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- 2023年12月25日 第98回社会保障審議会年金数理部会 議事録
2023年12月25日 第98回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局総務課首席年金数理官室
日時
場所
出席者
(委員)
翁部会長、野呂部会長代理、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、枇杷委員、山口委員
議題
- (1)令和4年度財政状況について―厚生年金保険(第1号)
- (2)令和4年度財政状況について―国民年金・基礎年金制度
- (3)その他
議事
- 議事内容
○村田首席年金数理官 それでは、定刻になりましたので、ただ今より、第98回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料1「令和4年度財政状況-厚生年金保険(第1号)-」
資料2「令和4年度財政状況-国民年金・基礎年金制度-」
でございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は全ての委員が御出席されております。
御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
なお、山口委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
それでは、以降の進行につきましては翁部会長にお願いいたします。
○翁部会長 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
社会保障審議会年金数理部会では、年金制度の安定性の確保に関し、毎年度報告を受けております。本日は、令和4年度財政状況について、厚生年金保険(第1号)及び国民年金・基礎年金制度の報告を聴取いたします。
カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。
本日は、年金局数理課の佐藤課長と年金局事業企画課調査室の楠田室長に出席いただいております。
それでは、議題(1)に入りますが、令和4年度の厚生年金保険(第1号)の財政状況につきまして説明をお願いいたします。
○佐藤数理課長 数理課長でございます。
資料1をご覧ください。令和4年度の厚生年金保険の財政状況となります。まず、例年と同様でありますが、年金財政の関係につきましては私から、受給者・被保険者の実績統計につきましては隣の調査室長の楠田から御説明いたします。また、本日は厚生年金保険の第1号被保険者に係る分ということで、共済組合を除く範囲での御報告となります。
では、1ページの収入欄をご覧ください。4年度の欄になります。まず、主な収入の内訳を見ていきます。保険料につきましては34兆583億円で、前年度と比べて7048億円、2.1%の増加となっています。この要因といたしましては、被保険者の増加や賃金上昇によりまして年度累計の標準報酬総額が2.9%増加したことがあります。標準報酬総額よりも伸びが抑えられているのは、前年度に当たる令和3年度の過年度納付が多かったということによります。
国庫負担につきましては10兆2468億円で、前年度より562億円、0.6%の増加となっております。こちらは基礎年金拠出金の増加に伴い増加しているものであります。
運用収入につきましては、括弧のついた時価ベースで見ていただきますと、2兆7664億円、前年度より6兆7510億円の減少となっております。こちらは時価ベースの運用利回りが前年度より低下し、1.42%となったというものであります。
なお、丸括弧の再掲で、年金積立金管理運用独立行政法人納付金が0円となっておりますが、この納付金は毎年度歳入、歳出の状況を勘案いたしまして、歳入に不足が生じると見込まれる場合に前年度末までの運用収益の中から納付するとされているものであります。令和4年度につきましては不足が生じない見込みであったため、受け入れていないというものであります。
なお、項目が飛びますが、積立金より受入につきましても引き続き0となっているものであります。こちらは運用収入から納付金を受け入れてもなお不足が生じると見込まれる場合に、積立金の元本から受け入れるというものになります。元本の受入れを必要としない状況が続いているというものであります。
続いて、基礎年金交付金につきましては2205億円となっておりまして、こちらは昭和60年改正前の旧法の給付の減少に伴い減少しております。
その下、厚生年金拠出金収入は4兆4935億円となっております。こちらは厚生年金の支出に必要な費用を各実施機関が負担能力に応じて拠出するものであります。厚生年金交付金の減少などに伴いましてこちらも減少しているというものであります。
この結果、一番上の収入総額につきましては、括弧つきの時価ベースの数字で見ますと、51兆9181億円となりまして、前年度より6兆3834億円の減少となっております。主な要因は時価ベースの運用利回りの低下ということになります。
続きまして、支出になります。主な内訳を見ていきますと、給付費が23兆6932億円でして、対前年度で44億円、0.0%の増となっております。
基礎年金拠出金が19兆8035億円で、対前年度で1517億円、0.8%の増となっております。
いずれも伸びが緩やかになっておりますが、近年、人口構成や支給開始年齢の引上げなどの影響によって、受給者の伸びが緩やかになっているということに加えまして、令和4年度につきましては、年金改定が0.4%のマイナス改定であったということなどが要因となっているものであります。
なお、基礎年金拠出金につきましては、基礎年金導入時に3号被保険者となった者が国民年金任意加入時代に積み立てていた積立金、いわゆる妻積みと呼ばれるものを充てていくということになっておりますが、その充当額約1300億円を控除した後の値となっております。
続いて、厚生年金交付金は4兆7647億円でして、対前年度で1368億円の減少となっております。こちらは実施機関が行う厚生年金の費用のために交付されるものですので、こちらの保険給付の見込みが減少したことが要因となっております。
この結果、支出総額は48兆4629億円でして、前年度と比較して92億円、0.0%増加となっております。
収支をトータルしての収支残を見ますと、時価ベースで3兆4552億円となっております。
この収支残に加えて、業務勘定から積立金への繰入225億円を足した3兆4777億円が年度末積立金の増加額となりまして、年度末の積立金の時価ベースの額は197兆5392億円となっているところであります。
収支状況は以上です。
○楠田調査室長 調査室長の楠田でございます。よろしくお願いいたします。
私からは受給権者及び被保険者の実績統計に関して御説明申し上げます。まず、2ページをご覧ください。こちらは給付状況に関する資料になります。初めにこちらの資料の留意点を説明させていただきます。先ほど佐藤課長からも説明があったように、この資料につきましては、国共済、地共済、私学共済を除いたいわゆる厚年1号に関しての資料となっていることに御留意いただければと思います。また、特記事項の4に記載しておりますが、新法老齢厚生年金のうち、旧法の老齢年金に相当するものは「老齢相当」に、それ以外のものは「通老相当・25年未満」に計上しております。
平成29年8月施行の受給資格期間の短縮により、被保険者期間が10年以上25年未満の方も新たに年金の受給権が発生しましたが、このような方々は「通老相当・25年未満」に計上されております。
厚生年金保険の受給権者数でございますが、令和5年3月末の欄が令和4年度末の数値になりますけれども、一番上の段をご覧いただきますと、受給権者数は全体で3748万8000人となっており、前年度と比べて0.5%の減少となっています。このうち老齢相当が1599万7000人で、前年度と比べまして1.1%の減少。通老相当・25年未満が1466万人で、0.5%の減少という状況でございます。
年金総額につきましては、1つ下の2段階目になりますけれども、こちらは厚生年金の年金総額ですので、基礎年金分は含まれておりません。
令和4年度末の年金総額は、受給権者全体で25兆9858億円であり、前年度と比べて1.6%の減少となっております。このうち老齢相当は17兆1912億円で、2.3%の減少。また、通老相当・25年未満は2兆5704億円と、1.0%の減少となっております。老齢相当及び通老相当・25年未満の年金総額が減少した要因については、1階部分込みで支給される旧法の受給権者が抜ける一方で、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金受給権者が加入したこと、また、令和4年度の年金額が0.4%のマイナス改定であったこと等が考えられます。
3ページは繰上げ支給及び繰下げ支給の状況でございます。数字を見ていきますと、令和5年3月末の繰上げ支給の老齢厚生年金受給権者数は20万7000人となっております。一方、繰下げ支給の老齢厚生年金受給権者数は、令和5年3月末で37万4000人となっております。近年の状況を見ますと、繰上げ支給、繰下げ支給共に増加傾向となっております。
また、特記事項をご覧いただきますと、令和4年度末時点で70歳の方の繰下げ率は2.1%となっております。なお、特記事項にも記載しておりますが、令和4年度末において70歳の方は昭和27年度生まれの方で、報酬比例部分は60歳から支給されているため、報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられた方が対象となる繰上げ制度の対象とはなっておりません。
4ページは老齢年金受給権者の平均年金月額等についてでございます。男女合計の老齢相当の老齢年金の平均年金月額は、一番上の段にありますように、令和5年3月末で8万9556円となっておりまして、前年度に比べて1.2%の減少となっております。これは厚生年金分の平均年金月額に係る動きになりますので、2ページでも御説明したとおり、1階込みで支給される旧法の受給権者が抜ける一方で、2階のみの新法の受給権者が入ってくることで構造的に減少していること、また、年金額のマイナス改定等が影響しています。
この額に老齢基礎年金額を加算した平均年金月額をご覧いただきますと、3段下の欄になりますが、14万3973円となっております。こちらが基礎年金分まで含めた平均年金月額でございまして、前年度と同程度で、若干上回る結果となっております。
5ページは新規裁定者に関する資料でございます。新規裁定者の年金は基本的には特別支給の老齢厚生年金ということになりますので、定額部分のない報酬比例部分のみの年金となっております。令和4年度の加入期間が20年以上の新規裁定者の平均年金月額は7万9659円となっております。前年度に比べて15.9%の減少となっておりますが、これは令和4年度に男性の支給開始年齢が64歳に引き上げられたため、この年度に63歳を迎える男性が新規裁定の対象とならず、男性の新規裁定者が減少した一方で、女性の支給開始年齢がその前年の令和3年度に62歳に引き上げられたことから、令和3年度に61歳を迎える女性が令和3年度ではなく、令和4年度に新規裁定されたため、令和4年度の女性の新規裁定者が増加しており、相対的に平均年金月額の水準が低い女性の割合が高まったことによるものと考えております。
続きまして、6ページから8ページでございます。老齢相当の老齢年金につきまして給付状況を詳細に見たものでございます。特に60代前半におきまして各歳別のデータとなっておりまして、支給開始年齢の引上げの状況が見てとれる形でお示ししております。
厚生年金の支給開始年齢の引上げに関しては、定額部分の引上げと報酬比例部分の引上げの2種類がございますが、定額部分の引上げは、男性については平成25年度に、女性については平成30年度に完了しているため、本資料では報酬比例部分の引上げの影響のみが表れています。ただし、坑内員・船員については、女性の報酬比例部分の引上げと同じスケジュールで、定額部分と報酬比例部分が一緒に引き上げられていることに御留意ください。
6ページは男女計の数値ですが、男性と女性でスケジュールが異なっておりますので、7ページ、8ページの男女別の数値をご覧ください。
7ページ、男性の62歳の平成31年3月末と令和2年3月末の欄、また、63歳の令和4年3月末と令和5年3月末の欄、そして8ページ、女性の61歳の令和3年3月末と令和4年3月末の欄をご覧ください。これらの箇所ではいずれも受給権者数が大幅に減少し、平均年金月額が大幅に増加してございます。
ここで御留意いただきたい点ですが、支給開始年齢の引上げは、先に定額部分が引き上げられた後に報酬比例部分が引き上げられることから、報酬比例部分が引き上げられると、それより下の年齢では、繰上げをしている場合または男性の坑内員・船員を除き受給権者がいなくなります。また、老齢厚生年金を繰り上げる場合には、繰上げにより減額される一方で、制度上老齢基礎年金も同時に繰り上げることとなるため、その分平均年金月額が増加します。
7ページの男性の場合で申し上げますと、令和元年度に報酬比例部分の支給開始年齢が63歳に引き上げられたことで、62歳について受給権者数が減少し、また、令和4年度に64歳に引き上げられたことで、63歳について受給権者数が減少しており、令和2年3月末の62歳、令和5年3月末の63歳のところで基礎年金も含めて繰上げをしている方、及び年金額が比較的高い坑内員や船員の受給権者のみとなっていることから、平均年金月額が増加しております。
一方で、坑内員・船員については、令和3年度に支給開始年齢が61歳から62歳に引き上げられており、令和4年3月末の61歳のところを見ていただくと繰上げをしている方のみになっていることから、平均年金額が減少しております。
8ページの女性についても、令和3年度に報酬比例部分の支給開始年齢が62歳に引き上げられたために、61歳の受給権者が減少し、61歳は基礎年金も含めて繰上げをしている方のみとなり、平均年金月額が増加しております。
9ページは老齢相当の老齢年金受給権者の年齢構成でございます。令和4年度末はいわゆる団塊の世代、昭和22年から24年に生まれた方々が73歳から75歳となっていることもあり、70歳から75歳のところの構成割合が25.9%と、ほかの年齢階級と比べて大きくなっている状況でございます。
10ページは老齢年金の受給権者の年金月額の分布を示したものでございます。この年金月額は基礎年金月額を含んだ金額となっております。左側の老齢相当を見ますと、男女計の平均年金月額は14.4万円で、10万円前後の階級が最も多いことが見てとれます。
一方、右側の通老相当・25年未満の分布を見ていただくと、平均年金月額は6.3万円であり、老齢相当と比較して低い金額水準に分布していることが見てとれます。
11ページからは被保険者の状況でございます。被保険者の統計につきましては、被用者年金一元化後は第1号厚生年金被保険者、つまり、一元化前から厚生年金であった部分に係る数値を計上しております。まず、被保険者数ですが、令和5年3月末、令和4年度末でございますが、こちらは4156万9000人となっておりまして、前年度に比べて92万4000人、2.3%の増加となっております。このうち男性は1.0%の増加となっており、女性は4.3%の増加となっております。
被保険者の平均年齢は、男性が45.3歳、女性が43.6歳、男女計で44.6歳となっております。男女計では前年度に比べて0.2歳上昇したという状況でございます。
次に、下の囲みの中段ぐらいのところにありますけれども、標準報酬総額、総報酬ベース年度累計でございますが、こちらの数字を見ていただきますと、188兆3094億円となっておりまして、前年度に比べて2.9%の増加ということでございます。1人当たりの標準報酬額の総報酬ベースの月額は、一番下の段でございますが、男性が43万4102円、女性が29万3796円、男女計で37万8549円となっておりまして、男女計では前年度に比べて1.4%の増加となっております。
また、令和5年3月末において短時間労働者の被保険者数は82万2000人となっておりまして、前年度に比べて25万3000人、44.5%の増加となっております。
今回短時間労働者が大きく増加しているのは、令和4年10月より短時間労働者が被用者保険の適用対象となる企業規模要件が従業員101人以上に拡大された影響によるものですが、その点を詳しく見るため、特記事項5に令和4年度の各月における短時間労働者数を記載しております。そちらをご覧いただくと、10月の短時間労働者数について、前月からの伸びは26.0%と、ほかの月に比べても20ポイント以上大きくなっています。また、前年同月からの伸びを見ますと、10月は33.7%と、それまでの月に比べて25ポイント以上大きくなっており、以降の月もその伸びは徐々に大きくなっており、適用拡大の影響が現れているものと考えております。
そのほか、特記事項の注3に記載しておりますように、100人以下の会社で働く方も労使で合意がなされれば社会保険に加入できますが、そのような任意加入の被保険者数は令和5年3月末で1万1000人となっております。
また、注4に70歳以上で老齢厚生年金、老齢基礎年金等の老齢給付や退職給付の受給権がなく、任意で厚生年金保険に加入している高齢任意加入の被保険者数を示しておりまして、令和5年3月末現在で640人となっております。
12ページからは被保険者数の分布でございます。上段が被保険者全体の分布、下段が短時間労働者の分布になっております。こちらも男性、女性別にご覧いただきたいのですが、まず13ページの男性についてでございます。こちらの上段の分布を見ていただきますと、45歳以上50歳未満及び50歳以上55歳未満の割合が13.8%、13.7%となっており、ここをピークとした山の形になっております。一方、下段の短時間労働者の再掲を見ていただきますと、60歳以上65歳未満、65歳以上の人数が多くなっており、高齢層にピークがあることが分かります。
続きまして、女性の分布でございます。14ページの上段の分布を見ていただくと、女性の場合はピークになる箇所が2か所ございまして、1つは25歳から30歳のところで11.8%、もう一つは45歳以上50歳未満、50歳以上55歳未満のところで13.4%、13.3%となっておりまして、いわゆるM字カーブの形、山が2つある形となっておりますが、こちらの分布の傾向につきましては従来と変わりないということでございます。
一方、下段の短時間労働者の再掲を見ていただきますと、50歳以上55歳未満のところが15.3%と最も大きくなっておりまして、ここをピークとした山の形となっております。
15ページは標準報酬月額等級別の被保険者の分布でございます。左側が被保険者全体の分布、右側が短時間労働者の再掲になっております。まず、男性につきましては、一番多いのが65万円の等級でございまして、こちらが全体の9.1%を占めております。次に多いのが26万円、28万円、30万円のところでございまして、それぞれ6.5%、6.2%、6.7%となっております。
女性につきましては、その右隣の列でございますが、22万円のところが最も多く10%、その前後のところが8~9%ということで多くなっております。
右側の短時間労働者の標準報酬月額の分布を見ていただきますと、男女共にピークが11.8万円と等級の低いところに山ができていることが見てとれます。
○佐藤数理課長 続きまして、16ページをご覧ください。こちらは1号厚生年金の資産の状況となります。まず上の表、令和4年度末の積立金の資産構成割合ですが、預託金が3.8%、市場運用分が96.2%となっております。
次に下の表、資産区分別の内訳は、国内債券が23.9%、国内株式が24.2%、外国債券が24.1%、外国株式が24.0%、預託金が3.8%となっております。
17ページは、収支について財政検証における将来見通しと実績を比較したものになります。この比較につきましては、財政検証と比較するため、収支の範囲を財政検証にそろえて実績を作成しているというものであります。具体的には基礎年金拠出金等は、特別会計の決算値ではなくて、確定値を用いておりますし、特別会計の実績に厚生年金基金の代行部分や国庫負担の繰り延べ分を加えて収入、支出、積立金を作成しております。さらに基礎年金交付金は収入、支出の両面から控除して、基礎年金勘定との会計上のやり繰りを相殺しているというものであります。このような方法によって財政検証ベースの実績を作成しております。詳しくは特記事項に記載しておりますので、ご覧いただければと思います。
加えて、年度末積立金につきましては、時価の変動を平滑化したものを確認するために、時価評価額に加えて、平滑化後の評価額についても括弧書きで記載しているというものであります。
将来見通しにつきましては令和元年財政検証結果となりますが、1号厚生年金の実績と比較するために、将来見通しについても共済分を含まない数値を掲載しているところであります。
また、財政検証は幅の広い経済前提を設定して複数の将来見通しを作成しておりますが、ここではケースⅠ、ケースIII、ケースVの3つの数値を掲載しております。令和4年度の時点ではいずれの数値もおおむね同水準の値となっているものであります。将来見通しにつきましては、ケースIIIで数字を申し上げて比較したいと思います。
まず、保険料収入でありますが、令和元年財政検証では33.5兆円と見込んでおりましたが、実績は34.1兆円ということで、0.6兆円程度実績のほうが多くなっております。この差の主な要因といたしましては、女性・高齢者の労働参加が見通しより進んだため、被保険者数が多くなったというものだと考えております。
次に、国庫負担は将来見通し10兆円に対して、実績は9.7兆円となっております。こちらは基礎年金拠出金が見通しより少なかったことに伴うものとなります。
被用者年金一元化に伴って導入されました厚生年金拠出金につきましては、将来見通し4.7兆円に対して、実績は4.5兆円となっております。
また、運用収入につきましては、見通しは3.0兆円となっていたものが、実績は2.9兆円となっておりました。
次いで支出になります。給付費は将来見通し25.0兆円に対して、実績が24.0兆円。基礎年金拠出金は将来見通し19.5兆円に対して、実績が18.9兆円。また、一元化に伴い導入されました厚生年金交付金は将来見通し5.0兆円に対して、実績は4.8兆円となっております。いずれも実績のほうが少なくなっておりますが、これは年金改定率の累積が実績のほうが低くなっているということに加えまして、将来推計は受給資格期間を考慮せずに全ての被保険者期間を年金に反映させるという、ある種保守的な推計を行っているといった影響があるものと考えております。
年度末積立金につきましては、将来見通しで176.5兆円と見込んでいたものが、実績は時価評価額で211.2兆円、平滑化後の評価額で208.8兆円となっております。いずれの評価額で見ても実績が将来見通しを上回っております。こちらは運用利回りの実績が元年以降の累積で見通しを上回っていたということが主な要因と考えております。
続きまして、18ページ、被保険者数及び受給者数の比較となります。将来推計につきましては労働参加が進むケースで数字を申し上げます。一番左の欄、被保険者数につきましては、将来見通し3987万6000人に対して、実績は4145万4000人となり、実績のほうが多くなっております。こちらは女性や高齢者の労働参加が見通し以上に進んだ影響と考えているものであります。
受給者の総数は将来見通し3731万1000人に対して、実績は3604万5000人となっており、逆に実績のほうが小さくなっております。内訳を見ますと、老齢相当は実績のほうが大きいということですが、通老相当、障害年金、遺族年金は実績のほうが少なくなっております。
要因といたしましては、「主な要因」に記載しておりますが、将来見通しの作成方法に起因している部分が大きいと考えておりまして、将来見通しにつきましては、老齢相当につきましては2号から4号厚生年金の被保険期間と通算せずに老齢相当を判定しております。そういったことで老齢相当の総来見通しが実績より少なくなっているということ。一方、通老相当につきましては、受給者期間を考慮せずに全ての被保険者期間が受給に結びつくと仮定していることから、実績よりも将来見通しのほうが大きくなっているというものだと考えております。
続いて、財政指標の比較になります。19ページをご覧ください。こちらは年金扶養比率、何人の被保険者が1人の受給者を支えるかという比率になります。下の表の将来見通しでは労働参加が進むケースで、令和4年度は2.62に対して、上の実績は2.64となっております。
20ページが積立比率の比較となります。積立比率は、前年度末積立金が当年度の国庫負担を除く実質的な支出の何年分に相当するかを表すものであります。令和4年度を確認いただきますと、下の表の将来見通しは、ケースIIIで5.1に対して、上の表の実績は、積立金を時価評価したもので6.2、平滑化した場合で5.9と実績のほうが高くなっております。こちらも運用利回りが元年度以降、累積で将来見通しを上回っていることによるものであります。
最後に21ページ、厚生年金の財政状況の総括となります。まず、年金財政の重要な要素となります被保険者数、経済について確認いたしますと、被保険者数につきましては、女性や高齢者の労働参加の進展によりまして、厚生年金被保険者数は財政検証の見通しを上回っておりまして、一方、3号被保険者数は見通しを下回って推移しております。これは保険料を拠出する支え手の増加と被扶養者の減少を意味しておりますので、厚生年金の財政にプラスに影響を与えているものであります。
次に、重要な経済要素について確認いたしますと、元年以降の累積で見ますと、実質賃金上昇率は実績が見通しを下回り、こちらは厚生年金財政にマイナスの影響を与えておりますが、一方、実質的な運用利回りにつきましては実績が見通しを上回りまして、プラスの影響を与えるというものであります。
さらに、マクロ経済スライドの発動状況を見ますと、令和4年度におきましては0.3%キャリーオーバーが発生しておりましたが、翌5年度にはキャリーオーバーを含めて全て発動しているというものであります。その結果、年金改定率を見ますと、実績が見通しを下回っているということであります。
次いで、収支状況のほうを確認いたしますと、保険料収入は賃金上昇率が見通しを下回ったわけですが、被保険者数が逆に上回りまして、後者の効果が大きかったということで、保険料収入は見通しを上回って推移しております。一方、給付費のほうは、年金改定率が下回ったということから、見通しを下回って推移しているということであります。この結果、運用収入を除く基礎的な収支差というものを確認してみますと、令和4年度の実績は0.6兆円のプラスとなっておりまして、見通しのマイナス1.2兆円より改善しているというところであります。
さらに、運用収入を確認しますと、こちらは年度によって変動があるところですが、令和元年度から累積で見ますと、実績が見通しを上回っているということで、その結果、積立比率も実績が見通しを上回っているというところであります。したがって、令和4年度までの収支状況や積立水準というものを確認しますと、厚生年金財政にプラスの影響を与えているというものであります。
一方、今回の資料にはありませんけれども、年金財政上重要な要素であります人口について確認してみますと、合計特殊出生率は令和4年の実績が1.26と将来推計の見通しを下回っているというところでありまして、長期的には年金財政に大きな影響を与える可能性があると考えているところであります。外国人の入国超過の動向なども含めまして、人口の動向を今後も注視していく必要があるというところであります。
いずれにいたしましても、年金制度は長期の制度でありますので、短期の結果から直ちに判断することはできないということでありまして、人口・労働力・経済の長期的な趨勢を見極めるということが重要かと存じておりまして、健全な財政運営ができているか、しっかりと注視していく必要があると考えております。
説明は以上となります。
○翁部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして御質問がありましたらお願いいたします。寺井委員、お願いいたします。
○寺井委員 まずは丁寧な御説明をありがとうございました。
とりわけ総括の部分が今回のこの資料を読むのに私にとっては非常に助けとなりました。財政状況の説明の前に経済の状況も書かれていて、それは非常に有益といいますか、財政状況をレビューする際に非常によい参考資料になると思いました。まずそれが感想です。
少し細かくなるのですが、書かれていることに対して質問が1つございます。5行目に実質賃金上昇率(対物価)で、これが高ければ厚生年金財政にプラスになるということだと思うのですけれども、ここ数年ではマイナスになっているということだと思うのですが、もう少し分解して、実質賃金上昇率というのは名目賃金上昇率と物価上昇率の差だと思うのですけれども、名目賃金上昇率のほうが保険料の支払額の伸びに影響して、物価上昇率のほうが既裁定者の年金給付額の伸びに影響するということで、実質賃金上昇率が高ければ厚生年金財政にプラスになるというのが、この2つの効果の相対的な影響というふうに解釈したのですが、それで合っているかどうか御確認いただければと思います。よろしくお願いします。
○翁部会長 お願いします。
○佐藤数理課長 今の御質問ですけれども、まず年金財政の基本的な構造を考えますと、収入、支出共に基本的には賃金上昇率に従って変動する構造になっております。保険料は賃金の一定割合ですので、委員から御説明があったように賃金に応じて変動いたしますし、給付のほうは新規裁定時が賃金スライドということになりますので、基本的には賃金に応じて変動いたします。
ですから、逆に言いますと、賃金に応じて変動しない部分が収支のバランスを変化させるところになりますので、賃金に連動しない部分が年金財政に大きな影響を与えるということになります。その一つとして実質賃金というものがありまして、こちらは委員もお話しになりましたように、新規裁定時は賃金にスライドしますが、それ以降は物価でスライドするということで、年金の伸びがその差の分、賃金より伸びが低くなるということで、実質賃金が高いほど保険料の伸びに対して年金の伸びが抑えられるという意味で、収支状況を改善させる効果があるということであります。ですから、委員が御説明になったとおりということだと思います。
以上です。
○寺井委員 非常によく分かりました。ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございました。
次に、いかがでございますか。では、小野委員、お願いいたします。
○小野委員 ありがとうございます。
私も最終ページの総括というのは書いていただいて、理解が進みまして非常によかったと思っております。どうもありがとうございました。
半分御指名ですので、1点だけお伺いしたいのですが、昨今コロナの影響で保険料の納付猶予をした結果、納付しなければいけないということで、企業の経営にかなり重荷になっているような記事を拝見しているのですけれども、ここ数年ということになると思いますが、この辺りはどんなところに反映しているかということを概括的にお伺いしたいということです。
○翁部会長 お願いします。
○佐藤数理課長 説明の中でも申しましたが、1ページを見ていただきますと、令和4年度の厚生年金の保険料収入2.1%の増加となっておりますが、保険料のベースとなる賃金総額の伸びを見ますと、2.9%の増加ということになっておりまして、賃金の伸びほど保険料が伸びていないということになっています。どうしてかといいますと、令和2年度に納付猶予された保険料を翌年度に納めた、つまり、過年度納付が令和3年度は多くありまして、令和3年度の過年度納付が多かったために、令和4年度の過年度納付は3年度に比べたら減っているということであります。そのために保険料の伸びが少し抑えられているということであります。
納付猶予された保険料は、まだ回収している途中というところでありまして、完全に全て回収できているわけではありませんが、今のところ保険料の不納欠損の額を見てみますと、それほど増えていないということですので、これからしっかりと徴収していくことが重要と考えております。
○小野委員 どうもありがとうございました。
○翁部会長 ありがとうございます。
そのほかはいかがでしょうか。それでは、野呂委員、お願いいたします。
○野呂部会長代理 御説明ありがとうございました。
幾つか御質問があるのですけれども、1つは今、小野委員の御質問の続きのようなことですが、メディアでは「社保倒産」との報道もあり、要するに、社会保険料負担が重くて、企業が事業継続に支障を来すようなこともあるということで、最近では厚生年金保険料の企業からの徴収について一定の配慮をしているということがあったと思うのですが、そういうことが今回の保険料収入に影響するほどの金額になっているのかどうか、また実際に差押えなどの滞納処分をするのはどういう場合かということについて、イメージを教えていただけたらなというのが1点目でございます。
2点目は、非常に簡単な話かと思うのですが、運用収入の時価でない、簿価ベースの数位が今年ちょうど0になっていまして、0というのは、本当に0なのか、あるいは億単位未満の数字しかないという意味なのかが分からないのですけれども、改めて見ますと、去年も2500億、その前は1兆4000億と非常に切りのいい数字で、多分これは自然態に出てきた数字でなくて、一定程度のつくられたと言ったらおかしいですがそういう数字ではないかと思いますので、この運用収入の時価でない、簿価のほうの数字がどうつくられているかということについて教えてほしいというのが2点目でございます。
3点目が11ページの被保険者数の状況について、今ほど短時間労働者が順調に増えているということで、これは非常にいいことだと思うのですが、今年の数字を見てみますと、被保険者数は短時間労働者以外のところが非常に増えておりまして、92万4000人から25万3000人を引くと67万人の増になっております。これは去年や一昨年に比べて非常に増えている。後ろのほうのページに男女別、年齢別がありましたので、どの辺が増えているのかと思いましたら、50代の男女が非常に増えております。どういう構造で短時間以外のところがこれほど増えたのかを教えてほしいというのが3点目でございます。
最後は18ページの受給者の状況です。これは去年寺井委員が御質問されたところで、通老相当の実績が将来見通しよりも非常に少ないという質問をされたときに、技術的な説明をいただいたうえで、しかし、今、次の財政検証をやっている最中なので、次の財政検証ではやり方も含めて見直しを検討しているというお話だったと思うのですけれども、その辺りはどういうふうな検討状況になっているかというのを教えてほしいというのが最後でございます。
以上でございます。
○翁部会長 お願いいたします。
○楠田調査室長 私のほうから1点目と3点目について答えさせていただきたいと思います。
1点目のほうですが、厚生年金保険の具体的な徴収事務については年金局事業管理課が担当しておりまして、この件は持ち帰らせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
3点目、被保険者の増加の要因というところだと思うのですが、まず短時間労働者以外の被保険者が67.1万人増加しているということで、その増加要因なのですが、厚生年金第1号被保険者の増加の要因は、もちろん短時間労働者の増加の要因もあるのですけれども、1つ目として日本年金機構の加入指導等による適用促進というのが約21万人影響しておりまして、その次に60歳以上の高齢者の雇用の増加で、これは短時間労働者以外ですけれども、約24万人おります。
最後に、令和4年10月において厚生年金第3号被保険者、地共済の加入員になりますが、その3号被保険者のうち臨時的に任用された職員が厚生年金第1号被保険者になっております。正確な数字は不明なのですが、厚年3号の減少が約10万人おりますので、こちらも厚年1号が増えた要因かと考えられます。
その次に、50歳台の増加が著しいという点でございますが、この状況につきましては、厚生年金1号被保険者の年齢構成によるものと考えております。年齢別に被保険者の分布を見ますと、令和4年度末時点で49歳がピークで、それ以降は年齢が上がるほど被保険者数というのは減少しているのですけれども、その傾きも比較的大きくなっているということから、各歳集団で1歳年齢が上がることによって、結果として40歳台は減少する一方で、50歳台の増加が大きい結果というふうになってございます。
○佐藤数理課長 補足も含めて私のほうから説明いたします。
2点目の簿価の積立金ですけれども、こちらは見込みで納付するものでありまして、歳入・歳出の見込みで歳入に不足が生じると見込まれる場合に納付金を受け入れるということであります。ですから、4年度につきましては、厚生年金、国民年金もそうですけれども、不足が生じないという見込みでしたので、GPIFからの納付金は0ということになっております。
0というのは本当に0なのかという話ですが、実は簿価の運用収入というのは、GPIFからの納付金に加え、特会の預託金の利子というのが少しだけありまして、特会の預託金の利子については計上されています。つまり1億円未満の少額の簿価の運用収入があるというものであります。また、見込みで入れるものでありますので、区切りのいい2500億とかそういった数字になっているということと承知しております。
50代の被保険者が増えているということにつきましては、楠田からも説明がありましたけれども、ちょうど団塊ジュニア世代が50歳台を超えてきているというところで、人口の山が50歳を超えてくることによって50代の被保険者が増えてきているものだと承知しております。また、高齢者が増えているとか、3号が減って、2号が増えているというのは、女性や高齢者の労働参加が進んだ結果という理解でいるものであります。
最後、通老相当の見込みの検討状況ですが、こちらのほうは次の財政検証に向けて数理課内でもいろいろ検討しているところでありますが、1号から4号厚年まで通算してシステムを見直すというのは、非常に大きなシステム改修ということになるものでありまして、どういうふうにやるかというのはまだ検討中というところであります。来年夏に向けて、どういったやり方があるのかというのを考えていきたいと思っております。
以上であります。
○翁部会長 ありがとうございます。
1番目の御質問についてはまた追って御回答いただくということで、お願いいたします。
そのほかはいかがでしょうか。特によろしいでしょうか。
それでは、以上で厚生年金保険(第1号)についての報告の聴取を終わりたいと思います。
次いで、議題(2)令和4年度の国民年金・基礎年金制度の財政状況について、御説明をお願いいたします。
○佐藤数理課長 では、私のほうからまず財政状況について説明させていただきたいと思います。
1ページをご覧ください。こちらは基礎年金勘定の収支状況となります。令和4年度の欄をご覧ください。基礎年金につきましては、毎年度必要な費用を基礎年金拠出金で賄う仕組みということでありますので、支出欄から御確認いただきたいと思います。支出総額は24兆6474億円、前年度に比べて111億円、0.0%の伸びとなっております。その大部分を占めるのが基礎年金の給付費ということになりまして、その内訳を見ますと、昭和60年改正後の新法による給付に当たります基礎年金給付費が24兆1968億円、前年度に比べて1042億円、0.4%の伸び。旧法の基礎年金に相当する基礎年金交付金が4502億円となっており、前年度に比べて930億円の減となっております。新法、旧法を合わせた基礎年金給付はおおむね横ばいとなっているものであります。これは近年、65歳を迎える世代がちょうど人口の谷間に当たっておりまして、受給者数の伸びが緩やかであるということに加えまして、厚生年金のところでも述べましたが、令和4年度の年金改定が0.4%のマイナス改定となったことが要因というものであります。
基礎年金給付金を基礎年金拠出金で賄うということになりますが、拠出金額は予算におきまして当年度の概算に2年度前の精算を考慮して算出するということになります。さらに、被用者年金一元化に伴いまして基礎年金拠出金の軽減に活用することとされた部分、いわゆる妻積みと言われるものも控除した上で金額を決定いたしますので、当年度の基礎年金給付費と金額が一致していないということになります。
収入の大部分を占めます基礎年金拠出金は25兆1495億円、前年度に比べ1648億円、0.7%の伸び。特別国庫負担は4043億円、前年度に比べ43億円の増加となっております。
積立金からの受入は2兆53億円となっておりますが、こちらは予算において歳入に不足が生じる場合に受け入れており、先ほど説明いたしましたいわゆる妻積みによる基礎年金拠出金の軽減分もこの積立金からの受入の中に入っているというものになります。
この結果、収入総額は27兆5705億円ということで、前年度に比べ6015億円の増となっております。
次に、下から3段目の基礎年金拠出金算定対象者数をご覧ください。こちらが基礎年金の支え手に相当する被保険者数ということになりますが、5448万人で、前年度に比べ2万3000人、0.0%の増となっております。
20~59歳の人口は減少しているということでありますが、僅かながら増加となりましたのは、国民年金の納付率の上昇が要因というものであります。
一番下の段、1人当たりの基礎年金拠出金単価のうち国庫負担を除く保険料相当額というものでありますが、こちらが月額1万8521円で、前年度に比べ22円減少しております。この金額は令和4年度の国民年金保険料の月額1万6590円より高くなっているというところでありますが、これはすなわち基礎年金拠出金を国民年金保険料だけでは賄うことができないということで、積立金を活用している状況にあることを示しているものであります。
続いて、2ページをご覧ください。令和4年度の基礎年金拠出金や拠出金算定対象者数の制度別の内訳ということになります。先ほど申しましたように、拠出金や交付金につきましては、予算で設定する概算値と実績によって確定する確定値というものがありまして、概算値と確定値の差額は翌々年度、2年後に精算する仕組みとなっているところであります。したがって、1ページの決算は、概算値と前々年度の精算額の合計となりますが、こちらの表は実績による確定値で整理しているというものになります。
また、注2にありますとおり、基礎年金拠出金軽減のため積立金から受け入れている分、妻積み分につきましては控除する前の数字となっておりまして、控除額を括弧内に再掲しているというものであります。
上の表ですけれども、基礎年金給付費の本来分、新法分の給付となりますが、こちらが24兆1901億円。旧法分の基礎年金相当給付費が4322億円で、両者を合計したものが一番右の欄、24兆6223億円となっております。こちらから下の表の右側にあります特別国庫負担4053億円を差し引いたものが基礎年金拠出金の合計24兆2170億円ということになりまして、これを各制度が拠出金算定対象者数に応じて分担するということになっているものであります。
3ページは国民年金勘定の収支状況であります。令和4年度の欄をご覧ください。まず、収入につきまして主な項目を見ていきますと、保険料が1兆3802億円で、前年度に比べて305億円、2.3%の増加となっております。
保険料収入につきましては、1号被保険者数は減少しているわけですが、納付率の上昇により増加しているというものであります。
国庫負担は1兆9089億円で、前年度に比べ174億円、0.9%の増となっております。これは下の支出欄の基礎年金拠出金が同じく0.9%増となっているものに対応しております。
運用収入は時価ベースで1493億円、運用利回りが1.43%となっております。時価ベースの運用利回りの低下に伴って、前年度より減少しているというものであります。
丸い括弧つきの再掲ですけれども、積立金管理運用独立行政法人納付金が3800億円となっておりまして、こちらは歳入に不足が見込まれる場合に、前年度末までの運用収入の中から納付されるというものであります。
厚生年金でも説明しましたが、収入欄の下から3番目の積立金より受入は0となっておりまして、こちらは納付金を受け入れてもなお歳入に不足が見込まれる場合に、積立金の元本から受け入れるものでありますが、令和4年度は前年度に引き続き元本の受入れは必要なかったというものであります。
これらを合計しました時価ベースの収入総額は3兆6024億円となっておりまして、前年度より3705億円の減少となっております。時価の運用利回りの低下が主な要因ということであります。
次に、支出を見ますと、その大部分が基礎年金拠出金となっておりまして、3兆3605億円、前年度より314億円、0.9%の増加となっております。
支出総額は3兆7256億円で、前年度に比べ170億円の減少となっております。
収支残を見ていただきますと、時価ベースで1232億円のマイナスとなっております。これにその下にあります業務勘定から積立金への繰入108億円を足したものが時価ベースでの年度末積立金の変化額となりまして、その結果、年度末積立金は10兆4518億円となりまして、前年度と比べまして1123億円の減少となっているものであります。
4ページは御参考ですが、3ページの保険料収入の内訳になりまして、現年度保険料と過年度保険料分に分けて見たものであります。説明は省略いたします。
収支状況は以上であります。
○楠田調査室長 5ページをご覧ください。こちらは給付状況についての資料でございます。掲載しております数値は、新法の基礎年金と旧法の国民年金を合計したものとなっておりまして、被用者年金のいわゆるみなし基礎年金に係る部分は含まれておりません。まず、受給権者数でございますが、令和5年3月末は合計で3681万8000人となっておりまして、前年度に比べて2万7000人、0.1%の増加となっております。このうち老齢年金・25年以上は3341万6000人となっており、前年度と同程度で、若干下回る結果となっております。
通算老齢年金・25年未満につきましては、令和5年3月末で93万5000人、前年度に比べて0.1%の増加となっております。
年金総額につきましては、1つ下の段のところになりますが、令和5年3月末で24兆8889億円となっておりまして、前年度と同程度で、若干下回る結果となっております。この大部分を占めております老齢年金・25年以上について見ますと、令和5年3月末で22兆5819億円、前年度に比べて0.1%の減少となっております。
続きまして、6ページでございます。こちらは繰上げ支給・繰下げ支給の状況についての資料でございます。まず、繰上げ支給の男女合計の受給権者数ですが、令和5年3月末で369万4000人となっており、前年度に比べて15万人、3.9%の減少となっております。近年の状況を見ますと減少傾向で推移しております。
一方、繰下げ支給の受給権者数は、令和5年3月末で67万2000人となっており、前年度に比べて6万1000人、9.9%の増加となっております。繰下げ支給の受給権者数については近年増加傾向で推移しているという状況でございます。
また、特記事項をご覧ください。令和4年度末時点で70歳の基礎のみの老齢基礎年金受給権者の繰上げ率は14.2%、繰下げ率は3.3%となっております。
7ページは、上段と下段がございますけれども、上段につきましては、老齢年金受給権者の平均年金月額及び平均加入期間についての資料でございます。男女合計の老齢年金・25年以上の平均年金月額は、令和5年3月末で5万6316円と、前年度に比べ53円、0.1%の減少となっております。また、平均加入期間については400月と、前年度に比べ3月の増加となっております。
下段につきましては、新規裁定者についての資料でございます。男女計の老齢年金・25年以上に係る新規裁定者の老齢年金平均年金月額は、令和5年3月末で5万3619円と、前年度に比べ431円、0.8%の減少となっております。また、平均加入期間については423月と、前年度に比べて4月の増加となっております。
8ページは老齢年金受給権者の年齢構成でございます。男女合計で見ますと、割合が最も大きいのは70歳以上75歳未満の25.3%、次いで75歳以上80歳未満の20.6%となっております。平均年齢は、男性が76.5歳、女性が78.1歳、男女計で77.4歳となっております。前年度末は男女計で77.1歳でしたので、0.3歳の上昇と、若干ではございますが年齢構成は高いほうにシフトしているという状況でございます。
9ページは老齢年金受給権者の年金月額の分布でございます。上段は受給権者全体に関する分布で、下段がいわゆる基礎のみの受給権者に関する分布になっております。さらに、それぞれについて、左側が老齢年金・25年以上、右側が通算老齢年金・25年未満の分布を示しております。
上段の受給権者全体について、左側の老齢年金・25年以上の分布を見ると、年金月額が6万円から7万円の階級が44.4%と最も大きくなっていますが、右側の通算老齢年金・25年未満の分布を見ると、比較的低い水準の金額階級の割合が高くなっております。
10ページをご覧ください。こちらは被保険者の状況でございます。まず、被保険者数でございますけれども、第1号被保険者数は令和5年3月末で1404万7000人となっており、前年度に比べて26万5000人、1.9%の減少となっております。第3号被保険者数につきましては令和5年3月末で721万2000人となっており、前年度に比べて41万5000人、5.4%の減少となっております。第1号被保険者、第3号被保険者共に減少傾向にありますが、厚生年金保険のところで御説明しました令和4年10月の適用拡大の影響で、令和5年3月末における減少幅は従来より大きくなっております。
被保険者の平均年齢は、令和5年3月末で第1号被保険者が39.3歳、第3号被保険者が45.7歳となっております。
免除等の状況につきましては一段下の段にお示ししております。令和5年3月末の免除者数につきましては、前年度に比べまして法定免除者は増加しており、その他については減少している状況でございます。
11ページは第1号被保険者の分布でございます。一番右の割合の欄をご覧いただきますと、最も多いのが20~25歳のところの24.1%となっております。国民年金の第1号被保険者には自営業の方、無職の方などいろいろな方がいらっしゃいますけれども、この年齢層は学生の方が多いことから、そのウエートが大きくなっているということでございます。
12ページと13ページは今、見た第1号被保険者の分布を男女別に見たものでございますので、説明は割愛させていただきます。
14ページは第3号被保険者の分布でございます。第3号被保険者につきましては、最も多いのが50~55歳のところで、20.0%となっております。ここをピークとして山のような形となっております。
15ページと16ページは今見た分布を男女別に見たものでございますので、こちらについても説明は割愛させていただきます。
17ページは、国民年金保険料の納付状況を年齢階級別に見たものでございます。特記事項にも記載しておりますが、納付状況の途中経過を示すものとして現年度納付率、過年度1年目納付率がありますが、最終的な納付状況を見るための指標としては最終納付率が適切と考えております。直近の結果では、一番上の段を見ていただきますと、令和2年度分保険料の最終納付率は80.7%であり、これは統計を取り始めた平成14年度分以降で最高の水準であり、また初めて80%台となっております。
下段に年齢階級別最終納付率をお示ししておりますが、括弧内は年齢階級別の現年度納付率となっております。おおむね年齢階級が高くなるにつれて納付率が上昇する傾向が見てとれます。
なお、20~25歳の納付率が25~30歳の納付率よりも高くなっていますが、20歳台前半は学生納付特例により保険料納付猶予を受けていたり、本人に代わって親が保険料を負担していたりするケースが多いことなどが影響しているものと考えられます。
○佐藤数理課長 続きまして、18ページをご覧ください。国民年金の資産構成割合となります。上の表、令和4年度の欄を見ていただきますと、年度末積立金の資産構成割合は、預託金が3.6%、市場運用分が96.4%となっており、運用利回りは1.43%となっております。
下の表の資産構成割合につきましては、国内債券が23.9%、国内株式が24.3%、外国債券が24.2%、外国株式が24.1%、預託金が3.6%となっております。
19ページは財政検証における将来見通しと実績の比較になります。厚生年金と同様国民年金に関しましても将来見通しとベースをそろえる必要がありますので、基礎年金拠出金などは確定値ベースといたしまして、国庫負担の繰り延べ分を積立金に加え、基礎年金交付金を収入、支出の両面から控除するということなどによりまして、財政検証ベースの実績を作成しております。詳しくは一番下の欄、特記事項に記載しております。
この実績と将来見通しを比べておりますが、将来推計につきましてはケースIIIで数字を申し上げます。保険料収入につきましては、将来見通しが1.28兆円と見込んでいたのに対し、実績は1.33兆円となっております。こちらは納付率の上昇が主な要因であります。
国庫負担は将来見通し1.92兆円に対して、実績は1.91兆円。運用収入は将来見通しで0.19兆円に対して、実績は0.15兆円となっております。こちらは運用利回りが見通しより低かったことが要因ということであります。
支出欄を確認いただきますと、給付費は将来見通し、実績共に0.09兆円。基礎年金拠出金は将来見通し、実績共に3.38兆円となっております。
収支残につきましても将来見通し、実績共にマイナス0.12兆円となっております。
年度末積立金は将来見通しで11.13兆円に対して、実績は時価評価額で12.58兆円、平滑化後の評価額で12.43兆円となっておりまして、前年度までの運用成績がよかったということから、いずれも実績が見通しを上回っております。
20ページは、国民年金の被保険者数及び基礎年金の受給者数の比較となります。実績と見通しを比べますと、被保険者数の合計は、将来見通しが6613万6000人に対して、実績は6743万5000人と、実績のほうが多くなっております。内訳を見ますと、2号被保険者等は実績のほうが大きくなっておりますが、1号被保険者及び3号被保険者は実績のほうが小さくなっております。こちらは主に女性や高齢者の労働参加が見通し以上に進んだことが要因と考えております。
受給者数を見ますと、合計は将来見通し3646万2000人に対して、実績は3644万5000人と、実績のほうが若干大きくなっているというところであります。その内訳は、老齢と遺族は実績のほうが小さい、一方、障害は実績のほうが大きくなっているというところであります。
21ページからが財政指標の比較となります。21ページは年金扶養比率となります。受給者1人に対する被保険者数の人数を示すものであります。令和4年度の数値は、下の表の将来見通しが1.92に対して、上の表の実績は1.97となっており、実績のほうが大きくなっております。
22ページは国民年金勘定の保険料比率となります。こちらは国庫負担を除く実質的な支出に対して、保険料収入がどの程度占めているかを示すものであります。100を下回りますと、運用収入など積立金を活用している状況ということになります。
令和4年度の数値は、下の表の将来見通し、ケースIIIで83.3に対して、上の表の実績は85.8と、実績のほうが高くなっているというものであります。実績のほうが運用収入を除く基礎的な収支状況がよいということを示しておりますが、100を下回っておりますので、積立金を活用している状況になっていることに変わりがないということであります。
23ページは国民年金勘定の収支比率となります。こちらは保険料収入と運用収入を合算した収入に対する実質的な支出の割合を示すものとなりまして、運用収入が分母に入っているため、時価の変動の影響を大きく受けるというものであります。令和4年度の数値は下の表の将来見通しでは、ケースIIIで104.7でして、上の表の実績は104.5となり、実績のほうが小さくなっているものであります。
24ページが国民年金勘定の積立比率となります。令和4年度は下の表の将来見通しで、ケースIIIでは7.3に対して、上の表の実績では時価評価額が8.2、平滑化後の評価が7.8となっており、実績のほうが高くなっております。こちらも元年度からの累積で運用利回りの実績が見通しより高かった影響であります。
最後に25ページの総括をご覧ください。こちらも厚生年金と同様、まず年金財政の重要な要素であります被保険者数、経済の状況を見ております。国民年金の第1号被保険者数は実績が見通しを下回っておりますが、基礎年金の支え手に相当いたします拠出金算定対象者数で見ますと、納付率の向上により1号の実績は見通しを上回っているところであります。
基礎年金の財政構造を考えますと、1号から3号まで全体で支える仕組みとなっておりますので、拠出金算定対象者数の合計が基礎年金の財政に重要な要素ということになります。1号から3号までの合計を見ますと、実績が見通しを上回っているというところでありまして、基礎年金財政、国民年金財政にプラスの影響を与えているというところであります。
続いて、経済要素、こちらは厚生年金と同じになりますが、実質賃金上昇率は実績が見通しを下回り、国民年金財政にマイナスの影響となっておりますが、実質的な運用利回りについては実績が見通しを上回り、国民年金財政にプラスの影響となっているものであります。
さらに、マクロ経済スライドの発動状況は令和4年度ではキャリーオーバーが0.3%ほどありましたが、令和5年度にキャリーオーバー分を含めて全て発動しているというところであります。その結果、年金改定率の累積は実績が見通しを下回っているというものであります。
第1号被保険者に相当する国民年金の財政については、その大部分を基礎年金の財政が占めるということになりまして、基礎年金の財政に大きく影響を受けるということになります。とりわけ基礎年金拠出金単価と国民年金保険料月額の差というものが重要でありまして、この差が保険料納付者1人当たりの運用収入を除く基礎的な収支差におおむね相当するということになります。
そこで、基礎年金拠出金単価と保険料月額について、見通しと実績を比較しております。拠出金単価につきましては、年金額改定率の実績が下回ったということによりまして、分子の給付費が低下したということに加えまして、分母の拠出金算定対象者も上回っております。したがって、実績が見通しを下回っているということであります。
一方、保険料月額も賃金上昇率が下回ったということで、実績が見通しを下回っているというところでありますが、両者の差は見通しと比べて小さくなっているというところでありまして、運用収入を除く基礎的な収支にプラスの影響を与えているというところであります。実際令和4年度の国民年金の運用収入を除く基礎的な収支差の実績を見てみますと、0.27兆円のマイナスとなっておりまして、見通しが0.31兆円のマイナスでありますので、実績のほうが改善しているというところであります。
さらに、基礎的な収支差というのは、国民年金の積立金の活用によって賄われるということになりますので、国民年金の積立比率というものが重要となってくるわけです。国民年金の積立比率につきましては、まず1号被保険者の拠出金算定対象者数の実績が見通しを上回っているということですが、こちらのほうは実は国民年金の支出の増加につながりまして、積立比率を低下させる面というものがあります。しかしながら、元年度以降の累積で運用利回りの実績が見通しを大きく上回っているということから、令和4年度における積立比率は実績が見通しを上回るという結果になっております。こういったことから、令和4年度までの収支状況、また国民年金の積立水準というものは、国民年金の財政のプラスに寄与しているというものであります。
ただし、これも厚生年金と同じでありますが、人口要素というものを見てみますと、出生率が低下しているということもありますし、外国人の動向も含めて今後の動向を注視していく必要があると考えております。
いずれにせよ、長期的な制度なので、長期的な人口・労働・経済の趨勢を見極めつつ、健全な財政運営ができているか、しっかり注視していく必要があると考えているものであります。
私からの説明は以上であります。
○翁部会長 どうもありがとうございました。
それでは、今の御説明に関しまして何か御質問などございましたら、よろしくお願いいたします。それでは、寺井委員、お願いいたします。
○寺井委員 ありがとうございます。
こちらの総括のところも非常に分かりやすく、特に国民年金財政と厚生年金財政の評価の仕方が違うということが分かりやすく書かれていて、書かれている内容は別に簡単ではない、難しい内容ではありますけれども、分かりやすく説明してくださっているというふうに感じました。ありがとうございます。
質問させていただきたいのは、10ページの第1号被保険者と第3号被保険者の被保険者数の推移についてでございます。第1号も第3号も趨勢的に被保険者数が減る傾向にあるのかなと思うのですが、趨勢的な変化のほかに、2022年10月、厚生年金の適用拡大が行われまして、より規模の小さい企業で働いている人たちにも厚生年金が適用されることになりました。年度の途中ではあるのですけれども、第1号、第3号、両方の被保険者数が減っていることについて、この制度改正がどれぐらい影響しているのか、規模感をお分かりになる範囲で教えていただければと思うのが1点。
もう一つ、第1号・第3号被保険者でいられるかどうかというのに賃金要件、いわゆる年収の壁というのがあって、非常に注目を浴びているのですが、最低賃金もここのところ上昇していますので、その影響でもって賃金要件が厚生年金に当てはまるようになった。第1号・第3号被保険者ではもういられなくなったと。そういう影響もここにどれぐらい影響しているのか。この表から読み取るのは難しいかもしれないのですが、感触としてお分かりになるところを教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
○翁部会長 よろしくお願いいたします。
○楠田調査室長 第1号被保険者・第3号被保険者の減少について、適用拡大の影響がどの程度であったかというところですけれども、規模感というのは、ほかの要因でも減少してきていますので、なかなかお示しするのは難しい状況です。第3号被保険者については、現役世代の人口全体の減少や女性の就労参加が進んだこと、また、その結果として専業主婦世帯が減少したということ等を背景として、先生のおっしゃるとおり長期的には減少傾向にあるのですが、従業員500人超の企業に使用される短時間労働者へ厚生年金保険が適用されることになった平成28年10月以降、その減少幅は大きくなっております。また、令和4年10月に従業員が100人超の企業へ適用拡大が行われて、その減少幅がさらに大きくなっているということは見てとれております。
したがって、厚生年金保険の適用拡大の影響が3号被保険者の減少に一定程度寄与しているということはその点から分かるのですけれども、規模感でお示しするのは難しいということでございます。
同じようにしまして、第1号被保険者につきましては、現役世代の人口全体の減少とか、自営業からサラリーマンへの流れであるような就業構造の変化、あと日本年金機構による厚生年金保険への適用促進といったものを背景として、こちらも長期的に減少傾向になっておりますけれども、第3号被保険者と同様に、厚年の適用拡大が行われた時期にその減少幅が大きくなっているということは確認できるため、厚生年金保険の適用拡大の影響が1号被保険者の減少に一定程度寄与しているということは分かります。
2つ目の御質問でございますが、第1号被保険者・第3号被保険者の減少に関して、最低賃金の引上げの効果についてどのぐらいかというところですが、最低賃金の引上げに伴って1号被保険者・3号被保険者の方の月額賃金が8.8万円を超えて、厚生年金保険の短時間労働者の適用要件の一つである賃金要件を満たすことによって厚生年金被保険者になった方というのは一定数考えられる一方で、就労の調整によって第1号被保険者や第3号被保険者にとどまった方も一定数いると考えております。
しかしながら、厚生年金被保険者となった方がそれ以前にどのような適用状況や就業状況であったかを把握するようなデータがないこと、また、最低賃金の引上げによって厚生年金保険の適用の要件を満たした方がどのような行動を取ったかというデータがないことから、第1号被保険者・第3号被保険者の減少にどの程度最低賃金の引上げが影響しかたというところも定量的に把握するのは困難であると考えております。
○寺井委員 ありがとうございます。
被保険者の行動まで考えられるようなデータが入手できるかというのと、さらなる実証分析の可能性といいますか、そういうものに基づいて丁寧に見ていく必要があるのだなと今、実感しております。
ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございました。
それでは、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤委員 どうもありがとうございます。
この総括の記述は感動的に分かりやすくて、私も財政の勉強になったというか、非常にありがたいです。
質問というか、確認が1点あるのですけれども、積立水準のところですが、24ページに実績と財政検証結果の比較があるわけですけれども、私は企業年金において事前積立方式の世界での仕事が長かったこともあり、(賦課方式である)公的年金の積立比率の妥当な水準というものがいま一つよく分からないのですが、比較対象として財政検証7.3%がベンチマーク的なものになるという理解で合っているのでしょうか。妥当な水準感というのがよく分からないので、そこのところをもう少し教えていただけるとありがたいです。
○翁部会長 お願いいたします。
○佐藤数理課長 お答えいたします。基本的に公的年金は賦課方式でやっておりますので、完全な賦課方式であれば積立金は全く持たなくてもいいということになるわけであります。一方、日本においては200兆円を超えるような積立金を持っておりまして、これは何のために持っているかといいますと、より少子高齢化が進んだ将来において給付水準を一定程度確保するために活用しているということであります。ですから、将来の給付水準を確保するために多ければ多いほどいいと言えばいいわけですが、一つのベンチマークは、先生がおっしゃったように、財政検証の見通しということになると思います。財政検証の見通しより高いということは、財政検証で見込んでいるよりも将来の給付水準を引き上げる可能性がある、そうした要素になるということになりますので、それは先生がおっしゃったように、財政検証と比較するというのが一つのベンチマークかと思います。
○佐藤委員 ありがとうございます。おっしゃるように、積立金はバッファー的な存在だと思うのですけれども、そういうところで見ていらっしゃるというところですね。よく分かりました。
ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございますか。枇杷委員と庄子委員、順番にお願いいたします。枇杷委員、どうぞ。
○枇杷委員 ありがとうございます。
2つあるのですけれども、1つは、ちょっと先の話ですが、繰上げの方とか繰下げの方が基礎年金のほうはそれなりの割合で出てきていて、これを次回の財政検証のシミュレーションでどう織り込むのかということも課題になるのかなとちょっと思いました。厚年のほうを見ているとパーセントが少なかったので、オミットしてもいいのかなという感覚もあったのですが、現時点でそこら辺のお考えがあればお聞きしたいということが1点です。
あとは、非常に細かい話で、今さらの話かもしれないのですが、データの抽出、調査の方法に関して、全数統計のものと抽出統計のものがあって、抽出統計も100分の1と50分の1が厚年と基礎年金ではパーセントが違うということがあったりしています。想像ですけれども、金額とか人数に関するところは全数統計で取っておられるが、年齢の情報が加入者については取れないので抽出統計になっているのかなと想像したのですが、その辺の考え方がどうなっていてということの確認と、あとは技術革新が進んでいる中でずっとこれでいいのかということもちょっと思いましたので、その辺りのコメントをいただければ幸いです。
以上です。
○翁部会長 御回答をお願いします。
○佐藤数理課長 まず、繰上げと繰下げの財政検証の見込み方ですけれども、まず現状どうなっているかといいますと、繰上げのほうは見込んでいるわけですが、繰下げのほうは見込んでいなくて、65歳で全員発生させるという推計になっております。これまで繰下げのほうはそれほど多くなかったということと、基本的には繰上げも繰下げも財政中立で設定されているということですので、どこで受給したとしても基本的には大きく変わらないはずだという考え方で繰下げは見込んでいないということです。
技術的な困難が結構ありますが、次の財政検証に向けてどこまでこれを改善できるか検討させていただきたいと思います。
データの抽出ですが、先生がおっしゃったように、物によっては全数統計であったり、抽出統計であったりということですが、こちらのほうもできるだけ改善していきたいと思っておりまして、一部データを新たに5分の1抽出でデータを入手しておりそれを活用することを検討しております。まだどこまでできるかというのははっきり申し上げられない段階でありますが、そちらのほうも改善を図っていきたいと思っております。
以上です。
○枇杷委員 ありがとうございます。
2つ目の点は、統計の問題というのは過去にもいろいろなことがあったので、世の中の方からも、そこは透明性を確保していただくことも併せてお願いできればと思います。
ありがとうございました。
○翁部会長 ありがとうございます。
それでは、庄子委員、お願いいたします。
○庄子委員 御説明ありがとうございました。昨年私もお願いした総括をつくっていただいて、大変うれしく思いますし、理解が進みました。
国年のほうの資料の8ページで、先ほど受給権者の年齢構成のところ、男女計では77.4歳で、去年よりも年齢が上がっているという御説明があったのですが、そこはできれば資料に書いておいていただいて、しかも何年間かヒストリーみたいなものが分かると、物を見る上で理解が深まるのではないかなと思いましたので、そこのところがもし可能であればお願いできないかなと思います。
また、同じ資料の6ページですけれども、今も繰上げ・繰下げのお話が枇杷委員から出ておりましたが、繰上げ率が14.2%、繰下げ率が3.3%ということで、これは単年度の数字しか書いていないので、これも過去推移みたいな形で記載していただけるとすごく分かり易いなと思いました。これは資料の面上で割ってみて何か分かるものはあるのでしょうか。そこら辺がすぐにはぴんとこなかったものですから、過去推移の記載があってもいいかなと思いました。
最後に、総括、ありがとうございました。できれば資料の何ページの数字に書いてある解説をされているということを御記載いただけると、さらに理解し易いなと思いました。
以上でございます。
○翁部会長 いかがでございますか。できる範囲でぜひ御対応いただければと思いますが。どうぞお願いいたします。
○楠田調査室長 委員御指摘いただいたのは6ページの繰上げ率・繰下げ率、これは70歳時点のものですけれども、ここの推移と、あと8ページの男女計の平均年齢の推移が分かるようなものをということでございますので、次回以降特記事項に工夫して書かせていただきたいと思っております。
○翁部会長 それでは、よろしく御対応いただければと思います。
それでは、駒村委員、お願いいたします。
○駒村委員 ありがとうございます。
非常に解説も、今、お話がありましたように総括もよかった。非常によく書いていただいていると思います。
今の繰下げ・繰上げについてですけれども、今年注目していたのは、繰上げの減額率が変化したということがどう影響を与えるのかなと思ってみたのですが、現時点では把握できないということです。6ページ、70歳にならないと繰下げは分からないけれども、繰上げについては65歳に今年のコーホートが到達したところで分かるという理解でいいのかどうかということを確認したいと思います。
繰下げ・繰上げについては、財政中立かどうかというのは、もし仮に人々が合理的で、自分の寿命をある程度予測できているならば、短命な人は早くもらって、つまり、65歳まで待てないということで、早くもらうし、自分が長命だと信じている人は遅くもらうだろうと。ただ、この分野の実証研究を見ると、人は自分の寿命を合理的に予測できないという研究がありますので、そうではないのだろうなと思う一方で、比較的短命な人は健康状態を見て、自分は65歳以降あまり生きないのだという予測は立てやすいのではないかということも言われていて、そうなると、かつてこちらの数理部会の報告書の中にも繰上げ受給している人は比較的短命、失権率が高かったという統計もあったはずなので、繰上げのところもちょっとフォーカスしていただいて、今日お話があったように、長期トレンドがどうなっているかというのを見させていただきたいなと思います。
それから、非常に細かいところですが、厚年のほうの18ページと国年のほうの20ページが同じ比較なのですけれども、ちょっとフォーマットが違いますので、フォーマットはそろえていたほうがいいのではないか。つまり、主な要因のところが、厚年のほうはちゃんと被保険者のところの枠の中に書いてあるのですが、国年の20ページのほうは主要因のところが横に外れてしまっているので、そろっていないというところで、そろったほうがいいのだと思います。
それから、非常に細かいところですが、障害年金や遺族年金の予測などというのは大変難しいということなのだろうと思いますけれども、厚年のほうが障害年金は多少少なめになってきている、予測よりは少ないのですが、国年のほうが予測よりも多いと言えば多い。大したインパクトはないですけれども。障害というのは国年と厚年で違うような動きがあったのかどうか、ちょっと気になりましたので、そこだけ確認したいなと思います。
ちなみに、関わっていて変な質問なのですけれども、財政検証で障害年金と遺族年金はどうやって予測していましたか。すみません。その点をお願いします。
○翁部会長 お願いします。
○楠田調査室長 繰上げの状況についてですが、65歳の時点でどのぐらいの人が繰上げをしたかという実数というのは把握ができるのですが、その人たちはその後、繰下げも選択する可能性があって、裁定請求しない限りは統計として数字で表れてきませんので、トータルでどのくらいの割合の人が繰上げをしたのかという率は、お示しするのが難しいと考えております。
○翁部会長 お願いします。
○佐藤数理課長 最後に御質問があった障害年金の話ですが、まず基礎年金のほうにつきましては、実績のほうが人数が多くなっております。これは今、財政検証に向けていろいろ分析しているところ、障害の発生率が、かなり実績は高くなっているというものであります。将来見通しは、その実績に基づいて発生率を設定して、毎年毎年障害年金を発生させて、あと、障害年金受給者の失権率も実績を基に設定して、それで失権させていくと。毎年毎年転がして計算していっているわけですけれども、基礎年金に関しては、まず障害の発生率が高いことが要因と考えています。厚生年金のほうは完全に分析し切れていないですが、あまり大きな差はないのかなと認識しているところであります。
以上です。
○翁部会長 お願いします。
○庄子委員 先ほど国年のほうでお願いした内容については、厚生年金のほうでも御対応いただけるとありがたいなと思いますので、よろしくお願いいたします。
○楠田調査室長 はい。
○翁部会長 駒村委員、今、御回答いただきましたけれども、何か追加的にコメントがございましたらお願いいたします。
○駒村委員 繰上げ・繰下げ受給率というのはなかなかつかまえにくいのかなというのは、そのとおりかなと思います。ただ、一方で、石井先生がセミナーなどでお話しされたように、何かマイクロデータ的なものを機構が持たれて、そういったものを使う方法はないのかなとお話を聞きながら考えていました。
ありがとうございます。
○翁部会長 やはり分析していくことは大変重要なので、いろいろと工夫して考えていただけるとありがたいなと思います。
そのほかはいかがでしょうか。野呂委員、いかがですか。お願いいたします。
○野呂部会長代理 毎年同じような御質問で少し気が引けるところもあるのですけれども、10ページ目の免除のところですが、これまで本当にすごい勢いで免除の方が増えてきたのですけれども、今年は少し増え方も収まってきています。しかし、被保険者数そのものが減っていることを考えると、割り算すると、免除の方の割合、特に法定免除者の割合が増えているという中で、これは去年も御質問した件ですが、実際どれぐらいの期間が免除がなされているのか。免除期間の分布になると思うのですけれども、これを知りたいと思います。あるいは免除になった後、追納、免除された保険料を後で払っているのかどうかという辺りについてはどの程度把握できているのかということもお聞きしたいと思います。
というのは、免除者が増えていること自体が問題というよりも、これは将来の低年金、高齢者の貧困層の予備軍のような要素になっていると思うので、ある程度早い段階からしっかりとその数字をつかんでおく必要があると思いますし、もっと言えば、そういう人が増えていくのであれば、これは年金数理部会の問題ではないですけれども、そういう将来の低年金者に対してどういう対応をするかという検討も要るのではないかと思います。毎年聞かせていただいているので、どれぐらいの期間免除かということと、追納があるかどうか。これが1点目の質問です。
同じような質問で、17ページの納付率のところですけれども、今年は実質的に保険料の収入も増えていますし、納付状況がよくなっているのだと思うのですが、去年も前年、当年とも加入している人の納付状況がよくなったことで納付率が上がった分と、免除や猶予の増加によってすなわち分母が減ったことで納付率が上がった分と、その他、新規や喪失というところで納付率が上がった分に、因数分解して教えてもらったので、今年もそれを教えてもらえないかというのが2つ目の質問です。よろしくお願いします。
○翁部会長 お願いいたします。
○楠田調査室長 1つ目の御質問でございますけれども、平均的な免除期間というのは、把握ができていなくて、免除を猶予された人たちがその後どのくらい追納していったかというところについても把握できていません。なお、追納制度の利用を促進するために、日本年金機構で毎事業年度の行動計画において、年金事業所に対して追納勧奨状の送付計画と送付実績を機構本部に報告するように指示をしておりまして、令和4年度では国民年金保険料の追納勧奨件数は約815万人、追納件数は約21.9万人となっています。
2点目の令和4年度の納付率について、その影響を因数分解ということで申し上げますと、両年度とも納付対象月数がある者の納付率の上昇に伴う影響というのが1.77%ポイントございます。また、免除または猶予の増減による影響というのは1.40%ポイント。その他の新規資格取得・喪失による影響というのがマイナス0.95%ポイントという結果になってございます。
○翁部会長 よろしいですか。
○野呂部会長代理 後半はよく分かりました。去年よりも前年、当年とも加入している人の納付率が上がっているということで、非常にいい傾向だということで理解しました。
初めのほうですが、どれぐらいの期間が免除になっているのか。全然払っていない、ずっと免除のままになっているのかどうかというのは、全数とは言わないまでも、サンプルデータでも調査することができればと思います。その辺りも今日すぐ御回答をいただくのは難しいかと思うのですけれども、一度検討いただけないかと思います。
○翁部会長 お願いします。
○楠田調査室長 今、現時点でどういった形で集計というか、把握ができるかというところはすぐにはお答えできないのですけれども、できるかどうかというところも含めて今後検討させていただきたいと思います。
○翁部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、山口委員、お願いいたします。
○山口委員 ありがとうございます。山口です。
1点目コメントですけれども、総括のところで拠出金単価が年金財政にどう影響を与えるかについて御説明いただいております。事前に拠出金単価が年金財政にどういう影響を与えるのか、その考え方について教えていただきたいということをお願いしていて、御説明いただきましてどうもありがとうございます。
以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
そのほかはいかがですか。駒村委員、お願いします。
○駒村委員 先ほど野呂委員からお話があった免除は低年金につながると。本当にそうで、大事なのは同じ人がずっと免除を受けているということが起きているかどうかというのがとても重要だと思います。
さらに言うと、免除があまりたまっていくと年金生活者給付金の給付にもはねるのではないかと思いますので、ここも今までの統計でできなければ、ぜひとも機構などからマイクロデータみたいなものをお借りして把握しておく必要があるのではないかなと思います。
以上です。
○翁部会長 そうですね。やはり低年金につながる非常に重要なデータだと思いますので、ぜひちょっと検討していただきたいと思います。
そのほかはいかがでしょうか。
1つお伺いしたいのですけれども、1号についての属性の内訳というのは、昨年度もお伺いしたと思うのですが、それはどういう頻度で分かるもので、これも随分動いていると思うので、ぜひ把握していただきたいなと思っているのですけれども、頻度とか状況について教えていただければと思います。
○楠田調査室長 国民年金第1号被保険者の就業状況と属性ですが、こちらは国民年金被保険者実態調査というもので調査をしておりまして、これは3年に1回やっております。今出ているのは令和2年度の結果までなのですけれども、3年に1回なので、現在令和5年調査ということで調査を実施しておりまして、再来年、令和7年3月ぐらいにその結果、第1報が出るというような状況でございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
1号というものも多様化していて、属性がばらばらになってきているので、この辺も非常に重要かなと思っております。今、実態としては3年に1回でないと分からないのですけれども、いろいろな議論のための基礎資料として非常に重要かと思いますので。どうもありがとうございます。
そのほか、追加的にございませんでしょうか。
特にないようでしたら、こちらで本日の聴取は終わりにしたいと思いますけれども、よろしいですか。
ありがとうございます。
それでは、もし今後審議の過程で疑義が生じましたら、事務局を通じまして照会させていただきますので、御協力のほど、ぜひお願いしたいと思います。
それでは、最後に事務局から連絡がございましたらよろしくお願いいたします。
○村田首席年金数理官 次回の第99回年金数理部会は、1月11日木曜日の10時から、本日と同じ全国都市会館大ホールにて開催いたします。
議題は、「国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済それぞれの令和4年度財政状況について」を予定しております。
以上でございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
それでは、第98回年金数理部会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。