2023年9月21日 第6回厚生労働省統計改革検討会 議事録

日時

令和5年9月21日(木)13時58分~16時09分

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

<構成員(五十音順、敬称略)>



<オブザーバー(敬称略)>

議題

(1)厚生労働省統計改革工程表の進捗状況等について
(2)その他

議事

 

○石津参事官
 それでは、失礼いたします。定刻より数分早い時間帯ですけれども、皆様おそろいですので、ただいまから、「第6回厚生労働省統計改革検討会」を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。
 最初に、開催に当たり、田中厚生労働審議官から御挨拶を申し上げます。

○田中厚生労働審議官 
 本年7月に厚生労働審議官を拝命しました田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。また、構成員の皆様におかれましては、大変御多忙のところ、本検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。厚生労働省では、統計の不適切な取扱いを反省し、「厚生労働省統計改革ビジョン2019」や「厚生労働省統計改革工程表」に基づいて、統計改革の5つの柱を進めております。
 1つ目は、統計の品質保証を推進する「ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」、2つ目が業務の正確性の確保及び省力化・効率化を推進する「情報システムの適正化」、3つ目がガバナンスの強化や計画的な人材育成を行う「組織改革・研修の拡充等」、4つ目がデータの有効活用に向けた「データの利活用・一元的な保存の推進」、最後の5つ目が、エビデンスに基づく政策立案を推進する「EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進」であります。
 本日は、こうした取組の進捗状況を御報告させていただき、構成員の皆様の御意見を賜りながら、着実に厚生労働省の統計改革を進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○石津参事官
 続きまして、事務局を紹介させていただきます。まず、政策統括官の森川です。

○森川統括官
 森川です。

○石津参事官
 政策立案総括審議官の青山です。

○青山審議官
 青山です。よろしくお願いいたします。

○石津参事官
 大臣官房参事官の岡本です。

○岡本参事官
 岡本です。よろしくお願いいたします。

○石津参事官
 審査解析室長の渡邉です。

○渡邉室長
 よろしくお願いします。

○石津参事官
 統計企画調整室長の飯島です。

○飯島室長
 飯島です。よろしくお願いいたします。

○石津参事官
 雇用・賃金福祉統計室長補佐の前原です。

○前原補佐
 よろしくお願いします。

○石津参事官
 政策立案・評価推進官の山田です。

○山田推進官
 よろしくお願いいたします。

○石津参事官
 政策企画官の白木です。

○白木企画官
 白木と申します。よろしくお願いいたします。

○石津参事官
 私は、企画調整担当参事官の石津でございます。よろしくお願いいたします。なお本日、大臣官房参事官の岡本は、ほかの用務がございまして、途中で退席させていただきます。あらかじめ御承知おきいただければ幸いです。もし、カメラがございましたら、撤収方、御協力をお願いいたします。
 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。資料につきましては、お手元のタブレットに議事次第、資料1、資料2、参考資料1、2、3。合わせて計6点の資料がPDFで格納されております。万が一、資料の不足、あるいはタブレットの不具合等がありましたら、事務局にお申しつけください。よろしいでしょうか。
 それでは、恐縮ですが、以降の進行につきましては小峰座長にお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

○小峰座長
 それでは、議事次第に沿って進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まず、議題1としまして、厚生労働省統計改革工程表の進捗状況等について、事務局から説明をお願いします。

○白木企画官
 それではまず、資料1、「統計改革ビジョン連絡会議開催実績」という資料を御覧ください。こちらですが、統計改革については、後で個別に御説明しますが、5つのグループを設けて推進しているところですが、それぞれの取組を関係者間で情報共有するため、省内で統計改革ビジョン連絡会議というものを開催しております。こちらにありますとおり、参加者は政策統括官、政策立案総括審議官をはじめとして、局内の幹部と各グループの長が出席して、個別の取組の進捗報告や議論を行っているということです。前回の検討会以降は、今年は2回開催したというところです。
 それでは、引き続いて、資料2につきまして具体的な進捗状況を御報告させていただきます。

○飯島室長
 続きまして資料2について、2ページに記載されております目次のうち、「1.ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」、「2.情報システムの適正化」、「3.組織改革・研修の拡充等」の3点をまとめて御説明させていただきます。
 資料2の4ページを御覧いただければと思います。「ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」です。まず、(1)取組実績です。①標準ガイドライン・業務マニュアル等に基づく業務遂行です。厚生労働省では、令和3年3月に統計作成プロセスを可視化し、各統計の業務マニュアルを整備することを目的として標準ガイドラインを作成しております。また、総務省は令和5年4月に、統計の品質確保や統計作成プロセスの水準の段階的向上を支援することを目的として、統計作成ガイドブックを作成しています。
 今般、省内全ての基幹統計調査及び一般統計調査等の86統計について、業務マニュアルの整備状況を確認するため、これら標準ガイドライン及び統計作成ガイドブックを基に作成した試行版のチェックリストを用いまして、4統計の業務マニュアルを確認し、チェックリストを確定させております。
 続きまして、これまで総務省が作成した各種ガイドラインや当省が整備しています要領等については、最新版が一元管理されていないことから、業務マニュアルの整備等を進めるため、これらガイドラインや要領等を一元的に掲載した「統計関係マニュアル集」を作成し、省内に公開しております。続きまして、標準ガイドラインについては、統計作成ガイドブックに記載されております変更管理の取組、遅延調査票の取扱い、例外措置への対応等が盛り込まれていないことから、本年9月に一部を改正し、これらを追加しております。
 続きまして②PDCAサイクルに基づく点検・評価を御覧ください。厚生労働省では、PDCAサイクルに基づく公的統計の品質確保・向上のためのガイドライン等を踏まえまして、令和2年度からPDCAによる点検・評価を実施しております。令和4年度におけるPDCAによる点検・評価は23調査が対象で、全ての調査について点検作業を完了しております。この結果、17調査で、26件の調査計画との不整合が見つかり、不整合の内容としては、調査計画上の集計事項の未集計・未公表や公表遅延といった集計・公表段階の事案が多くあり、全体の8割弱となっております。これらについては、調査計画の改善や作業工程の見直しなどを行っております。
 また、過去3年間、令和2年度から令和4年度におけるPDCAによる点検・評価の実施結果をまとめまして、各調査担当課室に共有しております。不整合の内容としては、令和4年度と同様に調査計画上の集計事項の未集計・未公表や公表遅延といった事案が多く、改めて各調査担当課室に、今後の改善や再発防止策、更に自己点検を実施するよう促しております。
 続きまして③コンプライアンスチェックです。コンプライアンスチェックは、第Ⅲ期公的統計基本計画や統計改革ビジョン2019等を踏まえ令和2年度から実施しており、令和4年度においては、社会保障生計調査、賃金構造基本統計調査の2調査において、コンプライアンスチェックを実施しました。今回行いました実施方法としては、社会保障生計調査は、2か月分の調査票について同じような記載がないかなどをデータチェック方式で行い、賃金構造基本統計調査は、調査票の提出があった事業所に対してアンケート調査を行い、調査票の提出状況などを確認しました。いずれも、メイキングなどは確認されておりません。
 続きまして、5ページを御覧いただければと思います。(2)取組予定となります。①標準ガイドライン・業務マニュアル等に基づく業務遂行です。こちらについては、先ほど御説明しましたチェックリストを用いて、残りの82統計の業務マニュアルについて、委託業者とともにチェックを進めていきます。また、各統計所管課室においては、業務マニュアル改定・策定のための手順書を用いまして、チェックした結果と併せて、業務マニュアルを改定・策定することとなります。
 ②PDCAサイクルに基づく点検・評価です。令和5年度におけるPDCAによる点検・評価は18調査について実施を予定しておりまして、10調査については、既に確認作業を開始しております。なお、令和5年10月を目途として、見直し後のPDCAガイドラインが施行されることから、これまでの調査計画との整合性の点検などに加えて、統計の品質確保・向上の観点から、業務マニュアル等との整合性なども点検項目として追加する予定としております。
 ③コンプライアンスチェックです。コンプライアンスチェックについては、令和2年度から4年度までの試行実施の結果等を踏まえ、令和5年度から本格実施するため、実施要領、実施計画を作成しています。本年度は、毎月勤労統計調査と国民生活基礎調査を対象にアンケート調査方式で実施する予定としております。
 ④統計作成プロセス診断です。統計作成プロセス診断は、総務省から派遣される統計監理官により実施され、本年度から本格実施が予定されております。実施に当たっては、統計作成プロセス診断の要求事項として、各統計作成プロセスにおいて必須要求事項と推奨要求事項が定められておりまして、全部又は一部のプロセスの診断が行われます。本年度の統計作成プロセス診断については、人口動態調査を対象として実施が予定されております。
 続きまして、「情報システムの適正化」について、御説明したいと思います。資料7ページからとなりますので、御覧いただければと思います。
 7ページ、(1)取組実績です。まず、①厚生労働省統計処理システムの見直しです。この厚生労働省統計処理システムとは、統計を所管しております政策統括官組織において実施される統計調査の審査、集計、データ保管などを行うシステムでありまして、令和8年1月から次期統計処理システムの運用を開始する予定としております。このシステム更改に当たりまして、前年度までに把握されたドキュメントの適正管理、クラウド利用の推進、ノンプログラミングツールの活用、データベース化の課題を解決するため、調達仕様書案の作成などの準備を進めております。
 主な課題を御紹介しますと、まず、ドキュメントの適正管理ですが、次期システムでは、ワークフローシステムや構成管理ツールなどを導入することによって、例えば、プログラム更新の際に、修正履歴などについて他者の確認手続を設けるなど、ドキュメントやプログラムを適切に管理できる仕組みの構築を検討しているところです。続きまして、2点目のクラウド利用の推進です。現行のシステムは、オンプレミスで構成されており、それによってハードウェアや機能の追加を容易には行えず、また、数年ごとに機器の交換が必要となっております。この状況を解消するため、次期システムではクラウドでの構築を目指しております。
 3点目ですが、ノンプログラミングツールの活用です。当面の対応としまして、簡易プログラミング言語の技術者の減少等に対応するため、簡易プログラム言語を残しつつも、令和6年度から総務省が運用を予定しております汎用集計ツールの活用可能性を含めて、ノンプログラミングツールの導入を検討しております。4点目ですが、データベース化です。調査票データをテキスト保存していることによる同時更新の制約などを解消し、データの管理、品質の向上や活用を促進することを目的として、登録データのデータベース化を検討しております。これらについては、予算要求の過程にありますので、財政当局と調整している最中です。
 ②毎月勤労統計システムの見直しです。令和4年度におきまして、COBOLとC++による並行運用を実施しておりましたが、令和5年度からC++へ完全移行し、毎月の集計を行っているという状況です。
 続きまして、8ページを御覧いただければと思います。(2)取組予定です。まず、①厚生労働省統計処理システムの見直しです。こちらについては、先ほど申しました4つの課題を実現するため、引き続き財政当局との調整を行っていくことになります。また、調達のスケジュールについては、資料に記載のとおりですが、予算の多寡によって実現できる機能が決まってきますので、調達スケジュールの見直しが必要となる可能性もあります。いずれにしても、令和8年1月から次期統計処理システムを稼働するためには令和6年度から開発する必要がありますので、それに向けて準備を進めていきたいと思っております。
 ②毎月勤労統計システムの見直しについては、引き続き、C++により毎月の集計を行っていくこととしております。
 続きまして、「組織改革・研修の拡充等」です。10ページの(1)取組実績です。①組織改革・体制整備です。開かれた組織への変革等ですが、まず、開かれた組織とするため、引き続き民間の企画官や総務省から派遣される統計品質管理官を配置するとともに、政策部局や総務省との人事交流を実施しています。また、毎月勤労統計調査、賃金構造基本統計調査、縦断調査の改善に関するワーキンググループの開催などを通じて、外部有識者と相談できる体制を確保しております。
 次に、統計データアナリスト・アナリスト補の育成・配置です。統計データアナリスト・アナリスト補については、令和2年6月に変更された第Ⅲ期公的統計基本計画において、計画的に確保・育成することとされておりまして、当省におきましては、令和8年度までにアナリスト10名、アナリスト補34名を育成・配置することとしております。アナリスト・アナリスト補になるためには、実務要件と研修要件を満たした者の中から総務省が認定するということになりますが、令和5年8月末までの認定者数は、アナリスト4名、アナリスト補16名となっております。
 次に、誤りの発見、報告及び対応を適切に行った者への評価の検討、実施です。本年3月に閣議決定されました第Ⅳ期公的統計基本計画では、誤りの発見、報告及び対応を適切に行った職員も、積極的に評価するような品質優先の風通しの良い組織風土の定着を図ることとされておりまして、当初におきましても、統計部局において、令和5年度から誤りの発見等を適切に行った者への人事評価を試行的に実施しております。
 次に、②人材育成・研修の充実です。厚生労働省では、令和3年6月に「厚生労働省における統計の人材育成基本方針」を定めておりまして、これに基づき計画的に研修を実施しております。まず、職員が研修を受講しやすい環境を整備するため、令和4年度に実施した研修を動画にし、eラーニング教材として、職員がいつでも受講できるように提供しております。また、令和5年度統計研修方針に基づきまして、体系的に研修を実施しています。さらに、計画的な研修の受講促進のため、各部局へ所属職員の研修の受講履歴の提供も行っております。
 11ページ、(2)取組予定です。①組織改革・体制整備については、引き続き、人員配置、人事交流等を継続・実施していきます。また、ワーキンググループの開催などを通じまして、外部有識者と相談できる体制を確保していくこととしております。データアナリスト・アナリスト補についても、令和8年度に向けて、引き続き育成等を進めていきたいと思っております。また、誤り発見等の対応についても、上期の状況を踏まえて、引き続き、統計部局において誤りの発見等を適切に行った者への人事評価を試行的に行っていきたいと思っております。
 次に、②人材育成・研修の充実です。こちらについても、令和5年度の統計研修方針に基づき、引き続き、体系的に研修を実施していくこととしています。下期については、全職員研修などの必須研修も実施する予定としております。また、統計部局の職員ごとに、統計業務の経験年数や従事した業務内容、統計研修の受講履歴等をまとめた統計人材プロファイルの更新なども行っていく予定としております。引き続き、計画的な研修の受講のため、研修の受講履歴の提供なども行います。また、令和6年度に向けて、統計研修方針の策定も進めていきたいと思っております。説明は以上となります。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○小峰座長
 ありがとうございました。それでは、ここで一旦切りまして、ただいまの厚生労働省からの説明につきまして、委員の皆様から御意見等ございましたらお願いいたします。

○美添オブザーバー
 御説明ありがとうございました。計画に従って見直しを進められているということはよく分かりまして、その努力は評価したいと思います。幾つかコメントと質問してもいいでしょうか。細かいことと、比較的大きなところと交ざっています。まず、資料2の少し細かいことなのですが、資料2の4ページにある未集計・未公表の問題です。これは大したことではないように見えるかもしれませんけれども、実はとても大事なことなので、後で補足説明をお願いできますか。あと、5、6個あるのですが、個別に答えていただくか、まとめて答えていただくか、まとめたほうが楽ですね。
 もう1つは、これも今の4ページの③にあるコンプライアンスチェックです。私は不適切事例が発生したときにいろいろと情報をお伺いして、この検討会が設置される前にも詳しいことをお伺いしたのですが、その中で、特にしつこく聞いたのが毎月勤労統計調査です。これに関して、具体的なコンプライアンスチェックの内容が、外から見える議事録などを拝見している限りでは、まだまだ失礼ながら、不十分だと見えてしまいます。私と同じように見る人がいるとしたら、この点は省としてもマイナスのメッセージを与えかねないので、どうなさっているのか詳しく教えてください。
 統計作成プロセス診断のうち、5ページに書かれている人口動態統計については必要なことだと思いますが、関連統計として、しつこいですが、毎勤はとても大事な統計ですので、その評価を上げるためにも、この点は徹底的に何度もやっていただく必要があることは繰り返し言わせてください。
 あと、細かいことが幾つかありまして、10ページ目に書いてある①の組織改革・体制整備は大変優れた取組だということで、高く評価したいと思います。その中で、統計データアナリスト・アナリスト補の育成をなさっている。これも大歓迎なのですけれども、こうやって育ったアナリストやアナリスト補が、省内で活躍する場をきちんと作っていただけているのだろうか。それから、このような方たちの知見をいかせるように配置の問題ということをお考えいただいているのだと思いますが、具体的にどういうことをなさるのか。
 例を申し上げますと、経済産業省では、専門的知識を持った職員がだんだん減ってきたということで、最後の段階なのですけれども、「統計コンシェルジュ」という名前を付けたと思うのですが、統計の何でも相談室というのを作りました。通産統計の時代から職人がたくさんいたわけですが、その最後の世代がまだ何人か残っていらっしゃいます。その方たちが相談に応じて、各統計作成担当や統計の利活用をしているセクションの方たちの相談に乗っているときには、このデータアナリストやアナリスト補の資格というか、知識が役に立つと思うのですが、そういうことができるのかということです。
 1つ褒めたいことがあったのですが、①の最後にある、誤りの発見、報告及び対応を適切に行った者への評価をするということで、これは大歓迎です。私も参加して内閣官房で実施した統計改革推進会議でも新生部会を設置しました。ほかの役所の名前を言うとまずいのですけれども、私の関わっている国土交通省の統計では、先輩のやったことで間違いを見付けた人がいるのだけれども、先輩をかばった結果、対応は確かに不適切だった。そこは大きな問題だったので、深く反省して、そういうことをしないような風土を作ろうとして、今、真剣に取り組んでいます。この姿勢は大事で、つらいことがあると思うのですが、国土交通省の事例で言えば、前任者のやったことの間違いを見付けて、どうしようかと悩んだのだと思うのですけれども、その結果の対応が必ずしも理解を得るものではなかったということがあったわけです。ここまでに止めておきます。
 しつこく言いますが、毎月勤労統計調査に関しては、推計方法について、私はいまだに疑問を持っています。この改革検討会が始まる前に、何度か個別具体的に担当職員に聞いたのですが、納得していません。分析をやり直したいからデータの提供はできますかと聞いたら、そのデータは廃棄されて、ないとおっしゃったのです。その姿勢を今でも続けているなら、それは大問題です。なかったものをもう一回探してでもいいから、再集計をすべきです。なぜそのようなことを言うかというと、現在の推計手順については、理論的な観点から十分ではないと指摘する統計学者は少なくないと思います。私は、むしろ厚生労働省を弁護する立場なのですけれども、間違った分析をして批判する人たちがいるのですよ、厚生労働省の統計を。私はそれを間違いだと言いたいのだけれども、そのための証拠がないのです。これでは弁護のしようがないので、実は、大変困った状況です。これは厚生労働省の統計の中でも、労働関係では毎勤はとても大事な調査なので、ここで、信頼を高めるためにも是非御検討いただきたいと思います。これは毎回のようにしつこくお願いしていますが、よろしくお願いします。

○飯島室長
 ありがとうございます。それでは、御質問等につきまして、回答したいと思います。まず、1つ目は、集計事項の未集計についてどのような調査なのかという御質問をいただいたと思っております。これにつきましては、参考資料3のほうで御説明したいと思います。参考資料3の5ページを御覧ください。タブレットの参考の一番下です。
 今回、令和4年度にあったケースですが、集計区分の一部が未集計であり、総務省から承認されております調査計画と実際に集計した結果の集計区分が合っていないというケースがありました。これは具体的な調査としましては、家内労働等実態調査の例をここでは挙げておりますけれども、今回、総務省から承認された集計表の一部が集計されていないということなどがありましたので、それにつきましては、再度個票ベースで集計をし直しまして、承認された集計表を作成の上、e-Statで公表するという形で対処しております。

○美添オブザーバー
 今の点は、利用者からの不具合があったという指摘ではなかったという理解でよろしいですか。

○飯島室長
 そうです。これは、当省でPDCAの点検をしている過程で実際の承認された集計表と、公表されているものが合っていないということが判明したというものです。

○美添オブザーバー
 分かりました。大分前に、財務省が同じような未集計があって批判されたのですけれども、そのとき反論ができて、利用上は何の問題もなかったことが分かったので、安心できたのですが、今回もそういう事例ですね。この点は、下手をすると批判されますので、ちょっと心配したというだけです。ありがとうございました。

○飯島室長
 では、続きまして、コンプライアンスチェックの件です。特に毎月勤労統計調査のコンプライアンスチェックは不十分であるという御指摘をいただいたと認識しております。
 コンプライアンスチェックにつきましては、まず、大きな考え方としまして、調査員の業務の履行状況を国が直接確認する取組とされており、これが政府全体の定義となっておりますので、一義的には調査員の業務の履行状況を確認するということになります。その上で、これまで令和2年度からコンプライアンスチェックを実施しておりまして、毎月勤労統計調査につきましても、令和3年度にアンケート調査方式でコンプライアンスチェックを実施しております。そのときには、特にメイキング等は確認されていないという結果です。
 これまで、令和2年から4年度までは試行的な実施ということで、今年度から本格実施を予定しておりますので、その中で毎月勤労統計調査も含めまして、引き続きコンプライアンスチェックを実施していくこととしております。また、実施計画という中で計画立てて実施できるような形で進めていきたいと思っているところです。
 あと、まだ答え切れていないところがあるかと思いますけれども、統計作成プロセス診断の件ですが、毎月勤労統計調査の統計作成プロセス診断について御指摘をいただきましたけれども、こちらは総務省が実施しているものであり、当該年で、各府省がPDCAの点検を行った調査の中から、総務省のほうでPDCAの上乗せというか、更なる点検ということで統計作成プロセス診断が行われることになります。今年度に関しましては、当省は人口動態調査ということになっています。これも継続していくものですし、今年度から本格実施するというようにも聞いておりますので、毎月勤労統計調査も含めて、今後対応していくことを予定しているものです。

○美添オブザーバー
 アナリストの活躍の場について御回答いただけますか。

○飯島室長
 アナリストにつきましては、令和8年度に向けて、現在、育成をしているところで、目標に対して40%ぐらいの育成がなされているという状況にあります。令和8年度以降は調査の設計はアナリスト、実施はアナリスト補の下で行うということになりますので、然るべき数が育成できた暁には、今のところ、アナリストは、少なくとも統計所管部局であれば各室に1名、アナリスト補は各調査に1名ということを予定しております。また、政策部局に関しましては、なかなか実務要件の関係もあって、自ら育成するということが難しいものですから、そこは統計所管部局が中心となって支援していくという形で、令和8年度以降、配置も含めて進めていきたいと思っているところです。

○小峰座長
 それでは、ほかの方はいかがでしょうか。吉川先生、どうぞ。

○吉川委員
 私は、研修について一言コメントしたいと思います。研修を拡充されるということで、大変結構だと思います。全体として改革については、しっかりやっていただいているという認識で、それはそれで結構なのですが、私のポイントは美添先生とは違って、大変どんぶりなのですが、やはり厚生労働省だけではなくて、政府全体ですけれども、結局、統計の改革の大本は、当たり前のような話なのですが、統計というものの意義について、やはりしっかりと確認していただくということだと思っています。それを是非研修等で、統計に直接関わらない、いわゆる幹部の方々もそういう認識を持つべきだと私は思うのですが、そのためには歴史的なパースペクティブを持つべきだ。
 近代的な統計というのは、やはり主導したのはヨーロッパになるわけですけれども、イギリス、フランス、ドイツがそれぞれ独特の発達をしたと私は認識しています。
 イギリスは御存じ、経験論の、ある種のフィロソフィーというか、その下で17世紀のウィリアム・ペティとか、そういう時代から統計というものに対する関心は非常に強く、今日までそれは続いていると思います。経済学者のある種のタイプでも、エンピリシズムというか、その基は統計ということなのですが、言ってみれば、イギリス経済学というのは、今ではそういう名前はほとんどないように溶解しているのですが、でも、まだ少し残っている。消費の専門家のディートンとか、少し前にノーベル賞を取りましたが、そういう残りの光のように、まだまだ残っている。イギリスはそういうことで統計は、17世紀以来今日に至るまで、しっかりと持っている。
 フランスは、フランス革命の頃、御存じの方は御存じなのですけれども、ラプラスという有名な数学者が確率論を非常に整えたわけですが、それとの絡みで、ラプラスなどは非常に独特の社会統計の意義というのを説いたわけです。これはある種、独特という感じがある。
 今日、特に日本で我々が統計といったときに、大きな主導的な役割を果たしたのは、やはり私はドイツだと思っています。ドイツは、19世紀の中葉にプロイセンの、まだドイツ帝国ができる前ですが、プロイセンの統計局というのができて、統計局長が、御存じエンゲル。エンゲルが極めて大きな影響力を持って、それは19世紀の終わりから今日、我々経済学の世界では、ドイツの歴史学派と呼んでいるのですが、シュモラー、名前はほとんど忘れられている経済学者、グスタフ・シュモラー、ブレンターノ、それからゾンバルト、これは御存じでしょう、マックス・ウェーバー。こういう人たちが世紀の変わり目で出てきた。統計の整備というのが彼らの仕事の大本にあって、そのときのキーワードが社会政策です。ここの御省というか、ここの省に一番関わりのある社会保障を整えるというのが、ドイツ帝国の1つの大きなビスマルクの下での構想だったわけです。ちなみに公的な医療保険というのを最初に導入したのはビスマルクのドイツ帝国、それは全部統計に基づいてなされたわけです。
 日本では、このプロシア、ドイツの統計を社会政策学とともに基本的にインポートしたということです。大学で言うと一橋、東大などですね。一橋は福田徳三、東大は高野岩三郎という人たちが基本的にはドイツの統計を輸入してくる。役所でそれを一番やったのは内務省です。
 こちらの省の淵源ということだと思っていますが、内務省は明治に入ってから、ありとあらゆる統計を整えたわけですが、それを今、お話しているような基本的なプロシア、ドイツのそれを取り入れてきた。また、経済学で言えば、ドイツの歴史学派の基本的な構想を取り入れてきた。
 戦前の日本の学者では、名前は御存じでしょう、東大ですと、大河内一男、総長をやった先生ですが、大河内さんというのは基本的にドイツの歴史学派、社会政策を取り入れてきた。日本は明治になってから統計をそういう形で内務省等を中心に整えたわけです。
 最後になりますけれども、私自身は2005、2006年でしょうか、小泉内閣の終わり頃に統計法の改正というのに、こちらにいらっしゃる美添先生等々と関わったのですが、当初、政治家の方々の統計に関する関心が低かった。
 説明する上で、今お話しているような歴史的意義、しかし、歴史学派とか、そういうことを言ってもしようがないので、明治以降も日本の歴史で、うろ覚えですが明治2年でしょうか、日本では「大蔵省統計司」というのですか、伊藤博文、これが明治2年ぐらい、ランドマークとして伊藤博文。それから、昭和21年に統計委員会ができて、旧統計委員会ですが、委員長が吉田茂内閣総理大臣が就任。伊藤博文、吉田茂、小泉純一郎と、三段跳びの明治以降のこの説明は政治家の方々には非常に分かりがよかった。
 長くなりましたけれども、やはり統計というものの意義というのでしょうか、国づくりの大本なのですね。これがめちゃくちゃだったら、今、人口が減っているということが分からないわけですから、この意義ということを研修の始めぐらいかもしれませんが、統計に関わる方々には徹底していただく。また、初めにも申し上げましたけれども、直接統計に関わらないような幹部の方々も、やはり統計というものに対する認識というのは深く持つべきではないかと思います。以上、私の意見です。ありがとうございました。

○小峰座長
 貴重な御意見ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。

○中室委員
 御説明いただきまして、どうもありがとうございます。私からは大きく分けると、2つ質問をさせていただきたいことがあります。主には、情報システムの適正化、7ページの所なのですが、厚生労働省の統計処理システムの見直しということがあるのですけれども、これがどの程度、他の省庁におけるシステム改修の動きをにらんだものなのかということを知りたいと思っています。というのは、例えばですが、21世紀出生児縦断調査などは、厚生労働省から、どこかのタイミングで文部科学省のほうに移管されていくというような形で、他の省庁に渡していくというタイミングがあるのかなと思うのです。そうしますと、厚生労働省と文部科学省のシステムが全く違うものになってしまうと、そのタイミングで、またミスが起きるのではないかという懸念もありますし、これから先は、例えば、NDBと国勢調査をリンクさせて分析しましょうという動きも、多分広がっていくだろうと思うので、他の省庁と余りにも違うシステムになっていると、不便が起きるのではないかということを想定しての質問です。
 もう1つお聞きしたいのは、今回、このガイドラインとかコンプライアンスの話を聞いていると、収集したデータが一旦厚生労働省の中に入ってきた後に、どのように業務を遂行し、評価をしていくのかということについて書かれているのかなと思うのですけれども、データを収集する所での何か変化というのはありましたでしょうか。
 例えば、やはり紙とかFAXのようなものでデータを集めているという話なのか、最近ですと、文部科学省がe-surveyということを随分やり始めていまして、オンラインで、その学校であったりとか個人から直接データを吸い上げる、あるいは地方公共団体から直接吸いあげてくるというシステムの構築をやっていると思うのですけれども、そういったことがシステムの適正化の流れの中で、どこかで入ってきているかどうかということも併せて教えていただきたいと思います。
 もう1つは、これは細かいことなのかもしれませんが、人事評価に反映していくというお話がありました。特に誤りの発見をしたときに、報告・対応を適切に行った者への評価の検討という話が11ページの所で出てきていて、これは非常に重要な話かというように思います。万が一、誤りが発見されたときに、それを隠蔽するのではなくて、きちんと報告しましょう、そのことについて正しい評価をしましょうというのは非常に重要なことかと思いますけれども、これはなかなか難しい面もあるのかと思います。例えば、自分がやった誤りを自分が見付けたみたいな場合に、どのようになるのかとか、ここについて何か、もし仮に検討されていることがあって、具体的に言えるような内容がありましたら、是非教えていただきたいと思います。以上です。

○飯島室長
 ありがとうございます。まず、今回の統計処理システムの見直しですが、こちらは、先ほどオンプレミスという言い方をしましたけれども、自分の所にサーバーを設置して、大体3、4年のスパンでリース契約で更改しておりますので、今回はそのタイミングがちょうど今きていることから、更改するものです。
 先ほど先生が申されました、ほかの省庁との連携ですとか、あるいはほかの行政記録情報などとの連携ということに関しては、この統計処理システムそのものはそういうものではなくて、あくまでデータを収集した以降のデータの審査とか集計とかを行うものですので、それはこの統計処理システムとは別の話といいますか、切り分けとしては別のものということになります。
 もう1つは、今の話とも関連しますけれども、このシステムは審査・集計、あるいはデータ保管を行う、いわゆるデータ収集した後のデータ処理を行うシステムですので、先ほど申しましたデータ収集のところについては、例えば、これとは別に政府統計共同利用システムなど、ほかのシステムもありますので、そういったシステムを活用しており、そこで収集したデータをこちらの統計処理システムに持ってきて、この中でチェックをして、集計するような形で連携しながら処理するといったようなことはあります。しかし、この統計処理システムそのものがデータ収集するといったものではないということです。

○石津参事官
 人事評価のことでございますので、総務担当の参事官の私から。確かにその点は大変難しいところです。ただ、それは日々、自分自身がこの誤りの発見の報告を受ける立場ですが、昔と違って、正に誤りの報告をすることが、見付かれば心理的な障壁というか、正に先輩がやったことを見付けてしまったということなく、あれば、当然に報告するという雰囲気ができてきていると思っております。
 その上で、自分がやったものを自分で見付けてしまったという場合のことについては、それをどう評価するかというのは、今まで考えたことがなかったというのが率直なところでして、非常にそれは短いスパンで、つまり、役人の任期は大体2年ぐらいなのですが、自分がいる間に自分がやったことについて自分が見付けたということであれば、それは先輩がやったものを時間がたってから見付けるというのとは違って、統計に関わらないことですけれども、当然に誤りを上長に報告して、すぐ直すというこの態度は、基本、役人というか、組織の中にいる者の基本動作としてあるべきものかなと思います。その上で、もちろんそれは隠すのではなく、報告するということに対して、それができるような雰囲気を作っていくということが大事だと思います。
 なお、評価というのは、その点について肯定的な評価なのですけれども、人事の評価というのはその点だけではなく、ほかの部分も含めての総合評価ですので、そこに何か、余計なことを申し上げますが、インセンティブ的なものを設定するというところまでは考えておりませんが、やはり人事評価というのは、組織の中で部下と上長の間のコミュニケーションがきちんと進んでいくためのツールとしての評価制度だと思います。誤りを発見したときに、よく見付けたと歓迎するということ。また、そういう雰囲気を作っていくことが大事だというように思っております。気合いみたいなものの説明になっていて、ちゃんとシステムの説明になっていないかもしれませんが、この部門で人事を担当しております課長としての私の考え、以上でございます。ありがとうございます。

○小峰座長
 ありがとうございます。ほかは、どうぞ。

○神林委員
 事前に質問しておくべきだったと思うのですが、ちょっと時間がなくて申し訳ございませんでした。幾つか教えていただきたいことがあります。1つは、標準ガイドラインの位置付けです。先ほど、標準ガイドラインが、つい今月ですか、2023年9月に改定されるとお聞きしました。ということは、4ページ、②のPDCAサイクルに基づく点検・評価のときに、標準ガイドラインの改定は反映されていないと思うのですが、改定された標準ガイドラインを使って、もう一度この23調査というのは点検し直す予定があるのかということをお聞きしたいです。つまり、標準ガイドラインを改定して、「変更管理の取組、遅延調査票の取扱い、例外措置への対応等を追加した」と書いてあるということは、前の標準ガイドラインにはこれはなかったということを意味していて、そうすると、次の23調査に関しては、この3点についてはチェックしていなかったのかなとも読めます。もしそうであれば、結構、遅延調査票の取扱いは、国土交通省のお話でちょっと問題になった部分もありますし、例外措置への対応というのも結構大きい話です。ですので、この辺りが反映されていたのかどうかというのをお聞きしたいと考えております。
 あと、全体の情報として出していただきたいのは、もう少し具体的な情報を出していただければと思っております。それは、例えば、5ページのコンプライアンスチェックの所で、「試行実施の結果から得られた知見や明らかとなった課題等を踏まえ」と書いてありますので、多分、何か知見や課題というのが明らかになったということだと思います。それは一体、どういう知見でどういう課題だったのかということを知りたいというのがあります。
 それと同時に、先ほどのPDCAサイクルの点検で、23調査の中で具体的に見つかった事項があるということで、参考資料の3にまとめられておりますが、例えば、私自身が結構「おっ」と思ったのは、抽出方法が異なる、これは実査前に発生していた不整合ということなので、恐らく実査を実施するときには修正されたと解釈はしているのですが、そのようになっていたのか、「抽出方法とは異なる手法」というのはどんな手法だったのか、あるいは、「調査期間が乖離していた」というのは、次の5ページの所では、照会を行ったり来たりしているうちに時間が消費されて、どうも締切りが間に合わなくなってしまったというようなニュアンスに取れるのですが、そういう事例なのかということで、どこまで公表できるかは分からないとは思いますが、この辺り、具体的な事例が何だったのかというのを教えていただければと思います。
 情報システムのほうもあれですか、まとめて言ってしまえばいいのですか。そうしたら、情報システムのほうは、ドキュメンテーションの問題です。ドキュメンテーションというのは、多分これ、集計段階に入ったときのドキュメンテーションしか前提にしていないと思うのですが、集計するときに、調査段階でのドキュメンテーションの情報が必要になるという場合もあるのではないかと思います。そういう場合は、このシステム上、どのように対処するとお考えでしょうかということを聞いておきたいと思います。以上です。

○飯島室長
 ありがとうございます。まず、1つ目の標準ガイドラインの改正ですが、先生におっしゃっていただいたとおり、9月に変更管理の取組、遅延調査票の取扱い、例外措置への対応などを加えております。こちらは、総務省がまとめておりますPDCAのガイドラインというのがありまして、その中でも、今回、当省で追加したこれらの事項も含め、本年10月からPDCAの新たなガイドラインとして施行することになっております。全省的には、それ以降、今、申し上げた3つの観点も含めてPDCAの点検を行っていくことになっておりますので、10月以降については、それらの観点を踏まえてPDCAの点検を行っていくこととしております。ですので、既に点検済みの調査については、今の段階で遡ることはないのですが、PDCAは1回で終わりではなくて計画立てて進めておりますので、今回点検した調査については、次のサイクルでの点検のときには、今、申しました観点も含めて点検していくという取扱いをしていきたいと思っております。これは全省的にも同じ取扱いになっております。
 もう1つですが、コンプライアンスチェックについては、令和2年度から4年度のコンプライアンスチェックの結果自体は、これも全省的に公表されておりませんので、詳細なところまで説明できないところがありますが、今回の試行実施について幾つか課題があった点を少し御紹介します。例えば、調査票を提出していないといったケースについては、アンケートの中でそういう回答があったときに、実際、調査票に記入した人に電話で確認するという行為をしております。そのときに、アンケートを書いた人と実際に調査票を書いた人が異なってしまうという場合には、回答内容に不整合が生じるようなケースもありましたので、そういったケースについては、アンケートのほうにも記入者氏名を入れるほうが、より効果的に照会ができるといったことの改善を図るとか、あと、データチェック方式ということでこれまで幾つかやってはおりますが、データチェックをして似たような調査票があるからと言って、すぐにそれがメイキングかというと、なかなか判断ができないということもありまして、これをすぐに全面的に拡大するのは難しいということとか、そういった、いろいろな今回得られた課題を踏まえて、今年度から、主にアンケート調査方式をメインとしたコンプライアンスチェックを実施していくということで考えているところです。

○神林委員
 記名についてはですね。

○飯島室長
 そうです。今回、試行的に行ったアンケートは記名にはしていなかったものですが、いざ、実際、調査票のほうに書かれている人に照会をしたときに、アンケートを書いた人と異なっているケースがあって、そういったケースについては、アンケートのほうにも記名があると、より整合と言いますか、誰が書いたかが明確になって照会等もスムーズにいくといった反省点も踏まえて、今回、改善するような取組を考えております。

○神林委員
 分かりました。

○飯島室長
 あと3点目です。抽出方法が異なるといったPDCAの点検結果についてです。これは、実際、調査計画に記載されていた抽出の仕方と実際の調査の抽出の順番と言いますか、やり方が異なっているというケースがあって、それについては、調査計画を変更して、実際のやり方に合わせるというケースがありました。ですので、調査計画上との不整合について、そこは整合させるということで、調査計画を見直すといった対応をしております。

○神林委員
 実際のほうを直されるのですか。

○飯島室長
 このケースではそうです。

○神林委員
 計画ではなくて。

○飯島室長
 調査計画を変更して、実際に合わせています。

○神林委員
 それはどういう理由でですか。普通は計画に合わせると思うのですが。

○渡邉室長
 すみません、御質問の件なのですが、これは、患者調査と受療行動調査という調査がありまして、受療行動調査の方がサンプルが少なく、患者調査と同一の医療施設に調査を行うというものなのですが、これは、患者調査の調査計画の改正で統計委員会でも報告しているものです。これまで、調査計画上は、患者調査のサンプルから受療行動調査のサンプルを抽出するという書き方をしていたのですが、実態として、患者調査の層化基準と受療行動調査の層化基準が異なり、また受療行動調査のサンプルが非常に少ないということもあって、受療行動調査の方を先に抽出し、受療行動調査のサンプルが全て患者調査のサンプルとなるよう患者調査のサンプルを抽出するというように、実態としてはやっていたものです。

○神林委員
 そうすると、患者調査のサンプルは有意抽出になっているということですね。

○渡邉室長
 いえ、有意ではなく無作為で抽出しているはずです。受療行動調査のサンプルが患者調査のサンプルになるようにし、その上で、無作為抽出になっているということです。ちょっとすみません、資料が手元にないので詳しく説明できないのですが。

○神林委員
 ちょっと。

○渡邉室長
 患者調査と受療行動調査の層化基準が異なっておりまして、患者調査の層化基準は非常に細かいもの、受療行動調査は比較的粗い層化基準で、ベン図的に完全に分かれるものではなくて、ちょっと入り繰りがあったりするものなので非常に難しい抽出方法になっているのです。受療行動調査のサンプルを先に抽出した上で、それが患者調査のサンプルになるように、患者調査の数を層別に合わせるような形で抽出をするということで、全体としては無作為抽出という形になっているかと思います。

○神林委員
 簡単に言うと、サブサンプルになっているはず、設計上サブサンプルになっているのだけれども、実態はそうではないということですよね。ベン図みたいになっていて。

○渡邉室長
 それは層化基準の話でして。

○神林委員
 層化基準が違うから、なので。

○渡邉室長
 サンプル自体はサブサンプルになるような感じになっています。

○神林委員
 サブサンプルになるように抽出のやり方を、工夫をしたということになるわけですね。

○渡邉室長
 そうです。この点に関しては、統計委員会のほうでも御議論を頂きまして、議事録にも残っているかと思います。

○神林委員
 分かりました。そうすると、理解としては、調査計画のほうに無理があったと考えたほうがよいということですね。

○渡邉室長
 そうです、そういうことになります。

○神林委員
 そのように書いてくださったほうがよいのではないかと思います。分かりました。ありがとうございます。

○小峰座長
 梶木委員、どうぞ。

○梶木委員
 これまでにも幾つか意見が出ましたが、10ページの「誤りの発見等を適切に行った者への人事評価」、是非とも定着をさせていただきたいと思います。20数年前に地方の幹部をしていたときに、若い職員が、裁判所の作られた書類の誤りを発見したことがありました。たまたまそれを私が耳にしまして、「表彰してやろう」と言ったところ、事務方のトップが、「彼のこのポストでは、こういう誤りを見付けて修正するのが仕事です」と言ったのです。公務員は間違いを犯すと処分の対象になります。したがって、誤りを発見すれば、報告をして是正するのは当然だと。それはそのとおりなのだけれども、人が仕事をしているわけですから、そのときは、私が個人の立場で賞詞というのを勝手に作って渡しました。そうすると、その噂は管内の職員の中にワッと広がりまして、我も我もということで、そういった自発的な若い職員のエネルギーが出てきたという経験があります。是非とも定着をさせていただきたいと思います。
 それから、その上に書いてあるデータアナリストとアナリスト補の育成なのですが、現段階では、当面、省内に専門家を必要な数だけ育てなければいけないということで、それはそれで結構だと思います。ただ、中長期的に見たときに、やはり、役人としての長い人生の中で、そのキャリアの1つのゴール、そのような位置付けで人事記録の中に残れば、そういった幾つかの内部研修を経て勉強してきた人が、積極的に登用されていく。そういう形で、なかなか年功序列を完全に廃止するのは難しいところなのですが、配置、将来の昇進等にうまく反映させることを中長期的に考えていただくと、組織が内側から活性化していくという感じがしますので、引き続き御努力をお願いします。以上です。

○小峰座長
 ほかはいかがでしょうか。

○神林委員
 先ほどの、ドキュメンテーションの話。

○小峰座長
 はい。

○神林委員
 もう一度、最後の所ですか、最後のドキュメンテーションの話をお答えいただければと思います。

○飯島室長
 すみません、もう一度質問をお願いいたします。

○神林委員
 今のシステムのドキュメンテーションは、集計段階のドキュメンテーションを保存するということを意図していると思うのですが、集計するときに、調査段階でのドキュメントが必要になる。調査段階でのドキュメントの情報が必要になるという場合にはどのように対処するようになっているかということです。

○飯島室長
 ありがとうございます。今の統計処理システムは、集計だけではなくて、いわゆる審査・集計という、チェックの部分も入ったシステムになっていますので、当然、調査の企画の段階の項目レベルを含めて、どういうチェックをするかというのは、それはドキュメントも含めて整理をして、それをチェックできるようなプログラムをこのシステムに組み込んでいるところです。ですので、チェックをするプログラムと言いますかシステムと、そのデータを集計するというシステムがあり、大きく分けて2つの構成になっていまして、チェックの部分に関しては、当然、調査票段階のものを考慮した形でのチェックということになっています。

○神林委員
 分かりました。では、チェックプログラムの設計いかんによっては、調査段階での収集する情報が変わると理解してよろしいですか。まだ、チェック段階でのプログラムをどう書くかというのは決まっていないわけですよね。

○飯島室長
 そうですね。調査票を前提にしてどういうチェックをするかということになりますので。

○神林委員
 チェックが終わった後、最終データが確定して、それが格納されるわけですよね、ローデータとして。それを集計するシステムは集計システムになっていて、チェックシステムというのは、確定されたデータをチェックするためのシステムということですよね。それで、エラーが出たときに、確定される前の情報が必要になりますよね、エラーを修正するためにも。

○飯島室長
 それらのデータは全て統計処理システムに入っています。

○神林委員
 それは、このシステムの中に入っているのですか。

○飯島室長
 入っています。

○神林委員
 ということは、ローデータが確定される前の情報も。

○飯島室長
 入っています。

○神林委員
 格納される、ドキュメンテーションとして格納される予定ということですね。

○飯島室長
 そうです。チェックの部分に関しては、確定データのチェックというよりは、もともとのデータをチェックして確定していくという流れになりますので、その前の段階のデータを処理していくことも含めたチェック機能があるシステムです。

○神林委員
 分かりました。

○小峰座長
 ほかはいかがでしょうか。よろしければ、次に行きましょうか。事務局から、引き続き説明をお願いします。

○渡邉室長
 続きまして、4の「データの利活用・一元的な保存の推進」に係る進捗状況を御説明いたします。先ほどの資料2の13ページを御覧ください。まず、こちらのパーツは大きく分けて2つあります。①として二次的利用の推進、②として行政記録情報の活用等です。まず、最初の①です。個票データの二次利用に係る手続の効率化、情報提供の充実です。こちらに関しまして1つ大きな動きがあり、本年3月の規制改革推進会議のワーキンググループにおきまして申請書類の迅速化について議論されました。その後、6月に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、研究者等への調査票情報の提供の迅速化・円滑化が求められたところです。
 こちらに関しましては、参考資料3の11ページを御覧ください。まずは、利活用の実績から御説明いたします。11ページの左側の図を御覧ください。こちらは、本年7月26日に統計法第55条に基づく統計法の施行状況が総務省から公表されております。これによりますと、厚生労働省の調査票情報の提供実績については、令和4年度において公的機関等向けが993件、その他、研究者等が主になりますが、110件となっております。ただし、こちらの数値ですが、この施行状況報告の数値につきましては統計調査ごとに件数を合計したものになっており、また対象が厚生労働省全体で、次のページ以降の申出1件当たりの審査日数の数値と対象が異なっております。このため前回の検討会におきましては、申出件数の数値もお手元にあれば出していただきたいと御意見を頂いたところです。この申出件数につきまして集計したものが、右側の図です。こちらによりますと、全体として増加傾向で、特に研究者等に向けたものが申出件数が継続して増加していることが分かるかと思います。なお、この図のデータですが、特に公的機関等からの申出件数につきましては、右と左で大きく数字が乖離しておりますが、この理由は注記に記載しておりますとおり、行政運営資料の作成等を目的に、自治体が調査票情報を用いる際の申出を、定期的に受け付けてまとめて審査する提供形態があり、こうした形態のものが大多数を占めているため、このように異なっているものです。
 次のページを御覧ください。こちらが、先ほど申しました申出1件当たりの審査日数です。こちらにつきましても、公的機関と研究者等に分けて見たものです。令和4年におきましては、公的機関等で日数が増加しております。これは申出件数が全体として増加している影響のほかに、審査担当者の人事異動や申出者の事情で時間が要する案件があったことなども影響しております。ただし、令和5年7月までの実績を仮に計算したものが薄い色でありますが、審査日数につきましてはそれぞれ30日と32日となり、こちらは土日等を含んでいる数字ですが、いずれにしても大幅に日数は減少しております。これは後ほど申しますが、規制改革実施計画の対応につきまして、段階的に一部先取りして取り組んだところがあり、そうしたことで申出件数が増加する中にあっても改善することができたのではないかと考えております。
 次のページを御覧ください。こちらにつきましては、申出1件当たりの審査日数を同じく公的機関等と研究者等に分けた上で、それぞれの分布について令和4年度と、その前年度で比較したものです。公的機関等につきましては、先ほど申し上げましたとおり申出者の事情で時間を要する案件がありましたので、若干長期なものがありますが、研究者等に関しましては、例えば多くの調査票を一括して利用する際に優先順位を付けて分割して申請していただくといった協力も一部いただけたこともあり、長期化する案件は前年度よりも減少しております。
 続きまして14ページ、15ページです。こちらは、本年6月に閣議決定されました「規制改革実施計画の概要」になります。この中で、具体的に取組が求められている内容としましては、最初の14ページになりますが、網掛けで記載のとおり、統計所管府省庁は、提供までに要する期間を令和5年度中に平均1か月以内、令和6年度中に特段の事情がある統計を除き平均1週間以内、かつ、遅くとも4週間に短縮するといったことになります。
 さらに、その次の16ページですが、こちらについては本件に対する取組を具体的に記載したところです。最初の上のフローを見ていただきますと、今回の取組を行う前の標準的な処理日数になりますが、事前相談、これは、例えば提供項目が「必要最小限」になっているかといった確認も含まれますが、これとその下の案件ごとのデータ作成業務というところで時間を要しているということが分かるかと思います。このため、例えば、提供データについて案件単位でオーダーメードするのではなく、おおむね統一化できるように申出様式の記載例を作成して、記載内容を標準化していくといったような取組を行い、これに要する時間を短縮して、本年度中に、おおむね1か月以内の提供が可能になるように取り組むこととしております。
 17ページです。こちらは、本年度より記載様式について厚生労働省のホームページに掲載することとしており、その申出の様式と今回追加しました記載例について掲載しております。
 18ページです。オンサイトへの調査票情報の登録を促進するという目的で、令和6年度に予算の概算要求を行っており、それに関する資料を掲載しております。
 続きまして、オンサイトです。同じく参考資料3の19ページを御覧ください。こちらにありますとおり、現在、賃金構造基本統計調査や人口動態調査など所管の15統計が利用可能となっております。今後の取組、進め方につきましては、また後ほど御説明いたします。
 資料2にお戻りください。13ページの中ほどの匿名データです。匿名データにつきましては、賃金構造基本統計調査に関しまして、平成29、30年、令和元年の3か年分の匿名データについて、9月11日、独立行政法人の統計センターを通じて提供を開始しております。また、国民生活基礎調査につきましては、これまで3年ごとに大規模調査に関するデータを提供しておりましたが、その続きであります2019年分の作成方針について、8月21日の統計委員会に諮問し答申を頂いたところです。
 なお、この賃構の匿名データですが、これは今回、事業所統計に関する匿名データの初めての取組であり、こちらについては教育の目的でも使用できるとなっておりますので、是非、委員の先生方には御活用いただければ幸いに存じます。
 続きまして、大きい2つ目の行政記録情報の活用等です。こちらについては、これまでの取組としては介護サービス施設・事業所調査におきまして、令和4年度から行政記録情報で得られる数値をあらかじめ調査票に印字して配布するというプレプリントを行い、回答者の負担を軽減する取組を実施しております。この取組の拡大としまして、社会福祉施設等調査におきましても、令和6年度から行政記録情報から得られる数値を調査票にプレプリントして調査を実施することとして、必要な予算を要求しているところです。
 それから、統計調査の連結やマッチングキーですが、こちらも厚生労働省が単独で取り組める内容としまして、例えば、法人番号の整備などを行ってきたところですが、これとは別の動きとしまして、同じく規制改革実施計画の内容になりますが、複数の統計を、調査票情報を回答者ごとに連結して多様な分析を行うことを可能とする観点から、回答者を紐付ける方策について総務省が中心となって検討することが求められております。こちらは、令和5年度中に検討・結論を得るという内容になっているところです。以上が、13ページの内容です。
 続いて、14ページの今後の取組です。まず個票データの二次利用に係る手続の効率化、情報提供の充実です。現体制で可能な対応につきましては今年度から始めており、これも引き続き進めていくことのほか、令和6年度は更に高い目標が掲げられておりますので、こちらにつきましては総務省で二次利用に関するシステム整備を行うこととなっております。これについて、厚生労働省としても積極的に関与し、手続の迅速化・円滑化に資するシステム整備に協力していくこととしております。
 オンサイトにつきましては、昨年策定しました工程表におきまして、主な基幹統計の直近20年分、ニーズの高い一般統計の登録が求められているところです。現状につきましては、賃金構造基本統計調査のみ直近20年分の登録が終了しておりますが、人口動態調査、国民生活基礎調査につきましても直近20年分の登録ができるよう進めていくこととしております。これと併せまして、過去分の更なるデータの登録につきまして、先ほど引用しました参考資料3に予算要求の内容がありますが、登録データ等の作成に関する予算要求をしており、こうした事業も活用しつつ、オンサイトへの登録を進めていきたいと考えております。その他、匿名データや行政記録情報の活用に関しては、資料に記載のとおりです。以上です。

○小峰座長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの厚生労働省からの説明につきまして、委員の皆様の御意見等ありましたらどうぞ。

○美添オブザーバー
 いつも余計なことをしゃべっているようですが、ここはとても良い取組をたくさんやっていただいているようで、本当に高く評価しますし、学会からも、ここにいらっしゃる先生方も、きっと感謝しているというか、評価しているのだと思います。
 特段、私から否定的な発言はしませんが、参考資料3にある件数がどう変化してきたか、提供するための日数がどう変化してきたかという点は、統計委員会担当室が各府省にお願いしている提供の促進に沿ったものだということで、利用者からすれば有り難い話なのですが、私は二次利用について、統計法第33条の目的外利用を実現する際の各府省の負担というのは実は気になっておりまして、従来これは手作業でやっていて、個別のプログラムを作るという大きな負担をかけてやっていたわけです。
 優れた研究を支援したいという背景があって、各府省で、これは言ってみればサービスですよね。本来業務かどうかが分からないけれども、学会等の研究者の仕事が政策にも利用できるという判断を当然なさったわけで、そこのためのお手伝いということで難しいことをなさってきたわけです。私は、それでは駄目だということを20~30年前から言っていまして、統計担当部局の負担を軽減するためにシステム化して、データベースを作ることを何回か提案してきたのですが、今回のシステムでは、ほぼ実現されているとお見受けしました。とても良い取組だと思います。
 面白かったのは、申請の手続、資料3の16ページですね。これは事前相談を延々とやっていたわけで、本当に分析に慣れている方もいれば、公表されているデータを分析すれば分かるでしょうというような相談まで、私の知っている限りでも多様な相談があったわけですが、今後の提案は、そこを簡素化して、取りあえず事前相談は簡素化してやるということは、歓迎します。平均7日程度と書いてあるところで見ると、右側の最短1日、最長10日、令和5年度の方向性。16ページの下ですけれども、事前相談の後の申出から情報の提供までを短くするというのは、大賛成で、それこそデータベースがあれば、こういうことはできる。ただし、事前相談を簡素化するのは歓迎だと言いながら、適切にデータを使ってもらうためには、やはり時間を掛けて相談しなければいけない事案もあるはずです。一律にそこを削除されるのは、ちょっと心配だなという気がしました。その点だけです。
 ほかには、匿名データの作成に関して、私は総務省に設置された委員会に発足以来参加していますけれども、これは順調にいっていると思います。まだ課題が残っていますけれども、公表できない技術として、分析のためには有効でかつ匿名性が高いデータが作成できます。この点は総務省でも理解していて、近々この技術が適用できるようになると思いますので、是非、御活用いただけるといいかなと思います。もう1つ、オンサイト施設にもデータを提供されているということで、これもとても良い取組だと思います。
 1つだけ質問なのですけれども、マッチングキーの話がどこかにありましたね。資料2の13ページです。検討ということで、これは総務省でやるのかもしれないので、そこは統一して実施すればいいのですけれども、何を意味していらっしゃるのかが、ちょっとよく分かりません。事業所・企業は非常に難しいですが、法人に関しては法人番号でうまくいくということは分かりますが、個人事業主まで含めた企業と事業所、それから世帯、個人のマッチングについて検討はどうなさっているのか。分かる範囲で結構ですので、御教示いただけますか。よろしくお願いします。

○渡邉室長
 ありがとうございます。御質問の件、2点と理解しました。1点は事前に審査を適切にやるべきであるというお話かと思います。この点に関しましては、早期化しているわけではございますけれども、基本的な標準フォーマットというものを決めまして、そうではない、例えば特殊な項目を利用したいといったときには、やはり審査は長くなることになります。ただし、通常の申請内容は、ある程度は一般的なものになってきますので、そうしたものは、ある程度標準化していく形で早期化していくということで考えております。一方で、センシティブな項目といいますか、ちょっと特殊な項目については、審査は長くなるということにはなるかと思います。
 それから、総務省の検討事案につきましては、申し訳ないのですけれども、私どものほうもまだ動向を注視したいと思っております。

○小峰座長
 ほかにありますか。

○神林委員
 よろしいですか。今のマッチングキーのお話なのですけれど、厚生労働省独自にお考えになっているということはございますか。厚生労働省のほうで使っている独自の識別子というのがあると思うのですけれども、それをマージするといいますか、対応させるようなファイルを作るというような、例えば雇用保険番号などは典型的にそうですが、雇用保険の事業所と、事業所・企業の事業所の対応番号を作るというようなことはお考えになっているのでしょうか。

○白木企画官
 厚生労働省独自のマッチングキーについては、医療施設調査とNDBを接続するキーについて、省内の政策部局や先生方へヒアリングするなど、統計作成部局と技術的な検討を進めています。
 省外に跨るものについては、引き続き、ガイドラインなどいろいろな問題がありなかなか難しいので、今のところ検討しているのはそういうものかなと思います。

○神林委員
 ありがとうございます。

○小峰座長
 ほかはいかがですか。

○川口委員
 参考資料3の16ページに基づいて質問したいのですけれども、この審査の日数の中に事前相談の部分も含めるということで、そのトータルの日数で目標を設定していらっしゃるということは評価されるべきことだと思います。この事前相談の中で、「資料作成+審査を効率化」するということの中で、今までですと、論文の中に図ですとか表を基本的に含めるという形で申請書類を作ってきたわけですね。
 今日の資料でも、最後の25ページ目にEBPMの例が紹介されていて、同一労働同一賃金の効果について検証されているわけですけれども、実際に論文を書くとなると、こういう図表というのがものすごい数になっているというのが、今の論文の現状で、要するにそれを全て作成して、事前に審査していただくというのは余り現実的ではないということで、同一労働同一賃金の例で考えると、基本的には被説明変数が賃金だと。主な説明変数に関しては、同一労働同一賃金の規制が当たっている事業所だと。その他の変数は全て制御変数として使えますといったイメージが伝われば、恐らく審査はしていただけるのではないかと理解しておりまして、そういった形で実際に言葉で分析のイメージをお伝えするということで、審査書類を簡素化するという形で運用していただけると、これは申請する側もそうですし、審査していただく方々にとっても負担が軽減されるのではないかと考えておりますけれども、その点のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○渡邉室長
 ありがとうございます。御指摘の件でございますけれども、まず、結果表については主なものを添付していただければよいというようにしておりまして、また、回帰分析の結果についても、御指摘のように変数の指定で記載して問題はないと考えております。実際に今回の参考資料3の17ページの所に、ちょうどこの部分が記載要領の中にあって、(4)という所がありますけれども、こちらを見ていただきますと、例えば「本研究において当該調査票情報を利用して作成する主たる結果表は」とか、それから「この結果表に示す調査事項以外にも、申し出た全ての調査事項は、本研究に必要な分析(回帰分析等)に利用する」とか、こういったような記載としておりますので、同様の記載を頂ければ審査は可能と考えております。記載要領で明確化されておりますので、ほかの先生方にも伝わるのではないかと考えております。以上です。

○中室委員
 ありがとうございます。御存じのこととは思いますが、私は規制改革会議の医療介護のワーキングで委員をしておりまして、この調査票情報の二次利用の手続の効率化について、昨年しつこく言っていた人の1人は私だと思いまして、この時間の短縮について御検討いただいて、実際に令和5年度の方向性を出していただいたことについて、まずもって感謝申し上げたいと思います。御検討いただきまして、本当にどうもありがとうございます。
 実際に、今、16ページで示されている話が現実になるかどうかというところを、しっかりフォローアップしていきたいというのが重要なところかなと思うのですけれども、それに当たって、先ほど川口先生が御指摘になった点に加えて、やはりどうしても気になるのが、この審査日数の分布を見たときに、極端に長い人たちが一部いるということなのです。ここで一体何が起こっているのかということについて、差し支えない範囲でお教えいただきたいと思います。完全にイレギュラーということでそのようになっているということなので、ちゃんとこの7日間というところに、令和5、6年度に落としていけるという話なのか、結局このイレギュラーな、120日ぐらい掛かっている、あるいはものによっては公的機関の33条1号のほうだと360日ぐらい掛かっている人たちがいるということによって、平均を取ると長くなってしまうということは場合によってはあるのかもしれないとも思いますので、特別長くなっている人たちの所で何が起きているのかということが、もし分かりましたらお教えいただきたいと思います。

○渡邉室長
 参考資料3の12ページを御覧いただければと思います。「調査票情報利用状況②」の所にポツが3つありますけれども、真ん中の所に記載しております。今回は令和4年度に関しまして特に長かったのは、地方自治体になるのですけれども、利用に当たって、例えば有識者への依頼とか調整が必要な場合に、審査を、事前に内諾までは行っているのですけれども、正式な申請が遅れて出されるといったような話です。まずこれに関しては、今回の数字の出し方が土日とか申請側の手持ち時間も含めた数字になっています。これが精緻化されれば更に短くなると考えておりますので、実際に300日掛かったとしましても、実態としてそれほど掛かっているわけではないというところは御理解いただければと思います。
 それから、特に長いケースがどういうものかというので見ますと、1つの申請の中で大量の調査票情報を申請しまして、あまり優先順位を付けていただけないケースだとか、そういったケースになるかと思うのですけれども、そういったところは我々のほうも協力を頂くようにお願いしまして、優先順位を付けていただいて、分割して申請していただくなどのやり方で、短縮に向けた取組をやっているというところでございます。

○中室委員
 ありがとうございます。この場でなくても大丈夫なのですけれども、このように調査票情報の提供の早期化みたいなことが図られるようになると、先ほど美添先生からも御指摘があったように、例えば事前相談のところで十分なのかとか、あるいはその研究者の中でルーズな取扱いをする人が出てくるのではないかという懸念が必ず出てくると思うのですね。なので、例えば厚生労働省側から、研究者が取扱いをするときに、このようなことに気を付けるというようなガイドラインを自主的に作ったらいいのではないかという動きは、実は研究者側からもあるのですけれども、そのようなことで御要望があったりすると是非お聞きしたいなということ。
 あとは、この動きを厚生労働省だけではなくて、全省で今後は進めていかなければならないので、そのことに当たって何か御不便があるようなことがあったとすると、規制改革側でもきちんと議論していかなければいけないと思いますので、この場でなくても結構なのですけれども、是非また意見交換させていただければと思います。以上です。

○小峰座長
 どうぞ。

○吉川委員
 どうもありがとうございます。審査の期間が短縮化されたというのは、もちろん大変結構なことだと思っています。隔世の感があるのですが、1つ質問というか、厚生労働省に限らないのですけれど、この調査票利用みたいなことというのは、私はそれこそ原理原則の問題として、統計法の改正にも関係していることだと思っていて、20年ぐらい前でしょうか。美添先生と随分議論したと思います。御存じのとおり、昔の統計法の下では、統計というのは、作っている官庁も自分の行政のための統計であって、外部の人たちは使ってもいいけれど、言わばおまけである。当時、我々は道路で言えば軍用道路で、基本的には軍の道路ではあるけれど、空いているときには普通の車も通ってもいいと、このような建て付けになっていた。
 それを変えて、現在の統計法では、統計というのは基本的に有用な公共財の1つとしての情報、これが統計であってという、そういう建て付けにした。もちろん公表されている統計が基本なのですが、場合によっては公表されていない問題の調査票情報、それに関心を持つ人もいるかもしれない。
 そこで当時、美添さんとか私は随分議論して、当時の統計局、あるいは統計学の専門家の方々は、私からするとかなり保守的だったと記憶しています。
 つまり、先ほどから出ている研究者、典型的には今日も参加されている、私もOBなのですが大学の先生。私の立場は、大学の先生を高校生と区別する理由はないというのが私の基本的な考え方で、夏休みの自主研究に関心を持った高校生が、場合によっては、ある種の調査票情報に関心を持つということはあり得て、原理原則の問題としては、高校生と大学の先生を区別する理由はないというのが私の立場で、ただ当時は、「お前、何を言うか」というような感じだったのですが、基本的に私は、その考えは変わっていません。
 大学の研究者以外でも、こうした調査票の情報に関心を持つというのは幾らでも考えられると思うのですね。例えば、極端かもしれませんが、家庭の主婦が今のインフレの中で、消費者物価のいろいろな細かい情報に関心を持つということはあるかもしれない。あるいは観光関係の仕事、事業をやっている民間の企業が、これは国土交通省の観光庁なのでしょうか。ちょっと分かりませんが、法務省の入国でも何でもいいのですが、いわゆるインバウンド関係の統計に関して、公表統計以外の調査票統計に関心を持つということはあると思うのです。
 ですから、繰り返しになりますが、もちろん大学の先生の研究も大事で、研究者というのは、こうした調査票情報の、最初の顧客かもしれないのですけれども、民間企業、あるいは先ほどから言っているとおり、高校生というのも立派な国民ですから、そういう人たちの利用というのも大事です。
 一言で調査票情報と言っても、言ってみれば難易度というのでしょうか、何と言うのでしょうか。松竹梅があって、高校生に簡単に利用してもらえるような、ある種のサンプルというのを提供できるというようなお話だったので、私としては、まずは良かったなという感じなのです。厚生労働省に限らないのですけれど、やはり統計に関心を持つ人たちは多様だと思いますし、できるだけ門戸をオープンにしていただきたいです。
 ただ、調査票の場合にはいろいろとデリケートな問題があって、個人情報や何かの問題があるということは理解しているのですが、言わばいろいろなグレードを使って、この審査期間の短縮に取り組んでいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○渡邉室長
 ありがとうございます。先生の御質問は事前のときにもお話いただきましたけれども、現在の統計法第33条の建て付けとしては、機関とか人で縛るということはないのですけれども、例えば行政機関であるとか、その他自治体などで行う統計の作成と同等の公益性というものを求めておりますので、なかなかそこで高校生とか主婦というところまでは広がっていかないと思います。
 一方で、大学生に関しては、先ほど御説明しました匿名データを、例えば教育の一環として使っていただくことは可能になりますので、そういったところでデータに慣れていただくということは可能ですし、将来のためにもなるのではないかと思います。

○吉川委員
 こちらで見られるのは大学生ですか。高校生ですか。

○渡邉室長
 高校生に関しては、なかなか現状は難しいかと思うのですけれども、これは総務省だけの取組ですけれども、一般用ミクロデータといったようなデータで、調査票類似のデータを提供していたりもしますので、そういった取組が広がっていけば、更に活用が広がる、あるいは民間のデータなども当然ございますので、データにさわる機会というのは今後も増えていくのではないかと考えています。

○吉川委員
 分かりました。むしろ美添先生にお願いすることかもしれません。高校生といっても、何とかオリンピックとかいう人たちもいるわけですから、高校生と大学生を区別する理由も余りないかなと思います。よろしくお願いします。

○美添オブザーバー
 統計法改正のときに、統計の専門家が反対したと言われましたけれども、私は反対ではなくて、1980年代から既に何回も言っているとおり、ミクロデータの利用を促進するためのいろいろな仕掛けは、一橋にいた松田芳郎先生を中心にして、ミクロデータ利用の科研費の重点領域で6年間やったというのがきっかけになったのですけれども、そのときから私は多くの提案をしています。ミクロデータを使うには本当の専門家が使うものだけでは駄目で、教育用ミクロデータセットを作りたい。パブリックユースマイクロデータという言い方で海外では提供されているものがある。それを作りたいと延々と言ってきて、それでようやくできたのが、1つは匿名化標本。私はずっと委員をやっていますが、この手法で匿名化すれば安全になりますが、匿名化だけでは有用ではないのですよ。分析しても意味のないような匿名化の例は重要な世帯情報を消してしまうなど、こんな役に立たないデータを使っても仕様がないので、役に立つけれども匿名化できるデータセットを作ろうとしました。この点に関しては研究者以外にも若干広められました。まだ残念ながら高校生は駄目なので、これはまだ私も言い続けています。
 パブリックユースマイクロデータセットに近いものは、統計局で何回か作ってもらったのですが、これは吉川先生御指摘のとおり、我が国はまだ遅れているなと。アメリカだったら政府全体でマイクロデータを使えますよ。でも、あれは嘘がいっぱい入っているのですよ。「そんなデータでも本当にいいのですか」と言ったら、専門家は使いませんね。教育用ミクロデータは日本はなかなか作っていただけないのですが、分析の練習としてはとても良いことなので、そういうデータは、吉川先生が御指摘のように私も作りたい。機会があったらお手伝いしたいと考えています。
 だけれど、本格的な研究者のためには、匿名データでは無理なので、そのときは33条の手続を踏んでいただいて、役所側もそれなりの作業負担をするけれども、きちんとしたデータを提供して良い分析をしてもらう。この仕組みで2つを分けたいのですよ。本当のプロが使うものを全員が使ってもいいとなると負担が大きすぎて、なおかつ、使う人もかえって分からないと思うのですね。本当のマイクロデータを分析したら、コードブックから全部読む必要があって、「そんなことはやっていられませんよ」と言われてしまうので、パブリックユースの、高校生や中学生でも使えるデータセットは是非作りたいので、機会があればお手伝いいたしますということです。

○小峰座長
 ほかは、いかがですか。

○神林委員
 すみません、高等学校は、今は匿名データを使えるのではないですか。多分、それはチェックしておいてあげても。

○美添オブザーバー
 匿名データの審査をしますよね。大学生に使わせるのはできるということですか。

○神林委員
 できます。それはやっています。

○美添オブザーバー
 それはやりますよね。

○神林委員
 高等学校も多分、入っていると思います。

○美添オブザーバー
 ありがとうございます。では、私の理解が甘かった。中学生は駄目ですか。

○神林委員
 中学校は多分、入っていないと思います。

○美添オブザーバー
 そこで線を引きました。

○神林委員
 あとはパブリックユースデータと、この匿名データというのは、美添さんは違うというように考えていらっしゃいますか。

○美添オブザーバー
 微妙ですね。

○神林委員
 分かりました。ありがとうございました。

○美添オブザーバー
 国によって呼び方が違うので、何とも言いようがないです。

○小峰座長
 ほかはいかがですか。それでは次に行きましょうか。引き続き、説明をお願いします。

○小峰座長
 では、説明をお願いします。

○山田推進官
 それでは、最後になりますが資料2の16ページをお開きください。「EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進」ということで、厚生労働省におけるEBPMの取組について御紹介させていただきます。大きく2つ行っており、1つは16ページのEBPMの実践で、これは省内の全部局を対象に、予算プロセスの中でEBPMを実践していただきます。具体的にはロジックモデルを作成していただくということです。上の令和4年度に関しても、EBPMの取組方針を定め、予算プロセスの中でロジックモデルを使い、予算プロセスに活かしていくことを定めており、それを下期も引き続き実施したということです。
 具体的に申しますと、予算プロセスの中でロジックモデルを作成した事業の中から深掘りする事業を選び、さらに、最後の効果検証対象事業まで選定をし進めていくとともに、そういった取組に資するような事例集を作成し、こういった例がありますので御参考にということで、横展開をいたしました。そのほか、令和4年度だけではなく過年度のEBPM実践事業の中から実際に効果検証を行って、そういった結果も作成してございます。そして、こういった取組に関して、最後3つ目ですが、EBPM推進に係る有識者検証会ということで、厚生労働省のこうした取組に関して有識者に検証していただくということで、会自体は、令和4年度の実績で申しますと3回開催し、令和4年度の取組について令和5年2月検証結果を取りまとめ、それを厚生労働省のホームページで公表しているということです。
 こういった取組を中心に行っているわけですが、その助けになるよう、よろず相談窓口を設けており、全職員に対してEBPMの取組についていろいろな相談を受け付けるとか、1つ目の○の最後、3つ目のポツになりますが、EBPMの基礎研修という形で、基礎的な部分、さらに、応用研修という形で研修を行っており、職員のスキルアップに努めています。実際に研修していただいた方には、「おおむね理解できた」、「大変よく理解できた」といった回答を、9割以上の方から頂いているということが昨年度下期の実績です。
 今年度、令和5年度上期に関しても同じように、EBPMの取組方針を作成し、予算プロセスの中で、括弧の中にありますように、新規事業、1億円以上の大きな事業とかモデル事業、大幅な見直し事業、予算を5割以上膨らますような大きな見直しを行った事業等を対象に、ロジックモデルを作成する取組を今年も行っており、11部局11事業についてロジックモデルが作成されております。また、同じように、引き続きよろず相談を実施しており、そのほか、実際に予算プロセスの中で作成していただく実践担当者の方に、基礎研修をもっと簡単にし、実際実践するための部分を抽出したような研修ですが、実践担当者研修も上期に実施したところです。
 17ページを御覧ください。厚生労働省の取組のもう1つの柱が、上のほうの②、省内若手・中堅プロジェクトチームです。これは、省内の有志の方、自分でやってみたいという方に集まっていただいて、各サブチームを結成し、いろいろな分析を行っているもので、その中で令和4年度で申しますと、令和5年1月に同一労働同一賃金の効果検証の結果が取りまとまったということで、これを厚生労働省のホームページで公表したところです。先ほど御覧いただいた参考資料3の結果がホームページ上にあるものです。これ以外にもいろいろな分析を随時進めています。また、最後のポツ、JILPTと連携し、EBPMセミナーも実施しております。そうした形でスキルアップの一助になる取組をしているものです。
 17ページ下の(2)、今年度下期の取組予定です。こういった例年の取組を引き続き行っていくことを予定しており、EBPMの実践に関しては、作成していただいたロジックモデルから事業を選定するとか、今までやっていただいた実践事業の中から効果検証を実施するとか、有識者検証会においてそうした取組を検証していただくといった取組を予定しています。また、EBPMよろず相談は通年で実施しており、下期も引き続きやっていくとともに、基礎研修・応用研修を今年度も予定しています。
 もう1つの柱の省内若手・中堅プロジェクトチームに関しても、上期に引き続き、実際に分析を進めているところです。簡単ですが、以上でございます。

○小峰座長
 ありがとうございました。それでは、委員の方から何か御質問あれば。ちょっと私から1点だけですが、16ページの下の令和5年度の取組の中で、6年度の予算要求事業について、幾つか選んで概算要求のときに使っていると御説明がありますが、これは、要するに厚生労働省の中で使っているということであって、外の財務省に説明するとか、対外的に説明するとか、そういうところには使っていないということですか。

○山田推進官
 そこは適宜使用していただく考えでございます。

○小峰座長
 適宜。対外的には出るものと出ないものが。

○山田推進官
 資料としては、多分添付していただいているのではないかと思うのですが、実際に説明のときに使用されているかどうかは確認しておりません。相手もあることでございますので、そこはちょっとはっきりとはいたしませんが、EBPMに関しては、厚生労働省だけではなく政府全体で、予算プロセスを中心に、取り組んでいるところでございますので、そういったところで御活用いただければとは思っております。

○小峰座長
 それからもう1つ。これらの補正は対象にならないのですか。結構補正で、泥縄的に、重要なのがどんどん出てきたりするので大変で、そういったものはどうなのかなと思って。

○山田推進官
 この取組は予算プロセスが中心なので、補正に関しては明示的ではございませんけれども、EBPMの取組そのものは、別に強制して「こうやれ、ああやれ」というものではございませんので、各担当部局が、基本的には予算や政策立案の中でEBPMに取り組んでいくものだと考えているところでございます。補正で重要なものであれば、当然そういったものは作成するといったことはあるかとは思いますし、そのためにはどうしたらいいかという御相談があれば、よろず相談窓口の中で随時承りますし、専門家に御相談もつないだりしまして、実際にやるときにはお助けできるような体制になっているかなとは思っております。

○小峰座長
 ありがとうございます。ほかにどうですか。

○川口委員
 若手の方々、中堅の方々で勉強会をやられているというのは素晴らしいことだと思います。それで来年度以降のテーマとして、思い付きなのですけれども、提案したいことがあります。それは、まず、労働分野でも行政記録情報を使った知見というのが世界的にはたくさん積み重なってきておりまして、こういったデータを使うと、一体どういうことが分かるのか。それが日本に対してどういう含意を持っているのか。こういったことを調べるというのをテーマにされるのはどうかと、1点思いました。
 もう1つは、最近というか、今年の3月なのですが、御存じだと思うのですけれども、日銀のほうからワーキングペーパーが出ました。求人情報をスクレイプしたデータを使って、足下の賃金変化を調べるといった研究がされていて、そうすると、2020年くらいから大幅な賃金上昇が見られると。少なくともそれは提示されている賃金なので、実際に支払われている賃金ではないというところに当然注意が必要なのですけれども、その一方で、毎勤では賃金上昇はほとんど見られないという、かなり対照的な結果が出ていることがあります。その違いがどういうところから生まれているのか。もちろんサンプルの対象がすごく違うとかいうことがあるとは思うのですけれども、一体どういう理由によってそういった違いが生まれてきているのかは、恐らく、厚生労働省としても何らかの見解を持っておいたほうがいいことではないかと思うのですよね。
 ですので、今までのEBPMのロジックモデルというような、政策評価の枠組みからちょっと外れてしまうのですが、将来の統計をどういうふうに設計するかというようなことをテーマに置きながらやられるチームがあってもよいのかなと思いました。そういったところから、本部としてやっていくことにつながっているようなものが出てくることもあるのかと思いましたので、提案をさせていただきました。

○山田推進官
 研究テーマに関しましては、自発的に手を挙げていただいた方の問題意識等も踏まえてテーマをということで、こちらから指定させていただいているわけでは今のところありません。頂いた御意見に関しては、EBPMのこのチームなのかなというところもちょっとありますが、いろいろ幅広にやっていきたいと思っておりますので、そういったところも検討させていただければと思います。

○白木企画官
 ちょっと細かくコメントさせていただきますと、行政記録情報については、EBPMチームの中でも非常に関心が高く、そういうものを使って研究したいと言っている方もいっぱいいますので、データを持っている部局に丁寧に、交渉というか説明をしながら、そういった研究をどんどん開拓していきたいと思っています。実際去年は、川口先生や神林先生は御存じかもしれませんが、雇用保険のデータを使った分析などを行ったところですので、引き続きああいうものを増やしていきたいと思っています。日銀のワーキングペーパーについては、これも省内のエコノミスト中心に関心は結構高く、読んでいる方もたくさんいます。個人的には、著者が前職の日銀で一緒に論文を書いた仲間ということもあり、著者や省内の若手とも議論したところです。あの論文で使われたデータのベンダーとも話をしていますし、厚生労働省の中でも、ハローワークのデータを使った類似の分析が可能かと思いますので、そういったことを視野に入れながら、将来的に、統計の設計に対する貢献も視野に入れながら、分析計画を作っていきたいと思っています。

○小峰座長
 ほかはいかがですか。

○美添オブザーバー
 EBPMは、昨年も一昨年も拝見して、アウトプットで立派なことをなさって、相当優秀なメンバーがいっぱいいるなという感じですね。特に3を見ると、JILPTとの共同研究は、よほど偉い研究者と一緒にやっているのか、自力でこれができるのなら、相当な実力の持ち主がいっぱいいるということだと思うのですが、一般的な質問として、どういう方、そんなにすごいメンバーがいっぱいいるのかと。今年度、基礎研修を受けた25人、応用研修の10人はこの論文を書けるぐらいの実力をお持ちの方ですね。公務員だからそれはいるでしょうけれども、統計や、計量分析に関する知見をこれだけお持ちの専門家集団ってすごいなという印象なのですけど、その理解でよろしいでしょうか。

○白木企画官
 研修について申し上げますと、EBPMの応用研修については、東大の田中先生に、RDDやDIDに関する概念的な講義をして頂いています。とはいえ、時間が短く演習まではいかないので、実際に手を動かして分析をするというようなところまでいける方というのは、典型的には大学や大学院で、経済学ですとか統計学を勉強された方が中心というのが実態です。ただ、そういう方は若手の方も含めてそれなりの数いらっしゃいますし、留学等を経験して、学部でそういった勉強をされていなかった方でも、スキルや知見を蓄える方も相応にいらっしゃいます。そういった方を中心に、研究成果を幅広く作っていけるものと思っています。

○美添オブザーバー
 お願いなのだけど、これも統計改革のときに何回も言ったのですけど、そういう人たちは下手すると逃げて戻ってこない。逃げてもいいけど、戻ってきてくださいという、そういう職場に是非していただきたい。統計作成部局と大学、あるいは民間であるBOJでもいいですが、相互交流をもっともっと深めていただく。例えば、白木さんなんかがいらっしゃっているのでいいのですが、お戻りになって、また来てくれる。そういう体制を是非作っていただきたいと思います。そうすると、こういう人たちは然るべき大学に行ってもポストが取れるだろうし、逆に若手の研究者を省内に入れて活性化できる。統計改革推進会議で最終取りまとめにも書きましたので、是非、この省でも御検討ください。これはどなたに話したらいいのですか。田中さんに、よろしく御検討をお願いします。

○白木企画官
 1つだけ今のことについて申し上げると、この活動に関してはプレゼンチームという人たちだけが勝手にやっているということではなくて、局の幹部の方、それから元の幹部職員といった方のサポートも含めてやっている事業でありますし、分析計画を立てるときは、そういった政策担当部局の幹部の方も含めて御理解いただいた上で進めているものでありますので、そういった組織として幹部の方が認められたプロジェクトの結果が、それが評価されるというようなサイクルが将来の中で出来てくれば、それは若手の、実際にその分析をされる方のモチベーションの向上につながると思いますし、それ自体がそのキャリアを作っていく上でプラスになるというようなサイクルを作ることが重要だと思っています。現在そういうような方向で進めようと思っていますので、引き続き、こういった活動を続けていきたいと思っています。

○小峰座長
 ほか、いかがですか。

○渡邉室長
 すみません。先ほどちょっと申し上げたことなのですけれども、匿名データ、実は高校生も使えるそうです。ただし、教育に供することを直接目的にするということになっていますので、原則としては先生と一緒に使っていただくという形になるかと思います。

○美添オブザーバー
 自分たちでということでは。

○渡邉室長
 先生からの申請ということになると思います。

○美添オブザーバー
 確認が要る。

○渡邉室長
 はい、そうです。

○美添オブザーバー
 そうすればできると。

○渡邉室長
 はい、教わることはできると。

○美添オブザーバー
 だから、貸し出しは先生で、生徒を研究分担者に入れるという、共同研究に入れる、そういうことですよね。

○吉川委員
 私的には、先生と高校生の間に区別ないのですけど。

○美添オブザーバー
 いやいや、高校生のほうができますよ、僕より。

○小峰座長
 ほか、いかがですか。それでは予定しておりました議事は全て終わりましたが、全体を通して何か御発言があれば、何かありますか。

○美添オブザーバー
 くどいようですが、毎勤の話は是非外部の評価を上げるためにも、もっと真剣に。真剣にやっておられますけど、まだ足りない。それから統計全体について、個別に委員会をお作りになっているというのだけど、全体を見るような若手の統計学者を、是非いつでも相談できる人を作ってください。実は、国土交通省は作ったのですよ。あれだけ失敗したから当然だとおっしゃるかもしれないけど、若手の准教授クラスの方で、いつでも相談できるという人、よく協力してくれると思いますけど、その方はほとんど毎週のように質問に答える。若い方なので気楽に質問できるのですよ。それがないと、毎勤も相談できないのじゃないか。是非、真剣に御検討いただいているという雰囲気を出していただけると有難いと思います。

○小峰座長
 ほかにはいかがですか。特段ないようですので、最後に、事務局から連絡事項などあればお願いします。

○石津参事官
 皆様、本日はお忙しい中ありがとうございました。本日の議事録につきましては、後日、事務局から委員の皆様へ御確認をお願いさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。なお、次回の開催につきましては、また1年後に開催させていただきたいと考えておりますが、改めて事務局から御連絡申し上げます。事務局からは以上でございます。

○小峰座長
 ありがとうございました。本日は活発な御議論を頂きまして、大変ありがとうございました。これをもちまして、第6回の厚生労働省統計改革検討会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

照会先

政策統括官付参事官付統計・情報総務室企画法令係 小野、藤田

代表03-5253-1111 内線7345