第54回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会 議事録

日時

令和6年1月31日(水)14:00~16:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム 501

議事

議事内容
○中村補佐 定刻となりましたので、ただいまから、第54回「厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会」を開会します。
 委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 なお、本日は、報道関係者及び一般の方の傍聴は行わず、代わりに会議の模様をユーチューブによるライブ配信にて公開しておりますので、御了承ください。
 本日、オンラインでの御参加の委員に向け、何点かお願い事項がございます。会議参加に当たり、ビデオカメラはオンにしていただき、マイクはミュートにしていること。発言時はマイクをオンにしていただき、発言時は名前をおっしゃった上で発言をお願いいたします。発言が終わりましたらマイクをミュートに戻してください。御不明な点がございましたら、事前にお伝えしている電話番号におかけいただければ御案内いたしますので、お問い合わせください。
 本日の出席状況について御報告いたします。山下委員、和田委員、小川委員から公務により欠席する旨の連絡をいただいております。筒井委員より途中参加・途中退席の可能性がある旨の連絡をいただいております。
 以降の議事の進行につきまして、水澤委員長にお願いいたします。
○水澤委員長 それでは、皆さん今日もよろしくお願い申し上げます。
 まず、資料の御確認をお願いいたします。
○中村補佐 それでは資料1-1、指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(一覧表)ですけれども、こちらは今回、新規の指定追加について情報提供があった疾病の一覧となっております。次に、資料1-2、指定難病に係る新規の疾病追加について情報提供のあった疾病(個票(第54回指定難病検討委員会において検討する疾病))ですけれども、こちらは新規の疾病追加について情報提供のありました疾病の診断基準等の案となります。
 そして、参考資料1-1としまして、指定難病の検討について(第53回指定難病検討委員会資料)。参考資料1-2が、厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会における指定難病に関する検討の基本方針(第53回指定難病検討委員会資料)となります。こちらの参考資料は、前回の検討委員会で検討いただいた内容となりますが、指定難病の要件について記載されております。難病の定義、指定難病の要件について記載がございますので、こちらを御確認いただきながら御議論いただければと思います。
 以上、資料の確認となりますけれども、資料の欠落等ございましたら、事務局までお申しつけください。
○水澤委員長 ありがとうございました。資料等は大丈夫でしょうか。
 それでは、全体の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。
○中村補佐 それでは、資料1-1を御覧ください。
 今年度は47疾病の申請が上げられております。そのうち、20疾病が今回初めて申請が上がった疾病となります。その他の27疾病は、過去に当委員会において審議歴のある疾病となります。
 上から順に、神経・筋疾患は12疾病の申請がありました。このうちLMNB1関連大脳白質脳症、COL4A1/COL4A2関連脳小血管病、MOG抗体関連疾患、遺伝子異常による発達性てんかん性脳症、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、PURA関連神経発達異常症が初めての申請となります。
 続きまして、循環器疾患は3疾病の申請がありました。このうち完全型房室中隔欠損症(完全型心内膜床欠損症)、ホルト・オーラム症候群が初めての申請となります。
 次に、代謝疾患は3疾病の申請がありました。このうち遺伝的インスリン抵抗症、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症が初めての申請となります。
 次に、免疫疾患は2疾患の申請がありました。このうち乳児発症STING関連血管炎が初めての申請です。
 次に、消化器疾患は6疾病の申請がありました。このうち巨大リンパ管奇形が初めての申請となります。
 次に、血液疾患は7疾病の申請がありました。このうち出血性線溶異常症が初めての申請となります。
 次に、骨・関節疾患は1疾病の申請があり、骨硬化症疾患は初めての申請となります。
 次に、腎・泌尿器疾患は3疾病の申請がありました。
 次に、染色体・遺伝子異常は5疾患の申請がありました。いずれも初めての申請となります。
 最後に、皮膚・結合組織疾患は5疾患の申請がありました。このうち壊疽性膿皮症が初めての申請となります。
 新規の疾病追加につきましては以上となります。
 次に、参考資料1-1を御覧ください。こちらには、新規の疾病追加等に関する検討の進め方に関しての記載がございます。
 また、21ページには今後のスケジュール案を記載しております。本日より疾病追加に関しては3回程度、アップデートについては2回程度、委員会で御審議いただき、審議結果に関してはパブリックコメント、疾病対策部会への報告を経て自治体等への周知を行い、告示・通知改正の実施を予定しております。
 以上でございます。
○水澤委員長 ありがとうございました。全体の進め方について今、御説明いただきましたけれども、何か御質問とかありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、今の御説明のような進め方で進めていきたいと思います。
 これから新規の疾病追加の個別の疾患について、委員の先生方に御議論いただきたいと思いますので、事務局から順番に御説明をお願いいたします。
○原補佐 新規の疾病追加については、本委員会より3回にわたって個別の疾患について御議論いただく予定としております。本日は、新規の疾病追加について情報提供のあった神経・筋疾患12疾患、循環器疾患3疾患、代謝疾患3疾患の計18疾患を予定しております。本日は17時まで予定させていただいております。
 まずは、神経・筋疾患について4疾病ずつ御説明いたします。資料1-2を御覧ください。
 1ページのLMNB1関連大脳白質脳症について御説明いたします。
 こちらは過去検討されたことはない疾患です。中枢神経系の大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患で、LMNB1遺伝子が原因遺伝子とされ、自律神経障害、錐体路徴候、失調、認知機能障害が主症状とあります。
 患者数は100人未満、発病の機構はLMNB1発現量の増加による機序が想定されておりますが不明と記載がございます。
 効果的な治療方法は、未確立で対症療法のみ。長期の療養については、緩徐進行性の経過で発症から死亡までの年数は平均12年とあります。
 重症度分類はBarthel Indexを用いて85点以下を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ70%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会の承認を得ております。
 次に、COL4A1/COL4A2関連脳小血管病について8ページを御覧ください。
 こちらも過去検討されたことはない疾患です。
 COL4A1もしくはCOL4A2遺伝子の変異を持つ常染色体優性遺伝形式の脳小血管病で、様々な程度の孔脳症、眼症状、腎症状、心症状、筋症状など全身所見を伴うとあります。
 患者数は100人未満、発病の機構はIV型コラーゲンα1鎖/α2鎖の蓄積や減少が想定されているが詳細は不明とございます。
 効果的な治療方法は、未確立で対症療法のみ。長期の療養については、進行性であるが長期間無症候である症例もあるとございます。
 重症度分類はmodified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ40%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会の承認を得ております。
 次に、神経核内封入体病について15ページを御覧ください。
 令和3年度には「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 神経系の細胞及び一般臓器の細胞の核内に広く核内封入体を認めることを特徴とする神経変性疾患で、認知症及び白質脳症を呈する症例が大多数を占めているが、末梢神経障害及び筋力低下を呈する症例、亜急性の脳炎様症状を呈する症例を初め、多彩な症状を呈するとございます。
 患者数は約460人、発病の機構は不明とあります。
 効果的な治療方法は、未確立で対症療法のみ。長期の療養に関しては、緩徐に進行し、最終的には臥床状態に至るとあります。
 重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ29%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会の承認を得ております。
 次に、NMDA受容体抗体脳炎について22ページを御覧ください。
 平成28年度、平成29年度、令和3年度には「発病の機構が明らかでない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされた疾病とされました。
 本疾病は、NMDA受容体を標的とする自己抗体によって生じる自己免疫介在性脳炎・脳症とございます。
 患者数は約600人、発病の機構は不明ですが、NMDA受容体を標的とする自己抗体が原因と記載がございます。
 治療方法については、急性期にステロイドパルス療法、IVIg、血液浄化療法が行われるとあります。長期の療養については、記銘力障害、注意力障害を含めた認知機能障害、精神・行動異常が遷延し、免疫抑制療法による維持療法を要することが多いと記載がありますが、急性期の免疫修飾療法により、発症から24か月間にmodified Rankin Scaleが2以下に改善する症例が約8割あるとの記載もあります。
 重症度分類はmodified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ95%と報告されておりますが、先ほどの記載のように、免疫療法の効果が期待できる疾患と考えられます。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会にて承認を得ております。
 一旦、以上となります。
○水澤委員長 御説明ありがとうございました。
 では、今、御説明のあった最初の4疾患について御議論いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 神経・筋疾患ということで私の担当になるかもしれませんので、私のほうから少しコメントしたいと思います。
 最初のLMNB1関連大脳白質脳症、概要は今お話あったとおりですけれども、重症の方の割合も相当多くありまして、1ページの「5.予後」のところを見ていただきますと、発症から死亡までの年数はということと、それまでの記載も含めて最終的に致死的な経過をたどるものと思われます。それが平均12年ということで、重症度に関してもかなり重いのではないかと思われました。ということで、この疾患は、指定の要件に該当するのではないかとは考えました。
 ちょっとマイナーな点なのですけれども、3ページの診断基準のところで、「C.遺伝学的検査および家族例」の1番に、LMNB1遺伝子の変異の内容が「重複または上流領域の欠失」と書いてあるのですが、これは限定されるのか、それともそれ以外のものが見つかったときに、それがすぐに認定されればいいのですけれども、されないかもしれないといったことで、研究班に確認して、例えば「など」等を入れたほうがいいのかどうか、ちょっとマイナーな問題なのですけれども確認いただければと思いました。
 次が、COL4A1/COL4A2のコラーゲンの遺伝子異常の疾患ですけれども、関連脳小血管病でございます。これは今お話があったように、重症に分類される方が4割程度しかおられないと。これは表現型が非常に多様であることが8ページの「2.原因」の最後のほうに書いてあると思いますけれども、そういうことから全体として重症の方の比率が少し少ないということなのかなと理解しております。そこが少し要件には引っかかってくるかなとも思っております。
 気づいた点としてマイナーな点なのですけれども、11ページの診断基準の「F.診断のカテゴリー」ですけれども、DefiniteとProbableの1、2、そしてPossibleとなっているのですが、Probableの2にC-3というものが入っています。10ページを見ていただきますと、C-3というのはVUSと呼ばれて、病原性が判定不能なんですね。バリアント変異が病的かどうか分からないという判定になるようなバリアントで、それがあるものでProbableに入るのはちょっと普通ではないことかなと思うので、このあたりも指定難病になるかならないかは別として、少し整理していただいたらいいのではないかと思いました。
 次に行かせていただきますと、神経核内封入体病(NIID)でございます。これはさっき御説明がありましたが、遺伝子が2~3年前に同定されました。我が国で同定されまして、非常に世界に誇る疾患というか、貢献もしているわけですけれども、指定難病の観点から言いますと、先ほどの御説明のように重症の方々は29%しかないということでございます。これは前の申請では46%ぐらいで、非常に多彩な症状を呈すると。主には3つの群に分けられて、認知症を呈する方とか神経・筋疾患であるとか、末梢神経障害とか非常に広範な症状を呈することから、重症を呈する方の比率が下がっているのではないかと思いました。そこが少し要件としては問題になってくるなと思います。
 これもちょっとマイナーな問題なのですけれども、17ページに診断基準があります。Definite、Probable、Possibleとなっておりまして、Possibleの1つがCの1項目を満たすと。これは病理診断のところがCに入っています。D及びEというのが鑑別診断と遺伝学的検査ですので、遺伝学的検査があってもPossibleという項目になるのは、ほかのProbableもという言葉の使い方と少し合わないなという気がするので、この辺も整理していただいたらいいかなと思いました。それには、18ページの*2の病理所見ですけれども、核内封入体があるわけですが、この感度特異度がどれくらいかに関わってくるかと思いますので、その辺も含めて研究班にさらにブラッシュアップしていただいたらいいのではないかと思いました。
 3番目が、NMDA受容体抗体脳炎ですけれども、これも先ほど御説明がありましたように、22ページの「5.予後」で免疫修飾療法により、発症から24か月以内にmodified Rankin Scaleが2以下に改善する症例が約8割ということで、かなり急性期のイベントとしてよくなられる方が予後であるという点です。
 それから「3.症状」で、全患者さんの約8割が女性の方で、卵巣奇形腫を合併することが多いという記載もございます。
 そういった観点からすると、これまでの基準では指定難病の要件に完全には合致しないかなと思います。
 私から4つ続けて御説明させていただきましたけれども、補足で何か追加していただける方はおられますか。いかがでしょう。よろしいでしょうか。ポイントとなるところは比較的明解かなと思いました。それにちょっと補足して診断基準等についてもコメントさせていただきましたけれども、ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 それでは、進めていただいて、また何かありましたら、そのときに御発言いただければと思いますので、続けて次の疾患をお願いいたします。
○原補佐 では、次の4疾病について御説明いたします。
 次は、MOG抗体関連疾患について、28ページを御覧ください。
 こちらも過去検討されたことはない疾患です。
 髄鞘構成蛋白の1つのMOGに対する自己抗体が原因となって生じる中枢神経の炎症性脱髄疾患とございます。
 患者数は1,695人、発病の機構は不明とありますが、自己免疫的な機序が病態に関与していると考えられているとございます。
 治療方法については、ステロイドパルス療法が適用され、難治例に血漿浄化療法や免疫グロブリン大量静注療法を追加することで回復がよくなることがあるとございます。長期の療養については、約半数は再発せずに単相性の経過をとり、後遺症なく回復することも多いという記載がございます。
 重症度分類は、総合障害度(EDSS)に関する評価基準を用いてEDSS4.5以上、または視覚の重症度分類においてII度、III度、IV度の者を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ50%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会にて承認を得ております。
 次に、スティッフパーソン症候群について、35ページを御覧ください。
 平成28年には「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 本疾病は、体幹を主部位として、間歇的に筋硬直や筋けいれんが発生し、さらには全身へと症状が進行する疾患とございます。
 患者数は257人、発病の機構は不明で、GAD抗体等が関与しているとされておりますが、抗体も検出されず原因が特定されない場合もあるとございます。
 治療方法につきましては、免疫グロブリン大量静注療法、血液浄化療法、免疫抑制剤等がございます。長期の療養については、免疫療法の継続が有効な症例もあるが、一部は予後不良という記載がございました。
 重症度分類は、modified Rankin Scaleを用いて3以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ90%と報告されておりますが、治療後のmodified Rankin Scaleの中央値はGAD抗体陽性例で2、GlyR抗体陽性例で0.5と記載がございます。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会にて承認を得ております。
 次に、痙攣性発声障害について、40ページを御覧ください。
 平成28年度、平成30年度には「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていない、令和3年度には「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 本疾病は、内喉頭筋の不随意収縮により、発話における音声の異常を来す疾患とございます。
 患者数は4,500~9,000人、発病の機構は、大脳基底核の機能異常による局所性ジストニアと考えられておりますが、本症の正確な原因は不明とございます。
 治療方法については、ボツリヌス毒素の内喉頭筋への注入療法が広く行われているとございます。長期の療養については、ボツリヌス注入療法が3か月ごとに必要とございます。
 重症度分類は、主観的重症度と客観的重症度を組み合わせた総合的重症度分類を用いて中等症以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ74.1%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会にて承認を得ております。
 次に、遺伝子異常による発達性てんかん性脳症について、47ページを御覧ください。
 こちらは過去検討されたことはない疾患で、特定の遺伝子異常に起因して発症する、難治性のてんかん発作と高度の脳波異常に精神運動発達遅滞を伴う疾患群とございます。
 患者数は約7,000人で、発病の機構は、遺伝学的機序とてんかんによる脳の発達プログラムの阻害の2つの原因が推測されているが、発症機序については十分には解明されていないとございます。
 治療方法については、未確立で対症療法のみ、長期の療養については、てんかん発作はしばしば新生児期~乳児期より出現し、発達は停滞または退行し、その後も知的発達症・運動機能障害・神経発達症などが成人期に至るまで残存するとございます。
 重症度分類は、精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて該当する患者を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ99%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本小児神経学会、日本てんかん学会、日本神経学会にて承認を得ております。
 ただ、こちらの疾病につきましては、既存の指定難病のうちの幾つかが、この疾患概念の中に入ると考えられており、それらの疾患との整理が必要と考えております。
 説明は以上となります。
○水澤委員長 ありがとうございました。次の4疾患の御説明をいただきました。
 1つずつやっていきましょうか。まず、MOG抗体関連疾患ということでございます。これも御説明がありましたように、MOG、すなわちmyelin oligodendrocyte glycoproteinに対する抗体による免疫性の神経疾患ということになります。免疫療法がありまして、記載のところを見ますと、約半数の病気は再発せずに単相性の経過をとって、急性期治療への反応性は比較的良好であり、後遺症なく回復することも多いといったこと。一方で、もちろん再発を繰り返したり、障害が蓄積していく例もあるという記載になっていて、重症度で認定された方は約半数くらいであるということになりますので、これまでの基準からはなかなか難しいかなとはなるのですけれども、この疾患が出てきた背景は、多発性硬化症という病気の中からと言うと語弊があるかもしれませんが、かつて一部とされていた視神経脊髄炎という病気がそこから分かれて独立するというか、疾患概念が決まりました。しかしながら似ているということもあって、多発性硬化症/視神経脊髄炎というくくりで指定難病ではなっていると思いますけれども、神経脊髄炎の表現型の中からこれが出てきたという経緯がありますので、少し整合性について事務局でも検討していただければと思いました。
 私からのコメントは以上でございますけれども、委員の皆さんいかがでしょうか。
 MOG抗体関連脳症は小児科にはありますか。書いてありましたか。
○石毛委員 石毛です。御指名ありがとうございます。
 あまり聞いたことはない、少なくとも鑑別としてメジャーに上がってきたり、問題にはなっていないとは思うのですけれども、発症年齢はどこでもいいとなりますと、もちろん小児領域の患者さんもおられるかもしれません。
○水澤委員長 そうですね。突然振った形になってしまって、すみませんでした。少なくとも今、研究班からのデータはそういうことになっているということでございますので、免疫療法と重症である方々の比率がかなり少なめであるといったところは御報告のとおりかなとは思います。よろしいでしょうか。
 どうぞ。
○桑名委員 桑名ですけれども、今回の議論とは少し外れるかもしれないのですが、1つ前の疾患のNMDA受容体の抗体もそうですが、診断基準の中に抗体の測定結果は検査所見が含まれているのですが、これらのアッセイ系というのは標準化されて保険診療で測定できるのでしょうか。診断基準というには、それが多分国内の医療施設で普遍的にできるという前提かと思うのですけれども、特殊な研究施設しか測れないという状況かどうかという点は、考慮する項目の1つかなと思って質問させていただきました。
○原補佐 ありがとうございます。これらの疾患の抗体検査については、まだ研究班に確認しておりませんでしたので、保険診療でできるものかどうかは確認したいと思います。
○水澤委員長 私も保険診療のことは詳しく分からないのですけれども、測定できるラボがありまして、cell-based assayというのが非常に重要なんですね。それができるような体制にはなっていると思いますけれども、全くコマーシャルにさっとできるかというと、そうではない可能性はあります。
○石毛委員 すみません、石毛です。
 先ほどの御質問で、私ちょっと混乱しているところがございまして失礼いたしました。小児ですとADEMの鑑別、先ほど先生もおっしゃっていましたように、ADEMは神経の疾患で急激に進行する中で鑑別が必要となってくるのですけれども、そちらの中でMOGの抗体が陽性になってくるグループがいることは言われてきております。ただ、そういうグループがあるということで今後それがどうなっていくかに関しては、まだ研究途上のところがございますが、低年齢でも問題になってくる可能性はあるかと思います。失礼いたしました。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、スティッフパーソンのほうに移りたいと思います。これにつきましても御説明のとおりであります。自己抗体が出てくるということと、一部分は傍腫瘍性の性質を持っている疾患だということになります。免疫療法が一応あるということと、これは研究班に聞いていただいた結果でしょうか、免疫治療後にmodified Rankin Scale2以下に改善した割合が、GAD抗体陽性のスティッフパーソン症候群の場合には65%、グリシンレセプター抗体陽性の場合では100%という数字が出ているようです。先ほど言った傍腫瘍性症候群の比率は3.6%と非常に少ないことが、これも答えが出ているようですので、傍腫瘍性のファクターはあまり考えなくてもいいと。しかしながら、免疫療法でかなりよくなる方がおられることはあるように思います。
 スティッフパーソン、何か御意見ありますか。特にないでしょうか。
 これも、そういう意味では少し要件が外れるかもしれませんけれども、やはり37ページの診断基準で、診断のカテゴリーのDefinite、Probable、Possibleについてですが、Probableのところで検査所見の2項目を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外するとなっているのですけれども、検査の1番というのが必須になってくるのではないかと私は思うのですが、今の基準のつくり方でいいのかなという点をちょっと思いました。ですので、ここも少し見直していただいたらいいのではないかと思います。
 それでは、次に移らせていただいてよろしいですか。痙攣性発声障害でございます。これも記載のとおりなのですけれども、声を出そうとしたときに声が震えるような状況になりまして、コミュニケーション機能が非常に障害されると思いますので、QOLは非常に悪くなるかと思うのですけれども、生命予後といった形では問題にはならないといったことがありますので、これで見ますと重症度の比率でいきますと10%くらいという数字が出ていますので、この辺が少し指定難病としては問題になってくるかなという気はいたします。
 いかがでしょうか。耳鼻科の先生はおられましたか。今日は小川先生はおられないですね。残念ながら小川先生がおられませんけれども、そのほか御意見等はおありでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この疾患はそういうことでございます。
 そして、47ページ、遺伝子異常による発達性てんかん性脳症でございます。これは御説明があったとおりなのですけれども、読んで字のとおり遺伝子の異常によって発達性に脳の障害があって、それによっててんかんも出てくる。両方の機序で障害が出てくるという疾患で、非常にたくさん遺伝子も知られていると思います。その一部が既に鑑別診断のところがあったかと思うのですけれども、大田原症候群とかてんかんを伴う脳障害の指定難病が幾つかあると思うのですが、そういったものとの整合性をとっていただくことがとても重要ではないかと思いました。それが整理されれば非常にいいのではないかと思います。これは包括病名になりますので、遺伝子の異常で発達性に脳の障害が起きて、てんかんも伴うという方は全部含んでくると思いますので、これまでの疾患と整合性をとって今後認定をしていくということで、事務局がさっきおっしゃったような配慮が必要ではないかと思いました。
 これについては、いかがでしょうか。
○石毛委員 すみません、石毛です。
 先生のおまとめで全く問題ないと思うのですけれども、Probableの2、50ページの「E.診断のカテゴリー」でございますが、Cが遺伝学的検査となっておりまして、この場合、遺伝子異常による発達性てんかん性脳症ですので、今の状況ですと遺伝子検査とそのとき言われている原因遺伝子を見つけることは必須ではないかと思うのですが、Probableの2がCが入らないことについて、研究班の先生方がこれを入れるべきだと思われる根拠があるのであればもちろんそれでいいとは思うのですけれども、Cを抜いてしまいますと、かなりいろいろなグループの疾患が入ってしまうのではないかということを危惧しております。
○水澤委員長 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。脳の障害が起きれば、てんかんはかなりの頻度で起きると思いますので、それが遺伝子の異常に基づくものがたくさんありますから、そういうことが出てきますし、遺伝子を調べなければ今度は遺伝子以外の原因のものがたくさん入ってきてしまうことになりますので、このDefinite、Probable1・2という組み分け方も含めて、この部分については検討していただいたほうがいいのではないかと思います。
 関連するのですけれども、「C.遺伝学的検査」のOMIMに記載されている遺伝子をと書いてありますけれども、ほかの疾患もそうですが、こういう書き方ではなくて、ここにそれをリストアップしていただくことが必要なのではないかと。例えば、筋ジストロフィーといったほかの疾患でも多くの包括病名になっていて、多くの遺伝子異常を含むものがこれまであったと思いますけれども、きちんとそれが記載されていたと思いますので、そういう形にして、今、石毛先生がおっしゃった点も注意していただくことで、きちんとした形になるのではないかと思います。先生、どうもありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、進めていただいて、次の4疾患でしょうか。お願いいたします。
○原補佐 では、次の4疾病について説明いたします。
 視床下部過誤腫症候群につきまして、55ページを御覧ください。
 平成29年度には「発病の機構が明らかでない」との要件を満たしていない、令和3年度には「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 本疾病は、視床下部過誤腫により引き起こされる病態で、笑い発作という特異的なてんかん発作、思春期早発症を特徴とするとあります。
 患者数は研究班に確認したところ500人程度、発病の機構については、視床下部過誤腫の発生にはGlI3、OFD1などの遺伝子異常の関与が疑われているが、二次性てんかん・てんかん性脳症の発症機構は十分に解明されていないとございます。
 治療方法については、笑い発作に対して、近年では定位的焼灼手術が主流とございます。長期の療養については、笑い発作は、定位的焼灼術により7~9割は消失し、笑い発作以外の発作も5~7割ほど消失するとございます。
 重症度分類は、精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて該当する患者を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ60%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本小児神経学会、日本てんかん学会、日本神経学会にて承認を得ております。
 次に、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合について、61ページを御覧ください。
 こちらは過去検討されたことはない疾患で、本疾患は紀伊半島南部やグアム島の地域に多発し、臨床病型には、ALS型とパーキンソニズムと認知症を主症状とするパーキンソン認知症複合型があります。
 患者数は約130人で、発病の機構は不明、治療方法については、L-dopaが一部の症例のパーキンソン症状に対して有効なことがあるが、有効な治療法はないとございます。長期の療養については、進行性の経過をとり、ALSでは球麻痺や呼吸筋麻痺が進行し、罹病期間は約3年で、PDCでは次第に認知障害や運動機能障害が進行し、罹病期間は平均7年6か月とございます。
 重症度分類は、ALS/PDC重症度分類を用いてIII以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ30%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本神経学会にて承認を得ております。
 こちらの疾患に関しましては、ALSの一病型ではないかという議論もある疾患のため、「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」かどうかという点につきましても御検討いただければと考えております。
 次に、フォン・ヒッペル・リンドウ病について、66ページを御覧ください。
 平成27年度、平成28年度には「発病の機構が明らかでない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 本疾病は、常染色体顕性遺伝を示し、脳脊髄血管芽腫、網膜血管腫、膵病変、腎病変、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍、精巣上体嚢胞腺腫などを合併する症候群とございます。
 患者数は約2,000人で、発病の機構はVHL遺伝子異常による蛋白機能の不活性化との関連が示唆されているが不明とございます。
 治療方法については、対症療法として外科的治療やインスリン補充療法、ステロイド補充療法があります。
 重症度分類は、神経系、耳、眼、腎臓、膵臓、副腎のうち、1つ以上の領域で重症、もしくは2つ以上の領域で中等症と判定された場合を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ20%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本脳神経外科学会、日本眼科学会、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本膵臓学会、日本泌尿器科学会、日本インターベンショナルラジオロジー学会、日本小児科内分泌学会、日本人類遺伝学会にて承認を得ております。
 次に、PURA関連神経発達異常症について、74ページを御覧ください。
 こちらも過去検討されたことはない疾患で、PURA遺伝子のヘテロ接合性の病原性変異を原因とする重度の知的及び運動発達の遅れを特徴とする先天異常症候群とございます。
 患者数は約100人で、発病の機構はPURA遺伝子の機能喪失変異ないしはハプロ不全が原因だが、その発症病態は不明とございます。
 治療方法は未確立で対症療法のみ、長期の療養については、多臓器にわたる症状は小児期以降も軽快せず、成人期以降も持続し、神経症状や呼吸障害、気道感染などが予後を左右するとございます。
 重症度分類は、精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分及び障害者総合支援法における障害支援区分における「精神症状・能力障害二軸評価」を用いて該当する患者を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ100%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本小児神経学会、日本てんかん学会、日本神経学会にて承認を得ております。
 説明は以上となります。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、また1つずつお願いいたします。最初の視床下部過誤腫症候群については、いかがでしょうか。御意見ありますか。
 これは前も出てきたということで御説明がありましたけれども、過誤腫と書いてあるけれども、これは形成異常であって腫瘍ではないと、わざわざお書きになっていただいております。
 論点の1つといたしましては、55ページの下「5.予後」にもあるかと思うのですけれども、特有な、診断でも重要な笑い発作が7~9割は消失するということ、その場合にはほかの発作も相当の例で消失するといった、治療法がある程度確立している疾患と言えるかと思います。その辺が前回も問題になったところだと理解しております。重症の方も全体として6割といった御報告がございます。
 ほかの先生方いかがでしょうか。よろしいでしょうか。追加で御意見いただける方はおられますか。
 それでは、先に進めさせていただきます。次が、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)という病気です。これも御説明がありましたけれども、日本で言いますと紀伊半島のほうに限局する地域性のある非常にまれな疾患ということになります。途中に書いてございますけれども、ALSにつきましては、たまってくる病原性の蛋白、TDP-43といったものを含めて、いわゆる後発性の通常のALSと変わりはないといったことも言われておりまして、こういう病態が存在することは私も含めてよく知られていますけれども、これが本当に1つの病気なのか、それとも合併しているのかといった問題もあろうかと思います。
 そういう意味で、ALSの病気をとった方はALSということで指定難病で認定されておりますので、学問的にもこれが1つの病気かどうかといったことで今、研究が進んでいると思いますけれども、これを指定難病として認定するのに適切な時期かというと、ちょっと検討を要するという印象を持っております。
 むしろPDCがパーキンソニズムを呈するわけですけれども、パーキンソニズムを呈する方で、例えば、パーキンソニズムに関わる指定難病では幾つかもう既に疾患がありますけれども、Parkinson-dementia complexという病名はなかったと思います。
 グアムのほうではこの病気は昔からあったのですけれども、現在ほぼ消失していると言われておりまして、これも非常に大きな研究対象にはなっておりますが、どちらかというとPDCのほうを取り上げてもいいのかなと。これは常に合併するのか、パーキンソニズムだけの方もおられるのかといったことで、その辺をもう少し整理していただいて、場合によってはPDCというパーキンソニズムの1つということで検討していただくのもいいのではないかと私としては思いました。
 重症度分類を用いた場合に、患者さんのどれくらいの方が重症化というところは30%になっているのですが、例えば今のような議論でALSと考えた場合、ALSが合併することがほぼ必発だと考えた場合には、ALSは100%亡くなられますので、30%という数字はかなり少ないのではないかと、ここも確認していただいたらありがたいなと思いました。
 私からのコメントはこんなところですけれども、これについて委員の先生方で何かありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次が、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL病)とありますけれども、これは先ほどの御説明どおり、重症度の方々が20%くらいしかおられないということで、血管腫に対する手術療法を繰り返さざるを得ないとか様々な医療が必要になってくる部分があるかとは思いますけれども、難病の要件としては少し不足しているのかなというところかと思います。
 フォン・ヒッペル・リンドウについての御意見はありませんでしょうか。いかがでしょう。
 どうぞお願いします。
○高橋委員 今、水澤先生が言われたとおり、基本病態は脳神経関連の腫瘍、網膜の腫瘍、腎腫瘍ということで、腫瘍性疾患によって様々な機能障害が起きるという病態だと思いますし、また「3.症状」のところに切除を行うことによって生命予後は良好である、これは腎腫瘍ですけれども、そのような記載もありますので、腫瘍による症状ということを考えた場合には、少し指定難病としては要件を満たさないのではないかとは思います。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 そのほかよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 では、PURA関連神経発達異常症でございますが、いかがでしょうか。
 こちらは石毛先生、大丈夫でしょうか。お願いできますか。
○石毛委員 御指名ありがとうございます。
 こちらも先ほどの9番、11番と同様に、小児慢性のほうでは既に指定されておりますけれども、難病では小児期の疾患になります。疾患として問題にはなりますけれども、病気をどのようにグループ分けしていくかというところなのかと思っております。治療法もなく、こちらの重症度のグループ分けにしますと100%ということなので、難病のグループ分けにはしっかり入ってくるとは思うのですが、いかがでしょうか。
○水澤委員長 大変難しい課題ですね。学会で大いに議論していただくといいと思うのですけれども、我々にも関係してきますよね。病名をどうやって区分していくか、病気をどうやって分類していくかに関わってきますので、現段階ではすごく鑑別上問題になる病態・病気というのはありますか。
○石毛委員 遺伝学的検査ができますので、それをきちんとやっていただければ、こちらに鑑別疾患も挙げてありますし、Definite、Probableの症状、主項目・副項目をどう持っていくかだと考えます。例えば、ProbableのAですけれども、3項目全て筋緊張低下、重度精神運動発達遅滞、摂食障害・胃食道逆流といいますと、かなりの神経の症状を持ったお子さんが合致すると。副項目のうち2項目以上といいますと、例えば、痙攣発作と低体温もそれなりの数が入ってきてしまうような気がいたします。鑑別疾患に関してはしっかり述べられておりますし、例えば、Rett症候群やAngelman症候群など明確な診断がつけられるものもあるのですけれども、ProbableAが主項目3項目と副項目2項目でほかのものが除外できればいいという話になりますと、完全にこの診断と言ってしまっていいのかどうかというグループも入ってきてしまうと思います。
 ただ、現実的には先生方も御存じのとおり、臨床の現場でこれは絶対違わないけれども遺伝子は今回の技術では見つからないという患者様が一定数いらっしゃるのは事実ですので、その辺をどのように考えていくかだと思います。
○水澤委員長 ありがとうございます。これは本当にこれまでもいつも感じていたことで、まさに先生のおっしゃるとおりですよね。遺伝子診断ができる、あるいは遺伝子診断をしなければいけないような自体になってきますと、今の問題は非常にあると。これは先生もおっしゃったように、鑑別診断がここにたくさん疾患が挙がっていますけれども、これを正確に鑑別するためには遺伝子検査が必要ですよね。
○石毛委員 おっしゃるとおりです。
○水澤委員長 例えば、筋強直性ジストロフィーと書いてありますけれども、これは筋ジストロフィーのガイドラインでは遺伝子診断をしなさいと。遺伝子診断しなくても診断ができるにもかかわらず、遺伝診断しないと診断できないような記載になっていますので、DefiniteとProbableはある意味では鏡の裏と表のような関係になっていて、PURA遺伝子を調べればそれでDefiniteと診断できてしまう。ですから、これも先生がおっしゃるように今のような問題があるのですけれども、診断のカテゴリーを少し工夫していただいて、不適切なものが入ってこないような工夫をしていただくことが大事ではないでしょうか。事務局で、ぜひそれは話し合ってほしいと思います。
○石毛委員 おっしゃるとおりだと思います。小児慢性になっていて治療法もなくて、重症度もかなり進んでいくものでありますと、今後、成人例が増えてくるということも考えての申請ということで、そちらに関しては非常に理解ができる部分ですので、あとはこちらをどのようにカテゴライズしてきちんとやっていただくかというところかと思います。
○水澤委員長 ありがとうございます。今のところも含めて御議論はありますか。御意見がありましたら、ぜひお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 そうすると、一番最初のLMNB1関連大脳白質脳症と今のPURA関連神経発達異常症は適合するといった感じかと思います。
 では、次に進めてください。
○原補佐 続きまして、循環器疾患について3疾病の御説明をいたします。
 完全型房室中隔欠損症につきまして、81ページを御覧ください。
 こちらは過去検討されたことはない疾患で、胎生期の心内膜床形成癒合不全により心房中隔一次孔欠損と心室中隔欠損を伴い、乳児期から重篤な心不全症状を呈し、多汗、多呼吸、哺乳不良、体重増加不良等を認めるとございます。
 患者数は研究班に確認したところ約4,000人で、発病の機構は胎生初期の心臓形態形成の異常とございます。
 治療方法は、心内修復術で、初回手術後に再手術を必要とするのは15%前後とございます。長期の療養については、小児期に行われる心内修復手術後の遺残症例で、成人期以降に慢性心不全、肺高血圧を来すとございます。
 重症度分類は、NYHA心機能分類を用いてII度以上、もしくはmodified Rankin Scaleの評価スケールを用いて3以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ5%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本小児循環器学会にて承認を得ております。
 次に、川崎病性巨大冠動脈瘤について、90ページを御覧ください。
 平成30年度には「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていない、令和3年度には「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 川崎病に罹患した結果生じた巨大冠動脈瘤で、患者数は1,000~1,500人、発病の機構は、川崎病により引き起こされた冠動脈炎のために動脈構築が破壊され瘤が生じるとございます。
 治療方法については、血栓予防として抗血小板薬、抗凝固薬の内服、心筋虚血を伴う冠動脈狭窄・閉塞例に対してはカテーテル治療やバイパス手術の適応とございます。長期の療養については、虚血性心疾患の発症予防と治療による出血性合併症の管理が必要とあります。
 重症度分類は、巨大瘤もしくはNYHA心機能分類を用いてII度以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ0.1~0.2%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本川崎病学会にて承認を得ておりますが、日本医学会分科会の承認は得られておりません。
 次に、ホルト・オーラム症候群について、98ページを御覧ください。
 過去検討されたことはない疾患で、母指や橈骨の異常を主体とする上肢の形成異常と、心臓の異常を伴う症候群とございます。
 患者数は約500人で、発病の機構はBX5の遺伝子異常により、母指や橈骨の異常を主体とする上肢の形成異常と心臓の異常が発症することが考えられているが、発症メカニズムの詳細は不明とございます。
 治療方法は、手の異常に対しては整形外科的な再建手術、胸郭や脊柱の異常に対しては装具による矯正や外科手術、心臓の異常に対しては心臓外科手術、カテーテル治療、ペースメーカー装着とございます。長期の療養については、先天性心臓疾患が予後を左右するが、多くの症例の心臓異常は心房中隔欠損、心室中隔欠損などの単純性欠損のため、外科治療後の生命予後は一般的に良好とございます。
 重症度分類は、NYHA心機能分類を用いてII度以上、もしくはmodified Rankin Scaleの評価スケールを用いて3以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ20%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本小児循環器学会にて承認を得ております。
 御議論をお願いいたします。
○水澤委員長 では、今、御説明いただきましたので、循環器の筒井先生からコメントをいただければと思います。よろしくお願いします。
○筒井委員 私のほうからコメントさせていただきます。
 まず、13番の完全型房室中隔欠損症ですけれども、この病気は多くの患者さんが乳幼児期に心内修復術をお受けになっておられると思います。手術をお受けになっていても、成人期となった遠隔期に房室弁閉鎖不全や房室弁の狭窄、さらに遺残の短絡などが残存する患者さんがおられるということだと思いますけれども、基本的にはこれらは心内修復術の遺残症もしくは合併症ということで、手術に関連した後遺症という位置づけになると思います。
 したがって、このような患者さんでは再手術の適応があるかどうかという検討を行うと同時に、合併している心不全、肺高血圧に対しては、早く治療を行っていただくということで、再手術も含めて治療法が全くないというわけではないのではないかと思います。
 同じような先天性心疾患の中で、210の単心室症、211の左心低形成症候群、212の三尖弁閉鎖症、213の心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症というのは、フォンタン循環という手術を行うのですけれども、このフォンタン循環というのは特に成人期になると破綻して術後も心不全が継続することがしばしば認められますので、フォンタン型の手術を行ってもそれが根治的な手術ではないという位置づけで治療法が確立していない。さらに、長期療養を必要とするということで、特定疾患の要件を満たすと判定されています。
 したがいまして、完全型房室中隔欠損症という先天性心疾患も同じように、こういった術後の患者さんの場合にはフォンタン手術の例を参考にして、指定難病の要件を満たすかどうかについて再度検討していただくのがよろしいのではないかと思いました。
○水澤委員長 ありがとうございます。
 ほかの先生方はいかがでしょうか。1つずつやっていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。非常に明解にコメントしていただいたと思います。
 もし、なければ次に、川崎病性巨大冠動脈瘤についてはいかがでしょうか。
○筒井委員 川崎病は冠動脈に動脈瘤を合併することは時々ありまして、そのような患者さんは成人期になっても経過観察が必要とされています。しかしながら、冠動脈流自体はあくまでも川崎病の合併症という位置づけであることと、瘤自体は巨大であっても多くの場合は無症状となります。ただ、巨大な冠動脈瘤を合併している場合には、心筋梗塞を発症するリスクが高いと捉えられていますので、抗血小板薬や抗凝固薬による予防を行うという治療が一般的になっています。
 ただ、心筋梗塞の発症リスクが高いということで特定疾患になっている家族性の高コレステロール血症などに比べると心筋梗塞発症リスクはさほどではないと思いますし、今申し上げた心筋梗塞発症予防のための治療として、抗血小板薬、抗凝固薬による薬物治療は家族性高コレステロール血症の場合に行う、いわゆるアフェレーシスなどに比べると侵襲性の高い治療を頻回に継続的に行わなければならないほどではないと思いますので、治療法が確立していない、長期の療養が必要となる指定難病の要件を満たすかどうかは疑問があると思います。
 先ほどもありましたが、承認学会についても日本川崎病学会で承認を受けておられるということですけれども、日本小児循環器学会もしくは成人ということですと日本循環器学会等で承認について検討していただく必要があると思います。
 以上です。
○水澤委員長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。追加のコメント等ありますでしょうか。ありがとうございます。これも非常に明解なコメントをいただいたと思います。
 それでは、3番目のホルト・オーラム症候群については、いかがでしょうか。
○筒井委員 ホルト・オーラム症候群は、我々、成人の循環器内科で診療することはほとんどございません。というのは、合併する先天性心疾患として、心房中隔欠損症もしくは心室中隔欠損症がよく知られていますけれども、単純性欠損のことが多くて、治療法として外科手術もしくは最近はカテーテルによる欠損孔の閉鎖というのが可能だと言われています。このような外科手術やカテーテル治療をお受けになった後の生命予後は良好で、手術後も薬物治療が継続になるという患者さんも非常に少ないと想定されています。そのようなことらか、我々の成人の循環器内科でこのような患者さんを治療するのはそれほど多くないということではないかと考えています。
 したがいまして、「治療方法が確立していない」と「長期療養を必要とする」という指定難病の要件を満たすのは、やや難しいのではないかと感じます。ただ、これはあくまでも先天性心疾患についてであって、上肢の先天異常を伴うというのはこの疾患の重要な症候ですので、その部分については今申し上げたことは全く考慮していない、心臓についてだけ判断するとそのように考えているということでございます。
 以上です。
○水澤委員長 ありがとうございます。ほかにはコメント等ありますか。
 上肢については、記載を見ると手術療法あるいは理学療法といったことで対応がされていて、治療後の生命予後もよろしいように思います。
 何か追加などありましたら、お願いできませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この3疾患につきましては、いずれも指定難病としてはなかなか対応は難しいのかなといったところかと思います。よろしいでしょうか。
 では、また次に進めていただけますか。
○原補佐 続きまして、代謝疾患について3疾病の御説明をいたします。
 遺伝的インスリン抵抗症について、106ページを御覧ください。
 こちらは過去検討されたことはない疾患で、遺伝的な原因によるインスリンシグナル伝達障害により、高度にインスリン作用が低下するために生じるとございます。
 患者数は約200人で、発病の機構は、遺伝子異常によるが病態の解明は不十分とございます。
 治療方法は、糖尿病に対しては経口血糖降下薬やインスリンを用いるとございます。長期の療養については、小児期から進行性であることが多く、生涯にわたって糖尿病治療を必要とするとございます。
 重症度分類は、中等症(糖尿病の薬物治療の必要があるもの)以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ80%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本糖尿病学会にて承認を得ております。
 次に、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症について、111ページを御覧ください。
 こちらも過去検討がされたことはない疾患で、ミトコンドリアでの脂肪酸β酸化が障害されるためエネルギー需要の多い脳や、脂肪酸β酸化が盛んな心臓、骨格筋、肝臓などが障害されやすく、発熱や運動などのエネルギー需要が増大したときや、下痢・嘔吐・飢餓などのエネルギー摂取が低下した際に、重篤な低血糖や横紋筋融解症などを来すとございます。
 患者数は340人で、発病の機構はACADVL遺伝子の先天的異常が原因とございますが、遺伝子型に対応する臨床像についても不明な点が多いとございます。
 治療方法は未確立で、食事療法や運動制限で長期の療養が必要とございます。
 重症度分類は、先天代謝異常症の重症度評価を用いて、中等度以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ60%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本先天代謝異常学会にて承認を得ておりますが、日本医学会分科会の承認は得られておりません。
 次に、中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)について、119ページを御覧ください。
 平成27年度、令和3年度には「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされました。
 心筋細胞、血管平滑筋細胞等において、本来のエネルギー源である中性脂肪(TG)の分解が何らかの原因で障害されるため、細胞内にTGが蓄積するとともにエネルギー不全が生じるとございます。
 患者数は692人で、発病の機構は不明、治療方法については、心不全、狭心症、不整脈に対する内科的あるいは外科的な標準治療を受けるが、治療抵抗性とございます。長期の療養は必要で、これまで診断された812例中120例が死亡しており、原因のほとんどは心臓死あるいは突然死とございます。
 重症度分類は、TGCV重症度分類を用いて中等症以上を対象としており、重症度分類を用いた場合、対象となる患者はおおよそ90%と報告されております。
 診断基準、重症度分類は、日本核医学会、中性脂肪学会にて承認を得ておりますが、循環器系学会の承認は得られておりません。
 説明は以上となります。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 今、御説明のあった3疾患について御議論をお願いしたいと思います。
 最初は、遺伝的インスリン抵抗症でございますが、いかがでしょうか。
 どうぞお願いします。
○石毛委員 こちらも小慢からですけれども、遺伝的にインスリンの受容体の変異があって、インスリンは分泌されているものの効かないという疾患群となってまいります。確かに重症の患者様におきましては、ほぼほぼインスリン抵抗性が著しくて、幼少期にかなり重篤な状況となって亡くなられる患者様もいらっしゃるのですが、病気の中でもかなり幅がありまして、通常の糖尿病の治療で、あとはインスリンの量がちょっと多め、体重当たり1単位以上を用いて治療することが可能というグループもございます。
 そうなってまいりますと、重症のグループということで確かに重いグループはあるのですが、糖尿病の患者様と同じような内服治療とインスリンの治療を行って、コントロールは難しいけれども治療ができるといった患者様に対して、難病としていくのかどうか。その辺を長期の療養が必要だと認定するかどうかという点が問題になってくるのではないかと思います。
 次の、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症におきましては、治療法がない疾患、先天性代謝異常症の一つとなっております。成人期になっても症状が発現したり、成人期での発症もありますので、心筋の合併症もありますし、長期の治療は必要となる、治療法はないというところで合致いたします。
 あとは、重症度と診断基準についての学会認定をどう見るかという部分の問題ではないかと思いますので、これはあくまでもルール上の問題ですので、現段階で日本医学会分科会を原則と見るか、必須と見るかという制度上の問題かと考えます。
 最後に、中性脂肪蓄積心筋血管症に関しましては、学会認定がどうかということと、循環器の疾患という部分も多いかと思いますので、もし、筒井先生、御意見があればいただければと思います。すみません。
○水澤委員長 石毛先生、3疾患についてのコメントありがとうございました。
 筒井先生、今お名前が出ましたけれども、いかがでしょうか。最後の疾患ですね。
○筒井委員 中性脂肪蓄積心筋血管症についてですが、石毛先生がおっしゃったとおり、診断基準について以前のときにも、基本的には日本循環器学会の学会承認が必要であるという判断になっておりますので、やはりそこは今回もその指摘は踏まえていただく必要があるのではないかと思います。
 あと、内容につきましては、この疾患がいわゆる左室駆出率が40%まで低下するとか、びまん性の冠動脈硬化が非常に重要な一つの疾患の特徴ということで挙げられているのですけれども、この左室駆出率の低下やびまん性冠動脈硬化は冠動脈疾患や心筋疾患でも非常に多く認められる病態ですので、それは糖尿病等にも非常に関連が深いことが知られておりますので、このような疾患が鑑別が必要であるという位置づけになっているのですけれども、基本的にはこれらの疾患が除外されているのが非常に重要な点ではないかと思います。そのような中性脂肪蓄積心筋血管症という患者さんがおられるのではないかとは考えられますので、そのあたりの診断基準をより検討していただいて、学会承認を受けていただく方向で進めていただくのがよろしいのではないかと思います。
 以上です。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 最後の疾患、中性脂肪蓄積心筋血管症について、お二方からコメントをいただきましたので、こちらを先に進めたいと思うのですけれども、お二人とも共通していたのは循環器疾患という形になりますので、循環器学会、メーンの学会で認定してもらうことが重要ではないかということだと思います。それは恐らくこの疾患を広く周知していただくことにもつながると思いますので、申請者の方々、患者にとってもいいことかなと思います。
 これは、事務局にもし情報があればですけれども、これは今、治験をされていると。大阪大学のほうで開発されて、CNT-01、トリカプリン、トリスデカノインというものでございまして、これがどんどん進んでいて、先駆け審査の対象になるとか、現在、第III相まで来ているという記載がされているかと思うのですけれども、今どの辺まで。その成績がよければ非常にすばらしいですし、難病ではなくなる可能性もあるかと思うのですが。
○山田専門官 ありがとうございます。事務局でございます。そのあたりは研究が進んでいるということですので、我々のほうも注視していきたいと思います。
 以上でございます。
○水澤委員長 AMEDの支援も受けておられると思いますので、そちらからでも分かるかと思いますので、ぜひ御検討ください。
 では、現段階では先ほどの要件のところで、今この段階で指定難病とお認めするのは少し早いのではないかということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。特に御異論ないように思いました。
 では、戻りまして、遺伝的インスリン抵抗症につきましては、いかがでしょうか。石毛先生からコメントいただきましたけれども、通常の2型糖尿病との鑑別もなかなか難しくなってくるかと思いますが、いかがでしょうか。一部非常に重篤な方がおられるというのは多くの疾患であり得ると思いますので、それが大部分の方が重症であるといったことが必要なのではないかという指定難病の考え方のベースになっているかと思いますので、そういう意味で、かなりの方が重症ということでない場合にはなかなか難しいかなという気がいたします。重症度が80%でしょうか。
 インスリン治療で2型糖尿病との区別はできますでしょうか。この辺コメントある先生、いかがでしょうか。
 持田先生、御参加でしょうか。先生、コメントがもしおありでしたら。
○持田委員 糖尿病のことなのですけれども、先ほどのお話を伺うと、小児に発症して最も重症な方は小児期に大体命を落としてしまうと思うんですね。そうではない方が成人になっても、インスリン治療で対応しているという理解でよろしいでしょうか。
 そうなりますと、小慢のほうで言えば、ある意味重症でない方が成人になって、成人の1型糖尿病、2型糖尿病と同じようにインスリン治療としているということになりますから、あまり指定難病のイメージにはそぐわないなと感じました。
 この辺は私も糖尿病が専門ではございませんが、石毛先生のお話などを伺うと、そのように感じております。
○水澤委員長 ありがとうございます。
 石毛先生、今のような理解でよろしいでしょうか。
○石毛委員 そのように思われます。重症度基準が薬物療法を何らか必要とするという基準にされますと、確かに重症度は一定数いくのだろうと思うのですが、インスリン投与と経口内服の血糖降下剤の治療をされている方を重症と線引きするのが適切なのかというところの重症度の診断基準になろうかと思います。もちろん、研究班がこのように重症度を出してきたのは理由があると思いますので、そちらがつくられた理由、非常に重症であって糖尿病とは全く違うという研究成果がおありであれば、それに対してお返事をいただいて検討させていただくという順番なのではないでしょうか。
○水澤委員長 ありがとうございました。今のお話は109ページの重症度分類で、中等症というのが「糖尿病の薬物治療の必要があるもの」となっているところですよね。これは非常にあっさりと書いてありますが、通常の薬物療法であってもここに入ってきてしまう。治療していらっしゃる方はみんなここに来るということで、それで8割程度だとすると、今のような議論も成り立つかと思います。そこは事務局でしっかり確認していただいて判定させていただければと思いますが、今のままだとなかなか難しいかなといったところかと思います。
 そういうことでよろしいでしょうか。追加の御意見等はありませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 そうましたら、残っているのが極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症でございます。これも石毛先生から先ほどコメントいただきましたけれども、学会承認に関するルールはもちろん大事かなと思うのですが、1つ教えていただきたいのですけれども、食事療法のことが少し書いてございますよね。それをきっちりやると、ある程度効果があるようには記載があるのですが、これはどの程度有効なものなのでしょうか。
○石毛委員 こちらは、実際のところ低脂肪食が有効とされているのですけれども、日本人の場合、欧米に比べますとそもそもが低脂肪食ですので、日本人の皆さんであれば基本的にされていると。あとは、MCTオイルなどにつきましては、発症予防にはなるとは言われておりますが、それを止めるほどの力はないというところかと思います。お使いになっている人とお使いになっていない方の比較についての回数が明確にはないと思います。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 これは、新生児マススクリーニングに入っていて、発見されない症例もあるという記載がありますし、当然でしょうけれども、そうしますと、相当の方がチェックされているというか、患者数が1,300と書いてありますが、そういうデータもどこかにあるのでしょうか。学会等には。
○石毛委員 マススクリーニングデータとしては、こちらは統計を取るものですので研究班にあるかと思います。VLCADグループ調査の問題点としましては、これは世界的にですが、スクリーニングでは確実に見逃しの症例が出てきて、そういった症例は技術的な限界で、新生児期の検査だけでは見つけきれないとなっております。
○水澤委員長 ありがとうございます。
 そうしますと、先ほどの学会承認のルールに関して、しゃくし定規にやる必要はないと思いますので、承認の中身がどうなっているかを確認していただくと、今の議論ですと要件としては合致するかなという感じかと思いますが、研究班とお話しいただくことはできますか。
○中村補佐 では、研究班に確認させていただきます。
○水澤委員長 ありがとうございます。
 今の3つの疾患について、いかがでしょうか。
 どうぞ。
○桑名委員 桑名ですけれども、この疾患の重症度分類を見ますと、日本先天代謝異常学会の重症度評価ということで、中等度以上は合計が3点以上ということになるのですが、個々の項目を見ていきますと、1点というのが、ほぼほぼ何も機能障害を認めるような項目がなく、それの合わせ技だけでも中等症になってしまうという基準のように思います。これ自体は多分この疾患に特異的なものではなくて、幅広く先天性の代謝疾患についての重症度評価なのだと思いますが、重症度分類の中等症以上がどのくらいかという根拠となるデータについて、これだと少し不十分かなと思いますので、研究班に確認していただければと思います。その内訳で、具体的にどういう点数分布で中等度以上の方が60%おられるという記載になっているのかという情報を集めていただいたほうがよいと思います。
 以上です。
○水澤委員長 ありがとうございました。
 先ほどのことに加えてというか、中身になると思うのですけれども、今のお話はぜひ伺っていただきたいと思います。私たちが拝見してリーズナブルだと考えるような基準、数値になっているかが大事かなと思います。
 ここには載っていないのですけれども、これまで代謝性疾患の重症度分類はよく使っていましたよね。今、私の手元にはないのですけれども、それを我々も見ながら研究班からの御回答を加えて検討したいと思います。よろしいでしょうか。
 ほかにはいいですか。今の3つの疾患につきましては。ありがとうございました。
 これで今日の予定の疾患は終わりですかね。全体として一番最初から12疾患につきまして、御意見等をいただければと思いますけれども、何かありますか。よろしいでしょうか。
 では、事務局からおまとめをお願いできますでしょうか。それで、もう一回御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○原補佐 では、本日のまとめとしまして1つずつ確認していきます。
 1つ目のLMNB1関連大脳白質脳症に関しましては、承認されたと認識しております。
 2つ目のCOL4A1/COL4A2関連脳小血管病につきましては、重症に該当する割合が低いことから、「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。また、診断のカテゴリーの再検討が必要とコメントをいただいております。
 3つ目の神経核内封入体病に関しましては、重症に該当する割合が低いことから「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。こちらにつきましても、診断のカテゴリーの再検討が必要とコメントをいただいております。
 4つ目のNMDA受容体抗体脳炎に関しましては、免疫療法での治療効果があることから「治療法が確立していない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 5つ目のMOG抗体関連疾患に関しましては、重症に該当する割合が低いことから「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 6つ目のスティッフパーソン症候群に関しましては、免疫療法での治療効果があることから「治療法が確立していない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。こちらにつきましても、診断のカテゴリーの再検討が必要とコメントをいただいております。
 7つ目の痙攣性発声障害に関しましては、「治療法が確立していない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 8つ目の遺伝子異常による発達性てんかん性脳症に関しては、既存の指定難病のうちの幾つかが、この疾患概念の中に入ると考えられることから、今後さらに整理が必要なため、現時点では「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。こちらも診断のカテゴリーの再検討が必要とコメントをいただいております。
 9番目の視床下部過誤腫症候群に関しましては、こちらも治療効果があることから「治療法が確立していない」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 10番目の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合に関しましては、今後さらに研究が必要なため、現時点では「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 11番目のフォン・ヒッペル・リンドウ病に関しては、重症に該当する割合が低いことから「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 12番目のPURA関連神経発達異常症に関しましては、診断のカテゴリーの再検討が可能かどうか研究班に確認した上で、承認の方向であると認識しております。
 13番目の完全型房室中隔欠損症に関しては、重症に該当する割合が低いことから「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 14番目の川崎病性巨大冠動脈瘤に関しては、川崎病の一合併症と考えられることから「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていない、また「長期の療養を必要とする」、また「治療法が確立していない」との要件に関しても要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 15番目のホルト・オーラム症候群に関しては、重症に該当する割合が低いことから「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 16番目の遺伝的インスリン抵抗症に関しましては、糖尿病に対する内服インスリン治療があることから「治療法が確立していない」、また「長期の療養を必要とする」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 17番目の極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症に関しましては、研究班への確認が必要な疾患と認識しております。
 18番目の中性脂肪蓄積心筋血管症につきましては、過去の委員会で指摘されている循環器系学会の承認得られていないこと、また、診断基準について再検討が必要なことから、「診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている」との要件を満たしていないと判断することが妥当とされ、承認は見送りになったと認識しております。
 以上となります。
○水澤委員長 取りまとめ、ありがとうございました。
 1番から18番まで御検討いただきましたけれども、今のまとめについて御意見や補足はありますでしょうか。
 では、私から。5番目のMOG抗体関連疾患で、免疫療法がかなり有効だということも一つあるかと思います。関連して、NMO(視神経脊髄炎)が指定難病に認められていると思いますので、それと比較検討は一応しておいていただきたいなと思っています。
 それから、7番の痙攣性発声障害で、治療法のボツリヌス注入療法の確立はおっしゃっていただいたと思うのですけれども、長期の療養をするというか、重症の方が少ないということも大きな理由だったと思いますので、それも追加していただければと思います。
 私からは以上です。
 ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。特になければ、本日検討を予定した疾患は以上になります。
 事務局から今後の予定とか御説明があったら、お願いいたします。
○中村補佐 委員の皆様方、長時間にわたり御議論いただきまして誠にありがとうございました。
 次回、第55回の指定難病検討委員会の日程ですけれども、令和6年2月6日に小児慢性特定疾病検討委員会との合同開催を予定しております。詳細については後日、御案内申し上げます。
 事務局からは以上となります。
○水澤委員長 それでは、第54回の指定難病検討委員会はこれで終了といたしたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。