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医療DX推進に関する意見交換会 議事録
日時
令和5年9月8日(金)17:30~18:00
場所
厚生労働省 省議室(9階)
議題
医療DX推進のために必要な取組について
議事
- ○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ただいまから「医療DX推進に関する意見交換会」を開催いたします。 私は、本日司会を進めさせていただきます、医薬産業振興・医療情報審議官の内山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、三師会として、日本医師会、医師歯科医師会、日本薬剤師会の会長の皆様方、また、四病院団体協議会を代表して日本病院会会長にお越しいただいております。
それでは、会議に先立ちまして、加藤厚生労働大臣より御挨拶をいただきます。
○大臣 それぞれ大変お忙しい中、しかも台風が近づいているという状況の中でありますけれども、三師会の会長の皆様方、また、四病協を代表して日本病院会の会長にもこうして足を運んでいただきまして、ありがとうございます。 座ってお話をさせていただきます。
タイトルにありますとおり、今日は医療DXに関する意見交換会ということでありますが、医療DXについては、去る6月2日に総理を本部長とする医療DX推進本部で工程表を決定し、現在、厚労省が中心となって国民の皆さん、また、医療現場の関係者の御理解・御協力をいただきながら強力に推進をさせていただいているところでございます。これを推進するに当たっては、国民の皆さん、また、現場の皆さんに医療DXの意味、目的、価値、メリット、こういったものを共有化して進めていくことが必要であると思っておりますし、また、電子カルテ、電子処方箋の普及、そして、マイナ保険証の利用拡大、こういったことを一つ一つ具体的に進めることが大事だと考えております。
先日、東京慈恵医科大学附属病院、また、日本調剤の御成門薬局を訪問させていただいて、マイナ保険証利用に関する先駆的な取組を拝見させていただき、また、マイナ保険証の利用がどういったメリットがあるのか等についても現場の皆さんから直接お話をお伺いしたところでございます。 現在、マイナ保険証については、ひもづけの誤りあるいは医療現場でのシステムの不具合が生じており、国民、また、患者の皆さん、さらには医療現場の皆さん方にいろいろと御迷惑や不安をおかけしているところでございます。現在、そうした一つ一つの課題を洗い出して、その解消に向けて、具体的に、保険者をはじめ関係者の皆さんとともにスケジュール感を持って取組をさせていただいているところでございます。
また、同時に、こうした様々な先進的な取組をお伺いする中で、マイナ保険証によって診療情報や薬剤情報が有効に活用できること、また、それによって重複投薬や併用禁忌のチェックなど、より質の高い安全な医療につながっていること、さらにはヒューマンエラーの削減などを通じて、事務の効率化、簡素化にもつながることを改めて実感をしたところでございます。
これまでも申し上げておりますが、医療DXは、医療・介護の提供の在り方自体を変革する大きな改革であります。今日は三師会、そして、病院団体の皆さんにもお越しいただいておりますが、例えば、医療機関の経営という観点から考えますと、医療DXの推進により紙の書類作成やデータ入力作業などが大幅に削減できるとともに、誤入力の減少などを通じた正確な事務処理も期待できるわけでありますから、手戻りをせずに効率的に事務を進めることができます。これらによって残業時間の減少など、今求められている働き方改革を進めていく、そうした意味での魅力ある職場づくりにもつながるものと考えております。
さらに我が国においては、労働力人口が減少して人手不足が続いています。
そういった中で、医療・介護の人材確保にもこうした取組がプラスになるということもあるかと思いますし、また、こうした医療DXを通じたコスト削減などによって、その資源を医療提供という本来の業務に再投資できるようになります。特に高齢化が進み、医療費全体はどうしても拡大をしていく中で、いかに改革をしていくのかということが求められている、そうしたことにも符合することになると思います。
また、医療機関や薬局でDX化を進めていくことで、患者さんにとっても受付・会計での待ち時間が短縮される、入退院の手続が簡便になるなどメリットを実感していただく場面もあると承知しております。
こうした保健・医療・介護情報がつながっていくこと、そして、患者御自身が健康管理や疾病予防に取り組み、まさに自分の健康管理を自らやっていただくというその基盤になること、さらには救急時や災害時でも安心して医療を受けていただけるといった従前から申し上げているメリットに加えまして、今申し上げたようなメリットも含めて、皆さんと協力して、国民や患者、医療現場に対して積極的に発信をさせていただき、協力を得ながら医療DXの実現に向けてさらに取り組んでいきたいと考えております。
今日は、そのためにさらにどういったことが必要なのか。また、現場の実情や忌憚のない御意見を伺いながら、一緒になってそうした取組を前に進めていきたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
カメラ撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。
(報道関係者退室)
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官
それでは、先ほど加藤大臣の御挨拶にもありましたが、本日は国民にマイナ保険証や電子処方箋をより広く利用していただき、医療DXのメリットを実感していただくために必要な取組について、意見交換をさせていただきたいと思います。
まず、医療関係団体の皆様からそれぞれ御発言をいただきたいと思います。時間が限られておりますので、お一人4分以内でお願いできればと思います。まず、日本医師会、松本会長、よろしくお願いいたします。
○日本医師会会長 日本医師会の会長の松本でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず、医療DX推進に関する考え方ですが、日本医師会は医療DXの推進により、国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供及び医療現場の負担軽減が実現できると考え、政府に全面的に協力をしてまいりました。引き続き医療現場の立場から様々な提言を行いつつ、政府とともに国民・患者と医療現場にメリットもたらす医療DXの実現に取り組んでまいります。
続きまして、マイナ保険証の利用促進、周知啓発についてですが、マイナ保険証による受診は、今後の医療DXの基盤となる重要な第一歩であり、医療機関においてその活用が進むよう尽力していきたいと考えています。現在、マイナ保険証につきましては、ひもづけ誤りや医療現場でのシステムトラブルといった課題が指摘されています。国民皆保険の下で健康保険に加入し保険料を納付されている全ての国民・患者の皆様が、必要なときに適切な自己負担額で医療を受けられる環境を整備し、誰一人取り残さないことは医療DX推進の大前提です。
マイナ保険証に関する国民・医療機関の不安を払拭することは、医療DX推進の大前提であると同時に、最大の普及策でもあります。政府は、8月8日に今後のひもづけ誤り再発防止対策と国民の信頼回復に向けた対応を取りまとめた政策パッケージを公表されましたが、その確実な実行をお願いいたします。その上で、よりよい医療の提供のために、マイナ保険証を多くの方に利用していただき、医療機関・患者双方がそのメリットを実感できることが必要です。マイナ保険証の利用促進には、国民・患者への効果的な周知が不可欠です。まずは政府や歯科医師会、薬剤師会とも協力をさせていただき、マイナ保険証による受診を促すポスターを作成するなど、その周知を行っていきたいと思います。
また、医療機関からは、患者の受け付けや事務フローが従来よりも煩雑になったとの声も聞かれます。政府には不安の払拭と併せて現場の負担軽減に向けた取組をお願いしたいと思います。実際に工夫を行った現場の取組や、患者の薬剤情報等、診療に活用したエピソードなど、具体的な好事例を収集し、横展開していくことも重要ですので、これも政府と協力して発信していきたいと思います。
医療DX推進の視点について、先ほど、国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供及び医療現場の負担軽減につなげることが大事だと申し上げましたけれども、そのほかの重要な視点も申し上げます。
まず、医療DX推進に当たりましては、現場の医師、看護師、事務職員などが使いやすい環境を整えていくという視点が重要です。現在、医療機関が閲覧できる薬剤情報は、必ずしも見やすいとは言えません。国は、システムベンダーともよく連携していただいて、医療現場が見やすい、そして、使いやすいものにするという視点で進めていただきたいと思います。
もう一つは、医療機関等のシステム改修時の負担への配慮です。
政府は6月に医療DXの工程表を出しておられますが、性急に、かつ、統一感なく進めるのではなく、医療現場の声をよく聞きながら、また、今後、順次導入が予定されている施策間の連携や整合性を取って医療機関の負担を極力減らす方向で進めていただきたいと思います。
DX推進の鍵は薬剤情報の共有だと思いますが、電子処方箋の普及が進んでおりません。地域の中核病院、診療所、薬局など、複数の施設が面で使い始めることで、重複投薬の削減や使用禁忌の処方防止という医療安全の効果がより発揮できるようになると思います。日本医師会はHPKIでも全面的に協力をしております。政府には導入支援の強化も含め、面での普及拡大という視点をもっと持っていただきまして、地域の三師会とも連携して進めていただきたいと思います。これは、今後導入が予定されている電子カルテ情報共有サービスも同様であります。
また、医療DXでは、保険、医療、介護の情報がシームレスに連携することが求められていますので、ぜひ、診療報酬改定DXにおきましても、医療と介護で足並みをそろえた一体的な取組をお願いしたいと思います。
丁寧な課題解決の積み重ねと実感できるメリットを提供することにより、強制ではなく医療機関が自ら進んでDXを導入するような環境をつくり上げていくことが重要です。そのために、引き続き日本医師会としてもしっかりと協力をしてまいります。
以上でございます。ありがとうございます。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
次に、日本歯科医師会、高橋会長、お願いいたします。
○日本歯科医師会会長 日本歯科医師会、高橋でございます。
このたびは意見交換会をさせていただきまして、本当に感謝申し上げます。我々、今回の意見
を聞いていただける会に対して、現場の歯科医師、そして、患者さんからの声を聴取いたしております。その結果を御披露させいただきます。
まずは、患者さんが一番不安を持っているのは、情報が入ってこないということでございます。
来年の秋に保険証が廃止になったらどうなってしまうのという声が一番多うございました。
そして、現場では「カードの有効期間が10年と書いてあるのに、先生、何で5年なの」という、マイナンバーカードの有効期間と保険証とのひもづけをされたときには、5年間で有効期限が切れるということに関して、その情報が患者さんに届いていない。それが患者さんとトラブルの一番の多い原因でございます。カードリーダーに入れたときに不適格と言われたときに「なぜか」と。「有効期限10年って書いてある」と。「何で5年で?」ということが非常に多うございます。
それから、現場の声といたしましては、薬剤情報等が、現時点では、お医者さんのほうからのレセプトの情報を基にして反映されるまで1月半ぐらいのタイムラグが生じます。ですから、それに関して薬剤情報、特に既に進展しているところでは、高血圧等の方の抜歯の際にどういう投薬があるのかということの情報がすぐ入ってくるはずなのに入ってこないというような声が非常に多くございます。
それから、在宅はどうすればいいんだと。今、これは検討していただいているようでございますけれども、現場では「在宅はどういうふうにしたらいいんですか」という声がたくさん来ております。
それから、リーダー、回線も含めてトラブル発生時点でこれをどう対応したらいいのか。
これは機械ですから、読み取れないとかオンラインの問題が必ずございますので、それによるトラブルの発生時点にどう対応したらいいかというマニュアルが必要ではないかと。それから、毎回なぜこれを持参しなければいけないのかと。これは患者さんからの声もあります。そして、資格確認書。これも負担率を自分で丸をつけると。「何ですか。これ」と。そういうことが現場の声としてたくさん来ております。
そして、もう一つは、地方の御高齢の先生が、これをきっかけにかなり廃業されております。対応できない。ついてくることができない。そして、もう一つはランニングコスト。ランニングコストに関して、歯科は小規模診療所がほとんどでございますので、それに対してランニングコストが非常に負荷がかかってくるということ等がございます。
何にしろ、これは全て的確な情報を出せば私は解決ができると思うのです。「こうなんだよ」ということを事前に周知をすることが一番で、その周知なくして進んでいることが、私は現状の一番大きな問題だと思っています。
我々は、どうにかして皆保険制度を維持したい、これが基本でございます。世界に誇れる日本のこのすばらしい皆保険制度を持続可能なものにしたい。今、日本の医療は非常に非効率的な部分があろうと思います。これを効率化することで皆保険を持続可能なものにする。これは我々の最大の目的でございます。そのためにはこの制度をうまく軌道に乗せる、それが我々にとって一番やるべきことだと思っております。
そのために、まず患者さんに的確な情報を出す。これは既に我々の組織でつくっておりますけれども「マイナンバーカードはこんなに利点があるんですよ」と。「これをうまく使ってください」というリーフレットも作っております。そして、ポスターも作っております。そして、会員歯科医療機関に対しては、もっともっときめの細やかな、これはこういう意味で、例えば資格確認書というのはこうなんですよ、だからここを気をつけてくださいよというようなこと、そういう情報伝達をしっかりすると。これが一つの我々の解決策として進めておるところでございます。
どうにかして、これを我々としては、国民の納得が得られる形格好で進めたいと全力を投球しておりますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
続きまして、日本薬剤師会、山本会長、よろしくお願いいたします。
○日本薬剤師会会長 日本薬剤師会の山本でございます。本日はこうした機会を頂戴しまして、
誠にありがとうございました。
日本薬剤師会のこの問題に関する論点でありますけれども、4点ほどありまして、まず1つは、医療DXの推進と実現という観点であります。医療DXの実現は、医療の質の向上に資するもので、医療全体のDXを進めることによってさらに広範な医療情報の連携が可能となり、患者・住民がこれまで以上に安全・安心な医療を享受できるものと認識しております。地域医療の一翼を担う薬剤師・薬局としても、その実現に向けて積極的に貢献する必要があります。マイナ保険証の活用はその第一歩であり、活用していく必要性、重要性について薬剤師が十分理解することと同時に、薬局が国民・患者に対してお薬手帳の普及を進めてきたように、来局者に向けてマイナ保険証の利用を積極的に促すことが重要と考えています。
具体的なマイナ保険証の利用促進でありますが、国民患者に対してマイナ保険証の利用を促す
際には、それを利用することで国民・患者が享受できる医療上のメリットを分かりやすく、かつ、平易な言葉で説明することが不可欠です。そのためには三師会、病院関係団体などの関係者並びに厚生労働省が連携して、薬局や医療機関などでポスター等を掲示することや、患者に対して受付などで声かけ運動を行ってまいりたいと思っております。また、薬局における利活用の好事例を収集し利用促進につなげていただけるよう、厚生労働省とも積極的に発信を行っていきたいと思っております。
続いて、医療DXの一体化に向けた対応と普及のための支援のお願いでありますが、医療DXのさらなる推進は、安全・安心でより質の高い薬物治療の実現が期待されているところでありまして、そのためには、現在、それぞれ独立して稼働しているレセコン、電子的な調剤録(いわゆる電子薬歴)、あるいは電子処方箋が、マイナ保険証を活用したオンライン資格確認システムを軸として、横断的な情報共有を可能とすべきと考えています。
現在ではそのシステムが個別に独立して連携できていないために、現場ではメリットを実感しにくい状況です。これらのシステムの標準化と一体化が進むように、担当部局が連携し、その実現に向けた具体的な議論をお願いしたいと思います。
また、PHRである電子お薬手帳とのマイナポータルを通じたリンクによって、患者さん自身が自ら情報を容易に管理できるようになり、それによって主体的に治療に参加することで、一元的、継続的な薬物治療の管理が実現できます。
一方、マイナ保険証の利用促進に加えて、診療録と対をなす薬局の調剤録等の標準化も同時に進めることが不可欠でありまして、早急な検討をお願いしたいと思います。
さらに、マイナ保険証をより効果的に利活用する観点から、電子処方箋システム等の薬局現場での普及を促すための補助金や税制上の支援をお願いしたいと思います。
最後に一点お願いでございますが、薬剤師、薬局の立場から、マイナ保険証の利活用を含む医療DXの推進に向けて積極的に取り組んでまいりますが、一方、このような取組を進めるためには、薬局現場での混乱やトラブルなどが起きないよう、厚生労働省におかれましては、マイナ保険証の信頼回復に向けた対応とともに、国民への周知が前提なので、その点、ぜひともお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
最後に、日本病院会、相澤会長、よろしくお願いいたします。
○日本病院会会長 日本病院会会長の相澤でございます。この席にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
まず、最初に、私はDXに関しては全くの素人であるということをお断りしてお話を申し上げたいと思います。
医療DXの推進に関して反対する病院は一つもありません。みんな進めてほしいということで一致しております。しかしながら、患者の医療情報をインターネットを通じて漏れなく収集するための大多数の医療機関が参加する医療機関ネットワークの構築と、収集した情報が、その患者個人の情報として認識し、集約する、いわゆる名寄せの仕組みがあることにより、患者さん個々に対応した安全で質の高い医療を医療機関が国民に提供することこそが、医療DXを推進するためのインフラとして極めて重要であると考えています。現在はそこがないというのが心配するところでございます。名寄せのためには、マイナンバーにひもづけされたマイナ保険証を活用することが考えられ、この資格確認は医療事務現場で極めて有用であることから、これを活用していくことを我々も推進をしてまいりたいと考えております。
しかし、もう一つ忘れてはならない重要なことは、医療現場において必要とされ、活用される医療情報には、即時性、タイムラグがないということが必要です。現在構築されているシステムでは、情報の即時性がなく、生きた情報ではないため、医療現場においては活用されていません。恐らく患者も自分自身の今の状況を知る情報こそが、自分のための生きた情報と認識しているのであろうと私は推測しております。この生きた情報の活用を、全ての医療情報について今すぐ実施することは困難であるということは言うまでもありません。まずは限られた情報において医療機関ネットワークと名寄せの仕組みを構築することが肝要であると考えております。これらの仕組みを構築さえすれば、あとは医療情報の範囲を拡張するだけで医療DXは推進をされるものと考えています。
今、即時性を有する情報として、医療機関、患者、調剤薬局が活用するための仕組みを構築しようとしているものに電子処方箋があります。この電子処方箋は、紙の処方箋を電子化しようとするものであり、医師が処方した薬の情報を医療情報の一部として活用しようとするものではありません。紙で発行していた処方箋を電子化サービスに置き換えるだけにとどまる単なるデジタル化であり、院内処方や退院時処方には対応できていません。医師が処方した薬を漏れなくデジタル化して収集し、患者個人の情報を集約し、これを医療機関と患者と調剤薬局が活用する仕組みをつくるべきであろうと考えます。
このためには、医師が処方する薬を全ての関係者が共有できるよう、電子カルテの処方オーダーがクラウドで連携されるようにすべきであると考えています。電子カルテが導入されていない医療機関においては、国が主導して処方オーダーを入力する端末を貸与する、あるいは導入を全面補助してクラウドに接続するネットワークをまず構築すべきであると思います。これにより、全てあるいは大多数の医療機関がネットワークでつながり、処方された薬情報をリアルタイムで共有することが可能ですが、現在は残念ながらこのような仕組みができていません。
医師が処方した薬を患者個人の情報として集約する名寄せの方法は冒頭でも述べましたが、全ての国民が所有している個人識別番号に集約することが、医療情報の活用では重要です。医師の処方を処方箋情報とするためには医師の署名が必要となりますが、この方法がいまだ明確にされておらず、医療機関の混乱を招いております。電子処方箋の推進にとってはマイナス要因となっていると思います。電子処方箋を推進するのであれば、処方箋の発行を目的とするのではなく、処方された薬の情報を活用することを目的とした仕組みを構築するべきであると考えます。
あれもこれも同時にやろうとするのではなく、まずこれをという一点突破を図り、医療機関、医療者と患者・国民が成功体験を共有することが、医療DXの推進には必要であると考えています。医師の処方した薬物療法の共有化と活用を通じて、医療機関の医療情報ネットワークと医療情報を名寄せする仕組みをまずしっかりと構築することが、地道な活動ではありますが重要であると考え、これが将来の医療DXに必ずつながってくると私は考えております。
以上です。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
それでは、意見交換に入りますが、ただいまの関係団体からの御意見等を踏まえ、厚労省の関係部局から発言をお願いいたします。保険局、よろしくお願いいたします。
○保険局長 保険局長でございます。先生方、本当にありがとうございます。
私のほうは、特に今マイナ保険証の問題を担当しておりまして、マイナ保険証は、今、保険証の議論に話が終始しておりますが、やはり将来を考えますと、電処方箋を使うためには必須の項目でありますし、将来は電子カルテでみんなで情報共有するためにもこれは不可欠なものでございます。そういった意味で、今、様々な課題に直面しておりますけれども、一つ一つしっかり解決して、来年の秋に向けて取り組んでいく、このようなつもりで一生懸命取り組んでいるつもりでございます。 今日様々な御指摘をいただきましたし、また、同時に、三師会としてポスターを作って患者様にお勧めしてこうとか、あるいは、患者様にマイナンバーカードを持ってきているかという声がけをしていただけるとか、そういう御提案をいただいて大変うれしく感じております。
それから、大事なことは、今幾つか大臣とともに現場の医療機関を歩いておりますけれども、非常に積極的な取組をされている事例がございます。これを横展開していきたいと考えておりますが、そうした中では、YouTubeで会員の先生方に見ていただけるような配信とか、そうしたことも考えていきたいと思っておりますので、ぜひ御協力、一緒に取り組んでいただけるようにしていただきたいと考えてございます。
それから、あわせて、いろいろな課題も今日御指摘をいただきました。例えば薬剤情報が必ずしも見やすくなっていないんじゃないかとか、あるいはシステムベンダーと連携できているのかという御指摘もいただきましたし、あとは、現場では更新期間が過ぎてしまって使えないというお話が出てきたり、あるいは、在宅の場合、実際にどうやってマイナ保険証を使うのかといったテーマ。こうしたことについては、今、我々は取り組んでおります。確かに御指摘のように患者様に届いているか、あるいは医療現場の個々の先生に届いていないのではないかという御指摘につきましては、ちゃんと反省して、できれば、先生方とともに現場に情報を提供できるようにしていきたいと考えてございます。
そうした意味で、このマイナ保険証は、将来の医療DXの基本中の基本になるものですから、ぜひ、もっと多くの方に利用していただけるように、まずは、今は一回でいいから、まず一回利用していただけるように努力していきたいと思っておりますので、ぜひ御支援、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 では、医薬局、お願いいたします。
○大臣官房審議官(医薬担当) 電子処方箋を担当しております、医薬担当審議官の吉田でございます。本日は、医療DXの推進に関しまして、忌憚のない御意見を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
ただいま、皆様からお話をいただきましたとおり、オンライン資格確認の導入が進んできている中、今後は電子処方箋の普及に一層助尽力する段階であると考えております。
ただ、現状では、電子処方箋を導入済みの施設は6,600施設という状況でございますが、全国各地で、先ほどありました面として電子処方箋を活用できる状況とすべく、さらに一層、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
また、先ほど御指摘いただきましたとおり、電子処方箋の導入には、医療機関、薬局の皆様方以外に、システム事業者の方々にもともに取り組んでいただく必要がございます。導入に向けて律速となる要因がないかなどにつきまして、システム事業者からも丁寧にヒアリングなどを行いつつ、電子処方箋を円滑に導入いただけるよう取り組んでまいりたいと思います。あわせて、現場の皆様が使いやすいシステムとなるよう働きかけてまいります。
また、薬剤情報につきましては、電子処方箋によって院外処方箋に係る処方情報あるいは調剤情報の迅速な共有を可能としているところでございますけれども、先ほど御指摘いただきましたとおり、院内処方情報の共有あるいはリフィル処方箋への対応、こういったことについても、部局間で連携しつつ機能拡充に取り組んでまいりたいと思っております。
さらに医療機関、薬局、システム事業者の方々向けの取組だけではなく、併せまして、国民あるいは患者向けにしっかりと電子処方箋の仕組みやそのメリット、あるいは医療DXについて周知広報を行い理解の向上を図ることも重要と認識しており、今後、国民・患者向けの周知広報にもしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
最後に、電子処方箋の普及あるいはその利活用については、まだまだ道半ばではございますけれども、皆様からの御意見を伺いつつ、御協力も賜りながら着実に進めていきたいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 引き続きまして、医薬産業振興・医療情報審議官でございますけれども、ただいま、横断的な情報共有あるいは面的普及、そして、施策間の連携や整合性、さらには情報提供の重要性について御指摘をいただきました。今後、オンライン資格確認等システムを拡充した保険、医療、介護の情報を共有いたします全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報、予防接種の情報などに共有情報を拡大するとともに、自治体や介護事業者等にも共有主体を拡大しようとしてございます。
また、7月には省内大臣官房に医療DX推進室を設置してございまして、省内は関係局が多うございますけれども、その時点のそれぞれの局の進捗状況、お互いに関係する部分などを確認しながら、連携を密に進めてまいりたいと思いますし、併せて医療関係者や国民の皆様にも適切な情報提供に努めてまいりたいと考えてございます。
また、電子カルテ未導入の医療機関に対する端末やネットワークの御提案もいただきましたけれども、診療所などを小規模な医療機関向けに、標準規格に準拠したクラウドベースの標準型電子カルテの開発・導入を推進しているところでございまして、2023年度中に必要な要件定義をさせていただき、24年度中には開発、一部の医療機関での試行的実施を目指してまいりたいと思いますので、引き続き御指導をよろしくお願いできればと思います。
そのほかに御質問・御意見等はございますでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、最後に加藤大臣から御発言をいただきますが、カメラを入れますので少々お待
ちいただければと思います。
(報道関係者入室)
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 それでは、加藤大臣、よろしくお願いいたします。
○大臣 本日は、マイナ保険証の利用や医療DXの推進に当たって、現在、それぞれ皆さんがどう取り組んでいただいているのか、また、これを進めるに当たってどういう点を考えながら進めていくべきなのかという率直な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
マイナ保険証の推進に向けては、利用促進のためのポスターを作成していただいて、院内や薬
局に提示し、周知や啓発を進める。また、それと一緒に様々な情報発信をしていただく。あるいは声かけもそれぞれやっていただいているということでありました。来院された患者に対するそうした積極的な働きかけは大変ありがたく思っております。
また、薬剤情報の活用など、現場における具体的な好事例を収集し、それを積極的に発信していくとともに、団体の中においても横展開も図っていただいているなど、大変前向きな御意見もいただきました。
他方、こうした医療DXを進めるに当たって、まずは適切な情報発信をそれぞれ国民の皆さんにタイムリーに行っていく必要があること、また、医療現場で使いやすいシステムにする必要があること、また、トラブルがあれば、それに対してどう対応するのか、マニュアル等をしっかり示していくべきであると、また、これからいろいろ出てきますシステムの改修に関する、あるいはセキュリティー対策に関する負担への支援、そして、個々の薬局だけで電子処方箋を導入してもなかなか効果が出るものではなくて、地域全体で面での普及が重要であること、さらには、これからレセコン、電子カルテ、電子処方箋など、複数のシステムを入れていくわけでありますけれども、それの標準化や一体化が図られていくべきこと、また、特に処方箋の関係では、医師が発行する全ての処方箋全体を活用できるようにしていくべきではないかなど、具体的な課題を様々に御提示いただいたところであります。
厚労省では、この7月から医療DX推進の司令塔となる医療DX推進室を設置させていただいておりますが、今日いただいた御意見をはじめ、今後とも、それぞれ皆さん方の声をしっかりと受け止めながら、省を挙げて医療DXに取り組んでいきたいと考えております。
まずはそのためにも、このマイナ保険証の利用の促進という意味においては、ここに出てきたひもづけ誤りなど、こうした課題を一つ一つ解消して信頼の回復に努めるとともに、国民の皆さんに対して、現在どう取組をしているのか、その具体的な中身、また、メリット、こういったこともしっかりと周知・発信をしていきたいと思っておりますが、それぞれ皆さん方におかれましては、引き続きそうした面も含めて、積極的な御協力、御対応を心からお願いをしたいと思います。
今日は短時間でありましたけれども、大変有意義な機会をいただきましたことに改めて感謝申
し上げたいと思います。ありがとうございました。
○大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 ありがとうございました。
本日はこれにて閉会とさせていただきます。皆様におかれましては、お忙しい中、また、お足元の悪い中御参集いただきまして、どうもありがとうございました。