第185回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和5年10月24日(火) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 職業安定局第一会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

議事内容
○伊藤調整官 事務局でございます。
 開催に先立ちまして、事務連絡でございます。
 本日は、こちらの会場とオンラインの併用で開催しております。
 部会中は、オンラインの方は基本的にはカメラはオンで、マイクはオフでお願いいたします。
 また、発言される際には、会場の方は挙手、オンラインの方はZoomの「手を挙げる」機能を使用いただき、部会長から指名があった後に、御発言をお願いいたします。
 また、前回開催時に御指摘いただいておりました、オンライン上における音声の乱れに対応するため、通信環境への負荷を考慮いたしまして、今回の部会より、資料の画面共有は行わないことといたします。
 恐縮でございますが、資料説明と御議論の際には、お手元の資料を御参照いただきますようお願いいたします。
 なお、傍聴は、別会場にてオンラインで行っております。
 進行に関する説明は、以上でございます。
○守島部会長 皆さん方、おはようございます。
 ただいまより第185回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
 本日の出欠状況なのですが、公益代表の小畑委員及び水島委員、労働者代表の三島委員が所用のため、御欠席となっております。
 それでは、頭撮りはこのぐらいまでとさせていただければと思います。
(報道関係者退室)
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、議題1に入りたいと思います。
 議題1は「雇用保険制度について」でございます。
 それでは、資料1「雇用保険の適用拡大について」について、事務局より御説明をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○鈴木調査官 雇用保険課調査官の鈴木でございます。
 資料1「雇用保険の適用拡大について」御説明させていただきます。
 本日、データ等を多く盛り込んでおりますので、多少御説明に時間がかかってしまいますが、御容赦いただければと思います。
 資料を1枚おめくりいただいて、2ページ目。
 「雇用保険の適用範囲と制度変遷」ということで、これまでの適用拡大の経緯について資料をおまとめしております。
 3ページ目「雇用保険制度の概要」でございます。
 こちらは、これまでも部会で示させていただいた資料でございまして、雇用保険制度の概要、全体像についての資料でありますので、割愛させていただきます。
 4ページ目「雇用保険の適用事業及び被保険者」ということで、雇用保険は一部の事業、農林水産業の個人事業のうち、常時5人以上を雇用する事業ではないもの(暫定任意適用事業)を除いて、労働者が雇用される事業を強制適用事業としているところでございます。
 雇用保険の適用事業に雇用される労働者を被保険者としているところでございますが、雇用保険法6条で適用除外について限定列挙しております。
 1週間の所定労働時間が20時間未満である者、同一の事業者に対して、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者、 季節雇用者等について適用除外とさせていただいているところでございます。
 5ページ目、現行の、特に1週間の所定労働時間が20時間以上であることという考え方でございますが、一番右上の「考え方」を御覧いただければと思いますが、雇用保険は、自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度であり、その趣旨に鑑み、保護の対象とする労働者を一定の者に限っているところでございます。
 一般に保険とは、同種類の偶発的な事故による危険にさらされている人々がこの危険の分散を図るために、危険集団を構成するものであるが、雇用保険制度においては、この同種の危険にさらされている人々として、週の法定労働時間が40時間であること等を考慮し、20時間を適用の下限としているという考え方でございます。
 6ページ目「雇用保険の被保険者と給付方式の種類」ですが、適用となりますと、(1)から(4)までの被保険者の4種類の類型いずれかに被保険者として該当するわけでございますが、それぞれ給付方式として、一般被保険者であれば基本手当ということで、離職前賃金の50~80%を年齢、被保険者期間、離職理由に応じて90~330日の給付日数の間、失業認定を受けた日について支給する方式がございまして、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者であれば、高年齢求職者給付金のような一時金という形での給付方式という形になってございます。
 7ページ目は、雇用保険と年金・医療保険で、社会保険の適用基準についての比較を簡単に図示したものでございます。
 雇用保険では、労働時間、雇用期間見込みについて着目しておりますが、上を見ていただければ「年金・医療保険」では、収入とか会社規模等によっても適用範囲が画されているところが見てとれるかと存じます。
 8ページ目「雇用保険の適用労働者の範囲の変遷」ということで、順次、適用範囲が拡大してきているところをサマリーとしておつけさせていただいております。
 9ページ以降で、それぞれの改正経緯について、少し簡単に御覧いただきたいと思います。
 9ページ目を御覧ください。
 最初に、雇用保険法の前身であります失業保険法が施行された昭和22年当初は、臨時的内職的に雇用される者は適用除外とされておりました。
 その後、昭和43年には、所定労働日が通常の労働者と同様、 1日の所定労働時間がおおむね6時間以上、常用労働者としての雇用見込み、賃金月額が扶養加算支給基準の年額の12分の1、その他の労働条件が通常の労働者とおおむね同様、他の社会保険の被保険者、といったところを適用基準としておりました。
 10ページ目、失業保険法から雇用保険法に変わりました昭和50年には、週所定労働時間通常の労働者のおおむね4分の3以上かつ22時間以上、年収52万円以上、反復継続して就労する者を適用基準としておりました。
 11ページ目、平成元年に適用拡大しておりますが、この際は、パートタイム労働者が質・量ともに増加してきたところを踏まえて、パートタイム労働者に対して適用拡大するという観点から、適用基準を緩和したものでございます。所定労働時間に関する要件のうち、通常の労働者のおおむね4分の3という要件を撤廃してございます。
 12ページ目、平成元年の適用拡大の際に、短時間労働被保険者制度という枠を創設しております。
 こちらは、短時間労働者への雇用保険の適用拡大を平成元年に行ったわけですが、その際、短時間労働者が、一般の労働者に比べて単に所定労働時間が短いのみならず、離職率が高く、一方で、求人が豊富で、就職が容易である等の特徴を持っていることから、基本手当等の受給資格要件・所定給付日数等について、一般被保険者と異なる扱いとして、短時間労働被保険者という区分を設けてございます。
 具体的には、下の「基本手当」の「賃金日額」を御覧いただきますと、一般被保険者に比して、短時間労働被保険者の賃金日額を低く設定してありますとか、所定給付日数を短く設定する枠で設定しておりますが、産業構造や勤労者意識などの変化に伴い、就業形態の多様化が進展していること等に鑑みまして、平成19年改正によって、この制度を廃止している経緯がございます。
 13ページ目は、適用拡大の経緯にお戻らせていただきますが、平成6年には、労働基準法改正により、週44時間制から40時間制になったことに合わせまして、週所定労働時間の要件を22時間から20時間までに引き下げてございます。
 平成13年、真ん中でございますが、雇用就業形態の多様化に対応して、収入の多寡によらず、経済社会における重要な労働力であることが反映されるよう、年収要件について廃止しているところでございます。
 平成21年は、当時のリーマンショックによる雇用情勢の悪化を受けて、非正規雇用労働者のセーフティネット機能を強化する観点から、雇用期間見込みについて、1年以上から6か月以上見込みまで緩和してございます。
 14ページ、同趣旨で翌年、平成22年に雇用期間見込みを6か月以上から31日以上まで拡大してございます。
 15ページ目、平成29年には、高齢者就労の高まりを受けて、それまで適用除外とされておりました65歳以上の高齢者を適用対象にするという改正を行ってございます。
 16ページ、直近では、令和4年1月から、65歳以上のマルチジョブホルダーに対して、本人の申出を起点に、単体では週所定20時間未満であっても、複数の事業所の労働時間を合算して、週の所定労働時間が20時間以上であることを基準として適用する制度を試行的に実施しているところでございます。その効果を、施行後5年を目途として検証するべきであるとされているところでございます。
 17ページ、18ページは、マルチジョブホルダーの試行事業に関する参考資料でございますので、割愛させていただきます。
 以上が、雇用保険の適用拡大に関するこれまでの経緯に関する資料でございます。
 19ページ目からは、適用拡大の今後の検討に当たって、関連するデータについて取りまとめさせていただいております。
 3つの観点から取りまとめさせていただいておりまして、労働市場の全体の動向、雇用保険被保険者に関するデータ。雇用保険被保険者以外の週20時間未満の短時間労働者に関するデータという3つの類型に沿って、データをまとめさせていただいております。
 まず、労働市場全体の動向でございます。20ページ以降で御説明させていただきます。
 21ページ目を御覧ください。「年齢階級別労働力人口の推移」でございますが、労働力人口は、近年増加傾向であったものの、2020年以降は横ばいとなってございます。
 22ページ目、男性の年齢階級別労働力人口でございます。全体的な傾向に大きく変わりはないものの、近年、60~64歳の階級において上昇していることが見てとれます。
 23ページ目「女性の年齢階級別労働力率」ですが、過去はいわゆるM字カーブを描いておりましたが、M字の底を中心に、全年齢で女性の労働力率が上昇していることが見てとれます。
 24ページ「女性の年齢階級別就業率」について、今度は雇用形態別に見た資料でございます。
 「正規の職員・従業員」は25~29歳がピークとなっており、女性の年齢階級別正規雇用比率は、いわゆるL字カーブを描いているところでございます。
 年齢別の就業率は、35~39歳を底に再び上昇していきますが、パート・アルバイト等の非正規雇用が主となっていっている状況でございます。
 25ページ目「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の推移」についてでございます。
 正規雇用労働者は、2015年に8年ぶりにプラスに転じて、8年連続で増加しています。
 一方、非正規雇用労働者は、2010年以降増加が続き、2020年、2021年は減少したものの、2022年は増加に転じているところでございます。
 26ページ目「非正規雇用労働者の推移」でございますが、雇用形態別に見ると、近年、パート、アルバイトが増加しているところでございます。
 27ページ目でございます。
 正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規雇用労働者)の割合は減少傾向となっておりまして、直近、2022年では、非正規雇用労働者全体の10.3%という状況でございます。
 家事や育児、介護等を理由に、パートタイムや有期雇用を選択するなど、正社員にこだわらない多様な働き方が広がっている状況が見てとれるかと存じます。
 28ページ「月間総実労働時間の推移」でございます。
 常用労働者、パートタイム労働者ともに減少傾向で推移しているところでございます。
 29ページ目以降は、賃金カーブについてでございますが、賃金カーブの推移を見ると、左側の図でございますが、2007年から2022年にかけてフラット化している状況でございます。
 産業別に見ると、それぞれ大きく状況が異なっている状況でございます。
 30ページ目「賃金カーブ(時給ベース)」でございますが、非正規雇用労働者は、正規雇用労働者に比べて賃金が低い状況が見てとれます。
 31ページ目「賃金カーブの比較」
 こちらは男性、女性ですが、男性については、左側、40代、50代前半の正規労働者について、賃金が低下傾向であることが分かります。
 一方、右側、女性については、正規・非正規ともに賃金水準が伸びている状況が見てとれるところでございます。
 32ページ、パートタイム労働者の時給は、この10年間で約2割上昇して、現在、2022年では1,242円という状況になってございます。
 33ページ目は、世帯の構成状況についての説明でございますが、男性労働者と無業の妻から成る世帯については減少傾向でありまして、1985年の936万件から、2022年の世帯数は半分以下の430万世帯となっている状況でございます。
 妻がフルタイムの共働き世帯は横ばいでありますが、妻がパートの共働き世帯は、2022年の世帯数は、1985年の3倍強の696万世帯という状況でございまして、全体として、世帯構成は共働きにシフトしている状況が見てとれるかと存じます。
 34ページ、勤労者世帯の実収入に占める世帯主の女性配偶者の収入の割合は、増加傾向で推移しているところでございます。
 先ほどの33ページ目と併せて見ますと、雇用労働者の中で、働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることが示唆されるかと存じます。
 35ページ目「転職入職率の推移」でございますが、男女計で見ますと10%前後、おおむね横ばいで推移しているところでございます。
 男性よりも女性のほうが、そして一般労働者よりもパートタイム労働者のほうが高い状況になってございます。
 36ページ目、離職前の職場の勤続期間でございますが、男女ともパートタイム労働者のほうが一般労働者より短い傾向にございます。
 37ページ目、転職者の離職期間について、直前の勤め先での就業形態が正社員の場合とパートタイム労働者の場合とを比較すると「1か月未満」の赤い部分が、パートタイム労働者のほうが10ポイント以上高くなっているなど、パートタイム労働者は、正社員よりも離職期間が短い傾向にあることが見てとれます。
 38ページ目、転職者について、直前の勤め先と現在の勤め先の就業形態の異同を見ると、直前の勤め先で正社員であった方は、正社員に転職した割合が高く、82.7%。
 一方、直前の勤め先でパートタイム労働者であった方が正社員に転職した割合、正社員以外に転職した割合は同程度となってございます。
 39ページ目以降は、兼業・副業に関する現状でございます。
 副業を希望する方は増加傾向であり、本業も副業も雇用者である者は増加傾向でございます。
 40ページ目、雇用者総数に占める副業をしている方の割合は、所得階層別に見ますと、本業の所得が199万円以下の階層と1000万円以上の階層で比較的高い状況でございます。
 副業をしている方を本業の所得階層別に見ると、本業の所得が299万円以下の階層で全体の3分の2を占めている状況でございます。
 41ページ目、本業を正規の職員である方に限って見てみますと、右側のグラフでございますが、本業の所得が300万円以上の階層で全体の6割以上を占めている状況でございます。
 42ページ目、今度は本業について、非正規雇用の方について見たデータでございますが、本業の所得が299万円以下の階層で全体の約9割を占めている状況でございます。
 以上が、労働市場全体に関するデータでございます。
 以下、43ページ以降では、雇用保険被保険者に限ったデータについて御説明させていただきます。
 44ページ目「雇用保険被保険者数の推移」でございます。
 直近、一番左下の令和4年度ですが、一般被保険者は4132万人。
 高年齢被保険者は333万人となってございます。
 45ページ目「基本手当の受給者実人員の推移」でございますが、令和4年度は40万5306人となってございます。
 46ページ目「基本手当の主要指標の推移」ということで、令和4年度、直近は初回受給者数が112万人、平均受給日数が108.8日、平均受給日額が5,092円という状況でございます。
 47ページ、適用事業所数は、企業規模30人未満の事業所が全体の約9割となっております。
 一方、被保険者数は、規模30人以上の事業所が全体の約8割となってございます。
 48ページ目、被保険者の性別で見ますと、男性が56.7%、女性が43%となってございます。
 年齢階級別に見ると、男女とも45~59歳が最も多いですが、その他の年代では構成比に差が見られない状況でございます。
 49ページ、一般被保険者を産業別に見ると「製造業」「卸売業、小売業」「医療、福祉」の順に多くなってございます。
 50ページ目「雇用形態別の適用状況」でございますが、いわゆる正社員が多く含まれる「その他」という部分が、一般被保険者数に占める割合が高い状況でありまして、次いで有期契約労働者、パートタイム労働者の順となっております。
 一方、一般被保険者に係る新規資格取得者数で見ると、正社員を含む「その他」が最も多いですが、全体の半数弱が「有期契約労働者」「パートタイム」「派遣」といった、いわゆる非正規雇用労働者となってございます。
 51ページ、一般被保険者に係る資格喪失者数、初回受給者数、支給総額について見ますと、非正規雇用労働者は、資格喪失者数や初回受給者数での構成比よりも、支給総額の構成比は低くなっている状況でございます。
 52ページからは、今回の適用拡大の対象となる週20時間前後の労働者に限ったデータでございます。
 週所定労働時間20時間以上30時間未満の方の適用状況でございますが、女性が約8割を占めて、男性は29歳以下、女性は45~59歳が最も多い状況になってございます。
 53ページ目、週所定労働時間20時間以上30時間未満に限った場合の産業別の資格取得者・資格喪失者でございますが、共に「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」の順に高くなっている状況でございます。
 続きまして「(3)雇用保険未適用である短時間労働者の実態」について御説明させていただきます。
 55ページ、以降、20時間未満の方々に対するデータでございます。
 55ページ目、週間就業時間が20時間未満である雇用者の数は、ここ数年は横ばいで推移しているものの、2013年以降増加を続けており、雇用者総数に占める割合も増加傾向であり、直近の2022年は13.0%という状況でございます。
 56ページ目、短時間雇用労働者、就業時間が20時間未満である雇用者数は718万人という状況でございます。
 就業時間別に見ると、全ての階級において雇用者数は増加傾向でございます。
 57ページ目、男女別に見ますと、女性が7割超を占めておりまして、男性は3割弱という状況でございます。
 就業時間別に見ると、週10時間以上の方が女性はおよそ7割、男性はおよそ6割という状況でございます。
 58ページ目、年齢階級別に見ると、65歳以上が最も多く、特に男性では34.3%を占めている状況でございます。
 女性も65歳以上の割合が最も多いですが、40~64歳の各年齢階級で10%前後の割合という状況で、分散している状況が見てとれます。
 59ページ目、企業規模別に見ますと、約半数が規模100人未満となってございます。
 企業規模別に雇用者総数に占める週間就業時間20時間未満である雇用者の割合を見ると、規模30人未満の割合が高くなってございます。
 60ページ目、産業別に見ますと「卸売業、小売業」が23.1%で最も高く、次いで「医療、福祉」の16.5%「宿泊業、飲食サービス業」の15.3%の順となってございます。
 61ページ目、産業別に雇用者総数に占める週就業時間20時間未満である雇用者の割合を見ると「宿泊業、飲食サービス業」で36.7%と最も高くなってございます。
 週就業時間が20時間未満である雇用者について、各産業別に細分化した週間就業時間階級別の状況を見ると、全ての産業で10時間以上の者が半数超を占めてございます。
 62ページ目、雇用形態別に見ると「パート・アルバイト」が約8割を占めている状況でございます。
 63ページ目「パートタイム・有期雇用の労働者が現在の所定労働時間で働くことを選択した理由」について聞いた調査でございます。
 「パートタイム」や「有期雇用」の労働者が現在の所定労働時間で働くことを選択した理由は、週30時間を境に、傾向に差が見られるところでございます。
 週30時間未満、赤い棒と青い棒でございますが「都合の良い時間帯に働きたいから」が最も多いですが「家事や育児、介護、その他があるから」「勤務時間・日数が短いから」といった理由も多くなってございます。
 一方、30時間以上の方、緑のグラフでございますが、御覧いただくとおり、選択理由はいろいろと分散している状況でございます。
 64ページ以下は、JILPTで今年7月から8月まで、ウェブ上の調査でありますが、1万人を対象に、週労働時間が20時間未満である15~74歳の方々について聞いたアンケート結果についてお示しさせていただきたいと思います。
 64ページは「収入の状況」についてでございますが、雇用保険未適用である短時間労働者について、従事している収入を伴う仕事の状況を見ると「家事がおもで仕事もしている」方が最も多くて、45.1%となってございます。
 65ページ「短時間勤務の理由」を見ますと「自分の都合のよい時間に働くことができるから」が最も多く、60.3%。
 フルタイムの勤務の希望の有無を見ると「ない」が76.9%という状況でございます。
 66ページ「入職経路の状況」でありますが「広告(求人情報誌・インターネット等も含む)」という経路が最も多く、41.0%という状況でございます。
 67ページ目「世帯の状況」ですが、婚姻関係については「既婚」が最も多く、52.9%。
 同居している人を見ると「配偶者」「子ども」「親」等となっておりまして、同居している子供の人数は平均して1.6人。
 同居している子供の末子について見ますと「18歳以上」が最も多く、37.9%という状況でございます。
 68ページ、年金収入等を含めた1か月当たりの収入については、週所定労働時間が多くなるにつれて、収入が高い傾向となってございます。
 主な仕事の1か月当たりの収入も同様で、週所定労働時間が多くなるにつれて、収入が高い傾向にございます。
 69ページ、主な仕事の賃金以外の収入の状況ですが、週15時間未満の各区分では「主な仕事の賃金以外の収入がある」の割合が多くなってございまして、主な仕事の賃金以外の収入は、年金収入のほか、他の就労収入、預貯金から得られる利子や配当といったものの割合が高くなってございます。
 70ページ目「賃金の使い道」でございますが「消費(生活上必須の物・サービス)」が最も多くて、57.3%という状況でして、就労収入の約半分が日常生活費用に支出されている状況でございます。
 71ページ、世帯全体の1か月当たりの収入を見ますと、週所定労働時間が多くなるにつれて、世帯全体の収入が高い傾向となってございます。
 世帯収入に占める本人の賃金の割合を見ますと「10%未満」の割合は、週所定労働時間が多くなるにつれて、減少傾向となってございます。
 72ページ目、世帯で最も収入が多い者を見ますと、週10時間以上の区分では「配偶者」が最も多く、週10時間未満の区分では「自分」が最も多い状況になってございます。
 73ページ、産業別に主な勤め先を見ますと、週5時間以上の区分では「卸売業、小売業」が最も多く、週5時間未満の区分では「サービス業(他に分類されないもの)」が最も多い状況でございます。
 企業規模別に見ますと「わからない」を除き、週15時間以上の区分では「1,000人以上」が最も多く、15時間未満の区分では「10~29人」が最も多い状況となってございます。
 74ページ目「主な仕事の状況」でございます。
 主な仕事の職種を見ると「サービスの仕事」が最も多く、25.9%となっております。
 週当たりの残業時間を見ると「残業はない」が最も多く、62.2%となってございますが「週5時間未満」の割合も21.1%と高い状況でございます。
 75ページ、主な仕事の1週間の出勤日数を見ますと「3日」が最も多い状況ですが「4日」「5日」「2日」も一定割合いるところでございます。
 76ページ目、主な仕事の勤続年数を見ますと、週5時間以上の区分では「5年超10年以下」が最も多く、週5時間未満の区分では「6か月以下」が最も多い状況でございます。
 77ページ、就業調整の有無についての問いですが「行っている」が31.3%になってございます。
 そのうち、就業調整を行っている理由について見ますと「自分の所得税の非課税限度額を超えないようにするため」が最も多く、49.8%となってございます。
 78ページ「副業の状況」ですが「行っている」が15.0%。
 うち、副業の数は「1つ」が最も多くて、81.7%となってございます。
 79ページ、副業の状況について、就労形態を見ますと「アルバイト(28.6%)」「パート(25.6%)」「内職(20.1%)」という状況でございます。
 副業理由についてですが「1つの仕事だけでは生活自体が営めないから」が30.8%。
 「副業の内容が楽しいから、好きだから」が28.4%という状況でございます。
 80ページ目、転職の経験について聞きますと「雇用者として仕事をしていたことがある」が51.1%。
 転職回数は「3回」が最も多い状況でございます。
 81ページ、フルタイムの勤務の経験があるかということでありますが「ある」が81.8%。
 直近の勤め先の週当たりの所定労働時間を見ると「週20時間以上」が最も多く、50.7%という状況でございます。
 82ページ、直近の勤め先を辞めた理由については「労働条件が悪かったため」「自分に向かない仕事だった」「出産・育児のため」といったところが多い状況でございます。
 直近の勤め先を辞めてから、現在の勤め先に入職するまでの期間については「2年以上」「1か月未満」という部分について割合が高い状況でございます。
 83ページ目、雇用保険未適用である短時間労働者について、雇用保険への加入希望を聞いたデータでございます。
 どの時間区分でも「加入したくない」の方が多くなってございますが、一方で、労働時間が長くなるにつれて、加入希望も多くなる傾向にございます。
 加入したい理由は、どの区分でも「失業給付を受けられるから」が最も多く約7割。
 加入したくない理由については、どの区分でも「保険料の負担があるから」が最も多く、特に労働時間が長くなるにつれて、その割合も高くなる傾向にございます。
 84ページ「育児休業、介護休業、自己啓発の経験」についてですが、いずれもほとんど経験がないという状況でございます。
 85ページ目、求職者支援制度について、周知状況、利用状況は、どの区分でも「知らない」が最も多い状況になってございます。
 86ページ目「コロナ禍における就業状況」について聞いたアンケートでございます。
 コロナ禍の就業状況を見ると、どの区分でも「就業していた」方の割合が多くて、労働時間が長くなるにつれて、その割合も多くなる傾向にございます。
 就労形態については、どの区分でも「パート」や「アルバイト」といった割合が高くなってございます。
 87ページ目コロナ禍の就業状況を見ると「影響はなかった」が最も多く、約6割という状況でございますが「労働時間の短縮」「シフトの削減」「休業(事業所側の事情)」等の影響もあったことがうかがえるデータとなってございます。
 88ページ目、休業した際の休業手当の状況を見ると「支払われた」が55.9%。
 休業手当が支払われなかった際の休業支援金・給付金の利用状況を見ると「申請していない」が85.7%となってございます。
 89ページ目以降は、雇用保険加入者・未加入者双方を対象とした調査について幾つか御提示させていただいております。
 こちらは、正社員で雇用保険が適用されている方の割合は92.7%であるのに対し、正社員以外のうち、パートタイム労働者で雇用保険が適用されているのは64.0%という状況でございます。
 90ページ目、パートタイム労働者の雇用保険の加入の有無について見ますと「加入している」が62.9%、「加入していない」が32.7%となってございます。
 産業別に見ますと「建設業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「医療、福祉」「教育、学習支援業」等において「加入していない」という青の部分の割合が高くなってございます。
 91ページ目、パートタイム・有期雇用の労働者について、雇用保険の加入状況を見ると「加入している」との回答が「有期雇用でフルタイム」の方は93.8%。
 「有期雇用でパートタイム」では65.5%。
 「無期雇用でパートタイム」は57.9%という状況でございます。
 以上、長くなりましたが、データについての資料でございます。
 92ページ目「雇用保険を受給できない者を対象とする制度」ということで、93ページ目に「求職者支援制度について」の資料をおつけしております。
 求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方が月10万円の生活支援の給付金を受給しながら無料の職業訓練を受講し、再就職、転職、スキルアップを目指す制度でございます。
 ここにございますように、求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方が対象となる制度でございますので、今回、雇用保険の適用範囲の議論と連動する関係にございまして、適用拡大を検討するに当たっては、一つの論点となり得るかなと認識しております。
 94ページ目、95ページ目については、求職者支援制度の制度概要でございますので、割愛させていただきます。
 96ページ目以降については、今回の適用拡大の検討に当たって、それに関係するこれまでの閣議決定についての資料でございます。
 97ページ目、今年6月に閣議決定されました「経済財政運営と改革の基本方針2023」におきましては「多様な人材がその能力を最大限活かして働くことができるよう、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築するとともに、個々のニーズ等に基づいて多様な働き方を選択でき、活躍できる環境を整備する。このため、週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大について検討し、2028年度までを目途に実施する」と規定されているところでございます。
 98ページ目、同じく6月に閣議決定されました「こども未来戦略方針」におきましても「子育て期における仕事と育児の両立支援を進め、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築する観点から、現在、雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者についても失業給付や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向けた検討を進める」「2028年度までを目途に施行する」とされているところでございます。
 99ページ目以降は、厚生労働省で開催しました「雇用保険制度研究会中間整理」を今年5月に取りまとめておりますが、こちらの議論の中で、今回の適用拡大に関する御指摘について抜粋させていただいたものでございます。
 大部でありますので、幾つか御紹介させていただきますと、99ページ目の「雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度の在り方」で、右下の○でございますが「事前の拠出を必要とする社会保険制度で制度を運営する観点からは、保険料の負担能力という要素は無視できない。雇用保険制度の適用対象とすることで、いざという時には保障があるが、保険料負担によって毎月の手取り賃金は減ることについて、国民が納得し、合意が得られるか」という御指摘がございます。
 100ページ目の左下でございますが「セーフティネットの手厚さを評価する際には、適用労働者の範囲の大きさという要素のみならず、給付の受給者割合、給付額・給付日数等の給付水準という3つの評価軸が必要ではないか」といった指摘もございます。
 101ページ「生計維持思想の具体化としての週所定労働時間20時間以上要件の妥当性」についての議論でございますが、左上「生計維持という理念の具体的な判断基準として、週所定労働時間20時間とする必然性はなく、20時間未満労働者の中にも生計維持のために仕事をしている人は存在する」。
 左下の○ですが「現行の適用基準では、週所定労働時間20時間で働くパートタイム労働者でも適用対象となっており、生計維持思想と合致しているとはいいづらいのではないか。失業時に生活危険を招くことは雇用保険制度の本質から要請されるものなので、生活危険とはいえないような労働は適用除外されると考えられるものの、その適用基準が週所定労働時間20時間ではない可能性もあり得る」という指摘もございます。
 102ページ目「生計維持思想の変更の必要性」については、2つ目の○ですが「週所定労働時間20時間未満の短時間労働者を雇用保険に包摂していくと、保険集団としての同質性が薄れていくことになるのではないか」。
 「雇用保険の適用にあたり、共働き世帯の増加や家計における女性の収入の位置付けの高まりを踏まえると、生計維持者を同種の危険にさらされている集団とする考え方を、失業した場合に生計に支障を与える生計の一端を担う者まで緩和してはどうか。主たる生計維持者でない者の賃金も家計の生計維持の役割を果たしているのであれば、その者が失業することは同種類の危険といっていいのではないか。その場合、給付はそれに見合った水準でよく、生計維持的ではない水準の給付となってもかまわないのではないか。もしくは、最低給付水準を設定することも考えられる」。
 右上ですが「労働者として働く以上、誰しも職を失うリスクはあるので、原則はすべての労働者が雇用保険に加入し、保険料を払うこととしてはどうか。これは働き方に中立的な社会保障という考え方に適合する。ただこの原則を貫くと、行政コストの面で非効率となったり、保険料を払っても給付が受けられない掛け捨ての問題が生じたりする可能性があるので、そうした観点から適用除外の範囲や保険料の負担方法を設定することも考えられる」といった指摘もございます。
 103ページですが「現行の適用対象労働者への影響」ということで、左上「現行の雇用保険制度は、週所定労働時間20時間以上の労働者を適用対象とし、適用労働者が企業を離職した場合のみならず、労働時間が20時間未満となった『部分失業』の場合にも給付が行われる。仮に適用対象となる労働時間を引き下げた場合、『適用基準=失業認定基準』という考え方を維持すると、現在適用対象となっている労働者も含めて、その引き下がった時間まで労働時間が減らなければ給付が出ないことになる。働き方が更に多様化していく中で、『部分失業』に対応しにくくなることは妥当なのか議論する必要がある」といった御指摘もございます。
 104ページ目「失業以外の保険事故に対して支給される給付」ということで、左上ですが「リスキリングやこども政策の強化が政策課題となっている中で、雇用保険の適用対象外となっている週所定労働時間20時間未満労働者も含めて、教育訓練給付や育児・介護休業給付を受けられることが重要」といった指摘もございます。
 その他、いろいろと御意見がございますが、時間の関係上、割愛させていただきます。
 105ページ目。
 以上、これまで適用拡大の経緯とかデータ、または今回の適用拡大に関係する閣議決定等について御提示させていただいておりましたが、それに関する論点ということで、5点ほど記載させていただいております。
 「経済財政運営と改革の基本方針2023」等において、週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大について検討し、2028年度までを目途に実施することとされていることについてどう考えるか。
 2つ目の○、雇用保険制度は「自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度」であるが、働き方や生計維持の在り方が多様化している中で、現行の適用範囲を拡充することの必要性についてどのように考えるか。
 雇用保険の適用拡大を検討するに当たって、その範囲について、どのような考え方に基づいて設定するべきか。
 以上の3つが、総論的な議論をお願いしたい部分でございます。
 下2つについては、そうした適用拡大をもし行うということであれば、新たな適用対象に対する適用や給付の在り方をどのように考えるか。
 失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業等について、現行の被保険者と同様に取り扱うべきか。
 その他、適用拡大に当たり、留意すべき点はないか。
 以上について、主な論点として提示させていただいております。
 参考資料として、106ページ目以降、諸外国の例について資料をおつけしておりますので、御参照いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明があった本件について、御質問、御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。
 大谷委員、お願いいたします。
○大谷委員 ありがとうございます。
 全国中央会の大谷です。
 雇用保険の適用拡大について、質問等も併せてお願いできればと思っております。
 将来的に適用拡大されて、セーフティネットが広がるといったことについては、大変よいと思っておりますが、コロナからの回復は不十分で、人手不足の状態がまだしばらく続くと言われている状況の中で、なぜやるのかといった説明が必要になってくるのではないかと思っております。
 また、不安定な非正規アルバイトなどの短時間勤務の方々の加入のメリットが本当にあるのかといったものについても、実施するのであれば、周知方法を考えていただかないとならないのかなと思っているところでございます。
 また、節税を考える方はどうしても出てきます。御説明いただきました資料1のスライド番号83にあるとおり、半数以上の方が加入を希望していない。
 また、今回のこの件につきましては、雇用保険の適用拡大は、少子化対策の一環ということでお話が出てきましたが、育児休業給付が受けられると答えた方の割合がかなり低いこともありますので、そちらの方面には響いていないのかなと思っているところです。
 また、年収の壁と同じで、加入の壁ができてしまって、副業を行って収入を確保できるなら就業調整してしまうとか、強制加入を嫌がってフリーランスになってしまう方が出るかもしれないということで、まだまだ課題が多くあると思っているところでございます。
 対象が増えることになると、中小企業の負担量が増大する。特に小規模な事業者につきましては事務負担が増えてくることになりますので、実際に実施することになった場合は、こちらについての御支援をいただきたいと思いますし、また、制度改正が保険料の引上げにつながらないように御検討いただきたいと思っているところでございます。
 それから、雇用保険制度だけでなくて、ほかの社会保険、年金とか健康保険にも関係してくると思いますが、年金部会等と連携されるのか、こちらについても教えていただきたいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 清田委員が手を挙げていらっしゃいます。
 どうぞ。
○清田委員 ありがとうございます。
 日商の清田でございます。
 今の大谷委員の意見とも重複する点もあるのですが、意見として述べさせていただきます。
 現在、非正規雇用者が増加しているおり、特に宿泊、飲食、生活関連サービスなど、労働集約型産業では、20時間未満の短時間労働者が非常に貴重な現場の担い手となっていること、それから、多様な働き方も増えていること、こうした点を踏まえますと、短時間労働者が安心して働き続けられる制度があることが望ましいと理解してございます。
 一方で、今、中小企業がコスト高で、業績の改善が伴わない中でも賃上げに取り組むなど、非常に厳しい経営環境にある中で、適用拡大によって保険料負担が増加する点を考えますと、事業主としては慎重にならざるを得ないと感じるところでございます。
 仮に適用拡大を今後検討していくというところでございますと、保険料負担の増加が見込まれる点について、中小企業に対して、どのように納得感がある説明を行っていくのかということについて、検討が必要になってくると感じてございます。
 また、育児休業給付や教育訓練給付も併せて、現行の雇用保険適用労働者と同じ取扱いにした場合、雇用保険財政にどのような影響があるのか、こうした点も整理しながら議論を進めるべきだと考えてございます。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問のある方。
 冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 この議論がスタートした第182回雇用保険部会でも申し上げておりますが、現在の週所定労働時間20時間を下回る労働時間で働く労働者への雇用保険の適用拡大については、短時間労働者へのセーフティネット拡大という観点から非常に重要な取組と考えております。
 適用拡大する際の週所定労働時間数について、先ほど大谷委員からも年金部会との連携等のお話がございましたが、現在検討が行われている健康保険、厚生年金の加入条件の緩和との整合性を図るなど、関係労使が納得できる制度設計とすることが必要だと考えております。
 また、セーフティネット拡大の観点からは、週所定労働時間という観点に加えまして、現在、雇用保険の強制適用事業から除外されている労働者が5人未満の農林水産事業などの暫定任意適用事業への適用の義務化を含めた検討を行うべきではないかと考えております。
 また、適用拡大した際の適用や給付の在り方について、週所定労働時間数によって給付内容が不利益にならないよう労働者を公平に保護する観点、また、制度の複雑化を防ぐ観点も含めて検討するべきではないかと考えております。
 また、これも以前申し上げておりますが、適用拡大に当たりましては、65歳以上に限定したマルチジョブホルダー制度のトライアルの結果の検証を行い、副業・兼業者への懸念や影響、想定される課題などをきちんと整理していただいた上で、副業・兼業時における雇用保険の加入の在り方や、失業の定義を検討すべきではないかと考えております。
 さらに、就業形態の多様化を受け、雇用と自営の中間的な働き方、いわゆる曖昧な雇用で働く方たちが増加しており、コロナ禍において、こういった方たちのセーフティネットの脆弱性が明らかになりました。
 まずは労働者性を見直して、労働者として保護される方たちを増やしていくことが先決だと思っておりますが、こういった方たちへのセーフティネットの観点も、給付と負担のバランスや労働者間の公平性といったものを考えると、雇用保険部会では切り離した議論になるかもしれませんが、その充実について考えていく必要があると考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 御説明ありがとうございました。
 適用労働者の所定労働時間及び雇用期間に係る要件の見直しが最後に行われた平成22年以降、働き方や生計維持の在り方は多様化していると認識しております。
 これを踏まえて、働き方に中立的な方向で適用拡大に向けた要件の在り方を検討することが必要と考えております。
 働き方に中立的な制度設計という観点からは、全ての労働者に適用することが理想ですが、一方、事業主、労働者の保険料と、一部国庫負担による保険制度であることに鑑みれば、働き方によって失業等のリスクの程度が異なることも踏まえる必要があります。
 こうした認識の上で、労働時間や収入にどのような基準を設けるのか、適用除外を継続することが適切であるかなど、慎重に議論を重ねることが不可欠だと思っております。
 適用拡大を行う場合には、新たに適用される被保険者が失業した際の給付についても、受給資格要件の在り方を含めた適切な制度設計の検討が必要と思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
○尾田課長 事務局でございますが、今、多数御質問的な御意見も含めていただきましたので、答えられる範囲でお答えさせていただければと思います。
 大谷委員から、なぜ今、適用拡大をやるのかという理由づけを十分に行う必要があるのではないかという御指摘をいただきました。
 これにつきましては、まず、背景としては、コロナ禍で、セーフティネットの在り方について、週20時間以上という雇用保険の適用にならない方に対するセーフティネットの在り方が問題提起されたと認識しております。
 一方で、今回、資料で御説明いたしましたとおり、働き方の多様化、あるいは週20時間未満で働いている方についても、週20時間前後で本当に働き方が違うのかというところで、実態を見ますと、様々な状況が見えてきたことをお示ししたところでございます。
 そういったコロナをきっかけとした問題認識、実態の変化を背景として、今回、こういった形で適用拡大が議題として上がってきたと認識しております。
 また、大谷委員から、20時間未満の方が加入のメリットを感じていないという御指摘がございました。
 確かに、83ページの資料でお示ししたとおり、約半数以上の方が加入したくないと回答し、その理由として「保険料の負担があるから」が最も多くなっております。
 ただ、83ページの右下を見ていただきますとその他の回答として、「加入する必要性を感じないから」「加入するメリットがわからないから」「よく知らないから」という御回答もそれなりにございます。
 こうした状況を踏まえますと、雇用保険制度について、どのような制度であるか、加入することのメリットがどのような点であるかということをしっかりと周知していくことによって御理解いただけるのではないかという可能性も感じるところでございますので、こういった点については、引き続き周知が非常に重要と考えておりますので、そういった点をやることによって、御理解が一定得られるのではないかと考えております。
 また、中小企業の御負担という点が大谷委員、清田委員から御指摘がございました。
 確かに、今回、資料でお示ししたとおり、20時間未満の労働者が雇用者に占める割合が高い企業は30人未満の企業で、他の企業規模より高くなっております。
 その結果、そうした企業での負担増は考えられるところでございますので、引き続き、私どもといたしましても、先ほども申しましたメリットの周知という点はございますが、中小企業の皆様にどういった形で御理解いただけるのかという点につきましては、引き続き委員の皆様からもお知恵をいただきながら考えていきたいと思いますし、どういった形でスムーズに適用が進められるかということは、様々な措置も含めまして、引き続き検討を深めていただければと思っております。
 また、大谷委員と冨髙委員から御指摘がございました、社会保険制度の検討との連携という点でございます。
 現在、働き方に中立な社会保障制度という論点につきましては、全世代型社会保障の観点から別途問題提起されていると認識しております。
 そうした中で、年金、健康保険でも適用の拡大が課題になっていると認識しております。
 ただ、具体的な今後の検討の在り方は、まだあちらのほうではっきりと見えておりませんので、そこのところは、御指摘のとおり、引き続き私どもといたしましても省内で連携いたしまして、方向性にそごを来さないように、今後とも検討してまいりたいと思っております。一方で、雇用保険におきましては、雇用保険自身の課題として、雇用のセーフティネットを拡大するという観点もございますので、そうした整合性と雇用保険独自の観点から引き続き検討をお願いしたいと考えております。
 また、清田委員から財政影響について御指摘がございました。
 この点につきましては、今後、今回の見直し全体につきまして、それぞれの財政影響は非常に重要な論点でございますので、いずれかのタイミングでそういったものもお示しして、引き続き御議論いただきたいと思っております。
 また、冨髙委員から、現在試行的に実施しておりますマルチジョブの検証について御指摘がございました。
 この点は、まず、今の実績でございますが、まだまだ人数が少なくて、219人の方がこれまで累計で適用されております。
 こうした方々へのアンケートも実施しておりますので、そうした結果につきまして、できれば次回のご議論の際にお示しできるように準備したいと思っております。
 また、フリーランスの適用について、冨髙委員から御指摘がございました。
 労働者性の問題については、労働行政全体の課題として認識しておりますが、非常に大きな問題でもございますので、これは労働行政全体として受け止めて、今後検討すべき課題と認識しております。
 漏れがあるかもしれませんが、以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 この議題について、御質問、御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですか。
 ありがとうございます。
 それでは、この議題については、これでとさせていただきたいと思います。
 次は、資料2-1と資料2-2に移りたいと思います。
 まず、事務局からこの2つの資料について、御説明をお願いしたいと思います。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。
 資料2-1と資料2-2に沿いまして、基本手当の関係の説明を申し上げたいと思います。
 基本手当等につきましては、9月7日の本部会において御議論、御意見を賜っております。
 その際に出た御意見などを踏まえて、資料を用意させていただいた上で、議論の整理をした上で、見直しの方向性をお示しさせていただきたいと考えております。
 まず、資料2-1を御覧いただければと思います。
 1ページ目以降「基本手当関係」の資料をおつけしております。
 2ページ目は、基本手当の給付制限の概要をお示ししております。
 正当な理由がなく、自己の都合により離職した方については、待期満了の翌日から2か月間は求職者給付(基本手当)が支給されない制度設計になってございます。
 3ページ目で「自己都合離職者数の推移」をお示ししております。
 これは前回と同じ資料でございます。
 4ページ目におきまして、受給資格決定を受けた自己都合離職者の方の数、月別の推移を令和2年10月、このときから給付制限期間を3か月から2か月にしておりますが、令和2年10月前後で見比べたものをおつけしております。
 前後で比較しても、傾向に大きな変化は見られない状況でございます。
 5ページ目におきまして、受給資格決定者数に占める自己都合離職者数の割合。これも月別にお示ししております。
 これも令和2年10月前後で見比べておりますが、受給資格決定者数の増加に伴い、令和2年度は、年度を通じてやや低くはなっておりますが、傾向としては大きな変化は見られない状況でございます。
 6ページ目におきまして「一定期間に複数回自己都合で離職した者の状況」をお示ししています。
 具体的には、2年以内に2回以上自己都合離職者として受給資格決定した方の割合を給付制限期間が変わる前の平成29年10月と令和2年10月とで見比べておりますが、こちらについても、いずれも1%程度で、給付制限期間の短縮前後で大きな変化は見られないといった状況が見られます。
 7ページ目におきまして「基本手当の支給額を逓減させている国の例」として幾つか載せております。
 例えばフランスでは、183日目以降、1日当たり87.65ユーロを超える部分は30%減額したり、イタリアですと、6か月目以降、1か月ごとに3%ずつ減額したり、基本手当の支給額を逓減させている国があるところでございます。
 8ページ目で、少し項目は異なりますが、賃金日額の上限額について、雇用保険制度研究会の中間整理で御指摘いただいた事項を載せております。
 上限額につきましては、毎月勤労統計調査により自動的に改定されているが、統計は後から修正することもあり得るものであり、それに応じて給付額も修正すると、かなりの事務的な負担・コストが生じる点は見直す必要があるのではないかという御指摘をいただいております。
 これにつきまして、どういうことかと申し上げますと、9ページ目に「基本手当の賃金日額の上下限額等の変更に関する規定」を載せております。
 基本手当日額の算定基礎となります賃金日額の範囲につきましては、毎月勤労統計における労働者の平均給与額の変動に応じて変更しているところですが、具体的には、法律の太字にさせていただいたところの「厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額」ということで、平均給与額の変動を見ておりますが、具体的には、その前々年度の4月から3月までの各月の金額を12で割ったものと、前年度の同様のものを見比べて比率としているところでございますが、この比率につきましては、例えば具体的には1.606…と、取れる範囲での桁数まで取っている状況でございます。
 それを10ページ目で、具体的に基本手当の賃金日額の下限額を設定する際に、取り得る範囲の桁数まで活用する形で活用して、それぞれの金額を出している状況でございます。
 一方、11ページ目でございますが、例えば年金の場合ですと、年金額も同様に、物価とか賃金の変動に応じて改定を行っておりますが、例えば新規裁定者、新しく年金をもらう方については改定率が2.2%ということで、具体的には、下の「参考」に書いてありますとおり、1.022と桁数が少なくなっている状況でございます。
 12ページ目以降「暫定措置関係」の資料をおつけしておりますが、13ページ目では、基本手当に係る暫定措置としては2つございます。
 一つは、雇用情勢が悪い地域に居住する方の給付日数を延長する暫定措置です。
 もう一つは、雇い止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等並みにする暫定措置。この2つが基本手当関係の暫定措置でございます。
 14ページ目でございますが「暫定措置の対象となる特定理由離職者の状況」をお示ししております。
 年齢階級別の割合については、特定受給資格者とほぼ変わらない状況。
 性別の割合につきましては、特定理由離職者のほうは、女性の割合が高い状況が見てとれます。
 15ページ目におきまして、地域延長給付の地域指定の推移をお示ししております。
 前回の部会では、令和4年度の2労働局2安定所とお伝えしたところですが、令和5年度におきましては、これに福岡西が加わって、3労働局3安定所が指定されている状況でございます。
 16ページ目以降で、地域延長給付と他に同じような趣旨の延長給付の概要をおつけしております。
 地域延長給付につきましては、雇用情勢が悪い地域に居住し、かつ、重点的に再就職の支援が必要であると認められる受給資格者に対して、給付日数を延長しているところでございます。
 これに類するものとしては、広域延長給付と個別延長給付がございます。
 広域延長給付につきましては、雇用状況等から、居住地域内での求職者の就業が困難であるため、広域職業紹介活動を行う地域の中で、必要があると認める地域において、所定給付日数を延長してございます。
 個別延長給付につきましては、難病にかかられた方以外にも、災害により離職した場合等に、重点的に再就職の支援が必要であると認めた受給資格者に対して、所定給付日数の延長を行ってございます。
 個々の詳細は、17ページ目以降で御説明させていただければと思います。
 地域延長給付につきましては、就職が困難な受給資格者以外の受給資格者のうち、特定理由離職者または特定受給資格者の方が、直近1か月で、有効求職者割合がリーマンショック時の平成21年1月時点の全国の有効求職者割合以上などの要件に該当する地域に居住する方が、再就職を促進するために、必要な職業指導を行うことが適当であると認められた場合には、延長することになってございます。
 18ページ目に「広域延長給付の概要」をお示ししております。
 有効求人倍率が急速に低下する傾向にある地域などで、広域職業紹介を行う必要があると認められる地域である広域職業紹介の対象地域のうち、以下のいずれかということで、直近4か月間の雇用保険の受給率が全国平均の2倍以上となる状況が将来も継続すると見られる地域などにお住まいの方で、他地域への移動意思があり移動が環境上からも可能である方、技能等から見て広域職業紹介による職業のあっせんが可能である方、技能等から見て当該地域内において短期間内に就職することが不可能な方、いずれの要件にも該当する方について、延長給付を行っている広域延長給付がございます。
 このほか、19ページ目で、個別延長給付ということで、右方の「就職が困難な受給資格者」以外であったとしても、特定理由離職者または特定受給資格者の方が、激甚災害や災害救助法が適用される災害により離職した場合に、重点的に再就職の支援が必要であると認められた場合には、所定給付日数を延長する個別延長給付も設けられております。
 あわせまして「求職者が広範囲の地域にわたる求職活動をする場合の雇用保険上の制度」を20ページ目におつけしております。
 先ほどの広域延長給付に加えまして、受給者本人と家族の移転に要する費用を支給する移転費とか、公共職業安定所の紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動をする場合、交通費及び宿泊料を支給する広域求職活動費も御用意しているところでございます。
 21ページ目は、その概要、詳細をおつけしております。
 ここまでが雇用保険における対応でございますが、これ以外にも地域雇用対策ということで、様々な雇用対策を行っております。
 22ページ目でございますが、地域雇用開発促進法がございまして、その中で、厚生労働大臣が雇用開発促進地域や自発雇用創造地域の要件を示した指針を策定した上で、都道府県が地域雇用開発計画を、市町村と都道府県が地域雇用創造計画を作成することとされております。
 これらの計画を厚生労働大臣が同意した場合には、雇用開発促進地域に対する支援として、地域雇用開発助成金の支給、自発雇用創造地域に対する支援として、地域雇用活性化推進事業を行うこととされております。
 23ページ目で、「地域雇用開発助成金」の概要を示しております。
 地域雇用開発助成金は、雇用開発促進地域において、事業所の設置・整備を行うとともに、当該地域内に居住する求職者を雇い入れた事業主に対して助成を行い、地域的な雇用構造の改善を図るものでございます。これにより、雇用情勢が悪い地域における雇入れ支援を行っているところでございます。
 24ページ目に「地域雇用活性化推進事業」の概要をおつけしております。
 市町村や地域の経済団体等から成る協議会において、就職促進の取組等を含む事業構想を作成し、その事業構想が魅力ある雇用や人材の維持・確保効果が高いと認められるものなどとして選抜された場合には、その事業を行うための委託費を支給するものでございます。これにより、雇用機会が不足している地域による、地域の特性を生かした魅力ある雇用などの維持・確保を図るための取組を支援している状況でございます。
 最後に、25ページ目におきまして「地域活性化雇用創造プロジェクト」の概要をお示ししております。
 地域活性化雇用創造プロジェクトは、都道府県が地域雇用の現状や課題、地域の関係者の意見等を踏まえ、事業主向けの支援等の事業を企画し、事業効果が高いものとして採択された場合には、事業費の8割を補助しているものでございます。これにより、地域における良質な雇用の実現を図っているところでございます。
 以上のとおり、雇用保険給付における対応だけではなくて、様々な取組により、地域の雇用が活性化するような支援などを行っているところでございます。
 26ページ目以降で「就業促進手当関係」の資料をおつけしております。
 「就業手当・再就職手当・就業促進定着手当の概要」をお示ししております。
 簡単に申し上げますと、就業手当については、受給資格者が職業に就いた場合、一定の所定給付日数を残して就職された場合には、基本手当日額の30%相当額を支給しているものでございます。
 再就職手当につきましては、安定した職業(1年超の雇用見込みのある職業等)に就いた場合であって、一定の所定給付日数を残されて再就職された場合には、支給残日数の60%または70%を支給しているものでございます。
 就業促進定着手当につきましては、早期再就職し、再就職後6か月間定着した場合ですが、再就職後の賃金が低下された方については、低下した賃金の6か月分を支給するところでございます。
 上限額につきましては、基本手当支給残日数の40%相当額、または30%相当額が上限とされているところでございます。
 28ページ目で、再就職手当と就業促進定着手当の双方を受給した場合の上限をお示ししております。
 いろいろな制度の拡充を踏まえて、給付率が拡充されているところですが、下の「双方受給時の上限」を御覧いただければと思いますが、現在は、所定給付日数が3分の1以上で再就職した場合、所定給付日数3分の2以上で再就職した場合ともに、最高で支給残日数の100%分が支給される制度となってございます。
 29ページ目以降で、それぞれ就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、有効求人倍率の推移をお示しするとともに、前回の部会の中でご指摘もありました、30ページ目において「転職入職者の賃金変動状況別割合」をおつけさせていただいているところでございます。
 これを踏まえまして、資料2-2を御覧いただければと思います。
 「これまでの議論の整理と見直しの方向性」をお示ししております。
 1ページ目は、前回の部会でお示しした論点でございます。
 これらの論点に対して、委員の皆様方から意見をいただいたものを順不同でございますが、記載させていただいております。
 2ページ目でございますが、基本手当に関して、基本手当の給付率等については、財源の課題はあるが、セーフティネットの充実という観点に鑑み、法定賃金日額などを平成12年改正前の水準までに回復することが重要ではないかという御意見がございました。
 一方、基本手当の給付日数の引上げについては、マッチングの改善や再就職後の賃金改善につながるという明確なエビデンスがないことを考えると、財政状況等を踏まえた上で、求職者の就職意欲を阻害することがないように慎重に検討していくべきではないかという御意見もあったところでございます。
 正当な理由のない自己都合離職者に係る給付制限につきましては、
給付制限期間を短縮していく方向が望ましいのではないか、給付制限については、一定の見直しが必要なのではないか、例えば「骨太方針2023」でも示されているとおり、一定の要件を設けた上で、自己都合と会社都合の差を縮めるなどのアプローチが考えられるのではないか、給付制限の趣旨に鑑みれば、一定の給付制限の維持は必要ではないか、見直しを議論するに当たっては、給付を目的とした安易な早期退職を誘発することがないような制度設計を検討するべきではないか、雇用保険財政に与える影響も踏まえながら検討することも必要ではないかといった御意見をいただいております。
 基本手当の暫定措置につきましては、災害により離職した場合には、個別延長給付により延長できることなどから、現時点で雇い止め離職者に対する暫定措置や地域延長給付を維持する必要性は低いのではないかといった御意見。
 雇用保険制度の運営は平時に戻っているため、暫定措置の効果を検証して、効果が薄いものは、暫定措置の終了も含めて、見直しを検討する必要があるのではないか、雇い止め離職者に対する暫定措置について、対象者の受給中の就職率が特定受給資格者を下回っている要因等を検証し、制度の恒久化も含めて、今後の在り方について検討するべきではないか、地域延長給付については、現在の実績が低い水準となっている原因についても分析した上で、今後の地域ごとに生じる雇用の変化への臨機応変な対応や地域雇用の維持など、幅広い観点で活用が進むように、基準等を見直してはどうかという御意見をいただいております。
 4ページ目で、就業促進手当についての御意見を記載しております。
 財政状況を踏まえ、就業促進手当のようなインセンティブとしての手当の支給が適切なのか、基本手当の給付水準を逓減させる設計がいいのか、再検討が必要ではないか。
 利用実態や効果を検証した上で、手当の統合や実効性の低い手当の廃止なども含めて、複雑化している事業を効率化していくべきではないか。
 政府がリスキリングによる処遇改善を政策の重点に置いていることを踏まえると、少なくとも就業促進定着手当の在り方については、再検討が必要なのではないか。
 いずれの手当も早期に安定した職業に就職する意欲を向上させるために、求職者にとって必要な制度ではないか。
 就業手当については、利用実績やハローワークでの運用状況など、利用者数の少ない要因を検証する必要があるのではないか。
 就業促進定着手当は、高年齢者をはじめ、再就職の結果、賃金が低下した労働者にとって、当面の生活を支えるために、引き続き必要な制度ではないかといった御意見をいただいております。
 これらを踏まえまして、事務局として「見直しの方向性(案)」としてお示ししております。
 「正当な理由のない自己都合離職者に係る給付制限期間の見直し」については、短縮する方向で検討することとしてはどうか。その際、給付を目的とした早期退職の誘発を抑制するために、現行の5年間で3回以上の正当な理由のない自己都合離職の場合には、給付制限期間を3か月とする取扱いの在り方も併せて検討することとしてはどうか。
 また、在職中も含め、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合に、給付制限を解除することとしてはどうかとさせていただいております。
 6ページ目におきまして「基本手当に係る暫定措置の見直し」の「見直しの方向性(案)」を記載させていただいております。
 特定理由離職者のうち、雇い止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等で離職した者(特定受給資格者)に対する日数と同じにする暫定措置については、引き続き支給状況等の検証を行う必要があることを踏まえ、検討することとしてはどうか。
 地域延長給付につきましては、対象地域が固定化しつつあり、対象者も少ないこと、地域ごとの雇用失業情勢の悪化に対しては、自治体による取組も含めた産業政策や雇用機会の開発を進めるとともに、広域での就職支援により対処していること、他の延長給付により災害や個別の事情に配慮して所定給付日数を延長することが可能であることを踏まえ、その在り方について検討することとしてはどうか。
 7ページ目におきましては「就業促進手当の見直し」の方向性の案をお示ししております。
 1年超の雇用見込みのある職業以外の職業に就いた場合に支給される就業手当について、支給実績や、人手不足の状況下においては、安定した職業への就職を促進していくことが求められることを踏まえ、その必要性も含め、在り方について検討することとしてはどうか。
 就業促進定着手当について、賃金が低下しつつも、早期再就職を行った方への支援として一定の役割を果たしている一方で、人手不足の状況が今後も一層深刻化することが見込まれる中、賃金の低下が見込まれる形での早期再就職にインセンティブを設ける必要性が薄れていることを踏まえ、その在り方について検討することとしてはどうか。
 最後に「その他」として、8ページ目で、賃金日額の上限額等の改定に用いる、毎月勤労統計調査を基礎として算定する平均給与額の前年度からの上昇率または低下率について見直すこととしてはどうかということで「見直しの方向性(案)」として事務局案をお示ししておるところでございます。
 説明は以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの点に関して御質問、御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。
 奥委員、お願いいたします。
○奥委員 ありがとうございます。
 見直しの方向性に触れる前に、基本手当について、かねてより労働者側から指摘しているところでございますが、雇用保険の趣旨であるセーフティネットの充実という観点を鑑みますと、原則的には、2000年、2003年の2度にわたって苦渋の決断により引き下げられた基本手当の水準を2000年改正前の水準まで回復し、基本手当を充実させるべきであると考えていることを改めて申し上げておきたいと思います。
 また、資料2-1の5ページで、受給資格決定者数に占める自己都合離職者数の割合を御説明いただきました。
 自己都合離職者に適用される基本手当の給付制限期間を短縮することで、安易な離職が発生してしまうのではないかという意見もございますが、このグラフの令和2年に2か月に短縮した際の割合の推移などを見ますと、離職への影響は小さいのではないかと考えております。
 なお、給付制限期間を短縮することが、政府が提唱する構造的な賃上げの実現のための労働移動の円滑化につながるのかについては、効果が薄いのではないかと考えておりますが、給付制限期間が長いと、無収入状態を脱するために就職を急ぐ求職者が、時間をかけて就職先を選択することができず、希望する就職先とのミスマッチが発生する可能性もございます。
 給付制限期間を短縮する方向性については、このようなミスマッチなどの抑制にもつながり得るものであり、望ましいものと考えております。
 最後に、賃金日額の算定方法の見直しにつきましては、受給者にとって不利益や混乱が出ないような見直しとする必要があると考えております。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続いて、清田委員、お願いいたします。
○清田委員 日商の清田です。
 ありがとうございます。
 基本手当の給付制限の期間見直しにおきましては、一定程度、安易な早期離職を抑制する方策を検討いただいたものと受け止めてございます。
 他方で、こちらに関しても、予測される財政への影響も踏まえた上で、改めて議論をしたいと希望するところでございます。
 また、就業促進手当につきましては、これまでの支給実績と効果を十分に踏まえて、本当に必要な制度であるかということを検証した上で、その在り方について検討するべきと考えてございます。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 では、大谷委員、お願いいたします。
○大谷委員 ありがとうございます。
 全国中央会の大谷です。
 給付制限期間の短縮につきましては、事務局案に書いていただいたとおり、こちらの方向で進めていただければと思っているところでございますが、短期間での離職を繰り返すような人がこれによって出てこないように、モラルハザードを起こさないようにやっていくことについて、効果検証を行っていく必要があると思っているところでございます。
 また、前回の議論の中で、リスキリングを加えることによって、離職を伴うといったような内容の発言がございますが、こちらにあるとおり、「在職中も」と書かれてしまうと、退職のための準備期間と捉えかねないこともありますので、その部分については、積極的には賛成し難いと思っているところでございます。
 また、リスキリングについて、要件とするのであれば、現行のものに加えて、どのような訓練が対象となるのかといったものについても、分かりやすく周知していく必要があるのかなと思っております。
 また、地域延長給付でございますが、御説明いただいたとおり、地域でそれぞれ施策が取られております。青森に聞いてみたのですが、五所川原は、制度改正以降、ずっと名前が出ているわけでございますが、そこであったとしても、人手不足の状況はあまり変わらないと聞いております。
 極端な話でいうと、フリーターがあふれているわけではないということでございます。全国的に日本人の労働者が足りずに、外国人の労働者を当てにしている業種もある状況でございますので、国の制度としては、役割を終えているのではないかとも思っているところでございます。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかにどなたか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 御説明ありがとうございました。
 4点申し上げたいと思います。まず、給付制限の見直しについて、セーフティーネットを現行の雇用維持型から労働移動推進型に移行していくべきという考え方に沿ったものであると認識しております。
 特定理由離職者に関しては、資料にも、雇い止めされた有期雇用労働者の基本手当終了までの就職割合が特定受給資格者全体より低い要因を引き続き検証と記載されておりますので、政策効果が低い暫定措置については、廃止も含めて検討すべきと認識しております。
 地域延長給付については、雇用情勢の悪い地域に着目して、要件を設定しているところですが、コロナ禍におけるテレワークの普及によって、場所にとらわれない働き方が一定程度進展していることを踏まえれば、地域を限定した暫定措置の必要性はこれまでよりも低下していると思っております。こうした点も踏まえた検討が必要と思っております。
 就業手当、就業促進定着手当については、労働力不足が一層強まることが見込まれている中で、実効性の低い手当は、統合や廃止を含めて検討していくべきと思っております。
 最後に、何度も暫定措置を延長することに素朴な疑問を持っています。何度延長できるかというルールはないと思うのですが、積極的な理由がないのであれば一旦やめてみることも一案ではないかと思います。仮に、「暫定措置は延長が当たり前」といった実態になってしまうと、暫定措置を講じることについて、慎重にならざるを得なくなるのではないかという懸念を持っていることを、念のため申し上げておきます。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続いて、内藤委員、お願いいたします。
○内藤委員 ありがとうございます。
 特定理由離職者に係る暫定措置について、見直しの方向に示されたように、まずは支給状況等の検証を行った上で、使用者から一方的に雇い止めとなった方に十分な就職活動を確保・支援する観点から、制度の恒久化も含めて検討する必要があると考えています。
 また、地域延長給付についてですが、現在は対象が少ないため、実績が低調ではあるものの、特定の地域における雇用情勢の悪化の際に、ハローワーク単位での指定が可能であり、かつ、対象者を直接支援できるものだと認識しています。
 一方、広域延長給付は、東日本大震災関連の実績しかないことを勘案すれば、単純に置き換えられるものではなく、あえてこのタイミングで地域延長給付を廃止する理由は見当たらないと考えています。
 以前も申し上げましたが、地域延長給付の要件を見直すなどによって、ほかの給付や支援ではカバーできない、真に支援を必要とされている方が、地域・地場での雇用を目指せるように、制度を見直して、継続すべきではないかと考えています。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 続いて、佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 どうもありがとうございます。
 私からは、賃金日額の上限額等の自動変更についてコメントしたいと思います。
 資料2-1の9ページ目にありますように、比率が「1.60657…」のように、小数点12位まであり、非常に細かい桁数の数値が用いられて計算されております。
 その前の8ページにもありますように、自分も委員として参加していた雇用保険制度研究会での議論や公的年金制度の例も踏まえると、必ずしもここまで細かい桁数の数値を用いる必要はないのではないかと感じます。
 この比率の数値について、分かりやすさ、確認作業のコスト、間違いのリスクの観点から、公的年金制度の改定に用いられている数値や、毎月勤労統計調査で公表されている数値の取り扱い方を参考に見直すことが考えられるのではないかと思います。
 11ページの参考としている令和5年度年金額の改定についてでは、年金額改定率は小数点1位までしか扱かわれておりません。
 例えば10ページにありますように、同じように小数点1位を基本手当の上限額、給付額の算出に適用した場合、すなわち比率を1.6%にした場合、例えば1つ目の賃金日額の下限額2,657円を使って計算すると、比率を小数点12位にして計算した下限額と、1.6%にして計算した下限額とでは、その違いはたったの0.17円です。
 今回、小数点12位の比率の小数点2位がたまたま「0」であるがゆえに、この差が小さいわけなのですが、この比率を小数点1位の1.6%と例えば1.69%で比較しても、違いはせいぜい2円程度しかありません。
 そう考えれば、先ほど述べた3つの観点から、比率の小数点以下の桁数を減らすことが好ましいのではないかと判断します。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、千葉委員、お願いいたします。
○千葉委員 ありがとうございます。
 まず、就業手当について、以前の議論で、支給実績が低調であることから、整理する方向で検討というような意見もあったところでございますが、安定的な雇用に就労することができずに、やむを得ず受給している方もいることを踏まえて検討が必要ではないかと考えております。
 もう一つ、以前も申し上げましたが、就業促進定着手当について、政策として賃金増加を伴う再就職を推進していることは認識しておりますが、実態としては、早期に再就職を目指す中で、転職時に3割以上の方が賃金減少しております。
 そのような方に対して、当面の生活を支えるためには、就業促進定着手当は必要であり、政策転換のたびに、本当に支援を必要としている方への対応がおろそかになってはならないと考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。
○尾田課長 事務局でございますが、今いただいた御意見のうち、幾つかお答えさせていただきたいと思います。
 まず、清田委員から財政影響について御指摘がございまして、これは先ほどもお答えいたしましたが、財政影響については、議論の上での重要な資料と考えておりますので、今後、いずれかのタイミングでお示ししたいと思っております。
 参考までに、受給資格者の中での自己都合離職者は、資料2-1の3ページでもお示ししておりますとおり、直近、令和4年度では74.6万人になっております。
 また、令和4年度の基本手当の自己都合離職者の方の受給総額は、2589億となっております。
 延長部分を除いた基本手当の支給総額は、その年で6210億でございますので、そのうちの2589億が正当な理由がない自己都合離職者、給付制限のかかる自己都合離職者の方が受け取っている額でございますので、こういった方々の受給行動がどう変わって、どう影響するかについては、いずれかのタイミングでお示しできればと考えております。
 また、大谷委員から、給付制限につきまして、在職中からのリスキリングという伝え方について御指摘がございました。
 これは前回も御指摘いただいたところでございますが、御指摘のとおり、我々としても、離職を促すという趣旨ではございませんので、そういった誤解が生じないように、ある意味労働移動に中立的なという観点からこういったことも対象としていくということが明確になるような表現に気をつけたいと思っております。
 また、対象となる訓練につきましては、私どもといたしましては、あくまでも職業に関連する訓練ということで考えておりますので、現在、教育訓練給付で指定対象となっているような訓練を念頭に考えているところでございます。
 また、平田委員から、暫定措置の趣旨について御指摘がございました。
 暫定措置については、時限の暫定措置と期限を切らない当面の間の暫定措置があります。本則の恒久措置も加えて、措置については、おおむねこれらの種類があろうかと思います。
 そのうち、今回、議論の対象となっております時限の暫定措置は、あくまでも期限を区切って、その間必要性があって講じる暫定措置という趣旨でございますので、そういった観点から、それをどうすべきか、御議論いただきたいということでございます。
 その他については、御指摘いただいた点を踏まえて、引き続き検討させていただきたいと思っております。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにこの件について御質問、御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですか。
 それでは、議題1については、以上とさせていただきたいと思います。
 事務局におかれましては、適用拡大及び基本手当等について、本日の議論を踏まえて、必要な整理を進めていただきたいと思います。
 本日予定されている議題は以上ですので、これで本日の部会を終了させていただきたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。
 これで終了いたします。