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第10回新しい時代の働き方に関する研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和5年7月11日(火) 10:00~12:00
場所
AP虎ノ門 Aルーム
議題
企業からのヒアリング
議事
- 議事内容
1 企業からのヒアリング 議事概要 A社(広告業)
○基本的に事業や人は全て内部育成することを優先しており、人事においては一貫性を大事にしている。
○2000年頃には退職率が3割くらいあったが、2003年頃、いわゆる成果主義問題が盛り上がっていたタイミングで、短期的な実力主義や成果主義というのは長期的には会社に合わない、中長期で会社を伸ばすのであれば人も大事にしようという意思決定があり、あえて長期雇用を打ち出した。そこから人事の専門部署をつくり、2008年頃から人事が経営チームに入り、どんどん形が強くなった。退職率も下がった。
○社員と会社の関係性を強くするポイントとして、⑴目指すべきビジョンやミッションが明確になっているか、かつ、それが入社1年目や2年目の社員まで浸透しているか、⑵横の繋がり、⑶表彰により個人に光を当てる、の3点を大事にしている。
○横の繋がりについては、社員同士の関係性を良くする投資を意図的にやっている。繋がりが増えることで情報の流通が進む。知的労働は知恵の情報共有が非常に重要なので、横の繋がりのための投資は大事。また、信頼関係が強ければ不正を防ぐことも出来る。
○若手にとって、自分の存在意義、認められているか、といったことの価値が非常に上がっているので、個人に光を当て、褒める・認めるということは極めて重要。半年に一回、盛大に表彰を行い、個人一人一人に光を当てている
○能力の高さよりも一緒に働きたい人を集めるという採用の方針を明文化している。能力主義の採用では、結果的にカルチャーが合わない人を採用することで組織が混乱してしまう。「素直でいい人」を採用基準としているが、具体的には、実際に議論するときに、他人から別の意見が出たときも受け止めて前に進めるかどうかという変化対応力を見極めている。
○社内で「禁止」という言葉を使わないようにしているが、若い人にチャンスを与えるため、年功序列だけは禁止している。
○失敗した人に再チャレンジができる環境を提供するのは経営の仕事であると捉え、その事例を増やすということを意識して行っている。
○社員の力を引き出すポイントとして、「個のやる気の尊重」をとても重要視している。
○意思を表明しやすい風土、意見を言いやすい風土をつくるため、面談を推奨している。
また、全社員による毎月のアンケートを実施しており、業務の一環として必ず回答してもらっている。アンケート結果を運用する専門部署(キャリアエージェント)を設け、モチベーションが下がっている社員との面談や、異動支援を行っている。定性的な社員の主観的な感情の情報を定量化することが、人材マネジメントにおいて極めて重要だと考えている。
○評価制度や育成プログラムなど、何かに取り組む際は、必ず事前に「白け」のイメージトレーニングを行っている。特に、上手くいかないケースはどういうケースがあるか、社員の白けをイメージトレーニングし、そこに出てくる障害を排除するのは経営であり、人事の仕事であると考えている。
○挑戦する人事制度と安心する人事制度は、どちらかではなく、両方あることで、緊張感と安心感がセットになって強くなるため、緊張と安心のバランスを取っていくことが、経営と人事の非常に重要な仕事であると認識をしている。
○今は出社日とリモートの日を明確に分けるという働き方をしている。月・水・金曜日は出社日、火・木曜日はリモートのデイでリモデイと決めているが、出社日でも申請すればリモートでも良い。新卒の若手社員が多いので、若手社員が出社したのに先輩がいないという状況を作らないよう、出社日を決めている。
○社内の研修はあまり多くない。育成イコール研修ではなく、決断経験が重要であると考え、決断出来る環境を提供することが最大の成長の場であると考えている。
○評価制度としては、半年に1回、半期の査定評価をしており、期初に目標を決めるMBOをやっている。
○異動については、⑴キャリアエージェントというヘッドハンターチームが全社横断で異動起案が出来るもの、⑵担当役員配下の部門内異動、⑶半年に1回のキャリアチェンジ制度という自ら手を挙げマッチングすれば異動できる社内異動制度の3つがある。キャリアチェンジ制度では年間70名程度が異動している。
○キャリアエージェントは、全員が事業部経験者で、人事経験やキャリア資格保有などは求めていない。対応の範囲としては、アンケートが毎月実施なので、基本的には1ヶ月内で出来ることのみ行うということを意識して対応している。社員の個人情報を取り扱うため、異動時に覚書を締結し、情報管理については厳しく指導をしている。
○二年前に採用競争力を上げるため、新卒の初任給の最下限を月額42万円の年俸504万円に引き上げた。初任給自体を撤廃しているという考え方のため、いい人がいたら最初から600万、700万でオファーしているケースもある。白けのイメトレをして、前年、前々年入社の人の基本給も上げる配慮をした。
○労働時間とエンゲージメントとの相関はまだわからないが、人事評価と労働時間の相関は見られていない。本人の働くスタイルを尊重しつつ、健康診断の受診率100%と二次健診の受診率100%を目指している最中で、健康のハイリスク人材を減らせるかを担保した上で、長時間労働も減らしていくことを目指している。
○各種労働時間制度、働き方の割合については、管理監督者が全体の6~7%程度、企画型・専門型の裁量労働制度の適用者が全体の20%から25%程度、その他が日給、月給制度やアルバイトで時給制の方となっている。
○給与を含めたばらつき、特にトップを厚遇することについての納得度については、誰が見てもフェアに判断をし、上げるべき人を上げることとしている。例えば、市場価値だけで見るのではなく、社内における価値と希少性をかけ算し、非常に重要であればきちんと厚遇するということをしている。また、部門の収益度によって給与幅を変えないようにしている。
○挑戦的な人事制度として、「あした会議」という役員が社員とチームを組んで行う新規事業コンテストがあり、毎年新会社や、新人事制度が生まれている。
2 企業からのヒアリング 議事概要 B社(生命保険業)
○営業活動推進や災害対策の観点で全国にある拠点へ人財を配置する必要があるため、全国転勤を必要とする会社である。
○ダイバーシティに関する指標や社員のエンゲージメントに関する指標は、経営でKPIを持ち、しっかりモニタリングしながら進めている。
○創業以来、「人財を大切にするコアバリュー」を人財マネジメントに関する基本の考え方とし、経営の軸に人財を据えた形でやってきている。中期経営戦略でも、第一の柱に「多様な人財の力を引き出す人財マネジメント戦略」を掲げている。
○自律的なキャリア形成を支援していくため、2021年に職能等級制度から職務等級制度をベースとした人財マネジメント制度に切り替えた。各ポストのミッションや、やるべきことを職務記述書に定め、仕事の大きさでグレードを決定している。いわゆる年功的な要素は全て廃止をし、社歴、年齢、性別に関係なく、意欲と能力のある人財を登用する適所適財の考え方がベースとなっている。20代で管理職になることが出来るだけでなく、役職定年制度も廃止し、誰でも活躍出来る制度を目指している。自律的なキャリア形成を支援するため、全部でおよそ1,400ポストある職務記述書は全て社内に公開している。
○主体的なキャリア形成を促す中核制度として、キャリア開発計画書(CDP)がある。職務記述書をもとに、チャレンジしたいポストや仕事に対して、アクションプランを立てている。作成は強制していないものの、2023年4月時点で作成済み・作成しようとしている社員は89%程度となっている。
○自己啓発のために最大10万円まで自由に使える制度は、5,000人の社員のうち1,000人程度の社員が利用をしている。以前は昇格要件のための資格取得にも利用されていたので、人財マネジメント制度が変わり昇格要件がなくなったことにより、受動的に利用していた社員の分、利用者数はやや減少している。現在がまさに転換点にある。
○キャリアを応援するための仕組みとして、ジョブ・ポスティングがある。新制度導入後、募集のポスト数や異動者数、応募者数とも3倍程度拡大し、一般社員が課長などのポストに手を挙げて登用されるケースも出てきている。
○新卒採用においては、キャリア志向が明確な学生を念頭に初期の配属先を確約する制度を導入。新入社員の2割がこの制度を利用しており、非常に好評。配属後に、異なる仕事に挑戦したい、あるいは思った通りの活躍ができない、と思えば、当然異動が発生する。
○人事異動の在り方については、何もかも本人任せで、自分で掴むというものではない。会社として、なくてはならないポストもあるため、会社主導の人事異動もうまく絡めながらローテーションをしている。特に、入社して10年ぐらいのキャリア初期と呼ばれる頃は、営業や保険金支払といった会社のコアビジネス、保険の根幹を担うような部署を経験させ、会社への理解と自分の適性を見てもらっている。
○いろいろな部署のことを知ることもキャリアを考える機会になるという考えから、キャリアEXPOという社内版の合同説明会を開催している。去年は80部署がエントリーし、のべ2,000人以上の社員が参加した。
○働き方改革については、統合的なパッケージとして進めてきた。1つ目がトップのコミットメントで、変革にあたってはトップが旗を振っている。2つ目が環境整備で、ツール面を充実させ、テレワークを出来ない理由をなくした。3つ目に制度面の整備があり、できるだけ無駄な制度は無くす取組みを行った。
○リモートキャリア制度という地方にいながら東京の部署を経験することも、環境が整ったことにより実現出来ている。
○労務管理や健康管理も大事にしている。リモートワークならではの労務管理、健康管理の在り方が存在すると考え、全管理職を対象にテレワークに関するマネジメント研修やテレワークにありがちなハラスメントなどを周知している。出社日は強制せず、組織成果やエンゲージメントの観点で最適な頻度を各部門で考えてもらうようにしている。全体の出社率は6~7割程度。
○時間と場所の柔軟性が高まった結果、子育てをしている女性社員を中心に、時短勤務の解消が進んでいる。
○健康経営にも力を入れており、2万社以上の健保のレセプトデータを外部の機関と連携して分析をして、自社が弱いところをピックアップし、集中的にフォーカスするところを決め、取り組んでいる。例えば、健康年齢を全社平均でマイナス1.5歳とすることを健康経営のKPIとし、また2028年までに喫煙率を0%にすることを目指している。
○エンゲージメントスコアについては、年に1回サーベイを通じて確認して、PDCAを回している。他社と比較することが大事だと考え、独自質問ではなく、外部のパッケージを利用しながら、日本の国内あるいは海外のグローバルの優良企業と比較しながら進めている。
○人事政策の議論をできるだけデータドリブンでやっていくことに力を入れており、社長をトップとして各部門の役員で構成される人財マネジメント政策委員会(隔週で開催)でも、人財に関するデータをモニタリングし、PDCAを回している。また、様々な人事データは、人事だけが使えるのではなく、役員や現場の管理職も使えるようにしている。
○労働組合がないので、労使の対話を大事にしている。人事の役員と部長が全国を回って社員と対話をする「りあろぐ」という取組みを行っており、対話の機会を設け、人財マネジメント戦略のPDCAを回している。
○東京では当たり前になっている働き方が地方では当たり前になっておらず、オンライン会議などが受け入れられないことがある。リモート勤務などデジタルを活用した働き方の浸透に際しては、会社やツールがどうこうというよりは、日本の地方の人たちの価値観が変わっていくことも、重要な要素であると考えている。
○DXの進化によって職種の構成が変わっていくのはその通りだが、まだ大きく変わるほどには至っていない。今はDX人財の育成に力を入れており、DX人財を17タイプに分け、そのタイプ別に求められるスキルセットを決め、そのスキルに合わせたトレーニングを展開し、一定要件をクリアするとDX人財として認定する、というDX人財育成プログラムを回している。2024年に社員の30%をDX人財にすることを目指している。
○1on1については、会社として最低でもクオータリーベースで100%実施するということをKPIに定めて取り組んでいる。
(以上)