第4回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録

●日時

2023(令和5)年6月30日(金)17時00分~19時00分

●場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15F ホール15D 

●出席者

深尾委員長(オンライン)、権丈委員、小枝委員(オンライン)、武田委員(オンライン)、滝澤委員(オンライン)、玉木委員、土居委員、徳島委員、藤澤委員、山田教授(法政大学経営大学院)
(オブザーバー)
前田参事官(内閣府計量分析室)、泉審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)、相澤企画部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)

●議題

(1)有識者ヒアリング
(2)運用利回りの長期的な動向について
(3)その他

●議事録

佐藤数理課長
定刻になりましたので、ただいまより、第4回「年金財政における経済前提に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は、深尾委員、滝澤委員よりオンラインでの御参加、小枝委員、武田委員よりオンラインで遅れて御参加の旨、御連絡いただいております。
 オブザーバーにつきましては、内閣府計量分析室の前田参事官から、オンラインにて遅れての御参加の旨、御連絡いただいております。
 また、年金積立金管理運用独立行政法人から、泉審議役と相澤企画部長に出席いただいております。
 また、本日は有識者からのヒアリングを行いますため、大変お忙しい中、法政大学経営大学院教授、山田久様に御出席いただいております。
 深尾委員長ですが、本日、オンラインで参加いただいておりますが、体調不良のため、議事進行は代理にお願いしたいということです。深尾委員長と御相談した結果、本日の議事につきましては、玉木委員に代理をお願いしたいと考えております。皆様、よろしいでしょうか。

 (首肯する者あり)

佐藤数理課長 
 ありがとうございます。それでは、玉木委員、席の移動をお願いいたします。

(玉木委員、委員長席へ移動)

佐藤数理課長 
 続きまして、審議に入ります前に資料の確認をさせていただきます。
 本日の資料は、
資料1 スウェーデンの賃金・雇用システムと我が国への含意
資料2 GPIFおよび諸外国の年金基金等の運用状況の国際比較
資料3 運用開始時から現行のポートフォリオにより運用していた場合の運用利回りと実績との比較(バックテスト)
資料4 日本の将来推計人口(令和5年推計)の概要
をお配りしております。
 それでは、以降の進行につきましては、玉木代理にお願いいたします。

玉木委員長代理 
 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 では、議事に入ることといたします。
 カメラの方は、ここで御退席をお願いいたします。
 それではまず、「有識者及び委員からのヒアリング」ということで、山田様からの御説明と、御説明に対する質疑の時間といたします。
 では、山田様、資料1につきましての御説明、よろしくお願いいたします。

山田教授 
 法政大学の山田でございます。
 本日は、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。30分ぐらいのイメージで最初お話をさせていただきまして、いろいろと御質問、あるいは意見交換をさせていただければと思っています。
 スウェーデンの話ということで、実は前回スウェーデンへ行ったのはコロナの前でしたので、ちょっとコロナの後の動きをフォローし切ってはいないのですけれども、大きな枠組みというのは基本的に変わっていないということかと思います。その中でスウェーデンというのは賃金が安定的に上昇を続けてきている国の一つということで、今日、その背景にあるような話をお話しさせていただこうと思います。
 最初に、改めてスウェーデンになぜ注目するかというところですけれども、図表1-1に、これは1960年からのかなり長いスウェーデンの主要な指標が載っております。スウェーデンは、戦後しばらくのいい時代を経て、実は80年代から90年代にかけてはかなり苦しい時代を経験しております。80年代はインフレ率の高進に苦しみ、90年代の頭にはバブルが崩壊して、完全失業率が非常に高い状況を経験しました。その前は戦後かなり特異なモデルということで注目されたのですが、一時、70年代から80年代にかけては、あるいは90年代にかけては、かなり北欧、スウェーデンのモデルというのは崩壊したのではないかと言われていたのですけれども、特にリーマンショック以降、コロナになってから若干、今、調整が入りつつあるかなという感じはあるのですけれども、いずれにしても、過去20年ぐらいで見ると、この右側にありますけれども、実は主要国の中でも、アメリカにひけをとらないぐらい、実質賃金の上昇率、生産性の伸び率、劣らない。むしろ所得配分の公平性ということまで考えますと、スウェーデンというのは総合的に見て非常にパフォーマンスのいい状況だったということが御確認いただけると思います。
 スウェーデンで何でそういういいパフォーマンスが続いてきたのか。今回の注目点というのは実質賃金ということですので、今、日本政府も生産性向上と賃金の好循環ということで、そこに、今、物価と賃金の好循環という話も出ているわけですけれども、こういうマクロ経済上の非常に好循環を達成してきたわけですけれども、背景には、極めて経済のロジックに沿ったことをまともにやってきたということに尽きるのだと思います。
 マクロ的にいうと、1つ目は、図表1-3を見ていただきたいのですけれども、これはリリアン指数とかリリエン指数と言われる手法ですけれども、要は、雇用構造から見たときに産業構造がどれぐらい変化しているかということですけれども、まさにスウェーデンとアメリカというのは不況期に非常に産業構造の転換が進む国なのですね。ですから、かつてシュンペーターが、不況というのは新しいものを生み出す好機になるのだということを言っていたのですが、まさにそういうロジックでもって、産業構造の転換が大きな不況の時代にこそ進んできたということがあります。そういう、まさに一言でいいますと、産業とか雇用構造がダイナミックに変化を続けてきたと、時代の変化に応じて変化してきたということがまず1点目ですね。
 もう一つは、実は、ある意味、アメリカよりもパフォーマンスがいいということの背景なのですが、ここしばらくというのは、特にアメリカですけれども、労働分配率が非常に大きく低下してきている。GAFAの影響などが指摘されていますけれども、どういうタームでとるかによるのですが、日本のほうも比較的低下傾向してきましたし、ドイツなんかも、どのタームで見るかによりますけれども、多くの先進国が、労働分配率というのは、どちらかというと低下傾向を続けてきた。ですけれども、スウェーデンに関して見ると、90年代の非常に厳しい状況はありましたが、それ以降はむしろ緩やかに上昇してくるような状況にある。
 産業、雇用構造がダイナミックに変化して実質労働生産性が向上する。その実質労働生産性の向上の果実を賃金という形で労働者に適正に配分してきたという、まさに経済原理そのものに忠実にやってきたというのが、一言でいえば、スウェーデンの少なくともこれまでの成功の背景にあったということですね。
 この後、スウェーデンがどういう仕組みをとってやってきたかということで、まず、賃金決定の仕組みから説明させていただきますけれども、実はスウェーデンの賃金決定の仕組みというのは、歴史的にかなり何度も変化はしてきているのですけれども、特に1990年代の後半から、ここ10年ぐらいかけてかなり洗練された、しかもユニークな賃金の設定の仕組みを構築してきております。
 ある面でいうと、日本で春闘がうまく機能していた時代に近いような状況になっているのですね。日本ではパターンセッターという言葉がありますけれども、スウェーデンはトレンドセッターと、これは英語に訳したときにそのように訳されているということですけれども、スウェーデン語は私も話せませんので分からないですけれども、パターンセッターなのですね。
 要は、スウェーデンというのは日本とよく似ているところがあって、輸出産業で食っている国なのですね。その輸出産業こそがやはり重要だということで、この産業部門で国際競争力上とか生産性の向上とかを考えながら賃金を決めていくという。ヨーロッパの組合というのは産別組合というのが基本になっているわけですけれども、これは日本と違うわけですけれども、スウェーデンもやはり産別組合でありまして、図表の2-2のところに、スウェーデン語で書いているのでちょっと読みづらいのですけれども、要は、輸出産業部門の産別産業組合が集まった連合体です。ここがまずインフレの長期的な推移を考慮する―スウェーデンの場合はインフレ目標を設定していますから、大体2%ですね。正確にいうと、ここは非常に経済学に忠実なのですけれども、マクロ全体ですから、インフレ率はCPIを使っているのではなくて、実はGDPデフレーターで議論しているのですけれども、そのGDPデフレーター。それと生産性の合計ですね。トレンド的な労働生産性のトレンド、大体これらの合計一致するような形で、賃金交渉を組合のほうから投げかけていく。当然、使用者サイドはそのとおりというわけでなくて、これはどこの国でもそうですけれども、国際競争力等を考えますから、日本でも使用者団体というのはかつてそういう国際競争力を考えたときに賃金を上げないというような議論があったと思いますけれども、やはり同じように、当然、特にスウェーデンにとってはドイツが非常に競争相手として重要なところです。だから、そこの賃金の状況なんかを見ながら労使交渉をやっていく。
 ただ、言えるのは、長期的、中期的なインフレトレンドと生産性の向上トレンドに大体収れんする形で労使交渉の中で決まってきているという、非常に、ある意味、経済学的に合理的な賃金の設定をやっているということですね。
 ここは輸出部門が決めていくのですけれども、これが実はそれ以外のセクターに波及していくという非常に面白い仕組みができています。それを助けているのが英語で言うとSwedish National Mediation Office、「中央調停局」と訳していいと思いますけれども。労使の紛争の調停というのは、日本でも、解雇の問題とかいうことではやりますけれども、スウェーデン、非常に面白いのは、賃金の決定の調停をここはやっているということですね。
 どういうことを具体的にやっているかというと、一番最初に、先ほど申し上げた輸出産業部門が賃金の非常に合理的な数字を決めた後、大体それに沿った形で賃金の設定がされていくのですね。ただ、中にはそれにうまく調整というか、交渉が進まないケースが出てくるわけですね。スウェーデンのケース、大体ヨーロッパはそうですけれども、賃金の労働協約というのは3年ごとぐらいにやっていまして、大体協約が終わる3か月から半年ぐらい前だと思いますけれども、その段階で更新が始まるのですけれども、交渉がまとまらなければ、あと、例えば3か月ぐらいになると、このNational Mediation Officeから指名された、かつての例えば労働組合の指導者であったり経営者、非常に見識のある、影響力のある人たちが、要は調停者として入ってくるのですね。そうやって大体合理的な水準に決めていくように誘導していくのですね。
 その結果、実はこれは10年以上かけてなのですけれども、2-4にありますように、これはコロナの前の数字ですけれども、ベンチマークというのは、先ほど言いました輸出産業部門の決めたところで大体2%半ばぐらいですね。ここに全体のいろんな協約の賃金も収れんしていくということが起こっているのですね。ですから、スウェーデンの場合は、平均賃金で見ると、ほぼ同じような賃金に収れんしている。
 これは、後ほど説明しますが、スウェーデンのもう一つ重要なところで言いますと、レーン・マイドナー・モデルというのがあって、これは平均賃金をできるだけ公平に上げていこうと。そうすると生産性の低い部門が淘汰されて、生産性の高い部門はどちらかというと余裕がありますから、その生産性の低い部門から労働者が吐き出されて、高い部門、余裕がありますから、そこに移動させる。そこに就業支援なり職業訓練なんかをやっていくという。これは戦後すぐにつくった仕組みですけれども、その仕組みというのは一回うまく機能していなかったのですけれども、新しい形で今復活しているということになっているのですね。
 もう一つ、申し上げておく必要があるのは、実は中央銀行もかなりこの賃金決定に対して影響を及ぼしているのです。これはどういうことかというと、デフレのリスクが非常に高まった頃がありました。スウェーデンが日本化するのではないかという。2014年ぐらいなのですけれども、クルーグマンなんかはこれを非常に論評していましたけれども、そのときに実は、すみません、「リスクバンク」というのは間違っています。「リクスバンク」ですけれども、そこがインフレターゲティング2%ということで設定しているのですけれども、そこが全くできていなかったのですね。ほとんどインフレ率がマイナス圏に入りつつあると。
 ところが、景気自体はよくて、不動産バブルが生じているくらいだったのですけれども、それでも、実はリクスバンクは緩和を続けるのですね。そのときの説明というのは、労使交渉の始まりつつあるときに、インフレ率が2%に達していないのに、ここで緩和を緩めてしまうと労使交渉に悪い影響を及ぼすと。中央銀行が2%達成は諦め、と捉えられると、当然、労働サイドが弱くなって、使用者サイドのパワーは上がるだろうということですね。
 ですから、中長期的な、まさにインフレの安定を、徹底的にそういう形にこだわって、それで国民経済全体の中でインフレ期待を安定させる。その結果、賃金も安定させる。結果として、スウェーデンはデフレを回避した。不動産の問題というのは実は今でも残っているのですけれども、ただ、そういうやり方をしているということですね。
 先ほど申し上げたレーン・メイドナー・モデルに戻りますと、戦後、これはLOというスウェーデンのブルーカラー系の労働組合のナショナルセンターですけれども、そこの2人の非常に優秀なエコノミストですね。スウェーデンというのは面白い国で、非常に優秀なエコノミストが労働組合に入っております。このお二人が、当時、戦後すぐつくったモデルですね。連帯賃金と呼んでおりますけれども、基本的に、いわゆる同一労働同一賃金なのですけれども、これを社会横断的に設定していく。できるだけ公平に平等に設定する。
 そうすると、この図表を見ていただくと、横軸にずうっと青い階段が描かれていますけれども、左から、労働生産性の低い産業、一番右が生産性高い産業ということになりますと、当然、生産性の低い産業というのは、生産性から合理化される賃金より高い賃金を払わざるを得ない。そうするとそこは縮小せざるを得ない。そうすると、生産性の高い余裕があるところに労働移動を進めないとだめだと、あるいは進めることができるだろうと。そこを職業訓練なり就業支援によって進めるのがいわゆるアクティブレーバーマーケットポリシー、積極的労働市場政策と訳されている、こういうモデルを戦後すぐにつくるわけですね。
 ただ、これがうまくいったというのは実はそんなに長くなかったのではないかと言われています。冒頭申し上げたように、70年代ぐらいから、80年代、90年代にかけてはかなり低迷した時代なのですけれども、ただ、さっき言いましたように、新しい形でこれが復活をしています。
 次のページが少し興味深いかなと思うのですけれども、よく生産性に連動して賃金が決まるということを言うのですけれども、スウェーデンの場合はナショナルにそれをやっているということですね。産業全体でそれをやっている。ということは、実はそれぞれのセクターでは生産性と賃金に乖離が起こっているということなのですね。
 実際、図表3-3を見ていきますと、右がイギリスですけれども、イギリスというのはユニット・レーバー・コストですね。ユニット・レーバー・コストというのは賃金を生産性で割ったものですから、大体生産性に見合った賃金が決まると、全体が大体収束する。ところが、スウェーデンはかなりばらついていることが分かると思います。
 だから、ここでいうと、生産性の低い、ユニット・レーバー・コストの高い産業なんかはむしろ淘汰されるような圧力がかかって合理化の圧力がかかるという、そこを労働移動なんかも含めながら対応していっているという、非常にここはユニークな仕組みですね。それが今でも原理的には維持されている。
 ここで重要になってくるのは、非常に鍵になってくるのがアクティブレーバーマーケットポリシーです。ある意味、今、日本の政府も、このスウェーデンを参考にしている部分もあると思うのですが、俗にいうリスキリングというところは、それにある意味該当するところなのかなと思いますが、ただ、実はスウェーデンのアクティブ・レーバーマーケット・ポリシーというのも非常に歴史の中で変遷しています。積極的労働市場政策といいますと、職業訓練というのがまず思い浮かぶということかもしれませんが、実は職業訓練というのは非常に難しいのですね。なかなか効果が上がらない。
 1950年代、60年辺りは比較的製造業中心で、公的セクター中心でやっていたのですけれども、だんだん経済がサービス化、ソフト化することによって、なかなかそれではうまくいかなくなってくるわけですね。
 特に90年代なんかは、職業訓練の効果というのは非常に大きく低下してしまいます。スウェーデンというのは基本的には中道左派の政権が担っているのですけれども、非常に面白いのは、何十年に1回ぐらい政権交代するのですね。そうやって中道右派が政権を取って、結構それまでの政権を見直して、修正していきます。このときもそうでして、そのときに積極的労働市場政策の中身を大きく、実は変えています。
 3-5を見ていただきますと、実は職業訓練の割合というのは大きく下がっていることが分かります。80年代から、特に2000年代に入ってから、このオレンジの線ですけれども、3-5ですが、大きく下がっていることが分かります。むしろ増えているのは、雇用助成と言われるものですね。
 要は、今の考え方というのは、職業訓練ももちろん大事なのだけれども、就業経験を積ますということが大事なのではないかということですね。ですから、企業にともかく助成金を渡して、雇いやすくしてやって、そこで就業経験を積むことによって能力を上げていくという方向に変えていったということですね。
 それともう一つ重要なのは、かつての職業訓練というのはやはり非常に短期の、例えば3か月とか半年とかの訓練だったのですけれども、本当に時代の新しいニーズに合うスキルが要るのだったら、そんなのでは短過ぎるだろうということで、実は教育政策との連携の中で、新しい職業大学の仕組みを2000年につくっております。これはスウェーデン語で「ユルケスホーグスコーラン」と呼んでいるものですけれども、要は、基本的には2年コースで、1年目は座学中心なのですけれども、2年目は企業で実際に働くのですね。これは私が、5年ぐらい前だったと思うのですけれども、エンジニアリング産業協会という、これは使用者団体ですが、そこの幹部の話を聞いたのですけれども、要は、自動車産業とかのエンジニアの人たちがその対象なわけですけれども、産業界として、人材の状況をマッピングしているのですね。
 縦軸に労働需要が、今余っているか不足しているか、右側は将来的にどうなのかという。要は、今も不足しているし将来も不足しているという、それぞれの職種をここにマッピングしていくわけですけれども、この、まさに右上のところにいる職種というのは、今も不足しているし、これからも不足しているということなので、ここを集中的に職業訓練の仕組みをつくっていくという、そういうやり方をやっています。
 そのやり方も、実際向こうで聞いたのは、とある自動車メーカーで、いわゆるCASEと呼ばれる現象が起こっていますから、例えばソフトウェアに強い新しいエンジニアが欲しいと。2年目の実際の企業で職業体験するというのは、うちで受けるので、1年目の座学というのは、どこか職業学校とか大学にやってくれという話を、この使用者団体の幹部に話を持っていった。そうすると、使用者団体の幹部は、地方自治体の幹部と知り合いですから、地方自治体の幹部に言って、全体のスキームをつくってもらう。そういう形で現場主導でかなり柔軟に、しかもそれは期限を切って、本当にニーズ主導でやっているという、そういうやり方をしている。その結果、これに関してはかなり評価が高いようです。
 それからもう一つ面白いのは、スウェーデンというのは、実は労働組合の組織率が70%あるのですね。労働組合の、どちらかというとイメージで言うと、労働組合はそんなに組織率高いと非常に変化に対して対応が遅くなってしまうのではないかという考え方になりがちなので、実はスウェーデンの組合というのはそうではなくて、例えばリストラ、ある事業がだめになったときに、その事業を閉鎖する。これに対しては反対しません。競争に負けているのだから、それは仕方ないと。むしろそうでなくて、そこで職を失った人たちが次の成長産業に、あるいは新しい仕事にどう移っていくのかという、そういう前向きなところを支援していくという発想を持っているわけですね。
 実はTRRという、これはオイルショックの後につくられた非営利団体ですけれども、3-9にありますけれども、日本でいうと経団連のようなところと、日本でいうと連合ですね。PTKというのはホワイトカラー系の組合の連合体ですけれども、ここが協定を結びまして、当然、経済的な理由でもって事業所を廃止する、それによって人員整理が必要になるというのは、これは組合としても受ける、仕方ないと。ただ、そのときに、再就職口をしっかり責任を持ってあっせんするような一つの機関をつくろうということでつくったのですね。
 これは加盟企業が毎年賃金の一定割合をずうっと積み上げていくのですね。積み上げていって、事実、リストラが必要になったときに、そのお金を使って、このTRRにはキャリアコンサルタントがたくさん雇われていまして、この人たちは、ある意味、百戦錬磨で、非常に経験も深いということで、個別、1対1でついて、リストラの対象になる人たちの仕事探しをいわゆるハンズオンで支援していくということをやっています。結構再就職率高くて、賃金も実は余り下がらないということを、これはコロナの前ですけれども、行ったときのヒアリングでは言っていました。
 それから、ここはもう本題からはそれますから簡単にしておきますけれども、実はそれ以外の失業保険とか生活扶助というのはあるのですが、その間にある第2のセーフティネットというのがアクティベーション・プログラムというものがあって、これもできるだけ労働市場に戻すような仕組みというのをつくっているということですね。
 要は、申し上げてきたように、基本的には経済原理にのっとってやっているのですね。組合のほうもそれを非常に尊重しています。簡単に政府に助けを求めないのですね。例えば、これはリーマンのときにありましたけれども、ボルボが経営危機に陥るわけですね。あのときも政府は支援していません。中央企業が支援して、今はそれでもう立ち直っているわけですけれども、そういう伝統があります。
 基本的には労使でやるのですね。さっきのTRRも、政府から金は一切出ていません。全部使用者側が金を出して、それでもって運営しているということです。組合も、一方で、そういう意味では、さっき言いましたように、非常に合理的に考えていて、経済合理性から考えていって存続できないような事業所というのは閉鎖することはもう仕方ないと考えているのですね。
 そうでなくて、そのときは次の新しい仕事をどう見つけるのかということを支援するということで、いろいろ知恵を出し合っている。そんな形になっているということですね。
 これはスウェーデンの人たちの非常に面白い考え方というのですか、こういうのを表していると思ってここに載せるのですけれども、例えば左側で「デジタル化に対する捉え方」ということで、これはアンケートをとっているのですけれども、「デジタル化はあなたの国・企業・仕事にリスクよりも機会を与えると思いますか」ということに対して、前向きに答えている割合というのは、北欧、スウェーデンも含めて非常に高いというのが分かります。それから、スウェーデンに私も何度も行っていますけれども、その中でよく言われる言葉です。「救うべきは個別の仕事や事業ではなくて、個人そのものですよ」ということを言いますね。仕事や事業は変化していきます。それに対して個人がどう対応していくかということですね。それから、非常に興味深いのは、今のデジタル化とかの関係でいうと、彼らが言うのは、我々が恐れるのは新しい技術ではなくて、古い技術だと。要は、古い技術にこだわると、時代から取り残されて、結局、仕事がなくなってしまう。だから、新しいものをどんどん取り入れていこうという、そういう発想を持っているということですね。だから、まさに変化を前向きに捉えている。
 このページは、Sacoといいまして、いわゆるプロフェッショナルな人たちですね。大卒の専門職系のプロフェッショナルな人たちの労働組合というのは恐らく北欧にしかないのですけれども、これがSacoというやつですが、この中身を見ていますと、非常にやっているサービスというのが面白くて、例えばコーチングとか、メンターとか、キャリアの支援とかをやっているのですね。それから、セミナーとかネットワーキングとか、キャリアに対する支援ということで、アメリカなんかに、アソシエーションといって、例えば人事ですと人材マネジメント協会というのがありますけれども、そういう同じ職種の人たちのキャリアをお互い支え合っているというか、その会員に対してキャリアを発展させることをサポートしているようなアソシエーションというのがありますけれども、中身を見ているとほとんどそれと一緒なのですね。
 だから、一般的に何となく組合と言われるものとは少し違っていて、この上のほうに書いていると思いますが、組合が、職の保障というよりキャリアの保障という発想を持っている、そういう組合ですね。
 ちょっと時間の関係で、コーポレートガバナンスも面白いのですが、これは割愛しまして、最後にちょっと日本に対するインプリケーションということでまとめておきますと、改めて言いますと、スウェーデンの持続的な賃上げというのは、労働組合主導の賃上げ圧力がまずあり、そこに公労使で連携した労働移動策、これがいろんな多様な形である。それから、実は中央銀行もインフレ期待、それが結果的に賃金の保障に影響を及ぼす、そういうところで実は関与しているということなのですね。
 翻って日本の状況を見ると、今、政府が三位一体の労働改革、それによる構造的賃上げと言っていますけれども、これはいわば日本はこれまで弱かった外部労働市場を整備して、成長分野への移動を促して賃上げを実現しようというので、ある意味、スウェーデンのケースでいうと2番目のところに該当するのだろうなと思います。
 それから、日本銀行は、今の植田総裁になられてから、賃金上昇を伴う形でという、賃金のところですね、金融政策と一定程度関与されるような御発言をされていますけれども、ある意味、これ、そのものではないですけれども、スウェーデンの3つ目のところと関連している。
 もう一つ、実は1のところなのですね。これは、日本はどうしても企業内組合ということがあって、賃金よりも雇用を優先するということもあって、賃金上昇の圧力が弱かったのですけれども、そこを何とかということで、数年前から政府が賃上げの要求をする中で徐々に変化が生まれているということで、ある意味、まだ不十分とはいえ、一定程度、スウェーデンに似たような形というのが生まれつつあるのかなあとは思います。
 ただ、全てこれはまだ道半ばだと思います。特に、私は個人的には賃上げの上昇圧力というのは結構大事だと思っています。下にちょっと自分なりの考えを書いていますけれども、ここは本題とは直接関係ないと思いますけれども、ただ言えるのは、スウェーデンの状況から見ると、一定程度賃上げの上昇の動きが出てきているのかなと。これをやはりどう持続的なものにしていくのか、強くしていくのかというところに、今後の持続的な賃金上昇のあり方というのは左右されるのではないかなと、そういうことでございます。
 ちょっと雑駁になりましたけれども、以上で説明を終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。

玉木委員長代理 
 山田様、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。
 武田委員、お願いいたします。

武田委員 
 ありがとうございます。
 山田さん、本日は大変すばらしい発表をありがとうございました。多くの示唆を得られたと思います。
 1点目にお尋ねしたいのは、最後に春闘の新しい形の提案があるとお話しをされて、時間の関係でやめられましたが、もしよろしければ、その御提案の内容をお伺いしたいと思います。
 2点目は、経済界と組合で、これから伸びる産業を見据えて、即戦力の人材の育成の面で成果を上げているということですが、即戦力で成果を出すには、そのときに必要なスキルが技術の進化によってどんどん変わっていきますので、教える側もしっかり労働移動されているのかどうか。そこが固定してしまいますと、教える内容が固定化すると思いますが、その点について、スウェーデンの状況を、もし教えていただけるようでしたらよろしくお願いいたします。

玉木委員長代理 
 では、山田様、お願いします。

山田教授 
 御質問、大変ありがとうございます。
 では2点目のほうから御回答いたしますと、この「ユルケスホーグスコーラン」という仕組みは固定化されたものではないのですね。本当に柔軟にやっているようで、結局、教えるというのは、理論的な部分とか基礎的なところってそんなに時代によって変わるわけではありませんですね。そういうところはやはり教育機関の教員が教えているわけですね。重要なのは、それと現場で実際働く経験を積んでいるということなのですね。
 だから、例えば、実はボルボのケースだったのですけれども、ボルボが今非常に、当時から自動車の構造変わっていますから、そうすると、新しいタイプのエンジニアというのは現場で物すごく不足しているわけです。当然、ボルボとしてはそういう競争に勝つために、先端のエンジニア自体はそこで抱えている、あるいは自分たちが勉強しながらそういうことを学んでいっていますから、そこに若い人たちを入れて、あるいは転職した人たちを入れて、そこで実践的に育成していく、そんなやり方をやっている。だから、それを結構、一種のプロジェクト的というか、一回つくったらもうずうっとそれを続けるということでなくて、ニーズに応じてどんどん切り替えていっているということのようですね。そういうやり方をやっているということです。
 それから1つ目は、これは細かくいうと長くなってしまうのですけれども、16ページにその下を書いていまして、政府がもちろん賃上げに対していろんなメッセージを出していく。ここ最近は3%とか何とかいう話はされていて、それはそれでいいのですけれども、もうちょっと合理的な根拠づけがあったほうが私はいいのではないかなと思っています。経済学的に考えてみたときに、もちろんこれは自動的に出てくるわけではないのですけれども、一定程度、インフレ目標の設定とか、あるいは、でも、長期的な労働生産性の向上トレンドというのはありますから、スウェーデンはまさにそれで決めているのですね。だから、そういうものを例えば経済学者中心に、結構重石になる先生方に集まっていただいて、実際の作業というのは事務局なり若い経済学者がやればいいと思うのですけれども、そういうので提示した上で、労使の代表が集まって、そこで合意をとっていくということをするのがいいのかなと。
 それをベースに、今年も政労使会議をやられましたけれども、これは定期的にやる必要があると私は思います。というのは、例えば今回、春闘、上がったのですけれども、何で上がったのかというのは実はまだはっきり分かっていないのですね。こういうものに対していろんな検証をしていって、なぜ上がったのか、持続性があるのだったらそれを来年うまく続けていく、あるいは、そうでないところがあれば、当然それに対してどういう手を打っていくのかという、継続的にやはりそういうことを開いていってやるべきではないか。
 さらには、実はそれをさらに実際の賃上げ交渉というのは中央でやるわけでなくて、個別の産業とか地域ですから、地域別、あるいは産業別に分科会的なものもつくって、全体で示されたものをその現場現場でより具体的なところを議論していって共有していくという、そんなことも私は必要かなと考えております。
 以上です。

武田委員 
 どうもご丁寧にありがとうございます。

玉木委員長代理 
 山田様、ありがとうございました。
 それでは深尾委員長、お願いいたします。

深尾委員長 
 山田先生、興味深い御報告、ありがとうございました。
 私から1点質問があるのですが、労働生産性の上昇が低い産業でも、横並びで、リーディング産業と同じように賃上げをしていく。それによって、比較優位を失ったような産業でも他の産業に労働が移動していって、それから同時に、職業訓練等も通じて労働の移動を円滑に進めているという非常に興味深い経済モデルだと思うのですが、一方で、産業別の組合があって、労働者がそれなりに産業に固有の熟練を持っているとすると、産業別労働組合はすごく、例えば保護主義的というか、比較優位が失われると、その産業の雇用が減るのを抑えるために保護主義的な圧力も出てくるような気がするのですけれども、それはどうやって抑えているのでしょうか。労働が産業間でも非常にスムーズに移動して、それを労働者が受け入れていて、そういう問題はないということなのでしょうか。

山田教授 
 そこが本当に北欧の組合のユニークなところだと思います。実は、北欧でも、例えばデンマークとスウェーデンでも全くといっていいほど仕組みが違うのですけれども、特にスウェーデンの人たちは、実は職にこだわりません。デンマークにあるような職業資格ってそんなにがちっとしたものはないのですね。かなり職種転換に対しては柔軟な考え方を彼らは持っています。
 100%うまくいっているわけでなくて、実は失業率はかなり高くなっています。それはだから、完全に理想的にいっているかというとそうではないです。ただ、かなり彼らは、実はリカレントですね。最近日本ででいわれているリスキリングでなくて、リカレントですけれども、このリカレントという言葉が一番最初に出てきたのはスウェーデンなのですね。
 生涯教育という考え方というのは昔からあって、結構、具体的に、向こうに行っても、職種をがらっと変えてしまう人という事例はよく聞いています。何度か行って感じたのは、彼ら、小さい国なので、すごく危機感を持っていますね。例えば不況になって、大体不況になると通貨が物すごい安くなるのですね。スウェーデンクローナというのは。そうすると、彼ら、すごく危機感を持ちます。このままいってしまうと本当に国が貧しくなってしまうのではないかと。
 だから、組合としても、歴史的に見ていると、戦後すぐ辺りはそういう、深尾先生おっしゃったような、一般的な組合の発想はあったようですけれども、そういうことをしていたら、結局、全部、国の産業がだめになってしまうので、そんな短期的な権益だけ考えていると結局食えないなあという、そういう感覚を彼らは持っていると思います。だから、怖いのは古い技術であって、新しい技術ではないとか、仕事とかにはこだわらないと。キャリアそのものをやはり発展させていくことが重要だと。組合そのものがそういうマインドをどんどんつくっていったのだと思うのですね。100%みんながそうなっているかというと、恐らくそうではなく、私なんかが会った人というのはそういうリーダーの人たちですから、ちょっと強調はしていると思うのですけれども、でも、全体として、そういう仕組みがあり、組合自体もそういう形でサポートしているのですね。そこが、自然にできたわけではなくて、彼ら、小さい国なので、ドイツとか、昔はロシアもソ連への対抗もありますし、物すごくそれに対しての危機感を持っている国だと思います。

深尾委員長 
 ありがとうございました。

玉木委員長代理 
 ありがとうございました。滝澤委員、いかがでしょうか。

滝澤委員 
 ありがとうございます。
 山田先生、御説明ありがとうございました。
 私からは2点お伺いしたいことがございまして、1ページ目ですけれども、スウェーデンの失業率というのを拝見すると、90年以前と以降でレベルが変わっているようにも見えるのですけれども、趨勢的に90年以降のほうが上がっているように見えるのですけれども、これは、労働移動が促進される中で、いわゆる需要不足による失業ではない部分で、ミスマッチ等で発生する失業率が上昇しているのかどうかということを1点お伺いしたいと思います。
 2点目は、3ページ目に、賃金全体が輸出産業部門で決定されていて、それが経済全体に波及していくということですけれども、前回、本委員会で東京大学の川口大司先生が、大手企業の賃上げ率と経済全体の賃上げ率というようなお話をされていて、大手が3.9%ぐらい上げると、経済全体では1.5%ぐらいの上昇というようなことで、ですから、日本は、こういうデータからすると、波及効果というのがスウェーデンよりは弱いような、数字を見るとそのような気がしております。
 日本がよりスムーズに経済全体に賃上げが波及していくためにはどうすればいいかということなのですけれども、こうなってしまっている現状として、スウェーデンは日本より中小企業が少ないからなのか、あるいは、中小企業は同じぐらいの割合であるのだけれども、生産性の高い中小企業が多いからなのかとか、あるいはベンチャーが日本よりたくさん参入しているからなのか、そういった波及効果の強さというものが、もし理由を御存じでしたら教えていただければと思います。
 以上です。

山田教授 
 ありがとうございます。
 2つ目の御質問から言いますと、当然、100%、もちろん、例えば最近は2%半ばに収れんしていると言いますけれども、全部適用されているわけではないのですが、でも、大体そこに収束している。当然、生産性も、大手と中小の格差は小さいです。これはOECDのデータなんかに載っていますけれども、例えばサービス産業なんか、実は大手より中小のほうが高いのですね。
 スウェーデンも、長く見ると、かつては中小企業をつぶすというか、もう生産性低いから淘汰するという政策を左派政権のもとで続けてきたのですけれども、でも、それがやはりインフレ体質を生んだりとかいうことになって、最近はすごくベンチャーを促進しています。だから、例えば、ちょっと古くなりますが、スポティファイとかいうのはスウェーデンから出ていますし、私はゲームは余りよく知りませんけれども、ゲーム系でどんどん出ていますし、ちょっと最近は、ほかの都市も対応が進んでいますけれども、10年ぐらい前は、人口当たりで、いわゆるユニコーンの数が2番目だったのですね。ストックホルムというのは。非常に国挙げてそういう新しい産業を育成する。
 だから、中小企業、その辺りはやはり物すごく格差あると思います。そこは伝統的なセクターでないので、今日説明したようなところは対応されていないのですけれども、ただ、スウェーデンというのは、申し上げましたように、多産多死なのですね。企業は別に淘汰されても仕方ない。事業というのは時代に合わなければ淘汰されて仕方ない。でも人を守るという発想ですから、だから、そういう中で、結果として生産性低い企業はどんどんつぶれますし、事業もなくなっていきます。
 昔はそういうことでちょっと寡占が進んだのですけれども、それをやはり、悪い部門はなくそうということで、かなりベンチャーを進めたり、あるいは、かつてはスウェーデンの対内投資を抑制していたのですけれども、20年ぐらい、物すごく受け入れているのですね。移民を彼らが一生懸命入れるというのは、一つの理由は、移民は、特に難民というのは優秀な人が多いですから、そういう意味合いも。ただ、もちろん、もう一方で社会の価値観が多様化していって、不安定化しているという問題も起こっているのですけれども、でも、結果としてそういう形で、実は非常にダイナミックな形でやっているということですね。ですから、生産性というのは、大手、中小ですごく格差があるというよりは、むしろそれは事業ごととかセクターごとによって違うということですね。
 それから1点目の話は、失業率上がっている理由を細かく見ていると、移民と若い人なのですね。移民はちょっと仕方ないですね。どんどん入れているので、これはどこの国でも起こっている話ですね。彼ら、政治的信条として移民を受け入れてきているということなので。若い人は、実は非常に失業期間が短いです。3か月とか半年ぐらいが大半で、ある程度たつと仕事を得ているということで、だから、どっちかというと摩擦的失業の側面が多いですね。
 だから、一定の年齢のスウェーデンに土着の人たちというか、長く住んでいる人たちだけで見ると非常に失業率は低いです。そんな状況で、そこは問題なのです。だから、スウェーデンの労働市場というか、そういうところでもやはり移民の失業率をいかに下げていくか、そこにフォーカスを当てたり、少し前は若い人たちに対するフォーカスを当てていたという、そんな状況ですね。

滝澤委員 
 ありがとうございます。

玉木委員長代理 
 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
 権丈先生、どうぞ。

権丈委員 
 ちょっと声が出ないのだけれども、申し訳ない。
 山田先生、どうもありがとうございました。私、30年ぐらい前に、どうして大きな福祉国家が生まれてくるのだというのを分析していたときに、どう見ても貿易依存率が高い小国が大きな福祉国家になるんですね。人口規模が小さいヨーロッパが福祉国家になっていく。政党とかは余り関係ないです。小国が生きていくためにどうすればいいかという結果が福祉国家であったし、経済政策としての積極的労働市場政策だったというのが私の中での納得していたところです。
先ほどの深尾先生の説明から言うと、ナショナルセンターはめちゃくちゃ強いです。ナショナルセンターがめちゃくちゃ強くて、個別の企業とかには言うこと聞かせます。例えばインフレ時には、ナショナルセンターは、個別の企業に賃上げをおさえる所得政策への協力を強います。このナショナルセンター、労働組合はいわばずっと与党です。生産性の強化を求めて小国に大企業が生まれたから、必然、労働組織率は高まりました。よって与党になったから、ああいう国の労働組合は理性的であって、個別の企業のわがままなんか聞きません。与党である労働組合が圧倒的に強く、自国が生きていくための方法を合理的に考えていくという形で、個々の労組を従わせていくことになるのですね。
 それが山田先生のおっしゃる経済のロジックどおりの経済政策が展開されていくということになるし、私は、経済規律とか市場規律とかいう言葉を使っています。要するに、ドイツをはじめとした周辺、世界の大国と経済戦争をしているわけです。旧式の武器を使って戦うわけにはいかないのですね。いかにスムーズに新陳代謝を図っていくかということで彼らは経済政策を展開していく。労働市場政策を展開する目的も、古い武器を新兵器にどうやってスムーズに入れ替えることができるかというような視界でやっていくことになります。
 そういう意味で、トップの与党としての労働組合のところから経済システム全体の、インセンティブ・コンパティビリティと僕たちは呼ぶわけですけれども、誘引が一貫しているのですね。日本のように、付加価値生産性を上げなければいけないといって、付加価値生産性が低いところからねだられたら補助金を出すというようなことはやらないです。それがあの国を強くしているというか競争力、要するにヨーロッパの小国の福祉国家の経済を強くしているところにもなっているというのが私の納得している仮説なのですけれども、ぜひ今日の山田先生のレーン・メイドナー・モデルみたいなものも、年金部会でも説明してもらいたいし、資料も配付してほしい。
このインセンティブ・コンパティビリティ、誘因両立性というのはとても大切です。ですから、この会議の中での経済前提として議論すると、外生的に設定する生産性の前提として、レントシーキング社会であり続けるか、レントシーキング社会を脱却するかという2つの前提を置いてもいいぐらいですね。
 おねだりすれば補助金もらえるというような社会であれば、生産性は上がりません。日本は大国であり、スウェーデンのような小国と比べて貿易依存率が非常に低く、国内市場が大きかった。そういう日本だから余裕を持って生産性が低い企業を保護して抱え続けることができたわけですけれども、スウェーデンのような小国はとにかく規模の経済を働かせて付加価値生産性を高めていかなければいけないということを明確に意識しながらやっていた。そのためには、先ほどボルボも助けなかったという話も出ましたけれども、レーン・メイドナー・モデルの中で中央で決められた賃金以下のところの企業は、労働者は守るが経営者は切っていきます。
私は昔から、適用拡大は成長戦略だということを言っているわけですけれども、適用拡大になりました、人が集まりません、お金ください、はい、あげますということをやっていたらば、成長の足を引っ張ります。成長という上位の目標とインセンティブ・コンパティビリティに違反するということになります。
 ということで、経済前提と結びつけるというのであれば、私は、全要素生産性の仮定というのはレントシーキング社会であり続けるか、それともそれを脱却するかというぐらいの大きな意味を持っている示唆を、今日はいただけたのではないかと思っております。
 以上です。

玉木委員長代理 
 山田先生、何か。

山田教授 
 大変勉強になりました。ありがとうございました。

玉木委員長代理 
 土居先生。

土居委員 
 御説明どうもありがとうございました。スウェーデンの特徴がうまく表現されていて、私も大変勉強になりました。2点ほど簡単に質問させていただきます。
 順不同なのですけれども、1点目は、飛ばされたのですが、15ページですね。従業員代表制についてですけれども、スウェーデンでの中小企業での賃上げに結構影響が大きい仕組みではないかと仄聞しておりまして、これはコーポレートガバナンスという形でお書きではあるのですけれども、まさに今日のテーマであります賃金に与えた影響をどのように捉えておられるかというのをぜひお聞かせいただきたいというのが1点。
 2点目は、2ページの労働分配率なのですけれども、スウェーデン、上がっているというのはそのとおりですが、数字の上では、水準としては、日、米、独よりも低いというところは何か統計的なものがあるのか。それとも、むしろ逆に、スウェーデンはそういう資本所得をも糧にして、経済全体としての所得を拡大させていると捉えればいいのかという辺り、何か御示唆があれば聞かせていただければと思います。

山田教授 
 どうもありがとうございます。
 後のほうからいくと、多分、スウェーデンは労働装備率高い国なのだと思います。アメリカもすごいIT投資をやっていますけれども、例えば、ある統計を見ていると、パソコン、今はみんな持っていますけれども、かなり初期段階でのいわゆるPCの普及率とか、あるいは中小企業がいろんなITシステムを導入しているのだって、アメリカより高いのですね。まさに小さい国なので、徹底した、例えばパソコン法というのを、1990年だったか忘れましたけれども、一斉に国民に持たせるような政策をとるのですね。
 当時はスウェーデンもかなり、90年代の終わりというのは苦しんでいましたので、当時はデジタルと言いませんでしたけれども、ICTで国を復興させないとだめだということで、かなり大胆な政策をとった。労働装備率高いので、結果として水準がこういった形になっているのではないか。結構、重厚長大産業も残っているのですね。だから、そういう産業構造の問題ではないかなと思います。
 それと、2点目の従業員代表制は、実はスウェーデンは組織率が高いので、従業員代表制というよりは、組合がもう一緒にやっているのですね。組合が、産別なりナショナルセンターが強いですから、そこの支部としてそれぞれ入っている。むしろ、恐らく従業員代表制で参考になるのは、私は、ドイツではないかと思っています。ドイツは、組合組織率よりも従業員代表制の入っている割合が高いのですね。ただ、従業員代表制というのは実は賃金に直接影響するものではなくて、あくまで経営参加のための組織です。
 日本で恐らくそれを入れるとなると、従業員代表制を入れることによって、中小企業本来、いわゆるボイス効果というやつで、発言効果でもって、組合が経営に対して協力するとやはり生産性上がってきますから、そういうところはやはり中小企業の経営者の方々に理解してもらって、従業員代表制を入れて、その従業員代表制を例えば産別組織なんかがサポートすると、結果として、産別組織が全体の賃上げを引き上げていくようなパワーを持っていくというのは、ややストレートにやるのではなくて、少し組み合わせるようなやり方をしたほうが、賃上げの話は少しそれるかもしれませんけれども。いずれにせよ、スウェーデンの場合は、組合そのものが全体で賃上げと、交渉も、あるいは生産性向上に対してもやっているという状況です。

玉木委員長代理 
 ありがとうございます。山田先生、間もなく御退席の必要があるということで、特に質問なければ。
 どうぞ。

藤澤委員 
 素朴な質問ですが、スライドの12ページの図表4-1のところで、日本の労働組合の組織率と適用率が低く感じたのですけれども、これは人単位で見ていて、非正規が影響しているとか、何かその辺りについて教えていただきたいのと、あと企業年金とか、その他のフリンジベネフィットに与える影響についてもコメントいただきたいと思います。

山田教授 
 日本は企業内組合ですので、中小が基本的には非常に普及率は低いですね。企業の数でいうと中小のほうが多いですから、それとやはり非正規が増えたという、その2つの要因で、世界の中でも非常に低くなっている。だから、中小と大手の差というのが、1つはやはり組合の差というのが、スウェーデンは産別ですから、かつ、その組織率が非常に高いので、だから賃金格差も小さいし、福利厚生なんかも、中小でも比較的充実しているという、そこの違いかなと思います。

玉木委員長代理 
 ありがとうございました。
 では、本日、山田様、大変お忙しい中、御講演いただきまして誠にありがとうございました。

山田教授 
 ありがとうございました。

(山田教授 退室)

玉木委員長代理 
 では、引き続きまして、議題2、年金基金の運用状況について、議題3、その他の議事に入ります。事務局から、資料2、資料3、資料4により御説明をお願いいたします。

佐藤数理課長 
 数理課長でございます。
 私のほうから、資料2から資料4までまとめて説明させていただきます。
 まず、資料2を御覧ください。こちらはGPIF及び諸外国の年金基金につきまして、長期的に見た場合、どの程度の利回りを確保できているか確認したものになります。対象としては、国内外で市場運用を行っている年金基金等のうち、20年以上の運用実績を把握することができた6か国、15基金について比較を行ったところであります。
 また、名目でなく、実質で比較を行うという観点から、実質価値の維持を意識していると考えられます、いわゆる公的年金と呼ばれる年金基金に対象を絞っております。また、比較に当たっては、今申しましたように、名目の運用利回りでなく、物価上昇率で実質化した実質運用利回り及び賃金上昇率で実質化した実質的な運用利回りについて比較したものとなります。この際、実質化に用いた物価、賃金については、前回の国際比較でも利用いたしましたOECDの統計による消費者物価上昇率及びマンアワーベースの賃金上昇率を使用しているところであります。
 3ページを御覧ください。こちらが消費者物価上昇率で実質化いたしました実質運用利回りの比較となります。長期的な動向を確認するという趣旨から、10年移動平均の分布を確認したところでございます。すなわち、10年間運用すれば、平均してどの程度のリターンが確保できるかを確認したものになります。
 左側の青色の部分が2001年から2022年の10年移動平均で見たもの。右側のオレンジ色の部分がより長い期間、実績が把握可能な基金については、把握可能な期間の10年移動平均で見たものであります。箱、ヒゲ図になっておりますが、箱の真ん中が中位数、ミディアムになっておりまして、上側が25%タイル、下側が上位75%タイル。上下に飛び出しているヒゲの部分が最大値、最小値となっているところであります。
 令和元年財政検証の前提ですが、最も高いケースでケースⅠの3.0%となっておりまして、これが赤い点線のラインとなっております。これで見ていただきますと、各基金の長期的な実績はおおむねこの水準を上回っているということが確認できるところであります。また、8ページ以降にも資料をつけましたが、各基金の資産構成を見ますと、GPIFは株式などのリスク性資産の保有割合が比較的小さくなっております。このため、運用利回りを見ますと比較的低い水準にあるわけですが、箱の幅を見ていただきますと、ぶれ幅も小さいことが分かるところであります。
 続く4ページにつきましては、今の3ページの部分をより詳しく見たものとなっております。
 続く5ページを御覧ください。こちらは賃金対比で見ました実質的な運用利回りの長期的な水準を確認したものになります。資料の見方は3ページと同じになります。令和元年財政検証の前提ですが、最も高いケースでケースⅢの1.7%となっております。赤い点線で水準を示しておりますが、実質的な運用利回りで見ましても、各基金の長期的な実績はおおむねこの水準を上回っているということが確認できるところであります。
 また、実質的な運用利回りで見ますと、GPIFの水準は必ずしも低い水準にはなっていないということを確認できますが、こちら、日本の実質賃金上昇の水準が低いということに起因しているかと考えております。
 続く6ページは5ページの分布を詳しく見たものであります。
 また、7ページ目以降に、各基金について運用目的、運用目標、資産構成割合、実質的な運用利回りと実質運用利回りの推移について情報を詳しくお示ししております。説明については割愛させていただきたいと思います。
 続きまして、資料3を御覧いただきたいと思います。こちらは第2回の専門委員会において委員よりお求めのあったものであります。運用利回りの設定に当たって、専門委員会でGPIFの実績をもとに設定するということを行っているわけですが、この実績の活用に当たっては、ポートフォリオの変更されてきた影響を調べた上で判断する必要があるのではないかといった御指摘がありました。そこで、仮に自主運用を開始した2001年より現行の基本ポートフォリオにより運用していた場合、運用利回りがどの程度になるかというのを、インデックスを用いて推計しました。これをバックテストと呼ばせていただいておりますが、このバックテストを行って、実績と比較したものということになります。
 2ページについては、バックテストに用いたインデックスや方法についてお示ししております。御覧いただければと思います。
 続いて3ページを御覧いただければと思います。こちらが対物価の実質運用利回りについてバックテストの結果となります。青の実線がGPIFの実績となりまして、赤の実線のほうがバックテストによる実質運用利回りの推計結果を示しています。
 ①から⑤まで期間を分けておりますが、それぞれの期間がポートフォリオを固定してきた期間となります。したがいまして、この期間の境目のところでポートフォリオを変更してきたということになります。下に、①から⑤の期間に使用してきた基本ポートフォリオをお示ししております。御覧いただいているとおりでありますが、過去のポートフォリオ、特に③までの期間については、国内債券の割合が高く、株式や海外資産等のリスク性資産の割合が低くなっているというところであります。
 上のグラフでバックテストの結果を御覧いただきますと、バックテストのほうがこういったリスク性資産の割合が高いということから、ぶれ幅が大きくなっているということが分かるかと思います。
 一方、真ん中の表で、それぞれの期間の平均収益率というのを求めておりますので御覧いただければと思います。こちらを見ていただきますと、バックテストのほうが平均収益率は高くなっておりまして、全期間で見ますと、実績で3.3%となっているのに対して、バックテストの結果は、4.2%となっているところであります。
 まとめますと、バックテストのほうがリスク性資産の割合が高いということになりますので、ぶれ幅は大きいですが、長期的な平均収益率は高くなっているというところであります。
 続く4ページ、5ページは、このバックテストに用いましたインデックスをお示ししております。インデックスを見ていただきましても、国内債券よりもリスク性資産のほうが長期的なリターンは高いのですが、ぶれ幅は大きいということが確認できるかと思います。
 続きまして、資料4の説明に入らせていただきます。こちらにつきましては、令和5年4月26日に将来推計人口が公表されましたので、そちらを御紹介させていただきます。
 2ページを御覧いただければと思います。将来推計人口について、その役割や目的をまとめたものとなります。将来推計人口は、国勢調査を基礎に5年ごとに国立社会保障・人口問題研究所におきまして作成し公表しているところであります。今回はコロナ感染拡大の影響を受けまして、1年遅れの公表となっております。
 人口変動につきましては、出生、死亡、人口移動というのが大きく3要素となりますが、これらの要素につきまして、過去から現在に至る傾向、趨勢を将来に投影(projection)することによって作成しているというものであります。すなわち、投影であって、予測ではないというような説明がしばしば行われているということでありまして、例えば政策効果や具体的な社会経済の変化を予測して織り込むということは行っていないというものになります。
 続いて、3ページが今回の結果の概要となっております。3ページの右上に人口変動の3要素について、中位推計の仮定をまとめております。合計特殊出生率につきましては、2020年の実績が1.33というものでありましたが、2070年には1.36となるような仮定となっております。かぎ括弧内が前回推計での仮定値ということでありますが、こちら、1.44となっておりますので、前回より低い水準で設定となっております。
 次の平均寿命、こちらが死亡の仮定ということになりますが、こちらにつきましては、2070年には、足元の2020年よりも、男女ともに4歳以上延伸することを仮定しているところであります。かぎ括弧内の前回の仮定と比較いたしましても、男性については1歳弱、女性についても0.6歳程度伸びる仮定となっております。
 続く外国人の入国超過に関しましては、2016年から2019年の入国超過の平均が16万人となっているところでありまして、将来についても、この16万人の入国超過が続く仮定となっているところであります。すなわち、出生と死亡につきましては、前回推計よりも少子高齢化が進む仮定となっている一方、入国超過についてはそれを緩和するものとなっているところであります。
 この結果、ポイントにありますように、左上のところですが、総人口の減少は少し緩和するということになっているところであります。
 この仮定によって、将来の人口推計した結果が左下ということになっております。総人口につきましては、50年後の2070年には8,700万人、100年後の2120年には4,973万人ということで、5,000万人を割り込む見通しとなっております。
 右下の関係指標を御覧いただきますと、高齢者数のピークは2043年で、3,953万人で、高齢化率は、2020年の28.6%が、2070年には38.7%まで上昇する見通しとなっております。前回の見通しが2065年に38.4%でしたので、おおむね同じ水準と考えております。
 年金財政への影響を考えますと、前回推計と比較して、高齢化率が大きく変わっておりませんので、その影響は限定的になろうかと考えております。また、総人口が1億人を下回るのが2056年という結果となっております。
 続いて4ページになりますが、こちら、人口ピラミッドの推移となります。我が国の特徴といたしまして、団塊世代とその子の世代に当たります団塊ジュニア世代と2つの大きな山があるというところであります。2020年には団塊世代は高齢者となっておりますが、団塊ジュニア世代はまだ現役世代ということであります。
 それから、2020年には、ちょうど65歳の年齢層、こちらが引退を迎えるような年齢層となりますが、これがちょうど人口の谷間に当たっておりますので、足元の引退を迎える層というのはまだ比較的少ないということが分かります。すなわち、引退を迎える年齢層というのは今後大きく増加していくということになりまして、現役世代の減少はこれから10年から20年にかけて本格化していくことになるところであります。
 2040年になりますと、団塊ジュニア世代も65歳を超えて引退を迎えるということになりまして、高齢化率も大きく上昇するという見通しになっているところであります。
 続いて5ページを御覧ください。年齢構成の変化を見ております。過去の変化を見ますと、一番上の高齢者数の増加というのが目立っているわけですが、将来を見ますと、高齢者数よりも真ん中の生産年齢人口が大きく減っているということが特徴的となっているところであります。すなわち、今申しましたように、今後、高齢者の増加よりも現役世代の減少にどう対応していくかということが課題ということかと存じます。
 続いて6ページを御覧ください。人口推計の方法と仮定についてまとめたものとなります。論点といたしまして、コロナの感染拡大の影響をどう取り扱うかということがあると思いますが、「方法」の2つ目のポツのところを御覧いただければと思いますが、長期の投影に際しては、新型コロナ拡大におけるデータを除外しているところであります。
 具体的には、初婚につきましては2019年まで、出生につきましては2020年までのデータを用いて長期の投影を行っているというところであります。また、死亡につきましても、2020年まで、また、国際人口移動につきましては2019年までのデータを用いまして長期の投影を行うということでして、コロナ感染拡大の影響を除去しているところであります。
 一方、足元では、出生率の実績が低下しているという事実がありますので、この足元の低下の影響は長期統計とは別に織り込むことにしているところであります。具体的には、次のページ以降に設定がありますので、御確認いただければと思います。
 7ページが出生率の仮定ということになります。中位推計を見ますと、長期的には1.36という水準に収束するというところでありますが、足元は低い水準で設定しておりまして、具体的な数字を見ていただきますと、令和5年には1.23まで低下するというような仮定となっているところであります。
 続いて8ページは平均寿命の仮定というところになりますが、同様に、長期的には伸びていきますが、足元では、一旦寿命が低下するということを仮定しているところであります。
 さらに9ページは外国人の入国超過の仮定ということになりまして、2016年から2019年、コロナ以前の入国超過の状況、平均16万人というのを将来も仮定しているというところであります。
 さらに10ページが入国超過する外国人の年齢構成ということになりまして、入国超過するのは若い年齢層でありまして、10代後半から30代が大部分を占めているという結果になっています。こちらも過去の実績から仮定を設定して、それを将来に投影しているというものであります。
 私の説明は以上であります。

玉木委員長代理 
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の御説明につきまして、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。
 徳島委員、どうぞ。

徳島委員 
 御説明ありがとうございました。まず、資料2、3、運用の関係のことでコメントさせていただけたらと思います。
 各国の年金基金と比較しても、GPIFの運用というのはよくやっている姿が理解できたかと思います。もちろん、この背景には、目標としている運用利回りの設定が違ったり、投資対象が違ったり、運用組織の人員とか対資産額当たりの人員数とか、大きな差がありますが、GPIFとしてはしっかり運用していただいていることが確認できたと思います。
 また、資料3のバックテストに関して、これは私からお願いしていたものですが、現在の株式が50%、外国証券が50%というポートフォリオを過去から採用していた場合でも、アップダウンの振れ幅は極めて大きくなるのですが、均していけば、十分に運用利回りを稼げていたといった結果が出ています。これは予測していたとおりの結果でございまして、要するに緩やかにでも経済が成長して、株価が上昇する過程であれば、アップダウンあっても勝てるだろうという予測の下でした。世の中には、GPIFの運用で年間10兆円損したとかいうことを批判される方がいらっしゃり、株が50%といった配分はリスクを取り過ぎているという批判も耳にするのですが、結果的には、こういう取り組みを行うことによって成長の果実を得ることができるというものです。現行のポートフォリオの配分を前提にして、バックテストの場合にはGPIFによる運用努力、超過収益を獲得した努力が入らないという前提でありますが、それですら十分に中長期で安定した利回りを確保できているといった観点から、現行のポートフォリオないしこれまでの運用を前提に置くことで適切と考えることが可能なのではないでしょうか。
 もちろん、マーケットの変動によって価格が下落し、損失が出るような状況に関しては、別途、GPIFの運用を考える際に、VaRとか下方確率とかのリスク管理手法によってコントロールするといった取組みが望まれます。それはまた別の場の議論であろうと考えます。
 今回のシミュレーションについて、ちゃんとした結果を出していただけて大変よかったと思います。ありがとうございました。

玉木委員長代理 
 ありがとうございました。ほかに御質問。
 土居先生、どうぞ。

土居委員 
 御説明どうもありがとうございました。資料についてコメントさせていただきたいと思います。
 まず、資料2についてですけれども、確かに、対物価、対賃金で一定の、変動幅あるとはいえ、GPIFは令和元年の財政検証の前提よりもいい運用利回りを出しているということは、これでも確認できたという意味ではよかったと思います。
 たまたま私、今年の3月にノルウェーの年金基金にヒアリングに行く機会があって、そこでGPFGの運用実態もたまたまヒアリングすることができたのですけれども、GPFG、それからもう一つ、GPFN(ガバメント・ペンション・ファンド・オブ・ノルウェー)という年金基金があって、2つ種類があるという話だとか。ノルウェー政府としてどういうスタンスでこの2つのファンドを運用しているかというのは日本に必ずしも十分な情報が届いていなくて、ソブリン・ウェルスファンドの代表格みたいなことぐらいしか伝わっていないということを知りまして、ある意味で、せっかく知った知識を少しはということで御披露させていただくと、GPFGは、御存じの方には釈迦に説法ですけれども、石油収入が完全に元手になっている。しかも、その石油収入を北欧諸国以外のところに投資するということで割り切りをしているということです。もう一つあるGPFNのほうがむしろ逆に北欧諸国だけに投資をして運用している。
 こういう割り切りがあるということでもっての資料2にある数字だということなので、非常にグローバルに投資のポートフォリオを組んだ結果として、こういう運用益であるということと、あと、ノルウェーも、先ほどのスウェーデンの話と似ていて、人口が少ないという意味での小国なものですから、ファンドマネージャーの人材というのも、そんなに多種多様で、世界各国から優秀な人材を引き抜いてファンドマネージャーとして雇っているなんていうわけにもいかないということなので、非常にリスクは取っているのだけれども、どちらかというと大きくリスクを取るというよりかは、底堅くリスク取るといいましょうか、そのようなスタンスであるという。
 こういう意味では、この資料2にあるGPFGの位置というのは、この数字自体は、今日の御説明で初めて知りましたけれども、決してものすごく高いわけではない。アメリカのファンドとかに比べると高いわけではないけれども、手堅くリスクを取っているというような印象が如実に表れている数字なのではないかなと拝見したところであります。
 それが資料2のところで、あとは資料4ですけれども、今回の新しい人口推計によって、今後の年金財政にどういう影響を与えるかを議論するかというところにも関わってくるのかなあとは思っているのですけれども、もともとこれまでの将来推計人口を年金の財政検証に使う際も、国籍といいましょうか、日本人か外国人かということでもって、年金の保険料の支払いないし年金給付というのを、特段2つをくっきり分けて計算しているわけではない。むしろ日本にとどまり続けるということである限りにおいては同じように年金保険料を支払い、同じように年金給付を受け取るということだとすると、確かに資料4の3ページとかで見ると、年金財政以外の視点で見て、この将来推計人口をどう解釈するかというところでは、前回推計に比べると、外国人が日本にそれなりに多くとどまるということだから、そのときの労働力としての日本人の労働者と外国人の労働者の比率が、前回推計よりか外国人の労働者のほうが多くなっているとかいうことで何か、そこから派生する政策課題みたいのがあるかとかいうことを議論する場面では確かに、国籍といいましょうか、日本人か外国人かというのは意味が違うということがあるのかもしれません。けれども、この専門委員会のテーマであるところの年金財政で言えば、極端にその2つの国籍の違いというものが強く影響するということではなさそうだ。ということであれば、極端にいえば、どのぐらいの年齢階級に何人ぐらい総人口としておられるのかということがむしろ重要で、そういう意味では、大きく前回推計と人数が異なるということにはなっていないということ。先ほども課長から説明ありましたが、総人口が1億人を下回る時期とかも、3年ほど遅れるということであるけれども、ほとんど近い時期に1億人を下回るとかいうのは、そんなに前回推計と大きく異なっていないということだとかいうところを考えると、そこまで劇的に何か大きな違いが今後出てくるということにはならないという面もあるのかなと。この将来推計人口の結果をこの専門委員会で考えるときに、前提として議論する上でそういう性質があるということを踏まえておくことは1つあるのかなと思いました。
 私から以上です。

玉木委員長代理 
 ありがとうございます。
 では、ここまでのところについて、事務局から何かおっしゃることがあれば。その後で、深尾委員長の御質問、お願いしたいと思います。

佐藤数理課長
 数理課長です。
 1点、人口推計の外国人の取扱いについてお話しさせていただきますと、土居先生おっしゃったとおり、外国人であっても、日本に居住していれば日本の社会保険に適用するというのが原則ということでありますので、取扱いとしては日本人と同じようにやるということで、これまでの財政検証もそのようにしておりますし、次回も同様に取り扱うのが原則だろうと考えております。
 あと、人口推計について、財政検証では、過去からこの将来推計人口を使ってきたということでありますので、これを使うというのが原則と考えているところであります。ただ、外国人については、将来推計人口を出したときに、16万人入国超過という前提ですけれども、本当にこれだけ入ってくるのかとか、いろいろ御議論あるところでもありますので、この16万人の人口流入があるということについてどのように考えていくかというのは、財政検証の中でいろいろ事務局としても考えていきたいと思っております。
 以上です。

玉木委員長代理
 ありがとうございました。
 深尾委員長、よろしくお願いします。

深尾委員長
 ありがとうございます。
 今の佐藤さんのお話とも関係するのですけれども、私、資料3の将来人口推計はやはり外国人の流入について非常に楽観的な仮定を置いていて、これを鵜呑みにして我々が議論できるかどうかは慎重に考えたほうがいいと思います。もちろん、専門家にある程度確認する必要があると思いますけれども、同時に、例えば少なくとも幾つか検討すべきことが、素人の私でもあると思います。
 例えば2016年から19年の実績だけを考えて、年間16万人。この時期、なぜ外国人がこれだけ入ってきたのかというのを確認する必要がありますし、それから、年16万人だと、50年たつと800万人ですか、増えるわけで、そのときの人口が8,700万人だと、10%ぐらいの人が外国人になる。それから、生産年齢人口、割と若年で外国人が入ってくるという仮定ですから、この仮定に基づくと、生産年齢人口の恐らく15%とかぐらいが例えば外国人になるという国の形を仮定しているとすると、先ほど山田先生の価値観の多様性みたいな話がありましたけれども、これについて国民的な合意ができているかどうか。教育制度等、それに対応して、例えば外国人の子弟の教育が対応できるかとか、そういった日本全体の形に関する非常に強い仮定が置かれている。それについては慎重に考える必要があると考えます。
 ほかにも、例えば、我々、経済成長を考えるときに、人的資本が重要なわけですが、外国人の生産への寄与、それから入ってくる外国人の教育水準、子弟の教育水準、そういったことも検討する必要が例えばあるでしょうし、それから、両親の呼び寄せによって高齢者も入ってくる可能性があるのではないかとか、例えば、すぐ思いつくだけでもそんな検討すべき問題がある。
 合計特殊出生率について、ケースを幾つか考えるぐらいであれば、この外国人の流入についても、どういうケースがあり得るかというのを考えたり、あと、国民の中で外国人の割合が、例えば50年間で10%弱まで、生産年齢人口の15%近くまで上昇するという国は、どういう国があってどういう経験をしているのかといったことも考えておく必要があると思います。
 以上です。

玉木委員長代理
 事務局、何かございますか。
 ほかに御質問等、いかがでしょうか。
 小枝委員、お願いいたします。

小枝委員
 私からは2つコメントを申し上げたいと思います。
 まず1つ目は、先ほど徳島委員おっしゃっていたことですけれども、運用利回りのバックテストの、こういったカウンターファクチュアルなバックテストをやっていただいたことというのは大変意味があることだと思いました。例えば3ページのグラフを見てみますと、やはり20年を超えた期間でみると、ボラティリティが高ければ平均の収益率はそれだけ高くなるわけですし、ですので、今後、このポートフォリオがもう少し株のウエートが高いというポートフォリオでいくということであれば、そのバックテストが提示しているような、少し高めの金利というのもその前提の仮定の一つ、シナリオの一つとして入ってくるのか、実績値だけではなくて、バックテストの数値というのも考慮することができるのかと思いました。
 もう一点目は、深尾先生もおっしゃっていたことですけれども、やはり外国人、90日を超える滞在の外国人ですよね。なので、それがどのぐらい年金の試算に入っていくかというのはぜひシナリオの中でも検討していただきたいと思いました。
 以上です。

玉木委員長代理
 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
 徳島委員、お願いします。

徳島委員
 今、皆さんから御指摘のあった外国人のところについては、私も、今回の将来人口推計を4月末に拝見したときに、ここの16万人という設定が一つの鍵かと思いました。政策として、これだけの流入をいかに確保するかという課題があると考えます。16年から19年の平均並みの流入が本当にこの後続くのだろうか、日本がそれだけ外国人労働者から見て魅力的な経済、社会なのかといったことは考えないといけないと思っておりますし、この流入が要するに生産年齢人口を確保する一つの鍵になっていますので、ケース分けみたいなことが可能なのかどうか、ぜひ数理課に御検討いただけたらと思います。
 一方で、もっと異なるケースで置いたとき日本の将来の人口構造がどんな形になっているのか、深尾委員長が言われたとおり、これは大きな議論というか、大きなことを考えないといけないテーマかと思っていますので、ぜひ御検討をお願いできたらと思います。
 以上です。

玉木委員長代理
 ほかにございますか。
 土居先生。

土居委員
 将来推計人口のことですけれども、確かにおっしゃるように、16万人は楽観的だとは思いますけれども、ただ、これまでの年金の財政検証で用いた将来推計人口で、社人研ないしはその前身の人口問題研究所が出したもの以上にアレンジを加えて、幾つかのシナリオを将来推計人口において用意した上で年金の財政検証に臨むということが、これはあったのかどうかというところは若干気になっています。つまり、もちろん、昔はもっとシナリオが少なかったけれども、今は、出生について高位、中位、低位、死亡率について高位、中位、低位とこの掛け算のバリエーションまではある。だけど、それ以上というのは、ちょっと私が存じ上げないだけかもしれませんけれども、今までは余りなかったような気がしていて、かつ、今のところ、社人研もそれは出していないということです。
 そうすると、社人研にお願いして出してもらうということなのか、それとも年金局で独自に外国人の部分だけ切り分けて、違う仮定を入れて、数字をそこだけ調整するということにするのかというのは、やっていただけるものならやっていただいたほうがいいとは思うけれども、なかなか考えるだけでも大変そうだなあと思ったりもするのですけれども。

玉木委員長代理
 事務局、お願いします。

佐藤数理課長
 まず、財政検証において将来推計人口以外も使ったことあるかということですけれども、少なくとも財政検証という名前になったのは平成21年からですから、それ以降、社人研が出した将来推計人口しか使っていないということであります。それ以前の財政再計算の時代も、昭和の時代になると、ちょっと詳しくは分からないですけれども、少なくとも平成に入って以降、将来推計人口以外は使ったことはないということです。
 ただ、将来推計人口というのは、出生で高位、中位、低位とある、そういったいろんなパターンでやっておりまして、今回について言いますと、外国人について、条件つき推計という名前で、機械的に外国人の入国を、16万人でなくて、例えば前回の7万人ぐらいだとか、そのように機械的に変化させていったら人口がどうなるかという見通しも併せて出しております。
 ですので、一つのやり方としては、ベースとなるのは、土居先生おっしゃるように、中位推計というか、出生率の高位、中位、低位で本推計として出しているものだと思いますけれども、それに加えて、条件つき推計というものを使って見通しをつくっていくというのもあるのかもしれないと考えているところであります。

玉木委員長代理
 ほかに御意見、御感想等ございますでしょうか。
 どうぞ。

藤澤委員
 同じ人口推計の外国人のところですが、これが是か非かという議論は別にして、仮にこれを使うとなったときに、年間16万人の外国人の入国超過数があると一定規模の集団になると思っています。そうすると、今は多分、男女別で分けて財政検証されていると思いますが、先ほど深尾先生もおっしゃっていたように、800万人とか、一定の規模になったときに、これに応じた前提を置く必要性を議論する時期も来るという気もしています。そのときに、例えば外国人の平均標準報酬はどれぐらいなのかとか、そういった統計データも今後整備していく必要があるのではないのかと思っています。その辺りも、今すぐに見せてほしいというわけではないのですが、今後に向けて、本当に外国人が増えていくのであれば、そういう統計データも整備する必要性が出てくるのではないかと思いました。

玉木委員長代理
 どうぞ。

佐藤数理課長
 まず、外国人、日本人に分けた年金の業務統計があるかということですけれども、これは残念ながら、現時点では外国人、日本人分けて統計をとっておりません。次の財政検証においても、こういった状況ですので、なかなか外国人、日本人分けてデータを取るというのは現時点では難しいですので、従来と同じように、日本人、外国人、一体としてやるしかないかなと思います。将来に向けては、外国人が本当に大きく増えていけば、そういった議論というのは出てくるかと思いますので、ちょっと今後の宿題とさせていただければと思っております。

玉木委員長代理
 ほかにいかがでしょうか。
 では、もしよろしければ、私から1~2コメントさせていただきます。
 まず、資料2の利回りの件でございますけれども、3ページの対物価、それから、5ページの対賃金とも、GPIFも他国もグローバルに運用しているわけですし、用いられている方法論なども余り外国と変わらないので、同じような結果が出るのは非常に当たり前かなと思います。
 ただ、私が注目したいのは、財政検証で置いております実質的な運用利回りの1.7%を大体どこの国も超えていることです。日本ももちろん超えているのですが、大体どこも超えているのです。今まで、日本で1.7%を随分超えていましたけれども、これは賃金が伸びないという環境でのものでした。しかし、ずうっと賃金がある程度は伸びていたほかの国でも、やはり同じように実質的な運用利回りがあるということは何か理由があるのかもしれません。だからといって、1.7よりもっと高くすればいいということでもないと思いますし、また、何十年という長いサイクルの中では、どこの国も実質的な運用利回りがずうっと低い、0.幾つとかになる可能性もないではないので、これはやはり長期的な観点からしっかり見ていくというのが我々のとるべき道かなあと思ったところでございます。
 ただ、1.7がむやみに高いということではどうもないということは、事実によって非常にクリアーになったかなと思うところでございます。
 それから、資料3のバックテストですけれども、3ページの赤い折れ線グラフは四半期の数字ですよね。四半期で見て、リーマンショックの頃、四半期で-10%、-15%とあったときありますよね。多分、当時の日本国民からしたら、四半期で-10、-15と続くということは、恐らく許容されないといいますか、あるいは、年金制度への基本的な不信感の高まりにつながった可能性もあるので、このときは青いグラフのような結果が出るようなポートフォリオでよかったなと思います。
 他方で、2019年の最後の方でしょうか、四半期で-10、その少し前にまた四半期で-9くらいになりますけれども、これについては、日本国内でもちろん若干の反応はあったわけですけれども、1四半期で済んだということはありますけれども、余り大きな騒ぎにはならなかったという辺りは、我が国の国民がリスク性の運用に慣れてきたなというところは感ずるところでございます。
 ただ、その後、22年度ですか、4四半期マイナスが続いて、私はこのとき、結構いろんな報道を目にして、ああ、こういうことなのかと思ったのですが、実はその前、2020年の第1四半期以降は多分、6四半期か7四半期、プラスですよね。それで、実は私、一回調べたことがあって、4四半期マイナスのときの某経済新聞の記事の字数と、それからその前の6四半期、7四半期の黒字のときの字数を比べると、これは赤字のときのほうの字数が多かったのですね。
 すなわち、赤字、黒字の幅は、黒字のときのほうが大きいけれども、報道される字数は、赤字のときのほうが多い、赤字、黒字、1単位当たりの字数は全然違うのです。これは現実でございまして、これはやはり国民の年金制度に対する信任というものを何としても確保するという我々の目的からすれば、厚労省におかれては、しつこいぐらいな広報をぜひよろしくお願いしたいということでございます。
 それから、最後の資料4につきまして、ちょっと1点、質問というか、お願いがあるのですけれども、3ページに表がございまして、右上の青い四角がございますね。ここに、「合計特殊出生率の仮定」と書いてございます。これ、仮定ですね。ですから、演繹的に決まったものではないわけですね。人口推計というのは、出生、死亡の仮定を置いた上で、実際に何万人になるかということを推計しているものだと思うのですね。
 あと、その前の2ページ、4つ目のブレットポイントのところで、2行目に、投影(projection)するものであり、現在の傾向・趨勢が続いた場合に帰結する状況を示す、その上で、我々が何をすべきかを判断する、そういうよすがであるということが書いてございますけれども、これは、私、確認させていただきたいのですけれども、グローバルに行われております人口学という学問を用いた人口推計において普通のことですよね。

佐藤数理課長
 そうです。2ページの一番最後に書いておりますが、これは国連や主要先進国で共通の枠組みということであります。

玉木委員長代理
 ありがとうございます。ですから、例えば、7ページに出生率の「実績」と「仮定値」がございますけれども、ここで例えば1.33とか1.26って最近なっていますけれども、それが1.26から、例えば中位推計の1.36に回復する理由を示せとか、こういった問題設定はないわけですよね。

佐藤数理課長
 おっしゃるとおりであります。

玉木委員長代理
 実は人口推計について、人口予測という語感もないではないですね。推計ですから。ただ、推計というのは仮定を人口という数字に置き換えるという意味での推計であるということは、これは経済前提の議論をするときの出発点であります人口に関する我々の知見といったものの性格に大きく関わってくるものでございますので、これについても、先ほどの運用利回りと同じですけれども、厚労省におかれては、国民に対してしつこいぐらいの広報をぜひお願いしたいと、こういうお願いでございます。
 私としてはこれで言いたいこと全部言ったのですけれども、ほかに、皆様、御意見、御質問、御指摘等ありましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、議論も尽きたようでございますので、時間より少し早いですが、本日の審議を終了といたします。
 事務局より御連絡ございましたらお願いいたします。

佐藤数理課長
 次回以降の日程につきましては、改めて御連絡申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

玉木委員長代理
 ありがとうございます。
 それでは、本日の審議は終了といたします。御多忙の折お集まりいただき、誠にありがとうございました。