第1回健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会議事録(2023年6月26日)

 

 


○日時


令和5年6月26日(月)14時00分~16時00分


○場所


AP新橋 Fルーム (オンライン開催)


○議題


1.身体活動・運動に関するこれまでの取組について 
2.基準改訂に向けた研究班のとりまとめ 
3.改訂に向けた論点について



 
○議事

○開会
【小田課長補佐】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより、「第1回健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき、誠にありがとうございます。本日、議事に入るまでの間、議事進行役を務めさせていただきます、健康局健康課の小田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、委員の皆様にはオンラインにて御参加いただいてございます。
開会に当たりまして、健康局長の佐原より御挨拶申し上げたいと思います。それでは、佐原局長、よろしくお願いいたします。
 
局長挨拶
【佐原健康局長】  皆さん、こんにちは。健康局長の佐原と申します。まず委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ本検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また日頃より、厚生労働行政に様々な面で御協力いただきまして、この点も改めて感謝申し上げます。
さて、厚生労働省では、「健康日本21(第二次)」の開始にあわせまして、「健康づくりのための身体活動基準2013」及び「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を策定しまして、これらを活用して健康づくりにおいて重要な要素である身体活動・運動に関する普及・啓発等の取組を進めてきたところであります。一方で「健康日本21(第二次)」の最終評価が去年行われましたけれども、1日の歩数や運動習慣者の割合は横ばい、または減少傾向でありまして、残念ながら目標は達成できませんでした。令和6年度から開始する「健康日本21(第三次)」においても、引き続き身体活動・運動分野の目標、指標を定めておりまして、さらなる身体活動・運動分野の取組が必要と考えております。また、「健康づくりのための身体活動基準2013」の策定から約10年が経過しておりまして、最新の科学的知見を踏まえた取組を進める必要もございます。
こうした背景から、身体活動基準等の改訂を行う必要があると考えており、今後の身体活動・運動分野の取組の推進において、本検討会で御議論いただいた成果は中心的な役割を担うものと考えております。加えて、身体活動・運動分野における、より実効性のある取組を進めるため、本検討会の成果物をベースとして普及・啓発等の検討につなげていきたいと考えております。
委員の皆様方におかれまして、忌憚のない御意見を頂きますようお願い申し上げまして、開会の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【小田課長補佐】  佐原局長、ありがとうございました。それでは議事に入る前に、WEB御参加者への留意点、資料の御確認、本日の構成員の先生方の出欠席状況等について御説明をさしあげます。
まず、オンラインでの参加の方に向けて注意事項でございます。会議中、ビデオカメラはOnにしていただくよう、よろしくお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただき、発言される場合には挙手をしていただき、座長からの指名後、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただくようお願いいたします。発言が終わりましたら、マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。事前にお送りしているファイルに不足がないか御確認をお願いいたします。まず、座席表、議事次第がございます。資料としましては、資料1から資料4までの4つのファイル及び参考資料が本日の資料でございます。資料1「開催要綱」、資料2「身体活動・運動に関するこれまでの取組」、資料3「基準改訂に向けた研究班のとりまとめ」、資料4「改訂に向けた主な論点」、以上4つでございます。また、参考資料としまして、参考資料1「健康づくりのための身体活動基準2013」、参考資料2「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を送付してございます。資料に不備等ございましたら、今朝メールでお送りしました事務局の連絡先まで御連絡いただければと思います。先生方、よろしかったでしょうか。
続きまして、構成員の先生の御紹介をさせていただきたいと思います。資料1にございます構成員名簿順に従いまして御紹介さしあげたいと思います。
まず、荒井 秀典構成員におかれましては、本日御欠席の連絡を頂いてございます。
続きまして、石井 好二郎構成員でございます。
続きまして、石井 荘一構成員でございます。
続きまして、岡本 理恵構成員でございます。
続きまして、小野 玲構成員でございます。
続きまして、黒瀨 巌構成員でございます。
続きまして、澤田 亨構成員でございます。
続きまして、鈴木 志保子構成員でございます。
続きまして、津下 一代構成員でございます。
続きまして、藤内 修二構成員におかれましては、本日御欠席の連絡を頂いてございます。
続きまして、中島 康晴構成員でございます。
続きまして、宮地 元彦構成員でございます。
続きまして、横手 幸太郎構成員でございます。
以上、13名の先生方を御紹介さしあげました。
続きまして、本検討会の座長についてお諮りしたいと思います。資料1「開催要綱」を御覧ください。3その他(1)でございますけれども、「構成員の互選により座長を置く」とあることから、座長の選出をさせていただきたいと思います。まず、構成員のどなたか御推薦があれば、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、澤田構成員、お願いいたします。
【澤田構成員】  大変僭越ですけれども、九州大学大学院の教授であられて、また、日本整形外科学会の理事長でもあられます、中島康晴構成員を推薦させていただきたいと思います。
【小田課長補佐】  ありがとうございます。中島構成員という御推薦がございました。ほかに、どなたか御推薦ございますでしょうか。構成員の皆様、中島構成員を座長で御推薦いただきましたけれども、御異論ございませんでしょうか。
【構成員一同】  異論なし。
【小田課長補佐】  ありがとうございます。御異論ございませんでしたので、中島構成員に座長をお願いしたいと思います。なお、報道関係者の撮影につきましてはここまでとさせていただきます。
それでは、以降の進行は中島座長にお願いしたいと思います。中島構成員、どうぞよろしくお願いいたします。
【中島座長】  皆さん、こんにちは。中島康晴と申します。九州では、中島(なかじま)ではなくて、中島(なかしま)と呼ぶことがままありまして、私は点々が付いていない、中島(なかしま)と申します。先ほど澤田構成員から御紹介ございましたように、私、現在、日本整形外科学会の理事長を務めております。また、もともとは九州大学整形科の教授でございます。そういう縁から、ここで座長を務めさせていただきます。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○議題
1.身体活動・運動に関するこれまでの取組について
【中島座長】  それでは、早速、本日の議題に入りたいと思います。皆さんも事前の打ち合わせをされたと思いますけれども、複数回この会があって、それで目的は「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂」というところですけれども、まず第1回目の今回は資料を見ていただいて、忌憚のないオープンなディスカッションを聞こうと。それから2回、3回となるにつれ、いろいろなところを絞っていって、具体的な文言なり数字なりに絞れていければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
それでは最初は「身体活動・運動に関するこれまでの取組について」、事務局から説明をお願いいたします。
【田邉室長】  事務局でございます。では、資料2「身体活動・運動に関するこれまでの取組について」というものを御覧ください。画面のほうでも共有させていただきますので、御参照いただければと思います。
おめくりいただきまして、まず最初に「国民健康づくり」と「身体活動基準」についての動きをまとめてございます。一番左側にいわゆる「国民健康づくり運動」と書いてございますけれども、2000年からは「健康日本21」という名前を出させていただきまして、その中で目標指標として歩数、それから運動習慣者と、この目標と指標を立てて取組を進めてございます。今年度まで健康日本21(第二次)でございまして、来年度、令和6年度から第三次が開始するというところでございます。運動の身体活動基準につきましても、最初は平成元年度に健康づくりのための運動所要量、それから運動指針を作成させていただきまして、運動による疾患リスクの軽減のために運動強度、あるいは運動所要量というものをお示してございます。こちら、健康日本21と同時に改訂を進めておりまして、2000年のところでは生活習慣病の改善であるとか一次予防に観点を置いたところ、それから、平成25年、2013年では、ライフステージに応じた基準設定というところで、これまで改訂を2回行ってございます。今回、令和6年度から始まります健康日本21(第三次)にあわせて、これにつきまして先生方に御議論いただければというところでございます。
おめくりいただきまして、次のページ、最新の2013のバージョンの身体活動基準についてでございます。この中で、まず年齢に関しましては18~64歳、成人のところをメインに置かせていただいた上で、いわゆる子どものところと高齢者の部分を置いてございます。身体活動に関しましては、成人については3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分、65歳以上に関しましては、強度を問わず毎日40分というところで置いてございます。そして、さらに全世代の共通の方向性として、今よりも少し増やそうということで、プラス10分というところを書いてございます。また、いわゆる運動のエクササイズの部分につきましては、成人の分については3メッツ以上の強度の運動を毎週60分というところで書かせていただいているという状況でございます。18歳未満に関しましては、この当時はエビデンス等々のことを踏まえ、「参考」という形でお示しさせていただいたという状況でございます。
おめくりいただきまして、先ほどのものが基準でございまして、これを普及・啓発する上で、もう少し国民向けにわかりやすくしたものが、いわゆるアクティブガイドと呼ばれております、こちらのものでございます。こちらにつきましては、先ほどの「+10(プラス・テン)」、10分間運動しましょうというところのメッセージを中心に、いろいろな取組等を書いているところでございます。ここまでが2013のもので、これを基にして第二次の運動をやってきたところでございます。
次のページにいかせていただきまして、健康日本21(第二次)の最終評価の結果でございます。左側が歩数、右側が運動習慣者の割合でございますが、どちらも「C:変わらない」ということでございます。性・年齢階級別に見ていきますと、少し悪化しているものもあるというところでございますが、トータルとしてはあまり変わってない、横ばいという結果でございました。こういう評価を第二次では頂いてございます。
これを踏まえまして、おめくりいただきまして、来年度から開始します健康日本21(第三次)の全体像を示してございます。こちらは、策定専門委員会のほうで専門の先生方に御議論いただきまして、次の方向性ということで、まず1つ、「誰一人取り残さない」、いわゆるInclusionという方向性。それから、「より実効性をもつ取組」ということで、Implementationという、2つの大きな柱を立てて、次の運動としてはどうかというところを示させていただいてございます。まず、左側の「誰一人取り残さない」という部分でございますけれども、当然、集団や個人の特性、性・年齢階級別、いろいろなパターンがございますので、こういうものを踏まえた健康づくりを進めようと。それから2点目、健康に関心が薄い方、時間等がなくてなかなかできなかったという方も含めて、自然に健康になれる環境という、そういうアプローチも大事ではないかと考えてございます。右側にいかせていただきまして、より「実効性をもつ取組」でございますけれども、まずは目標達成のためには目標を決めて、その目標に向かって頑張るというところで、まず目標を設定した上で、その目標を設定しただけではなくてきちんと運動するということで、実効性のある取組、アクションプランを提示というところを考えてございます。今回のガイドラインはこのアクションプランのベースとなる、基準となるようなガイドラインという位置づけとして考えてございます。こういう取組を進めた上で、健康寿命の延伸というところを進めていこうというところが第三次の大きなビジョンでございます。
おめくりいただきまして、次が健康日本21(第三次)における運動分野に関する目標でございます。まず、「日常生活における歩数の増加」ということで、目標値は令和14年度で7,100歩であり、これは国民全体での歩数という考えでございます。現状値の6,178から約1,000歩増やすというところでございます。次が、「運動習慣者の増加」でございます。現状が30%を切っているところでございますが、この運動習慣者の割合を40%に上げるといったことを目標にしてございます。この2つが主に個人の行動変容に係る部分かと考えてございます。このほかにも、子どもに関しましては、運動やスポーツを習慣的に行っていないこどもの減少ということで、これは第二次の成育医療等基本方針と合わせて設定する予定でございます。また、環境整備ということでございますけれども、国土交通省のほうで「まちなかウォーカブル区域」というものを設定してございます。こういうものも国土交通省と連携して環境整備の面でも運動の推進をしていこうというところで、これも目標を立てているところでございます。ここまでが健康日本21(第三次)ございます。
続きまして、こういう今回の見直しにおける基本となるエビデンスの部分でございますけれども、これは構成員でもいらっしゃる澤田構成員に厚生労働科学研究で研究をお願いしておりまして、こちらの研究のほうでエビデンス等々を踏まえた整理をしていただいているところでございます。資料2について、事務局からは以上となります。
 
2.基準改訂に向けた研究班のとりまとめ
【中島座長】  ありがとうございました。では、次の澤田構成員からの説明にそのままいきたいと思います。その後に質疑応答の時間を設けてございます。では、澤田構成員、お願いしてよろしいでしょうか。
【澤田構成員】  はい、承知いたしました。私のほうの画面を共有させていただければと思いますので、少々お待ちいただけますでしょうか。
あらためまして、澤田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。「ガイドラインの改訂に向けた研究班のとりまとめ」につきまして、御報告させていただきたいと思います。本日御報告させていただきます内容は、「前回改訂時の振り返り」、「身体活動ガイドラインの国際的動向」、「ガイドライン改訂に向けた研究班の取り組み」、そして、「ガイドライン改訂に向けたエビデンスの紹介」となります。
まず最初に、前回の改訂時の振り返りをさせていただきます。先ほど事務局から資料2の中で御紹介いただきましたように、こちらが前回の身体活動基準の一覧になります。また、こちらは国民向けに作成された身体活動指針(アクティブガイド)になります。さらにこちらは、前回の改訂時に作成されました報告書の目次になります。この報告書の最後に、前回の改訂時の課題が記載されております。具体的には、子どもの身体活動基準、高齢者の運動量の基準、座った状態の時間の上限値、全身持久力以外の体力(特に筋力)の基準値等につきまして、科学的根拠をもって設定できるよう研究を推進していく必要があると記載されております。
こちらは、アクティブガイドの裏面になります。アクティブガイドの裏面には、身体活動基準が国民に向けてわかりやすく整理されていますが、前回の課題となった項目につきましては、当然ですけれども記載されておりません。具体的には子どもの身体活動基準、高齢者の運動量の基準、座った状態の時間の上限値、全身持久力外の体力(特に筋力の基準)ということになります。筋力の基準に関しましては、こちらに「筋力トレーニングやスポーツなどが含まれると、なお効果的です」と記載されておりますけれども、前回の時点ではエビデンスが十分でなかったために、具体的な基準を記載するには至っておりません。
前回の改訂時に指摘されました改訂ポイントに加えまして、ここではガイドラインの認知度に関する課題を指摘させていただきたいと思います。前々回、2006年に作成された指針、厚生労働省としての第2版になりますが、「エクササイズガイド2006」と呼ばれていまして、この第2版の国民に対する認知度は、残念ながら10%程度でした。このため2013年に作成したガイドライン、「アクティブガイド」においては、いわゆる白表紙の報告書から、国民にとって手に取りやすいパンフレットに変更して公表いたしましたが、国民の認知度は10%を少し上回る程度でした。
そこで研究班では、国民にガイドラインを周知する重要な役割を担っています自治体の状況を確認しました。具体的には、自治体が身体活動推進の行動計画の策定や目標設定において、ガイドラインをどの程度利用しているかを確認しました。こちらは研究班員であります工学院大学の武田先生らの調査結果になります。自治体の保健部門が運動基準、あるいは身体活動基準を目標設定に利用しているかどうかを調査したものですが、ほとんど利用されていないという結果でした。各自治体のスポーツ部門においても、運動基準あるいは身体活動基準ともに保健部門と同じような結果でありました。運動基準も身体活動基準も報告書といった形で、政策立案者や身体活動の指導者に向けた基準を解説する形になっておりまして、今回の改訂時におきましては、国民に向けたアクティブガイドと同じような形で、より手に取りやすい、理解しやすい形で、自治体あるいは指導者に周知することが、結果として国民におけるアクティブガイドの認知度を高めるために重要であると考えています。
続きまして、「身体活動ガイドラインの国際的動向」について紹介をさせていただきます。今回改訂するガイドラインは厚生労働省としては第4版になりますが、アメリカが国として公表するガイドラインは、2008年に第1版という形で公開しています。2008年に第1版を公表した後に、多くのエビデンス、学術論文が公開されていますので、アメリカはそれらをレビューして、2018年に第2版を公開しています。
また、WHO(世界保健機関)は「世界の人々のための身体活動ガイドライン」を公表しています。WHOはアメリカのガイドラインを追う形で公表していまして、2010年度に第1版、2020年度に第2版を公表しているという状況です。ここでは、WHOのガイドラインにおける重要なメッセージを紹介させていただきたいと思います。WHOのガイドラインでは、こちらに示した6つのメッセージを紹介しています。このメッセージには、前回のアクティブガイドにおいて基準を示せなかった、「筋力強化」や「座りすぎ」が含まれています。また、「全ての人」という表現を使って、身体活動の実践や座位行動を減らすことによって、障害がある方や慢性疾患を持つ人を含めた様々な人に健康効果を与えると伝えています。
「ガイドライン改訂に向けた研究班の取り組み」を紹介させていただきます。前回の改訂時に示された積み残し課題や世界の動向を踏まえて、改訂に向けたレビュー作業を行いました。こちらが研究班の構成図となっています。まず、数多くの研究班が存在することから、統括班が全体のかじ取りを行ないました。駿河台大学の丸藤祐子先生が率いた班は、前回の改訂以降の研究をレビューして、前回の基準を変更する必要があるかどうかを確認しました。早稲田大学の岡浩一朗先生が率いた班は、座位行動の基準値や子ども・青少年の基準値作成のための文献レビューを行ないました。東京医科大学の井上茂先生が率いた班は、高齢者の運動量の基準値作成と身体活動を促進する社会環境整備に向けた文献レビューを行ないました。慶應義塾大学の小熊祐子先生が率いた班は、慢性疾患を有する人に対する基準作成のための文献レビューを行ないました。私が班長を務めました班ではガイドラインの認知度調査や筋力に関する基準策定のための文献レビュー、あるいは、前回の改訂時に話題にならなかった新たな分野、あるいは新たな対象者に関する基準が作成できるかどうかを確認するための文献レビューを行ないました。筑波大学の中田由夫先生が率いた班は、働く人のための基準や働く人を対象にした介入方法に関するレビューを行ないました。前回の改訂時の厚生労働科学研究の研究代表者を務められ、今回の検討会の構成員にも就任されています早稲田大学の宮地元彦先生が率いた班は、基準値作成の背景に存在する身体活動と運動に関するメカニズム研究のレビューを行ないました。最後に、自転車活用推進法に基づいて国土交通省が進めます「自転車活用推進計画」にエビデンスを与える研究を、帝京大学の桑原先生が率いた班が実施しました。
ただいま御紹介しましたように、各班がそれぞれの課題解決に向けて、WHOや各国のガイドラインや、ガイドライン作成に用いたエビデンスを確認するとともに、文献レビューやレビュー論文のレビューであるアンブレラレビューを行ないました。レビューを行った活動の種類はこちらに示した4種類、対象者は5つの群となります。そして、これらの作業の成果物として、国民にわかりやすく基準値を示す「アクティブガイド」の案、あるいは政策立案者や身体活動の指導者に対して、基準値やその背後にあるエビデンスをわかりやすく伝えるための「ファクトシート」の案を作りました。さらに、関連する情報をわかりやすく伝える「インフォメーションシート」の案を作成して、厚生労働省に提出しました。
最後に、ガイドライン改訂に向けたエビデンスの概要を紹介させていただきます。最初に、前回設定しました基準を変更する必要があるかどうかを確認した結果を紹介させていただきます。こちらは丸藤祐子先生らがメタ解析を行って作成した、身体活動と生活習慣病及び死亡リスクの関係を示したスプライン曲線になります。縦軸が疾病発症と死亡のリスク、横軸が身体活動量になります。10年前のレビュー結果と同様に、明確な量反応関係、つまり身体活動量が多い人ほど生活習慣病や死亡リスクが低いという結果が示されておりまして、前回の身体活動基準の18~64歳における基準値を積極的に変更する必要はないということを確認しました。具体的には、アクティブガイドにおける「1日60分」という基準、あるいは「1日8,000歩」といった目安の変更は不要だと判断しました。また、「プラス・テン」についても引き続き啓発していくことが望ましいと判断しました。
次に、前回の改訂時における課題の1つである、「座位行動」に関するレビュー結果を紹介させていただきます。こちらは岡浩一朗先生らがデータ解析を行って作成した、座位時間と死亡リスクの関係を示したスプライン曲線になります。縦軸が死亡のリスク、横軸が1日当たりの総座位時間になります。身体活動量と同じように明確な量反応関係が示されていまして、座っている時間が長いほど死亡のリスクが高くなることを示しております。先ほどお伝えしました、2020年に公開されたWHOのガイドラインでは、身体活動に加えてSedentary Behaviour、座位行動に関するガイドラインが示されております。そして、座位行動と健康の関係をレビューした研究は、座りっぱなしの状態が長く続くことが、様々な代謝や循環系の疾患のリスクであることを報告しています。
次に、筋力トレーニングと健康に関するレビュー結果を紹介させていただきます。こちらは、スポーツ医学系のトップジャーナルであります、「British Journal of Sports Medicine」の表紙になります。このジャーナルに、東北大学の門間先生を中心とした研究班が筋トレと総死亡や疾病発症リスクの関係をレビューした結果が掲載されております。こちらはその結果の1つで、1週間の筋力トレーニング時間と総死亡のリスクの関係を示したスプライン曲線です。御覧いただきますように、ある程度筋力トレーニングをしている人は総死亡のリスクが低いということを確認しました。一方で、1週間当たりの筋力トレーニングの時間が長い人の総死亡リスクが高いことについても確認しました。こちらは心血管疾患発症リスクに関するスプライン曲線になります。心血管疾患発症リスクにつきましても、左側の総死亡と同じ傾向であることを確認しました。これらの結果から、筋力トレーニングにつきましては適度な頻度、具体的には週に2日程度実施することを推奨することが健康にとって望ましいと判断しました。
次に、子どもと青少年に関するエビデンスを紹介させていただきます。こちらはWHOが子ども・青少年を対象にしたガイドラインを作成する時に実施したアンブレラレビューの結果になります。子どもと青少年に関しましては、薄緑で示しましたように様々なアウトカムを対象にした研究がレビューされており、体を動かしたり座り過ぎを避けることで様々なベネフィット、便益があるということが確認されています。これらのエビデンスを基に、WHOは子どもと青少年の身体活動・座位行動のガイドラインを示しており、研究班においても、WHOと同様のガイドラインが示せると判断しました。
次に、高齢者の運動量の基準に関するエビデンスを紹介させていただきます。運動基準の前に、身体活動に関する高齢者のエビデンスを紹介させていただければと思います。こちらは井上茂先生らがアンブレラレビューの結果を基に作成した、身体活動と総死亡及び心血管疾患死亡リスクの関係を示したグラフになります。縦軸が総死亡及び心血管疾患死亡リスク、横軸が身体活動量になります。御覧いただきますように、週15メッツ・時辺りまでは、成人と同様に高齢者におきましても身体活動が多い人ほど死亡リスクが低いという量反応関係を確認しています。このことから、前回の身体活動基準の65歳以上における基準値は週10メッツ・時としていましたが、15メッツ・時辺りまで引き上げてもよいと考えています。
続いて、高齢者の運動基準に関するエビデンスについて紹介させていただきます。WHOは2020年に公開したガイドラインで、高齢者を対象に、全身持久力、筋力、バランス能力、柔軟性などの複数の体力要素を高められる身体活動を「マルチコンポーネント運動」あるいは「マルチコ運動」と呼んで奨励しています。もちろん、この奨励の背景にはWHOにおいてエビデンスが確認されていますが、井上先生が率いる班におきましても、転倒骨折、身体機能をアウトカムにしたアンブレラレビューを行って、マルチコ運動が有効であるということを確認しています。これらのことから研究班としては、高齢者にとってマルチコ運動は有酸素運動や筋力トレーニングと並んで重要な運動形態で、高齢者に奨励されるべきだと考えています。
最後に、慢性疾患を有する人を対象としたガイドラインが示せるかどうかについて検討した結果を紹介させていただきます。この課題を担当されましたのは、慶應義塾大学の小熊祐子先生が率いた研究班です。小熊先生の班では、こちらに示しましたように高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症の患者さんを対象に、身体活動の効果を確認した研究をレビューしています。この結果、いずれの疾患についても、身体活動あるいは長時間の座位行動を避けることが、健康に効果があることを確認しています。
また、こちらは新潟大学の曽根博仁先生らのグループが実施した、2型糖尿病患者さんにおける身体活動量と全死亡率の関係を示した累積死亡率になります。御覧いただきますように、2型糖尿病に罹患している人においても、身体活動量が多いと、全死亡率は身体活動量が少ない人と比較して低いということが確認されており、研究班としては慢性疾患を有する人を対象としたガイドラインが示せると考えています。
まとめとなります。成人に関しましては、新たなエビデンスをレビューし、これまで同様に身体活動基準2013の基準値やプラス・テンを継続することが有益であることを確認しました。長時間の座位行動が健康リスクであることを確認しました。筋力トレーニングが健康にとって有益であることも確認しました。成人や高齢者において、身体活動量と健康リスクの間に負の量反応関係があることを確認しました。子どもや青少年において、身体活動推進や座位行動の減少が有益であることを確認しました。高齢者において機能的なバランスと筋力トレーニングを重視した多様な要素を含むマルチコンポーネント運動、WHOの言う「マルチコ運動」の効果を確認しました。最後に、慢性疾患を有する人にとっても身体活動推進が有益であるということを確認しました。
以上となります。御清聴いただきありがとうございました。
〈質疑応答〉
【中島座長】  澤田構成員、お話しいただきましてありがとうございました。前回の改訂時の振り返りから、その反省というか、そこで足りなかった部分を補いながら、今、今回の基準等々のディスカッションの土台になるところをお話しいただいたというふうに思います。それでは、ここで少し皆さんの質問とかコメントを受ける時間を取りたいと思います。ただいまの澤田構成員のプレゼンテーション及びその前の事務局による、これまでの取組についての御質問などありましたら御発言願いたいと思います。いかがでしょうか。手を挙げていただいている、黒瀨構成員、お願いいたします。
【黒瀨構成員】  ありがとうございます。日本医師会の黒瀨でございます。御丁寧な御説明ありがとうございました。何点か少し感じたことを申し上げたいと思います。
私、体型的に、なかなかこの会議で発言するのが難しい体型をしておりますけれども、座位行動の減少が非常に有益であるというお話を伺いました。これはもう確かにそのとおりだと思っておりますけれども、高齢社会の中でやはり心身の障害お持ちの方が増えております。その中で、もちろん四肢の障害による運動障害の方もいらっしゃいますし、また一方で、いわゆる心身ですから認知症ですとか、そういったことによる、なかなか運動がしづらいという方もいらっしゃると思います。今度の第三次の健康日本21の目標の1つが、いわゆる「誰一人取り残さない(インクルージョン)」というところを挙げておりますので、そういった意味で言うと、こういった心・体の障害をお持ちの方をどうこの中で引き上げていくのか、あるいはどう指針を出していくのかというところを教えていただきたいと思ったのが1点です。
もう1つは、先ほど事務局の御説明の中でありましたけれども、年齢の分け方という、少し細かいかもしれませんけれども、65歳以上というのと18~64歳、それから18歳未満という分け方の場合と、あとは、生産年齢人口に当たるものだと思うのですけれども、20~64歳という切り方をしている場合と、2通りあるように見受けるのですけれども、この辺りは今後どう統一感を持っていくのかということと、我々の目指す「健康寿命の延伸」という意味で言うと、今までのこの年齢区分で本当にいいのかという疑問も、あるところはあると思うのです。そういったところも、今後の方向性について教えていただければと思いました。以上でございます。
【中島座長】  今のは、澤田構成員に対する御質問と思っていいですか。
【黒瀨構成員】  最初の部分は澤田構成員に、2つ目の年齢区分の話は事務局から教えていただければと思います。
【中島座長】  では、お願いします。
【澤田構成員】  黒瀨構成員、貴重な御質問を頂きましてありがとうございます。黒瀨構成員が御指摘されました、心身の障害を持つ方に対する身体活動の推進のためのガイドラインは非常に重要だと考えております。今回、メンタルヘルスに関しましては工学院大学の武田先生と筑波大学の辻先生にレビューを行っていただいたのですが、残念ながら日本人を対象にした研究数は不十分という状況で、研究班として案を提示するには至りませんでした。また、障害がある人のガイドラインにつきましても、WHOではガイドラインを公表していますが、私たちの研究班で十分にエビデンスを確認することができませんでした。ご指摘いただいた点はとても重要な課題だと思っており、検討会として何らかのメッセージを出すということもあると思いますし、次回に向けた課題として残していくこともあるのではないかと思っています。
【中島座長】  ありがとうございます。
【黒瀨構成員】  ありがとうございます。座位行動の健康リスクということを強く言うとなると、やはり車椅子生活をされているような方に対しては何かのサゼスチョンみたいなものがあると受け入れやすいのかなと感じましたので、その点よろしくお願いします。
【澤田構成員】  申し訳ございません。座位行動について、コメントが抜けておりました。車椅子生活をされている方に対して何らかのメッセージが出せないか、研究班で考えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【中島座長】  では、年齢区分については事務局からお願いしていいですか。
【田邉室長】  はい、事務局でございます。黒瀨構成員がおっしゃるとおりで、健康日本21(第二次)の最終評価のところが「20歳~64歳」になってございます。これは「国民健康・栄養調査」の調査の関係でこのようになっておりまして、一方で基準のほうは18歳からになっております、今後、整合性を取れるか検討してまいりたいと考えております。ありがとうございます。
【黒瀨構成員】  ありがとうございます。
【中島座長】  それでは、津下構成員から手を挙げていただいています。
【津下構成員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございます。また、澤田構成員の研究班では精緻にレビューされ、まとめられたことに、深く敬意を表する次第です。
今回、慢性疾患を有する者についてのガイドラインが出るということについて、非常に期待感が大きいです。2013年の基準作成時には、「リスク重複者又は受診勧奨者」については「安全面の配慮が特に重要になるので、かかりつけの医師に相談する」となっていますが、ではかかりつけの医師が何に基づいて指導すればいいのか、その辺が明らかではありませんでした。実際にはリスク重複者や服薬している方は非常にたくさんおられて、スポーツクラブ、ジムなどでも運動しているし、自分でもウォーキングなどを、特に病気をよくしたいということでやっていらっしゃいます。そういう方に対して、安心してどういう運動を勧めたらいいかという基準が示されることは重要であり、期待感をいだくとともに、それをきちんと医療関係者に周知する手段が必要だろうと思います。インフォメーションシートなどの普及をぜひぜひ行っていただきたいと思っております。それは要望ということです。
2点目ですけれども、運動の量として今まで3メッツ以上の強度の運動を毎日60分以上ということですけれども、今回は強度についてはどう示されるのでしょうか。以前エクササイズガイドでは4メッツ以上の意識的な運動の場合、週1回でも60分以上行えば、それもいいですよというような、強度も加味したようなメッセージも出ていたかと思っております。そしてWHO、また糖尿病学会でも、高強度の運動ができる人は75分でも良いというようなメッセージも出ています。このように、強度を加味したような考え方について議論されたかどうか。また、それが採用しないというような方向性で結論が出ているのかどうなのかということを教えていただきたいというのが2点目です。
3点目はマルチコですけれども、マルチコンポーネントの効果がある、様々な体力要素を刺激していくというのは重要なことだと思いますが、同時にマルチでないといけないですかという質問です。1週間当たりで、この日はこういう運動とか、多様な運動様式を組み合わせて行っていくということも含んだ概念はいかがでしょうか。負担なく、そして楽しみながら、変化をつけながら行っていくような、そういうものもマルチコンポーネントとして含んでいいのか。または、一度にパッケージとしてやらないと意味がないということなのか。その辺りのニュアンスを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【中島座長】  澤田構成員に対する御質問と思っていいですか。
【津下構成員】  そうですね。今回の基準の考え方で、強度のこととマルチコンポーネントの定義の再確認ということでお願いしたいと思っております。
【澤田構成員】  ありがとうございます。強度に関しては身体活動を考える上でとても重要な要素だと思います。本件に関して、身体活動のガイドラインと運動プログラムの違いについて、コメントさせていただきたいと思います。
今回改訂を検討しているものは身体活動の指針、つまりガイドラインと改訂の根拠となる基準だと思います。身体活動の方向性を示すガイドラインと具体的な強度を踏まえた身体活動量を示す運動プログラムは異なるものだと考えています。身体活動のガイドラインは国民や、健康政策の立案者、あるいは指導者に方向性としての目安を示すものだと考えています。その方向は、時に「プラス・テン」という表現だったり、「1日60分」、あるいは「週に2日」や「元気に体を」という表現で、多くの人に腑に落ちて体を動かそうと思っていただける目安をエビデンスに基づいて伝えるものだと認識しています。一方で、運動プログラムにおける運動量は一般にエネルギー消費量で表現されますが、これは1回の「時間」と「強度」と「頻度」の掛け算になります。さらに付け加えれば、運動の種類がこれに加わって、これらを明確にしたものが「運動プログラム」となります。この運動プログラムについては、厚生労働省としては「標準的な運動プログラム」をホームページ上で公開していまして、また、大規模実証事業によって、その効果を実証しています。
これらのことから、改訂したガイドラインを周知する際には、標準的な運動プログラムも合わせて、つまり先生から御指摘いただいた強度も考慮した「標準的な運動プログラム」も合わせて周知することが重要だと考えています。特に指導者に関しては、ガイドラインが方向性を示すものであることを伝えるだけでなく、運動量については標準的な運動プログラムが存在しており、強度×時間×頻度、そして運動の種類によってターゲットとなる健康アウトカムが異なることを伝えていく、ガイドラインと標準的な運動プログラムをセットで啓発していくことが重要であると認識しています。
2点目のマルチコンポーネント運動に関しましては、WHOがガイドラインで推奨し、研究班でも効果を確認しましたが、御案内のように今回のエビデンスは、様々な介入研究のレビューの結果ですので、先生が疑問に思われている、同時でなくてはいけないのか、ばらばらではいけないのかということに対して明確なエビデンスを提示することができない状況です。ただ、今までは有酸素運動中心であったものに、今回、筋力トレーニングを提案させていただきましたが、高齢者にとっては筋力トレーニングや有酸素運動だけではなく、同じタイミングであるか、別のタイミングであるかは別にしまして、複合的な運動を奨励するということが大切だと考えています。そういう意味では同時でもいいし別々でもいいけれども、高齢者は様々な運動を実施することが、有酸素運動や筋力トレーニングだけの効果ではないものが得られるというふうに推奨していければと思っています。
【津下構成員】  ありがとうございました。
【中島座長】  ありがとうございます。石井好二郎構成員の手が挙がっているみたいです。いかがでしょうか。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。最初の、第1弾のエクササイズガイドの時には、生活習慣病予防ということで始まったと思いますけれども、それがだんだん広がっていって、今回、特に子ども、青少年、そして有疾患者、高齢者となったことによって、ターゲットにするリスクというのが、私が見たときには、座位行動に関しては死亡リスクになったりとかいうところで、何に対してのものかというのが少しあやふやになってきたかなと感じます。生活習慣病予防であったらこれくらいですよというのは、最初に宮地構成員が書かれていて、その部分では大変納得ができたのですが、今回はいろいろ動いてしまうので、何のためにやるかというのが、かなり大枠になってしまったかなと感じるところが1つあります。
もう1つですけれども、有疾患者が入ったことによって、この疾患のことに関して言うと、その該当する各医学会のところが様々なガイドラインを出しておられます。そのところに関しては、専門医の先生ですとか認定施設などでは、そのガイドラインに沿っての指導をされると思います。それと今回の新しいガイドラインが、ずれがあると、これは少し現場が混乱することになると思います。確か今回中島座長がやられているところでは、変形性膝関節症のガイドラインも今度出るというところで、確か澤田構成員の班でも、膝関節症のところで運動のものが出ていました。一方で、また別のところでもそれを話しているということになってくると、これが合わないと混乱してしまうので、今回、多くの学会の理事長の先生方が入ってこられましたので、こういう医学会と連携をして、相互理解の下で進められたらいいと思うのですけれども、その部分の調整というのは、澤田構成員、どう考えられていますか。何をターゲットにするかということと、医学会との連携という、この2点になります。
【澤田構成員】  石井好二郎構成員、ありがとうございます。先ほど津下構成員から御質問いただいた内容でお答えした内容と同じような回答になると思いますが、「アクティブガイド」と「標準的な運動プログラム」の違いがあると思います。御指摘いただいた、アウトカムがぼやけているという点につきましては、身体活動のガイドラインは、元気や幸せといったことも含めた国民全体の公衆衛生を向上させるための方向性を示すものとして求められていると考えています。一方で、運動プログラムは、時間、強度、頻度、そして運動の種類が決められて、健康アウトカムのターゲットが絞られて、例えば、高強度の運動に関して、それが適するアウトカムもあれば、高強度が適さないアウトカムもあると思いますので、アウトカムの明確化については、ガイドラインと運動プログラムのすみ分けという形で、考えていただければと思っています。
また、ガイドラインと運動プログラムのズレに関しましても、治療に関するガイドラインは運動療法ですので、運動プログラムになると理解していますこのため、今回の検討会の課題というよりは標準的な運動プログラムの改訂の中で検討していく課題だと考えています。標準的な運動プログラムを作成するときは、整形外科学会を含めた各学会とコンタクト取ってプログラムを作りましたので、これからも各学会とコンタクトをとって、標準的な運動プログラムをしっかり充実させていく、多様なアウトカムでプログラムを作っていくということが望まれるのではないかと思っています。このため、今回の身体活動指針の守備範囲とはまた別のところに、課題があると認識しています。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。
【中島座長】  よろしいですか。今日はオープンディスカッションということなので、私も少しだけ。これは質問ではなくてコメントですけれども、インクルージョン、一人も取り残さないということで、各年齢に分けたり、基礎疾患を持っている人、持ってない人に分けたりして、場合分けをして、それでそれぞれの身体活動であったり座位時間、あと筋トレ、マルチコーポレーション運動ですか、一様に印象的な言葉で申し訳ないですけれども、非常にもりもり、盛りだくさん過ぎて、こんなにたくさん項目があっていいのかというような印象を受けました。これは今からのディスカッションで、多分、全てを盛り込むというわけではないと思いますけれど、やはり絞って、すっと入ってくるようなわかりやすさが必要かなというふうに少し思った次第でございます。印象としてのコメントだと思っていただきたいと思います。ありがとうございます。
では、時間もございますので、皆さん、先に進んでよろしいでしょうか。
 
3.改訂に向けた論点について
【中島座長】  それでは、次の議題3に移りたいと思います。「改訂に向けた論点について」ということで、事務局からあらかじめまとめていただいております。それでは、事務局、御説明よろしくお願いいたします。
【田邉室長】  事務局でございます。では、資料4「改訂に向けた論点について」をご覧ください。では、おめくりいただきまして、先ほど澤田構成員からも御紹介いただきましたように、なぜこの基準を改訂しなければいけないか、必要性の部分についてございます。
まず、前回から10年間経過しておりますので、当然、最新のエビデンスがたまっており、取り込んでいく必要があると。また、普及・啓発という観点では、なかなか認知度が上がっていないということで、より使いやすいものにしていく、そういう方向性が必要と考えてございます。そういうことで、今回改訂をさせていただきまして、先ほどございました健康日本21(第三次)の中でしっかりと活用できればというようなイメージで考えてございます。
おめくりいただきまして、スケジュールでございます。令和6年度から健康日本21(第三次)が始まりますので、何とか令和5年度中に検討会で取りまとめいただきまして、新しいものを出せればということで考えさせていただいてございます。できるだけ今年度の早いうちにというイメージでございます。
おめくりいただきまして、ここまでは全体の方向性と普及でございますけれども、次は細かい論点について、何点か事務局のほうで挙げさせていただいてございます。今回は5点、先生方に御議論、御指導いただければと思ってございます。属性等を踏まえた構成について、「座位行動」の取扱について、「筋力トレーニング」の取扱について、「マルチコンポーネント運動」の取扱について、こどもにおける推奨値についてというところでございます。
では、1つ1つ見ていただければと思います。次のページにいっていただきまして、まず「属性等を踏まえた構成について」の部分でございます。健康日本21(第三次)では、個人の属性であるとかライフステージ・ライフコースということを考慮しておりますので、この身体活動基準の中でもこういう部分について考慮した内容にしてはどうかというイメージでございます。イメージといたしましては、全体のいわゆる一般向けのバージョンがあった上で、年齢の部分については「こども」であるとか、あるいは「高齢者」という部分について、エビデンス次第でございますが、エビデンスを踏まえて書ける部分は書いていくといいかと思います。それから、やはり「働く人」、つまりなかなか運動が難しいという属性を考えますと、そういう辺りの方に向けたものがあってもいいのではないかというところ。それから、先ほどいろいろとお話がありました、「慢性疾患を有する人」につきましても、生活習慣病予防、それから生活習慣病対策、重症化予防という点がございますので、慢性疾患を有する方についても、エビデンスに基づいて書ける分については書いてはどうかというイメージで考えてございます。
おめくりいただきまして、次が「座位行動の取扱について」でございます。座位行動をどのように取り扱うかというものでございます。座位行動は、ご案内のとおり、WHOでは座位、半臥位及び臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5メッツ以下の全ての覚醒行動というところで、立っていると1.8メッツですので、それ以外の行動というふうに考えてございます。先ほど澤田構成員から御案内がありましたように、これにつきましては、総座位時間の増加と死亡リスクについての増加に関しましては、エビデンスレベルの高いところで報告があるというところ。一方で、これに対する対応として、30分以上連続する座位行動について、できる限り中断(ブレイク)すると、心血管代謝疾患リスクを低下させるという報告もあるというところでございます。WHOではこれを踏まえまして、「身体活動及び座位行動に関するガイドライン」の中で、各年代における座位行動の減少と身体活動への置き換えを推奨しているということでございます。これについてどう考えるかという部分について、先生方に御議論いただければと考えてございます。
続けさせていただきます。次のページにいかせていただきまして、次は「筋力トレーニングの取扱について」、どう取り扱うかという部分でございます。いわゆる筋トレでございますけれども、こちらに関するエビデンスといたしましては、総死亡及び心疾患リスク、糖尿病リスクについて、下げる効果があるということでございます。こちらにつきましては、国立長寿医療研究センターの荒井構成員のほうから、こういう死亡リスクや生活習慣病だけでなくて、いわゆる生活機能維持向上という部分についてもエビデンスがあるということを御指摘いただいてございます。また、筋トレの実施の時間についてですけれども、これについても、わずかな時間であっても総死亡とか心血管疾患リスクを下げるというエビデンスが、先ほど澤田構成員に御支援いただきましたグラフでも見えているところでございます。また、健康効果が確認されたレビューにおいては、週2か3回のプログラムが最も多かったということで、頻度としては週2、3日が妥当ではないかというイメージでございます。その一方で、1回の強度につきましては、当然個人差がなかなか大きい部分で、人によって違う部分がありますので、なかなかそこに関して1人1人についてのエビデンスを出すのは難しいということで考えてございます。これにつきまして、藤内構成員からは、高齢者に関しても、筋力トレーニングについて何かしらの基準を出してほしいという御要望を頂いてございます。
おめくりいただきまして、4点目でございます。先ほどの御議論にございました、高齢者におけるマルチコンポーネント運動について、どのように取り扱うかという部分でございます。WHOでは高齢者(65歳以上)においては、バランス機能を高めるような中強度以上のマルチコンポーネント運動は転倒リスクを低下させるというところのエビデンスが示されておりまして、少なくとも週に3日以上行うことが推奨されてございます。ただWHOも、マルチコンポーネント運動の具体的な内容とか方法については、細かい部分についてはまだ出ていないというところ。それから、日本においてもエビデンスという部分についてはまだまだこれからという部分かなということでございます。マルチコンポーネント運動は、構成員から御案内がありましたように、多要素の運動ということで、有酸素運動、筋力強化、それからバランス運動を組み合わせた運動ということで、これを高齢者における運動としてどのように取り扱うかという部分について御議論いただければと思います。こちらも、本日欠席の藤内構成員から、具体的な運動例として、例えば国民になじみのあるラジオ体操とか、そういう部分についても何か取り込めるようであれば書いてほしいという御希望を頂いてございます。
最後、5点目でございます。「こどもにおける推奨値について」ということで、WHOのガイドラインを踏まえ、こども、いわゆる18歳未満の推奨値について、どのように取り扱うかということでございます。まず、日本スポーツ協会の「アクティブチャイルド60min.」の方で、こどもの身体活動のガイドラインとして、「毎日60分以上からだを動かす」ことが推奨されるとされてございます。また、WHOの5~17歳についてのガイドラインにおきましては、中高強度の身体活動を1日60分以上、また、高強度の有酸素運動に関しては週3日以上、それから、筋肉及び骨を強化する身体活動を週3日以上行うということが推奨されております。また、いわゆる座りっぱなしの時間、特に余暇のスクリーンタイム、テレビとかスマホとかそういう時間については減らしたほうがいいということが推奨されてございます。こちらにつきましても、藤内構成員からは関係省庁と連携をして、しっかり推奨値を出していってはどうかというコメントを頂いてございます。
事務局からは以上でございます。
〈質疑応答〉
【中島座長】  ありがとうございました。では、スライドの論点1に戻していただけますか。ありがとうございます。1個1個、皆さんの御意見等を伺いながら進めたいと思います。まず、その属性、年齢等々を踏まえた構成についての御意見がある方、いかがでしょうか。
これは先ほども少し申し上げました、インクルージョンということで、たくさんの皆さんを含めたいと。それで、みんな一括することは難しいということで、こういういろいろな場合分けに至ったのだと思います。では、石井好二郎構成員、よろしいですか。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。まずこの属性の前に、この改訂のところでの全般的につながることですけれども、最初のエクササイズガイドは何十ページもあるものが用意されて、次のアクティブガイドは本当に表裏のそういうリーフレットになって、簡便になりました。しかしながら、国民のほうにあまり伝わらなかったということがあります。このことに関して、用語とかいうものを、わかりやすい言葉を使わなくてはいけないのではないかということがまずあります。EBM(Evidence-Based Medicine)と同時に、NBM、Narrative、物語といいましょうか、伝わるようにやっていくというのは重要なところなので、少しわかりにくい言葉を使ってあるのが、ここを少し考えてはどうかと思っています。
属性について関わるところでは、「働く人」となっているのが、いろいろな働く方があるので、肉体労働、ブルカラーというところからデスクワーク中心というところもありますので、それがどういうふうに取られるか。ここにある絵は、おそらくはこういうデスクワークの方を中心に考えておられると思うのですけれども、その辺がひとくくりにできるのかというのは、少し思っているところではあります。まず今のところ、そんなところです。
【中島座長】  わかりやすい、非常に重要なところだと思います。特に、アクティブガイドは全部に配る分ですので、わかりやすくなくてはいけないと思いました。また働く人も、切りがないのかもしれませんけれども、肉体労働される方、座り仕事の方もいらっしゃるということで、貴重な意見だと思いますので、今後ディスカッションの中に含めていきたいと思います。津下構成員、お願いします。
【津下構成員】  ありがとうございます。私もこの属性に分けて、に賛同します。属性により健康上期待するアウトカムがそれぞれ違うので、誰が何のために運動が推奨されるか、そこを明確にして、どんな運動をどう進めるかということを、明確にメッセージを伝えることが重要だろうと思います。それぞれが自分事ができるように表示していくということが必要だろうと思います。働く人も子どももそうなのですけれども、運動のことを考える前に、その人が日常生活でどれくらい運動しているのかということをセルフチェック、アセスメントしたうえで、足りない場合にこういうこととか、もう十分できているのだったら、ほかの体力要素としてストレッチを推奨するとか、一律にというイメージではなく、まず自分の身体活動を振り返ってみようみたいなところから入れると、その後の流れとして、場合分けを考えられるのかなと思いました。成人世代ではICT、ウェアラブルの活用が非常に重要と思いますので、その辺のライフステージ・ライフコースを考慮した内容が望ましいと思います。
慢性疾患について、先ほど学会ガイドラインの話がありましたけれども、1人の人にいろいろな病気が重なっていて、膝関節障害もあって肥満もあって糖尿病もあって循環器疾患、もと、そういうような重なった人のガイドラインはないですよね。それを統合的に考えて、どういうふうにメッセージを伝えるかということは、現時点で、エビデンスベースとしては難しい部分があるかとは思いますけれども、共通項として示せるものというのを出していくのがいいのかなと思いました。
それから、前回プラス・テンということで、今回のブレイク・サーティもそうですけれども、それだけやっていればいいというふうに勘違いされないようなメッセージが必要と思います。「10分プラスすればいいんだよね」、それで合格ではなくて、そこは入り口であってトータル23メッツ・時までは目標としたいということですけれども、入り口のプラス・テンだけとか、座位時間をブレイクしたからそれだけでいいというふうに満足しないように、最終的にどのくらいが必要で、現在どの段階にあるということがわかるような示し方をすべきと思います。WHOのガイドラインでも、低いほうから高いほうまで一連の示し方をしていますけれども、そういう形で、次さらにというようなことを考えられる内容にしたらいいのではないかと考えます。以上です。
【中島座長】  ありがとうございます。澤田構成員、ここに関して確認というか御質問ですけれども、国民全般という、非常にあやふやですけれども平均的なモデルがあって、プラス、その右側に4つのパターンが書いてありますけれども、これで国民全般を網羅するのではなくて、極めて典型的な例を1つの例として4パターン挙げるというイメージで挙がっていると思っていいのですか。
【澤田構成員】  ありがとうございます。できるだけ国民のそれぞれの特性に応じたガイドラインを作成するということでありますし、一方ではエビデンス・ベースドであるために、エビデンスが十分でないものをガイドラインとして御提案できなかったものはございますので、国民全体を充分網羅しているということでは残念ながらなく、エビデンスがしっかりあるものから提案させていただいています。
【中島座長】  ありがとうございます。では、黒瀨構成員、お願いいたします。
【黒瀨構成員】  ありがとうございます。この論点1~5に関して、特に何か異存があるわけではないのです。ただ、この属性にも関わるところだと思うのですけれども、大きな課題の1つとして、やはり先ほど澤田構成員に御紹介いただいた認知度に関して、あまりにも低い。これを上げていく必要が、やはりここをまず底上げしないと、誰にも利用してもらえないということになると思うのです。その中の、今日はフリートークなので少し申し上げさせていただくと、例えば、もちろんウェアラブルデバイスと関連しているところもあると思うのですけれども、iPhoneなどで、いわゆる健康アプリみたいなものがいろいろあります。ですから、ただ知らせるだけではなくて、知った方が、自分のいわゆる運動状態がどれくらいのレベルにあるのかとか、合格レベルにあるのかとかを簡単にチェックできるような、あるいはその週の目標を達成したときには何か出てくるような、リングが出来上がるような、そういった仕掛けというのも、特にこの働く人の世代、あるいは子どもの世代などでも、これから先、考えていくことも必要なのかなと思いました。それで、民間のアプリと連動するのもいいのですけれども、それだとなかなか厚生労働省さん的に難しいというのであれば、簡単なアプリを独自で作っていくことも場合によっては考えていただければなと思いました。属性がたくさんあるので、紙ベースで考えると、本当にたくさんの紙になってしまいますから、ある意味、自分の年齢を入力すると自分に合ったアクティブガイドが出てくるという、そういう考え方もあるのかなと受け止めながら聞いておりました。以上でございます。
【中島座長】  認知度を上げなさいというのが、まずあったというふうに思います。宮地構成員よろしくお願いします。
【宮地構成員】  宮地です。よろしくお願いします。健康日本21(第三次)もインクルージョンということで、できるだけ多くの方を巻き込んだ健康づくりをやろうという大きな方向性があります。身体活動に関しても、今回、属性として4つの代表的な人たちを取り上げているわけですが、ここにいる構成員の皆さんもそうですし、多くの研究者、あるいは国民が、全ての人にとって身体活動は奨励できるということは、共通認識だと思うのです。どういうことをどの程度やったらいいのかが属性によって異なっているということも、共通した認識だと思います。ところが、今まで出てきた資料を見て、私も研究班にいて少し不十分だったと思うところは、先ほども黒瀨構成員から障害者の方についてはどうですかという話がありましたが、障がいのある方々にとっても、身体活動は推奨できるということが十分に言及されていないと気づきました。新しい「身体活動基準2023」、そして「アクティブガイド2023」、両方とも障害があろうとなかろうと、どういう人たちでもまず身体活動に取り組むことはいいことだという大前提をどこかでどんと示す。そして属性別のエビデンスのあるものから、属性別に量や時間を示していくという手順が必要なのではないかと思った次第です。以上です。
【中島座長】  ありがとうございます。今、非常にわかりやすく整理していただいたと思います。では皆さん、大まかな言い方で恐縮でございますけれども、こういうある程度の属性に分けて論じるということには、大筋賛成いただいていると思ってよろしいでしょうか。
【構成員一同】  異議なし。
【中島座長】  ありがとうございました。またここの分け方というか、そこはいろいろ案があると思いますけれども、また幾つか今日のディスカッションを踏まえて、次の時にまた論じられればと思います。
次のスライドへいっていただいてよろしいですか。今度は、論点2「座位行動の取扱について」。御意見がある方ということで、先ほど、車いすに乗った方への配慮とか、そういうものをどうするかということが御意見としてあったわけですけれども、澤田構成員、例えば車いすに乗った方に対する記載というのは、WHOとかそういうところにはどういうふうに載せてあるのでしょうか。
【澤田構成員】  申し訳ありません。WHOのガイドラインの中で、車いすに乗った人に向けて、座位行動に関して明確に記載している部分はないと思います。ガイドライン作成の前段で、様々なレビューが行われていますので、その中で論じられているかもしれませんが、申し訳ありません、現時点で、明確にWHOがどのようなコメントを出しているか、あるいは出していないかということをお答えすることはできませんので、確認しておきたいと思います。
【中島座長】  わかりました。では、横手構成員、手が挙がられました。お願いします。
【横手構成員】  ありがとうございます。千葉大学の横手と申します。この座位行動のことは、先ほども議論がありましたけれども、確かに元気に活動できている多くの方にとっては非常に重要なことで、しっかりと推奨していくことが必要だと思います。一方、そういうしっかりと歩ける方の目線の立場になってしまうので、やはり属性というところをしっかりと記述した上で述べるべきことだろうと思います。それから、先ほど来お話の出ている「インクルージョン」という考え方も、このガイドラインが前回出た2013年にはまだ市民権を得ていた言葉ではなかったと思うのです。今回、これを2023年に改訂して、またおそらく次、もし10年後に出るとするならば、社会状況はさらに大きく変わっているだろうと思います。そういう意味で、この座位行動の話から一歩進んでしまうというか、外れてしまうのですけれども、今やNHKのラジオ体操なども、いつしか座って行うバージョンが一般的にテレビで放送されるようになっています。私はこの2013年のガイドライン等々、日常診療で非常によく活用させていただいて、この歩数の目安というのは非常にわかりやすいし、あるいは生活活動などというのも、患者さんに説明するのにとても有用に使わせていただいています。しかし、歩けない方や多少は歩けても歩数を目標にすることが困難な方々にとって、よりわかりやすい身体活動の目標や目安のようなものもそろそろ考えて、向こう5年、10年へ向けて例示していくことが必要なのではないか。この座位行動の取り扱いとともに、そういった歩くことを目標にできない方の視点に立った目安というものを出しておくことも大事なのではないかと思いまして、一言発言させていただきます。以上です。
【中島座長】  横手構成員、ありがとうございました。こういう歩けない方への指針や目安など、それに対して答えを持っていらっしゃる方はいらっしゃいますか。はい、どうぞ。
【石井(好)構成員】  すみません。石井ですが、よろしいですか。先ほど澤田構成員から説明があった、アメリカのPhysical Activity Guidelines for Americansには、そういうハンディキャップを持った方へのロードマップというのがきちんとあります。したがって、そういう身体障害を持っている方々でもこういうことができますと、chair exercise、座ったままでできるものの推奨はきちんと出されています。
【中島座長】  ありがとうございます。では、石井好二郎構成員、続けて手が挙がっていますので、コメントをお願いします。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。まず最初、先ほどわかりやすい言葉というのは申しましたが、今ちょうど出ています共有の表のところの「身体活動」「生活活動」「運動」「座位行動」とありますが、おそらく一般の方でわかるのは「運動」で、ほかの言葉は多分、この横の定義は説明をしないとわからない言葉だと思います。座りすぎはよくないというのは伝わると思うのですけれども、「座位行動」という言葉が前に出ると、それこそ障害を持っている人の車いすも座位行動になってしまいます。でも、車いすに座っている方が座りすぎとは多分ならないと思うのです。なので、こういった面に関しては、私は「座りすぎ」という言葉のほうが国民に伝わるのではないかと思っています。
もう1つありまして、こういった座位行動は、もともとのsedentary behaviorというのが座位行動になっていますので、sedentary behaviorというニュアンスと座位行動というのは、確かに座っている時間が一番多いのですけれども、座位行動となると本当に座っていることに限定されているような感じが国民に伝わってしまうかなというのがあります。なので、ここら辺は「座りすぎ」というのがいいかなと。それで、先ほど津下構成員から、「ブレイク・サーティ」というのが出てくると、30分に1回立ち上がりましょう、それだけでいいということがありましたが、実際にこの座位行動と健康のことをやっている専門家が、2018年にオーストラリアで会議をやって、あまり座りすぎをやめましょうということが強くなりすぎると、身体活動の非常に効果があるところに関しての意欲が伝わりにくくなると。なので、この身体活動の良さが強調されなくなる可能性があるということを言っているので、並列というよりは、身体活動をもう少し前面に出して、そして座りすぎも抑えましょうとしたほうが、先ほど津下構成員が言ったように、本当に「立っていればいいのですね」ということになってしまわないかというのを危惧しております。以上です。
【中島座長】  ありがとうございました。まず、今目の前に見えているスライドの左側の4つの運動なり活動なりが、社会に対して、国民の皆様に理解しにくいのではないかということ。それから、「座位行動」という言葉自体もすっとわかりにくいので、「座りすぎ」という言葉がいいのではないかという御意見を頂きました。また、座位行動が前面に出るのではなくて、身体活動の中に含めるような形のほうがいいのではないかという御意見だったと思います。澤田構成員、この「座位行動」というのは、もう少しわかりやすい言葉で言うと、ほかに何か日本語としてあるのですか。
【澤田構成員】  研究班として提案させていただいています国民向けのアクティブガイド案の中では、「座位行動」という言葉は使っていません。石井好二郎構成員に御指摘いただきました「座りすぎ」といった表現を使っています。座位行動につきましては、sedentary behavior、あるいは座位行動が学術用語として認知されていますので、学術的にはsedentary behavior、あるいは座位行動という用語を使用していきたいと思いますが、一般の方には「座りすぎを避ける」という表現を用い、政策立案者や身体活動の指導者については、専門的な知識を、さきほど、横手構成員から、「生活活動」という用語が患者さんに説明しやすいと言っていただきましたが、専門的な用語を使って解説していきたいと考えています。つまり、アクティブガイドでは簡単な言葉を使い、ファクトシート、あるいはインフォメーションシートでは、専門的な用語を使用するといった使い分けをしていきたいと考えています。
【中島座長】  ありがとうございます。鈴木構成員、手が挙がっていますでしょうか。
【鈴木構成員】  鈴木です。どうぞよろしくお願いします。2006年、2013年とこの検討会に参加させていただいていまして、身体活動や運動に関しては3メッツ以上を強調して伝えてきました。今回、座位行動が入りますと、1.5~3メッツに関して、どのように今回のガイドラインでは取り扱うのかということが1つ。
もう1つは、属性のところでお話しすべきだったのかもしれませんが、前回までは必ず「体力の基準」というのがありまして、前回もこれは本当に必要なのですかと、また、参考で示されているアセスメント方法についても通常、現場ではできないアセスメント方法であると、その当時、宮地構成員に伺ったことがありました。今回、澤田構成員の説明の中に体力について示されなかったということは、ガイドラインから削除されたという理解でよろしいでしょうか。御本人の体力レベルに合わせて、この身体活動基準は使うという方向性でまとめられたのだなと思って少し安心したのですが、一応この場で、その点についてもお話しいただければと思います。以上です。ありがとうございました。
【中島座長】  これは澤田構成員、お願いしてよろしいですか。
【澤田構成員】  ありがとうございます。鈴木構成員から御指摘いただいた、いわゆる軽運動と言われる「1.5~3メッツ」については、メッツは強度の指標ですので、冒頭でお話しさせていただいた運動プログラムのエネルギー消費量の話になると思います。エネルギー消費量に最も影響を受ける健康アウトカムは、肥満になります。当時は、標準的な運動プログラムを厚生労働省は持ち得ていませんでしたので、ガイドラインの中で強度と時間と頻度を示すという形を取っていましたが、今回は、強度×時間×頻度は運動プログラムのほうに移して、ガイドラインとしては方向性を示すということで、御指摘いただいた1.5~3メッツの身体活動は、マルチコ運動、複合運動の中で、ヨガや軽運動という形で含まれてくると考えています。ただ、ガイドラインにおいては、強度自体は明確に示さないということで、強度×時間×頻度という運動処方、運動プログラムは提案しておりません。
また「体力の基準」につきましては、インフォメーションシートという形で、専門の方向けにインフォメーションを提案していますが、一般の方に向けたガイドラインで体力の基準を示すことは行っておりません。
【鈴木構成員】  ありがとうございます。中島座長、すみません、少しよろしいですか。そうしますと、23メッツという基準は変わらない中には、プログラム上、軽運動でメッツ・時が生じた場合は含めてもよいというガイドラインの考え方でよろしいのでしょうか。
【中島座長】  澤田構成員、お願いしていいですか。
【澤田構成員】  専門の方には、メッツを使ってで指導される方、されてきた方もおられると思いますので、「3メッツ」という言葉は、新しい研究を含めたレビューで、前回のガイドラインを変える必要はないということを確認しましたので、基本的に専門の方向けには前回の基準である「23メッツ・時」、そして「3メッツ以上」という表現は残していますが、「1.5~3メッツ」の基準を示すということは、今回の専門家に向けた基準でも抜け落ちています。
【鈴木構成員】  わかりました。ありがとうございました。
【中島座長】  では、これが最後で、津下構成員、短くお願いします。
【津下構成員】  はい、ありがとうございます。障害者に向けて、WHOのガイドラインでも、disabilityのphysical activityについての記載がございます。また、スポーツ庁でも健康スポーツ部会で、障害者ほど身体活動をしなければいけないということを提言しておりますので、それについても、スポーツ庁とも整合を取りながらメッセージを出していただくのがいいのかなと思います。
それから座位行動ですけれども、やはりスクリーンタイムとか、どういう行動に注意しなければいけないか、どういうことが座位行動を増やす行動かということがあると思います。国民向けには属性に応じて、テレワークで座りっぱなしとか、何が座りっぱなしの原因なのかということに対して、メッセージを発信したほうがわかりやすいのかなと。子どもだったらゲームとか、テレビの見すぎとか、そういう言葉のほうがいいのではないかとは思いました。以上です。
【中島座長】  津下構成員、ありがとうございました。複数の方から、障害をお持ちであるケースにも、運動をこのように勧めるというようなことはありましたということが、まず1つありました。それから論点2に関しては、このように独立するのかどうかは今からディスカッションを重ねる必要があると思いますけれども、こうやって座りすぎ、座位行動というものも、何らかの形で今回の中に含めるという方針は、皆さん、御異論なしと思ってよろしいですか。
【構成員一同】  異論なし。
【中島座長】  では、先のところで、またどういう形でこれを含めていくかを話していければと思います。では、先に進めさせていただきます。次のスライドに変えていただけますか。次は、論点3「筋力トレーニングの取扱について」。筋トレの取扱について御意見ある方、いかがでしょうというところです。すみません、どちらが早く手を挙げられたかわかりませんが、では、今度は津下構成員のほうからお願いします。
【津下構成員】  ありがとうございます。筋力トレーニングですけれども、ここには総死亡とか心血管とか糖尿病のリスクが書いてあるのですが、筋トレで求めるものは、例えば転倒とか、ほかのリスクというほうがより期待されるのではないかと思いました。健康寿命に及ぼす影響を示すのであれば、どうなのかなと思ったのが1つ。
もう1つ、この図2を見ますと、筋トレのやりすぎでリスクが上がっていくと。またこのやり方というのもあると思うのですけれども、高強度すぎると心血管イベントが増えるというようなこともありそうなので、これについて、このグラフを出すなら、やはりやりすぎの弊害や、どの辺りが安全で推奨されるものなのかというのを述べたほうが、いいのではないかと感じました。以上です。
【中島座長】  貴重な御意見ありがとうございました。では、横手構成員、お願いしていいですか。
【横手構成員】  ありがとうございます。私も2点ございまして、1つは今の津下構成員の御発言と重なるところです。荒井秀典構成員が高齢者の身体機能をアウトカムとしたデータをお持ちだという御説明が最初にあったかと思いますけれども、心血管病とか死亡だけでない、健康寿命の延伸に関わるようなファクターに筋トレがどういう影響を与えるのかというところが、日本ならではのデータとして提示されると素晴らしいのではないかというのが、まず1つでございます。
あともう1つは、筋力トレーニングというと、ガイドラインなどだと1行文章があって、私もこれまでに「筋トレはいいですよ」などと患者さんへ勧めることに尽きていたと思います。自分自身の経験として、コロナ禍になってから、毎週1回パーソナルトレーニングにこの3年半ほど通い始めたところ、それまで自分がイメージしていた筋トレとは少し違う。プロのトレーナーについて適切な運動を続けると、これは本当に老化予防になっているなというのが実感として湧いてきました。また、大学で教えている学生や診察している患者さんの中にも、昨今、YouTubeでいろいろな筋トレをやっていて効果が出ているという話を聞くことがあります。ただ、そういうもののクオリティーコントロールというのは、おそらく世の中でなされていないのではないかと思うのです。これまでアクティブガイドなどで、イラストレーションを使っていろいろなことを示されていますが、例えば、本当に基本となる安心・安全な有効な筋トレのようなものを、動画もしくはアニメーションなどで作成して、今回のガイドラインのオンライン版などに追加したりすると、さらに有効性の高い、そして社会に貢献する発信ができるのではないかと思いました。以上の2点を発言させていただきます。
【中島座長】  ありがとうございました。津下構成員も含めて、このアウトカムが、死亡だけではなくて、身体能力であったり、どれだけ元気かというようなものをアウトカムに、縦軸にしたものでもいいのではないかというお話でした。澤田構成員、そういうものもあるのですよね。
【澤田構成員】  はい。ございます。
【中島座長】  ありがとうございます。それでは石井荘一構成員、お願いいたします。手が挙がっているようです。
【石井(荘)構成員】  健康・体力づくり事業財団の石井と申します。筋力トレーニングについては、論点1と合わせて考えていく必要があるだろうと思います。運動指導の専門家が関わることがないような運動環境のほうが、むしろ多いと思われますので、国民向けのメッセージ、運動指導者向けのツールの両面で作っていくのが重要かと考えております。
また、「どのようなものをやるか」については、目的に応じ日常生活活動を維持するためのものや、さらに機能を高めるために行うものなどありますので、勤労世代でいえば、40歳以降の世代、それ以下の世代とか分けるなどしてメッセージを発信していく必要があるかと思います。
【中島座長】  ありがとうございました。筋トレと一言に言っても、対象によってだいぶ違うのではないかということで、もちろん私も筋トレというのはパッとイメージはできるのですけれども、例えば外来の患者さんたちに聞かれたときに、具体的にこの人に何をどこまで伝えればいいのかというのは、確かに悩むところかなと思います。一方、今回の健康日本21(第三次)はアクションプランの提示や目標の設定など、そこら辺も大事にしているわけで、これは具体的には澤田構成員、「筋トレ」という言葉をどこら辺まで解説するアイデアがあるのですか。
【澤田構成員】  ありがとうございます。こちらにつきましては、前回は、筋力トレーニングについてはなお書きで具体的な数字は示せなかったのですが、今回は、頻度をガイドラインとして示していくことを提案しています。そして、筋トレは強度×回数が重要になりますので、標準的な運動プログラムに高齢者、成人、各疾患を持った人ごとにイラスト付きで、筋力トレーニングのプログラムを示していますので、指導者にはそちらを参考にしていただく周知や啓発を行っていければよいと考えています。つまり、アクティブガイドとの組み合わせによって、方向性は筋力トレーニング、筋力が大切だということを国民にお伝えをして、強度×回数といった細かいことについては標準的な運動プログラムを見ていただく、あるいは指導者がそれを見て指導していただくというイメージを持っています。
【中島座長】  石井好二郎構成員、コメントはございますか。
【石井(好)構成員】  すみません。筋力トレーニングに関しましては、多分、目的に対してすごく変わってきますので、筋肥大や筋力向上とかいうのがすごくメインになりますと、今回提示されているこのグラフなどでも、おそらくはもう、かなりやっている人に大体なってきます。私も毎日腹筋と腕立てとランジをやるのですけれども、5分以内で十分終わっていますので、週やっても35分くらいです。それが一般的な国民がやれるレベルかなと。ここに入ってくる筋トレとなったときに、多分何人かの方々はバーベルを持ったりとか、そういったことを思ってしまうかもしれないので、そういったところとここで言う筋トレというのは多分違うことが出てくるので、そこら辺ははっきりしたほうが。誤解を生むと思いますので、よろしくお願いいたします。
【中島座長】  皆さん、ありがとうございました。少し定義づけというか、言葉はイメージしやすいのですけれども、人によってかなり受け取り方も違うのではないかということで、今後、またこれに関する話し合いも必要かと思いました。
では時間もございますので、次にいっていいでしょうか。論点4「マルチコンポーネント運動」の取扱についてというところです。これに関しては初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんが、いかがでしょうというところです。石井荘一構成員、今、手を挙げていらっしゃいますか。ミュートになっているみたいです。はい、ではどうぞ。
【石井(荘)構成員】  今回「マルチコ運動」を広めていくにあたっては、私どもが養成を行っております健康運動指導士等は、運動参加者が飽きないようにといいますか、継続しやすくする指導方法として、様々な運動要素を組み合わせ、日ごろ取り組んでいるところです。これまで、こういった言葉をあまり意識せずに行っていたと思いますので、呼び方は、統一した形で普及をする必要があると思います。
【中島座長】  ありがとうございました。まず、慣れない言葉であるのは間違いないですので、この言葉を推していくのであれば、やはりわかりやすい定義づけが必要ではないかという御意見だったと思います。では、続いて石井好二郎構成員、御意見ございますか。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。これをどのように取り扱うかというところですけれども、先ほど、今回、御欠席の藤内構成員からもあったように、ラジオ体操があったりとか、あとは例えばロコトレ(ロコモーショントレーニング)があったりとか、今は様々なトレーニングがあります。その1つとしてマルチコンポーネント運動みたいなものもありますよということを言うのか、マルチコンポーネント運動をしてくださいとなるのか、これによってだいぶ違うと思うのです。私は前者、つまり幾つかあるうちに、こういった混合型もありますよというところであったほうがいいなと思っています。もう既に今、こういったラジオ体操を続けてやっていますとか、そういう方もいらっしゃるわけなので、その幾つかの中にこういった方法もありますよという提示であるべきかなと私は思っております。以上です。
【中島座長】  御意見ありがとうございました。確かに、いろいろな団体がいろいろな体操を勧めていますので、ラインナップの1つで、では具体的に何をしたらいいんだというときに、提示できる1つであったほうがいいという御意見だったと思います。では、津下構成員、お願いします。
【津下構成員】  ありがとうございます。WHOのICOPEという高齢者のための包括的なガイドラインですけれども、その中での運動にマルチコンポーネントが入っています。その際には、介護を受けている方の、座位とか臥位を中心としたマルチコンポーネント運動の例示、またフレール、プレフレール、そしてロバストつまり健康な方、それぞれに対してマルチコンポーネントでこういう運動をこういうふうに組み合わせるのですというような例示まで出ていて、それが意味することがこれですということがわかる状況になっています。ですので、言葉だけではなかなかイメージがつかめないし、マルチコンポーネントを、プログラム化して実施できる施設とか指導者がいるとか、そういう条件がそろわないとなかなか広がっていかないだろうと思います。現時点で、我が国でこういうことが大事だということは広めつつも、多様な目的、多様な体力要素を高めるような、または維持できるようなプログラムを推奨する。その中に、御当地体操とかいろいろなことをやっていますけれども、そういうことも含めて、広く広げていけるような形を考えたらいいのではないかと思っています。WHOのプログラムみたいにカチッとしたものを示したところで、今すぐにどの程度、日本の中で広げられるかというのは、若干心配な面があるのかなと考えています。
【中島座長】  津下構成員、ありがとうございました。WHOにはいろいろな層別に分けて、では、あなたはこういう運動とこういう運動をミックスしなさいみたいな、組み合わせのお勧めまで、何か本として出ているということですか。
【津下構成員】  出ています。事前に身体状況を医学的なチェックを行って、体力のアセスメントを行って、その上でどういうプログラムから入っていくみたいな、それがICOPEのガイドラインの参考資料として合わせて出ていますので、マルチコンポーネントといった場合に、そういうイメージで話をしているということは理解できる形にはなっています。きちんとしたプログラムを組める健康運動指導士、理学療法士等が一緒に付いていないと難しいのかなとは感じた次第です。
【中島座長】  ありがとうございます。少し全体にも影響することなので、改めて澤田構成員とも一緒に確認させていただきたいのですけれども、今回、インクルーシブということで、年齢であったり、非常にクラス分けが多いですね。それにこういう、例えばマルチコンポーネントがあって、筋トレがあって、身体活動があってというようないろいろなものがあるのですけれども、その全ての組み合わせを詳しく書くようなものを目指しているのですか。それとも、もう少し薄い国民用のパンフレットを作ることが第一優先なのでしょうか。
【澤田構成員】  ありがとうございます。とても重要なことだと思います。研究班のイメージとしては、黒瀨構成員に御指摘いただきましたように、認知度がすごく低いということで、津下構成員から、「自分事のように」という表現をしていただきましたが、平均的なものが出てくると、自分事ではなくなるということで、1つ1つのシートを独立させて、自分事により近いものを手に取っていただける、例えば親御さんでしたら子どもや青少年を対象にしたガイドラインをお取りになる、慢性疾患を持っている方は慢性疾患を有する人を対象にしたものを手にしていただくといった形で、1つの大きな冊子というよりは、自分事に一番近いものを手にしていただく、あるいは、インターネットで自分に一番近いものをダウンロードしていただくというイメージを持っています。自分事に近いもの、自分に関係が深いものですので、認知度が上がるのではないか、また指導者にとっては指導しやすいのではないかと考えております。
【中島座長】  では、アクティブガイド・お子さま向けとか、アクティブガイド・高齢者向けみたいな、かなり場合分けしたものを想定して、私たちは話すべきだと思っていいのですね。
【澤田構成員】  はい。そのようなイメージで、提案させていただいております。
【中島座長】  わかりました。マルチコンポーネント運動に関しては、皆さんのいろいろな御意見が出ましたけれども、言葉として非常に新しいということで、言葉を前面に出すのであれば、やはり定義づけとか、そういうものが必要であろうというものがあった一方、もう既にいろいろな運動が我が国には存在しているので、そのうちの1つとして出すと。あるいは、確かにラジオ体操とか、これは具体的には太極拳みたいな運動でしたか。そういうものとして、言葉のわかりやすさを求めて出すというところも1つの手かもしれません。ただ、津下構成員が言われたように、例えば、ではそれを皆さんが、指導者が、指導員が簡単にさっとできるようになるかというと、そう簡単なことでもないということもあります。太極拳といったら、どこか太極拳教室に行かなくてはいけないという話になってみたりすることもあるので、これをどのような形で取り込むかということは、また今後の話の中でディスカッションしていかなければいけないかなと思ったところです。
では、3時50分になりました。論点5に移らせていただきたいと思います。最後の点ですけれども、「こどもにおける推奨値について」どうするかということです。澤田構成員、この下の週に何回以上とかいうのは、部活をしている子はそのまま何もなくて、していない子向けみたいなイメージで考えていいのですか。
【澤田構成員】  はい、こちらの示されているのはWHOのものを示していただいていますので、必ずしも私どもが提案したものとは違うものになります。例えば、津下構成員が座位行動に関連して御発言いただきましたスクリーンタイムやゲームといったことについても、研究班が提案したガイドラインには記載させていただいています。また、必ずしも運動部活をしている人がOKで、そうでない人だけがガイドラインの対象といった内容にはなっておりません。
【中島座長】  はい。では皆さん、18歳未満の人に対する運動、推奨値について。石井好二郎構成員、お願いいたします。
【石井(好)構成員】  ありがとうございます。この「アクティブチャイルド60min.」というのに私は携わりました。これに関しては、諸外国のこどものガイドラインを見まして、60分くらいがいいだろうと。何か調査をして、60分のところがクリティカルポイントだったわけではありません。ただ、これくらいがコンセンサスとしてあるというふうになっております。ただ、この「アクティブチャイルド60 min.」を作った時に、一番の目標としたのは動きたくなるようにしましょうということで、身体活動がかっこいいとか、運動がかっこいい、楽しいんだというところを一番に考えましょうというのがありました。結局、子どもは多分、健康とか体力向上を目指して運動しないと思うので、これはスポーツ庁と関連しますが、1つの目標はあるかもしれませんけれども、やはりメインのところは子どもが動きたくなるような状況をつくるような、そういうシートが必要と思います。それで、澤田構成員のグループが出されているファクトシートにはきちんと書いていらっしゃるのですが、座位行動に関して、今、子どもたちが授業中立ち上がったりするというのは結構問題になっています。これも誤ったメッセージだとすると、子どもたちが立ち上がると、子どもたちが「30分に1回立つんだよ」ということで、そうすると知らんふりするので、やはりこれはスクリーンタイムとか、そういったものを減らしますよというところを、特に子どもに関してはしっかり書いておかないと、教育現場に対して混乱を生じさせる可能性もあるかなというのは感じております。ここら辺のところは、よくよく考えてやる必要があると考えております。以上です。
【中島座長】  確かに、1日60分以上体を動かすというのは簡単な話ではなくて、学校にいる時間に何らかのことをしなくてはいけないということで、例えば学校の授業とか、そういうものにも影響するところがありますので、慎重に考える必要があると思いました。では、鈴木構成員、お願いいたします。
【鈴木構成員】  ありがとうございます。「以上」という言葉の取扱が、見方によっては今二極化しています。私は、ジュニアのアスリート等のスポーツ栄養サポートをしているのですが、1週間毎日、2時間以上の運動をしているジュニアアスリートも多くいます。運動すればするほど良いということを逆手に捉えられて、子どもの発育発達に悪い影響が出ないように、上限に関しても、このガイドラインの中に含めていただけると大変ありがたいと思います。以上です。
【中島座長】  貴重な御意見をありがとうございました。何分以内みたいなものの考え方も必要ではないかということですね。では、津下構成員、最後にお願いいたします。
【津下構成員】  ありがとうございます。今、二極化の話があって、私もその話をしようかと思っていました。特に女子学生とか、本当に運動しない層が多くなっているということで、そちらに向けてのメッセージをしっかり出していく必要があるのかなということと、スクリーンタイムということ。それから、しっかり運動している子については、休養とか、休めるということも合わせて伝えていかなければいけないということを発言しようと思いました。以上でございます。
【中島座長】  御意見ありがとうございました。インクルージョンということで、18歳未満に対して何らかの推奨を書かなくてはいけないというのは確かだと思います。ここは、スポーツ協会とWHOの例を挙げていただきました。これを踏襲して使っていくのか、あるいは、これは現実的ではないとか、そういう意見をまた次回に頂ければと思います。
私の不手際もあって、少しぎりぎりになって申し訳ありませんでした。今後のスケジュールについて、事務局からよろしくお願いいたします。
 
○閉会
【田邉室長】  ありがとうございました。事務局でございます。今回、先生方にたくさんご意見を頂きした。運動プログラムとの整合性等を含めて、また事務局のほうで少し整理させていただいて、また次回以降臨みたいと考えてございます。たくさん宿題がございましたので、事務所でもしっかりと何とか頑張っていこうと思いますので、今後とも御指導お願いいたします。
【小田課長補佐】  今後のスケジュールについて、御案内申し上げます。次回の委員会につきましては、今回の議論等を踏まえまして、追って先生方に調整いただきたいと考えてございます。お忙しい中恐れ入りますが、引き続きどうぞ御指導のほど、よろしくお願いいたします。
【中島座長】  では、終わりにしたいと思いますけれども、本日のところはオープンディスカッションというところで、いいディスカッションができたのではないかと思います。事務局のほうに論点整理していただいて、それぞれについて意見を頂きましたので、事務局等々でまたそこを整理していただいて、次回また話し合いができればいいと思います。およそ2カ月以内くらいには2回目をしたいという話だったと思いますので、日程調整にぜひ先生方、御協力のほどよろしくお願いします。
では、第1回の会を終わりにしたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。