第29回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和5年7月25日(火) 13:15~17:00

場所

中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室(オンライン併用)

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)部会長の選出及び部会長代理の指名
    2. (2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和4年度業務実績評価について
    3. (3)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和4年度業務実績評価について
    4. (4)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
  1. 資料1-1 令和4年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料1-2 令和4年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料1-3 令和4年度 財務諸表等
  4. 資料1-4 令和4年度 監査報告書
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
  1. 資料2-1 令和4年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料2-2 令和4年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料2-3 令和4年度 財務諸表等
  4. 資料2-4 令和4年度 監査報告書

議事

第29回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○難波企画調整官
 皆様、大変お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の難波と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、土岐委員、中野委員、深見委員、藤川委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。また、中野委員におかれましては16時20分頃に、藤川委員におかれましては16時45分頃に御退席されるとの御連絡を頂いております。その間よろしくお願いいたします。出席委員に関しましては委員の過半数を超えておりますので、会議が無事に成立しておりますことを御報告いたします。
 続いて、前回まで本部会の委員を務めていただいておりました祖父江委員及び大西委員におかれましては御退任をされておりますので、その御報告と併せまして、新しく本部会の委員に御就任いただいた方を紹介いたします。神﨑恒一委員でございます。よろしくお願いいたします。
○神﨑委員
 よろしくお願いします。
○難波企画調整官
 続きまして、4月1日付けでございますが事務局に異動がございましたので紹介させていただきます。厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室長の岩城でございます。
○岩城室長
 岩城でございます。よろしくお願いいたします。
○難波企画調整官
 続きまして、本部会の開催に当たりまして厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の浅沼より御挨拶申し上げます。
○浅沼危機管理・医務技術総括審議官
 御紹介いただきました厚生労働省危機管理・医務技術総括審議官の浅沼でございます。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、お時間を頂きまして誠にありがとうございます。
 本部会における御議論を頂きます国立高度医療専門研究センターにおきましては、第3期の中長期目標の達成に向けまして、それぞれの法人が使命である研究開発や医療の提供、人材育成等に尽力しているところでございます。そうした中におきまして、法人の取組を更に良いものとするために、委員の皆様の御専門のお立場から、令和4年度の業務実績に関して御議論を頂き、目標達成に向けた課題等につきまして御意見や御助言を頂きますようお願い申し上げます。6つのナショナルセンターがあるのですが、本日は、国立精神・神経医療研究センター、そして国立長寿医療研究センターにおける評価につきまして御議論を頂きますようお願いいたします。また、その他の4つのセンターにつきましては、来月御議論を頂く予定として準備しているところでございます。そちらのほうも、どうぞよろしくお願いいたします。
 簡単ですが、私からの御挨拶とさせていただきます。本日はちょっと長丁場になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
○難波企画調整官
 続きまして、本部会の会議の進め方について御説明いたします。オンラインで御参加になっている委員の皆様におかれましては、御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、この後に選出される部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。御発言時以外は、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 会場内で参加される皆様におかれましては、ハウリングを防ぐためにマイクとスピーカーを1か所に統一しておりますので、現在の設定は変更せず、机上のコンフィットマイクを使用して御発言いただければと思います。また、御発言の際には、冒頭にお名前をおっしゃっていただきまして、資料を用いる場合には資料番号と該当ページを明言いただきますようにお願いいたします。
 続きまして、本日の議事について御説明いたします。本日は、議事次第にございますとおり、部会長の選出及び部会長代理の指名のほか、国立精神・神経医療研究センター及び国立長寿医療研究センターに関する令和4年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいた後に、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと思います。
 それでは、本日の会議資料の確認をお願いいたします。オンラインで参加されている委員の皆様におかれましては、事前に郵送させていただいておりますが、議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4とピンク色の冊子で届いていらっしゃるかと思います。お手元に御用意いただいておりますでしょうか。そのほかの資料につきましては、事前にお知らせしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。会場の皆様の資料につきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料を格納しておりますので、そちらも御活用いただければと思います。
 審議の後に作成いただく評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を事前に皆様にメールで送付しておりますので、そちらに入力していただきまして、後日事務局にメールで御提出をお願いいたします。
 審議途中に資料の閲覧方法等、御不明な点がございましたら、チャット機能等で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上でございます。何か御質問等ございますでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。はじめに、本部会の部会長の選出及び部会長代理の指名を行います。部会長の選出につきましては、参考資料2「厚生労働省国立研究開発法人審議会令」の2ページを御覧ください。第5条第3項におきまして、「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員のうちから、当該部会に属する委員が選挙する。」と規定をされております。選挙の方法につきましては委員の互選となっておりますので、御推薦のある方がおられましたら挙手をお願いできればと思います。深見委員、お願いいたします。
○深見委員
 よろしいですか。
○難波企画調整官
 深見先生、お願いいたします。
○深見委員
 土岐委員を部会長に御推薦申し上げたいと思います。土岐委員は本審議会の会長を務められており、また、日本癌治療学会理事長を歴任するなど医療現場を含めて高い見識を持っていらっしゃることから、部会長に適任と考えます。以上です。
○難波企画調整官
 ありがとうございます。ただいま、深見委員から土岐委員の御推薦を頂きました。委員の皆様、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(異議なし)
○難波企画調整官
 御異議ないようでございますので、土岐委員に本部会の部会長をお願いしたいと思います。以降の進行につきましては、土岐部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 御推薦いただきまして誠にありがとうございます。大阪大学消化器外科教授の土岐と申します。先ほど御紹介いただきましたように、日本癌治療学会の理事長、それと一昨年までは大阪大学医学部附属病院の病院長を務めておりました。若輩者でございますけれども、前職の祖父江先生に負けないように、一生懸命この会をマネジメントしていきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、部会長代理に関しまして、参考資料2の「厚生労働省国立研究開発法人審議会令」の第5条第5項に「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する。」と定められております。この部会長代理を指名させていただきたいと思いますけれども、中野委員にお願いしたいと思います。中野先生、お引き受けいただけますでしょうか。
○中野委員
 はい、謹んでお引き受け申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、早速ではございますけれども、本日の議事に移りたいと思います。最初に国立精神・神経医療研究センターから始めたいと思います。入室をお願いできますでしょうか。
(国立精神・神経医療研究センター入室)
○土岐部会長
 準備が整いましたら、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和4年度の業務実績評価を始めたいと思います。それでは、センターの方から令和4年度の業務実績評価について御説明をお願いしたいと思います。理事長から、一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 本日は、当センターの業務実績評価のために貴重なお時間を頂き誠にありがとうございます。私は理事長を務めております中込と申します。
 早速ですが、概要の御紹介に移らせていただきたいと思います。まず、2ページ目を御覧ください。こちらですが、私どもの自己評価を示しております。
 続きまして、私の方からセンターの概要について説明します。3ページをお願いします。当センターの基本理念でございますけれども、病院と2つの研究所、更にその間をつなぐ4センターが一体となって、精神、神経、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに全国への普及を図るということでございます。
 4ページをお願いします。当センターの最大の特徴は、基礎から臨床までシームレスなフローを可能とする研究体制でございます。当センターで開発されました筋ジストロフィーのビルトラルセン、あるいは多発性硬化症のOCHといった治療薬がその具体的な成果に当たっています。
 5ページをお願いします。病院ですが、高度専門医療機関として、診療科、専門分野を超えた多職種連携チームによる12の専門疾病センターにて先進的医療を展開し、研究所と連携しながら診断法・治療法の開発に取り組んでおります。また、令和4年度におきましては、前年に引き続き、コロナに感染した精神、神経疾患患者の入院治療を請け負い、令和5年3月31日に病棟を一旦閉鎖するまで、310名の患者さんを受け入れてきました。現在はコロナ感染後遺症の外来を開設し、患者さんのケアに当たっています。
 6ページをお願いします。感染禍の中にあっても、研究基盤の強化を目指して患者レジストリ、あるいは臨床研究ネットワークの構築を進めております。こうしたことで、我が国の研究開発を下支えしているということでございます。既に実績のある神経、筋疾患のレジストリに加えまして、次のページですが、2020年より精神疾患のレジストリも立ち上げており、現在、エントリーの推進に努めているところでございます。概要についての説明は以上でございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。まずは、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1と1-2に係る業務実績について議論をしたいと思います。はじめに法人から説明していただき、その後に質疑応答という形で進めたいと思いますが、その前に、医療研究連携推進本部、いわゆるJHについて事務局から補足がありますので、よろしくお願いいたします。
○難波企画調整官
 事務局です。令和2年度に立ち上げられました医療研究連携推進本部、通称JHにつきましては、6NC共通の実績となっておりまして、資料の内容や説明も統一的なものとなっております。昨年度と同様に、JHの本部長が所属しております国立国際医療研究センターに関する8月8日の審議の中でまとめて実施させていただきたいと思います。そのため、本日審議を予定しております国立精神・神経医療研究センター及び国立長寿医療研究センターにおける「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価に関する御意見につきましては、8月8日のJHに関する審議を踏まえて実施していただきますようお願い申し上げます。事務局からは以上です。
○土岐部会長
 この評価項目1-1に、JHのものが入っております。16ページから恐らく20ページまではJHに関するものでございますが、これに関しては8月8日にまとめて議論するということで、本日は議論の対象としないということで進めたいと思います。
 それでは、早速でございますが、評価項目の1-1、1-2につきまして、法人のほうからお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 それでは、研究開発に関しまして神経研究所の岩坪から御説明させていただきます。8ページを御覧ください。担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進につきましては、Sと自己評価をしております。この自己評価の理由としましては、難易度「高」の理由にも示しましたとおり、当センターが筋ジストロフィーをはじめとする難治性疾患症例の集積に基づいて世界レベルの研究を進めまして、病態、メカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成し、患者さんの元に届けていることをあげたいと存じます。そして、令和4年度におきましても、デュシェンヌ型筋ジストロフィーや脳卒中後の運動機能回復など、医療推進に大きく貢献する画期的な研究成果を多数あげていることが、自己評価を高く取らせていただいた理由です。
 また、全体的な研究の発展を反映しまして、8ページ下段の表に示しますように、論文の発表総数も目標を19%超える754件に上っております。これもSの評価根拠としたところです。
 9ページ、Ⅲの表にS評価の根拠としました3つの顕著な研究実例についてまとめております。第1は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬としての新規エクソン・スキップ薬の開発、第2には、神経筋機能に基づいた新たな脳卒中評価法の開発、そして第3に、統合失調症の社会認知機能の経頭蓋直流刺激による改善、これらにつきまして説明をさせていただきます。
 次のページを御覧ください。こちらには、インパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文数及び引用数を示しております。論文出版数は過去6年間で毎年増加傾向を示しまして、令和4年度の原著論文発表数も409と、前年度に引き続きまして過去最高レベルを維持しているといえるものと存じます。
 11ページから、顕著な研究成果の達成例を御報告してまいります。第1は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬として、新規のエクソン・スキップ薬を開発した成果をお示しいたします。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、小児期に発症する代表的な筋ジストロフィー症でありまして、この疾患はジストロフィンと呼ばれる病因遺伝子の変異によって、その産物であるジストロフィンタンパク質が正常に産生されることができず、筋肉の細胞が傷害されて重度な運動麻痺から若年期に死に至る難病として知られているものです。
 当センターでは、この変異のある遺伝子部分を核酸医薬を用いて、いわばその部分に蓋をして読み飛ばしまして、タンパク質への翻訳が止まってしまうことを回避し、やや小さいサイズのジストロフィンタンパク質を機能させるというエクソン・スキップ療法の実用化を進めてまいりました。そして、令和2年にはエクソン53障害タイプの病型に関して、核酸医薬ビルトラルセンを開発し、日本新薬より発売しました。これが、令和4年度には国内でも100名近い患者さんたちへの投与を達成しております。今回達成しました成果は、このエクソン53傷害タイプ、これは全体の8%を占める頻度の高いものですけれども、これに次いで、頻度が6%と高いエクソン44障害タイプに有効なエクソン・スキップ薬、NS-089/NCNP-02のFirst in Human医師主導フェーズ2a治験を完了し、ジストロフィンタンパク質の回復率が15.79%という類薬では世界最高レベルの回復を達成し、ノース・スター歩行能力評価スコアを含む運動機能の維持又は改善傾向を示すことができたという点です。また、有害事象による中止例もなく、安全性も十分に示すことができました。今後、米国でのフェーズ2b相試験を開始しまして、2026年には薬事承認を目指して開発を進めることになっております。
 本成果は、NCNPにおける数十年にわたる基礎研究と、トランスレーションメディカルセンターを中心とする患者レジストリ、レムディーに支えられた医師主導治験体制が結実したものでありまして、15%を超えるジストロフィンたんぱく質量の回復というのは、十分に臨床症状の改善につながると期待できるものであります。今後、進行してまいります他のエクソン、エクソン50、51スキップ薬を含む国際共同治験体制によりまして、筋ジストロフィーに悩まれる患者さんに福音をもたらす重要な成果と考えているものです。
 12ページを御覧ください。神経筋機能の基礎的な研究成果に基づいた新たな脳卒中評価方法の開発について御説明いたします。脳卒中の機能回復の評価の世界標準として、FMAテスト、これはヒューゲルメイヤーアセスメントというものですが、これが使われてきましたけれども、その神経科学的な妥当性が十分に評価されないままであり、また、これは非常に詳細で、37種類もの課題を含んでおりますために、フルなテストは患者さん、測定者の双方に大きな負担となっておりました。
 そこで、私ども神経研究所の脳生理学の基礎研究者であります関部長らは、リハビリテーション又は臨床研究所と共同して、FMAテストの中の上肢が体幹部の筋肉の活動を筋電図計測し、次に筋シナジーという同時に働いている筋肉のグループの数を調べまして、この筋シナジーの数がFMAスコアの回復とともにどのように変化をするかというのを調べたのが、基礎データであります。その結果、脳卒中の患者さんでは、筋シナジーの数が健常の方に比べて少ないということがまず分かりました。理由は、健常者におきましては、別々に分かれて活動をしている筋肉のグループが、患者さんでは同時に活動してしまっているという、すなわち分かれるべき筋シナジーの融合、単純化が起こってしまっているというわけです。また、この筋シナジーの融合は、重篤な患者さんほど顕著に起こっているということも分かってまいりました。今後、このように融合してしまった神経機能を効果的に分離できるようなリハビリテーションの方法を、臨床ではFMAスコアを指標にして開発し、より良い機能回復につながることが期待されますとともに、脳の運動機能の可塑性の神経科学的な理解、また、両コストの低減にもつながる、私どもNCNPならではの融合的な研究成果ではないかと考えております。
 次のページを御覧ください。この研究の経緯ですけれども、NCNPの神経研究所モデル動物研究部、関部長らは、運動機能の評価法の科学的な検討を進める必要というものを問題意識にしまして、人に近似した筋肉や骨格の構造、そして神経系の構造を持ちます霊長類、これはマカクサルとか、最近話題になっておりますマーモセットなどでございますが、これを実験動物として用いて運動機能の基礎的研究を推進することによって、この絵の中段の上にありますように、例えば脳卒中のモデル霊長類の作出に成功、その成果を人に応用する今回の研究につなげたものです。右下にも示してありますように、本成果は、他の疾患における運動機能の評価にも幅広く応用可能な汎用性のある知見であると考えております。
 次のページを御覧ください。精神保健研究所の住吉部長らによる統合失調症の社会認知機能の経頭蓋直流刺激による改善に関する研究について御説明申し上げます。統合失調症におきましては、他者の意図や性質を受け止める能力を含んだ社会的考慮の根底にある精神機能である社会認知機能が低下し、社会生活における転帰を左右することが分かってきております。ここで経頭蓋直流刺激、略称tDCSと申しますが、これは微弱な電流を頭皮の上から当てる方式のニューロモデュレーション、脳刺激法でありまして、様々な精神疾患の改善に応用が試みられているものです。従来、tDCSが脳の中では左前頭前野に対して試みられてきたところですけれども、残念ながら、社会認知機能に対する効果は乏しいということが示されておりました。今回、精研の山田、住吉らは、tDCSを左上側頭溝の部分の刺激に適用しまして、例えば敵意バイアスといったような指標で評価される社会認知機能が改善するということを世界で初めて示したものであります。
 次のページに経緯を示しています。山田、住吉らは、ここに列挙されておりますように、統合失調症における社会認知機能の重要性に関する研究を、多面的に連綿と展開しており、このtDCSによる刺激部位の探索にも注力してまいりました。今回、統合失調症患者さんに対する左上側頭溝の刺激を特定臨床研究として実施し、社会認知機能障害の軽減を実証することができたものです。今後、この効果をランダム化比較試験で検証するとともに、介入効果に関する生物学的な指標の探索も行っていくという計画です。
 16ページからはJHのこと、先ほど御紹介がありましたように、後ほどの御説明、御議論がありますので、21ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について御説明いたします。こちらも令和4年度の自己評価Sとしておりまして、22、23ページにその根拠を示しております。これまでに進めてまいりました画期的な精神・神経系の難治疾患に対する治療薬の実用化を可能としましたFirst in Human試験や医師主導試験、先進医療等は、令和3年の時点、単年度では新型コロナウイルス感染症の影響の直撃を受けまして、まだ開始がかなっておりませんでした。しかしながら、令和4年度には小児の難病でありますアレキサンダー病に対する核酸医療、これをFirst in Human試験として実施することができました。また、様々な診断ガイドラインにつきましても、5件の策定に関わりました。さらに、臨床研究や企業治験も目標値を上回る成果を示しており、実用化を目指した研究開発が順調に行われていると申すことができます。また、共同研究も目標を26件、21%上回る数を実施できております。
 25ページには、治験及び臨床研究の実施状況を示しております。コロナ禍にもかかわらず、令和4年度にも企業治験は微増しておりますし、また、臨床研究の総数もほぼ同レベルを保ち、国際共同治験も過去最大数を維持しています。また、右の表にまとめていますように、当センターでは難治性の精神・神経疾患のほぼ全ての種類のものを網羅する治験を実施できていることも特筆されるものと存じます。
 26、27ページには、バイオバンク、ブレインバンク事業についてまとめております。当センターのバイオバンクは、伝統のあります筋肉については、今までの収集総数2万2,000を超えて世界最大級を誇っておりまして、また、本邦の筋疾患の診断の8割以上を担っているところです。ここから得られた成果は、新規疾患概念の確立、治療薬開発の基盤となり、一部のサンプルからはiPS細胞としての保存も行っています。また、脳脊髄液サンプル、こちらは我々の非常にユニークなリソースですが、神経疾患のみならず、精神疾患におきましても積極的に収集を進めて、その収集総数は6,465、脳バンクのサンプル収集総数も400を超えまして、コロナ禍前と同レベルに復活していることも特筆できると存じます。そして、これらのバンクは、ナショナルセンター間、また、国内外のバンクの連携におきましても中核的な役割を果たしていると申せると思います。
 27ページに利活用の実績を示しております。これらのリソースは、延べ256件の外部提供実績があります。令和4年度にはISOの実装のために一時的に利用制限を行わざるを得なかった時期もありますが、それにもかかわらず、43例と最高レベルを維持することができました。また、右下に記載しておりますように、AMED等との大型連携研究も順調に進行しておりまして、プレシジョンメディスンの開発基盤として製薬7社、AMEDと精神・神経疾患の脳脊髄液、血液、DNAを用いた多層オミックス解析を実施し、計8,000分子を解析してデータベース化し、企業とともに解析をするというプロジェクトが進行中です。
 28ページに、クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の取組についてまとめております。CINですが、御案内のとおり、6NCが中心になり、各疾患分野の患者登録、すなわちレジストリの構築を基盤としまして、臨床研究、治療薬開発に資する医療研究、開発環境の整備体制を作る活動です。このコア活動では、構築の推進又は横断的課題に関するNCNPの名誉所長であります武田伸一班などで事業化に貢献するとともに、企業とのワーキンググループを結成して、開発のための情報提供体制を整備してまいりました。
 この右にありますNCNPでの取組のまとめを御覧いただきますと、筋疾患レジストリのレムディー、これは先ほど御紹介しましたが、これをはじめとしまして、精神疾患、運動失調、プリオン、認知症の早期段階を対象としたIROOP、現行のJ-TRC、また、パーキンソン病早期を対象とするPPMIなど、幅広いレジストリを構築し、企業を含めた研究展開によって治療法の開発に貢献をしております。特に令和4年度は、レジストリ構築、運用の経験をいかしまして、薬事制度下での活用を想定した品質レベルのレジストリ構築と運用を開始したところです。評価項目1-1並びに1-2に関する御説明は以上です。御審議をよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございました。ただいま御説明がありました評価項目1-1について、御質問等を受けたいと思います。深見委員、どうぞ。
○深見委員
 深見です。項目の1-1、1-2、自己評価でSということになりますが、特に1-1についてまず2つほどお伺いさせていただきたいと思います。1-1の目玉となるのは、このエクソンスキップ44だと思うのですけれども。1つは、回復率が15%ぐらいということを書いてありますけれども、15%の回復ということで、実際に機能的に十分なのかというところがちょっと疑問に思うのですけれども、その辺をどのように考えていらっしゃるのか。
 その下に、運動機能の改善の傾向と書いてありますけれども、多分医師主導治験フェーズ2中心で、改善の傾向というのは、実際に機能の回復が顕著に見えなかったというのは、n数が少ないのか、それともジストロフィンのたんぱく質の回復が少ないのかというところを教えていただきたいと思います。これと関係するのですけれども、フェーズ2までは2025年度と書いてありますけれど、フェーズ3はどうなっているのかということについてお尋ねしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。まず、たんぱく質量、ジストロフィンの回復のパーセンテージに関してです。これは、もちろん正常に比べて15%の回復というのは量的には完全ではありません。しかしながら、このエクソン53のビルトラルセンを用いたときの回復率、2年前に御報告したのかもしれないですが、4%台ということになります。これに比べますと、今回は2桁、3倍になっておりまして、実験動物などでは筋力低下の進行を抑制する効果が見えています。人でも今後、例数を増やしていったときに、十分に臨床面、症状面での回復を得ることができるのではないかと期待しているという数字になります。
 また、御指摘のありましたフェーズ2bでn数が少ないからなのか、それとも実際の効果の幅が少ないために、なかなか筋力の統計学的な有意な改善が見られないのかという点ですが、主な理由は先生が御指摘のn数がまだ少ないというところにあるものと見ております。臨床では、定量的な指標、評価、n数が十分に出てきませんと、統計学的にも有意性が出ないということなのかと議論をしております。また、フェーズ2bからは企業にバトンを渡して進むというところですけれども、もちろんこれで効果がよければ、更に進めていきますし、2bで十分な臨床的な効果があると判断されますと、ここでブレイクスルーセラピーの指定なども最近出ておりますので、迅速承認というようなパスへもあり得るのかなということを議論しているところです。以上です。
○深見委員
 ありがとうございました。もう1つ質問させてください。25ページです。治験実績対象疾患がいろいろ書かれていて、たくさん企業治験をやってらっしゃっていて、右側にいろいろな対象疾患が書いてありますけれども、この中で研究所が主体となって開発していて、実際に主体となって医師主導試験に持っていっての承認疾患というものは、水面下で進んでいるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。ここにある中で、今回御説明しませんでしたが、多発性硬化症に関しては免疫研究部のシーズについては、臨床開発によって非常にいろいろな先進的な治療法が出てきておりますし、フェーズ2試験までいって臨床効果が確認をされたOCHというようなものもあります。来年度以降、こういうものが実際の成果として御報告できるものと見ております。
 また、我々の強みとして、一番下にありますが、例えばGNEミオパチー、遠位型ミオパチーという希少難病、筋肉の難病ですが、こういったものに関する治療にも貢献をいたしておりますし、今後こういう希少難病のほうでも成果の出るものが続々と出てくるものと見ております。
○深見委員
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 それでは、中野委員、どうぞ。
○中野委員
 中野です。すばらしい御研究の成果を紹介いただきまして、ありがとうございます。私も、エクソン・スキップ剤について質問をさせてください。エクソン・スキップ剤で筋ジストロフィーに合併する自閉症スペクトラム様症状の改善が見られたということに関して、既にプレスリリースとか記者会見をやっておられるということで、私が内容を十分に承知できてないのなら申し訳ないのですけども、これは実際の人における例で、実臨床というか、実際どれぐらいの方で、どのような指標で、どのような改善が見られたかということと、また、このような遺伝子治療で改善するのであれば、その機序として、今後の長期的な治療とかにどのようにいかせるのかとか、展望を御教示いただければ有り難く思います。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。先生が御指摘なのは、11ページの上のイントロダクション的に囲みで書いている所の御質問かと思います。ちょうど去年6月に、脳のジストロフィン欠損で生じる自閉症スペクトラム様の症状に関する遺伝子治療について成果を発表したことですが、申し訳ありません、これは少し舌足らずな記載でして、主にこれは実験動物での成果です。これは主にマウスでの行動試験の結果、扁桃体においてこういった自閉症スペクトラムの障害のときに機能変調が生じるといった機能変化を見ました。
 また、行動上、自閉症様症状と評価されるものが、遺伝子治療で補充をすると改善をしたという結果が主でした。この記載ですと、人で何か遺伝子治療ができたような誤解を招くものだったかと反省しております。
 ただ、今までデュシェンヌの患者さんで発達障害的な症状があるということが言われておりましたが、そのメカニズムであったり、あるいはジストロフィンが直接関係するかは、ほとんど深掘りできていなかったのですが、この青木たちの研究で、ジストロフィンのリプレイスで脳のほうの症状、発達障害の症状も改善できる可能性というのを指摘したという点で、非常に我々自身も驚きまして、プレスリリースなどで紹介させていただいたという経緯です。
○中野委員
 ありがとうございます。もちろん、最初のスタートは動物実験であり、それが人にいかに応用できるかということで、是非どうぞよろしくお願い申し上げます。
○土岐部会長
 前村委員、どうぞ。
○前村委員
 長崎大学の前村です。大変、大きな進歩が見られると思いますが、その中で今回、First in Humanが1件出たというのは、大きなことだと思います。もう少し詳しく、どのような内容の研究であるかを教えていただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 承りました。先ほど、申しましたアレキサンダー病という小児の難病でのFirst in Human試験です。アレキサンダー病というのは、脳の中でもアストロサイト、グリア細胞に異常が出てきます。グリア細胞には特異的な中間型フィラメントでありますGFAPというタンパクがありますが、これの遺伝子変異でGFAPがたまっていって、グリアが活性化をされて神経を障害するという、非常に数は少ないけれども有名な難病でした。
 今回のお薬は、アンチセンス核酸医薬ですから、GFAPの発現、これは異常なGFAP、正常なGFAPも含まれますが、これをある程度下げてやると、GFAPの点変異によるタンパク質の構造異常が緩和をされて、臨床的な効果も出てくるというメカニズムの治療です。これが人で始められたのが今回の治験でした。
○前村委員
 よく分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて、花井委員、どうぞ。
○花井委員
 私からはCINについてお伺いしたいと思います。実は凝固異常症で大変お世話になっておりまして、惜しみもなくノウハウをいろいろお伝えいただいて、大変助かっております。やはり、私もやって分かるのですが、レジストリを作ろうとしても、なかなかPNS利用に対応できるかとか、コストをどうするかとか、事務局をどうするかということを始めると非常に未知の領域でして、大変御支援を賜りまして助かっているのですけれども、今後こういう領域でいろいろな疾病でレジストリを整備するに当たって、このCINの中央支援調査事業について、今後、体制をどのように充実するとか、そういうことを考えてらっしゃるかどうかを教えいただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 先生、ありがとうございます。私どももCINの一翼を担い、今日お示しました活動を中心として、今後も進めていく予定ではいますが、CINの全体について、今後も御推進の方向であるということは承っております。厚生労働省あるいは国としての推進方向について、私はつぶさに存じあげない部分もありますので、その辺りは、また勉強してお答えしますとともに、もしよろしければ国側からもまた後ほどコメントを頂戴できればと思うところです。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほかは、よろしいですか。神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
 杏林の神﨑と申します。よろしくお願いいたします。私は、tDCSについての御質問です。具体的な機序、どういうふうに機能を回復させるのかというところは、ちょっと知識がないので分からないのですが、これは対象患者として統合失調症の方のみをここでは対象としているようなのですけれども、もっと広いほかの疾患、例えば発達障害みたいなものとか、何かそういうことにも応用できそうな気がするのですけれども、そういう点での御研究というのは展開されていらっしゃいますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。御指摘のとおりでして、これはかなり幅広い精神疾患、また錐体外路系の神経疾患とか、相当幅広い応用がありまして、特に我々NCNPでは精神疾患を中心に臨床と研究に応用を幅広く始めているところです。よろしければ、精神科がご専門の理事長からコメントをお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 精神科なものですから、少し追加をさせていただきたいと思います。先生のおっしゃるとおり、社会認知機能障害というのは統合失調症に特異的なものではありません。ですので、私どもとしても疾患横断的な検討は重要だと思います。
 一方、この評価尺度なのですが、疾患横断的な社会認知機能障害を評価できるものが、整備がまだ十分されていません。疾患ごとに社会認知機能障害の評価尺度があるというのが現実です。そこをもう少し共通の評価尺度というものを開発して進めていくべきだと私も思っております。
○神﨑委員
 ありがとうございました。是非、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 すみません、素人なので難しいことは分からないのですけれども、それでも評価をしなくてはならない立場なので少し教えていただきたいのですが、8ページ目において、指標があって、一番上の指標の所で、中長期目標期間に26件以上、年間4.3件ということで、年間が一応出ているので、令和4年度が4ですから、指標を下回ってしまうことになってしまうのですけれども、恐らくそれを上回るような非常に画期的な研究成果があったということをもってSということになるのかなと思いますが、そうすると、それはどの辺りというふうに言えばいいのか、素人にも分かるように画期的なところを教えていただけると、既に教えていただいたこと以上に何かコメントがあればお願いしたいと思う次第です。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 先生、ありがとうございます。御指摘どおりで、8ページの表の中の数値指標としては、数はぎりぎり目標の前後ということですけれども、やはり我々も思いは同じでして、例えば今回、3つ主な研究の実績で申し上げますと、デュシェンヌ型筋ジストロフィーというのは、50年ほど前から我々NCNPの研究の嚆矢として取り組んできたものですが、このエクソン・スキップという最新の方法を使って、実際に患者さんの筋細胞膜を修復して、筋力の維持回復というところまで辿り着いた、また、最初のビルトラルセンに続いてより効果の高いというものをできるようにしたということです。ちょっと申しましたけれども、数日前ですが、アメリカのFDAからこの申請中のエクソン44の薬について、ブレイクスルーセラピー指定という非常に期待度の高い、進んでいった場合に成績が良ければ優先的な審査を行うという指定を受けたものもあります。こういったことを総合すると、我々は胸を張って、これはかなりクオリティーの高いことを実施できたと申し上げていいのかなと考えております。
○藤川委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 私から、ここには4件ブレイクスルーがあったということでして、出していただいたのは3件なのですが、もう1件あるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 申し訳ありません。研究の実例というのは、例年、精神神経を横断して3つほど御紹介をするということになっていまして、それ以外にも、指標の中で重要なもの、研究成果を挙げたというものをカウントしているところです。
○土岐部会長
 それは、どのような研究なのでしょうか。4件目というのは。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 すみません。今、確認をして申し上げます。
○土岐部会長
 また後で結構です。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 恐れ入ります。確認の上、御報告させていただきます。
○土岐部会長
 それでは、おおよそ予定の時間となりましたので、続いて、1-3から1-5「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」に移りたいと思います。先ほどと同じような流れで、まず、法人から説明を頂いて、その後に質疑応答を行いたいと思います。特に1-3については、院長先生がオンラインで御説明とのことでしたが、今つながっておりますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 阿部です。つながっています。
○土岐部会長
 それでは、院長さんから順番によろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 NCNPの病院長をさせていただいております阿部です。よろしくお願いします。10分ぐらいで御説明申し上げたいと思います。
 私の担当は評価項目1-3、医療の提供に関する事項ということでして、自己評価はSで御審議をお願いしたいと思います。まず、中長期目標の内容はここに書いてありますように、1つ目ですが、医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供を行ってまいりました。2つ目としては、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供、この2つを中期目標の大目標として掲げております。
 30ページを御覧ください。指標の達成状況ですが、先進医療制度を活用したrTMSを用いた治療が125%などでして、以下ここに書いておりますように、医療安全管理委員会の開催は275%と、非常に頑張って医療安全にも力を入れております。手術の件数、病床利用率は、令和3年と比べても遜色のない成績を残しているかと思います。その要因の分析としては、専門疾病センターが本格的に稼働して、かなり件数を稼いでいるということと、医療安全はもともとかなり力を入れてやっているところかと思います。
 31ページです。評定の根拠です。令和4年度には、新たにこのrTMSがうつ病の患者に対する反復経頭蓋磁気刺激療法として、その維持療法が先進医療Bとして告示されましたので、当センターでの臨床研究が実際の患者さんに幅広く役に立つような適応を獲得していることになります。
 それから、新型コロナウイルスへの対応、これはどこの病院でもされていたかと思いますが、私どもの病院では、都内の病院から断られる精神病の方あるいは高齢者の認知症を持った方で、通常のコロナ病院には入院させてもらえない方々を専門的に受け入れてまいりましたので、かなり病棟もアップアップになるぐらい頑張りましたが、幸いなことに死亡率も少なくて、ほとんどの方は無事退院されましたので、それも評価の根拠にしたいと思っております。
 それから、てんかんに関する診療と研究ですが、昨年度東京都の「てんかん支援拠点病院」に設定されました。日本では、てんかんセンターがかなりどこも経営が苦しくて、撤退することが多いのですが、私どもでは昨年度からかなり力を入れており、全国で衰退する中にあって逆にここだけ伸びていますので、これを評定の根拠にさせていただきたいと思っております。
 32ページです。先ほど申しました先進医療Bに認められたrTMS、これは磁気刺激でして、治療抵抗性のうつ病の方の維持療法に用いております。
 次のページをお願いします。この先進医療は、当センター、赤い星印で示しておりますが、そこを中心として関東、西日本の病院と共同して、当センターがその中心となって開発してきたものです。
 次のページをお願いします。この電気刺激もそうですが、広くニューロモデュレーションという形での位置付けができるかと思います。rTMSは右側に書いてありますように、2022年度は74件です。左側には電気けいれん療法、ECTと書いておりますが、これも2022年度は中級編と上級編を含めて研修を行いつつ、患者数はここ5年間増加を続けております。
 35ページです。これは神経内科分野なのですが、非常に治療の難しいアドバンス機能、パーキンソン患者の症状の日内変動を安全にコントロールできるやり方として、レボドパの持続経腸療法、LCIGと書いておりますが、これは機械を用いて持続的に腸に注入することで、血中濃度が極端な乱高下をしないように、安定的な血中濃度を維持して、患者さんの症状の安定を図るというものです。これはなかなかどこでもできる治療ではないのですが、当センターでは2020年度は試験投与が11例、うち8例がPEGを作成してのLCIGで、2022年の1月から12月では、順天堂と並んで日本で最大の患者さんを行っておりまして、これについては日本全国から患者さんが集まってきております。
 それから、先ほど言いましたコロナですが、第1波から第7波まで、ほかの病院では断られるような精神疾患の方、あるいは超高齢者での認知症を持った方々は、マスクや酸素吸入をしても全部手で外してしまうものですから、とても手が掛かるのです。ですので、ほかから断られるのですが、私どもはそこを積極的に受け入れていくという役割を担ったものと思います。幸い、今は病棟は一旦お休みして、外来は逆に慢性期のコロナ後遺症患者さんを継続して診察していくという状況です。
 37ページです。今、申しました慢性期のコロナ感染症、ポストコロナの患者さんですが、当初から開設してかなり多くを診察しております。この度できましたガイドライン、新型コロナウイルス感染症診療の手引きの執筆者としても、多くの当院のドクターが名を連ねております。
 次をお願いします。高度専門的な医療、標準化に資する医療提供についてです。先ほどの筋ジスのお話もありましたように、当センターでは全国から筋ジスの患者さんがやってまいります。右端にパーセントが出ておりますが、いろいろな希少な神経難病、末梢神経疾患、筋疾患については、シェアと言ったらおかしいですが、数パーセントから高いものでは21%を超えるような患者さんが全国からうちに集まってきていますので、一般の大学病院でもできない希少な神経難病についても、以前からずっと取り組んできております。
 それから、昨年度は病院機能評価「一般病院3」を受けまして、ただいまリバイズドで、マイナーリビジョンですので、多分今年通るのではないかと思っております。私どものような総合病院でない所で取るのはかなり難しいと思いますが、いいところまでいっている、多分もうすぐ取れるという段階まできているかと思います。
 次をお願いします。神経難病はなかなか診断がつかない症状の患者さんが多いのですが、これは未診断の、診断がまだついていない方々について、遺伝子を調べることで診断を確定するというサービス、IRUDと申しますが、これを日本のセンターとして行っております。令和5年3月時点で、これまで2万2,729名、8,000家系ぐらいの方々の解析を行いまして、そのうちの45%ぐらいの診断が確定しました。これも、先進的な大学病院でもなかなか診断がつかないところを、当センターなりの特色をいかした形で、全国の臨床の先生方にも貢献していると言えるかと思います。
 次をお願いします。このIRUDの診断実績ですが、左上の図にありますように、年々依頼数が増加しており、診断率は44.6%を達成しております。変異も結構あります。
 次をお願いします。それから、てんかんですが、先ほども申しましたが、東京都からてんかんの拠点病院として認可されたわけでして、今後ますます力を入れたいと思っている部門です。超高齢化社会になりまして、昔はてんかんというと乳児や小児が多かったのですが、最近は超高齢者の新規てんかん患者が急増しております。そのような日本社会の変化にも対応する形で、乳児や小児だけではなくて、高齢者のてんかんも一緒に診ようということで、てんかん疫学調査チーム、てんかん基礎研究者、てんかん臨床研究者の3者が一体となって、三位一体としての総合的なてんかん医療を展開しようということで、そこの中に研究も入っているということです。
 次をお願いします。そのてんかん治療の実績ですが、2022年度はかなり症例も増えてきており、2023年度は更に増えるかと思います。てんかんの外科手術件数も、一時期はコロナで少なくなりましたが、また盛り返してきております。以上でございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。引き続いて、1-4、1-5までよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 精神保健研究所所長の金でございます。1-4、人材育成に関する発表をいたします。自己評価はAをお願いしております。
 中期目標の内容としては、リーダーとして活躍できる人材の育成、モデル的研修・講習の実施があります。指標として挙げていますのは、実務者指導者に対する生物統計学講座を10回以上開催するということで、これについてはちょうど10回開催しておりますので、達成度は100%となっております。
 44ページをお願いいたします。評定の根拠です。今のリーダー人材の育成に加え、臨床研究研修制度、モデル的研修・講習の実施ですが、順次説明いたしますので、次のスライドをお願いします。令和4年度、各種研修の実施状況です。研修、研究支援、精神保健、臨床技術、治療に関して、このような研修を積極的に開催し、表記の人数が受講しております。
 46ページです。これらの研修を精力的に展開しているセクターとして、1つは精神保健研究所があります。精神保健研究所として、延べ2,500人の研修を行っておりますが、コロナ状況下でオンライン研修となっております。一時期、オンラインということで受講者が減少した年もありましたが、現在このオンライン研修の利点を十分に活用し、むしろ受講者が伸びております。また、この研修の中には、発達障害、摂食障害、PTSD、薬物依存等、厚労省から委託を受けた研修が含まれております。今申し上げたようにオンライン研修が中心となっておりますが、かといって研修の質が下がったということはありません。例えば、PTSD対策研修では、受講者数が逆に増えておりますし、その満足度についても、47ページの右下の円グラフに示しているように、非常に高い満足度を得ております。
 48ページです。これは認知行動療法センターによる研修です。認知行動療法というのは、薬物療法と並んで、うつ病、不安症に対する有効な治療として国際的にも認証されている治療ですが、日本では普及のスピードが遅いということで、当センターにこのような部門を設け、熱心に研修を行っております。2つの種類の研修を行っており、1つは初心者向けの幅広の研修をオンデマンドで行い、1,400人が受講をしております。左側に研修名が書いてありますが、この中には警察庁から依頼を受けたストーカー対策のための研修も入っております。また、研修後アンケートを見ますと、有効性、満足度について高い効果の判定を頂いております。
 次のページです。中級者向けの実技指導についてご紹介いたします。これは、特定の疾患に対して有効とされる技法の研修です。延べ800人超の参加者でしたが、特徴としては受講者に対して1対1で治療の実態を教えるという指導、スーパービジョンと呼んでおりますが、これを延べ816時間にわたって提供し、単に受講をしたということにとどまらず、確実に臨床技能が向上するようなフォローアップをしております。この研修についても、効果、満足度ともに非常に高い回答を頂いております。コロナ状況下で対面での研修が不自由になったにもかかわらず、オンラインの利点をいかして、かえって受講者数が伸び、高い満足度をもたらしているということで、評価Aをお願いする次第でございます。
 続いて、項目1-5、医療政策の推進等に関する事項について御報告いたします。こちらも自己評価Aをお願いしたいと考えております。3つの柱がありまして、1つ目は政策提言、2つ目は医療の均てん化、情報収集及び発信、3つ目は公衆衛生上の重大な危害への対応です。達成状況の指標としているのは、ホームページ、SNS等による国民及び医療機関への情報発信で、ホームページのアクセス件数を1年間で530万件を目標としておりますが、実際には840万件と、158%の達成率となっております。
 次のページを御覧ください。ここにもホームページアクセス件数、政策提言、情報発信と簡単にまとめてありますが、次のスライドで詳しく御説明いたします。政策提言としては、まず次期国民健康づくり運動プランにおける目標に関する意見具申があります。これは今後の医療政策の基本となる指針ですが、この中にメンタルヘルス、心の健康が当初入っておりませんでした。これに対して、当研究所の部長が中心になり、精神・神経学会と連携をして申入れを行い、交渉の末に、目標の中項目として心の健康が明記されました。これは、今後の精神保健医療の展開において大変重要な貢献であると思います。
 また、公衆衛生上の重大な危害への対応としては、新型コロナウイルス感染症に関連して、厚労省による令和4年度メンタルヘルスに関する調査のアドバイザーとして、企画立案をいたしました。もう1つは、同感染症診療の手引き、罹患後症状のマネジメントに関して作成に協力をしております。
 次のスライドです。薬物依存関係の取組として、一次予防、二次予防、三次予防、そして基礎研究の全ての分野にわたって、多面的な活動に貢献をしております。まず、薬物使用の実態把握として、定期的な実態調査を繰り返し、この依存・濫用の実態を把握しております。また、特に社会復帰を促進するために、薬物依存をした方は大体受刑をしてしまうことが多いのですが、そういう方たちの社会復帰のために刑の適切な執行制度についても提言を行い、ガイドライン作成に尽力しております。
 また、右上の基礎研究では、ある薬物が危険ドラッグに相当するかどうかという疑問が出たときに、当研究部で動物実験を行い、その判定に基づいて危険ドラッグの指定が行われるということがありまして、令和4年度は7種が麻薬指定を受けております。右下の臨床研究ですが、薬物依存の治療、予防、再発予防に関する集団認知行動療法を開発し、これを積極的に、日本国内はもとより海外においても普及させております。
 次のスライドを御覧ください。次は地域精神医療についてです。残念ながら、精神疾患においては、適切な治療を行っても、その後遺症に苦しむ方たちが何十万人という単位で存在しております。この方たちの社会復帰、生活を支えるということが大変重要な課題であり、そのために地域包括医療ケアシステムというものが現在考えられております。そのケアの在り方について、漠然と人道的な支援をするのではなく、エビデンスに基づいた効果的な支援するための研究に取り組んでおります。この方たちに対しては、自分で支援のメニューを選択するのではなく、こちらが包括的に支援を提供することが有効だということが言われております。
 次のスライドを御覧ください。アドボケイトの取組です。精神科の長期入院患者において、時として人権が侵害されるという事例が指摘されております。それについて、入院中の患者に対して、入院者訪問支援事業というものが現在展開されており、研修を受けた方々が入院中の患者の様子を見に行って人権を守っていくという制度ですが、この研修の在り方についてのプログラム開発等に貢献をしております。
 最後に、センターからの情報発信です。ホームページのリニューアル、Twitter、YouTube、Instagram等の、現代においてよく使われている媒体を積極的に活用することで、情報発信をし、プレスリリース、記者会見等も行い、冒頭申し上げたような高いホームページの閲覧数につながっております。以上です。ありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいま、評価事項1-3から1-5まで御説明いただきましたが、御質問、御意見等がありましたら挙手をお願いいたします。花井委員、どうぞ。
○花井委員
 直接関係ないのかもしれませんが、興味が湧いたので教えてほしいのですけれども、薬物依存の関係で、おおむね減ってきているということなのですが、今は一般薬のオーバードーズが若い方に増えていて、この統計にはいわゆる一般用医薬品のオーバードーズは含んでいなくて、マリファナとかそちらの方面だけという理解なのですか。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 そうですね、これは以前から同じ項目を使った調査ですので、おっしゃるようにメジコンなどの依存が非常に問題になっておりますが、それは必ずしも十分に入っていない可能性はあります。今後、項目を追加しなくてはいけないというところだと。
○花井委員
 そうですね。比較的マリファナの規制を強化して、日本はドラッグ自体は、アヘンも少ない代わりに、そちらに流れているところがありますし、若年化しているので、その辺りも今後、統計情報に入れていただけたらと思います。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。その点は、私たちも内部で積極的に議論しているところですので、委員の提言をいかしていきたいと思います。
○花井委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて、前村委員、どうぞ。
○前村委員
 研修活動についてお伺いしたいのですが、ナショナルセンターとして研修活動をすることは非常に重要だと思いますが、46ページで、オンラインにして、むしろ件数が増えたというお話を聞きました。もう1つ興味があるのは、現地ですと、やはり東京近辺の人しか参加しにくいと思うのです。私も地方にいますが、オンラインにすることによって研修者の居住地が全国に広がったというような傾向はありますか。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 以前から、割と全国から参加者がいらっしゃったのですが、ただ、先生がおっしゃるように、オンラインにすることで、地方にいらっしゃる方が参加しやすくなったと、参加者の増加というのは地方において多く認められていると思います。
○前村委員
 やはりそういう効果があるかと思います。ありがとうございます。
○土岐部会長
 続いて、深見委員、どうぞ。
○深見委員
 深見です。35ページのパーキンソンに対するレボドパの持続経腸療法なのですが、ちょっと分からなかったのですけれども、四角枠で下のほうに書いてある試験投与の2022年度実績で、試験投与が11例、うち8例が胃瘻を作成して継続ということなのですが。この投与自体は胃瘻なしでやったのですか。それとも、この試験投与自体も経腸投与ということなので、胃瘻を作成したということなのかというのが1点です。お伺いしたいのは、治療のために胃瘻を作成しているのかという点です。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 お答えいたします。まず、これは良い治療法なのですが、はじめからPEG、胃瘻を開けますと、なかなか持続できない方もいますので、効果の確認も含めて試験的に胃瘻を作らずにやるということから始めています。
○深見委員
 その場合の投与法はどのようになるのですか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 鼻から入れて、ある程度の血中濃度、あるいは症状の改善を見極めた上で、2段階目としてPEGを作ってパーマネントにやっていきましょうということです。
○深見委員
 なるほど、分かりました。ドラッグデリバリーとして胃瘻を作成しなくてはいけないというところに抵抗があるものですから、ほかにドラッグデリバリーとしての有効な方法がないのかということなのですが、軽微的なこともあるかもしれないけれども、もう少しほかに投与しやすい方法というか、使い勝手のいい方法はないのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 おっしゃるとおりで、鼻からずっとはできませんから、PEGで穴を開けなければいけないのですが、それでもやはり胃に穴を開けるのは嫌だという方もいらっしゃいます。一般的にこの段階になりますと、食事の摂取そのものもうまくできない方が多いステージですので、食事も薬も一緒にできるということで、ある程度は受け入れられておりますが、先生が御指摘のように、やはりほかに何かないのかというのがあります。つい先頃、持続皮下注射、皮下に留置して、そこから臨床試験を行うという、これも当センターで日本で一番症例を入れたのですが、うまくいきまして、このほど厚労省から、LCIGの後継の治療法として、今年の秋か来年初めには保険適用になる見込みになっております。
○深見委員
 進行期のパーキンソン病の患者さんというのは、もう食事などもできない状況なのですか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 なかなか咀嚼に時間が掛かったり、誤嚥も結構あるものですから、かなり進行した場合にはもうPEGを入れてしまうと。PEGを入れても別に食べられなくなるわけではなくて、口からも食べる楽しみは残したいですし、栄養としてはPEGからきちんと入れるということで、併用することが多くなってまいります。
○深見委員
 分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長
 私からですが、rTMSが先進医療で5例ということなのですが、これを見ると6週間までは保険適用で、後は延長のようなのですが、もともとの数が少ないのか、逆に5例というのは少ないような感じがしたのですが、これが本当にいいのであれば、少なくとも6週まではできるわけなので、もっと大々的に広まってもよさそうなのですけれども、5例の症例数というのは、何か制限があるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 これは、先進医療を取るための予算がありまして、多分それに応じて5例に制約されると思うのです。基本的には、先生がおっしゃるように、その試験的な症例ではっきり効果が出ましたので、もう少し広く保険適用になったという経緯かと思います。
○土岐部会長
 12か月まで、もう保険適用になりそうということなのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 ちょっと、そこまではあれですが。
○土岐部会長
 そうですか。効果があるのであればね、既に6週までされているものなので。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 ええ。計30回まで保険診療として実施できますので、それ以上の長期化はなかなか難しいのですが、少なくとも治療抵抗性のうつの患者さんの維持療法としては、この期間はある程度効果を得ながら進めることができるということかと思います。できれば、保険ももう少し長く適用していただければ、なお有り難いのですが。
○土岐部会長
 はい。大規模試験が簡単なような気がしたのです。かなり方法論が確立されているので。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 機械が余りないのです。昔は、神経内科でよく小脳失調症などで使って、あのときは結構普及したのですが、それは効果がないということが分かったものですから、急速に減りました。しかし、その後、逆に精神疾患で有効性が確認されてきているところということですので、大々的にはまだできない段階かと思います。
○土岐部会長
 了解いたしました。庄子委員、どうぞ。
○庄子委員
 研修活動について教えてください。延べ2,500人超が受講すると書いてあるのですが、研修はどのように告知をされているのでしょうか。それから、この2,500人という数字をどのように評価されているのでしょうか。もっと増やすべきだと思われているのでしょうか。もしそうであるのであれば、これからどのようにしていこうかといったお考えがあれば教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 まず、告知ですが、私どものホームページに研修会の一覧を出しております。それから、過去の研修受講者、数千人のメーリングリストがありますが、これに通知をしたり、あるいは私たちの関係の先生方、各大学、各基幹病院等に周知をしております。研修の数は、かつて対面のときは会場のキャパシティがあるので、応募者の中でお断りする人が半分ぐらいいたのですが、今回はWebですので、まず断るということがなく、ほぼ全員受講できているということは非常によかったなと思っております。
 人数については、人数を増やすだけではなく、研修の科目を増やすことを考えております。これまでは私どもの研究所の人間が専門にしている疾患の研修を行っており、たまたまそういう専門家がいないと研修ができておりませんでした。代表的なものは強迫性障害です。こちらの都合で研修の科目を決めるのはよくないと考え、世間に必要とされている研修を行おうということで、この強迫性障害も昨年から行っております。また、治療ガイドラインの普及研修なども行っております。
 これもWebですと、講師の先生もWebで講義をすることができますので、研究所にいない講師の先生に依頼することも容易になっております。人数はもう少し増やしたいと思いますが、それよりも科目として日本の精神医療を考えたときに、漏れがないかということを考えながら、十分な研修を展開していきたいと考えております。
○土岐部会長
 神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
 杏林の神﨑です。知識がない質問で申し訳ないのですが、IRUDについて教えていただきたいのです。恐らくはNCNPだけではないと思うのですが、いろいろな所でこの遺伝子の疾患としての意味付け、多分ほかのいろいろな施設でも登録しているのではないかと思うのですが、ここには1,000家系3,000検体以上でということで、46家系においてその遺伝子と、ごめんなさい、ちょっと理解が不十分かもしれませんが、疾患とのつながりが分かったという意味なのかなと思うのです。NCNPでやっているものと、ほかの施設で登録しているものなど、何か全体としての登録システムというか、その辺りのことをもう少し御説明いただけると有り難いです。これは1つ1つの遺伝子に意味があるわけですから、かなり重要な研究だと思うので、質問させていただきました。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 神﨑先生、ありがとうございます。この1つ前のページです。これは、私自身もここに来るまでは、やはり大学で自分たちの症例を、自分たちで遺伝子を発見したいという気持ちもありますので、全ての日本の研究者がここに参加しているわけではないのです。しかし、このIRUDについては、日本全体をカバーして、かなりのところで連携の数が確保できています。特定の大学で、自前でできるような所はそうはないと思うのです。ですから、そういう中で、比較的力のない所なのだけど、珍しい患者さんがいて、遺伝性か遺伝性が疑われる場合には、このネットワークに載っているということになると、このIRUDのシステムは、正確な数はあれですが、恐らく日本の7割ぐらいはカバーしているのではないかと。それ以外の3割は、もちろん研究ですから、独自に解析して構わないわけなので、そこにお邪魔はするつもりはありませんが、できない所の先生方には全面的に応援させていただいて、その遺伝情報をネットワークとして、あるいは日本の国としての財産にも持っていきたいなと思っています。
○神﨑委員
 ありがとうございます。その中で、NCNPはやはり中核的な立場、位置付けということでよろしいのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 予算もここに下りていますので。
○神﨑委員
 はい、了解いたしました。ありがとうございました。
○土岐部会長
 私から1点、52ページの医療政策で、こころの健康を健康21のほうに入れていただき、大変有り難いと思うのですが、実際このようなマネジメントの仕事をしていますと、メンタルヘルスで休職、退職する人が非常に多くて困っているのですが、こういったものに対して、先ほどの研修の所には余り職場のメンタルヘルスというのはなかったような気がしたのですけれども、国にとっても大きな損失なので、NCNPとして何か、提言に更にもう一歩踏み込んだアクションができますでしょうか。もし案があれば、教えていただきたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ちょっと、お声が聞き取れなかったので、もう1回お願いしてよろしいでしょうか。
○土岐部会長
 こころの健康ですが、職場のメンタルヘルスで休職、退職をする人が非常に多いのですが、健康21の中に入れてもらったのは有り難いのですけれど、次のアクションとして、具体的にNCNPで、例えば先ほどの地域の精神衛生の研修には職場のメンタルヘルスという項目はなかったのですが、こういったものを進めていただく予定はありますかということです。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 重要な質問をありがとうございます。私たちは旧厚生省の主導で作られた研究所ですので、これまでは旧労働省とのお付き合いが十分ではありませんでしたが、最近、労働安全衛生の部局とも連絡を取りまして、労働者の精神健康の維持についての協力をちょうど始めたところです。今後、そのような方向に進んでいけば、先生がおっしゃるような研修活動というものも当然考えていかなくてはならないと思っております。大変重要な点をありがとうございました。
○土岐部会長
 藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 藤川です。いろいろな事例を教えていただいた中で、ほかの6NCですと、例えばスマホのようなものやロボットなど、DX化された何らかでの対応みたいなことが出てくるのですが、比較的そのような御説明はなかったかなと思ったりいたしました。家族と会えないというようなことに対しての配慮みたいなことは説明の中にあったのですが、例えば患者さんの家族、御本人となるとお使いになるのかどうか、なかなか難しい部分もあるのかもしれませんが、患者さんの家族まで含めて、そうした精神的な治療ということだけではなくて、機器を用いたような対応が何かあるのかどうか教えていただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 これは中込先生からもお話があるかもしれませんが、アプリを用いたCBTにしても、睡眠管理にしても、そういう研究は今進んでおりますし、KOKOROBOというサイトを使ったスクリーニングも現在進んでおります。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 御指摘ありがとうございます。私どもでは、コロナ感染下、なかなか医療機関にもアクセスしにくい中で、遠隔でサポートできるメンタルヘルスシステムを一応立ち上げています。その中には、AIチャットボット、あるいはオンラインでの相談業務といったものも取り入れております。今後、NCNPとしても、このデジタル技術を使って、なるべく幅広い未病というか、まだ疾患に至らないメンタルヘルス不調の方がアクセスできるようなメンタルヘルスのポータルシステムというものに、これを発展させていきたいと考えております。もう少し形がはっきりしましたら、またいろいろと御紹介させていただければと思っております。
○藤川委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 よろしいでしょうか。それでは、続いて「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」の評価項目2-1から4-1について議論いたします。先ほどと同様の流れで、まず法人から御説明いただき、その後に質疑応答を行います。それでは、法人から御説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 恐れ入ります。石川局長の発表の前に、先ほど御質問のありました研究開発についての4つ目の項目を簡単に御報告してよろしいでしょうか。
○土岐部会長
 はい、お願いします。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 4つ目ですが、複雑性PTSDの治療という項目です。これは、文字のファイル、145ページありますものの8ページ目に、4つの主な業績の4つ目として書いてありますので、御参照賜れればと思います。大変失礼いたしました。
○土岐部会長
 こちらこそ、理解が悪くて申し訳ございませんでした。それでは、評価項目2-1についてよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 企画戦略局長の石川です。よろしくお願いいたします。それでは、私からはスライドの57から64まで、業務運営に係る評価項目2から4について御説明いたします。
 まず、スライド57です。業務運営の効率化に関する事項について、自己評価はAとしております。Ⅰの中長期目標の内容は記載のとおりですが、6点ございます。定量的な指標として設定されている項目については、後発医薬品の数量シェアを目標期間を通じて85%以上とする。医業未収金、一般管理費については令和2年度に比して削減をする。経常収支率については100%以上が目標とされております。Ⅱの指標の達成状況ですが、収支改善については経常収支率、年度計画では100.1%以上の目標に対して、実績値は100.5%、達成率100%となっております。後発医薬品の数量シェアは、年度計画90%以上に対して、実績値は92.5%で、達成率は102%となっております。
 スライド58ですが、医業未収金については、令和2年度が0.032%でした。それに比べての低減を目標としておりますけれども、令和4年度の実績値は0.021%で、達成度158%となっております。達成度120%を超えておりますので、下に要因分析を記載しておりますけれども、これまでのクレジットカード決済に加えまして電子マネー決済を導入するなど、利便性向上を図ってきております。また、高額療養費受領委任払制度の活用や文書による督促等、様々な取組を継続して実施をしている成果と考えております。目標は令和2年度より低減させるということですので、この目標設定については変更せず、引き続き目標を達成するべく取組を着実に進めてまいりたいと考えております。
 戻りまして、一般管理費ですが、皆様御承知のとおり、昨今の燃料費、資材や物価の高騰等により、一般管理費については前年度より増加をしております。
 一番下になりますが、自己評価をAといたしました評定の根拠でございます。今、申し上げたとおり、病院でのコロナ患者発生等に伴う入院制限、管理費の高騰等厳しい状況がございましたけれども、外来患者の確保や研究収益の確保等、理事長以下職員が一丸となって精力的に取り組んだ結果、最終的には経常収支率100.5%を達成できたものと考えておりまして、A評価としております。具体的な状況につきましては、スライド59、60を御覧ください。
 まず、スライド59ですが、経常収支については、グラフのとおり、令和4年度は1億400万円のプラスとなっており、平成30年度からは5期連続の黒字となっております。コロナの影響もありまして、左下ですが、1日平均の入院患者数は減少しており、まだコロナ前には戻っておりませんけれども、右の外来患者数については順調に伸びております。
 続いて、スライド60です。業務改善に向けたその他の取組状況です。給与制度の適正化としては、新型コロナ対応等もありましたので、職員のモチベーションの維持向上のために基本給の改定、賞与の引上げ等を実施しております。働き方改革への対応としては、医師事務作業補助者による医師の負担軽減のほか、病院長主導の取組によりまして時間外労働を大幅に縮減しております。縮減率は40%となっております。
 続いて、スライド61でございます。評価項目3-1の財務内容の改善に関する事項ですが、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は記載のとおりで、外部資金の獲得を進めること、また繰越欠損金解消計画を策定、公表し、令和2年度比19.5%削減となっております。指標の達成状況ですけれども、令和2年度比19.5%削減を期間中に達成することになっておりますが、令和4年度実績では1億2,000万円解消しており、残額はグラフのとおり16億3,600万円となっております。この令和4年度の残額は、赤が解消計画となっておりますけれども、解消計画よりも約6億弱減額となっておりまして、今後十分に目標を達成できるものと考えております。
 スライド62、こちらは参考指標としての外部資金の獲得状況ですが、令和4年度はAMEDを中心に41.3億程度を獲得しており、グラフのとおり、毎年着実に増加をしております。
 スライド63ですが、評価項目4-1、その他の業務運営に関する事項です。自己評価はBとしております。中長期目標の内容は4点ありまして、内部統制の適切な構築、人事の最適化、適切なインフラ整備、それから適切な情報セキュリティ対策の推進となっております。こちらは、定量的指標は設定をされておりません。
 最後にスライド64ですが、内部統制の適切な構築については、公的研究費に関する説明会を実施するとともに、理解度確認テストを実施しております。調達に関しては、調達等合理化計画に基づいた取組を進めるとともに、随意契約の適正化に向けて契約審査委員会で審議を行うなど、公正性、透明性の確保に努めております。監査室による実地監査の実施、会計監査法人による実地監査も実施しております。また、定期的にリスク管理委員会を開催し、適切なリスク管理を図っております。人事の適正化といたしましては、業績評価制度により能力、適性、実績等を適正に評価し、昇給等に反映をさせています。職員の意欲向上につなげるとともに、国、国立病院機構、他のナショナルセンター等との人事交流により、必要な人材確保、組織の活性化を図っております。
 情報セキュリティ対策ですが、政府の統一基準群の見直しに基づき、速やかにセンターの情報セキュリティポリシー等の関連規程を改正したほか、標的型メール攻撃訓練も3回実施しております。
 また、イントラネット上に教育コンテンツを提供するなど、特にメールの持つ脆弱性への対策強化に取り組んでおります。これらの事項は、いずれもセンターの運営上非常に重要な事項と考えておりまして、引き続き適切に取り組んでまいります。説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの説明がありました事項につきまして、御意見、御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。
では、私のほうから、59ページですが、コロナの補助金が9億円で、最終的に1億の黒字ということで、補助金を除くとやはり赤字になるということで、これは今、どこの病院もそういう状況で苦しんでおるわけですが、そうすると、一方の繰越欠損金も順調に返せている、ここ数年は、はっきり言ってコロナのものが大分あったと思うのです、ここ2年ぐらいは。その先の見通しは、そんなに明るくないとは思うのですが、どのようにお考えなのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 病院長、何か発言はありますか。
○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 これは、病院長の阿部からお答え申し上げます。ここの図にある右側の外来が順調に伸びておりまして、私が来てからシャトルバスを出したりとか、Instagramなども活用して、結構広報活動をやっておりまして、外来はかなり増えているのです。この病院全体の収益の外来部門は20%にすぎず、残り80%の病棟が非常に重要でございまして、病棟の稼働率がかなり上がってきているのです。
 ただ、人件費比率が52%なので、普通の会社でいうと、ちょっと倒産寸前の状態ではあって、多分これはほかのNCも、ほかの国病も近いのではないかなと思いますが、なかなか人の首はすぐに切れませんので、収益を上げることで分母を増やせば、相対的に人件費率も下がりますので、稼働率を上げて、一人一人の患者さんの単価を上げるように、今いろいろとお願いをしております。多分、今年度からこの補助金がゼロになりますから、一時的にまた元のような赤字に多少転落するかもしれませんが、構造改革を進めていますので、3、4年のうちに必ずまた、補助金がなくても、本来、自力での黒字になっていくだろうというように楽観をしております。
○土岐部会長
 ありがとうございます。これは、日本中ほとんど全ての病院が、今はそういう見通しで困っているところだというように考えております。ほかはよろしいですか。前村委員、どうぞ。
○前村委員
 働き方改革のことですが、今、全国の病院で来年度から時間外勤務の水準をAにするか、Bにするか、Cにするかというのを検討しているところだと思いますが、A水準になる方向で考えていらっしゃいますでしょうか。
○土岐部会長
 いかがでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 ありがとうございます。先ほど、超過勤務縮減のお話もしましたが、当院は急性期を重点にやっている病院ではないということもあって、A水準の予定でございます。
○前村委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
 藤川です。先ほど部会長がお聞きになられたことを私もお聞きしようと思っていたので、それはありがとうございました。まず、2-1に関してですが、指標の達成状況だけでいえば、未収金は達成度が高かったわけですが、ほかの数値に関しては、おおむね目標どおりという結果だったと思います。特に経常収支率の辺りは重要な指標と考えられると思いますので、それは着実な達成に至ったということが、定期的にはそういうことになるのかと思いますが、その中でコロナという特殊な要因などがあって、燃料費の高騰という要因もあると、そういうことも踏まえて鋭意評価をしましたという、そういう理解かなと思っています。それでよろしいでしょうか。そうなると、その辺の考え方というのは、委員次第ということかと思います。それが1点です。
 あと、燃料費の高騰に関しては、組織によって、高騰の影響の今までに対するインパクトというのは少し違う部分はあるのかと思うのですが、大体1.2倍とか1.4倍とか言われていますが、経常費用が8億円増と、金額ではそのようにおっしゃっているのですが、何倍ぐらいだったのかという点を教えていただきたいです。
 あとは、セキュリティ対策のことで、いろいろ対応されているのですが、先日大きなインパクトがあったものは、取引先のセキュリティ対応が悪かったというのが非常に多かったと思うので、その辺の対応がどうだったのかということも教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 ありがとうございます。まず、すごく細かい話になりますが、燃料費は約1.5倍です。それから、セキュリティ対策ですが、今の御指摘のものにピンポイントに対応しているかどうかというのはあれなのですが、そういう事象があったりしたときには、院内のイントラネット上で、そういう事例も含めて、注意喚起や周知を促すような対応をしております。また、今回もメールに対しての脆弱性ということに力を入れているというお話をしましたが、こういう異動の時期、新しく採用された職員等、メールのセッティング等がうまくできていないこともありますので、そういう方には、複数回の注意喚起を担当の部署から直接御本人へ行うなど、そういう対策を行っております。
○藤川委員
 ありがとうございます。今、お答えいただいたのは、イントラネットとか、新しく入られた方ということで、中の話かと思うのですが、それも当然、重要だとは思うのですが、取引先、外部に対して、一定のどの程度の対応ができているかというようなことを確認されてらっしゃるのかというのが、私の質問の趣旨でした。
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 すみません。直接的なお答えができず申し訳なかったです。今の御質問をもう一度、持ち帰りまして、中の対応を確認して、また改めてお答えをさせていただきます。よろしいでしょうか。
○藤川委員
 はい、分かりました。ありがとうございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。全体を通じてでもよろしいですが、何か追加の御質問はございますでしょうか。では、私から1点、資金のことで、バイオバンク事業を、かなりお金も掛かると思いますが、一方、企業の利用も60件あったということなのですけど、我々の病院でもこのバイオバンクをどの費用でどうやっていくか、すごく悩んでいるのですが、これは今、実際のところ、かなりの費用の持ち出しになって、将来これをペイにするような、そういう見込みはあるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。細かい数字につきましては、また必要がございましたら算出して御報告を申し上げますが、おおむねは院長が御理解のとおりでございまして、やはり厚生労働省からの運営費交付金等で、このバイオバンクに充当したものをかなり持ち出しております。ただ、企業のあるいは外国のアカデミア企業なども含めまして、利用が非常に増えておりまして、御説明しましたように、今ISO対応で少し絞っているとウェイティングが増えてきている、そんな状態でございます。
 例えば、企業のニーズが高いのであれば、少し価格設定を上げて、収益にしてはというような御意見を頂いたこともあるのですが、やはりこれは公的な事業としてやっておりますので、アカデミア企業も含めてリーズナブルと考えられる設定でとなりますと、なかなか収益を十分に上げていくというのは難しい、そういう現状もございます。
○土岐部会長
 企業というのは、やはり国内のベンチャー的な企業は多いのですか。
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 両方でございます。大きな製薬企業、バイオ企業もございます。あるいは、外国でもベンチャー企業のしっかりした所が申し込んできて、対応しているという、そんな事例もございます。様々でございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほかに何か聞き忘れたこととかございますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター久我企画医療研究課長
 すみません。前の質問に補足をよろしいでしょうか。
○土岐部会長
 はい、どうぞ。
○国立精神・神経医療研究センター久我企画医療研究課長
 先ほど、委員長の土岐先生のほうから、働く人のメンタルヘルスに関して御質問を頂いたと思いますが、企画医療研究課長の久我といいます。精神保健研究所の所長のほうから、今、正にこちらで練っているところということでお伝えさせていただきましたが、具体的に1つ、心のサポーター養成事業というものを、厚生労働省のほうから委託を受けて、令和3年度から行っております。
 どういう事業かと言いますと、メンタルヘルスや精神疾患について、正しい知識と理解を持って、地域や職域でメンタルヘルスの問題を抱える人が近くにいたときに、どのように最初にコンタクトをして、そして医療までつなぐかというような、そういったサポーターを育てるような事業をやっておりまして、令和3年度、4年度で、サポーターなのですが、3,500人ほどのサポーターを養成しておりまして、30自治体で研修を行っております。令和6年度から10年間で100万人のサポーターを育てるということを検討しておりまして、今後、更に拡大したいというように思っております。補足になります。以上になります。
○土岐部会長
 国民の期待が非常に大きいところですので、是非よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。まずは、法人の監事から、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明を頂きまして、そして現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針についてコメントをお願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター露木監事
 監事の露木でございます。令和4年度の監事監査の結果でございますが、監査報告書に記載のとおり、指摘すべき重要な事項は認められず、適正であることを御報告申し上げます。コロナ環境下にありましたので、監事監査も多少の制約はありましたが、監査役室との連携を強化して、各種会議への出席、あるいは各部門の責任者の方々との面談を通じまして、業務運営状況を見てまいりました。
 病院と2つの研究所、4つのセンターからなります国立高度専門医療センターとして、病院と研究所が有機的に連携して、成果を最大化する各組織の連携体制が機能していることを確認しております。厳しい業務運営環境の中で、難度の高い課題に一丸となってチャレンジして成果を出されていることに関して敬意を表したいと思います。報告は以上でございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、引き続きまして法人理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等につきまして、コメントをお願いしたいと思います。
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 理事長の中込でございます。本日は、繰り返しになりますが、本当に貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。また、大変貴重な助言も頂きまして、私どものほうとしましては、ミッションであります精神、神経、筋疾患、発達障害の克服を目指して、様々な研究をしているというところを御紹介させていただいたというように思っております。
 一方、これまでの研究の枠組みから、今後、委員のほうからも御指摘がありました様々な多様化する方法論、例えばデジタル化等を通じて、メンタルヘルス、あるいは神経、筋疾患を含めたこの医療に関して、アクセスをより良くしていくということ、これは例えば臨床試験などにおきましても、Decentralized Clinical Trialsというものにも取り組んでいるところでございますが、やはり社会の生活の場における評価とか、社会の生活の場における医療というものも見据えて、開発を行っていきたいというように考えているところです。そういう意味で、職場のメンタルヘルスもさることながら、我々は学校教育現場におけるメンタルヘルスということも、今後は視野に入れながら進めていきたいというように考えているところです。
 冒頭に、私どもが最も力を入れてきました筋ジストロフィーのエクソン・スキッピングの研究開発のところでも話に出てまいりましたが、個人的には、筋のジストロフィンから、現在は脳におけるジストロフィンの作用に関する研究フェーズへ移ってきている点は、正に私どもの精神、神経、筋疾患の融合領域といいますか、その枠組みを離れて、筋疾患における脳の機能といった視点からの研究ができるということで、今後私どもの研究に大きなインパクトを与えるものであり、大変大きな業績だったのではないかというように私は個人的には思っております。
 それから、皆様からもご懸念がありました経営的な問題に関しましても、今、病院長からありましたように、私どもとしては、やはり外来の枠を広げることによって、稼働率を下支えするということをしっかり進めてまいりたいというように思いますし、それからバイオバンク等、様々な事業において、産学連携体制も進めながら、その中に私どもの経営的な視野というものも入れていきたい、そんなふうに考えております。私のほうからは措辞ではございますが、皆様に感謝を申し上げて、御報告とさせていただきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。
○土岐部会長
 理事長ほか、法人の皆様、誠にありがとうございました。以上で、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和4年度の業務実績評価についての審議を終了したいと思います。関係の方、ありがとうございます。
 短いのですが、5分ほど休憩の時間を置いて、また再開させていただきます。5分間の休憩でございます。よろしくお願いいたします。
(国立精神・神経医療研究センター退出)
(休憩)
(国立長寿医療研究センター入室)
○土岐部会長
 それでは、国立長寿医療研究センターの令和4年度の業務実績評価について審議を始めたいと思います。まず最初に、理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 御紹介いただきました国立長寿医療研究センターの理事長を拝命しています荒井と申します。今日は貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。令和4年度の業務実績概要について、御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、私のほうから簡単に御挨拶をさせていただきたいと思います。令和4年度におきましては、5月より新棟がオープンしまして、気分を一新して診療に取り組んでおります。また、これは今年度でありますけれども、認知症基本法が通ったということもあり、昨年ではありませんが、今後この基本法の施行に向け、当センターとしてしっかりと準備をしていかなければいけないというように考えておりますし、認知症に関する新しいお薬がアメリカで承認されたということもありますので、その新しいお薬も日本でもこれから承認の予定と聞いておりますので、そのお薬が適切に使われるような形での準備をしっかりと整えていくという予定でございます。
 また、コロナ禍におきまして、3年以上前からですけれども、認知症の予防に関するJ-MINT研究を終了させ、成果につきまして、先週の国際アルツハイマー病学会で発表してまいりました。非常に多くの海外の研究者から支持を頂きまして、この認知症に関する予防活動をしっかりと社会実装すべく、センター全体を挙げて取り組んでいきたいと考えておりますので、本日は長時間でありますが、よろしく御指導のほどお願いいたします。以上です。
○土岐部会長
 荒井先生、どうもありがとうございました。それでは、早速ではございますが、評価項目1-1及び1-2、「研究開発の成果の最大化に関する事項」について議論したいと思います。最初に法人から説明していただき、その後に質疑応答するという流れで進めたいと思います。時間も限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 研究所長をさせていただいております櫻井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。令和4年度の各指標の達成度については、パワーポイントの6番から8番に示しておりますので御覧ください。特に令和4年度では認知症研究で大きな進捗がございましたので、自己評価はSとさせていただきました。以下に、詳しく紹介させていただきます。
 パワーポイントを進めてください。まず、認知症の血液バイオマーカーの開発について説明いたします。私たちは、アルツハイマー病に伴う脳内アミロイド蓄積を推定する血液Aβバイオマーカーの開発に世界で初めて成功し、その臨床的有用性についてネイチャー誌に報告してまいりました。
 左を御覧ください。血液Aβバイオマーカーの実用化を目指した前向き研究を令和4年度に行いました。PMDAと相談の上、治験に準じたGCP準拠の特定臨床研究を行い、既に薬機承認をされております脳画像のAβバイオマーカーであるFlutemetamolを用いたPET検査の結果と対比することで、血液Aβバイオマーカーの精度を検討いたしました。令和4年9月には、目標症例数200例を達成し、現在、薬機に再申請を目指して、データの解析、書類の準備を進めているところです。
 右側を御覧ください。Aβ以外のバイオマーカーを組み合わせた認知症層別化システムの開発を行っています。血液Aβバイオマーカー(A)、リン酸化タウ(T)のバイオマーカーであるpTau181、神経変性(N)を反映するNfL、神経炎症グリオーシス(X)を反映するGFAPを組み合わせて、認知症の病型判定、進行予測が可能な層別化システムを開発しています。ROC解析で、それぞれのバイオマーカーに特徴を見ましたところ、Aβ病変の有無の推定には、血液AβバイオマーカーがAUC0.95と、非常に高い精度を示すことが確認されました。
 また、病態の進行度の評価には、GFAPやNfLが有用と考えられました。これらの解析を基に仮のカットオフ値を設定し、約160名の対象で、ATNXの陽性、陰性で層別した結果を右の下図に示しております。図の下のほうの赤い矢印はアミロイド陽性の認知症(MCI)、認知機能正常者を示しております。また、青い矢印はアミロイド陰性の認知症(MCI)、認知機能正常者を示しております。それぞれのカテゴリーにおけるATNXステータスの頻度を、円錐の高さで示しております。
 まず、ADリメンツや、右奥なのですが、ATNX全てが陽性のものが最も多く、これは水色の円錐です。MCIではN又はXが陽性であるものが多く、茶色の円錐です。認知機能正常者ではAのみが陽性、黄色が多いことが分かります。一方、アミロイド陰性の認知症では、Tが陰性、NとXが陽性の症例が多くて、これは紺の円錐です。認知機能正常に近付くにつれ、ATNX全てが陰性となる症例が増えていることが見ていただけるかと思います。以上のように、侵襲性の低い血液バイオマーカーだけでも、アルツハイマー病、非アルツハイマー病の病型分類、ステージ分類ができるようになりつつあります。また、ここでは示しておりませんが、私どもの血液Aβバイオマーカーは、超早期のAβ病変保有者を捉えることも分かってまいりました。未病の段階の高齢者の認知症リスク評価についても役立つものと考えております。
 次をお願いします。認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験、J-MINTについて紹介いたします。J-MINTは、我が国初の認知症予防のための大規模な非薬物による介入試験であり、2019年から当センターが中心となって進めてきました。対象はおおむねMCIレベルの認知症リスクを有する高齢者で、認知症予防に効果が期待される運動、栄養、認知機能訓練、生活習慣病の管理を同時に行うものです。
 本研究は、新型コロナ感染症のまん延により多くの困難に何度も見舞われましたが、本年3月に全ての介入と評価が終了し、主要な解析が行われました。図の左下を御覧ください。主要評価項目である認知機能のコンポジットスコアの変化量については、介入群が青線ですが、認知機能は改善方向に向いておりましたが、オレンジ色の対照群との間には有意な差は見られませんでした。しかし、右上の図を御覧ください。認知症の遺伝的リスクであるAPOEε4を有する者では、対照群では認知機能は顕著に低下していたのに対して、介入群では認知機能は全く維持されており、両群に有意な差を認めました。
 また、真ん中の図ですが、運動教室へのアドヒアランス別の解析を行ったものです。70%以上参加した者、青線で示しておりますが、70%未満の者の対照群に比べて有意な認知機能の改善が認められました。副次評価項目でも、食の多様性スコア、身体機能、社会参加にも改善が見られました。J-MINT研究により、我が国の認知症リスクを有する高齢者において、多因子介入が認知障害を改善させることを明確に示すことができました。本研究の意義として、認知症の予防に明確なエビデンスを与え、今後は介護予防と同様に地域活動に展開していくこと、また、多因子介入がMCIの非薬物療法としても位置付けられることがあります。
 令和4年度にはJ-MINT研究を社会実装するため、地元の大府市でモデル事業を開始しました。全国にいち早く届けられるよう準備を急いでまいります。また、令和4年度にはAMED調整費を頂き、当センターではPET2台体制となりました。また、間もなくレカネマブも承認されると言われています。J-MINTの治験及び先に紹介した血液バイオマーカーの治験と併せて、認知症予防に新たな扉が開かれていくものと期待しております。
 次をお願いします。日本人レビー小体型認知症発症リスク遺伝子変異の同定と機能解析について紹介いたします。レビー小体型の認知症、DLBと申しまして、アルツハイマー病に次いで多い認知症ですが、アルツハイマー病と比べるとゲノム研究は余り進んでおりません。そこで、当センターのバイオバンクに登録されている日本人検体を用いて、DLBの全ゲノム解析を実施しました。その結果、MFSD3遺伝子とMRPL43遺伝子にDLBの発症リスクを高める変異を同定することができました。興味深いことに、両変異ともヨーロッパ人、アフリカ人、アメリカ人では確認されないという東アジア人特異的な変異で、特にDLBに多く見られる変異でした。実際、これらの変異がどのように病態に影響を与えるかについて機能解析を行いましたところ、MFSD3遺伝子異常を持つ人は、血中でコリンエステラーゼ活性が上昇していることが分かりました。
 右側を御覧ください。コリンエステラーゼは神経伝達物質の分解に働く酵素であり、この酵素の上昇は神経伝達を阻害する可能性が示唆されます。一方、DLBは脳の疾患であり、この変異が脳でどのように機能するかを調べてみました。ゼブラフィッシュにMFSD遺伝子変異を導入して脳を採取し、脳内のコリンエステラーゼの量を測定したところ、人の血液のと同様に、量が上昇していることが分かりました。今後、人の神経細胞を用いた機能解析を行う予定ですが、例えばこの変異を持つ患者さんには、コリンエステラーゼを阻害するドネペジルの使用を優先するなど、臨床応用につながる可能性が考えられます。
 これらの結果は、個別化医療につながる治験であり、研究の意義は大きいものと考えています。当センターの保有するゲノム情報資源から得られました今回の研究成果から、疾患研究には人種、民族のゲノム情報が重要であることを改めて示しました。
 次をお願いします。地域での認知症の研究について紹介します。これまで地域における脳と体の健康チェックにより、約3万4,000人の健常高齢者のデータベースを構築してきました。令和4年度には、このデータベースを活用して、要介護の要因として社会的孤立、孤独の影響、サルコペニア肥満やオステオサルコペニアと機能障害などの関連などを解析し、多くの論文報告を行いました。
 図の左下を御覧ください。高齢者の自動車運転支援の研究も行っております。2つございまして、1つは実車教習を行って、自動車事故に対する効果をRCTで検証することを行っております。また、VRを用いた運転機能検査を行っており、令和4年度にも対象者を予定どおり増やすことができております。
 右上を御覧ください。介護予防研究として、高齢者自らがスマートフォンアプリを用いて様々な活動を実践するプログラムの大規模検証を行っています。自宅での活動を促進するために、アプリには外出支援機能や認知トレーニングなどの内容が含まれています。しかし、アプリを紹介するだけでは遵守率は向上しませんので、週2回は近所の公園に集まっていただき、IoT化したノルディックポールを使用しながら、行動変容手法を用いたアプローチを行っています。ウォーキングにIoTデバイスを導入した理由は、認知症予防のためにコグニサイズの様相を加えるためです。令和4年度の目標症例数の102%を割り付け完了しました。現在、経過観察中です。
 右下を御覧ください。高齢者の通いの場への参加を促すオンライン通いの場アプリの普及活動を継続しています。令和4年度はアプリの回収を行い、約8万人が既にインストールを行いました。身体機能、認知機能、コミュニケーションなどのライフログデータと、医療介護情報などの自治体データを統合したデータベースを今後作っていく予定です。
 次をお願いします。令和4年度に進捗した別の2つの研究を紹介いたします。左を御覧ください。ミクログリアPETイメージングのFirst in Human試験です。認知症などの神経変性疾患の新たな治療標的としてミクログリアが注目されていますが、評価のための信頼できる画像バイオマーカーがありません。そこで、私たちは新たな画像バイオマーカーとして、ミクログリア特異的な分子、Colony stimulating factor-1受容体をターゲットとしたPETリガンドNCGG401を開発しました。First in Human試験として、9名の健常者における有効性、安全性を評価しました。重篤な有害事象はなく、良好な脳移行性と薬物動態を認め、定量画像ではミクログリアの分布として矛盾せず、ミクログリアイメージングとして期待できることが明らかになりました。アルツハイマー病など、各種疾患における有用性を評価するフェーズへ進んできております。
 右側を御覧ください。動物実験で、視床下部骨格筋連関がサルコペニア・フレイル病態に与える影響の解明について紹介いたします。私たちは、脳の老化が骨格筋の老化を促進する一因になっている可能性を考え、視床下部のSlc12a8というNAD前駆体であるNMNを取り込むトランスポーターに着目しました。若齢個体においては視床下部におけるSlc12a8の発現を低下させると、全身性のエネルギー消費の低下、筋量、筋力、走行距離といった骨格筋機能の低下が生じることが明らかになりました。また、老齢個体ではSlc12a8の発現量が低下しており、発現量を回復させますと、加齢に伴う骨格筋機能の低下が改善されることを示しました。つまり、サルコペニア・フレイル病態には中枢性の要因があり、Slc12a8の活性化により、骨格筋の老化を改善できることが分かり、これらの結果はCell Reportに発表いたしました。
 1-2のほうへ進ませていただきます。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備についてです。実績は19ページから21ページに示したとおりです。基盤整備は確実に進展することができておりまして、自己評価はこれもSとさせていただきました。
 次をお願いします。まず、ゲノム医療推進基盤整備事業から説明いたします。メディカルゲノムセンターでは認知症のゲノム医療推進の基盤構築を目的として、データ産出と解析拠点の整備を行っております。左側ですが、NCGGバイオバンク試料から全ゲノム、オミックス情報を取得し、バイオバンクに格納し、研究への活用を実施しております。また、認知症のクリニカルシークエンスにも対応しており、令和4年度には290例の症例を実施し、臨床診断にも貢献しました。
 右側を御覧ください。令和4年度には、認知症例を含む305例の全ゲノム解析、4,462例の網羅的SNP解析、400例のトランスクリプトーム解析を行いました。累計では、右の表に示している情報を産出し、当センターのバイオバンクに格納、データベース化しております。これらの情報の一部は、AMEDが管理する公共のデータベースであるMGeNDに登録し、データの共有化にも貢献しております。さらにメディカルゲノムセンターでは、これら大規模格納データを用いたデータサイエンス研究基盤を整備しています。先ほど紹介しましたように、令和4年度には世界で初めてとなるレビー小体型認知症に東アジア人特異的な原因遺伝子変異を同定するとともに、認知症発症予測モデルの開発を進め、ゲノム医療の基盤構築と情報発信を行っております。
 次をお願いします。続きまして、バイオバンク事業とエイジングファームについて説明いたします。左側、当センターのバイオバンクは世界的にも珍しい老年病のバイオバンクで、東アジア系人種である日本人の認知症の試料・情報バンクとしては世界一の研究インフラです。令和4年度は1,181名の登録があり、5万6,425件の試料や情報を大学や企業に分譲しております。また、バイオバンク1万3,000人を超えるカタログデータベースを基盤として、認知症研究用のデータベースの構築を進めてきております。詳細な臨床データ、MRIなどの画像データのクリーニングと標準化を行い、加えてゲノムなどのオミックスデータも統合可能である数千人規模の認知症データベースです。令和5年3月までに1,662名のデータを整備することができました。また、バイオバンクの国際標準規格の発行を受け、ISOの認定に向けた準備を進めるとともに、スタッフの技術向上とバイオバンキング技術の資格取得を推進しております。
 右側を御覧ください。当センターでは自然加齢動物のエイジングファームを構築し、研究用加齢育成動物の供給システムを確立いたしました。飼育環境をコントロールすることにより、社会的ストレスを軽減した飼育を行っています。右の中段の図にありますように、当ファームではどの系統も半数以上が24か月以上生存し、安定供給ができる状態です。また、最大で34月齢まで寿命を延長している個体もあり、長寿研究にも供与可能です。令和4年度には24件の研究に加齢動物を提供し、外部機関にも提供を始めています。また、当センターの保有の動物用MRIを、文科省が推進する先端研究基盤共用促進事業に協力し、これまで欠けていた中京地区の研究用MRI共有プラットホームの連携機関として登録しております。
 次をお願いします。長寿医療支援ロボットの開発普及基盤整備について説明いたします。左を御覧ください。健康長寿支援ロボットセンターでは、長寿医療を支援するロボット機器の開発と普及開発を行っています。令和4年度には、新たにリビングラボを開設いたしました。リビングラボは室内と室外の両方の空間を再現できる設計であり、在宅と介護施設における次世代介護ロボットの検証、また臨床面における訓練評価の場として活用されています。当センターのみならず、他機関、企業の研究者も多く参加しています。支援ロボットとして転倒時の衝撃を大幅に低減できる懸架装置(寄り添いロボット)を導入し、安全に配慮した実証研究が可能です。アシストスーツ、ロボットアシストウォーカーなど、生活の場に適合させて、適切なロボットを使用することで、その人本来の能力を取り戻し、活力ある長寿社会を作ることに貢献してまいります。
 右側を御覧ください。市販化されている介護ロボットを介護施設に導入し、ロボット長期活用による入居者のQOL向上について、実証研究を行っています。令和4年度には、移乗支援ロボット、リショーネの長期活用により、介護者の介護業務の効率化と介護入居者の生活範囲の拡張を明らかに示しました。
最後に、介護ロボット普及のためのプラットホーム事業として、令和4年度はロボット開発企業との対応を33件行い、介護施設のロボット導入伴走支援は3件行いました。以上です。どうもありがとうございました。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、質疑応答に移りたいと思います。御意見等ございましたら、挙手のほうよろしくお願いいたします。
深見委員、お願いします。
○深見委員
 深見です。血液中のアミロイドβの測定とか、とても面白く拝見しました。これが多分、1-1に関してはメインの成果の1つだと思うのですが、メインではなくて、ほかの所から質問させてください。11ページのレビー小体型認知症のことについて、こちらも原因となる遺伝子変異を見いだしたということで、とても面白いと思うのですが、2つ見付けたものが東アジア人特有の遺伝子ということなのですけれども、レビー小体型認知症におけるこの2つの遺伝子の寄与率というのでしょうか、どのぐらいのものなのかというのをお伺いさせてください。このレビー小体型の認知症というのは、アジア人特有の疾患では多分ないと思うのですが、そういう意味でどのぐらいの寄与率があるのかというのをまず第1点としてお伺いさせてください。もう1つは後で伺います。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 御指摘のように、レビー小体型認知症はアジア人に特異な病気ではございません。ただ、海外ではパーキンソン病との関連を指摘する考え方もまだ残っていて、遺伝子的な解析が進んでいない状況ではございます。それで、今御質問の遺伝子異常の寄与率でございますけれども、まだ現在、それについてお答えするようなデータは出てきていないところです。
○深見委員
 では、これから期待したいと思います。もう一点なのですが、13ページ、ミクログリアのイメージングということで、CSF-1のreceptorをターゲットにしてミクログリアを見ていらっしゃるのですが、疾患との関係がよく分からなくて、ミクログリアを見ることで、何が分かるというか、何がパラメータとなって疾患との関係が分かるのかということがちょっとよく分からないのです。ここに、「脳幹・基底核・視床が高値」とか、その下にも書いてあるのですが、これとミクログリアの関係というのでしょうか、ミクログリアの何を見ると何の疾患が分かるのかということが理解できなかったので、ちょっと教えていただきたいと思います。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 ありがとうございます。アルツハイマー型認知症ではアミロイドタンパクとタウタンパクが原因であるとよく言われています。しかし、アミロイドやタウを抗体薬などで除去しても、認知機能の改善にはつながらないという報告がたくさんあります。アルツハイマー型認知症の発症機序には、何か他の機序が見逃されているかもしれないと考えられ、その可能性として炎症が重要ではないかという仮説がこれまでもありました。ただ、その炎症がどのくらい起こっているのかを測るメジャーがなかったのです。そのために、ミクログリアの活性を評価とするツールを作ることが本研究の目的でございます。
 ミクログリアというのは、御存じのように、白質も含めて脳内に広く分布しています。CSF-1受容体のPET画像にございますように、広範な分布が確認できました。今後は、認知症の疾患モデル、あるいはミクログリアを中心とした炎症性疾患でどうなっていくかを次のステップとして調べていく必要があると考えております。
○深見委員
 そうしますと、このイメージングではミクログリアの炎症を見ているという、そういう理解ですか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい、ミクログリアの中にあります特異的に引っ付くCSF-1受容体に特異的に結合するリガンドでイメージングをしているところです。
○深見委員
 そうしますとかなりブロードな、アルツハイマーにしろ、パーキンソンにしろ、そういった不特定多数な疾患で炎症を見るという理解になるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい、そうでございます。
○深見委員
 分かりました。
○土岐部会長
 それでは続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員
 前村でございます。いろいろな研究が進んでいて、大変興味深く聞かせていただきました。その中で13ページの視床下部骨格筋連関のお話ですが、サルコペニア・フレイルを予防あるいは改善することは非常に重要な領域かと思いますが、このSlc12a8、老齢個体で発現が低下しているのを回復するとサルコペニアも良くなったということですが、視床下部のどういう因子が上がることによって、サルコペニアが良くなったかというのはある程度分かっているのでしょうか。それと関連して、将来的な臨床応用を考えたときに、このトランスポーターであるSlc12a8を上げるというのはなかなか難しい手法になると思うのですが、どういう物質をターゲットに考えていらっしゃいますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 ありがとうございます。このSlc12a8がどういう機序で骨格筋の代謝や機能に関連するかということは、この研究だけではちょっと分からないと思います。本研究のグループは、NMNといわれる物質に着目した研究を行っております。Slc12a8はNAD+前駆体であるNMNを取り込むトランスポーターですので、人への応用を考えますと、NMNを投与することでSlc12a8機能を改善するという研究プロセスになっていくのだろうと思います。
○前村委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 根岸委員、どうぞ。
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いします。1-1と1-2の御発表ありがとうございます。大変先駆的な研究結果だったと思います。2点教えてほしいのですが、今御質問がありましたサルコペニア・フレイルのことなのですが、これから臨床への応用ということが段々考えられていくと思いますけれども、今考えられる方法としては、結局新しく発見された陽性細胞の回復を促していくというところまでだと思うのですが、それは例えば薬でということになるのですか、それとも運動するとかというようなことが考えられるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 もちろん運動は選択肢となっています。ただ、より特異的な薬剤あるいはサプリメントで機能改善できるほうが、普及させるためにはよろしいかと思っております。先ほどのNMNとはもう既に市販されているものですので、これを使うことで、高齢者のサルコペニア・フレイルに役立つ可能性を検証する必要があろうと考えております。
○根岸委員
 ありがとうございます。もう一点、24ページの長寿医療支援ロボットについてなのですが、新しい生活支援実証室をスタートさせているようですけれども、今非常に介護者の人材不足と介護者の腰痛の問題がかなり課題になっているかと思いますけれども、これは例えば施設の入所者のQOLの向上にこのロボットの開発が非常に有用だということは分かるのですが、他方で、介護する人たちにとってのメリットが何か結果として出ていれば教えてください。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 健康長寿支援ロボットセンターのセンター長をやらせていただいております病院長の近藤です。代わりにお答えさせていただきます。確かに腰痛は大きな問題でして、その腰痛に対して装着型ロボットが腰痛の予防に効果があるのは分かっていたのですが、それがどういったメカニズムで効果があるかというのは分からなかったものですから、このロボットセンターでは非常に深い所にある筋肉の活動も計測して、そこの筋肉の活動を補完することによって、腰痛の予防効果があるのではないかというようなことも解明しておりますし、あるいは、特に腰痛が生じるのは移乗介助といって、被介護者さんを持ち上げてベッドから車椅子に移すというような動作で問題が起こりやすいのですが、そこの移乗の動作を代行するようなロボットの効果の実証もやっております。実際、その代行するようなロボットに関しましては、月産40台とか、かなり普及が進んでおります。以上でございます。
○根岸委員
 ありがとうございました。
○土岐部会長
 神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
 神﨑でございます。同じく24枚目のスライドについてです。6NCの研究、多分基礎研究がやはり主体になっていると思うのですが、NCGGは基礎研究だけではなくて、こういった社会実装というのは重要な使命だと私は思っています。そういう意味で、このロボットの開発といのはかなり重要なのではないかと、個人的には感じております。
 そういった中で、右下に33の企業と開発を行っているという、これは大変すばらしいものだと思っています。ただ、恐らくこれはもう、今お話したように、社会実装を考えたときには、研究のための研究ではないはずなので、その辺について、これをどのように、はっきり言うと商業化するか、それから産業として輸出していくか、そこには国際競争ということも出てくると思うのですが、多分これはかなり迅速にやらないといけない仕事なのではないかなと思っております。その辺のビジョン、展望を是非お聞かせいただけますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 ありがとうございます。社会実装に関しましては、実際調べてみると、まだなかなか進んでいないのが現状でございます。特に見守り型といって、施設に入所されている方がときどき、本当はナースコールボタンを押していただきたいのですが、自分でベッドから離れてしまう場合に、動いたりするような系統のロボットは90%以上の割合で社会実装されていることになっておりますが、今申し上げましたような移乗を支援するロボットに関しては、まだ10%~20%というところで、施設での導入は進んでおりません。ですので、そこの部分に対して少し大きく介入して、施設、あるいは先ほど申し上げましたような移乗を代行するようなロボットに関しては介護保険のTAISコードを取って、在宅でもかなり使われるようになってきておりますので、そこの部分に関しても、できれば積極的に関与して、更に社会実装を進めていきたいと考えております。
 また、国外への輸出に関しましては、今申し上げた移乗用ロボットについては、アメリカの認可を取る方向で話が進んでおります。以上でございます。
○神﨑委員
 ありがとうございます。期待しておりますので、是非頑張っていただきたいと思います。
○土岐部会長
 どうぞ、藤川委員。
○藤川委員
 10年ぐらい前からいろいろ見せていただきはじめて、随分研究が加速化しているなと感慨深く思っております。11ページで、疾患研究には人種・民族のゲノム解析が重要だということで、この中では東アジアの人種というようなことがよく出てきていて、いろいろなデータベースやバイオバンクを構築され、12ページでは、34,230名の健常高齢者データベース構築、この数がちょっと素人として多いのか少ないのかがまず分からず、そして健常高齢者のデータベースを構築するということは、早い段階で健常者をスカウトしなくてはいけないのだろうなと思うと、これは早くやっていかなければいけないだろうなと思いますし、あとは23ページでも世界的にも希な老年病バイオバンクがあって、世界一の研究のインフラが構築されているということなのですが、この辺りも東アジア系の人種ということになると、近隣国に非常に大きな人口を抱えた国があるわけで、そういう所との戦いというか、よりどれだけ早くいろいろなことをやってきて、その研究成果を早く出して、そして先日も盗まれるというようなことがありましたけれども、その保護がどれだけできるのかというようなことにも非常に配慮しなくてはいけないと思うのですが、その辺りどのような体制とか、どのような見込みというものがあるのかを教えていただけますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 理事長の荒井です。某近隣国については、雇用の際に十分に注意しておりまして、現在は恐らくこの遺伝子などのような非常に機密性の高い分野においては、積極的な雇用をしていない状況かと思います。今のところ、確か某近隣国の方はいなかったような気がしますので、その辺りについてのセキュリティは担保しているかなと考えております。
 もちろん、某近隣国のほうが10倍人口が多いので、当然サンプル数も10倍多いと思われるわけでありますけれども、当センターの強みは、非常に良質な臨床データと一体となって遺伝子情報が保管されているということでありまして、正常、軽度認知症、認知症といった病態の非常に正確な情報がそろっているというのは非常に大きな強みだと思っておりますので、それについては当分の間、某近隣国には負けないと自負しておりますが、将来、10年後20年後に負けないように、しっかりと数も確保するとともに、質をしっかりと担保していきたいと考えております。
○土岐部会長
 それでは時間もございますので、続きまして「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目1-3から1-5について議論をしたいと思います。まず、法人のほうから1-3から1-5について説明のほうをよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 評価項目の1-3、医療の提供に関する事項に関して説明させていただきます。病院長の近藤と申します。自己評価をSとさせていただきましたが、スライド下段の指標の達成状況では、入院延患者数と病床利用率は目標に達成しておりません。これは後でも説明させていただきますが、一昨年度より感染症病棟を設定し、愛知県の他の医療機関を上回るレベルで、新型コロナウイルス感染患者の積極的受入れを行ったことが大きく影響していると考えられます。一方、平均在院日数は16.1日であり、手術延件数も2,915件となり、目標を大きく上回っております。
 次のスライドをお願いします。手術件数の増加は、白内障を中心に外来手術に移行できるものを増やして、人員、術場を効率的に使えるようにしたのが主な要因と考えられます。評定の根拠に関しましては、後ほど詳しく説明させていただきます。
 27ページを御覧ください。昨年度、新たに設置した摂食嚥下・排泄センターの設置とその取組です。左上段に示しましたように、超音波による便秘の状態の把握と、その情報を多職種チームによる治療ケアにつなげること、左下段の磁気刺激による舌骨上筋群の強化などの新しい取組を開始しております。
 スライド右側に、拡大するリハビリテーションニーズへの対応をお示ししました。コロナ禍であっても、高齢者に在宅での活動量の維持及び向上を図っていただくため、在宅活動ガイドを開発しております。これが非常に好評であり、感染症への対応や予防策について新たな知見が得られたため、改訂を行っています。また、リハビリ医療での知見の積み重ねにより、磁気センサーを使った指タップ運動の正確な評価により、MCIの段階で運動異常が出現していることを明らかにしております。今後、簡易な方法での認識のスクリーニングにつなげられるシステムの社会実装を検討していきたいと考えております。
 28ページを御覧になってください。もの忘れセンターで提供する最新の医療とケアに関して説明させていただきます。スライド左側上段、診療実績に関しましては、例年とほぼ同等でございます。その下段の家族教室の効果に関しては、RCTによる検証を行い、それをまとめた論文を発表して、Best Article Awardを受賞しております。
 右側に認知症の方とその御家族に対するリハビリテーションの取組を示しました。私どもはこれを脳活リハと呼んでおりますが、今年度新たに66名がリハを開始され、延べ4,483名に対してリハビリを提供し、現在毎週15クラスで継続的にリハを行っております。また、この参加者の中から当センターでの就労につながった方もおられます。
 29ページの左側で、引き続きもの忘れセンターの意義とケアに関して説明させていただきます。家族教室からもう一歩進んだプログラムである心理社会的支援プログラムを実施し、介入群でADLと家族との関係満足度が有意に改善するという結果を得ています。
 スライドの右側にお示ししましたのは、重点医療機関としてコロナ患者を受け入れた成果になります。受入れ患者の重症度は中等症Ⅱまでとさせていただきましたが、受入数は他の医療機関をほぼ全期間で凌駕しており、年度末までに総数で215名に達しております。一方、全例が高齢者であったにもかかわらず、死亡者はわずか1名でした。これは適切な管理を行うとともに、早期からのリハビリを行って、全身状態の悪化にもつながる機能低下を防いだことが大きく影響していると考えております。
 ただ、このような成果を実現するために、病棟の転換を行い、さらに医師、看護師、療法士など、大きな人的資源をつぎ込んだことが、先ほど申し上げました入院延患者数と病床利用率の目標を達成できなかったことにつながった要因になると考えております。もちろん、病棟でのクラスターも起こっており、そういう要因も関係していると思いますが、コロナ患者さんの受入れに積極的に取り組んだことに関しては、このような成果を上げられたと考えております。
 30ページにフレイル・ロコモ克服による身体的自立促進に向けた取組をお示ししました。スライド左側上段の診療実績に関しましては、例年と同等です。スライド左側下段に示しましたように、フレイル専門家の在籍する8大学、1施設とワーキンググループを立ち上げ、レジストリを更に拡大しております。スライド右側にお示ししましたような企業と共同しての開発を継続するとともに、下段にお示ししました日本医学会連合の「フレイム・ロコモ克服のための医学会宣言」の発出にも協力しております。
 31ページの地方包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実に関しましては、例年どおりの活動でしたので説明を割愛させていただきます。
 32ページに感覚器センターの取組をお示ししました。スライドの右側にお示ししましたように、感覚器外来での視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの五感を対象とした感覚器の包括的評価と、その高齢者における特徴をまとめ、感覚器評価アンケートから感覚器治療介入によるフレイル・認知症予防に向けた横断的高齢者医療モデルの構築に取り組みました。また、スライドの右側に示しましたように、これまでの角膜疾患に対する様々な取組を通じて、最終的に内皮細胞注入のビスノバ、口腔粘膜上皮の培養試験のオキュラル、サクラシーなどの再生医療製品を用いた医療の実現につながっております。
 33ページの治験・臨床研究推進体制の整備に関しましては、左側に示しましたように、臨床研究支援として、各種コンサルテーションを143件実施し、さらに昨年度からは常勤の生物統計家が勤務を開始しております。また、スライド右側にお示ししましたように、CLIC-D、Clinical Trial Information Center in Dementia、システムを充実させ、個人情報と紐付けられていない認知症レジストリのデータを、同意取得した上で登録し、創薬情報をタイムリーに紹介し、さらに製薬業と契約を締結して情報を提供しております。以上が評価項目1-3、医療の提供の事項に関する説明となります。引き続き、評価項目1-4について御説明いたします。
 評価項目1-4、人材育成に関する事項に関して説明させていただきます。35ページを御覧ください。スライド下段、指標の達成状況に関してですが、認知症初期集中支援チーム員研修、高齢者看護研修は、いずれも150%以上を達成しております。認知症サポート医研修に関しましては、達成度120%となっております。これらは、コロナ禍で構築したWebシステムに対面での研修を組み合わせることができるようになったためと考えております。このため、自己評価はAとさせていただきました。
 要因分析の評定の根拠に関しましては、後のスライドで説明させていただきます。
 36ページの認知症施策推進に向けた各種研修・専門医等の育成の実施に関しましては、左側にサポート医研修、右側に初期集中の実績をグラフでお示ししております。赤線で示しました年度ごとの修了者数ですが、左の認知症サポート医研修では、一昨年度よりも少し減少しております。ただ、年度当初の目標は達成しております。右の初期集中に関しましては、一昨年度を大きく上回っており、先ほど申し上げましたように、目標値の150%以上を達成しております。
 37ページです。引き続き、その他の事項に関して説明させていただきます。スライド左側上段の高齢者看護研修では、6講座で153名の受講を達成しました。中段の専門医制度への対応、レジデント及び専門修練医の育成に関しましては、新たにレジデント2名、初期研修医2名を迎えて研修を開始しております。さらに今後、若手の研究者のリクルートを図るため、当センターの職員が客員教授をしている大学の大学院生を対象に、リサーチ・アシスタント制度を設け、今年度になりましたが、4名が採用され、当センターでの研究を開始しております。その他の研修の成果に関しましては、スライド右側中段にお示ししました。以上が評価項目1-4、人材育成に関する事項の説明になります。近藤の説明はこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
○国立長寿医療研究センター平岩企画戦略局長
 続きまして、企画戦略局長でございます。私のほうからは、評価項目1-5について説明をさせていただきます。
 38ページをお願いいたします。医療政策の推進等に関する事項についてでございます。自己評価はAとしております。指標といたしましては、ホームページへのアクセス件数でして、令和4年度は目標を大きく上回った形になっております。これにつきましては、スマホで閲覧しやすく整備するとともに、SNSを活用した情報発信を進めたことが奏功したのではないかと考えているところでございます。なお、実績値を踏まえまして、令和5年度は目標値を年600万件にまで更に引き上げるということにしております。
 39ページをお願いいたします。政策提言・医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項についてです。こちらでは、(1)にありますように、在宅療養中の呼吸不全患者に対応する医療介護従事者を対象といたしまして、2つの指針と1つの支援ガイドを公表いたしました。内容については、緩和ケアやACPに関するものでして、これらは全て国内初となるものです。[1]の「在宅診療における非がん性呼吸器疾患・呼吸器症状の緩和ケア指針」につきましては、呼吸器症状の緩和の手段と実際について多角的に明示したものであります。[2]の「在宅における末期認知症の肺炎の診療と緩和ケアの指針」については、末期認知症の肺炎におけるオピオイドの使用方法など、ジレンマの多い局面での対応方法などを明示しております。[3]の「アドバンス・ケア・プランニング支援ガイド」につきましては、ACPについて適切な実施を支援する内容を定めているところでございます。
 (2)ですが、軽度認知障害、MCIの方や、その家族向けにハンドブックを作成しております。エビデンスに基づいた対策を分かりやすくまとめることを旨といたしまして、作成に当たっては当事者や家族にインタビューを行って、当事者目線で作成したところでございます。どこで診断や相談をすればよいのかという基本的な内容から、日々の行動による予防法や周りの人の接し方など、基本的な内容から始めまして、多くの疑問に答えるべく、平易な文章で、当事者に分かりやすく正しい情報を発信するものとして、好評を得ているところでございます。
 (3)につきましては、認知症の人と家族のQOL向上のためのリハビリマニュアルの発刊でございます。当センターで開発して実施しておりますプログラムなのですが、認知症の人が意欲的、主体的、継続的に取り組めて、かつ介護負担を軽減するためのリハビリプログラム、これにつきまして詳しく説明をし、活用いただけるようにしたものでございます。
 (4)は、薬をなるべく使わずに認知症を治療することに着目したガイドラインの発刊でございます。リハビリを含む非薬物的介入に焦点を当てたガイドラインです。こちらにつきましては、コミュニケーションに特化した治療方法のほか、音楽や動物、園芸といったものを活用した治療法について解説をしています。また、当事者のみでなく、家族や介護者へのケアについても大きく取り上げているところでございます。
 (5)につきましては、認知症に関する会議の開催でございます。ここには、認知症医療介護推進会議と、それから認知症医療介護推進フォーラムというものを特に書かせていただいておりますけれども、認知症政策推進大綱に関する取組について議論する推進会議であるとか、SOMPOホールディングスと共催するフォーラム、こういうものを通じて、関係者が一堂に集まって必要な取組について議論を行います。取組を進めていこうというものでございます。1,100名を超える方々に情報を発信することができたと思っております。
 (6)でございます。地方自治体との協力についてです。愛知県や市町村とともに構築した研修プラットホームにおきまして、eラーニングを行うとともに、その様子を動画で公開することによりまして、より多くの方に学びの機会を提供するという取組を行っているところでございます。また、地元の大府市が行う地域包括ケア関連事業への支援やアドバイスもさせていただいているところでございます。説明は以上でございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの1-3から1-5について、委員の先生から御質問、御意見等はございますでしょうか。では、私からちょっと抽象的な質問になってしまうのですが、高齢者に運動介入とか生活介入とか、いろいろな介入をしていったほうがいいのは分かるのですけれども、独居の方に通院でやってもらうのか訪問でやるのか、若しくはアプリ、でも高齢の方はアプリは難しいかも分からないですが、今後どういった方法が独居老人のフレイル予防に、どれがベストということはないと思うのですけれども、今どういう方向性で考えておられるのか、正解はないとは思うのですが、何かサジェスチョンを頂けましたらと思います。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今の御指摘の点はなかなか難しい点かと思っております。我々の目指す社会は、認知症も含めてですが、共生社会ということであります。最近の様々なプロジェクトでは、インクルージブなソサイエティを目指すという形で、いろいろなプロジェクトが走っているかと思いますが、今御指摘のあった独居で社会的に孤立している方をどのような形で支援し、フレイルや認知症にならないようにしていくかと、これは極めて大きな課題ではないかと思っております。
 日本だけではなくて、世界的な課題であると捉えておりますので、既にそういう状況に陥っている方に関しては、自治体と強力に組んで、自治体を中心に、いろいろなプログラムを走らせていかざるを得ないであろうと思います。すなわち個別訪問という手しか今のところはないであろうと思っております。今、我々がすべきことは、より早い段階から、アプリを使える段階から孤立しないような形で、システムを作り上げていくしかないと考えております。高齢者はもちろん我々のターゲットではありますが、より若い世代、更には子供のときからそういうアプリになじんで、孤立しないような社会を目指していく必要があるということで、これについてはいろいろな研究者が様々な取組をしているかと思っております。我々は、基本的には高齢者を対象としておりますが、できれば少し範囲を広げる形で、ほかの研究機関とも協力して、裾野を広げる活動をしなければいけないと考えておりますけれども、現時点では今の御指摘にお答えできるような確立した方法は見付かっていないということだと思います。何かありますか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 研究所長の櫻井です。理事長のおっしゃるとおりだと思っております。やはり高齢者の通いの場というのは様々な形体がありますので、そこにアプローチしていくというのが今できることかと考えております。以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、前村委員、どうぞ。
○前村委員
 前村です。先日、認知症基本法ができたのはこの分野の非常に大きな進歩だと思いますが、それに関連して2つ質問したいと思います。政策提言の所で、この基本法が成立することに関してNCGGが何か働き掛けをしてきたということはありますか。
 2つ目は、認知症サポート医の研修をされていますが、これはNCGGで研修したという修了証のようなものを出すような研修なのか、学会と連携して認定している制度なのか。あと、将来的に認知症医療が進んだときに、診療報酬にこれが結び付くような方向性を考えているかというのと、認知症の患者を診るのは、もちろん医師だけではなくて他職種が非常に重要になってくると思いますが、医師以外の方の研修というのは、どのような職種を考えていらっしゃいますか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 まず、私からお答えさせていただきます。この基本法に関しては議員立法ということもあって、当初より特定の政党の皆さんと議論をしてきました。専門家としていろいろな議論をさせていただきましたし、我々は老年医学会という所にも所属しておりますので、学会からもいろいろなサジェスチョンをさせていただいておりますので、センターと学会が一緒になって、議員の皆様といろいろな議論をさせていただいたということです。コロナ禍で少し止まってしまった面はあるのですが、コロナ前からそういった議論をさせていただきました。
 同時に、これまでオレンジプラン、新オレンジプラン、認知症政策大綱という形で、政府のほうでいろいろな施策が打たれてきましたが、それに関連して、これから詳しい説明をさせていただきますけれども、サポート医などのいろいろな人材育成、初期集中支援チームを含めて、政府が設定している様々なKPIに関して非常に重要な役割を果たしてきたと自負しております。医師はサポート医という形で人材育成を行ってきましたが、初期集中支援チームに関しては、看護師であったり、ソーシャルワーカーであったり、セラピストであったり、医師以外の様々な多職種の集まりに対して教育プログラムを提供して、人材育成を行うということをやってきて、それもかなり目標を上回る形で人材育成が進んでいるということです。
 ただ、コロナの3年間は対面での活動が制限されたということもあって、できるだけ早急にオンラインの仕組みを導入して、人材育成を図ってきたというところです。追加でお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい。認知症サポート医研修ですが、厚労省の委託を受けて、10年以上前から私どもが研修をするという活動を行ってきました。当初は、資格をお取りいただいても経済的なインセンティブがないということがあって、なかなか皆様の御理解を得られなかったという状況がありました。ただ、ここ数年にわたって、初期集中支援チームの必須メンバーとして制度上認められたものですから、いわゆるインセンティブが付いたということで、非常に多くの参加者が研修を受けることができ、このシステムとしてサスティナビリティを維持することができてきたというところです。育成する数については、認知症の大綱にKPIが細かく規定されており、中間段階でクリアしており、それを上回るペースで現在進行しているという状況です。以上です。
○前村委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 神﨑委員、よろしくお願いいたします。
○神﨑委員
 同じ分野で、お願いということになりますが、この認知症対策基本法はまだ大まかなことしか決まっていないと思うのです。正に今、厚労省にお邪魔しておりますが、厚労省から各地方自治体に施策を出していくという作業がこれから必要になってくるはずだと思っています。そうした場合に、今KPIという言葉も出ましたが、どれだけ具体的な施策を提示するのか、それに対して、どういった指標で効果判定するのかというところを、厚労省として多分やらなければいけなくて、多分それを実務としてNCGGが結構担うことになるのではないかと思いますので、その辺の具体策をちょっと急いでやっていただく必要があるのではないかなと、そんな気がしております。そこのところを頑張っていただきたいということでした。質問ではございません。以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 ありがとうございました。御指摘のように、認知症基本法は議会を通って承認されましたが、まだ施行されておりませんので、施行に向けては、我々ではなくて、恐らく厚労省がいろいろな施策を決めてKPIを設定されるのかと思いますが、その幾つかのKPIを我々NCGGが中心になって担うべきと考えておりますので、その辺は厚労省としっかりと連携を取って、役割を果たしていきたいと思っております。以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。続いて、花井委員、よろしくお願いいたします。
○花井委員
 スライドの30ページなのですが、左側にポンチ絵があって、フレイル・ロコモ克服に対する身体的自立促進の取組と。御センターは、先ほどから議論が出ているように、もちろんフレイル・ロコモもそうですし、認知症もそうですが、結局、皆が行く道なわけですよね。それで高齢化していって、病態というか、高齢化という現象が起こっていくわけです。東京都内でも一人暮らしの高齢者が恐らくあふれ出すという、そういうときに、言わば地域ケアシステムなのですが、病診連携を含めた形になっていくことが期待されます。
 それから、これまでも御センターがいろいろな形でガイドラインとかモデルを作って、研修とかもやっていただいていると思うのですが、もう10年以上も掛かっていて、その後、地域のいわゆる病診連携も含めたこういったことに対する専門性とか、そういうことについて、10年間で大分向上したという認識でしょうか。それとも、まだちょっと足りないなという認識でしょうか。もし、やはりまだまだだということであれば、今後、長寿医療センターとしてどの辺に力を入れる必要があるとお考えなのか伺いたくて質問いたしました。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今の点については、我々だけで全て解決できるとは思っておりませんが、地域包括ケアに関しては、やはり急性期から在宅まで、しっかりと高齢者を中心に、地元で、住み慣れた地域で、いつまでも生活できるような形の支援をしていくことが求められます。そのためには、急性期の医療機関だけではなくて、亜急性期のリハビリテーション、回復期であったり、在宅医療の充実をする、そしてかかりつけ医との連携など様々な病診連携、病病連携等、やるべきことはたくさんありますし、他職種連携についてもしっかりと進めていかなければいけないということで、まだまだ課題は大きいと考えております。政府のほうでも、かかりつけ医の役割というのをいまだに議論しているという状況です。当センターとしては、地域あるいは日本全体のモデルになるような病院の形態というものを目指しておりますので、現在は急性期、亜急性期を中心に医療を展開しておりまして、実際には地元の医療機関と連携しています。
 同時に、在宅にもリハビリを中心に派遣をして、アウトリーチをしておりますが、今後は在宅医療についてもより重要な役割を担うべきではないかと考えて、今後の我々の役割をしっかりと担っていかなければいけないと考えております。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 病診連携のお話を頂きましたが、今、訪問診療をやってくださっている地元の先生たちが、割とターミナルケア、あるいは本当に寝たきりの方の診療にどちらかというと偏って診療が行われております。当センターは、やはり地域包括ケアの中で、フレイル・ロコモの予防に取り組んでいかなければいけないというミッションがありますので、初病で回復期あるいは地域包括ケア病棟で治療を受けられた方に対して、地域に戻った後、その方々が機能低下しないような形で、リハビリだけではなく、新しい形の訪問診療を提供できないかということを、今ちょうど模索しているところです。それは、これから我々がNCGGとして提供できる新しい医療の形だと考えておりました。以上です。
○花井委員
 ありがとうございます。10年前から応募モデルばかりになってしまってもなということがあって、厚労省もポンチ絵を見飽きていて、10何年同じ絵を見て、何が変わったのかというところが非常に強いところがありますので、是非また今後ともよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 ポンチ絵は是非とも変えていただきたいと思っています。
○土岐部会長
 それでは、根岸委員、よろしくお願いいたします。
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。39ページのエンドオブライフケアについてお尋ねいたします。在宅で亡くなる高齢者が増えている現状がある中で、非がん性疾患のエンドオブライフケアの充実ということが非常に大事になっているだろうと思うのです。そんな中で、「在宅診療における非がん性呼吸器疾患・呼吸器症状の緩和ケア指針」、あるいは末期の認知症の緩和ケアに関する指針、こういったものが出されて、これを更に充実していってほしいなと期待しているところです。高齢者を対象にしたエンドオブライフケアの対象疾患を更に増やしていくべきだと考えているのですが、その辺りの今後の見通しあるいは見解があれば教えてください。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 最初の呼吸不全に関しては、実は課題が出て、AMEDに申請して、ガイドラインを作るようにということで応募して、当初は心不全も含めて我々は考えていたわけなのですが、細かいことを言いますと予算の関係とかで、結局は呼吸不全にとどまってしまったわけです。本来は、やはり心不全、腎不全も含めた臓器不全におけるエンドオブライフケアをしっかりと行わなければいけないという認識はありますので、いずれチャンスがありましたら、是非ともそういったガイドラインも作成するような形で努力していきたいと考えております。
 在宅を担っていただいている専門職は多いわけですが、残念ながらエビデンスに基づいてということがなかなか難しいということで、このガイドラインではシステマティックレビューをさせていただいて、現在、世界的にあるエビデンスをまとめて、どこにエビデンスが足りないかということを整理させていただいたということです。この領域は、国内のエビデンスが極めて少ないという状況ですので、そういった領域における研究をエンカレッジする意味でも、こういったガイドラインを発出するのは意味があるのではないかなと考えております。
○根岸委員
 ありがとうございます。もう1つ、診療報酬が付くか付かないかという辺りも、壁というか、大事な点になるのかと思うのですが、これは厚生労働省にお願いしたいところで、なるべく対象疾患を増やして、在宅で亡くなる高齢者のサポートが進むようにお願いしたいと思います。ありがとうございます。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 ありがとうございます。がんについては、たくさんではないけれども診療報酬が付いていますが、非がんについてはまだまだ診療報酬の手当がないということです。我々としては、しっかりとエビデンスを構築するというミッションがあると思っておりますので、エビデンスを構築しつつ、政策提言というか、診療報酬につなげていただくように努力していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○根岸委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、次に移りたいと思います。2-1から4-1です。「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」です。ではまず、法人から説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター平岩企画戦略局長
 41ページをお願いいたします。評価項目2-1の業務運営の効率化に関する事項についてです。自己評価はBとしています。指標の達成状況については、令和4年度の経常収支率は95.7%となっています。後発医薬品の比率は87.5%にまで上昇してきています。一般管理費については約9,000万円となっていて、令和2年度に比べて25.8%の増となっています。医業未収金の比率は0.0325%と、前年度より高くなっています。これらの要因について、順次説明していきます。
 42ページを御覧ください。一般管理費の増については、令和4年度に竣工した新病棟の整備に伴う委託費や水道光熱費の増加、こういったものが要因と分析しています。医業未収金比率の増については、コロナ診療に係る公費負担の手続に時間が掛かったことに伴う未確定分の増加が寄与したものと考えていますが、この影響については一時的なものと考えております。
 43ページをお願いいたします。左側が効率化による収支改善についてです。材料費等の削減については、後発医薬品の数量シェアが目標を上回る87.5%に達したところです。医業収益においては、白内障手術等の手術件数の増加とか、土日を含めた「365日リハ」や訪問リハの充実、こういったリハビリテーションの実施増などの取組を行い、対前年度比で2億2,500万円の増となる73億2,100万円となっています。また、一般管理費については、新病棟の整備に伴い総額が増えていますが、各種取組により削減に取り組んでいるところです。
 右側は、情報セキュリティ対策その他情報管理等についてです。令和4年度は、デジタル庁が示した方針に従い、長寿医療情報センターがPMO機能を担う形でPMOの運用を開始いたしました。また、引き続き職員による自己点検を実施するとともに、情報セキュリティ研修を実施いたしました。さらに、厚生労働省との連携強化として、CSIRTの情報セキュリティインシデント対処訓練を実施しています。これについては、当センターの対応等に問題ないことを確認いたしました。
 44ページは、収支についての補足として資料を付けています。運営状況の前年度との比較ですが、上側の医業収益については、対前年度比で2億2,500万円増となる73億2,100万円です。医業費用は、対前年度比で10億3,800万円増の81億9,400万円となっています。この結果、医業収支差はマイナス8億7,300万円となっております。収益増については、外来患者数の増及び入院と外来それぞれの平均単価の増が主な要因です。費用の増については、医療職を増やしたことによる給与費の増及び材料費の増、新棟の建設に伴う設備関係費の増が主な要因となっております。
 医業収支がマイナスとなっていますが、これについては医業収益は増えたものの、新病棟の整備に伴う医業費用の伸びがそれを上回ってしまったという状況です。なお、新型コロナ病床確保等の新型コロナ関連補助金が約8億500万円あります。これらについては、この表上は医業外収益に計上していますが、仮にこれを医業のほうに加味すると、医業収支差は約6,800万円のマイナスということで、少し額が圧縮されるところです。また、医業外収支については、研究収益の減及びそれに伴う委託費の減等により、プラス3億8,900万円となっており、こちらは前年度に比べて大幅に改善しています。しかしながら、医業収支のマイナスが影響して、総収支差はマイナス4億8,500万円となっております。
 45ページは、評価項目3-1の財務の改善に関する事項です。自己評価はBとしています。指標の達成状況ですが、総収支差がマイナス4億8,500万円でしたので、繰越欠損金も4億8,500万円増えて、9億5,400万円となっております。要因としては、コロナの影響とか新病棟の整備の影響、昨今の物価高の影響があると考えています。
 46ページは、外部資金の獲得についてです。対前年度比でマイナス7%の23億5,200万円となりました。大きな割合を占めるAMED研究費は安定的に推移していますが、厚労科研費や受託事業の減により、前年度から減少しています。
 47ページの左側は貸借対照表ですが、こちらは昨年度の新病棟竣工に伴う建設費について、財投借入れの分で現金及び預金が減少しており、これに伴って資産額が令和3年度の2.8億円から2.5億円へと減少しています。損益計算書については、先ほど説明したとおり、当期純損失が4億8,500万円となっています。右側の外部研究資金の獲得状況については、平成29年度からトレンドを棒グラフで示したものでして、高い水準を維持しています。なお、令和4年度で注目すべきものとしては、科研費の新規採択率が43%と国内7位に入った点を紹介させていただきたいと思います。
 48ページです。評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項についてです。自己評価はBとしています。49ページにあるとおり、ガバナンス強化に取り組むとともに、職場環境の整備については特に育児・介護と仕事の両立が可能な環境整備に努めています。制度改正の対応として、育児休業・介護休業法の改正に伴い、産後パパ育休制度を新設する等の対応を行っています。説明は以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。御質問等はございますか。なかなか厳しい状況と見受けられましたが、病床の稼働率とかは、今かなり回復基調にあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 現在、稼働率が低いことを改めて再認識して、各診療科の部長と相談して、細かいことから始めようということで、稼働率向上のための取組を開始しており、徐々にですけれども稼働率が回復しております。ですが、決して満足できるようなレベルには到達しておりませんので、今後更に努力を積み重ねていきたいと考えております。
○土岐部会長
 昨年と今年の病床の稼働率に関しては資料に数字はありましたか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今年のデータはまだこちらの資料にはないかと思いますが、昨年と比べて大きく改善していると。今の4、5、6、7に関しては、稼働率が8割弱ということですので。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 到達しておりません。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 顕著な改善はないと思っておりますが、今、病院長が申しましたように、細かな点も含めて、また病診連携は極めて重要ですので、コロナ禍でどうしても地域の先生方との顔の見える関係が構築できなかったことの反省があります。オンラインでもなかなか顔と顔の見える関係が構築できなかったという反省がありますので、その辺りをしっかりと構築することによって、地域の信頼を十分に回復する形を模索しておりますし、市民に向けた公開講座などを行うことで、地域もより拡大する形で病院に来ていただける患者さんを増やしたいと考えております。
また、来年にかけてですが、今年度恐らく認知症の新薬が出てくるという予想があります。そういった方に対する治療については、どこの診療機関でもできるというわけではないと考えておりますので、そういった患者さんの受皿として我々センターがしっかりと診断、治療、ケア、最期の看取りまでしっかりと役割を果たせるような体制を構築しつつありますので、そういった点でも改善が期待できるのではないかと考えております。
○土岐部会長
 ありがとうございました。前村委員、どうぞ。
○前村委員
 47ページの外部研究資金の獲得状況のグラフについてお伺いしたいと思います。令和2年までは順調に伸びているのですが、ちょっと漸減傾向にあります。1つの要因は、令和2年の受託研究が突出して多いのですが、これは何か大きな資金が入ったかというのがあるのでしょうか。また、これをよく見ると、科研費が先ほど新規採択率は非常に良かったという話だったのですが、令和元年から獲得額が漸減しているようなのですけれども、科研費の獲得額の増加に向けて何か対策は取られていますか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 まず、令和2年度については、私が主任を務めるJ-MINTという認知症の予防に関する大規模臨床試験に対するファンディングとともに、先ほどのバイオマーカー、幾つか大きなAMED研究が重なったと、そして調整費も少し頂いたかもしれませんが、そういうことが重なったかと考えております。このときは、非常にアンユージュアルなことではなかったかなと思っておりますので、令和2年度を無視ということではないのですが、除いていただきますと、右肩上がりというように我々は捉えております。
 科研費の採択に関しては、教育が極めて重要だと思っておりますので、研究支援室というものをAMEDに出向していた者や厚労省に出向していた者にメンバーになっていただいて、できるだけ細やかな支援、科研費の基盤はなかなか難しいかもしれませんが、少なくとも大型のAMED課題については申請資料をじっくりとそういった方に見ていただいて、アドバイスを頂くような体制を構築しています。
○前村委員
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
それでは、最後に、法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。まずは監事からなのですが、業務の監査結果を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター二村監事
 監事の二村でございます。監事の監査報告は、財務諸表等の25ページのとおりで、監査の結果において特記すべき事項は特にありません。ただ、令和4年度において、前年度と比べ大幅な赤字となっています。赤字解消について、陪席している運営会議、理事会等で常に話し合われていますので、今後も注視していきたいと思っています。以上です。
○土岐部会長
 ありがとうございます。続いて、理事長より経営改善等のコメントを頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 昨年度については、様々な要因が重なったと考えていますが、特に病棟の移転で、ほぼ2か月間、稼働率を下げざるを得なかったという状況がありました。また、コロナのオミクロンバリアントのまん延によってクラスターが発生したということで、どうしても入院制限をせざるを得なかったということがあります。当センターとしては、しっかりとコロナ病床を確保して、しっかりと診療を提供し、先ほど病院長から話があったように、できるだけ早期からリハビリテーションを導入することによって、機能低下が起きない形で退院していただくということで、地域の医療に貢献してきたと考えています。
 コロナの補助金は頂きましたが、残念ながら大きな赤字を出してしまい、これは至急、改善しなければいけないということで、先ほど監事からのお話もありましたが、2週間に1回運営会議を開催しておりまして、毎回経営状況についての議論をさせていただいています。各診療科における稼働率であったり、患者さんのデータも幹部の皆で共有して、どういった形での改善が可能かということについて毎回議論をさせていただいています。また、月に1回の理事会においても、外部理事及び監事の皆様から貴重なアドバイスを頂いているということですので、その状況でしっかりと経営改善に向けて努力していきたいと思っております。
 同時に、先ほどお話があった認知症基本法であったり、政府に対する様々な政策提言についても、研究開発とともにしっかりと行っていかなければいけないと考えていますが、しっかりと研究費の獲得状況にも鑑み、また運営費交付金についても、光熱費が上がったり、諸事情によって非常に困難な状況にありますが、運営費交付金が増えないという状況にありますので、そこは研究者に対する人件費というものを今後もしっかりと見直していく必要があると思っています。定年を迎えた部長が出ても、必ずしもそこをすぐに埋めずにいくというようなことも、今後しっかりと行っていかなければいけないと思っています。それで研究の活動性が落ちないようにしながら、人数を適正化していき、経営をしっかりと改善していこうと思っていますので、引き続き御支援のほどお願いしたいと考えています。
 また、今日はお話できませんでしたが、国際的な役割についても重要だと思っていますので、我々センターとしては、特にアジアの地域の若手の研究者をしっかりと育成したいということで、2年前からオンラインでのエデュケーションプログラムをスイスのジャン・ピエール・ミシェル先生、台湾の陳亮恭先生と私の3人が中心になって、プログラムを運営しています。そういったオンラインでのプログラムや対面での若手育成プログラムもすることでコミットしていきたいと考えていますので、その辺をしっかりと我々としては取り組んでいきたいと思っています。
 来年からは、私自身が国際老年学会のアジア・オセアニア地域の会長を仰せつかっていますので、アジア・オセアニア地域の老年医学、老年学をこれから盛んにするというミッションも私は担っていまして、各国の老年学、老年医学の育成というか、人材育成も含めて、学問が交流する形での役割も担っていくべきだと考えています。当センターのことだけではなくて、地域の医療の改善に向けてしっかりと尽力していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
 荒井先生、どうもありがとうございます。最後の国際のものは、来年のものでよく書いていただけたら、皆で評価したいと思いますので。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 ありがとうございます。
○土岐部会長
 皆様、よろしいでしょうか。それでは、以上で国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和4年度の業務実績評価についての審議を終了したいと思います。法人の方、どうもお疲れさまでした。
○国立長寿医療研究センター理事長
 ありがとうございました。
(国立長寿医療研究センター退出)
○土岐部会長
 以上で、本日の議事は終了いたしました。事務局から、今後の流れについて連絡をよろしくお願いいたします。
○難波企画調整官
 事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。本日御議論いただいた令和4年度業務実績評価については、本部会における御意見や、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえて、大臣による評価を行い、評価結果については、法人に通知するとともに公表させていただきます。委員の皆様におかれましては、先ほど申し上げましたが、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月8日に予定しているJHの審議も踏まえて、8月16日までに事務局宛てのメールにより御送付いただきますようお願いいたします。決定した大臣の評価については、委員の皆様にも共有させていただきます。
 次回、8月7日の9時30分より、この会場で成育医療研究センター及びがん研究センターの評価に関する審議を予定していますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○土岐部会長
 それでは、本日は以上とさせていただきます。本当に長い時間にわたり、御参加どうもありがとうございました。