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第9回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録
●日時
2024(令和6)年4月12日(金)13時30分~15時30分
●場所
全国都市会館 第2会議室(3階)
●出席者
深尾委員長、権丈委員、滝澤委員(オンライン)、武田委員、土居委員、玉木委員、德島委員、藤澤委員、小枝委員(オンライン)
(オブザーバー)
前田参事官(内閣府計量分析室)、植田調査数理部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)
●議題
財政検証の経済前提について
●議事録
- ○佐藤数理課長
- 定刻になりましたので、ただいまより第9回「年金財政における経済前提に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。
本日の委員の出席状況について御報告いたします。小枝委員、滝澤委員はオンラインでの参加となります。
土居委員からは、遅れて参加される旨の御連絡をいただいております。
オブザーバーにつきましては、内閣府計量分析室の前田参事官、また年金積立金管理運用独立行政法人からは植田調査数理部長に出席いただいております。
続きまして、事務局の人事異動について御紹介いたします。
大臣官房審議官の武藤でございます。
○武藤審議官
武藤でございます。よろしくお願いいたします。
○佐藤数理課長
続いて、資料の確認をさせていただきます。
本日の資料は、資料1「令和6年財政検証の経済前提について(案)(検討結果の報告)」。
資料2「令和6年財政検証の経済前提について(案)(参考資料集)」。
資料3「委員からのご指摘事項」。
参考資料1「令和6年第2回経済財政諮問会議資料4(令和6年2月29日)」。
参考資料2「令和6年第3回経済財政諮問会議資料5(令和6年4月2日)」をお配りしております。
それでは、以降の進行につきましては深尾委員長にお願いいたします。
○深尾委員長
委員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。
議事に入らせていただきますので、カメラの方はここで退席をお願いします。
(カメラ退席)
○深尾委員長
次回の年金部会で、財政検証の経済前提について検討結果の報告を行うことになっています。本日は、その最終報告案について事務局に作成していただいておりますので、委員の皆様におかれましてはこれを基に御議論いただければと思います。
では、事務局より資料の説明をお願いします。
○佐藤数理課長
数理課長でございます。
本日の資料ですが、資料1が本専門委員会の最終報告書の案、資料2がその参考資料集となっているところですが、順番は前後して恐縮でございますけれども、資料3から説明させていただきたいと思います。
資料3を御覧ください。
こちらは、前回の専門委員会において委員から御指摘のあった事項をまとめたものとなっております。
まず、2ページを御覧ください。
こちらは、委員より「生産・輸入品に課される税-補助金」の割合が変化した影響について、先生の試算を示されまして影響が限定的である旨の御指摘がありました。このため、事務局においても同様の試算を行い、確認したものとなっております。委員と同じように、GDPに占める割合が1%変化した場合の影響を見たところ、実質賃金上昇率、実質運用利回りに与える影響は0.1%未満ということで、御指摘のとおり限定的であることが確認できたというところであります。
続いて、3ページ以降は足元の資本係数の上昇と、それに伴う利潤率の低下について、資本価格の上昇が影響しているのではないかと委員長から御指摘があったことに関連するものであります。
4ページを御覧ください。
前回、委員長より、資本係数について実質では上昇していないのではないかという御指摘があったところであります。事務局で実質、名目の資本係数を確認したところ、御指摘のとおり名目では上昇しておりますが、実質では上昇が見られないという結果となっております。
この要因といたしまして、右側のグラフを見ていただきますと、GDPデフレーターとストックのデフレーターに差があることが確認できたということであります。すなわち、資本価格がほかの価格と比べて大きく上昇している。このため、名目の資本係数が上昇しているということが確認できたものであります。
また、資本を分母とする利潤率の低下もこれに影響していることとなっているというところであります。
このキャピタルの上昇と利潤率の低下に関して、キャピタルの上昇は資本を売却すると収益となるものでありまして、潜在的な利潤の上昇と考えられるという御指摘も受けたわけですけれども、これについてはより詳細な分析が必要かと存じますので、今後の課題とさせていただければと存じます。
また、足元の利潤の低下に伴って投資率が推計期間に入った際、大きく低下するといった試算結果になっているのを前回お示ししたところですけれども、これについても委員長より、2023年度の実績見込みを用いて工夫できないかという御指摘がありました。
そこで、2023年度の係数で用いることができるものを確認しているというものであります。
6ページを御覧ください。
こちらは、投資率についてGDPの四半期速報によりまして、2023年度の3四半期分は公表されているというところでありますので、こちらを用いることができるというものであります。
さらに7ページを御覧いただくと、TFP上昇率、あとは資本、労働の寄与につきましても2023年度の3四半期分が利用できるということですので、こちらを用いて2023年度の実績見込みを作成することが可能ということであります。
このようにして、2023年度の実績見込みを作成して投資率、利潤率を推計した結果が次の8ページ、9ページとなります。
8ページの投資率を御覧いただきたいと思います。
点線がこの2023年度の実績見込みを使って推計した結果となっております。若干段差は緩和するということでありますが、大きな変化はないものとなっているところであります。この結果から、委員長と相談いたしまして、2023年度の実績見込みを用いることはせずに、2022年度の年次推計の結果を足元に推計を行うこととしたものであります。
これを踏まえまして、資料1が本専門委員会の最終報告書案となります。こちらは、昨年末に設定の考え方を整理し、1月に年金部会のほうに報告した経過報告に、その後、御検討いただきました経済前提の複数ケースのシナリオ設定と、その結果、導き出されます経済前提の結果を加えて取りまとめているというものであります。したがいまして、報告書の説明に入る前に、シナリオ設定とそのシナリオに基づく結果について資料2を用いて御説明させていただきたいと思います。
このシナリオでありますが、従来、経済前提の複数ケースのシナリオについては長期のヒストリカルなデータを参照しつつ、内閣府の中長期試算やJILPTの労働力需給推計との整合性も踏まえて設定してきたというところであります。今回の設定に当たりましては、状況の変化といたしまして、経済財政諮問会議におきまして内閣府より初めて2060年度までの長期推計が示されたということがあります。したがいまして、この長期推計とも整合性を取る必要が生じたということであります。
そこで、まずこの諮問会議で示された長期推計について御紹介させていただきたいと思います。
恐縮ですが、参考資料1を御覧いただきたいと思います。
こちらが2月29日の諮問会議において示された資料となっておりまして、マクロ経済の姿についての2060年までの推計が行われているというものであります。表紙にこの資料の位置づけが記載されております。
1つ目のポツで、少子高齢化や人口減少を克服するために、将来の経済・財政・社会保障に関する定量的な展望を踏まえることが重要とされておりまして、2つ目のポツで本資料はまず経済の姿について考え方を整理するものとされているものであります。
おめくりいただきまして、1ページを御覧ください。
将来の人口の変化、特に現役世代人口の減少率を確認しているというものであります。これを踏まえまして下段に示しているところですが、このような人口変化を克服して持続的な成長を実現するためには赤枠の部分の【生産性の向上】、それからその隣の【労働参加の拡大】、さらにその隣の【出生率の上昇】、これが鍵になるとされているものであります。
したがいまして、そこに続く2ページ以降ですけれども、2ページは「生産性の向上」について確認した資料、さらに3ページは「労働参加の拡大」、4ページは「出生率の上昇」についての資料が示されているというところでして、5ページに2060年までの経済の姿についての試算が示されているというものであります。
5ページについては、3つのシナリオが設定されております。それぞれ足元10年ほどの内閣府の中長期試算のベースラインケース、参考ケース、成長実現ケースを延伸したものとされているところであります。中長期試算のそれぞれのケースと同様の前提が設定されているというものです。
前提を確認いたしますと、①のベースラインケースの延伸したものにつきましては、TFP上昇率は直近の景気循環の平均であります0.5%、労働参加は労働力需給推計の真ん中のケースに相当するもの、出生率は1.36で将来推計人口の中位推計に相当するというものになっております。ベースラインという名前のとおり、足元の現状の経済が続いた場合の試算となっているというものであります。
右側のケースについては、より生産性が向上して労働参加が進展し、さらに出生率も上昇するケースとして設定されているというものであります。生産性につきましては、TFP上昇率ですけれども、真ん中が過去40年平均の1.1%、右側のケースはデフレに入る前の平均で1.4%まで向上すると仮定されているというものであります。
労働参加は5歳若返ると仮定されておりますが、こちらは労働力需給推計の労働参加進展シナリオ、一番高いケースに相当する水準となっているものであります。
さらに、出生率も高位推計は1.8まで上昇すると仮定されているというものであります。
この仮定で潜在成長率を推計いたしますと、現状の経済が続く①ですと実質経済成長率はゼロ%やマイナスまで落ち込むことになりますが、②や③のケースでは実質1%以上の成長を確保できるとされているものであります。
この諮問会議の議事要旨の確認をいたしましても、5ページの説明におきましては事務方から生産性の向上、生涯活躍、出生率の上昇が実現できなければマイナスの成長になるおそれがあるが、それを防ぎ、右側のケースへシフトしていくことが重要と説明されているというものであります。
また、大臣からも、次の諮問会議で内閣府から論点の材料となる長期推計をお示ししたいという発言がありまして、または経済の活性化と経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するためにどのような施策、方針が必要か、ぜひ諮問会議で御議論いただいて骨太の方針に反映させていきたいとの発言があったというところであります。
さらに岸田総理からもその旨の指示があって、それを踏まえて4月2日の諮問会議に提出された資料が参考資料の2ということになりますので、こちらを御覧いただきたいと思います。
まず表紙を御確認ください。こちらも資料に位置づけが記載されております。
2つ目のポツで、昨年新しい将来推計人口が公表され、年金については今後財政検証が予定されている中で、医療・介護等の社会保障や財政の姿についても経済と一体に長期の姿を展望する必要と記載されておりまして、マクロ経済の試算に加えて財政や社会保障の姿を2060年度までに試算したものと整理されております。今回、社会保障につきまして年金は対象になっていませんが、医療・介護の推計が示されたものとなっております。
なお、マクロ経済の試算につきましては2月の諮問会議と同じ結果が示されておりまして、財政と社会保障について新たな試算結果が示されたものとなっております。
おめくりいただきまして、4ページを御確認いただきたいと思います。
参考資料1と同様の経済の姿の長期推計となっております。2月と同じ結果でありますが、3つのシナリオについて名称がついているというところが変更点となっております。それぞれ「現状投影シナリオ」「長期安定シナリオ」「成長実現シナリオ」となっておりまして、シナリオの意味が明確化されているというところであります。
さらにおめくりいただきまして、5ページは「経済の姿」について、より詳しい結果が示されております。現状の経済が続く現状投影シナリオでは、2060年の1人当たりGDPは先進国中最低レベルになると見通されておりますが、一方、生産性向上や労働参加の拡大、出生率上昇が実現する長期安定シナリオではドイツと同程度、さらに成長実現シナリオではアメリカや北欧と同じ程度になるとされているところであります。
なお、小さい字で恐縮ですけれども、一番下の備考欄に消費者物価上昇率の想定についても記載されております。現状投影が0.8%で、長期安定と成長実現シナリオが2.0%となっております。
続く6から9ページで、「社会保障(医療・介護)の姿」と財政を関連させて試算が示されているというところであります。この中では、医療の高度化の伸びについて焦点が当てられております。医療の高度化の伸びについては、これまでと同じ伸びですと年1%の伸びということですが、それが加速化して2%になった場合、さらに改革によって高度化の伸びを抑えられた場合について試算しているというところであります。
次に、8ページを御覧ください。
こちらは医療・介護の給付費のGDP比を推計しているというところですが、現状投影ではこのGDP比が3つのケースのいずれでも増加していくが、長期安定ケースになりますと改革を実行する。つまり、医療の高度化の伸びを抑えると横ばいになるというふうに見込まれているものであります。
さらに次の9ページを見ていただきますと、その際の財政の姿について試算結果が示されております。現状投影では上段のPBのGDP比はずっとマイナスが続き、さらに公債残高のGDP比も上昇が続いていくという結果となっておりますが、改革効果、すなわち医療の高度化の伸びを抑えることができれば、真ん中の長期安定シナリオの下でもPBの黒字化が維持されて、公債残高のGDP比も安定的な低下につながるとされているものであります。
続いて10ページは金利変動のインパクトを示しておりまして、11ページに長期的な展望についてのまとめが示されているところであります。
上の経済のところ、2つ目のポツを御覧いただきますと、財政や社会保障の長期安定性を確保するために実質1%以上に成長率を引き上げていくことが必要とされております。
同様のことが社会保障の2つ目のポツや、財政の最後のポツでも記載されているというところで、一番下を見ていただきますと、上記の改革効果を実現し、実質1%超の成長の下でPBの黒字化の維持、公債残高GDP比の安定的な低下につながるというふうにまとめられているところであります。
このように、経済財政諮問会議におきまして初めて2060年までの経済・財政・社会保障に関する長期推計が示されまして、この長期推計で示された3つのシナリオに基づいて財政や社会保障の議論が展開されているというところであります。4月は医療・介護の議論でありまして、年金については財政検証が予定されているということで対象となっておりませんでした。
ただ、こういった諮問会議の状況を踏まえますと、年金の財政検証に用いる経済前提においても、この諮問会議で示されました長期推計との整合性を図っていく必要があるというところであります。
このような状況を踏まえまして、今回のシナリオ設定に当たっては従来と同様に長期のヒストリカルなデータを参照するということ、足元については内閣府の中長期試算、さらにJILPTの労働力需給推計の整合性を踏まえるということに加えまして、この諮問会議に提出されました2060年までの長期推計との整合性も踏まえて設定することとしているということであります。
続いて、資料2を御覧ください。
この長期推計を踏まえて設定したシナリオ案が、ページを飛んで恐縮ですけれども67ページ以降にまとめております。
68ページを御覧ください。
こちらが今回のシナリオ設定のイメージというものになります。基本的な考え方といたしましてはこちらにお示ししているとおり、諮問会議で示された長期推計の3つのシナリオに相当するケースを3つ設定する。上から①の成長実現ケース、②の長期安定ケース、③の現状投影ケースということになります。
さらに、それに加えて年金独自の視点として最悪のケースも見据えていく必要があるといった観点から、労働力需給推計の1人当たりゼロ成長、労働参加現状シナリオに相当するケースを加えた4ケースを設定しているというところであります。
次のページ以降にシナリオ設定の考え方がついておりますので、69ページを御覧ください。
まず「基本的な考え方」となりますが、先ほど申しましたように長期推計の3つのケースに加えて最も低い成長を仮定するケースとして労働力需給推計の一番低いケースを加えて4ケースを設定することとしております。この結果、前回6ケースから4ケースに簡素化されることとなります。
さらに、シナリオの意味を分かりやすくする工夫といたしまして、前回はケースに名称がついておりませんでしたが、成長率の高いケースから順に「成長実現ケース」「長期安定ケース」「現状投影ケース」「1人当たりゼロ成長ケース」という名称をつけることといたしました。これによりまして、シナリオの意味が明確化されたと考えております。
また、今回4ケースに簡素化されることになりましたが、TFP上昇率については前回より幅広く設定し、前回より幅広い経済の姿を想定するものとなっております。
次の2.のところを御覧いただきますと、TFP上昇率の具体的な設定について行うことになっております。
まず長期推計の3ケースに相当するケースは、長期推計の前提により設定いたします。したがって、成長実現がデフレ状況に入る前の平均で1.4%、長期安定ケースが過去40年平均で1.1%、現状投影ケースが直近の景気循環の平均より0.5%となります。いずれもヒストリカルなデータの平均から設定したものとなっております。
また、下2つのケースについては直近30年の実績の分布も踏まえ、保守的に設定することとしております。
現状投影ケースの0.5%というのは80パーセンタイル値、上から80%の実績をカバーするようなものとなっておりますし、ゼロ成長ケースは最小値の0.2%で設定しているというものであります。
続いて、70ページを御覧ください。
GPIFの実質運用利回りの実績の設定についてとなります。こちらは時価の変動をならすという観点から10年移動平均の分布より設定いたします。これは5年前と同様ですが、保守的に設定するという観点から、全てのケースは70パーセンタイル値以下で設定することとしております。
また、下2つの「現状投影ケース」と「1人当たりゼロ成長ケース」につきましては、シナリオの意味の明確化ということから、TFP上昇率と同じパーセンタイル値で設定することとしております。具体的には、成長実現ケースと長期安定ケースが70パーセンタイル値の3.1%、現状投影は80パーセンタイル値の2.6%で、ゼロ成長ケースは最小値の1.8%となります。
続いて消費者物価指数の上昇率につきましては、こちらも長期推計との整合性から成長実現と長期安定は2%、現状投影は0.8%と設定します。さらに「1人当たりゼロ成長ケース」については、前回と同様に直近30年平均より0.4%と設定しております。
71ページを御覧ください。
足元の長期試算との接続ですが、上3つのケースは長期推計と同様に接続いたしまして、ゼロ成長ケースはベースラインケースに接続するということであります。
最後の労働力需給推計についても、長期推計や労働力需給推計との整合性を踏まえて設定しているというものであります。
次の72ページは、このように設定したシナリオの一覧をまとめておりますので御確認いただければと存じます。
続く73、74ページは、5年前のシナリオとの比較となっております。
続いて、75ページ以降に今このように設定したシナリオを基に「マクロ経済に関する試算」の結果をお示ししております。
ページはちょっと飛びまして、78ページを御覧いただきたいと思います。
右の四角囲みの中を見ていただきますと、実質成長率は成長実現ケースで1.6%、また長期安定ケースで1.1%、さらに79ページになりますけれども、現状投影ケースはマイナス0.1%となっております。こちらの計算結果は、経済財政諮問会議で内閣府から示された長期推計とおおむね同じ水準となっております。若干数値は異なっておりますが、これは平均を取っている期間が異なっているということ、さらに成長実現や長期安定については人口の前提が異なっているためと考えているものであります。
また、79ページの一番下の「1人当たりゼロ成長ケース」では1人当たり0.1%成長となっておりまして、名称どおり1人当たりおおむねゼロ成長という結果となっております。
なお、現状投影ケースと1人当たりゼロ成長ケースではマクロの成長率はマイナスとなっているところでありますが、こちらは人口減少の影響ということでありまして、1人当たりで見るとプラスとなっているというところであります。つまり将来決して貧しくなっていることを想定しているわけではないというところであります。
続いて80ページから83ページは総投資率、利潤率、資本係数の推計結果をお示ししております。
続く84、85ページはマクロ経済の係数表となりまして、86ページ以降にこの結果、設定される経済前提をお示ししているというところであります。
87ページを御覧ください。
こちらが、長期の経済前提の結果となるところであります。真ん中辺り、年金財政上重要な実質賃金と実質的な運用利回りを確認いただきますと、まず実質賃金上昇率は上のケースから2.0%、1.5%、0.5%、0.1%となっておりまして、幅の広い設定となっているところであります。
次に、その横の実質運用利回り、こちらは3.4%から1.4%の設定となっておりまして、こちらも幅広く設定されていると考えております。
対賃金のスプレッド、実質的な運用利回りということになりますが、こちらは先ほど見ました実質運用利回りと実質賃金上昇率の差から計算されるということになりまして、結果として1.4%、1.7%、1.7%、1.3%の設定となっているというものであります。
この結果、GPIFに与える運用目標につきましては、経済前提の設定後に資金運用部会等で御議論いただき、決定されるということになります。もし仮にということですけれども、前回と同じ方法で決定するということになりますと、前回と同じ1.7%ということになります。いずれにせよ、こちらは今後の御議論ということになります。
続いて、88ページを御覧ください。
こちらは、前回の設定との比較となります。今回4ケースに簡素化したということから、前回と対応するケースが必ずしも設定されているというものではありません。こちらについては、上半分と下半分に分けて今回と前回を比較しております。
上半分の「成長実現、長期安定ケース」を見ていただきますと、前回のケースⅠ~Ⅲとの比較ということになります。上から全要素生産性(TFP)上昇率、物価上昇率、実質賃金上昇率を見ますと、上半分のケースは前回より高めの設定となっておりますが、下半分については、逆に下方修正となっております。前回より幅広く設定しておりますので、上半分は上方修正ですけれども、下半分は下方修正になっているというところであります。
次に、運用利回りについて見ますと、実質運用利回りのほうは上方修正となっておりますが、こちらは実績が上方にシフトしている結果と考えております。
また、対賃金のスプレッドにつきまして、下2つのケースにつきましては実質賃金が下方修正された影響もあり上方修正となっているところであります。
続く89ページを御覧ください。
こちらは、足元の設定となっております。物価上昇率、実質賃金上昇率は中長期試算に準拠して設定されているというところであります。運用利回りについては、GPIFの実績から実質運用利回りを設定しまして、2033年度まで一定の値で設定しているというものであります。
したがいまして、実質的な運用利回り、対賃金の運用利回りにつきましては変化しておりますが、こちらは賃金の変化に伴い変化しているというものであります。
続いて、90ページから93ページは足元と長期の接続を確認したものであります。それぞれ物価上昇率、実質賃金上昇率、実質運用利回り、実質的な運用利回りとなりますが、5年前の設定と比較しまして、特に運用利回りについての接続はかなりよくなっていると存じます。
以上、今回の見直し案に基づく経済前提の設定の特徴を説明申し上げますと、まず4ケースに簡素化したということ、さらに名称をつけたということによりましてシナリオ設定の意味が分かりやすく、かつ明確化されたと考えております。
一方、4ケースに簡素化しましたが、前回より幅広い経済の姿を想定するというものになっております。このため、5年前にも前提が甘いのではないかというような批判を受けましたTFP上昇率とか実質賃金上昇率は、上2つのケースは前回より高めですけれども、下2つのケースは低めに設定されているということであります。
また、今回の設定は長期安定と現状投影の間が離れておりますが、今後の制度改正の議論に当たっては4つのケースを見ていくのですけれども、特にこの真ん中の2つのケース、中庸的なものとなります長期安定ケースと現状投影ケースを中心に、幅を持って見ていくということをしていきたいと考えております。
5年前も、ケースⅢとⅤで幅を持って示すということをしておりましたが、ケースⅢを中心に見ていくことも多かったというところですが、今回は前回以上に幅を持って確認していくということをしていきたいと考えております。
このように幅を持って見ていくということは、これまでの専門委員会の議論にも沿ったものになると考えておりますし、また、諮問会議の議論でも、現状の経済が続くと現状投影の姿になるが、生産性向上などが実現すると長期安定や成長実現のようになるというふうに、ある意味、幅を持って将来を考えておりますので、こういった経済財政諮問会議の議論にも沿うものと考えているというところであります。
続いて、資料1を御覧ください。
こちらが、本専門委員会の最終報告書の案ということになります。簡潔にではありますが、私のほうから全体を御説明させていただきたいと思います。
おめくりいただきまして、1の「報告の趣旨」につきまして、こちらは5年に一度の財政検証に用いる経済前提について、専門委員会の検討結果を取りまとめて報告する旨を記載しているというものであります。
続く2の「財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」につきましては、経済前提の基本的な考え方をまとめておりますが、昨年末に取りまとめた経過報告と同様の記載となっているものであります。
(1)は財政検証の枠組みで、平成16年改正において導入された財政フレームについて説明しております。
(2)は、財政検証は社会経済の動向を踏まえまして、最新のデータを用いて5年ごとに見直すものであることを記載しております。
(3)におきましては、財政検証は予測ではなく投影であるという性格に留意が必要であることをお示ししまして、そのため財政検証の将来の見通しは一定のシナリオに基づく長期の平均的な姿を描いたものと解釈すべきであること、さらに経済前提は複数のケースを幅広く設定すべきであること、結果についても幅広く解釈すべきであること、また100年にわたる推計であることを踏まえ、経済前提は足元の一時的な変動にとらわれず設定すべきであることを記載しているものであります。
続いて、(4)は国民に分かりやすく伝えるという視点の重要性について述べているところであります。設定方法はできるだけシンプルにし、シナリオの意味を分かりやすく伝える工夫をすべきであるとしております。
(5)につきましては、以上のような性質を踏まえますと、将来見通しの積立金や経済前提の運用利回りにつきまして、短期的な時価の変動を平滑化したものと整理することが適当であるということを記載しております。そのため、財政検証に用いる足元の積立金についても平滑化したものを使うということが適当であるとしております。
続いて、3.の「これまでの財政検証の経済前提」につきましてですが、こちらは財政検証でこれまで設定してきた経済前提について、一定の評価と今回の設定に当たっての視点を記載しております。こちらも、昨年末の経過報告と同様の記載となっております。
(1)は、公的年金の財政において重要な経済要素は実質賃金上昇率と賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りであることを記載しております。
(2)は、長期の実績と経済財政検証の前提を比較いたしまして、実質賃金上昇率については実績が前提を下回ったものの、実質的な運用利回りについては逆に上回っていること、また、実質賃金上昇率の設定の基礎となる全要素生産性上昇率や労働生産性上昇率はおおむね前提の範囲内に位置しているものの、低めに位置しているということを記載しているところであります。
(3)は、その要因について記載しております。財政検証では、労働生産性向上に伴い実質賃金も上昇するという仮定を置いておりましたが、労働生産性が向上する中で実質賃金は横ばいで推移したことが要因であったということ、実質的な運用利回りについては実質賃金が低迷したことが逆に働き、実績が前提を上回る要因となったこと、また、国内の法人企業において人件費が横ばいで推移する中、利潤率、純資産が増加したことも運用利回りが上ぶれする一因だったということを記載しているというものであります。
続いて、(4)は今回の実質賃金上昇率の設定に当たっての視点を記載しているというものであります。先進諸国の実質賃金の伸びについて要因分解を行ったところ、多くの先進諸国では労働生産性向上が大きく寄与し、労働生産性の向上に伴い実質賃金も上昇しているということ。
また、「注」に記載しておりますが、女性や高齢者の就業率が高まる中で労働力不足が続くと見込まれることを踏まえますと、日本においても状況が変わる転換点にある可能性を視野に入れる必要があることに留意が必要というふうにしております。
一方、全要素生産性上昇率や労働生産性上昇率についても、実績は前提の範囲内に入っていたものも低めに位置していることにも留意が必要というふうにされているところであります。
続いて、(5)につきましては実質的な運用利回りの設定に当たっての視点を記載しております。市場運用を行っている諸外国の年金基金の長期の運用実績を専門委員会で調べたところであります。これを調べたところ、財政検証の前提を上回っていることが確認できました。
また、将来、日本の実質賃金が上昇に転じるとマイナスの影響があるというところでありますが、実質賃金の上昇が見られました先進諸国の年金基金においても財政検証の前提を上回っていることが確認できました。さらに、GPIFは海外の年金基金と同様に長期分散投資によりグローバルな運用を行っていることも考慮する必要があるというふうに記載しております。
続いて、4.の「長期の経済前提に用いる経済モデルの建て方」ですが、4は経済モデルの建て方についての記載、さらに次の5にいきますと「長期の実質賃金上昇率及び実質運用利回りの設定」の記載になります。こちらも年末の経過報告と同様の記載となりますが、若干書き方を整理したというところであります。
(1)と(2)につきましては、基本的にこれまで用いられてきたモデルを用いるということ、ただし、改善が考えられる点については改善していくことを記載しております。
続いて、(3)につきましては1つ目の改善点を記載しておりまして、総投資率の設定につきまして本専門委員会で御議論いただいたとおり、利潤率との回帰式を用いて設定する方法に見直すことを記載しております。
(4)がもう一つの改善点といたしまして、利潤率の算定式を利潤率の定義に沿うよう見直すことについての記載となります。
続いて、(5)(6)はモデルに投入するパラメーターについての記載となります。投影という性格を踏まえて長期のヒストリカルなデータに基づいて設定することが適当であるということと、あとはコロナ感染症下のデータも排除せずに使用することとすることを記載しているというものであります。
続いて、5.が長期の実質賃金上昇率と実質運用利回りの設定ということになります。
(1)(2)は、労働生産性上昇率を基礎に実質賃金上昇率を設定することを記載しております。
また、その際、実質賃金上昇率と労働生産性上昇率の差についてはその要因を分析したところ、デフレーターの差のうち作成方法の違いによるところは多くの年で実質賃金上昇率にマイナスの影響を与え続けているということから今後も続くというふうに想定して、前回同様に考慮することが適当と記載しております。
続いて、(3)につきましては実質運用利回りの設定についての記載となるところであります。GPIFの運用実績に利潤率の変化率を乗じて設定することを記載しているというところであります。
また、前回、ケース6につきましてはイールドカーブから算出したフォワードレートを用いていたというところでありますが、まずフォワードレートの動きが非常に不安定であるということ、またはGPIFのポートフォリオの中で国内債券の割合が25%まで低下しているということから、今回全てのケースで実績を活用する方法を用いることが適当と記載しております。
続いて、6.の「経済モデルにおけるシナリオの設定等」ですけれども、この部分が新たに加わったところということになります。シナリオ設定についての記載となりまして、先ほど参考資料で御説明した内容を記載しているというところであります。
(1)はシナリオ設定の基本的な考え方になりまして、諮問会議で示された3つのケースに最も低いケースを加えて4ケースを設定しているというところであります。この結果、前回の6ケースから4ケースに簡素化されました。
また、「成長実現ケース」「長期安定ケース」「現状投影ケース」「1人当たりゼロ成長ケース」と名称をつけまして、シナリオの意味の明確化も図ったということを記載しております。さらに、4ケースに簡素化されましたが、前回より幅広い経済の姿を想定していることも記載しております。
(2)につきましてはTFP上昇率の設定でして、長期推計のほか、直近30年の分布も踏まえて設定しているということを記載しています。
(3)がGPIFの運用実績の活用方法でして、時価の変動があることから10年移動平均の分布を活用すること、また、保守的に設定すること、さらにはシナリオの意味の明確化からTFP上昇率の設定と整合性を図ることが記載されているというものであります。
(4)が労働投入量の設定ですし、(5)は資本分配率、資本減耗率、(6)は物価上昇率の設定について、それぞれ記載しているというところであります。先ほど、資料2で説明したものを記載しております。
続いて、7.の「足下の経済前提の設定」についてです。こちらも、経過報告と同様の記載となります。
(1)は、物価上昇率と賃金上昇率については内閣府の中長期試算に準拠することとしております。
一方、運用利回りにつきましては、前回は内閣府の中長期試算の金利を基礎に設定することとしておりましたが、足元と長期の設定方法が異なるため接続が悪くなっていること、さらにGPIFのポートフォリオにおいて金利と相関の高い国内債券の割合が25%まで低下しているといったことを踏まえまして、足元についても長期と同様にGPIFの実績を基礎に設定する方法に変更するとしております。
8.が「経済変動を仮定するケースの設定等」ということになりまして、こちらも経過報告と同様の記載となります。
(1)は、経済変動を仮定するケースについて前回と同様に設定するということを記載しております。
(2)は、国際人口移動の前提につきまして、外国人の入国超過の前提の違いが経済前提に与える影響が限定的であるということを確認いたしまして、国際人口移動の前提の違いを踏まえた財政試算を行う場合も経済前提は同じものを用いるということを記載しております。
続いて、13ページ、14ページがこの結果、設定される経済前提をお示ししているというところでして、15ページ、16ページはそれぞれ委員名簿と開催状況を付しております。
長くなりましたが、私からの説明は以上であります。
○深尾委員長
ありがとうございました。
事務局より作成いただいた最終報告書の内容や経済前提につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いします。いかがでしょうか。
私のほうから、細かいことですけれども、資料1の6ページに経済成長率の式がありまして、ここに労働の成長率という言葉が使われてありますけれども、普通GDPとかは成長率という言葉を使いますが、労働とかは成長率というよりは経済学では労働投入の増加率とか、そういった表現をしたほうがいいかと思います。ここはちょっと検討していただいて、できれば変えたらどうかと思います。
○佐藤数理課長
そちらは、委員の皆様や委員長と御相談して検討したいと思います。
○深尾委員長
ほかによろしいですか。
小枝委員、どうぞ。
○小枝委員
御説明いただき、ありがとうございました。
御提示いただいた案について、妥当な案だと思っておりますので、私は特に修正のお願いはございません。前回に比べて、試算の方法についても改善が見られますし、いろいろな幅広いシナリオを考えられているということでよいのではないかと思いました。
1つ、コメントを申し上げたいと思います。内閣府の中長期試算については、成長実現シナリオは前回より楽観的なシナリオと保守的なシナリオ(長期安定)が提示されたと理解しています。これは今後の経済成長の見通しについて、以前より意見が分かれているということなのかもしれません。(通信切断)
一方でベースラインシナリオについては、シナリオが加わっていないように見受けられます。特に、内閣府の今回の長期推計を見ると、ゼロ成長のケースは考えられていないので、前提においては、保守的に1人当たりゼロ成長ケースということも丁寧に試算していただいて提示していただきたいと考えます。
以上でございます。
○深尾委員長
すみません。声がちょっとよく聞き取れなかったところがあるのですけれども、要点だけ短めにもう一回話していただけますか。
○小枝委員
申し訳ございません。ちょっとネットの関係でよくないのでしょうか。
要点としては、コメントで1人当たりゼロ成長ケースというのは内閣府では提示していないシナリオだと思います。
ただ、今よりもよくなる、今よりも悪くなるというシナリオも必要だと思うので、今よりも悪くなるというシナリオに関しては1人当たりゼロ成長ケースしかないと思うので、その辺もやはり年金の前提としては丁寧にやっていただきたいと考えます。
以上でございます。
○深尾委員長
1人当たりゼロ成長ケースについても丁寧に説明するということですね。分かりました。
どうぞ。
○権丈委員
これは感想になるのですけれども、資料2の87ページを御覧ください。
経済前提についていろいろと書いているわけですけれども、どこにも名目運用利回りというのはないんですね。長く生きているといろいろ記憶しているわけですけれども、5年前もこの会議の翌日には某日経新聞のほうから、名目運用利回りというものをわざわざここの物価上昇率と賃金上昇率とスプレッドを足し合わせて出してきて、そこに対して日本総研の研究員、西沢氏は「長期にわたって3、4%の利回りの達成を続けるのは難しい」という話で、いつもながらの流れになっていくわけですね。
その翌週の年金部会で当時の数理課長が、「この点につきましては当方の広報努力不足などもあると思いますけれども、時折、名目値により取り上げられる記述が散見されますので、修正されていくようにさらに努力を続けてまいりたいと存じます」という発言があり、それを受けた私は、広報の努力不足などもあると言うけれども、そうなのかと。もう長年、スプレッドで見なければいけないということを言ってきたわけなのだから、そういう文法も知らない記事を書く記者は徹底的にちゃんと修正してくれというような話をしていたわけなんです。けれども、5年たっても同じことが起こっていますのでよろしく、広報不足にならないようにしっかりとこれから先、年金が、私自身はもっと低い50%を切ればいいのにというようなことを2009年から言っていて、そのほうが改革のインセンティブが高まるというようなことを会議の中で言っていたわけですけれども、ただ、客観的に見ていくと、この数字になっていくのかなというのがあります。
そこで、年金への不当な不安というものが世の中に広まっていくということ、これこそが本当に経済成長の、成長戦略の足を引っ張るというのが私のベースにありますので、正確な姿が世の中に伝わるように広報をしっかりとやっていただければと思います。
以上です。
○佐藤数理課長
名目運用利回りのお話につきましては、まさに先生がおっしゃったとおり、我々としては年金財政上、重要なのは実質的な運用利回り、すなわち賃金を上回る運用利回りということで、ずっとそういうふうに御説明してきておりますし、今後も誤解のないように説明していきたいと思います。
この名目での比較は、年金財政上でははっきり言って意味のない比較ということになりまして、この意味のない比較をされて、それが国民に伝わっていったということは大変残念に我々も思っているということであります。今後も、さらに広報については努力していきたいと考えているところであります。
○深尾委員長
ほかには、いかがでしょうか。
○玉木委員
私も、広報に関連したコメントをしたいと思います。
というのは、物価に関してなのですけれども、最近、物価が上がってきまして、あとは給付の物価スライドが実際に起きて二・何%、今年度も上がるというようなことになってございまして、国民の物価、あるいは年金と物価に対する関心が高まっているのだろうと思います。
先ほどの87ページのモデルを見ても物価上昇率が出ておりますけれども、これはモデルから出てきたものではなくて、ぽんと後から乗せたものということでございますので、国民への御説明におかれては、この物価というのはそうやって置いたものなのだということ、それからこれは一番上が2.0になっていますが、これが2.2でも1.8でも物価スライドという点は変わらないわけでありますので、高齢者の生活水準は基本的に変わりません。
あるいは、現実のものが短期的にもっと高くなったりしても、一定のラグを置くことはあっても、年金給付の実質水準は基本的に維持されるのだといったところは、かなり久しぶりにインフレーションといったものが国民の生活の中に入り込んできてございますので、この点は賦課方式の本質を表すものという点も含めて十分な御説明をいただければと思います。
もう一つ、上から2つ目と3つ目のケースですね。これが、全要素生産性で0.6%と広く空いているわけでございますけれども、この点についてはこの0.6%の幅のどの辺にいくのか、上のほうにいくか、下のほうにいくかというのは、まさにこれからの国民の行動次第であり、これが将来の年金の姿に響いてくるのだ、反映されてくるのだといったメカニズムについても、国民の御理解を賜れるよう、広報に御努力をいただきたいと思います。
その際、使えるなと思われる計表、あるいは情報として、この会合でもワニの口と言っていた、日本だけが実質賃金が上がらないままであって、他方で生産性上昇率は他の先進国と大差ないという状態が続いていることを示すものがあります。これはなぜそうなったかということについてはまだ決着はついていないわけですけれども、こういう現象があって、もしかすると収れんするかもしれないという可能性があることは、言ってもいいのかなと思うところです。
あとは、先ほど運用利回りにつきまして議論が出ましたけれども、これから賃金が上がっていく状態において実質的な運用利回り、対賃金スプレッドはどうなるかというのは非常に興味あるところではあるのですが、過去数十年間の外国の似たような目的で運用しているところにおいては、外国の賃金に対するスプレッドがそこそこ取れていたというのが何回か前のこの会合でも示されてきたところでございまして、いわゆるワニの口と、それから今、申し上げた対賃金スプレッドの過去の他国の状況というのは、前回のこの経済前提のときはなかった情報だと思いますので、今回の経済前提の議論の成果の一つとして、国民の理解を賜るためのツールとして大変使い出のあるものではないかと私は思っております。せっかく開発されたツールでございますので、皆さんもぜひ活用されて広報に努めていただきたいと思うところでございます。
以上です。
○深尾委員長
よろしいですか。
德島委員、先ほど手を挙げられましたか。
○德島委員
御説明ありがとうございました。私のほうから、2点ほど申し上げておきたいと思います。
ほかの皆さんから言われていることとも若干重なる部分はあるのですが、まず1点目です。今回4つのケース分けについては、私も適切かと思っていますが、長期安定シナリオという、もともと内閣府の中長期試算の中ですと、出生率が1.64程度と出生高位のものを反映しています。したがって、長期安定という名称ではありながら、かなり意欲的な設定になっていることを国民向けにしっかりアピールしていただけたらと思います。
基本的には、普通にやっていれば現状投影になりがちなところを、いろいろな努力をしてやっと長期安定に達することができ、さらに頑張らないと成長実現はやはり難しいと思います。そういった各々のケースの意味合いを丁寧に御説明いただけたらと思います。
それから今、玉木委員からも指摘のありましたスプレッドですが、運用の世界の人間から見ると、運用成果は名目で表示されるものです。したがって、公的年金の前提としてはスプレッドであることを口を酸っぱくして言っていただくと同時に、GPIFの運用実績のディスクロージャーなどでも業務報告書とかではスプレッドが全部過去のものも含めて開示されていらっしゃいます。四半期の運用成果の開示で行う必要はないと思っていますが、年度の開示のときに名目上の運用成果とともに、スプレッドの結果について割ともう少し大きく説明すべきかと思っています。運用の世界では名目しか見ていないのが通例ですので、その辺りの工夫も必要かと思います。
以上です。
○深尾委員長
ほかには、いかがですか。
どうぞ。
○藤澤委員
藤澤です。説明ありがとうございました。
専門委員会でも過去に申し上げていましたが、国民に分かりやすく伝えるという視点が大事だという観点で、検討作業班でもシナリオに名前をつけるとか、パーセンタイルをそろえるとか、その辺りをコメントさせていただいていました。最終的なシナリオでも反映いただき感謝してございます。そういう意味で、資料1について特段異論はございません。
1人当たりゼロ成長ケースの0.2%についても、TFP成長率が過去30年のうちの最小の値を使っており、それがずっと続くという前提ですので、ある意味ダウンサイドのシナリオというか、ストレスシナリオだと思ってございます。こういった姿を国民にお示しして、その中で財政の健全性を伝えていくことも大事だと思ってございます。
最後に、説明の際にも強調されていましたし、かつ内閣府の資料の中にも書いてございますが、幅を持って理解するというところがやはり大事だと考えてございます。この幅を持って理解するというところを国民に丁寧に説明していく必要があると考えてございます。
以上です。
○深尾委員長
ほかにはよろしいですか。
土居委員、どうぞ。
○土居委員
遅れて参りまして申し訳ございませんでした。
今日の資料に関してコメントさせていただきたいと思います。
基本的に事務局の案について私は賛成で、これでよいと思います。それと、今回の財政検証では4つのケースとするということにしたということが内閣府の長期試算に裏打ちされながら、それを援用して4つのケースにすることにしたという点で説得的だと思いますし、さらにはこれがこれまでこの専門委員会で検証してきた過去の潜在成長率ないしはTFP上昇率の統計の示唆を踏まえているということも重ね合わせますと、極めて理にかなっていると思います。
ほかの委員の方もおっしゃったように、この4つのケースであるということを国民に分かりやすく説明していただくということが、これからますます大事になってくるということなのだろうと思います。
特に、前回の財政検証では6つのケースだった。だけど、今回は4つのケースだ。なぜならばということで、その資料で御説明のあったことをしっかりと国民にもお伝えいただくということでもって、単にケースを間引きしたわけではなくて根拠ある形で示しているということを理解していただけるものなのではないかと思います。
もう一つは、資料3でGDPに占める生産・輸入品に課される税マイナス補助金の割合が変化した場合の影響ということで、事務局で試算をしていただいております。これを試算していただきましてありがとうございました。
資料2の37ページに今回のマクロ経済に関する推計の枠組みが説明されていて、まさにそこの利潤率のところにまず生産・輸入品に課される税マイナス補助金というものが登場する。これは深尾委員長も御指摘されていた点であり、これを入れることによって、より論理的にも理にかなったモデルになったというところが今回の一つの進歩だったと思います。
ただ、この生産・輸入品に課される税というのは消費税が含まれているというものなので、今後消費税率が変わったときにそこに影響を与え得るということではあるのだけれども、財政検証のときにいつ消費税が上がるかとか、そんなことを予見できるはずもありませんから、資料3でお示しいただいたように感応度分析と言いましょうか、機械的に1%上昇させた場合に、ではこの財政検証の結果にどれくらいの影響が及ぶのかということを検証していただいて、実質賃金上昇率で言えば0.01%程度しかない。それから、実質運用利回りは絶対値で0.04から0.05ぐらいしかないということが確認できたということですから、いつ消費税率がどうなっても今回の財政検証の結果がそんなに大きく揺さぶられる、大きく結果が変わるというようなことではないということが確認できたということは、非常に重要な影響分析だったと思います。
ですから、これを改めてまた国民の皆さんに御理解いただく上でこの分析結果を御活用いただいて、税率が変わったところで財政検証の結果が大きく変わるわけではないということも併せて示すことができるといいのかなと思います。
そういう意味では、利潤率のグラフが資料2の81ページにありますけれども、そんなにこれが大きく変わるわけではないし、そこから付随する実質賃金上昇率とか実質運用利回りとかもそんなに大きく変わるわけではないということですので、直近の比率をそのまま横置きしているということであったとしても検証結果に大きく影響するものではないということが併せて示されたということでよかったのではないかなと思います。
私からは以上です。
○深尾委員長
ほかにはよろしいですか。
では、どうぞ。
○武田委員
ありがとうございます。
まず、事務局におかれましては、経済財政諮問会議での議論も踏まえて速やかに御対応いただきましたことを感謝いたします。内容といたしましてはこちらでよろしいのではないかと思います。
御説明いただきましたとおり、経済財政諮問会議でも内閣府様が試算された数字との整合性や、シナリオを中立に置いている点、さらには不確実性が非常に高い中で先ほど小枝委員もおっしゃられましたように、1人当たりゼロ成長ケースを置いて保守的にも一応備えをしている点、これらの点に同意いたします。
シナリオの数は確かに減りましたので、減ったところに目がいく可能性もございますが、そこは先ほど土居委員もおっしゃいましたように、幅がございますし、むしろその幅は広がっているわけですので、その点を併せて伝えていくということは必要かと思います。
特にその幅という意味では、TFPの幅が上にも下にも広がっています。5年前からTFPの幅を広げるのはなぜか、さほど大きくはないですが、あえてその幅を広げているという意味は、前半でこの専門委員会でも議論をし、いろいろな有識者の方に御意見を伺ってまいりまして、上下ともに変化が見られる局面であると思います。
例えば人手不足の観点で申し上げれば、前回以上に労働参加がやや頭打ちといいますか、もちろん全く不可能だと述べているわけではなく、促進する余地は政策的にはあると思いますが、現実問題としてはかなり制約がある中で、玉木委員もおっしゃいましたように、企業がどうデジタル化をして生産性向上やTFP向上につなげる動きになっていくかということもあると思います。逆に少子化がさらに進んでしまい、国内への投資に対するマインドがむしろ後退することによるTFPへの影響等も可能性としてはあるなど、不確実な中でその双方向を見ておく必要があるという考えを持つことは大切ではないかと思った次第です。
前回と大きくは変わりませんが、なぜTFPの幅を広げるかという点についての意見です。
最後に、この資料のご説明の際に若干気になった点ですが、何が前回から変えた点なのかというと、基本的な考え方はこれまでと変わっていません。今回、より丁寧に議論した結果、どういった点を変えたのかは説明の中で補足していくのでしょうか。資料では趣旨や、基本的な考え方、これまでの前提と、さらに長期があり、口頭では「今回」とおっしゃってましたが、経済モデルにおけるシナリオの設定の表現は変更点の説明を丁寧にされていくということなのか、もう少しそこを分かりやすく資料に記載していくのか、その点はいかがでしょうか。
○佐藤数理課長
まず設定方法については、シナリオ以外の部分は恐らくあまり大きくは変わったところはないと存じます。変わったところについては総投資率や利潤率の算定方法を記載させていただいているところであります。
あとは、シナリオについて大きく変わったのは6ケースから4ケースに簡素化したというところでありまして、こちらはここにも記載させていただいているというところでして、あとは名称をつけて分かりやすくしました。
その他、説明の中でも詳しく述べて補って説明していきたいと考えているところであります。
○深尾委員長
よろしいですか。
私から2点ですが、1つは先ほど玉木委員から御指摘のあったワニの口の話ですね。経済学者としては非常に驚いた結果で、資料でいうと資料2の27ページです。労働生産性はアメリカほどではないけれども、日本はそれなりにほかの先進国並みには上がっているのに、実質賃金はほとんど上がらなかったという非常に興味深い結果が得られて、この扱いについては資料1の報告書の中の8ページの上段に書いてあることが我々の扱いの考え方だと思うのですけれども、一応確認だけしておきたいのですが、結局、このワニの口の原因というのは分解してみると25ページの一番下の左側にあるように、日本というのは労働生産性が上昇する。青い部分が上昇するのに、いろいろな要因がマイナスに効いてほとんど実質賃金は上がらない。実線で表される実質賃金は上がらなかった。
そうすると、その要因は何でしょうねというと、1つはGDPデフレーターに比べてCPI上昇率のほうが高いので実質賃金が下がってしまうという要因で、これについては後でさらに詳しい分解があるわけですけれども、それから雇い主の社会負担、労働分配率はあまり影響しないわけですが、労働分配というときに雇い主の社会負担も労働分配分に含めて経済学では考える。
それも、限界生産の考え方から労働に対する報酬の一部というふうに考えますので、雇い主の社会負担が大きくなると、その分だけ労働生産性は上がっても実質賃金は上がらないという要因が雇い主の社会負担で、例えば医療保険が上がっていけば雇い主の社会負担というのも上がってくることになるわけですが、したがってマイナスに効く。
それから、自営業者、混合所得の要因というのは、生産性が自営業者とそれ以外で雇われている人で違うこと等による要因だと思います。
それから、税補助金というのは、例えば間接税が、消費税が上がっていけばその分だけ実質賃金は上がらない。
最後に、このGDPデフレーターとCPIの上昇率の差というのは、資料で言うと同じ資料2の57ページにあって、たしか21年までの結果が以前は示されていたと思いますけれども、直近の22年までのデータで、一番右のところに95年から22年までの平均の値が載っていますが、この要因が年率でマイナス0.6%、これが恐らく25ページのオレンジ色の部分と対応しているのだと思いますけれども、それを分解すると、交易条件の悪化のケース部分ではその半分、21年までの場合よりもたしか22年の直近の結果のほうが交易条件の効果が少し大きくなっているんだと思います。ウクライナ戦争とか、そういう要因で大きくなっている。
それで、それ以外の要因、これは指数のつくり方とか、もうちょっと恐らくテクニカルな要因で家計最終消費支出デフレーター、国民経済計算統計の家計最終消費支出デフレーターと消費者物価指数の上昇率の差の分というのが、この残りのオレンジの0.3%ということかと思います。
それで、我々の扱いの確認なのですけれども、資料1の8ページに書いてあることというのは、今の57ページのオレンジの部分、テクニカルな部分については予見としてこれがずっと将来続くと仮定する。それから、ほかの要因、25ページに戻りまして自営業者、混合所得等がマイナスに効く要因、それから雇い主の社会負担が増えていくと実質賃金が上がらないというマイナスに効く要因、それから消費税が上がると実質賃金が増えないというマイナスの要因、これらは今後はゼロと考えて推計をしているという理解でよろしいですか。
○佐藤数理課長
委員長のおっしゃるとおりであります。
毎年の要因を分解して見た資料も御提出したと思いますが、その他の要因というのを今回見るようになって、GDPデフレーターの作成方法の違い以外の部分は結構変動が激しく、将来どうなるかというのはなかなか予見が難しい、プラスにいくか、マイナスにいくかはっきりしないということで、ゼロとさせていただいていると理解しているものであります。
○深尾委員長
分かりました。
あともう一点、確認なのですけれども、今日委員からの御指摘事項で資料3のところで既に説明していただいて、いろいろ事務局とも一緒に考えたのですが、うまくいかないというか、投資率のところ、具体的な結果で言うと資料2の80、81ページです。足元で資本財の価格が上がっているので、資本の収益率が下がって投資がしばらく停滞する。利潤率が下がって投資が停滞するということを、我々のモデルは前提にしていることになります。資本係数もちょっと特異な動きを83ページではしている。
それで、内閣府の場合には前田参事官から御説明を伺って私が完全に理解しているわけではないのですが、こういう利潤率を使って投資を推計するということをされていなくて、資本労働比率の長期的な均衡値に現実の資本労働比率が収束していくようなタイプのモデルを恐らく考えられているので、今のところは内閣府から例えば資本係数の結果、プロジェクションというのは出てきていないと思うのですけれども、そういうものが将来出てくると我々の1人当たりGDPとかの推移は見かけ上かなり近い結果になっていますが、資本蓄積に関するモデルの考え方が違いますので、資本の動き等は違う結果が出てくる危険はあると思います。
だけれども、ここでずっと考えてきて、経済学的には我々の考え方のほうがある意味望ましいというか、正しい考え方と思いますので、私はこれで結構だと思いますが、内閣府で仮に資本係数の予測等が出てくると結果に違いが生じる可能性があるのかなというふうに私は思います。
前田さん、何かありますか。
○前田参事官
補足でございますけれども、恐らく今、深尾座長が触れていただいたのは、今回の長期推計においては、中長期試算の期間は中長期試算に置いておりまして、その後、延伸したということで御説明してございます。その延伸の仕組みの部分について触れていただいたかと思っています。
それで、中長期試算に関しまして、つまり2033年までの推計に関しましてはホームページ上で方程式を公開してございますけれども、そんなに大きな変化ではないのですが、超長期的な期待成長率のパスに対しまして最適な資本ストックというのが設定される形で、そこに調整していく仮定を置くようなモデルになっています。
その関係でいきますと、成長実現係数など、成長が進むケースに関しましてはそれに向かって投資が進んでいくということでございまして、今回配っていただいたもので超長期試算のものはないのですけれども、長期試算の推計、例えば資料2の10ページにございますが、「長期安定シナリオ」「成長実現シナリオ」の黄色い部分は資本の寄与ということでございますので、資本増分の寄与が成長に影響している部分かと思います。
○深尾委員長
中長期試算の資本の動きはどうなっていますか。これと大分、違いますか。例えば、我々の投資の。
○前田参事官
こちらの長期推計のほうと近い形にはなりますので、今、資料2の10ページを映し出していただいていますけれども、これの25年から30年はまさしく先ほど申し上げましたようにこちらの長期推計は33年まで中長期試算を使いまして、その後、延伸しているということになりますので、この25年から30年は中長期試算の考え方になります。
ですから、こちらの25年から30年、現状投影シナリオ、ここはベースラインケースと中長期試算で呼んでいる部分でございますけれども、この黄色い資本寄与という部分がプラスに出てございますので、こちらを御参考いただけるといいかと思います。
○深尾委員長
分かりました。例えば一番左のケースだと、資本分配率が3分の1だったら資本投入が年率1.8%くらい増えていくと、そんな感じですか。
○前田参事官
一番左ですと、実は実際、中長期試算のこちらの分解図ですと0.2%のプラスになっております。2025年から2030年くらいの値ですけれども、0.2%となっております。
○深尾委員長
ごめんなさい。だから、0.6%くらい。
○前田参事官
例えば、倍であれば0.4とか、その辺りの上昇だと思っていただければと思います。
○深尾委員長
分かりました。
どうぞ。
○権丈委員
先ほどの資料2の27ページの労働生産性と実質賃金の推移というのは結構前から指摘されていて、労働生産性の伸び率、あるいは1人当たりGDPの伸び率とか、その辺のところは国際決済銀行、BISとかがわざわざ日本のことを計算してくれたりして、そんなに低く伸びてはいない。要するに、伸び率は他の国と比べて遜色はないと。
そういうことをずっと指摘されていく中で、どうも賃金に回っていないということは指摘されていて、その原因というのが前から言われていたわけですけれども、今回いろいろと伸びの要因が25ページのところであるわけですが、この雇用主の社会負担というものがベクトルとしてはこの方向に向くというのは確かにあるかもしれないのですけれども、ほかの国と比べてそんなに大きい値というのがあるのかなというところですね。
そして、ほかの国と比べて賃金と生産性の伸びがパラレルに動いているような国でも、この雇い主の社会負担というようなものが増えているようなところもあって、日本のこの会議を説明していくときに雇い主の社会負担というものが表にぽんと出てくるというのはそれでよろしいのでしょうかというようなことを伺いたいと思います。
○深尾委員長
国際比較においてはほかの国もそうだと思うのですけれども、今、議論しているのは、今後30年、100年のプロジェクションをするのに、労働生産性について我々は一定の仮定を置いて実質賃金がどうなるかということを議論していて、労働分配率は変わらないというふうに仮定していますので、そうすると雇い主の社会負担が増える分だけ、やはり実質賃金の伸びは小さくなりますね。それで、そのときの雇い主の社会負担のこれから拡大していく可能性、例えば内閣府の高度医療のコストの上昇とかという御指摘がありましたけれども、そういうことを考えると、これから増えていく危惧もあるかなと思うので一応確認しただけですが、でも我々の合意はこれについては今後増えていくということは前提にしないでやる。
だけど、そのことは一応確認しておいたほうがいいというふうに私は思います。
○権丈委員
労働分配率は仮定しているというところなのですけれども、このメカニズムというのは結構非正規は増えて賃金労働者における構成割合が構造的に高まっていったりしていくと、生産性は上がっているんだけれどもというようなこともあるわけなのですね。
その辺りのところをどのように説明していくかというところも含めて、賃金が上がっていない犯人捜しのところで雇い主の社会負担が過去において上がってきたからよくなかったというような形で議論が収まると、私は何となくそうかなと。今後の仮定においてこれは動かさない。この要因というのはマイナスに働くけれども、動かさないということは私も承知しておりますけれども、過去において日本がこういう特殊な形をしていたということに対して、果たして本当にそうなのだろうかというのは私の中ではまだ検討中であります。
○深尾委員長
ほかにはいかがでしょうか。
大体、議論が尽きたという感じでよろしいですか。
では、委員の皆様の御意見を伺って、特に社会への説明の面でいろいろ注意すべきだという御指摘があったと思います。インフレの問題を含めてですね。その点については事務局にも留意していただきながら、年金部会でもそういう議論をまたしていきたいと思います。
この内容でそれ以外については特段の御指摘がなかったと思いますので、この報告案を次回の年金部会へ報告するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○深尾委員長
ありがとうございます。
では、そのように進めさせていただきます。
本日は最終報告書を取りまとめ、年金部会への報告にめどをつけることができました。これにより、本専門委員会は一つの区切りを迎えることになります。
そこで、最後に橋本局長より一言いただければと思います。よろしくお願いします。
○橋本年金局長
年金局長の橋本でございます。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中にもかかわらず、一昨年の11月以来、9回にもわたる当専門委員会で熱心に御審議いただきまして誠にありがとうございました。一部の委員におかれましては、これに加えて3回にわたる検討作業班での作業もお願いしたところでございますので、本当に深く感謝を申し上げます。
おかげをもちまして、前回の財政検証と比べてもよりシンプルに、かつ望ましい姿から手堅い姿まで、より幅広く年金財政の将来像を国民にお示しすることができる、そういう経済前提をセットしていただけたと思っております。来週の年金部会でこれを報告し、オプション試算もセットした上で財政検証の作業に本格的に入っていきたいと思っております。
今後は、この夏の財政検証結果の公表、さらにはそれを踏まえた次期制度改正へと進んでまいるわけでございますが、大変多くの、そして困難な課題が待ち構えているわけであります。100年先まで視野に入れて、今この年に何をなすべきなのか、大きな岐路に立っていると感じております。
10年後、20年後に年金制度の歴史を振り返ったときに、「あのときの改正でこれをやっておいて本当によかった」というふうに後々の担当者に言ってもらえる、そんな内容のものに仕上げていければと思っておりますし、そのためにも先ほど来、委員の先生方から御指摘いただきましたような適切な説明、適切な広報ということも大変重要だと感じております。
私どもとしても最大限努力してまいりたいと思いますし、委員の皆様方におかれましても引き続きの御指導、御鞭撻をいただければと思っております。
以上をもちまして、私から皆様への感謝の言葉とさせていただきます。長期間にわたりまして、誠にありがとうございました。
○深尾委員長
ありがとうございました。
それでは、本日の審議は終了いたします。御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございました。