- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働政策審議会(労働条件分科会) >
- 2023年11月13日 第190回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
2023年11月13日 第190回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和5年11月13日(月) 13:30~15:00
場所
AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)
出席者
- 公益代表委員
- 荒木委員、川田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、両角委員
- 労働者代表委員
- 大崎委員、冨髙委員、藤川委員、水野委員、世永委員
- 使用者代表委員
- 鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、松永委員
- 事務局
- 鈴木労働基準局長、黒澤総務課長、澁谷労働条件政策課長、吉村労働関係法課長、田上労働条件確保改善対策室長、小島労働関係法専門官、飯田労働関係法課課長補佐、小嶋労働条件企画専門官
議題
- (1)労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について
- (2)新しい時代の働き方に関する研究会報告書について(報告事項)
議事
- 議事内容
- ○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第190回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催します。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
議事に入ります前に、本分科会委員の交代及び事務局の異動について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
本分科会委員の交代につきまして、御報告いたします。
お手元の「参考資料№1」として、労働条件分科会委員名簿を配付しております。
労働者代表の東矢孝朗委員が御退任され、11月8日付で御就任いただきました、全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長、藤川大輔委員。
○藤川委員 藤川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働条件企画専門官 続きまして、8月14日付で事務局に異動がございましたので、紹介いたします。
総務課長の黒澤でございます。
事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の安藤至大委員、黒田祥子委員、水島郁子委員、労働者代表の川野英樹委員、櫻田あすか委員、西尾多聞委員、使用者代表の佐藤晴子委員、田中輝器委員、兵藤美希子委員が欠席と承っております。
なお、本日、使用者代表の鈴木重也委員におかれましては、所用のため途中で退席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
本日の議事に入ります。
まず、本日の議題(1)は「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」です。それでは、事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課長 事務局から、議題(1)「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」御説明させていただきます。
まず、内容といたしましては、この分科会に新しく部会を設置したいというものでございます。法律の概要ですとか経緯につきまして、参考資料№2に基づいてまず御説明させていただきます。参考資料№2「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律について」と題しております資料でございます。
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律、いわゆるスト規制法と呼んでおりますけれども、こちらの法律は、電気事業、石炭鉱業の特殊性ですとかと重要性に鑑みまして、公共の福祉を擁護するということを目的としている法律でございます。
正当でない争議行為につきましては、憲法上の争議権の保障が及ばないとされているところでございますけれども、例えば電気事業につきましては、この法律によって電気の正常な供給を停止する行為、その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為、これを明文で禁止しているというものでございます。
この法律につきましては、参考資料№2の下側でございますけれども、平成26年の電気事業法等の一部を改正する法律におきまして、附帯決議において、このスト規制法の在り方について検討を行う、という御指摘をいただきまして、平成26年9月から平成27年2月にかけまして、「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」というものを開催いたしました。
その際の報告書の内容といたしましては、スト規制法につきまして、現時点で存続することはやむを得ない、スト規制法の在り方につきましては、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で今後再検討すべきである、という形で報告書をおまとめいただいております。
その後、平成27年6月の、また別の電気事業法等の改正をする法律の際の附帯決議におきまして、この電気事業法等の一部を改正する法律の施行後の検証時期、これは令和7年3月31日まででございますけれども、これに合わせまして、スト部会の報告におきます再検討の指摘に基づきまして、このスト規制法につきましては廃止も含めた検討を行って結論を得るもの、とされているという経緯がございますので、このスト規制法の在り方に関しまして検討を行うための部会を新しく労働条件分科会に設置したいというものでございます。
参考資料№2の2ページ目を御覧ください。部会のイメージでございます。現在、労働条件分科会に、労災保険部会と最低賃金部会と有期雇用特別部会がございますけれども、これに加えまして、新しく電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会というのを設置したいというものでございます。
資料№1のほうに戻っていただけますでしょうか。「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会の設置について」という資料でございます。
1の「設置の趣旨」は、先ほど申し上げましたとおり、スト規制法に関しまして部会を設置いたしまして検討を行いたいというものでございます。
2の「部会の事務」といたしましては、スト規制法の在り方に関する専門の事項を審議するとしております。
3の「部会の構成」でございますけれども、「(1)部会に属すべき委員及び臨時委員は、分科会長が指名する。」
(2)といたしまして、「部会は、労働者代表委員、使用者代表委員各4名、公益代表委員5名の計13名で組織する。」という形にしております。
部会の庶務につきましては、労働基準局労働関係法課において処理するとしております。
資料№1の2ページ目を御覧ください。具体的な分科会運営規程の改正の案でございます。赤字の部分が改正している部分でございまして、第五条におきまして、先ほども申し上げました部会を設置するということを規定いたしておりまして、第六条の第2項におきまして、部会に属される委員の方の人数を、労働者代表、使用者代表をそれぞれ4名、公益を代表する方を5名とするという形で分科会の運営規程を改正したいというものでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
なお、オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャットのほうに「発言希望」と書いてお知らせください。ではどうぞお願いいたします。
冨高委員。
○冨高委員 ありがとうございます。
スト規制法の在り方につきまして、今、説明いただいた部会において具体的に検討されることとなると思いますが、1点、意見を申し上げたいと思います。
水道・電気・ガスなどの供給事業に関する公益事業等につきましては、労働関係調整法による公益事業規制が定められております。そうした中で、さらに電気事業等の労働者の労働基本権を制約するための追加的な規制を設ける根拠は存在しないと考えておりますし、また、電力の安定供給については、電気事業に携わる労働者の労働基本権を制限することで担保するのではなく、あくまでも産業政策において実現すべきものだと考えております。
したがいまして、労働側としましては、基本的にスト規制法は廃止すべきと考えております。先ほど説明もいただいた電事法改正法の附帯決議も踏まえて、新たに設置される部会においては、スト規制法の廃止に向けて検討を進めていくべきだと考えておりますので、意見として申し上げたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
私のほうは、この部会の設置については異議がないところでございます。二つ質問になるのですが、電気事業及び石炭鉱業ということで、全体の就業者、それから、電気事業等に中小企業が関わってくることも多いと思いますので、このくくりになる事業者数とか、あと、分かる範囲で構いませんけれども、就業者数、労働者数等についてどのような形態となっているのか、数字として出でいるものがあれば教えていただければと思います。
それからあと、提示のあった部会ですけれども、当面の開催回数とかが分かれば教えていただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 お尋ねがありましたけれども、事務局からいかがでしょうか。
○労働関係法課長 事務局でございます。
まず、このスト規制法において、規制されている労働者の方の数という御質問でございましたけれども、すみません、ちょっと手元に労働者の方がどれぐらいこの事業に従事されているかというところは持ってはおりません。
ただ、この規制法において規制されている事業形態というのを少し御説明させていただければと思うのですけれども、まず、送配電、それから送電、これにつきましては、この規制されている事業に従事しておられる方々がまずは対象になってくるだろうということ。それから、小売部門もございますけれども、こちらは逆に規制の対象とはなっていないという形でございます。
あと、発電でございますけれども、こちらにつきましては、全ての発電、例えば家庭で太陽光を発電して売っておる方もおられるかと思いますけれども、こういった方まで対象になっているわけではございませんで、発電のうちでも、争議行為の発生によりまして電気の供給に支障が生じる可能性のあるような大きなところ、あるいは地域で、離島などに向けて独占的に発電されておられるようなところ、こういった事業だけが規制の対象になっているというところでございます。
こういった経緯からいたしまして、基本的には、旧10電力と言っておりますけれども、そういったところの方々が現状としては対象になっているという状況でございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
あと、開催回数の点はいかがですか。
○労働関係法課長 開催回数につきましては、これから検討させていただければと思っています。現時点では、何回とか、そういったところは見通せているものではございません。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
ほかに特に御意見がないということでしたら、設置について特段の御異議はありませんでしたので、分科会の運営規程の改正案については、提案のとおり、改正することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、分科会の運営規程の改正案については了承されたものといたします。
それでは、次の議題に移ります。議題(2)「新しい時代の働き方に関する研究会報告書について」、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 労働条件政策課でございます。
「新しい時代の働き方に関する研究会報告書」ということで、資料№2でございます。
まず、冒頭、この研究会の概要でございますが、新型コロナウイルスの影響による生活行動様式の変化ですとか人口構造の変化、技術革新による産業構造の転換等々の経済社会の変化を踏まえまして、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理する、こういったことを目的として開催しておりまして、先月10月20日に報告書が公表されたところでございます。学習院大学の今野浩一郎先生に座長になっていただき、議論を進めてきたものとなっております。
内容について、報告書に沿いまして、ポイントを絞って御説明いたします。お開きいただきまして、まず「第1 本研究会の契機となった経済社会の変化」というところでございます。第1の1番、2番のところで変化についてまとめているところでございます。
順を追いますと、まず2ページの下のところです。(企業を取り巻く環境の変化)ということで、経済のグローバル化、デジタル化の進展、あるいはウクライナやイスラエルなどを代表例にとります国際政治環境の不安定化、こういった変化ですとか、ChatGPT等の生成AIの発展、こうしたデジタル技術の進展によって、3ページ冒頭のところですが、企業が直面する不確実性が生まれているということ。
そして、次のところですが、(労働市場の変化)ということで、人口減少に伴いまして、深刻な人手不足が起こっているということ。また、DXの進展というのは、労働需要の中でも、スキル、人材、こういったものに変化を引き起こしている。こういったことが企業の人材戦略に影響を及ぼしているということ。
3つ目としまして、働く人の意識の変化というところでございますが、職業人生が長期化・複線化している中で、価値観ですとか生活スタイルといったものが個別・多様化している。そういった中で、働き方についても様々な選択をしたいという方が増加しているということ。
また、コロナの影響下でのリモートワークの進展というのもありまして、働く場所というものにもこれを選ぶ働き方が広がる、あるいは場所にとらわれない働き方をする方が出てきたというのが前提条件としてあるということでございます。
4ページ、「個人と組織の関係性」でございますが、このような変化の中で、個人、組織それぞれ対応してきたということでございますが、5ページ目のところ、この変化を背景としてどのように良好な関係を組織と個人が築いていくかというところで、個人と組織の関係性の最初のところでございますが、企業は働く人に対して、雇用形態等にとらわれず、全ての働く人が希望に沿って働き方を柔軟に選択し、能力を高め発揮できる環境を提供しようとしている。また、働く人の側としては、自発的にキャリアと働き方を選択した上で、能力を発揮して成果を上げていこうとしていると関係性が変わってきているということがございます。
そういった中で、労使コミュニケーションをしっかりと図りながら、企業と組織が連携して進んでいくということが大事になってくるというのがまずこの報告書の前提条件として第1で示しているところでございます。
5ページ下から10ページまでのところに関しては、この研究会で企業にヒアリングをした結果ですとか、働く方々に対してニーズの調査をしたその結果をまとめている部分でございます。ここまでが第1の現状の部分でございます。
「第2 新しい時代に対応するための視点」というところでございます。これまでの労働基準法制の特徴から、どういった課題があるかというのをまとめていただいた部分となります。
まず11ページ頭、【現行法のかたち】のところでございますが、現行の労働基準法制は御案内のとおり、鉱業法や工場法等を前身としたものでございまして、国際水準を考えて最低の労働基準を設定した。それを守るための強行法規で強い規制をかけているというものでございます。
そうした性質上、3つ目の○のところでございますが、同じ時間、同じ場所で使用者の指揮命令に従って画一的に働く集団を想定して発展してきたというものでございます。
したがいまして、4つ目のところですが、物理的な事業場を規制の単位として、36協定ですとか、その他もろもろの規制を適用し、監督署も事業場単位で指導監督を行っているところでございます。
下半分の部分、【検討課題】でございます。こういった労働基準法制ですが、経済社会の変化、技術革新による働き方を取り巻く環境が変化しているという中で、2つ目の○のところでございます。基準法が適用される労働者の枠におさまらない形で働く方ですとか、労働基準法制の適用単位となってきた事業場の枠におさまらない形で事業活動を行う企業が増加するなど、これまでの基準法制が想定していなかった状況が広く現れています。
12ページに移りまして、そういった中で、ここの最後の○のところでございますが、そういった同じ場所で画一的な働き方を前提としない状況が拡大しているということを踏まえて、企業の雇用管理・労務管理というものは画一的から多様性を生かすというものになっていく。そして、労働基準法制についても、そういった働き方と雇用管理、労務管理の変化を念頭に置いて、その在り方を考えていくことが必要であるとおまとめいただいております。
これをベースにして、12ページ下のところから、基本となる2つの考え方をお示しいただいております。それが「守る」という考え方と「支える」という考え方でございます。「守る」に関しましては、全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることのできる社会を目指すということでございます。「支える」に関しましては、働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備するというものでございます。
それぞれおまとめいただいた部分を紹介いたします。13ページ、まず「守る」というところでございます。基本の考え方としまして、心身の健康の重要性というのは全ての働く人に共通であり、これを守る役割である労働基準行政というのは引き続き確保されるべきであるということで、全ての労働者にとって変わることのない守るべき考え方として、これからも堅持すべきとお示しをいただいております。
また、「守る」の部分に関しても、法制を考えていく中での検討の視点というものも示されておりまして、下半分でございます。2つ目のポツのところでございますが、変化する環境の中で、労働基準法制として「どのような働き方をする働く人」について、「どのように守るのか」。「守り方」について、働き方の変化に対応した再検討というものが必要ではないか。
その際には、次のポツのところですが、労働者の健康を確保するに十分な制度であるということを大前提に、個々の労働者の多様な希望や事情に応じた柔軟な活用ができるものであることが求められるとおまとめをいただいております。
14ページ、「支える」というものに関しての考え方につきましては、ここまでも出てきました労働者の希望、自己の成長、キャリアを実現するための希望、こういったものが変わってきている中で、心身の健康を確保するというのを前提に、「守る」だけにとどまらず、働く人の働き方やキャリア形成の希望をかなえ、よりよい職業生活を送ることができるよう支えるという機能を持つことが必要ではないかとおまとめいただいております。
その際の検討の視点がその下の部分でございますが、基準法制は、自らの希望やキャリアを踏まえて自発的に働き方を選択しようとする人の妨げにならないようにする。そして、働く人の自発的な選択・希望を支えることができるようにしていくことが重要であるといただいております。
加えまして、3ポツ目でございますが、自発的な選択を行った人が、意図せず不利な状況に陥ることを防ぐために労使の適切なコミュニケーションが図られるような労働基準法制とすることが求められるとおまとめいただいております。
この2つの柱を前提といたしまして、具体的にどう考えていくかということについて、15ページに、1番から8番まで柱をお示しいただいております。柱について全て読み上げることはいたしませんが、これがこの次の第3の部分のベースとなっているものでございます。
16ページに移っていただきまして、「第3 新しい時代に即した労働基準法制の方向性」というところでございます。先ほどの8個の柱をベースとして、具体的にどのような考え方でそれぞれ進めていくのかということに関して議論をしていただいたものということでございます。
まず「1.変化する経済社会の下でも変わらない考え方を堅持すること」でございます。基準法の基本というところでございますけれども、基本原則として、労使対等ですとか均等待遇、男女同一賃金、強制労働禁止といったような、これは時代が変わろうが変化しないものであろうという基盤がございます。こういった基盤については、全ての労働者について変わることのないものであるということを改めてお示しいただいた上で、「加えて」というところで、長時間労働等々で健康上の支障が生じる人を保護するという労働保護の精神というものは決して忘れてはいけない、労働基準法制の方向性の検討の中でも忘れずに進めていくべきであるとお示しいただいております。
「2.働く人の健康の確保」でございます。働く人の健康確保というものに関しましては、全ての働く人にとって共通で必要である。そして、企業が労働者を使用して事業活動を行う以上、労働者の健康確保は企業の責務であるという前提があった上で、3つ目の○以降でこれまでの対応を書かせていただいておりますけれども、安全衛生法等々に沿いまして、各企業さんに健康管理をしていただいているという状況がございます。そういった中で様々な希望等も出てきているということがございます。
17ページ上から2つ目の○ところでございますけれども、そういった中で、働き方や働く場所が多様化し、健康管理の仕組みが複雑化してきているという中で、個々の労働者の置かれた状況に応じた健康管理というものについて、医学や診断技術の進歩も考慮しながら継続的に検討していくことが必要ではないかとまとめていただいております。
加えまして、その下の○のところでございますが、労働者の方々自身も、自分の健康状態を知り、健康の保持・増進に主体的に取り組んでいくということも重要ではないかという視点をお示しいただいております。
続いて17ページ下、「3.働く人の選択・希望の反映が可能な制度へ」というところでございます。まず1つ目として、個々の働く人の選択・希望の変化を踏まえた制度をつくっていくというところでございますけれども、18ページに移りまして、労働者、多様で、主体的なキャリア形成のニーズが膨らんでいるということ、あるいは、拡大していく新しい働き方に対応する、こういったことの必要性というものが出てきている。リモートワークや副業、兼業のように、職場の概念が変わっているもの、あるいはフリーランスの方々のような雇用によらない働き方をする方、このような従来の労働基準法制のみでは有効に対応できないような課題が生じてきている。その中で、監督署による監督指導、これを事業場単位でやるのかということも含めまして、基準法制定当時、想定されなかった新たな課題を踏まえまして、それぞれの制度の趣旨・目的を踏まえて時代に合わせて見直しをしていくべきであるとお示しをいただいております。
この章の「(2)適正で実効性のある労使コミュニケーションの確保」というところでございますが、そうした見直しを行うに当たっての労使コミュニケーションの役割ということで、画一的・集団的管理から個別管理へと傾向を変えていく、こういう中でも個々の労働者と使用者の間には交渉力の格差があるというのはこれまでと変わることがないということで、2つ目の○のところでございますが、集団的労使コミュニケーションの役割はこれまで以上に重要である。この点で、組合の果たす役割というものは引き続き大きいものであるということがまず前提としてはございます。
その一方で、それら基準法制の制度の仕組みで言えば、過半数労組ですとか過半数代表との関係、こういったもののほかにも様々な労使コミュニケーションを企業さんはやっていただいているという実例も見受けられたところでございます。
こういった中で、多様な働く人の声を吸い上げて、その希望を労働条件の決定に反映していくためにということで、19ページの○のところでございますが、現行の労働基準法制における過半数代表者、あるいは労使委員会の意義、制度といった実効性を点検した上で、多様、複線的な集団的な労使コミュニケーションの在り方について検討することが必要ではないか。その際に、労使の選択を尊重し、希望を反映できるような制度の在り方というものを基準法制として検討していく必要があるということをおまとめいただいております。
19ページ下、「4.シンプルでわかりやすく実効的な制度」というところでございます。基準法制、法制度が守られる、実効性のあるものにするためには、労使双方に法制度の内容、必要性を十分に理解していただくことが必要であるということで、2つ目の○、3つ目の○のところでございますけれども、法制度を検討するに当たっては、そういった有効性の視点、透明性の視点というものを踏まえて、シンプルで分かりやすい制度にしていくべきであるという視点をお示しいただいております。
20ページにいきまして、「5.労働基準法制における基本的概念が実情に合っているかの確認」というところでございます。先ほど来出てきました労働者を対象とする労働者といったものの範囲ですとか、労働者が働く場である事業場というものの概念、これが、働く人の性質が変わってきている、あるいは場所によらない働き方をする方が増えてきているという中で、下のところでございますが、「労働者」「事業」「事業場」等の労働基準法制における基本的概念についても、経済社会の変化に応じて在り方を考えていくことが必要であるとお示しをいただいております。
「6.従来と同様の働き方をする人が不利にならないように検討すること」というところでございます。ここまでのところでは変化する働き方というところに焦点を当てておりますが、これまでと同様の働き方がなじむ方というのも引き続き多く存在していくという中で、どのような働き方であっても、労働条件や健康確保が後退することのないように設計・運用していく必要があるということをお示しいただいております。
21ページ目、「7.労働基準監督行政の充実強化」というところでございます。監督行政、私どもの実行部隊のところでございますけれども、量的課題、質的課題、様々な課題がございます。
そういった中で、まず、「(2)効果的・効率的な監督指導体制の構築」という部分に関しましては、監督指導におけるAI・デジタル技術の積極的な活用ですとか、監督署の持つ指導記録等々のデータの活用、物理的な場所としての事業場のみに依存しない監督指導の在り方を検討するといったようなことをして、より効率的で実効性のある監督体制をつくっていくべきであるとお示しをいただいております。
加えて、22ページの「(3)労働市場の機能を通じた企業の自主的な改善の促進」というところでございますが、ここに関しましては、企業の自主的な取組を支援し促進するということで、企業さんから自社で取り組んでいる労働条件に関することですとか、働き方に関すること、職場環境のことといった情報開示をしていただいて、よりよい企業によりよい労働者が集まるといった好循環をつくっていくことによって、自主的な改善を促進できないかというような視点をお示しいただいたところでございます。
以上、第3でございまして、ここがメインの御提言となっております。
23ページにいきまして、「第4 未来を担う全ての方へ」というところで、ここは冒頭まとめが記載されております。下から2つ目の○のところでございますが、第1から第3までで基準法制の課題と方向性について取りまとめをしたということでございますが、一方で、企業や働く人一人一人にも変化が求められるということで、24ページ以降に、企業の方、働く方に対して期待したいことということで補論的にまとめをいただいております。
24ページが「1.企業に期待すること」でございますが、3点申し上げます。1点目、「ビジネスと人権の視点」ということで、企業グループ全体やサプライチェーン全体で働く人の人権尊重や健康確保を図っていっていただきたいということ。2点目、「人的資本投資への取り組み」ということで、ここでいう人的資本投資というのは、キャリア形成、能力開発のみならず、賃上げですとか労働条件の改善といったものも含めて全体的な人的資本投資を増やしていっていただきたいと書いております。
25ページにいきまして、3点目、「社内外の働く人に対して広く情報を開示すること」ということで、健康確保に関しても、あるいは能力開発、キャリア形成についても、自社で行っている支援ですとか取組、こういったものの情報を、自社で働く人はもちろんのこと、社外に対しても発信していただいて、それによって、より好循環をつくっていくということに取り組んでいただきたいという視点が示されております。
25ページ下、「2.働く人に期待すること」というところでございますが、働く人のほうには、1つ目の○のところでございます。働き方を自ら選択し、働きがいを持って仕事に取り組み、自発的にキャリアを積み重ねていく姿勢を持っていただきたい。加えて、2つ目の○のところでございますが、業務遂行の面でも、業務管理の面でも、自己管理能力、セルフマネジメント、こういった力を高めていっていただくことが求められるとしております。
さらに、その下の部分から次のページにかけてでございますけれども、そういった中で、キャリアについて自らより適切に判断する、あるいは職場環境の改善を企業に求めていく、こういった中でも、働く人同士のネットワークはしっかり構築していっていただきたい。それは組合という面でもございますし、もっと緩やかなものもあるでしょうけれども、そういった働く人同士のつながりといったものをつくり、その中で自らの働き方やキャリアを見つめ直す、働く人同士がお互いの価値観、働き方、キャリアなどについて尊重し、相互理解を深めていっていただきたいという視点が示されております。
以上、報告書の概要でございます。ここまで御説明いたしましたとおり、この報告書は具体的な制度についてどうということをまとめたものではなく、大きな方向性、考え方についてお示しいただいたというものになります。
これを踏まえまして、私どもとしましては、来年には働き方改革関連法施行5年になり、その見直しのタイミングもございますので、次はより具体的な法制度も含めた研究をやらなければならないということで、学識経験者の皆様のお力を借りて、年度内にもそういった新たな研究会を立ち上げられるよう、今、準備を進めようとしているところでございます。
事務局から以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして御質問、御意見あれば、先ほどと同様、お願いいたします。
冨高委員、どうぞ。
○冨高委員 ありがとうございます。
報告の中で指摘いただいているとおり、働く人の心身の健康確保をはじめとする労働基準法制の基本原則は今後も堅持すべきであるということは、私のほうからも改めて意見として申し上げたいと思います。
労働基準法の見直しに関わる議論ですが、労働基準法はあくまで働く上での最低基準であることは御承知のとおりだと思います。働き方やキャリア形成などの働く人の多様な希望への対応は、労働基準法を見直さなくても十分に可能でありますし、実際、連合に集う加盟組合も、個別労使における真摯な協議、議論を通じて、労働者がより働きやすくなるような様々な取組や、法を上回るような取組を既に行っているところでございます。
長時間労働によって過労死等に至る労働者がいまだ少なくない中、今回の報告で、この強行法規である労基法の見直しの方向性が示されたことで、連合の加盟組合の中では、最低基準を外すことのできる新たな例外規定が検討されるのではないか、また、労働基準法の持つ強行法規的な部分が抜き取られて、労働者保護のとりでが崩されるのではないか、このような懸念の声が挙がっているのも事実でございます。今後研究会も行われるということでございますけれども、そうした働く人からの声を真摯に受け止めていただき、ぜひ慎重かつ丁寧な検討をしていただきたいと思っております。また、労使合意があれば、最低基準を引き下げられるというような見直しは断じて行うべきではないと考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
労基法を遵守させるという観点から言えば、長時間・過重労働の根絶に向けて、副業、兼業の労働時間管理や、高度プロフェッショナル制度などについて、現行制度の厳格化につながる検討こそ、ぜひ進めていただきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
ではオンラインのほうから、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 ありがとうございます。
私のほうからは1つ意見を申し上げたいと思います。先ほどの方針の中で御説明いただいた部分でございますが、これは、我々企業の人事担当者としましては日々実感しているところでございまして、特に若い世代なんかは、キャリア志向も非常に高かったり、あるいは働く時間とか場所なんかについても自由に選択したいというような意識を持たれている印象が強くございます。
また、採用の観点からも、こうした働き方を重視する求職者に対応していくために、本人の意向に最大限応えていけるようないろんな採用の手法であるとか、入ってからの仕事を選ぶ、あるいは何らかの希望を出すとか、こうしたいろんな取組を進めているところでございます。
こうした中で、法律なんかで画一的な規制とか取決めというのが今後出てきますと、こうした社員の声に柔軟に応えていくというのが場合によっては難しくなるというような面もあるのだろうと思っております。
このような多様性に対応していくということを考えていきますと、今後の労働基準法制の在り方としましては、制度自体は、今日お示しいただいたように、やはりシンプルに構えつつ、当事者である企業の労使が話し合うことで柔軟に働き方なりを決めていけるような、こうした方向性でぜひ検討を進めていただきたいなと思っております。
また、業種や業態によりましても、働き方の多様さや労使の関係性なんかにもいろんな幅や差異もあると思いますので、労働者の心身の健康確保ということは十分留意しつつも、その制度の中身であるとか話し合いの対応なんかも含めて、やはり個別企業の労使が選択できるような視点も入れていただけますと大変ありがたいなあと思っております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
水野委員、お願いします。
○水野委員 ありがとうございます。
私からは、報告書の18ページの「適正で実効性のある労使コミュニケーションの確保」について1点申し上げたいと思います。
報告書には、働き方が個別・多様化していく中で、労働者間の公平性・納得性の確保が課題であって、集団的労使コミュニケーションがこれまで以上に重要だということで触れられておりまして、この点につきましては、この間の様々な職場の環境変化を踏まえれば記載のとおりと思っております。働く人のニーズが多様化する中で、そのニーズを的確に捉えて、労働条件や職場環境に反映させて、処遇の公正性や納得感をしっかり確保するためにも、企業と個々の働く人とのコミュニケーションが行われるように促進する必要があると思っております。
しかしながら、「コミュニケーション」という言葉は相当幅広な感も強く、実際、報告書でも様々なやり方、実例も提示されているのも事実でございますし、労使での受け止めも様々になるのではないかと思っております。
先ほどの説明でも、労使の情報の格差、交渉力の格差への言及もありましたが、やはりこうした労使の圧倒的な力関係の差が厳然と存在しているということを踏まえれば、様々なコミュニケーション手法があったとしても、そこに労使が真に対等でコミュニケーションがとれるような環境が整っていたのか、図られていたのかというのは少し疑わしい点もあるのではないかと思っております。
そういう意味でも、まずは団結権などが保障された労働組合による労働者間、そして労使間の関係の構築や団体交渉、労使協議をはじめとする集団的労使の営みを促進することが重要ではないかと考えております。
そうした取組を進めた上でも、企業内で発言するために、集団的な手だてを持たない働く人もいる現状もございますので、まずは、過半数代表制の規定の厳格化や、この運用の徹底をすべきだと思っております。集団的労使関係の在り方については、労使対等の原則を堅持しながら、中長期的な課題として検討を続けていただきたいと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
世永委員、どうぞ。
○世永委員 ありがとうございます。
報告書では、経済社会の変化、働く人の意識や働き方の個別・多様化を踏まえた制度見直しの必要性などに言及していますけれども、働く現場では、いまだに業種にかかわらず労基法違反が多く見られます。
特に自動車運転者では、労基署が監督を実施した事業場の8割から9割で違反が確認されているのが現状です。また、連合総研の直近の勤労者短観でも、残業手当の未申告の割合が28.9%、未申告の残業時間平均が17.3時間とともに増加し、日常的に長時間労働が行われている割合や、仕事により心身の健康を害した人が職場にいる割合も約3割に上り、昨年よりも増加しているという状況であります。
そうした実態を踏まえれば、まず、現行の労基法を遵守させることが重要であり、足元での監督指導の徹底はもとより、小手先の効率化ではなく、労基署の体制強化に早急に取り組むことが重要であると考えております。
その上で、報告書に記載のとおり、働き方に変化が生じている中で、健康の確保は、働く人がどのような選択・希望を持っているかにかかわらず、全ての働く人にとって共通して必要との認識は今まで以上に重要であると受け止めています。この働く人の中には、曖昧な雇用で働く就業者も当然含まれるべきであって、再三にわたって労働側から求めている労働者概念の見直しと、その保護の充実に向けた検討に早急に着手すべきことを、意見として申し上げさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
藤村委員、お願いします。
○藤村委員 どうもありがとうございます。
私は、個人が自分でキャリア形成していくというところにちょっと懸念を持っています。というのは、そういうことがちゃんとできて、いい状態になれる人というのが働く人たち全体の何割いるだろうかというところです。せいぜい2割かなと思います。残りの8割は、何をやっていいか分からないとか、会社側がこういうふうに言うからそれに従って働いていくという、そういう人たちだろうと思うのです。
会社がなぜ正社員を雇うかという点に注目すると、予期しない事態に対応してもらうためだと思います。ということは、個人のいろんな事情をある程度犠牲にして会社のために働いてくれることが経営側からは求められる。当然のことながら、その対価として賃金が支払われ、あるいは評価の面ではプラスの評価がされるとなると思います。
個人がこれからは中心になってやっていくのですよというメッセージが強く出過ぎると、恐らく戸惑う人たちが非常に多く出てくるのではないかと思います。それぞれが考えることは大事だと思います。ただ、個人が見ることのできる範囲というのは非常に狭いですから、例えば目の前の意思決定においてはAを選んだほうがいいけれども、5年、10年先の自分を考えたらBのほうがいいよという、こういうアドバイスをしてくれる人たちが必要です。労働組合があれば労働組合がそういう役割を果たしていけばいいと思いますが、働いている人たちの8割ぐらいは労働組合のないところで働いていますから、そうすると、そういう人たちが相談したいと思ったときにその機能を誰が果たせるのかという、その辺も併せて考えていかなければいけないように思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。
よろしいでしょうか。
それでは、いろいろと有益な御意見をいただいたところでございます。ほかに特に発言がなければ、以上とさせていただきます。
最後に、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の労働条件分科会は以上といたします。お忙しい中、御参集いただき、どうもありがとうございました。