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第3回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ 議事録
日時
令和6年3月12日(水)16:00~18:00
場所
AP虎ノ門
(オンラインとのハイブリッド開催)
(オンラインとのハイブリッド開催)
議題
- 1.有識者等からのヒアリング ② (生命倫理、ゲノム情報、差別、医療目
的以外の検査の質等) - 2.意見交換
- 3.その他
資料
議事
- 議事内容
○中田研究開発政策課長
それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループを開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本日は全ての構成員に御出席していただいております。続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1から9、参考資料1から3までございますので御確認ください。また本ワーキンググループは公開としており、議事録につきましては各構成員へ確認の上、後日公開します。
簡単に会議の進め方につきまして御説明させていただきます。適宜、御発言がある際には挙手をお願いいたします。オンライン出席者におかれましては、画面上の「手を挙げる」ボタンを使っていただければと思います。こちらの会場のほうから御指名をさせていただくような形にいたしますので、お名前をおっしゃられてから御発言いただきますようお願いいたします。
御発言をされない間はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また時に音声等が不安定になるような場合もございます。場合によっては一旦ビデオをオフにするなどの対応を試みていただくようお願いいたします。
傍聴に際しましては、携帯電話等の音の出る機器につきましては、電源を切るか、マナーモードに設定をお願いいたします。頭取りはここまでとさせていただきます。以降の運営を座長にお願いいたします。
○中釜座長
中釜です。それでは、構成員の皆さん、本日も御協力のほどよろしくお願いいたします。それでは、早速本日の議題に入りたいと思います。
議題1について議論を行います。本日はあらかじめ9名の構成員の方々に、生命倫理、ゲノム情報、差別、医療目的以外の検査の質等に関してゲノム医療を推進するための意見をお伺いし、その後ディスカッションとさせていただきます。おおむねお1人7分をめどに発表していただきたいと思います。なお、当該発表に関しての質問については、特に確認したい事項があれば発表後に質問をお願いしたいと思います。9名の御発表が終わりましたら、全体討論の場を設けておりますので、政策全般に係る事項に関するものについては、その場での御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、早速始めたいと思います。50音順に従っての発表をお願いします。まず最初は、天野構成員からお願いいたします。
(通信不良)
○中釜座長
申し訳ありません。こちらの通信の不具合で前半のほうがほとんど聞こえていなかったようですが、これから始めさせていただきます。冒頭に中田課長の説明があったのですが、その分は少し省略させていただいて、早速本日の議題に入ります。よろしいでしょうか。
それでは、議題1についての議論を始めたいと思います。本日あらかじめ9名の構成員の方々に、生命倫理、ゲノム情報、差別、医療目的以外の検査の質等に関してゲノム医療を推進するための意見をお伺いし、その後ディスカッションとさせていただきます。
おおむねお1人7分をめどに発表していただきたいと思います。なお、当該発表に関しての質問に関しては、特に確認したい事項があれば発表直後に質問をお願いしたいと思います。9名全員の発表が終わりました段階で全体討論の時間を設けておりますので、政策全般に係る事項に関するものについては、その場での御発言をお願いいたします。
それでは、本日9名の方々に早速発表に移っていただきます。まず最初は、天野構成員からお願いしたいと思います。
○天野構成員
よろしくお願いします。本日は貴重な機会をいただきありがとうございます。全国がん患者団体連合会は、現在、加盟団体が52団体で、加盟団体会員総数はおよそ2万人を有する患者団体の連合組織です。本日はがん患者団体の立場から意見を申し述べます。
まずゲノム医療推進法の基本的施策のうち、ゲノム医療の提供体制について意見を述べます。遺伝子パネル検査による薬剤到達率は現状では高くなく、医療機関や地域間の格差も大きいのが現状です。遺伝子パネル検査に関する先進医療については、先進医療技術審査部会で評価が行われ、早い段階で検査を行うことで高い治療効果が期待できる集団を適切に振り分けられる可能性が示唆されています。
これを受けて2023年6月には全国がん患者団体連合会から、また同年12月には患者団体や関連学会・団体から連名でがん遺伝子パネル検査の初回治療からの実施などを求める要望書と共同声明が提出されています。
いわゆる骨太の方針2023においても、適切な時機でのがん遺伝子パネル検査の実施が記載されていますので、基本計画においても同様の記載をお願いしたいと考えます。
保険診療下で未承認薬等を使用できる仕組みについてです。患者申出療養については申出に係る相談、すなわち臨床試験としてのプロトコル作成などにいまだ多大な労力と時間を要していますので、この部分のさらなる迅速化と簡素化が必要と考えます。
患者申出療養のいわゆる受皿試験についてですが、現在、小児がんでも行われていますが、その維持・拡充が必要と考えます。
拡大治験についてです。先日私もFDA関係者と意見交換する機会がありましたが、米国のコンパッショネートユースでは、その対象となる集団が治験の対象となっているコントロールされた集団とは異なり、比較はそもそも困難であることを理由として、一般的な年次報告を求めることはあっても、承認審査において直接活用されることはないということでした。日本でも企業でのヘジテートを避けるためにも同様の取扱いとすることを検討いただきたいと考えます。
治療薬に治験等で到達した患者さんの割合は地域間格差が大きい可能性が指摘されています。いわゆるリモート治験DCTの実施についても基本計画に記載をお願いしたいと考えます。
次にゲノム医療推進法における差別等への適切な対応について意見を述べます。AYA世代がん患者を対象とした研究班の調査では、59.7%の患者さんががんの遺伝の可能性について相談したかったと回答しています。一般の方々を対象とした調査でも、ゲノム医療情報による差別について、全体の60%の方々が不安であると回答しています。
こちらは研究班の調査でも割合は少ないものの、保険加入や支払いを拒否された、婚約者や配偶者の家族から検査結果の提出を求められたなどの事例が報告されています。米国の遺伝情報差別禁止法GINA法では雇用や保険分野における対応が明記されていることから、日本においてもまずは雇用や保険分野における対応が必要と考えられます。
例えば米国雇用機会均等委員会では遺伝情報と差別に関するFAQを公開しています。FAQでは、こちらにあるように遺伝情報差別の具体例を挙げています。この第1回ワーキンググループでは、厚生労働省より職業安定法を根拠として遺伝情報は社会的差別の原因となるおそれのある事項に含まれるとの解釈を示していただいていますが、厚生労働省から具体的なFAQの提示あるいはガイドラインの策定等を検討いただきたいと思います。
例えばがん患者の就労支援を行う場合においても、遺伝情報などは提供される可能性がありますが、人事労務担当者の現状での守秘義務が曖昧なので、企業に課せられている安全配慮義務とかバランスも考慮しながら具体的な取扱いについての検討が必要と考えます。
主治医から産業医に対しても就労支援に必要な情報提供も行われるわけですが、治療と仕事の両立支援ガイドラインにおける遺伝情報への配慮の記載についてもさらなる検討が必要と考えます。
保険分野については既に金融庁から保険会社への対応要請あるいは業界からも自主規制が公開されていますが、金融庁からも労働分野同様に具体的なFAQの提示あるいはガイドラインの策定等を検討いただきたいと考えます。
2020年1月にゲノム医療当事者団体連合会が当時の森まさこ法務大臣に対して、17項目からなる法務省の啓発活動強調事項において遺伝に起因する差別や偏見をなくそうという項目を追加するよう直接要望されています。ゲノム医療推進法の成立を根拠として追記するよう改めて要望いたします。同連合会によりますと、実際の差別や不利益の事例として例えば就職の面談時に家族に遺伝子異常を持った人はいないかを尋ねられた、遺伝性がんの診断書を会社に提出したら、これからは重要なポストを与えられないと言われた、遺伝性のがんであった結果を伝えたら、派遣の更新を断られた、家族が遺伝性がんであることを伝えたら、保険加入はできないと担当者から伝えられた、遺伝子検査を受けるために病院に行ったことを保険加入時に相談したら、それでは保険に加入できないと言われた、遺伝性がんであることを家族に伝えたら、家族の縁を切りたい、余計なことをしてくれたと言われた、遺伝医療によって産み分けができる時代になれば、あなたみたいにがんを繰り返す人はいなくなるので、国が豊かになると言われたなどの声が多数寄せられています。これが当事者の皆さんの現実です。
DTC遺伝子検査ビジネスについては既にガイドライン等を整備いただいていますが、ゲノム医療推進法成立を受けて改めて改定すべき点はないか検討いただきたいと考えております。例えば国内では遺伝子解析サービスが企業の健康保険組合向けに提供されている事例がありますが、これはゲノム医療推進法の記載の観点から再検討すべき点はないのかなどの検討も必要と考えております。御清聴いただきましてありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、今の御発表に関して何か特段の御質問はございますでしょうか。特にないようであれば、続きまして資料2、上野さやか構成員からの御発表をお願いいたします。
○上野構成員
上野でございます。聞こえますでしょうか。先ほどの天野先生の御発表がちょっと音声が切れ切れだったところもあるので、若干心配はしております。
○中釜座長
こちらにはよく聞こえております。よろしいでしょうか。では、お願いいたします。
○上野構成員
差し支えなければ始めさせていただきます。
(通信不良)
○上野構成員
TMI総合法律事務所弁護士の上野から発表させていただきます。我々はゲノム医療推進法に基づく基本計画の計画を検討するというワーキンググループというわけで、改めて法律に沿いながらどのような検討と提言をしていくべきか、いきたいかをコメントさせていただきたいと思います。
法律のタイトルそのものと法1条に示されている目的にも記載されておりますように、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするということがそもそもの目指すべきところでありまして、その際に人の尊厳の保持が課題になっていることを我々メンバーも常に意識して議論をしていくことが責務であるということをまず心してまいりたいと思います。
ワーキンググループで議論していく国の施策に関する基本計画は法律8条にも記載されておりますように、具体的な目標と達成時期、つまりいつまでに何がされるべきか、できるのかということを国民の皆様に納得していただけるように、単なる理念だけではなくてタイムライン等も含めて具体的に示していく責務が我々にあると理解しております。
では、何に関して施策を準備していくべきかといいますと、法律の3章にその方向性、事項が示されております。スライド4枚目以降の灰色の枠で示しておりますのが、法律3章の要約抜粋を私がさせていただいた内容になっておりますが、法律の示している事項はいずれも順番に議論していくべき重要なものと思いますけれども、中から幾つかピックアップして私の思うところを述べさせていただきたいと思います。
まず18条に、国は国民がゲノム医療及びそれをめぐる基礎的な事項についての理解と関心を深められるように教育・啓発の推進等の対策をすることを規定しております。このことは16条が規定している差別等への適切な施策にも密接に関係しているところかと思います。
その教育・啓発体制に関する具体的な構想に関しましてですが、その対象であるところの国民と一言に申しましても様々な人々からなる集団でありまして、試料提供者として患者様、あるいは差別されてしまう側、あるいは意識・無意識的等問わず差別する側にも立ち得るポジションということでいろいろな顔があり得る集団でもありますので、そういった視野で教育・啓発もそれをカバーできるような内容としていく必要がありますし、ポピュレーションとしてもいろいろな方々が老若男女おりまして、学生さんに関してであれば学校制度の中でどういった教育を盛り込んでいくかということを議論する必要がありますし、学校制度を離れた大人の方々に関しては、関心を持ってもらうための工夫がいろいろ必要になってくると思います。近年情報を届ける媒体や形にしてもいろいろなものの活用の可能性があると思いますが、それをどうやって活用していくかといったことも含めて、それぞれ具体的な対象オーディエンスに応じた最適な方法を議論していければと思っております。
今回新法ができたということで、その施策の立ち上げとしてまずは大きくそのものの周知を図って関心を喚起するようなキャンペーンといいますか、そういった短期的な計画も考えるとよいと思いますし、一方でゲノム医療とその基礎についての知識をベースとしたリテラシーの全般的な向上は一朝一夕に済むことではありませんので、国民の理解を時間をかけて涵養していく長期的な体制も提言する必要があると考えております。
スライドに「『一歩すすんだ』啓発の必要性」と書かせていただきましたが、これは例えば何かしらアナウンスなりドラフトした方針のようなものを公開しました、それで啓発が済みましたという形だけで終わるのではなくて、実効性のある体制にいかにしていけるかを考えていく必要があるという気持ちを込めまして、このように記載させていただきました。
具体的にどうやって情報を発信していくか等のことを考える際に、例えばこれまでにも似たように国の取組の類いに関して、既に関係者の皆様に御努力いただいていろいろな情報発信・提供を試みている経験等もおありかと思いますので、そういった既存の情報提供に関してもどういった取組が有効であったとか、逆にこの発信の仕方はいまいち成果がなくて改善点があるといった情報経験の共有もいただけるようであれば議論の一助になるのではないかと思っております。
それから、差別に関しましては、16条が適切な対応を取るべしということを規定しておりますが、差別が根本的には不安、恐れ、あるいは無知、無関心というところから来るのが人間のさがだと思いますので、そういった根本的なところの解消はやはり教育や啓発に負うところが大きいということで、重要施策の1つの柱になるかと思います。
それから、16条の条文をよく読んでみますと、「不当な差別その他当該ゲノム情報の利用が拡大されることにより生じ得る課題」ということで、差別以外にも何かしら課題があれば、それにも適切に対処していくことを掲げております。差別以外にどんな課題があるだろうかということは今すぐ私から全てのアイデアを出し尽くすことはできないのですけれども、可能性としてそういったところも考えつつ議論していければと思います。
そういった差別等に関する対応施策を考えていく上で、どのような情報が使われる場面でどのような差別、あるいは差別以外にも問題点につながり得るかということは具体的な事例をもって検討することが不可欠と思っております。そのためにまさにワーキンググループのメンバーの先生方の御経験であるとか外の情報についても広くインプットいただいて議論していくところかと思っております。例えば保険加入であるとか雇用関係での差別はよく議論あるいは不安に思われている典型的な場面と思いますし、結婚、出産、その他。
(通信不良)
○上野構成員
保険加入、雇用のところは述べたと思いますが、その他結婚、出産、その他私生活等で対面する差別であるとか偏見、誹謗中傷、プライバシーがどういった形で侵害されるか、あと知りたくない情報を知らずにいたい人の気持ちは尊重されるのかというような不安を持っている国民もいるかもしれませんし、他人からの差別もそうですけれども、自分自身へのバイアス、自分はこういったゲノムの状態だからこういうことはできないのかなとか、そういうことも不安に思う方々もいらっしゃるかもしれませんし、そういったいろいろな場面を想定した上で、それらの差別あるいは課題を防止・克服するために実効的には何をするべきかという対応策を考えていきたいと思います。それは教育・啓発のほかに差別的な取扱いの禁止等を法令やガイドラインで示したり、また差別等が残念ながら行われてしまった場合の対応についても、対象者に応じた相談体制の構築であったり、差別されてしまった状態をどう立て直して回復していくか、罰則等も含めて法令、ガイドライン等で示していくことが必要かと思います。
5枚目のスライドですが、ガイドライン、方針を今、申しましたが、ガイドライン、指針について法律が具体的に明示しているのは14条と15条で、医師等及び研究者等が遵守すべき事項として、生命倫理への適切な配慮の確保とゲノム情報の適切な取扱いの確保のための指針を策定すべしと示しております。医師、研究者等を対象とする指針はもちろん重要ですけれども、今、述べましたように、例えば関連する事業者が参照できるようなものであるとか、国民一般が参照して基本的な理解をしたり、安心して行動できるような指針といいますか、コメンタリーのようなものなど、具体的に示せるものを掲げていくことも必要かと思います。
それから、ゲノム情報の適切な取扱いの確保については、法律で明示しているのは医師等、研究者等の遵守事項としての指針策定というところですけれども、既存の情報関連指針についても、そのひもづけと見直しが足りないところ、あるいは改善すべきところがあれば改訂作業等も必要になってくると思います。既存のものとしましては言うまでもなく個人情報保護法関連の法令と指針がありまして、個人情報の取得、第三者への提供に関するルールを設けております。
重要ポイントとしては、取得に関して利用目的を適切な形で示してのインフォームドコンセントを得ること、第三者提供に関しては、これも利用目的に含まれている必要がそもそもありますが、第三者に当たる者当たらない者の別ですとか、あらかじめ本人の同意が必要な場合、例外的に不要な場合等々の取扱い区分とルールが定められております。これは個人情報の保護に資するのが法の目的ではありますが、時にはデータの有効な利活用の足かせにもなり得るということで、これまでにもいわゆるパーソナルデータの利活用を目指して個人情報保護の改正が平成、令和と行われてきましたが、従来の改正で足りているのか、ゲノム医療の推進のためにさらにどこか指針の改訂等が必要かについても確認と議論ができればと思っております。
○中釜座長
すみません、中釜ですけれども、そろそろ時間になりましたので、話をまとめていただけますでしょうか。すみません。
○上野構成員
はい。これは国際間における情報の共有の戦略的な推進という法の示している指針においても大変重要なポイントとなってくると思いますので、述べさせていただきました。
最後のポイントとして、地方でのゲノム医療推進も議論が必要でありまして、この点について今までどれくらい議論というか、問題意識というか、できていたか分かりませんが、この点についても忘れないようにということで書かせていただきました。以上、駆け足で失礼いたしましたが、よろしくお願いいたします。
○中釜座長
御発表ありがとうございました。今の上野構成員の御発表に関して何か御質問はございますでしょうか。よろしいですか。少し通信状況が悪くて御迷惑をおかけしていますが、一応こちらにはお声は聞こえているケースがあります。もし聞こえない場合はチャット等で速やかにお知らせするようにしますので、ないようであればお話を続けてください。
それから、お1人一応7分というめどで構成していますので、できるだけその範囲で御発表いただきたいと思います。続きまして、資料3、大沢構成員、御発表をお願いいたします。
○大沢構成員
よろしくお願いします。スライドはそちらでお願いします。聞こえていますか。
○中釜座長
大丈夫です。聞こえています。準備いたしますので少しお待ちください。
○大沢構成員
では、よろしくお願いします。御存じのとおり2018年7月まではHBOCの検査は全部自費でしたので、陽性率が高そうだなという方にはお話ししまして、ほかの病院で自費で受けられること、もし陽性だった場合は自費で取れる手だてがあることもお話ししていました。トリネガの方やお若い方、複数再発した方などは受診されています。お1人は、両側の卵管・卵巣と両側の乳房切除を自費で受け、全部で100万くらいでしたと御報告くださる方がいらっしゃいました。
18年7月に再発の方がコンパニオン診断として保険適用になってからは少しずつ増えてきました。最初の頃は効く薬がなくなってきて、新しい薬を使えるようになればというのを期待して検査する方が随分多かったのですけれども、ほとんど駄目で、結局その頃の陽性率は19%ほどでした。
やっと保険が利くようになり、条件に合う方はほとんど全員医師から説明して、私からも説明するようになりました。先週までの合計を計算してみたのですけれども、263名です。陽性率は11%ほどでした。このときからRRSOもRRMも保険適用になったので、陽性だった方は連携する病院に遺伝カウンセリングに行って説明を受けてもらっています。
こちらにあるとおり左上の表なのですけれども、2020年4月から今の3月までBRCA1だった方が15名で、BRCA2が13名、inconclusiveだった方がお2人です。出ていない方が233で、89%ほどでした。その前は出ていない方が77%ぐらいでした。
その後の様子なのですけれども、遺伝カウンセリングに行っていただいた後、バリアント保持者28名の中でRRSOまで済ませた方が10名でした。それから、まだ結婚もしていなかったり、これから出産希望や、迷っているなどでサーベイランスでフォローしている方が12名です。RRSOをやりましょうということで検査したら卵巣がんが分かったのがお1人で、カウンセリングを迷っている間にお腹が腫れてきて調べたら卵巣がんが見つかり今ケモ中なのがお1人です。そこは非常に残念でした。あとは再発転移後のコンパニオン診断で、RRSOは関係ないのでつながっていない方、既に乳がんも卵巣がんも既往があって検査して陽性で、遺伝カウンセリングにはつながっていない方がいらっしゃいます。こんな感じで推移しています。
当院のように拠点病院でも連携病院でもないと、限界を感じることがあるので、具体的に事例をぼかしながら2つ紹介したいと思います。
70歳でトリネガの乳がんが分かった方なのですけれども、お嬢さんも30代で乳がんになってすぐに亡くなっています。その娘さんの御主人も突然死しておりまして、そのためお1人でお孫さん2人を育てていました。お嬢さんが30代で亡くなったとき下の男の子が3歳で上の女の子が5歳で、患者さんの手を握って子供たちを頼みますと言いながら死んでいったのですとお話ししてくださいました。このおばあちゃまというか患者さんが乳がんになってうちに来たときは、下の3歳だった子が中1、5歳だった子が中3になっていまして、ずっと患者さんが1人で育ててきていました。でも、短期間で遠隔転移してしまいました。その頃再発した方が調べられるようになったので、調べたらBRCA1が出ておりオラパリブを使いましたが、2年ほどで亡くなられました。なのでお孫さんは遠くに住む親戚に引き取られていきました。その親戚の方には、もし遺伝が出ているにしても大人になってから発症するものだから、今、中学生、高校生のときは検査しないでも大丈夫だけれども、遺伝カウンセリングはいつでも受けられ、転居先のどこで受けられるという情報をお伝えしていきました。
このケースで遺伝には関係ないけれどもつらかったのが、このおばあちゃまは本当に頑張り屋さんで、訪問診療も提案はしたのですけれども、孫2人の中で自分が死んでいくのは孫たちにショック過ぎるからと導入を拒んでいました。とても具合悪くなってから受診しそのまま入院、3日後に亡くなりました。入院してきたとき、「夕べ孫に話してきたの。『明日病院に行って入院したら、やがてすぐに死ぬ。帰ってこれない』って話して、お別れを実はしてきているんです」と話してくれたのが忘れられないです。
(通信不良)
○中釜座長
大沢様、残り1分となります。すみません、大沢様の音声が途切れたみたいですので、再接続を図っていますが、もしよろしければ次の神里構成員からの御発表をお願いしてもよろしいですか。よろしいですか、構成員の先生方。すみません、御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。では、神里構成員、お願いいたします。
○神里構成員
まだスライドが出ていないようなのですけれども、出たら始めます。本日発表の機会をいただきましてありがとうございます。神里です。
ゲノム医療推進法では生命倫理への適切な配慮と差別等への適切な対応を求めているわけですけれども、そこにおいて検討すべき課題として幾つかの例を私からはお示ししたいと思います。
まず課題例の1つ目として、ヒト胚にゲノム編集技術等の遺伝子改変技術を用いるゲノム医療への対応です。ゲノム医療推進では第3条でゲノム医療施策を行う上での基本理念を3つ掲げており、第4条では国はその基本理念にのっとってゲノム医療施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有するとしています。スライドがなくなってしまいましたが、継続して大丈夫ですか。
○中釜座長
スライドは見えていますので。大丈夫でしょうか。
○神里構成員
すみません、復活しました。そして基本理念の2つ目として、ゲノム医療の研究開発及び提供には、子孫に受け継がれ得る遺伝子の操作を伴うものその他の人の尊厳の保持に重大な影響を与える可能性があるものが含まれることに鑑み、その研究開発及び提供の各段階において生命倫理への適切な配慮がなされるようにすることと規定されています。ここに示した赤字の部分ですけれども、これはやや唐突ではありますけれども、ヒト胚へのゲノム編集等の遺伝子改変技術がここに含まれると思われ、そうなりますと、法律上それもゲノム医療として想定していると理解することができます。ヒト胚へのゲノム編集等の遺伝子改変技術については、あまりゲノム医療の文脈で登場することはありませんけれども、実はこれについては国が既に宿題として課されているテーマです。ここに入れられた経緯を私は存じ上げていませんが、そのような背景があってここに入っているのではないかと推察します。
日本では平成31年以降ゲノム編集技術等の遺伝子改変技術をヒト胚に用いることに関する規制を整備してまいりました。基礎研究についてはそこのピンクのところに書きました2つの指針をもってヒト胚、それも余剰胚あるいは研究のために受精胚をつくって、それについてゲノム編集技術等を行うことを一定の条件の下で可能としています。またヒト受精胚にゲノム編集技術等を用いて、その用いられた胚、改変された胚を女性に移植するといった臨床試験については遺伝子治療等臨床研究指針で禁止されています。すなわち2018年に中国の研究者がゲノム編集ベビーを誕生させていますけれども、このようなことを日本で研究として行うことは禁止されています。しかし、一方で研究目的ではなく臨床目的で実施することについての規制はなくて、いきなり医師がこれはもう診療だということで実施した場合、日本においてはなすすべがないというのが現状であります。
これが問題なので、厚生労働省に「ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会」が設置され、私もメンバーでしたけれども、令和2年に「議論の整理」というまとめを行っています。時間がないので下線部だけですけれども、そこではゲノム編集については研究として行われる臨床利用と医療提供として行われる臨床利用双方に対して確実に実効性を担保することが必要である。これらへの対応として、本委員会では法律による規制が必要と判断しました。現状における法的規制の必要性を提言しました。ただし、一方で将来的にはゲノム編集技術をヒト受精胚に臨床応用することもあり得るという想定の下で、今後我が国と諸外国での検討状況や科学技術の進捗などを踏まえて、社会的受容性を確認しながら、継続的に検討していくことが必要であると結論づけています。すなわち国としてはこれら宿題を負っているところでありますけれども、その後4年が現在までに経過していますが、進展は一向にありません。生命倫理への適切な配慮の確保のために、臨床利用に対する法的規制、そして将来的な臨床利用についての議論が必要であり、先ほど見たゲノム医療推進法の規定上も基本計画で取り扱うべき内容と考えます。
課題の2つ目であります。着床前診断についてです。これについては日本では法令、指針はなく、日本産婦人科学会の会告で規制しています。
日産婦からはたびたび法令等による規制を国に要望しておりますし、また着床前診断を会告に反して行った医師による訴訟で、2007年に東京高裁でも学会の自主規制に委ねられていることが理想的とは言えず、立法による速やかな対応が望まれると述べていますが、これについて国の動きもありませんでした。
そういう中、日産婦では状況を鑑みて会告をアップデートするという工夫を行っています。しかし、これは日産婦の会員に対するものであって、それ以外には通用しない会告になります。
そこで学術会議からも、法的にゲノム医療推進法ができたのであるから、そこにおいて基本的な法律を整備しなさいということを提言しています。ということから、着床前診断についても推進法に基づいて基本計画の中で扱うべきではないかと考えます。
課題の3つ目であります。不当な差別の防止については基本理念の1つであり、これについて異論はないわけですが、ただ一言に「不当な差別」といっても医療者、患者、ELSI研究者によってその定義や概念もかなり異なる可能性がありますので、まずは不当な差別とはどのようなことかということの整理が必要なように思います。
またゲノム情報ではない家族歴等により差別は従来から大きな問題になってきたわけですけれども、これをそのまま放置してよいのかという問題もあります。
加えてゲノム医療が差別につながり得る領域として保険や雇用、結婚が挙げられますけれども、それ以外にprecision educationも海外で行われるようになっていますので、ほかにないかという洗い出しも必要かと思います。不当な差別の防止についてですけれども。
○中釜座長
そろそろ時間ですので、少しまとめていただけると助かります。すみません。
○神里構成員
分かりました。理解促進が必要であり、全くゲノム医療、そしてどの辺に差別があるかということについて国民の中で考えたこともない人がほとんどであります。ですので、まずは考えていただくような仕組みが必要かと思います。
このようにいろいろ例を挙げましたけれども、これは一例でありまして、今後技術の進歩に伴って新しい課題も出てきます。ということで、お願いしたいのは、生命倫理への適切な配慮、差別等への適切な対応について、継続的かつ体系的な調査研究ができるような仕組みを基本計画の中に入れていただきたいことと、生殖についてもゲノム医療推進の中で取り扱っていただきたいと思っております。以上でございます。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、ただいまの神里構成員の御発表に関して何か御発言、御質問はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、先ほど途中で音声が切れました大沢構成員、声は聞こえていますでしょうか。まだうまくつながっていないようですか。
(通信不良)
○中釜座長
申し訳ありません。大沢構成員との通信が不安定なようですので、少し先に進めさせていただきます。それでは、5番目、資料5の遠山構成員から先に御発表をお願いいたします。
○遠山構成員
聞こえておりますでしょうか。
○中釜座長
大丈夫です。スライドも見えています。
○遠山構成員
それでは、「生命保険とゲノム医療」について御説明させていただきます。まず、2ページですが、生命保険協会には国内で生命保険事業を行っている全42社が加盟しており、生命保険会社の業務品質の向上に向けた取組などを行っております。
3ページ以下で生命保険制度の概要をまとめておりますけれども、4ページでは生命保険は損害保険、少額短期保険、共済とともに「私保険」に分類され、民間組織により運営されていることをお示ししております。一方で、健康保険などの「公保険」は政策目的達成の手段として国や地方公共団体などにより運営されております。
5ページをお願いします。「保険」は「同様の危険にさらされた多数の主体が金銭を拠出して資金備蓄を形成し、各主体が経済的不利益を被ったときに支払いを受けるという形で不測の事態に備える制度」と定義されますが、保険が成り立つためには、引き受ける危険の程度が数量化でき、合理的尺度で測定できなければなりません。そして生命保険は、諸条件を同一とする数多くの対象を集めることで一定の結果に近づくという「大数の法則」、保険料の総和と保険給付の総和とが等しくなるという「収支相当の原則」、保険料はリスクの程度に応じて決定されるという「給付反対給付均等の原則」の3つの原則に基づき運営されております。
6ページですが、以上のように、生命保険は大数の法則に基づき一定の死亡率などを基礎として算出した保険料により、被保険者の損害を補填し、相互扶助を実現する制度であることから、生命保険会社は、被保険者の集団が危険の程度に応じて保険料を負担するという公平性を有し、また、個々の保険事故発生率が均一であるという危険均一性を維持するため、被保険者の危険選択を行っております。もし予定の死亡率などを超える人々が混入すれば、生命保険会社の支払いは著しく増え、その他の加入者の方々が不利益を被る結果となります。
7ページをお願いします。生命保険会社が危険選択を行う具体的な方法として、保険法では、保険契約者や被保険者に告知義務を課しています。告知義務に故意または重過失により違反した場合には、生命保険契約を解除することができる旨定められています。
次、8ページをお願いします。こちらでは代表的な告知事項を例示しております。正しい告知に基づく合理的な危険選択は保険運営に必要不可欠なものですので、御理解いただきたく存じます。
次、9ページでは日本生命の告知書を載せておりますが、こちらでは省略させていただきます。
10ページ以下でございますが、生命保険加入時の遺伝情報の取扱について御説明いたします。生命保険協会では2022年5月、「生命保険の引受・支払実務における遺伝情報の取扱」に関する周知文書を公表しております。
まず11ページにあるとおり、生命保険の引受・支払実務においては、遺伝学的検査結果の収集・利用は行っておりません。
また12ページにありますとおり、提出された告知書や診断書等に遺伝学的検査結果が含まれる場合などについても、その利用は行っておりません。
次に13ページにあるとおり、この取扱は、医療の進歩や社会的な議論の成熟等、環境や情勢の変化に応じ、監督官庁の指導と医療・医学等の関係者の意見を参考とし見直しを行うことを含めて、適時適切に対応してまいります。ただし、見直し時点までは本取扱を維持いたします。
15ページをお願いいたします。告知について御説明いたします。ポイントは「医師による」という点です。具体的には、遺伝カウンセリングも、医師による場合には告知対象となります。医師によるほかの診療がある場合には、そちらも告知が必要です。また、自費であっても、医師による診療は告知対象となります。ただし、遺伝学的検査の結果は告知いただく必要はありません。
次、16ページから18ページはよくいただく御質問をまとめたものになりますので、後ほど御確認いただければと存じます。
19ページ以下で過去に保険会社による差別の可能性を指摘された事例について簡単に御説明いたします。
20ページから23ページは、2002年の先天性疾患の事案です。具体的には先天性疾患について発症、服薬している場合の引受可否が論点となったものです。
こちらは現在の取扱いになりますが、23ページにありますとおり、先天性疾患や遺伝性疾患にかかわらず、疾病を発症している場合には、保険に御加入いただけなかったり、特別条件が付加される場合がございますが、医療技術の進歩などを踏まえまして、各社では現在、疾病が発症していても保険に加入できる機会の拡大に取り組んでございます。
次、24ページから26ページになりますが、こちらは2004年の高度障がい保険の事案になります。
24ページに戻っていただきまして、こちらはクラッベ病により高度障がい状態に該当されたケースなのですけれども、クラッベ病の確定診断は保険の加入後に行われておりまして、具体的には、保障が開始する前の発症の有無が論点になったものでございます。加入後、早期に御請求されるような場合には、責任開始前に発症していたか否かを確認させていただく場合がありますことを御理解いただきたく存じます。この点は26ページに記載させていただいております。
27ページから29ページは、2017年の約款記載に関する事案です。数社の約款に「遺伝」と記載されていたものですが、これは過去に家族歴を確認していたものがそのまま残っていたもので、既に家族歴は使っておらず、各社、約款から削除しております。
29ページをお願いします。先ほどの周知文書にも記載しておりますが、現在、生命保険の引受・支払実務においては、遺伝学的検査結果の収集や利用は行っておりません。
最後に31ページ、生命保険協会の考え方になります。生命保険協会はゲノム医療の普及や啓発について賛成しております。ただし、将来、ゲノム医療が普及し、遺伝学的検査が一般化したり、技術の向上が進むなどした場合には、ゲノム情報の利活用を行わないことが契約者間の公平性等の観点から課題となる可能性があると考えてございます。したがいまして、ゲノム医療の普及や技術の向上の状況に応じて、将来、保険の引受や支払におけるゲノム情報の利活用の可能性について検討する必要が生じ得ると考えておりまして、その際には、関係者の皆様から御意見をいただき、バランスの取れた結論が導かれることを期待しております。御説明は以上です。御清聴ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、ただいまの遠山構成員の御発表に関して何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。ないようでしたら、大沢構成員、声は聞こえていますか。では、続きまして森構成員から御発表をお願いいたします。
○森構成員
よろしくお願いいたします。では、スライドをお願いします。私どもは難病の患者団体で、難病・慢性疾患の約100団体の加盟からなっております。私どものところに届いている難病患者・家族からの主な意見の中からまとめて発言させていただきたいと思います。
○中釜座長
すみません、スライドの表示をお願いできますか。スライドは見えていますでしょうか。大丈夫ですか。
○森構成員
ありがとうございます。難病の患者の願いはもちろん根治することです。治療が主目的の人生とならないよう新たな医療に期待いたしております。難病は知られていない病気が多くて、初期症状が出ても気づきにくいことがあります。症状を自覚していても病気だと思わなかったとか、症状を言葉で伝えにくいなどと、実際に受診するまでに期間を要している場合があります。また検査をしても診断がつかず様子を見ましょうとか、ここでは分からないと言われ、診断がつくまで幾つもの病院を回り、何年もかかった患者もいます。難病の未診断疾患にIRUD診断体制を構築いただいており、非常に心強いです。初回受診となる身近な各地域の医療機関、かかりつけ医のところから確定診断にまでスムーズでスピーディーにつながるように、さらに診断体制を整備・周知していただきたいです。重症化させない医療体制を望んでいます。
遺伝情報、ゲノム情報は極めて重要な個人情報であり、その保護ですとか取扱いに関しては適切な規制を行っていただきたいです。不適切な扱い、情報漏洩や人的ミスなどが起こらない、防止できる法整備が必要と考えます。倫理的な問題で大きな不安となっている差別の問題では、保険、雇用、進学などで不利になる、本人や血縁者などの結婚・妊娠等に影響するなど、不利益を被る可能性があります。実際に差別は起こっています。遺伝差別を防止する法律の制定を強く要望いたします。これら抑止力が働くような罰則などが必要ではないか、また検討もいただきたいです。
ゲノム医療推進のためには、ゲノム情報の取扱いや差別の禁止など患者・家族の不安が払拭されなければなりません。疾患や環境によっても実態は様々ですし、多くの患者団体等の状況を把握し、意見を聞きながら進めていただきたいです。遺伝差別を防止するには国民の理解も必要です。幼い頃から一人一人の命の尊さや多様性を認め合える社会であるよう、年齢に応じた教育に組み入れることも必要と思います。その上で国民にゲノム医療に関する理解を得られるよう広く関心を持てるような様々な機会をつくり、周知し続けることが必要と思います。
相談支援体制については、遺伝に関する不安や疑問について誰でも安心して相談できる体制を構築し、周知していただきたいです。医療に関することはもちろんですが、患者・家族の心理面やその先の生活に関しても途切れのない相談支援につながるよう連携が取れる体制にしていただきたいです。見るもの聞くもの全てが初めての患者には医療機関での不安も大きいかもしれません。がんや難病の相談支援センターや患者団体のピアサポートも、当事者として経験を生かし、医療従事者と患者・家族をつなぐ役割にもなれると思っています。
全ゲノム解析等実行計画が進められています。質の高い情報基盤を構築し、新たな治療法の開発や個別化医療の実施を目指すとされており、大変期待しています。ゲノム医療も全国のどこにいても公平に適切な医療を受けることができるよう、実施体制整備、そして相談支援体制など十分な設備や人材確保が必要です。これら安全で質の高いものであるためには十分な予算・資金を確保していただきたいです。
ゲノムデータは非常に複雑であり、医師であっても正確に理解することは難しいと聞いています。データの複雑さを理解した上で、多くの医師が適切な診断や治療選択へ利用できるように、データ解釈の専門家へ相談できる体制や研究支援をお願いします。
新たな技術によるゲノム治療が可能となった場合でも医療費助成の検討なども適用されるようにお願いしたいと思います。また一方で、治療に伴う想定外の有害事象の懸念もあります。患者・家族にはそれらの危険性についても丁寧に説明していただき、また有害事象が起こった場合にも治療を受ける者の負担軽減になるような十分な対策を図っていただきたいです。
先進的な治療について日本の研究や臨床応用に向けた体制の遅れが生じることが懸念されます。国の指導の下、国内の研究者を本気で支援していただきたいです。海外に渡ってこのような先進治療を受ける場合、法的規制や倫理的ガイドラインを遵守しつつも柔軟性を持って検討していただきたいと思います。
ゲノム治療の倫理的な配慮は重要です。その上でほかに治療法がなく、わらをもつかむ思いの患者の治療の機会が失われることがないよう考慮されるべきとも思います。患者も医学の進歩に役立ちたいと思っている人も多いです。適切な倫理的なガイドラインの下で、研究者、医師、倫理専門家が協力し、患者の権利と安全性を保護しながらも、医学の進歩を妨げずに前進させる必要があると考えています。透明性、患者教育、公共の意見を反映させるプロセスの確立などが適切なバランスを保つために不可欠と考えます。引き続き多くの人たちの意見を入れながらの検討が必要と思います。以上です。よろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、ただいまの森構成員の御発表に関して何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。では、続きまして資料7、山田構成員に御発表をお願いいたします。声は聞こえていますでしょうか、山田構成員。
○山田構成員
聞こえております。私の声も聞こえておりますでしょうか。
○中釜座長
はい。では、スライドの共有をお願いいたします。
○山田構成員
スライドをこちらから投影いたしますので、ちょっとお待ちください。スライドは見えていますでしょうか。
○中釜座長
大丈夫です。
○山田構成員
では、始めさせていただきたいと思います。ジェネシスヘルスケア株式会社の山田と申します。当社は遺伝子検査・研究を行う事業会社として消費者向け、いわゆるDTCと言われる検査サービスと医療機関・研究機関向け検査の双方を行っている会社です。本日は「ゲノム医療とDTC遺伝子検査サービスの位置付けと課題について」と題して説明させていただきたいと存じます。
当社は創業以来20年の間に様々な遺伝子検査・研究を行ってまいりました。累積の解析実績数等は御覧いただけるとおりで、当社独自で特許等を取得し、検査サービス分析に活用しております。当社はCelebration of Humanityを理念としております。人類の多様性、遺伝の多様性を受け入れ、差別なく人類が健康で明るい人生を送れるように願ってという観点から、当社が社会に貢献していくという考え方を表しているものでございます。単に遺伝子検査を行うだけではなく、学術研究等の進展にも貢献したいと考えております。当然のことながら検査を受けられる方々の権利、プライバシー、いかなる形でも差別を受けないということ、倫理を重視しております。また研究機関との共同研究のほか、当社独自の研究も行っており、内外各所で発表させていただいております。直近では米国の大学と共同して遺伝子編集に関する研究を行うことも決定しております。当社は世間では一般の消費者向けにDTC検査と呼ばれる遺伝子検査サービスで知られております。DTCマーケットにおいてはグラフにございますとおり大きなシェアを有しており、その中でPCR、マイクロアレイ、WGSによるサービスを提供しております。
DTC検査サービスのキットとしては、例えばこのようなものがございます。当社として特に重視している事項としては、個人情報保護法、3省指針、経済産業省の遺伝子ガイドラインへの準拠、一般社団法人遺伝情報取扱協会、AGIとも呼ばれております業界団体の認証取得がございます。一部の検査サービスキットは医療機器に該当しますので、医療機器法の必要な許認可の下で取扱いをしております。検査サービス利用申込みに際しては同意書とオプトインを取得しております。また遺伝情報は究極の個人情報でもあることから、当社でも特に取扱いには万全を期しており、プライバシーマークを取得しております。倫理面に関しては倫理審査委員会を設置し、必要事項について審議、承認を得ております。
一般消費者向けのDTC検査サービスは、皆様も御存じのとおり医療目的・診断目的ではございません。検査報告の内容は予防等のためのリスク判定の内容となっております。当社で広く販売している商品はマイクロアレイとPCRの技術によるものが中心で、GWASによる検査項目となります。一方で、WGSを用いて行っている検査サービスも提供しております。内容的にはACMGパネルとClinVarの項目を内容としております。こちらのサービスは結果閲覧に際して、事前に当社の提携クリニックの医療従事者によるコンサルテーションを実施した後で初めて結果を開示することとしており、利用者に不要な不安、誤解が生じないような仕組みになっております。
当社の遺伝子検査は社内の遺伝学研究所で実施しておりますが、これは登録衛生検査所となっており、遺伝子関連・染色体検査を取扱項目としております。衛生検査所としての精度管理には万全を期し、社内でSOPを定め、それ以外にも医療機器の取扱等に関する登録・許認可等も各種取得しております。また検査所の品質を担保する意味合いから、米国のCAP認証も取得しております。当社はまた医療機関・研究機関向けのサービスも提供しております。提供内容は記載のとおりです。
当社では検査サービス以外にも生成AIを活用した遺伝子データのプラットフォームサービスを取り扱っております。当社が予測アルゴリズムと可視化ツールによって研究者の皆様方のR&D活動を効率化するための専門家向けのプラットフォームとなっております。
イメージをつかんでいただけるような動画がございますので、少し御覧いただきたいと思います。このサービスは生成AIを用いてオープンソースデータベースから抽出された3400万件を超える遺伝子バリアント、たんぱく質、化合物。すみません、どなたかミュートにしていただいたほうが。
○中釜座長
すみません、今、ミュートの操作をしています。少しお待ちください。
○山田構成員
このサービスは生成AIを用いてオープンソースデータベースから抽出された3400万件を超える遺伝子バリアント、たんぱく質、化合物及びその他の関連文献データと当社のデータセットを融合したもので、開発者の方々のリサーチを効率化できるツールとなっております。
また2つ目の動画なのですけれども、こちらはACMGのパネルの中で遺伝子と疾患の関連が瞬時に視覚化されて関連するデータベースにアクセスできるものとなっております。潜在的な関連を検索するために遺伝子を追加することも可能です。
次に、当社のWGS検査サービスの結果の一部を紹介いたしたいと思います。こちらはACMGパネルに掲載されている疾患についての保因者数となります。なお、n=409で母数が少ないですし、内容的にはあくまでも当社の集計による暫定的なものとなります。
こちらはClinVarの該当者数の表となります。同じくあくまでも現時点での暫定的な集計となります。複数の因子を保有しておられる方もいらっしゃることがお分かりいただけると思います。念のため付言しますと、当社の検査サービスはDTC一般消費者向けのサービスですので、サービスを受けられている方々はこれらの因子を持たれていても、必ずしも発症しているとは限らない方ということになります。
皆様も御存じのとおりWGSの場合は検査結果の膨大なデータをいかに迅速・安全、安価に保管するかという点が大きな課題となっております。特に赤枠で囲われたところは今後データ量が増えた場合に大きな課題になると認識しております。当社としてはそれらのニーズにもお応えできるような体制を取っております。
当社はCelebration of Humanityを理念としております。当社は検査を受けられる方々の権利、プライバシー、いかなる形でも差別を受けないということと倫理を重視しております。一般の皆様方へサービスを提供しつつ、その一方で研究機関・医療機関の皆様とも協力させていただき、皆様の健康、医療、科学の発展に貢献してまいりたいと思います。以上でございます。ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございます。何か御質問はございますか。1点私から質問ですけれども、全ゲノムシーケンスはターゲットした領域のシーケンスをされているのですか、それとも全ゲノムが含まれているのですか。
○山田構成員
全ゲノム行っております。WGSでございます。
○中釜座長
了解です。ほかによろしいでしょうか。
○小崎構成員
お願いします。質問があります。慶應大学の小崎ですが、3枚目くらいのスライドでWGC検査サービス、ClinVarパネル、希少疾患19.32%と書いてあるのですが、どういう意味か教えていただけますか。
○山田構成員
これは当社のサービスを受けられて、409のnなのですけれども、その中で何らかのClinVarの希少疾患の因子を持たれている方がこれだけおられたということを意味しております。一番下の行です。Rare diseaseに該当するもの。ですので1項目ではなくて、ClinVarに入っている全部の希少疾患に分類されているものの合計数ということになります。
○中釜座長
よろしいでしょうか、小崎構成員。
○小崎構成員
すみません、聞こえますか。因子を持っているという言葉の意味が科学的な観点からはっきり分からないのですが、分かりやすく説明していただけますか。
○山田構成員
ClinVarで特定されているものについて持っているということで、我々としてはそこを解析の結果、参照しているものを集計したことになります。
○小崎構成員
持っているというのは、臨床的に病的な意味があるということでしょうか。
○山田構成員
それ以上のことを私のところから申し上げられないのですけれども、これはあくまでもDTC検査として行っているものですので、臨床的に診断をしているものではございません。
○小崎構成員
十分に理解できないことが理解できました。ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。ほかに御質問、横野構成員、お願いいたします。
○横野構成員
資料の6ページに全ゲノムシークエンス検査の御紹介がありました。その最後のところで、結果一覧に対し、結果コンサルテーションを実施というような御紹介がありましたけれども、これは遺伝カウンセリングとは違うものということなのでしょうか。
○山田構成員
結果の説明をする前に医療従事者の方からこういうものが重要であると申し上げているということですので、結果を御覧いただく前に専門家の観点から説明しているということになります。
○横野構成員
ありがとうございます。了解しました。
○中釜座長
深田構成員、お願いいたします。
○深田構成員
ありがとうございます。今、山田構成員の御発表で、一番最初のDTC、医療以外の目的で行われるものという御発言がありましたが、内容を伺っておりますと、医療なのか、医療以外なのかが非常にファジーなところなのかなと思っております。受けられる方に最初にいろいろな説明ですとか工夫なんかが必要なのではないかと感じているのですが、現場ではどのような対応でこれは医療ではないというようなことをされていらっしゃるのか、もしやっていらっしゃれば教えていただければと思います。
○山田構成員
DTCサービスを御利用いただく前にきちんとその辺りは説明していることと、今日のお話の前半のほうで申し上げましたとおり私どもはそのサービスではDTCサービスであることをはっきりしておりまして、診断目的ではない、あくまでも予防目的になるようなリスク判断のような情報を基本的に提供しているということになります。その辺りは明確にしておりますし、DTCの業界団体もございますけれども、そういったものの準則に従って提供しているということです。
○深田構成員
承知しました。ありがとうございます。
○中釜座長
ほかに御質問はございますか。よろしいでしょうか。では、続きまして資料8、横野構成員、御発表をお願いいたします。
○横野構成員
画面をお願いいたします。今日私からはゲノム情報の保護と利活用というところで、特に差別の防止等について課題を共有させていただければと思います。以下ではゲノム情報、遺伝情報という表現が出てきますが、これらは今回は厳密には区別せず、参照元の資料の表現に基本的には従っています。
ゲノム医療推進法では3条の基本理念及び16条、17条にゲノム情報の保護と差別の防止等に関する規定が置かれています。
ゲノム情報による差別が許されるべきでないことについては、1990年代以降様々な議論がなされてきました。スライドでは幾つかの国際的な文書を紹介していますが、ここではユネスコによる2つの宣言のみを取り上げたいと思います。1997年の「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」では「何人も、遺伝的特徴に基づいて、人権、基本的自由及び人間の尊厳を侵害する意図又は効果をもつ差別を受けることがあってはならない」旨示されています。また2003年の「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」においても「ヒト遺伝情報等は、差別する目的または烙印を押すことにつながる目的のために用いられないことを保証するあらゆる能力がなされるべきである」旨が述べられています。
国内ではこの問題が20年以上前から議論されてきました。2000年に策定された「ヒトゲノム研究に関する基本原則」では差別の禁止に関する項目が盛り込まれています。そこでは「提供者の遺伝情報は、人としての多様性を示す基盤であり、提供者は、研究の結果明らかになった自己の遺伝情報が示す遺伝的特徴を理由にして差別されてはならない」とされ、解説においては「将来においても新しい法令の制定の可能性も含めて、適切な制度的措置をとる必要がある」と課題が指摘されてきました。このようにゲノム情報を研究や医療のために取得・活用するに当たり、差別の防止が必須であることは国内においても繰り返し確認されてきました。
またこのワーキンググループの初回にも詳細が紹介された「全ゲノム解析等実行計画」においても、2019年に第1版が出た時点から不適切な取扱い、不利益が生じないよう社会環境を整備することが必要であると述べられています。このようにゲノム医療の推進に当たり、ゲノム研究・ゲノム医療を通じてゲノム情報を取得することが社会における差別や分断を助長したり、新たに生み出すことにつながらないような社会環境の整備が必要であるということは共通の認識になっているといえ、今回ゲノム医療法に基づく具体的な取組を推進していくことが重要な課題となっています。
差別や不利益の防止が重要であるとされてきたのは、差別や不利益への懸念から医療や研究においてゲノム情報が取得・利用されることに対して不安や慎重な姿勢が存在するからです。差別や不利益の実態そのものを把握することは容易ではありませんが、これまでの研究により差別に対する懸念や不安が社会に存在することが確認されてきました。
こちらは東京大学の武藤香織先生らによって行われた日本での調査の結果を示したものです。この調査では、遺伝情報に基づく不利益の経験が回答者の3%ほどで認められたことが示されました。また複数の遺伝性疾患の患者団体で、発症前診断や確定診断のための検査前に必要な保険への加入を促す指導が行われていることも把握されています。一旦戻っていただけますでしょうか。
このように日本でも諸外国においても差別や不利益が懸念される対象は、雇用や保険といった分野に加え、私的な人間関係における差別も同様に挙げられています。また差別禁止の法律や政策が導入されている場合でも、それだけで懸念や不安を完全に払拭できるわけではないとの指摘がなされており、ゲノム医療法が目的とする良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするためには、情報漏洩時の対応等も含め、ゲノム情報の保護の強化やリテラシーの向上などを含めた多様な施策の組合せが必要であると考えられます。
国内では現時点では具体的な法律による規制があるわけではありません。ゲノム情報による差別の禁止が法制化されている国での制度について見ていくと、主に雇用と保険の分野に関する規制が導入されています。また規制の内容としては、雇用と保険いずれの領域においても事業者・雇用側や保険会社が遺伝情報を取得することに対する制限に加え、事業者・雇用側や保険会社が遺伝情報に基づいて個人に対する不利な取扱いをすることを制限しています。前者すなわち情報の取得はいわゆる入口の規制、後者すなわち遺伝情報に基づく不利益の取扱いの規制はいわゆる出口規制といえ、ゲノム情報の保護については2000年前後からこの2つのアプローチによる規制が主流となってきました。
近年ゲノム解析技術の発達やゲノム医療の実装の進展に伴い、多くの国で、特に保険分野での規制の導入・強化が進んでいます。例えばカナダでは2017年に連邦法である遺伝情報差別禁止法が導入されました。この法律では、違反に対して最大10万ドルの罰金の規定が設けられています。また下から2番目になりますが、オーストラリアでは従来法律による規制がないことが問題視されてきましたが、2019年に連邦議会の勧告を受けて、保険分野で業界団体に自主規制の形で遺伝情報の取扱いを制限するモラトリアムが導入されました。このように近年多くの国でこの分野の規制の導入・強化の動きが進んでいます。
日本においては、かつて存在した10学会のガイドラインにおいて雇用者、保険会社などが検査結果にアクセスするようなことがあってはならないという方針が示されていました。このガイドラインはこの後御紹介する日本医学会のガイドラインの改訂に伴って現在は存在しませんが、この立場は現在のガイドラインにも受け継がれています。また個人情報保護法のガイナンスでは、保険会社から紹介があった場合に、遺伝情報に限りませんが、健康状態等についての情報を患者の同意を得ずに回答してはならない旨が示されています。
日本医学会のガイドラインは2022年3月に最新の改訂が行われました。この際にはゲノム情報を共有することの重要性が改めて確認されています。それに伴ってゲノム情報による社会的不利益や差別の防止への配慮が求められることについても併せて述べられました。このことに関連して共同声明がなされたこと、またそれに対して生命保険協会から通知文書が公表されたことについては周知のとおりと思われます。
日本ではゲノム情報の保護に特化した法律はありませんが、医療従事者の守秘義務、個人情報保護法、また研究に関しては国の倫理指針によって個人の情報に関するルールが定められており、その中で遺伝情報、ゲノム情報も保護されることになっています。ただし、ゲノム情報に関する特別な規定は存在しません。
○中釜座長
そろそろ話をまとめていただけると助かります。
○横野構成員
すみません、最後に日本でのゲノム情報の保護と利活用について考えるのに参考となる調査について御紹介したいと思います。これは日本を含む22か国で約3万7000人の一般市民を対象として行われた調査です。この調査では、ゲノムデータの利活用においてはゲノムデータ等を収集する機関や個人に対する信頼が重要であるという観点から、信頼の醸成に関する調査が行われました。
調査全体では、10の要素の中でデータを利活用することによって誰が利益を得るかについての透明性のある情報の提供が重視されていました。その中で日本において特異な調査結果が1つございます。日本では信頼を醸成するための要素として最も重視されたのは、データが不適正に利用された場合にどのような制裁があり得るのかということに関する情報でした。これが最も重視されているのは22か国中日本のみで、非常に特異な結果であると言うことができます。したがって、不適正に利用された場合の制裁ですとか補償といったことを考慮することがゲノム情報の利活用に関わる制度を考える上で重要であると思われます。
最後、まとめです。最後の2つのポイントのみを御紹介したいと思います。ゲノム情報による不当な差別や不利益は許されないという理念は法律の中にも書き込まれています。ただ、その理念だけではなく、ゲノム情報の保護や差別の防止に資する多様な観点からの施策が必要になってくると思われます。また施策の意義や効果を定期的にレビューして、必要なアップデートを図ることも重要であり、そのためにもステークホルダーの協議の場が設けられ、20条の中にも規定されているようにそのような場を通してオープンな議論に基づく検討が行われることが望ましいと考えます。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。最後から2枚目の18ページの視聴が少し声が途切れたのですが、これは信頼のためにはデータの共有の透明化が重要だということでよろしいですか。何か追加で御発言があれば。
○横野構成員
大丈夫です。
○中釜座長
ありがとうございます。それでは、今の横野構成員の御発表に関して何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。なければ、続きまして資料9、吉田構成員、御発表をお願いいたします。
○吉田構成員
よろしくお願いいたします。資料を共有させていただきます。
○中釜座長
お願いいたします。
○中釜座長
大丈夫です。
○吉田構成員
よろしくお願いいたします。東京医科歯科大学の吉田です。私は弊学で生命倫理研究センターでの研究倫理・生命倫理関連支援に加えて病院において遺伝子診療科科長としてゲノム医療にも携わっています。本日はその立場から論点の共有をさせていただきます。
全ゲノム解析等実行計画が2年前に策定され、計画が進んでいます。この計画の目的がゲノム医療の社会実装ということを考えると、今回のゲノム医療推進法およびその基本計画は非常に重要だと考えます。私からは1)ゲノム医療の標榜診療科の制定、2)ゲノム医療関連人材の育成、3)患者・市民のゲノム医療・研究への参画という3つの論点についてお話をさせていただきたいと思います。
まずゲノム医療の標榜診療科の制定についてですが、事例を2つ紹介します。一般にゲノム医療、特に難病希少疾患ではそもそもの診断確定に大変時間がかかるため、英語ではdiagnostic odyssey(診断に至る長い道のり)と表現されます。
事例1です。手足の先が痛いという6歳の男の子です。両親と近くの小児科を受診しても特に異常はないと帰されてしまうが、症状は良くならず、運動もできず、不登校になり、さらに大きな病院を受診するも遺伝子診療科はなく異常なしと言われ、母親は途方にくれます。最終的には同じような症状の子供が治療を受けているといううわさから遺伝子診療科のある病院にたどり着いて、ファブリー病と診断されました。またこの母親も全く無症状でしたが、ファブリー病の健診をうけていたため、心肥大、腎機能障害などの早期診断ができました。事例2は、父親が大腸がんになった38歳の女性です。この女性の父親は遺伝子検査でがん遺伝子に変化があったと知らされましたが、本人は健診でも異常がなく、父親の病院でも遺伝子検査は受けられず、途方にくれていました。ようやく友人からある病院で遺伝子検査が受けられるという情報を聞いて、診察・検査を受けて、リンチ症候群という遺伝性腫瘍の遺伝子変化があることが分かりました。当時は無症状でしたが、消化器、婦人科、泌尿器などのサーベイランス受診を行って、1年後には早期大腸がんが発見され、内視鏡手術で治癒しました。
この2例はどこで遺伝子検査が受けられるかが分からず、大変苦労をしましたが、ゲノム医療を標榜診療科にすることでこのような事例は防げるのではないでしょうか。現在、遺伝子治療は標榜診療科でなく、どの病院に遺伝専門医がいるかが一般のかたには分からない状態です。現在、保険診療で可能な遺伝子検査は非常に増えており、その診療体制を整える必要があります。是非、遺伝子診療科を「見える化」しなくてはいけません。
2つ目、ゲノム医療関連人材の育成です。医師としての臨床遺伝専門医あるいは非医師としての認定遺伝カウンセラーの制度がありますが、人材は大変不足しています。
現在、1,894名の臨床遺伝専門医が全国にいますが、10人未満の都府県もあって、総医師数31万人のわずか0.53%にすぎません。さらに遺伝カウンセラーも全国で389名ということで、全く遺伝カウンセラーが存在しない県が5つ、1人のみの県が9つで、これも全く足りていません。
3点目は、患者・市民のゲノム医療研究への参画が求められているということです。全ゲノム解析等実行計画の内容や研究結果を患者・市民の皆さんに適切に還元するためには、ゲノム研究・医療の意味を国民一人一人が自分事として向き合っていただく必要があります。現在、私もAMEDの患者市民参画(PPI)研究班の中で患者・市民の方々を交えたラウンドテーブルイベントを通して理解を広げる取り組みを行っています。これについても、今回の基本計画の中でぜひ盛り込んでいただきたいと思います。これらの3点をしっかり盛り込むことで、ゲノム医療推進法がゲノム研究者と患者・市民の間の架け橋になってほしいと思います。御清聴ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。ただいまの吉田構成員の御発表に何か御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、お1人大沢構成員の御発表が途中で切れていたので、大沢構成員、私の声は聞こえていますでしょうか。
○大沢構成員
聞こえています。
○中釜座長
それでは、申し訳ないですが、4分程度で残りの話をまとめていただけると助かります。お願いいたします。
○大沢構成員
分かりました。では、2個目の事例のところから。中学生のときにお母さんが乳がんで亡くなった女の子で、大学生になったときに相談を受けました。「おばあさんも乳がんになって、遺伝子検査をしたら遺伝が分かったとだけ言われた。けれども詳しいことを話してくれない、点滴の抗がん剤が終わった後、何か薬も飲み始めたと。自分もなるのではないか、お母さんも乳がんで死んでいるし」という相談でした。おばあさんがかかっている病院に相談も勧めたのですけれども、おばあさんがそれをシャットダウンしてできないということで、うちの病院で普通に乳がん検診をこの間受けました。遺伝子検査をした元の病院が家族に対する情報提供をあまりしないことも聞くので、そこら辺も変えていったほうがいいのではないかなと思った事例でした。
なのでやはりきちんと、遺伝カウンセラーがいらっしゃって遺伝子診療科があるところと、遺伝子検査する病院はしっかり連携をしていかなければいけないと思うし、その体制がないと本当は検査できないはずなのですけれども、案外となし崩しになっているような印象もあります。大事なので、ちゃんとやっていってもらいたいなと思っています。
あと患者さんから聞かれるのは、がんもそうなのですけれども、遺伝も子供にどう話をしたらということです。特にお父さんやお母さんが遺伝性のがんで亡くなっている場合にお子さんもおびえてしまうこともあります。あと遺伝の種類によっては、HBOCと異なりもっと若い、子供のときから検査したほうがいい病気もありますし、そこら辺もみんなで学んでいけたらいいかなと思います。お子さんにどういうふうにお話しするかということについてや、検査を勧める年齢など。ただ、一貫してどういう状況でも同じなのは、やはり正直なコミュニケーション、あと家族の中での秘密やタブーをなくすことで、正しい情報を得ることによって不安も軽減できるので、家族間のコミュニケーションがスムーズになるようなお手伝いをみんなでできたらいいかと思っています。
こちらはリー・フラウメニ症候群のお子さんたち12名に電話インタビューした結果の論文です。周りはいろいろ心配するけれども、お子さんとしては検査をしっかり情報提供してほしいし、受けたいという結果になっていました。少ない人数の調査ではありますが、なかなか子供の声がなかったので、この論文は大事かと思います。
どういうふうに子供に伝えたりサポートしたらというところで悩んでいる場合は、Hope Treeから冊子を無料でお送りしていますので、ご活用ください。以上です。すみませんでした。御清聴ありがとうございます。
○中釜座長
ありがとうございました。今の大沢構成員の御発表に関して何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、以上で本日9名の構成員の方から御発表いただきました。生命倫理あるいはプライバシーの問題、ゲノム情報の管理の問題、差別、ゲノム診療科の標榜であるとか、さらには、国民の信頼を得てあるいは同時にリテラシーを深めながら進めていくという様々な視点からの御発表がありました。
通信等の不具合で残された時間が15分ほどになったのですが、本当に申し訳ありません。ここで全体の御発表を通じて何か御質問、御意見のある方は挙手をお願いいたします。それでは、天野構成員、お願いいたします。
○天野構成員
ありがとうございました。私から2点改めて意見を申し上げます。1点目ですが、これも改めて申し上げますが、労働分野については厚労省、保険分野については金融庁、DTCについては経産省の所管になるかと思いますが、やはりFAQの作成あるいはガイドラインの作成や改訂を検討いただきたいと思います。例えば労働分野については、遺伝情報は社会的差別の原因となるおそれがある事項に含まれるということですが、現実には就職の面談時に家族遺伝子異常を持った人はいないかを尋ねられたという事例があると申し上げました。あと保険分野についても、生命保険の引受け・支払いについては遺伝学的検査・結果の収集は行っていないと公表していただいていますが、現実には家族が遺伝性がんであることを伝えたら保険加入できないと担当者から伝えられたという事例があると申し上げました。またDTCについても経産省によって既にガイドラインをつくっていただいていますが、遺伝子解析サービスが企業の健康保険組合向けに提供されている事例、これは被保険者の健康行動への変容などを目的として提供されているとはされていますが、一方で現状一部の健康保険組合での事例ですが、がんに罹患して高額な治療を受けている被保険者に対して会社を退職するよう促しているような組合も残念ながらあります。そういった健康保険組合において遺伝子解析サービスは本来の目的とは異なる目的、すなわちリスクが高い被保険者を特定するような目的で利用される懸念もあり得ると考えます。
以上の事例を考えますと、やはり現場での実務あるいは担当者の周知に課題があると考えますので、具体的なFAQの作成あるいはガイドラインの作成などを検討いただきたいと思いますし、法務省においてもそもそも遺伝に起因する差別や偏見をなくすべきという理念を明示いただきたいと考えております。
2点目、啓発の重要性が複数の構成員から指摘されていまして、一般に今、お話を伺っていくに患者さんや一般の市民が想定されているように思いますが、恐れ入りますが、私からは啓発の対象に医療者も加えていただきたいと思っています。もちろん専門家ですので一般市民よりは詳しいことは想定されていますが、現状では医療者の方の中にもゲノム医療や遺伝情報の取扱いについての知識が不十分であるがゆえに不適切な取扱いが行われている事例もありますし、また吉田構成員がお話しされたようにゲノム医療診療科の標榜によって専門家の可視化が行われるということも併せて重要だと思いますので、御検討いただきたいと考えています。私からは以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。重要なポイントを整理していただきました。ほかに御発言、御意見はございますでしょうか。深田構成員、お願いいたします。
○深田構成員
ありがとうございます。今日は貴重なお話を聞けてとても勉強になりました。私から3点ほどコメントをさせていただきます。まず1番目、天野構成員の御発表になりますが、遺伝子パネル検査の実施のタイミングですとか治療への出口戦略と、とても重要なお話をしていただきました。既存の取組でも現在検討が行われていると承知しておりますが、さらにゲノム基本計画に加えることによってゲノム医療の恩恵を患者さんに届けるための取組がより加速化されると期待しておりますので、ぜひお願いしたいと思っております。
2つ目になりますが、大沢構成員の御発表でBRACAnalysisの検査をされて、適切に遺伝カウンセリングに連携している施設へ紹介されていると伺いました。我々が実際の診療をしておりましても、BRACAnalysisの検査をされて何もカウンセリングをされずにそのままになっている患者さんが、そんなに多くはないのですがぽつぽつ散見してびっくりすることもございます。患者さんにカウンセリングの機会すら提供されていないことがまだやはりありますので、天野構成員の御発表がありましたように医療者、また患者さんのリテラシーの向上は必須ではないかと考えております。
最後になりますが3つ目、神里構成員から御発表いただきました継続的な調査・研究の取組が非常に重要だと感じております。全ゲノム解析が今、AMEDで研究が進んでおりますけれども、これまで以上に様々な情報が明らかになってまいります。例えばがんの領域で我々はやっておりますが、がんの患者さんでがん以外の疾患の遺伝子の異常が見つかることも現場で遭遇しておりますので、この辺りゲノム医療の研究の取組が格段に進むことが予想されますので、それによってどう変わってくるのかという継続的な調査が非常に重要だと思っています。以上でございます。
○中釜座長
重要な御指摘をありがとうございます。ほかに御発言、御意見はございますか。それでは、横野構成員、お願いいたします。
○横野構成員
すみません、山田構成員に質問させていただきたいのですけれども、今回ゲノム医療推進法の中で医療以外の目的で行われる解析に関する規定が置かれており、その中で科学的知見に基づく質の確保、それから相談支援の適切な実施あるいはゲノム情報の適切な取扱い及び差別等への適切な対応を確保するといったことが規定されていますけれども、これを受けて何か新たに取組をされていることですとか今後検討されていること等はございますでしょうか。
○山田構成員
その観点から申しますと、ほかの構成員の方々からもお話がありましたとおりやはり啓発ですかね。受けられる方もですし、検査を実施する我々自身あるいはそれに関連する御説明等をされる医療従事者の方、こういった方々の啓発が重要かなと思いますし、私ども業界としてはやはり精度管理ですとかプライバシーの管理、それを極めて重要にしたいということです。
あと当社の社是として申し上げたのですけれども、差別のない世界、これは遺伝学とか遺伝子に携わる者としては当然のことではあるのですけれども、それを最も重要にするということが一番大事かなと思っています。ですので我々はDTCの会社としてもやっておりますが、その中では業界の方ともそのような話をさせていただいていますし、当然こういった場とかほかの場でも医療機関の方とお話しさせていただくときはそういった話をさせていただいております。そういった中から貢献していきたいかなと考えております。
○横野構成員
ありがとうございます。またぜひ今後の業界全体を含めた取組等を共有していただければと思います。
○山田構成員
ありがとうございます。
○中釜座長
今の点に関して私から1点質問がありますが、精度管理という御説明ですけれども、それは解析の精度管理とともに解釈の精度管理など、幾つかあると思うので、その辺りはどういうふうに対応されているのでしょうか。
○山田構成員
解析の精度管理は今日の私の話の中でも申し上げましたとおり衛生検査所で行っているということもございますけれども、当社自身で厳しいSOPを定めて、それに準拠して行っているということがございます。認証があるようなものについては適宜認証を取得しております。解釈に関しましては、結果報告書の中身は所定のものを当社の中の研究所等も見た上できちんとしたものを作成しておりますし、WGSのものについては先ほど申し上げましたように医療従事者の方、提携医療機関にいる専門家の方にそれを説明していただいているというような形になっております。
○中釜座長
ありがとうございます。それでは、水澤構成員、お願いいたします。
○水澤構成員
聞こえますでしょうか。最後の吉田先生の御発表のところで、遺伝の専門医とか施設、それからカウンセラーの方々の数が非常に少ないということが出ていたと思うのですけれども、大体どれくらいのところが望ましい数になりますでしょうか。もしそういうデータがあるようであれば教えていただければと思います。
○中釜座長
お願いいたします。
○吉田構成員
水澤先生、ご質問をありがとうございます。最適な数は示されていませんが、例えば遺伝専門医が医師全体の医療者の中の1%未満というのは少ない数だと考えます。今後のゲノム医療の進展を考えると出会って欲しいと思います。
○水澤構成員
ありがとうございます。臨床遺伝専門医のほうはかなり充足しているのだけれども、カウンセラーの方が少ないと聞いたことあるのですけれども、そういった専門の医療者の中での差もかなりあるのでしょうか。
○吉田構成員
確かに認定遺伝カウンセラーは全国的に非常に少なく、全く遺伝カウンセラーが存在しない県や1名しかいない県ではゲノム医療の均てん化が大きく阻まれています。遺伝カウンセラーの育成も重要な課題と考えています。その点でもゲノム医療が可視化されていないために人材育成の阻害要因ともなっており、今後は患者さん・市民の方に見える形でゲノム医療を進めることで人材も育ってくるのではないかと思っております。
○水澤構成員
ありがとうございました。
○中釜座長
それでは、最後小崎構成員、お願いいたします。
○小崎構成員
吉田先生のお話に続けてなのですが、今、臨床遺伝専門医が1,700名おりますが、専任、つまり週5日間その仕事をしている者は2けたしかおりません。したがいまして、数を増やすことも重要なのですが、そういったポジションを確保することが非常に重要だと考えておりまして、ぜひ大学病院、その他大きな病院の体系の中でお考えいただくべき内容かと思ったので補足させていただきました。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。よろしいでしょうか。そろそろ時間になりましたので、まだまだ御意見があると思いますが、本日の検討に関しては以上とさせていただきます。では、事務局にお回しいたします。
○中田研究開発政策課長
事務局でございます。本日は機材の不具合によりまして皆様に御迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
次回の開催につきましては、具体的な議事運営につきまして座長と御相談させていただきまして、後ほど御連絡させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
○中釜座長
それでは、本日も構成員の先生方にはスムーズな議事進行に御協力いただき、また通信の不具合にもかかわらず御協力いただきありがとうございました。では、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。