第182回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和5年9月7日(木) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 省議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

議事内容
○伊藤総括調整官 おはようございます。事務局でございます。
 開催に先立ちまして、御連絡申し上げます。本日は、こちらの会場とオンラインの併用で開催しております。部会中は、オンラインの方は基本的にカメラはオンで、マイクはオフでお願いいたします。また、発言をされる際には、会場の方は挙手を、オンラインの方はZoomの手挙げ機能を御利用いただきまして、部会長から指名があった後に御発言をお願いいたします。
 なお、傍聴は会場内で行っております。
 進行に関する説明については以上でございます。
○守島部会長 皆さま方、おはようございます。
 ただいまより、第182回「雇用保険部会」を開催いたしたいと思います。
 初めに、委員の改選がありましたので、御紹介いたしたいと思います。労働者代表委員として、航空連合会長の内藤晃委員に御就任いただいております。よろしくお願いいたします。
 あと、本日の出欠状況ですけれども、労働者委員の今御紹介差し上げました内藤委員が所用のため、11時半頃御退席と伺っております。それから、使用者代表の大谷委員が所用のため、遅れての御参加となっております。それから、労働者代表の小林委員が所用のため、御欠席となっております。
 まず、開催に当たって事務局から説明がありますので、よろしくお願いいたします。
○伊藤総括調整官 事務局でございます。
 本日は御参集いただき、誠にありがとうございます。
 まず、事務局に異動がございましたので、紹介申し上げます。
 職業安定局長に、山田雅彦。
 職業安定担当審議官に、石垣健彦。
 職業安定局総務課長に、長良健二。
 雇用保険課調査官に、川端輝彦。
 同じく雇用保険課調査官に、鈴木義和。
 雇用保険課総括調整官に、私、伊藤秀俊。
 雇用保険課課長補佐に、木原大樹。
 以上が就任いたしました。
 職業安定局長の山田より、一言御挨拶を申し上げます。
○山田職業安定局長 職業安定局長の山田でございます。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。第182回雇用保険部会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
 雇用保険制度は、時々の社会経済情勢の変化と密接に結びついた制度であり、時代の要請に応じて累次の制度改正を重ねてまいりましたが、制度の目指す基本的な思想・理念に立ち返りながら、時々に具体的な制度設計をしてきました。
 本日の資料にもございますが、本年6月に閣議決定された骨太の方針やこども未来戦略方針等においては、雇用保険制度を充実させる方向での制度見直しの検討が盛り込まれました。これらの課題に対処するに当たっては、雇用保険制度が引き続き雇用に関する総合的な機能を持った労働者のセーフティーネットとしての役割を十分に発揮できるように、本部会において公労使の委員の皆様に御議論いただきながら検討を進めていきたいと思います。
 今後、この部会での御議論を踏まえて、法案の提出、その他必要な対応を図ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、マスコミの頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、議事に入ります。議題1は、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」でございます。
 それでは、資料の御説明を事務局よりお願いいたしたいと思います。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。資料1-1と1-2に沿って御説明をさせていただきます。
 まず、資料1-1でございますけれども、今回諮問をさせていただきます省令案の要綱でございます。
 1つおめくりいただきまして、これは意見を求める正式な諮問文でございます。その次に、省令案要綱を御用意しております。大変恐縮ですが、説明の便宜上、資料1-2で内容を説明させていただければと思います。
 押印につきましては、令和2年度に行政手続の押印が原則廃止されたところでございます。ただ、基本的に金融機関に対する届出印などの一部の手続印に存続しているという状況でございます。
 雇用保険手続におきましては、押印は原則廃止ということにしたところでございますけれども、一部の手続、例えばあらかじめ登録された印影と照合する手続や、労働者が申請するものですけれども、事業主の証明を求めるものといったものについては、押印について引き続き残していたというところでございます。
 今般、改めて押印の必要性について整理を行いまして、申請者の方々の負担を軽減するという観点から、金融機関に対する届出印の一部を除いて事業主印の押印を全て廃止するというものでございます。
 具体的には、2の「改正の概要」のところでございますけれども、事業主が代理人を選任した場合の認印の印影の届出を要しないこととする。もう一つは、例えば再就職手当の支給申請手続、具体的には次のページの申請書を御覧いただければと思いますけれども、この中ほどに「事業主の証明」というところでこれまで押印をお願いしていたところですけれども、この印を削除するとともに、改ざん等の抑止力を確保するために、下に赤字で「(注)記載内容について、記載した方に直接確認する場合があります」という旨を付記することによって代替的な機能を確保するという形での改正を行わせていただきたいと考えております。
 この省令の施行期日については、令和5年10月1日でございます。
 何とぞ御審議のほう、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、本件につきまして、御質問、御意見等がありましたら、お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 特にありませんでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、当部会といたしましては、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について、おおむね妥当と認めることとし、その旨を職業安定分科会会長宛てに報告いたしたいと思います。それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱の報告文案を画面に表示いたしますので、御確認ください。こちらにいらっしゃる方は資料があると思いますけれども、会場で出席されている皆様には、事務局より今からお配りいたしたいと思います。
 ただいま画面に表示されている報告文案によって職業安定分科会に報告いたしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは、この報告文案で職業安定分科会に報告をいたしたいと思います。
 議題1については以上とさせていただきます。
 では、次の議題に移ります。議題2は、「雇用保険制度について」でございます。
 まず、資料について、事務局より御説明をお願いいたしたいと思います。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端と申します。
 資料2から6に沿いまして、説明をさせていただければと思います。
 雇用保険制度の在り方につきまして、本部会で御議論いただくことをお願いしております。本日はその最初の会でございますので、雇用保険制度の概要などをお示しさせていただいた上で、最後に今後御議論いただく主な論点について、事務局から案を提示させていただいております。
 資料2の雇用保険制度の概要について説明を申し上げます。ちょっと駆け足の説明となることを御容赦いただければと思います。
 おめくりいただきまして、1ページ目でございますけれども、雇用保険制度の概要を記しております。雇用保険制度は、労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに失業等給付などの様々な給付を支給するとともに、失業の予防などを図るための二事業を行うというものでございます。雇用保険の被保険者や給付内容、育児休業給付の内容については後ほど個別具体的に御説明を申し上げたいと思います。
 2ページ目を御覧ください。雇用保険制度の概要を記しております。主なものとして、失業等給付がございます。この失業等給付の中に、失業した際の基本手当などの求職者給付、これに加えて再就職手当等の就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付などを設けております。加えて、区分経理しておりますけれども、育児休業給付、そして二事業、二事業の中には雇用調整助成金などの雇用安定事業、人材開発支援助成金などの能力開発事業を設けております。
 3ページ目を御覧いただければと思います。雇用保険制度の財政構造を記しております。雇用保険の中では、失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業を実施しておりまして、これらを区分経理しておるところでございます。失業等給付につきましては、労働者・事業主から折半で保険料1,000分の8を頂いて、育児休業給付については、これも労働者・事業主から保険料折半で1,000分の4を頂いて、雇用保険二事業については、事業主から保険料のみ1,000分の3.5の保険料をお預かりいたしまして、積立金などと併せて失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業の事業を賄っているというところでございます。
 4ページ目を御覧ください。雇用保険の適用事業と被保険者を記しております。雇用保険は、一部の事業を除きまして、労働者が雇用される事業を強制適用事業としてございます。この適用事業に雇用される労働者を被保険者としております。ただ、適用除外として、例えば1週間の所定労働時間が20時間未満である方などについては適用から除外しているというところでございます。
 5ページ目を御覧ください。雇用保険の適用事業及び被保険者について記しております。一番多いのが、一般被保険者でございます。2、3、4の方以外の方は一般被保険者と呼んでおります。65歳以上の被保険者の方を高年齢被保険者、季節的に雇用される方のうち一定の方については短期雇用特例被保険者、日雇労働者であって一定の要件に該当する方については日雇労働被保険者ということで、被保険者の区分を設けているところでございます。
 6ページ目以降は、具体的な給付の内容について申し上げます。失業等給付のうちの求職者給付でございます。7ページ目に基本手当の受給要件を記しております。基本手当の受給に必要な被保険者期間として、一般被保険者が離職した場合には離職日から2年間に被保険者期間が12か月以上、倒産解雇等によって離職した方については離職の日から1年間に被保険者期間が6か月以上を求めているところでございます。
 8ページ目を御覧ください。基本手当の賃金日額をお示ししております。基本手当日額は、賃金日額に給付率を掛けております。賃金日額につきましては、下限額は各年齢区分とも共通しておりますけれども、年齢区分に応じて上限額を設定しているところでございます。基本手当の給付率につきましては、賃金日額が低い方については給付率を高く、賃金日額が高い方については給付率を低い形で、80%から50%の間で設定しているというところでございます。
 9ページ目を御覧ください。基本手当の所定給付日数をお示ししております。倒産・解雇などによる離職者の方の場合については、被保険者期間であった期間や年齢を考慮して、所定給付日数を定めております。それ以外の一般の方、例えば自己都合で離職される方については、全年齢区分同じで、被保険者期間に基づいて給付日数を設定しております。倒産・解雇等による方よりは短い期間となっています。障害のある方など、就職困難の方についてはさらに長い所定給付日数をそれぞれ設定しているところでございます。
 10ページ目に、離職理由による給付制限期間や被保険者期間の比較をしております。こちらについては詳細は後でまた基本手当のところで説明をしたいと思いますので、割愛させていただきます。
 11ページを御覧いただければと思いますけれども、基本的には基本手当は所定給付日数の範囲で支払われるというところでございますけれども、個々の事情を勘案して、延長給付というものを設けております。例えば受給資格者が公共職業安定所長の指示により公共職業訓練等を受講する場合には、その者の所定給付日数を超えて基本手当が支給される訓練延長給付というものを設けております。それぞれ個別の事情に応じて個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付、地域延長給付というものが設けられているところでございます。
 そのほか、12ページでございますけれども、基本手当に付随する手当として技能習得手当、寄宿手当、傷病手当といったものが設けられているところでございます。
 13ページ目を御覧いただければと思います。一般被保険者の方以外の被保険者の方に対する給付でございます。高年齢被保険者が失業した場合の高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者の方が失業した場合の特例一時金、日雇労働被保険者の方が失業した場合の日雇労働求職者給付金といったものも御用意しているところでございます。
 次に、14ページ目以降で就職促進給付を御説明いたします。こちらも詳細については後で御説明したいと思います。
 15ページ目に就職促進給付の具体的な給付を列挙しております。詳細は後で説明させていただきます。
 16ページにおいては、教育訓練給付の内容を記しております。教育訓練給付につきましては、労働者の主体的な能力開発を支援するために、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講した場合にその費用の一部を支給するものでございます。
 17ページと18ページの資料を併せ読んでいただければと思いますけれども、3つの類型を用意しております。一つは専門実践教育訓練給付ということで、特に労働者の中長期的なキャリア形成に資する教育訓練を対象としておるものです。18ページで、例えば看護師といった専門職になるための養成施設の課程、あるいは最近ですとデジタル分野、例えばデータサイエンティストの育成やプログラム言語を用いた機械学習のスキルを身につけるといった講座なども指定しているところでございます。この専門実践教育訓練給付につきましては、受講費用の50%、年間上限40万円に加えまして、資格取得等をされた場合には受講費用の20%、上限年間16万円を追加支給しているというところでございます。
 真ん中の特定一般教育訓練給付でございますけれども、労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象としております。右端の一般教育訓練給付よりも合格率や就職率、在職率の実績が一定以上ある課程が指定されているというところでございます。こちらについては40%、上限20万円を受講修了後に支給しているというところでございます。右の一般教育訓練につきましては、それ以外の教育訓練講座につきまして、受講費用の20%、上限10万円を受講修了後に支給するというものでございます。
 19ページを御覧いただければと思います。先ほど申し上げました専門実践教育訓練を受講して、修了する見込みがある45歳未満の若年離職者の方につきましては、別途訓練期間中の受講支援として基本手当日額の80%を支給しております。これを教育訓練支援給付金と呼んでございます。こちらについては令和6年度末までの暫定措置となっております。
 次に、20ページ目以降で雇用継続給付の内容について申し上げます。21ページ目でございますけれども、60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢の方について、給付金として60歳以降各月の賃金の15%を支給しております。これは令和7年度以降は10%という形で法定がされております。支給期間については65歳に達するまでの期間となっております。
 22ページ目でございますけれども、介護休業給付ということで、雇用保険の被保険者の方が介護休業した場合に、休業開始前賃金の67%に相当する額を支給してございます。
 次に、23ページ目以降を御覧いただければと思います。育児休業給付について記しております。24ページ目のところでございますけれども、労働者の職業生活の円滑な継続を援助、促進するために、一定の場合には最長で2年間まで延長可能でございますが、労働者が1歳未満の子を養育するための育児休業を行う場合に育児休業給付を支給するというものでございます。給付額については、休業開始から180日までは休業開始前賃金の67%、それ以降は50%を支給しておるところでございます。
 25ページ目以降で雇用保険二事業について説明申し上げます。26ページ目のところに二事業の概要を記しております。雇用保険二事業につきましては、被保険者等に関する失業の予防などに資する雇用対策を通じて、失業の予防や再就職を支援し、失業等給付の抑制を図るものとして実施してございます。事業の内容としては、雇用安定事業、能力開発事業に分かれており、財源につきましては、事業主の保険料のみを原資としているところでございます。
 最後に、27ページ目以降で求職者支援制度の概要をおつけしております。28ページ目以降でございますけれども、求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方が月10万円の生活支援の給付を受給しながら無料の求職者訓練を受講して、再就職等を目指す制度でございます。
 29ページ目以降に求職者支援訓練の種類や、30ページ目に職業訓練受講給付金の支給額などをお示ししているところでございます。
 雇用保険制度の概要につきましては以上でございます。
 次に、資料3で雇用保険制度の主要な指標について御説明を申し上げたいと思います。
 駆け足で恐縮ですけれども、1ページ目のところで、直近の雇用情勢について記載しております。2023年7月時点において有効求人倍率が1.29倍、完全失業率が2.7%となってございます。
 2ページ目に、雇用保険被保険者数の推移をお示ししております。令和4年度におきましては、一般被保険者の方については約4133万人がいらっしゃるという状況でございます。
 3ページ目に、基本手当の受給資格決定件数の推移を示しております。令和4年度においては少し増えて約133万人となっております。
 そのほか、ちょっと飛ばしまして6ページ目で、個別延長給付の支給状況を記しております。令和2年度、令和3年度においてはコロナ特例がございましたので、初回受給者数が増えていたという状況でございます。
 そのほか、7ページ目の高年齢求職者給付金については、受給者数、支給金額とも少し増えているという状況、8ページ目の特例一時金については、受給者数、支給金額が減っているという状況でございます。
 そのほか、10ページ目は再就職手当の支給状況や就業促進定着手当の支給状況、12ページ目でございますけれども、教育訓練給付の支給状況を示しております。一般教育訓練給付金につきましては、令和4年度においては前年度よりも受給者数、支給金額とも減っているという状況でございます。特定一般教育訓練給付金については、絶対数として少ないところでございますけれども、令和4年度においては受給者数が増えているという状況でございます。
 13ページの専門実践教育訓練給付金につきましても、受給者数、支給金額とも前年度よりも増えているという状況でございます。
 教育訓練支援給付金につきましても、初回受給者数は減っておりますけれども、受給者数、支給金額については前年度よりも増えているという状況でございます。
 15ページは少し飛ばしまして、16ページ目の介護休業給付につきましては、受給者数、支給総額とも増えているという状況。
 18ページ目の育児休業給付につきましては、受給者数、給付総額とも増えており、特に男性の方の取得、受給者数が相当増えて伸びている。女性につきましても、前年度よりも増えているというところですけれども、伸び自体が鈍化しているという状況でございます。
 そのほか、20ページ目に出生時育児休業給付金とか、21ページ目以降は求職者支援訓練の受講者数、受講給付金の受給者数を示しております。
 資料4におきまして、雇用保険制度の財政運営を御説明申し上げます。1ページ目のところは財政構造、先ほど説明したとおりでございます。
 2ページ目において、失業等給付に係る保険料率や積立金の推移をお示ししております。
 3ページ目でございますけれども、雇用安定資金残高、雇用保険二事業の保険料率の推移などを示しております。安定資金残高につきましては、0という状況でございます。そして、失業等給付の積立金からの借入れとして、令和2年度から5年度までの累計の見込み額が約3.36兆円となっているところでございます。
 4ページ目におきまして、雇用保険料の弾力条項の考え方をお示ししております。失業等給付に係る雇用保険料率は原則1,000分の8でございますけれども、財政状況に照らして一定の要件を満たす場合には、雇用保険率を大臣が変更可能という形の弾力条項が設けられております。令和4年度の決算におきましては0.90となっており、理屈上は引上げ可能という状況になっているところでございます。
 5ページ目におきまして、雇用保険制度の国庫負担についてお示ししております。国庫負担の基本的な考え方として、雇用保険の保険事故である失業については政府もその責任の一端を担うという考え方から、失業等給付に要する費用の一部を国庫が負担しているという状況でございます。求職者給付につきましては、費用の4分の1または40分の1、介護休業給付や育児休業給付につきましては費用の8分の1、ただし、現時点では80分の1となっております。求職者支援事業につきましては費用の2分の1、ただし、現時点では40分の11、27.5%となっております。
 そのほか、高年齢求職者給付金、就職促進給付、高年齢雇用継続給付、教育訓練給付といったものについては、現時点で国庫負担は講じられていないというところでございます。
 6ページ目以降につきましては、コロナ禍におきまして特例的に対応した休業支援金・給付金、雇用調整助成金などの施策を御紹介しております。
 飛ばさせていただきまして、13ページ目以降で失業等給付の収支状況を示しております。令和4年度の決算ベースで言いますと、収入が約1.5兆円、支出が約1.3兆円、差引剰余で2540億円となっております。この結果、積立金残高が1.4兆円ほどあるという状況でございます。右方に令和5年度の収支イメージも併せてつけております。
 14ページ目に行っていただきまして、雇用保険二事業の収支状況をおつけしております。令和4年度の決算額で申し上げますと、収入が約1.4兆円、支出も1.4兆円、差引剰余0で、安定資金残高も0という形になっております。積立金からの借入累計額は約2.9兆円ということになってございます。右方に令和5年度の収支イメージもおつけしております。
 15ページ目に行っていただきまして、育児休業給付の収支状況をお示ししております。令和4年度の決算においては収入が約7898億円、支出が7117億円、差引剰余が780億円、その結果、資金残高が3090億円という状況でございます。右方に令和5年度の収支イメージもつけさせていただいております。
 最後の16ページ目でございますけれども、コロナ禍において行われました雇用保険制度の安定的な財政運営を確保するための臨時特例法での措置内容についてお示ししているところでございます。
 次に、資料5におきまして、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針など、政府としての検討の方向性を記したものを御紹介申し上げたいと思います。
 1ページ目、2ページ目でございますけれども、いわゆる骨太の方針2023年においては、リスキリングによる能力向上支援として教育訓練給付の拡充、教育訓練期間中の生活を支えるための給付や融資制度の創設について検討する。もう一つ、自己都合による離職の場合に失業給付を受給できない期間に関し、自己都合の場合の要件を緩和する方向で具体的設計を行うということとされております。
 おめくりいただきまして、3ページ目でございますけれども、多様な働き方の推進ということで、週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大について検討し、2028年度、令和10年度までを目途に実施するということとされております。
 4ページ目以降に、こども未来戦略方針もおつけしております。
 5ページ目でございますけれども、こども未来戦略においても先ほどの教育訓練給付の拡充などの検討課題が載せられております。5ページ目の下の「共働き・共育ての推進」ということで、6ページ以降でございますけれども、両親ともに育児休業を取得することを促進するために、男性が一定期間以上の「産後パパ育休」を取得した場合には、その期間の育児休業給付の給付率を引き上げるとともに、女性の産休後の育休取得について、28日間を限度に給付率を引き上げることとし、2025年度、令和7年度からの実施を目指して検討を進めることとされております。あわせて、育児休業給付を支える財政基盤を強化するとされております。
 もう一つ、育児期を通じた柔軟な働き方の推進ということで、子供が2歳未満の期間に時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための給付、育児時短就業給付(仮称)を創設する。これにつきましても、2025年度、令和7年度からの実施を目指して検討という形にされております。
 最後に、あわせて週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大の検討。これも同じように2028年度まで、令和10年度までを目途に施行することとされております。
 最後に、7ページ目でございますけれども、こども・子育て支援のための新たな特別会計、いわゆる「こども金庫」を創設し、既存の事業、これには労働保険特別会計雇用勘定(育児休業給付)が含まれますけれども、事業を統合しつつ、費用負担の見える化を進めることとされているところでございます。
 最後に、8ページ目以降で「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を記しております。ここでも同じように教育訓練給付の拡充や自己都合離職の場合の給付制限の要件緩和の検討が検討課題として載っているところでございます。
 資料5については以上でございます。
 最後に、資料6におきまして、今後御議論いただきたい雇用保険部会の主な論点案ということで、あくまでも事務局の案でございますけれども、案を示させていただいております。
 1つ目は、基本手当の在り方。
 2つ目は、育児や教育訓練に関する給付等の在り方。
 3つ目は、適用の在り方。
 4つ目は、令和6年度末までの暫定措置の在り方。
 5つ目は、財政運営(保険料率、国庫負担等)の在り方。
 6つ目は、その他各種給付・事業の在り方等という形で案を示させていただいております。
 これらの論点について、足りないものなども含めまして、今回御議論をいただければと存じます。
 資料の説明については以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明のあった部分に関しまして、御質問、御意見等がありましたら、お伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 冨高委員、お願いいたします。
○冨高委員 ありがとうございます。
 まず、論点に入る前に、雇用保険制度全体に関する発言をさせていただきたいと思います。雇用保険制度の目的は、労働者の生活雇用の安定、労働者の能力開発、福祉の増進だと考えています。東日本大震災、また、先般のコロナ禍の状況といった社会経済の大きな変化が雇用に悪影響を及ぼす局面においては、この雇用保険を財源とする各種施策の果たしてきた役割は非常に大きく、今後もこうした非常時に臨機応変に対応可能な制度であることが重要であり、そのためには財政基盤の強化というのが急務だと考えています。
 また、雇用保険の財源が枯渇する中で、先ほど御説明いただいた「こども未来戦略方針」などにおいて、雇用保険財政にも大きく影響するような各種施策が示されています。一昨年の失業等給付の見直しなどの雇用保険の見直しの際にも申し上げてきたことですが、国策として推進する各種施策につきましては、その財源も含めて国が積極的に一定の責任を持つべきだと考えています。今後、子育てに関わる議論も予定されていると思いますが、まずは育児休業給付などの国庫負担の時限的な引下げ措置を解除して、速やかに本則に戻すことが議論の前提であり、それを受けて検討を進めることが重要だと考えています。
 そうした前提を踏まえた上で、今回御提示いただいた論点案について2点確認をしたいと思います。
 1点目は、論点の一つである適用の在り方についてです。現在の週所定労働時間20時間を下回る労働時間で働く方たちへの雇用保険の適用拡大につきましては、短時間労働者へのセーフティーネットの拡大という観点から重要な取組と考えています。
 一方で、20時間未満で働く方の中には、複数就労によって生計を維持している方も一定数いらっしゃると考えておりまして、副業・兼業時における雇用保険への加入の在り方、また、失業の定義などの検討に加えて、高齢者に限定したマルチジョブホルダー制度の試行状況結果の検証も必要になるのではないかと考えています。
 また、「適用拡大」という視点では、曖昧な雇用で働く方の中にも労働者性が高く、雇用保険の対象になり得る方もいることを考えると、労働者概念を社会の実態に合わせて見直し、より多くの方を雇用保険の対象とする必要もあるのではないかと考えています。こういった内容につきましては、論点の「適用の在り方」の中で議論が行われると考えていいのかというのをまず1点確認したいと思います。
 2点目は、論点の一つである財政運営についてです。こども未来戦略方針において、「こども金庫」というものをこども家庭庁の下に創設して、既存の特別会計事業を統合するという御説明がありました。
 ただ、雇用保険財源の活用の在り方や、保険料率をはじめとして、従来この雇用保険部会において議論を行ってきた事項については、引き続き本部会において検討する枠組みが重要だと思っておりますし、それが前提でなければ納得できるものではないとも考えています。その点についてもこの財政運営の論点の中で議論し、結論づけていくのかという点について確認したいと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 お願いいたします。
○尾田課長 雇用保険課長でございます。
 今、冨高委員から御指摘いただいた2点についてでございます。まず、適用について、複数就業、あるいは労働者概念そのものについて、適用拡大に当たって議論の射程かというお尋ねがございました。適用拡大の個別の議論を今後進める中で、そうした御意見も含めて御議論の中でとは思っておりますけれども、今回、適用拡大するに当たりまして、まずはどのような形でやるかということが一番の課題かと思っておりますが、そうした中で、今いただいたような御意見も踏まえてどうするかということを御議論していただければと思っております。
 また、こども金庫につきましては、先ほど御説明した閣議決定の中でも盛り込まれているところでございまして、基本的にはこども家庭庁を中心に特別会計の制度設計はしていくこととなろうかと思っておりますけれども、冨高委員に御指摘いただいたとおり、雇用保険財政、そして雇用保険制度そのものに関わる話でございますので、本部会におきましても、どこの議題かということはあろうかと思いますが、本部会で御議論いただく内容であると考えておりますので、その点も含めて今後御意見をいただければと思っております。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見のある方、いかがでしょうか。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。議論の開始でございますので、総論的に4点申し上げます。
 1点目は、財政再建についてです。雇調金等の大幅な活用によって雇用保険財政は危機的な状況にあり、有事の際に適切な対応ができないおそれがあると認識しております。「令和6年度末までを目途」とされている積立金への返済の在り方の議論も含めて、財政再建に向けた道筋を早急に明確化することが大事だと思っております。雇調金の特例措置が新型コロナウイルス感染症の拡大という有事の際に失業予防として一定の機能を果たしたということを改めてこの部会でも共有して、その費用の全てを全額事業主負担の雇用保険二事業で賄うことが妥当なのか、受益者が誰であったか、といった観点から、返済の在り方の議論は行うべきだと思っております。
 2点目は、教育訓練給付への一般財源の投入について申し上げます。政府は三位一体の労働市場改革の柱の一つとして、国を挙げて「リ・スキリングによる能力向上支援」を推進して、その一環として在職者個人の学び直しに対する直接支援を拡充するという方向を示していると理解しております。そうであるならば、現在、労使の保険料だけで負担している教育訓練給付について、一般財源の投入による国庫負担を行い、政府として人への投資にしっかり取り組むべきという姿勢を示すべきだと考えております。
 3点目は、育児休業給付の財政についてです。昨年10月、「産後パパ育休」制度の創設によって育児休業給付は一層増加していると理解しております。こうした中にあって、政府のこども未来戦略方針では、産後パパ育休期間の給付拡充や育児による時短勤務者への給付創設などが示されているところでございます。政府が率先して子育て支援をしていくことの重要性に鑑みれば、2024年度末までに暫定的に引き下げられている国庫負担割合80分の1を、一刻も早く本則の8分の1に復帰させて、財源を確保していくべきだと考えております。他方、雇用保険制度の主要な事業である求職者給付(基本手当)との給付率の均衡に鑑みると、これ以上の給付率の拡充を雇用保険制度の枠組みの中で行うことは整合性を欠いていて、被保険者の納得も得られないのではないかと懸念しております。
 最後に、適用の拡大について申し上げます。政府の「こども未来戦略方針」の中でも示されている週所定労働時間20時間未満の労働者への適用拡大については、多様な働き方の推進に資するといった観点から、働き方に中立的な制度となる方向で検討していくべきだと考えております。その際には、受給に必要な被保険者期間や賃金日額の水準、給付率、各種給付の適用の範囲など、給付の観点からも慎重に検討を行う必要があると考えております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 続きまして、オンラインの大谷委員が手を挙げていらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
○大谷委員 御説明ありがとうございました。全国中央会の大谷です。本日は参加が遅れまして申し訳ございませんでした。
 今、ほかの委員からもお話がありましたとおり、今回の雇用保険部会の主な論点について、財政問題という部分が非常に重要なファクターなのかなと思っております。私としましては、主な論点案で掲げられております6つの点については特に異論はございませんが、財政面について少しお話しさせていただきますと、昨年示されました雇用保険部会報告でも、国庫負担の在り方について各所に記載があるところでございます。国庫負担を原則に戻すということについての議論は今回も変わらない部分であると思います。
 また、保険料率をどうするかといった部分がございますので、中小企業にこれ以上の過大な負担とならないような配慮をしていただきたいということを発言させていただきたいと思います。
 また、次の議題で基本手当の論点の説明があるのかと思っておりますけれども、失業給付にプラスしてリスキリングを行うというのは一つの提案ではあると思うのですが、ほかの助成金とかぶってしまうといったことがないように、分かりやすい制度にしていく必要があるだろうといった部分とか、再就職をすることに関して、果たして給付の期限を短くするといったことで再就職につながるのかどうか、それとも手続を面倒がっている人たちを一定程度呼び込むことができるのかといったことも含めて、お話を聞かせていただければと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかにどなたか御意見、御質問がおありになる方、いらっしゃいますでしょうか。
 特にありませんかね。
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの御説明に関しては、御意見、御質問もないようですので、次に、「基本手当等の現状について」ということに移りたいと思います。まず、事務局より御説明をお願いいたします。
○川端調査官 雇用保険課調査官の川端でございます。資料7に沿いまして、基本手当等の現状について説明申し上げたいと思います。こちらにつきましても、駆け足となることを御容赦いただければと思います。
 2ページ目以降に基本手当関係の資料をお示ししております。冒頭3ページから7ページまでは先ほどの説明と重複しますので、割愛いたします。
 8ページ目において、基本手当の賃金日額の上下限・給付率のイメージを記しております。基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の最高額・最低額については、毎勤統計における平均給与額の変動に応じて変更しているというところでございます。
 9ページ目に、先ほど説明を割愛させてきました離職理由による基本手当の給付制限期間・被保険者期間・所定給付日数の比較を示させていただいております。倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた方を「特定受給資格者」と呼んでございます。期間の定めがある労働契約について更新を希望したにもかかわらず更新されなかったことにより離職した方、その他やむを得ない理由により離職した方を「特定理由離職者」と呼んでございます。そのほか、定年、満了等により離職された方、正当な理由なく自己都合により離職した方といった区分がございます。
 このうち、特定受給資格者、特定理由離職者、定年等により離職された方については給付制限の期間がない状況でございます。一方、正当な理由がなく自己の都合により離職した方については2か月の給付制限を設けてございます。
 受給に必要な被保険者期間として、特定受給資格者、特定理由離職者の方については離職後1年以内に6か月、その他の方については離職前2年以内に12か月、所定給付日数につきましても、倒産・解雇等の理由で離職された方については90日から330日と長い期間。現在、令和7年3月31日までの暫定措置でございますけれども、特定理由離職者の一部の方については、暫定的に特定受給資格者と同じ90日から330日の所定給付日数を設定しているところでございます。
 次に、10ページ目では、基本手当に係る主な制度変遷をお示ししております。11ページ目を御覧ください。基本手当日額と再就職時の平均日額を比較したものでございます。直近のデータを御覧いただきますと、直近の基本手当日額と過去5年度分の再就職時の賃金日額の平均を比較すると、再就職時の賃金日額が上回っているという状況でございます。
 12ページ、13ページ目のところは、先ほど申し上げました特定受給資格者、特定理由離職者の概要を載せております。
 14ページ目でございますけれども、自己都合離職者に係る基本手当の給付制限の概要をお示ししております。真ん中に基本手当の受給資格の流れがございますけれども、離職をして求職申込み、受給資格決定の後、7日間の待期満了を経て失業認定、基本手当の支給というところでございますけれども、正当な理由がなく自己の都合により離職された方については、待期満了の翌日から2か月間の給付制限がかかっているという状況でございます。この給付制限の考え方といたしましては、基本手当は倒産・解雇など、自らの意思によらない失業に対して給付を行うことが基本でございます。仮に給付制限のようなものがなければ、基本手当を受給することを目的として離職する者の発生を助長しかねないといったことが考えられます。
 15ページ目に、自己都合離職者の給付制限の見直しの変遷を示しております。まず、昭和59年の雇用保険法改正におきましては、給付制限期間を1か月から3か月に延長して、令和2年10月の改正では、給付制限期間を2か月に短縮しているところでございます。一方、平成6年改正においては、公共職業訓練等を受講する場合には給付制限を解除、令和4年の雇用保険法改正においては、求職者支援訓練を受講する場合においても給付制限を解除するという改正が行われておるところでございます。
 16ページ目に行っていただきまして、自己都合離職者の推移を示しております。自己都合離職者の方については70万人程度、受給資格決定件数に占める自己都合離職者の割合は50%程度で推移しておるところでございます。直近では55.9%、74.6万人ということになっております。
 17ページ目のところで、令和2年10月から給付制限を2か月に短縮しておりますので、この短縮前後を見比べたデータを御用意しております。見ていただきますと、令和3年4月から5月においては、給付制限開始から1か月未満、あるいは2か月以内で再就職する方の割合が減少しているという状況でございます。これは給付制限期間を短縮したことにより、基本手当の受給開始まで再就職を延期したという可能性が考えられる一方で、コロナ禍で再就職までに時間を要した可能性もあるということで、ちょっと留保付ではございますけれども、このようなデータがあるところでございます。
 18ページ目でございますけれども、受給資格決定後の初回給付率につきまして、給付制限の有無別の初回受給率をお示ししております。初回受給率につきまして、給付制限ありの方は令和元年度まで60%でしたけれども、給付制限期間を3か月から2か月に変更した令和2年度以降は約70%というふうに増えているという状況でございます。
 19ページ目を御覧いただきまして、自己都合離職者の公共職業訓練等の受講状況をお示ししております。令和3年度におきましては、給付制限がある方のうち、給付制限期間中、受講指示、訓練開始をして給付制限を解除された方は約2.7%という状況でございます。
 20ページ目で諸外国の自己都合離職の取扱いを示しております。例えばアメリカやフランスですと、自己都合離職の場合に原則支給しない国がある一方で、イギリス、ドイツ、スウェーデン、デンマークにおいては日本のように自己都合離職に給付制限を設けている国が多いというところでございます。
 21ページ目以降は、数値をお示ししております。
 24ページにおいては、特定受給資格者の平均給付日数、25ページ目は特定受給資格者以外の平均給付日数をお示ししております。
 26ページにおきましては、基本手当受給者の再就職の状況を示しております。基本手当受給者全員の方ですけれども、支給終了までに就職された方は62.2%となっております。一方、27ページにございますけれども、特定受給資格者の方が支給終了までに就職した方の割合は、65.6%という形になっております。28ページ目でございますけれども、特定受給資格者以外の方については60.7%という状況になってございます。
 29ページ目は、先ほど申し上げましたけれども、関連する閣議決定の中で、自己都合の場合の給付制限、給付期間の検討ということが盛り込まれているというものをお示ししているところでございます。
 30ページ目以降で暫定措置の関係を御説明申し上げます。31ページ目でございますけれども、リーマンショック時に様々な失業等給付の暫定措置が設けられました。引き続き暫定措置として、残っているものとしては、一つは雇用情勢が悪い地域に居住する方の給付日数を60日延長する暫定措置、もう一つは雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇並みにする暫定措置が残っており、失業等給付に係る暫定措置としては2つ残っているところでございます。
 32ページ目は、先ほど雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数の暫定措置の対象である方の概要を示しております。
 33ページ目でございますけれども、その暫定措置対象者の方については、令和2年度において10.4万人と増加したところでございますけれども、令和4年度には5.5万人になっているという状況で、特定受給資格者に占める暫定措置の方の割合は2割程度で推移しているという状況でございます。
 34ページにおきまして、この暫定措置の方の支給終了後1年以内の就職率をお示ししております。おおむね70%後半で推移しているかなというところでございます。
 35ページ目におきまして、暫定措置対象者の方の再就職状況をお示ししております。この暫定措置対象者の方が支給終了までに就職した方の割合は、特定受給資格者が65.6%に対して、この暫定措置の対象者は57.4%という低い数字となっているところでございます。
 36ページ目以降で、もう一つの暫定措置でございます地域延長給付の概要を申し上げます。倒産・解雇等による離職者について、雇用情勢が悪い地域に居住して、さらに重点的に再就職の支援が必要であると認められた受給資格者に対して、所定給付日数を超えて基本手当を延長しているところでございます。指定地域としては、いずれもリーマンショック時の指標をもちまして、有効求職者の割合が全国よりも高いという地域指定の基準を設けているところでございます。
 37ページにおいては、その指定基準の変遷を記しているところでございます。
 38ページ目でございますが、地域指定数の推移を示しております。平成21年度においては労働局単位で35労働局、これが平成24年度以降は安定所単位にいたしましたので、33労働局260安定所となっていたところ、現時点、令和5年度直近においては、2労働局2安定所になっているという状況でございます。
 39ページ目に、地域延長給付の支給状況をお示ししており、初回受給者数は8人という形になっております。
 次に、40ページ目以降で就業促進手当関係の内容について御説明を申し上げます。41ページ目において、就業促進手当の概要、手当の名称、受給者数をお示ししております。具体的には42ページ目以降で、まず就業手当でございますけれども、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上である受給資格者、後でご説明する、再就職手当の支給対象とならない形態で就業した場合において、一定の要件を満たすときに支給されるものでございます。支給額としては、基本手当日額の30%に相当する額を就業日ごとに支給されるところでございます。
 43ページ目を御覧いただきまして、再就職手当の概要を申し上げます。こちらの再就職手当の場合は、安定した職業、1年超の雇用見込みのある職業等に就いた場合に、所定給付日数の3分の1を残して再就職した場合には、支給残日数の60%に基本手当日額を乗じた額を支給し、支給残日数が3分の2以上の場合には、支給残日数の70%に基本手当日額を乗じた一時金が支給されるというものでございます。
 もう一つ、就業促進定着手当というものがございまして、基本手当受給者で早期に再就職したのだけれども、離職前の賃金から再就職後の賃金が低下していた方について、低下した賃金の6か月分を支給するものです。
 44ページには、それぞれ再就職手当と就業促進定着手当の制度変遷を示しております。再就職手当につきましては、順次給付率が高まっているというところでございます。
 45ページ目のところで、常用就職支度手当の概要を示しております。常用就職支度手当は、例えば障害のある方などの常用就職を促進するために、このような方が安定した職業に就いた場合において支給をしているものでございます。
 46ページ目、47ページ以降は、それぞれの手当の支給状況をお示ししているところでございます。
 50ページ目で、早期再就職者の割合の推移を示しておりまして、早期再就職者の割合は、近年は横ばいにあるという現状でございます。
 51ページ、52ページ、53ページ目と行っていただきまして、53ページは就業促進定着手当の支給状況でございますけれども、再就職手当の受給者に占める就業促進定着手当の受給者の割合は、近年、30%弱で推移しているところでございます。年齢階層別の受給者数を御覧いただきますと、年齢が高いほど就業促進定着手当の受給者の割合が上昇する傾向があるというところが見られます。
 これらを踏まえまして、事務局から基本手当等につきまして論点をお示ししております。54ページ目でございますけれども、1つ目は、失業者の生活の安定とその再就職の促進及び労働者の雇用の安定を図るという失業等給付の趣旨に鑑みて、基本手当(給付水準や給付制限等)の在り方についてどのように考えるか。失業等給付の趣旨や現下の雇用情勢等も踏まえ、暫定措置の在り方についてどのように考えるか。暫定措置につきましては、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した方に対する所定給付日数を拡充する措置と、もう一つは地域延長給付でございます。これに加えまして、人手不足の状況を踏まえ、安定した職業への就職促進や構造的な賃上げの次の観点から、就業促進手当の在り方についてどのように考えるかという論点案をお示ししているところでございます。
 55ページ目以降、参考資料として、学識経験者の方々に御参集いただきまして、雇用保険制度について多角的に研究・議論いただいた雇用保険制度研究会の中間整理でお示しいただいた内容の中で基本手当に関連するもの、直面する課題や検討の視点を御参考にお示ししております。様々な観点から御議論いただいて、様々な御意見を出していただいているというものでございますので、これらのものを御参考にしていただければと存じます。
 先ほど説明が遅れて恐縮ですけれども、参考資料1にこれまでの制度改正の経緯や、参考資料2-1に前回の雇用保険制度の見直しに当たっての雇用保険部会からいただきました報告書、参考資料2-2では、前回の法改正の法律案要綱の際に当部会からいただいた御意見、参考資料3においては、国会の中での衆参両院における附帯決議、参考資料4として、先ほど申し上げました学識経験者の方に御参集いただきました雇用保険制度研究会の中間整理を参考資料として御用意しております。
 資料としては以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見等があれば、お受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 三島委員、お願いいたします。
○三島委員 御説明ありがとうございました。論点にもある、基本手当の給付水準や給付制限について意見させていただきたいと思います。
 これまでの過去の分科会においても一貫して発言しておりますが、改めて基本手当に対する労働側の考え方を申し上げたいと思います。10ページの制度変遷を見ると、基本手当は平成12年及び平成15年の改正により、法定賃金日額及び給付率、所定給付日数がいずれも引き下げられました。財源の課題はありますけれども、雇用保険の趣旨であるセーフティーネットの充実という観点を鑑みますと、本来は法定賃金日額、給付率、所定給付日数を平成12年改正前の水準までに回復することが重要だと考えます。
 また、自己都合離職者に適用される基本手当の給付制限期間については、15ページの御説明にありましたとおり、過去、安易な離職の防止の観点から給付制限期間が1か月から3か月に延長され、その後、安定した再就職活動の支援の観点から2か月に短縮された経緯があります。長い給付制限期間を設定すると、無収入状態を脱するために就職を急いだ結果としてミスマッチが発生する懸念もありますので、給付制限期間を短縮していく方向が望ましいと考えます。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 清田委員、よろしくお願いいたします。
○清田委員 御説明ありがとうございます。日商の清田でございます。論点に基づいて3点申し上げたいと思います。
 1点目が、基本手当の給付制限期間についてでございます。正当な事由がない自己都合退職などへの対応として、給付制限の趣旨に鑑みれば、一定の給付制限の維持というのは必要と考えております。給付制限期間の短縮などの見直しを議論するに当たっては、見込まれる効果と想定される課題などを十分に精査していただき、慎重な検討が必要と考えます。労働政策全体としてリスキリングによる労働者のスキル向上と処遇改善を促すことに異論はございませんが、深刻な人手不足に苦しむ中小企業の立場からは、従業員の離職拡大につながるような制度改正に対しては懸念が大きくございます。既に転職先が決まっている労働者が給付や再就職手当を目的に早期の退職を図るようなケースなども懸念されます。給付を目的とした安易な早期退職を誘発することがないような制度設計を検討するべきと考えてございます。
 加えて、仮に給付制限の短縮をした場合に、雇用保険財政に与える影響も踏まえながら検討することも必要と考えます。
 続きまして、2点目でございます。有期雇用契約者の雇止め、特定地域に係る暫定措置についてでございます。過去の例を見ますと、リーマンショック、コロナ禍、あるいは東日本大震災などの影響が広範囲に及ぶ例、かつ、雇用悪化につながるときには必要な対応であったと考えます。
 他方で、災害により離職した場合には、個別延長給付により延長できることに加えまして、足下では、全国で幅広い業種において深刻な人手不足の状況であることから、現時点で本暫定措置を維持する必要性は低いのではないかなと考えてございます。
 最後に、3点目、就業促進手当について申し上げます。就業促進手当は、早期の再就職を促すことに一定の効果というのは認められますが、現在の雇用保険財政の状況を踏まえたときに、こうしたインセンティブとしての手当が適切なのか、あるいは諸外国での給付水準が逓減する設計がいいのか、再検討も必要ではないかと考えております。少なくとも、政府が現在リスキリングによる処遇改善というのを政策の重点に置いていることを踏まえますと、就業促進定着手当については再検討が必要なのではないかと考えてございます。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見や御質問はありますでしょうか。
 内藤委員、よろしくお願いいたします。
○内藤委員 ありがとうございます。私から、暫定措置に関して2点意見を述べさせていただきたいと思います。
 1点目は、雇止めの特定理由離職者の暫定措置についてです。こちらは、リーマンショック時に雇止めによる離職者の生活保障を目的に設計されていて、雇止めによる離職者の再就職に要する時間が顕著に短期化してきたなど、そうした状況の変化が確認されておらず、依然として特定受給資格者を下回っている状況だと認識をしています。
 下回っている要因、あるいは受給者の状況を踏まえた検証が必要だと思っており、そうした検証の結果を踏まえて、制度の恒久化といったことも含めて今後の在り方について検討してはどうかと思います。
 続いて、2点目は、資料7の36ページ以降にある地域延長給付についてです。こちらは近年の給付実績や特定地域の実績を見ると、低い水準で推移しているということは分かりますが、今後発生し得る特定の地域での雇用危機には、やはりセーフティーネットの観点で引き続き備える必要があると考えています。
 また、指定地域の対象や実績は、倒産や解雇などによって雇用機会が不足している地域に関する基準の設定によって変わり得るため、まずは現在の実績が低い水準となっている原因について分析をした上で、今後の地域ごとに生じる雇用の変化への臨機応変な対応や地域雇用の維持など、幅広い観点で活用が進むように基準等を見直してはどうかと思います。
 以上2点、申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
 平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。論点が3つございますので、それぞれについて申し上げたいと思います。
 まず1つ目は、基本手当の在り方についてです。「構造的な賃金引上げ」の実現に向けた一つの鍵が円滑な労働移動です。この実現に向けて現行の「雇用維持型」のセーフティーネットを「労働移動促進型」に移行していくべきといった立場からは、失業等給付に設けられている給付制限については一定の見直しが必要なのではないかと認識しています。例えば、政府の「骨太方針2023」でも示されているとおり、一定の要件を設けた上で自己都合と会社都合の差を縮めるなどのアプローチが考えられると思っております。基本手当の給付水準(金額や率、日数)の引上げにつきましては、研究会報告にもあったとおり、マッチングの改善や再就職後の賃金改善につながるという明確なエビデンスがないことを考えると、財政状況等も踏まえた上で、求職者の就職意欲を阻害することがないように慎重に検討していくべきだと思っております。
 2点目は失業等給付に係る給付面の暫定措置についてです。これらの措置は、リーマンショック時に創設されてコロナ禍で延長してきたものと理解しております。各種コロナ特例も終了して、雇用保険制度の運営は平時に戻っていると認識しておりますので、暫定措置の効果を検証して、効果が薄いものは終了も含めて見直しを検討する必要があると思っております。
 最後に、就業促進給付の在り方についてです。人手不足が続いている中にあって、労働参加率の質的向上という観点からは、安定した職業への早期再就職を促していくことは重要だと思っております。他方、就業促進給付のそれぞれの手当によって受給者数に偏りが見受けられています。利用実態や効果を検証した上で、手当の統合や実効性の低い手当の廃止なども含めて、複雑化している事業を効率化していくべきなのではないかと思っております。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 千葉委員、お願いいたします。
○千葉委員 ありがとうございます。就業促進手当に関して意見を申し上げたいと思います。
 41ページ目に一覧が記載されていますが、これらの制度については、利用者に差はあるものの、いずれも求職者にとって早期に安定した職業に就職する意欲を向上させるために必要な制度ではないかと考えています。各制度の利用状況、特に利用者数の減少している就業手当については、対象人数に対しての利用実績やハローワークでの運用状況など、利用者数の少ない要因を検証する必要があるのではないでしょうか。
 また、54ページに記載がある構造的な賃上げの観点からといった表現について、今回の資料としては添付されていませんが、厚労省で発表されている令和3年雇用動向調査の転職入職者の賃金変動状況というものを見てみますと、全体のうち4割弱の転職入職者の賃金が減少しています。こういった状況を踏まえますと、就業促進手当のうち、41ページ目の(ハ)就業促進定着手当につきましては、高年齢労働者をはじめ再就職の結果賃金が低下した労働者にとって、当面の生活を支えるために引き続き必要な制度ではないかと考えています。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、議題2につきましても以上とさせていただきたいと思います。事務局におきましては、基本手当等について、今日の議論も踏まえ、必要な整理を進めてください。
 本日予定されている議題は以上ですので、本日の部会はこれで終了させていただきたいと思います。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきどうもありがとうございました。