第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課

日時

令和6年3月14日(木) 10:00~12:00

場所

WEB会議にて開催
(厚生労働省 専用第21会議室:東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

(1)RSウイルス感染症の予防について
(2)HPVワクチンについて
(3)その他

議事

議事内容
○溝口予防接種課課長補佐 定刻になりましたので、第24回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議事でございますが、公開・頭撮り可としております。また、前回と同様、議事の様子はYouTubeで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。
なお、事務局で用意しているYouTube撮影用以外のカメラ撮りにつきましては、議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては、御理解と御協力のほどお願い申し上げます。
また、傍聴される方におかれましては「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
続きまして、委員会委員に改選がございましたので、御報告させていただきます。
神谷元委員が3月1日付で委員を御退任され、新たに3月4日付で国立感染症研究所感染症疫学センター主任研究官の森野紗衣子委員が着任されております。
次に、本日の出欠状況について御報告申し上げます。
現在、委員8名のうち8名全員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令の規定によりまして、本日の会議は成立したことを御報告申し上げます。
また、本日は、参考人といたしまして、岡田賢司福岡看護大学基礎・基礎看護部門、基礎・専門基礎分野教授、神谷元三重大学大学院医学系研究科公衆衛生・産業医学分野教授に御出席いただいております。
本委員会の資料につきましては、あらかじめ送付させていただいております電子ファイル及びお手元の配付資料で閲覧する方式で実施いたします。番号01の議事次第及び委員名簿から番号11の利益相反関係書類までを御用意しております。資料の不足等、不明な点等ございましたら事務局までお申し出ください。
なお、申し訳ございませんが、冒頭の頭撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力のほどお願いいたします。
(報道関係者退室)
○溝口予防接種課課長補佐 それでは、ここからの進行につきましては、鈴木委員長にお願いいたします。
○鈴木委員長 皆さん、おはようございます。
それでは、議事を始めていきたいと思います。
最初に、事務局から審議参加に関する遵守事項等について報告をお願いいたします。
○溝口予防接種課課長補佐 引き続き、事務局より御報告申し上げます。
審議参加の取扱いについて御報告申し上げます。
本日御出席いただきました委員、参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づきまして、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受け取り状況、薬事承認等の申請書類への関与について申告いただきました。各委員及び参考人からの申告内容につきましては、番号11の利益相反関係書類を御覧いただければと思います。
申告の結果、本日の議事内容に関しまして「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当する委員、参考人はいらっしゃいませんでした。
各委員、参考人におかれましては、毎回繰り返しのお願いで大変恐縮ですが、講演料等の受け取りにつきまして、通帳や源泉徴収票などの書類も確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願い申し上げます。
事務局からは以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、本日の議事に入らせていただきます。
議題1としまして「RSウイルス感染症の予防について」となっております。
それでは、事務局から資料について説明をお願いいたします。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局でございます。
それでは、資料1に沿って御説明させていただきます。「RSウイルス感染症の予防について」でございます。
3ページ目をおめくりいただきまして、まず、項目としましては「(1)RSウイルスワクチンに係るこれまでの経緯と薬事承認の状況」でございます。
4ページ目のRSウイルス感染症の概要です。臨床症状のところでございますが、特に乳児期早期や慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者においては、肺炎等の下気道疾患に至る場合があるとされております。
病因についてですけれども、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに少なくとも一度は感染し、何度も感染と発病を繰り返すとされております。
検査のところでございますが、病原体診断について、抗原迅速検査キットが1歳未満や入院患者等に保険適用されており、また核酸増幅検査も集中治療が行われた患者に保険適用されているところでございます。
予防・治療のところにおきまして、治療は支持療法が中心でありますけれども、パリビズマブ抗体製剤が重症化リスクの高い児を対象に保険適用されているところでございます。
5ページ目のRSウイルスワクチン等に係るこれまでの経緯ですが、平成15年に、RSウイルス感染症が5類感染症の定点把握対象疾患に追加されました。また、平成25年に、生産・流通部会においてRSウイルスワクチンが開発優先度の高いワクチンの一つに定められました。こちらに基づきまして、RSウイルスワクチン等の開発要請を厚生労働省において行っております。令和5年9月に、60歳以上に対するGSK社の組換えRSウイルスワクチンが薬事承認されました。令和6年1月に、母子免疫による新生児・乳児の予防を目的とするファイザー社の組換えRSウイルスワクチンが薬事承認されました。
また、3月ですけれども、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において以下の事項が了承されております。ファイザー社の上記の組換えRSウイルスワクチンの適応に60歳以上を追加すること、効果の持続期間が長いモノクローナル抗体製剤であるニルセビマブの生後初回のRSウイルス流行期の全ての新生児及び乳幼児等を対象とした承認、またモノクローナル抗体製剤パリビズマブ、従前からあるものですけれども、こちらの適応に肺低形成等の重症化リスクの高い5つの疾患を伴う24か月齢以下の児を追加したことでございます。
6ページ目をおめくりいただきまして、RSウイルスワクチンの薬事承認の状況です。我が国におけるRSウイルスワクチンの薬事承認の状況については、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、それぞれの効能及び効果、用法・用量等は以下のとおりでございます。
赤色のGSK社の部分ですが、高齢者における適応がございまして、用法・用量のところでございますが、60歳以上の方に1回0.5mLを筋肉内に注射するということ、また用法・用量に関連する注意としまして、本剤の効果の持続性に関するデータは得られていないということでございます。
青色のファイザー社のところですけれども、小児とありますが、母子免疫ワクチンのことを記載しております。用法・用量として妊娠24~36週の妊婦に1回、筋肉内に注射する。また、本剤は妊娠28~36週の間に接種することが望ましいとされております。高齢者におきまして、3月の部会に出されたものでございまして、添付文書としてはまだ未確定でございますけれども、GSKと同様に60歳以上の方に対して1回0.5mLを筋肉内に接種するとされております。
8ページ目以降「(2)RSウイルスの発生動向、疾病負荷等」でございます。まず、小児における疾病負荷でございます。RSウイルスは5類感染症定点把握疾患でございまして、全国約3000か所の小児科定点医療機関から報告されております。下の図が直近の動向でございますけれども、新型コロナの流行以前は秋冬に流行が見られましたが、2021年以降は夏に流行のピークが見られております。
9ページ目でございます。小児におきまして、人口における罹患率等の知見です。真ん中の表に研究を記載しております。1のレセプトデータの知見でございますが、概要としましては、対象人口当たりの外来受診と入院発生は2歳未満で多く発生しているということ、また入院の発生に関しまして、生後6か月未満で35.4/千人年、生後6~11か月で18.1/千人年でございまして、生後6か月未満で入院の発生が多いということ、また人工呼吸器使用割合は、生後6か月未満で8.9~11.4%と報告されておりまして、死亡は0例であったということでございます。
また、2は日本小児呼吸器学会のガイドラインにも収載されている知見でございますけれども、1地区における観察研究としまして、各年齢の累積人口当たりの受診と入院の発生率は以下のとおりでございます。0歳においては受診が15.9%、入院は8.4%と報告されております。ただし、こちらの知見でございますけれども、既存の知見は限られた集団におけるものでありまして、我が国全体の疾病負荷を評価したものではないということかと思います。
10ページ目は、小児の患者における重症化率等の知見です。3の知見は、入院患者の重症化の割合について評価した多施設の前向き観察研究でございます。全入院患者のうち人工呼吸器の装着は3%(25例)、死亡は0.6%(5例)発生したという論文でございます。
4の急性期病院の入院レセプト解析の論文でございますが、RSウイルスの診断で入院した5歳以下の患者5万482例を観察した研究でございます。入院患者のうち重症化、こちらは何らかの呼吸サポートを実施したものということですが、6.5~9.8%、死亡は6例、こちらは論文データより計算しますと、死亡の割合は0.012%、という報告がございます。
11ページ目は、高齢者における我が国の疾病負荷でございます。上のリード文でございますけれども、感染症発生動向調査において、高齢者のRSウイルス感染症の発生動向は把握の対象となっておりません。
また、知見の5は、前向きコホート研究としまして、65歳以上の高齢者約1000人を対象に1年間観察した研究でございます。こちらにおきまして、年間で24人、コホート人口の2.4%がRSウイルス感染症を発症し、そのうち1人、RSウイルス感染症患者のうちの4.2%が入院したという知見がございます。死亡やICU入室はいないとのことです。参考として本論文におけるインフルエンザの発症者の数字も記載しております。
知見の6は、全国4病院の前向きのサーベイランス研究でございます。肺炎患者における原因微生物を調べた知見でございますが、肺炎症状を有し胸部陰影を伴う患者2617人を対象にPCR法を用いた原因ウイルスのサーベイランスを実施しております。65歳以上の患者2037人において、RSウイルスは全肺炎の3.8~5.0%を占めたということです。また、死亡につきましては、Paramyxovirusでくくられておりますけれども、5名の死亡があり、基礎疾患の有無に分けた死亡の割合は以下に記載しているとおりでございます。基礎疾患のない患者で3.1%、慢性呼吸器疾患のある患者で4.2%、その他基礎疾患のある患者で0.9%でございます。
13ページ目は、まとめでございます。RSウイルスワクチンに係る経緯等でございますが、RSウイルスワクチンは平成25年に開発優先度の高いワクチンに指定されております。ワクチンの薬事承認の動向につきましては、先ほど述べたとおりでございます。
疾病の特性及び疾病負荷についてでございますが、RSウイルス感染症は呼吸器感染症でありまして、特に乳幼児や基礎疾患等を有する高齢者において下気道感染等による重症化を来す可能性がございます。RSウイルス感染症の予防については、ワクチンによるもののほか、乳幼児において抗体製剤によるもの(パリビズマブについては保険適用)がございます。
我が国における疾病負荷については、乳幼児及び高齢者に関して以下のような知見が得られております。乳幼児のところ、表の左側でございますが、研究デザイン等のところに記載したとおり、現時点では限られた範囲でのレセプト分析や、国内の複数医療機関における観察研究の報告がございます。結果としましては、人口における年齢層別の外来受診率や人口における入院率といった知見もあり、入院患者に占める重症化の割合、人工呼吸器使用割合といった知見もあるところでございます。右側の高齢者につきましては、研究デザイン等のところにありますが、限定的な規模の集団に対する観察研究の報告がある現状かと思います。結果としましては、限定的な規模の人口における発症の割合や入院の割合、肺炎患者に占めるRSウイルス感染症の割合といった知見はありますけれども、重症化に関する知見は乏しいところかと思います。
14ページ目は、RSウイルス感染症の予防に関する論点でございます。
乳幼児における論点として、以下記載しております。論点1、RSウイルス感染症の疾病負荷についてです。RSウイルス感染症の疾病負荷について現在得られている知見をどう考えるか、御議論いただければと思います。また、RSウイルスワクチンの定期接種化を検討する上で不足している知見はあるかという論点とさせていただいております。
論点2は、ワクチン等に関する有効性・安全性等に係る知見についてでございます。RSウイルスワクチンの薬事承認等を踏まえ、企業ヒアリング等必要な情報収集を行ってはどうか。また、母子免疫の予防接種を広く行うには、特に安全性に係る情報提供を行うことが必要と考えられますが、こうした情報提供のためにどのような情報が必要と考えられるかを論点とさせていただいております。
なお、参考資料としまして、16ページ目でございますが、米国におけるRSウイルス母子免疫ワクチンに係る安全性についての議論及び評価方法についてまとめたものをつけております。CDCによる安全性についての分析がございますけれども、CDCの評価としましては、ワクチン接種を妊娠32~36週で実施することの利益は早産や妊娠高血圧症のリスクを上回る。また、臨床試験において、ワクチン接種群で、統計学的に有意ではないが、早産や妊娠高血圧症が多く観察され、児についても低出生体重児と新生児黄疸のリスクが高かった等々記載されております。
また、導入後の安全性情報の収集方法といたしまして、1のVAERSは、我が国の副反応疑い報告に類似したものでございますけれども、モニタリング項目として、出産や児に関連する事象についても見ていくというところでございます。また、2のVSDと呼ばれるものは、全米1200万人の医療情報を用いてワクチン接種群と非接種群で疾病等の頻度の比較を行うものですけれども、こちらにおいても以下に関連するような、37週未満の早産や死産といった出産に関するアウトカムを比較していくということでございます。
14ページ目の論点3に戻ります。その他の諸論点についてですが、仮に母子免疫のRSウイルスワクチンを定期接種化した場合、接種の適正な実施の確保等のための副反応疑い報告や、健康被害救済の在り方といった制度上の論点が存在すると考えられます。こうした制度上の論点については、基本方針部会等の場において今後議論することとしてはどうかということでございます。また、RSウイルス感染症の予防の目的で薬事承認を得た抗体製剤についても、ワクチンと投与の目的や効果が類似していることから、その有効性、安全性、費用対効果等についての技術的検討を本委員会で検討することとしてはどうかということでございます。
高齢者における論点についてでございますけれども、論点1として、RSウイルス感染症の疾病負荷について、こちらは乳幼児における論点と同様でございますけれども、現在得られている知見をどう考えるか。また、定期接種化を検討する上で不足している知見はあるかということでございます。論点2についても、乳幼児と同様でございますが、薬事承認等を踏まえ、企業ヒアリング等、必要な情報収集を行ってはどうかと論点を上げさせていただいております。
以上でございます。
○鈴木委員長 資料の御説明ありがとうございました。
資料の14ページ目に論点をまとめてもらっておりますが、確かに乳幼児と高齢者は一旦分けて議論したほうがよいかと思います。ということで、まず、乳幼児に関する論点として3つ上げてもらっております。これらに関して委員の皆様から御意見あるいは御質問がありましたら、御発言をどうぞよろしくお願いいたします。大藤委員、お願いいたします。
○大藤委員 御説明ありがとうございます。
1つ目の疾病負荷についてということで御説明いただいたのですけれども、今、RSウイルス検査の迅速キットとか保険適用が1歳未満となっていることもありますので、外来受診でRSの診断された人の人数から罹患率ということで出していただいたのですけれども、こちらに関しては少しなので、過小評価されている可能性があるのではないか、実際、外来でRSの患者さんはもっといらっしゃるのではないかと思います。
一方で、入院患者さんについては検査の保険適用もありますので、入院率については妥当な数値かなと思っております。その中で10%ぐらいの患者さんが人工呼吸が必要になるということで、重症化のリスクが高い疾患であると考えております。今回、ワクチンを薬事承認されたということですので、企業ヒアリング等を行っていただくということで特に異論はないところでございます。
あと、今回、母子免疫という形になりますので、やはり安全性に関する情報が必要です。今のところ、多分、臨床試験とかでは健康な妊婦さんを対象にしたものになっていると思いますが、実際使われる形になっていくと、多胎の方とか妊娠合併症、基礎疾患を持っている人とか、そういった人というのは安全性の情報も必要になってくると思いますので、こちらについては米国での情報や市販後の安全性の調査の結果、そういったことの情報収集をしていただければと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、続いて、氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 ありがとうございます。
まず、小児に対するRSVのインパクトというところですけれども、有効性に関しては、既に知見が出ているように、疾病負担に関しましても小児において相応に高いということと、サーベイランスに関しても、定点報告ではありますが、評価する体制があるというところだと思います。
一方で、乳児を予防するワクチン戦略が日本においては非常に新しいアプローチで、妊婦さんに接種するということになりますので、接種をする人が産婦人科医ということになりますし、接種を受ける人も妊婦さんということになりますので、これまでの定期接種等で実施されたことがないプラクティスになるという点が非常にユニークな点だと思っています。ですので、制度化に当たっては、当然これまでやってきたような小児科との委託契約という形ではなく、産婦人科での接種ということが想定されるわけですし、妊婦さんというのは全ての妊婦さんが健康な子供を無事に産むということではないですから、安全性の観点で非常にセンシティブというか、感度の高いポピュレーションであるということは考慮する論点の一つだと思います。
そういう観点では、今週のNew England Journal of Medicineに報告が出ていましたけれども、同じ妊婦さんを対象にしたRSVの臨床試験で、GSKの開発したワクチンについては接種群で早産の比率が高かったということで臨床試験を中断しています。ファイザーの開発したワクチンは安全性に有意差がないということで承認されているところですけれども、先ほど大藤先生が指摘されたように、いろんなポピュレーションでデータの蓄積をしっかりと注視していく、かつ安全性の観点で、さらに幅広い関係者の理解を得るということが重要であると思います。
もう一点加えさせていただきたいのは、事務局から御説明のあった中和抗体製剤のニルセビマブは、全く同様に乳児を予防するための製剤で、健康な方、健康な乳児も含めた対象になっていますので、これまで保険適用で医薬品を補助することが多かったと思うのですが、こういった病原体への曝露歴もなくて、全くリスク因子がない方を対象とした製剤というのは、健康保険の対象とするのはこれまでされたことがないと思います。実際、新型コロナウイルスの関連製剤でも同様に曝露前の中和抗体製剤は保険診療で適用されずに公費で自由診療の枠で接種されていたというような経緯がありますから、これをどのような体制で制度に組み込んで広く接種できるようにするのかということも関わってくるだろうと思います。乳児の予防について、ワクチンと中和抗体製剤を両方やる必要があるのか、どちらかでいいのか。費用対効果を含めて、ニルセビマブをどうするかということも含めた対応がアブリスボをどのような位置づけにするのかということで重要になってくるだろうと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、幾つか御意見、それから御質問も頂いておりますので、事務局からコメントがありましたらよろしくお願いいたします。
○吉原ワクチン情報分析専門官 事務局でございます。
まず、大藤先生から頂きました罹患率等の知見について小児では過小なものがあるのではないかということでございました。そういった留意点も含めての疾病負荷をご議論頂ければと思いますけれども、御指摘のとおり、特に1番の文献ですと観察研究でございますし、こちらは検査の有無を問わない診断、ICD10コードでの論文でございますので、そういった点も留意した解釈が必要かと思います。
また、安全性の情報の収集が必要であるという御意見など、ありがとうございます。
氏家先生の御指摘につきましては、一番最後のニルセビマブをどう制度化するかにつきましても、まさに論点でございまして、本日の御意見を踏まえて、どう扱うか、検討したいと考えております。
○和泉予防接種課課長補佐 事務局です。
補足でお伺いできればと思うのですけれども、大藤先生に御指摘いただいた疾病負荷のところ、受け止めとしては、外来の受診というのは過小の可能性があるけれども、より重症のアウトカムというところに関しては一定程度評価できたのではないかというような受け止めでよろしいか、疾病負荷のところも含めて改めて知見が必要なのか、事務局案でお示ししている不足している知見はあるかというところのお尋ねに関連しましてですけれども、このワクチンの有効性も重症の呼吸器感染症を予防するという観点でいえば、一定の必要な疾病負荷が分かっているのかという受け止めも可能かと思いますが、その辺り、もしよろしければ先生方の御意見を頂戴できればと思っております。
また、御指摘いただいた安全性の評価というところはまさに重要なポイントかと思っておりまして、事務局の案でもお示ししているとおり、企業が持っている知見をヒアリングで深掘りというか、可能な限り聞いていくということがまずできるのかと思っております。
以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
原委員、お願いいたします。
○原委員 小児のほうの疾病負荷に関してですけれども、今、RSの重症感染症後に喘息様の症状が割と持続したり、そういったこと自体、小児にとっては疾病負荷に含まれてくるのではないかと思いますが、そういったRS感染症後の喘息とか、あるいは通院の回数とか、そういったデータなどはあるのでしょうか。質問です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
事務局、何かすぐ答えられるコメントがあればお願いします。
○和泉予防接種課課長補佐 事務局でございます。
すみません。私どものほうでは持ち合わせておりません。もし先生方にアイデアとかヒントがあればと思いますし、そういう観点で改めて検討はしてみたいと思いますが、網羅的に調べられないところもございますので、ぜひ先生方の御知見を頂ければありがたいところでございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
岡田先生、お願いいたします。
○岡田参考人 今の原先生の御質問に関する私が把握している報告をお伝えします。パリビズマブに関しては、注射した児と注射していない児を日本国内で前向きに約10年ぐらい追っていった研究を行ってきました。パリビズマブを注射した児は、注射していない児と比べると気管支喘息の発症率は有意に低かったです。その効果が就学前ぐらいまではもちますけれども、10年ぐらいたってくるとほとんど差がなくなりました。このような論文を呼吸器の有名なジャーナルに日本から3報ぐらい出していると思います。
以上です。
○原委員 ありがとうございます。
○鈴木委員長 岡田先生、どうもありがとうございます。
氏家先生、お願いいたします。
○氏家委員 ワクチンの費用対効果のところで、基本は適応の取っている乳児の予防というところが一つ大きな論点だと思うのですが、妊婦さんも感染症としては一般にハイリスク者扱いされるので、一定程度、妊婦のRSVによる疾病負担があるとするデータも報告されています。全体のリスクは低いながらも、非妊婦に比べて入院しやすいとか重症化率が高いみたいなデータも出ていますので、費用対効果を評価する際に、対象とする範囲は乳児だけでいいのか、先ほどの喘息のような二次的な合併症を含めた疾病負担というのも可能性としては当然ありますし、詳細を評価するというのはなかなか難しいかと思いますが、波及的な効果というのもワクチンにはあることを踏まえた評価は重要かと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
神谷先生、お願いいたします。
○神谷参考人 まず、論点1つ目の疾病負荷ですけれども、確かに定点のサーベイランスがあることはあるのですが、先ほど大藤先生がおっしゃったように1歳未満の迅速検査キットしかないということと、もう一つ、定点の先生のお話を伺っても、1年、2年たった後はかなり症状で診断しているというふうなお話もありまして、正確な疾病負荷という意味では定点サーベイランスではかなり限界があるのではないかと思います。正確な把握という意味では、ある程度しっかりとした土台を組んだ調査が必要ではないかと思います。
それから、その他の論点のところで、まず一つは、ワクチンを打つ前でも早産とか未熟児で生まれるというようなことが自然にある程度の確率で起こっているわけですけれども、そこにワクチンを打つと途端にワクチンと因果関係があるのではないかというふうな形に評価されかねませんので、未熟児とか早産、そういった周産期関係のデータについてあらかじめしっかりとベースラインを把握しておく必要があるのではないかと思います。
また、妊婦さんには現在のところ、インフルエンザとか百日咳とか接種するワクチンが既にあります。こういったワクチンと同時接種するような場合が恐らくこれからたくさん出てくる可能性があると思われますので、そういった同時接種の安全性やタイミングについても早めに検討を始めるべきではないかと思います。
以上です。
○鈴木委員長 神谷先生、どうもありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。岡田先生、お願いいたします。
○岡田参考人 先ほどの論点3のニルセビマブに関してです。今後、この技術的検討を含めて本委員会の中で検討するということでしたら、企業等のヒアリングもここで一回していただくと皆さんの理解が進むのかなと思いました。こういう抗体製剤を予防に使うのに、予防接種に関連した委員会で今後もこのような製剤を取り扱うかどうかということを討議していただければと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 岡田先生、どうもありがとうございます。
おおむね論点1から3について、御意見、それから幾つか御質問も頂いているところです。RSV感染症の疾病負荷、現状を国内で入手し得るデータとしては確かに定点サーベイランスがありますけれども、一方で、迅速診断キットの適用等、それから報告率等も含めて一定の注意、留保が必要なデータであるということは踏まえておく必要がある、そういった御意見があったかと思います。一方で、乳幼児の疾病負荷という観点から、直接的な感染症としての疾病負荷あるいは重症に関する疾病負荷だけではなくて、喘息などそのほかのアウトカムも考慮する必要があるのではないかといった御意見も頂いたかと思います。
論点2に関しては、妊婦さんにワクチンをするということで、これまで国内ではなかったということから、しっかりと安全性に関する情報収集、特に海外の情報収集と国内における情報提供が重要であるといった御意見が出たかと思います。また、氏家委員からは、妊婦さんそのものの疾病負荷もしっかりと把握することができないかといった御意見があったかと思います。
論点3に関しては、抗体製剤、今、まさに岡田先生もおっしゃっていただきましたけれども、今後、この小委で取り扱うこと自体の議論も必要であり、その場合には企業等のヒアリングも行うことが必要ではないか、こういった御意見も頂いております。
事務局から何かコメントに対する応答などありますでしょうか。
○和泉予防接種課課長補佐 鈴木先生、ありがとうございます。事務局でございます。
おまとめいただいてありがとうございます。先ほど頂いた様々な論点はまさにポイントかと思っております。
今後の見込みみたいなものも少しお話ししますと、新しいワクチンでございますので、いわゆるファクトシートを今後作っていくということが必要になってくるかと思っております。その際、分かっている知見あるいは分からないものも含めかもしれませんが、まとめていくということになるかと思っています。必要な知見、先ほど御指摘いただいたとおりかと思っておりまして、繰り返しで大変恐縮なのですが、現状、評価できているところとしては、入院であったり重症化というところは一定程度評価できているのか、あるいはさらなる評価が要るのかというところで情報収集の幅も変わってきて、ひいては感染研の先生方と連携してファクトシートを作るに当たって、どこまでスコープを広げるかというところがあると思っていますが、この辺り、入院とか重症化に関しては一定の知見があると考えてよいのか、あるいはまだ必要なのかというところについて方向性を頂ければと思っております。
その他の論点あるいは抗体製剤を含めたヒアリングについては事務局として検討させていただければと思っております。
疾病負荷のところは事務局の理解でよろしいか、あるいはもう少し検討すべき事項があるかというところを御教示いただければと思っております。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ただいまのことに関して委員の先生方、御意見、コメントはありますでしょうか。氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 ありがとうございます。
医学的には乳児でRSV感染症の疾病負担が大きいというところは一定程度コンセンサスであるというところと、日本では小児の定点報告で臨床転帰がサーベイランス上把握できないですので、全体の感染者の数、そしてアウトカム自体はレセプトデータとか、ある程度コホーティングしたグループでの評価が現実的ということになりますから、現状、一定程度の疾病負担の情報自体はあると考えています。これに追加して新しい手法でやるということは難しいように思いますので、海外の知見を集めるとか、これを大規模化して必ずやり直さなければいけないみたいなことまでは、ないよりはあったほうがいいと思いますけれども、絶対に必要というものではないのかなと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
大藤委員、お願いいたします。
○大藤委員 ありがとうございます。
私も氏家先生のお考えと同じで、RSになった子たちがどのぐらい入院するのか、人工呼吸器になる人がどれぐらいいるかとか、そういったところをお示しくださっているので、重症化のリスクといったところは、今、示していただいたところでも十分分かるかなと思っています。
あと、氏家先生もおっしゃっていたように、海外での情報とかも入れていただけると、よりいろんな情報が得られるのではないかと思いました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほかの先生方、いかがでしょうか。
私も委員の一人として申し上げておきますけれども、私も氏家先生、大藤先生とおおむね同じような意見です。それぞれのデータ自体には様々なインプリケーションがありますけれども、定点のサーベイランスが走っていて、そしてレセプトデータ等を使った推定値も一応はあるということになると思います。ただ、1つだけのデータに頼ってしまうと限界があるので、複数のデータソース、プラス海外のデータ等も援用しながら、包括的に評価することで一定程度小児における疾病負荷、それは重症、入院も含めてですけれども、というのは評価できる状況ではないかと考えているところです。
ただ、一点追加すると、特に新型コロナ流行開始以降、流行動態が大きく変わってきているということがありますので、その辺りは最新のデータを踏まえて評価していく必要があるのではないかと考えているところでです。
そのほか、先生方からコメントありますでしょうか。
事務局、いかがでしょうか。今の疾病負荷に関する意見ですけれども。
○和泉予防接種課課長補佐 先生方、ありがとうございます。事務局でございます。
承りました。最終的には、先ほど申し上げたように、ファクトシートで分析していく中で知見として整理できるかということと、あと、費用対効果の評価に関しては海外のデータでやるというのは難しいと認識しておりまして、その際、どのようにできるかというところのハードルもあると理解しております。さらに、鈴木先生は本質的なことを御指摘いただいたと思いますけれども、流行動態がかなり変わっているという認識もございますが、どこまでできるかというところは先生方とも相談しながら検討していき、必要であれば追加的な評価を行うかどうか、またお諮りさせていただければと受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、ひとまず、乳幼児に関しての議論はここで一まとめといたしまして、高齢者に関する議論に移りたいと思います。改めて、14ページの下の段になりますけれども、論点1として、乳幼児の場合と同様に、現状の国内におけるデータ、高齢者におけるRSV感染症の疾病負荷についてどのようにお考えか、今後の議論に向けてどのようなデータが必要なのか、こういった御意見について委員の先生方、いかがでしょうか。菅沼先生、お願いいたします。
○菅沼委員 先ほどの資料でもありましたけれども、幾つか不明な点があるということで、一つは、重症度についてのデータが今のところはまだ不足しているであろうということが述べられたかと思います。
もう一点は、ワクチンの持続期間がはっきりしないというところがあるかと思います。特にRSウイルスは何回も感染を繰り返すということになると思いますので、小児の場合ですと、1歳、2歳というところが重症化しやすい年齢ということで天井が見えているわけですけれども、高齢者はその先がずっとあるという形になっています。そういった意味では、いつワクチンを打ったらいいかということを考えたときにはそういった知見、持続期間のデータをより積み上げておきたいという感じはあるかなと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。大藤委員、お願いいたします。
○大藤委員 ありがとうございます。
高齢者の疾病負荷の部分については、今のところ、一シーズン、一地域の情報ということで、地域とかシーズンが違ってくると、また疾病負荷も異なる可能性があるので、もう少し情報が必要かなと思いました。特に高齢者の場合は検査の適用がないというところでなかなか難しいところはあるのかなと思いますが、疾病負荷をもう少し詳しく調べる必要があるのかなと考えました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
原委員、お願いいたします。
○原委員 私も同じく、高齢者に関しては、一シーズン、一地域だけということで、小児に比べてデータとしては不足しているという印象を持っています。特に重症化の割合についての情報が少ないと思いますし、また高齢者の重症肺炎の中で実際RSウイルスがどれぐらい寄与しているのかといった情報も十分ではないということ、それから、高齢者の中でも特に慢性の呼吸器疾患を持っているような方でどのような状況なのかといった、特にハイリスクな高齢者等の情報も欲しいと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 私も、皆様が既に御指摘されているような観点で、やはりサーベイランスがないというのが大きいのかと思います。小児は定点ですが、感染症法に基づくサーベイランスがありますから、それで傾向であるとか、細かいトレンドを評価することができると思いますが、高齢者はそういったサーベイランスがないというところが定期接種を考える際に非常に重要になってくると思います。加えて、何を言おうとしていたか忘れました。思い出したら、また言います。すみません。
○鈴木委員長 思い出したらお願いいたします。
そのほか、いかがでしょうか。
既に先生方から同じ意見を頂いておりますけれども、高齢者におけるRSV感染症疾病負荷に関しては、公的なサーベイランスもないだけではなく、研究ベースでもデータが乏しいのが実情であろうというのがおおむね関係者の共通認識かと思っております。
氏家先生、お願いいたします。
○氏家委員 すみません。言おうとしていたことは検査体制のことで、最近、コロナの関係でマルチプレックスPCR検査が一般診療でも普及して、偶発的に急性呼吸器感染症の患者検体からRSVが検出されるみたいなことはあります。検査体制でそういった新しい診断技術とかキャパシティーが広がった部分をいかに公衆衛生に活用していけるか、ちょっと話がずれますが、最近ですとそういったマルチプレックスPCRを使った検査で、通常診療と比べて、より早期の診断と早期の介入治療につながるとの報告なんかも出てきていますので、費用対効果のところはまた別の観点だと思いますが、そういった新しい技術を活用した新しいサーベイランス体制ということについても、予防接種だけの観点ではありませんが、考えていくということが重要かと思った次第です。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
おおむね現状で高齢者における疾病負荷は情報が乏しいという御意見かと思いますが、一方で、今後は定期接種化を考える上でどういった情報が必要か、データが必要なのかについても御意見を頂ければと思います。
基本的には疾病負荷、例えば外来受診者数、入院者数、重症化率、あるいは特に高齢者の場合には致死率、こういった情報が必要だろうと思いますが、それ以外にも、特にRSVに関して注意すべき病態、アウトカム等がもしあるようでしたら、御意見を頂ければと思います。
ひとまず、今、挙げたようなものになるのかと思いますけれども、よろしいですか。
あとは論点2に関して、今後の薬事承認等も踏まえてヒアリング等を行ってはどうかということですが、これに関していかがでしょうか。ヒアリングすること自体に大きく異論はないのではないかと思いますけれども、よろしいですか。
(首肯する委員あり)
〇鈴木委員長 御首肯いただいているかと思います。
事務局から高齢者のことに関して何か追加でコメントありますでしょうか。
○和泉予防接種課課長補佐 事務局でございます。どうもありがとうございます。
様々な観点、御指摘いただいたと思います。事務局側としましても、先生方と認識は一緒でございまして、どう評価していくかということのそもそも入り口のところも含めて、様々課題があると認識しております。私ども厚労省の担当課のみでは分からないところもございますので、感染研の先生やアカデミアの先生に御相談しながら、どう評価できるかというところも含めて検討させていただければと思っております。恐らく感染研の中にも一定の知見もあると理解しているので、その辺りも今後御相談しながら、お出しできるものは供していきたいと思っております。
以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
RSVのワクチンの定期接種化に関する議論は本日がスタートと認識しておりますので、様々御意見があったかと思います。一応、簡単にまとめておきますけれども、乳幼児に関しては、定点あるいはデータベースも含めて一定程度疾病負荷に関するデータはあるけれども、単一のデータだけで全てに応えることは恐らく難しいために、複数のデータ、場合によっては海外のデータ等も援用しながら、しっかりと疾病負荷を把握していく必要があるだろう、こういった意見があったかと思います。特に今後の定期接種化に向けてヒアリング等を行っていくということに関しては異論がなかったと思います。一方で、母子免疫というのは、今回、我が国においては初めてであるということから、慎重に安全性に関する情報収集、さらにはコミュニケーションに関するやり方についてもしっかりと準備をしていく必要がある、こういった意見であったかと思います。
一方で、高齢者に関しては、現状では疾病負荷に関するデータが乏しいことから、どのように情報を集めていくのか、これについての整理が必要であるといった御意見だったかと思います。抗体製剤を含めて企業等のヒアリングは行っていくということに関しても異論はなかったかと思います。
おおむねこのようなまとめになるかと思いますが、委員の先生方はよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○鈴木委員長 岡田先生、お願いいたします。
○岡田参考人 すみません。高齢者の疾病負荷に関してどのように国内で調査ができるのか、事務局のお考えを聞きたかったのですけれども、先ほど事務局のお答えを聞きました。アカデミアとしては、今後どのようなことがやれるのかを感染研の先生方と一緒に検討したいと思いました。検査法に関しては、感度は抗原迅速キットは低いですから、PCRを含めた検査を入れて高齢者の疾病負荷をどのように国内で出していくかというのは非常に大きな課題だと思います。厚労省と感染研とアカデミアで今後話合いの場を持ったほうがいいのかなと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 岡田先生、非常に重要なポイントをありがとうございます。当然ながら、厚生労働省、感染研だけで今後これを把握するというのは難しいですので、アカデミアの協力もぜひ頂きたいと思っております。
それでは、本日の議論を踏まえまして、事務局においては次の議論に向けて準備をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○和泉予防接種課課長補佐 事務局でございます。承知いたしました。
○鈴木委員長 よろしくお願いいたします。
それでは、時間も押しておりますので、議題2に移りたいと思います。議題2は「HPVワクチンについて」です。
HPVワクチンですけれども、現在実施しております女性に対する接種のほかに男性への接種について本委員会でこれまで議論を行ってきたところです。前回の令和4年8月の本委員会における議論を踏まえて、国立感染症研究所に対してファクトシートを作成するよう依頼することとしておりました。今回、ファクトシートが完成いたしましたので、この内容について確認するとともに、ファクトシートに基づいて議論を進めてまいりたいと思います。
まず、ファクトシートの内容について、現在、三重大学に移られております神谷参考人と感染研の森野委員から、費用対効果評価については池田委員から、それぞれ御説明を頂きたいと思います。
では、神谷先生、森野委員から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○神谷参考人 よろしくお願いいたします。
HPVワクチンに関してですけれども、令和5年4月1日に9価のHPVワクチンが定期接種に用いるワクチンとして位置づけられております。それに先駆けて令和3年1月に9価のHPVワクチンファクトシートということで感染研のほうからシートが提出されました。この時点では男性接種に関しての内容は含まれておりませんでしたし、9価のHPVワクチンも男性には推奨されておりませんので、当然、女性に対するファクトシートということになっておりました。先ほど鈴木委員長のお話があったように、令和4年8月に小委員会のほうで、男性に薬事承認されている4価のHPVワクチンに関する議論が開始されまして、既出の9価HPVワクチンのファクトシートに男性接種に関するファクトを補完版として作成するということになりまして、本日、その内容について御報告するということになっております。ファクトシートというのはファクトをちゃんと整備するという意味でありまして、そこに書かれていることがイコール接種する、しないということに直結するものではなく、ここで委員の先生たちに議論していただくための資料という位置づけと認識しております。
それでは、詳細については森野委員のほうから御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
○森野委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、HPVワクチンファクトシート追補版ということで、このたび提出させていただいたファクトシートの概要を御紹介させていただければと思います。
まずは、疾患の特性からです。ヒトパピローマウイルス(以下HPV)は、子宮頸がんのほかにも様々ながんと関連しており、男女ともに発症リスクがある肛門がんや頭頸部がん、男女それぞれに特有の生殖器がんの原因となります。特に高リスク型HPVと呼ばれるHPV16型や18型はこれらのがんの多くから検出され、肛門がんの代表的な組織型である扁平上皮がんの約90%はHPV感染に関連し、HPV関連中咽頭周辺がんの約90%はHPV16型を原因としているところです。また、異性間の性的接触がHPVの主要な感染経路となっています。
続きまして、疫学の状況を9ページから18ページに掲載しております。
各種関連がんと尖圭コンジローマの国内外の状況がまとめられております。全国がん登録及び人口動態統計に基づく国内のがん罹患データによりますと、ここでの年齢調整罹患率、死亡率は1985年のモデル人口で算出されたものですが、肛門がんの年齢調整罹患率は2019年時点データで(人口10万対)男性で0.49例、女性は0.38例と、女性に比べて男性の罹患率がやや高くなっております。
中咽頭部周辺がんの年齢調整罹患率は、12ページ上段のグラフにお示ししておりまして、男女ともに上昇しており、2015年、男性では(人口10万対)1.15と、1993年、約20年前に比べて約2倍となっております。中咽頭部周辺がんでは約55%がHPV感染に関連していることが示唆されております。年齢調整死亡率は2021年時点で(人口10万対)0.75となっております。中咽頭がんは男性で多く、全国がん登録のデータでは中咽頭部周辺がんの罹患者の約半数、また死亡者数の約88%を占めております。
そのほか、陰茎がん、外陰部がん、腟がんは、近年のデータでは罹患率、死亡率に関してはほぼ横ばいで推移しているところです。これらのいずれのがんも高齢になるほど死亡率が高い傾向があります。
尖圭コンジローマは、男女ともに20代が最も多く、近年では男性は横ばいからやや増加、女性は横ばいとなっております。2015年時点の国内の尖圭コンジローマの新規推定症例数は人口10万人当たり61と報告されています。
HPVワクチン導入前の疫学として、こちらは海外データでありますけれども、尖圭コンジローマ患者の約9割からHPV6型、11型が検出され、一方、HPV遺伝子型の重複感染も約半数で指摘されています。
続きまして、19ページ、予防接種の導入により期待される効果については、現在、国内で男性への接種が承認されているのは4価HPVワクチン(ガーダシル)で、男性への接種では肛門がん及びその前駆病変と尖圭コンジローマの予防が効果・効能として薬事承認されているところです。前述のとおり、HPV16型、18型は男性のHPV関連がんである肛門がん、陰茎がん、中咽頭がん、またHPV6型、11型は尖圭コンジローマの主な原因になっております。集団予防という観点では、性的区別のない(gender neutral)接種によって女性の尖圭コンジローマの予防効果も高まるという報告があり、男性への接種により女性の子宮頸がんやHPV関連がんの予防にもつながる可能性があります。
続きまして、有効性の観点は20ページから27ページに掲載しております。
4価HPVワクチンの男性における有効性について、日本を含む18か国、16~26歳の健康な男性を対象とした無作為化二重盲検試験において、3年間の観察でHPV6型、11型、16型、18型に未感染の被験者群でこれらの遺伝子型による性器周辺部病変の予防効果は90.4%、尖圭コンジローマの予防効果は89.4%、MSMにおいてHPV6、これらの遺伝子型による肛門上皮内腫瘍または肛門がんの予防効果は77.5%と報告されております。
また、HPV抗体陽性率を指標としました有効性の持続期間の評価に関しては、20ページ下段から掲載しております。接種後10年の時点でHPV6、11、16型に対する抗体陽性率は80%以上、18型に対する抗体は約60%の被験者で維持されていました。それ以外の臨床試験の成績を総合しますと、9~26歳の男性に4価HPVワクチンを3回接種することによってほぼ全ての接種者でワクチンに含まれる遺伝子型のHPVに対する血清抗体陽転が起こり、特に15歳以下の若い世代で誘導される抗体価が高い結果となっております。また、肛門性器部でのHPV6、11、16、18型の持続感染に対する予防効果も示されており、肛門がん及び尖圭コンジローマを含む肛門性器部のこれらの遺伝子型に関連する病変を予防する効果が推測されるところです。
22ページから、9価HPVワクチンの男性における免疫原性を調べる臨床試験について掲載しております。それぞれ女性と比較、あるいは4価HPVワクチンと比較して非劣性が示されているところです。
続きまして、25ページ中ほどから、4価HPVワクチンの男性接種による集団免疫効果を示す報告が紹介されております。米国、オーストラリアにおけるMSMを対象にした調査では、ワクチン未接種者の方においてワクチン含有の4つの遺伝子型のHPV感染率の低下が確認され、また、オーストラリアにおける男女を対象とした尖圭コンジローマに関する調査では、HPVワクチンの導入前、女性に接種が行われた期間、男女双方への接種が実施された期間の3つの期間で比較がなされておりまして、男女双方に接種が行われた期間で尖圭コンジローマの予防効果が高まるという集団免疫効果が示されております。なお、尖圭コンジローマは感染後早期に発症しますことから、HPVワクチンプログラムの効果を評価するマーカーとして使用可能とされていることを、疫学のパートになりますけれども、ファクトシート内にも記載しているところです。
続きまして、28ページから予防接種の安全性についての掲載です。
4価HPVワクチンの16~26歳の男性接種の臨床試験において、有害事象として接種部位の反応がワクチン群、プラセボ群ともにそれぞれ60%、56%ほどで報告されましたが、重篤なものや死亡は認められませんでした。
国内における試験の結果も以後、16~26歳、9~15歳を対象とした検討について29ページから32ページに掲載されております。
こちらは、同様の結果が示されているところです。10年間の長期フォローアップにおける安全性評価においては、ワクチンに関連する死亡例はなく、忍容性は高く、また新規の自己免疫疾患の発症リスクを評価した研究もありますけれども、接種群と未接種群で同等であったと報告されています。9価HPVワクチンの臨床試験で観察された有害事象は多くが軽度から中等度であり、全体として重篤な副反応はまれで、ワクチンと関連のある死亡症例はありませんでした。
米国におけるVAERS、VSDでも、事前に規定された有害事象についても有意なシグナルは検出されなかったと報告されております。
次は、医療経済学的評価ですが、こちらは池田先生から御紹介いただけるということで、48ページ以降、諸外国の導入状況について御紹介させていただきます。
HPVワクチンは2022年時点において、WHO加盟国のうち71%に当たる137か国で国の予防接種プログラムに導入されており、その数は増加傾向にあります。また、導入国のうち59か国(43%)において性別を問わず男性も接種対象とするgender neutral vaccinationが開始されておりまして、2022年3月時点で報告された世界の市場調査では、2022年における世界のHPVワクチン需要の約10%が男性に使用されるものと推定されておりました。
また、近年の新たな動向としまして、HPVワクチン接種の代替スケジュールとしてWHOからも1回接種スケジュールの可能性が示されておりまして、1回接種スケジュールを導入する国がオーストラリア、英国を含めて見られてきているところです。
以上でございます。ありがとうございます。
○鈴木委員長 神谷参考人、森野委員、御説明ありがとうございました。
続きまして、池田委員より、資料2-2に関して説明をよろしくお願いいたします。
○池田委員 池田でございます。
今回、我々研究班で実施しました費用対効果の研究結果につきまして、これはファクトシートの抜粋ですが、資料2-2で簡単に説明させていただきます。
まず、2枚目、分析方法ですが、既に先行研究がございますので、その先行研究をベースに2つのモデルを使っております。1つは、男性のHPV関連各種疾患への直接的な効果をマルコフモデルという長期的な予測をするモデルにより推計しております。2つ目には、女性への間接的効果、具体的には子宮頸がんの予防効果についての評価モデルも使用しております。
3枚目でございます。先ほど別のワクチンのところでも薬事承認された範囲内での効果を見るのかどうかというような議論がございましたけれども、今回のHPVワクチンの男性接種も同様の課題がございますので、今回は、まず男性に対して薬事承認されております適応の尖圭コンジローマと肛門がんの男性に対する予防効果のみに限定した分析をシナリオAとして行っております。シナリオBとしては、これに加えまして、男性の中咽頭部周辺のがん並びに陰茎がんの予防効果、これはある程度文献等も出てきておりますし、外国では薬事承認になっているところでございますので、そういったものも対象にした場合の分析です。Cとして、さらに女性への間接的効果、子宮頸がんの予防効果も組み入れた場合ということで、3通りのシナリオで分析を行いました。
4枚目でございます。それぞれ各疾患の罹患率につきましては、こちらのスライドに示しましたような文献や資料等から引用しております。
5枚目でございます。ワクチンの効果、持続期間は先ほどファクトシートのほうで御説明があったところでございますが、先行研究を参考にいたしまして、発症予防効果の持続期間を接種後20年、その後5年間で予防効果が減衰していくという仮定を置いてまず分析いたしました。ただ、これよりも長い持続期間になった場合はどうかということで、感度分析として持続期間を接種後30年ということも仮定しております。
6枚目でございます。費用のデータは、実際のレセプトデータを使って医療費のデータを集計しております。QOLのデータ、いわゆる費用対効果の効果指標、質調整生存年(QALY)という世界的に通常使われている健康の指標でございますが、こちらを算出するための効用値(QOL値)は先行研究の値を引用しております。
7枚目、女性への間接的効果についてでございますが、男性女性間の間接的効果についての情報は極めて限られております。今回は、女性接種に伴う男性の尖圭コンジローマの減少効果についての文献の数値を参考にいたしまして、男性接種に伴って女性の子宮頸がん減少効果が女性に接種した場合と比較して低いということで、30~50%と仮定して分析しております。また、一般に、女性へのHPVワクチンの接種率が高くなれば、間接的な効果、男性接種の女性の子宮頸がんを予防する効果のインパクトは小さくなってまいります。今回は、女性の接種率として、現状20%前後と伺っておりますので、現状の20%、そして接種率が高くなった場合の80%というレンジで4通りの場合について推計を行っております。女性へのワクチンの効果持続期間ですが、こちらも男性と同様に設定しております。
8枚目は、分析結果です。まずは、現在の日本における男性の薬事承認の対象疾患に絞った場合の分析結果でございますが、通常、ICER(増分費用対効果)がおよそ500万円ないし600万円というところが費用対効果のよしあしの基準値と考えられております。つまり、500を超えると費用対効果に課題があるということになります。今回、薬事承認された適応に限定いたしますと、2億3459万7000円/QALYということで基準値を大きく上回り、費用対効果に課題があるという結果となっております。これに中咽頭がんや陰茎がんへの効果を入れましても、500万円を大きく上回るという数字となっております。
女性に対する間接的効果を加えた場合ですが、女性の接種率が高くなればなるほど費用対効果は悪くなります。また、女性への間接的効果、これも見積りを変えることによって結果が変わってまいります。今回のシナリオの中で最も費用対効果がよい、女性への間接的効果を大きく見積もるのが50%、そして接種率が現状のような20%前後というところでございます。費用対効果を計算しますと584.6万円/QALYということになります。いずれのシナリオにおきまして、費用対効果には課題があるのではないかということが示唆される結果でございました。
次に、感度分析で、発症予防期間を接種後30年ということで、ワクチンの費用対効果が少し改善するわけですが、とはいえ、男性に対する疾患のみを考慮した場合のシナリオA、B、いずれも基準値を大きく上回る、費用対効果に課題があるという結果でございました。シナリオCですが、かなりワクチンに有利な見積り、女性への間接的効果を大きく、50%の見積り、そして接種率を現状の20%という低い状況で計算しますと、ICERの値は402万円/QALYということで基準値以内に収まってはおります。ただし、女性の接種率を上げるほうが男性の接種率を上げるよりも費用対効果はよいので、女性の接種率を低いまま男性に接種するというよりも、まずは女性の接種率を上げるのが費用対効果はよいということは、国内外、他の先行研究でも同様のことが示されているところでございます。
今回の分析の結論でございますが、HPVワクチン男性接種は、男性の疾病の予防効果に限定して分析した場合、費用対効果は基準値を大きく超えており、非常に課題があるという結果でございました。男性に加えまして、女性への間接的効果を考慮した場合も、女性の接種率が一定程度向上した場合には男性接種の費用対効果は良好とは言えないという可能性が示唆されたという結果でございます。
最後に、今回の分析に使いました参考文献を示しております。
以上です。
○鈴木委員長 池田委員、資料の御説明ありがとうございました。
それでは、最後に事務局から資料の説明をよろしくお願いいたします。
○小畠予防接種課課長補佐 事務局でございます。よろしくお願いいたします。
資料2-3の2ページを御覧いただきまして、本日は「HPVワクチンの男性への接種について」と「HPVワクチンの定期接種の現状等について」ということで進めさせていただきたいと思います。
それでは、HPVワクチンの男性への接種について、用いるワクチンの種類と接種方法についてということで4ページを御覧ください。まず初めに、現在行っております女性への定期接種の経緯ということですけれども、平成22年に接種緊急促進事業を実施しておりまして、平成25年4月から定期接種、その後、多様な症状が報告されまして、同年6月に積極的勧奨を差し控えております。その後、数年にわたりまして、様々な論点で審議会において検討を重ねていただきまして、令和4年4月から積極的勧奨を再開し、キャッチアップ接種も開始しております。令和5年4月から9価HPVワクチンを定期接種に位置づけております。
5ページを御覧いただきまして、男性への接種に係る議論の経緯と薬事承認の状況ですが、まず、令和2年12月に4価のワクチンで男性に対しまして肛門がん及び尖圭コンジローマが薬事承認されております。令和4年8月に本委員会におきまして、議論を開始していただき、国立感染症研究所にファクトシート作成を依頼しております。
薬事承認の状況としましては、現在、2価、4価、9価のワクチンが市場にあるわけですけれども、男性においては4価で肛門がんとその前駆病変、尖圭コンジローマが効能・効果として認められているという状況でございます。
7ページを御覧いただきまして、こちらは先ほど池田先生から御説明もありましたけれども、費用対効果のシナリオとして、評価に当たって、薬事承認が得られている男性本人への効果、1の肛門がんと尖圭コンジローマを基本として解析を行っていただいています。それに加えて、承認されていない男性本人への効果、2の中咽頭部周辺のがんと陰茎がんを加えたパターンや、女性への予防効果、3の子宮頸がんですけれども、これも加えて考慮していただいた解析も行っていただいています。
8ページを御覧いただきまして、こちらからパターン1の肛門がんと尖圭コンジローマに関してですが、疾病負荷の大きさと有効性ということでファクトシートから抜粋しております。肛門がんにつきましては、比較的まれながんであること、尖圭コンジローマにつきましては、性感染症で良性病変ということになっております。有効性につきましては、肛門がん、尖圭コンジローマ、いずれにも国内外において様々な報告を受けておりまして、薬事承認も得られているという状況でございます。
9ページ、論文を1つ抜粋しておりますけれども、4価HPVワクチン接種の有効性、男性の肛門疾患の発症予防ということで取り上げております。男性と性交渉を持つ健康な16~26歳の男性において、肛門上皮内腫瘍に対する4価HPVワクチン3回接種の有効性を評価した研究によりますと、プラセボ群と比較して4価HPVワクチン群においてAIN(grade2or3)は54.2%減少したと報告されています。
続きまして、10ページからは、パターン2の中咽頭部周辺のがん、陰茎がんについてでございます。疾病負荷の大きさと有効性について記載してあります。中咽頭がんに関しましては、先ほど森野先生からも御説明いただいたところですけれども、中咽頭部周辺のがんの罹患者数は男性において3760例、中咽頭がんがその約半数を占めています。中咽頭部周辺のがんの約55%がHPV関連とされています。陰茎がんにつきましても、肛門がん同様、罹患数は少なく510例程度のがんとなっております。
中咽頭がんに対する有効性ですけれども、感染予防効果としまして、アメリカからの報告で、口腔内のHPVの検出率が非接種者と比べて接種者で88.2%減少していたという報告や、あるいは人口レベルでの効果解析で17%の感染予防効果が推定されたといった報告がございますが、前がん病変やがんの直接的な予防効果を示すエビデンスはないと承知しております。
続きまして、11ページは、パターン3ということで女性への集団予防効果です。疾病負荷の大きさあるいは有効性といったところでこれまで定期接種の際に議論を重ねていただいておりますけれども、疾病負荷としては時点更新したような形で記載しておりますけれども、罹患者数が年間1万879例、死亡数が年間2887人と報告されています。有効性は9価のファクトシートから抜粋しておりまして、前がん病変に対する有効性ということで記載しております。9価ファクトシート完成以降も各国から子宮頸がんに対する有効性が複数報告されております。
12ページを御覧いただきまして、こちらは、1月26日に副反応検討部会で大阪大学の上田参考人から御発表いただいた資料ですけれども、2022年度の接種実績を踏まえた生まれ年度ごとの累積初回接種率をお示ししております。一番右の赤枠で囲んであるところが累積の接種率でございます。この接種率ですけれども、積極的勧奨再開前から徐々に上昇しているものの、定期接種、キャッチアップ接種ともに緊急促進事業当時ほどには接種が広がっておらず、2022年度の定期接種においては、標準接種年齢である13歳になる年度での接種率が低く、今後、この年齢でのより積極的な接種が望まれると評価を頂いております。
13ページは、性別を問わない接種(gender neutral vaccination)の有効性、男女の尖圭コンジローマの発症予防ということですけれども、ワクチン接種前の期間と比較して、女性のみのワクチン接種期間、性別を問わないワクチン接種期間における尖圭コンジローマの有病率比を評価したオーストラリアからの研究によりますと、いずれの期間においても有病率比の減少が見られたと報告されております。
14ページは、費用対効果のまとめのスライドです。パターン1が、繰り返しになりますけれども、薬事上の適応疾患が取れている肛門がん、尖圭コンジローマを考慮した場合で2億3459万円/QALY、パターン2が1に加えまして、中咽頭がんと陰茎がんを考慮した場合で9334万円/QALY、パターン3が2に加え、女性の子宮頸がんの予防効果も考慮した場合で584万~2898万円/QALYと、解析結果を報告いただいております。
ここから安全性のパートですけれども、16ページを御覧いただきまして、4価HPVワクチンの副反応ということで審査報告書から抜粋しております。薬事食品衛生審議会にMSD社の4価HPVワクチンの男性への接種に係る臨床試験データが提出されております。既承認の接種対象である女性と比較して新たな懸念は認められないと評価されており、「新たに男性を接種対象に加えることについて承認して差し支えない」とされております。
17ページが各HPVワクチンの副反応疑い報告の状況です。副反応疑い報告等に基づいて審議会において評価されておりまして「これまでの副反応報告等によって、その安全性において重大な懸念は認められない」とされております。
18ページは、まとめのスライドです。HPVワクチンの男性への接種に係る薬事承認の状況をお示ししております。また、男性への接種に係るパターンごとのワクチンの有効性・費用対効果に関する知見等ということで、先ほどから繰り返しておりますけれども、パターン1は薬事承認済みの男性への効果、パターン2は1に加えて薬事未承認の男性への効果、パターン3は2に加え、女性への効果と、3つに分けまして、疾病負荷、ワクチン効果、費用対効果を掲載しております。また、ワクチンの安全性に関する知見等も繰り返し掲載しております。
論点としましては、ファクトシートの内容を踏まえて、HPVワクチンによる定期接種の対象として男性を位置づけることについてどう考えるかといったところで御議論を頂きたいと思っております。
ここからは、HPVワクチンの定期接種の現状等についてということで、御報告です。
20ページを御覧いただきまして、こちらは、令和4年度から実施しているHPVワクチンに関する施策ということで、まずは、積極的勧奨を再開しております。それから、積極的勧奨差し控えの期間に接種機会を逃した方々に対しまして接種機会を確保するという観点から、令和6年度であれば、平成9年度生まれから平成18年度生まれの女性を対象にしてキャッチアップ接種を行っております。こちらの期間が3年間ですので、令和4年から令和6年の3年間で実施しております。
21ページを御覧いただきまして、接種状況の推移ですけれども、上半分が納入数量、真ん中が副反応疑い報告数、一番下が納入数の中での報告の割合です。納入数量が増えてきておりますけれども、その報告の割合は低い値で推移しております。
22ページは、令和5年4月から9月、上半期でのHPVワクチンの定期接種の実施状況でございます。初回接種の実施率が39.9%、接種者数が21万4000人、キャッチアップ接種の第1回の接種者数が20万2000人となっております。
23ページは、先ほどの資料の再掲です。累積初回接種率の表でございます。
25ページを御覧いただきまして、ここから広報に関してですけれども、令和5年度、厚生労働省で行った主な広報活動について記載しております。様々な媒体を使って様々な対象者に向けて情報発信をしてきております。
26ページは、今後の広報・情報提供についてということで、先ほど申し上げましたように、令和6年度末でキャッチアップ接種が終了いたしますので、それに向けまして、周知や再勧奨のために自治体等で活用いただけるような資材も作成しているところでございます。キャッチアップを含めまして、定期接種の方々もそうですし、引き続き、適切に情報提供を継続してまいりたいと思っております。
事務局からは以上でございます。
○鈴木委員長 御説明ありがとうございます。
神谷参考人、森野委員、池田委員よりファクトシートの内容について御説明を頂きました。また、事務局から資料の御説明を頂いております。
資料2-3の18ページの下のほうにありますけれども、ファクトシートの内容を踏まえて、HPVワクチンによる定期接種の対象として男性を位置づけることについてどう考えるかといった議論が求められているところです。
それでは、資料に対する質問も含めまして、委員の皆様から御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。大藤委員、お願いいたします。
○大藤委員 御説明どうもありがとうございます。
ファクトシートを見ますと、男性での陰茎がん、中咽頭がん、肛門がんとかに関しては、全部合わせると年間で5000人ぐらいの患者さんがいらっしゃって、死亡される方も1500人ぐらいいらっしゃるということで、重症化のリスクもかなり高い疾患であると思います。その中でHPVが関連しているものが55%から90%ぐらいあるということですので、予防可能なものは予防していくというのがいいのではないかと思います。一方で、費用対効果のところを見てみると、費用効果が500万円を超えているというところがあります。この費用対効果のところでお伺いしたいのですけれども、女性への間接効果を30%から50%に見積もった場合の効果を出していただいているのですが、ここは男性の接種率はどういうふうに考えられているのか分からなかったので、教えていただけたらと思います。
○鈴木委員長 今の質問について、池田委員、いかがでしょうか。
○池田委員 御質問ありがとうございます。
まず、前半のほうで御指摘されました中咽頭がんの疾病負荷が大きい割に費用対効果は悪いというのは、これは今回使った罹患の年齢にもよりまして、大体、30代とか40代付近でワクチンの予防効果が失われるという想定にしていますので、残念ながら、中咽頭がんを減らすという点での費用対効果はちょっとよくないという推計になったところでございます。
また、間接効果のところについては、本来はダイナミックモデルなどの精緻なモデルを使いまして、異性間の性的接触の状況など年齢ごとに解析する、イギリスなどは一部やっているのですが、日本でそういったデータを探しましたが、すぐに使えるデータはございませんでしたので、今回は非常に簡易的な、男性の接種が女性にどういう予防効果があるかということでの推計をしているところでございます。実際には、例えば男性の接種率が2倍になれば女性の病気の予防効果も2倍になる。連動して予防効果が、疾病の減少数は連動して動くような形ですので、そういう意味では、男性の接種率が上がれば、その分、女性の病気の予防の効果も増えていくということで設定しております。ただ、先ほどファクトシートの中でも御説明がありましたような集団免疫効果につきましては、今回、考慮はいたしておりません。
以上です。
○大藤委員 ありがとうございます。
○鈴木委員長 私から池田先生に追加で質問ですが、今日お示しいただいた費用対効果(ICER)の数字は、男性に100%打ったときの数字という理解でいいのでしょうか。
○池田委員 具体的には男性の接種率を考慮しておりませんといいますか、1人打ったらそれが男性なり女性の病気をどのくらい減らせるかという、ワクチンを接種した1人当たりどうなるという推計なので、ある程度接種率が動いていってもこの数字自体、ICER自体は変わらないという設定です。ただ、接種率が90%とか、そういう上のほうにいきますと、またこの推計は成り立たないわけですけれども、ある程度接種率が低い状況では、今回の数字は接種率のいかんを問わず、おおむね当てはまる数字というふうに考えております。
○鈴木委員長 分かりました。接種率というよりも、男性1人に対して接種した場合にどうかという数字であると理解いたしました。ありがとうございます。
原委員、お願いいたします。
○原委員 ありがとうございます。
中咽頭がんは入っていませんけれども、がん全体の中ではそう多くないがんではありますが、近年増えてきているということで、疾病負荷としてはあると考えて、前がん病変をしっかり予防できていますので、予防できるものであれば接種したほうがいいとは思いますが、やはり今出てきたように費用対効果でかなり基準を満たしていないところが気になるかなと思いました。ファクトシートを拝見していると、後ろのほうに各国の導入状況がありまして、男女ともに接種している国が大体2回接種で実施されているようなのですけれども、2回接種で費用対効果を算出し直した場合、あるいはWHOの推奨のように1回で推計し直した場合、どれぐらい改善が見込まれるのか、分かれば教えていただきたいと思います。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
池田委員、いかがでしょうか。
○池田委員 池田でございます。
御指摘のように、4価ワクチンの2回接種あるいは9価ワクチンの2回接種ということで推計いたしますと、費用対効果は当然のことながら改善してまいります。今回、日本での推計というのは、数字では示しておりませんが、諸外国の文献などを見てまいりますと、その結果というのはかなり割れておりまして、簡単に言ってしまいますと、最近の文献ですと、企業がスポンサーになった論文ではおおむね費用対効果がよいという結果が出ております。一方、そうでない、政府の資金で行ったような研究では費用対効果がよくない、おおむねそういった傾向がございます。というのは、長期的なワクチンの効果持続期間であるとか様々な前提条件を変えることによって結果が、不確実性が大きいということなのです。そこも留意しながら結果の解釈をしていく必要があると考えております。
○原委員 ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 ありがとうございます。
まず、男性での疾病負担を考えた際に、ほかの委員の先生方も指摘されているように、中咽頭を含む頭頸部がんということに関して数が増えているということと、男女比で男性が高いというのも一つ大きいと思います。例えば中咽頭がんですと、大体女性の4倍から5倍ぐらい男性のほうが罹患する方が多いですから、そういった頭頸部がんに関していえば男性のほうが疾病負担が大きい。かつ、がんに対するHPVの寄与率に関しても増加傾向にあるというところは今後憂慮すべき内容だと思います。
また、中咽頭がんに関していえば、中咽頭がんだけですと年間大体2300例ぐらいで、死亡が1100例ということですけれども、結構死亡率が高いのは、スクリーニング手段がないということで、途中で見つけることが難しい。見つかったときにはかなり進行しているがんで、死亡率が高いという特徴があると思います。逆に、途中評価が難しいということで、中咽頭がんを適応とした承認を取ることが難しいということも言えるので、その点を考慮すれば、しっかりと評価の中で中咽頭がんの評価を含めていくということが重要であると思います。
もう一つは、HPVの遺伝子型ですけれども、中咽頭がんで寄与しているHPV型はほとんどが16型です。悪性の4価のワクチン製剤でも含まれている16型が9割以上を占めているとされていますので、更に広い遺伝子型を含む9価のワクチン製剤を使うメリットがあまりないがんというふうに言えると思います。そういう観点では、9価での適応を待つ必要性は低いと言えるというのがこの疾患の特徴と思います。
加えて、現状だけ疫学的に予防接種プログラムを見た場合、WHOの最新のデータですと、HPVを国家プログラムで使っている国が141か国、男性を含めて接種している国が59か国となっています。大体3分の1ぐらいが男性にも接種を実施しているというような状況下にあります。池田先生が御指摘されたような費用対効果の意見が割れるというところがある中で、疾病構造であるとか、評価できていない部分をどこまで考慮するか、あとは数値化されにくいジェンダーギャップという観点で男女平等性みたいなことも多分に議論の中に含まれていると考えています。
あとは、3回接種の観点ですけれども、大藤先生、原先生が指摘されたように、最近、更新されたWHOポジションペーパーに基づき、1回接種のプログラムが導入されていて、昨年までに1回接種のプログラムを導入している国が20か国ぐらいあります。ファクトシートにも記載がありますけれども、その中にはオーストラリア、イギリスのように、日本と同等とされる高所得国も含まれているということで、MSDは今週、1回接種の臨床研究を9価で実施するということを公表、ステートメントで出していますが、海外では薬事承認の適応と違う部分でも予防接種プログラムを推進していくというような動きも見られていますので、3回接種が1回接種になれば費用対効果も非常に改善する部分があると思いますし、予防接種の基本計画で記載されているような、ほかの先生方が指摘されていますけれども、予防できる疾患で疾病負担が明らかなものについてはできるだけ予防していくという観点での議論は重要であると思います。
一方で、最後にもう一つだけ指摘しておきたいのが、女性での接種がやはり重要という観点です。現在、接種勧奨が再開されて3年目になるというところで、キャッチアップ接種が実施されていますけれども、対象者の数の割に接種数があまり多くないというのが現状なのではないかと思います。キャッチアップ接種で受けられる期間もあと1年ということになっています。できるだけ早くキャッチアップ接種したほうが当然有効ですし、これを任意接種で、9価のHPVワクチンは非常に費用が高いので、現在の規定で3回接種すると10万円近くの費用がかかってしまいますから、これだけ疾病負荷がある疾患を無料で予防できる機会ということをしっかりと情報提供して、男性への接種の議論は当然継続して必要だと思いますけれども、女性での接種率をこの1年間でしっかり上げていくということが非常に重要になってくるのではないかと考えています。
長くなりましたが、以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
池田委員、お願いいたします。
○池田委員 氏家先生の御意見との関連で申し上げますと、アメリカのACIPでHPVワクチンの男性接種について検討されたのは10年も前のことになりますけれども、そのとき、女性には9価、費用対効果の点を考えますと、男性の疾病の予防効果を考えれば男性は4価が優れているというような分析が報告されたことがございました。
もう一点、ACIPのほうでは、今回、我々のモデルで検討した異性間の性的接触のことだけではなく、同性間の性的接触に関しての分析も行っているということで、行く行くは日本でもそういったことの検討が必要かということで発言させていただきました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。近藤先生、お願いいたします。
○近藤委員 近藤でございます。
池田先生が先ほどおっしゃったとおりで、日本ではデータがなかなかないところで、ダイナミックモデルを使うことができない状態でされているのですけれども、そういう簡易なモデルでございますが、専門の立場からいうと、しっかりされていて、この結果はおおむね真実に近いのではないかと思います。日本からはメーカーファンディングのものでたどればデータが出てはいるのですが、そちらはもう少しいい結果が出ているのですけれども、これも池田先生がおっしゃったように、比較的中立的な立場でいろいろモデリングすると大体このぐらいの結果になるのかなというところで中身を拝見させていただいて、そういう状況でございます。もちろん疾病負荷とか予防可能性ということを考えると、積極的に男性にも打っていくということが私も望ましいと考えるのですけれども、費用対効果の観点からいえば、やはりつくれないかなと思います。今、また議論しておりますが、もちろん2回接種、1回接種ということになれば変わってくるということもございますので、そういった動向を見ながら引き続き検討していくということではないかと感じました。
以上、簡単ですが、私のコメントです。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
既に多くの御意見を頂いているところですけれども、本日の小委員会の一つのテーマとしましては、今回、費用対効果の分析の結果も含めてファクトシートが出てきたところで、それを踏まえて我が国で現在薬事承認されている4価のワクチンを3回接種という前提で、有効性、安全性、費用対効果という点で定期接種に組み込むことを妥当と言えるかどうか、これに関する見解が求められていると理解しているところです。
このスペシフィックに問われているところと、一方で既に御指摘があったような大きな観点からの評価というところがあろうかと思います。そこを切り分けて、まず今、求められている、4価を3回接種するという前提で、これを男性に定期接種化することを正当化できるのかどうか、あるいはそれについてはまだ課題があるのか、そういった観点から御意見があればどうぞよろしくお願いいたします。氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 ありがとうございます。
定期接種化を検討する際に、基本方針の中でも安全性、有効性、そして費用対効果、この3つを重視して評価するということが明記されています。今、上がってきた情報の中で費用対効果の点で課題が残る結果であるということは、重要なワクチンではありますけれども、重く受け止める案件だというふうに考えています。ただ一方で、費用対効果に上がってこない部分、先ほど御指摘したような男女平等性や相乗的効果など観点をどのくらい評価に加味するのかということと、今後また話があるかもしれませんけれども、そういった予防接種施策の方針決定のためのシステムそのもの、薬事承認に基づかない接種回数自体の変更がもしできるということであれば、そこはまた評価が変わってくるということだと思いますので、現状のご発表頂いたデータのみで判断をすれば課題が残るということが現時点での評価なのかなと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。大藤委員、お願いいたします。
○大藤委員 ありがとうございます。
私も氏家先生のお考えと同じなのですけれども、有効性の面では感染予防効果であったり肛門上皮内腫瘍に対する効果、あと、導入された諸外国では女性での尖圭コンジローマなども減ってきているということで、有効性についてはしっかりデータが出てきているところではないかと思います。安全性についても、女性での接種状況とかを見ますと、そんなに懸念される点もないのかなと思うところですけれども、やはり費用対効果というところで少し課題があるのかなと感じております。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほかの委員の先生方、いかがでしょうか。神谷参考人、お願いいたします。
○神谷参考人 ありがとうございます。
費用対効果の結果というのは重々承知しているのですけれども、一方で、これが予防できる疾患というのは、ほかになかなか治療できないようながんというものを費用だけで評価していいのか。例えば家族の痛みだとか、それ以外のこと、たくさんの多方面に影響するような疾患であって、しかも承認されていて、女性の接種率を上げるということももちろん必要だと思いますが、それも一つとして、男性が打てるようになることも少なからず影響があると思います。当然、女性だけより男性にも接種したほうがウイルスの伝播という意味でもバリアができるということで、もちろん今あるデータと打ってみないと分からないデータというのはあると思いますが、またこれでしばらく様子を見ましょうということですと、いつまでたっても定期接種にならない。そして、それが打たれることによってどうなるかということが全く見えてこないというのは、せっかく承認して打てるようになっているのにもったいないというか、予防できる命であったり疾患をみすみす取り逃しているような気がいたします。もちろん、国の政策、税金、そういったものがあるので、個人の感情とかでは判断できないというのは分かるのですけれども、これまでの予防接種も含めてですが、ワクチンは接種して初めて効果とかが出るのであって、届けてみてしっかりとその都度効果を判断していくという方法も一つあるのではないか。早く打てるように、定期接種化でたくさんの人が打てるようにしてみるというのは考えていただきたいと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
岡田参考人、お願いいたします。
○岡田参考人 ありがとうございます。
私も神谷参考人と全く同じ考え方です。先ほどファクトシートの中にもあった、いわゆるgender neutral vaccinationという考え方、今のようなジェンダーを考える国内外の社会情勢を考えると、G7の中で男性への接種がされていないのが日本だけということも言われています。定期接種化の議論としては、HPV4価の3回では費用対効果に懸念があるかもしれませんけれども、2回や1回の接種方法などでは、費用対効果の点では定期接種化の道も残っている可能性もありますし、今後、基本方針部会に上げるときに、そのようなgender neutral vaccinationとVPDの考え方も踏まえて総合的に判断していただきたいと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
そのほか、いかがでしょうか。
既にたくさんの御意見を頂いておりますので、私なりに簡単に整理したいと思います。
長口上で私も申し上げましたけれども、今、この小委員会で求められているのが、15ページにあるように、今回のファクトシート、費用対効果分析の結果も踏まえて男性に対するHPVワクチンの定期接種、ただ、これは現在、我が国において承認されている4価のワクチンを3回接種した場合という前提で費用対効果分析を行ってもらっている。その前提でこれを定期接種化することの是非が問われているというふうに理解しています。それに関して何人かの委員の先生方から、費用対効果に関しては課題があるところであるといった認識をお示しいただいたところかと思います。
一応、網羅的に確認しておきますと、有効性と安全性についてはどうかというところかと思いますが、恐らく安全性については大きく問題ないのではないかといったデータであったかと思います。一方で、有効性に関して、費用対効果分析のところでも課題が上がっておりましたが、特に口腔や中咽頭に関するがんに関して明確な有効性があると言えるのかどうかといったところは少し課題としてあったのかなという感じはいたしますが、その辺りは委員の先生方、どのように御認識でしょうか。原委員、お願いいたします。
○原委員 途中で氏家委員もおっしゃったように、中咽頭がん自体の頻度がやはり低いので、がんをエンドポイントとした有効性の評価というのは非常に難しいのかなと思いまして、前段階のものでの評価と見ますと、割とそろってきているのではないかと思いました。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
氏家先生。
○氏家委員 ありがとうございます。
先ほど私の発言でも申し上げましたが、中咽頭という部分がなかなか検査などでアプローチしにくいので、子宮頸がんみたいにバイオプシーとかの検査が簡単にできない、そういった場所ですので、細胞レベルでの評価が直接的に難しいということで、適応に対する効率的な評価が難しい。がん化までの年数も非常に長いですし、中咽頭がんの患者の中央値が多分60代とか、そんな形だったと思います。ですので、がん化まで疫学的に見ようと思ったら何十年もかかってしまうみたいなことが起こり得るので、代替指標として口腔内のうがい液の口腔内細胞とか、そういったもので感染率を見たり、そういった評価をしているものはありますけれども、がん化の予防を直接証明することは困難です。そういった疾病の特性に鑑みれば、かつ疾病負担ということも含めて考えれば、直接的なエビデンスがないからといって理論的に効果があると考えられるものを含めないというのは、神谷先生が御指摘したようなワクチンによるメリットをみすみす逃してしまうということに繋がり得ますので、科学的に推定できる範囲においてしっかりと、評価の中で適応がない有効性についても含めて評価していくべきではないかと考えています。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
今の点に関して追加で、ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
非常に重要なコメントであったと思います。確かに目に見えている中咽頭がんを臨床的なアウトカムとして設定した場合のデータというのは限られている。直接的なものは乏しいということがあるけれども、それの正確性を求めて、ではエビデンスがないということ自体も適切なのかどうかいった御指摘であったというふうに理解いたします。そうした意味で、必ずしも有効性に関するデータに欠けるところがある、あるいはそれが限定的であるといった認識も妥当ではないのではないかというふうに御意見として伺ったところです。
今の点も含めまして、改めて、4価を3回接種するという前提でこれを定期接種化する場合の有効性、安全性、費用対効果という観点から、先生方から追加でコメントはありますでしょうか。菅沼委員、お願いします。
○菅沼委員 先ほど氏家委員からもあったところですけれども、要は、がんという観点で見るとエビデンスが乏しいというところがあるのと、前がん病変としてウイルス感染率を抑えることができることが分かっているというところで、そこがうまく結びつくかどうかが一つ問題になってくるのかなと思うので、そこは私たちの話だけではなくて、そこの専門家、そういったところの意見を聞いてみる必要があるのかなと思いました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。氏家委員、お願いいたします。
○氏家委員 先ほどの9価と4価の違いで、男性に接種する場合の有効性に関しては4価でも頭頸部がんの多くの部分をカバーできるということは発言させていただいたところですが、接種回数に関しては、日本ですと9価のみが14歳以下で2回接種ということが承認されているわけです。海外を見れば、4価であっても2回接種が標準的な接種回数になっていますし、先ほど申し上げたように、多くの国では1回でも十分な効果が得られるという判断の下に1回の接種が導入されているところです。確実な有効性のためには、やはり1回よりも2回、2回よりも3回というところはありますが、ゼロ、1の差が非常に大きいというところがあると思います。回数の部分で4価が本当に3回でなければ絶対にプログラムとして実施できないのかみたいなところは、厚生労働省としても、そして製薬会社としても、議論や調整の余地が残る部分になっているのではないかと思います。神谷先生や岡田先生から指摘されたように、多くの人がワクチンのメリットを享受できるような観点という意味では、ゼロ、1の観点でいえば、少なくとも1回の接種が受けられるようになるということは科学的に見ても非常に大きな有益性があると考えられますから、システムをどのように柔軟に対応できるのかという観点での議論として重要になってくるのかなと思います。
以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。
時間は押しておりますが、まとめていく前に、たくさん御意見を頂いているので、事務局のほうから何かコメントいただければと思います。いかがでしょうか。
○和泉予防接種課課長補佐 事務局でございます。
御意見、御議論、どうもありがとうございます。様々な御議論を頂いて、受け止めといたしましては、4価3回という中で、いわゆる薬事の中でということでいいますと、男性に適応範囲のエビデンスはありますけれども、それ以外については一定乏しいところがあるが、どう検出するかというところ自体が難しいということで課題があるということだったと思います。
安全性についても一定議論いただいて、費用対効果については、やや課題が残るという御判断だったかと思っております。
オフラベルの使い方というところについては、私どもも確たることが言えないところでございまして、そこにエビデンスがあれば議論ができるかと思いますが、今回、ファクトシート上も1回でどうかというところはエビデンスもないところかと思いまして、私どもとしてもこの瞬間、判断が難しいところでございますけれども、引き続き検討する必要があるのかなというふうに考えております。
大まかでございますけれども、事務局からのレスポンスは以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
委員の先生方、そのほか、御発言、御質問ございますでしょうか。
本日、非常に多くの御意見、御議論を頂いたかと思います。まとめるというのはなかなか難しいところですが、私なりに少し整理をしてみたいと思います。
改めて、本日、ファクトシートが提出されました。それに基づいて、4価を3回接種するという前提で、これを男性に定期接種化することの是非が問われているわけです。これに関して、有効性、安全性、費用対効果という観点からいいますと、有効性に関して、特に口腔・中咽頭のがんに関してデータは限られているけれども、それに関してそもそも評価するのが難しいので、一定程度合理的なファンクションの下に有効性を評価することも重要であるといった御意見もありました。それを含めて有効性については一定程度効果が確認されているという認識でよいのかと思いますが、いかがでしょうか。
(首肯する委員あり)
○鈴木委員長 御首肯いただいたかと思います。
一方で、安全性に関してですが、安全性に関して特に懸念する声はなかったのではないかと思いますが、安全性については一定程度確立されているという認識でよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○鈴木委員長 御首肯いただいたかと思います。
一方で、繰り返しですが、4価を3回接種した場合の費用対効果、これについては課題がありそうだという認識、これも共通認識ということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○鈴木委員長 ありがとうございます。
おおむね4価3回接種の男性接種に関しては、このような小委員会の見解ということになろうかと思います。
一方で、途中でも申し上げましたが、果たして4価を3回接種するというのは、我が国における薬事承認上そうなっているので、それを前提に議論しているわけですが、グローバルな流れの中で果たしてその前提のまま、そもそも男性の定期接種をこれで議論を終えてよいのかということに関して様々議論があったというふうに認識しているところです。特にファクトシートの中でもありましたが、WHOがCervical cancerのエリミネーションに関する文書を出しております。その中で女性に対するワクチン接種率を上げるということも示されていますし、その辺りでは1回接種も含めてオフラベルでの使用というのも文言としてあったかと思います。また、度々委員からもありましたが、gender neutralの観点から、男性、女性問わずワクチン接種をすべきだといった世界的な流れもありますし、本日の委員の御意見もあったかと思います。ただ、そこのところはちょっと切り分けて考えていく必要があるのかと思います。
前半でまとめましたけれども、4価3回接種に関する議論に関しては一定程度、本日、コンセンサスができたかと思いますが、一方、それ以外の観点というのが本日多くの委員から論点として上がりました。これについて、引き続きこの小委で議論すべきなのか、あるいは基本方針部会等で議論してもらうのがいいのか、そもそも子宮頸がんのエリミネーションという話はさらに大きな話題となる得る可能性もあるかもしれません。この辺りはこの場で整理するのは難しいので、できれば事務局のほうで整理をしてもらったほうがいいのかなと思いますけれども、先生方、いかがでしょうか。
(首肯する委員あり)
○鈴木委員長 御首肯いただいたかと思います。
ひとまず、以上で議論をまとめたいと思いますが、事務局、今のような取りまとめで次の議論に向けて準備をしていただくということでよろしいでしょうか。
○堀予防接種課長 予防接種課長でございます。
鈴木先生、難しい取りまとめを頂きまして、ありがとうございます。
先生の御発言の中でも、男性接種の議論をこれで終了していいかという話もありましたけれども、様々な前提条件が変わってくれば、今回の議論のようなことについても当然結果が変わってくるということでございますので、薬事承認の状況を含め、様々なデータが新たに得られるようになれば、前提条件が変われば、また御議論いただくということであろうと思います。また、そもそも有効性、安全性、費用対効果に加えて、ほかの観点、ジェンダーの観点とか、そういったことをどういうふうに議論していくのか、またこれもさらに上の部会のほうで検討いただくことも含めて、今日の御指摘を踏まえて改めて検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、先ほどまとめたような内容で事務局のほうではいま一度今後の議論に向けて整理をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事は以上となりますが、そのほか事務局から何かございますでしょうか。
○溝口予防接種課課長補佐 事務局でございます。
本日も活発な御議論、御意見を頂きまして、ありがとうございました。
次回の開催につきましては、追って御連絡させていただきます。
事務局からは以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
それでは、本日の会議は以上で終了いたします。活発な御議論どうもありがとうございました。