2024年3月22日 第100回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和6年3月22日 14時30分~16時30分

場所

全国都市会館 第1会議室

出席者

(委員)
 翁部会長、野呂部会長代理、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、山口委員

議題

  1. (1)公的年金財政状況報告-令和4年度-について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○村田首席年金数理官 定刻より少し早いですけれども、皆さんおそろいですので、ただいまより、第100回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料は「公的年金財政状況報告-令和4(2022)年度-(案)」
でございます。
 資料は5つの資料に分かれておりまして、
資料1は「表紙、委員名簿、目次、ポイント、概要」
資料2は「第1章」
資料3は「第2章」
資料4は「第3章」
資料5は「付属資料」
でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は、枇杷委員から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 それでは、以後の進行につきましては、翁部会長にお願いいたします。
 
○翁部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、公的年金財政状況報告-令和4年度-について審議を行いたいと思います。
 カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。
 
(カメラ退出)
 
○翁部会長 令和4年度の報告書の作成に当たっては、委員の皆様に御協力いただき、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。
 それでは、事務局から本年度の報告案について御説明をお願いいたします。
 
○村田首席年金数理官 委員の皆様には、作業班で報告書案の作成に御尽力いただきまして、ありがとうございました。
 作成いただいた令和4年度の公的年金財政状況報告の案につきまして、事務局より御説明させていただきます。
 報告書の案は、資料1から5まで5つに分かれておりまして、かなりのボリュームとなっておりますので、本日は、資料1にありますポイントと概要を中心に御説明しまして、追加で概要に取り上げられていない事項を幾つか御紹介するという形にさせていただきたいと思います。
 それでは、資料1を御覧ください。
 最初に表紙、次に委員名簿がありまして、続いて目次が6ページほどございます。
その後に、ページ番号で1ページと2ページになりますけれども、令和4年度の公的年金財政状況報告のポイントがございます。こちらのポイントは、年金数理部会として、この報告で一番伝えたいことをまとめたものになります。
 中身に入りますが、まず、上の枠囲みの中ですけれども、公的年金財政状況報告についてですが、こちらは、年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況につきまして、各制度・各実施機関からの報告に基づいて、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果をとりまとめたものでございます。
この報告では、実績の動向を明らかにしたり、財政検証との比較ですとか、財政状況の評価といったことを行っておりますほか、共済組合等も含めた厚生年金全体での財政状況もとりまとめております。
 さて、ポイントは2つございまして、1つ目は、公的年金の収支状況でございます。
下の図表、令和4年度の単年度収支状況を見ていただきたいと思います。こちらは、年金数理部会が、公的年金の財政状況を制度横断的に比較・分析しているものでございます。
表側に収支項目が並んでいますけれども、ここでは、賦課方式を基本とする財政運営が行われていることを踏まえまして、財政収支状況を「運用損益分を除いた単年度収支残」と「運用損益」に分けて分析しております。
また、表頭には、厚生年金計、国民年金勘定、基礎年金勘定、公的年金制度全体とありますけれども、この一番左の厚生年金計は、共済組合等を含めた厚生年金全体の数値になっています。
 この厚生年金計につきましては、平成27年10月に被用者年金が一元化されておりますけれども、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合等を実施機関として活用することになっている関係で、厚生年金の財政は、「厚生年金勘定」と厚生年金の実施機関たる共済組合等の「厚生年金保険経理」に分かれて管理されておりまして、厚生年金拠出金、厚生年金交付金をやりとりすることで、財政的に一元化されております。
決算についても、各々に分かれて実施されておりますので、ここでは、報告いただいた資料を基に、厚生年金勘定と国共済、地共済、私学共済の厚生年金保険経理を合わせた厚生年金全体の財政収支状況をとりまとめております。
 その際、単純に各実施機関の決算の数値を合計するわけではなく、厚生年金全体としての財政収支状況を捉えるために、例えば、厚生年金拠出金、厚生年金交付金といった厚生年金の実施機関の間でのやりとりにつきましては、収入・支出の両面から除いて整理をしております。
 また、この厚生年金計と隣の国民年金勘定、基礎年金勘定を合わせたものが、一番右の欄の公的年金制度全体の財政収支状況になります。ここでも、公的年金制度内のやりとり、図表中でいえば、1の基礎年金交付金、2の基礎年金拠出金になりますが、こちらは収入・支出に同じ額が計上されて相殺されることになりますので、こうした公的年金の制度内でのやりとりは、収入・支出の両面から除いております。
 このように、厚生年金全体や公的年金制度全体について、財政収支状況を明らかにすることも、この年金数理部会の大きな役割の一つであると考えております。
 さて、令和4年度の公的年金制度全体の単年度収支状況についてみていきますと、図表の一番右の欄になりますが、収入面では、保険料収入が40.7兆円、国庫・公経済負担が13.4兆円などとなっておりまして、運用損益分を除いた単年度の収入総額は54.6兆円となっています。一方、支出面をみますと、大宗を占める給付費が53.4兆円でありまして、支出総額は53.7兆円となっています。この結果、運用損益分を除いた単年度収支残は0.9兆円のプラスでございました。
また、運用損益は、時価ベースで3.5兆円のプラスとなっています。
これらの結果、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は、前年度末に比べて4.4兆円の増加となっておりまして、250.5兆円となりました。
 続きまして、2ページを御覧ください。こちらはポイントの2つ目ということで、公的年金の財政状況の評価でございます。ここが、今回の財政状況報告における最も重要な結論でございます。
この報告では、令和4年度までの実績と令和元年財政検証の前提や将来見通しを比較して分析を行っておりますけれども、公的年金の財政状況の評価に当たりましては、そういった比較だけではなく、長期的な財政の均衡の観点から評価をしております。
評価につきましては、水色の枠囲みの中に記載しております。各々のバックデータにつきましては、後ほど概要の御説明の中で触れさせていただきますので、ここでは評価の結果を述べさせていただきたいと思います。
 枠囲みの中でございますけれども、まず、国民年金第1号被保険者数は財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者数は上回る状況が続いていることが確認されました。また、令和2年度、3年度を中心に高い運用収益となった結果、積立金の実績が将来見通しを上回っていることも確認されました。一方で、令和元年以降の合計特殊出生率ですが、こちらは平成29年人口推計における出生中位と出生低位の仮定値の間に位置しまして、出生中位の仮定値との乖離は更に拡大していることが確認されています。これらの将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなるということです。年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであると。こちらが今回の報告における公的年金の財政状況の評価となります。
 一番下のところにはてんびんの絵がございまして、こちらは、長期的な財政の均衡について理解する際の助けとなるように、イメージ図を掲載しております。
 ポイントについては以上になります。
 次に、3ページ以降にございます公的年金財政状況報告の概要について御説明させていただきます。
 4ページ、項番でいうと0番のところです。こちらのスライドを御覧ください。報告書の構成ですけれども、第1章、第2章、第3章、付属資料となっています。第1章では、報告書全体を理解する上で必要となる基本的な事項を中心に、公的年金の概要を説明しております。主として公的年金財政の仕組みなどについて説明していますけれども、今年度の報告では、トピックとして、令和4年度に施行された改正事項についても説明しております。第2章では、被保険者、受給権者、財政収支、財政指標の現状と推移について、実績の確認や分析を行っています。第3章では、財政検証結果との比較ということで、実績と令和元年財政検証の将来見通しとの比較、積立金の乖離の分析、財政状況の評価といったことをしています。この概要では、報告の第2章と第3章から重要だと思われるところを抜粋して掲載しております。
 次に、5ページを御覧ください。ここからの4ページでは、報告を読む際の基本的な情報として、項番aからdの資料を掲載しております。まず、こちらは年金数理部会についてまとめたものでございます。図の下のほうにありますように、年金数理部会のミッションとしましては、各制度において実施される財政検証についてピアレビューをするということ、それから、右側になりますが、毎年度の決算について報告をいただいて、それを審議しまして、公的年金財政状況報告をとりまとめるといったことになります。今回の報告は、この公的年金財政状況報告の令和4年度版という位置づけになります。
 次に、6ページの項番bの資料を御覧ください。こちらは年金数理部会の役割について図示したものでございます。上側に公的年金各制度(・実施機関)が行っていること、下側に年金数理部会が行うことを書いてございます。公的年金各制度におきましては、少なくとも5年ごとに財政検証が行われ、その間には毎年度、決算が行われるわけですけれども、年金数理部会では、この財政検証の後で財政検証のピアレビューを実施して、その中で財政検証の結果や手法の検証ですとか、今後の財政検証への提言といったことを行っています。また、毎年度の決算の後には、毎年度の財政状況の分析・評価を行いまして、公的年金財政状況報告をとりまとめております。これらについて、次の財政検証につなげていくということになります。
 続いて、7ページ、項番cの資料は年金制度の体系図でございます。こちらは第1章にも掲載しております。
 8ページの項番dですけれども、こちらは公的年金の資金の流れを示したものです。経過的措置等の終了した後の姿ということで、基礎年金交付金などは省いていますけれども、大まかな資金の流れが分かるようになっています。
 続いて、9ページからは報告書の抜粋を掲載しておりますが、まずは「被保険者の現状及び推移」ということで、第2章第1節より抜粋しております。
 10ページ、項番1を御覧ください。こちらは公的年金の被保険者数の推移になります。近年の状況をみますと、国民年金第1号被保険者と第3号被保険者が減少して、厚生年金の被保険者が増加する傾向にございます。令和4年度もこの傾向が続いておりまして、公的年金制度全体の被保険者数は0.2%の増加でございました。厚生年金については全体で1.8%の増加となっているのですけれども、このうち短時間労働者の増加率が44.9%と大きく増加しているということでございます。こちらにつきましては、この吹き出しにも書いてありますが、令和4年10月の被用者保険の適用拡大で、企業規模100人超の事業所の短時間労働者まで適用が拡大されたことが影響しております。
 続いて、11ページ、項番2は被保険者の年齢分布になります。令和4年度末の被保険者の年齢分布をグラフでお示ししておりますが、一番左にあります厚生年金計では、45~49歳、50~54歳の割合が大きくなっています。こちらは団塊ジュニア世代の方が属しているところになります。お隣の厚生年金被保険者のうちの短時間労働者についてみますと、男性は、緑色になりますが、60歳以上の被保険者が多くなっています。女性は45~64歳のところが多くなっているということです。隣の国民年金第1号被保険者をみますと、20~24歳のところが最も多くなっておりまして、ここは主に学生の方が属しているところです。。
 続きまして、12ページ、項番3からは年齢分布の変化をみています。まずは厚生年金計についてみておりますけれども、左側が被保険者数、人数のグラフになっておりまして、右側が総人口比のグラフになっています。直近の令和4年度末とその5年前、10年前を比較していますけれども、まず、厚生年金計の男性ですが、左側のグラフの青いところになりますけれども、最も被保険者が多い年齢階級が10年前は35~44歳だったのですけれども、その5年後には40~49歳、そして、令和4年度末には45~54歳ということで、シフトしてきていることが分かるかと思います。こちらは団塊ジュニア世代が移ってきているということになります。一方、女性をみていただきますと、5年前に比べて、一部15~19歳と40~44歳のところはちょっと減ったりしていますけれども、全体として被保険者数が増加していることがみてとれます。
 こちらの被保険者数につきましては、先ほど団塊ジュニア世代ということを言いましたけれども、もとの人口の多い少ないといった影響を受けてしまうために、なかなかこれだけでみると状況が把握しづらいということで、右に総人口比としまして、年齢層ごとに被保険者数の人口に対する割合を示したグラフを載せています。人口比をみると、きれいな形になっているのが分かるかと思いますけれども、5年前と比べますと、若年層を除き全体的に上昇しております。また、一番右の65~69歳のところの人口比をみていただきますと、この人口比は上昇しているということで、65歳以上の雇用が進展している状況が分かるかと思います。
 続きまして、項番4は短時間労働者についてみたものです。こちらは、令和4年10月施行の適用拡大によりまして、短時間労働者の被保険者数が大幅に上昇したということで、こちらのグラフもかなり上に上がっているのが分かるかと思います。5年前と比べまして、男女とも全ての年齢階級で増加しております。
 続きまして、項番5は国民年金第1号についてでございます。国民年金第1号被保険者は、左側の人数でみますと、団塊ジュニア世代のシフトを除けば、男女ともに全体的に被保険者数が減少しています。右側の人口比でみますと、5年前と比べまして、男女ともに20~24歳、60~64歳のところを除いて低下しています。
 続いて、項番6の国民年金第3号についてです。第3号被保険者につきましては、ほとんどが女性ということなので、女性を中心にみていきますけれども、左側の人数でみますと、49歳以下の被保険者数の減少が著しくなっています。右側の人口比でみますと、年齢を問わず全体的に比率が下がってきておりまして、女性は5年前と比べて全ての年齢階級で低下していることが分かると思います。
 続きまして、16ページの項番7でございますけれども、こちらは厚生年金の標準報酬月額別被保険者の分布になります。男性をみていただきますと、一番右の65万円の被保険者が最も多くなっています。女性をみますと、22万円のところにピークがある分布となっています。一方、右側の短時間労働者についてみますと、男性、女性ともに11.8万円のところにピークがある分布になっています。
 次に、17ページを御覧ください。令和4年10月施行の被用者保険の適用拡大の影響で、短時間労働者が大幅に増加しているということを先ほど言いましたけれども、今年度の報告では、トピックとして、適用拡大前後の状況を詳しくみております。
項番8は、適用拡大前後の短時間労働者の年齢分布の変化をみたものになります。適用拡大前後の状況をみるために、令和3年度末と令和4年度末を比較しています。グラフでは、人数を棒グラフで、構成割合を折れ線グラフで示しております。人数をみますと、令和4年度末の短時間労働者は、令和3年度末と比べて、男女とも全ての年齢階級で増加していることが分かります。構成割合をみますと、一番右ですけれども、男性では、65歳以上のところが30.3%から32.9%へ増加する一方で、60~64歳のところが22.0%から19.0%に減少しています。また、女性では、65歳以上のところが8.0%から9.2%へ増加する一方で、45~49歳や60~64歳のところは大体0.4ポイント減少しているということで、こちらをみますと、男女ともに年齢分布が年齢の高いほうにシフトしたことが分かるかと思います。
 続いて、項番9になりますけれども、こちらは、適用拡大前後の短時間労働者の標準報酬月額分布の変化をみたものでございます。先ほどと同様に、令和3年度末と4年度末を比較しています。棒グラフで示した人数をみますと、令和4年度の短時間労働者は、3年度末と比べまして、男女ともに全ての等級で増加しております。また、折れ線で示した構成割合をみますと、山となっている等級は、男性ですと11.8万円、9.8万円、20万円のところ、女性では11.8万円と20万円のところで変わっていないのですけれども、男女ともに、左のほう、特に9.8万円の割合が大きく増加しておりまして、標準報酬月額別分布は標準報酬月額が低いほうにシフトしていることが分かります。標準報酬月額の平均をみますと、男性は1.1%の減少、女性は1.3%の減少となっています。こうした状況につきましては、令和4年10月施行の適用拡大で企業規模の小さい事業所の短時間労働者が加入した影響と考えられます。
 続きまして、19ページからは「受給権者の現状及び推移」となります。第2章第2節から抜粋しております。
 20ページの項番10を御覧ください。こちらは受給権者の年金総額の推移になります。令和4年度末の年金総額は、公的年金制度全体で57.0兆円となっておりまして、前年度末に比べて1.1%の減少になっています。こちらですけれども、令和4年度につきましては、男性と共済組合等の女性におきまして、報酬比例部分の支給開始年齢が64歳に引き上げられたこと、また、令和4年度は年金額が0.4%の引下げであったことなどが影響していると考えられます。
 続いて、項番11は老齢・退年相当の受給権者の年齢分布となっています。こちらは厚生年金の実施機関ごとに示しております。左上に「旧厚生年金」とありますが、これは、いわゆる民間被用者の方の厚生年金のことをこういう呼び方で言っておりまして、事業統計ですと「厚生年金(第1号)」と呼んでいるものの数値になります。年齢分布をみますと、男女ともに全ての制度で70~74歳のところが最も多くなっています。
 続いて、22ページの項番12ですけれども、こちらは共済組合等の職域加算部分を除いた老齢・退年相当の平均年金月額となります。共済組合等の共済年金には職域加算部分が含まれておりますので、これらの職域加算部分を除いた厚生年金相当部分の年金額を推計して示しております。推計した結果ですけれども、この表の一番右をみていただきますと、厚生年金計の平均年金月額は、男女計で14.9万円、男女別にみますと、男性が16.7万円、女性が11.3万円となっております。
 続きまして、項番13は老齢相当の受給権者の年齢階級別平均年金月額になります。枠囲みの中にありますように、旧厚生年金の平均年金月額は、受給権者全体の平均加入期間が長くなっている中で、減少傾向にあるのですけれども、その要因としては、ここに挙げた1から6の要因が考えられます。グラフでは、旧厚生年金につきまして、直近の令和4年度末と5年前、10年前を比較しております。グラフの中に減少の要因を詳しく記載しておりますので、御覧いただければと思います。
 続いて、項番14ですが、こちらは老齢相当の年金月額階級別受給権者数です。旧厚生年金について、基礎年金を含む額でお示ししております。グラフをみていただきますと、男性は16~20万円のところに、女性は8~12万のところにピークがあるということでございます。
 続いて、25ページからは「財政収支の現状」ということで、第2章第3節から抜粋しております。
 項番15は令和4年度の単年度収支状況でございまして、こちらは先ほどポイントのところで御説明しましたので、省略させていただきます。
 続いて、27ページ、項番16は厚生年金の保険料収入の増減要因の分析となります。右上のところに保険料収入の推移が書いてございますけれども、厚生年金計をみますと、令和4年度では1.7%増加しています。実施機関別にみますと、厚生年金勘定と私学共済が増加して、国共済と地共済が減少しています。要因別の寄与をみますと、厚生年金勘定と私学共済につきましては、被保険者数の増加が保険料収入を増加させる方向に寄与しております。さらに、厚生年金勘定では1人当たり標準報酬額の増加が、私学共済では保険料率の引上げも増加要因となっています。一方、減少した国共済と地共済ですけれども、こちらは被保険者数の減少が保険料収入を減少させる方向に寄与しております。さらに、国共済につきましては、1人当たり標準報酬額の減少も保険料収入の減少要因となっています。
 続いて、項番17は、国民年金勘定の現年度保険料収入について、増減要因を分析したものでございます。令和4年度の国民年金の現年度保険料は、表の一番右にありますように、2.3%の増加となっております。こちらを要因別に分解して寄与をみますと、現年度納付率が上昇したことが保険料収入を増加させる方向に寄与したということでございます。
 続いて、29ページを御覧ください。ここからは「財政収支等及び財政指標の実績と将来見通しとの比較」ということで、第3章の第2節と第3節から抜粋しています。
 まず、30ページの項番18ですけれども、こちらは合計特殊出生率と65歳平均余命の実績と前提との比較になります。左側が合計特殊出生率のグラフで、黒い線が実績、点線が平成29年将来推計人口の仮定値になっています。こちらをみますと、先ほどポイントでもご説明しましたけれども、令和4年度の実績は、前年よりも0.05ポイント低下していまして、将来推計人口と比較しますと、出生中位と出生低位の仮定値の間に位置しておりますが、出生中位の仮定値との乖離がさらに拡大していることが確認できるかと思います。
右側は65歳平均余命のグラフです。令和4年の実績は、前年よりも男性で0.41年、女性で0.43年低下しておりまして、令和4年については、男女ともに人口推計における死亡高位の仮定値を下回っていることが確認できます。なお、令和4年の実績の低下につきましては、令和4年簡易生命表の概況によりますと、男女とも平均寿命が低下しておりまして、その平均寿命の低下要因としては、新型コロナウイルス感染症、心疾患、老衰などが挙げられているところでございます。
 続いて、31ページからは経済前提についてみております。項番19は物価上昇率の実績と前提との比較でございます。黒い線が実績、赤い線が成長実現ケースの前提、青い線がベースラインケースの前提となっています。令和4年の実績は前年比2.5%となっておりまして、いずれの前提も上回っていることが分かります。
 続いて、項番20は実質賃金上昇率についてみたものです。実質賃金上昇率は、対物価上昇率でみた賃金上昇率になりますけれども、令和4年度の実績については、先ほどみた物価上昇の影響によりまして、財政検証における前提を下回っているということになります。
 続いて、項番21は実質的な運用利回りについてになります。実質的な運用利回りは、対名目賃金上昇率でみた運用利回りになりますけれども、一番下に書いてありますように、運用利回りについて実績と前提を比較する際には、公的年金では保険料や新規裁定の給付費が名目賃金上昇率を基本として増減することから、長期的な観点からは実質的な運用利回りで比較することが適当であると考えておりまして、ここでは実質的な運用利回りについてみております。黒い線で示されております実績をみますと、令和4年度は、2つの前提の間にありまして、成長実現ケースの前提を上回り、ベースラインケースの前提を下回る状況です。なお、運用利回りは単年度の変動が大きいことから、過去5年度分を平均した5年移動平均で比較しますと、グラフの黄色の線になりますが、こちらでみますと、いずれの前提も上回っているということでございます。
 次に、34ページを御覧ください。項番22は労働力率についてです。黒い線が令和4年の実績、点線が令和7年の推計値となっています。令和4年の実績と令和7年の労働参加が進むケースの推計値、赤の点線になりますけれども、こちらを比較しますと、比較している推計値が実績より3年先のものだということを考慮に入れる必要がありますけれども、男性では15~34歳のところと60歳以上で、女性では15~29歳と60~64歳のところで、既に実績が推計値を上回っている状況になります。
 続いて、項番23は、被保険者数の実績と将来見通しとの比較をしたものになります。こちらは先ほどポイントで取り上げた事項になります。グラフは、実績を黒の星印で、財政検証の将来見通しを棒グラフで示しておりますけれども、令和4年度は、左側の厚生年金計をみますと、実績が将来見通しを上回っている状況、一方で、右側の国民年金第1号被保険者をみますと、こちらは実績が将来見通しを下回っている状況になっています。
 続いて、36ページ、項番24は受給者数についてでございます。こちらは、令和4年度には、厚生年金計では実績が将来見通しを下回っている状況、そして、基礎年金では実績が将来見通しとほぼ同水準ということになります。
 次に、37ページの項番25を御覧ください。ここからは収支の主な項目についてみていきます。実績と財政検証結果との比較に当たりましては、将来見通しの対象範囲が決算ベースと異なる場合には、決算の実績に一部修正を加えて「財政検証ベースの実績」を作成しまして、それと財政検証の結果を比較しております。また、財政検証には複数のケースがございますけれども、ここでは例示として、ケースI、ケースIII、ケースVと比較しております。保険料収入についてですけれども、令和4年度につきましては、厚生年金計、国民年金勘定ともに実績が将来見通しを上回っている状況でございます。
 続いて、項番26は給付費についてみたものでございます。給付費につきましては、令和4年度は、厚生年金計では実績が将来見通しを下回っている状況、右側の国民年金勘定では実績と将来見通しがほぼ同水準となっています。なお、ここで言う国民年金勘定の給付費は、注に書いてありますように、国民年金第1号、任意加入被保険者に係る付加年金などの国民年金独自の給付に係るものとなっておりまして、左側の厚生年金計のグラフとは金額のスケールが違っているので、そこは留意していただければと思います。
 続きまして、39ページの項番27、こちらは基礎年金拠出金についてでございます。令和4年度は、厚生年金計では実績が将来見通しを下回っている状況、右側の国民年金勘定では実績が将来見通しとほぼ同水準ということになります。
 続いて、40ページの項番28、こちらは積立金についてでございます。黒の星印が実績、白の丸印が時価評価による変動を平滑化した後の積立金額を示しています。まず、令和4年度末の実績をみますと、厚生年金計、国民年金勘定のいずれも実績が将来見通しを大きく上回っております。また、平滑化後の積立金額でみても、同様に、令和4年度は将来見通しを上回っている状況になっています。
 続いて、項番29は財政指標についての比較になります。年金数理部会では、財政状況の把握の一助とするために、年金扶養比率や総合費用率、積立比率など、幾つかの財政指標を作成して分析しているところです。ここでは、そのうち、年金扶養比率と積立比率を取り上げております。まず、上側の図が年金扶養比率になるのですけれども、年金扶養比率は制度の成熟度を表す指標でございますが、令和4年度は厚生年金計、基礎年金ともに実績が将来見通しを上回っている状況になっています。下側の図が積立状況を表す積立比率でございます。こちらも、令和4年度は、厚生年金計、国民年金勘定ともに実績が将来見通しを上回っている状況となります。
 続いて、42ページですけれども、ここからは「積立金の乖離の分析と財政状況の評価」になります。
 まず、43ページの項番30を御覧いただきたいのですけれども、こちらは、積立金の乖離の分析について、乖離分析の流れを図で表したものです。概略を御説明しますと、一番左にありますように、令和4年度末において積立金の将来見通しからの乖離があるわけですが、まず、それを、左側から2つ目にありますように、乖離の発生年度ごとに分解いたします。次に、左から3つ目になりますけれども、年度ごとに分解したものをさらに、名目運用利回りの乖離によるものと、それ以外のものと、2つに分解します。それから、一番右になりますけれども、さらにそれらについて細かく発生要因別に分解するということで、乖離の内容を細かく分けるということをしております。
 次の44ページからが、この乖離分析の結果になります。項番31でございますけれども、こちらは積立金の実績と将来見通しとの乖離につきまして、発生年度ごとに乖離状況をみたものです。ここでは例示としてケースIIIを示させていただいております。グラフをみていただきますと、一番左側に令和4年度末の将来見通しと実績の乖離を示しておりまして、右側のところに、それを発生年度別に分解したものを示しています。こちらをみていきますと、厚生年金計、国民年金勘定いずれも同じような感じになっているのですけれども、令和4年度末は実績が将来見通しを上回っている、乖離がプラスとなっておりますが、それを発生年度ごとにみますと、主に令和2年度と令和3年度の発生要因の寄与計の合計がプラスとなっておりまして、こちらのプラスが令和元年度に係る発生要因のマイナスの寄与計を上回ったということになります。
 項番32とその次の項番33は積立金の乖離分析の結果になります。まず、項番32は、令和4年度発生分について乖離の発生要因別にみたものです。図の左側のところに乖離の発生要因を、右側のところに積立金への影響を示しています。下の注にありますように、積立金の乖離につきまして、細かく分けたものから、要因別に取り出して集約するということをいたしまして、ケースI、ケースIII、ケースVのうちの最大値と最小値を表示しております。まず、左側の図をみていただきますと、令和4年度に生じた厚生年金計の積立金の乖離は1.42~2.13兆円となっておりますけれども、上から4つ目の被保険者数の乖離の寄与が最も大きくなっておりまして、令和4年度発生分では被保険者数の乖離が効いていることが分かります。一方、右側の図の国民年金につきましては、令和4年度に生じた積立金の乖離がマイナス0.02兆円ということなのですけれども、こちらにつきましては、一番上の名目運用利回りの乖離の寄与が大きくなっております。
 続きまして、項番33をみていただきたいのですけれども、先ほど令和4年度発生分についてみましたが、こちらは令和元年度から令和4年度の発生分について通期でみたものになります。令和元年度から4年度までの通期でみますと、厚生年金計の積立金の乖離は41.02~42.27兆円、そして、国民年金勘定の乖離は1.40~1.41兆円となっています。いずれも名目運用利回りの乖離が大宗を占めているということで、この乖離の大きな要因は名目運用利回りによるということが分かるかと思います。
 続いて、47ページからは、厚生年金の財政状況の評価になります。項番34では厚生年金の財政状況の評価の考え方についてまとめています。厚生年金の財政状況の評価ですけれども、年金数理部会では、積立金の実績と、「評価の基準となる積立金額(推計値)」というものをつくりまして、それとの差を考察することにより行っております。「評価の基準となる積立金額」とは、財政検証の積立金の将来見通しを、賃金上昇率及び物価上昇率の実績と財政検証における前提との乖離に対応する分だけ補正して比較できるようにしたものでございます。こちらにつきましては、詳しくは報告書の本文の290ページ、291ページにありますので、そちらを御参照いただければと思います。
 四角の中の2つ目になりますけれども、この考察では、前提としまして、公的年金財政の均衡が、下のてんびん図でいう左側の財源の全体と、右側の将来の年金給付の全体で図られていること、また、保険料水準が固定された上で、将来の給付費が将来の保険料収入と積立金等の財源と均衡するように、給付水準を自動調整する仕組みになっていること、そういったことを踏まえてやっておりまして、この分析では、積立金の乖離につきまして、積立金及び将来の保険料収入の財源と対比する形で大きさの規模をはかるということで評価をしています。
 評価の結果については、次のページの項番35にまとめてございます。左側の表に分析の結果をまとめてございますが、積立金の実績と「評価の基準となる積立金額の推計値」の差額、表でいうと3のところになりますけれども、こちらを4の財源との対比でみておりまして、プラス2.2~2.4%となっています。また、表の中の括弧書きで時価評価による変動を平滑化した後のものについてもお示ししておりますが、こちらの場合ですと、プラス2.1~2.2%となっております。この結果から、積立金の財政検証からの乖離が財源の2%程度に相当するものである、そういった規模感であることが確認されたということでございます。
 最後、49ページの項番36につきましては、先ほどポイントのところで説明しました公的年金の財政状況の評価となっております。
 概要についての説明は以上なのですけれども、このほか、本文から、概要に取り上げていないもので3点ほど御紹介させていただきたいと思います。
 資料3の第2章をご覧ください。1点目ですが、130ページを開いていただきたいのですが、こちらは受給者数の推移をみたものになります。こちらの受給者数の推移ですけれども、例年ですと受給権者数の動向と同じような傾向で動くということなのですが、令和4年度につきましては、被用者年金制度の対前年度増減率が、受給権者数の増減率に比べて高くなる状況となっています。1ページ前の129ページに受給権者数の推移があるのですが、みていただきますと、例えば一番左の旧厚生年金をみますと、受給権者数が0.5%の減少なのに対しまして、受給者数は0.3%の増加という異なる動きをしています。こちらについてなのですが、令和4年度より、60代前半の在職老齢年金制度が改正され、支給停止とならない範囲が拡大されたことの影響が出ていると考えられます。支給停止にならない方が増えるということで、全額停止者が減って受給者が増えるということが起きますので、それがこの統計に表れているということだと思います。
 2点目に御紹介したいのは、173ページになります。ここでは繰上げ支給・繰下げ支給の老齢年金受給権者数について記載しております。先日の年金数理部会におけるヒアリングで、今回新たに、各制度から年度末時点で70歳の老齢厚生年金受給権者の繰下げ状況を御報告いただきましたので、報告の中に取り込んでおります。文章中の「2-2-62」とあるところの上から5行目からになりますけれども、令和4年度末時点で70歳の老齢厚生年金受給権者の繰下げ率は、旧厚生年金が2.1%、国共済が2.0%、地共済が1.1%、私学共済が5.1%となっておりまして、旧厚生年金と国共済は大体同じなのですけれども、地共済が少し低くて、私学共済が高い状況になっていることが分かったということでございます。
 最後に、3点目としまして、229ページの図表2-4-4を御覧いただきたいと思います。こちらは厚生年金計の総合費用率をみたものです。総合費用率は、保険料賦課ベースでみた給付費用の大きさを表す指標でございまして、積立金を持たない完全な賦課方式で財政運営を行う場合の保険料率に相当するものです。図の一番左の欄、総合費用率のところをみていただきますと、令和4年度の総合費用率は17.9%となっておりまして、前年度と比べて0.4ポイントの低下となっています。保険料率の18.3%と比較しますと、このところずっと総合費用率が保険料率より高い状況が続いていたのですけれども、令和4年度では逆転しまして、総合費用率のほうが0.4ポイント低くなったことがみてとれます。財政的には良好な状況になっていることがうかがえるかと思います。
 私からの説明は以上でございます。
 
○翁部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、報告書の案につきまして、御意見などがございましたら、よろしくお願いいたします。
 佐藤委員、お願いいたします。
 
○佐藤委員 ありがとうございます。
 大変分かりやすい説明であったかと思います。特に資料1の1ページから2ページのポイントのところですけれども、ここに大変重要な情報が詰まっていると冒頭御説明がありましたように、これも昨年から格段に分かりやすい形になっていて、そのときに複数の委員から出たご意見は、広報周知活動が非常に重要であるということだったかと思います。このように非常に重要な情報をメディアに働きかける、例えば記者レクとか、投げ込みを行うとか、そういった試みがあるのかどうか、もしお考えがあればお聞かせください。
 特に2ページは、本当に国民に分かりやすく共有していただきたい。下の図の公的年金財政の均衡イメージも、この項目の大きさが重要というお話がありましたけれども、そのとおりで、積立金の大きさを考えると、わずかに損しただけでも将来の年金給付が危ぶまれるという誤解めいた記事もございますので、そういったところを正しく認識していただくためにも、メディアへの発信も重要ではないかと思います。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 お願いいたします。
 
○村田首席年金数理官 ありがとうございます。
 佐藤委員がおっしゃいますように、今回まとめた報告書についていろいろな方に知っていただいて、財政状況について理解を深めていただくことは大切なことだと認識しております。委員の皆様からぜひいろいろなところで広報として発信していただきたいというお話がありましたので、今回、部会の終了後に報道機関の記者の方々に資料を配付させていただく形を取らせていただこうと思っています。若干、今までよりは前進するのではないかと思います。よろしくお願いします。
 
○佐藤委員 どうもありがとうございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 そのほかにいかがでしょうか。
 小野委員、お願いいたします。
 
○小野委員 ありがとうございます。
 私からもポイントについてコメントさせていただきます。
 第1章の記述のとおり、被用者年金の財政は一元化されましたけれども、実施機関ごと、実施機関は統合されていないために、一元化後の厚生年金の全体の財政状況をとりまとめることが、年金数理部会の重要な責務であるということです。その点、1ページにあるとおり、実施機関間の収支等を極力省いて財政制度全体の収支を簡潔に示すことは、非常に意義があると思っております。
 それとともに、当部会には制度の財政状況を専門的な観点から分析・評価し、実績の動向とその背景を明らかにして、財政検証との比較によって財政状況を分析・評価することが求められているということですけれども、令和4年度のハイライトとしましては、さらに顕著になりました出生率の低下と、累積ベースで積立金が将来見通しを上回る状況をキープできたということだと思います。このことを2ページの財政状況の評価で取り上げたことも妥当だったと思います。その際に、乖離が中長期的に続くことへの警鐘を鳴らしつつも、長期的な観点から財政状況の動向を把握するべきことをアンダーラインを付して指摘されたこともよかったのではないかと思います。
 念のための確認なのですけれども、今回の資料は昨年同様に仕分けられているということなのですけれども、最終報告をホームページに掲載される際には、ポイントと概要を切り出して掲載するというような昨年同様の御対応をいただけるという理解でよろしいでしょうか。この1点だけ確認させていただきます。
 
○村田首席年金数理官 報告書のホームページへの掲載につきましては、以前は報告書だけを掲載していて、その中にポイントや概要が埋まっていたのですけれども、一昨年からポイントを外出しする、昨年からは概要についても外に出してアクセスしやすくするようにリンクを貼る形になっております。今年度も同じように、年金数理部会のトップページから直接ポイントや概要が見られるような形で掲載させていただこうと思っています。
 
○翁部会長 ありがとうございました。
 そのほかにいかがでしょうか。
 庄子委員、お願いいたします。
 
○庄子委員 ありがとうございます。
 私もポイントに関して若干コメントさせていただきます。
 収支状況がよくなっているのは、令和4年の法令改正によるものも含めて労働参加が進んでいることが大きな影響を与えているものと考えます。労働参加が進んでいることで受給のタイミングも遅れているということもあるのかと思いました。そのほかに、運用損益がよかったのは、結果だと思いますけれども、過去も含めて運用環境がよかったということだと思います。
 一方で、まとめでは、合計特殊出生率のお話がございますが、ここの影響は直接単年度の収支では出てこない内容だと思います。ここの影響が収支では測れないだけに、将来予測との違いをよりしっかりと見ていかなければいけないと思いまして、それをまとめにも入れていただいているのが非常にいいと思っております。財政を考える上では、合計特殊出生率は極めて重要な指標として今後とも注目していく必要があると、私も他の委員の方々と同様に考えておりますので、コメントさせていただきます。
 以上でございます。
 
○翁部会長 そのとおりだと思います。こういうメッセージを書いておりますので、ありがとうございます。
 そのほかはいかがでございますか。
 寺井委員、お願いいたします。
 
○寺井委員 ありがとうございます。
 皆さんからいろいろなことを、私も思っていることをおっしゃっていただきました。もう一つ、決算状況に基づいて制度改正の影響を確認できたのも、この報告書の大きな意義ではないかと思っています。しかも、報告書全体を見て、厚生年金の適用拡大のほか幾つか重要な改正があったのですけれども、それが年金財政にどのように影響していくか、波及していくかが見てとれるようになっていて、ひいては年金財政の健全性にどう影響していくかが分かるつくりになっていることが、この報告書のとてもよいところです。その議論に参加させていただいたことも、非常に誇れるところだと思っています。
 以上です。
 
○翁部会長 貴重な御意見をどうもありがとうございます。
 そのほか、いかがですか。
 山口委員、お願いいたします。
 
○山口委員 ありがとうございます。
 皆様のおっしゃっていることに私も同感でして、今回の報告に関する情報提供という点では、報告書の本文とポイントと概要の内容をそれぞれ調整して、年金財政の実情を国民にお伝えする姿勢はある程度示せているかと思います。
 これに加えて、今後の課題という点では、国民個々の選択に資する情報としてこれを生かせないかということです。例えば今回ですと短時間労働者の適用拡大ですとか、基礎年金、厚生年金の受給額とか、繰上げ・繰下げの状況といった世の中の状況を、「公的年金シミュレーター」や「ねんきんネット」などもございますので、自身の試算と併せて情報提供するといったことはできないでしょうかということを考えております。今後も年金の仕組みと運営について、国民の理解を広げていく取組が工夫できるとよいのではないかと思います。
 以上です。
 
○翁部会長 大変貴重な御意見をありがとうございます。
 何かコメントはございますか。よろしいですか。ありがとうございます。
 ほかにいかがでございますか。
 駒村委員、お願いいたします。
 
○駒村委員 皆さんコメントされているので、私も、これはもう毎年申し上げていることなのですけれども、非常によくできていて、私もいつも自宅にもこれを手元に置いて、時々必要に応じてよく読み込んでいます。一方で、毎年分かりやすくなってきて、非常に改善されていて、今年も細かい点ですごく改善されていますが、皆さん委員からお話があったように、もうちょっといろいろな方に見ていただきたいというのが最大のお願いになります。ぜひ御紹介いただいて、非常に重要な資料が出ていると。一方で、実はまだ難しい部分も残っているのは間違いない。大学のゼミなどで使うにも、これを完全に読みこなすにはかなりの力量は要ると思いますけれども、毎回意識して分かりやすく図表をつくっていくのが大事かと思っています。とにかくどんどんアピールしていただきたいと思っております。
 ありがとうございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 短時間労働者などもこれで本当にビジュアルに最近の動向が分かりますし、このグラフで示しているということで、いろいろと活用されていくと、非常に理解もさらに広がるかと思います。
 それでは、野呂委員、お願いいたします。
 
○野呂部会長代理 ありがとうございます。
 今回のとりまとめにつきましては、エッセンスがきれいにまとまっていると思います。ポイントの2ページの事務局から説明いただきました水色の枠囲みの中の1つ目のところに、運用状況の話、特に厚生年金被保険者数の話、そして、出生率の話と、この3つが今回の大きなキーだと思うのですけれども、先ほどほかの委員方もおっしゃったように、もう一段広く世間にPRできないかと思います。
 その中で、厚生年金のところで、被保険者数が増加した、これは労働参加率の影響もあるかと思いますけれども、短時間労働者への適用拡大がトピックかと思います。このように適用拡大していくことについては、短時間労働者の老後の生活設計という意味で非常に世の中的には重要だと思うのですが、年金財政的にはどうかというと、当面は収入保険料が増える、その結果として積立金も上振れするということであるのですけれども、彼ら彼女らも65歳になったら今度は受給者になって、年金財政にとっては費用になるわけです。中長期的にどうか。これは財政検証ピアレビューなどでも指摘された、有限均衡方式はどうかというところにつながるかと思うのですが、今後も適用拡大を進めていく中で、定常状態になったときに年金財政に対してはどうかというところを一度見たほうがいいのではないかと思いました。
 それから、次の出生率のところで、恐らくコロナの影響もあるかと思うのですけれども、出生率の問題については非常に厳しいなと思います。これにつきまして、去年のセミナー形式の年金数理部会で将来人口推計の報告をいただきまして、そこでディスカッションしたときに、出生率は下がっているのだけれども、一方で、外国人の方の流入が増えるので、生産年齢人口については今後50年間で逆に前回推計よりも増えるという話で、それはそれで一つの未来の投影かと思うのですが、今、新しい2024年の財政検証の作業をされていると思います中で、後でこの部会で財政検証ピアレビューをすることもありまして、現時点で外国人の流入を今度の財政検証でどのように扱う方向でいらっしゃるのかをお聞かせいただきたいと思います。
 3点目、最後になりますが、毎年申し上げていることで、この資料の中にもありますとおり、国民年金第1号被保険者の免除者は、これまでどんどん増えてきたのですけれども、ようやく増加が止まったかという感じがあります。免除者につきましては、客観的な基準に基づいて適用しておられるので、増えること自体については社会の投影だと思っているのですが、ただ、その免除者の方の中身といいますか、属性といいますか、例えば同じ方がずっと長く免除になっているのか、あるいは免除の方が入れ替わっているのかという実態がよく分からないという御説明もありまして、なかなか統計を取りにくいとお聞きしていますけれども、ただ、免除者というのは将来の低年金者の予備軍であって、大げさに言えば将来の貧困問題にもつながるような話かと思います。例えば全数調査が難しければサンプリング調査でもいいので、実態を見るようなことができないかと思いまして、これもお願いといいますか、御提言でございます。
 私からは以上です。
 
○翁部会長 大変貴重な御提言と御指摘をいただいたと思いますが、今の御質問につきまして、まず、外国人、どうぞよろしくお願いします。
 
○佐藤数理課長 今年の夏に実施する予定の財政検証において、外国人をどのように取り扱うかというお話をいただきました。まず、外国人については、日本人と同じように社会保険が適用されるということで、外国の人が入ってきたら日本人と同じように年金にも適用していくという前提で財政検証に盛り込むということだと考えております。
 その上で、国際人口移動についてはこれまで我が国ではそんなに大きな移動がなかったため、人口に与える影響はそれほど大きくなかったのだと思うのですが、近年、その数が増えてきて、昨年の将来推計人口でも仮定値で大きな流入を見込むことになり、人口にも大きな影響を与えるようになってきたということだと思っております。
 将来推計人口については、基本的に中位推計で財政検証を行うというのがこれまで基本でしたので、今回も同様に中位推計を基本にやるということだと思いますが、これまでも出生や死亡はその変動に人口が大きな影響を受けるということで、中位推計だけではなくて高位推計、低位推計の場合も行って、幅で結果を見ていくということを行っているところであります。
 近年、外国人の流入の影響が大きくなってきたという観点からいうと、今回社会保障・人口問題研究所で外国人の流入の仮定を変化した場合の条件付推計も行っておりますので、そういったものを使って外国人の流入についても幅で見ていくというのは検討していく必要があるのではないかと考えているところであります。御提言も踏まえて検討していきたいと思います。
 
○翁部会長 今の点、よろしいですか。
 
○野呂部会長代理 私もどうすればいいか全く想像できない状況なのですけれども、年金財政において外国人をどう取り扱うかは、結構影響は大きいかと思います。また教えてほしいと思います。ありがとうございました。
 
○翁部会長 大変重要ですね。外国人はこれから増えてきますしね。
 よろしくお願いします。
 
○橋本年金局長 今、野呂先生から適用拡大の年金財政への影響は長期的に見たときにどうなるのかという点のお話がございました。次の財政検証の中でこの問題をどう取り扱うかということはございますけれども、前回の財政検証の際のオプション試算なども見ますと、適用拡大を行うことによって確かに将来拡大された方々が受給者になっていく面はもちろんあるのですけれども、トータルとして見て最終的に確保される所得代替率は適用拡大をしたほうが上がっていく傾向は見られたところでございますので、その傾向は変わらないのではないかと思います。
 
○翁部会長 もう一つ、免除者が減っているけれども入れ替わっているのか、属性はどのようにフォローしていけるのかという御質問がありましたけれども、将来の貧困につながる話なのでということでございましたが、これについて年金局のほうでコメントいただけますでしょうか。
 
○佐藤数理課長 その点については、なかなか把握するのが難しいところもありまして、どのように把握できるかをまず検討していきたいと思います。
 
○翁部会長 よろしいですか。
 
○野呂部会長代理 どうぞよろしくお願いします。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 どうぞお願いいたします。
 
○庄子委員 ありがとうございます。
 今、財政検証のお話が出ましたので、概要の6ページに数理部会の役割をまとめていただいている表があるのですが、財政検証とピアレビュー、これが対になって行われることは理解しているつもりです。財政検証で検証をするに当たって置いた前提を、事後的にピアレビューする我々が承知するのでしょうか。もちろん計算の始まる前にたくさん言えることはほとんどないと理解しておりますし、運用の前提もこういう置き方で行うということや、人口も外部の予測を利用するということだと思いますので、特段数理部会として言うべきことはないのではないかとは思うのですが、ピアレビューをする立場としては、あらかじめ前提条件を知っておいた上でピアレビューをするのが適切なのではないかと考えました。年金数理部会の提言は、5年たたないと次の財政検証につながらないということもございますので、財政検証とピアレビューとの関係のあり方についてどのようにお考えなのか、少しでも前提情報をあらかじめご説明いただくというようなやり方はないのかについて、お考えを聞かせていただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○村田首席年金数理官 年金数理部会のピアレビューですけれども、これまでの形としては、庄子委員もおっしゃったように、財政検証が出て、そこでいろいろな前提、結果が出てきたものをヒアリングさせていただいて、その前提も込みで説明を聞いた上で、年金数理部会が検証するという形を取らせていただいています。財政検証が出る前に例えば基礎率だけ先に聞いてとか、そういう形はなかなか取るのが難しいかと思っておりまして、今回も、基礎率等についてピアレビューで評価した結果については、次の財政検証に生かしていただく形をとるということになるのではないかと考えます。
 
○庄子委員 恐らく進め方としては、今、お話しいただいたやり方であっても、私が申し上げた内容であっても、大きく違うことはないのではないかとは考えますが、ピアレビューをする上では、この前提だからこういう結果が出てくるのだということを理解しておくことが非常に重要だと思っていまして、前提を後から聞いて、仮に前提に疑問をもつようなことがあってはもったいないと思いますので、何らか方法はないのかというのが私の意見でございます。
 以上でございます。
 
○翁部会長 お願いいたします。
 
○佐藤数理課長 財政検証において重要な前提は大きく3つありまして、人口、労働力、経済と。それぞれについて、人口については社会保障・人口問題研究所で専門家に御議論いただいて、人口部会でも御議論いただく、労働力需給推計についてもJILPTで専門家に御議論いただき、雇用政策研究会でも御議論いただいて設定していく、経済については経済前提の専門委員会を立ち上げて、そこで専門家の方に御議論いただくということで、それぞれきちんと専門家の御議論を得た上で設定していくこととされています。その上で設定された前提を基に財政検証を行って、その結果をまたピアレビューで数理部会でもう一回検証していただく、そういう手続なのだと考えております。ですから、重要な前提については少なくとも勝手に厚労省のほうで決めているわけではなくて、いろいろ専門家の方に御議論いただいて決めていただいております。そのほかにもいろいろ細かい前提もありますけれども、こちらは前回の数理部会でのピアレビューの意見もきちんと踏まえた上で設定していって、財政検証を行っていきたいと考えております。そういう流れかと考えております。
 以上です。
 
○庄子委員 お話しいただいているところは全くそのとおりだと思っておりまして、そういう形できちんとオーソライズされたものを使いながら財政検証をされるので、数理部会が前提について何かを変えるべき等ということまでは行かないと思うのですが、計算の前提となるものはあらかじめ理解しておいた方がよいと思っておりまして、申し上げているところでございます。
 以上でございます。
 
○翁部会長 駒村委員、お願いいたします。
 
○駒村委員 我々の部会のこういう報告書を今後の政策にどう反映していただくかという議論の中心だと思います。年金部会でも財政検証を前に改革をすべきテーマをいろいろ議論は始めていると思います。年金部会でもぜひ数理部会のレポートの中でこれぞという部分は共有していただきたいと思っています。
 例えば第2章の116ページですね。標準報酬月額の分布で、この上限に達しているところが共済と厚生年金と1号、2号、3号、4号でかなり違うのだというようなものも見ていただいて、こういうことで上限を引き上げた場合にどういう影響が出るのだろうかとか、そういう材料に使っていただく部分もあると思いますので、公表されましたら、この繰上げ・繰下げのところで、前回も年金部会では繰上げで60歳代前半の支給と45年加入の整合性の議論が多少ありましたけれども、これだけの情報だと物足りないというか、深くは議論できませんけれども、こちらで把握できている実態などもうまく年金部会でも共有していただければと、このように思います。
 以上です。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 この116ページなどは、本当に重要なメッセージを含んでいると私も思っております。また、様々な前提との比較も、例えば出生率にしても全部実績とどうずれてきているかが見えていますので、こういうことが次に反映させられるような議論につながるというか、そういう形でこの報告書を年金局の中でいろいろな議論をされるときにぜひ活用いただきたいと思っておりまして、その辺り、よろしくお願いしたいのです。例えば首席年金数理官としてお話しされにいらっしゃるとか、そのような機会もつくっていただいて、ぜひお願いしたいと思っておりますが、よろしゅうございますでしょうか。
 
○村田首席年金数理官 御尽力いただいてまとめていただいた報告書でございますので、活用させていただいて、年金部会等にも共有していく形を取らせていただきたいと思います。
 
○翁部会長 ほかにいかがでございますか。
 小野委員、お願いします。
 
○小野委員 財政検証前に数理部会でという云々の庄子委員のお気持ちは非常に理解できるのですけれども、実務的な運営を考えた場合には、なかなか難しい面もあるのではないのかと思っています。一例を挙げれば、アメリカで行っているトラスティーレポートという公的年金や社会保障制度の将来予測ですね。こういう報告に関しては、たしか社会保障諮問委員会が4年に1回ぐらいのペースでもって直近で報告されたトラスティーレポートの評価を行っているということだったと記憶しています。そういう意味でいうと、あくまでも事後評価という形ですので、せいぜいそのぐらいなのかという気持ちで伺っておりました。気持ちとしては十分理解できます。
 ありがとうございます。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 年金数理部会は厚生労働省の中にはあるのですけれども、中立的な立場として客観的に事後的に検証をしていくところに意義があると思っていて、海外で独立した組織をつくっているところもありますけれども、中立的な立場からしっかり客観的に事実を指摘していくことに意義があると私は思っておりますし、ぜひ参照していただきたいと思っております。
 ほか、ございますでしょうか。
 
○野呂部会長代理 資料1の概要の30ページで、事務局から御説明いただいた65歳平均余命のグラフでございますけれども、今回のトピックとして、65歳平均余命が下がった、簡易生命表における0歳の平均寿命も下がっているということで、ずっと伸びてきた日本人の平均寿命について、ひょっとして天井まで来たのかということも考えられますが、私もこういう死亡率など保険数理の仕事を長くやってきた中で、死亡率は1年ぐらい見てもよく分からない、今回単年度ベースで65歳平均余命が下がったことについて、今掘り下げていってもまた来年どうなるか分からないと思います。それで、今回のポイントにも入っていないのではないかと思いました。もしこの傾向が数年続くようであれば、趨勢的になるようであれば、これは年金財政の問題というよりも日本国民全体の大きな問題かと思いますが、年金財政においてもトピックスとして分析していく必要があるかと思います。ただ、このグラフを見ても過去のトレンドもがたがたしているようで、1年だけ見てもよく分からないかというのが、この死亡率の実態ではないかと思っております。
 以上です。
 
○翁部会長 少し経年的に見ていく必要がありそうですね。ありがとうございます。
 そのほかに何かコメントはございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、委員の皆様には大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、御議論も大変深くしていただいたものと思いますが、報告書そのものの修文が必要という御意見は特にございませんでしたので、これをもちまして、本部会の令和4年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 
(異議なしの意思表示あり)
 
○翁部会長 異議なしということでございますので、これを本部会の報告とさせていただきたいと思います。
 皆様には大変御尽力いただきまして、ありがとうございました。
 なお、誤字や脱字といった細部の修正が必要になった場合には、私に御一任いただければと思っております。
 また、今日いろいろメッセージをいただきまして、対外的な発信や年金局内での活用について多くの意見が出ましたので、ぜひお願いしたいと思っております。
 それでは、令和4年度公的年金財政状況報告についての審議は以上で終了いたします。
 事務局から今後の日程等につきましてお願いいたします。
 
○村田首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整してまた御連絡を申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○翁部会長 ありがとうございます。
 今日は記念すべき第100回年金数理部会ということでございましたが、これで終了いたします。どうもありがとうございました。