第1回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和5年12月5日(火)18:00~

場所

中央合同庁舎5号館労働基準局第2会議室

議題

  1. (1)労働安全衛生法に基づく一般健康診断の現状について
  2. (2)本検討会の議論の進め方について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○大野中央労働衛生専門官 それでは定刻となりましたので、ただいまより第1回「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、御多忙の折、御参加いただきありがとうございます。座長選任までの間、進行を務めます、安全衛生部労働衛生課産業保健支援室の大野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に入ります前に、本来であれば構成員の皆様の御紹介をさせていただくところですが、時間の関係上、構成員名簿の配布をもって紹介と代えさせていただきます。事務局を御紹介いたします。小林安全衛生部長、松岡労働衛生課長、大村産業保健支援室長です。また、本日の出欠状況ですが、荒井構成員、大下構成員、田中構成員からは欠席の御連絡を頂いております。
 オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、初めに御発言の仕方などを御説明させていただきます。会議中、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。また、議題に対し御賛同いただく場合は、カメラに向かって「うなずいていただく」ことで、「異議なし」の旨を確認させていただきます。
 それでは、開催に当たり、安全衛生部長の小林より御挨拶を申し上げます。
○小林安全衛生部長 皆様本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして本当にありがとうございます。また、日頃より労働安全衛生行政について、御理解、御支援を賜わっておりますことに、心から感謝申し上げます。
 労働者が職業生活の全ての期間を通して、健康で働くことができるためには、事業者が労働安全衛生に基づく一般健康診断により、労働者の健康状態を把握して、必要な対策を進めていくことが極めて重要だと考えております。さて、一般健康診断につきましては、これまでも労働者の健康をめぐる状況の変化を踏まえながら、必要に応じて検討を行ってまいりまして、見直しが行われてきたところです。現在の検査項目ですが、平成28年にその妥当性について検討がなされたところです。その後においても、高齢化が急速に進んでおりますことや、女性の就業率が上がっていることなど、労働者の健康を取り巻く状況は変化をしております。また、医学的知見の集積も進んでおります。
今般、本年6月に閣議決定をされました、政府の「規制改革実施計画」では、一般健康診断につきまして、最新の医学的知見などに基づく検討の場を設けて、検査項目などについて、所要の検討を行うことが求められております。また、「女性版骨太の方針2023」というものが出されていまして、この中で事業主健診に係る問診に、女性の健康に関連する項目を追加するとされております。
 こうしたことを踏まえまして、一般健康診断の検査項目等について、検討を行うため、皆様の御参集をお願いいたしまして、この検討会を開催する次第でございます。お集まりいただきました皆様方におかれましては、それぞれの観点から、あるいは専門的なお立場から活発に御議論を頂いて、御意見を頂戴したいと思っております。簡単ですが、以上をもちまして私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○大野中央労働衛生専門官 ありがとうございます。
 報道関係者の方々にお願いいたします。カメラ撮りはここまでとしていただきますようお願いいたします。
 続いて、資料の確認をいたします。本日の資料は、事前にお送りをしておりますとおり、議事次第、資料1、2、3、参考資料1、2-1、2-2、3になります。議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、不足がありましたら事務局よりお送りいたしますので、コメント又は御発言にてお申し出いただければと思います。
 それでは、座長の選出を行います。事務局案といたしましては、髙田構成員を推薦したいと思いますが、皆様いかがでしょうか。
(異議なし)
○大野中央労働衛生専門官 それでは、以降の進行を座長にお願いしたいと思います。
○髙田座長 ただいま座長として御指名を頂きました、聖マリアンナ医科大学の髙田と申します。座ったままで失礼いたします。改めまして、この度はどうぞよろしくお願いいたします。御専門の皆様の御知見をお借りしながら、最新の医学的知見、社会情勢の変化等を踏まえた議論が行えればと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入ります。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。まず事務局より、議事の(1)、(2)について、説明をお願いいたします。
○大村産業保健支援室長 それでは御説明させていただきます。資料1を御覧ください。本検討会の開催要綱です。前回、平成28年の検討会報告書が公表されて以降、急速に進む高齢化の中、職業生活の長期化や女性の就業率の増加に伴って、女性の健康課題への対応の重要性が、一層高まるなどの動きがあり、また健康診断について、医学的知見が集積されている状況にあります。
 こうした中、規制改革実施計画等を踏まえまして、本検討会を開催し、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等につきまして、構成員の皆様方に御検討いただくこととしております。
 次のページを御覧ください。構成員につきましては名簿のとおりの皆様方です。
 続きまして資料2を御覧ください。「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の現状について」説明いたします。
 スライド2を御覧ください。「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の現状について」です。我が国の健診制度の概要についてですが、労働安全衛生法に基づく一般健康診断につきましては、労働者の方々を対象にして、年齢を問わず事業者が実施する健康診断となっております。なお、高齢者医療確保法に基づく特定健診項目と調和の取れた枠組みとなっております。
 スライド3を御覧ください。労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断の項目と関係する疾患等についてです。労働安全衛生法では、業務が原因で労働者が疾病にかかったり、疾病が悪化することを防ぐため、事業者に対し、常時使用する労働者を対象に、年1回、健康診断を実施することを罰則付きで義務付けております。なお、費用は全額事業者負担であり、労働者の方々にも受診義務が課せられております。現行の健診項目、項目ごとの健診の目的、規定された時期につきまして、一覧にしております。なお、健診項目につきましては、厚生労働省令により規定されておりますが、一般的には省令改正等を行う場合、専門家の方々に御検討を行っていただき、その結果を踏まえ、労働政策審議会における御審議を経て、厚生労働省令を改正するということにしております。
 スライド4を御覧ください。労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断項目の変遷についてです。昭和47年、現行の労働安全衛生法に基づく枠組みが設けられた後、その時々の課題を踏まえ、平成元年、平成10年、平成19年に健診項目の充実が図られてきております。なお直近では、平成28年に検討会が開催され、報告書が公表されておりますが、このときには厚生労働省令は改正されておりません。
 スライド5を御覧ください。いま申し上げました平成28年に公表されました検討会報告書では、定期健康診断等の目的、項目の要件等について、次のように整理をしております。労働安全衛生法に基づく定期健康診断等につきましては、その目的が、常時使用する労働者について、その健康状態を把握し、労働時間短縮、作業転換などの事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどとしております。また、定期健康診断等の診断項目は、当該診断項目単独で幾つかの項目と併せて、就業上の措置を行うためのデータとすることを期待できるものであり、その上で保健指導においても活用するものであることが必要であるとしております。
 スライド6を御覧ください。健康診断結果に基づき、事業者が講ずべき措置に関する指針を踏まえ、労働安全衛生法に基づく健康診断及び事後措置の概要をまとめております。事業者が健康診断を実施しますと、健康診断を行った医師の方が「異常なし」、「要観察」や「要治療等」といった異常所見者であるか判定を行います。異常所見者につきましては、事業者は医師に異常所見に係る意見を求め、続いて当該労働者から意見聴取を行いまして、事業者は当該労働者に対して、就業上の措置を決定するということになります。
 スライド7を御覧ください。平成6年から令和4年までの期間における、「一般定期健康診断における有所見率の推移」です。健診項目のいずれか1つでも有所見であることを示す全体につきましては、令和4年に58.3%、また、個別の項目では血中脂質が31.6%となっております。
 スライド8を御覧ください。平成14年度から令和4年度までの期間における「脳・心臓疾患による労災補償状況」についてです。令和4年度の労災認定件数は194件、うち54件は死亡事案となっております。
 スライド9を御覧ください。「労働力人口の推移」についてです。労働力人口そのものは、2020年がピークとなっております。その後、60歳以上の占める割合が高まっていくということが推計されております。
 スライド10を御覧ください。「業種と年齢で見た就業状況の変化」になります。2008年と2018年のデータを比較しますと、業種ごとにばらつきはありますが、雇用者の中では中高年齢者の占める割合が高まる傾向が見られます。
 スライド11を御覧ください。「女性の年齢階級別労働力率の推移」についてです。1981年、2001年、2021年と比較しますと、M字の底の部分が浅くなり、労働力率は全体的に高まっているという傾向があります。
 スライド12を御覧ください。働く女性の方が職場でお困まりになった経験について調べた、経済産業省の調査を基に作成しております。左側の円グラフですが、なんらか困った経験を有している方が51.5%、その具体的な項目としては、月経関連の症状や疾病を挙げた方が71.7%、以下、月経前困難症候群が42.9%、更年期が19.2%となっております。
 スライド13を御覧ください。本検討会の開催に関連する規定についてお示しをいたします。令和5年6月16日に閣議規定されました「経済財政運営と改革の基本方針2023」では、女性版骨太の方針2023に基づき、事業主健診の充実等により、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現することが期待されております。また、令和5年6月13日に、すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部により決定されました「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」では、働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性特有のライフイベントについて、望まない離職等を防ぎ、女性が活躍し、健やかで充実した毎日を送り、安心して安全に働けるよう、事業主健診に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加することが記載されております。
 スライド14を御覧ください。令和5年6月16日に閣議決定されました、「規制改革実施計画」では、労働安全衛生法に基づく定期健康診断について、医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目及び検査手法について、令和5年度に検討を開始し、令和6年度に結論を得るということとされております。資料2については以上です。
 続きまして資料3を御覧ください。本検討会の議論の進め方です。本検討会での検討事項としまして、最近の医学的エビデンスに基づく一般健康診断の検査項目の妥当性について、労働者の健康課題を踏まえた一般健康診断の検査項目等について、その他関連する事項について御検討を頂きます。本検討会における今後の予定についてです。第2回、第3回の検討会では、構成員の方からヒアリングを行う予定にしております。第3回の検討会では、「労働安全衛生法における一般定期健康診断の検査項目等に関する社会状況等の変化にあった科学的根拠に基づく検討のための研究」につきまして、御報告を頂く予定にしております。それ以降の検討会では、個別の項目について議論を進めてまいります。なお、必要に応じて、参考人の方からお話を伺うということを考えております。今後の予定につきましては、その都度お示しをいたします。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。ただいま、事務局から資料に基づいて、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の現状について、資料3に基づいて本検討会の検討事項と今後の予定について御説明いただきました。本日、ここからは、構成員の皆様方に御質問、御意見等を頂きたいと思います。御質問、御意見がありましたら、「手を挙げる」のボタンを押してください。ボタンを押していただけましたら、私から順次、指名をさせていただきます。マイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。
 それでは、亀澤構成員、御発言をお願いいたします。
○亀澤構成員 全衛連の亀澤でございます。トップバッターで大変恐縮でございます。健診機関の代表といたしまして、5点、申し上げたいと思います。健康診断につきましては、精度管理が非常に重要と考えております。全衛連におきましても、精度管理について取り組んでおりますが、国におかれましては精度管理の重要性を認識して、精度管理を適切に行っている健康診断機関の育成や支援をお願いしたいと思っております。これが1点目です。
 2点目ですが、今後、検査項目の検討がされるということを前提にしての発言ですが、その場合においては、2つ御留意いただきたいと思っております。1点目は、今申し上げました、精度管理が適切に行える検査項目や検査方法を検討する必要があるのではないか。2点目としましては、一般健診を行っている健診機関におきましては、事業場に出向いて行う、いわゆる巡回健診が相当の割合を占めておりますので、健診車に搭載できる機器や方法であるということが必要ではないかと思っております。これが2点目です。
 3点目は、健診の実施におきましては、健診機関においてプログラムの改修や施設の再整備、機器の準備等、一定の準備期間が必要になります。このため、仮に変更等を行う場合には、一定の準備期間をお願いしたいと思います。
 4点目ですが、今回、事務局で御説明のなかった参考資料1に年代別の有所見率の推移が出されております。そちらを御覧いただきますと、例えば、女性の貧血の問題についてなど、働き盛りの年代において、ほかの年代と異なる傾向がありますので、そういうことに関する視点も必要かと思います。
 最後の5点目です。今回は職域がん検診については対象ではないと認識はしておりますが、「第4期がん対策推進基本計画」においても、職域がん検診において、それを支援するためにどのようなことが必要なのかということが書かれておりましたので、とりわけ女性のがん検診については、どのように進めていくのかということも検討していくべき課題ではないかと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 日本医師会の常任理事の神村でございます。私は、現在、30人ないし300人規模の10社以上の嘱託産業医を務めております。そういう現場感覚を持って、今後もお話をさせていただきたいと思います。
 まず、健康診断項目については、これまでの蓄積されたエビデンスが将来の日本人の健康に生かせることも重要と考えております。労働の現場は業種、業界など多様です。職場の健康課題も一様ではありません。先ほど部長の御挨拶にもありましたように、労働者の高齢化、女性の問題、女性の増加、それからメンタルヘルスの増加問題、また、今後、外国人労働者への対応やアスベスト被害の増加も懸念しております。そのような中で、労働者の勤務形態は、さらに職場の移動においても、近年、柔軟化、多様化しており、労働者が自らの健康情報をしっかり持っている必要があるのではないかと考えております。
 健康診断は個人の健康情報の重要な部分と考えておりまして、今後、医療DXの中にも取り入れていく方向にあると思います。今回の検討会は、そういった視点、個人の健康の大事な情報を担っている健診の項目であることも踏まえた視点が重要と考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続いて、森構成員、お願いいたします。
○森構成員 ありがとうございます。私からは3点ほど、今後の議論をする上で、最初に考え方を整理しておく必要がある点について、発言をさせていただきます。
 まず、この労働安全衛生法の健康診断は、事業者の義務として行うものですので、今日、説明がありましたように、きちんと労働とどう関係があるかということを明確にする必要があると認識をしています。もちろん、これは就業判定や就業上の配慮など、事後措置で利用できることを想定したものです。しかし、前回の項目の見直しの検討会では、これは私も委員として参加をさせていただきましたが、脳心血管疾患のリスクにかなりフォーカスをして、それとの関連があるエビデンスの有無で議論をしました。労働者の引退年齢がかなり延長する中で、就業と関連した諸課題も少しずつ広がっているということを考えますと、もう少し広げた枠組みで議論をしてもいいのではないかと思います。その意味では、最初にどのような健康状態や課題をターゲットとして議論をするかは、しっかり検討をされるべきだと思っています。
 2点目は、これは亀澤構成員がおっしゃったことと同じだと思いますが、健康診断の項目は単に目的に対して有効というエビデンスがあるだけではなく、事後措置ができること、精度管理が適切にできること、コストが許容できること、巡回健診で実施可能である、といったたくさんの条件を充たすことが必要です。そのため、ただ有効であるエビデンスがあるというだけでは、なかなか議論ができないのかなと思っています。
 3点目ですが、現在、働く人の健康問題も多様化しており、健康経営などで幅広く、よりプラスの健康管理の取り組みを行っていこうという企業もたくさんあります。就業上の問題とは必ずしも関連が明確でないものでも、労働者の健康管理上望ましいという項目も存在することは事実です。
 既に平成29年8月に出た基発で、「定期健康診断等における診断項目の取扱い等について」という通達がありますが、その中で、「労働者の健康状態を勘案しながら、医師が必要と認めた場合は実施することが望ましい項目」という取扱方法があり、例えばクレアチニンなどがそういう記載になっています。これらは、法令上の義務とするわけではないですが、通達上で「望ましい項目」として、労使の話合いで、より柔軟に健診項目を決めていける枠組みがあったほうがいいのではないかと思います。
 例えば、がん原性物質の濃度基準では決まらないような物質をどうしていくかというとき、一般健診にある程度委ねなければいけないようなことも議論としてありますので、そういった意味でも、このような考え方で扱えるのではないかと思っています。その際の問題は、個人情報としての取扱いです。労働安全衛生法及び規則との関連を明確にして、個人情報保護法の規制を受けなくて、企業で取り扱える項目にできるといいのではないでしょうか。この個人情報との関係が不明確のまま、ただ望ましいという形で書くだけでは、やはり適切な活用ができないと思います。労使が合意して追加した“望ましい項目”については、産業医や産業保健看護職などの専門職が、産業保健活動の中で取り扱えるように、法令上の位置付けは明確にした上で、柔軟に示していくということもあってもいいのではないかと考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 増田です。今回は珍しく使用者代表ではなくて、なぜか有識者枠としての参加となります。普段は企業で産業医をしておりますので、現場の実状や課題を踏まえた意見を、今後申し上げていければと思っております。今回は時間がないということですので、かいつまんで申し上げます。
 今年7月に開催された「第155回労働政策審議会安全衛生分科会」でも申し上げたのですが、労働安全衛生法に基づく健康診断は、疾病スクリーニングではなく、健康管理措置のために実施するものであって、結果は事業者が把握しなければならないことになっています。女性の活躍や疾病対応は重要課題ではありますが、健診項目につきましては、先ほど森構成員からもありましたように、現行の法令でも網羅可能となっておりますし、健診項目に女性の健康関連のものをガチッと組み込むことについては、すなわち事業者に一律その結果が知られるということになります。その点、女性労働者がどう思うか、女性の活躍という目標に直結するかどうかを踏まえて、適切な健診項目と運用方法を検討していくべきかと考えております。
 個人情報の絡みのお話が先ほどありましたが、以前、健康情報取扱規程の議論をしていたときに、個人情報保護委員会から「通達で示されたものは、個人情報保護法の除外規定である「法令に基づく場合」には該当しない」というお話がありましたので、できれば、通達レベルではなく、指針以上の法令に該当するところに盛り込んでいくことを目指していければいいのではないかと思っております。今後とも、よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 経団連の鈴木でございます。初回ですので、今後の議論に臨むにあたり、健康診断の実態と基本的な考え方について、簡単にコメントさせていただければと思います。
 先ほど事務局から御説明がありましたとおり、労働安全衛生法に基づき、事業者には労働者への健康診断の実施が罰則付きで義務付けられ、なおかつ、その費用は全額事業主の負担となっております。事業者にとって健康診断は、健診実施機関との事前調整はもとより、社員への案内、受診の勧奨、個人票の作成・保存、労働基準監督署への報告など、多くの手間が掛かると聞きます。
 大規模な事業場では、毎月労働者の誕生月に実施するケースもあると伺っています。一方、中小企業においては、担当者が少ないが故に負担も小さくないとの声も聞いています。
 このように、事業者は時間と費用を掛けて健康診断を実施していること。それから、先ほど来、御指摘もありますが、事後措置につなげる仕組みであることから、健診項目は制度の趣旨・目的に真に合致したものに絞り込むべきだと思っています。すなわち、業務が原因で労働者が疾病にかかったり、疾病が悪化することを防ぐために必要な項目は何かを医学的なエビデンスに基づき検証する視点、これが最も重要ではないかと考えています。
 もちろん、様々な健康問題を抱える社員がいらっしゃいます。そうした方々が安心して働ける環境をつくっていくことは大変重要だと私も認識しています。しかしながら、業務起因性のない私傷病については、健康経営の推進などを通じて、保険者と企業が連携して取り組んでいるケースもありますので、そのような取組を後押ししていくアプローチが重要だと考えているところです。
 本検討会では、健康診断制度の趣旨・目的を踏まえ、適切な項目のあり方の検討を強くお願いしたいと思います。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして岡村構成員、お願いいたします。
○岡村構成員 ありがとうございます。ちょうど前年度に、保険者の特定健診の見直しのほうで健診項目の洗い出しを、検討会、WG、私共の研究班でやっておりまして、共通する部分につきましては再度やるのも無駄でもあるので、使えるものは有効に使っていただきたいというのが1つです。
 ただ、法律の趣旨が違いますので、出てきた結果をどのように活用していくかについては議論はできるかと思います。共通部分については、こちらはこちら、あちらはあちらで同じものをまた議論するということはやめて、要するに、本質的な今の事後措置等に含めまして、どういうふうに就労を考えていくかについて、特に特定健診の共通項目については絞って議論する必要があるのかと考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、冨髙構成員、お願いいたします。
○冨髙構成員 ありがとうございます。先ほどから何人かの方も御発言されていますが、労働安全衛生法は、健診の実施のみならず、本人の結果通知、医師の意見聴取とそれに基づく適切な措置を講じることで、脳・心臓疾患の発症などの防止までも求めるものであり、こうして一連のサイクルの端緒となる一般健康診断の果たす役割は大きいと考えております。
 健診項目につきましても、やはり社会の環境や変化に合わせて適切に見直すべきであり、「高齢化による職業生活の長期化」、「女性の健康課題への対応の重要性」という点は認識を共有するところです。
 その上で、例えば、更年期の症状は女性だけではなく男性にも現れる症状であり、多角的な視点から様々な検討を進めていくことが重要と考えております。また、労働者の平均年齢が高まる一方、生活習慣病などに関しては若年層への広まりなども考えられますので、新たなエビデンスも加味した上で、単に健診項目のみならず、先ほど指摘した更年期の症状も含めて、対象年齢のあり方なども含め、具体的検討が必要だと考えております。
 疾病等の早期発見によって適切な治療が受けられれば、回復も早く、治療費用の低減につながることも着目すべきです。今後の検討に当たっては、労働者の安全と衛生の確保という安全衛生法の目的を軸に据えることが大前提であると考えておりますことを意見として申し上げておきたいと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 宮本でございます。御指名ありがとうございます。今のお話とすごく似てしまうのですが、この定期健康診断は省略不可の年齢が設定されていて、35歳と40歳以上なのですが、いろいろな生活習慣病の若年化や、早めに介入したほうが将来の労働力の損失につながらないということで、良質の労働職の確保ができるということもありますので、省略不可年齢の見直しというものも必要かなと思っております。
 もう1つ、これと逆に元気な人で、若年者は特に省略は可能にはなるのですが、平成28年の後の通達でかなり厳しいことを言われたので、今は全員採血とか、全員に健診項目を省略せずという方が大分増えてしまったと聞いています。それが、前回結果をみた産業医の意見等で、ちゃんと理由があって省略が可能という場合は、原則省略にしておいて、不可の人には省略しないというような運用でもいいようにしていただきたい。入社時の健診や例えば5歳刻みで省略不可の年齢設定をしておくと、検査が必要な人は省略しないという判断ができるので、若年ということもあり見落し等による機会損失リスクは小さいと思います。前年の結果等に基づいていろいろな判断を産業医が下す場合で、原則省略が可能になるような、もっと柔軟に運用ができる体系にしていただきたいです。平成28年の後に全員省略せずという運用が強まってしまったところに懸念がありますので、この辺も併せて議論できればいいかなと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 どうもありがとうございます。東海大の立道でございます。私自身はこの検討会に関連して、過去6年ほど労災疾病研究で定期健康診断の有効性の評価と、健康診断の有効利用する方法に関する研究をさせていただきました。その知見と、さらに現状のエビデンス等を提示しながら検討会に参加させていただきたいと存じます。
 今、御指摘になったように、この定期健康診断というのは、基本的には業務関連疾患の予防ということが優先することは当然です。一方で労働者から見ると、安衛法で規定される事業主健診や、高齢者確保法で実施されるメタボ健診、さらには自治体が実施するがん検診等、健診や検診がいろいろな法律により実施母体によって目的が変わっていますし、会社規模、業種、業態でも変わります。つまり労働者側から見ると、基本自身の健康に関することであるので、一つに集約してくれないか!という声も上がっているということ、すなわち労働者目線から健診を考える必要があることを、一言付け加えさせていただきまして、今回の検討会では幅広い議論ができればと思います。
 冒頭、森構成員がおっしゃったように、まず最初に総論の部分を幅広く議論し、そして明確に固めるというところがポイントになるかと思いますので、是非、よろしくお願いいたします。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。続きまして、立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 産業医科大学の立石でございます。もう既にさんざん議論されてきたことですが、やはり、仕事との影響というところを大きく着目することが、基本的な労働安全衛生法の健康診断だと思っています。そのとき、女性と健康管理というのを視点に置いたときに、先ほど、例えば女性の月経で困ったことがある方が50%いたという話がありました。その方たちの中で、事後措置ということを考えたときに、50%全員を産業医が面接しなければいけないのか、若しくは何らかのロジックでその人たちを抜き出して対応するのか、そのようなところがもう少し明確に、事後措置を行った後のイメージまで含めて検討することが大事なのかなと思っております。
 今、女性の健康管理に関して研究班等で検討しているのですが、ほかの国の女性の健康管理においては、基本的には日本における両立支援と似たような枠組みでやっていることが多いようです。すなわち、申出をしやすいような環境をつくること。月経における申出を、オープンな環境で申出をすることができるようにするということ。そして、配慮を求めて、その配慮について産業医等と一緒に考えていくという枠組みをやっているので、そのような海外でやっていることも少し参考にできるかと思い、発言させていただきました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 私は健診機関の立場と、それから中小企業の産業医をたくさんしておりますので、その立場から申し上げますと、今回の健診の項目の見直しに当たっては、大企業だけではなく、中小企業の方々の健康を確保できるように、中小企業の立場も踏まえて御検討いただければと思います。
 亀澤構成員ともかなり重なりますが、実際に健診をする上で、実行・実現性というものが大事になってきますので、精度を保ちながら健診ができるようにする、そういった視点もお願いしたいと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、中野構成員、お願いいたします。
○中野構成員 よろしくお願いいたします。私は呼吸器内科という臨床も経験した後、予防医学、公衆衛生学のほうをやっておりまして、また女性という立場でいろいろな役割で、今回、関わらせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 もう皆様が言われたことに尽きるのですが、雇用時の胸部レントゲンや、それを撮った同じ年の定期健診で、もう一度、6か月未満にもかかわらずしなければいけないという、そういったいろいろな頻度の問題も考えていただけたらいいかなと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。これで手を挙げられた構成員は、皆様、御指名いたしました。まだ御発言いただいてない構成員の方で、御意見がありますでしょうか。よろしいでしょうか。既に発言された構成員の皆様で、ほかの構成員の御発言を聞いて、さらに追加事項がありましたら、是非、御意見を頂ければと思います。初回ですので、今後の方針決定に関わってまいりますので、積極的に何かありましたら御意見を賜れればと思います。いかがでしょうか。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 医師会の神村でございます。先ほど立石構成員のお話がありました、女性の健康に関する問診について、事後措置の対応が重要であると、そこが両立支援の枠組みと同じだという御意見を頂いて、私もそのように思っております。いろいろな症状があったときに、本人が事業場の中でどういうふうに対応していただきたいと思っているのかという辺りについては、これはもしかしたら高ストレス者のストレスチェックの枠組みと同じようなものではないのかと考えております。本当に支援が必要だというときに、それを見いだしやすい、職場にお願いをしやすいような環境をつくることがまず必要です。そういう観点から言いますと、女性の健康に関する問診については、少しほかの健診項目の場合と毛色が違ってくるのではないかと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 ありがとうございます。追加で恐縮です。現時点で、外部で健康診断や人間ドックを受けた場合に、任意提出をすることで定期健康診断に替えることができますが、項目が全部揃っていない場合の運用などについて決まりがないので、例えば、日にちが変わってしまうということがありますが、そういった提出された項目と、そこに付け足しでやる場合の扱いなども検討していただくと、二重に受けるなどの無駄がなくなってくると思いますので、言及していただければと思って発言させていただきました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続きまして、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 ありがとうございます。先ほど武藤構成員が言われた中小企業における対策は極めて重要であり、さらに、産業医が選任されていない50人未満の事業所への健康診断の事後措置の課題を含めながら検討をしていく必要があると思います。したがって、事後措置というものが産業医がいることを前提として議論されると、半数の労働者がカバーできないことになりますので、産業医が選任されていない事業所における事後措置を如何にするのかを念頭にいれて議論する必要があるということを、この場で発言をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほか、御発言はありますでしょうか。吉村構成員、お願いいたします。
○吉村構成員 失礼いたしました。東京大学のロコモ予防学講座の吉村でございます。私は運動器の疫学が専門でして、主に地域の中高年の方々をフィールドとして対処してきたわけなのですが、今回、労働者の年齢が高齢にだんだん進んできているということと、それから運動器の疾患として骨粗しょう症などがありますが、女性の疾患としてもそのような運動器疾患の考慮が必要なのではないかということで、今回、構成員に入れていただいたのかなと愚考しております。
 本来、先生方がおっしゃったように、労働との関連ということになりますと、特にロコモなどのそういう運動器疾患の関連についてのエビデンスは十分とは言えませんが、しかし、最近、「健康日本21」で、ロコモの読み替えとして運動器の慢性運動器痛、腰痛、膝痛などが取り上げられておりますので、そのような項目も含めて議論に加わらせていただければと思っております。以上です。ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。森構成員、お願いいたします。
○森構成員 産業医大の森です。ありがとうございます。先ほど、私もエビデンスのことを大事だというお話をしました。今、吉村構成員のお話を聞いていて、通常、健診のエビデンスと言ったときに、例えば、死亡率を下げるだとか、それからコストに対してどうかということを一般的には前提とするのですが、恐らく、一般健康診断で議論すべき労働との関係のエビデンスというものは、それらとアウトカムは同じではないと思います。それから、仕事とどう関係をするかと言ったときに、仕事自体がすごく多様なために、特定の仕事に対してのエビデンスがあっても、幅広いエビデンスを出すことが非常に難しい状況です。したがって、エビデンスは必要ではあるが、一方で、エビデンスとしてはどのようなものが価値があるのかということは議論しながら扱っていかなければいけないと考えます。通常の健診項目のエビデンスだけでやろうとすると、本当に必要なものが抜けてしまうので、そういったこともやはり議論しながら、これは確かに労働の現場で必要なエビデンスですよね、ということを確認しながらやっていく必要があるかなと思いました。吉村構成員のお話を聞いていてそのように思いました。ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。ほか、御発言はありますでしょうか。星野構成員、お願いいたします。
○星野構成員 ありがとうございます。自己紹介も兼ねてという感じですが。私自身は働く女性専門外来ということで、産業医でもなく、病院のかかりつけ医でもなく、中間的な立場で働く女性の相談に応じています。そういった方たちの話を聞くと、やはり月経で仕事中つらい、更年期の症状でやはりいろいろなトラブルがあるなどという話を聞いております。先ほど来、この健診の必要性を考えるに当たり、死亡率という話が出てきていますが、やはり就労状況に対しての、仕事場にいるがちゃんと働けないという、そういうことについての評価が必要なのだろうと感じておりました。
 あと、女性の月経関連や更年期のことをいろいろな健康診断の項目に入れると、それが職場のほうに伝わってしまうという話が先ほどありましたので、そのようなことを考えると、やはりストレスチェックと同じような扱いで、うまくフォローする体制が必要なのかもしれないなと、私自身も感じた次第であります。
 もう1点、話は変わりますが、各職場で子宮がん検診や乳がん検診に、若い人にも取り組みましょうという取組が出てきているのですが、果たして20歳の子に乳がん検診をやる必要はあるのだろうかと、私自身も現場に行って感じながら乳房の触診等を担当しているような状態です。
 あとは、子宮頸がん検診、やはり受検率が非常に低いので、上げましょうということで各職域で取り組みいただいているのはいいのですが、ただ、性交渉の御経験がないような方にも受けなさいという指示が出てきたり、本当に医学的に全然必要性がないような方が検診を受けなければならないとか、もし検診を受けなかったら理由を職場に申告せよとか、そんなことまでやっているということを聞くと、少しいかがなものかと感じているようなこともあります。その辺も含みながら御検討いただけるといいのかなと思いました。以上です。よろしくお願いします。
○髙田座長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。今日、まだ御発言いただいておりません方もよろしいでしょうか。
 そうしましたら、本日は多様な御意見を頂きましたので、その御意見を取りまとめまして、今後の方向性を検討して、第2回の検討会に進んでまいりたいと思います。本日の議題は以上となります。ここで事務局にお返しいたします。
○大野中央労働衛生専門官 事務局です。次回の検討会の日程は、来年1月25日10時からを予定しております。正式な御案内は、近々事務局から御連絡さし上げます。以上です。
○髙田座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。本日は、この遅い時間帯に、お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございました。