第30回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和5年8月7日(月) 9:30~13:19

場所

中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室(オンライン併用)

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和4年度業務実績評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和4年度業務実績評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立成育医療研究センター
  1. 資料1-1 令和4年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料1-2 令和4年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料1-3 令和4年度 財務諸表等
  4. 資料1-4 令和4年度 監査報告書
国立研究開発法人国立がん研究センター
  1. 資料2-1 令和4年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料2-2 令和4年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料2-3 令和4年度 財務諸表等
  4. 資料2-4 令和4年度 監査報告書

議事

第30回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○北久保室長補佐
 定刻になりましたので、ただいまより「第30回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様には大変お忙しい中をお集まりいただき誠にありがとうございます。事務局の大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の北久保と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 議事に先立ちまして、事務局より本日の御説明を申し上げます。本日は、庄子委員、中野委員、根岸委員、藤川委員、深見委員がオンラインでの御参加となっており、神﨑委員、前村委員より御欠席との連絡をいただいております。なお、出席委員に関しましては、部会所属委員の過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
 また、医務技術・危機管理総括審議官の浅沼につきましては、他の用務により、一時退席させていただきますので御了承くださいますようお願いいたします。
 続きまして、本日の会議の進め方について説明いたします。まず、御発言の際はオンライン参加・会場参加に関わらず、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。また、オンライン参加の方は御発言時以外ではマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。なお、御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いいたします。
 続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は国立成育医療研究センター及び国立がん研究センターに関する「令和4年度業務実績評価」に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいたあと、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。説明と質疑応答の時間は事前に時間設定をしており、終了1分前と終了後に事務局がベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いいたします。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いします。オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4を御用意いただいておりますでしょうか。その他の資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただきますようお願いいたします。
 会場の皆様の資料については、お手元にあるタブレットに本日の資料を格納しておりますので、そちらを御覧ください。
 審議終了後に作成いただく評定記入用紙については、事前にメールで送付しております様式に御記入いただき、後日、事務局に御提出くださいますようお願いいたします。機器の操作方法や資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、お近くの職員にお声掛けいただくか、チャット機能等で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か質問等ございますか。
 それでは、以降の進行につきまして、土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 皆様、おはようございます。本日は評価委員会の第2回ということで、国立成育医療研究センターと国立がん研究センターを予定しております。委員の先生方におかれましては長丁場になりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、早速、国立成育医療研究センターの令和4年度の業務実績評価のほうに移りたいと思います。まず、理事長のほうから一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 ありがとうございます。理事長の五十嵐と申します、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、本評価部会でプレゼンテーションをする機会をいただきまして誠に感謝申し上げます。一言御挨拶申し上げます。私どもは先ほど御紹介いただきましたけれども、設立21年目を迎えました我が国5番目のナショナルセンターであります。病院には小児・周産期の全ての病気に対処できる28の診療科がありまして、周産期と小児の専門病院としては国内最大規模を誇っています。臓器移植、遺伝子治療、それから胎児治療などの高度先進医療を実施しております。
 また、ES肝細胞移植を世界で初めて実施いたしまして安全性と有効性を確認しております。また、慢性疾患や障害を持つ子どもと御家族を支援するための医療型短期入所施設を2016年から運用しております。順調に運営が行われています。
 一方、研究所には9つのウエットラボ、2つのドライラボがありまして、小児難治性遺伝性疾患の原因遺伝子の解明と治療法の開発、小児内分泌疾患の病因・病態解明、免疫アレルギー疾患の治療法の開発、それからES細胞やiPS細胞を用いた再生医療、そしてバイオバンクの運営などを行っております。また、子どもの健康を守る療育環境の在り方、あるいは次世代の健全な育成に資するための政策に関する研究も行って、社会貢献をしております。さらに、エコチル調査研究事業、新生児マススクリーニング、制度管理、そして小児慢性特定疾病情報センターの運営など、国の事業も担当させていただいております。
 最後ですが、私どもはアドボカシーの精神を基に、子どもと妊娠する女性のBio-Psycho-Social well-beingを目指して優れた医療と研究を提供したいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございました。それでは、まずは「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1、評価項目1-2について議論したいと思います。最初に、法人のほうから御説明いただき、その後に質疑応答に入りたいと思います。それでは、法人からよろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 ありがとうございます。研究所の梅澤でございます。まずは1-1、「担当領域の特性を踏まえた戦略かつ重点的な研究・開発の推進」に関しまして御説明させていただきます。
 Ⅰ「中長期目標の内容」としては説明資料の5ページを御覧ください。こちらは重要度「高」、難易度「高」とさせていただいております。特に、難易度が高い理由としましては、免疫不全症や先天性代謝異常症といった多くの希少疾患・難治性疾患といった治療に対する治療が対象になるということから患者数が極めて少ないということです。そのような理由から、全国的なネットワーク形成により患者情報を集約した上で、研究開発を多施設共同で取り組む必要があり、難易度「高」とさせていただいております。
 Ⅱ「指標の達成状況」です。医療に大きく貢献する成果を20件以上あげるとしております。中長期目標としては20件、年間で4件としており、令和4年度は5件、達成度は125%です。また、新規病因遺伝子を5件以上解明するということで、年間、大体1件発見できるかなということで、目標値を「1件以上」としておりますが、令和4年度は4件の新規病因遺伝子を解明しております。原著論文数は年間420件を目標としており、令和4年度は458件ということで109%の達成度となっております。
 6ページを御覧ください。その要因分析といたしましては、医療に大きく貢献する研究成果として、STAT6遺伝子に関する研究、父親育児に関する研究、2型自然リンパ球の活性化に関する研究、ミニ小腸を活用した医学研究、コロナワクチン接種に関する研究など5件、医療に大きく貢献する研究成果として挙げております。
 新規病因遺伝子としては4件、FLNA、COL2A1、TP63、DUOX2の同定に成功しており、従来の疾患発症メカニズムの理解を覆す画期的な成果が含まれております。こちらに関しては、後ほどパワーポイントのスライドで示したいと思っております。
 評定の根拠として、私どもは本日、3つの成果について御説明させていただきます。Ⅲ「評定の根拠」としまして3つ挙げております。こちらをパワーポイントのスライドで御説明をさせていただければと思います。
 7ページ、評価項目1-1の[1]ゲノム解析等最先端技術によって成育疾患の発症機序・病態の解明を推進です。評価書の15ページです。本年度、STAT6の機能獲得変異による好酸球性胃腸炎・難治性皮膚炎の発症機序を解明することに成功いたしました。STAT6機能獲得変異によるアレルギー疾患発症機序として、実際の患者さんの症状を御紹介いたします。左の写真のAは、胃における好酸球が浸潤することによって生じたポリープです。Bは、同じく十二指腸に生じた好酸球性のポリープ、Eは全身の皮膚に見られる好酸球の浸潤並びにコラーゲンの沈着といった症状です。
 こちらの患者さんに関しては、研究所のほうでゲノムの解析をしまして、そこでSTAT6にバリアントを認め、この機能獲得変異であることを証明いたしました。さらに、遺伝子改変マウスを使い、STAT6の変異が原因遺伝子であることを明らかにし、『Journal of Allergy  Clinical Immunology』に、令和4年度に発表いたしました。こちらは、インパクトファクターが14を超えており、国際的に認められた雑誌です。STAT6の経路を標的とした治療を行うことで症状の改善を認め、今後、この患児には食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を同時に認めたところですが、一方で気管支喘息やアレルギー疾患といったようなものはなく、今後このような形で、希少疾患だけでなく、比較的ありふれた成育疾患の発症に関する遺伝情報や臨床情報を解析して治療につなげたいという一つの大きなモデルとして考えております。
 次に8ページを御覧ください。[2]成育難治性疾患の新規原因遺伝子発見と発症機序の解明です。評価書の15ページを御覧ください。先ほどは、アレルギーとゲノムの関連を示した紹介となっておりますが、こちらはエピゲノムの病気です。赤字の所で、2020年度の1つめのポツです。GNAS領域レトロトランスポゾン挿入が、NESP55遺伝子の発現異常を介して偽性副甲状腺機能低下症を招くことを発見いたしました。遺伝子がレトロトランスポゾンの挿入によって発現が調整され、その発現が調整されることによってホルモン自体、受容体は全く問題がないのに、そのシグナル伝達がうまく行かなくなることによって副甲状腺機能低下の症状を生じるということを明らかといたしました。このように、体の中を動き回る遺伝子によってエピゲノム変異を生じて病気を起こすといったような、1つのゲノムだけでなく、エピゲノムも重要であるということを示した良いモデルとなり、今後、このようなケースに関して臨床遺伝子検査として実装化し、さらに、今年度これらをシステム化することを開始しているところです。
 次のページを御覧ください。9ページの[3]です。コロナ禍の影響を測定・評価し、子どもの健康を促進する社会環境の整備を行いました。2022年度の赤字の所ですが、要因分析から、社会的規制が強い時期ほど子どものメンタルヘルスが悪化していること、子どもの食のバランスが保護者の知識や世帯収入により異なることを報告いたしました。また、これらの成果を基に、子どもに直に届く資材、これはパンフレットを意味していますが、自治体向けの資材を作成・公開し、令和4年度(2022年度)は10以上の講演依頼(学会・学術集会、自治体等)から依頼を受けているところです。
 当事者である子ども・保護者、そして社会である学校・自治体における実態把握、そしてそれらをきちんと要因分析することで介入提案するというサイクルを続けることによって、真ん中辺りの右側にありますような「しんどいって言えない」とか、その下の「学童児の子どもに食生活支援を届けるために成功事例から学ぶ」といったようなパンフレットを作って、SNSやWebサイト、更には子ども、お母様、お父様、学校や自治体に配ることで、私どもは提案をしていきたいと考えております。評価項目1-1については以上です。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続いて評価項目1-2、「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」について、臨床研究センターの斉藤から御説明させていただきます。資料の15ページを御覧ください。まず、中長期目標の内容はそちらに記載したとおりで、幾つかの項目を挙げております。重要度「高」としました。指標の達成状況を御覧ください。幾つかの項目を列挙しております。共同・受託研究の契約から始まり、学会の診療ガイドラインの利用状況までです。こちらの数字を見ていただきますと、例えば15ページの一番下のfirst in human試験が今回も0件ということで、6年の間に3件を目標としておりますが、なかなか試験の実施には至っておりません。ただいま倫理委員会のほうで検討中なので、恐らく本年度中には試験が開始されると考えておりますが、御存じのように小児の開発においては新しい薬の開発というよりも、リポジショニングを中心とした開発がされているということも困難の1つかと思っております。
 16ページを御覧ください。一番下の学会等の診療ガイドラインの採用状況は93%と、目標には少し足りておりません。そのほかについては120%以上を達成しておりますので、自己評価はSとしております。
 それでは、個別の評定の設定の根拠について御説明させていただきます。18、19ページを御覧ください。初めに、[1]小児医薬品開発ネットワーク支援事業です。経済財政運営と改革の基本方針2023でも記載されているように、小児用医薬品・希少疾病用医薬品等の未承認医薬品の解消に向けた措置が強く望まれている状況において、本事業は小児科学会を中心として製薬企業に対して小児用・希少疾病用医薬品の開発を要望し、併せてこれを支援することにより、開発を促進する事業です。これは厚生労働省が日本小児科学会に委託した事業であり、小児科学会から当センターが支援事務局として実施するようにとの委託を受けて、事業運営を実施しているものです。お考えのように、この事業がなければ、特に海外の製薬企業は小児に対する治験を日本国内で実施することは非常にまれで、更なるドラッグロスあるいはドラッグラグを招くと心配しております。
 これに対して当センターでは、「小児治験ネットワークシステム」を構築しておりますので、これを利用することで、事業開始から6年たって現在26品目を支援し、令和4年度に初めて承認の品目を得ているところです。19ページの右下に赤で囲っていますが、小児治験ネットワークを利用して2品目、それ以外で1品目の承認を初めて取得しました。現在は2桁の品目の支援をしておりますので、来年度以降、こういったものが増えてくると信じております。
 それでは20ページを御覧ください。2つ目です。[2]医師主導治験による慢性肉芽症腸炎に対する新規治療と、小児用錠剤(口腔内崩壊錠)の開発について、これは終了しましたので御報告させていただきます。慢性肉芽腫症は御存じのように、新たな感染症のリスクや造血幹細胞治療の妨げになり得る慢性の腸炎で、難病希少疾病です。これまではステロイドや免疫抑制薬などで免疫を抑えて治療を行ってきておりますが、その治療自体に感染症を発症しやすくする危険性があります。そこで、感染リスクの少ない治療法として注目された治療薬サリドマイドを日本の子供たちに投与したいということで、リポジショニングで開発を進めたところです。
 2015年から開発会社と共同して、会社のほうには口腔内崩壊錠を作っていただき、小児に服用しやすいように工夫をいたしました。さらに動物試験も実施し、基礎的なところを固めていただいております。2017年度からは成育において医師主導治験を実施しました。御存じのようにサリドマイドなので、安全性の管理が非常に重要ということで、安全対策課及び患者会と御相談させていただき、安全管理手順を作成した上で治験を開始したところです。2022年度に目標の8例を達成し、来年度は企業のほうから申請を予定しているところです。小児用製剤の開発から安全管理手順を作成した上で、治験を実施した多施設共同治験の例です。
 最後に21ページです。他の施設の研究者による特定臨床研究支援ということで、「未熟児動脈管開存症に対する新規治療の開発」です。この治験を開始したという御報告として、今回記載して御説明させていただきます。今回の場合はインドメタシンですが、御存じのように未熟児動脈管開存症に対する標準的な薬物治療であるシクロオキシゲナーゼは腎機能障害等の副作用が強いこと、あるいは不応例があることが問題となっております。一方、解熱鎮痛薬として一般に使われているアセトアミノフェンは、シクロオキシゲナーゼ阻害薬と同等の効果があり、腎機能障害等の副作用が少ないと報告されておりましたので、他施設の研究者主導により開発の計画がされました。
 AMEDの研究費である「周産期・小児領域における高品質の臨床研究推進のための臨床研究コンソーシアム」、いわゆるBIRTHDAYと言われている班研究があります。こちらの分担研究として、成育の中で「研究実施支援体制整備ならびに研究支援」に対する特定臨床研究というものがあり、これに採択されたものです。成育センターが予算の獲得から研究計画書の作成、実施、そして治験調整事務局担当者の支援まで、全てのマネジメントというか、全面的支援の下での試験ということで、今回、御報告をさせていただきました。以上、評価項目1-2の説明です。ありがとうございました。
○土岐部会長
 どうもありがとうございました。ただいま1-1及び1-2について御説明いただきました。それでは委員の先生方から御質問、御意見等を頂戴したいと思います。御意見のある方は、Webで挙手という形でお願いできればと思います。いかがでしょうか。それでは花井委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○花井委員
 御説明、ありがとうございます。毎年、小児領域でいろいろな研究・開発をされていて大変素晴らしいと思いましたけれども、質問です。まず1-1です。エピゲノミックなもののモデル化をしたということですね。素人なのでよく分からないのですが、「エピゲノム」という言葉が、ここ数年ぐらいで急に出てきています。今までの線形的なゲノムの発現が、更にややこしいことだと、素人なので思っていますので、これをもう一度詳しく御説明いただけると。どういうことをやっているかというのが1つ目の質問です。
 もう1つは1-2に関してです。「サリドマイド」と聞くと反応するのですけれども、試案に対しては、TERMSというのは承認条件をかなり厳しくやっている所なのですが、治験の場合も同様だと理解してよいのかということです。
 あと、これは参考までに御意見を伺いたいのですが、FDAや欧米では、小児の治験をある程度義務的にやっているのを、今、日本でもどうしようかという議論をしている最中です。例えば、そういうことを日本で法制的に義務化することで開発が進むのか、それとも法律で縛ったからといって簡単ではないのか、参考までに御意見をお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 まず、研究所のほうから御説明させていただきます。花井委員、御質問を誠にありがとうございます。説明の8ページです。私どもは国内外の医療機関・学会・研究班と連携して、1万7,000以上の検体を集積してきています。今の御質問にあったように、ゲノムの解析を中心に行ってきているところです。
 一方、成育においては、疾患が発達に関わるところがあり、エピゲノム、すなわちゲノムのメチル化、またはヒストンの位置、ヒストンの修飾が異常となる場合があります。本日、御紹介させていただいた例は、体の中で動き回る遺伝子、レトロトランスポゾンが特定の遺伝子、すなわちNESP55遺伝子の中に入り込むことにより、そのDNAのメチル化が変化することによって症状が出ました。症状としては、副甲状腺機能低下症といった疾病であり、原因としてアリル(allele)の母親側のゲノムがメチル化している、父親側が脱メチル化しているといった正常の状態が崩れて疾患が生じたということになります。
 これらの例は、こういった新しい形のエピゲノム変異を調べることが重要と私どもは考え、今後、衛生検査センターを建てますが、これは令和4年5月より成育衛生検査センター先天疾患遺伝学的検査部門において、具体的にこのようなエピゲノム変異であるインプリンティング異常症の診断を目的とする遺伝学的検査の受託を開始いたしました。令和4年5月から令和5年3月までの間に、インプリンティング疾患が疑われる28人のお子さんに対してMLPA又はMS-MLPA法による遺伝学的検査を実施しております。またAMED研究班からの解析委託を受け、106件のMS-MLPA検査を実施しました。このように全インプリンティング異常、すなわちエピゲノムの異常に関しても、検査といった形で全国から受託することを、私どもは令和4年度の5月から開始できるようになり、やっと動き始めたところです。私からは以上ですが、衛生検査センターのほうからも付け加えさせていただきます。
○国立成育医療研究センター深見副研究所長
 研究所副所長を拝命しております深見と申します。私のほうから少し追加させていただきます。先ほど委員の先生から御指摘があったように、エピゲノム疾患というのは、遺伝子そのものには異常がありませんので、IRUDを含めたシーケンス解析の診断ができないという点があります。もう1つの点として、常染色体の優性遺伝(顕性遺伝)とも、劣性遺伝(潜性遺伝)とも違う遺伝子形式を示すという幾つかの特徴があります。これまでIRUD等では一緒に扱わなかった症例がたくさんあります。今回、私どもは、このエピゲノムにも注目して、今まで診断が付いていなかった先天性疾患の患者に診断を付けたいと考えております。今回は研究として診断しましたけれども、それを今度は衛生検査での検査として、患者の臨床現場に近い形で行いたいと考えております。以上です。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続いて2つ目の御質問である小児治験について、法的義務化等をどう考えるかというところかと思います。私見を述べさせていただきますと、治験の実施あるいは臨床研究の実施について、これまで承認審査をやってきた立場で、成育で10年、小児・周産期領域で治験等の推奨をしてきた経験から、お話をさせていただきたいと思います。
 まず、本当に小児に必要なのは治験なのかというところが、最近非常に疑問に思っております。というのは、当センターでも未承認医薬品検討会を開催しておりますが、通常月1回の開催をしているところ、最近では月2回、それに更に臨時の会議をするという状況です。やはり、それは治験ではなく、治療が必要だということが如実に現れている結果かと考えております。そういったところから見ますと、当然治験として実施し、正当なRCTというか、プラセボに対する有効性を確認しなければいけないとは思いますが、その前に急性期あるいは慢性期の子供たちの治療をしてあげないといけない。
 というところで、先ほどFirst in humanが進まない理由として、ドラッグ・リポジショニングの話をさせていただきましたが、まずは治療をしてあげることかと思っております。いわゆる臨床研究中核病院等で小児領域を範疇に入れていただいて、特定の領域でのという話もありましたけれども、臨床研究の実施を推奨するよりも、まずは治療をしてあげて、その中でどのように安全性や有効性を法的に評価していくかというところを考えるのが順当ではないかと、最近思っております。以上です。
○土岐部会長
 私から追加します。その場合、未承認医薬品検討会を通すのはいいのですけれども、観察研究でもよろしいので、臨床研究としてきちんとデータを残して評価できるような体制にはなっているのでしょうか。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 それぞれの研究者や医師には、観察研究として、最低でも症例報告をしていただくということは伝えておりますし、何件も同じ医薬品で実施したいという要望があった場合には、何とか臨床研究に持って行けないかということを模索しておりますが、子供の研究費というのはAMEDの用意も少なく、なかなか実施に至らないものも数多くあるというところです。
○花井委員
 ありがとうございます。先ほどの未承認薬というのは、いわゆるホスピタリシーというイメーシなのですね。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 はい。
○花井委員
 それで、施設としての治療を承認する。ということは逆に言えば、ある種オフラベル的な部分の使用について、いろいろな制度をもっと整備することも必要だという御意見と伺ってよろしいですか。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 審査を経験した立場からすると、それをもって、どのように承認していくかということが必要かと考えております。承認の方法だと思います。
○花井委員
 分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて中野委員、どうぞよろしくお願いします。
○中野委員
 川崎医大の中野です。STAT6、シグナル伝達の問題によるアレルギー機序の解明とか、エピゲノムの解析、難治性疾患や希少疾患に対する非常に詳細な解析が行われるとともに、例えば慢性肉芽腫症というのは、原発性免疫不全では最も頻度の高い疾患の1つであるわけですから、小児の腸炎に対しては剤形なども考慮した上で、ネットワークを生かして医師主導治験を行われたり、未熟児動脈管開存症というのは、いろんな場面で見る疾患で、それを医師主導治験としていろいろな薬剤の効果を見る、この幅広いネットワークを生かした実用化に役立つような研究にも、しっかりと研究を進めていただいております。更にはコロナに関して心の問題も含めた子供の健康ということもあります。たまたまコロナが3年間ありましたから、それが一番大きな問題ですけれども、これからの小児にずっと続いていく心を含めた健康の問題で、幅広く取り組んでおられていて素晴らしい成果だと思っています。
 私から教えていただきたいのは、難治性疾患や希少疾患について、目標を大きく上回って中長期目標として8件の新規病因遺伝子の解明、令和4年度で4件の新規遺伝子の解明ということです。新規遺伝子の解明は素晴らしいと思うのですけれども、希少疾患ということもあって、現在、解明いただいた遺伝子でその恩恵に浴する患者数は、国内でどれくらい想定されるのかということ。更には、この研究が、ほかのコモンな疾患にどのように役立てられるかという、もし、その見込みなどがあればお教えいただきたいと思います。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 中野委員、御質問、誠にありがとうございます。現在、新規遺伝子に関しては、今日は4件の新規遺伝子を御報告しております。一方、御指摘になったように、私どもは目標を1件としており、目標値を大きく上回ってしまうという状況になっております。これは技術開発に依存するところがあり、次世代シーケンサー並びに病院における小児科の先生方の遺伝子診断に対するレベル、また、それを発見する能力が上がってきたことによると、私は理解しております。
 まず、御質問のお答えです。新規遺伝子と発見されたものが全国において何人ぐらいいるかということに関してです。こちらは論文として発表した後ですけれども、今のところ、ほかの患者で見つかることはなかなかありません。一方、今日御紹介したJAK-STATのSTAT6の変異に関しては、私どもが発見して論文とした後に、令和4年度においては、既に10件以上の論文が出ております。何を申し上げたいかというと、遺伝子の種類や疾病の種類にもよりますが、論文としてきちんと報告できると、その中で比較的多くの報告があり、一般的な診断の中に入ってくる例があるかと考えております。
 また、これらをどのように、Rare to Common、これは2つ目の御質問になりますが、このようなレアな疾病、STAT6の原因のファンクションミューテーションといった例が、どのように一般的なアレルギー疾患に適用できるかということに関しても、研究所の室長の森田とともに、どのようにきちんとやっていけばいいのかを考えております。すなわち、重症のアレルギー疾患に対して診療ガイドラインをきちんと作っていき、症例の特徴を抽出するということ。レジストリーを作るということ、そこにおける重症アレルギーパネル、これは遺伝子検査において保険適用がされるものと、そうでないものがあり、診断確定、既知の原因遺伝子の変異があるかどうかといった問題についても、遺伝子診断に基づく治療の最適化が求められるかと思います。
 また、遺伝子診断に基づいた分子標的薬として、現在はJAK阻害剤がありますが、今年になってからSTAT6の阻害剤がメディアで騒がれておりますので、このような分子標的薬の適応外使用を通じて、新たな治療標的として戦略することができるかどうか。すなわち中野委員が御指摘になられたように、Rare to CommonのStrategyといったものが、今後もこのような疾病を通じてできるかどうかということが、私どもに試されているのではないかと考えております。最終的には生物学的製剤、低分子であるJAK阻害剤、新薬であるSTAT6阻害剤の使い方に関しても、遺伝子検査に基づいた薬剤適応拡大の検討も含めて、取り組んでいきたいと考えております。御質問、誠にありがとうございます。
○中野委員
 ありがとうございます。よく理解できました。
○土岐部会長
 それでは続いて深見委員、よろしくお願いします。
○深見委員
 深見から質問させていただきます。今の中野先生に近い質問でもありますが、臨床研究、基礎研究とも、非常に堅実に行われていると思います。そういった中で、こういったゲノムを介した新規病因遺伝子を介した解明や医師主導治験などは、目標値を非常に大きく上回っています。これは大変結構なことですけれども、技術的にこういうことも出しやすい状況において、目標値を少し変える必要があるのではないでしょうか。要するに、400%とか200%が昨年、今年と続いている状況において、少し目標値を変える必要があるのではないかということに対して、どう思っているかというのが質問の1つ目です。
 もう1つは、先ほどのレトロトランスポゾンのほうです。これも興味本意で申し訳ないのですけれども、どこに入るか分からないレトロトランスポゾンがヒストンではなく、NESP55遺伝子に入る。この遺伝子が、両親ともに入るということが、頻度的にレアではないかと思うのです。それが両親ともにあるということは少し不思議なのですが、そういったことがなぜ起こるのか。それとも逆に頻度が、私が考えているよりも非常に入りやすい何らかの理由がある遺伝子なのか。どのような遺伝子なのかということを教えていただけたらと思います。時間が少ないと思いますので、簡単にお願いできたらと思います。
○土岐部会長
 よろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 深見委員、御質問ありがとうございます。目標値に関して、まずは私からお答えさせていただきます。深見委員に御指摘いただいたように、この中長期計画を設定する段階においては、1件が達成できるかどうか、私自身も自信がなかったのですが、毎年1件というように設定させていただきました。一方、次世代シーケンサーをはじめとして、ゲノム解析技術が向上したこと、また、小児科の先生方が遺伝子診断とジェノタイプ、フェノタイプの関連から、新規遺伝子を見つける能力が非常に上がったことにより、これらは今後も数が一気に増えてくる可能性が出てきております。すなわち、目標値が適切でないという御指摘はもっともなものであり、今後、当局とも相談をしながら、私どものほうでも提案に関して整理をしていきたいと考えております。御指摘のとおりと考えておりますので、改めて私どものほうで検討させていただければと思います。
 2番目のレトロトランスポゾンはAluの近位型で、Aluと思っていただいても結構ですが、Aluがレトロトランスポゾン、すなわち遺伝子のNESP53の3プライムのダウンストリームの所に入り込むといったことが、父親と母親といった形でレアのケースではないかという御指摘です。御質問ありがとうございます。実際にこの研究をした研究所の深見のほうからお答えさせていただきます。
○国立成育医療研究センター深見副研究所長
 研究所の深見から御説明申し上げます。説明が不十分でした。これはヘテロです。母由来のAluに、1コピーのみ入っており、それによって疾患が発症しております。父親のほうはインタクトです。以上です。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続いて、臨床研究の目標値ですが、15、16ページを御覧ください。15ページでは共同・受託研究の数と職務発明委員会の審査件数、16ページの一番上には医師主導治験の数、下から2つ目は治験の数ということで、こちらのほうが200%近い状態となっております。これについては令和6年度から再度、年間の目標値を変更するということで、今回、資料の17ページに示しておりますので、後ほど御確認を頂ければと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長
 よろしいですか。
○深見委員
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 それでは、次に移りたいと思います。続いて「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目です。1-3~1-5について、まずは御説明をよろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 病院長の笠原と申します。よろしくお願いいたします。22ページを御覧ください。1-3「医療の提供に関する事業」の中長期目標の内容ですが、4つ箇条書きにしております。重要度「高」です。成育医療に対する中核的な医療機関であり、医療研究開発成果の活用を前提とし、医療の高度化・複雑化に対応した医療を提供することは、我が国の医療レベルの向上につながるためと考えております。全職員1チームで、断らない医療を目標に現在、臨床を行っているところです。
 Ⅱの指標の達成状況です。23ページの一番上の「心臓移植を1件以上実施」ですが、これだけ少し目立つかと思います。これは、小児の臓器、特に心臓はサイズが合わない、あるいは臓器提供自体が少ない、たまたま血液型一致の症例がなかったという外的理由が原因です。
 24ページ、評定の根拠です。今回は、遺伝診療センターの新設、デルタ株・オミクロン株流行期の小児・妊産婦の新型コロナウイルス患者の実態調査及び解明、成育医療研究センターで保険収載後、国内初の「腹腔鏡下生体ドナー肝採取術」を実施したことについて御報告申し上げます。
 25ページを御覧ください。現在、ゲノム医療は日常診療に不可欠なものとして成立されております。成育は、小児医療・周産期医療、女性の健康領域などで、我が国のゲノム医療のフロントランナーとして実装していく必要がありますが、従来の成育には少々課題がありました。成育には、国内最大規模の遺伝の専門医、臨床遺伝専門医ですが、35名が在籍しておりますが、診療科間の連携の問題が少々ありました。
 令和4年9月1日に「遺伝診療センター」を増設いたしました。個々の医師、研究者の力を効率的に連携させる仕組みを構築し、「小児・周産期ゲノム情報管理センター」として機能させて質、量ともに日本トップレベルの遺伝診療体制を構築することを目標としております。
 進捗状況ですが、まず、実態解明のために全診療科を対象にアンケート・ヒアリング調査を実施しております。検査機関から返ってくるマイクロアレイの染色体検査の報告書が難解で、遺伝診療科以外の診療科が結果の解釈に難渋している実態が明らかとなりました。そこで、毎月開催される症例検討会で検査結果を取り上げ、院内エキスパートパネルによる結果の解釈を含めた診療体制の支援を行うとともに、結果解釈の標準化、若手医師を中心とした人材育成に着手しております。
 続いて、現場からの要望を踏まえ、ゲノム医療に関わる診療と研究の2つの相談窓口を設置いたしました。当院全体の遺伝学的検査の実施件数や、それに基づく難病等の患者数を成育として把握するために遺伝学的検査フローを一元化し、今後、これらの情報を、成育として戦略的に活用できる仕掛けを検討しております。
 病院と研究所の緊密な連携強化のため、研究所で実施できる保険収載遺伝検査について、病院医師がオーダーしやすくなるように、オーダリングシステムを整備いたしました。同時に、研究所内の関連部署や関連事業の整備や基盤整備を行っております。人材育成、研究体制を強化し、遺伝診療センター設置後は、専門医取得を目指す医師を一括で把握し、教育研修強化を行っております。令和4年度には、10名に対して研修を開始いたしました。今後、遺伝診療センターとして、研究所の設備や診療体制を更に整備して質、量ともに日本のトップレベルの遺伝診療体制を構築することを目指しております。
 26ページを御覧ください。 デルタ株・オミクロン株流行期の小児・妊産婦・新型コロナウイルス患者の実態解明です。新型コロナウイルス感染症は、これまでに日本国内で3,000万人以上の感染者と7万人以上の死者を出し、大災害と言えるような状況となっております。このような新興感染症に適切に対峙していくためには、その臨床的・疫学的特徴を明らかにすることが極めて重要です。しかしながら、世界的にも本邦においても、新型コロナウイルス感染症の研究の中心は成人患者です。小児・妊産婦に関しましては情報は極めて少なく、それを明らかにすることの社会的ニーズは極めて高い状況でした。そこで、センターとして同じNCである国立国際医療研究センターと共同研究体制を構築しまして、国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリーである「COVID-19 registry Japan」のデータを用いて、小児・妊産婦の新型コロナウイルス感染症の特徴を明らかにするための研究を継続して実施してまいりました。その中で特に小児や妊産婦の新型コロナウイルス感染症が急増し、社会的にも大きな問題となったデルタ株・オミクロン株流行期に実施した研究について報告します。
 まず、小児については、デルタ株流行期とオミクロン流行期の小児の新型コロナウイルス感染症者の臨床症状を比較した結果、オミクロン期では発熱、咽頭痛、けいれんが多く、味覚障害は少なかったことを世界に先駆けて明らかにしました。特に、けいれんについては、熱系けいれんを起こしやすい乳幼児だけでなく、学童期の患者でも、けいれんが起こっていることが示されました。これは、小児が新型コロナに感染した場合にどのような点に注意して経過を見るべきかどうかということについて、医療従事者及び一般の保護者に対する普及啓発に重要な役割を果たしております。妊婦に関しては、妊娠中期以降や新型コロナウイルスワクチンの接種を完了していない患者は、より重症になって、患者の割合が多いことを示しました。これは特に妊産婦における新型コロナウイルスのワクチン接種の重要性を示す大変重要なデータとなっております。
 これらの研究成果は国内の新型コロナウイルス感染症の診療の指針として中心的な役割を果たしている「新型コロナウイルス感染症の診療の手引き」や小児科学会、感染症学会などが発行いたしましたコロナウイルス感染関連の多くのガイドラインや提言に引用され、本邦におけるコロナウイルス感染症診療の適正化に大きな役割を果たしております。
 27ページを御覧ください。成育医療研究センターでは、2005年11月に第1例目の生体肝移植を実施し、以後、順調に症例数を積み重ね、2022年12月末までに症例数は生体肝移植が704例、脳死肝移植が74例となりました。2010年以降は、年間症例数が60~70例で推移いたしまして、国内で実施されている小児肝移植症例数は約100例のうち、ほぼ60~70%を当センターで実施しております。先天性代謝異常、急性肝不全など重症例が搬送されてくることも多く、小児集中治療科、内分泌代謝科等の多職種と連携しながら、国内肝移植の基幹施設、最後の砦としての役割を担っておりますが、肝移植成績は全国平均を大きく上回る良好な成績を維持しております。
 また、先ほども梅澤から説明がありましたが、革新的医療でありますES細胞由来の肝細胞移植を2019年に開発しまして、5例を成功裏に実施しております。一昨日の夏祭りには、患者さんと御両親が元気に参加してくれておりました。2022年度の特筆すべき肝移植医療に関する進展といたしまして、昨年度5月11日に保険収載後、国内初となる腹腔鏡下の生体ドナーの肝採取術を安全に実施いたしまして、手術を受けられましたドナー、レシピエントともに、現在、大変元気にされております。
 続いて、人材育成に関する事項です。28ページを御覧ください。Ⅱの指標の達成状況ですが、臨床研究の関連講座を年間20回以上開催、小児科の後期研修医を毎年20名以上採用、こちら2つを挙げております。30ページですが、当センター職員で学会の評議員、リーダーとして活躍できる人材の育成ですが、当センターの職員で学会の評議員等の役職に就いている人数は249名に上ります。また、理事長相当職に就任している職員は8名と、日本の医学会及び医療の水準の向上に寄与してまいりました。また、当センターから大学教授へ就任する職員も多く、2022年4月に2名が大学教授に就任しております。小児科専攻医の論文発表数は、2022年においては総数34、英文数20となっておりまして、過去最高でありました前年度を上回っております。2022年度のレジデント・フェロー等の論文数においても、病院では内科系が和文27、英文58と過去最多になっております。
 31ページを御覧ください。医療政策推進等に関する事項です。成育こどもシンクタンクの設立及び妊娠と薬情報センターについて御説明させていただきたいと思います。資料の33ページを御覧ください。左側ですが、令和4年4月1日付けで国立成育医療センター内に、略称「成育こどもシンクタンク」を設立させていただきました。シンクタンクの理念と4つの使命について、説明させていただきます。
 シンクタンクでは、「すべてのこどもたちが笑顔になれる社会を創ります」という理念を掲げ、この理念を実装するための4つの使命に基づき活動をスタートいたしました。1つ目の使命は、こどもたちの声を大切にします。こどものアドボカシーの推進を積極的に進め、こどもの声を集めるために、こどもパネルを作成して運営することで、こどもの声を代弁できるおとなの育成にも取り組んでおります。2つ目は、確かな情報・考えを届け、社会実装にもこだわります。自治体の母子保健・成育医療分野の計画策定の際の支援を行うなど、積極的に自治体との連携を図り、社会実装につながる活動を展開しております。3つ目は、からだ・こころ・社会の視点からこどもたちの元気を考え続けます。こちらは、データの利活用の体制・構築を主軸に、より効率よく成育医療の政策に資するエビデンスが出せるよう環境を整備していくことを目標としています。最後に、こどもたちの成長を支える全ての人たち「こども応援団」をつなぎ、育てます。社会全体を通して、こどもたちを支える全ての人たちとの関わりを大切にし、連携をとりながら持続可能な体制づくりを進めていきたいと考えております。成育こどもシンクタンクは、今後も引き続き成育医療及び母子保健行政の発展・推進や質の向上につながることを目指して活動してまいります。
 右側です。「妊娠と薬情報センター」のオンラインでの申込みを開始しております。平成17年に厚生労働省の事業として開設された「妊娠と薬情報センター」は、妊娠中の薬の安全性に関する情報提供において、相談症例を基にしたエビデスンス創出を目指しています。情報提供は、全国に設置されました拠点病院(現在57か所)の妊娠と薬外来で行っております。令和3年度の厚生労働高度推進化事業におけるオンラインシステムが完成し、令和4年度から相談者がオンラインで申込みができるようになるとともに、拠点病院の妊娠と薬外来で必要な妊娠と薬情報センターの安全情報データベースにオンラインでアクセスできるようになりました。
 申込みから外来診療までのタイムラグはほとんどなくなり、相談者並びに医療者の利便性が大きく向上しております。今現在、毎週20~30件の御相談を頂いているところです。これまでの相談症例を基にして妊娠中の薬の安全性について研究し、論文発表をしてまいりました。令和4年度に特記すべきことは、正確な問診情報と追跡率のよい妊娠結果情報からなるデータを基に解析できる妊娠と薬情報センターの基盤研究によって、世界に類を見ない素晴らしいものであると、米国の一流誌で称賛を受けたところです。
 しかし、相談症例に頼るだけでは、臨床現場で必要とされる新薬、例えばゾコーバなど、社会が必要とする薬剤の安全性を効率よく評価することが難しいため、登録研究を推進していく必要があります。当センター以外に妊娠中の薬剤を使用した結果についての情報収集を行っている製薬会社の市販後調査では、母親の疾患の産科主治医と新生児の主治医が異なりますので、母子連携したデータを取得することは困難です。そこで、これまでの製薬企業と当センターの利権をいかした共同を画策してまいりました。今回のオンライン下で、文字どおり全国拠点のネットワーク事業が完成し、今後、この仕組みを活用した登録研究を製薬会社等とも協働して推進する基盤が整っております。これにより、R5から厚生労働科研及びAMED研究班による具体的な共同方法に関する研究につなげることができております。
 続いて、コロナ禍における周産期医療への貢献です。34ページです。当センターは新型コロナウイルス対策において重点医療機関としての役割を担ってまいりました。東京都からの要請に対応するために、最大で一般病床36床、NICU1床、小児ICU1床、産科病棟5床の合計43床を、COVID-19対応病床として活用して診療してまいりました。令和4年度のCOVID-19確定の入院症例数は、小児が337例、妊産婦が81例でした。一方で、COVID-19疑い例、または濃厚接触者のうち医学的又は社会的な理由で入院治療が必要とされた例は、小児で374例、妊婦で19例でした。下のグラフですが、当センターにおける月ごとのCOVID-19確定患者の入院患者数を青色で、擬似症例・濃厚接触者の受入患者数を赤色で示しております。ピーク時には、病床確保・稼働率が100%となる日が続きました。また、当センターは多くの医療的ケア児が通院する施設であり、こうした患者さんの受入れも多く行ってきただけではなく、かかりつけ医のない医療的ケア児がCOVID-19に感染した際も積極的に受け入れてまいりました。
 一方で、当センターは高度先進医療を提供できる唯一の小児・周産期分野におけるナショナルセンターであり、コロナ禍においても、コロナ以外の理由による小児重症患者の受入先として中心的役割を担っております。そのため、診療制限を最小限としまして、最大限に受け入れられる非COVID患者の固形臓器移植や小児がん患者への治療を含む高度先進医療を継続して実施しております。また、都内流行期に、成人の重症・中等症のCOVID-19患者に対応している大学病院等で受入れ困難となった非COVID小児の受入れ先として重要な役割を担っております。発表は以上です。御清聴ありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございました。ただいまの御説明に対しまして御意見、質問等ございましたら、よろしくお願いします。中野委員、どうぞ。
○中野委員
 中野でございます。大変分かりやすい御説明をありがとうございます。御質問というより、コメントをさせてください。おっしゃったように、令和4年度は小児の新型コロナの患者が非常に増えた時期で、いち早くその病像をまとめていただいて発信いただいたことは、私自身も本当にすぐに読ませていただいて大変役に立ちましたし、いろいろな所で小児の病像はこうなんだということで引用されておりますので非常に良い成果かと思っています。そこで、お願い申し上げたいことは、新型コロナもそうですし、インフルエンザ、RSウイルスもそうだと思うのですが、とてもコモンな感染症というのは、たくさんの患者さんがかかります。ただ、重症化の頻度という話にすると、高齢者とか基礎疾患のある方とは全く、頻度としてはきっと高くはないのでしょうけれども、どのような子が重症化するかということが、先ほどの希少疾患や難治性疾患の原因遺伝子の解明というような研究とうまくリンクしていただくと、特にこの病気に注意すべき子とか、特にこの病気に対して対処が必要な子供たちというのが事前に分かりますと、より多くの子供たちが健康に暮らせるのではないかと思っていますので、是非、今後その点で研究を発展させていただけると嬉しく思います。
 もう1点は、妊婦と薬情報は、いろいろな地域の臨床に本当に幅広く活用させていただいております。Webサイトもとても有用で、きっと閲覧数はかなり多いのではないかと思います。添付文書以上の情報をきちんと書いていただいておりますので、大変役に立っていて、さらに、オンライン化による事業も始められたということで、きっとオンラインで個々の質問に答えるというのは、数からいけば難しいと思うのですけれども、Webサイトの内容も、現状以上にアップデートをしていただいて、いろいろな地域で役に立つと思いますので、どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。以上です。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 中野先生、どうもありがとうございます。小児のコロナ感染症ですけれども、重症例、入院数、ひとまず入院が必要な患者数というのは、コロナ陽性患者の1,426例中30%程度でした。検査が陰性であった軽い症例3,369例では、合計4,795例に検査が行われまして、当院救急外来の患者数の全体の20%に該当しております。重症患者である「MIS-C」関連の炎症性症候群は、スライドに出ておりますけれども、致死率は1.7%、当センターでも6例の患者さんを受け入れております。遺伝的背景については、これから梅澤のほうから説明させていただきます。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 簡潔に御説明をさせていただきます。まず、重症化に係るゲノムの課題について、中野委員から御指摘いただきまして誠にありがとうございます。現在、重症化と小児の重症化におけるゲノムの多型といったものに関しまして、私どもは知見を有していないところです。一方、私が知る限り、成人に関しては、重症化とゲノムに関して比較的データが出ているという理解をしておりますので、私どもが有する遺伝的解析のリソース、GWAS等を使いまして、80万か所のSNP(塩基多型)、それと関連するような重症化との連関を、今後を見据えて研究を進めることができるように体制を整えてまいりたいと考えております。研究所からは以上です。
○土岐部会長
 私から、子どものメンタルヘルスのことを聞かせていただきたいのですが、先ほどの評価項目1-1の所にもあったのですけれど、社会的規制が強いほど子供のメンタルヘルスが悪化しているというのがあったのですが、政策提言ができるかという話です。先ほどの社会的規制が強いというのは、コロナに関する社会的規制の話なのか、一般的な社会的規制の話なのか。と言いますのは、先進国の中でも日本は、子供の幸福度が非常に低いというのが問題になっていますので、その一因が、もし社会的規制ということであれば、是非その辺りを政策提言していただきたいと考えております。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 部会長、ありがとうございます。ここにおける社会的規制というのは、比較的単純な規制であり、学校に行けないとか、学校に行くことができなかった時期に関しまして、私どもは、社会学研究部並びに子供シンクタンクとチームを組み、こちらの具体的なエビデンス、解析をすることで要因分析を行いましたところ、そのような結果が出てきたということです。部会長の御指摘のように、それらに対しまして介入並びに提案をしていくことは、今回の場合はできましたが、今の幾つかの御指摘に関しましては、私どもとしては今後の課題とさせていただければと存じます。ありがとうございます。
○土岐部会長
 それでは、続きまして藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 藤川です。10年近く、いろいろ見せていただいている中で、成育は非常に幅広くいろいろな視点をもって、しかも、難病や希少疾患のようなものにも対応されていると、伸び率は6NCの中でも抜群だなと感じているところです。成育においては、希少疾患やそういうことに関しては非常にやっておられるし、例えば首都圏の高齢出産の女性などもかかれるということで、安心してやっていただけるセンターだなと思う反面、全国を見回すと、産科小児科医の配置というのは、非常に減少していて希少の難病どころか、普通の治療すら受けられないという。それに苦労しているという方が非常に増えているということに対する対応のようなことは、今日の御説明の中では余り見受けられなかった。成育子供シンクタンクなんかは、今まで以上に健康な子供に対して直接アプローチしようみたいな面白いことをされているかなと思うのですけれども、もっと基本的な、困っている事象に対して、どのような方針を立てられているのかをお聞きできればと思いました。よろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 ありがとうございます。まず、最初に大変高い評価をいただきまして、手前どもの診療にいただきまして、大変ありがとうございます。小児科の医師のシーリングが始まる前は、小児科の小児医療に携わる医師の約10%の医師が、成育医療研究センターを通って全国に散らばっていったという過去がございます。しかし、今の新教育、新臨床研修制度によってシーリングがかかっておりまして、今現在はそれほど、ほかの病院よりは多いのですけれども、小児科の後期研修医をしっかり教育するようにしております。
 また1つは、今、オンライン診療を進めておりまして、遠隔地にいましても、手前どもの専門診療科のほうで、オンライン診療がいつでもできるように、そういったプラットフォームを整えているところです。また、各診療科、例えば最も重症な患者さんを受け入れる救急部、集中治療部、新生児医療室、こういった基幹となる診療センターにおかれましては、サマーセミナー、ウィンターセミナー等で全国から医師、小児科の医師を成育医療研究センターのほうに教育の機会を与えて、成育医療セミナーというのもあるのですけれども、先日も行わせていただきましたが、成育で行っている、実装している医療を標準化して日本中に浸透させるという努力もしている最中です。よろしくお願いいたします。
○藤川委員
 すみません。恐らく先生がいらっしゃる地域は、まだ遠隔診療も、セミナーを受ける意味もあるのですけれども、だんだん不在の地域も出てきたり、そういうことに関して、恐らく地域の方々が不安に思っていらっしゃる所も多いと思うので、成育がバックで支えているよというようなことが、もっと世の中に広まるといいなと思いましたので、是非よろしくお願いします。以上です。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 どうもありがとうございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、続きまして庄子委員、よろしくお願いします。
○庄子委員
 庄子です。33ページの妊娠と薬情報センターの所ですけれども、とても素晴らしい取組というか、日本は妊婦さんに対する禁忌の薬というのが海外に比べてかなり多くて、薬を飲んだばっかりに中絶してしまうという方も多いので、少子化対策としても、これはすごくいいなと思っております。実際に製薬企業さんとも話をして、添付文書も変わったものもあるということで、興味深い取組で是非進めていただければと思うのですが、一方で、産婦人科医の方ですら、まだセンターのことを知らないという方もいて、まだまだ添付文書頼りというか、そうしているようなドクターもいるとも聞いています。その辺について、どのようにお考えなのか、この活動を知らしめるために、これから何か活動を、更に評価していくような計画とかがあれば教えていただきたいと思います。以上です。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 どうもありがとうございます。実は、妊娠と薬センターのホームページのアクセス数は、成育医療研究センターで一番多うございます。また今後、女性の健康支援センターという国の事業で、女性の健康を包括的に見ていきましょうということで、事業費としまして成育医療センターに新しい女性の健康センターを包括的に見るセンターが併設される予定です。このプラットフォームを使いまして、女性の薬の情報センターの拡充及びプレコンセプションケアセンターとか、産後ケアまで広げて、成育医療研究センターの女性の健康に関する部分というのを、より強化していく、そういった計画が進んでいる最中です。よろしくお願いいたします。
○庄子委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 よろしいでしょうか。私からもう1点、細かいというか大変なことですけれど、コロナが、令和4年は多分、小児のほうが成人より、より影響が強かったと想像しております。そのような中で、手術の件数ですけれど、23ページにございますように99.2%ということで、本当に維持するのが大変だったと感じております。特に、令和4年度は医療関係者のクラスターが多かったので、どうしても病棟を閉めるとか、そうせざるを得ない状況の中で、この手術を達成されたのは大変な御苦労があっただろうと思います。それもあるのですが、そのときに、291件という目標値が、年度計画において数値目標を設定ということだったのですけれど、これは毎年、その数字が変わってくるのか、前の年に次の年を予想して数字を設定されるのか、この数字についての御説明が、お伺いしたかったことの1つです。それは、いかがでしょうか。
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 企画戦略局長です。御質問ありがとうございます。ここに書いてありますとおり、年度計画において設定とありますけれども、前年度の状況も踏まえまして計画を設定しているということです。様々な要因が出てきますので、これまでの過去のトレンド、特に前年度の状況を踏まえて、毎年設定をしております。
○土岐部会長
 令和4年度の場合は、コロナの状況を想定されて、事前に、この程度と設定されたのでしょうか。
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 ありがとうございます。2020年度からコロナが流行しておりまして、当然そういったもの、それから経営的に、このくらいが必要ではないかというように、様々な要素を踏まえて設定をしております。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほかに御質問はよろしいでしょうか。それでは「医療の提供等その他の業務の質の向上に関する事項」につきましては、以上とさせていただきたいと思います。
 それでは、続きまして業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項に移りたいと思います。評価項目の2-1から4-1について議論をしたいと思います。先ほどと同様の流れで、まずは法人のほうから御説明いただき、その後で質疑応答を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 企画戦略局長の北澤から御説明させていただきます。35ページ~45ページまで、評価項目2-1、3-1、4-1について御説明いたします。まず、35ページを御覧ください。業務運営の効率化に関する事項です。自己評価はAとしております。Ⅱの指標の達成状況は表のとおりです。この中の看護師の離職率については、正にコロナの影響がありまして、大学では看護学生がちょうど3年目ということで臨床実習が始まる時期なのですが、コロナの影響があり、病院でのリアルな実習をする機会が少ないといった事情がありました。新人看護師が病院に入ってきてから、いわゆるリアリティショックを受けて辞められた新人看護師が多かったという理由があります。
 36ページ、一般管理費については、下に説明が書いてあります。監査報酬は、人件費が高くなってきたということもあり、その高騰の影響で増加したということで達成ができませんでした。医業未収金は様々な改善努力をしましたが、結果的には目標に達しなかったということです。しかしながら、その他の指標については目標を達成するとともに、37ページにあるとおり、効率化等による収支改善は、働き方改革が大きく推進されたということから、Aとさせていただいております。
 38ページを御覧ください。[1]近年、様々な収支悪化の要因がありましたが、患者確保、経費削減に努め、7期連続の黒字決算を達成いたしました。[2]医業収益は過去最高を記録しております。[3]物価高騰により、水道光熱費が前年度より3億円以上上昇しましたが、職員が一丸となって費用削減意識をもって取り組んだ結果、電気・水道・ガスの使用料は、右の表のとおり減少し、経常収支黒字に大きく寄与いたしました。
 39ページを御覧ください。[2]医薬品については小児医療施設への価格照会、医療材料費については、SPD等業務委託契約の工夫により、費用の削減を図るとともに、棚卸資産(診療材料)は院内在庫を所持しない方式、消費バレー方式をすることにより、右の図にあるとおり、令和4年度は、令和2年度との比較では約半分になり、ここには記載がありませんが7年前との比較では10%以下まで在庫を縮減いたしました。
 次に、働き方改革については、魅力的で働きやすい職場の環境整備に向けて、これまでの取組に加えて、令和4年度は新たにダイバーシティ実現推進室を理事長直下に設置しました。これは研究所のダイバーシティ研究室と共に両輪としてやっておりますが、全職員へのアンケート調査の実施など、多様性をいかした組織マネジメントに向けた取組を始めました。
 40ページを御覧ください。医師の働き方改革として、写真にあるとおり、医師の勤務実態の正確な把握のために他のナショナルセンターに先駆けてビーコンを導入するとともに、左側にあるように時間外労働を正確に把握するための判断基準を情報共有しました。さらに、右側にあるとおり、長時間労働となった医師が所属する診療部長に対する病院長名での注意喚起を行うとともに、タスクシフトを推進するために医師事務作業補助者の常勤化を進めているところです。以上のように、働き方改革に積極的に取り組んできたところです。
 41ページを御覧ください。評価項目3-1「財務内容の改善に関する事項」です。自己評価はAとしております。42ページ、[1]収益の改善です。病院における医業収益の改善に加えて、AMED等からの競争的研究資金への積極的な申請の促進などにより、令和4年度は20.6億円を獲得いたしました。そのほか、治験収益を獲得するとともに、小児医療情報収集システムの将来の製薬企業への試行的利活用を開始して、令和6年度からの有償のサービス化を目指しており、それに向けた準備をしております。寄付受入については、遺贈における外部金融機関との協定を新たに3行と締結したほか、企業に対する寄付獲得に向けた活動を実施しております。
 次に、[2]外部医療機関からの検体検査受託の推進です。平成31年3月に登録した衛生検査所(衛生検査センター)では、令和4年度には、生殖細胞系列遺伝子検査の検査室の登録変更の届出を行い、検査の受託を開始して、更に充実を進めております。[3]健全な財務内容ですが、これは御承知のとおり小児医療は非常に不採算と言われております。成育医療研究センター以外の公立の小児病院では、医業収支率が、例えば70%を切るような病院もあります。そういった中で、ここ数年のコロナ感染流行の継続に加えて、令和4年度は物価高騰といった収支悪化要因があったものの、医業収益は過去最高となり、7期連続の黒字決算を達成いたしました。
 続きまして、43ページを御覧ください。その他の事項で、自己評価はAです。指標の達成状況は、表にあるとおりです。44ページですが、コンプライアンス推進室の活動を積極的に行うとともに、PMDA、AMED、厚労省やNHO等と人事交流を積極的に行いまして、人材育成等の成果を上げました。
 45ページを御覧ください。まず、ハラスメント対策等です。[1]パワハラに関するアンケート調査や情報発信を実施し、公益通報者保護法の一部改正を踏まえた規程の修正や通報窓口の整備、[2]ダイバーシティ推進に取り組む体制の整備などを行いました。[3]新たに情報セキュリティ部会を設置するとともに、全職員を対象とした情報セキュリティのe-ラーニング研修の実施等を行い、情報セキュリティ対策の推進を行いました。
 次に、右側の整備計画の見直しですが、当センターは築後20年を経過しており、計画的な整備が必要となっているところですが、コロナによる経営状況等の変化を踏まえて、外務有識者も交えたワーキンググループ「老朽化対策WG」を設置し、整備計画の見直しを行いました。引き続きコストの合理化・適正化を進めていきたいと考えております。
 広報の推進としては、プレスリリースを昨年度から10件増加し、45件配信するとともに、総合的なパンフレット等の発刊を行いました。ツイッターのフォロワー数は約1,500件増加しております。説明は以上です。どうもありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。委員の先生方から御質問等ありますか。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 平成27年度までは、結構赤字が大きかったところから、大きな改革をされて、委員の人たちからも、「大丈夫ですか」と言われるぐらいのいろいろな切り詰めなどをされて、その後、これがいつまで続くのでしょうかと言いつつ、ずっと黒字を継続されているので、相当な努力をされているのかなと思いますが、ここのところは、どうしてもコロナの影響があったので、補助金等もある中でいろいろ、あちらが出てこちらが引っ込んでというような、正常な状態とは少し違うのかなというところもあります。
 そういうことで、損益計算書を拝見しますと、補助金等収益の中に、かなりそれなりの空床補償金や各補助金も入っているでしょうし、他方、総損失で考えますと、他年度の分を返還されたりということもあって、今後、大体今年ぐらいからは余り補助金も出てこないでしょうし、どのような見込みでいらっしゃるのかという辺りをお聞かせいただければと思います。
 その他、臨時損失の中で、かなり大きめの金額、賠償等が出ている部分もありますので、どのような内容なのかということも教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 1点目ですが、御指摘のとおり、コロナに関する補助金等というのは、2020年は約14億円ぐらいだったと思いますが、それが毎年3億円ぐらいずつ減ってきております。今年も当然こういった補助金は見込めないということから、現在、病院長を中心に診療科部長等のヒアリングを含めて、まず、診療収益をどうやって確保するかというところには相当、力を入れてやっております。
 そのほかの研究費も含め、いろいろな寄付も含めて外部資金の獲得ということに、今、一生懸命に対応しているところです。補助金に頼らない経営を目指して対応したいと思っております。
 ただ一方、御説明申し上げたとおり、築後20年ということで、大規模な修繕というか、配管も含めて対応しなければいけませんので、最低限の投資ということも必要ですし、また、医療機能についても先ほど御指摘のあったとおり、数年前に、かなり抑えたという時期もありますので、必要な医療機器の整備ということも、財投等を活用しながら今、計画的に進めている段階です。
 臨時損失については、コロナ補助金の返還分が0.6億円、賠償金の負担額が、昨年度は医療事故等があり、その賠償金の負担額が0.7億円ありましたので、この部分で、臨時損失を計上させていただいております。以上です。
○土岐部会長
 続きまして根岸委員、どうぞ。
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。今の項目の自己評価について、令和3年度の大臣評価よりも1ランクアップされているようですが、この点については、全く異論はありません。昨年度に引き続いて様々な取組をされて、その成果もきちんと出ていると評価したいと思います。
 質問ですが、40ページ、働き方改革の所ですが、時間外労働のカウントという辺りです。ビーコンというのを導入された10月以降、時間外労働が増加しているというグラフですが、これは時間外労働が正確にカウントされるようになったから、こういうデータに変わってきているのかということです。
 それと、ビーコンというのは、左の表の時間外労働の判断基準と連動したものなのか。つまり、この判断基準というのは、客観的にカウントしていかれるものなのかということです。あと、この表で整理した、つまり、これまで時間外労働に該当していなかったものが、判断基準を作成するに当たって、該当するものに変えた、つまり、この表でいきますと、黄色の2から1に変更を要したもの、そういう項目があったら教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国立成育医療研究センター金森総務部長
 総務部長の金森です。御質問ありがとうございます。まず、ビーコン導入後に、いわゆる残業時間が増えているということですが、これはまさしく御指摘のとおりです。正確な時間の把握ができるようになって、ある意味、残業時間が、これまでは自己申告であったものが、機械で正確に計れるようになったために一時的に増えたというものです。
 このビーコンのシステムを入れたときに、左側の労働時間の判断基準の労働時間に該当するものとの連動ですが、このシステム導入の際に、この判断基準の項目を全て入れております。ビーコンというのは、医師が電波を発する機械を付けておりまして、それを受信機が受信するということです。その受信機のデフォルト自体に、労働時間としてカウントするものと、労働時間としてカウントしない受信機をそれぞれの設置場所に置いております。
 例えば、医局に置いてある受信機については、労働時間としてカウントしないというデフォルトになっております。その中で、医師が自分が行った労働時間を、この判断基準の中から自己申告でシステム入力するというシステムになっております。労働時間としてカウントするもの、例えば病棟や外来にいる場合は、自動的に労働時間としてカウントするというシステムになっております。
 この判断基準については、労働時間に該当しないものから該当するものに移行したものがあったのかということですが、実はこの判断基準をつくる前から、こういったきちんとしたものが成育にはなくて、国のほうで医師の働き方改革がいろいろ議論されたときに、成育としてもこういったものは必要であろうということで、いろいろな施設のものを参考にしながら判断基準を作ったものです。説明は以上です。
○根岸委員
 ありがとうございました。この働き方改革は、今後いろいろな成果や影響が出てくるのではないかと思いますが、是非、推進の方向でよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○土岐部会長
 それでは花井委員、どうぞよろしくお願いします。
○花井委員
 ありがとうございます。花井です。私も、40ページの働き方改革の、いわゆるビーコンによる管理というのは興味を持ちまして、実はどこの病院でも結局働き方改革が進みますと医師不足になっていくという、つまり、今まで医師1人当たりの収益とか科別の収益などで収益構造をよくしようと言っていますが、実は医師の過剰労働に支えられていたというのが実態としてあると思うのです。
 もし、働き方改革が進めば、やはりそれまでの指標で、医師がこれだけ働いていれば、これだけ稼げるという話にも変わっていきますし、医師の必要ニーズも圧倒的に変わってくるのではないかと思うのです。例えば、週末からの病棟が回らなかったということが現実に起こっていますので、意見でいいのですが、働き方改革をこのまま推進したときに、やはり必要な医師数は何パーセントか増員というような基準にしないと、現場はもたなくなると思うのですが、それはどのぐらいのパーセンテージのイメージなのでしょうか。そうしないと、これからも同じ医師数で、同じだけ稼げということを言われた場合には大変なことになりますし、働き方改革と医療のクオリティ、それから採算性というバランスは、過去があまりにも違ったので、ドラスティックな変化が必要だと思うのですが、その辺りで御意見があればお教えください。
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 どうもありがとうございます。病院長の笠原です。まず、知っていただきたいのは、小児医療には人手がかかるということ。採血及び診療一つ取っても、通常の成人の医療よりも人手がかかるということを御理解いただきたいということが第1点です。
 2点目は、確かに働き方改革を推進していけば、それなりの人を配置しないと、なかなか難しいのは事実かと思います。幸い、成育医療研究センターは今のところ、患者数に対しての医師数は比較的潤沢におりますので、現状の医師数を維持しておれば、手前どものセンターにおきましては、それほど診療の質を落とさずに、しっかりとした診療が1チームで行えていけるのではないかと考えております。
 同時に、研究所にも複数の医師がおります。手前どもは、先ほども申し上げましたが、研究所と国立成育研究センター、そして病院がワンチームで医療を行っておりますので、どこからでも救いの手が出てくるという構造になっております。手前どもとしては、働き方改革の推進はしっかり進めていくという方針でやっていくつもりです。以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。私から1点、経常収支の年次推移の所で、黒字を達成しているものが、ここ2年苦労されているということの、これは感想ですが、多くの重点医療機関が黒字を達成していて、コロナになって黒字がどんどん増えていく中で、むしろ、成育医療センターのほうは、補助金があるのだけれども、なかなか収支に結び付かないということになっております。そうしますと補助金のどの部分を手厚く、どの部分を薄くするというのが、ちょっとアンバランスなのかなという気もいたします。やはり、いろいろな感染症のフェーズに応じて補助金の出し方をうまく考えていただかないと、恐らく、今後、感染症はうまくいかないかなという気がしておりますので、是非、その辺りを成育医療センターのほうから発信というか、政府のほうに要求していただいて、今後の感染症に備えていただけるようによろしくお願いします。
 それでは、ほかに全般を通じて御質問等はありますか。よろしければ、この辺りで、「業務運営の効率化、業務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」についての質問を打ち切りたいと思います。
 それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。まずは、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた「監査報告」について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントを頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター岡田監事
 ありがとうございます。監事の岡田です。監事監査の結果は、お手元の資料1-4、「監査報告」のとおりです。今日の報告の中にもありましたように、令和4年度は、新型コロナウイルス感染症の影響や、世界的なエネルギー価格上昇に伴う光熱費などの上昇が、センターの運営及び経営に大きく影響した1年でしたが、五十嵐理事長のリーダーシップのもと、センターの役職員が一丸となって取り組んだ結果、目標とした研究開発及び医療提供に関する成果を出し、また、経常収支率100%以上を達成したことは大変評価をしております。
 少子化などの社会課題に対して、経営陣が長期的視点で議論、対応しながら、当センターが今後も健全な発展ができるよう、我々監事も、監事としての役割をしっかりと果たしていきたいと思います。以上です。ありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをよろしくお願いします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 本日は、様々な点から貴重な御意見を頂きまして誠にありがとうございました。小児・周産期医療の今後の課題は、やはり一番大きな問題は少子化だと思っています。私どもでは、一昨年は2,200の出産がありましたが、昨年は2,000に減っています。多くの医療施設がそういう状況になっていまして、東京の有名な施設も、5%ぐらいは出産数が減るというように、有名な所でも考えているようです。
 ですから、まず、少子化がしばらくは続くだろうと。そういう中で、私どもは何とか女性が安心して妊娠・出産することができるような社会をつくりたいと考えています。そのために必要なことは、もちろん出産という、女性にとって非常に大変な状況を何とか軽減する。そして産後についても、例えば成育医療研究センターの初診で、初産の方の平均年齢が35歳、日本全体でも31歳ですので、要するに出産年齢が、高齢になってから産む方が非常に多くなっています。そうしますと、その親御さんに、出産後のいろいろな支援を頼んでも、体力的に無理だという状況になりますので、いかに妊婦、産後の女性の健康を支援するか。それも、妊娠・出産した人だけを支援するのではなくて、家族全体を、例えば、御主人も、上にお子さんがいれば、上のお子さんも家族全体で支援をするような、そういう新しい仕組み、新しい産後ケアだと思いますが、是非こういうことも構築したいと考えています。そういう意味で、今、厚労省を中心に女性の支援センターというものを構想中ですので、そういう中で女性の健康を推進するための体制づくりをしたいと考えております。
 もう1つは、私どもの所は出産が割と多いので、そこで余剰金ということはないのですが、プラスが出るわけですが、小児医療全体は完全に黒字ではありません。赤字だと言っていいと思います。先ほどお話がありましたが、小児医療の専門、いわゆる小児病院の多くは自治体が作っているわけです。例えば、年間数十億円の自治体からの小児病院への支援が、実際には日本全国で行われているわけです。そういうように小児医療を、特に重症の患者を一生懸命に診ている小児医療施設が、真面目に診療していても大赤字であるという、これがまずスタートポイントではないかと思っています。そうした状況を、私どもはステイクホルダーの方に、今年になりましてから、国会議員の方も含めて御報告に行ったり、あるいは厚生労働省のほうにもお願いに行ったり、日本医師会にも行きましたが、その事実をまず理解していただいて、普通に真面目にやっていても赤字にならないような診療報酬体系を作っていただきたいということも、実は強く願っているところです。
 私どもは、実はもう21年目を迎えておりますので、施設も古くなっていますし、院内ルールもなかなか改善できない部分があったわけですが、昨年から今年にかけて、いろいろな院内ルールを統一して、これは病院長に一生懸命やっていただいたのですが、看護部や事務も協力して、全体で患者さんをしっかり診ていこうという体制に今、変わりつつあります。稼働率も、今年になってからは、昨年よりも10%以上増えています。特に4月、5月、6月から感染症が増えており、その対応も加わっているのだと思います。しかし、私どもは予定している重症の患者さんの手術などは絶対に減らさないと。これを、近隣の病院の方たちと協力して、感染症の患者さんなども一緒にシェアしていくように、そういう体制も今つくっているところです。
 いろいろな問題点が、時代が変わると出てきますので、その新しい問題に対して、しっかりと対応し、そして新しいニーズに対しても掘り起こして、全国の模範になるような病院の機能、そして体制をつくりたいと考えているところです。これからも御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 五十嵐先生、大変貴重なメッセージをありがとうございました。以上をもちまして、「国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和4年度業務実績評価について」の審議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。ここで10分の休憩をもちたいと思います。よろしくお願いいたします。
(国立成育医療研究センター退出)
(休憩)
(国立がん研究センター入室)
○土岐部会長
 それでは、評価部会を再開したいと思います。まずは、国立がん研究センターの令和4年度の業務実績評価の審議を始めたいと思います。はじめに、理事長から一言、御挨拶をよろしくお願いします。
○国立がん研究センター中釜理事長
 理事長の中釜です。本日はよろしくお願いいたします。各担当者からの説明に先んじまして、まず、私から一言、御挨拶させていただきます。昨年度も新型コロナウイルスの影響による夏の第7波、それから昨年末から今年初めにかけての第8波で、やはり診療面では、病床の利用率等々にも影響があったのですが、その中でも、東病院・中央病院の両病院の職員の努力によって、その影響を最小限に食い止めることができたかと思います。さらに、そのような環境下にあっても、外部資金や競争的研究費の獲得によって基礎及び開発研究を加速する、それからデータの基盤を構築する、更には国際的な競争力を付けるという意味で国際的な連携も進めてきました。
 同時に、患者、国民目線から、どういうものがセンターに求められているかということで、後ほど説明があるかと思うのですが、PPI活動にも力を入れたところです。このようにセンターの活動規模が増大する中では、内部統制、コンプライアンス、そういうものにも配慮しながら、医療安全を第一に、更には個人情報保護、情報セキュリティの管理にも配慮しながら、この1年間努めてきたところです。詳細につきましては、各部署の担当者からの説明をお聞きいただき、御評価いただければと思います。本日はよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、まず「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2について議論を始めたいと思います。最初に、法人から御説明いただき、その後、質疑応答という形で進めていきます。時間が限られておりますので、まずは、法人からポイントを絞っての御説明をよろしくお願いします。
○国立がん研究センター間野理事
 研究所の間野です。まず私から、研究開発に関する事項について、資料2-2を用いて説明します。4ページを御覧ください。評価項目1-1「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」です。この評価項目に関しては、自己評価にSを付けさせていただきました。それでは以下、時間の関係で、項目を絞って具体的な説明をいたします。
 6ページを御覧ください。左側、「がんの本態解明に関する研究」です。[1]小児悪性脳腫瘍において新規の遺伝子異常の発見です。小児悪性脳腫瘍の髄芽腫(medulloblastoma)は、最も予後の悪い人のがんの1種ですが、その治療標的も、発がんメカニズムも、これまでは不明のままでした。当センター研究所の鈴木分野長らは、国際的な大きなコンソーシアムを作りまして、髄芽腫の検体を集めて、545例という非常に大規模な髄芽腫のコホートについてRNAの配列解析を行いました。そうしたところ、これまで髄芽腫は4つのサブグループに分かれていたのですが、最大のグループ、サブグループ4の半分近くに、CBFA複合体の遺伝子異常が発見されました。CBFAというのは転写因子です。その転写因子というのは、遺伝子発現を調整する蛋白質群のことを指しますが、そのCBFA複合体のどれかの遺伝子に異常がある患者さんが全体の5割を占めることを明らかにしました。
 右下にありますように、RLvzというマルがrhombic neuronという、やがて、これは小脳の脳室になる部位なのですが、そこに脳幹や脳神経細胞の起源細胞が存在すると言われています。それが様々な段階に分化をしていくのですが、下のRLsvzは、Subventricular Zone(脳室下帯)という、脳室の上の場所に位置した神経幹細胞が次のステップに移る際に、CBFAの機能がどうしても必須なのです。ここに異常があると分化がうまく行えずに、増殖だけが続いて、髄芽腫の起源細胞になることが明らかになりました。そうしますと、例えば、ブロックされた分化を乗り越えるような、分化を強制するような化合物のスクリーニングとか、あるいは、直接、CBFAの機能を戻すような遺伝子治療などが、今後、髄芽腫の治療法として想定されます。この研究成果は、『Nature』誌に出版されました。
 同じページの右側です。[2]制御性T細胞のがん組織における活性化プログラムのキーとなる分子を発見です。制御性T細胞というのは、免疫抑制をブロックするような、免疫系が過剰になるのを防ぐために作られているもので、我々の体にある免疫のシステムの一種なのですが、がんが起きたときに、腫瘍局所で制御性T細胞がどのような形で活性化されて、やがて疲弊化していくのかというのは分かっていませんでした。当センター研究所の西川分野長らは、微量の組織からでも局所周囲の免疫細胞をシングルセルで解析可能にするテクノロジーを開発して、それを用いて制御性T細胞をシングルセルで網羅的な解析を行ったところ、制御性T細胞が、がん化されていない未熟な制御性T細胞から、やがて活性化されて疲弊化していくという段階それぞれのサブグループを同定することに成功しました。しかも、それが活性化するときに鍵となる転写因子のBATFというのを発見しました。実際に、BATFを制御性T細胞で失活するような遺伝子改変ネズミをつくってみますと、右下のグラフにありますように、赤が制御性T細胞のBATFがなくなっているのですが、BATFが欠如すると、制御性T細胞が活性化できなくて、宿主の、つまりネズミの体の免疫系が本来の活性を取り戻して、がんの増殖を抑制することを明らかにしました。この成果は、『Science Immunology』誌に出版されています。
 8ページを御覧ください。右側の「がんの予防法や早期発見手法に関する研究」です。[1]世界最大の胃がんゲノム解析により日本人胃がんの治療標的を同定です。当センター研究所では、これまでにスキルス胃がん等の治療標的を発見してきましたが、今回、研究所の柴田らは、日本人胃がん症例の697例を含む総計約1,500例の世界最大の胃がんのコホートに関して全ゲノム解析を行って、これまで知られていなかったような新しいドライバー遺伝子を数多く発見しました。
 特に興味深いのは、下の図です。塩基置換のパターンですが、AがTとか、CがTとか、そういう塩基置換のパターンのことを変異シグネチャーと言います。アルコール関連の変異シグネチャーというものが存在しています。つまり、お酒を飲むことによってDNAダメージがどういうパターンで起きるかということは、もう既に明らかになっています。胃がんの全コホートの中で、アルコールによる変異シグネチャーが濃縮されているという集団、下の図で赤色の矢印で書いてあるクラスターですが、それが存在していることが分かりました。しかも面白いことに、そのクラスターの患者さんは男性で、お酒を飲んでいて、しかも、それらのクラスターの患者さんは、もともとアルコールを代謝しにくいような遺伝的背景を持つことが明らかになりました。言い換えると、もともとお酒に弱い方が習慣的飲酒を行うと、びまん性胃がんになるということが、ここで明らかになりました。この成果は、『Nature Genetics』誌に出版されました。
 9ページを御覧ください。「アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究」です。[1]リキッドバイオプシーが大腸がん術後の再発リスク測定に有用であることを確認です。リキッドバイオプシーというのは、患者さんの末梢血中を流れている腫瘍由来のDNA、がん由来のDNAを検出する測定法です。リキッドバイオプシーを用いた大規模な臨床試験を当センターの東病院が中心となって、CIRCULATE-Japanとして行っております。その中で、今日はGALAXY試験の成果を御発表します。
 これは、大腸がんで手術をした後に、術後1か月(4週間目)の時点で、がん由来のDNAが末梢血中に残っているか残っていないかということで、患者さんの予後を調べたものです。1,039例という極めて大きなコホートスタディで、左下のグラフにありますように、赤色のがん由来のDNAが残っている人は、残っていない人は青色ですが、それに比べて明らかに予後が悪いことが分かります。しかも大事なことは、右側上のグラフですが、左側の青い患者さん、つまり腫瘍のDNAが残っていない人に対して、術後の補助化学療法を行っても行わなくても予後は変わらないことが明らかになりました。さらに、左下のグラフの赤色の患者さんたち、つまり腫瘍由来のDNAが残っている人を、更に術後の化学療法を行った群と行わなかった群に分けると、行うことによって明らかに患者の予後が改善していることが分かります。つまり、これは大腸がんの術後の今後の標準治療を確立する上で極めて重要な成果であったと思います。この成果は、『Nature Medicine』誌に出版されました。
 10ページを御覧ください。右側の「患者に優しい新規医療技術開発に関する研究」です。[1]3cm以下の早期肺がんに対して肺機能温存術である区域切除の有用性の証明です。すりガラス様陰影というのは、早期の肺がんを示すCT上の画像なのですが、そのようなすりガラス様陰影で、特に3cm以下の小さな病変に対して、これまでは標準治療として肺葉切除、つまり肺の上葉、中葉や下葉といった葉単位の切除が行われていました。今回、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、大規模な臨床試験を行って、肺葉切除ではなくて区域切除、より小さな部分を部分的に切除する手術が、予後に、どれぐらいの影響を与えるかということを調べてみました。区域切除とは言っても、リンパ節郭清は行うのですが、357例という非常に大規模な、患者さんの外科手術の臨床試験ですが、5年後の無再発生存率が98%ということで、極めて予後が良いことが分かりました。こういった小さなすりガラス様肺がんの今後の標準治療を確立する上で、極めて重要な成果であったと思います。本研究成果は『The Lancet Respiratory Medicine』誌に出版されました。
 13ページを御覧ください。これは、主要なテーマにおける、当センターの年度ごとの進捗を表したものです。例えば、「世界規模の国際ネットワークによる各種がんのゲノム解読」に関しては、令和3年度以前は、例えば、がん種横断的な全ゲノム解析の成果を発表しましたし、令和4年度は、先ほど申し上げましたが、小児悪性脳腫瘍とか胃がんの全ゲノム解析で意義のあるデータを出しました。
 また、「遺伝子パネル検査の開発とゲノム医療の実装」に関しては、令和3年度以前は、当センターで「Oncco GuideTM NCCオンコパネルシステム」という、がん遺伝子パネル検査を開発して、保険診療に実装し、実際に、それが日本人の患者さんに使われるようになりました。また、がんゲノム医療のデータを集める「C-CAT」のゲノム情報データ、臨床データの利活用も既にスタートしております。後で述べますが、令和4年度は、血液がん、白血病といった造血器悪性腫瘍に対するがん遺伝子パネル検査を開発して、その臨床的有用性を示すような前向きのスタディが終了いたします。その後、令和5年度以降に書いてありますが、厚労省が中心となって行われているがんの全ゲノム解析に関しては、当センターも積極的に関与して、実施組織の設立に協力したいと考えています。
 14ページを御覧ください。上側は、「がんのアキレス腱を標的とした新たな治療法の開発」です。令和3年度以前は、例えばスキルス胃がんの新しい治療薬を発見しました。令和4年度は、肺がんの分子標的薬の耐性機序になるような融合遺伝子を網羅的にスクリーニングする手法などを開発しました。下側は、「がんの免疫微小環境の機序解明に基づく新たな免疫療法の開発」です。令和3年度以前は、例えば、オプジーボのような免疫チェックポット阻害薬の有効性をあらかじめ予測するようなバイオマーカーを開発して発表し、臨床試験も既に行っているところです。令和4年度は、先ほど申し上げましたように、制御性T細胞のがん組織における活性化メカニズムを解明しました。
 15ページを御覧ください。これは当センターの論文数と被引用数を調べたものです。被引用数というのは、ほかの論文から引用している回数のことで、それが多いほど重要な論文ということの目安に使われています。右下のグラフを見ていただくと分かりますように、高被引用論文数(Highly Cited Paper)、被引用数が全体の中で上位1%に入るような、極めて高く引用されている論文数は、がんに限らず臨床医学分野全体で調べても、当センターは、東京大学や京都大学を抜いて、過去5年間、日本一であることがお分かりになると思います。このことからも、当センターの研究力が高く維持されていることが分かっていただけるのではないかと思います。
 次のページからは、6NCの連携推進本部(JH)の説明ですので、これは、国立国際医療研究センターから御紹介があると思います。
 21ページに進んでください。評価項目1-2「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」です。この項目に関しても、自己評価をSとさせていただきました。
 23ページを御覧ください。「がんゲノム医療の基盤整備」の[1]がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の体制整備です。令和元年6月から、日本では国民皆保険の下で、がん遺伝子パネル検査を用いた「がんゲノム医療」がスタートしました。その後、がんゲノム医療を行える病院は順調に増えております。最新のデータでは、今年の8月1日現在で、がんゲノム中核拠点病院は13、拠点病院が32、連携病院が206で、計251の施設で、日本で広く、がんゲノム医療が保険の下で行われています。連携病院の数は今後も増えていくと思われますので、広い範囲でがんゲノム医療が日本で実装されていくと思われます。
 また、そこで行われる患者さんのゲノム情報と臨床情報を集めるデータセンターであるC-CATでのデータ登録は順調に伸びております。ここでは5万人超と書いてありますが、最新の7月31日、先月末現在では、58,873例のデータが集まっています。こうして、もう今や、恐らく、もうそろそろ6万例になると思うのですが、それだけの数がC-CATに集まっていて、世界でも類のない大規模なリアルワールドデータが集まっています。これは今、医療面でも研究面でも利活用がスタートしています。
 実際、これは各国から非常に注目されておりまして、例えば、左側に書いてありますように、アメリカがん学会の機関誌である『CANCER DISCOVERY』誌から、招待論文の依頼を受けて発表したところです。アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、さらに東南アジア諸国からも、C-CATに関して、どのような体制で行っているかという質問とか、実際に訪問していただくことが非常に増えています。C-CATのデータは、右側の図に書いてありますように、診療検索ポータルで、臨床の先生方に直接使っていただいたり、あるいは利活用検索ポータルで、ここには、計52の調査・研究が行われていると書いてありますが、もう既に60ぐらいになっていますが、アカデミアと企業にも広く利用されています。
 24ページを御覧ください。左側の「バイオバンク、データベース、コア・ファシリティーの充実」です。当センターでは、日本でがんの薬を作ってもらい、企業と一緒に共同研究を行うために、バイオリソースの充実に非常に注力しております。その中でも、J-PDXライブラリーの作成、利用体制の促進ですが、J-PDX(patient-derived xenograft)は患者さんのがんの組織を生きたままネズミの背中に植えて、そこで継代していくようなシステムなのです。これまでは細胞株を用いた薬の薬効評価というのは5%ぐらいしか患者さんの実際のリアルな有効性は予測できなかったのですが、このPDXを使うと、5割とか8割とかの極めて高い精度で、患者さんにおける有効性を予測できることが知られています。ですので、PDXを大規模に作って、特に希少がんの薬の開発では、こういうものを持っておかないと薬の開発はなかなか難しいのですが、当センターでは、先月末現在で1,916例の患者さんのがんをネズミに植えて、そのうち、628のPDXが既に樹立しています。これは恐らく単一の施設としては世界最大のPDXが日本にあることになります。
 特に、当センターの病院の特徴として、内視鏡などを用いた生検組織をよく採りますので、その一部からPDXを作っております。実際には、全PDXのうち4分の1以上が、そういった生検などから作られたPDXです。言い換えると、がんの初発時だけではなくて、薬が効かなくなった時期、あるいは、胎生期、再発の時期のPDXが非常に多いという、世界でも類まれな特徴を持ったPDXライブラリーで、現在でもすでに10社以上の製薬会社が共同研究でこれを使って、まだ世に出ていない抗がん剤をスクリーニングして実際の上市に向かって準備を進めているところで、間もなく、幾つかに関しては発表できると思います。
 右側は、「産官学の連携・ネットワークの構築」で、[1]血液がんに対する包括的ゲノムプロファイリングのための遺伝子パネル検査の有用性の検証です。これは、先ほど申し上げましたように、白血病等の血液がんに対しては専用のがん遺伝子パネル検査を開始する必要がありまして、当センターと日本血液学会、それから京都大学、九州大学等を含めたオールジャパンで、日本の血液がん遺伝子パネル検査を作ろうということで、その開発を行ってきました。大塚製薬が製造販売に向けて準備を進めてくれております。ここでは、前向きの臨床的有用性を検証するためのスタディが終了したことを御報告しています。右下にありますように、何らかの臨床的有用性が見出された患者さんの割合は8割以上になっておりまして、臨床的にも、この血液がん遺伝子パネル検査は有効であることが証明されました。
 25ページ、右側、[3]SCRUM-Japanにおける第四期の取り組みです。SCRUM-Japanは、当センターの東病院を中心とした大規模なオールジャパンの臨床試験ネットワークですが、これまで、新薬の22剤24適応、診断薬22種の薬事承認を取得するなど、日本のがん医療を牽引してまいりました。今回、第四期に移行するということで、マルチオミックス解析等を用いて、また、東南アジア等にネットワークを広げて世界のがん医療を牽引してまいりたいと思います。
 最後に、26ページを御覧ください。右側[2]アジア主導の開発に向けてネットワーク構築と新薬開発です。ASEAN諸国は、人口が多いですし、ポテンシャルには非常に大きながん医療のマーケットと考えられます。そこで、当センターが主導して、そこに大きなネットワークを作って、臨床試験の促進と、がんゲノム医療の導入を行っております。例えば、各国の病院が当センターに病理検体を送ってきて、当センターで中央診断を行って、がん遺伝子パネル検査も行って、そのレポートを返しておくということを各国に行っていて、臨床試験を促進する大きなネットワークを現在作って進めているところです。時間が超過して、すみません。ありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの法人からの御説明に対して、委員の先生方から御質問、御意見等がありましたら挙手をよろしくお願いしたいと思います。いかがでしょうか。中野委員、どうぞ。
○中野委員
 川崎医科大学の中野です。すばらしい研究の御成果、御発表ありがとうございます。本当にいろいろな観点で、がんに取り組んでおられて、しかも、その成果が全て著名な国際医学術誌にしっかり報告されているのはすばらしいと思います。その中で、トップに書いていただいているmedulloblastoma、小児の髄芽腫の研究についてお教えください。これまで60%の症例で発生メカニズムが解明されていなかったということで、すみません、私は不勉強で申し訳ないのですが、今回、解明されたCBFA複合体に異常が生じるタイプの髄芽腫というのは、発生メカニズムが解明されていなかった60%の症例と、かなりオーバーラップするのか、ほとんどオーバーラップするのかということと、あとはCBFA複合体異常のある髄芽腫というのは、臨床的な特徴の共通点があるのでしょうか、お教えいただければと思います。
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。遺伝子発現プロファイルから、先ほど髄芽腫は4つに分かれると申し上げましたが、Group1や2は、WNT型が活性化されているGroupですとか、あるいはヘッジホッグ型が活性化されているGroupが知られています。だからといって、必ずしもソニック・ヘッジホッグ(SHH型)のようなインビタが有効であることはまだ証明されたわけではないのですが、60%のGroupというのは、中でもGroup4と呼ばれているもので、発生メカニズムが全く分かっていなかったGroupをGroup4と言っています。それが全体の6割です。その6割の約半分に、CBFAの機能失活変異が見つかったということになります。ですので、原因が分かっていなかったGroupと、6割は完全に一致するとお考えいただいて構わないと思います。
 それから臨床像が、このGroup4あるいはCBFAの壊れているものに特異的なものがあるかというと、それは必ずしも発症年齢とか性別とか病理型とか特異的なものがあるわけではないので、これは実際にはゲノム解析をしないと見つからないと思います。以上です。
○中野委員
 ありがとうございます。是非とも、将来的に治療薬の開発につなげるような方向で御研究が進むといいなと思っております。ありがとうございます。
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 それでは、続いて花井委員、どうぞ。
○花井委員
 花井です。毎年余りに多数の目覚しい成果に、どこからという感じがするのですけれども。本当にがん医療、ゲノム医療というのは、こんなに浸透するというのは本当に驚くべきことなのですけれども。そうは言っても、全国的にどれほど、それぞれの病院で浸透しているかをお教えいただきたいのと、それから血液系においてもこういったゲノム医療というのは進捗すると伺ったのですが、いわゆる細胞系と何か特段難しさとかがあれば教えていただきたいと思いますが、以上2点、お願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。がんゲノム医療に関しては、がんゲノム医療の中核拠点となるような病院が全国で今、13か所指定されていまして、次にセカンドレイヤーと言いますか、がんゲノム医療の人材育成の所はまだ追わなくていいですよというような拠点病院があります。それから、エキスパートパネルを自分の所ではまだ開けない連携病院というのがあって、連携病院の数が順調に増えている状況です。患者さんが、そこでパネル検査を受けている数は、かなり凸凹がありまして、やはり中核拠点病院が非常に多いということは間違いないと思います。ただ、拠点病院においても、また連携病院の一部は非常にたくさんのパネル検査を行っていらっしゃるので、それは各病院ごとの経験値というのは、かなり凹凸があるのが現状ではないかと思います。
 それから、血液がんは固形腫瘍に比べると、分子標的薬がたくさんあるわけではありませんので、血液がんの場合には、むしろ、例えばこの人は骨移植をするべきかどうかなどを早期に判定するような予後判定などのほうが重要になってきます。つまり血液パネルに、予後予測とか、骨髄移植を含めた治療法の決定に重要な役割が、より求められていると思います。固形腫瘍は、どういう薬が実際に使えるか、どういう臨床試験に入れるかということが、むしろ一義的な目的ですけれど、血液がんの場合にはもちろんそれもありますけれど、むしろ、予後予測とか治療方針の決定とかということに使われる、更に言うと診断に重要であるということが言えると思います。以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。続いて根岸委員、どうぞ。
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。御発表、ありがとうございました。大変、画期的な研究を幅広くされていると受け止めました。特に確認をさせていただきたいのですけれども、小児の悪性の腫瘍である髄芽腫の遺伝子解析、それから世界最大の胃がんのゲノム解析についてなのですけれども、いずれも国際共同研究という御発表があったかと思いますけれども、国際的な共同研究を様々な御苦労がある中で推進されたことと思いますけれども、特に、この2つの研究の中で日本のNCCが果した役割というのでしょうか、最もこの部分に貢献したことはどういう部分だったのかを教えてください。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。やはり国際共同研究と言っても、そこで主導的な立場をとることを非常に重要視しています。例えば、今回の小児の脳腫瘍の論文でも、責任著者を当センターの研究者が取っております。それから胃がんの論文でも、責任著者は、先ほど申し上げました柴田が取っておりますし、first author(第一著者)も当センターが取っております。胃がんの論文では、もともとある国際がんゲノムコンソーシアムの中で胃がんを中心に進めていたのが柴田ですので、その流れで国際コンソーシアムで彼が主導して行いました。
 また、最初の小児の脳腫瘍に関しては、当センターの鈴木が留学中のときのボスと、このプロジェクトを草案して、世界中の臨床研究のグループに声を掛けて検体を集めて研究を行ったということで、アメリカの元ボスと鈴木が共同責任著者という形で、研究を直接、立案推進をしたということで中心的な役割をしていると思います。以上です。
○根岸委員
 ありがとうございます。よく分かりました。今後の治療開発の発展に期待をしております。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野理事
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 それでは、続いて深見委員、よろしくお願いいたします。
○深見委員
 深見です。私は、国際共同研究における役割ということでお伺いしたいと思ったのですけれど、今、根岸先生が御質問されましたので、具体的なところを1つ伺わせていただきます。今の胃がんのドライバー変異を多数見つけたということなのですけれども、75個というふうに、資料の8ページになります、既存のドライバー遺伝子と根本的に全く違うものであるのか、びまん性特異的、それから、ちょっと飲酒との関係が分からなかったのですけれども、飲酒に関係したドライバー遺伝子という理解でいいのかということをお伺いさせてください。
○国立がん研究センター間野理事
 75個のドライバーに関して、その多くは、60個ぐらいの既知のドライバーが今回も見つかっています。しかし、それ以外に関しては全く新しいドライバーが見つかっていて、例えばサイトカインのシグナル伝達に重要なJAK1とかJAK2チロシンキナーゼの活性型変異が今回見つかっておりますし、さらには同遺伝子の増幅も同時に見つかっています。それから、機能は分からないのですけれど、TRIM49C遺伝子変異というのも新しいドライバーで見つかっています。それから、ARHGAP5も新しいドライバーとして今回初めて報告されました。ARHGAP5は恐らく、スモールGタンパクの調整因子なので、これまで知られているRHOA変異とか、機能としては同じような役割の可能性があると思います。ですので、既存のものも確認されて発見されたけれども、新しいものも数多く発見されたというのが、この75個になります。
 それから、下の図ですけれども、アルコールによる変異シグネチャーがすごく多い集団があって、それは図にありますように、アジア人に多いし、びまん性の胃がんである、男性である、飲酒をしていると、先ほど申し上げましたように、アルコールの代謝酵素が2種類とも活性が低い遺伝子的素因を有している。やはりお酒に弱い方が習慣的に飲酒を続けると、お酒自体によるDNAダメージ、この場合のDNAダメージを生じるものは、お酒というよりはアルデヒドなのですが、アルデヒドによるDNAダメージが胃の中に蓄積していって、この場合は不思議なことに全てびまん性胃がんですから、びまん性胃がんの発がん原因になることが言えると思います。ですので、今後のがん予防の上でも重要な発見ではないかと思います。なぜ男性が多いかというのは、今、まだ分かっていません。以上です。
○深見委員
 新しいゲノムドライバーということで、今後の治療標的になり得るものもたくさんあったという理解でよろしいですか。
○国立がん研究センター間野理事
 はい、そうです。
○深見委員
 あと、もう一点なのですけれども、国際共同研究では国際連携を非常に精力的にやっておられます。それから23ページに、がんゲノム情報管理センターの体制整備ということで、説明していただいたのですけれども、本当にゲノムの解析から大きく花開いてきたと思うのですけれども、今後もゲノムなくしてはいろいろなことが語れない状況になってきて、ゲノムの解析を個々の研究所の人たちが個人個人というのではなく、こういうような体制で、きちんとみんなが使えるという形で運営していくという理解でよろしいですか。
 それから、中核的にアジアの拠点であったり、もちろん日本の拠点であったりという中で、このセンターの役割ということを、がんセンターとしては、今後の状況をどのように位置付けているのかを伺わせてください。
○国立がん研究センター間野理事
 深見先生がおっしゃるように、もちろんゲノムだけで全てが語れるわけではないですが、これからは、がんだけではなくて多くの人の疾患において、ゲノムなしで医療を進めていくことは多分、不可能ではないかと思います。そのような中にあって、例えばC-CATのシステムは日本の国のものですので、そのデータが日本の医療や世界の医療を良くすることに使われることに、C-CATの本来の目的があります。その利活用はC-CATの最も重要なミッションの1つであると考えて、国立がんセンターとしては運営しております。
 また、解析拠点という、研究の拠点ということに関して言いますと、日本はデータサイエンスがすごく弱い国と、残念ながら言わざるを得えません。ですので少なくとも、がんセンターが世界に競争力があるような場所でないといけないと思って、この6年間、所長として運営をしてまいりました。今かなり強くなりましたので、例えば、がんセンターが積極的に人事交流をしては、がん研究所のある、いわば学校みたいなもので、そこで勉強して成果を出して、またそれぞれの施設に戻っていただくとかという形で、日本全体の底上げの少しでもお役に立てればと思っています。以上です。
○深見委員
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 私からですが、リキッドバイオプシー、9ページの大腸がんの術後再発のことで伺いたいのですが、大変インパクトのある結果なのですけれど、一般臨床へ応用する手順を考えると、費用対効果をどのようにして保険の承認を進めていくのか、例えば患者さんの中では、自分でお金を払ってでもやってほしいという、自費でやりたいとかという希望の方の声も聞くのですけれど、その辺りをいかに迅速に医療に定着させるかというのは難しい問題があると思うのですけれども、今後どのような方針でお考えなのでしょうか。
○国立がん研究センター間野理事
 これは非常に難しい問題で、我々が勝手に言えるようなものでもないと思うのですけれど、今回のステージは特にカスタムメイドのリキッドバイオプシーなのです。今、保険で償還されているガーダントとかファンデーションワンリキッドとかではなくて、カスタムメイドで、その人の腫瘍をあらかじめ全エクソム解析をして、その中からリキッドバイオプシーに適した変異を見つけて、それでリキッドバイオプシーをカスタムメイドで作るということをしていますので、これがすぐに臨床応用に持っていけるかというと、まだ難しいのではないかと思います。
 ただ、そうはいっても、リキッドバイオプシーが術後の治療方針を決定する上で極めて重要であることは、このデータから間違いなく言えると思います。したがって、それを実際にどういう形で臨床に落とし込んでいくのかというのは、厚労省とも相談の上で、今後の開発をしていく必要があると思います。以上です。
○土岐部会長
 是非、進めていただくようによろしくお願いしたいと思います。ほかはよろしいでしょうか。それでは、1-1、1-2については、この辺りで質疑を打ち切りたいと思います。
 それでは、続いて評価項目1-3~1-5、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」について、まずは法人から説明をよろしくお願いしたいと思います。
○国立がん研究センター大津東病院長
 それでは、私、東病院長の大津と、中央病院の藤元副院長から、1-3について御説明いたします。我々の自己評価に関しては、28ページにありますように、Sとさせていただきました。根拠に関しては、28、29ページに示しております。
 それでは、トピックを幾つか御紹介いたします。最初にコロナに対する対応ですが、これは中央病院から藤元先生、よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 よろしくお願いします。島田に代わり、藤元から御報告いたします。コロナ禍の3年間、継続して対応しておりますが、だんだん体制を整備しております。特に30ページの左側の下のがん治療の話ですが、やはり治療継続が必要な患者さんが、PCRが陽性でなかなか陰性化しないところでも、やはり定期的な抗がん剤治療をやる必要があるということで、令和4年度に37名ぐらいの患者さんは、PCR陽性でも症状が改善していることが条件でしたが、実施することができております。
 さらに、目の前が築地の酸素ステーションでしたので、そこに対しては医師を定期的に派遣して協力してやっておりました。以上です。
○国立がん研究センター大津東病院長
 ありがとうございます。30ページの右側になりますが、これは東病院のほうですが、病院の敷地内に民間のホテルがオープンしまして、遠方からの患者さんや当院での通院治療を行っている患者さん用の宿泊、それからワンフロアを借りての外来もスタートしております。
 31ページの左側は、高度・専門的な医療の提供として、1つは光免疫療法で、これは両病院で行っておりますが、主に頭頸部がんを対象として、近赤外線を応用した形で新しいがん治療としての開発を行っております。そして既に承認して、一部は使用されております。それから、BNCTに関しては中央病院のほうになりますので、藤元先生、お願いいたします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 世界初のリチウムターゲットとした中性子照射装置ですが、幸い、悪性黒色腫と血管肉腫の患者で3件を始めて、左の下の図にあるようにかなりよく効いて、第Ⅱ相試験に進んで、今、症例を集積しているところです。
○国立がん研究センター大津東病院長
 続いて、32ページです。左側ですが、東病院と山形県の鶴岡市立荘内病院と、遠隔医療連携を結んでおり、既に2年前から遠隔医療の様々な交流をしております。その中で、大腸がんに対する腹腔鏡手術の技術支援を、オンラインで腹腔鏡の画像を両病院で同時に共有して当院の専門医がサポートするという技術支援を行っております。既に3例行われ、この後、婦人科にも拡大していく予定です。
 それから右側ですが、ロボットの支援手術は両病院とも非常に増えておりますが、中央病院のほうは藤元先生からお願いいたします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 特に食道の手術は30%であったのが、今年は45%までロボットの導入が進んでおります。直腸に関しては、ロボットがほとんど主体になって実施している状況です。
○国立がん研究センター大津東病院長
 東病院のほうも、既にダビンチが3台で、昨年度は630例ということで、国内でも一二を争う数になっております。
 続いて、33ページの左側です。これは東病院のほうですが、NEXT医療機器開発センターで開発し、がんセンターの認定ベンチャー企業として立ち上げました。手術支援ロボットのベンチャーを立ち上げて、そのベンチャーで開発して、そのベンチャー企業が出口としての成功事例になる大手の医療機器メーカーにM&Aをされて、昨年度、薬事承認を取得しております。正に、今、販売が始まるところまでになっております。
 右側です。両病院での低侵襲な治療の提供は数多く行っており、特に中央病院は、IVR関係では非常に高い技術で提供が行われております。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 33ページ右側の下ですが、AIを用いてどの部分を穿刺したらいいとか、ナビゲーションや穿刺のソフトを共同で開発しており、右側の一番下の円になっている所が、ここに穿刺すればこれだけのマージンがとれるというのを計算して、より正確な照射をするようにしております。
○国立がん研究センター大津東病院長
 34ページです。これは中央病院での医療機器の開発プロジェクトで、「MIRAI PROJECT」になります。藤元先生、お願いします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 中央病院で展開していますMIRAI PROJECTですが、2cm以上の早期大腸がんに対するESDが、再発のリスクも少ないということが2cm以上であっても分かりました。これに基づき、治療の第1選択となり得ることを論文化しております。それから、NECとAIの学習によって、存在診断だけではなくて、追加機能として質的診断です。本当にどういうがんがあるかということまでできるような開発を行っております。
 それから、東南アジアのATLASプロジェクトに今、力を入れておりますが、これについて大腸AIランダム化比較試験の準備を開始しているところです。
○国立がん研究センター大津東病院長
 34ページの右側以降は、希少がん、小児がんの治療開発を全国的な組織、一部はアジアへの展開も行っております。これは、中央病院のMASTER KEYプロジェクトの藤元先生から御紹介を頂ければと思います。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 やはり、希少がんは数が少ないために、集約とそれについての治療の開発が非常に重要になりますが、それに対するレジストリーを確立しております。施設はどんどん増えております。それから、それに対する治験も、何とか癌とかを個別にやっていてはとても開発できませんので、ある遺伝子の異常といったものの起因するバスケット型のデザインの臨床試験を開始しており、今は15社から試験を受けております。
 レジストリーも、去年より500件ぐらい増えている状況です。先ほどと同じように、アジアの17施設で同じような登録を開始しております。
 それから、希少がんなどの開発に対しては、薬だけではなくてコンパニオン診断薬の開発をしないといけないのですが、それが製薬企業等に対しても検査会社にしてもなかなか進みませんでしたが、当センターから要望書を出して、2月に同時にしなくても、取りあえず治療をして、その後で開発すればよいというような通達を受けました。
○国立がん研究センター大津東病院長
 35ページの右側です。小児がんの医師主導治験と国内の小児がんに対する薬剤開発のコンソーシアムが作られていますので、御紹介をお願いします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 これも同じです。コンソーシアムを作って治療体系を確立しなくてはいけないということで、医師やCRCとで人材育成を努めるとともに、ステイクホルダーで連携して話を進めていきたいということです。今年の4月に横紋筋肉腫に対する遺伝子の異常が分かっておりましたので、それに対する申出療養も開始しております。
○国立がん研究センター大津東病院長
 36ページに移ります。「患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供」の項目に関しては、両病院での相談支援体制をかなり充実化しており、両病院ともに相談件数は過去最高となっております。
 それから就労支援に関しても、両病院とも最高の件数になっております。今は厚労科研の研究班として、バーチャルのワークシェアシステム、特にパートタイム等でも入れるようなシステムを立ち上げているところです。
 右側は、医療の質の向上に向けた取組として、両病院でそれぞれの体制整備を行っております。中央病院のほうでは、TQMセンター、東病院のほうではメディカルアシスタント室を立ち上げ、強力にタスクシフト、それから医師の働き方改革をサポートするシステムも立ち上げております。
 最後に、「アピアランスケアガイドライン」に関して、e-learningの開発も行っておりますので、これは中央病院の藤元先生からお願いいたします。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 アピアランスに関する科学的な根拠に基づくケアを確立しようとして、e-learningを開発しております。実際に、それをコンテンツの効果判定を行い役立つということが分かりましたので、更に実装するような付帯ツールの開発に着手したところです。以上です。
○国立がん研究センター大津東病院長
 医療の提供に関しては、以上です。ありがとうございました。
○国立がん研究センター平子理事長特任補佐
それでは、1-4の人材育成に関する事項について、人材育成管理事務局を担当しております平子から説明申し上げます。資料は37ページを御覧ください。
 今年度は、自己評価はAをお願いしております。ここで指標目標の達成状況について一覧にしておりますが、達成状況については令和3年度と比較して、令和4年度はおおむね前年度相当、それ以上の高い達成を行っているということと、令和3年度では特に達成が難しかった海外からの実施研修等の受入れ人数などが大きく改善しております。
 次のページです。要因分析等については、やはりe-learningが一般的に普及し、また実地で行う場合にもハイブリッドで行うといったことから参加者が増えていること。また、コロナ禍で工夫して、海外からの研修生等の受入れを積極的に受け入れたことと、他の研修施設で受入れができない研修者を当施設で受入れを行っているということがポイントです。
 次のページです。ここで個別の事項についてお話いたします。左側は、希少がんのMeet the Expertというものです。これは、希少がんに関する最新の知見を、講義やディスカッションの模様を収録して、Web上で公開していくというものです。希少がんについては、専門家も全国に散らばっていて、一部の患者についても大きなマスではなくて全国に散らばっていることから、こういう機会がなかなか得られにくかったことがあります。これを、令和4年度よりWeb配信の形態で行い、皆さんが参加しやすい形で全面的に展開をいたしました。
 右側は、橋渡し研究推進センターです。これは橋渡しということで、基礎から臨床への橋渡しをしていくというセンターです。ここでの人材育成として、例えばアカデミア研究者がプレゼンをして、産業界の代表が厳しく審査を行って、シーズ開発やプロジェクトマネジャーなどを育てるような「イノベーションタイガー」という取組み、またレクチャー形式にはなりますが、先端医療の研究開発に関わる産官学全ての方に対して、例えば今回は、核酸デリバリーといったトピックなどを取り上げながら、こういった活動を拡大しているものです。
 次のページです。国内研究者の育成の推進ということで、特に最近は連携大学院について力を入れております。現在、21大学と協定を行っておりますが、そういった関係する大学の教員発令のある職員が増えてまいりました。そういったことも含めて、NCCとしては連携大学院規程という内部の規程を設けて、中の状況を整備しました。また、その中に教員が今92名おりますが、そういった方が一堂に会して情報共有をしたり、統一のルールを策定したり、カンファレンス等をどうやっていこうかということを相談できるような委員会を設置することといたしました。
 また、右側のICRwebになりますが、これは臨床研究教育を推進することで行ってまいりましたが、新たに118講義、新たに20施設、2万人の増加など、着実に増やすとともに、ATLASとして東アジアとの共同の人材の育成、また6NC共通教育プラットフォームとして、臨床研究だけでなく動物実験、データサイエンス、知財などの講義を連携して充実して行っております。以上です。
○国立がん研究センター井上副がん対策研究所長
 続いて、医療政策の推進等に関する事項について、がん対策研究所の井上から説明申し上げます。41ページからとなります。医療政策推進に関する中長期的な目標です。内容としては、国民の視点に立って科学的知見を踏まえた専門的提言を国に対して行うこと、がん対策の企画立案・実施に必要なデータを整理して均てん化を推進する、また、国民・医療機関に向けて、科学的根拠に基づく予防・診断・治療法の情報提供を充実させることによって、がん診療連携拠点病院等の診療を支援することとなります。
 指標の達成状況ですが、自己評価としてはAをお願いしております。この指標は2点あります。病理診断コンサルテーション数は目標の160%を達成しており、これは研修対象者への周知や希少がん等の研修内容のコンテンツの充実を図る取組を進めたことがあげられます。ホームページのアクセス数については目標の90%で、昨年度の85%と比べると改善はしておりますが、更なる達成の取組が必要と考えております。
 42ページは、認定の根拠ですが、この後のスライドで説明いたします。
 「[1]国への政策提言」に関しては、国の審議会や検討会等に大変多くのセンター職員が委員や委員として参画するなど、がん政策に関わる政策形成や施策の推進等に大きく貢献をしております。この中で、がんゲノム医療の実装に向けた取組、がん診療拠点病院の指定要件の改定、第4期がん対策推進基本計画、診療報酬改定などについて、要望や提案内容の取りまとめを行い、それを厚労省に提言いたしました。
 「[2]医療の均てん化」に関しては、地方公共団体や拠点病院、相談支援センターへの支援をオンラインやe-Learning研修、それからコンサルテーション、そして研修運営などの支援などのような様々な形態で実施しております。がん診療連携拠点病院連絡協議会や、その各部会、そして関連するフォーラムの場を通じて、取組の好事例の共有も進めております。
 最後に、「情報の収集・発信」について簡単にお話いたします。[1]がん情報サービスについては、ガイドライン改訂などによる内容の更新やページの改善、情報格差の改善などを考えながらリニューアルを進めております。また、情報作成プロセスの中で、外部団体等の協力を得る体制の推進を図っており、例えば小児がん研究グループとの協力や、患者・市民パネルによる査読の協力などが、その例となります。[2]がん登録については、2019年の全国がん登録の集計を厚生労働省から公表しました。また、全国がん登録の利活用のための審議委員会の開催や、その支援、更には登録システムの公開を進めております。[3]の「患者・市民パネル」では、オンラインで2回開催いたしましたが、秋の検討会では、全ゲノム解析研究における患者・市民参画のあり方について検討がなされております。[5]の喫煙に関しては、成人年齢の引き下げが行われましたので、世界禁煙デーに合わせて、若年喫煙の健康影響について注意喚起を行ったほか、改正健康増進法普及のために、法改正のポイントをまとめたリーフレットの配布を進めております。かいつまんでご説明いたしましたが、以上です。ありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの評価項目1-3~1-5までについて、委員の先生方から御質問があればお受けいたします。よろしくお願いいたします。中野委員、どうぞ。
○中野委員
 中野です。いろいろ多方面にわたり本当に努力して、よい医療の提供を含めて努めてみえることがよく分かりました。ありがとうございます。1点お伺いしたいのが、東病院の敷地内にオープンしたという民間のホテルですが、稼働率もかなり良くて、いいなと思いました。お伺いしたいのは、例えば患者さんや御家族から、経済的な負担というか、当然宿泊料などがいろいろ掛かるでしょうし、そういうことに関して評判というのも失礼ですが、どのようなお声が今あるかということや、そちらに関して何か、患者さんをサポートできるような制度やシステムは何かあるのでしょうか。お教えいただければと思います。
○国立がん研究センター大津東病院長
 大津から回答させていただきます。御指摘の件、ありがとうございました。基本的には、病院の利用者、治療のために通院されている方、その御家族も含めて、一般の宿泊客よりも安い価格で設定されております。それから、特に長期間、放射線等で2、3週間とか掛かるような場合の割引等も含めての対応になっております。都心ではないので、価格が高いということに関しては、今のところクレームは、それほどありません。よろしいでしょうか。
○中野委員
 ありがとうございます。写真を拝見すると、お部屋もかなり広いかなと思ったのですが、最初から、作るときからバリアフリーや御病気の方への対応という観点で、設計などをされたのでしょうか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 おっしゃるとおりで、実は患者会の方に、最初から何度も設計の段階から御意見を伺い、実際に患者会の皆さんの、我々が気が付かないような細かい所を非常に的確に御指摘を頂いて、患者さんにやさしいというか、フレンドリーな部屋の構造になっていったのではないかと思っております。
○中野委員
 ありがとうございます。非常にすばらしい実践だと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター大津東病院長
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて根岸委員、どうぞ。
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございました。私からは、36ページの5番の「総合的な患者支援」についてお尋ねいたします。御発表の中に、相談件数、セカンドオピニオンが過去最多とありましたが、数がこれだけ増えているということは、恐らく様々な問題や不安や悩みを抱えている患者さんが多いということだと思います。この中で、私は両立支援をする立場なのですが、その相談にはどういったものが多いのでしょうか。つまり、そういうデータが余り多くはないもので、参考にさせていただきたいです。
 それから、そういうデータを今後公表するような計画がおありでしょうか。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター大津東病院長
 大津から回答させていただきます。今の御指摘の事項に関して、今、正に厚労科研の研究班として、私が代表なのですが、ソーシャルワーカーの皆さんが中心となった組織で立ち上がっております。相談の内容に関しては、もう既にデータはあります。一番の問題は、やはり企業側の不理解というか、企業側への啓蒙が十分ではないと。それから企業側も、その対応をどうすればいいのかが分からないという戸惑いもあります。実際に、いろいろな就労をサポートするような支援の仕組みが、患者さん側と企業側の両方にまだ十分に認識されていないのかなというのが一番の問題かと思っております。
 この件に関しては、今、企業のオンラインのネットワークの中に、就労支援相談のコンテンツをe-learning的なものを入れて、多分NTTだと思うのですが、オンラインで企業が数百社の企業がそこに入っているネットワークがあります。今は、そのネットワークを通して、企業への啓蒙と周知を図っている状況です。これでよろしいでしょうか。
○根岸委員
 ありがとうございます。企業規模による支援の格差が広がってきているような感じがいたします。もし相談内容の公表、研究結果が発表されることになれば、そういった労働者の視点に立った両立支援にいかしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター大津東病院長
 1点だけ追加させていただくと、以前患者さんのアンケートを取ったときに、結構ニーズが多かったのが、時短です。フルは厳しいけれども、パートタイム的なものはやりたいという患者さんの希望が多く、今はバーチャルな組織を立ち上げており、その中でそれぞれのパートタイムでやるようなニーズとのマッチングを今、作っているところです。特に若年者の方などが多かったと思うのですが、在宅でできるような仕事の紹介、マッチング等も含めて、今、構築をしている段階です。
○根岸委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて深見委員、よろしくお願いします。
○深見委員
 深見です。40ページの連携大学院について、お伺いさせてください。他大学の大学院から、がんセンターで研究したいと希望する方は非常に多いと思いますが、現在の受入れは個々の研究者間が知っている方同士をベースにして受入れをしていただくような体制だと思うのです。この規程ができたことによって、そういった個人的なつながり以外に、マッチングのような形で研究者を受け入れられるようになるのかどうかが、1つです。
 それから、逆に大学院生の受入れと同時に、お医者さんたちが学位を取ろうとするときに、そういったことに対するサポートは、どこか連携大学院を紹介したりといったことがあるのかどうかをお伺いしたいと思います。学位の取得者が、令和4年度は少し減っているようなのですが、令和3年度が多いので、ばらつきの範囲かなとは思うのですが。医師が学位を取りたいと思ったときに、どういうサポートをしているのか、その辺りを教えてください。
○国立がん研究センター平子理事長特任補佐
 御質問ありがとうございました。平子からお答えさせていただきます。まず、この連携大学院のシステムが、大きく分けると、我々は3タイプに分けています。1つは、職員が大学に応募して働きながら行けるタイプと、もう1つは恐らく先生はこれをおっしゃったのかなと思うのですが、連携大学院を通じて大学側から、がんセンターが受け入れるタイプ、そしてCタイプとして連携大学院ではないのですが、大学から任意研修生として大学院生を受け入れるタイプと3つあります。こういった中で、例えばAタイプであれば、最初はどの研究というのがはっきり決まっていなくても、割と広い形で大学の側にも受け入れていただいて、働きながら興味のある分野について研究を深めていくことができているのではないかと思います。
 この点は、2番目にいただいた御質問とも関連いたしますが、医師の研究の支援のサポートという意味では、私どものレジデントであるとか、職員も含めてですが、そういった方が積極的に連携大学院に応募できるような相談ができるようなこともさせていただいております。そういった意味では、働きながら安心して研修、そして研究を行える体制が整っているのではないかと考えております。以上です。
○国立がん研究センター間野理事
 研究所長の間野です。追加で発言なのですが、我々は毎年1回、研究所のオープンキャンパスを開いております。そこで、日本中の数多くのアカデミアに対して、企業も含めてですが、大学院をうちでやりませんかという説明会をしています。全体の説明をした後で、今度は個別の研究者との個別Webミーティングなどを開いていて、そういう形でのマッチングを進めております。今年は4月22日に開いたのですが、150名近い参加者があり、非常に盛況でした。
 また、がん対策研究所でも、同様のオープンキャンパスを開いており、様々な分野で大学院をサポートするような仕組みを推進しております。以上です。
○深見委員
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 ほかにいかがですか。私から1点、28ページにお示しいただいたのですが、病院の手術件数に関することです。特に、東病院のほうはかなり目標を達成されていますが、中央病院のほうが少し不足しているようです。コロナの影響もあって、日本全体で5%ぐらいは減っているのかなという気はしているのですが、それより若干低いように思われます。
 その要因ですが、我々の病院では、ひとつには、ロボット手術というものをやると、結構長い時間が掛かって、かえって麻酔科やメディカルスタッフから長時間労働につながるということで制限が掛かったりするのですが。この92%というのを、どのようにお考えか、御苦労されているか、改善の方法などはありますか。
○国立がん研究センター藤元中央病院副院長
 中央病院副院長の藤元からお伝えいたします。まず最初に、ロボットは慣れてきており、むしろ早く終わるようになっております。合併症も少ないですので、ロボットに慣れてきた診療科においては負担はなく、普通の手術よりも早く効率的に行えるということと、教育的にも非常によい効果も出しております。導入時は少し時間は掛かりますが、早い段階でラーニングカーブも上がっていますので、むしろ、その点は改善しています。
 症例数が伸びなかった理由は、中央病院の場合は全国から20%~10%ぐらい患者が来られていたのですが、それがやはりコロナで来られなくなってしまって全体が下がった原因かなと思っております。令和2年には飛行機すら飛ばないような状態になっておりましたので、その辺りでの地方からの10~20%ぐらいの患者数が中央病院は強く影響したと。もちろん、外国の患者さんも来られなくなって、今年になってからは結構東南アジアから患者も受け入れるようになっていますので、そのようなコロナによって起こった原因かと考えております。
○土岐部会長
 ありがとうございます。花井委員、どうぞ。
○花井委員
 私からは、44枚目のPPIについて教えていただきたいと思います。PPIという言葉は広いのですが、規制当局(PMDA)などで見ますと、かなりパイプラインの上流から下流、最後はHTAまでかなり関与していて、そこに参加する患者会も、ある程度オーソライズしてストックしています。つまり、患者会も利益相反などいろいろありますので、そういった形で、2周ぐらい遅れている感じなのですが。
 医療施設でのPPIになりますと、例えば臨床研究のプロトコールに関与するということだと思うのですが。ホームページなどを見ると、また患者さんへの情報提供的なことが多いと思うのですが、実際にプロトコール等に患者参画ということも実例としてはありますか。もう少し教えていただけますか。
○国立がん研究センター大津東病院長
 大津からお答えさせていただきます。我々の所では、スクラムジャパンのPPI活動を進めております。基本的には、ほとんどのプロトコールに関して患者会の皆さんにチェックしていただいています。それから、定期的なミーティングで、つい先日スタートしたのは、これもバーチャルタウンというものを作り、メタバースの中に患者さんのいろいろなSNSの交流の場を作って、その中で出てくる頻度の高いワードに関して、1つの開発のキーワードとして取り上げるというようなことをやっているのが1点です。それから多分、中央病院もJCOGとかでやっています。
 今、先生がおっしゃったことに関しては、我々も別途また進めており、AMEDとも絡んでおります。やはり規制側、米国でいえばODACといった所に相当するようなものを作る組織を、今、企業と患者会の方々と共同で、別途に立ち上げを進めております。おっしゃるとおり、かなり周回遅れにはなっておりますが、徐々に、そういった本当の意味の開発、新しいシーズから医薬品開発、それから臨床試験に関して、かなり深い理解を持たれる方が少しずつ増えてきていますので、引き続き情報交換を進めながら、規制の所まで入れるような組織を作っていければと考えております。以上です。
○花井委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、続きまして「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」の評価項目2-1~4-1について、議論したいと思います。それでは、法人から説明をよろしくお願いします。
○国立がん研究センター尾崎理事長特任補佐
 それでは評価項目2-1~4-1まで、がんセンターの理事長特任補佐の尾崎です。よろしくお願いいたします。私からポイントの御説明をいたします。
 まず、45ページです。2-1の業務運営の効率化に関する事項です。自己評価Bとさせていただいております。指標としては、後発医薬品85%以上となっているところ93.1%ということで更に上昇しております。また未収金以下は、次のページを見ながら御説明をさせていただきます。
 46ページ、特に2番の効率化による収支改善の部分です。経常収支率の改善と安定化ということで、ここにありますとおり平成27年度に黒字に転換して以降8年連続で、今回、令和4年度につきましても黒字を維持しております。経常収支率は101%ということで、光熱費、電気・ガス代が相当多く、令和3年度と比べてアップいたしましたので、負担増になりましたけれども、医業収支や研究に関する収支などで、その分をカバーし、ほぼ概ね経常収支に関しては令和3年度と同じような率ということで、101.2%を達成しております。
 それから[2]の材料費等の削減ということですが、こちらも例年、引き続きまして医薬品の共同購入等により削減を果たしております。右側の[3]の未収金の改善は、目標のとおりです。令和4年度は0.05%ということで、患者さんがたくさん増えている中で様々な取組を進めております。ここにありますのは面談回数を増やすということなどで、できるだけこの金額が上昇しないように定期的に未収金の改善を図っております。
 また、[4]の一般管理費は、事務担当部門を中心に一般管理費、これは人件費等を除いた管理経費ですけれども、先ほど申し上げましたように光熱費の影響、あるいは光熱費が増えたことにより物件費の増など、様々な影響が非常に大きかったということもあり、昨年度よりも金額が増加してしまったという状況です。その他、電子化推進を図っておりまして、今では半分以上の手続の電子化が進んでおります。
 次に47ページです。財務内容の改善ですが、自己評価はAです。47ページの評定の根拠は、48ページで御説明をいたします。まず、左側の自己収入の増加ということで、外部資金の獲得として、ここにあるように年々、外部資金獲得額が順調に金額が積み上がってきております。令和4年度は過去最大ということで、合計179億円で前年度比113%増ということです。
 公的な資金と、共同研究費がありますが、特に共同研究費の伸びが高い状況です。それから右側の知的財産戦略につきましても、次なる戦略的な取組をがんセンター全体で進めております。知財収入は、3年連続で1億円を突破するという状況ですし、特許支出を抑えることで利益率の実現も図っております。それから[2]の産学連携の推進も進めておりまして、過去最高というような状況になっております。
 49ページですが、「センター発認定ベンチャーの拡大」ということで、NCC発のベンチャーの認定制度というものを想定しており、投資家の方々が認定制度の認定を受けることによって信用を得やすいということで、こういった取組を進めながら、様々な取組を進めております。それから寄付金につきましても、2年連続で3億円を達成という状況で、WEBサイト、パンフレットなどを活用いたしまして様々な情報発信をする。あるいは過去に支援した方へのダイレクトメールとか、病院パンフレットを目立つ所に置くといったようなことや雑誌に掲載するということなどで取組を強化しております。一般の方からの割合も増加していることで、47%に達しております。
 それから医業収支状況、これは先ほどの経常収支のところとも関連いたしますけれども、1人当たりの入院単価、手術件数の増、あるいは当該医薬品の価格の高騰により、医業収支の状況についても年々増加している状況です。下にありますように、長期借入金の償還も進めていくという状況です。そういったことで、Aとさせていただきました。
 50ページ、4-1「その他の業務運営」で、自己評価Bとさせていただきました。51ページを見ていただければと思いますが、法令遵守等内部統制の適切な構築です。監事及び外部監査人と連携して、内部統制等を含めた様々な取組を進めておりますし、研究費に関するコンプライアンス研修等も行っております。そして、Ⅱの人事の最適化として、タクス・シフティングの推進、障害者雇用の推進については、法定基準を上回る雇用になっております。
 それから右側にありますように、積極的な広報といったことも進めており、メディア掲載、公式ホームページの動画の活用、SNSの活用などにより、下に書いてありますけれども、メディア掲載数は昨年度の1.3倍、ホームページのアクセス数も増加しているという状況で、引き続き、こうした取組を今後も進めていきたいと考えております。説明としては、以上です。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの御説明に対して、委員の先生方から御質問等はありますか。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 藤川です。財務諸表とか、体制整備に関連することとして、3つお聞きしたいのですけれども。1点は、先ほど、ホテルの話が出たのですが、これは敷地内に三井不動産系のホテルが建つということだったようなのですが、センターとしては機材とか、そういうものをもらうようなものなのでしょうか。センターが建物を建てるとかということではなく、どういう仕組みになっているのかということを教えていただきたいと思いました。また、そんなに高くない収入というか、単価だということでしたので、センター側から何か優遇のようなものを与えているのかどうかというところも少し聞きたいと思いました。
 2点目ですが、大変優秀な研究者の方が集まってくるようになっているということで、そういう方々に対して引き止めるというのは、もちろん魅力的な研究ができるということなのでしょうが、報酬というか、そういう対価としても、かなり大きく出していかなければ、ほかの諸外国と比べて敵わないということになると思うので、そういったところの工夫があるのかどうかを教えていただきたいと思いました。
 あと、3点目ですけれども、最初の辺りで、例えばデータベースとか、バイオバンクとか研究成果とかにおいても、本当に世界に負けないぐらいで、世界一というようなものもたくさんあるということをお聞きしたわけですが、そうなってくると、これを盗みたい、あるいは壊したいというような異分子というか、そういうものも入ってくるおそれがあるので、それを守るために、どのように研究者の素性を問題なく確保しているのか。あとは、物理的な設備をどのように守っているのか。また、情報セキュリティというような面でも、大事なものをどのように守っているのかということで、やっつけ仕事ではなくて、これだけ重要なものを持っているのであれば、ここに相当お金を掛けていかなければいけないかなと思ったので、その辺りが気になりましたので、教えていただければと思います。以上、よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター大津東病院長
 1点目の東病院連携ホテルの件ですが、土地を貸与する形で、周辺の地価に合わせた形で、その分の賃料を頂いております。あとは、先ほど言いましたように、ホテルの1フロアを当院の外来として借りておりますので、ほぼ相殺されると考えていただければよいかと思います。1点目はそれでよろしいでしょうか。
○藤川委員
 分かりました。ありがとうございます。
○国立がん研究センター尾崎理事長特任補佐
 2点目と3点目でございます。もしかすると補足があるかもしれませんが、研究者に関して、どのような形で引き止め、募集を含めて、どのように対応しているのか。それから、3点目がデータベース関係、個人情報、情報セキュリティ関係についての御質問だったと思います。私のほうからは、先ほど申し上げましたように、48ページにあるとおり、研究者の方々には非常に頑張っていただきまして、今、外部資金獲得をアップしていただいております。
 がんセンターとして、研究者の方々がしっかりと研究に取り組めるようにする、あるいは、その研究資金をしっかり獲得できるようにするということで、研究支援センターという、研究所あるいは病院とは別の組織において、専門家を含めて、様々な研究がしっかりと円滑に行われるようにすると共に、獲得を円滑にするように進めているということで、そういった研究支援に関する取組、あるいは事務支援の取組をしっかりと進めて、研究者の方々への様々な対応が、より素晴らしいものとなるように、しっかりとやっていくという状況です。
 それから、最後の質問ですけれども。研究していく上で、あるいは医療を進めていく上で、情報データベース、あるいは情報関係の様々な取組と一緒に非常に重要だと思っておりまして、こちらも専門の情報統括センターという組織を作って、そこで事務部門あるいは様々な研究者、医療の関係者、センター全体となって、個人情報を含めて様々な取組をしっかりと進めております。特に情報統括、情報セキュリティに関しては、情報セキュリティに関する専門の委員会を作って、そこで様々な問題について議論し、課題を解決していくというような取組を進めておりますし、個人情報の取扱いについても、同様に専門の委員会を作成して対応しております。いずれにしましても、研究、あるいは外部資金獲得、知財戦略、産学連携、こういったことがしっかりと進んでいくように、がんセンター全体として取り組んでいきたいと思います。以上でございます。
○国立がん研究センター間野理事
 すみません。研究所長の間野です。追加で、補足の説明です。データのセキュリティに関しては非常に気を遣っておりまして、得られるデータのセキュリティーレベルによって分けているのですね。例えば、C-CATに集まっているデータは、決して研究用のネットワークにはつながっていなくて、そのデータがどこに保全されているかも明らかになっていない状態で、極めてクローズな環境で、もちろん3省3ガイドラインに沿った形でセキュアにストックしています。研究データも、研究所として集めている研究データと、各研究室が扱っている研究データとは、またセキュリティが別れていて、外からアクセスができるかできないかとか、どこに保全するかとか、それも分けて考えています。データセキュリティーに関しては非常に厳しく守っている状況を維持しております。以上です。
○藤川委員
 ありがとうございます。研究資金をたくさん取ってくるということで、もちろん、やりたいことができるのはとても大事だと思いますが、がんセンタークラスであれば、外国と比べてどうなのかということが分かるような資料の出し方をしていただけると。どんどん伸びているのは確かなのですが、これが諸外国と比較しても、十分遜色ないようなレベルなのかどうかということが分かるといいなと思いました。
 また、最後の質問に関しては、この前、外国に盗まれるような事件もありましたので、非常に大切な財産だと思うので、そういうことがないように、しっかりやっていただきたいと思います。以上、よろしくお願いします。
○国立がん研究センター尾崎理事長特任補佐
 ありがとうございます。御指摘の点も踏まえて、今後、しっかりと対応していきたいと思います。特に2番目の、外国との比較等については、できるだけ早く検討してみたいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長
 私から1点です。働き方改革に関する記載がないのですが、ほとんど全てのNCの方もかなり尽力されているようなのですが、今回は何か取組はされていないのでしょうか。
○国立がん研究センター尾崎理事長特任補佐
 働き方改革に関しては、特に医師の働き方は非常に重要だと思います。51ページのⅡの人事の最適化の中の「医師業務等のタスク・シフティングの推進」の所に、まずは医師本来の役割をしっかり果たすことができるようなタスクシフトの推進といったものを記載しました。ただ、令和4年度の取組ということで、今後、令和5年度に向けて、がんセンターのほうで、今、様々な検討をしていますので、それを来年度の実施の内容として、しっかり書いていきたいと思います。
○土岐部会長
 分かりました。かなりの方から、労務管理から始まって状況を報告していただきましたので、是非、来年度に期待したいと思います。よろしくお願いいたします。
 よろしいでしょうか。それでは、最後に、法人理事長と監事のほうからヒアリングを行いたいと思います。まずは法人監事より、業務の監査結果等を取りまとめた「監査報告」について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをよろしくお願いしたいと思います。
○国立がん研究センター小野監事
 がん研究センター監事の小野と申します。よろしくお願いします。私どもは監事2名で監査業務をやっておりますが、まず、追加提出の資料を基に、監査結果には重大な指摘項目はないということで、適正ということとしております。がんセンターの業務全般に関しましては、理事会等で一部コメントを述べさせていただいていますが、全体として申し上げますと、今日御説明させていただいたように、この国立がんセンターは、言うまでもなく研究・臨床において、国際競争の最前線におります。センターの取組は、これまでのところ、投資に見合う、それ以上の成果を幸い、獲得できたと見ております。これは研究開発独法でございますので、適格なシーズの発見、それから育成取組、成果の実現、こういったサイクルを的確に実践されてきたというふうに見ております。ただ、このサイクルは、これが成り立つために、その前提となる人材確保、人材に対する利き目も要ります。それから獲得した人材の育成と、最後にそれら全般を支える支援基盤、こういうものが揃って成立するわけですので、センターにおいては、今後とも国の御理解と御協力をいただきながら国民の期待に応えていただきたいと思っています。課題のほうもということでしたので、1点だけ申し上げますと、今日も説明がありましたように、研究や臨床については大変高度なものですので、高度な倫理規範、それから医療安全管理ということは非常にきちんと構築されております。何かあったときも直ちに、透明性をもった中で、きちんとしたルールに沿った処理が行われたということは、私は監事として、その都度確認いたしました。
 もう1点申し上げますと、そういうことでは臨床研究も、先ほど委員から御質問がありましたように、国家レベルの機密保持ということも扱っておりますので、この点に特段の注意を払っているわけですけれども、ただ1点申し上げるとすれば、センター全体の一般管理については、平成22年の発足以来、10年以上経ちまして、やはり相当な規模になっていますので、この点については今後とも少し、いろいろな面でガバナンスとか、セキュリティなどというところは、今後とも努力していく余地はあろうかと思います。私からは以上です。ありがとうございます。
○土岐部会長
 ありがとうございました。続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをよろしくお願いしたいと思います。
○国立がん研究センター中釜理事長
 それでは、理事長の中釜から、現在の状況等を踏まえた今後の課題等について、少し触れさせていただきます。今日、がんという病態が非常に複雑で、多様であることが分かってくる中で、個々人の病態に応じた個人に最適な医療の提供、開発は、センターとしての大きなミッションだと認識しております。開発研究を推進し、更にその成果をいかに迅速に実装化するか、そのための体制を整えることが重要だと考えています。これは課題としては日々大きくなってくると認識しています。加えて、国内だけではなくて、国際的な競争力を担保しながら進めていかないと世界の潮流に遅れることから、研究支援、人材支援というものを通しながら開発研究を適切に推進し、さらに実装化を目指すような取組が必要になります。この実装化に関しては、単に臨床部門といった単一部門だけではなくて、研究所あるいは、がん対策研究所などとも連携しながら、組織内における各部門の連携を図りながら進めていく必要があると感じています。
 それから、やはりアンメットニーズに応えるということもセンターとして非常に大きなミッションです。個別化医療と同様に重要なミッションだと考えており、そういった意味では、センターはこれまで、がん医療の均てん化ということで、全国450を超すがん診療連携拠点と連携を図り、情報を共有しながら、がん医療の均てん化を図ってきわけですが、いわゆる希少がん、小児がん等のアンメットニーズが高いものに関しては、ゲノム医療がそうであるように、集約化という仕組みを介した均てん化の仕組みを迅速に行うことが、今後の更なる課題と思います。更に、それを可能とするための研究基盤、データ基盤、ゲノム情報とのミックス情報と診療情報をいかにデータとして使いやすくするか。しかも、それをセンターだけではなく、広く日本の研究者や医療者に使っていただく仕組みを作るのがセンターとしての役割であり、今後の課題だと思います。
 その際に、今日、委員の先生方から御指摘のセキュリティの問題は、情報をいかにきちんと確保して流出しないようにするという意味での、いわゆる分化バランス、及びコンプライアンスの体制強化が必要だと改めて感じました。同時に、そのようなデータをより早く国際的なデータ共有も考えたときには、国際的な規制の問題も大きな課題としてありますので、これからのセンターの可能性を、より展開するためには対応が必要な部分だと思いました。今日はあまねく詳細はお話しませんでしたが、遠隔医療に加えて臨床試験を行いつつ飛躍するような、いわゆるデジタル情報など、DCTの仕組みの強化など、今後はそういうものも世界に残していくために、センターが日本の関連医療機関との連携強化を図りながら積極的に取り組んでいくことで、日本全体として取り組んでいく姿勢が必要だと思います。繰り返しになりますが、そのための人材が育成できる基盤であるとか、データ基盤の構築は、非常に重要な役割を果たすだろうと認識しております。私からは以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。委員の先生方、よろしいでしょうか。それでは、以上で「国立研究開発法人国立がん研究センターの令和4年度業務実績評価について」の審議を終了したいと思います。皆様、どうもありがとうございました。最後に、事務局から今後の流れについて連絡をお願いします。
○北久保室長補佐
 事務局でございます。今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただいた令和4年度業務実績評価については、この後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえて、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに、公表いたします。
 委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、明日予定しております、JHに関する審議も踏まえて、8月16日までに、事務局あて、メールにより御送付いただけますようお願いいたします。
 なお、決定した厚生労働大臣による評価については、後日、委員の皆様にお送りいたします。次回は8月8日13時半より、明日ですが、国立国際医療研究センター及び国立循環器病研究センターの評価に関する審議を予定しております。連日の審議となり大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
○土岐部会長
 それでは、本日は以上といたします。長時間にわたり、どうも御協力ありがとうございました。