2023年8月30日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録

日時

令和5年8月30日(水)14:00~

出席者

出席委員(7名)五十音順 

 (注)◎部会長 ○部会長代理 
 

欠席委員(4名)五十音順

行政機関出席者
  •  佐藤大作(監視指導・麻薬対策課長)
  •  木村剛一郎(監視指導・麻薬対策課監視指導室長) 他

議事

○監視指導・麻薬対策課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「令和5年度第3回薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会」を開催させていただきます。委員の先生方には、大変御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日、局長、審議官は、所要により欠席とさせていただきます。
 本日は、Web方式での開催ですが、関野部会長、池田部会長代理、髙野委員、舩田委員には、会場にお越しいただいております。当部会の委員11名のうち、青山委員、田中委員、松本委員、丸井委員から御欠席の連絡を頂いておりますが、現時点で7名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告させていただきます。
 本日はWeb形式の開催ですが、部会を開催する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されましたことから、当部会については非公開とさせていただきます。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害の及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 それでは、以後の進行は関野部会長にお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点につきまして、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の部会資料に関しましては、事前に各委員宛てにお送りしております。また、会場に御出席の委員の先生方にはタブレットにて御確認をお願いいたします。ファイルとしては3つです。当日資料、文献、参考資料になります。ここで併せて、訂正なのですが、当日資料の化合物名の4番と5番の構造式ですが、同じものが付いております。正しくは、4番のほうが、左上の二重結合が右側に付くことになります。5番のほうは左側で、ΔとΔの違いがありますので、その点を訂正させていただきます。ほかの資料については訂正はございません。
 文献に関しましては1~29、参考資料については1~3、おおむね本日の当日資料のほうで資料の説明をさせていただきたいと思います。部会資料の説明は以上です。
 また、審議物質の説明中は画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。以上になります。
○関野部会長 ありがとうございました。本日の議題は、「指定薬物の指定について」です。それでは審議に入りたいと思います。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、Webでの参加の方は配付した資料を、会場で参加の方はタブレットを御覧ください。資料No.1に関しては、本日の審議3物質及び2物質群の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2には、今回御審議いただく3物質、個別で指定すると3物質に関して構造が類似する指定薬物・麻薬等について、それぞれNo.2-1、No.2-2、No.2-3に、それぞれ一覧表としてまとめております。資料No.3には、今回審議いただく審議物質及び物質群の動物実験の結果等について取りまとめております。以上が資料の説明になります。
まず、審議物質のうち合成カンナビノイド系の物質1ADB-BINACAについて説明をいたします。資料No.2-1を御覧ください。資料No.2-1は一覧表になっておりますが、合成カンナビノイド系である物質、通称名ADB-BINACA及び、これに構造が類似する指定薬物について、カンナビノイド受容体に対する影響、中枢神経系への作用等をまとめております。ADB-BINACAは、カンナビノイド受容体CBに対するアゴニスト活性を有しており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有することを確認しております。資料No.2-1の説明は以上になります。
 続いて、資料No.3について説明いたします。ADB-BINACAは、指定薬物であるADB-CHIMICAと構造が類似するということで、資料No.3の1ページに、併せて載せています。
 続いて、2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにADB-BINACA(15mg:R体、S体の等量混合)を添加したマーシュマローリーフ0.25gを燃焼させることで、マウスを薬物にばく露させ、燃焼後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状について、観察された症状を記載しています。また、3ページ、4ページの表1~3に、ADB-BINACAに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。
 また、観察された特徴的な症状を示した写真を5ページに載せています。ここで写真と併せて実際の動画も御確認ください。これは、燃焼終了後約2分経過後のマウスですが、側壁にもたれ掛かるも脱力、伏臥位姿勢で静止することが観察されました。また、燃焼終了後約20分経過後のマウスですが、後肢指間離開とともに、掻痒感様作用が見られることが確認されました。動画は以上になります。
 続きまして、資料No.3の6ページの(2)カタレプシー試験の結果を御覧ください。カタレプシー試験の結果は、燃焼終了後15分、30分、60分のいずれにおいても、5匹全てが陰性でした。続いて(3)ヒトカンナビノイド受容体機能評価を御覧ください。ヒトカンナビノイド受容体(CB及びCB受容体)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を載せております。CB受容体では、S体で1.23×10-9mol/L、R体では3.01×10-7mol/L、またCB受容体ではS体で2.29×10-9mol/L、R体で9.43×10-7mol/Lでした。これらの結果から、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性があることが確認されております。
 以上から、ADB-BINACAは、中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系への興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」と考えております。
 続きまして、(4)海外での検出事例についてですが、2015年に中国、2021年にアメリカにおいて確認されております。また、(5)海外での規制状況については、ドイツ、ロシア、カナダで規制されていることを確認しております。以上が資料の説明になります。
今回、□□□□からは、検出事例として、ADB-BINACAについては、ありませんという報告を受けています。物質1については以上になります。御審議のほど、よろしくお願いします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。Webで御参加の先生方、御意見はございますか。御意見はないということですが、会場の先生方はいかがでしょうか。御意見がないということですね。
ありがとうございました。それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
 確認いたしました。ありがとうございました。それでは、引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、ケタミン系化合物である審議物質2について説明いたします。資料No.2-2の一覧表を御覧ください。資料No.2-2は、ケタミン系である審議物質2、通称FXE、Fluorexetamine及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物であり、NMDA受容体活性、モノアミントランスポーターへの影響等のデータをまとめております。FXEは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-2の説明は以上です。
 続いて、資料No.3の7ページを御覧ください。FXEは、指定薬物である2-Fluorodeschloroketamineに構造が類似する化合物です。続いて、8ページの(1)構造及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにFXEを2、10、100mg/kgを経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、9ページ、10ページの表1~3に、FXEに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。
 また、観察された特徴的な症状を示した写真を11ページに載せております。ここで、写真と合わせて実際の動画とともに御確認ください。動画は2つあります。これは、100mg/kg投与群の投与後26分経過したマウスですが、よろめく異常歩行が見られることが確認されました。こちらは、100mg/kg投与群の投与後55分経過したマウスですが、よろめく異常歩行及び震えが確認されました。動画は以上です。
 続いて、資料No.3の12ページの(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスにFXEを20mg/kg経口投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について測定したところ、総運動量及び総移動距離は、投与後150分では対照群と比べて有意に増加しました。
 続いて、13ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。FXE約22mg/kg経口投与群マウス6匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されました。
 続いて、14ページの(4)を御覧ください。FXEのモノアミントランスポーターに対する阻害作用の評価のため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しています。結果は、表4及び15ページの図のとおり、FXEのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は、2.7×10-7mol/Lでコカイン塩酸塩の約21倍でした。ドパミントランスポーターに対するIC50は、9.3×10-5mol/Lでコカイン塩酸塩の約85倍でした。セロトニントランスポーターに対するIC50は、6.0×10-5mol/Lでコカイン塩酸塩の約21倍でした。
 続いて、16ページの(5)グルタミン酸NMDA受容体に対する50%阻害濃度(IC50)を算出した結果です。Phencyclidine siteで、2.04×10-6mol/Lでした。以上の結果から、FXEは中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」と考えております。
 続いて、(6)海外での流通状況についてですが、2022年にベルギーにおいて流通が確認されております。最後に、(7)海外での規制状況についてですが、ドイツ、イギリスで規制されていることを確認しております。資料については以上です。
また、□□□□での検出事例はありませんでした、という報告を受けております。物質2は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。意見はございますか。私から1点、先生方に御確認をお願いしたいと思っております。行動解析をやりまして、有意に減少して総運動量、総移動量、投与量が、投与後150分で対照群と比べて有意に減少したという表記がありますが、このピンポイントだけだと、有意差が非常に分かりにくいと思うのですが、いかがでしょうか。この前のほうの110分ぐらいから全く動いていないということだと思います。行動をビデオで観察すれば大きな変化があることが分かるのですが、表記で150分だけを取り上げて、有意差と書いてありますと、これはどういう検定方法で有意差ありとしたかを確認したほうが良いと思います。
この点について、ここをどう書いていくかに関して、御専門の□□先生、何か少しコメントを頂けたらと思うのですが。つまり、150分だけを見て、ここのグラフで、ほとんど隣接しているように見えますよね。多分、120分からトータルで見てみると、全くぴったり動いていないので、この有意差は意味がある有意差であるということは想像できるのですが、150分の1点だけを有意差検定しているように感じます。データのここだけを見ると若干心配になります。これを有意差ありとしていいのかというところが心配になっているところです。ここは表記で、何か気を付けたほうがいいと思いますので、御意見をいただきたいと思っております。
○□□委員 □□です。そうですね。自発運動の解析では、タイムコースであればそれぞれのタイムポイントにおいて有意差検定が必要になります。さらに、トータルでの総行動量で比較すれば、薬物効果の全体の特徴を表すことになると思います。一方で、その前の表で示されていますが、行動評価、自律神経等のスコアがありますので、このスコアがトータルの評価ということになるのだとは思います。関野先生が御指摘のように、1ポイントのみの有意差については、評価が難しいと思います。私の意見としましては、今後、運動量については、タイムポイントでの有意差も重要ですが、トータルの行動量での有意差も検討する方が良いと思います。
○関野部会長 グラフに関する文章表記については、注意をしなければならないと思いました。こういう場合、学術論文だと、例えば30分ごとのトータルを取った結果として解析します。しかしグラフの方はルーティンだと思いますので、文章表記の仕方を考えたほうが良いと思います。御検討をお願いできますか。
○事務局 承知いたしました。
○関野部会長 ほかに、先生方で御意見はありますか。よろしいですか。
ありがとうございました。それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
確認しました。ありがとうございました。それでは、引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続きまして、カチノン系化合物である審議物質3について説明いたします。資料No.2-3を御覧ください。こちらはカチノン系の審議物質3、通称名はN-Butylbutylone並びに、これらに構造が類似する指定薬物について、モノアミントランスポーターへの影響、マイクロダイアリシス試験等のデータをまとめております。
 N-Butylbutyloneは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-3の説明は以上です。
 続いて、資料No.3の17ページを御覧ください。N-Butylbutyloneですが、指定薬物であるN-Butylpentyloneと構造が類似する化合物です。
 続きまして、18ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状観察を御覧ください。マウスにN-Butylbutyloneを2、20、100mg/kgを経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、19ページ、20ページの表1~3に、N-Butylbutyloneに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、20ページには、観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
 ここで、写真と併せて実際の動画とともに御確認ください。動画は2つございます。これは、100mg/kg投与群の投与後約30分経過したマウスです。せわしい自発運動及び腰高歩行が見られることが確認されました。こちらは100mg/kg投与群の投与後約110分経過したマウスです。ややせわしい自発運動が確認されました。動画は以上です。
 続きまして、資料No.3の21ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。総運動量及び総移動距離は、投与後150分で対照群と比べて有意に減少したという結果が得られておりますが、先ほどの御指摘のとおり、総合的に判断する必要があることは考えていきたいと思います。
 続いて、22ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。N-Butylbutylone約24mg/kg経口投与群を4匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線状体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されております。
 続きまして、23ページの(4)N-Butylbutyloneのモノアミントランスポーターに対する阻害作用の評価のためノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しました。結果は、表4及び15ページの図のとおり、N-Butylbutyloneのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は4.0×10-5mol/Lでコカイン塩酸塩の約9.5倍、ドパミントランスポーターに対するIC50は2.5×10-6mol/Lでコカイン塩酸塩の約1.6倍、セロトニントランスポーターに対するIC50は算出されませんでした。以上の結果から、N-Butylbutyloneは、中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」というように考えております。
 続きまして、25ページの(5)海外での流通状況についてです。2021年に中国、ベルギーで流通が確認されております。また、(6)海外での規制状況については、イタリアとフィンランドで規制されていることを確認しております。
最後に、□□□□での分析結果からですが、3件の検出事例があったという御報告を受けております。審議物質3については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
では、私からですが、先ほどの行動の運動量の測定なのですが、100mg/kgの投与群では、ややせわしい自発運動が見られたということで、自発運動の増加を示唆するような表記がされていますが、自発運動の運動量の測定のほうは20mg/kgというデータで、逆に減少しています。先ほどのように、トータルで考えて問題はないと思われますが、100mgの自発運動の増加を示唆している行動観察と、この文章表記が矛盾しています。100mg/kgのデータを出すべきかどうかというところなのですが、それぞれ別に行っている実験であると思われますので、この濃度だけをやったのかどうかの確認をしていただけますか。100mg/kgのデータがあるのであれば、そのほうがいいかもしれないということです。
○事務局 事務局からです。ただいまの関野先生からの御質問についてですが、100mg/kgでの行動観察の結果はございません。
○関野部会長 ないのですね。分かりました。では、濃度が違うというところは気を付けなくてはいけないということです。了解いたしました。ほかに質問等はございますか。よろしいですか。
 それでは、審議をまとめさせていただきます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
確認いたしました。ありがとうございました。それでは、引き続き、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 続きまして、カンナビノイド系化合物である物質群1及び物質群2について、御審議をお願いいたします。こちらの2つの物質群については、2つをまとめて御審議をお願いしたく存じます。これらの各物質群について指定薬物として指定し、規制対象とするべきかどうか、また、指定の範囲が適当であるかどうかについて、併せて御審議をお願いしたいと考えております。
 資料3の26ページを御覧ください。物質群1及び物質群2の名称、構造式は記載のとおりです。この物質群に含まれる化合物については、27ページにお示ししております。なお、注釈にお示ししておりますが、n=5のTHCについては、麻薬及び向精神薬取締法に基づいて麻薬に指定されていることから、物質名称のただし書きの記載により対象から除かれることとしております。
 また、n=6のTHCHをはじめとして一部の化合物については、本部会において御審議いただき指定薬物として指定させていただいたところですが、今回御審議いただいた結果、これらの物質群について指定薬物への指定が妥当という判断を頂いた場合、1つの名称として統合する予定としております。以降の行動観察等の結果については、物質群に含まれる化合物のデータをお示ししております。
 28ページの「大麻草における含有」という項目を御覧ください。複数の文献に基づきますと、今回対象となっている化合物のうち、THCV、THCB、THCH及びTHCPについては、量の多少はございますが、大麻草にも含有する成分であることが報告されております。なお、n=8のTHCjdに関しては、事務局において確認した範囲では、大麻草中の含有量に関する報告は確認されておりません。
 続いて、中枢神経系への作用等として、(1)行動観察の結果を御覧ください。各項目の1と記載している所に、対象となっている化合物の名称を記載しております。1ですが、アカゲザルにΔ-THC、Δ-THC、Δ-THCH及びΔ-THCHを静脈内投与した後の行動観察を行ったところ、表1の結果となっております。0.1mg/kgの投与によりΔ-THCは++、Δ-THCは±、Δ-THCHは+、Δ-THCHは++との結果が報告されております。
 続いて、29ページの2を御覧ください。マウスに、Δ-THC、Δ-THCH、Δ-THCP、Δ-THCjd、Δ-THC又はΔ-THCを尾静脈内投与した後の行動学的変化及び身体的な変化を評価したところ、表2-1及び表2-2のとおりとなっております。表2-1が、ED50の濃度を示しており、表2-2が最大変化量と最大変化量が確認された際の濃度を示している表となっております。一例として、Δ-THCの自発運動量に対するED50は1.1mg/kgです。また、表2-2の結果から、30mg/kgの投与で最大94%の阻害が認められたと報告されております。
 続いて、30ページの3を御覧ください。マウスにΔ-THCPを腹腔内投与した後の行動学的変化を観察して評価したところ、30ページの下段にお示しするような結果が得られております。自発的運動量については中用量群及び高用量群、体温低下量、カタレプシー及び鎮痛作用については高用量群で、有意な変化が確認されております。
 続きまして、31ページの4を御覧ください。マウスに、Δ-THCPを腹腔内投与した後の行動学的変化を評価したところ、31ページの下段にお示しするような結果が得られております。体温低下量については中用量のみで、カタレプシー、ホットプレートテストについては高用量群で有意な変化が認められておりますが、自発運動量については有意な変化は確認されていないという結果になっております。
 続いて、32ページを御覧ください。ホルマリンによりマウスの後ろ肢に炎症を生じさせ、Δ-THCBの鎮痛効果を評価した結果です。マウスの侵害防御行動は、Δ-THCBの投与により減少することが確認されるとともに、アンタゴニストを前処理することによって、Δ-THCBの鎮痛効果が抑制されたと報告されております。以上が行動観察の結果となっております。
 続きまして、33ページの(2)受容体親和性評価を御覧ください。これ以降については、受容体親和性評価の結果をまとめております。1をご覧下さい。カンナビノイド受容体CB又はCBアゴニストであるCP55940又はW1N55212-2のメンブレンへの結合に対するΔ-THCP又はΔ-THCの阻害率を測定し、Ki値を求めたところ、表4の結果となっております。
 続きまして、マル2を御覧ください。カンナビノイド受容体CBアゴニストであるCP55940のメンブレンへの結合に対するΔ-THC、Δ-THCB、Δ-THC、Δ-THCH、Δ-THCP又はΔ-THCjdの阻害率を測定し、Ki値を求めたところ、表5の結果となっております。33ページから34ページにかけての表です。
 続きまして、34ページのマル3の結果を御覧ください。カンナビノイド受容体アゴニストであるCP55940のメンブレンへの結合に対するΔ-THCVの阻害率を測定し、Ki値を求めたところ、図2のとおりとなっております。CB受容体については75.4nM、CB受容体については62.8nMとの結果が得られております。
 続いて、4を御覧ください。ヒトカンナビノイド受容体CB又はCBアゴニストであるCP55940又はWIN55212-2のメンブレンへの結合に対するΔ-THCBの阻害率を測定し、Ki値を求めたところ、CB受容体については15nM、CB受容体については51nMとの結果が報告されております。
 続いて、5文献レビューを御覧ください。この文献においては、これまでに実験結果を報告している文献を収集してレビューを行ったものになります。3位の側鎖の鎖長とヒトカンナビノイド受容体に対する親和性について、Ki値を指標として文献のレビューが行われております。その結果は表6に取りまとめられておりまして、報告の中では、側鎖の長さが短くなるにつれて、親和性が直線的に減少する傾向が認められたとされております。
 続いて、35ページの6.QSARによる予測を御覧ください。Δ-THCB、Δ-THCB、Δ-THCH、Δ-THCP及びΔ-THCjdについて、AutoQSARプログラムを用いてカンナビノイドCB受容体に対するKi値を測定したところ、Δ-THCBが76.3nM、Δ-THCBが63.2nM、Δ-THCHが33.0nM、Δ-THCPが23.8nM、Δ-THCjdが17.2nMと算出されています。
 続いて、35ページの7を御覧ください。カンナビノイド受容体に対する親和性について、1から6で御紹介した結果を取りまとめたものを表7として記載しております。5の報告の考察の中にもありましたが、側鎖の長さが短くなるにつれて親和性が直線的に減少する傾向が、こちらの結果からも確認されている状況です。
 以上をまとめますと、Δ-THCVなど一部の化合物については行動観察試験の結果が確認されておりませんが、他の化合物の行動観察試験の結果や受容体親和性評価からの推定は可能であると判断しており、物質群1及び物質群2については中枢神経に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」ものと考えております。
 続いて、36ページの(4)我が国・海外での流通状況についてを御覧ください。こちらについては、文献25から文献27も併せて御覧ください。まず、文献25がTHCVについて検索した結果です。文献26については、THCBに関する結果です。最後の文献27は、THCjdに関する結果です。こちらについて、今、御説明したものについては、いずれも国内で販売されていることを確認しております。
 資料3にお戻りください。最後に、(5)海外での規制状況について御説明いたします。英国及び米国において規制されている可能性があることを確認しております。
 最後になりますが、□□□□での分析結果について御報告を頂いておりますので御紹介いたします。THCVが1件、THCBが13件、THCjdは1件の検出事例があったということです。物質群1及び物質群2は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、包括ということで、資料が1つずつではないのですが、併せて見ていただいて、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。
 最初に、「当日資料で変更があります」と言っていた部分について、もう一度、資料とどこがどう違っているか、説明していただけますか。
○事務局 冒頭に御説明した資料1の構造式では、物質群4の左上の二重結合が8位と9位を結ぶ形で記載されておりますが、物質群5と同じ所に二重結合を記載しており、両方ともΔの構造式を記載しておりましたので、物質群4についてΔとΔに構造式を修正させていただいております。
○関野部会長 今、画面で見えているものは修正後になるわけですか。
○事務局 そうです。修正後のものをお示しております。皆様に事前に配付したものに関しては、訂正いただくことになります。今、画面上、共有で御覧になっているものが、修正後のものです。
○関野部会長 では、タブレットの資料は修正前のもので、画面で共有しているものが修正後ということですね。
○事務局 そのとおりです。
○関野部会長 今、お手元にある資料は、どちらも二重結合が左側に付いたものになっているので、ここを修正したものを配付してください。委員の先生方、何か質問等はありますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質群は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
確認いたしました。ありがとうございました。それでは、事務局から今後の手続について説明をお願いします。
○事務局 今後のスケジュール等について御説明いたします。本件の結果については、次回開催の薬事分科会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定でおります。また、本日御審議いただいた物質及び物質群に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来さないように対応いたします。以上です。
○関野部会長 以上で、本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について御連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会の日程については、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして、令和5年度第3回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。
(了)
 
備考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

監視指導・麻薬対策課 課長補佐 竹内(2779)