第190回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和5年12月21日(木) 9:00~10:00

場所

厚生労働省 職業安定局第一会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

議事内容
○伊藤総括調整官 おはようございます。事務局でございます。
 開催に先立ちまして、御連絡を申し上げます。
 本日は、こちらの会場とオンラインの併用で開催しております。
 部会中は、オンラインの方は基本的にはカメラはオンで、マイクはオフでお願いいたします。
 また、発言をされる際には、会場の方は挙手、オンラインの方はZoomの「手を挙げる」機能を活用いただきまして、部会長から御指名があった後に御発言をお願いいたします。
 なお、傍聴は、別会場にてオンラインで行っております。
 進行に関する説明については以上でございます。
○守島部会長 皆さん方、おはようございます。
 朝早くからお集まりいただき、どうもありがとうございます。
 ただいまより、第190回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
 出欠状況ですけれども、公益代表の水島委員及び労働者委員の千葉委員が9時40分、45分前後に御退室されると伺っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、マスコミの方の頭撮りはこれで失礼させていただきたいと思います。
(報道関係者退室)
○守島部会長 では、議題1に入っていきたいと思います。議題1は「雇用保険制度について」でございます。
 まず、資料1「財政運営」について事務局より御説明をいただきたいと思います。
○伊藤総括調整官 雇用保険課の伊藤でございます。
 私から資料1について説明をさせていただきます。
 議題は「財政運営」でございます。内容としましては、主に昨日、厚生労働大臣と財務大臣が令和6年度の予算編成の折衝を行いまして、その中で雇用保険関係のものが2点ございました。1つ目が、育児休業給付の財政基盤の強化、2つ目が、失業等給付の積立金から雇用安定資金への繰入金の取扱い、この2つを取り上げたところでございます。
 この内容について御説明させていただきますが、特に1つ目の育児休業給付を支える財政基盤の強化でございますが、この論点は今月11日の雇用保険部会におきましても、事務局から、国庫負担、保険料負担の在り方について検討を進める、その際、料率の調整は保険財政の状況に応じて弾力的に行うこととし、当面は据え置けるようにする仕組みの導入を検討してはどうか、こういった方向性をお示ししたところでございます。その後、委員の皆様からは、まずは国庫負担を本則に戻すことが先決であり、保険料に関してはその後である、国庫負担により財政状況が大きく変化することから、保険料率を弾力的に変更する仕組みの導入についても、国庫負担の本則復帰後に改めて検討を行うべきであるといった御意見ですとか、あるいは、国庫負担の本則復帰を前提に、財政運営の試算を踏まえつつ、将来的な給付額の増加を見据え、国庫とその保険料負担について、その在り方を考えていくべきである、また、本則の10分の1という記載は正しい記載ではあるものの、僅か1.25%であることも十分踏まえなければいけない、こういった御意見をいただいたところでございます。そうした御意見もいただきながら、厚生労働省として財政当局と交渉を重ね、これから申し上げる内容を策定したところでございます。
 長くなりましたが、1ページ目を御覧ください。育児休業給付を支える財政基盤の強化でございます。見直しの方向性といたしまして、男性育休の大幅な取得増に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するため、令和4年の雇用保険法改正法の附則の規定を踏まえて、丸の1令和6年度から、国庫負担割合を現行の80分の1から本則の8分の1に引き上げる、丸の2当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入する。そして、この弾力的な調整の仕組みを注釈として記載しておりますが、前年度の決算を踏まえた該当年度の積立金残高の見込みと翌年度の収入の見込みの合計額が、翌年度の支出の見込みの1.2倍を超える場合は、翌年度の料率を0.4%とすることができることとする、こういった内容とさせていただいたところでございます。
 この内容を次のページでもう少し具体的に説明させていただきます。2つ目の○でございます。この弾力的な運用ですが、前提として、これはN+2年度の保険料率について、N年度の決算に基づきまして、N+1年度に判断するということでございます。そして、判断に当たっては、この下の図のAとBを比較するものでございますが、Aは具体的にはN+2年度の収入と、N+1年度末の積立金の合計額の見立てでございます。そして、このN+1年度末の積立金をさらに分解しますと、N年度末の資金残高と、N+1年度の差引剰余の見立て、このようにしております。一方、Bは支出でございますが、これはN+2年度の支出の見立てでございます。そして、それぞれ計算いたしまして、AがBの1.2倍を超える場合には、労働政策審議会の御意見を聴いた上で、育児休業給付の雇用保険料率を0.4%とすることを可能とする、こういった仕組みを御提案させていただきます。
 次のページは御参考までにお付けしたものでございますが、現行の雇用保険制度において既にビルトインされております弾力条項でございます。失業等給付と雇用保険二事業については、御案内のとおり既に弾力条項がございまして、それぞれの給付の性格に応じて分母分子や何倍といった設定は変わりますけれども、このようなものがございます。同じようなものを育児休業給付につきましても導入してはどうか、こういった提案でございます。
 続きまして、4ページ目でございます。ただいま申し上げましたような国庫負担、そして、保険料率に関する財政基盤強化策を反映したものを将来の試算に当てはめたところでございます。国庫負担につきましては、繰り返しになりますが、令和6年度から8分の1とし、そのまま8分の1を継続するとしております。一方、保険料率についてでございますが、こちらは弾力倍率とリンクしておりまして、弾力倍率を御覧いただきますと、令和7年度までは1.2を超えておりまして、令和8年度、9年度が1.2を下回っております。そうしますと、例えば令和7年度でしたら、その2年後である令和9年度までは1.2を超えていますので0.4%とし、一方、令和10年度につきましては、令和8年度の弾力倍率が1.2を下回っていることから0.5としております。11年度も同様でございます。実際にはこれは労働政策審議会の御意見を聴いた上でございますけれども、機械的に当てはめるとこういった料率となるとしているところでございます。
 続きまして、5ページ目でございます。2つ目の話でございまして、こちらは失業等給付の積立金から雇用安定資金への繰入金の取扱いでございます。雇用保険二事業による失業等給付の積立金からの借入額でございますが、こちらは令和4年度末で累計2.9兆円、令和5年予算を含めると3.4兆円となっております。これにつきまして、2つのことを昨日の大臣折衝では論点としました。1つ目としては、令和5年度決算におきまして雇用保険二事業に差引剰余が生じた場合、これは特別会計法の附則の規定に基づきまして、全額を失業等給付の積立金に繰り入れることとし、としています。2つ目、控除の話でございまして、控除の在り方につきましては、令和4年の雇用保険法改正法の附則の規定に基づき、引き続き検討する、このようにしているところでございます。なお、この令和4年の改正法附則は、この下に記載しておりまして、具体的には、令和6年度までを目途に、労働特会の雇用勘定の財政状況などを踏まえ、控除の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる、これについて引き続き検討するとさせていただいたところでございます。
 6ページ目でございます。こちらの資料自体は、前回の12月13日に提出いたしました失業等給付の財政運営試算でございます。この試算に関しまして、ただいま申し上げた点を含めて補足説明を2点させていただきます。1点目として、令和5年度決算において二事業に差引剰余が生じた場合、全額の積立金を繰り入れる、これを実際に実施した場合でございましたら、今、表上、令和5年度の積立金残高は1.18兆円としておりますところ、こちらに決算剰余が積み上がることとなります。また、2点目といたしましては、こちらは11月22日の部会における質疑の中で御説明させていただきましたが、令和5年度予算におきまして、積立金から雇用安定資金への貸出しとして4600億円を計上しております。ですが、現在までの雇用調整助成金の実際の支給実績を踏まえますと、この令和5年度予算で計上いたしました4600億円の貸出し、これは必要なくなるのではないか、このように考えております。そうしますと、そういった数字がさらに令和5年度の積立金残高に加わると考えております。その結果、どういうことが起きるかといいますと、このお示ししております表上では、失業等給付の弾力倍率が2倍を超えておりますのは令和8年度でございますが、先ほど申し上げましたようなことが起きますと、この2倍を超える年度が何年か早くなる可能性があると考えております。
 7ページ目以降は、昨日の大臣間の折衝にはない事項でございますけれども、財政運営に関わるものでございますので、説明をさせていただきます。
 7ページ目を御覧ください。こちらは今月11日の部会で提出いたしましたリスキリング関係の訓練期間中の生活を支えるための新たな給付の具体的な制度設計の資料でございます。そのときから追加した点としましては、この一番下の財源でございますが、この財源につきましては、今回この資料におきまして、保険料に加えて国庫負担を財源とするということを提案させていただきます。国庫負担の水準としては、求職者給付と同様の基準で給付額の4分の1または40分の1としているところでございます。
 8ページ目、こちらは教育訓練受講のための新たな融資制度の具体的な制度設計でございますが、こちらも財源について追記しております。労使保険料と国庫負担としておりまして、この国庫負担の考え方は、求職者支援制度の財源構成でございまして、原則は2分の1、当分の間は原則的な負担割合の55%としているところでございます。
 9ページ目でございます。今回の制度改正において、このリスキリング関係の給付・融資について、雇用保険制度にどのように位置づけるかを説明させていただくものでございます。現行の法体系で申し上げますと、失業等給付はこのIからIVでございますが、今回の見直しにおきまして、このⅢの教育訓練給付の下に、既存でございます教育訓練給付金、これに加えて新たに創設します教育訓練休暇給付金、これは訓練期間中の生活を支えるための新たな給付の仮称でございますが、こちらを位置づけることとしております。また、新しい融資制度につきましては、求職者支援事業として位置づけると、このような制度体系の見直し案を御提案させていただくところでございます。
 事務局からは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様から質問、意見等をお伺いしたいのですけれども、今の説明にもありましたように、今回の資料は大きく3つの点があります。1つ目が、1ページから4ページの育児休業給付を支える財政基盤の強化という問題、2つ目が、5ページから6ページの失業等給付の積立金から雇用安定資金への繰入金の取扱案ですね。3つ目が、7ページ以降の教育訓練関係ということになっています。この順番で分けて議論していきたいと思いますので、委員の皆様もそれぞれのところで御意見をいただければと思います。
 最初に、育児休業給付を支える財政基盤の強化案についてですけれども、いかがでしょうか。
 大谷委員が手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
○大谷委員 ありがとうございます。全国中央会の大谷です。
 育児休業給付の見直しの方向性として、国庫負担割合を本則の8分の1にしていただきました。資料を見ますと、丸の1のところで「引き上げる」という表現がされておるのですけれども、ここは単に本則に戻っただけと捉えております。引き上げるということであれば、今後の支出増を見込んで8分の1以上の国庫負担割合を御検討いただきたいと思っております。
 また、賃上げの原資の確保に苦慮している中小企業に水を差すような広報をするべきではないと思っておりますので、弾力条項をしっかりやっていただいて、中小企業の負担となる保険料率の引上げにつながらないようにしていただきたいということと、今まで同様、赤字の際は一般会計からの繰入れを御検討いただきたいと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、清田委員、お願いいたします。
○清田委員 ありがとうございます。
 今回の育児休業給付の国庫負担割合につきまして、これまでの意見を踏まえまして、令和6年度までの暫定措置から1年間繰り上げて本則である8分の1に引き上げる方針を示していただいたことには、感謝したいと思います。
 他方で、令和7年度以降から0.5%に引き上げる案が示されていることは、大変遺憾に思っております。日商として、これまで少子化対策に重点を置く現下の政策動向に鑑みれば、育児休業給付の国庫負担割合をさらに増やして、安易に料率を引き上げるべきではないことを発言してまいりました。また、別途、こども政策に係る新たな支援金制度の創設による負担や、本部会で議論されている適用拡大なども踏まえますと、育児休業給付においても負担が増加することは、事業主にとって厳しい内容と考えております。
 ただし、今回の引上げと同時に、弾力的に調整できる仕組みを併せて検討いただいたことは、厳しい環境にある中小企業にも一定の配慮をしていただいているものと受け止めております。弾力運用の効果によって、0.4%まで据置きが可能な期間の間に、引き続き育児休業給付の目的と役割を再確認して、国庫負担割合のさらなる引上げをお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。男性育休の大幅取得に対応すべく、国庫負担の暫定措置を1年前倒しで終了させて、令和6年度から本則に復帰させるということ、それから、令和7年度から保険料率の本則を0.1%引き上げるものと理解いたしました。これに加えて、財政状況に応じて弾力的に保険料率を引き下げられる仕組みを導入することで、試算では当面の料率は据え置いた上で、令和10年度に弾力倍率が1.2を超える見込の下で、令和12年度に再び0.4%へ引下げとなる提案と受け止めました。
 これまでも申し上げてきたとおり、育児休業給付の大幅な増加を見据えた負担の在り方については、労使の保険料と国庫による応分の負担が原則であることをこの場で共有した上で、育児休業給付自体の在り方を含めて今後も継続的に検討していくべきだと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続いて、奥委員、お願いいたします。
○奥委員 ありがとうございます。
 ほかの委員の方からもございましたが、組合員の現状を踏まえて、発言をさせていただきます。
 私たちが抱えております中小企業で働く組合員は、現下の物価高騰を受けまして、非常に厳しい生活を強いられております。また、今年の春闘で物価高騰に見合う賃上げが実施されるのか、不安を抱えているところでございます。このように、組合員にとっては厳しい状況であるにもかかわらず、これ以上企業経営を圧迫し組合員の可処分所得を下げる可能性がある内容について、労働者が納得するだけの理由が見えないと感じております。もともと国庫負担割合を本則に戻すことは当然であると考えております。政府と労使の3者が応分の負担をすることが重要ではございますが、国庫負担割合がもっと早く本則に戻っていれば、労使の保険料率の本則を引き上げることにはつながらなかったのではないかと考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、水島委員、お願いいたします。
○水島委員 御説明ありがとうございました。
 来年度から国庫負担割合が本則に戻ることは大変喜ばしく、財務省と折衝いただきました厚生労働省の皆様に、まずは御礼申し上げます。
 男性の育児休業取得者が増加するだけでなく、男性の育児休業期間が長くなることが期待されるところでありまして、それに対応するために育児休業給付を支える財政基盤を強化することが必要であり、本則料率を引き上げる改正に私は賛成です。
 なお、その説明に当たり「今後の保険財政の悪化に備えて」と記されています。これは正確な記載ですが、保険運営に問題があるとか、被保険者や事業主の負担が将来的に増え続けるとか、誤った理解や報道がなされないよう御留意いただければと思います。保険料率が引き上がることは、保険給付がなされることを意味し、それは被保険者のリスク、育児休業に関してはニーズとも言い得るものかもしれません。そうしたものに適切に対応するものであると私自身は理解しております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど奥委員からもございましたが、労働側からこの間申し上げてきた考え方を改めて申し上げたいと思います。
 前提として、社会全体で育児に関する支援を行っていくことは非常に重要だと考えており、労働側としても全力で取り組んでいきたいと考えております。しかし、今回の見直しで示されている給付率の引上げや育児時短就業給付の取組などによる男性育休の取得促進と取得日数の増加については、この雇用保険制度の本来の趣旨を上回る少子化対策としての要素が強いものと考えており、その財源については、一般会計からの新たな繰入れなどにより国の責任を示していくことが重要ではないか、ということを一貫して申し上げてきたところでございます。
 今回見直しの方向性、1ページの丸の1に書いていただいているように、令和6年までの国庫負担割合の引下げ措置を1年前倒しで本則に戻すということで、これでようやく国庫負担と労使の負担が本則に沿ったものと認識するところでございます。しかしながら、一方では、丸の2で労使の保険料率の本則を令和7年度から引き上げることが示されております。そもそも冒頭、口頭での御報告がございましたけれども、本日の資料には今までの議論経過が掲載されておりませんし、とりわけこの保険料率について、議論が十分されたということはなく、今回若干唐突にこの保険料率の引上げが示されたことについて、大変遺憾に思っているところでございます。
 4ページを見ますと、弾力的な運用により令和9年度まで0.4%の保険料率が維持されると試算されており、ようやく引き上げの可能性が出てくるのは令和10年度ということだと思いますし、かつ将来の育児休業給付の支出状況が不明瞭な中で、なぜこの令和7年度から本則を引き上げる必要があるのか、理解がなかなか難しいところでございます。その点、事務局のお考えを伺いたいと思います。まずは1点質問です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問や御意見のおありになる方、いらっしゃいますでしょうか。
 課長、お願いします。
○尾田雇用保険課長 一旦、冨髙委員からいただいた点について御説明させていただきます。
 まず、この雇用保険部会の場で育児休業給付を支える財政基盤の議論、特に保険料率をどうするかという議論が十分でなかったという点につきましては、私どもの議事運営上の不備と認識しております。委員に十分な御意見を言っていただく場が提供できなかった点については、私どもとしても議事運営上の不手際として真摯に御批判を受け止めたいと思いますし、その点についてはおわび申し上げたいと思います。
 もう一点、冨髙委員から御指摘がございました、将来の支出が不明確な中で保険料の原則を引き上げるという点を今回決めることについての御疑問でございます。今回国庫負担と併せまして、保険料率の将来の姿も併せてお決めいただくことにつきましては、もともとの課題であった育児休業給付の給付と負担の在り方についての検討に併せまして、少子化対策を国として強化する中で、将来の財政支出増が見込まれるという要素が別途入ってまいりました。少子化対策については、男性育休の取得目標が典型でございますけれども、将来の姿も示しながら、そこまで万全な姿を示していくことも政府として掲げたところでございます。その中で、この育児休業給付についても今回お示ししているように、令和12年度、2030年度でございますけれども、ここに男性育休の取得率85%という目標を立てております。こういった時期まで育児休業給付が伸びたとしても万全な備えができるようにということで、国庫負担の早期引上げと併せて保険料についても原則を0.5%に上げる、ただ、財政状況を見てしっかりと確認しつつ、問題なければ0.4%にとどめることができるという措置を併せて講じることにさせていただいたところでございますので、何とぞ御理解いただければと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 冨髙委員、続けてどうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今の説明を伺っても、なぜ実際に上げる必要のない令和7年度の時点で本則を引き上げなければいけないのかというところは理解が難しく、本則は変えずに具体的にどういうことができるかを議論することもできるのではないかという印象を受けております。
 先ほども申し上げたように、社会全体で子育てに関する支援をしていく、それを社会的に発信していくことも非常に重要だと考えておりますし、また、雇用保険財政の安定的な運営のために、政労使が適切に保険料を負担していくことも必要なことと考えております。しかし、一方、先ほど奥委員からも御発言がありましたが、当面保険料が据え置かれるとしても労働者の可処分所得に影響があり得るものであって、労働者にとって抵抗感があることは間違いないと思っております。この保険料率については、労働者が納得できるように、今後の財政状況を見ながら都度検証し、十分な議論を行った上で判断を行うことが必要ではないかと考えますし、とりわけ特別会計がこども家庭庁に移管することで、支援金のようにその制度の本来の趣旨を超えて徴収されるような懸念もある中で、今なのかというところは疑問を感じるところでございますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問のある方。
 尾田課長、お願いします。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。
 御意見でございますが、事務局から私どもの考えも含めて御説明させていただきたいと思います。
 最初に、各委員から御指摘がございましたが、今回の制度をしっかりと皆様に理解していただくことが非常に我々も重要だと思っておりますので、企業の皆様、労働者の皆様に、今回の措置の趣旨、そして、弾力的な条項も設けられているという全体像、しっかりと御理解いただけるように、私どもも取り組んでまいりたいと思っています。まだこれで決まったわけではございませんが、この制度を実際にやるに当たりましては、しっかりと御説明することはお約束させていただきたいと思います。
 また、最後、冨髙委員から御指摘いただいた点、私どもとしてもしっかり受け止めてまいりたいと思います。実際の料率につきましては、丁寧に御議論いただき、委員の皆様から御意見をいただきながら、しっかりと決めていくこととさせていただきたいと思います。
 もう一点ですね。こども金庫の件についての御懸念につきましては、私どもとしては繰り返しこれまでも申し上げておりましたが、移管されたとしても雇用保険制度の育児休業給付であることは変わりございませんので、そこのところは当然と認識しておりますが、厚生労働省としてもそういう疑いを皆様に抱かれないように省としてしっかり対応するとともに、引き続きこの制度については雇用保険部会においてしっかりと御議論いただきたいと思っております。御指摘ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問等、この点でありますでしょうか。大丈夫ですかね。
 続きまして、失業等給付の積立金から雇用安定資金への繰入金の取扱案でございます。そこについて御意見や御質問のある方。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 資料6ページに対して、先ほど口頭で補足いただいたとおり、今年度の雇調金の支出状況を踏まえて、令和5年度の剰余を全額返済し、令和7年度から失業等給付の保険料率の引下げが可能になる環境が整うと理解しました。
 また、御説明のあった今回の全額返済は今年度限りの措置であって、来年度以降の返済の在り方を拘束するものではないと認識しましたが、そのような理解でよいかまず確認させていただきたいと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
 最初にどうぞ。
○尾田雇用保険課長 平田委員からお尋ねがございましたので、事務局から御説明させていただきます。
 今回この5ページに書いておりますのは、令和5年度決算において差引剰余が生じた場合としておりますとおり、あくまでもこれは5年度決算の話でございまして、今回このようにしたからといって6年度以降も同様の取扱いにすることを縛るものではございませんので、それは改めて次期以降に検討するべきことと私どもとしても認識しております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 平田委員、続けてどうぞ。
○平田委員 ありがとうございました。
 そういうことであると、来年度以降は、これまで本部会で種々議論してきたことも踏まえて、剰余の2分の1を上限とする雇用安定資金への積立ても含めて令和6年度末までに返済の在り方を検討して、財政再建および健全化に向けた道筋を明確にすることが不可欠だと思っておりますので、意見として申し上げておきます。
 また、制度見直しそのものとは関係ありませんが、結果として引き続き雇用安定資金がゼロになりますので、雇用保険二事業の適正な執行に引き続き努めていただきたいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、清田委員、お願いいたします。
○清田委員 ありがとうございます。日商の清田でございます。
 この雇用保険二事業による借入金の控除の在り方について引き続き検討すること、差し迫った時間の中でやむを得ないものと受け止めております。また、令和5年度の決算剰余金の処理につきましても、失業等給付の弾力条項に基づいて、より早期に料率の引下げが可能な状況に達するための措置として理解をしております。
 一方で、ただいま平田委員からの御発言及び尾田課長からの御回答にございましたが、今回のこの全額返済の措置は例外処理ということは、改めて御認識をいただきたいと思っております。
 また、令和5年度の剰余金の全額返済によりまして、雇用安定資金は引き続き残高ゼロとなります。人手不足の中で、企業を通じた従業員の能力開発及び雇用の安定に取り組むことは、これまで以上に重要と考えております。実効性の高い支援を検討いただくとともに、メリハリある運用をお願いしたいと思います。
 最後に、以前の発言の繰り返しとなりますが、今後の借入金の在り方に関する現時点での考えを改めて述べたいと思います。コロナ禍の雇調金の対応は、国家全体での危機、緊急事態に対して失業の抑制に果たした役割を考えますと、二事業ではなく一般会計で全額措置するべきであったということは、繰り返し主張してまいりました。
 一方で、既に二事業から拠出されている現状、また、借入金が発生している状況を踏まえますと、失業等給付への一定の返済を行っていく必要性はあるとは認識はしております。ただ、返済の検討に当たっては、二事業の安定的な運営を担保するために、一部免除による現実的な返済額を検討していくべきと考えております。その中で、一般会計が失業等給付の勘定に投入されている中で、その投入前後の失業等給付の収支及び失業率の推移等を見ても、その大半が雇用調整助成金の原資となっていることが推察されることを踏まえますと、一般会計からの失業等給付への投入額を目安に免除を検討することも可能ではないかと考えております。
 コスト増加に悩む中小企業にとりましては、二事業を含む雇用保険の料率引上げには懸念が強くございます。財政の早期健全化に取り組んで、料率の引上げが可能な限り抑制されるよう、財政運営をお願いしたいと思っております。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、大谷委員、お願いいたします。
○大谷委員 全国中央会の大谷です。ありがとうございます。
 私のほうは、先ほどの平田委員、清田委員のお話と重なる部分がかなりあるのですけれども、よろしくお願いいたします。
 今回の資料につきましては、失業等給付の積立金への返済だけに焦点を当てたものとなっておりますけれども、雇用保険制度全体で考えるべきではないかと思っております。リスキリングの関係もありますので、失業等給付も万全にする必要がありますが、二事業の雇用安定資金残高がゼロの状態が続いていることについては、労政審本審でも問題視する発言が多々あるといったところでございます。過去の議論にあったように、借金の原因は国の感染症対策の肩代わりをしたようなものであるということもありますので、全額国庫負担の検討もあり得るのかと思っておりますし、安易に料率を引き上げて対処することのないようにお願いしたいと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 古賀委員、お願いいたします。
○古賀委員 5ページの失業等給付の積立金から雇用安定資金への繰入金の取扱いについて、差引剰余の2分の1まで雇用安定資金へ組入れを可能にする仕組みになっているが、令和5年度においては雇用保険二事業の差引剰余を積立金に全額繰り入れるものと理解しております。控除の在り方については、引き続き検討とされておりますが、積立金からの貸出しの中には、労働者が負担している保険料も含まれることを十分踏まえた上で、引き続きの検討をお願いしたいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか御意見、御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 尾田課長、お願いいたします。
○尾田雇用保険課長 事務局でございます。
 各委員から御指摘いただきました。今回の措置としてはこのような内容ということでございますが、そもそもの返済について、控除でございますけれども、ここについては引き続き検討をという点については、私どもとしてはしっかり受け止めて今後対応してまいりたいと思います。
 また、そのときの考え方については、労使各委員の皆様からそれぞれ御意見を賜りました。そういった点も踏まえながら、私どもとしてしっかり対応してまいりたいと思っております。
 平田委員、清田委員、また、大谷委員から、雇用安定資金が引き続きゼロになることについて御懸念がございました。私どもとしても、雇用保険二事業は使用者の皆様から御負担いただいた資金に基づきまして雇用対策をしっかりとやっていくという趣旨でございますので、そこはしっかり頂いた資金の範囲内でめり張りをつけて効果的な事業をやっていくという趣旨を改めて確認させていただき、適切に運用させていただくことをお約束させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに何かありますでしょうか。大丈夫ですかね。
 では、次の点に行きたいと思います。最後ですけれども、教育訓練関係で何か御質問、御意見のある方はどうぞお願いいたします。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 資料の9ページで体系図として、位置づけを示していただきましたが、教育訓練給付の中に訓練期間中の生活を支えるための新たな給付を位置づけ、国庫を投入して財源を手当てするという内容と理解しました。また、教育訓練受講のための新たな融資制度につきましても、求職者支援制度の財源構成と同様に、その一部に一般財源を投入する提案と受け止めております。制度設計案や見直し、全体像に違和感はなく、政府としてリスキリングによる能力向上支援にしっかりと取り組む姿勢を示していただいたものだと認識しております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、大谷委員、お願いいたします。
○大谷委員 ありがとうございます。全国中央会の大谷です。
 今までの議論でもあったところと重なってくるところはあるのですが、今回の新たな給付・融資につきまして、本制度を含めてリスキリング関係の事業がどのような訓練が対象になるのか分かりにくいということがありますので、改めてしっかり周知をいただきたいということをお願いしたいと思います。
 また、小規模の中小企業ほどOFF-JTが進んでおらず、まして無給の教育訓練制度を制度化することは人手不足等で難しい面があります。中小企業でも取り組めるような好事例を集めていただきまして、機会を捉えて積極的に事例紹介していただきたいと思っておりますし、中小企業に本当に効果があったのかどうかについても検証をお願いしたいと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、内藤委員、お願いいたします。
○内藤委員 ありがとうございます。
 まず、7ページの新たな給付について、「求職者給付と同様の基準」という記載があります。国の政策としてリスキリングを推進するために個人への支援を拡充するものであることを踏まえると、実質的にはほとんどの場合が40分の1の割合となる国庫負担が国としての責任を果たしていると言えるのか、若干疑問が残るところです。
 8ページの新たな融資は、求職者支援制度の枠組みで実施することは一定理解できます。しかしながら、国の政策かつ雇用保険の被保険者以外を対象とした制度であることも勘案すると、求職者支援制度の国庫負担について、当分の間、本則の55%に引き下げている暫定措置を速やかに解除して、将来的には全額一般財源で負担すべきであるということは従来から申し上げているところです。
 いずれにしても、どちらの施策も教育訓練を行う労働者や求職者を支えるものであると認識していますが、両者を含む教育訓練全般について国の政策として積極的に推進していくのであれば、一般財源や関係する省庁の予算を投入することが引き続き求められるということも、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 どうぞ。
○尾田雇用保険課長 事務局でございます。
 まず、大谷委員から、どういった訓練が対象になるのか分かりにくい、あるいは中小企業にも普及できる好事例の周知あるいは効果の検証という御指摘をいただきました。今回新しい制度としてこういった給付・融資制度を設けるに当たりましては、当然ながら私どもとしてもしっかりとその中身をまず検討し、周知をして、御利用が進むようにしっかり取り組んでまいりたいと思っておりますので、御提案のような好事例も含めまして、どのようなやり方が適切か、可能かということは検討してまいりたいと思っております。
 また、内藤委員から、国庫負担について国としての責任が40分の1というのはどうかという御指摘をいただきました。また、融資に関連して、求職者支援制度について、本来であれば全額国庫負担という御指摘もいただきました。この国庫負担の在り方につきましては、従来も御指摘をいただいておりますが、今後ともの課題として我々としても受け止めまして、引き続き雇用保険制度の在り方の中で皆様からも御意見をいただきながら、私どもとしても考えていきたいと思っております。
 また、教育訓練全般の財源についても御指摘いただきました。これは厚生労働省全体の課題でございますけれども、おっしゃるとおりリスキリングを国としてしっかりやっていくという中では、雇用保険二事業だけでやる、あるいは雇用保険料だけでやるということでは当然ございませんので、そこは政府全体の課題としてしっかり受け止めて対応してまいりたいと思っております。御指摘ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 この点に関して、ほかに御意見などおありになる方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですかね。
 ほかに全体を通して御意見、御質問のある方はいらっしゃいますか。これも大丈夫ですね。
 ありがとうございます。
 これ以上御意見等がないようですので、議題1についてはこれで終わらせて、以上とさせていただきたいと思います。
 事務局におかれましては、今日の議論も踏まえ、報告案の整理をさらに進めてください。
 本日予定されている議題は以上ですので、本日の部会はこれで終了いたしたいと思います。
 皆様におかれましては、朝早くからお集まりいただき、どうもありがとうございました。