第4回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ 議事録

日時

令和6年4月26日(金)14:00~16:00

場所

AP新橋
(オンラインとのハイブリッド開催)

議題

  1. 1.有識者等からのヒアリング ③(関係団体からの提言等)
  2. 2.意見交換
  3. 3.その他

資料

議事

議事内容
○中田研究開発政策課長 
 事務局でございます。定刻より前でございますけれども、全員おそろいでございますので、ただいまより第4回「ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ」を開催いたしたいと思います。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、五十嵐構成員より御欠席の連絡をいただいております。そのほかの構成員は、皆様御出席いただいております。続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1から4、参考資料1から4までございますので、御確認いただければと存じます。また、本ワーキンググループにつきましては、公開としております。議事録につきましては、各構成員への確認の上、後日公開したいと思っております。
 簡単に会議の進め方について説明させていただきます。適宜、御発言がある際には挙手をお願いいたします。オンライン出席者におかれましては、画面上の「手を挙げる」ボタンを使っていただければと思います。こちらの会場のほうから御指名をさせていただくようにいたします。また、発言の際は、お名前をおっしゃってから御発言いただければと存じます。御発言をされない間はマイクをミュートにしていただきまして、また、時に音声等が不安定になるような場合がありましたら、一旦、ビデオをオフにするなどの対応を試みていただくようお願いいたします。
 傍聴に際しましては、携帯電話等の音の出る機器につきましては、電源を切るか、マナーモードに設定をお願いいたします。それでは、頭取りはここまでとさせていただきたいと思います。以降の運営を座長にお願いいたします。
○中釜座長
 それでは、始めたいと思います。早速、本日の議題に入ります。まず、議題1「有識者等からのヒアリング」になります。本日は、参考人として、福嶋義光先生、高田史男先生に御参加いただいております。本日は、2名の構成員、2名の参考人にゲノム医療を推進するための意見を伺い、その後、事務局からの報告の後にディスカッションとさせていただきます。なお、資料1、資料2については、それぞれ7分、資料3については、15分ほどをめどに発表していただきたいと思います。それでは、早速ですが、資料1、佐保構成員に御発表をお願いいたします。
○佐保構成員 
 御指名ありがとうございます。連合の佐保でございます。発表の機会をいただき、ありがとうございます。
 ゲノム医療推進法の第3条 基本理念には、大切なことが書かれていると思っておりますので、既に御承知のことかと思いますが、この理念を踏まえて、ゲノム計画の策定に向けて重要だと思う視点について、お話しさせていただきたいと思っております。
 次のページ、お願いします。資料、実質的には、この1ページでございます。第1に、「ゲノム医療の研究開発及び提供に係る施策を相互の有機的な連携を図りつつ推進することにより、幅広い医療分野における世界最高水準のゲノム医療を実現し、その恵沢を広く国民が享受できるようにすること」と書かれております。
 ここで大切なことは、患者にとって安心・安全な医療であること、そして、その計画を広く国民が享受できるようにすることだと考えます。これまで、適切な治療がなかったり、あるいは困難であったりする疾病に対して、新たな治療の提案がなされ、実際に治療に結びつけていくことが必要です。同時に、その治療は、長期的に高いレベルで安全性がしっかり確保され、患者にとって安心できる医療としていくことが重要と考えます。また、患者の経済力の差によって、医療を受けられる、受けられないといったことが生じないよう、経済的観点、地域的観点の両面から公平な医療アクセスを確保していくことが必要だと考えます。
 基本理念の第2は、「ゲノム医療の研究開発及び提供には、子孫に受け継がれ得る遺伝子の操作を伴うものその他の人の尊厳の保持に重大な影響を与える可能性があるものが含まれることに鑑み、その研究開発及び提供の各段階において生命倫理への適切な配慮がなされるようにすること」とあります。
 まさにそのとおりで、子孫に受け継がれ得る遺伝子の操作を伴ったり、その他の人の尊厳の保持に重大な影響を与える可能性がありますから、ゲノム医療を推進するに当たっては、生命倫理への適切な配慮が必要不可欠です。日本では、希望する妊婦の方が出生前検査を行っている状況かと思いますが、そのことへの倫理面の議論は、まだ議論の途中と認識しております。最近、他国のことですが、ゲノム編集ベビーが誕生したというニュースにも接しましたし、今後、ゲノム医療が発展するに従って、とりわけ生殖医療・不妊治療などでは選別が行われることへの危惧もございます。倫理面を含め、どのような方向観を持ってやっていくのかなど、あらかじめ議論し、きちんと認識を合わせて取り扱っていく必要があると考えております。
 基本理念の第3には、「生まれながらに固有で子孫に受け継がれ得る個人のゲノム情報には、それによって当該個人はもとよりその家族についても将来の健康状態を予測し得る等の特性があることに鑑み、ゲノム医療の研究開発及び提供において得られた当該ゲノム情報の保護が十分に図られるようにするとともに、当該ゲノム情報による不当な差別が行われることのないようにすること」とあります。
 ワーキングに御参画の皆様には言うまでもないことかと思いますが、1997年のUNESCO総会で採択された「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」に込められた思いは、全ての人が認識する必要があると考えます。世界宣言の第2条では、「何人も、その遺伝的特徴の如何を問わず、その尊厳と人権を尊重される権利を有するとされ、その尊厳ゆえに、個人をその遺伝的特徴に還元してはならず、また、その独自性及び多様性を尊重しなければならない」とされています。世界宣言の第6条では、「何人も、遺伝的特徴に基づいて、人権、基本的自由及び人間の尊厳を侵害する意図又は効果をもつ差別を受けることがあってはならない」とうたわれております。
 2003年の「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」においても、その7条では、「差別しないこと及び烙印を押さないこと」がうたわれております。日本においても、こうした理念を尊重して対応していくことが不可欠です。
 今回のワーキンググループで強調されている就労や保険分野で不当な対応がないようにするのはもちろんのこと、もっと幅広く差別禁止をうたう包括的な法的整備が必要だと考えます。ゲノム医療推進法の基本的施策の中で、「ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な利用の確保」というのは記載されておりますが、現状、日本では、ヒトゲノム研究に関する基本原則はあるものの、あくまで研究に関するものですから、これをもってカバーできるものではないと考えております。
 一番重要なのは、遺伝的特徴や情報により差別が起きないかということですが、ゲノム医療が普及すれば、研究や医療現場だけの問題ではなくなります。ビジネスや社会全般に関わってきますので、検討する課題は様々だと思います。例えば、社会生活においては、日常の言動による偏見や差別、民間保険における加入時の基準や情報の取扱い。ビジネスにおいては、治療とは違った利用における解釈、倫理的な取扱い、質の担保、消費者保護。雇用においては、採用時健康診断などの情報管理、配転や解雇、昇給、昇進、仕事と治療の両立などです。
 遺伝情報というのはとてもデリケートなものですから、家族や血縁者であっても、その伝達方法には配慮が必要です。例えば、医師が治療において検査して判明した遺伝情報を、どこまで、どうやって家族に伝えるかということについては、悩ましい問題ではないでしょうか。個々人が持つ知る権利だけではなく、知らないでいる権利も尊重されなくてはなりません。医療関係者や患者だけではなく、国民全体への倫理的取扱い、理解促進に向けた教育や周知啓発、患者や利用者の相談対応、万が一、差別が起こった場合の救済制度といった体制整備が必要だと考えます。
 ビジネス利用の広がりによる弊害も考えられます。将来的に手頃な値段で簡単に診断を申し込める状況になるのではないかと思いますが、ビジネス利用が広がることで、質の担保や消費者保護といった問題も出てくると思います。また、安易に診断を受けられるようになれば、例えば会社が従業員の健康リスクをはかることを目的に、強制でなくても診断を推奨するとか、病気に関係なく、子供の才能を見るための診断といった使われ方が起きるのではないかという意見もあります。
 最後に、雇用に関してですが、事業主の自主規制に任せることはできないと考えます。事業主に対して、労働者の遺伝情報に基づく差別的な取扱いを禁止することはもとより、ハラスメントのように防止措置義務を課し、事象が発生した際には適切な救済制度を創設すること、労働者のプライバシー保護の観点から、採用時に遺伝的検査は使用しない、遺伝子情報の提供を求めないことなども必要と考えます。したがって、検討する課題は多岐にわたると思いますので、他国の法律や実態、将来に向けて想定される課題や倫理的な取扱いに向けた国民的議論、様々な患者・その家族などからの実態把握なども行いながら、その内容を踏まえて、日本において差別を許さない社会づくりに必要な対応を基本計画の中に盛り込んでいただきたいと考えます。私からの発表は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○中釜座長
 ありがとうございました。続きまして、資料2、日本経団連からで、角山構成員、御発表をお願いいたします。
○角山構成員
 経団連です。資料をお願いいたします。ありがとうございます。次のページ、お願いいたします。今回のゲノム医療推進法では、この赤字に書かれているような文章がございますけれども、企業側からいたしますと、ゲノム医療は、基礎的な創薬研究から始まりまして、治験、製造、薬事審査、承認と、非常に長い期間と努力をしまして、そこで初めて患者さんに届くものと考えます。したがいまして、国民が安心する情報管理体制といったものが必要でございますけれども、それに基づきましたゲノム医療データの積極的な民間利用の促進が重要と考えます。残念ながら、今回の条文からはそのことが読み取れず、今後、御検討いただければと思います。
 次のページ、お願いいたします。ゲノム情報を活用しました創薬の例というのは、もうたくさんございまして、左側はがんの分子標的薬の例です。がんはゲノムの病気ですという言葉がありますけれども、その原因遺伝子を標的にした分子標的薬といったものがたくさんございます。
 右は、がん以外の例でございますけれども、PCSK9の例は大変有名でございまして、家族性高コレステロール血症、それから家族性の低コレステロール血症の家系のゲノム情報から得られた標的でございますので、それが今、一般的な高コレステロール血症のお薬になっております。それから、希少疾患に関しましても、原因遺伝子に作用するような治療薬の開発がたくさんされておりまして、昨今、希少疾患に向けた開発というのが1つ盛んなところでございます。
 それから、右下ですけれども、SGLT2は尿中に糖を排出するものですけれども、そういったことをやってしまいますと低血糖を起こすのではないかという懸念があったのですけれども、SGLT2のホモの欠損の家系の方が見つかりまして、その方を調べたところ、特に低血糖は起こしていないということで、健康に大きな影響なしとして創薬研究が進んだ例と理解しております。
 次のページ、お願いします。そういったゲノム情報でございますけれども、昨今、製薬企業にとってはとても重要な情報でございます。左側がアストラゼネカ、右側の上がGSK、下がOpen Targetという欧州のコンソーシアムからそれぞれ出された論文でございます。
 中身としましては、どれもほぼ同じことを言っておりまして、薬の標的になる分子に例えば変異があった場合に、適応症であったり、それを想起させるような表現形が変化する、これをGenetic Linkageと言いまして、ここでは遺伝学的根拠というふうに記載してありますけれども、そういったものがありますと、プロジェクトの成功確度が非常に高いということが分かっておりまして、現に右下にありますように、2021年のFDA承認品目において、Genetic Linkageのある品目が3分の2を占めるということで、現在、製薬会社において開発プロジェクトの選択の重要な指標になりつつありまして、某会社では開発パイプラインの70%がGenetic Linkageがあるものになっていると伺っております。
 次、お願いします。したがいまして、世界のゲノム国家プロジェクトというのは大変重要でございます。ここにありますように、アジアを含めまして、たくさんの国家的なプロジェクトがございます。最も進んでおりますのがGenomics Englandでございまして、こちらは民間利用、2次利用というものが最も進んでおります。本邦でも、本日の会議に御参加されておられます委員の先生方が中心となって推進されておられます全ゲノム解析等実行計画がございますけれども、ぜひこのGenomics Englandよりもいいものを基盤としてつくっていただければと思います。よろしくお願いします。
 次のページ、お願いします。今日は時間がございませんので細かく述べませんけれども、製薬会社あるいはほかの企業において、ゲノムデータというものは活用の用途がたくさんございます。ここに赤字で書かれているような様々な、それこそ基礎的な研究から開発・応用まで、たくさん利用できますので、こういうゲノムデータ基盤というものが国内にしっかりできることを望んでおります。
 次のページ、お願いします。本日、時間がございませんので、要望としまして、こちらのページに1つにまとめさせていただきました。ゲノム医療データの積極的な民間利用のためにということで、1番目は、統一された同意説明文書の利用でございます。我々企業が先生方と何か共同研究をするような場合に真っ先に確認しますのが、このICFでございます。これがばらばらであったり、企業利用の明記がなかったりしますと大変な手間になりますので、ぜひ企業利用の明記も含めて御検討いただければと思います。
 それから、国内に1つの窓口とシステムの構築をお願いしたいと思います。ICFの取り寄せにやたら時間がかかるようであったり、あるいは、その一つ一つの入手に時間を要してしまったり、あるいはシステムがあった場合に、各省庁や各疾患のシステムがばらばらであり、利用が大変難しいようなことでありますと大変ですので、そこはぜひ御検討いただければと思います。
 それから、現在、国内に複数のバイオバンクがあり、今、窓口を一本化されようとされていることは理解しておりますけれども、このバイオバンクの統一についてもぜひ御検討いただければと思います。それから、高品質、高密度のゲノム医療データの整備ということで、特に時系列データの蓄積についてはお願いしたいと思います。それから、患者様へのリコンタクトが可能な体制の構築もぜひお願いいたします。それから、国内に1つのゲノム拠点づくりは、人材育成やキャリアパス形成の促進ということで、とても重要だと思います。これは民間企業にとっても重要なことでございますので、ぜひ御検討いただければと思います。
 また、民間利用を促進するシステムの構築でございますけれども、リモートアクセス、計算リソースの拡張性、あるいはいろいろ相談に乗っていただけるようなコンシェルジュ機能といったものも希望いたします。また、データの迅速な共有と企業単独での利活用を可能にという考え方は、今、世界で複数認められている考え方ですので、ぜひこちらもお願いしたいと思います。
 それから、ゲノムデータの利活用を促進する個人情報保護法の措置。これだけですと分かりませんので、参考資料に残しましたけれども、匿名化や仮名加工する際に、ゲノムデータが個人の識別符号に該当するということで、全て消さないといけないような現状でございます。それですとゲノムデータが使えませんので、ぜひその辺も考えていただきたいと思います。また、生命科学・医学系指針に関しましては、非常に分かりにくいという声が強いということですので、こちらの改定もお願いしたいと思います。それから、最後でございますけれども、冒頭に申し上げました国民が安心する情報管理体制の構築ということをぜひお願いいたします。
 最後のページ、お願いします。ですので、企業は第3条の実現に大きな貢献ができるものと考えております。企業に分け隔てなくデータを共有していただき、利活用を促進するよう、施策の設定と推進をお願いいたします。以上でございます。
○中釜座長
 ありがとうございました。続きまして、資料3、こちらは日本医学会からの資料ですが、福嶋先生。
○福嶋参考人
 日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の福嶋と高田から、このたび日本医学会でゲノム医療推進法に関する提言をまとめましたので、その概要について御説明申し上げます。このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 まずは、経緯について御説明申し上げます。事の起こりは、2014年に国会議員の勉強会が立ち上がったというところからスタートいたします。その結果、厚生労働省におきまして特別研究班がつくられ、また高田先生がとても大きな役割を果たしているわけですけれども、今日は議員立法の経緯と日本医学会の「遺伝子・健康・社会」検討委員会の取組、そして提言作成の経緯、提言の総論と各論について概要を御説明申し上げます。
 2014年に超党派の有志の国会議員が勉強会を開催し、その第1回目の勉強会に私と高田先生、それと遺伝カウンセラーの山内さんが招かれて講演させていただきました。その結果、しっかりとしたデータをそろえましょうということで、第1期の高田班が結成されて報告書が出されました。
 ちょうど同じ頃、ゲノム医療実現推進協議会が内閣官房に立ち上がりまして、この高田班の報告書が協議会の中間とりまとめにも引用されたという経緯がございます。その結果、内閣府のほうでタスクフォースが立ち上がりまして議論が進められてきたわけですけれども、意見とりまとめというのが2016年10月に出されました。それに引き続いて、2016年から第2期高田班が立ち上がりまして、「遺伝学的検査の市場化に伴う国民の健康・安全確保への課題抽出と法規制へ向けた遺伝医療政策学的研究」が行われまして、その報告書というのが、この勉強会にも提示されて、その結果、議員連盟が正式に2018年3月に立ち上がりました。
 その結果、5年かかりましたけれども、今回のゲノム医療推進法が可決・成立したということで、とても喜ばしく思っております。今後、様々なものについて閣法を作るためのの基本計画が今、検討されている、そのためのワーキンググループだと考えております。その後、親子関係をどうするのかということが将来的には課題になってくると思います。
 次に、日本医学会の検討委員会ですけれども、2011年に「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」が髙久史麿会長の下でつくられました。まず、それを契機に、日本では法制面、行政面、倫理面、教育面などの社会的基盤としての整備が十分でないことから、日本医学会ではこの問題を常にウオッチしていこうということで、この委員会がつくられまして、様々な取組を行ってきました。
 拡がる遺伝子検査市場への重大な懸念表明ですとか、医学部卒前遺伝医学教育モデルカリキュラムを関連学会と合同で公表したり、NIPTの適切な扱い、あるいは日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構の設立の支援などを行ってきて、一昨年になりますけれども、2022年には遺伝学的検査ガイドラインの見直しを行ってきたところです。
 メンバーとしては、日本医学会長の門脇孝先生の下に、私を含めて11名の様々な領域の方によって運営がなされています。
 このたびは、2023年、昨年6月に可決・成立しましたので、7月に検討委員会を開いてワーキンググループを結成することといたしました。その中身としては、総論、医学研究、社会実装、生命倫理、検査精度のワーキング、それぞれ活発な議論が行われまして、5回の検討委員会を経て原案が作成されました。
 その原案を142の加盟学会にお送りして御意見を求めたところ、23の学会からは非常に積極的な御意見をいただいて、その御意見を取り入れた上で最終案を作成し、2月21日の評議員会で承認され、3月13日に記者発表したという経緯でございます。
 この提言は、今日の参考資料4に全て記載されておりますけれども、総論と各論に分かれております。
 総論では、特に重視していただきたい点をまとめたところで、2番目のポツに、充実したゲノム医療施策に関する基本的な計画を策定しなければならない。
 医学・医療に留まらず、教育、産業、ビジネス、個人情報保護、差別問題、生命保険などの民間保険等々、多岐にわたる点を踏まえる必要があるということですね。ですから、厚生労働省の所掌範囲のみに限定される基本計画であってはならないので、幅広いものをウオッチしていただきたい。
 2の一番最後のところですけれども、総務省と厚生労働省は、改正個人情報保護法を一部阻却し、当該分野を所管する特別法を制定する意義について検討を進めていただきたいということで、この点につきましては、プライバシー権の考え方というものをぜひとも再検討していただきたいということでございます。自己情報コントロール権とともに、適正な自己情報の取扱いを受ける権利という考え方もあるわけで、本人同意がなければ研究利用ができないのはとても不合理だということで、米国においてはHIPAA、EUにおいてはGDPRというものが出されております。
 この趣旨というのは、個人データの取扱いは人間に奉仕するために設計されるべきである。個人データ保護の権利は、絶対的な権利ではない。それは比例原則に従い、社会におけるその機能との関係において判断されなければならず、かつ、他の基本的な権利とバランスのとれたものでなくてはならないと述べているわけですので、ぜひともこの点についても御検討いただきたい。
 現在、差別防止ということが言われておりますけれども、基本は教育が十分なされていないというところから生じておりますので、文部科学省の初等中等教育局では、ヒトの遺伝に関する教育方針を抜本的に再検討していただきたい。このことによって、国民の遺伝リテラシーを向上させることができて、不適切な差別も防止されるものと思います。
 そして、遺伝子検査ビジネスについて、現在は経済産業省が所掌しているようですけれども、これは厚生労働省によって、適切な規制も含めた在り方を検討していただきたい。
 あと、保険につきましては、金融庁も検討していただく必要があるだろう。
 遺伝医療の中核を担う遺伝カウンセリング、どのように医療体制の中で遺伝カウンセリングを含めるべきか。この点についても十分検討していただきたい。
 生命倫理については、ぜひとも恒常的に審議・監理する公的プラットフォームを構築していただきたいということです。各論につきましては、各条文ごとに日本医学会の意見をここに述べているところです。
 これがこのワーキングの第1回目にあった資料ですけれども、全ゲノム解析等実行計画2022。研究をどんどん進めていって、それを日常診療へ導入しようということですけれども、長年、遺伝医療に携わってきた者としては、ここには遺伝カウンセリングという概念は全くないのだなということを思っております。
 これが私のお話のまとめになりますけれども、厚生労働省だけでなくて、次にこのような絵が描かれるときには、総務省、文科省、金融庁なども関与していただいた上で、ぜひとも大きな絵を描いていただきたいと考えているところです。それでは、高田先生、お願いいたします。
○高田参考人
 引き続き、高田のほうから、幾つかのポイントについて簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず、この法律策定に向けての活動を開始した発端・経緯ですが、大きく2つの課題が当時ありました。勉強会ができたときの最初の出だしは、遺伝カウンセラーが少ない。がんゲノム医療がちょうど起こってきた頃で、その担い手がいないということ。それから、遺伝子検査ビジネスで社会の中で様々な問題が起きていた。こういったことから、国会議員の先生方からもどういう状況なのだということで始まったのが端緒でございました。それを端緒に、もっと包括的ないろいろな問題点を掲げるという形で広がっていったというのが経緯でございます。
 まず、遺伝・ゲノム医療の普及と一般診療化に関することですが、これはこれまで3回までのこのワーキングで縷々(るる)検討されてきていることではあると思いますが、我々の視座から見た1つの医療に関する部分というのは随分出ているのですが、さらに忘れていただきたくない点を述べますと、まず、遺伝医療においては、不変性・予測性・共有性という大きな遺伝の3原則がございます。これを踏まえた医療の実装が必要であるということ。
 特に、今は身体のどこかに疾病と呼べるフィジカル、物理的な疾患が何かないと患者という概念にはなりません。それ以外は人間ドックに行ってくれとか、健康診断に行ってくれという話になりますが、遺伝子診断を行うことで、未発症の患者さんという状態が多々出てきております。例えば遺伝性乳癌卵巣癌における乳房や卵巣の予防的切除とか、そういうものも、今はわが国ではがんが身体のどこかに認められていないと健康保険で受ける事はできないけれども、アメリカやヨーロッパのようにそうじゃなくても遺伝子に変化があるということで予防的切除が受けられるような保険診療体制の整備が求められる時代となっています。
 それから、今後は認知症とか、そういうものも、認知症が進んでからお薬を飲んだのでは間に合わない。遺伝・ゲノム解析を行った上で、その発症する何十年も前からお薬を飲まなければいけないという時代が来ると思います。こういった治療適応のある未発症患者を患者とするという概念が保険診療の中に入っていかなければいけないだろうということです。彼らにも健康保険での医療を提供できる体制を整備するという観点からの厚労省の患者概念のパラダイムシフトの必要性ということです。医療に関してはこれまでの3回のご議論の中ですでに多数のご意見が出されてきておりますので、私からはこの点のみに留めておきたいと思います。
 次に、遺伝・ゲノム医学研究と改正個人情報保護法との関係です。これは先ほど経団連の方、それから、以前も横野構成員などもおっしゃっていたように、ゲノム情報のうち、取扱いが個人識別符号や要配慮個人識別符号となる部分の利活用の非常な困難さが現状ではございます。ですので、ここは特別法の制定という選択肢も視野に、この領域に関する対応というのを検討していただいていく必要があるのではないかと思っております。
 それから、差別と教育です。遺伝は、教えるから差別が起こるのではなく、教えないから、つまりタブー視してしまうことで、無知・無教養から差別が起こっているということを自覚する必要が我々日本人にはあろうかと思います。ですので、遺伝・ゲノムの国民への円滑で効率的な医療の提供のためにも、そして遺伝差別を防ぐためにも、国民の遺伝リテラシーの向上が必要ということで、教育の中でヒトの遺伝・ゲノム、そして多様性に関する教育体制の再構築が必要と考えます。ここで言っている教育というのは、医師とか看護職という医療職の遺伝教育ももちろんですが、初等中等教育で国民全般にゲノムリテラシーの水準を上げることが必要であるということです。文科省の初等中等教育局にもかつて伺って進言もしたのですけれども、当時、壁はなかなか厚かったです。今回、こういう法律ができたことで、前進させていかれればと考えております。
 次のポイントですが、遺伝子検査ビジネスへの対応です。これは実例を挙げれば様々な興味深い事例があるのですけれども、残念ながら今日は時間がありませんので割愛させていただき、わが国の抱える根本的な課題を俯瞰していただく目的で、敢えて海外の状況をごく簡単に御説明したいと思います。
先ず米国ですが、2014年に23andMeというDTC遺伝子検査ビジネスの会社が、FDAにより事実上の営業停止に追い込まれ、その後も同局が行ってきた施策対応というのがございます。結局、アメリカの当該業界にFDAが下した決定事項は、検体収集方法や機器等の情報、分析的妥当性の情報、査読付文献と学術団体ガイドラインに準じた臨床的妥当性のデータ、検査目的、得られる利益、検査の限界点、遺伝カウンセリングへのアクセス権、これら全てを公表することという義務を課しました。その他、提供される検査内容や検査結果を、最低でも一般人の90%以上の人々が正しく理解できることの確認を販売開始前に実施しておくことも課しました。
 それから、EUでは、それまでは遺伝学的検査はIVD Directive、つまりIn Vitro Diagnostic、体外診断薬の「指令」によりコントロールされることになっていました。この指令というのは、EUの定めた方針に基づいて加盟各国が各々法律を制定し、それに則って行政施策を進めるという方法です。当初これを採用したルールで来ていたのですが、このやり方では非常に実効性に問題があるということが顕在化してきました。つまり加盟国間でも不統一であり、中には法律自体、全く制定すらできていない国もあるということが分かって、2022年5月26日にカテゴリーを1段階上げ、レギュレーション、日本語では外務省により「規制」という単語と定義されておりますが、これはいわゆるEU法という形になり、各国があまねくEU全体の法律に従うというルールに変わりました。
 遺伝子関連検査は、もともと指令のときには低リスクのクラスAだったのを、クラスC、つまり高リスクに位置替えをするということ。それから、それまでは上市後に自社宣言だけで、「うちの検査は安心ですよ。」と言うだけでオーケーだったのが、上市前に公的な第三者認証機関の適合評価を受けることを義務づけました。
 安全性とその性能について、欧州機器データベースの機器証明書、臨床試験、検査関連データの当局への提出も義務づけました。それから、製造業者による臨床的エビデンスの提出や市販後サーベイランスの義務化も課しました。遺伝カウンセリング、それからインフォームドコンセント等、遺伝子関連検査の情報提供の在り方を記載するように命じました。それから、治療法が確立されていない病状及び疾患の遺伝的素因情報を提供する遺伝子関連検査を用いる場合は、適切な遺伝カウンセリング体制の確保義務を規定しました。これは実質的な遺伝専門家の関与を必須としたわけです。
 このように、ここで気づいていただきたいのが、これはEUも米国も医療とかビジネスという範疇ではなく、遺伝子検査であれば医療・ビジネスに関わりなく、全く同じ水準、同じ基準でこれに従うということです。ということで、日本以外の国は、医療・非医療に関係なく、遺伝子関連検査であれば保健衛生を所管する1つの官庁が1つの基準で監督する。ダブルスタンダードは混乱を招くということで、これを目指さなければいけないと思います。
 それから、遺伝カウンセラーは、今やゲノム医療に不可欠の職種です。患者団体、アカデミア、医療界から広く要望され、政界も賛同しております。法的根拠を有する免許制度の創設、国家資格化が求められます。身分保障も必要ということですね。遺伝カウンセラー法として、身分保障と職務権限の明確化(名称独占、業務独占)等の規定を設けて、そして人材不足の軽減・解消等が求められると思われます。
 遺伝学的検査の海外への出検。これはちょっと追加的な話題提供ですが、正しい解析が行われているかという質保証、適正な個人(遺伝)情報保護がなされているか等が、海外に検体を送って、海外の企業で解析が行われると、日本の法権限が及ばない地域になりますので、検証ができません。
 それから、カルタヘナ法、安全保障輸出管理規定等では、対応が難しい部分が多いかと思われます。一部可能かもしれませんが。
 それから、国家安全保障の視座からも検討が必要という声も聞かれます。日本人の検体、個人(遺伝)情報が海外で解析されて、海外で所有されるという意味です。
 DTCも含めて、わが国の貿易収支上の検査関連赤字拡大の懸念もございます。将来的に日本人の遺伝情報を基に、「メイド・イン海外」の日本人をターゲットとした治療薬が開発されれば、現在の3兆円の赤字以上の医薬関連の赤字拡大も可能性として考えられなくはないということで、大きな問題と言う議員の先生もいます。
 遺伝カウンセラーに関しては、実は今日、スライドはお見せしませんが、厚生労働省の研発課でも遺伝カウンセラーを公募をしていました。ですので、もう日本でのスタンダードになっている。その専門家の人たちを医療の中で必要な人材としてちゃんと認めるような法的な根拠が必要ということで、ここは強調させていただきたいと思います。以上です。どうもありがとうございました。
○中釜座長
 ありがとうございました。それでは、ここから資料1、2、3の御発表に基づいて、構成員の先生方から質問、御意見をお伺いしたいと思いますが、御意見のある方は挙手をお願いいたします。御意見いかがでしょうか。横野構成員、手が挙がっていなかったですか。
○横野構成員
 では、質問させていただいてよろしいですか。福嶋先生、高田先生に御質問させていただければと思うのですけれども、個人情報保護法が制定されて、その後、医学研究における個人情報保護の在り方が議論されて、2004年に議論の成果が「医学研究等における個人情報の取扱いの在り方等について」という形でまとめられていると思うのですけれども、その際、福嶋先生等も御議論に参加されていたと思います。その際、遺伝情報の保護等々について、個別法をつくるべきかどうかという議論があって、中長期的な課題とするということと、今後、個別法を検討するときにどういった問題が重要かということに関しては、研究環境の整備等も重要であるという議論がなされていたと思います。
 先ほど、2014年以降の経緯について御紹介いただいたのですけれども、その2003年、4年辺りの議論でどういったことが課題になっていたかということと、その後の経過を振り返って、今後、特に重視すべきこと等について何か御意見があれば、ぜひお伺いしたいと思っているのですけれども、いかがでしょうか。
○中釜座長
 では、福嶋先生、いかがでしょうか。
○福嶋参考人
 福嶋です。御質問ありがとうございました。研究環境あるいは医療の環境が劇的に変わってきていますので、自動的にひもづけられるというのは技術的には可能だと思います。それが了解を得ていなければ利用できないということが、研究推進という側面から見ても、あるいは研究成果を享受する国民にとっても、とても不十分な状況ではないかと思います。今回、日本医学会で議論をまとめる際に、研究推進側の方から特に強い要望をお聞きして、提言にはこのような趣旨でまとめさせていただきました。横野さんも詳しく海外の状況をぜひお調べいただけるとありがたいと思っています。よろしくお願いします。
○中釜座長
 今の回答、よろしいでしょうか。
○横野構成員
 ありがとうございます。
○中釜座長
 ほかに御発言、御意見ございますか。よろしいですか。それでは、先に進めさせていただいて、また全体の議論の際に、振り返って資料1、2、3に関連する事案、後ほど説明する厚労省の取りまとめにも恐らく関わるかと思いますので、その際に併せて御発言いただければと思います。
 それでは、議題2に移ります。「意見交換」となっていますが、第1回から第3回まで、各構成員からの御発表を踏まえまして意見交換を行いました。その際、各構成員の先生方から様々な御意見をいただいたところですが、事務局において、これまでの意見を整理したところです。先ほどの資料1から3の御発表を踏まえた意見交換に際していただいた御意見や、今、横野先生からもご発言がありましたし、これからも出ると思うのですが、今後、事務局で整理して反映させたいと思います。それでは今後の検討の取りまとめに向けての論点について意見交換を行いたいと思います。では、最初、事務局のほうから資料4の説明をお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
 事務局でございます。資料4を御覧ください。こちらはゲノム医療推進法に基づくワーキング、第1回から第3回目に構成員からいただきました意見を事務局で整理させていただいたものでございます。先ほど座長からもお話ありましたとおり、本日の御発表に基づく御意見については、また事務局で整理するといたしまして、第1回目から第3回目まで、様々な観点から御意見を頂戴いたしました。今回は、それぞれ法律に定める項目ごとに、いただいた意見を事務局のほうで集約化しまして、今後の取りまとめに向けまして、必要な観点から、また追加の御意見を賜りたいという趣旨でまとめたものでございます。
 それでは、事務局のほうから簡単に内容を御説明申し上げます。まず、1ページ目の(1)でございます。ゲノム医療の研究開発の推進に係る御意見のところでございます。
 こちら、主な意見といたしましては、ゲノム研究で得られた結果を医療現場に応用するための研究を推進し、そのための体制整備を進めるべきではないか。また、例えばリキッドバイオプシーなどの新しい技術を医療現場へ積極的に導入していくための研究を推進することや、リモート治験により患者が治験に参加しやすくなる体制の構築など、新技術の導入を促す研究や治験体制の構築を進めていくべきではないか。また、質の高いゲノム医療の実現のためには、基礎研究により、ゲノム変異と疾患の関連のメカニズムを十分理解した上で治療法を考えることが重要ではないかというような意見をいただいたかと承知しております。また、(2)ゲノム医療の提供の推進に関しましては、これまでいただいた主な意見といたしまして、国民が住み慣れた地域でがんゲノム医療を受けられるよう、例えば地方において遺伝子パネル検査を受けられるなど、医療提供体制の地域間格差を解消していくための対応について検討を進めていくことが必要ではないか。
 また、次のページ、2ページ目に移りますが、がん遺伝子パネル検査は、現時点では標準的治療法が終了した場合、保険適用となりますが、治療上の必要に応じて標準治療の開始前に実施する場合も想定されるところであります。当面の対応といたしまして、例えば患者申出療養を活用するなど、現時点において保険診療下で実施できる具体的な対策を検討すべきではないか。また、難病や小児慢性特定疾病、遺伝性腫瘍等の遺伝性疾患に対しまして、診断や治療方法の判断の支援のために、必要な場合にはゲノム検査を行うことが必要ではないかという御意見をいただいたかと承知しております。
 また、(3)情報の蓄積、管理及び活用に係る基盤の整備に関する御意見になります。主な意見といたしましては、当該患者以外の治療や病気の予防への活用など多岐にわたる用途を見据えまして、拠点的な施設において、疾病になる前の健常の時期も含めたゲノム情報の蓄積を進めるとともに、連携を進めていくべきではないか。また、検体やゲノム情報の保存に関しまして、具体的に管理して運営していくためのルールづくりが必要ではないか。また、ゲノム情報を今後の治療方法の開発に係る利活用を図るために、個人情報保護法の下での取扱いについて整理していく必要があるのではないか。
 また、次のページ、3ページ目でございますが、(4)検査の実施体制の整備であります。
 主な意見といたしまして、ゲノム解析を医療実装にするに当たりまして、第三者認定の仕組みの整理や、外部・内部精度管理等、質の担保に対する体制整備を進めていく必要があるのではないか。また、ゲノム検査を行った後のデータ解釈につきまして、遺伝情報に関する専門的な知識を持つ医師等の関与によりまして、検査の質の担保を進めていく必要があるのではないかという意見がございました。
 また、(5)相談支援に係る体制の整備であります。主な御意見といたしましては、ゲノム医療を用いた診断時におきまして、患者の不安や疑問へ適切に対応するために、それぞれの地域において相談支援体制を整備していくべきではないか。また、患者の様々な倫理的課題に対応できるように、例えば相談支援員に対する専門的な知識の習得や相談支援の経験を共有できるよう、研修体制の充実を進めていく必要があるのではないか。
 ページ、おめくりいただきまして、4ページ目でございます。(6)生命倫理への適切な配慮の確保であります。主な意見といたしまして、生殖・着床前診断、また親子鑑定やゲノム編集に係る課題について、政府において検討されたものの、進捗が進んでいないものがある。技術のスピードが増している中で、ここの場での議論を行いつつ、迅速に検討を進めて具体的な対策につなげていくべきではないか。また、生命倫理への適切な配慮や、差別等への適切な対応につきましては、技術の進展に伴い新たな課題が生じますので、継続的かつ体系的な調査研究ができるような仕組みを考えていく必要があるのではないかという意見がございました。
 5ページ、ゲノム情報の適正な取扱いでありますが、研究者、医師、倫理に関する専門家が協力し、患者の権利と安全性を保護しながらも、医学の進歩を妨げずに前進していくために、適切で倫理的なガイドラインである必要があるのではないかとの御意見がございました。
 6ページ目でございます。(8)差別等への適切な対応の確保でありますが、ゲノム情報による差別に関しましては、例えば就労や保険商品の販売に際して具体的に想定される課題を整理した上で、法規制、またガイドラインでの運用を含めて、どのような対応が取り得るのか検討していく必要があるのではないか。その際に、企業に課せられている安全配慮義務などとのバランスも考慮しながら具体的な取扱いについて検討すべきではないか。また、ゲノム情報に基づく差別を防止するために、制度面に加えまして、社会全体のリテラシーの向上を図っていく必要があるのではないか。
 7ページ目であります。(9)医療以外の目的で行われる核酸に関する解析の質の確保等につきましては、民間企業が行う遺伝子解析ビジネスに関しまして、検査の精度管理のほか、解析結果の判断の根拠について、どういったエビデンスに基づく結果であるのか、一定の基準が必要ではないか。
 また、(10)教育・啓発の推進でありますが、日本国民のゲノム全体に対するリテラシー向上を図るために、初等中等教育の段階からのゲノムに関する正しい知識の教育を進めていく必要があるのではないか。また、責任ある研究と発展という概念の下で進めていく必要があるのではないか。その際、医療における倫理的・法的・社会的な課題に対しまして、患者・市民参画を通じた理解を深めていく取組が重要ではないかとの御意見でございます。
 最後のページ、8ページ目に入ります。人材の確保等でありますが、ゲノム医療関連人材の育成の強化、また医療機関でのゲノム医療人材の役割の確立を進めるとともに、将来的にはゲノム医療を専門的に取り扱うゲノム医療診療科を標榜できるようになることが望ましいのではないか。また、ゲノム解析で出てきた情報を適切に判断するための教育の充実、専門プログラムの作成、また遺伝カウンセリングの体制整備等、人材育成を進めるための施策を推進する必要があるのではないか。
 最後、(12)関係者の連携協力に関する措置でありますが、産官学における連携を強化していくことは有用であり、継続的に協議の場を設ける必要があるのではないかとの意見がございました。
 様々な重複した意見については、事務局のほうで1つにまとめるなど、集約化してまとめさせていただきましたので、また追加の御意見等がありましたら、いただければ幸いでございます。事務局からは以上でございます。
○中釜座長
 ありがとうございました。これまでの3回の会議で議論された話題について事務局で取りまとめていただきましたが、今の発表についての御意見あるいはこれまで論点になったところで漏れている点がないかということに関して、構成員の先生方から御意見お願いしたいと思います。それでは、天野構成員、お願いいたします。
○天野構成員
 御説明ありがとうございました。資料4を拝読いたしまして、私が申し上げた意見についても既に幾つか反映いただいておりまして、改めて感謝申し上げますが、追加で4点、意見を申し上げたいと思っております。
 まず、1点目です。ゲノム医療の提供の推進についての部分になります。資料4を拝読いたしますと、遺伝子パネル検査に関わる医療提供体制の地域間格差の解消について、既に記載いただいているところですが、これに加えて、第2回の検討会で深田構成員より、遺伝カウンセリングやリスク低減手術といったHBOC診療を自施設で完結することができない拠点病院が一定数存在するなどの指摘がありましたので、遺伝カウンセリングを含め、遺伝性腫瘍あるいは遺伝医療提供体制の在り方の検討についても記載していただけないかと考えております。
 2点目が、同じくゲノム医療の提供の推進についてです。資料4では、がん遺伝子パネル検査は、現時点では標準的治療法が終了した場合に保険適用となっているが、治療上の必要に応じて標準治療の開始前に実施する場合も想定されると、既に記載いただいておりますが、改めて指摘申し上げますと、2023年のいわゆる骨太の方針で、適切な時期でのがん遺伝子パネル検査の実施を推進すると記載いただいておりますので、今回の基本計画においても同様に、初回治療を含む適切な時期でのがん遺伝子パネル検査の実施の検討について、改めて記載をお願いしたいと考えております。
 また、患者申出療養についても記載いただいておりますが、同様に、いわゆる適応外薬等をより使いやすくするための方策として、拡大治験の見直しについても記載をお願いできないかと考えております。
 3点目が差別等への適切な対応の確保についてです。資料4では、就労や保険商品の販売に関して、法規制やガイドラインでの運用を含めた検討をすると記載いただいております。これらは厚労省や金融庁で検討いただけるものと思いますが、併せて、資料4では、社会全体のリテラシー向上についても記載いただいておりまして、これについては、法務省や文部科学省での検討になるものと思いますので、例えば法務省においては、啓発活動強調事項等がありますので、それらとの関わりについても記載をお願いできないかと考えております。
 最後、4点目です。医療以外の目的で行われる解析の質の確保についての部分です。資料4では、解析結果の判断の根拠について、どういったエビデンスに基づく結果であるのか、一定の基準が必要と記載いただいていますが、法律の条文を改めて見直すと、いわゆる前項の解析においても、生命倫理への適切な配慮並びにゲノム情報の適正な取扱いを確保するとの記載がありまして、これに対応した方策、対応策の記載がDTC検査ビジネスとの関連で不十分と思いますので、この部分について改めて追記をお願いしたいと考えております。私からは以上です。
○中釜座長
 ありがとうございました。今の4点の指摘点について、この段階で何か厚労省から御発言ございますか。
○中田研究開発政策課長
 御指摘ありがとうございました。そういった点も意見の中に反映できるように対応してまいりたいと思っております。ありがとうございます。
○中釜座長
 よろしいでしょうか。続きまして、深田構成員、お願いいたします。
○深田構成員
 がん研有明の深田でございます。私から3点、コメントさせていただければと思います。まず、1点目でございますが、(1)ゲノム医療の研究開発の推進というところでございます。こちら、文言を拝見しましたが、全ゲノム解析という文言が今回の記載ではございませんでした。全ゲノム解析は、御承知のとおり、事業実施準備室を中心に国を挙げた取組として行われております。これまでの議論におきましては、全ゲノム医療以外の取組も重要だということで、全ゲノム解析の話はあえて少なくなっていたかと推察しておりますので、当然ながら、この全ゲノム解析についての文言も御検討いただければと思っております。
 2つ目でございますが、(2)ゲノム医療提供の推進というところの2ポツ目でございます。先ほど天野構成員からもお話がありましたとおり、遺伝子パネル検査について、治療上の必要に応じて、標準治療前の実施についても保険診療下で実施できる具体的な対策を検討すべきではないかと御記載いただいております。こちら、患者申出療養と記載がございますが、具体的な方法論に関する検討は、今後また改めて進められるものと承知しております。がんゲノム医療の恩恵を患者さんに届けられるように、検査実施のタイミングだけでなく、検査の回数についても、有用性などのエビデンスの収集を継続しながら最適な在り方を検討することが重要だと考えておりますので、こちらに関しましてもどうぞよろしくお願いできればと思います。
 最後、3つ目でございますが、(10)の教育及び啓発推進に関してでございます。国民全体のゲノムリテラシーの向上を図るということを記載いただいております。先ほど福嶋先生、高田先生の御発表にもありましたように、私も全く賛成でございます。さらにまた、私の発表でも申し上げましたように、日々、患者さんに向き合っている医療従事者に対する教育や啓発の活動も待ったなしの状況でございます。OJT、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングを含めた取組もできればと考えておりますので、こちらもお願いいたします。以上でございます。
○中釜座長
 ありがとうございました。今の指摘点について、特に追加でありますか。ちなみに、全ゲノムに関する記載は、具体的にはどの辺りに関して、少し論点を絞ったほうがよろしいという御意見でしょうか。
○深田構成員
 ありがとうございます。全ゲノムを進めていく、その恩恵を患者さんに届ける、還元する取組をやっております。この全ゲノムを含めた研究開発ということ自体を国が進めることが非常に重要かと思いますので、(1)のゲノム医療の研究開発の推進というところには、全ゲノム解析も当然含まれるというような記載ぶりなのかなと思っております。
○中釜座長
 承知しました。ありがとうございます。ほかに御発言、御意見ございますでしょうか。よろしいですか。
 これまでの会議の取りまとめ、論点という意味では、先ほどの資料4の中に事務局でまとめていただいていますが、追加で天野構成員、深田構成員の御指摘の点も少し丁寧に書き込むということであります。それでは、神里構成員からお願いいたします。
○神里構成員
 差別の第16条のところに私の発表で入れたことなのですけれども、不当な差別自体の概念整理、そこの見解がそれぞれによってばらばらだと思いますので、その概念の整理をするというところも重要ではないかと思います。
 それと、ここでは例えばということで就労と保険のことを挙げてくださっておりますけれども、最近では子供の育児においてのゲノム情報の利用というようなビジネスも始まってきているという話もありますので、一般的に雇用とか保険ということがこれまで論点として挙がってまいりましたけれども、それ以外にもいろいろなところにそういった差別の芽となることがあり得ると思いますので、その辺の洗い出しもするということも入れていただければと思います。以上です。
○中釜座長
 ありがとうございました。差別に関する概念の整理をして、もう少し丁寧に書き込んだらいかがかという御指摘でした。ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○福嶋参考人
 追加の発言、よろしいでしょうか。
○中釜座長
 では、福嶋先生。
○福嶋参考人
 福嶋ですが、今の不当な差別についてですけれども、今のところ「遺伝情報は使いません。とにかくブレーキを踏んでおけば安全です」、という考え方の下に、今、運用されているように思うのですけれども、これから遺伝子の情報で将来予測がかなり正確に分かるようになる時代を迎えて、例えば飛行機のパイロットの健康診断において、発作が起きるような病気を発症する確率が高いというようなことが分かった場合、それを知らなくてよいのかということも出てきますので、遺伝情報をどのように扱っていくのがよいかという議論を積み重ねていく、その仕組みづくりが求められているのではないかと思います。ぜひその点もよろしくお願いいたします。
○中釜座長
 ありがとうございます。神里構成員御指摘の概念とともに、もう少し将来予測を踏まえたような書き込みというご趣旨だと思います。よろしくお願いいたします。それでは、吉田構成員、お願いできますか。
○吉田構成員
 資料4の(5)の相談支援に係る体制の整備(第13条)の部分に記載されている「相談支援体制」には、単なる医療者ではなく、前回、ゲノム医療人材として発表さえていただいた、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーという既に存在している職種を記載いただくことでこれらの職種の意義を明確化し、さらに充実させることもつけ加えていただけるよいと思います。質問とコメントでございます。
○中釜座長
 今の点について、お願いいたします。
○中田研究開発政策課長
 事務局でございます。この相談支援体制につきましては、特に限定して記載したものではございません。今、吉田構成員から御指摘のあったとおり、もう少しここを明らかにして課題をお示ししたほうがという御意見かと承知しましたので、事務局のほうで少し整理させていただきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
 加えて、今後、さらにいろいろな種類の人材が増える可能性もあるので、その辺りも考慮した記載が必要かと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、横野構成員。
○横野構成員
 ありがとうございます。取りまとめていただいた資料4の(3)に、情報の蓄積、管理及び活用に係る基盤の整備というのがあります。この中の主な意見というところで、個人情報保護法の下での取扱いについて整理する必要があるのではないかというところに関して、まず、1つ意見がございます。この点に関しては、1つは先ほどの福嶋先生、高田先生からのコメントの中にもありましたように、個人識別符号の取扱いについて御検討いただきたいということがあります。
 それと、もう一つ、今回、この法律においてゲノム情報に関する定義を条文の中に盛り込んでいますので、この法律におけるゲノム情報と、個人情報保護法におけるゲノムデータ等の類似の概念との整理をしていただきたいと思っております。また、これから解析の方法ですとか解釈の方法がいろいろと新しくなっていくことに伴って、見直しが必要な部分も出てくるのではないかと思っております。
 もう一つ、このこととの関係で、(7)にゲノム情報の適正な取扱いの確保、情報保護関連の項目があります。ここでは、適切で倫理的なガイドラインがあるべきではないかということが書かれていますけれども、例えば各医療専門職の守秘義務との関係とか、個人情報保護法との関係、情報が漏えいしたときの罰則等も含めて、法整備が望ましい部分もあるかと思います。また、その法整備の対象は、個人情報保護法の関連だけではなくて、先ほどの遺伝カウンセラーの資格の法制化といったところも含めて、守秘義務であるとか漏えいに対しての罰則等も含めて検討していただくことが重要ではないかと思っております。先ほどの(3)と(7)、両方に係ることとして御検討いただければと思っております。
 それから、もう一つ、(6)の生命倫理への適切な配慮の確保というところがあります。ここに関しては、調査研究が継続的に行われることが重要だということは、非常に重要なポイントを入れていただいていると思うのですが、先ほどの日本医学会からの提案の中にもありましたように、こうした問題について、横断的な形で議論すべきものがかなり多いと思いますので、横断的な形で検討するような場を設けていくことが重要になってくると思います。これはこの法律だけに係る問題ではないですけれども、この法律にも関わる問題として、ぜひ御検討いただきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
 ありがとうございます。今の横野構成員からの御指摘の点、何か御発言ございますか。
○中田研究開発政策課長
 事務局といたしまして、いただいた意見を少し整理させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○中釜座長
 1点確認ですが、最初のご指摘のゲノムデータとゲノム情報、この2つの法律の中での取扱いの違いは、具体的にはどの辺りのところにより詳細な議論が必要ということでしょうか。追加で御説明いただければと思います。
○横野構成員
 個人情報保護法の解釈におけるゲノムデータという概念と、この法律におけるゲノム情報という概念とか、あるいは塩基の配列という概念との関係性というものを、一度どこかで整理していただく必要があるのではないか。
○中釜座長
 了解しました。より具体的・技術的に記載してはどうかという御指摘だと思いました。ほかに御意見ございますでしょうか。小崎構成員、お願いいたします。
○小崎構成員
 今の議論に関連することですが、資料4の(4)、ゲノム検査を行った後のデータの解釈(アノテーション)について云々というところがあるのですが、解釈の結果、得られた、ある遺伝子の特定の(バリアント)変化が病気を起こすかどうかという情報も、広い意味でゲノム情報に当たるのですが、これはむしろ公知のものとして幅広く共有されるべきものであると思います。ですので、個人レベルで守るべき、個人の全遺伝子のバリアント群全体としてのゲノム情報と、それから公知の一つ一つのそういう新しい知識で、必ずしも個人とは結びつかないものはぜひ区別して、蓄積してコミュニティ全体で使うという発想が必要になると思います。
 それについて、今回の資料4にはどこにも書かれていないので、明示的に記載するのがよいのではないかと思い、議論させていただきました。いわゆる病的バリアントデータベース、米国ClinVarの日本のバージョンということになります。これはアメリカの遺伝医療の必須になっているもので、米国政府がサポートしております。よろしくお願いいたします。
○中釜座長
 ありがとうございます。個人レベルの問題と、公的に利用する公知の知識として集積するレベルの2つを明確に区別して記載してはどうかという御指摘でした。ありがとうございます。ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日、御出席いただいた参考人のお二人の先生、追加で何かこの取りまとめに関して御意見ありましたら、お願いいたします。
○福嶋参考人
 ありがとうございます。福嶋でございます。事務局のほうで資料4として、今までの議論を条文ごとにまとめていただいて、非常に分かりやすく理解することができました。
 参考資料4に日本医学会の各論というのがございまして、条文は網かけで記載しておりますけれども、その後に日本医学会での意見を取りまとめております。ほとんどは資料4とほぼ同様の意見が書かれておりますけれども、この中で特に強調させていただきたいところがございます。それは第13条の相談支援に係る体制の整備のところで、遺伝医療体制、ゲノム医療体制を充実すべきだということはもちろんなのですけれども、日本医学会のほうではさらに踏み込んで、臨床遺伝を専門とする医師や遺伝カウンセラーなどのゲノム医療専門職を専任で配置することが求められるということですとか、財政的基盤として、遺伝医療・ゲノム医療の技術料算定、及び現在、遺伝学的検査に付随して認められている遺伝カウンセリング加算の技術料算定など、一歩踏み込んだ形でここに記載しております。
 生命倫理のところにつきましては、今までの議論にありましたとおり、非常に慎重な対応が必要になりますけれども、第14条の丸印の2つ目の最後ですけれども、今まで出生前診断とか着床前診断については、日本産科婦人科学会の見解というものによって、ある意味規制を担ってこられたわけですけれども、このような問題を1学会に委ねるにはとても限界がありますので、この点についても、ぜひ国が関与する形で進めていっていただきたい。
 それと、先ほども述べましたけれども、生命倫理、ゲノムと倫理につきましては、次々課題が出てくるということが予想されますので、公的プラットフォームで遅れることなく議論を進めるという体制が望まれると思います。
 あとは、今まで述べてきたとおりですので、この資料4に、参考資料4、日本医学会の各論というものも、最終案を取りまとめられるときには、事務局にあってはぜひ参考にしていただければと考えております。
○高田参考人 
 今、福嶋参考人から御説明あったように、日本医学会で条文ごとにコメントというか、提言が出されているので、それをぜひ御一読いただけたらありがたいなと思う次第です。
 それで、ちょっと忘れてしまいましたけれども、先ほど構成員のどなたかからDTCのことで御意見というか、お話があったのですけれども、DTCは、背景として様々な問題を御指摘のとおり、はらんでいます。先ほど子供の遺伝子検査とか、これは差別とか、そういった問題にも絡む。あと、個人の自己決定権を有する年齢になる前に勝手に親が調べてしまって判断してしまう。これも倫理的に大きな問題で、医療では子供が大人になるまで待てる検査はしないのですね。ですので、そういった意味でも自己決定権を剥奪してしまう。
 それから、多因子遺伝に関しては、科学的根拠といった観点から、検査そのものが、近年になってホールエクソームシーケンス(全エクソーム解析)とかホールゲノムシークエンス(全ゲノム解析)が始まって、やっとポリジェニックリスクスコアとかが議論として現実のものとして語られるようになって来つつあるといったレベルです。にもかかわらず、はるか20年以上前から多因子遺伝のビジネスが行われてきていて、それは言うまでもなく科学的根拠は極めて希薄であると言えざるを得ない物が多数を占める。大半の先進国では販売されていない、そういったものが日本では普通に売られている状況であるというのは、極めて異質な状況です。そういった問題も忘れてはならない。
 それから、DNA親子鑑定ビジネスも日本では花盛りですが、妊婦の血液を採って、胎児の父親鑑定に用いる。NIPTなどでは、こども家庭庁でしっかりとやろうとされています。それに比べて、この出生前親子鑑定などは全く野放し状態です。こういった遺伝子検査ビジネスというのは様々な問題を抱えておりまして、うまく社会実装化できるようなビジネスに発展していってくれれば、いいと言える時代が来るのかもしれませんが、現在の状況で「今、何をしなければいけないか」ということも必要です。先ほども述べましたように、技術的に同じ検査なのに規制がダブルスタンダード化するというのはよくない。これは世界中で日本だけだということを、いま一度皆さんに御理解いただいて、厚労省がきちんと監督していく、規制官庁が規制していくという形を取っていくことが必要なのではないかと思います。よろしくお願いします。
○中釜座長
 ありがとうございました。重要な御指摘をいただいたかと思いますので、事務局でぜひ反映してまとめていただければと思います。ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。山田構成員、お願いいたします。
○山田構成員
 山田でございます。今のDTCのところで一言だけ補足させていただきますけれども、私どものところではAGIという業界団体がございまして、その中で、年齢に関しては、現在は成人以上に提供するサービスについて認証するという形になっておりまして、私どももそれに該当するものも同じような形にしておりますので、その点だけちょっと補足させていただきます。ほかにもいろいろガイドラインには記載がございますけれども、そこのところ。ですから、小さいお子様が受けるということは、現状の認証を受けているキットではないということです。ただ、強制加盟の団体ではございませんので、加入されていない業者の方はいらっしゃるということだけ補足させていただきます。以上です。
○中釜座長
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、特に追加での御発言、御意見ないようであります。今日も先ほどの取りまとめ案を含めて、さらに重要な御指摘をいただいたと理解いたします。今日の御指摘、さらにはまとめる際の文言の定義、あるいは論理的な構成ということも御指摘いただいたかと思いますので、言葉に関する定義を含めて、少し詳細に取りまとめ案を整理していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 よろしいでしょうか。それでは、最後、議題の3「その他」に移ります。事務局よりお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
 その他につきましては、特にございません。
○中釜座長
 ありがとうございます。次回の予定はよろしいですか。
○中田研究開発政策課長
 次回は、5月22日水曜日、13時から15時を予定しております。具体的な議事運営につきましては、座長と御相談させていただきまして、後ほど御連絡させていただきます。以上でございます。
○中釜座長
 事務局ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、本日は構成員の先生方にはスムーズな議事進行に御協力いただき、誠にありがとうございました。以上をもちまして本日の会議は終了といたします。ありがとうございました。