第12回新しい時代の働き方に関する研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和5年8月10日(木) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 C・Dルーム

議題

中間整理

議事

議事内容
○今野座長 それでは時間になりましたので、ただいまから第12回「新しい時代の働き方に関する研究会」を開催いたします。
 本日は、ほとんどの方は会場参加ですけれども、小林構成員がオンライン参加でございます。
○小林構成員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
○今野座長 カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の議題に入ります。
 本日は、これまでの議論を踏まえまして、事務局に中間整理をつくっていただきました。それを説明していただいて、皆で議論をしたいと思います。
 それでは、事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
 資料1を御覧ください。今回、中間整理ということでまとめさせていただきました。これは以前、座長からおまとめいただいた論点を基に、報告書を見据えて整理をしたものになっております。
 全体の仕立てでございますが、1、2、3、4とございまして、本研究会の契機となった経済社会の変化をお示しし、それに基づく新しい時代に対応するための視点、それに即した労働基準法制の方向性、そして制度だけでなく、企業や働く方に期待することは何なのかという4つの構成となっております。
 1番から御説明をいたします。まず、スライド2番、企業を取り巻く環境は不確実性を伴いながら大きく変化しているというところです。上のところでございますが、経済に関して申し上げますと、経済のグローバル化、急速なデジタル化、こういったもので国際競争が一層激化している。金融市場・商品市場の不安定化も相まって、企業は従来以上に事業転換・組織変革が迫られている状況にあるということ。
 2つ目の技術革新のところでございますが、デジタル技術の革新によって新たなビジネスモデルの創出が見込まれて、企業環境が大きく変化をしているということ。その技術革新は、企業に大きな恩恵をもたらしますが、同時に不確実性を生む要因にもなっている。
 3つ目に労働市場でございますが、人口減少に伴う労働市場の構造変化の中で、深刻な人手不足に直面している。医療・福祉とか情報処理といった一部の分野では、就業者数は増加いたしますが、ほかの多くの産業では横ばいまたは減少と見込まれ、産業間の人材分布の変化が企業の人材戦略にも影響を与える要素になっている状況にあるということでございます。
 3ページ目でございます。こういった状況の中で働く人の意識、希望というものが個別・多様化しているということで、価値観や生活スタイルに関して申し上げますと、職業人生の長期化が人口減少や高齢化に伴って想定される中で、仕事に対する価値観、育児や介護などのライフイベントによる生活スタイルが個別・多様化しているということがわかります。働く場所についても、今回のコロナの経験でございますが、テレワークを契機に通勤を前提とした働き方だけでなく、ワークスタイルに合わせて働く場所を選ぶ働き方が可能ということが認識されるようになった。キャリア形成意識ということでいいますと、安定性を求める志向が強くなっておりますが、一方で、自らが望むキャリア実現に対する意識も高まりを見せているといった変化が生じている。
 4ページ目でございます。これに伴いまして個人と企業の関係について、働く側が組織に依存し過ぎない関係に変化しているというところでございます。企業から与えられた環境で働くことを望む労働者は引き続き多く存在しますが、一方で、様々な事情や働き方に関する自らの希望を持って働く方に関しては、終身雇用から多様で主体的なキャリア、年功序列から成果主義、会社で働くことから好きな場所で働く、着実さやチームワークが求められることから柔軟な発想や新しい考えが求められるといった下の図のような変化が生じまして、よりイーブンな関係を築く個人や企業が増えていく。AIやビックデータなどのデジタル技術の発展の中で、人に求められる能力も変わっていくという状況にございます。
 スライド5番でございます。そうした中で、個人と企業の関係の変化に対応した環境整備や仕組みが必要になっているところでございまして、伝統的な働き方で働く方は引き続きいらっしゃいますので、左側でございますが、そういった方はこれまでのような画一的な労務管理が合う。
 一方で右側でございますが、自らの希望や事情に合わせた働き方を望む方に関しては、働き方に関しては自らに合った働き方、キャリア形成を志向しつつ企業に貢献していこうとし、企業としては、その労働者の働き方の希望、キャリア形成の希望に対応して、個別・多様な働き方を実現しながら使用していくことになっている。
 こういった変化を踏まえますと、下のところでございますが、我が国の企業が活力を維持・向上させていくためには、働き方を柔軟に選択し、能力を高め発揮できる環境を整備することが求められ、また、これらを支える仕組みとして、働く人の多様なニーズを酌み取り、それを労働条件や職場環境に反映するための仕組みが必要であるというのが今の状況変化であるというところでございます。
 続いて、新しい時代に対応するための視点でございます。
 スライド7番でございます。これからの労働基準法制に求める視点のその1としまして、「守る」と「支える」という2つの視点が挙げられるかと思います。
 まず「守る」ですが、労働基準行政が果たしてきた労働者を守るという役割は、心身の健康の重要性というものは、画一的であろうとなかろうと、全ての労働者に共通するものである。これは引き続き確保されなければならず、労働条件に関する基準が時代に合ったものになっているか見直しながら、しっかり守っていくという役割は堅持されなければならないということ。
 「支える」というところでございますが、先ほども出てきました労働者の多様な選択、自発的な能力開発と成長を支えるということで、自らのワーク・ライフスタイルの重視や成長・キャリア形成を重視して働きたい労働者の希望の実現を支えられるものとなるよう、制度の在り方を見直していくことが必要ではないかというところでございます。いずれにしましても、自らの希望の下で、健康が害されることがないようにするというのが大切になっていく。
 スライド8番目でございます。こういった働く人の求める多様性の尊重の視点ということでいきますと、まず個別・多様化する個人の価値観への対応で求められることは、右側でございますが、個別・多様化する個人の価値観に対応することが可能な労働基準法制としていくことが時代の要請である。これは企業によるパーパス経営とかエンゲージメント力の向上を機能させるという観点からも、働く側の選択と希望を反映させる多様性尊重の視点に立った仕組みを整備することが重要であろうということでございます。
 下の半分でございますが、働く人の希望が反映される仕組みということでいいますと、経営者が労働者を雇用するという関係上、どうしても経営者のほうが強い立場にあるということで、労働条件や制度の決定に経営側の都合のみが優先され、働く人の希望が反映されないといったことにはならないようにしていくことが必要だろうということでございます。
 これらをまとめたものがスライド9番でございます。新しい時代とこれからの労働基準法制ということで、一番上のところに、労働人口の減少や市場環境の不確実性の高まり、コロナの影響なども含めた環境変化の発生、働く側がキャリアチェンジとか兼業・副業を行う方が増えているといった状況から、新しい時代では、企業を取り巻く環境の不確実性が高まっていく中で、働く人の働く意識や働き方への希望がより一層個別・多様化している。
 こういった中で労働基準法制をどうしていくかということでございますが、真ん中のところでございます。労働憲章的な規定とか基本原則、封建的な労働慣行を排除するための規定、こういったベースとなるものに関しては全ての労働者にとって変わることない考え方である。ここは堅持をしつつ、その中で、現在の労働基準法制が時代に合っているのかを検証し、見直すことが求められる。
 最後、ここの章のまとめですが、これからの労働基準法制の在り方は2つの理念が重要であるということでまとめております。まず、1つ目は「画一的な制度を一律に当てはめるのではなく、働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備すること」、2つ目は「働く価値観、ライフスタイル、働く上での制約が個別・多様化しているからこそ、全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることができる社会を目指すということ」の2つを挙げさせていただいております。
 これに即しまして、新しい時代に即した労働基準法制の方向性はどうあるべきか、というところが次章になります。
 スライド11番でございます。新しい時代に即した労働基準法制の考え方ということでございますが、ここは図示させていただきました。まず、変化する環境の下でも変わらない考え方をベースとしつつ、働く人の健康を確保していくことが共通的に必要である。この2つが下支えになり、シンプルで実効的な制度をつくることで、働く人の選択・希望の反映が可能な制度をつくっていき、新しい時代における働く人の守り方を構築していくというのが基本的な考え方であろうということを図示させていただいております。
 それぞれの項目について、まずスライド12番でございます。変化する環境下でも変わらない考え方というところでございますが、労働条件というものは労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない。これは基準法の最初に出てくる基本原則でございますが、こういった基本原則ですとか、基準法で定めております労使対等の原則、均等待遇とか強制労働の禁止といった、これは戦前の経験も踏まえまして封建的遺制を一掃する趣旨の規定が置かれているわけでございますが、こういったベースに関しては、企業を取り巻く環境が変化したり、働く人の希望が個別化・多様化したとしても変わらない基盤である。ここは守っていかなければならないものであるというところでございます。
 スライド13番、働く人の健康確保でございます。働く人が安心して働くことができるためには、何よりも健康確保が重要であるということで、これはこれまでも労働安全衛生法等々を含めまして、企業が一定の働く人の健康を守るという責務を負いつつ、制度がつくられてきたというものでございます。
 そういったものを踏まえながらも、2つ目のポツですが、働き方、働く場所が多様化している中で、健康管理の仕組みが複雑化している。個々の労働者が置かれた状況に応じた企業の健康管理の在り方が検討されるべきではないかということ。そして、労働者自身も健康保持増進を主体的に行う意識を育てることと、自らの健康状態を把握していくことが求められるのではないかという問題提起をしております。
 こういった対応を円滑に進めることができるためには、仕事と生活のバランスを含めて、労働者が必要に応じて使用者と十分にコミュニケーションが取れる環境も必要になるのではないかということでございます。また、労働者の心身の健康への影響を防ぐ観点から、勤務時間外における業務連絡の在り方についても検討すべきではないかということで、論点をまとめさせていただいております。
 スライド14番、働く人の選択・希望が可能な制度をつくっていくというところでございます。まず、変化に合わせた現行制度をどう見直していくかというところでございます。上の箱でございます。これまでと同様の働き方を望む労働者の方も一定数いらっしゃいますが、こういった方々には、引き続き労働基準行政が強制力のある規制によって労働者の権利を守っていくべきではないかということです。
 一方で、労働基準法では事業場が基本となっておりますが、例えばテレワークなど、職場で働くことが前提とならない働き方が普及するなど、法に基づく事業場への臨検監督はなじまないケースも増加している。これに関しては必要な見直しを行っていくべきではないかということでございます。
 下でございますが、個が希望する働き方・キャリアの形成に対応した労働基準法制というものはどういったものであるか。より柔軟な制度の適用については、まず本人の選択を尊重し、労働基準法制がその希望の実現の妨げとならないようにすべきではないかということ。多様な働く人の声を吸い上げ、その希望を反映していくための制度の在り方を考えていくことが必要ではないかということ。個々の労働者の希望を反映するためには、企業と個々の労働者が必要に応じて個別のコミュニケーションが取れる環境が求められるのではないかということ。個々の労働者と使用者の間には情報や交渉力の格差があることから、労働者の希望を集約して使用者とコミュニケーションを図るため、労働者の希望と労働条件の決定を反映させる集団的な労使コミュニケーションの在り方も検討する必要があるのではないかということ。こういった形にまとめさせていただいております。
 スライド15番でございます。5つ目として新しい時代における働く人の守り方ということでございまして、これは私ども労働基準監督行政の課題ということでまとめております。監督行政でございますが、量的な課題として、国際的に見て労働者数当たりの労働基準監督官の数は少ないほうであるということ。質的な課題として、デジタル化の進展、働き方の個別・多様化によって、監督官が対応すべき事案が非常に複雑になっているという状況があるということでございます。
 そういう時代に応じて産業も変わってくる、それに対する監督のやり方も変わってくるということで、働き方や情報技術の変化に応じて監督行政手法のアップデートも必要ではないかと。そういった新しい時代に合った効果的・効率的な監督指導体制をつくっていくことが求められるのではないかということで、下側にその視点をまとめております。
 まず左側ですが、効果的・効率的な監督指導体制を構築するということで、まず監督指導においてAI・デジタル技術を積極的に活用する。その技術を基に、直接の監督だけではなくて、事業者が自主点検を行うなどの対応策も確立していくことが求められるのではないかという点を1点挙げております。
 2つ目でございますが、こちらは課題ということで、物理的な場所としての事業場のみに依拠しない監督指導の在り方についても検討していくべきではないかということを挙げさせていただいております。
 右側の箱でございますが、監督署による監督だけでなく、労働市場による監視ということで、法履行確保の手法に関しましては、時代の変化に対応して強化・再構築をすることが必要ではないか。コンサルティングなどの手法にも重点を置いて、企業全体の法制度への理解や遵守意識を向上していただく。これをもって法違反の未然防止を図っていくことも必要ではないか。このために、企業に労働条件や職場環境に関する情報の開示を積極的に求めるなどして、そういった情報開示から労働市場を通じた市場メカニズムを活用するといった方法も検討すべきではないかということを論点として挙げさせていただいております。
 以上、労働基準法制に関する考え方ということでまとめておりますが、最後4番、制度側だけではなくて、企業に対して期待をすること、企業による健康確保に加えて働く人にも期待することということでまとめております。
 まず、企業に期待することでございます。一番上の基本的な考え方でございますが、働く人は価値創造の担い手であって、全ての働く人が働きがいを持って働くことが求められている。
 真ん中のところでございますが、全ての働く人が働きがいを持って働くことができるように、労働条件の改善、能力向上機会の確保、主体的なキャリア形成に対する支援などに取り組む。また、必ずしも自発的に能力を高めて発揮できる人ばかりではないということも踏まえて、企業側の一定のサポートが必要になる者は少なくないので、そういったところのサポートも求められるのではないかということ。
 一番下のところでございますが、いわゆるパーパス経営を含めまして、企業がパーパスを明確にし、社内に浸透させた上で社員のエンゲージメントを高めていって、社内外の人的つながりを構築するための人事施策を取り入れることも有効ではないかということ。そういった大きなパーパスだけではなくて、企業が自らのビジネスの将来像やそれに適した人材像を可視化し、働く人と共有していくことで、働く人が自らキャリアを形成していく中で、その企業の求める方向性と合致した能力を高めていっていただくといった選択が可能になっていく。こういった労使間がしっかりコミュニケーションを取って、キャリアを構築していくことが求められるのではないかということを挙げさせていただいております。これは、これまで企業ヒアリング等々で出てきたものをまとめさせていただきました。
 最後のスライド18番でございます。企業による健康確保に加えて働く人にも期待をすることということで、まず基本の考え方として一番上、働く人が自由で豊かな発想、それぞれの創造性・専門性を持って働き、キャリアを形成することを可能とする環境を整備することが求められるではないかということ。
 真ん中でございますが、働く人の側も労働基準法性を正しく理解をして、様々な場面で活用できるようになることが必要不可欠である。働く人本人が企業、社会、国などによる教育、周知啓発などを通じて、法制度について知る機会を持つことが重要ではないかということで、働く人の側にもきちんと法制を理解していただく、そのための支援も国としてやっていくことが重要ではないか、ということでまとめております。
 一番下でございますけれども、先ほどの企業側の最後の一番下とパラレルになっておりますが、テレワークなど直接管理される度合いが小さい働き方が拡大している。自己実現、心身の健康維持のためにも企業の支援を受けながら、セルフマネジメントを高めていくことが求められるのではないかということ。企業のパーパス、ビジネスの将来像、それに適した人材像について、企業と働く人の価値観の共有によって、より効果的・効率的に自らの価値を高めることができる。自分らしい働き方を実現していくためにも働く人の側からも、企業のパーパス、ビジネスの将来像、それに適した人材像といったものを理解して、その上で主体的なキャリア形成を行っていただく営みが重要ではないかといった形でまとめさせていただいてございます。
 こうした4章仕立てで中間整理はまとめさせていただきました。これについて御議論いただければと思います。事務局からは以上でございます。
○今野座長 ありがとうございました。
 それでは、今日も自由に議論をしたいと思います。
 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 ありがとうございました。ここまでまとめられるのは大変だったと思います。
 その上で御質問なのですけれども、17、18ページは、緑とピンクと青の丸が、上は「企業に期待すること」、下は「企業による健康確保に加え、働く人にも期待すること」と書いているのですけれども、微妙に位置づけが分かりにくい。
 例えば、下の18ページの一番上は個人のピクトグラムがあるのですけれども、横に入っているのは環境を整備することとなっているので、個人が主体的にやることではないのだなと思ったり、例えば、ピンクは労働基準監督のモニタリングみたいなアイコンの意味なのだろうかとか。どういう交通整理をなさっているのかが分からないので、17、18ページの位置づけについて教えていただけるとうれしいです。
○労働条件確保改善対策室長 基本的に一番上の緑のところは、基本的な考え方と課題のようなものをまとめており、2つ目のところには、それを対応するために必要ではないかと思われる取組ということでまとめております。一番下のところは、企業と労働者の関係性に着目をしてまとめたということで違いが出ているということでございます。
 ピクトグラムに関しましては、デザインをする中でこういったものを選んだのですけれども、そこはいろいろ御議論のあるところかとは思います。
 最終的に報告書にするときには、文章でまとめさせていただく形になるかと思いますので、そのときに分かりやすいように工夫して、また御相談させていただければと思っております。
 基本的には、上側の17ページは、企業サイドでしっかりやっていただきたいということをまとめているつもりでございます。18ページは、労働者サイドにやっておいてもらいたいというものでございます。
 ほぼ裏表のような形にはなっておりまして、特に下の青の箱のところを見ていただくと、企業側も労働者側もしっかりとコミュニケーションを取って、ビジョンを共有しながら個人の働き方の実現のためのキャリアプランなり、健康確保の方向性を相談していきましょうということをまとめているという格好になっております。
○中村構成員 ありがとうございました。
 きっと次の報告書の段階では、今の御説明だと裏表になっている、実は大事なのは個人と企業の間のすり合わせであるという部分だとすると、2つに分けてしまうことによって逆に中核の部分が抜け落ちた印象を与えてしまうリスクもあると思うので、まとめられるときはもう少しメインの部分が分かるようになるといいのかなと思いました。
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
○今野座長 この絵の形は別にして、内容は整理が上手にできていない感じはしますので、一個一個の内容というよりか、この箱の位置づけが少し分かりにくくなっていると私も思います。そこはもう一度改めて整理をしていただければと思います。
 戎野構成員、どうぞ。
○戎野構成員 ありがとうございます。
 今、中村構成員からお話があったところは私もすごく気になって、同じ質問をしようと思っていたところです。これは「企業による健康確保に加え」というワードも要らないのではないかなと思って、「企業に期待すること」、「働く人に期待すること」のほうがシンプルかなと思いました。これが1点目です。
 2点目は、働く人の意識も変化し、希望は個別・多様化しているところですが、時間にとらわれない働き方やテレワーク、あるいは時間管理できない働き方というのもあると思いますので、ここでは場所がかなり強調されている感がありますが、時間も価値観や生活スタイルのところに入るのかなと思いました。
○今野座長 3ページですか。
○戎野構成員 そうです。
 3ページのところで、そういったワードも入ったほうが分かりやすいと思いました。多分、価値観や生活スタイルの中に含まれているのだろうと思うのですけれども、柔軟な働き方というところにも関係しますが、そういうワードがあったほうがいいと思いました。
 3つ目なのですけれども、4ページ目の「これまで」「これから」という区分の中で気になったのが、「着実さやチームワークが求められる」の対比として「柔軟な発想や新しい考え方が求められる」というのがあり、これが対でいいのかなと思いました。
 ここでもいろいろヒアリングした中で、非常にチームワークを重視しているという企業がありました。「会社で働く」の対が「好きな場所で働く」というのは分かるのですけれども、この書き方は誤解を招きかねないのではないかと思いますし、そうではないと思う人が結構いる気がしました。私もいい表現の仕方が見つからなかったのですけれども、お考えがあってこうしたということでしたら教えていただきたいと思います。
 また、「これまで」と「これから」という表現が気になりました。これを見ると「これまで」がもうなくなっていくというわけでもないですし、「これから」がこうあるべきだということを示しているわけでもないわけなので、誤解なくうまく伝わるようにするにはどうしたらいいかなと思ったので、何かありましたら教えてください。よろしくお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 「これまで」「これから」という絵のつくりが対比になっているということもあって、やや誤解を招いたのかなというところでありますが、これまでが完全否定されるものはもちろんございませんし、ほかでも書いてありますように、これまでと同じような働き方をする方は必ずいらっしゃる、伝統的な働き方が続く方もいらっしゃるけれども、これからの働き方をする方が増えていっている中で、法制をどうしていくかという議論になるのだということを示すための形としてこういった形で書かせていただきました。
 御指摘のあった着実さやチームワークと柔軟な発想や新しい考え方の対比に関しては、御指摘も踏まえまして、どういった表現がいいのか、あるいはここの対比がそもそもこの2つの対比なのか、また別の概念であるのかを含めまして再度考えさせていただければなと思います。いずれにしても、報告をまとめる段階でこの辺りもきちんと整理をさせていただければと思います。
○今野座長 今の点は、報告書が文章になるので違う形になるかもしれないのですけれども、もしかしたら、絵にするときに左が要らないかもしれないね。右側の方向に進んでいますということだけ言えばいいのかもしれないですよね。対比してしまうと、例えば「終身雇用」に対する「多様で主体的なキャリア」というのも対かという問題と、もう一つは、今回のヒアリングで長期雇用を重視するというのは皆さん共通して強調されていたので、従来型の終身雇用ではないけれども、短期で要らなくなったらすぐに切るのかということではなくて、やはり長期的に人材を育成して活用することは重要だということは共通して強調されていたので、ここを対にしてしまうと無理があるのかもしれないなと思いました。
○中村構成員 今のところ、いいですか。
○今野座長 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 今の点でいうと、落とすより足したほうがいい気がしました。左を丸ごと落としてしまうと、新しいこういうとこだけを注力すればいい感じだと思うのですけれども、従来型のものも依然それを必要としている人は多くいるというのがこの間ずっと出ていることなので、従来型のものプラスアルファでこういうものに配慮すべきだと。だから、移行するのではなくて、追加でこれみたいなほうが、もしかしたら全体像としては分かりやすいのかもしれないと思いました。
○小林構成員 このスライドの件でよろしいでしょうか。
○今野座長 小林構成員、どうぞ。
○小林構成員 私も今御指摘の点が気になっていて、大事な点だと思っています。チームワークが求められるというところに関しては、これから場所や時間が自由になっていっても、個人で働くようになるわけではなくて、ますます必要になってくるのではないかと、今回の研究会でもそのような話が多かったかなと思いますので、これからはチームワークがますます求められるということかなと思いますので、そのように書いていただいたほうがいいのかなと。
 あと、依存のところです。企業と個人は依存ですとか、右側の企業に依存し過ぎないというこの依存の言葉も、報告書として出す場合には、依存という言葉を別の言葉に置き換えたほうがいいのかなとか、個人が企業に依存し過ぎない、では企業は個人に対してどうなのかというところも少し整理する必要があるのかなと思って伺っていました。
○今野座長 武田構成員、どうぞ。
○武田構成員 意見というより質問で、今野座長が4ページのところで左側の終身雇用に対して長く働くことは求められているのでとおっしゃられていたのですけれども、今野座長がおっしゃっていたのは、今のこの表の対比だと、多様で主体的なキャリアというところには長く働くみたいなニュアンスが残っていくということですか。そんなことはないですか。
○今野座長  私の意見は終身雇用と多様で主体的なキャリアを対にしてしまうと、右側が終身雇用はしないとか長期雇用なんて考えないというニュアンスになってしまうのです。
○武田構成員 なるほど。否定ではなくて。
○今野座長 ですから、雇用政策についてはやはり長期雇用は大切にするということは、ヒアリングをしたら皆さん一貫した共通したメッセージだったので、この対ではそれが伝わらないなということが私のコメントの内容です。
○武田構成員 今の内容を受けて3ページを見たときに、一番右側の「キャリア形成意識の高まり」という箱の中になると思うのですが、私の言いたかったことは、例えば、キャリア形成意識や多様化みたいなところで、必ずしも正社員で終身雇用というパターンを労働者側も求めなくなってきているではないですか。なので、例えば、働く場所のところに時間という概念を入れられるのであれば、もうちょっと単純に多様化とか主体的なとかいうワードではなくて、雇用形態であるとか、話題に出ていた副業の話とか、そういうニュアンスも入ってきていいのかなと思ったので、一アイデアですけれども、ちょっと違和感があったので言ってみました。
○今野座長 今の武田構成員の意見はどう組み込むかなと思ったのですけれども、何か事務局からありますか。
○労働条件確保改善対策室長 3ページの右側の「キャリア形成意識の高まり」のところに、長期雇用かどうか、終身雇用を求めない方もいるという、雇用期間の内容を少し入れ込むというニュアンスでございましょうか。
○武田構成員 期間だけに限らず、例えば期間にこだわらない雇用形態なども入れ子みたいです。今まで、いわゆる男性の働き方は、終身雇用の正社員至上主義で1パターンの働き方がメジャーでしたけれど、それが多様化しているのかということを入れたほうがいいのではないかなという意見でした。
○今野座長 そうすると、先ほど3ページで働く場所の多様化については時間も考えたほうがいいのではないかという話があったけれども、広い意味での働き方みたいなものもここに組み込んだほうがいいのではないかというぐらいで、うまく落ち着くかなと思って話を聞いたのですけれども。
○労働条件確保改善対策室長 それぞれの箱に少し要素を足すことになろうかと思いますので、そこを検討させていただければと思います。ありがとうございます。
○今野座長 伊達構成員、どうぞ。
○伊達構成員 私も4ページの議論について気になったところがあったので、コメントを述べさせていただきます。
 「これまで」と「これから」という表記と、間に矢印があるので、移行していくというイメージがしてしまいます。今回メッセージとして言いたいことが正しく伝わりにくくなってしまうのではないのかなと思いました。
 「これまで」と「これから」の表記は、私の専門領域ではキャリア論でよく出される構造ですが、対比で語るとどうしても対立を想起させてしまうので、積み重なっていく、追加されるといった表現にするのはどうでしょうか。
 2点目ですが、今回、「守る」と「支える」というコンセプトはいいなと改めて思いまして、7ページと9ページの図でそのことに言及しています。
 非常に細かいことなのですが、出す順番を同じにしたほうがいいと思いました。最初に「守る」を出して次に「支える」を出す順序にするということです。7ページは「守る」「支える」という順番なのですが、9ページは「支える」「守る」という順番になっています。
 最後に、18ページで、働く人にも期待することということで、ここに書かれている内容は基本的に賛同しています。
 一方で、ここに書かれていることは、自分で自分のキャリアを描けるということがあって初めて可能になっていくのかなと。自分のなりたい人材像を自分で見通したりすることができて初めて実行できていくのではないのかと思います。
 前回のニーズの調査の中でも出てきていましたが、キャリアを描くこと自体が難しいという状況があったはずです。そこに対して支援も必要になってきそうです。そういう観点を、例えば17ページに入れていくといいのではないのかと思いました。
 以上です。
○今野座長 今3つ質問がありました。
 1つは4ページ目のことですけれども、事務局から何かありますか。
○労働条件確保改善対策室長 4ページに関しては、恐らく皆様から同じ御指摘をいただいているかと思います。「これまで」「これから」が一対一対応で裏表のようにひっくり返るというイメージではなくて、今までのものがある中にこういうものが増えていくのだというプラスのイメージで書くべきであるという話かと思いますので、そこは修正を検討させていただければと思います。
 7ページ、9ページに関しましては、順番のところでございまして、確かに御指摘いただくとそのとおりだというところがありますので、合わせるように工夫をしたいと思います。
 18ページに関しては、前提となるところのためのキャリアを描けるようにするための支援、というものかと思いますので、そこを企業に頼むのか、制度的な話なのか、2パターンあるかと思いますが、どこに盛り込めるかというのを考えさせていただければと思います。御指摘は17ページということだったので、上のところかとは思うのですけれども。
○伊達構成員 確かにどこにキャリア展望に関する記述を入れるのかは、今、私は17ページと申し上げたのですが、もしかすると18ページにも関わってくるかもしれません。
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
 御指摘が能力ということになりますと、労働法制でどこまでいけるのかというところもございますので、それをどの辺りにどう書き込むかというのはまた御相談させていただければと思います。
○今野座長 最後のところは、望むことだから労働法制に関係なくてもいいわけよね。だから、今言われた自分で自分のキャリアを描けるようにしようよというのは、会社だとそれを支援しよう、個人だとそうするように頑張ってくださいという趣旨だと思いますけれども、それが労働法制とか、あるいは制度との対応をどう取るのかというのはあまり気にしなくていいのではないかと思って聞いていました。
 大湾構成員、どうぞ。
○大湾構成員 4ページの表はかなり書き換えられるということなので、申し上げても意味がないのかもしれないのですけれども、成果主義というとすごく狭いイメージがあって、本当は適材適所だと思うのです。今、特に求められているのは適材適所で、成果主義というとどうしても成果主義報酬みたいな報酬制度を意味するような言葉になってしまうので、そこは避けたほうがいいと思います。
 それから、先ほどからチームワークの話が出ていましたけれども、世界的にはチームワークが増えてきているというのが一般的な認識です。つまり、ICTの発達によって定常的な仕事がだんだん減ってきて、非定常の仕事が主になってくると、1人ではなくてチームに意思決定や業務を任せるという体制に移行しつつある。ですので、そのためにチームで働くことが増えてきたので、様々なコーディネーション能力、対人スキルが重要になってきたというのが一般的な認識だと思いますので、そこから外れないような表現がいいと思います。
 それから、私、第5回の健康管理のところを欠席したので、昨日、議事録を読んでいたのですけれども、健康管理の個別化が進むという議論の中で、健康管理の責任は企業にあるのか、個人に移るのかという話があって、そこは結論が出ないまま議論が終わっているような形になっていたかと思います。
 やはり、働く内容についての指示は企業が行う。ですから、働き方については企業が責任を持っていて、かなり裁量権を持つようになったといっても、自分が行う仕事を全部自分の裁量で決められる人というのは、社長とか経営陣を除いてはほとんどいないと思うのです。ということは、働き方に責任を持つ人と健康管理に責任を持つ人は同じ主体でなくてはいけないと思いますので、そこはやはり健康管理の責任は企業にあるということは明確にしておいたほうがいいのではないかなと感じました。
 それから、13ページのところで、この報告書は全体的に理念が述べられていて、具体的なことは書かないという方針で書いてあると思うのですけれども、最後の点で、「勤務時間外における業務上連絡の在り方についても検討すべき」というのはかなり具体的な内容になっていて、ここだけ違和感がありました。
 最後に、17ページのところを読んでいて感じたのですけれども、何となく非正規の人が落ちてしまうのではないかという不安を私は持っています。「全ての働く人」と書いているのですけれども、やはり雇用形態にかかわらずということは明確にすべきではないか。ここに書いてある能力向上機会の確保、あるいは主体的なキャリア形成、こういった機会や権利を最も奪われているのは非正規の方々だと思うのです。ですから、ノンスタンダードな働き方をする人たちの能力向上機会をできるだけ確保していくことは企業も配慮すべきではないか。そういった点が報告書に盛り込まれるといいのではないかなと感じました。
 以上です。
○今野座長 事務局から何かありますか。
○労働条件確保改善対策室長 御指摘を踏まえまして、再整理をさせていただきます。
 成果主義のワーディングは、年功序列から引っ張られたところもあろうかと思いますので、これが対比でないということであれば、そこはまた用語の使い方を考え直すということにもなろうかと思いますので、しっかり考えさせていただければと思います。
○大湾構成員 あと関連して、年功序列というのが、仕事の配置、役割の配置に関して年功的ではなくなるというのは確かだと思うのですけれども、年功賃金的な、後払い的な報酬制度が完全になくなるかというと、そうでもないと思うのです。企業にとっては、特に成長企業によっては、後払い的な賃金体系を組むことが最適な戦略である場合もあるので、年功序列というのはいわゆる給与カーブが上がっていくようなものまでなくなるという認識ではないという意識で言葉を使ったほうがいいと思います。
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
 それから、健康のところに関しては、いただいたものをどこかに組み込めるように検討させていただければと思います。
○今野座長 2点目については、健康確保の基本的な責任はまず企業にあるというのは、第5回研究会の基本的な共通した認識だと思っていました。議事録を読まれたらそういうことは伝わらなかったですか。
○大湾構成員 議事録を読んだときは、それはあまり伝わらなかったです。水町構成員が割とその点を何度か言及されていたのですけれども、それについてのコンセンサスみたいなものが見えてこなかったです。
○今野座長 コンセンサスがあったと私は認識していました。多分事務局もそう思っていると思います。ただ、それを上手に表現できていないということがあれば、表現を変えたほうがいいと思いますけれども、そこの認識は問題がないかなと思っていました。
 3点目と4点目について、事務局から何かありますか。
○労働条件確保改善対策室長 17ページのところで非正規の方に関するところをどう入れていくか。この絵の中でどう表現するかというのと、報告書の中でどう表現するのかは、直ちにぱっとつくものはないのですが、そこの表現を考えて御相談させていただければと思います。
○今野座長 全体として、正規・非正規という形で、正規の場合はこうだけれども非正規の場合はこうだという書き方になっていないのです。でも、今言われたことは重要なので、正規・非正規と明確に書かないで、今指摘されたことを上手に組み込むということですかね。
○労働条件確保改善対策室長 先ほど武田構成員からも御指摘があったように、そもそも最初の視点のところで、雇用形態や働き方が画一的でない、多様化しているという視点もあるので、その視点とバランスを取った書きぶりにしていくことが必要になろうかと思います。今、座長がおっしゃられたように、そういった言葉をなるべく使わないようにどう表現するかは頭をひねらせていただければと思います。
○武田構成員 一つ希望で、フリーの方とかそういった方も含めて「雇用の形態だけに限らず」が入っていると網羅的でいいのかなと思いました。
○労働条件確保改善対策室長 ありがとうございます。
○大湾構成員 働き方は多様になっていくと思うのですけれども、やはり労働者が活躍する機会を奪わないということです。活躍する機会とか自分の能力を向上する機会をできるだけ奪わないような制度に変えていくということは、強調したほうがいいと思います。
○今野座長 今、大湾構成員が言われたことが「支える」なのだよね。ですから、理念としては打ち出しているので、その理念に基づいてこう書いたときに、それに沿っているかどうかということだと思います。ですから、理念としては「守る」と「支える」というふうに打ち出したということは、今おっしゃられたことの考え方でいこうということにはなっていると思います。
 水町構成員、どうぞ。
○水町構成員 今、議論されたこととも関係するのですが、考え方としてのコメントを労働法の観点から大きく2つ申し上げたいと思います。
 1つは、今まさに議論があった、働く人とか労働者に関するような基本概念についてです。例えば、9枚目のスライドでは、「全ての労働者」と書いてあったり、「働く人の求める働き方」という表現が使われていますが、正規・非正規、先ほどフリーという話もありましたが、働く形態は伝統的な労働基準法上の労働者に限られずいろいろな形になってきているので、例えば、労働基準法制とここに書いてありますけれども、労働安全衛生法でも一人親方を対象にするとか、労災保険法でもフリーランスに対して特別加入制度を広げるとか、さらには今、フリーランス保護法が国会で成立して、その附帯決議の中で、労働者概念をどうするかということも課題として与えられているので、伝統的な狭い労働者だけではなく、法律の規制の在り方自体も多様なものになっていくかもしれない。労働基準法上の労働者だったら全部適用され、それ以外だったらほとんど適用がないというものではない。働き方も多様化しているけれども、規制もこれからは多様な規制という視点で考え直さなくてはいけないということが入っていればいいかなと思います。
 そういう意味で、最初に労働者とか働く人と使っているときに、もうちょっと柔軟になっているし、多様になっているし、規制自体の在り方もそういう観点から見直さなくてはいけないということをどこかに書くか、そういう意識で次につなげていくか。
 同じく17ページ、18ページで「企業に期待すること」と書いてありますが、企業の概念自体も実は多様化していて、デジタル化が進んでネットワークで法人自体も多様化してきている中で、使用者が責任を負わなくてはいけないという話もありましたが、使用者として、企業として、誰がどこでどういう責任を負うかというのが世界的な議論になってきています。企業のほうは特に何も書いていないのですが、例えば、ビジネスと人権の話でサプライチェーンや企業ネットワークの中で、直接雇用契約を結んでいる相手だけに責任を持てばいいというわけではなくなってきています。ビジネスと人権という話も今はきちんと計画を立ててネットワークの中で企業として対応し、その計画を立てることを義務づけて、それに反する場合には法的な責任を負うという議論がヨーロッパでも広がってきていて、努力義務的に何かやりなさいというものから、だんだん実態としてのルールに変わりつつあります。恐らく日本政府もこれからビジネスと人権について考えていく中で、その考え方と企業の多様な広がりとしての責任主体の在り方というのも、書くのは難しいかもしれませんが、視野に入れた検討を行っていくというのが大きく基本概念です。
 2つ目のコメントは、先ほど大湾構成員からあった13ページの健康確保のところです。これも、デジタル化が進んでいく中で、誰が責任を負うかと同時に、どこまで監視とかコントロールを広げていくかという問題が非常にシビアな問題になっています。例えば、今まで労働時間でカウントしていたのを睡眠時間でカウントするとした場合に、家で脳波を測ってとか、時計をつけたらもう分かるのかもしれませんが、睡眠時間は何時から何時まででこの人は3時間しか寝ていないから作業を減らしてあげましょうとか、この人は8時間寝ているからもうちょっと仕事をさせていいよねとかいう話で、どこまで監視できるかどうか。監視をしようと思えばどこまででも監視できて、かつ、監視をしてそれに対して個別の対応をすれば健康確保に資するということは一方で言えるかもしれないけれども、そういう私的領域との線引きをどうするかというのが非常に深刻な問題になってきています。
 これは、前回、ドイツの話でありましたが、個人情報保護法の観点からチェックすればいいという話ではなくなってきていて、個人情報保護法は通知して本人が同意して、四角をクリックしたら情報を取っていいですよという話になりがちなのですが、これは労働法とか労使関係でどこまで手を差し伸べてよくて、どこまで突っ込んで、どこまで監視して責任を取ればいいかというのが非常にシビアな問題になってきています。そういう意味で、最後のポツで「業務上の連絡の在り方などについても検討すべき」というのは、具体的過ぎるという話がありましたが、そういう意味で私的領域と使用者、会社としてどこまで監視しながら健康確保に資することができるかというものの労働法、労使関係的な視点というのも大切なのだと。真ん中のポツのところでコミュニケーションと書いてありますが、もう少し立てつけて考えなくてはいけないことがあるかなというのも、すぐ答えが出るものではないので、問題意識として持ちながら次の検討に続けてつなげていただければなと思います。
 以上です。
○今野座長 水町構成員が前の研究会で言われたのは、健康確保の基本的な責任は企業にあると。それをどうするかについては、技術的な条件が変わったので、方法はいろいろ変わってもいい。そのときに、今おっしゃられたところの関係でいうと、方法は変えてきました、例えばAIとかデジタル化で対応しました、そうすると、今度は今言った私的領域との関係が出てくるというロジックかなと思って聞いていました。その理解でいいですか。
○水町構成員 ご認識の通りです。
○今野座長 確かにそうですよね。やろうと思えばどこまでもできてしまうという感じになっているということですよね。
 安部構成員、どうぞ。
○安部構成員 全体として、私はこれまでの議論がうまくまとめられていると感じました。「守る」と「支える」を軸にこれから議論を進めていくことで違和感はありません、賛同します。
 この研究会の初期の段階で、私自身がこの議論に期待するところとして、たまたま「守る」と「支える」、加えて「保つ」或いは「伸ばす」と言った三点を述べた記憶があります。
 「保つ」や「伸ばす」を述べたのは、「守り」「支えた」その先に期待することが何かを考えたときに、企業も個人も成長し続ける、それが最終的な目的ではないか思ったのですが、議論を重ね、今はその考えはありません。労働行政は「守り」「支える」ことに主眼を置き、「保り」「伸ばす」のは、企業や個人が主体的に取り組むべきことで、「守る」と「支える」に集中することによって、企業と労働者の自己責任、自律を促し、より主体性が促進されることに繋がるとの思いに至りました。
 改めてごれまでの議論のまとめとしてこの内容を見て感じるのは、もう一回その責任主体を明確にする、その上で、労働行政だけでなく、企業と個人の主体性も軸に据えながら、全体のグランドデザインを組み立て直すと言ってもいいぐらいの整理と思って受け止めています。
 その観点で今回のまとめを見てみると、例えば企業に対しては、開示や将来期待される人材像、スキルの実例を示すことで労働行政の進化を図ろうとしているし、労働者に対しては、健康管理の主体はあくまで労働者自身もその一員であることを明確にし、基本的な法の知識保持を促しながら、今後、学びの機会など選択肢が提示されることに対する主体的な行動が働きかけられています。そもそも労働基準監督官が少ない中、全てを監督するのではなく、開示を促したり先を示すことによって、より上流で企業が監督しなくても良いい状況をつくり出そうということには大きな意義があり、企業もそう言った意識を持って主体的に今の課題に取り組んでいくべきと受け止めました。
 弊社でも、私は人事の在り方というものを、「管理する人事」から「支援する人事」への変革を促しており、それとも通じるように受け止めました。
 新たな労働行政のあり方の一例として、例えば地域の労働基準協会をより有効に活用する、すなわち、監督機能としてではなく、遵法のための情報提供や勉強会に力を入れることで、より上流での整備に向けた取り組みが考えられます。場合により、監督でなく、そういうところを強化することによって企業の自立した意識というのがより高まっていくのかも知れないと考えます。
 個人に関しても、法の知識をより深く持ちながら会社が選択肢を増やすよう働きかけることで、自分で決めていかないといけない局面がおのずと増えて来て、より主体性が促される。
 そうなると、雇われる側という弱者の視点を支える在り方として、今のような労働組合か過半数の社員代表、と言う選択肢だけでない、もう少し複数のバリエーションがあり得るかも知れません。例えば株主の声を企業経営に反映する際、声の影響度の大きさによって、必要な賛同株式数にいくつものパターンがあるのと同様、社員の声を経営者側に伝える際のバリエーションも幾つかあって良いかも知れない、との思いに考えを至らせていました。
 そういうことを考えると、今回の軸は、行政が「守る」「支える」を軸に取り組んで行くことは、あくまで手段としての施策であり、それによって実現したいもの、すなわち「自立性に富んだ企業と労働者双方の持続的な成長」と言った、真に目指すべき理念が、より上位に位置づけられると言う定義もあり得るのではないかと感じました。やや抽象的になってしまうかも知れませんが、真に目指すものをもう一段高い視点で掲げても良いかも知れない、と感じた次第です。
 いずれにしても、今回のまとめにおける整理は私としては自分の問題意識にも沿っており全面的に賛同しつつ、これを軸にさらに議論を進めていけるといいなと思いました。
○今野座長 今の安部構成員の議論を踏まえると、最後の17、18ページについて、個々の内容ではなく位置づけが、その前に国は「守る」「支える」をするので、それを超えて企業も個人もこういう主体的な取組をやってほしいということを書けばいいのだということですよね。
○安部構成員 今の印象ではそうです。企業だけではなくて個人も同様です。やや理想論かもしれませんが、こうやってきちんと「支え」、こうやって「守る」から、もっと自分たちで法に対する知識も持ち、ありたい自分を考えながら、より主体的に行動を起こして欲しい、と促すということを企業と労働者に対して働きかけるくらいのことを、目指すべき理念として位置付けても良いのではないかと感じた次第です。
○今野座長 最後の17、18ページにわざわざこう書いたということは、先ほどの言葉で言うと、それまでは国は「守る」「支える」をするので、それを超えて自主的に取り組んでほしいことを書きたいと思ったと多分思うのです。ですから、安部構成員の意見はいいなと思うので、もう少しそこの問題意識を鮮明にしてもう一度検討していただければと思うのですが、事務局どうですか。
○労働条件確保改善対策室長 位置づけとしてはまさしくおっしゃるとおりでございまして、行政ができることというのは3のところで書いたところ。ただ、行政がやる分はここまでだけれども、それを超えて企業や労働者にどういうことをやっていただきたいのか。ヒアリングも含めて、パーパス経営だとかビジネスの将来像の共有ということに踏み込んでいるのはまさにそういう部分になろうかと思います。ですので、そういったところの整理をしながら文章を考えていきたいと思います。
○今野座長 もう一度整理していただきたいのですけれども、安部構成員の御意見は、例えば、企業が個々に細かいことをこうしろと指示することよりも、「守る」「支える」を超えた部分は企業が自立的にちゃんとやってほしいのだということを明確に書くことが重要かなということだと思うのです。ですから、その観点を忘れないで整理をしていただきたい。
 もう一つ、先ほど水町構成員の論点で忘れていたのですけれども、概念の問題です。個人については労働者と働き方と両方あって、働き方という言葉をずっと使われたというのは、多分、単に労働者だけを考えているわけではないですよということですよね。
 そうすると、これを第三者が読んだときに、働く人と書いてあったときに、もしかしたらそこまでスコープを広げているというのは分からないかもしれないね。ですから、その辺がもう少し分かるように。文字にしたときには書くことにはなると思うのですけれども、何で働く人という言葉をわざわざ使ったのかということについてはどこかで触れたほうがいいのかもしれないなと思いました。
 事務局から何かコメントはありますか。
○労働条件確保改善対策室長 まさしく働く人というワーディングに対してはおっしゃるとおりでございますので、最終的に文章にするときにどこかにうまく書けるように工夫したいと思います。
○今野座長 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 今のところに関連して一つ。最後の17、18ページは今、割と根本的に見直されるという話だったのですけれども。個人のほうはきっと個人に期待することみたいなものを書けると思うのですけれども、個人がこういうふうに期待されるという話と、労働基準法制でできる範囲というのと、企業が頑張ることということ以外にも、先ほどビジネスと人権みたいな話とか、要は法制度だったり、政府の施策の中で個人を支えられるものはたくさんあると思います。個人に関してはそういうことも含めて重要だと思うので、労働基準法制、個人、企業だけではないところを、個人の将来の在り方の中では、恐らくキャリア支援みたいな話、先ほど自立を支援するみたいなのが多分入ってくると思うのですけれども、そこも含めて個人のところは交通整理をしていただいたほうがいいのかなと思いました。
○今野座長 ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
○武田構成員 安部構成員のお話を聞いていて、11ページの図を最初ぱっと見たときよく分からなかったのですけれども、安部構成員の話はまさにこの矢印の先のところに、17ページ、18ページのイメージの企業と人のところがあって、その手前で厚労省としてはこう考えるよ、というのが4つ書いてあるという理解を私はしました。
 その前に、皆さんの中で「守る」と「支える」はいいよねという意見が今ずっと出ていたのですけれども、それを考えると、ピンクの「新しい時代における働く人の守り方」は、ある意味、黄色にも緑にもブルーのところにも全部かかってきているので、実際に15ページを見ると、タイトルを変えたほうがいいと思うのです。監督指導体制であるとか監視がどうあるかとかいうことを書かれているので、ここのタイトルを変えると、もう少し全体的に「守る」「支える」がまぶされている4つの事柄になってくるので、文章になると11ページの図はなくなってしまうのだと思うのですけれども、結果すっきりするのかなと思いました。
○今野座長 端的に言うと、11ページは「新しい時代における働く人の守り方と支え方」と書けということですね。
 もう一つは、15ページも「働く人の守り方」となっているけれども、ここも「働き方と支え方」とちゃんと言ったほうがいいと。
○武田構成員 きっと「働く」も「支える」も健康確保とかいろいろなところに関わってくると思うのです。なので、無理やりここでどれが「支える」で「守る」とか分けてもいいのですけれども、全部に何となく触れられているので、考え方としてはこの「守る」「支える」が全体的には4つともにかかっている。切り口としてはこういうことを考えましたというほうが読み手としてはすっきりするかなと思いました。
○今野座長 要するに、言ってみると「守る」「支える」が売り物だから、それをいつも前面に出せという話だよね。全体として統一感は出てきますね。
 伊達構成員、どうぞ。
○伊達構成員 今の議論をお伺いしながら、18ページのところを見返していました。働く人に期待することの2つ目として、労働基準法制を正しく理解し活用するということは、実効性を持たせるために重要だと思いました。その一方で、労働者のニーズの調査によると、例えば労働時間に関する制度について十分に知られているかというと、そういうわけではありません。
 11ページに戻りまして、この中で、今の観点に関係するのは「シンプルで実効的な制度」という部分です。私は、これは重要な論点だと思っていますが、次のページ以降では、この論点について掘り下げられていないのです。もう少し掘り下げてもいいのかなと感じました。
○今野座長 今の点、事務局はどうですか。
○労働条件確保改善対策室長 「シンプルで実効的な制度」というところは、考え方として入っておりますので、うまくまぶせるようにということで考えております。
 この報告書で、この制度は細かくこうだ、と具体的なことを書くものではないので、そういった意味ではなかなか難しいところはありますけれども、考え方をうまく表現できるよう御相談させていただければと思います。
○伊達構成員 そうですね。「この制度をこういうふうにしよう」ということではなくて、法制度が複雑になると、それを運用するのが難しくなります。一方で、新しい時代の働き方を考えたときに、働く人も企業もより積極的に労働法にアクセスしていくことが重要になってくるはずです。そうしたときに、シンプルかつ分かりやすい制度になっていることが重要だと感じました。
○今野座長 これまでの研究会でも、今後、制度を考える場合に、水町構成員からの提案だったと思うのですけれども、ちゃんと目的に合った内容になっているか、もう一つは分かりやすいというか、後者は透明性と言っていたのでしたか、そういう2つの視点が重要だというのがここで議論になったので、それがここで言う「シンプルで実効的な制度」ということで書かれたと思うのです。
 ですから、議論はもう既にされているので、今の伊達構成員の御意見は文章で書くときは書かれると思います。もしポンチ絵でどこかに出すときは、そのスライドが一枚あったほうがいいよなということだと思います。
○労働条件確保改善対策室長 また、これまでの議論を見返して、そこを整理させていただければと思います。
○今野座長 水町構成員、どうぞ。
○水町構成員 今の安部構成員と伊達構成員の意見を聞いて改めて思ったのは、17ページ、18ページの基本的な大きな方向性としては、多様な社会の中で主体的な選択を可能とするような社会をつくっていこうということが大きな柱になるのかなという気がする中で、「守る」「支える」というときに大切なのは、多様な主体的な選択が可能なのだけれども、人間性を損なうようなこと、ここでは健康確保が強調されて言われていますが、世界の中では、日本ほど健康問題がシビアになっていないところでは人間性で一番出ているのは差別なのです。差別のない社会を実現するということもあるので、ここは健康確保でいいかもしれませんが、人間性を損なうような選択がいろいろな形ではびこっていく中で、それはちゃんときちんと守らなくてはいけない。
 あと、支えるというときに重要なのは情報です。特に情報能力格差というのがすごく出てくるので、皆情報をきちんと持った上で選択するというのを支えてあげることが大切です。
 そういう観点からすると、18ページの真ん中は、労働基準法制という法律をきちんと理解して、法制面での情報をきちんと把握した上で、と書いてありますが、これは必ずしも法律だけではなくて、労働条件とか労使関係の中で、どういうキャリア形成とかどういう賃金とか、どういう労働時間制度になっていて、ほかの会社に移ってみるとほかの選択肢があるかもしれないという法律上の知識だけではなくて、企業にも積極的に情報を公開してもらって、情報弱者である一人一人の労働者がきちんと情報を踏まえた上で選択できるサポートも必要かなというので、ここは法律だけではなくて、それも労働法教育とかいうだけではなくて、労使コミュニケーションの結果、ちゃんと情報が行き渡るとか、ほかの企業が情報を公開してくれるので、そういうのも見ながら選択できるとか、そういうもののニュアンスも入ったほうがいいかなとは思いました。
 以上です。
○今野座長 今の点について事務局からはいいかな。異論はないですね。
○労働条件確保改善対策室長 はい。
○今野座長 中村構成員、どうぞ。
○中村構成員 制度という言葉がすごく多義的に使われているというか、読み手側からすると解釈がどこまでを指しているのかが難しいキーワードになっています。それは、労働基準法制と言っているときのそもそも労働基準法制というのが労働基準法なのか、それ以外も入っているのかというところも、読み手や文脈によって違っているし。労働基準法制の外側にある、その他もろもろの労働法制というのがあって、さらには労働法以外の法律や政府の制度みたいなものがあって、社会全般の制度とさらに人事制度みたいな話があるので、もうちょっと輪郭をはっきりさせてほしい。この辺までの範囲の話はしているけれども、ここの話はしていないということを。恐らく今回働く人々というのはこういう範囲の人まで想定しているというのが、報告書のほうでは最初に出てくると思うのですけれども、制度という言葉についても今はここまでの話をしていますということが分かるように交通整理をしていただけるといいなと思いました。
○今野座長 事務局からはよろしいですか。
○労働条件確保改善対策室長 働く人のところでもあったように、言葉の定義、それがどこの範囲を指すのかというのはきちんと提示できるようにしようと思います。
○今野座長 たまたま気がついたことでいいですか。
 先ほど、水町構成員から情報の話があったのですが、それとの関係なのですけれども、15ページの箱の右側ですけれども、これは水町構成員が言った情報と非常に関連の深い部分ですが、この情報は、単に監視というのは狭いかなと。
○水町構成員 監視という言葉がネガティブですよね。
○今野座長 監視という言葉が何か上手にならないですかね。
○労働条件確保改善対策室長 15ページの仕立てが、水町構成員がおっしゃっているものよりは恐らく狭い形で整理をしていて、このページは監督行政の課題ということで、監督署の行政をどうアップデートするかということでつくっています。
 ここの右側というのは、監督署が直接監督に行くよりは、企業の情報開示、要は、うちの給与、労働条件はこうですよ、労働時間はこういう形になっています、福利厚生はこうですというようなものを開示していただく、それが労働者に伝わることで、労働市場を通じてよりよい企業が選ばれていくという形で、法の遵守を促進していくというようなストーリーで書いているので、恐らくこのストーリーより水町構成員がおっしゃった情報の話というのは広い概念であろうかとは思うのです。
○今野座長 狭い範囲の言葉で言うと、監視と言うと、悪いことをやっているという感じになるので、もう少し自分で改善していくというようなことも含めて、ここで言うと労働市場の情報を活用するというニュアンスだと思うのです。何となく監視と言われると暗いな。
 安部構成員、どうぞ。
○安部構成員 まさに的を得たポイントだと感じました。日々、我々が事業活動をやっていく上で悩ましいところで、広さ・狭さという捉え方もありますが、「守る」と「支える」のコンセプトは良いものの、捉える角度によってはどちらの視点から見るか、その界面の整理というのが今後、重要になってくると思います。
 情報には二面性があり、我々も情報の開示に努めながら、一方で個人情報保護という会社としての責任もあって、どちらから物事を捉えるかによって判断が変わってくる。、よって立つ上位概念とは自律性を持って多様性を生かしながら成長するという前提に立ちながら、そのときどきで最低限守るところは守って、基本的には開示の方向でいこうと言う判断に至ります。
 具体例を挙げると、我々は社内で様々な機会を全て公開しよう、と試みます。ニーズをベースにした活躍の機会の公開まではいいのですが、こういうスキルを持ったこういう社員がいると言った個人に紐づく情報を、ニーズがある部門の目に留まるよう、全社で広く公開して提供したいのですが、あくまで社内の公開であっても国を超えての社員情報の公開などに対する規制が厳しく、ブロックが掛かってしまう。企業も社員も求めていることではないことが、時として別の脈絡で制約となって顕在化しかねない。こう言った事態にどのように対処するか悩むことも多いのが実情です。
 個人情報に関しての一例を挙げましたが、他にも様々なところで出て来得ることで、それを乗り超える施策を進めようとすると、やはり、何を目指すかと言う上位概念、よって立つところに視点を据えることで何らかの解を目指そうということになります。情報というのは水町構成員がおっしゃられたとおり非常に象徴的ないい例で、それを掲げるときに、15ページの在り方の前提として、「守る」「支える」ことによって実現しようとするものは何か、をもし仮に定義できたとすると、その観点で、監視ではなく、支援するための監督の在り方という構成に持っていけるかも知れない、とお話を聞いていて感じました。
○今野座長 うまい表現が分かりませんけれども、例示としては、労働市場による「守る」を支援するとか。そうするとちょっと前向きになる。
○労働条件確保改善対策室長 そうですね。ジャストアイデアとして、労働市場を通じた企業の主体的な改善のようなイメージです。
○今野座長 もちろん監視もあるのですけれども、もう少し広く。○武田構成員 労働市場を主語にすると、自然選択という表現では駄目ですか。本当は自浄作用とか淘汰と書きたいのですけれども。
○今野座長 自然選択をして何を実現する。この文章は監視を実現すると書いたわけです。労働市場で情報を提供するから、個人とか行動を変えてくださいということなのです。あるいは、企業が悪いことをしているかもしれないということを見て、行動を変えてください。それによって監視したいという。
○中村構成員 だとしたら、労働市場を通じた自助努力の促進とか、行動変容の促進とか、そういう言葉も。
○今野座長 いずれにしても、ニュアンスはもう伝わっていると思うので、いい言葉を考えて。
○大湾構成員 規律づけという言葉でもいいかなと思いました。
○今野座長 規律づけか。もう少しソフトにして。
○大湾構成員 中村構成員の言われた自助努力の促進ですかね。
○中村構成員 規範とか。
○水町構成員 我々、ソフトローのとき、例えば市場機能を生かした誘導・規律とか、そういう使い方はしますね。
○大湾構成員 あと、情報の開示は3つのレベルがあると思うのですよね。1つは本当にオープンにホームページとかを通じて開示する、あるいは公的なサイトに上げるとか、そういった意味での開示もあります。2つ目は、採用活動の中でいろいろな情報を人材仲介企業とかに出していて、それはホームページでは載せられない細かい情報とかネガティブな情報なども割と共有したりしている。そういう採用活動の中で出てくる情報。それから、実際に採用する段階で、うちではこういう条件でやっていますということを本人に直接伝えるという意味での情報の開示がありますよね。どれも重要ではないかなと思います。
 それから、先ほど情報弱者という話がありましたけれども、企業さんと話していて感じたのは、ホワイトカラーとブルーカラーで相当格差があるなと。ホワイトカラーの方々はパソコンの前で仕事をしていて、いろいろな会社からの伝える情報なども出てくる。ところが、工場などで働いている人はパソコンを持っていない。スマホを持っているけれども、スマホでそんなにちょくちょく会社のインターネットにつないで何か情報を取得するということをやっていないので、そこで会社の方針とか会社からのこういったサービスありますよというアナウンスメントまで含めて、なかなか伝わりにくいものがある。
 これは何か提案というわけではなくて、情報弱者と言った場合に、その格差解消は非常に難しいなというのを感じていて、それをどうやって解決していくかということも今後の労働行政の中で考えなくてはいけない視点ではないかなと思いました。
○今野座長 小林構成員、どうぞ。
○小林構成員 17ページの「企業に期待すること」というところで、この内容を見てみると、企業の責任といいますか、企業にも期待することの中で、個別企業と労働者個人の関係において行うことがほぼ全てで、環境レベルでやることは書いていないと思ったのです。
 これから働く人や環境が多様化していく中で、どうしても個別の健康管理や個別のサポートという方向に視点が行きがちなのですが、労使コミュニケーションの中で職場環境の改善を求める声が多いというのは印象に残っていまして、そういったところから考えても、職場の環境を整える責任はやはり企業にあるのだというところをもう一度明確に出しておく必要があるのではないかと思いました。この点についてはどうでしょうかということと、異論がなければ入れていただきたいという御提案なのですけれども、いかがでしょうか。
○今野座長 今の点は、先ほどの健康管理の責任は基本的にはまず企業にあるというのと似たような話なので、職場環境を整備するのは基本的には企業の責任ということについては別に皆さん異論はないと思うのです。
 ただ、17、18ページに書く内容かどうかはまた別途考えなくてはいけないかなと思うので、その辺は事務局でもう一度考えていただいて。
○労働条件確保改善対策室長 今のお話ですと、むしろ総論として企業の責任はどこなのかというところなのかなという気もしますし、いずれにしても再整理をさせていただければと思います。
○小林構成員 管理という言葉もどうかと思うのですけれども、個人の健康管理というと企業対個人になるのですけれども、企業対職場環境や、企業内の組織を整えるというところを明確に書いていただけたらと思っております。
○今野座長 戎野構成員、どうぞ。
○戎野構成員 先ほどの確認になるかと思うのですけれども、2で新しい時代に対応をするための視点で「守る」「支える」が出てきて、3で新しい時代に即した労働基準法制の方向性と来たときに、先ほど来言っている「守る」「支える」について、最後にもう一度支え方についても明示したほうが、この「守り方」と「支え方」を受けて企業と働く人はどうするべきなのだというのが一貫すると思います。話の中では出てきているのですけれども、見せ方として、そこをしっかり明示したほうが、つまり2つの視点が一貫して最後までいくというところがあったほうがいいように改めて思いました。
 それに関連して、「シンプルな実効的な制度」は私もとても違和感がありましたので、ここもやはりしっかりと書き込んだほうがいいかなと思います。
 以上です。
○今野座長 前者は、先ほど武田構成員が言われたことと近いのですけれども、「守る」「支える」は売り物の重要なキーコンセプトなので、それがずっと一貫して流れるように意識してつくったほうがいいという話です。
 後者は、既にありましたけれども、この「シンプルで実効的な制度」については、文章にするときは当然書き込むと思いますけれども、こういうポンチ絵のときも1枚ぐらいあったほうがいいよなということだと思いますので、そういう対応をしていただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 安部構成員は明確に言っていただきましたけれども、皆さんは何もおっしゃられてなかったですが、言外では全体としてはいいだろうと思っていただいていますので、その上でこういう変更したらいいのではないかという意見を今日はいただいたと思います。
 それでは、今日はたくさんの意見をいただきまして、ありがとうございました。時間は早いのですけれども、終わりにさせさせていただければと思います。
 今後ですけれども、今日の議論を踏まえて事務局には報告書の骨子を今度つくっていただくことになると思います。事務局はよろしくお願いします。
 そのときに、わざわざ言う必要はないかとは思うのですが、一つ確認したいことがあって、この研究会は、働き方や職業上のニーズに関すること把握して、将来労働がこう変わるだろうということを確認して、それを踏まえて中長期的な観点から労働基準法制の課題を整理するということですので、これが基本理念ですので、その基本理念をいつも忘れないでこの骨子をつくっていただきたいというふうにお願いいたします。
 それでは、今日はこれで終わりにさせていただきます。
 次回の日程等について事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 座長から御指摘いただきました骨子の件、承知いたしました。作業を進めさせていただきます。
 次回の日時、場所につきましては、また、委員の皆様方と御調整の上、追って御連絡をさせていただきます。
○今野座長 それでは、本日の研究会は終了いたします。
 ありがとうございました。