第188回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和5年12月11日(月) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 職業安定局第一会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

議事内容
○伊藤総括調整官 おはようございます。事務局でございます。
 開催に先立ちまして、御連絡を申し上げます。
 本日は、こちらの会場とオンラインの併用で開催しております。
 部会中は、オンラインの方は基本的にカメラはオンで、マイクはオフでお願いいたします。
 また、発言をされる際には、会場の方は挙手、オンラインの方はZoomの「手を挙げる」機能を使用いただき、部会長から指名があった後に御発言をお願いいたします。
 なお、傍聴は、別会場にてオンラインで行っております。
 進行に関する説明については以上でございます。
○守島部会長 皆さん方、おはようございます。
 ただいまより、第188回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
 本日の出欠状況ですけれども、公益委員の小畑委員、同じく公益委員の水島委員が所用のため御欠席と伺っております。
 ここまででマスコミの頭撮りは終わりにさせていただけますでしょうか。
(報道関係者退室)
○守島部会長 それでは、議事に入りたいと思います。
 議題1は「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」でございます。
 それでは、資料について事務局より御説明をお願いいたします。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。
 資料1-1と1-2に沿いまして、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案について諮問をさせていただきたいと存じます。
 資料1-1が、省令案要綱について労働政策審議会への意見を求める文書になってございます。中身は要綱に記載のとおりでございます。
 大変恐縮ですが、便宜的に資料1-2に沿って内容を説明させていただきたいと思います。
 改正事項については、2つございます。高年齢雇用継続給付に関する改正、もう一つは教育訓練給付の関係の様式改正でございます。
 1つ目の高年齢雇用継続給付の関係でございますが、4ページを御覧ください。高年齢雇用継続給付ということで、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金を支給させていただいているところでございます。この給付金につきましては、60歳以降の各月に支払われる賃金が60歳時点等の賃金額の75%未満となった場合には、各月の賃金の15%を支給することで雇用継続を図っているというものでございます。この給付額につきましては、令和2年の改正におきまして、令和7年4月から今は15%ございますけれども、7年度以降は10%になることが法定をされております。
 この給付につきまして、右の真ん中の図を御覧いただければと思いますけれども、賃金額が一定のところまでは賃金に対して今は15%、令和7年度以降は10%を支給するというものでございますけれども、単純に給付率をそのままお支払いしますと、賃金と給付額が75%を超えるといったことなどが生じますので、賃金が一定割合のところから給付率を逓減させた形にしているところでございます。今、61%から75%のところで給付額を逓減させているところでございますけれども、支給率が10%になることによって、この調整する区間が61%から64%になるものでございますので、この逓減する給付率についても改正をするというものでございます。
 具体的には、戻っていただきまして、2ページを御覧いただければと思います。現在の省令において、この逓減の給付率が規定されております。賃金額、下の図で行くとマルの2の部分でございますけれども、マルの2の分の給付額につきましては、みなし賃金月額の75%から賃金の額とマルの3の部分を除いたものから出た賃金額分の給付額が、逓減給付率として定められているところでございます。
 マルの3の部分ですけれども、3ページを御覧いただきまして、このAの部分を拡大させていただきますと、マルの3を一辺にする三角形とみなし賃金月額×46/1000を一辺とする三角形が相似の形でございますので、算数の計算のようなものでございますけれども、このマルの3:みなし賃金月額×46/1000=、みなし賃金月額×75/100-賃金額:みなし賃金月額×11/100という比例式が成り立っているところでございますので、この比例式は内項の積と外項の積の和が等しい性格を持ちますので、最終的にはこのマルの3は、下のみなし賃金月額×46/1000×みなし賃金月額×11/100のみなし賃金月額×75/100-賃金額という計算式が出てくるところでございます。
 2ページに戻っていただきまして、高年齢雇用継続給付の支給率が令和7年度から15%から10%になることに伴いまして、このマルの3のそれぞれみなし賃金月額×46/1000というところ、現行は1万分の485でございますけれども、こちらにつきまして、75%と70.4%の差分の4.6%になるように1000分の46と。右の見直し賃金月額×11/100というところでございますけれども、現行は100分の14とされているところを、75%から64%を引いた11%ということで、100分の11にさせていただくという内容でございます。
 もう一つの改正でございますけれども、教育訓練給付の様式改正でございます。内容としては、行ったり来たりで大変恐縮ですけれども、3ページの(2)のところに書いてありますとおり、現行は教育訓練給付や教育訓練支援給付金の申請に当たっては、疾病又は負傷その他やむを得ない理由が認められない場合に限り、代理人または郵送によって行うことができない旨が記述されているところですけれども、これを原則、代理人又は郵送によって行うことができるように、その旨の記述を削るというものでございます。
 省令案の内容としては以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御意見、御質問があったらお受けしたいと思います。
 千葉委員が手を挙げていらっしゃいます。
○千葉委員 ありがとうございます。
 高年齢雇用継続給付につきましては、令和元年の雇用保険部会報告書にも記載がある通り、給付率の縮小後の激変緩和措置についても検討を行い、労働者及び事業主に対して十分に周知をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続いて、平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 令和2年の改正法の内容を施行するために必要な措置と理解しております。実務面への影響が少し大きいと思っておりますので、引き続きの周知徹底を要望いたします。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか御質問、御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 説明に一旦戻りたいと思います。
○川端調査官 事務局でございます。
 1点だけ説明を漏らしたところがありまして、申し訳ございません。この省令の施行期日につきましては、もし御承認いただければ、公布日は令和6年2月上旬を予定してございます。施行期日につきましては、高年齢雇用継続給付の関係は令和7年4月1日からで、教育訓練給付の様式改正は公布日からを予定しておるところでございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ただいまの追加の面も含めまして、何か御意見や御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですか。
 ありがとうございます。
 それでは、当部会といたしましては、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について、おおむね妥当と認めることとし、その旨を職業安定分科会長宛てに報告をしたいと思います。それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱の報告文案を画面に表示いたしますので、御確認ください。
 また、会場に来られている方には、事務局より報告文案を配付させていただきますので、御確認をお願いいたします。
(報告文案配付)
○守島部会長 ありがとうございます。
 ただいま画面に表示されている、もしくはお手元にお配りした報告文案によって、職業安定分科会に報告したいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、この報告文案で職業安定分科会に報告いたしたいと思います。
 議題1については以上ですので、議題2に移りたいと思います。
 議題2は「雇用保険制度について」でございます。
 「雇用保険の適用拡大」に関し、資料2「これまでの議論の整理と具体的な制度設計案」について、まず、事務局より御説明をお願いいたします。
○鈴木調査官 雇用保険課調査官の鈴木でございます。
 資料2に基づきまして、御説明をさせていただきます。資料2に関しては「雇用保険の適用拡大」ということでございます。
 1ページを御覧ください。前回11月22日の第187回でお示しした資料でございます。適用拡大の必要性、拡大する場合の留意事項、週所定20時間を基準として設定されている被保険者期間等の算定基準などの在り方について、事務局から見直しの方向性案をお示しさせていただいたところでございます。
 2ページを御覧ください。前回の議論についての御意見の概要でございます。適用拡大の必要性につきましては、雇用保険の適用を拡大し、セーフティーネットを広げることに賛成。労働時間や就労形態などにかかわらず、本来は全ての労働者に適用されるべきであることから、適用を拡大することに賛同。働き方や生計維持が多様化しているということであれば、20時間未満の労働者について適用拡大を進めるという検討の方向性には違和感はない。適用拡大は、中小企業の貴重な現場の担い手である短時間労働者が安心して働き続けられる環境の整備という点においては、意義がある。他方で、保険料負担の増加が見込まれる事業者、また、加入を望まない労働者への影響も考慮しなければならないのではないか。一番大きな層が15~19時間のところであることから、15時間を挟むなど、段階を踏んで徐々に進めていく必要があるのではないか。
 給付内容につきましては、仕事を失うという場面だけではなく、教育訓練や育児休業についても雇用保険の被保険者として適切な保障を及ぼすことが重要ではないか。多様な働き方を支えるセーフティーネットの強化や手続がシンプルになるといった点から、現行の被保険者と同様の水準とすることに賛成。ただし、負担に敏感な中小企業から一定の反発が予想されるため、施行に向けた今後のロードマップなどを示す必要があるのではないか。週所定労働時間週20時間の労働者を基準に設定されている基準や賃金日額の下限額などについて、雇用保険制度との整合性や被保険者間の公平性を考慮する必要があるのではないか。適用拡大によって新たに被保険者となる者については、現行の被保険者よりも失業等給付の受給頻度が増える可能性が高い懸念もあるが、現行と同様の基準とし、制度が複雑にならないようにすることが望ましいのではないか。ただし、被保険者期間の算定基準や失業認定基準、賃金日額については、給付と負担のバランスを図る観点からの見直しは必要ではないかといった御意見がございました。
 3ページでございます。適用拡大の検討に当たっての留意事項でございますが、適用拡大により就業時間を減らす労働者が増え、就業時間調整の新たな壁となることは避けるべきではないか。
 財政に問題がないのかもしっかり検証する必要があるのではないか。
 施行に当たっては、短時間労働者の方が働きやすい環境づくりがまず重要。中小企業の景気回復や、大企業との格差是正といった適用拡大の機運の醸成が今後の問題になってくるのではないか。
 複数就業者のうち、適用拡大によって新たに本業・副業がどちらも適用対象となる者も一定数いることが想定される。現在は主たる賃金を受ける1つの雇用関係についてのみ被保険者となるが、生活を維持するために副業している方も少なくないことを踏まえれば、本業以外では雇用保険加入資格がないという現在の取扱い自体が雇用保険の制度趣旨からして問題ではないか。
 2以上の雇用を合算することで既定の週所定労働時間数を超える場合、現在は65歳以上であればマルチジョブホルダー制度で適用対象となる。離転職や将来に不安を感じてマルチジョブホルダー制度で雇用保険に加入した方も一定数存在しているが、対象者数が少ないことを踏まえれば、対象を65歳以外にも拡充して対象者数を増やすべきではないか。
 適用拡大した際に、現在の対象者や複数就業の労働時間数のパターンごとにどのような影響が想定されるかを整理し、いわゆる部分失業などの失業の定義の見直しを含めた丁寧な検討が必要ではないか。
 暫定任意適用事業について、農林水産業において暫定任意適用事業を含む1~4人の企業に雇用されている労働者は、雇用者の25%を占めており、また、現状も多くの事業者が申請をしており一定のニーズも想定される。セーフティーネット拡大の観点や雇用者数で区別する妥当性の観点から、暫定任意適用事業の撤廃を含めて検討を行うべきではないか。
 求職者支援制度も雇用のセーフティーネットとして重要な役割を担っているところ、雇用保険の適用拡大により、雇用保険の被保険者となる者が当然に求職者支援制度から外れると、支援から抜け落ちてしまう人々が生じる。将来的には雇用保険制度でカバーできる問題なのかもしれないが、少なくとも過渡期においては求職者支援制度を適用ないし準用する必要があるのではないかといった御議論がございました。
 続きまして、4ページ以降でございますが、改めて今回適用拡大について御議論いただくに当たっての検討の素材として、これまでお示ししてきた資料等も含めまして御説明をさせていただきます。
 4ページでございますが、失業保険制度の主な考え方でございます。右側の赤囲いでございますが、雇用保険は、自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定を図る制度であり、その趣旨に鑑み、保護の対象とする労働者を一定の方に限っております。一般に保険とは、同種の偶発的な事故による危険にさらされている人々がこの危険の分散を図るために危険集団を構成するものであるが、雇用保険制度においては、この同種の危険にさらされている人々として、週の法定労働時間が40時間であること等を考慮し、20時間を適用の下限としている状況でございます。
 続きまして、5ページ以降でございますが、適用拡大をどこまで進めていくべきかといった点を検討するに当たって参考となるデータ等を改めてお示しさせていただきます。まず、共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移でございます。男性労働者と無業の妻から成る世帯は減少傾向であります。一方で、妻がパートの共働き世帯数は右肩上がりに増加しておりまして、全体として世帯構成は共働きにシフトしている状況でございます。
 6ページでございます。勤労者世帯の実収入に占める世帯主の女性配偶者の収入の割合は、増加傾向で推移しているところでございます。
 7ページでございます。現行の適用基準の週20時間付近の状況でございますが、週所定労働時間20時間以上30時間未満である方の適用状況の資料でございますが、左上のグラフでございますが、女性が約8割を占めている状況でございます。
 続きまして、8ページでございます。こちらからは、週所定労働時間20時間未満である方の状況でございます。状況を見ますと、男女別には女性が7割超を占めている状況でございます。
 続きまして、9ページでございますが、20時間未満である方の収入の状況でございます。雇用保険未適用である短時間労働者について1か月当たりの収入を見ると、週所定労働時間が多くなるにつれて収入が高い傾向となってございます。
 続きまして、10ページでございます。週所定20時間未満の方の賃金の使い道でございますが、主な仕事の賃金の使い方については「消費(生活上必須の物・サービス)」というものが最も多く57.3%となってございます。これらデータから、週所定20時間前後における労働者の実態は大きく異ならず連続性を持った状態となっているところが見受けられるところでございます。
 続きまして、11ページ以降でございますが、前回の御議論で適用拡大した場合についての財政試算をお示しいただきたいというお求めがございましたので、事務局で試算させていただいております。
 試算の前提について、11ページに記載してございます。財政試算の対象については、失業等給付と育児休業給付についてそれぞれ試算してございます。
 時点については、令和4年度実績を基に、適用拡大の範囲について、10時間以上に拡大した場合、15時間以上に拡大した場合、それぞれについて試算をしてございます。
 被保険者については、労働力調査より適用拡大対象の週労働時間の雇用者数を用いた上で、昼間学生など適用除外の者の割合を基に、適用除外の者を控除して推計してございます。
 収入については、20時間未満の雇用保険料収入は、労災保険、こちらは全労働者対象でございますので、そちらから推計した賃金総額と雇用保険から推計した賃金総額(週労働時間が20時間以上の労働者)の差額(約11兆円)を基に推計してございます。
 支出については、基本手当は、適用拡大対象について雇用形態別の労働者数を算出した上で、それぞれの雇用形態の労働者の基本手当の受給が、週20時間以上の各雇用形態の労働者と同じと仮定して推計してございます。基本手当以外の失業等給付は、週20時間以上の労働者の基本手当の支給額とその他の支給額の比率が、適用拡大対象も同じと仮定して推計してございます。事務費は、週20時間以上の被保険者数と適用拡大対象となる労働者数の比率を用いて推計。育児休業給付は、受給者数は週20時間以上の被保険者に占める受給者数の割合が適用拡大対象も同じと仮定して推計。平均受給月額は週20時間以上の方と適用拡大対象者との平均賃金の差を基に推計し、平均給付期間は週20時間以上の方と同じとして推計したところでございます。
 こうした前提に基づきまして、12ページ、具体的な財政試算結果でございます。全体とその内訳、失業等給付、育児休業給付とそれぞれ分けてお示しさせていただきますが、適用拡大の幅を週10時間以上とした場合、週15時間以上とした場合、いずれにおいても全体では収入が支出を上回る状況でございます。他方、いずれの場合においても、育児休業給付は、支出が収入を上回る状況でございます。週間就業時間が20時間未満の労働者においては、先ほどデータでお示しさせていただいたとおり、育児休業給付の取得率の高い女性の割合が高い状況でございますので、そういった点でこちらの試算にも影響が出ている状況でございます。
 こういったデータ等を踏まえまして、13ページですが、事務局から雇用保険の適用拡大に関する具体的な制度設計案についてお示しさせていただきたいと思います。雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、従来適用対象とされてこなかった週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大し、雇用のセーフティーネットを拡げる。具体的には、給付と負担のバランスのほか、申請手続等を含む事業主の負担等制度運営上のコストも踏まえ、2028年度中に週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用範囲を拡大する。
 新たに適用拡大となる被保険者の給付は、平成19年に廃止された「短時間労働被保険者」のように別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様とし、適用要件を満たした場合、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象とする。週所定20時間以上の被保険者と給付対象を同様のものとすることから、保険料率等についても同水準として設定する。
 現状、週所定20時間の労働者を念頭に設定されている以下の基準、こちら、表にしてございますが、被保険者期間の算定基準、失業認定基準、法定の賃金日額の下限額、最低賃金日額などでございますが、こちらについては、週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用拡大することに対応し、現行の2分の1として設定する。現行、見直し案、それぞれ比較いただければと思いますが、それぞれ2分の1として設定することとしてはどうかと考えてございます。
 続きまして、14ページでございます。一番上ですが、受給資格者が、失業の認定に係る期間中、原則として1日4時間未満の範囲内で自己の労働によって収入を得た場合、その収入額に応じて基本手当を減額することとしている。この仕組みを維持した場合、適用拡大後は、1日2時間未満の労働によって得た収入に基づき調整を行うこととなるが、2時間未満の労働で得られる収入は一般的には少額であることも踏まえ、手続の簡素化等の観点からこれを廃止することとする。
 複数の事業所で雇用されている労働者(マルチジョブホルダー)への雇用保険の適用については、現行では、複数の事業主との間で雇用保険の適用基準を満たす場合には、主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者とすることとされている。適用の範囲を週所定労働時間10時間以上に拡大することに伴い、複数の雇用主との関係で被保険者要件を満たすケースが増加することが想定されることから、現場における取扱いに混乱が生じることのないよう、判断基準の明確化を図る。
 また、令和2年の雇用保険法改正により、65歳以上の労働者を対象に、2つの事業所での週所定労働時間がそれぞれ20時間未満であって合算して20時間以上となる場合に本人の申出を起点として雇用保険を適用する仕組みが設けられ、令和4年1月から施行されており、施行後5年を目途として検討を加えることとされていることから、給付の支給状況等この仕組みの実施状況を把握しつつ、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用の在り方等について引き続き検討する。
 なお、週所定労働時間10時間以上で雇用保険が適用されることとなることに併せて、この65歳以上の労働者の適用の特例についても週所定労働時間の基準を見直すとともに、適用拡大の施行前にこの特例の適用を受け始めた労働者が不利にならないよう、所要の経過措置を設ける。
 雇用保険制度の適用範囲の拡大に伴い、結果として雇用保険の対象とならない者を対象とする求職者支援制度でカバーされていた方の一部が同制度の対象者から外れることとなるが、第2のセーフティーネットである同制度の果たすべき役割・機能を踏まえて、所要の措置を講じることとする。
 以上、事務局から制度設計の案について御提示させていただきます。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見等がありましたらお受けしたいと思います。
 大谷委員、手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
○大谷委員 ありがとうございます。全国中央会の大谷です。
 今回の制度改正の方向性として、まず、セーフティーネットを広げていくということ、こちらについて異論があるわけではありませんけれども、実際に実施するとなりますと、課題が多くあるのかと思っているところでございます。特に年金制度改正など、ほかの社会保険等々どうなるかは別の会議で議論されていると思いますけれども、こちらの議論と総合的に考えていかないと、どれだけの規模にするべきかは判断が難しいのではないかと現状は思っているところでございます。
 それから、財源につきまして、財源の試算を作成いただきまして、どうもありがとうございました。こちらの12ページにある試算でございますけれども、令和4年度ベースということなので、15時間以上でも10時間以上でも赤字にはならないとなってございますけれども、2028年を目途に実施することにされました骨太方針にある適用拡大の記載に合わせるということであれば、男性育休のさらなる増加ですとか、育児休業給付の収支、こちらについてはこのとおりにはならないのではないかと思いますけれども、事務局としてはどのようにお考えなのかお聞きしたいと思います。
 また、一気に500万人の増加ということになりますので、雇用の約7割を占める中小企業の負担はかなり大きいものになるのではないかと思います。今後2030年代半ばまでに最低賃金を全国加重平均で1,500円にするといった総理の御発言からも、さらなる賃上げが求められる中、このような負担増になりますと、賃上げの阻害になりかねないのではないかと懸念しているところでございます。これまで発言させていただきましたとおり、段階を踏むですとか、また、雇用保険料率を引き下げて国庫負担を増加させるといったことによって、中小企業の負担感が過度にならないように注意いただきたいと思っているところでございます。
 それから、これも以前の資料にありましたけれども、約半数の短時間労働者の方が雇用保険の加入を希望していない状況が問題ではないかと思っておりまして、雇用保険加入のメリットを一層示していかないと、年収の壁同様に、就労調整されて人手不足につながってしまうのではないか、年末前に就業調整されると非常に厳しい、人手の確保に苦慮していると各地から意見をいただいているところでもございますので、年収の壁・支援強化パッケージの3年間の実効性なども確認しつつ、適用拡大が就業調整につながらないようにする工夫も必要になってくるのではないかと思っているところでございます。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、清田委員、お願いいたします。
○清田委員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田でございます。
 今回示された資料におきまして、短時間労働者を含む共働き世帯が増加傾向にあること、それから、世帯収入においても配偶者収入が占める割合が年々高まっていること、また、週20時間未満の方が賃金の半分以上を生計に必須な支出に充てていること、こうした社会の変化に対応していくためにも、短時間労働者のセーフティーネットを確保していくことは非常に重要ということは理解しております。一方で、中小企業はコスト高の中で、業績の改善を伴わない状況でも賃上げに取り組まざるを得ない状況にあるなど、経営環境は非常に厳しい状況にあります。保険料負担が増加することは、短時間労働者を含む賃上げへの取組を阻害することにもなりかねないと懸念しております。
 また、適用拡大による負担増加は、事業主にとっては直接的に受益を感じづらいという点を踏まえましても、仮に適用拡大するならば、丁寧な説明が必要になってくるのではないかと考えます。中小企業が深刻な人手不足である状況を踏まえますと、例えばですが、新たに対象となる短時間労働者がより長く勤務し、フルタイムに近づけていけるような、そうした支援が重要になってくるのではないかと考えております。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問は。
 冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、13ページに示されている方向性について、週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用を拡大するということは、セーフティーネット拡大の観点からも重要だと考えており、前回も申し上げたように、現在の対象者への影響も含めて丁寧に対応していただきたいと思います。
 14ページ、具体的な制度設計の2つ目の○で、複数の事業所で雇用されている労働者への適用について、現場における取扱いに混乱が生じることのないよう、判断基準の明確化を図ると記載されております。この点について、複数の事業所での労働時間数や賃金等が同等だった場合にどのようにするのか、どのように明確化を図り判断していくのか。今回の適用拡大により対象となる複数就労者が増加すると想定され、現場ではこれまでにない対応も迫られると思いますので、より具体的に記載をしていったほうがいいのではないかと考えます。
 次に、65歳以上の複数就労者を対象としたマルチジョブホルダー制度について、今までも今回の適用拡大と合わせて対象の拡大を行うべきと申し上げてきております。一方で、対象者やデータが少ないということは、この間も答弁や報告の中でございました。もしそういうことであれば、早急にデータ収集や検証を始めていただき、速やかに複数就労者が適切に保護される施策にする必要があると考えておりますので、早急に検討していただきたいと思います。また、政府としては、副業・兼業を推奨していると思います。そういったことを踏まえれば、複数就労者の「部分失業」などについては、失業の定義の見直しなども検討課題として捉えていく必要があると考えております。
 それから、先ほどほかの委員からもございましたが、適用拡大により新たに適用対象となる方に対して、ご自身が雇用保険に加入することの重要性をしっかり理解していただくことも重要ですし、現在の被保険者や事業主を含めて広く理解が進むようにしていかなければいけないと思いますので、雇用保険制度のメリット、意義、適用拡大による効果や重要性、こういったところを十分に周知・広報を行っていただきたいと考えております。
 また、ここには記載はございませんけれども、前回から申し上げている農業などの暫定任意適用事業については、セーフティーネットの拡大の観点から、撤廃に向けて引き続き検討を行っていただきたいと思います。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 資料2の13ページ、14ページで示されている具体的な設計案については、以前意見として申し上げた、制度の分かりやすさや給付と負担のバランスといった点にも配慮されていて、特段違和感はありません。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問のおありになる方、いらっしゃいますでしょうか。
 お答えになりますか。
○鈴木調査官 1点目、大谷委員からございました28年度めどの育休、政府目標との関係の試算でございますけれども、こちらについては、今後、育休制度全体についてどのように財政基盤の強化を図るかといった観点から、制度全体の関係での検討が必要となってございますので、そうした育児休業制度全体の財政基盤強化をどうするかという観点から、今後も御議論いただきたいと考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○尾田雇用保険課長 その他いただいた御意見に関して、清田委員から、今回適用拡大になる方を念頭に、より長くフルタイムで働けるような支援をという御指摘もございました。今回の適用拡大に当たりましては、事務負担の軽減に加えまして、御指摘のような観点も含めてどういった御支援ができるかは引き続き検討していきたいと思っております。
 また、冨髙委員から御指摘がございました、複数就業の場合にどれを主たる賃金を受ける雇用関係とするかという判断基準の明確化についてでございます。これも施行までに具体化して世の中にお示しできるようにと考えておりますが、御指摘のございました賃金、時間、特に賃金が重要になってくると思いますが、そういった具体的な例示になろうかと思いますけれども、どういうことを念頭に置いているかは報告書での記載も含め検討していきたいと思っております。
 その他、各委員から御指摘をいただいた点につきましては、報告書の内容あるいは今後の検討におきまして、我々としても受け止めて対応したいと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですね。
 では、御意見がないようなので、このテーマについては終わらせていただきたいと思います。
 続きまして「育児休業給付等」に関し、資料3「これまでの議論の整理と具体的な制度設計案」について、まず、事務局より御説明をお願いしたいと思います。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。
 資料3に沿いまして「育児休業給付等」のこれまでの議論の整理と具体的な制度設計案についてお示しをさせていただきたいと思います。
 1ページと2ページは、第186回の雇用保険部会で御提示した給付率の引上げと育児時短就業給付(仮称)の創設に関する検討の方向性の案でございます。
 これにつきましては、3ページ以降でございますけれども、部会において様々御意見をいただいております。
給付率の引上げと育児時短就業給付の創設、共通事項での御指摘ですけれども、いずれの検討の方向性にも大きな異論はないが、運用の設計に当たって、企業の実務面で負担が生じないよう配慮すべきではないか。育児休業取得者や時短勤務者が増加することが見込まれる場合、両立に悩む中小企業への支援も充実するべきではないか。育児休業や時短勤務の取得率、取得期間にどのような効果があったかという点をしっかり見定めて、検証していくことも必要ではないかとの御意見をいただいております。
 財源につきましては、同様の御意見ですけれども、雇用保険以外の財源で措置すべきではないか。雇用保険の趣旨の範疇に収まるものではないと考えており、その財源については、より慎重に検討していくことが重要ではないか。追加的費用の財源については、今後、制度設計を進める中で、財源確保策を明らかにしていくべきではないか。支援金制度については、別のところで議論されているということだが、雇用保険財源に関わる施策の部分について、しっかりこの審議会の中で結論づけていくということだけはお願いしたいとの御意見をいただいております。
 4ページ以降でございますけれども、給付率の引上げにつきまして、制度の創設に関しては、財源的な不安や利用率・執行率が増えていくことに対して不安がある。基本手当の給付率との均衡に鑑みると、雇用保険制度の枠組みの中で引上げを行うことは適当ではないのではないかとの御意見をいただいております。
 給付の要件につきまして、要件とする育児休業の期間につきましては、実態を踏まえて、2週間を要件として設定して給付率を引き上げることは、男性の育児休業の取得率向上に資するのではないかと理解している。一方で、14日でいいのか、5日未満の取得の方たちにとってはハードルがあるという懸念もあるかもしれないが、育児休業だけではなく両立支援をいかにしやすくするかという環境整備に心を砕くべきであり、少なくとも28日がミニマムになるような形で検討するのが本来の望ましい形ではないかとの御意見をいただいております。
 一方の親が育児休業を取得することが不可能な場合の扱いにつきましては、配偶者がいない場合などにも配慮しつつ、配偶者両方の取得を要件とすることは特に違和感はない。ただし、要件の確認について、両者が育児休業を取得していることを確認することが、申請者である企業に過度な負担とならないように配慮すべきではないかとの御意見をいただいているところでございます。
 また、5ページ以降でございますけれども、育児時短就業給付(仮称)の創設につきましては、制度の創設について、育児時短就業給付によって、早期の職場への復帰が促されるということを大きく期待。また、早期のフルタイム就業への復帰を阻害しないような制度周知と運用を期待したい。「両立支援等助成金」の創設によって、他の労働者の理解が一定程度進むのではないかと思われるが、実際には、短い期間、例えば14日という形で、ピンポイントで、人手不足をカバーし切れるのかという点について、相当計画的に行わないと難しいのではないか。そもそも給付制度を検討する前に短時間だけでなく様々な柔軟な働き方を整備する必要がある。介護や育児、治療との両立等の様々な事情を抱える職場において、お互いに支え合って働いていくのだという社会的な機運を醸成することが非常に重要と考えており、この施策がその点において効果的なのか違和感を覚えるとの御意見をいただいております。
 対象者・給付率につきましては、時短勤務の安易な選択や長期化を防ぐという観点から、2歳未満という対象期間には異論はない。他方、ノーワーク・ノーペイの原則を踏まえつつ、他の被保険者の理解が得られる給付率はどの程度なのかという点については、慎重な検討が必要なのではないかとの御意見をいただいておるところでございます。
 これらの御意見を踏まえまして、6ページ以降、事務局から具体的な制度設計案をお示しさせていただきます。まずは育児休業給付の給付率の引上げに関しましては、制度概要のところですけれども、子(養子を含む。)の出生直後の一定期間内(具体的には、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業(出生時育児休業を含む。)を取得した場合に、その期間について、28日間を限度に、休業開始時賃金日額の13%を支給し、育児休業給付の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から、80%(手取りで10割相当)へと引き上げる。
 ただし、被保険者の配偶者が育児休業を取得することができない場合や配偶者が産後休業を取得している場合には、配偶者の育児休業の取得を要件としない。この被保険者の配偶者が育児休業を取得することができない場合としては、配偶者がいない場合ですとか、配偶者が子との法律上の親子関係がない場合、配偶者が就業していない場合、配偶者が雇用労働者以外の働き方で就業している場合がございます。
 御意見がございました給付率引上げの要件とする育児休業の期間については、男性の育児休業取得者の約5割が2週間未満の取得にとどまっている実態を踏まえ、男性の育児休業取得の契機となるよう、14日以上の育児休業を取得することを要件とすることとさせていただきたいと考えております。
 施行時期につきましては、2025年度(令和7年度)から実施する、財源につきましては、少子化対策という要素が強い施策であり、雇用保険料以外の財源を検討と記載させていただいております。
 続きまして、7ページで、育児時短就業給付(仮称)の創設の具体的な制度設計案をお示しさせていただいております。制度概要のところですけれども、被保険者が2歳未満の子(養子を含む。)を養育するために、時短勤務を選択した場合に「育児時短就業給付金」として、時短勤務中の各月に支払われた賃金の10%を支給する。この被保険者につきましては、現行の育児休業給付と同様に、開始日前2年間にみなし被保険者期間が12か月以上あることを要件とする。時短勤務につきましては、柔軟な働き方を支える観点から、給付対象となる時短勤務の労働時間(または日数)について、制限を設けない。
 下の図を御覧いただければと思いますけれども、賃金と給付額の合計が時短勤務前の賃金額を超えないように、一定の賃金額を超えた場合には給付率を逓減させるというところで、時短勤務前の賃金に対する比率が90%から100%の間におきましては、給付率を調整するということを記載しております。
 施行時期につきましては、2025年度(令和7年度)から実施する。財源につきましては、少子化対策という要素が強い施策であり、雇用保険料以外の財源を検討と記載させていただいております。
 続きまして、育児休業等給付というところで、第187回の雇用保険部会にお示しした資料とその際の御意見を記載しております。育児休業給付について、育児休業給付を支える財政基盤を強化するとされていることについて、どのように考えるかという論点につきましては、財政基盤の強化については、社会で広く負担する観点から、一般会計の投入を含めて検討することが妥当である。近年の給付実績の増加理由が、雇用の安定よりも、いわゆる少子化対策に重点が置かれているという政策推進にあることを踏まえると、国庫負担率を早期に本則に戻すことは不可欠である。安易に保険料率の引上げに頼ることのないように、さらなる国庫負担率の引上げも検討するべき。最新の統計、給付実績、財政状況などの将来推計も含めながら示していただき、引き続き議論が必要である。
 男性の育児休業の取得促進など、国を挙げての重要な政策であるならば、財源についても国の責任を示すことが重要である。保険料率を検討する前に、まずは国庫負担割合を本則の8分の1に戻した上で、一般会計からの新たな繰入れの方法についても検討すべき。
 国庫負担割合を早期に本則に復帰させることが不可欠である。将来的な給付の増加の見込みも踏まえた負担の在り方については、国庫負担割合が本則に復帰して初めて議論を始める環境が整うものと理解しており、保険料と国庫で相応の負担をしていくことが原則という認識を関係者で共有していくべきとの御意見をいただいております。
 これも踏まえまして、9ページにおきまして、育児休業給付の財政運営試算をお示ししております。育児休業給付の財政運営につきまして、現在の雇用保険料率0.4%と国庫負担割合(本則の10%水準)を令和12年度まで機械的に当てはめて試算すると、以下のとおりの試算となっております。なお、支出につきましては、令和4年度決算をベースにしております。「こども未来戦略方針」におきまして、男性育休の取得促進、2025年に民間50%、2030年に民間85%などの男性の育児休業取得促進を掲げておりますので、これらの前提も含めて試算をしております。なお、現在検討中の制度改正による財政影響の効果は盛り込んでいないというところでございます。
 真ん中の試算を御覧いただきますと、令和6年度から見込みでございますけれども、支出が収入を上回り、差引剰余が発生する形になってございます。令和9年度におきましては、資金残高がマイナスとなると。令和12年度においては、資金残高のマイナスが約9400億円程度生じるという試算となってございます。
 これを踏まえまして、10ページでございますけれども、見直しの方向性案として事務局からお示しをしております。男性育休の大幅な取得増等に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するため、令和4年改正法の附則第9条第1項の規定を踏まえ、国庫負担・保険料負担の在り方について検討を進める。その際、料率の調整は保険財政の状況に応じて弾力的に行うこととし、当面は据え置けるようにする仕組みの導入を検討してはどうかとさせていただいております。
 なお、料率の調整は保険財政の状況に応じて弾力的に行うというところにつきましては、11ページで、現在の失業等給付の雇用保険料率の弾力条項の資料をお示ししております。詳細な説明は割愛しますけれども、財政状況に照らして一定の要件を満たす場合には、雇用保険料率を当部会、労働政策審議会の意見を聞いた上で、大臣が変更可能という規定が設けられているところでございます。
 12ページ、13ページ以降はこれまでの育児休業給付の支給額など、14ページ以降は論点、いただいた御意見をそれぞれ参考までにおつけしているところでございます。
 資料の説明は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見があればお受けしたいと思います。
 奥委員ですね。
○奥委員 ありがとうございます。
 6ページの育児休業給付の給付率の引上げについて、これまで私どもとしましては、男女がともに育児に携わることのできる重要性を踏まえたときに、14日間という案が適切なのかと発言してまいりました。共働き・共育ての意義や、産後の母性保護などの観点の周知など、14日間の休業取得で十分だと思われることがないよう、意識の醸成を含めた取組を併せて実施していくことは大前提であると考えております。
 次に、7ページの育児時短就業給付の創設についてです。こちらも以前より申し上げておりますけれども、様々な事情を抱える職場において、お互いに支え合って働いていくことが重要である中で、この施策によって、公平性の観点から、労働者間の分担ができるのではないか、女性のキャリアを考えた際に、本当に有効な施策なのかといった点については、依然として懸念をしているところでございます。
 また、本案に賛同するものではございませんが、支給率について、時短前の賃金を超えないようにすることは、最低限の部分であると考えております。
 加えまして、給付率の引上げと育児時短就業給付を別財源で検討することは当然のことといたしましても、異次元の少子化対策のために集中的に実施する施策であるならば、恒久的な施策にすることについても疑問がございます。
 最後は10ページでございます。育児休業給付を支える財政基盤については、まずは国庫負担を本則に戻すことが先決であり、保険料率に関しては、その後であります。国庫負担により財政状況が大きく変化することから、保険料率を弾力的に変更する仕組みの導入についても、国庫負担の本則回帰後に改めて検討を行うべきであると考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 資料3の6ページ、7ページの具体的な制度設計案に「財源は雇用保険料以外を検討する」とあり、先の部会での議論が反映されていると考えております。育児時短就業給付の給付率は10%というご提案で、ノーワーク・ノーペイの原則を踏まえつつ、短時間就労のインセンティブになることも配慮した水準なのではないのかと理解しております。
 他方、10ページに示されている育児休業給付の財政基盤の強化について、国庫負担割合の本則復帰に関する記述がない上、法の附則には「財源の在り方について検討」とされているにもかかわらず、保険料率の調整にしか言及がないことは遺憾です。前回も申し上げたとおり、国庫負担の本則復帰を前提に、9ページに示された財政運営の試算を踏まえつつ、将来的な給付額の増加を見据え、国庫と保険料の負担について、その在り方を考えていくべきと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。大丈夫ですか。
 お答えになりますか。どうぞ。
○尾田雇用保険課長 事務局でございますが、10ページに記載しております財源の在り方について、奥委員、平田委員から御指摘がございました。国庫負担、明確には書いておりませんが、当然ながら国庫負担の在り方につきましては、現在の暫定負担割合をどうするか、その視野には当然もともとの負担割合8分の1を踏まえてどうするかが、明記はしておりませんが、当然そこは視野に入っているところでございます。
 この点につきましては、最終的に財政当局と年末にかけまして調整していくことになりますが、本日いただいた御意見も踏まえながら、我々といたしましても、育休給付の財政基盤強化の財源の在り方全体についてどう考えるかという観点から、しっかりとした結論を導き出せるように、御指摘を踏まえて対応していきたいと思っております。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。大丈夫ですかね。
 御意見がないようですので、次に進めたいと思います。
 続きまして「教育訓練給付等」について、資料4「これまでの議論の整理と具体的な制度設計案」について事務局より御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。
 資料4に沿いまして「教育訓練給付等」のこれまでの議論の整理と具体的な制度設計案についてお示しをさせていただきます。
 まず、資料の冒頭、1ページから5ページまでは、前回第186回雇用保険部会で提示させていただいた見直しの方向性の案をおつけしております。
 6ページ以降、当部会でいただいた御意見を順不同で記載をしております。教育訓練全般につきましては、企業に対しても、教育訓練の対象講座の具体的な訓練効果を適切に周知し、自社の従業員の育成等を後押しする制度だと理解され、納得感が高まるような周知を期待したい。業務で行う教育訓練は労働者も利用しやすいと思われるので、企業側が利用できる助成金についても、手厚くしていただきたい。企業経由の支援の拡充を含めて、個人支援とのバランスに配慮いただきたいとの御意見をいただいております。
 7ページにおきまして、具体的に教育訓練給付の拡充についての御意見を記載しております。専門実践と特定一般それぞれに追加給付を検討するという方向性は理解したい。追加給付の趣旨にふさわしい要件設定を検討いただきたい。
 教育訓練に関する施策を充実させること自体は非常に重要なことであるが、教育訓練講座の効果の検証、分析を踏まえた上で、提案されている拡充等についての是非を検討すべきではないか。
 専門実践教育訓練給付金に関して、賃金上昇等の処遇改善を要件として検討ということについては、賃金上昇が訓練受講や資格取得の結果としてなされたということが重要であり、OJTの効果などと異なることが分かるよう、工夫が必要なのではないか。特定一般についても、実績が4年しかないということで、検証不足ではないかと考えるところ。
 教育訓練の効果として賃上げしたかどうかは、なかなかはかり難いところがある。政府の方向として賃上げを強調しているのは分かるが、労働者個人の給付の要件として入れることが本当に適切なのか。
 拡充については、カテゴリー単位での検討だけではなく、講座ごとにこれまでの効果や実績を十分に検証した上で、真に効果があると認められた講座に限定すべきではないかとの御意見をいただいております。
 そのほか、効果検証などにつきまして、8ページでございますけれども、より効果的な教育訓練給付や講座指定の在り方を検討するために、効果検証の手法を検討し、データ収集、分析を行うことは非常に重要。EBPMの観点からもぜひ進めていただきたい。
 教育訓練給付を雇用保険給付で対応するべきか、対応するとしてもどこまで対応するべきかは、引き続き議論が必要と考える。
 指定講座については、失業の予防、早期再就職に資するものに限定すべき。
 目的が構造的な賃上げということを踏まえると、雇用保険財源のみではなく、一般財源も含めた措置を検討していただきたい。
 雇用保険制度の趣旨を超える国の政策としての拡充ということもあるので、一般財源や関係する省庁の予算も積極的に投入するべきとの御意見をいただいております。
 9ページにおきましては、教育訓練支援給付金についての御意見を記載しております。受給者の訓練内容に大きな偏りがあることに問題意識を持っている。制度創設の趣旨に立ち返って、本当に暫定措置を延長するのかどうかということを慎重に検討すべきではないか。
 偏りが生じないように調整して、広く活用されることが重要。生活費も含まれた受講支援であることや、産業に偏りがあることも踏まえると、本措置を延長する場合は、一般財源や関係する省庁の予算も投入されるべきではないか。
 教育訓練支援給付金の効果を測る指標としては、教育訓練給付金を受けた人と受けなかった人でのその後の賃金の上昇率の違いやその後の勤続年数の違いを考慮することで、ある程度給付金の便益を把握することができる。この便益と1人当たりの支給金額とを比較することで、今後、暫定措置を延長するのか、変更するのかという議論の材料になるのではないかとの御意見をいただいております。
 10ページ以降に、新たな給付や融資制度について、様々な論点について御意見をいただいております。制度の在り方につきましては、新給付と融資制度の創設によって、個人向けの教育訓練支援として、これまで支援がなかった領域が埋まるのではないかと理解している。求職者支援制度との役割分担、対象者の設定、債務免除の在り方と制度の詳細を詰めていくことが必要。
 労働者の雇用形態にかかわらず、能力開発のために時間を確保して、教育訓練の重要性を認識し、職場内で応援するような意識が必要。このような意識の醸成が行われないと、こうした給付を導入したとしても活用されない。懸念点を払拭できるような仕組みの検討をお願いしたい。
 新たな融資制度について、現行の求職者支援制度とのすみ分けを明確にしておく必要があるのではないか。求職者支援制度との併用の可否、求職者支援制度と比較した際の融資の水準などを慎重に検討する必要があるのではないか。対象とする教育訓練については、受講者の就業能力を高め、雇用の安定に資する講座に限定すべきではないかとの御意見をいただいております。
 財源につきましては、政府としてリスキリングによる能力向上支援にしっかりと取り組む姿勢を明確にするためにも、一般財源で手当てすべきではないか。新たな融資制度については、雇用保険の適用がない雇用者、離職者、(雇用されることを目指す)フリーランス等を対象にしていることを踏まえると、一般財源で実施すべきとの御意見をいだいております。
 いただきました御意見を踏まえまして、11ページ以降、それぞれの項目について具体的な見直し内容の案をお示ししております。
 まず、教育訓練給付につきましては、労働者の中期的キャリア形成に資する教育訓練を対象とする専門実践教育訓練給付金について、現行の資格取得及び就職等を実現した場合の追加給付に加えて、教育訓練の受講前後を比べ、賃金が一定(5%)以上上昇した場合には、現行の追加給付を受けていることを前提として、さらに受講費用の10%(年間上限8万円)を追加で支給する。また、労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象とする特定一般教育訓練給付金について、新たに、資格取得し、就職等した場合には、受講費用の10%(上限年間5万円)を追加で支給するとしております。下に文章で書いた内容を表でお示しをしているところでございます。これらの拡充については、2024年度(令和6年度中)に実施する。その上で、制度趣旨に沿ったより効果的な給付や講座指定の在り方の検討が可能となるよう、効果検証の手法を検討し、データ収集、分析に努めるとともに、地域ごと・類型ごとに指定講座数に偏りが見られることも踏まえ、制度の周知・広報を積極的に進めるとさせていただいております。
 12ページにおきまして、教育訓練支援給付金の具体的な見直し内容案をお示ししております。令和4年改正においては、コロナ禍からの経済の回復途上にあることも踏まえて3年間延長されたところでございますけれども、引き続き非正規雇用労働者の自発的な能力開発を支援する必要がある一方、1人当たりの支給金額等を踏まえまして、その給付率の適正化を図り、給付率を基本手当日額の60%、現行80%とされておりますけれども、この60%とした上で暫定措置を令和7年度から2年間延長するとしております。この趣旨としては、専門実践を修了した方のうちこの給付金を受給していない同じ対象年齢の方と比較して、給付金の受給者の就職率や追加給付の受給率は高くなっていることが確認された一方で、1人当たりの支給金額は平均約290万円となっており、失業者に対する基本手当の支給額の平均を大きく上回っている状況にあることを踏まえて、今の見直し内容の案を提示しております。その上で、教育訓練支援給付金受給者が受講する教育訓練の分野が著しく偏っている現状については、引き続きその実態の把握に努め、制度の見直しにつなげると記載をしております。
 13ページに、訓練期間中の生活を支えるための新たな給付の具体的な制度設計案をお示ししております。基本的な考え方といたしましては、教育訓練に専念するために離職した場合には、基本手当を受給しながら教育訓練を受けることが想定されることを踏まえまして、在職中に教育訓練を受けるために休業等を行う場合においても、教育訓練に専念するために自己都合により離職した場合と同視し得ることから、基本手当に相当する給付を支給するという考え方に基づき、制度設計を行うとしております。
 対象者につきましては、企業の制度を利用して、無給で、自主的に教育訓練のための休暇を取得した一般被保険者であって、休暇開始前2年間に賃金支払基礎期間が11日以上ある月が12か月以上あることに加えて、被保険者であった期間が5年以上ある方を対象者としております。
 給付額につきましては、本給付の制度設計の考え方に鑑みまして、基本手当の計算によるとともに、所定給付日数につきましては、正当な理由なく自己都合により離職した方と同じもの、被保険者期間に応じて90日、120日、150日とする。基本手当を受給した場合の被保険者であった期間の取扱いと同様に、教育訓練休暇給付金の受給後に離職した場合には、休暇取得前の被保険者であった期間は、基本手当を受給する際の受給資格の決定や所定給付日数の算定に用いる期間から除く。ただし、この場合においても労働者が失業した場合に労働者の生活の安定を図るという雇用保険の目的を果たすために、新たな給付の受給に伴い基本手当の受給資格を満たさなくなる場合、倒産、解雇により離職した方などに限り、最低限の基本手当(所定給付日数が90日等)を支給するということとしております。
 施行時期につきましては、2025年度(令和7年度)中に実施とさせていただいております。
 14ページに、教育訓練受講のための新たな融資制度の具体的な制度設計案をお示ししております。雇用保険被保険者や受給資格者ではない方(雇用保険の適用がない雇用者や離職者、雇用保険の受給が終了した離職者、フリーランス等から雇用されることを目指す者など)であって、一定年数(3年)以上の就業したことがある者を対象に、自らが受ける教育訓練に関してその受講費用と訓練期間中の生活費用を対象に融資を行うとしております。多様な教育訓練を対象としつつ、制度の趣旨を踏まえた適切な利用が行われるよう、融資の対象となる教育訓練の範囲をあらかじめ設定するとともに、より教育訓練の効果を高めるためインセンティブとして、訓練受講後に賃金が上昇した場合に一定額の返済を免除する措置を設けるとしております。この制度につきましては、雇用保険被保険者ではない方を対象として、その就職を促進し、もってこれらの方の職業及び生活の安定に資するものとして、求職者支援制度に基づく事業として実施するとしております。
 施行時期につきましては、2025年度(令和7年度)中に実施とさせていただいております。
 15ページ以降は、これまでにお示しした論点やその際にいただいた御意見を参考までにおつけしております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、御意見、御質問があればお伺いしたいと思います。
 内藤委員、お願いいたします。
○内藤委員 ありがとうございます。
 まず、11ページの、教育訓練給付の賃金の上昇に伴う新たな給付については、教育訓練の効果としての賃金上昇であることが重要だと考えています。訓練以外の要因による賃金上昇と区別して判断できるように、賃金上昇の確認方法に関しては工夫が必要だと思います。
 11ページの下のほうに「効果検証の手法を検討」とありますが、例えば賃金上昇の効果検証は含まれるのかなどが不明であり、より具体的な記載が必要だと考えます。
 加えて、教育訓練の地域や類型の指定講座数の偏りについて、周知・広報を積極的に進めるとありますが、周知・広報だけで偏りを是正できるのか疑問があります。教育訓練は長年実施してきている施策であり、改めて検証せずとも、偏っている要因は分かっているのではないかと思います。講座の指定基準の見直しを含めて検討し、偏りを是正していくべきだと考えています。
 12ページの教育訓練支援給付金について、2年間延長ということが示されていますが、失業者に対する基本手当の支給額とのバランスや、受講者の分野の偏りなどの課題については、引き続き是正に向けた見直しを行うことが必要だと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 資料4の11ページ以降にある専門実践と特定一般の給付率の引上げの要件の設定などについては、前回の議論が適切に反映されたものだと思います。
 13ページ以降の訓練期間中の生活を支える新たな給付と融資制度については、いずれも制度設計案には異論はありませんが、財源に関する記述がありません。以前も申し上げたとおり、政府としてリスキリングによる能力向上支援にしっかりと取り組む姿勢を改めて示すためにも、今後の予算編成の過程において、一般財源での手当の検討をしていくべきだと思っております。
 教育訓練支援給付金の暫定措置については、受給者の訓練内容に大きな偏りがあるので、仮に延長するとしても、給付金の効果を引き続き検証して今後の制度見直しにつなげていくことが前提だと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問はありますでしょうか。
 冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 13ページの新たな給付については、企業の制度を利用して休暇を取得した者が対象ということですので、まず、企業の制度の導入を促すことはもちろんのこと、当該の制度が労働者にとって使いやすいことが必要だと思っております。そのように考えると、能力開発の時間を確保することの重要性といった意識の醸成も必要だと思っており、そのような働きかけもぜひお願いしたいと思います。
 また、当然のことながら、非正規雇用で働く方を含めて全ての労働者の方がこういった制度を利用しやすいことが重要だと考えております。そういった視点で見ると、被保険者であった期間が5年以上ある者という対象者の要件は、少々ハードルが高いのではないかと考えており、利用が促進されるためには、例えば新たな融資の就業期間の要件の3年と合わせるということも視野に入れる必要があるのではないかと思いました。
 それから、14ページの新たな融資について、求職者支援制度の枠組みで実施すると示されておりますが、施策の趣旨を踏まえると、一定額の返済を免除する際の要件として、賃金上昇だけでなく、例えば雇用保険の被保険者になることなども要件として検討をしてもいいのではないかと考えます。
 最後に、先ほど平田委員からもございましたけれども、13ページ、14ページの新たな給付と融資については、財源に関する記載がございません。ここは従来申し上げているように、雇用保険制度の趣旨を超えるような国の施策でありますし、しっかりとここをやっていくのだという国の意思を示すという意味で、一般財源や関係する省庁の予算を投入していくべきだと考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですかね。
 では、お願いいたします。
○尾田雇用保険課長 事務局でございます。
 内藤委員から、賃金上昇について、訓練以外の要因による賃金上昇を分けるべきではないかという御指摘をいただきました。この点につきましては、実務的に対応できるか等を含めまして検討させていただきたいと思いますが、なかなか難しい点もございますので、最終的に賃金が上がったらそれを確認することになる可能性もございますが、いずれしても重要な御指摘かと思いますので、引き続き検討したいと思っております。
 また、効果検証において、どういう効果を把握するのかということ、より具体的な記載をという御指摘がございました。教育訓練給付については、従前からその効果検証をどのようにするかがずっと課題で、なかなかその課題が解消できておらない状況でございますので、私どもといたしましては、より広く効果検証のために賃金も含めて把握することができればと思っておりますが、今時点でピン留めできないところもございますので、ここについては御指摘としては受け止めた上で対応を検討したいと思います。
 また、周知・広報だけで偏りが是正できるのかどうかという御指摘でございますが、今回の議論の最初のほうの資料でお示しいたしましたとおり、地域別に見ると指定講座の偏在がある、あるいは講座類型ごとに偏在があることをお示しさせていただきました。これを指定基準で解消するというのは、現在の指定基準がある意味そういった要件を満たせば指定するということでやっておりまして、指定側が選別する形にはなっておらないことから、なかなか難しいところがございますので、そういう意味で指定基準を知っていただいて、この制度を利用するかどうか適切に判断していただくことによって広げていくということで、周知・広報と書かせていただきましたが、指定講座の偏りについては多々御意見をいただいておりますので、その他の手法がないかは引き続き検討してまいりたいと思っております。
 また、支援給付金の偏りについて、内藤委員、平田委員から御指摘がございました。この点、我々も問題意識を持っておりますので、引き続きどのような形で検証できるかは考えてまいりたいと思っております。
 また、財源につきまして、平田委員、冨髙委員から御指摘がございました。今回新たに創設を検討しております給付、融資、いずれにつきましても財源をどうするかということでございます。まず、融資につきましては、求職者支援制度を念頭に置いておりますので、今の求職者支援制度と同様の財源、すなわち一般財源と労使から御負担いただいております保険料ということでございますので、そちらを念頭に置いております。また、給付については国庫負担等々という御指摘をいただいておりますが、この点につきましては、最終的に年末に向けまして、財政当局との調整も踏まえまして決定していくこととなる部分でございますけれども、いずれにしても御指摘を踏まえて対応していきたいと思っております。
 また、冨髙委員から、まずは教育訓練休暇制度の導入あるいは労働者が使えるように、または企業における教育訓練の時間をそういうところに振り分けることの機運の醸成が必要という御指摘がございました。既存の助成制度でも有給教育訓練休暇の取得や制度導入に対する支援ということもございます。そういった助成金ともタイアップいたしまして、私どもといたしましても、この制度がより使われるように企業への休暇制度の導入促進あるいは機運の醸成といった点は、どのようなことができるかは考えてまいりたいと思っております。
 また、冨髙委員から、給付の5年という要件につきまして、ここは見直す余地がないかという御指摘がございました。この点はこの部会でも御意見をいただきましたが、一方で、退職を促すようなことになってはいけないという御指摘もいただいた中で、一定の年限が必要であろうということで5年にさせていただきました。そこは御指摘も踏まえまして、引き続き検討させていただきたいと思います。
 また、冨髙委員から、融資について、免除の要件としては雇用保険被保険者となったことを要件とすべきという御指摘をいただきました。この点は、私どもとしてもこの制度自体がそもそも雇用労働者を目指す求職者支援制度の一環でございますので、雇用労働者となったことは要件としたいと思っております。その際、被保険者ということがメルクマールになりますので、そこは視野に入れておりますので、そこは最終的にどうするか検討の上でお示ししたいと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見などはありますでしょうか。大丈夫ですかね。
 それでは、このテーマはこれで終わらせていただきたいと思います。
 続きまして「高年齢雇用継続給付について」でございます。
 まず、事務局より資料5を御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。
 資料5に沿いまして、高年齢雇用継続給付について説明をさせていただきます。
 1ページを御覧ください。高年齢雇用継続給付の概要をお示ししております。議題1と重複して大変恐縮ですけれども、簡単に説明をいたします。高年齢雇用継続給付ということで、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金を支給させていただいているところでございます。例えばこの雇用継続基本給付金につきましては、60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者に対しまして、60歳以後の各月の賃金の15%を支給し、雇用継続を図っているというところでございます。説明が重複しますけれども、令和7年度以降はこれが支給額については10%と法定されているところでございます。
 2ページにおきまして、高年齢雇用継続給付の支給状況をお示ししております。初回受給者数につきましては、各年度とも17万人程度となってございます。令和4年度におきましては、約17万2000人ということで、前年度と比べて微減という状況でございます。
 3ページを御覧いただきまして、さらに詳しい支給状況を示しております。受給者実人員と支給額をお示ししております。この受給者実人員につきましては、例えば1年間丸々受けている方については12人というカウントになってございますけれども、令和4年度におきましては、この1か月の1人当たりの平均給付額としては右肩の約2万7000円となっているところでございます。なお、最高額としては4万4500円、最低額としては2,197円という状況でございます。御参考までに、55歳から59歳までの層と60歳から64歳までの層の賃金を比較しております。直近の令和4年におきましては、約80%といったところでございます。
 4ページにおきまして、それぞれの支給金額区分ごとの受給者の実人員をお示ししております。
 この高年齢雇用継続給付につきましては、この部会におきまして、様々御議論をこれまでいただいたところでございます。5ページ以降に雇用保険部会の報告書を記載しております。平成19年においては、この継続給付については、原則として平成24年度までの措置とし、その後段階的に廃止すべきであるという報告がされており、それが平成25年度以降の在り方を改めて検討すべきですとか、今後の高年齢者の雇用の動向を注視しつつ、その在り方について改めて再検証すべきとされております。
 その後、今後の高齢者雇用の動向や社会経済情勢等を勘案しつつ、引き続き中長期的な観点から議論されていくべきであるという報告がなされた上で、令和元年の雇用保険部会報告書におきましては、6ページにございますけれども、雇用継続給付としての高年齢雇用継続給付については、段階的に縮小することが適当。令和6年度までは現状維持した上で、65歳未満の継続雇用制度の経過措置が終了する令和7年度から新たに60歳となる高年齢労働者への同給付の給付率を半分程度に縮小することが適当である。高年齢雇用継続給付の見直しに当たり、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を推進するなどの観点から、高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給付金の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講じていくべきである。その上で、高年齢雇用継続給付の在り方については、これらの状況も見つつ、廃止も含め、さらに検討を行うべきであるとされているところでございます。
 そのものの状況変化も含めて、現在の高齢者雇用対策の概要をお示ししております。7ページでございますけれども、高年齢者雇用安定法によりまして、企業における安定した雇用・就業の確保、中高年齢者等の再就職支援及び地域における多様な雇用・就業機会の確保を図っているところでございます。具体的には、60歳未満の定年禁止、65歳までの雇用確保措置、これは義務でございます。これに加えまして、70歳までの就業確保措置、努力義務でございますけれども、70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、70歳まで継続的に社会貢献活動に従事できる制度の導入といった努力義務を課しているところでございます。
 そのほか、中高年齢者等の再就職支援として、ハローワークにおきまして「生涯現役支援窓口」を設置し、再就職支援を重点的に行っているところでございます。
 そのほか、地域における多様な雇用・就業機会の確保として「生涯現役地域づくり環境整備事業」を実施したり、「シルバー人材センター」を設置し、臨時的・短期的又は軽易な就業を希望する高年齢者の方に就業機会を提供している状況でございます。
 8ページにおきまして、高年齢者雇用確保措置の実施状況をお示ししております。31人以上の企業規模でございますけれども、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は、ほとんどの企業が実施しているという状況でございます。70歳以上まで働ける企業の割合は約4割という状況でございます。
 9ページは、令和4年の高年齢者雇用状況等の報告の集計結果の概要をお示ししております。先ほど申し上げましたとおりの状況でございます。
 これらの状況を踏まえまして、事務局から高年齢雇用継続給付について論点をお示ししております。高年齢雇用継続給付については、令和元年12月25日の雇用保険部会報告書にあるように、令和7年4月からの給付率引下げの施行状況等を見つつ、廃止も含め、引き続き検討することとしてはどうかとさせていただいております。
 資料の説明としては以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見があったらお受けしたいと思います。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 御説明ありがとうございました。
 資料5の8ページにある通り、65歳以降も含めて高齢者雇用は着実に進展していると理解をしております。そうした中、今後の高年齢雇用継続給付のあり方については、同一労働同一賃金への対応や企業における高齢者雇用の実態や処遇等も含めて、引き続き実態把握に努めながら慎重に検討していくことが重要なのではないかと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、千葉委員、お願いいたします。
○千葉委員 ありがとうございます。
 先ほども申し上げたところではございますが、高年齢者雇用継続給付については、施行状況等の確認に加えまして、令和元年の雇用保険部会報告にあるとおり、高年齢労働者の処遇改善に向けて取り組む事業主への支援や縮小後の緩和措置についても、当然のことながら併せて講じていただきたいと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、大谷委員、お願いいたします。
○大谷委員 ありがとうございます。
 制度創設時は激変緩和措置ということで設置されたものと理解しておりますし、過去の議論から将来的な廃止もやむを得ないと思っておりますけれども、中小企業の人手不足対策として、高齢者雇用は非常に重要な位置を占めております。御説明いただいたスライドにもありましたとおり、70歳までですとか、70歳以上という部分についても、働ける企業が少しずつ増えている状況の中で、こちらも考えるべきなのかどうかは、今後の議論が必要なのかと思っているところでございます。
 また、就業継続を希望している方のために、企業が雇用環境整備を行うことに関しまして、今の準備期間の中では継続して制度周知が必要と考えておりますので、今後ともよろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。大丈夫ですかね。
 ありがとうございました。
 それでは、このテーマにつきましては、これで終了させていただきたいと思います。
 これで議題2について終わりました。
 事務局におかれましては、雇用保険の適用拡大、育児休業給付等、それから、教育訓練給付等及び高年齢雇用継続給付について、本日の議論も踏まえて必要な整理を進めてください。
 それでは、本日予定されている議題は以上ですので、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただいて、どうもありがとうございました。