2022年9月5日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和4年9月5日(月)15:00~

出席者

出席委員(21名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名出席


欠席委員(2名)五十音順

行政機関出席者
  • 八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  • 山本史(大臣官房審議官)
  • 中山智紀(医療機器審査管理課長)
  • 中井清人(医薬安全対策課長)
  • 鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
  • 池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医療機器審査管理課長 医療機器審査管理課長の中山です。定刻を過ぎましたので、薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多用の中、御出席くださいまして誠にありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況についてです。現時点で、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち21名に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを報告いたします。なお、14名の委員におかれましては、Webシステムにて出席いただいているという状況です。
 次に、本日の審議に参考人としてお越しいただいている先生を御紹介いたします。議題1につきましては、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教授の藤本学先生に、また、議題2につきましては、聖隷浜松病院心臓血管外科部長の小出昌秋先生に、Webシステムで出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に入ります前に、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から御申告いただき、この規定に該当されている委員はいないという旨を確認させていただいていることを御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面の御提出をいただいており御負担をお掛けしておりますが、引き続き御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 次に、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて、事務局から説明いたします。
○事務局 本日の議題の公開・非公開の取扱いについて説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日予定している全ての議題については、医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。
 続いて、配布資料の確認をさせていただきます。会場の皆様のお手元には、資料が格納されたタブレットのほか、議事次第及び座席表を紙でお配りしております。また、Webにて御参加されている委員の先生方におかれましては、事前にお送りした資料1~9をお手元に御用意ください。タブレットの操作について御不明点等がありましたら、お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。
 次に、Webで御参加される委員の先生方へ注意事項を説明いたします。審議中は、マイクミュート、通信環境等に支障がない限りカメラオンでお願いいたします。御発言の際は、画面右下の顔のマークのアイコンをクリックして、手のマークを押して挙手いただき、部会長から指名された後にマイクミュートを解除し、お名前をおっしゃっていただいた後に、御発言いただきますようお願いいたします。また、接続トラブルが発生した場合は、チャット欄を御利用いただくか、事前にお送りしました事務局連絡先まで御一報いただければと思います。
 次に、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業について御報告させていただきます。資料8を御覧ください。1ページに「デュオリスSD1 ウルトラ」について、2ページに「エドワーズ サピエン3」について、3ページに「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置」について、その他、一般的名称に係る影響企業のリストが4ページ以降にありますので、必要に応じて御覧ください。
 委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、議題1~7の議題について、薬事分科会審議参加規程第12条の「審議不参加の基準」に基づく審議に参加できない委員は、議題4において後藤委員が該当しております。また、薬事分科会審議参加規程第13条に基づく議決に御参加できない委員は、議題2において松宮委員、議題4において三村委員が該当しております。以上、報告いたします。
○医療機器審査管理課長 事務局からは以上です。以後の進行については、荒井部会長、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは始めさせていただきます。ここまでの事務局からの説明について、御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいですか。よろしければ、議題に入ります。
 議題1は、「医療機器「デュオリスSD1 ウルトラ」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、製造販売承認事項一部変更承認の可否及び使用成績評価の要否について」です。先ほどお話がありましたように、本議題については、参考人として藤本学先生に御出席いただいています。それでは、事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題1について、事務局より説明いたします。本議題では、医療機器「デュオリスSD1 ウルトラ」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定の要否、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、並びに使用成績評価の指定の要否について、御審議をお願いいたします。
 資料1-2のファイルをお開きください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて、新たに一般的名称を新設することになります。今回、「デュオリスSD1 ウルトラ」に対応して新設を予定する一般的名称は、「体外衝撃波皮膚潰瘍治療装置」です。定義は「体外から衝撃波を照射し、皮膚潰瘍の治療に使用する装置をいう。」としております。本品は、クラスIII、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。一般的名称の新設に関する御説明は以上です。
 次に、審議品目及び審査の概要について、機構から御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1「デュオリスSD1 ウルトラ」について、機構より説明いたします。最初に、資料1-1の1ページを御覧ください。本審査に当たり、記載しております4名の専門委員に御意見を頂きました。以降2ページから、審査報告書に基づいて審査の概要について御説明いたしますが、一番下に記載している大きい緑色の文字のページ番号に基づいて、説明箇所について説明いたします。
 初めに、品目の概要について御説明いたします。資料1-1の6ページを御覧ください。本品は、従来の電磁誘導式体外衝撃波結石破砕装置の出力を低出力に調整できるように設計した体外衝撃波疼痛治療装置であり、既に難治性の足底腱膜炎患者に対する除痛を目的として承認され、本邦で使用されております。本申請は、全身性強皮症患者における四肢の難治性潰瘍の治療に関わる適応を使用目的に追加し、また、それに伴い当該治療に使用する専用ハンドピースを構成品に追加するための、医療機器製造販売承認事項一部変更承認申請です。資料6ページの図1を御覧ください。本品は、主に装置本体、ハンドピース、スタンドオフから構成されますが、本申請においては、皮膚潰瘍治療用に開発したC-ACTORハンドピースが追加されております。
 次に、本品の開発の経緯について御説明いたします。7ページを御覧ください。本品による治療対象となる全身性強皮症患者は、本邦におよそ2万人程度いると推定され、当該疾患は指定難病とされております。全身性強皮症の症状の一つとして、末梢循環不全による虚血性の皮膚潰瘍が出現することがしばしばあります。しかしながら、全身性強皮症の潰瘍に対する治療方法として効果的な薬剤等の選択肢は少なく、新規の治療方法の開発が本邦では望まれている状況です。そこで申請者は、本邦において既に足底腱膜炎を対象として承認されており、海外では潰瘍治療においても許認可を得ている本品を、全身性強皮症患者に対する難治性潰瘍の治療にも使用できるよう適応を追加するため、本申請がなされました。
 本品の非臨床試験成績については、特段の問題は認められなかったため、臨床試験成績について御説明いたします。資料の13ページの表2を御覧ください。本品の臨床試験に関する資料として、本邦において、手に難治性潰瘍を有する全身性強皮症患者を対象に実施された、医師主導治験の臨床成績が提出されました。本試験は、血管拡張薬等による薬剤による通常治療を実施した通常治療群を対照として、通常治療に加えて治験機器による衝撃波治療を実施した本品群との比較を行う、非ランダム化試験のデザインで実施されました。本治験においては、本品のC-ACTORハンドピースとは外観等が異なる前世代品のハンドピースが使用されておりますが、焦点深度やエネルギー束密度といった衝撃波特性が同一であり差分がないことから、前世代品のハンドピースを使用した臨床成績を本品の審査に用いることは可能と判断しております。
 臨床試験の主な結果については、資料の16~19ページに記載しております。本品群と通常治療群の潰瘍数の変化については、特に18ページの図2及び図3を御覧いただければ分かりやすいと思います。審査報告書の黒い番号ですと17ページ、緑色の番号ですと18ページのグラフとなっております。本試験の主要評価項目として、治療開始後8週時点における総潰瘍数の減少数が設定されました。試験の結果、通常治療群に対し、本品群で有意に潰瘍数が減少していることが示されました。また、有効性の副次評価項目として、治療開始後4週、8週時に、20%、50%、70%潰瘍数が減少した被験者の割合も評価されております。具体的には、黒い番号ですと16ページ、緑の番号ですと17ページの、表3に具体的な結果を示しております。本評価項目においても、通常治療群に対し本品群で有意に高い結果が示されました。
 次に、審査報告書の黒い番号の18ページ、緑で19ページの、図4、図5を御覧ください。本治験においては、足にも潰瘍を有する症例については、手に加えて足にも治療を行っております。足に潰瘍を有する症例は、本品群で3例、通常治療群で4例のみでしたが、その結果がこちらの図4、図5に示しております。なお、足に対する治療結果については、特段の解析は行っておりません。
 続いて、小さい番号だと16ページ、緑の番号だと17ページを御覧ください。本試験においては、安全性として有害事象が評価されております。試験の結果、本品群で重篤な有害事象が30例中3件発現しましたが、いずれも本品との因果関係は否定されております。また、本品との因果関係が否定できない非重篤な有害事象が、本例で6件発現しておりますが、いずれも中等度から軽度の事象であり、中等度の有害事象のいずれも薬物療法により回復しております。
 次に、本品の審査における主な論点について御説明いたします。一つ目の論点は、本品の有効性及び安全性についてです。小さい番号ですと19ページ、緑ですと20ページの(1)を御覧ください。本品の有効性に関してですが、本治験では、主要評価項目である「治療開始後8週時点における総潰瘍数の減少数」について、通常治療群に対する本品群での有意な減少が示されました。一方で、同ページ20ページの中段の表に示しておりますとおり、総潰瘍数の減少数については、両群のベースラインにおける総潰瘍数の偏りの影響が考えられました。しかしながら、副次評価項目である、潰瘍数が減少した被験者の割合においても、通常治療群に対し本品群で有意に高い結果が示されていたことから、手の難治性潰瘍に対する本品の一定の有効性は示されていると考えております。
 また、本治験が非ランダム化比較試験として実施されたことや、本品群と通常治療群で試験実施施設が異なる点を踏まえ、有効性に対する比較評価を行うに当たって、適切性について検討いたしました。詳細は、同じく緑の番号で20ページの中段から次のページにかけて記載しておりますが、実際の併用薬の使用状況において群間に大きな偏りがないこと、難治性潰瘍の選択基準について厳密に定義することで一定の基準に基づく潰瘍を有する患者が登録されていることが、申請者より説明されました。また、施設の寒暖の影響により、潰瘍が増悪又は改善することが考えられましたので、症例が登録された時期の分布や治験実施施設の地域を確認しましたが、大きな偏りは認められませんでした。
 以上を踏まえ、機構は、非ランダム化比較試験は理想的な試験デザインではなかったものの、希少疾症に対する医師主導治験の実施可能性を考慮すると、やむを得なかったことも考えられ、施設の寒暖や治験実施施設の地域差に対する申請者の説明も踏まえて、本治験の有効性評価の結果は許容可能と判断しました。
 次に、本品の安全性に関してですが、本治験においては、治験機器との因果関係が否定できない重篤な有害事象の発現は認められず、非重篤な有害事象についても、中等度又は軽度であり、本品の安全性に関しては大きな問題はないと判断いたしました。
 なお、足の潰瘍に対する本品の有効性を裏付ける臨床成績は限定的ではありますが、全身性強皮症による足の難治性潰瘍に対する治療選択肢は限られており、臨床現場でのニーズが存在すること、手の潰瘍に対する有効性を単純に足に外挿することはできないものの、手における有効性及び本品の作用機序を踏まえると、足の難治性潰瘍の一部の症例に対しては有効性が期待できると考えられること、本治験及び過去のフィージビリティ試験、こちらは臨床研究ですが、こちらにおいて一部の結果ではあるものの、衝撃波治療により足の潰瘍数が減少している症例も認められていること、最後に、本品の安全性に大きな問題がないことを考慮し、製造販売後に引き続き情報を収集することを前提として、本品の適応部位を手に限定する必要はないと判断いたしました。以上を踏まえ、本品は、全身性強皮症における四肢の難治性潰瘍に対し、リスクベネフィットバランスを保つことができる治療方法であると判断いたしました。
 二つ目の論点は、製造販売後の安全対策についてです。小さい番号ですと22ページ、緑の番号ですと23ページの(2)を御覧ください。本品の基本的な操作方法は、体表面から衝撃波を照射するのみで、既承認品の足底腱膜炎に対する使用方法と大きく異なるものではなく、市販後の医師に対する訓練を要求するほどの手技の新規性はないと判断しております。また、全身性強皮症及び難治性潰瘍に対する適切な診断、治療が可能な医師や施設で使用されるのであれば、本品の治療のために、実施医や施設要件、適正使用指針を新たに策定する必要はないと考えております。添付文書において、同趣旨の注意喚起がなされたことも考慮し、承認条件を付与する必要はないと判断いたしました。
 なお、本治験では、あくまで薬剤による治療経験のある患者のみが登録されているものの、薬剤による潰瘍治療ができない患者に対して、本品で治療を行うことの意義もあると判断しております。本治験の結果に基づくと、本品の安全性は、対象患者の薬剤治療歴の有無にかかわらず問題がないと考えることから、添付文書において、そのような患者への使用に関する注意喚起を行うことで、適応を制限しないことに問題はないと判断いたしました。
 最後に、三つ目の論点は使用成績評価についてです。小さい番号で25ページ、緑の番号で26ページの表4を御覧ください。本品の対象患者である全身性強皮症は希少疾病であり、本治験で有効性及び安全性が検討された症例は30例と限定的であること、足の潰瘍に対する治療成績は更に限定的であることから、本品の対象患者の背景、薬剤併用時の安全性や有効性等について、市販後に情報を収集し、必要に応じてリスク低減な措置を講ずることが妥当であるため、使用成績調査が必要であると判断しました。治験成績との比較を行う上でも、観察期間は3か月とし、準備期間等を含めて使用成績評価期間は5年間とすることが妥当であると判断しました。
 最後、小さい番号で28ページ、緑の番号で29ページを御覧ください。以上の審査の結果、29ページに記載している修正後の使用目的により、機構は、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。また、使用成績評価の対象として指定し、使用成績評価期間は5年とすることが妥当と判断しました。本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。それではまず初めに、参考人としてお越しいただいている藤本学先生に追加の御発言を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○藤本参考人 大阪大学の藤本と申します。よろしくお願いいたします。全身性強皮症は、先ほど御説明がありましたように、我が国に約2万人患者さんがいると考えられていて、指定難病に含まれています。その中で、皮膚潰瘍、特に手指にできる手指潰瘍、指先潰瘍とも言われますが、このような潰瘍は非常に患者さんの数も多く、全経過では54%にこのような手指の潰瘍ができると、海外の大規模なスタディで報告されています。このような指先の潰瘍は日常生活に支障を来しますし、痛みも非常に強いので、患者さんのQOLを障害する症状の一つであり、これも海外の大規模なスタディによれば、強皮症の患者さんのQOLを障害する三つの大きな因子として、一つはレイノー現象、一つは消化器症状、それに並んで、この手指潰瘍というものがQOLを障害する3大因子にカウントされています。
 治療までの平均日数は、2016年4月にMichael Hughes氏とAriane L. Herrick氏により発表された「(Digital ulcers in systemic sclerosis)」という論文によると○○日ということで、非常に難治で、いろいろな治療を駆使しながら我々治療に当たっているというのが現状です。その治療ですが、大きく分けると、局所治療と全身治療に分けることができると思います。局所治療としては、種々の外用薬、デブリードマンとか、場合によっては手術をする場合もあります。全身治療としては、いわゆる内服とか静注の治療になりますが、降圧剤のカルシウム拮抗薬とかプロスタグランジン製剤、抗血小板薬、最近はエンドセリン受容体拮抗薬とかPDE-5阻害薬等も用いられるようになってきておりますが、多くは保険適用外の使用となっております。以上を踏まえて、薬剤、それから薬剤以外の分野ともに、有効な治療が必要とされる領域と考えております。以上です。
○荒井部会長 藤本先生、ありがとうございました。それでは、委員の方々から御質問、御意見はいかがですか。
では、私から一つ。この治験は、潰瘍の個数で評価をしていますが、これは結構治りにくい潰瘍だと思うのですが、治ったという判断は何か明確な基準をもって判断がされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。あくまでも上皮化と言いますか潰瘍が完全になくなったというところを、エンドポイントとして評価していると理解はしております。なので、具体的に定量的な評価というよりも、治験実施医師による目視による評価で、潰瘍部分が治癒して周りの健常皮膚と同じようになったところを、消失と定義しております。
○荒井部会長 そうしますと、その治験に参加している先生方の判断ということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○荒井部会長 永井先生、どうぞ。
○永井委員 部会長と同じ質問です。潰瘍が一口になくなるといっても、微妙なところがあり、誰が評価するのか、しかもそれを盲検下で評価するのか否かという点が数字に影響してくる可能性があると思います。責任医師、担当医師による評価が一番甘くなる可能性がありますよね。その次が、治験とは関係のない第三者ということになり、更に良いのは盲検化された評価委員による評価、そして最後に、盲検化した上で複数人によって中央判定するということです。一番最後になると大分信頼性が高くなると思いますが、今の御説明だと、現場の医師が判断したということですので、微妙なものをいい方向に判断してしまった可能性を否定できないかと思います。ついては、この数字どおりに理解してよいかという点に疑問がありますので、市販後にきちんと評価していただければいいと思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。先ほど説明いただきましたが、これは永井委員が言われたような、例えば主治医だけの判定なのか、あるいは複数名で判定したものかなどが重要と思われます。いずれにしても「目で見て」の判断ですから、永井委員が指摘されたような、何か信頼性が増すような方法を取っているのか、あるいは単純に、その施設の先生が減ったと言えば減ったということにしているのか、その辺について何か分かっていますか。
○医薬品医療機器総合機構 申し訳ありません。今の御指摘に対して、明確にクリアになるような御回答はできないのですが、申し上げたとおり、市販後調査も課す予定ではおります。もともと主観評価ではなくて、客観的な目で見て分かるというところもあったので、そのような評価を受け入れてはおりましたが、改めて市販後調査の際にも、そういった評価者バイアスが掛からないような、きちんとデータを収集していただきたいと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 機器についてお伺いします。ハンドピースによってスタンドオフI、IIがありますね。I、IIを選択するのは、潰瘍の深さによってI、IIを選択するのかどうか。Iの場合とIIの場合で、潰瘍の回復状況はどう違ったのか。それから、ハンドピースでは焦点が存在するはずです。そうすると、焦点を拡散するためにハンドルIを使うのか。IIを使う場合には、本来の焦点が近い所であって、それを深い所まで達するためにやるのか。目的がどのようにあって、この結果が得られたのかということを教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。ハンドピースI、IIという明確な区別は御説明できないのですが、治験においては、片方のスタンドオフだけを使用しておりまして、御指摘のとおり、スタンドオフを変えることで焦点深度が変わってしまいますので、市販後も片方のスタンドオフだけを使用することを申請者としても考えております。ただ、厳密にこちらを必ず使用してくださいという表現が不足していたことは説明不足であったかと思います。
○宮川委員 これはどちらを使用していたのですか。Iを使用していたのか、IIを使用していたのか。スタンドオフIを使うということであれば、ある程度圧迫したときに、その頂点から皮膚に対してある程度狭い地域で圧迫する形になると思うのです。スタンドオフIであれば、広い潰瘍面に対して余り圧迫をしないでやるのか、どのぐらいの圧迫を心掛けているのか、その圧迫の程度というか、そういうのもこの中に規定されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、スタンドオフですが、確認したところIIを治験においては使用していて、市販後においてもIIを併用することに限定されることになります。それから、スタンドオフの押し付け具合ということですが、それに関しては厳密に規定はしていないのが正直なところです。彼らからの説明ですと、焦点深度は基本的に0mm、体表面に当てることを意図して、ハンドピースに対してスタンドオフIIを併用していると説明されております。当然、押し付けた場合には深くなる可能性があります。
○宮川委員 そうですよね。つまり、スタンドオフIだと、衝撃波の焦点というのは、このスタンドオフIIの頂点に当たると考えていいのですか。それとも、もう少し先なのか、手前なのか。ですから、スタンドオフを少し圧迫することによって焦点に合わせるのか。それによっては、潰瘍面に対しての外的な因子としてある程度圧迫し続ける時間的な経過が存在するはずです。1点1点がある程度圧迫するような形になり、圧迫の程度に対して何も申請者はきちんと書いていない。どのように考えればよいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。失礼いたしました。従来の足底腱膜炎に対しては、体表面ではなく腱付着部の炎症部なので、ある程度深い所に焦点を持ってきて治療するというものです。この潰瘍治療においては、深い所へは意図しておらず、焦点深度が0mmになるように使用するというふうになっております。
○宮川委員 どうやって0になるように、ちゃんと焦点が当たるように調整するのですか。
○医薬品医療機器総合機構 現在頂いている説明ですと、スタンドオフIIを併用した場合に、焦点距離がスタンドオフの高さよりも内側に来るのです。
○宮川委員 内側に来るのですね。ですから、少し圧迫するということですよね。しないと焦点0にならないですよね。スタンドオフの頂点から内側ということは、スタンドオフの頂点よりも内側なのですから、ある程度皮膚面を圧迫しなければいけないですよね。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。すごく分かりにくくて申し訳ないのですが、彼らは焦点距離と焦点深度という表現を使い分けていまして、焦点距離というのはあくまでもこの機械の焦点がどこに当たるかで、それをスタンドオフIIを使った場合には、スタンドオフの高さの内側にどうしても焦点距離が来ます。申請者としては、必ずしも皮膚表面と焦点距離を一致させる必要はないと説明を受けておりまして、スタンドオフをたわませない、あくまでもスタンドオフの先端に皮膚表面が来るように使用すると伺っております。ですので、焦点距離はあくまでもスタンドオフの中で、焦点距離をあえて皮膚表面に合わせるつもりはないと伺っております。御理解いただけますか。
○宮川委員 でも、衝撃波の焦点というのが合わなければ、有効なパルスが与えられないということになります。つまり、焦点が合っていなければ、そのパルスが皮膚面に対してしっかりとした衝撃波を与えていないということになるわけです。それはしっかりと規定をしなければいけないわけですよね。常に皮膚面に対して衝撃波が有効に効くだけの距離というのが、衝撃波の焦点のはずですよね。そこに合致させるようにやっているのか、やっていないのかによって、これは当たり前ですが、有効か有効でないのか違いが存在してしまいます。それがなぜこの中に規定していないのですか。規定が書いていないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、治験においても市販後においても、同じ使い方をしようというふうには申請者は説明しておりまして、結果的に、つまり焦点を皮膚表面にあえて合わせなくてもよいという使い方となっています。
○宮川委員 では、衝撃波というのは、有効にかかっていなくても大丈夫という言い方なのでしょうか。パルスが焦点に合わなければ、パルスはその皮膚に対してしっかりと伝わらないではないですか。それがどうでもいいということになったら、これはどういうふうなパルスを与えていることになるのですか。それは説明になっていないですよ。
○医薬品医療機器総合機構 皮膚表面に照射される部分の圧力は臨床試験で評価されておりまして、○○○だと説明されております。
○宮川委員 ここの46/239には、機能として、電源オン、オフを切り換える、機器の設定や操作を行い、作動状況を表示する。衝撃波のエネルギーの設定、衝撃波、照射数の設定、モードの設定、照射数の表示、総照射のエネルギーの表示、これはできているはずなので、これがどのぐらいできているのか。一つの潰瘍に対してどのぐらいやったら有効なのか。一つずつが検証されて結果が出てくるはずなので、それがなぜ結果としてこれが表示されていないのか。これでは有効な治療が行われていないことになってしまいます。これを評価しているからこそ、一つの潰瘍面に対してどのくらい何分やりました、総照射数というか、その作業が60分以内に起こりましたということで、治療の評価ができているわけです。これでは全然評価していないということになってしまいます。今のお話だと評価してないという話になってしまいます。いい加減な照射の形でいいということになったらおかしな話になるので、どのように設定されたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 治験において、使用方法は規定されておりまして、スタンドオフはIIを使う、エネルギーレベルに関しては最大で0.25mJ/㎠という。
○宮川委員 それが有効にいっているかどうか、それでは設定できないではないですか。1個1個に対してそれが適正値に当たるように、これは設定していかなければいけない。そうでなければ、この照射の有効性が示されないはずなのですが、その一つずつがなぜ検証されていないのですか。
○医療機器審査第二部長 こちらからの説明が不足しておりまして申し訳ありません。御指摘のとおり、確かに衝撃波の焦点の部分に当てる必要があると思われますし、私どもは今、手元に持っておりませんが、この製品の開発の中で、そういったものについてどの程度許容できるかということは、非臨床の試験の中で確認できるはずの内容ですので、持ち帰りまして、その試験成績については確認したいと思います。その上で、その中でどの程度の距離が許容されるか、その場合にどの程度の圧力というか、そういうものが許容されるのかといったことについて確認の上で、必要に応じて添付文書あるいは情報提供の方で対応してまいりたいと考えております。
○宮川委員 それが分からなければ、これは審査できないです。それから、これが行われた室温が10℃~30℃、保存温度条件が0~60℃とすごいばらつきがあるのです。潰瘍というのはすごく微妙なところがあって、温度設定も室温設定も非常に重要なことなのだろうと思うのです。そうでなければ血流が非常にまちまちになってしまうのですけれども、それに対してもどのように設定されていたのでしょうか。治療のときの設定条件、患者さんの置かれている状況、そういうものがここに何にも書かれていないので、比べようがないのです。だから、幾らやってもバラバラになってしまう。治療の条件というのは、ある程度患者さんの条件を一定にしなければ評価ができないはずなのですが、これに対していかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 確かに、機器の設定や使う構成品は固定はしておりました。ただし、御指摘いただいたような、スタンドオフの押し込み具合や治療環境の温度に関しては規定はされていないというのが正直なところです。
○荒井部会長 規定がされていないというのは、データが今はない、あるいは企業から出てきていないという理解でいいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。治験時の環境温度に関して、気温、室温等に対する記録はないというのが正直なところです。この製品自体、設定できるパラメータとしては、出力のレベルだけなのです。
○荒井部会長 それは分かりました。ですから、宮川委員の質問に対しては、今、答えられるデータを持っていないということでいいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、おっしゃるとおりです。
○荒井部会長 これはかなり大事な問題ですが、宮川委員の御質問に関して、この後追求というか質問を増やしても、どうも答えがすぐには出てきそうにありません。小西委員と北澤委員からも手が挙がっていますので、今の宮川委員の御質問に関してはまだ明確に答えが出ていないということで、一旦ストップさせていただきたいと思います。小西委員、どうぞ御発言ください。
○小西委員 難治性潰瘍に対する新たな治療手段ということで、非常に期待感が高まる素晴らしいものではないかと思って期待しております。
 一つ知りたいのは、どういうメカニズムで効いて潰瘍を治すのかということが、
少し書いてあるのですが、御説明いただけると有り難いです。それから、そのメカニズムに関して、治療中に、例えば血流ですとか、それは確かに改善しているなというデータが出てきているかどうかについて教えてください。
 もう一つは、私どもも悩んでいる通常の褥瘡です。そういったものにも将来応用を考えておられるのかどうかも教えていただければ有り難いです。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。まず、本品の作用機序に関しては、全身性強皮症に関する動物モデルというものが確立したものがないので、全身性強皮症の潰瘍に対する動物実験の結果等は提出されておりません。代わりに提出された資料としては、難治性潰瘍として一般的に認知されている糖尿病を再現したマウスで皮膚を欠損したモデルを作り、それに対して衝撃波を当てた場合と当てていない場合で効果がどうかというような動物試験の結果は、提出されているところです。その結果、衝撃波を当てた群の方が、血管新生が促進されているということが確認されておりますので、単純に糖尿病のモデルを強皮症に外挿できるかどうかは難しいところはあるかもしれませんが、現時点ではその結果に基づいて血管新生を衝撃波によって促進させるという機序というふうに理解しております。
○小西委員 糖尿病の潰瘍や褥瘡にも応用していこうという流れはありますか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおり、海外においては、一般的な潰瘍全般で欧州で認可されておりますし、米国においても糖尿病性の潰瘍に対する適応を得ております。ですので、今後この商品をその他の潰瘍に対して適応拡大することは大いにあり得るかと思います。
○小西委員 ありがとうございました。よく分かりました。
○荒井部会長 北澤委員、どうぞ御発言ください。
○北澤委員 北澤です。審査報告書で機構は、今回の医師主導の治験、非ランダム化非盲検試験についてやむを得なかったと書かれていますが、本当にやむを得なかったのか、これを読んでいると疑問に感じました。例えば、実施群と非実施群を病院で分けているのですが、こういった分け方では、両群間にいろいろな差が出てくることはある意味当たり前で、本当にこれで比較試験になっているのかというところがやや疑問に感じました。
それに関連してなのですが、市販後の使用成績調査は全例調査で120例を集めると書かれています。これは、この治療をやった患者さんを120人、足の潰瘍は最低30人集めるということですが、集めただけでは、この患者さんにこれを使ってよくなったとかよくならなかったとか、そういう情報が分かるだけで、この治療法が有効なのかという情報は分からないと思うのです。なので、使用成績調査の中で、こういった治療法の有効性を検証できるような試験があればいいのではないかと思って発言させていただきました。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。実はこれもものすごく重い御指摘です。コメントはありますか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。審査報告書ですと、小さい番号で19ページ、大きい番号で20ページの中段以降に、試験デザインについて検討した結果を記載しております。今回、医師主導治験でしたが、非ランダム化試験を採用したというところ、当然なのですが比較臨床試験をする場合には、患者さんを無作為化していた場合の方が、より適切でより理想的な試験デザインであったと考えております。
 今回、実際申請者は、最初はシングルアームの試験を希望はされてはいたところですが、やはりそれは希少疾病でなかなか症例が集まらないというところが、一つの開発のネックになっていたところです。ただ、当時ですが、一般的な薬剤治療を行ったときに、どれだけ潰瘍が改善するかというヒストリカルデータのようなまとまったものがありませんでしたので、これは比較試験をしないことには、本品で効果が出たのか、薬剤治療を更に継続したからこそ効果が出たのかの判断ができなかったと思っています。そういったところも踏まえて、事前の相談では、少なくとも比較試験はしてほしいということで、比較試験にはなったというところがあります。さらにランダム化していればより理想的ではあったとは思うのですが、実際は症例数がなかなか集まらないということで、多施設で症例を登録しなければいけなかったというところがあります。
 それができなかった理由というのは、多施設でランダム化すると全ての施設に治験機器を置かなければいけないのですが、1台当たり○○○○○円以上する高額なものなので、コストの面からできなかったのが正直なところです。加えて、大きい施設でより観察期間を延ばして倍の症例数を集めるということもあり得たのですが、医師主導治験は潤沢に予算があるというわけでもなく、その期間も限られていることから、実現可能性を考えると、この非ランダム化試験というところは致し方なかったと考えております。
 当然、申請者としては、その点はもちろん実現可能性の観点なのでサイエンスではありませんが、具体的に難治性潰瘍の選択基準を明確に選択基準等に規定することで、別の施設ではあるけれども、その基準に基づいて一定の背景の患者さんが登録されるように工夫したという点は、一つ御説明できるかと思います。
○荒井部会長 ここはかなりもめる部分です。これを医師主導治験でランダム化して多施設で行うとなると実行性が極めて厳しいことは、臨床現場を知っている人間としては十分に理解できるのですが、非ランダム化、非盲検としても、先ほど私が申し上げた後に永井委員も指摘されましたが、その評価に関してはきちんとやってあるべきで、そこのところがいまいちです。それぞれの医師が判断したかもしれない。
 また、北澤委員からも御指摘を頂きました。永井委員、小西委員、北澤委員、宮川委員から頂いた御意見はいずれも重いものです。この部会では、様々な機器についてディスカッションしていただいていますが、希少疾患で症例が集めにくくて、かつこれまでいい治療法がなくて現場が困っているという背景がある場合には、得てして、少し臨床試験の評価は甘いというか、それほど厳しいものを要求しないということが常です。私も臨床医の端くれとしては、そういった点に対する配慮はある程度やむを得ないとは思っていますが。
 先ほどの、特に宮川委員の御指摘に関して余り明解な答えを頂けなくて、この試験の結果、このデザインで行われたこの結果について、もう少し掘り下げたものが出てくればいいのですが、出てこない段階で、北澤委員の御発言にもありましたが、「この部会でこの機器が有効だから承認しましょう」という方に持っていって良いのかはかなり微妙に感じます。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 14ページにも書いてあるように、両手、同じ出力から照射数でやっていくと。同じ出力というのは、出力だけなのですよ。だから、局所が同じでなければ、これは比較できないわけです。例えば、左右、こちら側はこういうふうにしました、こちら潰瘍面はこういうふうにしましたと、これはランダムではないけれども、比較試験はできるわけです。同じ人で。左右の血流がいろいろ違いはあるにしても何らかの規定は必要です。この出力と照射数だけでは規定できていないわけです。これでは既に記載が破綻しているのです。出力でこれは規定するものではなくて、照射した衝撃波がどのように局所に効いているのかという、そこの規定がなければ、ただ出力だけ上げても意味がない。だから、次回は最大出力から始めるといっても、深度が不明瞭で適当にやっていたら、最大出力から始めても何の意味もないではないですか。その患者さんがどのように治療がされているのか、衝撃波によってどのように潰瘍が有効になっているのか、そこの論理が破綻していれば、比較のしようもないし、評価のしようもないわけです。そこのところがはっきりしないと、私たちは審議できなくなってしまうだろうと思います。
○荒井部会長 今、Webの方から、お二人から御質問を頂いております。永井委員、どうぞ。
○永井委員 北澤委員の質問に戻りますが、私も市販後の単群の調査には非常に疑問を感じたのですが、基本的に暖かくなるまで治らないので、コントロールアームは治らないという前提でこういうふうにしたのかと思いました。実際、企業に調査を課す場合には、使用した人を対象にするしかないため、やはり学会でレジストリ的なものを作ってもらうしかないのかと思いました。以上です。
○荒井部会長 河野委員、どうぞ。
○河野委員 河野です。難治性の皮膚潰瘍に効く治療法ができればいいなと思いつつ、話を聞いておりました。整形外科では、足底腱膜炎にこれが治療の適応を頂いているのですが、これはやはり症状の改善につながっているからなのです。今の評価方法は非常に難しくて、これをもう一回やり直すのも現実的ではありませんし、今後、市販後調査ということになるのですが、少し気になったのは、皮膚潰瘍がQOLの大きな障害になっている、痛みとかそういう症状によってQOLが大きく損なわれているということですが、今回、潰瘍数が激減していることが、これだけの統計学的に明らかな差で示しているにもかかわらず、副次評価項目で出しているVASもHAQもEQ-5Dも全て差がないということが、主要評価項目の潰瘍数というのが評価に適していないのではないかと。対象としてはこれが指標にならないのではないかということを表していると思いますので、今回、例えば市販後調査をするときには、やはりQOLの改善に結び付ける治療法という点では、評価項目というのはかなり見直しが必要だと感じました。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。これも貴重な御意見と思います。
先ほどまでの流れというか、いろいろな御指摘を頂いて、その返答からすると、今日ここで結論を出すのは難しいと、座長としては考えます。どうしましょうか。今、機構から御意見はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほどのQOLの件に関しては、全身性強皮症患者は全身疾患を患っておりますので、当然、潰瘍以外の症状もあります。今回採用したQOL評価のスコアとか、機能評価のスコアに関しては、必ずしも潰瘍に特化した評価ではないというところは一つあります。もちろん、本品は潰瘍に対する対処療法の一つなので、潰瘍に特化したQOLとか、機能評価だけを評価できるスコアがあればよかったのですが、それは確立させたものがなかったので、既存にあるスコアを採用させていただきました。
 ただ一方でそれは、潰瘍以外の症状はこの衝撃波で治療できないものですから、当然、肺線維症とか心臓、消化管に対する症状を持っている患者さんもいらっしゃいます。また、強皮症の代表的な症状である皮膚が硬化するという症状によって関節が拘縮してしまった患者さんでは、当然、潰瘍は治っても指が十分に動かないので、ボタンの開け閉めとかもしづらかったり、日常生活のQOLが明確に示されなかった理由としては、そのようなところかと思っています。これがもし、例えば今回の治療に対する満足度とか、そういった評価項目であれば、もしかしたら潰瘍に特化したQOL、患者さんの満足度が評価できていた可能性はあるかと思います。
○荒井部会長 課長、どうぞ。
○医療機器審査管理課長 様々な御指摘を頂きましてありがとうございます。いずれにしても、先生方の御指摘に関して、これまでの提出されたデータをもって答えられることがしっかりあるのかどうかも確認し、しっかり先生方の御指摘に答えられるよう再度検討いたしまして、次回の審議会で御議論いただきたいと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。先ほど申しましたが、現実問題、こういうデータを集める医師主導治験の遂行がどれくらい困難かは、委員の先生方もよく御存じだと思います。ですから、あまりに過酷なことを要求するのは適切ではなく、この部会では、ある程度のところで「やむを得ない」という判断が必要な場合もあると思います。ただ、今日のこの品目に関しては、もう少しそれぞれのことに関して的確な資料を頂ければ、この部会としても、「ならば承認しましょう」という方向で議論ができると思いますので、課長からの発言も頂きましたので、本件については、次回また改めてという形で、今回は持ち越しとさせていただきます。
○宮川委員 私、ずっと意見を言っていますが、私も実地の医家ですので、疾病の重大さというか、治療の困難さとか、患者さんの困窮状況とか、そういうのは十分知っています。だから悔しいのですよ。ですから、審議はしっかりやらないと、患者さんをお救いできない。だから、私が前々から言っているのは、希少疾病だろうが、難治性のものだろうが、しっかりとした審議ができなければいけないのです。速やかにしなければいけないのです。滞ってはいけないのです。できれば1回で通したい。だからこそ、こうやって質問しているのです。そこをちゃんと理解してください。難癖付けているのでは絶対にないのです。どうやったら患者さんをお救いできるか、少しでも楽にできるか、そういうことを実地医家はみんな望んでいます。今日の参考人の方も皆そうだと思います。ここに関わった人は皆そうなのです。だから、審議するほうがしっかりとした議論をしていただかないと、それからそういうのを教えていただかないと、救われないのです。救われないのは私たちではなくて、患者さんなのです。ですから是非ともお願いします。いろいろなことを深く読んで大変でしょうけども、それをしっかりやっていただくことが、この審議を速やかにしていくこと、それが患者さんをお救いすることになるのだということを、少しもっと重要というか、申し訳ないですが、一生懸命考えてください。よろしくお願いします。
○荒井部会長 宮川委員、ありがとうございます。
○執行役員 機構の執行役員の高橋です。先生、激励の言葉ありがとうございます。機構として、今回の準備が足りなかったのではないかと思っておりますので、次回速やかに、先生方から受けた御指摘を踏まえて、改めて御審議させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○荒井部会長 ありがとうございます。この部会では、こういった医師主導治験で苦労して集められたデータに対して、「最初から全部やり直せ」といった乱暴な結論は避けるべきといった良識というか柔軟性をもって審査しているつもりでおります。よろしくお願いします。
藤本先生、参考人として御参加いただいておりましたが、このような形で一応、今回は持ち越しとさせていただきますが、藤本先生、何か御発言があれば承りますが、いかがですか。
○藤本参考人 特にありません。先生方の御意見はもっともだと思いまして拝聴させていただいておりました。レジストリ等に関しては、もし必要があれば今後学会等で対応は検討できると思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。今野先生が手を挙げていらしたので、今野先生、もしよろしければどうぞ御発言ください。
○今野委員 部会長が今、おまとめいただいたので、それで結構です。一つ、遅滞なく結論を出すことと、できることとできないことがディスカッションの中で出てきたと思います。ですので、データとして示すことができることは示す、でもできないこともかなりある。その中でも、余り議論が遅延することなく、次回には確実に結論を出すということをお願いしたかったということです。部会長がそのようにおまとめいただいたので、それで結構です。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、この議題1について、そのほか御意見等よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、議題1の品目については次回に持ち越しということで、この議論を終わらせていただきます。藤本先生、どうもありがとうございました。
○藤本参考人 ありがとうございました。
○荒井部会長 それでは議題2に入ります。「医療機器「エドワーズ サピエン3」の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び使用成績評価の要否について」です。本議題については、参考人として小出昌秋先生に御参加いただいております。それでは、機構の方から説明を始めてください。
○医薬品医療機器総合機構 よろしくお願いいたします。医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料2を御覧ください。1ページ、専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たりまして、こちらに記載の4名の専門委員から御意見を頂きました。以降の説明は、次のページの審査報告書に基づいて御説明いたします。ページ番号は、資料下の緑色のページ番号と報告書のページ番号も適宜御紹介させていただき、また、左に記載の行番号を用いて御説明いたします。
 はじめに、本品の概要を御説明いたします。資料の緑色の10ページで、審査報告書ですと黒色の9ページになります。「1.審議品目の概要」を御覧ください。本品「エドワーズ サピエン3」は経皮的心臓弁留置に用いるバルーン拡張型人工心臓弁システムです。本品は、生体弁、デリバリーシステム、シース等から構成されます。
 次のページ、資料11ページ、報告書ですと黒色の10ページを御覧ください。本品は、経カテーテル的大動脈弁置換術及び経カテーテル的肺動脈弁置換術に使用する医療機器として、既に承認されています。以降、経カテーテル的大動脈弁置換術をTAVRといいます。TAVRに使用する医療機器として、自己大動脈弁の重度大動脈弁狭窄を有する患者、及び外科的に留置した大動脈生体弁の機能不全による症候性の弁膜症を有する患者への治療に対して適応を有します。本申請は、経カテーテル的に留置した大動脈生体弁の機能不全による症候性の弁膜症を有する患者への治療に対する適応追加を目的とした一部変更承認申請です。なお、対象となる経カテーテル的に留置した大動脈生体弁は、本品又は本品の前世代品である「サピエンXT」であり、大動脈弁位に生体弁が複数留置されている患者は除かれます。
 次に開発の経緯を御説明いたします。同ページの「開発の経緯」から、TAVRの導入背景を記載しておりますが、次のページ、資料12ページの7行目から御覧ください。これまで多くの大動脈弁狭窄症患者にTAVRによる治療が行われてきましたが、開胸手術によって留置された外科的生体弁と同様に、経カテーテル的に留置された生体弁、以降TAVと言いますが、TAVの耐久性にも限りがあり、機能不全を起こすことが知られています。TAVRの普及に伴いTAVの機能不全による再治療を必要とする患者が増加すると考えられますが、これらの患者の多くは外科的手術のリスクが高く、外科的処置による再治療が困難です。また、機能不全のTAVは周辺組織に癒着しているため、TAVの外科的摘出には大動脈基部の損傷のリスクを伴います。TAVの機能不全の再治療として外科的処置を実施した場合、院内死亡及び手技後30日以内の死亡率は17.1%であったとする報告や、院内死亡率が11.8%といった報告もあり、死亡リスクが高いことが知られています。
 そのため、外科的処置を伴わない再治療の方法として、TAVの内側に経カテーテル的にTAVを重ねて留置する手技、以降、TAV in TAVと言いますが、TAV in TAVによる治療の医療ニーズが高まっております。本品のTAV in TAVの適応については、2019年に欧州でCEマークを取得し、2020年に米国FDAの許認可を取得しております。本邦においても、治療選択肢としてTAV in TAVの導入が求められていることから、申請者はTAV in TAVの適応を追加する本一変申請に至りました。
 次に、本品の非臨床試験についてですが、特段の問題は認められませんでしたので、臨床評価について御説明いたします。資料の20ページ、審査報告書の黒色番号ですと19ページの13行目から御覧ください。本申請における臨床評価資料として、米国胸部外科学会及び米国心臓学会主導で実施されているTVT Registryから、本品を用いてTAV in TAVを実施した患者のデータが抽出され提出されました。
TVT Registryは、TAVRの安全性及び有効性に関する実臨床データを広く収集し、デバイスの適正使用や患者治療の最適化に加え、TAVRの適応拡大を見据えて米国にて実施されているレジストリで、FDAとも連携して実施されております。米国では、TVT Registryにおける本品を用いたTAV in TAVの成績を用いて申請がなされ、FDAの許認可を取得しました。本邦における本一変申請に当たっては、更新された成績が提出されました。TVT Registryは実臨床データを広く収集しているため、TVT Registryにおける本品を用いたTAV in TAVの成績、そして、そこからさらに本邦で想定される対象患者を抽出した成績が示されております。
 まず、全体の成績について御説明いたします。資料の23ページの2行目から御覧ください。手技の状況についてです。本品を用いてTAV in TAVが施行された患者の約8割が手術リスクが高い患者でした。アクセス方法は主に経大腿アプローチがとられておりました。
 続きまして、安全性評価について御説明いたします。資料25ページを御覧ください。表15に手技後1年までの死亡率を示しておりますが、手技後30日で5%、手技後1年で17%でした。
 次に有効性評価について御説明いたします。次のページ、資料26ページを御覧ください。表17に心エコーパラメータを示しております。ベースライン時における平均圧較差は手技後30日、1年と改善が見られ、本品を用いたTAV in TAVによる血行動態の改善が確認されています。次のページ、資料27ページの図3が大動脈弁逆流の推移になりますが、ベースライン時からの減少が確認されております。続きまして、資料28ページの図5がNYHA心機能分類の推移になりますが、ベースライン時からの大きな改善が見られております。また、9行目にKCCQによるQOL評価について記載しておりますが、KCCQスコアについても改善が見られております。ここまでが、本品を用いたTAV in TAVの全体の成績になります。
 次に、本邦で想定される対象患者の成績について御説明いたします。同じページの14行目から御覧ください。先ほども申し上げましたように、TAV in TAVが施行された患者の約8割が手術リスクが高い患者でしたが、中等度及び低リスクの患者も一部含まれていました。一方、本邦におけるガイドラインでは、外科的手術リスクが高く、有症状で重度人工弁狭窄又は重度人工弁逆流を来している場合に、経カテーテル的Valve in Valve術を考慮するよう推奨されています。また、人工弁狭窄は平均圧較差35mmHg以上の場合に有意狭窄と定義されています。そこで、ガイドラインで推奨されているこれらの事項を条件とし、本邦で想定される対象患者における成績が抽出されました。次のページ、資料29ページを御覧ください。さらに、本一変申請におきましては、対象となるホスト弁は本品又はサピエンXTとしているため、本邦で想定される対象患者のうちホスト弁がサピエンシリーズの患者を抽出し、評価されました。表19に成績を示しております。本邦で想定される患者群においても、全体集団と同様の血行動態やNYHAの改善が確認されています。一方で、リスクの高い患者を抽出した背景もあり、死亡率の増加が見られております。
 以上の臨床成績を踏まえ、機構における審査の概要について御説明いたします。資料31ページ、審査報告書ですと黒色の30ページを御覧ください。レジストリデータを用いて評価することの妥当性についてです。7行目、申請者からの説明になりますが、TVT Registryは、TAVRの適応拡大も見据えて構築されたレジストリであり、本レジストリを用いて米国における適応拡大がなされた点が一つございます。次に18行目、TVT Registryは仮説検証試験ではありませんが、既存治療であるTAV in SAVの成績と記述統計により比較を行うことで、一定の確度をもって有効性及び安全性が評価可能と考えられることです。TVT Registryに登録された本品によるTAV in SAVとTAV in TAVの成績比較を表22に示しております。
 次は、資料32ページの2行目からです。手技後30日及び1年の平均圧較差は、TAV in SAVに比べてTAV in TAVで低く、良好な血行動態が確認されました。一方、手技後30日及び1年の死亡率は、TAV in SAVよりTAV in TAVで高いことが認められました。これはTAV in TAVでは高齢で外科的手術リスクが高い患者が多いことが要因と考えられています。また、外科的手術の施行が困難な患者を対象に、サピエンXTによるTAV in SAVを評価したPARTNER II試験における手技後1年の死亡率は19.7%であったことも踏まえると、TAV in SAVに比べてTAV in TAVで死亡率が顕著に高くなるとは考えられなかったと説明されています。
 さらに、外科的手術を施行できない患者を対象としたPARTNER-US試験の内科的治療群において1年の死亡率は50.2%であったことから、TAVの機能不全を有する患者に姑息的治療を実施した場合の死亡率は、当該成績と同程度又はそれを上回ると考察されております。また、文献においてTAVの機能不全に対する外科的再弁置換術後30日の死亡率は17.1%と報告されており、これらを踏まえると、本品を用いたTAV in TAV後の死亡率は臨床的に許容可能であると説明されています。
 これらに対する機構の見解について、18行目からになります。近年、リアルワールドデータの利活用を試みる国内外の取組が活発化しており、本邦においても通知が発出されているところです。希少疾病や緊急性の高い疾病等のため、適応拡大に係る開発等に際して十分な被験者が確保できず、臨床試験の実施が困難な場合に、臨床試験の代わりにレジストリデータを用いて有効性及び安全性を評価する場合が考えられますが、TAV in TAVの対象となる患者は限定的であり、前向きの臨床試験の実施は対象となる患者の年齢なども踏まえますと、相当の困難を伴うと考えられます。また、TVT Registryは、米国におけるTAVRの適応拡大も見据えて構築された大規模なリアルワールドデータベースであり、米国における適応拡大にも用いられています。そのため、当該レジストリデータを活用して本邦における承認申請を行う申請者の方針は理解できます。また、TVT RegistryはGCPに準拠した臨床試験ではないものの、承認申請への活用に関して、適合性調査により、そのデータの信頼性は担保できると判断しております。さらに、本品を用いたTAVRは、本邦においても既に標準治療として定着しており、また、TAV in SAVとTAV in TAVの手技の類似性も考慮すると、TAV in SAVの成績と比較を行うことで、一定の確度をもって評価できるとする申請者の方針は受入れ可能であり、TVT Registryにおける評価項目も問題ないと判断いたしました。
 次に、米国レジストリデータの本邦への外挿性については、次のページ、資料34ページの5行目より記載しております。対象患者、対象となるホスト弁、医療環境差の観点から検討しましたが、問題ないと判断しております。ただし、次のページ、資料35ページの23行目からになりますが、TAV in TAVの対象となる患者の年齢に関しては、本邦においては、より高齢の患者が対象になることが想定されたため、評価に当たっては留意が必要と考えました。こちらについては後ほど御説明いたします。
 次は、同ページの31行目、本品の有効性及び安全性で、まず全体の成績について御説明いたします。有効性について、本品によるTAV in TAVの弁留置成功率は高く、平均圧較差はベースライン時から改善し、NYHA心機能分類も改善しております。一方、安全性について、TAV in SAVと比べてTAV in TAVで高い死亡率が認められております。資料の36ページの2行目からとなりますが、機構は、TAV in SAVよりTAV in TAVで高い死亡率が認められたことについて、次のように考えます。TAVRの導入初期は、外科的に手術が施行できない患者を対象に使用されてきたため、再治療を必要とする患者の多くは、TAV in SAVの対象患者よりも、より外科的手術のリスクが高く、外科的処置による再治療が困難と考えられます。TVT Registryにおいても、患者の平均年齢、STSスコア、外科的手術リスクはTAV in SAVよりもTAV in TAVで高く、より状態が深刻な患者がTAV in TAVの対象になっており、これがTAV in TAVで死亡率が高い要因の一つになっていると考えられます。これらの患者背景や弁関連の有害事象発生率、また、次のページの資料37ページの表23に、TAV in TAVでの死因の内訳を掲載しておりますが、弁膜疾患以外の死亡が多いことも考慮いたしますと、TAV in TAVの治療介入を行ったことがより高い死亡率へつながったとは考え難いです。現在、ホスト弁の機能不全による再治療を必要とする患者には、保存的治療又は外科的処置が治療選択肢ですが、今回の適応拡大の対象が外科的手術を施行できない患者であることを踏まえますと、他に有用な治療方法がない当該患者における本品を用いたTAV in TAVの有効性はあり、安全性も臨床的に許容可能と考えられ、リスクベネフィットバランスは保たれていると考えます。
 次に資料38ページを御覧ください。本邦における対象患者で想定される平均年齢及び解析を実施する上での症例数の確保を踏まえ、85歳をカットオフ値として層別解析を行った結果について、表24に示しています。85歳以上の患者では、手技後1年の死亡率が20.9%と、本邦で想定される患者群全体の死亡率と比較してやや高率でした。しかしながら、手技後1年までに大動脈弁再インターベンションに至った症例はなく、弁に関連する再入院は手技後1年で4.6%と、本邦で想定される患者群全体より低率でした。また、NYHA心機能分類の改善、弁機能の改善も見られております。さらに、85歳以上の患者のうちホスト弁がサピエンシリーズであった患者においても、新たにリスク評価すべき安全性及び有効性上の懸念は認められませんでした。
 機構は、本品を用いたTAV in TAVの有効性及び安全性について、本邦で想定される患者年齢を踏まえても、TVT Registryの成績からは現時点で特段の懸念は確認されておらず、臨床的に許容可能であると考えました。ただし、本邦における本品の有効性及び安全性は、使用成績調査により確認し、必要により適切な措置を講ずることが重要と考えます。
 このような背景を踏まえまして、製造販売後の安全対策について御説明いたします。資料46ページ、審査報告書の黒色ですと45ページの21行目からです。製造販売後の安全対策ですが、大動脈弁狭窄症患者の初回治療の選択は、従来どおり外科的大動脈弁置換術の適応を厳密に医療チームにて検討する必要があり、加えて、TAV in TAVの対象は超高齢者も含まれ得ることから、患者の意向も踏まえ、適応について医療チームでの十分な検討が必要となります。なお、本治療の適応に際しては、適切な患者選択が重要となるため、関連学会から発出されるTAV in TAVの適応拡大に関する適正使用ステートメントを遵守するよう、関連学会とも連携し周知する予定であることが申請者より説明されています。また、次のページ、資料47ページの表30に記載のとおり、施設基準やトレーニング、技術支援体制がとられる予定でして、これらの対応は妥当であると判断しております。
 最後に、本品の使用成績調査について御説明いたします。次のページ、資料48ページを御覧ください。表31に計画案の概要を示しております。症例数については、本邦における本治療の対象患者は少数と予測されるため、登録期間中の全例を登録するよう設定されました。なお、本邦の対象患者は米国に比べて小柄な体型を有しており、また、透析治療の環境も本邦と米国で異なることから、20mm径の本品を使用した患者、慢性透析患者のデータについては特に重要であり、可能な限り登録されるよう、その他の患者よりも長い登録期間が設定されており、この計画案は妥当と判断しております。
 以上の審査を踏まえまして、機構は、資料50ページの10行目から記載している使用目的にて、また、26行目から記載している承認条件、今回の変更は次のページ、資料51ページの26行目の下線部分になりますが、これらの内容にて本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。
本品は生物由来製品に該当します。また、使用成績評価の調査期間は7年とすることが妥当と判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。
機構からの報告は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。それではまず、参考人として御参加いただいております小出先生から、追加の御発言を頂けますでしょうか。
○小出参考人 よろしくお願いします。聖隷浜松病院心臓血管外科の小出と申します。ただいまの機構からの説明と大分重なる内容でお話をさせていただくことになると思います。
TAVR、一般的に呼ばれているTAVIという方がなじみがあるのでTAVIという呼び名でお話させていただきます。2013年に日本に導入されたTAVIは、国内でも良好な臨床成績が報告されています。TAVIで使用される弁、生体弁ですけれども、その耐久性は従来の外科的に移植された生体弁と同等と思われ、これに関しては高齢の方が多いので、本当の耐久性というのはなかなかデータとしては出てこないのですが、移植後大体7、8年前後から生体弁の構造劣化が始まるといわれています。
 生体弁の構造劣化は、狭窄や逆流を生じて心不全の原因となり、一旦進行すれば、その劣化を内科的治療で改善させることは不可能です。従来の外科的開胸手術で移植された生体弁が構造劣化を来した場合は、現在その治療法としては選択肢は二つありまして、一つは従来から行われてきた開胸による外科的再弁置換術でして、もう一つがTAV in SAVと呼ばれる劣化した生体弁の内側にカテーテル法により生体弁を留置する方法であります。
 開胸による再手術のリスクは低くないことから、カテーテルによるTAV in SAVというのは非常に有効な方法であると思います。その一方で、TAVIにより移植された生体弁が劣化した場合は、現在日本では開胸による再手術しか、その治療の選択肢はございません。しかし、そもそもTAVIを行う時点で開胸手術がハイリスクである高齢者の患者群でありまして、開胸による再手術は不可能なケースがほとんどです。TAV in TAVはそのような患者群に対する治療法として行われるものであります。
 今回、臨床試験に関する資料として使用されたTVT Registryに示されているとおり、米国では良好な臨床成績が得られていて、CEマークに次いでFDAの認可を受けております。日本では、TAVIが2013年秋から導入されておりまして、この秋で10年目を迎えます。時期的には、そろそろTAVIで移植された生体弁の劣化を来す患者さんが増加してくると思われます。そういった患者さんの中には、非常に御高齢の方も多いので、ADLが低下するなどとして臨床的に追加治療の対象にならない患者さんも少なくないとも思われますが、その一方で、超高齢でもADLが維持されている患者には追加治療が必要となる可能性があります。
 TAVIの症例数は、近年適応拡大が進んだこともありまして、国内でも増加の一途をたどっております。TAVI後に生体弁の構造劣化を来す患者さんも、今後増加する可能性が高いです。このような背景から、TAV in TAVには一定の臨床ニーズがあり、この治療により救われる患者さんは一定数いると考えられます。
技術的には、現在行われているTAVIやTAV in SAVと大きな違いはなく、新しい治療といっても技術的な難易度は非常に高くなるというものではございません。私の方からは以上です。ありがとうございました。
○荒井部会長 小出先生、ありがとうございました。それでは、委員の方々から御質問、御意見いかがでしょうか。松宮先生、どうぞお話ください。
○松宮委員 よろしくお願いいたします。TVT Registryから有効性と安全性は非常に高いということで、本邦で行われた場合でも同じような結果が十分予想されるというところは、もちろん日本のカテーテル治療のレベルは非常に高いので、その点については私も異存はないのですが、安全性のところで今、小出先生は、初回とあるいはサージカルAVRの中にTAVIを入れる場合と余り変わりないとはおっしゃったのですが、いろいろな論文では、そもそもTAVIの弁というのは、手術で入れた弁よりも弁尖が上の方まで高いので、そこにもう一つ入れると、最初に入れた弁が広がったものが冠動脈の血流障害を起こしやすいということが、大きな懸念として出されていると思います。ただ、この非常に良好な成績が出ているということは、これは逆にいうと、非常にうまくスクリーニングをして対象を絞って行ったために、こういう良い結果が出ているという可能性が高いのではないかと解釈するのですが、その点についてはいかがでしょうか。
 特に日本においては小柄な患者さんが多いので、冠動脈の閉塞というのは、STジャンクション、弁の上の所の、冠動脈と弁の上の所がすぼまっているのですけれども、そこの部分が、より日本人では、小柄な人では小さくて大動脈弁からの距離が短いので、より日本人ではそういう冠動脈閉塞のリスクが高いのではないかということが懸念されるかと思うのです。ですので、そういう懸念はないのかということと、実際TAVIで入れた弁が再手術が必要になったときに、もう一回その中にTAVIの弁を入れられる患者さんはどのくらいのパーセンテージなのかということについて、小出先生、よろしければ御教授いただきたいと思います。
○荒井部会長 どうでしょう。機構からまず答えますか。では、小出先生、ちょっとお待ちください。
○医薬品医療機器総合機構 松宮先生、御質問、御意見ありがとうございます。TAV in TAVでの特有の課題について御指摘いただいたと認識しております。資料の緑色の通し番号44ページ、審査報告書ですと43ページを御覧いただけますでしょうか。表28に冠動脈の閉塞リスクがございまして、TAV in TAVで懸念される冠動脈の閉塞については、TAV in SAVと比べても低いことが報告されております。また、冠動脈のアクセスの件につきましても、次の15行目から記載しておりますが、こちらについては注意事項やトレーニングにも含まれているところです。少しページを進んでいただいて、緑色の通し番号で47ページ、審査報告書ですと46ページの表30が、製造販売後安全対策のトレーニング等の計画になります。松宮先生からスクリーニングをうまくしているのではないかという御指摘を頂いておりまして、この計画は申請者と学会と連携して立てている対策案ではあるのですが、やはり初期の症例に対してはスクリーニングプロクター医、これは導入初期は手技経験の豊富な米国から招聘する形になりますが、スクリーニングプロクター医の評価によって、冠動脈閉塞も含めたリスクが大丈夫か評価されるということで対策がとられます。
 また、御指摘いただいたSTジャンクション、大動脈基部の解剖的なところの特徴とリスクについては、トレーニング資料にも情報提供する予定です。加えて、今日の御報告で、学会から適正使用ステートメントが出されるという形で報告いたしましたが、その中にも、日本人では小柄になってくるので、そういう点は注意しましょうということで、注意喚起される予定です。機構からの御説明は以上になります。
○荒井部会長 機構から説明いただきました。小出先生、何か御追加はありますか。
○小出参考人 松宮先生に非常に重要な点を御指摘いただきました。冠動脈の閉塞に関しては、松宮先生が言われるように、元々入れたTAVIの弁が、特に自己拡張型のデバイスの場合は高い位置に生体弁、弁尖が付いていますので、それが広がって、冠動脈の閉塞のリスクがちょっと危惧されるかなと私も思っていたのですけれど、このTVT Registryを見ますと、冠動脈の閉塞は非常に少ないというのが実際で、先生が言われるように、よくスクリーニングされている。このTVT RegistryはTAVIを行った数しか出てきませんので、ほかの報告で例えばTAV in TAVとTAV in SAVを比較しているような論文を見ますと、やはりかなりの数がオープンで再手術をしているというのが実態です。特に米国は、元々TAVIの施行年齢が低いですので、再手術が必要になった時点でまだオープンできるという方が結構いらっしゃるので、スクリーニングがしっかりしていることと、年齢が低めということで、実際オープンで再手術している患者さんが少なくないということです。実際の数字はちょっと持っていませんので申し訳ありません。
 あとは、TAVI弁を2枚重ねて入れたときに危惧される冠動脈に関してですが、後々冠動脈へのカテーテルによるアクセスが困難になる、それも一つの問題と捉えないといけないと思いますので、それも含めてハートチームでしっかりスクリーニングをして、そういったことで将来困らないような患者さんをしっかり選んで施行することが重要だと考えます。ありがとうございます。
○荒井部会長 ありがとうございます。松宮先生、よろしいでしょうか。
○松宮委員 はい、結構です。ですので、レジストリでは非常に冠動脈閉塞リスクが実際に低いのですけれど、他のデータによると、TAVI弁の劣化に伴って再手術が必要になった患者の半分も、もう一回TAVIを入れることができないという報告があります。逆に言うとかなりうまくスクリーニングすれば良い成績が出るけれども、十分注意が必要ということで、機構のおっしゃるとおり、その辺を十分注意喚起してやっていただければと思います。ありがとうございました。
○荒井部会長 松宮先生、ありがとうございます。永井先生、どうぞ御発言ください。
○永井委員 お願いします。今、出ているレジストリデータの話です。今回レジストリデータを審査資料にしていて、しかも海外のレジストリデータを審査資料にしているわけですが、関連して二つ確認したいと思います。まず、アメリカですが、品質点検がコンピュータシステムでなされたというのは、いわゆるエディットチェックというものですね。SDVはやってないのかという点を教えてください。
 それともう一つ、日本での適合性調査によって信頼性は問題ないとコメントされましたが、何をもってというか、どのように調査をしたのかという点を教えていただけたらと思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。では、お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 まず1点目、アメリカでコンピュータシステムがなされていて、SDVをやっているのかというお話です。そもそもこちらのTVT Registryなのですが、データクオリティプログラムというシステムができておりまして、そこで、データの品質を自動的に確認するシステムが出来上がっています。
○永井委員 それはエディットチェックですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そうです。このエディットチェックは、レジストリ側が要求するデータ品質に満たないと、次にウェアハウスという保管する所があるのですけれども、そこの保管の所に進むことができないというかなり厳しいシステムが出来上がっています。それが1点です。
 そして、データのクオリティをチェックした後には、エンタープライズデータウェアハウスという保管するシステムがありまして、そこの中に保管されます。先生がおっしゃるとおり、確かにSDVはなされていないのですけれども、年に1回、大体400例ぐらいの症例を抽出しまして、医療機関にある原資料とTVT Registryの中に入っているデータとの突き合わせは行っています。
○永井委員 サンプリングSDVはやっているということですね。
○医薬品医療機器総合機構 これを彼らはSDVとは呼ばずに「監査」と呼んでいます。なので、SDVとしてはないのですけれども、年に1回の監査として、これを毎年実施しているといった状況です。
 そして、2点目の信頼性調査においてどのような内容を見て、というところですけれども、申請者から提出されたTVTの運営に関する根拠資料において、厚生労働省からレジストリの信頼性通知というものが出ているのですが、そちらの内容に従って、TVT Registryが信頼性があるかどうかということを、まず申請者に担保していただきました。そして、担保していただいた内容と彼らが担保に使った根拠資料を確認させていただきまして、彼らが説明しているそのTVTの運営状況について、根拠資料を用いて書面上で再現ができたということがまず1点。もう一つ、今回使用されたデータについて2016~2020年の監査において、レジストリに登録されたデータと原資料との一致性、正確性が、毎年その一致率が大体90%であることが結果として出ています。こちらも根拠資料で確認をしております。その上で、このTVT Registryというのは、治験のようにSDVとかがなされているわけではないのですけれども、既に品質の高いデータを継続的に収集できるシステムが確立しているというところを信頼性調査の方で確認しました。そして、これらの二つの結果をもって、申請資料の信頼性の基準は満たすものであると我々は考えております。以上です。
○永井委員 今後増えてくるかと思ってあえてお聞きしたのですが、よく分かりました。ありがとうございました。
○荒井部会長 一色委員、どうぞ。
○一色部会長代理 今までの御説明で、TAV in TAVの重要性というのは私どもも日々感じているところで、適用拡大に全く異存する立場ではないのですが、ちょっと気になることがありましたので、意見だけ述べさせていただきます。
 34ページで、TAV in TAVの以前植え込まれているバルブも、今回植え込むバルブも両方ともサピエンに限定されているということについてです。現在入れられているTAVI弁は複数あり、自己拡張型のものもたくさん入れられているという中で、サピエンの再狭窄例だけが今回の対象になっていて、ほかの弁が入った方は対象とされず、高い死亡率のまま経過観察するしかないということになります。このような状況はできるだけ早いうちに解決する方向にしていただきたいと思っているところです。
 それからもう一つは、先ほどの説明にはありませんでしたけれども、アメリカでは最初に入っている弁がサピエンでなくても、ほかの弁を用いて2回目のTAV in TAVを認めていますので、TAV in TAVという手技が承認されるのであれば、患者さんのために一番となる方法をハートチームで検討した上で、デバイスの選択ができる環境をできるだけ早く整えていただきたいと思っています。
○荒井部会長 ありがとうございます。非常に重要な御指摘と思います。機構からコメントはありますか。
○医薬品医療機器総合機構 一色先生、非常に重要なコメントありがとうございます。私たち審査チームも、その点は重々認識しております。先生からもお話があったのですが、現状はTAV in TAVができないという状況で、医療ニーズが高まる中、一方で本邦の初の適応拡大ということで、申請者側も慎重に検討しておりまして、まずは適合確認をして、臨床でも評価ができて、かつ、留置手技のチップスを含めたトレーニングを提供できる範囲ということで、サピエンシリーズということで出してはいるのですが、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○機構と相談を進めていきたいと伺っています。機構としましても、そうしたラグ、ギャップがなくなるように努めていきたいと思いますし、先生から御指摘いただいたコメントは、改めて申請者の方にも伝達して、前向きに取り組みたいと考えております。
○荒井部会長 梅津委員、どうぞ。
○梅津委員 私はエンジニアとして、人工弁の耐久試験を40年ぐらいやっているのですけれど、初めの頃はとにかく構造劣化の問題があって、どの生体弁がいいかを選択する際に耐久性が心配だったのに、今になってみても、既承認品を長期使うことでいろいろなことで問題がでています。TAV in TAVのコンセプトが出されたときに、それだったらもっと長い耐久性のものを作れよと、私はちょっと言いたかったのですね、当時。でも今になってみると、やはり患者さんのためにこれを第一選択するのも大事なことで、そのために臨床データを集積して、この一部変更承認をするという、このプロセスはとても大事だと思っています。この後、一色先生と全く話が重なってしまうのですけれども、使用成績調査の実施の表が、48ページの表31で出てきましたね。これはなるべく早い時期にいろいろな形で公開されて、できれば日米の例えば機構とFDAの間でHarmonization by Doingをやりながら、TVT Registryのデータに重ねてもらうと、国際的にも科学的な根拠をしっかりまとめるにはちょうどいい機会だと思うので、そういうことがもしもできたら、やっていただければいいのではないかと思いました。
○荒井部会長 ありがとうございます。松宮委員、どうぞ。
○松宮委員 すみません、コメントです。本件は、再手術時のTAVIを可能にするということで非常に大事な治療法だとは思うのですが、これを可能にすることは、初回の大動脈弁狭窄症患者の手術が必要な方の治療選択にかなり大きく影響するということがあると思います。TAVI自体は非常にハイリスクで手術ができない方に適応となっていたのですが、2年前でしたか、リスクによらず患者さんに最適な治療であればTAVIを行っていいことになりまして、アメリカとかヨーロッパではもっと日本よりも前からそういう使用がされているので、実際、60代とか70歳前後の方にこのTAVIが行われています。これが再手術になったときに、もう1回TAVIができると聞いている患者さんが多いということが論文に書いてありまして、ですので、より安易にという言い方は悪いかもしれませんけれども、より低年齢の患者さんにTAVIが広がる傾向があったわけですが、実際に再手術が必要になってみると、TAVIの中にTAVIを入れられる患者さんの割合がかなり低いということが問題になっていて、しかも、結局手術をしなければならなくなった患者さんは、非常に手術のリスクが高くて、手術死亡率は先ほど報告があったように、10%も20%もあるということが報告されています。弁自体のフレームの金属が大動脈の中にめり込むような形になって、それを全部一緒に取ると、弁と一緒に大動脈も取り換えないといけないとか、非常に大きな手術が必要になるということが、欧米の心臓外科医の中では非常に問題になりつつあります。
 そういうことなので、この治療が可能になったからといって、初回の手術適応を変えることなく、これまでどおり非常に手術のリスクが高くて、しかも再手術がどうしても必要になった方はしょうがないのですが、そもそも再手術が必要になるような可能性が高い人には、やはりこれは慎重に考えるべきだということを十分、関連学会等を通してインフォームいただければと思います。この審査書類の中にも、TAV in TAVの成績はいまだ不明であるので適応を変えないようにとは書いているのですが、TAV in TAVが可能になる患者さんの割合は高くないと想定されるためとか、そういったことを入れて、しかもTAVを再手術で外科的治療をする場合の治療リスクは非常に高いので、その部分は非常に慎重に考えるべきだということを、この審査報告書にも記載いただければと思いました。
○荒井部会長 松宮先生、ありがとうございます。今の御指摘について、機構の方はよろしいですか。そういう方向で、今後企業とも検討いただくということで。
○医薬品医療機器総合機構 はい。松宮先生から御指摘いただきましたような点は関連学会であるTHT協議会からも、TAV in TAVが適応拡大になったからといって、初回のTAVRが今回緩くなるというわけではなくて、従来どおりハートチームできちんと評価しようという形で、ステートメントの中に盛り込まれる予定です。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほか御意見はありますか。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 基本的なことで教えてほしいのですけれども、レジストリのところに書いてあるのですが、実際には9600の方が多くて、9750の方が例数が少ないのですが、これはTAV in TAVをしていく上で、外国の場合には径が大きいから、つまり9600の方が径が29があるので、そっちが多様されるから例数が多くなっているのか、導入されるのが多くなっているのか、それともアウタースカートの性質によって違ってくるのか教えてください。これは普通の場合のTAVIの入れ方ではなくて、インするからそちらを選択しているのか、どのように考えていくのかということを教えていただきたいのです。本来からすると、松宮先生がおっしゃられたように、しっかりとした適応の中でやっていくのですけれども、2回目に入れる場合、インする場合には、そういう性質がすごく必要になってくるのかということについて教えていただきたいのです。
○医薬品医療機器総合機構 宮川先生、御質問ありがとうございます。生体弁のモデルの使用比率が違うという点ですね。
○宮川委員 登録人数が違うのは、それはいわゆるアウタースカートの性質によって変わってくるのか、それとも径が、そのレジストリの場合だと外国の場合ですから、日本人に比べれば20の適用よりはもっと大きい29を適用する方が多いので、それが大きいからそちらを選択しているのか、そもそも選択の基準がどのような形でこのような9600の方が圧倒的に多くなっているのかということについて聞きたかったのです。
○医薬品医療機器総合機構 径の特徴もあるのですが、まず9600が最初にリリースした製品になるので、導入時期が大分違いますので、そこがまず大半を占めると考えます。
○宮川委員 そうすると、インをした場合には、そのアウタースカートの性質は余り考慮されなくてもいいということでよろしいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そうです。
○荒井部会長 よろしいですか。そのほか御意見はよろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかに御意見がございませんので、議決に入らせていただきます。
医療機器「エドワーズ サピエンス3」につきまして、本部会として製造販売承認事項の一部変更承認を可として差し支えないものとし、使用成績評価は調査期間を7年として指定することとしてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、そのようにさせていただきます。本件は分科会にて報告をさせていただきます。
これで議題2を終了いたします。小出先生、どうもありがとうございました。
○小出参考人 ありがとうございました。
○荒井部会長 それでは、議題3に進ませていただきます。「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」です。事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料3を御覧ください。議題1でも御説明したとおり、既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器への指定、及び特定保守管理医療機器の指定の要否について、御審議いただく必要があります。今回は、医療機器の承認等に際し、新設が必要と考えられる一般的名称が2名称あります。
 まず一つ目についてですが、名称を付そうとする品目の1品目目について、御説明いたします。2ページを御覧ください。この品目は、超音波スケーラ、専用の過酸化水素水とレーザーから構成される医療機器であり、超音波振動によるスケーリングと同時にチップ先端から過酸化水素水を噴射します。また、レーザー照射機能も備えており、過酸化水素にレーザーを当てることにより発生するヒドロキシラジカルにより殺菌を行うものです。この品目に対して付そうとする新設予定の一般的名称について、1ページを御覧ください。名称は「薬剤併用超音波歯周用スケーラ」で、定義は「歯周治療時に、振動超音波チップによる歯石等の沈着物の除去を行うと同時に薬液を放出し歯周ポケット内を殺菌することを目的とする機器をいう。本機器は専用の薬液を構成品として含む。また、殺菌作用の強化等を目的として、薬液を化学的に変化させる機構を持つものである。」です。本品はクラスIIIの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。
 次に、2品目目です。新設予定の一般的名称は「家庭用赤外線治療用衣」です。本名称の定義は「赤外線による血行促進作用を身体組織に与えて治療することを目的とした、衣類形状の器具をいう。生地に鉱物等による特殊な加工がされており、一定程度の赤外線を輻射する。上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部及び大腿部を被覆する。パーツ形状は含まない。」です。本一般的名称に関して、7ページを御覧ください。本一般的名称に関しましては、現在、一般社団法人日本医療機器工業会で、技術的な事項を記載した業界自主基準を策定しております。こちらの基準には、赤外線放射特性の評価方法や、その他医療機器として求められる基本的な要件が定められております。今回新設する一般的名称に該当するものとして届出がなされる医療機器は、こちらの業界自主基準に基づき評価することをお願いすることとなります。本品は、クラスIの一般医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。以上でございます。
○荒井部会長 ありがとうございます。2品目です。委員の方々から、御質問、御意見等はいかがでしょうか。二つ目の方は、まだ一般的名称は決まらないわけですね。
○事務局 一般的名称は「家庭用赤外線治療用衣」です。
○荒井部会長 そうでしたね。了解です。久保庭先生、どうぞ。
○久保庭委員 久保庭です。1件目の薬剤併用超音波歯周用スケーラについてなのですが、新設する名称については妥当だと思うのですけれども、1点質問させていただきます。超音波スケーリングの際に度々ある事例として、口腔内にスケーラを持ち込む前に、例えば補助者によってフットペダルが誤って踏まれるというようなことがあります。その場合、この機器の場合は、レーザーですとか3%の過酸化水素水が、患者さんの目に入ったりする可能性がなきにしもあらずかと思いますので、できれば承認条件で、ゴーグルの着用等を義務付けたほうがよいのではないかと考えます。いかがでしょうか。
○事務局 久保庭先生、大変重要な御指摘どうもありがとうございます。一般的名称は、こちらの形ではあるのですが、こちらは現在承認申請がなされているものでして、審査の中で先生が御指摘いただいたような安全対策措置については、申請者の方と調整をして対応していくこととなります。そういったことで御対応させていただきます。よろしくお願いいたします。
○久保庭委員 ありがとうございます。
○荒井部会長 そのほか、御意見はよろしいですか。河野先生、どうぞ。
○河野委員 一般的名称の二つ目、整形医療用品ということで、一般的名称として「家庭用赤外線治療用衣」というのが案として提出されているのですが、一般的名称に「治療」という言葉が入っているのは非常に違和感がありまして、これは加温によって血行促進するのが必ずしも治療にそぐわないという場面もありますので、実際にこれを使うのであれば、赤外線加温用衣とか、加温することは必ずしも治療には当たらないことを考慮すると、一般用衣に「治療」という言葉を安易に入れるべきではないと思いますが、いかがでしょうか。
○事務局 河野先生、非常に重要な御指摘どうもありがとうございます。少し経緯を御説明させていただきますと、資料3の4ページにある、温熱用パックというリハビリのときに使うホットパックの名称を、余り良くない方法で活用して、衣類形状のものが医療機器として無造作に届け出られてしまっているという現状が今の時点であります。遠赤外線によって起こる効果というものが、加温というよりも、実際のところは血行促進がなされるというところが直接的な効果になりますところ、血行促進による治療効果を持つ製品というのは、監視的な観点で医療機器に該当するということですので、今回こういう一般的名称を新設することになりました。そのときに、医療機器であるからには、健康器具ではなくて、何かしらの医療としての目的があるというところを明確にしたいということで、「治療」という言葉を一般的名称の中に含めさせていただきました。一方で、先生の違和感というのもごもっともだとも思っておりまして、いわゆる普通の方が考えられる、とてもすごい何かをするという「治療」ということではなく、できることは血行促進それからそれによる疲労回復といったその程度のことであるというのは、そのとおりでございます。その中で、ここで「治療」という言葉をそのままにするのか、それとも、やはりそれは言い過ぎだろうということで除くのかというところだと存じます。
○荒井部会長 これはどうしますか。検討しますか。
○河野委員 よろしいでしょうか。おっしゃっていることはよく分かるのですが、加温血行促進が「治療」に当たらない場面もよくあるので、「治療」という一方的な名称を付けるのは、治療ではなくて、局所症状に悪化させる炎症などがある場合には明らかに悪化させるものになるので、ここに「治療」という言葉を当てはめるのは不適切だと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。「参考」の3、4ページの所に書いてありますが、赤外線の場合と高周波の場合と、どういうふうな意味合いで、ナノメーターであったり高周波バンドだったりということが記載されてあるわけですけども、この場合は実際に5~20μの波長のものを出すと書いてあるのですが、今のお話のように、それが直接、血管拡張作用や血行促進作用を目指した形によっての「治療」という形に結び付くのかということで、それは許されているのですが、保温することとか加温することが、果たして「治療」に値しない場合が出てきた場合にどうするのかということが疑問なのです。「治療」に値しない場合がたくさん出てきたときにどのように判断するかということで、多分、言葉の限定をどうするかという形になったと思うのです。私もそれをやはりしっかりと考えたほうがいいのかなと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。
○事務局 どうもありがとうございます。おっしゃるように、この「治療」という言葉が意味することにぴったり合致しないような使いようというところも当然想定されるというところですので、一般的名称の中から「治療」という言葉を除くことと、あと、定義につきましても、「治療」という言葉を使わないという方向で少し検討させていただきたいと思います。
○荒井部会長 そこは考えていただくこととしましょう。多分それで皆さんの御理解いただけると思います。そのほか、特に御意見はありませんか。それでは、議決を行います。
まず一つ目、「薬剤併用超音波歯周用スケーラ」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としても指定するということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それから、今もお話にありました「家庭用赤外線治療用衣」ということでしたが、この「治療」という言葉が省けないかということに関しては御検討いただくということで、これについては今は名称が未確定のままですが、一般医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないこととしてよろしいでしょうか。ありがとうございます。
これは、次回分科会で報告をしなければいけませんので、もしお許しいただければ、この「治療」という言葉の書き換えにつきましては、部会長の私の方で、責任を持って判断させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、これで議題3を終了いたします。
 次は、議題4です。「医療機器「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置(仮称)」の先駆的医療機器の指定について」です。事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題4、「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置」を先駆的医療機器として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。
まず、当日配布資料を御覧ください。1ページに記載しておりますが、先駆的医療機器の指定については、平成27年より、運用として優先審査等の対象として取り扱うこととしていた先駆け指定医療機器について、令和元年の法改正に伴い先駆的医療機器として法律上明確化した制度でございます。
 なお、指定要件については、2ページ中段から3ページ上段に記載の4要件ございます。それらは、それぞれ一つ目が治療法又は診断法の画期性、指定要件2が対象疾患の重篤性、指定要件3が対象疾患に係る極めて高い有効性又は安全性、指定要件4が世界に先駆けて日本で早期開発及び承認申請する意思並びに体制です。
 本制度の仕組みとしては、オーファンの指定などと同様でして、承認申請の前に、探索的試験などの結果を踏まえて、要件に合致するかどうかというところで指定を行います。指定された品目については、優先的な相談などが受けられ、その後、検証試験などの重要な試験成績が得られた上で承認申請がされると、その審査期間が通常12か月が目標のところ6か月になるなどの措置が受けられます。
本部会においては、当該品目の先駆的医療機器としての指定の可否を御審議いただきます。それでは、事前評価の概要について、機構より御説明ください。よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置」の先駆的医療機器の指定に係る事前評価結果について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 資料4「先駆的医療機器該当性事前評価報告書」を御覧ください。本品は、低出力パルス波超音波を用いて、早期アルツハイマー病を有する患者の認知機能低下の抑制を目的に使用する機器です。機器の構成については、6ページに図をお示ししております。本品は、本体と接続したヘッドセットを患者の頭部に装着して、両側側頭部2点に固定した振動子から脳全体に対して、低出力パルス波超音波を左右から交互に照射します。本品については、既に医師主導の探索的治験が実施されており、3か月ごと計72週間の治療が行われております。
 本品について、先駆的医療機器の指定要件4項目に該当するかどうか評価を行いましたので、1ページの「事前評価結果」に沿って御説明いたします。
まず指定要件1、治療法又は診断法の画期性についてです。現時点では、本品と類似の治療原理に基づく既存の医療機器はなく、新規原理を有することから、本品は指定要件1に該当すると判断しました。
 続いて指定要件2、対象疾患の重篤性についてです。本品の対象疾患のうち、軽症アルツハイマー型認知症は、重症度としては軽度ですが、症状の進行に伴い、将来的に社会生活が困難な状態となる可能性が高いと考えられます。また、アルツハイマー病の背景を有する軽度認知障害は、将来的にアルツハイマー型認知症に進行する可能性が高いと考えられます。機構は、いずれの疾患とも社会生活が困難な状態が継続している疾患とみなすことが妥当と考え、また、いずれの疾患も根治療法がないことから、本品は指定要件2に該当すると判断いたしました。
 続いて2ページの指定要件3、対象疾患に係る極めて高い有効性又は安全性についてです。本品の対象疾患のうち、アルツハイマー病の背景を有する軽度認知障害に対しては、治療法が確立されていないと考えます。一方、軽症アルツハイマー型認知症に対しては、認知症症状の進行抑制を効能・効果とする医薬品が存在します。しかしながら、現在の標準治療を継続したとしても、認知機能低下は徐々に進行すると考えられています。また、本品の医師主導探索的治験では、治療開始後72週時点において、本品を使用した群では認知機能低下の進行が抑制されたことを示唆する結果が示されました。以上を踏まえると、本品の対象疾患に対して既存の治療法はなく、本品は高い有効性を有することが見込まれることから、指定要件3に該当すると判断いたしました。
 最後に指定要件4、世界に先駆けて日本で早期開発及び承認申請する意思並びに体制についてです。申請者は、探索的治験を終了し、本年中に日本で検証的治験を開始し、2025年に世界に先駆けて日本で承認申請を行う計画です。承認申請に対応できる組織体制の強化も予定しているということですので、本品は指定要件4に該当すると判断いたしました。
以上の評価の結果、機構は、本品を先駆的医療機器として指定して差し支えないと判断いたしました。御説明は以上です。
○荒井部会長 ありがとうございました。先駆的医療機器の指定ということで、かつては「先駆け」と呼ばれていたと思います。指定要件は四つありまして、いずれも該当するという御説明がありました。委員の方々から、御質問、御意見はございますか。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 効果というのが、高血圧の方が比較的よかったという面が出ているのですが、何かそれに対して示唆することが出てきているのかなと考えます。これをしっかりやるときには、バックグラウンドを、患者さんの層別化などをしっかりされるように、その仕組みを中に入れておかないと、後々困るのではないかと思います。その辺りの割り振りをしっかりやっていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。今、御指摘いただいたとおり、申請者は高血圧の患者で有効性があるかもしれないとしていますが、一方、探索的治験がまだ22例と症例数が少なく、本品群がその半分の11例ですので、まだ本当に本品が効く患者というのがまだ実際には分かっていないと考えています。今後、検証的治験を実施するに当たり、機構でプロトコルの相談も引き続き行っていく予定です。本品が実際に効く患者がどういう患者かというところを検証できるようなプロトコルを立てられるように、相談を続けていきたいと考えております。
○宮川委員 よろしくお願いします。アルツハイマーといっても、脳血管の障害がどのくらいのグレードで入っているのかによっても随分違ってくるので、そこが層別化のいろいろな解析の違いになって出てくるのではないかなと思いますので、是非それをお願いしたいと思います。動脈硬化的なバックグラウンドがどれだけあるのかというところもしっかりと見定めていただければと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。北澤委員、どうぞ。
○北澤委員 指定要件3の高い有効性、安全性というところで、効果がありそうだと示唆する結果が示されたというふうに書いてありますが、これは臨床試験といっても、まだ症例数も限られているので何とも言えないのかもしれませんが、資料の16~17ページに「結果」が書いてあります。RCT群の所で主要評価項目を見ると、いずれも95%信頼区間はマイナスの値からプラスの値になっていて、両群間の平均値の群間差もマイナスからプラスになっています。これは言ってしまえば、差があるのかどうかよく分からないというか、点推定値だけで有効性が示唆されるというふうに言ってしまうのも少し言いすぎなのではないかなと思ったので質問しました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。正に今、御指摘いただいたとおり、資料には載っていないのですが、今回治験を行った患者一人一人のスコアの推移も確認をしておりまして、それを見ると、よく本品が効いている、スコアが改善している患者と、余り効果が見込めなかった患者が混在している状況で、そのばらつきが95%信頼区間のところにも現れているのかと考えております。今後、検証的治験で本品が実際に効く患者がどういう患者かということ、先ほど御指摘いただいたところにも掛かってくるかと思うのですが、そこと併せて、ばらつきの原因も探っていきながらというところで考えております。ただ、現時点では、本品で効く患者がいそうと、効果が見込まれるということで、指定要件3は該当というふうに判断しております。御指摘ありがとうございます。
○荒井部会長 北澤委員の御指摘はごもっともと思います。最初から有効性が分かっている話だったら、この段階での指定はないわけで、ここから先、データをきちんと集めていただくということ、さらにそこでのバックグラウンドの中で、宮川委員からの御指摘のような点も十分配慮してください、ということでよろしいかと思います。北澤委員、よろしいでしょうか。
○北澤委員 はい。是非、検討をよろしくお願いします。
○荒井部会長 ありがとうございます。永井委員、どうぞ。
○永井委員 短く済ませます。今のコメントのとおりなのですが、アルツハイマーというか、MCIという疾患ですね。プラセボ効果も出やすく、ホーソン効果も、ピグマリオン効果もすべて出やすいので、次のピボタル治験では、是非きちんとデザインしていただいて、そういった効果が入らないような形で評価をしていただきたいというお願いです。
○荒井部会長 永井委員、ありがとうございます。そのほか御意見よろしいでしょうか。専ら、次のピボタルのところできちんと評価をしてほしいという、委員の方々からの御意見でした。
それでは、ほかに御意見がなければ議決に入ります。「LIPUS-Brain経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置」について、本部会として先駆的医療機器に指定するということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。本件は分科会にて報告させていただきます。これで議題4を終了いたします。
 少し遅れてしまい大変申し訳ございません。あと議題が5、6、7とありますので、頑張って進めさせていただきたいと思います。
 議題5に入ります。議題5は「優先審査品目について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 優先審査品目について、1品目御報告させていただきます。資料5を御覧ください。一般的名称は現在新設予定のものですが、販売名は「VENOVO静脈用ステントシステム」、申請者は株式会社メディコンです。本品は、症候性の腸骨大腿静脈の血流障害の治療に使用することを目的とした医療機器です。
 静脈用ステントは、令和2年5月に開催された「第30回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」において、我が国に早期に導入すべき医療機器に選定されましたが、指定された製品の開発が進まなかったことから、令和3年11月の第32回検討会において、本品を含む同様の品目を2製品追加指定しております。当該検討会における評価に基づき、本品は、適応疾病が重篤であり、既存の医療機器と比較して有効性又は安全性が優れているものとして、優先審査品目に指定いたしましたので御報告いたします。
○荒井部会長 ありがとうございます。これは報告事項ですが、何か御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは、議題5を終了します。
 議題6に入ります。議題6は「医療機器の再審査結果について」です。説明をお願いいたします。
○事務局 再審査結果を報告させていただきます。まず、再審査については、平成25年改正以前の薬事法第14条の4の規定に基づき、新医療機器等を対象として再審査期間を定め、承認後の使用成績等の調査を行わせるもので、その調査結果に基づいて、有効性及び安全性の再確認を行うことを目的とした制度です。
 今回、御報告させていただく再審査品目は2品目です。まず、1品目目について御説明いたします。資料6-1の1ページを御覧ください。販売名は「PDA閉鎖セット」です。申請者はアボットメディカルジャパン合同会社です。この品目は、動脈管開存症に適用し、経皮的に動脈管開口部に留置し動脈管を閉鎖する器具です。機器の構成としては、留置するダクトオクルーダーとダクトオクルーダーを送達するためのデリバリーシステムからなっております。平成20年12月26日に初回承認されており、初回承認時には、米国の臨床試験成績をピボタル試験として承認されていたことから、国内での仕様実態下における不具合発現状況、安全性、有効性等を確認することを目的として、承認条件として再審査期間中の使用成績調査が課せられております。
 以降、使用成績調査の概要について御説明させていただきます。まず、3ページの図1を御覧ください。当該図は、使用成績調査において調査対象となった患者背景を示しております。安全性評価については全434症例を対象とし、有効性評価については1年後のフォローアップが実施された391症例を対象としております。
 調査結果について御説明いたします。まず、安全性について御説明いたします。8ページを御覧ください。表5が重篤な有害事象をまとめた表です。評価の対象となった434例において、有害事象は22症例に認められており、また機器との関連が疑われる重篤な有害事象は1例のみに認めております。当該有害事象は表5の3番目の症例に該当しますが、1歳児の動脈管開存症に対し本品留置後、肺動脈側へデバイスが移動し、左肺動脈狭窄が生じたものです。しかしながら、総じて因果関係ありとされた重篤な有害事象は極めて少ないと判断しております。
 続いて、不具合件数について、13ページ及び14ページを御覧ください。ダクトオクルーダーの交換は35症例、デリバリーシースの交換は31症例が報告されていますが、初回承認の米国の臨床試験の結果と比較して頻度は高くなく、また現在、学会主体の認定医制度を継続しており、また十分な教育プログラムの提供及び添付文書での注意喚起を行っております。そのため、追加の注意喚起等は不要と判断しております。以上から、安全性について特段の対応は不要と判断しております。
 続いて、有効性について御説明いたします。18ページの表12を御覧ください。術後1年における連続性心雑音について、初回承認時の米国の臨床試験の結果と今回の使用成績調査の結果を比較したものであり、ほぼ同等の成績を確認しております。また、術後1年における経胸壁心エコーによる残存短絡についても比較を行っており、こちらにおいても同等の成績を確認しております。したがって、有効性に対して特段の対応は不要と判断しております。
 ここまで御説明した結果を踏まえて、承認条件について、21ページの真ん中より御説明させていただきます。本品の承認時には三つの承認条件、すなわち「動脈管開存症に対する本品を用いた血管内治療に関する講習の受講等により、本品の有効性及び安全性を十分に理解し、手技及び当該治療に伴う合併症等に関する十分な知識・経験を有する医師が適応を遵守して用いられるように必要な措置を講じること」、「先天性心疾患に対する経皮的血管内治療に関する十分な経験のある医師を有し、本品を用いた治療に伴う合併症への対応が可能な体制が整った医療機関において、本品が使用されるように必要な措置を講じること」、「再審査期間中は、本品全症例を対象に使用成績調査を実施し、適正使用に必要な措置を講じること、なお、登録症例については、留置後一定期間の長期安全性及び有効性に関する情報を収集すること」の三つが付与されておりました。再審査期間中に承認条件3は満たされたと判断しており、承認条件3は解除するとともに、再審査期間終了後も安全性及び有効性の確保のため、承認条件1及び2については継続することが適切であると判断しております。
 以上を踏まえて、22ページに記載のとおり、総合評価として、薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当せず、カテゴリー1と判断しております。以上、「PDA閉鎖セット」の再審査の報告とさせていただきます。
 続いて2品目目に移ります。資料6-2の1ページを御覧ください。販売名は「ノボリ」、申請者はテルモ株式会社です。この品目は、新規の冠動脈病変を有する症候性虚血性心疾患患者に対し留置する冠動脈ステントです。機器の構成については、血管内腔の確保を目的に病変部に留置して使用するステントと、ステントを病変部に送達させるためのデリバリーカテーテルからなり、平成23年3月9日に初回承認されております。従来の薬剤溶出性ステントと同様、有効性及び安全性を確保する目的で、各種臨床試験の長期成績の追跡調査及び再審査期間中のステント血栓症の全例調査の実施が承認条件に付されておりました。
 3ページの下を御覧ください。使用成績調査において、安全性評価は2,052症例を、また、有効性評価は本品が留置できなかった4例を除く2,048症例を対象に行っております。患者背景につきましては5ページの表1に示しており、平均年齢は69.4歳となっております。
 まず、安全性について御説明いたします。7ページの「(2)安全性」を御覧ください。本品との因果関係が否定できない不具合・感染症は、2,052症例中247症例で認めております。不具合のうちステント脱落については、17ページの下に記載のとおり、リスク軽減措置として適正使用情報の提供を医療機関に対して行ったところ、経年的なステント脱落の減少を確認しております。
 続いて、13ページを御覧ください。初回承認時に提出されたTRE956多施設共同比較試験の成績と比較したところ、心臓死や心筋梗塞を含めた主要心血管イベント(MACE)については、本調査では5年で185症例、9%に対して、TRE956試験においては、5年で16症例、10.2%と同程度であることを確認しております。また、14ページに記載のとおり、ステント血栓症や抗血小板薬の併用に伴う重篤な出血性の有害事象についても、同程度であると判断しております。したがって、安全性については特段の対応は不要と判断しております。
 続いて、有効性について御説明いたします。15ページを御覧ください。有効性評価における成功率は、ステントデリバリーに成功し、ステント留置後の残存狭窄率が冠動脈造影で50%未満であることとしておりますが、有効性評価対象症例の2,048症例において、成功率は99.9%であることを確認しております。したがって、有効性についても特段の対応は不要と判断しております。
 ここまで御説明した結果を踏まえて、承認条件について、18ページの中段より御説明いたします。本品の承認時には三つの承認条件、すなわち「本品を用いて行った臨床試験である国内比較試験、国内薬物動態試験、及びNOBORI 1Studyにおける対象患者の予後について、経年解析結果を毎年報告するとともに、必要により適切な措置を講じること」、「使用成績調査により、長期予後について、経年解析結果を報告するとともに、必要により適切な措置を講じること」、「再審査期間中は、国内において本品を使用しステント血栓症が発生した症例については速やかに報告するとともに、必要により適切な措置を講ずること」が付されておりました。本再審査期間中においては、いずれも適切に実施されており、再審査期間終了後は、全ての承認条件を解除することが適切であると判断しております。
 以上を踏まえて、19ページに記載のとおり、総合評価として、本品の再審査結果の区分は、薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当せず、カテゴリー1と判断しております。以上、「ノボリ」の再審査報告でございます。
○荒井部会長 ありがとうございました。2品目の再審査の結果について御報告いただきました。御意見、御質問はよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、議題6を終了させていただきます。
 議題7に入ります。議題7は「部会報告品目について」です。お願いいたします。
○事務局 資料7、横向きの資料を御覧ください。こちらの資料では、令和4年4月1日から令和4年6月末までの3か月間に承認された品目のうち、クラスIVの医療機器、臨床評価が必要な医療機器、承認基準外の体外診断用医薬品など、本部会への報告対象となっている品目の概要を記載しております。
 医療機器については41品目が該当しております。まず、1ページからは、「臨床試験の試験成績が提出され、審査し承認した医療機器」8品目について、それらの一般的名称、販売名、クラス分類などとともに概要をお示ししており、3ページまで続いております。
次に、4ページからは、臨床試験成績を必要とせず審査・承認した30品目の一覧で、12ページまで続いております。
13ページは、臨床試験成績の提出があったプログラム医療機器1品目です。
14ページでは、再製造単回使用医療機器2品目をお示ししております。
最後に、15ページからは、該当する体外診断用医薬品11品目をお示ししております。新規検査項目、コンパニオン診断薬、新規の使用目的の追加等に該当するものについては、一般的名称欄にそれらの別を記載しております。
 これらの報告品目については、事前送付をもって報告とさせていただいておりますので、この場での個別の説明は割愛させていただきます。資料7の説明は以上です。
○荒井部会長 ありがとうございました。委員の方々から、御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは、議題7を終了させていただきます。
本日の議題は以上ですが、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○医療機器審査管理課長 委員の先生方におかれましては、本日もどうもありがとうございました。次回の部会については、10月3日(月)の15時からを予定しております。詳細についてはメールで御連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。連絡事項は以上です。
○荒井部会長 ありがとうございました。今日は大幅に、多分これだけ時間を超過したのは初めてではないかと思いますが、私の不手際で時間が延びてしまい申し訳ございません。ただ、お陰さまで、重要な意義のあるディスカッションができたかと思います。それでは、これをもちまして、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会いたします。長時間ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長 高畑(内線4226)