2023年9月26日 第52回労働政策審議会 議事録

1.日時

令和5年9月26日(火)10:00~12:00

2.場所

厚生労働省省議室(9階)

3.出席者

公益代表委員
 ・清家会長  ・小畑委員  ・守島委員
 ・荒木委員  ・髙田委員  ・山本委員
 ・奥宮委員  ・武石委員  
労働者代表委員
 ・安藤委員  ・永井委員  ・則松委員  ・山中委員
 ・石川委員  ・中川委員  ・堀谷委員  
 ・清水委員  ・成田委員  ・安河内委員
使用者代表委員
 ・井上委員  ・小松委員  ・藤原委員  
 ・内田委員  ・西周委員  ・矢口委員
 ・川崎委員  ・野村委員  ・芳井委員
事務局            
 ・宮﨑厚生労働副大臣   ・岸本人材開発統括官
 ・田中厚生労働審議官   ・鹿沼政策統括官(総合政策担当)
 ・村山大臣官房長     ・青山政策立案総括審議官
 ・渡辺会計管理官     ・平嶋政策統括官付参事官
 ・鈴木労働基準局長      
 ・山田職業安定局長    
 ・堀井雇用環境・均等局長

4.議題

  1. (1)令和6年度予算概算要求について
  2. (2)分科会及び部会等の審議状況について
  3. (3)その他

5.議事

議事内容

○清家会長 それでは、定刻より少し早うございますけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまから「第52回労働政策審議会」を開催いたします。
 皆様方におかれましては、大変お忙しい中御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 それでは、審議会の開会に際しまして、宮﨑厚生労働副大臣から御挨拶をいただきます。
○宮﨑厚生労働副大臣 皆様、おはようございます。
 このたび厚生労働副大臣を拝命いたしました宮﨑政久と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私は政治の世界に入って12年になりますけれども、それまで20年間、普通に裁判所に行く、現場の弁護士として活動してまいりました。その際、労働事件は非常に多く扱わせていただいていた分野でございまして、今日そういったことを前にすると、労政審の場で御挨拶の機会を頂戴したということは、私自身、大変光栄に思っているところでございます。公益、使用者、労働者、それぞれの代表の御知見を賜りながら、これから厚生労働行政を共に進めてまいりたいと思っておりますので、御指導を賜りますように、まず冒頭お願いを申し上げるところでございます。
 さて、御挨拶を申し上げます。本日は大変お忙しい中、「第52回労働政策審議会」に御参集いただきました。厚く御礼を申し上げます。
 我が国におきましては、人手不足の問題が顕在化する中で、成長分野など必要な分野への円滑な労働移動を速やかに進めていくために、労働者が自律的に安心して挑戦できる労働市場の整備を通じて、労働者個人の多様な選択を支え、賃金上昇を伴う円滑な労働移動を効果的に支援する必要があると考えております。
 こうした考えの下で、厚生労働省としましては、構造的人手不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進のための施策を盛り込んだ令和6年度予算の概算要求を行っておりまして、国民の皆様お一人お一人が豊かさを実感できる社会の実現に取り組んでいるところでございます。
 本日は、こうした取組やこれまでの分科会などにおける審議状況を御報告するとともに、皆様から幅広い御意見をいただいて、今後の予算編成や政策の立案に生かしてまいりたいと考えているところでございます。
 申すまでもなく労働政策というものは毎日の国民の皆様の生活に直結するものでありまして、その政策づくりには、現場を熟知されている労使の参画を得て議論を深めていくということが大変重要であります。本日御参加いただいた皆様には、公、労、使、三者で構成された本審議会におきまして幅広い御見識と豊かな御経験に基づいて活発な御議論をいただきたいと考えております。先生方の本当に真摯な御議論に敬意を表し、また、今日の会議が充実することをお願い申し上げまして、冒頭御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○清家会長 宮﨑副大臣、ありがとうございました。
 なお、副大臣におかれましては、他の御公務のためここで退席されます。ありがとうございました。
○宮﨑厚生労働副大臣 どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
(宮﨑厚生労働副大臣退室)
○清家会長 それでは、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○清家会長 それでは、議事に入りますが、その前に本日の審議会について、事務局から御説明をお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 事務局の政策統括官付参事官の平嶋です。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の資料はお手元のタブレットで御覧いただきます。タブレットの操作方法をお配りしておりますので、御参照いただきますとともに、操作方法に御不明な点がある場合は、事務局にお申し付けいただければと思います。また、紙の資料が必要な場合も事務局にお申し付けください。
 オンライン参加の委員の皆様におかれましては、原則として、カメラはオン、マイクはミュートとしてください。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、会長から指名がありましたらミュートを解除して御発言ください。
 機器等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。通信遮断などが生じた際には、進行を一時中断する場合がありますので、御承知おきください。
 続きまして、9月22日付けで労働者代表委員2名の交代がございましたので、新たに就任された委員を御紹介いたします。資料1の労働政策審議会委員名簿を御参照ください。
 全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長の成田委員です。
○成田委員 運輸労連の成田幸隆と申します。2024年問題という大変難しい課題を抱えていますが、しっかり頑張ります。よろしくお願いします。
○平嶋政策統括官付参事官 ありがとうございます。
 日本化学エネルギー産業労働組合連合会会長の堀谷委員です。
○堀谷委員 ウェブから失礼します。JEC連合の堀谷です。どうぞよろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 ありがとうございます。
 事務局にも異動がございましたので、御報告いたします。
 厚生労働審議官の田中です。
○田中厚生労働審議官 よろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 大臣官房長の村山です。
○村山大臣官房長 よろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 職業安定局長の山田です。
○山田職業安定局長 よろしくお願いします。
○平嶋政策統括官付参事官 雇用環境・均等局長の堀井です。
○堀井雇用環境・均等局長 どうぞよろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 人材開発統括官の岸本です。
○岸本人材開発統括官 よろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 政策統括官(総合政策担当)の鹿沼です。
○鹿沼政策統括官(総合政策担当) よろしくお願いします。
○平嶋政策統括官付参事官 政策立案総括審議官の青山です。
○青木政策立案総括審議官 青山です。よろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 会計管理官の渡辺です。
○渡辺会計管理官 よろしくお願いいたします。
○平嶋政策統括官付参事官 本日、中窪委員、山川委員、大橋委員は、都合により御欠席と伺っております。
○清家会長 ありがとうございます。それでは、議事に入ります。
 本日は、議題1「令和6年度予算概算要求について」、議題2「分科会及び部会等の審議状況について」、まず、事務局から御説明をお願いいたします。
 それでは、渡辺会計管理官から御説明をお願いいたします。
○渡辺会計管理官 大臣官房会計課でございます。資料2に沿いまして、私からは令和6年度予算概算要求について御説明いたします。
 1ページ、2ページの御説明をさせていただきます。厚生労働省予算概算要求の姿を1ページで示しております。一般会計の要求額は、前年度比5,866億円増となっておりまして、雇用・労働関係では業務改善助成金やシルバー人材センター関係などの経費を要求しているところです。
 また、2ページ目の特別会計のところでございますが、労働関係予算の大宗を占める労働保険特別会計の要求額は、新型コロナウイルス感染症に対応するための雇用調整助成金の特例措置の終了などにより、4,250億円の減額となっております。
 3ページは令和6年度厚生労働省予算概算要求における重点要求の全体像を示したものでございまして、基本的な考え方は上の箱にございますとおり、人口減少や超高齢社会に対応した持続可能な地域医療・介護の基盤構築や地域共生社会の実現、イノベーションや「新しい資本主義」による成長の加速化の推進を図るとともに、国民一人ひとりがその果実を実感するための改革を進めることとしておりまして、省全体としましては、資料中に記載しておりますIからⅢを柱として重点的に要求しているところでございます。
 本日は、これら3つの柱のうち、真ん中のⅡ、雇用労働分野に係る重点要求となる施策について御説明をしたいと思います。
 具体的に4ページから御説明させていただきます。まず、Ⅱの1つ目の柱でございます。「最低賃金・賃金の引上げに向けた支援、非正規雇用労働者の処遇改善等」として、最低賃金の引上げに向けた環境整備を図るため、生産性向上に取り組む事業主への支援として業務改善助成金の拡充を図ることとしております。
 1つ飛ばしまして、キャリアアップ助成金の要件緩和等による正社員化の促進でありますとか、次の求職者支援制度によるステップアップ支援、無期転換ルールの周知や同一労働同一賃金の遵守の徹底に取り組むこととしております。
 右側に移りまして、リ・スキリングによる能力向上支援として、教育訓練給付による個人主導のデジタル分野の人材育成、キャリアコンサルティング体制の整備を通じた在職時からの継続的な学び直しの支援、非正規雇用の方々が働きながら学びやすい環境を整備するための職業訓練の試行事業、公的職業訓練のデジタル分野の重点化や訓練修了生等への「実践の場」の提供を通じたデジタル推進人材の育成、人材開発支援助成金による企業経由の人材育成に対する支援などを行うこととしています。
 3つ目の丸でございますが、成長分野等への労働移動の円滑化、人材確保の支援として、特定求職者雇用開発助成金を活用した成長分野への労働移動の支援や、最後の矢羽根のハローワークの専門窓口における医療・介護、建設、運輸といった人手不足分野への就業支援の強化を図ることとしております。
 次のページは、構造的な人手不足に対応した多様な人材の活躍と魅力ある職場づくりを進めていくための施策を掲げております。
 1つ目の丸、フリーランスの就業環境の整備では、新しい法律の円滑な施行に向けて、公正取引委員会や中小企業庁と連携して相談窓口の充実などを図っていくこととしております。
 また、「多様な正社員」制度の普及促進や適正な労務管理下におけるテレワークの推進、勤務間インターバル制度導入のためのアウトリーチ型のコンサルティング支援、来年4月に時間外・休日労働の上限規制が適用される建設・運輸、医療といった業種の中小企業に対する高率助成による支援などに取り組んでまいります。
 また、ハラスメントの防止対策やメンタルヘルス対策のさらなる強化のため、精神科産業医の配置・育成や、中小企業団体による保健活動の推進などに取り組んでいくこととしております。
 さらに、仕事と育児・介護の両立支援として、中小企業における業務代替整備や柔軟な働き方の導入を支援するため、両立支援等助成金に新たなコースを設けるなどの拡充を行うこととしております。
 右側に移りまして、多様な人材の就労・社会参加の促進として、高齢者の就労による社会参加促進の観点から、シルバー人材センターの登録会員のうち、未就業となっている会員への就業環境整備、あるいは障害者雇用の関係では、中小企業をはじめとした雇入れ等の支援や障害者の方々への就業支援、外国人の関係では、技能実習生制度の抜本的見直しに向けた外国人技能実習機構の体制整備などに取り組むこととしております。
 また、就職氷河期世代、多様な課題を抱える若年者や新規学卒者の支援にもしっかり取り組んでまいります。
 最後に、右側の下にございますとおり、女性の活躍促進に向けた施策について、女性が働きながら健康でいられるための環境を整備していくことが重要との考えから、医療、雇用・労働、社会・福祉と分野横断的に整理しておりまして、合計で2,181億円を要求しているところでございます。
 令和6年度予算概算要求の説明については以上です。よろしくお願いいたします。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、分科会及び部会等の審議状況について、まず労働基準局長から御説明をお願いいたします。
○鈴木労働基準局長 労働基準局長でございます。
 資料3に基づきまして御報告申し上げたいと思います。
 3ページを御覧いただきたいと思います。1つ目の丸でございますが、安全衛生分科会におきまして、じん肺法施行規則、労働安全衛生規則等で規定する労働者死傷病報告などの一部の報告につきまして、原則として電子申請とすることを新たに規定する省令案を議論いたしました。
 2つ目でございます。化学物質の譲渡・提供時の名称等のラベル表示及びSDS交付等の義務対象物質の法令での規定方法の見直し、及び追加を行う政省令案等について御審議いただいたところでございます。
 4ページ目の一番下のところでございます。労働条件分科会につきましては、政省令等を議論してございませんでしたので、8月1日には開催しておりますが、家事使用人に係る実態調査についてなど、報告事項のみでございました。
 労働基準局からは以上でございます。
○清家会長 続きまして、職業安定局長からお願いいたします。
○山田職業安定局長 職業安定局所管の分科会における審議状況等について御説明いたします。資料3の5ページからになります。
 1つ目の丸のとおり、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令を含む関係法令については、令和4年臨時国会で成立した改正障害者雇用促進法を踏まえ、令和6年4月の施行に向けて、障害者雇用納付金助成金の整理・拡充、障害者雇用調整金・報奨金の支給調整、特定短時間労働者の雇用率算定等、所要の規定の整備を行うものであります。
 2つ目、3つ目の丸については職業安定法施行規則の改正になりますが、1つには労働者の募集等の際に明示すべき労働条件等の追加、及び有料職業紹介事業における手数料等の掲示方法の見直し、また、職業紹介事業者がインターネットを利用して提供しなければならない情報である就職者総数及び無期雇用就職者総数、並びに無期雇用離職者総数等について、情報提供の期間を2年から5年に延長することとしています。
4つ目の丸に移りますが、雇用保険法施行規則の改正により、雇用保険の手続において、金融機関に対する届出印等の一部を除き、事業主印の押印を全て廃止することといたしました。
 そのほか、看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針については、参考資料2-2の別紙5に改正内容を、障害者雇用分科会における2022年度の年度目標に係る評価及び2023年度の年度目標の設定については、参考資料2-2の別紙6にて具体的な状況、評価の動向等を記載しておりますので、御参照いただければと思います。
 職業安定局からは以上です。
○清家会長 続きまして、雇用環境・均等局長からお願いいたします。
○堀井雇用環境・均等局長 雇用環境・均等局関係の分科会等の審議状況について御報告いたします。資料3の7ページ目を御覧ください。まず、雇用環境・均等分科会における主な審議状況についてでございます。7ページの1つ目の白丸でございますが、男女雇用機会均等法第4条に基づく男女雇用機会均等対策基本方針に関しまして、前回の改定からおおむね5年を経過したことから、5月26日の分科会におきまして改定案を諮問し、おおむね妥当との答申をいただきました。
 8ページの1つ目の丸になりますが、仕事と育児・介護の両立支援のための今後の施策の在り方等について検討した「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」の報告書が6月19日に取りまとめられたことを受けまして、7月26日の分科会で報告書の内容について報告を行っております。
 さらに、9月15日の分科会におきまして、仕事と育児・介護の両立支援の在り方について御議論をいただいたところでございます。本日午後も分科会が開催される予定で、そこでも議論を深めていただく予定でございます。引き続き報告書において指摘された事項等を踏まえて、必要な制度見直しに向けた検討を進めていただきたいと考えております。
 次に、勤労者生活分科会における主な審議状況についてでございます。8ページの2つ目の白丸の部分でございます。デジタル臨時行政調査会が定めた「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」等を踏まえまして、フロッピーディスク等を記録媒体として指定する規制の見直しを行うための勤労者財産形成促進法施行規則の一部を改正する省令案について御議論いただいた上で諮問し、妥当との答申をいただいたところでございます。
 最後に、中小企業退職金共済部会における主な審議状況について御説明いたします。8ページの一番下の白丸の部分でございます。独立行政法人勤労者退職金共済機構が令和5年3月に策定しました第5期中期計画を踏まえまして、建設業退職金共済事業における共済契約者の住所等の変更手続のワンストップ化等を行うための中小企業退職金共済法施行規則の一部を改正する省令案につきまして御議論いただいた上で諮問し、妥当との答申をいただきました。
 私からは以上でございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、人材開発統括官からお願いいたします。
○岸本人材開発統括官 人材開発統括官でございます。
 資料3の9ページを御覧ください。この間の開催実績は下のほうに少し小さい文字で書いてあるとおりでございます。審議状況の内容でございますが、1つ目の丸、人材開発分科会におきます2022年度の年度目標に対する実績評価及び2023年度の目標設定を行いました。
 2つ目の白丸でございますが、技能実習制度及び特定技能制度について、それぞれ技能実習法、入管法の附則に基づきまして制度の検討が求められているところでございます。これを受けて、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議というのが設置されておりまして議論が進められております。この有識者会議におきまして本年5月に中間報告書が取りまとめられたものですから、その概要、進め方について御報告をいたしております。
 3つ目の白丸でございますが、監理団体審査部会におきまして、技能実習制度の監理団体の許可申請について定期的に御審議をいただいております。前回の本審以降3回答申をいただいているところでございます。
 人材開発統括官関係は以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 本日、資料4といたしまして「こども未来戦略方針」という資料をお配りしております。こちらにつきまして、雇用環境・均等局長から御説明をお願いいたします。
○堀井雇用・環境均等局長 資料4の関係の御説明をさせていただきます。前回の労働政策審議会の本審におきまして、本年3月にこども政策担当大臣、当時小倉大臣でいらっしゃいましたが、その大臣の下で取りまとめられましたこども・子育て政策の強化について、試案というものを御報告させていただきました。この試案をベースに、内閣総理大臣の下に設置されました「こども未来戦略会議」において検討が深められまして、「こども未来戦略方針」が6月13日に閣議決定をされたところでございます。本日は、この方針のうち、特に今後取り組んでいく具体的な施策を記載したいわゆる「加速化プラン」につきまして、労働施策に関連する部分を御報告させていただきたいと思います。
 まず、資料4、3ページの上段でございます。教育訓練給付の拡充や、訓練期間中の生活を支えるための新たな給付の創設等を検討し、5年以内を目途に在職者への学び直し支援策について、過半が個人経由での給付が可能となるようにします。また、子育て世帯の多様な支援ニーズへの対応の一環として、ひとり親を雇い入れ、人材育成等に向けた取組を行う企業への支援を強化します、との記載がございます。
 次に、4ページの3、共働き・共育ての推進のうち、(1)男性育休の取得促進についてでございます。男性育休の取得促進のため、制度面の対応としまして、ページの中ほどの部分からでございますが、男性の育休取得率について、現行の政府目標の大幅な引上げ、次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画について、数値目標の設定やPDCAサイクルの確立を求め、男性の育休取得を含めた育児参加、育休からの円滑な職場復帰支援等に関する行動が盛り込まれるようにすることが記載されています。
 また、給付面の対応として、5ページにございますが、育児休業給付について、「産後パパ育休」や女性の産休後の育休の一定期間に係る給付率を手取りで10割相当に引き上げ、周囲の社員への応援手当など、育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置の大幅な強化についての記載がございます。
 続いて、6ページ(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進といたしましては、こどもが3歳以降小学校就学前までの場合において、短時間勤務、テレワーク等の柔軟な働き方を労働者のニーズを把握しつつ、事業主が複数措置し、その中から労働者が選択できる制度の検討、こどもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合の給付の創設、子の看護休暇について、対象となるこどもの年齢引上げや、休暇取得事由の範囲の見直しなどについての検討についての記載がございます。
 さらに、7ページになりますが、(3)多様な働き方と子育ての両立支援といたしまして、現在雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用拡大に向けた検討等を進めることについての記載がございます。
 その上で、8ページにございますが、今ほど説明した各種施策の内容の具体化と併せて、予算編成過程における歳出改革等を進めるとともに、「加速化プラン」を支える安定的な財源を確保するためのこども家庭庁による新たな特別会計の創設など、必要な制度改正のための所要の法案を令和6年通常国会に提出をするということが記載をされております。
 方針に記載の内容については以上のとおりとなっておりますが、今後は本方針に記載されたそれぞれの事項につきまして、職業安定会分科会、雇用環境・均等分科会等の関係審議会において御議論をお願いし、検討を進めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、ここから委員の皆様から御意見を承りたいと存じます。今回は円滑な議事進行のため、一通り委員の皆様から御意見を伺った後に事務局からまとめて回答をしていただく形で進めたいと存じます。御意見のある方は、御自身の名前の札を立てていただければ、こちらから指名させていただきます。また、オンラインで御出席の方は挙手のボタンを押していただければ、こちらから指名をさせていただきます。
 それでは、初めに清水委員、よろしくお願いいたします。
○清水委員 今ほど説明がありました厚生労働省の令和6年度の一般会計予算の概要要求額については、対前年度比で5,866億円の増額とされています。しかしながら、大部分は高齢化に伴う年金・医療に関する自然増です。その増額の必要性は理解しておりますが、リ・スキリングや氷河期世代の対策、あるいは育児・介護、働き方改革など、雇用労働分野における課題に対しましても、これまで以上に必要な予算を要求し、施策を進めていただく必要があると考えます。
 その中でも、概算要求における重点要求の「Ⅱ.構造的人手不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍推進」に、リ・スキリングを軸とした施策に関して記載がありますが、「こども未来戦略方針」とも関連させ意見を申し上げます。
 リ・スキリングによる能力向上は、DX等の社会変化に対応して、労働者の雇用の安定、処遇の改善に欠かせないものです。非正規雇用で働く者や障害者なども含めて全ての労働者に等しく能力開発の機会が確保されることが重要です。
 労働側としては、リ・スキリングは、DX等による環境変化を踏まえて、新たに必要と思われるスキルを習得することを意味しており、単に労働移動に向けた手段のみを想定した能力開発ではないと考えています。仮にリ・スキリングが労働移動に向けた手段と捉えられれば、企業の人材育成意欲を削ぐことになりますので、その点について特に発言をしておきます。
 また、労働者が能力を発揮するためには、企業の責任による人材育成、能力開発が不可欠であり、個人の支援と併せて企業への支援も維持、拡充すべきです。特に中小企業においては能力開発の推進が喫緊の課題であり、財政的支援やノウハウの提供の充実が不可欠と考えています。
 経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる「骨太の方針」や「こども未来戦略方針」には、雇用保険を財源とする様々な施策が記載されています。教育訓練給付や育児休業給付の拡充などの施策の支出については、雇用制度の本来の趣旨を踏まえた上で、その財源の在り方も含めて、労政審の雇用保険部会において十分に検討を行う必要があります。
 最後に、総理が昨晩、いわゆる「106万円の壁」について発言されました。この「106万円の壁」の課題解消は重要な視点だと思います。しかしながら、給付を受ける就業調整の対象となる者とそうでない者との公平性の問題に加えて、社会保険料負担の回避を目的とした施策をどの財源から支出するのかについても大きな問題となります。こうした施策の内容は公労使で十分に議論を重ね、合意を得た上で決定すべき事項です。審議会での議論を軽視し、内容が確定しているような発言を行ったことは、極めて遺憾です。今後同様のことが起こらないように対応いただきたいことを最後に付け加えます。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、小松委員、よろしくお願いいたします。
○小松委員 ありがとうございます。
 私からは公的職業訓練と公的職業紹介の2点について、中小企業の観点から申し上げます。
 日商の調査では、人手不足と回答する中小企業が約7割と人手不足感がかつてないほど高まっております。加えて、最低賃金を含む賃上げへの対応、エネルギー・原材料価格の高騰もあり、コスト負担の増加が経営へ大きな影響を与えています。このような環境下で中小企業が生産性を高め、持続的な賃上げに取り組むためには、従業員の能力開発を通じて付加価値を高め、少数精鋭でも事業運営が可能な体制を構築することが不可欠です。とりわけ、民間の教育訓練サービスの提供事業者が充実していない地域の中小企業においては、ポリテクセンターなどが実施する公的職業訓練への期待は高く、デジタル活用や生産性向上など、現場でのニーズが高い内容を中心に在職者訓練の拡充をお願いいたします。
 また、労働者全体のスキルアップを図り、労働移動の円滑化を推進する観点から、非正規労働者にも十分なリ・スキリングの機会を提供するとともに、在職中の受講、家事・育児との両立の観点から、オンライン化の推進や夜間・土日の講座設定など、受講利便性の向上をお願いいたします。
 なお、労働者個人へのリ・スキリング支援を強化するという政府方針については、時間とお金をかけて育てた人材がより高い処遇の企業に転職しやすくなってしまうのではないかという懸念が中小企業には根強くあります。リ・スキリングが企業としての新たなチャレンジや企業内での労働移動の実現、従業員のキャリアアップにもつながる取組であることも政府として適切に発信していただきたいと思います。
 最後に、中小企業の多くが活用しているハローワークについて、求人企業と求職者の双方への一歩踏み込んだ支援などを通じて人と仕事のマッチング機能を高め、中小企業における人材確保を支援するとともに、各種申請のデジタル化やシステムの操作性向上など、さらなる利便性の向上を図っていただきたいと思います。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安藤委員、よろしくお願いします。
○安藤委員 私からは概算要求に対して、キャリアコンサルティング、ハローワークの機能強化に関して発言したいと思います。令和6年度概算要求、4ページ、5ページにおいてもキャリアコンサルタントの資質向上やハローワークの機能強化に関する予算措置が検討されているところですが、労働者の雇用安定と処遇改善という観点からは、望ましい職業選択やキャリア形成を支援するキャリアコンサルティングの役割は重要であり、キャリアコンサルティングのみならず、その支援の中核を担うハローワークの機能強化は不可欠と言えます。国際的に見て低位にあるハローワークの人員強化を含め、その機能を果たす十分な支援体制の確立に取り組んでいただきたいと思います。
 また、キャリアコンサルタントについては、キャリアコンサルティングを担うにふさわしい質の担保が大前提となります。市場の基礎的な情報のみならず、産業構造や社会環境の変化への対応を含め、専門知識を有する質の高い人材の育成・確保に努めていただきたいと思います。
 なお、転職を含むキャリア形成は、労働者個々人の意向が最大限尊重されるべきことについては改めて触れておきたいと思います。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、内田委員、よろしくお願いいたします。
○内田委員 ありがとうございます。
 私からは参考資料2-4、146ページについて申し上げます。人材開発分科会における2022年度の目標に対する実績評価及び2023年度の目標設定についてでございます。現在政府が推し進めている三位一体の労働市場改革において、その柱の一つであるリ・スキリングによる能力向上支援の実現に当たっては、5年で1兆円という規模に拡充された「人への投資」の施策パッケージを着実に実行、活用していくことが重要であります。この施策パッケージには、人材開発支援助成金をはじめ、人材開発分科会が所掌する事業が多く含まれておりまして、適切な目標管理に基づいた事業執行が求められております。こうした中で、2022年度に実施した多くの事業で目標を上回る成果が上がっていることを率直に評価するとともに、ハローワークをはじめとする関係者の皆様の御尽力に敬意を表したいと思います。
 しかし、他方で、2023年度の目標を見ますと、コロナ禍の影響を強く受けていたここ3年間の実績をベースに低めの目標設定をしている事業が多いように感じられます。人への投資が非常に重要な政策課題であることを踏まえれば、例えば堅実に実行していく事業と意欲的な目標を設定して取り組む事業に分けて目標設定を行うこと、そういったことについてもぜひ検討していただきたいと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、永井委員、よろしくお願いいたします。
○永井委員 ありがとうございます。
 私からはパートタイマー、短時間や有期契約社員等の処遇の改善について意見を申し上げます。来年4月の労働条件明示のルールの変更により、有期契約労働者に対しては、更新上限や無期転換申込機会などの明示が必要となります。無期転換申込権が発生する契約更新時に労働条件明示がしっかりと行われれば、今よりも無期転換を選択しやすくなるものの、実際に労働者が無期転換を選択できるようにするためには、転換後の処遇改善や正社員化などキャリアアップの道筋が示されていることが重要です。
 また、パートタイムや有期契約で働く労働者については、雇用形態間におけるあらゆる処遇に関する合理的な理由を欠いた格差をなくすことが重要であり、同一労働同一賃金を一層徹底される必要があると考えます。
 概算要求でもキャリアアップ助成金の全体の予算の増額や対象者の要件緩和などのほか、均衡待遇推進事業などが盛り込まれておりますが、既存の施策にとどまることなく、正社員化に向けた支援策の周知や活用促進、同一労働同一賃金の徹底に向けた取組の一層の強化をお願いします。
 もう一点、いわゆる「年収の壁」の問題ですけれども、「年収の壁」による就業調整の問題については、現場の労使が制度を正しく理解し、最低賃金や賃金が上がり、労働者が職場で安心して働けるようにしていくことが大切です。ぜひ労働行政の側からも支援をお願いします。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、藤原委員、よろしくお願いいたします。
○藤原委員 御指名ありがとうございます。
 私から2点申し上げたいと思います。1点目は雇用保険に関してでございます。コロナ禍における雇用調整助成金の大幅な活用によりまして、失業予防対策としては機能した一方で、その財源である雇用保険二事業の雇用安定資金は2020年度から3年連続の残高0円ということで、危機的な状況にございます。こうした中、政府は三位一体の労働市場改革の柱の一つとしてリ・スキリングによる能力向上支援を掲げ、在職者個人の学び直しに対する直接支援として、雇用保険制度の教育訓練給付を拡充するとの方向性を示しております。雇用保険財政が危機的状況にある中、その健全化に向けた議論を早急に進めるとともに、保険料のみで負担している教育訓練給付に対し、一般財源の投入による国庫負担を行い、政府としても人への投資に取り組んでいくとの姿勢を明確に示していただきたいと思っております。
 2点目は「年収の壁」の対応でございます。資料2の4ページ、枠外に※印で小さく「年収の壁」への対応ということで記載されておりますが、昨日岸田総理は、「年収の壁・支援強化パッケージ」を週内に決定し、来月から実施するとしたうえで、「106万円の壁」を超えることに伴う労働者の手取り収入の減少をカバーするために助成制度を創設し、労働者1人当たり最大50万円を支給する。「106万円の壁」を乗り越えた方全てを支援と御発言されたと承知しております。
 地域別最低賃金が10月から順次発効して大幅に引き上げられる中、とりわけ人手不足に悩む中小企業に対する支援は大変重要でございます。そこで、1つ質問と1つ意見を申し上げたいと思います。
 質問といたしましては、総理がおっしゃった「来月から実施する」という意味がどういう意味なのかを教えていただきたいと思います。法改正や予算措置は必要かどうか。10月から50万円を実際に支給するということなのかという点を明らかにしていただきたいと思っております。
 意見といたしましては、財源には限りがあること。働き方に中立的な仕組みの構築が非常に大切であるということから、新たな助成制度はあくまでも時限の措置と受け止めております。政府には「年収の壁」の問題を抜本的に解消するため、被用者保険のさらなる適用拡大などの積極的な検討と実現をお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 御質問については後ほどまとめて事務局からお答えいただきます。
 それでは、野村委員、よろしくお願いいたします。
○野村委員 私からは3点意見を申し上げます。
 1点目は、令和6年度の予算概算要求の重点要求項目にあります最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者等支援についてです。今年度の最低賃金は政府方針で1,000円が掲げられた中、地域別の最低賃金は全国加重平均で史上最高の43円の引上げ、改定額1,004円となり、ついに1,000円台の大台に乗りました。
 地方の中小企業では人手不足の状況もあり、人材確保・定着のため、やむなく防衛的な賃上げを行っていますが、支払い能力は限界に近いという声も聞こえております。こうした中小企業・小規模事業者に対し、業務改善助成金をはじめとした生産性向上を支援するものづくり補助金、事業再構築補助金などの各種支援制度の情報が行き渡り、活用が促進されるよう支援制度の拡充と要件緩和を実施していただくとともに、労働局や都道府県、市町村など、地域の行政機関から徹底した最低賃金改定及び支援制度の周知徹底をお願いいたします。
 また、最低賃金の上昇に伴う「年収の壁」が大きな課題となり、従業員の就労調整が多く見られております。中小企業の人材確保の妨げにならないよう、有効な支援策を講じていただきますようお願いいたします。
 2点目は雇用保険制度についてです。雇用保険制度は、制度趣旨である労働者の生活、雇用の安定、能力開発等に加え、新型コロナウイルス感染症のような想定外の有事にも今後対応できるよう、安定的な財源の確保が必要であります。安定的な財源につきましては、国の政策として推進することから、国が責任を持って財源を負担していただくとともに、雇用保険制度において、現在国庫負担が本則よりも低く抑えられている部分は解除いただくなどの支援をお願いいたします。
 なお、現在国が推進するこども・子育て政策については、資料4の「こども未来戦略方針」において、こども家庭庁が管理する「こども金庫」創設、既存の特別会計を統合するとあります。育児休業給付が含まれることから雇用保険財政にも大きく影響がありますので、雇用保険制度に関わる部分は引き続き雇用保険部会でも慎重な議論が必要と考えております。
 最後に3点目でございますが、外国人の雇用に関する調査についてです。前回5月12日の本審議会で今年度実施予定の外国人の雇用に関わる統計調査及び技能実習制度適正化に向けた調査研究事業について、それぞれ調査内容や集計の状況を適宜情報提供いただきたいと申し上げました。技能実習制度と特定技能制度の在り方が変わろうとする転換期に新たな制度に資する内容であることを期待して、強い関心を持っておりますので、現在の実施状況と結果取りまとめのスケジュールについて教えていただきますようお願いいたします。
 私からは以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから御発言を希望されております堀谷委員、よろしくお願いいたします。
○堀谷委員 堀谷です。よろしくお願いします。
 私からは障害者雇用のさらなる促進に向けて発言させていただきます。本年4月に施行された改正障害者雇用促進法においては、事業主責任による障害者の能力開発が明記され、現在、個別労使において雇用の質の向上に向けた取組が進められています。
 そのような中、2024年4月には法定雇用率の0.2%引上げ、除外率の10%引下げが予定されているほか、以降も法定雇用率が段階的に引き上げられる予定です。これにより、今まで配属のなかった職場への新規配属や、これまで障害者を雇用したことのない企業での雇入れなどが行われることとなります。雇用率の達成が重要なことは言うまでもありませんが、個々の障害者がやりがい、働きがいを持って長く働き続けられるよう、環境を整えていくことも重要であり、政府として事業主の状況に応じた支援を継続して行う必要があります。
 今般拡充された助成金の周知はもとより、業務の切り出しや定着に向けた相談支援などのノウハウ提供の強化、障害者雇用促進に向けた意識啓発などに引き続き積極的に取り組んでいただくようお願い申し上げます。
○清家会長 ありがとうございます。
 引き続きまして、オンラインから御発言を希望されております井上委員、よろしくお願いいたします。
○井上委員 ありがとうございます。
 私からは参考資料2-2のうち障害者雇用に関して申し上げます。企業等に雇用されている障害者数約61.4万人、実雇用率2.25%は、共に過去最高を更新するなど、障害者雇用は着実に進展しております。一方で、身体障害のある社員の高齢化や精神障害のある社員の定着率の低迷など、現場は様々な課題を抱えております。
 こうした中、今回の法改正によって多様な就労ニーズや雇用の質の向上に向けて各種の支援策が拡充されたことは大変心強く感じております。他方で、障害者の法定雇用率は達成企業の割合が5割を下回っているにもかかわらず、現行の2.3%から来年4月、そして2026年7月に0.2ポイントずつアップして2.7%に引き上げられることとなっております。
 雇用率の見直しの議論が行われた今年1月の障害者雇用分科会において、使用者側委員から法定雇用率の大幅な引上げは、障害者が能力を発揮して活躍することよりも、雇用率達成のために雇用の量の確保を優先する動きを助長することにつながり、質の向上に重点を置く政策としての方向性と矛盾することを指摘しました。その上で、企業の実態に合った法定雇用率の引上げを可能とする制度への見直しの議論を早期に開始すべきと強く主張し、この趣旨が分科会の総意として答申文に明記されたと承知しております。
 障害者雇用の実態に適した形での雇用の質の向上が達成できるように、障害者雇用率の設定方法など、今後の制度改正に向けた検討を早期に始めるようにお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、成田委員、よろしくお願いいたします。
○成田委員 私からは2024年問題、時間外労働上限規制の適用猶予業種等への適用について、何点か申し上げます。
 まず、1点目がワーク・ライフ・バランスの促進です。働き方改革における時間外労働上限規制の趣旨は、長時間労働の是正によって全ての働く者の健康を守り、ワーク・ライフ・バランスを改善することであり、来年4月から自動車運転者や医師、建設業に円滑かつ確実に適用されることが重要です。大阪万博建設工事に関しても、東京五輪の新国立競技場工事のような過労死等の事案が生じることがあってはならないですし、一部で報道されたような上限規制の適用除外など言語道断です。労働関係法令をはじめ、コンプライアンスを徹底して準備等を進めるべきと考えます。
 2点目です。自動車運転者の時間外労働の是正には個別労使だけではなく、荷主や利用者、消費者等の理解と教育に向けた周知啓発とともに、規制の実効性確保に向けて、国交省などの関係省庁と連携し、取組を徹底していただきたいです。
 また、医師の働き方改革についても、国、都道府県等が一体となった取組を加速させ、まずは2035年に向けて各医療機関が着実な労働時間の短縮に取り組めるようしっかりと後押しをお願いします。
 最後に、自動車運転者、荷主等への対策事業についてです。2024年を前に、これら適用猶予業種の上限規制の適用に社会の注目が集まっており、働く仲間からも現場の課題や不安の声などが多く寄せられています。厚生労働省においては、もう一段ギアを上げて上限規制の着実かつ円滑な施行に向けた環境整備を進めていただきたいと考えます。加えて、その他の業種では労働時間管理及び副業・兼業を行う者の労働時間管理の徹底、休日・深夜労働等を抑制するための割増賃金の履行確保といった現行制度がしっかりと遵守されるよう、指導監督を徹底いただきたいと考えます。
 以上であります。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、芳井委員、よろしくお願いいたします。
○芳井委員 ありがとうございます。
 私からは資料2の5ページ、左側にあります「時間外・休日労働の上限規制が適用される中小企業等の時間外・休日労働時間の削減等に向けた支援の実施」に関連して発言をさせていただきます。御承知のとおり、来年4月から建設業や自動車運転業務等にも時間外労働の上限規制が適用されることから、各社ともこれに対応するための体制整備や準備を行っております。しかしながら、いずれの適用猶予業種も一業界、一企業だけでは対応が難しい事情があります。建設業では発注者と受注者双方が適切な工期を設定することが重要でありますし、トラック輸送業では着荷主による荷待ち時間の短縮等の協力が不可欠になります。
 経団連といたしましては、建設業や輸送業に限らず、「パートナーシップ構築宣言」への参画企業を増やし、実効性を高めていくことで引き続き長時間労働につながる商慣行の是正に取り組んでまいります。今後、政府におかれましても、上限規制の円滑な実施、働き方改革のさらなる推進に向けて力強い後押しをお願いします。
 以上でございます。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、山中委員、よろしくお願いいたします。
○山中委員 仕事と育児・介護の両立支援に関して、育児・介護休業法の改正に向けて、雇用環境・均等分科会において議論が行われていることは承知していますが、3点ほど意見を述べさせていただきます。
 まずは育児・介護期に限らず、誰もが性別にかかわりなく、仕事と生活の調和を実現できる社会・職場の構築こそが重要であり、そのためには働き方改革を徹底し、長時間労働を前提とした男性中心型労働慣行の是正、性別役割分担意識からの脱却と意識改革を強力に進めていく必要があります。
 続きまして、「こども未来戦略方針」においては、共働き・共育てが謳われていますが、共に育児に携わっていくためには、両立支援制度の利用が一方の性に偏ることなく、誰もが制度を利用しながら雇用を継続し、キャリアを積み上げていくことができるようにしていくべきだと考えます。
 最後に、日本のジェンダー・ギャップ指数は、2023年に125位と過去最低となり、特に政治・経済分野における女性の地位が低位にとどまっていることや、男女間の賃金の差異が大きいことを踏まえれば、単に就業を継続できるということだけでは十分ではなく、キャリアの継続という観点からもしっかり御検討いただきたいと思います。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、川崎委員、よろしくお願いいたします。
○川崎委員 ありがとうございます。
 私も先ほど御発言いただいたところに絡んだところになりますが、資料2の5ページの左下にございます仕事と育児・介護の両立支援に関して発言したいと思います。事務局からも「こども未来戦略方針」の説明がございました。政府としてもこども・子育ての政策を強化していくものだと理解しております。
 企業・経済界としましても、少子高齢化、人口減少は事業の活動あるいは人材の確保といった点に関しましてマイナスの影響が大きいと考えております。そのため、今、各企業では子育てや介護を抱える社員に対しましていろんな支援を充実していく。また、男性社員の家事・育児促進などを重要課題と位置づけて積極的に取り組んでおります。
 経団連としまして独自にアンケート調査を実施しまして、男性の家事・育児促進に向けた工夫を取りまとめました。そういうことを通して一層の取組を促すということもやっております。
 また、十倉会長のほうから、全会員企業に対しまして、社員が働きやすい環境の整備とともに、それに加えて、男性の育児・育児休職については、政府の取得率の目標の達成というところにとどまらず、男女が真にイコールパートナーとして、家事・育児を実質的に担うのに十分な日数の取得に挑戦するようメッセージも発信しております。これの背景としましては、育休に関しては、まだ女性の取得の日数が長い、男性のほうが短いということが背景にございます。今後もセミナーの開催等を通じまして好事例の周知に取り組んでいきたいと考えています。
 一方、現在、本審議会の分科会であります雇用環境・均等分科会で「こども未来戦略方針」を受けまして、育児・介護休業法の見直しの審議が進んでいると聞き及んでおります。例えば育児と仕事の両立につきましては、3歳から小学校就学までの間、テレワークや新しい休暇の利用など柔軟な働き方を選べる制度とか、育児期の社員を対象に働き方の意向を聴取し、配慮する制度の導入などが提案されていると聞いております。
 御案内のとおり、各企業ではこれまで労使自治の中で築き上げてきました独自の柔軟な働き方の措置、また、面談やコミュニケーションの仕組みなどがあります。
 私からのお願いは、画一的な仕組みとならず、各社が運用しています仕組みが生かせる、また、男女が真にイコールパートナーとして家事・育児を実質的に担うことを後押しする、そういう法制度の見直しをお願いしたいと考えております。
 私からは以上になります。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、則松委員、よろしくお願いいたします。
○則松委員 私からは、令和6年度予算の概算要求、資料2の5ページにあります、女性活躍推進に向けた施策に関して質問を1つとハラスメント防止対策について意見を申し述べます。
 まず、女性が活躍するためには、女性活躍の課題分析や一層の促進に向けた取組への支援が不可欠だと考えます。昨年7月に女性活躍推進法の省令と告示が改正されて、301人以上雇用する事業所に対して、男女の賃金差異の公表が義務づけられました。改正から1年経過した今、どのような状況になっているのかをお伺いします。
 次に、ハラスメントに関して。令和4年度雇用均等基本調査によりますと、ハラスメント防止対策の取組が小規模事業所でも8割に達するなど、ハラスメント対策関連法の啓発や履行確保に積極的に取り組んでいただいていると認識しています。その一方で、総合労働相談コーナーや、私ども連合への相談の内容として、差別やハラスメントに関わるものが依然として多く、現行の防止措置や履行確保だけでは不十分だと言わざるを得ない状況です。
 また、ハラスメント対策関連法の国会審議においては、施行状況の把握とカスタマーハラスメントについて検討するよう、衆参の厚生労働委員会で附帯決議されました。カスハラについては労災認定基準の要件に加えることが厚労省の有識者会議において報告書として出されています。早急に実態について調査するとともに、仕事の世界における暴力やハラスメントを撲滅するための包括的な法整備が必要と考えます。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、西周委員、よろしくお願いいたします。
○西周委員 ありがとうございます。
 私からは資料3の3ページの2つ目の丸、詳しくは別紙2ということで、参考資料2の9ページにございますが、ここにあります化学物質規制の見直しについて御発言申し上げます。御案内のとおり、職場における化学物質管理をめぐっては、特化則等の特別規則で物質を個別に指定して、具体的な措置・義務を課す法令遵守型から、危険性・有害性が確認された全ての物質を対象にリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき、事業者が自ら対策を選択する自律的管理に転換する制度改正が行われました。新たな規制は本年4月と来年4月の二段階で施行され、来年4月にはラベル表示・SDS交付、リスクアセスメントの義務対象物質の追加や、暴露を濃度基準値以下にする義務、化学物質管理者の選任義務化などが予定されています。
 こうした中、企業の現場には最終的には事業者の判断に委ねられる自律的管理に移行することに戸惑いがある、リスクアセスメントの実施に必要なラベル・SDSの作成や修正作業が施工日までに間に合わない、暴露測定が難しい作業についてどこまで対応すればいいのか分からないといった不安や懸念の声があると承知しております。
 厚生労働省においては、セミナーやリーフレットによる周知広報や、無料相談窓口の設置、事業場への専門家派遣、各種ガイドラインの策定、業種別・作業別の化学物質暴露防止対策マニュアルの作成支援など、既に様々な対応を講じておられますが、現場に寄り添った支援や対応を引き続きお願いいたします。
 最後になりますが、今般の化学物質規制の見直しに関連して、中央労働災害防止協会では、化学物質管理者に選任される方々への講習や混合物におけるラベル・SDSの作成方法に関する研修を実施するなど、化学物質の自律的管理の普及・定着に向けて重要な役割を果たしています。政府には中央労働災害防止協会に対する十分な支援をお願いいたします。
 私からは以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、中川委員、よろしくお願いいたします。
○中川委員 
 私からは資料2の4ページ、令和6年度予算概算要求の最低賃金・賃金の引上げに向けた支援について意見を申し上げます。今年度の最低賃金は全国加重平均で1,004円、引上げ幅は43円と、目安制度始まって以来の最高額となる見通しです。また、10月1日からは47都道府県で順次金額改定となる見通しです。中央最低賃金審議会の目安答申におきましては、業務改善助成金について、「対象となる事業場拡大」「最低賃金が相対的に低い地域における重点的な支援の拡充」「周知等の徹底」など、具体的な要望が述べられました。また、多くの地方最低賃金審議会においても、金額決定の際に、中小企業・小規模事業者の支払い能力補完に向けた支援策の要望が上げられたと承知をしています。
 宮崎地方最低賃金審議会におきましても、原材料等の高騰により影響を大きく受けている中小企業・小規模事業者への最大限の配慮を求める附帯決議が昨年に引き続き採決をされました。Cランクには、13県がございますけれども、九州では7県がCランクに集中しているところです。
 厚生労働省におかれましては、8月31日に業務改善助成金の対象事業場の拡大、賃金引上げの後でも申請できるようにしたり、助成率の高い区分により多くの事業場が入るよう区分金額を引き上げたりと、制度の拡充を公表されました。大変スピード感を持って対応いただいたことは評価させていただきたいと思います。
 かつてない水準の引上げに対しては、さらなる財政的な支援、経済対策なども含めてしっかり予算を確保した具体的な対策が必要です。多くの事業場が十分に業務改善助成金を活用できるよう、さらなる検討・強化・充実をお願いします。
 また、業務改善助成金のコールセンターの対応に関しましては、地方の若い事業主からは非常に好評です。各労働局におかれてはホームページなどに積極的に記載がされていると承知しています。繰り返しになりますが、より多くの方々、事業場が十分に活用できるようにさらなる御検討をお願いします。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、矢口委員、よろしくお願いいたします。
○矢口委員 ありがとうございます。
 私からは中小企業の人手不足対策の一環として、多様な人材のさらなる活躍が重要という観点から3点申し上げたいと思います。
 まず1点目は、女性の就労促進の妨げとなるいわゆる「年収の壁」の問題であります。これにつきましては先ほど既に他の委員から言及がありましたので、繰り返しませんけれども、ぜひ女性の活躍推進のためにもこの機会に抜本的な解決を目指すことをお願いしたいと思います。
 2点目は外国人材についてであります。現在政府の有識者会議で技能実習制度、特定技能制度の見直しの議論が行われております。中小企業においても外国人材のニーズは高いことから、より広い職種でより多くの人材をより長く受け入れられる仕組みづくりをお願いします。併せて、我が国が外国人材に選ばれる国になる必要もあります。外国人技能実習機構の抜本的な体制強化などを通じて、日本語能力の向上や生活支援、受入企業の体制整備などへの一層の支援をお願いしたいと思います。
 3点目は労働時間の取扱いについてであります。多様な人材の活躍を促す上でも、時間にとらわれない柔軟な働き方の推進は重要だと思います。裁量労働制度やフレックスタイムの制度などについて、中小企業での導入がより進むように、導入に関わる伴走型支援の充実をお願いしたいと思います。遠くない将来に労働力人口の減少によりまして社会機能の維持に支障が出てくる時代が到来すると言われております。こうしたことから、労働政策の在り方にも変革が求められていると認識しております。政府におかれましては、こうした大きな変化を捉えた政策の検討、実行をぜひお願いしたいと思います。
 私からは以上であります。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安河内委員、よろしくお願いいたします。
○安河内委員 ありがとうございます。
 私からはフリーランス新法について発言させていただきます。フリーランス新法は、取引の適正化と就業環境の整備に資する一方で、法の実効性確保のためには、政省令やガイドラインで具体的な内容をできる限り明らかにしていくことが重要と考えます。厚生労働省と公正取引委員会の下に設置された検討会では、就業環境の整備と取引適正化に関する政省令についての議論が進められておりますが、プラットフォーム事業者も含め「業務委託事業者の定義」や、あるいは「継続的業務委託に該当する契約期間の長さの在り方」などについて丁寧に検討することが必要です。その上で、フリーランスや事業者等関係者に対する分かりやすい法令の周知徹底、相談体制の強化・拡充等の環境整備についてもしっかりと行うことが重要と考えます。
 本法はフリーランスを取り巻く課題の解決に向けた第一歩ですが、仲介業者への業規制やセーフティーネットの脆弱性等、曖昧な雇用に関する課題は残っており、とりわけ附帯決議にもあります「労働者性」の見直しと労働関係法令による保護の拡充は喫緊の課題です。
 この問題は、社会の現実に我々の議論が少し追いついていないのではないかと思っており、そういう意味でも厚生労働省におきまして相談体制の強化・拡充を含めた就業環境の整備に加えて、法の実効性を確保する観点からも、労働者性の見直しに早急に着手すべきです。公正取引委員会及び厚生労働省の各検討会における論点に限定することなく、フリーランス保護の観点からさらなる実態把握を含め幅広い視点から検討することが必要と考えます。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから発言を希望されております石川委員、よろしくお願いいたします。
○石川委員 ありがとうございます。
 私からは外国人労働政策について発言をさせていただきます。政府の有識者会議で議論が行われております技能実習制度及び特定技能制度については、最終報告書の取りまとめに向け今後議論が本格化していくことになると思います。新たな制度及び特定技能制度の見直しを看板の掛け替えとすることなく、実効的なものとするためには、課題は多いものと考えています。特に人権保護の強化はもとより、処遇や就労環境の改善、国や支援機関による支援体制強化と質の向上、さらには外国人労働者受入れに関するプロセスの透明性の担保など、ビジネスと人権の視点を含め、外国人労働者の権利保護強化を図ることが重要です。
 また、両制度を見直し厳格化することで今ある問題が他の在留資格に横流れすることへの懸念もあります。今後さらに外国人労働者の増加が想定されることを踏まえれば、政府として個々の在留資格に限らず、外国人労働者全般について共生の観点を含め検討すべきです。
 最後に、新たな制度が施行されるまでの間は現行制度での運用が想定されます。今回概算要求で外国人技能実習機構交付金の僅かな増額要求をしていますが、業務内容を鑑みれば、機構の体制は不十分で、さらなる補強が必要です。制度を所管する入管庁などとも連携しながら制度の適正化と技能実習生の保護・強化に向け、予算確保を含めてしっかり対応いただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 以上で労使の委員から一通り御発言をいただきましたけれども、公益委員で御発言を希望される方はいらっしゃいますか。よろしゅうございますか。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまいただきました御意見、御質問につきまして、事務局から一括して回答をお願いいたします。回答は簡潔にお願いいたします。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。では、労働基準局長、お願いいたします。
○鈴木労働基準局長 労働基準局でございます。
 大きく5点御意見を頂戴してございます。まず、野村委員及び中川委員から最低賃金の業務改善助成金につきまして御発言がございました。最低賃金の引上げに当たりましては、特に中小企業が賃上げをしやすい環境の整備が大変重要だと考えてございまして、厚労省では業務改善助成金によります支援を行っているところでございます。この助成金につきましては、中央最低審議会の答申における要望などを踏まえまして、8月31日に対象となる事業場を地域別最低賃金との差額が30円以内という要件から50円以内と拡大いしたまして、それから最低賃金が相対的に低い地域の事業者に対して高い助成率が適用されるような助成率区分の見直しなどの拡充を行ったところでございます。
 また、申請書等を簡易に作成する申請書等簡易作成ツールというものを作成いたしまして、厚労省ホームページにも掲載したところでございます。
 また、周知啓発でございますけれども、最低賃金の改定額の周知及び業務改善助成金の活用に向けましたポスター・リーフレットなどを作成いたしますとともに、中小企業庁との連携も強化をすることとしてございます。また、地方公共団体をはじめとしました行政機関や関係団体などに対しまして、周知広報の協力依頼を行うなど、幅広い周知に向けました取組を進めているところでございます。こうした取組を引き続き続けますとともに、経済対策も含めまして業務改善助成金の必要な予算の確保にも取り組んでまいりたいと考えてございます。
 2点目としまして、成田委員と芳井委員から適用猶予業務の上限規制の適用に関しまして御発言があったところでございます。厚労省といたしましては、働く方の健康確保という観点から、建設業の労働者、自動車運転者、医師に対しましても来年4月から時間外労働の上限規制をそのまま何も変えることなく円滑に施行することが重要だと考えてございます。他方で、御意見にもございましたが、建設業の労働者、自動車運転者につきましては、長時間労働の背景に短い工期設定とか、荷積み・荷下ろしのための長時間の待機といった取引慣行上の課題が見られることから、個々の事業者だけでは長時間労働の改善が難しい場合もございまして、施主や荷主といった取引関係者、ひいては国民の皆様一人ひとりの御理解と御協力を得ることが重要であると考えてございます。
 このため、厚労省におきましては、建設業、自動車運転者につきましては、施主や荷主といった取引関係者、国民の一人ひとりに向けまして、国土交通省と連携しまして、業界が抱える課題とか皆様に御協力いただきたい内容をまとめましたPR動画を作成するなどしまして、働き方改革に向けました機運醸成を図っております。
 特にトラック運転者につきましては、監督署から荷主に対しまして、長時間の荷待ちを発生させないことなどにつきまして要請するなどの取組も行っているところでございます。
 また、医師に関しましては、適切な労務管理、タスクシフト・シェアなどを進めながら、医師の働き方改革を推進するため、医療勤務環境改善支援センターの支援などを通じまして医療機関への支援を行っておるところでございます。
 さらに、今年度から働き方改革推進支援助成金に適用猶予事業業務への時間外労働の上限規制の適用に対しまして、労働時間の削減に向けた環境整備に取り組む中小企業・小規模事業者を支援するための適用猶予業種等対応コースを新設しておりまして、働き方改革に取り組む事業所を支援しているところでございます。
 また、監督指導の徹底ということについても御発言いただきましたけれども、労働基準監督署におきましては、こういった猶予対象業務の指導のみならず、法定労働条件の履行確保を図るために、労働時間管理の徹底や割増賃金の履行確保といった関係法令の適用につきまして、説明会や集団指導など、あらゆる機会を通じまして周知するとともに、監督指導の徹底を図っているところでございます。
 続きまして、3点目でございます。矢口委員から裁量制、フレックスタイム制などの中小企業における導入支援について御発言がございました。働く方々が個々の事情に応じまして多様で柔軟な働き方を選択することは重要だと考えてございまして、厚生労働省では全ての労働基準監督署で編成しております労働時間相談・支援班とか、働き方改革推進支援センターも設置してございまして、中小企業に対しまして、裁量労働制やフレックスタイム制度などの導入につきまして、きめ細やかな相談支援を実施しております。ぜひこういったものを活用いただきますとともに、いろいろな制度の導入についても御検討いただけたらと思っております。
 4点目でございます。西周委員から化学物質の管理につきまして御発言がございました。化学物質の適正な管理につきましては、危険性・有害性が把握されている化学物質の一覧でございますとか、当該物質のモデル安全データシートを職場の安全サイトで公開しておりますほか、製造事業場向けの化学物質管理者の講習テキストを厚労省のホームページで公開しまして、動画教材も近日公開予定でございます。
 業種別・作業別の暴露防止対策をまとめましたマニュアル作成でありますとか、中小事業場に対します電話相談、訪問指導の実施などによりまして周知などを図っておるところでございます。
 また、令和6年度予算におきましては、産業保健総合支援センターにおきまして化学物質自律的管理の履行に向けました相談対応を拡充して実施する予定でございます。関係する全ての企業が体制を整えまして、御発言にもございました中災防ともしっかり連携いたしまして、来年4月の施行が迎えられるように引き続き周知を図ってまいりたいと思っております。
 最後、5点目でございます。安河内委員からフリーランスの発言がございましたが、その中の労働者性につきまして御回答申し上げます。まず、労働基準法の労働者に該当するかどうかにつきましては、令和3年3月に作成しました「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」におきまして、現行の判断基準の中身を分かりやすくお示ししたところでございまして、厚労省としましては、まず関係省庁と連携しましてこのガイドラインをしっかり周知してまいります。また、新法の附帯決議がございましたので、現行の労働者性の判断基準の中身が適切なものとなっているか否かにつきまして、今後ガイドラインの運用状況とか判例等の動向、労働者の働き方の変化などの状況を注視しながら、これは不断に確認してまいりたいと思っております。
 また、労働基準監督署におきましては、フリーランスを含めまして労働基準関係法令違反がある旨の申告がなされた場合には、相談者の方から丁寧に話を聞くなど事実確認を行いまして、労働者性の有無を判断しているところでございます。調査の結果、労働者に該当して労働基準関係法令違反が認められる場合には、厳正な監督指導が行われるよう徹底してまいりたいと思っております。
 基準局からは以上でございます。
○清家会長 では、職業安定局長、お願いいたします。
○山田職業安定局長 まず、清水委員から御指摘いただいた教育訓練給付とか育児休業給付等の検討の在り方についてから御説明いたします。本年6月に閣議決定された「骨太の方針」、「こども未来戦略方針」等においては、雇用保険制度を充実させる方向での制度見直しの検討が盛り込まれたところであります。具体的な検討に当たっては、雇用保険制度が引き続き雇用に関する総合的な機能を持った労働者のセーフティーネットとしての役割を十分に発揮できるよう留意しつつ、雇用保険部会において公労使委員の皆様に御議論いただきながら検討を進めてまいりたいと思います。
 小松委員、安藤委員から御指摘いただいたハローワーク体制の強化等についてです。ハローワークにおいては、キャリアコンサルティング機能の強化による求職者支援の向上を図りつつ、人材不足分野における求職者、求人者へのきめ細かな支援を行う人材確保対策コーナーの拡充等により、中小企業における人材確保支援に取り組んでまいりたいと思います。
 また、利用者の利便性の向上、これは求人者にとっても求職者にとってもですが、その負担軽減を図るため、全ての雇用関係助成金について電子申請による受付を可能としているところであります。
 また、今後離職票の離職者へのマイナポータルを通じた直接交付(令和6年度から)、雇用保険被保険者資格の確認請求等、電子申請未対応の33の手続のオンライン化や、オンラインによる求人登録等の操作性の向上(令和8年度から)等を予定しております。
 キャリアコンサルティング機能の強化を含め、求められる行政課題に的確に対応できるようにハローワークの必要な施行体制の確保に努めてまいります。
 藤原委員、野村委員から御指摘いただいている雇用保険財政についてでございますが、コロナ禍への対応として雇用調整助成金の特例措置などを講じた結果、労働者の雇用と生活の安定に大きく貢献してきたのは事実としてある一方で、雇用保険の財政状況は積立金残高が大幅に減少するなど急速に悪化したところであります。積立金から雇用安定資金への貸出累計額は令和4年度末で2.9兆円。これらの返済及び控除の在り方については、御指摘のように、雇用調整助成金の特例措置の果たしてきた役割、機能、法律改正により特別な財政上の是正を講じた上で、失業等給付や一般会計により多額の支出を可能としてきた実績なども十分に踏まえた上で検討すべきものであり、関係省庁とも十分調整してまいりたいと思います。
 いずれにしても、雇用のセーフティーネットとしての役割を雇用保険がしっかり果たすとともに、人への投資、労働移動の円滑化等の政府の課題に的確に対応するため、雇用保険財政の安定化というのは急務であると思います。引き続き健全な財政運営に努めるとともに、公労使の代表委員の皆様に雇用保険部会で御議論いただきながら、国庫負担も含め、雇用保険財政の在り方について検討してまいりたいと思います。
 藤原委員から御指摘いただいている教育訓練給付の拡充についてでございます。委員の御指摘のとおり、「骨太の方針」において、在職者への学び直し支援策について、個人への直接給付、直接支援を拡充することとされておりまして、その柱の一つとして教育訓練給付の拡充について検討することとされております。制度の在り方については、公労使の代表委員の皆様に雇用保険部会で御議論いただきながら検討を進めてまいりたいと思います。
 野村委員から御指摘いただいている外国人の雇用に係る統計調査についてですが、今年度から新たに実施することになった外国人雇用実態調査については、10月から調査を開始する予定であり、令和6年の夏頃をめどに結果を公表する予定であります。
 同じく野村委員からいただいた「こども金庫」についての御説明です。いわゆる「こども金庫」については、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化のため、全体的な制度設計はこども家庭庁を中心に検討を進めておりますが、雇用保険財政や雇用保険制度に関わる部分については、今後とも雇用保険部会において御議論いただくべきものと考えております。
 堀谷委員、井上委員から御指摘いただいた障害者雇用及び障害者雇用率についてですが、昨年成立した改正障害者雇用促進法において納付金制度を見直して、障害者の雇入れや職場定着等の取組に対する助成金を創設するなどの改正を行ったところであります。事業主への周知等を含め、関係機関と連携して円滑な施行を図ってまいりたいと思います。
 今後の障害者雇用率の在り方については、障害者雇用分科会において、令和5年度からの雇用率に関して御議論いただいた際の答申において、昨年6月17日に取りまとめた「今後の障害者雇用施策の充実強化について」等を踏まえて、障害者雇用率制度について、次期の障害者雇用率の設定や今後の制度改正に向けて早期に検討を開始すべきであるという意見が付されております。今の段階では具体的なスタート時期は確定しておりませんけれども、こうした審議会の御意見を最大限尊重して、今後関係者の意見を聞きながら丁寧に検討を進めてまいります。
 石川委員から御指摘いただいた外国人労働者の権利保護強化についてでございます。技能実習制度及び特定技能制度について、現在「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」において、その在り方の見直しが進められているところであります。既に出ております同会議の中間報告書を踏まえて、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消して、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設する、それから、技能実習では原則不可とされている転籍について、外国人保護の観点から、従来よりその制限を緩和する、人権侵害等を防止・是正できない監理団体等を厳しく適正化または排除する方向で検討することとしております。
 有識者会議では令和5年秋を目途に最終報告書を取りまとめることとしておりまして、その議論を踏まえつつ、外国人労働者の権利保護が図られるよう、制度の見直しに向けた検討を進めていきたいと思っております。
 同じく石川委員から御指摘いただいている日本で就労する外国人労働者との共生についてです。委員の御指摘のとおり、技能実習制度と特定技能制度が直面する様々な課題を解決することは重要だと思っております。これまで技能実習制度、特定技能制度の在り方に関する検討が進められているところでありますが、御指摘のとおり、在留資格にかかわらず、我が国で生活する外国人との共生社会の実現に向けた環境整備について、政府の関係閣僚会議において総合的な対応策が策定されているところでありまして、引き続き関係省庁と連携しながら、我が国で生活する外国人との共生社会の実現に向けた環境の整備に取り組んでいくということで考えております。
 今回いろいろ御意見をいただきましたけれども、雇用保険制度の見直しについては、こども未来、少子化の関係、人への投資、全世代型社会保障の推進ということで、非常に盛りだくさんのテーマを抱えております。雇用保険部会を中心に検討がされますけれども、非常にたくさんの項目について精力的に御議論いただかなければいけない状態にありますが、我々としても適切に資料等を提供して御議論に資するようにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○清家会長 それでは、雇用環境・均等局長お願いいたします。
○堀井雇用環境・均等局長 それでは、私から8点について御回答させていただきたいと思います。
 まず1点目、永井委員から御質問いただいた非正規雇用の対策についてです。希望する方の正規雇用化に向けましては、キャリアアップ助成金による支援とか、ハローワークにおけるきめ細かな就職支援を実施しております。正規移行化の促進のために、これらの支援の強化に併せまして、支援策等のさらなる周知等を通じた活用促進を強力に図ってまいりたいと考えています。また、同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けましては、労働基準監督署と労働局が連携をした取組や働き方改革推進支援センターによるきめ細やかな相談支援を引き続き行ってまいりたいと考えております。
 2点目、「年収の壁」についてでございます。これは清水委員、永井委員、藤原委員、野村委員、矢口委員から御質問、御意見等をいただきました。いわゆる「年収の壁」につきましては、一定以上の収入となった場合に社会保険料の負担等が発生して、手取り収入が減少することを避けるために就業調整が行われ、希望どおり働くことが阻害されているという指摘を指すものでございますが、本年6月に閣議決定をされた「こども未来戦略方針」において、壁を意識せずに働くことのできるよう取り組む企業に対し必要な費用を補助するなど、当面の対応策を決定する。そして、さらに制度の見直しに取り組む。こういったことが盛り込まれていたところでございます。
 そして、昨今の状況を見ますと、この10月から地域別最低賃金が大幅に引き上げられる短時間労働者にもこのような賃上げの流れを波及させていくためには、本人の希望に応じて可能な限り労働参加できる環境を整備していくことの必要性、こういったことに加えまして、企業の人手不足感がコロナ禍前の水準に近くなっている状況を踏まえますと、「年収の壁」への対応が喫緊の課題となっていると思います。
 このため、先ほどの当面の対応策につきましては、当初本年中に決定するとしていたものを、前倒しをして取りまとめをすることとなりまして、委員の方から御言及がございましたが、昨日総理が会見で述べられたとおり、「年収の壁・支援強化パッケージ」として今週決定されることが予定されております。
 この中で「106万円の壁」の支援策につきましては、労働者が壁を超えることに伴い手取り収入が減少しないよう手当の支給、賃上げで労働者の増加させる取組、こういった事業主に対する助成金の新メニューの創設という発言が総理の御発言の中であったところでございます。
 そして、藤原委員からも内容についてのお尋ねがございました。この内容としましては、具体的にキャリアアップ助成金におきまして手当の支給のほか、賃上げや労働時間の延長により労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円の支給を行うということを想定させていただいているところでございます。
 現在、政府部内で調整中の段階でございまして、本日複数の委員の方々から様々な御意見をいただきました。いただいた御指摘を重く受け止めております。そして、今後本件について具体の案を諮問させていただきまして、雇用環境・均等分科会におきまして十分な御議論をいただき、その上で成案を得て進めていきたいと考えております。
 なお、年金制度につきましては、現在社会保障審議会の年金部会におきまして、次期年金制度改正に向けた議論が行われているところでございます。厚生労働省として制度の見直しについてもこういった形で取り組んでいくということでございます。
 3点目といたしまして、山中委員から御質問いただきましたジェンダー・ギャップ指数につきましては、委員から御指摘いただきましたように、日本は146か国中125位ということでございまして、労働参加率の男女比、同一労働における賃金の男女格差、推定勤労所得の男女比、管理的職業従事者の男女比、専門技術者の男女比、こういった指標を経済参画の面で分析するスコアが低調であると。したがって、今後女性の勤続年数、管理職比率の向上に加えまして、男女共に仕事と生活が調和できる環境整備に取り組む必要があると考えています。
 本年6月に取りまとめました「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」の報告書におきましても、男女が共に育児と家事を分担しつつ、望むキャリアを実現するために、子の年齢に応じたニーズの変化等に対応した両立支援の在り方の方向性が示されたところでございます。この報告書を踏まえまして、今後の制度改正に向けて現在雇用環境・均等分科会で御議論いただいているところでございます。
 加えて、女性のキャリア形成の意識も重要であると考えております。令和5年度、個々の女性労働者のキャリア形成支援の事業の中で、メンター制度の導入やロールモデル育成のためのマニュアル・事例集を作成するとともに、女性労働者等を対象にしたアンコンシャス・バイアス解消セミナーを実施しております。このような取組を通じまして女性労働者が職業人生において明確な展望を描きながら働き続けられるような環境整備を進めていきたいと考えております。
 続きまして、川崎委員から御意見、御質問をいただきました。御指摘がございましたように、今、御紹介させていただいた内容とも重複しますが、6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」で盛り込まれた内容を踏まえ、現在労働政策審議会の雇用環境・均等分科会で御指摘の内容も含む両立支援の在り方の御議論をいただいているところでございます。そして、企業が労使自治の下で築き上げた独自の制度や運用があると、そのような御指摘も認識いたしております。今は、各企業が独自の制度を運用しているわけですが、それへの影響というのも企業サイドとしては非常にご関心があるという御指摘もあったと認識しております。現在公労使で構成されている審議会での議論ということでございますので、具体的な制度の見直し内容につきましては、各現場の状況も踏まえた御議論が深められていくものと考えておりますので、そのような議論を見守りつつ対応していきたいと思います。
 また、御発言いただいた中で、経団連や各企業の取組を具体的に御紹介いただきました。このような御取組に改めて敬意を表させていただくとともに、厚生労働省といたしましても、両立支援策についてどのような対策が効果的か、引き続き御意見をいただきながら進めていきたいと考えています。
 次に、則松委員から御質問いただいた男女の賃金差異の公表の関係でございます。御紹介もいただきましたが、令和4年7月から女性活躍推進法に基づく情報公表項目で男女の賃金差異というのを追加して、301人以上の企業に公表の義務づけをお願いしています。賃金の差異の公表が、則松委員も御案内のとおり、女性活躍の企業のデータベースで公表するパターンと、各企業がホームページなどで公表を行うというパターンがございます。そのため、男女の賃金の差異の公表の施行状況につきましては、データベース以外で公表した事例も含めて今、全体像のフォローアップをまさに行っている最中でございます。取りまとめができ次第雇用環境・均等分科会で御報告をさせていただきたいと思っておりますので、少々お待ちいただければと考えております。
 続きまして、則松委員から御指摘いただきましたハラスメントにつきまして御回答を申し上げます。総合労働相談コーナーや連合で実施されている相談内容としてハラスメント、差別の内容が多いという御紹介をいただきました。法の履行確保ということで、私ども、ハラスメント防止措置義務の実施状況につきましては、都道府県労働局において報告徴収を実施しております。引き続き防止措置が取られていない企業に対しては、是正指導を行うなどの対応をしっかりと行ってまいりたいと考えております。
 また、令和4年度からパワーハラスメントの防止措置義務が中小企業にも課せられたということがありまして、パワハラについての労働局への相談件数が非常に増加しているという状況もございます。したがいまして、法の履行確保というところもさることながら、企業としてどのような取組をしたらいいのかと、正直そういう御相談もあるのかなと考えておりまして、こういった企業への対応としましては、事業主やハラスメント相談窓口担当者等を対象とした研修の実施や、都道府県労働局で事業主向けの説明会などの対応も行っております。引き続き法の履行確保に併せまして、このような支援策と併せてハラスメント対策を進めていきたいと考えております。
 また、則松委員からカスタマーハラスメントについての御指摘もいただきました。カスタマーハラスメント防止対策につきましては、まずパワーハラスメント防止の指針におきまして、事業主がカスタマーハラスメント対策に取り組むことが望ましい旨を示していると。さらには関係省庁と連携した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成して、マニュアルを用いた企業向けの研修を実施しているという状況でございますが、マニュアルについて、より周知を行き届ける必要があるということで、積極的にこの周知を図って行きたいと考えております。
 実態把握につきましても令和2年度に実施していますが、適切な時期で改めて実態把握を行う必要があろうということで、準備をしています。またそういった状況についても適宜御報告等をさせていただきたいと思います。
 ハラスメント撲滅のための包括的な法整備についての御指摘もいただきました。禁止規定を創設する場合のハラスメントの定義などにつきましては、国内法制との整合性の観点から関係省庁とも連携しつつ、なお検討が必要であると考えております。法の施行状況や諸外国の動向などを把握して、さらに必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
 また、安河内委員からフリーランスについての御質問、御指摘をいただきました。厚生労働省で実施しております検討会におきましては、公正取引委員会の検討会における議論の状況も踏まえながら、御指摘いただいた点も含めて各論点について丁寧に検討してまいりたいと考えております。
 また、法律の円滑な施行に向けて、中小企業庁と公正取引委員会が入りますので、関係府省庁委と連携して法の十分な周知啓発を行うとともに、本省、都道府県労働局におけます執行体制の整備とか、フリーランストラブル110番における相談体制の充実等は引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 私からは以上でございます。
○清家会長 それでは、人材開発統括官、よろしくお願いいたします。
○岸本人材開発統括官 人材開発統括官でございます。
 大きく4点について御意見をいただいたと思います。リ・スキリングの関係、キャリアコンサルタントの資質確保の関係、人材開発分科会の目標設定、実績評価の関係、外国人技能実習制度の関係でございます。順次お答え申し上げます。
 まず、リ・スキリングに関しまして清水委員から御意見をいただきました。雇用形態や障害の有無にかかわらず、全ての人に能力開発の機会が確保されるべきであるということ。また、リ・スキリングは労働移動に向けた手段のみという位置づけではないということ。それから、個人支援と併せて企業向けの支援も拡充すべきであるということ。いずれも私どもも全く同じ考えでございます。
 また、政府として大きな方針を定めております新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画という6月の閣議決定文書でも、誰もが生涯を通じて新たなスキルの獲得ができるようにとか、自らの意思で、企業内での昇任・昇給や企業外への転職による処遇改善といったことが謳われております。
 こういった考え方に基づきまして、私どもとしても、例えば来年度の考えていることで申し上げれば、非正規で働く方が自らの選択によって仕事を続けながら受けられるような在職型の職業訓練のモデル事業、試行事業をやってみたり、あるいは教育訓練給付の指定講座の拡充、それに伴う予算の確保、個人主体の能力開発手段、一方で、生産性向上人材育成支援センターと呼んでおりますが、中小企業等のニーズに応じて、在職者の方にその訓練を提供する公的な機関の支援規模の拡充とか、こういったことを両面で進めていきたいと思っておりまして、御指摘の点をよく踏まえながらやっていきたいと思っているところでございます。
 次に、リ・スキリングの関係で小松委員からも御指摘、御意見をいただきました。在職者訓練の拡充の必要性、非正規で働く人の利便性のある訓練メニューの創設、リ・スキリングが転職の誘発につながってしまうのではないかという御懸念、この3点であったかと思います。
 まず、在職者訓練につきましては、特にものづくり分野の在職者訓練へのDX対応のメニューの拡大、それから先ほどもちょっと申しました生産性向上人材育成支援センター、中小企業のニーズに応じてオーダーメイドで訓練メニューをつくらせていただく、訓練を実施する機関ですけれども、ここの対象人員の規模拡大、こういったことに取り組んでいるところでございます。
 また、非正規で働く方のリ・スキリング支援につきましては、これも先ほども申し上げましたが、従来の手段である人材開発支援助成金の活用ですとか、教育訓練給付の活用のほかに、非正規の方が自ら選択して受けることができる公的な職業訓練、特に働きながらということですので、オンラインとかの手法を活用しながらということを考えておりますが、どんな訓練手法が有効か、試行的なことを来年度から開始したく、財政当局と議論をしているところでございます。
 また、人材流出の御懸念でございますが、リ・スキリングに取り組むことによりまして、企業から見れば、そこから新たな付加価値を生み出すチャンスが生まれるということ。また、働く人から見れば、一方で社外も含めた新しい可能性が開ける。こういった両面があることは事実だろうと思います。ただ、それに対しまして、人材開発分科会で昨年取りまとめていただいた「学び・学び直しガイドライン」という文書がありまして、そこでは考え方として学び・学び直しの促進が働く人のエンゲージメントや職場満足度の維持向上を通じて求職者から選ばれる会社づくりへつながる、そういった可能性があるのだということが盛り込まれております。
 若干敷衍しますと、企業がどういった戦略を持って環境変化に対応していくか、それに対して従業員にどんなスキルを期待していくか、そのスキルを身につけるために会社がどんなアプローチ、社内教育、自己啓発支援、様々だと思いますが、そういったことをやっていくかということを社内で労使間でよくコミュニケーションを図っていただくことが、むしろ外から人を惹きつけることにもつながると思いますし、また、中にいる人がこの会社で頑張っていこうということにもつながるのではないかということで、そういった取組がこれまで以上に重要になってくるのではないかと考えている次第でございます。そういったことについて私どもも支援をしてまいりたいと思います。
 次に、キャリアコンサルタントの資質について御意見がございました。これも御案内のとおり、法律上5年ごとの更新制としておりまして、キャリアコンサルタントの資質の維持を図り続けることができるような仕組みとしております。また、キャリアコンサルタントの方が学び続けていただくことが重要であるとの観点から、更新時だけではない研修メニューを用意させていただいておりますが、特に今、テーマとして考えておりますのは、キャリアコンサルタントの方が労働市場の基礎的な情報、最新の求人・求職情報など、リアルタイムで学ぶことができるような仕組み。これはjob tag(日本版O-NET)も活用してそういった研修メニューがつくれないかとかいったことに来年度取り組みたく、これも予算要求に盛り込んでいるところでございます。こういったことを通じてキャリアコンサルタントの資質向上を引き続き図ってまいりたいと考えております。
 人材開発分科会における実績評価、目標設定について御意見をいただきました。御指摘のとおり、人への投資、5年1兆円の金額的な非常に多くのウエートを私どもの人材開発部門が担っておりますので、適切な目標管理、事業執行が大事であるということは、全くおっしゃるとおりと考えております。
 また、2022年度の取組に関しまして、ハローワークをはじめ、現場の取組について一定の御評価をいただきましたこと、感謝申し上げます。その上で、2023年度の目標設定でございますが、一定の水準を定めまして、仮に前年度に目標達成できていなくとも、その目標を維持するという考え方を取っているものもございますが、特に雇用情勢の影響を強く受けると考えられる若者サポートステーションの就職等率などについては、過去3年平均を目標値とするという考え方を取っております。全7項目中2項目はこの3年平均方式を取っています。これについては、御指摘のとおり、特に2020年度が入りますと目標の押し下げ要因になるということは意識したのですが、過去3年平均を取りましたところ、新型コロナウイルス禍前の2019年度の実績よりは高い数値となったものですから、この考え方で目標を設定することにも妥当性があるのではないかということで、そういった提案をし、人材開発分科会でも御議論いただいたところでございます。
 御指摘については、引き続きということになりますが、各数値の持つ意味ですとか政策の重要性などを踏まえながら、毎年毎年しっかり見直しをしていきたいと思います。
 次に、外国人技能実習制度の関連で幾つか御指摘をいただきました。まず、野村委員からでございますが、現在行っております調査研究事業について、この成果の共有が重要であるということの御指摘でございます。これはそのとおりでございまして、最終報告は年度内というスケジュール感で調査研究を進めておりますが、今、技能実習制度の見直しの議論なども動いておりますので、中間結果を取りまとめまして、恐らく来月から技能実習、特定技能制度の有識者会議の議論がまた再開されますが、その有識者会議の場にお出しできるように今、準備をしているところでございます。
 同じく外国人技能実習制度について、矢口委員からも御指摘がございました。日本語能力の向上や生活支援、受入企業の体制整備が重要だという御指摘でございます。職業安定局からのお答えとちょっと重なってしまいますが、技能実習制度、特定技能制度のよりよい在り方について、有識者会議で議論していただいているところでございます。そこでは重要な論点の一つとして、御指摘の日本語能力の問題、外国人技能実習機構の体制整備の問題、実習先の要件の問題なども議論されているところでございまして、この議論に私どもとしても参画しながら、引き続き制度の在り方について検討してまいりたいと考えております。
 同じく技能実習制度について、石川委員からも御意見をいただきました。特に私ども人材開発部門に関しましては、外国人技能実習機構の体制について十分なのかどうか、さらなる補強が必要ではないかという御指摘でございます。まず、足元令和6年度、来年の要求につきましては、有識者会議の議論はまだ閉じておりませんけれども、中間報告書の中でかなり明確に方向性が示されました監理団体の許可制度の厳格化などを受けまして、外国人技能実習における許可申請の審査体制の整備などに関して、先取りして拡充するような予算要求をしているところでございます。
 一方で、今回の技能実習制度、特定技能制度の見直しが実際に施行されたときに、どんな職種に人数規模、どれぐらいの人数がどんなスピード感で入ってくるのか、こういったことを踏まえながら、さらに施行後の状況に応じた適切な、必要な外国人技能実習機構の体制を確保していかなければいけないと思っておりまして、その点、今後とも有識者会議の議論を見ながら予算確保の努力を続けてまいりたいと考えております。
 人材開発からは以上でございます。
○清家会長 ここまで事務局からお答えいただきましたけれども、藤原委員、御発言を希望ですか。よろしくお願いいたします。
○藤原委員 ありがとうございます。
 「年収の壁・支援強化パッケージ」につきまして、先ほど質問を1点いたしましたが、お答えがなかったのでもう一度伺いたいと思います。総理は来月から実施するとおっしゃったのですが、それはどういう意味なのかということを教えていただきたい。その際に法改正や予算措置は必要ないのか、10月から50万円の支給が実際に行われるという意味なのかという点を明らかにしていただきたいという質問をいたしました。もう一度お願いいたします。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、雇用環境・均等局長、お願いいたします。
○堀井雇用環境・均等局長 御質問いたたきましてありがとうございました。
 具体的な内容につきましては、先ほど回答の中でお話をさせていただいた、例えばキャリアアップ助成金の今の枠組みで、手当の支給のほか賃上げや労働時間の延長に労働者の収入を増加させる取組を行った事業者に対して、労働者1人当たり最大50万円の支給を行うことを想定させていただいていると、そういうお話をさせていただいたところでございます。
 ただ、一方で、具体の詳細の部分につきましては最終的に調整中の部分ではございますが、調整が整い次第、具体的な内容について御説明をさせていただくということにさせていただきたいと思います。そういう意味ではお答えになっていないかもしれませんけれども、御理解をいただければ大変助かります。申し訳ありません。
○清家会長 藤原委員、よろしいですか。
○藤原委員 よろしくありませんけれども、しようがないですね。何回申し上げてもしようがありませんので。
○清家会長 委員の質問の御趣旨は、そのような施策を進めるに当たって、当審議会、あるいはそれぞれの分科会なり部会で決めるべきことも含まれているのではないかというようなことでもあるかと思いますけれども、その点についてはどうなのでしょうか。
○堀井雇用環境・均等局長 ありがとうございます。
 繰り返しの話もあるかもしれませんが、本日、本当に複数の委員の方々から御指摘をいただきました。その御指摘の内容につきましては大変重く受け止めておるところでございまして、今後具体的な案について諮問をさせていただき、雇用環境・均等分科会におきまして十分な御議論をいただいた上で、成案を得て、御理解を得ながら進めていきたいと考えております。
○清家会長 よろしゅうございますか。では、清水委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○清水委員 十分なお答えがないのはとても残念です。先ほども申し上げたとおり、「年収の壁」や就業調整の課題解消は重要なことですが、10月と言えばもう目前です。本日のように労使が参画する場においてしっかりと説明いただくことが重要ですし、なにより、十分に確定していないのにこういった形で総理が発表されたことは遺憾です。また、中身だけではなくて、財源について十分に説明がされていないことは問題と考えます。政策を進めるうえでは、財源もきちんと含めて示されるべきですし、その財源がしっかりと確保されないまま発表されるようなことは控えていただく必要があると考えます。
○清家会長 ありがとうございました。
 他によろしゅうございますか。
 労働に関係する施策は、労使が合意した形で進められて初めて実効性が得られるものだと思っております。そのためにも、私どものような、三者構成の審議会というのは大変大切だと思っておりますので、今、労使双方から御意見を伺いましたので、会長としても、審議会の意義をよく踏まえて、行政においてはこれから施策をお進めいただきたいと思います。また、その進め方の方法、スケジュール等も含めて、今、労使から御意見があった点をしっかりと踏まえて進めていただきたいと会長からもお願いするということでよろしゅうございましょうか。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの点も含めまして、厚生労働省におかれましては、今後の予算編成あるいは政策立案において委員の皆様からの御意見をよくよく踏まえてお取り組みいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議は以上で終了とさせていただきます。本日は活発な議論、誠にありがとうございました。
 

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