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第1回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ 議事録
日時
令和5年12月26日(火)16:00~18:00
場所
AP虎ノ門
(オンラインとのハイブリッド開催)
(オンラインとのハイブリッド開催)
議題
- 1.座長選出
- 2.ゲノム医療推進法の成立について
- 3.ゲノム医療の推進に係るこれまでの取組状況
- 4.意見交換
- 5.その他
資料
議事
- 議事内容
- ○中田研究開発政策課長
事務局です。それでは、定刻となりましたので、ただ今より、第1回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループを開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省医政局研究開発政策課長の中田と申します。座長が選任されるまでの間、議事進行を務めさせていただきます。
本日は五十嵐構成員、遠山構成員が遅れての御出席ということですが、全ての構成員に本日御出席いただく予定となっております。また、本日の議事に際しまして、参考人及びオブザーバーの方にも御出席を頂いております。
続いて、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載しておりますが、議事次第、資料1~3、参考資料1~3までありますので御確認ください。また、本ワーキンググループは公開としており、議事録につきましては、各構成員への確認の上、後日公開したいと考えております。
ワーキンググループの開催に先立ちまして、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官より、一言御挨拶をさせていただきます。
○内山医薬産業振興・医療情報審議官
皆様、こんにちは。厚生労働省医薬産業振興・医療情報審議官の内山です。ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループの開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。近年、ゲノム情報を活用した研究等がグローバルに進展しており、我が国においても、ゲノム情報を活用した研究の実施や医療の提供の促進が期待されております。一方で、ゲノム情報が様々な場面で活用される際に、ゲノム情報や個人の権利の保護等が一層重要な課題となってきております。本年6月に議員立法として成立いたしました、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律、通称「ゲノム医療推進法」と呼んでおりますが、このゲノム医療推進法では、政府がゲノム医療の研究開発や提供、生命倫理への適切な配慮、不当な差別への対応等を推進するための基本計画を策定することとされております。
ゲノム医療の推進に当たりましては、医療者や研究者だけではなく、ゲノム医療を受ける立場にある患者の方など、関係者から幅広い御意見を頂きつつ取組を進めることが重要です。そのため、本ワーキンググループにおきましては、こうした関係者の皆様に広く参加をしていただいておりまして、これから基本計画を策定していくに当たって、ゲノム医療を推進するための様々な課題について、忌憚ない御議論を頂ければと考えております。
今後、厚生労働省といたしましては、本ワーキンググループでの議論を踏まえて基本計画を取りまとめ、国民が安心してゲノム医療を受けられるよう、関係省庁と連携をして取組を進めてまいりたいと考えておりますので、皆様の御協力を賜りますようよろしくお願いを申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。以後、よろしくお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
簡単に会議の進め方について説明いたします。オンラインの出席者におかれましては、画面上の「手を挙げる」ボタンを使っていただければと存じます。こちらの会場のほうから御指名をさせていただきますので、名前をおっしゃってから御発言いただきますようよろしくお願いいたします。また、御発言をされない間は、マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また、音声等が不安定になるような場合もありますので、場合によっては一旦ビデオをオフにするなどの対応を試みていただくようお願いいたします。傍聴に際しましては、携帯電話等の音の出る機器につきましては電源を切るか、マナーモードに設定をお願いいたします。
本日の出席者の御紹介につきましては、時間の都合もあり、後ほどの意見交換の際にお一人ずつ御発言を頂く予定としておりますので、その際に自己紹介も併せてお願いしたいと存じます。
それでは、議題1の座長選出に移ります。開催要項第3項に基づき、座長を選出いたします。構成員からどなたか御推薦ありますでしょうか。天野構成員、よろしくお願いいたします。
○天野構成員
座長には、厚生労働省のゲノム関連の各種委員会等で座長を歴任され、また、全ゲノム解析等事業実施準備室の室長も務められている国立がん研究センターの中釜理事長が適任かと考えます。
○中田研究開発政策課長
ありがとうございました。ただいま、天野構成員より、中釜構成員を座長への推薦がありましたが、御賛同いただけますでしょうか。
(一同賛同)
○中田研究開発政策課長
ありがとうございます。それでは、座長には中釜構成員にお願いしたいと思います。座長より、一言御挨拶をお願いいたします。
○中釜座長
ただ今、本ワーキンググループの座長を御指名いただきました中釜です。私から改めて申し上げるまでもございませんが、近年のゲノム解析技術の革新的な進歩により、その臨床応用として、例えば、がん、難病を中心としたゲノム診断やゲノム情報に基づく治療の層別化、あるいはその治療薬の選択などの医療実装が着実に進んでいる状況です。さらに、加えて現在は遺伝子パネル検査として提供されているがんゲノム医療に関しても、全ゲノム解析の時代へと突入しようとしています。ゲノム解析が全ゲノム解析へと展開することにより、解析対象となる疾患も、今後、将来的には大きく拡大することが想定されています。
このような状況において、個人識別性のあるゲノム情報の取扱いに関しては、生命倫理の観点からだけではなく、多様な視点からの適切な配慮に基づいた社会全体としての取り組みが求められているところであります。良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策、その計画的な推進において、基本計画を策定するに当たり必要な事項について検討するため、本ワーキンググループは設定されたと理解しています。本ワーキンググループは、ゲノム医療施策における基本的な方針、ゲノム医療施策に関して政府が総合的かつ計画的に実施し、計画を推進するための必要な事項について検討していくという極めて重要な役割を担っていると考えていますので、構成員の皆様からの活発な議論、率直な御意見を頂き、このワーキンググループとしてまとめていければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。私からは以上です。
○中田研究開発政策課長
ありがとうございました。頭取りはここまでとさせていただきます。以降の運営を座長にお願いいたします。
○中釜座長
それでは、開催要項第4項の5に基づき、座長に事故があった場合の対応として、座長代理をあらかじめ指名したいと思います。私から、座長代理には水澤構成員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○水澤構成員
水澤です。了解いたしました。
○中釜座長
それでは早速、本日の議題に入りたいと思います。議題2は、ゲノム医療推進法の成立について、資料1です。こちらについて事務局より説明をお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
事務局です。資料1です。良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律、いわゆる「ゲノム医療推進法」について御説明いたします。本法律につきましては、議員立法として令和5年6月16日に公布、施行されたものです。制定の趣旨にありますとおり、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策を総合的かつ計画的に推進するため、ゲノム医療施策に関する基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定その他ゲノム医療施策の基本となる事項を定めるものであります。
内容につきましては、1.基本理念にありますとおり、1つ目の○で、ゲノム医療を実現し、その恵沢を広く国民が享受できるようにする、また2つ目の○にありますとおり、研究開発及び提供の各段階において生命倫理への適切な配慮がなされるようにすること、また、3つ目の○にありますとおり、ゲノム医療の研究開発及び提供において得られた当該ゲノム情報の保護が十分に図られるようにする、及び当該ゲノム情報による不当な差別が行われないようにする。こういった基本理念が定められております。2.責務ですが、国は、基本理念にのっとり、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に策定し、実施する責務を有するものとされております。3.財政上の措置ですが、政府は、ゲノム医療施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を構ずるとされています。4.基本計画の策定として、政府は、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に推進するため、ゲノム医療施策に関する基本的な計画を策定するとされております。
その具体的な内容につきましては、5.基本的施策にありますとおり、まず1つ目として、ゲノム医療の研究開発及び提供に係る体制の整備等、2つ目として、生命倫理への適切な配慮の確保、3つ目として、ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保、4つ目として、医療以外の目的による解析の質の確保、5つ目にその他の施策が定められております。こういった基本的施策の内容に基づきまして、今後、基本的な計画を策定することとされております。法律の概要につきましては以上です。
○中釜座長
それでは、ただいまの説明につきまして、何か御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、続きまして議題3に移ります。議題3は「ゲノム医療の推進に係るこれまでの取組状況」です。資料3になります。こちらの説明を事務局からお願いいたします。なお、当該事項の質問については、次の議題である「意見交換」の際に、併せてお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
事務局です。お手元に資料2を御用意ください。ゲノム医療の推進に係るこれまでの取組状況について、事務局より説明をいたします。時間の都合上、事務局の私から一括して御説明を申し上げます。
まず、ゲノム医療の研究開発の推進、情報基盤の整備、生命倫理への適切な配慮の確保についての取組について、御説明いたします。次のスライドをお願いいたします。全ゲノム解析等実行計画の政府の方針について、御紹介いたします。こちらは、令和5年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2023」の中で、全ゲノム解析等に係る計画の推進を通じた情報基盤の整備や、患者への還元等の解析結果の利活用に係る体制整備を図ることとしております。また、同じく、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中では、全ゲノム解析について、その結果の患者への還元、また情報基盤の整備を着実に進めるとともに、事業実施組織について、2025年度の発足に向けて今年度内を目途に法人形態を決定することや、全ゲノム解析やマルチオミックス解析の結果や臨床情報等を利活用し、創薬の成功率の向上を図ることが定められております。また、11月には「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の中でも、新規治療法や革新的新薬を促進するため、がんや難病患者の遺伝情報等を搭載した新しい質の高い情報基盤を構築し、その利活用を促すこととされております。
こういった政府全体の方針の中で、厚生労働省において、「全ゲノム解析等実行計画2022」を定めております。この目的については、上の囲みにありますとおり、戦略的なデータの蓄積を進め、それらを用いた研究・創薬などを促進することで、解析結果の日常診療への早期導入や、新たな個別化医療の実現についても更に推進することとしております。
具体的には、次のスライド5を御覧ください。令和4年度以降、全ゲノム解析等実行計画のそれぞれの到達目標を達成するため、実行計画、解析実績等、それぞれ計画的に進捗を管理し、取組を進めているところです。この実行計画については、厚生労働省の中の専門委員会でも適宜議論を重ねて進めているところです。
6ページです。全ゲノム解析等実行計画に基づき、これまで全ゲノム解析等を厚生労働省で行ってまいりましたが、現在の進捗については、がんの領域で約1万2,000件、難病の領域で約8,000件、合わせておおむね2万件のデータの症例数が蓄積されているところです。これらのデータ集積の利活用も含めて、今後の医療実装に向けて検討を進めていく予定となっております。
7ページです。この実行計画の中では、出口戦略を定めて進めていくことが課題となっております。そのために、真ん中の枠の囲みにあります全ゲノム解析等実行計画を進めていく上での基本戦略を3つの柱としてまとめております。1つ目は、研究や創薬などに活用するための基本戦略を立てることです。これは、我が国発のイノベーションの創出を行うことによる産業育成を目指すとともに、集約した全ゲノム解析等の情報をオープンかつフェアに利用すること、こういったことを達成するための基本戦略です。2つ目は、早期に日常診療へ導入するための基本戦略です。具体的には、一定のエビデンスが得られたものについては、将来的に保険適用を目指していきます。3つ目は、新たな個別化医療等を実現するための基本戦略です。具体的には、新規の臨床試験・治験等を実施し、先進的かつ効率的な診断・治療等による更なる個別化医療等を実現することを目指すものです。予防、診断、治療のそれぞれのステップにおいて、実用化に向けた様々な課題について今現在検討を進めているところです。
8ページを御覧ください。具体的に、出口戦略に向けた医療実装を進めていくためには、それぞれの要素分析、要素分解を行いながら、課題を整理しているところです。ここで言うステップ1、2、3に定められておりますとおり、全ゲノム解析を医療実装するために、どういった患者さんを対象としていくのか、その臨床的有用性を検証していくためにはどういった方策が必要なのか、最終的には、全ゲノム検査の医療実装をどういった方法で行っていくのか。そのような医療実装までの各段階において、一つ一つ課題を整理して、医療実装に向けた取組を進めることとしております。
9ページです。こちらは、本年度令和5年度の全ゲノム解析等の実施体制です。こちらについては、先ほど申し上げました全ゲノム解析等実行計画を着実に推進していくために、国で行う専門委員会の議論を踏まえて、実際の事業として行うための組織を立ち上げるための検討の組織図となっております。下の図にありますとおり、全体の方針としては、厚生労働省に設置しております「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」での検討を踏まえ、令和7年度からの設置を目指しております事業実施組織の準備を行うための事業準備室において、下にありますとおり、専門的事項の検討等、また、全ゲノム解析等の実施、こちらは厚生労働科学研究、若しくはAMED研究事業とも連携しながら、今、検証をしながら進めているところです。
より詳細な図表については、次の10ページを御覧ください。特に下の段にありますとおり、このAMED研究班においては、医療機関からの流れに基づいてシークエンス企業、解析・データを使ったレポート作成、この一連の流れをどのように実現していくのかといった検証も行いながら、今後の事業実施に向けた様々な課題の検証を進めております。最終的には、事業実施組織としての立ち上げに向けて今現在検討を進めているところです。
11ページをお願いします。このような事業を行うために、厚生労働省でも必要な予算を確保したいと思っております。令和6年度の当初予算として、この事業を進めるための関連予算について、現在、予算要求をしているものです。12ページは、それに先立ち、令和5年度の補正予算でも先行して整備等を実施する分の関連予算として、既に95億円分の予算を確保させていただいておりますので、このような予算をしっかりと準備に活用することにより、事業実施組織の立ち上げに向けた検討を進めているところです。
13ページです。こちらは、内閣府健康・医療戦略推進事務局で担当しておりますゲノム・データ基盤プロジェクトについて御紹介するものです。バイオバンクやコホート、また臨床研究等、ゲノム・データ基盤の整備、また全ゲノム解析等実行計画等の実行によって得られるデータの利活用を横断的に促進できるような取組を進めるため、こういった基盤プロジェクトが進められているものです。下の図表にありますとおり、具体的な研究開発内容については、ゲノム・データ基盤の整備・利活用を推進し、データシェアリングに係る取組を継続して行います。そのことにより、右にありますデータ共有プラットフォームを通じて、ほかのプロジェクトへもこの知見を活用できるようにする取組となっております。それぞれの研究事業は、厚生労働省で行っているものや文部科学省等で行っているものが連携されていますので、次以降の資料でも御紹介をさせていただきます。
14ページです。これは先ほど申し上げましたゲノム・データ基盤プロジェクトの中の一番大きいゲノム・医療データ研究を連結している部分です。ここにありますとおり、様々なゲノム関連の事業がありますので、これらの事業を連結しながら今後の利活用につなげていくというものです。また、こちらの資料については、令和6年度の必要予算を今要求しているものです。
15ページをお願いします。こちらは、一番最初の出口のデータ共有プラットフォーム部分の資料ですが、複数のデータベースを連結してゲノム情報等の横断検索機能を期待する事業です。こちらについても、令和6年度の関連予算として現在要求しているところです。
16ページは、文部科学省で行っているゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラムです。これも、最初の資料の一部を構成する内容となっておりますが、バイオバンク自らが企業等と幅広く連携して、医療・創薬・ヘルスケアなどの社会実装のモデルとなるような研究を行うものです。事業内容としては、左にあります①~④、東北メディカル・メガバンク計画等、必要な事業について、令和6年度も関連予算が要求されているものです。ここまでが、研究事業実施組織等の御紹介でした。
以降、倫理関係の指針の現状について御紹介いたします。17ページを御覧ください。生命・医学系指針についてです。人を対象とする生命科学・医学研究は、国民の健康の保持増進や患者の傷病からの回復、生活の質の向上に大きく貢献するものです。他方で、研究対象者の身体や精神などに大きな影響を与えて、新たな倫理的・法的・社会的課題を招く可能性もあります。こういったことに対応するために、真ん中の枠ですが、学問の自由を尊重しながら、人を対象とする生命科学や医学研究が人間の尊厳及び人権を尊重して、適正かつ円滑に行われるための制度的枠組みとして生命・医学系指針が策定されているものです。一番下にありますとおり、研究対象や手法の多様化、生命科学・医学や医療技術の進展を踏まえて、規制範囲や方法等について継続的に見直しを行っていくものです。
18ページをお願いします。今現在の指針の中には、この基本方針として①~⑧にあることが定められているものです。①社会的及び学術的意義を有する研究を実施すること、②研究分野の特性に応じた科学的合理性を確保すること、③研究によって得られる利益や不利益の比較考量をすること、④公正な立場にある倫理審査会の審査を受けること、⑤事前の十分な説明、また自由な意思に基づく同意を得ること、⑥社会的に弱い立場にある者には特別な配慮をすること、⑦個人情報等を適正に管理すること、⑧研究の質及び透明性を確保すること、こういった基本方針の下で、指針が作成されることになっております。
19ページです。その指針の中に、人を対象とする生命科学・医学系研究の定義が定められており、この資料のイにあります「人由来の試料・情報を用いて、ヒトゲノム及び遺伝子の構造又は機能並びに遺伝子の変異又は発現に関する知識を得ること」が、現在、生命・医学系指針の中で位置付けられており、この指針の対象として研究事業も実施されているものです。
次のスライドをお願いします。ここからは、ゲノム医療の現在の提供状況と、検査の実施体制の整備、また相談支援体制や人材の確保について御紹介いたします。21ページをお願いします。がんに関しては、がんゲノム医療提供体制の整備が進められております。がん医療提供体制については、がん対策基本法において、国はがんゲノム医療をより一層推進する観点から、がんゲノム医療中核拠点病院等を中心とした医療提供体制の整備を引き続き推進することが定められており、がんゲノム中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院の3層構造の中から、それぞれの役割を担いながら、がんゲノム医療の推進が図られております。現在、がんゲノム医療中核拠点病院は、先進医療や治験、人材育成を担うような中核拠点ですが、来年の1月予定で13箇所、がんゲノム医療拠点病院は32箇所、がんゲノム医療連携病院は215箇所が整備されております。このように、均一的ながんゲノム医療の推進に向けて取り組んでいるところです。
23ページをお願いします。併せて、難病の医療提供体制について紹介いたします。難病については、難病に関する遺伝子診断体制について、「国は、遺伝子診断等の特殊な検査について、倫理的な観点を踏まえつつ幅広く実施できる体制づくりに努める」ということが定められております。24ページを御覧ください。難病の医療提供体制の遺伝学的検査の位置付けについては、難病医療の目指すべき方向性として、早期に正しい診断ができる医療提供体制とするために、診断がついていない患者が受診できる各都道府県の拠点となる医療機関を整備することとしております。また、遺伝子関連検査については、本人や血縁者に与える影響等について、患者が理解して自己決定できるためのカウンセリング体制の充実・強化を図ることとされております。現在、難病診療連携拠点病院においては、下の図にありますとおり、45自治体(81医療機関)、難病診療分野別拠点病院については、26自治体(79医療機関)において整備されており、こちらも全国的な難病診療拠点ネットワークが築けるよう、整備の取組が進められているところです。
続いて、検査の精度に関して現状を御紹介いたします。25ページを御覧ください。遺伝子も含めた遺伝子関連・染色体検査の精度の確保に関する基準の考え方です。こちらは、医療法の中でゲノム医療の実用化に向けた遺伝子関連検査の精度の確保に取り組むこととして、(1)医療機関や衛生検査所等の検体検査の医療機関が検体検査業務を委託する者の精度管理の基準の明確化、(2)医療技術の進歩に合わせて検体検査の分類を柔軟に見直すため、検査の分類を厚生労働省で定めることを規定しているものです。具体的には、下の図にありますとおり、医療法の改正に伴う省令の中で、遺伝子関連・染色体検査の精度の確保のために設けるべき基準が定められております。1.遺伝子関連や染色体検査の責任者を配置すること、2.内部精度管理の実施、適切な研修の実施義務、3.外部精度管理調査の受検について定められております。そのほか、検査施設の第三者認定を取得することを当面推奨するという規定となっております。このような取組により、精度管理が進められております。
続いて26ページです。こちらは、出生前に関するNIPT(Noninvasive prenatal testing)の検討状況について、現状の報告をいたします。こちらは本年4月に、厚生労働省からこども家庭庁に当該業務が移管されており、現在こども家庭庁でこういった議論が進められております。一番下にありますとおり、検討事項として、出生前検査の適切な在り方や実施体制、妊婦への情報提供の在り方や遺伝カウンセリングの相談体制、胎児期からの切れ目ない小児医療や福祉施設との連携、その他出生前検査等に関わる課題が検討課題として挙げられております。
27ページをお願いします。現在、出生前検査に関する検討の組織としては、先ほどのこども家庭庁の部会をはじめとして、日本医学会の情報提供、施設認証、検査精度評価といった専門分野のWGでの議論も踏まえて、それぞれ連携しながら検討が進められている状況です。
最後に28ページです。人材育成及び相談支援の状況です。様々な分野で、その目的に応じた人材育成や相談支援がなされるものですが、ここではがんゲノム医療に関する事例を少し御紹介いたします。先ほど紹介しましたように、がんゲノムの医療連携体制については、全国的な医療提供体制を進めているところですが、一方では専門人材の育成も進めております。がんゲノム医療に係る医師の育成については、厚生労働科学研究により、この研修プログラムの作成を行い、学会と共催で医師向けの教育セミナー等に取り組んでおります。また、一番下のがん相談支援センターにおけるがんゲノム医療に関する相談についても、相談支援マニュアルを作成するなど、その資質向上に努めているところです。
続いて、ゲノム情報の法制上の位置付けについて御紹介いたします。30ページです。個人情報保護法の規律を整理したものです。がんゲノムデータについて、これを構成する塩基の配列等については、遺伝型情報により本人を認証することができるようにしたものは個人識別符号に該当するものと位置付けられております。31ページを御覧ください。こちらは、個人情報保護法の規律についてまとめた図となっております。一番上にある、個人情報単体での個人情報、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるものについては、その取得・利用に関するルールの適用となります。さらに、データベースとして個人データとして集めていく場合、こういったものは保管・管理に関するルールや第三者提供に関するルールを講じております。保有個人データについては、公表事項・開示請求等の対応に関するルールが定められております。
続いて、ゲノム情報による不当な差別等への対応について御紹介いたします。33ページです。保険会社への対応要請について紹介いたします。まず行政側の対応ですが、金融庁での対応です。金融庁においては、ゲノム医療推進法が成立したことを受け、各保険会社に対し、ゲノム情報による不当な差別を決して行わないことについて徹底するなど、改めて適切な対応を要請されております。一番下にありますとおり、各保険会社においては、引受や支払の際に遺伝学的検査結果やゲノム解析結果の収集・利用は行っていないことや、また、ゲノム情報による不当な差別を決して行わないことについて改めて徹底するなど、引き続き適切な対応をお願いするものです。
併せて34ページは、業界団体側の対応です。生命保険協会や日本損害保険協会においては、保険の引受・支払実務における現行の遺伝情報の取扱いについてまとめた周知文書を、各保険協会のホームページにて公表されております。下の記載の1ポツにありますように、生命保険の引受・支払実務において、客観的・合理的かつ公平に判断を行い、人権尊重を基本とした取扱いを行っている、その取扱いについては、遺伝学的検査の結果の収集・利用は行っていないということで、団体としての見解がまとめられているところです。
次に35ページです。こちらは、労働分野における対応についてです。採用選考時や労働契約締結後において、不当な差別の対応について、このとおり実施するものです。採用選考時における対応については、採用選考に当たって労働者の募集を行う者等が応募者の個人情報を収集する際には、職業安定法第5条の5及び同法の指針により、原則として業務の目的の達成に必要な範囲内で目的を明らかにして収集することとされており、特に本籍や出生地など社会的差別の原因となるおそれのある事項については、原則として収集してはならないという規定となっております。また、公正採用の観点から、応募者の遺伝情報を取得・利用することは本人に責任のない事項をもって採否に影響させることにつながることから、そうした必要性のない情報を把握してはならない旨を事業主に対して周知・啓発をしております。また、違反行為をした場合には、職業安定法に基づく改善命令を科すことが可能となっております。
労働契約締結後における対応についてです。労働契約締結後における配置転換・解雇等について、労働契約法において、使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することはあってはならないこと。また、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は無効とする規定となっております。労働契約法は民事ルールであり、使用者による人事権行使の有効性は、最終的には司法判断において事案ごとに判断されるものですが、それぞれの取組について御紹介をさせていただきました。
36ページです。これも労働分野の個別労働紛争解決制度について紹介するものです。解雇等の不利益な取扱いを受けた場合の紛争解決の援助として、詳細については資料を御覧いただきたいと思っております。都道府県の労働局長による助言及び指導や、紛争調整委員会によるあっせん等の取組があります。
続いて、消費者向けの遺伝子検査ビジネスに関する対応です。38ページを御覧ください。消費者向け遺伝子検査ビジネスについては、消費者向け(DTC:Direct to Consumer)と言われておりますが、こちらは消費者自らが検体を採取し、消費者に直接検査結果が返されるというサービスです。消費者向けの遺伝子検査サービスを提供する事業者を指すものであり、診断・治療を目的としない、「医療」とは区別されるものです。消費者の行動改善を促すような疾患罹患リスクや体質に関する情報を提供するだけではなく、ダイエットプログラムの提供や化粧品・サプリメントの販売といった2次サービスをセットで行われることも多いということです。
39ページです。このDTC遺伝子検査ビジネスの適正化に向けた施策の取組です。遺伝子検査ビジネスを行う上では、分析の妥当性の確保や正確な情報の提供等が適切になされない場合、消費者が混乱したり誤った判断をしたりするといった懸念も存在するところです。経済産業省においては、「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」を整備し、消費者向け(DTC)遺伝子検査ビジネスのあり方に関する研究会も立ち上げております。また、業界団体においては、「個人遺伝情報を取り扱う企業が遵守すべき自主基準」の公開や、「遺伝情報適正取扱」認定制度の運用により、適切な事業の実施に向けて対応を進めているところです。
最後に40ページは、経産省で整備したガイドラインの一覧をまとめておりますので、御参照いただければと思います。今回、分野が多岐にわたり大変恐縮ですが、現在の取組状況については以上のとおりです。
○中釜座長
ありがとうございました。引き続き、議題4として意見交換に入りたいと思います。今回は初回ということもありますので、特にテーマを決めずにフリーディスカッションとしたいと思います。冒頭、簡単にお一人お一人自己紹介をお願いし、基本計画を検討していく上で必要となる論点や意見などを、お一人約3分程度をめどに御紹介いただければと思います。それから、今、事務局から説明がありましたこれまでの取組状況に関する質問がありましたら、その際に併せてお願いしたいと思います。質問に対しては最後にまとめて事務局から回答をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。名簿順にしたがいまして、最初に天野構成員、お願いできますでしょうか。
○天野構成員
全国がん患者団体連合会の天野でございます。私からは4点、意見を申し述べたいと思います。ゲノム医療推進法に記載のある基本的施策に基づいてとなりますが、まず1点目は「ゲノム医療の研究開発及び提供に係る体制の整備等」についての部分です。厚生労働省その他の省庁において、特に最近は全ゲノム解析等実行計画について強力に推進していただいているところですが、現在、全ゲノム解析等実行計画の部分にやや検討や議論が集中しているのではないかと感じておりまして、かねてから実施されているがんゲノム医療そのものについての議論が、現在は必ずしも十分ではないのではないかというように感じております。例えば、がんゲノム医療においては地域格差の問題は未だかなりありますし、遺伝子パネル検査で未承認薬等を推薦されても、治験等にほとんどアクセスできないという方々が地方では多くいらっしゃいます。また、そもそも遺伝子パネル検査自体の保険適用が、諸外国と異なり初回治療から使えないという問題も依然として解決されていませんし、遺伝カウンセリング等の体制整備の問題も残されています。なので、こうしたがんゲノム医療そのものの議論、あるいはがんゲノム医療以外の疾病のゲノム医療と研究の検討も併せて、全ゲノム解析等実行計画以外のゲノム医療と研究について、今回のこのワーキンググループでの検討を通じて、現時点での課題の洗い出しと必要な施策の検討が必要ではないかと考えております。
2点目ですが、基本的施策の中の「ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保」についてです。この中では様々な課題があるとは承知しておりますが、特に今、保険の問題と就労の問題については、具体的な指針あるいはガイドライン等の作成など、実効性のある検討が必要ではないかと考えます。例えば、保険ついては、先ほど御説明いただいたとおり、生命保険協会及び日本損害保険協会から周知文書を公開していただいているところですが、現状では、現場では必ずしも周知は十分でなく、遺伝情報は保険会社から求められたり、あるいは医療者のほうから伝えられてしまうといった混乱が生じていますので、やはり何らかの具体的な指針あるいはガイドライン等の作成は、厚生労働省あるいは経産省、法務省など、省庁横断的な検討が必要ではないかと考えます。
3点目、「医療以外の目的による解析の質の確保」については、先ほど御説明にあったいわゆるDTC遺伝学的検査についてです。先ほどもあったように、正確な情報が伝えられるか、科学的根拠があるか、あるいは質的保証が適切にされているかというような様々な論点があり得るかと思いますが、今回新たに成立したゲノム医療推進法の指針を鑑み、指針あるいはガイドライン等を必要に応じて再検討することが必要ではないかと考えます。
4点目は「教育及び啓発の推進」についてですが、全ゲノム解析においてもPPIとELSIの推進が規定されているところですが、この全ゲノム解析実行計画のみならず、ゲノム医療全体についても、社会啓発あるいはPPIとELSIの推進が必要と考えます。私からは以上です。
○中釜座長
重要な指摘、ありがとうございました。続きまして、五十嵐構成員、お願いします。
○五十嵐構成員
国立成育医療研究センターの五十嵐です。私から1つお願いがあります。この事業で対象としている難病についてです。難病の定義にはいろいろあると思うのですが、現在では治療が難しくて慢性の経過を辿る疾病のことを言うと思います。一般的に難病と言いますと指定難病を考えがちだと思います。指定難病は338疾患認定されています。一方、小児慢性特定疾病は788疾患が認定されています。小児慢性特定疾病のほうから見ますと、指定難病と対応がない疾患が418疾患あります。その418疾患のうちの90疾患が小児がんで、残りの約300疾患のうち7割は遺伝性疾患です。私からのお願いは、この事業で対象とする難病は指定難病だけを指すのではなく、小児慢性特定疾患の中の遺伝性疾患のうち難病に相当する疾患も含めて戴きたく存じます。以上です。よろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございました。重要な御指摘と思います。続きまして、上野構成員、お願いいたします。
○上野構成員
構成員の上野でございます。自己紹介とコメントのセッションということで、簡単に自己紹介を最初に申し上げます。TMI総合法律事務所に勤務している弁護士でございます。弁護士業務の専門としては、特許を中心とした資材関係の分野ですとか、あと薬学出身ということもありまして、バイオメディカル分野の法律相談なども取り扱っております。ゲノム分野に関しましては、プレゼンの中でも御紹介ありました全ゲノム解析の推進に関する専門委員のほうも拝命しておりまして、ゲノム医療に関しては、法律人としても、また一国民としても強く関心を持っているところです。
本件ワーキンググループに関してコメントですけれども、ゲノム医療の中で利用されるゲノム情報はセンシティブな要配慮個人情報でもありまして、今般、法律の中で明示的に法律16条のほうでも差別禁止という理念を盛り込んでいただいて、実際にそのガイドライン等も既に一部ありますが、具体的にそれで十分なのか、何か改善していく必要があるところ、あるいはより明確に法令で定める必要があるところがないかといったことは議論を深めていく必要があると思っております。また、個人情報法、情報の取扱い、データの取扱いという形に関しても、今、既存の枠組み、法制度の中で対応していっているところと思いますが、国民の安心という意味でも、あるいは活用の促進という意味でも、その両輪を取ったより適切なやりやすい方向性をリードしていくために何が必要なのかといったところを、現状の問題点をあぶり出しながら、必要な施策のところで基本方針に結び付けていければと思います。
そういった議論の中で、御紹介いただいた現状の各プロジェクトとか、あるいはプロジェクトをつなごうと思ったときに、現状の仕組みだとここが既に不便だという何か不満の声が業界や実際にやっていただいている医療の方々の中で挙がっていたり、患者様からこういう不安の声が挙がっていますとか、そうした現場の声が既に拾えているものがあれば、是非、共有いただいて、我々のディスカッションの材料とさせていただければ大変有り難く存じます。ひとまずこれでコメントさせていただきました。
○中釜座長
ありがとうございました。続きまして、大沢構成員、お願いいたします。
○大沢構成員
よろしくお願いします。最初に自己紹介から、仕事はソーシャルワーカーをしております。1991年から中目黒にある東京共済病院で、乳がん相談支援センターに勤務しています。あとは2008年に、Hope Tree(ホープツリー)というがんになった親とその子供を支えるNPOの代表をしており、子供や患者さん支援や医療者教育をしております。遺伝関連では、当院は比較的に若い患者さんが多くて、全年齢の乳がんでは4%程度であっても、AYA世代だとBRCA1/2遺伝子に病的バリアンタントがあるのは15%ぐらいと報告されているとおり、かなり当院も多いです。術式選択にも関わってくるので、診断を受けたばかりのまだ動揺が強い時期に、年齢やサブタイプの分類から保険適用になる方には遺伝子検査の説明を医師から行い、その後、私から補足説明をしているのですけれども、やはり自分のがんのこととか遺伝の可能性をどうやって家族や子供に説明するかというところで非常に悩む患者さんが多いので、その前後のフォローもしています。新しい情報も出てくるので、JOHBOCのe-learningセミナーやアップデートセミナーの受講をするなどして、常に情報をアップデートできるように努めています。
個人の患者経験としては、36歳のときに乳がんを、去年は子宮体がんを経験しました。現場の声の共有というのが先ほどありましたが、患者さんの声や相談員の声、そして拠点病院のみならず市中病院でもかなり患者さんを診ていますので、そうした病院で聞いている声なども共有していければと思います。ただ、本当に難しい話が多いので、しっかり勉強していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
○中釜座長
ありがとうございました。続きまして、神里構成員、お願いいたします。
○神里構成員
東京大学医科学研究所の神里彩子と申します。専門は生命倫理や研究倫理の政策研究をしていて、バックグラウンドは法律であります。私も「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」に参加をさせていただいている身であります。今回、法律ができて、この基本計画を作るということ、大変関心が高いところだと思います。取り分け、法の第14条の生命倫理への適切な配慮、そして第15条のゲノム情報の適切な取扱い、第16条の差別への適切な対応の確保、この3条においてはゲノム医療をこれから日本が推進していく上で両輪となって、ここがしっかりとしたものが作れない限りは国民にゲノム医療の浸透、普及というのはなかなか難しいのではないかと思っていますので、ここは重要なものとして私自身も取り組んでいきたいと思っています。
要望としてですが、第14条に関して申し上げますと、今回、先ほど説明がありましたとおり、生命倫理への適切な配慮の1つの課題として、出生前診断のこと、NIPTのことがあります。それについては厚労省の中でも取組が進んでいるという御紹介がありましたけれども、このゲノム医療で生命倫理に関しては政府の課題として乗り切れてないものがたくさんあります。例えば、着床前診断がそうですし、親子鑑定の問題もあります。また、生殖補助医療系列のゲノム編集の臨床利用の問題は厚生労働省の科学審議会で一旦は取りまとめのところまではいっていて、その中で法律の制定が求められているわけですが、その後、一切議論が途絶えております。そういうこともゲノム医療と直接的に関係がある話ですので、是非ともその辺も視野に入れた上で、ここの場で検討できるようにしていきたいと思いますので、そちらをよろしくお願いしたいです。
また、国民、そして現場の声、いろいろあると思いますので、これから意見交換が何度か続くと思いますけれども、その中では多様な方の選出をしていただいて、いろいろな声を聞いて取り入れられる、そのような環境の整備もお願いしたいと思います。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。続きまして、菅野構成員、お願いいたします。
○菅野構成員
菅野でございます。ゲノム関係の基礎研究をずっとしてきた者でございます。ゲノム医療と申しますと、どうしても患者様とそれから医療の現場ということが最も大きな問題となるとは思いますが、やはり有効な治療法がない状態ですと、いくらゲノムを調べてその遺伝子のことをやっても、その情報が有効にその医療につながらないということで、しっかりと基礎研究をして、ゲノム変異がどのようなメカリズムで疾患に関わっているのか、それでそのメカリズムを理解した上で、しっかりとした治療法を考える。非常に手間が掛かって、時間もかかりそうなことですけれども、質の高いゲノム医療を実際に作り出していくためには、そういったプロセスをしっかりやっていくことが必要だと考えております。
しかも、今、医学の分野は御存じのように大量のデータを取得するということ、さらにその得られた大量のデータを情報科学を使って処理して、それで多様な変異の中から、これぞ大切な変異というものを見つけ出した上で、それに対する治療法を編み出していくというプロセスが世界中で行われていて、かなりのスピードで、遺伝性疾患の分野にいらっしゃる先生方は特にそれを多分感じておられると思いますが、ここ数年の間で、これまでは本当に手が付かなかったような遺伝性の疾患について、完全とは言いませんけれども、有効な治療法が幾つも開発されつつあります。同じようなことが様々な疾患についても可能になるのがゲノム医療のいいところだと思いますので、そういったことが本当にこのゲノム医療法を推進していただくことで、スムーズに研究の現場も動くことができるという状況が出来上がるといいなと考えておりますので、そういう観点からコメントをさせていただければと思っております。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。続きまして、遠山構成員、お願いいたします。声がミュートになっております。ミュートを解除していただけますでしょうか。まだミュートですね。すみません、音声の不具合があるようですので、遠山委員、後ほどまた御指名させていただきますので、少し順番を変えて、深田構成員に先にお願いできますでしょうか。
○深田構成員
がん研究会有明病院の深田でございます。私は乳がん領域の腫瘍内科を専門にしており、抗がん剤や分子標的薬剤などの薬物療法を担当しておりました。当院には2019年に新設されましたゲノム診療部があり、現在はゲノム医療の臨床の現場での取組を主に行っております。具体的には、がん遺伝子パネル検査を希望される方に御説明、同意の取得、解析結果の御説明、治療への橋渡し、また生殖細胞系列(ジャームライン)の病的バリアントを認めた方への対応、エキスパートパネルの運営、病院内・研究所を含めた全体の調整などを担当しております。
また、全ゲノムの分野におきましてもAMEDの上野班の臨床現場でのマネジメント責任者としての体制の構築とか、事業準備室の臨床・患者還元支援チームにも参加をさせていただいております。本法律に関しましては、臨床の現場の立場から、微力ではありますが尽力できるように努める所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私からは2点、発言をさせていただければと思います。先ほど厚生労働省からも御発表いただきましたように、ゲノム医療の推進に関しましては、様々な関係各省の御尽力で取組が進められていると承知をしております。本法律はゲノム医療の推進という法律の立て付け上、現行の取組と重複するような内容も多く含むような記載になっていると承知しております。現行の取組を行う部分と、この法律が新たに行う部分のオーバーラップがやはり出てくると思いますので、この辺りの整理をしっかりして、多岐にわたる取組が必要ですので、ここの取組の整理、課題の抽出等が重要かと思っております。
2点目です。全ゲノムの準備室にも参加をさせていただいておりますが、全ゲノムなどの医療に関する検査の精度というのが状況に合わせて新たな対応が必要になるかというような議論を行っております。本法律の第12条におきましても、ゲノム医療に関わる検査の「質の確保を図るために必要な施策を講ずものとする」というように記載をされております。第2回目以降になるかと思いますが、このゲノム医療に係る検査の質の確保について、有識者の先生からの御発表ですとか、そういったものが予定されているのかどうか、そういうものも必要なのかなと考えております。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。遠山委員、つながっていますでしょうか。まだのようですので、先に、三木構成員、お願いいたします。
○三木構成員
ありがとうございます。私は、がんの基礎研究をずっと続けてきたものです。特に遺伝性腫瘍、遺伝性のがんについての研究を続けてきました。一般のものもそうだとは思うのですが、特に遺伝性のものは診断ということが非常に重要だと考えています。先ほど菅野先生もちょっとおっしゃっていましたが、新しい治療に結び付けようとしたときに、診断が付く、すなわち原因遺伝子が分かるということが次の治療、対応策の開発に非常にアドバンテージをもたらすと考えています。事実、既に遺伝子診断が保険でも行われているようながん腫についても、原因遺伝子から有効な治療薬が見付かってきているという種類のがんも多々見付かるようになってきています。したがって、やはり診断ということが非常に重要と思っています。
そういう意味では、遺伝性のがんに対してパネル検査はまだ保険医療として行われていませんし、さらには、全ゲノム解析という形で、最終的には多くの遺伝性がんの原因遺伝子が見付かってくるものとは考えます。ただ、広く遺伝子を解析していけば原因遺伝子が見付かるかというと、もう1つそこには各遺伝子のVUS、いわゆる変化はあるけれども、それがパスジェニックな原因となるものかどうかと、これが今現在分かっている原因遺伝子の中でも数多くあります。これのアノテーションを付けていかないと、遺伝性がんの原因を突き止めるいうことには大きな障害になっているということは事実だと思います。そのためには、広く遺伝子を調べるということと、分かっている遺伝子について、それぞれの遺伝子変化がどういう影響があるのかということを調べていくということ、その両方をやらないと、診断というのは難しいのではないかとは考えています。
それから、これはがんだけではないのですが、今、germlineの変化というものを見付ける場合に、full genome sequencingをやる場合のshort-read sequencingでは、やはりなかなか検出が難しいものがあるということは既に分かっていますので、そういうことも含めて、ロングリードシークエンス等をいかに組み合わせていくか、そういうことも非常に大きな問題ではないかと思います。今、がんゲノム医療というと、ソマティックミューテーション、ソマティックな情報を指標にした開発がどんどん進んでいますし、これはそのまま進めるべきだとは思いますが、そういったgermlineの変化に注目したがんゲノム医療というものも整備していただきたいと思います。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。続いて、水澤構成員、お願いいたします。
○水澤座長代理
国立精神・神経医療研究センターの水澤と申します。脳神経内科医で、神経難病がたくさんありますが、厚生労働省の指定難病検討委員会等にも参加させていただき、難病全体についていろいろと努力させていただいております。ゲノム関連では、特に未診断疾患、いろいろ努力をしても診断が付かないという非常に希な難病の方々の医療について、AMEDのIRUD(アイラッド)といった研究をずっと続けさせていただいており、いろいろ成果は上がってきているかと思いますが、まだまだニーズには追い付かない状況かと思っています。そういった面でお役に立てればと考えています。
意見としては、今、個別のことがたくさん出てきたと思いますが、海外等に行ってみますと、日本におけるゲノム全体に対するリテラシーというか、そういうものがまだまだ低いかなと感じています。したがって、ゲノムという言葉を聞いたら、すぐにかなりのことが分かるようなレベルに持っていくのがとても重要ではないかと感じており、ゲノムに対するリテラシー、あるいは親和性といったものを上げる方向で努力していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございます。続いて、森構成員、お願いいたします。
○森構成員
日本難病・疹病団体協議会の森幸子です。難病の当事者の立場として出席させていただいています。よろしくお願いいたします。難病については、これまで診断がなかなか付かなかった疾病が非常に多くあり、早期発見、早期治療が難しい状況にありますが、ゲノム解析等により、ようやく早期に診断が付くようになってきたことは、今後の予後に対しても非常に影響することですので、大変喜ばしいことだと捉えています。この診断時には、やはり精神的な負担が大きく付きまとうものですし、こういったところの相談支援というものは、今回の議論の中でもしっかりと充実させていただけるような形に持っていっていただきたいと思います。また、ゲノム医療によって新たな治療法が生まれてくることに期待したいと思っています。
私たちが非常に懸念するものとしては、やはり差別禁止に対して非常に心配することが多くあります。今もやはり難病の誤解とか偏見なども含めた患者家族への差別といったものは生じているものですし、私たちの苦しみでもあります。生活に非常に大きく影響しているものです。是非、そういった差別を禁止する具体的な施策につながるようお願いしたいと思います。私たち患者家族へのゲノム医療に対しての啓発も、正しく理解できるように必要ですし、国民の理解というものも必要だと思いますので、社会的な啓発、そして倫理面、PPIなど、患者、市民がしっかりと参画しながら重要な視点というものを持っていっていただけるよう、重視していただけるように進めていただけると有り難いと思いますので、この点をよろしくお願いしたいと思います。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。続いて、山田構成員、お願いいたします。
○山田構成員
ありがとうございます。この度、このWGの一員として選んでいただきまして、誠に感謝しております。山田義介と申します。私は、ジェネシスヘルスケア株式会社という所におりまして、この会社は遺伝子検査を行っている会社です。一般の方には、先ほどのスライドにもありましたように消費者向けの検査、いわゆるDTCの検査を行っていますので、それで知られているかと思うのですが、実際にはそれ以外の研究機関、医療機関、学術機関の遺伝子検査も行っていますので、極めて幅広くサービスを提供している会社におります。ですので、そういった様々な方々の検査ニーズを会社としては承知していると考えています。
私自身は、科学の人というよりは、実際には米国の弁護士の資格を持っており、ビジネス側からこの会社にいるということですが、これもまた先ほどのスライドに出てきた消費者向けの遺伝子検査を行っている業界団体のAGIの中にも入っていまして、そういったところで他社の方ともいろいろ話をさせていただいて、その中で、特に倫理的な観点とか、そういった場面でいろいろ議論をして、ここまで来ているというところです。私の専門は法律ではありますが、当社は検査、研究をやっている会社ですので、当然、当社内の研究者、検査技師、バイオインフォマティシャンと業務上の接点を多く持っています。これらの内容については、基本的には理解していると考えていますので、こういった観点から、法的・倫理的な側面からも懸け橋となる形で、こちらのWGに貢献させていただければと考えています。
今年、成立したゲノム医療推進法ですが、こうして皆様、WGの方々が集まられている中で、イノベーションを促進しつつ、倫理基準を守って、ゲノム情報の責任ある利用を確保するという形で考え方を作っていけるように、皆様とこの場で是非、協力させていただきたいと考えています。ということで、どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございました。続いて、横野構成員、お願いいたします。
○横野構成員
こんにちは。早稲田大学の横野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、専門は医事法学・生命倫理学です。特に子ども、家族と医療に関する法的・倫理的問題とか、先端医科学研究に関するELSIを対象として研究を行っています。今、前半で御紹介いただいた事項に関しては、厚労省からお話があった全ゲノム解析等実行計画事業実施準備室において、ELSIに関する検討、また、こども家庭庁から御紹介があったNIPTに関する専門委員会での検討や、生命科学・医学系研究に関する倫理指針の検討等に関わってきました。この法律に関しては、成立前から患者・当事者のお立場や関係学会等から早期の成立を要望する多くの声が出されており、法律が成立したことは大変喜ばしいことと考えています。この法律が意義のあるものとなるためには、今ここで検討されている基本計画の内容を、どれだけ充実させられるかといったことが極めて重要だと考えていますので、是非、その点で貢献したいと思っていますし、今後の検討においては、多様な視点からの御意見をできるだけ幅広く頂ける形で進めていただければと思っています。
この法律の概要の中で、「ゲノム医療の研究開発及び提供に係る体制の整備等」また「ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保」といったことが盛り込まれていますが、それに関して少しコメントさせていただきたいと思います。個人情報保護委員会から御紹介がありましたが、現行法では、ゲノムデータを保護するための1つの方法として、個人情報保護法において、一定範囲のゲノムデータについては、個人識別符号という位置付けで扱うというルールがあります。これを前提にして現行の倫理指針や特別法は整理されています。ただ、データ利活用する上ではこれが制限になっている面もあります。例えば、次世代医療基盤法では、一定の加工を施した上で医療情報を利活用するための制度が設けられていますが、加工の際には個人識別符号の全部を削除することが求められているため、ゲノムデータを利活用することが困難になっています。全ゲノム解析等が拡大しつつある状況に照らして、研究・医療への幅広い利活用ということを考えた場合に、個人識別符号としての取扱いを維持すべきかどうかという点についても、再検討してもよいかと考えています。もちろん、差別を含め不適切な利用については懸念すべきだと思いますが、それに対しては、利活用を制限する方向で対応するのではなく、漏えいを含め不適正な利用が生じた場合に対する対策とか罰則の強化、あるいは、守秘義務に関連するルールの精緻化、ゲノムデータを取り扱う組織に関する要件の整備などといった形での対応も重要であると考えます。
今回、この会は、こうした問題を横断的に検討する貴重な機会だと思いますし、この法律の制定を契機に、ガイドラインだけではなくて、関連法案の見直しや整備を含めた検討といったものに是非つなげていければと考えています。また、この法律第20条では、関係者の連携協力に関する措置に関する規定が置かれており、関係者による協議の場を設けるということが規定されていますので、是非、そうした場の整備も進めて、多様な観点から横断的な検討を今後も進めていく契機になるような議論がここでできればと思っています。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。続いて、吉田構成員、お願いいたします。
○吉田構成員
よろしくお願いいたします。東京医科歯科大学の吉田と申します。私は、臨床遺伝専門医として、遺伝子診療科で遺伝子診療に携わりつつ、大学の中で生命倫理研究センター長として、研究倫理、医療倫理にも関わっているという立場で、今回このゲノム医療法のWGに加えていただきました。よろしくお願い致します。今回、多様な立場の方々が参集しておられるということで、これからの基本計画の策定、さらにはゲノム医療法を充実したものにするため、充実したディスカッションができることを期待しています。
その上で、私からのコメントとして、全ゲノム解析等実行計画が既に着手され、解析が進んでいるという実態の中で、たくさんのデータがこれから出てくることになります。当初の解析結果に加え、二次的所見も多数出てきます。一方、その解釈にあたる臨床遺伝専門医は本日(2023年12月26日現在)全国で1,894名しかおらず、医師が33万人ということを考えると0.5%にしかすぎません。また、認定遺伝カウンセラーも全国で389名しかおりません。つまり、遺伝医療の担い手が決定的に不足しているということがあります。先ほど天野構成員も言われていましたように、まずゲノム医療の実施体制をしっかり構築することが非常に重要だと思います。
そのために重要なことの1つ目として、国民や患者さんにとって遺伝子診療科が見えにくい状態であるいうことがあります。ゲノム医療あるいは遺伝子診療科は標榜診療科ではないため、どの医療機関に遺伝の専門の先生がいるのかが非常に分かりにくい状態です。これを分かりやすくするため、ゲノム診療・遺伝子診療科を標榜診療科にする必要があります。国民や患者さんのゲノム医療へのアクセスを迅速にする点でも重要な対策になると思います。
2つ目は、医療における患者・市民参画[PPI(Patient and Public Involvement)]をゲノム医療の面でも進めていく必要があるということです。ゲノムリサーチを進める上で、責任ある研究と発展(RRI、Responsible Research and Innovation)という考え方が、EUを端緒として広がっています。この概念も、ゲノム医療法を今後推進していく中で是非、実現していきたいと思っています。この2つについて、この基本計画の中で策定できればと思っています。以上です。ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、遠山構成員、つながっていますか。
○遠山構成員
先ほどは、大変失礼いたしました。今度は聞こえていますでしょうか。大丈夫でしょうか。
○中釜座長
大丈夫です。お願いいたします。
○遠山構成員
日本生命保険の調査部、支払サービス部、契約管理部で上席専門部長をしております遠山でございます。よろしくお願いいたします。また、本日は途中からの参加となりましたこと、おわび申し上げます。私は、所属保険会社においては、生命保険契約に関する法務と事務に携わっています。また、生命保険協会には、契約サービス委員会という生命保険契約の事務に関する委員会があり、その傘下の会議体のメンバーとなっていることもあって、今回、本WGに参加させていただくこととなりました。
本WGでは、ゲノム医療の推進に向けた基本計画の策定について検討がなされると伺っています。高度な医療が発展・普及していくことは、国民の健康の増進に寄与するすばらしいことであると考えています。一方で、生命保険契約というのはその性質上、医的情報などのセンシティブ情報を取り扱わざるを得ないものとなっています。そのため、ゲノム医療の発展・普及と生命保険制度、生命保険契約の在り方とは密接に関わってくるものと考えています。先ほどの資料でも周知文書のお話がありましたが、本WGにおいては、生命保険業界の現状をお示しするなど、ゲノム医療の推進に向けた本WGの検討に少しでも寄与できればと考えています。よろしくお願いいたします。簡単ではございますが、以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。それでは、本日は参考人にも御参加いただいていますので、まず日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長の小林参考人、お願いいたします。
○小林参考人
労働組合の全国組織であります連合から、本日、参考人として参加しております小林です。よろしくお願いいたします。良質かつ適切なゲノム医療の推進を通じて、これまで適切な治療がなかったり困難であったりする疾病への対応に光が当てられることで、患者の希望につながればと思います。また、ゲノム情報に係る人権や差別などの観点から、今後、WGに参画する中で議論できればと思っています。以上です。よろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございます。続いて、慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センターの教授をされている小崎参考人、お願いいたします。
○小崎参考人
よろしくお願いいたします。私は小児科医で、先ほど吉田先生がおっしゃった臨床遺伝専門医でもあります。臨床遺伝学センターは、慶應大学では2011年に設立されて、2013年以来10年ほど、診断がはっきりしない難病の患者さんに対して、エクソソーム解析ないし全ゲノム解析を実施しています。私自身、現場で患者さんと直接面談、診察をした上で、研究者としてゲノム解析をして、その結果を遺伝カウンセリングとしてお返しする立場でおり、言わば、このサイクルの全てについて現場でのある程度の経験を踏まえた上で、意見を述べさせていただければと考えているところです。すなわち、今度のゲノム医療推進法では、是非、アクセルとブレーキが現実味を持ったニーズに合わせて実装されればと、現場の課題を解決できる方向に向かえばと期待するものです。
ゲノム医療推進法が出来たとき、あるいは成立を目指していたときに、私は人類遺伝学会の理事長を拝命しており、約60の学術団体、それから、先ほど横野先生がおっしゃった180の患者団体に賛同を呼び掛けるという形で参画させていただきましたので、この法律が実を伴うものである、アクセルとブレーキとして機能するものであればという願いがあり、参画させていただいています。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございました。以上、本日御出席いただいている構成員と参考人の方々から、いろいろな御意見やコメント、論点を頂きました。まず質問として幾つかあったかと思います。最初に、五十嵐構成員からの質問です。現在、ゲノム医療はがんと難病という2つの疾患に特化して進められているわけですが、小児の慢性特定疾患というのは非常に多くあり、この多くは恐らく遺伝的素因によるものだろうということです。これに関して、現在、難病あるいはがんでカバーしきれないものがありますが、これについてもこの基本計画を作成する際に、論点として含まれるかということです。事務局、お願いできますか。
○中田研究開発政策課長
事務局です。頂いた論点について、私どもとしても整理をさせていただき、次回以降、検討の材料となるようなものを準備させていただきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
よろしいでしょうか。2つ目として、今回のワーキンググループには多くの領域の方々から御参画いただいているわけですが、現場の声、ゲノム医療の格差等を踏まえた相談員の声、更に多くの多様な国民の声も、是非とも参考にしていただきたいところですが、これらの声についても、事務局としては今後検討される予定でしょうか。これは質問です。
○中田研究開発政策課長
御質問、ありがとうございます。事務局としても、本日皆様から声をいただいた、ゲノム医療・研究と生命倫理、ゲノム情報差別への対応は両輪であるという御意見だったかと思います。その検討に際しては、多様な方々の意見や声を参考にできるようにという御指摘を頂いたかと思いますので、事務局としても、検討の材料となるよう、そういった準備を進めていきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
よろしいでしょうか。次に3点目です。ゲノム医療の実装においては、治療薬の開発に加え診断の精度、診断の重要性も御指摘されました。診断の精度を図る上での検査精度、QAやQCということだと思うのですが、これについても重要な論点だと思います。これらについてもこのWGの中で、論点として挙げられる予定でしょうかという御質問でした。
○中田研究開発政策課長
事務局です。診断の精度については、今後、有識者の方々の意見も整理して、検討の材料となるよう準備をさせていただきたいと思います。特に医療実装のレベルで求められている精度管理から、いろいろな民間活用での精度管理の在り方について、しっかりと議論ができるように準備を進めていきたいと思います。以上です。
○中釜座長
最後の質問として、ゲノム医療を推進するに当たっては、医療実装の面に加えて研究の充実、これにはいわゆる未診断の領域、VUSの問題や新しい技術、ロングリードが重要であろうという御指摘もあったかと思うのですが、この研究面に関する論点、充実、課題というところも、このWGのテーマとして取り上げられる予定かどうか、それについてコメントを頂ければと思います。
○中田研究開発政策課長
事務局です。今回のゲノム医療推進法の柱の1つには、研究の推進というようにあります。本WGでいただいた論点については、いろいろ関係省庁とも相談、連携をさせていただいて、どういった対応が可能かどうかも含めた検討をしたいと思っております。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。事務局への質問として私が認識したものは以上かと思うのですけれども、ほかに事務局に対する直接の御質問という形で、私が拾い漏らしているものがあれば御発言いただけますか。よろしいですか。もし後ほどありましたら、適宜御発言いただきたいと思います。
本日、構成員の先生方や参考人からいただいた論点として、多くのものが挙げられました。少し整理をしますと、まず、ゲノム医療の現状の課題を十分に認識して、課題を拾い上げ、それに対する対策を論じてはどうかという点です。それから、遺伝情報、あるいは個人情報の取扱いに関する問題で、現状の法体制の中で議論ができるか、あるいは新しい法整備内での対応が求められるかという御指摘もありました。また、これは関連することだと思うのですが、生命倫理、あるいはゲノム情報に関する適切な配慮に関する論点です。これも関連するものとして、出生前の診断に関する配慮が挙げられたと思います。それから、広くは普及・啓発・教育・PPIという国民のリテラシーを上げるような取組に関する論点が挙げられていたかと思います。また、海外の状況を把握しながら、日本としてどういうことが取り組めるか。海外との連携には教育や情報の普及も入ったかと思います。それから重要な問題として、やはり差別に関する問題が、法整備の中であるかと思います。横野構成員からの御指摘では、現在、ゲノム等のデータを現行の法制度内で利活用する上での課題に関して、ガイドライン等々で対応するのではなく、新たな法体制、あるいは関連法案の整備の中で議論をする必要があるのではないかということです。これらの課題を頂いたかと認識しております。
今後、今日頂いた課題について御議論いただければと思います。本日、あと30分ほど時間があるかと思いますので、それほど多くのことは議論できないかもしれませんが、この中から、意見交換という形で、例えば冒頭に天野構成員から御指摘があった、現状のゲノム医療での課題、これについて幾つか整理しておいてもいいかと思うのです。この点について、どのような課題があるのか。あるいは地域の格差や、ゲノム解析の結果が分かっても十分に治療を受けられないという意味での提供体制の課題、これはゲノム医療の提供体制の中で、別の委員会等でも議論されている論点ではありますが、この点についてゲノム医療を推進する際に施策上改めて取り扱う必要がある論点だと思います。先ほど深田構成員から御指摘のあった、ほかの所でも議論されている論点との重複も少し考慮する必要があるかと思うのですが、まずは最初に、ゲノム医療における現状の課題について、改めて少し論点を挙げていただきたいと思います。先ほどは3分の説明時間でしたので、余り十分に語れなかったかもしれませんが、まず最初に天野構成員、この点について追加で御発言はありますか。
○天野構成員
ありがとうございます。患者サイドからの指摘というか、要望です。それと、実際にゲノム医療に関わっている、尽力されている医療者からの指摘や要望がそれぞれあるかと思いますので、分けてそれぞれの検討が必要かと考えています。私は患者の立場で参画しておりますので、その立場から幾つか補足いたします。
先ほども申し上げたように、遺伝子パネル検査で実際に薬の提案があったとしても、未承認薬であることがしばしばです。そうすると、臨床試験にアクセスするということが第1選択になってくるわけですが、地方の患者が臨床試験にアクセスすることはなかなか難しい。当然、臨床試験は早期のものであればあるほど、いわゆる中核的な医療機関で行われていることが多いので、地方の患者はなかなか難しいという現状があります。これはほかの部局、あるいはほかの検討会等で議論する内容も一部含まれるかと思いますが、1つには、情報提供も含めて、臨床試験によりアクセスしやすいそういったものの議論が必要かと思います。
また、特に現場の医療者から御指摘があるのが、いわゆる拡大治験が十分に機能していないという問題があるかと思います。もともと海外のコンパショネートユース制度を基に導入されているかと思いますが、海外の場合はコンパショネートユースでは、人道的な使用という観点から、実際にそれを使用した場合の安全性に係る情報は、承認等の審査において参考とされないという整理になっていると聞き及んでおります。しかし、日本の場合は拡大治験という名称のとおり、承認に当たって、拡大治験で使用した患者のデータは当然参照され得るという立て付けになっていて、企業が人道的な支援をなかなか行いづらいという現状があるかと思います。以前であれば、野放図に未承認薬等を提供することへの危惧という面があったと思いますが、ゲノム医療の進展に伴い、遺伝子パネル検査という一定のエビデンスをもって、そういった未承認薬等の薬剤の提案ができる時代に変わってきていますので、こういった部分については、このWGで行うか、あるいは他の審議会等で検討いただくかは別かと思いますが、実際にゲノム医療が患者さんに本当の意味で届くという点では、そういった部分の検討も必要かと思っております。私からは以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。重要な御指摘だと思います。この点について、現時点で厚労省から何かご発言ございますか。
○中田研究開発政策課長
御指摘、ありがとうございます。いただきました課題については、まずもって我々事務局のほうで関係部局と調整して、課題を整理させていただきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
ほかにもう1点、例えば情報の提供については、十分に情報が行き届いていないのではないかということに関しては、PPI活動、あるいは普及啓発の事業や体制の整備に落とし込めるかと思うのですが、この点に関して、ほかの構成員の先生方から何か追加で御意見はありますか。多くの方々に参加していただくということが1つの解決策かと思うのですが、その点について何か追加で御意見はありますか。吉田構成員、お願いいたします。
○吉田構成員
先ほど、PPIについて少し触れました。ゲノム医療の現場では、患者さんやご家族に対して、複雑な遺伝情報を伝えなくてはいけません。その担い手として遺伝カウンセラー等が活動していますが、先ほど述べたように人材が足りない状況です。また、大都市と地方の格差の問題もあります。最近ではオンライン診療をゲノム医療にも導入していますが、やはり人材をしっかり育てることは不可欠だと思います。また、繰り返しになりますが、遺伝子診療科を標榜診療科とすることによって、どこに遺伝の専門家がいるかが明示的になり、国民への情報提供や理解が進むと考えています。これについても厚労省にはゲノム医療法の推進と併せて進めていただきたいと思っております。
○中釜座長
ありがとうございます。重要な御指摘です。人材の育成は、現行のがんにおける遺伝子パネル検査、あるいは難病における遺伝子検査のところでも重要な課題で、担当する医療機関がその責務の一端を担っていると理解していますが、まだまだそれが十分ではないというのが現状だと思います。これが現在の遺伝子パネル検査から全ゲノム解析に展開したときに、求められる人材は更に多様で高度化することが想定されます。こういうOJTを含めた人材の育成を、医療機関あるいはアカデミアが、どのように責任を持って推進できるか、これも重要な論点の1つかと思います。事務局から何かありますか。
○中田研究開発政策課長
事務局です。人材育成は1つの大きな課題だと思っております。今後、どんどん全ゲノムで高度化していく中でどういった人材が必要なのか、また、それをしっかりと養成するためにはどういった方策が必要なのか、課題として受け止めたいと思っております。以上です。
○中釜座長
それから、今、吉田構成員から御指摘があった、いわゆるオンライン診療や、例えば臨床開発のDCTといった制度で、広く多くの方々に参画していただくことにより情報が広がっていくのかと思います。オンライン診療あるいはDCTの推進という点について、このWGの論点として取り上げる可能性があるかどうかについて、事務局から御意見はありますか。
○中田研究開発政策課長
御指摘、ありがとうございます。今の段階では、様々な方策について自由にディスカッションいただきたいと思っておりますので、議論の幅を狭めるようなことは今のところ検討はしておりません。以上です。
○中釜座長
現状でのゲノム医療上の課題について、ほかに何か追加で御発言はありますか。横野構成員、お願いいたします。
○横野構成員
先ほど、ちょっとだけ触れたのですが、これはゲノム医療、ゲノム情報だけの問題ではないのですが、守秘義務の問題についても視野に入れた議論をしていただきたいと思っています。今、様々なデータの、主に二次利活用に関しては、個人情報保護法等との関連の議論が様々な形で行われていますけれども、診療という一次利用の場面においては、やはり患者と医療関係者等との信頼関係等々を考える上で、守秘義務がどのように運用されるのかということ。また、ゲノムデータに関しては、検査を受けた方のデータから、血縁者に関する様々なリスク等の情報が把握される場合もありますので、そういった情報の取扱いをどのように整理するのかということ。また、医療現場では様々な職種が働いている中で、それぞれのバックグラウンドによって、その辺りの法的な手当ての状況が異なっている部分もありますので、診療、研究も含めて、ゲノム情報が一定の水準のもとで守られ活用されるということを担保する上では重要な論点かと思っています。関連する議論の中では、どうしても個人情報保護法の話に偏りがちなのですが、是非、医療という観点から、守秘義務の運用等についても御検討いただければと思っております。
○中釜座長
重要な御指摘だと思います。守秘義務の運用に関する議論、論点ですが、こちらについて厚労省、いかがでしょうか。
○中田研究開発政策課長
ゲノム情報の取扱いについては、柱の1つとなっております。また、今回いただいた論点については、我々事務局でも整理をさせていただきたいと思っております。以上です。
○中釜座長
それでは続いて菅野構成員、お願いいたします。
○菅野構成員
現状のゲノム医療をどうするかというときに、どうしても新しい医療、実装をどうしていくかという形になると思うのです。小崎参考人がおっしゃっていたように、必ずしもアクセルを踏みっぱなしにするのがいいかどうかは分からないところがあります。また、日本の医療制度は国民皆保険で、これだけ充実した公的医療制度を持っている国は世界にないのですけれども、これを維持することが非常に大変な状況になっているという現状もあり、一律に理想のゲノム医療を実現しようというだけの立場で物事を計画するのは、若干無理があるかという気がしております。
ですので、この委員会の範疇を超えてしまうかもしれないので、この委員会としては理想のゲノム医療を追い求めるということでもいいのかもしれませんが、それを現実に実装するに当たっては、やはりいろいろな工夫が必要になるのではないかと思うのです。特区的な扱いとか、あるいは思い切ってDTCを使うとか、何かそういう。医療制度は各国で全く違いますので、欧米でこうなっているから日本もやろうと言っても、欧米でこうなっているという現状は、国民全体に均等にそういうことが行われていないのです。例えば、米国などではそういうことが行われていないのに、最先端の所だけを見て、それが日本で全体に行われなければいけないのだという議論になったときには、非常に問題が起こるのではないかと思っております。そういう辺りも考慮しながら考えていければと思います。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。重要な御指摘かと思います。先ほど菅野構成員御指摘の、研究から開発、さらに医療実装というステップがあるだろうという意味で、ゲノム医療が万能ではなく、その臨床的有用性を検証する開発フェーズも必要であるし、それを踏まえた実装ということでの限界、リミットも認識しながら、どのような形で現実的な実装が可能かという議論は、非常に重要な御指摘だと思います。この点について、事務局からコメントを頂けますか。
○中田研究開発政策課長
貴重な御意見、ありがとうございます。特に医療実装については、現状の我が国の制度との整合性についてどのように考えていくのかといった論点も当然出てくるかと思います。このWGにおいて、そういった視点も踏まえた検討が進められ、それぞれの実装の部分になりますと、それの担当部局でも議論が進むものと考えておりますので、そういった視点での御議論も是非賜れればと思っております。以上です。
○中釜座長
ほかに現状の課題として何かありますか。少し関連する事項として人材の育成もあると思います。これも大きな議論だと思うのですが、先ほど私はアカデミアあるいはOJTによる人材育成ということを申し上げたのですが、もっと根源的に現状のゲノム医療の推進における人材育成上の課題として、何か御発言いただけたらと思います。いかがでしょうか。これは現状、現場の実情を踏まえながら、より課題を分解していく必要があるかと思いますが、今後の議論として取り上げるという形でよろしいですか。深田構成員、何かありますか。
○深田構成員
私は臨床現場で、がんゲノム医療をやっておりますが、我々のようながん専門病院においても、特に医師も含めて看護師、薬剤師に話を聞きますと、「ゲノム医療って何」という話が出てくるということを、多々耳にいたします。我々のような専門病院においても、ゲノムリテラシーというのはまだまだ低いということを実感しながら、これをどうにか改善せねばということで、院内の人材育成のプログラムを作るということを今やっておりますが、なかなか思うようにいかないところです。構成員の先生方からいただいたリテラシーの向上というのは、現場でも非常に重要な課題だと認識しておりますので、是非、この場をお借りしていろいろ検討を進められればと思っております。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。関連して大沢構成員から、相談員の目から見たときの人材育成上の課題として、どのようなものが挙げられますか。
○大沢構成員
属している医療機関の特徴にもよると思うのですが、直接関わっている患者さんにそういう方が多いと、関心も高まり、勉強しようという気になると思うのですけれども、少ない場合は関心が低いかもしれません。ただ、医療従事者に対する研修は、もっとあってもいいのではないかと思います。一般市民対象は少しずつ増えてきましたが、相談員や看護師や医師に対する研修は見つけづらいです。HBOC領域ではJOHBOCが開催していますが、幅広くゲノム医療を学べる研修があると、啓発にもつながるし、リテラシーの向上にもつながるかと思います。
○中釜座長
ありがとうございます。この点に関してもう少し深めますと、例えば難病、あるいは小児慢性特定疾患等においては、非常に種類が多い。そういう中で、専門家、人材育成は非常に大きな課題があるかと思うのです。この点について、小崎参考人、人材育成の観点から何かコメントはございますか。
○小崎参考人
小崎です。診断がはっきりしない患者について解析をしたときの診断率は、国際的に大体45%と言われております。数万円の分析で45%の診断が得られるというのは、ほかに例を見ないことだと思っております。ただ、たくさんのいわゆるバリアントが出てきますので、これを適切に判断するには人材育成が必要です。私自身の経験では、一般的な小児科医をお預りしてそのようなトレーニングをするのに、大体1年あれば大丈夫だろうと思っておりますので、そのような人材交流の場を是非つくっていただければと思っております。
それと、最終的にはゲノム医療ということで、がんの専門家と難病の専門家が、ある意味でマージすることが望ましいと思うのですが、初期におけるキャリアパスはかなり違っておりますので、そこを認識した人材育成が必要だと考えております。それから、一口に難病と言ったときに、いわゆる多因子遺伝の難病と、私が45%の診断率が上がると申し上げている単一遺伝子病とでは質が異なりますので、できればそこも分けた議論が必要かと考える次第です。以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。関連して小児慢性特定領域の疾患においても、これもまた非常に種類が多いかと思うのです。五十嵐構成員、人材育成の観点からどのような課題があるか、御発言いただけますか。
○五十嵐構成員
小児の難病の中で、小児慢性疾患として認められているのは、まだごく一部です。疾患名も診断も付かないような病気がたくさんまだ存在しています。そういう中で、原因遺伝子が分かることで、いろいろなことが分かってきています。小児の専門の研究施設は、ある疾患領域においては強いけれども、ほかの分野では力が注げないというのが現状で。小児の慢性疾患あるいは小児の遺伝性の難病を1つの医療あるいは研究施設で対応することは、現実的には無理ではないかと思います。学会を中心とした遺伝医学の教育を充実させたり、専門のプログラムを作って、関連の領域のメディカルスタッフと一緒に勉強していくシステムがないと、小児の幅広い疾患群に対応することは難しいのではないかと感じています。
○中釜座長
ありがとうございました。人材育成の問題は、非常に重要な課題だと認識しました。それから領域が、限られた遺伝子パネルから全ゲノムに及ぶことによって、さらに専門とする多くの方々が参画しながら、それをいかにつなげていくかということの重要性が人材育成上重要な問題です。これはいわゆる情報の共有や普及等にも関わる問題だと認識しました。この時間ではまだまだ十分に議論しきれないと思いますが、人材育成が重要な課題であることは、改めて認識できたかと思います。
まだ少し時間を残していますが、これから本格的な議論に入ると時間が足りないと思うので、本日はこの辺りにして、今日、構成員の先生方からいただいた様々な論点を事務局で整理していただいて、次回以降の検討に反映していきたいと思います。本日、全体を通して、改めて何か御発言のある構成員や参考人の先生方はいらっしゃいますか。
○小崎参考人
参考人ではありますが、小崎のほうから一言よろしいですか。五十嵐先生のおっしゃったことは本当にもっともです。いわゆる単一遺伝性疾患が3,000ほどあります。そのうちの一部が小児慢性特定疾病になっていたり、指定難病になっていたりするという現状なので、それを包括的に取り扱うことは逆にできると思いますし、同じような人材育成の中で、小児科も成人の難病も含めた取組ができるように思いますので、そういった包括的な視点から、少し課題をコメントさせていただきました。以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。ほかに御発言はありますか。よろしいでしょうか。それでは最後の議題5.その他に移ります。事務局からお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
資料3を御覧いただきたいと存じます。今後のスケジュール案です。本日の第1回目以降、第2回目は年明けの2月14日の10~12時、第3回目は3月12日の16~18時を予定しております。4月以降は基本計画の策定に向けて、その骨子、本文案について議論を頂き、パブリックコメント等の実施を踏まえて提案をまとめていきたいと存じます。4月以降の日程については年明け以降、皆様に御確認させていただきたいと思います。また、最終的に2回目、3回目以降の有識者の意見交換については座長とも御相談の上、年明け以降、事務局にて調整・御相談させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○中釜座長
本日、構成員の皆様にはスムーズな議事進行に御協力いただき、誠にありがとうございました。これをもちまして本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございます。