第2回労働基準関係法制研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和6年2月21日(水) 9:00~11:00

場所

厚生労働省 専用第22~24会議室

議題

労働基準関係法制について

議事

議事内容
○荒木座長 おはようございます。
 それでは、定刻になりましたので、第2回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
 本日の研究会につきましては、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式とさせていただきます。
 本日は、首藤先生、水島先生が御欠席、石﨑先生、島田先生がオンラインでの御出席と伺っております。
 カメラ撮りは、ここまでということでお願いいたします。
(カメラ退出)
○荒木座長 それでは、議事に入ります。
 本日は、第1回の議論に引き続き、労働時間制度についての議論を深めていきたいと思います。
 資料1について、事務局より説明をお願いいたします。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長 資料1を御覧ください。「労働時間制度について」というものでございます。
 資料をおめくりいただきまして、2ページ目からでございます。
 第1回での研究会で労働時間制度に関する御意見として、先生方からいただきましたものを簡単にまとめさせていただいたものでございます。
 働き方改革関連法に関するものや、現在や今後の働き方の変化を見据えたものというところでまとめております。
 こういった御意見を基に、論点として3ページにまとめているところでございます。
 そちらに一覧として書かせていただいておりますが、大きく分けて3つでございます。
 1つ目が、働き方改革関連法において導入されました各制度について、現状を分析した上で評価をしていただくという論点。
 2つ目としまして、これまで累次の改正を経てできあがりました、労働基準関係法制につきまして、現在及び今後の働き方の変化を見据え、制度の意義をどのように考えていくかという論点。
 3つ目といたしまして、制度全体の建て付けに関する論点となっております。
 この3本の柱立てに沿って、資料を作成しております。
 まず、1つ目の柱でございます「働き方改革関連法において導入・改正された制度の評価等に関する論点」というところでございます。
 働き方改革関連法におきまして、時間外労働の上限規制ですとか、年次有給休暇の時季指定義務など、導入された制度が多くございますので、それについての論点ということでございます。
 6ページにお進みください。
 まず、論点の1つ目、時間外・休日労働の上限規制について、導入後の労働時間の状況等を踏まえて、どう考えるかというところでございます。
 6ページは、法案の議論当時の立法の考え方、上限設定をどのような考え方でやったか、そして、その際、労使がどのように発言をしていたかというところをまとめさせていただいたものでございます。
 7、8ページが、その際、導入された上限規制の図や労働安全衛生法の改正内容となっております。
 9ページ以降でございます。法の施行状況ということで、労働時間の推移に関する状況でございます。
 9ページの左のグラフを見ていただければ、年間総実労働時間は経年的に下がってきています。令和元年の導入以降、コロナの影響もあって、かなり労働時間が下がりまして、コロナからのリバウンドもそれほどしていないという状況になっております。
 右側の一般労働者の総実労働時間を見ていただいても、フルタイムの一般労働者のベースで見ても、ずっと2,000時間を超えていたところが、令和元年に2,000時間を割りまして、コロナ禍でぐっと下がった。その後のリバウンドも、そこまで大きなものにはなっていなく、2,000時間を切った状況が続いているという状態になっております。
 10ページは、これを産業別に見たものでございます。各産業ばらつきがございます。コロナ後にリバウンドをしているもの、していないものがございますけれども、全体として2,000時間は切ってきているという状況になっております。
 11ページ、これを企業規模別、事業所規模別に見たものでございます。こちらも傾向としては同じでございますが、より規模の小さいところのほうが、労働時間が短く、この差は顕著になっているところでございます。
 12ページ、男女別の労働時間の推移等でございます。男女の推移も同じような形になっておりますが、右側のグラフ、月末1週間に60時間以上就業する雇用者、いわゆる長時間労働者の割合でございますけれども、これもコロナを機にかなり下がりまして、男性でも7.4%というところまで下がっていると。
 そして、こちらに関しては、それほどリバウンドはしていないという状況になっております。
 こういったデータから、長時間労働の上限規制について、分析評価をお願いしたいと考えております。
 13ページ、2つ目でございます。長時間労働者に対する健康確保措置について、どう考えるかというところで、一般的な労働者、裁量労働制適用者、研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者、管理監督者の方について、それぞれ、どのような健康確保措置が法律上入っていて、どのような形で面接指導を入れているかというものを表にしたものでございます。
 大きく違うところは、健康確保措置のところで、一般的な労働者は、上限規制がはまる。みなし労働時間制度の裁量労働制適用者、研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度適用者については、健康福祉確保措置が入っている。
 ただし、管理監督者の方には、そういったものはないという状況になっているというのが大きな違いかと思います。
 こういった違いについてどう考えるのか、どのような健康確保が必要なのかというところを含めて御議論いただければと思います。
 続きまして、14ページ以降、大きく3つ目の論点でございます。年次有給休暇に関するところでございます。
 14、15ページは、年次有給休暇に関する制度改正の経緯を示したものとなっております。
 16ページ以降、働き方改革関連法で導入した年次有給休暇の時季指定義務等に関連するデータとなっております。
 16ページは、年次有給休暇の取得率の推移でございまして、これも令和元年から大きく年次有給取得率が上がってきているということで、一定の効果が出ているのかなというところでございます。
 17ページ以降、企業・労働者に対するアンケートでございます。
 17ページ、企業に対するアンケートで、年休の時季指定義務についてどうかというところで、運用に関して取得時季の設定が困難となったケースがある企業は7.4%ということで、9割以上のところが特に問題はないという結果になっております。
 また、時間単位年休に関してもお聞きしました。増やしたほうがいいか、減らしたほうがいいかというところで、ちょうどいいという企業が最も多いところ、増やすか減らすかというところであれば、増やしたほうがいいという企業の割合のほうが多い状況となっております。
 18ページ、労働者の調査のほうで、年5日の時季指定義務でございますけれども、この日数はどうかと聞いたところ、そのままでいいという方、そして自由に取得したいので、そもそも時季指定は要らないという方、この2つが多かったところでありますが、増やすか減らすかというところであれば、増やしたほうがいいという方のほうが多かった。
 その理由は、時季指定されたほうが休みやすいというところでございました。
 19ページ、年次有給休暇に関して、期末時点で取り残している日数がどれぐらいか、また、取り残す理由は何かというところのデータでございます。
 左側にあるとおり、ばらつきはございますが、年休を取り残している方もいらっしゃって、右側の図の取り残す理由としては、病気や休養のために残しておく必要があるというところが多くなっているというものでございます。
 20ページ、労働時間制度等に関するアンケート調査の続きでございますが、労働者の方に時間単位年休を活用したことがあるかとお聞きしたところ、活用したことがあるという方は、約22%というところでございました。
 その理由としては、通院・治療の都合ですとか、趣味、行政の手続といったところが多かったところです。
 時間単位年休の上限日数を拡大すべきかと聞いたところ、多いのは、「今のままでよい」でございましたが、拡大か縮小かで言えば、拡大のほうが多かった状況となっております。
 続いて、21ページ目、4つ目の論点、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度に関するところでございます。
 21ページは、制度概要でございます。
 22ページから、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度に関する現状というところで、データを幾つか用意をしております。
 22、23ページが、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度が実際に適用されている労働者の意識を聞いたものでございまして、8割方の方が適用自体には満足をされているところでございますが、一方で業務量が多い、働く時間が長いといった御意見も見受けられるところでございます。
 24ページ以降、高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況の結果というところでございますが、特徴的なものとして、25ページを御覧いただきますと、健康管理時間が一定抑えられている事業場もある中、最長で見ると、400時間を超えているという例も出てきている実態がございます。
 また、26ページ、高度プロフェッショナル制度に関する選択的措置、健康・福祉確保措置をどのようにやっているかというところでございますけれども、連続2週間の休日を与えるとか、相談窓口を設置するといったところが多い一方で、勤務間インターバルを取り入れているところはなかったという状況でございます。
 27ページ、5つ目の論点として、勤務間インターバルに関するところでございます。
 勤務間インターバルの導入に関する企業の意識は、27ページで聞いているところでございますけれども、既に導入しているという企業は徐々に増えてきてはいるものの、令和5年で、まだ6.0%という中で、導入を予定又は検討しているという企業の割合は、令和2年の15.9%をピークとして徐々に落ちてきているという状況もありまして、こういった企業の意識がなかなか伸びないというところをどう考えるかというのが、1点論点としてあるかと思います。
 また、29ページ、労働者の勤務間インターバルの導入希望調査でございます。
 3,000人の方に聞いたものでございますが、既に導入されているというのが1割程度。そして、これから導入してほしいという方が22.3%いたところでございますが、3分の2程度の方で導入の希望がないという回答でした。
 なぜ希望しないのかというところを聞いたところ、そもそも休息時間を確保できているからという方も一定程度いらっしゃいますが、前日の終業時刻に合わせて、翌日の始業時刻を変更するというのは難しい、繁忙期には休息時間を確保しづらいなど、そういった回答をされる方も一定程度いらっしゃったところでございます。
 以上、働き方改革関連法に関する部分についての資料でございます。実績の資料がベースとなっておりまして、これを基に先生方に御議論をいただければと思っております。論点1つ目については、以上でございます。
 続いて、31ページから2つ目の論点でございます。累次の改正を経てできあがった現行制度についての論点というところでございます。
 32ページ、時間外・休日労働の上限規制がある中で、法定労働時間の意義は何か、日・週・月・年の各労働時間規制の意義は何かというところで、そもそもの労働時間規制はどうかというところの論点でございます。
 32、33ページは、1日8時間、週40時間の法定労働時間に関する経緯でございます。
 もともと1日8時間、週48時間というのが、戦前に国際協定化されたというところでございますが、日本ではそれが採用されていなかった。それを戦後採用し、その後週休2日制の広がりに基づいて週40時間に変えていくという経緯があったところでございます。
 こういった中で、34ページ以降にデータを用意しておりますが、一定の産業の中で、常時10人未満の小規模の事業所に関しては、週の法定労働時間が44時間となる特例がまだ残ってございます。それに関してどう考えるかというのが1つ論点としてあるというところで、データを紹介しているものでございます。
 34ページのデータを見ていただければ、週44時間の特例の対象となっている事業場、1,034事業場に聞いた結果でございますが、実際の週の所定労働時間をどこに設定しているかというところであれば、80%以上のところが、40時間以下のところで設定をしているという状況であるというのが見て取れます。
 また、35ページのところですけれども、法定労働時間が44時間ということは、割増賃金の発生するラインも44時間になるというところでございますが、実際の労働契約の中で、割増賃金はどこから発生させているかというところを聞いたところ、これも80%以上のところで40時間以下のラインで発生をさせているという回答でございました。
 また、36ページ、実際に44時間の対象事業場に対して、法定労働時間を週40時間とすることについて、支障はございますかと聞いたところ、これも8割以上のところで支障はありませんという答えであったところでございます。
 こうした実情を踏まえまして、この特例をどうしていくかというところについても御議論をいただければと思います。
 続いて、37ページ以降、時間外労働の限度基準に関するところでございます。
 37、38ページは、昭和53年以降の経緯を並べておりますけれども、上限規制である、複数月平均80時間以下、単月100時間未満といったものを含めて、それが入るまでに時間外労働の上限というものをどう考えてきたのかという歴史的な経緯でございます。
 そういったことを踏まえて、40ページへお進みください。今の労働時間制度を図に落とし込んだものでございます。
 労働契約上、所定労働時間というものが8時間の範囲内のどこかに設定をされると。そこと法定労働時間の間に、いわゆる法定内の所定外労働時間というものが発生したり、しなかったりする。
 そして、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えたところが時間外労働ということで、ここから先は、36協定で決めていく世界ということになります。
 36協定の中でも原則として45時間、年360時間の範囲内にしてくださいというものがあり、さらに、それを超えて特別条項を結ぶ場合においても、月100時間、複数月平均80時間、年720時間というのは超えられませんという形になっているのが、今の形でございます。
 この基本図に各制度を落とし込んだものが、41ページでございまして、法定労働時間を超えたところというのは、時間外労働でございますので、36協定等なく、この時間を働かせると労基法32条違反になると。
 その中で、36協定を締結する、あるいは裁量労働制や高度プロフェッショナル制度を協定等により入れることで、この違法性がなくなるというところでございますが、仮に36協定を結んでも上限を超えてしまえば、そこは、今度は労基法36条違反ということになることを示した概念図でございます。
 こうした様々な制度に関しては、基本的には労使協定ないし労使委員会での決議を経て導入するということになりますが、その際の労使協定の法的効果はいかがなものかというものに関しては、様々学説がございます。そういったものを42ページにまとめております。
 43ページ以降でございますけれども、法定休日と年次有給休暇のところとなります。
 43ページは、休日制度に関する基本的な制度概要でございます。
 44ページ、法定休日の取り方のところでございます。法定休日は、現在4週4休ということで、変形週休制を認めていることになっておりますけれども、図でお示ししておりますように、1週に必ず1日休日があるということではなく、4週間、4週間のサイクルで見たときに4日休暇が設けられていればいいということで、連続4週で、例えば、この図で言えば、2、3、4、5のところでは、3つしか休日がありませんが、これは違法ではないという形になります。
 これは、休日の取らせ方によって、休日を動かすことができますので、極端な例で言えば、二十何連勤という連続出勤ということも制度上可能になってしまっているが、そういったことに関して、どう考えるかということがあるかと思っております。
 45ページ、年休の導入経緯に関しまして、1970年の有給休暇条約から、我が国の年休がどのような形で入っていたかという経緯でございます。
 46ページ、制度の国際比較でございます。我が国と他国との関係の比較でいうと、大きく違うところとして、特にヨーロッパ、バカンスの習慣のある国では、まとめ取りをするというのが基本になっておりますが、日本の場合は、基本的には、労働者の希望に沿って1日単位でバラバラに取っていく、場合によっては時間単位という形になっているというのは大きな違いでございます。
 47ページ、有給休暇と法定労働時間の関係ということで、有休を取った際に法定労働時間との関係がどうなるかというところの論点でございます。
 図は、これは典型的な週5日勤務、土日休みの方を想定しておりますが、日曜日が法定休日であるとして、土曜日が所定休日である場合、土曜日に働かせる分には、時間外労働で処理をされることになりますが、週の途中で有給休暇を取っていた場合に、土曜日に休日出勤をするということになりますと、週の全体で見たときに法定労働時間を超えませんので、時間外労働の対象にならないという扱いになってしまうことがございます。これは有給休暇を取っている時間というのは働いていない時間ですので、労働時間のカウントには入らないという扱いになっていますというところでございます。
 こういった扱い方に関して、御議論いただければと思っております。
 48ページから割増賃金の関係でございます。
 48、49ページが割増賃金の制度概要をまとめたものでございます。
 それを図にしたものが、50ページでございます。
 各日の労働時間の中で、赤枠で囲んでいるところは、いわゆる法定外労働時間の対象になると、赤の斜線部分は休日労働の割増の対象で、紫の点線囲みのところが、深夜労働の割増対象で、これは、ほかの割増と重なるところがあります。
 そのほか、法律上は存在しませんが、労働契約上の中で、所定労働時間を超えているものの、法定労働時間の範囲内である、すなわち所定外法定内労働時間が発生している際に、契約上、割増賃金を支払うということになっているケースがございます。こういった割増賃金に関して、どのように考えるか。もともと、割増賃金を設定することによって、労働時間を圧縮していくというものでございましたけれども、上限が入った中で、これをどう考えていくかというところが、論点になろうかなと思います。
 51ページ、割増賃金に関しまして個別の論点でございますが、副業・兼業の場合の労働時間通算、割増賃金の支払いというところをどう考えていくべきかというものがございます。
 51ページ、現行の扱いでございますけれども、1日1日カウントして法定外労働時間を通算していくというやり方と、それをもう少し簡便な手法である管理モデルを示しておりますが、特に後から契約した使用者のほうで処理をしていくという方法、この2つを提示しているところでございますが、こういった扱いについて、どう考えるかというものでございます。
 なお、53、54ページに諸外国で、この割増賃金に関してどう扱っているか比較をしたものを用意しております。
 55ページ、4つ目の論点でございます、テレワーク等々の普及に関して、どう考えていくかというものでございます。
 55ページは、働き方改革関連法で入れたものでございますが、フレックスタイムの清算期間の上限を1か月から3か月に延長したというものの図でございます。
 テレワークに関して、特にフレックスタイム制との関係というものでございますけれども、56ページ、まず、テレワークを行っている労働者の方に対して、テレワーク時にどのような労働時間を適用しているかというものを聞いたものでございます。
 右側を御覧いただくと、テレワークをしている労働者の適用ということで言えば、通常の労働時間制度が7割と一番多いのですが、その次に多いのがフレックスタイム制で、20%弱というところとなっております。
 フレックスタイム制を入れるということになりますと、当然清算期間がありますので、その間ずっとフレックス制でなければならないというところでございますので、週のうち3日フレックスタイム制、2日出勤で、その2日が通常勤務というところであれば、通常の労働時間制度というのが今の原則になります。
 フレックスを使っていくということであれば、その辺りをどう考えるのかというのも論点になろうということで、57ページ、フレックスタイム制と通常勤務を組み合わせる制度というものに対して、どう考えるかというところを企業、労働者に聞いております。
 企業に関して言えば、「どちらでもよい、わからない」というところが過半数でございますが、ある方がよいかない方がよいかで言えば、ある方がよいという人が多いと。
 労働者に関しても、「どちらでもよい、あってもよい」というところで7割という結果となっているものでございます。
 58ページ、今度は、事業場外みなし労働時間制でございます。
 58ページは制度概要です。
 59ページ、事業場外みなし労働時間制に関してアンケート調査をしたものでございます。
 特に営業等外勤の方、出張の方、テレワークの方に、「事業場外みなし労働時間制の対象になっていますか」と聞いたところ、どれも大体3割から3割弱程度の方で、制度の対象となっているという回答でした。
 その際に、労働時間をどう管理していますかと聞いたところ、管理していないというところもある程度ございますが、多いのは、勤務管理システムを自己申告でというところ、あるいは上司にメール等で報告というものが多かったという結果となっております。
 この事業場外みなし労働時間制を入れるということは、労働時間を算定し難い場合があるという前提でございますけれども、それについて聞いたものが60ページでございまして、この算定し難い場合に関しては、該当するときはないというのが35%。
 自己申告の真偽が確認できないときというのが30%程度というところで多くなっているという状況でございます。こうした状況に関して、どう考えるかというところが論点となります。
 なお、下のところに参考として、裁判例をつけさせていただいていますが、この算定し難い場合というものを、どう認定するかということに関しては、裁判上も評価が揺れているというところかと思います。
 61、62ページは、つながらない権利に関するものというところで、これに関しては、第1回でも少し資料を出しましたが、諸外国との比較を資料として提示させていただいております。
 最後に、大きな3番目の制度の立てつけの論点でございます。64ページ以降のところでございます。
 64ページ、まず、制度のシンプル化についてどう考えるかというところでございまして、64ページは、これまでの報告書等でいただいているシンプル化に関する御指摘。
 65ページで、労働政策の実現手法として、これは第1回でお示ししたものでございましたが、こういった様々な実現手法がある中で、どういう形でやっていくのがシンプルになるかという論点になろうかと思います。
 その中で、自発的に法の遵守の促進を図る、いわゆる法ではなくてガイドライン等々でやっていくものというものに関して、前回も御指摘がございました。
 66ページに現行のガイドラインの一覧というものをつけさせていただいておりまして、67ページに、そのガイドラインがどのように認知されているかというものの結果をお示しさせていただいております。
 68ページ、最後の論点でございますが、ワーク・ライフ・バランスの観点から対応すべき点はないかというところでございます。
 現在、ワーク・ライフ・バランスに関しまして、労働契約法で68ページにお示ししているような条項が入っておりまして、それに関する学説もあるというところで紹介させていただいております。
 また、今国会でも法案を出そうということで議論をしておりましたが、昨年12月26日に労働政策審議会雇用環境・均等分科会におきまして報告が出ておりますので、そちらを最後のページで御紹介させていただいております。
 資料は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。
 本日は、ただいま事務局から説明がありました資料に基づいて、特に資料の3ページですかね。そこに論点1、論点2、論点3という論点のグルーピングがなされております。
 おおむね、この順番で議論していければと考えておりますけれども、非常に資料が大部なものでございましたので、論点についての問題の所在が分かりやすいように、記載の論点について、事務局から若干の補足をいただいて、その後で議論をできればと考えております。
 事務局から、よろしくお願いいたします。
○労働条件政策課長 それでは、資料の3ページの論点例の1につきまして若干補足の御説明を申し上げます。
 働き方改革関連法5年後見直しの観点で、論点の例を並べたものでございますが、まず、①につきましては、罰則つきの上限規制が導入されて5年になりますけれども、長時間労働による健康障害や過労死等の防止という観点から見て、どのような効果があったか。
 また、論点例2の②とも関わりますけれども、例えば、休日労働の取扱いなども含めて、上限規制の今後の在り方について、幅広く御意見を伺えればと思っております。
 ②の長時間労働者に対する健康確保措置につきましては、通常の管理をされている労働者のほか、④に出てくる高度プロフェッショナル制度あるいは裁量労働制、管理監督者など、労働時間について様々な裁量がある方が長時間労働をした場合について、健康確保措置のメニュー、あるいはその義務化の程度、現状は若干の違いがございますが、それぞれのメニューの効果ですとか、内容の違いについてどう考えるかなど。一個飛んで、関連して④高度プロフェッショナル制度につきましては、裁量労働制については、専門業務型裁量労働制への個別同意などの制度改正が今年の4月施行でございますが、そうした動きも踏まえつつ、高度プロフェッショナル制度自体の施行後の評価などについての御議論があればと思っております。
 一個戻りまして、③の年休につきましては、5日未満取得者に対する使用者による時季指定を入れたことで、どのような効果があったのかということ。また、時季指定をする時期ですとか指定できる日数、あるいはその時季指定対象となる労働者などについて、法制上、実務上の課題などがあれば、御議論をいただければと思っております。
 ⑤の勤務間インターバル制度につきましては、努力義務となっている一方で、導入割合が1割弱というところで、どのような働き方や労働時間制度のもとにある労働者について、勤務間インターバル確保の必要性が高いのか、あるいは逆に導入が難しい職種などがあるのかなど、現状を一歩進めるための御議論があるのかなと思っております。
 あくまでも、今、申し上げたのは議論の糸口の例でございますので、これに縛られずに、幅広く御意見を伺えれば幸いでございます。
 あと、補足でございますが、本日御欠席の首藤委員から、1点、年休のところについて事前にコメントをいただきましたので、読み上げさせていただきます。
 年次有給休暇の取得について、資料の19ページの図表に基づくと、年次有給休暇の残日数が分からないとの回答が30.7%と最も多いと。有給休暇の残日数や取得状況を可視化させること、例えば、告知義務などが必要なのではないかというコメントを事前にいただいております。
 私からは以上でございます。
○荒木座長 3ページだと論点が大きく3つある、その中の論点1について、事務局として、ぜひ議論いただければということで、具体的な論点について説明があったところです。これらの論点について、御意見があれば、ぜひ、伺いたいと思いますし、これにかかわらず、御意見があれば、御自由に御発言いただければと思います。
安藤委員、どうぞ。
○安藤構成員 ありがとうございます。大部にわたる資料の御説明もありがとうございました。
 労働時間制度の1の中の、まず、最後の勤務間インターバルについて、一言コメントをしたいと思います。
 この勤務間インターバルというものが、どのくらい実現可能性があるのかといったとき、私も、今、6歳と1歳の子供を抱えております。そうすると、仮に、夜仕事が終わるのが遅かったとして、でも、次の日の朝は、子供を起こして保育所には連れていかないといけないという意味で、例えば、11時間インターバルが空いたとしても、結局、朝は動かないといけないということがあり、また、それが終わった後に、少し時間を空けてから仕事についたとすると、今度は帰宅が遅くなり、また、子供を迎えに行くタイミングがずれてしまうといったことが考えられます。よって、勤務間インターバルというものの理念はよく分かるのですが、では、実際に自分一人だけで生活しているのではないという生活の実態を考えますと、朝から夜の時間のスケジュールがずれてしまうことを気にされる方は多いのではないかと思っています。
 また、今後の副業・兼業の推進みたいなものを考えると、やはり、その点でも、ほかの仕事の開始時間のずれなどを考えたときに、勤務間インターバルが必ずしも労働者にとって、自由度が高まる方向にはならないのではないかということが気になるところです。
 また、仮に一人で生活しているような状況であったとしても、勤務間インターバルを取ったことによって、始業と終業の時間がずれて、例えば、朝寝て昼起きるとかになってしまうと、夜型になってしまうなどのずれが発生するのかなというのも気になるところです。
 また、東京に住んでいますと、通勤時間片道1時間というのは許容範囲だと思うのかもしれませんが、地方都市などに居住していれば、1時間というと、みんな驚くわけですね。もっとずっと通勤時間というのは短いものだと。
 そういうことを考えた際に、この勤務間のインターバルというのは、職場を離れたところから、また来るところまでというので、本当に考え方としてはいいのかということも気になっていて、通勤時間などをどう捉えるのかといったことを考えないといけないのかというのも感じたところです。
 取りあえず、以上です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 神吉先生。
○神吉構成員 その点、私も同じような懸念を、勤務間インターバルに関して聞くことがございます。
 資料の29ページ、労働者側から勤務間インターバルを希望しない理由として、かなり高い割合で挙げられているのが、「前日の終業時刻に合わせて翌日の始業時刻を変更することが難しい」で19.5%ですけれども、この「翌日の終業時刻を変更することが難しい」と考えられている背景には、今、安藤先生がおっしゃったように、次の日の始業時刻を遅らせることで、その日の終業時刻も結局遅らせざるを得ないとの懸念があるように聞きます。
 そうだとすると、勤務間インターバル制度自体に誤解があるのかもしれません。
 本来的には、終業時刻は決まっているものです。裁量労働制などではなく通常の労働時間制度が適用される場合には、始業時刻が遅らせられたからといって、当然、終業時刻も後ろ倒しにはならないはずです。先の懸念は、始業時刻を変更することの難しさというよりは、全部の労働時間が繰り下がっていってしまうという、そこの懸念ではないかと思います。
 本来的には、終業時刻は決まっているのに、恐らく仕事が終わらなければ、結局、終業を遅らせたり休息時間をつぶさなければいけなくなるという、その前提状況こそ問題ではないでしょうか。
 つまり、所定終業時刻、いわゆる「定時」が有名無実化していること自体に問題がある。その状況で、インターバル規制を入れて、その実効化を考えると、現状では、インターバル規制も有名無実化してしまうかもしれない。つまり、労使協定を結んで、割賃を払えば、一方的な命令で所定外でも法定外でも労働させられるという仕組み自体を再考する必要があるのではないかと考える次第です。
 ですので、インターバル規制導入の希望が少ないと、この数字を決めつけて取ることはできないと考えております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 黒田先生。
○黒田構成員 ありがとうございます。
 健康管理に関しての話題が多いかと思うので、全体的にコメントをさせていただければと思います。
 まず、時間外労働の上限規制が導入をされた後、私、産業医なので、いろいろな会社で実際に面談をする中で、長時間勤務者の方の面談をしたり、衛生委員会でどういう情報共有がされているかというのを見ていたりするのですが、かなり効果があったのではないかと思ってはいます。
 今までも別に無責任に働かせていいというわけではなかったと思うのですけれども、何段階かの上限規制がかかったということで、月ごとに、今、部署別にこういう状態にありますとか、それをマネジャー会議でもきちんと共有します、といった体制が取られている会社が、全社とは言いませんが多いかなと実感しています。
 有休の消化日数の把握や見える化も同じような感じでされています。会社によっては、有休奨励日を、もともとあったところもありますが、もう少し強めに打ち出して、ここは一斉に休みましょうねという感じで、時季指定ですかね、そういうことをきちんと計画的に見える化してやっているというのが伺われます。
 また、長時間勤務者の医師面接が、これをきちんともう少しやりましょうということで、増えたか減ったかというのは、会社によるなという感じがあります。きちんと対策を、そもそも長時間労働を抑制しようという動きがあるので、対象になる人が減ったかなというところもあれば、きちんと把握に努めた結果として長時間勤務者が掘り起こされ正確に把握されて、対象者が増えたかなというところもあります。長時間勤務者の医師面接をやってそれで満足というところもないではなく、それだと意味がないことになります。ただ把握するだけではなく、その後の長時間勤務者を減らすための対策の方が大事なので、長時間勤務者の医師面接をして、今のところ大丈夫ですかねみたいな話になると、そのまま長時間勤務をさせていいみたいな誤解が生じやすくなったりとか、あとは、たびたびお声がかかってしまう人というのが出てきて、そうすると面倒くさいので、よくないと思うのですけれども、勤務時間を少なめにつける、自己研鑽時間を多めにつける、みたいな話もちらほら聞こえてきたり、ということがあります。これは、制度の問題ではなくてあくまで運用の問題だと思うのですけれども、その辺りは気になっているところです。
 また、高プロ適用者は全国で823人ということで、私が健康管理を担当している範囲の方では高プロ適用者はいないので、実際の働き方や課題の現場感はよく分かりません。ただ、尋常ではない労働時間の方もデータ上はいらっしゃるようなので、幾ら裁量性があるといっても、過労死認定や労災補償のときには、労働時間、労働強度、労働密度という3点が主に検討されると思うのですけれども、裁量があるから時間が長くてもかまわないというのはあるかもしれませんし、そういう職場の人は、肉体的な労働強度は高くないかもしれませんけれども、労働密度と時間を掛け合わせると、負担の程度はどうなっているのかなというのは少し気になっています。ただ、裁量性が高い人たちは自由に働けるようにした上で、これ以上働くと危険だぞ、とボクシングの試合でタオルを投げるセコンドみたいな担当の人がいることが大事なのかもしれません。ただ、この人たちは自律的に働ける人だから、健康管理もできる人だから、どんどんやっていこうというのは、ちょっとどうかなと思いますし、勤務間インターバルの制度が導入されているところがゼロ事業場ということで、なかなか難しい制度なのだと思いますし、特に高プロの方は、対象の趣旨からいってあまり勤務間インターバルとそぐわないというのがあるのかもしれませんが、健康確保措置が甘いかなというふうに見えます。
 最後に勤務間インターバルの話ですが、どこまでが勤務間インターバルか、通勤時間はどうなのかという話がありますが、少なくとも通勤時間及び労働時間を含めて、そこから解放されている時間を勤務間インターバルと考えたときに、科学的には11時間は、やはりほしいかなというところです。
 これは、国のほうでも労働安全衛生総合研究所などで結構積極的に研究されている分野で、勤務間インターバル時間が11時間を切ってくると、精神的にも、肉体的にも、いろいろな支障が出てくるかなというデータが出ています。
 ですので、あくまで科学的な観点で言えば、11時間はほしいというところなのですが、結果として始業時間が繰り下がってくることで生じる問題というのも、よく現場でお聞きします。
 ただ、神吉先生がおっしゃったように、それは少し趣旨の取り間違いがあるのではないかなというのがあって、そうならないように、1日当たりの長時間労働を抑制しましょうという枠をかけてあるのだと思いますし、以前ほかのところで聞いた話として、会社によっては、例えば、前日が0時まで働くことになってしまって、勤務間インターバルを11時間空けられない場合、次の勤務時間の始まりが午前11時になっているわけですけれども、9時から11時は勤務したことの扱いにして、実際の勤務時間は11時からスタートし、終業時間は、普通の、いつもどおりの終業時間にする扱いをしているという例がありました。全ての会社にそれを強いるのは、少し難しいのかもしれませんが、やはりそういった運用が理想的ですよ、と打ち出していくのが大事かと思っています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 オンラインから、石﨑先生の手が挙がっています。お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
 私からもインターバルと健康確保の部分について、少し意見を申し上げさせていただければと思います。
 もう既に、いろいろ御指摘も出ているところかと思うのですが、インターバル規制については、これまでのような労働時間のほうではなくて、やはり、休息時間のほうに着目して規制をかけるという部分において、そういった意味での理念的な意義というのは、かなり大きいのではないかと思っております。
 先ほど、黒田先生からお話があったような11時間というのが、一つの休息として、やはり確保すべき時間なのだということを示すことの意義はあるのかなと、一方で思うところです。
 ただ、他方で、先ほどのアンケートの資料の中にもありましたけれども、インターバルが入ることによって、かえっていろいろと不都合が起きるみたいな声が上がっていたりとか、あとは、特にデジタル化の中で、帰ってからメールを返信するみたいなこともよく行われていると思うのですけれども、それらも、およそ全て許されないのかみたいな話になってきてしまうと、かえって柔軟に働き方を設計しにくいみたいなところの課題もあるのかなと思っています。
 そういった意味で、インターバル規制を仮に入れるとするのであれば、ある種の原則的なルールとしてインターバルの規制は置くのだけれども、そこを守れないような場合については、別途の手段で休息時間を確保するという例外を認めるような形での規制の設計というのもあり得るのかなと思っておりまして、そうなった場合、ここで挙がっている希望しない理由の幾つかというのは、その前提というのが消えてくることにもなるのかもしれないと。要するに設計次第で、この規制に対する捉え方というのは変わってくるのではないかという印象を持ったところでございます。
 続きまして、健康福祉確保措置につきまして、13ページで非常に分かりやすい図表をつくっていただいているかと思うのですけれども、これらについて、裁量労働制とか、高プロについては入っているのだけれども、管理監督者については全くないというところで、これで本当にいいのかというところは、やはり必要ではないかということを思うところになります。
 それから、その際、どういう仕組みを入れてくのかというところとも関わるかもしれないのですが、高プロについて、26ページのほうで実際に導入されている措置が出ていたかと思うのですけれども、やはり、健康福祉確保措置の中で相談窓口の設置がかなり多くなっているというところであります。
 それは、まず、相談を受け付けて、その方の健康状況とか、どうなのかというのを確認することが重要であることはもちろんなのですけれども、これも先ほどの黒田先生のお話とつながる部分もあるかもしれませんが、相談を受けてそれでいいねという話ではなくて、その後、必要に応じて代償休暇を確保するとか、まさにその後、どう休息を確保していくのか、長時間労働をその人との関係で減らしていくのかみたいなところが重要になってくると思うので、健康福祉確保措置をそういったフローとして、うまく、まさに健康福祉確保につなげていく仕組みを入れていくことが、必要なのではないかと考えているところであります。
 差し当たりは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。
 水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。
 それぞれについて幾つか、簡単にお話しします。
 7ページの上限規制のところですが、これは、大きく罰則つきの100時間、80時間というところと、原則として45時間、さらにはもっと残業を短くしたほうがいいのではないかという2つのレベルで、まず、前者の罰則つきの100時間、80時間というのは、今回かなり政策効果が上がっているのではないかと、罰則をつけるということに対する効果が上がって、中小企業も含めて。
 それで、実は最近観察していると、2024年問題で5年間猶予されてきた特に建設事業とかトラック運転業務は、時間の猶予があったので、2024年4月に向けてDXをかなり入れて、ほかの、要は5年前にばたばたとスタートしたところよりかは、計画的な時間の効率化が、今、まだ途中ですが、そういうのが進んでいるということが観察できるのではないかと思います。
 ですので、例えば、100時間、80時間を将来的には原則としての45時間にどう近づけていくかというときには、少し早めに議論をして、少し猶予期間をつけても政策的効果を見込む形で前もって早めに、そういう目標を設定して、政策的な段階を踏んでいくというのが1つ必要なのではないかと。
 もう一つ、原則的な45時間、さらには45時間もなくて、もっと残業なしの働き方を促そうというところは、これは健康確保とは、また違うレベルでの問題なので、これは果たして労働基準法でやるべきことなのか、場合によっては、情報公表と市場誘導的な措置は、これまで女性活躍推進法とか、次世代法とかでやられているような手法を政策的に合わせながら、よりよい働き方、豊かな生活を実現するために企業がどれくらい努力しているかをマーケットに見やすくして誘導していくという政策を併せて取っていく。
 労基法では、ここまでしかできないけれども、それ以外ではこうやるという発想ではなく、政策的に結びつけながら進めていくことが必要ではないかと思います。
 それと、13ページ、先ほど石﨑さんからもお話がありましたが、ここは、大きく課題は2つで、1つは凸凹をなくすと、あまりにも凸凹が、高度プロフェッショナルと管理監督者の内容が全く、実は隣に座っているような人たちが、境界を越えたら全然違うような制度になっているという凸凹をなくすということと、もう一つ、最後のところとも関わりますが、どうやってなくしていくかというと、制度の趣旨に照らして分かりやすく制度を、当事者にとっても分かりやすい制度にすると。
 そのときには、例えば、健康確保の観点からは何が必要か、さらには、割増賃金という待遇面ではどういう制度設計が必要かと、場合によっては、労働基準法のテリトリーと労働安全衛生法のテリトリーで罰則をつけるか、つけないかというところも含めて、もう少し分かりやすく、全部分かりやすく整理するためには、かなりの手間がかかるかもしれませんが、最終的にゴールを見据えながら横を合わせていくという作業が必要ではないかと思いました。
 年休の付与義務5日のところ、これも罰則つきにしましたので、ある意味では、現場でかなり効いてきているのではないかと思います。それで予想以上に、5日でいいとか、5日よりも延ばしたほうがいいという意見がある中で、やはり制度の趣旨としては、私は5日よりもっと延ばしていって、計画的に年休を取るということを促していったほうがいいのではないか。まだ、未消化がかなり残ったり、分からないという人たちもいるので、罰則つきで年休をきちんと取らせるように延ばしていったほうがいいのではないか。
 5日を10日にするかというときに、時季指定権の行使によって、要は、駆け込み型で、年とか年度の終わりのときに5日取れ、5日取れと言われて、ばたばたと取らされているような人たちもいるので、制度の本来の趣旨からすれば、事前に何日間取りますよということを事前設定型にする時季指定義務を制度的に、そろそろ促していくという観点から、5日を10日にするのだったら、増やした分はそうするとか、いろいろなやり方はあると思いますが、制度本来の趣旨としては、労働者が時季指定権を行使した分をカウントするというやり方が、現場でいろいろな問題も生んできているので、そこら辺を制度設計のときに考えるべきではないかと思いました。
 さらに時間単位年休ですが、これは結構好評で、増やしたほうがいいという人もいますが、私個人的には、実は反対で、時間単位年休は制度の趣旨に合わない、年休の本来の趣旨というのは、肉体的にも精神的にもリフレッシュするために、年休を24時間期、日単位で、場合によっては連続して取得するという本来の制度の趣旨からすると、病院に行くためとか、ちょっとした趣味のために1時間、2時間使うというのは、本来の年休の趣旨に反するので、これを増やすかどうかというのは、私は、あまり賛成ではありませんが、少なくとも、この後で出てきますが、年休を取得した日は、きちんと労基法上の労働時間として位置づけるという制度設計を、もし、時間単位年休を維持するもしくは増やすということであれば、そこをきちんとやらないと、年休の買取り効果が、例えば、水曜日に年休を取ったけれども、土曜日に働いて、結局1日年休を買い取ったというのと同じ効果が発生したり、時間単位年休も午前中4時間年休を取ったのだけれども、1時に出てきて、10時、11時まで8時間以上働いたというときに、年休を買い取ったというのと同じような効果が発生して、それは導入のときに、きちんと制度的な担保がなされないまま導入されているので、そういう変な効果が発生しないようにするためには後で議論するような、年休を取得したものを労基法上の労働時間としてどう位置づけるかというのを、きちんと制度化した上で、この年休をどう制度化していくか、増やすのかどうかを検討したほうがいいかなと思いました。
 私のほうからは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。
 山川先生。
○山川構成員 少しだけ申し上げます。インターバル規制とか健康福祉確保措置の議論が多かったと思います。
 その点について、労働時間規制全体とも関わるのですが、いつも議論されるのは、結局、働き方とか仕事の割り振りとか、仕事の仕方をどうするかという問題だねというのが、法律家以外からはよく聞かれることでありまして、それは、先ほど神吉先生、安藤先生からもお話がありましたけれども、実質的には重要なことだと思います。
 それを、どうやって法政策に反映させていくかということですけれども、ある種のPDCAサイクルのように、職場の中でインターバル規制は、例えば、こういう点が難しいのですとか、働き方について、こういう仕事の割り振りをすれば、これが実現しやすくするとか、職場内でそういう議論の場みたいなものをつくることが有益ではないか。
 先ほど、水町先生からもお話がありました女性活躍推進法でも、そういう現場での意見を吸い上げて改善計画を立てていくみたいなことがあり、PDCAサイクル法と言われていますけれども、それと同じような形でインターバル規制、ほかの健康福祉確保措置でもそうですけれども、働き方の改善との関係で議論するという仕組みがあるといいのかなと思います。別に、そのために新たに委員会をつくれというのは大変かもしれませんけれども、今でも労働時間等設定改善法のもとでの委員会もありますし、労働安全衛生法にもありますので、そういった中で、情報を提供して、働き方自体をどうするかということを議論する場があればいいのかなと思います。今、インセンティブということで、インターバル規制は、助成金等で支援していると思いますけれども、より自発的なことができればということを考えました。
 そこで、安全衛生法の問題なのか、基準法の問題なのかというのは、やはり水町先生から御意見があったところですけれども、今、お話しした観点からすると、例えば、管理監督者は、今の労働時間の状況の把握の枠組みは、安全衛生法の問題なので、そちらから考えるということもあり得るのかなと思いました。
 あとは、先ほど、首藤先生の御意見が紹介されたところですけれども、年休の残日数は、今回の改正で結構知らせるようになってきているのではないかと、使用者としては罰則がかかるので、年休が何日残っているかというのが分かりやすくなっているのではないかとは思いますけれども、やはり、それぞれの状況を知らせるという点では、企業外の情報開示が現在進んでいますけれども、意外に企業内の開示があまり進んでないのではないかという感じがいたしまして、いろいろ議論する前提としても、年休の日数というのは、1つの例ですが、就業規則の周知も、今回、通達で明確化がなされているところですけれども、あまり関心が持たれないのですが、労働基準法106条の周知義務は就業規則だけではなくて、労働基準法と施行規則の要旨も周知しないといけないということになっていまして、これは、きちんとどのぐらい実現されているのかなという感じがするところです。
 ちなみに、これもすでに言ったかもしれませんが、アメリカの工場見学に行くと、大体最低賃金は幾らですとか、雇用差別はしてはいけませんというポスターが貼ってあって、その掲示が義務づけられていて、場合によっては、雇用機会均等委員会などの電話番号まで書いてありますので、企業内周知を、議論の前提のために、もう少ししたほうがいいのではないか、これは、今日のテーマではないかもしれませんけれども、先ほどの労働時間の健康福祉確保措置なども、そういう文脈で議論できるような仕組みがあるといいかなと思いました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 第1の論点について、島田先生から、何かコメントはございますか。
○島田構成員 ありがとうございます。
 私のほうから、管理監督者について少しだけ申し上げたいと思います。
 13ページの健康確保措置について、凸凹がある点が問題というのは、全くそのとおりかと存じます。
 私としては、管理監督者の定義自体も少し問題ではないのかなと思っておりまして、管理監督者の定義は、御存じのように、行政解釈でも裁判所でも一致していて、使用者と一体的な立場で、労務管理とか労働条件の決定権限があるとか、裁量があるとか、報酬がどうと、いろいろ定義があるのですけれども、少し感覚的な話になって恐縮ですけれども、これは、私の感覚からすると、かなり限定的な人を指すのではないかという感じがしております。使用者とやはり一体的な立場だから、労働時間規制を外してもよいという意味で言えば、非常に限定的、数パーセントぐらい、割合の話ではないとしても数パーセントという、すごく使用者側の人間という、そのような趣旨で設けられたのではないかと思うのですけれども、実際には、10%弱でしょうかね、かなり多くの人が管理監督者となっていて、それも恐らく、行政の指導や監督があるにせよ、裁判所で最終的に争わない限りは、事実上、使用者が決められると。高プロとか裁量労働とか、本人の同意をかませるとか、何か委員会をかませることなく、事実上、使用者が決めて、あなたは管理監督者ですよということができてしまうので、実際の定義よりも、実は多い人が管理監督者になってしまっているのではないかという感じがしております。
 管理監督者の実際の趣旨からして、適正な人たちを管理監督者として規制を外すということも、健康確保措置の凸凹をなくすと同時に重要なことではないかと考えた次第です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 論点1について、大変有益な御指摘をいただきました。幾つか私からも申し上げますと、まず、インターバル規制について、いろいろな問題の指摘がありました。これは、インターバル規制をどういう制度として設計するかと関係してくると思います。
 先ほど、黒田先生から御指摘があったように、9時始業のところを11時出勤の場合は、2時間は働いたものと扱うという形で終業時間を遅らせるということがないような対応というのも1つ工夫としてあり得ると思います。それから、明日イベントがあるので夜遅くまで準備をして、そして朝からも責任者として対応せざるを得ない。そういうときに、硬直的なインターバル規制、すなわち、11時間のインターバルを、どういう場合にも必ず遵守しなければいけないという硬直的な制度であれば、そういう制度は採用できないという方向にいってしまいますので、例外的な場合には、11時間を割り込んだ出勤も認めつつ、しかし、すぐ代償的な休息を接近した時間に取らせないといけないとか、実務の必要に対応した柔軟性を備えつつ、しっかりと休息を取らせるような制度の工夫もあり得るところではないかと思います。これは、山川先生がおっしゃるように、実際、導入する上でどういう問題点があるかというのを現場から出していただいて、その上で、通常は、きちんと11時間は休息を取れるような労働時間体制を目指すという方向での議論もあり得るかと思います。
 それから、年休制度については、罰則つきで5日付与義務が入りましたが、これも労働者自身が率先して時季指定をした場合には、その分、付与義務がなくなるという制度です。自分で取らなかった場合には、使用者が一方的に付与することになりますよということで、年度当初より、しっかりと年休の完全消化を目指した要員体制を労使が共有して年休を取る。これができているから、ヨーロッパは年休の完全消化ということもできているわけですので、年度当初より年休を取ることを前提とした勤務体制を労使双方が考える、これを促す1つの在り方として、使用者が最終的には5日強制的に取らせることになる。この制度には、そういうことが含意されているということで、運用していただくというのが望ましいかと思います。
 それから、島田先生がおっしゃった点、実は、戦後当初、労基法ができたときは、通常の労働時間規制を外れるのは、ホワイトカラーでは労働基準法41条の管理監督者しかなかったわけですね。
 そういう中で、常に実労働時間規制を厳格に守らせるのが合理的でない働き方が増えてきたことから、裁量労働制、最初は専門型、その後、企画業務型も追加され、そして高プロも導入されました。
 このように受け皿自体は多様化してきている中で、戦後当初の管理監督者の制度や解釈をそのまま維持するのかが改めて問われることになります。実は、企画業務型裁量労働制ができたときに、スタッフ管理職については、本来は考え方を見直すべきであったかもしれないとったことも含めて、今後、労働時間制度が全体的に合理的な制度となるために、どうするかという論点が提起されたのではないかと受け止めたところです。
 それでは、大分時間も過ぎましたので、次に、論点の2に移りたいと思います。
 事務局から、補足説明をお願いします。
○労働条件政策課長 3ページの論点例の2のところにつきまして、若干補足を申し上げます。
 ①でございますが、月100時間未満とか年720時間といった36協定を結んだ場合における上限規制も今回導入されて5年になるわけでございますが、そういうものが導入された中で原則の法定労働時間である週40時間とか、あるいは1日8時間の意義をどう考えたらよいかということなどがあるかと思っております。
 健康確保ということで御説明をするのか、あるいは仮に生活時間の調和といったような概念を持ち出すようなことも考えられるかと思いますが、そうすると、今度は、所定労働時間を8時間ではないところの所定であっても、超えたときに大きな影響を受ける労働者もおられるわけですので、その1週とか、1日の単位で法令をもって規制すべき労働時間の上限というのをどう捉えたらよいかということが、先ほど来御議論のある勤務間インターバルとも関わって、議論の切り口かなと思っておるところでございます。
 また、資料でも御説明いたしましたが、小規模など、一部の10人未満事業場では発射台であるところの法定労働時間が、今、週44の特例がございます。この在り方についても御議論のあるところと思っております。
 ②の法定休日のほうにつきましては、これは上限規制との関係でいうと、月100時間未満とか、複数月平均80時間以下には休日労働が算入されますが、回数制限はない。また、4週4日制のもとでは、極端な場合には、連続24日労働して所定休日連続4日みたいな形も適法となってしまうことなどもありますので、過重労働防止との関係で現行の労働基準法35条、休日規制の在り方がどうかということが御議論になり得るかと思っております。
 ②の後半の年休につきましては、もう既に論点1のほうでも御議論がありましたが、本来の制度趣旨である連続休暇による労働力の涵養、リフレッシュという観点と、現実的な労働者ニーズを踏まえた使い勝手の改善、取得率向上という観点、両面にらんだ制度的な対応の在り方について、水町委員からも、結果的に時間単位年休などで法定内労働になってしまって、買取りのような効果があるという御発言もございましたけれども、そうしたことをどう考えるかとか、さらに細かい話として、出勤率要件になるものもあるわけですけれども、そうした制度的な要件全体について、御議論がいろいろあるかと思っております。
 ③の割賃につきましては、従来は、いわゆる労働の補償という側面と、使用者の経済的負担による抑制を目的と御説明がされてきたところでございますが、これも上限規制が導入された中で、時間外、休日、深夜、それぞれの割増賃金について意義を改めてどう捉えるかと。裁量労働制などの労働者でも休日とか深夜の割増賃金が適用されているわけですが、その意義などにつきまして、1回目でも議論のありました副業・兼業者の割賃の扱いなどについても、御議論が深められればと思っているところでございます。
 それから、④の情報通信技術の進展やテレワークの普及などの関係で申し上げますと、例えば、テレワークの方について言えば、週に何日かは自宅で、残りは出勤といった組み合わせた働き方が昨今広く見られる中で、自宅で働く日について、職場に出勤する日と同様に厳格な始業終業時刻とか休憩時間の管理は必要ない場合も多いのではないかとか、あるいは、逆に夜間とか休日も含めて、連絡がかかってきて対応させられることに対しての歯止めも考えなくてよいのかということなど、生活時間と労働時間の境目を厳格に見る、あるいは曖昧にするということは、善し悪し両方あるのかなと考えられる中で、どういう対応が、現在、今後の働き方を踏まえて求められるかというところが、1つの切り口かと思っております。
 こちらも、今、申し上げたことにとらわれずに、広範な御意見を伺えれば幸いでございます。
 また、論点例2の関係で、こちらも御欠席の首藤委員から副業・兼業の扱いについて、コメントをいただいておりますので、読み上げさせていただきます。
 副業・兼業の労働時間数は、現状、労働者による自己申告によって把握している使用者が多いと考えられる。しかし、それでは正確な労働時間の把握になっていないと思われる。労働者の自己申告に頼らずに労働時間を把握する仕組みの構築はできないのだろうかと。
 例えば、副業・兼業で得た収入を国、税務署などがほぼ正確に把握できているのであって、同様にどこかで労働時間を把握することは難しいのだろうかというコメントをいただいております。
 以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 論点の2は、今後の労働時間制度についての論点ということになります。
 これについても、どなたからでも御自由に御発言ください。
 それでは、石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
 もしかすると、最初の1の論点とも関わるかもしれませんけれども、まず、年次有給休暇の意義は何かというところとの関係で、先ほどの水町先生の取得義務の日数を増やすかどうかというところの論点と、その論点が相互に関わってくるのではないかという気がしましたというところについて、コメントをさせていただければと思います。
 先ほど事務局からもお話がありましたように、年次有給休暇の意義としては、そういったリフレッシュというところにあるのだろうと思うのですけれども、そのリフレッシュということが、労働者の非常に私的なことだという理解に立つ場合には、取る、取らないは本人の自由で、時季指定というのが原則でという話になっていきやすいのかなという思ったところです。
 ただ、他方で、リフレッシュということが、労働者個々人との関係ではなくて、あるいは職場全体であるとか、いろいろと社会的に意義のある活動に従事することによる、そういった社会的な価値の側面にも注目するということになってくると、そうした義務、ある種、パターナリスティックな形にはなると思うのですけれども、その義務の範囲を拡大していくという議論も当然あり得るのかなと感じているところです。
 ただ、他方で、お示しいただいた資料の中で、やはり自分で取得したい、取っておきたいという層の中に、やはり病気に対する不安であったりとか、あるいは子供を育てていったりすると、子供が病気になって急に休まなくてはいけないみたいな、そういうときのため残しておきたいというニーズも恐らくあるというところでして、そういったところを考えたときに、やはり年休の消化ということと裏返しで、日本ですと、やはり病気休暇制度がないわけですが、その辺りの整備ですとか、あとは、既に育介法のほうでいろいろ対応はなされているところかと思うのですけれども、そうした何か不測の事態とか家庭責任との関係で何かあったときに、労働時間を柔軟に調整できる仕組みとかそういったものがどれだけちゃんと入っているかというところとも、また関わってくるのかなと思ったところになります。
 年次有給休暇については以上です。
 もう一点目が、割増賃金に関わる論点のところでして、この辺り非常に議論が難しいところだなと日頃思っているところではあるのですけれども、割増賃金規制の趣旨として、時間外労働の抑制と労働に対する補償というところが挙げられていると思うのですけれども、割増賃金規制が、特に前者の趣旨、時間外労働抑制の趣旨との関係で、うまく機能している場合もあるとは思うのですけれども、必ずしもそうでない場面もあるかもしれないというところを、どう考えるのかというところが気になっているところであります。
 いわゆる、だらだら残業と呼ばれるような、そういった非生産的な残業を抑制しようとしたときに、実務等で問題となっておりますけれども、そうした時間効率が悪い働き方を処遇においてマイナスに評価するような仕組みというのが、そもそもおよそ許されないのかどうかというところについて、なお、そこについては検討の余地があるのではないかという気がしているところです。
 ただ、そのときに重要になるのは、労働者側がどれだけ労働時間について裁量を持っているかというところですとか、あとは、時間外労働、今は代償休日の仕組みは、一定の範囲で認められているというところかと思うのですけれども、こちらのほうを、むしろ原則的な形で認めていくことによって、より時間外労働の抑制の趣旨というのを発揮しやすくするという考え方もあるのではないかと考えているところになります。
 あとは、やや細かな論点になりますが、副業・兼業との関係で言いますと、果たして割増賃金規制を課すことが適切かというのは、少し私自身は疑問に思っているところですけれども、これと併せて副業・兼業の場合に、ガイドラインのほうで管理モデルが導入されたかと思うのですが、これが現状、どの程度普及していて、あるいは入れていないところなどは、どういったところで入れていないのかとか、この辺りの実態を、また、今後の検討会の中で、状況を教えていただけたらありがたいなと思っているところであります。
 それから、すみません細かな点になりますけれども、テレワークにつきまして、現状、事業場外みなし労働時間制度と、柔軟な働き方としてのテレワークの親和性が高いというところもあって、ガイドラインの中で解釈基準等を示していただいているところかと思いますが、先ほどの御説明でもあったように、事業場外みなしがそのまま適用できるのかどうかというのが、やや難しいところもある中で、現状は、ガイドラインでそういった形で示されているというところだと思うのですけれども、法制度的に対応する必要はないのかなというところは、問題関心を持っているところです。
 つまり、テレワークでもいろいろ働き方がありますので、全てのテレワークということではないのですけれども、比較的中抜けに関して、柔軟に労働者のほうで取ったりすることができるという働き方をしているときに、そういうある種の働き方に係る裁量を持って、みなし制を適用するという仕組みもあり得ないのかということが考えられるかなと思っているところになります。
 すみません、やや広くという感じになってしまいましたけれども、以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
 水町先生、お願いします。
○水町構成員 ありがとうございます。幾つかあります。
 まず、44時間特例、35ページ、36ページ辺りかと思いますが、結論から言うと、もうこの制度は歴史的役割を、実態としても終えたので廃止をしかるべき時期に行うということが望ましいかと思います。
 そして、次は、43ページ、44ページ辺り、休日のところですが、日本の休日制度は週休1日制だし、特定もないと、非常に緩い上に、さらに4週4休制というきちんとした制度設計もなされない緩い制度が、労基法上定められていると。
 法定労働時間と、時間外労働に関しては、働き方改革の中で、かなり罰則つきで前進してきている中で、まだ休日の緩さが残っているので、少なくとも法定休日の特定をきちんとするとか、4週4休制、私は廃止してもいいのではないかと思いますが、4週4休制を残すとすれば、要件を制度上きちんと明確化して、適法性を確保した上できちんと、予測可能な形で4週4休制を残すという形にしたほうがいいのではないかと思います。
 それと、47ページ、これは先ほども申し上げましたが、年休のところについては、年休を取得したところを労基法上、労働時間制度等との関係で、どう位置づけるかということが、今、制度的にブランクになっているので、これをきちんとしたほうがいいかと思います。
 そして、兼業・副業とテレワーク、副業・兼業のところは、簡便な管理モデルがガイドラインで示されていますが、この簡便な管理モデルを採用している会社よりかは、業務委託という形でのみ兼業・副業を認めているという会社が、圧倒的に実態として多いと思います。
 これは、雇用で副業・兼業を認めてしまうと、割増賃金の計算が非常に複雑になってしまうし、上限規制との関係でも罰則つきでいろいろなことを求められるということになっているので、それが恐ろしくて、雇用でコンプライアンス、労基法違反にならないような形で実務上回すのは難しいというので、業務委託だったらいいよと、ただ業務委託だったらいいよと言って、本当に実態として業務委託でやっているかどうか分からない。
 そういう中で、先ほど石﨑委員もおっしゃったように、割増賃金のところは、ヨーロッパの多くの国では通算しないと、それぞれの会社で割増賃金を実労働時間に沿って払えばいいという制度になっているので、そこはそうしつつ、割増賃金のところは、通算を外しつつ、上限規制は健康確保のために大切なので、今、逆に言うと、通算制を全体として維持しているからこそできていない上限規制が、本当に実態として守られているかというところをきちんとするためにも、割増賃金を外して上限規制はきちんと通算すると、上限規制については実労働時間をきちんと労働者ごとに把握すればいいので、割増賃金だと法定割増賃金と所定外割増賃金といろいろな複雑な管理が必要になってくるので、実労働時間だけはきちんと見て、上限規制だけは健康確保のところからきちんと守ってくれという制度に移行していくのが大切かなと思います。
 それと、テレワークの労働時間管理ですが、先ほど石﨑さんがおっしゃったように、事業場外みなし労働時間制が、これは歴史的に、昔からできている制度が、これをテレワークで使おうとしたら、よく分からないと、制度としては、労働時間の算定が困難なときという要件が入っていますが、これは、労基法は強行規定なので、客観的に労働時間の算定が困難であるということが要件になりますが、実際には、客観的に困難かどうかよりも時間管理をしているか、していないかと、会社が勤怠管理システムに入れたら、算定困難ではなくなるし、勤怠管理システム入れなかったら算定が困難だからという、実は客観的な要件設定と企業の実務というのに任せられている部分が、法の解釈をすごく難しくしていて、そして裁判所も、予測不可能な状況になっているので、事業場外みなし制度ではなくテレワークの実態に沿った労働時間制度、事務局からの説明によると、例えば、フレックスタイム制を柔軟化することによって、テレワークにおけるきちんと健康管理等をしながら、柔軟な労働時間制度を設計するという形で、事業場外みなし労働時間制の適用ではない形での制度設計を考えることが必要かなと思いました。
 つながらない権利のところも資料にあるので、61ページ、これは最後のところともつながってきますが、諸外国の状況を見てみると、つながらない権利、ああしろ、こうしろと強硬的にルールを定めているというよりも、労使できちんと話し合いなさいということを優先して制度設計がなされているので、例えば、労働契約法上デフォルトルールを定めて、それに対して労使で柔軟な制度設計をしてくださいという労基法と労働契約法の接続というか、そことの関係で議論すべき問題かなと思いました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 黒田先生。
○黒田構成員 ありがとうございます。
 それでは、論点2、全体的なことに関して、健康管理の観点からコメントをさせていただきます。
 石﨑委員からも法定労働時間とか、休日の制度というのは、リフレッシュのためにという目的もあるかという御指摘があったと思うのですが、健康管理の観点からは、加えて、労働で蓄積した疲労の回復のために、各種法定労働時間の定めがあったり、休養や休憩の時間の定めがあったり、勤務間インターバルも、そのように理解をしています。疲労回復の程度というのは、やはり休養のタイミングと量に依存すると考えられますので、いろいろな枠で、例えば1日当たりの労働時間は、これぐらいが適切で、週に1回ぐらいは休日が必要だと思いますという、目安としてのルールは必要かなと思っています。
 割増賃金は、複数の性質があると伺っていますが、例えば、深夜労働のところの資料で、労働強度が高いものに対して補償的な性質があると書いてあったと思うのですが、健康管理の観点からは、少し言い過ぎなのかもしれませんが、正直危険手当みたいな位置づけなのだと理解しています。
 やはり労働時間、時間だけではなく、労働強度も含めてですが、それが高いということは、それなりの健康有害性があるということになります。深夜勤務はそれが典型的で、深夜勤務を定期的に行っている人は、深夜勤務自体が、発がん性があるのだという議論があったと思うのですけれども、各種健康に悪影響があるということは分かっているので、危険手当としての位置づけの意味合いもあるのではないかと理解し、適切に運用されることが大事だと思います。
 副業・兼業の管理に関する割増賃金に関しては、特に意見はないのですが、原則に沿って運用されるのがいいと思うけれども実効的な運用も必要だと思っていて、ここにない議論として、本務側が副業しなさいと指導した場合以外は、健康管理時間は通算されないと、たしかガイドラインに書いてあったと思うのですけれども、それは結構、問題であると思いつつ、実際どうやって把握したらよいのかというのは、かなり現場にいる者としては困っているところです。
 先行して、医業を行う医師に関しては、2024年の4月から医療法との兼ね合いがあると思うのですけれども、通算した健康管理時間をきちんと把握して、長時間医師面接などの健康福祉確保措置をやりなさいとなっていると思うので、こちらがどのように運用されるかというのを見て、それも問題がきっと生じると思うのですけれども、どのように運用していくのが適切かと見ていくのがいいのではないかと思っています。
 あとは、何にせよ、多様な働き方と規制というのは、両立はすると思うのですが、相反するところもあると思います。その時にやはり一番大事なのは、労働者自身のヘルスリテラシーとかヘルスマネジメント能力を高めるために、労働者自身もきちんとした取組が必要なのですが、会社だけではなくて業界とか社会が、どのように取り組んでいくかというのを検討した上で、さて、事業者としてどういう義務を課すべきかというのをルールに盛り込んでいただくということかと思っています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 安藤先生。
○安藤構成員 ありがとうございます。
 私から3つコメントがございます。
 まず、1つ目は年次有給休暇のところで、年休を取り残すという話で、既に何人かの委員の先生からもあったお話ですが、やはり病気休暇との関係というのは、とても気になるところです。
 例えば、ドイツなどにあるように、病気休暇が6週間有給で別にあってというのだったら、年の初めに、この時期にバランスを取るとか、計画的に有休取得の取組ができるだろうと思います。
 厚生労働省の調査によると、恐らく最も新しいようなデータでも、病気休暇を設定している企業は、大体日本で20%程度と言われていて、ほぼ全て無給ということで、無給で病気休暇を取るよりは、有給休暇として自分の病院に行ったりとか、または病気の子供の世話をするほうが、少なくとも今の現状では、労働者の希望に、ニーズに合ってしまっているのではないかと感じているところです。
 特に病気休暇というのを本人だけではなくて、子供だったり、年老いた両親の病気に付き添うであったり、こういうものについて、どこまで手当すべきかというところが難しいかと思っています。
 そこが手当されない限り、年休を後半まで、ぎりぎりまで残しておいてという行動を取ってしまうということは避けられないかと思っています。
 ですので、可能性としてあり得るのは、年の最初に、年次有給休暇全体の取得の計画について話し合いをする際に、労働者側が、うちは小さい子供がいるのでということで、年の後半に残しておきたいとか、私は、子供は手を離れているので、計画的に取るであったりとか、こういうような各労働者の事情に合わせて計画的にやるような形を、検討していただければと思います。
 2つ目として、本業と副業がある場合の、両方が雇用契約の場合の労働時間の通算と、割増賃金を払うのかというところですが、これも既に何人かの先生からあったとおり、私も、これは不要ではないのか、特に労働時間の通算を健康確保のために行うことは絶対必要ですが、割増賃金のためにというのは、不要なのではないかと考えています。
 従来、長時間労働を抑制するために36協定と割増賃金と、この2つを組み合わせて使っていたところ、割増賃金には、企業側には長時間労働を命じることを抑制するインセンティブがありますが、労働者としては割増賃金が得られるからこそ進んで手を挙げて働くインセンティブがあります。またそれを生活費の一部として取り入れてしまっているということも指摘されてきたわけですね。
 今回の本業と副業の関係を考えたとき、本業でフルに8時間働いていた人を副業で雇うとなると、いきなり割増賃金からスタートすることになります。そうすると、ある会社で、その会社を本業としている人たちが複数いる中で、副業として新たに人が入ってくると、その人だけ給料が割増しされたところからスタートするというのが、既存の社員に対して納得感があるのかといったところも難しいと思われます。そうすると、なかなか雇用としては雇ってもらえないのではないかということで、水町先生からもあったように、請負であるとか別の形態で採用されるのではないか。
 しかし、企業としては請負にしておこうと、今はそういう抜け道を使っているところがあるかもしれませんが、契約ではなく実態を見られるということが普及していけば、そもそもそういう人は雇われないといったことにもなり、今のような変化が激しい時代で、副業を通じて仕事の幅を広げていきたいといった人が、新たな副業先を見つけるのが難しくなるといったこともあり得るかと思います。
 または別の対処方法として、割増賃金が、25%かかるのだったら、その分、基本給をディスカウントしたところからスタートして、割増賃金を加算したところで、ほかの労働者と同じような賃金ということも考え方としてはあるかもしれません。企業としては、その労働者の貢献度に見合った金額までしか賃金が払えないといったことをベースとすると、ある労働者が副業として就業することを希望する相手先企業から、そもそも雇われない可能性または賃金を割引される可能性、そして請負など別の業務委託にされてしまう可能性などがあり、全体を考えると、労働時間の把握と通算のところは、必要ではありますが、割増賃金については各企業でという方向が、時代に合っているのかなと思います。
 そうすると、労働時間の通算を誰がやるのかというところも、計算をするというのも大きな課題かと思います。
 今、本業・副業というのを、恐らく契約の先後で捉えていると思うのですが、そうすると、例えば、ある大学4年生が大学を卒業して就職した場合に、学生時代に土日にやっていたアルバイトを継続したというケースを考えます。そうすると、本業は週末に続けているアルバイトのほうであり、フルタイムで働いている正社員勤務のほうが副業となります。このとき、本業である学生時代のアルバイト先のほうに労働時間管理の責任を負わせるのかなどというと、よく分からなくなってくる。
 これからの時代、週に2日だけ働いているけれども、時間単価は非常に高い仕事と、週に3日働いていて時間単価が低い仕事を組み合わせているケースなど、何をもって副業・本業というかが難しくなってくるというのを考えたときに、労働時間の把握、通算というのは、本来は、企業ではなく国が責任を持ってやるべきものだとも思っています。
 ただし、そうしたときに、誰がその労働時間の登録をするのだ、そこで正確な情報を登録するインセンティブがあるのかというところも気になります。
 労働者本人が、例えば、自分のマイナンバーカードか何かを使うのですかね、A社で何時間働いています、B社で何曜日の何時から何時まで働きました、これを片っ端から登録していくというのをきちんとやるのか、やらなかった場合にはどうするのか、企業側にはどうかといったときに、企業側も割増賃金を払わなくていいのだったら正直に登録しても損はないのかもしれませんが、正直に登録すると、この人はトータルの労働時間が長くなって、必要なときに時間外労働をお願いできないとなったときに、きちんと正確な情報の登録が行われるのかといったところも気になります。
 また、いま私は通算をしての割賃計算は不要だと主張していますが、このときの注意点だと思うのは、割増賃金を払いたくない本業先が、自分の業務の一部を切り出して、それを子会社とか関連会社とか取引先に仕事を切って投げると。そして、自社の労働者がそこの会社でたまたま副業していて、そのたまたま副業していた別の会社の仕事として、仕事の続きを行うなどという抜け道があっては困るということで、グループ会社などでは通算が必要なのではないかと考えます。しかし、取引先まで含めるのかといったところは、難しいので検討が必要かと思っています。
 最後の3つ目の点として、50ページにそもそもの割増賃金の話が出ていますが、従来、36協定と賃金という話で、労働者側には非常に強い拒否権があるという状況だったと思うのですが、とはいえ、特別条項つきの時間外労働を認めているところがかなり多かったということで、極端な言い方かもしれませんが、労使の自助努力には任せておけないということで、上限規制がかかったのだと思っています。
 ここで絶対的な上限規制をかけたということは健康管理のためです。それでは、例えば極端な思考実験として、36協定と絶対的な上限規制だけで長時間労働のコントロールをできないか、そもそも割増賃金というのが、今の形で必要なのかというところも長期的には考えてみても面白いのではないかと思っています。
 今、労働市場がこれだけタイトになっていて、1人の新卒者を複数の企業が奪い合い、労働条件が上がるという状況になっている中で、その労働条件のうち、割増賃金のところというのを、今の形で残す必要があるのかといったことも、これはなかなか難しい課題かもしれませんが、検討の余地はあるのかなと感じております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 山川先生。
○山川構成員 どうもありがとうございます。
 兼業・副業と言われるものについて、時間そのものの規制と、割増賃金規制をある程度切り離したらどうかという点は、割と積極的な見解が多かったと思います。私もそれが妥当ではないかと思います。
 ただ、安藤先生が、今、言われましたように、実際にはいろいろな課題が生じるところかと思います。そもそも通算という考え方で行くのかどうかということもありまして、何が兼業・副業かというのもあるのですが、既に他所で働いている場合に、追加的に、トータルで何時間を超えて働かせてはならないみたいな、追加的労働の禁止みたいな仕組みにすると、割増賃金はそこからは発生しないと仕組むことは、できないではないかもしれません。通算という考え方をどこまで維持するかという問題にも関わるかと思います。
 あと、やはり難しいのは、健康の観点からというと、ほかで働いているかどうか分からない場合をどうするのかということがあります。少なくとも罰則をかけることはできないですね、ほかで働いていることを知らないという場合、今の仕組みにおいては。
 行政指導だとできるかもしれませんけれども、兼業・副業の促進という観点からは、労働者に労働基準法で申告義務を課するというのはおかしいと思いますので、使用者のほうに何らかの形で把握義務を課するのかといった、安藤先生の言われたような問題を検討する必要があるかと思います。
 客観的に言えば、知らなくたって長時間労働になっていれば、健康を確保する必要性はあるということですけれども、今の兼業・副業推進のトレンドと、どう調和させるのかという問題がありそうです。
 テレワークの労働時間についても、比較的見解は一致していたかと思います。新たなテレワークに即した時間の仕組みをつくるということかと思います。
 確かに、今、事業場外みなしで対応しているのですが、あの制度はそもそも労働時間が算定困難であるというところから出発しており、テレワークの場合はそれもあるのですが、いろいろ問題はあるにしても、私生活との両立を図る1つの手段であるということで、少し趣旨が違う面があります。
 いろいろな簡便な方法とかも出てきてはいるのですけれども、ある種、みなし時間と似たような仕組みで、しかし事業場外労働とは違うという仕組みが考えられるかと思います。
 労働時間の概念のところで、約定基準説という、客観的に把握しないということができるという見解があって、判例では否定はされているのですけれども、裁量労働とか事業場外労働のみなし制というのは、ある意味で約定基準説を立法で採用したという位置づけになります。要するに、客観的な管理は一定限度しなくていいということですから、それと同じ発想で、いろいろなセーフガードを取り入れた上で、ある種の約定基準説みたいなものを採用するということは、みなし制の一種として考えられるかなと思ったところです。どういうセーフガードが必要かというのは、これもいろいろ議論があります。
 あとは、これも水町先生がおっしゃられましたように、一定の事業の週44時間というのは、統計を見て、私も驚きまして、もうかなり使われていなくなっているということが分かってきて、これは新たな発見だと思いましたし、今の人手不足のもとで、44時間ということでどれだけ人が集められるかという、法律とは関係ないのですが、そういう雰囲気になってきているのかなと思いました。
 フレックスタイム制の一部コアデイと言うのでしょうか、一部固定労働時間の日を設定するというのも、ニーズがありましたら検討する価値はあるかなと思います。
 30年前ぐらいに、これができるのではないかという論文を書いたことを思い出しまして、どう書いたのか、もう既に覚えていないのですけれども、やり方としては、例えば、清算期間が6日のフレックスタイム制ならば、清算期間外の固定時間日を設定すればできるということになりますが、清算期間が短い場合に、少なくとも立法論としては、そういうものも考えられるのかなと思った次第です。
 現行のシステム全体がそういうところがあるのですけれども、非常に理想的な制度をつくって、かえって利用の範囲を狭めている場合があるような気がしまして、それが悪用されないような仕組みを踏まえた上で、いろいろ考えていくことはあり得るかと思います。
 あと、先ほどの第1の論点で触れましたところと関係するのですが、ヘルスリテラシーの促進という黒田先生の御意見、私も先ほどの観点から大賛成の感じを持ちました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
 1点申し上げます。時間外休日労働の上限規制がある中で、法定労働時間の意義が何かという点なのですけれども、先ほどの第1の論点とも関わってくるのですけれども、やはり労基法の上限規制というか、法定労働時間なり、上限の労働時間の意義をどう設定するかというのを、ある程度具体的に決めないと制度をどうつくるのかというのが、いまいちよく分からないという思いを持っております。
 今の状況というか、今の制度を見ていますと、法定労働時間なり、上限の労働時間の意義というのが、過労死の防止とか、健康確保という、そちらにかなり軸足があるように思うのですけれども、それをそのままにしておくのか、それとも労基法の法定労働時間の意義として、広い意味での私生活との両立というのも意義の中に入れていくのかというのが、すごく気になっています。
 仮に私生活の両立をその意義に入れるのであれば、労基法という性質からして、労働時間の短縮を罰則つきで入れるということは、仮に、そこまでするのは難しいとしても、例えば、何らかの形で、1日8時間、週40時間はデフォルトで、これを超えるのは例外なのですというメッセージだけでも入れるとか、いろいろな可能性があると思うのですけれども、例えば、残業に諸外国みたいに労働者の同意を入れるとか、いろいろな可能性があると思うのですけれども、いずれにしても、労基法の中での労働時間規制の意義というのが何なのかというのを確定しないと、ほかの政策と組み合わせるにしても、役割分担を考えるにしても、どうしていくのがいいのかなというのが疑問に思うところです。
 以上です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございます。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 すみません、2回目で失礼します。
 副業・兼業の場合の通算というか、健康確保に関して、一言だけ補足の意見を申し上げさせていただければと思います。
 健康確保の観点からの通算が必要であるという、ほかの委員の先生方の意見には全く賛成なのですけれども、その際に、上限規制を含めて通算するのかどうかというところについては、私自身は、それでよいのかどうかというところは、やや疑問を持っています。
 他方、労働時間はやはり通算で、かつ、労基法の枠内で考える場合には、どうしてもあくまで雇用型というか、雇用型の副業・兼業の通算ということのみが念頭に置かれていると思うのですけれども、先ほどもお話にあったように、副業・兼業は業務委託型のものもあって、それも健康確保という観点から言えば、業務委託型か雇用型かで、特にそこで趣味的なものも入ってくるとすると、そこは難しいのですが、疲労という観点からあまり変わりはないのかなという気もしておりまして、どちらかというと、安衛法の話にはなってくるのかもしれませんけれども、そういった意味で、広い意味での就業時間の通算みたいな観点も、場合によっては必要になってくるのかもしれないと思ったところであります。
 私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
 副業・兼業については、以前にも大分議論したことがあるのですけれども、EUの半分ぐらいの国は、使用者が異なる場合には、労働時間は通算をそもそもしない。残りの半分ぐらいの国が、使用者が違っても労働時間を通算するという状況です。
 通算する国ではどのように通算しているのだろうと、厚労省から派遣されて実態調査にも参りました。そこで分かったことは、健康確保のために通算はするけれども、割増賃金については通算しない。フランスもドイツもオランダも、労働時間を通算するけれども、割増賃金については通算をしないと。
 なぜかと聞くと、割増賃金は賃金の話であって、健康確保とは別物であるということで、通算しない。これは労働組合に聞いても、割増賃金は賃金の話であって別物であるという答えでした。
 もう一つは、日本は週40時間に加えて1日8時間規制があるので、毎日毎日8時間を超えると法定時間外労働として罰則の対象となる。フレックスタイムなど、日々の労働時間の長さが個人の意思によって変わり得るような労働時間制度ができてきた中で、どう通算するのか、様々な課題があると思って聞いてきたところでございました。
 それから、島田先生から労働時間規制は何のためのものかという根本的な御指摘がありました。現在の労働時間規制は、1つには、最長労働時間規制、何時間以上働かせてはいけないという長時間労働の規制がもちろんあるのですけれども、あまり注目されてこなかったかもしれませんが、労働基準法は、同時に休憩、休日、年休という労働から解放された時間についての規制を行い、そして今、勤務間インターバルについての規制を議論しているという状況です。
 休息時間のことをドイツではarbeitsfreie Zeit(アルバイツフライエ・ツァイト)と労働から解放された時間と表現しますので、そのまま労働解放時間と私は呼んでいるのですけれども、労働基準法は労働から解放された時間についても、労働時間規制の裏側として規制しており、現在、勤務間インターバルという形で再度議論すべきではないかということになってきているという状況だろうと思います。これが2つ目の規制。
 3つ目の規制が、割増賃金規制です。労働時間規制の中で、労働基準法37条が割増賃金を定めていますけれども、これまで労働時間規制を外すべきだというように経営側から主張されているのは、主としてこの割増賃金規制に服させるのが合理的でないので、外すべきだ、あるいは特別の規制をすべきだということが労働時間規制に関する中心的な論点として提起されてきたのだろうと思います。この賃金に直結するような割増賃金規制をどう捉えるか。
現在の労働基準法は、この三種類の規制を行っていると思いますので、それぞれについて、どういう趣旨で、どういう目的のために、どういう手法で管理、規制をすべきなのかを改めて議論すべきではという点にもつながるご指摘と受け取ったところです。
 それでは、論点2についてよろしければ、残った時間は少ししかありませんけれども、論点の3についても、事務局から問題意識をお願いします。
○労働条件政策課長 論点3は、もう3ページに書いてあるとおりでございまして、既に大分御議論もあったかと思いますが、複雑な制度についてシンプルにしていくという、方向性としては賛成が多いような話について、各論として、この辺りがもっとシンプルにできないかといったことがあれば、ぜひ御意見いただければと思います。
 それから、2点目、これも既に御議論がいろいろ出ていますけれども、労働時間制度というものについて、健康確保以外の価値として、前回ケア労働という御発言も複数の委員からありましたが、どういうような物の考え方をベースに置いて、具体的に制度の意義を考え、あるいは対応していく点がないかということなどについて、御意見を賜ればと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 それでは、論点3、制度全体の建てつけについてということでありますけれども、いかがでしょうか。
 神吉先生。
○神吉構成員 ありがとうございます。
 大局的な観点というわけではないのですけれども、先ほど座長が整理されたように、労働時間規制というのは、労働時間の裏側であるところの休暇、休業、休日の規制とも非常に密接に関わっているので、一つ一つの制度の趣旨だけではなく、規制相互の関係を考えながら整理していくという段階に来ていると考えております。
 切り口として、先ほど有給休暇は本来的にはリフレッシュに使うべきというお話がありましたけれども、実際には、取り残す原因をみても子供の病気や学校行事、家族の通院付き添いや介護との関係、それから行政機関の窓口が開いているときに手続したいとか、そうした予測できない短期間の生活ニーズがあって、有休を時間給で取って対応するしかない。裁量労働などではなく、通常の労働時間規制下では、有休がそうした役割を担っているのであるとすれば、そうした生活ニーズに対応できるという機能も念頭におく必要があると思います。
 その場合、リフレッシュという趣旨に関しては、黒田先生からもありましたように、本来的には一定の期間で、それもあまり長期間にならない、短期間での労働負荷の軽減を図っていくことが必要と考えます。
 そうすると、勤務間インターバルや、休日も1週1休の原則を貫くといったことが必要であると考えられます。
 また、短期間の突発的な生活ニーズに関しては、そもそもは通常時間規制で所定労働時間ががっちり決まっている点に問題があるとすれば、フレックス制の導入・拡充で対応できるかもしれません。
 先ほど、事務局からの論点で、フレックス制の拡充を図っていくために、通常労働時間規制との併用をどう考えるかという提示がありました。全部フレックスにするのが難しいという現場のニーズがあって、一部、週2日、3日をそれぞれフレックス、通常時間と併用していくこともあり得ますが、そうすると、制度をなるべくシンプルにするというところからは離れてしまうのが悩みです。
 それから、割増賃金の規制に関して、割増賃金の趣旨、意義というのが、本来的には使用者に金銭的な負担を負わせることで、間接的な金銭的負担で結果的に時間外労働の抑制を図ることが本来的な趣旨だと思います。それに加えて労働者への補償という趣旨ですけれども、近年、特に運輸系の業界で手取りを増やさない、割増賃金として払うのだけれども、賃金の計算方法を工夫して同額を別の部分から控除して総額が増えない形で支払ったとしても、それ自体は労基法違反にはならないという裁判例が出てきております。
 つまり、使用者側の負担増部分がなくても、労基法上は対価性のある部分が判別可能であれば問題ないという解釈が定着してきていますけれども、それは時間外労働への歯止めとしての割増賃金の効果はそれほどない、十分な役割を果たしていないことも意味しているのかもしれません。
 そうすると、より直接的な上限規制の必要性が示唆されているのではないかとも考えます。
 それから、労働時間の絶対的な上限に関して、労使が合意をした実現可能なレベルで現在の基準が設定されたという御説明もありました。導入時は、これまでになかったものを入れるために仕方なかったかと思うのですけれども、これからもずっと合意に係らしめてよい事項なのかは、問題だと思います。
 今、非常に人手不足なので、労働時間をこれ以上減らすことはできないというニーズはあるのでしょうけれども、次世代の働き手を健全に育成するための観点からすれば、今は、仕事と家庭生活を無理なく両立できる水準ということでは到底ないと思いますので、むしろ人手不足だからこそ、見直しは必須だと考えております。
 当たり前に要求される労働時間の上限が余りに高過ぎるために、逆に言うと、労働条件としては低過ぎるために、子育てや介護中の労働者はスタンダードな働き方ができなくなり、パートなどを選ばざるを得なくなる。それは、男女別にみた正規割合や賃金格差に現れていますので、そういった観点からの見直しも必要ではないかと考えています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 安藤先生。
○安藤構成員 短く2点だけ、まず、労働時間規制に健康確保とか安全衛生の面で重要だということは、疑いがないものだと思います。
 その上で、ワーク・ライフ・バランスと言われて、そこに8時間、40時間が基本でありと言われてしまうと、経済学者の視点からすると、少し物申したくなるというところもございます。
 というのは、やはり人間が生活していく上で、キャリアとかスキルとか、人的資本の形成ということも同じく大事なことかなと思っています。
 ワーク・ライフ・バランスというのは、人生のキャリアのいろいろな、一時点、一時点で、その取るべきバランスというのは変わってくるものでもあるのではないか。
 例えば、若いうちに集中的に、ここにいる先生方も勉強されたからこそ、今のような重要な仕事をされているといったところもあるのではないか、ここで働くことができる時間などにきっちり制約を設けたとすると、それによってスキルを十分に形成できないといった面もありますので、あくまで健康確保の部分は絶対に守ると、ワーク・ライフ・バランスのところはよく考えるといったような切り分けが必要かなと思っています。
 仮に、今、非常に厳しいのが、労働時間規制をがちっと今入れたとすると、若い人のスキル形成が遅れ、既にある程度学んでしまったシニアな人たちが、相対的に有利な立場になります。また、若い人はスキルが形成されないということになってしまうと、今の人手不足であり、また、人口が減少している社会の中で、数少ない人数が効率的に生産性高く働いて、社会を支えていくという観点から求められるものが満たせないとも思います。
 あと、神吉先生がおっしゃっていた割増賃金の話、使用者が実質的に負担していないというケースがあり得るということですかね。それは、非常に問題があるのかなと思って話を聞いていました。経済学の理屈として時々聞くのは、企業には割増賃金を払わせておいて、しかし、それをある意味、割増賃金税のように、雇用税のように政府が取り上げてしまって、労働者の手元に渡さないというのが、一番長時間労働抑制には、理論的には効くのではないかというものがあります。労働者はお金をもらえないから積極的には働きたくない。企業は高い割増賃金を政府に税金として納めないといけないからです。これと全く逆のことが起こってしまっては問題だなと感じました。これは感想です。
○荒木座長 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 1点だけ、生活と仕事の調和という関係からという話で、水町先生からも最初のほうで御意見があった点なのですが、やはり情報開示規制の強化というのは、必要になってくるのではないかと思っておりまして、現状、各種法律の中でいろいろと情報開示項目が定められているかと思うのですけれども、かなりの法制で選択的になっていたかと思います。
 ただ、この点、やはり重要な、特に残業とか、労働条件に関わる部分については、選択的ではなくて、もう必須化していって、できれば情報を一元化して求職者等が一覧できるような仕組みを構築していただくのがよろしいのではないかということを思っております。
 また、中小企業のほうについては、現状、努力義務になっている部分が大きいかなと思うのですけれども、確かに情報開示ということについては難しいとしても、求職過程に入った者に対する情報提供義務等は課す余地があるように思っておりまして、この辺りも今後検討課題になるのではないかと思っている次第です。
 以上になります。
○荒木座長 それでは、最後に水町先生、お願いします。
○水町構成員 スライド66枚目のガイドラインについて一言だけ、幾つかガイドラインはありますが、副業・兼業ガイドライン、テレワークガイドライン、シフト制に関するガイドライン、上3つについては、私法上のルールに関わって望ましいと書かれているところもあるので、そこは労働契約法等からの私法上のデフォルトルールを、ガイドラインというものとは違うような形でどう定めるか、そのときに、デフォルトルールの例外として定める柔軟な制度設計のための労使コミュニケーションの基盤というのが大切になるので、これは、恐らく次回議論になると思いますが、強行法規の例外を定める労使コミュニケーションと労働契約ルールの例外を定める労使コミュニケーションは、諸外国では、基本的には同じ基盤として設計されていることが多いので、そこら辺をどう制度的に調整するかということがあるかと思います。
 一番下に家事使用人の雇用ガイドラインというのが、今月公表されて、労基法が制定されたときには適用除外されていた家事使用人の実態が大分変わってきているので、就業環境の適正化という観点から、今回、ガイドラインが定められましたが、その中で労基法とか労働安全衛生法、労災保険法を視野に入れてどういう適正化が必要かと取りまとめられたものを踏まえて、労基法上の適用除外もそろそろ外して、労基法等の労働基準関係法制も適用するという方向の検討を進めていくべきかと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 時間がもう過ぎておりますので、今日の議論は、ここまでとさせていただきたいと思います。
 ただ、相互に関連する重要な論点も提起されましたので、また、必要があれば、さらに議論を続けたいと考えております。
 最後に、事務局から次回の日程についての説明をお願いします。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長 次回の日程等については、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木座長 それでは、第2回の研究会は、これまでといたします。どうも貴重な御意見をありがとうございました。