2023年11月13日 第1回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報の二次利用に関するWG 議事録

日時

令和5年11月13日(月)15:00~17:00

場所

WEB開催
TKP新橋15A(15階)

出席者

構成員(五十音順、敬称略)

議題

  1. (1)主査の選出について
  2. (2)医療等情報の二次利用に係る現状について
  3. (3)医療等情報の二次利用に係る論点について
  4. (4)関係団体ヒアリング

議事

議事内容
【医政局企画官】事務局でございます。3時の定刻になりましたので、ただいまより「第1回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ」を開催いたします。皆さまにおかれましてはご多用のところ本ワーキンググループにご出席をいただきまして誠にありがとうございます。本日は構成員の皆さまにおかれましては対面とオンラインの併用での開催といたしまして、会議の公開につきましてもYouTubeでのライブ配信で行うこととしております。本日は第1回目の開催になりますので、主査選出までの間、事務局において進行を務めさせていただきます。開会に先立ちまして、厚生労働省医薬産業振興・医療情報審議官の内山よりご挨拶を申し上げます。
【医薬産業振興・医療情報審議官】皆さま、こんにちは。厚生労働省の医薬産業振興・医療情報審議官の内山でございます。構成員の皆さまにおかれましては、本日大変お忙しいところご参集またはオンラインでご参加いただきまして誠にありがとうございます。医療等情報の二次利用につきましては、昨年、医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会において精力的にご議論いただきまして、昨年の秋に議論の整理をまとめていただいたところでございます。
 その後、政府におきましてもさまざまな検討や議論が行われまして、本年5月には次世代医療基盤法の改正法が成立したほか、今年の6月、規制改革実施計画、それから総理を本部長とする医療DX推進本部で医療DXの推進に関する工程表が取りまとめられたところでございます。この中でも医療DXの推進に関する工程表では、医療情報の二次利用について、そのデータ提供の方針、信頼性確保のあり方、連結の方法、審査の体制、法制上あり得る課題等の論点について整理、検討するため、2023年度中に検討体制を構築するとされているところでございます。これを受けまして今般、健康・医療・介護情報利活用検討会の下に、医療等情報の二次利用に関するさまざまな論点をご議論いただくためにこのワーキンググループを設置させていただいたところでございます。
 医療DXについては、単なる文書や手続きの電子化だけではなく、医療介護のイノベーションにつながるもの、患者さん、ひいては国民一人一人が受ける医療の質を上げることにつながるものでございまして、武見大臣の下、厚生労働省あげて取り組んでいるところでございます。医療等情報の二次利用を適切なかたちで推進することで、研究開発が推進される医薬品等の創薬につながるよりよい治療や的確な診断が可能になるといったことが期待をされております。
 このワーキンググループでは昨年の仮名加工情報に関する検討会の構成員の皆さまに加え、医療情報やセキュリティー、それからデータサイエンスのご専門の方々にも構成員になっていただいております。ぜひ忌憚のないご活発なご議論をいただきますようにお願いを申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、構成員のご紹介をさせていただきます。私から、資料1の開催要項の裏に委員名簿を付けておりますので、順番にご紹介を申し上げますので恐縮ですが一言ずつお願いをできればというふうに思います。まず、石井構成員でございます。
【石井構成員】中央大学国際情報学部の石井と申します。よろしくお願いいたします。私はプライバシーや個人情報保護の領域で研究をしている者になります。医療分野、非常に機微な情報を取り扱う領域の議論に参加させていただくことを大変光栄に感じております。よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】井元構成員でございます。
【井元構成員】井元でございます。東大の医科学研究所のヒトゲノム解析センターにおります。ゲノム情報や生命科学にかかわるデータの解析を専門にしております。どうぞよろしくお願いします。
【医政局企画官】落合構成員でございます。落合構成員は遅れてご出席ですので、続きまして宍戸構成員でございます。
【宍戸構成員】東京大学の宍戸でございます。私は法学、中でも憲法それから情報法を研究しております。先ほどお話ありました健康・医療戦略室のほうで議論している次世代医療基盤法の改正等の議論などにも参加をさせていただいたところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、清水構成員でございます。
【清水構成員】ご紹介にあずかりました東京大学の清水です。私も宍戸先生の下で内閣府さんの次世代医療基盤法の改正案についての議論に参加させていただいておりました。その延長で、NDBを使った研究とかやっておりまして、まさに今週末学会で発表することになってるんですけれども、非常に泥臭くデータを扱ってるという立場から今回参加させていただきます。よろしくお願いします。
【医政局企画官】続きまして、高倉構成員でございます。高倉構成員は本日ご欠席でございます。それから中島構成員でございますが、中島構成員も遅れてのご出席でございます。続きまして、長島構成員でございます。
【長島構成員】日本医師会常任理事の長島でございます。情報全般を担当しています。医療等情報の発生源でもあり、また一次利用の現場でもある医療現場の声を伝えられればと思っております。以上です。
【医政局企画官】続きまして、日置構成員でございます。
【日置構成員】三浦法律事務所の弁護士の日置でございます。個人情報保護であるとかデータ利活用全般、こちらのほう実務の対応をしております。昨年度に引き続きお声がけいただきありがとうございます。今年度は、今できることと将来的にやらなければいけないことというのがあると思いますので、そういった観点も踏まえてコメントをさせていただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、松田構成員でございます。松田構成員は本日ご欠席です。続きまして、森田構成員でございます。
【森田構成員】はい、森田でございます。私自身、長い間大学で行政学とか公共政策を教えておりましたけれども、何年か前から医療政策にかかわっておりまして、現在このワーキングの親会議のほうの検討会の座長も務めさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、山口育子構成員でございます。
【山口(育)構成員】ささえあい医療人権センターCOML(コムル)という認定NPO法人で理事長を務めております山口でございます。私たちは1990年から活動をしてまいりまして、現在34年目の活動を進めているところです。患者の立場から医療をよくしていきたいということで活動してまいりました。今回の問題については仮名加工情報の検討会にもかかわらせていただいて、内閣府の次世代医療基盤法にもかかわってまいりました。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、山口光峰構成員でございます。
【山口(光)構成員】医薬品医療機器総合機構の山口です。私はPMDAで通常業務に加えて薬事医療目的における医療情報の活用等の検討を進めています。よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】続きまして、山本隆一構成員でございます。
【山本構成員】医療情報システム開発センターの山本でございます。医療情報の研究者でデータの利活用に関してはNDBの専門家会議の取りまとめの座長をもう10年やっておりまして、それから、介護総合データベース、難病、小慢、感染症その他のデータベースの各会の座長をさせていただいてます。どうぞよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】ありがとうございました。続きまして、事務局を紹介させていただきます。医薬産業振興・医療情報審議官の内山でございます。大臣官房、情報化担当参事官、岡本でございます。
【大臣官房参事官】岡本でございます。よろしくお願いします。
【医政局企画官】医政局参事官、田中でございます。
【医政局参事官】田中でございます。よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】政策企画官の山本でございます。
【政策企画官】山本です。よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】私、医政局企画官の西川でございます。よろしくお願いします。医政局室長補佐吉井でございます。
【医政局室長補佐】よろしくお願いいたします。
【医政局企画官】また、本検討会にオブザーバーとしまして、内閣府健康・医療戦略推進事務局、個人情報保護委員会、デジタル庁にもご参画をいただいております。次に資料の確認をさせていただきます。議事次第、資料1、資料2-1から2-3まで、資料3、参考資料1でございます。もし不備等ございましたら事務局までお申し付けいただければと思います。なお本日、審議官の内山は公務のため途中で退席をさせていただきます。
 それでは、これより議事に入らせていただきます。オンラインでご参加の構成員の皆さまは、会議中ご発言の際には手を挙げるボタンをクリックし、指名を受けてからマイクのミュートを解除してご発言をお願いいたします。ご発言終了後は再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いをいたします。
 それでは、議題1の主査の選出について、資料1をご覧いただければと思います。本ワーキンググループの開催要項でございます。2の(3)にワーキンググループに主査を置く。主査はワーキンググループの構成員の中から選出することとし、主査代理は主査が指名することができるというふうにされております。本ワーキンググループの主査につきましては、事務局としましては東京大学の森田朗構成員にお願いをしたいと思っておりますが、構成員の皆さまいかがでしょうか。よろしいでしょうか。オンラインの構成員の皆さまもよろしいでしょうか。それでは森田先生、よろしいでしょうか。
【森田主査】はい。
【医政局企画官】ありがとうございます。それでは森田先生に本ワーキンググループの主査をお願いしたいと思います。森田先生、恐縮ですが主査席にお移りいただけますようお願いします。森田先生、以後の議事運営をどうぞよろしくお願いいたします。
【森田主査】はい。ただいま主査にご指名いただきました森田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。これから構成員の皆さまのご協力を得まして円滑な議事運営に努めてまいりたいと思いますので重ねてよろしくお願い申し上げます。
 医療等情報の二次利用に関するワーキンググループということでございますけれども、一言だけご挨拶させていただきますと、この分野につきまして、最近海外の事情なども見て、いろいろと調べているところでございますけれども、この医療情報と言いますのは非常に貴重な資源であるということで、これを活用することによって先ほど審議官のほうからお話がございましたけれども、正しい診断が進むようになるし、治療の質が高まっていく。さらに言いますと新しいお薬の開発であるとか、そうしたことも結び付いてまいりますし、さらにパンデミックのようなケースの場合には適切な医療政策の策定にも貢献し、さらには医療保険財政と言いましょうか、そちらの効率的な運営にも資するものであります。
 そのようなかたちで先進諸国ではこの情報をどう活用するかということに関心が向いているところでございます。ただ一方で、これは非常に機微性の高い個人情報でもあるということですので、患者さん、国民の方の権利を侵害しないようなかたちでどのように利活用を図っていくか。そこに課題があろうかと思っております。いかにそうした権利を保護しつつ、貴重な情報資源を活用していくか。そういう制度をどのようにつくっていったらいいかということについて、この場では検討するものではないかと考えております。
 なお、先ほど事務局からご指摘もございましたけれども、このワーキンググループの開催要項におきましては、主査代理は主査が指名することができるとされております。私も何があるか分かりませんので主査代理につきましては宍戸構成員にお願いしたいと考えております。ご本人にはご承諾をいただいております。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。では宍戸構成員よろしくお願いいたします。
 それでは時間がございませんので、さっそく議題に入りたいと思います。議題の2になります。資料2-1、2-2、2-3とございますが、それぞれ事務局、内閣府健康医療戦略推進事務局、厚生労働省保険局医療介護連携政策課からご説明をいただきまして、その後でまとめて質疑応答の時間を取りたいと思っております。それではまず事務局から資料2-1のご説明をお願いいたします。
【医政局企画官】事務局でございます。それでは資料2-1についてご説明いたします。医療等情報の二次利用に係る現状についてという資料でございます。3~4ページ目をご覧いただければと思います。先程からもありましたが、医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会におきまして、昨年3月から9月30日までご議論いただきました。4ページに、9月30日にまとめていただきましたこれまでの議論の整理の概要を付けさせていただいております。この検討会におきましては、先ほど森田主査からもありましたが、医療情報について貴重な社会資源であるとともに大変機密性の高い情報であり、慎重な取り扱いが必要という、そういう前提の上で利活用の期待が大きい情報については氏名等を削除した仮名化された情報である、その情報についてどのように保護を図りながら利活用を進めていくかということについてご議論いただいたところであります。
 2番目の二次利用のあり方というところ、特に真ん中の赤い矢印のところでございますけれども、この検討会におきまして、個別具体的な明示がなくても利用目的等の妥当性を客観的に審査をし、その妥当性が認められた場合には他の目的での利活用、他者への第三者提供を可能とするルールを整備することが適当ということで、この点についてさらに検討を深めていくべきということでまとめていただいたところでございます。
 さらに、3ポツでございますが、本人・国民の理解促進に向けた取り組みということで、何よりも国民の理解と納得が得られるものでなければならないということで、患者本人、患者の立場を代弁する者が適切に関与できるような仕組みが必要というふうにされたところでございます。
 次に5~6ページでございます。医療DXの推進に関する工程表の概要でございます。今年6月に政府の医療DX推進本部でまとめました工程表でございまして、5ページの赤枠で囲んであるところでございます。全国医療情報プラットフォームにおいて共有される医療情報の二次利用について、データ提供の方針、信頼性確保のあり方、連結方法、審査の体制、法制上あり得る課題等の論点について整理し検討するため、検討体制を構築するとまとめられたところであります。
 次の7ページでございます。全国医療情報プラットフォームというものを構築していくということが医療DXの工程の中で定められております。この図は全体像のイメージを表したものでございます。左側にあります医療情報基盤、それから介護の情報基盤、それから行政・自治体情報基盤が連携をしまして、関係者の間で必要な医療、介護の情報が共有をされる。それらが一番下に赤い矢印が出ておりますが、二次利用のほうにも適切に使われていく。そういった全体像を描いているところでございます。
 8ページはこの中で電子カルテ情報共有サービスの概要をお示ししたものでございます。こちらは現在厚生労働省で検討、開発を進めているところでございます。左下にあります3文書と6情報について、全国の医療機関間で共有をするということを目指して、現在サービスの検討開発を行っているところでございます。
 9~10ページは、規制改革実施計画の概要、抜粋でございます。今年6月16日に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、9ページの下線を引いてある箇所ですけれども、医療等データに関する特別法の制定を含め、所要の制度、運用の整備、情報連携基盤の構築等を検討するとされたところでございます。こうした政府のさまざまな決定を受けまして、本ワーキンググループにおいてご議論をしていただきたいというふうに考えております。以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは続きまして、次に内閣府健康・医療戦略推進事務局から、資料2-2についてのご説明をお願いいたします。
【内閣府健康・医療戦略推進事務局】はい。内閣府健康・医療戦略推進事務局参事官でございます。資料2-2に基づきまして、改正次世代医療基盤法についてご説明をいたしたいと思います。1枚おめくりいただきまして、2ページに次世代医療基盤法の概要がございます。こちら法改正前のものということになります。次世代医療基盤法は、2017年の国会で成立していただいて、2018年に施行した法律でございます。枠の中にありますとおり、カルテ等の医療情報を匿名加工して研究開発につなげていくという法律でございまして、あらかじめ同意が必要な個人情報保護法の特例法ということになります。
 真ん中の上の病院、診療所等のところで丁寧なオプトアウト手続きで得られた医療情報を右側の認定事業者、国が認定した事業者のほうで匿名加工させていただいて、左側の大学、製薬企業のほうで研究開発に活用していく。こういった法律ということになります。1枚おめくりいただきまして、3ページをご覧いただければと思います。先ほど申し上げた匿名加工医療情報の作成事業者、また作成事業者から委託を受ける受託事業者の状況をお示ししています。全部で作成事業者は3つ、受託事業者は4つ認定をしているところでございます。それで、ここの事業者に医療情報を提供していただいてる届出機関、これ全部合わせますと113件ございます。収集されている医療情報は約275万人程度、これまでに匿名加工医療情報として提供された件数が合計で30件ということになっております。
 次に、5ページ見ていただけますと、次世代医療基盤法の検討ワーキンググループの中間まとめがございます。こちら法律に5年後見直しの規定がございまして、それに基づきまして昨年ワーキングで検討をさせていただいたところでございます。まず、1番のところにございますけれども、医療研究の現場ニーズに的確に応える匿名化のあり方の検討ということで、匿名加工医療情報では希少疾病といったような難病とか、そういったところになかなか対応できていなかったり、あと提供元基準からすると対応表を削除しなければいけませんので、②にあるとおり継続的発展的なデータ提供ができなかったり。あとは薬事目的のところで真正性確保のための元データに立ち返った検証ができない。こういった課題をご指摘いただいたところで、匿名性を維持しながら有用性の高いデータ提供ができるように検討すべきだといったご指摘をいただいています。その他、2番目のところに書いてありますとおり、NDB等の公的データベースとの連結解析ができるようにすべきだとか、あと医療機関、自治体等のデータ収集の促進、こういったところのご指摘を受けたところでございます。
 こちらを踏まえまして、6ページに今年の5月の国会で成立させていただいた次世代医療基盤法の改正の概要をお示ししています。一番大きいのは1に書いてありますとおり、新たに仮名加工医療情報というものを作成して提供できる仕組みを創設したということになります。この仮名加工医療情報は、匿名加工医療情報に比べて個人情報により近いということもありますので、1にあります作成事業者の認定に加えて、利活用していただく事業者についても国が認定をする。こういった仕組みを導入してるところでございます。また、3番目、先ほどの匿名加工のところで問題になっていました薬事承認にも資することができるように、PMDA等に情報を提供できるようにしたりとか、そういった見直しをしているということになります。
 また、2つ目のポツにありますとおり、NDB等の公的データベースとの連結を可能とする。こういった見直しをしたところでございます。下に施行日ございます。公布の日から1年以内で政令で定める日となっておりまして、来年の5月25日までの間で施行すべく現在検討を進めているところとなります。7ページに匿名加工と仮名加工の医療情報のイメージをお付けしておりますので、また後ほどご覧いただければと思います。8ページをご覧いただきますと、今の改正後の法律のイメージ図を付けております。先ほどの2ページにあったものと比べると真ん中の下にPMDAというのができてきてるということと、左側の認定利用事業者のところに箱がついて、再識別の禁止、罰則の適用等々の新たな仕組みが加わっているというのが現行法との違いということになります。
 ちょっと飛びまして、最後10ページをご覧いただければと思います。来年の5月までの施行に向けまして、今検討進めてるところでございます。利用事業者、作成事業者、あと仮名加工医療情報の加工方法等々につきまして、検討班を設けまして検討を進めております。今月から来月ぐらいにかけて検討班で取りまとめた上で今年の年末12月ぐらいの次世代法のワーキンググループでガイドライン、政省令等々の概要をお示ししていきたいと考えております。内閣府の説明は以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは続きまして、保険局医療介護連携政策課から資料2-3のご説明をお願いいたします。
【保険局医療介護連携政策課】はい。保険局医療介護連携政策課でございます。資料2-3のNDBデータの利活用の現状について、私から説明いたします。最初めくっていただいて2ページ目になります。NDBの概要やこれまでの経緯についてまとめた資料になります。NDBというのは厚生労働省が法律に基づき医療保険のレセプトを収集した上で個人の特定ができない形にした上でデータベース化したものになります。大体240億件分が収納されているという状況です。これまでの取組のところからですが、平成18年度に制度が創設されました。令和元年の法改正で第三者提供制度というのが法定化されました。それに加えて、介護データベースとも連結して解析できるようになるとか、そういった規定も整備しました。
 そして令和2年の法改正においては、個人単位の被保険者番号というのができましたので、そういった履歴を使って正確なレセプトの名寄せができるような、そういった措置もしました。令和2年からとなっているところではあるのですが、ここ最近については収納情報を増やしたり、Web審査の導入とか、そういった利便性の向上策にいろいろと取り組んでいるというのが現状になります。続いて3ページ目、ご参考です。これだけデータが格納されているということです。
 4ページ目になります。NDBに関して、いろいろなデータの提供形式が研究のニーズに応じてさまざま拡大してきているという状況です。一番左の方に書いてある本省利用の特別抽出であったり、第三者提供の特別抽出というのがある種スタンダードなもので、個人単位の経時的な分析もできるような形でデータを提供するので複雑な解析が可能ではあるのですが、提供日数に時間がかかるといった課題もあります。ここ最近では右から2つ目の列、サンプリングデータセットといって、サンプルデータを用意した上で探索的な研究をできるようにしたもの、データセットみたいなものを用意して提供を早めたり、研究のニーズに応じていろんな形式を用意している状況です。下の表が、これまでのNDBの提供状況ということで、抽出件数300件ぐらいの実績が1年ごとにあるといった状況です。
 続いて、5ページ目です。これが第三者提供の承諾件数の推移、どういった申出者が多いかといった区分のデータになります。これはご参考ということになります。次の6ページ目です。NDBのデータを用いて研究した際には、実績を厚生労働省に報告していただくということにガイドライン上なっておりますということで、その件数の推移です。7ページ目です。具体的にこういった研究をしていましたと。これタイトルだけでよく分かりにくいかもしれませんが、さまざまな研究で使われているという現状になります。
 8ページ目から、今後や現在取り組んでいることについての基本的な資料になっていきます。NDBの利用を一層進めていく観点から、他の公的データベースとの連結解析をどんどんと進めているという状況になります。あとは死亡情報の収載なども進めていくという準備も今やっているところになります。続いて9ページ目です。先ほど私も触れましたが、NDBのデータ提供になかなか時間がかかっているという課題がございますので、そういった課題を踏まえて抜本的見直しを進めているところでございます。資料の上囲みのところにいろいろとやることが書いてあるのですが、ポイントとしては下の図を見ていただければ分かりやすいかもしれないです。リモートアクセスでクラウド上の解析基盤、HICと書いていますが、こういったクラウド上の解析基盤でNDBデータの分析研究をリモートでできるようにする。そういったことを今中心的に取り組みとして進めているところです。
 次の10ページ目、イメージ図だけではあるのですが、HICと我々が呼んでいるクラウド上の医療・介護データ等の解析基盤というものになります。2023年秋に稼働予定、今は2023年秋ですが、もうまもなく稼働予定というところです。こういったものを稼働させた上でリモートアクセスでより研究データを利用しやすいようにする。単純に今までだと申出をして、そういったデータを抽出して、それを媒体で渡してみたいなことをやっていたのですが、クラウドで分析できるような、そういったルートをつくるといったことに取り組んでおります。
 11ページ目が、それに伴う見直しというところで、平均390日かかるといった状況なのですが、全ての研究とは言いませんが、一部の研究に関してはきちんと原則7日で処理するようにという、そういった規制改革の閣議決定を踏まえて来年秋までに見直しを行うということになっています。来年秋には原則7日で、HICなどを使ってデータ提供できるように準備を進めているというのが現状になります。それ以降の資料は参考資料になります。私からの説明は以上です。よろしくお願いします。
【森田主査】ありがとうございました。それではただいまのご説明につきまして、ご質問コメント等があるかと思いますので、それについてご発言をいただきたいと思います。本日第1回目でございますので、皆さんできるだけご発言をいただければと思っております。そしてある程度まとめて事務局から回答していただきたいと思います。どなたからでも結構ですので挙手をお願いします。会場にいらっしゃる方は直接、オンラインの方は挙手サインをお願いします。
【井元構成員】よろしいですか。
【森田主査】はい、井元先生、どうぞ。
【井元構成員】ちょうどこの出ているスライドで、390日、平均だと思うんですけれども。中央値はどれくらいかとか、そういうことを少し教えていただきたいということと、あと利用件数が30件とかそういう件数だったと思うんですけれども。それって少ないと認識されているのか、結構頑張ってると認識されてるのか。そういうところを少しお伺いしたいのですけれども。
【森田主査】以上でございますか。では、関連して。山口構成員どうぞ。
【山口(育)構成員】ありがとうございます。今ご説明いただいたHICのところですけれども、ご説明がさらっとだったので日にちがかなり短くなるということは利点として挙げられたと思うのですけれども、例えばそれ以外に期待できること、あるいは件数がもっと増えてくるということがそれによって起きてくるのか。もう少しそこのところを詳しく教えていただきたいと思いました。以上です。
【森田主査】はい。関連して他にいかがでしょうか。最初はなかなか発言しにくい雰囲気かもしれません。清水構成員どうぞ。
【清水構成員】ありがとうございます。同じくNDBの活用状況についてなんですが、私自身は1年以上かかってデータをもらった立場なので、こういうふうになっていただけると大変ありがたいなと思うんですけれども、これはいわゆる特別抽出のデータセットを自分で取りに行くためのIDとパスワードをもらえるという理解でいるんですけど、それで宜しいんでしょうかという質問になります。もう一点、今回のディスカッションの中心にもなってるNDBをその他のデータベースとつなげた時に解析する環境について、ちょっと言葉は悪いんですけれども、たこ部屋とわれわれの間では呼んでいるんですが、現在のNDBではそういう制約があったわけですが、こういうかたちになることによってより厳しくなるということもイメージできるんですけれども、そのあたりとの兼ね合いはどういう感じで考えてらっしゃるのか。あるいはそれが今回の議論の対象であれば、それにお答えいただければと思います。
【森田主査】他にNDBのデータ利用についてのご質問ございますか。なければ、そろそろ事務局からお答えいただけますか。これはどちらなのかな。
【保険局医療介護連携政策課】いくつかご質問いただいたので、お答えできる範囲でお答えいたします。NDBの提供日数ですが、すみません、ちょっと中央値のデータはないのですが、特にこの特別抽出の第三者提供に関しては、平均で300何十日かかるといった現状になります。研究の件数が多いか少ないかという、そこの価値判断のところはなかなか難しいのですが、少なくとも一層、研究利用、利活用を進めていきたいという、今の政府の全体の状況ではありますので、それに沿って進めていきたいというのが政府の立場といったところになります。
 HICのメリットですが、早くなる以外に何かあるのかというお話もございました。もちろん要件はあるのですが、リモートアクセスで研究室からアクセスができるということなので、少なくとも研究はしやすくなる。今までは研究計画書を書いて、頼んで、それで媒体で研究に必要なデータを特別に抽出してもらって、それを送付してもらってというかたちで、ある種手続きが煩雑にいろいろあったのですが、リモートでアクセスして、そこで研究できるというのと、あと他のデータベースと組み合わせもやりやすくなるという面もあると思います。そういった面で研究もより進むのではないかと我々はみております。
 あとは、3つ目の質問としては、特別抽出のルートがすべてHICのルートに変わっていくのかみたいな、そういった趣旨のご質問だったと思うのですが、ちょっとそういったことも含めて、いわゆる7日でできる対象と言いますか、7日でできるもの、9ページの図のところに解析用に処理したNDBというのをHICに載せるような図が書いてあると思うのですが、ここの解析用に処理したNDBというもの、どういった形で研究に使いやすいようなデータベースを載せるかというところを今まさに検討しているところです。規制改革の閣議決定においては、来年秋までにこれができるようにということですので、それに向けて今進めているといった状況になります。お答え漏れているものがありましたら、ご指摘いただければと思います。
【森田主査】よろしいでしょうか。
【医政局企画官】事務局でございます。清水先生の後半のご質問のほうで、他のデータベースもこういうHICという利用環境になっていった時に解析環境がどうなっていくのかというご質問だったと思いますが、まさにこのワーキンググループの論点の一つでもあると思っておりまして、今の資料の10ページにはNDBの他にも障害福祉DBとか、予防接種DBとか、感染症DBなども薄く絵が描かれておりますけれども、こういう方の公的データベースをどういった環境で利用していくかというところ、必ずしもHIC決め打ちではないかもしれませんけれども、その時にどういう利用環境が望ましいか。どういうセキュリティー環境にすべきかといった点もご議論いただければというふうに思っております。
【森田主査】ご質問された方、よろしいでしょうか。関連して、私、山口構成員の質問に関連してお聞きしたいのですが、海外ですとリモートアクセスにした場合にはデータが外に出ないのでセキュリティーの面で非常に安全であるという評価がされるんですけれども、そちらの点はいかがなんでしょうか。
【保険局医療介護連携政策課】そうですね。中央の方でどういう人が利用したかというのが分かりやすいので、そういった面ではセキュリティーが高いという面もあるとは思います。9月にNDBの専門委員会のほうで、HICの安全管理の措置とかを定めたガイドラインを定めまして、その参考資料が、概要しか書いていないのですが、14~15ページにあるのですが、比較的安全なかたちでリモートアクセスして研究できるといったお話もございました。
【森田主査】ありがとうございました。それではこの件、よろしいでしょうか。またあとのほうでまとめていろいろとご質問伺う時間もあろうかと思いますので、それでは本件にかかる質疑はここまでとしまして、次の議題3に入りたいと思います。事務局から資料の3のご説明をお願いいたします。
【医政局企画官】事務局でございます。資料3をご覧いただきたいと思います。医療等情報の二次利用に係る論点についてということでございます。このワーキンググループでご議論いただきたい点について、整理をしたものでございます。まず1つ目の黒丸でございます。二次利用と言いましても論点がさまざまございます。法制度のあり方、患者の特定や連結方法、データの標準化・信頼性確保、利活用基盤の構築、クラウドやAPI連携の整備方法など、さまざまな論点がございます。
 先ほど来ご説明しましたが、昨年の仮名加工の保護と利活用に関する検討会におきまして、法制上の課題、またその二次利用のあり方について議論を行っていただきました。また今年の5月には次世代医療基盤法の改正法が成立をいたしまして、一定の枠組みの中で仮名加工医療情報の利活用を可能とする仕組みが整備されたところでございます。
 こうした経緯も踏まえまして、このワーキンググループにおきましては、さまざまある論点の中でも、特に真ん中に書いております2点について議論を行っていただくこととしてはどうかというふうに考えております。1つ目は、貴重な社会資源であります公的データベースについて、仮名化情報の保護と利活用を図るための法制度のあり方ということでございます。次世代医療基盤法の改正を受けまして、まだ公的データベースにつきましては匿名加工情報ということでの第三者提供、利用ということになっておりますが、これについて仮名化情報での利活用を図るための法制度のあり方ということで、具体的にはポツが5つほど挙げさせていただいております。まずは医療現場の理解と協力の促進、本人の国民の理解促進に向けた取り組み、それから、各公的データベース間の患者の紐付け、IDをどうするかという問題、それから、本人の適切な関与をどう考えるかという問題、それから利用者側の安全管理措置などについてどう考えるかという問題、それから審査体制などについて具体的なあり方をご議論いただきたいと思っております。
 それから②、情報連携基盤の整備の方向性でございます。取り扱う情報の範囲、公的データベースの中でもどこまでを考えるべきかということ、それから、必要となる要件の骨格ということで、先ほどご説明しましたHICのようなクラウド環境、Visiting環境のような整備での利活用を一義的に考えるべきかどうか。それから、各公的データベースの利用促進のために、一元的な利用申請の受付、また審査体制のあり方、そういったことをどう考えていくかというところ。それから、こういった情報連携基盤に求められる情報セキュリティーの課題などについてもご議論いただきたいというふうに考えております。
 これら以外のデータの標準化、信頼性確保、クラウドやAPI連携の整備方法など技術的な論点につきましては、別途専門家からなる検討の場を設けて議論をしたいというふうに考えております。もちろん、こちらデータの標準化など、こうした点についてもこのワーキングでも必要なご意見は言っていただきたいというふうに思っております。説明は以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございます。ただいまのご説明につきまして、それではご意見コメント等ございましたらご発言をお願いいたします。これ、ここで議論をする論点ということでございますので、じっくりとご議論いただきたいと思います。ご発言をお願いします。それでは清水構成員からどうぞ。
【清水構成員】すみません、ありがとうございます。2点あるんですが、1点目は今回のこの討論、検討会、ワーキンググループは、公的データベースに限定という理解でよろしいんでしょうかという、質問、確認です。なぜそういう質問をさせていただくかというと、現在実際に医療現場とか臨床研究であったり疫学研究であったり、あるいは製薬会社さんで医薬品の開発等で使っているデータというのは、実際のところ民間のデータのほうが使い勝手がよくて質もいいってことで、極めて高価であるにもかかわらずそちらを中心に使っています。それに対抗して国の公的データを構築していこうっていうのは、本来あるべき姿としては正しくないかなと思うので確認です。
 民間のデータのいいところはいいところで取り入れながら、民間のデータともいい意味での連結をしていくというのはNGなのか、あるいは、そういうことも一応視野に置きましょう、なのか。ちょっと民間のデータの位置付けというのを確認させていただきたいと思います。
 2点目は、別に討議の場を設けてというほうに入るのか、あるいは②のところに入るのかちょっと微妙な内容が一つあるので確認です。最近ではNDBをはじめとして、非常にいいデータが集まってきたという状況なんですが、やはりデータのクレンジングがしていないために、いくらデータ量が多いから、何億件あるよと言っても現実にデータを活用しようと思うとすごく難しい面があるという課題があります。その点はいろんなところで指摘させていただいてるんですけれども、その件が下のほうの別に議論するほうに話が入るのか、あるいは本WGでそのあたりも視野に入れるのか。セキュリティーの問題とも絡んでくるので、そのあたり確認させていただきたいと思います。
【森田主査】はい、ありがとうございます。どうしましょうか。これすぱっと答えられるかなと思いますので、事務局のほうから先にお答えいただけますか。
【医政局企画官】事務局でございます。ご指摘ありがとうございます。まず、民間データベースとの連携の位置付け、公的データベースに限定するのかということでございます。次世代医療基盤法の改正法が5月に成立をしまして、一定、民間データベースも含めて仮名加工情報での利活用ができる仕組みができた、これから施行していくというところでございます。その中で公的データベースについては、まず法制度の面から言いますとまだ匿名加工情報での提供、利用に限られているというところでございますので、まず法制度というところで言うと公的データベースについて仮名化情報での利用についての保護と利活用をどうするかというところはご議論いただきたいというふうに考えております。
 でも、その上で、②の情報連携基盤とも関係してくると思いますが、民間データベースも含めて利活用を進めていく情報連携基盤をどうしていくかというところは、このワーキングでも論点になろうかと思います。必ずしも公的データベースだけでの情報連携基盤に閉じる必要はないものと思っておりますので、必要な民間データベース、もちろん何でもかんでもというわけにはいかないかもしれませんが、一定のものについては情報連携基盤での活用も想定をしたご議論をお願いをしたいというふうに考えているところでございます。
 それから2点目のご質問にありました、データの標準化とか信頼性確保の点だと思いますけれども、このワーキングの中でも当然セキュリティーの問題とも関連するということでございますので、一定のデータの標準化の方向性とか信頼性確保をもっとこうしていくべきだというようなご意見はぜひ頂戴をしたいというふうに思っております。その上で、例えば各データベースの中のデータの標準化、持ち方をどうしていくべきかといった個別の論点、かなり詳細な論点につきましては、すべてをこのワーキンググループで扱うのはなかなか難しいと思っておりますので、それはまた別途の場でご議論いただきたいというふうに思っておるとそういうことでございます。
【森田主査】よろしいですか。他に。ではコムルの山口構成員。
【山口(育)構成員】山口でございます。資料3の論点、2つある内の1のところなんですけれども。まず本人・国民の理解促進に向けた取り組みということが書いてございますし、資料1のところでも国民の理解と納得が得られるものでなければならないと書いてあるわけですけれども、これまでも同じことを何度も発言してきているんですが、例えば次世代医療基盤法とか、仮名加工情報とか、匿名加工情報とか、言葉自体を一般の方がどれだけ知っているかというと、ほとんど理解されていないというのが現状だと思っています。特に次世代医療基盤法にかかわっている情報提供している医療機関の、私、有識者会議に出てる部分があるんですけれども、どのように患者さんに説明されているのか説明の文書を見せていただいたことがあります。とても難しい内容で、これで理解しろというのは無理だろうと思いました。
 ですので、直接次世代医療基盤法の情報提供をしているという医療機関にかかわっている患者さんですら理解できていないとしたら、一般国民の常識になるというところにはちょっと程遠い状況ではないかと思いますので、まずはそういったかかわっている方に情報提供する時の説明文書を、例えば国でつくって医療機関が使えるようにするなど工夫をしていかないことにはなかなか理解は進まないんじゃないかなと思います。
 それから、本人の適切な関与ということが書いてあるんですけれども、日本の場合、二次利用についても同意ありきということで進められてきて、入り口規制が主になってきていたと思います。ところが入り口のところで情報提供に同意するという時にどんな二次利用が行われるかということがまだ分かっていない段階で同意というのは、まず無理だと思うんですね。同意ありきにすると、例えばご高齢の方であるとか、子どもさんであるとか、そういった方が対象から外れてしまうという、そんなことからしますと、同意を得ないといけないということで医療機関もなかなか協力ということに二の足を踏んでいるところが多いように聞いております。
 ですので、やはり二次利用ということを考える時には、二次利用が決まった段階でその二次利用が本当に適切なのかどうかということを出口規制と言いますか、その段階でしっかり審査するような体制、そこに患者、国民の立場というか、視点を入れていく。これは本当に国民にとって意味のある二次利用なのかということをきちんと理解した上で審査するような体制が大事ではないかと思っておりますので、ぜひそういったことを論点の中でも話し合うことができればと思っております。以上です。
【森田主査】ありがとうございました。それでは、他にご発言いかがでしたでしょうか。今度はPMDAの山口構成員。
【山口(光)構成員】ありがとうございます。私から2つございます。資料3の3つ目の黒丸①です。公的データベースについては機密性の高い情報を扱うということで6つの観点から整理するということで、必要な活動であると思います。その中で1つ、このワーキングでぜひ検討いただきたいのは、安全管理措置についてです。おそらくHICがモデルになっていろんなこと考えられたかと思います。HICの基盤は、管理者側で厳格にセキュリティーを確保されています。一方、利用者は遠隔から接続するということは、その高いセキュリティ環境下で使っていくことになります。
 先ほど、清水構成員から、作業環境がたこ部屋のようで利用しづらいという説明がありましたが、利活用者の利用環境に求められる要件があまり厳しくしすぎると、利活用が進まなくなってしまうと思います。あくまでも管理者側で厳格に管理される条件下で利用することを前提に利活用者の利用環境にどこまで求める必要があるかを検討いただきたく考えます。特に作業環境である部屋の要件です。利用用途別にいろんな部屋を準備するってかなり大変です。例えば、東京の一等地に賃貸のマンションを借りるようなものなので、利用のための専用部屋をつくるらせるのかという点はしっかり議論したほうがいいと思います。この後の議論で検討いただければと思います。
 2つ目なんですけれども。先ほど山口(育)構成員から説明がありましたが、本人の適切な関与、同意取得については、非常に難しいです。薬事利用の検討においても結構なところで同意の話があがります。同意を取得するということが大前提であることは理解しているつもりなんですけれども、公益性が認められる利活用をする際に、簡単に利活用できない状況があります。例えば、オーファン、希少疾病の開発・薬事申請において、同意がないRWDを使っていいのかという議論になることが多く、利用してよいという部分が明確になっていないところがあります。間違いなく公益性が高い利用になると思います。いざ使う時になるとなかなか厳しいということになるので、ぜひ、薬事利用であれば希少疾病のあたりは使えるようにしていただきたいと思います。公益性か公益性じゃないかというのは、線を引くのはなかなか厳しいのは理解しているのですけれども、少なくとも希少疾病薬の開発・申請における利用については、本当に優先的に検討いただいたほうがいいかなと思います。ぜひよろしくお願いいたします。以上です。
【森田主査】ご意見ありがとうございます。他にいかがでしょうか。それでは、会場のほうの日置構成員、続いて山本構成員からお願いします。
【日置構成員】ありがとうございます。まずは対象が今回公的データベースで、それに限られる議論ではありませんというお答えは頂いてるんですが、それはその方向でよろしいのかなと思いつつ、対象としてやっぱり公的データベースに入っていないデータを活用したいというニーズは非常に大きいんだと思っております。特に、画像であるとか、そういったものについては診断も含めて使っていきたいというお声もあるのかなと思いますので、合わせて検討したほうがよいのかなと考えております。
 他方で、民間データベースというものを活用していくよというお話の時に、例えば仮名にしたデータというのを考えた時に法制度的には個人情報保護法であれば仮名加工情報の制度では、これは公表ベースですと。次世代医療基盤法の場合は通知ベースというお話だったかなと思います。今度は公的データベースの場合はそういった通知というお話にはなかなかなりにくいのかなと。今蓄積されているものや、今後通知しようと思うと、そのデータの、患者さまとのコンタクトポイントがあると思うんですが、その方たち、じゃあ全部通知してくださいねというふうに委ねるのがいいのかというところ、お話あるかと思います。そういった実務上のスタックポイントもあると思いますので、安全安心というかたちで考えなければいけないものではあるし、本人関与というのは考えなければいけないんですが、利活用と保護のバランス取りながらどういう制度にするのか考えたほうがよいのかなというふうに思っております。
 次が、データ連携と審査の方式というところなんですが、例えば、今の公的データベースあるいは次世代医療基盤法のデータベース、それぞれ取り扱い主体というのが異なるわけなんですが、申請方法は全く別ですがというお話になってくると、審査の方式どうなるのか。今の公的データベースもそれぞれ連合審査みたいなものありますけれども、実態としてどういう運用をしていくのがよいのかというお話あるのかなと思っております。
 もう一つが、審査をばらばらにしたり、あるいはデータを提供した後に提供された側の二次利用の幅もそうなんですが、そこで連携してマッチングした時に、データの粒度がある程度細かくなってきた時に識別性の観点から識別リスクって高まらないのかとか。その高まったリスクを全部利用者側がリスクを負わなきゃいけないのかとか。そういったところの負担感であるとか、ご本人の保護という観点は見ておかないといけないのかなというふうに思っております。あとは、その前提にもなるんですが、データ連携するよといった時のIDの話は少し詳細をもう一度こちらでも頂いたほうがよいのかなと思っております。
あと、②の情報連携基盤の整備の方向性の内、2つ目のポツに関連するところですが、公益性と言われた時に、ここの公益性は現行の公的データベースの公益性とどれぐらい関連するのかというところ。あとは、二次利用の幅にも関係しますけれども、自己が保有するその他の情報との突合というのはどれくらい許容される設計になるのかというところ。二次利用の内容については加工後のデータについてはどういう活用をできるのかなとか、そういったところも含めてお話しいただけるといいのかなと思っております。
 もう一つ、なかなか公益性の観点で要件を絞ると審査後に活用したいと思っても活用できる方たちというのは、スクリーニングされていってしまうというところがありますので、オープンデータというところも考えなければいけないところかなというふうに思っております。すみません。相談的になりましたが、以上でございます。
【森田主査】たくさんの問題の指摘、ありがとうございます。それでは山本構成員、続いて長島構成員の順でお願いいたします。
【山本構成員】ありがとうございます。今回の検討は公的データベースに限定されないというのは、私としては非常に賛成でございますけども、一方でその対象となる公的じゃないデータベースとして話題に上がってるのが、いわゆる民間の商用データベースなんですけれども、研究者にとってかなり切実な問題として、学会ベースで構築しているレジストリデータベース等があると思うんですね。これは、有用性は言うまでもなく非常に役に立つとは思うんですけれども、一方で、やっぱりデータベースの管理体制っていうのはそれぞれ非常にバリエーションがあって、一概にこう結び付けてやるとか、同じ基準でやるとかって言えないものもあると思うんですね。従って、そういったいわゆる民間の学会データベース、学会には限りませんけれども、レジストリデータベースに対して、このスキームに入れるための基準っていうのをやはり検討しなければいけないんじゃないかと思います。
 それから、この論点の中で提供にかかわる審査体制の検討について、たくさんのデータベースの審査体制に参画していて、本当に毎日毎日審査ばっかりしているという状況で、なおかつレセプトと介護のデータベースの合同審査委員会までやっているということで、ぜひこれは統一的な体制をつくっていただきたいと思う一方で、各データベースには各データベースに独特のリスクというものがございます。例えば、難病のデータベースとか、小児慢性特定疾病のデータベースとか、非常に希少例がありますし。そういう各データベースにかなり特異的な専門知識がないと判定できないようなことも多分ありますので、審査体制を一元化すると同時に、やっぱり個別のデータベースで最終的なチェックをするようなことも必要なことがあるのではないかと考慮すべきではないかというふうに思います。
 それから、Visiting環境なんですけれども、これはセキュリティー上の措置で要するに利用者、研究者のデータベースの利活用費の負担を減らすという意味では非常に有効だと思います。それほど厳しい環境でなくても使えるようになりますし、たこ部屋とおっしゃっていたのは多分NDBの安全基準で本当に他の人が入れないような部屋をつくらないといけないというふうなことがございますけれども、ただ、Visiting環境で注意しなければいけないのは、分析ツールは自分の分析ツールが使えないんですね。もともとVisiting環境内で用意された分析ツール以外は使えない。それをどこまで許容するのかも含めて、これだけですべて済むという話ではないということも、頭に置いて検討すべきじゃないかというふうに思います。以上です。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは、続いて長島構成員どうぞ。
【長島構成員】はい。本人・国民の理解は当然のことですけれども、同時に医療現場の理解と協力は必須であると考えています。もし国民あるいは医療現場に不安や心配が生じますと、まさにマイナ保険証の不安と同様に、二次利用が止まるだけではなくて、医療DXそのものが止まる可能性すらあると大変心配しております。従って、マイナ保険証の不安払拭が医療DXの推進の大前提であると同様に、やはり二次利用に関する不安、心配をつくらないこと、払拭することが大前提だろうと思っています。
 何故そう思うかと申しますと、私、日本中を医師会など医療DXの説明で回っておりますが、そこでは一次利用に関するメリットや意義は大体理解されて賛成されています。しかし、二次利用に関しては大変心配、不安だという声を日本中から聞いております。どんな心配があるかというと、一つは情報の漏洩があるのではないか。患者さんご自身の個人情報もありますが、医療機関の情報も含まれていますので、医療機関の情報が漏洩するのではないかという心配。
 もう一つが、目的外に使われるのではないか。例えば診療報酬の審査に使われるのではないか。医療機関の管理、評価に使われるのではないかというところで大変強い不安、不審を持っているということです。ここのところは丁寧に説明して、理解と納得を得ながら進めないと、おそらくものすごく強い逆風が吹いて、最初に戻りますが、二次利用どころかオンライン資格確認、あるいは3文書6情報の共有、ここにも強いストップがかかるという可能性が極めて高いと心配しています。
 その観点から、例えば公的データベースで言うと、レセプトのデータ提供に関して、医療機関はある意味同意して出しているわけではありません。診療報酬請求のために出しているデータがこういう形で匿名化されて使われてるということです。それが、仮名化することでどのようなメリットがあって、逆にどのようなリスクがあるのか。何故それが必要なのか。リスクがあるけれども、こういう仕組みにするから安全だということがない限り、これはものすごく強い反発が来るだろうと思います。医療機関はそういうことに使われると思っていないので。従って、必要性、メリット、あるいはリスクに対する対策、これは余程丁寧な説明、納得できる説明がない限り、極めて強い抵抗があるということはぜひご理解ください。
 もう一つ、次世代医療基盤法の改正で仮名加工情報の利活用が進む予定になっていますが、特に利用者側も認定するという、匿名加工情報よりもさらに厳しい安全基準が設けられます。それとバランスがとれた、同じレベルの安性というのが確保されないと、医療現場の不安は払拭できないのではないかと考えています。従って利便性を追求するばかりに、もしも不安とか心配を招いてしまうと大ブレーキになるということ、これは何回も繰り返して強調させていただきます。以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは、井元先生、どうぞお願いいたします。
【井元構成員】短く、この①、5つポツがあるのですが、その中の利活用を推進するという観点から、ユーザーニーズは非常に大切だと思っています。そのことに関することが書かれてないことは気になりました。また、先ほど外部のデータベース等の話がありましたけれども、どういうデータベースを対象にどのような解析を行うのがニーズが高いのか、そういうことを調べることは非常に大切だろうと思います。
 また、Visiting環境についても前にも意見が出てますけれども、外部のデータベースや外部のツールを持ち込むことに関しては、諸外国、そういう取り組みをやっているところは既にございますので、先行する海外事例をベースに考えるのがいいのかなと思っています。以上です。
【森田主査】ありがとうございました。他にご発言はよろしいでしょうか。失礼いたしました、それでは中島先生、お願いいたします。
【中島構成員】一つだけお願いします。3つ目の丸ポツの①の中、各データベース間の患者の特性、紐付けというところです。現在はマイナンバーはあるものの、実際には例えば、政府の全国情報プラットフォーム構想などでも、保険者番号を使うということになっておりますけども。やはり、このデータベースの患者の紐付けなどを考えると、今後研究としては、やはり不安がある。つまり、かなり保険者番号は流動的に変わる患者さんも多いわけですね。そして、登録の時期が違うデータベースもあるわけで、時期が違うからこそ紐付けることによって意味があるデータベースもあるわけですので。
 やはり、私は、マイナンバーと一意に紐付く、ただし同一ではない医療等ID、以前から議論がありましたけど、これをつくっていく議論をもう一度考えていただかないといけないかなと思いました。以上です。
【森田主査】はい、ありがとうございました。他にいかがでしょうか。大体予定された時間になりましたが。なければ事務局のほうからコメントございますか。
【医政局企画官】ありがとうございます。各先生方から頂いたご意見を踏まえまして、ちょっと整理をさせていただいて、次回以降、具体的な論点、方向性というかたちでお出しをしていければというふうに思っております。事務局からは以上です。
【森田主査】ありがとうございます。まだご発言のない方はよろしいですか。石井先生、宍戸先生、落合先生。よろしいですか。
【石井構成員】すみません、石井です。少しだけ発言をさせてください。
【森田主査】石井先生、どうぞ。
【石井構成員】ありがとうございます。日本医師会の長島先生のご意見とかぶるところはありますが、3点目の①のどういう目的に使うかということについて、利用目的を社会的に受け入れられるように、具体的にどのように個人情報使っていくかということ、落とし込むという話があると思います。まずは社会的に受け入れられる用途でないと、そもそも利用は難しいだろうという話がありますので、その点に課題があるかな思います。
 それから、利用目的に照らした用途に使われているかの確認が事後的にもできるようなガバナンス体制、すなわち、もともと想定されている用途でない使い方がなされないような仕組みも考えていかないといけないということ。
【森田主査】すみません、石井先生。ちょっと音が割れて聞き取りにくいのですが、申し訳ございません。
【石井構成員】そうですか。すみません。ではビデオを停止させていただきます。よろしいでしょうか、音声のほうは。
【森田主査】今度はよく聞こえるようです。すみません。
【石井構成員】利用目的について、スライドの①のところで、今のところ記載がないようには見えますが、やはり医療等情報を使う正当な理由、利用目的をいかに定めていくか。社会的に受け入れられる用途に使われていくことをうまく謳っていかないと、この議論は進まないのかなと思っております。どういう用途に使っているかということを、まずはこの場で議論して確認をしておくというのが大事かなと思います。
 また、他の用途、予想外の用途に使われていないということを事後的に確認できるような仕組みも重要ではないかと思っているところであります。
 それから、もう一つ大きな視点の議論も重要かと思っております。公的データベースを使う議論と民間データベースを使う議論で、ここの検討会で打ち出す方向性と次世代医療基盤法の改正の領域で進む議論が今後どう収斂されていくのかという点についても、目指す制度のあり方を共通認識として持っておくことが重要かと思います。大きな視点の議論もできれば少し視野に入れていくとよろしいかなと思った次第です。以上であります。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは時間が過ぎておりますので、よろしいでしょうか。ただいま構成員の皆さまから頂いたご意見を踏まえまして、また事務局と相談して次回以降どういう論点を立てていくかということについて、工夫をしていきたいと思います。
 それでは次の議題、議題4に入りたいと思います。ここでは関係団体からのヒアリングということで、本日は日本製薬工業協会の安中さま、小林さまにお越しいただいておりますので、プレゼンをお願いしたいと思います。では安中さま、よろしくお願いいたします。
【日本製薬工業協会】はい。製薬協の安中でございます。本日は発表の機会を頂きましてありがとうございます。製薬企業のデータの利活用の事例、ニーズ、海外動向ですとか、それを踏まえた要望についてご説明させていただきます。2ページをご覧ください。まず、製薬企業のデータ利活用事例をご紹介します。
 3ページご覧ください。健康医療データの利活用で実現する世界観、これを1枚でお示ししたものでございます。データの利活用により、患者さん自身の健康管理に役立てる。あるいは個人に合った治療が提供できるようになり、患者さんのQOLの向上、健康寿命の延伸が実現できるようになる。それから、製薬企業といたしましては、医薬品の安全監視活動、これが充実しまして、患者さんの安心安全につながります。さらに創薬のスピードや成功確率、これが飛躍的に向上します。開発コスト低減につながりまして、ひいては医療コスト全体の効率化につながる。そのように考えております。対象データのイメージは中央に描いておりますが、詳細は次の4ページをご覧ください。
 電子カルテ、レセプト、画像、ゲノム・オミックス、PHR、死亡データなど、医療機関の内外にあるさまざまなデータにニーズがございます。これが一時点の情報ではなくて、時系列にデータが集積され利用できるようになることが重要であるというふうに考えております。5ページをご覧ください。データのユーザーは患者さん、医療機関、行政、保険機関、アカデミア、企業などさまざまな利用者がそれぞれの立場で多様な利活用ニーズがあるというふうに思います。このうち製薬企業のニーズを黒でハイライトしておりますけれども、次の6ページにバリューチェーンごとに整理しましたので、そちらをご覧ください。
 まず左側、上市品、これは発売された医薬品でございますけれども、中段にありますように副作用の早期把握、バイオマーカーの発見、治療反応性や副作用の予測、薬剤の飲み合わせに問題がないかなどを確認したり、あるいはHTAなどで用いるケースがございます。臨床開発、治験の段階におきましては、後に詳細をご説明いたします。研究につきましては、創薬標的の探索、患者層別化、バイオマーカーの発見、ドラッグリポジショニング、発症予防の研究など、これもやはり利用目的は多岐にわたります。
 7ページをご覧ください。利用にあたりましては、先ほどからご議論ありましたとおり、個人単位でのデータ連携が非常に重要になります。新型コロナウイルス感染症の例を思い返してみますと、ワクチン接種から検査、濃厚接触者の認定後の隔離、感染発症後にどのような転帰をたどっていくか、これを追跡することが病態解明ですとか、ワクチンあるいは治療薬の安全性や有効性の検証、さらには医療政策をどう立案していくかということについて必要でありましたけれども、残念ながら日本ではデータ連携がうまくいってはおらず、混乱が生じたといったところは記憶に新しいところかと思います。
 8ページをご覧ください。新型コロナウイルス感染症では、後遺症が長く続くことがございますし、時間がたってから後遺症が出るということもありました。また、コロナの事例にとどまらず、医薬品の副作用は時間を経過しないと現れないものも存在しますし、例えば妊婦さんの場合はお子さんへのリスクがある場合もございます。従いまして、ライフコースデータ、さらには世代をまたいだ調査ができる、こういった環境が必要であろうというふうに考えております。
 9ページをご覧ください。過去の厚労省さんの薬害再発防止に関する検討会の提言で、薬害再発防止に健康医療データの利活用は有用であるというような報告がなされております。提言書の中には、異なる医療情報源からのデータリンクが可能となり、かつデータのバリデーションが可能となるような仕組みがない限り、その有用性は極めて限定的になるとか、あるいは電子カルテ等のデータへのリンクを可能とし、高度な分析への活用を可能とすることの検討も行う必要があるというふうにございました。
 日本ではMID-NET、これが構築されておりますけれども、10拠点23施設にとどまり、クリニックのデータが得られないなど、そういう段階で確認あるいは検証できる副作用リスクは限定的でございます。例えば、例を挙げますと発がん性リスクは転院後も長期にわたる観察が必要ですとか、併用リスクは同時期での別の医療機関のデータと連携する必要がある。あるいは、催奇形性は妊産婦レジストリとの電子カルテ情報との連結が必要になるなど、これらのリサーチクエスチョンを分析できる環境というのは、MID-NETだけでは不十分なのかなというふうに考えております。今後つながる医療データが増えれば増えるほど、特定できる副作用リスクも増え、患者さんの安心安全につながります。
 10ページをご覧ください。ここから開発の話に少し移りたいと思います。まず海外事例として、イスラエルのCOVID-19ワクチンの事例をご紹介したいと思います。イスラエルは出生から死亡までを追跡できるデータインフラが既にございます。これを活用して、COVID-19ワクチンの効果が分析され、論文化されました。注目すべきはそのスピードと規模感です。青枠のとおり、21年2月1日までにワクチン投与された120万人ものデータが解析され、たった3週間で2月24日ですね。NEJMという医学界の最高権威のJournalに論文が掲載されております。この悉皆性の高い疫学データは各国のコロナ対策の政策で活用されたり、あるいは企業としましてもワクチン開発の重要な判断根拠となりました。やはり公衆衛生危機の際に、このぐらいのスピード感で分析できるような環境が日本にも必要ではないでしょうか。
 11ページ、お願いします。医薬品の開発の特徴は10年、3,000億円という長い時間と莫大な費用がかかること、これが課題でございます。例えば、東京スカイツリーの建設は10年600億円かかったと言われております。つまり、1つの医薬品をつくることと、スカイツリー5棟建てるということについては、同じぐらいの時間と費用の規模感になります。さらに成功確率が非常に低いということが問題でございます。特に多額の費用がかかる治験の段階の成功確率もわずか10%程度にとどまっております。そして、厳しい国際競争にさらされておりまして、コロナのワクチン、治療薬の開発で十分ご理解いただけたと思いますけれども、スピードの追求、これがますます必要となっております。
 12ページをご覧ください。医薬品開発をいかにやっていくかということで、スピードの向上、それから成功確率の向上、データ収集の効率化、これがキーワードでございます。詳細は次の13ページ以降でご説明します。13ページをご覧ください。開発のスピード向上を目的とした利用についてです。臨床試験は倫理的な観点からも仮説を検証するために必要最小限の人数で行うことが求められ、そのために組み入れ基準、いわゆる参加基準の設定が試験の成功、あるいは失敗の鍵を握っております。
 例えば、表のようにリアルワールドデータを用いて、疾患Aという患者さんが10,000例いらっしゃるということが分かったとします。さらに、治療Bを受けてる患者さん、あるいは治療Cを受けてる患者さんはどうなのかというふうにデータベースで見ると、Bの場合は4,000例、Cの場合は2,000例と絞り込むことができます。さらに、絞り込み条件として、検査値を上乗せするとします。例えば、200以上の患者さんに絞ると、治療Bの場合は2,000例、Cの場合は1,500例というふうに条件を増やせば対象の患者さんの数が減っていきます。
 このような中で、例えば3,000例の試験をやらなければいけないとなると、これは実現不可能でございます。このようにデータがあれば実現可能な臨床試験を迅速に設計することが可能になります。また、どの医療機関に対象の患者さんが何人いるかということが分かれば、医療機関を選定する作業、これは非常に大変なんですけれども、速やかに候補の医療機関を絞り込むことができるということで、治験のスピードアップにもつながります。
 14ページをご覧ください。成功確率の向上のためにも、データは非常に重要でございます。このスライドの中身は非常に難しい話ですので簡潔にご説明しますと、最近はコンピュータシミュレーションの精度が向上しておりまして、リアルワールドデータと社内の研究データを駆使することで臨床試験の結果をある程度予測することができるようになってきております。これを基にさまざまな条件をかませて、最善の計画を練っていきます。この精度を上げるには最新のデータが必要であります。なぜかと申しますと、新たな治療薬ですとか、あるいは診療ガイドラインの改訂などにより、治療方針、つまりは医療そのものが日々刻々と進化しています。ですので、最新のデータが必要だということです。
 もう一つ強調したいのは、成功確率を上げるためには、逆に成功確率の低いプロジェクトを早期に中止させて、人的あるいは金銭的なリソースを他のプロジェクトに適切に配分するということが企業活動にとって非常に重要になります。そのためにもデータを駆使してできるものに資財を注入していくという判断をするためには、やはりデータが必要でございます。
 15ページをご覧ください。その事例ですけども、これはやはり海外の事例になります。米国には退役軍人のデータベースがございまして、ここからニルマトレルビルという薬剤のLong COVIDの発生抑制効果が確認できたということで、これをベースに追加効能取得のための開発計画が立案されたということがございました。これはあくまでも一例でございまして、米国ではリアルワールドエビデンスをきっかけに効能効果の開発計画が始まるケースが出てきております。日本では、患者さんの診療情報が分散し、連結ができていないため、同様の研究をするケースというのが少ない状況です。つまり、日本で上市している医薬品の効能効果の追加の検討を、データベースで行う機会を逸しているというふうにも言えます。
 16ページをご覧ください。次にデータ収集の効率化についてでございます。2つの事例をご紹介します。1つは上段でございまして、一定の期間の臨床試験を行い、その後をリアルワールドデータで経過を追跡するということについてもニーズがございます。例えば、高血圧の治療薬の事例が分かりやすいと思いますけれども、臨床試験では血圧がどれだけ下がるかということを評価します。しかし、高血圧治療の本当の目的というのは、ご存じのとおり、心臓とか脳の血管障害、あるいは死亡を防ぐことですので、それをリアルワールドデータで長期にわたって評価する。こういったイメージでございます。
 もう一つは、治験の対照群として活用する方法でございます。例えば、プラセボ群を従来よりも減らして、リアルワールドデータを追加して評価する。あるいは対照群をすべてリアルワールドデータで評価するということも理想としてはございます。これにより、臨床試験のスピード向上とコスト低下が実現できます。これを患者さんの立場で想像してみますと、治験薬をぜひ使用したいというご希望を持って臨床試験に参加した患者さんにとっては、対照群に当たる確率が減っていきますので、患者さんの意思あるいはご希望に寄り添うことにもなるというふうに思います。この点は決して忘れてはならない視点かなというふうに思います。
 17ページをご覧ください。アメリカではさらに先行する事例がございまして、乳がんと言えば女性の疾患のイメージがございますけれども、男性も非常にまれに乳がんを起こすことがあります。致死率が高い希少疾患でございまして、治験の実施が困難でした。そして、実態として米国ではパルボシクリブという抗がん剤が適応外で使用されていたということがございました。そのため、対照群をリアルワールドデータで置き換えるだけではなくて、評価対象のパルボシクリブについてもリアルワールドデータで評価しまして、FDAが承認したというような事例でございます。つまり、臨床試験を行わずにリアルワールドデータだけで承認を取得したというような事例も出てきております。
 次をご覧ください。また医薬品開発の成功確率を上げるための極めて重要なデータとして、ゲノムデータが挙げられます。研究段階からゲノム情報と臨床情報を組み合わせて病気の原因を分析しまして、標的分子と適応症との関連を遺伝学的に確認した上で治験の段階に入りますと、なんと成功確率が2倍から3倍上昇するというような論文がございます。実際に2021年のFDAの承認品目を見てみますと、3分の2は遺伝学的根拠のある品目、つまりゲノムデータを研究段階から活用していたということでございます。先ほど、治験から上市に至る確率が10%程度と申し上げましたけれども、これが20%、30%になるというだけでも、大きなポジティブな影響があるというところでございます。
 次をご覧ください。ここから、仮名化データの利活用環境整備に対する期待について述べさせていただきます。20ページをご覧ください。その前にまず冒頭、製薬企業は患者さんの氏名、住所、連絡先、こういった情報は全く必要としていないということを改めてご説明させていただきたいと思います。データを使用する目的、これはデータを統計解析して、その統計情報を基に研究開発などに利用することでございまして、患者さんに直接コンタクトして、例えば営業活動をするというようなことは全く望んでおりません。例えば治験データにおきましては、医療機関において氏名を被験者識別コードという番号や記号に置き換えた上で入手させていただいております。
 21ページをご覧ください。仮名化と匿名化の違いについては先ほどご説明ありましたので、割愛して簡単にご説明したいと思いますけれども、中段が仮名化したデータでIDと氏名などを削除するだけでデータの中身はいじらない。一方、匿名化につきましてはデータそのものもいじってしまうというような内容でございます。22ページをご覧ください。当然のことながら、匿名化したデータによる解析結果は信頼性が低下します。匿名化による個人特定性のリスク、それから情報の有用性、これはトレードオフの関係にございます。最悪のケースでは、匿名加工情報を用いたデータで解析した結果は本当のものとは違う、誤った結果が導き出される恐れもあります。病気のメカニズムを解明したり、副作用を見つけるためには、外れ値ですとか特異な数値を含めて研究することこそ重要ですが、匿名加工はそれをできなくする加工手法でございますので、医学研究には全くなじみません。次のページをお願いします。
 それから匿名化では、これも先ほどありました、長期の追跡研究が不可能になります。匿名化では、例えば今日解析した集団について、1年後も全く同じ集団で解析したいとしても氏名ID、対応表を削除してしまいますので、1年度に同じ患者集団を抽出することができないという問題がございます。24ページをご覧ください。これらを踏まえまして、仮名化されたデータでないとできない研究の主な例といたしまして、6つ挙げさせていただきました。特異な疾患の詳細な診療情報等、それだけで個人情報となってしまうものを使う研究。医学的に意味のある珍しい症例、外れ値が重要になる研究。多項目、長期データによる病因の探索解析、フォローアップが必要な研究。医療機関、自治体、保険者で保有する医療情報を連結して実施する疫学研究。ゲノム情報や顔画像等、個人識別符号を使用する研究。規制上の意思決定に利用できる研究。つまり、薬事利用などが挙げられます。
 25ページをご覧ください。画像データにつきましても、先ほど日置構成員からご指摘ありましたとおり、われわれ製薬企業としても利用ニーズがございます。26ページをご覧ください。ゲノムデータにつきましても、先ほど申し上げたとおりでございます。現状では日常診療で遺伝子検査をするケースもそれほど多くはございませんけれども、解析費用が大幅に下がってきており、政府も医療実装を目指して全ゲノム解析等実行計画に取り組んでいらっしゃるところでございますし、本年の通常国会でゲノム医療法も成立しましたことから、今からゲノムデータの扱いを検討していくことが必要だというふうに思っております。
 27ページをお願いいたします。こちら、仮名化の観点から少し外れますけれども、死亡情報につきましては非常に重要ですので少し触れさせてください。死亡情報は医薬品の有効性を評価する上でも、また安全性を評価する上でも最も重視されるべきイベントでございます。しかし、死亡データはかかりつけ医の医療機関に記録が残るとは限りません。そのため、医療データが連携されていないと得られないのですけれども、残念ながらそのような環境ではないため、私ども企業が死亡情報を得るというのは非常に困難な状況でございます。
 28ページをご覧ください。まとめますと、仮名化データが利用できるようになると、例えばでございますが、希少疾患、難病、超高齢者のリアルワールドデータを用いた研究が拡大します。長期の追跡研究が可能となり、より詳細な有効性、安全性の評価が実現できます。個別化医療を見据えたゲノム情報や画像等を用いた研究が拡大します。治験計画の精緻化や薬事利用等により、治験のスピードアップ、効率化を図れますということでございます。
 29ページをご覧ください。なお、次世代医療基盤法の改正で仮名化したデータが利用できるようになるということは非常に大前進でございますけれども、依然として課題も残ります。多大なご尽力をされていらっしゃる認定事業者の先生方とそれから内閣府の皆さまの前で申し上げにくいのですけれども、やはり全国民のライフコースデータの基盤にはなっておらず、ご紹介しました多様なリサーチクエスチョン、これをすべて分析するということはなかなかできないという課題が残っております。
 原因といたしましては、認定事業者さまの負担が重い。これは事業者さまが個別に医療機関と契約するという負担が非常に重いということ。あるいは丁寧なオプトアウトの負担が非常に大きいというご指摘も、次基法の検討ワーキンググループでございましたが、今回の法改正では改善していないという状況かと思います。現状では認定事業者さまに提供される医療機関、自治体の数は先ほどのご説明、すみません、この資料は少し古い情報でつくっておりますので、最新のデータでは先ほど113施設になっているというふうにございましたが、それでもやはり113に留まっているというふうな、われわれは受け止めをしております。
 症例数が少なく、大病院に偏っている。あるいは医療機関ごとに利用できるデータが異なる。転院後のデータが得られない。死亡に関するデータが得られない。本人通知ができなかった患者さんのデータが利用できないということで、現時点ではお亡くなりになられている方のデータが大きく抜け落ちている。NDBと認定事業者のデータ連結ができるようになりますが、これは匿名加工ということで、仮名化データではないということ。あるいは、ゲノムデータ、画像のデータにつきましても、これ製薬協から改善を要望しましたが、今回の法改正では実現しなかったというところ、こういった限界がございます。
 30ページをご覧ください。最後に、EUの動向と製薬協からの要望についてご説明させていただきます。31ページです。EUは昨年5月にEuropean Health Data Space、EHDSというヘルスデータ基盤構築と利活用に関する総合的な構想、それから法案を公表しました。これにより、EU域内で国境をまたいでヘルスデータが連携され、医療、行政、研究、イノベーション活動において同意不要で利用できるようになります。また個人は自分のデータをスマホなどから確認でき、自らの健康維持に役立てられるようになります。対象のデータの範囲も法律の33条、これバックアップ資料にありますので後ほどご覧いただきたいと思いますが、電子カルテ、ゲノム、オミックス、バイオバンク、研究コホート、あるいはPHRなど非常に多岐にわたっております。
 また冒頭の3ページで私どもが理想の絵として掲げたスライド、これ実は製薬協が2018年ごろに作成したスライドなんですけれども、31ページのスライドと見比べていただければよく分かると思いますが、EUはまさにその姿を実現しようとしているわけでございます。32ページをご覧ください。先ほどからご議論にもございました、利用目的、これをEHDSでは明確化しております。34条にあります。日本の個情法では、同意を得ないで医療データを利活用するということは学術研究、あるいは公衆衛生の例外規定で一部可能にはなっておりますけれども、一般に製品開発で直接利用するということは認められておりません。しかし、EHDSでは、医薬品、医療機器、AIシステム、デジタルヘルスアプリなど、研究開発あるいは安全監視活動に直接利用可能であるというふうに読み取ることができるかと思います。
 33ページをご覧ください。他方で、法律の35条では禁止事項、これも明確化されております。例えば保険の契約の利益から除外すること、または保険料の負担金を変更すること。広告、マーケティング活動、違法薬物、アルコール飲料、たばこ製品、個人や社会全体に害を及ぼす可能性がある製品またはサービス開発、これはNGだというふうになっております。このように法律の中でクリアに規定していただくと日本のように意見の一致しない解釈論を延々と戦わせる必要がなく、利用者にとっても大きな安心感がございます。
 34ページをご覧ください。EHDSでは、先ほどご説明しましたとおり、同意不要でデータを利活用できるようになります。あくまで介入研究ではなくて健康医療データの二次利用の場面に限定して状況を整理してみますと、同意が患者保護にあまりつながっておらず、医療機関の負担になっているだけで形骸化している恐れも、先ほどもご指摘ありましたが、私もそのように思います。医療の話は非常に難しいです。患者さんが内容やリスクを十分に理解、判断して同意できているのでしょうか。関係良好な信頼するお医者さまから提案をされた場合に断りにくいという心情も働かないでしょうか。説明する医師にとっても大きな負担になっているのではないでしょうか。多忙なゆえ、十分に説明できていないということも、もしかしたらあるんじゃないでしょうか。
 最後は、これは個人情報保護法を制定を担当されたある役人の方が講演の場でよくおっしゃっていたことですけれども、「同意さえ取得してしまえば何でもありの法律ですから、同意を取ってください」というふうにおっしゃっていましたが。私、個人的にはこれ責任を同意する側に押し付けているようで、何となく保護につながっていないんじゃないかと違和感を感じました。皆さまどうお感じになられますでしょうか。
 このような課題認識のもとでEHDSを分析してみますと、EHDSは非常に合理的であるというふうに思います。EHDSのようにデータの利活用状況を、国民、市民が確認できる、見える化するということは大前提としつつ、利活用目的と禁止事項も明確化して不利益を防止する。患者に代わって利活用審査機関がプライバシーの保護を含めて厳格に審査する。セキュアなデータ解析環境の構築によって漏洩を防止する。そして、罰則を強化するなどの策を講じることで患者保護の強化、医療機関の負担軽減、それからデータ利活用推進とその利活用による患者さんへの成果還元、これを同時に実現できるようになるのではないでしょうか。
 入り口規制から出口規制という議論もありました。これはとらえ方によっては規制緩和としてとらえられてしまうようなケースもあるかと思いますけれども、これはむしろ出口規制というのは、保護強化であるというふうにとらえるべきだと私どもは考えております。35ページをお願いします。EHDSを参考としつつ、データ基盤構築と法制度整備を両輪として総合政策立案、それから法整備の推進、これを製薬協としては希望しており、政策提言にもおまとめさせていただきました。昨年と今年の骨太の方針に盛り込まれましたとおり、創薬にも資する電子カルテの標準化とデータ連携、それからデータ利活用基盤の構築、これをぜひ実現いただきたいと思いますし、規制改革実施計画に盛り込んでいただけましたとおり、EHDSのような個人情報保護法の医療分野の特別法の制定、これも強く希望いたします。
 最後、36ページでございます。製薬企業といたしましては、日本の国民の皆さまに安心安全で革新的な医薬品、これをお届けしたいというふうに日々強い思いで活動しております。しかし、データが日本になければ日本で医薬品を開発する科学的な理屈、これを立てられなくなってしまいます。かかる状況を放置しますと、最近問題視されておりますドラッグラグ、あるいはドラッグロス、これはますます拡大していくというふうに強く懸念しております。
 コロナの時のデジタル敗戦を二度と繰り返さない。これは9月13日に岸田総理が会見でこう述べられたそうです。EUもEHDSをコロナの反省を踏まえて検討されたもので、来年の春までには成立する見込みと聞いております。日本はさらに差を付けられようとしている状況でございます。ぜひこの危機感のもと、過去にとらわれずに、前向きにご議論いただければありがたいというふうに考えております。以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【森田主査】ご丁寧なご説明、ありがとうございました。残り時間限られておりますけれども、ただいまの発表につきましてご質問とかご意見コメント等ございましたらお願いいたします。はい、山口構成員どうぞ。
【山口(育)構成員】ご説明どうもありがとうございました。1点、質問したいんですけれども。29ページの次世代医療基盤法の改正を経てもなお課題は残るということで、課題が9つ挙げられているのですけれども。こういった課題が残ることで製薬企業の方々から見た時に一番大きな影響を受けるというのはどういった項目と考えられるのか、教えていただきたいと思います。こういう、例えば創薬する上でこういったことができなくなるとか。ちょっと具体的なことを教えていただきたいと思います。
【日本製薬工業協会】ありがとうございます。どれも優劣は付けにくいんですけれども、一番大きな影響としましては、やはりライフコースデータを取る、分析するという意味で、転院した後の状況を追えないということが非常に大きな課題でございます。認定事業者さまに全国の医療機関がデータを提供できるような環境になればいいと思うんですけれども、残念ながら認定事業者さまのご負担が非常に重いということで、なかなかそういう見込みもないんじゃないかというような話も聞いておりますので、やはり、ライフコースデータが追えるような医療機関同士でのデータ連携ができるような環境になっていただければというふうに思っております。
 ご説明しましたとおり、EHDSではですね、多少時間はかかるとは聞いてますけれども、ライフコースデータが扱えるようになる。利用できるようになるというふうに聞いておりますので、そうしますとどんどんEUのデータだけ使って、EUの患者さんに合うような創薬をしていくと、日本でなかなか治験をできなくなるんじゃないかということを危惧している。そういったところでございます。以上です。
【山口(育)構成員】ありがとうございます。
【森田主査】他にいかがでしょうか。清水構成員、どうぞ。
【清水構成員】大変分かりやすいご説明をありがとうございました。どちらかというとコメントなんですけれども。セキュリティーの話というのが今後やはり議論の中心になってくると思うんですけれども。データが漏れてしまう、あるいは個人が特定されてしまうという問題、これ実は大きく分けて2つに分かれていて、1つはシステム的に漏れてしまうという話。われわれのクレジットカードの番号が漏れちゃったという話がよくありますけど、その手のデータがシステム的に流出してしまった話と、それから解析する人が目的外使用という話も含めて意図的に悪さをして個人を特定してしまう。これらはまったく別の課題なのですが、結構ごちゃまぜになって語られたりして、前者に後者が引っ張られているところが時々あると思ったので、これをちょっと分けましょうというのを思いました。
 私も以前製薬会社にいたんですけど、製薬会社は別に個人を特定したいなんて夢にも思ってないですし、個人の情報が欲しいなんて思っていないんですね。でも、どうもそういうふうに思われてしまうところがあるので、その話と、システム漏洩の話は全然別だよということ、ちょっと確認しておきたいと思いました。
 それからもう1点、データの連結という話が今回の主なテーマになると思うんですけども、連結といった時にマイナンバーを使って個人のIDで連結したり、という話が、連結といった時に多分皆さん浮かべられることだと思うんですけれども、それももちろん最終的なゴールなんですけども。
 例えば2つのデータベースがあった時にこのお薬とこのお薬が同じお薬だということがアイデンティファイできないような別のコードを使っている場合が結構あるんですね。こういうのに対してマスターをちゃんと揃えようという話をずっと言っているんですけれども、同じお薬が同じお薬だとちゃんと認識できるようなマスターデータを持っていることというのもすごく大事になってきますので、そういうことを含めた上で連結という議論をしていただけたらというふうに思っております。すみません。以上コメントでした。
【森田主査】ありがとうございました。他にいかがでしょうか。山本構成員どうぞ。
【山本構成員】ありがとうございます。おおむね、今日ご発表いただいたご意見には賛成ですけども、EHDSって非常にいい試みだとは思うんですけれども、やはり基本的にはフィンランドの法制度のコピーだというふうに言われています。フィンランドはヘルスデータのデータベースは全部国有なんですね。国がデータベースを管理していて、だからこそ、かなり厳しい出口規制ができるというか、それが安全性を保つ。EU全体としても、やっぱりそういう傾向があるんじゃないかと思うんですね。
 わが国でそれができるかというと、なかなか難しい問題があると思いますので、それも含めて、本当に効率的な出口規制を考えて、入り口は仮名加工にしても匿名加工にしても、少なくとも本人の識別性をかなり低下させてるわけですし、今、清水先生がおっしゃったように研究者が個人を識別するということはメリットも何もないわけですし、通常考えにくいです。私もNDBの審査をしていますけども、研究者が一意に特定することは全く構わないといいますか、気にしていない。むしろ漏洩をしてそれが全くコントロールの外に出てしまって個人に迷惑かかるということが問題ということでやってます。
 それから、EHDSをお手本に議論するのはいいんですけども、その時にあまりにもデータベースを硬直化するのも問題ですので、むしろ、本当にその製品の出口規制というのをきちっと検討していただければ幸いだと思います。以上です。
【森田主査】ありがとうございました。続いて、井元構成員どうぞ。
【井元構成員】井元です。今ご説明いただいたことに賛同するところが大きくあります。私、ゲノムデータの解析や、健診のデータ、レセプト、さまざまな生命科学、ヘルスケア、疾患に関するデータを解析しているわけなんですけど、このライフコースデータのような、いわゆる時間軸のあるデータは非常に貴重であると思っています。そういうデータの利活用ができる環境が、それぞれのデータの利活用を推進するものだと思っています。感想です。以上です。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは続いて、中島構成員、それから落合構成員、そして長島構成員でお願いいたします。
【中島構成員】お願いします。臨床研究にとって死亡データというのは非常に重要なのは言うまでもないんですけれども、この次世代医療基盤法とナショナルデータベースの突合可能な法制度となることは研究者にとっては良いのですが、薬事申請ができる仮名加工情報、では、死亡情報を含むナショナルデータベースとの突合は相変わらずできないということがとても大きいわけです。それから先ほどもお話ありましたけど、例えば治験後に長い期間のライフコースデータを含めたリアルワールドデータを取得したいということがある場合、これはナショナルデータベースの突合ではできない、つまり薬事申請などに使う場合にはできないわけですので、これはやはり、次世代医療基盤法の中で拡充していかないといけないんです。
 もう一つちょっと心配なのが3つの認定機関同士の情報連携がまだ例がないと言いますか、これが積極的にこれから行われるということを進めていただきたい、あるいは担保していただきたいということです。これ、法では担保されてることになってますけれども、実際にはこれからだということがあります。そういうことも含めて、これからも改正もさらに進めていただきたいということです。それと、参加医療機関の拡大に関しては、やはりライフコース、リアルワールドデータがつながるということを考えると、全国でn数が増えるということよりも、小さな地域でもいいので、ほぼすべての医療機関が次世代医療基盤法に参加するような、そういう地域がいくつかあるということが非常に重要になるというふうに考えております。これも今回の法改正の中ではプロモートするというような言葉で入ってはいるんですけども、これを具体的に進めていただきたいと思っております。
 それから、先ほど清水構成員が言われていましたけれども、標準マスターのことです。11月1日にJLACセンターが立ち上がりました。MEDISの山本隆一先生などの協力もあって立ち上がりました。ぜひですね。すでにローカルコードで集まったデータがそのままでどんどん次世代医療基盤に集まり、匿名加工化されてしまっているわけで、早くこの標準コードを普及させるということに力を入れていただきたいというふうに思っております。以上です。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それでは落合構成員どうぞ。
【落合構成員】ありがとうございます。途中から参加ですので、これまでの流れを追えていなければ申し訳ありませんが、今回ご指摘いただいている内容というのは、ゲノムデータの利用の点などは個人識別情報の件ではないかと推測いたしますし、法例上の問題もあるのだろうとは思います。ただ、一方で、全体として挙げていただいてる中で見ていきますと、規制改革実施計画の中でも議論しておりましたが、やはり一次利用側の情報の整備、また、国全体のデータのストラクチャーというか、アーキテクチャーというか、こういったものを見据えた整備と結び付いて二次利活用に関する仕組みが整備されることが決定的に大事なのではないかというふうに思います。また、それに当たってはシステム面や標準化の面も含めて整備をしていくことが重要なのではないかと思います。この点、製薬協のほうで持たれている問題意識と一致するものかどうかお伺いできればと思います。以上です。
【森田主査】ありがとうございます。あとでコメントいただくとして、それでは長島構成員どうぞ。
【長島構成員】はい。EHDSに関しては、やはりその地域の社会制度や文化を基盤として、いわゆる一体化されたものであるので、それが違う日本において導入しようという場合、よほどその違いに注意してやらないと大きなきしみが生じてむしろマイナスになるということは十分注意しないといけないと思います。
 もう一つ、改正された次世代医療基盤法はまだ実際には全く動いていません。これが実際に動き始めてどうなるか。それから、さまざまな課題の運用の点でもかなり改善が望めるところもあるので、まずはここのところをしっかり見ていく必要があるだろうと思います。以上です。
【森田主査】ありがとうございました。だいぶ時間が押してまいりましたので、まだあればですけども、これぐらいでちょっと製薬協のほうにも、ご質問もございましたのでコメント、回答をお願いいたします。
【日本製薬工業協会】はい。製薬協の安中でございます。落合構成員、ご質問ありがとうございました。3ページの絵をおめくりいただければと思いますけども、二次利用のためにデータベースをつくっていただきたいということでは決してございません。全国民のライフコースデータを使える環境というのは、これ製薬企業のためにできるものではないというふうに思っております。あくまで、患者さんが自ら健康管理に役立てる、一次利用の中でしっかり使っていくという中で製薬企業もそのデータを二次利用させていただきたいというようなイメージでございます。ですので、製薬企業は、これは何となく上の世界が一次利用で、下の世界が二次利用のイメージのような雰囲気で描いておりまして、一次利用、二次利用の全体像の中での、今回はご要望でございました。以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございました。それではそろそろ時間もまいりました。今までのご意見を合わせて何かご発言ございますでしょうか。これ今は製薬協への質問なのですが、PMDAの山口構成員、何かご発言ございますか。
【山口(光)構成員】ありがとうございます。製薬協の活動に対して、言及するか迷ったのですが、ご指名ゆえコメントさせていただきます。本WGについて事務局から説明があったのは、国としてNDBとの連携とか、公的データベースの連携を取り組んでいく、また、法整備もしていくということだったと思います。ご説明いただいたEHDSの例が参考になるのは理解でくるのですが、事務局は言及していませんがEHDSの状況を参考にやっていきますよというメッセージを出しているんだと思います。
また、本活動はかなり難しい作業になりますが、厚生労働省は、かなり頑張っていただいてると思います。例えば、死亡の情報とか連携することも考えてますよということも言及されています。個人情報の問題も整理するので連携して使えますよ、使えるように目指しますよというメッセージを出していただいたと思います。いろんな問題がありますが、本活動を通じて多分解消できるところはできるんじゃないかなと思います。すべての要望を満足できるデータベースって待っていてもできるわけないと思います。そのため、整備された環境でできるところから、利用をチャレンジするのかなとないと思ったのですけど、いかがでしょうか。
【森田主査】どうぞ。
【日本製薬工業協会】ご指摘ありがとうございます。安中でございます。まさにおっしゃるとおりだと思います。とはいえ、EHDSで集めようとしているデータは、ご紹介した範囲もそうですし、あとバックアップ資料のほうにもいくつか設けておりますけれども、かなり詳細なデータを集めるような雰囲気もございます。そこら辺のものも勉強しながらですね、日本で欧州に負けないような、やはり基盤を構築していただきたい。そうでないと、なかなか日本で治験をやる理屈が立たなくなってくるという危機感を、まずは今日共有させていただいた次第です。今後も、そこらへんを含めて勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【山口(光)構成員】ありがとうございました。
【森田主査】よろしいでしょうか。それでは時間がまいりましたので、このあたりでと思いますけれども、私も一つだけ質問と言いましょうか。製薬協さんではなくて全体に関してですけれども。昨年も次世代医療基盤法の改正の時に匿名加工情報か仮名加工情報かをめぐって随分議論をしたのですが、仮名加工情報であると匿名加工情報に比べて、どれぐらいリスクが高まるかといことについて、研究などそれについて論じた見解はどこかにあるんでしょうか。論理的には確かにリスクは高まると言えると思いますけれども、先ほど研究者の観点から、あまりその辺関心がないというお話もありましたけれども、別に厳密に科学的な研究に基づく確率論でいくらかという、そこまでお尋ねするつもりはありませんけれども。
 実際に仮名加工情報を利用した場合に、匿名加工情報と比べてどれぐらいリスクが高まるのか、あるいは仮名加工情報を使ったためにこういう事故が起こったという、そういうケースというのはあるんでしょうか。これは多分、法律を考える時の立法事実の問題にもかかわると思います。何となく、仮名加工情報はリスクが高い。匿名加工情報ならば安全だという、そこから先あまり詰めた議論というのがされてないのかなというのが気になりまして。多分、メリットとの比較にもよると思いますけれども、そのあたりのことを少しどなたかご存じの方、あるいは事務局のほうで調べていただければと思います。
 次回は、今日も出ましたけれども、EUのEHDSも含めて、海外の事情について、これからの検討の資料としてご報告いただけると聞いております。海外のとらえ方もそうですけれども、私の印象ですと日本は仮名加工か匿名加工かにすごくこだわっているなという気がしないでもないものですから、そういうことをお尋ねいたしました。これは特にコメントとか異論反論あれば伺いますけれども、よろしいでしょうか。
 それでは時間もまいりましたので、本日はこういうかたちで終了とさせていただきたいと思います。それでは事務局のほうに議事をお返ししたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
【医政局企画官】はい、事務局でございます。構成員の皆さま、ありがとうございました。次回の開催につきましては、また別途事務局からご案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。本日の議事録につきましては、作成し次第、ご発言者の皆さまにご確認をいただきまして、その後公開をさせていただきます。よろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
【森田主査】はい、ありがとうございました。本日は第1回目でございまして、ほぼ皆さんご発言いただいたと思っております。それでは次回以降も活発な議論をお願いしたいと思います。ありがとうございました。これで終了といたします。
一同:ありがとうございました。