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- 2024年1月5日 第1回「アフターケアに関する検討会」 議事録
2024年1月5日 第1回「アフターケアに関する検討会」 議事録
日時
令和6年1月5日(金)18:00~
場所
厚生労働省労働基準局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
出席者
- 参集者:五十音順、敬称略
- 酒井昭彦
- 住谷昌彦
- 林礼人
- 三上容司
- 三木健司
- 厚生労働省:事務局
-
- 梶原輝昭
- 児屋野文男
- 西村政也
- 下平修一
- 小川明紀 他
議題
1 外傷による末梢神経損傷に係るアフターケアの措置範囲について
2 熱傷に係るアフターケアの措置範囲等について
2 熱傷に係るアフターケアの措置範囲等について
議事
- 議事録
○園田福祉係長 それでは定刻となりましたので、「アフターケアに関する検討会」を開催いたします。参集者の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
本検討会は、労災保険におけるアフターケア制度のうち、「外傷による末梢神経損傷」及び「熱傷」に係るアフターケアの措置範囲等の見直し内容について、御検討いただくために開催することといたしました。
それでは、本検討会に御参集を賜りました先生方を五十音順に御紹介させていただきます。産業医科大学整形外科学教授の酒井昭典先生、オンラインでの御参加になります。
○酒井委員 産業医大の酒井です。どうぞよろしくお願いいたします。
○園田福祉係長 続きまして、東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部准教授、住谷昌彦先生。
○住谷委員 住谷でございます。よろしくお願いいたします。
○園田福祉係長 横浜市立大学医学部形成外科学講座主任教授、林礼人先生。
○林委員 林です。よろしくお願いいたします。
○園田福祉係長 横浜労災病院病院長・運動器センター長、三上容司先生。
○三上委員 三上です。よろしくお願いいたします。
○園田福祉係長 続きまして、大阪行岡医療大学医療学部特別教授の三木健司先生ですが、少し遅れての御参加となります。
続きまして、事務局を紹介いたします。大臣官房審議官の梶原です。補償課長の児屋野です。補償課長補佐の西村です。補償課長補佐の下平です。中央労災医療監察官の小川です。私は園田と申します。
それでは、「アフターケアに関する検討会」の開催に当たり、大臣官房審議官の梶原より御挨拶を申し上げます。
○梶原大臣官房審議官 着座にて失礼いたします。「アフターケアに関する検討会」の開催に当たり一言御挨拶を申し上げます。先生方におかれましては、日頃より労災補償行政に関しまして、特段の御理解と御協力を賜っておりますことに厚く御礼を申し上げます。年始早々、御出席を頂きましたことに、重ねて御礼を申し上げます。
1月1日に最大震度7の令和6年能登半島地震が発生しております。お亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。
厚生労働省といたしましては、現在、医療機関、福祉施設、そして水道施設の復旧に全力を挙げているところでございます。また、私ども労働基準局としましては、現在、建設事業者、建設作業労働者によって、現地での道路ですとかインフラの復旧に向けた活動が実際、既に行われております。また、今後、個人住宅の災害判定や復旧、そういった活動が活発化します。また、被災地での経済活動が順次再開に向かっていくということで、時々刻々と状況が変わってまいりますが、現地の状況、実情に即した適切な労働条件の確保、労働安全の確保、そして万一、労働災害が発生した場合の労災保険による被災者の迅速かつ適切な救済、こうしたことに取り組んでいく考えでおります。
さて、労災保険におけるアフターケアにつきましては、労働者災害補償保険法により療養を受け、症状固定後においても後遺症状に動揺を来す場合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることに鑑みまして、予防その他の保健上の措置を講じ、労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営んでいただくことを目的として実施をしております。
実施に当たり、実施要領において、対象傷病及び措置範囲等を具体的に定めて運用しておりますが、対象傷病別のアフターケアの措置範囲等については、直近ですと平成19年4月に改正を行ったところです。
それからおよそ15年が経過し、この間、対象傷病の事例収集等を行ってまいりました結果、「外傷による末梢神経損傷」及び「熱傷」に係るアフターケアについて、最新の医学的知見等を踏まえ、現行の取扱いの改正の要否につきまして御検討をお願いしたいと考えております。
以上、簡単ではございますが、検討会の開催に当たっての御挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願いいたします。
○園田福祉係長 続きまして、開催要綱に従い、本検討会の座長を選出していただきたいと思います。座長は参集者の互選により選出することとしております。どなたか御推薦を。
○児屋野補償課長 事務局側といたしまして、三上先生にお願いできればと思っておりますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○園田福祉係長 それでは三上先生、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。
○三上座長 横浜労災病院の三上でございます。ただいま御指名いただきましたので、座長をお引き受けいたします。重要な検討会ですので、先生方には、専門的な立場から様々な忌憚のない御意見を頂ければ大変有り難く存じます。そして、皆様のお力を借りながらスムーズな議事の進行に努めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。
○園田福祉係長 それでは、配布しております資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1として本日の検討事項をまとめた横置きの資料、資料2として本検討会の開催要綱やアフターケア実施要綱等の縦置きの資料、また、個人情報を含むため非公開の資料として、個別事例に係る横置きの資料となります。資料の不足等はございませんでしょうか。会議の途中で落丁等お気づきになりましたら、お申し付けください。
特にないようでしたら、このまま座長に引き継ぎをさせていただこうと思います。事務局からは以上になります。
○三上座長 議事を開始いたします。まずは、事務局からアフターケア制度や本検討会の開催の趣旨等について説明をお願いいたします。
○小川中央労災医療監察官 資料2に基づき、開催の趣旨について御説明させていただきます。1ページに「開催要綱」がございます。趣旨としましては、労災保険制度におけるアフターケアにつきましては、労災保険法により療養を受け、症状固定後においても後遺症状に動揺を来す場合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることに鑑み、予防その他の保健上の措置を講じ、当該労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営ませることを目的として実施しております。
続いて、制度の目的等につきましては、資料の3ページ、4ページになります。「社会復帰促進等事業としてのアフターケア実施要領」を定めておりまして、1の「目的」につきましては、ただいま御説明したとおりです。2の「対象傷病」につきましては、①の「せき髄損傷」から⑳の「炭鉱災害による一酸化炭素中毒」までの20傷病について、アフターケアの対象としております。それぞれの措置の範囲としましては、4ページの中段、4の「措置範囲」に診察、保健指導、保健のための処置、検査となっており、これらについて、それぞれ傷病別の実施要綱に定めて実施しております。
今回御検討いただきます「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」と「熱傷に係るアフターケア」につきましては、資料2の11~12ページ及び13~14ページにおいて、それぞれ措置の範囲等を定めております。今回御検討いただく際のポイントにつきましては、後ほど検討内容の所で御説明させていただきたいと思います。
続いて、本検討で御検討いただきたい事項について御説明します。先ほど梶原審議官の挨拶にもありましたとおり、アフターケア制度の見直しの要否を検討するため事例収集等を行った結果、具体事例はまた後ほど御紹介しますが、カウザルギー及びRSDにより障害等級12級以上と認定された方を対象にしている「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」について、カウザルギー及びRSDではないものの、疼痛が残存したことにより12級と認定された方についてもアフターケアの対象とすることが望ましいのではないかと思われる事例や、また、障害等級12級に相当する大きさの傷痕等に限定されている「熱傷に係るアフターケア」について、14級と認定された方についても、アフターケアの対象とすることが望ましいのではないかと思われる事例があることから、専門の先生方に御検討をお願いしたいと考えております。
併せて、この2つの傷病に係るアフターケアの措置の範囲について、特に薬剤の支給等について最新の医学的知見を踏まえ、改定の検討をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○三上座長 説明ありがとうございました。事務局から説明があったとおり、今回の検討会においては、「外傷による末梢神経損傷」及び「熱傷」に係るアフターケアについて検討することとしています。検討事項はそれぞれ2つずつ、計4項目となります。すなわち、対象範囲の拡大、薬剤の支給に関する措置の範囲、この2つの項目について、それぞれ検討するということになります。まずは検討事項の1点目、「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」の「対象者の拡大等」について、事務局から説明をお願いいたします。
○小川中央労災医療監察官 まず、現行の取扱いについての御説明をいたします。資料1、横置きの資料の3ページに沿って御説明いたします。
「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」につきましては、その対象者ですけれども、カウザルギー及びRSDによる激しい疼痛等の緩和を必要とすることがあることに鑑み、実施をしております。対象者は、カウザルギー及びRSDによる激しい疼痛が残存する者で、労災保険法による障害等級12級以上の障害補償給付等を受けている者等のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者としております。
対象となる障害は神経系統の機能等の障害であり、カウザルギー及びRSDは、障害等級認定基準においては「特殊な性状の疼痛」として次のように示されております。カウザルギーにつきましては、「疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して等級を認定する。」。RSDにつきましては、「関節拘縮、骨の萎縮、皮膚の変化のいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合にカウザルギーと同様の基準により認定する。」ということで、障害等級としては、カウザルギー及びRSDにつきましては、障害等級第7級、9級、12級とそれぞれ定められてございます。この等級を整理したものとしては、資料2の15ページに「整理表」という形で整理させていただいたものを御用意しております。
続きまして、実際にどのような事例があったのかということについて御説明を申し上げます。外傷につきましては、事例の資料の「外傷1」について、この方が事故によって左手小指を受傷して、左の趾を移植して症状固定をしたということで、症状固定時の傷病名としては、左小指開放性粉砕骨折等の病名が付いてございます。御本人の、左小指の痛みとして、無理やり動かしたり、接触がなくても常にズキズキ痛み、時々指を切り取りたくなるほどの激しい痛みが生じるという主訴に対して、主治医はRSD又はカウザルギーのいずれにも該当しないとの診断です。病名としては外傷による「末梢神経障害性疼痛」ということで、再腱指の色調変化や萎縮、骨萎縮等のCRPS所見は認められないが、神経障害性疼痛に対する投薬加療は継続することが望ましいとの御意見でございます。
この方の障害等級といたしましては、欠損障害のほか、神経系統の障害として左手の小指につきまして、12級の12と疼痛の障害等級は認定されましたが、RSD又はカウザルギーに該当しないため、このアフターケアの手帳は不交付の決定となっております。
現行では、カウザルギー及びRSDで激しい疼痛が残存して、障害等級12級以上に認定された方に限定をしている取扱いとなっておりますが、御検討いただきたい事項としましては、1点目として、疼痛に係る障害等級認定において、「末梢神経障害性疼痛」などの傷病名が付され、若しくは疼痛に係る傷病名は付されずにカウザルギー等と同等の障害等級12級に認定される場合、カウザルギー等の診断がなくとも、激しい疼痛等を抑えるため投薬等が必要となることがあることから、アフターケアの対象となる障害等級12級に評価される疼痛が残存した者のうち、外傷により末梢神経が損傷したことが医学的に確認でき、アフターケアが必要と認められる者について対象者に加えることは適当であるかどうか。
2点目として、対象者を追加する場合、カウザルギー等以外の傷病名を例示することが適当であるかどうか。例示する場合は、どのような傷病名が適当であるか。
3点目として、「カウザルギー及びRSD」について、現在の傷病名として適当かどうか。適当でない場合は、どのような傷病名に変更するべきか。可能であれば、先ほど御紹介しました傷病別の実施要綱において、どのように表記することが適当か。以上について御検討をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○三上座長 事務局から説明いただいた内容に関して、少し議論をしていただきたいと思います。現行の制度ですと、RSDあるいはカウザルギーという傷病名が付いて、12級以上に認定されるとアフターケアが適用される。しかし現実としては、RSDやカウザルギーの診断名が付いていなくても、末梢神経が損傷したための痛みがある方はいらっしゃるし、薬も必要になる。このような方をアフターケアの対象者に加えて良いかということが1点ですね。
このような方を対象として加えるとすると、どういう傷病名が良いのかということ。それからカウザルギーとRSDという傷病名が果たして適当なのか。適当でないとすると、どのような傷病名がよろしいかというところに検討事項は絞られると思います。この点につきまして皆様から御意見を頂きたいと思いますが、どなたか御意見ありますでしょうか。では、三木先生どうぞ。
○三木委員 私は整形外科医なのですが、神経障害性疼痛の診断の精度というのは、どのように考えるのでしょうか。医師がこのレセプトに書いたら、それでよいのか。それともきちんと診断基準とかに則った神経障害性疼痛だけを認めるのか。これにより随分範囲が変わってくるのではないかと思います。
○三上座長 その点については、事務局としてはいかがでしょうか。
○児屋野補償課長 ありがとうございます。非常に難しいところであるのですが、我々としても、やはり主治医の先生の見立てというのを一番優先するということにしておりまして、ただ、前提となる障害認定ということになると、障害認定をしていただく先生にも御意見を聴いてということで、どこまでオーソライズされるかということはあるのですけれど、その障害認定をする先生と主治医の先生と併せて診断をしていただいた結果をもってと考えてございまして、実務的に言いますと、その障害認定をする先生の御意見で傷病名が付くのかなというところでございます。
○三木委員 1つ懸念があるのは、例えばお薬を使いたいということで、傷病名はいわゆるレセプト病名で付けてしまっている場合があると思います。労災では、労基署の審査の先生が決めた場合のみにするのか、それとも、例えばプレガバリン、リリカを使いたいからというので、傷病名で入ってしまっているというのを見極めるのは実務上は難しいのではないかと思うので、その辺りは実際に決めておかないと、意見が食い違って問題になるのではないかとは思います。
○児屋野補償課長 ありがとうございます。カウザルギーにしろRSDにしろ、神経疼痛が認められるものだとか、そういうものをもってRSDと認定してくださいと、一般の医療の関係で使われていることだと思います。ですから、行政としては、そういうものがあるかないかを、まず先生に確認して、「ある」あるいは「ない」というところから診断名が付くと思っております。なので、最終的にどこまで精度を高めるかということはあるかと思いますが、認められる身体の症状と、それから発生する痛みから、この診断が妥当ではないかというのを、障害認定時に先生が付けていただくものを信頼してやっているということになるかと思います。
○下平補償課長補佐 今の発言の補足ですが、外傷により末梢神経が損傷しているかどうかというところが一番のポイントになりますので、そのような負傷や災害の状況がないにもかかわらず、末梢神経障害性疼痛というだけで認定できるのかという点は、十分認定の現場において、主治医の先生に確認する必要があると思っております。多くの場合、末梢神経障害性疼痛だけの傷病名だけでなく、指を骨折している場合には骨折という傷病名が付くと思います。このような場合には末梢神経も損傷しているということがおそらく想定されると思いますので、主治医の先生にも十分確認しながら認定していくことにはなると思っております。
○三木委員 病名だけではなく、いわゆる外傷が高度で、神経が損傷しているだろうということを、医師の目から見て明らかなものに限るというような前文が付くとか、条件が付くという認識で良いのか。単に打撲や捻挫しただけで該当することはないということで良いですか。
○下平補償課長補佐 疑いがあるようなものについては、労働局で主治医に確認して、医学的にも外傷による末梢神経損傷があることを確認することについて労働局に注意喚起していくことが必要と思っております。
○三木委員 分かりました。
○三上座長 ありがとうございます。三木先生の御意見は、末梢神経障害といっても非常に範囲が広いので、ある程度の限定をしたほうが良いのではないかという御意見だと思いますが、ほかの先生方は御意見いかがでしょうか。住谷先生はいかがですか。
○住谷委員 私は、もともと麻酔科医でございまして、CRPSと呼ばれる疾患の診断基準の作成には携わっておりまして、本日この場に呼んでいただけたというように考えております。
先ほど三木先生がおっしゃったように、一般の痛みの診療の中では、レセプト病名といわれるようなものが確かに付いているのもあろうかということは事実として存じ上げておりますけれども、一方で、労災などでの明確な診断が求められるような機会におきましては、ある程度は先ほど児屋野課長からも説明がございましたとおり、主治医の先生方の意見と、それから審査を実際にする先生方がいらっしゃいますので、2つの目で見ていただくことによって、ある程度、不適切な処方、病名というのは防げるのではないかと思います。
先ほど三木先生がおっしゃったように、例えば大きな外傷などに伴うというような文言を付けることによって、逆に本当に神経障害性疼痛が、神経損傷があるにもかかわらず、そういった大きな外傷というのが、目立たないがために漏れてしまう患者さんというのがいらっしゃいますので、そういう意味では通常の外傷に伴う末梢神経障害性疼痛というもののほうが、むしろ分かりやすいですし、二重の目で見ることによって、三木先生のような御懸念は防げるのではないかというように考えます。以上です。
○三上座長 ありがとうございます。林先生、いかがでしょうか。
○林委員 私は形成外科ですけれども、末梢神経についても特に研究などをしていまして、そもそもCRPSやカウザルギー、RSDの診断というものが非常に難しく、しっかり診断書に書ける医師も非常に限られているのが現状なのではと思います。
あまり経験がない医師ですと、そもそも診断できないという状況がある中で、末梢神経障害で非常に苦しんでいる患者さんに、適切なアフターケアを広く認めていこうという視点で、この制度改革を進めようした場合には、保険病名とは別に、ちゃんとした診断書として末梢神経障害を提示するということが、もし医師においてできれば、非常にそれは患者にとって有益なことと思いますし、それが乱発されるということは恐らくないのかなと、私は思うのです。
以上のとおり、CRPSだけに限っている現状ですと、しっかり診断できる医師が非常に限られる現状もあるので、今回の改定の案は、非常に患者にとって良いことであると感じております。
○三上座長 ありがとうございました。酒井先生、いかがでしょうか。
○酒井委員 末梢神経障害性疼痛は、保険診療で診断名に使われることが多いので、末梢神経障害性疼痛という病名をもって全てを認めるのは不適切だと思います。末梢神経障害性疼痛という診断名は、一般的な絞扼性神経障害や脊椎疾患まで包含する可能性があります。三木先生が言われたように、外傷を伴った末梢神経障害性疼痛という要件は適切だと思います。外傷性というものをどこまで認めるかは難しい問題だと思います。疼痛の原因となった末梢神経損傷が医学的に確認できるということは非常に大事な点だと思います。
○三上座長 ありがとうございました。皆様の御意見としては、現在のカウザルギー、RSD以外に傷病名を加えることは適当であること。その中に末梢神経障害性疼痛、これが入るのではないかということですね。かつ、ただし、全くフリーハンドで認めるということではなくて、そこには確実に末梢神経が損傷されたという事実、それを追認させる客観的な事実が必要であろうと。できれば、これは末梢神経の具体的な名前があるということが前提条件になるのではないかと、皆さんのお話を聞いていて思いました。
皆さん、ほかに何か御意見はありますか。末梢神経障害性疼痛を加えることは、皆さん、恐らく賛成されていると思うのですが、カウザルギーと現在のRSDに加えて、通常、今、これはCRPSと言うことが多いと思いますので、これも併記するのはいかがかということも御意見を伺いたいのですが、住谷先生、いかがですか。
○住谷委員 まず、CRPSという用語を使うことに賛成です。あと、併記するかどうかに関しては、実はRSD、リフレックスシンパセティックジストロフィーという交感神経性というリフレックスシンパセティックの所が、世界的には全く使わない、病態を表してないとなりますので、科学的な意味では、併記ではなくCRPSに切替えが妥当だと考えます。ただし、世の中の今までの流れの趨勢的な面、あるいは患者さんたちの理解というところで、RSDという言葉は今もなお一般的にはよく知られていますので、そういった点では併記するのが望ましいのではないかと考えています。以上です。
○三上座長 林先生いかがですか。
○林委員 私も住谷先生の意見に同感でして、CRPSという認識が学会では今ほとんど一般的で、むしろカウザルギーはあまり言わなくなっているのですが、ただ、どうしても年代差みたいなものもあって、カウザルギーの方が馴染みが深いという先生もいらっしゃると思うので、そのような観点から併記にしておいて、徐々にCRPSに絞っていくことが良いのかと思います。
○三上座長 三木先生いかがですか。
○三木委員 私も併記というのは大事かと思います。ただ、CRPSを文面の最初にしていただいて、カウザルギーは、CRPSの後に記載していただき、1行目、2行目みたいな感じにしたら良いのではないかと思います。要するに、これが同じものだという認識が伝わるようにしたらと思います。
○三上座長 酒井先生いかがでしょうか。
○酒井委員 現在、CRPSを使うことが多いので、併記することについては、CRPSの診断基準を満たしているのであれば問題ないと思っています。
○三上座長 ありがとうございます。現状の医学的な流れとしてはCRPSを使うことが多いので、何らかの形で併記したほうが良いという御意見だろうと思います。この点に関して、ほかに何かありますか。
○児屋野補償課長 先生、事務局から一言よろしいですか。
○三上座長 はい。
○児屋野補償課長 今、頂きました併記、私どもも必要だと思っておりますが、CRPSとRSD、カウザルギーの包含関係というか、広さでいうと、一番広いものがCRPSで、その中にカウザルギー、RSDが入っているのか、あるいはCRPSも分類1や2があるようですが、包含関係はどうなっているのですか。
○三上座長 住谷先生、御説明ください。
○住谷委員 CRPSのタイプⅠというものが「=(イコール)RSD」です。CRPSのタイプⅡが「=カウザルギー」となっていますので、「CRPS=RSD+(プラス)カウザルギー」と御理解いただきましたらよろしいかと思います。
○児屋野補償課長 ありがとうございました。
○三上座長 それでは、「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」の対象者の拡大に関して大体御議論いただきましたが、ほかに何かこの点に関して追加の御発言はありますか。なければまとめさせていただきますが、まず、カウザルギー、RSDの診断がなくても、障害等級12級に相当するような外傷での末梢神経損傷による疼痛、他覚的所見があれば、アフターケアの対象としてもよいのではないかと、そういう御意見だと思います。ただし、他覚的所見というものをどの範囲までするかということは、今後、検討の余地があるということだろうと思います。それから、末梢神経障害性疼痛を傷病名として加えることには、皆さん賛成であると。それと、CRPSも併記すべきであると。ただし、記載の仕方は少し検討の余地があると。こういう内容だったと思います。
以上で、第1点目の検討は終わりになります。続いて、検討事項の2点目。「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」の「措置範囲の追加」、薬剤の支給に関することについてです。事務局から説明をお願いします。
○小川中央労災医療監察官 資料1の5ページと、後ほど資料2の最後のページ、17ページを御参照ください。措置範囲の追加につきまして、現行の取扱いとしましては、ただいま申しました、1つ目の項目、2つ目の項目のとおりですけれども、このアフターケアの中で、措置範囲として診察や保健指導のほか、支給できる薬剤は以下のとおり、①「鎮痛・消炎薬(外用薬を含む)」と、②「末梢神経障害治療薬」、このようなものを支給できることとしています。
資料2の最後のページに、アフターケアの20傷病において措置される薬剤を表に整理させていただきました。黄色で塗った1の「鎮痛・消炎薬(外用薬を含む)」と16の「末梢神経障害治療薬」というのが、「外傷による末梢神経損傷に係るアフターケア」で支給できるものとしております。
この事例としましては、先ほど御覧いただいた「外傷1」、小指を受傷された方につきましては、リリカ、メチコバールのほか、リボトリールという内服薬、これは抗てんかん剤を処方されています。「外傷2」の事例ですが、ローラーに巻き込まれてけがをされたということで、この方は、多発肋骨骨折後肋間神経痛という病名で今も療養中です。この方には、プレガバリン等のほか、トリプタノールという内服薬、これは三環系抗うつ剤で、うつ病等のほか、末梢性神経障害性疼痛も効果としては認められているものですが、こうした抗うつ剤等の向精神薬が処方されております。アフターケアについても、疼痛に関する治療効果のある向精神薬の支給を、必要な保健のための措置として認めることが適当なのかどうか、御検討をお願いいたします。
○三上座長 今、事務局からの説明がありましたように、使える薬剤が現行では「鎮痛・消炎剤(外用薬を含む)」と「末梢神経障害治療薬」だけなのですが、そこに向精神薬のような薬を加えることが適切かどうか、こういうことを検討していただきたいということです。これは、御専門の住谷先生に御意見を頂きたいと思います。
○住谷委員 私は賛成です。1点だけ事務局に確認させていただきたいのですが、この末梢性神経障害性疼痛治療薬というものと、神経障害性疼痛治療薬という保険適用を持つ薬剤とが今、日本国内には混在しているのですが、外傷による末梢神経障害による痛みの患者さんにも、この神経障害性疼痛、即ち、末梢というように限定してない薬剤も使えるという理解でよろしいでしょうか。
この事例で言いますと、プレガバリン、リリカというのが保険適用が神経障害性疼痛になっておりまして、末梢に限ってはおりません。もちろん神経障害性疼痛という病名の中に、末梢性神経障害性疼痛の治療というのは包含しておりますので、良いとは思うのですけれども、病名で末梢性神経障害性疼痛治療薬というように限定されてしまいますと、日本国内では今、このトリプタノールという薬しかありませんので、それだとちょっと困るというところです。
○下平補償課長補佐 外傷の末梢神経障害の疼痛に効果があるというものであれば支給できると考えております。
○住谷委員 それでしたら、是非広く認めていただきたいと考えております。以上です。
○三上座長 ほかの先生方、三木先生どうぞ。
○三木委員 いわゆる神経障害性疼痛の治療薬に関して異議はないのですけれども、向精神薬の中には、痛みに関する適用を持つものと持たないもの、若しくは、ベンゾジアゼピンみたいな、例えば睡眠薬などもあるのですが、この全てを出せるようにするのか、それともやはり痛みに関する治療に使われているものに限定するのかというのは決めたほうが良いのではないかと思います。
理由は、例えばベンゾジアゼピンの治療薬を使っても、その痛みも治らないし、不眠は治るかもしれませんけれども、不眠がこの痛みと直接関係しているのかどうかというのは、また別の話ではないかと思うので、きちんと決めたほうが良いのではないかとは思います。
○三上座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。林先生いかがですか。
○林委員 私自身は、そういう向精神薬を痛みに処方することもあるのですが、今、三木先生からお話があったように、やはり向精神薬は非常に幅広いというのがありまして、ある程度限定したほうが良いのかなとは個人的に思います。
あと個人的に思うのは、例えば慢性疼痛のガイドラインみたいな、診療ガイドラインみたいなものもあるかもしれないので、それでどういう薬が推奨される、推奨されないみたいなものが今、割と出ているので、そうしたものとのすり合わせみたいなものがあっても良いのかもしれないと思ったのですが、どうでしょうか。
○住谷委員 日本ペインクリニック学会から神経障害性疼痛の薬物療法ガイドラインが出ておりまして、三木先生がおっしゃったように、向精神薬の全てがそのガイドラインとして推奨されているわけでは決してございません。そういう観点では向精神薬ということで統一するのは確かに不適当かもしれないと思っております。
○三上座長 酒井先生いかがでしょうか。
○酒井委員 ありがとうございます。今、議論になっている向精神薬についてどこまでを認めるかというのは非常に線引きが難しいかと思います。睡眠剤も含めて、その辺を整理しておいたほうが良いと思います。ガイドラインがあれば参考にするのがよいと思います。
○三上座長 ありがとうございました。この検討事項に関して、皆様、向精神薬を加えることには賛成ということです。ただし、全部ではなくて、その中で、ある程度限られたものを認める方向でよろしいのではないかということだと整理をさせていただきます。その際には、ガイドライン等もありますので、あるいはそれを参照するというようなことも1つの案であろうというように整理をしたいと思います。この件はほかによろしいですか。
それでは、次に検討事項の3点目、「熱傷に係るアフターケア」の「対象者の拡大」についてです。事務局から説明をお願いいたします。
○小川中央労災医療監察官 資料1の6ページと7ページです。熱傷に対しては、症状固定後においても傷痕による皮膚のそう痒、湿疹、皮膚炎等の後遺症状を残すことに鑑みアフターケアを実施しております。その対象者は、労災保険法による障害等級12級以上の障害(補償)等給付を受けている者又は受けると見込まれる者のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる者としております。対象となる障害は醜状障害であり、醜状障害として障害等級12級に該当する程度というのは、この資料にあるとおりで、資料2の16ページに表として整理をしております。
醜状障害としては7級、9級、12級、14級とあるのですが、ここの縦の二重線で引いた左側の黄色の部分については現行のアフターケアの対象としているものです。14級としては、例えば上下肢の露出面以外の所で等級が認められているわけですけれども、てのひらの大きさの醜いあととか、背部及び臀部について、その全面積の1/4程度をこえるもので、かなり広い範囲での醜状が認められるけれどもアフターケアの対象にはならないということになっています。
御検討いただきたいこととしましては、現行では、この対象者を障害等級12級に相当する醜状障害を残す者としていますけれども、障害等級については瘢痕等が残存した部位や、瘢痕等の大きさや範囲に応じて定められているところ、熱傷により障害等級14級の醜状障害が残存した者の中には、現行のアフターケアの対象者以上の大きさの傷痕を残し、そう痒等の症状を残す場合があります。熱傷により障害等級14級に該当する醜状障害が残存し、傷痕に皮膚のそう痒等の後遺症状が残存している者について、アフターケアの対象者に加えることは適当かどうか御検討をお願いいたします。
○三上座長 ありがとうございました。事務局からの説明を頂きましたが、熱傷後の瘢痕は12級以上であればアフターケアの対象になるけれども、14級は現行ではならないということです。しかし、14級の方の中には、当然12級以上と同等のそう痒、湿疹、皮膚炎等の症状が残る方もいらっしゃると。そういう方も対象に加えることについてが検討事項となります。この点、林先生にまず、お伺いしたいと思います。
○林委員 今の熱傷の範囲ですけれども、今までの12級から14級に該当する方でも、そう痒とか湿疹、皮膚炎、それから痛みとか、そういう後遺症を非常に強く訴える方もいると。例えば上肢でも下肢でも、大きさが小さくても、それが肘の関節の所にあるとか、膝の裏にあるとか、例えばお尻でも、お尻のちょうど椅子に座る所にあるとか、そういう場所によって、症状が異なってくることや、火傷が非常に深い場合、肥厚性瘢痕といって、少し分厚い瘢痕になったりします。そうすると、すごくかゆみを生じたり痛みを生じたりする。それは大きさというよりも、その場所や、その火傷の深さによって生じる痕の状態で変わるので、現状、大きさだけで分類されているが、範囲が小さくても症状が強い方はいらっしゃるので、個人的には、今回のように範囲が小さくても処方できるよう、緩和することが望ましいと思っています。
○三上座長 ありがとうございました。ほかの方々の御意見はいかがでしょうか。三木先生はいかがですか。
○三木委員 主に交通外傷の患者さんなどを時々診るのですけれども、やはり面積とは関係なく、先ほど林先生もおっしゃいましたけれども、可動域の場所とか、私はよく創外固定で肘とか膝を動かさないようにするのですけれども、そのときに皮膚が損傷しているとなかなかそこはいつまでたっても治らないことがあるので、面積ではなくて、質で評価するというのは非常に大事ではないかと思います。
○三上座長 ありがとうございました。住谷先生、いかがですか。
○住谷委員 私も賛成です。といいますのも、熱傷とはちょっと違うのですが、私ども緩和ケアでがんの患者さんの診療に携わっておりますと、露出面以外の所でも比較的大きな手術の傷痕などでは非常にQOLが低くなってしまう。お風呂に入れないとか、そういう訴えはよく耳にしますので、そういった面では、患者さんのQOLの低下をサポートするという点では、この14級をアフターケアの対象にするというのは賛成です。
○三上座長 ありがとうございました。酒井先生、いかがでしょうか。
○酒井委員 14級の方の一部をアフターケアの対象者に加えるということについては賛成です。実際、熱傷の面積だけではなくて、隣接関節の可動域制限の有無、拘縮の程度が非常に重要だと思います。ですので、単に面積というよりは熱傷の深さが重要で、Ⅰ度の熱傷なのかⅡ度かⅢ度かということが問題だと思います。小さい面積であっても症状が強いことがありますので、14級を加えることについては賛成です。
○三上座長 ありがとうございました。それではこの熱傷の対象範囲に関しましては、ただいまの検討の結果として、必ずしもその大きさだけではなくて、部位とかその性状によって、そう痒、あるいは皮膚炎、痛みといった症状が出てくるので、等級が低くてもアフターケアを適用するのが医学的にも妥当ではないかとの皆さんの御意見で取りまとめをさせていただきたいと思います。
最後の検討事項の4点目、「熱傷に係るアフターケア」の「措置範囲の追加」。つまり薬剤の適用範囲の拡大についてということです。事務局から説明をお願いいたします。
○小川中央労災医療監察官 繰り返しになりますが、この「熱傷に係るアフターケア」については、症状固定後においても傷痕による皮膚のそう痒、湿疹、皮膚炎等の後遺症状を残すことに鑑み実施をしているものです。
保健のための措置として、診察の都度、必要に応じて「外用薬等(抗菌薬を含む)」を支給することができることとしております。資料2の17ページの薬剤の一覧においては、縦列の3「外用薬等(抗菌薬を含む)」と横列の14「熱傷」の欄が交差するところになります。
現行では、そう痒等に対して内服薬の支給は認めていないところですが、療養中にケロイド・肥厚性瘢痕治療剤や、皮膚炎、痒疹等に効果のある内服薬が処方されている事例が実際にあるということで、事例の資料の熱傷の2、3、4、5について、リザベン、トアラセット、ジルテック、トアラセット、ロキソプロフェンナトリウムといった内服薬の処方がされております。
このような事例があることから、皮膚のそう痒等に対する効果がある内服薬について、外用薬と同様に症状固定後の保健のための措置として認めることが適当かどうかの御検討をお願いしたいと思います。また、現行は支給できる薬剤として、繰り返しになりますが、「外用薬等(抗菌薬を含む)」と表記しており、これはどのような効果のある薬剤を支給できるか明確ではないところ、熱傷治療における疼痛に関しては、熱傷創の面積や深度、治療の進行具合、瘢痕の程度などに加え、患者自身の痛みの閾値の関係もあり、十分な鎮痛を考慮することが必要な場合もあると考えられます。症状固定後においても疼痛が残存する事例があることから、「鎮痛・消炎薬」について、保健のための措置として認めることが適当かどうか。以上、2点について御検討をお願いいたします。
○三上座長 事務局から、現行の取扱い及び見直し内容等についての説明がありました。現行では、外用薬等が認められているわけですが、これに更に「鎮痛・消炎薬」を加えてはいかがかと、このような御提案です。この点に関して、林先生いかがでしょうか。
○林委員 まず、1つ確認ですが、現行の「外用薬等(抗菌薬を含む)」というものは、その抗菌薬を含む外用薬でないと支給できないのでしょうか。それとも、外用薬なら何でも良いし、抗菌薬を含むものでも良いという、そのようなことなのかでしょうか。この「抗菌薬を含む」というものが外用薬の中でも抗菌作用のあるものだけになるということなのかを確認したいのです。
○下平補償課長補佐 今、先生が言われたお話ですと後者になります。外用薬であれば支給を認めており、加えて抗菌の薬効があるものも支給の対象となるということです。
○林委員 要するに、外用薬であれば何でも良いということですね。
○下平補償課長補佐 そうです。
○林委員 こちらの表にも「外用薬」と「外用薬等(抗菌薬を含む)」と2つあるので、抗菌作用のないものは支給できないのかという印象がありましたが、それであれば非常に良いと思います。
また、内服薬に関してですが、こちらの事例にも載っていますように様々な内服薬が必要になることがあります。まず1つ、この後に出てきます疼痛の「鎮痛・消炎薬」に関しては、特に、先ほど申し上げたような関節部にひきつれがあるという患者さんです。あとは、肥厚性瘢痕という分厚い傷痕になってしまって、体を動かすときに痛みが走ったりということで、かなり痛みの訴えを強く持つ方が多いです。
このようなケースでは非常にアフターケアとして必要な種類の薬剤ではないかと思います。そのほかの薬剤として、事例にも挙げられていますが、かゆみに対する抗アレルギー剤も非常に処方されますし、抗アレルギー剤の中でも特徴的なものはリザベンという抗アレルギー剤です。トラニラストという名称でも書いてあるかもしれませんが、このリザベンという内服薬は、もともと、かゆみ止めなのですが、ケロイドとか肥厚性瘢痕などのひきつれを及ぼすものを少し緩和するような治療薬として唯一認められており、肥厚性瘢痕という火傷の痕のひきつれを起こすような病態の唯一保険病名となっている薬なのです。
重傷な火傷の痕のある方には、そのような形で出すことが非常に多いのです。あとは、トアラセット等をこのような「鎮痛・消炎薬」に含むかどうかというところも微妙なところですが、いずれにしろ、このような「鎮痛・消炎薬」ではない抗アレルギー剤というものも非常にかゆみ対策、それから、肥厚性瘢痕等の傷痕への対策として処方されますので、同時に認められるようになると良いのかなと思っている状況です。
○三上座長 ありがとうございました。林先生の御意見は、内服薬は「鎮痛・消炎薬」に加えて、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬ですかね。そこら辺のかゆみに効く薬も入れたほうが良いのではないかという御意見だろうと思います。住谷先生いかがでしょうか。
○住谷委員 私も林先生の御意見に賛成です。かゆみ等の内服薬は、是非、認めていただきたいと思っております。また、実際、私も熱傷の治ゆ後の痛みで困っている患者さんの診療を担当させていただいておりますので、「鎮痛・消炎薬」は必須だと考えておりますし、また、感覚脱失を明らかに伴う末梢神経の障害を伴うような患者さんもいらっしゃいますので、もう一歩突っ込んで、先ほどの末梢神経障害治療薬、あるいは、末梢性の神経障害性疼痛治療薬等も火傷の患者さん方にも使えると非常に良いのではないかと思っております。その点に関しても、感覚鈍麻があるとか、そういった面で末梢神経が何かしら障害されているという部分は二重の診断で担保できるのではないかと予想しております。以上です。
○三上座長 ありがとうございました。三木先生いかがでしょうか。
○三木委員 よく交通外傷で、バイク等でザーッと擦りますと皮膚が損傷して、熱傷と同時に挫滅しているのですが、そういった開放骨折等をよく治療するので、そうすると、皮膚の表面もありますし、その下の軟部組織も挫滅しているので、原因が神経の損傷なのか、皮膚の損傷で痛いのかの判断は難しいのですが、皮膚の問題、乾燥して痛い、そこからよく血が出たりして痛み止めも飲んでいるという患者さんは結構います。
なかなか、この痛みの原因を、先ほど住谷先生がおっしゃったように、神経障害性疼痛なのか、それとも、そこの関節が壊れて痛いのか、判別は難しいのですが、その医師がこれだろうということで痛みの原因を診断してくだされば、それに伴う投薬、内服も良いですし、この外用薬も両方使えるようにしてあげたらどうかと思いました。要するに、因果関係というか、普通の医学的な根拠に基づいて診断しているものだったら認めたらどうかと思います。労基署でそれはできるのではないかと思います。
○三上座長 ありがとうございました。いわゆる「鎮痛・消炎剤」に限らず、痛みに効能のある、先ほど出た末梢神経障害性疼痛に使うような薬も含めて少し広めに見たほうが良いのではないかとの御意見だろうと思います。酒井先生いかがでしょうか。
○酒井委員 保湿剤等の外用剤に加えて、皮膚炎によるかゆみ、そう痒に対する内服薬も認めて良いのではないかと思います。リザベンについてですが、瘢痕形成期といいますか、ある程度の早期だと治療効果はあると思うのですが、例えば、1年、2年も経って完成されてしまったような病態に対して使うことで効果が期待できるのかどうか、アフターケア等でリザベンを使う必要があるのかなと少し疑問に思ったのですが。
○三上座長 ありがとうございます。林先生、リザベンの件はいかがでしょうか。
○林委員 リザベンですが、酒井先生がおっしゃるように急性期に使うことが一般的ですが、例えば、火傷をして、それがある程度、肥厚性瘢痕のようになってきて、段々、ケロイドとしてすごくキューッと痛みを生じてきたり、結構、後になってからそのような症状を訴える方もいるのです。すごく瘢痕やケロイドが赤々としていて活動性があるような、そのような場合は、受傷から時間が経った段階でリザベンを始めることもあると思います。
そうすると、やはりアフターケアには、そのような薬も必要ということになると思うので、病態に応じて処方することになりますが、リザベンを2年も3年も漫然と処方することはあまりないです。ただ、そのように、病態として非常にかゆみが強くなってきた、火傷して2年してから急にそのようなものが出てきた、赤々と盛り上がってきたというときには、リザベンをまず処方するような場面はあると思います。
○三上座長 ありがとうございました。かなり時間が経ってからでもリザベンは使える、効果がある場合もあると、こういうお話だろうと思います。ほかに何か追加での御発言等ございますか。事務局は何かございますか。どうぞ。
○児屋野補償課長 今、林先生からもおっしゃっていただいたように、急性期が主だが、慢性期というか、その後でも使われるというようなお話でした。その後に、保存療法というか、いつまでも使うものではないというお話もございました。熱傷のアフターケアですと、およそ3年が手帳の有効であると見ており、それとの整合という意味ですと、アフターケアの対象とする飲み薬として十分だという理解でよろしいですか。
○三上座長 事務局の懸念は、つまり、再発とか、そのようなことでやらなければいけないのではないかという、そういう御懸念なのですか。
○児屋野補償課長 はい、おっしゃっていただいたとおりでもありますし、アフターケアは、やはり急性期の治療ではなく、最初に申し上げたように保健上の措置、動揺の抑えということで、保存的というか、健康上の措置になっておりますので、急性期に使うものだと適当とは言えないというのはあります。
○三上座長 ある一定期間使うということでの理解でよろしいかと思います。よろしいですか。大体、意見は出尽くしたかと思います。林先生どうぞ。
○林委員 今の急性期の話ですが、結局、火傷の急性期というのは、火傷をして皮膚が爛れてしまって、それから皮膚ができてきてという、それで皮膚がきちんと完成するというところが、多分、急性期だと思うのです。
それが時を経て、段々皮膚が瘢痕で盛り上がってきて、かゆみが出たりというところでアフターケアなので、火傷して、例えば、受傷して1週間目からリザベンを飲ませるということも、ないわけではありませんがあまりない、一般的ではないと思います。それが傷痕として肥厚性瘢痕になってきて、これから問題になりそうだなという、そのような患者さんに、「では、飲んでいきましょうか」という形なので、そのような意味では、純粋な本当の急性期ではないと思います。
○児屋野補償課長 ありがとうございます。承知いたしました。
○三上座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。そうしますと、ただいまの検討の結果として、「熱傷に係るアフターケア」の措置範囲の追加については、現行は「外用薬等(抗菌薬を含む)」を支給対象としているところ、内服薬の支給も認めるのが適当であろうということです。
それから、内服薬としては、疼痛に対する鎮痛薬、あるいは消炎薬、それから、そう痒に対する抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、末梢性神経障害性疼痛に用いられるような疼痛薬もその範囲に加えてはいかがかというのが、皆様の御意見だろうと思います。
以上で、本日予定された論点の検討が終わりました。本日の全体の議論を通じて追加での御意見、あるいは御質問のある方がいらっしゃいましたら御発言をお願いいたします。よろしいですか。それでは、本日の議論の内容を踏まえ、事務局において本検討会の報告書(案)の形で整理していただき、次回はそれを検討することにしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。事務局は今の方針を踏まえて作業を進めてください。それでは、本日の検討会をこれで終了いたします。
次回の日程等について、事務局から何か御連絡はありますでしょうか。
○園田福祉係長 御議論ありがとうございました。次回は、ただいま座長から御発言がありましたとおり、本日の御議論を踏まえ、報告書(案)を御用意させていただくことといたします。正式な御案内は後日させていただきますが、次回は令和6年2月7日(水)18時、こちらの会議室を予定しております。本日はお忙しいところ御参集賜り、誠にありがとうございました。