薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(2023年7月19日)

日時

令和5年7月19日(水)
14時00分~16時00分

場所

オンライン会議

出席者

委員
事務局
参考人
  • 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部 小川部長

議題

  1. (1)審議事項
    • ポリビニルアルコールの新規指定の可否等について
  1. (2)報告事項
    • 消除予定添加物名簿について
    • 二酸化チタンの対応について
    • アスパルテームについて
    • その他

議事

議事内容
○事務局 それでは、定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会」を開催させていただきます。
 本日は御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、本部会をオンラインで実施するに当たり、オンライン会議での委員の皆様に御注意いただきたい点について事前に確認いたします。
 御発言時以外は、基本的にマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。発言時以外にマイクがオンとなっている場合には、事務局がミュートとさせていただく場合がありますので、御了承ください。また、御発言がある場合には、まずは挙手機能やコメント機能を用いて意思表示をお願いします。意思表示を頂きましたら、部会長又は事務局が御指名しますので、その後に御発言をお願いいたします。御発言の際は最初に御自身のお名前をお願いいたします。
 また、部会長から委員の皆様に審議事項について認めることでよいか等を確認していただくことがありますが、チャット機能等での意思表示をお願いしております。了承いただける場合には、チャットで「異議なし」などを入力いただきますようお願いいたします。注意事項は以上となります。
 続いて、本日の委員の皆様の出席状況を報告いたします。現時点で添加物部会委員13名中12名の方々に御出席を頂いておりますので、本日の部会が成立いたしますことを御報告申し上げます。また、本日の報告事項2つ目の「二酸化チタンの対応について」に関して、参考人として国立医薬品食品衛生研究所の小川久美子先生にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 次に、資料等の確認をいたします。あらかじめ議事次第、委員名簿、資料1-1から1-3、資料2-1から2-3、資料3、資料4、及び参考資料1から7をお送りしています。
 それでは、議事の進行を杉本部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 皆様、こんにちは。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。また、今日も千代田区が34℃ですね。厚生労働省に集まった皆様においては少し大変でしたけれども、webを通して参加してくださっている先生方、外は多分暑いと思うのですけれども、中は快適なのかと思います。今日もいろいろ審議していただくことがありますので、どうか活発な御意見、御質問などを頂けると良い会議になるかと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から本日の部会の審議品目に関する利益相反の確認結果について、まず報告をお願いいたします。
○事務局 事務局です。本日の部会においては、審議対象のポリビニルアルコールが利益相反確認対象品目となっております。当該品目について、本日の部会において退出が必要な委員又は議決には参加できない委員はいないことを確認しております。
○杉本部会長 大丈夫ですね。それでは、議題(1)の「ポリビニルアルコールの新規指定の可否等について」の審議を行いたいと思います。まずは、事務局から本議題の概要について御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。よろしくお願い申し上げます。それでは、ポリビニルアルコールについて御説明いたします。ポリビニルアルコールについては、資料1-1、今画面にある「諮問書」、そして資料1-2「ポリビニルアルコールの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)」、資料1-3「食品健康影響評価の結果の通知について」の3種類の資料を御用意しております。本日はそのうち、資料1-2であるポリビニルアルコールの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)を中心に御紹介いたします。
 それでは、早速始めます。本日、御審議いただくポリビニルアルコールですが、新規指定の食品添加物です。それに伴い規格基準の設定に関して御審議いただきたいと思います。まず、1.品目名です。ポリビニルアルコール別名(ポバール)となります。2.構造式、化学式及び式量に関しては御覧のようになっております。
 3.用途です。今回は製造用剤(結合剤、コーティング剤、安定剤、増粘剤、分散剤、フィルム形成剤、光沢剤)としての用途を予定しております。4.概要及び諸外国での使用状況等ですが、ポリビニルアルコールの歴史は古く、1924年にドイツで開発され、諸外国で広く使用されております。また、国内では既に医薬品添加物規格2018等に収載されており、医薬分野での使用実績があります。
 主な諸外国の使用状況を御紹介いたします。コーデックス委員会においては、2007年に光沢剤及び増粘剤としてGSFAのリストに収載されており、使用上限としてはフードカテゴリー13.6「食品サプリメント」に対して食品1kg当たり45,000 mg/kg以下での使用が認められるとされております。今回の使用基準における使用量の設定に関しては、このコーデックス規格に合わせております。
 米国においてはGRAS物質と認定されており、食品と直接接触する包装材料への使用が認められております。また、米国食品化学物質規格集には、コーティング、結合剤、シーリング剤及び表面仕上げ剤として記載され、実際にマルチビタミンやマルチミネラルの栄養補助食品に使用されております。また、医薬品をはじめ、多くの化粧品に結合剤、フィルム形成剤及び増粘剤として使用されております。
 欧州連合においては、カプセル、錠剤及び類似の形状(チュアブル形態を除く)を含む固形の食品サプリメントのうち、カプセル及び錠剤のみに使用が認められており、その使用量は食品1kg当たり18,000 mg/kgまでとされております。
 5.添加物としての有効性です。(1)フィルムコーティング剤及び結合剤としての用途です。ポリビニルアルコールは不活性であり、被膜形成性、防湿性、ガスバリアー性、界面活性能及び接着性など、種々の特性を有する水溶性ポリマーです。その特性を利用して、これまで医薬分野では、錠剤やカプセル剤のフィルムコーティング剤及び結合剤として使用されております。
 したがって、今回の使用基準案であるカプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品に対しては、医薬分野同様の有効性があると考えられます。
 (2)食品中での安定性です。ポリビニルアルコールは、化学的に安定な高分子化合物で、通常、常温では腐敗や分解、重合などは起こらないというように言われております。熱に対する特性として、200℃以上の場合は急速に着色し、熱分解が始まるとされております。したがって、通常の食品においては安定であるというように考えられます。
 (3)食品中の栄養成分に及ぼす影響です。要請者の説明によると、ポリビニルアルコールは、海外の使用実績において、一般的な健康食品中の有効成分との特異的な相互作用は知られておりません。一方で、強酸で分解し、弱酸及びアルカリで軟化するか、溶解することから、医薬品においては高濃度の無機塩、特に硫酸塩やリン酸塩とは配合禁忌となっておりますが、これらの反応はカプセル・錠剤等、通常の食品形態でない食品や胃腸管内で起こるとは予想されませんので、食品中の栄養成分とは反応しないと考えられます。
 一旦ここで、先生にお渡しいたします。
○杉本部会長 説明ありがとうございます。ここまでで、委員の先生方から御質問などはありますでしょうか。大塚委員ですね。お願いします。大塚先生。
○大塚委員 よろしくお願いいたします。東京都の大塚です。細かい書式みたいなところでも提案させていただいてもよろしいでしょうか。
○杉本部会長 どうぞ。
○大塚委員 ありがとうございます。脚注の番号の振り方なのですけれども、場所を変えたほうがいいかと思う所が1か所ありました。1ページの28行目の所です。1ページの28行目の頭の所の「mg/kg」なのですが、ここに脚注の「3」が振ってあるので、ぱっと見たときに「おやっ」と、係数がかかっているかと見間違える方がいるかもしれないと思いまして、一番後ろの「認められている」の所に「3」と振ったほうがいいかと考えました。
 次の29行目でも、脚注の「4」の引用が「認められている」の所で「4」となっておりますので、同じように28行目の脚注も、「認められている」で脚注の「3」とするのはいかがでしょうか。提案したいと思います。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。事務局、後で修正をお願いいたします。
○事務局 先生、御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり修正をさせていただきます。
○杉本部会長 ほかにありますでしょうか。ないようですね。それでは続きまして、ポリビニルアルコールの食品安全委員会における評価結果について、事務局より簡単に説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。それでは続きまして、6.食品安全委員会における評価結果につきまして御報告いたします。令和5年6月7日付けの府食第379号で、「ポリビニルアルコールが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、許容一日摂取量を特定する必要はない。」との評価結果が食品安全委員会より通知されております。評価書からの主要な部分の抜粋を下に記載しておりますので、概要につきまして御説明をいたします。
 「ポリビニルアルコール」については、製造過程において、不純物として酢酸メチル及びメタノールが生成されます。このうち酢酸メチルについては、メタノールと酢酸に分解しますので、今回、ポリビニルアルコールに加え、メタノール及び酢酸を含め、総合的に「ポリビニルアルコール」の食品健康影響評価を行っております。
 まず、一番上PVAですが、体内動態については、経口投与後のPVAの吸収は非常に小さく、主な排泄経路は糞便中であると考えられております。
 また、PVAには遺伝毒性はないと判断しております。
 反復投与毒性、生殖発生毒性試験等を検討した結果、ラット90日間反復経口投与試験及びラット生殖毒性試験の結果に基づき、PVAのNOAELを最高用量である5,000 mg/kg 体重/日と判断しております。PVAの一日摂取量は、国民平均で590 mg/人/日で、体重に直しますと11 mg/kg 体重/日、小児で370 mg/人/日、体重に直しますと23 mg/kg 体重/日と推計しております。
 よって、PVAは、消化管でほとんど吸収されないこと、ラット90日間反復経口投与試験及びラット生殖毒性試験において最高用量である5,000 mg/kg 体重/日まで毒性所見が認められていないことから、「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、PVAの安全性に懸念はないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断されております。
 メタノールと酢酸についても、簡単に御紹介いたします。メタノールについては、食品安全委員会で2019年に評価が行われております。その後、新たな知見が認められていないことから、新たな体内動態及び毒性に関する検討は行っておりません。「ポリビニルアルコール」由来のメタノールの推定一日摂取量は国民平均で0.15 mg/kg 体重/日、小児で0.32 mg/kg 体重/日であり、通常の食事由来のメタノールと同様に吸収され、体内で代謝及び排泄されると考えますと通常の食習慣でのメタノールの摂取量に比べ少ないことから「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、「ポリビニルアルコール」由来のメタノールは、安全性に懸念がないと判断しております。
 酢酸についても、食品安全委員会で2017年に評価が行われております。メタノールと同様、その後、新たな知見が認められていないことから、新たな体内動態及び毒性に関する検討は行っておりません。「ポリビニルアルコール」由来の酢酸の摂取量が食事由来の摂取量と比較して少ないことを評価した結果、「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、「ポリビニルアルコール」由来の酢酸は、安全性に懸念はないと判断しております。
 上記のPVA、メタノール、酢酸の結果を踏まえ、食品安全委員会は「ポリビニルアルコール」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断したとの評価結果を頂いております。
 食品安全委員会からの報告は以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員より簡単に御説明をお願いいたします。
 まず、一般毒性について桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 桒形です。それでは、簡単に御説明いたします。資料1-3を御覧ください。13ページの一番下のほうに毒性試験とございます。
 おめくりいただいて14ページの(2)、急性毒性が始まりますが、15ページの上の表7、こちらのLD50の数字です。御覧いただけますように、大きい数字が並んでおります。すなわち特段、急性毒性で懸念すべきことはないと判断できます。
 (3)反復投与毒性試験、ラット90日反復が混餌で行われています。表8に5,000 mg/kgまで用量がありますが、16ページにその評価が書いてあります。PVAは消化管からの吸収はわずかであるということで、肛門周囲の汚れ等があるのですが、それは糞便中に排泄された大量の被験物質により、便内に水分が保持されたものということで、生理的な影響だというようにJECFAも食品安全委員会も考え、最終的にPVAのNOAELは、最高用量の5,000 mg/kg 体重/日と判断されています。
 (4)の発がん性ですが、こちらはマウスを用いた経膣投与、もし事務局のほうですぐ情報があったら後で教えてほしいのですが、これは薬物動態でも経膣投与試験があって、先ほどの説明の用途の使い方から経膣の可能性があるから経膣投与なのか、そこが分からないのですが、発がん性マウスで経膣投与で行っております。普段、食品安全委員会は経口ばく露での評価という原則がありますので、発がん性はないと推測はされておりますが、食品安全委員会としては、発がん性はないとはいえ、経口と経膣というところで限定されているだろうというように結論づけています。
 17ページの(5)生殖発生毒性ですけれども、ラットを用いた二世代繁殖試験は、用量が高く、最高用量が5,000 mg/kgまで混餌投与した投与試験が行われています。
 18ページ真ん中に、食品安全委員会のまとめが書いてありますが、特にこの試験から親動物に対する一般毒性、生殖毒性並びに児動物に対する毒性等はないということで、NOAELを最高用量の5,000 mg/kg 体重/日というように判断されています。
 18ページの(7)に毒性のまとめがあり、今申し上げたようなことが書いてあります。総合的には18ページの一番下から記載がありますが、食品安全委員会としては、提出された毒性試験の試験成績からPVAの毒性の評価は可能、すなわち、特に懸念するような重篤な評価は、5,000 mg/kgまでは大丈夫であろうというような判断となっています。
 3.ヒトにおける知見の記載もありますが、有用なデータが乏しいということで、ヒトでの健康影響は報告されていないとされております。毒性関係は以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。続きまして、遺伝毒性について、戸塚委員、お願いできますでしょうか。
○戸塚委員 同じ資料の13ページにお戻りください。13ページの下からが遺伝毒性です。遺伝毒性のまとめといたしましては、次のページにお移りいただきまして、表6にまとめてあります。遺伝子突然変異試験、染色体異常試験と両方されておりまして、ほとんどin vitroの試験になっていますが、ほとんどが陰性という結果になっております。
 遺伝子突然変異試験の2つ目のカラムですが、ここの結果のみ1回目で偽陽性という結果が出ております。その後、2回同じようにアッセイをしておりまして、そちらの結果は陰性ということから、最終的に陰性と判定しております。
 また、1つだけin vivoの小核試験がありまして、一番下のカラムですけれども、マウスを用いた小核試験ですが、これも陰性という結果になっております。これらの結果を踏まえまして、遺伝毒性のまとめとしては、このPVAは遺伝毒性がないと判断したとまとめられております。以上になります。
○杉本部会長 ありがとうございます。続きまして、体内動態について、頭金委員、お願いいたします。
○頭金委員 体内動態について、資料1-3の9ページを御覧ください。まず9ページの(1)の試験と12ページの(2)の試験で経口投与試験の結果が記載されています。9ページの(1)の経口投与試験で用いられたPVAの分子量は、5,000から50,000となっております。放射体のPVAを使った実験なのですが、結果は、投与いたしましたPVAのほとんどが糞便中に排泄され、尿中への排泄量は全投与量の0.2%と非常に微量であったとされております。
 それから、12ページの(2)の経口投与試験も同じように、消化管からの吸収量は非常に僅かで、ほとんどが糞便中に排泄されたとしております。
 静脈内投与の単回投与試験の実験も行われておりまして、10ページのマル2の試験、13ページの(3)の試験があります。10ページのマル2の試験ですが、用いたPVAの分子量としては5,000から50,000であり、静脈内投与をした場合、特定の臓器にPVAが集積されるということはなくて、体内に広く分布したとされております。また代謝物は認められなかったとしております。ただ、静脈内投与をしたときの排泄速度に関しましては、分子量の影響があり、高分子量のものは排泄速度が遅かったとされています。
 先ほど毒性試験の説明で桒形先生が触れておられましたが、経膣内投与の動態試験の結果が参考資料として11ページのマル3に記載されております。これは先ほど、発がん試験の所で触れておられましたが、長期間投与の動態試験が行われていませんでしたので、経膣内投与の実験が2年間にわたり行われていたということから、参考資料として、経膣内投与の体内動態についてもデータを示しております。この結果によりますと、経膣内投与の場合、経口投与と比べて僅かに吸収量が高い結果が得られたとしております。
 以上を踏まえまして、体内動態のまとめとしては、経口で投与した場合、分子量が5,000から50,000のPVAの実験結果ですが、消化管からの吸収量は小さく、主な排泄経路が糞便中であるということ、また静脈内投与の結果から、低分子量のPVAでは比較的速やかに尿中に排泄されるが、高分子量のPVAは排泄が遅くなるというようにまとめております。
 体内動態につきましては、以上になります。
○杉本部会長 ありがとうございます。これで安全性評価について御説明いただいたわけですが、桒形委員の先ほどの経膣について、今、頭金委員から説明があったかと思うのですが、それ以上に事務局のほうに何か質問はございますでしょうか。桒形委員、何か経膣について質問はありますか。
○桒形委員 特に絶対知りたいわけではなかったのですが、なぜ経膣をやったのかなと思って、先ほどの御説明から、使用用途の中で、何か増粘剤とか書いてありましたので、膣内ばく露をする可能性のあるものなのかしらと思いながら拝聴していたのですが、その理解でよかったのかという確認程度です。
○近藤基準審査課長 事務局でございます。食品安全委員会の専門調査会の審議の際の議事録などを拝見しますと、膣内の感染に使うような薬剤のケースを想定して、この試験もやられたのではないかといったような御発言がありました。最初の用途で説明したとおり、これは医薬品の添加剤としても使われているものですので、食品用途というよりは、そういった用途も考えた上での試験だったのかなということで、はっきりしたことは分かりませんが、そういった背景があるかもしれないということで、参考までに情報提供させていただきます。
○桒形委員 桒形です。十分だと思います。ありがとうございました。
○杉本部会長 ありがとうございます。一応ここまで一とおり説明いただいたのですが、食品健康影響評価に関する評価結果について、御質問などございますでしょうか。
 なさそうですので、続きまして、ポリビニルアルコールの成分規格案等について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。続きまして、7番目以降の御説明をさせていただきます。7.摂取量の推計ですが、先ほどの食品安全委員会の健康影響評価にもありましたが、ポリビニルアルコールにつきましては、カプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品への使用を予定しております。「平成23年国民健康・栄養調査報告」から「補助栄養素・特定保健用食品」の摂取量である国民平均で13.2 g/人/日、小児(1~6歳)で8.3 g/人/日を引用し、これに使用基準案における「ポリビニルアルコール」の最大使用量(45 g/kg)を掛け、1日摂取量は国民平均で590 mg/人/日、体重に直しますと11 mg/kg 体重/日、小児では370 mg/人/日、体重に直しますと23 mg/kg 体重/日と推計しております。
 8.新規指定ですが、ポリビニルアルコールにつきましては、食品安全委員会における食品健康影響評価を踏まえ、食品衛生法第12条の規定に基づく添加物として指定することは差し支えなく、9番、規格基準の設定につきましては、食品衛生法第13条第1項の規定に基づき、使用基準としては、諸外国での使用状況や添加物としての有効性、食品安全委員会の食品健康影響評価結果や摂取量の推計等を踏まえ、使用基準案としては、ポリビニルアルコールは、カプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品以外の食品に使用してはならない。ポリビニルアルコールの使用量は、カプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品1kgにつき45 g以下でなければならないと、使用基準案を設定しております。
 詳しい成分規格に関しては、別紙1のとおりに設定しております。繰り返しになりますが、別紙1における本成分規格案において、JECFA規格や米国食品規格集(FCC)の規格及び欧州連合(EU)等の海外との整合、並びに日本の医薬品添加物規格、米国薬局方における成分規格を参照し設定しております。別紙2は設定根拠についての記載となっております。
 事務局からは以上となります。
○杉本部会長 ありがとうございます。使用基準案及び成分規格案について、委員の先生からコメントをお願いしたいと思います。まず成分規格について、多田委員のほうから何かコメントございますでしょうか。
○多田委員 多田です。成分規格案の設定につきましては、国内外の規格を踏まえて設定されているところですが、主にJECFAの規格をもとにして設定がされております。その中で1点、純度試験のメタノール及び酢酸メチル、残留溶媒規格なのですが、こちらはJECFAでヘッドスペース法が採用されており、今回の規格案でもヘッドスペース法とされているのですが、JECFAのほうではパックドカラムという短いカラムが用いられておりますが、現在の科学的技術の進歩に合わせ、キャピラリーカラムを用いた、より分離の良い分析法に変更されて規格案とされております。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、ほかの委員の先生方から、規格案、使用基準案について、御質問などございますでしょうか。よろしいですか。あと全体を通して、質問を抜かしていたなどありましたら、御意見、御質問などいただけますでしょうか。ないですね。
 それでは、一とおり御審議いただいたようですので、ポリビニルアルコールの新規指定の可否等については認めるということでよろしいでしょうか。ここで御意見がある場合については、御発言をお願いします。御了承いただける場合は、コメント欄に異議なしなど、入力していただけると助かります。
 「異議なし」ですので、それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。事務局からその他、何かありますか。
○事務局 事務局です。本件は添加物の新規指定ですので、分科会では審議事項とされております。細かい文言の変更等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただいた上で、手続を進めるとしてもよろしいでしょうか。
○杉本部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言ください。
 大丈夫ですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。
○事務局 事務局です。今回の審議結果につきまして、食品衛生分科会での審議のほか、所定の事務手続を開始したいと思っております。以上です。
○杉本部会長 それでは、適切に手続をよろしくお願いいたします。
 それでは続いて、1つ目の報告事項「消除予定添加物名簿について」に関して、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続いて、消除予定添加物名簿について報告いたします。本報告については、資料2-1「消除予定添加物名簿について」、資料2-2「令和5年6月20日発出の薬生食基発0620第1号」、「消除予定添加物名簿の作成に係る既存添加物の販売等調査について(周知依頼)」、資料2-3「本調査の対象となる既存添加物(78品目)」の3つの資料となります。本日は、主に資料2-1を用いて報告をいたします。資料2-1を御覧ください。
 今回の消除予定添加物名簿の作成に関する概要について、御報告いたします。食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律、附則第2条の3の規定(以下「消除規定」という)により、厚生労働大臣は、その販売、製造、輸入、加工、使用、貯蔵及び陳列の状況からみて、現に販売の用に供されていないと認める既存添加物について、消除予定添加物名簿を作成の上、公示し、必要な手続を経て既存添加物名簿(平成8年厚生省告示第120号)から消除できるとされております。
 これまでに既存添加物489品目のうち132品目が名簿から消除されており、現在収載されている既存添加物は357品目となっております。これまでの既存添加物消除については、資料2-1の2枚目にあります参考に記載をしております。平成16年に実施いたしました第1次消除から、平成19年の第2次消除、平成23年の第3次消除、令和2年の第4次消除に加え、平成16年の安全性の問題による「アカネ色素」の消除を実施しております。
 今般、令和3年度厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)「食品添加物の安全性確保のための研究」で予備的な調査を行い、流通実態が確認できないもの等に対して第5次消除を実施するため、令和5年6月20日付けで、資料2-2にあります「消除予定添加物名簿の作成に係る既存添加物の販売等調査について(周知依頼)」を発出し、9月19日までの約3か月間にわたり、事業者等に対する販売等の調査にて流通実態の確認を行う予定です。
 2.消除予定添加物名簿(案)ですが、実際に消除対象候補品目となった既存添加物については、資料2-3「本調査の対象となる既存添加物(78品目)」のとおりです。
 今後の予定ですが、令和6年上半期において、地方自治体、WTO通報等を通じて、消除予定添加物名簿(案)に掲げております既存添加物に関して、販売等の流通実態調査を踏まえ、報告がなかったもの等を対象に消除予定添加物名簿を作成及び公示をいたします。さらに、令和7年上半期において、消除規定に基づく申出期間終了後、申し出がなかった既存添加物に対して、既存添加物名簿からの消除を実施する予定です。
 以上が、消除予定既存添加物名簿に関する御報告です。事務局からは以上です。
○杉本部会長 ただいまの消除予定添加物名簿に関する説明に対して、御質問などはありますか。二村先生、お願いできますか。
○二村委員 御説明ありがとうございます。既存添加物については、基本的には規格基準の策定や安全性の評価を着実に行って、できるだけ早く解消していくことが筋であると思っています。今回、調査の対象となっているのが78品目ということで、それなりの数を調査していただけることは非常に重要だと思いますが、この中には流通が余りないということで、成分規格が未完成であったり、安全性確認の対象となっていたりする品目もあると思います。
 ただ、成分規格を作成したり安全性の確認をしたりということは、非常に労力、あるいはコストが掛かっていると思います。流通実態がほぼないといえるようなものまで同じようにそういうコストを掛けた対応が必要なのかと思うところもあります。実態がないものについては、やはり確実に一旦消除をして、事業者のほうで利用の実態があるということであれば、サンプルを提出いただくとか、成分規格の作成に協力していただくなどして、安全性の確保を進めるというのが筋であると思いました。1つ1つコストを掛けてやっていくというときに、実態との関係でどこまでそれが妥当なのかということの判断は必要なのではないかと思いました。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。事務局、何か御意見はありますか。
○事務局 事務局です。二村先生、ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりで、今回についても販売等の調査実施要綱の中に記載させていただいたのですが、申出書の内容が不十分な場合については、消除予定添加物の範囲とすることがあるということで、規格等の予定が立たないものに関しても、流通実態の把握は難しく、使用実態が確認されなければ一旦しっかりと消除等必要な措置を行い、もし必要であれば再度新規指定を要請していただくという形で、使用実態に則した取組を推進していきたいと考えております。以上です。
○杉本部会長 ほかに御意見などはありますか。よろしいですね。
 では、次に2つ目の報告事項に移ります。「二酸化チタンについて」に関して、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。食品添加物二酸化チタンの対応について、御報告いたします。資料3を御覧ください。また、参考資料1~3についても、適宜御参照いただければと思います。
 まず、二酸化チタンを取り巻く状況について御説明いたします。二酸化チタンは、白色の着色料として菓子類等に使用されている指定添加物ですが、令和3年5月にEFSAより、遺伝毒性の懸念を排除できないとして、「もはや安全であるとみなすことはできない」との結論が公表されました。これを受けて、欧州委員会においては、令和4年1月に食品への使用禁止を決定しています。
 そのため、厚生労働省から、国立医薬品食品衛生研究所の専門家に対し、二酸化チタンの安全性の意見を求めたところ、EFSAが評価したデータセットから遺伝毒性の懸念が排除できないと結論することは困難であり、ナノサイズの二酸化チタンを考慮して安全性を評価するには更なるデータ収集と検討が必要との御意見でした。
 これを踏まえ、令和3年12月15日開催の添加物部会にて対応方針を御検討いただいたところ、ナノサイズの二酸化チタンについてラットを用いた90日間反復経口投与試験を実施し、当該試験の結果を含めて再度御意見を求めることとされました。その後、令和4年3月11日の食品安全委員会添加物専門調査会に報告し、意見交換が行われ、厚生労働省に対してデータ収集とその報告を求めることとされました。さらに、令和5年2月28日の食品安全委員会においても同様に、厚生労働省に対してデータ収集とその報告を求めることとされました。
 今般、当該試験結果を含めた二酸化チタンに関する調査結果が取りまとまりましたので、御報告いたします。
 調査結果を説明いたします。ナノサイズの二酸化チタンを使用した90日強制経口投与毒性試験では、雌雄ともに体重、臓器重量、血液学的検査及び血液生化学検査において、投与に関連した変化は認められませんでした。また、病理組織学的検査において、回腸パイエル板等のリンパ組織に被験物質の沈着がみられたことから、消化管から生体内に微量ながら取り込まれていることが示唆されました。
 しかし、主要臓器におけるチタンの曝露量は対照群と二酸化チタン投与群との間に差は認められず、また、二酸化チタンに起因する炎症反応や組織障害性は認められなかったことから、当該試験のNOAELは高用量群の1,000 mg/kg 体重/日と結論されました。
 マル1の文献調査についてですが、2021年以降に二酸化チタンの遺伝毒性の懸念を結論づける新たな遺伝毒性に関する情報は確認されておりません。また、令和3年12月に当部会に報告したとおり、国立医薬品食品衛生研究所専門家による検討において、EFSAが結論づけた評価を支持することは困難であるとされましたが、先ほどの90日間経口投与毒性試験の結果を踏まえると、二酸化チタンの消化管からの吸収性は極めて低いと考えられます。そのため、経口投与された二酸化チタンが遺伝毒性を誘発させることを説明できる濃度で骨髄などの標的組織に到達していたことが前提となるEFSAの解釈を合理的に説明することは困難だと思います。
 また、海外の状況についてですが、英国、カナダ、ニュージーランド・豪州においてEFSAの結論を支持しておらず、食品添加物としての二酸化チタンの安全性について健康被害を及ぼす決定的な科学的証拠はないと判断されています。また、FDAにおいて二酸化チタンの使用規制に関する変更はされていません。
 2.二酸化チタンの粒子径について御説明いたします。二酸化チタンの粒子径については、国内で製造されている5社について、透過電子顕微鏡による粒子測定を行ったところ、7nm未満のものは確認されませんでした。
 なお、このサイズは一次粒径の値であり、ナノ粒子同士が凝集する性質があることから、食品成分と混在した状況でのナノ粒子径は測定することが困難な状況です。
 以上を踏まえ、厚生労働省としては、現時点での情報では二酸化チタンの規格基準について特段の対応をする必要はないと考えていますが、今回集めたデータについて食品安全委員会に報告を行い、必要な対応を検討できればと思います。以上です。
○杉本部会長 ただいまの報告について、御質問、御意見などはありますか。まずは、大塚先生からお願いできますか。
○大塚委員 今お話を頂いた報告書の中で若干矛盾する所があるかなと思い、手を挙げさせていただきました。どこかと申しますと、2枚目の最後の所で、国内で製造している5社について、7nm未満のものはなかったという形で書いておられるのですが、1枚目の調査結果で「一次粒子径が6nmのアナターゼ型」と書いてありました。これは、国立医薬品食品衛生研究所で実施されたのは、海外製の二酸化チタンであったのか、それともこの2つの記述でどこか誤りがあったのかなと思って御質問させていただいた次第です。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。これは、1.の試験のほうは6nm未満で行われていて、最後の5社については、流通しているものを見てみると、7nm未満のものがなかったということですよね。
○事務局 そうです。御質問ありがとうございます。1.の所は90日投与試験の結果で、2番の粒子径については国内で製造されている5社のものに対して測定した結果となりますので、やり方として矛盾はしていないかなと思います。
○事務局 追加で、参考人の小川先生から御説明いただきます。
○小川参考人 国立医薬品食品衛生研究所病理部の小川です。こちらの90日試験を担当させていただきました。こちらで使ったのは、食品用途ではないものも含めて、日本で一番小さい粒子径のものを選ばせていただきました。2.の最後の二酸化チタンの粒子径については、こちらは国内で製造されているという記載になっておりますが、食品用途で用いられているものとなりますので、そういったところでは矛盾はないのかなと考えます。よろしいでしょうか。
○大塚委員 今の御説明で明確になりました。ありがとうございました。
○杉本部会長 ありがとうございます。今ので大丈夫ですよね。それでは、二村委員、お願いできますか。
○二村委員 御説明ありがとうございました。この二酸化チタンの問題は、すでに使われていたものがEUで禁止になったということで、結構メディアなどでも取り上げられ、消費者にとっても関心が高い事項ですので、今回このように丁寧に調査、分析、研究等をしていただいたことは、非常に大切なことであると思っています。このように関心の高い事項ですので、厚生労働省や食品安全委員会の見解や対応方針などがまとまりましたら、是非、消費者、またメディア向けに正確な情報の発信をしていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 ありがとうございます。ほかにはありますか。戸塚委員、お願いします。
○戸塚委員 今、見せていただいている資料3の1ページ目で、二酸化チタンの調査結果、遺伝毒性についてという表記になっておりますが、遺伝毒性に関する結果がここには全然反映されていない、記載されておりません。恐らく、これは一般毒性か何かを調べられたのではないかと思うのですが、もしそうであれば、ここの表記を遺伝毒性という言葉ではない文言に変えたほうがよいのではないかと思いました。
 一方で、遺伝毒性についても調べられているのでしたら、それなりにその結果に関しても出していただくのがいいかなと思いました。
○杉本部会長 ありがとうございます。これは、事務局、いかがですか。
○事務局 こちらとしましては、マル1の所に少し記載させていただいたEFSAの解釈にかかるように記載しているのですが、御指摘のとおり分かりづらい表現になっていますので、例えば毒性についてなどで修正させていただければと思います。ありがとうございました。
○戸塚委員 ちなみに、遺伝毒性は調べられていないのでしょうか。
○事務局 ご質問は、遺伝毒性の試験をしていないかどうかということですか。文献調査はさせていただいたのですが。
○戸塚委員 いえ、国立医薬品食品衛生研究所のほうで、これは一般毒性だけを対象にしたもので、例えばトランスジェニック動物等を用いた遺伝毒性試験などはやられていないのでしょうか。
○小川参考人 国立医薬品食品衛生研究所の小川です。国立医薬品食品衛生研究所で追加の試験というのは特にされていないのですが、今までの文献情報の中でもトランスジェニックのデータなどはあって、それをもとに考えると、EFSAの解釈には少し無理があるのではないかという見解はありました。
 それと、我々が実施した90日試験の検体で定型的な試験まではできていないのですが、小核を見るような試験であるとか、γ−H2AXの免疫染色でチタンが沈着している部位の周囲の細胞などにもDNAの損傷所見など見られる範囲の検討においては、全くないといったことは、論文の中には記載しているような状態です。文献情報及び追加の参考的なデータを見た範囲では、遺伝毒性を示唆するような所見はないというのが衛研の考察になります。
○戸塚委員 承知しました。そうであれば、この書き方を少し考えられたほうがいいかなと思いました。
○事務局 御指摘ありがとうございます。
○杉本部会長 これは、どうしましょうか。書き方を少し修正しますか。
○事務局 事務局です。書き方の詳細については、記載整備等含め座長と御相談していきたいと思います。御指摘ありがとうございました。
○杉本部会長 よろしいでしょうか。
○戸塚委員 はい、結構です。
○杉本部会長 ありがとうございます。ほかにはありますか。ないですね。では、「二酸化チタンについて」は、ここでおしまいにして、次の報告事項に移ります。「アスパルテームについて」ですが、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。資料4の「アスパルテームについて」を御報告いたします。この資料4は7月14日、先週の金曜日に国際がん研究機関のIARC、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議のJECFAが共同で発表を行った甘味料アスパルテームに係る状況についての御報告です。まず、1.としてアスパルテームの概要をお示ししております。品目名はL-α-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル。構造式は図にお示ししているとおりで、用途は甘味料となっております。概要及び使用状況として、日本では1983年に食品衛生法に基づいて食品添加物として指定されました。その際、JECFAが設定していたアスパルテーム及び分解生成物であるジケトピペラジンの許容一日摂取量(ADI)について、それぞれ40 mg/kg 体重/日及び7.5 mg/kg 体重/日を採用しています。使用基準は設定されておりません。
 現在、米国、欧州、アジア、アフリカ、オセアニア等の国・地域で使用されています。
 次に、2.IARC及びJECFAの評価についてです。最初に述べたとおり、本年7月14日、IARCとJECFA共同でアスパルテームについて発表を行いました。なお、評価結果の詳細を示すモノグラフは今後公表される予定としております。
 まず、IARCについては「グループ2B」(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類をしております。一方、JECFAは3点、0~40 mg/kg 体重のADIを変更する十分な理由はないと結論づけ、この範囲内であれば安全であることを再確認したこと、動物及びヒト研究における発がんリスクに関する根拠を検討し、ヒトにおける発がん性との関連を示す根拠には説得力がないと結論したこと、そして既存のコホート研究において、より長期間の追跡調査を行い食事に関するアンケート調査を繰り返す、より良い研究が必要であること、としております。
 次に、2ページの3.としまして、日本における摂取量推計についてです。2つの推計がありまして、(1)がマーケットバスケット方式、(2)が生産量統計調査に基づくものです。まず(1)マーケットバスケット方式についてです。方法としまして、加工食品群7群それぞれについて、20歳以上の喫食組成に基づいて混合した試料を調製、混合群試料ごとの含有量を測定し、各加工食品群の各年齢層の喫食量を乗じて、一日摂取量を算出しています。表のとおり、どの年齢層においても対ADI比が、例えば全年齢層であれば、0.002%と非常に低い値であることが分かります。
 次に、生産量統計調査についてです。方法としては日本国内の食品添加物製造事業者・輸入販売事業者にアンケート調査票を送付して、食品添加物原体の種類・生産・販売・使用について量的調査を行っています。こちらの推計においても表のとおり、対ADI比が、全年齢層の平均で0.3%という非常に低い値になっています。
 これらを踏まえますと、厚生労働省として今後のIARCとJECFAから公表される評価結果の詳細を確認する必要はあるのですが、直ちにアスパルテームの使用を禁止する状況にはないと考えております。いずれにしても厚生労働省としまして、引き続き食品添加物の安全性確保に努めてまいりたいと考えております。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。ただいまの報告について、御質問、御意見などございますでしょうか。二村委員、お願いします。
○二村委員 ありがとうございます。この点もメディアなどでも取り上げられ、webのニュースやSNSなどでも大分話題になっていたことは多分、皆様も御覧になったかと思います。この報告自体、内容自体はこのとおりだと思っているのですが、やはり今回のこのような発表で、メディアなどでミスリードする報道もありますし、中には発がん性があるというように受け止める方も多いかと思います。こちらも正確な情報をきちんと発信していくことが非常に重要になってくるかと思います。その際に、1つはやはり食品添加物の指定の際に発がん性も含めて評価をしておりますし、今回もJECFAの再評価も最新のデータと科学に基づく判断の下で行われたと思いますので、食品添加物の安全性評価が、このようにきちんと行われていることを伝えていく必要があるのではないかと思います。これが1点です。
 それから先ほどの二酸化チタンの件で印象的だったのは、EUのリスク評価に対して、再評価や再確認を行ったそれ以外の国々が、このEFSAの結論は支持しない、同意しないということが分かったということです。こういう情報も非常に大事だと思います。ですので、今回この件についても、諸外国の規制当局等がどのようなコメントを発信されているか、何か対応されているのか、そうしたことについても確認をしていただいて、情報提供あるいは情報発信等をしていただけるとよいと思いました。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。事務局どうですか。
○事務局 二村先生、御指摘ありがとうございます。まず、1点目については、リスクとハザードの区別やリスク評価の在り方等の点も含めて、メディア等を通して、当方としてもできるだけ分かりやすい情報発信に必要に応じて取り組んでいければと考えております。
 2つ目の、諸外国の規制当局の状況について、これまで調べた範囲でですが、例えばアメリカであればIARCの結論に対して、disagree、同意しないということをホームページで記載していること、ヨーロッパのEFSAに関して言えば、アスパルテームについて、現在行っているアセスルファムカリウムの評価の中で、アスパルテームのばく露評価も併せて行っているとしていること、あるいは、例えば韓国であればADIの扱いが変わってないことをもって、JECFAの対応を支持するというようなことをホームページに記載していることは承知しておりますので、こちらも海外の動向も見ながら対応に努めてまいりたいと考えております。
○杉本部会長 松藤委員、お願いします。
○松藤委員 せっかくなので教えていただきたいのですが、3.の摂取量推計で、(1)と(2)での一日摂取量が100倍違うところについては、どのような考察というか、考え方があるのか教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○事務局 御質問ありがとうございます。もともと食品添加物の食品中の含有量がどのくらいあるのかは、そもそも推計が非常に難しくて、今、活用可能なデータから複数の調査手法を、恐らく統計的な調査手法を用いて推計するということをせざるを得ない状況があると考えております。その中で、我々の手元にあるデータと、あと厚労科研等でお示ししているような、1つはマーケットバスケット方式という市場の食品を用いた手法で調査したもの、2つ目が生産量統計というマクロな観点から調査したもの、両方の調査手法を用いて算出したところ、このように低位の推計と高位の推計が得られたところ、いずれにしても大事なことは、高位の推計となる(2)の方でも対ADI比が0.3%という低い値であるということが非常に大事ではないかと考えているところです。
○松藤委員 いわゆる上限を見たら、100倍も思ったよりずれるというのが1点と、人口で除しているという形になりますけれども、それが妥当なのかどうかというところも考えるとというところは、ちょっとだけ気になったので、もう少しうまい表現というか、何かきちんと報告するときに、あくまでも対ADI比が1を超えてないというところもうまくアピールされるといいのかなという気がしました。どうもありがとうございます。
○杉本部会長 多田委員、これについては何か追加でありますか。
○多田委員 国立医薬品食品衛生研究所の多田です。マーケットバスケット方式の摂取量調査に関して、少し補足説明をさせていただきたいと思います。マーケットバスケット方式の摂取量調査は加工食品群の喫食量を使って算出がされているのですけれども、そもそもこの喫食量のデータがあるものは、食品成分表に記載されている食品項目を基本とした食品についてであり、いまだ成分表に掲載されていない食品などもありますので、そうした部分の算出がどうしても欠けてしまうという点が1つあります。
 それからマーケットバスケット方式調査では、全ての食品を購入することができませんので、喫食量の高いものを購入して調査がされておりますけれども、例えば喫食量は少しだけれども配合量が高いような食品があった場合に、それが購入対象になかった場合には算出に入ってこないというような、限界というか、そのような点もありますので、そういったところから生産量調査との差が生じていると考えております。
○杉本部会長 ありがとうございます。松藤委員、今の説明でいかがでしょうか。
○松藤委員 はい、分かるのは分かるのですけれども、いろいろな添加物をマーケットバスケット方式で摂取量調査されているところを考えたときに、意外と、こんなに100倍もずれるのかというのがちょっと気になったところです。あくまでもなのですが、今回のたまたまアスパルテームがこういう形であるというべきなのか、マーケットバスケット方式がそうなってしまうのかというのもちょっとだけ気になったところです。すみません。
○多田委員 毎年のマーケットバスケット調査の結果は厚生労働省のホームページでも確認することができますけれども、この令和元年度のアスパルテームの結果ほど差が開いているのは、比較的珍しいケースだとお考えいただければと思います。
○松藤委員 はい、分かりました。ありがとうございます。
○杉本部会長 頭金委員、お願いします。
○頭金委員 今回の対象添加物はあくまでもアスパルテームですけれども、ペプチド系の甘味料としてはアドバンテームがあると思います。構造的にはアドバンテームはアスパルテームの誘導体です。アドバンテームについては10年ほど前に食品安全委員会で、発がん性も含めてリスク評価をしたと思うのですけれども、同じペプチド系の甘味料になりますので、念のためにアドバンテームにつきましても情報を収集しておくのがよろしいかと思います。
○杉本部会長 ありがとうございます。
○事務局 先生、ありがとうございます。情報収集に努めてまいるようにいたします。
○頭金委員 よろしくお願いします。
○杉本部会長 三浦委員、お願いします。
○三浦委員 IARCの発がん性分類の2Bですが、3つの該当する項目のうち、1つが該当すると2Bにすると言われているようですが、今回はどのような理由でこのIARCは2Bにすることになったのでしょうか。
○事務局 事務局です。今回はIARCの中では、まず、ヒトにおける限られた根拠に基づいて、アスパルテームをヒトに対して発がん性の可能性があるとしていますが、ヒトを対象とした入手可能ながん研究の中で、アスパルテームと、これは肝がんですが、その関連性評価を可能にした研究は3件のみで、摂取と肝がんのリスクの間には、正の関連は認められたものの、陽性所見として、バイアスが入っているとか、偶然性あるいは交烙因子を排除することはできなかったことは留意が必要であり、また、実験動物におけるがんの根拠も限られていたということで、研究デザイン、データ解釈等の懸念に基づいて、がんの根拠は限定されていると結論づけられたということのようです。
○三浦委員 内閣府の食品安全委員会のホームページには、2Bになる場合、「ヒトにおける発がん性の限定的な証拠」がある、あるいは動物実験における「発がん性の十分な根拠」がある、「発がん性物質の重要な特性を示す有力な証拠」がある。この3つのうち、1つ該当する場合2Bとするとなっていますけれども、今回はどれに該当したのでしょうか。
○小川参考人 国立医薬品食品衛生研究所病理部の小川です。私から少し追加させていただきますと、1つでもということではあるのですけれども、今回のサマリーに記載されているのですが、ヒトに対する発がん性が限定的なデータがあるというのと、動物に対する発がん性もリミテッド、限定的な証拠があると。機序に関するものについては非常に弱いものが少しあると。いずれも少しずつあるということではあるのですが、その全体を考慮しても限定的な証拠しかないという意味合いで、「ヒトに対して発がん性がある可能性がある。」というところに分類されたという認識になっております。
○三浦委員 分かりました。2Bになったのは何らかの懸念事項があるから2Bになったというように理解されると思いますので、そういうところをしっかり明らかにして、でもそれは今回の基準ではそれほど重視するものではないということを明らかにしたほうがよろしいかと思いました。よろしくお願いします。
○杉本部会長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。なさそうですね。ここのグループ2Bの所、今の(1)の説明に、「(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類」だけ、1行だけになっているのですが、ここの説明について、もう少し丁寧に加えましょうか。
○近藤基準審査課長 はい。先ほど二酸化チタンのほうも少し修正をというお話を頂きましたので、こちらも少し修正して、ホームページに再掲載する形にしたいと思います。御指摘ありがとうございます。
○杉本部会長 ありがとうございます。ほかに意見もないようですので、今回の結果を踏まえて、アスパルテーム、現状を見直す必要はないということでいきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。大丈夫ですね。はい、「アスパルテームについて」は以上になります。本日の審議は以上ですね。
○近藤基準審査課長 はい。
○杉本部会長 今日の審議について、皆様から、その他、何か御発言などございますでしょうか。よろしいですね。
 それでは、次回の予定について事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。次回の添加物部会につきましては、議題が決まり次第、改めて御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 本日の添加物部会はこれで終了いたします。先生方、お忙しいところ、どうもありがとうございました。