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第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会(第二部)議事録
健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課
日時
令和6年5月29日(水)17:15~
場所
Web会議
中央合同庁舎5号館 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
議題
- (1)2024/25 シーズン向け新型コロナワクチンの抗原組成について
- (2)その他
議事
- 議事内容
- ○福澤ワクチン開発専門官 委員の皆様、お待たせいたしました。議事を再開させていただきます。ただいまより、「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」の第二部を開催いたします。第二部の議事は公開です。議事の様子はYouTubeで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。なお、事務局で用意しているYouTube撮影用以外のカメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、報道関係の皆様方、御協力のほど、よろしくお願いします。
また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
本日は、対面とWeb会議のハイブリットで開催いたします。会議の進め方は第一部で御連絡しているとおりでございます。Web会議から御参加いただいております委員及び参考人の皆様は、カメラオンで御出席いただければと思います。
続きまして、委員の出席状況についてです。第二部からは石井委員にも御出席いただいております。荒戸委員、脇田委員から御欠席との連絡を受けておりますので、現在7名の委員にWebで御出席いただいております。委員9名のうち7名に御参加いただいておりますので、定足数を満たしており、厚生科学審議会の規定により、本日の会議が成立していることを御報告いたします。
申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いします。これ以降、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。
それでは、議事に先立ちまして、本部会の資料について御説明させていただきます。本委員会の第二部の資料につきましては、通信負荷の軽減の観点から、Webサイトに掲載されている資料を画面には投影いたしませんので、傍聴の方々を含め、Webサイトに掲載している資料をお手元に御用意いただければと思います。
それでは、坂元委員長、進行のほど、よろしくお願いします。
○坂元委員長 皆様、第二部も引続きよろしくお願いいたします。事務局から、審議参加に関する遵守事項などについて、御報告をお願いいたします。
○福澤ワクチン開発専門官 審議参加の取扱いについて報告いたします。本日、御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づきまして、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について御申告いただいております。
各委員及び参考人からの申告内容については、利益相反関係書類を御確認いただければと思います。本委員会での調査審議を行う品目は、新型コロナウイルスワクチンとなります。本日の出席委員及び参考人の寄附金等の受取り状況から、参加規程第9条により、中野委員が寄附金受取りの実績があり、かつ、その枠が50万円以上500万円以下という年度がございますので、議決不参加の基準に該当し、審議の際、「議決に参加しない」に該当いたします。以上です。
○坂元委員長 ただいま、事務局から本日の審議参加につきまして御報告がありました。参加規程第9条により、中野委員が、審議の際に「議決に参加しない」に該当いたします。本委員会での意見の取りまとめは「議決」には当たりませんが、中野委員におかりましては、参加規程第9条に準ずる形で、意見取りまとめの際には御参加いただかないということにいたしたいと思いますが、委員の皆様方、いかがでしょうか。よろしいですか。
(異議なし)
○坂元委員長 ありがとうございます。委員会としての了承が得られたということで、早速議事に入りたいと思います。
まず、「2024/25シーズン向け新型コロナワクチンの抗原組成について」について、事務局から資料1の御説明をお願いいたします。なお、質疑応答については、全ての資料について御説明いただいた後に、お時間を設けたいと思います。では、事務局、よろしくお願いいたします。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局です。資料1に沿って説明させていただきます。2ページにお進みください。令和6年2月5日の予防接種ワクチン分科会においてお示した資料です。こちらの分科会でお認めいただきました内容としましては、定期接種、秋冬の接種に向けて、赤枠の所ですが、用いるワクチンについては秋冬の接種に向け、用いるワクチンに含むウイルスの抗原組成の選択については、インフルエンザワクチンに関する研究開発及び生産・流通部会の議論も踏まえ、最新のWHOの推奨する抗原組成を用いることを基本としてはどうか。また、選択肢の確保の観点から、様々なモダリティのワクチンについても、開発状況に応じて用いてはどうか。また、今後の具体的な検討については、インフルエンザワクチンにおけるワクチン株の検討と同様、研究開発及び生産・流通部会において行うこととしてはどうかという内容をお認めいただいたところです。
3ページです。こちらが今後の進め方です。新型コロナウイルスの変異や流行する系統の状況、また、ワクチンに関する科学的知見、諸外国動向等について情報収集を進めつつ、本年春ごろを目途に議論を行うべく、情報収集を行ってはどうか。こうした内容で、今年2月の生産・流通部会においてお認めいただいております。本日の議論につきましては、赤枠で括っている所ですが、4月にWHOにおける推奨する抗原組成に係る議論が行われましたので、それを踏まえて開催している次第です。この枠の流れにつきましては、製造販売企業による薬事申請等の準備がありますので、そちらを進めていただきまして、この秋冬の市場への供給や、定期接種の実施を予定しているところです。
ここでWHOの推奨内容や我が国の新型コロナウイルスの各系統の検出状況、免疫学的な知見について、国立感染症研究所の参考人から御説明いただいてもよろしいでしょうか。
○坂元委員長 はい、承知いたしました。それでは、国立感染症研究所の長谷川参考人から、資料2-1、資料2-2の御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○長谷川参考人 承知いたしました。国立感染症研究所の長谷川と申します。まず、資料2-1に沿って説明いたします。これはWHOのTechnical Advisory Group on COVID-19 Vaccine Composition (TAG-CO-VAC)でのCOVID-19ワクチン抗原構成の推奨についてです。
SARS-CoV-2ウイルスは出現から今日に至るまで、中和抗体から逃避能を獲得した変異株が出現し続けてきました。ワクチン抗原構成を定期的に見直すために、世界保健機関(WHO)は2021年9月にワクチン構成の技術的諮問グループ(Technical Advisory Group on COVID-19 Vaccine Composition;TAG-CO-VAC)という独立した専門家グループを組織しました。それ以降、年に2回の頻度で推奨ワクチン株に関する声明が発表されています。
TAG-CO-VACの現在の意思決定プロセスは、WHOにより公衆衛生への影響の大きい変異を有する変異株(懸念される変異株;VOC)が指定されることにより始まります。VOCの検出状況並びにウイルス変異の位置とワクチン効果に関する様々な科学的なデータに基づき、ワクチン構成の更新の必要性について検討されています。2024年の検討に用いられたデータとして、例えば以下のものが挙げられています。下に文献1として示しています。最新状況の議論に反映させるために、査読前のプレプリントや、企業等からTAG-CO-VACに対し機密情報として共有されたデータを含む幅広いデータが検討に用いられています。
(1)SARS-CoV-2ウイルスの遺伝的進化状況、(2)動物及びヒト抗血清を用いた中和試験による様々な変異株の抗原性及び抗原性変化を示す図による抗原性の評価データ、(3)動物及びヒト抗血清を用いた既承認ワクチン抗原により誘導される中和抗体反応の幅に関する免疫原性データ及びモデリングデータ、(4)既承認ワクチンによるワクチン有効性の推定値データ、(5)変異株感染者の免疫応答に関する暫定的な免疫原性データ、(6)TAG-CO-VACに対し機密情報としてワクチンメーカーから共有された候補ワクチンの非臨床・臨床試験における暫定的な免疫原性データなどです。
TAG-CO-VACの声明や利用可能なワクチン株の状況を踏まえた上で、各国・地域においてオミクロン対応ワクチン株が選定されてきました。本邦では、WHOの声明等、諸外国の状況や国内の状況をもとに、新型コロナワクチンの製造株に関する検討会及び厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会での議論を踏まえ、2022/2023年秋冬シーズンのオミクロン対応二価ワクチン、2023/2024年秋冬シーズンのXBB.1.5一価ワクチンの導入が進められてきました。
2024年4月に発表されたCOVID-19ワクチン抗原構成の推奨に関するデータの要約ですが、2024年4月26日にTAG-CO-VACから最新の声明が発表されています。(文献1)。今回の推奨に至ったデータの要約を記しています。
2024年4月時点で、過去数か月間の公的データベースに登録された大部分のSARS-CoV-2ゲノム配列はJN.1由来のウイルスで占められており、従来のXBB系統ウイルス、例えばEG5から置き換えが続いています。このデータ配列の置き換えは、他の変異株と比較して、JN.1系統の変異ウイルスのヒトへの適応度が高いことを示しています。また、幾つかのJN.1由来の変異株、例えばJN.13.1、JN.1.11.1、KP.2は、それぞれ独立した進化を経たものの、スパイクタンパク質の抗原決定基に関わるアミノ酸残基346、456番目への変異を含みます。これらのアミノ酸残基の置換は、以前のSARS-CoV-2の変異株、例として、BQ.1及びXBBのR346T変異、EG.5及びHK.3のF456L変異でも見られており、置換部位は中和抗体が認識するエピトープ内にあります。以上のことから、近い将来に流行するSARS-CoV-2変異株はJN.1由来である可能性が高いと推察されます。
XBB.1.5株若しくはJN.1株に初感作された動物及びヒト抗血清を用いた解析データから、これらウイルス株の抗原性は異なると考えられています。一方で、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず、XBB.1.5一価ワクチン接種後の抗血清は、XBB.1.5及びその派生株(EG.5、HK.3、HV.1)並びにBA.2.86とJN.1を中和します。しかしながら、公表済み及び非公表の研究において、JN.1に対する中和抗体価はXBB.1.5に対する中和抗体価よりも2~5倍程度低く、F456L若しくはR346T変異を伴うJN.1由来の変異株に対する交差中和価はさらなる低下が確認されています。
過去に報告されたヒト免疫原性データの二次解析から、株を更新したワクチンによる追加接種は、以前の株を用いたワクチン接種に比べて最新変異株に対する中和抗体を平均40%増加させることが確認されています。統計モデリングにより、ワクチン抗原を更新した場合のワクチン有効性に対する効果は、重症化及び発症予防効果に対して、それぞれ23~33%と11~25%ずつ増加すると予測されています。
TAG-CO-VACに対して機密情報としてワクチンメーカーから共有された非臨床試験のデータによると、JN.1一価ワクチン候補によって免疫されたマウスでは、既承認ワクチンで免疫された場合に比べ、JN.1及びJN.1派生変異株に対し、より高い中和抗体応答を誘導していました。1つの臨床試験結果ではあるものの、JN.1一価ワクチン候補を用いたヒト免疫原性試験の成績は、単一の臨床試験の結果であるものの、XBB.1.5や、関連するワクチン抗原に比べてJN.1派生変異株、例えばKP.2に対して、より高い中和抗体を産生する可能性が示唆されています。
TAG-CO-VACによるCOVID-19ワクチン抗原構成に関する推奨ですが、2024年4月時点で、ほとんどの流行しているSARS-CoV-2変異株はJN.1由来です。JN.1からウイルスの進化が続くと予想されるため、将来のCOVID-19ワクチンの製剤は、JN.1及びその派生変異株に対する強い中和抗体応答を誘導することを目指すべきとされました。その結果、TAG-CO-VACが推奨する1つの手法としては、JN.1系統の一価ワクチン抗原を含むワクチンと発表されました。
また、現行の1価XBB.1.5ワクチンの継続的な使用でも、初期のJN.1系統変異株に対する中和抗体応答を誘導し、感染からの保護が期待できることも、併せて発表されています。ただし、SARS-CoV-2の更なる変異がJN.1から続くと、XBB.1.5ワクチンによる発症予防効果が現状よりは弱くなる可能性がある点にも言及されています。また、現在流行している変異株、特にJN.1.1系統変異株に対して強い中和抗体を誘導する他の製剤やプラットフォームも考慮可能と言及されております。
以上が、WHOのTAG-CO-VACによるCOVID-19ワクチンの抗原構成の推奨についての説明になります。続けてよろしいでしょうか。
○坂元委員長 はい、どうぞ。
○長谷川参考人 続きまして、国内でのゲノムサーベイランスに基づく、国内での系統別の検出状況について説明させていただきます。こちらは資料2-2を御覧ください。まず、最初に示してあります図が、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスです。こちらは今年、2024年の第2週から17週まで、2週おきの検出状況になっています。右側にまとめられているのは、第14~17週、直近の4週のデータですが、KP.3というのはJN.1の派生ですけれども、そのKP.3系統を含み、JN.1系統とその亜系統及びXDQ.1系統が国内での主流となっています。直近4週間の系統別検出数は、JN.1系統とその亜系統がおよそ50%超、ついでXDQ.1系統が30%程度検出されています。直近2週間では、JN.1亜系統であるKP.3系統の割合が増加しています。
ここで、このXDQ.1系統についてですが、左側の赤い四角の中を御覧ください。XDQ系統はBA.2.86系統とFL.15.1.1系統の組換えにより生じた系統であり、JN.1系統の祖先であるBA.2.86系統と比較して、ワクチンが中和抗体反応の主なターゲットとするスパイクタンパク上のRBD(受容体結合領域)等の構造がBA.2.86系統と類似していることが知られております。
続きまして、2枚目の図を御覧ください。こちらは全国のゲノムサーベイランスによる系統別検出状況です。JN.1系統とその亜系統が依然国内で最も多いものの、XDQ系統とその亜系統の割合が増加傾向にあることが示されております。全国のゲノムサーベイランスに関する検出状況については以上になります。
○坂元委員長 長谷川参考人、どうもありがとうございました。
引続き、同じ国立感染症研究所の高橋参考人から、資料3の御説明をお願いいたします。
○高橋参考人 国立感染症研究所の高橋です。私からは、抗原性評価に関わる免疫学的な知見を説明させていただきたいと思います。まず、資料3の1枚目を御覧ください。こちらには、最近派生してきている変異株の系統樹を左側にお示ししております。その上側に、どのような部分にどのような変異が入っているかを示したパネルが示されております。
ここで注目していただきたいのが、昨年度、旧シーズンに使われたワクチン株はXBB.1.5になりますが、そこから系統樹的に少し離れた株として、BA.2.86という株、それに類似した系統としてJN.1というものがあります。また最近では、BA.2.87.1という株、非常に多くの変異を蓄積したような系統も出てきている状況です。先ほど、長谷川先生から御説明のあったように、XDQ系統という株が国内では検出されておりますが、そのXDQ系統に関しては、このBA.2.86と、その中和抗体が主な標的としてRBD部分の構造に関しては類似している系統になるということを、長谷川先生からも御説明がありましたが、再度ここでも補足させていただきます。
今回、やはり海外でも同様ですが、XBB.1.5系統と、あとはJN.1系統ですが、それと、このBA.2.87.1系統が抗原性として、どれぐらい近接しているのかどうかというところの明確な知見を御紹介できればと思います。
2ページを御覧ください。こちらは、先ほどのWHOのTAG-CO-VACの評価でも使われていた方法になりますが、マウスに、下に英語で記載されていますが、BA.1、BA.5など、様々なウイルス株由来のスパイクタンパクをマウスに2回接種して、誘導された抗血清の様々な、ここに示した全ての変異株に対する中和抗体価を測定されています。その中和抗体価を基に、各々の変異株のスパイクタンパクの抗原性がどれぐらい近接化しているかを、この地図上で距離で評価するという方法です。これがいわゆる抗原性地図というものになります。
見方としましては、まず中心部の左上部分に、Δ株、β株などのオミクロン前の株があり、より近接して、そこが1つの島のようになっております。ただ一方で、BA.1やBA.2というのは、その左や下側に少し離れて存在していて、オミクロンになって少し抗原性が変わったということが、この……に示されております。ただ、一方で、XBB系統に関しては、BA.5の更に右斜め下にXBB.1.5とかEG.5.1が固まっていますが、これがXBB系統になり、そこが1つの島になっていると。一方で、JN.1に関しては、その右側ですが、BA2.86と1つの固まりになって島になっているということで、この結果は、複雑で恐縮ですが、ここに示されていることは、XBB.1.5とJN.1、BA.2.86系統が抗原性として変化していると、距離が離れているということを、この結果が示しております。
次の3ページに移ります。ただ、先ほどはマウスの結果でありまして、やはり、ヒトの場合は様々な免疫履歴や遺伝的背景も違いますので、ヒトの抗血清ではどうかという評価も行われています。それが、特に、この右側の抗原性地図を見ていただくと、その場合、マウスと比較しまして、たくさん点があって恐縮ですが、例えば右側の真ん中の水色のXBB.1.5に比べて、JN.1やBA.2.86は確かに距離としては離れているのですが、このマス目が何マス離れたというかということがかなり重要になります。マス目数としては、2マスあるいは3マスといったような範囲内にいって、マウスに見られた抗原性の変化に比べたら、その差が縮まっているということをこの結果は示しております。
最後の4ページを御覧ください。今までは海外のデータを基に評価されておりますが、やはり国内とは少し免疫履歴が異なることもありますので、国内の抗血清でどうかということで評価した結果が、この4ページの結果になります。基本的に、これらの方々は全て武漢株を3回接種、4回目にオミクロン対応二価ワクチン(BA.4/5)を接種した方になり、それプラス、XBB.1.5一価ワクチンを接種されているかどうか、あるいはBA.5又はXBB.1.5流行期での感染歴があるかどうかということで層別化されております。
ただ、ここで御説明したいポイントは2つになります。まず、どのグループでも、水色で示したJN.1に対する中和抗体価が一番低いということで、やはりJN.1株の抗体逃避能というのが、ここで調べた株の中で、一番強いということになります。2点目としては、このJN.1とXBB.1.5の数値の差を見ますと、大体2.2~5.7倍の差になるということで、大体これぐらいの抗原性の差があるということを、この結果は意味していることになるかと思います。私からの説明は以上です。
○坂元委員長 高橋参考人、どうもありがとうございました。それでは、引き続いて事務局から説明をお願いいたします。
○吉原ワクチン情報分析専門官 ありがとうございます。事務局です。それでは、資料1の4ページを御覧ください。こちらは事務局として、まとめとしております。一番上の【これまでの経緯】の所は、先ほど冒頭にお伝えした部分です。また、2番目【WHOの推奨】の所ですが、長谷川先生から御発表いただきましたとおり、2024年4月に開催されたTAG-CO-VACにおいて、ウイルスの変化がJN.1から継続することが予想されるため、新型コロナワクチンの抗原構成について、JN.1系統及びその下位系統への、より高い中和抗体の誘導を目指すことが推奨され、一つのアプローチとして1価のJN.1系統の使用が推奨されました。
また、【製薬企業の報告等】ですが、製薬企業から、各社のメッセンジャーRNAワクチン又は組換えタンパクワクチンについて、新たな抗原構成のワクチンの開発状況等が報告されました。
「製薬企業の報告の概要」をまとめております。非臨床試験の結果ですが、1点目として、JN.1の成分を含む1価ワクチン接種は、XBB対応型1価ワクチン接種と比較して、JN.1に対して誘導される中和抗体価が、初回接種や追加接種が完了したマウスに、さらに追加して接種した場合は、約2~10倍高かったということ。次に、初回接種として接種した場合は、約3~47倍高かったということです。2点目として、JN.1の成分を含む1価ワクチン接種は、JN.1系統の他の下位系統(KP.2等)に対して、JN.1と同等程度の中和抗体価の上昇を誘導したといった報告がありました。
また、国立感染症研究所から、我が国の各系統の検出状況については、JN.1系統と並んでBA.2.86.系統とFL.15.1.1系統の組換えにより生じたXDQ系統が優位で、オミクロンXBB.1.5対応1価ワクチンのJN.1に対する免疫原性等の知見が報告されたところです。また、その下の※に書いているとおり、XDQ系統については長谷川先生から補足いただいたとおりです。
以上のまとめを踏まえて以下を論点としております。2024/2025シーズンの定期接種において使用するワクチンの抗原組成について、WHO推奨の状況や、製薬企業によるワクチンの開発状況等を踏まえ、どのように考えるかということを論点としております。
また、次のページ以降は参考資料として、2023年度の8回接種におけるオミクロン株XBB対応1価ワクチンの有効性の国内における知見を御紹介しております。事務局からは以上です。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。それでは、今までの資料の説明内容について、これから質疑応答の時間とさせていただきます。御質問のある方は、順次、御発言をお願いいたします。そして、その質疑応答の後に、審議取りまとめに移らせていただきます。では、皆様方、よろしくお願いいたします。御質問、御意見のある方は、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
特に、2024/2025シーズン向けの新型コロナワクチンの抗原構成として選定することが適当と考える抗原組成についての御意見、御質問等も頂けると幸いです。では、福島先生、よろしくお願いいたします。
○福島委員 御説明ありがとうございました。グローバルな状況と、ウイルス学的な性状、そして国内のヒト血清を使った中和抗体価の評価も示していただきまして、大変よく分かりました。勉強させていただきました。
今聞いたお話からは、JN.1系統を選ぶということになろうかという印象を持っております。その上で、2つ御質問させていただきたいのですけれども。少し周辺のことで申し訳ありませんが、まず1点目は、高橋先生のスライドで、ヒト抗血清を用いた国内のデータですが、4ページ目について質問があります。ここではXBB.1.5の1価ワクチンを接種されているのですが、下のグラフで、一番左の、過去に感染歴がない、かつ、XBB.1.5一価ワクチンの接種歴もない方に今回接種したときに、ホモの抗体価が一番上がるのかなと思うのですが、武漢株が一番高いのですかね。XBB.1.5株に対するホモの抗体価が一番上がっていないのは、これはNが3だからなのでしょうか。その点を教えていただきたいのが1つです。
あと、長谷川先生に教えていただきたいのが、グローバルの状況で、先生もTAG-CO-VACに参加されているということで、詳しく御説明いただきありがとうございました。昨年は確か、抗原組成のステートメントが5月だったかと思うのですが、今年は4月ということで、段々前倒しになる傾向はあるのでしょうか。御存じの範囲で教えていただければと思います。その2点をお願いいたします。
○坂元委員長 では、まず最初に高橋先生、それから長谷川先生、よろしくお願いいたします。
○高橋参考人 福島先生、御質問ありがとうございます。まず、4ページ目の左下の数値ですが、すみません、こちらのグループはXBB.1.5一価ワクチンを受けてない方になります。ですので、XBB.1.5の中和抗体価がさほど上がってない。一方で、武漢株、あとオミクロン対応2価ワクチンBA.4/5は受けているので、武漢株に対しては免疫刷込み等もあり、相対的に高い抗体価になっていると考えております。
○坂元委員長 福島先生、今の御回答でよろしいですか。
○福島委員 はい、すみません、私、データを読み間違えておりました。一番左がリファレンスなのですね。今回、何も接種していないということで。失礼いたしました。
○坂元委員長 では、長谷川先生、よろしくお願いします。
○長谷川参考人 2番目の御質問なのですが、TAG-CO-VACは、できた当初から、いつ検討会議をやるかということは決まっていませんでした、年に2回ワクチンの構成を見直しましょうということでスタートしています。おっしゃるとおり、昨年は5月だったのですが、秋に接種する所が多い状況で、mRNAワクチンは比較的短期間で準備できるけれども、ほかのモダリティのワクチンの場合にはもう少し時間がかかる事があり、早ければ早いほどよいという要請が製造所などからも来ており、今年は4月の開催になりました。年に2回ですから、年内にもう1回、秋に開かれることになると思いますが、次の春のシーズンがいつか、まだ決定しておりません。年に2回が基本になっております。
○坂元委員長 福島先生、いかがでしょうか。
○福島委員 ありがとうございました。高橋先生に追加の御質問になってしまうのですが、先ほどのお話しによると、スライドで真ん中のグラフは、過去に感染がなくて今回XBB.1.5対応一価ワクチンを打ったグループですよね。ここでもホモの抗体価が上がってきてないように思うのですが、これはなぜなのでしょうか。
○高橋参考人 ありがとうございます。すみません、プレのデータをここに載せてなくて恐縮だったのですが、接種によってXBB.1.5のホモの抗体価の増加は認められます。ただ、やはり免疫刷込み等の影響もあり、武漢株に対する抗体価のほうが、まだ依然として高いと。これは海外のデータでも、このようなデータはときどき見られている状況です。BA.2.87.1に関しても、抗原性がそこまで変化してないということもあり、この武漢株との中間のような数値になっていると考えているところです。
○福島委員 ありがとうございました。
○坂元委員長 よろしいですか、福島先生。では、大曲先生、よろしくお願いいたします。
○大曲委員 ありがとうございます。御説明いただきまして、本当にありがとうございました。長谷川先生に教えていただきたいことがあります。WHOのステートメントの御紹介をいただきましてありがとうございました。自分でも頑張って読んでみたのですが、自分の理解で自信がないところがあり、1点、教えていただきたいと思います。
2ページ目の所です。2ページの最初のパラグラフなのですが、ポイントとしては、アミノ酸残基346と456への変異が両方ともあるということが、今後の出てくるであろう主たる変異株の条件、言い方を変えればこの2つの変異を持った変異株がしばらくは出続けるだろうということをおっしゃっているのではなかろうかと思います。実際に、WHOは言っているのだろうと思います。現在、市中で検出されているJN.1の変異株では、示されたのが3つありますが、それは全部がこの2つを持っているということで、この2つ、346と456への変異を持っているということが、恐らくは今後また検出されて、ある程度、市中でドミナントになる条件であろうと書かれているのだと思っています。
なぜ、そう言えるかというと、過去に流行したXBBだと346、EG.5若しくはHK3だと456の変異があったということですし、今回、現在流行しているJN.1由来の変異株は、この両方を持っているということがあるので、やはり2つの変異を持っているということが、要は、主たる変異株という傍証と言えるのではないかと、そういうふうに理解をしました。その理屈としては恐らく別途検討が必要で、免疫逃避を得やすいとかいうことがあるのだろうと思うのですが、大変回りくどい言い方をして申し訳ありませんが、そういうふうな理解でよろしかったでしょうか。
○長谷川参考人 おっしゃるとおりです。今まで出てきた変異株についても、ここの部分に変異が入って、ここに変異が入ることが、やはりヒトへアダプトしてきているということなのだろうと。実際に、今までの異なる経路を辿っても、ここに変異が入ってきているという経過があるので、このような表現になっております。
○大曲委員 ありがとうございます。実は自分でも思いますし、仲間うちでも、要はJN.1と、その系統が当分出続けるのかどうか、それはどこで考えればいいのかということに関しては非常に悩みがありました。今日御説明いただいてよく分かりました。ありがとうございます。
○長谷川参考人 ありがとうございます。
○坂元委員長 では、ほかに御質問、御意見等はありますでしょうか。石井先生、よろしくお願いいたします。
○石井委員 御説明ありがとうございました。今の大曲先生からの御質問と関連して確認をさせていただきたいのですが、今現在、ドミナントとなっているXDQ株においても、346、456番目のアミノ酸残基が同様に、置換されているということでよろしいでしょうか。
○長谷川参考人 そちらについては、シークエンスを、私は承知していません。高橋先生、いかがですか。
○高橋参考人 少なくともXDQの最初の株に関しては、BA.2.86と同じですので、その2つの変異は有していないということになります。ただ、今、派生株がどうなっているかというのは、すみません、私も確認できておりません。
○石井委員 分かりました。ありがとうございます。
○坂元委員長 石井先生、よろしいですか。
○石井委員 はい、理解しました。ありがとうございます。
○坂元委員長 ほかに、委員の皆様方いかがでしょうか。よろしいですか。では、ありがとうございました。
では、これから本日の議論のまとめに移りたいと思います。なお、申し訳ありませんが、中野委員におかれましては、取りまとめに参加いただくことはできませんので、事務局より一旦、Web待機室へ移動させていただきます。取りまとめした後、再びお呼び申し上げますので、しばらくWeb待機室でお待ちいただければと思います。では、事務局、よろしくお願いいたします。
○事務局 事務局です。作業が完了いたしました。よろしくお願いいたします。
○坂元委員長 それでは、2024/2025シーズン向けの新型コロナワクチンの抗原組成には、WHOの推奨と同様に、JN.1系統及び、その下位系統、サブ系統への、より高い中和抗体を誘導する抗原を含むこととし、その1例としては、1価のJN.1系統が考えられるという結論になると思いますが、皆様方、いかがでしょうか。分かりにくい言い回しにはなってしまいましたが、要するに、JN.1系統が考えられるということですが、いかがでしょうか。何か、この点に対して御意見等はございますか。
(異議なし)
○坂元委員長 よろしいですか。では、異議なしということですので、そのようにさせていただきたいと思います。
以上、取りまとめが終わりましたので、事務局は、中野委員の呼び込みをよろしくお願いいたします。
○事務局 中野委員からチャットがありまして、6時から別の会議があるので、このまま失礼しますということですので、続けていただければと思います。
○坂元委員長 分かりました。以上で、本日の予定しておりました議事は終了となります。その他、何か事務局からありますでしょうか。
○事務局 事務局です。次回の開催につきましては、追って、後日連絡させていただきます。事務局からは以上です。
○坂元委員長 それでは、本日の季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会を終了といたします。本日は、皆様方、ありがとうございました。では、失礼いたします。