第14回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の議事録

日時

令和6年2月28日(水) 16:00~18:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル(日本酒造虎ノ門ビル))

議題

1.医薬品の迅速・安定供給実現に向けた対策における現状の取組と今後の対応について
2.その他

議事

議事内容
○山本ベンチャー等支援戦略室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を開催させていただきます。
 初めに、構成員の先生方の御出欠について御報告いたします。本日、8名の構成員が会場での御参加、小黒構成 員、菅原構成員、堀構成員、三浦構成員はオンラインでの御参加となっております。
 なお、本会議の模様はYouTube配信形式による公開にて行わせていただきます。
 次に、事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 内山医薬産業振興・医療情報審議官においては、本日は公務により欠席となります。
 次に、医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷課長でございます。
 また、本日は保険局医療課より安川薬剤管理官、医薬局・医薬品審査管理課より中井課長及び美上企画官も出席 しておりますので、併せて御紹介させていただきます。
 続きまして、本日の会議資料を確認させていただきます。一番上の議事次第のほか、資料1として「医薬品の迅 速・安定供給実現に向けた対策における現状の取組と今後の対応について」、資料2-1として「参考資料」、資料2-2として「令和6年度薬価制度改革の骨子」、参考1として「有識者検討会報告書」、参考2として「開催要綱」、参考3として「構成員名簿」、そして、小黒構成員からの提出資料を御用意してございます。
 以降の議事進行につきましては遠藤座長にお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 まず、議事に入る前に、マスコミの方に申し上げますが、頭撮りにつきましてはこれまでにしていただきたいと思います。それから、あらかじめ傍聴の御登録をいただいた方以外は御退室をお願いいたします。以降の傍聴につきましては、会場外にてYouTubeでお願いしたいと思います。

(報道関係者退室)

○遠藤座長 それでは、議事に入らせていただきます。皆様、久しぶりの開催です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題は1つでございまして、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた対策における現状の取組と今後の対応について」でございます。事務局から資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長の水谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた対策における現状の取組と今後の対応について」という資料に沿って御説明申し上げます。
 資料2-1と2-2はこれに関連する資料でございますが、資料1に沿って御説明申し上げます。
 お開きいただきまして2ページ目でございます。この検討会、昨年6月に流通、薬価制度、産業構造の検証など幅広い項目につきまして議論を行っていただき、報告書を取りまとめていただきました。これを受けまして、私どものほうにおきまして厚生労働省が事務局を務める形で検討の場を新しく設けた、あるいは既存の場でこうした議論を行ったもの、これを一覧にして整理している資料でございます。
 左を御覧いただきまして、産業政策ということにつきましては、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」というものを新たに立ち上げて御議論を行っていただいてございます。昨年10月には中間的な取りまとめを行い、引き続き御議論を行っていただいてございます。
 薬価等に関しましては中医協等において御議論いただいているということ、そして薬事につきましては、これも新しく「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」というものを立ち上げて議論を行ってございます。
 また、流通等につきましては、既存の会議体でございますが、医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会、そして、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議、こうしたところで御議論いただいているわけでございます。
 まさにこの有識者会議で幅広い観点から大きな方向性をお示しいただき、それを個別具体の検討の場で御議論いただいているわけでございますが、私ども厚生労働省の事務局として、個別の検討になって方向性を失ってしまうことのないよう、この有識者検討会の報告書の大きな流れに沿った形で検討が進むように、私どもとしても努力しているところでございます。
 そして、そうした取組だけでなく、この有識者検討会のほうに、こうした取組の進捗状況を御報告させていただき、そして御議論いただくことによって大きな流れに沿ったものというこの一つの方向性が明確になるように、また御意見をいただきたいということで、本日、会議を開催させていただいた次第ということでございます。
 3ページにお進みいただきまして、以後、昨年6月におまとめをいただきました有識者検討会の報告書、この第2章におきまして、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた対策の方向性」というのをおまとめいただきました。この対策の方向性におまとめいただいた内容について、それぞれどのような取組を行っているかということを整理しておりますので、御報告を申し上げます。
 4ページ以降が、まず「2.1 医薬品の安定供給の確保に向けて」ということでございます。
 5ページにお進みいただきますと、「2.1.1 後発品産業構造の見直し」ということでございます。最初の四角は検討会報告書のポイントをまとめたものでございますので、説明は省略させていただきます。
 「現状の取組」という真ん中の箱を御覧いただきますと、昨年4月、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」というものを新しく設置いたしまして議論を行っていただいてございます。
 昨年10月には、2つ目のポツです。中間取りまとめというものを公表いたしました。これは薬価改定、あるいは薬事につきまして別の検討会等が走っているということもございました。薬事・薬価に関する事項について先立って取りまとめを行っていただく、そうした性格のものでございます。また、こうした議論を踏まえまして、3つ目のポツでございます。薬価制度におきまして、安定供給が確保できる企業の評価、こうしたものを令和6年度薬価制度改革において試行的に導入するといったこともいたしてございます。
 「今後の対応」という一番下の箱でございますが、本年1月の第8回の検討会におきまして、これまでの意見の整理と今後の対応の方向性(論点)をお示しいたしまして、御議論いただいてございます。そうした中で、後発医薬品産業のあるべき姿といたしまして、品質の確保された医薬品を安定的に供給できるよう、製造管理・品質管理体制の確保、持続可能な産業構造、そして安定供給能力の確保、こうした大きな方向性を示しつつ、また細部について御議論いただいているところでございます。
 また、安定供給に係る企業情報につきましては、公開すべき情報の内容、判断基準等の考え方をガイドラインとして今年度中に公表する予定でございます。これを受けまして、各企業においては、来年度前半のできる限り早いうちに公表を開始していただくということをしております。
 また、先ほど申し上げたとおり、今回の令和6年度薬価制度改革において、こうした企業の評価を受けた薬価制度の取組を試行的に導入いたしましたが、こうした企業指標、評価方法の妥当性等を検証し、薬価制度における取扱い、これは引き続き議論するとしてございます。
 続きまして6ページでございます。薬価制度における対応でございます。真ん中、「現状の取組」という箱を御覧いただきまして、医薬品の安定供給の確保という観点から、令和6年度薬価制度改革において、基礎的医薬品につきまして収載からの経過期間に関する要件を25年から15年に短縮するということ。また、不採算品再算定につきましては、企業から希望のあった品目のうち、令和4年度薬価調査における全品目の平均乖離率7.0%以内の品目を対象に特例的に適用するといった形で安定供給の確保に向けて取組を講じてございます。
 「今後の対応」という一番下の箱でございますが、こうした後発品に係る令和6年度薬価制度改革による影響等について検証を行いつつ、引き続き中医協において議論を行うこととしてございます。また、これは後ほど出てくる流通のところとも関連いたしますが、過度な薬価差の偏在も含め、医薬品流通に関する課題、こうしたことについても検討していくこととしてございます。
 7ページにお進みいただきまして、「2.1.3 サプライチェーンの強靱化」でございます。
 「現状の取組」という真ん中の箱を御覧いただきますと、令和4年度の第二次補正予算におきまして、原材料や原薬、こうしたものを輸入に依存しているβラクタム系の抗菌薬につきまして、国内における原薬等の製造設備の導入、あるいは備蓄体制の整備、こうしたことを行うための支援を実施してございます。
 「今後の対応」という箱でございますが、様々な予算事業におきまして、こうしたサプライチェーンの強靱化に向けた取組を推進してございます。1つ目のポツでございますが、今年度の補正予算におきまして、こうしたリスクシナリオのようなものを整理いたしまして、医薬品の安定供給確保実現に向けた具体的な手順、役割分担の明確化、こうしたものを図ってまいります。
 2つ目のポツでございますが、これも今年度の補正予算におきまして、医薬品供給の各流通段階における情報の収集・整理・分析・提供を行うための最適な体制・方法について調査・検討する事業も設けてございます。
 このほか、本年4月1日施行予定でございます改正感染症法等に基づきまして、製造販売業者等から報告徴収する、そして必要に応じて増産等の要請を行う、こうしたスキームが設けられてございます。
 感染症法等に基づく医薬品等の供給情報の報告徴収、生産促進要請等に関する運用ガイドラインというものの案を作成し、現在、パブリックコメントにかけているところということでございます。
 続きまして8ページ以降、「2.2 創薬力の強化、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消」についてでございます。
 9ページにお進みいただきまして、「2.2.1 創薬力の強化」でございます。
 「現状の取組」というところを御覧いただきまして、昨年12月、内閣官房におきまして、「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」(創薬力構想会議)を設置いたしまして、研究から開発、製品製造へのグローバルな創薬エコシステム育成に向けた支援ですとか、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス問題への対応などについて議論を行ってございます。
 これまで2回議論が行われておりまして、一番下の箱でございます。春から夏頃を目途に中間取りまとめを行うことを目指すということで議論が進められてございます。
 10ページにお進みいただきます。「2.2.2ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消」でございます。
 真ん中の「現状の取組」という箱を御覧いただきまして、1つ目のポツでございます。昨年4月から「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」を開催してございます。ここに掲げてございますような国際共同治験開始前の日本人第1相試験の要否、製造方法等の変更管理の在り方、希少疾病用医薬品の指定要件の明確化・早期化、小児用医薬品の開発促進、そして我が国の薬事制度の海外への情報発信、こうした議題について検討を行ってきております。また、検討会で御了承いただいた方向性につきましては、それを順次、関連通知という形で整理いたしまして発出してきているということでございます。
 また、2つ目のポツでございますが、未承認、適応外である小児がん治療薬につきまして、AMEDの研究事業におきまして、国立がん研究センターが患者申出療養等を活用いたしまして、安全性、有効性を評価しながら使用する臨床研究、こうしたものを令和6年1月から開始しているところでございます。
 薬事規制のあり方に関する検討会につきましては、一番下の箱でございます。引き続き議論を進め、また必要な対応をとってまいります。一番下のポツでございますが、また、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス、現に発生しているラグ・ロスへの対応といたしまして、未承認薬のうち、我が国において必要性の高い医薬品を優先して対応し、企業における開発が進むように戦略的に対応するための取組を行ってまいりたいと考えてございます。
 11ページでございます。「2.2.3 薬価基準制度における対応」でございます。
 「現状の取組」という真ん中の箱を御覧いただきまして、令和6年度薬価制度改革におきましては、革新的新薬を日本へ迅速に導入した場合の評価の新設(迅速導入加算)ですとか、新薬における有用性系評価等の各種加算の評価の充実をいたしました。また、新薬創出等加算につきましては、企業区分による加算係数を廃止し、原則、薬価を維持することといたしました。また、市場拡大再算定の類似品につきましては、あらかじめ中医協で特定した領域について再算定の適用を除外する、こうしたことも取り決められたということでございます。
 「今後の対応」というところでございますが、令和6年度薬価制度改革の骨子におきまして、今後の革新的新薬の創出、ドラッグ・ラグ/ロス解消等の医薬品開発に対する影響、こうしたものを製薬業界の協力のもとで分析・評価等を行うとともに、革新的新薬の薬価の在り方について中医協において引き続き議論を行っていくとされているところでございます。
 続きまして12ページ以降、適切な医薬品流通に向けた取組でございます。
 13ページにお進みいただきまして、流通の問題につきましては、真ん中の「現状の取組」という箱でございます。昨年12月の流改懇におきまして、基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定品、血液製剤、麻薬、覚醒剤及び覚醒剤原料につきましては、価格交渉の段階から別枠とし、単品単価交渉とするとか、価格交渉代行を利用した場合にガイドラインを遵守させるということ、原則、年度内は妥結価格の変更は行わないこと、そのほか、返品や一社流通の取扱いなども含めまして、流通改善ガイドラインの改訂案をまとめまして、パブリックコメントを実施いたしました。
 パブリックコメントの結果を踏まえまして、流通改善ガイドラインの改訂を、「今後の対応」というところでございますが、3月上旬に発出すべく、今、準備を進めているところでございます。
 流通の問題につきましては、こうした流通改善ガイドラインの見直しのほかに、一番下のポツでございます。購入主体別やカテゴリー別に大きく異なる取引価格の状況、過度な値引き要求等の詳細を調査した上で、流通の改善など、過度な薬価差の偏在を是正するための方策ということにつきまして、これは流改懇において議論を行っていく予定をしてございます。
 14ページ以降、「その他の課題」でございます。
 15ページにお進みいただきまして、これは有識者検討会の報告書の最後に、以下のような意見があったということでまとめられているもの、これを列挙してございます。
 それに関連する動きといたしまして、16ページでございます。「現状の取組」という箱でございますが、昨年6月の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針でございますが、3行目辺り、イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置を推進するということ。そして、その下2行目辺りのところですが、医療保険財政の中でこうしたイノベーションを推進するため、長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める。そして、医療上の必要性を踏まえた後発品をはじめとする医薬品の安定供給確保を図る。こうしたことが骨太方針に盛り込まれておりました。
 また、次のポツですが、昨年12月の全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋におきまして、このポツの下から2行の辺りでございますが、「薬剤定額一部負担」「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」、そして「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」、こうしたことについては引き続き検討を行うとされているところでございます。
 また、少し違った話になりますが、昨年12月の規制改革推進に関する中間答申におきましては、令和5年末時点で、海外2か国以上でスイッチOTC化されている医薬品、こうしたものにつきましては、原則として3年以内、すなわち、令和8年末までに日本でもOTC化する(スイッチ・ラグを解消する)ことを目標として設定するということが盛り込まれてございます。
 このほか、薬価調査につきまして、最後のポツでございます。システム化を含めた調査実施手段の変更、あるいは一部情報の代替手段による収集、こうしたことも含めまして、今後の対応方針を検討するための調査事業、こうしたもののために必要な経費を本年度の補正予算に計上いたしてございます。
 最後の17ページでございます。薬価制度につきましては引き続きこうしたことを踏まえながら議論を進めてまいります。また、規制改革の中間答申、スイッチ・ラグの問題につきましては、こうした答申の内容を踏まえまして、関係審議会等の審査・審議・意思決定プロセスの見直し等の必要な措置を講じてまいります。
 薬価調査の関係の調査事業につきましては、補正予算に計上した調査事業を着実に実施して、検討を進めてまいります。大変幅広い御提言をいただいてございます。そうしたものにつきまして、私ども、個別の議論の場で検討を進めている状況について、時間の関係もございますので、簡潔に御報告させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございました。ただいま報告があった内容につきまして、御意見、御質問等があれば承りたいと思います。いかがでしょう。
 オンラインで、小黒構成員、お手を挙げておられますので、小黒構成員、よろしくお願いします。
○小黒構成員 ありがとうございます。我々、有識者検討会が取りまとめた報告書の課題に関する現状や令和6年度の薬価制度改革の内容など、詳細な説明ありがとうございました。
 まず、御礼でありますけれども、このたびの薬価制度改革で有識者検討会の報告書にもありますように、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスに関する問題を解決するため、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性を了知する観点などから見直しされたことに関して、厚生労働省の皆様をはじめ改善に向けた政府の御尽力に感謝を申し上げます。
 ただ、これはスタートラインに立ったにすぎず、新薬創出加算適用の範囲と市場拡大再算定の共ずれの条件についてはさらなる検討が必要という声もあります。ただ、大変恐縮ですけれども、これをもってドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスを解消したということがないように、冒頭少し申し上げたいと思います。
 早速ですけれども、本日の御説明を伺いまして、経済がデフレからインフレ経済に変わる中、マクロ的な観点、あるいは留意すべき事項を含め、幾つか簡単なコメントを申し上げたいと思います。
 まず1点目の留意点は、インフレ経済への乖離率圧縮効果です。この乖離率圧縮効果という概念は私の造語になりますけれども、御承知のとおり、薬価改定については、物価上昇によりコストが上がれば市場実勢価の上昇につながって、薬価との乖離率が圧縮される効果もあり、こうしたことから、薬価が下がりにくくなる効果を持つと思います。
 実際、マクロで見ても、今回の薬価改定の下落幅は近年よりも小さくなっており、現在の仕組みのもとでも、今後の物価動向は薬価に一定程度織り込まれていくと、そのような傾向にあることは確かだと思います。
 このような状況の中、例えば2024年度の改定では、平均乖離率の縮小もあって、全体の改定率はマイナス5%程度と、過去偶数年より緩和された傾向があり、業界全体もやや安堵感が漂っているというような感じではないかと思います。
 2点目なのですけれども、ただ、以上の説明とはやや矛盾するかもしれませんが、実際の薬価の改定率と実質的な薬価の改定率との区別ということについては留意が必要かなと思います。経済学では当然ですけれども、名目と実質の区別があるわけです。詳細は本日お配りした私の資料の1ページ目を御覧いただければと思いますけれども、この資料でも強調しておりますが、デフレ経済とインフレ経済の違いを認識することは非常に重要だと思います。
 といいますのも、製薬産業以外の他の産業では異なる動きが出てきているためです。インフレ経済に転換する中、従来は値下げ競争をしていた業界でさえも値上げラッシュで、物価上昇はプラス大体3%程度とここ最近なっております。経済学では、先ほど申し上げましたように、名目と実質の区別をするのは常識であり、経済がインフレ経済に転換する中、例えば岸田首相も、国会の賃上げでの議論では、名目ではなくて、実質の賃金の伸び、つまり、名目賃金の伸びが物価の伸びを上回る状況を重視している状況と思います。
 このようなインフレ経済での物価上昇分を勘案しますと、薬価の改定率、先ほどの5%のマイナスですけれども、これは実質的な改定率はマイナス5%に3%分を加えたマイナス8%と見ることができると思います。
 デフレ経済下ではこれまで顕在化しなかったのですけれども、今後、インフレ経済が継続するようになれば、基本的には下落か維持しかあり得ない日本の薬価改定方式の課題が大きく浮き彫りになっていくというような気がしております。
 なお、この問題は薬価のみの問題だけではなくて、診療報酬本体にも共通する問題ですが、この有識者検討会では議論の対象外と思いますので、ここでは薬価制度の問題に絞って、ちょっと続けてコメントさせていただきます。
 以上の前提から、薬価に絞った話になりますが、何らかの解決策を示すためのスキームが必要であり、今後のインフレ経済を見通した上で、物価上昇を何らかの形で反映できる薬価改定スキームについても今後検討していく必要があるのではないかと思います。
 この点で、この有識者検討会でも以前に説明があったものですが、新時代戦略研究所(INES)が提案しているマクロ的アプローチは物価変動を内包した名目GDP成長率連動方式と言っても過言ではなく、インフレ経済下でもその意義がより実感できる提案になっているのではないかと思います。時間も限られていますので、この場では説明しませんが、詳細は私が配付した資料の3ページを御覧いただければと思います。
 一方で、マクロ的アプローチに一定の懸念がある場合には、物価上昇への対応に焦点を当てた場合のもう一つの解決策として、物価上昇率分を個々の医薬品の改定率に反映させるというような、改定率の影響を緩和させるアプローチⅡも考えられるかと思います。
 このアプローチも一つの提案、対応方法と思いますが、この有識者検討会での議論となり懸案事項として挙がっていたミクロの問題ですね。例えばイノベーティブ医薬品の収載の薬価の改善、あるいは再算定の廃止というか見直しなどの抜本的な解決にはつながりにくいと思われますので、これらミクロ的な問題の解決には、財政との調和を図りながら、やはり資料のアプローチⅠが最適解になるのではないかと思います。
 なお、最後になりますけれども、経済がデフレからインフレ基調に転換する中、例えば名目と実質の乖離が毎年2%であるならば、約10年経過しますと、累積で20%以上の乖離になるということは簡単な算術計算から明らかになります。また、物価動向と連動する、先ほど説明したようなマクロ的アプローチは診療報酬本体との問題でも応用ができ、それともセットで検討する戦略もあり得るかと思いますけれども、我々有識者検討会の守備範囲を超えると思われますので、これ以上の発言は控えたいと思います。
 取りあえず私からは以上になります。
○遠藤座長 ありがとうございました。新しいアプローチ案についての御説明もありました。その内容についての御意見でも結構ですし、もちろん違う視点からでも結構でございますけれども、御意見、御質問等ございますか。
 それでは、香取構成員、お願いします。
○香取構成員 ありがとうございます。
 まず、この検討会、非常に幅広い内容で、いろんな御提案をさせていただいたわけですけれども、今日も説明ありましたように、かなりの部分でいろいろな形で取組がされている、あるいは一部、実際に政策に反映されている部分もあるということで、この間の事務局の御尽力には感謝したいと思います。
 その上で、これは以前にこの検討会の中でも申し上げたことなのですけれども、今の薬価改定の基本的な考え方となっている市場実勢価の形成というところをやはりもうちょっと突っ込んで考えないといけないのではないかと思っていて、今小黒先生からもお話ありましたけれども、今の薬価制度は、例えば物価上昇を価格に反映するというようなことを、仕組みとして制度に内包していないわけですね。以前もお話ししましたが、償還の上限価格を決めて市場で取引させるというのは、もうその時点で市場の自律的な価格形成に一定の枠をはめているということになっているので、市場実勢価格に基づいて改定しているというのは、極言すれば虚構に近いのですね。
 ということから考えると、経済情勢が変わるのであれば、それが実質的に反映できるようなマクロのスキームとしての薬価制度というのを考えないといけないということになると思うので、もうちょっと大きい視点でこの話は考える必要があるのではないかと思います。
 もう一つは、これも以前申し上げましたが、乖離率というのは何かいう話です。
この話については2点指摘したいことがあって、1つは、どんな商品でも市場での取引価格には一定のばらつきが生じる。どんな商品でも取引条件が違えば価格もそれぞれ全部違うということになるのであって、全ての取引が同じ価格に収れんするなどということはない。必ず一定の幅、価格の乖離が生じる。そういうことだと思うのですね。
 そう考えると、乖離率が、この間の調査で6%、調査史上最低と言っていますが、この間何度も改定して、もう乖離率は下がらなくなってきている。ということは、薬価制度のあるなしにかかわらず市場の取引で生じる自然な価格のばらつきに近づいている、とそろそろ考える必要があって、乖離があるからそれを削る、あるいは全く数字の根拠がない2%というのを持ってきて改定を行う、という考え方はもういい加減もう無理なのではないか。
 もう一つは、薬というのは一つの市場ではなくて、様々に薬効や投与方法が違う複数の市場の束になっているので、そのそれぞれの薬効群ごとに競争条件も違うし使用数量も違うし存在している薬剤の数も違う、ということを考えると、一律の乖離率でそれぞれの改定率を決めるというのも恐らく無理なのではないか。これはここで議論することなのか中医協で議論することなのかというのはあると思いますが、今の薬価改定方式で本当に医薬品の製造と流通を安定的に機能させていけるのか。医薬品というのは、言ってみれば医療の根っこを支えているものなのですから、そういう視点で考えるということが必要なのではないか。
 で、すみません。1つ質問です。
先ほど1ページのところで、これからこういう体制で検討していきますという絵がありましたよね。この中で、ご説明の中でも出てきましたけれども、創薬力関連の話は官邸の会議でも進んでいるということになっていて、そちらはこれまで2回会議があって、私も資料を見せていただきましたけれども、より広い視点で、産業政策、あるいは日本全体の技術革新等々の観点から議論が進んでいるわけですけれども、夏までに取りまとめてそれを骨太に反映することになるのでしょうけれども、受け皿、どこで受けるか、全体として考えれば、アーリーステージは文科省だろうし、あとのステージは経産省か、また厚労省かということになると思うのですけれども、そこでの議論と、ここで全体として総合対策を考えていくという、医政局というか厚生省というか、そことの関係がどのようになるのか。
 特に研究開発にどういう支援をするか、ベンチャー支援をどうするかということがありますけれども、最後、この話は薬価の算定、新薬の値決めの話になるのかなという部分で、薬価算定方式の問題を抜きにこの議論はできないと思うのですが、その辺の議論の仕方というのはどのようになるのか。なかなか難しいと思うのですけれども、そこはちょっと、立ち位置というか、スタンスをはっきりしておかなければいけないと。これは質問です。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。では、事務局、お答えをお願いします。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。
 まず、御質問いただいた創薬力構想会議、私どもがお示しした最初のページの表には出てこないわけですが、御説明の中であえて申し上げました。厚生労働省が事務局をやっているこの有識者検討会の報告書を受けて、厚生労働省事務局がやっている検討の場というのを一覧にしたものでございます。創薬力構想会議のほうは内閣官房において事務局をしているということで、ここにはあえて記載してございません。
 それで、この創薬力構想会議、これは昨年6月の骨太方針の中で政府全体の新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、政府全体の司令塔機能のもとで総合的な戦略を作成する、こうした大きな政府全体の方針のもとにこの会議で検討が進められているということでございます。
 今、香取構成員から御指摘ございましたとおり、実際に創薬のシーズを具体的な創薬に結びつけていく、そうしたことにつきましては、現在でも、文部科学省のほうにおきまして、アカデミアの研究に対する支援、これをいかに実用化まで結びつけていくかという観点からの支援、あるいは経済産業省におきましては、認定ベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルによるこうした支援をいかに後押ししていくかという観点からの支援、こうしたものも行われているわけでございます。まさにそうした各省が行っている取組も念頭に置きながら、そのアカデミアのシーズを具体的にどのように創薬に結びつけていくか、こうした観点から御議論いただいておりますし、ただ、そうしたことだけではなくて、例えば治験、あるいは臨床研究に向けたそうした環境の整備ですとか、あるいはバイオなど新規モダリティに対応できるような製造設備、あるいはそうしたものを製造できる人材の確保、こうしたことも論点だと思ってございます。
 まさに創薬力構想会議におきましては主にそうしたことに焦点を当てながら、これまで行われている議論の中で、薬価の問題ということに直接言及するような形で深い議論が行われるという状況にはないものと認識してございますが、私どもとして、今私が申し上げたようなシーズをいかに実用化に結びつけていくか、そして、臨床研究、治験等の環境整備、そして製造設備、人材をどのように確保していくか、こうしたことを幅広い視点から御議論いただきながらおまとめをいただければ、これは内閣官房を中心として、厚生労働省のほかに文科省、経済産業省、各省が連携して対応しておりますので、そうしたものにのっとった形で、具体策というのは関係省庁連携しながら対応していく、こうしたようなイメージになるのかと考えてございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。香取構成員、いかがでしょう。
○香取構成員 お答えとしてはそういうことかと思うのですけれども、ちょっと中身の話をしますと、創薬力構想会議の議論を聞いていると、前臨床から早期臨床のところ、今お話しになったところで言うと、アカデミアからベンチャーにつなぐところ、そこのところの支援はすごく弱い、そこのパイプラインを形成していくところの支援が非常に弱い、ということを皆さん同じように意見されていたと思うのですけれども、そうすると、個別にそういう話になってきたときに、この話は厚生省に落ちてくるわけなので、そこをどのように受け止めて議論するのか。これは構想会議側がどんな意見を出してくるかということにもよるのですけれども、厚労省としてどういう検討のつなぎを考えるのか。これは医政局だけでなくて、厚生科学課とかいろいろ関わると思うのですが、その辺はどのように課長はお考えでしょうか。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。
 香取構成員おっしゃられましたとおり、最終的な一定の方向性を創薬力構想会議でお示しいただきますれば、それを具体的に実現していくという段階ではそれぞれ各省において考えていくということになろうかと思います。そのときに、各省がばらばらにということではなくて、先ほどもちょっと申し上げました。文科省は文科省でアカデミアへのアプローチからどのように実用化に結びつけていけるか、例えば経産省はベンチャーキャピタルへの後押しという観点から何ができるか、そして、私ども厚生労働省としては、今、香取構成員がおっしゃったアーリーの段階、そうしたものに対する支援として、今私が申し上げましたような臨床研究に向けた環境の整備ですとか、あるいは製造設備、人材の整備、こうしたことにどのような支援ができるか、そして、そのアーリーの段階でのそうしたシーズを実用化に結びつけていく、こうした観点においては、どうしても実用化を早い段階から視点に置いた、そうした支援、取組が必要だということがこれまでの創薬力構想会議の中でも議論として出てきているということだと思います。
 もちろんそれをベンチャーキャピタルということがそうしたことも含めて支援していくという形もあるでしょうし、あるいは製薬企業がそうしたものを支援していくという形もあるのかと思います。そうした様々な主体がこうしたアーリーの段階への支援に対してどのように手を差し伸べていくことができるか、私どもとして今持っているツール、あるいは新しいツールを考えながらこれを支援していくということを考えてございます。
○遠藤座長 香取構成員、よろしいですか。
 それでは、ほかの方でいかがでしょうか。
 坂巻構成員、お願いします。
○坂巻構成員 大変まとまった資料をありがとうございます。また、発言の機会、ありがとうございます。坂巻でございます。
 ちょっと今の課長の発言に関連して、まず、もともといろんな論点があるわけですけれども、新薬開発力の強化というところで、新規モダリティに対して立ち遅れないようにということで様々なことが議論されている、これは非常に重要だと思いますけれども、ちょっと細かい話ですけれども、いつ頃までにこの成果が出るのかというところは何かお考えがあればお聞きしたいのですけれども、私個人の関心でもあるのですけれども、特にバイオ医薬品が非常に日本は開発が立ち遅れている。このことはいわゆるイノベーティブな新規のバイオ医薬品だけではなくて、バイオシミラーも同じなのですね。バイオシミラーに関しても日本で開発できる企業が非常に限定されている。
 一方で、例えば今非常に大きな売上げを占めている免疫チェックポイント阻害薬、こういったものに関しても世界的には、2020年度中、日本だけ少し遅れるかもしれませんけれども、2030年前後には世界中で出てくる。ところが、日本で開発できる企業が全くない。そういう中で、果たしてバイオ医薬品の開発ができる会社がいつ頃に日本に出てくるのかというところに関して、もう少しきちんと目標設定しないとなかなか成果が出てこないのではないかというところを危惧しています。
 極端にいえば、半導体のようにTSMCは国が。バイオ医薬品企業もつくっていく、そのぐらいの取組もしないといけないのではないかということを考えているのですが、それはともかくも、取組の考え方自体は非常にいいですけれども、いつ頃までにその成果を出すのかというところについて、もしお考えがあればお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございます。何かコメントあればお願いします。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・情報企画課長でございます。
 まさに今、創薬力構想会議で御議論いただいている段階でございますので、今の段階で私から、そうしたことについて、いつ頃までにということを具体的に申し上げる状況にはございません。一方で、今、坂巻構成員がおっしゃられたとおり、このバイオの関係の製造というか研究開発の能力、あるいは製造の能力、あるいは人材の確保も含めまして、こうしたものを、環境を整備すれば自然と変わっていくというものではなくて、もう少しきちんとイニシアティブを持って取り組んでいかなければいけないのではないか、そうした問題意識は私どもとしても持っているところでございます。
 具体的にということは、今、創薬力構想会議で御議論いただいている段階でございますので、これ以上のコメントは差し控えさせていただきますが、私どもとしてそうした問題意識を持ちながら取り組んでいきたいと思います。その際には、先ほど申し上げたとおり、何か一つだけというよりは、そうしたシーズみたいなものをきちんとつなげていけるような環境、そして臨床研究、治験のようなものの環境整備、そして製造設備だけでなくて、製造できる人材の確保、こうしたものトータルとして、政府全体としてそうした創薬力の向上というパッケージのもとに進めていくのだ、そうした方向性をお示ししていく中で初めてそうしたことが少しいい方向に向かっていくのではないかと考えておりますので、そうした意味においても、まさに内閣官房のもとにこうした会議を置いてやっていこうというのはそうした姿勢の表れかと考えてございます。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。坂巻構成員、何かありますか。
○坂巻構成員 ありがとうございます。私も、いつまでにできるのかの予測は無理だと思っておりますが、やはり時間的な感覚を持てば、2030年ぐらいまでには成果を出さなければいけないのではないかという期待は持つべきかなと思っております。ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございました。ほかに。
 それでは、三村構成員、お願いいたします。
○三村構成員 詳しい御説明ありがとうございました。多くの大きな課題がある中で、全体としては着実に整理を進めていただいているということについて感謝いたします。それで、私が関心を持っております流通とサプライチェーン強靱化ということについて、2点だけコメントさせていただきたいと思います。
 先ほど、流通ガイドラインの改訂ということが説明されましたが、これは流改懇の席で関係者の方々から熱心な御議論をいただきました。そういう意味からいたしますと、今回の有識者検討会の報告書、それから発信された内容につきましては皆さん大変関心を持たれていますし、ある意味で、危機意識というか、問題意識も共有されていると思っております。
 今回、厚労省側から、医療上非常に重要な医薬品として、基礎的薬品や安定確保医薬品、その他につきまして、安定確保あるいは供給安定、そして供給情報の透明性ということを踏まえて取引交渉の別枠とするということを提示していただきました。関係者の皆様はその意味することについて相当よく理解していただいたと思っております。
 ただ、それを実効性あるものにするための時間がかかりますし、また現場で理解していただくために、いろいろな形で厚労省からも情報発信とか啓発をお願いしたいと思っております。このように品目を指定されますと、流通段階の商品の流れ、いわゆるサプライチェーンが、ある意味では非常に透明化しますし、品目ごとの動きも掌握しやすくなるということであります。既に、それに向けての準備や様々な工夫が始まっていると思っておりますので、ぜひそれに対しての支援等をお願いしたいと思います。
 また、価格交渉代行業者に関して、今回は特にある言葉を使っていただきました。現状、価格交渉代行業者の方が関与することで幾つか問題があるのですが、一番大きな問題は、当事者意識が欠落する、あるいはお任せ的な価格交渉になっていく可能性があるということです。そこで責任の所在はどこかということについても改めてしっかりと意識していただきたいということで、ガイドライン上の表現を工夫していただいたことは大変重要ではないかと思います。
 ただ、まだまだ流通段階では残っている課題がございますし、実は来年度にかけてさらに大きな課題を提示していただいていますので、その問題にどう取り組むかということについては関係者の皆様に協力いただきながら進めていきたいと思っております。
 また、サプライチェーン強靱化ということにつきましては、今回の有識者検討会からの報告を受けてということですが、非常に重要な御提案がございます。それは、基本的に供給情報のシステム基盤の整備を進めるべきということです。これにつきましては、先ほどのいくつかの検討会の中で、いわゆる安定確保策の関係者会議の場でいろいろな御意見が出ていました。それらの御意見等も踏まえてということであるわけですが、流通を、例えば卸段階と医療機関、薬局という限定的な形で捉えられてしまうと非常に問題であると思います。
 むしろ今の状況からしますと、なぜこれだけ供給不足とか供給混乱が起こるのかといいますと、やはり生産段階から適切かつ迅速かつ必要な情報提供がなかなか行われていないということがあり、いろんな形で思惑を生じさせ、不安を広げ、一種の供給パニックを起こしている。この状態を根本的に直していかないと、実はどのような情報システムを設定したとしても実効性のあるものにはならないのではないか。いろいろな方々から御意見がございます。私も本当にそのとおりだと思っております。
 今回、後発薬の分野につきましていろいろ御提案がされていますし、企業情報についての公開であるとか、薬事承認や監査の強化や改善であるとかがあるわけですが、何よりも供給情報をいかに迅速かつ適切に提供していくかということについての生産段階におけるしっかりした仕組みや体制づくり、これは一緒に進めていただかないと、せっかくの御提案がある意味で絵に描いたモチになってしまうという可能性があります。サプライチェーンという観点からしますと、明らかに生産段階、時には原薬調達段階なども含めてということでありますから、しっかり全体を一貫して通していくものだということをもう一度強調していただく、あるいは再認識していただく、あるいはその点についてきちんと発信していただくということをお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。重要な御指摘だと思いますけれども、何か事務局から関連でコメントございますか。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。
 まず、前段の流通の問題でございます。今回、流通改善ガイドラインの見直しの中で、有識者検討会の報告書における御指摘も踏まえながら、これは三村構成員のほうから、まさに流改懇で非常に危機意識を共有して活発な御議論をいただいたと思っております。そうした中で、やはり一歩踏み出さなければいけないということで、今回こうした流通改善ガイドラインをおまとめいただいたと思っております。
 ただ一方で、これを実効性あるものにしていく、特に別枠とするということ、本当にこれを遵守してやっていただくということになれば、これは流通の段階の関係者にとって非常に大きな変更というか、そういうことになるわけです。そうしたことをきちんと意識して、どのように流通が変わっていくのかということ、これが大変重要だと思ってございますので、私ども、これはしっかりとした情報発信に努めてまいりたいと考えてございます。
 それから、サプライチェーンの強靱化、流通というのを卸と医療機関、薬局との関係だけで捉えるべきではないという御指摘、そのとおりだと考えてございます。私ども、今回、補正予算の事業の中で、こうした供給情報をどのように見える化することができるかということ、これは実は安定確保会議でも御議論いただいているとおり、どういう観点で広い意味での流通の情報を共有するのかということ、これが制度設計を考える上で非常に重要な視点になってくると思います。
 何でもかんでも公表すればいいということではないと思いますし、ではどういう目的で、どういう情報が共有できるのか、それを既存の今のシステムの中でどのように効率的にできるのか、そうしたことをまず設計として御議論いただくということが必要だと思っておりまして、本年度の補正予算の事業の中では、そういうことについてどういう選択肢が考えられるのかということを整理していただくような事業を今補正予算で実施することとしております。そうしたものを使いながら、私どもとして少し整理した上で、また関係する検討の場で御議論いただきたいと考えてございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。
 それでは、芦田構成員、お願いいたします。
○芦田構成員 発言の機会をいただきましてありがとうございます。私からは、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消の点についてコメントしたいと思います。
 昨年のこの有識者検討会の報告書を受けて、厚生労働省の中に新たに薬事規制のあり方に関する検討会が設置され、その中でドラッグ・ロスの解消に向けて様々な薬事規制の議論がされているということ、また、中医協においても、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消ということを念頭に置きながら薬価制度が改革されてきたということは、いずれもこのドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消に向けた大きな前進であると理解しております。
 今申し上げたように、薬事制度と薬価制度が改善されたことによって、日本の製薬協、アメリカのファルマ(PhRMA)、ヨーロッパのエフピア(EFPIA)に加盟している製薬企業にとっては、日本で新薬を導入するハードルの全てとは言いませんけれども、幾つかが解消されることになると思いますので、彼らが開発している新薬のドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが解消されていくだろうと大いに期待しています。
 一方で、この有識者検討会の中でも議論されましたけれども、革新的新薬の多くが日本に拠点を持たない、アメリカのいわゆるエマージングバイオファーマが開発した医薬品であり、それをまず彼らがアメリカで開発して承認を取得し、アメリカで販売しています。それが、日本におけるドラッグ・ロスの大きな要因の一つになっているということを考えますと、それら革新的医薬品を日本で誰が開発し承認を取得し販売するのかという論点はまだ残っていると思います。
 まず第一に、そういったアメリカのエマージングバイオファーマが日本に自ら拠点を設け、日本で開発するようにしてもらうということが必要なのだと思います。PMDAがアメリカに拠点を新たに設けられて情報発信をするということですので、そういったエマージングバイオファーマにも、日本の制度変更というものが発信されていくということが期待されているわけですけれども、それに加えて、まだどのような課題が残っているのかを検討し、その解消を図るということは必要ではないかと思っています。
 例えばですけれども、この有識者検討会でも以前議論にあった、国際共同治験に対応できるような施設がまだ国内に少ないであるとか、そのほかにも英語対応といった課題はまだ残っていると思います。そういった課題の解消も含めて、エマージングバイオファーマを誘致する施策が必要ではないかと考えております。
 さらに、そうはいっても、アメリカのエマージングファーマが日本に拠点を設けないというケースは今後もあるだろうと思います。アメリカのすべてのエマージングファーマが十分な資金やリソースを持って世界各国に拠点を設けるというわけではないだろうと思います。
 そのように考えると、次に考えなくてはいけないのは、そういったエマージングバイオファーマが自ら日本に拠点を作らない場合に、その解決の一つの方法として、日本に拠点を持っている製薬企業がアメリカのエマージングバイオファーマから医薬品開発のライセンスを導入するなどのアライアンスを組んで、日本で承認を取得し販売するということが必要であろうと思います。もちろん、ライセンス導入には費用がかかりますので、初期投資は必要ですけれども、承認制度が変わることにより日本国内での開発時間と費用が下がるわけですから、国内に拠点を持つ製薬企業がアメリカ企業から導入して日本で開発するということのハードルが少しは下がるのだろうと思います。
 そのように考えますと、そういった日本に拠点を持つ製薬企業が海外からのライセンスを導入して日本で開発するということをどのように促進していくかということも考える必要があるのではないかと思っております。
 私からのコメントは以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。それでは、成川構成員、お願いいたします。
○成川構成員 成川です。ありがとうございます。新薬関係と、安定供給の観点で1点ずつコメントをさせていただきます。
 まず、新薬のドラッグ・ラグとかロスの関係ですけれども、こちらについては、先ほど芦田構成員もおっしゃったように、医薬局のほうに薬事規制のあり方について検討する検討会が設けられまして、最終的な報告書みたいなものの取りまとめを待つまでもなく合意が得られた事項について、逐次、ガイドラインの改訂などの作業が行われておりまして、もう既に規制に反映されているところもあります。そういったタイムリーな対応がされていることは非常に喜ばしく思っております。
 本有識者検討会の報告書の課題の中で、何らかの規制が直接影響を与えにくいものというのが創薬力の強化の問題だと思っていまして、そういう意味ですと、対応するには難しい課題だと思っておりますけれども、それもあって、内閣官房に設置された検討会で包括的な議論が進められていると理解していますので、そこの議論については注視していきたいと思っています。
 創薬力というものを広義に捉えますと、今、芦田構成員おっしゃったように、必ずしも日本発のシーズだけではなくて、海外発のものをどうやって日本に円滑に導入するかということにもやはり意識を持っておく必要があって、国内企業のライセンス活動というのは非常に重要な問題だと思います。
 1点加えるとしますと、ライセンス企業が決まっていないような早期の段階で、例えば治験国内管理人とか、そういうものの体制整備とか育成とか、そういったところで、まず早期の段階で日本で足掛かりをつけるまでの間をつなぐというところの対応も考えていく必要があるのかなというのが新薬についてのコメントです。
 それから、2点目が医薬品の安定供給の話でございますけれども、ちょっとこれは個別の話になりますが、抗菌薬の原薬国産化事業というのがあって、βラクタム系の抗菌薬の原薬とか、重要中間体の製造設備の整備などに国の予算が投じられまして、国産化に向けた支援がなされたということは評価したいと思っています。
 今後重要なのは、せっかくそのように国産化の設備が整ったとしても、これまでのように、自由競争に委ねておくと、要するに原薬メーカーの利益の確保というのをある程度考えておかないと、最初だけ立ち上げてもなかなか持続しないと思っていますので、そういう意味で、原薬の製造事業、ある程度適切な利益というか持続性の確保というものに向けて継続的な支援というか、そういったものもやはり今のうちから考えておく必要があると思うので、それはどういったところで検討するのかはあれですけれども、一つの課題ではないかということで指摘をさせていただきます。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。ほかに、あるいは各構成員の先生方がお話しになられたことに対してでも結構でございますし。
 それでは、井上構成員、お願いいたします。
○井上構成員 ありがとうございます。非常に充実したおまとめ、ありがとうございました。
 ちょっと全体に感じたのは、最初にこの委員会で議論した全体像が、それぞれの懇談会、検討会等でのテーマ別の議論にいって、全体の関連性がどう担保されているのかという点が気になるところです。今回のおまとめのところでも、それぞれ分かれて検討されていますという説明ですけれども、それぞれの間の関係性、全体的なグランドデザインというところに関して一枚におまとめ頂いた画があると、もう少し進捗を見る側からして見通しがよかったではないかと感じます。この委員会の議論の最後のときに申し上げたのですけれども、それぞれの施策のタイムラインが必要で、もう少しこの後の検討や施策実施のタイミングが見えてこないと、なかなか事業者が動くに動けないという状況になるのではと思います。事業者にとってどういうタイムラインで自分たちはどの施策に準備すればいいのかというところが見えないのではないかと懸念します。先ほどほか構成員の先生からの御質問にもありましたけれども、少なくとも制度的な部分であるとか、情報公開の要請とか情報共有システムの話であるとか、こうしたところはある程度のタイムラインが示されると事業者側が自ら準備に動いていく点でよいのではないかと感じました。
 私が製薬業界に門外漢なので、こちらの委員会に出ているときにいつも感じるのですけれども、それぞれの分野に非常に専門家が多くて、このために議論が非常にクローズドで、異業種の方がなかなか入ってきておらず、その知見が活かされないという感じがします。例えばサプライチェーンのDXの話をしているのだけど、鍵となる情報産業の方が入ってきていないとか。専門的知見を持った異業種の方々が参加することで対策が迅速化するのではないかというところが感じたところです。
 先ほど、タイムラインが示されないから事業者がなかなか自発的な対応できないのではないかというお話をしたのですけれども、全般的にいろんな施策や検討事項は書いてあるのですけれども、それぞれの該当や参加する事業者に対するインセンティブというものが欠けているように思います。まず、タイムラインがあり、それに対応して事業者にこれだけのインセンティブを与えるというものがセットであるべきではないかと。先ほど安定供給のところで、その安定供給能力に関する情報の調査、企業評価を行うというようなお話がありましたけれども、企業評価を行えばやはり信頼に足る供給元から落ちるところが出てくるというのが前提であります。企業評価して全部がオーケーですねということはほとんど実質的な評価をやっていないことと一緒でしょう。企業評価の中で安定供給元になれない企業を延命措置でゾンビ化させないため、事前に自主的な再編などによる体制強化・効率性向上を促進する余地を与え、それを支援するというセーフティネット的な考え方が一緒にあるべきでしょう。企業評価で落ちる企業を、単純に全部淘汰させると、却って安定供給が阻害されるということになってくるので、信頼に足らない企業やその供給にどのように取り組んでいくのか、自主的に再編などにつながるインセンティブと安定供給継続のセーフティネットのシステマティックな取組の全体像とタイムラインがもう少しあるとよいのではないかという感じがいたしました。
 そういう中で、いかに全体として実現をしていくか、例えば産業集約していくと独禁法が障害になるというご指摘もありましたが、そもそも独禁法は単なるシェアではなく、再編により効率性が改善するかの判断基準があり、効率性の検証というところが行政側で並行的に行われ、事前に提示して安定供給と効率性改善のための産業再編の環境を形成すべきではないかなという感じがしました。
 私自身は、製薬業界は垂直統合しないそれぞれの機能の文化した産業と見ていますので、垂直統合に代わるサプライチェーン情報の一貫した情報システム整備というのが非常に重要だと思うので、やはり情報産業等で一緒に手を携えて、既存の製薬、流通関係の事業者がやっていくというのはDX化のところで非常に必要なのではないかという感じがしました。
 それから、先ほど新しいエマージングバイオファーマの話、芦田委員からありましたけれども、海外の事業者だけでなく新規事業者が入るには、この産業に入っていけばもうかるという見通しが立たなければいけなくて、それには既存事業者にとって代われるというような、そうした新陳代謝の仕組みというのが不可欠という感じはしております。ですから、企業評価やサプライチェーンのDX化で存在意義を失う企業を新しいシステムの中での供給力に取り組んでいくというのと同時に、創薬のところでは新規事業者がしっかりともうけられるような仕組みというところで、市場の開放等が重要になってくるでしょう。
 海外のエマージングバイオファーマのところについては、ちょうど内閣府のほうでグローバルスタートアップキャンパス構想とかでMITなどとの連携を検討していると思うのですけれども、MITはその後背地に大きな創薬クラスターがあります。グローバルスタートアップ構想の中で、大学と同時に同時に彼らと関連の深いバイオ系スタートアップを呼び込んでくると、日本の大学周辺のバイオベンチャーがそこと連携して大いに刺激を受けることが期待できるので、グローバルスタートアップキャンパス構想など政府内のほかの取組との有機的連携というものがもう少しあっていいのかなと考えます。
 私は医薬業界以外から参加しているので、全体の議論がちょっと業界クローズドな感じを受ける、もっと他産業の知見を活用しないのかというのが正直な印象でございました。以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。確かに専門性が非常に重視されるような業界ではあるのですけれども、やはり幅広い視点から御覧になるとやや閉鎖的な議論に終始している可能性があるという御指摘だったと思いますので、その辺については素直に受け止める必要があるかなあとは思います。何かコメントございますか。
 よろしいですか。
 それでは、ただいまのお話も含めまして、何か御意見、御質問いかがでしょうか。
 それでは、菅原構成員、オンラインで手を挙げておられますので、よろしくお願いします。
○菅原構成員 
 検討会の報告書に対してこれだけ短期の間に多くの実効性ある提案、あるいは会議の検討が行われているということで、本当に関係者の方々の労は多かったと思いますけれども、心からの感謝を申し上げたいと思います。
 先ほど小黒構成員並びに香取構成員から冒頭ございましたけれども、私も、現況のマクロの経済状況、急激なインフレ等の高進を考えますと、これらを適切に薬価に反映するような恒常的な仕組み、安定的な仕組みというのは本気で考えなくてはいけないと思っております。小黒構成員のほうからも幾つか御提案がございましたけれども、今後これらの検討がきちっと進むことを期待申し上げます。
 それから、全体の方向性を示した検討会でありますけれども、その下に幾つかの会議が新たに設置されて検討が進んでいるということですので、何点か、検討状況の御質問と、あるいはちょっと御意見を交えて話をさせていただきたいと思います。
 資料に沿いまして、まず5枚目の後発医薬品産業、産業構造の見直しという話があったかと思います。この産業構造の見直しということが今の供給不安の解消に非常に重要だということは分かるのですけれども、もともとの今回の供給不安の発生元というのはやはり製造管理体制、現場の問題というのが非常に大きかったと個人的には考えております。現況におきましても、GMP、あるいはそのGMPにおける製造管理者、品質管理者の教育等々はある程度しっかり行われていると認知しておりますが、それをさらに進めて、本当に製造現場で働いている方々のモラルの醸成だとか、きちんとした責任管理体制というのを確立するということが大事ではないかと思いますので、そこの部分、より踏み込んで御議論を、もししていないのであればしていただけると大変ありがたいなと個人的には感じております。
 それから、次の、長期収載品からジェネリックへの移行につきましては、これは検討会の中でも申し上げたのですけれども、速やかに、かつ迅速に従前の長期収載品の医薬品に係る情報がジェネリック医薬品の製造企業に移行できるように、情報共有ができるように手だてを講じていただきたい旨発言させていただきました。
 医薬品はもちろんモノでありますけれども、情報が伴って初めて適切に利用されるものでございますので、その辺のジェネリックへの代替を適切に進めるに当たっては、情報の移行、管理体制もきちんと整備していただきたいと改めて申し上げたいと思います。
 それから次、13枚目になりますが、先ほど三村構成員のほうからもお話がございましたが、やはり流通改善ガイドラインを適切に設置して、それを適切に遵守していただくということが何よりも大事になってくるかと思います。大変僣越ではありますけれども、これまで医薬品の流通の話というのは様々な問題が長年にわたって指摘されてきて、そのたびごとにある一定程度のガイドラインは整備されてきたにもかかわらず、今日においても残念ながらまだ多くの問題が、課題が残されているということであると思います。当然、様々な御尽力が今改善に向けて行われているということでございますので、大変期待を申し上げておりますが、一方で、このガイドラインが遵守されない場合には、それが守られていないことをきちんと通報されたり、あるいは指導されるというようなもう一歩踏み込んだ強い体制が整わなければ、なかなか実効性の担保が難しいのではないかなとも感じます。
 その辺りについても、今度こそはきちっとこのガイドラインが守られるのだということを、売り手側、買い手側双方がしっかり担保できるようなより強い指導体制というのを御一考いただければと思います。
 それから、16枚目のスライドになるかと思いますが、「その他の課題」の中でちょっと気になったのは、3つ目のポツ目だと思いますが、規制改革推進に関する中間答申において、海外2か国以上でスイッチOTC化されている医薬品については日本でもOTC化するというような文言がございます。これはほかの会議体でのお話でありますので、ここで質問するのは不適切かもしれませんけれども、この「海外2か国以上」というのが一体どんな国が含まれているのかがちょっと明らかではありませんし、おのおのの国における保険給付、あるいはOTCでの扱いの関係というのは当然全然違うわけですから、相当程度日本の状況と近似した国との比較でなければ、こういった議論は少し乱暴ではないかと、外から見ると感じます。
 いずれにしましても、何か事務局のほうで、この「海外2か国以上」ということについて情報があれば少し御提供いただければと思います。
 いずれにいたしましても、これだけ幅広の内容について本当に短期間の間に適切な対応、あるいは会議の進展が見られているところで本当に感謝申し上げたいと思います。
 私のほうから、意見並びに若干質問もありましたけれども、以上でございます。ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。会議の中でもおっしゃられたような幾つかの懸念事項、それがどのような形で議論されているのかいないのかも含めて、御意見であると同時に御質問でもあったかと思いますので、可能な範囲で事務局にお答えをいただければと思います。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。御質問いただいた点について、私のほうからまず何点か、その後に担当課長のほうからまた御答弁申し上げたいと思います。
 まず最初の後発医薬品の産業構造のあり方の問題でございます。この中で、もちろん産業構造のあり方の見直し、重要でございますが、その前提として、後発品の安定供給、信頼回復等の観点からも、製造管理、品質管理の徹底、これがまず最初に取り組まなければならない喫緊の課題である、こうした課題認識は既にこの後発品の産業構造のあり方の検討会でも示されているところでございます。
 1月31日、第8回の検討会においてお示しした論点の中におきましても、後発品への信頼回復のため、製造管理、品質管理に係る自主点検の強化についてどのように考えるか、企業の製造管理、品質管理に係る取組状況を可視化することを検討してはどうかなど、まさに後発医薬品、産業構造のあり方を検討するいわば前提として、こうした製造管理、品質管理の徹底が重要である、そうした課題認識のもとに議論が行われているということを御報告させていただきたいと思います。
 それから2点目でございます。流通改善ガイドライン、これが遵守されていない場合の対応ということでございます。今回の流通改善ガイドラインの見直しの中で、そこの部分についても、もともとこうした流通改善ガイドラインの趣旨に沿わないような事例、そういうものがあった場合、私どものほうで設置しております窓口に相談することができるという規定はございました。
 こうしたことをさらに敷衍する形で、厚生労働省でこの相談内容を流通改善ガイドラインの事項ごとにまとめ、流改懇ですとか厚生労働省のウェブサイトで公表し、いわば事案の見える化ということを通じて、その流通改善ガイドラインの遵守を促すということ、こうしたことも既に流通改善ガイドラインに書いてあり、実際、前回の流改懇におきましても御相談いただいた事案について御報告させていただいているところでございます。
 さらに、今回の流通改善ガイドラインの改正におきましては、公表後に同様の事案を繰り返し行うなど、改善の見込みがなく、適正な医薬品流通に支障を来すものと厚生労働省が判断した事案については、ヒアリングや指導を行い、その詳細について流改懇への報告や厚生労働省のウェブサイトで公表するなど必要な措置を取る、こうしたことも少し文言を強化する形で盛り込んだところでございます。
 私どもとして、こうした取組を通じて流通改善ガイドラインが遵守されるように、その前提として、今回の見直し時点、先ほど三村構成員の御指摘にもあったとおり、しっかりと周知をしながら取り組んでまいりたいと考えてございます。
 ではスイッチの関係、お願いします。
○中井医薬品審査管理課長 医薬品審査管理課長でございます。
 一番最後の16ページ、スイッチの関係でありますけれども、これは規制改革会議で御議論がありまして、海外2か国以上ということ、特にこれはどこの国かという指定はございません。ただ、日本で申請がされているもの、そういう希望があるものということが大前提であります。また、スイッチ化するということは、スイッチ化することが目標ということでありまして、期限内にスイッチ化について判断をすることになっているということであります。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。菅原構成員、いかがでしょうか。
○菅原構成員 1点だけ、まだ御返事いただいていないのが、長期収載品からジェネリックに移行の際の情報共有のあり方という話があったと思いますが、この辺はいかがでしょうか。
○遠藤座長 事務局、コメントをお願いします。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 事務局でございます。
 今、御質問いただきました長期収載品から後発医薬品、メーカー間での情報の共有のお話かと思います。安全性情報ですとか有効性に関する情報をどのように引き継ぐかという問題と理解しております。この問題につきましては、現在も長期収載品の撤退が行われる場合には、個別の指導を各メーカーに対して行って、可能な限り、後発品メーカーへの引き継ぎが行われるように指導を行っているところではございますけれども、そこについて、より明確といいますか、明示的に明確になるようにすべきという御指摘かと思いますので、御指摘につきましては、関係部署とも共有させていただき、引き続き検討させていただきたいと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。
 坂巻構成員、どうぞ。
○坂巻構成員 坂巻でございます。
 ちょっと安定供給に関して意見を申し上げたいと思うのですけれども、すみません、個人的には、安定供給の問題というのは、企業のコンプライアンス、ガバナンスの問題という認識が一般的になされてきたわけですけれども、私自身、その考え方では甘いのかなという考え方はちょっと持っております。
 ここで引用するのが適切かどうか分からないですけれども、最近、監麻課長がそれに近い発言をされておりまして、簡単には、もともと技術力がないために品質を担保できない、あるいは製造プロセスを供給量に合わせてプロセスの確認、手引書をつくることはできない。それを隠蔽することが結局今の問題につながっているというような、私の理解ではそういった発言をされているように感じています。
 恐らく私も同じ考え方で、それに近いかなと思っていますけれども、いずれにしても、今の安定供給の議論って日本特有の問題の中で、企業のガバナンスの問題に余りにもフォーカスを当て過ぎている、あるいは供給キャパシティの問題にも今回の、失礼な言い方をすれば、薬価でもそこのところに重きが置かれ過ぎているなと思っています。そもそも日本のジェネリックメーカーどうするのだという議論の中で、日本のジェネリックメーカーが世界の中で、グローバルの中で、品質であったり技術であったりというものについてどう競争力を高めていくのかという根本的な議論がやはり弱いのではないかなということを感じています。
 その技術力の弱さということを突き詰めて考えれば、現実に今、日本のジェネリック、特許切れ医薬品の大半は、原料、原薬は海外依存です。βラクタム系に関しては国内回帰という議論がされていますけれども、今後どういったものがジェネリック化されていくか。例えば分子標的薬のような合成の難しいものであったり、あるいは特許上の課題をクリアーできなかったもの、あるいはバイオシミラーも同じですけれども、そういったものに関してずっと海外依存するということが、ずっと同じようにサプライチェーンのリスクを抱えながら、日本で特許切れ製品について日本で使っているということを続けていくことにほかならないわけです。
 一方で、今度逆の見方をすると、先ほどバイオシミラーとも話しましたけれども、先発医薬品に関しては、グローバルのドラッグロスで議論している。一方で、バイオシミラーとかジェネリック医薬品に関しては、日本にグローバル企業がもう上市しないという流れになりつつある。実際、バイオシミラーに関しても、今年に入って1社が日本事業から撤退しました。グローバルでは撤退していません。というようなことが起きて、バイオシミラーとかジェネリック医薬品の市場自体もやはり魅力度が落ちている、あるいは規制のハードルが高くて、日本で、例えば薬価の低さ等比べた場合の魅力度が落ちているということもあります。そこら辺のところについて、もう少し現状についての企業行動についてきちんとデータを見ながら産業振興の議論が必要ではないかと思っています。
 それから、今までの御発言の中でちょっと反論ではないのですけれども、例えばエマージングバイオファーマ、EBPの役割は非常に重要です。実際にアメリカでは、直近、2024年の2月に、いつも引用される巨大市場調査会社がレポートを出していますけれども、アメリカですと約半分がEBP由来であると。実際には、EBPが単独で開発しているものは、もちろん皆無ではないですけれども、少なくて、大半は大手の企業とパートナーシップで開発しているのですね。これは見方を変えれば、日本の企業は、海外のEBPから見ても、パートナーシップを組むだけの力がないという見方をされている。そういう意味では、やはり同じところに行き着くわけですけれども、日本の製薬企業の開発力をどう強化するかということの議論なのだと思います。
 それから、冒頭の薬価乖離率の話ですけれども、ここもきちんとデータを見ながら議論することが必要だろうと思います。例えば流通制度の改革であったり、あるいはインフレが起きているから乖離率が高まったというのは恐らく少し勇足の議論ではないかと思います。今日、安川管理官いらっしゃいますけれども、薬効別で見ると、抗ウイルス薬だとか、非常に乖離率が小さくなっています。つまり、この薬価調査の時期にちょうど新型コロナの治療薬が調査の対象になったために、見かけ上、全体の平均率が小さくなった可能性もあります。
 ですから、ここは今実際どうなったのかということについて、これからの分析なので質問はしませんけれども、やはりもう少し時間をかけながら、乖離率がなぜ変わっているのか、それから、海外の市場調査を見ながら、実際にインフレ率と市場実勢価というか、海外ですと入札制度ですけれども、ほとんど差がない、関係がないということはもう分かっているわけですね。ですから、余りそこのインフレという議論だけで薬価制度改革の議論、あるいは市場実勢価をどう扱うのかという議論は少し慎重に。もちろん幅広に、薬価制度をどうするか、薬価改定の仕組みをどうするかということの議論は必要ですけれども、データに関しては、これまでも申し上げてきましたけれども、より正確な分析をしながら議論することが必要だと考えております。
 すみません。長くなりましたけれども、以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。2つのことをおっしゃられたのかなと。1つは、創薬力の向上というのも、ジェネリックメーカーであるとかバイオシミラーとかいうような、そういう企業に対しても議論するべきではないかという話と、もう一つは、薬価制度改革のベースとなっているデータについては丁寧に分析するべきだろうと、そういう御指摘だったかなと思いますが、何かコメントありますか、事務局としては。
 御意見として承るということで、重要な御指摘だったとは思います。ほかに何かございますか。
 三浦構成員、お願いします。
○三浦構成員 ありがとうございます。
 実際、皆さんおっしゃっている感じなのですけれども、本当にこの短い時間でおまとめいただきまして、ありがとうございました。
 さらに、井上先生がさっきおっしゃったみたいに、要因間の関係なんかも最初にあるとさらによくなったような感じもいたしまして、実際、流通の総価取引はすごい問題ですけれども、長期収載品とジェネリックを薬局はまとめて買うので、結局、ジェネリックは安くさせられる。そうするとジェネリックメーカーとしてはもうからないので、毎年どんどん新しいのを出さざるを得ない。それが供給不安にもつながるみたいな感じがありまして、要因間の関係みたいなものも、井上先生おっしゃるようにあったりするので、さらに分かりやすくなるという感じがありまして、要因間の関係図みたいなものがあるといいなという感じがいたしました。
 そういった意味では、要因の中でどこが一番問題かみたいなものがさらにあると分かりやすいと思いまして、大きな方向性、これだけいろんなものが関わってきますので、何かグランドデザインを考えていくというのはすごく難しいかと思いますが、一つのポイントとしては、開発も流通も日本は遅れていると非常に感じましたので、多分、実際、薬価が毎年下がるというのは何か変わったシステムということがありますし、本当に総価取引もすごい変わったシステム等があったりするわけでして、そんなことがありまして、その中ではやはり情報ということが1つ大きなポイントで、さっき三村先生もおっしゃっていたわけですけれども、本当に強靱化をしていかないとだめで、サプライチェーンの強靱化をしていく、やはり情報ですよね。
 これはマーケティングなんかでも、82年、もう40年前ですけれども、セブンがPOSレジと電子台帳で本当に情報化して、商品にソースマーキングさせてみたいな感じがありまして、そういった体制ができてきているわけでして、実際、医薬品のOTCでは完全にそういった単品単価のシステムができているわけですけれども、その一方で、医療用医薬品でできていないというのは、いろんなところに旧来のシステムが残っているという感じがありまして、実際、成川先生と一緒に数年前に厚労科研で調査もやらせていただきましたけれども、何で単品単価にしないのかというと、卸はできる、その一方で、薬局側としては薬品数が多過ぎてとてもできないみたいな話があったりするわけですけれども、ただ、この情報化の時代になってくると、多いからできないのではなくて、もうやらないとだめなわけですね。やらないと、DX化で日本はどんどん遅れている感じがありますので、そういった意味ではやらないとだめだということになってきて、そういった中でやはり情報化していく必要があって、そのときには、卸はシステムを持っているわけですから、何か協力いただく必要がありますし、あとは、さっきのインセンティブみたいな話で、単品単価しているとインセンティブをあげる、単品単価していなかったらディスインセンティブを与えるというようなこともすごい必要な感じがありまして、そういった情報化ということが多分医薬品流通では、物流体制がしっかりできていて、あと、そこに情報をどう乗せるかということだと思いますので、そういったことをしていくことが必要ではないかという感じで、今おっしゃったような情報化と、これから医薬品流通をよくしていくというのをどんどん発信していく必要があるのではないかと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。ほかに何かございますか。
 香取構成員、どうぞ。
○香取構成員 さっき創薬の話をしたので、今度は流通の話をしたいのですけれども、先ほど課長が流通でいろんな問題事例があったときには、報告をしたり公表したりという仕組みがガイドラインの中であるという話をされたのですが、流通ガイドラインを守るべき人というのは誰かと考えると、流通だから、売っている人、買っている人両方ということになると思うのですけれども、とすれば、例えば医療機関とか薬局とか、これも実は流通ガイドラインの当事者なわけですよね。そうすると、総価取引にしてもそうですが、医療機関とか薬局の側にも当事者としてガイドラインを遵守してもらわなければいけないはずで、これは卸の側だけで改善できるわけでもなくて、医療機関とか薬局側がどれぐらい当事者意識を持っているのかというのがあると思っていて、今でも日医等に対していろいろ御説明をされたりしているだろうと思うのですけれども、果たして買う側に当事者意識があるのだろうかと思っています。その辺はちょっと取組を考えていただきたい。
 その関連でいうと、これはなかなか難しいと思うのですが、以前も話しましたが、例えば数量を決めないで価格だけで取引を行うとか、薬価改定の直前に在庫品を全部引き揚げさせるとか、一種、ずっと昔から続いている、一定の力関係の中ででき上がっている市場での取引慣行みたいなのがあって、個々の卸、あるいは個々の医療機関だけでは中々変えられないようなことがあるように思います。そうすると、一種そういう構造的な取引慣行の中で明らかに問題があるものとか、それこそDX推進の邪魔になるようなものというのは、この際総ざらいすることを考える。長年続いている取引慣行なので、なかなか卸の側から言いにくいのでしょうけれども、流通改善というのであれば、行政としてそういう取り組みを考えるべきではないかというのが1点。
 もう一点は安定供給の話なのですが、長既収載品のところでも出てましたが、新薬メーカーから後発品メーカーに移行させる、新薬メーカーには撤退してもらって後発品メーカーにハンドオーバーする、ということですけれども、そのハンドオーバーした瞬間に生産量ががたっと落ちるというわけにいかないので、全体としての生産量、必要な供給量を確保しながら安定的に移行していくことを考えなければいけないはずですね。
 薬の世界というのは、生産も流通も販売も全部規制がかかっているわけなので、一種、自由なようでいて自由でない世界というのがあると思うのです。そうすると、例えば卸が共同で何かやろうとすると、独禁法の関係があるという。今回の能登の地震でもそうですけれども、被災地への医薬品の配送を共同でやるというのを考えた卸さんがいるらしいのですけれども、卸の中で議論すると、そういう協議をすると集まって話をすること自体が独禁法にさわるかもしれないと、独禁法が怖いというか、おびえているというか、そういうのがあってうまくいかない。むしろ全体として規制がかかっている業界だ、ということを考えれば、安定供給の確保とか、ある程度そういうことについては、一定のスキームというか、独禁法に触れないような形の枠組みを制度として用意してあげないとなかなかうまくいかないのではないかと。
 何が言いたいかというと、安定供給に関してはもっと大きい視点で考える必要があるのではないか。具体的にいうと、今の薬機法は、個々の医薬品の製造・流通・販売について安全性と有効性に基づいて承認する。基本的には衛生規制法なのですけれども、そもそも何のためにこの法律があるのかをずっと議論していくと、安定供給、つまり、国民に対して必要な医薬品を確実に届ける。質とクオリティのコントロールは、薬機法はしているわけですけれども、安定供給についての規定が薬機法には書かれていない。むしろ考え方としては、薬機法の基本的な法目的の中に必要な医薬品を確実に国民に届ける、安定供給という法益をきちんと入れ込んで、このことについて体系的・制度的に対応できるような枠組みをつくるべきではないか、そうすると、例えば製造者に対しても流通者に対しても、安定供給に関する一定の要件、製造段階の承認でもそういう義務をかけることができるようになると思うのです。
役人的な発想で申し訳ないのですけれども、そういうことは考えたほうがいいのではないか。全体としての法体系というか制度的な枠組みの中でこの問題の解決方策を考える。個別にメーカーを指導したり、個別のケースについて行政で対応する、それはそれで必要だと思いますが、もっと大きい視点で枠組みというのも考えてはどうか。幾つか立ち上げておられる検討会の中で検討していただければと思います。
そういうこともあるのではないかということで、これは意見です。
○遠藤座長 御提案、御意見として承りました。ありがとうございます。
 それでは、オンラインで小黒構成員がお手を挙げておられますので、小黒構成員、お願いいたします。
○小黒構成員 先ほど坂巻構成員がデータで実際に乖離率がどうなっているか、精緻に分析すべきというご提案は、データを見ながら冷静に判断する必要があると思うので、全く賛成です。ただ、もしかすると私の説明で、乖離に関する用語が2つ(「乖離率」と「乖離」)あったので、ちょっと誤解を与えるかもしれないので、ちょっと念のために補足だけさせてください。
 最初に申し上げた「乖離率」というのは、薬価と市場実勢価との間で発生する乖離率で、理論的には物価が上昇すれば原材料のコストとか上がりますので、一定の枠で、上に薬価で上限は決まったとしても、その幅が少し小さくなる可能性があるというような、乖離率圧縮効果と前段で説明させていただいたものになります。それが本当にどうなっているかということについては坂巻先生のおっしゃるとおりだと思います。
 後段のほうで申し上げた別の「乖離」につきましては、これは薬価改定の名目と実質の違いで、平均的な改定率が名目で5%だとしても、物価の上昇率が3%だとすると、実際はその3%をさらに差し引いたマイナス8%分がリアルなエコノミーで見た実質的な改定率になるという意味で御説明させていただきましたので、そこだけ少し補足させていただければと思います。
 あとちょっとついでなのですけれども、1点だけ、事務局のほうにお伺いしたいことがありまして、「骨太の方針2023」で、これの39ページの脚注の260に、ちょっと小さい文字ですけれども、「中長期的な薬剤費のあり方の議論を含めて取組を進める必要がある」というような文言が入っているのですけれども、これと有識者検討会との関係とかはどうなっているのか、可能であればちょっと教えていただけますでしょうか。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 すみません。今、39ページとおっしゃられましたでしょうか。
○小黒構成員 骨太の方針の39ページの脚注260ですね。
○遠藤座長 本日の配付資料にはないものという理解で。
○小黒構成員 多分入っていないかもしれないですね。今日の説明資料だと、後ろのほうに骨太の話が出てきていたので、その関連でちょっと質問させていただきます。
○遠藤座長 事務局がそれにアクセスをしたので。
○小黒構成員 もし可能であればという程度で。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 医薬産業振興・医療情報企画課長です。
 今確認いたしまして、ありていに申し上げれば、まさにここに書いてあるとおりということになるのですが、脚注のところに、小黒構成員がおっしゃいましたとおり、「GDPに占める日本の医薬品等の支出は他の先進国よりも高い一方、世界の医療用医薬品の販売額における日本国内の販売額のシェアは低下しており、こうした状況の中で国民負担の軽減とイノベーションの推進を両立する観点から、中長期的な薬剤費のあり方の議論も含めて取組を進める必要がある」とされているところでございます。
 まさに骨太方針でこうしたことが注で書いてあり、そうしたことも踏まえながら検討を進めるということになります。
○小黒構成員 そこは「薬剤費の総額も」という理解でよろしいのですね。「含めて」と書いてありますから。
○水谷医療産業振興・医療情報企画課長 まさに「含めて」と書いてあるとおりということでございます。
○小黒構成員 分かりました。ありがとうございます。
○遠藤座長 ほかにございますか。
 三村構成員、それから坂巻構成員の順番でお願いしたいと思います。
○三村構成員 先ほど香取先生がおっしゃったことと若干関連いたしまして、実は安定供給の話をしていきますと、これは先ほど能登地震の話が出たのですが、最近、離島においての供給体制どうするかという話を伺いましたときに、海が荒れたらフェリーが行かないので届けられないとか、ときには自衛隊にお願いするとか、そういう話もあるということです。そのときに、卸さん同士がやはり共同配送できないかとか共同備蓄できないかという話があるのですが、それを実現させるのがなかなか難しいと。
 そういうときに、これは先ほどの市場実勢価とは何かということと関係するのですけれども、まさに市場原理がしっかりと機能するべき分野とは別に、緊急時の安定供給ということが重要となったときには、それをある意味で少し先行的に何か対応できるような仕組みとかルールがあってもいいのではないかという感じがいたしました。
 確かに薬機法の中に安定供給に関する例えば規定なりがあればやりやすいのですが、今のところないということでありますので、今までのような議論に関しては、厚労省から、公取との関係においてもしっかりと支援していただくとか、公取との話し合いもしていただく、御説明していただくということが必要かなという感じがいたします。
 ただ、供給安定という議論になりますと企業間連携という話がどうしても出てきますので、香取先生おっしゃったような懸念に対しての、まさに厚労省としてのある意味でのスタンスとか方針がやはり必要ではないか、あるいは現場の感覚としてはそういうことをやっていただきたいという要望もあるように聞いております。
 以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。では、坂巻構成員、お手を挙げておられましたので、お願いします。
○坂巻構成員 ありがとうございます。坂巻です。
 この検討会でも、薬剤費の伸びをどうするかというところについてはいろんな御提案がありましたけれども、ちょっと議論が十分でなかったかなというのは印象として残っています。恐らく最初は外国、言ってしまえばファルマだと思うのですけれども、市場調査会社のデータを使って、日本の薬剤支出の伸びが先進国の中で非常に低いというところから議論が出発しただろうと思うのですね。その理由は何なのかということをもう少し精緻に分析すべきだということは、私、申し上げていたつもりです。
 例えば円安基調がどう影響しているのかということはあるだろうし、最近、某市場調査会社のデータで見ますと、薬剤の使っている量ですね。一般的には、デファインド・デイリー・ドウズというのは平均的な患者さんがどのぐらいの量を使うかという単位ですけれども、それで見て、薬剤の使っている量を見ますと、日本はまさに先進国の中で全然伸びていない国なのです。つまり、ほかの国はその量が増えているのだけど、日本は量が増えていない。もちろん薬価の問題もあるだろうと思います。
 薬価の問題だとか、為替の話だとか、それから今言った使える量の問題だとか、いろんな要因を絡めて、薬価だけが原因であるかのような議論になってしまっていますけれども、ここもちゃんともう少し分析する必要があると思うのです。何で日本は使用量が増えてこないのか。例えばポリファーマシーに代表されるように使い方のコントロールの効果が起きているのかもしれないし、もともと日本って医薬品に関するアクセスは世界の中で一番高いです。ヨーロッパなんかですと、予算制がある中で、高い薬については年度の終わりになると使えなくなってしまう。これがジェネリック医薬品だとかバイオシミラーが出ることによってアクセスがよくなって、それでどんどん使用量が増えていくということもあるかもしれない。いろんな理由があると思うのですけれども、薬剤が日本伸びていない理由は薬価だけという議論は少し慎重に考える必要があって、そこは、先ほど小黒構成員からも質問がございましたけれども、それに関連して、私も、より精緻に分析しながら議論を継続する必要があるのではないかと考えています。以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。ほかに。
 それでは、事務局から補足の説明をお願いいたします。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 事務局でございます。
 オンラインで参加されております堀構成員から、PCの調子が悪いということで、チャットで、コメントで御意見をいただきましたので、今から代読をさせていただきたいと思います。恐れ入ります。
 報告書で提示された方向性を踏まえ、各会議体で詳細を実施に向け積極的に議論し、短期的に対応できるところはされたと理解しております。ただ、構造的な課題も多く、短期的に対応できないものも多いので、「今後の対応」を見ると、「議論する」や「議論予定」という表現が多くなっているのはある意味仕方がないとは思いますが、正直、一体どれだけの成果が上がっているのか、特に、長期的な視点から把握することが容易ではありません。
 いつ頃までに何を実現したいのかという具体的な工程表、進捗状況を確認する指標がなく、「見える化」がされないままでは、議論が続くだけで先の見通しが立たないようにも感じます。無論、この検討会で、進捗管理の確認が求められているのかどうかにもよりますが、「総合対策」として、各委員会における議論間の整合性がどうなっているのか、関係性などを確認しないと、バラバラになっていきます。
 PDMAを回すと考えると、いつ頃までにどのように成果を評価すればよいのか、政策の評価という意味でも「見える化」が重要ではないかと考えます。薬価調査のデジタル化を図るとされていますが、「見える化」という意味で重要だと思いますので、調査設計をしっかりしていただければと思います。最後に、国民目線で理解しやすいようにしないと議論が前に進まないところもあるかと思います。専門家以外も理解できるように、安定供給に向けて実際、どこまで進んだのか、どこが進んでいないのかなどが見えるようにしていくことが重要で、せめて概要を一枚図でも分かるようなものがあるとよいのではないかと思います。以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。海外からアクセスされておられますのでこういうこともあるということでありますが、重要な御指摘を頂戴いたしたと思います。ほかにございますか。
 大体御意見はいただいたということでよろしゅうございますか。
 ありがとうございました。本日は、もともとこの会議体のアジェンダ、多様なわけですけれども、非常に多様な視点からの御指摘をいただきました。厳しい御指摘もあったかと思います。事務局におかれましては、これらの中で、必要に応じて会議をされている会議体に対して情報提供するなど対応をお願いしたいと思います。また、今後それぞれの会議体での議論の進捗状況を当検討会において報告されるということを続けていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。長時間にわたりまして大変貴重な御意見を頂戴いたしましてありがとうございました。
 それでは、本日の議論はこれまでとさせていただきたいと思いますが、事務局から何かありますか。

○山本ベンチャー等支援戦略室長 次回検討会の開催につきましては、現時点では未定でございますので、詳細につきましては厚生労働省事務局より改めて御連絡させていただく予定でございます。
 また、本日の検討会の議事録につきましては、後日、厚生労働省のウェブサイトに掲載予定としてございます。
 事務局からの連絡事項は以上でございます。
○遠藤座長 それでは、これをもちまして、本日の検討会、終了したいと思います。年度末のお忙しい中、御参集をいただきまして、どうもありがとうございました。