第3回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会 議事録

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

令和5年8月2日(水)16:00~18:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム(オンライン開催)

議題

  1. 開会
  2. 令和5年度の糖尿病・腎疾患対策について
  3. 厚生労働科学研究班からの報告
  4. 腎疾患対策の進捗状況と課題について
  5. その他

議事

2023-8-2 第3回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会
○原澤課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第3回「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本検討会はYouTubeにて配信しておりますので、その点、御承知おきください。
 続きまして、検討会構成員の交代について御説明させていただきます。令和5年3月に中澤よう子構成員が御退職されたことに伴いまして、中澤構成員から高知県健康福祉部部長 家保英隆構成員に交代となっております。家保構成員、よろしくお願いいたします。
○家保構成員 衛生部長会の会長の家保でございます。今回から参加させていただきます。よろしくお願いします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
 続きまして、構成員の出席状況の確認でございます。本日、村田構成員及び室原構成員より御欠席の御連絡をいただいております。また、井本構成員から途中から御参加される旨の御連絡をいただいてございます。そのほかの構成員の皆様につきましては、名簿をもって御紹介に代えさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日、参考人といたしまして、お二方、杏林大学の要伸也先生伸、埼玉医科大学の岡田浩一先生に御出席いただいておりますので、併せて御承知おき願います。
 続きまして、前回の検討会以降に事務局において人事異動がございましたので、事務局の紹介をさせていただきます。
 健康局長の大坪でございますが、本日、遅れての参加予定でございます。御承知おきください。
 続きまして、健康局がん・疾病対策課長の西嶋でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、がん・疾病対策課課長補佐の山田でございます。
 続きまして、がん・疾病対策課主査の宮川でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、資料の確認に移らせていただきます。資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございますので、適宜御参照ください。議事次第、資料1から資料3まで、及び参考資料1から2までがございますので、御確認ください。もし落丁等ございましたら、事務局までお知らせ願います。
 続きまして、オンラインを含めた本日の会議の進め方について御説明させていただきます。御発言に当たって、オンラインの構成員の皆様方におかれましては、Zoomの「手を挙げる」機能を御活用ください。カメラは常に映る状態にしていただき、発言されないときはミュートにしていただき、発言されるときのみミュートを解除するようお願い申し上げます。また、本日はチャット機能の使用は予定しておりませんので、その点も御了承ください。
 事務局から冒頭の御連絡は以上となります。
 それでは、この後の進行につきまして柏原座長にお願いしたいと思います。柏原座長、どうぞよろしくお願いいたします。
○柏原座長 皆様、大変お忙しいところ、この検討会に御参加いただき、ありがとうございます。
 この「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」でございますが、今回で第3回目となります。今回の第3回と次回の第4回においては、腎疾患対策を中心に議論を行いたいと考えております。後ほど、より詳細な御説明が事務局からありますけれども、平成30年7月に腎疾患対策検討会報告書が取りまとめられ、発出されました。今年でちょうど5年目、中間地点を迎えたということであります。5年間を振り返って、どこまでこの進捗が得られたかということ、その評価を行っていただきたいと考えております。それに基づいて、今後5年間の取組につながるような議論をぜひお願いしたいと願っております。構成員の皆様方におかれましては、ぜひ活発な御議論をいただきますよう、お願い申し上げます。
 それでは、早速でありますが、議題1「令和5年度の糖尿病・腎疾患対策について」に移りたいと思います。資料1の御説明を事務局よりお願い申し上げます。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料1を御用意ください。「腎疾患対策及び糖尿病対策の取組について」というものでございます。
 2ページ目を御覧ください。まず、糖尿病対策については、昨年度、御議論いただいた内容も含めて御紹介させていただき、腎疾患対策の現状の取組状況について御紹介させていただくという流れでございます。
 3ページ目から「糖尿病対策」でございます。
 4ページ目を御覧ください。「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」、本検討会において昨年度御議論いただいた糖尿病対策に係る中間とりまとめということで、項目1から項目4までお示ししております。もともとワードの形式で整理していたものをパワーポイントの形に落とし込んでいるものですので、内容は基本的に変わりございません。こちらの内容を踏まえまして、昨年度御議論いただいていたときにも御紹介していたとおりでございますが、第8次医療計画の見直しの中に、この要素を入れ込んでいくという形にしています。
 次の5ページ目を御覧ください。こちら、糖尿病の医療体制についての第8次医療計画の見直しのポイントということで、糖尿病の発症予防、治療・重症化予防、合併症の治療・重症化予防のそれぞれのステージに重点を置いた取組を進めるとともに、他疾患で治療中の患者の血糖管理を適切に実施する体制の整備を進めるといった、糖尿病対策の中で議論いただいたうちの、特に医療提供体制の整備という観点でポイントを整理してお示ししている資料でございます。御覧いただければと思います。
 続いて、6ページ目を御覧ください。第8次医療計画において、糖尿病医療の体制構築に関する現状把握のための指標例ということで、第7次医療計画から指標例という形で、各自治体で御活用いただけるように項目等を整備してお示ししているものでございますが、研究班の報告内容等も含めて、本検討会で御議論いただいた内容をこちらに反映しているところでございますので、御報告でございます。
 続いて、7ページ目以降でございます。「腎疾患対策の取組状況」でございます。
 8ページ目を御覧ください。腎疾患対策検討会報告書(平成30年7月)、先ほど柏原座長からも御紹介いただきましたが、以前まとめさせていただいた報告書において、このような全体目標やKPIが定められているというところで、実施すべき取組の各柱に沿って、これまで取組を進めていただいているという理解でございます。
 続いて、9ページ目を御覧ください。現状の振り返りという形で、慢性透析患者数と有病率について、慢性透析患者数は、2021年末の時点で34万9700人の方がいらっしゃるという集計になっているというところと、続いて、10ページ目、御覧いただきますと、新規導入患者については、直近の値ですと、2021年で4万511人の方となっているという状況が見てとれるところでございます。
 続いて、11ページ目を御覧ください。疾患別の内訳ということで、導入された患者の中の原疾患の割合についてでございます。一番上の茶色い折れ線グラフのところが糖尿病性腎症でございますが、やや低下傾向というところと、代わりにというわけではないですが、少し増加傾向が見てとれるのは、ピンク色の折れ線グラフになっている腎硬化症であるといった形で、疾患の内訳も変化が見られるということは、先生方、御存じのとおりかもしれませんが、改めて振り返りでございました。
 続いて、12ページ目以降でございます。令和5年度の腎疾患対策に関する予算の御紹介ということで、こちらは概要の1枚になっています。腎疾患対策費から厚生労働科学研究費等補助金等の御紹介までさせていただいています。各項目、次のページ以降で御紹介させていただきます。
 次の13ページ目でございます。慢性腎臓病特別対策事業、いわゆる特対費と呼んでいるものでございますが、こちらにおいて患者等一般向けの講演会の開催や、病院・診療所等の医療関係者を対象とした研修の実施等をメニューとして読んでいただけるように、左下の事業概要の中に位置づけております。こちらは都道府県等に対する2分の1の補助金という形でメニューを御用意しているという状況でございます。
 続いて、14ページ目を御覧ください。こちらは令和5年度からの新規事業という形で、これまで実施していただいていたモデル事業を少し衣替えして実施しているということで、これまでも検討会においても御紹介申し上げていましたが、慢性腎臓病の連携体制の構築、特に右下のモデル病院の中の二人主治医制度の構築というところで、都道府県が実施する腎疾患対策と連携可能な病院において、都道府県や健保組合等の関係者と連携し、腎疾患の診療体制の構築や多職種連携を行うための会議体の設置等の事業を実施していただくということで、メニューを組んでいるものでございます。こちらは申請していただく医療機関を対象としておりまして、補助率は10分の10となっているところでございます。
 次のページ、15ページ目を御覧ください。本年度実施していただくモデル事業の実施医療機関でございますが、お示しの6医療機関を採択している状況でございます。1番の自治医科大学附属病院から、6番の国立大学香川大学まで実施していただくという形になっています。
 続いて、16ページ目を御覧ください。こちらは厚生労働科学研究費等補助金、いわゆる厚労科研のメニューについての御紹介ということで、このような形で令和5年度、メニューを設けて研究に取り組んでいただいていますというところと、次の17ページ目で、AMEDの腎疾患実用化研究事業という中で、こちらは疾患の病態解明治療研究ですとか、そういった基礎的なところから医薬品・医療機器等の開発というところで、医薬品の開発につながるようなプロジェクトという形で研究事業を御用意しておりまして、こちらも研究に取り組んでいただいているという状況でございます。
 簡単ではございますが、資料1の御説明については以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○柏原座長 ありがとうございます。非常に簡潔に厚生労働省が取り組んでいただいております腎疾患対策の取組について、おまとめいただきました。
 それでは、ここまでの御説明に関しまして御質問とか御意見があれば、ぜひよろしくお願いします。
 家保構成員からお願いいたします。
○家保構成員 今回から参加させていただきますので、糖尿病のところも含めて、少し御意見を述べさせていただきたいと思います。
 資料6ページのプロセスの特定健康診査の実施率というところで、重要指標になるというのはよく理解しております。ただ、保険局の資料などでも、保険者によって大きく実施率が異なっています。その点をしんしゃくしながら、都道府県レベルでは保険者協議会等で議論して、重症化予防なり糖尿病の対策を取っているということがございますので、評価の際にはそういうところも留意していただけるとありがたいと思います。それが1点です。
 以上です。
○柏原座長 ありがとうございます。重要なポイントでありますから、継続して念頭に置きたいと思います。
 続きまして、津下構成員からお願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。
 様々な事業の中でお伺いしたいのは、平成21年度から実施している特別対策事業、普及活動事業でございます。これについては補助先が自治体になっているのですけれども、平成21年度からこれまでの実施状況といいますか、全国万遍なくこのようなことが行われているのか。地域的な偏りとか、件数がどの程度上がっているのかなどの情報がありましたら、御教示いただければと思います。
○柏原座長 これは初年度と比べて次第に手が挙がりにくくなっていると認識しているのですが、より正確には事務局のほうから御説明お願いします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 特対費の対応状況ということで御質問を頂戴したと理解しています。特対費の取組状況については、ホームページ等で一部公開している情報もあるのですが、今、手元でこのような状況ですというふうに直ちに御案内できないので、整理して後ほど御連絡できるようにしたいと思います。
 以上でございます。
○津下構成員 ありがとうございます。
○柏原座長 半額補助であるというところもリミテーションになっているのではないかと考えております。
 いかがでしょうか。ほかに御質問や御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 そういったレビューを踏まえて、令和5年度から新しく多職種連携モデル事業というのを打っていただき、これは全額補助であるということ。採択された6件を見ますと、大学病院が過半ではありますが、それ以外にも千葉東病院であったり、山梨県はクリニックであります。山梨県で中心的に取り組んでいらっしゃるクリニックが採択されたということで、かなり地域の特性に合わせた多様な取組に対して補助が与えられたと考えています。この成果についても注視していきたいと考えています。
 よろしいでしょうか。ここまでの部分は、既に構成員の方々、既にある程度御存じの内容だったのではないかと考えております。この後で、より重要な課題もありますので、次に進めていきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、議題2「厚生労働科学研究班からの報告」に移りたいと思います。資料2-1に基づきまして、岡田参考人から御発表をお願いいたします。
○岡田参考人 ありがとうございます。
 それでは、厚生労働科学研究班、柏原班と岡田班から報告させていただきます。タイトルは「地域におけるCKD診療連携体制に関する研究」ということでお話しさせていただきます。
 まず、先ほど御紹介にありました腎疾患対策検討会報告書が10年間の目標を設定しているわけですが、その中間地点ということで、その目標がどの程度達成されつつあるのかという成果報告を最初にさせていただきます。
 達成すべきKPIとして、2028年までに2018年度の透析導入の1割に相当する3万5000人以下に持っていく、1割減にするということが目標とされております。ということで、その指標としては、2016年比で5年で5%、10年で10%以上減少する。まずは、都道府県数がどう推移しているかということを検討するということで御報告させていただきます。
 まず、2016年比で5年間で5%、透析導入患者数、実数が減少した都道府県は、47都道府県中12県になります。このスライドでお示しする日本地図上のブルーに色づけされている県が、5%以上の減少を達成した県になっております。12県であります。
 一方、これは実数なのですけれども、年齢構成等々が経年的に変化いたしますので、2016年の透析導入率を1として、性や年齢を調整した2021年度の透析導入率が、2016年に比べて減少した、1未満になった都道府県数を検討して見ますと、18都道府県で透析導入率が2016年に比べて減少している。要するに、透析導入率が減少傾向に入っているというのが18都道府県、確認されております。
 これを男女別に見てみますと、男性では22都道府県、女性では27都道府県で、2016年に比較して透析導入率が減少傾向に転じております。
 透析医学会の統計調査の結果を基にこれらの計算をさせていただいているのですけれども、その透析医学会の統計調査の内容として、施設調査と患者調査というものがございまして、患者調査のほうが男女別等々のより詳細なデータが収集されております。それで見てみますと、2016年の導入数、絶対数ですね。それと2021年の導入数を比較してみますと、男性では3.2%の増加、女性では0.9%の減少、これは実数です。減少しております。合わせて、男女合計いたしますと1.9%の増加ということになっております。
 男女別のデータ等を判定できない施設調査による導入患者数ですと、ちょっと実数が変わってくるのですが、これを見てみますと、2016年に比較して2021年では3%の増加ということで、全体としては増加傾向が続いているものの、女性では減少傾向に転じているということが分かりました。
 2016年から17年の2年間の、この腎疾患対策検討会報告書が発出される2年前の透析導入率を基に、2018年度以降の透析導入患者実数を予測した場合と、予測値と実際の実数と比較してみますと、予測値に比べて実数は下回っているということで、2016年、17年の導入率がそのまま据え置かれたとすると到達したであろう透析導入患者数よりも、実際の数は減少しているということで、対策の効果は出ているのではないかと感じます。
 その一つの原因といたしましては、各年度ごとの透析導入率の推移を見たものです。各年齢構成に合わせてグラフを引いているのですけれども、このグラフが淡い色から黒に向けて経年変化しております。そういたしますと、男性におきましても女性におきましても、この透析導入率のグラフが右側にシフトしていることが分かります。すなわち、導入率のピークが高齢側にシフトしているということで、透析導入が先送りされている。保存期の延長に成功しているのではないかということが示唆されるデータで、別のデータで示してみましても、各世代におけます透析導入率の年次推移は、高齢男性を除いて、全て右肩下がりになっております。女性においては、全ての世代で右肩下がり。
 男性においてのみ、75歳以上の高齢男性におきまして右肩上がりということで、だんだんと透析導入が高齢化、保存期が延長されているということが見てとれるデータですし、別の表現にしてみましても、75歳以上の男性におきまして透析導入率が経年的に増加しておりますが、その他の世代、及び女性では全ての世代で右肩下がりになっているということで、導入率は順調に減少してきているということが見てとれる結果となっております。
 それでは、それぞれの取組の状況について御紹介させていただきます。
 まず、「普及啓発」ですけれども、この公的研究班、岡田班、柏原班では、未病の方及び有リスクの方に対するパンフレットを作成して、慢性腎臓病の普及啓発に取り組んでおります。特に有リスクの患者さんにおきまして、慢性腎臓病というのが末期腎不全のみならず、心血管系合併症のリスクである。たんぱく尿が出ている方は、将来、脳卒中になりやすいということをクイズ形式で情報提供できるようなパンフレットを作成しております。
 また、日本腎臓病協会が開催しますCKDの啓発イベントに関しましては、2018年、この腎疾患対策検討会報告書が発出される前の段階では、増加している年度もありますけれども、全体を見ますと減少傾向でしたが、2019年以降は、コロナ禍の影響もあるとはいえ、啓発イベントの数が高めに推移しているということが分かります。こういった取組に加えて、民間企業とのコラボレーションで新たなチャネルを通したCKDの啓発事業にも取り組んでおります。
 その結果といたしまして、慢性腎臓病に対する疾患認知度調査を2019年から行っております。各世代から任意にサンプリングした方たちに、このCKD、慢性腎臓病に関する疾患認知度をウェブ形式でアンケートしております。
 そういたしますと、この2022年度、直近のデータですけれども、年齢が高齢化するに従って認知度が高いということが分かります。しかし、2019年からの経年の変化を見てみますと、20代、30代における慢性腎臓病認知度も、微増ではありますが、増加傾向を示しております。といったことで、先ほどお示ししたような啓発事業も少しずつ功を奏する※判断されます。
 また、同時に行っております、生活習慣病として慢性腎臓病が認識されているかどうかということに対する認知度調査ですけれども、糖尿病や高血圧に関しましては高いレベル、特に高齢になればなるほど、こういった病態が生活習慣病であるという認識がされているわけですが、慢性腎臓病に関しましては、ほぼ脳血管疾患と同等レベルの認知度であるということ。それから、世代間格差はないですね。高齢の方でも慢性腎臓病を生活習慣病と認識されている方というのは、それほど多くないということが分かりました。
 また、たんぱく尿や血清クレアチニン高値を放置すると、どういった障害が将来起こるのかということに関しましても、透析導入ということに関しては認知度が高いのですけれども、その他の心血管系合併症のリスクになっているのだということに関する認知度は非常に低い状態ということで、こういったことを踏まえて、先ほどお示ししましたようなパンフレットに、慢性腎臓病というのが心血管系合併症のリスクになるのだということを情報発信するような工夫をしております。
 また、地域におけます医療提供体制の構築につきましては、様々に各地区に司令塔となるべき研究協力者を置いて、地元の実情に即した形で連携体制構築の音頭を取っていただいております。
 その取組の成果を研究班のホームページ上の日本地図をクリックしていただきますと、その地域の取組が一目で分かるような見える化したデータベースを作成しています。
 この中で非常に功を奏して取組をされている地域として、今日は北海道を御紹介いたします。北海道では、管理栄養士さんとか保健師さんの協力を仰いで、一般住民のたんぱく尿やクレアチニン上昇が健診によって引っかかった方の2次検査として、かかりつけ医への受診勧奨を非常に強力に取り組まれています。
 特に、たんぱく尿が出ている。たんぱく尿はどういった病的意義があるのかということを、こういった非常に影響力のあるパンフレットを用いて説明するということを取り組まれることで、北広島市というところも保健師さんの数を増やして積極的に取り組まれた結果、道内ワースト4の透析導入率を、この15年ほどで58位に減らすことに成功されています。こういった成功例が北海道の市町村レベルで報告されています。
 また、増毛町におきましても、血圧の管理が道内ワーストの高い位置、コレステロール管理が非常に悪いところに位置されていたのですが、健診及びかかりつけ医の2次検査への受診勧奨に取り組まれたことによって受診率が高まって、健診受診率も高まって高血圧が良好になって、II度の高血圧患者さんが15%から5%、3分の1に管理不良の高血圧患者さんを減らすことに成功されたということで、北海道では市町村レベルでの健診及び2次検査の受診勧奨に非常に強力に取り組まれることによって成果を上げておられます。
 実は、日本全国では女性は減少傾向なのですが、男性は高齢者の透析導入が増加傾向なのですが、北海道におきましては、男性の高齢者においても透析導入の率が減少傾向にあるという結果が、このホームページ上で見てとれます。その一つの成功した取組の要因として受診勧奨があるのではないかと想定して、柏原班、岡田班でも、このレベルでの取組を推進していきたいと考えております。
 これまで取り組んでいますのは、かかりつけの先生方から専門医への紹介及び逆紹介ということで、かかりつけの先生から専門医への紹介基準、及び専門医からかかりつけ医との紹介・逆紹介という形の連携の目安として、こういったCKDの重症度分類のチャートを用いて、マトリックスを用いてお示ししておりますけれども、連携に関しまして、二人主治医制で拝見していくCKDのレベルとしては、G3bとG3aの辺りを最も強く推奨しているということになっております。
 実際はどうなのかということですけれども、まず、この腎疾患対策検討会報告書が発出された初期の段階におけます現状調査ということで、かかりつけの先生方と腎臓専門医に向けて、CKD診療連携に関するアンケート調査というのを実施しております。これは来年、中間報告のためのアンケートの調査を予定しております。これは初年度調査になります。
 CKD診療におけますガイドラインの遵守ですけれども、まずはガイドラインを利用しているかかりつけの先生方というのは約30%です。専門医のほうは90%以上の先生が利用していると答えられています。
 紹介・逆紹介ですけれども、紹介に関しまして、ある程度以上に連携が機能しているとお答えされたかかりつけの先生方は75%、紹介もスムーズとお答えいただいています。一方、月に5名以上のかかりつけの先生方からCKD患者さんの紹介を受ける専門医は約50%ということでした。
 地域連携パスを用いたCKD連携をされているかかりつけの先生方は約16%。また、専門医は約10%ということで、まだまだ連携パスの使用は不十分であるということが分かりました。
 紹介する患者さんのGFR区分はどのぐらいかということですけれども、かかりつけの先生方におきまして中心的に最も多いのはG3b、専門医におきまして紹介していただくべき患者のレベルとしてはG3bが適切と考えている先生が一番多いということで、ここは合致しているのですけれども、現実としてかかりつけの先生方から紹介する患者さんの続くステージは、G4、G5ということで、より進んだCKD患者さんを紹介するというのが実情だそうです。しかし、専門医のほうはもう少し早いレベルでの紹介を適切と考えています。すなわち、G3aの患者さんを紹介していただくべきということで、実際に紹介されている患者さんと専門医が紹介していただくべきと考えている患者さんとのステージがずれているということが見てとれます。
 紹介患者さんの紹介のきっかけは、GFRが落ちてきたか、もしくはたんぱく尿が多いかということで、こういった紹介の基準として、先ほどお示しした腎臓学会が提唱しているものを使っていますかということに関しては、50%ぐらいの先生方が参考にしていると答えています。専門医のほうが、実際に紹介される患者さんの内容としては、腎機能が低下してきた、たんぱく尿、血尿が原因検索といった紹介のきっかけが多いということですね。先ほどの紹介基準に沿った紹介を受けているパーセンテージは、50%以上受けていらっしゃるという先生方が約50%という結果でした。ですから、この辺は実際のところが双方のアンケートからうまく見てとれます。
 紹介のメリットに関しましては、多くのかかりつけの先生方が専門医に紹介することにメリットを感じているとお答えいただいておりますけれども、不満としては、紹介してもあまり治療に変化がない、いいアドバイスがもらえない。もしくは、かかりつけの自分たちへの説明が不十分であるということに不満を感じていらっしゃる。専門医の先生方が過半数を逆紹介する。要するに半数以上をかかりつけの先生方にお返しする頻度というのは、30%ぐらいなのです。ということは、もうそれ以降は専門医が診るべき、進行したCKD患者さんの紹介が非常に多いということが分かる。こういったアンケートの結果が初年度に得られました。
 ということで、かかりつけの先生方からはCKDステージが進行してからの紹介が多いために、専門医からかかりつけの先生方に逆紹介するというケースが少ない。そのためには、パスが非常に少ないので、率が低いので、連携パスの推進というものが1つ有効な手立てではないかと考えられます。
 日本腎臓病協会では、毎年、各都道府県代表にCKDの連携状況についてのアンケートを行っております。例えば私が担当しております埼玉県におきましては、地域の医師会のホームページに連携パスがダウンロードできるような形にしていただいておりまして、紹介状がすぐできる。ここに記入していただいて我々のところに御紹介いただきますと、我々のほうからは逆紹介状ですね。
 これは先ほどの不満のポイントに配慮いたしまして、治療のアドバイス、お薬とか治療方針、管理目標をしっかりと書き込んで、かつ患者さんにどのような指導をしたのかということも書き込めるような工夫がしてある逆紹介状を使ったクリニカルパスを用いた連携というものを行って、これを埼玉県内の4つの基幹病院で地元の医師会との間に連携協定を結びながら、少しずつドミノ倒しのように広げているといった試みをしております。
 こういった連携体制の構築状況ですけれども、詳しくモニタリングしている4つの都道府県、定点観測地点の結果を見てみますと、連携体制の数が、この4つのポイントでは、この4年間で増加傾向になっておりますし、あまり体制が増えていないところでも、そこに協力するかかりつけの先生方は増加傾向である。もしくは、もともと非常に大勢の方が参加されているということで、こういった取組が増加傾向にあるということは見てとれます。
 「診療水準の向上」ですけれども、そういった連携の下で行われている診療水準です。こういった標準的な治療というのは、専門医の先生方やかかりつけの医師向け、療養指導士向け、患者さん向け、様々なガイドラインを用いて情報発信しておりますが、例えば岡山県の美作で行われております連携の状況も詳細にモニタリングしておりますが、2019年から2022年にかけて、この連携体制の中でケアしている、二人主治医制で診ている患者さんにおきましては、血圧・貧血・血糖のコントロールが非常に良好に、ガイドラインに示している標準治療の遵守率が7割以上達成されているという、非常に質の高いCKD診療が行われているということが示されておりますので、この連携体制を広げていくということは、有効な診療水準の向上に結びついていると考えております。
 人材育成に関しましては、後ほど要先生に御報告いただきます。
 あと、「研究開発の推進」に関しましては、本日、座長をお務めの柏原先生が構築されておりますCKDのデータベース、横断情報のデータベース、及び縦断情報のエクステンションを用いて、ガイドラインで推奨されている標準治療がいかにCKDのアウトカムに影響を及ぼしているかということを、リアルワールドデータベースを用いて検討いたしました。
 そういたしますと、ガイドラインに示されている標準治療のうち、データベースで検討できる8つの標準治療の目標を抽出いたしまして検討したところ、6個以上、このガイドラインの推奨を満たしている患者群は、6個未満の患者さんに比べて有意にGFRの30%低下、もしくはステージG5の進展が抑制されているということが示されましたので、この標準治療の推進というのは、CKD進展抑制にエビデンスをもって有効であることを示すことができました。
 ですので、この取組を進めていきたいということで、ガイドラインの策定と、その普及の推進。そして、その有効性のデータベースを用いた検討。それを踏まえた改定といったPDCAサイクルをぐるぐると、ガイドラインの作成とリアルワールドデータベースによる検討というものを推進していくことによって、CKD診療の改善と腎不全患者さんの減少、すなわち腎疾患対策検討会報告書の掲げた目標の達成に結びつけていきたいと考えます。
 総括は9つお示ししております。御参照ください。
 以上です。
○柏原座長 岡田参考人、非常に膨大な内容を簡潔にまとめて御紹介いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、早速、御発表いただいた内容につきまして御質問や御意見をいただきたいと思います。ぜひ挙手いただければと思います。
 南学構成員、お願いいたします。
○南学構成員 ありがとうございます。
 岡田先生、大変重要な御発表ありがとうございます。
 まず、1点目ですけれども、J-CKD-Databaseを用いたリアルワールドのデータの解析というのは、もちろんインプリメンテーションの効果の判定のみならず、今後、様々なほかの解析にも非常に重要な、すばらしいツールだと思っていて、まず、これをつくり上げられた柏原先生のすばらしいお力に心から敬意を表したいと思っております。
 一方、これ自体は、恐らく今後さらに発展させる必要があるのですが、維持・発展にはかなり費用がかかるものと認識しております。腎臓学会としても、もちろんこれは考えて取り組んでいかなければいけないところですけれども、維持・発展のためにどういうふうにしていくのがいいのかということで、岡田先生もこれに深く関わられているので、もしお考えがあれば伺いたいというのが1点目です。
 2点目は「ダイヤモンド」のアンケート調査ですけれども、生活習慣病に関するアンケート調査を去年やられていて、一方、糖尿病の方々は、この生活習慣病という言葉がスティグマであるということで、この言葉を撲滅しようという形で動かれていると認識しております。ですので、今後、腎臓の立場から、この生活習慣病という言葉・概念について、どのようにしていくのがいいのか、糖尿病は生活習慣病ではないけれども、腎臓病は生活習慣病だという立場に立つのか、それはスティグマであって、これはNon-communicable Diseasesあるいは何かほかの言い方を今後していくべきだと思われるのか、ぜひ御指導いただければと思います。
○岡田参考人 ありがとうございます。
 まず最初のデータベースの維持ですけれども、これまでは公的研究班に様々なテーマで応募し、獲得し、公的研究班のデータを出す一環として、このデータベースを維持するというふうにしてまいりました。もちろん、その努力は今後も続ける必要があるのですけれども、当然、それでは立ち行かなくなりますので、できれば2次利用、製薬企業等々に活用いただいて、もちろんその際には、個人情報の流出等々がないような手立てを担保して、優良な2次利用をすることによって原資を確保するという形に持っていきたいと考えております。
 それから、生活習慣病の言葉ですけれども、まず、糖尿病とか高血圧というものが生活習慣病であるという認識は非常に普及しておりまして、多くの方がその認識を持っている。その上で生活習慣病という言葉が不適切だという御意見だと理解しておりますが、まず、日々の生活が慢性腎臓病に影響を及ぼし得るのだというそもそもの認識が全くない状況で、名前をどうするという議論は、慢性腎臓病のエリアでは時期尚早だと思います。ですから、生活習慣病という言葉は糖尿病学会等々の先生方の御意見に合わせて適正化していきたいと思いますが、日々の生活の不摂生が腎臓にも悪影響を及ぼすのだという認識そのものは普及させていきたいと考えております。
○柏原座長 ありがとうございました。
 続きまして、黒瀨構成員、お願いいたします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。黒瀨でございます。
 御質問というよりは、お願いと意見なのですけれども、まず、4ページ目、5ページ目に5%以上減少を達成した都道府県というのが示されておりますけれども、これを見ると、例えば年齢調整しない場合には、東京や大阪などの大都市圏では数が増えてしまっている。一方で、年齢調整した後、あるいは性別を調整した後であれば、東京・大阪も透析導入の減少が見られるということで、何が問題かというと、大都市圏に若い方々、人口が流入しているということがかなり大きい問題なのかなと思います。
 そうすると、これだけの地域差を考えたときに、地域の実情、人口構成等々が大きなウエートを占めているのだと思うのですけれども、2040年に向けて高齢者が日本全体では増える中で、一方、地方ではむしろ高齢化率はピークアウトしてしまっているところもありますし、東京・大阪のように、まだこれからますます進むところで、地域による対策というのを実情に合わせて考えていかなければいけないのではないかなと、伺いながら感じておりました。
 そこで、18ページに、慢性腎臓病についてどれぐらい知っているかという、普及啓発のお話だと思うのですけれども、これを見ると、年代によってかなりばらつきがある。高齢者の方のほうが自分に関係するということで、ある程度知っていらっしゃるということが多いと思うのですけれどもね。我々も日本医師会で例えば広報をやるときに考えているのは、若い世代の方々はSNSとかウェブを使って情報を仕入れている。一方で、高齢者の方は、いわゆる昔からの紙媒体の新聞とかテレビによって知識を得ている、あるいは刺激を受けている。
 例えばパンフレットにしても、紙の媒体で見たい方と、デジタルで携帯とかiPadみたいなもので見たい方とか、そういった年齢によるアプローチの違いがあると思うのです。今後、そういったところも考慮いただきながら、いわゆる啓発活動をしていただくといいのではないかなと感じておりました。
 その中で、我々医師会としては耳の痛い話なのですけれども、31ページ目以降に、かかりつけ医と専門医との連携に関して、かかりつけ医側の意識がかなり低いというところは、我々も非常に反省するところでありますし、今後、日本医師会としても、都道府県医師会あるいは郡市区医師会と協力して、もう少し前向きにいろいろな連携に関して、いろいろなツールを使って行っていくということも伝えていきたいと思っています。
 その中で、我々、今、期待しているのは、オンライン資格確認によるPHR機能によるデータの共有化ですとか、あるいは私ども日本医師会が今、行っているJ-DOMEという高血圧とか糖尿病の患者さんのレジストリシステムがございます。これをかかりつけ医の先生と専門医の先生と情報を共有しながら診療に当たっていただくことで、かかりつけ医の診療の質の向上と均てん化を図っていこうというふうにも考えておりますので、ぜひそういった点も御考慮いただいて御協力いただければ幸いに存じますし、今後も御指導いただければと願っております。
 以上でございます。
○岡田参考人 黒瀨先生、どうもありがとうございます。
 情報発信のチャネルですけれども、我々自身がSNSとかを使っている者があまりいないので、若手をとにかくよりこういった取組にリクルートして、若手の先生方が同世代に発信するようなやり方が一番有効だろうと思いますので、研究班のメンバーもなるべく若返りをさせていきたいと考えております。また、日本医師会の先生方にも協力、これも紹介基準を医師会雑誌に掲載していただいて、全国隅々のかかりつけの先生方に発出していただくところでは大変御協力いただいたのですけれども、今後ともぜひ御協力をよろしくお願いいたします。
○黒瀨構成員 岡田先生、ありがとうございます。
 我々の世代だと考えつかないような広報手段というのを若い先生方はよく理解していますので、そういったところをうまく世代を超えて協力していければと思っています。ありがとうございます。
○岡田参考人 ありがとうございました。
○柏原座長 津下構成員、お願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。
 とても詳細なデータをお示しいただきまして、ありがとうございます。また、取組状況についても様々な調査で現状把握され、それを整理されているということに非常に感銘を受けました。
 新規透析導入などのエンドポイントを日本透析医学会で常に分析・公表されていて、そういうデータ基盤が整っていることとか、都道府県別の導入率などのデータが示される。これは都道府県の担当者に非常に大きなインパクトがあるのではないかなと思っております。
 5ページに、年齢調整しても増えた自治体もあるということでございます。これについて、どのようなことが考えられるかなと思ったりしているのですけれども、もともと例えば新潟県とか透析導入率が比較的低い県で増えているのではないか。また、九州はもともと高めで、今回は減少がみられているといました。透析導入率が高い県のほうが、そこに注目度が集まって様々な対策が打たれて効果が出ているのか、また、増えたところはどういう要因なのかということが、もし検討されているようでしたら教えていただきたいなと思っております。
 また、原因疾患別の動向などもわかりますでしょうか。全国的には糖尿病性腎症による新規透析導入割合が減っているのですけれども、増えたところ、減ったところで何が違いがあるのかということ。それから、透析導入率をみると、男性で90歳、95歳以上の透析導入患者さんが増えている。この辺り、超高齢期にある者の透析が増えれば透析患者さんがなかなか減らないところかもしれないですけれども、昔と見ると、90歳、95歳の透析する方々が増えてきたという高齢シフトが非常に大きくて、そういう男性と女性の違いなどについても、どんな考察が可能かについてお考えがあれば教えていただきたいと思っております。
 それから、細かい定点観測などは、4つの都道府県をセレクトしてやられているということでしょうか。例えば今回増えたところの原因検索とか、そういうことについては今後の課題と受け止めればよろしいでしょうか。
 いろいろお尋ねしてすみませんが、分かる範囲でご教示いただければと思いました。
○岡田参考人 ありがとうございます。
 基本、高齢男性で増えてきているということの一つの原因は、腎臓以外の臓器、もしくは健康寿命の延伸だろうと思います。健康寿命の延伸に、腎臓の臓器の健康寿命の延伸が追いついていないということで、人生の最終段階で腎不全、特に男性ではそれが出てきてしまっているということが現実だろう。なので、増えてきているところもそうなのですが、順調に女性と同じように男性でも抑え込めている都道府県の状況を検討しようということで、積極的な部分を検討しようということで、先ほど御紹介しましたように、北海道では、他の都道府県に比べて高齢男性の増加が抑えられているということで、そこに何があるのかということを検討した結果、受診勧奨を10年以上前から積極的にされている都道府県で、北海道の中の市町村で順位が入れ替わっているのですね。
 その順位の入れ替わりの一つの要因が、保健師を増やして受診勧奨を積極的にやっているところの透析導入率の順位が下がってきているということで、同じ北海道の中でもグラデーションが変わってきているということを踏まえると、そういった試みが有効なのではないかと考えております。そういった形で、津下先生が今、御指摘になられましたように、各都道府県のパターン、違いを何らかの取組、もしくはリスクの問題点のところにまで落とし込んで対策していく、もしくは取り入れていく、横展開していくということが、今後の我々の重要なミッションだろうというふうに考えております。
 あと、男女差の説明というのは難しいです。昔から洋の東西を問わず、腎疾患、透析導入、末期腎不全というのは男性のほうが多いのですね。なので、それがセックスホルモンによるものなのか、より生活習慣的な問題なのか、そこはまだはっきりとは突き止められておりませんけれども、これは多分いろいろなところで繰り返し報告されている事実なのだろうと認識しておりますので、ここも1つ今後の検討の課題だろうと考えております。
 すみません、中途半端な返事で申し訳ございません。
○柏原座長 それでは、あとお二人の構成員から御質問を受けたいと思います。まず、武本構成員、お願いします。
○武本構成員 岡田先生、ありがとうございます。いろいろな取組を御紹介いただき、ありがとうございました。
 北海道の取組で、保健師を増やすと減ったということを先生、お話しいただいたわけですけれども、そうすると、取組をするのにちょうどいい人口というのがあるのでしょうか。うまく減った原因で、どれぐらいの地域辺りで取り組むのが一番。というのは、患者さんじゃなくて、一般の人に啓発したり、いろいろな受診を推進するので、ちょうどいい自治体を構成する人数とか、そういうもののお考えが何かあったらお聞かせいただけたら、そういう人数単位で集中してやっていくというのも施策としてはいいのかなと思ったので、お伺いしました。いかがですか。
○岡田参考人 ありがとうございます。適正な数というのは今、申し上げられませんけれども、市町村レベルでの適正化というのが非常に重要だということは、我々研究班の研究分担者のお一人ですけれども、新潟大学の若杉先生もいろいろなデータからアドバイスをくださっていまして、その目で見てみると、北海道でもそういった特徴が見えてくるということで、市町村レベルで、そのエリアにおける受診勧奨の適正化というものを心がけていくと、成功例が増えていくのではないかと考えております。
○柏原座長 それでは、矢部構成員、お願いいたします。
○矢部構成員 岡田先生、ありがとうございます。大変よく現状が分かりました。私、岐阜県でCKD対策を腎臓内科の先生方と一緒にやってきておりまして、今日、先生のおまとめいただいた資料を見ながら、本当に同じように岐阜県のデータとも重ね合わせて勉強させていただきました。
 2点ございます。
 1つは、岐阜県のように腎臓専門医がほとんどいないような県になってくると、全国的にはいろいろなCKDの啓発イベントなんかが進んでいるかと思うのですが、なかなかうまくいっていなくて、岐阜では糖尿病対策推進協議会がどちらかというと母体になって、腎臓の先生方と展開しているというところもありますので、できればそういった糖尿病関連の協会であったり、学会、そういったところとの連携であったり、県を越えたプロモーションというのがあってもいいのかなと思いました。それが1点目です。
 あと、もう一点は、先ほど南学構成員からもございましたが、生活習慣病の件ですね。これをどう呼ぶかというところで、糖尿病学会、糖尿病協会で合同のアドボカシー委員会で、糖尿病に関する呼称という議論の中で、スティグマという問題と、あと、国際化というところで、糖尿病に関しては、ほとんどの国というか、生活習慣病という呼び名をしている国はなくて、Non-communicable Diseasesといった呼び方になっているので、日本も世界と合わせて呼び名を考えていくべきかなと思いました。もちろん、生活様式が修飾するという要素を広く一般に知ってもらうということは、先生がおっしゃられるように大変大切だと思いました。
 以上です。
○岡田参考人 ありがとうございます。
 専門医の局在、専門医療施設の局在というのは非常に大きな問題でして、都道府県ごとにも大きく異なります。後ほど、多分、要先生がお示しくださると思うのですけれども、そういったものを均てん化していくにはどうしていくのかということに関しまして、確かに糖尿病対策と相乗りするという試みもあると思いますし、あとは千葉県で、エリアによっては、かなり広いエリアが専門医不在なのです。非常に偏っている。
 なので、それをなるべく均てん化するための一つの試みとして、腎臓病対策協力医という、かかりつけの先生方の中でもCKD対策に比較的積極的な先生方という方たちをリクルートして、行政が何らかのインセンティブ。もちろん金銭的なものではないのですけれども、腎臓病協力医というようなタイトルを授与して関わっていただく、あとはホームページにお名前を載せるといった形で、協力医を増やしていくということで底上げしていくという試みもされています。
 なので、全てのエリアでそれができるかどうかというのは分かりませんけれども、その地域の特色に即して対策を打っていくという意味では、そういった様々な取組を御紹介して、これならできそうだということを取り上げていただくという形でやっていきたい。その一つの試みが、47都道府県、日本地図をクリックしていただくと、自分と似たような色合いの状況の都道府県の取組が一目で分かる。それがうまくいっているのか、いっていないかというアウトカムまで分かるようなデータベースをつくりましたので、それを御参考にしていただいて進めていただければと思いますし、我々のほうも積極的に情報発信していきたいと考えております。
 御指摘ありがとうございました。
○柏原座長 ありがとうございました。矢部構成員が御指摘いただきました呼称とか疾患の捉え方に関しましては、この検討会にも内科学会、糖尿病学会、腎臓学会の理事長、また日本医師会からも御参加いただいておりますので、より高次のレベルというか、広いスキームで改めて御議論いただけると思います。
 まだまだ議論は尽くせないわけですが、議題3の後で少しまとまったQ&Aの時間がありますので、継続して御議論いただきたいと思います。
 それでは、次ですが、資料2-2につきまして要参考人のほうから御発表をお願いします。
○要参考人 このたびはお招きいただき、ありがとうございます。御紹介いただきました杏林大学の要でございます。私は厚労科研班の多職種連携の実証研究班から報告させていただきますが、その前に腎臓病療養指導士の現状と課題についてお話しさせていただきます。
 まず、療養士についてです。御承知のとおり、腎疾患対策報告書の人材育成の欄には、療養士の役割がこのように明記されております。
 本制度の紹介ですけれども、本制度はこのような背景の下、CKD診療においても療養指導の担い手を養成する必要があるという認識の下、腎臓学会主導で議論を重ね、2017年度にスタートいたしました。2018年4月に第1回の療養士が誕生しております。
 腎臓病療養指導士は、研修や講習会など一定の要件を満たした看護師、管理栄養士、薬剤師に与える資格で、現在は日本腎臓病協会が認定しています。
 すなわち、CKD指導に関する職種横断的な標準知識と技能を有し、1人で患者さんに対して基本的な療養指導を行うことができる、いわばチーム医療の柱という位置づけであります。
 認定者は、もちろんまだまだ十分ではないのですけれども、順調に増えて、第6回までで2404名に上っています。
 内訳を見てみますと、病院勤務者が多数を占めるのですけれども、最近の傾向として病院以外の薬局やクリニックなどの認定者が増えています。
 ここからは療養士制度の今後の課題について考えてみたいと思います。まず、継続的育成であります。
 こちらは先ほどもありましたけれども、都道府県ごとの療養士数、赤のバーで示しますけれども、これを人口比で見た図になりますが、御覧のようにかなり地域差があるというのが分かります。例えば東北など一部の地域では、岐阜もちょっと少ない傾向が見られます。また、青が専門医の人口比ですけれども、これと比べてみますと、専門医と療養士の両方はおおむね比例している。すなわち、専門医が多いところでは療養士も多い、少ないところでは少ないという傾向が見てとれると思います。
 したがって、育成におけるまとめの課題としては、全体の数を増やすとともに、少ない地域に重点的に配置していくということが必要と考えられ、現在、広報活動、それから制度上の工夫を進めているところですけれども、今後の対策としては、さらに広報を強化すること。
 それから、療養士不在の施設がある、たとえば腎臓学会認定施設でも不在のところがまだ6割もありますので、それらに働きかけていくということ。
 それから、都道府県ごと、これはこの後お話ししますけれども、きめの細かい対策を取っていくということが重要と考えています。
 全体でどれぐらいが適正かというのは、まだ不明ですけれども、患者数、糖尿病療養指導士数をいろいろ勘案しますと、少なくとも6000人は必要かなと考えています。
 これは療養士の組織図ですけれども、ここに療養士の各地方ごとの連携の会を組み入れていきたいと考えています。現在、幾つかの地域で自然発生的に設立されつつありますので、今後はこれを全国展開して、それを束ねる全国組織を設ける方向で検討しているところです。各都道府県の連携の会は、医師のほうのJKAの地域の代表が全国にいますので、ここで連携しながら、地域ごとにきめの細かい対策を取っていくということを行っていきたいと思っています。
 例えば熊本県や長野県では、御覧のような療養士の会が既に立ち上がっています。
 次に、資格取得者に対する対策ということで、継続的な教育と活躍の場の提供ということが挙げられますが、取組として、各種セミナー、療養士企画の実施、教育コンテンツの無料公開などを行っております。
 かかりつけ医等との連携も非常に重要です。療養士は様々な施設に所属していますけれども、中心となるのは病院に所属する療養士ですが、この病院に所属する療養士に対しては、施設内のチーム医療をさらに強化いただくとともに、かかりつけ医からの紹介患者に対する指導。それから、調剤薬局との連携など。それから、クリニックなどでは、非専門医・かかりつけ医のサポートのほか、基幹病院との連携。それから、かかりつけ医との連携。その他、先ほどお話ししましたけれども、最近増えている保健師、薬局薬剤師の役割も期待されるところです。
 図に示しましたように、様々な場面で地域ごとの活躍というのを期待しているところです。
 次に、療養士制度が開始されて6年になりましたので、その評価ということで、こちらは私が代表を務める研究班で検討しておりますので、この後、紹介させていただきます。
 この多職種連携班では、療養士の委員会と共同で、まず、チーム医療に関する全国の実態調査を行い、その結果を踏まえて多職種介入研究を実施いたしました。
 こちらがその概要です。対象は全国の24施設に属するCKD患者3015名で、何らかの多職種介入前後の腎機能、たんぱく尿、複合アウトカムを比較検討いたしました。
 これは患者背景ですけれども、平均年齢は約70歳、eGFRは23程度。介入職種はこのように多数ですけれども、看護師、管理栄養士が多いという状況でした。
 これは結果ですけれども、多職種介入後、このeGFRの年間低下率が御覧のように低下している。糖尿病でも非糖尿病でも有意に抑制されているということが分かりました。その効果は、分けて見ますと、G3aでは少し弱かったのですけれども、G3、G4、G5、どのステージにおいても、少なくとも2年までは見られるということが分かりました。
 こちらは複合アウトカムと職種数、それから入院・外来別の比較ですけれども、こちらに示しますように、職種が多いほど、それから、我々の結果では、外来よりも入院のほうが予後は良好であるということが分かりました。
 さらに、複合アウトカムとスタッフ数、それから介入数との関連を見たところ、これらが有意に相関していること。すなわち、スタッフ数、介入数が多いほど予後が改善されるということが分かりました。特に、管理栄養士、理学療法士の効果が大きいという興味深い結果も得られました。
 これらの結果に基づきましてシミュレーションしてみましたところ、もしこの効果が2年以上持続すると仮定しますと、御覧のように透析のかなりの先延ばし効果が期待される。その効果は、早期のステージで介入するほど大きいと考えられました。
 今回の研究結果より、リミテーションもありますけれども、多職種介入によって腎重症化の抑制が可能と考えられました。
 今回の研究では、同時に各施設での介入方法、教育資材の収集も行っておりまして、例えばこちらの日産玉川病院では、4職種が別の日に4回介入することによって、単施設でも先ほどと同様ですけれども、腎機能の低下の遅延が見られることが示されていますし、これは資材ですけれども、各病院ごとに独自の教育資材を活用されているということも分かりました。
 これらの成果を取りまとめて、このような多職種連携マニュアル、これは岡田先生中心に作っていただいたのですけれども、作成いたしましたので、今後はこれを全国に普及し、チーム医療を推進していくという計画にしております。
 また、これらの成果を踏まえて、できればCKDにおけるチーム医療の診療報酬化を目指したいと考えています。
 最後に、他領域の療養指導士との連携について、少し最後に触れたいと思います。
 2018年からの門脇班で、関連指導士が集まって生活習慣病として共通する部分について連携できないかということの検討が行われています。
 また、最近、透析・移植の療法選択を担う腎代替療法専門指導士が誕生していまして、腎臓病療養指導士もその一翼を担わせていただいております。
 今後は、他の療養指導士との連携もさらに進めていきたいと考えています。
 以上、駆け足でしたけれども、腎臓病療養指導士の課題と多職種連携のエビデンスについて説明させていただきました。御清聴どうもありがとうございました。
○柏原座長 要参考人、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの発表に関しましての御質問や御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 植木構成員、お願いいたします。
○植木構成員 要先生、どうもありがとうございました。
 2つ教えていただきたいのですけれども、先生の論文も拝見して、多職種連携の介入が効果があるというのは疑問の余地がないと思うのですが、介入の前後で薬剤のインテンシフィケーションがどのぐらい行われたのか、その効果がどのぐらいだったのかというのがちょっと読み取れなかったので、それはどんな感じだったのでしょうか。
○要参考人 すみません、それに関しては全くデータを取っていないので分かりませんというのが答えになります。今後、そのような点も詰めていければと考えております。すみません、今、答えられるのはその程度なのです。もちろん、この研究、いろいろリミテーションがあると思っており、限られた施設であるということがまず1つです。恐らく参加いただいたのはかなり熱心なところだと思うのですけれども、そういうところでは、多職種連携があまり行われていない状況で介入したら、このようになるということは少なくとも言えるのではないかと思います。
 ただ、現実には、ある程度、各施設は恐らくやられていると思いますので、そこでさらに連携を強化して、どのぐらい効果が得られるかというところは、これは本当に分かりません。ただ、多職種連携は効果があるということは、少なくとも言えるかなと考えています。
○植木構成員 伺った理由は、薬剤のインテンシフィケーションが行われているということ自身は、別に何も悪いことではなくて、多職種で見守ることによってガイドラインに沿った治療がきちんと行われるという面もあるかと思いますので、それも評価していただければと思います。
○要参考人 恐らくそのように考えています。いろいろな遵守率とか、そういうことがよくなることを介して、最終的には効いてくるのではないかなと考えていますので、その辺もできれば何らかデータを取っていきたいなと考えています。ありがとうございます。
○植木構成員 もう一点は、CDEJの例もお示しいただきましたけれども、糖尿病の場合に非常に苦労していますのは、CDEJが介入することに対する直接の診療報酬がないということもあって、資格を持っていても、適切に糖尿病の部署にその看護師あるいは薬剤師さんが配備されるわけではないということが非常に問題で。もちろん、どの病棟にも糖尿病の患者さんはいらっしゃるので、そこで活躍できるという面もあるのかもしれませんけれども、今後、課題としては、何回か更新される方の率をどうやって保っていくのかということが非常に問題かなと思うのです。
 もう一点は、今の状況を見ましても、病院に確かにたくさんそういう方が育成されているわけですが、クリニックは増えているということでしたけれども、クリニックにどの程度配備されるのか。リソースを本当に必要としているのはそういうところなのかなと思うのですけれども、もし将来的なそういうことに対する対策にお考えがあればお聞かせください。
○要参考人 ありがとうございます。
 更新については、今年から更新者が出ていて、実際にどれぐらい更新してくれるかというのは、私もちょっと心配しているところではあるのですけれども、腎臓病療養指導士では更新の要件というのが多分あると思うので、それに関しては割かしハードルは低いのではないかなと考えています。
 例えば看護師ですと、配置が変わってしまうということは、多分、腎臓病療養指導士でも全く状況は同じだと思いますので、先ほど診療報酬化ということをお話ししましたけれども、糖尿病性腎症以外でも診療報酬化がもし可能になったとしても、療養指導士が必須になるということは、それは糖尿病のほうと同様だと思います。その問題点は多分共有しているのではないかなと思いますので、またその辺、御指導いただければと思います。
 あと、クリニックに関しましては、先ほど岡田先生からもありましたけれども、どうしても専門医がいない地域は、協力医あるいは療養指導士を配置して補強していくということをしていきたいなと考えています。ですので、なるべくクリニックとの連携というのも、今後考えていきたいと思っています。ありがとうございます。
○柏原座長 多くの御質問の手が挙がっておりますので、ここから先は少しクイックに進めたいと思います。
 まず、矢部構成員、お願いします。
○矢部構成員 ありがとうございます。
 エビデンスに基づいて、療養指導士の必要性ということで、更新率等に関しましては先ほど植木構成員がおっしゃられたところだと思いますが、私、心配なのが、専門医がいない地域でどうやって育てていくのかというところをお伺いしたかったのですが。糖尿病の療養指導士も、CDEJとは別に、各地域でもう少し試験の要件なんかを緩和したものをつくって、CDELというものを展開して、数としては逆転していて、そういった人たちが先生方のところで頑張ってやってくれているのですね。そういったところも考えられてもいいのかなと、コメントになりますが。
 もう一つは、これからいろいろな療養指導士というのが出てきますね。例えば心不全とかも入ってきて、現場の人たちがいっぱいいろいろなところに参加しないといけないとなって困られてくるので、その辺りを単位の互換性を持たすとか、そういったものもあっていいかなと思いましたので、また御検討いただけますと幸いです。
 以上です。
○要参考人 ありがとうございます。
 一番最後の点につきましては、まさに1つ前の門脇班でできないかということで、コロナで中断していますけれども、今後、そのような継続するということも多分あるかなと思います。
 それから、CDEJですか、そういったことを検討していきたいと思います。まず、先ほどお話ししました各都道府県に療養士の会というのをつくって、それで腎臓病協会と連携しながら、各都道府県で少ないところに配置するということをやっていただくということ。中央でなかなか全体、細かいところはできないと思いますので、そのようなことをやっていきたいと思っています。
○柏原座長 下浦構成員、お願いします。
○下浦構成員 ありがとうございます。日本栄養士会の下浦と申します。要先生、御説明ありがとうございました。
 先ほど説明がありました腎臓病療養指導士とともに、日本栄養士会では日本病態栄養学会さんと共同し、日本腎臓病協会さんとも連携していきながら、腎臓病の病態栄養専門管理栄養士の育成を行っているということは御存じかと思います。認定者数が60名ということで、まだまだ少ないのですけれども、今後、腎臓病の病態栄養セミナー等々を企画して、当該認定制度の周知と、また腎臓病に係る管理栄養士のボトムアップを図って、さらなる人材育成に努めていきたいと思っておりますので、先生方には、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○要参考人 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○柏原座長 それでは、池田構成員、お願いします。
○池田構成員 ありがとうございます。
 要先生、どうもありがとうございます。全国腎臓病協議会の池田と申します。患者サイドから参加させていただいております。
 今、お話の中で多職種連携というのが、これはどうしても病院を前提とした多職種連携という形で進んでおりますけれども、ステージ3から4を今後伸ばしていくとなったときに、どうしても高齢化が伴ってくると思うのです。そうすると、介護が必要になってくる方も増えてくるのではないかということを懸念しておりまして、そういうときに今の多職種連携が病院だけではなくて、今後、介護というところにまで広がるのかどうかというところをちょっと確認したいのです。
○要参考人 設立してからまだ数年ですので、多分そこまで手が回っていないという状況で、今後のことを考えますと、介護にもCKD患者は当然いるわけですので、訪問医との連携とか、そういうのも考えていく必要があるなと、今、痛感いたしました。また、患者さんとの連携も必要だと思いますので、協議会に患者さんにも参加していただくという仕組みもちょっと考えていきたいなと思います。どうも御指導ありがとうございました。
○池田構成員 こちらこそありがとうございます。
○柏原座長 それでは、最後の御質問になります。津下構成員、お願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。
 後ろ向き研究ということで、リミテーションについてもお話があったのですけれども、私たち、国保等の地域のデータを見ていると、治療中断者とか指導を途中でやめてしまった患者さんもたくさんいらっしゃる。したがってこういう指導を完結できる完了率とか、そういうことも前向きに見ていく必要があるのかなと思いましたが、今後計画されていますかということと。
 今回の介入は、例えば透析予防指導管理料とか、そういう枠組みでされたのでしょうか。かなりマンパワーがかかっているところもあるので、それは制度としてフィージブルなのか、かかりつけ医に広く広げるという観点で言うと、多職種連携をどう実現させていくかという課題もあります。CKD患者さんは非常に多いので、その辺りが気になります。
○要参考人 糖尿病以外のところにも広めるということを前提にこれが始まったわけでは全然ないのですけれども、結果的には非糖尿病性腎症のチーム医療ということも非常に重要ですし、そこに診療報酬がつかないと、いろいろな意味で前に進んでいかないというのもありますので、それは目指したいと考えているところです。
 もう一つは、臨床研究、何回という、その辺は今後検討していきたいと思います。1年で4回ぐらいが平均なのです。それをやっていると、少なくとも2年ぐらいまでは効果があるというのは分かっているのですけれども、実際、どれぐらいの頻度でやっていくのがいいのか。あるいは、それがどれぐらい継続できているのかというのは、我々の研究はかなり熱心なところが手を挙げてくれてやっているので、実際の実態はどうなっているのかというところはすごく重要なことだと思いますので、考えていきたいと思います。ありがとうございます。
○柏原座長 ありがとうございます。非常に多くの建設的な御意見をいただきまして、私も大変勉強になりました。
 お二人の参考人、岡田参考人、要参考人には、この資料の準備の部分にも大変大きな労を割いていただいたと思っております。改めて御礼申し上げたいと思います。
 それでは、最後の議題になります。議題3「腎疾患対策の進捗状況と課題について」に移りたいと思います。これに関しましては、事務局のほうから資料を用いて御説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 それでは、資料3「腎疾患対策の進捗状況と課題について」を御覧いただければと思います。
 続いて、2ページ目を御覧ください。まず、前提の御説明でございます。会議の冒頭、柏原座長からも御紹介いただいておりますが、腎疾患対策検討会報告書が平成30年、2018年7月に作成されておりまして、そこから5か年が経過している状況でございます。そちらの報告書の中で、腎疾患対策に関する全体目標を達成するために、国や関係学会等は、評価指標等を用いて対策の進捗管理を実施するとともに、進捗管理の過程で、KPIの達成が困難と判断される場合には、適宜検討を行い、実施すべき取組に見直しを加えながら対策に取り組むこととされてございます。ということで、青い枠の中に報告書の記載内容の抜粋を書いてございますが、そのような趣旨の記載がなされているというところでございます。
 続いて、3ページ目を御覧ください。こちらは2018年の検討会報告書の全体目標そのものと評価指標、現時点における評価、取組状況等について一覧をお示ししているところでございます。一つ一つ申し上げることはしませんが、例えば(c)の新規透析導入患者数については、評価指標としては、新規透析導入患者数を5年で5%以上減少、10年で10%以上減少を達成する都道府県数といった指標が設けられていて、評価自体は可能な状態になっていて、一番右のところに取組状況等についてお示ししているということになります。先ほど資料2-1で御報告いただいた内容等とも関係してくるところでございます。
 続いて、4ページ目を御覧ください。こちらは同じ報告書の個別対策のところの対応状況についてお示ししているものでございます。一部見ていただきますと、例えば人材育成、マル4の2つ目の行でございますが、腎臓病療養指導士等と、関連する療養指導士等間の連携事例数というところがございますが、こちらは具体的にこの指標をキャッチアップする手法が現時点でないので、現状では評価困難という形で整理させていただいています。
 続いて、5ページ目を御覧いただければと思います。これまでの資料2-1、2-2に関する研究班の御報告の内容も踏まえて、こちら記載させていただいています。これまでの取組状況等を踏まえた腎疾患対策に係る課題及び今後の対策に向けた論点ということで、まず、今、申し上げた対策の進捗管理についてというところでございます。
 1つ目のポツで、腎疾患対策について、今、申し上げたように一定の進捗管理が可能な項目がある一方で、一部、現時点で評価困難な項目もございますというのが実態でございます。
 他方で、2つ目のポツでございますが、新規透析導入患者数につきましては、先ほど岡田先生からの御報告にもございましたとおり、平成30年から令和3年の予測透析導入患者数と実際の新規透析導入患者数を比較したときに、一定の取組の効果が見られるのではないかといった分析もさせていただいており、予測透析導入患者数との比較や、性・年齢階級を踏まえた評価の必要性も示唆されたところでございます。
 2つ目に、個別の対策についてというところで、それぞれの柱ごとに記載しているイメージですが、例えばマル1、普及啓発については、勤労世代を中心に、さらにCKDに対する認知度を高めていくことが必要ではないかといったことや、健診受診後の医療機関への受診勧奨といった形も含めた普及啓発が必要ではないかということですとか。
 2つ目のポツで、こちらはマル2の医療提供体制のところに関連してまいりますが、かかりつけ医と専門医との連携について、より早期の受診勧奨とか連携が必要ではないか。CKDステージが進行してからの紹介が多いので、より適切な連携が必要ではないかといった御示唆がありました。
 3つ目のポツでは、CKD患者に対して、最後の要先生の御報告のところと重なりますが、多職種がチームで適切な療養支援を行うための腎臓病療養指導士のさらなる育成や、多職種による療養指導の標準化されたツールの普及等について、さらなる育成も含めて必要であるといったことが示唆されていると思います。
 そういったところを踏まえまして、論点として2つ記載してございます。
 1つ目のポツは、前段で御紹介した対策の進捗管理についてというところで、現時点では評価困難な事項とか、評価が不十分な事項については、その評価手法について、引き続き検討し、より適切な評価が実施できるようにしていってはどうかということを考えてございます。
 2つ目のポツで、個別の対策については、本日ここで御意見をいただければと思いますが、上記に記載したほかに、今後、追加的に実施すべき取組について、どのように考えるかということで御意見をいただければと思っております。
 事務局から資料3の御説明については以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○柏原座長 ありがとうございました。課題と今後の対策に向けての論点整理をしていただきました。
 それでは、全般的な議論になろうかと思うのですが、残された時間を使いまして質疑をしたいと思います。挙手いただければと思います。構成員の方だけでなく、参考人の方も加わっていただければと思います。
 植木構成員、お願いいたします。
○植木構成員 この腎疾患対策については、恐らく2つのフェーズが非常に重要で、1つはCKDの認知を高める、未病の人に対して、どのように啓発していくのか。それは新しいSNSとか、そういうものでの啓発活動というのが恐らく必要で、それは今、なされていないのではないかと思います。
 それから、もう一つ、もう既に発症してしまった人の重症化をどのように防いでいくのかという点について、個別対策のところで、岡田参考人がガイドラインの普及率のアンケートの調査をされていましたけれども、それでは多分不十分で、例えばたんぱく尿が出ているような高血圧の方に、既に有効であることが分かっているようなRAS系の阻害薬がどのぐらい使われているのかとか、今後、ガイドラインにどのように書かれるのか、よく分かりませんけれども、糖尿病であってもなくてもeGFRが低下している人にSGLT2阻害薬がどのくらい使われているのか。これは今後、費用対効果を判定する上でも物すごく大事なことではないのかなと思います。
 どのくらいのお金が使われて、どのくらい重症化を防ぐことができたのかということを、今後判定できることになりますので、それをNDBやKDBを使って全国的にやれるかどうかというのは検討していただければいいと思いますけれども、あるいは、どこか幾つかの地域でモニターするのかということは決めていただければと思うのですけれども、プロセス指標の中にそういうことを取り入れていただくほうがいいのではないかというのが私の意見です。
○柏原座長 ありがとうございます。私が答えていいかどうか分かりませんが、前半部分に関しましては、南学理事長の下で非常に分かりやすい、未病の方、一般市民・国民に向けてのCKDの普及啓発のキャンペーンを企画いただいていると理解しています。例えば80歳で自分自身の歯を20本維持しようというのと同じような意味合いで、60歳でGFR60を維持しよう。60、60という分かりやすいキャッチフレーズでキャンペーンしていこう。幾つかのプランがあるように伺っています。
 岡田先生、これについて、何か今、情報とかお考えがあればお教えいただけますか。
○岡田参考人 ありがとうございます。
 普及啓発に関しましては、先ほど申し上げましたように、様々なチャネルを通した試みがいろいろと今、企画されていますので、これは今後発展があるかなと思っているのですけれども、植木構成員がおっしゃられた細かいデータ収集がなかなか難しい。実は、おっしゃられたことを盛り込みたかったのですが、かかりつけの先生方からの情報収集というのが、質問事項が煩雑になると多分返事が返ってこないということがありまして、何らかのリアルワールドデータ、客観データを用いた検討にしなければいけないなということで、これに関しましては、データベースを用いた検討にたけた分担研究者の先生方にもお入りいただいておりますので、ぜひ検討していきたいと考えております。
 以上です。
○柏原座長 それでは、下浦構成員、お願いします。
○下浦構成員 ありがとうございます。日本栄養士会の下浦です。
 個別の対策についてのところで、CKDステージが進行してからの紹介が多いという記載がございます。当然、専門医、また腎臓病の専門医療機関での管理栄養士の栄養指導の実施というのは必須であるかと考えておりますが、かかりつけ医のところでぜひ管理栄養士を御活用いただければと思っております。当会としても、かかりつけ医と管理栄養士の連携が図れるように、地域密着型としての認定栄養ケア・ステーションというのを設置しておりまして、要先生のスライドの中にも記載があったかと思います。患者様が身近なところで栄養指導を受けられることによって、CKDの重症化予防、患者のQOLの維持・向上が図れると考えておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。
○柏原座長 ありがとうございます。
 それでは、家保構成員、お願いします。
○家保構成員 ありがとうございます。
 個別の対策について、勤労世代を中心にCKDに対する認知度を高めるということは、行政全般として取り組まないといけないと思います。一方で、後段の健診受診後の医療機関への受診勧奨といいますのは、医療保険者がきちんとフォローする。そのために特定健診、特定保健指導というのがありますので、そこは誰が主体になって確実にフォローするのかというのを明確にすることが大事と思います。
 それから、最後の腎臓病療養指導士、腎臓病専門医の数が少ないことです。私の県は、ここ10年で腎臓専門医が増えたのが0.2%。25人が27人にしか増えませんでした。そういう意味で言うと、専門医を増やすことは非常に難しいのが現状です。それをフォローする意味で、各地域で腎臓病療養指導士を増やすような取組というのは、ぜひ強調していただけるとありがたいと思います。
 以上でございます。
○柏原座長 ありがとうございます。全国的に見ますと、専門医の数はゆっくりと漸増している状況ではありますけれども、県によってはほとんど増えていない、あるいは若干減少している県もあると理解しています。一方で、岡田参考人が御紹介いただきましたように、北海道の例など見ますと、北海道は専門医の数が全国平均と比べて少ない。療養士の数も十分ではない。ですけれども、男女ともに新規透析導入患者数が減っている。幾つかその要因についても岡田参考人から御紹介があったところだと思っています。ということで、専門医を増やすことは決して容易ではないのですが、それだけが決定要因ではないなということも考えています。
 それでは、津下構成員、お願いします。
○津下構成員 ありがとうございます。
 受診勧奨、治療につなげることの重要性というのはあるのですけれども、糖尿病性腎症の重症化予防の中でつかんでいるのは、毎年受診勧奨しても毎年受診しない人。その理由としては、経済的な理由も多くあげられます。お薬代が今すぐかかるわけですけれども、それが将来、どのぐらい自分に対して利益があるかということを十分に理解されていないというか、現在の足元の経済的な理由を優先してしまうという患者さん、住民が非常に多いという状況になっています。
 二人主治医制ということで、経済的な負担は足元では若干増えるわけですけれども、その意味を患者さん自身が、行ってよかったな、自分の体の状態が分かって、これで安心だとか、こうすればいいんだねということを納得してかかりつけ医に戻っていく。そして、かかりつけ医が書面で報告をもらう、それも大事なのですけれども、患者さんが喜んでくれたかということ。行ってよかったよ、先生、これでちゃんとやろうと思うというように、患者さんの言葉から聞けるとかかりつけ医も安心するのではないかなという気がしております。
 今、先行投資するわけですね。特に腎症のできるだけ早い時期というと、自覚症状がまだない時期にそれだけのことをすることが、どんな意味があるのかをきちんと説明していくこと。それが多職種連携ではなされるのだけれども、ということだと思うのですが、広く患者さんの視点で十分な説明や納得感があるということが重要かなと思います。指標の中に患者さんの満足度とか意欲とか、そういうことが取り入れられるといいのかなとも思いました。
 以上です。
○柏原座長 ありがとうございます。その辺りの議論が今までできていなかったものですから、非常に貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
 それでは、横山構成員、お願いいたします。
○横山構成員 科学院の横山です。ありがとうございます。
 評価手法については引き続き検討を進めるということで、KPIとしては、新規導入患者数を3万5000以下にということになっていて、実際はそこまではいっていないということですが、御説明いただきましたとおり、予測値に比べると改善しているし、男女・年齢によって相当傾向も違うということで、これに関して、岡田先生から非常にすばらしいデータを御発表いただきましたので、こういったデータを広く周知して、特に男女の違いあるいは年齢によって、どういう違いがあるのか。さらに、地域別の違いといった情報を基にして、評価というのは課題を見出して改善するのにつなげることが非常に重要かと思いますので、この結果に基づいて、どこにフォーカスを当てるとか、地域的にどう考えるのかということを広く周知して対策につなげていくのがいいのではないかと思います。
 以上です。
○柏原座長 ありがとうございます。
 ほかには、3つ目の議題に限定せずに、全体を通して御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 本日、構成員として、日本腎臓学会から、理事長でいらっしゃいます南学構成員も構成員として御参加いただいておりますが、全体を通して何かコメント等、御指導いただければと思います。いかがでしょうか。
○南学構成員 ありがとうございます。皆様から大変貴重な御意見をいただき、心から感謝申し上げます。
 柏原先生のリーダーシップの下で進められている本件につきまして日本腎臓学会としても全力で取り組んで、腎臓病に悩み、苦しまれる方々の健康・福祉の貢献に取り組んでまいりたいと思いますし、また、そのためには、糖尿病学会や循環器学会をはじめとする関連諸学会の皆様、そしてもちろんかかりつけ医の皆様や、管理栄養士の皆様をはじめとする関連分野の方々との密接な連携が重要であるということを再認識いたしました。
 引き続き、柏原先生にはぜひ御指導いただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○柏原座長 ありがとうございました。
 それでは、ほぼ予定した時間を迎えました。今日は本当に多くの御意見や御指導いただいて、大変ありがたく思いました。御協力いただきましたこと、改めて深く御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、もう一度、ここで事務局にお返しいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
 構成員の皆様方、活発に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
 次回の検討会についてでございますが、事前に各構成員の皆様には御案内させていただいているとおり、9月28日の10時からを予定してございます。場所等の御案内について詳細は改めて事務局から御連絡させていただきます。お忙しい中、恐縮ですが、引き続きの御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、以上で本日の検討会を終了させていただきたいと思います。構成員の皆様、参考人の皆様、長時間にわたり御議論いただきまして、誠にありがとうございました。