2024年3月21日 第53回労働政策審議会 議事録

1.日時

令和6年3月21日(木)10:00~12:00

2.場所

厚生労働省省議室(9階)

3.出席者

公益代表委員
 ・清家会長  ・小畑委員  ・中窪委員  ・山本委員
 ・荒木委員  ・髙田委員  ・守島委員
 ・奥宮委員  ・武石委員  ・山川委員
労働者代表委員
 ・安藤委員  ・永井委員  ・則松委員  ・山中委員
 ・石川委員  ・中川委員  ・堀谷委員  
 ・清水委員  ・成田委員  ・安河内委員
使用者代表委員
 ・井上委員  ・西周委員  ・矢口委員  
 ・川崎委員  ・野村委員    
 ・小松委員  ・藤原委員
事務局            
 ・宮﨑厚生労働副大臣   ・岸本人材開発統括官
 ・田中厚生労働審議官   ・鹿沼政策統括官(総合政策担当)
 ・村山大臣官房長     ・青山政策立案総括審議官
 ・渡辺会計管理官     ・平嶋政策統括官付参事官
 ・鈴木労働基準局長      
 ・山田職業安定局長    
 ・堀井雇用環境・均等局長

4.議題

  1. (1)令和6年度労働行政関係予算案の主要施策について
  2. (2)分科会及び部会等の審議状況、法案の国会審議状況について
  3. (3)その他

5.議事

議事内容

○清家会長 それでは、定刻よりも少し早うございますけれども、出席御予定の委員は皆様御出席でございますので、ただいまから「第53回労働政策審議会」を開催いたします。
 皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 それでは、審議会の開会に際しまして、宮﨑厚生労働副大臣から御挨拶をいただきます。
○宮﨑厚生労働副大臣 厚生労働副大臣でございます。
 第53回の労働政策審議会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 まずは、本日はお忙しい中、御参集いただきました皆様には、日頃より格別の厚生労働行政に対する御配慮を賜っておりますこと、心から感謝を申し上げます。今日もこういった形で非常に格式のある中でこれから御議論を展開していただくものと思っておりまして、私もこの会場に入ってきて非常に背筋が伸びるような思いであります。先生方の御尽力に心から感謝を申し上げるものでございます。
 現在、政府を挙げて取り組んでいる最重要の課題の一つが、先生方も御承知のとおり、賃上げに向けての環境整備でございます。報道でも、何年ぶりの賃上げというような言葉が躍っているわけでありますけれども、現在行われております今期の春季労使交渉では自動車産業、電機産業、小売業など、昨年を上回る回答が相次いでおりまして、今の一次集計をしていただいている大企業の皆様を中心とするところでは、賃上げに向けての力強い動きが出ているというところであるかと思います。
 厚生労働省としましては、こうした流れを中小企業、零細の事業場、そして全国津々浦々、地方にこれを波及させていきたい。また、非正規雇用の方にも波及をさせていきたい。そういったことを考えておりまして、このための取組として全国各地の労使の団体の皆様、地方公共団体、関係省庁などと連携をいたしまして、昨年の12月から地方版政労使会議というものを開催して、各地での賃上げに向けての環境整備、または機運の醸成の取組をさせていただいているところでございます。
 私も今週、山口県に、また、北は北海道から来週は沖縄県にも伺い、10を超える道府県にお邪魔をさせていただいておりまして、各地で機運を高めてまいりたいということで、政府を挙げて全力で取り組んでいるところでございます。
 先生方も御承知のとおり、中小企業を中心といたしまして労使の皆様の交渉がこの後、まだまだ続いていくところでございますけれども、我が国経済に物価上昇を上回る持続的な賃上げというものがしっかり社会の中で根づいていくように期待をしているところでございます。
 労働政策は、毎日の国民の皆様の生活に直結をするものであります。その政策の立案に当たりましては、現場を最も熟知されておられる公労使の皆様の参画を得て議論を進めていくことが何よりも重要なところでございます。
 本日、この審議会におきまして先生方の幅広い御見識と豊かな御経験に基づきまして、活発な御議論を賜りたいと思っております。本日の会議が充実して行われますことを御期待、またお願いを申し上げまして冒頭の御挨拶とさせていただきます。
 本日もどうぞよろしくお願いいたします。
○清家会長 宮﨑副大臣、どうもありがとうございました。
 なお、宮﨑副大臣におかれましては、他の公務のため、ここで退席されます。ありがとうございました。
○宮﨑厚生労働副大臣 どうぞよろしくお願いいたします。
(宮﨑厚生労働副大臣退室)
○清家会長 そして、カメラの頭撮りもここまでとさせていただきます。御協力よろしくお願いいたします。
(カメラ撮影終了)
○清家会長 それでは、議事に入ります前に、本日の審議会について事務局から御説明をお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 事務局の政策統括官付参事官の平嶋です。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の資料は、お手元のタブレットで御覧いただけます。タブレットの操作方法もお配りしておりますので、御参照いただきますとともに、操作方法に不明な点がございましたら事務局にお申しつけください。
 オンライン参加の委員の皆様におかれましては、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただければと思います。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、会長から指名がありましたらミュートを解除して御発言ください。
 また、機器等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。通信遮断などが生じた際には、進行を一時中断する場合がございますので御承知おきください。
 本日は内田委員、大橋委員、芳井委員は所用により御欠席と伺っております。
 以上です。
○清家会長 それでは、議事に入ります。
 資料2「令和6年度労働行政関係予算案の主要施策について」、資料3「分科会及び部会等の審議状況について」、資料4「法案の国会審議状況について」、資料5「地方版政労使会議の状況について」、それぞれ事務局から説明をお願いします。
○渡辺会計管理官 大臣官房会計課でございます。
 それでは、資料に基づきまして「令和6年度労働行政関係予算案の主要施策について」、御説明をいたします。
 令和6年度の予算案につきましては、現在国会で政府案を御審議いただいているところですけれども、本日資料2として用意してございますのが厚生労働省予算案で、1ページを御覧いただければと思います。全体像を示しております。
 一般会計は対前年比で6,782億円増、その下にございます労働保険特別会計は雇用調整助成金の新型コロナ対応のための特例措置の終了などにより、対前年比で4,097億円の減となっております。
 次の2ページを御覧ください。
 2ページは、令和6年度予算案の一般会計における社会保障関係経費の内訳を示したものでございます。雇用については、対前年度比967億円の増となっております。主な要因としましては、雇用保険の育児休業給付における国庫負担の割合を現行の80分の1から本則である8分の1に引き上げたことによるものでございます。
 3ページを御覧ください。
 こちらは、令和6年度厚生労働省予算案における重点事項を1枚にしたものでございます。令和6年度は、御覧いただいているⅠからⅢの3つの柱を重点事項としております。このうち、本日はⅡの「構造的人手不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進」に掲げる主な施策について御説明をいたします。
 まず4ページを御覧いただければと思います。
 左側にございますのが賃金、非正規雇用の関係でございます。最低賃金の引上げに向けた環境整備を図るため、業務改善助成金による生産性向上に向けた支援を補正予算とセットで行うとともに、キャリアアップ助成金による正社員化の促進、昨年秋に取りまとめました「年収の壁・支援強化パッケージ」の推進などに取り組むこととしております。
 次に、右側のリ・スキリングによる能力向上支援の関係では、教育訓練給付による個人主導の学び・学び直しの支援や、キャリアコンサルティング体制の整備を通じた在職時からの継続的なキャリア形成、リ・スキリングの支援、下にございます人材開発支援助成金による企業経由の人材育成に対する支援などに取り組むこととしております。
 続いて、5ページを御覧いただければと思います。
 5ページの成長分野への労働移動の円滑化のところでございます。就職困難者を含めて成長分野等へ賃金上昇を伴う移動ができるよう、特定求職者雇用開発助成金による支援などを行うとともに、下にございますハローワークの専門窓口の拡充により医療・介護や建設・運輸といった人手不足分野への就職支援を強化することとしております。
 また、その下にございます「多様な人材の活躍と魅力ある職場づくり」の関係では、「フリーランスの就業環境の整備」のため、今年の秋に予定されております事業者間取引適正化法の施行に向けて、公正取引委員会や中小企業庁と連携した相談窓口の充実や、労働局における執行体制の整備などを行うこととしております。
 また、右側に移りまして、「多様な働き方の普及、ワーク・ライフ・バランスの促進」の関係でございますが、「多様な正社員」制度、テレワーク、勤務間インターバル制度の普及促進のための支援や、本年4月に時間外労働の上限規制が適用される4業種の中小企業における労働時間削減に向けて助成金の拡充などを行うこととしております。
 さらに、「ハラスメント防止対策」や産業保健総合支援センターを通じたメンタルヘルス対策の強化などについて講じることとしております。
 続いて、6ページを御覧いただければと思います。
 「仕事と育児・介護の両立支援」の関係でございます。育休取得中の業務代替整備や柔軟な働き方の導入に取り組む中小企業を後押しするため、両立支援等助成金に新たなコースを設けるなどの拡充を図ることとしております。
 次に「多様な人材の就労・社会参加の促進」の関係では、高齢者の就労促進や障害者の雇入れ等の支援、外国人雇用の関係では今般の技能実習制度の見直しに合わせて外国人技能実習機構も改組されることとなっておりまして、必要な体制整備等に取り組むこととしております。
 また、就職氷河期世代や若年者・新規学卒者に対する就労支援に引き続き取り組んでいくこととしております。
 最後に6ページの下のオレンジの箱でございますが、こちらは厚生労働省全体の施策の中で「女性の活躍促進に向けた施策」を抜き出して再掲したものであります。昨年夏の概算要求の時点からは、「年収の壁・支援強化パッケージ」の実施でありますとか、育休取得時の業務代替支援の前倒し実施等により、増額して約3,000億円の予算を要求しているところでございます。
 令和6年度労働行政関係予算についての御説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○鈴木労働基準局長 続きまして、労働基準局長でございます。
 労働基準局関係の分科会などにおける主な審議事項につきまして、資料3に基づきまして御報告を申し上げます。
 資料3の3ページを御覧ください。
 まず労災保険部会でございますが、1つ目の○でございますけれども、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス法でございますが、これに規定する特定受託事業者が行う事業を特別加入の対象として新たに追加する省令案になります。
 それから、2つ目の○でございますけれども、労災保険率などを約6年ぶりに改定するための省令案等につきまして御審議いただいたところでございます。
 安全衛生分科会関係は4ページ、5ページに記載しておりますが、その中の5ページの1つ目の○でございます有機溶剤中毒予防規則等に規定します個人ばく露測定の精度を担保するため、個人ばく露測定を行う者の要件を定める省令などについて御審議いただいたいところでございます。
 労働条件分科会におきましては、その下、2つ目の○でございますが、2022年度の目標について評価を行ったところでございます。このほかの審議状況につきましては、5ページの下部に記載しているとおりでございます。
 基準局からは以上でございます。
○山田職業安定局長 続きまして、職業安定局長でございます。
 職業安定局所管の分科会における審議状況について御説明いたします。時間の関係上、主な法令改正の内容に関する事項のみの説明とさせていただきます。
 資料の6ページになりますけれども、1つ目の○のとおり「雇用保険法等の一部を改正する法律」については女性や高齢者等の多様な人材の労働参加が進むとともに、働くことに対する価値観やライフスタイルもさらに多様になってきている中で、労働者の生活及び雇用の安定を図るため、雇用保険の適用拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等のための措置を講ずるものであります。2月9日に閣議決定をし、既に国会に提出されております。
 2つ目の○、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(雇用保険法等の一部改正関係)」についてですが、急速な少子化が進展する中で、社会全体で子育てを支援し、男女ともに働きながら育児を担うことができる環境の整備を図るため、育児休業の給付率の引上げ、育児時短就業給付の創設等の措置を講ずるものです。2月16日に閣議決定をし、既に国会に提出されております。
 それから、7ページ、8ページにわたりますが、7つ目、9つ目の○のとおり、雇用保険法施行規則の改正や、建設労働者の雇用改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令により、令和6年の能登半島地震に伴う経済上の理由により急激に事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して特例措置を講ずる改正や、令和6年1月1日以降に石川県における建設作業に従事する建設労働者のための宿舎等の貸与を受ける中小建設事業主を人材確保等支援助成金の対象とする改正を行いました。
 それから、その他の省令改正については参考資料2の別紙3から6、それから8、10に改正内容を書いておりますが、職業安定分科会及び障害者雇用分科会における2022年度の年度目標に係る評価及び2023年度の年度目標の設定及び2023年度目標に係る中間評価については参考資料2-2の別紙11、12に具体的な数値状況、評価の動向も記載しておりますのでこちらを御参照いただければと思います。
 安定局からは以上です。
○堀井雇用・環境均等局長 雇用・環境均等局の関係で資料3、4、5について関連部分を御説明いたします。
 まず資料3の10ページ、11ページの関連でございます。
 これは、雇用環境・均等分科会における主な審議状況でございます。
 まず資料3の10ページでございますが、2つ目、3つ目、そして11ページの2つ目の○になりますが、それぞれ附則の改正ということで、まず1つ目はいわゆる「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりのための当面の対応策としてのキャリアアップ助成金に新たな社会保険適用時処遇改善コースの創設、そして両立支援等助成金の育休中等業務代替支援コースの新設等、あとはキャリアアップ助成金の正社員化コースの助成額の拡充等、そしてまた両立支援等助成金の出生時両立支援コースの拡充・加算措置の新設や、柔軟な働き方選択制度等支援コースの新設等、また人材確保等支援助成金のテレワークコースの助成率の変更等、このような内容についての雇用保険法施行規則の改正案について御議論いただきまして、おおむね妥当ということで答申をいただいたところでございます。
 そして、「年収の壁・支援強化パッケージ」につきましては、前回のこの審議会におきましても各委員の皆様方から大変貴重な御指摘をいただきました。私どもとしてはそれを受け止めまして、そして雇用環境・均等分科会においても御議論をいただいた上で、昨年の10月にパッケージということで開始をしております。引き続き丁寧な周知に努めまして、御活用をされる事業主の方に使っていただき、非正規雇用労働者の方のキャリアアップにつなげていきたいと考えております。
 続きまして、今、御覧をいただいています資料3の10ページの5つ目の○でございますが、仕事と育児・介護の両立支援のための在り方についての議論を行いまして、令和5年12月26日に「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」の報告を取りまとめて、方針としての建議を出していただいたところでございます。この内容を踏まえまして、改正法の法律案要綱について今年の1月30日に御議論いただき、諮問の上、おおむね妥当という御答申をいただいております。そして、法制的な詰めを行いまして、3月12日に閣議決定をして今国会に提出をさせていただいております。
 この内容につきましては、資料4の関連の法案の状況のほうにも掲載をさせていただいております。
 そして、資料3の11ページの一番上の◯でございますが、これは女性活躍推進法の関連で、男女の賃金差異の情報公表を令和4年7月8日から一定企業規模以上の事業主に対して義務化をしていますが、この公表状況の最初の取りまとめ、報告を行いましたところでございます。
 そして、11ページの3つ目の○でございますが、「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」というものを新たに立ち上げました。これは女性活躍の推進、そしてハラスメント、こういったことについての現状や論点を整理して、その方向性について検討を行うこととしておるところで、この検討会の進め方についても分科会のほうで御報告を行ったところでございます。
 引き続きまして、資料5の地方版政労使会議について御報告をいたしたいと思います。
 資料5に書かせていただいておりますが、地方版政労使会議の開催につきましては、昨年の12月以降になりますけれども、各労使の関係者の皆様方にも御尽力を協力いただいておりまして、本日時点で44都道府県において開催をされまして、残る3県、佐賀県と長崎県と沖縄県は今月中に開催予定ということになっております。
 また、直近の動きについても御紹介をさせていただきますと、今年の3月13日、総理官邸におきまして政労使の意見交換が行われました。その際に岸田総理からは、賃上げの地方への波及に向けて厚生労働大臣は地方版政労使会議の開催を実効的なものとするようにフォローアップも含めてお願いいたしますという御指示がなされているところでございます。
 以上、当局からの御報告でございます。
○岸本人材開発統括官 人材開発統括官の岸本でございます。
 人材開発統括官からは、資料3に基づきまして最近の審議状況について主要なものを特に御説明申し上げます。
 資料3の12ページからでございますが、まず12ページの3つ目の○です。令和5年11月2日に閣議決定をされましたデフレ完全脱却のための総合経済対策に基づきまして、「DX推進スキル標準」に対応した訓練を設定した実施機関に対して、認定職業訓練実施奨励金の支給額を上乗せする特例措置を講じることとしたものでございます。
 次に、同じページの4つ目の○でございますが、既にある社内検定制度について見直しを行いまして、現行の社内検定制度というのは御案内のとおり、検定を実施する企業なり団体で既に働いている社員の方のみが対象となっているものでございますが、これについて新たなバリエーションとしまして外部労働市場に一定の通用力を有するような職業能力評価制度としての意味を持ち得るようなものについては、対象者の制限を撤廃した団体検定の認定制度を創設したものでございます。これによりまして、従来の社内検定のほかに団体が実施し、受験資格を外に開く団体検定、それから個別企業が実施し、受験資格を企業外に開く事業主検定の3区分となったものでございます。
 続きまして13ページでございますが、1つ目の○です。求職者支援制度のコロナ禍における特例として、短時間・短期間の訓練や、eラーニングコースについて特例を講じてまいりました。これらについて効果も見まして、恒久化するもの、元に戻すもの、振り分けを行いまして、一定の事項について恒久化をするための必要な改正を行ったものでございます。
 次に資料の14ページでございますが、1つ目の○と2つ目の○です。いずれも令和6年能登半島地震関連でございます。地震によって著しい被害を受けた都道府県立職業能力開発校、それから認定職業訓練校の施設、設備の復旧に要する経費について、国から都道府県への補助率を引き上げる特例を講じるものでございます。
 最後に資料15ページでございますが、3つ目の○で人材開発分科会に置かれております監理団体審査部会でございます。審査部会において技能実習制度の監理団体の許可申請について定期的に御審議をいただいておりまして、前回の本審から本日までの間に4回答申をいただいているところでございます。
 人材開発統括官関係は以上でございます。
○鹿沼政策統括官(総合政策担当) 続きまして、政策統括官総合政策担当の鹿沼でございます。
 資料3の16ページに基づきまして、労働政策基本部会について御説明をさせていただきます。
 部会におきましては、「人口減少社会に即した働き方について~中小企業・地域の生活を支える産業での労働者の能力発揮に向けて~」ということをテーマに、特に人手不足感がある中小企業、地域密着型産業の生産性向上やサービス供給の在り方などの論点を中心に、本年1月から議論を行っているところでございます。
 今後、委員、有識者、企業の皆様方からのヒアリング、また委員間の議論を行いまして、令和6年度末頃をめどに報告書の取りまとめを行う予定となっております。
 なお、当日配付しました資料であります検討テーマ及び進め方につきましては、参考資料2のほうに配付しておりますので御参照いただけたらと思います。
 私のほうからは以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、ここから委員の皆様より御意見を承りたいと存じます。
 今回も一通り委員の皆様から御意見を伺った後で、事務局からまとめて回答をいただく形で進めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、御意見のある方は御自身の名前の札を立てていただきますようお願いいたします。また、オンラインで御出席の委員の方は、御意見のある場合、挙手ボタンを押していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、清水委員よろしくお願いいたします。
○清水委員 労働者代表委員、連合の事務局長の清水でございます。
 私からは、雇用保険等の一部を改正する法律案と、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について一言意見を述べさせていただくとともに、資料2の5ページに関わって働き方改革について発言させていただきます。
 初めに、長期的かつ安定的に雇用を維持・確保していくことは、労働基準行政や職業安定行政といった政策分野の垣根を超え、雇用・労働政策の軸に据えられるべきと考えます。今国会には子ども・子育て支援法改正案と、雇用保険法改正法案などが提出されており、雇用保険法改正法案では週所定労働時間10時間以上の労働者への適用拡大など、雇用のセーフティーネット機能の強化につながる内容が多く含まれていると理解しています。
 また、労政審の議題からは外れますけれども、支援金制度については子ども・子育てを社会全体で支えることは重要であるという中、財源確保策としては問題があると認識しています。この間も様々な場でそのことを指摘していることについて一言、意見を申し上げておきます。
 これらの法案につきましては、いずれも働く者、生活者にとって重要な法案ですので、十分な国会での議論が必要であろうと思います。
 次に、働き方改革関連法についてです。法施行後には長時間労働の是正や同一労働・同一賃金の取組などで一定の成果はあるものの、いまだに残念ながら健康被害や過労死等はなくなっておりません。まさに目前に迫った適用猶予業種への時間外労働、上限規制の適用の確実な施行遵守の徹底のみならず、附則に基づく法律の見直しにおいては労働時間規制のさらなる強化が必要であると考えるところです。
 また、今年2月に発足しました厚生労働省の研究会においては、時間外労働の上限規制の効果検証が行われているほか、働き方の変化などを踏まえた労働時間法制の在り方といった重要な議論が行われていると思います。ともすれば、規制緩和につながる懸念もあります。労働者の命と健康を守るためには現在の強行法規としての労働基準法制は今後も堅持することが不可欠であると考えるところです。
 まずは労働組合を中心とした集団的な労使関係の構築を一層進めながら、働く者が安心して働き続けることができる環境の整備を進めていただきたいと思います。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、野村委員よろしくお願いいたします。
○野村委員 全国中小企業団体中央会の野村でございます。
 私のほうからは、4点意見を申し上げます。
 1点目は、賃上げと価格転嫁に関してです。景気の回復や大企業の業績改善が進む中で、人材確保のためにいわゆる防衛的賃上げで対応している中小企業が多数あります。このような中で、中小企業が物価を上回る賃上げを実現するには労務費をはじめ、いまだ不十分な価格転嫁の改善が必要であります。
 小規模企業ほど価格転嫁が進んでいない状況の中におきまして、サプライチェーン全体で改善を図るためには、大企業、中小企業、労働組合が一体となって適正な価格転嫁に取り組むとともに、改善ツールとして公正取引委員会の労務費転嫁ガイドラインで示された価格交渉申込み様式の統一的使用や団体協約、組合協約制度の活用などが必要と考えます。
 私ども中小企業団体中央会も、会員の中小企業に対しまして価格交渉の申込み様式の周知や、御用意いただいた各種支援策や既存の制度の活用促進に取り組んでまいります。
 2点目でございますが、地方版政労使会議についてです。2月2日に開催されました大阪の政労使会議では、賃上げに向けた価格転嫁につきまして大阪府知事をはじめ労使団体のトップが出席し、発言したことで大変意義のあったものであると感じております。持続的な賃上げと適正な価格転嫁を社会全体で共有するには、政府だけでなく地方でも政労使のトップが意見交換し、対外的にメッセージを発信することが必要ではないでしょうか。
 また、官公庁の競争入札等での予定価格への労務費転嫁を国や地方自治体が率先して行っていることを積極的に示すべきではないかと思います。
 3点目ですが、人への投資パッケージの周知に関してです。岸田総理が言われた、人への投資5年1兆円のパッケージにつきましては、令和5年度予算案に明記されておりましたが、令和6年度予算案には明記されておりません。人への投資は、中小企業における持続的な賃上げを継続していくためには重要なものと考えております。人への投資パッケージの支援策がより活用されるようなPR強化が必要ではないでしょうか。
 現在、テレビでは毎日のように民間人材会社のCMが流れております。国の事業もマスメディアを活用してPRを行えば、必要となる中小企業や労働者の活用促進につながるのではないでしょうか。御検討をよろしくお願いいたします。
 最後に、「年収の壁・支援強化パッケージ」についてです。最低賃金の引上げに伴うパート労働者の就業制限対策等のため、昨年10月から支援がスタートしておりますが、支援策を利用するための計画の申請状況は1月末現在で対象労働者の2割程度であると聞いております。この数字を聞きますと、中小企業における人手不足解消への効果は少ないと感じております。今年の年末には中小企業のパート従業員の就業制限の減少につながるよう、要件緩和等の見直しをよろしくお願い申し上げます。
 私のほうからは以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安藤委員よろしくお願いいたします。
○安藤委員 安藤です。
 私からは、担保法制の見直しに伴う労働債権の保護について申し上げさせていただきたいと思います。
 先般、「事業性融資の推進等に関する法律案」が国会に提出されたところでございますけれども、この法案で創設が予定される企業価値担保権については労働契約を含めて企業の総財産を担保の対象とするという、これまでにない強力な担保権です。企業が債務不履行に陥った場合には総財産を一体として換価することが原則でございますが、例外的に個別換価も可能とされております。事業譲渡においては従前から労働契約が承継されず、労働者が不採算部門に残され、大きな不利益を被るといった問題が少なからず生じております。企業価値担保権でも同様の問題が生じないよう、労働債権や労働者保護策の強化が必要不可欠となります。
 また、法務省においても動産・債権を担保とする譲渡担保のルールの明確化などについて議論が続けられているところでございますが、労働債権保護につながる対応は不十分なままとなっております。
 いずれの場合においても、労働者の雇用や労働債権の保護に資する実効性ある仕組みが整備されるよう、厚生労働省からも法務省や金融庁への働きかけを一層強化いただきたいと思います。
 加えて、企業価値担保権が設定された場合を含め、あらゆる事業再編時における労働者保護を強化するためには、事業譲渡や合併時を含めて措置義務を課すなど、労働契約承継法の抜本的な見直しが必要と考えます。
 厚生労働省においては、こうした法改正に向けて具体的な検討に着手していただきたいと存じます。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安河内委員よろしくお願いいたします。
○安河内委員 ありがとうございます。
 私からは、先ほど野村委員からも御発言がありましたけれども、地方版の政労使会議の状況について発言させていただきたいと思います。
 中小企業が持続的な賃上げを実現していくためには適正な価格転嫁、価格交渉、そしてその前提となる取引環境の整備を含めた公正取引の実現が不可欠と考えています。昨年11月に取りまとめられた「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、昨年を上回る物価に負けない賃上げを実現するための足がかりになるものと評価しているところです。
 問題は、実際の現場で価格転嫁が進むか否かでありまして、指針の周知に加えまして指針に反する行動を取った場合には所管省庁とも連携をして厳格な対応が必要と考えています。
 政府には、地方版政労使会議での指針の周知等を後押ししていただいています。地方の賃上げの機運醸成に資する取組として感謝しています。3月15日開催の政労使会議におきましても、地方版政労使会議の課題整理をお願いしたところですけれども、指針の実効性を担保する上では地域の中小企業の経営者のみならず、労働者も含めてあらゆる階層への周知活動が重要であり、地方版政労使会議などを活用したきめ細かい取組をしていただきたいと思います。中小企業がちゅうちょなく発注者に対して価格交渉の申入れができるような取組環境を整備し、地域の活性化につながる取組を着実に進めていただきたいと考えております。
 足元のJAMの状況について少しだけ触れさせていただきたいと思います。定昇込みで中小企業300名未満は1万981円の賃上げを実現しており、率では4%の上昇となっています。定昇込みの状況であれば物価上昇を上回る、または昨年を上回る賃上げが実現をしておりますけ。ただ、ベースアップで見ますと、従業員数300名以上の企業が1万407円である一方、300名未満は6,940円でありますので、格差がさらに広がってしまった現実があろうと思います。
 したがいまして、こうした現実を踏まえた上で、賃金と物価が安定的に上昇する新たな経済社会のステージにおいては価格転嫁も継続して行っていく必要があると考えております。ぜひとも次年度以降も開催時期や内容について地域における労使と相談しつつ、現場で何が起こっていることのフォローアップを含めて、地方版政労使会議を今後とも継続して開催されることをお願い申し上げます。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから御発言を希望されております井上委員、よろしくお願いいたします。
○井上委員 ありがとうございます。井上でございます。
 私からは、資料4の育児・介護休業法等の改正法案について申し上げます。
 急速に少子化が進行する中、共働き、共育てがしやすい環境を整備することは大変重要です。そのため、経団連では男性の家事、育児促進を意識しつつ、仕事と育児との両立に関する事例集や公表、企業向けのセミナーの開催など、積極的に機運醸成に取り組んでおります。また、多くの企業が独自の支援に取り組んでおります。
 例えば、当社では10歳までの時短勤務を認める制度、そして有給休暇を積み立ててそれを育児に使用できる制度など、現在環境整備を進めております。
 その上で、今般の育児・介護休業法等の改正法案には、3歳以降小学校就学までの子を持つ労働者が、事業主が提示する柔軟な働き方の措置の中から自身に合ったものを選んで働くことができる制度など、新しい措置が数多く盛り込まれています。
 改正法案の成立後、企業は施行までにこれらの措置に対応する準備を進めることが求められます。具体的には、3歳になる子を持つ社員の確認や、労働組合との協議、システムの改修など、かなりの時間と費用を要することが想定されます。
 厚労省におかれましては、法案成立後、可能な限り速やかに指針やQA等を策定し、十分な準備期間を確保くださいますよう御配慮願いたいと思います。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、成田委員よろしくお願いいたします。
○成田委員 成田でございます。
 私からは、適用猶予業種への時間外労働上限規制適用及びライドシェア問題について意見を申し上げたいと思います。
 自動車運転者や医師、建設業といった適用猶予業種に対する時間外労働の上限規制の適用が間もなく開始されます。これらの業種は、いまだに他の業種より年間総労働時間が長く、長時間労働者の割合も高止まりしており、今後も着実な労働時間短縮取組の強化が重要であります。こうした取組の実効性を高めるためには、当該の労使だけではなく、自動車運転者では荷主、お客様企業や利用者、そして建設業では注文者や発注者などの理解と協力が欠かせません。本年4月の法施行後には、なお一層、国土交通省などの関係省庁との連携を強化し、各種取組の徹底をお願いいたしたいと思います。
 また、医師については極めて高い水準の上限時間数が適用される医療機関が残されていることや、労働時間としての自己研さんの適切な取扱いといった課題もありますが、まずは2035年に向けて医師のみならずタスクシフト、シェアに取り組む医療従事者を含めて労働時間短縮が進むよう、国や都道府県による取組支援の充実を図っていただきたいと考えています。
 次に、自動車運転業務に関わる内容としてライドシェアに関してです。この4月より導入される自家用車活用事業についても、運転手はタクシー事業者との雇用契約に限ることで、運転手に加え利用者等の安全、安心を確保することが非常に重要であります。今後も、雇用を前提とした労務管理と安全管理を徹底することが不可欠であります。なお、6月に向けた検討に対しても、現場から多くの懸念の声が上がっていることはこの場でも申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、西周委員よろしくお願いいたします。
○西周委員 西周でございます。ありがとうございます。
 私からは、雇用保険法等の改正案と、雇用保険財政について申し上げます。
 国会で審議中の雇用保険法等の改正案には、雇用保険の適用拡大や教育訓練給付の拡充、訓練期間中の生活を支える新たな給付と融資制度の創設などが盛り込まれています。法案が成立すれば、雇用のセーフティーネットの拡充やリカレント教育などによる能力向上支援を通じた円滑な労働移動に資すると受け止めております。
 また、今後の男性育休の取得増などに対応すべく、育児休業給付の国庫負担割合の本則への復帰、80分の1になっておりましたところを8分の1に戻すということも含まれており、重要な制度改正と考えております。
 政府におかれましては、改正法案の確実な成立と合わせまして、改正内容が多岐にわたり施行時期も様々であるということからも、法案成立後は丁寧かつ迅速な周知をお願いいたしたいと思います。
 2つ目は、雇用保険財政についてです。コロナ禍における雇用調整助成金などの大幅活用によって、その財源である雇用安定資金は積立金から約3兆円の借入れをした上で、今年度も残高ゼロ円が見込まれる危機的な状況にあります。雇用安定資金の借入金については、令和6年度末までに返済の在り方を検討することになっています。
 雇調金の特例措置がコロナ禍という有事で一定の失業予防を果たしたことは間違いありません。このことを労政審の共通認識として返済の在り方を議論し、雇用保険財政の早期健全化への道筋を明確にしていただきたいと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、再びオンラインから発言を希望されております石川委員、よろしくお願いいたします。
○石川委員 ありがとうございます。
 私からは、外国人労働者の政策について意見を述べさせていただきます。
 政府は技能実習制度と特定技能制度の見直しに関する法案を閣議決定されました。その方針には、監理・支援体制の強化や、新たな外国人育成就労機構の体制強化など、私ども連合が求めてきた内容も含まれており、制度の適正化につながるものと評価するところです。
 その一方で、技能実習制度に代わる育成就労制度の受入れ分野については、特定技能に合わせつつも、有識者会議の最終報告書では、「人材育成になじまない分野は対象外」と明確にされていた点が修正をされ、曖昧になったところであります。
 さらに、新制度の施行前に特定技能制度の受入れ分野を拡大するとの報道もあり、今回のそれらの見直しが適正につながるのか、懸念がぬぐえないところです。
 また、本人意向の転籍の在り方や永住許可の見直しについては人権の尊重が担保されなければなりません。「ビジネスと人権」の指導原則では、人権の保護は国家の義務とあり、新制度においては、人権保護と人材育成が適正に運用され、サプライチェーン全体で問題が解決できるよう、厚労省として指導原則に沿ってその役割を果たしていただきたいと思います。
 なお、外国人労働者に選ばれる国を目指すのであれば、地場・中小に対する産業政策をそれぞれ所管省庁が立案・実施することで地方経済を活性化し、地方で就労する外国人の賃金や処遇を着実に向上させていくことが極めて重要であります。
 同時に、外国人労働者との共生の観点から、外国人受入れ全般については幅広い国民的議論を行う必要があると考えます。厚労省としてのリーダーシップをお願いし、私の発言といたします。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、小松委員よろしくお願いいたします。
○小松委員 ありがとうございます。
 私からは3点申し上げます。
 まず、人手不足について申し上げます。日商の調査では、中小企業の3社に2社は人手不足となっております。少ない人数でも事業を継続し、成長させていくための対策として、デジタル化などによる省力化や人材の育成にこれまで以上に取り組んでいくことが求められます。
 厚労省におかれましては、生産性向上に資する公的職業訓練の強化に取り組んでいただきたいと思います。
 併せて、中小企業は時間や人材が限られていることから、オンラインや休日、夜間の講座、企業内への出張研修の拡充など、在職者が働きながら学ぶために利便性向上に取り組んでいただきますようお願いいたします。
 同時に、休日、夜間の受講にはプラスの賃金が発生することもあり、中小企業にとっては負担が大きくなります。従業員に対する訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する人材開発支援助成金は、中小企業による従業員の能力開発を後押しする重要な施策ですので、予算を維持するとともに企業ニーズに応じた内容の見直し、手続の簡素化を図り、より一層の利用の促進をお願いいたします。
 2点目は、中小企業の自発的かつ持続的な賃上げについてです。今年の春季労使交渉が本格化し、大企業では前年を上回る高い水準での賃上げが示されていますが、労働分配率の高い中小企業、小規模事業者においては賃上げ余力が乏しく、賃上げに取り組みたくても取り組めない企業も多いのが実態です。中小企業の自発的、持続的な賃上げを実現するためには、生産性向上や取引価格の適正化などを通じた付加価値の向上による賃上げ原資の確保が不可欠となりますが簡単なことではございません。
 厚労省におかれましては、他の省庁とも連携の上、業務改善助成金をはじめとした中小企業の賃上げを後押しする支援策の拡充、新設をお願いいたします。
 また、昨今は転職市場が活発化し、政府においても労働移動を促す政策を進めておりますが、中小企業ではせっかく育成した人材が外部に流出してしまうことの不安の声が多く聞こえます。賃金上昇を目的とした転職の後押しではなく、在職者の職業訓練の強化により中小企業の付加価値向上を通じた賃上げを推進いただきますようお願いします。
 3点目は、最低賃金制度です。最低賃金は労働者の生活を保障するセーフティーネットとして全ての事業所に強制的に適用されるものであり、法の趣旨にのっとった審議による決定をお願いいたします。
 2023年度は過去最高となる全国加重平均43円の大幅な引上げとなり、中小企業にとっては非常に大きな負担となっております。最低賃金を決定する際には、生計費、賃金はもちろんのこと、中小企業の経営の実態、支払い能力を十分考慮していただきますようお願いいたします。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、再びオンラインから御発言を希望しておられます堀谷委員、よろしくお願いいたします。
○堀谷委員 堀谷です。よろしくお願いいたします。
 私からは、曖昧な雇用で働く者の保護について意見させていただきます。
 個人事業者などに対する法的保護の強化は喫緊の課題であり、現在課題解決に向けた議論が安全衛生分科会などで進められているものと承知をしています。労災保険特別加入制度が特定受託者業種の全業種に拡大されたことは、個人事業者などの保護強化につながるものと受け止めております。
 しかしながら、制度が拡充されようとも、対象者が適用拡大を知らなかったのでは必要な保護が行き届きません。関係団体等との連携を含め、制度を必要とする者にしっかりと情報が届くよう、周知徹底をお願いいたします。
 安全衛生対策については、昨秋取りまとめられた検討会報告を踏まえ、個人事業者も労働者と同じ安全衛生水準を享受できるよう、法改正も含め、早急に環境整備を進めていただきたいと思います。
 また、労働者性の判断基準の見直しは喫緊の課題です。フリーランス新法の附帯決議を踏まえ、法の施行状況や就業実態の把握を行い、労働者性の判断基準の見直し、拡充が必要であると考えます。
 最後に、足元では多様な働き方促進という名の下に、労働者から個人事業者への置換えを進めようとする動きが見られます。雇用労働者の処遇の悪化や産業の健全な発展に影響を及ぼしかねないことから、正規から非正規、さらには個人事業者へと法的保護の弱い就業形態へと安易に転換されることのないようにしていくべきと考えます。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、則松委員よろしくお願いいたします。
○則松委員 ありがとうございます。
 私からは、仕事と育児・介護の両立支援について発言したいと思います。
 育児・介護休業法の改正に向けて、雇用環境・均等分科会において議論が行われてきたと承知しております。男女がともに育児・介護などの家族的責任と、仕事やキャリアの形成を両立するため、育児については「共働き・共育て」という観点から柔軟な働き方を可能とする方向で両立支援制度が拡充されたことは、両立支援制度の利用が女性に偏りがちであることを転換していくためにも大変重要だと考えています。
 一方で、主に高齢者介護が念頭に置かれている現行の仕事と介護の両立支援制度は、障害のある子や医療的ケアを必要とする子を持っている親が、仕事と子のケアを両立する観点からは課題があり、今後しっかりと検討する必要があると考えています。
 なお、仕事と育児・介護を両立しやすい職場環境形成のためには、育児や介護といった事情を抱えていない者も含め、長時間労働を前提とした働き方を見直し、誰もが働きやすい職場にすることが大前提です。労使でそれぞれの職場の働き方の見直しに取り組むことはもとより、厚労省においてもこの改正法が成立した暁にはしっかりと周知に取り組んでいただきたいと思います。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、矢口委員よろしくお願いいたします。
○矢口委員 ありがとうございます。
 私からは、2点申し上げます。
 既に何人かの委員から御発言がありましたが、まず賃上げについてであります。先日の政労使の意見交換では、岸田総理から中小企業を含む裾野の広い賃上げが重要とのと御発言がありました。地方版政労使会議などを通じ、賃上げの動きを全国の中小企業、小規模事業に広げることは経済の好循環に取り組む上で極めて重要であります。
 他方で、日商調査では賃上げを予定している中小企業は昨年より増えておりますけれども、依然として約6割は業績の改善を伴わない防衛的賃上げであります。賃上げは最終的には業績や支払い能力に基づき判断するものであり、賃上げのためには本来収益改善による賃上げ原資の確保が不可欠であります。
 政府におかれましては、昨年11月に公取が労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を出されるなど、価格転嫁の商習慣に取り組んでいただき感謝しております。引き続き、各省庁の連携により、中小企業、小規模事業者の収益改善への支援を強化し、自発的、持続的に賃上げできる環境整備をお願いしたいと思います。
 次に2点目、女性活躍推進についてです。いわゆる年収の壁の問題で、昨今の賃上げや最低賃金の引上げが女性の就業調整を拡大させ、むしろ女性の活躍推進を阻害するのではないかとの懸念の声が大きくなっております。第3号被保険者制度の抜本的見直しなど、年収の壁問題の解消に取り組んでいただきますようお願いしたいと思います。
 当面の対応策として、「年収の壁・支援強化パッケージ」が出されておりますが、中小企業の間からは、制度が複雑で企業単独で理解するのは困難である。壁を意識せずに働く従業員もいる中、壁を意識して働く従業員だけを賃上げすることは公平性の面で難しい。さらに、助成金受給期間終了後の負担増に対応できるか、見通しが立たない等を理由に申請をちゅうちょするという声が多く寄せられております。
 本制度につきましても、より活用がしやすい制度への見直しを検討していただくとともに、中小企業の活用事例の展開など、周知の一層の充実をお願いいたします。
 労働力人口の減少により、社会機能の維持に支障が生じる時代が到来すると言われております。こうした大きな変化を受けて、労働政策におきましても政策全体の整合性を踏まえての検討・実行をぜひお願いしたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、永井委員よろしくお願いいたします。
○永井委員 ありがとうございます。UAゼンセンの永井です。よろしくお願いいたします。
 私からは今もありましたけれども、女性の活躍促進に向けた職場環境の整備につきまして意見を申し上げたいと思います。
 女性活躍推進法が定める女性の活躍に関する情報公表につきましては、コンプライアンスやガバナンス規制などにより進んできていると考えております。特に労働者が301人以上の企業に公表が義務づけられている「男女の賃金の差異」については、自社のウェブサイトや厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースにおきまして、働きがいに関する実績や働きやすさに関する実績が併せて公表されており、有価証券報告書での開示も義務づけられております。これらの情報は学生や求職中の方、投資家など、多くの方々から注目されていると認識しております。
 一方で、日本のジェンダーギャップ指数が低位であるという大きな要因の一つには、「男女の賃金の差異」をはじめとする経済関連のスコアの低さがあると思います。「男女の賃金の差異」は数値を公表するだけでは不十分であり、事業主に対し、差異の要因を分析して是正に取り組むとともに、取組内容の説明欄への記載を促すことが必要と考えております。厚生労働省におかれては、こうした取組をお願いしたいと存じます。
 また、男女間賃金格差、女性の賃金が低いという理由の一つには、いわゆるL字カーブ、正規雇用比率の問題があり、ここには年収の壁の問題もいまだ立ちはだかっていると考えております。
 先ほど来出ております年収の壁・支援強化パッケージ、キャリアアップ助成金の活用事例の提供など、厚生労働省の取組も進んでいることは認識していますが、年金をはじめとする社会保障の政策とともに、労働行政につきましても引き続き周知などの取組をお願いしたいと存じます。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、川﨑委員よろしくお願いいたします。
○川﨑委員 ありがとうございます。
 私のほうからは、資料2の6ページにもあります「多様な人材の就労・社会参加の促進」の項目の中の、特に高齢者雇用につきまして申し上げたいと思います。
 既に御案内のとおり、労働力が不足するという問題への対処、ここも必要なわけなのですけれども、多様な人材が生み出すイノベーション、またそこから生まれる付加価値の増大や最大化、そういったことを目指して高齢者雇用といったところをさらに促進していくことは非常に重要ではないかと考えているところです。
 実際、日本における高齢者の雇用ですけれども、65歳以上の高齢者の就業率は25.2%ということになっておりまして、アメリカが18.6%、イギリスが10.9%ということで、日本はこれを上回っている状況にあるわけですけれども、ただ、高齢者の活躍促進というところをめぐっては様々な課題があると認識をしております。実際、経団連のほうでアンケート調査をしておりまして、高齢者雇用に関してどんな課題があるかというところに関しては、まずは高齢者社員のエンゲージメントやパフォーマンスに関して課題を感じているのが87.9%、技能の伝承や後継者育成に対しての課題が77.2%、また社内における人材の新陳代謝への課題を感じているのが69.8%というふうに非常に多くなっているのが現状です。
 こうした中、各企業では他社の事例を参考にしながら役職定年制の廃止、または定年年齢の引上げといった自社に適した制度の導入の見直しに取り組んできております。経団連では来月、十数社の企業事例を収録した高齢社員の活躍促進に関する報告書を公表しまして、企業の自主的な取組をさらに支援していきたいと考えております。
 政府におきましても相談窓口の設置、マッチングの支援、助成金、補助金の支給など、様々な支援策を実施しているということは承知をしておりますけれども、企業の取組をさらに後押しするような好事例の収集と横展開、こういったところの周知活動ですとか、実効性を高めるための検証拡充をお願いしたいと考えております。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、山中委員よろしくお願いいたします。
○山中委員 ありがとうございます。電機連合の山中です。
 私からは、最低賃金と賃金の引上げに向けた中小・小規模企業等の支援であります業務改善助成金について意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 2023年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,004円となりましたが、いまだ誰もが1,000円には到達をしていない状況です。被災地も含めて、早期に到達する必要があると考えます。
 また、最低賃金を継続的に引き上げていくためには業務改善助成金などによる中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けた取組への支援策が欠かせないと考えます。業務改善助成金はこの間、予算の大半を補正予算で対応してきておりますけれども、当初予算として十分な予算確保をお願いしたいと思います。
 加えまして、支援策に対する政策効果の検証も重要であると考えます。交付が決定した実績については、前年比1,800件以上増加しており、当助成金の周知効果に加えまして需要が高まってきていることが推測できます。より政策効果を高める上では、昨年度の要件緩和の効果を検証すべきではないかと考えます。とりわけ地域別最低賃金が低位の地域における助成金の活用実態や、助成率の引上げによる影響を把握するためにも、都道府県別での集計と分析が必要になると考えます。
 また、本年10月の地域別最低賃金改定時に大幅な引上げが実現した場合、対象事業所のさらなる拡大を検討いただきたいと思います。
 中小企業などからは、申請書や事業実績報告などに大変な手間と時間がかかるという声があがっています。申請報告のより一層の負担軽減を図っていただきたいと思います。
 併せて、さらなる周知活動として、概要を確認する入り口でもあるホームページの改善や、様々な場面を利用した紹介なども引き続きお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、中川委員よろしくお願いいたします。
○中川委員 ありがとうございます。中川です。
 私からは、人への投資、ハローワークの機能強化について発言させていただきます。
 人への投資につきましては資料2の4ページにも記載されていますが、全ての労働者がその能力を十分に発揮し続けるためには、リ・スキリングを含む能力開発機会が等しく確保される必要があると考えます。資料1の65ページの下段にも記載されておりますけれども、特に機会が限られています非正規雇用で働く方々、中小企業や小規模事業所を後押しするための支援の拡充が大変重要であると思っております。
 また、雇用の質の向上につきましては、能力開発に基づく労働者の能力発揮を評価し、処遇改善に結びつける能力開発と処遇改善の好循環の実現が不可欠であると考えます。政府として各種助成措置の拡充、好事例の水平展開などの支援策を積極的に検討いただきたいと考えております。
 それから、ハローワークの機能強化についてです。地域雇用における最大の課題は人手不足を解消することにございます。ハローワークの体制を強化し、企業と求職者とのマッチングを一層推進する必要がございます。
 さらには、ハローワークを地域の核として地域の産業を担う人材の育成、職業能力の充実にも積極的に取り組んでいただきたいと思います。非常に医療介護分野での求人が多く、地域では労働相談も大変多くなっております。ハローワークの専門窓口においては、医療介護分野への就職支援の強化にも積極的に取り組んでいただきたいと思っております。
 今、ハローワークに関しては労働時間、初任給、時給の賃金が違っていたという相談内容が大変多く寄せられております。オンライン、それから来所者へのきめ細やかな対応など利便性の向上や、体制のさらなる充実強化をぜひともお願いしたいと思っております。
 最後に、資料2の4ページの右の欄にも記載されてございます三位一体の労働市場改革に関連して申し上げたいと思っております。労働移動に当たりましては、労働者の意思が尊重されることが大前提であることは言うまでもございません。労働者の意向に沿わない形で労働移動を促進したとしても、職場定着や生産性の向上につながらないことは改めて指摘をさせていただきたいと存じます。全ての方々が安心・安全で職場に定着し、生産性の向上につながるような取組をぜひともお願いしたいと思います。
 私のほうからは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、藤原委員よろしくお願いいたします。
○藤原委員 ありがとうございます。
 私からは意見を1点と、質問を1点発言させていただきます。
 まず意見でございますが、資料2の5ページから6ページにかけまして、「構造的人手不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進」というふうに銘打っておりますけれども、こちらに関連して発言いたします。
 ここで指摘されておりますとおり、人材の確保や個々の労働者の希望に応じた多様な働き方の実現は喫緊の課題となっております。このような状況においては、労使が話合いを通じて双方にとってよりよい働き方を決めていく「労使自治」の推進がますます重要になると考えております。
 経団連ではこうした課題認識の下で、今年の1月に「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を公表いたしました。この提言では、労使自治を重視するという観点から3つの主張を打ち出しております。
 1つ目は、過半数労働組合がある企業を対象とする労働時間規制のデロゲーションの範囲拡大です。例えば、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の対象業務について、十分な協議や健康確保措置を前提にいたしまして、労使が議論して選択する仕組みを取り入れてはどうかと考えています。
 2点目は、過半数労働組合がない企業における新しい集団的労使交渉の場として労使協創協議制、これは仮称でございますけれども、「キョウソウ」というのは協力して創り上げる「協創」ということですが、この制度を導入してはどうかという御提案でございます。
 有期雇用等労働者を含めて、全ての労働者から民主的手続により複数人を選出することなどを条件にいたしまして、この協議体と会社が労働条件について合意すれば、個々の労働者を規律する契約の締結権限を付与することなどを検討すべきだと考えております。 なお、この協議制の導入は義務ではなく、あくまでも各社の選択制という考え方でございます。
 3点目は、過半数労働組合の有無にかかわらず、就業規則の作成や労使協定の締結、労使委員会の決議は企業単位での手続を可能にすべきだと訴えております。テレワークが普及して、常時労働者が事業場にいない場合もある中、会員企業からは現行の事業場単位の規制を見直すべきとの声が多く寄せられております。
現在、厚生労働省では労働基準関係法制研究会におきまして、労働基準関係法全体の見直しに向けた議論が行われておりますけれども、私どもの提案内容も十分踏まえた上で御検討をお願いしたいというのが1点目でございます。
 次に、同じく資料2の6ページにあります「女性の活躍促進に向けた施策」のところに関連して質問でございます。
 よく地方に参りますと、就職などをきっかけとして20代の若者、とりわけ女性が近隣の大都市へ流出して人口減少の一因となっているという非常に深刻な訴えがございます。こうした状況を改善するためには、女性が地域で活躍する環境整備が大変重要になると考えております。
 そこで、政府として地方での就職を希望する女性に対する支援策としてどのような取組を行っていらっしゃるのか、具体的な施策についてお伺いしたいと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 労使の委員からは一通り御意見を承りましたが、公益委員で何か御発言を御希望の方はいらっしゃいますか。よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。それでは、ここから厚生労働省の事務当局より御質問いただいた点について御回答をお願いいたします。
 また、再度御質問を御希望される委員もおられるかとも思いますので、回答につきましてはできるだけ簡潔に時間の節約をお願いしたいと思います。
 それでは、まず会計管理官からお願いいたします。
○渡辺会計管理官 私のほうからは、まず野村委員からいただきました官公需の競争入札等での予定価格への労務費の転嫁に係る御意見についてお答えしたいと思います。
 まず国なのですけれども、中小企業庁の受注の確保に関する法律、いわゆる官公需法というものがございまして、この法律に基づき、中小企業庁の取りまとめの下、毎年度「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」というものを定め、ホームページに掲載をしています。
 令和5年度の中小企業庁の基本方針の中で、国等の契約の締結に当たっては、人件費、原材料やエネルギーコストの上昇分について適正な転嫁を確保するとしているほか、役務及び工事等の発注に当たっては、最新の実勢価格等を踏まえた積算に基づき、適切に予定価格を作成するものとしておりまして、厚生労働省としましてもこの基本方針に準じた中小企業者に関する契約の方針を定め、これに基づいた取組を行っているところです。
 また、来年度の基本方針に向けて今、政府内で検討しており、今年3月14日に「官公需に関する関係府省等副大臣会議」が開催され、その中で宮﨑厚生労働副大臣から、関係府省の副大臣に対し地方版政労使会議で労務費の転嫁が難しいという声が多数出ているということをお伝えした上で、官公需に関わる民間事業者において価格転嫁が進むよう適切な予定価格の設定を行うようにお願いをしております。
 厚生労働省としましても、こうした方針の周知を含め、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。
 以上です。
○清家会長 では、次に労働基準局長お願いいたします。
○鈴木労働基準局長 まずは、最賃につきまして小松委員と山中委員から御発言がございました。
 最低賃金の具体的な引上げにつきましては、最低賃金法に基づきまして各地域における生計費、賃金、企業の支払い能力の3要素を踏まえまして、都道府県ごとに設置されております公労使三者構成の最低賃金審議会によって決定をしております。これにつきまして、こういった3要素を重視するということについて今後も堅持をしていきたいと思っております。
 その上で、この着実な最賃の引上げを図っていく必要から、政府としましては全体的な目標を立ててございます。これにつきましては、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の最低賃金額についてしっかり議論を行って、その積み重ねにより2030年代半ばまでに全国加重平均が1,500円となることを目指すということになっておりますので、厚生労働省としましてもそういったものに向けまして努力をしていきたいと思っております。
 その際に重要なのが、特に中小企業が賃上げしやすい環境の整備だと考えてございます。厚生労働省におきましては、中企庁とも連携しまして事業場内最低賃金を引き上げて生産性向上などに取り組みます中小企業、小規模事業者に対します業務改善助成金による支援を行っているところでございまして、今年度は昨年に比べまして約3倍の申請をいただいているなど、非常にこの改善助成金につきましては好評に展開しているところでございます。
 これにつきましては御指摘のとおり、予算の大半を補正予算で措置しているところでございますけれども、当初予算におきましても可能な限り必要な予算を計上できるよう努めてまいりたいと思っております。
 それから、今後のさらなる拡充に当たりましては、御指摘の昨年度の要件緩和の効果検証などを踏まえまして検討してまいりたいと考えてございます。
 また、申請時におけます中小企業などの負担軽減を図る観点から、申請書などを簡易に作成することができる申請書等簡易作成ツールを作成しましてホームページ上に掲載しているところでございますので、さらなるこういった工夫を検討してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、賃上げ一般につきまして小松委員、矢口委員、野村委員、安河内委員から御発言がございました。
 今年の春季の労使交渉におきましては、多くの企業で昨年を上回る回答が行われるなど、大手企業を中心に賃上げの力強い動きが広がっておるところでございます。政府といたしまして、この賃上げの流れを中小企業でも波及させ、成長と賃上げの好循環を実現することが重要であると考えておりまして、厚生労働省におきましては地方版政労使会議の開催を進めますとともに、先ほど申し上げました業務改善助成金、それから中小企業庁におけます補助金などを活用することによりまして、生産性向上に向けた支援、それから労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知などによりまして、中小企業などの賃上げを後押しする環境の整備に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 また、労働基準監督署におきまして下請事業者への監督指導の際に、賃金引上げの阻害要因として買いたたきなどが疑われる事案を公正取引委員会などに通報する取組も継続してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、労働基準法制に関しまして藤原委員と清水委員から御発言がございました。
 まず、労働基準法が昭和22年に制定されましてから77年目を迎えております。労働者保護の基本法としての役割は今も変わるところではございませんけれども、労働者の働き方への希望の多様化や、企業を取り巻く環境変化なども踏まえまして、将来に向けてどうあるべきかをしっかり検討するべき時期にきていると考えてございます。
 このため、まずは法改正の方向性をどうするのかということで、新しい時代の働き方に関する研究会というものを設置しまして検討いたしまして、昨年10月に報告書を取りまとめていただいております。
 この中におきましては、不当な条件の下で働く者や、長時間労働などによって健康上の障害が生じる者を保護するという労働保護の精神は、新しい時代に即した労働基準関係法制の方向性を検討していく中でも忘れてはならないと提言をいだいたところでございます。
 こうした報告を踏まえまして、今年の1月より労働基準関係法制研究会というものを開催いたしまして、具体的な法改正の内容について検討しているところでございます。
 この研究会におきましては、働き方改革関連法の施行5年後の見直しと併せまして、新しい時代の働き方に関する研究会で示されました方向性も踏まえつつ、時間外休日労働の上限規制をはじめとしました労働時間規制、それから集団的労使関係の意義なども着目しました労使コミュニケーションの在り方、労働基準法の事業や事業上の考え方も含めまして、労働基準関係法制について幅広く検討を進めていただいているところでございます。労使の皆様方の御意見も十分に参考にしていただきながら、今後の労働基準関係法制の在り方につきまして検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 続きまして、成田委員から上限基準についての御発言がございました。
 まず業種別にお答え申し上げますと、建設業につきましては建設業界全体の長時間労働削減に関します自主的な取組を促進するため、各都道府県労働局におきまして国交省と建設業団体だけではなく、発注者団体も構成員としました建設業関係労働時間削減推進協議会を開催しまして取組を進めているところでございます。4月以降につきましても、引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。
 自動車運転者につきましては、令和4年12月から労働基準監督署が発注者でございます荷主に対しまして長時間の荷待ちを改善することについて要請を行っております。
 さらに、令和5年10月からは国土交通省との連携を強化しまして、従来の取組に加え、長時間の荷待ちを発生させている発着荷主などの情報を広く国土交通省へ提供すること、それから国土交通省のトラックGメンが行います荷主企業への働きかけに労働局の担当者も参加する等の新たな連携を開始したところでございます。
 また、医師につきましては、上限規制適用後も引き続き適切な労務管理がなされ、労務時間の短縮が着実に進められることが重要と考えてございます。このため、研さんの労働時間の在り方も踏まえました適切な労務管理や労働時間短縮の取組につきまして、医療勤務環境改善支援センターによりますきめ細やかな相談対応や訪問支援を実施していくとともに、地域医療介護総合確保基金を通じまして医療従事者の勤務環境の体制整備に取り組む医療機関への財政支援を行うなど、引き続き都道府県とも連携しながら医療機関の勤務環境改善に向けた取組を支援してまいりたいと考えてございます。
 また、いわゆるライドシェアにつきましては国交省において検討がなされていると承知しておりますけれども、いずれにしましても厚労省としましては働き方が実態として労働基準法上の労働者に該当する場合には、その使用者に対しまして労働基準関係法令の遵守を求めてまいりたいと考えてございます。
 続きまして、堀谷委員から個人事業者につきまして御発言がございました。
 まず、労災保険の特別加入制度につきましては施行規則の一部を改正する省令が令和6年1月31日付で交付されまして、フリーランス新法に規定する特定受託事業者が事業所から業務委託を受けて行う事業などにつきましては、新たに一人親方等の特別加入も対象事業とすることとされたところでございます。まずはこれにつきまして、新たな対象事業についてしっかりと周知をしてまいりたいと思っております。
 また、個人事業者等の安全衛生対策につきましては、昨年10月にそれをまとめました報告書で御提言いただいた内容を踏まえまして、現在検討を進めているところでございまして、本日午後に開催されます安全衛生分科会におきまして、個人事業者等の健康管理に関するガイドラインや、労働者と同じ事業場で就業する方々の危険防止に必要とされる事業者の措置義務の拡大に向けました関係省令の改正について御審議いただくところでございます。
 その他の報告事項につきましては、4月以降の分科会で御審議いただけるよう準備を進めておるところでございます。
 また、労働者性判断基準につきましては、昭和60年の労働基準法研究会の報告において判断しているところでございますけれども、フリーランス法の附帯決議なども踏まえまして、労働者性の判断基準の在り方につきましては先ほど申し上げました労働基準関係法制研究会で検討していきたいと考えてございます。
 それから、安藤委員から事業性融資につきまして御意見がございました。
 企業価値担保権につきましては、金融審議会のワーキンググループにおきまして厚労省としてオブザーバーとして必要な対応を取ってきたところでございまして、また法制審議会の担保法制部会におきましても譲渡担保権等の法制化などが議論されておるところでございまして、こちらについては幹事として必要な対応を取っているところでございます。
 厚生労働省におきましては、今後も引き続き金融庁、法務省との連携を強化しまして、労働関係法令を所管する立場から必要な対応を検討してまいりたいと考えてございます。
 また、労働契約承継法の見直しにつきましては、事業譲渡や合併等の事業再編時の労使コミュニケーションや、労働者の保護は重要な課題であると認識しておるところでございますけれども、再編の対応は様々であることから、再編の内容や労働条件などについて情報を労働組合などに対して事前に提供することを一律に義務づけることについては検討が必要であると考えてございます。
 なお、会社分割や事業譲渡を行うに当たりましては、事前に過半数組合と一定の協議をするよう進めることとされておりますので、引き続きこういった関係の法令や指針の内容、その箇所についても周知を進めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○清家会長 では、次に職業安定局長お願いいたします。
○山田職業安定局長 最初に、西周委員から御指摘いただいた改正雇用保険法の周知、雇用保険財政について御説明申し上げます。
 御指摘のとおり、今回の雇用保険法改正については非常に多岐にわたる内容でありまして、今後国会で御審議いただきまして成立した暁には、周知徹底についてはこれまで以上にしっかりやっていかなければいけないと思っております。
 雇用保険財政の関係についてですが、コロナ禍の対応としてこうした雇用調整助成金等の特例措置に関して失業等給付の積立金から雇用保険二事業へ繰り入れた額は、令和4年度末で約2.9兆円となっております。この繰入額の返還については、雇用保険部会の報告において、令和5年度決算において雇用保険二事業に差引き剰余が生じた場合にはその全額を失業等給付の積立金に繰り入れることとし、控除の在り方については令和4年雇用保険法改正法の附則の規定に基づき引き続き検討するとされたところであります。
 この点、雇用保険部会において御議論いただいた際には、労使双方より様々な御意見をいただいたところであります。こうした議論を踏まえつつ、来年度、令和6年度、雇用保険部会において議論いただきたいと考えております。
 それから、川﨑委員のほうから御指摘いただいた高齢者雇用についてでございます。来月出される予定の経団連の報告についてもぜひ参照したいと思いますが、周知活動については定年年齢の引上げなど、高年齢者の活躍に向けて人事給与制度の工夫に取り組む企業の事例について独立行政法人高障求機構と連携もして収集、展開を行うこととしております。
 支援策の実効性を高めるための取組としては、職業安定分科会における中間評価、年度評価の内容等も踏まえつつ、毎年度の予算要求に反映しているところであります。こうした取組により、高年齢者の活躍推進に取り組む企業を後押ししてまいりたいと思います。
 それから、藤原委員から御指摘いただいた、地方での就職を希望する女性に対する支援策について御説明申し上げます。
 特に女性に限ったということではありませんけれども、ハローワークにおいてUIJターンなどにより地方での就職を希望する方を支援するために、大都市圏の若者等を対象に潜在的地方就職希望者の掘り起こし、地方就職への動機づけといった地方での就職に意識を向けていただく取組を行うとともに、特に大都市圏、東京、大阪のハローワークにおいては地方就職支援コーナーを設置し、専門の相談員による職業相談、職業紹介や情報提供を実施しております。
 実際に東京の場合の話ではありますけれども、利用者の若返りが実は起きていまして、これまでは定年を前にした割と年齢が高い方の利用が多かったのですが、コロナ禍の途中くらいから若い人が非常に利用するようになっているということがありますので、土日だとか夜間も含めた相談体制というのを今、充実させようとしております。
 女性が働きやすい環境整備等についてですけれども、今般、女性活躍法に基づく企業の行動計画策定取組の支援等による、企業における女性の採用配置の偏り等の解消を図るといった話、それから育児・介護休業法の改正の措置、そういった話とも組み合わせて、これは特に地方にターゲットを絞ったものではありませんけれども、そうした動きとも連動させつつ、そういった地方への回帰というのを進めていきたいと思っております。
 それから、石川委員から御指摘のあった外国人施策全般について、個々の技能実習等については後ほど人材開発統括官のほうから説明があると思いますけれども、全般の話については私のほうからさせていただきます。
 日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるという観点に立って、技能実習制度及び特定技能制度の見直しに向けて検討を進めるとともに、外国人労働者の雇用実態を把握するための統計調査により実態を適確、適切に把握しつつ、就労環境の整備にしっかり取り組んでいきたいと思っております。
 政府においては、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議で取りまとめられた外国人材の受入れ・共生のためのロードマップ等に基づき、外国人との共生社会の実現は重要であると考えております。
 それから、中川委員から御指摘のあったハローワークの機能強化についてであります。例示に挙げられた医療介護等も含めて、エッセンシャルワーカーの関係については、特にそのための人材確保の特別な窓口を設けて対応しておりますけれども、そういったチャンネルも使って人手不足解消のためのマッチングの促進等、求められる課題に的確に対応できるようにハローワークの必要な執行体制の確保に努めてまいりたいと思います。求人情報が間違っているとか、そういった問題についてのチェック体制もしっかりしていきたいと思います。
 中川委員からのもう一つの御質問の労働移動についてでありますが、現在政府が進めている三位一体の労働市場改革は、働く個人の立場に立って多様なキャリアの処遇の選択肢の提供を確保しようとするものであります。こうした考えの下、厚生労働省としては、希望する労働者の円滑な労働移動を支援するため、就職支援や能力開発支援のセーフティーネットの確保などに総合的に取り組んでいるところであります。
 安定局からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 次に、雇用環境・均等局長お願いいたします。
○堀井雇用・環境均等局長 まず、野村委員、そして安河内委員から、地方版政労使会議についての御指摘がありました。
 先ほども御説明をさせていただいたとおり、昨年の12月以降、社会全体での力強い持続的な賃上げの機運醸成のために各都道府県で地方版政労使会議を開催しております。この会議の場におきましては、業務改善助成金等の厚生労働省が実施をしている事業以外にも、例えば内閣官房公正取引委員会において策定をされた労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の内容でございますとか、経済産業省が進めているパートナーシップ構築宣言など、取引適正化に向けた取組や省力化等助成金、省力化等補助金、賃上げ促進税制などの賃上げ支援策についても周知をしている。関係省庁が所管している制度等についても連携の上、周知を図っているという状況でございます。
 そして、野村委員からも御指摘がありました大阪の場合については、知事をはじめ労使のトップの方が参加をされて大変意義深いものであったというお話があります。
 また、安河内委員のほうからは、中小の経営者ですとか労働者といった方々、要は津々浦々に地域の方々に周知をすることが重要だという御指摘がありました。これらの御指摘に関連しては、基本的にこの地方版政労使会議は地域の実情に応じて構成員との間でテーマの協議、出席者、開催日程の調整をしていただくということで、地域で自発的に取り組んでいただくということがあるのですが、ただ、今般の会議におきましては機運醸成の観点から都道府県に対して可能な限り知事に御出席をいただけるようにということで働きかけを行ったところでございます。このような結果、既に開催した44の会議のうち、約半数は知事に御出席をいただいたという状況があります。
 厚生労働省といたしましては、来年度の賃金引上げもテーマにして取り扱う会議の開催に当たりましては一層の機運醸成が図られるように、出席をいただく構成員のレベルも含めて丁寧な調整を行っていきたいと考えております。
 また、我が国全体で賃金の引上げを図っていくためには、地方中小企業も含めた賃上げの実現が不可欠で、来年度以降も地方版政労使会議の場を活用する。このようなことも、関係省庁とも協力をして取り組んでまいりたいと考えております。
 続きまして、年収の壁の関連でございます。これも野村委員、そして矢口委員からも御指摘をいただいたところでございます。
 まず利用状況につきましてですが、「年収の壁・支援強化パッケージ」の当面の対応策の一つであるキャリアアップ助成金につきまして、支給申請が出てくるのは6か月後なのですが、どのような状況で活用の傾向が推移しているかというのを見るために計画届の受理件数、そしてその中に出てきている計画の見込みの労働者数を毎月公表させていただいております。そして、今年の1月末時点で、合計14万人を超える労働者の方への活用が予定されているという状況です。
 それで、実際に就業調整を行う方、つまり106万の壁の手前で現実に就業調整を行っている労働者数を統計上、把握をするということは困難なのですが、就業調整の有無によらず週15時間以上働く第3号被保険者のうち、106万円の壁を意識している可能性のある方を約60万人ということで見込んでおります。このような数字を踏まえても、1月末時点で合計14万人を超える労働者の方が活用予定ということは、制度創設から3か月を過ぎた段階での計画ということを考えると、パッケージの活用自体は着実に進んできているのではないかと考えています。
 さらに、今後春季労使交渉などの賃上げのタイミング、そして本年10月に被用者保険のさらなる適用拡大といったことも考えられて、こういったタイミングでの活用を考えられるということを企業さんのお声としても聞いておりますので、今後もパッケージの活用、特にキャリアアップ助成金の活用というのは進んでいくのではないかと考えております。引き続き、多くの事業主の方にこのパッケージを活用していただけるように、中小企業における実態等も把握をしながら様々な機会を捉えて周知をしていきたいと考えております。
 そして、その関係で矢口委員から御指摘のあった年収の壁の制度見直しというところに関してでございますが、御指摘の第3号被保険者制度も含めて社会保障審議会の年金部会におきまして現在議論を開始したところであると承知をしています。ですので、現時点でその方向性とか、そういったことをお答えできる状況にはないと把握をしております。今後も関係者の方々の意見も伺いながら、丁寧に検討していくことになるのではないかと考えております。
 さらに、キャリアアップ助成金についての中小企業の利用しやすさというところについて、これは永井委員からもその周知ということの関連で御指摘があったと考えていますが、分かりにくいと、特に中小事業主の方々はなかなかその制度を把握するのも大変だというお声も聞いております。ですので、なるべく多くの事業主の方に活用していただけるように労働局、ハローワークでの問合せ受付もやっておりますし、または都道府県ごとに設置をしております働き方改革推進支援センターにおきましても無料の相談支援を行っているところでございます。
 併せて、既に社会保険に加入をしていた労働者の方との不公平感、バランス、こういったお声も非常に多くいただいておりましたので、具体的な助成金の活用事例等を2月の末に厚生労働省のホームページで公表いたしました。例えば、パッケージの中でも2つメニューがあって、こちらのほうのメニューを使うとか、こういう組合せがあるのではないかといった形で今後も周知をしていきたいと思っておりますし、特に中小企業で実際に使ったという活用事例は参考になるというお声もいただきましたので、収集をして公表、公開していきたいと思っております。引き続き、いろいろな方々の御意見を伺いながら丁寧に進めてまいりたいと考えております。
 続きまして、井上委員から御指摘がありました育児・介護休業法の関連の部分でございます。そして、共働き・共育てということで法案を提出させていただいたということですが、今般の改正によって事業主に柔軟な働き方のための措置、そして個別周知等、こういったことを行っていただく必要があるというところになっております。
 御指摘がありましたように、こういった部分につきましては今後国会で御審議をいただく話ですが、施行日を改正法の公布の日から起算して1年6か月以内において政令で定める日、こういった部分について今、申し上げたような新たな柔軟な措置の選択、そして個別の意向確認、こういった部分については施行日を設定するということを考えており、企業において十分な準備期間を確保できるように考えております。引き続き、こういった内容については指針、Q&Aといったことで具体化を図りながら丁寧な周知を図ってまいりたいと考えております。
 同様に、則松委員から育児・介護休業関係についての御指摘をいただきました。特に障害のある子供、医療的ケアを必要とする子供を持つ親についての御指摘だったと承知をしております。
 そして、御指摘が則松委員からございましたように、現行の要介護状態の判断基準というのは、この場合にはその判断基準をそのまま適用すると判断が難しいというケースも確かにあると考えています。そのようなことから、介護が必要な子に応じた判断基準とするということを考えておりまして、これは専門家の方の知見を得ながらその見直しを検討するということで考えております。
 また、共働き・共育ての推進のための法案の提出でございますが、その中で子に障害がある場合と、子や家庭の様々な事情に対応できるように、労働者の仕事と育児の両立に係る個別の意向の聴取と、その意向への配慮を事業主に義務づけるということを今回の法案の中で盛り込んでおります。
 さらに、育児・介護などの利用にかかわらず、仕事と生活が両立できるようにしていく。これは御指摘のとおり大変重要だと考えておりますので、これは次世代育成支援対策推進法の改正法案の中で行動計画に労働時間の状況等に係る数値目標の設定等を義務づけるということにしております。法案が成立した暁には内容の周知徹底をするとともに、就業環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、堀谷委員から御指摘がありました、いわゆるフリーランス新法の関連でございます。昨年4月に成立をしたいわゆるフリーランス新法、フリーランス・事業者間取引適正化等法につきましては、現在その円滑な施行に向けまして法律の下位法令で定めるべき事項についての検討を関係者の方の御意見を伺いながら進めているところでございます。フリーランスとして働くことを希望する方が安心して働くことができる環境整備に取り組んでいくということを進めてまいりたいと考えております。
 また、正規雇用労働者として働くことを望む非正規雇用労働者の方々の正社員転換を支援する、またはハローワークの担当者制によるきめ細かな就職支援、こういったことを引き続き進めてまいりまして、希望する方々の正社員転換を進めてまいりたいと考えております。
 そして、永井委員から御指摘をいただきました女性の活躍に関する公表についてお答えをしたいと思います。
 御指摘のとおり、令和4年4月から女活法に基づいて301人以上従業員を雇用する事業主に対して賃金差異の公表の義務化ということを進めており、御指摘のとおりその差異の公表に当たりましては説明欄に記載する内容を検討することで企業における女性活躍の課題等の分析を促していく。このようなことを進めているところでございます。
 そして、数値の公表に加えて、数値の要因分析を行うことが重要であるということと、要因分析、今後の取組についても情報公表ということで併せて出していただくと、求職者の方ですとか見るほうについては分かりやすいし、逆にそれが企業の理解を深めるということになりますので、そういったことを働きかけております。
 また、この要因分析に当たりましては、公表義務の対象となる企業等に対しましてその要因分析改善に向けたアドバイスなどのコンサルティングの実施を行っており、また、賃金差異の要因分析を分かりやすく公表している企業の好事例の周知なども実施をしております。このようなことで、引き続きせっかく始まった制度でございますので、効果的にということで取り組んでまいりたいと思っております。
 また、L字カーブについての御指摘もあったというふうに先ほど認識をしています。L字カーブの課題の解消に向けては、本当にいろいろな施策を総合的に実施していくということが重要だろう。継続して働くことができるようにということで、仕事と育児・介護、家庭責任との両立支援対策を一生懸命進めていくということも重要ですし、あるいは女性のキャリアという観点で、若いときからずっと考えて自分のキャリア形成を図っていく支援も重要だと思っておりますし、または一時的にその仕事から離れるけれども、また復帰をしたいという方については正社員、あるいは望む働き方、あるいは非正規雇用の方であっても同一労働同一賃金、こういったことを進めていく。総合的に当局の施策を併せてやっていくことが重要だと思っておりますので、引き続き対応してまいりたいと考えております。
 当局の関係は以上でございます。
○清家会長 次に、人材開発統括官お願いいたします。
○岸本人材開発統括官 人材開発統括官でございます。
 人材開発政策の関係では、大きく4点御指摘をいただいたと思います。
 まず1点目、野村委員からいただいた点でございます。人への投資の予算額についてと、それからPRについてかと思います。
 人への投資につきましては、令和5年度予算で1510億円を計上したところでございますが、令和6年度予算案ではいろいろなところにばらけているので数字としてピンポイントで書いていないのですけれども、約2000億円を計上して今、国会で御審議をいただいているところでございます。
 また、PRでございますが、例えば人材開発支援助成金につきまして、テレビCMというのをやっていないのですけれども、最近はテレビよりもスマホを見る時間のほうが長くなっているというようなことも考えまして、動画投稿サイトへの動画広告の掲載ですとか、SNSを用いた事業主の皆様への積極的周知、利用勧奨などを行っているところでございます。同じような取組を求職者支援制度や教育訓練給付の対象講座拡大の周知などにも用いているところでございまして、何とか効果的な周知に引き続き取り組んでいきたいと思っております。
 次に、石川委員から技能実習制度の見直しについて御指摘をいただきました。
 まず、今回の技能実習制度の見直しにおきまして、外国人の権利保護の観点から管理団体や登録支援機関の要件厳格化、機構の体制強化などを盛り込んでいるところでございまして、そういった点は制度の適正化につながるというような御発言でお触れいただいたことには感謝申し上げます。
 その上で新制度、育成就労制度の受入れ対象分野について有識者会議の最終報告書と政府の政府方針との記載の関係についてお尋ねがございました。
 御案内のとおり、有識者会議の最終報告書では、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく、育成就労制度と技能実習制度の趣旨、目的の違いを踏まえて新たに設定をするというふうになっているところでございます。それを受けた2月に定めました政府方針では、この機械的に引き継ぐものではないという部分は踏襲をしつつ、現行の技能実習制度の職種の中に特定技能の特定産業分野としても指定をされているものがございますので、それについては厳に特定技能として国内人材確保の必要性があるというふうな前提で制度化されているといったことも踏まえまして、原則としてそういった職種については対象として加えることを検討するという記述を追加したところでございます。
 ただ、いずれにしましても「検討する」でございますので、最終的に新制度はこれから国会で御審議いただきますが、成立した場合には、その法律にのっとって育成就労の対象職種をどうしていくかについて改めて議論をして具体的に定めていくということになるものでございます。
 また、今回の技能実習制度とビジネスと人権との関係についても御指摘がございました。
 今回、転籍制限の見直しなど、幾つか外国人労働者の権利保護の観点からの見直しも盛り込んでおります。現行制度においても、技能実習生は労働保護法規が適用されるという意味で労働者でございますが、新制度においては日本の生産年齢人口の減少も踏まえて、より正面から労働力として受け入れていこうという考え方に立ちますので、当然これまで以上に入って来られた方の適正な就労環境の確保というのは国の責任としてしっかりやっていかなければいけないという認識でございます。
 続きまして、小松委員から生産性向上に資する職業訓練ですとか、人材開発助成金の周知などについて御指摘をいただきました。
 公的職業訓練につきましては、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において生産性向上人材育成支援センターというものを設けて、地域の中小企業の皆様からの御相談をいただいてオーダーメードのプランの提案などに取り組んでいるところでございます。おかげさまで多数利用いただいておりまして、感謝申し上げます。
 訓練の実施に当たりまして、在職者の方が対象ですので、サブスクリプション型を含むオンラインによる訓練の実施ですとか、休日・夜間の訓練の設定、企業内の出張研修など、個々の中小企業の皆様の要望や実情を踏まえたカリキュラムをオーダーメードでつくっているところでございます。
 また、令和6年度予算においては、特にDX関連の訓練コースの対象人員の拡充も盛り込んでおります。引き続き、地域の中小企業の皆様の期待に応えられるような訓練として展開してまいりたいと考えております。
 また、人材開発支援助成金について、おかげさまで地域の労使の皆様の御協力もいただきまして、実績が今年度に入りまして大分右肩上がりで伸びてきている状況にございます。私どもとしましても、関係書類の統合ですとか添付書類の省略など、活用しやすくなるような簡素効率化に努めているところでございますが、引き続きより広く使っていただけるような取組、例えば活用事例を収集して水平展開するとか、こういったことも考えてまいりたいと思っておりますので、どうか引き続きの御活用をよろしくお願い申し上げます。
 それから、こういった企業内で在職者の職業訓練を強化することによって、これが社外への人材流出につながるのではないかという御懸念は特に中小企業の皆様からいろいろいただいているところでございます。確かに、そういった面がないというと、ちょっと言い過ぎになると思いますが、これまで以上に経済、経営環境が動いていく時代になって、人材育成も取り組み、かつその育成した人材が社内にとどまってくれるような経営戦略ですとか、魅力ある職場づくりですとか、そういったことと同時並行で進めていくということが求められる時代になっているのではないかと思っております。
 人材開発分科会で御議論いただいて取りまとめました学び直しのガイドラインにおきましても、学び直しの促進は労働者のエンゲージメント、職場満足度の維持向上、こういったことを通じて選ばれる会社へとつながるものだというような理念を書いているところでございます。そういった好循環になるような取組を政府としても後押ししてまいりたいと考えております。
 4点目ですが、最後に中川委員から非正規の職業訓練ですとか、ハローワークを核とした人材育成について御指摘をいただきました。
 御指摘のとおり、在職者の中でも正規雇用の方と非正規雇用の方で、社内で教育訓練を受ける機会の程度に差があることは事実でございます。私どもとしましても、その点について在職中の非正規の方が働きながら学びやすい仕組みを新たにつくれないかということで、令和6年度予算案に様々な受講認定実施手法によって非正規の方が在職で学びやすい職業訓練、オンラインですとかオンデマンドを活用したものを試行実施する内容を盛り込んでおります。実績が上がるような工夫をいろいろしながら、非正規の方であっても在職、仕事を辞めずに教育訓練を受けられる機会を社会としても増やしていくような取組を強化していきたいと思っております。
 それから、ハローワークを核とした人材育成、これは当然地域で一番根差している雇用関係の支援機関はハローワークですのでおっしゃるとおりと思います。人材育成機関とハローワークとの連携のため、ハローワーク職員に公的職業訓練や教育訓練給付の指定講座の最新状況の周知ですとか、訓練実施機関との意見効果の機会などを設けまして、ハローワークが職業紹介のみならず職業訓練においても軸になれるような取組を進めております。
 また、ハローワークを核としてという問題意識から少し外れるかもしれませんが、一昨年、令和4年の10月から施行されました改正能開法に基づいて法定化されました地域職業能力開発促進協議会において、地域の労使団体を含む幅広い関係者に御参画いただいて、本当に具体的にその地域のポリテクセンターのこの訓練科のこのカリキュラムをどう見直すかといった議論についていろいろな御注文をいただいて改善をするという取組、そのサイクルを回すことを始めておりまして、地域に根差した人材育成が進められるように今後とも努力してまいりたいと考えております。
 人材開発からは以上でございます。
○清家会長 それでは、最後に政策統括官お願いします。
○鹿沼政策統括官(総合政策担当) 冒頭、清水委員のほうから、子ども・子育て支援法の関係で御意見をいただきました。
 担当がこども家庭庁のほうになりますので、十分なお答えができるかどうかとは思いますが、私もこの1年間この問題に携わってきた立場でもございますので、知り得る限りということでお話をさせていただければと思います。
 言うまでもございませんが、少子高齢化、人口減少、これは非常に我が国の将来に関わる重要な課題だと思っております。こうした中で、2030年代、若年人口が非常に急激に減少していく。こうしたところに入るまで、2030年代に入るまでがまさにラストチャンスだという強い危機意識で、本日の参考資料3にもございますが、こども未来戦略というものをまとめさせていただきました。
 規模的に言えば3.6兆円というかつてない大きな規模であったということ、または内容的には従来の待機児童を中心とした対策から、今回は経済的支援の拡充、または全ての子ども・子育て家庭に対する支援、そして3点目は私どもも非常に大きく関係しますが、共働き・共育て、まさに夫婦が一緒になって子供を育て、そして働いていこうという考え方、この3つが大きな柱になっております。
 また、それ以外にも子供の貧困、児童虐待、医療的ケア児、様々な問題について盛り込んだところだと思っております。特に共働き・共育ての関係につきましては、こども未来戦略会議におきましても、また労働政策審議会の下にあります分科会や部会におきましても、労働者関係団体の先生方から非常に貴重な御意見をいただいて、取りまとめについても御参考にさせていただいたというふうに承知をしております。
 一方で、お話のありました財源の議論でございますが、今回まずこの3.6兆円というお金を、子供たちのための対策を将来の子供たちに負担をつけ回しするようなことがあってはならないということで、安定した財源をしっかり確保しなければいけない。これがまず議論のベースになった上で、規定予算の最大限の活用、または私ども社会保障についてできる限りの効率化、適正化を進めていくということで歳出改革の徹底、こういったものをまず行った上で、これで大体2.6兆円ということで考えておりますが、残りの足りない部分の1兆円について支援金という形で経済界の皆様方ですとか、または若い方々だけではなくて高齢者の方々も含めて御負担をお願いするというような考え方でやっているものだというふうに承知をしております。
 ただ、この支援金につきまして、やはり拠出される方々の御意見、御意向というものが非常に重要だというふうに私どもも思っております。そういった認識の下に、担当であるこども家庭庁のほうに対して本日、委員のほうからもお話があった御意見につきましてしっかりとお伝えをしていきたいと思っているところでございます。
 私のほうからは以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 委員の皆様、よろしゅうございましょうか。
 では、安河内委員どうぞ。
○安河内委員 ありがとうございます。
 あくまでも意見でございますので、答弁等は必要ございません。先ほど藤原委員から労使自治の強化、あるいはそれを踏まえした働き方改革に関するご発言がございました。経団連のほうで、様々な働き方について様々な調査・研究、あるいは提言をされていることにまずは敬意を表したいと思います。
 その上で、労働運動の現場におりますと、必ずしも労働組合法に規定された対等な労使関係が確立をしているとは言えないような職場も多数ございます。また、経営者の中にも労働法を必ずしも十分に御理解をされていない、あるいは大変遺憾ではございますけれども、働くということに対して十分な敬意を払っていただけないような職場もあります。そうした実態を踏まえますと、個別労使に職場におけるルールの形成を委ねるような制度見直しが行われた場合、労働者の尊厳がしっかりと守られた形での労働法制が実現できるのかという点は率直に疑問がございます。
 あくまでも個人的な意見ですが、産業や地域ごとの労使協議等を通じた労働協約の拡張適用なども検討に値するのではないかと思います。
 いずれにしても、これから働き方改革を議論するに当たっては最も危機的な課題であります人口減少に歯止めをかけるということを前提とした議論が必要ではないかと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 ほかによろしゅうございますか。
 ありがとうございます。それでは、厚生労働省におかれましては、来年度の予算の執行や年末の予算編成、今後の政策立案において本日委員の皆様からいただきました御意見を踏まえて取り組んでいただきたいと思います。
 また、何人かの委員から御発言がございました地方版政策労使会議につきましては、事務局においてそのフォローアップを行い、次回その報告を行っていただければと考えております。
 最後に、何か御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。
 小松委員、どうぞ。
○小松委員 最低賃金について申し上げます。企業努力で業績を上げ、賃上げを推進していきたいといった思いは各企業あるとは思いますが、最低賃金はセーフティーネットであり、企業努力による賃上げとは趣旨が異なります。政府が2030年代半ばまでに最低賃金額の全国加重平均で1,500円を目指すという目標を掲げたことで、引き上げの明確な根拠を持たず、目標ありきで引き上げが起こるのではという懸念があります。中小企業は労働分配率が70~80%と高く、今年の賃上げについても防衛的賃上げが6割という調査結果も出ていることを踏まえ、慎重に決定いただきたいと思います。再度にはなりますが、最低賃金額の決定は、法の趣旨に則った審議の徹底をお願いいたします。
○清家会長 ありがとうございます。
 ほかによろしゅうございますか。
 ありがとうございました。
 それでは、本日の会議は以上で終了といたします。皆様、どうもありがとうございました。
 

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