第1回労働基準関係法制研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和6年1月23日(火) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 専用第15会議室

議題

労働基準関係法制について

議事

議事内容
○労働条件政策課長 定刻になりましたので、ただいまから、第1回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。本研究会の進行につきまして、座長が選出されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日の研究会は、会場参加とオンライン参加を組み合わせての開催となります。
 続きまして、御出席の構成員の皆様を御紹介申し上げます。
 東京大学大学院法学政治学研究科教授の荒木尚志様。
 続いて、オンラインで御参加でございます日本大学経済学部教授、安藤至大様。
 オンラインで御参加でございます、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授の石﨑由希子様。
 東京大学大学院法学政治学研究科教授の神吉知郁子様。
 東京大学環境安全本部准教授の黒田玲子様。
 オンラインで御参加でございます、京都大学大学院法学研究科教授、島田裕子様。
 立教大学経済学部教授、首藤若菜様。
 オンラインで御参加でございます、大阪大学理事・副学長、水島郁子様。
 東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授、水町勇一郎様。
 明治大学法学部教授、山川隆一様。
 それでは、本研究会の開催に当たり、労働基準局長の鈴木から御挨拶を申し上げます。
○労働基準局長 労働基準局長の鈴木でございます。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、本研究会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 労働基準法は昭和22年にできた法律でございまして、今年で77年目を迎える法律でございます。時代を経ましても、この法律は、労働者の保護に関する基本法としまして、いささかも衰えることなく、その必要性がますます高まっているところでございまして、特に5年前に施行されました時間外労働の上限規制につきましては、長時間労働の抑制の一翼を担うものとしまして、今、施行に一層の力を入れているところでございます。
 しかしながら、この労働基準法、かなり古い法律でございまして、その制定当時には、例えば事業場の中である程度均質な労働者がその場所で一定時間、使用者の指揮命令のもとで働くという前提があって、それに基づいてつくられた法律かと思っております。
 その後、いろいろな状況の変化によりまして、例えば解釈でいろいろ拡張していくでありますとか、改正するとか、そういったアップデートを加えながら今に至っているわけでございますけれども、しかしながら、例えば、最近働き方が多様化しております。グローバルに働く人材が非常に増えております。それから、IT技術の進展によりまして、場所にとらわれず働くような方も出てきております。また、ワークライフバランスを考えながら短時間働く方もいろいろ出てきております。
 こうした中で、労働基準法制定当時の考え方の範囲内で事業場の中で働いている方が大多数かと思いますけれども、一部の方におかれましては、それにとらわれない、例えばテレワークや副業・兼業、そういったいろいろな働き方が進んでおりまして、その範囲内で、そういった方に対しても適用するような考え方を新たに検討していく必要があるのではないかと現在考えているところでございます。
 翻りますと、ちょうど法律が施行されて40年目の昭和62年には、労働基準法、大改正がございました。40時間労働制を導入して、それから多様な変形労働時間制を入れて、裁量労働制を入れるといった労働基準法の根幹にわたるような大改正があったわけでございますけれども、その改正に至るまでには、昭和50年代の終わり頃から労働基準法研究会という研究会を開催いたしまして、例えば労働時間法制だけではなく、労働契約法制、就業規則法制、さらには、現在でもその基準となっています労働者性の判断基準もこの研究会で出されたものでございます。
 そうした研究の成果のもとに昭和62年の大改正がなされた。その後もいろいろなところで改正を続けて現在に至るわけでございますが、そろそろ労働基準法の根幹にわたるような概念を含めまして、一度しっかり検討して、将来に向けての永続する労働基準法の新しい考え方を確立していく時期に来ているのではないかと思いまして、この検討を開始したところでございます。
 この研究会に先立ちまして、昨年の3月から、「新しい時代の働き方に関する研究会」という研究会を、今野先生を座長にお願いしたところでございます。こちらにつきましては、現時点でどういう働き方がなされていて、今後どういう働き方が進んでいくのか、それに併せて労働基準法制というのは今後どうあるべきかといった概念的なものを御検討いただきまして、昨年の10月に8項目のポイントを御提言いただいたところでございます。
 本研究会におかれましては、こういった研究成果も踏まえまして、労働基準法制全体の根本にわたるところから含めまして皆様方の忌憚のない御意見を賜りたいと思っております。労働基準法制といってもいろいろ多岐にわたる法制でございますけれども、皆様方のお知恵をかりましてよりよい法制にしていきたいと思っておりますので、ぜひ忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、冒頭の御挨拶とさせていただきます。
○労働条件政策課長 続きまして、本研究会の開催要綱について御説明をいたします。資料1を御覧ください。
 「趣旨・目的」でございますが、1.の第3パラグラフに書いておりますが、今後の労働基準関係法制について、包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法第12条に基づく労働基準法等の見直しについて具体的な検討を行うことを目的として開催するものでございます。
 「検討事項」でございますが、先ほど局長からも御挨拶申し上げましたように、新しい時代の働き方に関する研究会報告書を踏まえました今後の労働基準関係法制の法的論点の整理と、働き方改革関連法の施行状況を踏まえた労働基準法等の検討となります。
 「運営」につきましては、資料1の3.を御覧いただければと存じます。
 それでは、議事に沿いまして、続きまして、本研究会の座長の選出についてでございます。開催要綱の「3.運営」の(4)におきまして、本研究会の座長は、参集者の互選により選出し、座長代理は座長が指名するとしております。
 座長の選出につきましては、事前に事務局から各構成員の皆様にお諮りさせていただいたとおり、荒木先生にお願いしたいと考えておりますが、よろしゅうございましょうか。
(構成員首肯)
○労働条件政策課長 ありがとうございます。御賛同いただきましたので、荒木構成員に座長をお願い申し上げます。
 以後の進行は荒木座長にお願いいたします。
○荒木座長 それでは、御指名でございますので座長を務めさせていただきたいと思います。
 今回は、局長が今お話しになったとおり、労働基準法に関わる具体的な問題もたくさんございますけれども、同時に中長期的な検討をするということが期待されております。今回はそうした問題を議論するにふさわしい、すばらしい先生方に御参集いただいておりますので、先生方の協力を得ながら充実した議論ができればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、開催要綱の3.(4)に基づきまして、本研究会の座長代理を指名させていただきたいと思います。
 座長代理は、山川先生にお願いしたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。
(構成員首肯)
 よろしくお願いいたします。
 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 まず、研究会の開催に当たり、会議の公開等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 資料2を御覧ください。本研究会については、原則公開とすることとし、資料2の①から④までに該当する場合であって、座長が、非公開が妥当であると御判断いただいた場合には非公開とすることとさせていただきますが、よろしゅうございますか。
(構成員首肯)
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
○荒木座長 それでは、会議の公開につきましては、事務局から説明がありましたとおり、取り扱うことといたします。
 続いて、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 本日の資料について御説明いたします。
 資料3-1から3-4、そして資料4について御説明いたします。まず、資料3についてでございます。
 3-1「労働基準に関する諸制度について」。これが今回のメインの資料となってございます。こちらは詳細は後ほど御説明いたします。
 3-2「人口構造、労働時間等について」とございますが、現在の統計等で取れるものからベースとなる統計情報を記載したものとなっております。議論の御参考にしていただければと思います。
 3-3でございます。「労働基準に関する諸制度について」。これは関係する学説ですとか裁判例につきまして、その文章をまとめたものとなってございますので、こちらも御参照にというものでございます。
 資料3-4でございます。これまで示されてきた課題というものでございますが、こちらは、これまでの労働政策審議会ですとか、あるいは国会での附帯決議、あるいは政府の他の研究会、委員会、検討会、こういったところから労働基準法制に関しましていただいている御指摘等をまとめたもので、課題の一つとなっているものでございますので、こちらも後ほど御覧いただければと思います。
 最後に資料4でございますが、労働時間制度等に関するアンケート調査結果ということで、昨年から私どもでやっていたものでございます。一般的な統計調査では取れないような少し細かめの項目、例えば、お開きいただいたところでは、研究開発に関する業務の方の労働時間の状況ですとか、そのようなものを3,000人規模のウェブアンケート調査でまとめたものでございます。速報値ということで、単純集計の結果を用意いたしました。こちらも議論の御参考にいただければと思いますし、詳細に関しては今後また提出させていただきます。また、集計の方法等について御指摘等あればいただければと存じます。
 戻りまして、資料3-1、労働基準に関する諸制度について、詳細を御説明いたします。
 お開きいただきまして2ページのところから、まず1番の働き方改革関連法と「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書のところでございます。資料、2ページ、3ページ、働き方改革関連法の概要と検討規定でございます。この検討規定におきまして、施行後5年で、各法律の施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとされておりまして、この研究会の契機となっているものでございます。
 もう一つが4ページ目、5ページ目の、先ほど局長からも申し上げました新しい時代の働き方に関する研究会の報告書でございます。5ページの下のところに、先ほど申し上げました8つのポイントを載せているものでございます。こういった視点に立って御議論を進めていただければと思っているところでございます。
 続きまして、2番の「労働法の基本構造」の部分でございます。資料、7ページからでございます。まず、7ページのところに、こちら、おさらいでございますけれども、「労働法の体系」ということで、労働法の中には個別的労働関係法、集団的労働関係法、労働市場法がある。今回の対象は労働基準法制ということで、個別的労働関係法が基本的な検討対象になるということで、その構造を示させていただいております。
 8ページ、9ページのところでございますが、8ページのところに労働法に関連しまして、その法の政策を実現するための手法を分類いたしました。公的権限の行使による強行的な実現手法から、自発的な法の遵守の促進を図るというものですとか、あるいは労働法以外による実現を図るとか、様々手法があるということをこちらにまとめているものでございます。
 9ページは、その労働政策の実現に向けたこれらの手法がどのような構造になっているのかを図解したものとなっております。
 10ページ目以降でございますけれども、労働基準法制定、昭和22年当時から現在に至るまでの労働基準法の大きな改正につきまして、各改正時期、そしてその際の社会的背景、改正の主な内容についてまとめたものとなっておりますので、こちら、議論に御利用いただければと思います。
 続きまして3番目の「労働基準法の事業」というところです。ここからが具体的な論点のところに入っていくものと考えております。
 まず、16ページのところでございますが、労働基準法の事業について、現行の解釈をお示ししております。まず、事業は業として継続的に行われるものであるということ、社会通念上、業として行っていると認められるものは全て含まれている。そして、下のほうでございますが、事業は主として場所的概念で決定されるが、組織的関連ないし事務能力等も勘案して、個々の事業の適用単位が決定され、その1単位が事業としての適用単位となる、このような解釈を示しているところでございます。
 これにつきまして、様々学説ございまして、17ページのところに、東大での学説ですとか、あるいは橋本先生の御指摘を参考につけさせていただいております。
 18ページにお進みください。この事業という概念でございますが、大きく変わっている部分がございます。労働基準法制定当時は、旧第8条の部分におきまして各号列記で事業の種類を指定しておりました。これは当時の労働基準法がその事業場が何の事業をやっているかによって適用を変えているという形の法律であったというものでございますが、一部を除きまして、それは1998年の改正で包括適用にするということで、この旧8条は消える。一部、号別適用が残る部分については別表の形でその内容を残し、適用するという形に変わってきたというものでございます。したがいまして、その事業というものの基準法の中での役割も変遷してきているというものでございます。
 20ページ以降のところでございます。そうした中で各種届出等もいろいろ変わってきているというところでございまして、原則として基準法は事業場単位でやっているというものでございますが、20ページのところにございますように、手続に関しては本社一括届出を一定程度認めるというような特例を設けているとかいったような変更をしてきています。
 また21ページでございますが、労働基準関係法制以外のところで、例えば健康保険や厚生年金保険のように企業単位で労使合意をし、企業単位で手続をするというような法制もあるというものをお示ししております。こういったものを御参考に、事業に関して御議論いただければと思います。
 最後の22ページは労災保険制度における国際比較でございます。
 4つ目のブロック、「労働基準法の労働者」についてでございます。労働者の判断基準につきまして、いわゆる労働者性を判断するということになりますが、24ページに現行の判断基準をお示ししております。昭和60年に労働基準法研究会に御報告いただいたものでございまして、使用従属性に関する基準と労働者性を補強する要素というものを挙げていただき、これをもとに、現在、監督署等でも、その方が労働者であるかどうかを判断しているというものでございます。
 しかしながら、昨今の多様な働き方の進展によりまして、そのグレーゾーンに当たる方というものが増えてきている。例えばフリーランスの方、プラットフォームワーカーの方といったようなものがございますが、そうした方々に対する労働者性の判断というものをどうしていくのかということが議論の対象になり得るものと考えております。
 そこで25ページでございますけれども、「多様な就業者に対する5つのアプローチ」ということで、ここで5つ分類をお示ししましたが、グレーゾーンの方々を労働者であるかないかを判断する、あるいはその労働者性というものをその方々に及ぼすのか及ぼさないのか、そういったものに様々考え方がありますが、大きく分ければ、こういった5つの分類でアプローチしていくことが考えられるというのを示したものでございます。
 続く26ページには、こういった労働者性の判断基準に関する各学識者の御指摘についておまとめしております。先ほどの5つの分類の特別規制の一例といたしまして、27ページ以降のところでございますけれども、いわゆるフリーランス法に関しまして定めてきたものを載せているものでございます。
 27ページが法律を議論したときの附帯決議、28ページにその法律の概要を載せております。こういったものをもとに労働者性の大きな御議論をいただければと思います。
 続いて30ページのところでございますが、30ページ以降、少し資料をつけておりますが、労働者性に関連いたしまして、1点、個別に御議論いただきたいところをお示ししております。家事使用人の法的保護というところでございますが、家事使用人の方、いわゆる戦前からある女中さんのような働き方をしていらっしゃる方、各家庭と個別に雇用契約を結んで家事労働をしている方々に関しては、労働基準法上、適用が除外されているという状況でございます。
 今般、フリーランス法ができ、そして家内労働者に関しては別途家内労働法があるという中で、比較してみたものが30ページでございますが、家事使用人の方に対する法的保護がここだけないというものがございます。こういった方々に対する労働基準法の適用を含めた保護のあり方について御議論いただきたいと考え、以降、この方々に対する現行制度に関して、労災の特別の加入制度含め資料を御用意しているものでございます。
 続きまして5番の「各労働時間制度等」のところでございます。こちらに関しましては、先般の働き方改革関連法で追加された時間外・休日労働の上限規制を含め、現行の労働基準法で各労働時間に関してどのような制度があるかというものをまとめた資料となっております。
 39ページから「労働基準法の概要」が始まりまして、賃金に関する法、労働時間法制の概要、その体系、そしてその概況ということで、変形労働時間制やフレックスタイム制、事業場外みなし労働制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度、管理監督者といった各種制度につきまして、どのような形で運用しているかというのをまとめたものでございます。
 今回、働き方改革関連法の施行状況も踏まえた見直しということでございますけれども、それにとどまらず、労働時間制度全体について先生方に御議論いただければと考えているところでございます。
 6つ目のブロックでございます。「労使コミュニケーション」の部分でございます。先ほどお話しいたしました新しい時代の働き方に関する研究会におきまして、62ページのところに、その報告書を抜き書きしておりますけれども、そういった新しい時代に即した労働基準法制の方向性の中で、適正で実効性がある労使コミュニケーションの確保が必要であると、こういったことを御指摘いただいているところでございます。
 それを踏まえまして、63ページのところでございますが、労働基準法において労使が関わっている手続について一覧にしたものでございます。労働基準法、各制度ございますけれども、その制度活用の際には必ず労使において協議をして、その上で適用するしないを決めていくという形になっておりますが、その区分といたしまして、労働協約でやるのか、労働組合がやるのか、労使委員会でやるのかと分かれているところでございます。
 一覧にございますとおり、労働協約方式で行っているものは賃金の通貨払の部分のみでございまして、大多数の手続は過半数労働組合との労使協定、あるいは過半数代表との労使協定、そして企画業務型裁量と高度プロフェッショナル制度については労使委員会制度というような形になってございます。
 そうした中で、労使コミュニケーションのあり方をどのようにしていくべきかということを御議論いただきたいと考えておりますので、まず、この労働組合と過半数代表について、今回、資料を御用意しております。
 64ページ以降でございますが、まず、労働組合の状況につきまして、組織率の変遷ですとか、その産業別の状況、また労働組合に対する企業の認識、労働者の認識といったもののデータを用意しておりますので、こちらを御参照いただければと思います。
 69ページ以降ですが、過半数代表者についての資料をまとめております。69ページに出しておりますのは、労働基準法施行規則における過半数代表者の選出方法でございます。使用者の意向に基づき選出されたものでないことですとか、使用者がその過半数代表者に対して必要な配慮を行うべしといったようなことを定めているものでございますが、これは先般、平成30年の省令改正のときに追加したものでございます。
 その契機となりましたのが70ページ以降のところでございまして、その過半数代表者のあり方を考えるときに、過半数代表者の選出方法、こちらが必ずしも適正ではないのではないかという御指摘をいただいていたというのが背景にございます。
 71ページのデータにございますように、2018年時点でも、親睦会の代表者ですとか、使用者が指名をするといったような形で過半数代表者を選出している企業というのは27.6%あったということで、そういったものを是正すべく省令を改正したというところでございます。省令は改正いたしましたが、その後、これが適正になっているかどうかというのはまた調査しなければならないという状況でございます。
 そういった過半数代表者に関する問題点を含めまして、以降、統計情報等々を76ページまで記載させていただいておりますので、こちらを御覧いただければと思います。
 77ページ以降のところでございますけれども、過半数代表者が関与する制度、いわゆる労働基準法の労使協定以外にも様々ございまして、それを網羅的に集めまして、81ページまで一覧性を持ってお示ししておりますので、こちらも御覧いただければと思います。
 82ページ、過半数代表者の選出に関しては裁判例も幾つかございますので、その裁判例を載せております。
 83ページでございますが、そういった集団的労使関係のみならず、労働基準法制下で、個別同意も別途求めなければならないと定めているものにつきまして一覧化しております。
 84ページは諸外国における集団的労使関係とその法定基準解除の方向についての国際比較となっております。
 続きまして、7番の「国際的な動向」というところでございます。今回のテーマに関連いたします国際比較について、参考資料としておつけしております。
 86ページが休日制度の比較、87ページが勤務間インターバル制度の比較でございます。
 88ページから91ページまで、ドイツの関連する制度としまして労働時間口座制度というものがございます。こちらについても概要を集めたものをお示ししております。
 それから、92ページから96ページでございますけれども、「最近の国際労働運動の動向」ということで、ILOの資料を含めておまとめいたしましたので、こちらも御参照いただければと思います。
 最後に97ページ、98ページのところでございますが、97ページはプラットフォーム労働における労働条件改善におけるEUの指令案。今、EUでもかなり議論が進んでいるところでございまして、プラットフォーム労働の方々の労働者性をどう考えていくのかというのがございます。今回の議論の範疇にも入るものでございまして、御参考にとつけております。
 ただ、一方で、このEUの指令案については、EUの中でも議論を進めてはいるものの、かなり様々な意見があるということで、まだ定まったものではないということを御留意いただければと思います。
 最後、98ページはAIに関する諸外国の動向ということで、EUにおけるAI規制法の概要ですとかをお示ししております。このAIの技術に関しても進んでいく中で、労働、労務管理、そういったものにどう影響していくのかということも含めた御議論をいただければと思っているところでございます。
 駆け足になって恐縮でございますが、本日の資料の概略は以上でございます。御議論のほどよろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。
 ただいま、事務局から労働基準に関する諸制度について御説明いただいたところです。具体的な論点は今後議論していただくということになりますけれども、本日は初回ということでございますので、各先生方から、この研究会に当たって、労働基準に関する諸制度の考え方や御関心について順番に一言ずついただければと考えております。まず、会場の先生方から、その後、オンラインの先生方からお願いしたいと思います。
 それでは、会場参加の神吉先生からいかがでしょうか。
○神吉構成員 神吉でございます。
 一言では言えない重要な問題がたくさんあると思いますが、本当に一言で言うと、私が関心あるのは主に3点です。
 1点目は、やはり長時間労働問題です。労働者の心身の健康確保だけではなくて、恐らく長時間労働ケア責任との両立を困難にし、男女格差や、正規・非正規格差問題、働き手の分断にもつながっているのではないかという問題意識を持っています。
 それから、2点目は過半数代表の問題です。特に、組合ではなく個人の過半数代表者が多様な働き手の利害をうまく代表できているのか。もともとは労基法上の規制解除のための存在にすぎなかったのが、実際には労働条件の設定にも深く関わるような役割をだんだん担うようになってきています。それが機能しているのか、制度として持続可能かということを考えたいと思っております。
 3つ目は、全般にわたることなのですけれども、多様なニーズに応えるために労働時間制度自体が非常に複雑なものになり過ぎていて、実効性の問題が生じていないかを懸念しております。この資料にあるとおり、制度自体が非常に細かく適用要件であったり対象者も違っていて、説明するのですら難しいことを、実際に適用される働き手が理解できて、きちんと守り支える仕組みとなっているのかということを考えていきたいと思っています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。続いて黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 黒田です。
 東京大学で産業医をしております。また、公的な研究機関や民間企業でも、産業保健サービス、健康管理の提供を一部担当しております。
 その立場で、まず、私は法律の専門家ではないので、本研究会で私に求められているのは、現在の制度による健康管理の問題、それから、制度の変化に伴って新たに、もしくはより課題になってくるであろう副作用的な健康問題に関して、それをできるだけ小さくする措置に資するような知見や意見かと認識しています。
 その件で私が関心あるのは5点ございまして、まずは、今、神吉先生からもちょっと言及があったのですが、多様な労働ニーズがあって、それに対応していくというのは重要だと思うのですけれども、資料4のアンケート調査結果を見ていると、例えば深夜労働を自ら選択したいという人もいるのですけれども、そのうち2割が育児・介護等による、日中は業務時間が取れないため行いたいと回答している。それが自律的な働き方に伴うものなのか、そうせざるを得ないのか。ケア労働との両立ですとか、ケア労働にかかわらず、自己研鑽ですとか、自分の地域での活動を行いたいとか、ワークライフバランスとか、そういう観点もあるでしょうけれども、せざるを得ないという要素が結構大きいのではないか。それに伴って健康影響は結構出るのではないか、という点が気になっていて、この点も検討したいと思っています。
 それに関しては、労働者個人個人がヘルスリテラシーを高めるというのは非常に重要なのですが、ただ、そうすると、個人が頑張ってねという話になってしまいます。もちろんそれを組織が支えるということも重要なのですけれども、組織と個人、これは2点目なのですが、どうやって責任をバランスよく分け合うか制度によって制御する、という点が重要なのかなと思っています。
 それから、これも先の調査のデータなのですが、制度変更におけるヒアリングで、役員の意見は5割、半分ぐらいの会社は聞きます、労働者の意見は4分の1ぐらい聞きますという回答があったのですが、何で役員の意見は聞くのに労働者の意見はそんなに聞かないのだろうというのが、疑問です。制度変更の影響を受ける当事者は労働者なので、もちろん会社が最終的に制度をつくるのだと思うのですけれども、その点で、労使コミュニケーションというのがかなり不足しているのかなと。それを支える制度はあるのでしょうけれども、それが実行されていないという点が気になっていて、そこに関心があります。これが3点目です。
 4点目は、もうちょっと実務的な話になるのですが、産業医をしていますと、今、兼業・副業を結構されている方がいると実感します。特に私の本務先である大学のようなところだと兼業・副業は多く方がしています。そういうときに、兼業・副業をしていて、労働時間を通算して確認し、それに伴う健康影響がどう出ているのか、出ていないのか、出ているのだったらどのように対処が必要かという検討を、産業医も含めて情報収集して、対処について事業所側に検討していただくことになるのですが、かなり難しいと思っています。ですので、その点を、もちろん実効的に制度だけでやることはできずに、いろんな工夫が必要なのだとは思うのですけれども、どうやって制度を変える、もしくは変えなくて、また何か制度を十分活用できるような資料などが必要となったらどうやって補っていくか、という点について議論できればいいかなと思います。これが4点目です。
最後、5点目ですが、今回、働き方改革法案施行後5年たって、現状を踏まえてまた検討する、という話ですけれども、労働時間の上限規制について5年猶予の措置が取られていた業種というのが、4種ぐらいですかね、あったと思います。そこについては、公益性が高くて、受益者、国民への影響が大きいとして猶予されていた側面も多分あったと思うのですけれども、ではどうやって受益者の理解を得て、働き方改革をその猶予されていた職種にもちゃんと適用していくか、かなり難しい。もちろんやっていかざるを得ないし、やるというのは非常に大事だと思うのですけれども、そこで代償措置を含めた健康確保がどうやって実効的に行われていくかというのを、実態の経年変化調査は多分必要で、それを制度でどうやって担保していくかという仕組みも必要なのではないかと思っております。
 長くなりましたが、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。続いて水町先生、お願いします。
○水町構成員 ありがとうございます。
 大きく2つ。1つは、背景にあるところですが、鈴木局長のお話にもあったように、昭和22年、1947年に労働基準法ができて、そのちょうど40年後の昭和62年、1987年に労基法の大改正。これはもともと労基法が工場労働を基本的なモデルとしてできてきたのだけれども、その後、サービス経済化でホワイトカラー労働者が増えてきたので、そのホワイトカラー化に対して労働基準法制をどう立て直すかということで大改革が行われた。そしてまたそこから、約40年後。今回は、世界的な大きな流れとしてデジタル化が起こってきて、これまでのただのIT化とかホワイトカラー化とは違う形で、大きな働き方とかビジネスモデルの変化が出てきて、労働基準法制、労働法、社会保障法制をどう見直すかというのが世界的な大きな課題になっているときに、労働基準法制を中心にどう見直すかという大きな改革の節目に来ているのだなということが、鈴木局長の話からもよく分かりましたし、世界で大きく労働法改正がなされているのを踏まえながら、日本でもどう立て直していくかというのが大きな背景にあるかなと思います。
 そして、具体的な中身が2つ目ですが、今日、労働基準に関する諸制度についてほぼ網羅的に論点とかこれまでの考え方をお示しになったところで、示されたものをこれからどう具体的に検討していくかというのが大きな課題になると思います。基本的には、例えばこれまでの労働法制の基本であった基本概念としての労働者概念とか、事業、使用者概念というのがこれまでのあり方でいいのかというのは大きな課題になると思いますし、あと、規制のあり方として、労働基準法制と例えば労働契約法制って分けられる。新しい時代の研究会報告では、「守る」と「支える」という2つの概念を使って課題を提起したのですが、守るというのは強行法的に労働基準とか人権とかをきちんと守るということと、あとサポートするというのは、ルールはいろいろ多様なつくり方があるのだけれども、労働契約のルールでどのようなサポートをしていくかというふうに2つ分かれたときに、今、労働基準法制と労働契約法制の区別が厳然となされないような、複雑化してきていて、密接に関わるようになってきている中でどう考えるかというときには、労働契約法制、ルールの決め方についても視野に入れながら検討することが必要になってくるのかなと。
 そして、いずれにしても、労働基準法制でも、労働契約法制でも、一律のルールを定めて強制するというのが非常に難しくなってきている中で、国際的に重視されているのは、労働組合の組織率が減少傾向にある中でも、労使でどのようにルールを実態に合わせてつくっていくかという、それがまさに労使関係のあり方とか労使コミュニケーションのあり方で、これまで繰り返し皆さんおっしゃっているところですが、その中で、日本の過半数組合、過半数代表者制度がうまく機能してきたのか、その検討と見直しと同時に、それを立て直す場合にはどうしたほうがいいのかということが、規制のあり方の全体に関わる重要なポイント。
 諸外国でも、大きなルールを変えるときに、最後は、多様な中で、実態に合わせて現場の労使が実効的にコミュニケーションして、ルールメイキングしていくということを大切にする方向に規制の方向性が変わってきているので、では日本でそこが労使関係で底支えできているのかというと、そこが恐らく比較法的に見て最大の問題かなという気がします。40年ぶりの大改革をするに当たってはそこが最大のポイントになるかなと個人的には思っております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 首藤です。
 私は労使関係を研究しておりまして、私も労働法が専門ではありませんので、皆様の議論に一生懸命ついていきたいなと思っておりますが、労使関係の観点から述べますと、今最後に水町先生おっしゃったところがまさに私も関心があるところでして、労使コミュニケーションの部分ですね。やはり働き方がすごく多様化して、労働条件の決定が個別化していく中で、画一的なワークルールがそぐわなくなってきているという実態があるのは私も承知しているところで、それ自体は労働者側のニーズもそのようになってきている部分がありますので、それに応えていかないといけないと考えています。
 そのときに、労使の自治で様々なことを決めていくということが求められているわけですけれども、その労使自治がきちんと機能していないのではないかと私はかなり批判的に見ています。労働組合があって、労使協議がきちんとできている職場、もちろんありますので、組合の組織率が上がることによって、そういった高めていくということもありますけれども、中長期的に見ますと、やはり組織率ずっと低下してきている中で、この後、V字回復みたいなことがなかなか期待できない。これは世界的にそうだと思いますけれども、ですので、やはりある程度低くなっている組織率を前提に、過半数代表のあり方であるとか従業員代表のあり方を根本から考えて、きちんと機能できるようなものをつくっていかないといけませんし、それを法的にどのように支えられるのかということと、あと、現場での運用においてどのように担保できる仕組みにできるのかということを議論していきたいというのがまず第1点目の私自身の関心としてはあります。
 第2点目は、先ほど神吉先生もちょっとおっしゃっていましたけれども、日本社会の今後を考えたときに、少子化の問題とか人口減少の問題がありますので、ケア労働を誰が担うのかということはすごく重要な論点だと思っていまして、長時間労働とケア労働の問題というのは私も関心があります。単純に、もちろん健康を守るために長時間労働是正しないといけないということもありますけれども、同時に、ワークライフバランス、どうやって支えていくのかということを考えていく、これがやはり社会的な課題の観点から長時間労働を考える上ではすごく重要かなと思っています。
 もう一つ、最後は長時間労働の問題で、ここでの議論とは違うかもしれませんけれども、先ほど黒田先生もおっしゃっていましたけれども、私、物流等の労働実態の研究をしておりまして、労働時間の上限規制が5年猶予された上で、例外基準がトラックとかバス、タクシーもそうですし、あと医師もそうですけれども、設けられた状態になっていまして、こういった例外基準を速やかに一般則に移行させると国会の附帯決議では述べられていますけれども、こういったものをどのタイミングで一般則に移行していくのかなと。いつまで過労死ラインで働くことが許容されるのかなというところは、個人的にはすごく関心のあるところでもあります。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。続いて山川先生、お願いします。
○山川構成員 個人的、かつ基礎的な関心事項が5つありまして、すごく簡単に申し上げます。
 第一に、労働政策一般については、ある政策を実現するためにどのような法的ルールを用いるべきかということと、それから、個々の法的ルールを実現するにはどのような手法を用いるべきかという2つの手法の問題が視点として挙げられると思います。
 第二が、そのうち法的ルールの中身につきましては、要件だけでなくて、効果も重要でありまして、逆に、効果から要件を考えるということがあり得るかと思います。例えば労働基準法について言いますと、解釈や立法上、違反に対して刑罰が科されるという法律であることと、それから、主たる実際上の実現手法は強制上の監督や指導であること。他方で、強行法規として民事的効力を持つ規定があること。こういった効果を意識して要件のあり方を検討する必要があるかと思います。
 3番目が、こうして行政による監督や指導が重要であることからすると、監督や指導をどのようにして有効に行い得るかという点と、逆に、監督や指導を有効かつ適切に行い得る法規範のあり方はどういうものか。これは当事者による遵守、自主的なコンプライアンスのチェックがしやすいような法規範であるということも視点としてあり得るかと思います。
 4番目が、やや観点が変わりますけれども、法の実現に当たって、既に先生方御指摘のように、企業の内部でのモニタリングとかコンプライアンスの促進も重要でありまして、その役割を果たしうる重要なものとして過半数代表者に関する制度をどう考えるかという問題があります。
 また、最近、政府の労働立法では見える化が進められておりまして、労働基準関係法でも諸制度の見える化を促進する、あるいは分かりやすさを促進するということも重要な課題になるかと思います。
 最後、5点目が、これは労働基準法に限らないのですけれども、そもそも労働法制というのはどういうものを想定するのかという点で、書生論みたいなことですが、生命や健康の確保を前提として、現代では働きがいを感じられるというか、自己実現ができるような職場をつくるための環境整備という視点も有益になっているのではないかと思います。
 そうすると、先ほど水町先生もおっしゃられましたように、労働基準法だけの問題なのか、それとも労働契約法との関係、さらには、最近、労働市場法と個別的労働関係法の関係がややはっきりしなくなっているということもありまして、他の法律との役割分担とかコラボレーションみたいなものも視野に入れていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 それでは、オンライン参加の先生方から伺っていきたいと思います。まず、安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 安藤です。よろしくお願いします。
 私がこの会議で議論に参加する上で注意したいと考えている点を3つお話ししたいと思います。まず、働き方の変化が避けられないものであるということは理解が必要だと思っています。以前は機能していたような仕組み、これを無理に維持しようとしても実現不可能なことも多々あるのではないか。また、人々が求めているのは、まずは生活の安定と向上である。その上で自己実現があるなどの順序も重要かと思っています。
 例えば、最近、雇用の流動化についてもっと推進すべきだといった意見もあったりします。しかし、私の理解では、現状のような急速な技術進歩があるような時代だと、ほうっておくと過度に流動化していってしまうのではないか。そこで、どうやって人々が安心して働けるような「新しい安定の姿」を実現するのかといったことが大きな課題かと思っています。これが1つ目です。
 2つ目が、労働法制を考える上で、元気のよい、声の大きい人の意見というものがメディアなどでもよく耳にするわけですが、そうではなく、普通の人の働き方にも注意する必要があると思っています。労働基準法は働く上での最低限の条件を設定するものだからですね。能力が高く意欲もある人の活躍を支援するということは確かに必要なのですが、皆がそういう条件で働いているわけではない。これは鈴木局長からの最初のお話でもあった点かと思っています。
 その上で、今の時代重要なのは、労使の関係だけでなく、多様な働き方をしている、また多様な働き方を希望している労働者間の利害の不一致というものにも注意が必要かと思っています。この段階でも、声が大きい人の意見だけが通ってしまっては問題があると、このように感じております。
 最後3点目として、法律・制度を考える上で、やはり納得感というものが重要ではないかと感じています。これまでの労働法制とその運用について、法律家ではなく、経済学者の立場から見ていた感覚としては、大企業なら守れているが中小企業が守れていない、または守っていないというものがあるのではないか。そういうルールというのはやはり納得感が低いと思います。
 よく私が出す例なのですが、自動車の速度制限超過や駐車違反のように、見つかった人が、「運が悪かった」と感じて、「次はばれないようにやろう」と感じてしまうような仕組みではよくない。守れるルールをしっかり守らせるといった視点が納得感のためにも重要だと思っています。そのためには、神吉先生からもあったように、ルールがシンプルであり、理解しやすいということも重要かと思っています。
 私から以上です。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。続いて、石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 このたびは、貴重な研究会に参加の機会をいただきましてありがとうございます。私からは主に3点ほど、関心を持っている点について述べさせていただければと思います。
 まず1点目として、労働時間のあり方というところがございます。既に複数の先生方からお話があったかと思いますけれども、やはり労働時間法制との関係では健康確保という目的が第一にあり、また、近年ではケア労働とかそういった観点からも、生活時間の確保という要請もより高まってきていると理解しています。その上で、その目的実現のための規制として、この現行の規制でよいのか、あるいはより実効的な規制のあり方があるのかというのはこの研究会で今後さらに考えていきたいというところであります。
 その際、現行規制として、罰則、行政監督、あるいは割増賃金規制も時間外労働抑制のための仕組みとしてそれぞれ入れられているところかと思いますし、また強行法規の点についても同様ですけれども、それらが実効的に機能しているのかいないのか、あるいはある側面において過剰な規制となっていないのかというところの検証というのが必要になってくるのかなと思うところです。
 またもう一つ、特に生活時間の確保の要請といった、健康確保を超えたところを促していく上では、先ほどからほかの先生方からも御指摘ありましたように、労基法の枠を超えた規制手法によって推進していくということも考えられるのではないかと思うところであります。他方で、既に企業によってはそうした健康経営ですとか従業員のウェルビーイング向上の観点から、時間管理とか健康管理の仕組みをかなりしっかりやって、また組合のほうもそれをモニターしているというような状況があるときに、この現行の規制というのをそのまま、そうした企業に適用しているということで、それがよいのか、あるいはそういったところについてデロゲーション等認めていく余地があるのかというようなこともまた課題になってくるのかなと思っているところであります。
 1点目の問題関心はそのようなところで、また2点目としましては、これもずうっと先ほど来より御指摘が挙がっているところですけれども、労使コミュニケーションについてでございます。ニーズの個別化・多様化というのが広がっているのはそのとおりかなというところで、その中でやはり現場の労使の意見をどこまで反映させられるのかというところが大きな課題になっているかなと思っております。
 過半数代表制を法制として整えていくのかどうかというのがメインの課題にはなるかなとは思うのですが、それと同時に、どういった形になるにせよ、意見集約の役割を担う方について、その役割を果たすために必要な前提条件の基盤を整えていくということが必要であるように思っております。
 例えば労働法制に対する理解もそうですし、あるいは意見の取りまとめ方とかそういったところについて、役割を担う方が学べる、あるいはそうした人材を育てていける環境の整備というのも必要になってくるのかなと思っているところでございます。
 最後の点は、なお、私自身、何か固まった見解があるというところではないのですけれども、新しい技術などが出てきている中で、これまでの、例えば労働者概念であるとか、そういったところについてどう考えていくのがいいのかという問題があるように思いであります。従来より、強行法規の適用範囲との関係では、あまり当事者意思を考慮することは適当ではないというところで、その部分については大きく変わることはないのかなと思う一方で、他方で、多様な働き方へのニーズが出てきているというところをどう考えるのかとか、そうした新しい技術への対応というのをどう捉えていくのかというところが今後重要な課題になってくるのかなと思っております。
 その際には、これもほかの先生方の御発言にもありましたけれども、個人の希望といったときに、希望というのが本当に本心というか、自律的なところから生じてきているものなのか、それとも、何らか、いろんな置かれている状況によってやむなくそういった希望となっているのかとか、そういったところの検討というのも非常に重要になってくるのかなと思う次第です。
 私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。続いて島田先生、お願いいたします。
○島田構成員 島田でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは大きく2点ございます。まず、既に複数の先生が御指摘されたように、やはり長時間労働とケア労働に関することに関心がありまして、これに関しては、各企業、また政策上の議論の中で、例えば時短勤務の拡大とか、育児労働者に対する在宅を認めるとか、そういう話もあるかと思うのですけれども、その制度や措置のあり方によっては、多くの場合、女性労働者をマミートラックに追いやってしまうということになりかねないのかなと思っておりまして、ケア労働の分担というのを考えると、むしろ育児とか介護といったものにとらわれない、より中立的な、子供を持っていても持っていなくても、介護していてもしなくても、広い意味での私生活とのバランスという意味での制度で、いかに恒常的な残業を減らしていくかという点が重要になっていくかなと思っております。
 ただ、これも手法として労基法という枠が適切なのか、そうではなくて、多様な手法があると思いますので、それは私もまだ考えがまとまっているところではございません。
 2点目に、既に石﨑先生も御指摘された労働者性の問題です。労基法等で労働者保護が拡大すればするほど、労働者の中でかなりの保護の格差が生じてしまうという問題があると思います。これに対しては既にフリーランス新法等もできてはいるものの、かなりの保護の格差があるので、それをどのように対処していくのか、労働者性の問題として扱うのか、それとも、別途、先ほどの図で御説明いただいたように、これも多様な手法があると思いますので、何らかの形で、余り格差が、同じように働いているのに、保護が全く異なってしまうということがないような制度をつくることが大切かと考えております。
 私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。それでは、最後に水島先生、お願いします。
○水島構成員 大阪大学の水島でございます。
 まず、資料を御準備いただきました事務局の皆様に御礼申し上げます。大変貴重な資料であり、今後の議論の参考になるものと思います。
 私からは3点、意見を申し上げます。労働基準法は労働憲章として封建的な不当な労働慣行を排除するといった役割が今も重要ですが、それと同等に重視しなければならない役割が労働者の健康確保と考えております。長時間労働是正のためのさらなる取組が必要ですが、特に健康確保の点では、個人的には勤務間インターバルの導入が重要と考えております。今や導入を検討する時期に来ているように思います。
 2点目に、在宅勤務が進んでいますが、事業場での一斉労働を前提とした労働基準法の規制は在宅勤務になじみにくいものもあるように思います。例えば自宅勤務であれば、仕事から休憩に比較的早く切り替えられますので、休憩に関する規制等が見直されることによって、働きやすさの向上が可能であるように思います。また、労働安全衛生、労災保険の観点からの検討も重要と考えております。
 3点目は、労使コミュニケーションの確保についての意見です。労働条件を維持確保し、改善するために、集団的労使コミュニケーションの役割が重要であることは同感です。今回御準備いただいた資料もそれを踏まえて、労働組合や過半数代表についての内容であると理解いたしました。
 マイノリティや支援を必要とする者の意見を集団が適正に酌み取る方法ももちろんありますけれども、そうした方々に関しては個別の労使コミュニケーションの確保にも留意する必要があると考えております。
 私からは以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 それでは、私も一言述べさせていただきたいと思います。
 先生方がおっしゃったことに共感する点が多々ございました。なるべく重複しないようにということで申し上げますと、働き方が多様化してきて、一律の規制は妥当しなくなった、これは皆さんおっしゃったことかと思います。これをどう多様な働き方、多様な現場に合わせていくかということで、各国で法律の基準を労使の合意によって柔軟化していく、デロゲーションと言ったりしますけれども、そういった仕組みが採用されていて、それが日本では、過半数代表との合意でできる。しかも、過半数組合がない場合には、過半数代表者という個人との合意で最低基準を逸脱できるという仕組み、これが果たして公正に運用されているのかという問題、これは既にいろいろと指摘があるところです。
 これは国が設定する法規範をどう現場に合わせていくかという発想の議論で、今回の研究会の重要な論点だと思いますけれども、もう一点、これから大事になってくるのは、発想の視点を個人に置いて、自分が選んだ働き方を実現するためのサポート。これが、今後は労働政策としても重要になってくるのではないかという気がしております。
 コロナ禍により、テレワーク、リモートワークが急速に普及しました。これまでは組織の中で働くのが当たり前で、それを前提に考えてきたのですけれども、各人が自宅において労務を提供する、こういう働き方を日本全国で強制的に経験したわけです。自分の人生の中での働き方をどう位置づけていくか、企業も個人も考えるところがあったと思います。自分の選んだ望ましい働き方をしていきたいという願望が実現されないと、働くことの満足感も得られない。国際比較でも、日本の労働者の働くことに対する満足度は非常に低いという統計がございます。今後、労働基準法制としてもこのような課題も念頭に置いて取り組むべきと考えております。
 それから、冒頭、局長からもお話があったとおり、労働基準法制研究会ではありますけれども、当然、労働基準法制というものも、ほかの個別的な労働関係法、そして集団法、労働市場法など、労働法全体との関連の中で考えざるをえない、そういう時代です。
 そのことに関連して、今日、たくさんの方がおっしゃったのは、労使コミュニケーションです。個人の望むような働き方を実現する仕組みを考えるとしても、個人の選択と組織との関係をどう考えていくか。これは必然的に、労使がコミュニケーションを取って望ましい選択をしていくということになるかと思います。そういう意味で、労働基準法制研究会ではありますけれども、労働法全体を考えながら議論を進めていくことが重要ではないかと考えています。
 それでは、残った時間の議論ですが、本日の資料の3-1の冒頭に1から7という項目があります。具体的な論点として、恐らく労働基準法の事業、労働基準法の労働者、これが一くくりのテーマ、それから2番目に労働時間制度についての問題、そして3番目に労使コミュニケーションの問題、大きくはこの3つにグルーピングできるかと思います。これらはいずれも、先ほど申しましたとおり、労働法の基本構造との関係でどう議論していくかということになろうかと思いますので、そういう点にも御留意いただき、具体的な議論を進めていければと考えています。
 それでは、まずは労働者性、あるいは事業について、先生方から自由に御議論いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 オンラインの先生方は、希望があれば手を挙げていただければ、私のほうで指名させていただきます。いかがでしょうか。
 水町先生、どうぞ。
○水町構成員 我々に今ボールが投げられた御趣旨、例えば今日は、今3つの大きなグループのうち第1グループについて意見を始めるのか、それとも、第1グループ、第2グループ、第3グループとこれから3つターンが回ってくる中のまず第1グループというご趣旨ですか。何をどのぐらい言えばいいのかというのがちょっと分かりかねているのですが。
○荒木座長 失礼いたしました。次回からより具体的な議論は進めていきますけれども、今日はその具体的な話をする前に、資料の説明もありましたので、10分ずつぐらい、今の3つについて全体的に議論していただきたいということです。あるいは、この3つに分けるのが議論しにくいということでしたら、それと関わりなく御発言いただいても全く構いません。
 水町先生、お願いします。
○水町構成員 今、事業と労働者のところですよね。事業については、労働基準法上は、事業場とか事業概念にしていますが、基本的にそれが実態と合っているかどうかというところで、企業単位に変えていくことが可能かどうかということと、ただ、使用者、企業単位に変えていくときには、要はそこを支える労使コミュニケーションのあり方と、今、労使協定も事業場単位でやっていますが、労使コミュニケーションはもう事業場単位ではなくて、より企業単位で広く行っていくということであれば、その労使コミュニケーションの実質化の単位と規制の単位としての事業とか事業場単位をどうするかということが一つの大きな課題かなと思います。
 労働者概念のところは大きく2つあって、1つは、分かりやすくする。今、7つ8つの基準の総合考慮というのになっていますし、さらには労組法上の労働者はまた別の概念だよということになっていますが、例えば労基法上の、また労働契約上の労働者概念の分かりやすさ、これは諸外国では推定方式とかいう方法もありますが、そういうそもそもの判断の方式と基準の分かりやすさをどうするかというのを、法の趣旨から照らしていって、山川先生のおっしゃるように、法的な効果との兼ね合いでどのように設計するか、もうちょっといろいろできるのではないかというところと、あとは、仮に労働者に当たらない場合のルールをどうするかというのが、今、デジタル化、プラットフォーム化の中で言われているので、その規制全体とのあり方の中で、労働者概念をどう考え、どのように分かりやすくするか、労働者に当たらなかった人に対する規制のあり方も視野に入れながらどう設計するかが大きな課題かなと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。山川先生、どうぞ。
○山川構成員 ありがとうございます。1つは事業についてですが、資料の3-1の17ページでしょうか。適用対象の限定という機能のほかに、場所的単位を示す機能を有している。そのとおりなのですけれども、そもそも適用の場所的単位というのは具体的にどのようなものか。つまり、海外の事業場でしたら、そもそも適用対象外だというような意味での適用の場所的単位になりますが、国内の事業場であるとすると、適用はいずれにせよあるので、効果との関係では、どの労働基準監督署が権限を行使するのかという点に関わっているような気がするのですけれども、その辺り、具体的にどのように、監督の観点、あるいは行政指導等の観点から、場所的単位として機能しているのかという実態がいま一つ、私よく分かりませんので、そういうものが分かる資料があれば今後提供していただければと思います。
 事業については以上です。
 労働者についてで、本来のトピックから外れるかもしれませんけれども、フリーランスの新法ができたということの意味なのですけれども、主張立証責任という観点からすると、労働者である場合とフリーランスである場合に分けるというのはやや不十分で、グレーゾーンをどうするかという問題が発生します。そうすると、例えばフリーランスかどうかについてどう判断するのか、例えば一定の事項については公取等が所管庁として規制することになっていますけれども、公取等では、消極的に、労働者でないということを判断した上でないと権限は行使できないのか。つまり、どちらがデフォルトかという問題になります。
 フリーランスか労働者か分からないときにどういう対応をそれぞれの所管庁が取るのか。恐らくは公取で、労働者概念について複雑な判断をして、労働者でないということを確定しなければ権限が行使できないとすると、実効性がどう図られるのかということもありますし、どちらか分からないというグレーゾーンではどちらの規制も、つまり、労働法の規制もフリーランス新法の規制も適用できないというのは明らかにおかしいので、そういった判断がつかないときにどうするのかというのは、この研究会でやるテーマかどうか分かりませんけれども、考える必要があるかなと思った次第です。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。今、お二人の先生から、今後何を議論していくかという意味で大変有益な御示唆をいただいていますので、そういうことも含めて、どうぞ御自由に御発言ください。
 首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 どなたもいらっしゃらなければ、ちょっと簡単にと思って発言させていただきます。
 労働者性のところなのですけれども、私、労働実態を各いろんな企業ですとかフリーランスの現場含めて回って調査するような研究をしているのですけれども、例えばプラットフォームに従って荷物を運ぶような宅配のドライバーの実態なんかを見ていますと、結局、ここまでは労働者になって、ここを超えると労働者でなくなるという、このぎりぎりのところを攻めて労務管理するというのですかね。ですので、労働者性を持たないようなところに労働者を置きながら、それも労働者側のニーズである部分もあるのですけれども、労務管理でないのですね。だから、仕事の管理をしながら働いているような実態というのが結構幅広くあると思っていまして、今、荒木先生おっしゃったように、グレーゾーンが非常に広がっていて、そこに労基署が入って是正勧告とかをすると、勧告されたり指摘されたりしたところだけを直して、なので、雇用に極めて類似しているのだけれども、雇用に当たらないようにするというような実態が現場にはあると思っています。
 なので、どこかで線引きをしますので、その線からぎりぎり超えるということは当然あると思うのですけれども、やはりこのグレーゾーンのところにおける法的な労働者保護のあり方というものは、今後、そういう働き方が一般化するかどうか分かりませんけれども、現在存在していることは確かですので、やはりきちんと考えていく必要があるなあと思っているところではあります。
○荒木座長 ありがとうございました。黒田先生、どうぞ。
○黒田構成員 すみません。労働基準法について語れるほど詳しく専門的には分かっていないのですが、私の分野だと、どちらかというと労働基準法から分かれたとされる労働安全衛生法のところでの事業場という概念で、水町先生がおっしゃったように、これはちょっと会社単位のほうがいいのではないかということは結構あったりします。例えば大学とかだと端的にそうで、キャンパス毎にと言っても、どちらかというと大学全体として施策をいろいろ決めたり、労働基準法に関すること、労働安全衛生法に関することを決めていっています。事業場毎に、大学ならキャンパス毎ということになりますが、安全衛生委員会を行っていて、それはそれで有用だとは思うのですけれども、結局は大学としての全体的な施策を労使コミュニケーション、労働安全衛生委員会というのは労使コミュニケーションの一つの場だと思っているのですが、やるというのが適切だと思うので、従来の事業場や事業所単位で今までやってきた積み重ねは、それはそれで重要として、法的には会社単位というのが上位に来てもいいんだよ、というようなあり方というのもいいのではないかなと思っています。
 ただ、全ての業態で適用できるかはよく分からないですけれども、ふだんの産業保健の実務を行っている立場ではそのように感じています。
 それから、労働者性という点で、結局は同じことをやっているんじゃないというような、雇用形態が違うけれども、請負とか、プラットフォーム労働だけれども同じことをやっているという点に関しては、どういう評価するかというのはちょっと意見を持ち合わせていないのですが、一方で余りにも規制が強まったりすると、例えば臨床医だったりすると、今度、労働時間上限規制の5年猶予が終わって、そうはいっても壮絶な上限ラインで働くことが許容されることにはまだなってはいるのですが、余りいろいろ言うと、結局、面倒くさいから請負労働にすればいいんじゃないのというお話になってしまうだろうなという懸念があります。
 5年以上前からその議論は病院の中ではあったと思うのですけれども、ただ、仮に請負労働となった場合に、そこに裁量というのはあるのか、臨床医の場合はちょっと違うよね、ということで踏みとどまっているところがあると思うのですが、その辺りも十分考慮しながら、もちろんトラックドライバーもそうでしょうし建設業もそうなのでしょうけれども、考えていく必要があるのかなと思っています。
 すみません、意見というよりは感想になってしまったかもしれませんが、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 恐らく、労働者とか事業の考え方というのは、労働基準法制をどう適用するかというその対象範囲を画することに関わる概念ということだと思います。労働基準法は、使用者は労働者に40時間を超えて労働させてはならない、というように、規制の名宛人は使用者です。これは企業で言えば法人単位の企業ということになるのですけれども、一法人だけを見ていては実態に合わない。独禁法が改正されて、ホールディングス、純粋持株会社が解禁され、企業はグループ単位での経営を行っている中で、法人単位の企業を名宛人とした労働基準法制というものでよいのか。事業場単位ではなく企業単位という議論がありましたが、それをもっと広げて、グループ単位の企業というものを考えなくてよいのか。それから、「ビジネスと人権」で議論をされている、企業を超えて、あるいは国を超えて、サプライチェーンの末端の問題についても留意しなければ、これからはきちんとした労働行政と言えないかもしれない。そういう問題が世界的に議論されている中でどう考えるか、という状況にあるのかなとお聞きしたところでした。
 それでは、事業とか労働者について、ほかによろしゅうございましょうか。
 また後で戻ってきても結構ですので、それでは2番目のグループとして、これはこの検討会でも中心的な論点になるかと思いますけれども、労働時間制度について、御意見いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
 水町先生。
○水町構成員 大きく3つあります。1つは、働き方改革関連法5年後見直しで、働き方改革で改正された上限規制とか勤務間インターバルとか、さらには年休付与義務とか高度プロフェッショナルとかいろいろありますが、それが今現場でどういう問題を起こしていて、どのように改革していくべきかというのが大きく1つと、2つ目は、新しい働き方としてテレワークとか副業・兼業についてはそれぞれガイドラインがつくられていますが、ガイドラインが現場でどのように受け止められているのか、うまくテレワークとか副業・兼業を実態に合った形で促進しつつ、きちんと弊害を除去するようなものになっているのか、そこには恐らく労基法改正も視野に入れた改正をしなければいけない鍵がひそんでいるのではないかなと思います。それが2つ目。
 そして3つ目は、労基法、労働基準法制の中に一番大きく組み込まれている過半数代表制度。今まで議論ありますが、その過半数代表制度のあり方との関係で、労働基準、労働時間法制、さらには視野を広げていくと、労働安全衛生法制も健康確保というところでは関わっていますので、それと労使コミュニケーションのあり方をどう見ていって、大きく規制を改革していくかというところかなと思います。
 私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 オンラインの先生方、手を挙げていただけると見えるようになっておりますので、どうぞ遠慮なく挙手ください。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 先ほど申し上げた部分も多いのですが、ちょっとそれに付け足して何点か、今後こういうことについて知りたいというところをお伝えできればと思います。
 1つは、労使コミュニケーションとの関係もあるのですけれども、企画業務型とか高度プロフェッショナルを入れられているところで労使委員会のほうを設置されていると思うのですが、そこが具体的に実態としてどういう役割を果たし得ているのかという辺りはより具体的に知りたいなと思うところでございます。
 あともう一点目は、先ほどから労働時間法制との関係で、労働基準法と、場合によっては労働市場法制とのコラボによって目的を実現していくというようなお話も出ていたところかと思うのですけれども、既に導入されている次世代法とかそういったところで情報開示規制入ってきていると思うのですが、特に労働時間等の関係で、その辺りの情報開示項目が現状で十分なのか、もうちょっと増やしていったり拡充していったりする必要が、ないのかというところ。また、開示したとしても、それが分かりやすく見る側の者にとって伝わっていなければ意味がないというところがあるので、この辺り、どの程度、どう評価できるのかなというところが少し気になっているところでございます。
 私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 山川先生、どうぞ。
○山川構成員 ちょっと早めに出ないといけないので、少しだけ申し上げます。
 最近の労働時間規制の改正の議論を、詳しくフォローしていないのですけれども、エビデンス・ベイスト・ポリシーメイキング、EBPMということが今しきりに言われていまして、健康確保という観点から、EBPMをどう考えるかが問題になり得るかと思います。例えば、今、選択的にいろんな健康福祉確保措置がありますけれども、これらがどのように有効なのかという点。既に改正のときに議論されているかと思いますが、施行もされてきたので、これらが本当に健康福祉確保措置として十分か、あるいは逆に、インターバル規制みたいなものも議論されていますけれども、新たな措置が何か考えられないかとか、これは法律というよりも労働科学の世界で議論すべきことかもしれませんけれども、黒田先生もいらっしゃいますので、そういう議論、EBPM的に健康福祉確保措置を考えるというのも議論の対象になるかなと思いました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。神吉先生。
○神吉構成員 私からは、先ほど申し上げたとおり、過半数代表の労使コミュニケーションに与える影響を知りたいと思いました。非常に詳しい資料をご用意いただいて、過半数代表者の選出がどのようになっているとか、その選出状況、過半数代表制等の運用状況などが挙がっているのですけれども、私が気になっておりますのは、過半数代表者の選出は、実際には任期を定めて、令和5年度、6年度の過半数代表みたいに選出されている場合もあると思うのですね。
 選出されてから労使協定の締結をするまでの、点と点の間において、どのように職場での意見集約をしているのか、あるいは労使協定の締結に至るまでに使用者からの情報提供や意見交換がどのようにされているのか、それともされていないのかという実態が分かるとありがたいと思いました。
 というのは、労使協定は、特に会社が時間外労働をさせるには必須なわけですけれども、その上限、労使協定における労働時間の上限が、過半数代表者が適切ではないのではないかという問題意識を持っているときに、労働者の意見集約をして、そして使用者との間で適切な労使協定を結んでいくように持っていくというそのプロセスが、労基法の中では特に保障されているわけではない。組合との団体交渉のように、不当労働行為をしてはいけないとか、そういうプロセス保障が全くないわけです。その中で、実際にはどういう機能を果たせているのか、果たせていないとすればどういう課題があるのかが分かるといいかなと思いました。
 たとえば、過半数代表者を任期を決めて選んだけれども、その過半数代表者が非常に職場の状況に問題意識を持っていて、使用者と意見が対立したという場合に、使用者側が、36協定が締結できないので新たに過半数代表を別に選出したい、36協定が締結できなければその職場で時間外労働ができなくなり労働者多数の利益を反映できていないのではないかと考えて、任期中に改選手続をやって、別の人が過半数代表者になって、会社の思うような協定を締結するとか、そういう状況もあると聞きます。実際、任期を定めることも労基法の中では全く要求されていないですし、むしろそれは望ましくないと考えられている場合もあると思います。ですので、そういった過半数代表者の労使協定締結に関する意見集約のあり方みたいなことも検討できればと考えました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。労使コミュニケーションとも重なる問題ですけれども、これは当然、労働基準、労働時間法制で重要な論点ということで御指摘いただきました。ほかにはいかがでしょうか。
 山川先生、どうぞ。
○山川構成員 今、神吉先生のおっしゃられたことに関しては労働委員会レベルで若干の検討を行っていまして、例えば協定の内容について法律は関与していませんけれども、そこで紛争が生じた場合に、労働委員会が何か支援ができないかということを全国労働委員会連絡協議会(労働委員会在り方・ビジョン検討小委員会)で検討して、最終報告書も出されていますので、情報提供として申し上げます。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。本日いただいた資料4で労働時間制度等に関するアンケート調査結果があります。大変興味深いのですけれども、私自身、これをどう読み解けばよいのかがまだイメージできていません。
 例えばスライド9の、事業場外みなし労働時間とされる労働時間の管理方法や、スライド21の、変形労働時間制などの各労働時間制度の適用対象者の有無について、アンケートを取っていただき、状況を把握できたことは大変参考になりますが、これを今後の議論にどう繋げ、活かしていくのか、イメージしかねます。
 スライド16「働き方改革に伴う影響」の結果は、意外でした。思い切った改革をして、それなりに企業に影響が出ると思ったのですけれども、各項目で7割ぐらいが「特段影響はなかった」との回答です。働き方改革がうまく受け入れられて思ったほどの支障がなかったということなのか、あるいは、実際、各企業において思ったほどの働き方改革がなされていないのか、気にかかるところです。
 感想になりましたけれども、以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。資料について言及がありましたけれども、事務局から何か補足すべきことはございますか。
○労働条件確保改善対策室長 御指摘ありがとうございます。この調査でございますけれども、今、単純集計の状況でございますので、この後、各項目のクロスですとか、そういったものも含めてもう少し分析は深めていこうと考えているところでございます。今、御指摘いただいたところも含めて検討を進めたいと思います。
 それで、16ページの「働き方改革に伴う影響」で、「特段影響はなかった」というところが、各項目、大体7割ぐらいになっているというところでございます。この要因にはいろいろなものがあると思いまして、今、先生に御指摘いただいたような、実際的にはやっていない企業があるいうのもあろうかとは思うのですが、1つ参考となり得るのが18ページの36協定の締結状況でございます。
 「36協定を締結しているか」というところで、そもそも締結していないという、そもそもうち残業ありませんと、そういう企業も3割ぐらいいること。36協定締結しているけれども、特別条項を締結していない。すなわち、上限である月80時間には達せずに、月45時間以内のところでやっているというケースもある。特別条項を締結しているけれども、その特別延長時間の上限45時間以内でやっている企業も一定程度いたということで、各企業によって差はいろいろあるものの、もともとそんなに残業がない会社、事業所というのもそれなりに数が存在し、そういう方々にとってはあまり影響がなかったということも要因としてはあるのではないかと思われます。
 今後の深め方次第ではございますが、今分かることとして以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 それでは、労働時間と労使コミュニケーション、これは密接不可分のテーマでもありまして、山川先生はそろそろ御退出ということなので、労使コミュニケーションについて何か御意見があればちょっとお伺いできればと思いましたが、いかがでしょうか。
○山川構成員 すみません、特に考えてこなかったというのが正直なところですけれども、労使コミュニケーションの意味そのもの、やはり幾つかの機能があると思います。先ほど、モニタリングと申し上げましたけれども、企業の中の制度について適正に運営されているかどうかを見るというような機能もあると思いますし、それから、荒木先生が先ほどおっしゃったデロゲーションという機能もあると思いますので、様々な機能があるので、そのうちどの機能を生かす、あるいはどの機能において問題があるのかという点は視点として必要ではないかと思います。
 あと、法律でどこまで規律できるかというのがあるのですが、確かに労使コミュニケーションで、過半数代表制度を考える場合、集団的なものというイメージがありますので、先生方のおっしゃられたように、そこで個別の多様な労働者の利害をどう集約して反映させていくかという点は、多様化と集団的規制の調整という観点から大変重要になるかと思います。ただ、そこを法律でどのように規律していくかというのがすごく難しいのではないかと思います。
 という問題意識だけです。どうも申し訳ありません。
○荒木座長 突然指名させていただきましてすみません。ありがとうございます。
 それでは、労使コミュニケーションも含めて、先生方から何か御発言いただければと思います。
 黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 すみません。ちょっと遡りますが、山川先生からちょっと前にEBPMの話があったと思います。労働科学の点も踏まえてということでした。原則の労働時間限度を超えた労働者に対する現状の健康確保措置として、今回の資料4の調査では、企業側と労働者側の意識がスライド18ページとスライド44ページにそれぞれ示されていました。ちょっと残念だなと思ったのは、健康診断というのが1位に来ていて、すみません、私の立場から言うと、それは当然やるべきものであって、それで健康確保措置を講じたと言われましても、というのが率直な感想でした。スライド44ページで、特段の措置は実施されていないと労働者側で4割の人が言っている状況もあります。健康確保措置として推奨されている制度はいろいろあります。労働者側が実際には会社が自死していることを知らないだけかもしれませんが、一方でこれらの措置が余り効果的でないのかもしれません。
 現場でも、産業医がいるような会社だと、まだましかもしれませんけれども、産業医がいるような会社は大企業だったりすごく恵まれたていたりする企業であり、日本の企業というのはほとんどそうではないのです。ですので、外部から専門職の支援を得てというのはもちろん必要だと思いますし、労働や健康確保措置の実態のモニタリングも含めて、バランスよく、内部資源と外部資源を使い、外部資源はもうちょっと使いやすいように、ちょっと労働基準法を超えてしまうと思うのですけれども、どのような地域資源とか外部資源を使ってやっていくかという議論が必要なのだと思います。
 なので、新しい健康確保措置を、というよりは、既存の対策の組み合わせで何かできるのかもしれませんし、そもそも今の措置を十分行えればいいのですけれども十分行えないというのがきっと問題なのだと思うので、実効的に実施する仕組みを、どのように施策に反映していくか、法制度に反映していくか、というのが重要かと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかの先生方、いかがでしょうか。
 水町先生。
○水町構成員 山川先生がおっしゃったこととも関係するのですが、労働基準法上の原則に対して例外を設定するというときに、それを支える過半数代表制度、労使関係のあり方というのもありますが、もう一つ、例えば労働契約法制で原則的なルールを定めて、それに対して、その原則に対する柔軟な措置を現場で話し合ってつくるという契約ルールの中でも、労使コミュニケーションはどう生かすかというところも視野に入ってくるかもしれません。
 一般的に、今ガイドラインっていろいろ定められていて、労基法に関わるところはしなければならないとガイドラインの中にも書いてありますが、労基法に必ずしも違反しないけれども、労使で話し合ったほうがいいよねというときには、何々するほうが望ましい、望ましいということがいっぱい書いてあって、現場で、ガイドラインで望ましいと書いてあるということはどうしたらいいのと。無視していいのか、本当に一生懸命やらなければいけないのかというので、コンプライアンスをちゃんとしているところかそうでないところかで、取扱いというか、取組方が大分違っているというところもあるので、そういう強行法規に、労基法等に違反しないけれども、契約のルールとして今ガイドラインで書かれているようなことについて、場合によってはデフォルトルールを、原則的なルールを定めながら、労使でより具体的なことは話し合ってくださいというルールの定め方もあるかなと思いました。そこで労使コミュニケーションどうするかというのも重要なポイントになってくる。これは労基法の例外、性質とも関わってどうするかという、関連している問題としてあり得るかなと思いました。
 それともう一点だけ、今日の労働基準に関する諸制度について、資料3-1のスライド63のところで「労働基準法における労使が関わる手続について」という表があって、恐らく政策的に最も議論しなければいけないポイントとしては、右から2番目の過半数代表という、過半数代表者個人として、これが労働者の意見をちゃんと酌み取ったものになっているかというのが比較法的に見ても一番脆弱で、労基法できたときからずうっとそれを引きずっているというところがありますが、もう一つ、実はその左隣に労働協約方式というのがあって、1個だけ、賃金通貨払原則のときに、労働協約による例外を定めていいということが書かれていますが、今後、制度設計を考える上で、選択肢の一つとして、労働協約方式というのを考えてみることも大切かなということを思いました。
 以上です。具体的にはまた議論していけばいいと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 過半数代表者の選出のあり方というのは、先ほど神吉先生おっしゃった、すごく重要な論点だと思いますけれども、もう一つ、皆さんもおっしゃっていますけれども、どうやって職場の人々の意見を集約しているのかというところのまず実態をきちんと把握しないといけないと思いますし、あと、その職場の人々の意見を集約するには、当然その活動の時間的、労力的なコストがかかってくるわけで、そのコストをどうやって誰が保障していくのかというようなことも考えていかないと、例えば労働組合が職場集会開いて、職場の意見集約をして、労使協議、労使交渉するというときにも、やはりそのコストを負うのがすごく大変で、組合の役員のなり手がいないとかいうような問題を抱えている組合って物すごくたくさんある中で、過半数代表者に選出された人々の活動の確保というものはどのようにして保障されるのかなというところは、そこの保障がない中で、これが社会的に意義があるから頑張りましょうという、何か精神論だけではなかなかできないのかなとは思っていますので、本当にこれをきちんと機能させていくためにはやはり機能できるような仕組みをつくっていく必要もあるのかなと思っております。
○荒木座長 ありがとうございました。大変重要な御指摘ですね。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。先ほど申し上げた意見とも重なるところはあるのですけれども、やはり過半数代表の選出された方が適切な役割を果たす上でのサポートがどの程度なされているのかいないのかというところが重要かと思っておりまして、現行の施行規則の中では、使用者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならないとあるということですが、現実にどういった配慮がされているのかされていないのかという辺りを確認した上で、今後どういう配慮が必要なのかというところについて議論できたらいいのではないかということを思いました。
 また、現行のこの規則の中では、使用者がする配慮というお話だけではあるのですけれども、多分そのサポートの提供の仕方というのは、使用者からに限らず、先ほど山川先生から労働委員会の役割というようなお話もありましたけれども、例えば労働委員会として担える部分があるのかというところですとか、あるいは組合、企業外組合ということにもなるかもしれませんけれども、そういった例えば産別組合として果たせる役割があるのかとか、そういったところも場合によっては視野に入れて検討していく余地というのもあるのかなと思いました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 御指摘いただいた点は、過半数代表制度というものが労働基準法にあって、どんどん発展してきているのですけれども、それは事業場の全員を代表する制度ですから、諸外国だと従業員代表制度というものと比較されるべき制度です。首藤先生も石﨑先生もおっしゃったように、諸外国では従業員代表制については企業がサポートしなければいけない、費用負担、経費援助しなければいけないということになっています。
 ところが、日本だと、過半数組合がある場合には過半数組合が過半数代表となりますから、組合に対しては経費援助することが不当労働行為として禁止されている。そういう中で、過半数代表への経費援助をどう受け止めていくべきかについて、これまで政策的には一歩踏み込まずに来たのだと思います。それを今後どう考えていくかは大きな課題ですけれども、労働基準法の規制を現場に適合させるための重要な仕組みであるので、重要な論点として検討していくべき課題かと、お聞きして考えたところでした。
 ほかにはいかがでしょうか。
 もし個別ではなくて全体についても何かこの場で御意見いただければ幸いですけれども、いかがでしょうか。
 安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 安藤です。
 全体ではなく、過半数代表について1点だけお話ししたいと思います。過半数代表というのが、労働者が多様化している中でどのように意見を取りまとめるのかということは、昔よりも今さらに難しくなっている時代かなと感じております。卑近な例ですが、私が働く職場でも、専任教員と非常勤講師の先生という複数の人間が過半数代表に立候補して、結果的に、非常勤講師の方が、私の働く学部の全ての教職員の代表として過半数代表者を務めていた時期があります。
 そのような際に、案件ごとには専任教員の意見も聞くといった柔軟な対応をその代表の方はやっていたので適切に機能していたと思いますが、より一般的には、これは過半数組合があって少数組合がある場合もそうかもしれませんが、過半数の人が推したからといって、少数の立場の人の意見がどこまで真摯に酌み取られるのかという点について不安もあり、今後どういう形で意見を取りまとめていくのか、重要な課題かと思っています。
 本来、案件ごとに代表を選ぶのであれば、一件一件、この論点についてはという形で選んでいくというのが望ましいものだと思うのですが、実際上、AとBとCについて議論するといったような形で任期を設けて過半数代表を選んでいるという実態はかなり一般的に見られるものかと思っています。
 このとき、実現可能性、毎回毎回選び直すということがなかなか難しいということも踏まえて、任期制には一定の合理性もあると思いますが、しかし、公に表立って認められているものではないようにも思います。この辺り、どういう形で望ましいルールをつくるのか。それは運用が容易で、実現可能性が高いといったような視点からも、例えばこの任期についてどう考えるのかであったり、任期は仮に認められたとして、選任された後で、選出時には特段の意見を表明していなかった事項について使用者と協議する必要が出てきたら、その際にはどういう意見を申し述べるのが適切なのかといったような点ですね。過半数代表をどう選ぶか、またはどういう点についてどういう発言が求められるのか、この辺り、議論しないといけないというか、検討しないといけない点は多々あるかなと感じております。
 私から以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。労働者が非常に多様化しておりますけれども、その多様化したグループの意見をどう代弁するかという問題、それと、企業としては統一的な意思決定をしなければいけないという要請もあって、それをどう調整していくかという大変重要な御指摘かと思いました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 神吉先生、どうぞ。
○神吉構成員 緻密な制度論でないので、余り今後申し上げる機会がないかもしれないと思って、一言だけ、これまで出なかった観点について申し上げたいと思います。
 荒木先生から、自由で自律的な選択をサポートするような仕組みが非常に重要だということ、まさに同感です。その自由で自律的な選択ということを考えていったときに、冒頭の問題意識のところで複数の先生から御指摘あったかと思うのですけれども、それが本当に望まれている、希望しているという意味での自律的な選択と言えるのかということを考えなければいけない。その前提として、やはり労働の現場に埋め込まれた格差の是正ということが、法改正を考えていく上で重要なのではないかと考えています。
 様々な格差があり得ますけれども、同じ規制を適用しても、その効果というのは恐らく平等には表れないと感じます。それは、例えば努力義務としての勤務間インターバルが推奨されても、実際導入している企業は5%超と出ていました。安藤先生が納得感に格差があるとおっしゃったように、努力義務であってもきちんと対応しようとする職場と、そもそもそういう努力義務があることすらよく分からない、ガイドラインで望ましいと言われているということはやらなくてもいいことなのだろうと解釈するような、そういう職場もあり得るというところが一つの格差かと思います。
 それからもう一つは、自律的な選択と言いながら、実際にはケア責任、ケア労働があるがために選ばざるを得ない、余りにも正規職の要求する時間的な拘束が強いものだとすると、もう正規の職は選べないので非正規を選ぶといったように、やむを得ず「自律的に」選択することも十分にあるかと思いますので、そうした格差をなくしていくこと、それは中立的な基準を適用すれば実現するという単純なものではないのではないかということについて、申し上げておきたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。水町先生、手が挙がっていましたね。お願いします。
○水町構成員 全体的な話として、デジタル化対応で40年ぶりに見直すという観点からしたときに、AIとかアルゴリズムと働き方との関係というので、今回の資料3-1の一番最後のところにAIに関する諸外国の動向ということが書かれていますが、今大きな議論として、AIはプラットフォーム事業者にどういう規制を課そうかということとか、さらには、個人情報保護法との関係でどうするかということは議論されていますが、ヨーロッパの最近の議論を見てみると、働く現場に対してAIとかアルゴリズムによる監視とか管理が強まっていることに対して、労働法、働く側としてどうするかというのが重要な課題になってきています。
 例えば行動監視ですね。ウェアラブルデバイスをつけて働く一挙手一投足からどこ見ているのか、どういう発言するのかを全部監視するとか、で、効率化を図るということとか、お客様のプロファイリングによってどういう広告を出すかということはもう今やっていますが、働く現場でも、プロファイリングによって労働者の、働く人の管理をしていくとか、何が得意か不得意かということで配置とか契約自体の解約をするとか、さらにはプライベートとの切り分け、デジタル化が進むといつどこで働いてもいいというので、プライベートと働くことの区別がつかなくなるので、例えばつながらない権利をどうするかというようなことが言われていますが、こういうのを今突き詰めていくと、労働者個人の同意、個人保護法って個人の同意があれば、その同意に基づいていろいろやっていいというのが基本的な考え方ですが、個人の同意では担保できない、みんな分からないから全部クリックして、同意したら何でも使えるという状況になるのは、働き方、労働者との関係ではだめだというので、現場で集団的なチェックとコントロールと同意をする協議と交渉が必要だということが大きな方向になってきているので、そういう観点から、どういうルールを考えるのか。
 そのときにもやはり重要になってくるのは、集団的な労使コミュニケーションのあり方をどう担保していくことによって、そういう新しい技術変化に対する働き方をどう守っていくのか、健全化していくかということも重要になってくるかなと。これは全体との関わりでどう取り上げるかは課題になるかもしれませんが、1つ申し上げておきたいと思いました。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、初回でありましたけれども、大変重要な、示唆深い御意見をいただいたと思います。そろそろ時間ですので、今日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
 最後に事務局から、次回の日程についてお願いいたします。
○労働条件政策課長 次回の日程等については、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木座長 それでは、第1回の研究会は以上といたします。大変貴重な御意見いただきまして、どうもありがとうございました。