第14回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和5年9月21日(木) 10:00~

場所

AP虎ノ門Aルーム(11F)
東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11F

議題

  1. (1)これまでの議論の整理(報告書案)
  2. (2)引き続き検討すべき論点について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○船井主任中央労働衛生専門官 本日は大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより第14回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催します。
 本検討会は、会議の資料及び議事録は原則公開とさせていただきますが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 本日は、清水委員、高山委員、三柴委員が御欠席です。鹿野委員、鈴木委員、森委員の3名がオンラインでの参加となっています。
 それでは以降の進行については、土橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○土橋座長 それでは始めたいと思います。皆様、よろしくお願いいたします。前回までの検討会におきましては、各論点について事務局が整理した「これまでの議論の整理」及び「引き続き検討すべき論点について」に基づきまして、御議論いただきました。今回は前回の議論を踏まえて、事務局が整理を行った資料をもとに、引き続き議論を行っていただくことを予定しています。
 それでは、議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いします。
○船井主任中央労働衛生専門官 お手元にクリップ留めで資料を1つ用意させていただいています。一番上にありますのが表裏で次第と資料一覧です。資料一覧を見ながら確認いただければと思いますが、資料は主に2種類あります。資料1と資料2です。資料の構成については前回と変わっていません。資料1については、これまでの議論の整理ということで、ただ、今回、報告書(案)ということで、いわゆる報告書の形に整えさせていただきました。目次や検討会の趣旨、開催状況、そういった部分についても追加した形でまとめさせていただいています。
 資料2については、「引き続き検討すべき論点について」ということで、前回の議論を踏まえて修正したものです。前回、新たな論点を御提示いただきましたので、その部分を中心に書かせていただいています。
 参考資料については、いつも付けている2種類です。資料の確認については以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。それでは、前回に引き続き、「これまでの論点の整理(報告書案)」に関して、資料1に基づいて御議論いただきたいと思いますが、前回の検討会において新たに御提案いただいた論点について、いずれも資料1に記載した事項と関連が深いものですので、今回は議題(1)と議題(2)、これを通じた議論をしていただきたいと思います。まずは議論に先立ちまして、事務局から資料説明をお願いします。
○船井主任中央労働衛生専門官 それでは事務局から資料1、資料2について順番に御説明させていただきます。今、座長からもありましたが、後で出てきます資料2の1つ目の論点については、報告制度に関するものです。前回、報告制度については、ずっと議論を重ねてきたものについて合意を頂いたということで、資料1に移しているのですが、それと一体不可分な部分もありますので、今回まとめて資料説明をさせていただきたいと思います。
 それでは資料1、報告書(案)を1枚めくっていただきまして、目次があります。目次の次に「検討会の趣旨・開催状況」ということで書かせていただいていますが、こちらについては開催要綱に書いてあった部分について報告書にまとめるということで、若干、分かりやすく補足はさせていただいていますが、基本的な内容については開催要綱と変更はありませんので、個別の説明は省略させていただきます。(2)参集者です。
 (3)に開催状況を書かせていただいています。ちょっと長くなってしまっているのですが、各開催回と開催日、それに加えまして各回の議題についても全部書かせていただいています。これは今回の検討会で、非常に個人事業者等、多岐にわたる分野で活躍されているということで、いろいろな業界の方々からヒアリングを行っています。そのヒアリングが、どういった団体に話をお伺いしたのかということが分かるように、ちょっと長くなりますが、書かせていただいた次第です。
 7ページ目に飛びまして、2の所です。「個人事業者等を取り巻く安全衛生上の現状と課題」という所で、これは事務局で新たに書かせていただいたものです。後で出てきます3の項目については、これまで論点ということで報告書素案という形で資料1としてずっと出してきたものですが、いきなりその論点に飛ぶのではなくて、その論点が提示されるに至った背景、現状という部分について少し書かせていただいています。2の所の柱書きにありますように、個人事業者等による業務上災害の発生状況や就業環境や健康管理などの安全衛生上の課題、仕事を注文する者による対策等に関する現状と課題。これはいろいろなアンケート調査、また、関係団体からヒアリングも行わせていただきまして、全てではないですが、主だったものについて以下(1)から(6)まで書かせていただいたという形になります。
 (1)は、災害発生状況について書かせていただいています。労災保険の特別加入者の被災状況、あとは厚生労働省で、各監督署でいろいろな情報から把握できた建設現場の一人親方の死亡災害の状況、そういったものについて検討会においてもデータをお示しさせていただきました。ただ、これらについては部分的に把握できたもので、網羅的に把握する仕組みはありませんので、対策の企画・立案に当たっては、災害把握のための仕組みの構築が必要不可欠であるという御指摘を頂いて、今回、検討してきたということです。
 (2)については、個人事業者等の就業場所です。これはアンケート調査の結果で、約3割が、「自宅・自オフィス以外の場所」で就業しているという回答があった。企業や自治体等の事務所のほか、建設現場や運輸・配送の現場など、いろいろな部分で働いていて、場合によっては、ほかの労働者の方と混在して作業が行われる可能性もあるような場所での就業も認められるというところです。
 (3)については、個人事業者等が行う作業です。これは重量物の取扱いや粉じん作業、有機溶剤、化学物質の取扱い、いろいろな危険・有害作業に従事しているという状況が見られました。一方で、例えば有害物質についての教育やその物質に関する説明を受けたという割合が約3割程度となっていて、特殊健診の受診率などについても、非常に低調な状況となっているということがデータからうかがえました。
 (4)の健康管理の状況についてみますと、市町村で実施しているような健康診査等も含めて、何らかの健康診断を何も受けていない、そういう方の割合が大体35%ぐらいあったという状況です。あと、週の労働時間が60時間を超えるような長時間の就業、この割合について労働者と比較してみると、個人事業者等のほうは高い傾向にありました。業務に関連したストレスや悩みがある者も高い割合であるにもかかわらず、医師による面接指導やストレスチェック、これを全く受けたことがないという割合が9割、8割といったように非常に高くなっているという状況があります。
 あと、個人事業者等が仕事を請け負った発注者からの指示の状況についてもアンケートで聞いていますが、具体的な作業内容や作業条件が明示されないまま発注される、現場に行って具体的な作業指示がなされる場合もある、または契約に予定されていない作業を依頼されるような場合もある。そういう状況もうかがえました。また、これはヒアリングや検討会の場でも御指摘いただきましたが、重層下請の現場で作業を行う場合において、元方事業者さんが関係請負人の労働者の方や個人事業者の方に何か安全上の指導・指示をやろうとしても、労働安全衛生法29条に基づくものは別として、一般的な指示というものは「指揮命令」に該当してしまうのではないかという懸念があって、躊躇しているという状況もある。そういう声もありました。
 最後(6)は、フードデリバリーの配達員やイーコマースの商品配送員に代表されるような働き方として、必ずしも請負関係にないようなプラットフォーマーを介して業務を行うような形での就業というのも増えている。プラットフォーマーと一口に言っても、様々な形態、業態がありますので、個人事業者が行う業務への関与の度合いというのも様々である。誰が、どのような役割分担の下、作業に当たる個人事業者の方の安全衛生を確保すべきかというのは、なかなか明確になっていないのではないか。こういう状況にあるということでした。
 このような現状認識を踏まえ、この検討会におきましては非常に多岐にわたる観点から御議論を頂いたということです。そのまとめが3にあります。冒頭の柱書きの所を読ませていただきますと、本検討会では、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方について、別添1のとおり、これは参考資料としていつも付けているものですが、大きく3つの論点に分けて検討を行ってきたわけです。その結果は3-1以下に掲げるとおりですが、この検討に当たっての考え方として、私どもが所管している労働安全衛生法については、従来、労働者を主な保護対象としてきたわけです。この枠組みをうまく活用して、労働者と同じ場所で働いて、または労働者と同じような作業を行う個人事業者等の安全衛生の確保を図ろうと。それに当たりましては、個人事業者自身はもとより、就業場所を管理する者や仕事の注文者、こういった個人事業者が作業を行う場面を取り巻く関係者が、それぞれどういう措置を講ずべきかということで整理をいただいた。そういう位置付けです。
 このまとめの結果については、制度や仕組みを見直すこと、取組を速やかに進めることが適当だとされた事項については、厚労省において速やかに必要な法令改正や予算措置等を行っていくべきである。こういう形で報告書の提言とさせていただいています。
 3-1以降は、これまで資料1として議論いただいたものに、前回、議論して合意が得られた部分について、こちらのほうに移させていただいています。具体的には、3-1の(1)の災害の報告の仕組みの部分については、非常に長く議論してきましたが、おおむね合意が得られたということで、この赤字の部分が前回、議論したものからこちらに移した部分になります。この部分については、前回、資料2にあったものをそのまま移しています。ただ、前回、資料2にあったこの赤字部分について御議論いただいた結果、もう少しこういう点についても配慮すべきではないか、手当てすべきではないかという御意見を頂いたものが、この赤字に青マーカーしてある部分になります。例えば10ページの下にある青い部分ですが、これは報告主体の考え方です。今回、災害報告の主体というのが、被災者である個人事業者等が亡くなったりして、報告・伝達が不可能な場合と可能な場合に分けて考えているわけですが、では、どういう場合に可能なのか、どういう場合に可能ではないのかということがしっかりしていないと、報告主体、義務主体がそれによって変わってきますので、この辺りを具体的なケースの例示も含めて、通達等で丁寧に示したほうがいいのではないか。こういう御指摘がありましたので、その旨を記載した次第です。
 あと11ページですが、これは個人事業者等から情報、報告を受けた特定注文者や災害発生場所を管理する事業者の方が、監督署に対して報告をしていただくという義務が生じるわけですが、では、この際、どういうときに義務が生じるのかということも整理する必要があるのではないか。資料では、把握した場合にはとか、可能なものについてというような表現をしていたのですが、それがちょっと誤解を生む表現ではないかということで、では、どういう場合に把握し得る立場にあったのか、把握して報告すべき立場にあるのかということを書かせていただいています。この報告義務が生じるのはということで書いてありますが、例えば災害の発生を現認したような場合や、被災者の救助、救急搬送等の事実を把握した場合、それ以外にも仕事の性質上又は災害発生場所の管理権原を有する立場上、災害の発生を当然に把握すべき立場にあるような場合が含まれる。ただ、災害発生後に被災した方が、誰かの車に乗せられてすぐ現場を去ってしまって、そういう立場にあるのですが、把握し得なかった。そういうような場合まで報告義務を負う趣旨ではない、その旨を通達で明確にしてはどうかということで書かせていただいています。今、申し上げた考え方については、検討会においても随分前から申し上げていたのですが、それをうまく一言で表現できていなかったので、この旨を通達で明示しようということです。
 少し飛びまして、13ページです。オの報告事項のマル6の所で、労災保険の特別加入の有無というのを報告事項として追加させていただきたいと思います。こちらについては、労災保険の特別加入について、いろいろな課題、改善すべき点があるという御指摘もいただきまして、最低限、この災害報告においては、その有無については把握しておくべきではないかということで入れさせていただきました。
 あとキの所です。13ページから14ページに渡っての記載ですが、これは今回の報告制度について、非常にいろいろなプレーヤーが出てきて、いろいろなケースによって報告主体が増えたり減ったりするというような状況もありますので、幅広な丁寧な周知が必要なのではないかということで、国は個人事業者等のみならず、報告主体となり得る関係者に対して、幅広に、分かりやすい形で制度の内容を周知すべきではないかということで書かせていただきました。
 15ページです。これは脳・心、精神の報告できる規定です。こちらの報告事項についても、災害の場合と同様に特別加入の有無について追加をさせていただいたということです。黒い字の部分については、特に変更はありません。
 17ページの下の段にある部分については、前回、資料2に入れていたものについて特段の異論がなかったということで、こちらに移したものです。
 23ページです。これは、いわゆる論点2として議論してきていた部分ですが、この青マーカーの部分が、前々回御議論いただいて合意が得られたということで、こちらに前回の資料1から移していたのですが、この青マーカーの部分がもともと資料2では※書きになっていて、それをちょっと事務局で前回移し漏れていたというところで、今回、明示的に移させていただいています。中身については変わっていません。
 最後、28ページです。これは新たに書かせていただいた所ですが、「その他」として、(1)個人事業者等の特性を踏まえた対策の推進ということで、書かせていただいています。個人事業者については、いろいろな立場、位置付けについて、検討会で様々な御議論がありました。その1つとして、個人事業者というものが、単に安全衛生上、保護されるというような側面だけではなくて、自律的にその事業活動を行うという事業者的な側面も有しているのではないか。また、個人事業者等の活躍の場がいろいろな業種・職種にわたるわけで、それぞれ立場や考え方、場合によっては管理されたくないという方もいるという御意見もありました。そういったような状況を踏まえて、実態に即した内容となるように、国がいろいろな取組を推進するに当たっては配慮する必要がある、ということを書かせていただいています。
 (2)について、これは前回、新たな論点として御提示があった部分ですので、後ほど資料2で説明させていただきます。
 最後、「その他」の中のその他という所です。これは今回の検討会における主たる検討テーマというわけではないのですが、検討会をやる中で、災害防止と災害補償のあり方はやはりセットで議論すべきではないか。そういう視点から、特別加入制度の話について複数の委員からいろいろな御意見がありました。充実を図るべきという御意見があったということで、報告書の「その他」の部分にはなりますが、明記させていただいた次第です。
 29ページ以降は、いろいろ条文が出てくるので、参照条文として付けさせていただきました。別添1、2についても、報告書の別添として、これまで付けていたポンチ絵について付けさせていただくというものです。以上が資料1です。
 今度は資料2ですが、1枚めくっていただいて、別紙マル1、別紙マル2ということで、前回、御議論いただいて新たに御提示いただいた論点について、それぞれまとめています。
 別紙マル1は、報告制度に関してですが、前回、報告制度については、先ほど御説明させていただいたとおり、被災者である個人事業者が死亡等の場合で報告不能な場合と、そうではない場合に分けて、死亡等の場合は特定注文者ないしは災害発生場所管理事業者が監督署に出していただく。そうでない場合については、特定注文者ないしは災害発生場所管理事業者が監督署に出していただくのですが、その前に、まず基点になる部分として、被災者である個人事業者が特定注文者ないしは災害発生場所管理事業者に対して必要な事項を報告する。それに作業の内容、若しくは災害発生場所の状況も踏まえて、必要な事項を追記、修正した上で監督署に出していただく。こういう仕組みについて、おおむね合意いただいたと承知していますが、この仕組みをうまく適正に回すためには、この別紙マル1に書いてあるようなことが必要ではないかということで、複数の委員から御指摘がありました。
 この上の所に書いてありますように、個人事業者というのは相対的に弱い立場に置かれることがある。それによって、報告を躊躇したり、若しくは特定注文者等から場合によっては圧力的なものがかかって、報告を行うことができないというような事態、こういったことも想定されるのではないか。これを防ぐといいますか、そういうことがないように必要な方策というものを検討すべきではないか、こういう御意見がありました。この報告適正化のために必要な取組として、これまでの議論を踏まえた事務局案として、報告を行ったことによる不利益取扱いの禁止ということで提案させていただくということです。
 1つ目の○ですが、特定注文者及び災害発生場所管理事業者に対して、個人事業者等が法令上の義務である休業4日以上の災害報告を行ったことを理由として、不利益取扱いを行ってはならないこととしてはどうか。こういう仕組みを設けてはどうかということです。具体的には、これは報告制度の並びで、法令でこういったことを規定することになると思いますが、この不利益取扱いの中身については、労働者の場合の労使関係における不利益取扱いとはちょっと性質が異なると思いますので、不利益取扱いに該当するような具体例を通達等で示すということも併せてやってはどうかということで、書かせていただいています。
 続きまして、別紙マル2です。こちらについては、労働者に付与されているような申告の制度について、個人事業者等にも同じような仕組みというのを設けてはどうかという観点です。この論点が出てきた切っ掛けですが、この一番上の所に書いてありますように、個人事業者等が災害報告を行ったにもかかわらず、特定注文者や災害発生場所管理事業者が監督署に報告をしないようなケース。こういう場合については、監督署に自分は報告したのだけれども、特定注文者等が出していないということで申告できるような仕組みも設けてはどうかというようなお話も頂きました。ただ、この申告の仕組みについては、必ずしもこの報告制度に限った話ではないわけです。今回、様々な検討を経て個人事業者等の災害を防止する観点から、事業者等に講ずべき措置が新たに設けられることになろうとしています。こういったことを踏まえて、そういう措置についても、報告に限らず、労働者並びで個人事業者に対しても報告の仕組みというのを検討してはどうか。そういう形で御提案させていただいています。それによって、個人事業者の就業上の安全衛生が適切に確保されるようになるのではないか。
 四角の中に書いてある1つ目の○ですが、個人事業者等が就業する場所や請け負った作業に関して、労働安全衛生関係法令に違反する事実がある場合については、都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に対して申告をして、是正のために必要な措置をとるように求めることができることとしてはどうかということです。これは下の労働安全衛生法第97条に、労働者の場合の申告の制度が書いてありますが、それと同じように、個人事業者が申告をしたことを理由として不利益取扱いを行ってはならないということも、併せて規定してはどうかということです。この不利益取扱いの中身については、別紙マル1のほうで整理するということでしたが、同じような形であるとお考えいただければと思います。事務局からの説明は以上です。
○土橋座長 説明ありがとうございました。それでは、ただいまの資料1及び資料2にもとづいて御議論いただきたいと思います。御発言いただく際は、資料番号と該当部分を明示してくださいますようお願いいたします。いかがでしょうか。出口委員、お願いします。
○出口参集者 出口です、よろしくお願いいたします。御説明、また様々な御意見、要望を取りまとめていただきありがとうございます。資料1、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会報告書(案)」につきまして、思うところを述べさせていただくとともに、一部修正を要望いたします。
 まず初めに、労災保険特別加入制度につきましては、労働者死傷病報告の報告事項に加え、今後の制度について改善する機会を設けていただきましたことにつきましては感謝いたします。できれば、資料1の28ページの最後にあるコメント、「その他、本検討会において主たる検討テーマとして議論したものではないが、災害防止と補償のあり方をセットで議論すべきとの観点から、特別加入制度の充実を図るべきとの意見が複数の参集者からあった」と。この記述を「特別加入制度の改善点を抽出し、より充実した制度を図るべきとの意見」なりに、修正をお願いいたします。
 事務局のほうからは、具体的に改善点はどういうものかという御指示がございました。改善点として認識しておりますのは、厚労省が発行しております「労災保険特別加入制度のしおり」を見ますと、給付基礎日額保険料、補償の対象となる範囲、給付特別支給金の種類の記載がございました。この中で給付基礎日額は3,500円から2万5,000円までの16とおりございます。
 保険給付は、療養補償給付があり、給付基礎日額と関係なく必要な治療が無料で受けられるのがよいのですが、休業補償給付や障害、傷病、遺族補償給付などは給付基礎日額が計算の基となります。
 1例ですが、令和4年8月22日に検討会が開催され、その際に業界団体等のヒアリングにおいて組合員向け労災保険制度にて給付基礎日額1万4,000円、1万円、5,000円の3コースに限定されていた団体がありました。これらは先ほど申しました休業補償給付や障害、傷病、遺族補償給付等の算出する根拠である給付基礎日額が安ければ実質補償にはならないので、団体として組合員の補償を確保するために給付基礎日額を限定されているのではないでしょうか。また、ヒアリングの最後の「伺いたい事項」につきましては、「個人事業者の安全衛生管理について課題と感じていることはあるか」に対して、個人事業者が加入できる一人親方労災制度の保険料が高額なため加入率が上がりません。サラリーマンなど、自己負担なく労災保険に加入できているのに比べ、個人事業者にとっての労災制度は極めて条件が悪いと感じています。国庫からの保険料一部補填や個人事業者が加入できる労災保険を広くアピールして加入者数を増やすことで保険料を下げるようにするなど、国策によるバックアップを期待したい旨の要望がございました。
 この保険料等につきましても、加入する団体によっては一律ではございません。私も個人事業者等から相談を受けますが、事務手数料の安い団体を探して、一番安い給付基礎日額の保険に加入されていました。もちろん団体も、事業としての運営による経費、事務手数料もかかります。しかし、公的な保険に加入する費用は一律にするべきではないでしょうか。
 また、個人事業者が、個人でも身軽に簡単に加入できる仕組みも構築すべきです。今回の報告案にも記載されています27ページ、3-4、「個人事業者や小規模事業者に対する支援」、【業種・職種別団体等の活用等、各種情報の共有】、○の2つ目には、「国は、個人事業者を支援する団体等の活動に対し、情報提供等の支援を行うこととする。団体等がない業界については、業界団体の形成を促すための取組を進めることとする。」とあります。窓口となる団体もなく、労災保険の特別加入制度さえ知らない対象者がおられます。スマホ1つで直接加入できれば、窓口となる団体にも負担を掛けることなく保険に加入し、直接加入することで保険加入にかかる事務手数料等も見直し、一律で加入でき、手続も一人親方等の負担軽減にもつながります。働き方改革等もある中で、昨今はAIやICTを用いて業務を進めていく時代でございます。厚労省におかれましてもDX等の推進を掲げておられます。是非、これらの取組を進めていただくようお願いいたします。
 1例ではありますが、現状の改善等を抽出していただき、一人親方、その他の自営業者及びその事業に従事する方々が、災害防止の観点だけでなく、補償に関しても安心して働けるように、より改善していただきたく強く要望いたします。
 次に、今後も含めて検討していただきたい点が1点ございます。まず7ページ、2の、「個人事業者等を取り巻く安全衛生上の現状と課題」がございます。(1)の最後のほうには、「個人事業者等の業務上災害については、上記のとおり一部については把握できているものの、網羅的に把握する仕組みがなく、対策の企画・立案に当たっては、災害把握のための仕組みの構築が必要不可欠な状況となっている」と。また、(3)につきましては、「個人事業者等が行う作業についてみると、重量物取扱作業や粉じん作業、有機溶剤取扱作業、化学物質取扱作業など、様々な危険・有害作業に従事しているが、一方で、有害物質についての教育、また説明を受けた割合は約3割となっており、特殊健康診断の受診率も極めて低い水準となっている」等の現状と課題があります。
 災害把握のための仕組みの構築が必要不可欠で、非常に重要な点となります。これらを満たすためには、まず、個人事業者等、一人親方等を明確にすべきで、登録制度も今後検討すべきではないでしょうか。本検討会でも当初、個人事業者等、一人親方等の全体数が不明僚で、数値に関する評価がしづらい点がございました。報告案にも、至る所に「促す」、「周知する」、「支援する」と書かれています。ですが、団体に通達を発出したり、ホームページで掲載、説明会等を開催しても、ターゲットである個人事業者等、一人親方等に直接働きかけなければ大きく改善されないのではないでしょうか。元請等が有期の工事所にて、契約のない一人親方等に直近上位の事業者経由で促してもなかなか効果は望めません。一人親方として取得しなければならない資格、受講する教育、周知すべき事項を対象者に直接・間接も含め促すことで、現状の課題に対して、より改善できるのではないでしょうか。今後、是非検討していただくようにお願いいたします。
 最後に資料2、別紙マル2の申告権を拝見いたしまして、災害報告の主体については一部変更していただきたいという要望をいたします。この申告権でございますが、以前、検討会でも本多委員が申し上げていた個人事業者等の権利ではないでしょうか。確かに、個人事業者等に申告権があるからといって、監督署への災害報告の主体が個人事業者等になるものではございません。ですが、これらの新たな取組を実施し、継続して機能させるためには、現状から掛け離れ、実施する者に大きく負担を掛けるべきではないと考えております。別紙マル2につきましては、「個人事業者等による労働基準監督署等への申告等」について、「個人事業者等が就業する場所や請け負った作業に関し、労働安全衛生関係法令に違反する事実がある場合については、都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に対して申告を行い是正のために必要な措置をとるように求めることができる」とあります。
個人事業者等が申告権を行使するパターンは、大きく分けて2パターンあると考えています。まず、就業する場所や請け負った作業が法に違反しており非常に危険である場合、又は災害等が発生した場合に何かしら法的に問題があったと解釈した場合と推察します。災害に遭った被災者が個人事業者等本人で、死亡等でなく本人が報告できるのであれば、死傷病報告の報告事項以外についても申告したいのではないでしょうか。
 しかも、休業4日以上の死傷病災害は特定注文者等に報告義務を課し、4日未満等は報告義務対象外の災害として情報提供する。これらが異なるルートではなく、個人事業主等の権利を尊重し、死亡した場合や入院中などにより災害発生の事実を伝達することが困難な場合は特定注文者等が把握して監督署に報告する。その他の災害については、個人事業者等が自ら監督署に報告する。また、特定注文者等が必要に応じて、個人事業者等が提出に関して支援を講ずることが、特定注文者、直近上位の事業者及び災害発生場所管理者、商業施設のバックヤード管理者に、大きく現状から掛け離れた運用を課すこともなく、個人事業者等の災害も、より多く把握できるのではないでしょうか。
 また、今後、2025年1月から予定されている電子申請についても、複雑に考える必要もなくシステム化できるのではないでしょうか。
よって、個人事業者等の報告主体において、死亡した場合や入院中などにより、災害発生の事実を伝達することが困難な場合以外は、報告主体を個人事業者等に変更していただくように要望いたします。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。事務局から何かありますか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御質問等、ありがとうございます。3点あったと承知しております。1点目の労災保険の特別加入制度の部分については、頂いた点、若しくは改善すべき点について、しっかりと担当部署のほうにお伝えしたいと思います。ただ、こちらの検討会において、その部分を掘り下げて議論することができるテーマではないということは、御承知いただければと思います。
 2点目の今後も含めて検討すべきというところについては、ざっくり言うと、いろいろな所で働いている個人事業者に周知の声が行き届かないのではないか、どういうように行き届かせるべきか、ということだと思います。こちらは我々もすごく大きな課題だと思っております。我々が法令を施行する際に事業場単位でやってきたという経緯があるので、個々の個人事業者自体、なかなか把握しづらい部分があります。そこにどう周知するかというのは、一般的な周知に加え、必ずしもうまくいかないのではないかという御指摘もありました。例えば注文者経由、事業者経由というやり方もあります。それだけではなく、いろいろな他行政との連携などのチャンネルも、もしかしたらあるのではないでしょうか。思い付きで言えば、個人事業者はいろいろな税務関係の処理などをやられていると思いますので、そういった所との連携も模索しながら、制度の趣旨や内容が個々の個人事業者にしっかり届くような方策は、引き続き追求していきたいと思っております。
 最後の3点目は、報告主体のお話であると思っております。先ほど報告書(案)のほうで御説明したとおり、報告主体については前回、一定の合意が得られたという認識ですが、それについての変更という話だと思います。まずは事務局の考え方、若しくはこれまでにも報告制度、特に報告主体については非常に数多く、回を重ねて議論をしてきた経緯があると思いますので、その確認も含め、検討会における合意事項、若しくは考え方について、少し補足説明をして回答に代えさせていただきたいと思います。
まず、報告制度の報告主体を選定するに当たっての考え方は、資料1の10ページに、これまでの検討会における議論を踏まえて記載しております。ただ、ここには書き切れない、検討会におけるいろいろな御議論もあったというように承知しております。ちょっと長くなりますが、一つ一つ整理をしていきます。
 例えば、被災者である個人事業者自身の負担を考えなければいけないという御意見があったと思います。被災者である個人事業者等が遅滞なく災害報告の事務を行うというのは、なかなか適当ではないのではないかという御意見もあります。一方で報告主体、災害発生場所管理事業者や特定注文者の負担も考えなければいけないと。先ほど資料の中でも御説明しましたけれども、被災者である個人事業者が報告主体に何も告げずに現場を立ち去ってしまったような場合、報告主体が災害を把握し得ないようなものまで報告義務を課されるというのは、なかなか現実的ではないのではないかという御意見もありました。
 行政による履行確保も非常に重要な課題です。先ほども申し上げましたけれども、安全衛生行政は基本的に法令の適用は事業場単位としてやっておりますので、個人事業者の所在把握や法令の履行確保というのは、なかなか難しい面があります。報告というのは、単にデータを取って集計するだけではなく、それを踏まえていろいろなアクションを起こす、改善していくということを通じて、個人事業者の災害をなくしていく。ひいては事業場自体を安全にして、労働災害もなくしていくという大きな流れの中で設けている制度ですから、この部分も非常に重要になってきます。
 あとは検討会でも御指摘いただきましたが、個人事業者の主体性ですね。災害報告を特定注文者や災害発生管理事業者に全部お任せで、個人事業者は単にそれに協力するだけというのはおかしいのではないかという御意見もありました。単なる協力だけではなく、確かに個人事業者は事業者的な側面も有しますので、亡くなってしまったような場合は難しいわけですが、そうでない場合については報告の起点として、個人事業者が特定注文者等に報告していただくという形でやってはどうかという御意見もありました。
 あと、個人事業者の方々も安全衛生上の知見や事務能力も考えなければいけないと。これも検討会で御指摘がありましたが、個人事業者の方々は安全衛生に対しての意識が、必ずしも十分に高くない。その結果、知見も十分に備わっていないのではないかということです。また、個人事業者なので労働者を雇っておりません。中小企業の事業主や役員は、別途所属企業が報告してくださいということになっているのでいいのですが、そうでない、いわゆる本当の個人の場合は、業務上災害に被災した状態でちゃんと適切に報告事務を行うことができるのかという観点もあります。
 そして、この次の点が非常に重要です。災害発生場所や災害を発生させた作業における再発防止いう視点が、非常に重要ではないかということです。特定注文者や災害発生場所管理事業者が災害報告を行うという仕組みでお願いしようと思っておりますけれども、そういったことによって今後注文するであろう同種の作業とか、災害が発生した事業場に報告をするというのを契機として、同種の災害の再発防止が図られる、そのための作業の改善や作業環境の改善が図られるのではないかということです。その作業や作業環境は、必ずしも個人事業者固有の話ではないのです。ひいては労働災害全体の防止にもつながる、非常に重要な視点だと御議論いただいたと承知しております。
 あとは報告制度というものを考えたときに、労働災害に関する報告との制度的バランスも考えなければいけないのではないかということがあります。個人事業者というのは安全衛生上、保護されるべき側面もあるわけです。そういった方に一律に報告義務を課すというのは、労働災害について見た場合には、被災者である労働者に義務を課すのと同じような視点になってしまいます。労働災害の場合はそうではなく、事業者に報告義務を課しているという点と比較して、ちょっとバランスを欠く点があるのではないかと。
 一方で、個人事業者については、保護されるべき側面だけでなく、当然事業者的な側面も持っております。これは完全に労働者と同じように、何もしなくてもいいということではなくて、個人事業者が災害報告について何らかの責務を負わないというのは、ちょっとおかしいのではないかと。それは先ほど申し上げた点です。そういったバランスも踏まえて、冒頭に申し上げた仕組みに至ったという経緯があります。そのような経緯で現在の案に至っているということは、是非、御理解いただければと思います。
 具体的に今、出口委員から御指摘や御要望があったのは、個人事業者等が直接監督署に報告するという形にしてはどうかというものです。今申し上げたような観点を踏まえると、例えば一律に個人事業者に監督署に報告させることにより、報告事務がちゃんと行えるのか、被災者保護の観点から適当なのかという課題があります。亡くなってしまったような場合は、当然報告不能になりますし、履行確保の観点でも、非常に難しい部分があります。あと、個人事業者は安全衛生の意識や知見が十分に高くないということがありますので、報告の内容を記載したときのその中身というのは、必ずしも十分なものにはならない。その結果、実態把握や再発防止に十分資するものにならないのではないかという懸念があります。また、被災者個人に監督署への報告義務を課した場合には、労働者が被災した場合の災害報告等のバランスも、崩れてしまう恐れがあるという問題点があります。
 これらを踏まえ、現在お示ししたような案になっています。それによって再発防止もしっかり徹底されますし、監督署への災害報告の内容もしっかりしたものになる。その結果、個人事業者の災害防止に資することにもなりますし、その制度の中にしっかり個人事業者を位置付けることによって、個人事業者自身の意識や機運の向上にも資するのではないでしょうか。そういうようにトータルで見た場合に、これが絶対正解というものはないというのは、皆さん合意の上での議論でしたが、一番いい形にたどり着いたのではないかと考えているところです。そういった仕組みによって、先ほど挙げたような課題は一定解消されるわけですので、是非、御理解いただければと思います。
 ただ、その仕組みをちゃんと円滑に実施するためには、特定注文者や災害発生場所管理事業者の負担軽減にも十分に配慮する必要がありますし、個人事業者が加入している団体等の協力も必要でしょう。あと、特定注文者や災害発生場所管理事業者が存在しない場合とか報告対象外の災害についても、なるべく広く把握するという観点から、個人事業者から監督署に情報提供していただくような仕組みも、併せて実施することによって、課題の所にも書いた網羅的な把握につなげていきたいということです。
 もっとも、特定注文者や災害発生場所管理事業者に報告義務を課すというのは、資料にも記載しておりますけれども、災害の全てに責任を負うということではありません。そこは重々御理解いただきたいと思います。報告書の「その他」にも書きましたが、個人事業者というのは守られるべき側面だけを持っているわけではありません。自分自身で主体性を持って事業をやっていただくという立場もあるので、その両面をしっかりやっていただくことが重要だというのは、事務局としても、この検討会としても共通の認識だと思っており、報告書に書かせていただいていることも御理解いただければと思います。
 最後に、申告制度との関連も御指摘いただいたと思います。出口委員もおっしゃっていたとおり、申告制度があるからといって、報告主体をどう変えるべきかという話にならないということは、そのとおりだと思います。報告制度の適正運用に当たっては、まずはこの制度の趣旨を踏まえて個人事業者自身、特定注文者や災害発生場所管理事業者が、災害の発生の事実やその状況、原因などについてしっかり協力して報告いただくということが重要だと思っております。それによって、違反の有無も含め、そういう実態から十分読み取れるような報告をしっかり出していただくことが、何よりも災害防止のために重要だと思います。それが実現可能な仕組みになっているのではないかと思っておりますので、是非、御理解いただいて、この仕組みの推進に御協力いただければと思います。長くなりましたが、事務局からの補足説明は以上です。
○土橋座長 特に最後の報告制度のところですが、前回まで、ほぼまとまっていたかというところに御意見を頂いた感があります。これまでの議論や検討については、今、事務局から説明いただいたとおりで、それを受けて、特に個人事業者本人の報告が困難な場合、それ以外の場合についても、特定注文者を報告主体に含めるという形でまとまってきたと思います。出口委員の意見としては、含めずに個人事業者が直接行政に報告するという御意見でした。この辺りは皆様の意見も伺いたいと思います。この点について、何か御発言があればお願いしたいと思います。それでは山脇委員、お願いします。
○山脇参集者 連合の山脇です。確認ですが、今の点に関してのみ先に発言したほうがよろしいですか。
○土橋座長 取りあえず、今の点を話したいと思います。
○山脇参集者 これまでも議論を積み重ねてきて、前回、一定の合意ができたと思っておりますので、この点は崩さずやるべきと思っております。今回、前回委員会での議論をベースに別紙マル1とマル2が追加されました。この別紙マル1とマル2の内容を追加するのが望ましくないというのなら議論として理解できますが、別紙マル1とマル2を理由として、報告主体の仕組みを見直すべきだというのは本末転倒ではないかと思います。以上です。
○土橋座長 御意見、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは本多委員。
○本多参集者 報告主体の件で、若干申し述べたいと思います。確かに、これまで一定の合意というところで認識しておりますけれども、その上で、私どもの現場の実態あるいは現実を踏まえて、あえて申し述べさせていただくこと、そういう形で受け取っていただければ幸いです。
 資料としては、特に報告書の11ページの中段に当たるかと思います。個人事業者等が災害事実を伝達・報告することが可能な場合、一人親方は特定注文者や災害発生場所管理事業者に対し、災害報告を義務付けるようなことになりますけれども、私どもは、一人親方が同じ手間をかけるのであれば、監督署に情報提供することができるようにしたほうがいいのではないかという思いです。一人親方が監督署に直接情報提供できる枠組みをきちんと認めた上で、一人親方が特定注文者や災害発生場所管理事業者に対して報告を行ったり、特定注文者や災害発生場所管理事業者が監督署に報告を行う必要がないことにしていく必要があるのではないかという意見を持っている次第です。
 というのは、特定注文者や災害発生場所管理事業者のいずれも存在しない場合や被災程度が報告義務対象外の災害については、報告書(案)でも一人親方が監督署に情報提供することが可能な枠組みを構築することになっています。これは報告義務ではなく、情報提供となっております。それと同様に休業4日以上の災害についても、一人親方が監督署に情報提供できるような枠組みを、並列的に整備していくことが妥当ではないかと思っている次第です。
 そもそも、できるだけ多くの災害を効率的に把握するという観点に立った検討を進めていく際に、認識しておかなければならないのは、2025年1月1日からは労働者死傷病報告の電子申請の原則義務化が施行されるという事実であります。これも前回申し述べましたけれども、この労働者死傷病報告について電子申請が義務付けられた場合に、一人親方に係る災害報告や情報提供だけが、紙媒体で行うというのでは道理にかないませんし、当然、一人親方に係る災害報告や情報提供についても、電子申請が原則とされるはずです。
 一人親方が特定注文者等に災害を報告する方法は、あらかじめ厚労省が定めた様式を用いて、定められた事項をスマートフォンに入力し特定注文者等に送信するのが最も簡便であるため、そうしたやり方で報告が行われるのが一般的になると思われます。その場合に一人親方から報告を受けた特定注文者は、送信された電子データを監督署に転送して、報告義務を果たすことになりますが、災害発生状況、休業見込期間、傷病名等の報告事項を最も把握しているのは一人親方自身なので、監督署に特定注文者が報告する際に、特定注文者が何らかの事項を追加しなければならないといった内容は、それほど多くはないと考えています。特定注文者や災害発生場所管理事業者のいずれも存在しない場合や、被災程度が報告義務対象外の災害について、一人親方が監督署に情報提供することが可能な枠組みを構築することは妥当であり問題はありません。
 さらに、一人親方が元請となっていたり、単独作業中に被災する事案は比較的多いため、そうした災害の把握漏れをできるだけ防がなければなりませんし、災害発生場所や災害発生状況等を最も把握している一人親方が、スマートフォンに所定事項を入力した上で監督署に送信し、情報提供をするのは効率的で確実です。
 一方で、一人親方が災害発生場所の事実を伝達することが可能な場合については、一人親方自身が監督署に直接情報提供することが認めてもらえず、必ず特定注文者等を介さなければならないことについては、本当に適当なのか甚だ疑問です。一人親方が特定注文者等に電子データで報告する際に、併せて監督署に情報提供することさえ認めてもらえれば、手間が掛からず効率的で、かつ、監督署は確実に災害発生状況等が把握できます。
 私どもの意見は以上のとおりですけれども、被災した一人親方の立場を十分に考慮した提案を1点させていただきたいと思います。一人親方が被災する災害を減少させたいという思いや、そのためには一人親方の災害を把握し分析する必要があるという認識は共通しているということを前提としたものです。すなわち、報告書(案)に沿って一人親方が特定注文者等に災害報告を行い、更に特定注文者等が当該災害報告を踏まえ、監督署に対して災害報告をするという枠組みを法令により構築する場合であっても、当該枠組みが目指している、一人親方が被災した災害を監督署が把握するという目的を事実的に達成できる場合には、一人親方が特定注文者への報告義務、更には特定注文者が監督署への報告義務を果たしたとみなすことを、通達で示すことを検討してはいかがでしょうか。すなわち、一人親方が報告先を選択でき得るという法令上の枠組みではなく、法令の目的を事実的に達成した場合には、法令上の措置義務が履行されたものとみなすということに関する提案です。
 こういう手法には様々な前例があります。例を2つほど申し述べたいと思います。例えば、建設工事現場でコンクリートを打設する際には、型枠支保工を組み立てます。安衛則第240条では、事業者に対して型枠支保工を組み立てる際には組立図を作成することを義務付けています。この措置義務に関しては、昭和38年6月という古いものですけれども、厚労省から通達が発信されております。B階の枠型支保工の構造及び使用材料をA階のものと同一又は近似のものとする場合には、A階についての組立図をもってB階についての組立図とみなして差し支えないという解釈を示しています。B階についての組立図が作成されていない場合であっても、A階の組立図をもって法令の目的を事実上達成できる場合には、法違反としては取り扱わないということです。
 また、もう1つの例です。化学物質を含有する製材等の製造、又は取り扱う設備の工程の作業に係る注文者に対しては、安衛則第662条の4により、請負人の労働者の労働災害を防止するために、法定文書の交付が義務付けられております。平成18年の通達では、同種の仕事を反復して発注する場合において、既に当該仕事に係る文書が交付されているときは、再度の文書の交付を行う必要はないという解釈を示されております。一度文書を交付していれば、2回目以降は文書の交付を行わなくても法令の目的を事実上達成しているため、法違反としては取り扱わないということになっております。そのため、一人親方が自らの任意の判断で、自主的に監督署に対して直接災害の情報提供を行った場合は、一人親方が特定注文者に災害報告を行い、更に特定注文者等が当該災害報告を踏まえ監督署に対し災害報告したとみなすということを通達による解釈で示すということは、十分にあり得るのではないかと考えています。
 報告書によりますと、一人親方が自ら元請として工事を施工する場合や、休業4日未満の災害などについては、監督署に対して直接情報提供できるとされています。その反面、一人親方が休業1回以上の災害について監督署に直接報告を行った場合には、監督署が当該報告の受取りを拒否し、必ず特定注文者を経由して報告を行わなければならないとすること自体、つまり、こういうものが現地での混乱を生じさせかねません。ただいま提案したような方法であれば、法令上に対する報告義務は特定注文者が負うという原則を維持した上で、一人親方に特定注文者等が法令上報告義務を果たしたとみなすことにより、二重の負担が生じることを回避できるのではないでしょうか。
 さらに、一人親方が特定注文者に対して報告を行う際に、CCなどで監督署に状況を提供することを認めることについても検討したほうがよいかもしれません。一人親方が被災した災害を把握する目的は、災害を集計・分析し、災害防止対策に役立てることであり、特定注文者等に報告義務を課して過重な負担を負わせることがないことは、先ほど船井専門官からもお話がありましたし、十分理解しております。できるだけ多くの報告が効率的に、かつ、報告者の負担を軽減することが可能な形で行われることを目指すべきであると考えます。以上です。
○土橋座長 本件に関して、事務局側から何かありますか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございます。頂いた解釈で法の趣旨を満たしたことにするというような話は、今の時点で議論すべき話ではないのかもしれないので、その可能性というのは追求する余地があるとは思いますが。先ほど本多委員から御指摘があった中で、個人事業者が特定注文者ないしは災害発生場所管理事業者に対して報告をしたものについて、何ら追加しなければならないケースは多くないということでした。それは、先ほど長々説明させていただいた中にも書いた懸念点にもありましたが、個人事業者が必ずしも安全衛生上の知見や事務能力は高くないと。それは、建設業界の皆様からも意識が低いというような言葉で御指摘いただいていたと思いますので、その意識を高めなければならないという観点もあると御指摘いただいていると思います。
 そのような実態があると思いますので、自分の被災した災害について、災害発生の対応や原因も含めて、再発防止に資するような内容を完璧に作って出してきてくれるかというと、ちょっと疑問があるというのは正直なところです。そういった観点も、特定注文者や災害発生場所管理事業者に出していただいて、必要な事項を追記して出していただくというところには含まれているのだということを御理解いただければと思います。ですので、個人事業者が自分で選んで監督署に出したから、特定注文者や災害発生場所管理事業者が全く関与しなくていいのだということではないのかなという理解です。
 それから、個人事業者が特定注文者、若しくは災害発生場所管理事業者に対して報告する義務があると。それを踏まえて、特定注文者又は災害発生場所管理事業者が監督署に対して出していただく義務があると。それをきちんとやっていただいた上で、それとは別ルートで、重ねて個人事業者が、例えば念のためとか、自分はきちんとこういうものを出したというのを確認的に監督署に知っておいてほしいのだという意味での情報提供は、必要性はそんなに高くないと思いますが、あり得ると思います。それは、受け付けないとか突っぱねるということではありません。それは、過去の検討会でも山脇委員からも御指摘があって、それは別に排除するとか突っぱねるものではないと回答しています。そういう意味で、そのルートでやれば報告義務のルートがなくなるということではなくて、報告義務はきちんと果たしていただいた上で、何らか別の目的で情報提供するということは別に排除していないということも御理解いただければと思います。以上です。
○土橋座長 本多委員、どうぞ。
○本多参集者 早々に回答いただき、ありがとうございました。そのうち、最初にお話がありました災害発生状況等についての報告内容に関して、特に一人親方の方々の安全の意識や知識が必ずしも高くないので自分で報告できないということですが、ここだけ少し反論させていただきたいのです。自らが被災した災害に関して報告できる状況で報告する内容というのに、安全管理に関する知識や知見というものは必ずしも必要ないと思っています。特に被災の程度、休業の日数などについては、特定注文者等は事実上知れ得ません。御本人から申し出がない限り分からないのです。
 一方、受け取る側の監督署からしますと、これは勝手な私の判断ですが、きちんとした報告書でもらいたいということであれば、もちろん特定注文者等が更に調査を加えて、詳しい内容で報告してもらえれば、それはそれでいいのでしょうが、今回の目的はそうではないと思っているのです。災害について被災者が把握しているものを、特定注文者等に報告をして、その把握した内容を報告するということですので、仮に先ほどおっしゃった内容ですと、特定注文者等は災害の後について再度様々な調査をして報告するということで、ものすごく負担が出てくると思います。このようなことを、全く今はそのような土壌がない中で、私どもが元方事業者、あるいは数限りない特定注文者等に説明をして浸透させていくことについては、ものすごい混乱が生じると思いますし、現実的ではないと認識しております。以上です。
○土橋座長 報告制度について、ほかに御意見はありますか。田久委員、お願いします。
○田久参集者 報告ありがとうございます。私自身は山脇委員の意見に賛同ですし、報告主体の議論はこの間かなりやってきて、今ここに着地をしたという認識をもっております。先ほどの事務局からの補足も含めて、経緯も報告があった中身で、私はかなり納得がいく部分ではないかと思っております。
 やはり報告主体は、基本的には個人事業主等の安全衛生の対策のあり方であるのと同時に、全ての業界での安全対策につながるものにしていくという意味合いも、私はあるのではないかと思っています。そういった意味では、全体が1つのけがによって、安全をどうしていくかということを共通認識にしていくといった報告の流れというのは、今あったものではないかと感じています。そういった点では、今の報告でまとめられたもので、是非進めていただきたいというのが私の考えでもあります。
 また、同時に別紙マル1、マル2にあるようなことも含めて、実際に行われる際の実行性が高いようなものにしていかなくてはならないとも思うので、そういった点はやはり通達等で個人事業主等が報告をしやすい環境をつくっていくことを考えていただければと思います。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございます。ほかに報告制度について、何かありますか。青木委員、お願いします。
○青木参集者 住団連の青木です。報告主体の話ではないのですが、13ページのオの報告事項に関してです。この報告事項の中でマル3の辺りになると思うのですが、「被災者の氏名、年齢、性別、業種、職種」となっておりますが、ここに被災者が日本人なのか、若しくは外国人なのかという部分も追加していただけたらと思います。
 私ども住団連で労災調査をやっておりますが、そこにも実はそういった区別を付けております。これは、特に一人親方ということにして見てしまうと、特に建設業の一人親方というと、なかなか外国人というのは少ないかとは思いますが、今回のこの制度は建設業だけではないので、他の業種では一人親方というよりも、フリーターといいますか、外国人の方が就業しているケースも当然あるかと思います。報告の集計の結果によっては、日本人とは異なる対策が必要となることも考えられますので、今、申し上げたような、日本人なのか外国人なのかというところを書いていただく項目があればいいと思います。これは、14ページのマル2も同様かと思いますので、意見ですが、この辺りを御考慮いただけたらと思います。以上です。
○土橋座長 本件について、事務局、いかがですか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御意見ありがとうございます。確かに、労働者死傷病報告の場合は、国籍、地域や在留資格を書く欄を先般、数年前に追加したということもあります。おっしゃるように、建設現場だけを見ると、まれかもしれないのですが、いろいろな業種の方も対象にした報告であることを踏まえれば、入れたほうがいいかと思いましたので、検討して、次回お示ししたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 ほかはよろしいですか。では、報告制度に限らず、資料1、資料2、全体について、御発言があればお願いします。中村委員、お願いします。
○中村参集者 今さら蒸し返すのかと言われるかもしれないのですが、2点申し上げます。1つは、個人事業主が実際に教育を受けるということを考えた場合に、現実の話として、発注者負担で教育をやっていくというようにこの文章はなっているのですが、発注者だけではなくて、例えば、もう少し地方自治体等も加えるような書き方ができないでしょうか。どうしてそういうことを言うかといいますと、個人事業主の仕事というのは、必ずしもその発注者と1対1の関係で仕事をしているわけではなくて、同じような仕事をほかの発注者からの部分もやることがあると思うのです。書かれている趣旨はよく分かるのですが、もう少し幅広く書いていただけたらいいのではないかと思います。これは、16、17ページに関係する内容です。
 もう1点は、全く別のことです。参考資料マル2を見ると、この図を見て言えるのは、今までの経緯から、どうしてこういう文章になったかということは分かるのですが、本当にその事業場の管理者が自分の所で管理できる範囲を超えてまで果たしてできるのかというと、難しいところがあると思うのです。これまでの議論からいうと、なぜこのようなことを書かなければいけなかったかということの例示があったほうが、混乱を招かないような気がするのです。基本的には、上のほうの形でいかないと、事業者としては管理できないと思うのですが、下のようなケースがあるということは、例えば、運送業者がその発注先でということもあるので理解できるので、何か例示的なものがあったほうが分かりやすいのではないかと思います。この2点です。
○船井主任中央労働衛生専門官 御質問ありがとうございます。教育の部分で、16、17ページは、必ずしも発注者の責任でということではありません。例えば、労働者であれば、事業者の責任で受けなければいけない特別教育については、個人事業者が自ら受けるのですが、そういった教育の機会などは注文者等が配慮してあげるということを書いております。先生に御指摘いただきました自治体というような話は、第何回かは覚えていないのですが、先生から御指摘いただいて、27ページの3-4の1つ目の○の所に書いてあります。例えば、いろいろな支援が必要な部分があると思うのですが、そのような部分については、業種、職種別の団体や、これもITの関係でも御指摘がありましたが、仲介業者や個人事業者が就業する地域の自治体も関与するように働き掛けることが重要だということで書かせていただいておりますので、御理解いただければと思います。
 もう1つ、参考資料マル2の例示というのは、この右側のポンチ絵の下の部分で、こういうケースがこの図に該当するというようなことでしょうか。
○中村参集者 はい。それを言っておいたほうが、やはり事業者がきちんとそのリスク管理をするべきだというのが基本で、そのとおりにこの文章全体が書かれていると思うのです。労働者で同じ場所で就労する者は、同じような安全衛生水準を享受すべきだという趣旨できているので、そのように考えたときに、本当に事業者が管理できる所を強く出す意味で、このような新たな視点もあるということを例示的に示されたほうが。要するに、誰がしっかり管理できるかということを明確に書いたほうがいいかと思っています。
 これは、ある意味では、先ほどの報告主体とも関係する議論だと思うのです。やはり、事業者が自分の所で起きていることについて、きちんとリスク管理していくということが基本だと思うので、そういう意味で、きちんと事業者に報告させるということは、それだけのことを事業者にきちんと責任を負わせることになるので、私はこのとおりでいいと思うのですが、下の所に少し例示があったほうがいいと思っただけです。
○船井主任中央労働衛生専門官 ありがとうございます。なかなか一言で例示というのは、難しいのです。例えば、上の四角、事業場の中に個人事業者やその他の作業者が入る場合に、場所を管理する時点で、立入禁止みたいな話であれば、これは事業者がやるというのは非常に明確なのです。
 一方で、個人事業者が何か危険な機械を持ち込んで、それが点検不備で、隣にいる労働者を被災させてしまうというようなケースもあり、個人事業者自身の措置なども入っているのです。ですので、ある場面は、やるべき人が1人しかいないという話ではなくて、それぞれ役割分担しましょうということを左側の文字で書いています。ですので、ここで全部書き切るのはなかなか難儀かと思っておりますので、御理解いただければと思います。
 報告を見ていただきますと、それぞれの役割のことは結構細かく書いてあります。これは非常に広範な視点から議論しておりますので、御理解いただければと思います。
○中村参集者 私が言ったのは、いきなりこれだけ出てくるとと思ったので、言いました。
○土橋座長 オンラインのほうから、鹿野委員、お願いします。
○鹿野参集者 まず、先ほどの報告主体については、今回の取りまとめに賛成です。既に、先ほど事務局から議論の経緯や、ここでまとめた趣旨について御報告がありました。詳しくは繰り返しませんが、3点申し上げます。
 1点目は、この報告制度は、今まで実態把握ができていなかったので、実態把握ができるような仕組みを作ろうという考えに基づくものです。その際、誰がどのような役割を担っていくのが一番確実で効率的であり、かつ、どこかだけに、例えば、特定注文者等だけに一方的な負担がかからないようにということで議論してきました。その結果、前回、ほぼ合意をみたと認識しておりますので、基本的に今回の案に賛成です。
 2点目は、先ほど個人事業者が一番知っているので、それに追加すべきことはないというような御発言もありましたが、事務局からお答えがあったように、必ずしもそうではない場合もあるのではないかという気がしております。その点からも事務局案がよろしいのではないかと思っております。
 3点目は、これも先ほどの御説明の中にあったと思いますが、特定注文者や災害発生場所管理事業者等が報告をすることにより、これが責任問題に直結するわけではなく別ということを前提にしても、これを契機に将来の再発防止につなげるということが期待されるのだと思います。その意味でも、現在示されている案がよいのではないかと思っております。これが大きな1点目です。
 それから、報告主体というわけではないのですが、ほかの点もよろしいですよね。資料2の別紙マル1について、「個人事業者等からの報告が適切に行われるための方策」ということで、報告を行ったことによる不利益取扱いの禁止というものを提示していただきました。前回、私もそのような手立てがないと、不利益取扱いがなされるということを恐れて、結局報告がなされないことになると、この制度がうまく機能しないのではないかというような趣旨の発言をさせていただきました。基本的に、今回示されたことに賛成です。
 ただ、その際、不利益取扱いに該当する具体例を通達等で示すとなっている点が若干気になります。確かに労働者とは違うところがありますので、いろいろと考慮しなければいけない要素があるのだろうと思うのです。しかし、通達に全部丸投げというより、典型的な例を法律で挙げて、その他、具体的な所については通達で明らかにするというような枠組みがあってもいいのではないかという気がいたしました。注文者との関係でいうと、発注停止などが考えられるのかもしれませんし、現場に近い方のほうがその辺りはよく御存じかと思います。不利益取扱いの内容について、典型的な例を示したほうが分かりやすいのではないかという趣旨でした。以上です。
○土橋座長 ご意見ありがとうございました。ほかに御発言はございませんか。事務局からお願いします。
○船井主任中央労働衛生専門官 今の点について。御意見ありがとうございます。先生の御指摘のとおりで、別紙マル2を見ていただきますと、申告のほうの不利益取扱いの禁止については、解雇その他ということで典型事例を書いております。これは条文を書き起こす段階での検討になるかもしれませんが、典型的なものは例示する形になるのではないかと現時点では考えております。取引停止とか、そういった個人事業者で容易に想定される不利益を、何かしら例示したほうがいいかなというのが現時点での考えです。
○鹿野参集者 ありがとうございます。
○土橋座長 山脇委員、お願いいたします。
○山脇参集者 まずは事務局のこの間のとりまとめに向けた取り組みに敬意を表します。私は、基本的にこの形でのとりまとめに賛成の方向ですが、幾つか補強の観点からお話申し上げたいと思います。
 1つ目は、先ほど中村先生に触れていただいたように、本検討会の基本的視座として、労働者以外の者も労働者と同じ安全衛生水準を享受すべきという観点で議論を行ってきましたが、そのことが報告書に記載されていません。報告書には「基本的な考え方」のようなものがあるものの多いので、先の考え方を記載してはいかがでしょうか。
 2点目は、7ページからの「現状と課題」にあるヒアリング内容に関してです。ヒアリングの中では偽装雇用の話があったと思います。本来であれば、労働者として保護されるべき方々が、そうではない偽装雇用という形に置かれることで安全が脅かされているということも大きな課題の1つだと思っています。この点についても記載を検討いただきたいと思います。
 3点目は、今回の御提案いただいた不利益取扱いと申告権ですが、これは事務局提案の内容に賛成です。その上で、不利益取扱いの禁止あるいは申告権が導入されたとしてもなお、事業者からの明示、暗示の圧力、あるいは個人事業者が今後の受注への影響を恐れて、事故にあったことを伝達・報告しない、できない場合も想定されると思います。そうした中、実行性を担保するという観点で言うと、監督行政の果たす役割は大変大きいと考えます。監督行政としてどのように対応されるお考えなのか、現段階での見解を伺いたいと思います。少なくとも、労災隠しに関しては、法第100条違反として、厳しく取り締まることを明確にしていく必要があると思っているところです。
 また、個人事業者が自ら労働基準監督署に、情報提供なり、報告とは別の形で伝達する場合があろうかと思いますが、この場合における特定注文者等の災害防止対策をどうするのかという点が明示されていません。労基署から特定注文者に対して、将来にわたる災害防止対策を講じさせる仕組みも極めて重要なのではないかと思いますので、この点についてどうお考えなのか伺いたいと思います。
 次に、27ページに「個人事業者や小規模事業者に対する支援」との記載があります。この点について、明示的に議論はしていなかったのですが、安全衛生委員会をどう活用していくのかという点も、今後に向けて重要な観点だと思います。同じ事業場内で働いている方の安全を守るということは、結果的に労働者の安全を守るということにつながってくるということを考えると、安全衛生委員会において、個人事業者等についても議論していくことが重要ではないかと思いますので、この点もどうお考えなのかお聞きしたいと思います。
 最後は、別紙マル2の申告権の関係です。幅広に申告権の対象になると思っておりますが、どのようなものが申告権の対象になるのか事前に明らかにしておく必要があるのではないでしょうか。特に、個人事業者は、今まで申告権ということ自体を知らない方も多いと思いますので、周知も含めて今後重要な課題になると思います。この点も御回答いただきたいと思います。
○土橋座長 事務局、いかがでしょうか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございます。資料2にあった、労働者と同じ安全衛生水準を享受すべきであるという部分は、報告書には明示的に書いていないのですが、9ページの3の柱書きの所に、別添2を引用してしまったので、それでいいつもりでいたのですが、3番の柱書きの所は、山脇委員が御指摘の基本的考え方に近い部分ですので、ここら辺は余り長くなってもと思ったのですが、これだけを読んで全体像が分かるような記載にできないか検討させていただきたいと思います。
 あと、偽装雇用のような部分については、この検討会でも議論があったのですが、労働者性の話とかもあって、この検討会というのは、いわゆる労働者ではない方々、個人事業者の方々であっても安全衛生をどうするかという視点で議論をしたので、明示的に書いていなかったのですが、ほかとの並びも踏まえて、2の所にどういう形で書けるのかということも含めて、検討させてください。
 あと、順不同になってしまうかもしれませんが、特定注文者等、報告主体である人、災害発生場所管理事業者も含めて、そこにおける再発防止というか、将来にわたっての取組という部分ですが、これについては、当然報告いただくということは、単に件数を把握するというだけではなく再発防止という視点も入っているので、これは普通の死傷病報告とも同じですけれども、それを見て何かしらお願いすべき事項があれば、場合によっては現場にお邪魔することもありますし、電話などでやり取りをして状況をお聞きして、その上でアドバイスさせていただくこともあると思いますので、そこは通常の労働災害の場合と同じように、この報告自体がアクションの切っ掛けであるというように御理解いただければと思います。
 あと、監督機関としてのアクションを現時点で想定しているものということですが、まだ、現時点でどう動くかは決まっているわけではありませんで、これも我々は事業場単位で法令適用して、履行確保、指導等をさせていただいているわけで、そういう場面において、個人事業者の方がいる場合には同じようなアプローチになると思いますが、一方で、全然別の所で、いわゆるフリーでやられているホワイトカラー的な方々の健康管理のような部分というのは、基本はセルフでという話にしているので、そういう部分について、行政としてどういうアプローチが相応しいのかというのは、ガイドラインの策定なども含めて、そのガイドラインをどうやって実行していくのかも含めて、検討させていただきたいと思っています。
 あと、申告権の対象になるような条文の明示ということですが、これは条文上書けるかどうかは置いておいてですが、今回、個人事業者等について、安全衛生確保の観点から、いろいろな措置が法令上明記されることになろうとしており、そういった部分について対象になるというのは、何も示さないと分かりづらいと思うので、何らかの形でお示しすべきだというように思っておりますので、また検討させていただきたいと思います。
 あと、委員会の活用ですが、安全衛生委員会の主たる目的として、個人事業者の災害防止を入れるかどうかというのは、この検討会でも議論していませんし、馴染むかなというのはあるのですが、一方で、山脇委員が御指摘のとおり、個人事業者の方が事業場において労働者と同じような作業をやる場合は、ある意味で、作業場所の作業環境は個人事業者にも当然裨益してくる話だと思いますし、労働者にも影響が及ぶ話もあると思いますので、そういった部分は、どういう形になるかは別にして、議論をして然るべき部分もあるとは思います。どういう形でやるべきだというのは今の時点で案があるわけではありませんが、また、今回ご議論いただいたような制度ができ、具体的な運用を図る上で、やるべき事項も明確になってくれば、それは委員会の中でどの部分をどうやればいいのかというのも、丁寧にお示しする場面が必要になるかと思っています。今後の検討課題になると思います。
○土橋座長 そのほかに御発言はございますか。大木委員、お願いします。
○大木参集者 この検討会で、個人事業者の災害件数を把握するのはよかったなと思っております。災害件数、死亡者数を把握したものを公表するのかどうか。例えば、労働災害ですと、平成4年は、建設業の死亡事故は300件を切ったとか、死傷者数は何万件になったとか、毎年厚労省から発表されます。個人事業者のことは今まで把握していなかったということもありますが、これを通じて把握した後、例えば、資料1の8ページにありますが、建設業で年間80件~100件の個人事業者の死亡者がいるということは、知らない人が大多数だと思います。こういったことも、現場の中で、労働者であれ事業主であれ、事故を起こしてはいけないので、そういった意味で、個人事業者のデータを把握したら、社会全体に対して発表すべきだなと思っていますけれども、いかがでしょうか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございます。今、御指摘のあった建設業の一人親方の80人前後という話は、一応ホームページ等には公表しているのですが、いわゆる労働災害のものと一緒にとか、連携してというような話ではなかったと思うので、一般の人に広く知れわたっていないという部分については、課題として受け止めさせていただきます。
 一方で、新しい報告制度の仕組みができた後については、15ページの下の所にも書いてあるのですが、労働災害と同じように、しっかりとデータを分析して公表していこうと思っております。公表の仕方は、労働災害と一緒にしてやるのか別々にやるのかまでは考えが及んでいませんけれども、基本的には災害の状況を見ても、労働災害と全く別だというわけではなくて、結構近い部分もあると思いますので、うまく比較ができるような形で公表できたらいいなと考えています。いずれにしろ、分析して公表します。
○土橋座長 そのほかの御発言はございますか。田久委員、お願いします。
○田久参集者 確認なのですが、16ページの(1)の3つ目の○についてです。機械等の安全の確保の関係で、基本的に事業者が自主点検を実施すべきものである中で、それができていることが確認できた場合は、自らやらなくていい旨を通達で出すということなのですが、逆に自主点検されていない場合は、個人事業主がやるのかというようにも読み取れる部分なのですが、そういった意味はないということでよろしいのでしょうか。
○船井主任中央労働衛生専門官 ぎりぎり言えば、点検されていないと言われても、それをなお使うのだったら、やらなければいけないというのが法令上の仕組みになりますが、それ以前の話として、点検していないものは使わせないでくださいという話になるのかなと思います。そこは事業者とよく協議をしていただいた上で、事業者が個人事業者に使わせるのであれば、ちゃんと点検したものを労働者と同じように使わせるという趣旨です。
○田久参集者 分かりました。
○土橋座長 オンラインから鈴木委員、お願いします。
○鈴木参集者 先ほど、基本的な考え方の記述を検討されるというお話がありました。そのこと自体に異論はありませんが、御留意いただきたいということで一言申し上げます。
 現在の措置を考慮するというようなお話がありましたが、報告制度の主な目的は、災害の実態を把握し、エビデンスに基づく政策立案につなげることだと認識しております。
 何を申し上げたいかといいますと、災害の内容は様々でして、例えば個人事業者の不安全行動に起因するものなどもあると思います。報告制度の副次的な効果として、特定注文者等が事故や災害を再発させないような意識啓発につながるとか、具体的な措置につながることがあり得るとは思いますが、基本的な考え方を書く際には、その点を整理して御検討いただければと思います。
○土橋座長 事務局、よろしいですか。
○船井主任中央労働衛生専門官 御指摘をいただきました。具体的な記載については、事務局で作成させていただいた上で、事前説明も含めてお目通しいただくことになると思いますので、具体的な部分については、その際によろしくお願いします。
○土橋座長 そのほか御発言はございますか。青木委員、お願いします。
○青木参集者 別紙マル1の中に、「不利益取扱いの禁止」という項目があります。労働者と違うというところで、特に最近、今回の委員会とは別ですが、いろいろな意味で元請と下請間の適正取引という形で、いろいろな要請を受けております。
 そういった中で問題になってくるのは、建設業法の遵守であるとか、独禁法、例えばフリーランス新法といったところと、かなり関わってくるところになると思います。そうすると、公正取引委員会、中小企業庁、例えば、インボイス関連で何か言われるということになると、国税庁とか、建設業法であれば国交省とか、様々な省庁が関連する形になると思いますので、是非とも、そういったところ、現状で上がっている諸々の課題がありますので、そことうまくリンクした形で、具体例、そういったものを考えていただきたいと思います。
○土橋座長 ご意見ありがとうございました。そのほかはいかがでしょうか。いろいろと御意見を頂きまして、その辺を整理しまして、報告書をまとめていきたいと思います。
 特に、報告主体については、大きな変更の御意見がございましたが、「報告書(案)でよいのではないか」という意見もございました。この件につきましては、これまで何回も慎重な議論、検討をしてまとまってきたところです。御指摘のように、いろいろな課題というものが全くないということではないと思いますけれども、新しい制度ですので、個人事業者等の災害防止を推進するという上で、一番ベースとなる情報を速やかに把握するという意味では、まずは今回、事務局から示された報告の仕組みでスタートすると。ただし、災害把握や再発防止の観点から改善が必要ということになれば、不断の見直しを行うということを明確にしていくことが妥当ではないかと思います。そういった方向性で、報告書をまとめていきたいと座長としては思いますけれども、いかがでしょうか。本多委員、お願いします。
○本多参集者 今、座長がおっしゃったように、大枠の合意が得られていることは認識しておりますけれども、先ほど提案もさせていただきましたし、本日の議論を踏まえて、個人的に認識しましたのは、報告のあり方についても、それ以外についても、先ほど鈴木委員からもお話がありましたが、事業者に対する過度な負担が感じられます。そういう意味では、改めて、またいろいろな話をさせていただこうかと思います。
○土橋座長 分かりました。少なくとも、そういったところは議事録にはしっかりと残させていただきたいと思いますし、今後の検討には、その辺は頭に入れていくということにしたいと思います。よろしいでしょうか。
(異議なし)
○土橋座長 それでは、そういう形で、事務局においては本日の議論を整理した上で、今の方向性で報告書はまとめていただきたいと思います。
 それでは、その他になります。事務局から何かございますか。
○船井主任中央労働衛生専門官 今、座長からありましたように、事務局で、頂いた御意見を踏まえて報告書(案)を次回までに整理の上、御提示させていただきたいと思います。
 連絡事項としては、正式には後日改めて御案内させていただきますが、次回は10月2日(月)の午後に開催させていただく予定です。あと、本日の議事録については、参集者の皆様に御確認いただいた上で公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○土橋座長 それでは、本日は長時間にわたりまして活発な御議論をいただき、ありがとうございました。以上で、第14回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を閉会いたします。ありがとうございました。