第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会(第7回)議事録

日時

令和5年12月27日(水)15:00~17:30

場所

BasisPoint Lab.新橋日比谷口店
東京都港区新橋2-6-2 新橋アイマークビル4F

出席者(五十音順)

構成員
  • 荒井 史男
  • 一ノ瀬 正樹 《web出席》
  • 鎌田 七男 《web出席》
  • 木戸 季市
  • 前 健一 
  • ◎佐々木 康人
  • 増田 善信
  • 山澤 弘実 《web出席》

◎は座長
荒井構成員の「荒」の草冠は、正しくは間が空いている四画草冠

参考人
  • 五十嵐 康人(京都大学複合原子力研究所 教授) 
  • 石川  裕彦(京都大学複合原子力研究所 研究員) 
  • 高橋 秀人(帝京平成大学大学院環境情報学研究科医学統計学ユニット 教授) 

議題

(1) 検証結果について
(2) その他

議事

議事内容
○岡野室長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第7回「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」を開催いたします。
 本日は、構成員の皆様はじめ関係各位におかれましては、お忙しい中お集まりをいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の出欠について御案内をいたします。荒井構成員、前構成員、木戸構成員、増田構成員には本会場にて御参加をいただいております。また、一ノ瀬構成員、鎌田構成員、岩崎構成員、山澤構成員はオンラインで参加いただいております。柴田構成員、永山構成員は欠席となっております。
 また、本日は各ワーキングからの報告の議事がございますので、参考人にも御出席をいただいております。気象シミュレーション及び土壌調査ワーキンググループとして京都大学複合原子力研究所の五十嵐先生、また同研究所の石川先生も会場にて御参加をいただいております。また、京都大学複合原子力科学研究所の高宮先生、広島大学大学院先進理工系科学研究科の遠藤先生、長崎大学原爆後障害医療研究所の松田先生、また同研究所の横山先生はオンライン参加となっております。また、健康影響ワーキンググループとして、帝京平成大学の高橋先生に会場にて御参加をいただいてございます。
 また、前回から事務局に異動がございますので御報告をいたします。
 健康・生活衛生局長の大坪でございますが、公務により遅れての参加となります。
 総務課長の岡部でございます。
 総務課長補佐の原澤でございます。
 申し遅れましたが、私は原子爆弾被爆者援護対策室長の岡野でございます。よろしくお願いいたします。
 本日の傍聴ですけれども、会場の都合などによりマスコミの方のみの傍聴として、会議の模様をユーチューブによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。
 ここで、ユーチューブ配信に関する注意事項を御連絡いたします。この動画、映像及び音声も含みますけれども、こちらは本検討会の公式記録ではございません。公式記録である議事録につきましては、厚生労働省ホームページ内に会議終了後に追って掲載をいたします。また、配信している画面あるいは内容につきましては、この後、会場におられるマスコミの方々の冒頭のカメラ撮り終了時までは使用することは可能です。
 オンラインでの参加の方々に何点かお願いさせていただきます。まず、ビデオカメラはオンにしていただくようお願いいたします。マイクはミュートにしていただきまして、御発言のときのみマイクをオンにしていただきますようお願い申し上げます。御発言時には名前をおっしゃった上で御発言をお願いします。御発言が終わりましたら、マイクをミュートにしていただきますようお願いします。
 以上でございます。
 操作方法等につきまして御不明な点がございましたら、事前に電話番号をお伝えしていると思いますので、そちらにおかけいただいた上で、御案内いたしますので、いつでもお問い合わせいただければと存じます。
 それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでといたします。退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○岡野室長 それでは、早速議事に入りますので、ここからの進行を佐々木座長にお願いいたします。よろしくお願いします。
○佐々木座長 皆様、本日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 早速ですけれども、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料の御確認をお願いいたします。
 お手元に座席表、議事次第、資料1から資料7までと構成員提出資料、計10個のファイルがあるかと存じます。御確認をお願いいたします。
 また、第6回までの検討会における資料につきましては、会場にお越しいただいている皆様に対してとなりますが、別途1冊のファイルをお手元に御用意してございますので、そちらにまとめて御用意しておりますので、適宜御参照いただきますようよろしくお願いいたします。
 資料の不足等お気づきの点がございましたら、議事の途中でも結構でございますので、先ほど岡野より御案内いたしました電話番号等も活用していただき、事務局までお声がけいただければと思います。
 それでは、事務局からの資料の御案内は以上でございます。
 佐々木座長、よろしくお願いいたします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 前回開催から時間が空きましたので、少しこれまでの経緯の説明を私からさせていただきたいと思います。
 本検討会は、被爆者援護法第一種健康診断特例区域という昭和49年、51年に設定された区域について、最新の科学技術を用いて可能な限り検証をし、その在り方等の意見集約をするため、令和2年11月に設置されました。これまで気象シミュレーション、土壌調査、健康調査など、被爆地域の検討に有効と考えられる検証を進めるとともに、本検討会も過去6回開催し、昨年4月には「検証の進捗状況について」という形で、その時点での状況報告と議論を行ってまいりました。
 今回は、気象・土壌ワーキンググループ、健康影響ワーキンググループの検証作業が取りまとまっておりますので、その報告をしていただき、その報告を踏まえた議論をお願いしたいと思っております。皆様におかれましては、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に、鎌田構成員より御報告があると伺っております。鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 毎回、広島からの現状をお伝えしておりますが、お手元にありますように、今年の11月末現在まで5,798件の申請がありまして、認定された数が5,153件で、却下数が268件、この比率は全体の4.9%に当たります。
 なお、これは広島市・広島県のデータでありまして、広島から外に出られた方で黒い雨に当たられておられる方が各都道府県において申請している数は含まれておりません。もし可能ならば、厚生労働省のほうで全体を言っていただければ、全体像がはっきりするだろうと思います。
 以上です。
○佐々木座長 鎌田構成員、ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。
 本日の議事は「検証結果について」と「その他」であります。
 まず、「検証結果について」でありますけれども、全ての資料説明を先に行っていただきまして、会の後半でまとめて議論を行いたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 では、事務局より資料1「前回までの報告について」の説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料1を1枚おめくりいただきまして、「前回までの報告について」というページをご覧いただければと思います。こちらは時点が前回の時点での観点になっておりますので、年度内と書いてあるのは令和4年度内という記載であるとご覧いただければと思います。
 こちらで大きく2つに分けて、これまでも課題を整理していたというものでございます。先ほど座長からも御案内が一部あったかと思いますが、マル1として「原爆由来の放射性物質を確認する課題」として、気象・土壌ワーキンググループのほうで御活動いただいております。マル2の「健康影響が生じているか確認する課題」、健康影響ワーキンググループの2つに分けてこれまで取り組んできていただいているところでございます。
 気象シミュレーションのところは、特に前回までで少し新しい観点というところでは、令和4年度以降の取組として、個別シミュレーションの実施の改善を図る中で、各モデルの精緻化と原爆投下時の気象シミュレーションを構築するというものでございます。
 土壌調査のところでは、矢羽の3つ目でございますが、放射能等の測定・分析によって、区画ごとの土壌に残留する原爆由来の放射性物質の程度について明らかにするといった目的で取組を進めていただいているというものでございます。
 また、原爆投下時の気象状況等に関する文献調査、祈念館における体験調査等については、米国公文書館等が開館後に現地調査が可能であれば実施し、実際の文献入手や翻訳等を行い、精査を行うといったことを今後の取組として当時記載しているというものでございます。
 続いて、マル2の健康影響では、疾患罹患状況等調査の矢羽の2つ目で、策定された調査計画に基づき調査を実施し、データの解析・調査報告をしていただけるように御準備いただくということで、本日ここについても御報告いただくものと認識してございます。
 広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査については、令和3年度で一旦終了しているというところで、こちらは記載のままでございます。
 事務局から、前回までの報告について以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 昨年4月までの状況をおさらいしていただきました。
 続きまして、資料2、3について、気象・土壌ワーキンググループの五十嵐参考人から御説明をお願いいたします。25分程度での御説明をと思っております。よろしくお願いいたします。
○五十嵐参考人 五十嵐でございます。
 今日は私のほうから御報告してまいりたいと思います。
 石川先生が同席されておりますし、あと、先ほど御紹介がありましたように、ネットでメンバーが控えておりますので、チームとして質疑応答に対応してまいりたいと思います。
 次をお願いします。
 調査研究の背景でございます。
 申し上げるまでもございませんけれども、これまで証言、それから体験、また証拠と言われるものがたくさんございます。ただし、これは黒い雨の領域を示す証拠という形でまとまってはございません。そういう意味で、私どもはそこにアプローチするということ。それから、戦後直後の調査をはじめとして、数次にわたって様々な調査がなされてきたのですが、我々に先行する10年ほど前に、広島市と、それから私の先輩の研究者である青山道夫先生が中心になって、HiSoFと呼んでおりますけれども、調査がございました。この中でモデルについて非常に重要な知見がありまして、爆発自体のエネルギーは7掛ける10の13乗ぐらい、それに対しまして火災、大火災は100倍ぐらいの大きさであったということが示されてございます。ここら辺が非常に重要なポイントであるかなと思っております。
 次をお願いします。
 資料が多いので、早口になったり、雑駁な説明になりますが、御容赦ください。
 左から本日御出席になっている増田先生が証言に基づいて取りまとめられたもの、それから、それと一緒に宇田雨域、これは昭和35年のいわゆる原災報に載っているようなものですけれども、当時の広島地方気象台の方たちが一生懸命まとめられた雨域です。それから、広島大学の大瀧先生がHiSoFの時期にまとめられた時間変化も伴った雨域がございます。
 次をお願いいたします。
 それから、私どものアプローチなのですが、今のような雨域をモデルと、それから、それを検証するような形での土壌調査のデータという形で見ていきたいと思っておりまして、過去の行われたアプローチと基本的には一緒なのですけれども、それに対してより先端的な手法を採用しようとしております。20年ほど前の丸山先生、吉川先生の報告では、原爆雲、衝撃塵、火災煙の3つを置きまして、これを流すという形のものでございます。ただし、いろいろな問題があったと。御指摘があったところであります。土壌の調査のデータということですけれども、これもHiSoFのときにまとめられたものですが、いろいろなデータ処理をしても、うまいパターンが見えてこないよということでございます。これは放射性のセシウム137、核分裂生成物を土壌中で見ているというものになります。
 次をお願いいたします。
 調査体制でございます。土壌チームと気象チームでございまして、それを私がまとめているという形になってございます。
 次をお願いします。
 最初に全体結論でございます。大変恐縮なのですが、私ども、昨年度末までに一定の成果は得たわけですけれども、領域推定、精度よく推定するということについては届いていないということでございます。誠に申し訳ございません。
 1番、2番、3番という形であります。
 1番が気象モデルでございまして、一定程度モデルで再現計算できるということは分かりました。ただし、不確実性の評価ということ、不確実性の大きさということ、それをしっかり押さえないといけないということが分かったわけであります。当然と言われれば当然でありますけれども、この不確実性というものを正しく大きさとして評価しないといけないということが明らかになったところです。
 2番につきましては、いわゆる黒い雨が降ったと言われる地域について、証拠というものがあって、およそ年代的な評価も行っているわけですが、それについてもちろん議論がいろいろありますけれども、恐らく降ったということの物的証拠と考えてよいというものを見つけました。これはこれまでの調査にはない達成と言うことができますが、残念ながら領域をカバーして押さえるというところまでは至りませんでした。
 それから、文献調査ですが、役に立った事例はございました。
 次をお願いします。
 不確実性の問題です。不確実性にはまず2つございます。大きく1つは、気象モデルを動かすわけですが、その初期値として使う過去の気象を、大気場を再現したデータセットがありますが、そのデータセットに不確実性が大きいということがあります。UとVというのが東西風、南北風ということでありまして、黒い部分が平均値ということになりますが、そのデータセットの中のばらつきというものが、高層観測がないということによりまして、かなり大きいということが分かります。
 それから、一番右が温度ですけれども、温度のばらつきはあまりないのですが、この僅かなばらつきの差というのが、積乱雲の発達であったり、降水の降り方に大きく波及するということになります。
 それから、下のほうに書いてございますが、モデルの中でも全てのプロセスを考慮できていないという部分がございます。そういった不確実性があるということが改めて実際に計算をしてみて分かったということになります。
 次をお願いします。
 爆発のお話になります。爆発は火球を0.1秒後ぐらいから始めまして、標準大気の中で時間発展を流していくということになります。左の図の赤い線は上昇を表しておりまして、こちらはネバダ等で行われた核実験の観測データです。それによく合っているという具合に考えております。
 また、衝撃波につきましても、よく再現ができたのではないかという具合に考えております。
 次をお願いします。
 このデータに基づきまして、どのくらいの温度差があったら気象モデルの中で破綻してしまわないかということを一番懸念したわけなのですが、80秒後ということであれば間違いなく左から温度分布、衝撃塵の密度分布、原爆由来物質の密度分布という形で与えておりますけれども、こういうものを入れていっても問題が起きないということが分かりましたので、計算を達成することができたということになります。
 物質の分布につきましては、移流拡散モデルを別途動かして得ているということになります。
 次をお願いします。
 これは気象モデルの計算領域を表しております。全球の気象データ、そこからドメイン1と呼ばれる大きさに設定をしまして、次にドメイン2、ドメイン3という形で3段階のネスティングと呼ばれる内側により細かい格子をつくっていくという手法になります。これは気象庁でも使われている手法でございます。
 我々としては最初、2段階ということで考えていたのですが、3段階で一番右の400メートルの格子で計算をするということになります。
 過去の地形のデータということで、そこも非常に細かい領域なので、どこまで利くかということはあるのですが、再現をしているということになります。
 次をお願いいたします。
 次に、気象モデルで当時の再現の客観解析データを使いまして再現計算をしまして、広島ですけれども、実測、原簿とありますが、手書きのものとの比較になります。気温、風速、風向についてはよく一致するということが分かりました。比湿がなぜか合わない部分がございますが、今、検討を続けているところではございます。
 次をお願いいたします。
 街区火災のデータです。これは先ほど述べましたように、現場の爆発よりも熱源としては非常に大きいと。100倍はあるということですので、熱源及び水蒸気源として非常に重要なものです。これは青山道夫先生からデジタルデータを頂く算段になっていたのですが、著者として御活躍だったのですけれども、残念ながら御逝去されましたので、このデータを石川先生が目で読み取りまして再現するということを進めました。
 それから、街区火災への取り込みなのですけれども、モデルへどういった形で入れるかという問題が非常に基本的な問題でございます。発熱量、顕熱、潜熱という形ですけれども、それを都市の人工排熱で都市の温暖化という問題がございますが、そのモデルを暴走させるような形で対応したということになります。
 次をお願いします。
 これがモデルの状況ということで、ごく一例でございます。こちらにつきまして積算雨量と降雨時間が初めて計算できたよということでございます。この分布がどれぐらいの意味を持っているかというのは、検討しないといけないという部分になります。諸条件は左にまとめてあるとおりでございます。
 次をお願いします。
 この中に放射性物質、原爆雲を入れまして、セシウム137のみ追いかけたものになります。1掛ける10の14乗ベクレルということで計算をいたしました。初期の分布は爆発80秒後になります。乾性沈着、湿性沈着それぞれのプロセスによりまして100万個の粒子を発生させて流したということです。左が乾性沈着、真ん中が積算になって、右が湿性沈着になります。湿性沈着よりも乾性沈着のほうがより広い領域にわたっているということが分かりますが、沈着量としては当然乾性のほうが小さいということになります。
 また、湿性沈着はどれほど確かかと言われると難しいのですが、山側で北側の領域の両サイドになりますが、沈着がほんの僅かあります。これは恐らく夕立等の原爆とも原爆後の火災とも関係がないプロセスによって沈着しているという具合には推定できます。ただ、放射性物質が広がっているので、沈着が起きてくるというものになります。ですので、確からしさと言われると非常にまだ難しい部分があって、慎重に検証する必要がございます。積算の沈着量は若干大きい、過剰ではないかということも想像されます。
 次をお願いします。
 達成状況、不確実性の要因ということで、まとめてございます。湿性沈着、乾性沈着の計算例が出ております。
 達成状況としては、初めてしっかり計算ができたよということでございます。
 不確実性の要因につきましては、主に基礎データ、それからもう一つはモデルの中のプロセスということで考えないといけないものがあるということを示しております。
 次をお願いします。
 参考に、様々なデータを並べてございます。当時の8月6日の中央気象台の天気図と類似事例、WRFというモデルを使っておりますが、その気象モデルでの計算結果の比較等も行っております。
 次をお願いします。
 これは増田先生、岩崎先生からのお求めがありましたので出しておりますけれども、8月5日と上で打っておりますが、間違いで8月6日でございます。当時の20CRv3の再解析のデータということになります。気圧の等値線と風、それから着色してありますが相対湿度という形になりまして、かなりよく再現はできているのではないかなと考えております。
 次をお願いいたします。
 これは風のばらつきの様子でございます。地表から上層に向かってばらつきが広がっている。先ほども特に200ヘクトパスカルぐらいで最大になっていたと思いますが、このようなばらつきになってしまいます。ですので、不確実性は上層に行けば行くほど大きいということが分かります。
 次をお願いします。
 次に、現在、全部のプロセスが入っていないわけですが、火災由来の微粒子、あるいは衝撃塵を入れたときにどのような分布になるかという計算の例であります。左が光学的厚さ、水平的な分布を見ております。右が鉛直の分布を示しております。私も意外に思いましたのが、街区火災なのですけれども1万2000メートルぐらいまで上がってしまうということで非常に驚いたのですけれども、非常に高く上がるのだということが改めて分かりました。こういったプロセスをしっかり組み込んでいかないとちゃんとした評価につながらないなということであります。
 次をお願いします。
 次に、土壌調査のほうです。土壌調査のほうは先ほどお話ししたように成果というものは達成できたのですが、様々な困難性がございました。そのために領域全体を我々の土壌調査で明瞭に示すことは、残念ながら昨年度末までに示すことはできなかったということであります。未改変の地点が少ないということ。特に都市部はそういったことが多いと。地権者探索が非常に困難でございました。それから、許認可の手続、特に史跡等をやりたいわけですけれども、なかなかやらせていただけないということがございます。また、セシウムの放射能が非常に減衰しておりますので、バックグラウンドを測っております。福島第一原発事故のおおよそ1,000分の1とか100分の1とかいうバックグラウンドレベルを測ってございますので、3,000測るということで物すごく労力がかかりました。このデータは駄目だなと、改変があるなといって、再度取るということももちろん行ったわけですけれども、時間的にも人的な資源にも限界がございました。
 それから、ほかのより簡便に黒い雨の領域を示せる指標、そういう物質を探したわけでございますが、なかなか見つかりませんで、微粒子状の炭素というものが使えるということは明確に分かったのですが、水銀等は残念ながら駄目でした。そういったこともございまして、この困難性ということの中で、昨年度末の時間が限られた中では届かなかったということでございます。
 次をお願いいたします。
 どのような手法ということを示したスライドになります。30センチ、1センチずつ掘っていくわけですが、こういう金属の板を使いまして、1センチずつ剥いでいくということになります。もちろん小石や根がありましたら、それは除くということになります。
 右の図は、未改変の森林の中でどういう具合にセシウムと鉛210が分布するか、鉛210は天然の放射性核種でありまして、大気から来るものでございます。このような分布になります。上からどんどんインプットされて、半減期が22年でありますので、減っていくのできれいな指数関数状のカーブができます。これによりまして、堆積したおおよその年代も推定できます。
 セシウムですが、1963年にピークがございまして、それからだんだん減っているという形になりますが、下方への浸透、それから拡散がございますので、このような分布になるというところです。黄色で書きましたが、こういうものがどこかにないかということを探したわけでございます。
 次をお願いします。
 これは表でどのようなものを測ったかということをまとめてございます。我々、初期のこの調査、研究が始まった頃に熔融した球状の粒子というものにも着目しましたが、残念ながら原爆由来だけということは想定できませんで、ほかの発生原因がどうもあるということが分かってまいりました。
 次をお願いします。
 広島で100か所、5キロの区画を取りまして、横に10メッシュ、縦に12メッシュ並べてございまして、県境を越えては取っておりませんので、おおよそ110内外の区域において土壌試料を取りました。
 次をお願いします。
 これは長崎でございます。長崎はもう全く途上でございまして、こういう2.5キロのメッシュを置いたわけですけれども、12のメッシュを取ったというところに尽きます。
 次をお願いします。
 土壌調査ではどういう地点を選ぶかということであります。過去の航空写真から始まりまして、年代がいろいろあるのですが、そういったものを見ながら、はげ山になっていないかとか、畑になっていないかというようなことをチェックしながら進めたということであります。
 次をお願いします。
 この場合は、最後の神社ということです。実地に踏査もいたしました。私自身も相当行きまして、どういったところがよいかということで、大木があるほうがよろしいだろうということで、大木周辺、そこは切られていないので、恐らく相対的には改変されていないだろうということで取りました。当初のものでは境内をかなり取ったのですが、境内はきれいに整地されていますので、ほとんど使えませんでした。神社の社叢、鎮守の森というものがかなり有効でございました。また、史跡、山城の跡も有効でございました。
 次をお願いします。
 これは土壌サンプリングの様子です。一層ずつ丁寧に取っているということがご覧になれるかなと思います。これは現地で写真撮影、土色帳と言うのですが、こういったものを参照しながら写真撮影をして、記録をする、重量を量る、それからこれを送りまして、私どもの研究所でさらに前処理を実施します。
 次をお願いします。
 この作業も非常に大変な作業でありまして、セシウムが入っていないと、せっかく30層きれいに測っても意味がございません。なので、途中からですけれども、スクリーニングということをやるようにいたしました。それから、ガンマ線照射またはオートクレーブの滅菌を当てまして、微生物や病原体をなるべく死滅させるというような処理もしております。2ミリの孔径で、これが標準手法でありますが、篩いまして、U8と呼ばれるこのくらいの大きさの容器に均一に詰めまして、それを発送するということになります。
 ただし、この後お示しするのですが、たくさんの機関でいろいろな装置で測っております。なので、物差しが全くそろっておりませんので、これをそろえるということをやっております。IAEAの試料でそろえてございます。
 次をお願いします。
 これだけたくさんの機関の先生方、業者の方々に御協力をいただきまして、測定をいたしました。昨年度、3,000試料の測定を達成したわけでございます。
 次をお願いします。
 これは技術的な方法なので省略いたしますが、鉛とかセシウム、こういったガンマ線のスペクトルというものに基づいて測ってございます。
 次をお願いします。
 スペクトルデータの点検です。これも1つずつやっておりまして、誤りがないようにということの点検でございます。
 次をお願いします。
 たくさんの機関に協力いただいて測っておりますので、度々測定に関する技術会議を催しまして、進捗状況の管理も併せて行いました。また、改変、未改変の判断を我々だけで担うのではなくて、測っていただいた先生方の中で、ボランティアでワーキンググループというものをつくって、条件を決めていったということになります。
 次をお願いします。
 これは未改変の事例ということになります。赤が大気から来る過剰鉛と呼んでおりますが、そういったものの濃度の分布、30層になります。それから、黒がセシウムの分布になります。上層からなるべくきれいに減っていくものを選んでございます。最上層で有機層があったり、何らかのちょっとした攪乱があると濃度が下がっているのかなと思いますが、基本的にいずれもきれいにカーブを描いて減っていって、なおかつセシウムの鉛直の分布があるということです。
 次をお願いします。
 改変された事例です。特に左の2つの事例は、客土ないし覆土されたようなものです。全く何も出てきません。せっかく時間をかけて一生懸命測っても、全くの無駄になってしまったという事例でございます。
 次をお願いします。
 ここで炭、微粒子状の炭素というものが有効であったということですけれども、なかなか測れなくて、このような顕微鏡の写真が一番左に出ておりますけれども、この部分は、目で光学顕微鏡下で検出するという大変な作業であります。そうして鉛直のプロファイルが得られるということです。丸をつけてあるものはセシウムの濃度のピークと何らかの関係がありそうな部分でありまして、微粒炭の個数濃度の最大値がここら辺にあるというものになります。
 次をお願いします。
 広島2地点、長崎1地点ですけれども、セシウムのピークの下側、05-03Aというものが真ん中にありますけれども、これが一番チャンピオンのデータでございますが、セシウムの濃度ピーク、2つ目のピークというものがあって、そこに微粒炭の極大、個数濃度の極大がかぶってきて、過剰鉛で求めました堆積速度から推定した1945年というものがございますが、これが一致するというものです。こういったデータが出たという事例はこれまでございませんので、その意味ではこれは非常に大きな達成であったと思われます。しかし、これを全ての領域に適用するということは達成できておりません。
 次をお願いします。
 モデルによって、先ほどのセシウムの分布と、全部セシウムは溶けて土の粒子と分配をするというような条件で拡散をさせてみたのですが、おかしなことが起きていないと。100年いって崩れてしまうのですが、70年ぐらいでは100ミリ、10センチよりも上の層にセシウムが全部溶けるという条件でもとどまるということになります。
 次をお願いします。
 これは熔融した微粒子です。ウランの同位体比を測ったものですけれども、この当時、2つぐらいの色を呈したものが原爆由来ではないかと考えられたのですが、赤線で引いてあるウラン同位体比をはるかに超えていますので、天然のものではないという判断をしていたのですが、その後、分析が進みますと、どうもこれは違うのではないかというような話に今はなっております。この時点では、まだ可能性はあるのかなと思っておりました。
 次をお願いします。
 これは同様にウラン235をターゲットとした分析ですけれども、中性子を当てると分裂する物質を探しているということです。05-02Aの地域で取りました土壌では、右の写真にあるようなクラスターと呼ばれるウラン235の塊と思われるものが出ておるのですが、現在まだ検証を進めているような状況でございまして、大きな領域で適用できているわけではございません。
 次をお願いします。
 水銀でございます。水銀、セシウム、水銀、セシウムと左から並べてございます。水銀はセシウムとある意味相関する部分もあるのかなと思っていたのですが、全くそういう状況を呈しませんでしたので、残念ながら指標としては使えないということが分かりました。
 次をお願いします。
 炭素の分析は非常に手間がかかりますので、これを自動化しようという試みも行っております。
 次をお願いします。
 指標物質の探索ということで、広島平和記念資料館から様々な資料を頂きまして分析を行いました。このうち金屏風と言っているのですが、金ではなくて、銅と亜鉛の合金の箔でございました。非常に薄い箔です。数ミクロンもないような箔でございます。左の写真で黒い雨の跡が見えますが、これは最近やられたものですけれども、この跡、オタマジャクシ状のものを切り抜いて、上から光を当てると真ん中の写真、下から光を当てますと透けているということが分かります。これは溶けているということになります。実はどなたも注目されてこなかったのですが、どうも硫酸や硝酸を含んだ酸性雨だったのではないかという疑いが出てまいりました。これは今後追求したいと思っております。
 次をお願いします。
 ウランの同位体の分析でございます。過去に、黒い雨の資料の中で、ウランの同位体が異常であると。すなわち、原爆由来のウランを含んでいるとされたものを、より精密な手法でもって測ってみましたが、いずれもネガティブでございました。あいにく検出できなかったということです。
 次をお願いします。
 ここからデータベースでございます。こういった結果を含めまして、我々のコミュニティーであったり、この検討会の先生方にもデータをご覧いただけるようにしたいという具合に考えております。後世に残すという意味でも、デジタル空間にこういったものを残していくということは非常に重要ですし、なおかつサンプルもアーカイブしたいという具合に考えております。
 次をお願いします。
 機能向上も図っております。
 次をお願いします。
 分析機能の強化ということでございます。こういったことを狙っているということであります。
 次をお願いします。
 それから、最後に、広島大学、長崎大学では、それぞれ過去に収集されました資料を、今の仕組みに合わせましてデータを入れてこうということでやってございます。
 次をお願いいたします。
 これは長崎大学のものでございます。
 最後、まとめがございます。このように全力で取り組んでまいったわけですが、残念ながらという部分があるということを、申し上げにくいのですが、ここで述べさせていただきます。
 以上でございます。大変雑駁になり、すみませんでした。
○佐々木座長 五十嵐参考人、ありがとうございました。
 続きまして、資料4、5につきまして、健康影響ワーキンググループの高橋参考人から御説明をいただきたいと思います。やはり25分程度でお願いいたします。
○高橋参考人 健康影響ワーキンググループの長をしております帝京平成大の高橋秀人です。どうぞよろしくお願いいたします。
 次のスライドをお願いいたします。
 健康影響ワーキンググループに求められている課題はこのとおりでございます。第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会におきまして、ここにありますように、背景・目的として、これまで蓄積されてきたデータを最大限活用、最新の科学技術の活用を含めた新たな調査を追加的に行う、可能な限りの検証を新たに行い、それらの検証の進歩、成果を踏まえ、第一種健康診断特例区域の在り方等について意見を集約する。
 これまでの意見として、健康影響調査について、交絡要因の影響を除外できるように研究計画、コホートの選び方、その数、対照の選び方、交絡因子の扱い等をしっかり企画・立案して実践すべき、院内がん登録を積極的に活用すべき、地域のがん罹患状況だけでなく全国との比較も必要、内部被ばくに関する放射線医科学の科学的知見も踏まえて検討すべき、そして健康影響ワーキンググループについて、相談支援事業受診者の疾患罹患状況の調査、選定された調査実施主体において、広島県・市の協力を得つつ、実現可能な調査方法を検討し、必要な手続を踏まえて、事業利用者に対する疾病罹患状況調査を実施する、調査の実施、解析、報告に当たっては、放射線医学、統計、がん登録の専門家などから成る健康影響ワーキンググループの体制を速やかに構築し、これまで検討会において出された意見も踏まえて調査を行うと課題をまとめております。
 これを受けて、相談支援事業受診者の疾患罹患状況の調査、選定された調査実施主体において、広島県・市の協力を得つつ、実現可能な調査方法を検討し、必要な手続を踏まえて、事業利用者に対する疾患罹患調査を実施する、調査の実施、解析、報告に当たっては、今申し上げたように出された意見も踏まえて調査を行う課題の解決に向けて、健康影響ワーキンググループが発足いたしました。
 次のスライドをお願いいたします。
 健康影響ワーキンググループは、左のメンバーで発足し、岡山大学に委託し、右のように、どのように研究を進めるか、広島県・市とデータや対象者の住所情報等について協力・連携し検討いたしました。
 その後、倫理審査承認後、個人情報保護に配慮した対象者への連絡方法などを検討し、質問紙調査、面接調査を実施し、面接調査のことをワーキンググループで検討し、報告書を提出したという流れになります。
 次のスライドをお願いいたします。
 研究概要(対象者と調査項目)について、次のように立案しました。本事業は令和3年、4年に実施されたもので、ちょうど新型コロナによる移動制限などが実施された時期になります。また、対象者が77歳を超えている高齢者となりますので、回答しやすさ、時間がかからないように、いろいろ配慮しております。
 まず、質問紙調査、電話調査に基づく健康状況調査を実施します。これは広島平成20年原爆体験者等健康意識調査を参考に、同調査で明らかにされたPTSDなどの精神的要因を踏まえ、うつ、PTSD及び放射線関連疾患11類型について検討いたしました。
 対象者は、黒い雨相談事業者800人、広島平成20年調査(宇田小雨地域)850人程度、比較対照としまして広島平成20年調査(非体験群)3,000人程度、比較対照2、広島平成20年調査(宇田大雨地域)750人程度となります。
 「拡大要望地域におられる黒い雨の降雨を体験された対象者が、降雨を体験されていない非体験群と比べて健康事象において差があるのか」、及び「降雨を体験された体験群の大雨地域群と同様な結果であるのか」を明らかにすることを目的としております。
 疾患有無調査に関し、うつ、PTSDについては、K6、PCL-4と、放射線関連疾患11類型については対象者のかかりつけ医への調査を実施いたしました。
 さらに、電話調査に同意いただいた方に、半構造化面接により放射線11類型の有無の確認とトラウマ体験、PTSD等の状況を確認いたしました。
 また、以前実施されました平成20年原爆体験者等健康意識調査について、今回のデザインに合わせて再解析し、今回の結果を補強いたしました。
 続いて、他のアプローチとして、内部被ばく等の科学的知見に関する文献研究、そしてがん登録のアプローチを実施しました。
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 ここで言うところの放射線関連疾患11類型とは、スライドの赤で囲んだ11類型でございます。
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 研究体制は、本事業を岡山大学で受託いただき、本健康影響ワーキンググループと研究班が連絡を密に取りながら実施する形で進めました。
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 それでは、事業の結果をスライドに記載されている順に報告いたします。
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 まず、過去研究のレビューです。
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 平成20年原爆体験者等健康意識調査の再解析についてです。本研究の目的は、原爆体験、黒い雨の体験による心身への健康影響を明らかにすることです。データは広島県・市から、当時解析に使用したものと同じものを、個人情報等を削除の上、提供いただいております。
 対象者は、A群として未指定地域群(宇田小雨地域ほか)、B群、非体験群(黒い雨非体験群及び原爆非体験群)、そしてC群、指定地域群(宇田大雨地域)となります。
 対象群としてA群、比較対照群は2つで降雨曝露のない非体験群としてのB群及び降雨曝露のある指定区域群としてのC群となります。
 調査項目は1、心理的ストレス評価尺度K6スコア、総点、5点以上割合、9点以上割合、2としてPTSD症状評価尺度としましてIES-Rスコア、これは全部で88点で総点25点以上割合、3としまして現在治療中の病気(放射線関連疾患11類型)の3種です。
 解析は、A解析としまして、「未指定地域群と非体験群との比較(5VS6、7)」、A群VSB群について差があるのか、雨が降った曝露とそうでないところについて差があるのか。B解析として、「未指定地域群と指定地域群との比較(5VS4)」、これはA群とC群、共に雨が降っている群ですので、これについて同等か、差がないのか、それぞれT検定をベースに、統計解析ソフトR4.32を用いて解析しております。同等かどうかについては、20%差を許容する基準としております。
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 結果です。
 まず、K6についてです。K6は心理的ストレス、抗うつ、不安感に関する評価尺度で、気分の落ち込みや不安に関する6項目に0~4点で回答するもので、合計5点以上で心理的ストレス相当、合計9点以上で気分障害や不安障害の可能性あり、そして13点以上で重症精神疾患の可能性ありとされております。
 A群の未指定地域群とB群の非体験群との比較について、大枠の最右列をご覧ください。丸のついている部分、すなわち、a)総点、b)5点以上割合、9点以上割合の全てについて有意な差が認められました。
 続いて、A群の未指定地域群とC群の指定地域群の比較について、大枠で右から2番目の列となりますが、その中の右のところで丸がついている部分は、総点5点以上割合、9点以上割合になりますが、これも全てにおいて同等性が認められております。
 まとめますと、A群の未指定地域群とB群の非体験群の比較で差があり、かつ、A群の未指定地域群とC群の市指定地域群との比較で同等と認められたものは、K6の全ての指標、総点、5点以上割合、9点以上の割合となります。
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 続いて、PTSDの尺度でありますIES-Rの結果です。IES-RはPTSDに関する評価指標で、心的外傷の侵入症状、回避症状、過覚醒症状、睡眠障害に関する22項目に0~4点で回答し、合計25点以上でPTSDの可能性ありとされます。A群の未指定地域群とB群の非体験群の比較について、大枠で最右列のように、丸のついている部分、IESスコアの総点、それから25点以上の割合、この2つにおいて有意な差が認められました。
 続いて、A群の未指定地域群とC群の指定地域群の比較において、大枠で右から2番目の列となりますが、丸のついている部分はありませんでした。総点、25点以上の割合について、同等性は認められませんでした。
 まとめますと、A群の未指定地域群とB群の非体験群の比較で差があり、かつ、A群の未指定地域群とC群の指定地域群の比較で同等と認められたものは、IES-Rにはありませんでした。
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 続いて、放射線関連疾患11類型です。ここでは心の疾患と婦人科系の疾患も追記しております。A群の未指定地域群とB群の非体験群との比較について、大枠最右列のように丸がついているのは、放射線関連疾患11類型では脳血管障害、循環器機能障害、運動機能障害、潰瘍による消化器機能障害、それぞれを伴う疾患の4つ、これに加えて心の機能障害の疾病に差がありました。
 A群の未指定地域群とC群の指定地域群の比較について、大枠の右から2番目の列のように丸がついているものは、放射線関連疾患11類型では造血機能障害、肝機能障害、細胞増殖機能障害、内分泌機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、潰瘍による消化器機能障害の7つ、これに加えて心の機能障害、婦人科系機能障害を伴う疾病に差がありました。
 まとめると、A群の未指定地域群とB群の非体験群の比較で差があり、かつ、A群の未指定地域群とC群の指定地域群との比較で同等と認められたものは、放射線関連11類型では、ここに紫でマークしております脳血管障害を伴う疾患、循環器機能障害を伴う疾病、潰瘍による消化器機能障害を伴う疾病及び心の機能障害を伴う疾病となりました。
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 続いて、内部被ばくによる健康影響に関する科学的知見の整理(文献研究)の結果でございます。
 黒い雨との関連から、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書(2013年版、2020/2021年版)に記載されている既知の知見に加えて、特に内部被ばくの健康影響に関する最近の知見(2020年以降)を整理いたしました。詳細は報告書にまとめておりますが、2020年以降の放射線内部被ばくの健康影響に関する論文は1件で、「低線量の内部被ばくは、チェルノブイリ原子力発電所周辺に住む住民の消化器官に影響を与えていない可能性がある」と結論づけております。
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 続いて、本事業の本題であります黒い雨相談支援事業者の健康影響調査でございます。
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 まずは疾患有無に関する質問紙調査です。上の表は各群の調査票の送付数及び有効回答数、回答率です。対象者が全て77歳以上の高齢者であり、またコロナ禍の中の調査ということで、回答率は残念ながら低い値になっております。
 今回の目的は、拡大要望地域において、降雨曝露と健康影響に関連があるかを明らかにすることですので、相談者に限らず拡大要望地域として他の地域と比較することを主眼に報告することとし、検定の回数を最小限とするため、相談支援群との比較は記述的なものにとどめております。
 対象群としてのA群、比較対照群は2つで、降雨曝露のない非体験群及び降雨曝露のある指定区域群となります。A群が相談支援地域群プラス未指定地域群、B群が非体験群、C群が指定地域群となります。
 対象群、比較対照1、比較対照2は、過去研究のレビューにおける3群の設定と同様に、それぞれA群、相談支援地域群プラス未指定地域、B群、非体験群、C群、指定地域群としております。
 解析は、ロジスティック解析を中心に、統計解析ソフトR4.2.2を用いて実施しております。
 対象者は、調査票送付数が2,494人、有効回答数570、回答割合が22.9%となっております。
 性別はA、B、Cそれぞれ男性55.4%、60.1%、58.5%とほぼ同等、被爆時曝露年齢12歳以上、調査時89歳以上はA群が5.8%、B群が13.2%、C群が14.6%のように、A群がやや少ない傾向となっております。
 年齢については、被爆時曝露年齢が12歳以上、調査時年齢89歳以上は、A、B、C群それぞれ5.8、13.2、14.6%と、A群が年齢の若い傾向にあります。
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 K6について結果を表にまとめました。A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とB群の非体験群の比較について、右の列をご覧ください。色がついている部分、すなわちAの総点、5点以上割合、10点以上割合、13点以上の割合、全てにおいて有意な差が認められました。
 続いて、A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とC群の指定地域群の比較については、p値は右のほうの左の列になります。色のついている5点以上割合、10点以上割合、13点以上割合について差が認められませんでした。
 まとめると、A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とB群の非体験群の比較で差があって、なおかつ、A群の相談支援地域群プラス未指定地区群とC群の指定地域群との比較で差がなかったものは、K6、5点以上割合と10点以上割合、そして13点以上の割合となります。
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 PCL-4について結果を表にまとめております。PCL-4は、被災体験に対し、トラウマ反応に関する4項目に1~5点で該当するもので、合計12点以上でPTSDの反応を疑うとされております。
 A群の相談支援群プラス未指定地域群とB群の非体験群との比較において、右の列をご覧ください。色がついている部分、すなわちAの総点、Bの12点以上割合について有意な差が認められております。
 続いて、A群の相談支援群プラス未指定地域群とC群の指定地域群の比較については、右のほうのp値の左の列になります。12点以上割合について、差が認められませんでした。
 まとめると、A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とB群の非体験群の比較で差があって、なおかつA群の相談支援地域群プラス未指定地域群とC群の指定地域群の比較で差がなかったものは、PCL-4の12点以上の割合となります。
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 続いて、放射線関連11類型等に関する結果です。かかりつけ医からの回答率は15.4%であり、これは対象者から質問紙調査の回答率が22.7%であることを考えると、回答された方の70%がかかりつけ医で回答されたことに相当する状態になっております。
 性別は、A、B、C群のそれぞれで男性54.8、60.0、62.7%とほぼ同等、被爆時年齢については12歳以上、調査時89歳以上は5.9%、13.6%、10.2%と、A群が少ない傾向となっております。
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 放射線関連11類型の結果でございます。ここでは心の疾患と婦人科系の疾患も追記しております。A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とB群の非体験群の比較について、右の列のように、放射線疾患11類型では少し多いのですけれども、肝臓機能障害、細胞増殖機能障害、内分泌機能障害、脳血管障害、循環器機能障害、視機能障害、運動器機能障害、潰瘍による消化器機能障害等の8つに差がありました。
 まとめると、A群の相談支援地域群プラス指定地域群とB群の非体験群との比較で差があって、かつA群の相談支援地域群とC群の指定地域群との比較で同等と認められたものは、放射線関連疾患では内分泌機能障害を伴う疾患の1つとなります。
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 これは平成20年の調査と比較したものでございます。本研究と平成20年調査に共通して相談支援地域群と非体験群で差があって、相談支援地域群と指定地域群で差がない要因はK6となっております。
 本研究のみにて相談支援地域群と未指定地域群と非体験群で差があり、相談地域群と指定地域群で差がない要因はPCL-4(13点以上割合)と原爆関連11疾患「内分泌腺機能に関連する疾患」となりました。
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 続いて、2.2の電話調査の結果でございます。性別は、A、B、C群それぞれ男性59.6、60.8、61.5%とほぼ同等、被爆時年齢12歳以上は、調査時89歳以上になりますが6.4、11.4、13.4%のように、A群がやや少ない傾向になっております。
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 トラウマ体験については、A群の相談支援群プラス未指定群とB群の非体験群との比較については、質問1の「トラウマ体験の有無」、質問3の「恐怖,無力感,戦慄を伴う反応の有無(当時)」について差があり、A群の相談支援群とC群の指定地域群の比較については、質問の1、3、5について差がないことが明らかになりました。
 非体験群の比較で差があって、指定地域群との比較で差がなかった変数は、質問1の「トラウマ体験の有無」、質問3の「恐怖,無力感,戦慄を伴う反応の有無(当時)」となりました。
 PTSD症状については、A群の相談支援地域群プラス未指定地域群とBの非体験群の比較について、1cの「興味」1fの「余命」、2aの「睡眠」、2dの「神経」に差があり、A群とC群の比較については、最下の2段に記載している変数に差がないことが分かりました。1aの「回避」から2fの「支援」まで分かりました。
 非体験群の比較で差があって、指定地域群の比較で差がなかった変数は、1cの「興味」と1fの「余命」となりました。
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 平成20年実施の面接調査との比較です。上の表が質問時の回答者数及び回答率、右上の表はその中で電話調査に協力いただいた人数と平均年齢等になります。平成20年調査と極めて類似した結果になっております。ともに対象者のほとんどが非PTSDでありましたが、未指定地域(相談支援地域)のみにPTSDが見られたこと及びその割合が3~4%になったことが共通でございます。
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 続いて、がん登録を用いた研究に関する検討です。
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 第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会において提案されました「拡大要望地域の『要医療性』に関する検討」研究(以下、検討会提案研究)について、がん登録の立場から研究計画及び実行可能性の点を検討いたしました。これは、拡大要望地域の「要医療性」は、すなわち放射性降下物(いわゆる「黒い雨」に当たったこと)の健康影響(がん罹患)を明らかにする事と捉えております。
 これに関し、検討会提案研究をはじめ、記述的研究の実施を検討しましたが、先行研究(コホート研究)より踏み込んだ根拠の提示が可能な調査の実施は困難と判断しております。困難な理由としては3点、1として放射性降下物曝露からの期間が長期間(78年)経過しており、情報の収集及び精度に課題があること。2としまして、曝露発生以降の対象地域への人口の流入が少なからず無視できなくあること。それから、3すでに死亡した住民が対象者から除かれるというような、重要な結果変数が偏っていることなどが挙げられます。
 また、がん登録推進法の下、いわゆる顕名データのリンケージを研究目的で利用する場合、対象者の同意が必要となっております。この際、課題解析において同意が得られた対象者のみの研究では代表性に問題が生じる点、また、交絡やバイアスを少なくするために講じる手段についても同様に情報が偏っておりますので、これらから検証が困難と結論いたしました。
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 考察です。
 まず、質問紙調査において、放射線関連11類型の結果について、「未指定地域群」と「非体験群」で差があり、「未指定地域群」と「指定地域」で差がない要因として、原爆関連11疾患の中で「内分泌腺機能障害を伴う疾病」が得られた点についてです。これは本研究の対象者に恐らく糖尿病のような一般的な生活習慣病が多く含まれていた影響ではないかと考えております。
 一般論としまして、放射線被爆と内分泌疾患の関連については証明されておらず、加えて過去に「広島では放射線被ばくと糖尿病の罹患率の間に、一部の被爆線量域で関連性が示唆されたが、潜在的な交絡因子が存在する可能性が考えられ、因果関係を確認するにはいたらなかった」という報告があることから、そのように考えております。
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 続いて、放射線被爆と精神的な影響についてでございますが、(1)としまして数多くの研究で、放射線被爆と精神的な影響について報告されてきております。
 また、K6に関しましては、福島の研究ですけれども、原発事故(2011年)以降、低下(改善)しているものの、日本の先行研究における割合と比較すると依然として高い値を示しているという研究であるとか、PCL-4に関しましては、原発事故の直後と比較し、2016~2019年の調査では大きく低下しているものの、1割近い方はトラウマ反応を持っているなどの知見があり、今回の結果は、精神疾患との関連はこれらの結果と同様であると考えております。
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 まとめでございます。過去研究のレビュー(本研究の新規性・困難点の明確化)について、1.1の平成20年原爆体験者等健康意識調査の再解析では、「未指定地域群」と「非体験群」の比較で有意差があって、かつ「未指定地域群」と「指定地域群」との比較で同等性が認められた要因は、K6(総点/5点以上/9点以上)及び放射線関連疾患11類型等の一部(脳血管障害を伴う疾病、循環器機能障害を伴う疾病、潰瘍による消化器機能障害を伴う疾病、こころの機能障害を伴う疾病)であることが示されました。しかし「78年前の降雨状況」と「現在の有病状態」との関連は、情報の精度の限界により、本研究ではこれ以上の言及が困難であると解釈しております。
 それから、1.2による内部被ばく等による健康影響に関する科学的知見の整理(文献研究)では、2020年以降の放射線内部被ばくの健康影響に関する論文は1件で、「低線量の内部被ばくは、チェルノブイリ原子力発電所周辺に住む住民の消化器官に影響を与えていない可能性がある」と結論づけられていることも分かりました。
 続いて、黒い雨相談支援事業者の健康影響調査について、2.1としまして質問紙・電話調査(疾患有無に関する調査)を行い、ここからは、本事業で実施した質問紙・電話調査の解析結果は、平成20年原爆体験者等健康意識調査の再解析結果と類似しており、平成20年調査の報告内容を補強するものとなっていること、未指定地域群(広島県・市による拡大要望区域)において、黒い雨を浴びたことによる放射線被爆の直接の健康被害を確認することは困難であること。しかしながら、指定地域群と同等、それ以上の精神的な影響があったということが明らかになりました。
 次のスライドをお願いします。
 放射線関連11類型につきましては、内分泌腺機能障害を伴う疾病を除き、未指定地域群と非体験群の間に有意な差が確認されませんでした。調査方法の違いのほか、回答数が少なかったことなどから、平成20年の調査結果を補強するには至りませんでした。一般論としまして、放射線被爆と内分泌疾患については証明されておらず、過去に「広島では放射線被爆と糖尿病の罹患率の間に、一部の被爆線量域で関連性が示唆されたが、潜在的な交絡因子が存在する可能性が考えられ、因果関係を確認するにはいたらなかった」という結果があることから、本研究の対象者にも糖尿病患者が多く含まれていた影響ではないか、すなわち内分泌腺機能障害を伴う疾病でやや差が見られたのは、被爆の直接的影響よりもむしろ生活習慣などの地域差が要因となっている可能性があると考えております。
 2.2の原爆被災トラウマに関する電話面接調査結果とその解析につきましては、今回の調査におけるPTSDの診断結果は平成20年調査と極めて類似していること。平成20年調査よりも有病率は低いけれども、これはさらに14年が経過した調査のために、症状が回復した、あるいは強い症状の対象者が死去された等の理由が考えられました。うつについては過去の知見と同様の結果を呈し, トラウマ体験については未指定地域において、指定地域と同様のサポートが受けられなかったことにより、健康不安が増大し、PTSD症状の回復が遅れていた可能性が考えられます。
 そして、3のがん登録を用いた研究に関する検討からは、検討会で提案されましたがん登録を用いた疫学的研究により、放射性降下物の健康影響(がん罹患)を調査することは、様々な課題があり困難と結論いたしました。
 次のスライドをお願いします。
 最後に、本事業のまとめでございます。
 本事業で実施した質問紙・電話調査の解析結果は、平成20年原爆体験者等健康意識調査の再解析結果と非常に類似しており、平成20年調査の報告内容を補強するものになりました。
 未指定地域群(広島県・市による拡大要望区域)において、黒い雨を浴びたことによる放射線被爆の直接の健康被害を確認することは困難であったものの、指定地域群と同等、それ以上の精神的な影響があったことが示唆されました。未指定地域において、指定地域と同様のサポートが受けられなかったことにより、健康不安が増大し、PTSD症状の回復が遅れていた可能性があるかと考えます。
 他方、検討会で提案されましたがん登録を用いた疫学的研究により、放射性降下物の健康影響を調査することは、様々な課題があり困難であると結論いたしました。
 以上で発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
○佐々木座長 高橋参考人、ありがとうございました。
 資料の説明の途中でありますけれども、大坪局長がお見えになりましたので、ここで御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○大坪局長 公務の関係で遅れて参りまして、大変申し訳ございません。
 本年7月4日に佐原の後任で健康・生活衛生局長を拝命しております大坪でございます。
 これまで第一種健康診断特例区域につきましては、拡大の方向も含みながらも、最新の科学的な知見、こういったことを踏まえて、鋭意検討を進めていただいてきたところでございます。本日は、健康影響ワーキング及び気象・土壌ワーキングの先生方にも進めていただいておりました検討結果を御報告いただくということで、大変ありがとうございます。もう既に議論が進んでいるところかと思います。この報告も受けていただいて、これから御議論いただくところだと思いますが、本日も忌憚ない御意見をいただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 ありがとうございます。
○佐々木座長 大坪局長、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、資料6、7について事務局から御説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料6、資料7について御説明させていただきます。
 資料6は縦置きの「検証結果のまとめ」という資料になってございます。こちらについては冒頭の資料1で御説明した項目に沿って、「1)原爆由来の放射性物質を確認する課題」の1ページ目に気象シミュレーションと土壌調査の結果について、1枚おめくりいただいて2ページ目の「原爆投下時の気象状況等に関する文献調査、祈念館における体験記調査等」について、それぞれ計測結果のまとめを記載してございます。また、その下のほう、「2)健康影響が生じているか確認する課題」の「疾患罹患状況等調査」について、先ほど高橋参考人から御説明いただいた内容についてと、次の3ページ目に「広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査」ということで、それぞれ結果をまとめてございます。その結果をさらに抜粋して、今回新たに報告していただいたことを中心に取りまとめた資料が次の資料7になってございます。
 資料7をご覧いただければと思います。「検証結果の報告について」ということで、1枚目おめくりいただいて、右下に1と書いてあるページでございます。「これまでの検証結果の報告」というところでございますが、第一種健康診断特例区域の在り方等の検討に向けて、気象・土壌ワーキンググループ及び健康影響ワーキンググループそれぞれにおいて、可能な限り検証を進めていただいた結果として、気象シミュレーションについては、先ほど来の参考人の先生方からの説明と重複いたしますが、一定程度広島における黒い雨の予想沈着状況等について再現が実現できたところですが、計算結果の不確実性は相当程度大きく、領域判定を気象モデル計算によって行うことは現在の技術をもってしても依然困難性を伴うことが明らかになったということ、土壌調査については、その地点が戦後未改変であって、かつ黒い雨が実際に降ったということであれば、その領域を判別可能な指標が存在し得るというところまでは示されたものの、未改変地点を探すといったこと等が本質的に難しいという部分もあるので、精度の高い領域の推定は困難であると一旦結論づけていただいているというものでございます。
 また、原爆投下時の文献調査や体験記調査等については、過去に米国で収集・解析された諸データを含む報告書や体験記調査等によって、先述の爆発モデルの検討・検証や気象モデルの再現の試み等々の検討の促進に寄与したと伺っているものでございます。
 続いて、マル2の「健康影響が生じているか確認する課題」については、疾患罹患状況等調査のほうで、先ほどの御説明とも一緒でございますが、未指定地域群において、黒い雨を浴びたことによる放射線被爆の直接の健康被害を確認することが困難であったものの、指定地域群と同等ないしそれ以上の精神的な影響があったということが示唆されたというものでございます。
 カルテ調査については、冒頭の御報告もありましたが、令和3年度に既に調査が実施されたものでございますが、こちらは雨への曝露の有無による健康影響の違いは報告されなかったと一旦結論づけられているものでございます。
 事務局から資料7の御説明は以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、五十嵐参考人、高橋参考人及び事務局から御説明をいただきましたことにつきまして、議論をしていただきたいと思います。御発言のある方は挙手をお願いいたします。
 増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 構成員の増田でございます。
 大変膨大な資料を検討せざるを得なかったというか、それを全部読むということは本当に大変なことで、十分検討する暇がございませんでした。したがって、まだ全部に対して意見を申し上げることができませんが、主にシミュレーションの問題について、私の見解を述べさせていただきます。
 五十嵐先生をはじめとして、多くの研究者の方が協力して、いろいろな角度からシミュレーションの問題を検討されていることに対しては、敬意を表したいと思いますが、モデルだけでも非常にたくさんあるので、一体これのどの部分をどこで使っておられるか、率直に言って分かりにくいという感じがしました。したがって、間違った指摘をせざるを得ないかもしれませんが、それはお許し願いたいと思います。
 まず、前から私たちの検討会の中でお願いしていたのは、今度新しくモデルに採用されたアメリカのNOAAがやっている再解析データで、初期値をつくるということでした。その問題については、検討会の中でも何回も、少なくとも初期値がどういう分布か見せていただきたいということでした。今回初めて、たしか資料2の13ページか14ページにそれが載っています。やっと、ある意味では初めてお目にかかったという状態です。シミュレーションの場合は、何といっても初期値が一番重要だと思うのです。広島原爆の場合は、1945年8月15日の初期値がどのような形で再現されているかということが、決定的ではないかと思うのです。そういう点で、今回初めてそれを見せていただきましたが、13ページ、まず風速の東西方向と南北方向、そして気温の図の値の分散だと思うのですが、分散の誤差がかなり大きいものになっています。そういう点で言うと、本当にこれだけでははっきり言えない、果たして本当にそれを使っていいのかどうかということさえも分からないと思います。私たちは、前からお願いしていたのは、少なくともサーフェスだとか、500ヘクトパスカルだとか、100ヘクトパスカルなどの等高線でもいいのです。あるいは温度の分布、特に必要なのは水蒸気量の分布だと思うのですが、そういう物理長を見せていただかないと、本当にこれを初期値として使えるかどうか、統計的にはこういう形になっていると言われても、その場合に、この分散の中のどこをお取りになってお示しになったのか、それがよく分からないのです。アンサンブルがたくさんあるわけですから、そういう中でどれをお使いになったかが、まず私には分からないのです。この論文の中では、わざわざ赤がつけてあったので、恐らくこれをお使いになったと思いましたが、この中にはそういうことが書いてございません。したがって、非常に重要な初期値をどう表現するかということが、ある意味では決定的だと思います。
 WRFのモデルでも、いろいろなモデルが提示されていますが、最終的にはWRFのモデルが使われたように書いてあり、実際、その結果が出ています。9時間までの予想が出されております。しかし、これもパターンとして9時間後に一体どうなっていたのかということが分かるようにしていただかないと、本当によく理解できないと思います。そういう意味では、いわゆる誤差を一生懸命示されて、それを小さくなさろうという努力は分かるのですが、少なくとも目で見てはっきりとわかる、例えば特に水蒸気量が正確に出ているのか。先ほどの図で9時間までのものを見ましても、これはどのレベルのことなのかよく分からないのです。あるいは全てのレベルでそういうことになっていたのか、よく分からないのです。かなり水蒸気量が大きく、実際の値と離れていることが示されております。これは黒い雨をやる以上は、一番重要な気象要素ではないかと思うのです。まずそれには、非常に気にかかったところです。
 まず、何とかモデルと書いてありましたが、いわゆる原爆の最初の火の玉から大きくなっていく。80時間後まで、シミュレーションされておられるようですが、最初から80時間までの出し方というのが、実際の原爆が本当にそういうことで表現できるかということは、率直に言って私は疑問を持っています。
○佐々木座長 増田構成員、恐れ入りますけれども、ほかにも発言されたい方がおられると思いますので、できるだけ簡潔にお願いいたします。
○増田構成員 そういう点で、似たものが出てきています。これでは本当の意味のシミュレーションにならないと思います。
 最後に1つだけお話し申し上げたいのは、1992年から広島県と市が主催された「黒い雨に関する専門家会議」、そこの吉川モデル、あるいは丸山・吉川モデルはほとんど同じ取扱いをしていると思います。すなわち、原爆雲と衝撃塵とを分けて与えている。確かに原爆雲と衝撃塵は、最初は別々にできたが、上昇する過程で、周りの空気が真空にならないようにその後を埋め、一体となって上昇し、圏界面に達して、キノコ雲になるのです。ところが、吉川モデルや丸山・吉川モデルでは、原爆雲と衝撃塵とが存在するある特定の時間だけを初期値に与えて、その空気粒子の移動などから「黒い雨」雨域を求めています。しかし、これは実際と違うと思いますので、もう一度質問したいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人から何か御発言をいただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 五十嵐です。
 時間もなかったことですので、雑駁な御説明しかできなかったのですけれども、私たちは現在、可能な範囲で再現を目指しておりまして、丸山・吉川との違いは、非静力学のモデルでありますので、しっかりとした上昇流、積乱雲を再現できるようなモデルになっております。そういう意味では、領域をしっかり狭めて、400メートルのサイズで再現をしているので、気象モデルとしては妥当なモデルだと私どもは思っておりますけれども、ただ、爆発モデルをそのまま気象モデルに入れることは到底できませんので、その部分については別途、爆発モデルをつくって、その形態とか温度分布、密度分布を与えて、なじませた上で時間発展を見るという形になっております。
 現代的な手法を使っているという点については、90年代のモデルに比べまして変わらないとおっしゃるのですが、それは御指摘には当たらないのかなという具合に思います。ただ、衝撃塵については、完全な再現は今でも困難でありますので、街区の分布を正確に与えて、そこからどのように衝撃波で土壌あるいは建物から破砕物が巻き上がるかということを再現するということですので、現代でも相当難しくて、我々が今かけた以上の時間をかけないと、そういったモデルは構築可能だと思いますが、それは到底届かないと。我々以外にも専門家を求めないといけないということでございますので、爆発モデルの専門家というのはなかなかお断りを受けて、我々も協力が受けられないという状況でございますので、限度がございます。我々が今届く範囲では、しっかりとやったという具合に考えております。
 石川先生、どうでしょう。特に比湿の問題です。合っていないのは事実なのです。
○石川参考人 実は比湿がどうして合わないのかという話は、つい先頃、原因が分かりました。人工排熱、街区火災の熱を与えるために街区モデルを使っておりますけれども、そこのパラメータ設定の問題でそういうことになっているということが分かっているという進捗がございます。これは今年度のお話なのですけれども、そのように疑問点に関しては検討を進めているところであります。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 鎌田構成員、お願いいたします。
○鎌田構成員 教えていただきたいのは、13、14、15のページを見ていますと、方向性というものが、地図の分布が大体北側に向かっています。従来言われている北西方向というニュアンスがちょっと出ていないのですけれども、これはモデルだからしようがないと考えていいのかどうかというのが1点。
 それから、炭素の微粒子とセシウムの分布がほとんど同じであったということ、とても驚きであるし、貴重なあれだと思うのですが、それぞれの存在形態はどうだったのでしょうかということです。セシウムはセシウムだけで、乾燥系として落ちていっている。一方、木片といいますか、微粒子も独立でいったか。単独同士なのか、あるいは、微粒子のほうにセシウムがついていたのか。その辺が最後のまとめのところの言葉にも響いてきますので、教えていただきたい。その2点です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 これも五十嵐参考人から御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 最初の問題でございます。増田先生の御質問も絡むのですが、計算で出している例というのは、アンサンブル平均と言われるものの計算結果でございます。全てそのような計算結果になっているということです。誤差がついているということです。なので、鎌田先生が御質問のとおりでありますけれども、やや違った方向に向いているのではないかというのは御指摘のとおりであります。
 これはモデルの不確実性も絡みますが、モデルのプロセスをいじってしまうとまた変わってしまいますので、現状の気象庁のモデルで使われているような雲のケース、そういうパラメータで今、動かしていますので、その条件で降らせますとこのような分布になるということです。これが合っている、間違っているという問題ではなくて、あくまでこういう例が計算されるということです。ですので、私たちはこれが独り歩きするのは非常に警戒しているということでございます。それは委員の先生方、十分御了解いただけるかなと思います。
 それから、なぜ炭素とセシウムが一緒に土壌中にいるのかということについては非常に難しい問題でございまして、それぞれ発生源が当然違うわけですが、混合した過程が起きているであろうと。私たちは、観測側では土壌観測では見ることができない、それはむしろモデルの中でそれぞれ発生が違うものがどのように混合したかを追跡しないといけないということになります。これはまた計算をやり直さなければいけませんので、そこは非常に難しい。
 一般的には、セシウムも溶けやすい形態と溶けにくい形態が恐らくあったであろうと。溶けにくいものは、そのまま残った可能性がございます。炭素の微粒子は、生物学的にも化学的にも安定ですので、降ったままで残っているだろうという具合に推測します。
 セシウムについては、溶けましたものは一旦溶けて、粘土鉱物の層間、雲母のようなものは層の間に、シリカとアルミナの間に入っていくわけですけれども、そういうところで存在して、固定されている。これは福島の事例でも同様ですので、そういうプロセスが重なった上で、たまたまと言うと語弊があるかもしれませんが、非常にローカルなクローズインと言っていますけれども、そういうもののセシウムと炭素がかぶって残っているということです。また、年代指標もおおよそ1945年という具合に推定されたということになります。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 山澤構成員、お願いいたします。
○山澤構成員 山澤です。よろしくお願いいたします。
 気象と土壌のほうについてコメントと質問をさせていただきたいのですけれども、まず、モデル計算については、現状やれる先端的なアプローチで計算をやられたと私は拝見いたしました。かなり御苦労されたかなと思っております。
 ただ、結論としては、一番出だしのところ、この事業のスタートポイントで想定された計算をやってもやはり何も言えないでしょうねという結論のところに来たと認識しております。もし私の認識違いがあれば御指摘ください。
 結論、最後の資料6にも書いてあるのですけれども、不確かさがかなり大きいというところがあって、その部分は今回の資料では私としては全く読み取れなかったというのがありまして、資料6では、不確かさの検討について慎重に実施したのですけれども、それがこの資料には見えてこないと。示された一例という形での沈着分布であるとか、あるいは降水の分布であるとか、それが気象のアンサンブルの平均を使った1個の沈着計算結果なのか、それとも個々の気象でそれぞれ拡散計算を行って、拡散計算結果のアンサンブルなのかというのも分からないのです。さらに、アンサンブルだとして、例えば沈着量分布についてどういったばらつきが出ることになったのかというところが一番重要なポイントだと思うのですけれども、その点について、まず御説明いただければありがたいなと思います。
○佐々木座長 山澤構成員、ありがとうございました。
 これも五十嵐参考人から。
○石川参考人 まず、アンサンブルのメンバーで全部計算したのかということではなくて、もともとのデータのNOAAの計算では、計算条件が少しずつ異なる80ケースの計算を実施した、それらの計算をある種の平均操作に似た手法で総合化して再解析データを作成しています。それを使って計算しています。
 実はアンサンブルに関しては、基になったアンサンブル計算のデータを何例か特別に提供して貰い、それを使った計算していまして、全然違う結果が出ているというのもあります。令和4年度の段階では、それを全部、80例はやっていません。データを集めてというのは、その後の今年度の作業の中で進めていることであって、また次回の報告会で御説明できるかと思うのですけれども、進めていますけれども、まだ整理がついていない状況になっているところです。
 質問に関しては、NOAAが80のアンサンブルでつくったデータでまとめて作製した平均したデータを使って計算したのが、報告書に書いている結果です。
○山澤構成員 分かりました。そうしますと、これは一例という取扱いであって、不確かさが大きいですよというのは、ちょっと振らした計算をやったときに、結果の差がかなり大きかったので、ということを根拠にして述べられているということでしょうか。
○石川参考人 参考資料に示した風のばらつきを、80のアンサンブルのプロットと赤いプロットをした図に見られる風のばらつきに加え、雨の降りやすさに関するばらつきがあります。CAPEと言いまして、積雲対流の起こりやすさの指標がありまして、そのデータもありますが、それを眺めたりすると、非常に雨の降りやすい状況とか、なかなか雨が降らない状況というのもあります。風のばらつきとCAPEのばらつきの組合せによって、実際には全部やってみなければ分からないのかもしれませんけれども、かなり大きいばらつきがありそうで、これを観ていく必要があります。
○山澤構成員 大体分かりました。ということは、沈着の分布の不確かさの出どころというのは気象データの設定、先ほど増田先生がおっしゃったような気象データの設定の仕方であるとか、そのようなものがまず大きいという理解でよろしいわけですね。
○石川参考人 はい、そのように考えております。
○山澤構成員 分かりました。
 それから、土壌のほうなのですけれども、全体で3,000サンプル分析されたという御説明があったのですが、地点数としてはどうだったのかがこの資料から分からなくて、グリッドに引いたというのは分かるのですけれども、1グリッドの中に1地点があるという理解でよろしいでしょうかという部分です。その辺りはいかがでしょう。
○五十嵐参考人 グリッド、5キロ四方のものですけれども、その中に1地点あれば、そこでそのメッシュは未改変のデータが得られるという判断をしています。今回、ここのスライドには記載しておりませんが、昨年度末で33か34メッシュだったと思いますけれども、未改変という具合な判断ができたところです。全体をカバーするにはとても密な分布になっておりませんので、我々としては領域を判断することができないという結論になってございます。
○山澤構成員 分かりました。そういった情報のほうがかなり重要かなという気がしますので、出していただけるとありがたいなと。
 それから、先ほどチャンピオンデータとおっしゃった鉛直プロファイルで、炭素とセシウムの極大が見えてきていて、鉛もちゃんと見えているというデータがありましたけれども、こういったデータは、この3点ぐらいしかないということでしょうか。それとも、先ほど33点そういう土壌があったけれども、結構見られるということなのか、その辺りの感触と、それから、セシウムの分布が示されています。鉛でかなり年が分かるという感じなので、セシウムについて、これをこのまま見るよりも、例えば半減期補正をしたような形で解釈すると、また別の見え方がしてくるような気もするのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
○五十嵐参考人 ありがとうございます。半減期の補正ということなのですが、現在得られている鉛直プロファイルの中には、大半が1963年をピークとするグローバルフォールアウトのセシウムになっております。ですので、あえてこの年代に沈着したという具合に確証を持って半減期補正するというのはむしろ誤りを拡大してしまう可能性があるのかなという具合には思っております。
○山澤構成員 基本的なデータとしてはそうだとは思うのですけれども、今回、昭和20年時点で降ったセシウムがどう見えるのだろうと。一方で、土壌の各層について、鉛のほうで大体ここはどれくらいの古さだというのはある程度出せますので、参考として、その古さに応じた、深さに応じた半減期補正みたいなことを施してあげると、違った見え方、昭和20年時点でのセシウムをより明瞭に見えるような形で表示できるのではないでしょうかといったような話なのです。
○五十嵐参考人 ありがとうございます。検討してみたいと思いますが、鉛直の分布を濃度で表すのがよいのか、インベントリーで表すのがよいのか、あるいは正規化すべきだったのかとか、いろいろな検討点がございまして、その中の一つとして考えるというのは可能性があるかなと思います。当時、78年前に降ったものはもう15%ぐらいしか残っておりませんので、そういう意味では非常に難しいことを今やっているということです。
 それから、炭素なのですが、先ほども述べましたけれども、マニュアルの分析でございます。なので、非常に手間がかかって、100のメッシュのカバーというのがとてもとても届いていないということになります。しかも、今年の3月末の時点でのデータで御報告していますので、この3つの地点というのが、現状最もよく我々が想定していた分布、鉛直の分布が見えるというところでございます。
○山澤構成員 分かりました。ありがとうございます。
○佐々木座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 岩崎構成員、お願いいたします。
○岩崎構成員 どうもありがとうございます。東北大学の岩崎でございます。
 最先端のモデルを構築して、黒い雨発生に対する大変興味深いシナリオを提示していただいたと理解します。関係者の御尽力に敬意を表したいと思います。
 私の1つのお願いは、これだけのシミュレーションをやったので、降水発生に関するメカニズムをもう少し明確に記述できないかなということを思っております。それは1つには、原爆の熱であるとか、火災の熱、気象にとって外部的な熱が、条件つき不安定の大気の中でトリガーとなって降水が発生していたという印象を持っております。そういった解釈が正しいかどうかということに関して、4時間も続いたということですので、降水が発生し、継続したメカニズムに関して1つの物理解釈をしていただければ、不確実性を減らすことができるのではないかなと思います。
 それを考える上では、シミュレーションの降水の時間発展をつぶさに見ると理解できる。あるいは、原爆の熱、それから火災の熱を除去した実験と比較してみれば、どのようなメカニズムでこの雨が降ったのか理解できると思います。メカニズムについて、もう少し踏み込めないかということが1点です。
 それから、先ほど山澤先生もおっしゃっていましたけれども、現在の気象学においても、2~3キロの精度で降水分布を時間も含めて正しく当てることは基本的に非常に難しい。シナリオは提示できたとしても、降雨域をきちんと決めるということは、そのさらに先の難しさがある。そういったことを念頭に入れて、どうすればいいのかということを考えていただければと思いました。
 降水の不確実性の資料を提示してほしいというのは、山澤委員と同じ意見でございます。例えば降水の時間とか降水の分布といったものに関して、一番その違いを明瞭に見られるようなアンサンブルメンバーを提示していただくとか、もちろん分散を計算していただくとかでもいいのですが、再現結果のばらつきを示す資料があると、80メンバーも予測したのですから、あるといいと思いました。
 第4点目が、先ほど外部加熱という言い方をしましたけれども、それも相当不確実性があるので、そこの不確実性に関しては、原爆の熱が1つの定数で与えられてしまっていますし、1つの分布で与えられてしまっていますし、町の火災は1つで与えたのですか。その辺の推定誤差に関しても、難しいと思いますが、簡単なコメントで結構ですのでいただければと思いました。
 以上です。よろしくお願いします。
○佐々木座長 岩崎構成員、ありがとうございました。
 五十嵐参考人から御発言をお願いいたします。
○五十嵐参考人 まず全体的な立場なのですけれども、もともと非常に困難なことをやりますというスタートで始まってございます。なので、我々としては、できるところはどこまでかということを示すということで進めてまいったということはまず第1点であります。難しいということは本当に当然のことでありまして、そこは承知していたということを述べたいと思います。
 最後の御質問だけ私、簡単に答えられると思うのですが、街区火災は時間変動を与えてございます。1時間であったか2時間であったか、間隔は忘れましたけれども、時間変化は与えてございます。
 石川先生、お願いします。
○石川参考人 雨の部分ですけれども、細かいデータ、時間間隔でデータを残してありまして、かつ、降水粒子の種類ごとの空間分布はデータが残っていますので、それを解析していくことによって、何らかの解釈を得ることは可能かと思います。
 それから、外部加熱の不確実性に関しましては、例えば原爆熱源の空間パターンを変えるのは難しいかもしれませんが、強さを若干増したり、減らしたいというやり方は可能かとは思います。これは原爆に限ったことではなくて、応用といたしまして、大気中に人工熱源があったときに何が起こるかというのは、広い意味でこれから検討が必要な課題かとは思っております。
 大体こんなことでよろしいでしょうか。
○岩崎構成員 1点だけ質問です。結局、原爆の加熱とか火災が、降水のトリガーとしてどの程度重要な役割を担っていたかということに関して、シミュレーションを見た立場から何か感じたことがあれば教えてください。
○石川参考人 まず、先ほどから雨は当てにくいという話が出ております。夏の夕立がどこに降るかというのは非常に当てにくいのです。ところが、今回の場合にはそこに熱源があるということが分かっていますから、夏の夕立を当てるのに比べたら、場所は大体ここだということは分かります。そういう意味では、夏の夕立よりもシミュレーション的には明瞭な結果出やすいという状況だと思います。
 あと熱源に関しては、原爆の熱源と市街地の熱源を入れたり外したりするような比較計算をしております。その結果、相対的に熱量の大きい街区火災の熱源が、非常に大きくコントリビュートしておりまして、原爆の熱源だとあんな広い範囲には雨が降らないということは報告書に比較の結果を示してあったと思いますけれども、そういう結果が得られています。
 降雨モデルの一番難しいところは、大気中のエアロゾルがどう作用するか。実際には細かい粒子が一緒に上昇して、それが凝結核となって雨ができるというプロセスがあるのですけれども、今回お見せしたシミュレーションでは、それは入っていないシミュレーションをしています。でも、一部でそれを入れたシミュレーションでWRFchemというモデルを使って実施した結果も報告書に含めてあります。エアロゾルを考慮することによって、特に原爆起源の雨の降る場所が少し変わってくるとか、そのような結果が出てきそうだというようなことを調べているところであります。エアロゾルを考慮することによって、雨のパターンが少しずつ変わってくるという効果もありそうだというような調査をしております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 それでは、一ノ瀬構成員にも御発言いただいて、その後で増田構成員に御発言いただきます。よろしくお願いいたします。
○一ノ瀬構成員 私は、健康影響についての高橋参考人の御発表に対して確認させていただきたいのですけれども、事業のまとめのところに簡潔に要点が記されているので、そこを参照しますと、未指定地域群において黒い雨を浴びたことによる放射線被爆の直接の健康被害を確認することは困難ではあったけれども、精神的な影響が指定地域群と同等にあったというのがこの調査の結果だと思うのですが、その後に、未指定地域においては、指定地域と同様のサポートが受けられなかったことにより健康不安が増大し、とあります。PTSD症状の回復が遅れていたと。私は哲学系の研究者なのですけれども、こういう場合、原因と結果が問題になると思うのですけれども、健康不安が増大し、精神的な影響があったというのは、黒い雨による影響とみなすべきなのか、それとも黒い雨による影響とみなすという根拠はもちろん一定程度あると思うのです。黒い雨を浴びなかったならばこういうことは起こらなかっただろうということは言えると思うので、一定の根拠はあると思うのですけれども、ただ、それはかなり派生的なことで、黒い雨を浴びたということに対する社会的な印象とか、理解とか、そういうものがまず間に介在しておりますし、さらにはこの事業のまとめを見ますと、後に指定地域には一定のサポートが得られたのに、未指定地域においてはサポートが受けられなかった。そのことによって不安が増大したとなると、黒い雨を浴びたということからかなり離れたところが原因だと思いますので、原因、結果ということで言いますと、健康不安が黒い雨が全く無関係だとは言えないと思うのですけれども、かなり遠い因果系列といいますか、因果的依存性の関係にあると思うので、この辺りをどのように国として、あるいは日本の社会として受け止めるのかということを一応明確にしておいたほうがよろしいのではないかと思いました。その点、ちょっと確認できればと思って発言いたしました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 高橋参考人から御発言をお願いします。
○高橋参考人 高橋でございます。御質問ありがとうございました。
 今のところは非常に重要な点だと我々も考えているところでございます。雨が降ったということは因果のどこかには入ってはいるのですけれども、それがこの結果に届いているかどうかというところは分かりません。ただ、言えるのは、国のほうで指定地域にはいろいろ行政的なサポートがあって、そこを受けられる人と受けられない人で、あの人は受けられたのに私は受けられないとか、そういうことが背景にあって、精神的なものですので、そういうところに出てきているのではないかと捉えております。なので、今の御質問の黒い雨がどうかというところに関しては、直接的には分かりませんとしか言いようがなくて、その後の行政的なところによって、むしろそういうところのほうが可能性としては高いのではないかなと考えているところでございます。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 一ノ瀬構成員、どうぞ。
○一ノ瀬構成員 そうだとすると、かなり線引きが難しいような気がいたします。つまり、そういう形で健康不安が増大した場合、その増大した方の御家族にもそういう影響が出たり、お子さんがいた場合に性格形成とかそういうことにも当然不安というのは波及していく可能性があるので、そうするとどこかで線引きをしないと因果的な系列というのはずっと続いてしまうので、どういう形で捉えるかというところは明確にしておいたほうがいいのかなと思いました。これは明らかに健康不安が増大した今の高橋先生の御発言からしますと、行政が行き届いているか行き届いていないかというところに原因があるように思いますので、黒い雨というものからかなり離れたところの問題になっているような気がするのです。その辺り、いかがでしょうか。
○高橋参考人 これはもう黒い雨とかそういうことを離れて、線引きというところで、どこの地域でも、どういうふうにやったとしても、行政的サポートを受けられる人と受けられない人のところで、受けられない人は受けた人に対して、不安ではないですけれども、精神的にいろいろと感じるところはあるのかなと、そういうことでございます。確かにおっしゃるとおり線引きは大事なのですが、この線引きは、境界におけるサポート授受に関する精神的なことから、その対応を事業の中で考えた場合には、線引きが際限なく広がってしまうということがありますので、これはどういうふうに考えるかというところはこの検討委員会の中での話になるかと思います。言えることは、今回の結果、心理的なところで、何らかのトラウマであるとかK6の不安というのが出てきているというところは、黒い雨とは直接的な関連というより、行政的な線引きによる精神的なものによるというような私、先ほど可能性が高いような話をしましたけれども、私どものワーキンググループではそのように考えているということでございまして、これが確実と言えるかどうかというと微妙なところもあります。なので、私たちのワーキングの考え方としてはそういうふうにまとめさせていただいたということで、あとはそれをどう考えるかというのは、検討委員会の判断といいますか、そういう整理になるかと思います。
 以上です。
○一ノ瀬構成員 ありがとうございました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 度々発言して申し訳ありませんが、原爆の雨には黒い雨のほかに、上空の風とは無関係に四方八方へほぼ30キロ圏内に拡がるキノコ雲から降る雨があることは、私の研究だけではなくて宇田先生も指摘されていますし、実際にアンケート調査をやった結果では、広島市の南のほうにも雨が降っています。
 先ほどから私が初期値の問題を非常に重視しているのは、吉川モデルや中丸・吉川モデルは、この事実を無視しているからです。すなわち、彼らはキノコ雲から降る雨を無視して、最初に原爆雲と衝撃塵を置いてシミュレーションをスタートさせています。しかし、彼らは最初に原爆雲と衝撃塵の雲を置いてシミュレーションをやっているので、ここで示されている降雨図のように、北西の方向にだけしか雨が降っていないのです。しかし、実際には、前述したように南の方にも雨が降っているのです。そういう点で、イニシャルの与え方というのは重要だと思うので、今一度、どういう初期値にすれば、原爆雲のキノコ雲からも雨が降るようなシミュレーションができるのかどうか、その点が知りたくて、再度質問させていただきました。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人から御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 私どもが想定している前提というのが、全く根拠がないかとか、あるいは完全に誤っているという具合には捉えてございません。先生の言われているように、南のほうで雨が降ったというお話はあるかなとは思いますが、バックグラウンドの計算で南に降るのかどうか、それの初期値、先ほどお見せした気象のアンサンブルのデータですけれども、そういうものがぶれる中では当然一定程度出て来ると思いますけれども、ただし、そういったものが確実にあったかどうかは、現状、我々が証明する手段をむしろ持っていないという具合に思います。
 証言は証言として尊重すべきかとは思いますけれども、本当に降ったかどうかはなかなか難しくて、我々の現状の過程で原爆雲からキノコ雲が形成され、衝撃塵や火災でさらにそれが強化されるというシナリオが間違っているという御指摘ではないという具合に認識しているのですけれども、よろしいでしょうか。
○佐々木座長 増田構成員、どうぞ御発言ください。
○増田構成員 それは先ほども言いましたように、原爆雲が成長していって、実際に、圏界面まで達して、四方八方に拡がり、半径にして30キロぐらいの範囲で雨が降っているのです。実は2010年、PTSDに関して検証する検討会がございました。その検討会の中で、結局地域を拡大しなくてもいいという結論になったのですが、その中でワーキンググループの方が、アンケートの結果、30分以内にいわゆる爆心近くと、それから20キロも離れたところに同時に雨が降っている、こんなことはあり得ないからということで、アンケートの信憑性が問題になって、そのアンケートは年数がたっているから、信憑性が非常に低いということで、結果的には被爆地域拡大はされなかったのです。こういう事実があるのですから、雨の領域をシミュレーションしようとするならば、空気が上昇した後が、真空にならないようにするために周りから空気が集まってきて、次々と上昇して、最初のころの原爆雲と衝撃塵の雲の差がなくなり、最終的にキノコ雲が圏界面まで達するのです。ところが、少なくとも先ほどの吉川さんの話もそうですが、このモデルでは、ある高さのところに原爆雲と衝撃塵の雲を置いておくということになっているのですから、そういう点では、私はこの方法ではシミュレーションは実際の原爆の場合の降雨域のシミュレーションになっていないと思っているので、発言させていただきました。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人はよろしいですか。
○石川参考人 原爆起源のものは十分分かっていますから、そこに置いて計算しています。衝撃塵の計算の準備はしていましたけれども、令和4年度の段階では計算するに至っていないという段階でして、組み合わせた計算を走らせれば、ある程度は衝撃塵も含めた計算ができるかと思います。圏界面のところにプルームが達して、少し広がって、一部が成層圏に突入する様子は計算結果で見えていますけれども、圏界面に上がったものがどこまで横方向に広がったかはあまり詳しく見ていないです。申し訳ございません。今の御指摘を参考に、手持ちのデータをもう一回眺め直してみたいと思います。
 どうもありがとうございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 今、鎌田構成員からお手が挙がっております。鎌田構成員、御発言をお願いします。
○鎌田構成員 ありがとうございます。
 健康障害のほうの質問もよろしいでしょうか。
○佐々木座長 お願いします。
○鎌田構成員 健康障害で、内分泌機能障害という格好で、これがやり玉に上がって、生活習慣病のあれだろうという結論になっていますけれども、内分泌機能障害の中に、大事な甲状腺機能低下症というものがあります。これは原爆症認定の場合も、例えばがんとか白血病な場合には原則的に認定する。それから、甲状腺機能低下は積極的に認定するという類いに入って、非常に大事なことなのです。それが今回の分析では内分泌機能障害と言って、イコール糖尿病という格好で、ということは生活習慣病だろうという話になって、話を展開していっているのですけれども、私はこの言葉さえ出てきていない、甲状腺機能低下症という言葉が出ていないということは非常に残念です。それが問題になるのは、聞き取りの調査票でどのように病気を聞いたのか、11疾病をどのように聞いたのか、あるいは電話の場合にどのように尋ねたのかということが非常に大きくなるのです。というのは、初めから11疾病があって、この中で丸をつけなさいというアンケートなのか、自分が持っている病気を全て書き出しなさいという格好での健康障害の質問なのかという基本的なところになってくるのですけれども、私が聞きたいのは、内分泌機能障害ということの中に、甲状腺機能低下症というのが分離されるような格好で解析されたかどうかということを聞きたいです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 高橋参考人からお願いします。
○高橋参考人 御質問ありがとうございます。非常に重要な点だと私たちも捉えております。
 この11類型についてどういうふうにデータを取ったかということについてお話しさせていただきますと、まず対象者が高齢者になっております。本来であればカルテの履歴を集めて調べたかったのですけれども、年数もたっており、カルテは大体5年程度で廃棄されるということですので、これはちょっと難しいということが分かりました。
 直接本人に聞いたとしても記憶が曖昧になるということもあります。そこで患者の現在のかかりつけ医からはある程度信頼した情報が得られるだろうと考えました。しかし、かかりつけ医も過去のことは知りません。そのため、対象者の現在の症状に対して、糖尿病も全部含めた形で内分泌症状があるかどうかということをお聞きし、それをかかりつけ医のほうから回答していただいております。そのため、かかりつけ医の現在の患者に対する見立てという形でデータを解釈する必要があるかと思います。
 そのように考えた場合に、甲状腺機能障害というものが表に出てくるかというと、圧倒的に糖尿病が多いですので、そちらのほうに隠れてしまうだろうと私たちは考えております。ご質問の点は、大変重要な観点であるのですけれども、そこまでは掘り出せない、そこまでは言及できないなということで、糖尿病性ということで考察させていただきました。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 ほかに御発言ありますでしょうか。
 私から事務局に伺いたい点が1点あるのですけれども、米国での文献調査というのは、私の理解では、今までコロナのこともあって調査ができない状態が続いていたように理解しているのですが、その点はどういうことになっておりますでしょうか。
○原澤課長補佐 事務局でございます。お答え申し上げます。
 今、御指摘いただいた米国公文書館等における調査についてでございますが、今おっしゃっていただいたように、これまで新型コロナウイルス感染症の点でその調査を受け付けていなかったという状況でございますが、今年になってからその調査の受付がエントリー開始になったというところでございます。そのため、委託事業として私どものほうで調査の開始をしているところでございます。具体的には公募の手続を経て、今年の10月に文献調査を実施できるような企業との委託契約を行った上で、着手をしていただいているという状況でございます。他方で、調査を希望する方からのエントリーがかなり多数来ているということのようで、順番待ちをしている状態となっているので、まだ調査の開始時期及び完了時期については見通しが立っていないところでございます。
 事務局からは以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 まだ御発言があるかと思うのですが、時間の制約がございますので、木戸構成員からできるだけ簡潔にお願いをいたします。
○木戸構成員 簡単に。これはこの委員会が黒い雨の問題となっているのでしようがないのかもしれませんけれども、原爆が、核兵器が人間に何をもたらしたかと。まさに人類が核兵器によって殺されるのか、あるいは核兵器をなくすのかと。それで人類を守るかという、それが問われているわけで、そういう意味では、厚労省がそういう問題を真正面から議論する場を、私たちは厚労大臣との定期協議とかいろいろやっているのですけれども、本腰を入れてというか、国民を守るのだという立場から、局長もおいでになっていますけれども、ぜひ検討していただきたいという具合に思います。強く思います。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 これまでにも何度か話題になっているのですが、この局長諮問委員会の付託されている役割とちょっと離れているところが難しいところだと思いますが、事務局のほうでこれに関して何か御発言ありますか。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 貴重な御意見として承らせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 この議論につきましてはここまでにさせていただきたいと思います。
 それぞれのワーキンググループの先生方におかれましては、意欲的に検証していただきましたところ、入手可能なデータに限界があって、被爆地域の線引きを行うに足る結果を得ることは現在のところできておりませんが、有意義な試みであったと思っております。
 それでは、本日欠席の柴田参考人からの御意見を資料としてお配りしておりますので、事務局から御説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 構成員提出資料というつづりの鎌田構成員からの提出資料の次にございます柴田構成員提出資料のほうをご覧いただければと思います。時間の関係もございますので、かいつまんでポイントを御説明させていただきたいと思います。
 1枚おめくりいただいて、2ページ目とページ番号が振ってあるところでございます。柴田構成員から、事前に事務局から送付した資料に基づき幾つか御意見を頂戴しているという状況でございます。
 まず2ページ目はマル1で「原爆由来の放射性物質を確認する課題について」ということで、気象・土壌ワーキンググループに関するコメントでございます。○の2行目ぐらいのところからでございますが、既存の書物として原子爆弾災害調査報告集というものがありその第一分冊において放射能分布と土壌調査のデータ等があるということです。これを先生方の気象モデルの検証の補助情報として利用できないものかというようなコメントでございました。
 続いて3ページ目、1枚おめくりいただければと思います。こちらのページは「健康影響が生じているか確認する課題について」というところでのコメント等でございます。
 「1.過去研究のレビューについて」のところから順に、ポイントとしては平成20年の調査の再解析と当時の再解析で使用されたものとデータが同一かどうかの明記と、次の○ではK6スコア、IES-Rについての得点分布を示していただけないかということ。あとは○の3つ目で検定の確からしさとか解釈についてのコメントがございます。
 「2.黒い雨相談支援事業者の健康影響調査について」ということで、質問紙調査及び電話調査についての背景や質問紙の様式について示してほしいということと、あとは相談支援群と未指定地域群との間の差について調べていく必要がないかという言及を頂戴しているというものでございます。
 また、3.のがん登録のところは、がん登録が個別の同意が必要であるということで、事実上リンケージがなかなか難しいということについて、研究者側からの反論とかコメントといったものはないかというコメントでございます。
 最後の「その他」のところについて、課題全体としてこれ以上なかなか有効な調査を行うことは困難ではないかというようなコメントを添えていただいているというものでございます。
 事務局からの御紹介は以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 高橋参考人か何か御発言はありますか。
○高橋参考人 回答をスライドにまとめておりますので、先ほどのスライドの37枚目をお願いできますでしょうか。
 まず、柴田構成員からいただいた初めの質問でございますけれども、下段が今回の解析で用いましたK6の5点以上、9点以上のそれぞれの分布でございます。上段が10点で区切ったときの分布でございます。当然、10点のほうが5から9のところが5から8と少し変わりますので、そこのカテゴリーに属する人数が少し増えております。
 これによってどう結果が変わるかでございますけれども、次のページをお願いできますか。ちょっとビジーですみません。数字は下のところに特出しました。結論を申しますと、結論は変わりませんということでございます。後で資料のほうを見ていただければと思います。
 それから、IES-Rに関して、IES-Rには下位尺度としまして侵入症状、回避症状、それから過覚醒症状という3つの下位尺度がありまして、それぞれ定義はIES-Rの質問項目の数字がそこに書いてありますけれども、それぞれの番号を全部足し合わせたものが下位尺度の点数になります。その分布をここの表にまとめております。まず侵入症状についてA群は未指定地域群です。そこと非体験群のB群、それから指定地域群がC群でございますけれども、それぞれ平均点が9.8、5.5、8.6となりました。標準偏差はそれぞれ0.332、0.120、0.309、平均点でB群、つまり非体験群が一番低く、また、ばらつき具合でB群が小さくなっております。これはほかの結果と同様の結果になります。
 それから、スライド41枚目、次のスライドをお願いします。
 回避症状につきましても同様に、A、B、Cのそれぞれの平均点が9.3、5.4、8.6で、標準偏差が0.321、0.125、0.334となり、B群が平均点でも低く、ばらつき具合もB群が小さくなっているということで、ほかの傾向と同じくなっております。
 それからもう一つ、過覚醒症状につきましても、A、B、Cのそれぞれの平均点が6.0、3.0、5.3となり、標準偏差がそれぞれ0.2499、0.082、0.240となり、平均点でB群が低く、また、ばらつき具合でもB群が小さくなっているということで、それぞれ3つの尺度につきまして、総点同じような傾向になっているというような結果でございます。
 ほかの質問についてですが、様々な検定が行われており、データトルチュアリングになっていないかということに関しましては、例えば放射線関連11類型について、それぞれの検定をしておりますので、ここでは11回検定を行っております。検定というのはご存知のようにそれぞれ95%の信頼度ですので、信頼度が下がるのではないかという御指摘でございます。これに関し、本研究では、各項目につきまして2種類、未指定地域群と非体験群について、それぞれ検討を行っております。この2種の検定は、事前に設定した必要最小限の課題であり、合理的であると。したがって、データトルチュアリングにはなっていないと考えております。
 ちなみに、データトルチュアリングの定義はイングランドジャーナルにありまして、2つのタイプ、優位的な関連を見つけるまでデータを精査するということと、またはデータを仮説に適合させるように操作するというようなことが書かれてありますが、このいずれにも該当しないということでございます。
 しかしながら、放射線関連11類型、13種について独立に検定しており、全体の結果の信頼度が下がっているのは事実でございますので、そこは解釈するときに注意が必要です。
 その一方で、探索的な研究では、多重性の検討はしなくてもよいというロスマンの研究報告もありまして、今回は探索的な研究ということもありますので、私たちはこちらの立場で検討しております。
 2番目の点、黒い雨の相談支援者の健康影響調査について質問紙調査が行われているのですが、blank formを提示してくださいという点に関しましては、報告書に添付しております。柴田先生は本日出席されておりませんので、時間の関係上、ここでの提示は割愛させていただきまして、あとで見ていただくように御連絡させていただきたいと思います。
 それから、電話調査について、調査者の人数、背景、経験年数などを示してくださいというような質問がありました。これは調査会社に依頼したものでございまして、これまでの治験への参加経験のある臨床心理士、公認心理士が担当しております。個人個人の経験年数までは私たちは把握しておりません。
 しかしながら、面接員は全員臨床治験コーディネーターとして、精神医学的査定面接の訓練を受けております。今回に当たっても施行予定の面接法に関する研修を受けていただいておりますので、皆さんある程度受講していただきますので、基準はクリアしていると考えております。
 それから、相談支援と未指定地域を合併した分析を行っておりますけれども、相談支援群は未指定群の居住者のうち相談事業に参加した人々ということであれば、参加者と非参加者の間に差があるかどうかを調べておくべきではないかというような御質問がありました。これは当然そういう質問はあると思います。
 今回の目的は、先ほど発表させていただきましたけれども、拡大要望地域において降雨曝露に基づく健康影響があるかを明らかにすることですので、相談者に限らず、拡大要望地域として他の地域と比較検証を行うことを主眼に報告いたしました。検定の回数を最小限にするということもありましたので、今回の相談支援群の比較は記述的なものにさせていただいております。
 実際比較をしてみますと、有意差があるような回答は1種類あるのですけれども、選択バイアスが示唆されている結果ではないかと考えております。
 また、相談支援群に絞って他の解析と検討を行っておりますが、合併した場合と大きな違いはないということを確認しております。
 最後のがん登録を用いた研究に関する検討についてでございますけれども、「がん登録推進法のもと、顕名データのリンケージを研究目的で利用する場合は、対象者の同意が必要である」というところが、リンケージは事実上不可能であるというのではないかというところに、研究者側からの反応はないかという質問でございました。これに関してはもちろん以前からできていたことができなくなっておりますので、研究者らの反応は非常に大きいものがあります。
 一方で、がん登録の時代と異なり、急速な情報社会、デジタル化によって、情報量は10年前と比べて格段に増大しております。それとともに個人情報保護についても非常に重要視されているということもありまして、このせめぎ合いと私たちは理解しております。ということで、がん登録情報は法律の下、本人の同意なく悉皆的に収集される情報でありますので、また、がんという機微な要配慮情報でありますから、識別性のある状態での保存も長期にわたるということもあります。非常に重要な秘匿性の高い情報でもありますので、私たちも利活用の推進社会の還元を図って、シンポジウムとか様々な場で訴えておりますけれども、がん登録の精度が向上したにもかかわらずまだ解決しておりません。しかしながら、我々もこのような努力を続けていくというようなところでございます。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、増田構成員からも資料の提出がありましたので、増田構成員から5分程度で御説明をいただきたいと思います。ちょうど今、終了の時間になっているのですけれども、まだ御議論いただきたいことがありますので、あと15分ほど延長させていただいて、会議を続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○増田構成員 度々発言を許していただきまして、ありがとうございます。
 増田構成員提出資料としてこの検討会に出させていただいておりますが、この問題は、裁判の結果と、それから行政の問題を取り上げた問題で、非常に重要な問題を含んでいると思います。したがって、今日は十分な時間がございませんので、ぜひお読みになっていただいた上で、この次の検討会で詳しく皆さんと議論をさせていただかないといけないのではないかと思っています。これは確定した裁判の結果と、それから行政がそれをどう使うかという問題です。すなわち、司法と行政の問題です。この問題がある意味では食い違うときがございますが、そういうときにどのように対処すべきか、というような提案をしておりますので、ぜひ次の検討会でもう少し時間をいただいて、皆さんの御意見をぜひ付加していただきたいと思います。したがって、今日はこういう発言だけで終えさせていただきます。
 ありがとうございました。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 非常に重要な御指摘をいただいているわけであります。先ほどの木戸構成員の御発言もそうでありますが、大変大事な課題でありますが、先ほど申し上げましたように、この諮問されている検討会の目的に直接関わっていない問題をどのように扱うかということに関しましては、また事務局ともよく相談をして、対処法を考えさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。
 それでは、次の議題「その他」に移りたいと思いますけれども、まず事務局から、今後のこの検討会の予定も含めて御発言をいただけますでしょうか。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 本日は長時間にわたる御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 今後の議論の進め方でございますが、先ほど来出てきた論点としては、これまで実施していただいたワーキンググループに関する御議論と、加えて先ほど座長から御指摘いただいた調査のこととか、今、木戸構成員、増田構成員から頂戴したような論点の取扱いについてというところも含めて、現時点で具体的にはお示しすることは難しいですけれども、本日の御議論でもいただいたような内容も踏まえまして検討してまいりたいと考えてございます。今後の具体的なお示しの仕方については、今この場では難しいので、また報告、御相談させていただければと思っております。
 以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、事務局から何か追加の御発言はありますでしょうか。
○岡野室長 事務局でございます。
 本日、ありがとうございました。
 今後の進め方につきまして、今申し上げましたように、本日の議論なども踏まえて少し整理させていただいた上でということで、次回以降の開催につきましても、その上で御案内をさせていただければと考えてございます。
 あと、事務的な話で恐縮ですけれども、机上に配付しております参考資料のファイルはまた利用させていただきたいと思ってございますので、机上に置いたままにしていただければと存じます。その他の資料につきましては、お持ち帰りいただければと思ってございます。
 事務局からは以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。大変活発で有意義な御議論をいただきました。ありがとうございました。