第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 議事録

健康局予防接種担当参事官室

日時

令和5年5月24日(水) 13:00~15:00

場所

Web会議
中央合同庁舎5号館 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)ワクチンの研究開発及び安定供給にかかるこれまでの議論
  2. (2)日本ワクチン学会からのヒアリング
  3. (3)ワクチンの業界団体からのヒアリング
  4. (4)日本医薬品卸売業連合会からのヒアリング
  5. (5)その他

議事

議事内容
○大塚予防接種担当参事官室室長補佐 ただいまより、第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただき誠にありがとうございます。
本日の議事は公開となります。議事の様子はYouTubeで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。なお、事務局で用意しているYouTube配信用以外のカメラ撮りは、議事に入るまでとさせていただきます。プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。
 本日は、対面とWeb会議のハイブリッドで開催いたします。まず、会議を開催するに当たり、会議の進め方について御連絡させていただきます。御発言される場合は挙手いただき、部会長に御指名されてから、まずお名前をおっしゃっていただき、御発言をお願いします。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている番号までお電話をお願いいたします。
 続きまして、委員の出欠状況について御報告いたします。現在、10名の委員に御出席いただいております。委員10名全員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定により定足数を満たしており、本日の会議が成立したことを御報告いたします。また、本年1月をもって任期満了となった細谷委員に代わりまして、国立成育医療研究センター社会医学研究部部長の森崎先生が新たに委員に就任されましたので、御紹介いたします。森崎先生、一言御挨拶いただければ幸いです。お願いいたします。
○森崎委員 今回から委員を承りました、国立成育医療研究センター社会医学研究部の森崎と申します。どうぞ、よろしくお願いします。
○大塚予防接種担当参事官室室長補佐 ありがとうございます。さらに、本日は参考人として9名の方に御出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。福岡看護大学 基礎・基礎看護部門 基礎・専門基礎分野 教授の岡田参考人、日本製薬工業協会バイオ医薬品委員会ワクチン実務委員会 委員長の丹澤参考人、一般社団法人日本ワクチン産業協会 理事長の今川参考人、米国研究製薬工業協会(PhRMA)ワクチン委員会 委員長の橘参考人、一般社団法人欧州製薬団体連合会(EFPIA)ワクチン部会 部会長の松本参考人、一般社団法人日本医薬品卸売業連合会 薬価問題検討委員会委員長の松田参考人、一般社団法人日本医薬品卸売業連合会 流通改善推進委員会 専門委員の鈴木参考人、一般社団法人日本医薬品卸売業連合会の千田参考人、一般社団法人日本医薬品卸売業連合会の若菜参考人です。
 議事に入りますので、申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。御協力のほど、お願いいたします。
 それでは、議事に先立ちまして資料の確認をさせていただきます。本委員会の資料は、あらかじめ送付させていただいた電子ファイル、及びお手元のタブレット端末で閲覧する方法で実施します。番号01の議事次第及び委員名簿~番号11の利益相反関係書類を用意しております。資料の不足等がございましたら、お申し出いただければと思います。
 それでは、ここからの進行は伊藤部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○伊藤部会長 皆様、御出席ありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局から審議参加に関わる遵守事項について報告をお願いいたします。
○大塚予防接種担当参事官室室長補佐 事務局でございます。審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日、御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取状況、申請資料への関与状況について御申告いただきました。各委員及び参考人からの申告内容については、資料11にあります。御確認いただければと思います。本日の議事内容において個別に調査審議される事項はございませんので、議事への不参加に該当する方はおりません。以上です。
○伊藤部会長 それでは、早速議事に入らせていただきます。本年3月に開催されましたワクチン分科会において、予防接種基本計画の見直しを関係部会で進めていくことが決定されております。本日は、この決定を受けまして、予防接種基本計画のうち、当部会の所掌であります研究開発及び安定供給に関する部分について御議論をいただく予定です。最初に、事務局から、ワクチンの研究開発及び安定供給にかかるこれまでの議論について説明してもらった後に、次に、ワクチンに関する有識者と2つの団体からヒアリングを行います。そして、それらが終わった後にフリーディスカッションをさせていただくという流れで進めさせていただきます。まず、事務局から説明をお願いいたします。
○井上予防接種担当参事官室室長補佐 事務局です。それでは早速ですが、資料1「予防接種基本計画の見直し等について」御説明させていただきます。資料1を御覧ください。資料1を開きますと右下にスライド番号が書いてあります。まずスライド1を御覧ください。本日、事務局から御説明いたしますのは3つありまして、予防接種基本計画そのものの御説明、ワクチンの研究開発に関する御説明、そしてワクチンの安定供給に関する御説明をさせていただく予定です。
 スライド2を御覧ください。こちらのスライドは予防接種基本計画に関する概要をお示ししたものです。予防接種基本計画については第1から第8の項目があり、それぞれ読み上げますと、第1に予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する基本的な方向、第2に国、地方公共団体その他関係者の予防接種に関する役割分担に関する事項、第3に予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に係る目標に関する事項、第4に予防接種の適正な実施に関する施策を推進するための基本的事項、第5に予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保に関する施策を推進するための基本的事項、第6に予防接種の有効性及び安全性の向上に関する施策を推進するための基本的事項、第7に予防接種に関する国際的な連携に関する事項、第8にその他予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する重要事項です。
 当部会においては、先ほど委員長からも御説明がありましたとおり、第5の「予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保に関する施策を推進するための基本的事項」がこの部会の所掌ですので、この部分について、本日は御議論いただく予定です。
 次のスライド3を御覧ください。繰り返しになりますが、本日、本部会で議論する理由について再度御説明させていただきます。本部会については3月に開催された予防接種・ワクチン分科会の議論を受けて行われるものです。この部会で決定された事項としましては、事務局案の真ん中、2つ目の○にあるとおり、予防接種基本方針部会、副反応検討部会、研究開発及び生産・流通部会において具体的な議論を深めることが決定されております。本部会においては、研究開発及び生産・流通部会ですので、第5の研究開発と安定供給に関することを御議論いただきます。
 スライド4を御覧ください。予防接種基本計画に係るこれまでの経緯をお示ししたものです。予防接種法については、平成25年の改正を機に予防接種基本計画が盛り込まれました。予防接種基本計画自体は平成26年に策定され、5年ごとに見直しを行うこととされております。こういった規定がありますので、令和元年8月から、予防接種基本方針部会において見直しの議論を第32回から第37回まで行っていましたが、新型コロナウイルス感染症への対応のため議論が中断していました。
 スライド5を御覧ください。予防接種基本計画の見直しについての今後の議論の進め方です。先ほど御案内したとおり、本年3月に分科会で議論を再開することが決定されています。それを受けて各部会で議論を行うこととなっており、それと並行して自治体へのヒアリングなども行われる予定です。
 そういう作業を行った上で、予防接種基本計画の見直しについては、基本方針部会において提言を取りまとめることとなっており、さらに、その取りまとめの提言については、予防接種・ワクチン分科会において報告されるという流れです。
 次のスライド6を御覧ください。ここからはワクチンの研究開発について御説明いたします。スライド7を御覧ください。予防接種に関する基本的な計画の中の、研究開発に関する事項を抜粋してそのまま記載しています。この中では、基本的な考え方と開発優先度の高いワクチンについて記載がされています。開発優先度の高いワクチンについては、ここに記載されていますとおり、個別にワクチンが指定されています。
 スライド8を御覧ください。先ほどからの続きで、予防接種に関する基本的な計画の抜粋を記載しています。ここの第3の項目で、研究開発を促進するための関係者の環境作りが設けられています。ここで記載されている内容は、国の関係機関、関係団体及びワクチンの製造販売業者との間において十分かつ適切な連携が図られることが重要であると記載されています。さらに、今後もこれらの研究開発を促進するための取組が継続されることが期待されている状況で、国は以下の事項について引き続き検討する必要があるとされています。
 以下の事項については真ん中以降に書いてある(1)~(5)までです。(1)ワクチンの需給の見通しに関する情報提供、(2)感染症対策の目標設定、(3)感染症の疫学情報の整備、(4)小児の治験を実施する環境の整備、(5)ワクチンの基礎研究並びに実用化に向けた支援及び産学官の協力です。
 スライド9を御覧ください。こちらについては、ワクチンの予防接種基本計画の議論が中断する前までに行われていた議論のスライドをお示ししています。2019年11月の予防接種基本方針部会で議論された内容です。スライドの真ん中から右側の「検討」の欄を御覧ください。以前の2019年の部会でお示しした内容ですが、国内外の感染症対策に必要なワクチンの研究開発を促進するとともに、危機管理の観点から国内で開発や製造をする体制を確保するために、ワクチンの研究開発に対する取り組みについて、どう考えるか。さらにサブの項目として、開発優先度が高いワクチンの指定や、研究開発の支援等の取り組みを踏まえて、今後の研究開発のあり方についてどう考えるか。さらに、定期接種化に関する検討の迅速化を図るため、どのような取り組みが可能か。現在の検討のプロセスのうち、迅速化や並行した検討が可能な部分はあるかと記載されています。
 次のスライド10を御覧ください。開発優先度の高いワクチンの開発状況をお示ししたものです。こちらについては、先ほど御案内させていただいた予防接種基本計画の中に、現状、幾つかワクチンが記載されているものをそのまま抜粋したものです。ワクチンごとに開発状況が異なっています。さらに開発状況で幾つか既に承認がなされたものがありまして、こういったものを事務局として整理させていただいております。
 次のスライド11を御覧ください。A類疾病とB類疾病について簡単にお示ししたものです。もともと開発優先度の高いワクチンの選定についての観点は、医療ニーズと疾病負荷の観点から決定されていました。他方で、予防接種法においてはA類とB類に分類されております。まずA類については、人から人に伝染することによるその発生及びまん延を予防するものを主眼として指定されています。他方、B類については、個人の重症化の予防や、あくまで個人の防御の観点から定められています。そういう目的の違いのために、接種の努力義務のあり・なしや、勧奨のあり・なし、自治体の負担の金額などが異なっています。
 さらに、スライド12を御覧ください。ワクチンの定期接種化までのプロセスのイメージ図を掲載しております。ワクチンが定期接種化されるまでには、開発から検討、予算の確保と、いろいろ多くのプロセスがあります。まず開発のところでは臨床試験まで行われて、その後、薬事の申請をして、審査されて承認を受けると。さらにその承認を受けた後、ワクチンの評価小委員会で検討がなされ、基本方針部会の分科会で議論された後、政省令等の改正が行われるということです。この中で開発優先度の高いワクチンについては、研究開発及び生産・流通部会の中で、まず開発の段階で指定がなされ、要請が確保されたというものです。
 次のスライド13を御覧ください。このスライドからはワクチンの安定供給について御説明いたします。スライド14を御覧ください。予防接種基本計画の中から安定供給に関する部分を抜粋しています。「ワクチンの生産体制及び流通体制」の項目で、その中で、ワクチンについては製造開始から出荷までに要する時間が一般的に長く、需要の変動に合わせて短期間で生産調整をすることが困難であるため、国、都道府県及び市町村の関与が不可欠であるとされております。
 次のスライド15を御覧ください。先ほど研究開発でも御説明させていただいた、2019年に行われた予防接種基本方針部会での議論で使われた資料をそのままお示ししています。右側の検討の項目の中を御覧ください。ワクチンの安定供給に係る課題については、製造期間が長いことなどのワクチンの基本的な特徴が背景にあることを踏まえ、リスクの軽減又は回避に向けて、総合的に対策を進めることとしてはどうか。さらに、以下のような観点や、具体的に検討を進めるべき事項について、どのように考えるか。(1)速やかな増産を実現することについて、(2)ワクチンの備蓄量の増大について、(3)複数社が供給するワクチンの企業間の調整について、(4)その他、と記載されています。
 次のスライド16を御覧ください。ワクチンの需要と供給について、基本的な考え方をお示ししたものです。平時においては、左側の需要の天びんと右側の供給の天びんが釣り合っている状態でバランスを取っています。しかしながら、何らかの事情により需要が急に増えたり、若しくは供給が滞ったりしますと、このバランスが崩れて供給の不安定化が起こることを概念的にお示ししたものです。スライドの下半分に、過去にこういった事例がありますということで、ワクチンの供給の不安につながった事例をお示ししています。過去からそれほど少なくない数の供給の不足が生じていることをお示ししています。
 こういった中で、国の取組として何をしてきたかについてスライド17を御覧ください。国家検定の制度・運用の見直しをお示ししたものです。一般的にワクチンについては出荷前に品質をちゃんと確認しないといけませんので、国家による検定が行われています。他方で、この国家検定においては時間を一定程度要するものですので、安定供給の観点から必要な見直しを行い、ワクチンの安定供給につなげた事例です。その際に行った見直しの内容ですが、試験項目の見直し、郵送での対応からメールでの対応を可能にするなどの運用の見直し、薬事監視員による封印解除や検定合格の年月日の印字を廃止するなどして国家検定の早期化をすることとしました。
 この結果、次のスライド18を御覧ください。結果的に供給の早期化をすることができましたので、その結果何が起こったかというと、流通備蓄量の増大をすることができました。上の段にあるとおり、これまでは2か月ぐらいで備蓄量が増減していたのですが、改正後、こういった取組をすることにより、4か月を中心に3か月を下回らない程度で流通量の備蓄が行われている状況です。
 次のスライド19からは、厚生労働省において行った予防接種法の改正の概要を参考資料として掲載しています。こちらについては説明を割愛させていただきますが、臨時接種の類型の見直しや、予防接種事務のデジタル化を行いました。以上です。ありがとうございます。
○伊藤部会長 今、提示していただいた資料以外に、以前にお願いしていたSCARDAの資料も参考資料3として付けていただいております。また、今回の議論が定期接種までの枠組みの迅速化が議題になっているので、11ページに資料としては付いておりますが、それと併せて元資料であったものについて参考資料2として付けていただいております。今回、議論をどこにフォーカスするのかというときには、やはり予防接種法上の定期接種の枠組みや、A類やB類など努力義務、接種勧奨、費用負担、それから健康被害救済に係る給付金額の違いなども分かることはどうしても必要だろうと思いましたので、そのような形で過去の資料を付けさせていただいております。
 続いて、関係者及び関係団体からのヒアリングです。まずは有識者からのヒアリングとして、岡田参考人からお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。
○岡田参考人 岡田と申します。先ほど事務局から御説明がありましたように、開発優先度の高いワクチンというのは、アカデミアから国に提案をして、国から産業界へ開発優先度の高いワクチンとして提案されたものです。私からは、まず、そのワクチンの取扱いについて少し考えを述べさせていただきます。続いて、Life Course Immunizationの考え方で健康寿命を延ばすという考え方を社会に広く発信していただきたいというお願い、その2つです。
 これは、先ほど事務局から説明がありましたように、現在の予防接種ワクチン分科会の前身の予防接種部会のときに、予防接種制度の見直しに関して、第二次提言が提案されています。その中では、開発優先度の高いワクチンとして必要とされるワクチンに関して、研究開発の優先順位や方向性を提言するという提案がなされています。その提案を受けて、この研究開発及び生産・流通部会の第3回のときに、アカデミアから開発を期待するワクチンとして提案をされています。予防接種推進専門協議会は亡くなられました神谷齊先生が呼び掛けをされて、ワクチンに関係している学術団体、現在23団体がまとまって活動しているアカデミアの集団で、現在の委員長は岩田敏先生です。
アカデミアから、研究開発及び生産・流通部会に開発を期待するワクチンとして、1番目は麻しんワクチンベースの混合ワクチンです。これは皆様御存じのように、今、国内では麻しん風しん混合ワクチンしかありませんが、世界標準に合わせた形でのMMRワクチンなどの開発を期待するとしました。2番目は、日本で開発された百日咳ワクチンを含んだDPTワクチンベースの混合ワクチンで、四種混合、五種混合、六種混合ワクチンの開発を期待するとしました。さらに、渡航ワクチンとしては、狂犬病ワクチンや髄膜菌炎ワクチン、デング熱ワクチン、マラリアワクチンなどを提案させていただいています。
 現行ワクチンの改良としては、これはワクチン評価の小委員会などでも随分議論を頂いておりますが、百日咳ワクチンやインフルエンザワクチンなどを提案していますし、さらに肺炎球菌ワクチンでは結合型の15価、20価、21価が開発されているようです。HPVワクチンも男性への接種、水痘は帯状疱疹ワクチンの提案をさせていただいたところです。新規のワクチンに関しては、最近海外で開発がなされているRSVワクチン、あるいはノロウイルスのワクチンなどを提案させていただきました。このようなアカデミアから提案させていただいたワクチンを、この研究開発及び生産・流通部会の委員の先生方に、国内外の優先度、あるいは国内外の疾病負荷の観点で点数を付けていただき、最終的に開発優先度の高いワクチンとして、この予防接種の基本計画の中に盛り込んでいただきました。
 最終的に、海外に存在するが日本独自で開発を期待するワクチンとしては、MRワクチンを含んだ混合ワクチン、四種混合ワクチンを含んだ混合ワクチン、それからもっと効くインフルエンザワクチンとなりました。続いて、海外にも存在しないワクチンとしては、RSVワクチン、ノロウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンで、中には、これまでに承認されたワクチンも含まれています。
さらに、先ほど事務局から御説明がありましたように、研究開発を推進していく上では産官学の協力が必要であるとも書かれています。開発優先度の高いワクチンとして提案されたものは、先ほどご説明申しあげました通り、まず学から官への提案をいたしました。学から官へ提案された6つのワクチンを、続いて官から産へ開発依頼がなされています。2013年12月に、開発優先度の高いワクチンの開発を課長通知として産業界側に要請されています。官から産へ開発依頼を受けたこれらのワクチンを、長い間、時間とお金を掛けて産業界で開発していただいています。このように、産官学が一体となってワクチンの開発が進んでいるというふうに思います。
 先ほど事務局から説明がありましたように、予防接種の基本計画に関しては、本日は11ページの第5番目です。6つのワクチンと、さらに、これはCOVIDのワクチンでいろいろ言われましたが、危機管理の観点からはワクチンを国内で製造できる体制をつくる必要があるということは、COVIDで社会から国に求められた事項だろうと考えています。
開発優先度の高いワクチンに関しては、このように産業界へのヒアリングが行われています。このスライドは、先ほど新しいものが事務局から紹介されましたので、飛ばします。   
このように、国から産業界へ「開発優先度の高いワクチン」に関して開発を要請しました。ヒアリングを受けて、最終的に開発優先度の高いワクチンに関して、産業界側からの要望もこのように挙げられています。1つ目は、開発優先度の高いワクチンを開発する産業界側のメリットをはっきりさせてほしいとの要望があります。特に、国から要請されて開発したワクチンに関しては、定期接種化されるかどうかは、企業にとってみると非常に大きなことになると思います。産業界側からは、インセンティブとして、1つは優先審査をお願いしたい。さらに、PMDAが行っているような相談窓口を厚生労働省の中に設けてほしい。この要望の中で、最も強調されているのが、承認後ではなくて開発の段階から、いろいろ国に相談に乗っていただきたいという開発優先度の高いワクチンに関しての要望事項です。さらに、研究の支援をしてほしいともあります。これは今、AMED-SCARDAなどで多くの支援がなされていると思います。
 定期接種化に向けた論点というのが産業界側はどうしても一番気になっているところです。治験が開始される前の段階で、定期接種のワクチンとなれるような必要事項を前もって開発段階から洗い出してほしいという産業界側からのお願いです。疫学情報も、承認された時点で更に新しい疫学情報を求められてしまえば、どうしても承認後の定期の議論に時間がかかることになります。特に高齢者へのワクチンに関しては、疫学情報が十分に把握されている状況にありませんので、前もってどのような疫学情報が必要かどうかを議論させていただきたいというのが、産業界からの希望です。早い段階で、開発する個別のワクチンの相談に乗っていただきたいともあります。そこで、定期接種に向けたデータが足りるか、足りていないかどうかを、事前に産業界側も承知しておきたいというのが、産業界側からの要望だと思います。さらに、安全性のデータも定期接種化に向けてはどのようなデータが必要か、事前にPMDAと厚労省と共有させていただきたいというのも産業界側からの希望です。
事務局からの資料にありましたように、定期接種化の可否は、現在は、承認後に基本方針部会で検討されています。承認されるまでの間は、この開発優先度の高いワクチンに関しては、定期接種化の是非や定期接種化に求められている要素に関しては、検討する場がありません。さらに、治験のデザインに組み込む必要のある事項や、取得が必要な疫学情報を、企業は事前に想定できずに、効果的なワクチン開発ができていないのが現状です。厚生労働省の所管部局やPMDAとの情報共有も十分でないことも課題の一つです。
このように開発優先度の高いワクチンとして産業界側に国から開発を要請したからには、産業界側のメリットも何らか産業界側に示していただきたいというのが、開発企業の主なお願い事項になっていると思います。私は、開発中あるいは申請段階から、検討する事項を国と産業界側で早く共有をしていただくことが、開発後の定期接種化の議論に早く進む体制だろうと考えます。さらに、そのような検討を行う場が今のところ整備されていません。検討の場を考える際に、米国ACIPの体制が参考になると思います。御存じのように、ACIPは、新しいワクチンが承認された時点で、定期接種の議論がその場で行われます。ACIPでは、ACIPに出す資料の準備として、新規ワクチンが承認される1年から1年半前に作業部会が設置されます。この作業部会は公開の会議ではなく、必要なデータは開発した企業からこの作業部会に提供していただいて、定期接種になるかどうか、有効性や安全性の議論をまず作業部会でして、そしてACIPにその結果を報告するというような流れになっています。
 先ほど事務局からの資料にありましたように、ワクチンの定期接種化までのプロセスの段階として、私から提案させていただく1番目は、開発優先度の高いワクチンについては、ACIPの作業部会のような検討組織を研究開発及び生産・流通部会の下に小委員会などを作っていただきたいことです。開発優先度の高いワクチンとして部会から産業界にお願いしたワクチンに関しては、通常どおり開発試験が完了後に申請され、審査を経て承認されます。承認された後に、ワクチン評価の小委員会でファクトシートを6か月以内に作ることが感染研にお願いされて、そこからワクチン評価の小委員会で定期接種の議論がなされます。そして、それを基本方針部会に上げて、予防接種ワクチン分科会で議論をしてという流れとなっています。
 そこで、開発優先度の高いワクチンに関しては、承認された時点でこの流れが進むのではなくて、この流れを開発企業から申請された時点に、前倒ししていただけないかというのが、私からの提案事項の1番目です。そして作業部会を、申請後にこの部会の下に設置をしていただいて、ファクトシートを感染研だけではなくて産業界、アカデミアも一緒になって作成することで、感染研の負担も減ると思います。承認された時点でこれまで行われてきたワクチン評価の小委員会での定期接種化の協議が、早めに始められるのではないかという提案です。
 2番目は、これは皆様御存じのように、健康寿命を延ばす1つの手段としてワクチンが少し役に立つのではないかということです。男性と女性の健康寿命と平均寿命の差は、10~12歳です。今、国内外で言われているように、Life Course Immunizationの考え方を知っていただきたいと思います。予防接種は、乳幼児や小児に関しては国内外でかなり進んできましたから、小児科医としては大変有り難いと思っていますが、今後は、生涯を通しての予防接種という考え方が必要です。妊産婦や高齢者、思春期、成人に向けても、ワクチン施策が必要になってくると思います。その中で、開発優先度の高いワクチンを赤字にしていますが、妊産婦、思春期、成人、高齢者に対しても、多くの開発優先度の高いワクチンが含まれています。提案の2番目としては、Life Course Immunization、生涯を通しての予防接種の考え方を国から社会に向けて広く発信していただきたいというお願いです。私からは以上です。どうもありがとうございました。
○伊藤部会長 ありがとうございました。岡田先生には、2013年の予防接種基本計画策定時及び2019年の開発優先度の高いワクチン開発状況の中間評価の際の議論を振り返って、ACIPの作業部会のような検討組織作成の提案と、生涯を通じての予防接種についての提案を頂いております。
 振り返ってみますと、2014年の予防接種基本計画の開発優先度の高いワクチンで提案した混合ワクチンも済みましたし、経鼻投与のインフルエンザワクチンのフルミストとか、現在、メッセンジャーRNAのインフルエンザワクチンの開発も始まっておりますし、既に帯状疱疹ワクチンも出来ております。心残りなのは、流行性耳下腺炎のワクチンがまだというところがあるのですが、その当時に比べて進歩があったということだと思います。ただ、この部会の目的は、国民を守るという安全保障に必要なワクチンの開発目標を立てるということですので、参考資料のSCARDAの目的とは違っていることについては十分理解していただいた上で議論を進めていかなければいけないのではないかと思います。
 岡田先生がWebですので、今回、岡田先生がほぼ業界団体の方の代弁をされているので、それ以上付け加えることがあるかどうかはよく分かりませんが、業界団体の方への質問は後でまとめることにして、岡田先生だけへの質問に絞りますと、何かありますでしょうか。あるようでしたら、この場で伺っておきたいと思います。大丈夫ですか。
それでは、業界団体からのヒアリングをさせていただきます。丹澤参考人、今川参考人、橘参考人、松本参考人からのお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○丹澤参考人 それでは、よろしくお願いいたします。資料を映していただけますでしょうか。始めさせていただきます。本日はこのような機会を頂きまして、ありがとうございます。ワクチンの業界団体としましては、製薬協、日ワク協、PhRMA、EFPIAの4団体でございます。本日は製薬協の丹澤がお話させていただきます。よろしくお願いします。ページ番号は付いていませんが、次のページになりますけれども、本日のアジェンダとして、最初に業界団体の取組及び要望事項をお話させていただきます。
 1.ワクチン4団体加盟企業によるこれまでの取組という資料をご覧いただければと思います。4団体加盟企業は、国民に早く必要なワクチンを届けるべく、安定供給に努めるとともに、先ほどから出ております開発優先度の高いワクチンの開発要請を受けまして、ワクチンの研究開発を進めてきております。その中で、帯状疱疹ワクチンにつきましては既に上市されております。また、前回まで表示されておりました2021年の10月に公開された以降、今日もお話がございましたが、直近では、DPT、IPVを含む5混の5種混合ワクチン及び経鼻のインフルエンザワクチン、これらが薬事承認をいただきました。また、RSVワクチンにつきましても、薬事の承認申請中ということで、国から頂きました要望に対しまして、着実に実行を進めているところでございます。
 また、この間、国家検定については、官民による継続的な協議を続けさせていただきまして、平時から並行検定が導入されました。また、直近で、検定申請にある全てのワクチンについて、生物学的製剤基準から異常毒性否定試験、こちらが削除されるということで、様々な合理化が進んでおります。その他、ワクチンの申請から承認審査、生物学的製剤基準、国家検定に至るまで、幅広い課題につきまして行政の方々に前向きに取り組んでいただきまして、数多くの解決、改善が得られております。感謝とともに、引き続きのお力添えをお願いしたいというように考えております。
 我々、4団体としましては、日本国民が感染症のまん延におびえることなく、安心して生活できるよう、国家戦略に基づいた一貫性のあるワクチンの実用化、推進体制を整備するとともに、引き続き企業の支援策につきまして、その重要性について、昨年の3月に提言書を厚生労働省のほうに提出させていただきました。こちらは4団体のそれぞれのWebサイトに公開させていただいております。本日は、これまでの取組をもとに、ワクチンの研究開発と安定供給、予防接種事業への要望事項等、4つほど御説明させていただきます。
 次、2ページ目の開発優先度の高いワクチンという所を見ていただければと思います。こちらは、先ほどから岡田先生、事務局のほうからもいろいろお話いただきまして、ありがとうございます。予防接種に関する基本計画では、開発優先度の高いワクチン、これが指定されておりまして、指定されたワクチンの位置付けが少し不明確な点がございまして、改めて明確にしていただければというところでございます。
 先ほど、岡田先生の話にありましたとおり、学会等の意見を受けて、予防接種ワクチン分科会等で検討されて、その要請を受けて開発を進めてきているワクチンでございまして、やはり速やかな定期化の検討、これが望まれているワクチンであるというように改めて認識しております。したがいまして、この開発優先度の高いワクチンにつきましては、定期化の検討のタイムライン、その明確化、速やかに着手できるような対応、及び開発段階から産官学による情報の共有、必要なデータ、必要な疫学データの論点の整理などを議論する場を設置していただきたいと考えておりますし、また、こういった取組の中で、速やかにワクチンの実用化を進めていく対応につきまして、引き続きの支援を頂きたいと考えております。
 また、近年、ワクチンのイノベーションがこのコロナ禍で大きく進みました。これまで予防できなかった感染症の対策が可能になることも予想されておりますので、開発優先度の高いワクチンの認定基準、こちらを明確にして、定期化の対応等の見直しが行われることが望ましいと考えております。また、世界では、最先端のバイオテクノロジーによって、新規及び既存のワクチンの製品の製造プロセス、品質の改善等が行われております。日本のワクチンの薬事規制を最先端の技術に対応できるような内容にタイムリーに変更・検討させていただくような仕組みも構築いただければと考えております。このような対応が整備されることにおきまして、企業は、国内の研究開発を推進することがより可能になっていき、その上で、国民が遅滞なく世界標準のワクチンを享受できるような検討を進めていきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いします。
 3ページ目です。安定供給につきまして、予防接種のデータベースの必要性についてお話させていただきます。製造販売業者は、平時においてワクチンの供給不足を未然に防ぐよう、できうる限りの対応を進めているところでございますが、ワクチンの供給不足の原因、その背景におきましては様々なものがございまして、それらを全て、あらかじめ排除することは現実的に難しい状況でございます。実際に供給不足が生じた場合につきましては、その影響を最小にするためにおいても、これまでの状況、対応だけでなく、市場原理に委ねることだけでなく、国及び全ての予防接種事業関係者による連携・協力が必要だというように考えております。同時に、企業は、急激なワクチンの需要増に対応するには早期の着手がどうしても必要でございます。この需要バランスを確認するためには、やはり速やかな接種動向及びその状況の把握が必要となるため、現在検討中の予防接種履歴のデジタル化におきまして、全ての定期接種及び任意接種の接種動向をタイムリーに把握するデータベースの構築をお願いしたいと考えております。
 これによりまして、国民一人一人が生涯を通じて予防接種履歴を確認できる仕組みにもつながりまして、国民が健康維持のために予防接種を検討する上で重要な取組だと考えております。また、予防接種デジタル化にあたりましては、自治体の管理業務の軽減も期待されるところでして、これを機に、政省令、予防接種の実施要綱で定められた記録事項など、その目的を再検討した上で、必要な事項に絞り、情報にすべきではないかというように考えております。
 4ページ目です。予防接種の施策の総合的かつ計画的な推進、予防接種事業のPDCAにつきまして御提言差し上げます。日本の現状に即した定期接種、ワクチンごとの接種率の目標の設定、あと、感染症の動向のモニタリングを行うような体制を構築していただければと考えております。これによりまして、接種率の目標、その接種状況、こちらの計測が可能な指標を用いて、事業の進捗把握及び予防接種の事業を速やかにきちんと評価することができるようになると考えております。予防接種事業の目的を達成するために、この評価に基づいて接種勧奨、情報の提供等の対応を進めていく必要性があると考えています。
 また、これらの取組を進めることによって、安定供給に伴う計画立案、これが企業のほうも必要だと考えています。予防接種事業は国民の理解に基づく主体的な行動が必須であるというように認識しておりまして、感染症のリスク、予防接種の必要性を国民に分かりやすく伝えるためにも、接種率の目標、接種率の推移等を把握するような、海外のような事例を基に検討することが必要だと考えております。
 5ページ目です。先ほど、岡田先生のほうからもお話しいただきました定期接種化のプロセスです。表にさせていただきましたのは、米国、ドイツ及び日本の比較です。現状では、定期接種化の主な論点について、製造販売承認の取得まで公の場で議論する機会がございません。この定期化の検討の開始後、改めて長時間を掛けて主要な評価論点を調査するような事例がございまして、これが検討の期間を長期化させる一因となっています。この検討が長期化することで、平均7、8年ほど掛かるという状況でして、企業は、この定期化の実現の時期が予測できないところもあります。そのために、事業計画を立案するのが非常に難しい状況でございます。
 6ページ目です。このような状況で、先ほどもお話がありましたが、ワクチンの定期接種化の必要な疾病に対して、早期に定期接種化の議論を進めるために、承認後の定期接種化の検討開始時期等の検討タイムラインの見直しや、指定要件の明確化、必要なデータをワクチンごとに開発初期から検討を開始する等、検討プロセスにつきましても改めて議論を進めさせていただければと考えております。
 最後、7ページ目です。今後検討すべきポイント等、国内予防接種の在り方等に少し触れさせていただきます。先ほどもお話がございましたが、WHOなどは、ライフステージに応じた生涯を通じた予防接種を提起しております。日本におきましても、少子高齢化が進みまして、団塊世代も後期高齢期を迎える我が国におきましても、これまでの感染症まん延予防を主にした小児を対象とする予防接種の在り方だけでなく、現役世代の生産性向上、高齢者の健康寿命の延伸を視野に入れて、全世代の個人の健康を維持することを目的に、予防接種事業の在り方を改めて議論させていただく機会を頂ければというように考えております。そして、その目的に沿った予防接種法の改正、その他全般の制度の見直しにつきまして議論させていただく場を希望いたします。
 具体的には、全てのワクチンについて、国民の理解を深めるために、効果的な接種の推進、情報提供の見直しを行っていただきたいと考えております。あと、薬事承認を得たワクチンに対する科学的な評価を随時行う体制の構築も必要だというように考えております。我々、ワクチンの4団体は、国民に世界標準のワクチンを迅速にアクセス可能にするための努力を惜しまず、引き続き対応していきたいと考えております。
以上、4点、研究開発、安定供給、予防接種事業につきまして、意見を申し上げさせていただきました。以上でございます。
○伊藤部会長 ありがとうございました。続きまして、日本医薬品卸売業連合会からのヒアリングをさせていただきたいと思います。松田参考人、鈴木参考人、千田参考人、若菜参考人からお話を伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○松田参考人 それでは、日本医薬品卸売業連合会の松田より御説明をさせていただきます。本日は、このような機会を設けていただきまして、どうもありがとうございます。本日は、医薬品卸の立場から、ワクチン流通の現状と課題について、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、1ページ目を御覧ください。本日は、1.現状認識、2.課題の整理と改善の方向性、3.今後の取組の順に御説明させていただきます。
 2ページ目を御覧ください。まずは現状認識についてです。私たち医薬品卸は、ワクチンを含む医薬品の安定供給に努め、地域の医療提供サービス向上に貢献すべく、日々活動しております。ワクチンの流通については、接種を希望される国民の皆様が円滑な接種ができるよう、これまでも行政・医療機関・メーカーの皆様と協力してまいりましたが、その流通プロセスの効率性を向上させるためには、更なる改善が必要と思われる領域も少なからず残されていると認識しております。
 下の図に、ワクチンの流通プロセスを簡単なイメージとしてまとめ、生産から接種に至るまでの工程を番号で表示しております。この図に基づき、医薬品卸の視点からの現状認識を御紹介させていただきます。
 まず、メーカーと卸間を指す工程(1)についての現状認識です。メーカーから医薬品卸への出荷割当て量と、医療機関からの需要量のギャップが生じていること。そして、メーカー、卸の各企業間だけでは全体の生産供給計画の情報共有は非常に難しい。
 次に、卸と医療機関を指す工程(2)についてです。何らかの供給制限が掛かった際には、医薬品卸に需給調整の業務負荷が掛かること。医薬品卸は、過去実績に基づく納入計画をベースとしており、突発的な受注増にタイムリーに対応できないこと。季節性ワクチンの場合は、接種希望期間のピークを過ぎると、返品等の発生が医薬品卸の負担増となること。
 次に、接種希望者に係る事項として、工程(3)についてです。接種期間中における需要予測が困難なため、メーカーが綿密に供給計画を策定することは非常に難しいのではないかと思っております。また、医療機関側にとっても正確な発注計画を策定することは、同時に難しいというように考えております。
 最後は、流通当事者を表すABC全てに共通する点です。流通当事者の自助努力だけでは、不測の事態に備えるための在庫の確保は困難であること。流通プロセスの一部に在庫偏在が発生したとしても、流通当事者だけで正確に実態を把握することは困難であること。これらが医薬品卸の視点から見た現状認識と捉えております。
 3ページ目を御覧ください。先ほどの現状認識に基づいて課題を整理し、改善の方向性についてまとめたものです。ページの左側に課題を3つ整理いたしました。1.生産量と必要量のバランスが崩れた場合に、安定的な流通に支障を来すこと。2.接種期間中の供給総量が十分であったとしても、メーカーの供給と医療機関の需要との間に時期のずれが生じることで、一時的な需給逼迫が生ずることがある。3.需要予測の難易度が高いため、突発的な需要増が発生した場合の対応が困難となっていること。
 これらの課題ごとに、改善の方向性を右側に列記いたしました。1.生産量と必要量がリンクするための情報共有の促進。2.需給ピークのずれを最小化するための全体的なスケジュールの前倒しと、期間短縮の検討。3.行政による最低限の備蓄確保や、流通最適化のための働きかけの検討、円滑なワクチン供給を実現するため流通過程で生じているこれらの課題を検証いただき、当部会において改善に向けた取組を御検討いただきますようお願いいたします。
 4ページ目を御覧ください。最後に、今後の取組について述べさせていただきます。国民の期待に応える医療サービス提供との視点で、行政・医療機関・メーカー・医薬品卸が一体となって、効率的なワクチン供給の仕組みを検討することが重要であると考えております。また、SDGsの観点からも、“ワクチン廃棄による資源ロス”を最小化するという共通認識を徹底する必要があると考えております。
 最後となりますが、接種を希望される国民の皆様に対して、円滑にワクチンを供給できるよう、私たち医薬品卸はこれからも努力してまいります。以上をもちまして、御説明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○伊藤部会長 ありがとうございました。これまで事務局並びにワクチン関係団体からのヒアリングを踏まえまして、これからフリーディスカッションの時間に入りたいと思います。ワクチン4団体からは、毎回、開発優先度の高いワクチンの定期接種化のスケジュールを示せと、それから予防接種記録のデシタル化、それから疫学情報収集とワクチン評価小委員会の迅速化についての要望がありました。医薬品卸からは、平時ではなくて、有時のワクチン供給のときのトラブル回避の話と、もう1つは、ワクチン廃棄による資源ロスの最小化のための供給体制構築についての提案があったと認識しています。
基本的に定期接種の議論は、生産・流通部会ではなくて基本方針部会や分科会の所管だと認識していますので、深入りは避けたいのですが、まず皆様方から、今、いただいた御意見や説明に対しての御質問を頂ければと思いますが、どなたかいかがでしょうか。なかなか言いにくいでしょうか。福島先生、どうぞ。
○福島委員 もし伊藤先生が先に御発言されることがあるのでしたら、その後でも私は結構ですが。
○伊藤部会長 皆さんから意見を伺ってからでないと、言いたいことは後に取っておこうかなと思っていたので。
○福島委員 分かりました。フリーディスカッションということで、意見出しということで自由に述べさせていただきたいと思います。たくさん論点があるのですが、ワクチンの定期接種化までのプロセスというところで、伊藤部会長が先ほどこの部会の所管ではないとおっしゃいましたが、私自身、この問題については前からいろいろ考えるところがあります。分科会の委員でもありますし、2019年3月までは基本方針部会の下に置かれていたワクチン評価小委員会の委員でもありました。承認後にワクチン評価小委員会で定期接種化の議論を始めて、そこからファクトシートの作成依頼を感染研にお願いする。その中で、疫学データが足りないといったような基本的な問題が指摘されたこともありました。ではそれをどうしますかといったところで研究班が立ち上がり、今から疫学データを収集する、あるいは、既存データ、NDB等を使って算出していただいたこともありましたが、本日、御発表いただいた内容のようにかなりの遅れを来したワクチンもあったことも事実です。
この問題については、2023年3月の予防接種ワクチン分科会で、米国等のACIPのような大きな組織のやり方ではなくても、何とか日本にフィットしたものができないかということを申し上げました。岡田先生に2019年12月25日の研究開発及び生産・流通部会のスライドを再掲していただきましたので、当時の議事録を今、私も見直しましたが、当時の部会で私は同じことを申し上げています。岡田先生から、スライド19枚目で、例えば、研究開発及び生産・流通部会の下に、開発優先度の高いワクチンに限ってワーキングを置いて、そのワクチンが申請されると同時にワクチン評価小委員会での議論に移してはどうかということをご提案いただき、それも一案かと思います。このような具体的なイメージをお示しいただいたことで、議論も進むと思いましたが、違う部会の下に置かれたワーキング同士でシームレスに引き継ぎができるのかという問題もあるかと思います。そもそも米国のACIPは、ACIPという1つの大きな組織があって、それが日本でいう予防接種ワクチン分科会になるのですが、ACIPの下にワクチンごとにワーキングが置かれている。そのワーキングで、2週間に1回なり、常に議論が回っていて、製薬メーカーさん等も情報提供され、大体、議論が温まったところで、ACIPに上げるというプロセスです。日本で細分化された部会の下にまたワーキングを置くことで、横連携ができるのかというような問題もあると思います。ですので、テクニカルにはすごくたくさん問題がありまして、今、私もここでよい案を申し上げることはできないのですが、何とかしなければいけないというのは以前から思っていますし、分科会、部会でも申し上げていますということを述べさせていただきます。
○伊藤部会長 ありがとうございました。今、福島先生からどちらかと言うと御意見ということで、ほかに何か御意見等はありませんか。合田先生、よろしくお願いします。
○合田委員 すみません、1つ確認させていただきたいのは、薬事承認前に定期接種化の検討に向けて予備検討ということを、このワクチン評価のどこかの部分でやるということは、ここの議論のテーマなのですか。そういうことをやったほうがよろしいですかというようなことについては、今、福島先生もおっしゃいましたとおり、やったほうが絶対にいいだろうと思いますが、どういう状況で薬事の情報が出てくるのか。それから、先ほど言われたように、その前の段階で具体的にどのような疫学データが必要なのかなど、非常に幅広い議論をしなければいけません。それの実現可能性というのと、どこで議論するのかを確認したいのですが。
○伊藤部会長 ありがとうございます。岡田先生、これの回答ですか、それとも何か御意見ですか。よろしくお願いします。
○岡田参考人 私が提案させていただいたのは、ワクチン評価の小委員会の改革ではなくて、この研究開発及び生産・流通部会の下に作業部会的なものを作っていただいて、承認された時点で、先ほど御提案させていただいたような内容を事前に、平場ではない、公開ではない形で協議をしていただきたいということで、決してほかの委員会を改革してほしいと言っているわけではございません。それは、誤解のないようにどうぞよろしくお願いします。
○合田委員 合田ですが、よろしいですか。
○伊藤部会長 どうぞ。
○合田委員 岡田先生は確かにそう言われたと思います。それはすごく実現可能性の高いやり方だと思いましたが、いろいろメーカーさんや卸の方々が言われているのは、承認の前の議論という形で言われているので、それがどの辺のところで議論して、どういう実現可能性があるというのが私自身今よく分からないので、そこを確認したかった、そういう状況です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。では、企業のほうからお答えいただけますか。
○今川参考人 御質問ありがとうございます。一般社団法人日本ワクチン産業協会の今川と申します。御質問の件ですが、本部会、研究開発及び生産・流通部会ということになっています。今、問題になっているのは、ワクチンの承認というのは、言うなればダブルスタンダード的なところがありまして、薬事承認とそれから定期接種化の承認という2つがあります。丹澤委員長から御説明がありましたように、デュプリケートしているというか、重複しているプロセスがあるということがありますので、そこを短縮、効率化をするという意味では、承認の前から予備的に、平場ではなくて、その段階から評価していただくということになればいいなと業界としては思っています。
 今回の趣旨として、全てのワクチンにおいて、例えば承認前から審査ということになりますと、当然、大変な工数が掛かるということになりますが、今回、開発優先度の高いワクチンというところ、いわゆる公的と言いますか、社会からのニーズが高いというワクチンにおいては、そういったものは迅速に市場に投入して、高い普及率をもって国民を感染症から守るという観点からしますと、そのような迅速的なプロセスというものを導入してもいいのではないかなというのが、我々の要望ということになっています。
○伊藤部会長 ありがとうございます。坂元先生、どうぞ。
○坂元委員 川崎市の坂元です。私も、その早い段階から定期接種化の議論をする必要はあるだろうと思っています。その理由としては、ワクチンの製造承認が下りた後、それぞれのメーカーさんがやはり定期接種化をしてほしいという意味も含めて、各自治体、特に市町村のほうに独自の補助をしてくれないかという働きかけを結構やっていまして、例えばいろいろなワクチンも、ある市町村は補助を出して、ある市町村は出していないなど、本来、予防接種というものを国民に平等にするという意味からは、やはり自治体ごとに余り差があってはよくないのではないかと考えています。例えば、安全性のデータ、そういう意味も含めて、やはり早い段階で定期接種化するという議論がなされることは、私は国民の健康のためにも必要ではないかと考えています。
 それからもう1点が、その逆の話として、定期接種化されないならばこのワクチンを開発しないというのも、例えば薬の中にも希少薬のようなものがあって、そういう感染症として数は少ないけれど予防接種で防げるという感染症の意義から、やはり定期接種化する議論と、これは定期接種化対象ではないが、例えば今後日本が海外進出するという意味においても、また、日本のメーカーが開発したワクチンがそういう感染症がはやっている国で売れるという意味も含めて、もう1つの可能性という枠も早い段階から私は検討するべきではないかと思います。その意味においても、やはり早い段階での議論は必要だと思っています。
 それから、予防接種記録のデジタル化なのですが、これは我々市町村としても大賛成です。今回、コロナワクチンの接種において、マイナンバーを使って接種記録がスマホできちんと登録されて提示できるというシステムができましたので、やる気になれば、現在、市町村が持っている予防接種台帳と、それをデジタル化させて、マイナンバーが使えるかどうか分からないのですが、マイナンバーを使って誰でも自分の接種記録をどこでも簡単に見られるということも、私は1日も早くやる必要があるだろうと思っています。
 それから、予防接種の記録において、予防接種台帳の記録保管が原則、自治体であれば5年なのです。ところがワクチンというものが、例えば将来を考えたときに、20年前にこのワクチンをやっておいてどうかというデータも必要なので、そういう予防接種台帳の記録の在り方ということも、やはり基本的に私は見直す必要があるだろうと思っています。
 それからもう1点です。今後、いろいろなワクチンが開発されてくると、市町村にとって1つの大きな悩みというのは、定期接種化された後、同じ感染症に対するワクチンの価格が違ってくるということが、今後、十分起こり得るのではないかと思っています。その際、現在、A類は全額市町村が持つという形でやっていますが、B類のワクチンは市町村によって補助率が違っております。国はおおむね市町村が掛かる費用の3割程度を補助しますということなのですが、今後、ここでワクチンの価格が違ってきたときに、市町村としては、どのような対応を取っていいかということがまだ議論されていないという形で、その辺の議論も、今後、私としては必要ではないかと思っています。私からは以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。隣で坂元先生が定期接種前向き論を打ったので、少し反対論を打っておこうかなと思います。2022年度から接種勧奨が再開されて、今年の4月にようやく9価のHPVワクチンが導入されて、世界と同じレベルになったのですが、このHPVワクチンに関しては、製薬企業の団体から提示された資料の中で、HPVの定期接種までの期間は書いていないのですが、多分、相当早かったと思います。承認から入って、ワクチン導入初期に拙速に最初に定期接種として使われたということが、CRPS、複合性局性疼痛症候群など多彩な症状への恐怖となったのではないかということを、大変憂慮しています。
 新型コロナワクチンについても、当初の高齢者の死亡率が2割近くあった状況が、全世界的なcut and tryというか、壮大な社会実験が行われたと理解していますが、3回以上の接種で重症化の予防ができるということが分かるまでに、疼痛や発熱などの副作用とか、心筋炎など様々な問題が発生したのは残念だったのですが、コロナウイルスとの共生にたどり着くまでにある程度の時間が掛かったと認識をしています。今後、同様のパンデミックが起きてきたときは、同じような対応が必要になるのだろうと思いますが、社会防衛ではなくて個人の防衛を主体とするワクチンについては、基本的には定期接種をしてもB類なのでしょうから、任意接種で一定程度の接種者数、例えば対象者の最低20%か30%かどこでもいいのですが、ある程度の例数が集まって、社会的なコンセンサスができてから、定期接種の議論を始めるということがあってもいいのではないか。それは製薬企業のことから考えれば、もちろん利益をきちんと取れるという形がどうしても必要だと、エンタープライズとしては必要だと思いますが、その辺りについては、やはりpros and consはあるのだろうなと思っています。そこも含めて、きちんとした議論ができる場がどうしても必要なのではないかなと思います。
 それから疫学情報収集に関しては、今回の資料1の23ページにもありますが、新型コロナに関してはV-SYSやVRSなどで、大変円滑に供給されたと思っています。定期接種のワクチンについては、デジタル庁や厚労省がコントロールして、同様のシステムを拡充したらどうかと思います。安全保障上は国内でデータを持つ必要がどうしてもあるのだろうと思いますが、例えば医療機関からの発注は卸業者の方がやられて、出荷状態は、製薬企業が入力して、市町村や厚労省などが把握できるというような状況にしておけば、偏在や期限切れの防止や、副反応の発生母数の把握が可能になる。その一歩手前までは、もう既にシステムとしてというか、構想としては出来上がりつつあるのだろうとは思います。
 定期接種については後で話が出てくるのだろうと思いますが、公正取引委員会とも話が進んでいるという話も聞いていますし、ワクチン全体のDX化など、またデジタルトランスフォーメーションについては進めていただきたいというところだと思います。
 すみません、せっかくの機会なので個人の意見として述べさせていただきました。ほかに皆さんから御意見などはありませんか。釜萢先生、どうぞ。
○釜萢委員 ありがとうございます。釜萢です。今、伊藤先生からお話がありましたが、デジタルトランスフォーメーションは是非、進めなければならないし、大分、進んできたという認識もありますが、一方で、なかなか我が国でこれを進めていくには、まだまだハードルが高いなと思っています。 着実に前に進める必要があるのですが、いろいろ担当の部署によって、非常に一時的にせよ負荷が掛かる部門がありますので、その辺りをなるべく無理のないように工夫しながらやっていくことが、早い進捗を実現するためには必要だろうと思います。
 今、マイナンバーに関わるいろいろな不都合、あるいは事故のようなものが報道されていて、これはなかなか避け切れない部分があるのだろうなと思いながら見ていますが、医療現場において、マイナンバーカードの利用が急速に高まっているというわけにはなかなかいかないので、その辺りのところは、今後、進めていかなければならないが、進めるために解決すべき課題を一つ一つつぶしていかなければいけないという作業があって、国から示されるデジタルトランスフォーメーション、特に医療のDXの未来像は非常に明るい見通しをお示しいただくわけですが、なかなかそこにいくまでにはまだまだ大変な時間が掛かりそうだなというのが、現場からの実感です。ですから、今、それを早く利用していろいろなところに役立てていかなければいけないというのは、そのとおりなのですが、そのためには、これまでよりもはるかにまた多くの努力を払わないといけないなと思っています。
 それから話を戻しまして、定期接種化の議論をいかに早く行うのかということです。これは伊藤先生と坂元先生から、どちらかというと両方の意見をお出しいただきました。その中で、やはりコロナの今回の経験を踏まえますと、国内において、いかに早く多くの国民の必要とするワクチンを的確に作って供給できるかということは、極めて大事であって、それを国際比較した場合に、我が国の取組がすごく優れていたとはなかなか言えないと思います。これはいろいろやむを得ない事情もあるわけですが、さらに、この能力を平時からしっかり整えておくということが必要であって、現状であれば薬事承認が行われた後で定期化の議論をするという順序になるわけですが、これは国民により早く必要なワクチンを提供するためには、このワクチンが必要かどうかというところの見通しや決断は国において、ある程度早い時期に行われる必要があって、このワクチンは是非必要だから早く作らなければならないということになった場合には、これまでの仕組みよりも、もちろんクローズドの検討の必要がありますが、場合によっては薬事の検討と併せて、これを早い段階でやっていって、そしてしっかりワクチンを確保していくという戦略がないと、なかなか諸外国に比べて早く国民に提供するということは難しいなと強く感じます。したがって、ここの仕組みについては、今回の検討の中で、何とかこれまでよりも改善できる取組が必要ではないかなと思います。
 それから、今日は薬剤の卸の御担当からもお話を頂きましたが、個々の卸業者さん、幾つも会社はあるわけですから、そのそれぞれは全体の流通の状況を独自に把握するということは不可能だろうと思います。したがって、それらの情報を何とか国が一括して把握、管理できるような取組というものを更に進めていかないと、その地域的な薬剤の偏在等についての情報や、あるいは対処の方法をしっかりうまく実現するというのはなかなか難しいとずっと思っていました。これについては、厚労省でもいろいろな取組を既に予防接種室を中心にやっていただいているということを承知していますので、何とかその辺りの取組が更に進むことを期待したいと思います。私の意見は以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。厚労省から回答を頂きたいと思います。
○井上予防接種担当参事官室室長補佐 いろいろな御意見をありがとうございます。先ほどの釜萢先生のところで、特に事務局からお答えさせていただこうと思っていますのはデジタル化の部分です。デジタル化によって集められる接種記録については、この部会でも先ほど御提案いただいたとおり、供給の計画を立てる上でかなり重要な情報であるということは、我々も十分に認識しています。そういったこともありますので、今後のデシタル化を厚生労働省で議論するに当たっては、そういったことも踏まえつつ、例えば、接種者数がどれだけ進んでいるかダッシュボードの形で公表するなど、そういった取組を進めさせていただいて、安定供給に貢献することを考えています。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。ほかに御意見等はありませんか。信澤先生、どうぞ。
○信澤委員 ありがとうございます。先ほどの伊藤先生の御意見に関連してなのですが、やはり開発優先度が高いということと、定期接種化ということを必ずしもリンクして考える必要はないのかなという気がしています。開発優先度が高いというのは、例えばパンデミックワクチンのようなものは必ず高いのですが、定期接種化をすぐするかという議論が必要かというと、そういうわけではないと思います。ですので、ちょっと私がこの分野は余りファミリアではないので、変なことを言ったら訂正していただきたいのですが、開発優先度の高いワクチンに関して、先ほどの御提案のように、ACIPの作業部会のような検討組織を作って、検討を早くに始めるということはいいと思いますが、その後、そのワクチンの定期接種化が必要であれば、早期に検討していた情報をもとに、その議論を始めればいいのであって、必ずしも定期接種化がありきで議論をする必要はないのかなという気がしました。すみません、ちょっと考え方がおかしかったら、御指摘ください。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。ほかに御意見等はありませんか。今いただいた御意見と、今後、開発優先度の高いワクチンはリバイスをしていかなければいけないのだろうと思いますので、それに関してどのように情報収集をし、この委員会として取りまとめをして、分科会に上げていくのかについては次のステップとして考えなければいけないと思っています。今いただいた御意見など、それからもちろん過去に新型インフルエンザのワクチンなど、クローズドで開発の途中の評価などをしていたということもあるので、必ずしもオープンではない場所で、今後の見通しも含めての会を作って、意見交換をしながら、最終的にその中の公開ができる部分に関しては、こちらの委員会に上げていただくなど、作業の手順というものが組めるのだろうと思いますので、そういったことも含めて、事務局でちょっと考えていただいて、また近々にその案について御意見を伺うという手順になろうかと思いますが、それでよろしいでしょうか。今日はどちらかというと、今後の見直しをしていく過程の中の最初のキックオフの回という位置付けだと思っていますので、今日で何か決めるということではないと思っていますので、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。今後については、また事務局でまとめていただきたいと思いますが、「その他」について、事務局から説明をお願いいたします。
○高橋企画管理調整官 事務局です。参考資料3について、簡単に御報告したいと思います。SCARDAにおけるワクチン・新規モダリティ研究開発事業の採択課題一覧です。先生方、御存じのとおり、SCARDAにおいて、重点感染症に対するワクチンの開発の支援を進めているところです。
 1ページ目ですが、今回、赤枠で囲まれた所が前回の御報告内容からの追加です。(1)が感染症ワクチンの開発で、上の5つの課題はこれまでに採択されたもので、前回のこちらの部会で御報告しました。本年4月に、この赤枠で囲んでいるインフルエンザワクチンに関する開発課題について、採択されています。
 次に、これまでの部会において、各開発課題の基本情報等が分かるものを示していただきたいという御意見を頂戴してきまして、今回より添付しています。それが3ページ以降、具体的な内容は4ページ以降に添付させていただいています。この内容については、AMEDのWebサイトで既に掲載されているものです。例えば今回、新規の採択課題として御報告したインフルエンザワクチンですが、9ページにありますので、こちらを簡単に御紹介させていただきます。
 9ページの1.提案の概要ですが、このワクチンはLNP-mRNA技術を用いたワクチンで、パンデミックに備えて目指しているものということです。例えば、3.選定理由に、このワクチンが研究に採択された選定理由が書いてありますが、有用性の観点ということで申しますと、mRNAワクチンが新しいモダリティとして開発、製造スピードが優れているということが、今回のコロナウイルスのワクチン開発で実証されたということで、インフルエンザによる有事の際には貢献が期待できるということです。また2つ目のポツですが、新型コロナウイルス以外の感染症においては、今、mRNAワクチンの有効性及び有用性は不明ですが、そのためこのmRNAワクチンの汎用性をインフルエンザワクチンで検証する意義はあると考えるといったような選定理由が書いてあります。
 その他の課題についても、同様にこういった情報をまとめさせていただいていますので、今回より資料として付けさせていただきました。御報告は以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。今の説明について、委員の方から御質問はありませんか。ようやくSCARDAでどんなことが議論されているのかが、少し分かるような状況になってきたのかなと思いますが、こういったワクチンが開発の部分が進んでいるということで、御理解いただければと思います。
 本日の議事は以上になりますが、その他、事務局から連絡等はございますか。
○大塚予防接種担当参事官室室長補佐 本日も様々な御意見を頂きまして、ありがとうございました。次回の開催については、追って御連絡をさせていただきたいと思います。引き続き御協力をよろしくお願いいたします。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。それでは、本日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。