第7回がんの緩和ケアに係る部会(議事録)

健康・生活衛生局 がん・疾病対策課

日時

令和5年9月29日(金)16:00~18:00

議題

(1)第4期がん対策推進基本計画について
(2)緩和ケア研修会について
(3)その他

議事

議事内容
○扇屋がん対策推進官 定刻となりましたので、ただいまより、第7回「がんの緩和ケアに係る部会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局を務めます、健康・生活衛生局がん・疾病対策課がん対策推進官の扇屋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本部会はユーチューブにて配信しておりますので、御承知おきください。
 本会議におきましては、愛知県がんセンター緩和ケア部部長、下山理史参考人に御出席いただいておりますので、御承知おきください。
 構成員の出席状況でございますが、本日は、全ての構成員に御出席いただくことになっております。
 なお、伊東構成員、谷口構成員、江口構成員が、若干遅れての御出席と伺っております。
 また、今回から、構成員2名が交代しております。
 森住構成員に代わりまして、国立がん研究センター東病院看護部看護部長、栗原美穂構成員に、前田構成員に代わりまして、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会理事、国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター長、坂本はと恵構成員に御参画いただいております。
 栗原構成員、続きまして、坂本構成員、一言、自己紹介をお願いできればと思います。
 よろしくお願いいたします。
○栗原構成員 栗原と申します。
 国立がん研究センター東病院で看護部長をしております。
 本日からの参加となります。看護の立場からいろいろと検討させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○扇屋がん対策推進官 ありがとうございました。
 続きまして、坂本構成員、お願いいたします。
○坂本構成員 よろしくお願いいたします。
 私は、国立がん研究センター東病院でがん相談支援の仕事をしております、坂本と申します。また、御紹介いただきましたように、日本医療ソーシャルワーカー協会の立場からも、今回、参加させていただいておりますので、社会福祉の立場またはがん相談支援センターの相談員の立場、両面から貢献させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○扇屋がん対策推進官 ありがとうございました。
 続きまして、前回の部会以降に事務局側の人事異動がございましたので、事務局の紹介をさせていただきます。
 健康・生活衛生局がん・疾病対策課長の西嶋でございます。
○西嶋がん・疾病対策課長 西嶋です。よろしくお願いいたします。
○扇屋がん対策推進官 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1~6及び参考資料1~6がございますので、御確認ください。
 続きまして、座長の指名ですが、参考資料1の開催要綱にもございますとおり、局長の指名によるとされており、中川恵一構成員を指名することとします。
 事務局からは、以上でございます。
 これ以降の進行は、中川座長にお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。
○中川座長 皆様、中川でございます。
 お疲れさまです。よろしくお願いいたします。
 本日は、「第4期がん対策推進基本計画について」、また、「緩和ケア研修会について」、この2つの議題がございます。
 議題に先立ちまして、前回のがんの緩和ケアに係る部会の開催から何と1年1か月が経過しておりまして、過去6回の議題について、事務局より、資料1を用いて説明していただきたいと思います。
○扇屋がん対策推進官 事務局でございます。
 資料1を御覧ください。
 まず、2ページ目を御覧ください。がんの緩和ケアに係る部会における議題について、これまで、令和3年7月2日から令和4年8月31日の第6回まで、がんの診断から終末期の段階ごとに課題を洗い出し、検討をしていただきました。第1回では、診断時からの緩和ケアに関する議題を整理し、これまで、診断時、治療期、終末期の3つに大きく分けて御議論いただきました。参考資料2に議題の整理案を示しておりますので、適宜御参照ください。第2回では、診断時からの緩和ケアに求められる対応について、告知時の面接においての望ましい体制や内容について明らかにし、当該内容を踏まえ、使用する資材についての情報提供を行うなどの御議論がありました。第3回では、治療期の課題について、医療従事者の患者の苦痛の把握や対応のための工夫、全ての患者に対して組織的に苦痛の把握と対応がなされるような仕組みを検討することなどの御議論がありました。第4回、第5回では、治療期の課題、特に専門的な緩和ケアの提供について、緩和ケアチームの技術、提供するケアの質の向上や均てん化等について、御議論いただきました。第6回では、終末期、緩和ケア病棟の課題について、遺族調査の結果の報告や第4期がん対策推進基本計画の策定に関する提言について、御議論いただきました。
 資料1の説明は、以上になります。
○中川座長 ありがとうございました。
 引き続き、「第4期がん対策推進基本計画について」、事務局から、資料2を用いて説明をお願いします。
○扇屋がん対策推進官 事務局でございます。
 資料2、2ページ目を御覧ください。先生方に本部会で御議論いただきました内容も踏まえ、令和5年3月28日に、第4期がん対策推進基本計画が閣議決定されました。この計画に沿って、今後、6か年、対策を進めていくことになります。計画の全体目標として、一番上に記載しております「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す。」を掲げた上で、第3期がん対策推進基本計画と同様、「がん予防」、「がん医療」、「がんとの共生」の3つの柱を立てて、これらを支える基盤とともに各分野別の施策として位置づけているという構造になっております。緩和ケアに関する大きな変更点としましては、緩和ケアについて、全ての医療従事者が診断時から治療と併せて取り組むべきとの趣旨から、「がん医療」分野の中に位置づけた点です。一方で、緩和ケアは「がんとの共生」においても重要な観点であることから、社会連携に基づく緩和ケア等のがん対策・患者支援として記載しております。「がんとの共生」では、2つ目の社会連携に基づく緩和ケア等のがん対策・患者支援に記載されており、令和4年のがん診療連携拠点病院等の整備指針改定において、当該指定要件に緩和ケアや緩和ケアチームが地域の医療機関との連携を強化する旨が記載されました。
 3ページ目、4ページ目では、「がん医療」、「がんとの共生」という順番で、それぞれ1枚にまとめておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 また、参考資料3に、緩和ケアに関する記載を抜粋しています。
 2ページ目に、がん医療のうち、「(1)がん医療提供体制等」のマル7、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進について」の現状・課題の中で「診断時の緩和ケアを実践するポイントを整理したリーフレットや、診断時の医療従事者の対応についての説明文書、専門的な治療の活用を含む対応のポイントを整理したリーフレットを作成し、がん医療を提供する全ての医療機関等に対し周知を行った」と記載がありますが、今回のこの部会の参考資料4~6に、「診断時の緩和ケア」、「病状、治療方針とあわせて、医療チームからお伝えしたいこと」、「痛みへの対応について」のリーフレットをおつけしておりますので、適宜御参照ください。
 事務局からの説明は、以上になります。
○中川座長 ありがとうございました。
 この部会でも議論した資材が基本計画の中にもきちんと位置づけられているということは大きいことだと思います。
○前川構成員 ごめんなさい。会議に入る前に確認したいことがあるのですが、いつ発言させていただけますか。よろしいでしょうか。御判断をお願いします。
○中川座長 どうぞ。手短に。
○前川構成員 会議に入る前に、一言、発言させていただきたいことがあります。
 月曜日頃に報道された、山口県で医療ミスが起こったこと、1月に起こったことが、今になってマスコミに出たのですけれども、主治医が誤って予定の11倍の1日当たり44ミリグラムのステロイド剤の処方をして、その後、再入院したときには、モルヒネを夕方に30ミリグラムを投与する予定が倍の60グラムを投与したということです。普通の謝罪ですね。今回、謝罪が行われたということがメディアで放送されました。緩和ケアと関係ない医療安全の問題だとは分かっているのですけれども、こういうことはよくあるケースであろうということもはっきりと発言しております。
 残された娘さんは、40歳なのですけれども、その方に心の傷を負わせ、病院への怒りの心をずっと死ぬまで持ち続けるような人生を生きるようなことになると思うのです。人の魂を殺してしまったと感じるのです。長く患者経験者として緩和ケアの部会に参加させていただきましたけれども、がんと診断されたときからの緩和ケア、緩和ケア研修会での病院医師の学びがすごく大切だと思います。このことを、トップ、病院全体が理解して共有しないから、このようなことが起こるのではないかと思いまして、本日の議題に入る前に、ぜひこのことを心に留めておいていただいて御議論していただければと思いまして、申し訳ありませんが、発言させていただきました。
○中川座長 ありがとうございました。
 それでは、先へ進ませていただきます。
 木澤構成員から、資料3について、御説明をお願いいたします。
○木澤構成員 よろしくお願いいたします。
 私の役割は、ロジックモデルについて御説明することであります。皆様、今回、基本計画とともにロジックモデルが発表されていることに気づかれているかと思います。今回初めて取り組まれたものでありまして、見慣れないものかと思いますので、簡単に、私から、ロジックモデルとはどういうものなのか、どういう目的でつくられたかというお話をしまして、その後、具体的なことを小川先生にお話しいただこうと考えています。
 まず、資料を見ていただくといいのですけれども、ロジックモデルを見ると、新しい、例えば、全体目標の「アウトカム」と出てきたり、「インプット」という言葉が出てきたり、「中間アウトカム」という言葉が出てきて、分かりにくいと思うかもしれないと思っているのですけれども、今までも、例えば、計画を立てたときに、個別施策とその施策を評価するためのアウトカムは既に設けられていたと思うのです。ただ、個別施策を達成することが全体のどこに効いてくるのか、患者さんのアウトカムを改善するところに本当に関係するのかという関係性がよく分からなかったのです。個別の施策が何のために行われていてこれをすると何がよくなるのかがよく分からないという御指摘を、様々なところからいただいていたのではないかと思いますし、私もそのように感じました。ロジックモデルの最大の目的は、まずは、最終的なアウトカム、がん患者さんの生活を改善する、QOLを改善するという大きなアウトカムをみんなで共有して、そのために何をしたらいいのかという分野別アウトカム、それを達成するために具体的にはどんなアウトカムを達成したらいいのかという中間アウトカム、そして、個別施策というそれぞれの関係性、構造を明らかにすることが、ロジックモデルが今回つくられた一番大きな目的になるかと思います。本来はロジックモデルをつくってから全ての文章を書くということが通常なのですが、今回は並行して行われたので、前後してロジックモデルが出されたところはあるのですけれども、コンセプトとしてはそういうことと御理解いただければいいかと思います。したがって、ロジックモデルを見ていただくときは、皆さんにそのつながりや関係性をしっかりと見ていただいて、何のためにこの個別施策が行われているのかということをしっかりと把握しながらロジックモデルを読み込んでいただけるといいかと思います。
 今、お話したように、皆さんにまずは見ていただきたいところ、最終的にここがずれていると困るのですけれども、最終アウトカムを共有する。それを達成するために、分野別アウトカム、中間アウトカムがあって、その中間アウトカムの個別のものを達成するために、個別施策があるという関係性ですので、この関係性をしっかり見ていただいて、構造を理解した上で、様々な施策について御意見を交わしていただければと思っています。
 これが具体的なロジックモデルになるわけですけれども、詳細は小川先生からこの後にお話があるかと思います。
 ありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございました。
 引き続いて、小川構成員から、資料4について、御説明をお願いします。
○小川構成員 よろしくお願いいたします。国立がん研究センター東病院の小川と申します。
 木澤先生よりこの緩和ケアに関するロジックモデルの大きな枠について解説いただきましたので、それに関連して、緩和ケアの領域では今どんな状況なのか。具体的にロジックモデルがいろいろと出てきて、指標の是非もあるのですけれども、そちらの内容の確認。本来このロジックモデルが求めている全体目標、各都道府県、拠点病院とのそれぞれの目標をどのようにそろえていくのか。現実には、モデルができても、それに魂を入れるためには、それぞれの指標を読み解くことと併せて、関連する国と都道府県と拠点病院が目標をそろえていくことが大事になります。そこの課題も現実に多くあり、緩和ケアを含めて、このがん対策を実施する上で課題がほぼ共通して出てきている面もあるかと思いますので、特に代表的なところを御紹介できればと思っております。
 まず、今回、ロジックモデルが出てきている背景、その中で具体的にどのようなところにこの指標等が影響しているのか、それをまとめておきました。大きくは、今、このがんの緩和ケアにおいては、第4期がん対策推進基本計画、もう一つはがん診療連携拠点病院等の整備指針、この2つがございます。それぞれ、緩和ケアは、一つは医療、社会連携と、先ほど御紹介がありましたけれども、基本計画に盛り込まれていて、それを受けるような形で、整備指針においては、まず、院内の緩和ケアの提供体制、もう一つは、地域における緩和ケアの連携、その2点が盛り込まれるようになってきております。
 その中で、今回、この緩和ケアに関してロジックモデルは幾つか出てきておりますけれども、その中のアウトプット、中間のアウトカム指標を挙げておきました。大きくは、この緩和ケアに関しての指標は、先ほど挙げましたような院内や地域の緩和ケア、診断時の緩和ケア、大体その3点から指標が提案されてきております。この辺りの指標は、まず、国が行っている患者体験調査等で分かるものもありますし、一部は現況報告等を含めて検討していくことになるかと思います。ここで確認いただきたいことは、まず、このような指標の全体を通して、県の動きや拠点病院の動きが見渡せるように計画されていること、目標が、診断時の緩和ケア、院内の緩和ケア、地域の緩和ケアの3点から組まれているという点を御確認いただければと思います。
 各指標、評価指標等を挙げておきました。今、挙げましたように、大きくは、拠点病院、診断時、地域の連携というところで出てきているということを見ていただけたらと思っております。特にこの辺りの指標で重要なことは、客観的な指標が幾つか提案されていること。当然、これが本当に緩和ケアの進捗なり質の改善を表しているかどうかということは、今後、検討しながら、指標として採用していく必要があります。少なくとも今までは緩和ケアは大きく質の評価に頼っていましたので、幾つかこういう客観的な指標が挙がってきているということは、それを見える化するという点で、一つの大きな変化があったのではないかと思っております。例えば、この緩和ケアの部会に関連するところでいけば、このスライドの真ん中の辺りですね。神経ブロックの実施数、緩和的放射線照射の実施数が挙がってきておりますが、これが拠点病院内での緩和ケアの活動や地域の緩和ケアの提供体制の一つの指標として考えられている。この辺りの動きあるいは内容を分析しながら、妥当な指標かどうかを見つつ、今後、指標として使っていくことを考えていく必要があるかと思いました。また、今、ちょうどロジックモデルが都道府県に伝達されて、各拠点病院もこれから県と拠点病院で話し合って進む段階かと思うのですけれども、この診断時の緩和ケアにも目を配らせているという点は第3期との大きな違いになるかと思います。例えば、ここでいきますと、診断時の緩和ケアの指標の一つとしてがん患者指導管理料イの算定数も挙がっていて、主に診断後の医師の面接に看護師等が同席する割合をある程度こういう指標から算定しようとし、それを質の評価として考えていこうという意図が読み取れるかと思います。緩和ケアというとおぼろげな面があったかと思うのですけれども、こういった面からの検討が見える化されてきている。そういう試みの途中と思っていただくとよいかと思いました。
 先ほどの木澤先生のお話と重なりますけれども、ロジックモデルの目的をざっとまとめておきました。まず、この全体像を把握するということは木澤先生のお話のとおりで、最終的に現場の活動あるいは質の向上の様々な取組が何につながるのか、その目標を共有するということが1点で、そのために途中でどういう指標がどのように変わっていくのかを示すものがこのロジックモデルになります。まず、全体を読み解くことも重要になります。もう一つ、このロジックモデルと併せて大事なことが、これは、国レベルの評価だけではなくて、各都道府県の達成目標や各拠点病院の達成目標とつなげて組んでいくことが大事になります。現在、検討段階かと思われますけれども、都道府県の拠点病院あるいは地域のがん診療連携拠点病院のそれぞれが県のロジックモデルとかの調整を行って、お互いの指標の連携を確認していくことが必要になるかと思います。
 その辺は、従来の緩和ケアの質の改善の取組と、一つ、大きく異なる点になります。一方で、今まで行われていた取組も決してなくはない。その中で、今後、こういうロジックモデルをそれぞれの県で考えていく上で、この辺りを意識することが大事ではないか、現在の好事例がどういうものなのか、現状がどういうものなのかということをまとめて御紹介できればと思います。
 まず、大きく、この緩和ケアの質の改善の取組は、1つは、この有識者による検討が県・拠点病院のレベルで行われておりました。ただ、それですとなかなか見える化はしないということもありましたので、一部、緩和ケアにおいては実地調査やピアレビュー等も行われていた。その辺りの状況が、今までの取組になります。
 まず、県レベルでの話で好事例を幾つか御紹介していこうと思います。まず、今、県の段階にこのロジックモデルが下りてきて、恐らく県でどうしようかと考えているレベルかと思いますが、幾つか、先行して県独自でロジックモデルを組んで動いている地域もございます。こちらはその中の一つの県ですけれども、県と都道府県のがん診療連携拠点病院がまずは連携して、こちらのスライドの右にあるような統一した院内の評価指標を作成しております。それを各地域の拠点病院に伝えて、このような数値を一緒に挙げていく、併せて、その目標を県の緩和ケア部会で報告して、それぞれの拠点病院の状況と併せて地域・県のレベルでの今の状況を確認する、その指標に基づいて次年度の活動を修正していくということを行っております。この県がこういう取組を行うことができたのは、一つは、県の担当者と都道府県拠点病院の担当者の間での連携が比較的良好である点、このようなロジックモデルに緩和ケアの専門家が慣れていた、ある意味、こういう専門家がいたということは有利な点なのですけれども、その辺りの状況がそろえば、現実にこのような質の改善の取組が動くという点で、参考になる点かと思っております。
 B県に関しましては、少し別の取組になりますが、どちらかといえば、都道府県拠点病院、地域の拠点病院が主体的に御自身で質の改善の取組を起こしている、それを県全体として促しながら情報を共有し、県全体に上げていく、ある意味、ボトムアップの活動を行っている取組になるかと思います。先ほどのA県がどちらかといえばトップダウンでそろえていくことからすれば、自発的に下から上に上げていくボトムアップの県で、一つ、好事例になるかと思っております。重要なことは、こういうロジックモデルあるいはこういう質の改善の取組に関する見識を持った担当者、緩和ケアの専門家がいるという点、その動きに県が協力して、実際にその県内でこのような研修会や相互のレビュー等を行いながら質の改善につなげていっているという点で、参考になるかと思います。どちらがいいというものではなくて、恐らくそれぞれの県の状況に合わせて使っていけるという一つの好事例になるかと思いました。重要なことは、A、B、どちらとも県と都道府県拠点病院の間でそれなりの連携体制があることと、このような質の改善に関する見識を持つことという2点が重要になるかと思います。
 その次に、拠点病院の中のレベルではどうか。これは、今までは「ピアレビュー」や「実地調査」と言われるものでございました。例えば、その中では、委託事業としてこういう取組等が今まで行われておりましたけれども、なかなか負担が大きい、それぞれのスタッフの作業等が明確でない、あるいは、こういうピアレビューとの違いがよく分からないということが言われておりました。これはその中の一つの例として委託事業で行ったモデルを挙げておりますけれども、大体実施の3か月前から行って、当日に約1~2日かけてこういうインタビューを行って、その結果をまとめて戻すということで、準備・実施の負担が大きいということがあり、前回の昨年の緩和ケアの部会等でその後の対応について議論がされたところかと思います。
 こちらの実地調査の取組の経緯も、今回、簡単にまとめておきました。もともとは2013年頃から始まり、2019年の実地調査パイロットまでありますけれども、ここで明らかになった課題は、受ける病院と都道府県の担当者の負担が大きいこと。負担という点ではそうなのですけれども、もう少し細かくインタビュー等を行うと、この都道府県の担当者が、こういう医療、特に緩和ケアに関する知識等で、どのように動いていいか分からない、もう一つは、都道府県と拠点病院の間で病院の中あるいは地域での緩和ケアに関する議論を行う場がなかったので、何をどこから手をつけていいか分からないという背景の課題もあったのかなと感じております。
 そういうこともありまして、今回、緩和ケアの部会の中でこういう実地調査等を今後はどうするのかということもあり、研究班の中で、まず、こういう実地調査を含めて、緩和ケアの質の改善を取り組む基盤がどうなっているのか、言い換えれば、拠点病院と都道府県がこの緩和ケアに関する議論をする場がどれぐらいあってどのような状況にあるのかということを確認するような取組を、各部門と協力しながら、進めてまいりました。これはその中の一つで、緩和ケアに関する協力体制を都道府県がん診療連携拠点病院の連絡協議会のときに、アンケートとして取らせていただいたものになります。これで見ていただきますと、例えば、今回の第4期の基本計画、整備指針に出ている例、左側の介護施設と緩和ケアの連携体制を見れば、7割ぐらいが取り組んでいて、その準備段階を含めると8割ぐらいが進んでいます。あるいは、右にありますように、緩和ケアチームが地域の医療機関からの連絡体制というものに関していえば、6割強が行っている。そのような状況が見えてきております。割合ポイントとなることは、こういう拠点病院が自分の施設の中で動けるものはそこそこ動いているということがここからうかがえるかと思いました。
 次は、一転して、今度は、地域の関係者と協力して地域の目標をつくっているとか、地域でどういうことを目標にして動くのかという議論となるとどうかというものを見たのが左の円グラフになります。見ていただきますと分かりますように、今度は実施が大きく下がってくる。要するに、拠点病院の中で自施設だけで動けるものに関してはそういう動きにすぐつながるのですけれども、拠点病院間で動く、拠点病院と県とか、医療圏の中で目標をつくるようなものに関しては、残念ながら2割程度にとどまっていて、その途上ということが分かるかと思います。右でいけば、その中でも、緩和ケアに関しては大体1割ぐらい。ポイントは、この医療圏の中での話合いということでいくと、がん治療や検診は割合都道府県の場で議論されるのですけれども、緩和ケアに関しての地域連携は、この第4期に入るまで十分に基本計画に見える形では盛り込まれていなかったので、そういう場が設定されていないあるいはその拠点病院が意識していないという状況がつかめているかと思います。
 緩和ケアの地域連携体制の構築に向けて、協議する場が2段階でどのようにあるのかということを聞いたものになります。少し背景を述べさせていただきますと、地域連携で緩和ケアのような連携体制を組むときには、まず、その組織の管理者レベルで全体の枠組みをつくるという話と実務者が実際にどうするのかという2段階の会議を構成することが重要であるということが言われています。ただ、現実に見ますと、これが別の会議としてあるというものは残念ながら2~3割程度で、あまり意識されずに両方が一緒に含まれている状況があるかと。先ほどのように緩和ケアに関する議論が進んでないということは、まだ場が全然つくられていない医療圏があるということが1点、もう一つは、場があったとしてもこの辺りが有効に機能するような格好になっていない可能性があるということを示唆するものかと思います。
 特に、今回、地域のロジックモデルに関して、どれぐらい活用しているのか。今はもう少し高いかと思いますけれども、準備段階を含めて3割ぐらいが昨年度の段階で、各ロジックモデルが都道府県にこの9月に下りましたので、これがどれぐらい変わってくるのかということを注意しながら見守る時期に来ているかと思います。
 以上の話を簡単にまとめておきたいと思います。この緩和ケアの質の改善を進める上での課題、今後、ロジックモデルを生かす上で、今、どういう状況かをまとめておきました。まず、都道府県に関しては、緩和ケアに関して、緩和ケア部会等の検討体制は持っております。ただ、この質の改善に関する計画や評価体制、具体的にいえば、指標をしっかりと用いて見える化をして、目標に向けて、都道府県の動き、拠点病院の動きをそろえるということについては、ばらつきが大きく、そういうものに取り組んでいる県もあれば、今検討段階の県もあるかと思います。指標に関しては、ロジックモデルで国のレベルのものが出ましたので、今後、各県・拠点病院での検討に移っていくのですけれども、このロジックモデルをまずは理解して、使うレベルをまずはサポートしていく必要があるかと思っています。同じく、がん診療連携拠点病院においても、院内に関する取組は進む一方で、この地域との緩和ケアに関しては、会議体の整備あるいはその議論がこれからの段階の面もあるかと思っております。まず、実地調査等もあるのですけれども、その前段階で議論の場がない。地域連携、地域における緩和ケアの検討を進める上では、まず、県・拠点病院等が話し合う場、その知識のギャップ等を埋め合う場を整備し、議論の熟成を進めていくことが、最初の段階として必要かと思います。そのために、都道府県に対するロジックモデルの運用に関するサポート、拠点病院に関してもこのロジックモデルに関する普及とそういう議論の場をつくっていく必要性を伝えることが大事かと思いました。
 今、研究班では、この辺りを踏まえて、今後、まずは、都道府県ごとに、この緩和ケアのロジックモデルの活用状況、これをそれぞれの県の計画に落とす段階で必要なサポートを伺いながら、このロジックモデルを各拠点病院に下ろし、県が基本計画に組み込むところをサポートしていこうと思っております。具体的にいきますと、都道府県に関しては、アンケートを実施して、このロジックモデルに関する情報提供を行っていくこととともに、こういう場の設定等の好事例の共有、必要に合わせてコンサルテーション体制を行う予定にしています。また、拠点病院に関しましても、整備指針に合わせて、具体的にいくと、今までと違って、診断時の緩和ケアや地域連携が明確に盛り込まれているのですけれども、残念ながらまだ知らない拠点病院も多くあります。その辺りの検討の必要性と併せて、このロジックモデル運用に関する知識等を提供し、県との議論を促進するという両面からのサポートを行うことをモデルとして検討しております。この辺りに関しては、当然こういうアンケート等ではまだ不明な点もありますし、それぞれのなかなか量的なものでは見えない課題等もまた把握されているかと思います。御指導いただきながら進めたいと考えておりますので、様々なコメント、御示唆をいただければと思います。
 以上になります。
○中川座長 ありがとうございました。
 それでは、事務局、さらに、木澤、小川両構成員の御説明について、質問やコメントがありましたら、いただけますでしょうか。
 岸田構成員、お願いします。
○岸田構成員 木澤構成員、小川構成員、御説明をありがとうございました。ロジックモデルについて、深く知ることもできました。
 ここで意見を申し上げても、ロジックモデルはもう決まっているものかと思いますが、関係性や構造が大事ということもおっしゃっていただきましたので、今後のために意見を申し伝えたいと思っております。
 まず、昨年まで、我々のこの緩和ケアに係る部会で、診断時の緩和ケアなどの資材、リーフレットを作成したかと思います。ただ、それに関して、拠点病院等に厚生労働省から周知していただいたと思うのですけれども、ある病院は電子カルテのお知らせに書いてあるだけのようでした。そこは興味のある方しか見ない場所ではないかなと個人的には思っております。緩和ケアにある興味がある医療者は、個人的な感想ですけれども、大体緩和ケアについては一通りできている人たちなのではないかと思っていて、緩和ケアに興味がない、自分は無関係だと思っている人に対してアプローチをしていかないといけないということは常々思っています。つくって、配って、終わりということではなくて、そこへの指標やアプローチも今後は必要ではないかと。今だと、PDCAのPとDだけ、DoだけをやってCheckとActionができていないというところを、ずっと緩和ケアに係る部会を出席していた者として、危惧しています。
 そういった振り返り等々も必要になってくるのではないかと思って、発言させていただきました。
○中川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 ロジックモデルの指標の中に神経ブロックと緩和照射が明記されていることは非常にいいことだと思うのですが、診断時からの緩和ケアについて、資材の活用というところで御意見をいただきました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 どうぞ。
○小川構成員 今の岸田構成員のお話と関連する点なのですけれども、まさに御指摘のとおり、本当にどう評価するかは非常に重要になるかと思いました。その中で、指標も決して全て確定しているものではなくて、恐らくこういう何らかの取組に対する改善を図っていくものを盛り込んでいくことは重要になるかと思います。例えば、その中には、それこそ患者体験調査等で診断時の支援を受けたかどうかということを実際に確認するということが行われれば、アウトカムの一つとして考えられると思います。実際にこういう配った資材を見たことがあるかまで聞くかどうかは分からないですけれども、その辺りの診断時の支援の充実度をより細かく評価することは当然重要になるかと思いますので、こんな点はどうかとか、こういう見方があるのではないかとか、ぜひいろいろと挙げていただければと思います。
 ありがとうございました。
○中川座長 小川構成員、そうすると、ロジックモデル自体は微修正が可能ということなのですかね。
○小川構成員 恐らく全体の枠組みということでは動かない点もあると思うのですけれども、例えば、ナショナルデータベースとかに関しましては、恐らくその妥当性を含めて今後の検討が行われていく面もあるかと思います。その中で、より適切な指標等があれば、そちらを入れていくというか、恐らく提案していくという格好になると思うのですけれども、そういう可能性は研究班レベルでは十分あるかと思います。これを固定とは思わずにいろいろと御検討いただくのがよいかと思いました。
○中川座長 木澤構成員、手が挙がっていますね。
○木澤構成員 岸田さん、ありがとうございました。
 確認していいですか。今の御発言は、リーフレットどうこうということも重要ですけれども、それよりもアプローチとして関心がない人たちにどうアプローチをするかという施策を考えろという御発言だったように私は受け取ったのですが、そういう方向性の御発言ということでいいでしょうか。
○中川座長 どうぞ。
○岸田構成員 ありがとうございます。
 2点、ございます。1つは、部会でやったものに対して、しっかりと自分たちでもきちんとチェックをしていかないといけない、していこうという我々の心意気としてです。あとは、これは多分緩和ケア研修会をどうやって広げていくかも関わってくるのかもしれないのですけれども、興味のない方に対してのアプローチも別途考える必要がある。この2点でございます。木澤構成員、ありがとうございます。
○木澤構成員 ありがとうございました。
○中川座長 よろしいでしょうか。
 時間が押しておりますので、先に進ませていただきたいと思います。
 続いて、「緩和ケア研修会について」、事務局から、資料5を用いて説明をお願いします。
 岸田構成員、どうぞ。
○岸田構成員 ありがとうございます。
 今回の指標の対象として、地域の医療機関からの年間の新規紹介者の患者数というものがあると思うのです。ただ、これに関しては、まだ緩和ケア外来がしっかりと整っていないという現状が今はあると思います。新規の人たちの紹介者数を上げていくことはもちろん大事なのですけれども、しっかりとそこで連携が取れているか、数字を計れない地域から、誰からどのように連携されているかという過程も、今回、その関連性というところでは非常に大事になってくるのかなと。そこが、「数が増えたからいいよね」ではなくて、きちんとどのように紹介されてきているのかという要因まで含めて考えていかないと、より多くの人たちに届かないかなと思っているので、そこだけ、付け加えさせてください。
○中川座長 ありがとうございました。
 よろしいですかね。
 資料5の説明をお願いします。
○扇屋がん対策推進官 事務局でございます。
 資料5を御覧ください。
 まず、2ページ目です。第4期がん対策推進基本計画の緩和研修会の項目の中で、今後の方向性として「緩和ケア研修会の学習内容や、フォローアップ研修等について検討し、必要な見直しを行う」とされていることを踏まえ、今回の部会において、緩和ケア研修会について取り上げることとなりました。
 3ページ目を御覧ください。緩和ケア研修会は、平成29年12月に、がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針が改正され、平成30年4月から、現在の研修が開催されています。研修会の目的は、基本的な緩和ケアについて正しく理解し、緩和ケアに関する知識、技術、態度を修得することで、緩和ケアが診断のときから適切に提供されることとしています。構成は、e-learningと集合研修の二本立てで、e-learningで事前学習を行い、e-learningを修了した後に集合研修を受講することとしています。学習内容は、記載のとおり、必修項目と選択項目に分けています。
 続いて、4ページ目を御覧ください。令和5年3月末時点で、累積約17万人が研修を修了しており、年間約1万人程度のペースで増えています。平成30年4月以降は、医師・歯科医師以外の医療従事者にも受講の機会が広がり、令和5年6月末時点で、約1万3000人が修了しています。
 続いて、5ページ目を御覧ください。拠点病院の類型ごとの受講率をお示ししています。都道府県及び地域がん診療連携拠点病院においては約8割、地域がん診療病院においては約7割の医師・歯科医師が研修を修了しています。
 続いて、6ページ目を御覧ください。第4期がん対策推進基本計画に緩和ケア研修会の見直しに関する記載がなされた背景について、過去の主な議論について、説明いたします。第2回がんとの共生のあり方に関する検討会において、緩和ケアにおける苦痛のスクリーニング、人材育成について議論されたほか、7ページ目にお進みいただき、第84回がん対策推進協議会において、がんとの共生のあり方検討会から、緩和ケア研修会について、記載のとおり、今後の方向性を示しております。
 続いて、8ページ目には、がんとの共生のあり方検討会からの提言の中で、緩和ケア研修会の学習内容の見直しに関係し得る提言を示しています。
 続いて、9ページ目を御覧ください。緩和ケア研修会の見直しに向けた検討の方向性をお示ししています。これまでの議論を踏まえた課題の整理として、スライドに記載の3つの課題や、この後の下山参考人からの御発表にありますような課題や見直し案を御参考に、緩和ケア研修会の現行の研修内容、新たに追加すべき研修内容、また、その優先順位について、御議論いただければと考えております。
 事務局からの説明は、以上になります。
○中川座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、下山参考人より、資料6を使って御説明いただきます。
 よろしくお願いします。
○下山参考人 よろしくお願いいたします。愛知県がんセンターの下山でございます。
 本日は、日本緩和医療学会で取り組んでおります緩和ケア研修会等に関して、お話を手短にさせていただこうと思います。
 日本緩和医療学会の厚生労働省からの委託事業では、この緩和ケア研修会と緩和ケアに関する普及啓発、この2本を柱として、この事業に関して進めさせていただいております。
 その中で、緩和ケア研修会に関して本日は主にお話しさせていただこうと思うのですが、基本的には、緩和ケアの提供に関して、先ほどの御説明の中でもございましたように、誰も取り残さないために、いかに基本的な緩和ケアを幅広く知っていただいて知識として身につけて役に立てていただくかというコンセプトの下に、緩和ケア研修会に関する様々なプログラムを、指針を基に、つくっているという形になっています。具体的な緩和ケアの流れみたいなものをこちらに記載させていただいておりますが、基本的な緩和ケアの研修会を、多くの方々、医師・歯科医師だけではなくて、様々な医療職種に関して、受けていただいて、それが様々な方々に幅広く届くということを目標としております。
 恐らくこれまでにも「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」という言葉が出てきたかと思いますが、研修会で主に身につけていただくものは、基本的な部分、誰もが行う緩和ケアになるわけです。私たちが、目標といいますか、こういったところができるようになるといいなということで掲げているあるいは受けていただいた方にそれを行動の目標にしていただけるというものを、ここに5つほど列挙させていただいています。ポイントは、患者さんの全人的な苦痛、痛みだけではなくて様々な苦しみに関して目を向けることが必要だということ、あくまでそれに対する初期対応のようなもの、どんな医療でも恐らく行われている、がんに限らず様々な分野で行われていると思うのですが、基本的な苦痛にまずは対処しようということになるかと思います。苦痛を持っているのはもちろん患者さんが中心だと思うのですが、看病しておられる家族等の感情にも配慮が必要だろうということで、そういったところを、様々に、幅広に身につけていただけるようにということを目標にしていると同時に、専門的な緩和ケアにつなげていくあるいは地域につなげるみたいなところも、一応の目標として、身につけていただけるといいなと考えています。
 具体的には、「PEACE project」と呼んでいますけれども、緩和ケア研修の内容に関しては、先ほどの御説明の中でもありましたように、現在は、学びの部分としてe-learning、具体的にみんなで実際にディスカッションをしながら学ぶというところで集合研修を1日型で行っているのですが、そういったもので使う様々な資材を構築したり修正を重ねて検討したりしているということが、緩和ケア研修に関する学会の取組の一つになります。もう一つは、その研修会は各拠点病院等が主催されるわけですけれども、その主催をするに当たっての手続等を行うのが、緩和ケアの「指導者」という名前がふさわしいのかどうかは分かりませんけれども、「指導者」と名前をつけられておりますので、「指導者研修会」と呼んでおりますが、その研修会を開催する企画責任者の養成のための研修会も行っております。
 ここからは、まず、現在の研修会の内容について、指針が改定された後、その研修会を受けられてどんな効果があったかというお話と、我々が考えている今後の緩和ケア研修の問題点等について、順番にお話しさせていただきます。研修会内容に関しては、重複しますので、一部端折りながらお話しさせていただくのですが、従来のものだと2日間だったものが、現在は、1日型の集合研修、プラス、事前にe-learningを受けてきていただくという形で、拠点病院の緩和ケアリソースは非常に少ないメンバーでやっているものですから、そういったところへの負担の軽減等もこの1日型研修で大分進んだのかなと思っています。
 違いに関して、ここで挙げてありますけれども、主立ったところは、今、御説明させていただいたとおりになります。
 座学での部分をe-learningにしたわけなのですが、その部分はこちらに掲げられてありますとおりです。必修の項目と選択の項目がございまして、必修の項目に関して、主に指針にのっとって計画し、項目を作成して、スライド等をつくっているという形になっています。選択項目は、我々がこういったものももっと必要なのではないかというものに対して、あるいは、厚労省から要請されたものに関して、相談をさせていただきながら、作成しているものになります。
 もしかしたら具体的にe-learningのサイトをまだ御覧になったことがない方々もいらっしゃるかと思いますので、少しだけお見せしておこうかと思って持ってまいりました。e-learningのサイトにID・パスワードを入れて入りますと、このような形になっています。様々なことを、指導者研修会を受けられた方、つまり、研修会を企画して運営していく方はやらなければいけないのです。こういった登録をして、モジュールがどうなのかというところをいろいろと見ていただきながら、研修会を企画し、資料をつくるみたいなところを、全てこのe-learningのサイトの中にまとめて入れてあります。
 具体的なプログラムに関して指針に書かれているものはこういう形になっています。
 それに基づいて、細かいスライドになって恐縮なのですが、使っていただける様々な資料等がこちらのように載っています。これだと細かいので、解説等は後でお読みいただければと思います。
 お映しした資料名だけをピックアップしてあります。これは先ほども出てきていたものなので重複になりますが、集合研修で使う内容と同時に、その後、例えば、修了証も必要ですし、研修の前に都道府県に出す資料、それが果ては厚労省まで行くわけですけれども、そういった様々な準備を経て行っている。その準備を行うための内容も、全てこちらに盛り込まれております。
 実際に研修会が現場でどのように行われているかといいますと、指針にのっとって、例えば、標準プログラムとして私たちが挙げてあるものがこちらになります。これだけを御覧いただいても、朝から晩まで、受講者の方々にもみっちりと受けていただかないといけないとともに、この準備をする人たちは多分前々から準備をしているという形で、1日になったとはいっても結構なボリュームの研修会を拠点病院はやっていることになります。
 現在、e-learningのシステムに登録されていた方は研修会を修了した方よりも当然多くなるわけなのですけれども、人数を見てみると、このような形になります。e-learningの登録者数は8万8759人が全体でいるうち、医師が大体6万人強になります。その中でe-learningの内容を修了している人は約7万人程度という形になっています。下に各職種の修了者等も載せてありますので、後で御確認いただければと思いますけれども。大体このような数字になっていて、e-learningシステムになってからでもこれだけ多くの方々が研修会を修了している形になります。
 実際にこの新指針になって、具体的には1日研修になりましたし、どのような効果があるのかないのか、従来とどのように違うのかということを確認した結果をこちらで示したいと思います。対象は始まってから1年のところでの結果になるのですけれども、2018年度の修了者で確認を取っています。研修会のときに、プレテスト・プレアンケート、ポストテスト・ポストアンケートもやっていただいているので、これに基づいて確認を取っていきました。
 ここで尺度として使わせていただいたものが、PEACE-QとPCDSなので、その説明を載せてありますけれども、ここは、説明していると時間がかかりますので、割愛させていただきたいと思います。ポイントとしては、PEACE-Qは点数が高ければ知識が高くなったことが分かりますし、PCDSは数字が低ければ困難感が低くなったことを示していると見ていただければいいかと思います。
 その結果を出しているわけなのですけれども、PEACE-Qに関しては数字が上がってきているし、PCDSは、様々な項目、5つの項目を挙げてありますけれども、いずれの項目も有意に下がっているので、効果としては十分あるのではないかという結果が得られています。
 分かりにくいので、グラフにすると、こんな感じだよと。それだけなのですけれども、見ていただくと、一目瞭然なように、効果は一応あるという結果は出ています。
 各職種に基づいてはどうなのだろうかということを確認しているわけですけれども、これに関しましても、どの職種もそれぞれ効果は上がっているという結果が出ております。特に知識に関しては、医師や看護師以外の様々な職種で、受けていただくことで非常に効果が上がっているという印象はあるかと思います。
 最後になりますけれども、我々が考えている研修会についてということです。
 実際に学習内容等は我々も常に見直していっているわけなのですけれども、見直していくときには何が必要かというところを我々も常に考えております。その中で、基本的な路線としては、基本的緩和ケアとして必要な知識をきちんと身につけていただいて使っていただけるという内容を提示しています。とはいっても、最新の知識を身につけていただきたいので、常にガイドラインが改定される場合にはアップデートをしながら、今までも作成してきています。
 さらに、今後付け加えていくとすればということになるわけですけれども、主に社会的な諸事情等を何とかしていくための項目を立てていく、がんの医療は大分生存も延びてきていますので、サバイバーシップの問題、あるいは、オピオイドを長期にわたり使っていた人のオピオイドの依存みたいなところも今後は多分問題になってくると思うので、こういったことに関しても取り組んでいく必要はあるといいますか、現場でも知っておく必要はあるかと思っているので、そういったものも盛り込む必要が出てくるのではないかと感じています。いわゆるライフステージに合わせた対応が重要になってくるので、縦軸と横軸みたいな形でそれぞれこういったものも取り組んでいける可能性はあるかと思っています。
 これで最後になります。こういった研修会を我々が下支えをしてきたわけなのですけれども、現時点で見えている課題を挙げさせていただいています。ビジーになりますけれども、御覧いただければと思います。最近は、多くの施設で、医師の受講者は特に研修医の方々が多くなってきているのではないかと思います。そうすると、例えば、ディスカッションの内容とかが、参加者中心にやっていると、薄くなりやすいというところはあるのではないかと思います。そうすると、議論が深まりにくいので、より身につけて帰っていただくためにどうしたらいいのだろうかということを現場で考えていく必要はあるかと思っています。各職種で参加していただける方々が増えてきていますので、どうしても持っている知識や行っている行動の違いみたいなものは結構大きいかと思います。そうすると、1つのツールを用いて様々な人たちにいろいろな幅広の知識を得ていただくためにはどうしていったらいいのだろうかというところは考える必要があるのではないかとは思います。今、御覧いただきましたように、一定の効果はあるわけなのですけれども、これに関して現場でどのように使われているのかというところに関しては、懸念される部分も当然あるのではないかと思います。例えば、オピオイドを処方するということに関しては抵抗はなくなったけれども、それを具体的にどのように管理して患者さんと一緒に考えて鎮痛を図っていくのかというところまでできて、多分初めて鎮痛ができたと言うのだと私は思うのですけれども、そういったところがどのぐらい現状でできているのかというところは、個別の対応になるので、非常に難しいのではないかとは思います。あとの2つに関しても、今後の課題としてありがちなのですけれども、診断時からの緩和ケアが余りにも前面に出過ぎているために、エンド・オブ・ライフの部分、がん以外の緩和ケアに関して、本当は重要だと思うのですが、まだ手薄な部分もあるので、その辺りに関しても今後どうしていけばいいのかという問題はあるかと思います。
 本日の話に関しては、以上になります。ありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございました。
 それでは、検討に当たっての論点、資料5の9ページ目をお出しいただいて、これを踏まえた議論をお願いしたいと思います。今回議論いただきたいのは、緩和ケア研修会の学習内容についてであります。30分弱程度、時間が取れると思いますので、どなたか御発言はございますでしょうか。
 林構成員、お願いします。
○林構成員 下山先生、ありがとうございました。
 本当に木澤先生の頃からしっかりとした緩和研修を行っていただいているおかげで、若い先生たちと話していると、明らかに緩和を目指す医師だけでなく全く今まで興味を示してくださらなかった診療科の先生方などの意識が相当上がってきていると思うのですね。数字で出ていたように、確実に効果は上がっていて、私はこのPEACE研修会はすばらしい成果を上げていると思います。
 そんな中で、私は、大学に籍を置きながら、今、北関東にある地域の病院にいるのですけれども、例えば、コロナ禍ということもあって致し方はないと思いますが、患者さんの緩和ケアに関して、拠点病院に患者さんを送って、先ほど成果物の話がありましたけれども、こちらでつくった成果物をもらって帰ってきた患者さんはいらっしゃらないのですよね。知識は増えて、意識も変わってきていると思いますけれども、体制はすごく重要で、そこで初めて拠点病院の要件や国からの行政の指導みたいなことが生きてくると思うのですけれども、我が国は診療報酬で出来上がっている医療体制なので、医療体制の中に組み込むことはすごく必要かと思っています。ただ、大学病院や拠点病院はやらなければいけないことが山ほどあるので、ロジックモデルを使って、本当に効果がないものはどんどんも要件あるいはいろいろな業務を削っていくべきだと思うのです。患者さんが初めて緩和ケアで拠点病院に行ったときに、本当に10年前のような扱いを受けて帰ってこられて、とても残念な思いも2度ほどしました。そういう思いをしないで済むように、行政的なマネジメントをしていただきたいということが、現場の人間からのお願いになります。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 前川構成員、お願いします。
○前川構成員 検討に当たっての論点のところで、今後の緩和ケア研修会の見直しに当たって新たに追加というところなのですけれども、診断時の緩和ケアと痛みへの対応というものは緩和ケア研修会に入っていますか。これから入れてほしいなと思うのですけれども。
 もう一点は、こういう緩和ケア部会で研修会のことをお聞きしますけれども、医療者の方はよく御存じですが、私たち患者経験者とかは、何をされているのか全く分からない。随分前に、研修会が始まって何年か頃、2度ほど見学をさせていただきました。見学させていただいて、大変失礼なのですけれども、「何だ、このぐらいのことしか勉強していないのか」と思って驚いて、今、どのぐらい進んでいるか、どのようなことを学ばれているかということを見学させていただくことはできないかなと。
 この2点です。
○中川座長 お答えは、事務局ですか。緩和ケア研修を見学したいということですかね。
○前川構成員 そうですね。こういう数字的なこととかは知ることできますけれども、先生方は何を勉強されてどのように患者に反映できるようなことを学ばれているのかなと、とても不思議な感じがすると。
○中川座長 検討させていただきたいと思います。
○前川構成員 それと、診断時の緩和ケアとかを研修会に入れることはできないのかなと。
○中川座長 前川構成員が言われているのは、この部会でつくった資材の活用ということになるのですかね。
○前川構成員 そうですね。
○中川座長 例えば、資料5の3ページ目を出していただけますか。研修会の内容の中に、例えば、緩和的放射線治療や神経ブロックに関しては、資材をつくりましたよね。これは入っています。ただ、選択科目になっているのです。これを必修化するかどうか、この辺り、皆さんから御意見もいただきたいと思うのですけれども、どなたか、ございますか。
 林構成員。
○林構成員 岸田構成員が言ったように、例えば、こういう部会から出てくるものはせめて指定要件化していただくぐらいの意気込みでいないと、我々も責任を持った立場でお話しできないような気もするのです。逆に、これを要件にしてくださいと、この10年来、いろいろと言ってきたのだけれども、アウトカムが分からないものもたくさんあると思うので、そういったものをきちんと検証しつつどんどん削っていくという動作と並行して、幾つか部会もあると思うのですけれども、そういったところで決まったこと、専門家集団が決めたことは、取りあえず要件化していただくというプロセスにはできないでしょうかね。
○中川座長 要件化とは、拠点病院の要件化を含めてと。
○林構成員 例えば、拠点病院の要件化とか。
○中川座長 そこは私も関心があるのですけれども、今回は緩和ケア研修の内容ということなのです。ただ、林構成員としては、資材で扱ったテーマは入れるべきと。
○林構成員 あんなにすばらしい研修会が単なる知識で終わったらもったいないと思うのですよね。実際の患者さんにつながってくるようなこと、診療と本当に具体的に絡められるようなことを行政的なプロセスでしなければいけないのかなとは思っているのですけれども、その方法論をどうしたらいいのか、御意見を伺いたいのです。
○中川座長 ほかはございますでしょうか。
 岸田構成員、どうぞ。
○岸田構成員 今の選択科目について、下山参考人への質問にもなってしまうのですけれども、こちらの選択科目は、今、5つのうちから2つが選択できるということでよかったでしょうか。どれもすばらしい選択科目だと思うのですよね。それが選択されるので、偏って選択されているものがあるのか、満遍なくなのか、偏りがある場合はそれをよしとするのかといったところも思っていて、私がこれを見させていただいたときに、がん以外の緩和ケアとかは大事だなということを思ったのです。例えば、不眠とかになると、ぱっと見、選択する人が少ないのではないかなと個人的に思いました。ぱっと見のタイトルとか、いい内容でも、いろいろなそういったものが関係するのではないかと思って、思い過ごしだといいのですけれども、そういう偏りとかは、今後、捉えていくとか、そういったことはありますか。
○中川座長 下山参考人、お答えは可能ですか。
○下山参考人 どうもありがとうございます。
 今の件に関しましては、一応どの選択科目も取っていただくことは可能になっています。まさに選択科目ですので、全部受けていただくことも可能ですし、最低限2つみたいなところがあるかもしれないのですけれども、全部受けられるようにはなっていますということが、まずは一つ。
 ざっくりとしたデータしかないのですが、選択科目のうち、できた順序が若干前後している部分もあるのですけれども、例えば、一番受講者が多いものが実は今言っていただいた不眠なのですよね。不眠が一番多いのです。少ないものが、泌尿器症状や口腔症状の緩和みたいなところ。若干新しいからというところもあるのですけれども、例えば、がん以外、倦怠感、不眠と比べると、明らかに少なめの受講者数にはなっています。恐らく受けていただく方の興味に基づいているのではないかと思います。多いのは、がん以外の疾患の緩和ケアと倦怠感と不眠になりますかね。そんな形になっています。
○岸田構成員 下山参考人、ありがとうございます。
 いいプログラムがいっぱいあって、全部が選択できるということを理解しました。
○下山参考人 ありがとうございます。
○中川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 橋口構成員。
○橋口構成員 ありがとうございます。
 聖マリアンナ医科大学の橋口と申します。ふだんは医学部での教育と初期研修医の教育あるいは専門医の教育をしていて、その中で緩和ケア研修会をやっているような立場になります。
 緩和ケア研修会が始まって、もう10年以上の月日がたちました。最初の頃は、いわゆる緩和ケアを学んだことがないという世代も含めてこの緩和ケア研修会に参加していましたので、その内容についても非常に新鮮でしたし、例えば、ロールプレイ一つにしても、チーム医療の模擬体験であるところの症例検討にしても、非常に新鮮な気持ちでやってきていたのです。ただ、この内容自体、本来は医学部でやるような本当にベーシックな内容で、先ほど前川構成員が「一体どういうことをやっているんだ」とおっしゃったのですけれども、本当にベーシックな内容になります。今は医学部の中での教育も変わってきていて、いわゆる緩和ケアは必修項目になっていますし、国試でも出るような内容ですので、ある程度のことはもう学んできているのです。チーム医療の体験であるところの症例検討も、看護医療学部や薬剤部の学生たちと一緒に何回も合同授業や事例検討を組んでいますので、チーム医療が大事だということは彼らも非常によく知っていますし、殊さらにそれをもう一回やり直す必要があるのかなという気持ちでやっています。
 この研修会をやって、最近の受講者は初期研修医が中心となってきているということは皆様の施設もそうだと思うのです。私たちの施設も、古いドクターはほぼ受けきっています。私たちのところでは初期研修医の研修修了要件にしていますので、毎年、60~70名という若い医師たちの研修をすることになるのですけれども、そうすると、医学部で1回やって経験したようなことをもう一回やるような形になって、初期の頃の緩和ケア研修会に対する研修とは意味合いが違ってきているのかなと。下山参考人がされている委員会ですごく検討されていますので、内容的にはすごくいいものになっているのですけれども、その意味ということを考えると、この緩和ケア研修会を「やったところで」と言うとすごく言葉が悪いのですけれども、やっても、そこからすごく前に物事が進むかというと、そうでもないのかなという気がしています。
 最初のところで前川構成員がおっしゃったように、オピオイドの間違いが起こるとか、そういう実践に近いような事柄はこの緩和ケア研修会の研修では扱っていません。しょせん医学部の中でやるような内容になりますので、実践にはそれほど合っていないということもありますし、これを1回受けたからといって、現状から見えてきた課題にも書いてありましたけれども、いわゆる医師の態度や意識を大きく変えるということでもないということが現状なのではないかと私は思います。多少困難感が軽減したり、オピオイドの投与を開始するというところまでたどり着くということはあるのですけれども、それ以上はできるようになりません。
 先ほどから言われているこの部会で作成した成果物も、なるべく新しい決定事項や新しい流れについて講義内容に入れていく機会があったほうがいいのではないかということはもっともな御意見だと思いますので、1回はこういう研修会を研修の初期の頃にやってもいいとは思うのですけれども、そこから先のフォローアップ研修のほうが大事で、新しい動きに対して、診断時から緩和ケアにはこういう動きがありますということを、例えば、5年に一回ぐらいは行いますが、e-learningとCBTみたいな形でいいと思うのです。ブラッシュアップをしていくような機会を定期的に設けていただいたほうが、現場としてはありがたいのではないかと思っています。
 この緩和ケア研修会そのものの在り方というか、やり方というか、時代が大分変わってきていますので、そういう中でもう少し根本的に考え直したほうがいいのではないかと考えております。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 フォローアップ研修についてはまた別の機会に議論したいと思いますので、今日は緩和ケア研修ということでお願いします。
 伊東構成員、お願いします。
○伊東構成員 ありがとうございます。
 女子医大足立医療センターの伊東でございます。主に薬剤師の研修等を担当させていただいております。
 今、橋口構成員からもお話がありましたが、当院でも同様の傾向です。研修医の先生方ばかりだと話がフリーズをしてしまうというところで、何を学んでいるのかなというところは疑問が残るところです。
 実は薬学部でも同じ傾向があって、薬剤師の研修などをやっていましても、若い者が非常に増えてきたという状況で、初期の研修の内容では実践の対応は非常に難しくなってきています。当初のほうで、別途、薬剤師の現場教育という意味合いでは、2か月ないしは3か月に一遍、また、病院薬剤師会でも3か月に一遍ぐらい、実践教育ということで、各テーマ、各がん種、倫理教育、ラジエーションを入れているようなもの、ブロックをかませるようなものを題材に、ロールプレイ研修も、こういったものを土台にした形で、やっております。それですらだんだん提案内容が貧弱になっていくという現象が見られていますので、教える側がかなり実践的な内容を盛り込んだ形で、年間でやっていくと、最初の段階よりも、1年後の年間5~6回とかをやった後のほうが、同じ研修生でも議論が深まるあるいは医師への提案が非常に幅広いものになってくる。自分たちの領域からできないことに関しては、例えば、「放射線をかけたほうがいいですよ、先生」とかという形につながってくるということが実体験としてはあります。
 この資材は、下山参考人と緩和医療学会に非常にブラッシュアップをしてつくっていただいていることは重々承知しておりますけれども、これの繰り返しの教育が一つの方法論なのかなと思っているところでございます。
 以上です。
○中川座長 教えていただきたいのですけれども、薬剤師の先生方の研修の中で、緩和的放射線治療や神経ブロックが教育されているということなのですね。
○伊東構成員 そうです。結局、薬物療法にも限界があります。実際、現場でも、放射線をかければきっと楽になるのにと思っているところに薬ばかりを載せると、副作用ばかりになってしまって寝てしまうということが起きますので、「先生、もうやめましょう。放射線を1回かけましょう」と言うほうがクリアカットになるケースもありますので、我々のほうの「これ以上はオーバードーズですよ」と言うことの代替として、放射線あるいはブロックを入れておうちに帰しましょうということの提案をさせていただくこともあります。
○中川座長 ありがとうございます。
 放射線治療の36%が緩和的放射線治療なのですね。ですから、非常に大きなテーマではあるのです。
 江口構成員、お願いします。
○江口構成員 ありがとうございます。江口ございます。
 私も先ほど橋口構成員におっしゃっていただいたことに割と近い印象がございまして、言葉は悪いですけれども、年上の古い世代の医師にとって、緩和ケア研修会は非常に価値があった。一方で、若い先生方は、医学教育で、かなりの部分をマスター済みといいますか、座学は既に勉強が済んでいるという現状があるなということは、実感として持っております。その上で、この緩和ケア研修会にどういう価値を見いだしていくかということを考えますと、緩和にまつわる知識のアップデートが非常に大事になってくるだろうと感じております。
 その中で、先ほど下山参考人に見せていただいた見直しの方向性1と2というものがございました。その中で、例えば、「サバイバーシップ」という言葉もあって、これは非常に大事なことなのだろうと思います。思うのですけれども、がんの生存率が上がってきて、緩和だけではない、サバイバーとなっていく方が増えていく中でのサバイバーシップをどうすべきかということも含めた、いわゆる緩和ケア講習の枠を超えたようなことまで含んだ概念を教育しようということになっていて、僕自身、これは非常に大事だと思うのですけれども、これを緩和ケア研修会の枠の中で教えていくのか、それとももっと別の枠をつくるのかということを、そろそろ行政としてお考えいただきたいと考えております。サバイバーシップでどんなものがあるか分かりませんが、例えば、就労支援とかもあるでしょうし、ピアサポートとかもあるのかもしれませんが、緩和とはまた違うものも含めて、知識をアップデートすべきものはたくさんあると思うので、この辺りをこの講習会の中でやるということだったらそれはそれでもいいと思いますが、枠の中でやるのか、外でやるのか、行政側にその辺の方向づけをしていただく必要があるのではないかと感じております。
 以上でございます。
○中川座長 ありがとうございます。
 黒瀨構成員、お願いします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 簡単に、1つだけ意見がございます。下山参考人から、今後の見直しの方向性の中で、社会保障についての最低限度の知識ということに触れてくださっております。いわゆる医療としての緩和ケアから行政における緩和ケア、病院から在宅へという流れの中で、また、多職種連携の観点からも、特に今の若い研修医の先生方に知っていただきたい。例えば、地域包括ケアシステムに対する知識あるいは理解を深めていただくといった項目を、ぜひ重点的に入れていただければと感じて、聞いておりました。
 以上でございます。
○中川座長 ありがとうございます。
 下山参考人、手が挙がっていますか。
○下山参考人 ありがとうございます。
 発言させていただきたいと思います。先ほどのサバイバーシップ等の件に関しては、サバイバーの方々がオピオイドをずっと使い続けたまま過ごしているといった問題等も結構絡んでくるということがあるので、緩和ケアに関連する部分というところでお考えいただくといいかと思いましたので、その辺だけ、言葉が足りなかったので、申し訳ありませんでしたが、付け加えさせていただきたい。
 同時に、もう一つ、発言させていただければと思うのですが、項目で盛り込みたいことは多分いっぱい出てくると思うのですよね。我々も、十何年とやっていると、もっともっと、これもほしいというものがいっぱい出てくると思うのですけれども、それをやり過ぎてしまうと、今度は受講者にも開催する側にも物すごい負担がかかってくるというところも事実なので、ポイントを絞って入れていくという議論になっていくといいのではないかと感じました。
 以上になります。
○中川座長 木澤構成員、お願いします。
○木澤構成員 ありがとうございます。
 3点、あります。
 1点は、緩和ケアの研修会の内容の見直しの点ですが、大いに賛成です。ただし、国家試験の問題をつくられている先生方はお分かりかと思うのですが、例えば、国家試験では、薬の種類は、オピオイドであれば、その中の詳しい種類に関して、薬物をどう使うかについては詳しく問わないのです。問うことができないのですよ。用量、処方方法、副作用にどう気をつけるかなどの問題は詳しく問われないのです。この研修会でその詳細について触れることには意味があるだろうと思うので、何を教えて何を教えないかということを、卒前教育も俯瞰した上で、しっかりと決めていくことが大切かと思いました。
 2つ目です。これも大枠の意見ですが、近頃、研修会の参加者を広げてきた。例えば、他職種の方も参加していいということで、そこを考えた上で内容を改訂してきたわけですけれども、そうすると、どうしてもレベルが変わってきてしまう。そうすると、興味を持てなくなる人たちもいる。要は、アドバンストな内容を教えることができないということが出てきます。PEACEは本来医師を対象につくられたものですので、そこにフォーカスを絞って行うべきだと思います。今、橋口先生や林先生等から御意見がありましたが、現場でその人たちのレベルに合わせて研修をしていけば良いと考えています。特に実地研修のところでは、例えば私は、参加者をレベルに分けて、グループレベルのレクチャーをやって、参加者のニーズに合わせるようにしています。そのような研修会の努力でカバーできるところもあるのではないか、やり方の努力でカバーできるのではないかと思います。
 3つ目です。もっと大きな枠組みです。緩和ケアはがんに加えて心不全について保険診療で認められていて、今後も恐らく保険適応の範囲が広がっていくと思うのです。今、心不全に関しては、HEPTというPEACEとは違う研修会をやっているわけですが、今後、緩和ケアの適応疾患が広がっていったときに各疾患別にどんどん研修会ができるというのは由々しきことで、実際に研修を維持していくのはなかなか難しいと思いますので、今回の見直しのときに、疾患を問わずに学ばなければいけない研修会の内容とそれ以外をしっかりと分けるという構造を意識した上での改訂をされたらいいのではないかと感じています。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 それでは、坂本構成員、お願いします。
○坂本構成員 ありがとうございます。
 私からも、1点です。先ほど黒瀨構成員からもお話があった社会保障制度のところですが、日々、ソーシャルワーカーとして社会保障制度のことを扱う立場としては、法のことをたくさん取り扱い過ぎると、学ぶ側もどこまで自分たちがこの知識をつければいいのかということで少し迷われる部分も出てくるのかなというところも、若干懸念をしております。一方で、今の社会保障制度は、患者さんたち、また、御家族自身、利用する側が自分に合った社会保障制度を認知して的確な窓口に行かないと利用ができないというところもありますので、そういった実態と、緩和ケア研修会であるということを踏まえて考えると、優先して取り上げていただきたいと思ったことが、今、社会情勢的にも、親族や支援者不在、また、認知症患者さんの増加を踏まえると、そういった安全な治療の完遂、あるいは、おみとり、悔いなく旅立つということに対して、必要な利用ができるような、それこそ後見人制度や生前・死後の事務委任の部分の制度的なところを優先しながら盛り込んでいただくといいのかなと思いながら、お伺いしていました。
 以上になります。
○中川座長 ありがとうございます。
 岸田構成員、お願いします。
○岸田構成員 ありがとうございます。
 方向性2のところ、AYA世代や高齢者などのライフステージに合わせた対応といったところ、ありがとうございます。そういったライフステージは大事だと思いますし、私もAYA世代の患者でございますので、AYA世代は、数も多くはなくて、病院によっては毎年数名見るか見ないかというところで、戸惑われる病院も多くあるかと思いますので、ぜひ前向きに検討いただけばうれしいなと思います。ただ、この数が少ないという点の苦労においては、今、社会的マイノリティーの方たち、LGBTQをはじめ、現場の医療者の先生たちも、初めて接するからどうしたらいいか分からないといったところもある、コミュニケーションの部分もあると思いますので、それも今後の検討の一つとして考えていただければと思っています。これも木澤構成員がおっしゃった「疾患を問わず」になるかと思いますので、そういった検討もお願いできたらと思っております。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 橋口構成員、お願いします。
○橋口構成員 ありがとうございます。
 この研修会が、多職種ではなく、医師とか、職種ごとに絞られていくことになるのであれば、本当に集合研修は必要なのかなと思ったりもします。このコロナ禍で医学教育も大分変わったのですけれども、いわゆる知識を身につけるに当たっては必ずしもそこにいなくてもいいというのが今の趨勢ですし、意見交換一つにしても、集合しなければいけないような理由は、あまりないのかな、なくなってくるのかなとも思ったりします。ロールプレイでいわゆる患者体験をするという大事なこともありますので、1回ぐらいはやってもいいかもしれないのですけれども、現場の負担とかも含めまして、その集合研修が本当に必要なのかどうかということはもう一回御検討いただいてもいいのではないかと思います。コロナ禍を経て教育のありかたも手法も変わってきているのではないかと思っております。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 栗原構成員、お願いします。
○栗原構成員 ありがとうございます。
 看護の立場から、看護師がこの研修に参加できるようになりまして、特に施設によって大分ニーズが違うのかなという印象を持っております。例えば、当院の場合ですと、知識に関しての部分はかなり院内教育でされていますので、どちらかというと、参加をして戻ってくる看護師たちは、いわゆる多職種でのカンファレンスというところが非常に充実している、そういった機会はすごく重要だと思うという反応があります。そういった意味では、かなり若い先生たちのほうが、どちらかというと、緩和ケアや多職種との連携がすごく大事なのだということを認識されていますが、逆に言うと、もう少し上の方たちのほうが、もしかするとちょっとパターナリズムがまだ残っているケースもあるのかなという印象もありますので、集合研修をどうするのかというところでは、参加者を拡大したのであれば、多職種でのカンファレンスの模擬は、ある意味、効果はあるのかなと思います。先ほど木澤構成員がおっしゃる前までは、この議論をずっと伺っていて、この集合研修にしても、緩和ケア研修にしても、軸をどこに持っていくのかなということを疑問に思っていたところなのです。要は、対象者をどんどん広げれば、確かに、もう少しいろいろな職種に共通した内容が必要になってくる可能性もありますし、医師中心ということであれば、もっと緩和ケアについてのことを深く繰り返し行うということが必要なのかなと聞いておりました。看護の立場としては、看護師にとっては、知識をアップデートさせるという意味では、効果がある研修の位置づけになっているのかなという印象を持っております。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 木澤構成員、お願いします。
○木澤構成員 ありがとうございます。
 今栗原構成員のおっしゃったことに少しだけ考えを述べさせていただきますと、ここは皆さんの考え方次第かと思うのですけれども、何を狙うかということが重要かと思っています。看護に関しては、例えば、ELNECとか、既に看護師に対するプログラムがありますので、そちらをするほうが本筋かなと思っておりまして、今日はそのような提案をしました。そこは大変重要な点かと思いましたので、発言させていただきました。
 私が手を挙げた一番の理由は、皆さんに経緯を知っていただきたいと。集合研修を残した理由はきちんと討議されていまして、一番はコミュニケーションなのですね。がん告知、治療が難しい状況の方にバッドニュースを伝えるというコミュニケーションをどこまで教えるのか、そのコミュニケーションスキル自体を学んでいただくことは必須だろうということをこの場でコンセンサスを得て、集合研修を残したということです。それをどこまでやるのかということは話し合う必要があるかと思うのですけれども、今の卒前教育では、悪い知らせを伝えることは教えていないのですよ。それを学ぶ機会として、この研修会が位置づけられていた。今は、学習目標として、橋口先生がおっしゃったように、患者体験をすることがミニマムの目標になっているのですけれども、例えば、これでは物足りないということであれば、そのレベルを上げることを考えなければいけないということになるかと思います。それは、不十分な可能性があります。ここのところは小川先生にも御追加いただきたいのですが、学習レベルを考えた上で、教材をつくり、標準化する必要があるのだろうと思います。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 御発言いただいていないのは高野構成員と谷口構成員ですけれども、高野構成員、何か御意見はありますか。なければないでも構わないのですけれども。
○高野構成員 ありがとうございます。
 私は、この緩和ケア研修会は、7年前に一参加者として参加したのみで、その前も後も企画側で参加したことがありませんので、実情をあまり理解できておりませんが、先ほども話があったように、緩和ケア講習会の軸は何かというのがポイントかと思っています。ロジックモデルの中では、緩和ケア研修会の修了者数が数値目標として書かれていますが、この数値目標を達成することが最終目標ではありません。ロジックモデルにおいて一番大事なのは、我々が目指すところは何なのかという最終目標をみんなで共有することです。ロジックモデルの最終アウトカムとして書かれているのは、「現在自分らしい日常生活を送れていると感じるがん患者の割合」ですので、その視点を忘れることなく、目先の数値目標とか、どの資材を使うかとかの議論に終始するのではなく、最終目標に向けて、軸はぶれずに進んでいくことが重要で、そのために我々は今何をすべきなのかを議論する必要があると思っております。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 谷口構成員、何か御発言はありますか。
○谷口構成員 谷口です。
 すみません。遅くから参加して、全体の話を十分聞いておりませんが、この資料を見たり先ほどのお話を聞いたりして、緩和ケア研修会のターゲットをどうするのかということはもう一度考えてもいいのではないかということを思います。大体1万1000人ぐらいが受けていて、9,000人ぐらい、恐らく初期研修医が受けているのではないかなと思うのです。そうすると、残りの2,000人ぐらいがそれ以外という感じになるのではないかと思うのですけれども、実際にこの緩和ケアをもっと広げていこうとすると、いろいろなニーズがある人たちがいるので、看護師さんの話もさっき出ましたけれども、医師の話も出て、様々な人たちに合ったものを考えていく必要がある。そうすると、今回のこの緩和ケア研修会のターゲットはどこなのかということは大変重要なのかなと思いながら話を聞きましたし、さらに、この緩和ケア研修会は1つでいいのか、それともいろいろな対象者に合わせたものを用意していく必要があるのかという議論も必要になってくるのではないかと思いながら聞いておりました。
 以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
 もうあまり時間がないのですけれども。この部会の座長として、あるいは、一構成員として、先ほどのロジックモデルの指標にもあり、また、第4期がん対策推進基本計画の中でも、緩和的放射線治療あるいは神経ブロックというものが指摘されている中で、複数の構成員から、医学教育の現場あるいは緩和ケアに関する理解が浸透してきている、緩和ケア研修の中身のアップデートも必要なのだろうと思います。対象をどうするかというのはまた大きな議論になりますので、ここでは置きますけれども、そういう緩和的照射あるいは神経ブロックなどは、一構成員としては、必修化していただきたいと私は考えます。また、この部会でも取り上げてきた資材あるいは基本計画の中にある診断時からの緩和ケアもきちんと学べる環境が必要かとも思います。
 大変活発な議論がありましたので、時間を延長してしまいましたが、今日はここまでとさせていただきたいと思います。
 ほかにどうしても発言をということがありますか。
 ありがとうございます。
 それでは、ここまでとさせていただきまして、事務局には、今日議論いただいた内容を整理して、がんとの共生のあり方検討会に報告いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 最後に、事務局から、連絡事項等があれば、お願いいたします。
○扇屋がん対策推進官 事務局でございます。
 次回の部会の日程に関しては、事務局より、追って御連絡いたします。
 それでは、本日の会議を終了といたします。
 構成員、参考人の皆様、長時間にわたり、誠にありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線4608)