第155回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和5年7月27日(木)14:00~16:00

場所

対面及びオンラインにより開催
(AP虎ノ門)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

会場

公益代表委員

  • 熊﨑美枝子
  • 髙田礼子(分科会長)
  • 宮内博幸

労働者代表委員

  • 中村恭士
  • 山脇義光

使用者代表委員

  • 鈴木重也
  • 出口和則
  • 増田将史

(五十音順、敬称略)

事務局

  • 美濃芳郎(安全衛生部長)
  • 松下和生(計画課長)
  • 小沼宏治(安全課長)
  • 松岡輝昌(労働衛生課長)
  • 安井省侍郎(化学物質対策課長)
  • 中村宇一(産業保健支援室長)
  • 藤田佳代(化学物質評価室長)

オンライン

公益代表委員

  • 砂金伸治
  • 新屋敷恵美子
  • 中嶋義文
  • 原俊之

労働者代表委員

  • 佐藤和幸

使用者代表委員

  • 天沼陽介
  • 及川勝
  • 大下英和
(五十音順、敬称略)

議題

  1. (1)「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」、「労働安全衛生規則及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」及び「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」要綱について(諮問)
    (ラベル表示・SDS 交付等の義務対象物質の追加関係)
  2. (2)石綿障害予防規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
    (除じん性能を有する電動工具に係る措置の見直し関係)
  3. (3)「経済財政運営と改革の基本方針2023」等について(報告)
  4. (4)令和4年労働災害発生状況について(報告)
  5. (5)「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」の変更について(報告)
  6. (6)化学物質の自律的な管理における健康診断に関する検討報告書について(報告)

議事

議事内容
○髙田分科会長 それでは定刻となりましたので、ただいまから「第155回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。本日は、労働者代表委員の袈裟丸委員、佐々木委員、奈良委員、門﨑委員、使用者代表委員の矢内委員が欠席しております。本日は感染症の防止対策として、対面及びオンラインの併用により開催することとしておりますので、御承知おきください。カメラ撮影等については、ここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。
 なお、本日は議題が多くなっておりますため円滑な議事に御協力をよろしくお願いいたします。まず、事務局からオンラインによるZoomの操作方法等について説明をお願いいたします。
○計画課長 事務局でございます。Zoomの操作方法の説明をさせていただく前に、事務局側に7月4日付けで人事異動がございましたので、新たに着任した方を紹介させていただきます。
 まず、労側委員に近い方から御紹介させていただきます。安全課長の小沼でございます。続いて、労働衛生課長の松岡でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、Zoomの操作方法について御説明を申し上げます。オンラインで参加されている委員におかれましては、ハウリング防止のため御発言されないときには、マイクをオフに設定していただきますようよろしくお願いいたします。また、御発言される場合には御発言がある旨をチャットに書き込み、分科会長から指名されましたらマイクをオンに設定していただいた上、氏名をおっしゃってから御発言をお願いいたします。このほか、進行中に通信トラブルなどの不具合がございましたら、チャットに書き込み、又は事務局に御連絡をお願いいたします。事務局から以上でございます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。議事に入る前に前回5月16日に開催されました第154回分科会の議題1「分科会長の選出及び分科会長代理等の指名について」に関して、一部訂正がございますので、事務局から説明をお願いいたします。
○計画課長 事務局の計画課長の松下でございます。今、分科会長から御発言、御説明がございましたが、5月16日に開催された前回の分科会の議題1におきまして、4月27日付けの委員一斉改選後のじん肺部会の委員名簿を提示させていただきました。それで分科会長より、じん肺部会の委員の御指名を頂いたところです。そのときの委員名簿の中で、労働者代表委員の一部について交代が正しく反映されておりませんでした。
 具体的には、前回の委員名簿において労働者代表委員の1人として、全日本港湾労働組合書記次長の松谷哲治様と記載しておりましたが、正しくは全日本港湾労働組合副中央執行委員長の畠山昌悦様でございます。訂正とともにお詫び申し上げます。訂正した委員名簿については、本日の資料7の名簿の資料になりますので御確認いただければと思います。今後、このようなことがないように再発防止に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。
○髙田分科会長 名簿の件は大変失礼いたしました。それでは改めて、資料7の委員の方々をじん肺部会の委員として指名いたします。
 それでは、続いて議事に入ります。議題(1)「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」、「労働安全衛生規則及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」及び「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」要綱について(諮問)」に関しまして事務局から説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長 化学物質対策課長の安井と申します。資料1-4に基づき御説明をさせていただきます。
 1枚めくっていただけますでしょうか。こちらの政令案ですが、大きく2つポイントがあり、まず1つは物質のリスクアセスメント及び「ラベル・SDS対象物質」の数を増やすというものです。こちらについては、専門家による検討会を経まして、ラベル・SDS対象物質、同時にリスクアセスメントの対象物でもあるわけですが、こちらについて、国が行う化学品の分類、いわゆるGHS分類の結果、危険性又は有害性があるものについて全ての化学物質を含めるということを行うための改正です。
 もう1点としては、法令の形式を改めるということです。従来は労働安全衛生法施行令の別表第9に個々の物質を列挙していましたが、こちらの方式から今回は、GHSに基づく危険性又は有害性物質全てであるということを外枠として規定した上で、個々の物質の名前につきましては、厚生労働省令に列挙するという方式に変更するということです。
 続きまして4ページ目です。具体的にどのように改正するかという内容ですが、まず左上が現状のものです。実際は物質が列挙されているわけですが、その中を分類すると、このようになるという内容です。
 まず①です。現在適用されている667物質のうち、その当時はGHS分類で危険性又は有害性があったのですが、現時点では危険性又は有害性の分類がなくなってしまった物質、粉じんによる物理的な作用による障害を起こすもので、従来から粉じん則で規定されたものにつきましては、このラベル・SDS対象物質から削除するというものです。
 ②は、667物質のうち、「A及びその化合物」として包括的に指定している物です。例えばマンガン及び無機化合物というような形で、包括的に指定している物が②です。③は、同じく667物質のうち、既にGHS分類で危険又は有害性がある物です。④は、令和4年の政令で追加された234物質です。こちらはGHS分類の結果、発がん性、生殖細胞変異原性、生殖毒性及び急性毒性という、比較的相対的に有害性の高い毒性分類、有害性分類で区分1とされている物については、早めに施行するということです。ここまでが全て物質として列挙されているもので、右側のほうに今回、外枠を規定するという形で定めるものです。
 ⑤は、先ほど申し上げた③と④の合計です。②は、従来と基本的に同じですが、「ウラン及びその化合物」だけが個別列挙のものから包括的物質のほうに移動しています。⑥は、今回新たに実質的に付け加えるものです。先ほど申しました発がん性など有害性が相対的に高い有害性区分以外の有害性で「区分1」とされた物です。こちらは別にお配りしている「別表1」に当たるもので、1,497物質があります。
 ⑦は、危険性又は有害性があるものと区分された物のうち、有害性の区分が1以外の物で、区分2、3や4のものです。こちらについて別表2の779物質が当たるということです。
 それぞれの施行日ですが、下に表があります。今回の政令が公布されたときに、①の7物質については、即日施行いたしまして対象から除外いたします。それから、令和6年4月1日に、既に改正されている政令ですが、④に掲げる物質を追加する予定です。
 令和7年4月1日は、今回の改正で追加されたものになりますが、ここで⑥の物質が追加されます。最後に、令和8年4月1日ですが、⑦に該当するものは適用猶予を終了するということで、令和3年3月31日までに危険性又は有害性があるものと区分されたものが全て対象となるという改正です。
 5ページは、それを条文に落とすとどういう形になるかということです。(1)のイを見ていただきますと、GHS分類の結果、危険性又は有害性があるものと令和3年3月31日までに区分された物のうち、次に掲げる物以外のもので厚生労働省で定めるものということです。これがメインで、先ほど御説明いたしました⑤⑥⑦です。
 一部除くものというのは(ア)から(ウ)までありますが、(ア)が条文上、法令上の技術的な問題でありまして、製造許可物質については、別の条文で「ラベル・SDS対象物質」となっておりますので、ここでは除くというテクニカルなものがあります。
 (イ)のアに掲げる物というのが、先ほど御説明いたしました包括物質で、②に該当するものです。こちらについては包括的に指定するということで、GHSのように1つ1つ名前を書かないということですので一旦ここで除いた上で、包括物質につきましては、新たに制定する別表9の中で列記する予定です。
 (ウ)は、粉じんによる物理的な作用による健康障害を起こす物質で、従来、じん肺法や粉じん則において別途の規制を行っている物につきましては、こちらの規制から除外するという趣旨です。
 ウとエにつきましては、それぞれの混合物で、ウについては、ア及びイに関する混合物、エにつきましては、製造許可物質の混合物ということです。
 (2)は、①に掲げる物質の削除ということです。(3)は、その他所要の改正を行うということです。下に※がありますが、製剤その他の物の含有量に関する裾切値があります。これは例えば0.1%未満であれば、混合物としては適用しないという下限値を設けるものです。従来は省令に定めておりましたところを厚生労働大臣が定めるということを政令上で規定する予定です。
 次のページは施行日です。令和7年4月1日に施行するわけですが、経過措置があります。(1)にありますように、ラベル・SDS対象物に追加する物質のうち、有害性が区分1以外のもの(4ページの⑦)につきましては、令和8年4月1日まで適用を猶予するとともに、(2)ですが、新たにラベル・SDS対象物に追加される物質については、追加後1年間はラベル表示に係る規定を適用しないということです。これは、在庫、あるいは既にマーケットに並んでいるものについて、全部回収してラベルを貼り直すというわけにはいきませんので1年間の猶予措置を与えるという趣旨です。
 続きまして8ページ、省令の関係です。改正の趣旨については、先ほどと同じですので省略します。改正の概要ですが、(1)が先ほど御説明いたしましたように、ラベル・SDS対象物質から除外される7物質について削除するというものです。
 (2)につきましては、従来、ラベル・SDS対象物の裾切値を省令で列挙していましたので、こちらに関する規定の削除を行います。
 (3)が今回の政令改正に直接関わるものですが、改正令に示されたラベルSDS対象物質を具体的に個別列挙するということで、お配りしている資料の別表3及び別表4に関わるものです。
 ※がありますが、こちらが高圧ガスの状態において危険性の区分のみに該当するものというのは、例えばアルゴンガスのように、化学物質そのものは特に有害性がないのですが、高圧の場合は危険であるというものについては、高圧の場合のみに義務を掛けるというものです。もう1つは、皮膚腐食性などの区分に該当しない金属で粉状以外の状態において危険性の区分に該当すると区分されていないもの、いわゆる具体的には金属のインゴットですが、触っても特に問題がなくて、粉状にもならないようなものについては、ラベルを貼る必要はないといった趣旨です。
 先ほどの説明の中で、別表1と別表2と申し上げましたが、実際は別表1が別表3で、別表2が別表4ですので、訂正させていただきます。
 お配りしている資料で、分厚い物質のリストがありますが、10ページは別表1で、いわゆる包括物質の一覧で33物質です。11ページが除外される7物質です。12ページからは⑥にあたるもので、延々と続きますが、46ページまであります。45ページ、小さくて恐縮ですが、一番下の※2に、「運搬中及び貯蔵中において個体以外の状態にならず、かつ、粉状にならない物で、危険物以外のものについてはラベル表示の規定の適用を除外する。」という規定が書かれています。
 47ページからは、⑦の物質に当たります。例えば48ページの39番に「アルゴン」というのがあります。こちらには高圧のガス状のものに限るという記載がありますが、先ほど申し上げました内容が個別に記載されているということです。説明は以上です。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございました。本件について御質問、御意見等のある方は御発言がある旨、オンラインの委員の方についてはチャットに書き込みをお願いいたします。会場の委員の方から何かございますか。出口委員、お願いいたします。
○出口委員 出口です。よろしくお願いいたします。御説明ありがとうございました。議題(1)については、特に異論等ございません。要望でございます。まず、自律的な管理を基軸とした新たな化学物質管理については、令和6年4月1日より罰則付きで義務化されます。しかし、製造するメーカーから提供されるSDSシートについては、使用すべき保護具の種類が記載されていないケースが多く、保護具の選択ができない状況が続いております。保護具の種類の記載を義務付ける等の対策を、至急、お願いいたします。
 また、化学物質管理者並びに保護具着用管理責任者の選任についても、令和6年4月1日より義務化されますが、推奨される講習を受講しても、SDSに保護具等の種類の記載がなければ判断できません。現状、製造メーカー、保護具メーカーに確認いたしましても回答を頂けないケースが発生している状況です。ラベル表示、SDS交付義務の達成状況についても7割程度の状況です。取扱事業者側には、罰則付きの義務だけが施行されることは納得いかないという声も聞こえております。是非、法改正の内容が周知徹底されるまでの数年間、また、定着されるまでの期間は、丁寧な指導・対応をお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございます。それでは鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。政省令の改正内容について、特段、異論はございません。法令上の規定方法が大きく変わりますので、厚生労働省におかれましては、現場への丁寧な周知・広報をお願いできればと思います。その上で、化学物質規制の見直しに関して、1点質問させていただきます。
 来年4月1日から新たに234物質がラベル表示、SDS交付、さらにはリスクアセスメントの義務対象となります。また、出口委員から御指摘がありました化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任義務、加えて、一定の物質における労働者のばく露程度を濃度基準値以下にする義務も施行されることとなります。
 これらに関連し、先に当分科会でまとめていただきました第14次労働災害防止計画において、国等の取組みとして、「リスクアセスメント及びその結果に基づく措置や、濃度基準値遵守のための業種別・作業別の化学物質ばく露防止対策マニュアルの作成支援を行う」との記載が盛り込まれました。このマニュアル作成状況について、事務局にお伺いしたいと思います。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかにございますか。そうしましたら山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 労働側の山脇です。内容については、特段、異論はございません。その上で、今後、事業者にはリスクアセスメント結果に基づくばく露低減措置をはじめとして、保護具の適切な使用、あるいはSDSの情報伝達の強化等々、これまで以上に主体的な取組を求められることになりますので、化学物質を取り扱う労働者が安心安全に働けるよう、政府として中小企業をはじめとする全ての事業者に対して周知徹底を行うとともに、引き続き必要な支援を行っていただくことを要望申し上げます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかにございますか。会場の委員はよろしいでしょうか。オンラインの委員から何かございますか。オンラインの委員からは御発言は特にないということでよろしいでしょうか。
そうしましたら、会場の委員から御要望と御質問がございましたので、そちらについて事務局から御説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長 私からお答えいたします。まず、出口委員からの御要望ですが、SDSに保護具の種類についての記載が十分でないという御指摘でした。こちらについては、特に手袋等の問題もございます。それから呼吸用保護具で、防じんか、防毒かという区別が必要となっております。現在、国の委託事業で、まず、手袋の選択についてどのようにすればいいのかというマニュアルを作成しております。呼吸用保護具については、もともと、いわゆるガス状のものについては防毒マスク、粉じんのものについては防じんマスクということで、そういった基本的な内容がSDSにきちんと記載できるように、メーカー団体と引き続き協議してまいりたいと考えております。
また、定着するまでの間については、丁寧な対応をしていただきたいという御要望についても、定着するまでの間については労働基準監督署においても丁寧な対応をするようにしてまいりたいと考えております。
 それから、鈴木委員からいただきました御質問については、業種別マニュアルと申しますのは、基本的に、建設業は毎日仕事をする場所が違う、あるいは作業内容が違うといった場合で、一般的なリスクアセスメントのように、あらかじめ測定をして、それに基づいてリスク低減措置を決めた上で作業することがなかなか難しいというものについては、業種別マニュアルを作成して、あらかじめ典型的な作業を抜き出して、その場所でどれぐらいのばく露があるかという測定を行った上で、それに基づいた措置をマニュアルに記載し、また、現場においては、そのマニュアルに基づいて措置を行えばリスクアセスメント及びその結果に基づく措置を行ったとする措置を、今回の省令改正に盛り込んでいるところです。
 こういったマニュアルが必要になりますのは、日々、作業が変わるような業種や業界ですので、まずは、建設業において建設業労働災害防止協会とも連携しながら、また、労働安全衛生総合研究所と連携しながら建設業向けのマニュアルを昨年度から作成しております。今年度も引き続き行う予定です。同じく、非常にたくさんの物質を、日替りのようにたくさん使うような、例えば、大学の研究室などのような所についても同じように、このマニュアルの作成については、現在、取り組んでいるところです。
 それ以外については、例えば、第三次産業でよく使われる洗浄剤などについても、業界団体にはこういったマニュアルの必要性について御説明しているところです。そういった業界と調整を行い、こういったマニュアルが作成されるように引き続き支援していく予定です。
 あと、山脇委員から御要望のございました、政府として中小企業への周知及び支援を図るということですが、周知についてはホームページ等でできるだけのことをする予定です。また、中小企業への支援については、例えば、相談窓口を設けるとか、専門家の派遣を行うといった支援事業を行っているところですので、そういったもので適切に支援をしてまいりたいと考えているところです。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。今の御説明で各委員、よろしいでしょうか。何か追加はございますか。よろしいでしょうか。そのほかに御意見、御質問はございませんか。それでは、議題(1)「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」、「労働安全衛生規則及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」及び「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」要綱について(諮問)」については、妥当と認めることでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○髙田分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で答申の手続をお願いいたします。
 次に、議題(2)「石綿障害予防規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長 続きまして、資料2-2に基づきまして御説明をさせていただきます。こちらは石綿障害予防規則の一部を改正する省令案で、除じん性能を有する電動工具に係る措置の見直しの関係です。
 1ページめくっていただくと、石綿則における石綿等の切断等作業等における措置がどういったものが義務付けられているかという概要です。まず、下側のほうを見ていただくと、まず石綿等の切断等の作業を行う場合においては、石綿則第13条で一般的な措置が義務付けられています。具体的には、石綿等を湿潤化する、それから湿潤化が著しく困難な場合については、除じん性能を有する電動工具の使用の努力義務ということです。この努力義務の要因となった経緯は、上の四角の中の※1の後に書いていますが、令和2年の石綿則改正時の専門家検討会での検討において、除じん性能を有する電動工具については、除じん性能についての調査研究が十分に行われず、さらに調査・検討が必要なことから、石綿等の湿潤化の代替措置として位置付けることは困難ということで努力義務としたという経緯があります。こちらについて引き続き検討を行ってきたところです。
 また左下のほうですが、石綿含有成形品のうち、特に石綿の含有量が多いようなもの、具体的には、「けい酸カルシウム板第1種」のようなものを切断する場合などについては、先ほどの13条の措置に加えて、作業場所の隔離と常時湿潤化の措置が求められるということです。あと右下ですが、石綿含有仕上げ塗材の電動工具における除去における措置についても、同様に作業場所の隔離と常時湿潤化の措置が義務付けられているということです。
 続きまして、3ページ目です。こちらについては、令和2年度の検討会の宿題事項になっているということでしたので、除じん性能を有する電動工具の使用について検討を行いまして、具体的には除じん性能を有する電動工具の有効性に関する文献調査、それから石綿含有粉じんの濃度低減効果の実証試験、そういったものを行って除じん性能を有する電動工具を用いた石綿等の措置の見直しについての検討を行ったということです。こちらのメンバーについては、この一覧のとおりですが、学識経験者と労働側と使用者側、それぞれから委員が出ています。
 続きまして、4ページ目です。こちらが文献調査の結果です。文献1~15までありますが、非常に様々な材料、それから様々な作業、また様々な種類の電動工具において、作業においては90%以上の低減率、要するに1桁落ち、そういったものが多く見られ、また粉じんの二次汚染など、そういったものの評価もなかったということです。
 このように、除じん性能を有する電動工具全般について、一般的に有効性が確認できるという結論になっています。ただ、この中で石綿そのものの文献がなかったということですが、7番目にRCF、これはリフラクトリーセラミックファイバーという人造繊維ですが、こちらについては十分な効果があるということが見られたということです。
 続きまして、5ページ目です。こちらは、より具体的にそれぞれの石綿則におかれている状況において、実際に除じん性能付き電動工具の試験を行ったというものです。作業内容については下の表にあるように、石綿含有スレート板の切断は、石綿則第13条が適用になる作業です。それから、けい酸カルシウム板第1種の切断は、6条の2第3項が適用になるものです。最後は、石綿含有塗材の研磨剥離ということですが、これは6条の3が適用になる作業で、それぞれ行っています。上の2つについては、まず湿潤化を行った場合と、湿潤化を行っていない場合で、集じん機があった場合と、ない場合、この3種類を行っています。最後の石綿含有塗材については、もともと防水のために使用している塗剤ですので、湿潤化の効果はないということですので、湿潤化の試験は行わずに集じん機あり、なしで行ったということです。
 6ページ目が、その結果です。まず石綿含有スレート板の切断については、総繊維数濃度及び石綿繊維数濃度、いずれについても除じん性能を有する電動工具の使用によって除じん性能を有さない電動工具と比較して濃度を15%以下に低減したということです。また湿潤化した場合と比較しても濃度40%以下に低減できたということです。
 それから石綿含有けい酸カルシウム板1種の切断についても、同様に除じん性能を有するものと有さないものの比較によりますと、濃度を40%以下、それから湿潤化した場合との比較においては60%以下の低減が見られています。
 それから石綿含有塗材の研磨剥離については、防じん機能を有するものと有さないものの比較において、濃度20%以下に低減できたということです。
 7ページには、具体的な数字があります。例えば、左上の表1の左上の「工具A」ですが、集じん機がない場合は654という数字があります。これは1cm3当たりの本数になりますが、集じん機を付けると46.88まで下がり、湿潤した場合は266.86ですので、集じん機がない場合と比べると0.07、それから湿潤化した場合と比べても0.18になります。そういった記載です。以下は省略させていただきます。
 続きまして8ページ目です。この文献調査と実証試験の結果を踏まえた上で、石綿等の切断等に関する規定をどのように見直すかということを御議論いただいた結果です。まず、上のほうにあるのが石綿則13条関係です。文献調査と実証試験を踏まえると、除じん性能を有する電動工具の使用は、石綿等の湿潤化と同等以上の粉じん発散低減効果を有するものであると認めるということです。石綿等の切断の作業においては、従来定められている「湿潤化」に限定せず、湿潤化、防じん性能を有する電動工具の使用その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置のいずれかの措置を行うことを義務付けるべきであるといった提言を頂いています。
 下のほうが、6条の2と6条の3の関係です。まず、文献調査及び実証試験から除じん性能を有する電動工具は十分な石綿等の粉じん発散低減効果があることが認められる。一方、石綿則第6条の2及び第6条の3については、湿潤化以外の措置が認められていないということです。この規定によりますと、常時湿潤化の状態にするためには、切断面への散水等の措置を講じながら作業を行う必要があります。つまり散水しながら電動工具を使用する必要があるということで、その場合においては当然、感電のおそれがあります。また湿潤化の代替措置として挙げられている剥離剤の使用については、有害性による健康障害が報告されています。そういった有害性があるということです。
 石綿等の切断等の作業においては、有効な呼吸用保護具、主には電動ファン付き呼吸用保護具ですが、こちらが義務付けられていることを踏まえますと、電動工具を使用する作業においては、除じん性能を有する電動工具を使用することによって、まず労働者の石綿のばく露を低減でき、かつ、感電の危険性や剥離剤の有害性を避けるということで、石綿以外の有害要因を含めた作業場の安全衛生状況が全体として向上することが期待できるということになっています。
これを踏まえまして、作業内容に応じて現場の状況に応じた最適な粉じん発散防止対策を作業場で適切に選択できるように、「常時湿潤な状態を保つ」に限定せず、常時湿潤化、除じん性能を有する電動工具の使用その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置のいずれかの措置を行うことを義務付けるべきであるという提言を頂いたところです。
 9ページ目ですが、同時に、留意事項について様々な御意見を頂いています。まず集じん機の性能ですが、これは当然、いわゆるHEPAフィルタという高性能のフィルタを使った集じん機でなければならない。それから、集じん機や電動工具が正しく使用されなければ低減効果が発揮されないということですので、取扱説明書等に従って適切に使用、あるいはフィルタの交換等の定期的なメンテナンスをきちんと行うべきであるという御意見です。
 それから第13条においては、その他の作業という形で、従来から封じ込め作業における固化剤の吹付け、剥離剤の使用、隔離(囲い込み)等が認められていますが、それは引き続き認めるべきである。それから6条の2及び6条の3において、剥離剤の使用を認めていますので、こちらについても引き続き認めるべきだということです。また、将来の技術の進歩により、湿潤化と同等以上の粉じんの発散を防止する新たな措置が開発された場合は、例えば水をかけながら切断して、その水を回収できるような機械というものが、今は研究開発の途上にあるわけですが、そういったものが実用化された場合は専門家の意見を聞いた上で当該措置も同様に、通達で位置付けるべきであるという提言を頂いています。
 最後、こちらの全ての委員から強調されたところですが、電動工具における切断や切断等を推奨するための改正ではないということで、石綿則の6条の2第1項の規定があるように、石綿等というのは切断等以外の方法、具体的にはボルトや釘などを外して、いわゆる手ばらしすることが原則であるということを変えるべきではないといった提言を頂いていますので、これについては引き続き周知する予定です。
 以上を踏まえまして、最後のページですが、諮問事項です。改正の趣旨については、先ほどと同様ですので省略します。2.改正の概要ですが、①が13条で、石綿等の切断の作業等において、実施が義務付けられている湿潤化の措置を、「石綿等を湿潤な状態のものとすること、除じん性能を有する電動工具を使用すること、その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」と改めるということです。こちらは条文の書き方で、A、Bその他のこれこれの措置というものについては、AとBは例示で、そのいずれかの措置を、若しくはその他の措置を取ればいいという条文構成です。
 ②ですが、こちらが6条の2及び3の関係です。義務付けられている常時湿潤化の措置を、当該「石綿含有成形品を常時湿潤な状態に保つこと、除じん性能を有する電動工具を使用することその他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」とするという諮問です。こちらの施行日については、令和6年4月1日を予定しています。説明は以上です。
○髙田分科会長 御説明、ありがとうございます。オンライン参加の方は、御発言時以外はミュートにしていただきますよう御協力をお願いいたします。本件について質問、御意見のある方でオンラインの委員については御発言がある旨、チャットに書込みをお願いいたします。まず、会場の委員のほうから御意見がありましたら。中村委員、お願いいたします。
○中村委員 御説明ありがとうございます。本件に関して、専門家検討会では、文献調査と実証検査によって、その有用性を判断したということで、今回の調査結果に異論はありません。ただ、国内における文献調査が行われていないことや、実証検査が実施されたのが1回のみであると聞いております。それらを踏まえますと、施行後にも調査や試験を改めて実施して検証等を行っていただくことが望ましいと思っております。この点について考え方、ご検討等を頂きたいと思います。その上で、先ほどの9ページの留意事項に記載されているとおり、あくまでも手作業、手ばらしが基本です。今回の改正の趣旨が正しく事業者に周知されるよう、ここが一番大切だと思いますので、そういった観点での取組をお願いしたいと思います。
 また、現場の作業状況によって、例えば湿潤化が効果的だったり、電動工具が適切だったりというように、それぞれふさわしい方法があると思います。湿潤化、除じん性能を有する電動工具その他について、その都度、作業状況によって優先順位が変わってくるかと思いますので、現場段階で分かりやすい方法を示すなどで、対応されるようにするべきではないかと思っています。
 次に、除じんフィルタについてです。性能の高いフィルタを使っていたとしても、吸引力の低下やフィルタの不適切な交換などによって期待される効果が発揮できないケースが起こることもあると思います。そういった点についても事業者に対して周知徹底をしていただければと思いますので、よろしくお願いします。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。御意見、御要望を頂きました。ほかにありますか。宮内委員、お願いいたします。
○宮内委員 御説明、どうもありがとうございました。私は、今回の除じん性能を有する電動工具を使うことによって、労働者の石綿のばく露の低減ができるということで、そういう方法が見つかったというのは非常に素晴らしいと思います。特に関連の危険性をきちんと予言できる、避けることができるものとしては画期的だと思いました。
 ただ、経験上の話ですけれども、手持ち式工具の一種として、いわゆるディスクグラインダーがあります。回転体の外側にカバーがあり、除じん装置が付いているような形状をしています。一般的な粉じんの発散抑制もできますけれども、回転の方向が非常に重要だと思います。よくあるのは、キックバックといって、逆回転させることができるようなスイッチがついている工具です。逆回転すると、ばく露が増えてしまったり、気が付かないうちに環境濃度が悪くなったという経験も過去にあります。配布資料の留意事項の中にも、正しく使用しなければいけないとはっきり書かれておりますので、問題ないとは思うのですけれども、フィルタの目詰まり等の話もありますし、その辺の注意点について細かく御指導いただくとか、文書で出していただくと良いのではないかと思いました。以上です。
○髙田分科会長 御意見、ありがとうございました。会場の委員から、ほかに御発言はありますか。オンラインの委員からチャットの書込みがありませんけれども、何かありましたら、チャットへの書込みをお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、ただいまの御意見について、事務局から御回答をお願いいたします。
○化学物質対策課長 私からお答えいたします。まず中村委員からの御指摘が4点ほどありました。まず、第1点目についてです。今回の報告書としては、文献と実証試験で十分に性能が確認できたという結論にはなっておりますが、御指摘のとおり、確かに国内文献が引用されておりませんし、試験についてもより詳しい試験を行っていく余地があると思います。こういったことが試験機関で行うことができるように科学研究補助金という制度がありますから、こういう関係のものを公募するなどを検討させていただきたいと思います。それから、手ばらしが基本であることの周知については、改正の趣旨が分かるように周知を図っていきます。また、状況に応じた電動工具の使用の方法とか、フィルタの交換といったメンテナンスについても適切に行うべきことを、リーフレットなどを使って周知していきたいと考えております。
 宮内先生からの御指摘については、グラインダーの回転方向ということですが、御指摘のように反対方向に回転させますと、もろに粉じんが顔面に当たるということもあります。ですので、そういったことがないようにするという点も含めて、適切に取扱説明書どおりに使用することについての周知を図っていきたいと考えております。以上です。
○髙田分科会長 御説明、ありがとうございました。中村委員と宮内委員、追加で何かありますか。よろしいでしょうか。そのほかの委員から何か追加でありますか。よろしいでしょうか。それでは議題(2)「石綿障害予防規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」については、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○髙田分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で答申の手続をお願いします。
 次に「議題(3)「経済財政運営と改革の基本方針2023」等について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○計画課長 安全衛生部計画課長の松下です。私からは、資料3に基づき、御説明をさせていただきます。例年ではありますが、今年も6月の上旬に、幾つかの政府方針・政府計画が閣議決定されております。この閣議決定されたものの中で、安全衛生分科会に関係する部分について、御説明・御報告をさせていただきます。
 まず、資料の2ページを御覧いただきたいと思います。「経済財政運営と改革の基本方針2023」というのは、いわゆる「骨太の方針」と呼ばれるものです。3ページは会議の概要なので説明は省略して、4ページを御覧ください。
 4ページの第2章、「新しい資本主義の加速」の1.です。「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成という中で、「多様な働き方の推進」という項目があります。中身が縷々書かれておりますけれども、下線を引いている所を御覧ください。メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を進めるという形で、ほかに兼業・副業の促進等も書いておりますが、そうした取組の一環として多様な働き方の中で、メンタルヘルス対策の強化を進めていくということが記載されているという内容です。
 続いて5ページを御覧いただきたいと思います。第2章の4.包摂社会の実現の「女性活躍」です。女性活躍の文脈の中に書かれている中で、下線の所を見ていただきたいと思います。「女性版骨太の方針2023に基づき」ということで、縷々書かれております。その下の下線の所ですが、「事業主健診の充実」などを行うことによって、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現するというのが、骨太に書かれている内容です。具体的に女性版骨太の方針の記述については、脚注の下の所に「関連する政府方針等」というのがあるかと思います。「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」というものです。この中で下線を引いている所を御覧ください。事業主健診に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加するとともに、産業保健体制の充実を図るといった記述があります。それを受けて、骨太の方針の上記の内容になっているということです。
 続いて、6ページを御覧いただきたいと思います。第4章の2.「持続可能な社会保障制度の構築(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)」です。この中で、我々安全衛生分科会に関係する部分として下線を引いている所ですが、PHRを自らの健康づくりに活用できる仕組みを整備するということで、検査結果などについては、PHRとして本人がマイナポータルを通じて情報を確認できる仕組みを整備していくという内容になっています。また、3番の下の所も毎年、骨太の方針の中に書かれているものですが、「建設工事における安全管理の徹底」について書いているという内容です。以上が骨太の方針の内容です。
 続いて7、8ページが、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」についてということで、8ページは会議の概要なので説明は省略させていただき、9ページを御覧いただきたいと思います。9ページのⅧの1.デジタル田園都市国家構想の実現の(1)の①規制・制度の一括改革と実証事業の実施です。今年3月の分科会においても、私のほうからデジタル原則に照らした規制の一括見直しの話を御説明させていただきましたが、それに関連する内容となっている規律です。具体的には、政府が所管する法令等で規定する目視規制であったり、4番目の常駐・専任規制といった規制を7項目に分類しております。この7項目のアナログ規制をデジタル技術で代替可能か否かという検証を引き続き行っていくということで書かれている内容です。ここも安全衛生分野が該当する部分ですので、引き続き対応を図っていくという内容です。以上が新資本主義の関係です。
 10、11ページで、規制改革実施計画について御説明させていただきます。具体的には12ページを御覧ください。これは個別分野の取組の「医療・介護・感染症対策分野」の中の(4)で、法定健診の項目の合理化という項目があります。具体的な中身や事項名についてですが、№19として「法定健康診断項目の合理化等」ということになっております。その内容ですが、定期健康診断(事業主健診)は、健診項目や各検査項目について、「医学的知見等に基づく検討の場を設け、検査項目及び検査手法について所要の検討を行い、結論を得る」という形になっております。
 右側の「実施時期」のaですが、令和5年度検討の開始となっており、令和6年度に結論を得るという形になっております。また、「規制改革の内容」のbですが、健診結果に基づいて実施する就業上の措置及び保健指導(事後措置)について、小規模事業場の実施が低調であることを踏まえて、異常所見者については、医師等から意見を聴取し当該意見を勘案して就業上の措置を講ずること又は保健指導の実施に努める必要があることを周知徹底するということで、これらが今年度上期の措置になっているという内容です。以上が規制改革の中身です。
 続いて13、14ページです。「デジタル社会の実現に向けた重点計画」という内容です。具体的な中身については、15ページを御覧いただきたいと思います。この重点計画は、6月9日に閣議決定されている内容です。第3の第3-1の1.デジタル社会の実現に向けた構造改革ということで、先ほどの新資本主義の所と同じアナログ規制の点検見直しといった内容がここにも書かれていますので、内容の説明は省略させていただきます。
 続いて、16ページですが、(3)マイナンバーカードの普及及び利用の推進です。具体的には、下線部分ですが、国家資格のオンライン・デジタル化の取組を進めるということと、併せて、技能講習の修了証明書など、国が提供する身分や資格証明サービスなどのマイナンバーカード・マイナポータルを活用したオンライン・デジタル化に取り組むという形で記載されています。これに関しては、次のページで、また説明させていただきます。
まず、16ページの下の下線を引いている所ですが、健診・検診情報については、40歳未満の事業主健診の情報は、マイナポータルを活用して御自身の保健医療情報を閲覧できる仕組みの整備を図っていくという形で書かれています。17ページは、先ほど少し申し上げたオンライン化の対象手続のうち、安全衛生に関する部分を抜粋しているものです。ここにある7つの手続について、オンライン化を進めていくことになっています。
 続いて18ページを御覧ください。これはオンライン化の実施の労働基準関係法令に基づく届出についての中身です。(1)取組内容の③で、安全衛生法の関連手続について、これも労働者死傷病報告について電子申請を進めていくということで、前回の安全衛生分科会でも御説明いたしました。こうした死傷病報告の電子申請の開始を行いつつ、開発を進めていくということが、ここに書かれている内容です。
 あと、下のほうに、これまでのオンラインの利用率の実績等々も書いており、参考として付けている内容です。雑駁ですけれども、事務局からの説明は以上です。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございます。本件について質問や意見等がある方は、オンラインの委員については、御発言がある旨、チャットに書込みをお願いいたします。会場の委員からはいかがですか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 鈴木です。御説明ありがとうございます。2点申し上げます。1点目は意見です。5ページの下、「関連する政府方針等」として御紹介のあった「女性版骨太の方針2023」には、労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断の問診に女性の健康に関連する項目を追加するとの記載が盛り込まれています。この問題は慎重に検討すべきものと考えます。御案内のとおり、一般定期健康診断の目的は、業務が原因で労働者が疾病にかかったり、その疾病が悪化することを防ぐことにあります。定期健康診断の健診項目あるいは問診項目は増加の歴史をたどってきていることもあり、制度の目的に真に合致したものでなければ、事業主の理解や納得は得られないのではないかと思うところです。
 「女性版骨太の方針2023」では、月経困難症や更年期症状等が例示されていますが、こうした項目が健康診断の目的にダイレクトにつながるのか、私自身、少々腹落ちしないところもあります。もちろん、女性の健康問題に対応して、女性の方々が安心して働ける環境を整えることは大変重要な課題だと認識しており、経団連といたしましても、働く女性のヘルスケアに関する会合を開くなどの取組を進めているところです。しかしながら、この課題に対しては、健康経営を進めていく中で、他の私傷病も含めて、その予防や増悪防止を図る取組をいかに増やしていくか、そのような職場を増やしていくことが大変重要だと考えています。
12ページの法定健康診断項目の合理化についても同様に、医学的知見等に基づく検討を行うに当たっては、健康診断の目的に真に合致しているかどうかという観点を十分に踏まえていただきますよう、お願いしたいと思います。
 2点目は質問です。17ページでは、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に関連して、オンライン化を実施する7つの行政手続が列記されています。これらの手続について今後、オンラインで完結できるようになるという理解でよろしいのかどうか、事務局にお尋ねしたいと思います。
 例えば、3つ目の「労働安全衛生法に基づく免許証の申請手続」は、e-Govによる電子申請が既に可能になっております。しかしながら、添付書類として、申請者の顔写真や免許試験合格通知書等を郵送で提出しなければならない実態があります。また、4つ目の「労働安全衛生法に基づく免許試験の受験手続」について、現在は書面による手続のみが可能であり、受験料は専用の払込用紙を用いて納める必要もあります。申請部分のオンライン化にとどまらず、添付書類や手数料納付を含めて一連の手続が電子的に完結できるようにしなければ、利便性は高まらないと思います。こうしたデジタルファーストの視点に立って、オンライン化を進めていただけるという理解でよいか、事務局にお尋ねしたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかに会場の委員からありますか。増田委員、お願いします。
○増田委員 増田です。御説明をありがとうございました。鈴木委員の意見にかなり重なるのですが、女性の健康に関連した事業主健診の充実についてです。まず、女性の健康に関連した項目の追加に関しては、昭和47年9月18日の基発第601号の1の34、第44条関係のくだりを紐ときますと、問診に女性の健康に関することをわざわざ追加するまでもなく、既存の法令で既にカバーしており、網羅可能と言えるかと思います。産業医として従業員の健診結果を常日頃チェックしておりますけれども、現行の健康診断でも、そうした内容を申告している労働者もおります。もちろん健診では申告せずに、面接指導などに際して申し出てくる従業員もおりますので、問診の精度を上げるのは引き続き課題かと思います。
 なお、労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断は言うまでもなく、労働者の健康確保措置のために事業者責任によって実施するものであって、健診結果は事業者が把握することが可能、むしろ把握しなければならないものとなります。ですので、問診項目として明確化した場合、例示されている月経困難症や更年期症状といった、女性にとってセンシティブな、機微な内容と感じる情報が一律、事業者側に知られることになりますので、資料の5ページの目的の箇所に記載がある、安心して働けることに直結するかどうかについては微妙に感じます。したがって、健診項目にわざわざ組み込む、明示することが女性の活躍につながるかどうかについては、慎重に検討していただくべきものかと考えます。個人的には、資料の末尾にも記載がありますように、産業保健スタッフを軸とした、健康相談体制の充実で対応するという方向性で進めていくのが良いように思います。
 12ページについては、今から7年ほど前に、定期健康診断の見直しについての検討会がありました。そのときは健診の内容は結局ほとんど変わらなかったのです。理由は、特定健康審査としての健診と、労働安全衛生法に基づく健康診断という、2つの異なる目的のものを1つの健診でやっているので、労働安全衛生の趣旨だけに沿った議論がなかなかできない、変更ができないということがあります。今後、見直しをされるに当たっては、できれば、その辺りの縛りを取って、本来あるべき健康診断についての議論のできる環境整備を厚生労働省にお願いできればと期待しております。以上です。
○髙田分科会長 御意見、ありがとうございます。山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 労働側の山脇です。個々の施策については今後、この分科会で議論されると思いますので、本日、個別の言及は避けますが、今、鈴木委員や増田委員からお話のあった点も含めて、三者構成の原則にのっとって、この分科会の中で慎重に議論を行い、結論を得ていくべきことについて改めて申し上げておきたいと思います。
○髙田分科会長 御意見、ありがとうございます。ほかに会場の委員から、御発言はよろしいでしょうか。オンラインで御参加の委員から何かありますか。今のところチャットの書込みがないようですが、よろしいでしょうか。それでは、今までの御意見について、事務局から御回答をお願いします。
○産業保健支援室長 産業保健支援室の中村です。まず、一般健康診断についてです。特に女性の項目を追加することに関して、慎重に検討すべきではないかとか、もう既存のもので対応できているのではないかという御指摘を頂いております。先ほど御説明させていただいたように、規制改革会議の中で、一般健康診断項目をどうするかについて検討せよということが決定されております。これからその検討会の準備を進めていくことになると思いますけれども、当然、結論ありきではなく、労使の皆様を含めて御意見を伺いながら、きっちりと慎重に検討を進めていきたいと思います。その結果は当然、この労働政策審議会安全衛生分科会で、また御審議いただくことが前提になると思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
○計画課長 鈴木委員から2点目として御質問があった、資料の17ページに記載されている安全衛生免許に関する手続について、今後オンラインで完結できるようにしていく方針か、そのような理解でよいかというところについて、一言で申し上げますと、そのような理解で進めさせていただきます。少し具体的に申し上げますと、行政手続について、政府全体として添付書類も含めてオンライン化を進めていくこととされております。そうした政府方針に基づきながら、しっかりと安全衛生免許に関する手続についても、オンラインで完結できるように進めたいと思います。
 また、山脇委員からは、報告させていただいた内容について、今後の具体的な進展があった際には、しっかりとこの分科会にも報告をという御指摘がありました。我々としても、そうした方針で進めていきたいと思っております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかに追加で御意見、御質問はありますか。よろしいでしょうか。
それでは、いただいた御意見も踏まえて、事務局から説明した方針で進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 続いて議題(4)「令和4年労働災害発生状況について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○安全課長 安全課長の小沼です。令和4年度の労働災害発生状況ということで、資料4に沿って説明いたします。2ページを御覧ください。最初は、令和4年の労働災害による死亡者数、休業4日以上の死傷者数について、経年的な変化を説明させていただくものです。
 死亡者数については、下のほうの赤い線になりますが、774人ということで、前年度である令和3年の778人より4人減少となっています。長期的に減少傾向にあることはグラフのとおりですが、近年においては、平成27年に初めて1,000人を切って以降も着実に減少しているところです。
 続きまして、死傷災害です。上のほうの青い線になります。13万2,355人ということで、前年度である令和3年の13万586人より1,796人の増加となっております。死傷災害については、リーマンショックの時期を除くと、おおむね12万人前後で推移してきておりますが、平成の終わり頃から、緩やかながら増加傾向が続いているように見受けられるという状況です。なお、死亡災害、死傷災害ともに、新型コロナウイルスによるものは除いた数値になっております。御参考ですが、新型コロナウイルス関係でいきますと、令和4年は死亡が17人、死傷は15万5,989人ということです。
 3ページをお願いします。業種別の労働災害の発生状況です。上のグレーの部分に○が描いてありますが、平成29年を基準年とした第13次労働災害防止計画では、全産業で死亡災害を15%以上減少、死傷災害を5%以上減少させることを目的として掲げておりました。死亡災害についての結果ですが、左側のグラフにあるとおり、平成29年の978人から令和4年の774人ということで204人減、率にすると20.9%の減少になりましたので、15%以上の減少という目標については、全体としては達成しているところです。
 その一方で、死傷災害については右側のグラフにあるとおり、同じく12万460人から13万2,355人へと、1万1,895人、率にして9.9%の増加となっており、目標を達成できておりません。このような増加となった要因ですが、なかなか難しいところではございますが、右側のグラフの下のほうに緑で囲んだ部分ですが、業種でいくと、小売業や社会福祉施設といった第三次産業での増加が目立っているところです。その緑で囲んだ下のほうに「その他の第三次産業」という区分がありますが、こちらも増加が目立っているところです。内訳を調べてみましたが、清掃・と畜業という業種で1,000人弱ぐらいの増加が目立つのですが、それ以外の小分類の業種では特に目立つ増加はないという状況です。
 続いて、4ページを御覧ください。事故の型別の労働災害の発生状況です。上のグレーの部分の○にあるとおり、死亡災害については、「はさまれ・まきこまれ」が減少しているものの、「墜落・転落」は増加しております。また、死傷災害については、特に「転倒」、「動作の反動・無理な動作」といったものの増加が目立っているところです。
 続いて5ページをお願いいたします。第13次労働災害防止計画の目標に対する確定値です。左側の死亡災害ですが、全産業については目標を達成しております。業種別に見ると、建設業については、目標である15%の減少に対し、最終的には13%の減少で目標は達成できておりません。同様に製造業についても、12.5%の減少ということで目標を達成できておりません。林業については、そもそも絶対数が少ないので何とも言えませんが、30%の減少で目標は達成できたという状況です。
 続いて、右側の死傷災害です。全産業については、先ほどの説明のとおりで、目標は達成できておりません。これ以外に、小さなグラフで描いてあるように、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店の4業種については、業種別の目標を設定しておりましたが、こちらも残念ながら目標は達成できておりません。
 こういう中で今後どうしていくのかということですが、死亡災害、死傷災害での目標達成に向け、第14次労働災害防止計画にもあるとおり、業種横断的な対策である自発的に安全衛性対策に取り組むための意識啓発ですとか、作業行動に起因する労働災害の防止、高年齢労働者対策といったものを積極的に進めることと併せて、例えば建設業であれば、「墜落・転落」のおそれのある箇所への囲いや手摺りの設置、フルハーネスの確実な使用、リスクアセスメントを確実に行っていただく。また、第三次産業であれば、ハード面、ソフト面の転倒防止対策や正社員以外も含めた安全衛生教育の推進といったことに取り組んでいただくといったことを、私どもとしても、しっかりと進めていきたいということです。
 続きまして、6ページを御覧ください。建設業における一人親方等の死亡災害の発生状況です。この数字は下の※にあるとおり、労働者を使用しないで事業を行う一人親方と呼ばれる方と、中小の事業主、役員、家族従事者が含まれるものです。
 死亡者数としては、左側の表1にあるとおり、令和4年は72人の死亡を把握しておりますが、前年の令和3年との比較でいくと22人の減少です。工事種別で増減をみると、その他の建築工事、具体的には電気工事、内装工事といった建築設備工事ですが、こちらで大きく減少となっています。
 右側の表は、事故の型別に整理したものです。非常に事故の型が多くあるので、これを分類すると個々の件数が少なくなってしまうので、分析はなかなか難しいわけですが、「墜落・転落」が多くなっており、その中で特に足場とか屋根からのものが少し減少しているということが見受けられます。災害の状況についての説明は以上です。
○髙田分科会長 本件について、御質問、御意見のある方は、オンラインの委員については、御発言のある旨チャットに書込みをお願いいたします。会場の委員から、御意見、御質問はございますか。出口委員、お願いします。
○出口委員 資料4参考6ページ、建設業の一人親方等の死亡災害発生状況概要について、表1、表2ともに、元請、下請を区別した数値となっているかは事前に確認させていただきました。本資料には区別されていない数値が用いられておりますが、集計時には、元請、下請別で集計されており、数値も公表されておりました。
 その中でお聞きしたいのですが、工事の種類別、災害発生状況、事故の型別・起因別等の集計されたデータから、先ほどお伺いしました以外に、何か分析された見解及び評価等がございましたら教えていただけますでしょうか。また、労災保険の特別加入別災害発生状況に関しましても、同様に見解や評価がございましたらお願いいたします。
また、今後ご検討いただきたい要望ですが、労災保険特別加入についてですが、こちらの資料につきましては、加入と未加入の2つの区分だけしかございません。ですが、本当に起こっている問題は、この特別加入制度そのものだと考えております。このデータでは、個人事業者の加入数等は全く分かりません。しかし、現実には、被災後に補償とならない加入となっているケースも発生しております。やはりデータの集計及び分析については、今後の施策のためになるデータ取りをお願いいたします。こちらについては要望でございます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかに会場からはございますか。中村委員、お願いいたします。
○中村委員 労働災害の発生状況について、この間も、第14次防の議論のときにも御説明いただいておりますし、おおむねそのときと変わりはないと認識しているところです。
 ただ、いずれにしましても、第14次防でも、かなり議論をしたと思いますが、労働災害撲滅に向けては、政労使が一丸となって取組を続けなければいけないと思いますし、労側としても、労側としてできる範囲で、この労働安全対策に取り組んでいきたいと思っています。
 その上で、先ほど出口委員からもありましたけれども、6ページに、建設業における一人親方等の死亡災害の発生状況の概要があります。現在、個人事業者等に対する安全衛生対策の在り方に関する検討会において、個人事業者の災害把握を検討していると聞いておりますが、いずれにしても他業種においても、このような同様の把握をした上で対策を講じていくことは非常に重要なことだと思いますので、是非とも、他業種においても同様のデータ等の整理や把握をお願いできればと思いますので、要望として申し上げます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。オンラインの委員からはいかがでしょうか。熊﨑委員、お願いします。
○熊﨑委員 御説明ありがとうございました。説明いただいた内容から、事故を収集して分類、統計処理することにより再発防止対策に資する非常に有用な情報になると思います。要望ですが、先ほど出口委員、中村委員がおっしゃったことと被るところではあるのですが、より対策を充実していくために、事故の直接原因のみならず、背景要因まで、リーチして調査・分類処理していただきたいと思います。例えば、情報共有がなされていなかったとか、タイムプレッシャーがあったとか、注意喚起がなされていたかなどの情報を基に、エビデンスベースの再発防止対策も充実し、労働災害の防止に至るのではないかと思うので、検討いただければと思います。
○髙田分科会長 ほかはいかがでしょうか。宮内委員、お願いいたします。
○宮内委員 休業4日以上の死傷者数で、転倒災害が令和3年から令和4年で若干増えていることが気になりました。
 今、お話がありましたように、複合要因があるかなということで、一つ一つ転倒災害プロジェクトが組まれて解決されるようにしていると思うのですが、なかなか難しい。これは高齢化の問題が背景にあるのかなと思うのですが、一つ、屋外作業と屋内作業をみたときに、屋内であれば建物の、特に床材が非常に重要かなと思っています。滑り性能試験で、床材については、JISで明確に滑り止めの規格もできていますし、ワックスなども非常にいろいろな種類があり滑らないようなものも出てきています。滑り抵抗係数というような形で数字化されているものもあるので、情報をどこかで積極的な出してもらえるとと中小零細企業などでも、選べるようになると思いました。
 それから屋外作業での建設の話しがありましたけれども、いろいろな所に出向いて行ってやるような場合、設備がいじれませんし、そもそもどこがどういう状況になっているかが分かりずらいです。その場合、そのときの状況認識と意思決定のトレーニングが要ると思っています。これはKYに入ると思うのですが、外国ではSituation Awarenessなどのトレーニングをやっておりますから、是非、本国でもいろいろな方法の教育を現在の5管理の教育に加えてもらうとよろしいのではないかと思いました。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ほかは、よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局から、今までありました御質問、御要望についての回答をお願いいたします。
○安全課長 まず、出口委員からありました一人親方の死亡災害の発生状況について、工事の種別ですとか、事故の型別、起因別、特別加入の状況、元請、下請といったものについて、見解があるかということでした。
 この調査自体は、そもそも都道府県の労働局であったり、労働基準監督署のほうで把握できた災害について集計しているということですので、全数を把握しているものではございませんので、行政機関として、この数字をもって何か評価するというのは難しいところです。こちらのデータにある72件について、内訳を説明させていただくと、以下のような感じということです。
 1点目の、どういう工事種別なのかということですが、こちらは72件中の49件、7割ぐらいの方が建築工事業です。土木で10件ということで、残りはその他ということです。
 事故の型ということですが、表にもありますが、墜落・転落が72件中の46件で、約6割は墜落・転落ということです。
 墜落場所ということで、起因物ということにもなってまいりますが、そういったものを少し調べてみますと、一番多いのは梯子から落ちているというもので、12件です。それから、屋根や足場から落ちたというものが、それぞれ10件ずつございます。あとは数件とか、件数が少なくなってきますので、基本は梯子、それから屋根や足場といった所から墜落・転落されたという事案が多くなっているということです。
 それから、特別加入の状況です。72人のうち、特別加入をされていた方は50人ということです。未加入の方が22人ということで、特別加入されている方が7割ぐらいです。ちなみに、令和3年ですと、特別加入の方は49人で、未加入の方が45人だったそうですので、そういうことでは、特別加入が少し増えてきている状況にはあるということです。
 最後に、元請とか下請の状況です。元請、要するに御本人が直接どこかからお仕事を請け負ったというものが、72人中の19人で、4分の1ぐらいです。下請になっているものが39人ですので、半数強といったところです。残りの3割ぐらいの方は、どういう形かというのは余りよく分からないという、正直に言うとデータ上はよく分からないといった状況になっております。出口委員からの御質問に対する数字でございます。
 それから中村委員からの御質問ですが、ほかの業種も含めて把握が必要ではないかということです。正に委員からもお話がございましたように、個人事業主の検討会において、現在、その部分が議論になっているところですので、そういった中で皆様方の御議論も踏まえまして、そういったものの在り方について、しっかりと検討していきたいということでございます。
 熊﨑委員からは、御要望ということで承っておきたいと思います。確かに、災害の背景といったところをもう少し深掘りできればいいわけでございますが、通常の労働者の災害であれば、当然災害調査という形で行って、先ほど御指摘のあったようなことも調査できるわけですが、その辺が現状では、必ずしも把握できるような仕組みになっていないということもありますので、こちらも個人事業主の在り方という検討の中、あるいはそういったことだけではなかなか難しいのかもしれませんけれども、場合によっては、労働安全衛生研究所といった所の力なども借りながら調べていくのではないかというようには思います。
 宮内委員からの滑り止めの話は、なかなか難しい話です。こちらも、労働安全衛生研究所でもいろいろと研究されていたと思いますけれども、滑りすぎるのもよくないのですけれども、滑らなすぎるのも、つまずく原因というようなこともあったりして、どの程度の滑りの度合いがいいのかということを、国としてお示ししていくというのは非常に難しいのだろうなと思っています。ただ、何もない所で転倒するという災害も一定程度ありますので、こういった部分も、今後きちんと科学研究費などを使いながら調べていくことは必要かと思っております。そういう中で対応させていただければと思っております。
○髙田分科会長 ただいまの御説明について、追加で何かございますか。御発言のあった委員の皆様、よろしいでしょうか。オンラインのほうもチャットの書き込みがないようですので、よろしいでしょうか。
それでは、本件につきましては、事務局から説明いただいた方針で進めていただけますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、「議題(5)「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」の変更について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○安全課長 引き続き、安全課から説明いたします。資料5を御覧ください。建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画の変更について、先月閣議決定されておりますので、概要を報告いたします。
 1ページをご覧ください。最初は、建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画が、どのようなものかについて説明したものです。この計画については、上の箱の1つ目の○にありますとおり、平成28年に議員立法として成立した「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」、一般には「建設職人基本法」と呼ばれておりますが、その第8条に基づき、政府として建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定めることになっているものです。
 2つ目の○にありますとおり、当初、変更前の計画は平成29年6月に閣議決定をされております。3つ目の○にありますとおり、建設職人基本法においては、少なくとも5年ごとに検討を加え、必要な変更を行うという規定がありますので、今回、国土交通省と私どもで検討を行い、計画を変更することになりました。
 下の箱については、建設職人基本法の計画の策定・変更に関する条文ですので、御参考ということです。一番下は、計画の変更に係る専門家等による審議の経過を時系列で並べたものです。本年2月から検討を始め、変更(案)を策定し、6月に閣議決定に至ったというものです。
 続いて2ページをご覧ください。基本計画変更の趣旨、視点というものです。大きく分けますと、前の計画が策定されて以降の状況の変化の視点と、前の計画に沿って対策を推進した成果という2つの視点があります。上の箱は、前の計画を策定して以降の状況の変化で、大きく分けて4点あります。1点目は、夏場の暑熱の状況や、自然災害等の緊急対応といったものの充実が求められるなど、気候変動の影響への対応が必要になっています。それから、肺がんや中皮腫の原因となる石綿の建材を用いた建築物の解体工事が増加していること。さらに、新型コロナの関係ですが、新興・再興感染症の拡大への対応が必要になっています。
 2点目は、これは建設工事に従事する方々について、女性や外国人労働者、高年齢労働者など、多様化していることへの対応が必要になっているというものです。3点目は、新・担い手三法、労働基準法の改正に伴い、工期の適正化などを通じた働き方改革ですとか、建設工事従事者の処遇改善を進める環境が整備されてきたというものです。新・担い手三法については、※に書いてある3つの法律になります。これについては、国土交通省が基本的には所管しています。
 4点目は、建設工事におけるデジタル技術の進展です。危険な作業を自動化した機械に行わせる、それから職場環境の改善などにもつなげることができるようになってきているといったことへの対応です。
 続いて、下の箱ですが、計画を推進してきた5年間の成果の反映になります。厚生労働省関係としては、1つ目の○にありますとおり、建設業における墜落・転落災害防止対策の充実強化に取り組んでまいりました。これを報告書として取りまとめ、次のページに出てきますが、計画変更の中に反映させています。なお、残りの2つの○については、国土交通省における提言になりますので、説明は割愛いたします。
 3ページをご覧ください。計画の主な変更内容になります。7点ありますが、このうち厚生労働省の関係する部分についてのみ説明いたします。最初に、4の建設工事従事者の処遇改善及び地位の向上の部分です。2つ目の○にありますとおり、建設業で働く人材の育成や、雇用の安定のための各種支援の仕組みを引き続き行っていくものです。例えば、若年者や女性の入職定着を目的とした見学会、それからインターンシップ、研修会などに対する助成を行う人材確保等支援助成金、同様に若年者の育成や熟練技能の維持向上のための実習などを行う人材開発支援助成金といったものが該当いたします。こちらは、職業安定局や人材開発統括官で所管されています。
 次に5の墜落・転落災害部分です。3つの○がありますが、1点目は屋根や屋上などの端の部分、はしご・脚立からの墜落・転落災害防止のためのマニュアルを作っていき、それを普及していくというものです。2点目は、足場点検の確実な実施のための措置の充実です。具体的には、足場点検者を指名いただく、それから点検実施の記録を残していただく、一側足場の使用範囲の明確化といったものになります。これらについては、本年2月13日に開催されたこの分科会で御了承いただきましたので、安全衛生規則が3月に改正されております。
 3点目は、足場の組立・解体中の墜落・転落防止対策の充実強化です。こちらについては、手すり先行工法に関するガイドラインを今後見直していくということで検討を始めるところです。
 次に、6の健康確保対策の強化部分です。気候変動の中での熱中症防止対策や騒音障害の防止、それから2030年頃にピークを迎えるといわれる石綿建材を使った建物の解体工事対策、それから先ほどのコロナではありませんが新興・再興感染症が発生・拡大した場合には、関係する政府方針に沿って適切に対応するということが書かれております。
 最後に、7の人材の多様化への対応です。女性の活躍促進、それから外国人労働者の増加への対応、高年齢労働者対策ということです。女性については、国土交通省でも女性の定着促進に向けた建設産業行動計画を作っておりますので、こういったものを踏まえながら私どもも連携できるところは連携して、女性の方々の現場環境の整備や仕事と家庭の両立、働き続けられるための環境整備について、私どもとしても必要な支援をしていくということです。外国人については、効率的・効果的な安全衛生教育手法の開発や、危険の見える化のためのピクトグラム、安全表示の開発などを進めていきたいということです。高年齢労働者については、皆様よく御存じのとおり、エイジフレンドリーガイドラインに基づいた対策を進めていくということです。ごく簡単ですが、以上のような変更がありましたので、報告させていただきます。よろしくお願いします。
○髙田分科会長 本件について、質問、御意見がある方は、オンラインの委員については、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。出口委員、お願いいたします。
○出口委員 出口です。よろしくお願いします。資料5の2ページを見ますと、1の基本計画策定後の状況変化への対応の4つ目の○には、「インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が危険作業等の減少や建設現場の環境改善に寄与することへの期待」とあり、3ページには、「3.建設工事の現場の安全性の点検等に関する記載の充実」として、「建設機械施工の自動化・遠隔化やロボットの活用等インフラ分野のDXにおいて、安全な工法等の研究開発・普及」と記載があります。これらに基づいた要望です。
 建設業では、車両系建設機械等の作業において、安衛則第158条に接触防止があり、立入禁止又は誘導者の配置が義務付けられています。近年、メーカーから接触防止安全装置が装備されている機種、また後付け等で装置を装備するケースも多く、労働者不足の中、有効な接触防止安全装置が装備されていれば、誘導者を配置しなくてもよい等の検討を進めていただきたいという声が挙がっております。
 更に、誘導者が車両系建設機械と接触し、被災する等の災害報告もあります。現状、接触防止安全装置には様々な機種があり、全ての装置が接触防止として完璧ではありません。しかし建設業としては大がかりな機械設備だけでなく、身近な労働者の安全、また労働者不足等をDXを用いて補う有効活用、また安全管理のルールも見直しを官民挙げて推進していただきたいです。
 また、これらを検討されているのが国交省で主管されている「建設機械施工自動化・自律化協議会」とのことです。こちらの協議会のメンバーには厚労省の労働基準局安全衛生部、また建設業の日本建設業連合会も出席されておりますので、是非、進言していただき、このような有効活用ができるように検討していただくようお願いいたします。要望でございます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。会場のほうは、ほかによろしいでしょうか。中村委員、お願いします。その後にオンラインの原委員にお願いしますので、お待ちください。
○中村委員 本計画の変更について異論があるわけではないのですが、要望です。今後、建設工事従事者のみならず、他の業種、職種においても、同様の基本計画が作成できないのかということです。例えば、DXの推進や高年齢労働者の安全と健康の確保、そして外国人労働者の労働災害への対応、どの業種についても、これらの点については新しく入ってきている課題だと思っています。林業などでも、DXや、これから外国人労働者を活用するというような検討も政府全体でされておりますので、是非そういった基本計画について、他の業種においてもお願いしたいと思っております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。オンラインの原委員、お願いいたします。
○原委員 原です。声は届いていますか。
○髙田分科会長 聞こえております。
○原委員 ありがとうございます。青森中央学院大学の原です。まず、この建設職人基本法における建設工事従事者の定義なのですが、法の第2条第2項には、建設工事に従事する者としか書かれておりません。この場合、建設工事従事者というのは多分、労働安全性法の労働者、それから例のアスベストの最高裁判決を受けて1人親方も含むと思うのですが。
 また、場合によっては、例えば小規模の下請けの事業者が職人を引き連れて社長自ら現場で作業をするといった場合にも、建設工事従事者に該当するのでしょうか。あるいは、ときには発注者などが現場に視察に行くとか、現場のリスクに晒されるような状態におかれた場合にも、発注者あるいは元請事業者も、この建設工事従事者に該当する可能性があるのかどうか、厚生労働省の御見解としてはいかがでしょうか。
○髙田分科会長 ありがとうございます。引き続き、及川委員も御発言御希望のようなので、お願いいたします。
○及川委員 及川です。資料5の3ページですが、1つは4番の建設工事従事者の処遇の改善の最後の○に「職業訓練の実施による事業主の支援等」があります。大変メニューを多く提示していただいて評価をさせていただきますが、執行面でどうかと思っています。どのような点が課題となっているのか、もし課題解決ができればもう少し普及ができるとお考えになっているのか、この豊富なメニューについての執行面についての課題と現状と今後についてのお話を頂ければと思います。
 それから6番に記載の追記とあるのですが、現在も熱中症、異常気象、地球温暖化ということもあると思いますが、追記ということに限らず、是非この熱中症についての問題の対策を大きく強化していただきたいと思います。
 最後に、その他の所に、東京オリンピック・パラリンピックの競技大会に向けた項目の削除とありますので、そのとおりだと思います。もし、今後予定されているような技能五輪を含めていろいろな競技大会のようなものがありましたら、そういったものを追記するなり、入れていただければと思っております。以上3点です。ありがとうございました。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ほかによろしければ、事務局から回答をお願いいたします。
○安全課長 まず出口委員のご質問ですが、確かに安全衛生規則第158条の第1項のただし書きの話になってまいります。こちらは、正に建設業界のいろいろな課題等もあり、その中でデジタル・トランスフォーメーション(DX)の活用推進は、私どもとしても理解をしております。お話にありましたように、国土交通省の検討会にも私どもは入っておりますので、先ほどもいろいろと多様な安全装置等が最近開発されているということでしたので、まずはそういう情報をしっかり確認させていただいて、その中で誘導員に代わって同等以上の安全性が確保できるのかということを、勉強させていただき、今後どうしていくのか判断していくのではないかと考えております。
 それから、中村委員の御要望ですが、こちらは基本的には建設職人基本法の法律に基づいて作っております。一応、そういうものですが、基本的に14次防の中に、ご指摘の趣旨のことは、基本的に全業種を網羅するような形で入っておりますので、現状はそういう中で私どもとしてはしっかり進めさせていただくものと思っております。
 それから原委員のほうですが、建設工事に従事する者は、1人親方や中小の経営者の方々も入られるのかということですが、こちらは含まれるということです。それから、発注者も含まれるということです。
 及川委員からの、訓練の執行状況ですが、こちらも先ほど少し申しましたように、私どもは直接は担当していないところですが、どういう課題があるのかというか、むしろそういう課題があるからこそ、こういう訓練メニューになっているのではないかと思いますので、私どもとしても少し確認をして、またお時間を頂いて別途、説明させていただくようにしたいと思います。
 あとは、熱中症の話などは、もちろん要綱があります。それから、2020東京オリンピック、パラリンピックは終わりましたが、その後で今後、技能五輪が国内で開催されるかもしれないというお話もありました。技能五輪ですので大規模な競技施設を作るようなことはないと思いますので、なかなか難しいとは思いますが、今後も大きなイベントがあるようであれば、そういったものは恐らく国交省のほうでもお考えになって入れていくことになっていくものと思います。以上です。
○髙田分科会長 ほかに、追加でありますか。
○安全課長 1点、誤った説明をいたしました。先ほどの原先生の御質問ですが、発注者は含まれないということです。すみません、説明が間違っておりました。よろしくお願いします。
○髙田分科会長 よろしいでしょうか。それでは、本件については事務局から説明いただいた方針で引き続き進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 大分時間が押してしまって申し訳ございません。次に、議題(6)「化学物質の自律的な管理における健康診断に関する検討報告書について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○産業保健支援室長 資料6を御覧ください。時間の関係もありますのでポイントだけ説明させていただきたいと思います。2ページを御覧いただきますと、来年の4月から施行される仕組みとして、今回の化学物質規制の見直しで、今後2,900物質ぐらいまでリスクアセスメント対象物が広がっていくということで、この物質を扱う労働者の健康診断をどうするのかということで、仕組みとしては、基本的には、リスクアセスメントの結果に基づいて事業者のほうで健康診断を実施するかどうかを決めて、健康診断の項目も医師が判断をするという仕組みになっております。もう1つは、濃度基準値があるものについては濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは健診をやるという仕組みになっているわけですが、具体的にどのようにやるかどうかを判断して、健診項目を決めていったらいいのかということについて、ガイダンスが必要であろうということで、専門家の方々に御議論いただいて、正に昨日の午後に取りまとまったという状況ですので、ポイントだけを御報告させていただきます。
 まず、3ページです。基本的な考え方として、今御説明したように今回のリスクアセスメント対象物の健診の基本となるのは、リスクアセスメント結果に基づいて、特に全員にやるということではなくて、リスクが高いということで必要があると認められた労働者に健診をやるという仕組みです。濃度基準値がある場合については、それを超えたおそれがあるときに実施するということが基本になるということです。
 3ページの下の流れの所にありますが、まず健診をやるかどうかを事業者のほうで決めていただいて、その後、実際にどういう健診項目でやるのか、どういう実施頻度にするのかは医師に判断をしていただくということです。それで医師の意見を踏まえて、どの健診をやるかを決めて、その後の流れは通常の健診と同様でございます。
 4ページを御覧ください。その健診をやるかどうかの判断を何を基にしていくのかということですが、ここにポツを7つ書いています。基本的にはリスクアセスメントの中で、その化学物質の有害性がどのくらいあるのかということと、ばく露の程度や、どのような作業方法なのかを勘案して、その労働者の健康障害リスクが受容できるレベルなのかどうかで判断をしていくということです。
 下半分ですが、こういう場合は健康診断の実施が推奨されますということで、ばく露濃度について、国が示している努力義務を満たしていない場合や、保護具や保護手袋などの使用方法が不適切である場合などについては、健診の実施が推奨されるということをまとめていただいております。
 それから、5ページです。濃度基準値がある場合の健診については、超えたおそれがある場合は実施が義務となっておりまして、基本的に、どのような場合がその義務の範囲になるのかということですが、そもそもの作業環境中の濃度が濃度基準値を超えていた場合は、局所排気装置などの工学的措置や呼吸用保護具などで、ばく露を防いでいくことになると思いますけれども、そういった呼吸用保護具の使用が不適切であったり、局所排気装置が動いていなかったなども含めて工学的措置が不十分であったりした場合については、ばく露が超えていたおそれがあるので義務になるだろうということです。それから漏洩事故などで大量ばく露した場合も該当するのではないかということをまとめていただいております。
 それから、5ページの下半分の実施頻度についても、今回は、今の特殊健診のように半年ごととは決めずに、一応、目安として、ものによって6か月から3年ごとぐらいで考えてはどうかというのが専門家の御意見です。急性毒性があるような場合は半年ごと、発がん性があるようなものについては1年ごとで、それ以外のものは3年ごとぐらいが目安になるのではないかという御提言を頂いております。濃度基準値を超えてばく露した場合は速やかに実施ということになっております。
 それから、6ページで、健診項目をどう決めていくのかということですが、基本的には濃度基準値があるものは、それを決めたときに集めた有害性情報も参考になると思いますし、それ以外のものについてもSDSに記載されている有害性情報を基に決めていく、歯科健診については、歯に有害性のあるものというのはGHSの中から幾つか拾われていて、今回検討した結果、新たに5物質は対象にする必要があるのではないかという御提言を頂いております。
 6ページの下半分ですが、項目自体は医師が決めていくことになるのですけれども、基本的には、まずは業務歴や作業条件や自他覚症状の調査などを行い、必要な場合には、標的とする健康影響のスクリーニングをしていくことになるのではないかということです。
 第4項のほうは、高濃度のばく露の状況だと思いますので、特に短時間濃度基準値を超えた場合には急性影響を見ていき、それ以外の「八時間濃度基準値」を超えているような場合は、先ほどと同様で、問診などによってみていきながら、必要に応じて生物学的モニタリングをやっていくなどということが考えられるのではないか。歯科については、基本的に歯科医師による視診でいいのではないかといったまとめを頂いております。
 最後、7ページになります。今回、配置前や配置転換後の健診というのは制度化されていないのですが、配置前は一般健診などで得られた情報が参考になるのではないかということで、配置転換後については、特に遅発性の影響があるようなものは医師の判断で続けていくことも考えられるのではないかという御提言を頂いております。
 それから、リスクアセスメント対象物健診は、リスクが高い場合に限ってやるものですので、それで引っ掛からない労働者は必要に応じて一般健診の中でフォローしていくということも考えられるのではないかということです。それから費用負担については、基本的には特殊健診と同様の考え方で、自業主負担が基本になるのだろうということをまとめていただいております。
 最後に一番下です。特定業務従事者健診ということで、化学物質については年2回で、一般健診と同様の項目の健診をやることが、今は義務付けられているのですけれども、今回、リスクに応じて化学物質の健診はやるという考え方に統一していくべきだろうということで、化学物質に関するこの特定業務従事者健診というものは廃止すべきだという御意見を頂いております。今後、この検討会報告書を踏まえて、政府のほうでガイドラインをまとめて、この分科会に、また御報告をさせていただきたいと思っております。以上でございます。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございました。本件について質問、意見がある方は、オンラインの委員につきましては御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。会場の委員から、増田委員、お願いいたします。
○増田委員 増田です。御説明ありがとうございました。2点、お伺いさせてください。第3項の健診の要件と4項の健診の要件は重なりますでしょうか。例えば、4項の対象になったらもう3項のほうはやらなくてもいいのかとか、そういう考え方になるのかどうかということをお伺いできればと思います。
 あと、もう一点が、健康診断を実施したら、恐らく一定の年数分の記録を残すということになると思うのですが、実施しなくてよいとなった場合も、実施しなくてよいことになったという記録は残さないといけないことになるのかという点をお伺いできればと思います。
○髙田分科会長 御質問、ありがとうございます。ほかに会場の委員から。山脇委員、お願いします。
○山脇委員 3ページに基本的な考え方が記載されています。この2つ目の○に記載のとおり、化学物質による健康障害を未然に防止するという観点に立つと、ばく露そのものをなくす、あるいは低減させることが基本であるということに取り組んでいただくことが、重要であることを改めて強調しておきたいと思います。
 そのためには、前提となるリスクアセスメントがきちんと行われること、そしてリスクアセスメント結果に基づいて適切な対策が行われることが何より重要です。
 一方で、令和3年の労働安全衛生調査の結果を見ると、表4から引用しますが、52条に該当する物質について、全てリスクアセスメントを実施している事業所の割合は約7割にすぎません。また別の問題として、労働者数50人未満の小規模事業場では産業医の選任義務はなく、実際に選任されている例も多くないに聞いております。
 今後、対象物質が3,000近くにまで拡大される中、リスクアセスメント実施率を高めることと、そのリスクアセスメント結果を適切に分析し、健診につなげていくという仕組みが構築できなければ、仮に、この健診の仕組みだけできても十分に機能させることは難しいと考えています。今後作成されるガイドラインが事業者にとって使いやすく、かつ実効性の高いものにしていただくことが、労働者保護の観点から大変重要だと思っております。
 併せて、7ページの一番下に、特定業務従事者健診の廃止が記載されておりますが、単に廃止ということではなくて、リスクアセスメントの定着状況も勘案しつつ、慎重に検討していくべきと考えております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。会場の委員、ほかにはよろしいでしょうか。オンラインのほうもチャットの書き込みはないようですので、そうしましたら、今までの御質問と御要望について御回答をお願いします。
○産業保健支援室長 まず、増田委員から頂いた3項と4項の関係なのですが、基本的に濃度基準値があるものについて、超えてばく露した場合は4項で健診の実施が義務ということになりますので、基本的に濃度基準値を超えていないような場合は義務にはならないということだと思いますけれども、事業場のほうで、健康障害リスクを受容できないということで、自主的に実施するという判断まで妨げるものではないという、そういう関係でございます。それから、記録については実施した場合の記録の義務となっておりますので、実施していない場合まで、全て何か記録を残していくというものではございません。
 それから、山脇委員のほうから頂きましたが、御指摘のとおり、この仕組みはリスクアセスメントをきちんと実施することが大前提になっておりますので、その適切な実施を徹底していくということは、対策課とも連携しながら、しっかり進めていくということだと思います。
 それから、特定業務従事者健診については、今回、新しいリスクアセスメント健診という仕組みを作ることとの整合性の観点から、専門家の方々からは、これをあえて残さなくてもいいのではないかという御提言を頂いているのですけれども、今後、仮にこれをなくすとなると省令改正になっていきますので、また当然、この分科会で御審議いただくということになると思いますが、どのような方針でやっていくかについては、しっかりと検討させていただきたいと思います。
○髙田分科会長 ありがとうございます。今の回答で、山脇委員のほうはよろしいでしょうか。ほかに追加でございますか。よろしいでしょうか。
そうしましたら、今までの御意見、御要望を踏まえまして事務局のほうで、御説明いただいた方針で進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。時間が過ぎてしまって申し訳ございません。これで全ての議題を終了いたしました。本日も熱心に御議論いただきましてありがとうございました。本日の分科会はこれで終了いたします。お忙しい中、本当にありがとうございました。暑いので気をつけてお帰りください。