「社会保障教育の推進に関する検討会(第2回)」議事録

日時

令和6年3月27日(水)18:30~20:30

場所

厚生労働省 政策統括官(総合政策担当)大会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館11階公園側)

出席者

構成員(五十音順)
参考人
いちのせ氏
事務局

議題

  1. (1)取組の進捗と今後の方針について
  2. (2)ストーリー教材の作成について
  3. (3)有識者によるプレゼンテーション
    • いちのせ かつみ氏(合同会社 itoc CEO)
  4. (4)映像教材の作成について
  5. (5)副教材の改善について
  6. (6)その他

議事録

議事内容
○横山室長補佐
 定刻になりましたので、ただいまから「社会保障教育の推進に関する検討会」の第2回を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、本日はお忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。冒頭は横山が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日は、オンライン会議システムを併用しての実施とさせていただきます。
 なお、本会議は議事録作成のため録音させていただきますので、御承知おきください。
 また、動画配信システムのライブ配信により一般公開する形としております。
 それでは、まず、開会の御挨拶を政策統括官の鹿沼より申し上げます。
○鹿沼統括官
 政策統括官の鹿沼でございます。
 先生方、本当に夕方の遅い時間にどうもありがとうございます。また、本日はいちのせ様には大阪からわざわざ来ていただきプレゼンテーションをお願いするということで、本当にありがとうございます。
 私、全世代型社会保障の会議とか、いろいろなところで講演とかをしている中でよく言われるのは、社会保障教育の重要性です。第1回の会議でも言ったかもしれませんが、まさに今の社会保障・社会保険の仕組みは社会連帯で成り立っているものだと思っています。我々はいつも、年金については決して崩壊することはないと言っていますが、誰も保険料を払わなくなったらこれは成り立たない。これは医療保険も介護保険も全部同じだと思っています。
 一方で、なかなか賃金が上がらない状況がずっと続いていて、その中で保険料負担が結構ある中で、若い方々を中心として閉塞感、保険料に対する払いについての不満、そういったものもあろうかと思っています。ただ、若い方の保険料は、そのときの高齢者を支えるためというだけでなく、自分自身にも当然返ってきます。また、自分たちがその親とかの面倒を見る代わりに社会全体で応援してくれているといった意識がやはり十分浸透していないように思います。この国の社会保障は非常に大事な仕組みだと思っていますが、それの基盤となる部分がこの社会保障教育そのものだと思っておりますので、ぜひ御議論いただけたらと思います。
 本日、先生方から第1回での御議論やこれまでもいただいた御意見を踏まえ、新たな教材について授業で活用しやすいような視点での見直しとか、また、映像を使った関係の教材とか、資料を出させていただいております。ぜひ先生方の活発な御議論をいただき、本当に実践で役に立つような、そして、子どもたちにしっかり伝わるような教材になればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○横山室長補佐
 それでは、議事に移らせていただきます。
 この後の議事進行は小野座長にお願いいたします。
○小野座長
 政策研究大学院大学の小野でございます。本日も座長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題は1から6までございます。1~2、3~4、5という3つの区切りになりまして、先生方には1~2の後、3~4の後、5の後、3回御発言をいただく機会があると事務局の方から承っております。
 それでは、早速ですので、議題に移らせていただきたいと思います。
 まずは、議題の「(1)取組の進捗と今後の方針について」、あと「(2)ストーリー教材の作成について」の2つにつきまして、事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山崎専門官
 先生ありがとうございました。では、厚生労働省を代表して、私から御説明いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1の1、2ページで「新規教材の作成について」、3、4ページで「他機関との連携について」、5ページで「副教材の改善について」、それぞれこれまでの取組の進捗と今後の方針をまとめております。この資料に沿って、まず全体を一通り御説明した後で、個別の教材案についてそれぞれ御意見をいただければと思います。
 まずは、資料1の1ページ冒頭の「新規教材の作成について」です。新規教材は3点作成しており、本日お示しするストーリー教材と映像教材の案について、いただいた御意見を踏まえて改善を試み、今年の夏までに厚生労働省の社会保障教育のウェブページで公表できればと考えております。また、教材を公表する際には、活用に関するマニュアルや参考となる社会保障関連情報についても併せて掲載できるよう、関係者と調整を進めていく予定です。
 新規教材の1点目が、1ページ(1)の横山先生の御著書「15歳からの社会保障」を基にした教材です。前回、改善案2としてお示ししたもので、詳細については、後ほど参考資料1を用いて御説明いたします。
 2点目が、2ページ上段(2)の授業でそのまま流せるような映像教材です。前回、改善案6としてお示ししたもので、こちらについても、後ほど参考資料2を用いて御説明いたします。
 3点目が、2ページ(3)のフューチャーデザイン教材で、こちらは前回お示しした改善案8と9に対応するものです。フューチャーデザインというのは、現在世代が将来世代の利益のために行動できるような社会を目指すという考えで、この活用の促進に取り組んでいる財務省と連携して、「持続可能な社会保障の在り方」をテーマとした教材づくりを進めてまいりました。実際に、試作した教材を用いて大学でワークショップを行い、色々と課題が明らかになりましたので、それも踏まえて改善に取り組み、ほかの教材と合わせて夏頃に公表することを目指したいと思っております。
 次に、資料1の3、4ページの「関係機関との連携について」です。これまで省内外の行政機関や団体とともに、効果的な連携策について検討を進めており、引き続き、その実現に向けて取り組む方針です。
 このうちの一つが、(1)の金融経済教育との連携です。現在、今年4月の金融経済教育推進機構の創設に向けた準備が進められており、所管の金融庁と相談してまいりました。実際、「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(令和6年3月15日閣議決定)」において、連携する旨記載されております。具体的には、金融経済教育推進機構が作成する教材において、社会保障教育の考え方を踏まえ、社会保障の意義や役割、給付と負担の関係等いろいろと盛り込ませていただきました。ほかにも、金融経済教育推進機構が集約する既存の教材や、実施する講師派遣事業等について社会保障教育のウェブページで公表したり、併せて金融経済教育推進機構のウェブページで社会保障教育の教材などを周知していただいたり、ということを考えております。
 次に、4ページ(2)の文部科学省との連携についてです。具体的には、今年の夏、ウェブページにおいて新規教材等を公表する際に、文部科学省から各教育委員会等宛てに事務連絡を発出する形で、周知に御協力いただくようお願いしております。
 また、4ページ(3)のその他として、財務省の財政教育、国税庁の租税教育、全国社会福祉協議会の福祉教育、また、省内の年金教育や労働法教育と連携して取組を進めてまいりたいと思っております。これまでに連携策について具体的に御相談する中で、最も注意が必要なものとして挙げられたのが、出前授業の活用の周知です。出前授業については、それぞれの教育の趣旨や教えられる内容を適切に伝えなければ、学校側のニーズとのミスマッチが生じてしまうといった懸念や、出前授業の取組は、地域差があり、体制が十分に整っていない地域もあるといった話も伺っております。このため、そういったそれぞれの教育や現場の実態についてしっかりと把握した上で、現場の方々に負担のかからない周知の在り方についてしっかりと検討していきたいと考えております。
 最後に、5ページの「副教材の改善について」です。既に社会保障教育のウェブページでも周知している指導者用マニュアルの副教材について、昨年度の検討会で、現場の実態を踏まえた改善案を作成いただきました。これらについて、厚生労働省の資料として公表することを前提に、修正しております。こちらについても、後ほど参考資料3で御説明させていただきたいと思います。
 以上、現在の取組状況と今後の方針について全体をお伝えしました。
 続いて、参考資料1を用いて、ストーリー教材について御説明いたします。こちらの教材は、昨年度の検討会でお示しいただいた改善案2の「授業の冒頭で活用できる身近な社会保障関連の時事ニュースなどの資料の追加」を実現するために作成したものです。ヒアリングなどを通して、教員の方々から、生徒さんは社会保障になじみがないため難しい話というイメージが強く、授業の冒頭で、これは自分にとって大事で、しっかり聞いておかなければならない話だと感じていただくことが重要とうかがいました。このため、横山先生の御本を参考に、社会保障が必要となる状況を300字程度で描いたストーリー形式の教材を御用意しました。社会保障の授業の冒頭で、こんなことがあったらあなたはどうしますかと問いかけながら一緒に読んでいただき、対応方法について生徒さん自ら調べていただくことを想定しております。
 3作のストーリーを作成しており、1つ目が、事故に遭ってけがをし、1か月の入院が必要になってしまった登場人物についてのお話、2つ目が、大学卒業直前の旅行でけがをして障がいを負ってしまった登場人物に関するお話、3つ目が、突然解雇されて職員寮から退去しなければならず、仕事と住まいを同時に失ってしまった登場人物に関するお話です。
 事前に先生に御相談した際に、生徒さんが集中して最後まで読める分量は300字程度とうかがい、横山先生の御本の要素は残しつつ、いかに短く分かりやすく状況を伝えられるかに注力して作成しました。
 また、前回、横山先生からいただいた御意見を踏まえ、ストーリーの後ろに、政府の孤独・孤立対策のウェブサイトのQRコードや利用方法に関する資料を付けております。このサイトは横山先生も作成に携わっておられ、自動応答のチャットボットにより、悩みに応じた支援制度や相談窓口を表示してくれる機能があります。現在、マイナポータルとも連携し、表示された支援制度の一部については、ウェブ上で申請することも可能になっております。前回、玉木先生が、いずれAIが、困った状況に応じて自治体の相談窓口を具体的に提示してくれるような世の中になることを希望するとおっしゃっていたと思うのですが、政府としても、支援を必要とする方に情報が届く仕組みづくりに取り組んでいるものと承知しております。
 参考資料1の7ページに、孤独・孤立対策のウェブサイトの概要を記載した資料も付けております。孤独・孤立を感じている人は若年者にも多いという調査結果もあることから、18歳以下向けのページも用意されており、ルビが振ってあったり、簡単な言葉が使われていたりと、こどもでも使えるようなサイトになっています。こちらについても、悩みに応じて、チャット、SNS、電話による相談窓口を紹介する機能や悩みを抱えている方向けのQ&Aが掲載されています。この資料を活用して、孤独・孤立対策のウェブサイトを紹介していただき、つらい思いをしている生徒さんに情報が届けばと、孤独・孤立対策の担当とも相談しながら作成しました。
 ストーリーについては、学生向けの教材ということを考慮して、いくつか工夫をいたしました。横山先生の御本は、それぞれのエピソードで登場人物の境遇を詳細に描くことによって、読者が感情移入しながら読み進められるようなすばらしい作品になっていると思います。一方で、教材としては、登場人物のバックグラウンドに関する具体的な情報を盛り込むことによって、自分事と捉えづらくなる生徒さんも出るのではないかという御意見もいただきました。このため、それぞれの登場人物について、年齢、性別、家族構成などに関する描写はできるだけ避け、どんな生徒さんでも自分に置き換えて想像ができるようにしました。
 また、横山先生の御本においては、勤務中や通勤中に起こった出来事もあったのですが、その場合、労災保険が適用されることも考えられ、医療保険や年金保険との併給調整について注釈をつける必要性が生じます。こういった状況を避け、できるだけ簡潔に説明できるよう、勤務中や通勤中を想起させるような文言は入れないこととしました。
 また、2つ目のストーリーについては、横山先生の御本の中では、トラックドライバーの方が業務中に事故に遭うというお話だったのですが、そういう状況でないと社会保障は受けられないのではないかという誤解を与え、かえって制度の利用を妨げてしまうのではないかという御意見もいただきました。このため、あえて、大学生がスノボ旅行中に大けがを負ってしまった、という高校生にとって身近な状況を描いた内容に変えることとしました。
 以上でございます。まずは、このストーリー教材について、御意見をいただければと思います。
 なお、この教材の作成は、今回の最重要課題と思っておりますので、現場で御活用いただくためにどうすればいいか、御助言いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○小野座長
 説明ありがとうございました。
 それでは、先生方の中から、今の資料1と参考資料1の説明につきまして、御意見、御質問などのある方がいらっしゃれば、御発言をお願いしたいと思います。挙手でお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。
 皆さん、よろしいでしょうか。
 佐々木先生、お願いします。
○佐々木構成員
 世田谷泉高等学校の佐々木です。本日はありがとうございます。
 大変魅力ある教材になっていると思いまして、業務が大変お忙しい中、御作成いただきまして本当にありがとうございました。
 1点御質問というか、意見として、このストーリー教材は非常にリアリティがあっていいと思うのですが、この話をした後のいわゆる落ちといいますか、次の展開はどのように考えていらっしゃいますか。みんなが見る共通の設定があって、ポータルで調べていく。そうすると、いろいろな制度に行き着くと思うのですけれども後日談ではないのですが、答えがあると思いますので、そういう答えを示すのかどうかという一点。
 あと、これを授業のどの段階でやるか。冒頭という話がありましたが、その冒頭から展開を持っていくときにどういう構想でやるか。現時点で構いませんので、教えていただければと思います。
〇山崎専門官
 ありがとうございます。
 1点目については、横山先生の御本の中でも、社会保障制度の紹介を受けて、悩みが少し晴れたとか、状況が改善したというところまで描かれており、その部分を参考に後日談を付けることも考えております。
 2点目については、授業の冒頭で御使用いただき、生徒さんたちが社会保障に興味関心を抱いてくださった状態で、社会保障全体の御説明に進んでいただければと考えております。ストーリーを読んで、それに対応する制度を調べていただき、社会保障が必要になる状況と実際に利用できる制度について具体的なイメージを持っていただいた後で、社会保障の全体像や社会保険制度の内容など、教科書に沿った授業に進んでいただくことを想定しております。
 実際、公表する際には、こちらの資料を活用したモデル授業案を作成することを想定しています。指導案を作成する際には、先生方の御意見をいただければと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
○佐々木構成員
 ありがとうございます。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかの先生方、御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。
 では、玉木先生、お願いします。
○玉木構成員
 今回の教材、大変、利用可能性が上がっていると思います。字数も減っていますし、あと、教員の皆さん、先生方が細切れで使う際にも使いやすくなっていると思います。非常に使う側の自由度が上がっていてよろしいかと思います。
 あと、こういったものを使って、これからもうちょっと授業に即したものにしていくときなのですけれども、例えば大学受験の政治・経済の科目の勉強に至るような導き方はあると思うのですが、そういった別の教え方の対象になる生徒は本当に数%しかいないのだろうと思うのです。それに対して何十%か、多分、半分を超える人たちは、世の中には社会保険があるのだとか、政府は何かやっているのだというイメージを持ってもらえればそれでかなり成功という人たちもいるでしょう。
 そうすると、もうちょっと「落ち」といいますか、終わりまでどうなるのかを考えたときには、いろいろなタイプの生徒がいるけれども、まずは人数の多いところからやってみたらどうかという気がするところでございます。
○小野座長
 厚労省の方、いかがでしょうか。
○山崎専門官
 まさに、今、玉木先生から御意見いただいたとおり、大学受験を見据えて政治・経済や公共を勉強する生徒さんは本当にごくわずかと伺っておりますが、幸い、家庭科の学習指導要領においても、共生社会と福祉について触れられているかと思います。前回、家庭科については藤村先生から、家庭科と公共との連携については、佐々木先生からお話しいただきましたが、文部科学省とも相談して、家庭科などのほかの授業でも活用いただけるようお示しできればと思っております。
 ありがとうございます。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかの先生方、いかがでしょうか。
 もしよろしければ、横山先生、横山先生の教材を大分参考にさせていただいたので、もし何かコメントがあればお願いしたいのですけれども、横山先生、いかがでしょうか。
○横山構成員
 ありがとうございます。
 今回、自書を御活用いただいて、かつこれはより身近で、自分事として想像しやすいように御作成いただいて本当にありがとうございました。
 第1回目で、あなたは独りではないと、チャットボットのサイトとの接続についても御提案をさせていただいて、そちらも採用いただいてありがたく思っております。
 1点、佐々木構成員が先ほどおっしゃっておられた、後日談があると、実際、こういうふうに困ってみたいなことを本当に300文字で分かりやすく書いていただいたと思うのですけれども、では、制度を使ってどういうふうに生活が助かったのかみたいなところがありますと、より社会保障の運用をイメージしやすいのかなと思いましたので、私も佐々木構成員の御意見に賛成のところです。
 私からは以上になります。ありがとうございます。
○小野座長
 厚労省の方、いかがでしょうか。
○山崎専門官
 実際にこのストーリー教材を公表する際には、ストーリーごとに、活用が想定される制度等に関する参考資料を幅広く付ける方向で、関係者と調整を進めております。例えば1つ目のストーリーについては、高額療養費をはじめとする公的医療保険制度の活用が想定されると思いますので、ケガをして1か月ほど入院した場合、どのぐらいの医療費がかかり、保険給付によってどのぐらい自己負担が軽減されるか、具体的にイメージできる領収書などといった資料をつくれればと思っております。
 また、2つ目のストーリーについては、孤独・孤立対策のウェブサイトの検索例では障害年金をお示ししていますが、それ以外にも障害福祉サービスや障害者雇用といった社会保障の各種制度に関わる話になるかと思いますので、これについても、生徒さんの着眼点や理解度に応じて、様々な制度に話を広げられるよう参考資料を準備していきたいと思っております。これによって、いろいろな制度があることが分かり、希望が見いだせた、というような話の流れにできればと考えております。
 3つ目のストーリーについては、生活困窮者自立支援制度を検索例として示しておりますが、明日から来なくていいから、などといって突然解雇するようなことは労働法上問題があるのではないかということに気づかれる生徒さんもいらっしゃるかと思います。厚生労働省では、労働法教育の推進にも取り組んでおりますので、労働法等のワークルールや労働基準監督署等の相談窓口に関する情報を盛り込んだ労働法教育の教材も参考資料として付けて、将来起こりうるトラブルを未然に防げるような情報をお伝えできばと考えております。
 これらの参考資料については、また御相談できればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○小野座長
 ありがとうございました。
 先生方、ほかに御意見は。
 では、猪熊先生、お願いいたします。
○猪熊構成員
 ありがとうございます。今回、すごく教材を、力を入れてよくつくっていただいていると思っております。
 今のお話を受けてなのですけれども、私は特にこの3ストーリーの中で2つ目のストーリーがすごくいいなと思いました。大学生活最後の思い出づくりにスノボ旅行へ行って脊髄(せきずい)を損傷してという話です。これは、年齢や性別はなるべく外してということはあるのですけれども、ただ、年齢ぐらいはあってもいいかなと思っていて、大学生活最後というと、高校生などが読んだときに非常に親近感を、我が事として思えるのではないかと思います。その意味でいくと、第1ストーリーも、これだけでは20代か、30代か、40代か、よく分からないというのがあって、年代ぐらいは入れてもいいのかなという感じがいたしました。
 第2ストーリーは、後ろの資料を見ると障害年金の話に行くのかもしれないですけれども、これは医療とか福祉とか、また、まさにおっしゃった障害者雇用とか、いろいろな制度がこの話には含まれていると思います。障害年金の話だけみたいな形で教えるとすごくもったいない気がします。先生方に、このストーリーによって、いろいろな制度につなげて教えられますよということを示されるとすごく使い勝手がいいかと思いました。
 それと、つまらない話なのですけれども、第3ストーリーを読んでいて、これは仕事も家も失ってというもので、リーマンショックの派遣切りを思い出したわけですが、今はすごく人手不足で、アルバイトで求人も高まっている時期なので、そういう時代性に合わせてつくるのもいいのかなと思いました。親からの虐待とかネグレクトとか、親の話から生活保護につなげるとか、なるべく生徒さんも先生も身近に思えて、こういう人が多いねということからいろいろな社会保障制度につなげていけるようなものを出すのと良いと思います。
 独りでないという、この孤独・孤立対策ウェブサイトは、私もやってみて、こういうものがあって便利だなと思いました。欲を言うと、これは孤独・孤立対策ウェブサイトだから、生活や医療は入っていますけれども、なかなか年金にまでは飛ばないところがあって、それをここに入れ込むのは難しいとは思いますが、障害年金の話が出てきたのであれば、今、厚生労働省もすごく年金教育に力を入れてサイトを作っているので、そちらに飛ぶようにすると、より使い勝手がいいと感じます。
 以上です。
○山崎専門官
 ありがとうございます。
 ストーリー1については、小野座長からも性別のバイアスがかからないような表現としてはどうかという御助言もいただいており、猪熊先生の御意見も踏まえ、もう少し工夫をしたいと思います。
 なお、ストーリー2については、猪熊先生の御助言を踏まえて、就職間近という設定にしたのですが、これは、高校生に知っていただきたい、国民年金保険料の学生納付特例制度の話につなげられるのではないかと考えたというのもあります。私自身、高校の政治・経済の授業で、もしものときに障害年金を受給できるよう、学生納付特例を申請しておいたほうがいいよという話を聞いて、申請しておこうと思えたということがあったので、そういった高校生の役に立つような情報も盛り込めればと思っています。必要最低限に絞ったモデル授業案を作成しつつ、一方で、先生や生徒さんが必要に応じていろいろな情報を入手できるよう、社会保障教育のウェブサイトを充実させていきたいと考えております。こちらについても、利便性を高めるためにどのような工夫ができるか、改めて御相談できればと思います。よろしくお願いいたします。
○小野座長
 ありがとうございました。
 先生方、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、次の話題に移らせていただきたいと思います。議題の「(3)有識者によるプレゼンテーション」で、議題(4)に先立ちまして、映像教育の作成にお力添えをいただきましたいちのせかつみ様に、これまでのお取組について御説明をいただければと思います。
 それでは、いちのせ先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○いちのせ氏
 はじめまして、いちのせと申します。よろしくお願いいたします。
 私自身のプロフィールも含めて、はじめに紹介したいと思います。
 私自身、平成元年、1989年からファイナンシャルプランナーという仕事を今年で35年しております。長い間、人の人生に係るお金の仕事をしています。
 その中で、私が基本として行ってきたことの多くが、子どもたちのための金銭教育でした。ただ、すごく難しい分野でもありました。当初、それこそ、学校にお金の教育を授業で行いませんかとお話をしに行くと、どうしても、お金のことは家でやることだ、しつけであるとよく言われました。そして、学校の教育の中では盛り込むことはなかなか難しかったですが、全国の学校で多くの先生方が興味を持っていただき、それ以降、ちょっとずつ広がっていきました。今や400近い学校に行かせていただいて金銭教育をやらせていただいております。
 今や金銭教育という言葉も使わなくなってきました。金銭というと、お母さん方から「銭とは何?」と言われるような時代になっているので、金銭から金融教育という名前に近づいてきたかなと思います。ずっと子どもたちの前でお金の話をする機会が非常に多かったのは、自分の子どもと一緒に金銭教育を進めてきたとも思っております。
 今回は社会保障教育ということですが、これは金銭教育と全く違うものではないのです。実はずっと子どもたちにお金の教育をする中で、お金とは何と聞かれたときに答えているのは「お金は幸せになるための道具なのだ」。これが基本的な考え方であると子どもたちにお話をしております。
 その中で、ただ単に物を買うということだけではなく、例えば税や社会保険料を払うというものも、結局は幸せになるための道具として活用されているのだということもしっかりと理解した上で、今よく言われている「貯蓄から投資へ」という言葉を理解するべきだろうなと私は思っております。そういう面では非常に社会保障教育というものは大事な教育だなと思っております。
 私自身も今から13年前、子どもが学生の時にがんになり、私が高校生のときに母親ががんになって亡くなるという経験があります。うちの家もそんなに豊かな家ではなかったので、母親は家で亡くなった時に、何で最後まで病院に入院しなかったのかなと疑問に思っていました。実は私の家族は社会保険ではなくて、国民健康保険だったので、仕事を休んでいても傷病手当金が出なかったこともあって、母親はお金のことを気にして、お金がかかる入院をせずに、家で亡くなりました。私が大人になってから分かるのですが、その当時は何で入院しないのかと疑問に思った記憶があります。
 そして、自分ががんになり、自分でお金を払うわけですから、いろいろなことが見えてくるわけです。社会保障について私自身も知らなかったことや学生である子どもたちには全く知らなかったこともあって、学生の時からしっかりと社会保障教育をやっておかないと、何かあったときに制度をうまく受けられない。日本は申請主義とよく言われるように、知っている人は申請できますが、知らなければ申請できず制度を受けられない可能性もあるということになります。小・中学生ではなかなか難しいかもしれませんので、高校生ぐらいから社会保障教育をやっていくべきではないかなと思い、始めております。
 今日は、その内容を見ていただければありがたいなと思います。ちょうど今月の18日に兵庫県の学校で行った授業の内容を見ていただきながら、どんなことをしているかを説明させていただきたいと思います。
 まず、未来を見るという形で話をします。実は、2065年の欄には数字が入っていません。子どもたちは未来を想像しながら数字を入れていくところからスタートするのですけれども、実際に答えを見ると、人口がすごく減っていくことが分かります。そこから見えてくるものは、やはり社会保障に対する大きな問題がたくさんあるなと知ることになります。年金の問題にしてもそうですし、医療費の問題も大きく兼ね合いしてくることを人間の数から未来の姿を考えていく授業をしております。
 あとは、実際に入院したらどうなるかを課題に、入院するとお父さんの給料は少なくなって、お母さんのパート代も減る。要るものは要る、治療費だけ増えてきて、家計が不足することになることを説明しながら、実際問題として健康保険の制度、3割負担とか高額療養費の話をして、ストーリー性を持って子どもたちに考えてもらうことをしています。
 実は、もしそういうことになったときにどう思うか、あなたの思いから話を聞いています。例えば、できるだけ頑張って成績を上げるとか、お小遣いを減らしてもいいとかと、何か自分ができる想いの話をするとか、サポートとしては何か家事を手伝うことができるか、学生同士でグループを組みながらいろいろと考えていくというような授業にしております。話し合ったことを書きだして発表するような授業となります。
 「がんライフのサポート」の欄には、どんな制度が、どのようなケースの場合に利用できるのか、お父さんがもしがんになったときに、時系列で治療の内容が分かるように表記されています。今回はお父さんのケースですが、お母さんのケースもあるので、状況に応じてケース・バイ・ケースで考えるのですが、そのときにどういう制度が使われるのであろうかを白いスペースに埋めていってもらうという形を子どもたちにしてもらっています。
 具体的には、いろいろな制度を盛り込んでいく授業を行い、子どもたちに最後に発表してもらうようになっていります。
 健康保険では、各企業の健康保険組合によっていろいろな制度があることを教え、将来の就職の選択肢の一つとして考えることを教えました。ただ単に給料がいいだけではなくて、社会保障、つまり、その会社の福利厚生のいいところもしっかりと見ていくことも必要だと思うことができるようになるための授業を行っています。
 あとは、授業を受けた学生の反応を付け足しながらより深く、もし親ががんになったときに、自分だったら何ができるのか。そして、どういう制度を受けられるか、子どもたち同士で話合いをしながら考えていく授業も先日やったところでございます。
 また、ここに至るまでは、金融教育を基本にやってきた経緯もあり、先々週行った兵庫県の舞子高校でやった授業ですが、学校からの依頼によって、オーダーで授業内容をオリジナルで作成して行うのですが、今回は高校2年生を対象に、学校の先生が、来年から受験になるが、受験料などお金がたくさん必要となるのだけれども、全然分かっていないと。なおかつ大学に進学した後、大学でどれだけお金がかかるかも知らない。結局、たくさん奨学金を使って、社会に出てから大変な目に遭っていると。それを高校2年生のときにとにかく実感させてほしいという依頼があったので、そういう授業をさせていただいたということです。
 簡単に見ますが、進路はどうなりますかということで、実際の現役の受験生に取材をして、現実的に大学へ行くためには、3年生になると進学塾に行ったり、模試をいっぱい受けたりする。それで、今回はお金をテーマにしますので、お金から見た進学という過程で進学塾へ行くのにはどれぐらいのお金がかかるのかとか、模擬テストとか、大学を受験する金額を具体的に出して、もしあなたが希望する大学に受験するのであれば、滑り止めで幾つ受けたいですかとか、それは地元の大学なのですか、遠方の大学なのですかというものを幾つか分けて、シミュレーションして、自分が進学したいと考えるイメージで、受験料がどれくらいかかるかを計算してもらいます。
 大学に合格した後は、どれぐらい費用がかかっているかを、表にまとめる作業をします。その中で、大学に行っている間にいろいろな資格を取ったりとか、成人式や卒業式などで好きなものを買ったりもしますので、そういう部分も踏まえて必要な資金を考えてもらう内容となっています。
 現実的に、それらの資金をどう担保するのかといったところでは、本人には全く担保の仕方がないというか、アルバイトぐらいしか出てこないわけですよ。知っている子どもは親から、おまえにはこれだけしか出せないぞと言われていたりとか、おまえのために学資保険はこれだけ入っているぞと聞いている子もいるので、自分なりに数字を入れていくのですけれども、ほとんどのケースがあまりどれぐらいかかるか分からないという部分があったりとか、今の計算で表にまとめて金額を出しますので、大体これぐらいかかるのだなというのを実感してもらって、それをアルバイトで、多いのは奨学金が多いので、僕の行っている学校でも7~8割の子たちが奨学金を使ってきているので、できるだけ少ない奨学金がいいという考え方を持ってもらいたいなと思います。それはなぜかというと、卒業してからローンが待っているということを感じさせたいなという授業です。
 現実的には初任給をこれだけもらうけれども、ここからどれだけ毎月返済するのかを考えてもらい、数字を入れ込んでいくと、必然と毎月いくら返さないといけないかが数字で出てきます。ばたばたと話をしてしまいましたが、こういう授業をやっています。
 子どもはお金のことが大好きで、ちょっとでも増やしたいという考えが非常に多く、今はNISAについて質問をする高校生が少なくありません。NISAよりもっと大事なものがあるだろうと。
 その中で今回、いい機会を与えていただいて、映像という形態を取らせていただいていますが、先ほどのがんライフ教育では、お父さんががんになったとき、お母さんががんになったときの2ケースのビデオを作っています。まず、そのビデオを視聴することで、少しでもリアリティな気持ちにする。私がぽんと言ったところでなかなかぴんとこないのですけれども、その辺は映像で雰囲気を持たせて、実際、もしも自分の親がこうなったらどうなるだろうかという雰囲気でビデオを使ったということです。
 それと、クイズ形式で、ビデオを使ってするのですが、子どもたちは盛り上がり、よく聞き、リアリティな感覚になりますので、映像を使ってやる方法は非常に大切だなというのは思いました。
 今回、この社会保障教育に関してもビデオ形式を物すごく意識しましたし、金融教育、金銭教育をやっていて本当に思うのは、各地域で考え方が違うのはすごく感じるのです。地域性は、お金のことに関してはあります。都会の子どもと田舎の子どもでは全くお金のことに関しては違うし、考えていることも違う。だから、できたら1つの学校の生徒たちに意見をもらうのではなくて、いろいろな地域の子たちから声が欲しかったなというのがあったので、今回つくった映像では、北海道、沖縄、東京、大阪、兵庫の高校生に参加してもらって意見をいただいたのもその一つでした。そうすると、いろいろな答えが出たのも結果的には、私が、想像していた以上の意見も出ましたので、いい映像になったのではないかと自負しています。
 ただ、つくり方としては、あまり長いものだと聞かない、見ないので、2~3分ぐらいでまとめないといけないという大変さはあります。
今回、こういう形で、このような場所を与えていただき、皆さん方に御理解してもらい、子どもたちに伝えるようなことができれば非常にありがたいなと思います。
今までやってきた35年間の金銭教育から社会保障教育に向けての今後の私自身のやり方にも大きく影響するなと思っておりますので、いろいろな御意見をいただきながら考えていきたいなと思います。
 以上です。
○小野座長
 いちのせ先生、どうもありがとうございました。
 それでは、続けて、事務局から議題の「(4)映像教材の作成について」の資料の御説明をいただいて、その後で先生方から御意見をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○山崎専門官
 まずは、いちのせさんのお話、本当に勉強になりました。引き続き、色々と御助言いただければと思います。では、参考資料2に沿って、映像教材(案)について御説明いたします。資料1の「取組の進捗と今後の方針について」にも概要を記載しておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 映像教材については、資料1の2ページの冒頭にあるとおり、先生方の御助言を踏まえ、2~3分程度の短い動画と、それを見た上で取り組んでいたくワークシートのセットを2本作成したいと思っております。動画の基となるいちのせさんと5人の高校生の対話を収めた音声と、投影用のプレゼンテーション資料を準備しております。
 1本目が参考資料2の2~5ページの映像教材1で、こちらはストーリー教材と同じように、社会保障に関する授業の冒頭で使っていただくことを想定しております。高校教員の方々へのヒアリングの中で、文章の読解が難しい生徒さんは、数行にわたって文字が並ぶ資料を前にすると、意欲や集中力が低減してしまうというお話を伺いました。一方で、そういう生徒さんにこそ、将来に備えて社会保障について知っていただきたいという思いがあり、簡単な動画を見るだけで調べ学習の導入になる教材を作成することとしました。
具体的には、指導者用マニュアルにある「これからの人生で起こるかもしれない困難な出来事にはどのようなものがあるか」という問について、高校生からいただいた御回答をいちのせさんが収録してくださった音声に沿って、プレゼンテーション資料を作成しました。これに、ストーリー教材と同様、参考資料2の4ページのワークシートを付けて、孤独・孤立対策のウェブサイトを活用した調べ学習に取り組んでいただき、様々な社会保障制度の存在や、将来困ったときに情報を得る方法を知っていただければと思っています。
 これだけ問が多いワークシートに取り組むのはなかなか難しいという生徒さんもいらっしゃるかと思いますので、先生が生徒さんの状況に応じて柔軟な使い方ができるよう編集可能なファイル形式でし、公表したいと考えております。
 2本目の教材が参考資料2の6ページ以降の映像教材2です。公共の教科書の中で、財政や税制と関連づけながら、持続可能な社会保障の在り方について考えるというテーマが取り扱われていましたので、このテーマについて考察、議論等する際の参考になるような教材を作れればと思いました。
 いちのせさんが指導者用マニュアルをもとにして、これから起こるかもしれない困難な出来事に備えるためにどうすればいいかという形で、今後の社会保険制度をどうしていくべきか、高校生の皆さんに質問した音声を御用意くださいましたので、これを活用させていただくこととしました。最初は、皆さんの御回答について、レポートやディスカッションに取り組む前に選択肢A、Bそれぞれの回答例としてお示しすることを考えていたのですが、皆さんが真剣に考えて、御自身の言葉で話してくださったからこそ、AかBかという極端な二択に収まらない、素敵な御回答になっているように感じましたので、委員の先生方の御助言も踏まえ、9、11ページのとおり、できる限り生徒さんの御意見をそのまま活用し、厚労省のメッセージをお伝えするための教材にできればと考えております。これを通して、社会保障制度の在り方については、二者択一のどちらかを選ばなければならないわけでも、唯一の正解があるわけでもないこと、また、自分とは全く違う状況にいる人や将来の自分自身のことも想像しながら、考えてほしいということを感じていただければと思います。
 映像教材についても活用方法をお示しすることが必要だと思いましたので、13ページに記載した内容を盛り込んだ指導者用マニュアルを作成し、教材と併せて公表できればと考えております。なお、13ページ最後の「映像教材を活用したモデル授業案」というのは、この映像を使用する前に、社会保障、財政、税制について御説明いただく際の流れや教材のようなものをお示しできればと思います。これについても、公表までの間に御相談できればと思います。
○小野座長
 ありがとうございました。
 では、今の話題につきまして、御意見、御質問などがある先生方がいらっしゃればお願いしたいと思います。
 いかがでございましょうか。
 では、玉木先生、お願いいたします。
○玉木構成員
 すごくいいものができていると思います。
 1つだけ申し上げたい点は、参考資料2の最後のページの指導者マニュアルの構成というところなのですけれども、私は、指導者マニュアルをつくるに当たっては、高校の現場の先生方がやる気になるようなものを考えていただきたいのです。というのは、先生方は、自分は健康保険とか年金とか、制度を知らなくてはいけないのかと思ったらやる気が出ないだろうと思うのです。別に社労士の専門学校の授業ではないわけです。だから、指導者用マニュアルのポイントとしては、生徒に何か安心感を与えるとか、あるいは自分は社会から放っておかれているのではなくて、社会のセーフティーネットがあるところで生きているのだということを理解させることが多分、マニュアルの一番のポイントだろうと思うのです。
 そうすると、例えばこの13ページの一番上の行で、必要な制度とか、社会保障について当事者意識とかということを書くと、制度を知らなくてはいけないのか、あるいは当事者意識を持たせなければいけないのかとか、保険料を払うというけれども保険料が幾らとか、「私は授業で教えられるほどには知らない」ということになってしまったら、社会科の先生、家庭科の先生は心理的な負担を背負うことになってしまいます。何か、現場の先生方の心理的なバリアが低くなるような指導者マニュアルの書き方をぜひ工夫いただけたらなと思います。
 これは間違っても、厚労省とか、いろいろな役所の人にコメントを求めたらいかんのです。すぐ、「これは経過措置がある」とかなんとかになって、脚注が6つも7つも出てくるわけです。多分、先生方は、たとえ脚注であったとしても、6つも7つも出てきたら、生徒に対して過不足なく教える自信がなくなります。そういう愚をおかさないようになるべく、はっきり言って7割ぐらい正確だったらいいのだという割り切りを役所として行ってつくっていただいたほうがいいのではないかと思います。
○小野座長
 厚労省の方、いかがでしょう。
○山崎専門官
 ありがとうございます。先生方が活用される上でも生徒さんが学習する上でもハードルが高くならないように、ということが一番重要と思っておりますので、指導者用マニュアルの作成に当たって、また御相談できればと思います。よろしくお願いいたします。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかの先生方、御意見、御発言などのある方はいらっしゃいますでしょうか。
 それでは、杉浦先生、お願いいたします。
○杉浦構成員
 教材の作成等、ありがとうございました。前に見たときよりもさらに見やすくというところで工夫がされていっていると思いました。
 映像教材について、まとめとして使うようなことをイメージしているという話があったと思うのですけれども、そのまとめになる前にやっている内容はどこまで、どう想定しているのだろうかということ。あと、選択肢のAなのかBなのか、AでもBでもないのかと考えるときに、この出てくるモデルでしゃべっている高校生が言うことはまさにそのとおりなのですが、私は一応、進学がほとんどの学校にいますので、そういう学校でこのことをもっと考えようとなったときには、やはりきちんと根拠資料に基づいた形で考えられることが必要になってくると思うのです。
 もちろん、社会連帯の理念について理解してもらうことは大事なのですが、ある種、政策を考えることができるということまでもし目指すのだとすれば、今、そこまで細かい資料はないほうがという意見もあるのですけれども、そういったところまで考えていくことになるのであればどういうことができるのかということを思いましたので、お願いしたいなと思っています。
 あまり細かなことは教えないで、AかBか、それとも、その他かというものを聞くのは、去年、私が厚生労働省のつくられた教材で実際にやってみたのですけれども、基本的に理念としてはAがいいのではないかという傾向にはあったと記憶しています。
 以上です。
○小野座長
 どうぞ。
○山崎専門官
 ありがとうございます、杉浦先生にいただいた御意見に対応するものが、資料1の新規作成教材のうちの2ページ(3)のフューチャーデザイン教材かと思っております。こちらは財務省と協力し、国の財政や税制、社会保障をめぐる情勢について、統計データもできるだけ盛り込んだ資料を作成しております。これについては、映像教材とは異なり、抽象的な概念について考えることが得意な生徒さんに使っていただけるような資料を目標にしたいと思いますので、こちらについてまた御相談できればと思います。
○杉浦構成員
 ありがとうございます。
 今年、社会保障についてのディベートを生徒にさせてみたのですが、そうしたら、小さなスマホの画面とかで意外と厚労省の統計の資料など、グラフを見たりとかということをしていたのです。ちゃんと官公庁とかが出しているようなデータに当たりなさい、あるいは新聞にしなさいという形で言ったのですけれども、そういった形でデータがそろうと、これとはまた別の形で資料を使うときに検索に引っかかって、それが、生徒が考えるきっかけになるかなと思いました。
 3番の話につながってしまうと思ったのですけれども、先にお聞きしました。ありがとうございます。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかの先生方で御意見、御発言がある方はいらっしゃいますでしょうか。
 では、佐々木先生、お願いします。
○佐々木構成員
 いちのせ先生、ありがとうございました。声は常に聞いておりましたが、対面させていただきありがとうございました。
 先ほどの先生のプレゼンテーションの中で、「お金は幸せになるための道具」であるというフレーズが非常に印象的で、さらに社会保険料とか払っている税金がどのように活用されていくのかというところが実は物すごく重要なところで、教育で扱うべきところだと思います。
 今回の教材は、要するに、自分が困難になったときに政府はどう助けてくれるのかという制度の学習です。しかし、自分が払った税金や社会保険料は、ほかの困難を抱えている方々を救う原資にもなるわけですね。これが利他的な精神だと思います。
 どうしても社会に出たり、大人になったりすると利己的になってしまうのですが、教育だと利他的まで踏み込みますので、税金を払うのは、痛税感という言葉もあるとおり、非常に損をしている感覚はあると思うのですけれども、そうではないのだと。最近、クラウドファンディングとかがはやって、困っている人にお金を出すことに対しての意識は変わってきているので、ある意味、税金の意義づけをはっきりさせて、社会保障につながるとかを言えば、人々の意識は変わってくるのだと思いますので、ぜひそこは財務省の方と連携していただいて、税や社会保障の負担感に対する意識をプラスに変えていく教材を今後示していければ、かなりいいのではないかなと、伺っていろいろ感じました。
 それで、資料の映像教材のところで、文字を読むのが難しい子に対してこそこういうものが必要だというお話がありました。それであるとすれば、先ほどQRコードを読み取って、こういう仕組みがあって、こういうアクセス方法があってというものを紹介されていたと思うのですけれども、あれをぜひ映像の中で組み込めないかなと思います。視覚的に捉えて、困ったときの自治体の役所へのアクセス方法も視聴覚教材の中に組み込むと、その子たちにはヒットするのではないかなと思いました。
 あと、がん教育について伺いたいのですけれども、資料を見ていくと、やはり保険診療分と保険外診療分があって、どうしても後者の自分で支払う部分は大きいというふうに、先生の資料を見ていると、印象として見受けられました。そうしますと、例えば社会保障教育の授業でこれを扱うと、社会保障教育があるから安心だと捉える子もいる一方で、何だ、自分でここまで用意しなければいけないのかと自助に意識が向く可能性もあります。先生はこれを扱われる中で、がん教育を行う中で社会保障教育において、こちらの意図するところとそうでないところに行く場合と、いろいろあると思うのですが、その点については実践されていかがですか。
○小野座長
 では、お願いします。
○いちのせ氏
 やはり世の中的にはすごくいろいろな情報があり過ぎて、例えば通常は社会保障で決められている医療が基本的な医療の仕組みですし、それを支払うのが基本的な考え方なのですけれども、それ以外にも、ネットで探すとすごくたくさんの、治りますとか、これは効きますとかというものはすごく出ているので、逆に考えると、それをどういうふうにちゃんと判別できるかはすごく大事だなと思って、そこはすごく教えていかないといけないことだなと思っています。
 まず一つあるのは、かかるものと、かけるものの2つに分けて考えないといけないことだと思います。例えば社会保険等で支払うのは、それは治療のために支払うのですけれども、その以外のものは自分の意思によっていくらでも使うことができます。私はがんをり患して5年たったときに、ドクターからこれからは、普通の生活に戻っても大丈夫だと言われましたが、それまではきつい薬を飲んできて、明日から何もしなくてもいいと言われたときに、そうだ、何もしなくてもいいのだとは、素直に思えないのが人間の性だと思います。今まで、それこそ味覚障がいも起こるぐらいの薬を飲んできて、さあ、明日から普通でいいと言われても何もしなくていいのではなくて、何か他に体にいいものを自分で探さないといけないと必死で調べるのです。だから、一本1,500円もするような水を騙されて買ったりしてしまう原因は、怪しい情報が物すごくあふれているのです。
 今は全てがネットから情報を得てしまうのですけれども、ネットの情報が正しいものばかりではないというのは知っておかないといけないことだなというのは思っています。お金はかけたら幾らでもかけられるので、かかるお金とかけるお金の違いはしっかりと教えたいなと思っています。
○佐々木構成員
 すみません。そうしますと、がんにかかった場合は、公的な医療保険で十分だという認識に生徒はなったりするものなのでしょうか。それとも、その逆になったりするのでしょうか。肌感覚で結構ですので、教えていただけますか。
○いちのせ氏
 私のケースの場合は、病院で受ける医療すなわち標準治療で十分だと話します。でも、そこまで聞く子はいないのですけれども、とにかくたくさんかかるお金が社会保障によって少なくて3割負担になる。3割負担分が多ければ、高額療養費の対象になる。それによって、本当は何百万円かかるような手術代が例えば10万円程度で済む。そういう制度が、今、国にあるのだということぐらいまでしか理解はさせていませんし、それ以上の先の話は、不透明な部分も非常に多いので、現実的に授業としてやるときはそこまでの話はしていないです。
 あくまで、かかるお金は社会保障、かけるお金は自分の意思の部分ということでしょうか。その程度の感じになっていると思います。
○佐々木構成員
 ありがとうございました。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかの先生方で御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 では、杉浦先生、お願いします。
○杉浦構成員
 いちのせ先生、ありがとうございました。
 今、佐々木先生が聞いていたところも私が気になった部分でして、あと、4番のスライドもそうなのですけれども、これを見ると何かすごく資金が不足してしまって、どうしていいか分からない状況を感じてしまうような気がして、それに対して、次に保険の説明があるから、健康保険で大丈夫なのだろうという、多分、つながりになると思ったのです。
 そうしてくると、また6番で、先ほどの自分の意思で払う分と実際にかかる部分とは違うということなのですが、3分の2ぐらい足りなくなるというようなイメージになってしまった部分がありまして、ここの保険診療分と保険外診療分とその他の部分はやはり面積なので、実際にこのぐらいの金額がかかるという、総額が幾らとあったときに、この比率なのかなと生徒は感じてしまいます。そういう意図ではないかと思いますので、その辺はどう考えたらいいのかを教えていただけたらと思います。よく分かっていなくて。
○いちのせ氏
 ここは、実はその下に僕の領収書があるのですけれども、この領収書の説明をするのですが、実際問題としては、赤く丸がついているところが治療費になります。一番上の128万5770円が治療費になるわけです。通常の場合は、これの3割負担になるわけなのです。その3割負担が多ければ高額療養費になる。だから、現実的には高額療養費は一番下にあります9万円ほどが高額療養費になるのです。
 私が子どもたちに言うのは、「物すごくナイーブで恥ずかしがり屋だから、個室に入った」という話をするのです。個室に入ったので、個室料が11万円かかっています。別に個室に入らなければ要らないお金になるのです。実際、個室に入ったから特別な治療を受けたわけでもなく、1人で寂しい思いをしただけかなと思ったりもするのですが、金額の多さ、通常は9万円ほどでいいわけですけれども、プラス11万円が保険外診療分という形になって、この数字の幅の大きさになったというのも説明のときには入れたりするときはあります。
 もしこれがなかったら、先生がおっしゃるように、できるだけここを少なくするほうが社会保障の役割はすごく見えてくると思いますので、本来はそのほうがいいですね。自分の事例を入れてしまっているので、どうしても個室に入ったという話をしたかったので、大阪ではこの当時、個室代が一日9,800円なのに対して東京では一日2万円とか3万円と聞きますので、すごくそっちの金額が増えてくることも教えたいなというのもあったりしたのもありますが、そういう思いもあったということで、すみません。
○小野座長
 ありがとうございます。
 ほかの先生方はいかがでございましょうか。
 では、特にないようであれば、次の議事に行かせていただきたいと思います。いちのせ先生、どうもありがとうございました。
 それでは、議題の「(5)副教材の改善について」に話を進めたいと思います。事務局からの御説明をよろしくお願いいたします。
○山崎専門官
 ありがとうございます。3つ目の副教材の改善について、資料1の5ページに概要を記載し、実際に作成した副教材案について参考資料3のとおり用意しておりますので、両方用いて御説明いたします。
既存の指導者用マニュアルに含まれている副教材について、昨年度の検討会で多くの御意見をいただき、報告書において改善案をお示しいただきましたので、厚生労働省の資料として公表することを前提に、制度所管部局によるチェックを実施しました。また、厚生労働省の資料は体裁もバラバラで、見にくいものが多いという問題意識の下、若手職員が専門家の御知見も得ながらパワーポイント統一様式を作成していますので、これをもとに、改善を図りました。
 参考資料3の16ページまでが昨年度の検討会でいただいた案を反映したもの、18、19ページが教科書などを勉強して先生方のお役に立つかもしれないと考え、新規で追加したもの、21ページ以降が今年度いただいた御意見等を踏まえて形式面の改善を試みたものです。
 順番に、簡単に御説明いたしますが、9ページまでは、基本的には、読みづらいもの、生徒さんの理解や集中力を妨げてしまうもの、誤った情報を伝えかねないものなどについて、構成員の先生方や高校教員の方からいただいた御意見を踏まえ、文字の拡大、不自然なイラストの差し替え、表現の適正化などといった修正をそれぞれ行いました。
 11~16ページは、昨年度の検討会で新しく作っていただいたものについて、厚生労働省の資料として公表できるようための、内容や体裁の見直しを行っています。
 この中で最も重要と認識しているのが、12ページの給与明細と生活保護費に関する資料です。これまでに多くの高校教員の方から、実際の金額などが盛り込まれていてイメージしやすい資料を作ると、生徒さんに興味関心を持ってもらえるとの御意見をいただきました。給与明細については、家庭科の教科書や金融経済教育の教材でも記載されているものが多く確認できましたので、それらを参考に、分かりやすく概数表示したものとしました。
 加えて、大学生にヒアリングをした際に、給与明細だけ見ると、こんなに社会保険料や税金が引かれているのか、という印象を受けるだけで終わってしまう一方、それぞれの保険料がどのような制度に活用されるかも一緒に見られると納得感を持って払えるという御意見をいただきました。これを踏まえ、それぞれの保険料について、納付することにより受けられるサービス等に関する記載を欄外に追加しております。
 また、生活保護費については、前回、横山先生より、計算式や自分の世帯の金額について教材で触れて、早いうちに知っておいてもらうことは将来に絶望しないために必要、というご自身のご経験に基づいた貴重な御意見をいただきました。これを踏まえ、年齢、世帯構成、居住地域等について条件を示した上で例という形でお示しし、さらに、利用することへのスティグマを排するため、申請は権利であること、ためらわずに相談してほしいということを入念的に記載しました。
 13ページは、少子高齢化の進展により、「高齢者1人を支える現役世代の人数」が減っていることを示す、いわゆる「騎馬戦型から肩車型へ」の資料についてです。高齢者が昔に比べて若くなっているという実態に即して、65歳以上という「高齢者」の定義を見直した資料を昨年度の検討会で作成していただいており、これについて、さらに見やすく分かりやすくすることを心がけて改善しました。
 14ページ以降の資料は、基本的には昨年度の報告書における改善案のままですが、今回に先立ち、さらなる改善の余地があるという御意見もいただいております。このため、公表に向けて、文字の拡大や内容の簡略化などを行い、より、先生にとって使いやすく、生徒さんにとって分かりやすい資料にできるよう、引き続き、取り組んでいきたいと思います。
18、19ページは、昨年度の検討会報告書の改善案とは別に、教科書の内容を補足するものとして御活用いただけるのではないかと考え、盛り込んだものです。政府資料には、社会保障の授業に活用しうる情報や統計データがたくさんあるのですが、膨大な数の会議の資料としてインターネット上に散在しているため、授業する先生方も調べ学習する生徒さんも、なかなか情報に辿り着けないのではないかと感じております。このため、学習の役に立ちそうな資料について、授業で使うことを想定して分かりやすく、社会保障教育のウェブページに集約していきたいと思っており、一部ではありますが、追加したいと考えている資料を例示しております。
 21ページ以降は、先ほどお伝えした厚生労働省の統一様式を用いてデザインの修正を行いました。特に、藤村先生から様々な色覚特性を持つ方に配慮した資料づくりが重要ということで御紹介いただいた、色覚特性を持つ方の色の見え方が体験できるアプリを通して確認しながら配色を工夫しました。
 最後の25、26ページは、前回、玉木先生からいただいた御意見を踏まえ修正したものです。既存の社会保障給付費の推移のグラフは、戦後直後で制度が整っていない頃が始点となっているため、当然のことながら制度の充実による増加が含まれ、過剰な不安を与えてしまう資料になっているということで、26ページのように、少子高齢化が問題視され始めた1990年を始点に改め範囲を狭めました。さらに、高校教員の方々から、元のグラフが2種類の額の変化を折れ線グラフと棒グラフで表し、右側と左側に両方目盛りがあって、どちらがどちらに対応しているか分かりにくいという御意見をいただいておりましたので、統一様式を活用するような形で、目盛りとグラフの対応関係が色で分かるよう工夫しました。今後も、既存の政府資料について、範囲を絞ってグラフを大きくする、配色を工夫するなどして、学校現場で御活用いただきやすいものに改め、ホームページで公表できればと思っておりますので、引き続き、御指導のほどよろしくお願いいたします。
○小野座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、御意見、御質問のある先生がいらっしゃれば、よろしくお願いいたします。どなたからでも結構です。お願いいたします。
 では、玉木先生、お願いいたします。
○玉木構成員
 26ページのグラフなのですけれども、ありがとうございました。前のものは社会保障も何もないときと比べているので、お金が足りないという財務省のキャンペーンに沿い過ぎるところがありました。1990年からということは、今の生徒さんたちにしてみれば自分が生まれる十数年前ですから、十分古いなということだと思います。
 あと、このグラフは確かに右軸と左軸が微妙に違うのですよ。120万円と150兆円という話になっているので、こういったグラフでは左軸、右軸というものを入れればすっきりします。だから、福祉その他、医療、年金はそれぞれ後ろに、左軸と入れて、一人当たりのほうは右軸というふうに入れるとすっきりします。今のままだと、色で見分けろということですね。
○山崎専門官
 そのとおりです。
○玉木構成員
 「福祉その他」に、介護は入っているのですか。これは、福祉その他で、介護をその他に入れるのはちょっと大き過ぎるというか、特にしっかり勉強する生徒さんにしてみると何だろうと悩んでしまうところがあるので、介護・福祉その他あるいは介護・福祉等とか、そんなのでもいいかなと思いました。
 でも、このグラフはやはり数字がちゃんと入っているので、いろいろな意味で議論の発展を促す。杉浦先生の高校辺りだったら、これと例えば消費税収を比べるとかといったやり方でもって発展性のある高度な学習ができるのではないかという気が非常にしました。
 以上です。
○小野座長
 ありがとうございます。
 よろしいですか。
 では、ほかに御発言がある先生方がいらっしゃればお願いいたします。
 横山先生、お願いいたします。
○横山構成員
 ありがとうございます。
 12ページの生活保護支給額も入れていただいてありがとうございました。
 それで、あえてなのですけれども、ある高校で生活保護のほうで、生活扶助額の計算方法を一緒に学ぶ機会を持ちたいというお話をいただいたことがありまして、厚生労働省の生活保護のホームページに最低生活費の算出方法というPDFがあると思うのですが、例えば御負担を増やすようであれなのですが、そういった表を基にして幾つか計算の例を出していただくみたいなことをこのPDFの後ろに加えていただくみたいな形でもとてもいいとは思うのですが、そういったものがありますと、では、もし正確に計算方法をやろうとかという学校がおありになったりとか、あと、実際に相談員の現場でも、この最低生活費の計算を一緒に相談者と行うということがありますので、そういった計算の行うプロセスをつけてくれるような、この表を使って具体例みたいなものがあったりしますと、今回の教育においても実際の相談現場での活用においても非常に助かるのかなと思いましたので、その場合は御検討いただけると幸いです。
○小野座長
 ありがとうございました。
 いかがですか。
○山崎専門官
 ありがとうございます。ご教示いただいた情報について、活用させていただく方向で調整していきたいと思いますので、また御相談させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小野座長
 ありがとうございます。
 ほかの先生方、御意見のある方は。
 では、梶ヶ谷先生、お願いいたします。
○梶ヶ谷構成員
 お願いします。
 参考資料3の14ページですが、社会保障制度と市場経済の関係図の下なのですけれども、3つの保障で、企業保障、私的保障、それから、公的保障があるのですが、あまり学校の現場、学習項目としては企業保障という用語は使わない、馴染みがないと思います。意味はこれでよく分かるのですが、何か違和感があるかなと。
 それと、もしこれでやるのであれば、私的保障を一番左の位置にして、真ん中に企業保障を、右に公的保障を持ってくると、いわゆる定型的な自助・共助・公助の順になるのかなと思います。ただ、公民では企業保障という言葉はあまり見かけないと思うのですが、家庭科でやっているかもしれません。確認お願いできればと思います。
○山崎専門官
 ありがとうございます。家庭科については、前回藤村先生に御説明いただき、その際にお勧めいただいた教科書を梶ヶ谷先生から頂いて、勉強しました。家庭科で活用いただくことも想定しながら、家庭科との関係、学習指導要領との関係も照らし合わせながら、資料について改善したいと思います。
 ありがとうございます。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかに御発言は。
 では、藤村先生、お願いします。
○藤村構成員 
 企業保障の件についてですけれども、家庭科の教科書本文には記載はありません。家庭科で社会保障について学習するときには「共に生きる」「共に支え合う社会の実現」というところに力点があります。先日の検討会で、私がご紹介した授業は、生命保険文化センターが提供している教材を使って行いました。その教材には企業保障について記載がありましたので授業で説明しましたが、細かい内容には触れていません。
 先ほど梶ヶ谷先生が言ってくださったように、順番を入れ替えたり、自助・互助・共助・公助のまとまりで示したりすると良いかもしれません。よろしくお願いします。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかに先生方で御発言のある方は。では、佐々木先生、お願いいたします。
○佐々木構成員
 デザインは非常に見やすくなりまして、ありがとうございます。
 それで、スライドで言うと16ページ、15ページに当たるところなのですけれども、社会保障には経済を底支えし活性化させる機能があるとか雇用創出が期待できるところが、個の視点から社会全体の視点を広げるに当たって非常に有用だと思います。
 ただ、この15ページの経済効果で紹介されている、下の(参考)を見ても、では、医療や介護でどのようにというものが、イメージがつく子がつかない子がいますので、具体例を挙げていただくと大変いいかなと思いました。
 社会保障は、要は将来への不安を払拭することによって、消費を増やす面があると思いますので、そういった意味での経済活性化に寄与できる統計というか、グラフがもしあればそれも欲しいなとは思いました。
 それで、グラフをたくさん用意いただいたのですが、これはある意味、料理で例えれば素材、材料でして、これをいかに調理するかというところに教員が腕の見せどころなのだと思います。
 ただ、なかなか調理も難しい面がありまして、このグラフを使ってどのように調理ができるのか。要するに、「何を学ばすことにこのグラフは役に立つのか」をもう少し、一言で結構ですので、提示していただけると助かります。
 その方法として、例えば問いかけ例、このグラフを読んで生徒たちにこういう問いかけをすることも可能ですという感じで、大変恐縮なのですけれども、用意いただくと、より広まり、普及できるのではないかなと思いました。
 以上です。
○小野座長
 お願いします。
○山崎専門官
 ありがとうございます。御意見を踏まえ、どのように追加すべきか検討したいと思いますので、またご相談させていただければと思います。
○小野座長
 では玉木先生、お願いします。
○玉木構成員
 すみません。大変細かい点なのですけれども、14ページの公的保障の下の括弧の中なのですが(国が国民と支え合って)という表現は生徒に通じますか。国と国民が支え合うのはどういうことなのか。多分、ここでの趣旨は、「国の制度の下で国民が支え合う」ではないのですか。
 あと、企業保障なのですけれども、世の中でもっとこなれた言葉は福利厚生です。保障という言葉で3つまとめようとすると、かえって分かりにくくならないでしょうか。企業の退職金、企業年金、それから、介護看護休職制度等というものは全部、労働の対価なのです。賃金以外にも福利厚生があって、これが一体となって従業員に安心感を提供しているということなので、生徒に授業で伝えるのはすごく難しい、そういう概念だなという気がします。企業保障、私的保障、公的保障と並べる一方で、自助・共助・公助という区分もあるので、対応関係が複雑になるかもしれません。公助に公的年金とか社会保険は入らないですね。社会保険は共助ではないですか。公助は福祉でしょう。ですので、ここの言葉の使い方が、実はまだいろいろな研究のレベルでこなれ切っていないかな、現場の先生方は大変ではないかな、という気がしました。
○梶ヶ谷構成員
 年金も福利厚生に入れてしまっていいのですか。
○玉木構成員
 企業年金は福利厚生なのではないのですか。
 だから、これが難しいのかなと。
 難しいのは、企業年金の掛金というものは企業が払っているので、労働対価の払い方の一つです。法律によって企業が掛金を払ってあげても労働者の所得税はかかりませんとか、法人税の損金になりますとかいうことは企業年金に関する法律で決められています。例えばディズニーランドのチケットを配りますとかという単なる福利厚生とは違って、非常に法律、国の制度として行われているものです。そもそも、企業年金に関する法律では、公的年金の給付と相まってとかという文言が目的規定に入っているわけなのです。
 だから、これはすごく難しいです。教える先生方は悩んで七転八倒しないかなという気がしました。
○梶ヶ谷構成員
 では、これはテスト問題にしたら大変ですね。
○玉木構成員
 いや、テストは無理です。
○小野座長
 ありがとうございます。これは大分難しそうなので、ぜひ事務局で工夫してみていただければと思います。
○山崎専門官
 ありがとうございます。御意見を踏まえ、見直したいと思います。
○小野座長
 ほかに御発言のある先生はいらっしゃいますでしょうか。
 では、猪熊先生、お願いします。
○猪熊構成員
 社会保障の経済効果とか雇用創出効果のお話を聞いていて思ったので発言させて頂きます。16ページの雇用創出効果の期待のところで、こういうものを出した後に、8ページでせっかく社会保障制度を支える主な「職業」の図表をつくっているので、そこに関連づけてこういう職業があると教えるのもありかと思います。超高齢社会が進む日本では、医療とか介護とか、そういうところが雇用創出として期待されるのだと関連づけて教えるのに、教材を並べる順番を考えてもいいと思います。
 社会保障が経済を底支えし、活性化させる機能というところで、年金が消費を通じて地方の経済を支えているということで、よく島根県のケースが出されると思います。ああいうものを示すと、先生方も割とすとんと落ちやすく、教えやすい気がします。
 13ページの「若返り」は、変化を踏まえたもので、分かりやすく、これでよいと思います。これは参考情報までで、日本老年学会・日本老年医学会が平成29年に出した高齢者の定義の話はすごく注目を浴びましたけれども、これの新しいバージョンが近く出るという話があります。この図自体にはあまり関係ないかもしれませんが、注目しておいてもよいかもしれません。また、この図は15~64歳の生産年齢人口で見ているのですけれども、どうせつくるなら、20~64歳でもいいかもしれないと思いました。
 26ページの表も非常に見やすくなって、右と左の注をつけるのはとてもいいと思います。
 25ページの表はすごく悩ましくて、これで数値がばんと上がっていますねというのはメディアでもよく使いますし、将来推計では、給付費は190兆円まで増えますということも書きがちです。本来は、対GDP比で見たグラフの方がいいのかなと思います。ただ、そこまでここで出すのはなかなか難しいかもしれないので、これはこれでいいのかなとも思いました。
 全体的に、見せ方も含めて、すごく分かりやすくなったのではないかと思います。
○小野座長
 ありがとうございました。
 ほかに先生方、御発言がある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 最後で議論になった、社会保障を通じていろいろなところにお金が回って、先ほどの図で言うと、8ページのような人たちのお給料が実はあなたたちが払っている保険料であるとか、先ほどの猪熊先生の年金の島根の消費の何%を支えているとかといったお話の辺りは、お金が社会の中で回っていく中で社会保障があって、それが先ほどの権丈先生の絵で見ると、必要な人のところに回っているのですということを分かってもらう意味でもいい資料になっているのではないかなと思いますが、いろいろな先生方の御意見もありましたので、ぜひ今後とも改善に努めていただければと思います。
 それでは、そろそろ締めに入ることになるのですけれども、もし先生方の中でどなたか、今日言い足りなかったということがあるような先生がいらっしゃれば、ぜひ一言でも御発言いただければと思うのですが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
 では、すみません。私から一言述べさせていただきたいと思います。
 この我々のチームを何年かやってきた中で、かなり議論が深化したなと私は思っておりまして、感想なのですけれども、最初は前の社会保障検討会、2010年代に行われていたものが、当時、まだそれこそ年金不信論みたいなところから始まっていて、社会保障はちゃんとみんなの役に立っているのだということを分かってもらう辺りから始まってという、何を伝えたいかに焦点があったと思うのですが、この会議、我々のクールになってからは、どう伝えるかという辺りに焦点が行くようになっているなと思いました。
 さらに今年度、先生方にいろいろお入りいただいて、まさに横山先生のテキストなども反映することによりまして、伝える側の目線だけではなくて、子どもたちがどう自分事として捉えて、考えて、自分の言葉で話せるようになるか。それを自分で主体的に、どうやって、どこを見て情報を集めたらいいかとかという、伝える側の目線だけではなくて、伝えられる側というのでしょうか。そういった子どもたちの皆さんの目線にすごく近いところまで話が行き、それによって厚労省の方々がつくられる資料も、コンテンツにつきましても、見せ方につきましても、かなり改善が見られたのではないかなと思っております。
 私自身の注文としては、これからまたこれをリファインしていかれることになると思うのですけれども、これでホームページに掲載されるということなのですが、ここまで、6月までで一応、厚生労働省でまとめていただくことになるのですが、その後も、それっきりにならないように、ぜひ体制を整えていただいて、ここを見れば全国の先生方が社会保障教育をする上で、取りあえずのものはそろっているのだということを認識できるようなものに常にしていただければなと思っているということがございます。
 そのようなことだけ、感想として申し上げさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議論についてはここで閉じさせていただきまして、私のマイクは終わらせていただいて、事務局にお返ししたいと思います。ありがとうございます。
○横山室長補佐
 小野先生、ありがとうございました。
 最後に、宮崎審議官より御挨拶をさせていただきます。
○宮崎審議官
 本日は年度末の大変お忙しい中にお集まりをいただきまして、大変貴重な御意見をいただきまして本当に心より感謝を申し上げます。また、いちのせ様におかれましては、本日のプレゼンテーションのために大阪から御足労いただきまして、改めて深く御礼を申し上げます。
 本会は、昨年11月以降も、今日御紹介したような内容の充実をはじめとする、社会保障教育の推進のために検討を進めてきたわけですけれども、各委員の皆様には、この間、かなりいろいろな形で、オンライン、あるいはじかに御指導をいただきながら、御協力、御尽力をいただきましてありがとうございます。
 この会は、令和2年度から現場の実態を踏まえた効果的な教材づくりに取り組んできたところですけれども、ようやくその形が見えてきたなと感じております。先ほどの議論にもございましたが、どうしても役所のつくる文書や絵は基本的に間違いのないものにしようとして盛り込むだけどんどん盛り込んで、玉木構成員のお話に、注がたくさんついたものとか御指摘がありましたけれども、そういうものをいつもつくっているものですから、この間、教える側の方の視線なり、あるいは受け手の高校生の方の視線でそぎ落としていく作業は、正直言うと、役所では大変苦手な分野です。そこをいろいろ本当に御指導いただいたことで、大分、形になってきたなと思っております。今後も夏の公表に向けて、少しでも現場のお役に立てる教材とするように努めてまいりたいと思っております。
 また、今回で検討会は一区切りではございますけれども、先ほど小野座長からお話がありましたように、継続的にということで、これは我々も本当にそのつもりで動いております。来年度以降も引き続き、しっかり取り組んでいきたいと思いますし、そのためにも皆様方の御知見をぜひお寄せいただいて、引き続きの御指導のほど、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 本当にありがとうございました。
○横山室長補佐
 本日も貴重な御意見をありがとうございました。
 本日の第2回をもって「社会保障教育の推進に関する検討会」は終了させていただきます。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、御協力を賜り誠にありがとうございました。
(以上)