2023年8月21日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和5年8月21日(月)18:00~

出席者

出席委員(21名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人3名出席
欠席委員(0名)
行政機関出席者
  •  城克文(医薬・生活衛生局長)
  •  吉田易範(大臣官房審議官)
  •  中井清人(医薬品審査管理課長)
  •  野村由美子(医薬安全対策課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。本会議はペーパーレスの開催といたしますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作等で不明点等ありましたら、適宜、事務局がサポートいたしますので、よろしくお願いします。
 本日のWeb会議における委員の出席についてですけれども、川上委員が遅れての御参加と御連絡を頂いております。本日、現在のところ当部会委員数21名のうち20名の委員がこの会議に御出席を頂いていますので、定足数に達していますことを御報告いたします。
 なお、本日は審議事項の議題6に関して、国立大学法人東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野教授の岩坪威先生にお越しいただいております。続いて、国立大学法人三重大学大学院医学研究科特定教授の冨本秀和先生にお越しいただいております。それから、国立研究開発法人国立循環器病研究センターデータサイエンス部長の山本晴子先生に参考人として御出席いただいております。
 続いて、薬事分科会規程第11条への適合状況については、全ての委員の皆様に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様におかれましては会議開催の都度、御協力を賜り、誠にありがとうございます。それでは、これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力のほどよろしくお願いいたします。それでは森部会長、以降の進行をお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、委員からの申出状況について報告を行っていただきます。お願いいたします。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~No.17を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは、資料No.17に記載のとおりです。
 これらに関する委員からの申出状況等を踏まえた、薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく、各委員の審議参加に係る取扱いは次のとおりでございます。
議題1「フォゼベル」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、中西委員、矢野委員です。
議題2「コルスバ」は、退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題3「ジルビスク」は、退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題4「リスティーゴ」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委
員、高橋委員です。
議題5の「レクビオ」は退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、高橋委員です。
議題6の「レケンビ」は退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。以上でございます。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はございませんでしょうか。よろしければ、皆様に御確認いただいたこととさせていただきます。本日は審議事項6議題、報告事項が6議題、その他事項が1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移らせていただきます。はじめに、参考人をお呼びしている議題6から先に御審議いただきたいと思います。それでは審議事項の議題6、そして、その他事項議題1については関連する議題でございますので、まとめて御議論いただきたいと思います。
 まず、議題6について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品レケンビ点滴静注200mg及び同点滴静注500mgについて、機構より説明いたします。
 資料No.6の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全112ページの通し番号で5ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。アルツハイマー病、以下、「AD」と申し上げます。こちらは、臨床症状発現の10~20年前にアミロイドβ、以下、「Aβ」と申し上げます。こちらで構成されるアミロイド斑の神経細胞外蓄積等が始まることが示されています。
 ADによる軽度認知障害、以下、「MCI due to AD」と申し上げます。この段階では、AD病理を有し、かつ軽度の認知機能障害が生じているものの、日常生活に大きな支障を及ぼすまでは至っていませんが、数年で日常生活に著しい影響を及ぼす状態へ移行します。したがって、MCI due to ADを含む早期の段階で、疾患の進行を抑制することが重要と考えられています。
 本剤は、レカネマブ(遺伝子組換え)を有効成分とし、可溶性Aβプロトフィブリルに選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介して除去することにより、MCI due to AD、及びADによる軽度の認知症患者における臨床症状の悪化を抑制する薬剤として開発されました。以降は、MCI due to ADとADによる軽度の認知症をまとめて、「早期AD」と称します。
 今般、国際共同試験成績等を基に、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は米国では2023年1月に迅速承認された後、7月に完全承認されています。2023年6月現在、本剤は欧州を含む5の国及び地域では承認審査中です。本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 審査報告書の通し番号45ページ、7.3項を御覧ください。早期AD患者を対象とした、国際共同第III相試験である301試験が実施され、無作為化後の18か月間がCore Studyとされました。治験薬は2週間に1回、静脈内投与されました。
 審査報告書の通し番号47ページを御覧ください。主要評価項目は、治験薬投与18か月時点の臨床認知症評価法のSum of Boxes、以下、「CDR-SB」と申し上げます。こちらのベースラインからの変化量とされました。CDR-SBは、3項目の認知ドメイン及び3項目の機能ドメインにより構成される尺度であり、早期AD患者の臨床症状の変化を評価可能な指標と考えられています。審査報告書の通し番号48ページ、表41に示しますように、CDR-SBの悪化抑制効果について、本剤群でプラセボ群に対する優越性が示されました。
 臨床試験で認められた結果の意義について、審査報告書の通し番号60ページの中ほどに示しますように、主解析の結果に加え、長期にわたって緩徐に症状が進行するADの早期段階で、CDR-SBのスコアの悪化が、プラセボ群に対して本剤群で20%超抑制されたことには、一定の意義があると判断しました。また、臨床症状の悪化速度や臨床症状の重症度段階の悪化に着目した解析、及び日常生活機能に関する評価項目において、本剤による抑制傾向が示されていることも考慮し、本剤の効果には臨床的意義があると判断し、専門協議において、この判断は支持されました。
 日本人集団の成績については、審査報告書の通し番号50ページ、表46を御覧ください。主要評価項目の結果について、日本人集団でも全体集団と同様に、本剤によるCDR-SBの悪化抑制傾向が認められました。また、審査報告書の通し番号51ページ、表47に示しますように、副次評価項目のADAS-Cog14、ADCS MCI-ADLでも全体集団と同様に、本剤の有効性を示唆する傾向が示されていることなど、有効性に関する項目を総合的に評価し、全体集団で認められた有効性は、日本人患者においても期待できると判断しました。
 また、審査報告書の通し番号62ページ、表51に示しますように、CDR-SBについて、ApoE ε4の保因状況別の部分集団解析の結果、ホモ接合型集団では、プラセボ群と比較して、悪化抑制傾向は認められませんでしたが、審査報告書の通し番号62ページの下から3~4行目に示していますように、ADAS-Cog14及びADCS MCI-ADLについては、ApoE ε4ホモ接合型集団と全体集団の結果に、明確な違いは認められませんでした。
 ADに関する大規模観察研究であるADNI及びJ-ADNIにおいてApoE ε4アレル数は、早期AD患者の認知機能低下の進行速度には、影響しないことが報告されています。ApoE ε4ホモ接合体で、本剤の有効性が減弱する機序は想定されないことなども踏まえ、本剤の有効性はApoE ε4ホモ接合体でも期待できると判断し、専門協議において、この判断は支持されました。
 続いて、審査報告書の通し番号71ページから記載している「7.R.4 安全性について」の項を御覧ください。安全性については、アミロイド関連画像異常、以下、「ARIA」と申し上げます。こちらのリスク管理及び中枢神経系の出血事象の発現リスクを中心に検討しました。審査報告書の通し番号72ページの表58、及び75ページの表62に示しますように、本剤の臨床試験において、本剤群では、浮腫/滲出液貯留を伴うARIA、以下、「ARIA-E」及び出血又はヘモジデリン沈着を伴うARIA、以下、「ARIA-H」と申し上げます。こちらが、それぞれ約13%及び約17%認められました。
 ARIAは、AD治療を目的とする抗Aβ抗体に特徴的な脳画像の異常所見であり、ARIAにより、脳に不可逆的な障害が生じた場合には、患者の予後に深刻な影響を与える可能性があります。したがって、本剤の投与は、投与に当たり必要な検査及び管理が実施可能な医療施設又は当該医療施設と連携可能な医療施設において、ADの病態、診断、治療に関する十分な知識及び経験を有し、本剤のリスクについて十分に管理・説明できる医師の下で、本剤の投与が適切と判断される患者のみに行う旨の注意喚起が必要であると判断しました。
 また、審査報告書の通し番号74ページの表60~61、及び76ページの表63~64に示しますように、ARIAはApoE ε4キャリアの患者で、発現割合及び画像上の重症度が高い傾向が認められましたが、ARIAの発現時期はApoE ε4の保因状況によらず同様であったことから、ApoE ε4キャリアの患者であっても、ARIAのリスク管理を厳格に行うことで、本剤の投与は可能と判断しました。
 ただし、本剤の投与開始に先立ち、本剤投与によるARIAの発現割合、ARIAのリスク管理のために必要な検査、ARIA発現時の対処法について、患者及び家族・介護者に十分な情報を提供して説明し、同意を得てから投与するよう注意喚起することが必要であり、ApoE ε4保因状況別のARIAの発現状況についても、情報提供することが必要と判断しました。加えて、ARIAを正確に診断し、診断結果を踏まえて適切な対応を行うことを徹底するため、事前にMRI読影に関する医療従事者向けトレーニングを実施する必要があると判断しました。
 次に、中枢神経系の出血事象の発現リスクに係る検討について、御説明いたします。審査報告書の通し番号81ページの表69を御覧ください。本剤と抗血小板薬、抗凝固薬及び血栓溶解薬との併用について、ARIA-Hの発現割合は、併用集団で高い傾向が認められていますが、現時点で臨床的に許容できないリスクは示されていないこと、本剤の対象患者の年齢や合併症を考慮すると、これらの薬剤を併用禁忌とすることは現実ではないことから、併用注意とすることが適切と判断し、この判断は専門協議において支持されました。
 なお、本剤投与とは別の医療施設で血栓溶解薬投与が行われるような場合も含め、本剤を使用する患者に関わる医療従事者全員に、本剤投与中の患者であることが伝わるように、患者携帯カードを作成することを予定しております。また、審査報告書の通し番号105ページの上段に示しますように、本剤投与中に脳出血又は重度のARIAを発現し、その後、死亡に至った症例が認められていることについては、添付文書等で情報提供することを予定しております。
 最後に、製造販売後の調査計画について御説明いたします。審査報告書の通し番号106ページ1.5項を御覧ください。本剤の一定の安全性が確認できるまでは、本剤が投与された全症例を対象とした、使用成績調査を実施することを承認条件とし、ARIAの発現リスク要因の探索や、ApoE ε4の保因状況と、ARIAの発現リスクとの関係の評価等を行う予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において、御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では、報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。この後、関連いたしますその他事項議題1について、事務局から御説明を頂きまして、引き続き、参考人の先生が本日3人お越しいただいておりますが、それぞれお話を伺いました後に、委員の先生方の意見交換という形にさせていただきたいと思っております。それでは、その他事項1につきまして、事務局から概要説明の方をお願いいたします。
○事務局 その他事項議題1、レカネマブの最適使用推進ガイドライン案について、事務局より説明させていただきます。資料No.14-2を御覧ください。以降の説明において、ページ番号は先ほどと同様、各ページ最下部の通し番号で御説明します。
 3ページに記載のとおり、今回の対象となる効能又は効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」であることから、一般社団法人日本神経学会、一般社団法人日本神経治療学会、公益社団法人日本精神神経学会、一般社団法人日本認知症学会、一般社団法人日本老年医学会、公益社団法人日本老年精神医学会及び一般社団法人日本脳卒中学会から御推薦を頂いた専門家からの御意見を踏まえ、本ガイドライン案の作成を行っております。
 4ページに本剤の特徴及び作用機序、5ページから臨床成績の概要を記載しています。内容は先ほどの機構からの説明と重複するので、割愛します。12ページ以降に、本剤の投与対象となる患者及び投与施設の要件を記載しています。適切な患者選択や投与判断、重篤な副作用発現の際の迅速な安全対策等を確保した上で、最適な薬物療法を提供できるよう、要件を設定しています。
 12ページに投与対象となる患者要件を記載し、投与開始前1か月以内の期間を目安に、MMSEスコア及びCDR全般スコアについて確認されていること等を要件としています。
 13ページ以降に投与施設の要件を記載し、初回投与に際して必要な体制として、認知症疾患の診断及び治療に精通する常勤医の複数名の配置や、適切な検査ができる体制として、1.5Tesla以上のMRIを保有し、ARIAの鑑別を含むMRI読影が適切に行える常勤医が配置されていること、さらに、MMSEスコア及びCDR全般スコアについての評価が可能な者が配置されていること、本剤の製造販売後調査を確実に実施できる施設であること等を求めています。なお、PET検査又はCSF検査の実施については、同一施設内での実施に限らず、当該医療機関と連携が取れる施設で実施可能としています。なお、初回投与後6か月までは同施設で本剤を投与することを求めています。
 16ページには、初回投与後6か月以降の施設要件を記載しています。初回投与後6か月以降は、6か月に1回、CDR全般スコアやMMSEスコア等の評価、MRI検査を初回投与を行った施設で実施する必要がありますが、それ以外の投与は初回投与時の患者情報等の共有も含め、初回投与施設と連携が取られていることを条件に、認知症疾患の診断及び治療に精通する学会の専門医等の要件を満たす医師が配置されている施設でも可能としています。また、本剤の製造販売後調査を確実に実施できる施設であることを求めています。
 17ページには、投与期間中の有効性及び安全性の評価、投与継続、中止の判断について記載しています。先ほど申し上げたとおり、6か月に1回、臨床症状の評価を行い、臨床症状の経過から本剤の有効性が期待できないと考えられる場合は、本剤の投与を中止することを求めています。また、定期的かつ必要に応じてMRI検査によりARIA発現の有無を確認し、ARIAが認められた場合には、投与中止又は投与継続の可否を判断することとしています。また、本剤の投与は原則18か月までとし、18か月以上継続する場合は、18か月時点での投薬効果等から本剤投与の継続の要否を判断することとしています。また、中等度以降のアルツハイマー病による認知症と診断された場合、中等度以降に進行した患者に投与を継続したときの有効性が確立していないことから、本剤の投与を中止し、再評価を行うこととしています。
 最後に、18ページには投与中止後の再開について記載しています。患者の都合で投与中止した場合、初回投与時の患者要件に準じて、再度、認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。なお、本剤投与中止後の再開は、原則、初回投与から18か月までとしていますが、初回投与から18か月を超えて再開する場合は、再度Aβ病理を示唆する所見及び認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。また、ARIAにより投与を中止した場合で投与を再開する際は、添付文書の注意喚起に従い、投与再開の可否及びタイミング等を判断することとし、投与再開する場合は、再度、認知症スコアを確認の上、本剤の投与対象となる患者要件に該当することを確認することとしています。
 本ガイドラインは本日の御意見も踏まえつつ、引き続き検討を行い、最終的に中央社会保険医療協議会の了承を得た上で、本剤の薬価収載日までに通知する予定です。以上、本剤の最適使用推進ガイドライン案についての説明になります。
○森部会長 御説明ありがとうございました。続きまして、参考人の先生から本議題につきまして御発言を賜ることとなっております。それでは、まず岩坪先生から御発言をお願いしてよろしいでしょうか。
○岩坪参考人 御紹介いただきました東京大学、国立精神・神経医療研究センターの岩坪でございます。私は疾患修飾薬の基礎研究、臨床研究に携わっており、日本認知症学会でこういった修飾薬の議論を取りまとめてまいりました立場から、幾つか意見を述べさせていただければと存じます。
 まず、今回提示されましたレカネマブの治験結果が、臨床的な有用性を示すものであるという御説明に同意いたします。CDR-Sum of Boxesによる評価で、18か月時点で27.1%の臨床的増悪抑制、これは時間軸で見ますと、5.3~7.5か月の症状増悪の遅延、それだけの時間がセーブできたということになりますけれども、この結果は統計学的に有意であるだけでなく、単独の使用で極めて強い効果が得られたと申すことはできないまでも、一定期間にわたって生活機能のレベルがより良好な状態を保って、認知症とともにその患者様に生活をしていただくことができる。より良い認知症との共生、を図っていただく一助にもなるのではないかと考えるものです。こういった点で臨床的意義があるだろうと考えるところでございます。
 アルツハイマー病の治療に用いる薬剤は、冨本教授からも御説明があると思いますが、本邦でも過去20数年にわたってドネペジル等の症候改善薬のみであったわけです。疾患進行のメカニズムに即して認知症、アルツハイマー病の本質である神経細胞の変性という現象を遅らせる疾患修飾薬、その実用化が長らく待望され、努力を重ねられてきたわけであります。今回登場いたします薬剤レカネマブはAβを除去することによって、認知症の発症という臨床タイミング前後の時期、これははっきりと有症状の時期でありますけれども、この時期のアルツハイマー病において臨床症状の進行を抑制する薬剤でありまして、こういった薬剤を承認いただき、医療現場に提供いただくということの意義は極めて大きいものと考えるところでございます。
 御説明のありました抗Aβ抗体薬特有の副作用であるARIAについてです。冨本教授から御説明があると思いますが、これは臨床使用が開始された後、特段の注意が必要な副作用であることは言うまでもございません。しかしながら、MRI読影のトレーニング、専門家との連携、また投与開始早期を含めて全期間にわたり徹底したリスク管理策を行うことによって、安全な臨床使用は実現することが可能と考えております。
 認知症に関係する主要な学会、特に日本認知症学会と日本老年精神医学会では、このARIAリスク管理を含めた議論に基づいて、レカネマブ使用の前提資格となる研修を、今、準備しております。また今後、国、医療界を挙げて医療現場の体制整備も進められますことから、本邦の臨床現場においても、安全性に配慮した上での適切な使用が進められるものと確信いたします。
 現在までに治験で得られているデータを改めて拝見しますと、投与前にApoE遺伝子型の検査を実施することを必ずしもしなくても、MRI検査と詳細な臨床的なフォローアップを行うことによりまして、ARIAのリスク管理は十分に可能ではないかと考えます。しかしながら、治験でのデータや症例数は限られております。そこで、実用の開始後に実臨床上のデータを集めて、慎重に検証を進めることが何より重要であると考えます。この点で市販後調査を一定期間は原則、全例で行うという方針に賛同いたしますし、また並行してレジストリ登録、あるいは市販後に臨床研究なども行っていくことで、データ収集とエビデンス構築を図るということが重要だろうと考えております。
 このARIAのリスクを勘案しましても、本薬剤の投与が真に必要な方、適用条件を満たした患者さんに限定して投与を行う必要があるということは申すまでもございません。この点で、使用可能な施設や専門家の要件などについて、最適使用推進ガイドラインにより限定をするということは適切でありまして、その内容については更に御議論の上、最も良い形でおまとめいただくということが必要かと思います。
 最後に、本薬剤の使用には薬効に関する的確な臨床的評価は必須でありまして、有効性が消失したり、あるいは病気が著しく進行した段階に至って、漫然と投与を継続すべきものではないということは非常に重要な点だと思います。もちろん治験において効果が検証されました18か月間を超えても有効性が持続する場合もあり得ますし、また病期が中等症認知症に差し掛かった時期にも有効性が保たれているというケースもあり得ます。ですので、一律に時期、病期のみに基づいて投与を打ち切るということは、患者さんの利益を損ない、真に有効な病期について情報を得ていくという機会を失うおそれもあるということは、一方で銘記すべきであります。しかしながら、投与が長期間に及ぶ場合には、特段に厳格な臨床的評価を行って、投薬の中止や治療法の切り替えについて検討することが極めて重要であると考えます。以上でございます。
○森部会長 御説明ありがとうございました。引き続きまして、冨本先生から御発言を頂きます。お願いします。
○冨本参考人 御紹介いただきました三重大学大学院、済生会明和病院の冨本と申します。私は、神経治療学会の認知症対応ワーキングチーム委員長として、学会の認知症の取りまとめを行っております。特に私の従来の研究領域がアミロイド関連画像異常ARIAの発症に関係の深い脳アミロイド血管症の診療に中心として従事してきた、そういった立場から少し発言させていただきます。
 先ほど岩坪教授の方からも御紹介があったように、本薬の副作用としてのARIAに関しては、一定の注意が必要であるとは思いますが、それを鑑みましても、やはり本薬の有効性・有用性に関しては十分に支持されるものと判断しております。現在アルツハイマー病に関しましては、抗認知症薬は4剤あるわけですけれども、初期から進行期までの診療に非常に幅広く用いられております。実際に症状の改善に一定程度の有効性がございますし、重要な薬剤であることは確かです。しかし、現状では症状の進行を抑制することは本質的には困難で、特に疾患の初期におきましては、軽度の認知障害があっても投与する薬剤がないというのが現状です。そういった軽度の認知障害の患者さんにつきましては、運動あるいは生活習慣の改善といったことを図りまして、軽度認知障害から認知症に移行する、コンバートすることを防ぐ努力を行っているわけですが、実際にこういった取組の中で、特にフィンランドで実施されたフィンガー研究がございますけれども、その結果を見ましても、その効果には一定の限度がございます。アルツハイマー病は進行してしまいますと、行動・心理症状を来すことも多うございますし、患者さん御自身の生活は元より、その御家族にも大きな負荷が生じます。そういった現状がございますので、初期に認知症への移行を防ぐ、こういった薬剤の意味合いというのは非常に大きいものであると考えております。
 現状では疾患修飾薬がないということで、早期に医療機関に受診することの意味が、患者さんや家族の中で余り意味がないのではないかと考える患者さんもかなりいらっしゃいます。そういったことが、実際には疾患の進行につながっておりますし、あるいは、認知症の初期集中支援チームの中で、こういった初期事例を治療することも精力的にされているわけですけれども、なかなか初期の患者さんが医療機関を受診してくれないという現状の中で、非常に疾患が進行してしまうということが起こっております。
 認知症の人と家族の会が実施した調査がございまして、その結果では、認知症を発症してから診断が付くまでに1年2か月というように、長期間空白期間があるということが報告されております。こういった疾患の初期に進行を、コンバートを抑制する薬剤があるということであれば、患者さんあるいは御家族のお気持ちも変わるでしょうし、早期受診を促して長期予後を改善することが期待できると考えております。
 あと、ARIAに関して、抗血栓薬の問題が指摘されているわけですが、実際には十分な配慮の下で行えば、現状の対応として許容されると考えております。レカネマブの第III相試験、Clarity ADの結果を見ますと、抗血小板薬の服薬をする、ありなしで脳の微小出血の増加、あるいは脳出血、脳表ヘモジデリン沈着症などの出血性合併症が増加する傾向は認められておりません。また、抗凝固薬につきましては、抗血小板薬よりも、より出血イベントが一般的には多いと言われておりますが、それにつきましても、レカネマブの投与群で2.4%、抗凝固薬のないレカネマブ投与群では0%ということで、ただ、両者の間には有意差は認めておりません。認知症あるいは循環器疾患も、いずれも頻度が高い疾患で、また、高齢になりますと合併する頻度が高いということがございます。したがいまして、レカネマブの対象患者が、抗血栓薬を内服中であるという蓋然性はかなり高いと思われますが、ここのClarity ADのデータを見ますと、その副作用の頻度からは、併用禁忌とする必要性はないと考えております。
 それから、ARIAのリスクがあることで、より厳密な対応が必要であることが考えられます。ARIAの読影は、浮腫を反映するARIA-E、さらに出血を反映するARIA-Hがございます。この二つの所見というのはほかの幾つかの病態でも起こることがございます。したがいまして、ARIAに関する十分な知識を持っていることが必要です。早期に診断して、ARIA-Eを発生したごく初期に継続、中止、あるいは一旦中止の後の継続といった判断を行っていく必要がございます。そのためには、所見に関する読影、あるいは治療に関する高度の専門性が必要になります。したがいまして、施設あるいは処方資格について規定しております現行では検討中ということではございますが、現在の最適使用推進ガイドラインの骨子、骨格については、その内容が妥当なものであると考えます。さらに、岩坪教授からも御指摘がございましたが、特にレカネマブではARIAの副作用がございますので、アミロイドβが病態の中心にある軽度の認知障害、あるいは早期のアルツハイマー病に限定するべきでございます。中期以降になって有効性を示すエビデンスは、現在のところございません。したがいまして、患者さんの症状が不幸にして進行してしまった場合、漫然とした投与は副作用のリスクのみを患者さんに負わせる結果となりますので、控える必要があると考えております。
 また、病態が違うほかの疾患がございます。同じくアミロイドPET等で陽性になる、そういった疾患がございまして、認知症の層別化と呼んでおりますが、これが重要だと思っております。具体的には、例えばレビー小体病理による軽度認知障害では、アミロイドPETは4割が陽性になりますし、レビー小体型認知症まで移行しますと6割がアミロイドPET陽性ですので、これらの病態は慎重に除外する必要があると考えております。
 最後に、ApoEのホモ接合体の問題について少し触れさせていただきます。レカネマブでは、無症候性を含めたARIA-Eの発現率は13%ですが、症候性に限りますと3%ということで、決して高率ではございません。さらに、ApoEの遺伝子型でホモ接合体の患者におけるARIA-Eの発症率は33%ということで、確かにノンキャリアの5%と比べると高率になります。しかし、ARIAは、基準を満たした診療医が厳格な基準に従って判断し、早期に中止、若しくは薬剤による治療といった適切な管理を行うことで十分な管理が可能と考えられています。治療効果としては、全体で27%の増悪抑制が期待できますので、ホモ接合体の患者さんでありましても、先ほど少し御説明いただいたように、リスクベネフィットを考慮すると治療の意義が十分にあるものと考えております。以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。続きまして、山本先生から御発言いただきます。お願いいたします。
○山本参考人 ありがとうございます。国立循環器病研究センターの山本でございます。私は神経内科専門医ですけれども、主として脳卒中の急性期をずっと臨床としては診てまいりました。それから、ここ20年ほどは、AROと言われる臨床試験を実施する体制整備、実際に医師主導治験を含む介入試験の実施も手がけてきたという立場から、今回は発言させていただきます。
 既に2人の参考人の先生方が御指摘されているように、レカネマブの有効性については治験で明確になっており、ベネフィットは明らかと考えます。また、有害事象については、投与時の反応が幾つかありましたけれども、それを含めてある程度対応可能なものが多いと認識しております。問題としては、脳出血を発症する可能性があるというデータが示されている。ただ、ここについては圧倒的にデータが不足しているため、判断が難しいという状況かと思います。
 脳出血ですけれども、残念ながら欧米人に比べて日本人は発症率が約3倍と言われておりまして、日本人は脳出血を起こしやすいという特徴がございます。もう一つは、脳梗塞につきましては今は超急性期からの内科的治療、外科的治療がかなり発達しておりまして、ある程度適切な治療をすることで予後を改善することができる疾患になっておりますが、脳出血は、私がレジデントになった30数年前からほとんど治療法は変わっておらず、現在でも急性期に行えるような効果的な治療はございません。退院時には20%が死亡、45%は車椅子か寝たきり、無事に社会復帰できる方というのが15%程度と言われておりまして、非常に予後不良な疾患で、存命したとしても非常にQOLが下がるという、アルツハイマー病とは別の意味で大変な疾患です。ですので、そのリスクをどのようにコントロールして減らしていくかが、この薬の使い方の重要な問題だと思います。具体的には一つはARIAの画像評価、これが一つの脳出血の前触れになっているかもしれないということですので、ここを適切に行うという体制が非常に重要だと思います。これにつきましては、最適使用推進ガイドラインで十分期待できる内容になっていると思います。併せて、先ほどもお2人から指摘がありますけれども、投与すべきでない患者さんには投与しない、それから、投与することのベネフィットよりもリスクの方が高まったような状況になった方には漫然と投与しない、そういう体制も敷いておくことが必要ですけれども、それにつきましても承認条件、最適使用推進ガイドラインで、ここを担保してあると考えます。残る懸念としましては、抗凝固薬、抗血栓薬、脳梗塞の超急性期に使われる血栓溶解療法との併用の安全性です。これにつきましては、残念ながら、現在それが大丈夫とも言い切れませんし、危ないとも言い切れない、圧倒的にデータが不足しております。この臨床開発の中で抗凝固薬や抗血栓薬を併用されている患者さんが1,000人程度ですので、その中で数名が脳出血を発症しているとしても、通常の脳出血の疫学のデータからいって特に超過した数字ではないと思いますので、これを併用していても、現時点で脳出血が増えているという判断はできないと思います。ただ、これが、いざ市場に出たときに、これの治験の100倍、1,000倍という患者さんがこれを使用するときになって、このデータがどう動くかは非常に大事なところですので、やはり全例調査を行うことが必須だと考えます。しかも、ただ全例調査をやって終了するまで待つというよりは、データの集積に応じて定期的な検討、その結果を医療現場にフィードバックしていただくことが重要だと思います。
 それから、脳梗塞発症時の血栓溶解療法が安全かどうかというのが、残念ながらよく分からない。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに、やはり大出血を来した症例が発表されまして、一部の、特に脳卒中の急性期の診療をしている者たちにとっては、非常に心配な状況がございます。これにつきましては、本薬を投与中の患者さんに服薬カードを携帯させるとか、いろいろ案を出していただいていると思うのですけれども、ただ、本当に短時間で併用薬を含めて、血栓溶解療法ができる患者さんか、できない患者さんかというのを見極めるのは、医療現場では非常に困難を極めておりまして、いろいろな服薬カードを携帯させても、いろいろな事情で、そのときのそれぞれの事情で併用の見逃しは起こり得るとは思います。ただ、現在のところ、これが危ないというエビデンスもございませんので、単なる懸念、あるいは単なる1例報告で、そこを禁忌にするという必要はないと思いますし、逆に、もし、これが単なる1例報告で実は安全だった、別にそれが脳出血を来さないということであれば、むしろレカネマブの治療を受けている患者さんがたまたま脳梗塞を起こしたときに、tPAは打たないというような判断をされますと、その患者さんから治療の可能性を奪うということにもなりますので、それは逆であろうと思います。ですので、結局現状できることとしましては、脳卒中の医療現場、脳卒中関連の学会等も通じて、脳卒中の医療現場にも情報提供と、製販後調査への全面協力の依頼をかけるということでデータを集めていく。そして、危険な情報があれば、そこについては手当をするという形です。非常に革新的な薬でありますし、間違いなくアミロイドβを脳内から減らすという、画像的なエビデンスも出ておりますので、本当に大事に育てて、関係者全員でベネフィットを最大にして、リスクを最小にするという活動を、市販後も関係者一同が全員でそれを行っていく。そして、患者さんの安全を確保して、治療のベネフィットを最大限享受していただくような環境を作るということが一番重要だと考えております。以上です。
○森部会長 御発言、ありがとうございました。今、3人の参考人の先生方から詳しく本剤の有効性や有用性、さらに市販後における課題についてお話を伺いました。それでは、この後、委員の先生方から御質問、御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
○大谷委員 一つよろしいでしょうか。大谷でございます。
○森部会長 大谷委員、お願いします。
○大谷委員 大変すばらしい薬で、期待が持てる薬かと思います。1点、お伺いしたいのですが、市販後の調査において十分な情報を収集していくことが大事だということと、一方で、遺伝子型との関係というのがある程度データとして分かっているという、その二つの面があるかと思います。そうしたときに、この薬に関しては、特にApoEの遺伝子型でホモだと、もしかしたら効きが悪いような傾向も少し見られているということ。それからARIAのリスクが高いということがなんとなく見えてきている中で、今後、市販後の中で、実際に患者さんに使って全例調査をしていくとはいっても、この患者さんの全例の遺伝子型が診断されるわけではないという理解でよろしいのですよね。
○事務局 厚生労働省より説明させていただきます。御質問ありがとうございます。今回の全例調査については、全例調査の中でApoE ε4の保有状況等の患者背景について、しっかり精査をすることとしております。遺伝情報に関係しますので、当然、全例調査のうちでも患者様の同意が得られた方のみ、遺伝情報を収集することを想定しております。以上です。
○大谷委員 ありがとうございます。それは自然に挙がってくる形で集められるのか、それとも患者さんの同意が取れる範囲で積極的に集めるのかによって、かなり集まってくる情報の量や質が変わってくるのではないかと懸念します。もし可能であれば、なるべく早い時期に遺伝子型と効果やリスクとの関係の情報を集めることが大事なような気がしています。その辺り、どれぐらいの早さ、力の入れ加減で遺伝子型の情報を集めていかれるつもりなのか。できれば患者さんの同意が得られる限りにおいては、積極的に集めていく体制が何か必要なのではないかという気がしますが、その辺りはいかがでしょうか。
○事務局 事務局です。御質問ありがとうございます。今回、ApoEの遺伝子の保因状況は安全性等に関する因子であると、厚生労働省でも認識しております。市販後調査に関しては、審査報告書の通し番号の107ページの表94に記載していますが、今回、登録期間を18か月~36か月としており、登録状況を踏まえ検討していく予定としています。観察期間についても、標準観察期間として79週間、継続投与する場合には可能な限り最長3年間、長期も含めた追跡調査もしまして、積極的に情報を収集していくこととしております。以上です。
○大谷委員 ありがとうございます。これは現実的に、現在の状況ですと、ApoEの遺伝子型のホモ接合の患者さんというのは、実際に使った患者さんの何パーセントぐらいから集まるという見込みなのでしょうか。
○事務局 ApoEの遺伝子タイプε4のホモ接合の患者さんは、臨床試験では確か15%程度と認識しております。
○大谷委員 実際に使った患者さんの中で、どれぐらい遺伝子診断がされる心づもりでいるのかということなのですが。要するに、頑張って集めますと言っても、実際に開けてみたら、投与した患者さんのうち3%ぐらいしか遺伝子情報が集まりませんでしたという形になってしまうのか、それとも半分ぐらいは集まりましたという形になるのか、どの辺りを目指していて、実際にどうなのかが少し心配なのですが。
○事務局 想定では、できる限り多く取るというふうに考えておりまして、今、先生が御指摘の、いわゆる数パーセントというのではなく、むしろ、同意を取得できる範囲で可能な限り情報を収集していく前提で考えております。
○大谷委員 分かりました。その辺りが、取りあえず承認は取れたけど、その後、実際にやってみたら遺伝子の情報は余り集まりませんでした、1桁パーセントでしたとなると、なかなか本当に重要な情報がいつまでたっても集まらないことになってきますので、そこはしっかりと市販後調査で、迅速に情報を集めていただけるようにしていただけるといいのかと思いました。以上です。
○事務局 ありがとうございます。申請者とも調整しまして、情報収集できるように努めてまいります。
○大谷委員 ありがとうございました。以上です。
○森部会長 この件で1点。ApoEの遺伝子型の検査を必須項目にするということは、仕組みとしては可能なのでしょうか。
○事務局 それは試験のデザインとしてでしょうか。
○森部会長 ApoEの遺伝子型に同意した方を投与対象とするということも可能なのでしょうか、当面の間ですが。
○事務局 投与対象という、そこですね。
○森部会長 はい。
○事務局 今回は、これはあくまで研究目的としまして。
○森部会長 今、ここは結論でなくて、そのような方向性の検討は可能かどうかということです。
○審議官 恐らく私の理解では、遺伝子検査の方法がまだ薬事承認されているものではありませんので、もし必須としてしまいますと、恐らく、今、日本で使えなくなってしまうかと思いますので、その点の配慮も必要ではないかと思っております。
○森部会長 申請者は、何かこの点では意見はあるのでしょうか。
○事務局 今回、市販後調査では、申請者が別途実施する研究において得られた情報を収集して評価することとしております。
○森部会長 研究目的で検査に協力するということですね。分かりました。ありがとうございました。
○大谷委員 よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ。
○大谷委員 今のような形で、例えば、原則として遺伝子検査を実施するというような、全例調査における項目として、それはちゃんとやらなければ駄目だとか、なるべくやるんだよというような、何らかの一文があるといいかなと思いました。今のように義務付けると、おっしゃるように投与できなくなってしまうということが起きるので、そうではなくて、「可能な限り」のような一言があってもよろしいかなと思いました。ありがとうございます。
○森部会長 よろしいでしょうか。続きまして、大森委員から御発言いただきます。
○大森委員 私は認知症の専門ではないですが、認知症の診療をすることもある精神科医なものですから、大変、関心と期待を持って資料などを拝見いたしました。一つ気になったのは、この最初のインフュージョンリアクションというのがかなりな高率で起こるわけですよね、20数パーセント。それ自体は大したことはないわけですが、そういった副作用が起こると、被験者や家族は、「これは実薬に当たったな。よかったな」というふうに先入観を持ってしまう可能性がかなりあると思います。それが治験の結果に影響を及ぼさなかったかという点は検討済みなのでしょうか。というのは、プライマリーアウトカムのCDRというのは聞取り調査になるので、かなりそういった患者さん自身、あるいは介護者や家族が実薬と信じていると、少しいい方に動く心配はあると思うので、その点を確認されているかどうか。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの方で、ARIAの出現がブラインドを開いてしまった可能性がないかというのが検討されているように書いてあったのですが、こちらのインフュージョンリアクションに関しては、何も記載がなかったので少し気になりました。その点はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございます。感度解析を実施しておりまして、今、そのデータを確認しますので、少々お待ちください。
 お待たせいたしました。機構より説明をいたします。今回、301試験、検証的な試験の主要評価項目の感度解析として、「有害事象等による治験薬の中止時点」というものがあり、それを「打ち切り」と言いまして、それ以降のデータを解析の対象に含めないといった感度分析が実施されております。その感度分析の結果、群間差が-0.406という結果でして、主要評価項目と同様に、本剤の有効性を指示するといった結果が示されております。インフュージョンリアクションのみに注目した感度分析ではないのですが、有害事象に注目した感度分析として、このような解析が実施されております。以上です。
○大森委員 ありがとうございます。少し私の質問とは意図が違う解析のような気がいたします。恐らく、インフュージョンリアクションがあった人も、その次からは事前の予防措置などがされて、結局、ずっと投与は続いたのではないかと思います。だから副作用によって中断した人たちではなくて、最初にインフュージョンリアクションはあったけれども、治験そのものは終了したという人たちがほとんどなのではないのでしょうか。この25%もの人が生じているわけですから、そんなに多く脱落しては困るし。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。御指摘いただいたように、確かにプラセボ群に比べて本剤群の方が発現率が高い結果とはなっております。ただ、プラセボ群でもそれほど発現してないわけではないので、インフュージョンリアクションが発現したことのみをもって、投与群が明らかになったほどではないと考えているのですが、御指摘いただいたような解析データが今すぐに見つからないので、確認いたしまして後日ということで。すみません、ありがとうございます。
○森部会長 参考人の先生から御発言いただきます。
○岩坪参考人 参考人から発言をお許しください。確かにインフュージョンリアクションは、患者さんがいろいろな知識をお持ちである場合には、実薬である可能性について推定される根拠にはなるかと思います。ただ、今も先生もおっしゃいましたように、ARIAが出たということの方が、より決定的に実薬の可能性を知られる可能性がございます。私も治験実施にあたっては、現在もCDRを施行していますが、主観的に影響を与えそうな項目以外にも、客観的にバイアスを排して判断されうるような項目も入っております。それから、何よりもセカンダリーアウトカムの中で、例えば、ADAS-Cogですとか、客観的に認知機能のみを調べるテストでも結果は全て同じ方向に動いておりますので、今、大森先生がおっしゃったような懸念がないかということは十分に注意して、治験結果は解釈しなければならないと思いますが、今回の場合にはその懸念は少ないのではないかと、今回のデータやほかの治験等の結果を見て考えるところでございます。
○大森委員 私も、ないことを基本的に祈っているわけですが、精神科医の立場としては、例えば、よく、うつ病が認知症と間違えられるというのがあるのです。やはりこれは本人の意欲や気分で、どんなパフォーマンスでも結構変わってしまうというところがあるので、もし御本人がインフュージョンリアクションを受けて、「あーよかったな、これはいいぞ」と思っていると、やはり少し動く心配というのはあると思うのです。ですので、その懸念を払拭するために、そういった解析をしていただくと、私としては非常に安心なような気がしています。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいた解析については、後日、その結果を御報告させていただくことでもよろしいでしょうか。
○大森委員 もちろん、手元になければそれで結構でございます。
○医薬品医療機器総合機構 承知いたしました。
○森部会長 ありがとうございました。今、岩坪参考人からもお伺いしましたように、今回のこの臨床試験はCDR-SBが主要評価項目ですが、そのほかADAS-Cog14、並びにADCS MCI-ADLといった複数の指標の副次評価項目で支えられており、患者さんに対する客観的な評価も併せて行い、治験の信頼度を高めているのが特徴かと思います。大森委員の御心配ももっともでございますので、機構の方から、もし詳細が分かりましたら御報告いただきたいと思っております。どうもありがとうございました。
 続きまして、石川委員から御発言いただきます。お願いいたします。
○石川委員 どうもありがとうございました。神経内科医の立場から質問させていただきたいのですが、有効性や投与すべき患者さんの層は、この書類に書いてある内容で大変よく理解できましたし、すばらしい研究成果だったと思います。私の懸念は中止の所なのですが、先ほど、岩坪先生の御発言の最後の所で、一律18か月ではなくて、患者さんの状況を見て判断するという御発言だったと理解しているのですが、それに対して、このガイドラインの17/19ページの所に書かれていますが、MMSEのスコア20点以下、CDR全般スコア2点以上と、中等度以降の指標として書かれています。コメントとしては、少しこれだけでは簡単ではないかなという懸念がしました。現場では中止の妥当性に関して迷ってしまう、施設によっての違いや担当者による違いなどが出てしまうのではないかという懸念を感じました。
 例えば、先ほどの議論にもありましたような、ADAS-Cogの日本語版のものを使うとか、MoCA-JなどをMMSEに追加して使用するなど、ある程度もう少し分かりやすい中止基準の設定を盛り込んだ方がいいのではないかという感想めいた質問なのですが、この辺りはいかがでしょうか。岩坪先生からでも。
○岩坪参考人 確かにこのガイドラインの中の例示は、中等症の一つの端的な特徴を、点数で言えばこういうものであると書いてあるだけなので、これに当たったら必ず中止すべきとか、そういう規定を書いてあるのではないわけです。それから、今、先生がおっしゃった、MoCA-JやADAS-Cogというような検査もあります。MoCA-Jは比較的簡便かもしれませんが、これをフォローアップの中で全例で行っていくことはまたかなりの負担になります。私の個人的意見としては、一番大事なのは臨床診断による病期の判断だと思います。MCI、軽度の認知症、中等度の認知症、これらはそれぞれクライテリアがしっかりありますから、臨床的に、専門医がどの病期に入っているかを確実に診ていただくというのが、実は一番大事だと思います。
 決して、あるテストの点数では切ることができないというのが本当のところだと思います。ただ、保険診療に持っていっていただく中では、やはり客観的、数量的な基準を入れていただくのもやむを得ないと思います。
 ですので、CDRを正しくやっていただく、あるいはMMSEも簡易な検査ではあってもしっかりやっていただいて、その点数の基準をどう扱うのか、あるいはほかのものに照らしてどう考えるのかを、ガイドラインの運用をどうするのかを最後に決めるときに、更に細かな議論を委員の先生方にしていただいて決めるというのが、今後取るべき方向かなと思いました。結論ではございませんが、以上のようなことを考えました。
○石川委員 ありがとうございました。機構の方に質問したいのですが、全体のガイドラインの策定の方針で、最後に御発言のところで時期についてお話になっていたのですが、今日の議論の後、それがもう一度検討されるということでよろしいのでしょうか。
○事務局 厚生労働省より説明させていただきます。最適使用推進ガイドラインについては、本日の薬食審での御意見も踏まえまして、今後、最終的に中医協の了承も得た上で公表することとなっております。本日頂いた御意見及び中医協での御意見を踏まえて、適宜検討を進めて行く形になります。
○石川委員 そうしますと、私としては、もう少しここの所を充実させて、はっきり書いていただく方がいいかなと思っております。もし、参考になればと思います。
○事務局 御意見ありがとうございます。中止基準の所ですね。こちらの記載ぶりをもう少し充実したらいいという御意見と事務局の方で承りました。
○石川委員 ありがとうございました。
○森部会長 森から機構の方にお伺いします。18か月の臨床試験が終わった後に継続されている症例に関して、今の国内外での情報収集状況はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。
○森部会長 現状並びに今後、どの程度の期間でそういった情報が収集されてくるかについて、見通しを教えていただければと思います。分かっていたら教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 この試験自体は、各国で投与期間は承認されるまで継続となっていますので、日本は本剤が承認されたらそこまでの期間となると考えておりまして、現状、日本人ですと42か月ぐらいの投与期間があり、投与中の日本人症例が116例程度です。海外は、地域によっていろいろかとは思うのですが、おおむね同じぐらいの期間かなと考えております。
○森部会長 お伺いしたいことは、継続投与されている症例の背景と、継続投与後の臨床的な有用性や安全性に関する情報は、どの時点で収集されるかということです。今回、18か月のデータを収集して承認審査しているということは私も理解しているのですが、その後の情報が集まりつつあることも把握しているので、状況を教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 データベースの固定は済んでおりまして、解析結果が、次は12月までには入手できる予定となっております。
○森部会長 先ほどの石川委員からの御意見につきましても、中止をすべき若しくは継続をすべきというところのデータの根拠になる元データが今ないので、やはり、国内外で継続で使用されている方のデータが大変根拠になり得ると思いますので、そのデータの解析を、できましたら速やかに進めていただいて、この最適使用推進ガイドラインの、特に中止に関する内容についてアップデートしていただくと、よろしいのではないでしょうか。是非、御検討いただきたいと思います。
 石川委員、その点はいかがでしょうか。
○石川委員 先生がおっしゃった御意見でいいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 参考人の先生から、もし御発言がございましたら、いかがでしょうか。
○岩坪参考人 今の御議論は大変大事だと思います。オープンラベルエクステンションのデータが今集積をされていると思います。日本では、機構がおっしゃったように116例が基本となりますが、これをできるだけ長く、しかし無理なく集めていただきたいと思います。しかし恐らく、承認時には中止をせざるを得ないということもあると思います。といいますのは、承認時に再度プロトコルを変えて延長するというのは、世界で行われたグローバル試験としても大きな影響があると思いますので、なかなか技術的には難しいのだと思います。
 一方では、18か月を超えたところで、例えば、先ほどのように18か月を超えても7.5か月、あるいはさらに推計すると2、3年の遅延効果があるのではないかと言われている。これが本当にあるのかないのかを実証するためには、できる限り長い期間、データをしっかり取る必要があると思います。これをどのように技術的に可能にして、日本あるいはグローバルにもデータを集積いただくことは、疾患修飾薬をどこまで使うか、どれぐらいの最終的な意義があるかを決定付ける重要なデータとなると思います。実は18か月の所では、まだそんなに効果が最大に現れていないだろう、という見解もあるわけですから、それが更にどこまで実薬とプラセボで点数が開いていくかで真価が測られる、そういう面もあるということを最後に申し上げておきます。
○森部会長 その場合、オープンラベルエクステンションに参加されている患者様に、状況を御説明した上で了解を取るということですね。そういうことが必要になるということでしょうか。機構の方、よろしいですか。そういった位置付けでしょうか。今のオープンラベルエクステンションは、もう中止になる見込みということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。その試験についてはそうです。その参加者の追加のデータの取り方については、これから企業とも調整して、できるだけ長期のデータを取れるように計画していこうと思います。
○森部会長 ありがとうございました。
○堀委員 COMLの堀です。今度は、一般市民として患者又は家族という処方される側からの質問をさせてください。まずはこのお薬に関しましては、一般市民はかなり期待をしております。ですから、今の石川委員がおっしゃっていたように、医師がスタートする患者に向けて説明をする場合、投与は18か月までとすると説明したときに、例えば、それが中等症に進行していたということが分かれば患者は納得するのですけれども、そこまで進行していなかったときに、どうやって患者に18か月たったときに中止を納得させるかという説明は、非常に重要だと思います。
 ですので、まずは患者にも今後の流れの説明を受けるに当たって、薬の中止に関しては、特に本当にこの薬に期待をしているので、何故18か月で投与が終わってしまうのかということに関するやはり確実なデータや納得ができるような患者向けの資材というものが是非必要だと思っています。その点に関しては、機構はいかがでしょうか。患者向けの資材について、これを作成なさる御予定はあるのでしょうか、教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。患者向けの資材はもちろん作成いたします。まだ中身の詳細な部分は詰めているところですが、今、御指摘いただいたような部分も配慮していくようにしたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。その事に関してお願いと、もう1点質問をさせてください。が、先ほど冨本先生もおっしゃったように、軽度の認知症に関しましては、私たち一般市民は、自分が認知症になっているかどうかというのは自分では判断が非常に難しいです。ですから、今までは自分が本当に認知症かどうかというのを判断するために病院に行くということ自体、かなりハードルが高かったため、先ほど、受診を控える患者さんが多いということを冨本先生がおっしゃったと思います。
 ですので、今回この薬が出て承認されると、今後は受診をしようとする人たちがかなり多くなると思います。特に受診の際には先ほどのガイドラインの11ページ以降に関しましては、私たち患者にとっては大変重要な情報がたくさん入っております。ただ、先ほど機構から資材を作っていただけるとおっしゃっていただいたのですが、その資材にそれらの情報を患者向けに非常に分かりやすいように記載をして、まず作っていただきたいということが一つ。
 それから、事前検査に関しまして、11ページの、「投与対象となる患者」の所の1~4をクリアした方は、アミロイドPET又は脳脊髄液検査を実施すると書いてあります。そういたしますと、この1~4をクリアした方たちが、一気にこのPET検査などを受診する可能性が非常にあるのではないかと、私は心配しています。そのときに、実際にPETの検査を受けるには、なかなか私たち一般市民は、がんとかの検査でない限り受けにくいですし、またPETを設置している医療機関も少ないのではないかと思っているので、その事前検査について、受診したいと思っていても、実際にはPET検査の施設が足りないというような心配はないのでしょうか。教えてください。
○森部会長 どうぞ、厚労省の方から。
○事務局 厚生労働省です。今、御質問いただきましたPET検査の件ですが、現在、PET-CTは国内に約400施設あります。台数も500台ほど配置されている状況です。また今回、検査のところ、検査については、PET検査に限らず脳脊髄液検査でも可能です。どちらかを選択していただく形で、このアミロイドの検査体制が不十分にならないように進めていきたいと考えております。
○堀委員 分かりました。そうしましたら、承認した後はスムーズな対応ができるということで理解してよろしいでしょうか。
○事務局 はい。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 堀委員の御指摘は非常に的確な御指摘だと思います。PET-CTの施設については、日本で400施設ということですが、やはり地域格差と言いますか、大都市圏に集中していて地方で受けにくいといったいろいろな問題もあります。また、実際に本薬が上市された後に、どの程度患者さんが医療機関を受診するか、要望するかのキャパシティの枠との問題もありますので、その点は実際に様々な調整が必要になってくるかと思います。
 それから、髄液の検査によってもアルツハイマー病理は確認できると考えられています。今回の臨床試験で行われている基準は、総TauとAβの比で判定していると思うのですが、日本国内の保険診療ではAβの濃度で判定されているかと思います。この二つの方法は特に大きく相違はないものと理解してよろしいのでしょうか。
○冨本参考人 そういう御理解でいいかなと思います。
○森部会長 分かりました。そうしますと、髄液の検査を使って代用もできるということです。
○堀委員 ありがとうございます。
○森部会長 宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 私も、堀委員がおっしゃった所は少しお話をしようと思っていましたが、それは今解決しました。もう一つ重要なところは、初期集中支援チームというのがどのように働けるのか。厚労省も含めてですけれども、そこもしっかりとした枠組みを作って、もう一回再構築というほどではないのですが、そこのところを少し精査しながら、どれだけ充実しているのかということは重要な入口の所になると思うので、そこも強化していただきたい。そうでなければ、この入口が非常に曖昧なまま検査のところに集中してしまうということもあるので、初期集中支援チームの確立並びにそこの技術的なバックアップを、厚労省から是非やっていただきたい。そういうのが、地域において非常に重要なことになるのかと思います。
 それから、先ほど山本委員がおっしゃったように、全例調査の必要性と薬の育薬につながります。薬というのは、ただ単に皆が使いたい使いたいとやってくると、それが漏れてしまうというか、それに適合しない人に使われると精度がどんどん落ちていって、これは駄目な薬だと判断せざるを得ないということになってしまうので、その入口がしっかりと定まらないと駄目だろうと考えます。
 それに対し、先ほど言ったような全例調査を含めていろいろお話がありました。遺伝子のところも含めてですけれども、申請者も考え方をしっかりしていただきたい。そうしなければ、この薬というのは育薬できない。遺伝子検査に関しても全例とは言わないけれども、比較的そういうものが進みやすいように配慮していただきたいということを、しっかりと言っていただきたいと思います。
 これは、冨本参考人にお聞きします。ARIAのトレーニングの問題です。今は、トレーニングをして研修をするという形なのですけれども、それはどのぐらいのトレーニングなのか。密度もありますから、時間で物事を言ってしまうのはおかしな話なのですが、誰もが誰もがといって、この診断ができると私は思っていません。やはり、最初は医師要件も、施設要件もしっかり縛った形というか、縛るというのは言い方が悪いのですけれども、ある程度限定した形で進めないと、いたずらにそれを行う人が増えてしまう。それも先ほど言ったように、日本の医療の疲弊につながるのだろうと思うのです。
 認知症に関連する学会から申し込みがあったということなのですが、認知症学会、老年学会、神経治療学会とかいろいろあります。ある程度その要件を定めないとまずいので、この入口も少ししっかりと定めていただきたい。参考人も含めて、日本において学会として、多く見て3千人とか4千人というのはあり得ないので、このような施設と医師要件とすると、大体どのぐらいの感じで考えていったらよろしいのでしょうか。アバウトでよろしいのですが教えていただけますか。
○冨本参考人 御質問いただいた件ですけれども、まず、ARIAの診断を正確にするには、やはり普段から頭部のMRIの画像の所見に、ある程度馴染んでいることが前提になると思います。全く自身で画像の読影をしていなくて、放射線のレポートだけを頼りに診断をするというのは危険だと思います。と申しますのは、画像の微妙な変化、例えば微小出血が何個増えたかというのは機種によって、あるいは撮像の条件によって変わってきます。ですから、同じ先生が、同じ条件で継続フォローしていかないと、レポートだと読影者が代わったりしますので非常にまずいです。ですから、ある程度自分でMRの読影の経験、馴染んでいるということが、まず前提になります。
 今、講習を受けるというのは、学会あるいは企業がすることであるわけです。それをきちんと理解して担保できるということには、もともとある程度の専門性を持っている必要があります。そうすると、アルツハイマー病の関連学会が幾つか挙がってまいります。これは、そこから先どういう学会がというのは、これから更に検討の対象になっていくことだと思うのです。参考までの数字だけ挙げせていただきます。まず、認知症の専門医というのがあります。これは、基本的には日本認知症学会専門医で2,100人、老年精神医学会専門医が1,000人、合わせて3,100人ということになります。この先生方は、認知症に特化して、そういう診療及び診断を普段からしています。ですから、講習を受けることで、そういった十分なレベルに達することは期待できると思います。
 例えば、ARIAが起こったときの対応まで含めて考えると、治療の中断、あるいはステロイド薬といったものを使うようなことも、治療としては海外のガイドラインの中に記載されています。そういう治療に普段から精通しているという意味では、神経内科専門医というのもあります。ただ、これは必ずしも全てが認知症専門ということではありません。ただ、その数字だけ挙げると、神経内科専門医は4,500人ぐらいだと思います。ある程度そういう数字を前提に、どのぐらいの診断をする、ARIAも含めて対応ができる専門医をある程度イメージすることは必要かと思うところです。以上です。
○岩坪参考人 この最適使用推進ガイドライン案の医師要件のところに五つの要件が書いてあります。その四つ目と五つ目が、今お話のありました研修要件ということになります。四つ目は、製造販売業者が提供するARIAに関するMRI読影の研修を受講していることとあります。これは業者にやらせるというわけではなくて、今のところARIAの画像やデータというのは全て治験データの中にしかないので、そこから十分に提供していただく。これは、冨本教授もこの研修に関しては内容を監修され、講師になられることになっています。これは、実際にいろいろな原案もあるのですけれども、豊富な症例の画像をもとに、かなり時間をかけて研修するものです。これは、処方医になる医師並びに放射線診断医も対象にしているものです。
 五つ目は、ここに日本認知症学会(「又は」ではなくて「及び」だと思いますが)と日本老年精神医学会の実施するアルツハイマー病の病態・診断等に関する研修です。これは、既に合同でこの研修の準備を具体的に始めています。11月26日の学会開催時に初回の研修実施を行うことにしています。3時間以上の時間をかけて、治療原理と治験のエビデンス、臨床診断と薬剤投与の実際、中止判断を含めた臨床評価、それからPET検査、バイオマーカー診断とApoE遺伝子型の意味、さらにARIAです。最後に大事なのは、フォローアップと適応にならなかった人を含めた様々な臨床的対応、こういう内容をコンパクトにやろうということで、講義の上、理解度テスト、それから受講証明も作成し、かなりがっちりしたものをやろうと思います。また、多分いろいろな形でフォローアップ研修も必要になると思います。
○宮川委員 ありがとうございます。そういう意味では連携するというところ、初期の投与のところに関わってくるのだろうと思います。もう一つお聞きしたいのは、投与中の期間の対応のところについてです。これは冨本先生にお聞きしたいのですが、本剤投与開始後、それから2か月後、3か月後、6か月後とMRIをやるのですが、ARIAに関しては14週以内というのが起こってくるような形だろうと思うのです。1か月を入れない、2か月でいいというのは、何か症状が出たときであれば、それ以内に行うというような形で理解してよろしいのでしょうか。
○冨本参考人 はい、おっしゃるとおりです。2か月まで待つという意味でなくて、2か月をめどにということです。もちろん症状が出たらすぐにするということになります。
○宮川委員 ありがとうございます。そういう意味では投与中、中止のところは厚生労働省も含めて文言を整理する。これは、最適使用推進ガイドラインですから、まだ少し時間はあろうかと思いますので、少し精度を上げていただいて、書き込みを十分していただくことをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○佐藤(陽)部会長代理 少し細かいのですけれども、最適使用推進ガイドラインで岩坪参考人から御説明があったところで、12ページの「3 施設における医師の配置」の所の四つ目と五つ目のお話を頂きました。この三つ目というのは、特に具体的な資格要件というよりも、1.2.と4.5.を総合的に判断した上で、結果として三つ目を判断するという形でよろしいですか。それとも、別の要件があるということですか。
○岩坪参考人 これは、文章をまとめていただいたのは厚労省かと思います。私は、佐藤先生がおっしゃったような形で理解しておりました。
○事務局 今の御指摘のとおりです。ここで単独で何かしら個別の要件というよりは、これらを踏まえて総合的にということで、ただ、文字におこしますとこのような形になったということです。
○佐藤(陽)部会長代理 分かりました、ありがとうございます。
○森部会長 その他に先生方から御意見、御質問はありますか。柴田委員から御質問です。
○柴田委員 抗血栓薬の併用について現在の判断、示されている判断は妥当だとは思っています。念のためにデータの確認をさせてください。先ほどのお話では、例えばARIAの発現状況などには、アジア系と非アジア系で差がないということ。あるいは、抗血栓薬の使用についてはちょっと差が出るという御説明がありました。これは、臨床試験に入った患者さんが少ないので、厳密な分析ができないというのは当然で、それでいいですが、アジア系の方では、抗血栓薬を併用している方が治験には余り入っていなかったなどということはないのでしょうか。そのために民族差が余りないように見えているだけということが起こったりしているとか、そういうことは検討されていますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。そこの点については確認ができていません。
○柴田委員 もともと患者さんの数が少ないので、現時点で調べられていないというのは全然問題ないと思います。市販後のデータ等を分析される際に、その点を注目していただければと思います。
 もう1点、市販後調査についてはいろいろな項目を調べることになっています。これは、臨床試験と違って、最後に全部まとめて結果を出すというものではなく、項目ごとに適切な公表のタイミング、分析のタイミングというのがあると思います。企業と詰めるときに、その辺の報告のタイミングまで事前に整理した上で出していただくと、臨床現場に有用な情報が即時出てくるのではないかと思います。コメントですがよろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。そのようにいたします。
○森部会長 大森委員から御質問を頂きます。
○大森委員 ApoE ε4タンパクについては先ほど来から大谷委員、宮川委員、参考人の先生からもいろいろ御意見が出ているところです。資料に入っているアメリカの添付文書では、冒頭に黒枠で大書しているブラックボックスワーニングに入っています。それに比べると、日本の添付文書は、ApoEタンパクの遺伝子型に関する情報提供が余りにも曖昧なのではないかという感じがあります。これは、何かお考えのもとに、日本ではアメリカでは付けたブラックボックスワーニングに相当するような警告を、あえて必要なしと判断されたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えいたします。日本の添付文書では警告の1.2にARIAに関するリスクについて必要な情報を記載しています。ここに、ApoE ε4のことも記載すべきかどうかというところも審査において検討いたしました。先ほど来説明があったように、現時点で、本邦において、そもそも承認されていて、実臨床で使用可能なApoE ε4の検査がまだ確立していない状況では、この項目においてApoE ε4の内容まで盛り込むことが現状にそぐわないというところを考慮して、警告欄での記載はせず、8の重要な基本的注意の項の中でApoE ε4 に関するARIAリスクの状況や、その保有状況の情報提供を行うという判断を行いました。以上です。
○大森委員 なるほどなのですが、それにしてもアメリカの添付文書には大分厳しく遺伝子型を測定して、患者さんとリスクベネフィットを検討するべきであるというようなことが、かなり強調されているのに対して、日本のはもう少し何か書いた方がいいのではないかなという感じをすごく持っていますが、どんなものでしょうか。他の委員の先生方、お読みになった先生方から御意見があればと思います。アメリカの添付文書では、ベネフィットの方も、率直にその臨床データの現状を記載してあります。それで、リスクとベネフィットを考えることができるように添付文書もできているので、この辺も大分違う。もうちょっと慎重にそこを考える方がいいのではないか。対象を広げてしまうよりは、恐らくベネフィットが高くて、リスクの少ない人たちから投与を始めるというのが、これまた先ほどから、薬を育てるという観点が必要だという御議論がありましたけれども、その点からいっても、なるべく最初は、ホモ接合の人は避ける方がうまく臨床導入が進むのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○森部会長 宮川委員から御意見を頂きます。
○宮川委員 私も、大森委員の御懸念に非常に賛同するところがあります。そうすると、ある程度患者さんの要件を絞ってしまって、日本において軽度の、早期の認知症という、この両方を合わせた形の早期の認知症という患者さんをどこまでお救いできるのか。これが、本当にそこに区別していいのかということが分からない。ですから、先ほど厚生労働省にお願いしたのは、ApoE ε4に関して、申請者やメーカーの方に、しっかりと全例調査の中に入れ込んでいただいて、しっかりとしたフォローをしていただく。その方が、日本の患者さんにとってはメリットがあるのではないかと私は思ったものですから、先ほどそのように発言したつもりでした。
 私も、そういう意味では大森先生の御懸念というのはよく分かります。そこで分けてしまうと、ある程度早期の認知症の患者さんでお救いできる人も、そこではねてしまうというような、恣意的な作業に入ってしまうのではないかということが私も懸念されました。これは、あえてそこが懸念事項であるけれども、この8.1.4という所で警告ではないけれども、しっかりと添付文書の中に注意を与えて、更にそこに対しては今後出るであろう、そういういろいろな注意喚起というようなところを、現場の医師に対してもしっかりと知らしめるという形の中で行っていくのが一番よろしいのかと思っていました。これは私の意見ですが、その方が日本の患者さんをお救いできるのかと。そういうことを育薬につなげながら、患者さんをお救いするという形になっていくのではないかと思った次第です。以上です。
○大森委員 どうもありがとうございます。その点では、最初の大谷先生の御指摘のように、できる限り使用する全例に近い数に遺伝子型の解析をしていくというのが本当に大事になるのかなと思った次第です。以上です。
○森部会長 大森委員、御発言ありがとうございました。川上委員どうぞ。
○川上委員 実務上のことを教えてほしいのです。医薬品リスク管理計画の中で、適正使用の確認として流通管理のことが記されています。特に、体制の整った施設への出荷の制限ということが書かれています。例えば、この医薬品を医療機関が購入・調達しようとしたときに、具体的にどのぐらいの手順というか、手続きが必要なのか。それとも、卸業者の方で体制として整えていただけるのか。実際に承認された後、この薬が流通していく中で、どういうことが医療機関側に求められるのかを、今、分かる範囲で教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 すごく詳細なところまでは、まだ決められているわけではないのですけれども、メーカー側からの説明に基づくと、どこの医療機関でトレーニングを受けた医師がいるかとか、そういう情報は企業の方が全部把握できる体制を今考えているようです。そういう体制が整っていることを確認した上で流通させるということをイメージしていく予定です。その中で、御指摘いただいた医療機関への御負担といったところまでは、現時点では情報を持ち合わせておりません。
○川上委員 分かりました。使うべき医療機関にきちんと納入される、そういった流通体制を取っていただければよろしいかと思います。ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 その他に委員の先生方から御質問はありますか。本日は、参考人の先生3名から大変貴重な御発言を頂きました。本剤の国際及び国内の臨床試験から得られた有用性に関する総括、並びに本剤を安全に使用するために注意すべき副作用並びに有害事象に関する詳細。そして、その状況を早期に発見するために必要な医療施設の体制づくり、並びにガイドラインでそれをいかに担保するかということについて、様々な意見交換をさせていただきました。
 米国の添付文書にもありますように、ApoEの遺伝子型が既に分かっている場合には、本剤の使用によって生じ得るARIA-E、ARIA-Hの発生頻度、その予測値が異なってくる、並びに本剤の有効性に関する検討のサブグループの解析では、このApoE ε4のホモ接合体の型では、CDR-SBの主要評価項目に関しては、本剤が有用であることが明確に示されていないということでした。
 私が事前に機構の方にお伺いした資料として、ApoEの保因状況によって、18か月後のADAS-Cog14と、それからADCS MCI-ADLの値がどう変化しているかということについて、ホモ接合体、ヘテロ接合体並びにノンキャリアの状況の方がどうなっているかということについて、部分解析のデータを見せていただきました。この点は、今の報告書には特に記載されていないのでしたか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 先生方には共有していただいていますか。
○医薬品医療機器総合機構 本文の中に数値が少し書かれています。
○森部会長 それは、何ページですか。
○医薬品医療機器総合機構 62ページで表の形ではなくて、最後の4行目から文章の中に。
○森部会長 ここに、文章としてお示ししているものですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 このような有効性についても、あらかじめこの遺伝子型が分かっている方に対して、それはノンキャリアであっても、ヘテロであっても、ホモ接合体の方のいずれの方であっても、それが分かっている方にとっては、有効性・安全性に関する追加の情報を提供し得る状況にある、部分的ではありますができる状況にあると考えられています。米国の添付文書は、その点でホモ接合体の方の有効性・安全性に関する警告をしているということです。
 現在、我々が準備している国内の添付文書案については、ARIAの発現頻度については、その遺伝子型によって発現頻度が違うというリスクに関しても情報提供していただいています。ベネフィットに関わるところの情報提供が添付文書に不足しているということが、指摘できるのではないかと思います。
 先ほど、米国の添付文書には有効性に関する情報等も公示されているということでした。日本でも、その添付文書ないしは医療現場に提供できる資材や、患者さんへの情報提供の内容、ないしはインタビューフォーム等も含めて、その詳細な情報を開示することが非常に重要だろうと思います。これは、遺伝子型が分かっていない患者さんの場合には、全体のデータという形で御評価いただくので、現状はそうなると思うのです。何らかのきっかけで既に遺伝子型が判明している方も一定数いるかと思います。そういう方々が御使用になるときに、その全体としての成績のみならず、やはりサブグループでの有効性・安全性に関する情報も、しっかり提供しておかなければいけないのではないかと考えています。
 その上で、患者さんや御家族、利用者の方々がその個々の患者さんの症例の状況や、遺伝子型を総合的に鑑みて本剤の投与を行うべきか、リスクとベネフィットを御検討になるということは必ずするものではないかと思っています。この点は、早急に再検討すべきではないかと思います。幸い、既にデータはありますので、それをいかに添付文書や資材に織り込んでいくかということについて、本日お越しの参考人の先生方にも、この後少し御意見をお伺いします。どこまで含めて織り込んでいけるかということについて、この後お伺いしようかと思います。
 もう1点は、脳梗塞の際の血栓溶解剤については、現状で国内外のこの臨床試験の中で使用した症例数というのはどの程度か把握されていますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問の確認をさせていただきます。血栓溶解剤については。
○森部会長 tPAです。
○医薬品医療機器総合機構 tPAに関しては、基本的に治験では使用しないということで、緊急時のみ使用されており、試験で確認されているのは恐らく1例のみかと思います。
○森部会長 その1例に関しての臨床的な情報をそちらでは把握されていますか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書にも経緯の詳細を記載しております。添付文書ではそこまで詳細ではありませんが、15項にその症例を含む情報を記載しております。
○森部会長 ニューイングランド・ジャーナルのケースレポートとなっている症例ですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森部会長 分かりました。その症例については15項で御説明も頂きますし、できましたら、引用文献にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの症例、ケースレポートの所も引用していただくように、併せてお願いします。現状、その他にデータがないようでしたら、そのデータについては添付文書に織り込んでいただけるように、レファレンスの追加もお願いしたいと思います。
 参考人の先生方に、先ほどの国内の添付文書等々にどこまでの有効性に関する情報を織り込んでいくべきか、少しサジェスチョンを頂ければ幸いですがいかがでしょうか。
○岩坪参考人 今のApoEと有効性の点ですが、これは大森先生がおっしゃる御懸念は、確かにサブグループのデータを見ると感じられてまいります。私も、全データの解析を日本から委員として出て担当いたしました。既にFDA、あるいは医薬品医療機器総合機構でも指摘されておりますように、ApoE-ε4/4のホモ接合体は、剤合と全数が少ないのに加えて、プラセボ群のスコアの動きがちょっとアンユージュアルに小さかったのです。これは何が原因か分かりませんけれども、やはりばらつきによるものであろうと考えられています。このために、CDR-Sum of Boxesのデータが実薬とプラセボで非常に近接したのです。ですので、ちょっとここに注目しすぎると、方向を誤ることもあるかなという印象です。
 本日も御議論が様々ありますように、ApoEのジェノタイピングは遺伝情報でもありますし、もちろん保険収載もされていないものですので、これは市販後調査の中で、企業側に任せて調べるべきものではありません。我々も一緒に市販後調査と研究をカップルしてやっていく中で、ICを取って取り扱っていくべきものであります。これは本日も御意見がありましたように、できる限り最大化して数を取らなければいけないということを、再度認識したところです。こういうデータを合わせて取って、その上でまた積み重ねていくべきかと思います。
 これは、ちょっと申しすぎかもしれませんが、我々専門医がこれを処方するときには、実際にはE-4/4の方であれ、E-3/3の方であれ、同等の注意をもってARIAをモニターしていかなければならない。それは、私が冒頭に意見を申しましたように、今の我々の心構え、そして体制を敷く中で安全性を確保できると考えます。このApoEについての記載は、市販後の様々な研究の結果を含めて記載をするということで、私はよいのではないかと考えている次第です。
○森部会長 御発言ありがとうございました。冨本参考人から御発言いただけますか。
○冨本参考人 先ほどの御議論にもありましたように、その企業のジェノタイピングというのは、一定程度実際にしていただけるのであれば、その情報を分析した結果を、一定の段階で患者さんに提供するということは、実際に治療を受ける方からすると、非常に必要な情報だと思いますので、それは是非御検討いただけたらと思います。
 一方、企業任せにせずに、アカデミアとしてそういったことを全例ではもちろん難しいでしょうが、一定部分について、やはりきちんとしたデータを検証していくということも並行して行っていく必要があると思います。以上です。
○森部会長 山本参考人、御発言いかがでしょうか。
○山本参考人 私も、岩坪先生が御指摘なさったように、限られた症例数でのサブグループ解析はどのぐらいの確度があるかということについては、少々疑ってかかる必要はあると思います。検証試験であっても、サブグループ解析になると、一気にそのパワーは落ちてしまいます。現時点で添付文書に書くとなると、かなり確信的なことになってしまいます。また、その後の修正も非常に難しくなってきますので、現状では現在の治験の中である程度確証が得られているところから書いていく。その代わり、欧米と違って、日本は市販後調査が非常に綿密に行われるという特徴があります。非常に革新的な薬ということで、当然アカデミアの先生方はこの市販後調査とコラボした形での様々な臨床研究が走ると思います。是非そちらで早急に情報を収集していく、データを収集していく上で、適時適時に追加情報を公にしていくということの方が建設的な対応ではないかと思います。
○森部会長 参考人の先生方から御発言いただきましたが、委員の先生方から本件について、追加の御発言等がありましたらいかがでしょうか。添付文書に追記する必要について、先生方は今あまりないというお考えのようです。医療現場に提供する様々な情報の中には含めておくのが望ましいだろうということで理解してよろしかったでしょうか。分かりました。
 できましたら、申請者の方に、インタビューフォームにはApoEと有効性についての記載を含めていただくように御要望いただくということでいかがでしょうか。インタビューフォームだと非常に閲覧性も高いので見やすいかと思います。その点は是非御検討いただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 はい、承知いたしました。
○森部会長 岩坪先生からお話を伺いましたプラセボ群でのデータのぶれについては、私も背景因子を全て解析してみたのですけれども、特に違いは見当たらなかったところもあって、ぶれを生じた説明が足りていないということもありますので、ε4のホモ接合体のサブグループの有効性に関しての結論はまだ出ていないということも事実です。事実として、そのまま提示しておくことも医療現場には重要かと思いますので、そのようにさせていただきたいと思います。本薬について大変詳細に御議論いただきました。その他に追加の御発言、御意見等がないようでしたら、議決に入らせていただきたいと思いますがいかがでしょうか。宮川委員お願いします。
○宮川委員 森部会長からいろいろなお話があって、私も全て賛同しております。医療現場というようなお話がありました。隣に堀委員もいらっしゃいますが、医療現場というのは、医療の医療者だけではなくて、患者さんを含めて形成される場であります。医療現場の中の医師、それから患者さん、家族というところにまで届くような適切な資材なり、それからそういうディスクローズしていくところをしっかりしていただければ、これは良いものになっていくのだろうと思いますので、是非よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 本日の議論では、オープンラベルエクステンションで得られている成績の収集、並びにガイドラインの最適化が課題となりました。そして今後使用されていく医療現場のキャパシティと患者さんのリクエストのバランス、特に、専門の先生方が限られている数の中で、中等症や重症のアルツハイマー病、その他のタイプの認知症の診療と同時に、今後は、早期若しくは軽症のアルツハイマー病の方、またそれを疑われる方の御家族、御本人が希望されて医療機関を受診されるようになります。これらに対応できる体制づくりや、その担保といったことも大きな課題かと思います。
 そういった点を本日の委員会で議論させていただいたということを総括にしたいと思います。その他に追加の御発言がなければ議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。それでは、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に異議はないようですので、本剤は承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。参考人の先生方には、長時間にわたります大変詳細な議論に御礼申し上げます。最適使用推進ガイドラインについて、本日は特に修正は明確には出ていないようでしたが、修正点はございませんでしたか。この議題、その他事項の議題1について、ガイドラインの方向性については御確認いただいたものとさせていただきます。今後、詳細は厚労省の方と機構の方で詰めていただいて、確定させていただくということでお願いいたします。
 改めまして岩坪参考人、冨本参考人、山本参考人には心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。それでは御退室ください。
参考人退室
○森部会長 前後しますが、続いて議題5に移りたいと思います。レクビオ皮下注に関して、議題5とその他事項の議題1は関連する議題となりますので、まとめて御議論いただくこととなっております。では、議題5について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品レクビオ皮下注300mgシリンジについて機構より御説明いたします。資料No.5の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全86ページの通し番号4ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤はLDL受容体の分解に関与することが知られているプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(以下、「PCSK9」)遺伝子を標的としたsiRNAであるインクリシランを有効成分とする高コレステロール血症の治療薬です。
 本剤は、PCSK9 mRNAの分解を誘導し、PCSK9の発現を低下させることで肝細胞表面上のLDL受容体の分解を抑制し、血中LDLコレステロール濃度(LDL-C)を低下させると考えられます。本剤は、2022年10月時点で欧米を含む60以上の国、又は地域で承認されています。今般、国内外の臨床試験成績を基に、高コレステロール血症に係る効能・効果で製造販売承認がなされました。
 本品目の審査の概略について臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の通し番号36ページの7項、表41を御覧ください。本剤の開発は、本剤の有効性が検証された海外第III相試験の成績を日本人に外挿するブリッジング戦略に基づくものであり、海外第II相試験であるORION-1試験をブリッジング対象試験として、国内第II相試験であるORION-15試験がブリッジング試験として実施されました。
 審査報告書の通し番号58ページ、表57及び表58を御覧ください。ORION-15試験では、主要評価項目とされた投与180日目のLDL-Cのベースラインからの変化率について、申請用量である本薬300mg群でプラセボ群と比較して有意な低下が認められました。また、LDL-C及びPCSK9のベースラインからの変化率は、プラセボ群を含む4用量群のうち300mg群で最大の低下を示し、ブリッジング対象試験と同様の用量反応関係が認められました。加えて、ORION-15試験と海外第I相試験で薬物動態に国内外差は認められず、また、ORION-15試験とORION-1試験で安全性プロファイルは類似していました。以上より、ORION-15試験から事前に規定したブリッジング成立要件を満たす結果が得られました。
 さらに、本剤の有効性を検証した海外第III相試験であるORION-9試験、ORION-10試験及びORION-11試験の被験者の大部分は、国内ガイドラインでも治療が必要とされる患者であったことを踏まえ、これらの海外第III相試験の有効性の結果を日本人に外挿することは可能と判断いたしました。
 高コレステロール血症及び家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(以下、「HeFH」)患者における有効性について御説明いたします。審査報告書の通し番号47ページ、7.3.1項の表50を御覧ください。海外第III相試験の一つであるORION-9試験の結果、主要評価項目とされたLDL-Cの投与510日目のベースラインからの変化率、及び90日後から540日目までの期間平均変化率のいずれの評価項目についても、プラセボ群に対して本薬群で有意なLDL-Cの低下が認められました。加えて、ORION-10試験及びORION-11試験においても同様に有効性が示され、これらの試験の結果から、日本人の高コレステロール血症及びHeFH患者において、本薬の投与により臨床的意義のあるLDL-C低下効果が期待できると判断いたしました。
 続いて、家族性高コレステロール血症ホモ接合体(以下、「HoFH」)患者における有効性について御説明いたします。審査報告書の通し番号55ページ、7.3.4項の表56を御覧ください。HoFH患者を対象とした海外第III相試験であるORION-5試験では、主要評価項目とされた投与150日目のLDL-Cのベースラインからの変化率について、本薬群のプラセボに対する優越性は示されませんでした。
 審査報告書の通し番号62ページ、7.R.3.2項を御覧ください。ORION-5試験では、ベースラインのLDL-C測定前2週間以内にLDLアフェレシスを実施した患者、及び本剤の作用機序を考慮すると有効性が期待できないと考えられる、肝細胞表面にLDL受容体を発現しないnull/null型のHoFH患者の組入れが許容されていたことが、本薬の有効性の結果に影響を及ぼした可能性が考えられました。
 ORION-5試験の成績に基づく有効性の評価に限界はあるものの、LDLアフェレシス非実施の患者集団及びLDL受容体の遺伝子型が非null/null型の患者集団における部分集団解析の結果に加えて、個別症例ごとのLDL-Cの推移や同種同効薬の状況も踏まえれば、LDL受容体の遺伝子型が非null/null型のHoFH患者に対して本剤の有効性は期待できると判断いたしました。以上より、HoFH患者の治療選択肢が限られることも考慮すると、本剤を医療現場に提供する意義はあると判断いたしました。
 ただし、本剤が投与される患者の中には、本剤の有効性が期待できない患者も想定されることから、本剤が漫然と投与されることのないよう、添付文書において初回投与後の血中脂質値を測定し、患者の状態等も考慮して継続の可否を検討する旨、投与を継続する場合は血中脂質値を定期的に検査し、本剤に対する反応が認められない場合には投与を中止する旨の注意喚起を行うことといたしました。加えて、製造販売後調査においては、HoFH患者に本剤を投与した際のLDL-Cの推移等に係る情報も収集することを予定しております。専門協議においても、以上の機構の判断に御賛同いただきました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書65ページ、7.R.4項に示しますように、国内外の臨床試験において、プラセボ群と比較して本薬群で問題となるような有害事象は認められませんでした。また、海外臨床試験において最長で4年程度までの安全性が評価されており、現時点では、長期投与による新たな有害事象の発現傾向は認められておりません。しかしながら、本邦では1年を超える長期投与時の評価が行われていないことから、製造販売後調査において長期投与時の安全性等について情報収集する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。続いて、その他事項の議題1について事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より、その他事項の議題1のレクビオ、インクリシランの最適使用推進ガイドラインについて御説明いたします。資料14-1を御覧ください。以降の説明においてページ番号は先ほどと同様に、各ページの最下部の通し番号で御説明いたします。全体の構成については、既に発出されております他剤の最適使用推進ガイドラインと同様ではございますが、最適使用推進ガイドラインは保険診療上の留意点として作成しているものです。
 まず、3ページの「1.はじめに」についてですが、今回の対象効能・効果は、先ほど、説明がございましたとおり、心血管イベントの発現リスクが高いHMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない家族性高コレステロール血症で、本ガイドラインについては、一般社団法人日本臨床内科医会、一般社団法人日本循環器学会、一般社団法人日本動脈硬化学会、一般社団法人日本アフェレシス学会及び一般社団法人日本脳卒中学会から御推薦を頂いた専門家からの御意見を踏まえて作成を行っております。対象となる効能・効果及び用法・用量については3ページの枠内のとおりです。
 また、記載形式は、これまで作成している最適使用推進ガイドラインと同様になっており、5ページ以降に今回審査された臨床試験成績、17ページに他の最適使用推進ガイドラインと同様に、施設等に関する要件として高コレステロール血症という疾患を適切に診断、管理、治療ができるような施設が選定されるように配慮されております。また、19ページには、本剤の投与対象となる患者に関する内容を、疾患ガイドラインを参考に家族性高コレステロール血症の患者と、非家族性の患者について記載をしております。最後に、21ページには、審査における内容を踏まえた投与に際して留意すべき事項について記載をしております。御説明は以上です。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、概要並びにガイドラインについて、委員の先生方から御質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。柴田委員お願いします。
○柴田委員 ORION-5試験について御質問いたします。LDLRの遺伝子型がnull/null型の患者さんでは、本来、効かないだろうという御説明は、一定の理解はできるのですが、そもそも、何で治験の対象になっていたのかという経緯について教えていただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。遺伝子型ですが、基本的に実臨床で必ず測定されるものではなく、臨床試験のインクルージョンクライテリアとしては臨床診断のみでも組入れが可能な規定でした。その後、得られた結果に基づき部分集団等を解析してnull/null型の患者は、やはり効かなかったという結果が得られているといった状況になります。
○柴田委員 分かりました。
○森部会長 そのほか御質問いかがでしょうか。特に、循環器系が御専門の先生等から御発言がございましたらいかがでしょうか。特段、よろしいでしょうか。代田委員お願いします。
○代田委員 6か月の間を開けて投与できるという面で、極めて患者さんにとって便利なお薬が開発されたなと思って聞いておりました。null/null型のケースについては、日本では、遺伝子検査が許可されたので事前に分かると理解しておりますが、それでよろしいかということをお聞きします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。遺伝子型についてはおっしゃるとおり、昨年、保険収載され、保険で使えるようにはなっているのですが、一方で、環境整備といいますか、必ずしもどの施設でも遺伝子検査ができるといった状況でもないことを確認しております。基本的に、投与対象としては臨床診断に基づき、投与対象を選んでいただき、必要に応じて遺伝子検査を実施し、遺伝子型がnull/null型かどうかを検査していく形になるかと思います。
○代田委員 ありがとうございます。もう1点、他のPCSK9のインヒビターでは効かなかった場合、この薬剤を使う適用というのはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。一応、既存のPCSK9阻害薬がPCSK9に対する抗体で、今回はsiRNAなので、若干、作用機序としては異なると考えております。ですので、PCSK9の抗体を使用して効かない、又は副作用で投与できないといった患者さんに対して、本剤が使用できる、又は使用して効果が期待できる可能性はあるかと考えております。
○代田委員 ありがとうございます。最近は循環器の臨床をやっている医師も頻繁にこのお薬を使うケースが見られて来ましたので、十分に説明をしていただければと思います。以上です。
○森部会長 御意見、ありがとうございました。よろしいでしょうか。そのほか、特に御発言がないようでしたら、議決に入りたいと思いますがよろしいでしょうか。なお、佐藤直樹委員、高橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議はないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。また、その他事項の議題1についても御確認いただいたものとさせていただきます。続いて、議題1に移りたいと思います。では、議題1について機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題1、資料No.1、医薬品フォゼベル錠5mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明をいたします。本薬は、ナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3の阻害作用を有する化合物であり、ナトリウムイオン/プロトン交換輸送を阻害することにより、細胞間隙のリン透過性を低下させ、腸管からのリン吸収を低下させることで、高リン血症に対して効果を発揮することが期待されます。
 今般、高リン血症を伴う透析中の慢性腎臓病患者を対象とした臨床試験成績等に基づき、製造販売承認申請がなされました。なお、現時点で本薬は、高リン血症に係る効能・効果で、米国で承認申請中ですが、承認されている国又は地域はありません。また、本薬は便秘型過敏性腸症候群に係る効能・効果では、米国及びカナダで承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.16に示します専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号46ページの表46を御覧ください。高リン血症を伴う血液透析患者を対象に本薬を単独投与した国内第III相試験において、主要評価項目である「投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの変化量」について、本薬のプラセボに対する優越性が検証されました。
 続いて、審査報告書の通し番号48ページの表49を御覧ください。既存のリン吸着薬で効果不十分な血液透析患者を対象に、リン吸着薬に本薬を上乗せ投与した国内第III相試験において、主要評価項目である「投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの変化量」について、本薬のプラセボに対する優越性が検証されました。
 また、審査報告書の通し番号50ページの表53を御覧ください。実施可能性から小規模での検討とはなりましたが、高リン血症を伴う腹膜透析患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である「投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの変化量」について、血清リン濃度のベースラインからの低下が認められました。
 以上より、血液透析患者における本薬の有効性は示され、腹膜透析患者においても、本薬は高リン血症改善効果を示すと判断をしました。
 安全性について、審査報告書の通し番号64ページの表70と表71を御覧ください。国内第II相及び第III相試験において、最も多く認められた有害事象及び副作用は下痢でした。国内第III相試験において重症度が高度の下痢が認められており、透析患者を対象とした国内外の臨床試験において、重篤な下痢も認められています。下痢は特に投与開始早期に比較的多く発現する傾向を認めましたが、その後も一定の割合で発現をしており、本薬投与中は十分な観察を行い、必要に応じて対症療法や本薬の減量、休薬、中止等の適切な処置を施す必要があると考えました。
 以上の検討結果から、本薬の投与中は下痢に注意する必要があるものの、減量や休薬等の適切な対応を行うことで、透析患者における本薬の安全性は管理可能と判断しました。以上の審査の結果、透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症に対する有効性は示され、その有効性を考慮すれば安全性は許容可能と考えられたことから、機構は医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。堀委員、どうぞ。
○堀委員 ありがとうございます。私からは、添付文書の「9.7 小児等」の所に関して質問させていただきます。先ほどの御説明では、腹膜透析にも今回は対応が可能ということだったのですけれども、この9.7.2などを確認しますと、小児の慢性腎臓病の方には該当はしないと判断してよろしいでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 はい、その理解で問題ございません。6の用法及び用量の所にも「通常、成人には」と記載しておりますので、基本的には成人の方に使っていただくということで、9.7の小児等の所で非臨床の試験ですが、ラットに投与した場合に下痢による死亡などもみられておりますので、小児への投与は避けていただくという形で注意喚起をさせていただいております。
○堀委員 ありがとうございました。念のため確認をさせていただきました。以上です。
○森部会長 どうぞ、佐藤委員、お願いします。
○佐藤(陽)部会長代理 教えていただきたいのですが、この薬は下痢が結構出るということなのですけれども、審査報告書を拝見すると、いろいろな薬物との相互作用を検討をされている中で、止瀉薬、いわゆる下痢止めの薬との相互作用というものはないように見えたのですが、その辺りは、相互作用や注意事項などの検討はどうなっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より、お答えいたします。相互作用の試験では特別、下痢止め等との相互作用については検討されていないという状況かと思います。本剤は作用機序から、下痢の発現が増えるということがありまして、海外では便秘型の過敏性腸症候群でも承認されているということで、便秘の方でしたら便を出す方向には動くということなのですけれども、特段、下剤との相互作用について検討はしていない状況で、特段、懸念もないのかなとは思っていますが、いかがでしょうか。
○佐藤(陽)部会長代理 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 下剤ではなくて止瀉薬の方です。その点はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そちらについても、併用時に特段の懸念はないと考えております。
○森部会長 機構の方にお伺いいたします。臨床開発のときに、実際に下痢を生じた患者さんにどういった対応が有効であったかということと、その対応の内容が資材等に反映されるかどうかの状況を伺ってよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より、お答えいたします。審査報告書の通し番号64ページの7.R.3.3.1の所で、下痢の重症度はほとんどが軽度又は中等度であって、高度の下痢の患者さんが2例でした。いずれも本薬の中止後に回復、高度の患者さんについては投与中止後に回復をしています。また、下痢によって、本薬の投与の中止、休薬又は減量をした被験者については、全ての試験の合計で67例認められていますが、いずれも転帰は回復といった状況になっております。
○森部会長 その臨床試験から得られた患者さんへの対応法について、具体的に、企業から資材を作成する予定があるかどうかも併せて伺ってよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より、お答えいたします。添付文書の重要な基本的注意の8.1の所に、基本的には下痢に伴う症状が認められた場合には、休薬又は投与の中止を検討し、適切な処置を行うことと記載をしております。
○森部会長 そのほかに企業の方から、患者さんや医療現場向けの資材等の作成予定はございませんか。
○医薬品医療機器総合機構 特別、資材を作るというようなお話は聞いておりませんが、インタビューフォームや薬のしおり等は作成されるとは思います。
○森部会長 これだけ症状が高頻度ですし、特に透析の方ですと体液バランスがもともと余り安定していない方が多くて、下痢を起こす場合も血圧が低下したり様々な有害事象を生じ得るので、やはり丁寧な説明という意味では、資材の作成をしていただくことと適切な対応や医療機関との連携について、おまとめいただくのがよろしいのではないのでしょうか。是非その点は御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。宮川委員、いかがでしょうか。
○宮川委員 今、部会長がおっしゃったのは、8.1の最後の所に「適切な処置を行うこと」とありますが、この適切な処置とは何ですかという話です。下痢を止めるためのいろいろな処置はたくさんありますが、それが何が適切なのか。透析を行っているこういう患者さんに対して薬を中止するということは当然です。その後に適切な処置をするという、その適切な処置は何ですかということを、今、部会長は言ったわけです。
 それに対して資材などがなければ、現場では困るわけです。先ほどおっしゃったように何を使って止めるのか、どうやってサポートをするのか、そういうことが書いていなければ、これは医療現場に落とし込むことはできません。下痢に対していろいろな処置をするのは当然ではないかと。でも、それがそれに対して悪さをすることがあるのか、そういうものに対して使ってはいけない薬があるのかということも含めて書き込みがなければ、こういう意味では添付文書としては成り立たないので、そこを是非しっかりと書き込んでいただきたいという、丁寧さが足りないというところを今指摘されたと理解してください。
○森部会長 赤羽委員から御意見あるようなので、お願いします。
○赤羽委員 私も同じ所を御質問させていただこうと思っていまして、先ほど、審査報告書の御説明をされたときには、通常の対症療法でと御説明をされたので、対症療法とは具体的にどういうことをされるのかは、やはり聞きたかったのですけれども、今、先生方から御指摘がありましたとおり、特に透析をされている患者さんは、配慮しなければいけないことがたくさんあるかと思いますので、そこは是非お願いしたいと思います。
○森部会長 是非お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。頂いた御意見を踏まえまして、企業に資材の方で、適切な対応とは具体的にどういったことが考えられるかということを、丁寧に記載するように指示したいと思います。ありがとうございます。
○森部会長 特に透析をしているときは、お通じを催しても、なかなかおトイレをするということも容易ではありませんので、やはり、きめ細やかな配慮が必要かと思います。是非お願いします。
 そのほか御意見ございませんでしたら、議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。なお、佐藤直樹委員、代田委員、高橋委員、中西委員、矢野委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決の参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようですので、承認を可として薬事分科会に報告をさせていただきます。
 続きまして、議題2に移らせていただきます。機構の方より、議題2につきまして概要説明の準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品コルスバ静注透析用シリンジ17.5μg他2規格の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.2-1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、通し番号4/67ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用条件に関する資料等」の項を御覧ください。血液透析施行中の慢性腎不全患者では、そう痒症を合併することが多く、その発現部位は全身性で、かつその症状は持続するため、睡眠障害などによりQOLに悪影響を及ぼすことが知られています。本剤の有効成分であるジフェリケファリン酢酸塩は、D-アミノ酸及びピペリジンから構成されるテトラペプチドであり、慢性腎臓病に伴うそう痒症に対して、抑制的に働いていると考えられているκオピオイド受容体を活性化させることで、抗そう痒作用を示すと考えられています。なお、本邦ではκオピオイド受容体に対するアゴニストとして、経口剤であるナルフラフィン塩酸塩製剤が承認されておりますが、本剤は透析終了後の返血時に、透析回路から注入する静注剤ですので、水分摂取制限に影響されず投与が可能であり、また透析ごとに医師の管理下で確実に投与を行うことが可能な薬剤となっています。
 本邦では、20○○年○月から本剤の臨床試験が開始され、今般、申請者は国内第III相試験等により、血液透析患者におけるそう痒症に対する有効性及び安全性が確認されたとして、本剤の製造販売承認申請を行ったところです。
 本薬は米国で2021年8月に、欧州では2022年4月に、それぞれ「血液透析を受けている成人患者における慢性腎臓病に関連する中等度から重度のそう痒症の治療」を適応症として承認され、2023年4月現在、37の国又は地域で承認されています。
 本品目の審査に関しまして、専門委員として資料No.16に記載されている8名の委員を指名いたしました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の一番下、通し番号31/67ページの表26を御覧ください。国内第III相試験として、抗ヒスタミン薬等の既存治療で効果不十分なそう痒症を有する血液透析患者を対象に、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験が実施されました。当該試験における本剤群の用量につきましては、審査報告書の通し番号37/67ページの表30を御覧ください。本剤の用量として、0.5μg/kgをベースとしたドライウェイトに基づく体重区分別の用量が設定されました。
 有効性について、同ページの表31を御覧ください。国内第III相試験の主要評価項目として、二重盲検期4週時の平均NRSスコアのベースラインからの変化量が設定されました。その結果、本剤群においてプラセボ群と比較して統計学的に有意なNRSスコアの改善が認められたこと等から、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号43/67ページ、「7.R.2 安全性について」の項を御覧ください。今般提出された国内外の臨床試験成績から、本剤投与に関連すると考えられる主な有害事象として、浮動性めまい、傾眠等の中枢神経系関連事象、便秘等の胃腸関連事象、血圧低下等の心血管系関連事象が認められたものの、これら有害事象の多くは非重篤な事象でした。また、一部の被験者で内分泌学的検査値の変動や血中カリウム濃度の増加が認められたものの、関連する有害事象の発現状況等を踏まえると、臨床上、重大な問題となる可能性は低いと考えられました。
 加えて、海外製造販売後の安全性情報から安全性上の特段の懸念は示されていないことも踏まえると、適切な注意喚起の下であれば、本剤の安全性は管理可能であると判断いたしました。以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では、報告を予定しております。
 なお、事前に森部会長から国内臨床試験で認められた心臓障害の内訳と、海外臨床試験での発現状況と比較した相違点について御質問を頂きまして、追加の説明資料として、コルスバに係る追加資料1及びコルスバに係る追加資料2を、事務局を通じて送付させていただいております。まず、コルスバに係る追加資料1を御覧ください。本資料では、国内前期第II相試験、国内後期第II相試験及び国内第III相試験で認められた、心臓障害の内訳と国内臨床試験で認められた各事象の海外臨床試験での発現状況を示しております。先の三つの国内臨床試験のプラセボ群を併合した群については、投与期間がほかの併合群と比較して限られているということに留意する必要があるものの、国内臨床試験と海外臨床試験における心臓障害の発現状況に大きな相違はないものと考えられました。
 続いて、コルスバに係る追加資料2を御覧ください。本資料では先の三つの個々の臨床試験における心臓障害の発現状況をお示ししており、プラセボ対照期間は限られていることに留意する必要があるものの、個々の臨床試験でプラセボ群と本剤0.5μg/kg群の心臓障害の発現状況に差がある傾向は認められませんでした。これら追加資料に関連しまして、代田委員から、「透析症例は潜在的な心疾患の合併も多いため、少しの血行動態の変化で不整脈等は誘発されやすく、海外統合データの心房細動既往例での心房障害の相対リスクの上昇はそれを表しているのではないか。症例数が限られているので、統計学的な判断はしにくいとは思うが、何らかの注意喚起があってもよいと考える」との御意見を事前に頂戴しております。
 頂戴した御意見を踏まえまして、添付文書の「15 その他の注意」の項におきまして、海外で実施された臨床試験での心房細動の既往歴の有無別での心臓障害の発現割合や、リスク比を具体的に情報提供するということを検討しているところです。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。委員の先生方から、追加の御発言はございますでしょうか。御質問はいかがでしょうか。事前に代田委員と佐藤直樹委員から御発言いただいたということですが、何か追加の御発言がございましたらお願いします。いかがでしょうか。
○佐藤(直)委員 透析患者さんの血圧が下がることは往々にしてあって、代田先生がおっしゃるように、それが誘因になり不整脈を誘発したりすることはありうることだと思います。この薬剤自体が基礎実験の結果を見ると、高用量ではあるものの血管拡張作用を有していることが示されています。実臨床の中でやはりこの薬剤によって血圧低下のリスクはあると思うのです。添付文書を見ると血圧低下の頻度は書かれているものの、それに対する注意喚起がちょっと乏しいように思うので、反復投与すると半減期もかなり長いことを考えると、しばらくしてから血圧低下を来したりとかということもあるので、その辺についての注意喚起、あるいは注意をするような資材等を含めて何か検討されているのかどうか、教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答いたします。佐藤委員から、血圧低下がどのタイミングで生じるのかという御指摘を頂いて、また、それに関連した添付文書の注意喚起や資材での情報提供について、どのように考えるかという旨の御質問を頂いたかと理解しております。まず、臨床試験において、血圧低下と低血圧がどのようなタイミングで生じたのかについて御説明させていただきます。前期第II相試験、後期第II相試験、国内第III相試験の3試験におきまして、本剤0.5μg/kg投与時に、全部で15例に計16件の血圧低下、あるいは低血圧が認められました。これら3試験のうち、後期II相試験、後期第III相試験については、治験薬投与から有害事象発現までの細かい時間が収集されておりませんでしたので、直近の治験薬投与から血圧低下あるいは低血圧が生じた日数について、まず御説明させていただきます。
 15例、16件の血圧低下あるいは低血圧のうち、投与当日に発現したものが7件、投与後翌日に発現したものが3件、投与2日後に発現したものが3件、投与3日後に発現したものが2件、そして本剤投与7日後に発現したものが1件でした。なお、本剤投与当日に発現した事象については、当日の治験薬投与との前後関係は不明なところです。
 今申し上げた本剤投与当日に発現した7件のうち、治験薬との因果関係が否定されなかった症例は1例、1件のみです。また、投与翌日以降に発現した9件のうち、4件については治験薬との因果関係は否定されておりません。ただ、この4件のうち、1件は詳細不明ですけれども、1件は治験薬投与前から血圧の低下傾向があり、関連がない可能性もあることが治験担当医師から報告されております。
 また、別の1件では、同日に胆嚢炎と高血糖を併発していたところがありまして、これらの影響もあるのかと考えております。更に別の1件では、2回目の治験薬投与前の透析終了時の血圧が低値であったということで、その後、透析を継続しながら治験薬投与を3回スキップしたのですが、血圧がなかなか上昇しなかったことが報告されていまして、本剤は透析で大部分が除去されるというところを踏まえると、この症例については、本剤投与以外の要因もあり得たのではないかと考えています。以上のとおり、本剤投与後の、本剤に起因すると考えられる血圧低下の発現時期は、必ずしも臨床試験成績の中から明確にはなっていないと考えておりますので、本剤投与中は投与後の経過時期にかかわらず、血圧低下には注意していただく必要があるのではないかと考えています。
 また、現時点で得られている情報からは、本剤投与直後に特に発現しやすい傾向が認められると言えないところもありますので、機構としては、本剤投与後に本剤に起因した血圧低下が遅発的に生じるおそれがあるとか、そういった内容は積極的に注意喚起する必要があるとまでは判断できていないところです。結論としては、添付文書において、こうしたタイミングで血圧低下が起きる可能性があるので注意せよという添付文書の注意喚起であったり、資材での情報提供は今のところは予定してはおりません。
○森部会長 佐藤直樹委員、今の内容ですがいかがでしょうか。
○佐藤(直)委員 だとしたら添付文書に載せないまでも、やはりそこがまだ明確なデータがないのであれば、その血管拡張作用を有すると想定されている薬剤なので、何らかの注意喚起はしっかり資材も含めて伝えておかないと、後々血圧が下がるというようなことで、心血管系のイベントの引き金になるというリスクはあるのではないかと思うので、注意喚起は必要かと思います。
 それともう1点、透析で除去されるというお話でしたけれども、これはどの程度除去されるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただいた添付文書での注意喚起ということですが、先ほど説明したように、投与時期については明確になっていないところもありますので、臨床試験における血圧低下、あるいは低血圧の発現時期といった情報を医療従事者向けの資材に記載していただく方向で、今、御指摘を踏まえて考えているところです。
 2点目の御指摘ですが、透析での除去率につきましては、データとして76%除去されるという結果が載っておりまして、添付文書の16.1.1の項で、そちらについて情報提供をさせていただいています。
○佐藤(直)委員 ありがとうございます。是非、何か注意喚起をしていただければと思います。よろしくお願いします。
○森部会長 機構の方に確認ですけれども、今私どもが教えていただいた血圧低下のことについて、添付文書の臨床成績の所などに追記していただくようなことは難しいのでしょうか。これは副作用と認定されていないと難しいですか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験成績については、有効性及び安全性に関する主なプライマリーエンドポイントの結果や、主に認められた有害事象の内容を記載するというところです。先ほど御説明したような、どのようなタイミングで生じたのか、そうした細かい内容を記載するのは、ちょっと臨床試験成績の項の記載としては馴染まないかと考えています。
○森部会長 先ほどこちらに頂いた15の項目に追記する内容に、その内容を含めていただくことは難しいですか。と言いますのは、血圧低下が投与当日に起こっていて、因果関係がはっきり分かっていないものが多いようですけれども、透析した後なので、血圧低下するとかなり患者さんの容体に影響する、透析が終わった後の自宅への行き来にも影響しまして、そのまま血圧が低くて帰れないケースも想定し得るので、血圧低下が当日に7例起こっているのであれば、やはりきちんと何らかの形で注意喚起しておくことは必要で、それは因果関係が明確に分かっていないのであれば、実際に発現した日にちを、当日は何例、2日目は何例、3日目は何例というような記述でよいと思いますので、そういう事例が確認されているというような内容にしておいていただくことはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。投与当日に何件起きた、あるいは投与後翌日以降に何件起きたという情報を、例えば、添付文書の15項などに記載するということでしょうか。
○森部会長 そのとおりです。15の項目を1と2に分けていただいても結構ですけれども、血圧低下に関する注意喚起と、それから心房細動に関する注意喚起をそれぞれ書いていただくことでいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 こちらについては、持ち帰って検討させていただければと思います。15項に記載する案も確かにあると思うのですけれども、例えば11.2のその他の副作用の血圧低下の所に、少し脚注を付すような形で、例えば投与直後にかかわらず起きるとか、あるいは投与翌日以降に起こる可能性があることを記載した上で、具体的なデータについては資材などで情報提供をするようなやり方もあるかと、今、考えたのですけれども、その点はいかがでしょうか。
○森部会長 どちらでもいいですし、両方されてもいいです。とても大事なことなので、是非お願いしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 はい、分かりました。今得られているデータを踏まえまして、企業の方とどのような形の注意喚起、あるいは情報提供ができるかについて検討させていただきます。御指摘ありがとうございます。
○森部会長 代田委員から御発言お願いします。
○代田委員 私も今の低血圧の件に、もう少し記載の追加が必要かなと思っておりましたので、今の議論で結構です。ありがとうございました。
○森部会長 では、心房細動については海外の成績等で、心臓障害のリスクが高かったことについて触れていただければいいと思いますので、15の1と2という形でお願いいたします。宮川委員、いかがですか。
○宮川委員 宮川です。やはりそれはしっかりと書き込んでいただきたい。これは週3回の透析ですから、透析終了時にボーラスで入れるということは、透析性は関係ないですね。透析は終わっているのですから。透析が終わっていて、週2日間空くわけです。そこに透析するわけではないので、透析性は関係ないのです。透析終わった後に入れているので、透析をするということは、透析をそこで除去する形になるので、実際にこの分子量として透析性はあります。この副作用は透析のこの薬の作用として現れているので、除去したからといって、症状がすぐ取れるというような物質ではないのです。だから透析性というのは確かにあるんだけれども、透析終了後にボーラスで入れているということは、中2日間空くわけです。そこのときに症状が現れるから、それをいくらそこの途中で透析をしようが、その分子量からすれば、もう血管の所から入っているものです。血管内に浮遊しているわけではないから、透析があるなしにかかわらずこの副作用が出てきてしまっているということは、透析をやっている人間は、腎臓を専門にやっている人間はみんな分かります。だから透析性のことをいうのではなくて、症状が出ることをきちんと書いておかないと問題が起こるということなので、血圧低下のことはきちんとしっかり書き込んでいただくことをしなければいけないと思います。躊躇しては駄目です。15の所に入れるか、そのほかに入れるか分からないけれども、それはしっかりと確認をしていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。透析で除去されるため血圧低下の懸念がないというところは御説明したわけではないという、そこだけは補足させていただいて、今頂いた御意見を踏まえて、添付文書の注意喚起の内容についてはしっかりと企業と議論したいと思います。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか、先生方から御意見、御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3に移ります。機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品ジルビスク皮下注16.6mgシリンジ、同皮下注23.0mgシリンジ及び同皮下注32.4mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構から御説明いたします。資料No.3の審査報告書を御覧ください。始めに、審査報告書の一番下、全70ページの通し番号で4ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。重症筋無力症は、神経筋接合部のシナプス後膜上にあるアセチルコリン受容体等に対する自己抗体によって、神経から筋へのシグナル伝達が阻害されることにより生じる骨格筋の筋力低下と、易疲労性を特徴とする自己免疫疾患です。このうち、筋力低下が全身に及ぶ全身型重症筋無力症(以下、「gMG」)は重症筋無力症の約8割を占め、運動、発語、嚥下、呼吸障害など全身の随意筋に臨床所見が認められます。本剤は、補体C5に結合することにより、抗アセチルコリン受容体抗体による補体活性化経路の活性化を阻害し、神経筋接合部の破壊及び神経伝達障害を抑制することで、gMGに対して有効性を示すことが期待されております。
 今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、製造販売承認申請が行われました。本剤は、米国及び欧州で、それぞれ2022年8月に承認申請が行われ、2023年8月現在、審査中です。本申請の専門委員として、資料No.16に記載されている11名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず、有効性につきまして、審査報告書の通し番号で40ページの表45を御覧ください。抗アセチルコリン受容体抗体陽性のgMG患者を対象に国際共同第III相試験として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験、MG0010試験が実施されました。第III相試験の主要評価項目である「投与12週時のMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量」について、本剤群とプラセボ群の間に統計学的に有意な差が認められ、プラセボに対する本剤の優越性が検証されました。
 次に、審査報告書の通し番号で45ページの表52、53を御覧ください。表の53のとおり、第III相試験の副次評価項目である「QMG総スコアのベースラインからの変化量」についても本剤群でプラセボ群を上回り、改善する傾向が認められております。
 また、日本人部分集団における有効性の結果は、それぞれ表52、53の下半分のとおりであり、日本人部分集団についても全体集団と同様の傾向が認められております。以上より、本剤の日本人gMG患者に対する有効性は示されたと判断いたしました。
 次に、安全性について、審査報告書の通し番号47ページから始まる「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤の作用機序等も考慮して提出された臨床試験成績等を検討した結果、本剤投与に当たっては、髄膜炎菌及びその他の莢膜形成細菌を含む感染症、膵炎や膵酵素の上昇、重篤な過敏症反応等に特に注意する必要があるものの、これらの事象について適切な注意喚起を行うとともに、本剤がgMGの診断、治療に精通し、本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関の下で使用されることで、日本人gMG患者における本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、承認して差し支えないとの結論に達し、本部会にて御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問や御意見等はいかがでしょうか。堀委員どうぞ。
○堀委員 添付文書を拝見いたしまして、8.2の所に「自己投与への適用については」というように書いてあったのですけれども、これは、全身型重症筋無力症の自己投与、在宅での投与ができる初めてのお薬という形でよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。御指摘のとおり、重症筋無力症に対する自己投与が初めて許容される製剤になるだろうと考えております。
○堀委員 ありがとうございます。ちょっと素朴な質問なのですけれども、この病状は、例えば生活においても手足とか、筋力とかに力が入らなくなって、同じ姿勢を保ったりするのが結構大変だということをお聞きしています。そのような症状で、自己で投与ができるか、この場合は皮下注だと思うのですけれども、それが可能なのかどうなのか。それとも、投与するのは患者本人ではなく、御家族を対象にしたことを想定して作っていらっしゃるのかを教えていただいてよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の臨床試験では全例が自己投与を行っておりまして、第III相試験も長期投与試験も、全ての患者さんが本剤を自己投与することができたという報告を受けております。ですので、本剤が市販されても、多くのgMG患者さんで円滑に自己投与は可能なのだろうと考えております。
○堀委員 ありがとうございます。そうしますと、当然、患者向けの資材は作られるということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○堀委員 分かりました。どうもありがとうございます。以上です。
○森部会長 そのほかの御質問等はいかがでしょうか。神経内科領域の御専門の先生、御発言いただけるようでしたら、いかがでしょうか。
○石川委員 石川です。患者さんの期待が結構大きいと思いますし、資料を拝見しましたけれども、特に問題ないと思いましたので、特段、質問等はございません。ありがとうございました。
○森部会長 そのほかの先生方はよろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただいてよろしいですか。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題4について、機構から概要説明の御準備をお願いしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料No.4、医薬品リスティーゴ皮下注280mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.4の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下の全63ページの通し番号で5ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。全身型重症筋無力症(gMG)の病態等につきましては、先ほど議論いただきました議題3のジルビスクにて御説明させていただいたとおりです。本薬は、胎児性Fc受容体(以下、「FcRn」)を標的とするヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、FcRnを介したIgG抗体のリサイクル経路を阻害し、病原性IgG自己抗体を含むIgG抗体濃度を減少させることにより、gMGに対して有効性を示すことが期待されております。
 今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、本剤の医薬品製造販売承認申請が行われました。本剤は、米国では2023年6月に承認されており、欧州では2022年11月に承認申請がなされ、2023年8月現在、審査中です。本申請の専門委員として、資料No.16に記載されております9名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書の通し番号で35ページの表39を御覧ください。gMG患者を対象に国際共同第III相試験としてプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験、MG0003試験が実施されました。第III相試験の主要評価項目である「治験薬投与43日目のMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量」は、いずれの本剤群でもプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められ、プラセボに対する本剤の優越性が検証されました。
 次に、審査報告書の通し番号で40ページの表45を御覧ください。MG-ADL総スコアでは、全体集団と日本人集団で同様の傾向は認められませんでしたが、同ページの下の表46のとおり、第III相試験の副次評価項目である「QMG総スコアのベースラインからの変化量」では、全体集団及び日本人集団のいずれもプラセボ群と比較して、本剤群で、より改善する傾向が認められました。
 次に、審査報告書の通し番号43ページの上から4行目の「MG0003試験の主要評価項目である」から始まる段落を御覧ください。MG-ADL総スコアについて、日本人集団で全体集団と同様の傾向が認められなかった要因と想定される患者背景は特定されませんでした。しかしながら、本薬の薬物動態及び病原性IgG抗体を含む総IgG濃度の減少率に民族差は認められておらず、日本人と外国人のgMG患者において、本剤の有効性に明らかな民族差が認められる可能性は低いものと考えられます。
 また、第III相試験におけるMG-ADL総スコアのベースラインからの変化量の日本人各被験者の分布は、プラセボ群及びいずれの本剤群においても外国人集団の分布の範囲内であったことを考慮すると、MG0003試験に組み入れられた日本人症例数が限られたことが影響した旨の申請者の説明は、一定の理解は可能と考えました。
 加えて、QMG総スコアのベースラインからの変化量は日本人集団と全体集団で、いずれもプラセボ群と比べて改善する方向であったことなども考慮すると、第III相試験の全体集団の結果に基づき、日本人gMG患者に対する本剤の有効性を評価することは可能であり、日本人gMG患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 また、審査報告書の通し番号で58ページの「1.1 有効性、効能・効果、投与対象及び臨床的位置付けについて」の項を御覧ください。本剤の有効性について、専門委員からの御意見はお示ししているとおりであり、専門委員から本剤の有効性に関する機構の判断は支持されました。以上より、本剤の日本人gMG患者に対する有効性は示されたと判断いたしました。
 最後に、安全性についてです。審査報告書の通し番号で44ページから始まる「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。提出された試験成績等を検討した結果、本剤投与による重篤な感染症、無菌性髄膜炎等の発現については特に注意を要しますが、これらの事象について適切な注意喚起の下で使用されることで、日本人gMG患者における本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品に由来し、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、ありがとうございました。では、先生方から御質問や御意見等はございますか。本件も石川先生に御発言いただいてもよろしいでしょうか。
○石川委員 こちらは質問があるのですけれども、今の40ページのMG0003試験において、全体集団と日本人集団の方向性が違うということに関してもう一度確認したいのですが、おっしゃっているのはMG-ADLスコアの変化とQMGスコアの変化に、日本人において、その一致性がないということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。MG-ADL総スコアにつきましては、御覧いただきますと、全体集団では改善する傾向は認められているのですが、日本人集団の方では、そういった傾向が認められていないという状況ではあるのですが、表46のQMG総スコアにつきましては、全体集団と日本人集団で改善する傾向という方向については、同じ方向を向いているのかなということで、先ほど御説明させていただきました。
○石川委員 そういうことですよね。ですから、日本人においてMG-ADLスコアとQMGスコアが一致していないということですよね。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。改善する傾向というところは、MG-ADL総スコアでは認められなかったというところです。
○石川委員 そういうことですよね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○石川委員 ここをどう捉えるのかということかなと思いまして、最終的な結論として日本人で示されたとはっきり言い切られると、正直少し抵抗を感じます。ただ、やはり我々はQMGスコアの方を優先することが多いと思いますので、最終的な結論としては、日本人でも有効性が示されたのだというように考えられるのかなと思っております。全く同じという結論になるのは、ちょっと無理があるかなという意味なのですけれども、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生、ありがとうございます。機構より御説明をさせていただきます。今回、申請者から提示されましたのは、国際共同試験ですので、全体集団と日本人集団での傾向を確認して、全体集団の結果が日本人にも適用できるだろうというようなことを、そういう観点から評価させていただきました。
 私どもといたしましては、MG-ADL総スコアでは、全体集団と日本人集団で平均値の結果は逆転してしまった状況はありましたけれども、審査報告書の41ページの表48にお示ししたとおり、日本人データの個別のデータも確認させていただきまして、大分プラセボ群で改善が見られた傾向がある方ですとか、そういった方がおられたので、各群4例又は5例しか入っていない状況もありましたので、これは日本人の症例数が少ないことが影響した結果であろうというように判断し、全体集団のように日本人集団でも有効性があるであろうというような判断をさせていただいております。
○石川委員 どうもありがとうございました。とはいえ、やはり日本人も同じように効いているというときには安心するわけですけれども、そこのところが同じようになっていないというときに、今のように丁寧に御説明していただく条件付きの有効性なのかなというように思わざるを得ないというように、正直言うと、思います。ほかの薬剤も同じように日本人で効いているということを確認した上で、皆さん安心して承認しているというところはあると思いますので、そのように申したわけであります。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりコメントをさせていただきます。こちらのデータですけれども、専門協議でも議論をさせていただきまして、先生に先ほどおっしゃっていただいたように、QMGスコアの方は握力ですとか、そういった先生方が検査された情報に基づいて評価する指標であることから、日本人集団でもきちんと傾向が見られたのではないか。一方で、MG-ADLスコアに関しては、患者さんの日常生活の状態の聞取りの評価ですので、ちょっとそういったところも影響したのではないかというコメントもありまして、総合的に見て、日本人の有効性というのは期待できる状況があるだろうというところで、この品目に関しては本邦で承認して差し支えない程度には、日本人の有効性は確認できているというような御意見であったかと思います。御説明は以上です。
○森部会長 石川委員、よろしいでしょうか。
○石川委員 ありがとうございました。
○森部会長 今回の国際共同試験は200例でしたか、全体で。うち日本人が13例参加されているということです。日本人の参加者数が13例ですので、有効性を統計学的なパワーを持って議論することが、そもそも難しいというところがございます。その中で、今、石川委員が懸念されていたのは、MG-ADLスコアが主要評価項目であって、その方向性が海外と異なっていた点は、有効性に対する若干の不安を感じるという御発言だと理解しました。
 一方で、実臨床でよく利用されているQMGスコアに関しては、絶対値としては海外よりは、やや効果の点で劣るように見えますけれども、同じ方向性を向いているということで、本剤の有効性を支持する所見の一つとして機構及び専門協議でも、そう捉えていただいているというように理解いたしました。
 そこで、本剤の添付文書の臨床成績を見ますと、有効性に関する記載の根拠になっているのが、MG-ADLスコアのみになっているのです。これは、できたらQMGスコアも併記されてはいかがでしょうか。そのようになさると、日本人で実臨床で使用された際にQMGスコアがどのくらい変化しているということを、先生方が国際共同試験の中で位置付けられて、目の前の患者さんに本剤が本当に有効に機能しているかどうかということについて、評価しやすくなるということが上げられるかと思います。
 また、日本人の成績につきましても、大変貴重なデータでございますので、インタビューフォーム並びに資材等でくまなく周知していただき、また今後もMG-ADLスコアとQMGスコアについての情報が集積されるように、日本人の市販後調査等で万全を尽していただきたいというところを考えている次第ですが、石川委員、いかがでしょうか。
○石川委員 ありがとうございます。今、先生がおっしゃったことで納得できるのですが、一方で、大変恐縮なのですけれども、正直申しますと、私、今、森先生がおっしゃったMG-ADLの方を優先していたという記載は見逃しておりまして、報告書の記載からは両方が同等に評価対象になっているという記載を読んでおりました。もし、MG-ADLの方を優先していたとすると、やはり最初にスタディというか、前提として立てられたことを審査の段階できちんとされるべきなのではないかというように感じるのですね。この結果を見たときに、では、QMGスコアの方を同じだからというようなことではなくて、日本人はもちろん症例数は少ないのだけれども、MG-ADLを優先していたという点においては、症例数が少ないから判定できないとか、もう少しわかりやすく書いていただくという形を機構にお願いしたいと思いました。これは私の誤解かもしれませんけれども。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。まず、評価項目の妥当性に関してですが、MG-ADLスコアにつきましては、国際的なgMGの臨床開発の中で主要評価項目とされている評価項目ですので、そういった点では主要評価項目をMG-ADL、より患者さんの日常生活の状況を評価するスコアをメインで評価したということ自体は妥当だと考えております。
 一方で、先生方が実際に検査をされて、スコアを付けられるQMGスコアというのも客観的な検査の所見が入ったスコアですので、機構としては副次評価項目であっても重要視して評価をしてきているという状況でございます。そういう状況ですので、森部会長から頂いたように、QMGの方も重要だということで、添付文書の方でQMGの成績の情報提供をさせていただくということでいかがでしょうか。
○森部会長 これは機構の方にお伝えしておきたいのですけれども、今回の臨床成績で日本人集団でもIgGは減少しています。IgGが減少しているということは、機構のアセスメントでは本剤の有効性の一つの根拠として考えて位置付けられている、それは事実ですけれども、もう一つは、IgGが減少することは、この薬剤のリスクと表裏一体なのです。したがいまして、本剤の有効性をきちんと確認することと、IgGが減少することによって伴うリスクのバランスに関わってくるので、IgGが減少するという現象の記載に関しては有効性が期待できるという記載にとどまらず、それが、すなわちそのリスク・ベネフィットに関わっているということにも言及される方が望ましいと思っていました。今回、そのこともありまして、特にベネフィットに関する記載について、全体での集団に関するQMGのスコアの追記と、並びに、資材、インタビューフォーム等での日本人の集団におけるデータについて、詳しく開示いただきたいというようにお願いしたい次第でございます。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御回答させていただきます。ただいまの御指摘を踏まえまして、添付文書での情報提供、また、資材での情報提供というところを検討してまいりたいと考えます。
○森部会長 石川委員、よろしいでしょうか。
○石川委員 はい、結構です。ありがとうございました。
○森部会長 ほかの委員の先生方から御発言、御質問はございますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただきたいと思います。なお、川上委員、高橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、報告事項の議題に移らせていただきます。報告事項議題1~6について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○事務局 事務局でございます。報告事項について御説明します。資料No.7をお開きいただけますでしょうか。まず、報告事項議題1、資料No.8、「ロミプレート」です。こちらは申請の概要として、「既存治療で効果不十分な再生不良性貧血」から「再生不良性貧血」への効能・効果の変更、すなわち、これは未治療の患者さんに対する効能を追加するというものです。
 議題2、資料No.9、「ジアグノグリーン注射用」ですが、こちらは肝外胆管の描出の効能・効果の追加をするものです。こちらは公知申請でありまして、本部会において事前評価について御報告したものです。
 議題3、資料No.10、「ソル・メドロール静注用」ですが、川崎病の急性期に関する効能・効果を追加するものです。こちらも公知申請で、事前評価済みのものです。
 続きまして、議題4と議題5、資料No.11とNo.12ですが、「ビザミル」と「アミヴィッド」です。これらは体内診断用医薬品ですが、いずれも今回、アルツハイマー病による軽度認知障害又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドβプラークの可視化への効能・効果の変更ということで、これまでは認知症のみに認められておりましたが、今回、軽度認知障害を追加するといった趣旨の変更です。
 議題6、資料No.13の関係ですが、「エンタイビオ皮下注」、こちらは中等症から重症の活動期クローン病の維持療法の効能・効果を追加するというものです。以上でございます。
○森部会長 委員の先生方から御質問等はございますか。エンタイビオについてですが、頂いた資料の表21と表22に、日本人の集団における有効性に関するデータとありますが、この日本人の集団の成績につきまして、前田先生、何か追加で御意見はございますか。
○前田委員 確かにこれは、症例数は日本人は少ないのですけれども、国際共同で日本人のクローン病の患者さんは少ないので仕方ないかなとも思いますけれども、これ、点滴製剤からペン、シリンジへの変更というか、ほぼ同一製剤ですし、全体としての国際的な有効性はほとんど同じですので、また、血中濃度等は潰瘍性大腸炎と同様というようなデータがございますので、臨床データは日本人としては不足していますけれども、これは実臨床で確かめていくしかないかなと思いますし、クローン病の患者さんは若い方が多いので、静注で病院に来るところを皮下注にして御自宅でできるということがございますので、お認めいただいてよろしい、このままでよろしいのではないかというようにコメントさせていただきます。以上です。
○森部会長 御意見、ありがとうございました。ほかの先生方から、この議題1~6を通して何か御発言はございますか。よろしいでしょうか。それでは、報告事項議題1~6につきましては、御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日の議題は以上でございます。事務局から何か報告はございますか。
○事務局 次回の部会については、令和5年10月27日(金)の午後2時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日は、大変長時間にわたりまして、機構の方、厚労省の方、厚く御礼申し上げます。委員の先生方、本当にどうもありがとうございました。では、これで御退室ください。ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)