第13回新しい時代の働き方に関する研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和5年8月31日(木) 16:00~18:00

場所

航空会館 501+502号室 

議題

報告書に向けた議論

議事

議事内容
○今野座長 それでは、時間ですので、ただいまから第13回「新しい時代の働き方に関する研究会」を開催いたします。
 まず、今日の出欠状況ですが、戎野構成員と武田構成員が御欠席です。
 事務局に人事異動がございましたので、紹介をさせていただきたいと思います。総務課長の黒澤さんが出席されていますので、よろしくお願いします。
○総務課長 よろしくお願いいたします。
○今野座長 それでは、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。
 本日の議事に入りたいと思います。本日は、これまでの議論の状況を踏まえて、事務局に報告書の骨子を作成いただきましたので、その説明をしていただき、議論をしたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
 お手元の資料ですが、骨子案と前回お配りした資料の修正版ということで、2つ配らせていただいております。本日は骨子案の御説明ということで、縦置きの文書編のほうで御説明を差し上げたいと思います。全体に関しては事前に一度送付させていただきましたので、全体のポイントを御説明させていただければと思います。
 まず、骨子案の全体の構成でございます。1ページ、表紙のところでございますが、第1から第4までに分けてございます。前回提出いたしました中間整理と同じように、「この研究会の契機となった経済社会の変化」「新しい時代に対応するための視点」「新しい時代に即した労働基準法制の方向性」「企業や働く人に期待すること」という4章仕立てで構成しております。
 おめくりいただきまして、第1の「本研究会の契機となった経済社会の変化」という部分でございます。最初の「1.企業を取り巻く環境の変化」でございますが、企業を取り巻く環境ということで、国際競争が激化しているということ、金融市場・商品市場が不安定化をしているということ、技術の不安定化による企業の不確実性への直面といったようなことを前回と同様に取りまとめております。
 また、労働市場の変化につきましても、人口減少に伴う人手不足、DX等の進展による企業の人材戦略への影響、こういったことを取りまとめさせていただいております。
 「2.働く人の意識の変化、希望の個別・多様化」というところでございます。これも前回の資料を基本的にまとめさせていただいております。生活スタイルの個別・多様化の中で、働く場所、時間、就業形態といったものを選択できる働き方を求める方が増えているということ。また、コロナの影響下によるテレワークの広がりとか、オンラインを通じたオフィスのないような仕事も含めたワーカーの増加、こういったことから働く意識や希望する働き方、キャリアといったものが個別・多様化していっているということをまとめております。
 3ページの「3.組織と個人の関係性」のところでございます。この部分は、前回の御議論の中でもかなり様々な御指摘をいただいたところでございまして、それに沿ってまとめさせていただいているところでございます。
 組織と個人の関係性でございますが、まず個人の観点として、多様な働き方の選択肢を取ることができ、能力を高めて発揮し、豊かなキャリアを形成できるといった機会の提供を求める方が増えているということ。一方、企業の側から言いますと、4つ目のポツのところですけれども、人口減少下において、優れた人材を中長期的に確保するということから、長期雇用や企業内のキャリア形成といったものは引き続き重視しつつも、労働者の能力、成果といったものを評価して、様々なものに反映していくといった仕組みが広がっていっているということ。また、企業がビジネスの内容とか人材像・能力といったものを働く人と共有して、多様で主体的なキャリア形成を支援するといった企業も増加しているという事情がございます。
 そういった中で、下の部分「変化する企業と個人の関係性」でございますが、組織と個人の関係性が変化していっている中で、働く人が働き方を柔軟に選択し、能力を高め発揮できる環境を整備し、これを支える仕組みとして、働く人の多様なニーズを酌み取って、それを労働条件や職場環境に反映するための仕組みが必要になってきているという状況でございます。上のほうにも書いてございますが、働く人と企業がよりイーブンな関係を築いていくということになってきているというふうにまとめております。
 4番のヒアリング結果につきましては、前回は記載がございませんでしたが、本研究会でヒアリングした企業の状況につきまして簡単にまとめたものとなっております。こちらについての説明は割愛させていただきます。
 5ページ目「第2 新しい時代に対応するための視点」というところでございます。前回の御議論の中で、「守る」ということと「支える」ということ、この2つの軸に沿っての整理ということを御指摘いただきましたので、そのように流れをつくっているものでございます。
 1つ目が「これまでの労働基準法制の特徴と課題」というところですが、まず現行法の形としましては、労働基準法制が鉱業法や工場法を前身としていて、同じ時間・場所で使用者の指揮命令に従って働くといったものを想定している。したがいまして、最後のところですけれども、物理的な「事業場」を規制の単位としているというものであるというのが現行法の形であります。
 これに基づく検討課題、下の部分でございます。事業場での時間・場所の管理といったものから解放された働き方が拡大してきている。そうしますと、労働基準法制が想定していなかった状況が増えてきているという状況になっている。働き方の個別・多様化といったものも急速に進行していて、同じ場所で画一的な働き方をするということを前提としない状況が拡大している。こういったものを生かすということで考えますと、「画一的」なものでなく、「多様性を生かす」といった問題意識を念頭に、大局的な視点を持って労働基準法制の在り方を改めて考えることが必要であるというふうにまとめております。
 その次の「これからの労働基準法制に求められる視点」のところでございますが、ここは大きく丸2つで区切っております。1つ目が「守る」という視点で書いているもの、2つ目が「支える」という視点で書いているものでございます。
 「守る」のところでございますが、まずは変わらない考え方ということで、労働憲章的な規定とか基本原則、封建的な労働慣行を排除するための規定、こういったものは変わらないということ。そして、全ての働く人が心身の健康を維持しながら、幸せに働き続けることのできる社会であること。こういったものはどのように環境が変化しようとも変わらない不変のものであるということを記述しております。
 次の変化の部分でございます。「今」の現実と「新しい時代」の変化を捉え時代に合った必要な見直しが必要であるということ。働く価値観、ライフスタイル、働く上での制約といったものが個別・多様化している中で、画一的な制度を一律に当てはめるのではなく、健康管理も含めて、働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備していかなければならないということをまとめております。
 これを踏まえまして、次の「1.『守る』と『支える』の視点」でございます。「守る」の視点につきましては、変化する環境の下で、働き方・キャリア形成に関する希望が個別・多様化していく中で、心身の健康の重要性は全ての働く人に共通していると。これまで基準行政が果たしてきたこういった労働者を守るという役割は引き続き確保されなければならないということ。また、後述する「支える」という視点においても、支える中でも健康が害されるということがないようにするという視点が必要であるということを記述しております。
 「支える」視点のほうでございます。自らの望むワークスタイルに合わせて柔軟に働きたい方、自己成長やキャリア形成のために柔軟に働きたい方が増えている中で、基準法制というものが適切に効力を発揮するように、対等な労使コミュニケーションの下で、そういった多様な選択を可能とするものとしていく必要があるということをまとめさせていただいております。
 6ページ下段「働く人の求める多様性尊重の視点」ということでございまして、7ページに「守る」と「支える」の視点で書かせていただいております。「多様性尊重の中での『守る』視点」でございます。働く人の健康確保、最低限の労働条件といったものは、変化する中でも守るべき基盤である。また、これに加えて、労使関係といった中で、経営者がどうしても労働者より強い立場にあるといった構造の中で、働く人の選択や希望といったものがしっかり反映されるようなものにしなければならないという視点でまとめております。
 「支える」の視点でございますけれども、厳しい環境変化に対応する中で、企業は職場のエンゲージメントを高めるための人材マネジメントといったものを広げていく。こういった中で、働く人の求める多様性、尊重の視点に立った仕組みを企業としても整備をすることが重要になってきます。
 そのためには、労働基準法制のほうも、働く人が自ら希望する働き方・キャリアを支え、働く人の選択や希望が尊重されるものになるということが重要であるとまとめております。
 こうした上で、「第3 新しい時代に即した労働基準法制の方向性」ということで、これも守り方、支え方ということを目指しております。これは前回の資料では5つの丸を書いて、矢印で示した絵があったと思いますけれども、その5つというものが基本の軸になります。その中で、これらの5つの項目は、「守る」という視点、「支える」という視点、両方入っているものではあるのですが、どちらかといえば「守る」という視点に近いものから順番に1から順に並べさせていただいております。
 まず、「1.変化する環境下でも変わらない考え方」ということでございますけれども、先ほど来出てきております労働基準法の基本原則、労使対等とか、強制労働禁止といったものに関しては変わることのない基盤であるということを改めて示しております。
 「2.働く人の健康確保」でございます。働く人の健康確保は、全ての人にとって共通して必要であるということと、企業が労働者を使用するという活動である以上は、労働者の健康確保というのは一義的に企業の責任であるということ。これを明示した上で、下の3つ目の丸以降でございますが、働き方や働く場所が多様化し、健康管理の仕組みが複雑化している中で、個々の労働者が置かれた状況に応じた企業による健康管理の在り方というものが検討されるべきであるということ。
 ただ、企業がそれをやるということではございますが、一方で、下の丸のところでございます。裁量の大きい仕事ですとか、時間や場所にとらわれない働き方をする人が増えている中で、企業が全ての労働者の健康状態を把握、管理するということがなかなか難しくなっている。こうした中で健康を守っていくためには、次のページの上でございますが、労働者自身も自分の健康状態を知り、健康保持増進を主体的に行うといったことが必要であることを記述しております。
 その次のところですけれども、こういった構造で考えたときに、企業が労働者の健康管理を行う。労働者も自分の健康状態を知って、企業とコミュニケーションを取っていく。その中で、労働者の健康に係る情報というものをどこまで企業が把握していいか、こういったことも検討課題になるということを書かせていただいております。
 こうした対応の中で、その次ですが、労働者が必要に応じて使用者と十分にコミュニケーションを取れる環境が求められるということ。ここまでが全体のまとめでございます。
 最後の丸でございますが、前回も示させていただきました。これに加えて、勤務時間外についてのいわゆる「つながらない権利」につながるところでございますけれども、そういった時間帯の業務上の連絡の在り方についても引き続き議論がなされることが必要とさせていただいております。
 「3.働く人の選択・希望の反映が可能な制度へ」というところで、ここからが「支える」の視点のほうに寄ったものとなります。まず「(1)変化に合わせた現行制度の見直し」というところでございますが、これまでと同様の働き方がなじむ方には、これまでと同様の規制をして権利擁護を行っていくということが必要であると。一方で、新たな働き方で働く人に関しては、時代に合わせた見直しを行っていかなければならないという基本原則を改めて書かせていただいております。
 「(2)個が希望する働き方・キャリア形成に対応した労働基準法制」でございます。キャリア形成に関する働く人の希望が個別・多様化している中で、企業も多様性を重視する人材マネジメントをやっていると。こういった働き方は広がっていくけれども、一方で、格差拡大とか、労働者間の公平性・納得性といったことも課題になってくる。そういう中で、企業が働く人の多様な声をしっかりと吸い上げて、その希望を労働条件の決定に反映させる、こういった集団的な労使コミュニケーションの在り方というものを検討することが必要なのではないかということを記載しております。
 その際、労働者と使用者の交渉力格差にはきちんと留意した上で、基準法制の中でそうした労使の選択を尊重し、その希望を反映できるような制度の在り方を検討すべきではないかということで、書かせていただいております。そういう状況でございますので、最後のところでございますが、労使コミュニケーションの在り方というものも多様であり、また複線的なものであり得るということを書かせていただいております。
 「4.シンプルでわかりやすく実効的な制度」ということで、これは前回のときには資料を用意していなかったところでございますが、改めて記述をさせていただいております。3番のところまでで記載してきたようなことを実施していくに当たって、シンプルで分かりやすい制度が必要というところでございますが、基準法の中、例えば労働時間制度に関しましては、その手続の中で過半数労働組合であったり、過半数労働組合がないときは過半数代表者との協定であったり、あるいはものによっては使用者と労働者で構成する委員会、安全衛生委員会のようなものが代表例かと思いますけれども、そういったもので手続をするという形で、各制度によって異なる手法、各労使手続によって協定・決議といったものが様々な内容になるという状況になっているというのが現状でございます。
 法制度が「守られる」、実効性あるものにするためには、労使にしっかり受容していただく必要がありますので、最後の丸のところでございます。視点として、趣旨・目的に沿った有効性の視点から、労使双方にとってシンプルで分かりやすいという分かりやすさの視点が、制度によって労使コミュニケーションを経て導入するというものもございますけれども、それは導入時だけでなくて、導入後についても定期的な点検、コミュニケーションというものができるかという透明性の視点、こういったものを踏まえて検討されていく必要があるだろうということを記載しております。
 最後に、「5.労働基準監督行政のアップデート」でございます。ここは前回もお示しいたしました量的課題、質的課題、それぞれございます。その中で、11ページ(2)と(3)で2つ用意してございますが、まず「効果的・効率的な監督指導体制の構築」ということで、監督指導にAI・デジタルの技術を活用することによって、効率的な監督を行うということ。また、事業者が自主的に法令遵守の状況をチェックできる仕組みといったものも活用していくことが必要ではないかといったことを書かせていただいております。
 こういったものを検討する視点として、最後の丸のところでございますが、これまで事業場単位で法を遵守させる仕組みになってきたものがなじまないケースが増えているということから、物理的な場所としての事業場のみに依拠しない監督指導の在り方についても検討が必要ではないかということで、書かせていただいております。
 最後の丸のところでございますけれども、基準法制は労働者を対象としている法律ということではございますが、働く人全体の守り方ということに関しては、基準法制の枠内だけでなくて、広く検討が必要ではないかということを書かせていただいております。
 「(3)労働市場の機能を通じた企業の自助努力」というところでございますが、2番で書かせていただいたいわゆる監督行政によるものだけではなくて、企業の自主点検によって労働条件や職場環境の改善をする。そういう好循環を促進していくということが必要ではないかということで、市場メカニズムを活用した規律・改善方法についても検討すべきと。
 最後のところでございますけれども、それが、企業にとっても労働条件や職場環境の改善に自律的に取り組むことで人材確保と成長にもプラスになるということをまとめさせていただいております。
 12ページ、最後「第4 企業や働く人に期待すること」ということでございまして、前回の資料ですと、働く人に関しては健康管理等を絡めた書きぶりになっていましたが、シンプルにするということで、「企業に期待すること」「働く人に期待すること」と2項立てにしております。
 まず、「企業に期待すること」でございますが、1つ目として、これは前回なかったところでございますが、複数の先生方から御指摘いただきましたビジネスと人権といった視点を持ってやっていく必要があるということで、文章を書かせていただいております。国際化が進む中で、企業内の働く人の人権尊重や健康確保というのはもちろんのことながら、サプライチェーン全体で働く人の人権尊重や健康確保、そういったものを図っていくことが必要であるということを書かせていただいております。
 「(2)人的資本投資への取り組み」ということで、企業にとって職員の健康確保も含めて、それは人的な資本投資であるというふうに捉えて、企業価値の向上のためにも、そういった労働条件の改善、能力向上の確保の機会、主体的なキャリア形成といったものに対してしっかりと投資をしていっていただきたいということをまとめさせていただいております。
「(3)働き方・キャリア形成への労使の価値観の共有」ということで、働く人の中では、自らキャリア形成できる方、企業のサポートが必要な方など、様々いらっしゃいます。その中で企業がパーパスとかビジネスの将来像、適した人材像といったものを可視化して、働く人と共有していくことで、双方向のコミュニケーションの中でキャリア形成をしていく。そういったことを進めていっていただきたいということを記載させていただいております。
 「2.働く人に期待すること」でございますが、「(1)積極的な自己啓発・自己管理」ということで、1つ目の丸、2つ目の丸、先ほども出てきましたが、健康の確保ということでは、企業がやるだけではなくて、働く人も自ら健康の保持増進に努めていく。そのためにも自ら法制度等について知っていっていただき、セルフマネジメント力を高めていっていただくことが求められるのではないかということを書かせていただいております。
 3つ目の丸につきまして、健康だけでなく、能力向上という観点からも、自ら望む働き方、将来行いたい仕事、こういったものに求められる能力開発に自主的・積極的に取り組んでいただきたいということを書かせていただいております。
 「(2)企業の目的・事業への積極的なエンゲージメント」については、「企業に期待すること」の3番とパラレルでございますけれども、企業のパーパス、ビジネスの将来像、人材像といったものについて、働く人の側からも積極的に情報収集、価値観を共有していただいて、その企業内での中長期的に価値の高いキャリア形成を行っていただきたいということを記載させていただいております。
 以上、前回の中間整理を基に、それを文章化して骨子とさせていただいております。これを基にまた御議論いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○今野座長 ありがとうございました。
 それでは、御自由に意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 ちょっと細かいこと、用語の問題ですけれども、人事管理、労務管理、人事労務管理、人材マネジメント、4つぐらいの言葉が出てきているのですけれども、何か意味があるのか。人事管理と言っているときと、労務管理と言っているときと、人事労務管理と言っているときと、人材マネジメントと言っているときは、何か意味の違いがあるのですか。
○労働条件確保改善対策室長 大きく中身がということではないのですが、人事管理と言うときは、どちらかというと人を採用するときとか、そういう時点をイメージしていて、労務管理は、採用して、今働いている人の状況を管理していくというイメージではおります。ただ、分かりづらいということであれば、表現の統一等も検討させていただければと思います。
○今野座長 第三者が初めて読むと、用語が違うと、何が違うのだろうと思いますね。
○労働条件確保改善対策室長 かしこまりました。用語の整理をさせていただければと思います。
○今野座長 どうでしょうか。どうぞ。
○大湾構成員 非常に分かりやすくまとめていただいたと思っております。
 幾つかちょっと議論が足りないのではないかなと思うところがありまして、その点について議論させてください。最初から順を追って、細かい点になってしまうかもしれないですけれども、労働市場の変化のところで、「デジタルトランスフォーメーションの進展による情報処理や開発、情報通信の分野での労働需要の変化」とあるのですが、今、デジタルトランスフォーメーションでほとんどの職種で仕事の仕方が変わってきていて、その中で必要とされるスキルが変わってきているという認識が広がってきていると思いますので、特定の分野だけでなくて、多くの職種で変化が起きていて、職種間の必要な人材構成も変わってきているし、同じ職種でも必要とされるスキルが変わってきていると。それに企業が対応しなければいけないという現状が分かるような、伝わるような文章のほうがいいのではないかなと思いました。
 2つ目ですけれども、多様な働き方を支えていくとか、個人の自発的なキャリア形成を支えていくというようなメッセージが幾つかありますが、それと対になるのが労働市場の流動化だと思うのです。今まで企業はある程度個人の希望を抑えて、要するに、雇用保障をする代わりに会社の都合に基づいて人を使ってきたと。ある程度働く人の意識、個別のニーズを考慮しながら人材開発を進めるということは、そこで需給のギャップが生じてしまう可能性があると。したがって、ある程度自由な労働移動を認めていくためには、それを阻むような政策的な要因をできるだけ取り除いていくということがやはり重要ではないかなと。そういったメッセージが入ったほうがいいのではないかなと思っています。
 個人的には、活躍の場を企業は提供しなければいけない、もし活躍の場を提供できないのであれば、金銭補償という形で、ある程度これまでの貢献に報いた上で、他社で活躍の場を見つけてもらうというような選択をする人が増えてくることは避けられないと思っているので、金銭補償のルールとかそういったものも進めていく必要がありますし、企業も自発的にそういった制度をつくっていく必要があるのではないかなと思います。
 個別化・多様化が進んでいくと、その行き着く先は雇用形態にあまり意味がなくなってくる世界だと思うのです。今までは画一的な人事制度を持っていたので、正社員に対してはこの制度、非正規の人たちにはこういう制度というふうにかなり明確に区別して人事政策を運用してきたわけですけれども、個別・多様化が進むということは、そういった壁をさほどつくらなくてもいいということになってきますので、雇用形態の区分を明確に分けていくということが、あまり意味がなくなってくるような世界が今後広がってくる。長い目で見るとそういったことを前提にした議論が必要ではないかなと思いました。
 労使がイーブンな関係をつくるということを何度かお話しされていて、報告書に盛り込まれていますけれども、どうやってイーブンな関係をつくるのかというのが、読んだ感じでは見えてこない。もちろん、労働組合とか、制度上の労使交渉に関する制度を変えていくというやり方も一つあるのでしょうけれども、もう一つが最後のほうで議論があった市場メカニズムを使うと。労働市場における可視化を進めることによって、従業員を大切にしない企業には優秀な人が集まらないというメカニズムをうまく使って、従業員の交渉力を高めていくということが望ましいのではないか。そういったつながりがもう少し見えたほうがいいのではないかなと感じました。
 最後に、働く人のところで積極的な自己啓発・自己管理も重要ということが書いてあって、もちろんそうだと思うのですけれども、それをさせるための情報提供の責任というのが企業サイドにはあると思うのです。要するに、自己啓発のために学んでいくと。では、どういうスキルがこの人に必要なのかということについてのアドバイスを企業側もしなければいけないし、健康に関して自己管理することが必要だという場合には、健康情報も個人にフィードバックしていく。そういった情報提供体制も企業のほうでつくっていくということがある程度入っていたほうがいいのではないか。そういう意味で言うと、「働く人に期待すること」と「企業に期待すること」がもう少し対になっていたほうがいいのではないか。対になるような書き方をしたほうがいいのではないかなと思いました。
 私からは以上です。
○今野座長 事務局から何かありますか。
 今、お話を聞いていると、5点でしたね。
○大湾構成員 はい。
○今野座長 一番最初の点は2ページ目の労働市場の変化ですね。
○大湾構成員 はい。
○今野座長 これはおっしゃるとおりで、この文章ぐらいの単純な書き方だとすると、「DXの進展による労働需要の変化」でいいのですよ。真ん中が要らないのだ。それをもう少し詳細に書くと、今おっしゃられたようなことがいろいろあると思うのです。
○労働条件確保改善対策室長 今おっしゃられた2ページの点については、おっしゃるとおりでございまして、ここがこういう書きぶりになっているのは、まさしくDXが進展することによって、労働者の需要といいますか、労働力を必要とする分野として情報処理の分野。それは業界にかかわらずですが、そういうのが増えていくということです。そういうのが増えていくと、そうでない技術で人を必要としているところに対する圧迫感があるということを示したかったというのが実はありまして、この骨子ですと文章が短いということもあって、分かりにくくなっているということもあろうかと思います。全体的には、先生がおっしゃられるとおり、全体の労働需要に影響してくるということになろうかと思いますので、本文化するときにその辺りを工夫させていただければと思います。
 2つ目、3つ目、4つ目に関しては、ちょっと難しめな御指摘をいただいたところでございまして、まず5つ目、自己啓発・自己管理のための企業の情報提供というところでございますが、ここは左側の「人的資本投資への取り組み」の辺りにもう少し働く人に対していろいろ提供していくのだよということを分かるように盛り込んでいくということになろうかなと考えているところでございます。
○労働条件政策課長 引き継ぎますが、2点目から4点目、特に企業内でのポストといいますか、御本人の望むところ、企業側が提示できる仕事がない場合の活躍の場をどうするかということにつきましては、この研究会で過去にヒアリングいただいた中で申し上げると、長期雇用を重視するという企業側のメッセージは出しつつも、実際にそこに定年まで働くことを労使双方それぞれが念頭に置いているかというと、必ずしもそういうことではなくて、今時点の雇用の安心というものを保障した上で、その会社でやっていきたいと思えば、その会社の中で求められる能力を伸ばし、中でのポストに挑戦していくし、逆に言いますと、合わないと思えば外に出ていくということが労働者側にも開かれているという事例の御紹介があったかと思いますので、そうした事例があったということも踏まえつつ、長期雇用の重要さと同じ会社にいるかどうかということは違うよねという辺りをうまく文章化できるような御意見を、この後、ほかの構成員の先生方からも賜れればなと思っております。
 併せて、3点目の雇用形態という形での正社員、非正社員とか、契約社員、パートといったような、従来のそういう一定のカテゴリーに依存した集団的な雇用管理がなじまないといいますか、人それぞれに多様なポジションとか働き方を提示していくと、そういう壁がなくなっていくのではないかという御指摘は、過去この研究会でも御議論があったかと思いますので、今野先生もあまり正社員とか非正社員とか言いたくないんだよということを言われたと記憶しておりますけれども、大湾構成員が今回おっしゃられたようなことを踏まえて、どうなっていくのかということについての何らかのメッセージについても、さらに先生方の御意見をいただければと思っております。
 4点目、労使イーブンな関係をどうやってつくっていくかということについて、労働市場の機能の強化のところにもう少し何か書き込めるかという形での議論になるのかなと思いますが、そこもさらにほかの先生方も含めて御意見をいただければと思います。
○今野座長 今おっしゃられた4点目については、労使のイーブンな関係を考えるときに労働市場のメカニズムを活用するとか、あるいは5点目の働く人の自己啓発とか自己管理に対して企業が情報提供しなければいけないのだというこの2つは、書かれているのだけれども、入っているのですけれども、関連がうまくいっているのか。そういう意味なのですよね。だから、もう少し上手に構成をつくり直して、そこは関連性があるのだという感じで分かるように書いてよということですので、そこはあまり誤解して事務局が反応しないほうがいいかなと思います。
 それと、私の意見です。個別化と多様化の延長で雇用形態の区分の必要性が落ちるのではないかというのは、大湾構成員には悪いけれども、書き込んでほしくないなと思っていて、つまり、人事管理からすると、雇用区分は残ると思っているので。ただし、今のような雇用区分ではないかもしれない。遠い将来を考えたって、働く人との契約、要するに、企業が社員に期待することが、違う社員が複数存在するというのは当たり前だし、逆に働く人もそうなのですけれども、複数のタイプが存在したら、雇用区分として分けて人事管理をするというのが人事管理だと思っているので。だから、雇用区分が消滅するというのは、大湾構成員には申し訳ないですが、雇用区分の形が変わるというのはいいのですけれども、そういうのはないと思っているので、そこは勘弁してほしいかなと思ったのだけれども、大湾構成員、どうですか。
○大湾構成員 今、これを読んですごく感じるのが、非正規の問題があまり見えないというのを前回も申し上げたのですけれども、今、非正規は完全に安全弁として使われているわけです。そういった形での雇用形態はなくなるだろうと。要するに、個別化・多様化することによって安全弁としての今の非正規の在り方はなくなっていくべきだし、必要もなくなってくると。そういった認識で申し上げたのですが、非常に硬直的な人事制度が今、非常に残っているので、もう少し働く人が活躍できる、そこでまた成長できる場を企業がどの雇用形態に対しても保障していけるような人事制度づくりをしてほしいと。そういったことを何とか報告書の中に盛り込めないかなという気持ちで先ほどの発言をしました。
○今野座長 おっしゃることはいいのですけれども、それと雇用形態の区分がなくなるというのとはちょっと違うのではないかと思っているので、そこはちょっと考えさせてもらいたいなと思ったのですけれども。
○大湾構成員 イメージとしては欧米のような区分は残ると思いますけれども。アメリカでも短期雇用の人たちは当然いるわけです。でも、日本みたいに制度そのものが全く違う制度があてがわれるということはないわけです。
○今野座長 いやいや、そんなことはなくて、アメリカ企業でもいわゆる正社員の範囲内でもイグゼンプションとノーイグゼンプションがいて、あと短期の人がいるわけですけれども、イグゼンプションとノーイグゼンプションは人事管理が違うので、それはヨーロッパも一緒だと思いますので。
○大湾構成員 そういう意味で言っているわけではなくて、正社員の中で管理職、あるいは専門職とそれ以外の補助的な、それをサポートする職種でもちろん役割が違うというのは当然残ると思いますけれども、今の正社員というのは日本独自の区分なわけです。日本だけが無期・フルタイムで働いているのに、正社員の人と正社員でない人というのが明確に分かれていたりする。そういったものがなくなっていくだろうという意味で言っています。
○今野座長 例えば、日本でこれまで正社員と言うとフルタイマーと決まっていたけれども、短時間勤務で正社員がいてもいい。今だと、短時間勤務だと非正社員とされてしまうものを、短時間だって正社員でいいではないかというような方向には進むと思いますが、それと先ほどから議論になっている雇用形態の区分の必要性が減少するとかなくなるということとはちょっと違うと思っているのだけれども、どうですか。安部構成員に聞いたほうがいいかな。
○安部構成員 うまくお答えできるか分かりませんが、雇用というのは様々な側面を持っており、その形態や継続性ということに関し、なかなかこうあるべき、というのは難しいと思っています。それにも関連して、このレポートに対する感想と併せて、少し感じたところをお話しさせていただきます。
 雇用や、その他の労働慣習、慣行に対して、今回、特に際立っていると思うのは、「守る」という側面と「支える」という側面で全てをもう一回見直している点です。そこに大きな意義を感じます。例えば、後ほどもう少し詳しく述べますが、雇用の在り方についても「守る」という視点から見た場合と「支える」という視点から見た場合で、それが示唆するところ、インプリケーションが異なって来ると思っています。それも含め、まず「守る」と「支える」で全体の構成が非常に分かりやすくなっており、完成度が上がってきていると思います。
 強いて言うと、「守る」と「支える」というのは行為なので、何を守るのか、何を支えるのか、これで目指すところを常によりどころとしてもう少し分かりやすくしておくといいかなと。文章としてはあちこちに散見はされるのですが、もう少し明示をしてもいいかなと感じました。「守る」と「支える」は、先ほど事務局が御説明された通り、結構重なるところもあるので、それを明確化させていくことの助けにもなるかなと。
 仮説として私の理解は、「守る」のは人権であったり、健康であったり、社会的な公正さであったり、労働憲章的な要因というところに尽きると思っています。であれば、守るべきものは基本的な絶対条件だということを明示すると、結果的に「支える」ものの目的が自ずと見えてくる、すなわち継続的な進化や成長、充実、豊かさ。これを追求し続けることが支える対象なのではないかと思います。
 このように整理を進めていくと、労働法制の在り方も、「守る」というのは管理的な要因が強くなって、「支える」というのは支援的な要因が強くなる。「支える」の文脈の中に多様な意向や選択肢に応えるということが出てくるのですけれども、多様性に応えるのは目的でないので、多様性に応えることによって何を目指すかと考えると、やはり人生の充実や成長実感、自己実現や自分の存在意義、貢献実感と言ったものが常に上位概念にあるべきと言う事が明らかになり、それを実現するための選択肢の拡大であったり、それを実現するための新しい法制度の枠組み、と言う整理になるのかなと。そう考えると、「支える」の観点で今の法制度を見直すところに、余地や可能性が随分あると思っています。
 「支える」ところにより注目をして今の法制度を見直していくと、実はこの中に組み込まれてはいるのですが、法律による一律の規制から、企業も労働者も含めたセルフマネジメントというところにある項目は移行していってもいいのではないかと言う発想に自然と到達する。くくりの範囲を拡大し、事業場単位から事業主単位へ移っていく。労働者を一律に束ねる労働組合という組織の在り方ももう少し個を生かせるような労働者の代表という形に持っていけるような法整備にする。もう一つは管理の緩和です。管理的要素の部分をもう少し柔軟にすることによって、「支える」という要因をもう少し色濃く出していけるのではないか、そう言った点がこのレポートに対する私の感想です。これらをもう少し際立たせられると、よりよくなると思います。
 最後に、今の雇用慣行を「守る」と「支える」の視点で、もう一度、それによって目指すべき上位概念に基づいて見て見ると、雇用に関して守るべきこと、と、支えるべきもの、に分解できるような気がしています。大湾構成員と同じ意見で、1回雇用してしまうと、硬直的にその解消が非常にしづらい今の制度には、なかなか課題があると思います。とは言え、これを金銭的な解決だけで、1、0で解を見出そうとするのでなく、これを「守る」と「支える」という観点で分解してみると、絶対的に守るべきものとして、例えば雇用関係そのものは解消しずらいままにし、それこそ守るべきことかもしれない。
 では、支える要因をどうやって反映させるかというと、先ほど今野先生が言われたように、一定の職種、例えばエグゼンプトかもしれませんが、企業側に、労働者へ求めることや期待を明示させることを課し、そこに常に到達するような支援、投資をしているか定期的に確認して開示、3年や5年と言った時間軸で見極めた上で、そこに至っていなかったときに、即雇用関係の解消を可能にするのでなく例えば処遇を見直すことができる、とする。労働者にも一定の努力を期待し、単に雇用関係の解消か、継続かだけの1、0ではない選択肢を可能にすることも、「守る」「支える」という整理を際立たせていくと、雇用に関する一つの解として出てき得るのではないか、と考えるのです。同様に、雇用スタイルや、働き方、勤務地など、いろんなことに対して、「守る」と「支える」の切り口で、絶対的に一律法律で守るべき部分と、支えるために柔軟度を上げ、範囲を広げて緩和する部分、と言った解釈が、できるのではないかという気がしています。
 繰り返しますが、今回の提言書は非常にまとまってきている。さらに際立たせるために何を守る、何を支えるというところをもう少し明らかにした上で、特に「支える」に関して、今の社会情勢を踏まえ、より様々な施策に当てはめて具体化できると、より分かりやすく整理できるのではと感じた次第です。 以上です。
○今野座長 今、安部構成員がおっしゃられたことで、この報告書というのは、「守る」と「支える」の視点から、基準行政をどういうふうに見るかというので「守る」「支える」の視点を使っているのですね。今、安部構成員の提案はさらにそれを超えて、雇用という面についても「守る」「支える」でもう一度分解してみたらどうかという御提案ですね。
○安部構成員 私が申し上げた雇用と言うのは、社会的に広義に捉えられている雇用というより、今の労働法制が定義する労働契約としての雇用のことで、それを「守る」と「支える」の視点で分解すると、どういう解釈が可能か、と言う整理です。今は、正規か非正規か、など割と一律的な組み立てになっているものを、もう少し多くの視点、バリエーションで、変形、進化できるのではないかと思いました。雇用に対する規制を単に緩和するのではなく、守るべき要因ともう少し柔軟にできる要因に因数分解できるのではないか、という趣旨です。
○今野座長 ということは、全体の構成はいいけれども、ここのところの「守る」「支える」の視点で労働基準行政をどうするかということについてもう少し書き込めないかということですか。
○安部構成員 いえ、すみません。今のはあくまで一例であり、例えば雇用契約を例に取ってみると、そういう解釈や議論につながり、発展できると言う事を示したまでです。ここに書き込んだほうがいいと言っているわけではありません。
 「守る」と「支える」をより際立たせることで、この提言は今の段階では、いいと思います。
 ここで具体的に挙がっている「支える」の対象が多様性や選択を可能にするというふうに読めますが、それは手段であって目的ではないので、目的を明示していくと、今後それが一つの判断軸になると感じます。それを元に働き方であったり、労働行政であったり、様々な雇用慣行に展開をしていけるのではないかという例で雇用契約を取り上げて見ました。ここに盛り込むことを提案しているわけではありません。
○今野座長 ということは、この報告書の中で「支える」について書いてある記述は、なぜ支えるのかということをもう少し書けということですね。
○安部構成員 まあ、そうですね。
○今野座長 支えるとは何なのかということね。
○安部構成員 組み立てのことで、あとは表現だけです。この中にある「能力を高め発揮し、豊かなキャリアを形成できる」などは、少しレイヤーが異なり、むしろ本来の目的だと思うのですが、それ以降は選択肢を与えるとか、選ぶことができるとか、やや手段のような記述が並んでおり、支えることによって何を目指すか、を最初に明示できれば、それでいいと思います。大幅な変更を提案しているわけではなく、この構成をより明確に際立たせられれば、との思いです。
○今野座長 事務局、何かありますか。
○労働条件確保改善対策室長 今おっしゃられている感じだと、第2の視点のところに「守る」「支える」が出てくるわけでございますけれども、ここの部分でそもそも守るものとは何ぞやということをはっきり書く。支えるものとは何ぞやというのをはっきり書く。その前提で書き下していけるように。最初安部構成員もおっしゃられたように、第3のところになってしまうと、各項目はそれぞれ両方を包含しているので、なかなか表現がしづらくなってくると思いますので、第2のところで守るとは何ぞや、支えるとは何ぞやというものをもう少しはっきりと際立たせて書くというような解釈かなと思ったのですが、いかがですか。
○安部構成員 そうです。現状認識や課題認識を述べられた後、そういった現実と問題意識を踏まえて、「これからの労働基準法制に求められる視点」という点で守るべきものと支えるべきもの、を最初の丸と2番目の丸で明示して具体化させる。例えばここにもあえて「守る」と「支える」という表現を入れて、何をという点を明記した上で、その次の「1.『守る』と『支える』の視点」に導入していくということも一つのアイデアとしてあるのではないかと思いました。。
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
○安部構成員 それはこの文章で意図されていることと齟齬はないですよね。
○労働条件確保改善対策室長 齟齬はないかと思います。
○今野座長 先ほどの安部構成員の御意見だと、5ページの一番後ろ、労働憲章的なことが最初に書いてありますが、これも「守る」に入るのですね。
○安部構成員 ええ。先ほど事務局の方がおっしゃられた通りですね。
○今野座長 だから、「守る」に入れてしまえばいいのですね。
○安部構成員 先ほど事務局の方が、これが「守る」だとおっしゃいましたね。
○労働条件確保改善対策室長 はい。1つ目の丸が「守る」、2つ目の丸が「支える」というふうに説明いたしました。ですので、ここのところをしっかりタイトルづけをしつつ、先ほどおっしゃられたようなことをもう少しはっきりと際立たせて書くというイメージでよろしゅうございますか。
○安部構成員 はい。労働憲章と封建制の排除、健康確保というところを明確にして、これは絶対的に守るべきこととして、社会の環境がどう変わろうが、これは守るということを明示する。その上で、この変化に対応するための新たな側面として「支える」。それがこの次の丸。何を守るのかということが明確になると、支える目的というものが、もう少し際立つかなと。
 以上です。
○今野座長 それでは、どうぞ。
○水町構成員 今の議論を労働法的な観点から少しだけ。私の個人的な意見というよりは、「守る」と「支える」を区別するときに、健康確保と人権保護が大切だと私もこれまで繰り返し申し上げてきましたが、では、本当に「守る」と「支える」が線引きできるかというと、人権保護というのも人権もいろんなものがあって、生存権とかが入ってくると、では、解雇することもどうするかという生存権とか、いろんなものがあるので、クリアカットできずに濃淡があるので、どこまで書けるかというのはいろいろ工夫の余地があるのかなと思います。
 もう一つ、今おっしゃっていた中で、労働基準法制というものがどこまで射程に入るかですが、労働基準法と労働安全衛生法とか労災保険法とかは労働基準法制と言えるかもしれませんが、所管している法律の中に労働契約法があって、かつ民法の権利濫用というのも労働契約法の3条4項、5項の信義則とか権利濫用というので入っていて、そういう契約ルールも労働基準法制に入るのか、ここの中の射程に入るかということですが、要は、そういうものも実は解雇権濫用法理。解雇権濫用法理というのは、本当は硬直的ではないのだけれども、硬直的だと思っていて、あまり手出しできないよねと思っていたり、その後、例えば5年間、3年間と決めて、こういうミッションを与えたのだけれども、うまくいかないときにはどういうふうな訓練とか配置をするというときには、人事権に対して権利濫用で、配転をするのができるかどうかという人事権濫用。労働契約法で言うと3条5項に関わるようなことがどうしていいのかどうかという基本的な一般的なルールとか、考えられている行動指針となるようなルールがなくて、最終的に裁判所に行ったときに権利濫用かどうか言われるので、あまり変なことはできないなと思って動かしているところがあるかと思いますが、書き方としては、今後のルールの決め方として、労働契約法みたいなルールの中にも基本的な原則のデフォルトルールとかオプトアウトとか、こういう原則になるけれども、労使できちんと話し合ってくれれば、それと例外をつくっていいよというのを。
 諸外国ではそういう契約ルールについてもオプトアウトとかデフォルトルールをつくって、何にもなければこうしなければいけないけれども、労使で話し合ったらこういう柔軟なことができるのだよという制度設計をしたりしているのです。そういう柔軟なことができるし、労使で合意したら、裁判所に行って違法とか言われないよというようなルールの在り方も「支える」の中に。労働契約法まで射程に入れたらいろんなことが書けるし、そういう多様な選択肢は、現場で話し合って納得しながら集団的に協議したり、合意を得られればいろんなことができるのだよということをどこまで書けるかですが、そういうニュアンスで労働契約法まで射程に入れながら、柔軟なルールメイキングということであれば、もうちょっと膨らませて書けることかなと思いました。
○安部構成員 全く同感です。「守る」と「支える」というのはなかなか線引きをしづらいので、目指すところの上位概念で明確にした上で、結局、守るための労働法と支えるための労働法というのがそれぞれ別に存在するということは現実的にあり得ないと思うので、では、今の労働法規をその2つの観点から見直したときに、何を見直すべきで、何は見直すべきでないのかという解釈ができてくると思っています。一つの法規の中でさえ両方の側面というのはあると思います。
 そのときに、「支える」の中に多様な希望に応えることができるということが入っているのは、本来目指すのは多様性を認めることではないので、より上位の概念に持っておくと、それぞれの法規制を見直すときの解釈の幅が広がるかなという思いです。
○今野座長 今の点については、上手に入っているかどうかは別にして、一例で言うと、もう少し労使コミュニケーションでちゃんとやってよ、というのは、今おっしゃられたことに近い話ですよね。
 今おっしゃられたように、明示的には書いていないのかもしれないけれども、多様性に応えるには多様な対応が必要なので、そのときには労使で相談してちゃんとやってよということは、一貫して書かれているかどうかは別にして、一貫して考えられていることなので、それは今、水町構成員や安部構成員に言われたことに近いかなと思っていて、そういう意味では、ある程度入っているけれども、きれいに入っているかどうかは別だという話だと思って聞いていたのですけれども。
 ほかにいかがですか。どうぞ。
○中村構成員 ありがとうございました。大変難しい研究会をまとめていただいて、御苦労も多かったろうと思います。
 今、水町先生から出ていたこの報告書の射程がどこかということとすごく関連するのですけれども、この研究会は、一番最初が20年、30年を見越した中での新しい働き方全般でということで、鈴木局長のほうからお話があってスタートしたということと、あと労働基準局が所掌している法範囲が基本的には中心になりつつも、より多くの人たちを包摂するような働き方を考えていく場だというふうに考えると、一番気になっているのが、5ページの下にある労働基準法制とはということの書き方と、たびたび見出しに出てくる労働基準法制とはというところが、全般的に研究会の射程に対して狭過ぎると感じています。
 少なくともこの間で言えば、労働基準局が所掌している中に労働組合法が入っているということもお話しさせていただきましたし、労使関係の在り方というのは、今日も出ているようにいろいろな重要性がある。在り方も含めてあるだろうということが議論されてきているので、もう少しこの報告書の射程の範囲を研究会の最初の趣旨に立ち戻った形で書いていただき、狭い意味での労働基準法制の議論をしているのか、労働基準局が見る様々な法制度の話をしているのか。
 法制度でなくて、例えば企業に表彰制度を設けるとか、政策的にインセンティブを設けたりするようなものも当然行政の中に入ってくると思うので、そういうものを話しているのか。さらにもっと広い話を議論しているのか。レイヤーが3個ぐらいあると思うので、そこがきっちり分かるように。今、ここはどちらの話をしているのだということを全般に交通整理をしていただくといいかなというのがまず1点目です。
 その中で、今のところに関連していくと、まさにたくさん書いていただいている労使のコミュニケーションが重要だというところがやはり重要なのだと思います。実効性がある仕組みを運用する中では重要だというときに、法制度が「守られる」、実効性のあるものという中で、多様で複線的なことが大事な一方で、労働組合のようなある程度知見が蓄積されているような仕組みがあるということも依然重要です。そういう制度を整備していく中での改めての労組の位置づけ、重要性ということも言及いただけると、より現実的な報告書になるかなと思いました。1点目は以上です。
 2点目が12ページですけれども、12ページの中の1の「(2)人的資本への取り組み」というところがすごく違和感があります。違和感がある理由は、「人的資本への取り組み」と言われたときに、例えば能力開発基本法とかは現時点では射程の外にあるのに、人的投資の話がふわっと出てくる。多分そこに違和感があって、ここで言うと、個人の主体的なキャリア選択を支える仕組みが必要で、そのためには人的資本への投資が必要だと。もしかしたら主従が逆な気がします。ここは小見出しをどうするのかというのをもう一回調整したほうがいいのではないかと思います。
 個人の主体的なキャリア形成やキャリア選択を支えるというふうになると、情報の積極的な開示とか選択肢の開示とか、企業からのキャリア選択への支えみたいなことがより重要になってくる。先ほど大湾構成員が御指摘されているような点も含まれてくると思いますので、この辺りはちょっと見直していただけるといいかなと思いました。
 3点目は、同じく12ページ、13ページのところですけれども、個人と企業に期待することが書いてあるのですが、労使コミュニケーションみたいな言葉が再三出ている中でいくと、実は労使コミュニケーションというのは、では、個人と企業のどちらなんだっけというのが、かえってこの書きぶりだと分断を生んでいるなと思っています。企業が経営として頑張ること、個人が個人としてやること。だけど、その両者の関係の中でこういうものが望ましいのだというところが、今でいくと、12ページの(3)と13ページの(2)というのがすごく。例えば個人に積極的なエンゲージメントを求めますと言われると、すごく違和感がある。だって、ブラック企業に何でエンゲージメントしないといけないのというふうに思うので。もしかしたらあえて企業、個人、その上での労使関係の在り方みたいなことを書いたほうがいいのではないかなと私自身は思っています。
 大きく3点意見ですけれども、あと1点、先ほど労働移動についての扱いはいろいろ御意見が出ているので、書きぶりも検討なのかもしれないですが、一番大事なのは、企業がより競争力を高める制度であるということは当然ながら大事ですけれども、労働基準局で議論する中で一番大事なのは、個人の人たちがそこの中で安心して豊かなキャリアが築けるための労働移動の在り方、それを支えるなり守るための仕組みというふうに書いていくべきだと思っています。そのとき一つ大事な観点は、前職以上の待遇、前職以上の賃金で労働移動できるような受入れの仕方です。辞めさせ方の議論以上に受入れの仕方のほうが整ってこないと、個人の人たちはなかなか一歩足が踏み出しにくいので、ぜひそういう個人の観点でも検討いただけるといいかなと思いました。
 私からは以上です。
○今野座長 事務局から何かありますか。
○労働条件政策課長 まず、労働基準法制の定義について、レイヤーがいろいろあるのではないかという御指摘につきましては、確かに5ページの注釈の2で書いてあるところは非常に狭いところを確実に押さえていますが、この研究会の中ではこれにとどまらない御意見が多々あったところですので、同じ言葉を使うかどうかも含めて、一旦引き取らせていただきたいと思います。
○今野座長 確かにここの議論では、今後の新しい働き方については自由に議論して、それを踏まえた上で、労働基準法制はどうするかというのがこのつくり方というか、建前なのです。私もそう思って議論してきましたので、そうすると、いろんな働き方がこう変わったときに労働基準法制をどうするかというときに、受けるほうをあまり広げてほしくないと思っているのです。そんなことを言ったら切りがないので。例えば労組法をどうするかとか、能力開発の法律をどうするかとか、いろんな問題が出てくるので、中村構成員には悪いけれども、そこはあまり広げたくなくて、私の気持ちとしては、ここで言う狭い、堅い労働基準法制の範囲内でどうするかというふうに受けたいと思っているのですけれども、中村構成員、駄目ですか。
○中村構成員 能力開発法とかは今回議論と関係ないし、こうやって書いてしまったら、そういうのも気になってきますよという話なので、あくまでそちらは全然いいです。けれども、私自身は労働基準法制ではなくて、少なくとも労働基準行政だと思ってこの研究会に参加している。なぜそう思っているかというと、法律をどう改正しますかという議論でなくて、どう運用するとか、企業にもどう期待していくかまで、ここの議論で入ってきた。という中で言えば、少なくとも法律の在り方だけでない議論をしていると認識しています。
 そういう意味で言うと、労働基準局が見ている範囲というのは、狭い意味での労働基準法の在り方の話を少しは超えていると思うのです。真ん中のテーマではないけれども、周辺的にはあり得る。労使関係は一つそこの中の大きいテーマだと思うので、そのときにどこまで扱うか。完全にゼロにするというのはちょっと極端な着地のさせ方だと今、感じています。
○今野座長 では、先ほど中村構成員が言われた中で、労組法の問題もとか言ったのがすごく気になったのだけれども、労組法の議論はここでは今まで全然していないので、そこはもう範囲外でいいですよね。
○中村構成員 例えば私自身のときに、労組法の不当労働行為の見直しみたいなこともお話しさせていただきました。この研究会は個別の法律をどうしますかという議論ではないのだと思うのです。なので、労組法を変えてくださいというのは多分違うのだと思っていて。では、ここに書いてある労働基準法制の話ですかというのも狭過ぎると思うので、そこがちゃんと分かるようにしていただけるといいなと思いました。狭い労働基準法で漏れてしまっている部分が何となく気になるなと思います。
○今野座長 どうぞ。
○水町構成員 第1回目に労働基準局長からお話があったように、今後50年を見据えて考えるということが一つの射程ではあるけれども、働き方改革施行後5年見直しというのも直近の課題ではあるので、まず直近で、行政というのは法律に基づく行政の原理なので、法律に基づいて行政がどうあるかというので、行政の在り方がどうするかというような狭い議論ではなく、法律をどうして、行政をどうするかという議論かなと思うのですが、法律も直近の課題で労組法改正などということは、恐らくここでの議論ですぐできるようなことではないので、働き方改革5年後見直しで、働き方改革でつくった法律とか、それをどういうふうに変えるかというのは直近の課題になると思いますし、これから30年、40年、50年後を見通してこういう改革の提言をこの研究会がしたというときに、これは労働基準法だけではなくて、例えば女性活躍推進法とか、いろんなところに関わる問題もあるかもしれないけれども、ここの研究会ではそういうのも射程に入れながら、すぐ法律を変えなさいよということではない問題も幅広く議論をして提言したということでいいのではないかなと思って議論をしています。
○今野座長 それはそのとおりなのですね。でも、今の中村構成員の話はどこまで頭に入れておくかなということですね。
○中村構成員 頭の入れ方というのと、最後、そうは言いながら企業に期待することみたいな、法律の外枠の話がぽーんと出てくるから、余計に違和感があるのだと思います。狭い労働基準法制に基づく狭い意味での労働基準行政の在り方だけに閉じているようでいて、物すごく外側の話をしている。当然外側の話をしようとすると、様々考慮したり、関係するものがいっぱいあるのに、だけど、中心はここだけだよねと。読んだときの違和感がそこから出ているのだろうなと思います。
○今野座長 多分その違和感というのは、第4の「企業や働く人に期待すること」というのは何を意図しているのかということが、もしかしたら我々の間であまり統一して理解されていないからかもしれない。
 事務局でつくられた方は、今までは広いところから始めて労働基準関連法制に焦点を絞ってきたわけだけれども、でも、それを超えて何か言いたいことがあるよなというのをここでまとめたというふうに私は理解しているので、そういう点からすると、それまでと少し離れてジャンプしてしまってもいいだろうという位置づけでつくられたのだろうと思っているのです。その理解でいいですか。
○労働条件政策課長 まず、「労働基準法制」という言葉自体は、労働契約法はやや微妙なのですが、基本的には労働基準法周辺の法制を意味するものとして使っているつもりで、そこについての幾つかの御提言が第3までのところで今回整理をできないかなということで書いております。なので、先ほども申し上げましたように、それと違う使い方で「労働基準法制」という6文字が、もっと広いものを指してしまっているものがあるとすると、書きぶりの整合性は確認したいと思っております。
 第4については、具体的な御提言として第3までで5つの柱でどういう方向で「守る」「支える」を幾つか実現していくかということと、まさに今野先生がジャンプしてと言われましたけれども、それにとどまらないけれども、この研究会で様々出てきた広範な視野に基づく御提言が、これは厚生労働省全体としてこういうことも今後考えていただきたいという、先生方からの御提言としてさらに広いものを受け止める場として1節あってもよいのかなということでまとめてみているものになります。
○今野座長 中村構成員、どうですか。
○中村構成員 もし今のような形だとすると、逆に言うと、4が企業に期待すること、個人に期待すること、労働基準法制の外側にある労働法制全般に期待すること。「期待」という言葉がいいのかは別ですけれども、というのがあるような気がして。例えば先ほど言った労使関係みたいなものは本来両方にまたがっているテーマなので。別出ししたほうがいいのではないですかと言ったのもそうなのですが、そういうものを支えていくときに、法律を改正してほしいとかいうことが一義的な目的なのではなくて、労働基準法制でなくて、ほかの手段で解決とか推進したほうがいいものが出てくるだろうなと思うし、それが大事だと思います。
○今野座長 ということは、中村構成員が言っていることは、企業に期待すること、個人に期待すること、広く労働関連法に期待することとかいうふうに分けるという趣旨ですか。
○中村構成員 そうです。逆に最後の企業への期待の範囲とか、守備範囲が広いのだったら、もっとその手前で労働政策の中で受け止められることがあるだろうなと思うからです。
○今野座長 そうすると、具体的にどんなことを考えていらっしゃるのですか。
○中村構成員 その意味で言うと、労使コミュニケーションは一つ大玉だと思っています。今、見出しとしては立っていないのですけれども、労使コミュニケーションの中で、例えば「多様化」みたいな言葉も、前半で「複線化」みたいなものが出ていたり。あと、この場の中で言えば1on1みたいなものも出ていたし、一方で、労働組合の位置づけをより積極的に位置づけたほうがいいという小林先生等の御意見も途中で出ていたと思います。今日出ていたみたいに、労働条件を下げるときの在り方を労使で話し合うというのだってあり得る。労使コミュニケーションという範囲の中にこの間様々な意見が出ていたものがあって、そういうものについてどう考えていくかというのは、それこそ従業員代表制みたいなものが出ていたと思いますし、いろいろ出るのではないかなという気がします。
○今野座長 ほかには。それだけですか。
○中村構成員 今で言うと、そうですかね。
○今野座長 第3までで、先ほど話もありましたけれども、ここで言っているようなことをやるには、労使コミュニケーションはちゃんとしろよとか、こうしろよというのは重要な一貫したテーマなので、あちこちに入っていますね。それはもし入れるとしたら第3のどこかに入ると思いますよ。
○中村構成員 もしかしたらそれでもいいのかもしれないのですけれども、ただ、労使コミュニケーションというのをちゃんと位置づけようと思うと、先ほどから出ている狭い意味での労働基準法制からは外れるものが明らかにあるので、多分狭い意味での労働基準法制の在り方という議論の中に労使コミュニケーションというのが全部入ってしまうのは、それも違和感があります。
○今野座長 どうぞ。
○水町構成員 労働基準局とか労働基準法というのは、今の法律とか今の行政の縦割りの中で決められていることであって、我々が議論していることは、この法律のこの箱の中だとかこの行政の中で今、閉じられた議論をしているわけではなくて、議論というのは、例えばテーマとしては「新しい時代の働き方に関する研究会」という。ただ、これは労働基準局長が招集したというか、諮問の研究会で、そういう下で議論をして、労働基準法を変えるときには、当然労働組合法とかほかの法律との関係を議論しながら、全体としてバランスの取れた法制を考えるということなので、ここで言われていることは、特に労働基準局が労働基準法などでということがメインになっているかもしれないけれども、関連するところは、自然と行政の縦割りとか法律の縦割り以外のところにも及んでいくので、我々の議論は、そういう法律とか行政の縦割りの議論は背景には頼まれているのでありつつも、ここの作文自体は、そういう定義自体とか射程を限定することなく、新しい時代の働き方に対してこういう提言をして、労働基準局長にこういう報告書を出しました、あとは責任を持ってやってくださいというのでいいのかなと。そこの議論をしてもあまり生産的でないのかなという気はしました。
○今野座長 でも、中村構成員の意見でそれはそうかなと思ったのは、労使コミュニケーションをもう少しよくしていくということが非常に重要だということは皆さん共通している。それは骨子の中に入っているのですけれども、どこか個別の項目で上手に立ってもいいかなとは思ったのだけれども。今、お話を聞いていて。あちこちに入っているのですよ。入っているから、どう入れるかはいろいろあるけれども、1つ独立してそういう項目ができてもいいかなと思ったというのは、中村構成員の意見を聞いての私の感想ですけれども、事務局の皆さん、どうかな。上手にどこかに入るかな。
 ちょっとしつこいようですが、内容はあちこちに入っているのですよ。だから、どう書くかですけれども、新しいことを書く必要はないかもしれませんけれども、読み手としては、独立にあると、あ、やはり重視しているのだなということが伝わるかなということだと思うのですが、どうですか。
○労働条件確保改善対策室長 第3の中でどう処理できるかという話と、最初におっしゃられたように、第4の企業の(3)と個人の(2)は、労使の話を裏返しで書いているという面は確かにありまして、例えば第4の中で言えば、この2つをまとめて独立させて、労側、使側でしっかりコミュニケーションを取ってもらいたいことというような書き方がまずあるかと思います。
 その上で、第3に関してはいろんなところにちりばめられているので、それを抽出するのか、抽出まではせずとも、何らかまとめ的なものを置くのか、そこはちょっと研究をさせていただければなと思います。
○今野座長 私としては中に入れたほうがいい。つまり、第4というのは、それまでの議論から離れて何が必要だろうかということを書こうということなので、そうすると、労使コミュニケーションの問題がそういう位置づけになってしまうので、できれば中で上手に工夫していただければと思います。
○労働条件確保改善対策室長 分かりました。第3の中のほうでの書き方を研究させていただければと思います。
○今野座長 どうぞ。
○伊達構成員 
いろんな意見が出ている中でまとめる御苦労があったかなと思うのですが、分かりやすくまとめていただきまして感謝申し上げます。まず、労使コミュニケーションについて、私も重要な論点だなと思っていますので、労使コミュニケーションについての項目を立ててもいいのかなと感じました。
 他に、幾つか形式的なところも含めて、2~3個ほど指摘をさせていただければと思います。1つが3ページですが、前回の研究会の中で従来の働き方と新たな働き方を対比させるのはよくないと議論になり、それを反映していただいたのが、今回のものだと認識しています。一方で、この文章だけを初めて見た人は、3ページの3行目の「これまでと同様の環境」、20行目、21行目辺りに、「これまでの画一的な労務管理」と突然さらっと登場すると、混乱するかもしれません。
 研究会のメンバーは、前回の議論があるので理解できるのですが、ここはもう少し書き込んでもいいのかなと感じました。
 2点目ですが、7ページ目の13行目、14行目辺りに「パーパス」「エンゲージメント」という言葉が登場します。この研究会の中で私もエンゲージメントのお話をさせていただきましたし、パーパスのお話も企業事例で出ていたかと思います。他方で、これもここで突然登場しているので、冒頭の第1の1とか2とか3辺りでこの用語が社会的に求められている背景を盛り込むとよいと感じました。
 3点目は10ページです。前回も「シンプルでわかりやすく実効的な制度」について指摘し、こだわり過ぎているかもしれないのですが、法制度はつくって終わりではなくて、多くの起業に実効性のある形で運用されて意味を成すと思っています。
 その上で少し気になった点になります。ほかの項目では背景から丁寧に書かれているのですが、「シンプルでわかりやすく実効的な制度」については、いきなり制度はシンプルなほうがいいというところから始まっています。
例えば、個別・多様化が進んでいるため、労使コミュニケーションが重要になってくる。そのときに使ってもらえるように、「シンプルでわかりやすく実効的な制度」が求められるという具合に背景を書き込んでいただくとよいですね。
 その3点になります。
○今野座長 ありがとうございました。
 事務局、何かありますか。3点あったけれども。
○労働条件確保改善対策室長 いただいたものに関しましては、本文をつくるときにしっかり反映させて、検討させていただければと思います。
○今野座長 先ほど僕は事務局の報告を聞いていて、一番最初、伊達構成員が言われた3ページ目ですけれども、3ページ目にいろいろと書いてあるけれども、説明の仕方が個人がこういうふうに求めていること、会社がこうしたいと思っていること、両者を合わせたときに両者の関係がどうなるのかということというふうに分けてきちっと説明をされた。例えば個人がこうしたいことということは、実は3行目にも書いてあるし、違うところにも書いてあったりしたので、それを飛ばしながらきちっと説明されたので、実は3ページ目の構成はそういう構成にもう一度つくり直していただくと、すごく分かりやすくなるかなと私も聞いておりました。
 ほかにいかがですか。どうぞ。
○小林構成員 とても分かりやすくまとめていただいてありがとうございます。
 私も理解が深まったといいますか、これからの働き方というところで、大事なところが出されていると思います。この研究会は今後の働き方ということで、今後のビジョン、働く未来像を描くというところが大きな目標にあるのかなと思うのですけれども、そういう前提で見たときに、一つ一つの項目はすごく正しいことを書いていて、納得するのですが、例えば9ページの3の(1)の「これまで同様強制力のある規制により労働者の権利の保護を行うべき」というのが、これまでの働き方がなじむ労働者で、その次に、時代に合わせた見直しが適用されるのが「新たな働き方で働く人」というような形で分けて書かれていると、ちょっと二分化されているように読めるのかなと。つまり、保護が必要な労働者と挑戦していける労働者とを分けて管理しましょうみたいな読み方ができるのかなと。
 1人の労働者が、まず労働市場に入っていって、学んで成長して、そして活躍できるようになって、その中でまたライフイベントがあってということを考えると、守られたい時期と挑戦したい時期ということで、それぞれ1人のライフキャリアの中で変遷があると思うのです。そこのシフトがどうなるのかなというのは、読みながら思いました。つまり、これまでは守られていたのだけれども、今は挑戦したいということが許されて、だけども、また守られたいのだとなったときに、そういったシフトが労働者の個人的な事情・意向で勝手だと受け止められたり、使用者側からすると、何をどこまで責任を持って管理すればいいか、あやふやになるような部分が出てくるのかなと。そこを埋めるのがもしかすると労使コミュニケーションという手段なのかなと思うのですけれども、その辺りの考え方とかつなぎのイメージ、前提としての考え方をもう少し深めていく必要があるのではないでしょうか。また、そのような管理とか仕組みをつくっていくというのは結構手間のかかる話になるのかなと思うのですが、その一方で、次のこうm奥4ではシンプルな制度というところを掲げていて、これをどう両立させていくのかというところも難題になってくるのかと思います。
 個別具体の内容を考えるのはこの研究会のスコープからは外れるのかなとも思うのですが、基本的な考え方、その在り方がイメージできるところまでは議論があるといいますか、表現があるといいのかなと思いながら拝見しました。
○今野座長 
 今おっしゃられた前者のほうが根本的というか、読み手へのメッセージとして重要だと思っているのですが。ここで言うと、(1)は守る人と支える人みたいな対ですね。こう書くと、今、小林構成員が言われたように、守る人と支える人が違う人というふうにみえてしまう。でも、ここはそう思っていないわけですよ。「守る」のプラットフォームがあって、その上に「支える」が乗っているというふうに考えているので、ですから、そういうふうに読まれてしまうと困る。だって、多様に働きたい人だって、「守る」は絶対基準というか、絶対守るのだというふうにここではずっと言っているわけなので。だから、そこがそういうふうに取られるようでしたら、そこは誤解がないように上手に書いてあげる必要があるかなと思います。
○大湾構成員 2点あります。1つは、しつこいかもしれないのですけれども、ちょっと言い方を変えますね。「守る」視点、「支える」視点というのはすごくいい分け方だと思うのですけれども、守られてもいないし、支えられてもいないという人たちがいるわけです。例えば健康が大事だと言っても、小企業に勤めていたら健康診断もないし、そういうチェックもなくて健康管理を誰もしてくれないと。一方で、労使コミュニケーションは大事だと言っても、非正規の人たちは過半数代表者にもなれないし、労働組合にも入れないし、自分たちのボイスをなかなか届けられないと。「守る」「支える」という人たちが一部になってしまって、そこから漏れる人たちができるだけ出ないようにするような視点も必要なのではないかなと思っています。
 だから、どういうふうに書くのかというのは難しいと思うのですけれども、できるだけ包摂というか、働く人をみんな「守る」「支える」の枠組みの中に入れていくという行政の目標みたいなものをできるだけ入れてほしいなと思います。それが1つです。
 もう一つは人的資本投資に絡んでですが、今までは会社で必要な知識とかスキルは、会社が研修機会を提供してくれて、自分の勤務時間を使って学ぶ機会があったと。一方で、自分のキャリアを伸ばしたい、会社の外に可能性を広げたいという人は、自分のお金でビジネススクールへ行ったり、英語の勉強をしたりとかいうことをやって自分で自己研さんしていたと。
 最近、リスキリングの先進的なケースを読んでいて非常に目にするのは、会社がいろんな機会を提供すると。例えばラーニングマネジメントシステムを会社がつくって、自分で学んでくださいと。あなたにはこういうスキルが必要ですよと。そういった学ぶ機会をつくるコストは会社が持ちますと。だけれども、学ぶ時間は自分の時間を使ってやってくださいねと。会社が依頼しているのだけれども、勉強する人は自分の時間を使って、残業代をもらわずに勉強することを期待される。一方で、一生懸命学ぶ人は会社の中で活躍する機会が増えていくのだけれども、学ばない人は会社の中で活躍する機会がだんだん減ってきて、最終的には辞めてくださいと言われるケースも出てくると。
 これは今までとは違うパターンだと思うのです。要するに、会社のためなのだけれども、外でも使える知識を会社が社員に学ばせようとする。そのときに恐らく何で会社から言われているのに残業代が出ないのだというような議論も出てくるし、では、それに従わなかったときに雇用が何で保障されないのだという議論も出てくる。あるいは処遇が悪くなるということを不満に思う従業員も出てくる。そういった場がこれから出てくるということを想定したときに、そこで対立とか訴訟とかを行わないような法制度の枠組みをつくったほうがいいのではないかなと思っているのです。そういった方向性みたいなものも入れられないかなと思っています。
 以上です。
○今野座長 後者の点はどうしようかなと思って、私もノーアイデアなのですが、前者の件については、多分これをつくったときに「働く人」というふうにしたということは、もう非正規も入っている。もちろん、雇用でない人も入っていますが、当然非正規も入っている。ですから、今、大湾構成員が言われたように、「守る」「支える」とか、あるいは労使コミュニケーションと言ったときに、当然非正規の人もこういう対象にあるのだということを暗黙のうちは持っていると思うのです。「働く人」という言葉を使っているので。
 ですから、もし必要だったら、今回は箇条書きになっているので、文章化するときに、当然そういうことは非正規も含めてちゃんと考えるプランだというような趣旨のことをどこかに入れていくということについては、何の問題もないかなと思うのですが、どうですか。
○労働条件確保改善対策室長 本日の議論の中で何を守るのかというのを明示するというのは、先生からもいただいている。その何を守るかの中に当然に非正規が含まれ得るのだということが分かるように文章を工夫するということかなと承れればなとは。
○今野座長 いやいや。「支える」についても非正規が対象に入るのです。そういう人がいるかもしれないので。
○大湾構成員 非正規だけでなくて、小企業もそうだと思うのです。漏れるところ、行政がそこに入ってサポートしていくのかということになると思うのですけれども。今の報告書は、例えば守られてもいない、支えられてもいない人たちが見ると、自分たちは蚊帳の外になるのではないかなという印象を受けると思うのですよ。そこは、いや、働く人全員ですよということが分かるようなメッセージを入れたほうがいいのではないかなと思います。
○労働条件政策課長 本文でどうするかも考えたいと思いますが、取り急ぎすぐ思いつくこととしましては、2ページの脚注の1で雇用契約の当事者である「労働者」だけでなく、幅広く捉えた「働く人」と書いてはいるので、当然労働者の中には大企業、中小企業は問わないですし、正規、非正規も問わないつもりで書いていたのですが、そこは全部含めて労働者の中に入るのだよというところを最初の定義のところで書くというのは1つ考えられるかなと思っています。
○今野座長 どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 これまで大湾構成員とか小林構成員とか、議論の全体の中で出てくる中でちょっと思ったことが第4に関わるところで、企業と働く人という二項対立というか、2つに分かれているというところの、かつその中で実際に情報とか能力格差がある労働者がここまで期待するということに対する何かのサポートが必要なのではないかという点で、ここも、もうちょっと工夫ができればいいかなと思うところがあります。
 例えば13ページの14行目辺りに、企業・上司による直接管理が小さい働き方が拡大する中で、自分で管理するセルフマネジメント力を高めることが必要とか、21行目、22行目辺りで、働く人の側からの積極的な情報収集・価値観共有が必要だと書かれていますが、欧米の最新の状況などを見てみると、これからデジタル化がかなり進んで、情報を例えばアルゴリズムとかデジタルデバイスでいろんな形で収集するときに、実際現場で働いている人は情報格差とか情報過疎の状況になっていて、自分の情報がどうなっているか分からないと。
 要は、直接人が管理したり、人が指揮命令しているわけではないのだけれども、アルゴリズムによって管理をされ、監視をされ、いつの間にか健康情報も含めて取っていかれているのだけれども、自分の情報がどこに何があって、どうなっているか分からないので、例えばヨーロッパでは情報をちゃんと通知して、自分でコントロールできるようにしましょうというような措置がなされている中で、簡単に言うと、自分でちゃんと管理して、自分で積極的に情報を取って自分で考えなさいというのは、これから情報化の中ではあまり現実的ではないので、例えば情報に主体的にアクセスしてコントロールできるような制度をつくって、きちんとサポートしてあげるということとか、さらには企業の中で起こっていることについては、労使コミュニケーションで、1人だととにかく情報なんて個人同意が必要だと言っても、クリックして情報を取っていいですよと言って、中身を読まないでみんなクリックしているわけですよ。
 個人同意があって、目的を特定したと言っても、何の目的で特定されたか分からないままみんな情報を取られていっている中で、個人同意、自分で情報を管理しなさいと言っても、何がどこにどうあるか分からないという状況が現実に起こっている中で、そういう意味では、現場では個人でなくて、集団的にどういう情報がどういうふうに利用されていているかという労使コミュニケーションをかませるということが重要だし、かつ個人で自分の情報を管理するために情報にアクセスできたり、情報をコントロールしてもらえるように、転職するときには持っていた情報を全部請求できて、次の職場に持っていけるというような制度設計も今なされているので、そういう個人に期待するという背景に、個人がちゃんと判断できるような情報面でのサポートとか、労使コミュニケーションによるサポートというのもうまいぐあいに入れておいていただけると、将来の幅広い議論の中に。特に健康管理のところではいろんな問題が出てくると思うので、そういうのをうまいぐあいに書ければいいかなと思いました。ちょこっと入れてもらえれば、広がりがあるようになると思います。
○今野座長 13ページで、今、お話になった次の(2)について。これは中村構成員が言ったことなのですけれども、これはちょっと違和感があるのです。「企業の目的・事業への積極的なエンゲージメント」というのは。どうするかはまだアイデアがないのだけれども、私が個人だと嫌な感じですね。エンゲージメントしろと言われているみたいで。ここはちょっと考えたほうがいいかなと思います。どうするかは、今、ノーアイデアなのだけれども、直感的にちょっと違和感があるということです。
 今、出た意見についてはよろしいですか。ここはなかなか難しいよね。個人に期待することと関連して、そのためにはほかのことが必要だと書いていくと、企業が登場したりというので、なかなか書き方は難しいと思いますが、ちょっと検討していただければと思います。
○労働条件確保改善対策室長 はい。
○今野座長 ほかにいかがですか。
 それでは、今日もたくさん御意見をいただきましてありがとうございます。
 今後の進め方ですけれども、もちろん今日の意見を踏まえて報告書の草案をつくっていただくということになりますが、その前に、今日出された案をもってパブリックコメントにかけて、外部の意見もいただいて、その意見と今日の意見を併せて最終的にどういう報告書にするかということ。もう少し言うと、両方踏まえて最終的な報告書の草案を事務局につくっていただくという段取りにしたいと思っています。いいですか。
(構成員首肯)
○今野座長 では、事務局にはこれでパブリックコメントを取っていただいて、外部の意見をいただいて、しつこいようですけれども、今日の意見、たくさん出ましたから、それも踏まえて、両方踏まえて最終的な報告書の草案をつくっていただくということでお願いをしたいと思います。よろしいでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 かしこまりました。
○今野座長 それでは、この辺で終わりたいと思います。いつもいつも積極的な、果敢な、自由な御意見をいただきましてありがとうございました。では、終わりたいと思います。
○労働条件確保改善対策室長 次回の日程等については、また追って御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。