第12回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和5年6月28日(水)9:00~12:00

場所

オンライン開催

議題

(1)今後のがん研究のあり方について
(2)その他

議事

 
○原澤推進官 事務局でございます。定刻を少し過ぎてしまいましたが、ただいまより「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
 構成員・参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本有識者会議はYouTubeにて配信しておりますので、その点、御承知おきください。
 また、健康局長は公務のため、欠席とさせていただきますので、その点も併せて御承知おき願います。
 本会議におきましては、前回に引き続きまして、8名の参考人に御出席いただいております。また、新たに参考人として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長の藤原康弘参考人に御出席いただいておりますので、御承知おき願います。
 構成員・参考人の出席状況の確認でございますが、佐谷構成員より途中で御退席、土岐構成員より途中で御退席、また、西川参考人より途中で御退席と、それぞれ伺ってございます。
 事務局からは、厚生労働省のほか、内閣府、文部科学省、経済産業省からそれぞれ出席しております。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。
 議事次第、資料1から資料2-8まで及び参考資料1から参考資料7までがございますので、御確認をお願いいたします。
 資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申出ください。
 それでは、以降の進行は、中釜座長にお願いしたいと思います。座長、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 中釜です。本日も、皆さん、よろしくお願いいたします。
 早速ですが、議事に入りたいと思います。
 最初の議題1「今後のがん研究のあり方について」、事務局と構成員、参考人の皆様から資料を提出いただいております。
 一通り資料を説明いただいた後に、各項目立てについて議論をしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 まず、事務局から資料1の説明をお願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 それでは、資料1を御用意いただければと思います。「具体的研究事項と横断的研究事項について」という資料でございます。
 前回お示ししている事務局からの資料と、基本的には同じ構成になっております。
 2ページ目を御覧いただければと思います。
 こちらでお示ししているのは、中間評価のときの項目立てを基にいたしまして、具体的な研究事項、横断的研究事項、その他について、番号で項目を整理しているものでございます。
 前回と同様で、本日御議論いただきたい議題については、青字でお示ししておりますので、御覧いただければと思います。
 「(1)がんの本態解明に関する研究」から、その他の「(1)~(9)にない論点について」というところで御議論をいただきたいと思います。
 資料の構成については、確認程度でございますが、1枚お進みいただいて、例えば、この本態解明に関する研究ですと、4ページ目を御覧いただいて、これまでの成果の例というものを示しているのと、次の5ページ目から7ページ目までについては、構成員・参考人の皆様から事前に御提出いただいた意見の一覧をお示ししております。
 また、8ページ目を御覧いただきますと、がん対策推進基本計画に関連した記載などがお示しされておりますので、同じように、項目ごとに順に並んでございますので、適宜御参照いただきながら御議論をいただければと思います。
 事務局から資料1の御説明は、簡単でございますが、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、構成員・参考人から資料について御発表いただきます。
 進行の都合上、各7分程度での御発表をお願いしたいと思います。また、資料の内容に応じて、本日発表の順番を検討させていただきますので、その点をあらかじめ御了承ください。
 それでは、最初に古関構成員から資料2-1の説明をお願いいたします。
○古関構成員 ありがとうございます。
 理化学研究所の古関と申します。このようなタイトルでお話をさせていただきますけれども、エピジェネティック遺伝という言葉も聞きなれない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に説明からさせていただきたいと思います。
 そもそもメンデル遺伝は、今の医科学、生物学の非常に大きな基盤になっていますけれども、ここでベースになっているのは、ゲノムと表現型の間に非常に強い一致があるということであります。
 その結果として、例えば、がんの分野では、ゲノム変異と、がんの表現型というのが、恐らく非常に強くリンクしていて、ということは、恐らくゲノム変異を見つけていけば、そこから治療標的ですとか、層別化のためのマーカーというのを見いだしていけるだろうと、そういう考え方で、恐らくがんゲノムというのは進んできたと考えております。
 その一方で、メンデル遺伝が全てなのかというと、必ずしもそうではございませんで、ここに3つのショウジョウバエの目と、ネズミの毛の色と、三毛猫の毛の色ですけれども、同じ遺伝子型でも違う表現型を取るということは、非常によく知られていて、表現型の揺らぎと言われてきたわけですけれども、逆のこともまたあるわけです。
 次のスライドをお願いできますか。
 この揺らぎというのが、必ずしもランダムに起こるものではなくて、一応何かルールがあるだろうと。遺伝学者は、とにかく変異を拾ってくるのが仕事ですから、この揺らぎを抑制する変異、逆に揺らぎを増強する変異、そういったものを一つ一つ拾っていって、それが2000年前後に一つ一ついろいろな酵素活性に結びついていったわけです。
 次のスライドをお願いできますか。
 実際に分かったことは、どういうことだったかと申しますと、ゲノムDNAは当然御存じのように、ヒストンの8量体に巻きついて、ヌクレオソームという複合体をつくっているわけですけれども、こういった揺らぎを制御するメカニズムというのは、一体何だったかって言いますと、例えば、DNAそのものをメチル化する酵素、あるいはヒストン8量体の中で、ひげのように巻きついたDNAから飛び出ている場所がありますけれども、そういう場所にメチル化ですとか、アセチル化ですとか、そういったいろいろな化学修飾をもたらす、そういう酵素であることが分かってまいりまして、非常に大事なことは、これらの化学修飾の一部は、まるで遺伝子が複製されるかのように複製される。さらには、これらが遺伝情報のように振る舞うことがある。そういうことが分かってきたことであります。
 もう一つ非常に大事なことは、これらは酵素ですので、しかも非常に特異性の高い酵素であるということが分かってきたわけです。ですので、これらは治療介入の標的にもなり得るだろうということが、ここからも想像できると思います。
 次のスライドをお願いできますか。
 このエピゲノム情報というのが、一体何をしているのか。1つには、植物などがより分かりやすいのですけれども、今、申しましたようにゲノムのように、一元的な情報ではありませんので、しかも、非常にデジタルですので蓄積されていくことができる、そういう情報であります。
 例えば、寒冷刺激を受けた植物が、その後開花するように、その寒冷刺激を、先ほどのDNAのメチル化ですとか、ヒストンのメチル化という形で、細胞の中に少しずつ蓄積していって、あるところで現象を起こす、そういう表現型を制御するというのは、もちろん1つの重要な機能です。
 もう一つには、こういった情報が複製されますので、それぞれの細胞の表現型をそこにすり込んでいく、記憶させる、そのためにも非常に大事なものであるということが分かってきたわけです。
 ここでの問題は、これらが、発がんやがんにどう寄与するのかということになるわけですけれども、次のスライドをお願いできますか。
 モデル動物では、エピゲノム因子として見つかってきたのですけれども、ヒトでどのように見つかってきたかと言いますと、非常に多くは、悪性腫瘍において、転座ですとか、その変異を起こす、そういう遺伝子として見つかってきたものというのが非常に多くあります。
 実際それらを見てみますと、本物のがん抑制遺伝子ですとか、がん遺伝子を直接制御することができるようなものであるということも分かってきました。
 その一方で、逆に、がんの全ゲノム解析をしても、ドライバーが十分に分からないようながんも多いということですので、恐らく、がんにおいてエピジェネティック制御というのは何かをしているだろうと、みんな考え、実際に治療標的になるのではないかと考えているわけです。
 先ほど申しましたように、DNAのメチル化ですとか、そういったものは、蓄積するものであります。しかも、非常に低いレベルでも容易に検出できるようになってきておりますし、あと突然変異に比べると、非常に高い頻度で変化というのは誘導されますので、これらは、もしかすると予防マーカーや層別化マーカーとしても機能する可能性がある。
 3つ目としましては、エピジェネティックな状態の変化というのは、がんそのものだけではなくて、微小環境の中でも同時に、コヒーレントに起こっているということも分かっていますので、新しい治療戦略になる可能性があるのではないかと考えられるわけです。
 一つ一つ簡単に説明させていただきますと、次のスライドをお願いできますか。
 左側に現在行われているクリニカルトライアルの多くが、100個以上のものが示されていますけれども、まだ、フェーズ4までいっているのは、このうちの2つだけですけれども、もうここ20年間、2004年にDNAメチル化阻害剤というのがFDAで承認されて以来、少しずつその数が増えており、主に血液腫瘍を対象として、このDNAメチル化阻害剤、それから、ヒストンのメチル化阻害剤といった開発が少しずつ進んでいるところであります。
 それで、先ほど申しましたような免疫チェックポイントの阻害剤等との併用療法なども少しずつ進んでおり、エピジェネティック制御を標的とした創薬というのは、少しずつ着実に進んでいるところだと考えています。
 次のスライドをお願いします。
 実際に、もう既に幾つかのがんにおいては、このDNAのメチル化の状態というのが、治療反応性のリスク評価にも使われていますし、また、胃がんを対象とした大規模コホートから分かってきていることは、正常組織に蓄積したDNAのメチル化の異常の状態を停留することで、発がんのリスクも診断できるだろうと。
 ですので、今後、パラレルにバイオマーカーとして、こういったエピゲノム情報を蓄積していくことも大事になっていくのではないかと考えられます。
 3つ目は、次のスライドお願いします。
 これが最後になりますけれども、実際にこの微小環境への介入に対して、DNAメチル化阻害剤ですとか、いろいろな阻害剤の使用で進んでいるところでありまして、まとめといたしましては、エピジェネティック制御というのは、これまでのゲノムですとか、シグナル伝達とはまた違う階層の、恐らくがんの治療標的になり得て、その酵素活性を標的とした阻害剤、あるいはそういう酵素に対するプロタックとしての開発が、着実に進んでいるところだと考えます。
 このエピゲノム情報というのは、いろいろなマーカーにもなる、予防や層別化のマーカーにもなるということが分かってまいりました。
 一方で、エピゲノム、エピジェネティック制御を標的とした薬剤というのは、その分子標的としての選択性は高いのですけれども、この細胞選択性という意味では、必ずしも高いとは言えない性質のものでありますので、今後、がんごとにどのように適正を層別化していくのか、そういった研究が大事であると考えております。
 また、このエピジェネティック制御そのものが非常に複雑な制御になっているところが、もう一つのネックになっておりまして、もちろんこの治療標的として開発を進めること、これはもう進んでおりますので、大事なのですけれども、同時に、やはりどのように機能発現が起きているのか、特に人間のレベルで何が起きているのかというところの基礎的な理解を深めていく必要があると考えている次第であります。
 以上であります。どうもありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、宮園参考人より、御発表をお願いいたします。
○宮園参考人 どうもよろしくお願いいたします。
 それでは、宮園ですけれども、私は、がん研究におけるシーズ探索ということで、これまでの成果と課題について、紹介させていただきます。
 次をお願いいたします。
 私は、AMEDの次世代がん研究のプログラム・スーパーバイザー、PSを務めております。今日は、次世代がん研究の取組を中心に紹介させていただきます。
 次をお願いいたします。
 がん研究10か年戦略では、一番上の左に書いてありますけれども、8つの柱が立てられたわけですが、各柱にまたがる横断的事項ということで、青い枠の中にありますけれども、シーズ探索が挙げられまして、がん治療のシーズ探索については、AMED次世代がん医療創生事業が中心となって推進するとされています。
 次世代がん事業は、オレンジになっていますが、2011年のP-DIRECTからスタートし、P-CREATEが6年、P-PROMOTEは7年ですが、引き継がれてきました。
 その目指すものは、下に書いたとおりですので、詳細は述べませんけれども、御覧いただければと思います。
 次のページをお願いいたします。
 これは、P-DIRECTからP-PROMOTEまでの経緯ですけれども、P-DIRECTは、野田哲生先生のリーダーシップの下で5年間、P-CREATEが6年間、P-PROMOTEは2022年からスタートいたしまして、今年は2年目に当たります。
 P-PROMOTEは、右下に赤い枠で囲ってあります5つの研究領域からなりまして、特徴的なことは、P-CREATEに引き続き、研究推進サポート機関というのが、研究の推進の上で大きな役割を担っているということです。
 研究フェーズは、探索研究フェーズと応用研究フェーズに大きく分けられますけれども、シーズ探索は、探索研究フェーズが中心となって行っています。
 末松先生から、前回、予算が少しずつ減っているのではないかという指摘がありましたけれども、このスライド、それぞれのところの下のほうに実績のところで、事業予算が記載してありますが、残念ながらそのとおり、少しずつ減っているのは確かです。
 ただ、調整費の配付や、あるいはムーンショット研究がスタートしましたので、がん研究全体としては、何とか研究費を確保しているというのが現状です。
 課題ごとの達成目標は、これまで十分に成果を出してきましたけれども、今後、新たな切り口が必要と考えているところです。
 次をお願いします。
 創薬のプロセスは、この図の左側から右側に移っていくわけですけれども、左側の生命、疾患のさらなる理解が不可欠で、これが創薬標的の同定、評価となって、その後の臨床応用につながっていくわけで、特に生命現象と疾患の理解から新規創薬標的の同定と、標的の妥当性評価、ターゲットバリデーションが、次世代がんの研究の最も重要なステップと考えております。
 次をお願いいたします。
 これも似たようなスライドですので、簡単に申し上げますけれども、左側にあるように、生命、疾患のさらなる理解が不可欠で、創薬標的の同定評価が臨床応用につながっていくわけですけれども、特に標的の妥当性評価、ターゲットバリデーションというのは、次世代がんで重要なミッションとして、これまで続けてきたところです。
 次をお願いいたします。
 この図は、現在のP-PROMOTEの体制図で、今年が2年目ということで、私はPSを務めさせていただいておりまして、10人の先生方にプログラムオフィサー、POを務めていただいています。
 堀田先生には疾患領域コーディネーターということで、革新がんとの連携を含めて、がん研究全体を御指導いただいているところです。
 次をお願いいたします。
 先ほどから申し上げておりますが、研究サポート機関は、マネジメントユニットでは、情報共有と会議の支援を行い、マッチング会議というのを通して、採択された研究の中から、研究推進に必要な支援を詳細に、何が必要かということを協議して、有望なシーズについては、技術支援ユニットで導出に向けた支援を行います。
 研究推進サポート機関を野田哲生先生に研究代表者になっていただいておりますけれども、革新がん研究でも同様のサポート機関がスタートしました。
 特許や倫理の申請の助言とか、それからケミカルプローブの探索、最近ではPDXとか、中分子の化合物をつくる支援など、幅広い支援を行っていまして、AMEDの他の事業にもモデルとなるようなものと、私たちとしては自負しているところです。
 次をお願いいたします。
 研究サポート機関の支援の最近の例を1つだけを御紹介いたしますけれども、PETを使った診断ということで、これまでもサポート機関でやってまいりましたけれども、今年から特にα線核種、アスタチン、アクチニウム、アスタチンの場合は、半減期が7.2時間と非常に短いですけれども、α線は飛距離が100ミクロンほどで、がん細胞に大きな損傷を与えますけれども、周辺の細胞には最小限に副作用が抑えられるということで、これが大きな長所となっています。
 これは、化合物や抗体薬を用いて臨床に用いるということが、今後、非常に世界的にも大きく発展していく可能性がありますので、この支援を今年度からスタートしたところです。
 次をお願いします。
 この図は、2016年から6年にわたって進めましたP-CREATEの成果をまとめたもので、企業導出、特許出願、それからAMEDの他の事業への導出が活発に行われておりまして、これは、実は達成の数値目標をつくっていたのですけれども、最初の3年ほどで、ほとんど達成目標を達成いたしまして、成果は大きく当初の目標を上回るものでありました。
 これは、P-DIRECTから継続して支援が行われて、がん研究者の間に創薬に向けた研究の関心が高まって、それが本事業でも継続して、それが次のP-PROMOTEというのにつながっているというのが、大きな原因ではないかと考えております。
 次をお願いします。
 さて、次の10か年計画に関連して、私の私見も少し混ざっていますけれども、海外の革新的ながん研究の事例として、米国のNCIの研究について、御存知の方も多いと思いますが、少し紹介します。
 次をお願いします。
 RASがん遺伝子の遺伝子変異というのは、膵臓がんをはじめ、多くのがんで見られるのですけれども、RASのがん遺伝子の重要性が見つかったのは、1980年代のことですが、臨床的に有効な薬剤というのは、もう30年以上見つかっていませんでした。
 一方で、KRAS、右側にありますけれども、免疫チェックポイントに対する役割も見つかったりして、非常に基礎研究としては重要なものと広く知られていたところです。
 次をお願いします。
 米国のNCIでは、2013年からRASを標的として、薬剤開発を目指したRASイニシアティブというのを開始しました。9つのチームが戦略的に連携して、年間1000万ドル規模の予算が支援されて、特に産官学、バイオベンチャーなどが積極的に参加しているというのが非常に重要なところでありましたが、私、これがスタートしたときは、かなりハードルが高いのではないかと思いましたけれども、御存じのとおり、2021年にはソトラシブという薬剤が開発されまして、成果がどんどん出始めてきているということです。
 こうした事例を見ますと、我が国も次世代の治療薬を見据えて、他分野を融合させた研究を戦略的に支援することが重要かなと感じているところです。
 次をお願いします。
 そこで、今後のがん研究に向けてですが、次をお願いします。
 次世代のがん医療に向けまして、本態解明を含めたシーズ探索に関して、恐らく多様な先端技術を用いた異分野融合の基礎的な研究を行っていくことが重要で、その際に、例えば難治性がん、ある種のがんに焦点を当てて、戦略的に進めるということも考えられますし、この後、野田先生が予防法や早期開発などについても述べられますけれども、そういったことについて、戦略的に考えていくというのも必要かと思いました。
 次をお願いします。
 例えば、がんの種類を絞って研究を推進するということも1つの案として議論しているところですけれども、例えば、膵臓がんについても、戦略的に、早期発見から本態解明、治療法の開発まで集中的にやると。
 もちろん、これは、ほかのがんへも最終的には大きな波及効果があると思われますので、こういったことも考えられるのかなと思いながら、今、議論をしているところです。
 次をお願いいたします。
 AMEDでは、次世代がんでは、これまで基礎研究を積極的に支援してきませんでしたけれども、今後はシーズ対策の強化のためにも、左上に書いています基礎的な研究の支援というのも、新たに研究費を獲得できればということで、こちらのほうも、今、何とか関係者の間で議論しているところです。
 次をお願いします。
 最後にまとめですけれども、2030年までにがん根治を達成するための次世代創薬に向けたシーズ探索を加速しまして、2040年までには、開発された技術によるがん予防の実践、がんの早期発見や次世代がん治療法によって、がんにならず、がんが治る社会を実現したいということで、今後、検討を進めさせていただければと思います。
 私からは、以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、野田参考人よりお願いいたします。
○野田参考人 よろしくお願いいたします。
 私は、がん研で基礎研究から応用研究までをやっていますし、もう一つは、先ほど宮園先生がおっしゃっていただいた、次世代がん事業で、シーズ探索からシーズ育成の部分のお手伝いをさせていただいてきています。
 そして、革新がん事業のほうも、評価などで参加しており、その次世代がん事業、革新がん事業のところを中心にして、がんの予防法や早期発見手法に関する研究という部分に焦点を絞ってお話をしたいと思います。
 宮園浩平先生の、従来の研究成果のお話しが、創薬の領域が中心だったので、こちらでは予防のこともお話をさせてください。
 この前の10か年の中では、6番目の項目にこれがあります。
 ただ、予防や早期診断法に関するものとして、その後の横断的な項目に、リキッドバイオプシーであったり、ゲノム医療であったりということがありますが、そうした部分は、後で中村祐輔先生もお話しになると思いますので、今日はゲノムに関係する部分は含めずにお話をしたいと思います。
 さて、すみません、ここで許可をいただくもの何ですが、堀田先生のスライドをそのまま使わせていただきました。このスライドを、良く見直しますと、AMEDは、この10年、実際には8年の計算ですけれども、トータルで1,573課題のがん関連研究プロジェクトを支援してきています。
 その中で次世代がん事業と革新がん事業が、合わせると3分の2ぐらいを占めるので、この二つの事業の方向性というのが、国内のがん研究の方向性に大きく影響するということです。
 もう一つの特徴は、先ほどの宮園先生のお話にもありましたが、アカデミアの医療シーズを拾い上げるのが次世代がん事業で、さらにそれらを育成して、次の研究開発フェーズに伝えるのが次世代がん事業の役目です。すなわち企業等にも導出を進めて、より臨床の実用化に近づけるということですが、そこでは、場合によっては革新がん事業が、その実用化のフェーズを担当しており、この二つの事業の間にはパイプラインがあるということが、もう一つの特徴だと思います。
 ここに示したのは、その研究領域とプロジェクトの数で、その領域の中に予防、診断の研究分野があるのですけれども、もう一回この8年間の全てのプロジェクトの内容を読み直してみました。
 そうすると、今、ここに示す、予防、診断、治療、創薬という各領域の課題数は、AMEDのがん研究の推進状況を非常によく反映していて、次世代がん事業では、下から2つ目の創薬のテーマが、173と非常に多くなっています。
 一方、革新がん事業は、すでに医療になっている治療法のさらなる適用拡大なども含めて推進しており、治療という部分の課題が329で、最も多くなっています。
 ただ、診断の領域には、コンパニオン診断等を数多く含みますので、この中の早期診断法開発はとみると、大分絞られてしまって、次世代がん事業で25プロジェクトになります。ただ、そのほとんどがマーカー開発のプロジェクトです。今の時代、がんの本態が分かれば分かるほど、その情報をもとにして、早期診断に使える診断マーカーを探そうという研究開発の流れが、どんどん加速しています。
 ということで、もう一度、次世代がん事業に戻りますが、次世代がん事業の創薬プロジェクトでは、この8年間に173課題を育成してきて、そして、それは成果として企業に40導出されていますし、20に近い数のプロジェクトが、革新がん事業に進んでいます。
 一方、さっき申し上げたように、早期診断法のほうは、育成のパイプラインの構成も創薬とは少し違っているのですが、ただ、それでも、そのパイプラインから優れた成果が得られています。
 その代表的なものを1つお示しします。最初から手前みそになって恐縮なのですが、がん研の植田プロジェクトリーダーが、CPMセンターで行ってきた、新規診断法開発のプロジェクトで、前立腺がん診断マーカーの開発研究です。男性の皆さんが興味のあるPSAは、前立腺がんの診断に汎用されているマーカーです。ただ、その機能に関する評価ですが、このPSAには「偽陽性が多い」という問題があります。診断基準では、4ng以上の値が陽性とされているけれども、この4ngから、10ngの間のかたは、偽陽性率が高く、その後、バイオプシーをしても、その3割にしかがんが見つからないとされています。すなわち、PSAは、場合によっては、正常な細胞からも産生されてしまうということです。
 そこで、こういう偽陽性が少ない、より正確なマーカーはないのかということで、植田君は、PSA蛋白そのものではなくて、そこにつく糖鎖に目をつけました。これは、なぜかというと、この糖鎖の構造は、PSAを産生している、それぞれの細胞が決めているので、がん細胞がPSAにつける糖鎖と、周りの正常細胞がPSAにつける糖鎖とは違うだろうというアイデアで、非常に微妙な解析で、精密な糖鎖構造の解析法を作り、それを使って完成させたのが、このがん細胞特異的な糖鎖マーカーによる診断法です。
 この下にありますように、次世代がん事業での性能評価から、この糖鎖マーカーは、検診等でも十分に使えるだろうということで、診断用キットをLSIメディエンス社と作製し、今、革新がん事業に採択されて臨床試験が行われています。これが認められれば、将来的には、血液から、より正確に前立腺がんを診断することが可能になり、場合によっては、バイオプシーも不要になることもあり得ると考えられ、このマーカー開発は、血清診断バイオマーカーの特徴的な利点を示しています。
 このように、この早期診断法開発の分野に関して、次世代がん事業の研究テーマを見てくると、やはり次期戦略を考えるには、各種の生体内分子の解析システムが、この10年で飛躍的に進歩していることは、大変に重要だと思います。
 ここで、新たな解析技術のキーワードは、「より微量」で解析可能で、「より高精度」であり、そして、最も大事な点が、「より網羅的」な解析が可能であるということです。これらは、先ほどから申し上げている、いわゆる診断マーカー探索に極めて向いている技術であります。
 ということで、次期戦略の実施期間には、より有望な診断マーカー候補が、より多く同定されてくると予想されます。そして、それらを評価して、有望なマーカーを積極的にピックアップし、それらを早期診断マーカーに育成していくことが求められるわけですけれども、現在の次世代がん事業から革新がん事業へと流れるパイプラインを、強化しなければ、この次期戦略の推進に対応できないのではないのではないかという危惧があります。
 このスライドに示すのが、現在の早期診断マーカー開発のパイプラインです。パイプラインというのには、少し複雑な構築になっていますが、この入り口の部分で重要なのは、アカデミアのシーズの中で、診断シーズとして優れていることに加えて、企業との連携がより早い時期からしっかりと行われていることです。
 当然、創薬のプロセスにおいてもそうなのですが、診断マーカー開発の場合は、早い段階で、きちんとした測定キットの作製が必要ですので、やはり企業がきちんと入り込んでいなければなりません。そういうプロセスで育成されたものを、次世代がん事業で、新規診断法のシーズとして確立しています。
 ただ、現在のパイプラインにおける問題点は、その診断法を用いて、さらなる臨床試験を行わなければいけない。これは、臨床性能試験あるいは診断機能試験と呼ばれますけれども、この施行がなかなか大変で、治験よりは、はるかに多くの数の検体を必要としますし、その検体の中の均一性、質が担保されていないと、全くきちんとしたデータが取れません。ということから、先ほど言いましたように、きちんとした性能を有する、きちんとしたキットが数多く作り出されても、それから、多数のサンプル、場合によっては万に近い数のサンプルが必要となる臨床性能試験が、どうしてもボトルネックになっているというのが、次の問題です。
 ということで、少し余談になりますが、そのステップに進めない診断マーカー候補は、どうした状況に陥るか、これを「診断マーカー難民」と人は呼んでいます。一旦、難民になると、その後は研究用試薬あるいは試薬でとどまることになります。とどまるところ、そのカテゴリーに多くの診断マーカーがたまっていくわけですけれども、場合によっては、特定の企業は「診断用試薬ではないけれど、ヘルスケアには十分に使える」と言って、事業化をしている方たち、企業が数多く存在します。
 このように、診断性能がきちんと評価される手前の段階で、こういう使われ方をするという状況には、がん研究者として、非常に忸怩たる思いがあります。とにかく、少しでも多くの診断マーカーに対して、正当な評価を実施して、早期診断法の開発を、先に進めことが非常に重要だと思います。
 そのためには、このスライド内にありますように、先ほど特にボトルネックとなると申し上げた臨床性能試験の実施支援の部分を、次期戦略ではさらに強化していただきたいと思います。
 ちょうど、次世代がん事業、続いて革新がん事業で支援をしてきた、国立がん研究センターの、今は日本医大におられますが、本田先生の膵がん診断マーカーが、今年の6月8日に承認されましたので、このマーカー開発に関して、少し述べたいと思います。
 膵がんは、最も代表的な難治がんであり、その早期診断法の開発は非常に重要です。本田先生は、がんそのものではなく、早期の膵がんの段階から変化してくる膵の外分泌機能を標的として、ApoA2の1アミノ酸の違いのバランスから、この膵がんを診断できる血中診断マーカーシステムを開発しました。
 次世代がん事業で、このマーカーをきちんと評価できる診断キットを作製し、次に、それを革新がん事業に持ち込んで、その支援のもと、臨床性能試験を行いましたが、その結果、このたび体外診断薬として製造承認が認められたということになります。
 この製造承認が認められれば、一般的には、その後、保険申請をして保険収載が行われ、一般臨床には、そのまま使われることになります。ただ、ここで少しだけ考えてみたいのは、この一般診療での使用と検診への組み込みは、現在は、全く無関係に行われています。しかし、今後、次々と診断に有力なマーカーが承認されていくようなる時に、それが、さらに、今後の検診のあり方を変えていくような方向性を見出すことができないかというのが、次の質問になります。
 現在のシステムで、この部分の展開を考えると、一般診療における価値を認められた診断マーカーであっても、次は、改めて、死亡率減少効果を明らかに出来なければ、検診のメニューに入れることは出来ません。そのためには、この無作為化臨床試験という非常に多くの数の、数万人になりますが、そうした試験の実施が求められますので、希少がんの早期発見への適応は無理です。同じく、難治がんへの適応もかなり困難であり、もう既に、現在の第3期戦略の中間評価で、死亡率に代わる評価指標の必要性というのが言われていますが、未だ出口は見えていません。
 そのときに、次期戦略の策定においては、この部分に関して少し考えてみたらどうかと考えます。その時、こうした新たな診断マーカーは、一般診療に加えて、すぐに任意型検診において使われます。この任意型検診は自費負担であり、そこで診断マーカーが使われるコンディションをコントロールするのは、なかなか難しい状況です。しかし、次期戦略の推進にあたっては、どうにかそこを上手くコントロールして、任意型検診で得られるデータ、このリアルワールドデータを積極的に活用することで、有用な新規診断マーカーを検診に導入していくような新しいルートの開発研究に、手をつけるべきではないかと、強く感じています。
 そうしないと、このスライドの右側に示す、現状の検診システムのままでは、すなわち、このシステムに、より体に優しいマーカーによる早期診断、検診というのを導入することなしには、なかなか受診率は上がらないだろうと考えます。
 さて、最後に、もう一つ述べます。
○中釜座長 時間を超過していますので、まとめていただけるとありがたいです。
○野田参考人 すみません、このスライドで終わりです。
 ここに示しているのは、がんの予防法のほうですけれども、がんの予防法も見直すと、特徴は、次世代がん事業にはほとんどない。革新がん事業では、ここにあるように発がんリスク評価を中心に非常に多くのプロジェクトを展開しており、特にゲノム情報を取り入れた発がんリスク評価研究、あるいはリスク低減の研究が増えているのですが、次世代がん事業での予防法開発プロジェクトが少ないこともあり、逆に新たな発がんリスクの研究開発というところが、現在、非常に不十分な状態になっています。
 ということで、次期戦略で、がん予防の領域を考えるには、さらなる新規発がんリスクの探索と評価に関する研究の推進が必要になるだろうと思います。
 最後のスライドに、ここまで申し上げたことをまとめていますので、お読みいただければと思います。
 ありがとうございました。時間が延びてしまってすみませんでした。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、安川構成員より、御発表をお願いいたします。
○安川構成員 製薬協で副会長を務めております、安川でございます。
 私からは、製薬業界の立場から見た、がん治療薬開発の課題についてお話をさせていただきます。
 次のページをお願いします。
 こちらは、今日の目次でございます。
 次のページをお願いします。
 世界におけるがん領域での新薬数をグラフにまとめております。1990年から2022年までに承認されたがん領域の新薬品目数は約200ございます。がん治療薬が創出されており、がん研究の成果が、数多くのがん治療薬の創出に貢献してきたことがよく分かります。
 次のページをお願いします。
 しかしながら、近年の日本ではドラッグラグ・ロスの問題が発生しており、大きな社会問題となっております。
 まず、がん領域に限定せずに見ていきますと、2020年の時点で、欧米で既に承認され販売されている243品目のうち、国内の未承認薬は176品目となっております。
 このうち、抗悪性腫瘍剤、すなわち、がん領域では最多の44品目を占め、2016年当時の21品目から倍増していることが分かります。
 この44品目のうち、FDAのブレークスルーセラピー指定を受けたものが25品目、ファーストトラック指定を受けたものが7品目と、臨床的に重要な薬剤が含まれていることが分かります。
 また、国内未承認の抗腫瘍剤44品目のうち、国内で開発情報がないものが13品目ございます。
 次のページをお願いします。
 このページの上段のイラストでは創薬のプロセスを図示しておりますけれども、画期的な治療薬は基礎研究の成果から製品の候補品を見出し、ヒトでの有効性、安全性を確認した後、薬事審査承認を経て、医療用医薬品として初めて日本の患者さんに届きます。
 ということで、前述したようなドラッグラグ・ロスの問題は、非常に重要なものと考えます。
 世界で有数の経済力を誇り、安定した政治体制があり、皆保険制度もあり、医療先進国でもある我が国で、なぜこのような問題が発生してしまうのか、顧みられない市場になりつつあるのか、今まさに真剣に考えなければいけないと考えております。
 この問題が発生する原因は大きく分けて2つ、薬事的な要因と、それから経済的な要因があります。
 医薬産業政策研究所からは、最近レポートが多数出ておりますけれども、調査結果によりますと、原因の8割、9割は経済的要因であると考えております。
 したがって課題解決のためには、これまでとは異なった経済的な視点を含めた対策を考えることが必要でございます。
 このことも考慮に入れまして、製薬業界からは、国へ課題対策の要望、すなわち提言書を複数出しております。
 このページの下のほうには、製薬業界から出しました要望について項目をまとめております。
 以降のページで、1つずつ説明をさせていただきます。
 次のページをお願いします。
 1つ目「基礎研究とトランスレーショナル研究の支援」についてです。
 まず、創薬を加速するための基礎研究を支援していただきたいと思います。
 ゲノム・医療データなどの利活用の基盤整備のための予算配分と人材育成によって、現在検討が進んでいる全ゲノム解析等実行計画を着実に実行し、創薬研究を加速させる必要がございます。
 先端技術への投資としては、がん組織の微小環境解析や遺伝子改変技術の研究開発へ助成することによって、さらなるがんの本態解明や、がんの治癒に向けた新たな技術が開発されることが期待されます。
 また、より正確に早い診断を下し、治療につなげるためにAI等を活用した早期診断法の研究開発が欠かせません。
 次にトランスレーショナル研究の支援として、臨床研究でアカデミアが有しております治験、組織検体等から得られた情報を創薬研究や臨床研究へ活用することが重要です。そのための産学連携のプラットフォームの構築が必要であると思います。
 また、クロスアポイントメントなど、産学の専門人材の流動化による最先端研究の橋渡しの仕組みも重要と考えております。
 次のページをお願いします。
 2つ目は「開発環境の整備と新たな視点での経済的な分析」についてでございます。
 まず、小児がんや希少がんに代表されるような臨床試験でリクルートが大変難しい疾患の治療薬については、例えば、海外で既に承認されている薬については、海外データを基に仮承認をし、その後リアルワールドデータで補完するような制度の導入、あるいは治験の対照群へリアルワールドデータをより一層活用する制度の導入。また、モード・オブ・アクションによっては、従来の臓器別の承認取得にこだわらない、科学的根拠に基づいて、がん種横断的に承認する制度の導入が必要と考えます。
 続きまして、開発のハードルとなる規制の国際調和も重要な要素だと考えております。
 最近、バイオロジクス(抗体医薬を代表とするバイオ医薬、遺伝子ベクター等)のがん候補品が増えておりますけれども、生物由来原料基準、あるいはカルタヘナ法の運用においては、日本独自の要求が多くございます。
 これによって、データの取得のために1、2年ほど海外よりも臨床試験入りが遅れます。製薬会社としては、それは待てませんので、早く臨床試験ができる国において、プルーフ・オブ・コンセプトを確認していきます。既に日本では、ここで遅れが出るわけです。
 さらに、国内では、国際共同治験の参加前に、日本人での忍容性評価が求められることが多くございます。
 これによりまして、国際共同試験のフェーズ3、あるいはピボタル試験に乗り遅れるという場面が多々出てまいります。
 このタイミングを逸しますと、国内で申請するために、国内で特別の臨床試験が必要となり、より経済的な負担が大きくなる。さらには日本での低い薬価、毎年の薬価改定、こうしたものが相まって、先ほど前述したようなドラッグラグ・ドラッグロスを引き起こしているものと考えます。
 本会議では、薬価制度、あるいは薬事的な枠組みを変えるための議論の場ではないということは重々承知しておりますけれども、必要な変化に妥当性を与え、それを後押しするようなデータの解析、あるいはレギュラトリーサイエンス上の研究は必要だと思っております。
 小児がんや希少がんを含め、企業が積極的に治療薬を開発したいと思うような新たな経済的インセンティブ制度の設計についても、分析・検討していただきたいと思っております。
 次のスライドが最後でございます。
 3つ目として、前回の議論でもございましたけれども「患者さんが治療薬・治験薬の情報にアクセスしやすい環境の整備」に対する検討が必要だと考えております。
 製薬協においても、こちらの図で示してありますように、現在ある治験の情報サイトについて、より深い理解を得られますよう用語集を作成するなどして、患者さんの治験情報へのアクセス改善、理解向上に取り組んでおります。
 また、患者団体、国立がん研究センターと連携して、この6月に発足しました、「臨床試験にみんながアクセスしやすい社会をつくる会」などの活動を通じて、より一層取組を進めていく予定でございます。
 以上、製薬業界の立場から、今、起こっているドラッグラグ・ロスを改善し、今後も画期的な治療薬を患者さんに届けるために必要な取組について述べさせていただきました。
 御清聴ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、藤原参考人より御発表をお願いいたします。
○藤原参考人 PMDAの藤原でございます。今日は、発表の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 今日話す話は、私個人の見解なので、PMDAとか薬事当局がこう考えているとは御理解いただかないように、あらかじめよろしくお願いします。
 次をお願いします。
 初めに、先ほど安川会長からお話がありました、ドラッグロスの簡単な背景を、もう少し話したいと思います。
 次をお願いします。
 もともとドラッグロスは、私が世の中に問うたという問題です。2020年のがん学会のパネルディスカッションで、こういう問題が起きているのですというお話をしました。
 次をお願いします。
 これは、国立がんセンターで、私、以前はがんセンターにおりましたので、その当時、2014年から始めていましたプロジェクトで、四半期ごとに欧米の承認されている抗がん剤と、日本の未承認薬との比較をしまして、卸売薬価、これは、アメリカの卸売薬価も全部調べて、値段が幾らかということを一覧表にして、適応等も含めて、がんセンターのホームページに定期的に出しております。
 これを見ていただいたら、2016年7月末の時点ですけれども、左のところに52薬剤の未承認薬が、その当時ございました。
 次をお願いします。
 これが、がん学会での発表のときに調べた、2020年4月末ですけれども、88でございました。
 このとき気づいたのが、やはり2016年辺りからの潮目で、どうも未承認薬が増えているなということです。
 もうすぐがんセンターのホームページに出ると思いますけれども、2022年、今年の3月末時点での海外既承認、国内未承認の抗がん剤の件数は116です。100以上の薬が日本に入っていないという実態を、まず、皆さん方には感じておいてほしいと思います。
 次をお願いします。
 この当時、このパネルディスカッションで、私は分析をいろいろしたのですけれども、そのまとめですけれども、このときに一番衝撃的だったのは、1マス目のポツの2つ目に書いています、日本法人や国内管理人を持たない企業、Emerging Biopharma、日本の中堅製薬企業さん並みの大きさもありますけれども、いずれにしても国内に法人がない企業が大半の抗がん剤を開発しているという実態がありました。
 このために、非常に日本の人たちが幾ら声を上げても、聞く耳を持ってくれないという実態にあるということが、ドラッグロスの最大の要因です。日本の製薬企業さんの責任ではありません。
 次をお願いします。
 これを製薬協さんが、先ほど安川さんも参考にされていました製薬協のシンクタンクの政策研がいろいろいいデータを出しているのですが、その後いろいろ調べてくれて、直近、去年の7月でまとめをしています。右を見ていただきたいのですけれども、日本未承認、その当時、抗がん剤41あって、そのうち新興企業、先ほどのEmerging Biopharmaという国内に法人とか管理人がいない企業が製造販売企業の半分あるのです。
 この方たちにはどう働きかけても日本に来てくれません。これをどうやって対応していくかというのが、今後、日本の大きな課題になっているということが、改めてこのデータでも分かりました。
 次をお願いします。
 私は、がんの研究、特に臨床試験をたくさんやってきましたので、次の10年に向けて一番お願いしたいのは、これまでやってきた基礎研究と、トランスレーショナルリサーチの振興は非常に大事なので、これは欠かすことなくやっていただきたいのですけれども、今の日本のがん研究で一番問題なのは、出口というのを、どうも保険医療の現場に出すことと誰も意識せずに、論文を書いたりとか、特許を取ったりとか、製薬企業に技術移転したりとかというところまでが出口と思っていらっしゃる方が多いということです。そうではなくて、保険医療の現場に製品を出すということが一番大事ということを、次期の10年では考えていただきたいと思います。
 それから、よいシーズが生まれても海外で販売・医療現場への展開が開始されてしまうのが現状ですので、この開発の主体は、最近は新興バイオテック、アメリカのボストン近辺の企業が多いですけれども、その人たちに日本に来て開発してくれるという環境を整えていかないといけないと思っています。
 次をお願いします。
 今日は、この3点だけのお話をします。もうこれはまとめです。1つは、まず、臨床研究ではなく、いろいろな人の話を聞いていると、治験あるいは臨床試験ではなくて、臨床研究あるいは観察研究というものの振興を考えている人が結構います。それから特定臨床研究をやろうという人もいますけれども、そうではなくて王道の臨床試験をちゃんとやる、振興するという体制を、次の10年ではやっていただきたい。
 それから、今回コロナで明らかになりましたけれども、日本の臨床開発力、特に国際共同臨床試験を組む力は、ほとんどありませんので、これはちゃんと育成しないと、日本国内だけで臨床試験を完結することはできません。それをどうやっていくか。
 それから、2つ目に書いてありますように、先ほどから申し上げている新興製薬企業ですね、Emerging Biopharmaが、あるいはベンチャー企業とかが、日本で臨床試験をやりたくなる環境整備というのが非常に大事になります。
 それから2つ目、出口戦略を先ほどから申し上げていますけれども、早期臨床開発はもちろんですけれども、フェーズ3であったり、市販後のComparative Effective Research、既承認薬同士を比較して、薬価は高いのに効果が同じような薬というのは、やはり市場から退場していただくとか、こういう研究をちゃんと臨床試験としてやっていただきたいと思います。
 それから、今年、本省から通知が出ましたけれども、特定臨床研究の薬事申請の活用も、現在はできるようになりました。したがって、先進医療Bという合法的な混合診療ができるいい仕組みが日本ではありますから、それの活用も今後は考えていただきたいと思います。
 ただ、こういう臨床試験で希少疾病、希少がんの方々を全て薬事申請、薬事承認で救えるかというと、なかなか限界があります。エイズとか熱帯病治療薬では、かなりその辺が融通の利く仕組みが運用されていますので、抗がん剤分野でも、single patient INDという本当のコンパッショネート・ユースですね、今の拡大治験というものではなく、本来のコンパッショネート・ユースである、これを導入してセーフティーネットを図るということも必要だと思っています。
 それから、先ほど安川さんが述べられましたけれども、日本の臨床試験情報というのは、非常に分かりにくいです。それから、国内のみに限定されているので、先ほど申し上げた、最近の世界での承認薬の半分は日本に来ない薬ですので、その情報を日本語で得られるということは、ほとんどできません。そこをちゃんと注意していただきたいのと、今日午前中にいろいろな話を聞きましたけれども、AMEDの研究だけを個別に集計していることは多いのですけれども、日本のがん研究費全体をちゃんと俯瞰的に見るデータベースがありません。これは、以前、政府の健康医療戦略参与会合で堀田先生が紹介していますけれども、NIHにはちゃんとしたデータベースが、その辺はしっかりしています。ここに書いてあるRePORTですけれども、これを見るとどの分野に、これは、がんだけではありませんけれども、全ライフサイエンス領域に、どの領域に幾らのお金が、毎年でどのぐらい出ていて、どのぐらいの件数があるかというのが、リアルタイムに全部見られるのです。こういうものを整備せずにやっているのは、やはりおかしいと私は思います。
 残り2分で、ざっと流していきます。次のスライドをお願いします。
 国際連携、次をお願いします。
 日本の製薬企業は、世界全体の国際共同臨床試験のうちの13%しか、主導していないという悲しい現実があります。
 次をお願いします。
 なぜ日本に治験が来ないのか、よく製薬企業の方々がまとめています。これはCRCの在り方会議で、以前、EFPIAの方々がまとめられたものですけれども、日本の治験では患者一人当たりの経費が高いということをよく言われるのですけれども、これは、うそです。
 次をお願いします。
 私は、PMDAに来る前に、米国の製薬企業から多額のお金をいただきまして、国際共同治験をやっておりました。二十数億のお金を5年間いただいて、たかだか184例の規模ですけれども、そのぐらいのお金がかかるのですが、そのデータを集計した結果、これは、2021年で一旦まとめたデータですけれども、次のほうが新しいデータです。
 医療機関に約3億円のお金が5.5年間で流れているのですけれども、韓国、日本、台湾、シンガポール、それぞれ31例、118例、24例、11例の患者さんをエントリーしていますけれども、1人当たりの患者さんのコストを正確に判定すると、日本が一番安いのです。なぜかというと、日本以外の国は、保険外併用療養費がありません。ですから、その医療費が物すごくかかるのですね、臨床試験に参加していても、そこに目をつぶって集計しているのではないかと、私は製薬企業の集計には懸念を持ちます。
 次をお願いします。
 出口戦略、次をお願いします。
 今回は、特に領域5のところの先生方が、ヒアリングにないので、少しお話ししたいと思いますけれども、臨床研究法が出て介入研究というのが減っています。
 次をお願いします。
 領域5の標準治療の確立に関する研究費もどんどん減っています。研究課題数は増えているのですけれども、それは単価が小さくなっているという現状です。年間で1400万ですね。これでフェーズ2とか、フェーズ3ができるわけがないのです。
 次をお願いします。
 がん臨床試験を探すというのは、がんセンターのがん情報センターサービスがずっとやっています。これは非常にいい仕組みなので、参考にしていただきたいし、ここにしっかり国費も入れていただければいいかなとは思うのですけれども、次をお願いします。
 jRCTに全ての治験の登録を求めてから、いろいろ改善傾向にありますけれども、非常に見にくいというのは、相変わらず続きます。
 次をお願いします。
 clinical trials.govのいいところは、プロトコールの変更履歴がいろんな形に加工して見えるので、もし悪いことをしたら、すぐこれで把握できるというとこありますが、jRCTでは、それができません。こういうのも少し考えていただかなければいけないと思います。
 最後のスライド、その次でお願いします。
 例えば、RCDC、下のURLに行っていただければ、全て見られますけれども、あらゆる領域のライフサイエンスの研究費の動きが、全てリアルタイムに見られます。
 前に戻っていただいて、日本では、AMED、JSPS、JST、NEDO、厚労省、文科省、経産省の研究費を俯瞰できるデータベースがありません。これは、NIHはちゃんと持っています。これをやらないと、研究費の評価はできませんので、これをぜひ導入していただければと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、大賀参考人により、御発表をお願いいたします。
○大賀参考人 発表の機会をいただき、皆様には御礼申し上げます。日本小児血液がん学会理事長、小児科学会の副会長を務めています、大賀でございます。
 次をお願いします。
 小児がんの研究の方向性について、新たな課題を解説いたします。
 スライドをお願いします。
 小児とAYA世代のがんは、全悪性腫瘍の0.2%と2%で多様です。生存率は上昇しましたが、各年齢層の主な死因で、適切な診断と新規治療開発は課題です。
 がんゲノム医療は、小児にも実装が進み、腫瘍の遺伝相談も急増しています。研究体制はJCCGを中心に、JSPHO、学会、それからナショナルセンターと小児がん拠点連携病院が一体となっています。
 次をお願いします。
 多様性と希少性が診断の課題です。各診療施設だけでは必要な検査や評価が十分できず、習熟した病理専門医数も十分ではありません。正確な診断が病態及び臨床研究の出発点です。中央診断は、2011年以降増加し、年間新規発生患者をほぼカバーします。しかし、これらの中央診断は短期の研究費や小児がん中央機関の業務の一環として運用され、十分ではありません。
 より正確な診断、リスク分類の下、晩期合併症に配慮した臨床試験を実施するため、ゲノム診断の融合が必要ですが、病理、画像、分子など現診断体制の経済的基盤も脆弱です。
 次をお願いします。
 ハイボリュームセンター数個では、小児がん臨床試験は成立しないため、試験参加施設数が多くなります。疾患数も試験数も多く、多剤併用化学療法が基本なので、研究もシンプルな立てつけにはならず、膨大な手間と費用がかかります。
 成人がんでは、大部分がガイドライン治療、一部が臨床試験ですが、小児がんでは標準治療と臨床試験が近いため、臨床試験の実施が直接患者の役に立つという利点もございます。
 現在、特定臨床研究を含む臨床試験に関して、管理施設数が1試験当たり、血液で100、固形も50を超えます。
 広域に発生する数の少ない患者を対象とした研究推進には、統合解析体制が必要です。
 次をお願いします。
 難治例治療と合併症のない治療を目指すために、ドラッグアクセスの改善が必要です。現行戦略にも挙げられていました。
 しかし、がん遺伝子パネル検査が保険適用となり、適合医薬品が見つかっても、小児に保険診療下で使用できる薬はわずかです。必要な薬剤が子供たちに届くには、使用可能医薬品を増やすことが重要です。
 第4期がん対策推進基本計画にも、国際共同治験への参加を含む治験の実施促進が記載されましたが、余命1年とされる患者さんに治験を準備しても保険適用は間に合いません。
治験を増やし、承認薬を増やす取組と並行して必要な薬がある患者さんのニーズに応え、患者申出療養制度に基づく研究ベースの薬剤提供も必要です。
 迅速な薬剤アクセスを可能とするため、あらかじめマスタープロトコールと複数の治療薬コホートを準備しておくことで、パネル検査の推奨薬使用のニーズに応える研究が計画され、AMED支援で国立がん研究センターと、小児がん拠点病院などで実施が検討されています。
 短期的薬剤アクセスの研究とは別に、必要な薬を保険診療下で使用できる仕組みを海外に遅れることなくつくることも重要です。
 次をお願いします。
 全国レベルの基盤形成が進んでおります。小児の特性からオールジャパン体制であること、各研究者が、治療研究の萌芽的病態研究にも取り組む体制であることが必要です。
 重点を置きたいのは、正確な中央診断体制、標準治療向上を目指す臨床研究支援体制、そして、ドラッグラグ解消と早期治療開発です。
 これを支える検体保存体制を起点とするゲノム解析研究体制が効果的研究、トランスレーショナル・リバーストランスレーショナル研究を実施可能とします。
 次をお願いします。
 小児がんの病態理解にゲノム研究の重要性が増しております。
 全ゲノム解析など、実行計画に代表される研究の流れを黒の実線で示しますが、小児がんでは、その希少性の多様性から全発症者にゲノム解析を提供できる実装研究を軸として、開発することが基本と考えます。
 全ゲノム解析に加え、メチル化、cell free DNA、ロングリード解析も有用なため、追加体制が必要です。
 そして、萌芽的研究発展のため、検体保存、中央診断、臨床情報収集の統一体制が必要です。
 これらがそろって、よりよい治療、診断技術、薬剤開発へとつながります。
 全国の患者が診療施設で迅速かつ正確なゲノム情報を得て、適切な治療を受けながら検体と診療、ゲノム情報が集積、解析される体制が、治療の適正化、新規薬剤、治療開発研究を進める原動力となります。
 次をお願いします。
 日本小児血液がん学会は長期フォロー、移行期医療の啓発に努め、成人領域の学会との連携も開始しましたが、AYA世代の対応が十分ではございません。
 長期観察データは重要で、晩期合併症や健康、社会状態を調査するため、大規模観察研究を行い、現在2万人を超える小児がん克服者の一時登録を行いました。
 元気な治癒と晩期合併症を有するがん克服者に、必要な支援を提供するための長期研究が必要です。
 新生児期から若年成人期までのがん研究を推進する基盤データを継続的に集積できる体制を構築することによって、結果を国際的に発信し、患者、経験者の個別医療へ還元するロングタームフォローアップセンターの確立と発展、持続的支援が必要です。
 今後、晩期合併症を介して、がん素因スクリーニングから二次がんの高リスク患者特定も可能になると考えられます。
 次をお願いします。
 右が新たな4項目です。安定した基盤で実施される中央診断・検体保存・臨床情報収集と連携したゲノム研究。
 2番、治癒率の向上と晩期合併症の軽減を目指した標準治療を開発する多施設研究。
 3番、難治性小児がんなどに対する未承認薬や適応外薬を対象とした治療薬の実用化をめざした臨床研究。
 そして、海外と連携可能な永続性のある日本のLTFUシステムを構築し、日本におけるChildhood Cancer Survivorの情報を集積して発信する研究。
 以上です。
 これが、次世代の遺伝相談と個別介入へ展開すると考えられます。
 御清聴ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 時間内での御発表に御協力いただき、ありがとうございます。
 続きまして、中村構成員より御発表をお願いいたします。
○中村構成員 私がメインに振り当てられたのは、ゲノム医療とリキッドバイオプシーというテーマですけれども、全体を俯瞰して、やはりいつでもどこでも先端の医療にアクセスできるようなゲノム医療の構築に向けてという形で話をさせていただきます。
 皆さん、御存じのように、アメリカのがんのムーンショット計画のゴールは、がんによる死亡をなくすと、がんをキュアーするということです。やはり、がん研究の最大の目的は、がんの治癒率を上げることです。
 そのためには、先ほどから出ていますように、がんの検診率を上げる。今まで画像で見えないと再発と診断できなかったものを、いろいろな技術を使って、もっと早く再発などを見つけることが必要です。それから言うまでもなく、的確な治療法の選択をできるだけ早い時点でする。
 そして、先ほどから出ている分子標的治療薬に加えて、前回、西川先生が話されたような免疫療法というのは非常に大事だと考えています。
 いろいろな方が考えるときに、結局日本の中で一番遅れている部分というのは、患者さん、企業あるいはアカデミアが一体となったエコシステムの構築が遅れているということだと思います。
 特に患者さんが参加するということは、今後のがん医療にとっては非常に重要で、患者さんに協力していただき、研究に生かして、企業で薬を開発して、また患者さんに還元するというような、ここの図に書いているようなエコシステムが大事だと思いますし、そのためには、やはりリアルタイムでリアルワールドのデータを集めることが必要だと思います。
 前回からずっとリアルワードのデータの重要性が出ていますけれども、患者還元という観点からは、リアルタイムにデータを集めてきて、リアルタイムで患者さんに返していくというような仕組みの構築が、特に10年後のがん医療を考えた場合に非常に重要だと思います。
 ゲノムを中心に考えると、がんを見つけたり、がんの個性を知るという左側の部分というのは、ゲノムで非常に大きな部分が分かってきましたし、古関先生言われたエピゲノムというのも非常に大事だと思います。
 その上で、真ん中にあるように、患者の個性に応じた治療薬を選択すると、ここまでは大体形としてはできていますけれども、それが全国レベルで普及しているかどうかというのは、甚だ疑問です。
 免疫療法に関しましては、前回言ったように、いろいろな新しい動きがあります。それをやるためには、結局リキッドバイオプシーというシステム、あるいは全ゲノム解析、全ゲノム解析の最大の利点というのは、右にあるように、ネオアンチゲンワクチンの開発にあると思いますし、欧米を見ていると、がんに特異的なT細胞を見つけて、それを人工的に増やしていくという動きも進んでいます。
 これらを包括してやるためには、やはり人工知能というのは鍵ですし、現在の医療現場の負担を考えれば、下の赤字で示したように、やはり最新の医療情報を提供する仕組みが重要ですし、AIや人工知能アバターなどを借りて、もう少し患者さんへの双方向の説明システムというのを自動的につくり上げていくという医療システムの構築が非常に大事だと思います。
 リキッドバイオプシーに関しては、いろいろな液体を使ってやるわけですけれども、血液の場合、血清を使うと非常にばらつきが大きいですし、血漿を使っても、どうサンプルをプロセスするかによって、かなり大きなばらつきが出ます。
 しかしながら、侵襲性が低いという観点で、今後、リキッドバイオプシーというのは非常に重要だと思います。
 時間がないので後でゆっくり読んでいただければと思いますけれども、がんを見つけるところから、がんをフォローアップすること、そして、恐らくこれからは免疫チェックポイント抗体の効果予測にも、リキッドバイオプシーレベルで十分な予測ができると思います。
 ただ、先ほどから申し上げていますように、左下にあるように、検体採取からどのように扱うかによっては非常にばらつきが大きいので、ここを標準化していかないと、いい、悪いという答えが分かれて、議論が混乱すると思います。
 特に、ゲノム解析を理解していない人が、ただ単にプロトコールだけを見てやればいいというものではないので、この辺りの科学的なバックグラウンドを高めていくことが、非常に重要だと思います。
 リキッドバイオプシーの利点を簡単に2つだけ紹介しますと、やはりヘテロジェナイティがあっても、それは1つの腫瘍の中でのヘテロジェナイティあるいは複数の腫瘍がある場合のヘテロジェナイティも、それを反映する形で見つけることができます。
 特に腫瘍由来のDNAというのは、2、3時間で半減しますので、今日取ったDNAというのは、今日の担がん状態を示していることになります。
 したがって、ある薬を使っていて、耐性になった場合でも、リキッドバイオプシーを使えば、組織のバイオプシーをしなくてもかなり正確に見つけることができますので、このようなリキッドバイオプシーの利点を生かした治療効果の判定や、あるいは微小再発の発見ということもできると思います。
 これは一例ですけれども、ホルモン治療を受けている間に、女性ホルモンレセプターの変異が起こります。女性ホルモンレセプターの変異が起こると、ある薬が全然効かなくなります。これをリキッドバイオプシーで調べることによって、より安全に、より正確に患者さんのマネジメントをしていくということが、今後できてくると思います。
 先ほどから言いましたように、いろいろな治療法の開発が進んでいますけれども、前回、西川先生が言われた中で、ネオアンチゲンとか、CAR-T細胞とか受容体を導入したT細胞療法の話が、ほとんど出ませんでしたけれども、やはり免疫療法、今、分かっていることは、遺伝子異常が多いほうが、免疫チェックポイント抗体が効きやすいということが分かっています。
 遺伝子異常が多いと何が違うのかというと、ネオアンチゲンが多くて、ネオアンチゲンに反応するT細胞が腫瘍環境の中で多くいるということが分かってきています。
 ネオアンチゲンという言葉に触れると、何となく多くの方に抵抗があるようですけれども、遺伝子の変異が分かれば、アミノ酸が変わり、新しいネオアンチゲンの同定というのは、技術的には簡単にできます。まだ難しい課題はありますけれども、2017年、コロナのメッセンジャーRNAワクチンで有名になったビオンテックという会社が2017年に既に、メッセンジャーRNAを使ったネオアンチゲン療法というのを紹介していて、その後、T細胞を導入した療法など、いろいろなところで出てきていますし、今やネオアンチゲンと免疫チェックポイント抗体を併用する治療法も、どんどん報告されています。
 その一例がこれでありまして、今年の5月に膵臓がんで手術の後、抗がん剤療法、それから抗体療法と同時にメッセンジャーRNAを組み合わせで治療しました。患者のうち、ネオアンチゲンに反応があった患者さんでは、まだ期間が短いですけれども、再発がないのに対して、免疫反応がなかった人は、非常に再発率が高いということが報告されています。
 これで、フェーズ1だからエビデンスがないと言っていると、日本はどんどん遅れていく一方ですので、やはりこういうものを科学的に評価して、今後どう開発していくのかということを考えないと、10年経ったらまた遅れているということが起こると思います。
 特にT細胞療法に関しましては、ここに書いてあるようないろいろな方法が出てきていて、CAR-T細胞やT細胞受容体を導入した療法、それからバイスペシフィックな抗体を用いて、T細胞をがん細胞の近くに引き寄せるということも行われていて、こういう新しい概念が科学的に妥当かどうかということを考えた、次への試みが必要だと思います。
 日本でどうしてゲノム療法が遅れているのかということを、今やChatGPTに聞いても、これぐらいの答えは出てきます。誰が見ても明らかなレベルで、日本のゲノム医療というのは遅れているので、やはりシステマティックにやらないと、いつまで経っても、どんどん差が開いていくだけだと思います。
 私は内閣のAIホスピタルというのをやっていましたけれども、やはり最先端の医療を、藤原先生がおっしゃったように、みんなが受けるようにできるためには、やはり医療現場の負担を減らすことが大事で、人工知能やロボットを使った説明の仕組みというのは絶対に必要ですし、今、AIプラットフォームといって、全国どこでもAIを使えるようなシステムの構築を行っていますけれども、2033年を考えた、やはり日本に何が足りないかという観点が必要で、今、足りないことを追いかけるのではなくて、10年後のがん医療を見据えたシステムの構築が大事だと思います。
 我々は、AIを使いやすくするためにAIプラットフォームというのをつくって、医師会と協力しながら、いつでも、どこでも、誰でもが同じシステムを使えるような制度を構築してまいりました。医機連にも協力していただいています。
 議論を聞いていて思うのですけれども、富士山の下から雲に覆われている頂上を見て、エビデンスがないと言っているのではなくて、やはり科学的にどんな山頂があるのかということを予測して、国として必要な方策をしていくというのが大事ですし、この有識者会議のミッションというのは、10年先を見据えて、今、必要な手を考えていくことだと思いますので、ぜひ活発な議論を私も期待しております。
 少し長くなりましたけれども、ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、末松構成員より御発表をお願いいたします。
○末松構成員 発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 情報共有という問題について、お話をさせていただきます。
 生命倫理の4原則というのは、もう皆さん御存じだと思いますけれども、個人情報の保護と情報共有の関係は、特に1番と2番、自己決定権の尊重と無危害原則というのと、真逆のことにどう向き合うかという問題とも言えます。
 この医療現場の情報共有を進めて、そして、研究開発を加速するということは、2015年にAMEDがスタートしたときの一番大きなテーマでありました。
 当時は「分散統合と広域連携」と言っていましたけれども、いわゆるブロックチェイン方式の管理をどう進めていったかということを簡単にお話ししたいと思います。
 私どもは、最初に着手しましたのは、難病・未診断プログラムというのと、それから画像兄弟というプロジェクト、それから感染症のデータベース、まさにAMED側が参加して、感染症の特に新型コロナのデータベース、GISAIDというのがありました。これはもともと世界の研究者コミュニティが立ち上げた鳥型インフルエンザのデータベースだったものを転用したものです。詳細は、ここでは省かせていただきます。
 医療用のビッグデータで、これは特定のセンターを示したものではないのですけれども、ありがちなのは、研究者が高密度におられるところで、データを集めるのですけれども、その集めたデータを患者さんや医療機関にリアルタイムにフィードバックできるかどうかというところが、一番の難しいところではないかと考えております。
 もう一つは、データはたくさん集めるのだけれども、データを吸い込んだデータベースからデータを取り出せないという大きな問題も日本には存在しています。
 ナショナルデータベース(NDB)は、世界最大の医療データベースの1つですけれども、データを取り出して過去数か月のデータを分析して、次の半年で何が起こるかというようなことを読み取るような仕組みにはなっていません。
 やはり広域連携、分散統合という考え方で、そこに参加している研究者あるいは患者さんが、今、どういう状態になっているのかということをお互いに見ることができる。場合によっては監視の仕組みにもなるわけですけれども、そういったデータの使い方ができるようにすること必要であります。
 研究費を配分する側と研究費を使う側の状態というのは、なかなか難しいものがありまして、これは何十年も前の写真ですけれども、こういう状態です。研究費を配分する側と受ける側というのは、ルールも違うし、メンタリティも違う。
 AMEDでは難病・未診断疾患のところで”No share, no budget”という概念を提唱しました。研究開発の契約書、特に難病領域の契約書では、これを明文化し遵守してもらうということをやりました。また難病領域では日本は驚くべきことに、AMEDが始まる前、国際難病コンソーシアムというのに入っておりませんでした。理由はなぜか全然分からないのですけれども、AMED発足直後にすぐ入りまして、彼らともこの考え方を共有することをいたしました。
このIRUDのご紹介をする理由は、全国にネットワークが広がり、海外の研究者も使っている汎用臨床ゲノムデータベースの先駆けであるからです。
 ケースマッチングという方法で希少難病の診断を行います。これには患者さんの同意が絶対に必要ですし、自分のデータをデータベースに入れていいですねということが必要になります。
 このときに重要になるのは、ゲノムのデータも重要なのですけれども、何より重要なのはフェノタイプのマッチングです。IRUDのデータベースの特徴で参考にしていただきたいのは、主治医同士がデータベース上で、この症例はお互いによく似ていないかということが分かった瞬間に、主治医が連絡を取って患者さんに確認を取った上で、ゲノムの解析を行うというやり方が、ルールとして進んでいます。現在まで日本では480以上の病院で、このIRUD Exchangeという仕組みが、もう既に使われています。
 がんの場合ですと、また状況とか、条件が違うとは思うのですけれども、リアルタイムに動いて、どこでも使えるという意味では、このIRUD Exchangeの運用のやり方は非常にいいシステムのひな形となるのではないかと自負しております。
 これは、IRUDの事業が始まったのが2015年の7月、AMED発足とほぼ同時にスタートして、最初の3年間でヨーロッパの難病データベースでありますOrphanetのデータが赤、それから青がIRUDですけれども、最初の3年間でここに示した数字の未診断状態の方の診断がつきまして、診断がつきますとお互いのデータベースにそれが登録されます。
 外側にあります212というデータが、3年経った時点での未診断状態だったのですけれども、我々はそこから、未診断状態を半年以内で診断を全部つけるようにという目標を立てまして、これは半年後のデータベースですけれども、こういうふうに未診断のデータが青または赤のほうに入っていくという仕組みとして動いて、現在もこの数字はどんどん増えているということであります。
 これは、ケースマッチングということに特化した仕組みということで、御参考にしていただければと思います。
 このIRUDがうまくいった理由には、複数の要因がございます。中でも非常に大きな貢献をしたのが、中央IRB機能を引き受けてくださった東北大学病院と、それから東北メディカルメガバンクの貢献です。日本人のレアバリアントのリストをオープンにしてくださったということが非常に大きかったわけでありまして、そして、その実績を基に、アイランドビヨンドというプロジェクトで、世界のその他の難病データベースと連携しました。
 連携といっても、具体的にどういうところが難しいかというと、データベースを使うための、海外旅行に行ったときのイレトリックプラグ、コンセントですね、形がみんな違います。それを、ユニバーサルプラグをつくって、お互いのデータベースを、条件はありますけれども、見られるようにしようということを行いました。
 アジアのデータベースが、欧米のデータベースとリンケージをつくった恐らく最初の例ではないかと考えています。
 ただ、このIRUDには課題もありまして、インフォームド・コンセントが学術研究に限定しているために、製薬企業での利活用に制限があるというところが1つの問題点であります。
 このようなことで、海外の希少難病の解明にも、データベースを介した国際協力が進んでいます。これは、リトアニアの3歳女児の症例で、日本との協力で確定診断のついたリボフラビンのトランスポーターの異常症なのですけれども、この症例では実際に診断がつくだけではなくて、人間にあります3つのリボフラビントランスポーターの異常のないと思われる他の2つから、少しでも取り込まれるように大量のリボフラビン投与をやったところ、生まれたときから付けていた人工呼吸器を外すことができ、この方は救済されているわけであります。御存じのようにヨーロッパには、ジェネラル・データ・プライバシー・レギュレーション(GDPR)という非常に厳しい個人情報の制限がありますけれども、これを超えて、EU諸国とのデータ共有も進められています。
 最後ですけれども、日本でぜひ考えなければいけないのは、患者さんのデータのインフォームド・コンセントを取って、新しいことをまたやるときに、再同意を取るということが治療法の開発の観点から大きなギャップになるのではないかと危惧しています。
 医療データの二次利用という定義もイギリスと日本では相当違っています。英国では二次利用が可能なのは、この右側のページの下ですけれども、NHSと自治体と大学病院の研究者、ここまでは同じなのですけれども、新たな治療法の研究を行う医学部や企業とはっきり書いてあります。これが国策になっています。日本はそこが違うわけです。
 そのために企業で使えますよというところで、また再同意を取らなければいけないということが起きています。
 医療用のビッグデータの大元になっているバイオバンクの状況ですけれども、これは2018年にAMEDでスタートしたバイオバンクネットワークで最初の参加者が非常に少なかった。東北メディカルメガバンク以外のバイオバンクは大小さまざまで連携が十分ではなかったですが、今は、このネットワークに参加するところが14機関のバイオバンクネットワークになっていて、そして、非常にたくさんのサンプル、がん以外のデータも当然入っているわけですけれども、資料数はもうすぐ100万を超えるところまできています。
 これは、実は稼働中のバイオバンクのネットワークとしては世界最大規模になりつつあると思います。
 ということで、これまでの経験値を生かして、がんでどういう情報共有をしていくかということが非常に大きな課題だと、研究開発を促進するための課題であると思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 御発表いただきました皆さん、本当にありがとうございました。
 残りちょうど所定の時間の真ん中に来ましたので、ここで5分ほど休憩を取りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、5分の休憩を取らせていただきます。
 
(休憩)
 
○中釜座長 それでは、これから後半の議論に入りたいと思います。後半では、各項目立ての議論に移りたいと思います。
 本日、8つの項目あり、90分弱の時間で8つの項目について御議論いただきたいと思います。効率的に議論を進めていただきますよう、事前にいただいている意見につきましては、既に御覧いただいているという前提で、事前意見にない論点、あるいはその反対意見を中心に御意見をいただきたいと思います。御協力よろしくお願いいたします。
 また、御発表いただいた構成員や参考人への質問でも結構です。
 では、まず資料1の4ページ「(1)がんの本態解明に関する研究」について御意見をお願いしたいと思います。御意見のある方は、挙手ボタンを押していただければと思います。目安として1つの項目で約10分程度の議論になりますが、よろしくお願いたします。
 最初の項目について、本態解明に関する研究、御意見ある方、先生は、いらっしゃいますでしょうか。
 構成員の先生方、参考人の方、御発言はございますか。
 それでは、今のところ手が挙がっている方はいらっしゃいませんが、本態解明は非常に広いテーマですので、また最後のほうで少し戻らせていただきますので、その際に御意見のある方はお願いしたいと思います。
 それでは、次の項目、資料1の10ページ「(2)アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究」について、御意見をお願いしたいと思います。薬剤開発についての様々な課題が、本日の構成員、参考人の御発表の中からも指摘されています。それでは、佐谷構成員、お願いいたします。
○佐谷構成員 どうもありがとうございます。
 先ほどPMDAの藤原先生からもお話があった、いわゆるEmerging Biopharmaのお話なのですけれども、日本でも新薬というのは、かなりアカデミアからスタートアップを介して開発されることが多くなってきたのですが、やはり一番大きな問題として、いわゆる製剤化を行うCDMOの欠如です。最近はバイオの薬剤が増えてきましたので、抗体薬とか、あるいは核酸薬とか、そういったものの医薬品を受託して製造するCDMOが、余りにも国内に少な過ぎるために、そこが前に進まない。つまりいい標的があって、その標的を抑制すれば治療に持っていけるといいながら、そのモダリティーの部分を支えるシステムが我が国にないというのは、非常に大きな欠点になっていると思っております。
 ですから、そこを産業界と、産学官が共同することによって、最初のアーリーフェーズの試験ができるようなCDMOをきちんと整備していく体制というのがないと、やはり死の谷をなかなか越えることができないのではないかと考えております。その辺りで、藤原先生など、御意見をいただければ、非常にありがたいと思いました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 CDMOの問題、非常に重要な点かと思います。藤原参考人、この点について、何かご意見はございますか。
○藤原参考人 これは、がん領域だけではなくて、様々な領域でバイオ医薬品の新興というのは非常に大事なところですので、経産省とか厚労省とか、いろいろなところからお金を出して、今は、例えばビークレットと言って、神戸大学と、それから東京の新木場に、この前、研究施設がオープンしましたけれども、ああいうところは、少し小さい規模なのですね、パイロットプラントレベルなのでですが、しっかりお金を入れるとかをしていかないといけないと思いますけれども、これは、安川さんのほうが、詳しいのではないかと思いますが。
○中釜座長 この点につきまして、安川構成員、お願いできますか。
○安川構成員 特に私から加えることはございません。
○中釜座長 ありがとうございます。
 CDMOの参画を促進するようなアカデミアの仕組みの重要性について、何か御意見、御発言はございますか。よろしいでしょうか。重要なポイントで、アカデミア側の取り組みとしても、あるいはファンディングをどのように育成していくかということは、個別的なケースを育成しながら見ていくのかなと思いますけれども。宮園参考人、お願いいたします。
○宮園参考人 佐谷先生が御指摘されたことは非常に重要で、例えば、最近ですと、サルやイヌを使った試験も、非常に高価になって、日本ではなかなか難しいと、この件は医薬基盤研究所の中村先生にもお話をお聞きしたことがあるのですけれども、なかなかそういったものがうまくいかないと。
 それから、佐谷先生がおっしゃったとおり、例えば、高分子薬をつくろうと思っても、日本ではなかなかうまくいかなくて、この辺りから海外に出ていってしまうということで、やはりいろいろ議論がなされていますけれども、ぜひ体制をきちんと具体的に検討しなければいけないのではないかと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 私のほうからは、当事者としての現状についてお伝えさせてください。
 皆様からもお話がありましたし、私もアンメットメディカルニーズについては、いろいろ資料のほうに書かせていただいたのですが、特にドラッグラグ、ドラッグロスについて課題を感じています。
 私が罹患しているがんでは、このドラッグラグのせいで、既に海外との標準治療に差が出てきてしまっているのです。それは本当に悲しく、悔しいことです。
 ですので、これから次の10年を生きる人たちに、この国に住んでいることを後悔してほしくないので、ぜひこの部分においては、喫緊の課題として取り組んでいただけたらと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の問題を解決するようなファンディング、仕組み、研究の方向性の検討が課題であると理解いたしました。ありがとうございます。
 それでは、安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 御指名ありがとうございます。
 13ページに書いてあります、16番の項目についてですけれども、新薬開発のハードルが高くなり、一製剤当たりの開発費が高くなっているという内容です。
 方向性として、デリバリー技術の開発につなげてはどうかということが提案されておりますけれども、新しいデリバリー技術が開発された場合でも、薬剤の体内動態が大きく異なりますと、これは新薬と同じような臨床試験を実施し、治験が必要になります。
 既存成分が同じである場合には、物質特許は同じになってしまいますので、新しいデリバリー技術を開発したところで、再審査期間は4年程度の独占販売期間が認められる程度でございます。
 ということで、ここは制度改革が抜本的になされない限り、新しいデリバリー技術で既存の薬のいろいろ付加価値をつけていこう、あるいは使い回していこうという大きなモチベーションにはならないと考えます。
 以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、黒瀨構成員、お願いいたします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 本日は、大変丁寧に、また詳細に御発表いただきまして、ありがとうございました。
 その中で、藤原参考人と、それから安川構成員からも御指摘いただいたように、また皆様方も御指摘いただいているようにドラッグロスの問題、かなり深刻な状況であるということを、日本医師会としても憂慮しております。
 分子標的薬ですとか、あるいは希少がんの抗がん剤等、全ての薬剤が、新薬が次々と開発され、上梓されてくる中で、限られた社会保障と、そして医療財源の中で、どのように誰一人取り残さないという方向性を実現するために、抜本的な薬価制度の改革を含めた検討というのを行いながら、本当に必要な患者さんに、本当に必要なお薬をどう届けていくのかという視点を持ちながら、この10年間、これから先もしっかりと見直していく必要があるのではないかと感じております。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございます。
 開発基盤の仕組みと、規制の問題ということで、今日多くのご発表がありましたけれども、データ基盤の構築とその利活用の加速も1つの要因かなと理解しています。
 中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 ここに限ったことではないのですけれども、やはりドラッグロスの問題を考えたときに、海外の企業が日本に来て治験をやりやすいかどうかというと、なかなか患者さんにたどり着けないので難しいと思います。逆から見ると、患者さんにとっては、どこでどんな治験が行われているのか分からない。
 がんの全ゲノム実施組織のところでもお話したように、やはり患者さんが、いつどこにいるのか、どんな患者がいるのかということを、やはりデータベース化しないと、なかなか治験は進まないですし、日本の中にそういうようなデータベースがあれば、新しいアメリカの新興企業が日本にやってきて、臨床開発を進めることができると思うのですけれども、やはりファンダメンタルな問題として、コロナのときもそうですけれども、いつ、どこに、どんな患者がいるのかということがデータベース化されていないというのは、日本にとっては、非常に大きなハンディキャップとなっています。藤原先生がおっしゃられたように、患者さんさえ見つけることができれば、そんなに臨床開発コストがかからないのであれば、海外の企業もやってくると思うので、やはりなぜ来ないのかという根源的なことを考えていく必要があると、私は思っています。
 藤原先生の御意見もお伺いできれば幸いです。
○中釜座長 ありがとうございます。
 藤原参考人、今の御指摘について、何か追加で御発言はございますか。
○藤原参考人 ありがとうございます。
 そこは、中村先生がおっしゃるとおり大きな課題で、製薬協さん、あるいはアカデミアの方々との協力の下に、データベースというか、臨床試験のリアルタイム情報というのが流れるような仕組みが必要かなと思いますが、実際の立場からすると、データベースをつくっても臨床試験は動いています、生き物ですので、毎週、毎日のようにエントリーが進んでいきますので、例えば、Ⅰ相試験だと、あるレベルに患者さんが3人とか6人とか入るところが、あっという間に埋まってしまって、情報で臨床試験の存在が分かっても、そこに参画できないということもありまして、リアルタイム性をどう維持するかというのが大きな課題に残ると思います。
 いずれにしましても、これは多分、がん・疾病対策課等で、リアルタイムに臨床試験情報を全国で共有する、あるいは同意を得て、患者さんから得た情報は、企業とかアカデミアが自由にアクセスできる、その代わり一般にはすぐ見られないけれども、例えば希少がんの臨床試験を実施したい場合、そこのデータベースに行けば、どんな患者さんが日本にいて、その人たちがどういう状況かというのをぱっと見て、治験を紹介できるとか、そんな仕組みもいいかなとは思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 臨床試験、開発研究を行う場として、日本が魅力的な場であるということを示すような情報基盤や、新しいモダリティーに対する開発パイプラインを迅速に設けるなど、先ほど来御指摘されている、そういう点の改善が必要と理解いたしました。ありがとうございます。
 大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 ありがとうございます。
 藤原参考人のお話の中で、研究者だけではなく、それをサポートするリサーチナースであったりとか、契約事務担当官の育成というのも必要であろうとの御指摘があったかと思います。過去もいろいろな場面で、このお話をお聞きしていて、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生なども、日本での研究はプロテクターを付けないラグビーをやっているようなもので、アメリカはアメフトのようにプロテクターとして、たくさんの人たちのサポートを得ているというお話をお聞きしたことがあります。例えば、これを実装していく、今後展開していく上で、日本ではどれぐらいの規模を育成していけばいいのかという私見があれば、教えていただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 藤原参考人、今の御指摘について、何かお答えはありますか。
○藤原参考人 規模感は難しいですけれども、例えば、コロナのときにリカバリートライアルという、イギリス全土でNHSを使って、トライアルをやられましたけれども、あのときは、NHS傘下の各病院に1、2名のリサーチナースが既に配置されていたので、臨床試験のスタートがやりやすかったという論文も出ております。
 例えば、国立病院機構全病院にそういう体制を整備する、あるいは事務官には、私は国際共同試験をやったときに一番大変だったのは、英語での契約をスムーズにできる事務官が非常に少ない。各病院にそういう人を雇用できるかというと、今の事務官の雇用体系では、なかなか英語をスムーズにしゃべれて、英語の契約書まで見られる、つくれる人は少ないので、そこを例えば本当に各病院に1人はそういう方を用意できるかというような規模感だと思います。
○中釜座長 よろしいでしょうか。
 その辺り、例えば、最近のAIの技術を使った翻訳、あるいはそのような機能を充実させていくということも解決の一策かと思うのですが、その点は、藤原参考人、どうでしょう。
○藤原参考人 おっしゃるとおりなのですけれども、AIは、結構セキュリティが甘くて、翻訳させたデータがどこかに全部集積されてしまうというリスクもあって、なかなか機微な情報を、全部AIを使って翻訳するかというと、かなり難しいところもあるのも事実であります。
○中釜座長 はい、理解いたしました。
 ほかに、この項目についてございますでしょうか。
 それでは、次の項目に移りたいと思います。
 資料1の18ページ「(4)の新たな標準治療を創るための研究」について、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
 直江参考人、お願いいたします。
○直江参考人 ありがとうございます。
 まず、新しい新薬が市場に出たとしても、患者さんに実際に届けるには、エビデンス構築が必要で、そのためには質の高い介入研究が必要なのですけれども、藤原参考人が御指摘のとおり、最近、介入研究が少し減っているということがございます。
 その大きな1つの理由は、やはりAMEDの資金が必ずしも潤沢ではないということでございまして、例えば革新がんでも、領域5というのは、非常にハードルが高い領域になってございます。
 やっていて感じることは、新しい新薬が、果たして既存のものに比べていいのかどうかということは、フェーズ3で問うているわけですけれども、それを例えばコンビネーションとか、より次の次元に持っていこうとすると、やはりその薬を使った試験というのが組まれるわけですけれども、ここにメーカーは全く関与しないわけなのですが、ただ結果的には、大きなベネフィットを得るのは患者さんであり、その次にはメーカーであるということを考えると、メーカーさんにもう少し協力してもらう必要がある課題もあるのではないかと。
 ただ、今はなかなか規制が厳しくて、いろいろな仕組みも変わりましたので、現在メーカーさんが、何かそういうところで研究資金を出してくれるということについては、以前とはかなり様相が変わっているという実態がございます。
 何かそこを、透明性を担保して、例えばメーカーさんが研究を、ファンディングのような仕組みを通じて、AMED資金と合わせて使えるというものは、将来的に必要なのではないでしょうかということが第1点目です。
 それから、第2点目は、今、どんどん研究を進めようというところの話が多くて、少し言いにくいのですが、やはりがん医療の中では、随分過剰だなと思われる検査とかも随分多いわけですね。
 例えば、今のがんの免疫チェックポイント阻害剤も、有効であった場合に、いつまでやるのだということも非常に大きな問題になっております。
 そういうものを調べるために、現在、これもAMEDで試験をやるわけなのですけれども、今後そういうものを全部がAMEDとしてやっていく必要があるのかどうかということを考えると、これは、やはり保険医療制度にかかる経費とか、メーカーさんはお金を出しませんので、何かそういう資金のルートは考えられないでしょうか。必ずしも開発研究のためのお金から、そういうものを出すのがいいのかどうか。やはりここは若干疑問ではないかと思っておりますので、少しお金のソースをどうするかという話なのですけれども、これは国全体でも考えてみたらどうかと思いまして、提言させていただきました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 最初の点について、安川構成員、何か御発言はございますか。
○安川構成員 まず、併用についてですけれども、最近では我々の研究所でも臨床研究を始める前、前臨床の段階から該当する薬剤のモード・オブ・アクションの特徴から、どういうものと併用することが効果の増強につながり得ると、こういうようなデータも取るようにいたしておりまして、まず、単剤で治験を始めますけれども、単剤で有効性のヒントみたいなものが出れば、その後すぐに併用での試験なども多くやるようにはなっております。
 それから、適用拡大、こちらもひとたび最初にゲートインディケーションとして設定したがん種で有効性が認められれば、発現しているタンパク量などをがん種別にしっかり検査いたしまして、開発計画の中で順次やるようにはしております。
 こういう併用の可能性も、後から後から薬が出てまいりますので、薬を開発している間、1回のチャンスではなくて、ずっと見直す必要はあるわけですけれども、先ほどのプレゼンでも申しましたとおり、本邦では発売後、年間約5%ぐらいの割合で価値が減損していく、あるいは特許満了とともに薬剤の価格は大きく引き下げられ、ジェネリックの使用が促進されるという環境の中では、ライフサイクルの後半になってまいりますと、こういうことへ投資していくというインセンティブは、企業としては失われますので、この辺は国としていろいろな補助が考えられるかということは、検討していただきたいと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 2点目のご指摘については、効果判定のためのバイオマーカー開発とも関係するのかなと思いましたので、何かその点についてコメント等ありましたら。重要なポイントだと思いますので、よろしいでしょうか。
 続きまして、土岐構成員、お願いいたします。
○土岐構成員 私、大学病院、臨床研究中核病院という立場から発言させていただきますと、臨床研究中核病院、徐々に病院の数は増えておりますけれども、そこで行われている標準治療を開発するように、承認薬の特定臨床研究、もしくは適用拡大の特定臨床研究というのは、かなり苦戦をしている状況だと思います。
 今、臨床研究法の改正も見込まれていることで、より研究しやすくなる環境を何とかつくっていただきたいということが1つでございます。
 もう一点は、製薬企業とのアカデミアの研究も、特に製品開発されたものに関しましては、非常にCOIの観点から研究がしにくくなっているという状況には感じます。
 これに関しましては、製薬協のほうで、自社製品に対する契約に基づいた研究支援というのがあるのですけれども、その制度が、必ずしも活用されてはいないように感じております。
 そういうことで、今、大学は、来年の4月から働き方改革で、実は臨床以外の業務、いわゆる研究開発的な業務は全て自己研鑽として、実は、いわゆる自分の収入の対象にならないという厳しい状況で、何とかみんな研究をしたいと考えているのですけれども、それをサポートしていただきますように、1点目は臨床研究法の在り方について、2点目は、製薬企業からの自社製品に対する研究支援の在り方について、検討をぜひお願いしたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 承認後、販売後のフォローをどうするかという仕組みづくりと、研究を支える社会環境をどうするかという問題の御指摘でした。ありがとうございます。
 では、内堀構成員、お願いいたします。
○内堀構成員 QSTの内堀です。
 19ページの5番について、コメントをさせていただきます。
 ここで御指摘いただいていますように、放射線治療は、諸外国に比べて治療数が少ないという点、大きなところかと思っています。患者さんの放射線に対する不安や恐怖心、こういったものを払拭していくべきということ。
 また、右側にありますように、放射線治療に対する国民的理解を醸成する取組に力を入れてはどうかということ、これは重要かと思っております。
 QSTでも放射線治療、重粒子線がん治療をはじめ、核医学治療等をやっておりますので、これらについても国民の皆さんに理解していただくようなことの取組をしてまいりたいと思っております。
 もう一つなのですけれども、宮園先生が御説明いただいたラジオセラノスティクスについて、コメントをさせていただければと思います。
 このラジオセラノスティクス、核医学治療と診断の融合ということで、非常に重要かと思っております。様々な薬剤や放射線核種の組み合わせが考えられることによって、非常に強力な治療法となることが、そういう可能性が考えられると思っています。
 先生から御説明いただいたP-PROMOTEによって多くの研究者が、この研究を実施できるということが非常によいことだと思っております。
 一方で、これを安全に利用していくためには、様々な問題があるとも理解しておりまして、治療薬の製造においては、PET薬剤のような、いわゆる学会GMPだけではなくて、法律に基づいたようなGMP基準が必要だと考えています。
 放射性物質と薬剤に対してそれぞれ陰圧管理と陽圧管理という相反する管理方法が求められるところで、規制当局や審査機関、メーカーを交えて慎重な策定が必要になると考えております。
 また、線量評価についても診断薬の体内動態からの治療薬、特に飛程が短いアルファ核種の製造の、そういった線量推定法の確立などの知見も必要となってまいります。
 社会実装までには、そのほかにも様々な課題がありまして、いずれも学会や関係機関との密な調整が必要と考えております。
 藤原先生から御指摘いただいたように、基礎から保険医療まで持っていくということが重要であって、一気通貫の研究が重要かと思っております。
 こちらについては、野田先生からも基礎から臨床まで、AMEDのサポートが必要ということで御指摘がありました。次世代から革新がんへ向けて、切れ目ないサポートをぜひお願いしたいと考えております。
 ぜひ理研様や、ほかのアカデミアや、産業界のお力をお借りして、オールジャパン体制で、ラジオセラノスティクスに取り組んでまいりたいと思っておりますので、ぜひ御支援いただければと考えております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、谷島構成員、お願いします。
○谷島構成員 治す治療と両輪で、支持療法、緩和ケア、社会的サポート等、患者一人一人が幸せに生きるための研究をお願いしたいと思っております。医療の進歩には、本当に非常に感謝しております。
 と同時に、がんを治す治療の進歩に伴って、一人一人が幸せに生きるというか、いわゆるWell-beingの実現のための研究の必要性をより感じております。
 複雑多様化していくことが今後考えられる、副作用及び後遺症並びに精神、心理、社会的な苦痛のメカニズムというのを明らかにして、支持療法や緩和治療、社会的サポートの研究を進めていくべきと考えております。
 中間報告では、支持療法や緩和ケア等も、こちらの項目に入っておりましたので、ここで述べさせていただきました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、山本構成員、お願いします。
○山本構成員 医機連の山本です。
 本日、野田先生からありました任意型検診を通して標準検診にしていく話は、まさに社会実装をどのように実現していく話ではないかと思って聞いておりました。例えば、我々もAIを使った診断を推し進めていくわけですが、やはりここでも社会実装の重要性を痛感しています。ほかの先生も何人か言及されています通り、また、我々としても、前回も申し上げましたが、社会実装が大変重要であることは、再度強調させていただきたいと思います。もちろん、研究ですので、入口が大変重要であることは理解していますが、出口である社会実装の研究に関しても、御考慮いただきたいと思っていますし、我々も一緒になってやらせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上です
○中釜座長 ありがとうございました。
 では最後に、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 ありがとうございます。
 先ほども放射線の内用療法のことで御議論があったかと思います。現状行われている標準治療には優先順位というものが、保険診療上いろいろ決められているかと思いますけれども、それが果たして患者さんの一番負担にならない方法なのでしょうか。放射線内用療法で、前立腺がんの、特に塩化ラジウム223であれば、標準的な治療をされても効果がない去勢抵抗性の方という条件が書かれてありますけれども、そうではなくて、作用機序から考えれば、標準的な治療の前から使っても患者さんの体の負担なく使えるのではないかと想像したりするのですけれども、そういった患者さんの体に負担がない治療が優先順位というのとか、順番というものを変更することが、患者さんの体に負担が少ないという視点で、再検討いただけるような研究があればと思いました。
○中釜座長 重要な御指摘ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 では、時間も限られていますので、次の課題で、資料1の23ページ「(5)ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域」の中で、特に小児がんに関する研究について御意見お願いしたいと思います。
 時間も限られていますので、御発言はできるだけ簡潔に、テーマ、項目にある程度限定した内容で御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。
 この小児がんについて、大賀参考人、追加で御発言はございますか。
○大賀参考人 本日、様々な領域の先生からお話を聞かせていただきまして、小児では非常に難しいかもしれませんけれども、ケースマッチングだとか、任意型検診だとかは、この10年ではないかもしれませんけれども、将来的には関係してくるのではないかという感想を持っています。
 もう一つは、希少がんと小児がんは、多様性と希少性から研究の方向性としては、何らかの形で連携ができると非常にいいかなと思います。
 以上、感想でございます、すみません。
○松尾座長 ありがとうございます。
 1点私から質問ですけれども、今日の先生の御発表の中で、やはりゲノム医療であるとか、あるいは中央診断体制から、かなり開発の体制が整ってきているという印象を受けたのですが、まだ依然として大きな課題として残るものを1つ挙げるとすると、どういう点がありますか。
○大賀参考人 やはりゲノムの情報、それから臨床情報を統合的に、この多様性と希少性の中でやっていくデータベース、それからセンター化というか、そういうところの基盤形成に非常に支援がほしいと、子供たちのために考えております。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに、この小児がんに関する研究に関して御発言はございますか。
 中村構成員、お願いします。
○中村構成員 簡単に申し上げますと、海外では小児がんサバイバーの問題というのは、非常に大きく取り上げられていて、前に申し上げたように、やはり小児がんサバイバーの寿命が短い、50歳前後と言われていますので、本当に今のような強い抗がん剤が全員に必要かどうかということも含めて、やはり子供さんは、がんは治ったけれどもダメージが大きい、そういうことは、やはり、国として検証していく必要があると思いますので、ぜひ考えていただければと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今日、大賀参考人が御発表になった長期フォローアップの体制とともに、この辺りの課題を抽出し、研究する体制の必要性と御理解いたしました。ありがとうございます。
 ほかは、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 続きまして次の項目、資料1の29ページ「(9)各柱にまたがる『横断的な事項』について」、まずシーズ探索について、御意見をお願いしたいと思います。
 宮園参考人から何か追加で御発言はございますか。
○宮園参考人 いいえ、今日発表させていただいたとおりであります。
 それで、前回、末松参考人からAMEDのがんの研究費が徐々に減っているのではないかということを指摘されまして、いろいろ調べました。確かに徐々に減っております。やはりこういう課題というのは、私は次世代がん研究3期目に入って、しかも7年認められたということで、そういう点でほっとしていたのですけれども、やはり少しずつ減っているというのは、どうしても継続していくと、お金というのは減っていくのかなと思った次第です。
 そういった意味でも、やはりもう少し何か訴えるようなものをみんなで検討していかなくてはということで、今回、幾つか戦略的なもの、プロジェクトというので紹介させていただきました。
 繰り返しになりますけれども、先ほど紹介しましたNCIのRASイニシアティブですね、脳研究では、ブレインイニシアティブというのがありますし、そういう感じでやはり国全体として集中的に戦略的にやっていこうという取組がありますので、そういったものをまた議論させていただければと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、佐谷構成員、お願いします。
○佐谷構成員 ここで述べるべきかどうか分からなかったのですが、1つ言いたかったことは、今後やはり標的が見つかって開発が進んでいくと、日本でも、いわゆるEmerging Biopharmaが中心となって、実際の薬剤を開発していくことになるのですが、先ほどの話の中にもありましたけれども、今の日本の状況では、ベンチャーができても、それに資金を投資するベンチャーキャピタルが整備されていないので、ベンチャーが海外へ逃げていってしまう。最終的には日本の患者さんに対して、せっかく日本で開発された薬剤が届かないという状況があると思うのです。
 ですから、今後は投資をきちんとするキャピタルを国内に整備する必要があって、がんの問題というのは、文科や厚労だけではなくて、経産省もその部分には十分参入していただいて、こういうキャピタルを育てるということが必要ではないかなと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今日の御発表にもありましたけれども、経済的な要因の強化と、シーズ探索における開発パイプラインの充実、CDMOのご指摘もあり、その点が重要だと理解いたしました。
 宮園参考人、追加で御発言ございますか。
○宮園参考人 今の佐谷構成員の御発言と関連するのですけれども、革新がん研究で、非臨床研究でいいところまで行っても、なかなか臨床研究に行かないので、支援が必要だということを堀田先生から御指摘があったことがあります。
 日本の創薬のVCに関して難しいのは、シングルアセットと言うのですけれども、シーズが1つしかないと、日本は、すみません、私は詳細を知らないのですけれども、法律上か何かで、IPOが難しいのですか、何かそういうことがあるということで、なかなかVCがつかないという話も聞いたことがありまして、それで海外に行くのだと。間違いかもしれませんが、そういったことも聞きまして、そういった制度上の問題もあるのではないかと聞きまして、そこからも改革していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○中釜座長 重要な御指摘だと思いました。各省庁で御検討いただけばと思います。
 古関構成員、お願いいたします。
○古関構成員 ありがとうございます。
 私も佐谷先生のお話に関連したところなのですけれども、私たち基礎生物学のほうからやっていますと、私の場合は、必ずしもがんではないのですけれども、結構いろいろな病気のモデルがあって、それをもう一個別のノックアウトマウスを交配することで、その病気が治ったりということは、何回か経験するところなのですけれども、そうしますと、例えばそれを何かの抗体に置き換えていきたいというようなことは、よく感じるところなのですけれども、例えば、先ほどのお話にありました、Emerging Biopharma何たらとか、恐らく世界中に山のようにあって、ほとんどの増殖因子ですとか、介入できるところに対する人型の抗体というのは、どこかが恐らく開発している。
 そういうところと、もう少し早い段階にある基礎研究の研究者がリンクしてできるような、そういう仕込みというのがどこかにあると非常にありがたいのかなと。やはり介入手段に入っていくためには、なかなかすごく大きなところがありますし、恐らくそういう会社は、逆にどういう病気に使えるかというところを探しているのではないかという部分もあるのではないかと思いますので、ふさわしい発言かどうか分からないのですけれども、そんなふうに思いました。
 以上であります。
○中釜座長 ありがとうございます。
 研究者側と開発側とのマッチングや、その強化が必要と思います。
 それでは、石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 今の研究者とのマッチングは、少し関係あるのですが、知財のお話をさせていただきたいと思います。
 私ども研究者として、いろいろなシーズ探索を基礎研究でやっていくと、新しい発見があった場合、1点は、それの新規性がどうであるかを調査する際に、私の場合、東北大学の機能を使うわけですが、その機能は非常に弱いと思います。
 それから、もう1点は知財を申請する際の費用ですが、これが所属先の大学機関では、それは一部しか持ってくれないので、研究者がその多くの部分を負担するという問題です。
 このため、せっかくの知財として良いものを見つけても、それをちゃんと新しい知財として発掘できないし、維持できない問題です。
 加えて企業とのマッチングの問題があり、個々の研究者レベルでは、良い企業のマッチング相手を探すというのはなかなか難しい。
 したがって、仮にいい知財を見つけたとしても、それが企業に評価してもらう機会がないし、また、知財を維持するために非常にお金がかかってしまいます。
 私の例で言えば、私のある知財のものが悪いのかもしれませんけれども、結局維持費を100万以上かけても、10年かかってもものにならなかったりすることが、何回もありました。もちろん、良いシーズであれば、そういう問題は無いのかもしれませんが。そういった知財関連の支援が、やはり足りないのではないかということを申し上げておきます。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ほかに、このシーズ探索に関して、何か御発言ございますでしょうか。
 探索から開発への仕組みそのもの、その社会経済環境の重要性を御指摘いただいたと思います。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、次の項目で、資料1の33ページ「(9)各柱にまたがる『横断的事項』について」の中で、がんゲノム医療に係る研究についての御意見をお願いしたいと思います。
 今日の構成員の御発表の中にも、幾つかゲノム医療の重要性、データ基盤の重要性の御指摘ありましたが、何か追加で御発言はございますでしょうか。
 それでは、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 ゲノムに関して2点ございまして、1つ目は、遺伝子パネル検査の保険適用による検査タイミングであったり、回数の最適化について研究を進めていただきたいと思っています。
 特に、治療法が乏しくて、予後が不良とされるがんにおいては、標準治療の終了を待たずに、パネル検査の実施が必要ではないかと思っています。
 あと、病状によっては複数回の検査における保険適用などを検討して、治験をはじめ、できるだけ多くの治療機会へと患者さんをつなげるための研究を進めていただきたいと思っています。
 こちらの状況も、海外と差ができている分野と感じていますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 2点目は、ゲノム医療です。国民が安心して受けられるようにするための社会的方策及び環境の整備に関する研究も必要ではないかと思っております。
 私自身も、遺伝子パネル検査を受けましたが、やはり遺伝性腫瘍が判明する可能性の説明を受けた際に、遺伝情報がもたらす周囲や、社会に及ぼす影響が本当に自分ごとになって、大きな不安を抱えました。
 ですので、最も重要な社会課題として今後なっていくであろうゲノムに関して、先日、いわゆるゲノム法というのが成立しましたが、差別の防止や究極の個人情報であるゲノム情報の取扱いについて、社会的方策を今後研究していく必要があると考えております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 重要な御指摘と理解いたします。
 それでは、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 谷島構成員の今の発言に附随する形になります。
 先にゲノム医療法を成立して、様々な差別を抑制していく、禁止していくという取組が行われるようになるという方針は定められましたけれども、アメリカにおいても、2008年にGINA法、米国版の遺伝子情報差別禁止法が成立していますが、その後のジョージタウン大学の調査では、そういう差別禁止法ができたにもかかわらず、保険加入を拒否されたという事例が22%あったという報道もあります。
 また、社会学者のドロシーネルキンさんは、遺伝子検査というのは、単に医学的な実験方法だけではなくて、社会的な新たなカテゴリーとして、全兆候的な病者というものを誕生させるということで、警鐘を鳴らしております。ぜひその遺伝子検査を受けて、まだ未病状態の状況になる、あるいは将来発症が予測されるかもしれない家族とか、そういった人たちに対しても、様々な社会的な配慮というのが重要になってくるかと思います。先ほど谷島構成員がおっしゃったようなことに附随した発言になります。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、阿久津構成員、お願いいたします。
○阿久津構成員 ありがとうございます。
 今、谷島さんと大井さんがおっしゃられたところで、AIのところでお伝えしようかなと思っていたのですけれども、やはり遺伝のゲノムの情報を正しく個人の差別にならないようにまとめて、きちんと実装させていくというか、それをきちんと生かせるようにしていくというような基盤というものが非常に大事になってくるのではないかなと思います。
 先ほどもありましたけれども、オプトイン、オプトアウトの問題とかもあると思いますし、ただ、未来があるなと思ったのは、ゲノムバンクがとてもたくさん今、きちんとされて集まっていて、相当の人数が集められているという事実は、すばらしいことではないかなと思うのですけれども、ここから先10年に向けて、いかに患者さんの遺伝も含めた情報ですとか、ゲノムの情報というものを統計的に解析するためにも、そうした情報を集めるデータベースの研究を進めていただきたいと感じているところでございます。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の3名の方々の御指摘は、ゲノム医療を推進するためにも、倫理的、法的、社会的な課題についての研究も並行して進める必要があるのだろうという御指摘だと理解いたしました。
 中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 少し追加で触れさせていただきたいのですけれども、遺伝子パネルをいつ受けるのかという話ですけれども、早いほうがいいに決まっているわけで、科学がなくて、何となく診療報酬の観点から後回しになっていると考えています。やはり必要な検査を必要なときにやるというのが大事で、これは、今後の社会的課題として考えていく必要があると思います。
 それから、ゲノム医療法ができて、差別がどうのこうのという話が出ていますけれども、基本的に遺伝子が見つかったから差別が生まれるのではなくて、もともとある遺伝する病気に対する差別意識というか、それが遺伝子に結びつくだけであって、本来、差別そのものをなくすという教育をしていかないといけないと思っています。私はずっと言い続けていますけれども、やはり遺伝子が違うから差別をするのではなくて、もともとあった差別と遺伝子がリンクされるだけであって、やはりそういう差別そのものが理不尽だという教育をしていく必要があると思っています。
 だから、何となく遺伝子差別という言い方をしていますけれども、根源はもともとある差別に遺伝子がくっつくだけであるということで、やはりいろいろな病気を含めて、人間の多様性を理解し合って、お互いに違うということをリスペクトする教育をしていかない限り、これはやはり後先を考えると、差別をなくすという教育の中で多様性を認め合うと、その中に遺伝性疾患も含まれるということを考えていく必要があると思いますし、そこを根源的に教育の問題から考えていかない限り、幾ら法律ができても、人の気持ちが変わらない限り変わらないと思います。
 もう一点、AIかどうかという話ですけれども、やはり今行われているエキスパートパネルというのは、恐らくもうAIに置き換わってくると思います。そういうことを考えて、この10年間何をするのかということを考えていく必要があるわけですし、どこかの病院に行かなければ、この遺伝子検査は受けられないというのではなくて、どこの病院でも組織さえ取ることができれば、同じクオリティの診断を、いつでも、どこでも、誰でもが受けられるという発想が、我々には必要ではないかと思います。
 それから1点だけ、末松先生が、大きなバイオバンクは東北にしかないというような発言をされましたけれども、バイオバンクジャパンを始めた当事者として、バイオバンクジャパンには27万人分のDNAと、症例数でいうと44万症例のサンプルが蓄積されているわけで、この会議ははYouTubeで流れているので、誤解を解いておきますけれども、決して東北だけに大きなバイオバンクがあるというのではないということを御理解していただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 重要な御指摘と思います。
 では、間野参考人。
○間野参考人 間野でございます。
 今、移動中ですので、ビデオをオフで失礼します。
 この3月まで、がんゲノム医療のデータベースセンターであるC-CATに関わっていた者として、今パネル検査を受けた方には、日本で行われている臨床試験に関しては、速やかに、最新の情報が返っていますので、日本はそういう意味では、臨床試験にアクセスしやすい国になったと思います。
 あと、先ほどの中村構成員の意見と少し関連するのですけれども、国民皆保険の下で、がんのゲノム医療をする国に日本はなったわけですから、がんのゲノムに関して、もう少し基本的な情報を学校の教育で教えるべきではないかと思います。
 例えば、がんは後天的な遺伝子変異が様々な臓器に蓄積して起きる病気なので、蓄積した変異自体は卵子や精子には影響せず次の世代に遺伝はしないとか、でも、精子や卵子の遺伝子のゲノムの中で、一部変異がある場合には、遺伝的にがんを発症しやすい状態が遺伝することがあるとか、体細胞変異と生殖細胞系列の変異とかは、ごく基本的なことでいいので、例えば中学校の保健体育の授業でみんな学ぶと良いのではと思います。遺伝子とか遺伝ということ関して、極端な過剰な怖さみたいなのを感じずに、ちゃんと高いリテラシーを持って、ゲノムに向き合える、そういう教育も大事ではないかと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 末松参考人、お願いいたします。
○末松参考人 公の会議ですので、フェイス・トゥー・フェイスになっているので、少しだけ言わせていただきますと、東北が最大であるというのは誤解であるということだったのですけれども、私が申し上げたかったのは、いろいろな研究機関が個別にデータベースとかバイオバンクを立ち上げて、それをお互いにすり合わせて、大きなネットワークにしていくというところが、私の今日の論点の一番重要なところであります。
 その意味で、今日御紹介したものは、私の誤解ではなく、ファクトデータの示す客観データであると思いますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○中村構成員 バイオバンクが大きいか小さいかという話をされたので、やはり数字そのものは、症例の数で言うと圧倒的にバイオバンクジャパンが大きいので、そこは、はっきりとさせていただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございました。
 末松参考人が御指摘のように、日本では、バイオバンクジャパンと東北メディカル・メガバンク、それからNCのバイオバンクに加えて、大学のバイオバンクを統合したネットワークができたということで、100万に近いリソースを使える環境を整えられたところは変わらないかと思いますので、そういうものを使って、いかにゲノム医療をはじめとした様々な研究を推進できるかという重要性を、中村構成員、末松参考人が御指摘されていると理解いたします。ありがとうございます。
 それから、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 すみません、少し補足なのですが、先ほどの発言の中で、遺伝に関して、差別そのものがなくなっていくことが必要だというお話があったのですが、当然それが一番大事だと思っていて、一方、私が遺伝子パネル検査を受けたときに、何か見つかった場合を想定して、気になったのが、例えば娘にどう伝えたらいいかであるとか、自分の兄弟にどう伝えていったらいいかと、その後、誰がサポートしてくれるかなということが、非常にいろいろ具体的なことが出てきまして、そういったものも含めた社会的なサポートというものも、一緒に研究を進めていっていただけたらと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 これまでの参考人、構成員の御意見では、ゲノム医療を中心に、それを推進するためにも、教育環境や社会及び経済的な環境の整備も相まって進める必要があるだろうというご指摘でした。
 逆に言うと、そのように倫理、社会的な問題を考えていく重要なテーマとして、ゲノム医療が位置づけられているということかもしれませんので、今後の研究の中で、どう取り扱っていけるかということを考えながら、10年後を見据えた研究体制の在り方ということが重要だと、御指摘いただいたと理解いたしました。ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、次の項目として、もう既に議論されている問題でありますが、資料1の41ページ「(9)各柱にまたがる『横断的な事項』について」の中で、AI等の新たな科学技術についての項目です。この点について、御意見をお伺いしたいと思います。
 黒瀬構成員、お願いいたします。
○黒瀬構○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 先ほど日本医師会も絡んでいるAIプラットフォームですとか、あるいはAIホスピタルの御案内もしていただいてありがとうございます。
 私ども、以前から御指摘させていただいておりますし、また、事前提出意見でも、42ページに挙げていただいておりますけれども、やはり医療AIが今後医療現場で実装されていく、そして、どんどん普及していくためには、それは当然必要だと思うのですけれども、臨床現場における倫理面の合意形成ですとか、あるいは法的な基盤の整備ですとか、さらには人材の育成、こういったことが喫緊の課題となっていると受け止めています。
 ですので、この点に関して、より国民の大きな合意が得られるように、ぜひ研究も進めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、郡山参考人、お願いします。
○郡山参考人 ありがとうございます。
 AIではないのですけれども、環境中の発がん性物質に関するモニタリング、あるいは環境、疫学者と連携したような、そういった研究分野の開発というのは、今後必要になってくるのではないかなと考えます。
 中間報告の中でも少し環境中の化学物質の発がん性に関する研究など、触れていただいておりますけれども、最近のPFASなどのニュースなどを拝聴していると、基礎的な研究、動物を使った研究などで発がん性が明らかになっているというところまでは、多分情報発信は行っているのですけれども、その後がうまく回ってなかったりする場合があります。
 そうすると、やはりリスクコミュニケーションであったり、社会学であったり、あるいは法律学者であったり、そういった方々も含めた新たな分野というか、非常に横断的な、そういった研究が、今後はますます重要になっていくのかなと考えます。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 これまで、あまり御指摘されていなかった点かと思いますが、重要な課題だと思います。ありがとうございました。
 それでは、山本構成員、お願いいたします。
○山本構成員 山本です。
 私個人の意見も含め、AIは、ツールであるとの認識ですし、皆さま方も異論はないと思います。このツールを使うときに、医療、特にがんという観点において、2つの点が重要と考えています。1つは先ほど藤原先生が言われたような情報漏洩がない、すなわち情報セキュリティー等に代表される共通プラットフォームの構築に類する部分、もう一つは、データの利活用に代表されるアプリケーション開発に相当する部分です。特に、アプリケーションは、今後多数開発されていくことになると思います。
 こういう状況下で、がん研究、特にAIに関係するアプリケーション開発を進めていくには、優先順位付けが必須になってくると思います。
 優先順位に関しては、国のがん研究において進めるにあたっては行政、先生方の御指導が重要と思います。是非、御指導をよろしくお願いします。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、福田参考人、お願いします。
○福田参考人 福田でございます。
 45ページの中間評価のところに、患者報告アウトカム、PROについてのことが記載されていまして、それについてコメントをしたいのですけれども、この項目の関係で言うと、やはり新たな技術、例えばスマートフォンとかを使って、電子的に患者報告アウトカムを集める、我々はePROと言っていますけれども、これに注目しているところです。
 こういう技術が発展することによって、患者さんの状態を逐次把握できる、かなり頻繁に把握できるという情報収集上のメリットがあるだけではなくて、その情報を医療提供者と共有できますので、そこで適切な介入を速やかに患者さんに提供することによって、メリットがあるという面も想定されると思うからです。
 実際に海外でされている研究でも、たしか対象は肺がん患者さんだったと思いますけれども、ePROによって患者の状態をモニターして介入する方法と、従来どおり定期的な受診時に、それを把握していくという方法を比較するRCTが行われていて、これによって、例えば有意に生存年数も延長するとか、そういう研究成果なども報告されていたりしますので、日本としても、こういう技術の開発とか、あるいはそれによる効果検証の研究も重要ではないかと考えます。
 以上です。
○中釜座長 重要な御指摘だと思います。
 既にAMEDでもePROを使ったような研究が取り上げられていると理解していますので、さらなる強化の必要性と理解いたしました。ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか、AIに関連して。
 では、中村構成員、お願いします。
○中村構成員 AIやデジタルという問題は、やはり医療分野にとって非常に大きな課題で、先ほどから出ているプライバシーの問題というのは間違いないのですけれども、やはり、患者さんと医療機関が情報を共有して、いろいろな介入をしていくという観点では非常に大事なので、AIが問題だ問題だと言っても、どんどんこの分野は進んでいくので、AIをどう使っていくのかという議論を、本当は国レベルでやっていかなければならないと思うのですけれども、それが遅れている間に、また遅れてしまいますので、やはりAIの問題点を挙げる以前に、やはりどう使っていくのかという積極的な議論を進めていくことが非常に重要だと思います。、このがんの分野に限っても、例えば抗がん剤治療を受けておられる方の日常生活をどうモニタリングしていくのかというのは、非常に大きな問題ですので、それも含めてAI、デジタル化というのは必要だと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 そのほかございますでしょうか。よろしいですか。
 続きまして、資料1の47ページの(10)ですが、その他の論点についてなります。既に構成員、参考人の方々から幾つか御意見をいただいていますが、追加での御発言がございますでしょうか。
 では、黒瀨構成員、お願いいたします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 先ほど野田参考人も、ちらっとプレゼンテーションの中で触れていただいたと思うのですけれども、やはり今後のがん対策推進基本計画に基づいて、どういった指標で行っていくかというところに関して、今までは死亡率の低下というのを最終目標にしておりますけれども、やはりこれからの高齢社会、あるいは治し支える医療ということを考えた場合に、死亡率の低下ということよりも、もっと新しい適切な指標を検討すべきだと思います。
 例えば、健康寿命の延伸に資する指標という、考え方としてはWell-beingに資するような指標、こういったものを、それこそAIを用いて我々も構築していく必要があるのではないかと考えておりますし、その点を期待しておりますので、どうぞよろしくお願いします。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 ありがとうございます。
 2点ございます。1点目は、がん対策においても健康格差の視点が必要ではないかと思っております。
 誰一人取り残さないがん対策を推進するために、がん対策における地域や経済状況の違いや、障害の有無等による格差を明らかにして、患者の社会的背景に基づく適切な支援について、より深掘りして研究を進めていく必要があるのではないかと思っております。
 2点目は、今回御家族とか御遺族という、そばで支える方に対しての言及が抜けていたのではないかと思っております。
 御家族、御遺族等、そばで支える方、支えてこられた方々へのサポートについて、どうしても忘れられがちになってしまいますので、そこについても研究を進めていくべきではないかなと思っております。
 例えば、御家族との関係は相互に大きな影響を及ぼしますし、遺族の生きる日々というのは、患者の終末期の状況に影響されるように感じております。
 この辺りの研究が進めば、治療と生活の両立や、終末期の選択も変わってくるのではないかと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 PPIの参画の重要性の一端と理解いたしました。
 阿久津構成員、お願いします。
○阿久津構成員 ありがとうございます。
 今の黒瀨先生と谷島さんにも絡むところではございますけれども、やはり死亡率に代わる評価指標というのは、必ず必要だなと感じておりまして、検診の点でも、今、マンモグラフィーとエコー検査が走っていますけれども、それに関しても40代以上しか、今、調査がされてなくて、しかもそれも結果が出るのが、長期生存が可能になっている乳がんだと、それ以降の15年、20年かかるというところで、結局のところ、それ以外の指標がないがゆえに変わっていかないと。
 これが、もしかすると経済的指標で、先に見つけていて、エコーだけの検査でも、もしもですけれども、見つかるのであれば、経済的には下がる可能性とかもあるわけで、そうした様々な指標による研究というのがなされていって、それは、多分、今皆さんがお持ちのリアルデータの中で検索すれば、その答えも出てくるのではないのかなと感じていますので、そういった部分のAIも含めた、システムを利用した次の研究というのが、確実に必要になってくるのではないかと考えております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 御指摘の点は、野田参考人が御指摘されたバイオマーカーの開発や、検診技術へのバイオマーカーの導入などとも関係するように思いました。御指摘ありがとうございました。
 それでは、郡山参考人、お願いいたします。
○郡山参考人 ありがとうございます。
 私は疫学が専門なので、少し疫学的な立場でコメントをさせていただきます。
 前回からデータベースの整備などについても御指摘があったと思いますけれども、御存じのように日本では、就学前は地域保健の母子保健という領域で健康の管理をし、それから学校に上がると、学校保健というところで健康管理をしていくということで、その後は産業保健の分野、また、高齢者になると地域保健ということで、データが分断化しているというのが日本の問題点であるということは、もう皆さん、共通の認識であると思います。
 そこを生まれる前から、実は、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる頃からの健康状態をつなげていくような、そういったデータベースというものが、何らかの形で、全員は無理でも、どこかモデル地区のようなところで、構築できると非常に有効なデータベースになると思われます。
 例えば、環境省などが、今、エコチル調査といって10万組の親子のコホート調査を行っております。もう十数年経っておりますので、生まれたお子さんが中学校に達しようとするような、そんな大規模なコホート調査です。
 もともとは、がんなどは対象としておりませんでしたけれども、何らかの形でこういった既存のコホート研究のデータベースなども、今後生かしていけるといいのかなと思ったりします。
 現在、がんを対象として立ち上がっているコホート研究というのは、35歳あるいは40歳以降の、ベースライン時の年齢が、そういう成人が対象ですので、ほかの既存のコホート研究などのデータベースなども、今後はぜひ生かしていければと考えております。
 以上です。
○中釜座長 重要な御指摘、ありがとうございました。
 続きまして、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 これまでのいろいろな発表をお聞きしていて、やはりがんにならないとか、がんを治すといったことを目標とするということでの様々な研究や取組ということのお話があり、それに関してどう取り組んでいくかということのお話があったかと思うのですけれども、社会保障制度改革促進法第6条第3項には、人生の最終段階に穏やかに過ごすことができる環境を整備することということが、2016年に明記されました。現在、緩和ケアについては、特に診断当初からということで様々な研究が行われて、診断当初からの緩和ケアへの取組とか、早期からの緩和ケアの介入ということが実装されてきておりますけれども、残念ながら、どうしても治療がかなわなかった、あるいは厳しい状況に置かれている人たちのためにも、そういった最終段階におけるサポートの在り方とか、支援の在り方に関する研究に関しても加味していただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、直江参考人、お願いいたします。
○直江参考人 私の意見は、今の大井構成員の話とかなり重なることもあります。
 今、日本の国民は、2人に1人ががんにかかり、3人に1人はがんで亡くなるということで、がん末期の療養に関する研究あるいは方策がやや乏しいのではないかと考えております。
 がん拠点病院を中心に、がん医療は進むわけですけれども、最終的には、やはり緩和ケアとか、ホスピス、それから在宅、最近は様々な施設、例えば、医療と介護と同時に受けられる、あるいは在宅と行き来するような施設が増えてございます。
 そういう施設の方と会話をする機会がたまにあるのですけれども、ある施設では、半数ががんを抱えたターミナルの方だという話も聞いたことがございますけれども、ただ、非常にレベルがヘテロでございまして、例えば、疼痛緩和をどうしているのだろう、栄養管理をどうしているのだろう、それから、今、お話しになった家族の医療負担はどのぐらいだろうということについて、少なくとも私は、あまり情報を持ち合わせていないのです。
 この辺について、医学研究ではないかもしれませんけれども、広い意味でのがん医療のレベルアップということでは、必要なエリアではないかと考えまして、発言をさせていただきました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 御指摘の点は、現在の項目になっている(7)(8)のサバイバーシップ、あるいは、がん対策の効果的な推進に係る研究は、他の領域、項目とも横断的に関係するので、今後、どのようにお互いに連携しながら、個別の項目を進めていくかという重要性と、公衆衛生を含めた社会的、倫理的な課題に関して、どのように各柱に関係づけるかという御指摘と理解いたしました。
 ほかにございますか。
 ありがとうございます。それでは、最初に戻りまして、がんの本態解明のところの研究で、最初あまり御意見をいただけなかったのですが、振り返りまして、何か追加での御発言はございますでしょうか。よろしいですかね。
 野田参考人、お願いいたします。
○野田参考人 先ほど、シーズ探索のところで佐谷先生がおっしゃった点ですが、シーズという名前がついた段階で、育成して導出する点の意識づけが必要であり、そのためにはベンチャーとのカップリングが必須となります。このように、次期戦略においても、今後は、先の出口、すなわち達成目標が、どんどん基礎研究の領域に近づいてくれば、そこでのがんの本態解明のための研究を、そうした出口に引きずられることなく推進することが、これから先、なかなか難しくなることを、大いに危惧します。
 ただ、そのときに、今後も本態解明研究の積極的な展開は大変に重要です。そして、先ほども言いましたけれども、生命の現象を見る一つ一つの解析技術は飛躍的な進歩を遂げており、そういうものを取り入れる努力をして、新たな本態解明のための基礎研究を推進することが重要です。そして、もう一つ重要なのが、先進的なバイオロジーから生まれている知見の積極的な取り込みですね。例えば、今、細胞老化という現象の解析から始まった老化研究の成果が、もう老化防止アプリの開発にまでつながろうという状況になっていますが、そこではがんの発生進展とのカップリングも見えてきていることを理解すれば、こうした新たな生物学の展開を取り込むことで、がんの基礎研究領域を積極的に拡大し、そこに革新的な解析技術を組み込むことで、各研究課題を、さらに新たなシーズ探索の研究フェーズに送り届けることが重要であると考えています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の野田参考人の発言に加えて、生体や細胞レベルのイメージングをどうしていくかということも、重要な視点と理解いたしました。ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、以上で本日の議事は、ここまでとさせていただきたいと思います。
 最後に事務局から、連絡事項等ありましたら、お願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 本日は活発に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
 本日いただきました御意見につきましては、前回と同様でございますが、座長とも御相談の上で、事務局のほうで整理していきたいと思います。
 それに当たりまして、構成員、参考人の先生方にも趣旨の確認等のため御連絡を差し上げることもあろうかと存じますので、その際は御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 次回以降の日程につきましては、追って御連絡をさせていただきます。
 それでは、本日は、ここまでとさせていただきます。御協力いただきまして、ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線2066)