第15回 HTLVー1対策推進協議会 議事録

健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課

日時

令和6年1月11日(木)15:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム(5階)
(東京都港区新橋1-18-1)

議題

  1. (1)HTLV-1総合対策の概略と現状について
  2. (2)HTLV-1感染実態について
  3. (3)HTLV-1母子感染予防対策マニュアル第2版について
  4. (4)HTLV-1に関する普及啓発事業について
  5. (5)患者会の活動報告
  6. (6)その他

議事

議事内容
○杉原エイズ対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第15回「HTLV-1対策推進協議会」を開催いたします。
 本日は御多忙のところ本会議に御出席いただきまして、どうもありがとうございます。
 令和5年9月1日付で厚生労働省に感染症対策部が設置されまして、部長決定に基づきまして、本協議会は感染症対策部感染症対策課が事務局を行うこととなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日議事進行を務めさせていただきます感染症対策部感染症対策課の杉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議事は公開となります。なお、カメラ撮りにつきましては議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解、御協力のほどお願いいたします。
 また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
 なお、会議冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
 本日はウェブ会議で開催することとしております。ウェブ会議を開催するに当たりまして、会議の進め方について御連絡させていただければと思います。
 まず、御発言される場合は、挙手機能を用いて挙手いただくか、チャットに発言される旨のコメントをいただきまして、座長から御指名されてから御発言いただきますようお願いいたします。なお、ウェブ会議ですのでタイムラグが生じることがございますが、御了承願います。
 今回、災害対応のため大坪健康・生活衛生局長が急遽欠席となっておりまして、大変申し訳ありません。
 鳥井審議官のほうから御挨拶申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
○鳥井審議官 厚生労働省の大臣官房審議官の鳥居でございます。開会に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。本日御出席の構成員の皆様方には、御多用のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございます。日頃より厚生労働行政、HTLV-1対策の推進につきまして御指導を賜っておりますこと、厚く御礼申し上げます。
 今から14年前の平成22年にHTLV-1総合対策が取りまとめられ、翌平成23年に対策推進協議会の第1回が開催されました。その後、本協議会におきましては総合対策が掲げる5つの重点施策、すなわち、感染予防対策、相談支援、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進について精力的に御議論いただいておりまして、我々もそれを踏まえて対策を推進してきたところでございます。
 申し上げるまでもなく、HTLV-1は関係する領域が多岐にわたっており、総合的な対策が重要でございます。今回は第15回目ということで、HTLV-1の感染実態、母子感染予防対策マニュアル第2版について、また、令和5年度より開始いたしました普及啓発事業について御発表いただきます。その後、御意見をいただく予定といたしております。さらにはその後、患者会から活動報告をいただく予定でございます。
 対策の一層の推進に向けまして、皆様には今回も真摯かつ活発な議論をいただきますようお願いを申し上げます。
 簡単ではございますが、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
○杉原エイズ対策推進室長 続きまして、構成員の出欠状況について御報告いたします。本日は構成員14名中11名の方に御出席いただいております。御出席の構成員におかれましては、通信の確認を踏まえまして、こちらからお名前を順次申し上げますので、一言お返事をいただければと思います。五十音順に失礼いたします。
 石母田構成員。
○石母田構成員 よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 石渡構成員。
○石渡構成員 石渡です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 内田構成員。
○内田構成員 内田でございます。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 川村構成員。
○川村構成員 川村です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 菅付構成員。
○菅付構成員 菅付です。映っていますか。聞こえますか。
○杉原エイズ対策推進室長 聞こえております。ありがとうございます。
 塚崎構成員。
○塚崎構成員 塚崎です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 永井構成員。
○永井構成員 永井です。
○杉原エイズ対策推進室長 濵口構成員。
○濵口構成員 日本医師会の濵口です。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 森内構成員。
○森内構成員 よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 山野構成員。
○山野構成員 山野です。よろしくお願いします。
○杉原エイズ対策推進室長 渡邉構成員。
○渡邉構成員 渡邉です。どうぞよろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 よろしくお願いいたします。
 なお、本日、岩本構成員、齋藤構成員、安河内構成員より御欠席の御連絡をいただいております。
 また、本日は参考人といたしまして、東京大学大学院、内丸薫参考人、日本赤十字社九州ブロック血液センター、相良康子参考人に御出席いただいております。
 内丸参考人、相良参考人におかれましても、通信の確認のため、一言お返事をいただければと思います。
 内丸参考人。
○内丸参考人 参考人の内丸でございます。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 相良参考人。
○相良参考人 相良でございます。よろしくお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 よろしくお願いいたします。
 そうしましたら、申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはこれで終了とさせていただきますので、御協力をお願いいたします。なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
 次に、事務局より資料等の確認をいたします。
 議事次第、構成員名簿、座席図のほか、資料1「厚生労働省感染症対策課、がん・疾病対策課、難病対策課、こども家庭庁母子保健課より提出されたHTLV-1総合対策の概略と現状について」という資料。資料2としまして相良参考人より提出された「HTLV-1感染実態について」。資料3は内丸参考人より提出されております「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル第2版について」。資料4としまして渡邉座長より提出されました「HTLV-1に関する普及啓発事業について」。資料5が患者会の菅付構成員より提出されております「スマイルリボンからの報告と提言」、石母田構成員より提出されております「コロナ禍での患者会活動報告」。参考資料1としまして石渡構成員より提出されました「HTLV-1抗体陽性妊婦に関する調査結果」を御用意しております。
 不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけください。
 なお、本日の座長は渡邉構成員に務めていただきます。
 以降の議事運営につきましては、渡邉座長にお願いいたします。
○渡邉座長 私が本日座長を務めさせていただきます渡邉です。
 本日の議題は、厚生労働省、こども家庭庁から「HTLV-1総合対策の概略と現状について」、相良参考人から「HTLV-1感染実態について」、内丸参考人から「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル第2版について」を続けて説明いただき、そこで一旦フリーディスカッションの時間を取りたいと思います。その後、座長の私のほうから「HTLV-1に関する普及啓発事業について」を説明いたしまして、再度フリーディスカッションを挟んで、菅付構成員と石母田構成員から患者会の活動について説明いただき、フリーディスカッション。最後に全体を通して意見交換をしたいと考えております。
 構成員、参考人の皆様には円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。
 まず、厚生労働省、こども家庭庁から資料1「HTLV-1総合対策の概略と現状について」お話をいただければと思います。よろしくお願いします。
○芦澤感染症対策課長補佐 まず、厚生労働省から説明させていただきます。感染症対策課になります。
 次のスライドをお願いいたします。
 まず、HTLV-1対策の経緯としてまとめさせていただいております。平成14年に第1回のHTLV/ALT研究発表会を開催。HAMの患者会「アトムの会」結成。NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」の設立。また、「HTLV-1研究会」の発足を経まして、平成21年に「HTLV-1感染総合対策等に関する有識者会議」が設置されております。翌年には「HTLV-1特命チーム」が立ち上げられ、その中で総合対策が取りまとめられました。さらに、翌年に第1回の対策推進協議会が開催されております。「スマイルリボン」の設立、「日本HTLV-1学会」の設立もありまして、前回が2019年の第14回開催でありましたけれども、その際には5類感染症指定への要望もありまして、その後、小委員会を2回開催。また、感染症部会でも議論を行っております。今年度からはHTLV-1普及啓発事業の実施となっております。
 次をお願いいたします。
 こちらでは、時間の都合上割愛しますけれども、総合対策の骨子について御紹介しております。
 次をお願いいたします。
 厚生労働省からのHTLV-1の案内のホームページ。また、情報ポータルサイト。渡邉座長にも尽力いただいておりますけれども、見やすくまとめていただいているポータルサイトの案内になります。
 次をお願いいたします。
 先ほど申し上げましたが、5類感染症に関する議論というものを厚生科学審議会感染症部会でも行っております。お示ししています4つの論点で議論されております。第1点として、HTLV-1について、感染症法での疾病としての届出になっておりますけれども、どういった対象と考えられるかというところで、ATLやHAMといったところが候補として御意見に上がっておりましたけれども、感染防止対策の観点での位置づけがどうなのか、また、腫瘍性疾患または神経性領域の側面もありますので、そういった疾病対策でのカバーも前提ではないかという御意見もあったところです。
 2点目としまして、HTLV-1がほかの5類感染疾患と同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるかどうかという点で論じられております。論文でもHTLV-1感染そのものの健康に対する影響が指摘されているといった御意見が小委員会でも上がっておりました。一方で、HTLV-1キャリアの方への治療につなげる手段が少なく、行政的な仕組みにするのは難しいといった御意見もあったところです。
 3点目としまして、社会やHTLV-1キャリア本人がどのような反応をすると考えられるかといったところで論じられておりますけれども、HTLV-1感染症に対する体制の整備につながり得るのではないかという御意見を小委員会でもいただいていたところです。水平感染を考慮すると誤解や偏見、差別につながりやすい懸念。また、キャリアに対して不安が増強するのではないかといった御意見もあったところです。
 4点目としまして、どのような届出が行われることが妥当か。また、感染対策としてどのような進展が考えられるかということで、ここでも感染実態の把握により病気についての理解が広がり得るのではないかといった御意見があったところです。また、95%の方が無症候だが全数届出を義務づけるのか。傾向の把握であれば、出産や献血のときの検査等で十分ではないか。また、全数を届け出られても、保健所で長期にわたってキャリアの方を登録しておくというのは考えにくいという御意見もあったところで、感染症法上の位置づけに関しては、部会として一致した見解は得られず、見送りとなっております。HTLV-1の普及啓発、キャリアへの相談体制の受け皿の整備の必要性が改めて認識されたところでありまして、今年度よりHTLV-1に関する普及啓発事業を実施しているところであります。
 次をお願いします。
 普及啓発事業については、渡邉座長からもお話しいただきますけれども、その内容としては、普及啓発、講習会の開催、相談体制の整備といったことを盛り込んでおります。
 感染症課からは以上です。
○西條難病対策課専門官 続きまして、難病対策課のほうの取組についてお伝えしたいと思います。
 難病対策課としては、指定難病のHAMに対する支援等をさせていただいておりまして、研究班のほうで診療ガイドラインの策定等をしていただいております。
 また、研究班のほうからHAM患者レジストリの「HAMねっと」を活用した病態解明と治療法・予防法の開発に関する研究等も進めていただいておりまして、今後も研究班を中心にガイドラインの改訂等を進めていただきながら、このような支援を続けていきたいと考えています。
 難病対策課からは以上です。
○上野がん・疾病対策課長補佐 続いて、健康・生活衛生局がん・疾病対策課より、資料1-3を御覧ください。
 1枚目になりますけれども、がん・疾病対策課としての取組としましては、まず令和5年3月に閣議決定となりました第4期がん対策推進基本計画、国のがん対策の骨子になるような計画におきましてもHTLV-1総合対策等を引き続き推進するという旨の記載をさせていただいております。
 また、医療体制という部分につきましては、がん診療連携拠点病院を全国に配備しておりますけれども、その中に置かれます相談支援センターにおきまして、相談に対応するべき項目としまして、資料の一番下のところになりますが、HTLV-1関連疾患であるATLというものを例示しております。
 次のページをお願いします。
 研究支援の一環ですけれども、レジストリの研究なども支援しているものがございまして、それについてHTLV-1情報ポータルサイトでも紹介させていただいております。
 以上です。
○こども家庭庁母子保健課吉川生殖補助医療対策推進官 こども家庭庁成育局母子保健課でございます。資料1-4について御説明をさせていただきます。
 資料1-4ではHTLV-1に関しての母子感染予防対策について御説明をさせていただいております。経緯については、先ほど感染症対策課の資料であったとおりでございます。
 1ポツとしましては、妊婦健診において現在HTLV-1抗体検査の実施を行っていただいているところでございまして、基本的に市町村においてはこうしたHTLV-1抗体検査を妊婦健診の中で公費負担に基づいて実施いただいているところでございます。
 2ポツのHTLV-1母子感染対策事業の都道府県における実施状況についてでございます。直近のデータでは37都道府県におきまして協議会を設置いただいているところでございまして、34都道府県において医療従事者を対象に研修事業を実施、37都道府県において相談窓口従事者を対象に研修事業を実施など、推進をいただいているところでございます。
 2ページでございます。母子保健課で計上している予算でございますが、都道府県における性と健康の相談センターの事業の一部としましてHTLV-1母子感染対策加算を設けておりまして、この中で先ほど御説明差し上げました協議会の設置や関係者への研修事業などを実施いただいているところでございます。
 3ページ目以降におきましては、母子保健課において実施しておりますHTLV-1の母子感染対策事業の実施状況についての調査内容をお示ししているところでございまして、3ページ目、4ページ目、5ページ目が令和5年度における状況、6ページ目以降が令和4年度に関しての状況をお示ししたものでございます。
 資料についての説明は以上でございます。
○渡邉座長 それでは、引き続きまして、資料2「HTLV-1感染実態について」の説明を相良参考人よりよろしくお願いいたします。
○相良参考人 相良でございます。よろしくお願いいたします。
 次の資料をお願いいたします。スライドを進めてください。
 日本においてキャリア数を推測するという形でお仕事をする中では、今まで献血者のデータというのが用いられております。最初の報告は1990年、左側に書いております田島先生の御報告で、そのときのキャリア数120万人ということで、半分以上は九州・沖縄に居住しておられるという御報告でした。その20年後の報告が右側の佐竹先生の報告になります。推定キャリア数108万人ということで、20年間で僅か10%しか減っていなかった、しかもキャリアの分布は九州・沖縄では減って、大都市圏に移動しているという御報告でした。
 次のスライドをお願いします。
 これが最新のキャリア推測数になります。左側に示しているグラフはちょっと煩雑なのですけれども、2006年、2007年、先ほどの佐竹先生の108万人という報告のときのキャリアの抗体陽性率を示しているものが上から女性、男性となっております。下の2つの折れ線グラフが最新のキャリア数を推測する上で用いました抗体陽性率で、2020年から2021年にかけての初回献血者の抗体陽性率を示したものです。ところが、献血者の集団としては同じはずなのですが、15年たったときの陽性率というのが下振れしている。グラフの中にピンクの矢印で示しておりますように、2006年、2007年の調査時に20代だった方は2020年の段階で35歳になっているはずですが、そこの陽性率が下振れしているということが分かりましたので、2006年、2007年の調査のときの数値から補正値を用いて出したキャリア推測数、一番新しいデータが昨年報告いたしました65万8000人という数字でした。
 下振れというのを少し御紹介したいと思います。
 次のスライドをお願いします。
 こちらには献血者の女性を年代別に分けて、その年代ごとのHTLV-1の抗体陽性率をお示ししております。ピンクの棒グラフで示しているものが実際に得られた陽性率なのですが、2006年、2007年の年代別の抗体陽性率をそのまま、15年たったときに予想される推測値を赤丸で示しております。そして、その赤丸を近似線でつないだものがそこに点線で示してあります。その点線があるべき数値ですが、得られている実際の陽性率が棒グラフ数値ということで、緑色の矢印で示しているところが下振れしている割合という形になってまいります。
 次のスライドをお願いします。
 これまでこのように献血者のデータを用いてキャリア数の推測を行ってきましたが、献血者のデータのみからの推測がかなり難しくなってきている現状があるということを御紹介いたしました。しかしながら、右下に示しておりますWHOが出したHTLV-1に関するテクニカルレポートでは、キャリア数を把握しなさいということが第1推奨事項になっております。このことを鑑みますと、献血者だけのデータで推測をするのは難しくなったので、検査対象は一般化していくことが必要になってくると推測されます。
 次のスライドをお願いします。
 もう一つ気になるデータがこちらになります。左側が男性、右側が女性です。献血者の年代別の抗体陽性率を示しておりますが、先ほどと同じように近似線を点線で引いておりますが、そこから大きく飛び出しているのが10代で男性も女性も10代のところが近似線よりも大きく抗体陽性率が高いということが分かりました。これが何を意味しているのかということで、水平感染について少しお話をしたいと思います。
 次のスライドをお願いします。
 最初に、水平感染というのは、お母さんから赤ちゃんにうつったというものではなくて、青少年期以降にHTLV-1に新しく感染をするというものになります。この感染の実態がどうなっているのかということを初めて調査しました第1次調査が2005年から2011年にかけての追跡調査です。このときの調査によって、1年間に4,190名の新規感染者が生じていることが分かりました。
 さらに、左側グラフが男性、右側が女性の新規感染者数を示しております。男性のほうを見ていただきますと、九州よりも関東や近畿のほうが多いということであったり、女性のほうを見ていただきますと、九州に次いで関東・近畿、中部東海といった大都市圏に多いということが分かりました。
 次のスライドをお願いします。
 さらに、第2次調査として2013年から2020年まで追跡調査をした結果がこちらになります。男女とも横軸は生年、生まれた年を示し、このときの水平感染者推測数は、足し算をしますと、1年当たり2,940人の方が新規に感染していらっしゃるという数字が得られたところです。
 次のスライドをお願いします。
 しかしながら、この中でAYA世代、青年及び若年の成人世代の感染割合、水平感染者数というのが、第1次調査に比べると、左側、男性で1.64倍、右側、女性で1.57倍というように、若い方たちの中での新しい感染者の数が増えていることが分かりました。
 次のスライドをお願いします。
 さらに、10代に限って見ますと、男性は17倍、女性は21倍と非常に大きな増加が見られたところです。これが感染者数としても表れているというのが、10代のところで上振れしていたということの原因の一つではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。
 先ほどキャリア数全体を推測するときに補正をしたというお話をしました。補正をするということを考えついた論文は、2023年、昨年の3月に報告したものですが、水平感染者の推測数を出したのは、その半年ほど前の論文になります。水平感染者数、先ほどの2,900人余りという数字は補正をしない実測値から推測される数を出しておりましたが、キャリア数の推測と同じように補正をかけてみるとどうなるかというものを示したのが左側の棒グラフになります。同じ補正値を使って計算をし直しますと、男性1,100人余り、女性3,600人ということで、1年間に4,750名の新規感染者が生じていることが分かりました。第1次調査の1.13倍ということで、対策をしていないと少なくとも減ってはいない、同じような数の水平感染者が新規に生じているということが分かります。
 また、右側の表ですけれども、1人の感染者当たりに発生する水平感染者数、つまり、水平感染者数を感染者数で割った数字を出してみました。そうしますと、緑枠で囲んでおりますように、10代から30代で高い値が得られるということから、HTLV-1の水平感染というものもやはり活動性が高い年齢層に多く発生しているということを示唆するデータとなっております。
 次のスライドをお願いします。
 青少年期以降の感染というのが既にHTLV-1の主経路になっているということが考えられます。したがって、若者向けに啓発という活動を行っていくこと、また、検査を拡充していき、特に無料で検査ができたら一番いいと思います。このような検査の拡充をしていくということでHTLV-1の感染拡大の抑止が期待できるのではないかと考えられます。
 最後のスライドをお願いします。
 今回の発表の課題として得られたことをまとめております。1ポチですけれども、一般の集団を対象とした検査体制の整備。そして、それから得られた数字を用いることで正確な疫学調査を行うということが1つ。2ポチです。活動性の高い年代を中心とした啓発、そして感染予防対策を行っていかなければならないと考えます。すなわち、検査対象を拡充し、検査で陽性になった方については受入体制ですが、これはどこでも誰でもどんなときでも受け入れていただけるという均てん化ということが必要と考えます。
 また、啓発については、医療従事者、若年層に重点を置いた啓発ということの重要性を感じております。
 このように感染予防対策の加速化ということがこのHTLV-1対策をしていく上での課題と考えるところです。
 私の発表は以上です。
○渡邉座長 相良先生、ありがとうございました。
 御質問・御意見等は資料3の発表が終わった後にまとめて行いたいと思います。
 続きまして、内丸参考人から資料3の説明をお願いいたします。
○内丸参考人 東京大学の内丸でございます。
 現在、こども家庭庁のほうに移行しておりますこども家庭科学研究で「HTLV-1キャリア妊産婦の支援体制の構築に関する研究」の研究代表者を務めております東大新領域の内丸でございます。
 今回は厚労科研版の母子感染予防対策マニュアル。これの前の版は2017年に当時の厚労科研板橋班から出ているのですけれども、これの改訂版を昨年11月に発出してございますので、この内容について、最もエッセンシャルな部分だけごく簡単にかいつまんで御紹介、御報告をさせていただきたいと思います。
 まずスタートラインでございますが、2011年、HTLV-1総合対策が始まった時点、その当時のHTLV-1キャリアマザーに対する授乳指導方針は、その当時の厚労科研特別研究、本日は御欠席の構成員、富山大学の齋藤先生のHTLV-1母子感染予防に関する研究班から出された医師向け手引が基本になってございます。ここにございますけれども、確認検査で陽性となった確実なキャリアマザーに対しては、説明をした上で、完全人工乳、いわゆる断乳、それから満3か月まで、90日未満の短期母乳栄養、それから凍結母乳、この3つを提示して、お母さんに選ばせる。基本的には三者並列というところからスタートしてございますし、この当時の日本産科婦人科婦人科学会のガイドラインも基本的にはこれに沿った形で、十分説明した上で、キャリア妊産婦に選択をさせると。これからスタートしてございます。
 ただ、同じ2011年から当時の厚労科研板橋班のほうで授乳法によって児の感染率が、3か月以下の短期授乳では本当に変わらないのかということを調べるという前向きコホート研究がスタートしておりまして、これは2017年でございますが、これはまだ板橋班の研究が進行している最中でございました。したがって、その研究班の結果が出ていないという状況で、つまり、短期授乳と完全人工乳、凍結母乳との感染率の違いがないかという研究が進行している中で、それらを並行して上げるのはいかがなものかという議論があったと聞いておりますけれども、2017年の当時の厚労科研板橋班からHTLV-1母子感染予防対策マニュアルというのが発出されまして、この赤線は私が入れたものでございますが、こちらのほうには「原則として完全人工栄養を勧める」。十分に説明してもなお強く望む場合にこれらを上げるという形で、明らかに原則として完全人工乳というふうに授乳指導方針がここで変更されてございます。これと軌を一にして、同時期に日本産科婦人科学会のガイドラインのほうでも、HTLV-1キャリア妊婦に対する授乳は原則として完全人工栄養というふうに指導方針が変わってきているところでございます。
 一方で、板橋班による授乳方法ごとの児の感染率のコホート研究は、2020年に最終的にまとまりまして、これが板橋先生の研究結果でございますけれども、3か月以下のShort-term breastfeeding、3か月以下の短期授乳でExtra formula feeding、完全人工乳に比べて感染率の増加はないというふうな結論が出てございます。
 所期の目的、予定の調査数よりも少し少なかったということもございまして、その当時まで出ていた文献のメタ・アナリシスを当時の研究班で行っておりますけれども、その結果でも短期授乳で感染率の上昇はないというふうな結論になってということで、板橋班からの結論としては、90日以下の短期授乳であれば、児の感染率は完全人工乳に比べて増加はしないという結論を出してございます。
 一方で、板橋班の研究のもう一つ大変重要なメッセージは、この研究に登録されたお母さんで短期授乳を選んだお母さんのうち、3か月の時点で予定の期間でやめられていなかった方が3分の1いるということです。これは推測ですけれども、1か月までフォローされていて、その後、完全人工乳に移行する本番のタイミングでお母さんが1人になっていて、十分に自分で対応し切れなくて、やめられなかったということが少なからず起こっているということを強く示唆しているものでございます。このデータも今回の改訂マニュアルにデータとして報告、載せてございます。
 そういったことを踏まえて、このマニュアルは全部で90ページぐらいに上るものですけれども、最も重要なエッセンスである第4章の一番冒頭にこの章のまとめというのがあって、これが今回のマニュアルの最もエッセンシャルな部分でございますので、このページだけを上げてございます。栄養方法の選択に関して、経母乳感染ということに関して言えば、母乳を上げなければ絶対に母乳感染は起こらないわけですから、完全人工栄養が最も確実な方法であるということは変わらないということを明記してございます。一方で、板橋班の研究データが出たということがございますので、短期母乳栄養を希望する場合は、90日未満までであれば感染率に差が出ないということで、90日未満までに完全人工栄養に移行できるようにという形での短期母乳栄養を選択肢の一つとして上げてございますけれども、非常に重要な点は、先ほど示しましたように、きちんと完全人工栄養に移行できるようにケア、サポートがなければ様々な困難を伴いますので、失敗につながる可能性、リスクが非常に高いということでございます。
 したがって、そのために、そこをサポートする助産師外来や授乳支援外来等で適切な乳房ケアが行われる体制が組まれているということが必須であると。逆に言えば、これがなければ短期授乳を勧めてはいけないということで、これがなければいけない。裏返して言うならば、この体制の整備が今後ぜひとも必要であるというふうなメッセージも込めてございます。
 後ほど出てくるかもしれないのですけれども、日本産婦人科医会のほうで、当班の班員でございます昭和大学の関沢教授がHTLV-1に関連した調査を行っておられます。正確なデータの私からの公表は今回は避けさせていただいて、班会議のほう等でまた公表いたしますが、実際にこの調査でもって短期授乳を選んだお母さん方がどのような経過を取ったのかということについて、非常に興味深いデータが得られることが期待されますので、2次調査を行うということで検討しておりましたが、医会調査の計画の段階で2次調査というのが計画として入っていなかった関係で、それを追加するのに改めて倫理委員会その他を通すのが非常に時間がかかるだろうということで、改めて別途これに関しての調査をやる方向でどうかということを研究班内で検討しているところでございます。ただ、現時点で得られた1次調査の結果だけでもこういった体制の必要性を示唆する非常に興味深いデータが出てございますので、必要に応じてまたコメントをしていきたいと考えております。
 私からは以上でございます。
○渡邉座長 ありがとうございました。
 ここで、議題にございませんけれども、直前に石渡構成員から参考資料を頂きましたので、御説明をいただければと思います。石渡構成員、参考資料の説明をお願いたします。
○石渡構成員 2023年9月から11月に調査をしました。全医療機関に調査したのですけれども、回答率が64.4%で、大体42万等々の出産時をカバーしているという状況であります。
 エッセンスだけお話ししますと、感染してから発現まで40年以上時間がかかるわけですが、生涯発症率は女性で大体50人に1人ぐらいであります。ただ、発症した場合には化学療法等を行いますけれども、予後は非常に不良だということであります。感染経路としては、今、お話にあったような母乳を介する場合と性交等の水平感染、あるいは出生前の胎盤感染あるいは産道感染というのがございます。全国のキャリア数はおよそ72~82万人と言われていますけれども、抗体陽性率が平均で0.3%ほどであります。
 HTLV-1の母子感染の予防が重要ということでありますが、母子感染の予防のための公費補助のもと、ほとんど全部の妊婦さんがスクリーニング検査をやっております。
 先ほどお話がありましたように、産婦人科診療ガイドラインは完全人工栄養を推奨(産婦人科診療ガイドライン産科編2023CQ612「HTLV-1検査と陽性例の取り扱いは?
のAnswerに、HTLV-1キャリアの場合、経母乳母子感染予防の観点から、
完全人工栄養が最も確実な方法であり、最もエビデンスが確立した方法として推奨される(B))しているわけですが、板橋班の研究等々から産後90日未満であれば、短期母乳の栄養を完全人工栄養の場合と同等に母子感染予防ができるという報告がございます。しかしながら、30%の産婦さんは授乳を中止できずに長期の母乳栄養となってしまっているわけであります。
 次をお願いします。
 これは北海道、東北あるいは九州、ブロック別に調査したもので、2012年から2023年までをプロットしています。御覧のように、九州地域においては陽性率が減少しておりますけれども、一方、ほかの地域、特に関東地方等々では減少していないという傾向が明らかであります。
 水平感染の可能性というのは今回の調査からも分かってきているのですけれども、2ポツに書いてあるHTLV-1のキャリアが7.3%いるということが分かりました。これはどういう調査かというと、初めのときは陰性だったのですが、2回目、3回目の妊娠のときにキャリアの方で陽性者が出てくるのです。それが大体7.3%いるということが確認されてきました。
 HTLV-1のキャリアの中で77.4%が人工栄養を選択しておりまして、短期母乳栄養の方も12.8%ございました。ただ、その方たちが3か月でやめられるかというと、皆さんやめているわけではないということです。
 短期母乳栄養の選択者の中で、特に九州と関西地域では短期母乳栄養を選択する方が比較的多いと。母乳ケアは助産師を中心として行われております。3分の1は1か月健診でケアが中断されている。これはどういうことかといいますと、産婦人科の中で今、1か月健診をやっておりますけれども、それ以降の健診につきましては、産婦人科のほうはあまり関わっていないということがあります。4分の1でフォローアップが十分行われていないのではないかということが推測されます。
 HTLV-1のキャリアから生まれた児のフォローアップですけれども、小児科医に依頼されていることが多くて、その中で特にフォローアップされていないことが1割程度あるということも問題になっているのではないかと思います。
 産後の妊婦のフォローアップの専門施設に紹介したり、あるいは自施設で行うのは50%ということでありますけれども、実は私たちはいわゆる母子感染の防止ということについては非常に力を入れてやっているわけですが、5%以下であると思いますけれども、将来ATL等々になってくるわけなので、その方たちの精神的なフォローアップあるいはケアということも今後必要になってくるのではないかと思っております。
 現状においては40%の施設の地域においてHTLV-1の専門施設に紹介するというシステムができているということでありますが、これは全国的にきちんと対応ができているわけではありませんので、この辺のところも問題になってくるのではないかと思っております。
 実は膨大な資料があるのですけれども、今回は短い時間ではしょりましたが、医会も全力を挙げて母子感染の防止に努めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○渡邉座長 ありがとうございました。
 それでは、ここで質問、御意見等を伺う時間を取りたいと思います。御発言がある場合には手を挙げて発言の意思表示をしていただけますか。森内先生、よろしくお願いいたします。
○森内構成員 森内です。
 小児科医としての立場になるかもしれませんけれども、まず相良先生に質問ですが、水平感染、近年になって増えてきたという認識でよろしいのでしょうか。
○相良参考人 相良でございます。御質問ありがとうございます。
 近年になって増えてきたというか、分かるようになったというのが正確な表現ではないかと考えます。
○森内構成員 ありがとうございます。
 若者への検査をどんどん勧めていくということに関してですけれども、それで水平感染、性感染を減らすことでキャリアを減らしていくということにつなげるということは、重々理解しているのですが、若者がそういう検査をすることによって得られるメリット。これは相良先生に限らず、ほかの皆様方に質問ですけれども、本人としてのメリットは何なのか。それは例えば0.3~0.4%ぐらい起こるHAMを防ぐということなのか、それともさすがに今みたいに長寿になってくれば、10代後半とか20代である一定数ATLとかを発症するかもしれないから、それを防ぐということなのか。そういうHTLV-1関連疾患を防ぐということのメリットを本人に与えるから検査を勧めるということなのか。
 それから、先ほども出ましたように、九州も含めた割合エンデミックなところでは、1回目の妊娠のときには陰性だった、キャリアではなかった人がその後でいつの間にかキャリアになっていることがあります。それが妊娠初期にスクリーニングしたときには気づかれていなくて、実際上は次の妊娠のときに陽性だったということで、振り返って最初のお子さんは母乳で育てて、その子を調べてみたら実はキャリアになっていた。どうやらタイミング的にはちょうど悪いタイミングでキャリアになって、そういう母子感染予防対策を取らなかったために母子感染が生じてしまったということは、今後も起こり得ることだと思います。
 そういうことを防ぐということで、男性が仮に自分がキャリアだと知った場合にどうするかということですが、完全に防ごうと思ったらコンドームをずっと使うということだったらば、そもそも挙児を希望しないことにつなげるということになって、それが果たして本当にいいことなのか。もしくは自分がキャリアであるということを知ってしまったために、そういういろんな悩みを増やしてしまうことにもなるかもしれない。それに対するケアがきちんとできない。つまり、本人にとってのメリットがないし、少子化が叫ばれている日本で、ますますそれに拍車をかけることに下手をするとつなげてしまうかもしれないことになる。それにどういうふうに対応するかというのがきちんと決められない中で、若者にどんどん検査をしましょうと呼びかけることはちょっと難しいところがあるのかなと思いました。
 ですので、まず本人に対してのメリットで私が知りたいのは、若い頃に水平感染するとATLのリスクがどのくらいあるのだというメッセージを出すことができるのかどうかということ。HAMに関してはある程度しっかりとしたデータがあると思いますけれども、本人に対してのメリットがどうなのか。それから、先ほどお話ししたように、今の母子感染対策から漏れが出てしまうという点でのメリットを考えるべきだということなのか。検査をするからにはそういうメリットをきちんと打ち出して、想定されるデメリット、本人に対する心理的なストレス等々も含めたデメリットとのバランスがどうなっているのかをまずはきちんと検討しておく必要があるだろうと思いましたので、そういうふうな質問をさせていただきました。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 もしよろしければ、相良先生から一言。
○相良参考人 相良でございます。
 非常に厳しいというか、現実味のある御質問だったと思います。森内先生からのお尋ねの若者に検査をして何になるのかということですが、私としては、一番のメリットは、赤ちゃんにはお母さんのおっぱいを飲んでもらいたいのです。なるだけそういうことは増やしていきたい。ですから、水平感染というのはなるだけ止めていきたいということが1つあります。
 ただ、献血者の方で陽性になった方についても、挙児についてどうするかという御質問は多々いただきます。血液センターからのお答えは、挙児については、自然になさってくださいということをお伝えする一方で、(妊娠期間中など)挙児を求めないときには、やはりコンドーム等の使用ということを少し念頭に置いていただけたらいいなと。(ウイルス)に暴露される量とか頻度とかいうことによって感染が生じてしまうことは多々あることだと思います。これはほかのSTIと同じような形だと思います。ですので、機会をある程度選択していただくということを認識していただく。
 また、HTLV-1に感染しているから控えないといけないというのは、これからの啓発にもかかってくると思いますけれども、先ほど先生から御指摘いただいておりますように、95%の方は天寿を全うされるということを考えたときに、そこまで特別視をしなくてもいいことだということを啓発していくことも必要で、CMVやHBV、EBVといった感染症と同じような扱い方をしていけるような啓発をしていくということを若者に対して同時にお伝えをする。要するに、正しく恐れる、正しい知識を持っていただくということが一番大事かなと思います。そして、検査をしていただく中で、妊婦さんという非常にセンシティブな時期にいきなり、こんなことなのでおっぱいをあげないほうがいい、3か月でやめたほうがいいということを言われるという前に認識をいただくということも大事なミッションなのかなと考えます。あくまでも私の私見です。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございました。
 そのほかに御意見とか御質問とかございますでしょうか。お願いいたします。
○石渡構成員 石渡です。
 今、お話がありましたように、経母乳感染ということは、断乳等々によって防げるわけです。ただ、少数ながら胎内感染、赤ちゃんが子宮にいる間に感染したり、経胎盤感染、あるいは産道感染ということも数%、2%以下だと思いますが、あることも事実なのです。ただ、ほとんどの場合、予防できていくわけなので、挙児を希望している方にはお産をしていただければいいと思うのですけれども、こういう知識というのは非常に重要なことなので、そういう啓発が必要ではないかと思うことと、もう一つは社会的な偏見です。エイズのこともそうですが、ほかの感染症と同じように、国民全体がそういうことに関して偏見を持たないような、そういう教育を早い時期から行うべきではないかと思っています。
 早い時期というのは、今、包括的性教育といって、私たちの人権あるいはそういうものをベースとした教育を今、展開していこうと思っているのですけれども、学習指導要領等々、文科省のほうは、いわゆる感染予防であるとか避妊のことであるとか、狭い意味の性教育を進めているようですが、もうちょっと包括的な幅広い教育を小さいうちから行うことによって。小さいというのは小学校の高学年からですが、こういう社会的な偏見というのはだんだん除かれていくのではないかと思っていますので、そこは重要な点ではないかと私は考えております。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 山野先生が手を挙げておられますので、山野先生、どうぞ。
○山野構成員 ありがとうございます。
 先ほどの森内先生のコメントに少し関連すると思うのですが、母子感染対策を実際に2010年、総合対策を始める前に、母親に全国一律で陽性を告知して対策をするということによって、陽性と判明した母親がかなり混乱するようなことが起こるのではないかという議論がかなりありました。そういう懸念もありながらも、しっかりと感染を予防するということが重要であろうということで、まずは母子感染対策という部分をしっかりとやっていきましょうというふうに決まって、実際にその後、陽性と判明した妊婦さんを結構御紹介いただいて、適切に御説明をして、その後も年に1回ぐらいはフォローするという方を結構今、診ているのですけれども、きちっとそういうふうに説明をして、その後のフォローアップをきちんとやっていくことによって、そういう方々の人生がおかしくなったということは、私の外来にかかっている方に関しては全くないです。
 なので、本当に感染者を減らすということを我が国でやっていくということを実現するのであれば、そういう体制をしっかりと充実した上で、次は水平感染の対策に取り組んでいかない限りは減らないのではないかなと懸念しております。
 相良先生に1つ質問ですけれども、どうしてもドナーエフェクトといいますか、例えば妊婦さんで陽性となった方に御説明したときに、御家族の方とかも献血に行かないという感じに結構なってしまうのです。お伺いしてみると。なので、陽性が疑われるような方というのは献血に行かないようになっているので、かなりドナーエフェクトが、特に2010年、全国一律にこういう対策をした後に大分その効果、エフェクトが出てしまうような状況になっているのではないかなと感じております。
 先生は、昔のデータ、陽性率をそのまま横に引っ張って想定の陽性率とされていましたけれども、以前山口先生が公表したときとその昔のデータを比べると、同じ年代の方は増えていたのです。結構増えていたのです。それがもとで水平感染が起こっているのではないかということをたしかこの対策協議会で議論して、これは大分増えているので、ここは水平感染の実態をちゃんと解明すべきだという議論をさせていただいて、ちょうどそのとき佐竹先生が発表されて、その後の解析で、先ほどのような水平感染の実態が非常に明らかになってきたという経緯がございます。
 これは横に引くとなると、この期間、この集団において水平感染は基本的にはゼロという前提での横への推移となるので、今、水平感染が多いというデータがある中で、これぐらいの水平感染の数だったら、横ばいでなくてこれぐらい増えることになってしまうというシミュレーションができるのではないかなと思ったのですが、そういう補正の仕方というか、そういう議論とかはなかったのか。その後に水平感染のデータが出てきたと思いますので、そういうエビデンスを基にもう一回補正をするということで、より正確な感染者数の推定ができないのかということを教えていただきたいです。
○渡邉座長 では、相良先生、ちょっと手短にお願いいたします。
○相良参考人 御指摘ありがとうございます。
 補正の件ですけれども、まず下振れしていたというお話をしたのは、恐らく妊婦健診によって陽性が分かった方たちが献血者の集団から離脱しているという影響が大きいのだろうということを考えまして、妊婦健診が始まる前の数字からの水平に線を引いて、少なくともこれだけは下振れしているよと。それ以上のところは何とも読めない。要するに、妊婦健診で離脱したのか、何で離脱したのかということが献血者の履歴からは分からないので、最低でもこれだけということで、先ほどお話をしそびれているかもしれませんが、あくまでも献血集団を用いたキャリア数の推定というのはアンダーエスティメーションであることが前提です。健康な方たちが頻回で献血してくださるというのが献血集団の主な母集団ですので、健康だというふうに自負していらっしゃる、少なくとも自覚症状が全くないという方たちが献血してくださっている中にいらっしゃるキャリアの方というところから推測している数字です。
 簡単に言いますと、例えば鹿児島の特定の地域の集団健診をしたときの陽性率とは、地域によって3倍とか9倍とか違いますが、陽性率が献血者との間で乖離がございます。それははっきり分かっていることですので、一般集団との陽性率というのは差があるだろうということが考えられます。また、水平感染を積み増しした形でのキャリア数の推測というものも以前佐竹先生とさせていただいております。そこで得られてきている数字というのが今回の65万8000人という補正とあまり変わらなかったというのが2021年、2022年というところの調査の数字となっておりますことを申し添えます。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 塚崎先生のほうから御発言をお願いいたします。
○塚崎構成員 先ほど山野先生から妊婦でHTLV-1キャリアと同定された方のフォローというところで、山野先生のようにしっかりHTLV-1を理解されていらっしゃるところにお見えになったキャリアの人に混乱はなかったというお話があったかと思います。
 私、以前長崎にいたときに血液内科として、ATLの患者さんで、御本人が妊婦健診のときにキャリアと指摘されていたという方を3~4名診させてもらったことがあります。その方々が全て同じように言われたのが、自分がATLになったというのは、HTLV-1キャリアだったから仕方ないというところがあるというのは分かりますと。ただ、自分がHTLV-1キャリアと言われて、子供に母乳を与えなかったことによって、しっかりそこの予防ができたということが大変ありがたかったと思いますということ。3~4名しかいませんでしたけれども、皆さん、同じようにお話をされていたというのがすごく印象に残っています。
 それに対して、先ほど森内先生がお話しされていた若い方々でHTLV-1の検査を行うというところはかなり大きな違いがあると思うのです。妊婦さんでのHTLV-1の検査を行うということとは分けて、森内先生が言われたところに関しては、我々は慎重に考えていくことが必要かと思いました。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 ほかに御発言ございませんでしょうか。
 活発な御発言、どうもありがとうございます。
 それでは、時間も押しておりますので、次のほうに移りたいと思います。
 今度は私から資料4、普及啓発事業について紹介させていただきます。
 スライドをお願いします。先へ回してください。
 これはもう既に厚生労働省の担当の方から御説明がありましたけれども、総合対策における重点対策の中の4番目に、国民への普及啓発・情報提供の記載がございますが、ここに書いてありますように、様々なことが取り組まれております。また、医療関係者への普及啓発・研修・情報提供ということもいろいろな形で組み込まれておりました。これは先ほど厚生労働省側から発表もございました。
 次をお願いします。
 啓発活動の実績というのは、総合対策が始まった時点で様々な研究班がパンフレットをつくったり、資料作成に当たりました。また、厚生労働省のほうも「HTLV-1情報ポータルサイト」を開設して情報提供をしております。
 研究班の取組としては、総合対策発足直後に先ほど申しましたようにいろいろな形での普及啓発の作業に関与させていただいております。それから、総合対策発足後約10年を経てから新たな研究班として私の研究班が普及啓発を中心に取組をするようにしております。
 学会のほうですが、HTLV-1学会のほうは、情報提供としてはe-learningを準備しておりまして、最近の研究情報に関しても提供しております。
 もう一つ大事なところは、相談の窓口としてのHTLV-1学会の登録医療機関というものを、一定の資格審査をした上で認定をしておりまして、これまで全国で20施設が登録医療機関として登録されております。
 次のスライドをお願いします。
 普及啓発・情報提供という内容を考えたときに、対象が誰かによってそのコンテンツ、内容が異なるであろうというのがこの図であります。一般の人には上のほうの3つ、4つぐらいまで。医療関係者に関しては、もちろんウイルスの知識も感染様式等の基本的なことも含めて情報提供が必要なのですが、相談対応とか関連疾患等の以下の部分が重点になるかなと考えて取り組んでまいりました。
 次のスライドをお願いします。
 情報提供というのは専門家から一方的に対象に向かって情報を流すという関係と、もう一つは下段のほうに出ております双方向性です。情報を求めてきたときに対応する。双方向性の対応も必要であろうという考え方を踏まえていろいろと手段を考えてまいりました。
 次のスライドをお願いします。
 これが研究班として取り組んでまいりました「HTLV-1情報ポータルサイト」でございます。これが最初のページに当たりますが、情報を提供するという部分が右側に黄色で書いてありますが、対象をいろいろ考えてこのような形で情報を提供する。
 左側のところは、相談対応はこういう形でやっていますよということを情報として示しております。
 次のスライドをお願いします。
 最初の情報提供ですけれども、まずHTLV-1と関連疾患の基礎知識の部分です。これは一般向けの情報、Q&Aが中心でありますが、医療従事者その他、行政担当者向けにはe-learningとか、そういったものも用意されているということでございます。
 次のスライドをお願いします。
 情報提供のもう一つ大事なところは、医療関係者、実際の現場の医療者、あるいはその研究に携わる人たちにも最新の情報を提供するということが重要な一つの役割だと思っておりまして、情報提供の最新の情報紹介のサイトをつくっております。1つは国内の研究者がどのような発表をしているかということ。もう一つは、国際ヒトレトロウイルス学会がホームページでリアルタイムで情報をアップデートしておりますので、そこにリンクするという形で情報提供をしております。
 次のスライドをお願いします。
 もう一つはHTLV-1関連の研究への参加とか登録のことを紹介するページとなっております。ここにあるバナーを押しますと、それぞれの研究のところに詳細に入っていくことができます。その下の段に置いてあります「キャリねっと」というのは、内丸先生がずっとキャリアを対象にして運営してこられたサイトですけれども、これは独自に運営していただいて、我々のところからリンクだけ張らせていただいているという形になっております。
 次のスライドをお願いします。
 こういったウェブサイトを作成しまして、アクセス解析、去年の12月31日までですが、これだけアクセスがありましたということと、どういう地域からアクセスがあったかということがこれで分かるかと思います。右下のほうを御覧いただいて分かりますように、実は日本語のウェブサイトですが、全世界からのアクセスがあるということが非常に大事かなと思います。全ページを英語化するということはいろいろ議論したのですけれども、我々が英語の翻訳をしなくても自動的にAIがやってくれるだろうから、このままでいいだろうということで、現在はそのまま運用しております。実際にはかなりアクセスがあります。
 次のスライドをお願いします。
 キャリアの相談ニーズに関して我々がどのようなデザインをしたらいいかということで、このような基本的な構造を考えました。つまり、キャリアの中で、今、準備したようなウェブとかその他での情報で十分だと思われる方はそういうポータルサイトで見てもらう。ウェブで見たけれどもよく分からない、ちょっと相談したいこともあるなという場合には、電話相談とか、キャリア当事者であればオンライン相談を受けていただく。あるいは医師に相談したいという方もオンライン相談とか受診をしていただくような形で、こういうふうに対象、需要を考えてデザインをいたしました。
 次のスライドをお願いします。
 そういったことを含めまして相談対応はどうなっているかということを、厚労省の研究班で保健所での活動のアンケート調査を行っております。これは第1回で基本的なところの情報を収集して、それに基づいて第2回目のアンケートを行うということで、現在進行中であります。
 次のスライドをお願いします。
 第1回目の大まかな概略のアンケートの部分での集計の一部です。例えばHTLV-1に関する相談があったかというと、「なかった」というところが75%、80%ぐらいに当たるということと、もう一つ、右下のほうにありますように、HTLV-1の抗体検査を実施したことがあるかというときに、90%ぐらいがやったことがないということが実態として分かってまいりました。
 次のスライドをお願いします。
 先ほどちょっと触れました無料電話相談です。これは対象者を限定しておりませんので、キャリアの当事者とか疾患を持っている患者さん、あるいは医療機関の医師、看護師その他の方からもいろいろな問合せがございます。いろいろな内容がございますけれども、実績と内容のまとめのところの上のほうに書いてありますが、実は検査を受けられる場所を知りたいというのが約2割以上。ほぼそれに準じたものが13%ぐらいある。つまり、どこで検査を受けたらいいか、どこに相談したらいいかがよく分からないということで電話を受けている部分がかなりあるというのが分かりました。
 次のスライドをお願いします。
 どこで検査が受けられるかということで、検査と相談体制を整備するということが非常に密接につながっていると考えます。電話相談では検査を受けられる場所はとダイレクトに聞かれているだけでも22%。そのほか13%ぐらいが同じような内容。合わせて35%ぐらいがそういうことです。
 保健所のほうは、実際に検査をやった実績がないというのが89%になります。そこで、HTLV-1の抗体検査とか相談対応の拠点を整備して充実していくということが大事であろうということです。
 現状ですが、HTLV-1学会が登録医療機関を20機関承認しておりまして、そこが相談対応、経過を見ていく、あるいは治療の拠点となっております。
 もう一つは、20年前から進めておりますHTLV-1キャリア、感染者のコホート・レジストリ研究(JSPFAD)に参加している医療機関が全国で50施設ぐらいございます。ここは常にキャリアのフォローアップをしたり、いろんなリスク評価をするという研究を行っておりますので、こういう施設が非常に適切な拠点になるかと思います。
 将来的にはこういったコホート・レジストリ研究をきちんと拡充・整備していくということと、もう一つは学会の登録医療機関を増加させるということができれば、相談とか検査体制の充実に向かって進んでいくのではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。
 相談対応をするときに非常に大事なのがいわゆる診療ガイドラインの存在です。ということで、学会と私の研究班で協力いたしまして診療ガイドラインを作成することになりました。ただ、御承知のように、既に関連のガイドラインとかそういったものが存在しております。ここに示したように、産婦人科でもガイドラインが存在します。それから先ほど内丸先生から紹介がありましたように、母子感染予防対策マニュアルというのも存在します。それから血液内科のほうでは造血器腫瘍ガイドラインがあるとか、そういった様々な関連のものがありますので、そことの調整、整合性を保った形でガイドラインをつくるということでスタートいたします。
 次のスライドをお願いします。
 これはキャリア診療のアルゴリズムで、詳しいところ、非常にたくさんごちゃごちゃ書いてございますので、興味のある方は後ほどよく中身を見ていただきたいのですが、専門家が一生懸命頭を絞って、実際にはどういう場合があるだろうか、その場合にどういう流れで相談対応をしたらいいのか、情報提供したらいいのかということを工夫したいわゆる見取図、マップになります。
 次のスライドをお願いします。
 今のガイドラインは完成に向かっておりますが、3月末に完成の予定です。
 もう一つ工夫したのが、オンラインでキャリアの方から直接相談を受ける、いわゆる受診勧奨の枠組みで対応するということを設置いたしましたが、実際には利用者の数が非常に限られていて、利用に対する何らかの障害があるのではないかと考えています。ということで、十分検討を進めた上で、本来離島とか遠隔地の方から相談を受ける上では非常に有益なシステムだと思いますので、有効な利用法を検討していきたいと考えているところです。
 次のスライドをお願いします。
 情報提供のもう一つの部分ですが、先ほどもちょっと触れましたが、医療者・研究者に対して、現在の研究の進捗状況がどうなっているかという情報をきちんと提供するというのも非常に大事な役割だと思います。HTLV-1総合対策のスタートのときの5つの重点施策の中で、HTLV-1関連疾患研究を充実させるということが5番目の柱になっておりまして、HTLV-1関連疾患研究領域というものが設立されております。そこのカテゴリーに該当する研究課題、AMED及び厚労省の研究課題を研究者の代表の方にお願いして、年に1回成果を発表していただくイベントを行っているということで、情報共有、ディスカッションの場を設けております。
 次のスライドをお願いします。
 もう一つは、保健・医療行政の方々への情報提供のカテゴリーになるかと思いますが、左側には我が国のキャリアの方が最初に提案されて、世界HTLVデーというのが設立されました。これが今、全世界で承認されて活動が行われております。それに合わせて記念講演会を毎年開催している。
 もう一つは、先ほどちょっと話が出ましたけれども、WHOが2018年からHTLV-1の感染対策に取り組み始めました。2019年に東京で一度スタートの会議を開催されまして、そこでHTLV-1を感染予防対策の柱の一つに組み込むということが決まっております。
 もう一つは、国際学会を通じて様々な活動、情報交流をしているというのが現状でございます。
 次のスライドをお願いします。
 研究班の取組としては、ここに細かく書いてあります。細かい説明はしませんが、1つはウェブを用いた情報提供と啓発活動を整備・強化したということです。2番目は、今回、結果については触れませんでした。現在進行中なのですが、厚労省の側から御提案をいただきまして、感染者数の実態を把握するための一つの試みとして、医療施設での感染者数の実態を調査していくと。経年的に調べていくので、参考、何らかの情報が得られるのではないかということで、現在アンケート調査のパイロットスタディを動かしております。3番目で診療・相談体制を整備するということで、先ほど説明いたしました。4番目、5番目も説明したところであります。
 次のスライドをお願いいたします。
 これが最後のスライドだと思いますけれども、先ほど相良先生の御発言にもございましたが、一番大事なことは、HTLV-1に関する認知度を高めるということがいまだに重大な課題であろうと思います。これが基本となって、いわゆる偏見差別の解消とかいうことにつながっていくだろう。したがって、ありふれたウイルス、ほかのウイルスと同じような受け止め方をしていただけるような事態をつくっていきたいなと考えて活動しているところです。
 以上です。
 それでは、ただいまの発表に関しまして御質問とか御意見等ございましたらお願いいたします。永井先生、お願いいたします。
○永井構成員 よろしくお願いします。
 細かいことで恐縮なのですが、電話相談の多くがどこで検査できるかということ。
○渡邉座長 検査をしていただける場所はどこかという問合せですね。
○永井構成員 それに対して、どう答えているのですか。
○渡邉座長 基本的にはHTLV-1学会の登録医療機関と我々のコホート研究の参加施設が最も専門家がおりますよということをまずはお伝えします。ただ、実際にはそういう施設になかなか行けませんので、保健所のほうとかいろいろ当たってみてほしいというような答え方をしております。
○永井構成員 保健所でやってくれないですよね。
○渡邉座長 9割方やってくれないのですよ。
○永井構成員 「検査しないのがいいのではないでしょうか」というような答え方。先ほどの森内先生のお話のように、単純に知りたいというだけであったら、専門の病院を紹介するのが適当かしらという疑問を感じました。
○渡邉座長 ありがとうございます。ただ、我々の立場からすると、それはあり得ない答えでございまして、病気の基になるウイルスを持っているということをきちんと知った上で、適切な対応をしていくということを勧めるというのが医療者の立場であろうと考えています。今、きちんとした形で十分な対応ができないというのは、そちらの側が問題なのであって、見えないようにすることはあまり適切ではないと考えております。これは我々のほうの立場でございます。
○永井構成員 できれば国民全員が検査して陽性かどうかを知っておいたほうがいいとお考えなのですか。
○渡邉座長 いえ、そうは思いません。リスクのある方とか希望のある方に調べて、適切な対応の仕方を。
○永井構成員 知識が普及して、こんな病気があるのだということをみんなが知って、そうすると、みんなが検査してほしくなるのがいいことなのですか。
○渡邉座長 知って悪いことはないと思います。20人に1人は生涯ATLを発症します。これは全国民が胃がんになる確率よりはるかに高いと思います。
○永井構成員 危険な性行為があった人に限るとか。それでいいのかどうか分かりませんけれども。
○渡邉座長 ですから、いろんな考え方。
○永井構成員 ハイリスクの人でない限り、検査しなくたっていいよという。
○渡邉座長 それは感染症の実態を正確に把握して対策を取りましょうという物の考え方には合わないですよね。恐らく世界の医療者が、WHOでの議論でもそうでしたけれども、まず実態を把握することがトッププライオリティーであるということが、感染症対策、肝炎、エイズ、性感染症の3つの柱の中できちんと議論されていることですので、一応医療者としては実態をきちんと把握した上で、それぞれ適切に対応する、どのようしたらいいかということを考えるというのが我々の立場であろうと考えております。
○永井構成員 エイズだって、皆さん、検査しましょうとは言わないですよね。
○渡邉座長 リスクのある方ですね。
○永井構成員 ハイリスクに限って言うのであって。
○渡邉座長 はい。
○永井構成員 エイズでさえという言い方は変かもしれませんけれども。
○渡邉座長 日本は、エイズの感染者の数は、HTLV-1の感染者の数の100分の1です。そのぐらい国民に広く広がっている感染症ですので、やはり対応も異なってくるのではないかと思います。
○永井構成員 御意見、分かりました。
○渡邉座長 次は内田先生、お願いいたします。
○内田構成員 保健所の検査の実績がないところが9割ぐらいという結果が出ています。これはそうだろうなと思うのが、まず保健所にそもそも相談がない。相談がもしあって、HTLV-1の検査をしてくれと依頼があれば、それを断る保健所はないと思います。検査体制はどの保健所も取っているはずですので、HTLV-1の検査を希望される方が現れれば、当然検査は行うはずと私は認識しているのです。調査結果によってはそうではないという事実が出るのかもしれませんけれども、私の認識はそういうことで、ただ、実際に私どもが保健所で経験することは、そういう御相談がそもそもないということがあります。
 ですので、電話相談でもし保健所を御紹介いただいて、その方が保健所に検査を希望されれば、我々は当然対応するということになるかなと思いますので、一応そのことは、我々の対応がお断りしたいとか、説得して受けないほうがいいのだよということはまずあり得ないなということを申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 実は今、お話しのような実態としてどうなっているかということは、1次アンケートで今、集まってきております。さらにまたそういったことを踏まえて、検査をできない場合には一体何が問題になっているのかということも含めて、詳しい調査を第2次調査でやっているところであります。
 簡単に申しますと、例えば保健所で検査をやろうといたしますと、様々な設備とかそういったものも必要になるかと思います。外注する場合ももちろんあるかと思います。その場合も1つ問題なのが、その場で結果が出ない。今、検査はどこかに外注して返ってくる。そうすると、希望者はもう一度結果を聞きに来なければいけないという不便があります。最近15分で結果が出る新しいイムノクロマト法が開発されて、今、市場に出ておりますので、そういった検査法の改善によって簡便に検査ができて、その場で答えが得られるような体制をつくって、さらに保健所の方々に御協力をお願いしていくという方法を取れないかなということを研究班としては考えているところであります。
 ありがとうございます。
 森内先生、もう一度お願いいたします。
○森内構成員 手段ですけれども、HTLV-1に対する扱いとして一番近いのはB型肝炎ウイルスかなと思っています。HIVとか梅毒というのはスティグマとして強過ぎるということがありますし、性行為感染も母子感染もするということがあります。ただ、ちょっと違うところがあります。B型肝炎ウイルスに関してはワクチンが開発されている。特に  e抗原陽性のキャリアから生まれた場合はなおさらですが、ワクチンで間に合わない分はHBIGみたいな受動免疫の方法もある。それから、進展してきたキャリアに関しては、C型肝炎ほどではありませんが、抗ウイルス薬も非常に発達してきているので、それ以上の進展を防ぐことができる。HTLV-1はそこまでは行っていないわけですけれども、あえて言えばその中では一番近いかなと思います。
 届出に関することでも、急性肝炎としての届出は5類としてすることになっていますが、B型肝炎ウイルスのキャリアとしての届出はない。A型肝炎とかE型肝炎とかも届出はありますけれども、あくまでも急性肝炎としての扱いで、キャリアを届けるということはしていない。
 実態を知るということは非常に大事なことなのですけれども、ただ、希望する人を調べれば実態が分かるかというと、多分そうはならないと思います。B型肝炎に関して、もともとはキャリアのお母さんから生まれる赤ちゃんにだけワクチンを打っていたり、HBIGを打っていたりしたのを、今はユニバーサルのワクチネーションに変えた。その理由となった根拠は、いろんな病院にほかの理由で受診した子供たちの血液の残血清とかを使ってs
抗原、HBc抗体とかいろんなものを調べて、どうやら水平感染が結構起こっているぞということで、全ての赤ちゃん、キャリアから生まれる赤ちゃん以外も全部ワクチンを打つべきだということを、その事実をもって実態をちゃんとそれで捉えることができたので、そういう方策を取ったということで、先に進めることができたと思います。ですので、実態を知るという点で、ただ単に一部の希望する人に検査をすれば分かるかというと、決してそういうことではないと思います。
 私は検査をするべきではないと言っているわけではなくて、HTLV-1に限らず、どんな検査でもその検査が陽性だったときにどうするか、陰性だったときにどうするかがきっちり決まっていないのに、ただ検査を行うととんでもないことになるということを言いたいだけであって、先ほど山野先生のところも含めて、きちんと対応しているところでトラブルが起こるわけはないと思います。ただ単に検査を希望してするということであれば、恐らくそうではないところが山ほど生じてしまうということが問題だということです。啓発が同時進行で、少なくとも一歩前に進んでいるのでなければ、検査をどんどん広めるということの弊害がむしろ大きくなるということを言いたいということです。
 実例でよく挙げているのですけれども、私のところに産婦人科のほうから紹介があったのが、要するに、キャリアと分かった妊婦さんが、これはどういう感染経路だという説明も受けた上で、自分の実のお母さんと夫が率先して検査を受けて、どちらも陰性だったのです。それで感染経路の説明まで受けていたものですから、姑さんたちが、「おまえのお母さんからうつったわけではなくて、うちの息子からうつったわけでもないといったら、よその男からうつったのだろう」ということで、結局、離婚になった後で私のところに紹介が来て、要するに、子供のフォローどころではない状態なのでどうしましょうかという相談だったのですけれども、お母さんは自分がキャリアだというのを受け入れていなかったので、PCR検査を自身でも3回も4回もやったという方だったのです。それで、私自身、受け入れて、ああ、五島の出身なのですね、お母さんの子供の頃は、五島には保育園もないし、近所のお母さんが預かっていて、おなかが減ったと泣いていた赤ちゃんにもらい乳なんて普通にやっていたかもしれないですね、そういうことで感染することもあるのですよみたいなことで、やっと少し落ち着いたという経験もあります。
 ただ、そういう説明が長崎みたいに慣れているところの産婦人科の先生から1回もなかったのです。私はキャリアのお母さんに、「陽性だからといって、周りの人は検査をしないでください」とむしろ言っているのです。仮に検査をするときにも、その後のフォローができない形で、「誰かからうつったわけだから、少しでも感染している人が分かったほうがその後の対策につながるのだから」みたいな安易な言い方で「できるだけ検査を」というのは大反対だと思っています。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 あと、山野先生のほうからどうぞ。
○山野構成員 うちの部門の方が電話の無料相談を受けていらっしゃるので、電話相談の状況を把握しているのでコメントします。先ほどの永井先生の御質問で、もう検査をしなくてよいというふうに説明をすればいいのではないかとちょっと聞こえたのですけれども、むしろ性的にアクティブな方から、セクシャルワーカーとのコンタクトがあったので、自分が陽性かどうか知りたいという問合せが結構多いのです。それで、関東は実は保健所が今、全くどこも検査をやっていませんで、先ほど内田先生が保健所に行ったら検査を絶対するはずだとおっしゃったのですが、残念ながら関東はしておりません。
 保健所からも無料電話相談に電話が来て、「検査を希望されてきたのですけれども、どこに御紹介したらいいでしょうか」という相談の電話が、保健所から来ているというのが現状です。ですから、検査をとにかくして知りたいという方に「しなくてもいいですよ」と言っても、必ずどこか別のところに行ってしまうのです。なので、その方に対してちゃんと真摯な対応をしているということにならず、相談対応としては不適切ではないかなと思うので、我々はちゃんと検査できるところを、その方の住所を聞いたりしてしっかりと御紹介しているという対応を今、一生懸命しております。ただ、こちらのエンデミックエリア以外のところでは保健所はほとんどやってくださらないです。内田先生は今、大分県だと思うのですが、全国的に見た場合にエンデミックエリアとだいぶ様相が違うということはぜひ実態を御理解いただけたらなと。今、実際に無料電話相談を受けている担当者は、かなりそういうところで苦労されているというのが現状だということはお伝えできればと思います。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 塚崎先生、どうぞ。
○塚崎構成員 ありがとうございます。
 全国の保健所で一律にできないというのは、それが今、継続しているということは改善すべきではないかと思います。
 それと、HTLV-1キャリアの指針、ガイドライン、最近のものがつくられたというのを内丸先生からお聞きしましたけれども、私はその前の版のときに関わっていたかと思うのですが、基本HTLV-1のキャリアであることが分かること自体にメリットがあるかということについても、先ほど森内先生からお話があったようなところがある中で、たしか以前のガイドラインのときには、それを知ることによってメリットになるということは明らかではないですよということも書いていたと思うのですが、新しいものにおいて、HTLV-1の検査をしないという選択肢もあるということをその相談者に勧めると。そういう一文は今はもうないのでしょうか。
○渡邉座長 まだ最終案が固まっていないのですけれども、そういう記載はなかったような気がしますね。今、つくっているところですが。
○塚崎構成員 基本的にそれぞれの個人の方には知る権利と知らない権利の両方があるということは結構大事なことかなと思ってお尋ねした次第です。たしか前のガイドラインではそこは少し触れていたように。
○渡邉座長 そこはもう一回確認しておきます。最終版になる前にちょっと確認しておきます。
 森内先生。
○森内構成員 先ほど1点言い忘れたので追加ですけれども、B型肝炎のほうと少し比較をするみたいな話でしたが、私たちはキャリアのお母さんから生まれた赤ちゃんで予防対策をしても残念ながらキャリアになった子供たちは、普通に外来でフォローしています。保険診療という形で普通にフォローしています。それはごくまれとは言っていても、小児期に肝硬変になる、肝臓がんを起こす人がいるということや、ちょうどセロコンバージョンのタイミングで肝炎とかを発症したりするし、キャリアの方を上手に消化器内科、肝臓内科の先生たちにトランジションしていかないといけないということも含めて、きちんと保険診療でキャリアをフォローしていくことができています。ただ、HTLV-1の場合には、多分先につなげるのが今のところ十分ではないということもあるのだと思いますが、何か心配だからといって相談したいとか検査をしたいという場合、そして何よりも、今、キャリアのお母さんたちが短期母乳にぜひしたいですとかいうことで、では、助産師の人と一生懸命見ていきながら、きちんと90日以内でやめられるようにしようねということをやったとしても、現時点では保険診療にならないのです。それから、ちょっと心配なことがあるからということで、相談相手ということでお母さんたちに対応するのもいろいろこじつけでやりますけれども、通常の意味での保険診療にはならないです。ですので、私自身は少なくともキャリアの方を診ていく上で、それが保険診療になるような道筋だけはつくってほしいなとは思っています。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。非常に大事なポイントだと思います。
 ほかに御発言は。山野先生、どうぞ。
○山野構成員 先ほどの塚崎先生の質問ですけれども、今回のガイドラインでも陽性と判明した妊婦さんの御家族とかそういうのを含めて、積極的に検査を勧めるということはなくて、しないというふうな選択肢に関しても、そういうことをにおわすような感じのニュアンスというのは書き込んである。今までどおりそこら辺は書き込んであるというふうに理解しております。
○塚崎構成員 それは相談が来たときにも両方を提示されると。知るメリット、知らないメリットということは、HTLV-1キャリア相談のところでは大切かなと思ってお聞きしました。どうもありがとうございます。
○渡邉座長 大分時間が過ぎておりますので、一旦ここまでで議論を止めて、次に進みたいと思います。
 ちょっと話が元に戻って申し訳ないのですが、厚生労働省の方の説明の中で、がん対策のところで第4期がん対策推進基本計画の中にHTLV-1が書き込まれたということはあったと思うのですが、そのことによって具体的に何が変わるのかというところがちょっとイメージが湧かなかったので、そこは補足で説明いただければありがたいなと思いますが、どうでしょうか。
○上野がん・疾病対策課長補佐 がん・疾病対策課でございます。
 こちらの記載、感染症課とも協議して記載をさせていただいておりまして、がん対策推進基本計画については、その進捗というものを適宜管理していくことになります。その中でロジックモデルというものを用いるのですが、HTLV-1のところですと、その指標にHTLV-1の保健所の検査数とか、先ほどもお話がありましたけれども、そういったものが指標に上がっていたりというところで、中間評価は第3期のときにも一定されていたものでございますけれども、中間評価もしていくということになります。
○渡邉座長 今の御発言ですけれども、そうすると、第3期と第4期で変わっていないということですか。
○上野がん・疾病対策課長補佐 指標が一部変わっておりまして、今、第3期の指標をすぐに申し上げられないのですが、記載自体は指標の再検討等々は今回させていただいております。
○渡邉座長 なるほど。分かりました。ありがとうございます。
 それでは、議事を先に進めたいと思います。
 次に、患者会の活動報告として、菅付委員と石母田委員より資料5-1、5-2について御説明をお願いいたします。
 それでは、菅付委員、お願いいたします。
○菅付構成員 スマイルリボンの菅付です。
 「患者とキャリアからの報告と提言」と題してお話をさせていただきます。
 2ページをお願いします。
 スマイルリボンは、アトムの会、カランコエ、ミラクルという3つの会で成り立っており、現在会員は306名、法人19社となっております。
 3ページをお願いします。
 スマイルリボンの主な活動についてですが、各機関と協力しながらHTLV-1を知ってもらうための啓発活動を重要視して活動を続けています。
 次のページをお願いします。
 2003年度の活動として、ATL、HAM患者、キャリア向けの本を先生と協力しながら発行、出版いたしました。
 次のページをお願いします。
 本の出版のいきさつについてですが、新型コロナウイルスの流行により、講演会や交流会を開くことができない中で、患者やキャリアの相談や現状を何とかしたいと思いました。こういう時世だからこそできる活動は何かと考えたときに、本の出版だったら自宅でできることかと考えて実行に至りました。
 当法人に寄せられる相談として、くすぶり型と言われた人が経過観察のみで不安でたまらない。子供は断乳のおかげで感染が防げたが、自分が60歳になるとATLを発症するのではないかという不安。これはここ10年、NPOを設立してからずっと変わらない状況であります。
 6ページをお願いします。
 この本の出版の目的ですが、全国のどこに住んでいてもインターネットを利用できない人も情報が得られる。つまり、情報格差をなくすため。多くの患者の治療に当たる専門医師が教える、一般向けで分かりやすい専門書。また、多くのキャリアママの相談を受けてきた小児科医師からの語りかけるようなアドバイスブックをつくりたいと思いました。
 患者やキャリアの不安をなくすことだけでもなく、全国に流通することで、HTLV-1と感染症について正しく知ってもらう。これが広く啓発につながると考えました。
 次のページをお願いします。
 ここからはHTLV-1を感染症法の5類に指定してほしいという要望についてお話しいたします。まず、HTLV-1の日本と世界における背景についてですが、令和元年、HTLV-1に関するWHOのグローバル協議会が東京で開催され、WHOの感染症対策として優先順位の高いリストの中にHTLV-1が追加されました。令和3年には「HTLV-1テクニカルレポート」が発行され、HTLV-1感染予防対策が性感染症対策の中に含まれています。WHOもHTLV-1をグローバルヘルスの観点において対策の必要性が高い重要な感染症であると位置づけており、その対策に取り組んでおります。
 次のページをお願いします。
 5類感染症指定で起こり得る問題点と現状の問題点、その解決法について考えてみました。5類感染症指定によって偏見や差別を助長するのではないかという意見があります。これに対しては、偏見や差別を生む原因は無知にあり、患者本人、そして社会や周囲、家族が正しく知ることで問題はなくなると考えます。
 現状の問題点として、感染が判明した母親に対するフォローは不十分と言わざるを得ない状況。キャリアの告知とともに、ウイルスや病気についての正しい説明が必要だと考えます。最近は増加傾向にあるとされる水平感染については、性感染症としてクローズアップするのではなく、HTLV-1を正しく理解してもらうための啓発に重点を置いてほしいと考えます。
 次のページをお願いします。
 5類認定にすることで得られる効果として、1、HTLV-1への認識が高まり、行政、医療現場における地域差の解消が期待できる。今の時点ではスマイルリボンには全国の保健所の方からも、患者さんが分からないことやキャリアの方が分からないということで電話連絡があって、私のほうから渡邉先生がつくられているサイトのほうを連絡したり、とにかく現場で対応ができていない状況があるようです。
 2番目として、正確な患者、キャリア数を把握できるようにして、HTLV-1の研究がより一層推進ができると考えます。5類感染指定により正確なHTLV-1関連の患者、キャリアの数が把握できるようになります。献血の数字よりも目に見えない数字を把握するには指定感染症に認定することが一番速いことかなと考えております。
 3番目として、キャリアの相談窓口として保健所が機能しやすくなる。
 結論から言いますと、対策の推進のためにHTLV-1を感染症法における5類感染症に指定するとともに、十分な普及啓発をお願いいたします。
 お話は以上です。ありがとうございました。
○渡邉座長 ありがとうございました。
 それでは、引き続き石母田さんのほうからの発言をお願いいたします。
○石母田構成員 アトムの会の石母田と申します。よろしくお願いします。
 次をお願いします。
 アトムの会は、2003年に鹿児島で現NPO法人スマイルリボン理事長の菅付加代子氏が設立されました。
 2011年に国の総合対策が実施されたのを機に、菅付さんがHTLV-1対策により専念できるように、アトムの会の代表を私が交代しました。
 設立当初は、全国に埋もれる患者を見つけるため、また、HAMという疾患を知ってもらえるよう、積極的にマスコミに協力を求め、新聞掲載やテレビ報道に取り上げてもらうように働きかけました。
 署名活動も実施し、28万筆を集め、当時の尾辻厚労大臣に面会、署名を渡し、HAMの難病指定を要望しました。また、同時に衆参両院へのHTLV-1総合対策の請願を行い、両院の厚生労働委員会にて採択されました。
 次をお願いします。
 会員の交流は、アトムの会の設立以来、ほぼ毎年1回全国大会を各地で開催しました。また、各支部ごとの交流会も数多く各地で実施してまいりました。
 全国大会には多くの研究者や臨床医にも参加していただき、HTLV-1関連疾患の研究情報をはじめ、ウイルスの歴史やゲノムの話などを患者にも理解しやすいように講演していただき、また、その後に先生方にも参加していただいた交流会を開き、患者の生の声を聞いていただき今後の研究の参考にしてもらえる場ともしました。
 次をお願いします。
 コロナ禍での活動としましては、HAMはステロイド治療中の患者が多いという疾患特性があるため、感染の危険度が高いので、残念ながら2020年のコロナ流行以来、集まっての患者交流の場は実施できませんでした。スマホ等を使える方はHAMのグループLINEを使って情報交換をしていますが、高齢者が多く、なかなか参加者は増えず、50名に満たないのが現状です。
 この状況の中、私はHAMやHTLV-1のことをより多く知ってもらえるように、厚労省への要望、研究班や学会行事への参加、民間セミナー等への出席をし、コロナ終息後の活動への足がかりをつくっています。
 次をお願いします。
 2022年以降、この表のような活動をしてまいりました。
 次をお願いします。
 2022年5月にはHTLV-1の国際学会IRVAにて患者会の活動の報告の場をつくっていただき、IRVA International Awardを受賞しました。左端がそのときの賞状です。
 また、2023年3月にはRDD med-U netフォーラムにて患者会と研究者の連携について講演をさせていただきました。真ん中の写真がそれです。
 また、同じ昨年7月にはRare Cancers Australiaという希少がんの患者団体をサポートしているRCAという団体が、東京のホテルでPinnacleというワークショップを2日間にわたって開催したのに参加させていただき、rare cancerの団体でありながら、残念ながらATLについては知っている方がほとんどおりませんでしたので、ATLやHAM、HTLV-1について詳しい話をさせていただき、理解を深めていただいたりしております。以上のような活動をしてまいりました。
 私、患者として今、非常に思うことは、早く治療薬の開発を進めていただきたい。というのは、この僅か1~2年の間にHAM患者で白血病で亡くなった方、ATLで亡くなった方、また、現在がんを患っている方がいらっしゃいます。白血病の患者もそうですし、今、がんを患っている患者さんもそうなのですが、普段QOLが非常に低い中で抗がん剤治療をして、さらに家族に迷惑をかけるのはつらいということで、治療を断ってしまって亡くなってしまいました。また、現在頑張っているがんの患者さんもそういう思いで抗がん剤治療を行わずに過ごしております。こういうことを少しでも早くなくしてほしいということで、治験等をどんどん進めていただき、また、よい結果が出たら早く承認していただけるシステムをつくっていただきたいと切に思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○渡邉座長 御発言どうもありがとうございました。
 患者会の活動報告について御質問とか御意見等がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。山野先生、どうぞ。
○山野構成員 コメントですけれども、我々、「HAMねっと」という患者レジストリとか、あるいは治験にも患者会全体にお声がけくださって、非常に研究に協力していただけましたので、患者会の活動があったというのは大きな推進力になっていると思っておりますので、改めてこの場を借りて感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
○渡邉座長 典型的なPPIの一つの成功例でもありますね。
 どうぞ。
○濵口構成員 母子感染の観点から一言だけお話をさせてください。2023年、産科ガイドラインで完全人工栄養が推奨されているにもかかわらず、研究成果から短期母乳もいいということになって、そして実質的な問題としては90日未満までに断乳すればいいということになっておりますけれども、先ほど内丸先生が言われたように、その後のフォローというのは非常に大事なのです。産婦人科の場合は1か月健診で途絶えてしまう。そして、そこで産後の妊婦の方には紹介をしたり、あるいは赤ちゃんのほうは小児科でフォローしてもらうということになるのですが、どうしてもドロップアウトしてしまう方が多くいらっしゃるわけです。それから考えると、先ほど厚労省が言いましたように、母子保健の対策協議会が10市町村は設置されていないわけです。それが一つ大きな問題かなと考えております。
 そういった意味で、御紹介がありましたようにHTLVの対策加算も予算化されておりますので、国として(抗体検査の実施状況の把握、キャリア妊婦への支援・連携体制、相談窓口・研修・普及啓発事業を行うとされる)、この協議会の設置というものをこの場を借りてでもぜひ推進していただきたいと考えておりますので、御発言をさせていただきました。
 以上でございます。
○渡邉座長 ありがとうございます。
 ほかに御発言。内丸先生、どうぞ。
○内丸参考人 参考人ですので発言を控えておりましたけれども、今、濵口構成員のほうからマニュアルの母子感染予防について触れていただきましたので、少しだけ補足をさせてください。石渡構成員のほうから産婦人科医会の今回の調査の重要なメッセージについて御紹介がありましたが、本当は膨大なデータがあってとおっしゃって、その膨大なデータの中に幾つか非常に重要なメッセージがあって、これを改めて研究班のほうでもまた報告していきますと申しましたけれども、幾つかかいつまんで御報告したいのです。2~3分で終わります。
 今回、短期母乳を選んだ方が12.8%ということで、全部で37名なのですが、このうちフォローアップから脱落をしてしまった、その結果どうなったか分からないという人が25%いらっしゃいます。残りの75%のフォローアップをされた方というのは、実は全員3か月以内に授乳をやめられている。つまり、そういった形でフォローアップすることによってきちんと3か月以内に人工乳に移行することができているのです。25%、4分の1はフォローアップから落ちている。これまでのデータから考えると、その中に多分やめられなかった人がいるのだと思うのです。
 フォローアップがされた方というふうな見方に対して、今回2回目の調査で誰がフォローしたのかというのを見てみると、フォローアップされた方のうちの75%は、先ほどちらっと石渡先生もお話しいただきましたけれども、助産師外来、母乳外来でフォローされたというふうに回答されています。ただ、母乳外来、助産師外来は保険点数化されておりません。自費診療になっているか、持ち出しになっているはずです。したがって、母子感染対策ということをきちっとやって抗体を調べて、選択肢に3か月以内だったら大丈夫だよということを示して、それをちゃんと勧めてサポートするということであれば、助産師外来、母乳外来というのがあればちゃんと成功できている。そうでない人がフォローアップから落ちている。そういった実態があるという状況ですので、そこのところをより広めていくためには、今のままでは不十分である。何らかの形で事業化するなり対策を打つなり、そこはぜひ考えていただきたいと思います。
 森内先生、よろしくお願いします。私が振ってはいけないのだけれども。
○渡邉座長 では、森内先生、お願いいたします。
○森内構成員 以前もこの協議会でそういう議論があったと思うのですけれども、今に関することでも、保険診療がすぐできなくても、妊婦健診などと同じように、いわゆるクーポンみたいなものとかでちゃんと換金するという制度とか、いろんなものをつくればいいのだろうと思いますので、広い意味でのキャリア外来が保険診療になるというのがハードルが高ければ、少なくともまずそこからスタートしていくことで現実味が帯びてくるだろうと思います。
 これは毎回言っていることですけれども、そして毎回この協議会の枠を離れるからということで、そのままうやむやになるのですが、全国の自治体でHTLV-1の母子感染予防対策の協議会とかがうまくいかない最大の理由は、「うち、だって、いないもん」というところがわざわざ組み立てていろんなことをやっていくのに現実味を持たないということがあるのだと思うのです。ただ、私自身はHTLV-1に限るからそういう問題があるのであって、これは全ての母子感染に関わる協議会というものを全ての自治体が持てば、必ずどこの自治体でも影響があります。いわゆるTORCH症候群みたいなものはいっぱいありますし、最近だったら梅毒も問題になっている。そういったものを全て扱うようなところであれば大丈夫であるわけです。
 例えば血液内科の先生がうちはATLしか診ませんとか、神経内科の先生がうちはHAMしか診ませんということはないわけで、母子感染、HTLV-1だけ診ますよというのはそもそもおかしいわけであって、全ての母子感染、同じような周産期とか保健に関わる人たちが関わっている部署で、いろんなマニュアルとかの助けも借りながら、全ての母子感染に周産期、乳児などに関わるような人たちがきちんと対応するようなものとしてつくれば、それは全ての自治体に関係があるし、永続性があるようなものになるだろうと思いますので、ぜひこの協議会の枠を超えてそういう議論を厚労省のほうでもしていただきたいなと改めて申し述べたいと思います。
 以上です。
○渡邉座長 ありがとうございます。大変興味あるといいますか、非常に重要な御提案、ありがとうございました。
 ほかに御発言ございませんでしょうか。
 では、一応そこまでで。ちょうど時間が来たのですけれども、座長としてもう一度一言コメントをさせていただきます。
 相良先生の御発表にもありましたように、HTLV-1の感染者数を正確に把握することがますます難しくなってきております。ですから、それをどのようにしてやっていくかということも大きな課題ではありますが、様々な状況証拠から、国民の約1%は感染者であると考えるのが妥当ではなかろうかと我々関係者は思っております。その中から5%の方がATLになる。この辺は塚崎先生の専門ですけれども、ATLは、つい最近までは発症した患者さんは1年以内に8割近くが亡くなられるという非常に激烈ながんでございます。
 それから、HAMとかぶどう膜炎という慢性炎症がありますが、大体キャリア中の0.3%、0.5%ぐらいがいわゆる有病率で、そういう慢性疾患でございます。様々な病気、さらにQuality of Lifeを著しく下げているという論文も最近相次いで出てきております。したがって、感染症としてしっかり取り組む必要があるであろうと思っているというのが私の立場です。
 もう一つは、何が足りないか。例えば感染予防に関しても、母乳をやめるではなくて、感染予防の何らかのいい薬とか抗体とか、方法が新しく開発されれば。例えばHIVのほうではPrEPと呼ばれる処方で感染を抑えるということも可能になってきておりますので、何らかのそういう新しい技術革新があればいろんなことが解決するだろう。
 感染者数が減ればATLの患者数も減るのですが、残念ながら厚生労働省の人口統計の死亡率、数の確認でいきますと、2000年代に入りましても年間1,000~1,100名がATLで亡くなり続けていて、まだ減少の傾向は見られないというのが現実であります。
 感染予防、発症予防、治療法の開発、こういったことが根本で、それができれば、堂々と告知をし、こうしましょうねということが医療者の側から提案できるようになるかと思いますが、そのためには息の長いサポート、研究の継続が必要だろうということで、今後も厚生労働省の関係部局の方々にはぜひよろしくお願いをしたい。座長の場を借りてちょっと宣伝をさせていただきましたけれども、私のほうからの要望でございます。
 次回の開催につきましては事務局からお願いいたします。
○杉原エイズ対策推進室長 御議論いただきましてありがとうございました。
 本日いただきました御意見につきましては、関係課室のほうで検討課題として共有させていただければと思っております。
 皆様、どうもありがとうございました。
 次回の開催につきましては、また調整の上、事務局より御連絡させていただきたいと考えております。
 本日は以上で終了となります。どうもありがとうございました。
○渡邉座長 どうもありがとうございました。