2023年10月27日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和5年10月27日(金)14:00~

場所

厚生労働省専用第22~24会議室

出席者

出席委員(15名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
 
欠席委員(6名)五十音順

 
行政機関出席者
  •  城克文(医薬局長)
  •  吉田易範(大臣官房審議官)
  •  中井清人(医薬品審査管理課長)
  •  田宮憲一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 執行役員) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。お忙しい中、御参集いただきましてどうもありがとうございます。
 本日はペーパーレスでの開催となりますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作などで御不明点がありましたら、適宜事務局がサポートしますので、よろしくお願いします。
 本日の会議における委員の出席ですが、大森委員、佐藤直樹委員、中西委員、根岸委員、松野委員、矢野委員より御欠席との連絡を頂いています。また赤羽委員と田﨑委員が後ほど御参加されると聞いています。本日、現在のところ当部会委員数21名のうち13名の委員がこの会議に御出席を頂いていますので、定足数に達していることを御報告します。
 薬事分科会規程第11条への適合状況については、全ての委員の皆様より適合している旨を御申告いただいていますので、御報告させていただきます。委員の皆様におかれましては会議開催の都度、御協力賜り誠にありがとうございます。
 それでは、森部会長、以後の進行をお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、委員からの申出状況について報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日の会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~資料No.9を用いますのでお手元に御用意ください。
 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは資料No.9に記載のとおりです。これらに関する委員からの申出状況等を踏まえた、薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員の審議参加に係る取扱いは次のとおりです。
議題1「フィコンパ」、退室委員なし、議決に参加しない委員、代田委員、髙橋委員です。
議題2「イグザレルト」、退室委員なし、議決に参加しない委員、代田委員、髙橋委員です。
議題3「希少疾病用医薬品の指定の可否」、退室委員なし、議決に参加しない委員、川上委員、髙橋委員です。以上です。
○森部会長 今の御説明について、特段の御意見等はありませんか。よろしければ皆様に確認いただいたものとします。本日は審議事項3議題、報告事項2議題となっています。
 それでは審議事項の議題に移らせていただきます。では、審議事項の議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品フィコンパ点滴静注用2mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。
 資料No.1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全32ページの通し番号で6ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤は、有効成分としてペランパネル水和物を含有する注射剤であり、本邦では、ペランパネル水和物の経口製剤が、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)及び強直間代発作に係る適応で承認されています。
今般、ペランパネル水和物の経口製剤を一時的に投与できない患者における代替療法として、本剤の製造販売承認申請が行われました。2023年10月現在、本剤が承認されている国又は地域はありませんが、本薬経口製剤は、米国、欧州等73以上の国又は地域で承認されています。
本申請の専門委員として、資料No.8に記載されている5名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。本剤は、一時的に経口投与ができない患者における本薬経口製剤の代替療法として開発されたことから、他の抗てんかん薬の注射剤と同様に、本薬経口製剤と本剤での薬物動態の類似性、並びに本薬経口製剤から本剤に切り替えた際の安全性及び有効性に大きな問題がないことを確認する開発方針がとられました。
11/32ページ、表7を御覧ください。まず、050試験において本薬錠剤投与時に対する本剤投与時の最高血漿中濃度(Cmaⅹ)は同程度以上で、投与時間が短くなるにつれて高値を示す傾向があり、濃度-時間曲線下面積(AUC)は同程度となりました。次に、17/32ページの表12を御覧ください。18歳以上のてんかん患者が参加した240試験において、本薬錠剤と本剤との切替え時の発作頻度に明らかな変化は認められませんでした。以上から、一時的に経口投与ができない患者に対する本薬経口製剤の代替療法としての本剤の有効性は確認できたと判断しました。
 次に安全性について、審査報告書の通し番号19~22/32ページの「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。提出された臨床試験成績等から、本剤投与に当たっては、浮動性めまいや傾眠等の中枢神経系の有害事象やそれに起因する転倒等の二次的な有害事象、添加剤SBECDによるアナフィラキシー関連の有害事象や腎機能障害関連の有害事象の発現に注意する必要があると考えます。添加剤SBECDによる腎機能障害に関しては、SBECDの累積投与量が腎機能悪化と相関がある可能性が既存の情報から示唆されていることから、長期間投与する場合には定期的に腎機能検査を行う旨の注意喚起は必要と考えますが、当該内容を含め、他の事象についても適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、一時的に経口投与ができない患者における本薬経口製剤の代替療法としての本剤の安全性は許容可能と判断しました。
用法・用量について、審査報告書の通し番号27/32ページの「1.3 用法・用量について」の項を御覧ください。240試験の結果等から、成人に対する用法・用量は、先行する本薬経口製剤と同一の用量とすること、及び投与時間を30分以上かけてと設定することは妥当であると判断しました。240試験に4歳以上の小児は組み入れられませんでしたが、小児における本薬経口製剤投与時と本剤投与時との曝露の差異が、050試験において成人で認められた差異とおおむね同様になると推定することに大きな懸念はないと判断しました。その上で、12歳以上の小児と成人で本薬経口製剤投与時の曝露量、有効性及び安全性に大きな差異はないことが確認されていること等を踏まえ、12歳以上の小児では、成人と同一の用法・用量を設定することは可能であると判断しました。一方、4歳以上12歳未満の小児では、臨床試験において有効性及び安全性が確認された用量で本薬経口製剤を投与したときに、成人及び12歳以上の小児と比較して曝露量が高くなる傾向が認められています。しかしながら、240試験成績から本剤投与時の曝露量を、臨床試験で有効性及び安全性が確認されている本薬経口製剤の曝露量と同程度にすることで、本剤において本薬経口製剤と同様な有効性及び安全性が期待できると考え、4歳以上12歳未満の小児の用法・用量は、成人及び12歳以上の小児と同様に、本薬経口製剤と同じ用量とした上で、050試験において本薬錠剤投与時に対する本剤90分間投与時の曝露量がおおむね同程度であったことに基づき、投与時間を90分と設定することが適切であると判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は新投与経路医薬品であるこことから、再審査期間は6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。なお、審査報告書に誤記がありましたので、審査報告書のファイル1枚目の修正表のとおり訂正いたします。本修正について、審査へ影響がないことは確認しています。
 薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。
○大谷委員 一つよろしいでしょうか。大谷です。注射剤への切替えということで、そんなに大きな問題はないと思いますが、当然、一定時間以上かけて点滴するというような指示になっていたかと思いますが、これは間違ってショットで短時間で入れてしまった場合というのは、何か大きな副作用、問題点が生じる可能性はあると考えていますか。その点をお聞かせいただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 急速静注された際には、Cmaxが急激に上昇することになりますので、恐らく中枢神経系の有害事象等の発現頻度が上がる可能性はあるのではないかと考えますが、本剤は医療機関内で使用する薬剤になりますので、有害事象が発生した場合でも管理可能ではないかと考えております。
○大谷委員 ありがとうございます。ある程度、時間をかけて投与しなければならない製剤は、ものによっては包装、それから被包の方に急速静注禁止や何分以上掛けて静注など、そういったことが書かれることが多いのですが、本剤の包装形態はどのようになっていますか。
○医薬品医療機器総合機構 10月第一部会製剤写真・外箱の展開図を御覧ください。まず、販売名に「点滴静注用」というワードが入っていまして、その販売名がしっかりと外箱に表示されているため、急速静注も可能とはお間違いにならないのかなと機構としては考えています。
○大谷委員 ありがとうございます。今、それを開けて見たのですが、点滴静注用とは書いてありますが、特に大きな文字でそういった短時間で入れないようにということは書いていないかと思いますが、そこは大丈夫でしょうか。もちろん医療現場ですから、正しく使ってくださることを信じるわけですが。もし間違って入れてしまった場合の重篤度によることだとは思うのですが。間違って入れてしまっても、その場で対応すれば何とかなる程度であれば、そのままでもいいかもしれませんし、非常に重いようなことが起きるのであれば、一応そういった注意喚起のような包装や表示があってもよいのかなと思いましたので、その辺はどうお考えかということでお聞かせいただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず冒頭、御質問いただきましたワンショットで静注した際のデータはありませんので、具体的に何が生じるかというのはわかっていませんが、添付文書でも注意喚起をさせていただいていますように、過量投与後に見られた主な症状としては、精神状態の変化、激越、攻撃的行動といった事象が生じる可能性があると考えています。御指摘いただいた、外箱等の包装での注意喚起の文言はありませんが、先ほど説明した販売名に加えて、「点滴専用」と表示されていますので、こちらの内容で誤使用になることは防げるのかと考えています。
○大谷委員 分かりました。ありがとうございます。直接、死に至ることがないということだと思いますので、承知しました。どうもありがとうございました。
○森部会長 今の点について、先生方から特に追加の御発言や御意見、御質問はありませんか。従来、経口薬で使用されている場合には、急速に血中濃度が上昇するということは想定されなかったわけですが、こういった静注薬として上市されますと、医療現場ではもちろん多くの医療従事者が細心の注意を払って行ってはいますが、まれに想定していない事象が起こり得るといったことや、何らかの事情で点滴ラインが速く滴下されてしまったりといったことなどは、他の薬剤でも多々生じているところですので、具体的に注意喚起できる機会をフルに活用して情報提供することは大いに考慮していただいてよいのではないかと思います。パッケージの準備が検討可能かどうか分かりませんが、今、大谷委員から御発言がありましたような、パッケージも含めて、この薬剤を急速静注しないように注噫喚起するということを、資材の作成、それから包装も含めて、メーカーの方に再度御検討いただくというのはいかがなものでしょうか。それに関して何か御意見はありませんか。 
○新薬審査第三部長 資材等含めて、医療過誤が起こらないような方策をさらに検討していくようにとの御指摘と理解しました。ただ、包装での注意喚起の記載についてはスペースの状況もありますので難しいかもしれないですが、資材なども含めて、今日いただいた御意見を反映できるように、申請者側と相談していきたいと考えています。
○森部会長 ありがとうございます。点滴静注用と書いてあるので、急速静注する方はいないと思いますが、明らかに「急速静注できない」と一文入れておくことも、医療現場としては、特に緊急で対応することも多い中で、より安全性が高まるものだと思いますので、是非、御検討願えればと思いました。
○新薬審査第三部長 検討させていただきます。
○森部会長 そのほか先生方から御意見、御発言はありませんか。先ほど概要説明を頂いた際に、4歳から12歳の症例への90分かけた投与ということについて、添付文書等での記載も一部変えていただいたのでしたか。より分かりやすく記載していただいているように、変更されているのですか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書での用法・用量の記載がかなりビジーとなっているという御指摘かと思います。まず分かりやすいように、既に御確認を頂いているとおりですが、表形式で用法・用量や投与時間をまとめさせていただいています。また本日、御確認を頂いている添付文書案では、まだ見づらい状況があると思いますので、今後、企業と相談をしまして、用法・用量が明確になるように、改行なども含めて見え方を調整させていただきたいと考えます。
○森部会長 現行案よりも更に見やすくしていただけるということで、御検討いただけるということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。検討します。
○森部会長 それは大変助かります。そのほか、先生方から本件について御意見、御発言はありませんか。もし可能でしたら、小児の診療を御専門としている長谷川委員から何か御発言はありませんか。
○長谷川委員 ありがとうございます。静注用製剤への変更ですので、特に私自身は気にはしていないのですが、やはり静注薬は結構、緊急の現場であれば間違える可能性がありますので、先ほどから御指摘があったような注意点を明記していただければなと聞いていて思った次第です。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。続きまして、神経内科の御領域から石川委員の御発言をもしいただけましたら、いかがでしょうか。
○石川委員 石川です。どうもありがとうございます。今の御説明などに関して、特別なコメントはありません。承認させていただきたいと思っていました。
○森部会長 御発言どうもありがとうございました。そのほか、特に先生方から追加の御意見はありませんか。
 それでは議決に入らせていただきます。なお代田委員、髙橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続きまして議題2に移らせていただきます。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg他5品目について、機構より説明いたします。
資料No.2の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全43ページの通し番号で7ページ「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤の有効成分であるリバーロキサバンは、経口投与可能な活性型血液凝固第X因子の直接的阻害薬です。本邦では成人に対して、10mg及び15mgの製剤が「静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制」等の効能・効果で承認されています。また、小児に対して、小児用ドライシロップ製剤並びに10mg及び15mgの製剤が「静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制」の効能・効果で承認されています。今般、国際共同第III相試験の成績を基に、「Fontan手術施行後における血栓・塞栓形成の抑制」の効能・効果を追加する製造販売承認申請がなされました。本薬は、海外では欧米を含む130以上の国又は地域で承認されており、本申請効能・効果については、2021年12月に米国で承認されています。
Fontan手術は、機能的単心室症の先天性心疾患患者に対する機能的修復術であり、Fontan手術後の患者では血栓形成リスクが高く、抗血小板薬や抗凝固薬による血栓予防が必要とされています。Fontan手術後の小児を対象とした本薬の開発では、Fontan手術の適応となる先天性心疾患患者の希少性等を踏まえ、下肢整形外科大手術施行後の外国人成人患者での静脈血栓塞栓症の発症抑制に対して有効性等が示されている本薬10mg1日1回投与と同程度の曝露量が得られるように用法・用量を設定した上で、実施可能な規模の試験において小児での有効性等を確認する開発方針が採られました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の16ページを御覧ください。Fontan手術後の小児の機能的単心室症患者を対象に、血栓性イベントの抑制効果をアスピリンと比較する実薬対照非盲検比較試験が実施されました。審査報告書の18ページ、表7のパートBを御覧ください。有効性の主要評価項目は、心原性脳塞栓症、肺塞栓症等の血栓性イベントの発現割合とされ、本薬群でアスピリン群と比較して低い結果でした。主要評価項目について、統計学的な仮説を検証するための検出力は有していなかったものの、本薬のアスピリンを下回らない有効性が示唆されているものと判断いたしました。
 審査報告書の19ページを御覧ください。日本人集団の成績については、症例数が極めて限られており血栓性イベントの発現は認められなかったことから、全体集団の成績と比較することには限界がありますが、本薬の有効性に明らかな影響を及ぼす民族的要因の差異は示唆されていないこと等も踏まえ、全体集団と同様の本薬の有効性が期待できると判断いたしました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の26ページ、「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本薬投与時に最も懸念される副作用は出血ですが、本試験での出血を含む有害事象の発現状況から、現時点で新たな注意喚起を要する内容はないと判断いたしました。審査報告書の29ページ、「7.R.3.3 肝機能障害患者への投与について」の項を御覧ください。Fontan手術後患者では高い中心静脈圧に起因する肝合併症が認められる場合があること、本薬は中等度以上の肝障害の患者への投与は禁忌とされていることから、本薬投与開始後は、Fontan術後肝合併症の発症や増悪、重症度に関する観察及び評価を実施した上で本薬の投与継続可否を判断すること等を、資材を用いて情報提供することが適切と判断いたしました。
 用法・用量について御説明いたします。審査報告書の30ページ、「7.R.5 用法・用量について」の項を御覧ください。本試験で認められた有効性・安全性等を踏まえ、本試験の検討用法・用量を日本人Fontan手術後患者における用法・用量として設定することは妥当と判断いたしました。また、本試験では体重30kg以上50kg未満及び体重50kg以上の小児に対する用法・用量は検討されませんでしたが、モデルを用いたシミュレーション等に基づき、本試験の検討用法・用量投与時と同程度の曝露量が得られると考えられる用法・用量が設定され、申請されました。本試験において目標とする曝露量でFontan手術後患者での有効性等が確認されていること、静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制に係る適応について、より幅広い体重及び年齢の小児において成人と同程度の曝露量を達成することにより期待する有効性等が示されていること等も踏まえ、当該体重区分に対して申請用法・用量を設定することは可能と判断いたしました。
 製造販売後調査について御説明いたします。審査報告書の38ページから記載している、「1.5 医薬品リスク管理計画(案)について」の項を御覧ください。臨床試験での日本人症例数が極めて限られること等から、使用実態下における患者背景、出血の発現状況、併用薬、Fontan術後肝合併症に関連する検査値等の情報を収集する特定使用成績調査を実施する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は新効能・新用量医薬品に係る申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の方々から御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。堀委員から御発言ください。
○堀委員 御説明いただき、ありがとうございました。COMLの堀です。私からは、ドライシロップの用法・用量についてお尋ねいたします。今回、Fontan手術後の用法・用量に関しては2歳以上ということで、ほかのものに関しては全てkg、体重によって服用量が変わってくると思うのですが、なぜここで2歳以上というように明確に指定されたのか、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。審査報告書の15ページの「6.R.3」項に、2歳未満の患者への投与について記載しております。今回実施された臨床試験では、Fontan手術自体が主に2歳から4歳で行われる場合が多いことと、Fontan手術後の血栓形成リスクが術後6か月以内が最も高いことを踏まえて、試験の対象としては2歳から8歳、かつ初回のFontan手術後4か月以内の患者さんが対象とされました。一方、2歳未満のFontan手術後患者さんについては、申請用法・用量を投与したときの本薬の曝露量を、モデルを用いて推定することが困難と判断して、2歳未満の患者さんへの投与は推奨できないと判断したという状況です。
 具体的には、今回、このFontan手術後患者さんにおける本薬の曝露量の推定に用いたモデルでは、より体重の軽い低年齢側の患者さんにおいて、本薬の曝露が過小評価される傾向が認められていました。一方で、より広い2歳未満を含む年齢層のデータが得られていた小児のVTE患者さんを対象とした開発では、今回認められたような体重の軽い小児では、逆に曝露量が低下する傾向が認められており、これらの違いが認められた要因は明らかではありませんでした。なお、米国においても本薬の適応は、2歳以上のFontan術後の患者さんということで、同様の状況となっております。御説明は以上です。
○堀委員 ありがとうございました。今、ドライシロップの添付文書を拝見しているのですが、今御説明いただいたものが、私が見たところ記載がなく、「9.7.22」の所で「2歳未満及び9歳以上の小児を対象とした臨床試験は実施していない」としか書いていなかったのです。確かに、御説明いただければ医療関係の方たちはお分かりになると思うのですが、私ども一般市民は、添付文書からその薬剤の情報を得ます。添付文書はネットからでも簡単に見ることはできますので、記載された情報から判断いたしますと、何となく2歳未満は臨床試験を実施していないから2歳以上に指定されているのではという解釈をする方もいらっしゃるのかなと思いました。ですので、添付文書はいろいろな方が御覧になるかと思いますので、今のご説明の部分も追加記載していただけたらと思ったのですが、いかがでしょうか。難しいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。御意見を頂き、ありがとうございます。御指摘いただいた判断の根拠については、添付文書において端的に情報提供することが困難であると考えますので、今御説明させていただいた審査の経緯は、審査報告書の記載を参照していただけないかと考えています。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。また今後ご検討いただけたらと思いましたので、質問させていただきました。ありがとうございました。私からは以上です。
○森部会長 機構の方に1点です。今の御質問で、今後、作成される資材等の中で、このシミュレーションが難しかったことなどの背景について補足いただくことは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。資材の中で御指摘の趣旨を踏まえた情報提供ができないか、記載内容を含めて、検討いたします。
○森部会長 単純に臨床試験が実施されていないという背景と、されていない中でも、更に2歳未満の方では現状のデータからの推定が難しいということは、情報として付加価値がありますので、そちらが共有されるように何らかの御配慮を頂くといいと思います。もし、申請者が許せば、インタビューフォームにも加えていただくような御配慮を頂けると、なおいいかと思いました。これは御確認いただいて、可能なら御対応ください。
○医薬品医療機器総合機構 何らかの媒体をもって、御指摘の趣旨を踏まえた情報が提供できないかということを検討いたします。御指摘ありがとうございました。
○森部会長 医療現場で閲覧性が高い添付文書並びにインタビューフォーム等の記載が望ましいので、作成資材も含めて検討いただけますと助かります。そのほか、委員の先生方から本件について御質問等はございますか。循環器領域の代田委員、もし御発言がございましたら、いかがでしょうか。
○代田委員 お話を聞いていて、かなり症例数が限られていますので、海外のデータを含めて御判断された有効性と安全性の説明は妥当かなと聞いておりました。市販後調査をしっかりやっていただくことが大事だと思います。以上です。
○森部会長 御発言どうもありがとうございました。専門協議の際に、本薬の臨床開発の試験について、対照薬がアスピリンだったことについて、本来ワルファリン等の抗凝固薬が比較されるべきだったという御意見もありました。この点は、機構から少し説明の補足を頂いてもよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。御指摘のとおり、Fontan術後の血栓予防に関しては、アスピリンとワルファリンのいずれもガイドライン等で使用が推奨されている状況でして、ワルファリンを対照とするという選択肢もありました。また、本邦で小児の適応を有し、かつ本薬と同じ抗凝固薬に分類されるというところで、ワルファリンを対照として試験を実施することがより適切であったとは考えています。一方で、国際共同試験としての実施ということで、国内外における関連ガイドラインの推奨状況等に基づいて、結果としてアスピリンが選択されたという状況でした。先ほども御説明させていただいたとおり、ガイドラインで推奨されており、標準治療の一つとして考えられるアスピリンを対照とした試験結果を評価した上で、治療選択肢の一つとして医療現場に提供することには、意義があると判断しています。一方で、上記の経緯から、ワルファリンとの比較がなされていないという点については、医療従事者向けの情報提供資材で情報提供させていただいている次第です。説明は以上です。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。標準治療の一つのアスピリンとの比較試験であったということで、ワルファリンとの比較がされていないことについては、今後、情報提供していただけるということも確認いたしました。どうもありがとうございました。そのほか、先生方から追加の御発言、御意見はございますか。特段よろしかったでしょうか。
それでは、議決に入らせていただきます。なお、代田委員、髙橋委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題3に移ります。議題3について、事務局から概要説明をお願いしたいと思います。
○事務局 議題3の希少疾病用医薬品として指定することの可否について、説明いたします。資料No.3-1のまとめの資料を御覧ください。今回、御審議をお願いしたい品目は3品目です。
 1品目めは、資料No.3-2の関係ですが、「Obexelimab」で、予定される効能・効果が「IgG4関連疾患」、推計患者数が約8,000人となっております。
 2品目めは「ジアゼパム」で、こちらは点鼻剤ですが、予定される効能・効果が「てんかん重積状態」で、推計患者数は約2万4,000人となっています。
 最後、3品目めは「pizuglanstat」、予定される効能・効果は「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」で、推計患者数は約5,000人となっております。いずれの品目についても、既存の治療法が限られるなどの医療上の必要性が高いと認められる状況であり、開発の可能性についても認められておりますので、指定の要件を満たすと考えております。
以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。特段ございませんでしょうか。では議決に入らせていただきます。なお、川上委員、髙橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようでございますので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、報告事項の議題に移ります。報告事項の議題1~議題2について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項について報告いたします。資料No.4を御覧ください。まず、報告事項の議題1関係ですが、医療用医薬品の承認条件についてです。今回、「アイノフロー吸入用」について、承認時に全例調査に関する承認条件が付与されておりましたが、今般、全例調査に関する報告が提出され、機構における評価の結果、対応されたことを確認しております。
 続いて2ページ以降、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。今回、再審査の結果として御報告するのは、こちらに記載の8品目ですが、いずれの品目についても、機構における審査の結果、承認拒否事由のいずれにも該当しないカテゴリー1と判断しております。以上です。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。委員の先生方から御意見、御質問がございましたらお願いいたします。特に御質問がないようですので、それでは報告事項議題1~2については御確認いただいたものとさせていただきます。
本日の議題は以上でございます。事務局から何か報告はございますでしょうか。
○事務局 次回の部会は令和5年12月8日金曜日、午後5時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 本日はこれで終了とさせていただきます。どうも御審議ありがとうございました
( 了 )
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)