第26回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和5年9月8日(金)10:00~12:18

場所

全国都市会館 3F第1会議室

出席者

オブザーバー

議題

働き方・ライフコースに対応し公平で中立的な私的年金制度の構築について

議事

議事内容
○森戸部会長 
 皆さん、おはようございます。
 定刻になりましたので、ただいまより第26回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催いたします。
 皆さん、お忙しいところ、またお足元の大変悪いところお集まりいただき、ありがとうございます。
 本日ですが、小林司委員、原田委員、山口委員、小林由紀子委員、大江委員、島村委員、藤澤委員については、オンラインにて御参加いただいております。
 また、渡邊部会長代理が御欠席との連絡をいただいております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えていますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 事務局のほうですが、本日、橋本年金局長、大竹企業年金・個人年金課長は欠席とのことです。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。
○榎基金数理室長 
 基金数理室長でございます。本日、大竹課長に代わりまして事務局の説明を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料の確認でございますが、本日の資料としましては、資料1「働き方・ライフコースに対応し公平で中立的な私的年金制度の構築について」、参考資料1として「大江委員提出資料」、参考資料2として「私的年金制度(企業年金・個人年金)に関する今後の検討における主な視点」、参考資料3として「ヒアリング等における主な意見」、参考資料4として「企業年金・個人年金部会委員名簿」を用意しております。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。
 カメラの方がもしいらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。
 本日は、「働き方・ライフコースに対応し公平で中立的な私的年金制度の構築について」を議題といたします。
 まずは事務局から説明をお願いいたします。
○榎基金数理室長 
 では、事務局のほうから資料1について御説明させていただきたいと思います。
 資料1については、事務局のほうで準備した資料でございますが、本年4月から6月までに実施したヒアリングでいただいていた各種意見のうち、視点1の部分に関する資料をまとめたものでございます。御参考までにヒアリングで出ておりました主な意見については、参考資料3として配付させていただいております。時間の関係でかいつまんでの御説明となる点、どうか御容赦いただければと思います。
 では、ページをおめくりいただきまして、1ページを御覧ください。1つ目、拠出限度額に関しての資料でございます。こちらはヒアリングの中でDCの拠出限度額の引上げや、マッチング拠出における本人拠出額上限の見直し、あるいは拠出限度額の合算管理、また、生涯拠出限度額、キャッチアップ拠出、こういった御意見をいただいておりまして、これらに関連する資料を整理したものでございます。
 まずは現行制度の成立経緯・考え方に関する資料でございます。4ページ目を御覧いただければと思います。年金制度の仕組みということで、1階、2階部分の公的年金に加えて、3階部分に企業年金、個人年金が位置づけられているというものでございます。
 5ページ、企業年金制度の変遷でございます。退職金の普及から始まり、適格退職年金制度の創設、厚生年金基金制度の創設といった変遷を経ております。
 その上で、6ページ目を御覧いただきますと、バブル経済の崩壊や新会計基準の導入などもありまして、DB制度の創設、DC制度の創設に至っているということでございます。
 7ページ目を御覧ください。企業年金、個人年金制度も含めた全体像の変遷をお示ししております。丸の3つ目のところを御覧いただきますと、個人型DC(iDeCo)につきましては、国民年金第1号被保険者と企業年金のない第2号被保険者のための制度として創設されておりますが、それ以降順次加入可能範囲が拡大されまして、直近では被保険者種別にかかわらず国民年金被保険者全体を包括する制度となってございます。
 8ページを御覧ください。DB・DC制度の創設の経緯・期待されていた役割でございます。DBについては、老後の生活設計が容易ということで、長期雇用が中心の大企業で導入しやすいと考えられておりました。これに対して、DCについては、年金資産の持ち運び(ポータビリティ)が容易ということで、離転職の多い中小企業でも導入しやすい制度と考えられておりました。このように、DB、DC、それぞれ制度創設の経緯や期待されていた役割は異なるものでございますが、公的年金の給付と相まって、老後の所得確保の一層の充実を図るという点については共通しているということでございます。
 9ページを御覧ください。DBの制度的特徴の考え方でございます。DBについては、先ほどの変遷のところでもございましたが、適格退職年金、厚生年金基金の移行の受け皿としての位置づけになってございます。こうしたことを踏まえて、両制度の特徴を継承しているということでございます。
 10ページを御覧ください。DCの制度的特徴の考え方でございます。DCについては、個人の貯蓄と形態が類似しているといった点がございますが、その上で資産が老後の所得保障となることを担保するために幾つか要件を課してございます。こうした要件を課すことによって、DBの年金と同等の税制優遇措置が認められているといった点がDCの特徴でございます。
 11ページを御覧ください。DCの拠出限度額の変遷を表にしてお示ししております。
 12ページを御覧ください。企業型DCの拠出限度額の考え方をお示ししております。企業型DCの拠出限度額5.5万円の部分になりますけれども、こちらは厚生年金基金の望ましい上乗せ水準、具体的にはマクロ経済スライド調整後の公的年金と合わせて、退職前給与の6割に相当する水準を勘案して設定されたものでございます。具体的には望ましい上乗せ水準というものを給付ベースから掛金ベースへ換算するということをやっております。右下のところに計算式がございますが、このように一定のモデルを立てた上で計算した結果が5.5万円ということでございます。
 13ページを御覧ください。iDeCoの拠出限度額の考え方でございます。企業年金がある第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額は現行2.0万円、あるいは1.2万円の部分でございますが、こちらはマッチング拠出の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定されたものでございます。また、企業年金がない2号被保険者の拠出限度額、現行2.3万円の部分ですが、こちらは企業年金を実施している企業の事業主掛金と加入者掛金の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定されたものでございます。
 14ページを御覧ください。マッチング拠出における限度額の考え方でございます。マッチング拠出は、他の企業年金制度における加入者拠出限度額と同様に、事業主拠出限を超えない範囲での拠出が認められているということでございますが、こちらについては、下段の下線を引いている部分のとおり、企業型DCが事業主拠出を基本とする企業年金制度であるということを前提とした考え方でございます。
 15ページを御覧ください。第1号被保険者の拠出限度額の考え方でございます。現行6.8万円になってございますが、この拠出限度額については、厚生年金基金加入者に対する社会保険料控除とのバランスを勘案して設定されたものでございます。
 次ページ以降では直近の改正の内容とその考え方を整理しております。
 17ページを御覧ください。昨年10月に一部見直しがございまして、この表のマル1とマル2の部分について変更が加えられてございます。
 具体的には18ページを御覧いただければと思います。企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和を行ってございます。企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金との合算管理の仕組みを構築するということで、企業型DC規約の定めや事業主掛金の上限引下げがなくても、5.5万円から事業主掛金を控除した残余の範囲内でiDeCoの拠出ができるように改善を図ったというものでございます。
 もう一つの見直し内容としましては、19ページでございます。マッチング拠出を導入している企業の企業型DC加入者は、マッチング拠出か、iDeCo加入かを加入者ごとに選択できるようになったという見直しも併せて行っております。
 20ページを御覧ください。令和6年12月からまた別の変更が加えられる予定でございます。こちらはこの絵でいきますとマル2とマル3の部分に関連するものでございます。
 具体的には21ページを御覧いただければと思います。DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額の見直しでございます。DBを併せて実施する場合、これまでは全てのDBの掛金相当額を一律2.75万円ということで評価をしておりましたが、このDBの掛金相当額を一律ではなく、個別に評価するということを行った上で、企業型DCの拠出限度額を5.5万円からDBごとの掛金相当額を控除した額にするということを行ってございます。これによって公平できめ細かな算定方式にしたというものでございます。
 22ページを御覧ください。iDeCoの拠出限度額についても見直しを行っております。こちらも企業型DCと同様に、DBを併用する場合においてDBの掛金相当額を一律の評価から個別の評価に切り替えてございます。その上で、これまで区分によって限度額が2万円ないしは1.2万円と分かれていた部分について、一律2万円に統一するということも併せて行っております。このような形で公平を図ることにしたということでございます。
 23ページ以降は私的年金の現状に関するデータを幾つか御紹介しております。
 24ページ、DBの掛金の状況でございます。DBの掛金額の実態は、月額2.75万円より低いDBが多く、また分布の裾野は広く、DB間で大きな差もあるという状況でございます。
 25ページ、企業型DCにおける掛金の算定方法でございます。8割以上が昇格・昇級に伴って掛金が増えるタイプとなっております。
 26ページは企業型DCの掛金の分布をお示ししております。左側の円グラフを御覧いただきますと、5.5万円の限度額が適用される方の分布でございまして、上限の5.5万円になっている方が一定割合、4.7%いらっしゃる一方で、掛金額が2万円以下の方が過半数を占める状況になっております。
 27ページも同様に企業型DCの掛金の分布をお示ししております。別の区分、別の限度額が適用される方でございますが、主な傾向は先ほどのものと同じでございます。
 28ページは先ほど御覧いただきました企業型DCの掛金の分布につきまして、年齢階層別にお示ししたものでございます。今回の部会で初めてお示しする資料になります。こちらを御覧いただきますと、特に左側でございますが、限度額5.5万円が適用される方々の分布につきまして、高い年齢層ほど掛金総額が多い割合が高くなるという傾向がございます。また、赤の色をつけている部分が限度額5.5万円を拠出している方でございますが、こちらについても年齢が上がれば上がるほど割合としては増えており、50代のところではおよそ1割程度限度額に達しているという状況でございます。
 29ページを御覧ください。こちらも新しいデータでございますが、企業型DCの掛金分布、年齢階層別に見たもので、先ほどのものと別の区分でお示ししているものでございます。傾向としましては28ページのものとおおむね同じになっております。
 30ページ、企業型DCの拠出限度額を超えた場合の調整状況でございます。企業型DCの事業主掛金の状況を見ますと、事業主掛金の額が拠出限度額を超えている加入者が存在する企業が14.1%という状況になってございます。
 31ページを御覧ください。マッチング拠出の導入状況でございます。マッチング拠出を導入している事業所の割合は、直近の2021年度末時点でおよそ4分の1程度となってございます。
 32ページを御覧ください。企業型DCのマッチング拠出の分布を年齢階層別に見たものでございます。こちらも部会で初めてお示しするものでございます。御覧いただきますと、先ほどの事業主掛金の分布と同じように、年齢が上がれば上がるほど掛金も上がっていくという傾向が確認できます。
 33ページ、iDeCoの掛金の分布でございます。拠出限度額まで拠出している方の割合、左側の第1号被用者保険ではおよそ15%、右側の第3号のケースは半数近くになってございます。
 34ページは、同じiDeCoの掛金の分布を第2号被保険者について見たものでございます。いずれの区分で見ても限度額まで拠出している方の割合は非常に高くなってございます。
 35ページは、iDeCoの掛金分布を年齢階層ごとに細かく見たものでございます。こちらも部会には初めてお示しするものでございます。御覧いただきますと、第1号被保険者の分布になりますが、こちらは特段年齢階層間での顕著な差異は見当たらないという状況でございます。
 36ページ、同じ分布を第2号被保険者で見たものでございますが、年齢が上がれば上がるほど限度額まで拠出している方の割合が高くなるという傾向がございます。
 37ページは、第3号被保険者になりますが、こちらも先ほどの第2号と同じような傾向になってございます。
 38ページは、1つ試算をお示ししております。平均的な賃金カーブの下で、給与のピーク時の掛金が限度額の5.5万円となるように掛金率を設定し、40年間拠出し続けた場合、運用利回り1.5%のケースでは一時金換算額がおよそ2400万円となるといった計算結果になってございます。
 次ページ以降では少し将来像に関連する資料をお付けしております。
 40ページを御覧ください。「穴埋め型」/「共通の非課税拠出枠」に関連する資料でございます。これまで働き方や勤め先の企業によって受けられる税制上の非課税枠が異なっているなどの課題が指摘されてきたところでございます。この点に関して、非課税拠出の枠を公平にするとともに、分かりやすくするという観点から、iDeCo等を活用した穴埋め型や共通の非課税枠についての提案がなされてきてございます。左下の部分に粗いイメージがございますけれども、個人別に非課税拠出の共通枠を設定した上で、企業型の掛金を上限額から控除し、残余がある場合には個人型の拠出を可能にするというイメージになってございます。
 41ページを御覧ください。生涯拠出枠、キャッチアップ拠出に関連する資料でございます。こちらはヒアリングの中でも複数の団体から御提案、御意見等あったものでございます。企業年金の多くが賃金カーブに応じた設計となっているということで、若年期の未利用分を中高年期などに繰り越して使えるようにするといった生涯拠出枠、あるいは退職準備世代に対して追加の拠出枠、キャッチアップ拠出の枠を設定するといった提案があったところでございます。
 42ページ以降ではこれまで過去の議論を御紹介しております。42ページのところは、令和元年12月にこの部会で整理をしました取りまとめからの抜粋でございます。イギリス、カナダにおいて共通の非課税拠出限度額を設けているといった点、あるいは我が国の中でも「全国民共通の退職所得勘定」やiDeCoを活用した「穴埋め型」と言われる提案がなされているといった点に言及しつつ、こうした事例も参考にしながら、引き続き丁寧に検討を継続していくといった記載になってございました。
 43ページを御覧いただきますと、令和2年の部会の取りまとめの中でも同様の記載がございます。
 44ページは与党の令和5年度の税制改正大綱でございます。こちらの中でも、共通の非課税枠を設けるといった議論も参考にしながら、具体的な案の検討を進めていくとされております。
 45ページは、今年の6月に税制調査会のほうで出された答申からの抜粋でございます。太字の部分を御覧いただきますと、「各種私的年金に共通の非課税拠出枠や個人退職勘定の制度を設けることについて、中長期的な視野に立って段階的に検討・見直しを行っていくことも重要」と記載されております。
 また、拠出限度額の関係から少し離れますが、この後の受給の在り方に関する部分がございますので、こちらについてもここで御紹介しておきたいと思います。最後のパラグラフの部分でございますが、「税制が、給与・退職一時金・年金の支払や受給に関する企業や個人の選択にできるだけ影響を及ぼさないよう、引き続き、中立的な税制のあり方を検討していく必要がある」という記載も入っております。
 以上が拠出限度額の関係の資料でございます。
 46ページからはiDeCoの加入年齢・受給開始可能年齢の引上げに関する資料を御用意しております。こちらは昨年末に出ておりました資産所得倍増プランに盛り込まれた課題でございます。
 48ページは、資産所得倍増プランそのものの抜粋でございます。iDeCoの加入可能年齢の引上げにつきましては、「働き方改革によって、高年齢者の就業確保措置の企業の努力義務が70歳まで伸びていること等を踏まえ、70歳に引き上げる」とされてございます。
 また、iDeCoの受給開始年齢の上限の引上げにつきましては、「2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る」という形で記載をされていたところでございます。
 49ページは、この資産所得倍増プランを踏まえた今後の対応ということで、昨年12月にこの部会のほうでお示しした資料でございます。
 マル1のところでiDeCoの加入可能年齢の引上げに関して記載がございますが、「70歳まで引き上げることとする。詳細な要件等については、幅広い方々が公平に老後生活に備えることができる環境をつくることを基本として検討」としておりました。
 また、マル2の部分では、受給開始年齢の上限の引上げについて、「iDeCoの加入可能年齢の引上げを踏まえ、掛金拠出と運用を一定期間確保する観点から、次期年金制度改正に向けて検討」とされておりました。こうしたものを踏まえまして、今後具体的な部分の検討を進めていければと考えてございます。
 50ページ以降では、iDeCo加入年齢に関する制度の現状に関しての資料でございます。
 51ページを御覧ください。加入可能年齢に関するこれまでの制度の変遷をお示ししております。創設以降、対象の拡大等ございましたが、直近ではiDeCoの年齢要件を撤廃しまして、加入可能者の範囲を国民年金被保険者全体に拡大するに至っております。
 52ページでは、現行の加入可能対象者の範囲を図でお示ししております。赤の四角のところを御覧いただきますと、iDeCoの加入対象者の範囲については、国民年金に加入している者と同様の範囲ということで設定してございます。
 53ページについては、iDeCoの対象者の範囲をより細かく区分ごとに分けてお示ししております。図の部分を御覧いただきますと、第1号・第3号については60歳まで、任意加入被保険者・第2号被保険者については65歳まで加入可能となってございまして、このように区分によって加入可能の年齢に差異があるという状況になってございます。
 54ページは御参考までのデータでございますが、iDeCoの加入者数の推移でございます。足元のところでは順調に加入拡大が進んでおりまして、資料に記載してございませんが、直近7月末では300万人に到達をしてございます。
 55ページにつきましても御参考のデータでございます。高齢者の就業状況をお示しするものでございまして、2020年以降、就業者の25%以上を65歳以上が占めるといった状況になってございます。
 次ページ以降では受給年齢に関する制度の現状をお示ししております。
 制度の考え方について、57ページでございます。確定拠出年金では単なる貯蓄とは異なり、年金性を担保するという制度趣旨の下で、受給開始可能年齢を設定してございます。
 3つ目の丸になりますが、積み立てた資産を確実に自らの老後資産に利用する。これを言い換えますと、遺族への遺産形成を防止すると。こうしたことを目的としまして、受給開始年齢に上限を設けているということでございます。
 また、直近の改正を経まして、昨年4月からは受給開始可能年齢の上限を70歳から75歳に引き上げられたという状況でございます。
 58ページは、直近の改正の内容の詳細をお示しした資料でございます。
 59ページは、iDeCoの受給に関するデータをお示ししております。こちらも今回部会で初めてお示しするものでございます。御覧いただきますと、iDeCoの老齢給付金につきましては、60歳で受給を開始する割合が非常に高い、また、年齢にかかわらず老齢一時金を受ける割合が高いという状況でございます。
 60ページにつきましてもiDeCoの受給に関するデータでございます。こちらはiDeCoを年金給付で受給する方に限って受給期間、受給開始時の年齢別に見たデータでございますが、どの年齢においても約8割が5年ないしは10年の短期間で受給を受けているといった状況になってございます。
 61ページを御覧ください。平均寿命等のデータをお示ししております。平均寿命、健康寿命はいずれも伸びてきております。右側のグラフでは、年齢が上がるにつれ認知症有病率が上昇するといった傾向をお示ししております。
 62ページを御覧ください。平均余命のデータでございます。平均余命につきましては、これまで伸びてきておりまして、またこの先も伸び続けるという推計になってございます。
 63ページでは、iDeCoの加入者が亡くなられた場合の取扱いに関して資料をお示ししております。iDeCo加入者、受給中の方も含みますが、亡くなられた場合には、遺族からの請求により遺族に対する死亡一時金が支給されるという仕組みになってございます。その際の死亡一時金の金額は、iDeCo加入者が亡くなられた際の個人別管理資産額となってございます。
 64ページは死亡一時金に関するデータでございます。今回部会のほうで初めてお示しするものでございます。左側のグラフを御覧いただきますと、件数、受給者共に増加傾向にあるという状況でございます。
 ここまでがiDeCoの年齢の関係の資料でございます。
 65ページからは受給の在り方に関連する資料をおまとめしております。こちらはヒアリングの中であった一時金受け取りが多い等の現状を是正する点ですとか、受給の実務や税制に関連する資料として整理をしたものでございます。
 66ページを御覧いただきます。DBとDCの受給の形態をお示ししております。DB・DC共に年金支給が基本となってございますが、労使の合意に基づいて一時金選択の設定も可能となってございます。
 67ページは、実際の受給の現状をデータでお示ししてございます。DB・DC共に相当数が一時金受給を選択しているという状況でございますが、特にDCのほうでは企業型・個人型共に9割程度が一時金受給ということで、非常に顕著な傾向が確認できます。
 68ページはDCの商品選択の関連資料でございます。年金受給あるいは一時金受給を選択できますが、特に年金の場合の選択肢としましては大きく2つございます。1つは資産を現金化した上で、年金商品を購入するという選択肢。もう一つは運用しながら受給を選択するという分割取崩しといったものもございます。
 69ページは御参考のデータでございますが、退職金の主な使い道をお示ししてございます。生活資金に充てる人の割合が高い状況でございますが、住宅ローンの返済に充てる方も一定程度いるということでございます。
 70ページを御覧ください。受給方法のバリエーションに関する参考資料としまして、谷内委員が4月に御提出いただいた資料からWPPについての資料を転載させていただいております。
 71ページでは退職所得の課税方式をお示ししております。退職所得の課税において特徴的な点としましては、1つは分離課税であるという点。もう一つは退職所得控除額が比較的大きくなっているという点。さらには収入からこの控除額を引いた後に2分の1を乗じるという計算になる点。こういった点が挙げられるかと思います。
 72ページ、公的年金等控除制度の概要をお示ししております。こちらも収入額から一定の控除が可能になっているという仕組みでございますが、その控除額の大きさにつきましては、先ほどの退職所得控除に比べると限定的になっているという状況でございます。
 ここまでが受給の在り方に関する資料でございます。
 最後、4番目としましてその他を設けてございます。中身は2つほどございますが、1つ目は税制に関するものでございます。ヒアリングの中では、加入者掛金に係る税制に関する御意見、あるいは特別法人税の廃止に関連する御意見がございましたが、これらに関連する資料をおまとめしております。
 75ページは企業年金・個人年金の税制の全体像をお示ししたものでございます。特徴的な部分としまして、拠出時の従業員拠出の部分を御覧いただきますと、制度によって適用される税制が異なるという状況になってございます。また、運用時においても課税対象になっているといった点も特徴的かと思います。
 76ページを御覧ください。諸外国税制の諸外国との比較をした資料でございます。運用時の部分に注目いただきますと、諸外国では運用時は非課税としている例が多いということでございます。
 77ページを御覧ください。加入者掛金の所得控除についての概要をお示ししております。私的年金の加入者掛金には社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、または生命保険料控除のいずれかが適用されるという仕組みになってございまして、それぞれの控除額には違いがあるという形になってございます。
 78ページを御覧ください。御参考まででございますが、iDeCoとNISAの比較をお示ししております。iDeCoにつきましては払い出し制限がございまして、原則として60歳まで引き出し不可という制限があるということでございますが、こうした制限によって年金と同等の税制優遇措置が適用されているということでございます。この点がNISAと異なる点ということで挙げられるかと思います。
 79ページは特別法人税課税の考え方をお示ししております。企業年金の場合につきましては、事業主が掛金を拠出した段階で課税するのではなく、それを給付時まで繰り延べた上で、給付時に課税をするという仕組みが基本になってございます。この際、給付時まで繰り延べていることに伴って発生する遅延利子に相当する分として特別法人税というものが設定されているということでございます。
 80ページは特別法人税の沿革をお示ししてございます。平成11年度に課税凍結がされて以降順次延長が繰り返されまして、現在まで凍結が続いているという状況でございます。
 ここまでが税制の関係でございます。
 81ページ、国民年金基金に関する資料でございます。こちらはヒアリングの中で国民年金基金制度の加入者対象範囲を見直してはどうかという御意見があったことを踏まえて御用意した資料でございます。
 82ページは国民年金基金の制度概要をお示ししてございます。国民年金基金は自営業者などの国民年金のみに加入する者が上乗せして任意に加入できる確定給付型の個人年金制度でございます。また、国民年金に上乗せして加入する厚生年金に相当するものとして創設された制度ということでございます。このような経緯から、現在の加入対象者については第1号被保険者に限っているといった形になっております。また、税制上の取扱いにつきましては、国民年金基金制度が国民年金の上乗せ分という位置づけになっているということなどを考慮しまして、全額社会保険料控除という扱いになっているということでございます。
 83ページは国民年金基金の給付設計をお示ししたものでございます。1口目、2口目などございますが、1口目につきましては終身年金になっておりまして、加入者は必ず選択するという仕組みでございます。2口目以降については、終身年金、有期年金などから選択が可能になってございます。こちらは必須ではなく、限度額の範囲内で自由に複数の組合せが可能になっているといった設計でございます。
 84ページ以降には国民年金基金の事業概況や広報に関する取組などをお付けしてございますが、こちらは御参考ということで、説明のほうは割愛させていただきます。
 資料1につきましては以上となります。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 それでは、ただいま御説明のありました資料について議論に入りたいと思います。本日の議題は4つぐらいパートがあり、特に1番最初の部分について多くの論点があるかと思いますが、ただ、横断的な議論もあるかと思いますので、資料全体を説明いただいたので、論点ごとに区切らずに、全体をまとめて御議論いただきたいと思いますので、委員の皆様から御自由に御質問、御意見をいただきたいと思います。それでは、何か御意見がある方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。いかがでしょうか。では、谷内委員、お願いします。
○谷内委員 
 多岐にわたる御説明ありがとうございます。
 全ての論点について意見を申し上げたいところですが、時間に限りがありますので、今回は拠出限度額に関する事項に限定してコメントします。まず資料1の12ページですが、DCの拠出限度の在り方についてです。当時は、望ましい給付水準を示す指標として厚生年金基金の努力目標水準というものがあり、それを用いてDCの拠出限度額を決めるというやり方は理にかなっていたと考えますが、今後も引き続き厚生年金基金の努力目標水準を用いるべきか、という点については、今や厚生年金基金が5基金しかない状況を考えると、望ましい水準をベースにするという考え方は堅持しつつ、方法は変えたほうがいいと考えます。
 私自身も特段アイデアがあるわけではないのですが、例えば、公的年金のマクロ経済スライドの発動によって所得代替率が変わっていくことが見込まれていますが、こうした変化を取り入れるような計算の仕方などがあるのではないかと考えます。まず1点目です。
 続きまして、2点目です。資料1の40ページでは、穴埋め型や共通の非課税限度枠について説明があり、既にイギリスやカナダでは同様の仕組みがあるという話でした。
 しかし、日本では、一口に私的年金と言っても、企業年金と個人年金とでは性格や役割に大きな違いがあります。この両者の違いを踏まえると、個人年金すなわち個人が任意で拠出できる部分について共通の限度額を設けることは、多額の掛金拠出ができる高所得者層のみに税制の恩典が偏ることを是正する観点からは有益だと考えます。
 一方、企業年金すなわち事業主拠出も共通の限度枠に収めることについてはもっと議論が必要と考えております。これはまさに企業年金と個人年金の性質の違い、企業年金には給与の後払いあるいは退職金の分割払いという性質がありますけれども、事業主拠出と加入者拠出の取扱いを単純に揃えることについては熟慮すべきと考えます。これが2点目です。
 3点目は、資料1の41ページに記載のある生涯拠出枠とキャッチアップ拠出です。先ほど、同資料12ページの拠出限度額の考え方について変更すべきという話はしましたが、新たな拠出限度額の考え方の整理には時間がかかるとしても、この41ページで示されている生涯拠出枠については、現行の拠出限度額の考え方を維持したとしても拠出総額をより増やすという観点からは有効だと考えます。iDeCoの加入者の年齢分布を見ると、7割以上が40歳以上の年代で占められています。これは、ある程度の年代に到達しないと老後のことを真剣に考えないという当然の帰結でして、若いときに拠出限度額を全額活用し切れないところを、生涯拠出枠やキャッチアップ拠出で補うという考え方は有効と考えます。2024年から施行される新しいNISAにも生涯投資枠の考え方が導入されているので、これらと平仄を合わせる点からも理にかなっていると考えます。
 まず、拠出限度額について、以上3点です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。3点とも非常に重要なポイントでして、今後それぞれについてより深く議論していかなければいけないと思います。そういう御指摘をいただいたと思います。
 1点だけ、私もついでに言わせていただくと、12ページの企業型DCの拠出限度額の考え方ですが、谷内委員は非常に慎重におっしゃっていましたけれども、私も、もともとの説明はこれだけれども、今はそろそろ新しい基準なり考え方をしたほうがいいのではないかと個人的な意見ですけれども思っております。ほかの点もいろいろありますが、またより深く議論するときに議論していければと思います。
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。冨樫委員、お願いします。
○冨樫委員 
 御指名ありがとうございます。
 私から2つの意見と、資料について伺いたい点が1つございます。
 1点目は拠出限度額についてです。企業年金は退職給付由来ですし、後払い賃金としての性格も有しております。また、労使合意の下で実施されている制度です。42ページの議論の整理にも記載がありますが、共通の非課税拠出枠や生涯拠出枠の設定によって、例えばDB単独で実施されている場合に拠出額が制限され、労働者にとって不利益になってしまう可能性があります。したがって、DBの拠出限度額の設定については行うべきではないという意見です。
 2点目はマッチング拠出についてです。14ページにも記載がありますが、企業型DCは事業主拠出を基本とする企業年金制度であり、マッチング拠出はあくまで企業年金の上乗せの制度です。制限が撤廃されると、事業主の掛金が労働者に転嫁されてしまうとの懸念があります。また、以前部会の中で、企業側が拠出額を増やすインセンティブを阻害する方向に向くのではないかとの懸念に関する発言もありました。これらの懸念が払拭されない限り、現行の制限を維持すべきとの意見です。
 それから、32ページの年齢層別の拠出額の分布についてです。御説明いただいたとおり、年齢が若いほど拠出額は低く、年齢が高いほど拠出額が高くなっています。事業主掛金が低い若年層ほど、そのことを理由に本人の拠出額が低くなっている可能性ももちろん否定はできません。しかし、あくまでもこれは拠出の状況であり、限度額については示されていません。例えば、初任給の引上げの報道もありますが、実態として若年層は賃金が低いために拠出ができない可能性もありますので、拠出限度額と実際の拠出額の関係が重要と思います。
 2019年3月の本部会での損保協会様の資料のように、拠出額と限度額の関係が分かる、さらに年齢別で分かるようなデータを今後準備いただけるようであれば検討いただきたいと思います。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 1点目、2点目は既に前から繰り返しいただいている御意見かと思います。3点目は御質問、確認、データの提出、準備してくれというお願いかと思いますが、32ページの話です。これは拠出額の年齢別のデータですけれども、これと実際の限度額を示した上でのデータがあったほうがいいのではないかという御趣旨ですか。
○冨樫委員 
 そうです。枠がここまでで実際はここまで拠出しているとの現状を知ることが必要と思います。
○森戸部会長 
 究極的には何でこれだけしか出さないのかは調べようがないところもあるのだけれども、ただ、限度額は一応ありますから。事務局はどうでしょうか。
○榎基金数理室長 
 ありがとうございます。
 今、冨樫委員から御指摘いただきましたとおり、32ページの資料はあくまで拠出している金額のみをお示ししたものでございまして、限度額との関係はこのデータからでは読み取ることができないというものでございます。おっしゃっていただいたとおり、限度額と実際の掛金をクロスして集計しているようなものがないかということですけれども、我々、手元にあるものでは今の段階ではないというのが現状ではございますが、先ほど御提示いただいた損保協会のデータなども確認させていただきながら、何かお示しできるものがないか、精査をしてみたいと思います。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 では、それは次回に向けて用意すべきものを確認の上、準備をしていただければと思います。
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では、小林洋一委員、お願いします。
○小林(洋)委員 
 御説明ありがとうございました。
 私のほうからはコメントが1点と、事務局のほうへ御質問2点ということで、申し述べさせていただきます。
 1点目は、私からのコメントでございます。以前の会議でも申し上げておるのですが、繰り返しで大変恐縮ですが、私は、私的年金制度を既に利用している個人・企業の利便性の向上に加えて、現在制度を活用できていない個人や企業に対する普及拡大という視点での議論が重要だと考えております。
 資料43ページの下部に記載されておりますけれども、私的年金制度を働き方や勤め先の違いによって有利・不利が生じない制度とすることで、シンプルな制度となり、分かりやすさが向上して、制度未利用者の活用意欲を喚起するのではないかと思います。ぜひ、制度の簡素化という観点も意識して、具体策の検討をお願いしたいと思っております。1点目はコメントです。
 2点目は、iDeCoの加入可能年齢についての御質問であります。資料53ページに被保険者区分ごとに条件が異なっているとの記載がございます。私的年金制度が公的年金制度を補完する位置づけのものであるならば、加入可能年齢の統一により、公的年金制度に何らかの悪影響を及ぼすおそれがあるのか、それともないのか。厚生労働省の御見解をお聞かせいただければと思っております。
 3点目は、iDeCoの最低拠出額についての質問です。第24回の部会で、iDeCoの最低拠出額が5,000円であることが所得の低い若年層の制度活用のハードルを高くしているとの指摘がございました。普及拡大に向け、最低拠出額の見直しも必要になると思うのですけれども、本日の資料に記載が見当たりませんでした。今後議論をしていくのか、厚生労働省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 1点目は、前もおっしゃっていただいたことなので、改めてということで承っておきたいと思います。
 2点目は、53ページの資料にあるように、iDeCoの加入可能年齢は、今はこういうふうにいろいろ違うのですけれども、このことの、公的年金制度の、統一することによる悪影響とおっしゃいましたかね。
○小林(洋)委員 
 はい。
○森戸部会長 
 公的年金への悪影響は、厚労省事務局から言えるかどうか分からないですけれども、2点目について、コメントがあればお願いします。
○榎基金数理室長 
 ありがとうございます。
 年齢の関係になりますけれども、そもそもなぜ今、区分によって60歳なり65歳に分かれているのかという点でございます。こちらは、基本的に今のiDeCoの加入者というのが、国民年金に入っている方に限定をしているということでございまして、60歳ないしは65歳を超えると、公的年金の世界ではむしろ受給が始まっていくという形になります。我々のiDeCo側での考え方としましては、iDeCoそのものは公的年金の上乗せだという位置づけであることを前提としまして、公的年金を受給し始めた方というのは、既に掛金を拠出して老後のために年金資産を積み増すという段階にはないのではないか。このような考え方で公的年金の加入範囲に合わせて設定してきたというのがこれまででございます。
 これが現状ではございますけれども、今後それを取っ払って一律70歳まで引き上げるのかどうかといったことを検討していく段階に入ってきているわけでございますので、これまでの考え方を転換していくような形が必要になってくるかと思います。その点につきましてはどういう整理が可能なのか。制度の趣旨としましても、昨年末の議論でもございましたが、「公的年金と相まって」というところをどう整理するのかということも関係してくるかと思いますので、こちらにつきましては事務局のほうでもしっかり整理をしまして、今後何らかお示しをさせていただきたいと考えております。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 悪影響かどうかはともかく、新しい説明というか、そういうことは必要なのだろうと思います。それはまた今後考えていきたいと思います。
 3点目については、例のiDeCoの最低拠出の5,000円の話ですが、これだけのページでまさかない資料があると思わなかったですけれども、これが今回の資料には載っていないということなので、それは議論しないのかという御質問です。しないということではないと思うのですが、一応事務局に確認したいと思います。
○榎基金数理室長 
 御指摘ありがとうございます。議論としては除外しているつもりはございませんので、今後も御議論させていただきたいと思っています。本日のところはなかなかピンポイントの資料が御用意できておりませんで、大変申し訳ございませんが、iDeCoの掛金の分布状況の中を見ますと、5,000円掛けている方がどの程度いるかといった状況は御確認いただけるような形で御用意はさせていただいたつもりでございます。
○森戸部会長 
 どうぞ。
○小林(洋)委員 
 そこがiDeCoのところだけ20代が書いていなくて、30歳以下という形で丸くなってしまっているので、ほかのページですと、20歳が別の区分で分かれているのです。20から幾つと。若年層のところが問題なので、30以下でくくらないでいただいて、もしそこのところが細かく刻めるのであれば刻んでいただきたいということです。よろしくお願いいたします。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 今の御要望は確かに承っていきたいと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では、岩城委員、お願いします。
○岩城委員 
 ありがとうございます。
 4点述べさせていただきます。1点目は拠出額についてですけれども、マッチング拠出とiDeCoを含めたDC制度についてです。まず、マッチング拠出ですが、先ほども冨樫委員からありましたけれども、14ページ、本人拠出額が事業主掛金の範囲内とすべきということの考え方について、そろそろ議論をしてはどうかと思っております。iDeCoを選択することも可能という状況で、iDeCoを選択しないでマッチングを続けたいというのは、それなりにラインナップもよいということだと思います。あるいはiDeCoだとコストも自己負担ということがあるかもしれないのですけれども、よい制度を企業がつくっているのだろうと思います。それならば、老後の所得保障の充実を図るという意味でも掛け金の上限をなくすことでより充実できないかなと思っております。確定給付は事業主がリスクを負っていますが、企業型DCというのは運用リスクを従業員個人が負っているわけで、言い換えれば個人のマネーリテラシーで実質の受取額が変わるということです。この大きな違いが歴然としている中で、確定給付年金制度に準ずる上限規制というのはそぐわないのではないかと思っております。
 また、従業員の自助努力による老後の所得保障の充実を認める必要があると言いながら、事業主拠出額を超えない範囲での拠出という言い方に矛盾を感じています。そもそも事業主掛金が5,000円未満というのがこのデータでも5割を超えているという現実もありまして、事業主拠出額を超えない範囲というのは老後の所得保障の充実には貢献できないのではないかと思っております。
 一方で、企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCoの加入の選択というのが可能になりまして、企業のラインナップがコストや商品性について見劣りする場合は、従業員がiDeCoを選択するという道もできました。自社の制度がマッチングということで選ばれなかったということは、企業型が大いに反省して改革すべきなのですけれども、そのことはまた別の議論といたしまして、今、制度が複雑であることと、iDeCoの拠出額の下限が5,000円ということで、非常に制度が使いににくくなっているということは、再考すべきだろうと思います。
 併せて、老後のニーズというのは人それぞれでありますので、自己責任においてより多く拠出をしたいという意思があるならば、その意思に応える制度として拠出額を引き上げていくのも必要ではないかと思っております。
 2つ目は受給の在り方ですけれども、現在一時金受け取りというのが大半ですが、年金受け取りを制度的に推進できないかと考えています。今、高齢になって加入する人が増えている現状でありますけれども、そうなってくると、どうしても運用期間が短くなって、始めた時期によっては元本割れをするという可能性も高くなる。なるべく運用期間を延ばすためにも、運用しながら取り崩す年金受け取りというのを推進できればと思っております。既に議論にも上っていますように、一時金か年金かという受け取り方法の違いで生じている税負担のバランスの是正について考えていくほか、運管ごとに受け取り方法が異なることで、手続が非常に複雑であるということも年金受け取りが増えない原因かと思います。制度の一律化についても検討してはどうかと思っておりますし、受取期間中に多くの場合、受取手数料などのコスト負担が生じるのも阻害原因ではないかと思っております。
 3つ目が、特に挙げていらっしゃらなかったのですけれども、NISA、iDeCoを含めた個人退職年金勘定というのを設けて、一人一人の老後資産を可視化するという広い意味での年金ダッシュボードの必要性を感じています。
 4つ目が、40ページ、41ページにあります共通の非課税拠出枠、穴埋め型、あるいは生涯拠出枠、キャッチアップ拠出については、ぜひ議論を進めていきたいと私も思っております。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。4点いただきました。いずれも今後絶対に議論していかなければいけない議論だと思います。特に年金受け取りの話は、資料にもありましたが、そういうニーズがあって、それをどういうふうに実現していくかということも含めて、特に岩城委員は運用しながら取り崩していくということの重要性を御指摘いただいたと思いますけれども、その視点も大事かと思います。ありがとうございました。
 では、金子委員、お願いします。
○金子委員 
 ありがとうございます。
 まず最初に、今回資料が分厚かったこともあったのですけれども、新たな資料も多く見られまして、私も幾つか欲しいなと思っていた資料がありまして、これは多分事務局が多大な作業をされてつくられたのだろうなと思っております。そういう意味では、お礼を申し上げたいと思います。
 私からは4点ぐらい申し上げたいと思います。今日はいつもと違って2時間半なので、多少余裕があるかなと思いますので、ちょっと長くなってしまうかもしれませんけれども、申し上げたいと思います。もう既に皆さんが御指摘されている点ではあるのですが、別の角度で表現したようなことになってしまうのかなと思いますが、申し上げたいと思います。
 まず、拠出限度額について、これは谷内委員とか森戸部会長も御指摘されていた部分ですが、12ページ目のDCの拠出限度額の考え方のところです。現行のDCの限度額については、給付換算ベースで退職前給与の6割の水準に達することが望ましいと捉えた上で、厚年基金の平均ゾーンを媒介変数として算定しているということだろうと思います。ただ、これは、この決定時から20年近く経過していまして、厚年基金自身がかなり少数になってきたということも踏まえますと、新たなロジックをつくる必要があるのだろうなと思います。
 これは御指摘されたとおりなのですが、ただ、この件については、DCの限度額のみならず、もしかすると穴埋め型みたいなことを想定した場合に、共通の非課税枠につながる大事な議論だと思いますので、私も改めて指摘しておきたいと思った次第でございます。
 次が34ページ目辺りの資料です。これは今回の資料の中で私が一番びっくりというか、多少興奮してみた資料ですが、34ページ目は第2号被保険者のiDeCoの掛金分布の資料なのですが、3つのグラフとも上限額を拠出している人が多いことが分かります。例えば真ん中の拠出限度額が2万円のところを見ますと、3分の2ぐらいの人が上限いっぱいに拠出しております。この上限額の設定に当たっては、企業型DCのマッチング拠出の大半がカバーされている水準を目安にしたということなので、2万円もあれば多くの人が望む拠出水準を十分満たすと想定したのかもしれないのですが、現実にはより多額の拠出を望んでいる人が多い様子がうかがえるということであろうかと思います。利用実態も踏まえまして、iDeCoの拠出限度額の見直しを考えるべきではないかと思った次第でございます。
 これに関連して、岩城委員が御指摘されたところと全く同感なのですけれども、逆に言うと冨樫委員とは別の見方になってしまうかもしれないのですが、13ページ目の2万円の拠出限度額の根拠のところの説明に戻って考えてみますと、企業型におけるマッチング拠出では2万円の範囲に大半が収まったということは、実はマッチング拠出に事業主拠出以下という制限をつけているためではないのかなと思っています。だからこそそこに収まったのかなと考えた次第でございます。そうだとすると、マッチング拠出に関する現在の制限というのは、加入者自身による老後の所得確保の足かせになっているという側面もあるのではないかと思った次第でございます。
 受給の在り方のところなのですが、意見もあったのですが、面白いグラフがあったので、これについて質問したいのです。69ページだったと思います。これは退職金の使い道ということですが、この退職金というのは、DCの一時金としてもらったというものでなくて、より広い、退職一時金制度ということも入っているのかということ。もう一つ、「生活資金」と書いてあるところがあるのですが、これは生活資金として使ったという意味でなくて、「生活資金」という名目で将来使うだろうということでためているという解釈でいいのでしょうか。
○森戸部会長 
 それでは、質問、よろしいですか。
○榎基金数理室長 
 ありがとうございます。69ページのグラフについて、1つ目は、おっしゃるとおり、退職金の意味する範囲でございますが、これは退職一時金一般を指すものでございまして、DCないしはDBなどの一時金受け取りだけに限定したものではないということでございます。本来のこの資料の流れからすれば、DCなりDBの一時金を何に使ったかというのをお示しできるのが一番よかったのですけれども、なかなかそういうデータがないということで、少し広い範囲のものでお示ししてございます。
 2つ目、生活資金を主な使い道と挙げているのは、もう既に使ったということなのか、あるいはこれから使うということなのか、どちらかということですけれども、「これからどのように使いますか」という趣旨で聞いたお答えかと認識しております。実際選択肢を御覧いただきますと、「消費済み」という部分がございまして、これがアンケート調査、尋ねた段階で既に使い終わっている部分でございます。ですので、残りの部分について何に使うかというのが住宅ローンなり生活資金なりということでお答えいただいているということと認識しております。
○金子委員 
 ありがとうございました。
 なぜそこを詳しく聞いたかと申しますと、一時金取得が非常に多いということをいろいろ指摘されていますが、そのときに一番懸念されるのは、一時金としてもらってすぐに使ってしまう人が多いということなのだろうなと思いました。だから、もしそれを示すのだったら、これは非常に重要な資料なのかなと思ったのですが、今、聞いておりますと、使った部分というのは濃いオレンジの部分と薄いオレンジのローンの返済辺りなので、しかも回答者の中央値が七十何歳かになるのですかね。という意味では、余命も考えてみますと、余命に対して使った金額が多過ぎるという感じには見えないと思った次第でございます。
 これも含めて、実は受給の在り方については私も少し関心を持っているところでございまして、先ほど申し上げましたように、受給の在り方で議論すべきことは、一時金受給への著しい偏りが当事者の老後所得の確保の観点でどんな問題をもたらしているのかということですとか、あるいはその状況を是正する必要があるのであるとすれば、どのような手だてを考えるべきかということだと思います。これについて考えようとしたときに、本日のほかのテーマ、例えば拠出限度額のようなものだとたくさん資料、材料があって、いろいろ考えることがあるのですけれども、今回の資料だと、税のところはかなり詳しく御説明いただいたと思うのですが、資料としてはそれほどなかったかなと思っています。これは批判しているわけではなくて、とりもなおさず受給の部分について、部会でもそうですし、世の中全体でもそうだと思うのですが、あまり議論されていなかったので、検討の際の材料、情報があまりなかったということだろうなと思います。
 そういう意味では、これから改めて議論することの意味と意義というのがあるのだろうなと思っております。当部会でも実りある議論をするためには、もう少し客観的な判断材料をそろえた上で議論していくべきで、でないと、皆さんの共通の認識が整わないでいくのかなと思った次第でございます。
 ちょっと長くなりましたが、意見として申し上げました。以上でございます。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。それぞれ非常に重要な、貴重な御指摘で、しかもデータについて違う視点から御意見をいただいて、非常に興味深い視点を御指摘いただいたと思います。
 13ページの資料については、確かにマッチング拠出の大半をカバーすると言っているけれども、そもそもマッチングの限度があるのだからというのは、そのとおりで、それは確かに考える必要がある点ですね。
 それから、受給の点について今おっしゃったことも非常に大事だと思います。要は、あまり考えてこなかったからデータもそんなにないし、それから一時金で渡してしまっている後にそんなデータもないだろうということで、もうちょっと議論するのに必要な資料なりをそろえられないかという御指摘だったと思います。私もそのとおりだと思います。
 またついでに乗せて言いますけれども、もらい方で言えば、岩城委員がおっしゃったような取り崩しながらもらうとか、そういう受け皿とか商品とか、実際どういうのがあるのか。ヒアリングでもちょっと出てきたとは思うのですけれども、一時金でなくて年金にして、あるいは運用しながらもらいたいのだけれども、その場合、どういう選択肢があるのか。それは制度としてもともと用意されているのもあるでしょうけれども、そうでなくて、例えば民間のそういう商品があるのかとか、そういうことも分かればなと思いました。
 すみません。私も少し意見を申し上げましたけれども、事務局、いろいろ注文が多くなってしまって恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
 では、オンラインのほうに。大江委員、お待たせしました。お願いします。
○大江委員 
 今回資料を提出させていただいておりますので、それをベースに意見を申し上げたいと思います。
 今回、実態に基づいた議論をしたいので、関係するデータをなるべく集めてほしいという要望に応えて頂いたことに関して、事務局に本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。
 お出ししました参考資料1というものですが、これは本日のテーマに関連する箇所のみなのですが、私どもNPO法人確定拠出年金教育協会で、企業型のDC導入企業の代表規約の御担当者に実態をお聞かせくださいということで、御回答をいただいたものです。前回1回出しておりますが、今回の議論に関係するということで、今年の調査は今、一般公表前なのですけれども、該当する箇所の結果をお持ちしました。御回答いただいているのは規約ベースで27%、有効回答数で1,649ということで、企業型の担当者のお声としては最大のものになるのではないかと思っております。
 見ていただきまして、1ページ目ですが、今後制度がよりよくなるために、担当者としてどういう改正があるとよいと思いますかというものに御回答いただいたものです。1ページは、幾つでも選択可ということで、担当者として改正してほしいものを入れておりまして、拠出限度額の話は筆頭ということで挙がっております。それから、たびたび岩城委員と冨樫委員とか金子委員からも出ておりますマッチングにつきましては高く、35.4%の事業主さんが事業主掛金以下というものを撤廃してほしいとおっしゃっております。
 先ほどの事務局の資料の31ページ、マッチングの採用が減っているというところで、4分の1ぐらいの会社がDC導入の中でマッチングを使っているということからすると、マッチングを既に導入されている事業主様におかれては、ほぼ皆様、事業主掛金以下という制約を撤廃していただきたいというふうに思っていると見ていただいていいのではないかと思います。
 今年の特徴的な部分として、赤い部分ですが、「60歳受取にあたっての加入者等期間10年の制限撤廃」というのが増えております。
 2ページを見ていただきますと、前年との比較を見ていただくことができます。企業規模を問わずこの部分が要望として高くなっているという傾向があります。特に50~99人、300~999人という中小企業様においてこの制限をなくしてほしいという御要望がございます。要するに、人手不足になる中で、50代での転職というものも増えてまいりました。50代でもいろんな方に働いていただきたいということで、採用が進んでいるのだと思います。そうしますと、企業型DCに全ての人が入っているわけではないので、その会社に採用されてから加入するとなると、60歳の段階で10年ない。そうすると、60歳の時点で、前から勤めていた方は60歳からDCを受け取れるけれども、新たに入っていただいた方に同じようなことがベネフィットとして提供できないという点は、今後の人の採用という面で、中小企業においてはでネックだというふうにお感じになられているのではないかと想像いたします。
 3ページは、今までのところは幾つでも選択可でしたが、改正の中で最も重要だと思うものを1つだけ選択いただき集計したものになります。一番多いのが「拠出限度額の引き上げ」、2番目が「マッチング拠出金額を事業主掛金以下とする制限撤廃」ということで、ここが2番目に挙がってきていて、ここの部分というのは、いろいろなお声がありましたけれども、会社としても事業主掛金以下しか出せないという制約があるのであればマッチング拠出は採用しにくいなということで、導入が止まっている、頭打ちになっているということもあるのではないかと思われますし、これがあることによって、形式的には会社掛金にみなされる給与内枠・賞与内枠という形で擦り抜けて加入者掛金を出すというような制度改正というものがちょっと広がっていて、あまりいい姿ではないのではないかと思っております。
 4ページ目ですが、前年との比較を見ていただきますと、特に赤い部分、「60歳受取にあたっての10年という制限撤廃」について、どの規模も問わずですが、特に中小企業のところ、5,000人以上のところでも「1つだけ」というのにこれを挙げているということは、ここの部分が、人手不足で人が動くという時代になったときに少し考えなければいけないステージに今、来ているのではないかと思います。
 限度額については、今回初めて1万人以上でクロスして分析してみたのですが、大企業様において限度額を上げてほしいというお声がとても強いという傾向が出ているかと思います。
 資料については皆様の議論の参考になればと思います。今後とも関係するデータはなるべくお出ししたいと思っております。
 その上で、意見を申し上げさせていただきますと、資料1の41ページ、キャッチアップについては、実務的にシンプルな形で、生涯枠というよりはキャッチアップみたいな形が、50代の個人ニーズ、事業主様の実態等々を見てもあるのかなと思っております。
 iDeCoの掛金については、今日ほかの委員の皆様は具体的な数字はおっしゃっていないのですが、シンプルに考えるとすると、一つの考え方として2号の被保険者については、単純に5.5万円から会社拠出分を引くという内枠をシンプルに設定してしまうというのもありかなと思っております。その理由は4点ございます。
 1点目は、考え方としてシンプルになるということ。2点目は、60歳以降も働く方が増える中で、企業としては多分60歳以降は会社拠出がないということになりますから、ある意味iDeCoキャッチアップみたいな形で枠が大きく使えて、その方々がどんどん老後資金を積み上げられるということにもつながるかと思います。3点目はマッチング拠出に絡むところですが、マッチング拠出の事業主掛金以下という制約がもしなくなったとして、そうすると、岩城委員のお話にもありましたが、今はマッチング拠出かiDeCoか悩んで考えなければいけないのですけれども、そういったところも限度額等で悩まなくても、利便性ですぐ簡単に選べるようになる。4点目は、給与内枠という形で、事業主が十分に責任を果たせないのだけれども、枠が大きいので、企業型の器を使って加入者が事業主掛金にちょっと成り済まして拠出する、という本来の企業型DCではない使われ方がなくなるという意味でいいのではないかと思います。
 そして、先ほど小林洋一委員の意見を伺って思ったのですが、5点目として、まだ退職金がない会社の方に枠を大きなものを御用意して、会社が用意できればいいですけれども、御自身で備えるときには十分な老後資金の資産形成の枠を提供するという意味でも意味があるのではないかと思います。
 受け取りについての関係ですが、まず受給開始年齢のさらなる引上げの話が出ておりますけれども、運営管理機関で受給手続の対応に当たっているコールセンターの現場などでお聞きすると、70歳までの受け取りだった時代でもそこまで受け取っていない方に受け取り手続を御案内し、手続を電話でサポートしながら行っていただくというのは、いろいろな困難があるようです。関心も理解も低いことから放置されているケースもあったり、住所が変わっているなど連絡がつかないケースもあったりと、いろんなことで難しい面があるそうです。現在75歳まで引き上がったことに非常におびえているというお声もいただきました。金子委員からデータのお話もありましたけれども、実務的にどうかというところ、実際の年金受け取りの手続はどんなものかというのも皆様と共有して議論できるといいかなと思います。
 といいますのも、年金は、何年で、1年に何回受け取るだけではなくて、例えば投資信託をそのまま保有して運用していくということになると、1回当たりの年金額を定額にするのか、マーケットに合わせて1回あたりの金額は変動させつつ規定の回数を受け取るとか、1回当たりの金額を指定するという受け取り方もありますし、どの商品から売るという選択もできたりします。企業さんも運営管理機関さんもいろんなバラエティーに富んだ受取の選択肢を用意することが、加入者のためになると誤解されているところがあるかもしれません。しかし、選択肢が多いと、加入者の方はいざ受け取ろうとすると、検討して判断しなければならないことが多い上に、それを手続書類に落としこんで書かないと年金受け取りができないということになります。このような課題が現状企業型でもiDeCoでもあります。
 なので、税制のことだけが非常に注目されて、一時金、年金ということになりがちですけれども、そこ以前に手続面で選択できるような選択肢に年金の側がなっていない。さらには、税金も総合課税ですので、分離に比べるとどれぐらい影響が出るのか。社会保険料にどれぐらい影響が出るのか。こういう辺りも個人の方が想像するのは非常に困難な部分があります。
 公的年金は公的年金シミュレーターなどでちょっと概算が見られるというふうに進んできておりますけれども、こういった辺りも、商品としての器というだけではなくて、本来加入者の方が自分にとっていい形で受け取ることができるという環境。法令ではないと思いますが、そういうことを整えるということについて、本格的に受給する方も増えていく中で、対応していく必要があるのではないかと思います。
 長くなりましてすみません。よろしくお願いいたします。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。資料の提出と御説明もありがとうございました。
 油断していたら結構具体的な提案もいただいたので、それもまた今後議論していきたいと思います。特に最後の年金の受け取りのところです。もちろん、年金にするといい面もあるでしょうけれども、手続的に、実務的に考えて大変なこともあるかもしれないよという御指摘がありました。確かに年金というのは、年金を支給する機関なり、どこかがずっと責任なり面倒を見なければいけないという制度でもありますので、そういうことも考えて議論する必要があるのだろうと改めて思いました。ありがとうございました。
 では、小林司委員、お願いします。
○小林(司)委員 
 ありがとうございます。
 まず、全体的な意見ですが、これは次回以降に議論することになるかもしれませんが、私的年金制度における優先すべき課題は、公的年金の給付と相まってその役割を十分に発揮していくために、企業年金の加入者を増やすこと、つまり中小企業等への企業年金の普及と促進、そしてパート・有期などで働く労働者へのカバレッジを広げることだと考えています。働き方やライフコースに対応し中立的な制度の構築を目指すに当たっては、そのような課題を解決することができるのかという視点も踏まえて議論すべきであることをまず申し上げておきたいと思います。
 その上で、大きく2つの意見です。1つ目は拠出限度額についてです。本日の資料の26ページ、30ページにデータが幾つかありますが、単に上限に張りついている、あるいは限度額を超えている加入者が存在するからという理由だけではなく、様々なデータを根拠に納得性や合理性を追求し、しっかりと加入者に説明できる水準を設定すべきだと思っています。この間も関係団体や委員の皆さんからDCの拠出限度額の引上げに関する意見が様々述べられていました。いまだ厚生年金基金を勘案して設定されている考え方について検討する必要性は理解しますが、企業・労働者間の格差の拡大の懸念、税の公平性、そもそも企業型DCと個人型DCを法的に一元管理している点などを踏まえつつ、国民年金基金の拠出限度額も含め、水準については慎重に検討すべきと思います。
 それから、30ページのグラフについてですが、あくまで拠出限度額を超え、差分を調整している加入者が1人でも存在する事業主の割合がグラフとして示されていると思います。実際にそのような加入者がどれだけいるのかについては分かりませんので、今後の議論の際には、そのようなデータや直近の傾向などが分かるような資料を可能な限り準備いただきたいと思います。
 次に、iDeCoの加入可能年齢についてです。以前のヒアリングにおいても、現行の国民年金被保険者という加入要件を撤廃してもよいのではないか、という意見が出されていましたが、DC法との整合性や、被用者保険の適用拡大などの公的年金の制度改革の方向性を十分に踏まえる必要があると思います。以前にも申し上げましたが、資産所得倍増プランありきではなく、年金部会における議論動向なども踏まえながら丁寧な議論をお願いしたいと思います。
 以上になります。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 最後の3点は、既に前からいただいている意見もあったかと思いますが、最初に強調された点、パート・非正規労働者などを念頭に加入者を増やしていくためにはどうしたらいいかということも議論していくべきだという御指摘、その点は今後十分踏まえたいと思います。ありがとうございました。
 では、藤澤委員、お願いします。
○藤澤委員 
 ありがとうございます。藤澤です。
 拠出限度額のデータを新しく示していただいて、大変参考になりました。特に年齢別の掛金の分布のところで、例えば28ページのところを見ると、拠出限度額の上限に到達する人はそんなに多くなくて、多くの人が非課税拠出枠を使い切れていない実態があるということを踏まえると、今後生涯拠出枠の議論が必要だと感じた次第です。
 12ページで複数の委員からコメントが出ていますが、5万5000円の限度額の考え方のところで、厚生年金基金の望ましい上乗せ水準ということを基準にするというのは古いのではないかという意見は過去にも述べさせていただいたのですが、括弧書きにある「マクロ経済スライド調整後の公的年金と合わせて退職前給与の6割に相当する水準」というのは、いわゆる所得代替率のことだと思いますが、この考え方は維持するというのはありだと思っています。
 DCが発足して20年以上経過して、データもたまってきてございますので、例えば先ほどの年齢別の掛金の分布があれば、38ページのような一定の利回りの前提を置いて、DCの平均的な給付水準は把握できると思っています。そうすると、所得代替率6割という考え方は、今、5万5000円のところの限度額の考え方で使っていますが、一定のモデルを想定して、ほかの区分の人の所得代替率が6割あるのかという検証を行う中で、なければその分の、例えばiDeCoの限度額を引き上げるとか、そういったロジックがあるのではないかと思ったので、コメントをさせていただきました。
 もう一点は受給の在り方のところで、ここも複数の方が言われている、年金の受け取りが少ない、みんな一時金で取ってしまうという部分の課題です。一般論で言うと、こういった長生きのリスク、ロンジェビティのリスクと言いますが、長生きすることで個人の資産が枯渇してしまうリスクというのは、個人が何歳まで生きるかどうか分からないということに起因するもので、基本的にプーリングして集団で管理していくことが必要だと思っています。
 これも一つのシンプルなアイデアですけれども、年金を受け取る人を増やす施策として今後議論してもいいのではないかと思っているのが、例えばDCとかiDeCoの原資を一時払いで掛金として拠出して国民年金基金の年金を購入することができれば、終身年金の選択肢が広がるので、そういった方法もあるのではないかと思っています。過去に国民年金基金連合会のヒアリングの中で2号・3号被保険者に拡大という要望がございましたが、それに近いような発想ですけれども、一時払いで掛金を拠出して終身年金を受給できるという選択肢を示してあげると、年金の受給者の割合が増えていくのではないかと思ったので、そういうことも今後議論できたらいいなと思っています。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 特に最後の御提案なども非常に興味深いと思います。ここでもいろいろ御指摘があった年金で支給することに伴ういろいろな問題を、国基連かどうかは別として、終身年金を支給できるところに一元化して、安心できるところに任せればいいのではないかというのは一つの発想だと思います。ありがとうございました。
 それから、12ページの資料についてもコメントいただいて、私ももう古いとか言いましたけれども、公的年金と合わせて何割保障すべきではないかという考え方が別に悪いという意味ではございませんので、その点は違う形で維持していくということを基準にするということはもちろんできるのだと思います。御指摘ありがとうございました。
 それでは、原田委員、お願いします。
○原田委員 
 まず、感想的なことから述べさせていただきますと、60ページにiDeCoの受給期間が短い方が多い状況だというデータがありますが、まだiDeCoの積立額がそれほど大きくないというのも一つ影響しているのではないかと思いました。1年当たりの受取額があまりに少ないと、コストとかそういったところも影響してくると思いますので、皆さんのiDeCoの加入期間がもう少し延びて、積立ての額が増えると、もう少し長い期間を取る方も増えてくるのではないかなと思いましたので、足元の状況だけではなく、将来どうなりそうかということも踏まえて議論の題材にしていくといいのかなと思いました。
 67、68ページでDCの年金受給のデータとDCの受け取り方をお示しいただいた資料がありますが、できれば実態としてDCで年金受給をされている人がどのような運用をしているのか、ほとんど一時金、もしくは確定商品で取り崩しだけをしているのか。68ページに書いてあるように年金商品を購入しているとか、運用しながら受給を選択しているという人が多いのか。どういうことをやっているのかというサンプルがあると、今後年金受給を検討する方にとっても参考になるのではないかなと思いますし、どういう対策が受給を広げていくのかという議論の参考にもなるのではないかと思いましたので、サンプルは少ないのかもしれませんけれども、そういうデータが取れるのであれば、教えていただけると非常に助かるなと思いました。
 この辺から意見になるのですけれども、拠出限度額についてです。厚生年金基金の給付水準からということは、今まで皆さんがおっしゃっていたとおりで、我々日本年金数理人会からも、必要額から決定したらどうかという御提言をさせていただいたところですが、拠出限度額が改定されても過去の積立分が増えるわけではなく、将来期間だけの改定になってしまうので、公的年金の所得代替率が低下していく可能性とか、余命が伸びていくといった可能性を考えますと、今時点というよりも、ある程度将来を見越した必要額を議論のベースにするべきではないかなと考えておりますので、一言述べさせていただきました。
 それから、DCの運用についてですが、38ページです。拠出限度額が必要十分かどうかという観点から、運用利回りごとに平均的な賃金カーブで積み立てた場合にどのくらいお金がためられるかということを示していただいた資料ですが、やはり個人個人の運用への許容度というのは大分違っていますので、その前提となる利回りというのは慎重に議論すべきと思っております。
 あとは、年齢が高くなってきますとリスクは取れなくなると思います。例えば50歳ぐらいまでは3%とかを目標に運用していたとしても、当然60歳近くなってくると安全志向、損はできないという状況になってきますので、年齢ごとにどれくらいリスクを取れるのかというのも踏まえてこういった資料をつくると、また参考になるのではないかなと思います。限度額を決める、必要額から逆算するといった場面においては、運用利回りの前提というのは慎重に検討すべきだと思っていますので、この辺りもいろいろと議論していけたらと思います。
 私からは以上でございます。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 感想とおっしゃった点も実際には非常に重要な御指摘にわたるところが多かったかと思います。最後の点、38ページの資料もさらっと利回り1.5%で回ったという前提で、そうすると、一時金換算額は2400万だと言うのですが、下に試算結果は別にあるのですけれども、これによってどう置くかで大分違ってくる話なので、そういうことをもちろん踏まえて今後考えていきたいと思います。ありがとうございました。
 では、島村委員、お願いします。
○島村委員 
 島村です。御説明ありがとうございます。
 皆さんの御意見も非常に勉強になって、重なる点しかなくて申し訳ないのですが、2点お話しさせていただければと思います。
 どういう形で働いていらっしゃる方でも老後は来るかと思いますので、公的年金を支える私的年金が充実化される必要があるというのが基本的な私の認識です。その意味では、穴埋め型ですとか生涯拠出枠、後でのキャッチアップというのはできるだけ入れる方向で進められるとよいと思います。企業年金の特殊性についても十分な配慮をした上で、検討を進めていきたいと思っております。
 もう一点が、もう既に複数の委員から出ている点ですけれども、年金の受け取りの場面で一時金よりも年金が極めて少ないというところに問題意識を持っております。御説明いただいた税制のところももちろん改正が必要かなと思っておりますし、RKさんから受け取り方法が伝達される際に、そもそも一時金請求というのを前提に資料をつくっていらっしゃるRKさんもいらっしゃるみたいな話を聞いたことがあります。
 大江先生からも貴重なお話があって非常に勉強になったのですが、受け取りの場面について、もう少し実務がどういうふうになっているかというのをいま一度確認させていただけるとありがたいと思っています。実務として法改正なしでも変更できることがきっとあるかと思いますので、そこはまずやる必要があると思いますし、その上で、法改正が必要なものなのか、それとも各規約の内容を変えていただければ済むのかとか、いろいろなものが想定できるかと思いますので、まずはそこら辺が実際にどうなっているかというのをもう少し勉強させていただきながら、法改正をも含めた議論をさせていただければと思っております。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。貴重な御指摘、また全体のまとめのような感じもしていただいてありがとうございます。もらい方の点が重要だということは何度も他の委員からも出ている話ですが、今、聞いていて思ったのですけれども、データにもありますが、年金も終身と有期とは大分違うということもあると思うので、それも「年金」とまとめていますが、5年とか10年の有期というのは、もちろん谷内委員の案ではないですけれども、つなぎ年金としての意味はあるのかもしれないですが、「年金」とまとめたときに終身と大分意味も違うと思いますので、それも含めてちゃんと議論したいと思います。ありがとうございました。
 では、山口委員、お願いします。
○山口委員 
 皆様の御意見を伺わせていただきましてありがとうございます。
 重なるところもあるかと思いますが、2点述べさせていただきます。1点目、制度の枠を広げる検討をしていますけれども、それぞれの資産運用の行動は、社会人になって年齢を重ねてから、40代くらいから本格化していくのではと思います。20代、30代と言うと、20代は、意識自体がそもそも全般的に希薄でしたり、30代ですと、早い人はすでに取り組み始めていたり、人によって行動にかなり違いがあるかもしれません。その意味では、資産がうまく積み上がっていくように、投資行動の流れに沿って枠づけを改めて考えられると良いかと思っております。
 iDeCoに関しては、制度が比較的新しいということもありますけれども、各種調査を見ますと、30代、40代といった年齢の若い人の層ではある程度取り入れていることも目にしますし、初めて運用を始める人がiDeCoを使うことも比較的割合は高そうでもあるので、そうした実態を見ながら、より積み上げたい人には枠をより広げるという考え方もあるでしょうし、今、底固めをしている人にはより使いやすいというように、制度のめり張りのある使い方ができるようになると良いかと思います。
 その中で、今日いろいろな基準の立て方とか新しい考え方が必要だということを先生方がおっしゃっておりす。資料8ページの経緯や歴史を見ますと、DBとDCで考え方や想定しているニーズが異なります。しかし、今はそれがミックスされて、かつDCも企業型DC、iDeCoを組み合わせて使えるようになっているので、制度の趣旨とか考え方というのは整理しておきたいという感じがしております。
 もう一点が受け取り方について、資料の60ページで、これは質問も入るのですが、受け取りは一時金が多いということです。受取年齢は60歳が圧倒的に多く、その内容にもよるかもしれないのですが、大江委員が御指摘のように、私も手続のところがかなり気になっておりまして、60歳で受け取る方が多いというのは、手続的に特にやっていることがあるのでしょうか。
 あとは63ページ、遺産ではないことについて、死亡一時金の受け取りが増えていて、運用時には自動移換の問題が大きな問題になってきているところもあり、手続的に自分で見えるようにしておくのはとても大事だと思っております。その辺り、放っておけば、強制裁定もあるかもしれないのですが、現状の手続がどうなっているのかをもう少し教えていただければと思います。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 最後の現状の手続がどうなっているかというのは、具体的にはどういうことか、もうちょっと御説明いただいてもいいですか。
○山口委員 
 おそらく強制裁定か何かありますね。基本的なところをもう一度知りたいと考えています。
○森戸部会長 
 ずっと受け取らなかったらどうなるのかということですか。
○山口委員 
 はい。
○森戸部会長 
 では、それを事務局、よろしいですか。
○榎基金数理室長 
 ありがとうございます。
 iDeCoの場合は、現在受給開始可能年齢の上限が75歳まで引き上げられております。その上限に達した場合には強制的に裁定されるという仕組みになってございますので、それまでは自分が請求しないと支給は始まらないという形になっているのが基本かと思います。
 十分にお答えできていない部分があれば申し訳ございませんが、一旦以上でございます。
○山口委員 
 ありがとうございます。
 60歳のときも勧奨のようなものがあるのですか。
○森戸部会長 
 その点は60ページの図で、要するに、60歳で6割方受け取っているということだと思います。私もこれはなぜなのかとちょっと思いましたが、それはないと思いますけれども、例えば60歳だから受け取れるように、みたいなものが来てしまうのかということだと思いますが、大江委員がすごいしゃべりたそうなのでと言ったら怒られますが、大江委員、補足があれば。
○大江委員 
 まず1つ、60歳のところが非常に多いのは、受け取れと言っているわけではないのですが、「受け取れることになりました」というお知らせが届くことがあると思います。これは受け取るのだったらこの手続で申請してくださいという御案内なのですけれども、多くの方は、ご案内が来た、では、受け取らなければと思ってしまい、そこでアクションをするという行動になるのだと思われます。
 それ以降は、いわゆる70歳とか、今で言うと75歳まで選択可能なので、運営管理機関側からそろそろどうですかとか、そういう御案内はあまり行かなくて、受給開始年齢の上限に達した段階で、強制裁定となります。この場合年金での受け取りではなく、一時金での受け取りになるわけですが、強制裁定の場合であっても、振込先とかを伺わないと振込もできないわけですから、そこでの手続というのが発生いたします。意識が高い方が残していて、運用もして受け取るぞという意欲のある方ばかりが残っていればいいのですが、それもなくても十分に暮らせていて、うっかりみたいなことで、運営管理機関から届いている書類も無視をし続けるケースもあるようです。運営管理機関としては受け取っていただきたいので、コールセンターからご連絡するとそれは何だったけなみたいなことで会話がなかなか成立しなくて御苦労されているというような話はちょっと聞いております。
 すみません。口を挟みました。以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 もちろん、60歳で受け取っている人がみんなよく分からずに受け取っているということではないと思いますが、他方で、今の大江委員のお話だと、60歳で来るので、何となくナッジが効いてしまっているというか、そういうのがあるのかもしれないというお話かと思います。確かにその後はあまり来なければ、毎年毎年同じ催促が来るわけではないでしょうから。
 では、お願いします。
○松下国民年金基金連合会理事長(オブザーバー) 
 今お話がありました受け取りに関しての実務の状況ですけれども、給付については、基本的にRKが事務を実施するという形になっていまして、RKから加入者等へ受け取りに関する通知を行っているという状況にあります。連合会では通知が不達、届かなかった場合に、年金機構のほうに住所照会を行っていくという仕組みを構築していまして、RKが行っている御本人宛ての通知、裁定請求の周知等が確実に行われるように取組を行ってきているということです。
 今、お話がありました強制裁定についてですけれども、これもまたデータを今後精査したいと思いますが、22年3月までのもの、昨年は上限年齢が70歳まででございましたので、70歳に到達してもなお受け取りがなされずに強制裁定されているケースという意味では、過去5年ぐらいの傾向を見ると、毎年度70~80名ぐらいの方が存在しているという状況にあります。
 受給開始年齢に到達しても受け取りがなされないケースというのが今後どれぐらい増えるかというのは、なかなか予測は難しいところですけれども、御承知のとおり、この数年、7年で言うと加入者数が9倍ぐらいに増えていますので、今、申し上げた過去5年の70~80名程度という水準が、先ほどの運管の懸念という面でもありましたように、確実に増えていくのだろうなという状況は容易に推察できるのかなと思っております。我々もデータをもう少し精査したいとは思っております。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。強制裁定の点について、国基連さん、オブザーバーから補足をいただきました。
 事務局、何かありますか。
○榎基金数理室長 
 ありがとうございます。
 大江委員も補足いただきましてありがとうございます。
 60歳のところでの通知の取扱いについても大江委員のほうから御説明いただいたとおりでございます。一点だけ付け加えさせていただきますと、委員の皆様からこの受給の部分はかなり関心が高く、御指摘いただいているかと思いますので、強制裁定の話や、あるいはお知らせの話、あるいは受給に関する手続の部分につきましては、事務局のほうでもしっかり整理をさせていただいて、今後の議論に役立つような資料のほうを御準備させていただきたいと思います。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。ぜひお願いします。
 では、小林由紀子委員、お願いします。
○小林(由)委員 
 御説明ありがとうございました。
 私からは拠出限度額とiDeCoの加入可能年齢等の引上げに関して、2点意見を申し上げたいと思います。
 まず、拠出限度額については、これまで各関係団体のヒアリングでも多くの意見・要望が出されているとおり、企業年金制度の態様や運営状況に大きく影響する、重要な問題であります。その在り方については、資料の44~45ページの記載にあるように、拠出・運用・給付の各段階を通じた税制の在り方の議論を踏まえて、一体的に検討・議論をしていくことが必要と認識しております。
 一方で、本日の資料では記載がありませんでしたが、本年6月に閣議決定されたいわゆる骨太方針2023においては、三位一体の労働市場改革の文脈の中で退職所得課税制度の見直しの方針が明記されています。現時点ではその詳細、具体案は明らかになっていませんが、仮に給付時課税の一つである退職所得課税が強化されるのであれば、それとのセット論、全体パッケージとして拠出限度額の引上げや特別法人税撤廃の議論も進めていただきたいと考えます。そのためにも、当部会の要望としてしかるべき時期に、拠出・運用・給付一体での見直しを提言できるように、具体的な事務局案を早期に御提示いただき、税制や公的年金に関する議論との連動を図りながら、計画的に議論を進めていくことができるように御対応をお願いしたいと考えております。
 次に、iDeCoの加入可能年齢の引上げに関してです。こちらについては昨年の11月、12月の部会でも申し上げたとおり、大きな方向性は理解できますが、高齢期の所得確保については、公的年金と私的年金の関係等を含め、様々な観点から議論が必要と認識しております。公的年金の上乗せという位置づけにあるiDeCoについても、国民年金被保険者であることを加入要件としてきたこれまでの取扱いとその背景を改めて整理した上で、社会保険料負担と加入資格の関係をどう考えるか、議論する必要があると考えておりますので、改めて今後の対応をよろしくお願いします。
 私からは以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 特に事務局に対しても非常に明確な重要な御要望もいただいていますので、また対応を検討したいと思います。ありがとうございました。
 一応、皆さんから御意見をいただいたのですけれども、二巡目ということはないのですが、今日幸いなのか、不幸にしてなのか、時間がまだありますので、もう少し御意見があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたかありますでしょうか。では、谷内委員、お願いします。
○谷内委員 
 資料1の79ページと80ページには特別法人税について書かれています。これは税制の話なので、当部会でどうこうできる話ではないですが、コメントさせていただきます。資料の79ページに記載のとおり、特別法人税は企業年金を税制上優遇するのではなく給与所得課税と平仄を合わせる役目を果たしているということ、そして80ページでは課税凍結措置が始まってもう24~25年たつという状況とのことです。
 例えば、当部会で議論すべき要素としまして、まず特別法人税の税率の計算方法の根拠についてです。特別法人税の創設時の所得税は、税率が十何段階にも分かれていて、そうした多段階税率という制約の中で簡略的に課税するために、個人への所得課税の代替として1%の税率を資産に課税することとされました。さらに延滞・利子税率も創設当時は7%という税率を織り込んでいましたが、これを現在の低金利の状況あるいはだいぶフラット化された所得税率の状況を踏まえると、1%の税率がどの程度変化するのか、また、特別法人税の課税凍結から四半世紀が経ち、金融機関も課税の実務から四半世紀以上遠のいているとなると、課税停止措置が解除された際にどの程度の影響が生じるかということも含めて議論する必要があると考えます。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 特別法人税の話はもちろん重要で、理論的には谷内委員が御指摘された点、そのとおりの議論が必要だと思うのですが、寝た子を起こすではないですが、ずっと凍っているマンモスを本当に解凍するのがいいのかどうかということも含めて。映画とかで何十年眠っているやつを起こすと、大体ろくなことにならないではないですか。それは冗談ですけれども、いろいろなところに影響が及ぶ話なので、慎重に考えなければいけない。しかし、避けて通れない議論だと思います。ありがとうございました。
 ほかに何かありますか。では、金子委員、お願いします。
○金子委員 
 せっかく30分延長していただいたのでというわけではないのですが、この機会を通じてお話ししたいと思います。1つは、先ほど受給のところに皆さん結構御関心があるようで、私も驚いたのですけれども、受給のところに関して、皆さん、一時金の受給率が高いことをもって、すなわち悪いみたいな感じになっているのですが、私はそうは見ておりません。先ほど申し上げましたように、受給において一時金として受け取って、その後、一番悪いのは後先考えずに使ってしまうということで、これは確実に悪いと思うのですけれども、個人で計画的にその後取り崩しているということであれば、そんなに目くじらを立てるほどのことではないのかなと思っています。そういう意味では、一時金として使った後どうなっているのかということも踏まえて検討する必要があると思います。皆さんはどういう状況が悪いと思っているのか分からないのですが、そこら辺を踏まえて、どんな状況が悪いのかということ。悪い状況が想定されたならば、一つの方法として年金受け取りを増やすという方法があるのかもしれませんけれども、ほかの方法もあるかもしれないということも含めて検討すべきかなと思っています。
 この部分について結構税制の部分が大きいということは事実だと思うのですが、1つ参考になりそうな話として思い出したのは、これは有名な話だと思うのですけれども、イギリスが年金を自由化したときに、自由化することによって一時金取得をしてしまう人が多くて、後先考えずにどんどん使ってしまう人が多いのかなということを懸念したのですが、そのとき議論された話として、各国の制度を調べる中で、税制とかも影響を与えているようなのですけれども、日本で言うと投資教育みたいな話なのですかね。アドバイスとかガイダンスもその後の個人の行動に非常に影響を与えるだろうという議論が確かなされたと思います。そういう議論のベースがあって、Pension Wise、受け取り方を主に相談するところですけれども、今はMaPsという組織に変わったと思いますが、そんな組織も登場したということでございますので、そういう手段も含めて検討していただきたいなと思っております。
 以上です。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。
 私も決して一時金でもらうことが悪いと思っているわけではないのですが、その点も含めて御指摘どおりだと思います。結局、一時金なり何なり、この原資、このお金が年金なのか、退職金なのか、老後のお金なのか、そうでないのか、いつまで縛りがかかったお金なのかという話なのだろうと思います。自分の意思、自分で老後を形成していくという部分と、そうはいってもある程度パターナリスティックに枠がはまっていないと困るだろうというところの兼ね合い、バランスを考えなければいけないという御指摘だと思って伺っておりました。ありがとうございました。
 ほかによろしいですか。では、岩城委員、どうぞ。
○岩城委員 
 今のお話にちょっと付け加えてというか、便乗して疑問なのですけれども、そもそも企業年金というのが退職金由来であるということに従えばそうなのかもしれないのですが、先ほどどなたか委員もおっしゃっていましたが、実際RKとかも一時金受け取りを前提として資料をつくっているというのは私も感じるところで、受け取り側の従業員の方とか個人にとって、iDeCoもそうなのですけれども、手続き自体を難しく感じるという実情があると思うのです。
 つまり、RKとか運管とかが年金受け取りをするということにあまり熱心でないというか、熱意を持っていないというか、そういう感じがしているのです。ただ、受け取るほうにしてみれば、年金受け取りのほうが一時金受け取りよりも受取額が総額として多くなるという考え方もありますし、税金とか社会保険料がかかってくるので、年金で受け取るよりも一時金で受け取るほうがいいのだよという考え方の人も多いのですけれども、必ずしも年金受け取りがここまで敬遠されるほどの理由にもならないと思っています。RKさんとか運管さんが年金受け取りにあまり熱意を持っていないのはなぜなのかなということを知りたいなと思っております。
○森戸部会長 
 ありがとうございます。熱意を持っていないとここで断言はできませんけれども、そういうふうに見える部分、もしくはそういう実務が、もしかしたら無意識な何かバイアスがあるのではないかということも含めて、実態はどうなっているか、ちゃんと実態を教えてくれという話がありましたが、その点も含め、実務上どうなっているかということもきちんと、ほかの委員からも出ていますけれども、データ等も含めて今後議論できるように準備をしたいと思います。ありがとうございます。
 ほかによろしいですか。オブザーバーの方、何かありますか。では、企業年金連合会さん、お願いします。
○鮫島企業年金連合会理事長(オブザーバー) 
 ちょっと感想めいたことも含めて、かねて申し上げている点もあるのですが、3点申し上げようと思います。
 1つは企業型DCの拠出限度額について、先ほど原田委員からも出ておりましたが、私どもとしては、公的年金の所得代替率が低下しつつあること、一方で、余命は伸びてきていること、また、経済情勢として物価、賃金が上昇局面に入ってきていることから、ぜひ引上げをお願いしたいと考えております。
 実務の面でも来年12月からDCとDBの拠出額の合算管理の仕組みが入るのですけれども、既に拠出限度額を超える拠出を行っている企業もありますので、将来柔軟な制度設計ができなくなったり、制度の縮小・廃止を余儀なくされるケースが出てくるということになり得るわけです。こうした状況を踏まえまして、私どもとしては、iDeCoだけではなくて企業型DCの拠出限度額についても引上げをお願いしたいと考えております。
 それから、先ほど御説明もあり、議論がありました穴埋め型あるいは共通の非課税枠ということに関連して一言申し上げたいと思います。皆様御承知のことではあるのですが、DBにつきましては歴史的経緯がありますので、企業の退職給付制度の中で労使合意に基づく自由な制度設計に委ねられておりまして、拠出限度額は設けられておりませんし、従業員の幅広い生活保障ニーズに対応できるように設計されております。今後穴埋め型の議論において、もしこうした柔軟な制度設計の自由度が大きく制約されることになりますと、引き続き私的年金制度の中で中心的な役割を果たしておりますDBに及ぼす影響は大変大きいと考えておりまして、企業年金制度の衰退にもつながりかねないと危惧しております。したがいまして、今後議論が行われる場合には、ぜひともそれぞれの制度を普及・発展させていくという観点に立って、慎重かつ丁寧な検討をお願いしたいと重ねてお願いをしておきたいと思います。
 3点目でありますけれども、先ほど藤澤委員のほうからDCの一時金を終身年金に転換することも考えてはどうかというお話があったように思いますが、私の感想を一言申し上げます。私どもでは通算企業年金を提供しておりますが、これは会社を中途で辞められた方々の脱退一時金相当額を移換していただく、それを受け入れるというのが基本なのですが、私どもでは例年の税制改正要望で、これに関連して通算企業年金への追加拠出を可能にすることを要望しております。また、昨年から企業型DCから通算企業年金への移換も始まっております。こういったことを考えますと、先ほどのお話について、私どもでお役に立てるということもやり方によってはあるのかなという感想を持ちましたので、一言発言させていただきます。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 藤澤委員の御意見のときは、要は、国基連に終身年金をという話でしたけれども、今、いや、企業年金連合会もやれるぞということですので、最後は分かりません。国基連と企年連でコンペしていただくことになるかもしれませんけれども、いずれにしてもそういう終身年金の受け皿も現にあるのだということで、そのとおりだと思いますので。また、最初のほうにおっしゃった点も部会で十分踏まえて議論したいと思います。
 大江委員、挙手されていますか。どうぞ。
○大江委員 
 皆様と1点共有したいところがあります。原田委員のお話の中で出てきたどれぐらいの給付金額を受け取っているのだろうという話についてですが、運営管理機関連絡協議会というところが実態を毎年度まとめられておりまして、それによりますと、企業型のほうは、2022年3月末ですと、一時金1人当たり金額としては474万円という数字が出ております。iDeCoのほうは、同じ2022年3月ですが、一時金受け取りですと、1件当たりの金額が332万円です。すみません。「1人当たり」という言い方は正しくなかったです。1件当たりの一時金の金額。もしかしたら年金と一時金と組み合わせている方もいるかもしれないので、訂正させてください。1件当たりの金額が、iDeCoのほうは332万円、企業型のほうは一時金1件当たりの金額が474万円という数字をまとめられております。年々微妙に増えているというような統計データがございましたので、御報告までです。失礼いたしました。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 そういうデータもあるということですので参考に。原田委員の御質問された点に答えられる部分もあったかなと思います。ありがとうございました。
 国民年金連合会は何かありますか。どうぞ。
○松下国民年金基金連合会理事長(オブザーバー) 
 先ほど小林委員のほうからiDeCoの最低拠出額の5,000円という現状についてお話がございましたけれども、これについては、6月の部会で信託協会さんのほうからもう一点別の論点としまして、DB、企業型DC、iDeCoの合算管理の結果として、最終的にiDeCoに積み立てる余裕枠が5,000円以下になったときに余裕枠自体を捨てなければいけないというか、無駄にしなければいけないような可能性が生じるという問題意識をお話しされていたと思います。別にこれについての解があるわけではないのですが、そういう論点も1つありましたねということの確認が1点。
 それから、実務的には私どもは今、規約で5,000円以上1,000円単位というのが規定してあるわけですけれども、当初の趣旨としては、あまり少額の積立では老後の給付額も当然少なくなってしまうので、老後の資金準備という意味ではなかなか役に立たないだろう、十分機能しないだろうということもあって、5,000円という下限が設定されたというふうに伺っていますということ。
 更に、例えば100円刻みとかいう単位になってしまった場合には、運管さんもそうだと思うのですけれども、私どもの実務上の影響、何らかのシステムの変更等が出てくるだろうということを若干懸念しております。
 また、御案内かと思いますけれども、中小企業退職金共済についても類似の制度として見ると、最低金額が5,000円という状況にあるということ等々、いろんな観点を踏まえて御検討いただくことが望ましいかなと考えているということでございます。
 以上です。
○森戸部会長 
 補足いただきましてありがとうございました。もちろん、その点も踏まえた上で、5,000円なら5,000円の是非も考えていかなければいけないと思います。
 ありがとうございました。
 私からは特にまとめというものはないのですが、今日伺っていて、限度額の点はもちろん重要ですし、特にマッチング、例の事業主拠出を超えていいかどうかという話は、いろいろ御意見が出ましたし、避けて通れない論点だろうと思います。
 あとは、これも既に御指摘がありましたが、受け取り方の点です。受給の実務もそうだし、年金か、一時金かということも含めて、かなりいろいろ幅広く論点も出ましたので、その点も非常に重要な、これから議論していくところだなと思った次第です。
 事務局には今回膨大かつ詳細な資料をまとめていただいて、私は正直この資料だと網羅的過ぎて、全然意見が出ないのではないか、もしくは空気の読めない人が全部について意見を言い始めるのではないかと勝手に思っていたのですが、私が完全に見誤っていたというか、そんな空気を読めない人はおらず、かつこういう膨大な資料が出た中で、ちゃんとどこが重要か、ポイントを絞って御意見をいただいたので、むしろ結果的に次の議論をどこでしていくかというのが事務局のほうにもよく見えて、時間もちょっと余裕があったので、次回に向けてよい準備ができたのではないかと思います。私が一番見誤っていたというか、そういう感じだったなと思った次第でございます。
 事務局からこの時点で何かありますか。
○榎基金数理室長 
 繰り返しになりますけれども、本日、資料に関してもう少しこういうものがあったほうがいいのではないかという御指摘を多々いただいたかと思いますので、可能な範囲で事務局のほうでも精査させていただきまして、今後議論する際に御準備させていただきたいと思います。
○森戸部会長 
 皆さん、どうもありがとうございました。
 それでは、予定の時間も近づいておりますので、本日の議事は以上で終了といたしたいと思います。
 今後の予定等について、事務局からお願いいたします。
○榎基金数理室長 
 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡をさせていただきます。
○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 それでは、第26回「企業年金・個人年金部会」を終了いたしたいと思います。御多忙の折、お集まりいただき、また、オンラインの皆さんもありがとうございました。では、これで終了いたします。ありがとうございました。