第15回新しい時代の働き方に関する研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和5年10月13日(金) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Bルーム

議題

とりまとめ

議事

議事内容
 
○今野座長 それでは、時間になりましたので、ただいまから第15回「新しい時代の働き方に関する研究会」を開催いたします。
 本日の研究会はほとんどの方が会場参加なのですけれども、戎野構成員がオンラインで参加をしていただきます。武田構成員は御欠席でございます。
 また、事務局に異動がありましたので御紹介をいたします。
 労働条件政策課の小島専門官です。
○労働関係法専門官 労働条件政策課の小島です。よろしくお願いいたします。
○今野座長 カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
 本日の議事に入ります。本日は、事務局より報告書案を説明の上、報告書の取りまとめを行う予定でございます。
 それでは、事務局から、前回からの報告書案の修正点について御説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料について御説明をいたします。
 まず卓上の資料でございますけれども、「資料」と書かせていただいているものが報告書本体になっております。あとは、参考資料としてこれまでこの研究会でも御覧いただきました基本的なデータですとか、ニーズ調査のデータ集をつけている形となっております。
 報告書の修正部分について御説明申し上げます。前回の会議から全体的に座長とも御相談をいたしまして、文言の修正ですとか軽易な変更等々は全体に行っておりますが、私からは大きな変更点のところを御説明したいと思います。
 まず2ページ目で「第1 本研究会の契機となった経済社会の変化」のところでございます。ここの最初の序文の部分でございますけれども、前回時点ではここのところに少し長めに記載をしていたところでございますが、前回の御議論の中で、その次の部分とオーバーラップ感があるので、ここは短くてよいのではないかというような御指摘をいただきました。そこで、ここのところについてはポツを2つに圧縮をして記載させていただいたところでございます。
 その次が、2ページ目の下の「ChatGPT等の生成AI」というところでございますけれども、前回はChatGPTとだけ書いておりました。これは、具体的なプロダクトの名前であるが問題はないか、という御指摘をいただきまして、ここについては「ChatGPT等の生成AI」という単語とさせていただいております。この表現は、ほかでも使っているようなものとなっております。
 続いて3ページ目で、下のほうから出てきます「リモートワーク」の単語のところでございますが、前回「テレワーク」と「リモートワーク」を使い分けていたところを統一したほうがいいのではないかという御指摘をいただきまして、ここは統一させていただいております。
 下の脚注の6番のところに、「「テレワーク」は、インターネットなどのICTを活用し自宅などで仕事をする」、リモートワークはもう少し広い概念であるということで、この報告書については「リモートワーク」と記載するということを脚注で書かせていただく形としております。
 続いて4ページ目でございまして、第1の「2 個人と組織の関係性」のところでございますが、これは前回のときは4番でございました。前回、終了後に座長と御相談をいたしまして、やはり順番としては「個人と組織の関係性」が前にあったほうがいいだろうという御指摘をいただきまして順番を移しております。
 この2番についてですが、その次が4ページの下の(組織について)の2つ目のポツのところになります。ここについて、前回の報告書では、調査のデータから差分を示して書き下すような形にしておりましたが、そこの意味がよく分からないという御指摘もございましたので、そこは簡略化をして文章できちんと書く形としております。
 続いて、5ページ目の上から5行目以降のところでございますけれども、「パーパス経営」ですとか「エンゲージメント」「1on1ミーティング」といったような単語のところで、まず「パーパス経営」に関しては括弧付きにいたしまして、これが一つの単語であって、そのパーパスの中身としては(企業の存在意義)であるということを示すという形としております。
 「エンゲージメント」に関しましては、下に脚注をつけました。伊達構成員に中身の御確認をいただきながら、「組織に対して愛着を持ったり、仕事にいきいきと打ち込んだりすることを広く示す考え方。組織や仕事との良好な関係にあることを指す。」ということで注釈をつけております。
 それから、「1on1」のところは「1on1」とだけ書いていたのですが、ここは実際に事例で見てきたのは1on1ミーティングのことでございますので、括弧付きで「1on1ミーティング」とした上で、(定期的に部下と上司が1対1で行う面談)ということで中身を補足する形としております。
 その次でございますが、P5の下の24行目のポツのところですが、前回段階では点線囲みの記事となっていた部分でございまして、そこの要素を持ってきて、少し表現を修正をした上でここに書き下す形としております。
 それ以降、しばらくは表現の修正等々をした部分が続いております。
 その次は少し飛んでいただきまして、14ページの一番下のところから15ページにかけての「「守る」「支える」ための具体的な制度設計に向けた考え方」のマル1からマル8までのところで、前回ここの語尾が制度設計になっていたり、なっていなかったり、やや並びが悪いということで、全て、何々すること、ということで書き方を統一いたしました。
 次に第3に入りまして、第3の1番、2番については表現修正が大きく入ったところではございますけれども、内容についてここは変更をしておりません。
 御指摘があった中でいきますと、19ページで第3の3の労使コミュニケーションのところでございますけれども、その中でここも「1on1」という単語がありましたが、ここは1on1ミーティングではなくて、もう少し広く「1対1の労使コミュニケーションをとること」ということでございますので、そのように分かるように書いたところでございます。
 また表現の修正が続きまして、22ページの第3の7の(3)の表題です。「労働市場の機能等を通じた企業の自主的な改善の促進」ということで、前回までは、第2の守り、というふうに書いていたのですけれども、「守る」だけでなくここは「支える」にも言及しているので、やや誤解があるのではないかという御指摘をいただきましたので、第2の守り、という表現は削除をいたしました。
 続いて23ページでございます。「第4 未来を担う全ての方へ」のところで、23ページの下の26行目でございますが、これは最後のところにありました結語について、前回ここにある必要はなく冒頭に書けばいいのではないかという御指摘をいただきましたので、こちらのほうに移してきているというものでございます。
 それから、24ページでございます。「企業に期待すること」の(2)でございますけれども、ここのところは全体的に人的資本投資に統一した文脈にそろえたほうがいいのではないかというふうに座長と御相談をいたしまして、そのように書き換えております。
 その中で、職業人生を実現するために環境変化を乗り越えるというようなことを冒頭に書き加えつつ、人的資本にしっかり投資をしていく。そして、その投資をされた人から働く人の能力を引き出していくというような観点で書き換えているところでございます。
 それから、24ページの27行目以降のところでございますけれども、この辺りは座長と御相談をしながら人的資本の文脈に統一して書かせていただいたところでございます。
 その上で、25ページの(3)でございますが、もともとは、働き方、キャリア形成への労使の価値観の共有、としていたところでございますが、内容については求める人材像を共有するということを書かせていただいた部分でございますので、この表題は「求める人材像を共有すること」というふうに修正をしております。その上で、内容については文言修正等々を行ったというものでございます。
 続いて、25ページの2番の「働く人に期待すること」でございます。ここも冒頭部分に先ほどの「企業に期待すること」のところと同じように、「働く人が幸せな職業人生を実現するためには、環境変化を乗り越えながら、自らのライフスタイルや人生設計とのバランスを意識しつつ」ということで、そういったバランスが大事なんだということを加筆したところでございます。
 最後に、24ページの下から25ページ目の最終段落のところでございます。「加えて」の段落でございますけれども、前回ここのところの表現ぶりに関しまして、よい環境を個人が責任を持って構築しないといけないというふうに取られるのではないかという御指摘をいただきまして、冒頭のところでございますけれども、「職場環境の改善を企業に求めていくためにも」というふうに書き換えております。
 ただ、自分でやるというよりは、環境をつくるのは企業の責任、その中で労働者としても自分から発信をしていくことというふうに文脈を書き換えたところでございます。
 大まかではございますけれども、大きく変更したところは以上でございます。あとは、細かな表現修正等が入っているものとなっております。
 私からは以上でございます。
○今野座長 ありがとうございました。
 前回の研究会で御指摘を受けたことと、あとはその間で直接、事務局に寄せられたコメントを踏まえて修正をしていただきました。
 それでは、この案について御意見をいただきたいと思います。
 大湾構成員、どうぞ。
○大湾構成員 前回の研究会は欠席をしたので、そのときに発言しようと思っていた内容を今、申し上げさせていただきます。
 まず、3ページ目、「デジタルトランスフォーメーションの進展」から始まる段落がちょうど真ん中にありまして「人材戦略に影響を及ぼしている」と書いてあるのですけれども、もう少し加えて、人材戦略に影響を及ぼしており、人材の流動化に備える動きもある、というような書き方がいいのではないか。
 要するに、内部労働市場を活性化させるための取組をいろいろな企業がやっていて、例えばジョブ型とか、そういった方向性がありますけれども、それを進めていくと労働市場の流動化が進む。それに備えて、人を定着させるために活躍する機会を与えようという方向で人材戦略を変えていっているというふうに認識しておりまして、もう一言、付け加えたほうがいいかなと、方向感を出したほうがいいのではないかと思います。
 それと、ページで言うと、12ページ目の25行目に「フリーランスで働く者が増加し」という言葉から始まる段落がありますけれども、ここでなくてもいいのですが、この報告書のどこかにこうしたキャリアアップを、全体的にこの章はキャリアアップに関する話が。
 すみません。これは段落を整理して、ちょっと飛ばしちゃったみたいですね。
○今野座長 入れたいことを言っていただければ、適切な場所を考えます。
○大湾構成員 分かりました。
 入れたいことは、キャリアアップを妨げる原因となっている制度や雇用慣習は長期的に解消される必要がある、という文言を入れるべきではないかと思います。国の制度であれ、法制度、税制度、それから企業が導入している慣習にしても、キャリアアップを妨げるものはたくさんあるわけですね。そういったものを解消していくという言葉をどこかに入れてほしいと思います。
 それと、この報告書の中で消えてしまったのですけれども、最近、自分の時間を使って自己研さんしていただこうということで、それを前提に学ぶ機会を積極的に提供している企業が増えてきていると思うんです。そのときに、処遇に影響を与える学びを勤務時間外として扱うこと、あるいはその業務負担を変えずに勉強しろと言われることに対して抵抗を感じる労働者も多い。したがって、人的資本投資に関して労使が共通の理解を持つ必要がある、という言葉をどこかに入れてほしいと思います。
 前のバージョンで、学びの時間を確保すること、それからそれに対する賃金の支払いを保障するというような言葉が入っていて、賃金の支払いを保障するというのはちょっと行き過ぎだと私は思うので、それは外したほうがいいと思うのですけれども、ただ、その文がなくなってしまったので、今後かなり問題になってくると思うんですね。
 今、積極的にリスキリングを進めている企業は割と体力のある企業で、かなりリスキリングの費用、もちろんその機会提供の費用もあれば勤務時間内にやるというような費用もある。
 ただし、そういった企業でさえも、宿題は自分の時間でやってくださいと言っていますというようなところもあったりして、企業が100%負担すべきではないと思うので、その内容によってここまでは企業がコストを全部負担しますが、ここから先は労働者もコストを分担してくださいというような労使間の合意がないと、今後、様々な衝突を生む可能性があるので、文言を入れてほしいと思います。
 それから、「働く人の健康確保」のところで、労働者自身が自分の健康状態を知り、健康保持・増進を主体的に行うことが重要だと書いてあって、ただ、それを可能にする情報共有やフィードバックを企業側が提供する必要があると最後にちょっと書いてありますけれども、明確に書いたほうがいいと思います。
 ちょっと長くなってしまってすみません。もう一点は、労働基準法制に対する基本概念のところにリモートワークが広がっていますという話があって、そこにもう一点、リモートワークが広がる中、働く時間をどう定義するか、どう計測するかという問題に対処する必要がある、ということを入れたほうがいいのではないかと思います。これは今も問題になっていますし、今後、学びの時間も入ってくると、どこからどこまでが働く時間なのかが非常に曖昧になってくるのではないかと思います。
 それから、最後のところですね。「労働市場の機能等を通じた企業の自主的な改善の促進」というところがあって、そこに「市場メカニズムを活用した方法を検討することが必要である。」と書いてあります。それで、市場メカニズムが有効に機能するためには競争的な労働市場を実現する必要があるので、そのための法制度環境の整備も必要であるということを入れたほうがいいのではないかと思います。まだまだ日本の労働市場は摩擦がありますので、それをなくしていくことによって企業間競争が働き、それによってよりよい労働条件、人的資本投資が行われると思います。
 以上です。ありがとうございました。
○今野座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがですか。
 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 大変なブラッシュアップありがとうございました。
 2点あるのですけれども、1つ目が24ページから25ページにかけての「求める人材像を共有すること」という部分です。
 ポイントは2つあって、1つはまず昨今のジョブ型雇用みたいな文脈の中でいくと、単純な人材像の共有という言葉がこれからの時代の雇用の在り方を説明するときのフレーズとしては恐らく適切ではないだろうという見出しの問題。より本質的なのが2点目なのですけれども、その前段の「人的資本投資への取り組み」の後段が情報提供みたいな話で、一部「情報発信」とか「情報提供」という言葉が24ページの34行目くらいから入ってきていて、企業の積極的な情報開示、というのを24ページの34行目から25ページの今(3)に入っているような内容でくくったほうが、この研究会での議論の内容と合っていると思います。
 その上で、積極的な情報開示、というふうなブロックを立てたときに、今22ページの15行目に入っている「企業に対して労働条件、職場環境等に関する情報の開示を促し、」というのが、労働基準行政とかを高めていく上での重要な一つの要件としてこの研究会で議論していると思いますので、そのことも含めて、要は単に人材像を共有するということではなく、今後の新しい働き方を支えるための情報開示全般を企業に積極的に促すためにこういうものが必要という書きぶりのほうがいいのではないかと思いました。
 まず1つ目はそれで、2つ目はその下に続いてくる25ページの「働く人に期待すること」の16行目から入っている最初のところです。これは、個人がこういう状況に置かれているという話なのか、個人にあなたがこれをすることが重要ですと言われているのか、ちょっと最初の一文が分かりにくいと思いました。
 「働く人が幸せな職業人生を実現するためには、環境変更を乗り越えながら、自らのライフスタイルや人生設計とのバランスを意識しつつ」、多分そこは個人がそういうことをするのは大事ですよねという意味だと思うのですけれども、「働き方を自ら選択し、自由で豊かな発想や創造性・専門性をもって働き、自発的にキャリアを形成することが重要である。」と言われても、やりたくてもできないんだけれどもとか、必ずしも創造性を発揮することが求められている仕事じゃないんだけれどもという人が結構な数いると思っていて。特に「働き方を自ら選択し、自由で豊かな発想や創造性・専門性をもって働き、自発的にキャリアを形成すること」は理想であるのか、そういうことを希望する場合はかなうほうがいいとか、個人の責任の話ではないだろうし、一つの理想形でしかないものなので、働く人全体に対してこれが期待することですと伝わらないような書きぶりで。最初の1つ目のポツは分解して、かつ、どこまでは環境の説明をしていて、どこまでは個人に期待していることかが分かるように書き下していただいたほうが、この報告書の趣旨に合うかなと思います。
 以上です。
○今野座長 今、言われた前半ですけれども、前半の点は24ページと25ページで(3)を(2)の中に入れてしまえばいいじゃないかという趣旨ですか。
○中村構成員 違います。(3)の見出しを、積極的な情報開示、とかに変えて、「人的資本投資への取り組み」はそれでもう1ブロックでいいと思うんですけれども、今(3)の見出しが「求める人材像を共有すること」になっているところ、今、企業に期待されることは多分、人材像の共有というとすごく狭過ぎる。この研究会の議論としては狭過ぎると思っていて。もっと全般的な働き方だったり、労働条件に関する、あとはその実態に関する情報開示が必要です。それで、個人に対しても1対1も含めて説明していきましょう。さらには、将来的にどういう人が活躍してほしいと思っているかということも言語化しましょうと、いろいろなことがこの研究会で論じられているんですけれども、その中で人材像の話だけを取り上げるというのは、私自身は結構違和感があります。
○今野座長 情報開示は前に入っていますよね。
○中村構成員 前に入っているけれども、「企業に期待すること」ですし、要はそういう社会制度を整理するために必要という話と、企業の自主的な改善というのは、その意味で言うと「企業に期待すること」とどういうふうに分けているのかが分かりにくいと思います。
 前半で言っていることは外しているというふうに、ぱっと見ると私自身は取りにくかったです。
○今野座長 22ページは労働基準法制からずっときているので、(3)はこういう書き方となっているわけですね。そうすると、今おっしゃられた25ページはそれを超えて何か、もしここを情報開示にするとしたら、それを超えて開示すること、こういうことを開示したらいいのではないかということを書いたほうがいいということですね。
 つまり、単純に言うと、労働条件関係の開示はもう書いてある。
○中村構成員 そういう整理なんですね。
○今野座長 そうなんです。そういうことだと私は理解したのですけれども。
○中村構成員 そこが、今野座長の読み取り方と私の読み取り方が違うからだと思います。私は、ぱっと見て、企業への期待はここのワンブロックを見れば、まとめとして一通りのことが書いてあるのかなと思って読みました。
○今野座長 そういうことがあるので、24ページの(2)も自律的キャリア形成を支援するというような形が前に書いてあるし、ここでは人的資本投資は全然触れていないからそれに焦点を当てたほうがいいということで、(2)の「人的資本投資への取り組み」ということで表題にしてもらったんです。
○中村構成員 その交通整理を前段の部分に加えて、さらにみたいなことだとしたら、「未来を担う全ての方へ」か、「企業に期待すること」というところの最初に入れたほうがいいと思います。
 要は、そこの区別がどちらの読み取りもできる気がします。
○今野座長 ちょっと考えさせてください。
 というのは、情報開示といったときには労働市場に対する情報開示ですよね。ここは企業内も全部入っているんです。だから、企業の中でも働く人材像は共有化してくださいよということが書いてあるので、単に情報開示と言うとここのニュアンスとは違うかなと思うので、ちょっと考えさせてもらえますか。
 事務局、どうぞ。
○労働条件確保改善対策室長 今のお話を伺ってなのですけれども、24ページの下の3つのポツのところですね。人的資本投資の取組の中での話ですけれども、ここの中には「能力開発とキャリア形成を行う上で必要な情報や機会を全ての働く人のために提供する」ということですとか、その「機会と情報に格差が生じないように配慮する」、労使コミュニケーションを活用してサポートするということ、また企業内における情報提供に加えて企業外にも発信するというようなことが入っていますが、この中身を(3)に移すということなのかなと私は受け止めたのですが、そういうことではなくということですか。
○中村構成員 すみません、もう一回、言ってもらっていいですか。
○労働条件確保改善対策室長 24ページの下に3つのポツがございます。(2)の人的資本の中ですけれども、そこの中におっしゃられているような情報や機会の提供ということが入っている。これを3番に持ってくるというイメージなのでしょうか。
○中村構成員 まさに今おっしゃっている下の3つの扱いがやはり気になっていました。もともと前回、この人的資本の取組は、たしか2つに分かれていて、上が人的資本への取組で、下がどちらかというと情報開示っぽいものになっていたのではないかと思います。
 それが今回1つの見出しに統合されて、1行空きになって今3個入っているんですけれども、その1行空きになった3個のところの位置づけと、その次の25ページの3番のところの収まりが悪い気がするということだと思います。
○今野座長 どうしましょうか。情報開示という言葉を使ってしまうと前と混同するから、何かいいタイトルはないですか。そうしておいて、24ページの下の3つと、25ページの(3)を合体する。そうすると、このタイトルが。
○中村構成員 例えば、企業内外における積極的な情報の提供、とか。
○今野座長 どちらにしても、タイトルの変更が必要ですね。
○中村構成員 そうです。だから、この3つを移したりするのと、さっきの「人材像」という言葉が適切かどうかという別の議論もあるので、タイトルも調整が必要な気がします。
○今野座長 分かりました。それでつなぎを上手につくればいいですね。
 ほかに、いかがでしょうか。
 小林構成員、何かあります。
○小林構成員 ありがとうございます。
 第4の「未来を担う全ての方へ」というのはまとめ的な位置づけなのでしょうか、それとも補足的な位置づけといいますか、未来に向けたちょっと追加されたような内容といいますか、どういった位置づけなのか。
 前回お休みをしてしまいましたので、確認をさせていただきたいと思います。
○労働条件確保改善対策室長 第4でございますけれども、前々回のときには、働く人と企業に期待すること、ということになっていましたが、それが本論なのか、補論なのかが分かりにくいという御指摘がございました。それで、前回の段階で「未来を担う全ての方へ」という表題に変えまして、ここをまとめの節としております。
 それで、この最初の文章からまとめの節としてざっと流れているのですが、今で言いますと、23ページの20行目から御覧いただきたいのですが、「第1から第3までにおいて、今後の労働基準法制の課題と方向性についてとりまとめた」というふうにしています。
 この報告書のメインはそこですということを示した上で、加えて「企業」や「働く人」にも意識、行動の変化が求められるので、期待することをお示しするため、付加的な論点としてここの下を続けるというような位置づけになっております。
○小林構成員 分かりました。ありがとうございます。
 その上で感じたところになりますが、第4の上のまとまりの並びとしてこのマル1からマル3までで大事にしている価値観といいますか、その並びに合わせたほうがいいのかなと思います。
 つまり、「守る」「支える」という並びであったほうが、ここの研究会での合意を得た価値観の並びみたいなところが示せるとよいのかなと思いまして、具体的には例えば26行目の最後のポツの健康の部分で、「働く人一人一人が心身の状態を良好に保ち」というところ、これは「守る」というところで言うと、全ての働く人の健康を守るということがまずは大前提ですといった考え方があると思いますので、これを上のほうに持ってくるとか、まず大前提として健康をしっかり確保できるような形を置いた上で個々人のキャリアプランを描けるような世界にしていきたいといった流れのほうが、メッセージとしては齟齬なく伝わるのかなと思います。
 それから、1つ目のポツの「新型コロナウイルス感染症の流行等は」というところは、最初のほうを見ると前提がコロナだけでないなということで、第1章の書きぶりと少しそろえたほうがいいのかなと感じました。
 それで、健康のところで言いますと、「企業に期待すること」というところで「ビジネスと人権の視点」の中に健康確保ということは入れていただいているのですが、この流れでいくと、サプライチェーンでの人権、そういった枠組みを通した人権尊重をしっかり確保していくという流れの中だけで読めるので、ここの部分で健康管理のところを出していただいてもよいのかなと思います。
 「働く人に期待すること」の2つ目のポツのところに「(セルフマネジメント力)を高めることが求められている。」と書かれていまして、これは重要なことでこういった方向性が正しいと思いますが、すぐに皆さんがセルフマネジメント力を高めることができるとも限りませんので、企業側がそれを促していくとか、サポートしていくことも当面、求められていくと思います。そうした「働く人に期待すること」の2つ目のポツに対応するような内容を、1番の「企業に期待すること」の(1)にポツを1つ増やして記載いただけるとよいのではないかと思います。
 以上です。
○今野座長 今の最後の点はどうしましょうか。「ビジネスと人権の視点」でも入りにくいですね。どこに入れようか。
 事務局、どうぞ。
○労働条件確保改善対策室長 今のお話ですと、先ほどの中村構成員の御意見と統合して、3番の「求める人材像を共有すること」を全体的な情報共有とかという形にするので、そこのところで、企業からの支援や情報提供、というような形にして、健康に関する支援のところを1つ盛り込みつつ、先ほどの情報のものを盛り込んでというような形にして包括的なところにするというのはいかがでしょうか。
○今野座長 そうすると、タイトルがまた難しいですね。では、少しくっつけて、内容を見て、後からタイトルを考えましょう。
 ほかにいかがでしょうか。
 伊達構成員、どうぞ。
○伊達構成員 修正ありがとうございました。非常に分かりやすくなっていると感じました。
 まず非常に細かい点なのですが、17ページの脚注21では、健康確保を企業よりも個人が行うべきと労働者が思っているという内容です。
 それに対して、脚注は20行目に差し込まれているのですが、ここで書かれている内容を考慮すると、その1個前のポツのところに差し込まれるものかなと思いました。
 次に、25ページ目です。「働く人に期待すること」の29行目以降のところになるのですが、働く人の多様性が増している中で、相互に理解していくことが重要になってくるはずです。いわゆる労労コミュニケーションの重要性が増すということです。
 では、相互に理解すべきものとは何かと考えたときに、今34行目で「お互いの働き方」と限定されているのですが、働き方の背後にある価値観や事情、考え方やニーズなども含めて相互に理解する必要があるのではないでしょうか。また、相互に理解だけではなく尊重し合っていくことも期待されるところです。
○今野座長 戎野構成員、どうぞ。
○戎野構成員 今のお話の最後のところは私も思ったので、できれば続けてお話しさせてください。
 前回、ここが議論になって、私も申し上げましたが、取り入れていただいてありがとうございました。今、働く者同士の、お互いの働き方だけではないのではないかという意見がございましたが、まさしく私も同感です。
 さらに、その前半のところで自らのキャリアが見えない人がすごく多いという話があったと思うのですけれども、こういった相互の理解の中で自らのキャリアについても理解が深まっていく、新たな発見をして自らのキャリアを切り開いていけるという、まさに労労コミュニケーションの中から自らも見い出していけるということも加えてはどうかと思いました。そして、やはり労働者がお互いを尊重しないことには、労使の経営側との関係だけで成り立たないので、ここのところはぜひ加えていただけたらと思います。
 もう一点が、ちょっと細かいことにはなるのですけれども、個人と組織の関係性とか労使コミュニケーションの概念です。これが一部、いわゆる雇用関係に限定した書き方になっているかなと思われるところがあるのが気になったんです。
 今回、ここではかなり広義な意味でフリーランス等も含めた広く働く人、労働者という取扱いでほとんどが書かれているのですけれども、例えば5ページ目の(個人と組織の関係性について)の中で「正規雇用・非正規雇用等の雇用形態にとらわれず」という言葉があるのですが、「とらわれず、全ての働く人」というと雇用関係を前提にしているかなというふうに取られるので、「雇用形態にとどまらず、全ての働く人」とか、工夫をしてはいかがでしょうか。ちょっとここの文言が気になりました。
 それから、14ページのところにもあるのですけれども、「支える」ところなのですが、(「支える」に関する検討の視点)で、「経営者が労働者を雇用する以上、経営者が労働者より強い立場にある」、これは確かに雇用関係の上ではそうなのですが、今回はそうでない場合も取り入れていて、ほかのところでは、労働者と経営者との間には情報や交渉力の格差があるという言い方もしているので、ここはそろえるなり調整したほうがいいかなと思いました。つまり、概念のところは一貫して再チェックしたほうがいいかなというのが2点目です。
 以上です。ありがとうございました。
○今野座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
○水町構成員 私は報告書の内容には特に異論がないので、報告書の内容以外にもし何かコメントをしてよければ、そのときにお話をさせていただきます。
○今野座長 後でということですね。
 それでは、よろしいですか。今日いただいた御意見を踏まえて改めて修正をさせていただきますけれども、修正の内容については私に一任をしていただければと思います。事務局と相談して、皆さんのおっしゃられたことをどういうふうに上手に入れるかは考えなければいけないので、その点についてお任せいただければと思います。
 それでは、こちらで当研究会の報告書がまとめられた。括弧つきで修正を入れるということも含めて、まとめさせていただいたということにさせていただきます。
 長い間、ありがとうございました。もう今日は15回ですから、15回にわたって議論した上で最後に皆さんから感想とか思いがあったらお話をいただいてこの研究会を終わりたいと思っております。
 それでは、順番ですけれども、安部構成員からいきましょうか。よろしくお願いします。
○安部構成員 ありがとうございました。
 15回に及ぶ研究会、私自身にとって日頃、人事労務の業務に携わる中で自分が見てきていた景色と違う視点や背景があることに気づく非常に有意義な、学びの機会になりました。皆さんとさまざまな議論ができたことは良い学びの機会となり、ありがたいと思っています。
 いろんな意見が出ることこそ多様性そのものだと思うと同時に、多様性に向き合うということは、今野座長のご苦労が容易に察することができ、その取りまとめのご尽力に対し、改めて敬意を表し、感謝申し上げたく思います。
 研究会の冒頭、鈴木労働基準局長から、施行後75年が経過する労働基準法が、その後、大きく変化した今の環境に即さなくなってきている中、労働法制の見直しの前提として、その基本となる報告書の作成を、とのご期待を伺いました。それに向けた広範な議論を経て、今回の報告書は、労働法制の見直しに留まらず、社会を構成する労働慣行や労働行政、企業、働く人の行動や意識の在り方まで包含する内容になったのではないかと思っています。今回の報告書によって、こう言った様々な視点での提言、投げ掛けを行うことで、社会の大きなグランドデザインの描き直しにも繋がっていくことを期待したいと思っており、現にその気運を感じ始めています。
報告書自体は、議論で挙げられた様々な視点や意見が反映され、わかりやすくまとめて頂き、良いものが出来上がったと賛同しています。事務局の皆さんのご尽力にも感謝申し上げます。「守る」と「支える」と言う考えを軸に据える中で、究極的には労働法制が担うのは、いかなる環境変化があろうと普遍的に守らなければならないところを明らかにしたことに意義があり、「支える」は、その上で、多様性に対応することに主眼を置いて様々な選択を行使できるよう、むしろ一律の法規制からの解放、緩和と言う構成になるのではないかと捉えています。それが今後の関連法規見直しの基本となるのではないかと考えながら、期待している次第です。
これまで企業としても、個別具体的な事象、例えば解雇の金銭解決や労働時間管理の柔軟化等、個別具体的な事象を課題として投げ掛けてきがちでしたが、法規制のみでなく、今や、より大きな視点で捉え直すことが必要と言う思いに考えを至らせています。例えば解雇の制約が日本同様に高いフランスやドイツでは、一方で職業訓練、社会人教育に投じられている公費が対GDP比でも金額でも日本の数十倍と言う事実、並行して日本は企業としての人的投資が少ないだけでなく、労働者の自己成長に対する意欲の低さや費やす時間の少なさが顕著であると言う事実を、社会全体の事象として再認識するにつけ、社会全体が成長して行く上での、政策、企業、労働者の歯車がかみ合っていない印象を受けました。それを法規制の見直しだけで対処するのではなく、企業に対して人的投資を促すと同時に、労働者に対しても学びの重要性を投げ掛け、この報告書の範疇ではないものの、公費の増額による機会の提供や内容の充実も併せて実現することで、社会全体が成長に向けて連携の取れた動きが見えて来ることを期待したいと思っています。
改めて今回の報告書の基となった議論を経て、私自身も社員との向き合い方について、いろいろな視点で考え直すきっかけになりました。今回の報告書が、今後、様々な課題に対する社会的な気運の高まりに繋がることを期待しつつ、企業としてもさらに進化に向けた施策を進めて行きたいと考えています。半年間、ありがとうございました。
○今野座長 では、小林構成員どうぞ。
○小林構成員 本当に半年間、ありがとうございました。普段、今後の日本の法制度はどうあるべきか、といったことを考えて仕事をしているわけではないのですが、仕事をする上では必ずルールというものに従っているわけで、これからの働き方とルールがどうあると良いかということを考えさせていただいたのは、本当に貴重な時間でした。
 使用者側と労働者の間で意識の違いは今でも大分あると思いますし、労働者側がどうやって自身の健康を確保していくか。使用者がいろいろ策を練っても、従業員側がそれをうまく活用できていなかったり、逆に必要なときに必要なサービスが届けられていなかったりということは今でも起こっていて、さらに中小企業ですとか、あるいは労働者という枠に入らない様々な働き方をする方たちがこの国で働く中でどのように守られていくのか、恩恵を受けていくのかというところでいうと、本当にこれからまだまだ手をつけていかなければならない領域は多いなと感じるところです。
 ルールをしっかりと定めていくというのは重要でありますが、ただルールを決める、それを守らせる、ということだけで進めていくと、やはり分断ですとか対立というのは無くなっていかないなというのはすごく感じるところです。
 ルールをどう活用していくかということがこれから重要になってくるところで、そういったルールを柔軟に運用できるようなルールもまた必要になってくるのかなと感じています。
 つまり、個々人が権利を主張すれば、その法のルールに沿った権利の主張の在り方、その対応の在り方というのはあるとは思うのですけれども、平行線にしかならないことも結構あって、例えばハラスメントですとか、そういった問題というのは、そのルールを守るということは前提にありつつも、それに一歩踏み出してお互いを尊重するとか、相手の立場を思いやるとか、社会全体のことを考えるとか、そういった視点はどうしても必要で、そういったことを促す、それらを考えることができるような全体の設計が必要になってくるのではないかと思います。
 あともう一つ、働く人たちが自主管理をというところで、セルフマネジメントで健康を自分で守っていくということが方向性として正しいとは思うのですが、ただ、例えば不調になってきますと、治療が必要とか、休みが必要とか、そういった判断力低下しますので、そういう判断ができなくなってきているところを第三者がしっかりとサポートできる、こういった枠組みはやはり強化していく必要があると思っています。
 つまり、産業保健ですとか、私の専門としている領域になりますけれども、そういったところで、例えば自己研さんだから労働時間に換算しないといったルールの話はありますけれども、自分で働き過ぎているというふうに自覚できない、もしくは現状を変えることができない状態になっている人に幾らセルフマネジメントと言っても仕方がない話ですので、そこはソフトの面で対応していく必要があります。これからの自分自身の役割として、ルールを守りつつ、運用面でしっかりし貢献していきたいと思います。
 今回のことで大変勉強させていただきまして、皆様には様々な御準備、取りまとめをいただき、そして今野座長には本当にこんな大変な議論を上手に取りまとめていただいて本当にありがとうございました。
 以上です。
○今野座長 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 半年間、ありがとうございました。
 ちょうど先日、X、旧Twitterで労働基準法というのがバズワードになっていて、社会的にも労働基準法を取り巻く今の労働の問題ですとか、制度の在り方が問われているタイミングなんだなと、そういうときにこういう研究会に一員として参加することができてとても光栄でした。
 この後に検討だったり整備だったりされ中で、制度に魂が入るかは、現場で個人と企業の人たちがどういうコミュニケーションをしていくかということだなと思っていて。ここに出ている広義の意味での労使コミュニケーションということの重要性だったり、逆にそれが持っているポテンシャルだったりというのを私自身、再認識しました。
 8月末にアメリカのバイデン政権から「労働組合と中間層」という画期的なレポートが出ていて、これからの経済成長と働く人たちのウェルビーイング、中間層を支えるためになぜ労働組合が大事かということを相当量の実証分析を基に分析しています。
 そこの中で、改めて集団的労使関係の重要性ということが表に出てきて、さらには、そういう集団的労使関係を推進するに当たっては、個人、または企業に、労働者の団結権ですとか、交渉するということの重要性について周知する、情報提供するということも既に推進していて、引き続き重要だというメッセージしています。その意味で言うと、今回この研究会で出している方向性というのは、やはりある程度、正しいのだろうなと思いながら議論していました。
 一方で、労働組合の話で言えば、途中でも御報告したように非常にリソース不足に陥っていて、十分に活性化できていません。労使関係を整備していく中では、戦後ほとんど大きい改正がなされていない労働組合法そのもの、特に就業時間における労使協議ですとか、広い意味での使用者と労働側の対話、やり取り、その準備といったものの位置づけというのは、今後見直しの余地があるのではないかと思います。
 また、9月に労働政策研究会議という学会がありました。労働組合の機能と個人の発言を分析した結果を出したのですが、労働組合がない職場では個人的発言、1対1での労使コミュニケーションみたいなものをしている人たちのほうが、実は労働組合にも加入したいという意向が高くなるという結果も出ていて。集団的労使関係を再整備するということと同時に、今回、複線的な労使コミュニケーションという言葉が入っていますけれども、組合以外のやり方も含めて活性化していくということが、これから柔軟な働き方をつくっていく上で実は非常に重要なのだろうと思っています。
 それに向けて、この研究会から直接かどうかは別にしても、今後いろいろな検討であったり、議論だったり、整備というものが進んでいくといいなと願っています。
 半年間、どうもありがとうございます。
○今野座長 それでは、戎野構成員にいきましょうか。
○戎野構成員 ありがとうございます。
 様々な視点からの分析について学ぶことができ、本当にこういった機会に参加させていただきましたこと、感謝しております。毎回がとても刺激的な内容で、非常に学ぶことが多かったです。
 そして、途中からこういった非常に多岐にわたるいろんな議論がどうまとまるのかなと、ちょっと心の隅で心配していたのですけれども、本当に今野座長をはじめ事務局の方のおかげで、こういった取りまとめ方ができるのかと、また改めてこのことについても勉強させていただいた次第です。本当にありがとうございました。
 また、本日、この報告書を再度確認、読ませていただきまして、労使コミュニケーションの重要性、これは労労コミュニケーションも含めてですが、改めてこの重要性を感じました。これは集団もありますし、個別もありますし、集団と言っても組合の重要性はもちろんのことですけれども、そのほか、地域のつながりであったり、様々なつながりの在り方もあるということに言及されていて、本当にこれからの歩みの一歩につながる、考える一歩につながるかなと思います。
 そして、これを具体化していくということが、つまりこの報告書にとどまらず、実現していくことが、この先とても大事になってくると思うのですが、まさにそのルールづくりに関しましても労使のコミュニケーションというものを大事にしながら歩んでいくということが不可欠なのではないかと思う次第です。
 また、最後になりますが、ここでの議論で取り上げた概念が非常に広義の意味での労使関係であったということについて、私は大変光栄に思いました。どうしても組合の話とか、非常に狭い話が多く、これもとても大事なんですけれども、なかなか広義の議論というのがこれまで行われることが少なかったと思っているのです。
 しかし、日本の歴史をひもといてみると、まさに労働基準法ができる時期には今回のように広く労働者を捉えながら労使関係を概念づけて、研究者たちが分析し、発信しています。ある意味、初心に返って、原点に返って、これからの時代に向けた内容がまとめられたのではないかと思っております。
 本当にどうもありがとうございました。
○今野座長 それでは、大湾構成員どうぞ。
○大湾構成員 私は結構、金曜日の午前中は授業が入っていたり、いろいろなイベントが入っていてかなり欠席して、その分貢献できなかったのですけれども、最終的な報告書を読んで、非常にいい報告書になったと私も非常に感じています。
 特に情報共有とか、既に何名かの構成員の方々がおっしゃっていたように、情報共有、労使コミュニケーションの重要性が強調されたということはすごくいいポイントだったと思います。
 私自身、早稲田大学に来て教授会だけの発言ではなかなか上に届かないということを感じて、実は初めて労働組合に入りまして、労働組合を通じてもボイスを届けたいという行動をした人間として、やはりボイスという機能を強化していくことは非常に大事ではないかと思います。
 一方で、本当はもう少し発言して入れていただきたかったと思うのは、労働市場の効率的な機能を高めていくというのはすごく大事だと思うんです。労働市場の競争を通じて企業に正しい行動を取らせるということは非常に重要で、そのためには摩擦を減らしていくことが大事だ。摩擦というのはいろいろなものがあると思いますけれども、その一つ一つを挙げていくのは今回の研究会の趣旨に合わないと思いましたので、特に強くは主張しませんでしたけれども、方向性としてはやはり競争を高めていくということを強調したかったなという思いはあります。
 それから、1つの懸念としては、今、生成AIの影響でものすごいスピードで自動化が進み始めていて、あるいは今後進むことが予想されている。そうすると、いろんな業種で工数が削減されて人が要らなくなる。その分、より高度な仕事での需要が高まっていくので、リスキリング、アップスキリングというのはすごく重要になっていると思うんですね。これがどのぐらいのインパクトがあるかというのは、まだ誰も分からないと思うんです。要するに、80年代から90年にかけてのIT革命と同じ規模なのか、あるいはそれを上回るようなことが起きようとしているというのがまだよく分からない。
 ただ、日本企業の動きというのは非常に遅い。米国企業などに比べるとすごく遅いと感じていて、これが待ったなしの状態になったときにどんなことが起きるのか。やはりある程度、職種転換を伴うようなリスキリングを政府としてもっと力を入れていくということが起きる可能性があると思うので、今回の報告書、あるいはその後、出来上がる様々な法改正がそういった事態にうまく対処していけるのかというのが若干の懸念としてはあります。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○今野座長 伊達構成員、どうぞ。
○伊達構成員 最初にこの研究会のテーマをお伺いしたときに非常に難解な印象を持ちました。果たして十数回の研究会を通じてどのような提言ができるのかと不安な部分もありましたが、様々な専門性を持った方々が意見を出し合いながら、ここまでたどりつけたことに感謝申し上げます。
 この研究会に参加させていただく中で、改めて働く人の多様性が大きくなっていることを感じました。そうした中で、組織と個人が対話をすることが一層大事になるのでしょう。
 今後、組織と個人のコミュニケーションの有効な方法が様々な形で開発されていくことを期待したいと思います。あるいは、すでに日本のどこかで良い取り組みがあるかもしれません。そうした事例が共有されていくといいですね。
 働く人の多様性が進む中で、今回の研究会で「守る」ということが大事だと改めて打ち出せた意義は大きいと考えています。
 加えて、「支える」の重要性も増していくことでしょう。労働基準法制が「守る」と「支える」の両方を考慮したものになることを願っています。
 最後に、日本には多くの企業があります。特に中小企業の数は非常に多い。労働基準法制が多様性に対応していく中でも、制度自体が複雑化しないように、よりシンプルな制度になることを期待したいと思います。
 半年間、ありがとうございました。
○今野座長 水町構成員、どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 厚生労働省の研究会で、かつ労働基準局の研究会でこんなに、ふわっと、ソフトな、それもいろんな堅苦しい法律用語ではない表現、文言がたくさん入った報告書というのは恐らく初めてではないか。みんな読んだらびっくりするのではないかと思います。
 このソフトな非常に幅の広い報告書をこれから法制度としてどう具体的に落とし込んでいくのかというのがこれから重要な課題になってくると思いますが、その観点から2つだけ、非常に大きなコメントをしておくと、1つは法制度の問題で、社会がとにかく国境ボーダーレス化、もう境目がなく開かれた形でネットワークでつながって、それも非常に速く変化していくというのと対極にあるのが労働基準法みたいなもので、企業レベルで、事業場単位で、そして上で決まっている客観的な規則を当てはめて、違反した場合には罰則の適用をしますという非常に閉じられた単位での、率直に言うと硬直的な制度としてこれまで成り立ってきたものをこれからどう変えるかというときに、この報告書の中ではこれまで皆さんがおっしゃっているように市場メカニズムとか、情報開示を通じて外とどうつながっているかとか、さらにはビジネスと人権という視点を入れていただいたのは、国境を越えながらどういうふうに大切なものを守っていくかという視点も入っているというので、非常に画期的な報告書になっていると思いますが、今後制度化していく中で恐らく労働基準法の中に全部盛り込むというのは無理なんです。労働基準法の中にどの視点を盛り込んで、実は情報開示というのはほかの法律の中でいろいろやっていることと、労働基準法がどうつながっているとか、さらにはビジネスと人権を政策的にこうしたときに、それとここがどうつながっているか。
 例えば、労働基準法と労働契約法とか、あとは労働施策総合推進法とか、そういうものとの役割分担の中で、実は政策として全部つながっているよと、その中でどういう改革をしていくかという視点が恐らく重要で、今後具体的にはそういうことを議論しながら、労働基準法制とほかの制度とかほかのマーケットとのつながりをどう意識していくかということが制度設計でも重要になるかと思います。
 もう一つ、労使コミュニケーションをこれだけ繰り返し述べていただいたということも大切なことだと思います。労使コミュニケーションというのは、今までお話があったように1on1から事業場、工場レベル、企業レベル、さらには企業を超えた地域レベル、産業レベル、国のレベルで、国境を越えて労使コミュニケーションというのは多様なもの、複層なものがあり得て、これは先ほどの法制度と比べると正反対で、自発的、自主的、柔軟なものであり得て、法律でこういう形で交渉しなさいということを枠にはめてやるようなものではないので、これは勝手に自分たちで好きに自発的に自治でやってくれればいいですよということが一つの大きな制度の建前ではあったのですが、世界的に見てみると、やはり労使コミュニケーションというのは自生的に放っておいてもなかなかうまく回らないようになってきたよというので、各国で、でも労使コミュニケーションというのは国が一律にルールを決めて命令をするということが難しくなってくるけれども、やはり大切に守らなければいけないものがあるというときに、国と労使コミュニケーションのバランスをどうするかというのがすごく大切になってきた。
 でも、労使コミュニケーションは放っておいて自発的に行われるものではなくなってきているので、労使コミュニケーションをどう法制度の中に組み込むかというのが今、労働法の一つの重要な課題になってきている中で、今後日本でも労使コミュニケーションをより実質的にして、特に法制度の中でこれを応援してあげたり制度に組み込んでいくという視点からどう法制度化していくか。これも事業場レベル、企業レベルだけではなくて、もっと広い国を超えたレベルでの労使の話合いをどう政策の中に反映させていくか。国境を越えたレベルでの労使コミュニケーションとのつながりをどう考えるかということも大切で、恐らく私が今、申し上げたことはこの報告書の中にほとんど全て盛り込まれていると思うので、そういう視点を今後具体的に意識しながら制度設計の議論につなげていっていただければというふうに希望しているところです。
 これまで厚生労働省の研究会にたくさん入らせていただきましたが、個人的には一番楽しい研究会でありました。どうもありがとうございました。
○今野座長 皆さん、ありがとうございました。
 それでは、鈴木労働基準局長から御挨拶をいただければと思います。
○労働基準局長 構成員の皆様方、今年の3月に開始をいたしまして約半年、15回ということで、大体2週間に1回開催させていただいたという計算になりますけれども、本当にどうもありがとうございました。
 1回目に私は、今後の労働基準法を改正する指針になるようなものをつくっていただきたいというふうに申し上げたところでありますけれども、そのとき、我々の中でもこんなものができたらいいなと漠然と思っていたものが、本日文章になって見させていただきまして、なるほど、これは具体的にこうやるといいのかと、改めて本当にしっかりとした御提言をいただきましてありがとうございます。
 今後、私のほうではこれを法改正の指南書といいますか、マニュアルといいますか、そういったものと考えまして、まずは労働基準法をどうしていくか、それからその他の今、水町構成員がおっしゃいました関係の法律をどうしていくか、さらには労働政策全般どうしていくかといったときに、これを横に置いて見させていただきながらいろいろと議論をしていきたいと思っています。これから具体的な制度設計になりますけれども、また引き続きどうぞよろしくお願いしたいと思います。
 こういったことを通しまして、全ての働く人が、こちらにありますように、心身の健康を維持しながら幸せに、そしてやりがいを持って働ける、そして活躍ができる、こういった社会を法律だけではできませんけれども、施策全般を通しましてしっかりとつくってまいりたいと思いますので、ぜひとも今後とも御意見等々をいただきながら御指導御鞭撻、引き続きよろしくお願い申し上げましてお礼の御挨拶とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○今野座長 ありがとうございました。
 それでは、最後に取りまとめに苦労した私から一言、御挨拶をさせていただければと思います。
 本当に半年間、15回、御協力いただきましてありがとうございました。報告書は、大変いいものができたというふうに、私は一応責任者でしょうか。責任者としては自画自賛をしております。これも、この会で皆さんが活発に議論していただくとか、皆さんがいろんなアイデアとか考え方を提供していただいた結果かなと思っております。改めて感謝申し上げます。
 ただ、皆さんがいろんなアイデアを出せば出すほどまとめが難しくなるということで苦労したわけですが、特に事務局には大変な作業をしていただきましたので、事務局にも感謝を申し上げたいと思います。
 あともう一つ、司会者としての気持ち、思いなのですけれども、こういう場の司会をしていて、では議論を始めますと言うと、皆さん静かになるのが一番困るんですけれども、今回は、では始めますと言うとみんな勝手にしゃべり出して、私の役割は時間で終わりですということだけで済んだということは、大変司会者としては楽だったので、そういう点でも皆さんに感謝を申し上げたいと思います。
 この報告書は御存じのように労働基準法制を今後どうするかということを考えるための素材としての課題を整理することが役割なのですが、それを超えていろんな重要な指摘が入っております。そういう点では、労働基準法制の問題を超えていろんな貢献ができる報告書かなとも考えております。
 最後に、これは労働基準法制を今後どうするかを考えるうえでの出発点として作った報告書ですので、これは厚生労働省に対する宿題ですけれども、これを次の議論にきちんとつなげていただきたいということを強く期待する、強く要望するということで、私の最後の挨拶にさせていただければと思います。
 皆さん、長い間ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして第15回も終わりますけれども、この研究会自体も終了にさせていただきます。
 改めましてありがとうございました。