薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和5年度第1回適正使用調査会議事録

日時

令和6年1月29日(月)16:00~18:00

場所

Web併用形式
AP虎ノ門 会議室A

出席者

出席委員(10名):五十音順、敬称略 ◎座長
欠席委員:敬称略
新潟県立がんセンター新潟病院  新潟大学医歯学総合病院 :敬称略
東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学科:敬称略
自治医科大学附属病院 輸血・細胞移植部:敬称略
日本赤十字社:敬称略
事務局:

議題

  1. 1.座長の選出
  2. 2.血液製剤使用実態調査について
  3. 3.血液製剤使用適正化方策調査研究事業について
  4. 4.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

議事内容
 
○鈴木血液対策課長補佐 定刻となりましたので、「血液事業部会令和5年度、第1回適正使用調査会」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。このたびは、御参加いただく方の利便性等の観点からWeb併用での審議とさせていただきます。会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、会議はYouTubeで生配信を行いますので、何とぞ御容赦ください。本日は委員改選後、第1回目の開催となりますので、座長が選出されるまでの間は私、血液対策課長補佐の鈴木が進行役を勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは委員の方々を委員名簿に従って御紹介いたします。上から順番に読み上げます。安達知子委員、梶原道子委員、上條亜紀委員、喜多村祐里委員、喜多村先生は本日御欠席と御連絡を頂戴しております。國土典宏委員、堺田惠美子委員、柴崎郁子委員、堺田先生と柴崎先生は新任で御着任いただいております。西脇公俊委員は遅参とお伺いしております。野村恭一委員、三谷絹子委員、宮川政昭委員、矢口有乃委員、矢口先生も本日御欠席との御連絡を頂戴しております。
 なお、本日の調査会は現時点で委員12名中10名の出席をいただき、定足数に達しますので、薬事・食品衛生審議会令第9条により本部会が成立したことを御報告いたします。また、これまで委員でいらっしゃった薄井紀子委員、西村元延委員、半田誠委員については、昨年1月に行われた委員の改選に伴い、退任されたことを併せて御報告いたします。また、本日は参考人として東京医科大学八王子医療センター臨床検査医学科准教授の田中朝志先生、自治医科大学附属病院輸血・細胞移植部教授の藤原慎一郎先生、新潟県立がんセンター新潟病院臨床部長、新潟大学医歯学総合病院特任教授の関義信先生に御出席いただいております。加えて日本赤十字社血液事業本部から早坂経営企画部次長、杉山経営企画部供給管理課長、日野技術部安全管理課長に御出席いただいております。
 続いて、全ての委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告いたします。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願いいたします。議事に入る前に会場におこしいただいている委員の皆様においては、本日の資料の御確認をお願いいたします。資料は議事次第、委員名簿、参考人名簿、適正使用調査会設置要綱及び資料1-1、資料1-2、資料2-1、資料2-2、加えて参考資料1をお配りしております。お手元にあるか御確認をお願いいたします。もしも不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
 本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明いたします。審議中に御意見、御質問がありましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方はマイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を御発言ください。ノイズを減らすため御発言が終わったらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際には、一度、皆様の発言を控えていただき、発信したい委員については、チャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いをする場合があります。その場合には記入されたメッセージに応じて、座長より発言者を御指名いただきます。Web参加の皆様においては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き、審議参加に支障を来す場合にはチャット等でお知らせいただくようお願いいたします。
 なお、事務局の異動がありましたので御報告いたします。血液対策課長の山本が渡辺の後任として着任しております。また先ほどから御説明しております私、血液対策課長補佐の鈴木が有田の後任として着任していますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。なお、議事進行等について、今までの御説明に御質問等はございませんか。よろしいでしょうか。
 それでは議題1、座長の選出に入りたいと思います。僭越ですが、事務局としては、三谷絹子委員にお願いしたいと考えておりますが、委員の先生方、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。御賛同いただき、御異義がありませんでしたので、三谷委員を座長とすることに決定いたします。三谷委員、御挨拶をお願いいたします。
○三谷座長 獨協医科大学輸血部の三谷でございます。それでは、委員の先生方に御推薦を頂きましたので、本年度の適正使用調査会の座長を拝命したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○鈴木血液対策課長補佐 ありがとうございました。それでは、以降の進行を三谷座長にお願いいたします。
○三谷座長 それでは、議事に入ります。議題2「血液製剤使用実態調査について」です。まず、事務局より、本事業の概要について説明をお願いします。
○鈴木血液対策課長補佐 資料1-1を御覧ください。「血液製剤使用実態調査」につきましては、医療機関の血液製剤の管理体制、使用状況など、医療機関における血液製剤の使用実態を把握することを目的として、令和5年度も日本輸血・細胞治療学会に委託して実施しました。当該調査の結果等につきましては、本日、学会よりお越しいただいております田中参考人及び藤原参考人より御発表いただきます。令和5年度の調査内容につきましては、この資料1-1でもお示ししておりますように、基本的事項に加えて、輸血療法の体制や使用実態についてといった項目を調査していただいております。
 膨大な項目になりますが、本日の御発表につきましては、特に、へき地・離島での輸血使用状況(輸血管理体制と使用状況のこれまでの推移)の調査結果と、その対策について、及び小規模医療機関での廃棄減少と適正使用の推進のため、小規模医療機関での輸血管理体制・使用状況についての調査結果と対策についてということを中心に資料としてまとめていただいております。過去には、こういった調査の結果を、資料にもお示ししておりますような通知とか指針に反映してきているところですが、本日は、血液製剤の更なる適正使用の推進に必要な方策を検討するため、御意見を頂戴できますよう、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○三谷座長 ありがとうございました。それでは、田中参考人、藤原参考人から、資料1-2の説明をお願いしたいと思います。まず、田中参考人、お願いします。
○田中参考人 よろしくお願いします。では、まず田中から、へき地・離島における輸血使用状況について御説明します。まず、その前に本調査の概要をお示しします。
 資料の1ページ目を御覧ください。対象施設としては、2022年度に日本赤十字社より輸血用血液の供給を受けた9,277施設でありました。その中で、2022年4月から翌年度の3月までの1年間の輸血管理体制の使用状況を調査したということです。
 2ページに、病床群別の回答率を図1でお示ししております。500床以上の施設においては9割以上の回答率がありますが、病床数が少なくなるほど回答率が下がりまして、20床から99床レベルで約50%、診療所レベルでは4割ぐらいの回答率です。図2には、調査回答率の年次推移をお示しております。ここ10年、大体50%ぐらいで推移しておりますが、今年度におきましては、52.17%と、1%ほど去年よりは回答率が高いという状況でした。
 3ページ、へき地・離島施設の地域分布と施設の病床規模をお示しします。表1と図3を御覧ください。まず、離島については、沖縄県、長崎県、鹿児島県など、西日本の地域で多いという状況でした。へき地は、日本全国に分布しておりまして、特に多かったのは北海道、熊本県、大分県などですが、離島は少し偏っていて、へき地は全国にあるという状況です。
 4ページ、へき地・離島の輸血管理体制です。図4~図7にお示ししてありますが、まず、図5の右側のグラフを御覧ください。二次救急以上を見ていただくと、100床以上の場合は、ほぼ二次救急の体制が敷かれておりますが、それ以下の小さい規模におきましては、離島・へき地のほうが二次救急に指定されている施設の率が高いという状況でした。それに付随していることかと思いますが、図4の輸血責任医師や図5の輸血療法委員会、並びに図7の輸血検査の24時間体制などは、離島・へき地のほうが、むしろ輸血管理体制としては整備されている状況が見られました。
 5ページ、へき地・離島での輸血使用状況です。こちらは、図8~図10を御覧ください。ここで、まず図8では、各病床群での輸血の購入量と廃棄率を、離島・へき地、他地域(その他の地域)で分けてお示ししております。折れ線グラフは廃棄率ですが、その他の地域と比べて、離島・へき地ではどの病床群でも廃棄率が高いという状況がありました。診療所レベルで、その他の地域の一部で高い所もありますが、ここは回答率が低くて実際に購入量や廃棄量を御回答いただいた施設が少ないので、参考値として見ていただければと考えております。購入量を見ますと、へき地よりも離島のほうが1施設平均では少なくて廃棄率も高いという状況でした。
 図9は、1施設平均の赤血球の使用量と輸血の実人数を示しています。こちらも、その他の地域よりも離島・へき地のほうが、使用量、実人数ともに少なめという状況でした。
 そして、図10では、へき地・離島での診療科別の赤血球製剤使用量をお示ししております。離島では、内科、救急科、整形外科の順に多く、へき地では、内科、消化器内科、血液内科の順に多い状況でした。内科は、循環器内科、血液内科などの指定された科以外の「その他の内科」という分類になっております。その他の地域については、お示ししませんでしたが、赤血球製剤の使用量が多い診療科として、血液内科、心臓外科などで、その他の地域と離島・へき地で使われている診療科とは少し違うことが廃棄率にも影響しているのではないかと考えております。
 6ページ、図11を御覧ください。こちらでは、輸血管理料を算定している施設の比率を示しております。先ほど、その他の地域よりも離島・へき地のほうが輸血管理体制は整備されていると申し上げましたが、それを反映して、離島・へき地のほうが輸血管理料を算定している施設の比率が高いという状況でした。
 次に緊急避難的な血液製剤の融通についてです。まず、緊急避難的な血液の供給、若しくは受領を行ったことがある施設は、離島では約3割の施設で実績があり、へき地においては5%の施設で実績があるという状況でした。やはり、離島では血液製剤の融通がされている割合が高いということです。そして、離島の20床以上の施設で、緊急避難的な血液製剤の供給を行った施設と行わなかった施設の差異を検討したのが、図12と図13です。そこで差異が見られたのが、二次救急医療の指定や帝王切開の有無、病床数、赤血球の輸血量や血小板製剤の輸血量ということです。以上を鑑みますと、救急や産科医療を行って輸血使用量の多い病院では、緊急避難的な血液融通の必要性が高いということが推測されます。
 次に輸血医療の地域連携について提示します。まず、緊急避難的な血液の融通を行う需要があるという回答をされた施設は離島で31%、へき地で6%で、実際に行っていた割合とほぼ同じぐらいでした。ただし、地域の合同輸血療法委員会に参加していたのは、離島では3割、へき地でも3割という状況で、さらに、この委員会で離島・へき地での輸血医療連携が検討されていたのは離島では2施設、へき地では0施設で、合同輸血療法委員会での検討が余りされていない状況が分かりました。また、ブラッドローテーション(BR)の要望ありという回答が、離島の42%、へき地では17%であり、要望があるともないとも言えないという回答が離島で42%、へき地で50%ということで、後者の回答が、若干多かったですが、やはりブラッドローテーションは赤血球しか運べず、費用が掛かるということが影響しているのかなと考えました。
 7頁目に今後の展望を案としてお示ししました。血液センターから定期的に配送される血液製剤は、遠隔地の地域中核病院で使ったり院内在庫として置いておき、それを緊急融通として周辺施設に配るわけですが、場合によっては、患者搬送も含めて、地域の中で完結するような輸血量を目指すのがよいのではないかと考えております。また、遠隔地の血液製剤有効利用の課題としましては、血液製剤の供給体制の要望が幾つか挙げられております。
 最後に考察です。遠隔地では、小規模施設であっても二次救急などの医療機能を担う比率が他の地域よりも高く、輸血管理体制は整備されておりました。一方、1施設当たりの赤血球使用量はへき地で少なく、また輸血患者数も少なく廃棄率は高いという状況でした。診療科で使う量が、その他の地域と違っておりまして、それが廃棄量の高さの要因とも考えられます。
 また、緊急避難的な血液製剤融通は離島施設の約1/4で実績があり、特に高度な医療機能や輸血使用量の多さとの関連が推測されております。ただし、こういった緊急避難的な血液融通を含めた医療連携のあり方は、なかなか合同輸血療法委員会では緊急の議題になっていない所が多いという印象でした。このように、へき地・離島の施設では、緊急輸血への対応に困難を抱えておりまして、血液製剤の緊急避難的融通が実際に実施されておりますので、このような体制を支援していくような姿勢が、国・地方自治体・血液センターに求められると考えられました。以上です。
○三谷座長 田中参考人、ありがとうございました。それでは、続いて、藤原参考人から後半の御説明をお願いいたします。
○藤原参考人 よろしくお願いします。1ページ、今回、私は小規模医療機関について調べております。定義としては、0~19床は診療所でして、20~199を小病院、200~499を中病院、500以上を大病院としていますが、今回の小規模医療機関の定義としては200床未満(診療所と小病院)を対象としております。
 10ページの表1です。小規模医療機関において輸血の供給を受けた施設は合計7,974施設で、非常に多くの施設が輸血を受けております。田中先生からもありましたが、回答率は50%ですので、こういった調査に協力いただけない施設の実態がどうなっているのかということで、実際は今回の調査と大きく変わる可能性は考えられます。半分ぐらいの施設から回答が得られて、表1に示しております。
 表2は、医療機関の概要です。標榜している科として、診療所としては、その他の内科や腎臓内科で、内科系の標榜科が多く、小病院は20床~199床の病院ですので、整形外科や消化器内科など、外科系の標榜する科が増えてきております。輸血の使用量の多い心臓血管外科の手術や帝王切開、移植や血漿交換が10%未満で、小病院の半分(52%)が二次の救急指定の病院となっております。
 11ページの表3は、輸血の管理体制です。やはり診療所ですと、輸血の責任医師はなかなか整備できる状況にはなく、2割程度です。それから輸血担当技師が3割で、輸血療法委員会も2割~3割ぐらいの整備状況です。小病院では、少し組織ができてきて、責任医師が6割、担当技師、それから管理体制も6、7割ぐらいはできています。
 12ページ、表4は、血液製剤の納入状況(購入状況)です。製剤によって変わってきますが、特に赤血球に関しては、小病院では全体の15%を購入しているところです。血小板や新鮮凍結血漿に関しては、高々数パーセントの割合で、全体の数パーセントが小規模の医療機関で購入されています。
 次に、表5は廃棄状況です。実際、小規模医療機関では、購入しているのは全体の数パーセントで、赤血球は15%ぐらいであったのですが、廃棄単位で見てみますと、特に20~199床の小病院では、全体の廃棄の中の40%が廃棄されております。一方、血小板や新鮮凍結血漿を見ますと、血小板は7%、FFPに関しては、小病院で18%を廃棄されており、購入の割には廃棄の単位が多い。特に、赤血球に関しては小病院で多いところがあり、以降、小規模医療機関における赤血球の廃棄について少し検討しております。
 13ページに、図1と図2があります。まず、購入単位を100床ごとで13に分けて示しております。購入単位は、ベッド数が増えるにしたがって、どんどん増えていくわけですが、廃棄の単位を100床ごとでみますと、4番目の100~199床の所に廃棄総単位のピークがあります。また、図2の廃棄率というのは購入した赤血球に対する廃棄の割合ですので、廃棄率をみますと、ベッド数が上がると増えていくのですが、4番目の100~199床と、5番目の200~299床の所に廃棄率のピークがあり、それ以降、ベッド数が増えていきますと廃棄率がかなり低くなっていきます。やはり小規模医療機関の100~199床、この辺りに廃棄の量や廃棄率の高い所があることが分かりました。
 表6は、実際には、小規模医療機関の何科で使用されているのかというデータです。赤血球ですが、診療所は、血液内科や腎臓内科、その他の内科で、全体の7割ぐらいが内科系の診療科で使われております。小病院になってきますと、全身麻酔の手術などが増えてきますので、外科系の診療科で44%が使用されている状況でした。
 表7ですが、赤血球の廃棄の要因も調査されておりましたので見てみます。廃棄の要因として、一番多いのが有効期限切れです。どの病床数であっても多いのですが、診療所では転用不可というのが15%ありますので、全体の大まかな傾向ですが、有効期限が切れて転用ができなくて廃棄に至っているということが要因と考えられました。
 次に、診療所と小病院に分けて廃棄の要因を少し検討してみたのですが、まず表8は、診療所です。診療所は、1,483施設中219施設、約15%の施設で赤血球の廃棄がありました。「廃棄無」と「廃棄有」で分けて見てみますと、廃棄有群の廃棄率中央値は7.6%、(0.1~100%)で、かなり幅がありまして、実際に中央値で見ますと、50単位ですので2単位で25パック買って、ということみたいですが、そのうちの2パックぐらいの廃棄が行われています。このくらいの規模で廃棄されているということです。
 表8の2群ですが、差が付いてくるのは、有床とか、全身麻酔手術の割合、帝王切開手術、大量出血の経験などで、見えてくるのは、どうも産科診療所が廃棄に関係しているのではないかと、この表だけで見ますと見て取れるところでした。診療所では、輸血の管理体制が整っている所は廃棄が多いということもあったのですが、実際に廃棄があった施設の219施設だけで検討してみますと、やはり、責任医師や担当技師、輸血療法委員会があったほうが、廃棄率は明らかに下がっておりますので、ある程度輸血をしている所では、診療所の輸血の管理体制が整っている所のほうが、廃棄率は下がるということが見られました。
 次に、表9の小病院についてです。約半分の施設が廃棄はありませんでした。約半分の施設が「廃棄なし」、半分の施設が「廃棄あり」というところです。廃棄の有無を比較してみますと、やはり廃棄のない所は、赤血球の購入単位や病床数、手術の件数など、ほかの各診療科や救急の割合など、ベッド数、診療規模が小さい所でした。それに伴い、手術に関係するような準備血、それから緊急とか大量輸血のために準備するような血液が少ないために廃棄がない、内科系などを含めて安定した輸血が行われているので廃棄がないのではないかということが、表9からは見て取れました。
 今度は、「廃棄有」の群を、余りよく分からなかったので、廃棄の「低」と「中」と「高」の3群に分けて見てみますと、やはり廃棄に関係するのは、負の因子として、購入単位が増えるとか、二次救急指定の割合、血液内科、消化器内科、腎臓内科の割合などが増えてくると、こういった内科系のものが増えてくると廃棄率が下がることが分かりましたし、廃棄率の上昇に関係するものとしては、やはり心臓血管外科とか、帝王切開の割合、小児科、産科の割合、大量出血の割合といったものが増えてくると廃棄率も増えるということが見て取れました。
 18ページ、最後に結論です。小規模医療機関は、血液製剤の全体の5~16%ぐらいを使用しており、特に小病院は、診療所から中規模ぐらいの病院まで、かなり多様な病院があるということが分かりましたし、一般的には、中病院や大病院に比べますと、小規模医療機関の輸血管理体制はまだ十分ではありませんでした。
 特に、赤血球製剤の廃棄が全体の41%を小規模機関で占めており、ここが問題かと思われます。赤血球は、診療所では主に内科系、小病院では主に外科系で使用されておりますし、要因としては有効期限切れ、特に転用できないということが関係していました。廃棄に関係する因子として、診療所では産科診療と輸血管理体制の不備、小病院では心臓血管外科や産科周術期の診療、使用量の多い内科系の診療科がない、それから輸血管理体制の不備というものが挙げられました。
 赤血球の廃棄削減に向けまして、一つは、産科や心臓血管外科は、中病院や大病院との連携推進であったり、やはり集約化ということが必要ではないかと思います。また、小規模医療機関においては、有効期限の迫った赤血球は転用できないということがありますので、一つの案として、ブラッドローテーションのように回収できる仕組みが必要ではないかと思われました。さらに、今回、診療所でも示されておりますが、輸血の管理体制というのは、廃棄率を下げることにつながる可能性がありますので、引き続き、輸血管理体制の整備が望まれるということが今回の調査で見て取れました。以上となります。
○三谷座長 ありがとうございました。ただいま、田中参考人により、へき地・離島での血液使用状況について、また、藤原参考人より、小規模医療機関での輸血管理体制、使用状況について御報告いただきました。へき地・離島あるいは小規模医療機関におきましても、やはり廃棄血が多いことが最大の問題で、いかに、これを解決していくかということが課題ではないかと思いました。それでは今までの御説明につきまして、御質問や御意見を頂きたいと思いますが、委員の方々はいかがでしょうか。よろしいですか。
 では、私から参考人の先生方にお伺いしたいのですけれども、この調査自体なのですが、Webの回答と紙の回答と併用されているようですけれども、どちらのほうが回答率がよろしいでしょうか。というのは、やはり小規模病院等で回答率が芳しくないということだったのですが、これだけのものを回答してくるので、もちろんマンパワーがない所が大変ということは分かるのですけれども、今後、回答を促進するための工夫とか、何かおありですか。
○田中参考人 Webの回答と紙の回答と比べますと、やはりWebのほうが回答が多い状況です。ただし、大病院だからWebが多いというわけでもなくて、大病院でも紙で回答してくる施設もございます。ですので、全体的に改善が必要なのかと思います。特に、この調査項目を先生方にも実際に見ていただくと、非常に分厚くて300項目ぐらいありまして、それを受け取ると、特に小規模の病院の方はびっくりされるというか、引いてしまうというか、なかなか全部回答はできないなという雰囲気になってしまうところもありまして、その調査項目の整理とか、もう少し回答しやすい仕組みというのも工夫していくべきとは考えております。
○三谷座長 ありがとうございます。藤原参考人もこの件に関して、何か御意見はおありですか。
○藤原参考人 やはり調査項目が多いと思いますので、もう少し回答率を上げるためにも、要点を絞ってというか、スリムにする必要があるのではないかと思います。
○三谷座長 ありがとうございます。確かに私も、現場で拝見していて、かなりの調査項目で、タフな仕事かなと思います。できるだけ調査項目をスリム化していただいて、もしかするとWebにしていただくと回答率が上がるのかなと思いました。ほかに、宮川先生、お願いします。
○宮川委員 日本医師会の宮川でございます。調査について、いろいろ教えていただきまして、ありがとうございます。へき地と離島では少し様相が違ってくるというように思っております。離島はいいのですが、へき地というのは、この定義を「無医地区から準無医地区」と書いてありまして、「半径4km区域内に人口50人以上が居住している地域であって」、その後なのですが、「かつ、容易に医療機関を利用することができない地区」と書いてある所の「容易に医療機関を利用できない地区」というのは、どのように定められているのか。
 これは事務局に聞いたほうがいいのか、先生に聞いたほうがいいのか、無医地区というのは、どのようにされて、容易に医療機関を利用することができない地区というのは、どのような定義でされたのかを教えていただきたいのですが。
○鈴木血液対策課長補佐 事務局の鈴木です。宮川先生、御指摘ありがとうございます。私も詳細な所まで、この場ではお答えできず恐縮ですけれども、こちらは他局でへき地調査が毎年行われていますが、その定義とそろえる形で、こちらの調査も設計しております。
○宮川委員 ありがとうございます。この表1で見ると、へき地の所で、北海道は割と分かるというか、そういう意味では理解しやすい所なのですが、熊本、大分、それから鹿児島ということになりますと、単に医療そのものが、どちらかというと数が少ない。それで、山があったりとか、いろいろな所があって集落が1つずつ固まっているのだけれども、それは距離としてのへき地という、要件として距離が長くなっているということがあるのかどうか。今回の能登のような形で道が細いとか、非常にアクセスが悪いような所というのは、そういう意味では無医地区とか、準無医地区に近い状況があろうかなと推察されるのですが、そういう医療条件のほうが、かなりきつくなってしまって、段階的に進んでいるということもあるかと思います。最初から離島ということであれば、1つの島とか、そういう所に医療機関があると、それなりの対策は立てやすいのですが、だんだん過疎になってくる場合は、逆に、大きな所に人間が行くということによって医療が成り立っているというような所もあるため、そういうことを考えないといけないかと思います。つまり、大きな医療機関が、6、7km先にあるということであれば、過疎地域に医療資源を投入しなくても考えやすいのではないかということがあります。実際に、どういう所かというデータを私は見たことがあるのですが、熊本にはそのような地域があるのです。
 熊本の、どちらかというと福岡に近い所でもそういう地域があります。福岡では、どちらかというと北のほうで博多や福岡市に近い医療機関があるのですが、そこから遠く離れて、なおかつ、県境を挟んでくると、熊本に入ってすぐの地域にはないため、熊本市とかそういう所までいかなければならないのです。その間が抜けてしまって、二次医療圏が全くなくて、三次医療圏で対応せざるを得ないというデータを見たことがあるのです。
 だから、その辺りの医療の環境というものを考えないと、ただ、へき地というくくりで考えていくと非常に難しい。大きな病院は、それである程度担保できるのですが、小さい医療機関という形になってくると、それが響いてくるのではないかというように思います。0床だから1~19床、つまり有床診療所という形で見ているというところで、かなりデータとしては、そこにきつく見えてしまっている。だから、有床診療所で対応せざるを得ないということが大きな問題を起こしているということなのではないかなと考えます。医療の特性というか、その地域の特徴を考えながら見てみると、有床診療所で、このようになっているということです。
 話が長くなってしまって申し訳ありませんが、同じように、婦人科の対応というところを見ると、ほとんど有床診療所ですね。日本の場合はそういう形で、大病院から有床診療所が対応しており、有床診療所となると、1~19床の所で婦人科のほうが非常に多くなるので、そこの率が多くなって、こういうパーセンテージが出てしまうのだと推測できます。何か、その特徴があるのかなと思って、医療事情ということも含めた中で、何か御示唆いただけるようなことがあるのかどうか、田中参考人にお願いします。
○田中参考人 産科医療については、へき地・離島は確かに厳しいのですが、その他の地域でも、やはり厳しくて、私の資料だと、5ページ目の図8に示しておりますけれども、その他の地域の廃棄率が1~19床で、急に跳ね上がっていますが、これも、主に産婦人科の廃棄率が影響しているものでございます。
 また、回答率が低いので全てではないのですが、やはり端的にそれが見えているというところがあります。産婦人科については、離島・へき地だけでなく、全国的に問題があるのではないかと考えておりまして、そのテコ入れをどうするかというのは、非常に難しいのではないかと思います。
 先ほど、藤原先生からもブラッドローテーション等の話が出ましたが、それを産婦人科まで広げるとなると、かなり多くの機関が候補になりますし、産婦人科の医療の特性として、どのようなお産でも緊急大量出血になる可能性がありますが、その頻度が非常に低いので、在庫を置いても、かなりの割合が廃棄になってしまう。ただ、患者さん、母体や母児の健康を維持するためには、ある程度の在庫を置かざるを得ないという事情があるので、そこをどうするかは、やはり日本全体で考えていただく課題かなと思っております。
○三谷座長 安達委員、お願いします。
○安達委員 産科の話題が出ましたので、産婦人科医の私が発言しないわけにはいかないかなと思います。今、お二人からもお話がありましたように、産科は分娩の取扱いの約半分が有床診療所なのです。ですから、へき地とか離島であれば、ますます19床以下の診療所という形になるのではないかと思います。県の中のいろいろな地域でも、中央の都市であれば病院もあるのですが、県の遠隔というか、山間などに行きますと、全く病院はなくて、周産期センターという集中的に産科と新生児をみる施設なのですけれども、そういう所も非常に少ないということになります。
 それと、産科の出血については、先ほどお話がありましたけれども、予期せぬ大出血が起こりえます。妊娠のリスクスコアというものがあって、リスクスコア付けができるのですが、例えば、妊娠前、妊娠中も含めて母体年齢、初産・経産、合併症や、子宮の手術の既往があるとか、妊娠中に起こった要素、妊娠高血圧症候群、胎児の大きさや胎位などを加えて、評価したスコアです。このスコアが低く、ローリスクであっても、3%の大出血の可能性があると言われているのです。ですから、そういう意味では、始めからこれはリスクが高いからと思って、大きな病院へ紹介して振り分けたとしても、診療所で診られると思ったローリスク妊婦の3%が大出血をきたしますので、輸血の可能性があるということです。
 もう1つは、産科の出血というのは、通常の手術の出血とは全然違いまして、赤血球だけ輸血すれば母体が助かるというものではないのです。急激にDICに進行しますので、FFPのような血漿や血漿分画製剤を入れないといけないのです。私どものように血液を専門にやっている者からみますと、赤血球と血漿 (プラズマ)の割合では、むしろ血漿のほうが少し多いぐらいの割合で輸血して頂きたいのです。そうしなければ、フィブリノゲンを中心とした凝固因子があっという間に枯渇して、止血できなくなるのです。そのため、赤血球だけローテーションするような対策だけではなかなか救命できないということがあって、そのシステムの中に乗りにくいのかなというように思います。いずれにせよ、いろいろな地域で、母体搬送システムで大きな病院と契約するとか、もしも離島であれば、リスクが高い妊婦は初めから本島のほうで分娩していただくなどの対応が必要かと思います。しかし、お産はいつ始まるか分かりませんので、離島などでよくあるのですが、出産予定日の1か月くらい前から1人で本島に行き、ホテルやウィークリーマンションなどに泊まって待機して分娩を迎えることもあります。大変、事情としては厳しいものがあります。以上です。
○三谷座長 ありがとうございます。この産科的出血というのは毎回話題になることなのですが、今の先生のお話を伺いまして、むしろ血液製剤のローテーションよりは、やはり患者さんに動いていただくというほうが解決策としてはよろしいのでしょうか。
○安達委員 そうですね。母体搬送のシステムは昔に比べて随分できてきたのですけれども、しかし、母体搬送で対応するにしても、当初のいろいろな処置が間に合っていませんと、搬送中に危険な状態になるということもあり得ます。本当に、そういう意味では、もう、今は安全神話という時代ではなくなってきていると信じてはいるのですけれども。それでも、妊娠した方が、自分がもしかして、この出産で10万人に3人は命を落とすと。妊産婦死亡の最大の原因は大出血であること。亡くなる3人の70倍ぐらいの人数がものすごく大変な状態で、やっと救命できているというようなことは認識しておられないと思います。国もそういう妊娠・出産のリスクを言いますと、少子化にますます拍車が掛かってしまいますのでなかなか難しいと思いますが、実態はそういうことです。
○三谷座長 ありがとうございます。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川です。今の安達委員がおっしゃったように、私たちの医療というものにおいて、産科の先生たちのものすごい努力によって安全を確保していただいたということだと思います。その中で安全ということだけが独り歩きして、そういうリスクを院内とか、様々な工夫の中でパーセンテージを少なく見せてきていたということを国民の方は余り知らず、安全の神話のようなものがつくられてきたということです。神話と言ってはいけないのですけれども、安全というものをつくっていただいたわけですね。
 しかしながら、このような今の状況、能登半島のことを見れば分かりますように、4の所で2市2町の能登半島の北部、例えば開業医の施設は30名にも満たないところです。そこに能登と穴水、珠洲という病院があって、それ以外の所でみんなを守っていたわけですね。そうすると、そこだけでは維持できないということが、これで分かったわけです。今回も震災が起きて、では、どのくらいでいけるのかといったら、私は日本医師会では薬事の対応ですから、薬の搬送関係で2日から対応にあたっていましたけれども、やっと4日にほぼ届くようになったとのことです。5日の時点では、普通は約2時間の搬送で行ける80kmを8時間、10時間掛かって、やっと搬送する。それで、重要な薬は全部搬送できるし、もちろん血液もそれで搬送する。卸や、血液に関わる関係者がものすごく努力されて、長い時間は掛かりますけれども、当日なり何なりは緊急の搬送はできるようになりました。そのような中で安全な医療を確保してきたというところが、今の現状だろうと思うのですね。
 だから、こういう血液製剤においても、ただ単に、このようにすればいいのだということではなくて、もちろん血液の大事さ、今も言ったように、赤血球だけで済むわけではないということ、そして、患者搬送ということも先々考えながら、医療の重篤さ、母体搬送、患者搬送も含め、そのような総合的な考え方の中で施策ということを考えていかないといけないのではないかということが、今回教えられたことの一つだろうと思っています。
○三谷座長 貴重な御意見ありがとうございました。ほかに委員の方々から、何か御意見や御質問等はおありですか。
 田中委員に、私から1点お伺いしたいのですけれども、ブラッドローテーションということなのですが、へき地、それから離島の実態を見ますと、緊急避難的な血液の融通というのはなかなか行われにくいと。一方では、BRの要望があるかというと、離島においても、必ずしも高くないですよね。ブラッドローテーションというシステムはどのぐらい浸透しているものなのですか。
○田中参考人 今、ブラッドローテーションが実用化されているのは、東京都の小笠原諸島、父島、母島だけです。離島で、やはり一番の問題点は、緊急血が必要になったときにどうするのだということでありまして、やはりブラッドローテーションで運べるのは、先ほど先生方がおっしゃったように赤血球だけです。ですので、需要が低いのではないかと考えています。これが日本では余り使われておりませんけれども、全血が運べることになれば、今は海外でも外傷などで全血が使われていることが多くなってきておりますが、全血の中には赤血球だけではなく、凝固因子も血小板も活性のがある状態で含まれているということが分かっていますので、そういうブラッドローテーションができれば、需要が変わってくると思います。また、新たな技術で乾燥凍結血漿とか、冷蔵血小板とか、そういう技術も反映されてきていると聞いておりますので、そういった新しい血液製剤が臨床に応用できるようになれば、それもかなり有効利用できるのかと考えております。
○三谷座長 ありがとうございます。全血が将来的にブラッドローテーションの対象になると、より適用が拡大されるのだと思いますが、現状の赤血球製剤のみということになりますと、現在、行われているのは小笠原のみということだったのですけれども、今後、ほかの離島に拡大されていくという見込みは余りないのでしょうか。何か、学会等では、結構これを宣伝されているようにも思ったのですけれども、いかがですか。
○田中参考人 全く需要がないわけではなくて、やはりある程度の需要は見込まれると思います。ですので、できることは、やはりやっていっていただいて、特に血液の供給がうまくいかない所では、何とかそれを役立てていただきたいという思いがありますし、やはり新たな血液製剤と全血についても、是非、御検討をお願いしたいと考えているところです。
○三谷座長 ありがとうございました。それでは、ほかに御意見等はおありですか。まだ少し時間がありますので、私からもう一点、藤原委員にお伺いしたいのですが、小規模医療機関での輸血管理体制ということですけれども、やはり小規模医療機関では、輸血の責任医師がいなかったり輸血療法委員会がないということで、廃棄血の多さが問題になっているのだと思いますけれども、これらの小規模の輸血部は、地域の合同輸血療法委員会への参加状況とかはいかがなのですか。
○藤原参考人 今回の調査では、その項目がありませんでしたので、それは次回以降というか、調べるべきかと思います。
○三谷座長 ありがとうございます。なかなか小規模施設ですと、その中でいろいろな体制を整備するのが難しいということはあろうかと思いますけれども、各都道府県の合同輸血療法委員会等に参加していただく機会がありますと、意識が大分違うのかなと思いまして、質問させていただきました。ありがとうございます。ほかによろしいですか。柴崎委員、お願いします。
○柴崎委員 ビデオで、顔が出せないのですけれども、獨協医科大学の心臓・血管外科の柴崎です。すごく今回、勉強になったのですけれども、みんな前向きに、こういう形でやっているのはいいと思いますが、これから働き方改革が4月から行われることに対して、へき地とか離島での手術が余計減ってくるのではないかなというのが考えられることです。
 もう1つは、心臓血管外科の場合は、どうしても破裂とかで、やはり予想がつかないというので、麻酔科のほうからは輸血を多く取るようにと言われてしまって取らざるを得ないということがあります。もちろん、先ほど言ったように、心臓血管外科自体が本当は集約化できれば理想なのですけれども、これは、国が動いてくれない限りは集約化できないということが、私たちの学会でも問題になっておりまして、これに関して厚生労働省と話しても、やはり自分たちはそこまでないからというので、そこを本当に集約化したいならば、国にもう少し考えていただきたいと思ったことと。
 先ほど産婦人科の件で、患者さんが動くということになれば、やはりそれに対しての補助とかを付けてあげないと、大きい病院に前もって移るということもなかなか難しいのかなと思って聞かせていただきました。特に質問というわけではないのですけれども、働き方改革で今後どうなるかというのも1つのポイントになるので、やはり三谷先生がおっしゃったように、ブラッドローテーションなどは今後必要になってくるのかなと思いました。以上です。
○三谷座長 柴崎先生、ありがとうございました。貴重な御意見であったと思います。現時点で厚労省から何かコメントとかはおありですか。今後の課題として。
○鈴木血液対策課長補佐 事務局の鈴木です。様々な御意見ありがとうございます。へき地・離島について先ほど宮川先生からの御指摘もですけれども、血液を届ける際、どのくらいの配送時間が掛かるかということも、日赤のほうも把握していただいておりますが、医療全体と輸血療法のときのへき地の考え方は、学会とも相談しながら取り組んでいこうと思っているところです。正に、産科や心臓・血管外科といったところは、他部局の地域医療の政策のところにも、特に重点項目として盛り込まれているところですので、その辺も当課としても連携して取り組んでいかなければと、改めて認識しております。また、御相談させていただくこともあるかと思いますが、本日は各学会からも代表として委員のみなさまには御出席いただいておりますので、是非御知見いただけますようお願いいたします。
○三谷座長 ありがとうございます。堺田委員が挙手されておりますので、お願いします。
○堺田委員 千葉大学の堺田です。大変勉強させていただき、ありがとうございます。私から1点だけ、クイックにお聞かせいただければと思います。昨年3月から赤血球製剤の有効期限が、21日から28日に1週間延長されているかと思います。こういった期限延長の影響というのは何かアンケート調査の中から、見えてきましたでしょうか。例えば赤血球輸血を多く保管しすぎないように制御しているとか、ブラッドローテーションに少しでも良い影響がありましたでしょうか。搬送時間などを考えた場合に、時間の余裕があればポジティブに働くのかと思いますが、よろしければ状況など、お聞かせいただければと思います。お願いします。
○三谷座長 ありがとうございます。参考人の先生方はいかがですか。
○田中参考人 ブラッドローテーションについてはおっしゃるとおりでありまして、1週間の期限が延びたことによって、ブラッドローテーションの頻度を下げられることができますので、その面では費用も下げられますし、良い影響があるのかなと思っています。
 1週間延びた影響なのですが、残念ながら、この調査では2022年4月から2023年3月までのデータを集計しております。期限が延長したのが3月半ばで、2週間ぐらいしか、データに入っていないので、その影響は、まだしっかりと把握できておりません。ただ、近隣の医療機関に聞きますと、1週間延びたことによって少し在庫数を減らしたりとか、あるいは、むしろ三次救急をやっている施設においては、少し在庫数を増やして、もっと余裕をもたしている所もあると聞いているので、施設によって状況が多少違うのですが、いずれにしても来年度の調査では、しっかりと分析して御報告したいと思っております。
○三谷座長 ありがとうございます。
○堺田委員 ありがとうございます。
○三谷座長 ほかに御意見や御質問はおありですか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、事務局におかれましては、本日の調査会の御質問、御意見を参考に、引き続き適正使用の推進に努めていただければと思います。
 続きまして、議題3、血液製剤使用適正化方策調査研究事業についてです。まず、事務局より、本事業の概要について御説明をお願いします。
○鈴木血液対策課長補佐 資料2-1を御覧ください。血液製剤使用適正化方策調査研究事業については、血液製剤の適正使用を推進する観点から、各都道府県における課題と、それに対する取組について調査研究をすることを目的としております。先ほどからお話も出ておりますが、各都道府県には合同輸血療法委員会を設置されており、その合同輸血療法委員会に参加している医療機関や採血事業者等の関係者が血液製剤の使用適正を推進する上で、様々な課題の認識や手法の検討、実施等の取組を行っていただいております。そのような先進的な取組を行っている合同輸血療法委員会が主体となって当事業を実施していただき、今回のような会議などで全国でその取組を共有することで効果的な血液製剤の適正使用の方策を推進したいと考えております。
 令和4年度は採択課題のリスト一覧にある8件を実施していただきましたが、本日は、この中で特に新潟県から、関参考人に、「山間へき地や豪雪地域における血液製剤の供給体制実態調査~廃棄血削減の取組~」として、これまでにも新潟県は本事業に何度か手挙げしていただいて調査を進めていただいておりますので、その成果を御報告いただきます。以上です。
○三谷座長 ありがとうございました。それでは関参考人から、資料2-2の御説明をお願いいたします。
○関参考人 新潟県合同輸血療法委員会の関と申します。よろしくお願いいたします。「山間へき地や豪雪地域における血液製剤の供給体制実態調査」の発表をいたします。
 目的としては、新潟県の山間へき地や豪雪地域の医療機関における供給体制の現状を解析し、廃棄を増やさないための工夫や問題点の提起を行うこと、そして、アンケート調査を行い、そのデータを分析して解決の糸口を探ることといたしました。我々が以前、佐渡で実施してきたブラッドローテーション(BR)のATRのことについても、今後、有効か否かの検討にもつなげたいと思っております。
 まず、新潟県のオリエンテーションなのですが、全国5位の広さがあります。広いだけではなくて非常に細長いということがあります。資料の如く、昔の都に近い所から、下のほうから上越エリア、中越、それから、山形付近は下越となっておりますが、今回は、この豪雪地域として上越エリア、中越の山間部である魚沼エリア、下越の村上・阿賀町エリアをピックアップしました。
 新潟県の血液製剤の供給拠点は2か所で、新潟市と長岡市の2点となっております。配送時間は、上越エリアが一番遠いために1~3時間ぐらい、魚沼が30分~2.5時間、村上が1.5~2.5時間と様々な時間差があります。
 ちょっとピンとこない委員の方もいらっしゃるかもしれませんが、パワーポイントだとアニメーションになって面白いのですけれど、この新潟県の細長さというのは、関東でいうと、ちょうど茨城・栃木から山梨ぐらいがすっぽりと入ってしまうぐらい長い県です。関西バージョンでは、ちょうど京都から広島までがすっぽり収まってしまうぐらい長い県です。
 このような特徴を持つ我が県において、輸血を行う主要医療機関75施設にアンケート調査を行いました。御覧のとおりの内訳となっていますが、調査期間は2022年12月、調査方法はFormsを用いたWebでのアンケートとなっております。調査項目としては、2021年度の赤血球製剤の血液型別使用量、廃棄量、院内在庫血数ほかを調査いたしました。
 75施設に出したアンケートの回収率は、74施設で98.7%と非常に良かったです。回答状況の一覧には、エリア、病床数、搬送時間、使用量、院内在庫、廃棄量とありますが、満遍なく施設が入っているということで、院内在庫を置いてある病院は、大体約3割、置いていない所が大体7割ということでした。
 8ページ、結果です。これは血液型別の使用量を表しておりますが、この使用量は県全体では、やはりA型が一番多く、次にO型が続いているという結果でした。院内の在庫血数はO型が一番多く、次にA型と続いているという結果でした。
 9ページです。このときに廃棄量と廃棄率を血液型別に調べてあります。廃棄量が一番多かったのはO型の35.1%、次がAB型の30.3%と続いております。廃棄率のほうは、やはり分母が小さくなりますので、AB型が3.48%と一番多く、次にO型が1.87%という状況でした。
 どういう条件が廃棄につながるのかという要因を調べてみたのですが、廃棄量が10単位未満の施設と10単位以上の施設に分けて、廃棄量が多いか少ないかを考えてみました。まず、施設の規模としては、100床~300床の施設において廃棄量が多いので、この施設が廃棄量の多い要因になっているのではないかということになりますし、その右上のグラフは、血液製剤使用量が1,000~5,000単位の所がやはり多い。それから、在庫に関しては、院内在庫を保有しているほうが多いということが分かってまいりました。
 この廃棄の多い施設における廃棄要因ですが、これはアンケートで分かったのですが、当然、重複の理由があるのですが、院内在庫血の有効期限切れが、全例で100%、ほかの患者さんに転用できなかったとか、患者さんが急変したなどの理由が続いていました。
 では、搬送時間やエリアなどと、廃棄量がどのような関係で、何か関係があるのだろうかということを見ておりますが、廃棄量の多い少ないで分けて考えても、この2つの表にお示しするように、余りはっきりとした傾向はなく、同じような感じで有意な差は認められなかったという結果でした。
 13ページです。山間へき地・豪雪地帯にフォーカスして解析していくと、いわゆる血液センターから一番遠かった上越エリア、村上・阿賀町エリアなのですが、使用量をみると、どの地域もA型が一番多く使用され、次にO型となっておりました。院内在庫をみると、どの地域もO型が一番多いという結果でした。血液型別の廃棄量を見ると、血液センターから一番遠い上越エリアはO型が一番多かったという結果に対して、そのほかの魚沼エリアや村上・阿賀町エリアではAB型が一番多く、O型もそこそこ多いのですけれど一番多かったのがAB型の廃棄量であったということが分かりました。
 あと、ブラッドローテーションのATRに発展できるかという問題ですが、上越エリア、魚沼エリアともに各2施設、合計4施設から活用したいという希望がありました。これは離島ではなく、山間へき地の希望です。まだATRを知らないという施設も少し散見されております。
 結果をまとめます。院内在庫はO型が最も多く、廃棄率に関しては使用量が少ないために、AB型が最も多かったという結果です。その要因としては、100~300床の中小規模の施設が多かったということ、年間使用量が1,000~5,000単位の施設が多かった。それから、院内在庫血を保有している施設が多かったということが分かりました。直接の原因は院内在庫の有効期限切れが一番多くて100%でした。エリアや搬送時間、廃棄量との間には、特に有意差は認められませんでした。
 山間へき地・豪雪地域にフォーカスすると、やはり使用量はA型が多く、在庫血はO型が多かったということになります。血液型別廃棄量については、ここがやはり面白かったのですけれど、センターから一番遠い上越エリアでO型の廃棄が多いということ、そのほかのエリアではAB型の院内在庫の有効期限切れによる廃棄が多かったという結果です。
 そして、離島は入っておりませんが、ATRを活用したいと回答した施設が4施設あり、これはアンケートで分かったのですけれど、いずれも、これまでに冬期間等に血液搬送の遅延によって困ったことがあると回答した施設でした。
 まとめます。廃棄率減少のための各施設における適正在庫血数の評価を行い、今後も検討が必要かと思います。先ほどから議論に上がっていますが、赤血球製剤の有効期間が変更になりましたので、今後どうなっていくのか、どういう対策がされて減っているのか、また、問題点が出ているのか等は、来年度以降の継続研究が必要なのではないかなというように思っております。
 あと、ブラットローテーションのATRの活用ですが、山間へき地では、やりたいという希望がございます。ただ、各々の地理的条件がそれぞれ違いますので、各々に適した運用方法、お金の問題といったものが、やはり結構大きな問題になってくると思って、今後も継続的な検討が必要かなというように思っております。以上になります。ありがとうございました。
○三谷座長 関参考人、ありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問や御意見等を頂戴したいと思います。いかがでしょうか、宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川です。いろいろありがとうございました。この98.7%と、非常に高い回答率は先生方の御協力のお陰だというように考えております。そうなりますと、そういう意味では、ほとんどの医療機関がしっかりと中に入っているというところを見て、いわゆる病床の特殊性、どういう科別というわけではなくて、供給をどれくらい受け取っているのか、そういう特定機能病院というだけではなくて、そういう枠組みとして何か特徴があったのか、廃棄の多い所というのは、そういうような病院としての特殊性というか機能として、何か違いがあった点があったのかどうかということをちょっと教えていただきたいと思います。
○関参考人 ありがとうございます。満遍なく施設には入っているのですけれど、やはり、過去のデータ解析で、血液内科が最大の有効期限のはけ口になるかどうかですが、血液内科のない所の中小規模の病院は廃棄量が高いというデータを我々は持ち合わせております。あと、救命救急センターがあるかないかについては、ちょっとやってみたいのですが、今のところ、そこまで細かいデータの解析はしておりません。以上になります。
○宮川委員 ありがとうございました。
○三谷座長 ありがとうございました。ほかの委員の先生方、上條先生、お願いいたします。
○上條委員 恐れ入ります、上條です。申し訳ございません。今、こちらの設定でビデオが出ません。関先生の発表は、とても興味深く拝聴いたしました。
AB型の赤血球製剤の廃棄について、エリアによってかなり大きく違っているように感じました。個人的には、安易なAB型の異型適合輸血はかえって危険だとは思ってはいるのですが、これらの施設でAB型の患者さんへの異型適合輸血が行われているのかどうか、その点だけを教えていただければと思います。以上です。
○関参考人 御質問ありがとうございます。異型適合輸血は、O型がAB型に対して使用されていることはつかんでおります。血液センターのデータなどでそういうことは分かっております。AB型の患者さんに対して、例えば、A型を使ったり、B型を使ったりという異型適合輸血がされているかということはちょっと不明でございます。恐らく、院内在庫数や廃棄状況から、現状ではやられていないのではないかなというように考えております。
○上條委員 先生、ありがとうございます。このようなところで、A型やB型を使うという発想は、今後、変わる可能性はあるでしょうか、それとも、かえって中途半端な異型適合は危ないからやめるほうがいい、実際に、現場としてはどちらのほうがよろしいのかなというところで気になりました。ありがとうございました。
○三谷座長 関参考人、いかがですか、異型適合輸血に関して、今後どのような動向になるかという御質問だったと思います。
○関参考人 動向はちょっと分からないのですけれども、赤血球輸血に関しては、やはり救命救急センターのある基幹病院的な所はどこでも、O型はそこそこ有していると思いますし、同型であれば全然AB型でいいと思うのですけれども。ちょっと動向としては、すみません、分からないです。
○三谷座長 ありがとうございました。私自身も、先ほど宮川委員がおっしゃったように、アンケートに対する回答率が非常に高くて、新潟県の合同輸血療法委員会はすごくよく機能していらっしゃるのだなというように思いました。やはり廃棄血を減らすということが一番の問題だと思うのですけれども、今回、先生が最後にまとめてくださったことに尽きるのかもしれませんが、この合同輸血療法委員会では、どのような意見が出ているのでしょうか。
○関参考人 今回、面白いデータがいろいろと出ましたので、今後は個別に、これを医療機関に還元して、こういうことがあるのだけれど、備蓄量を見直してみてはいかがですかなど、改めて、センターからの搬送時間といったこともお知らせしたいというように思っております。あと、やはりATRやブラッドローテーションについても、非常に要望されている所が多くて、これも何とかしたいのですけれど、今すぐ実用化するというのはちょっと難しいというように思っております。以上です。
○三谷座長 ありがとうございました。やはり、山間部のへき地等でもATRのニーズはあるのだなということ、皆さんの意識にしっかりすり込まれているということがよく分かりました。ありがとうございました。引き続き御検討ください。
 ほかの委員の先生方、何か御質問や御意見等はおありですか、柴崎委員、お願いします。
○柴崎委員 すみません。また、ビデオが付かないのですけれども。三谷先生などにお聞きしたいのですけれど、このAB型に対してO型の赤血球製剤を使った場合のリスクというか、どのくらいあるのかというのが知りたくて、もし、それが少ないのだったらば、やはり麻酔学会などにいろいろ周知することによって、もしかしたら、先ほど上條先生がおっしゃったとおり、AB型に対してO型を使ってもいいのではないかというのが、もし問題なければ、そういうことで周知していくと、廃棄がちょっと減るのではないかなと考えました。
○三谷座長 ありがとうございます。当院でも、超緊急輸血の場合には、おしなべてO型の赤血球製剤を使うのですけれども、それに伴うリスクというのはほとんどないというように考えています。大体、超緊急輸血の場合は、15分以内に正しい血液型が出てきますので、現場の先生は正しい血液型を見ますと、そちらにしなければということになるのですけれども、大事な血液製剤ですので、オーダーしたものは使っていただくというように当院では運用しております。基本的には安全だというように考えています。
 先生方、ほかに何か御意見はありますか。西脇先生、お願いします。
○西脇委員 西脇です。私は麻酔科ですが、今、麻酔科のお話も出ましたが、麻酔科学会では、その輸血に関して、適合の異型輸血は必要なときにやりなさいということで、日本輸血・細胞治療学会でも出ております。それで、ちょっと私もお聞きしたいのですけれども、そのO型が廃棄というのは、どうしても緊急用として取っておいて、使わなかったので、やむを得ずということはあるとは思うのですが、このAB型が期限切れというのは、要するに、使う予定がなくて、あらかじめ取っておいたものを廃棄ということだと思うのですけれども、具体的には、どういう状況、どういうことをどう想定して取っておくのかというところについて、ちょっとお聞きしたいのですけれども。
○関参考人 ありがとうございます。恐らくは、ほとんどが中規模病院が多かったと思っているのですけれど、やはりAB型も備蓄はしておきたいと、ある一定の確率でAB型の患者さんがいらっしゃる病院だというように思っておりますけれども、しかしながら、やはり今まで21日有効期限時代のデータですけれども、21日までには使うことができなかったと、しかも中小病院ですから、血液内科は大きな病院しかないのが普通かと思いますので、血液内科でAB型を使ってもらえないなど、血液内科が使用のバッファーになってくれないような環境で、廃棄になった症例が、これは地域ミーティングで分かったことなのですけれど、そういう御意見をたくさん頂いております。
○西脇委員 そうしますと、手術の対象にAB型の方がいると、やはり念のために取っておくということも多いのでしょうか。
○関参考人 あると思います。
○西脇委員 やはり、そういうときにO型を入れるということをあらかじめ想定して、それでいいんだというところでいくのかというのは、意識の問題かなと思います。ありがとうございます。
○三谷座長 ありがとうございます。AB型の廃棄血に関しては、中規模病院だけではなく大規模病院でも結構問題になっています。やはりニーズがありますので、在庫を置かないわけにはいかないのですけれども、何分まれな血液型ですので、出ていくことが少なく、血液内科等で転用できればいいのですが、それでも廃棄になってしまうことがAB型は多いのが実態かなと思います。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川です。いろいろありがとうございます。ちょっと聞き漏らしたかもしれないのですけれども、この豪雪も含めてですが、季節変動というか、1月~12月まで、何か季節変動として廃棄が多かったとかといったような影響というのはなかったのでしょうか、教えていただきたいと思います。
○関参考人 ありがとうございます。やはり山間へき地の病院は、得てして、冬季間にO型の備蓄量を増やす傾向にございます。それが使われたり、使われなかったりすることで、今までは廃棄量が変わってきたのですけれど、ある年度を見ますと、やはり冬季における廃棄量は増加傾向が認められるかもしれない地域もあったのですけれど、一定の傾向がまだ得られておりませんので、果たして、冬季に、どの地域も廃棄量が増えるかどうかは、ちょっと今後、我々もデータを解析していかなければいけないかなと思っていますので、もう少しお時間を頂戴する必要があろうかと思います。
○宮川委員 そういう意味では、豪雪というだけではなくて、道路も含めてのアクセス度というか、需要によって随分違ってくるのかなというように思いますので、また、いろいろ解析ができましたら教えていただきたいと思います。ありがとうございます。
○関参考人 御存じのとおり、豪雪のときは高速道路とかもストップしますし、あらゆる交通機関が麻痺しておりますので、そういうことを想定して各医療機関の備蓄量を増やしたりといったことを考えているのだと思います。ありがとうございます。
○三谷座長 ありがとうございます。それでは、堺田委員、御質問をお願いします。
○堺田委員 大変貴重なアンケート調査をありがとうございます。ちょっと聞き漏らしてしまったかもしれないのですけれども、この3つのエリアの中で、ブラッドローテーションに対する要望というのが案外少ないように思いました。2施設のみであったのではないかと思うのですけれども。これに関しては、ローテーションをするに当たっての輸血製剤の保管状況に不安が残っているとか、何か施設側の事情というのは見えてきましたでしょうか。
○関参考人 残念ながら、ちょっと保管状況までは解析はできていないのですが、その各エリアごとに2施設ずつ必要だというデータであり、そのエリアが県内の、今回サンプリングした豪雪地帯のうちの3分の2のエリアから手挙げがあったということになります。
 我々は、前から佐渡島でブラッドローテーションのシミュレーションみたいなものを研究レベルではやったことがあるのですけれど、今回、初めて、この本土のほうの山間へき地や豪雪地帯ということでやりました。やはり、そういう施設が全部、過去に痛い目に合っているということ、例えば、高速道路が寸断され、血液が来なくて困ったとかといった経験のある医療機関が全てであったということになります。
○堺田委員 大変参考になりました。この非常に貴重な輸血製剤をより有効に活用するためには、ローテートに際しても品質を担保していくという視点も重要だと思います。製剤保存の温度管理などの保管の条件など、ローテーションに際して様々な取り決めも確認しながら進められるとよいのかと思いました。ありがとうございました。
○三谷座長 堺田委員、御質問をありがとうございました。ほかに、御意見等はおありでしょうか、よろしいでしょうか。安達先生、お願いします。
○安達委員 今の質問ではなくて、全体的なことなので、後で結構です。
○三谷座長 それでは後でお願いいたします。それでは、ただいまの新潟県の合同輸血療法委員会からの御報告は以上といたします。事務局においては、本日の調査会の御質問や御意見を参考に、引き続き適正使用の推進に努めてください。
 最後に議題4、その他です。事務局から何かありますか。
○鈴木血液対策課長補佐 事務局より、一つ報告させていただきます。厚生労働科学研究「科学的エビデンス等に基づき医療環境に応じた適切な輸血療法実施についての研究」ということで、令和5年度より令和7年度までの3年間の計画です。研究代表者は、奈良県立医科大学の松本雅則教授にお願いして、実施していただいております。適正使用調査会にも深く関係する研究ですので、概要のみですが、本日、御紹介させていただきます。
 血液製剤の適正使用の推進及び輸血療法の適正化については、御存じのように、歴史的には昭和61年に「血液製剤の使用適正化の推進について」をお示しし、さらに、平成元年に「輸血療法の適正化に関するガイドラインの制定について」を示して、適宜それらの改正を行い、こちらの概要にもお示ししていますように、現在は、局長通知により「血液製剤の使用指針」いわゆる(使用指針)と、「輸血療法の実施に関する指針」いわゆる(実施指針)を示しているところです。
 適正使用が進んできている一方で、歴史的な経緯により、使用指針と実施指針がこれまで別々に改定されてきている状況ですので、内容について急速に進歩している科学的知見等と、これらの指針の内容が乖離しているという御指摘も頂くようになってきております。日本医学会の分科会であり、本日も御出席いただいていますが、日本輸血・細胞治療学会では、これらの指針を補足する様々な資料に示しているマニュアル、ガイドライン、保管・管理のマニュアル等も当課から示していますが、こういった指針、ガイドラインを作成していただいており、これらのあり方、役割分担については、厚生労働省としても検討を行う必要があると考えています。
 また、令和元年度第1回適正使用調査会・安全技術調査会合同会議においても、血液法の理念を踏まえた上で、使用指針及び実施指針の在り方を含めて検討を進めることとしていたところです。最新の知見を踏まえて、医療機関等が参照しやすい形になるよう、本研究において関係学会とも連携していただき、両指針と学会がこれまでお示しされている各種ガイドライン等の位置付けを御検討いただき、各種ガイドライン等の必要な見直しを行っていただいた上で、へき地等についても調査した上でガイドライン等も御検討いただいていると伺っていますので、そういったことを踏まえて両指針の内容を統一して、新たな指針に代わるガイドラインとして、「輸血療法実践ガイド」といった仮称を付けていますけれども、大変大きなお仕事で、松本先生には御負担をお掛けしているのですが、この作成に意欲的に取り組んでいただいています。輸血療法実践ガイドの詳細については、今後の研究班の進捗等を踏まえて、来年度以降に本調査会において先生方にも御報告させていただき、御相談させていただければと思っています。事務局からは以上です。
○三谷座長 ありがとうございました。本日の議題は以上です。ほかに何か御意見等がおありでしたら頂戴したいのですが、安達委員、お願いいたします。
○安達委員 私が今述べることが見当違いだったら申し訳ないと思っておりますが、輸血の廃棄をしているものが結構あります。現在、献血による血液の供給が非常に少ない中で、何かできるかどうかということを、考えていただきたいのです。それは、自己血輸血のために採っておいた血液の利用についてです。特に産科の場合は、自己血輸血を考えて、本人に大出血のリスクがあったときに自己血を全血で保存しております。
 妊婦さんですので、いわゆる基本的には健康な方なのです。何か病気があって、でも自分の血液を使わなければいけないという方ではなく、もちろん不規則抗体か何か特別なものがあって自己血を採る方もいらっしゃるかもしれませんが、それは極めて少ない割合で、多くは、例えば前置胎盤があるから自己血貯血しましょうなどになります。かつては400mLぐらいの血液を5パック採りましょうなどといった時代があったのですが、実際に私の施設では、前置胎盤での輸血率は50%ぐらいなのです。ほかの状況での自己血貯血においてはもっと輸血率は低いかもしれません。そうすると、実はかなり自己血が廃棄されています。
 自己血の返血には条件があります。例えば、大出血をしていて自己血を投与していても止血措置が間に合わない、うちの施設では無理だから高次施設に搬送しましょうというときに、今、ラインにつながっている自己血はそのまま返血を行っていいのですが、施設の中にその方の自己血がまだ残っていても、それを持ち出して先方で輸血してくださいということができないようになっているのです。また、自己血は一応5週間保存できるということですけれども。1週間に1回ずつぐらいの割合で自己血を採取して保存しておりますが、使用しなかった場合は、本人が退院した日付でもって廃棄とする形に、私の病院では決めているのです。ですので、かなりの廃棄量が出ているのです。
 どのぐらいの疾患で、どのぐらいの出血の可能性があり、実際にどのぐらいの輸血が必要かということを評価し、逆に自己血の採る量をなるべく少なくしたりもするのですが、少なめの自己血を用意しておいて、大出血で同種血輸血をしなければいけない事態もあります。全部が全部ではないのですが、実は多くの自己血を廃棄しているという現状があるのです。これを何らかに利用はできないものなのでしょうか。本人に利用することも、外に出て搬送されたときに使えないぐらいですし、血液製剤についていろいろな分画を作ったりすることに関しても大きな縛りがあると思います。今採った血液をできるだけ早く分離したりするということで、例えば、1週間前に採ったものは無理という形なのか、あるいは、全血で採ったものなら可能なのかなど。
 もちろん、本人の同意やいろいろなものはあり、これを別としても、実際に安全管理上、保存の仕方などの問題も施設によってはあるとは思います。しかし、今の供給が足りない時代に、そういうことを考えていってもよいのではないでしょうか?この調査会で、いわゆる適正使用、貴重な血液を適正使用して何らかの医療とか健康管理に使うことができるのであれば、理論的に可能であれば、学会やいろいろな所に依頼するとか、そういうことも考えてもいいのかなと思ったのです。採って何日かおいたものというのは、そこから赤血球製剤を作ったりすることは、非常に難しいものなのですか。私はその知識として不足しているので、もし使えるのであればと思うのですが。
 同種血の廃棄も、産科としてはもちろん多いのですが、初めからリスクのある方はほとんど皆、周産期センターでは、自己血を採っていると思うのです。かなり廃棄していると思います。比較的若く健康な女性たちの血液です。妊婦さんですので多少、貧血気味かもしれませんが、非常に貴重なものだと思っています。いかがなものなのでしょうか。
○三谷座長 安達委員、貴重な御意見をありがとうございました。日赤のほうから、何かコメントはおありですか。座長がコメントする立場にはないような気がするのですが。
○日本赤十字社血液事業本部日野技術部安全管理課長 安全管理課の日野と申します。貴重な御意見をありがとうございます。まず、日本赤十字社で製造している輸血用血液製剤は「製剤」という言葉が付きます。先ほど品質について議論がありましたが、輸血用血液製剤も分離されているだけの製剤にも見えるかもしれませんが、その過程には薬機法に準じて品質厳守しています。例えば、生物学的製剤基準に掲載されてますが、赤血球製剤は、採血をしてから24時間以内に分離をしたものでなければならないという基準があったり、感染症検査もいろいろ実施しています。輸血用血液製剤と同じ検査を実施すればよいということでもありませんが、有効利用という観点でほかに利用法がないかの議論はされる必要はあるのかもしれません。しかし現状で、他の患者さんへの輸血として使ってもらいましょうという場合には、輸血された患者さん御自身に、仮に自己血として採血したもので何か有害事象が起きたときにはどういった責任が担保されるのか、どういった法的カバーがあるのかということも含めて整理が必要になるかと思います。
 現状の中で実行するには、ちょっと難しいのではと感じました。
○安達委員 ありがとうございます。すぐにということではないのです。例えば、24時間以内に分離するというのは、万が一何らかの微生物が入ったとき、それを1週間後に分離して有害なものが含まれてしまうのか?少なくとも、その血漿に関しては女性ホルモンがたくさん入った血液であろうということは事実です。赤血球に関しては、通常の方よりも少し貧血気味の血液ではありますが、分離すればどうにかなるのか?ということもあります。
 日赤のいろいろな検査と同じことをやってもクリアしないというのは、そのとおりかもしれません。しかし、採血して2週間たっても3週間たっても、一応、保存血として置いておいた自己血は返血できるわけですから、将来的にそういうものに関して何らかの血液製剤として使えるかどうかということを考えていただいたり、そういうきっかけになっていただけるとよいのかと思います。 
 いろいろな問題があって難しいことは分かっています。昔は母乳でさえも、もらい乳と言って、たくさん出る人から未熟児で赤ちゃんだけ入院していてお母さんがそばにいない人にあげたりしていた時代もありました。しかし、今は他人からそういうものをもらうということ自体が問題で行わないことになりました。経口で入ることでさえ大変なのですから、血管の中に入っていくわけですので、ものすごく大変なことだということも分かっております。ただ、目の前で廃棄されていく血液を見ていますと、そういうことを考えてもいい時代に来たのかなと思いました。すぐの回答は無理だとは思いますが、そういうことを考えた研究というのも進めていただければと思います。ありがとうございました。
○三谷座長 安達委員、貴重な御提案をありがとうございました。確かに、一朝一夕に解決できる問題ではないと思いますが、貴重な御提案ですので検討を重ねてまいりたいと思います。ほかに何かありますか。西脇委員、お願いいたします。
○西脇委員 西脇です。今の話なのですが、例えば、妊婦さんが日赤に行って、そこで献血をして、その血液を自分用という形で病院に持ってきていただければ、少なくともその血液をもってほかの病院でも入れることはできるとか、その病院の中で転用するとか、もちろん、通常の採血患者としては妊婦さんがなり得ないかもしれないのですけれども、輸血を有効利用するという意味でいえば、そこで採っていただいて、分けておいても、返すときに一緒に返せばいいわけなので、何かそういう形を取るようなことも、一つの方法として考えていただけたらどうかなと思うのです。いかがでしょうか。
○三谷座長 非常に貴重な御意見だと思います。私も、その案はちらっと考えましたが、日赤のほうから何かコメントはおありですか。
○日本赤十字社血液事業本部日野技術部安全管理課長 日野です。度々すみません。そもそも献血という制度は、誰のための血液ということではなくボランタリーのある健康な方からいただいています。妊娠されている方の採血はもちろん御法度なのですが、それをご自身のために採血し結果的にその方が使わなかったとき、その病院にも血液を必要としている方がいなければどうなるのか。問題は尽きませんが、ボランティアによる献血という制度からは、これも外れてしまうと感じます。おっしゃっている意見は、以前からも時々出てくる話題です。自分の子供が今どこどこ病院にいるので、献血するからそれを使わせてくださいなどという話が過去になかったわけではないですけれども、そういうことは全てお断りしているのも実態としてありますので、御理解いただければと思います。もちろん、それを崩しましょうということがあればとは思いますが。
○三谷座長 宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 宮川です。今、いい議論ができていると私も思っています。今、日野さんがおっしゃったように、ボランタリーの方、実際に今は、ラブラッドの方にかなり頼っているというか、そういうところがありますよね。私も献血推進調査会にも出ていますから実態はよく分かります。特に、そういう意味では若い方からの輸血が少なくなっていて、ある程度年齢の高い方がラブラッドの方にかなり御協力いただいているのでできている。だから、今後のことが全く方向性としてはどうなのかというところなのです。
 ですから、日赤の方にお願いしたいのは、先ほど西脇委員もおっしゃったように、研究する、それから、そういうことに対応するということは、すごく大事なことなので、是非とも具体的に考えていただきたい。こういう委員会とかをやると、常に「検討します」とご返答があり、その後で何の回答も出てこないことが多いかと思います。法的な問題なのか技術的な問題なのか、そういうものをしっかりと分けて考えていただきたいと思います。技術的な問題であれば、ひとつずつクリアしていけばできるもので、法的な問題であれば、広く多くの方に検討していただいて、それができるようにするということは、日赤以外の方にできるわけです。そういうことをしっかりと考えていただきたい。その後の所の当て付けはしっかりとしていただくということが非常に大事だと思いますので、是非とも継続的な課題としてやっていただければと思います。今、安達委員、西脇委員がおっしゃったところは、しっかりと明記していただいて御検討していただければと思います。以上です。
○三谷座長 ありがとうございます。是非、継続的な課題にしていただければと思います。柴崎委員、何か御意見はおありですか。
○柴崎委員 心臓血管外科の立場で言うと、全血というか血小板があるだけで、やはり解離とかの手術のときは血が止まりやすいのです。今の安達先生の話を聞いて、本当にびっくりしたのですが、ただ、どのぐらい廃棄しているかというのを、まず全国でアンケートを取るべきだと思うのと、実際に妊婦さんが、自分たちが使わないときに、廃棄するよりも、そういうことに活用してほしいという同意が得られるのか。半年間でもいいので、アンケートで、どのぐらいかというのをちゃんと数値に出したほうが、次の研究なども進むかなと思いますので、学会として、もし可能だったら、そういうアンケートをしていただけると、私たちもすごく勉強になるかなと思うので、お願いできますでしょうか。
○三谷座長 ありがとうございます。具体的な御提案を頂いたと思います。輸血学会の責任者の先生は、ここにはいらっしゃらないのですが、輸血学会ではなく産婦人科の学会の問題ですよね。
○安達委員 自己血輸血の学会というのがあるので、そこで、実際にはどのような疾患にどのぐらい要して、どのぐらい廃棄したというのはすぐ出てくると思うのです。自己血輸血というのは、余り健康でない方でもいろいろな意味で採ることもありますので、産婦人科の学会がいいのかもしれませんし、産婦人科新生児血液学会という私も役員をやっている学会があるのですが、そういう所で調査をやってみてもいいかもしれないですね。
 基本的には妊婦さんというのは健康な方で、自分が輸血しないでもよい状況であれば、その血液を返血してくださいなどという方はいらっしゃらないわけです。出血がある程度あっても、その後すぐリカバーしますので、多少貧血になっても使わないということでもOKということなのです。ですので、本当に廃棄しているものは多いという印象です。
 昔は、自己血の期限が切れるまで保存していたこともあったのですが、実際に使わないので、退院の日をもって廃棄しているのですが、目の前で、献血者もだんだん少なくなっている中で、大変もったいないなというのは感じているところです。もちろん本人の意向も聞いてみなければいけないことです。ただ、物理的に絶対に無理ということがあるのであれば、いくらやっても仕方がないことなのですが、安全性が担保されるような研究が進めば、あとはシステムの問題です。24時間以内の分離というのは、それぞれのお産施設ではなかなかできないことなので、西脇委員がおっしゃったように日赤のようなセンターに行くことが解決になるかというと、妊婦さんは、負担も大きく面倒ですのでそこまではしないと考えられ、現実的な問題としてはどうかなとは思います。もし、廃棄しない保存血、全血があれば、それが分離できるかというところが一番実践的なのかなと思っています。
○三谷座長 ありがとうございます。安達委員の御提案が現実化するには、少しいろいろなステップが必要かなと思いますが、また引き続き検討というと宮川委員に怒られそうですけれども、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。お願いいたします。
○鈴木血液対策課長補佐 三谷座長、委員の先生方、本当に活発な御議論をありがとうございました。次回の調査会の日程については、別途、御連絡差し上げます。これにて血液事業部会令和5年度第1回適正使用調査会を終了します。ありがとうございました。
○三谷座長 ありがとうございました。
(了)