令和5年度 第1回化学物質管理に係る専門家検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和5年6月8日(木) 10:00~12:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム16A
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング16階)

議事次第

  1. (1)令和5年度検討スケジュール
  2. (2)皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定方法
  3. (3)その他

議事内容

○環境改善・ばく露対策室長  本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、定刻になりましたので、第1回化学物質管理に係る専門家検討会を開催いたします。
 私は、本日、座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます化学物質対策
課環境改善・ばく露対策室の平川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、今年度の検討スケジュールと皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定方法について検討することとしていますので、開催要綱別紙の構成員名簿に掲載の全ての先生方を参集対象としております。
 構成員の出席状況ですが、本日は、17名の構成員のうち14名の構成員に御出席いただいており、平林委員、上野委員、山本委員の3名の方が御欠席となっております。本日は会場参加とオンライン参加の併用で開催させていただいており、14名の出席者のうち武林委員がオンラインでの参加となっております。
 なお、皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定方法について検討するに当たり、報告書を取りまとめいただきました独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センターの豊岡先生にオブザーバーとしてオンラインで参加いただくこととしております。
 会場とオンラインの併用で開催しておりますので、会場参加の皆様におかれましては、御発言の際に必ずマイクを使用していただきますようお願いいたします。
 また、オンライン参加の先生におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがございますので、御発言される場合を除きまして、マイクをミュート、オフに設定していただきますようお願いいたします。また、御発言の際にはあらかじめチャットで御発言の旨を入れていただくか、またはお名前を名乗っていただき、座長の指名を受けてから御発言いただきますようお願いいたします。
 なお、議事録を作成し後日公表いたしますので、御承知おきください。
 また、本日の会議は公開としており、一般傍聴者につきましてはウェブでの音声配信のみとさせていただいております。
 それでは、最初に令和5年度第1回化学物質に係る専門家検討会の開催に当たり、厚生労働省労働基準局、美濃安全衛生部長の御挨拶を予定しておりましたが、急用のため参加することができませんので、代わりに安井化学物質対策課長から御挨拶を申し上げます。
○化学物質対策課長  皆さん、おはようございます。本来でしたら部長の美濃から御挨拶申し上げるところですが、国会対応で参加できませんので、私から代わって御挨拶させていただきます。
 皆様におかれましては、平素より労働安全衛生対策の推進、とりわけ化学物質管理の推進に多大なる御尽力を賜りまして、この場を借りまして厚く御礼を申し上げます。
 御案内のとおり、令和4年4月から全面施行される新たな化学物質規制におきましては、事業者がリスクアセスメントを実施して、その結果に基づいて国が定める基準の範囲内でばく露防止措置を適切に実施してきたということになるわけです。そのため昨年9月に本検討会を設置いたしまして、計6回にわたってばく露の上限となる濃度基準値、それから測定方法などについて御検討いただいたところです。その結果を踏まえまして、令和5年4月に67物質について濃度基準値を告示するとともに、測定の方法を示しました技術指針を公示したところです。
 今年度につきましても、7回にわたりまして昨年度の積み残し物質33物質に加えまして、新たに154物質について濃度基準値や測定方法を御検討いただくという予定です。
また、測定の精度管理、あるいはばく露の防止措置につきましても併せて御検討いただく予定としています。
 先生方におかれましては、それぞれの御知見やお立場から忌憚のない御意見、御議論をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○環境改善・ばく露対策室長  ありがとうございました。
 それでは、以降の議事進行を城内座長にお願いいたします。
○城内座長  皆さん、おはようございます。本日第1回の化学物質管理に関わる専門家検討会を開催することになりました。本委員会では、自律的な管理の技術的な部分について検討する非常に重要な会議でして、事務局あるいは委員の皆様には多大な御苦労をおかけすることになると思いますが、今年度も引き続きよろしくお願いいたします。
 では、事務局から資料確認をお願いいたします。
○環境改善・ばく露対策室長  それでは、資料等の確認をさせていただきます。資料ですが、資料は議事次第と配付資料一覧、資料1から資料5-2まで、参考資料は参考資料1から参考資料3まで御用意させていただいております。
 本日の資料はタブレットに格納しておりますが、皮膚等化学物質等の検討に当たって特に御検討いただきたい16物質に係る一次文献のうち報告書作成に当たって入手されたものについては、印刷したものを用意しておりますので、必要な方は事務局までお知らせください。
 会場にお越しの皆様方におかれましては、資料に抜けなどございませんでしょうか。オンラインで参加していただいている先生方にも資料を事前に送付させていただいておりますが、何かございましたら、事務局までお知らせください。
 なお、検討に使用する一次文献は、著作権の関係がございますため、委員限りの資料としております。
 資料の確認は以上です。本日の資料は厚生労働省ホームページにあらかじめ掲載しております。傍聴の方はそちらを御覧ください。
 以上でございます。
○城内座長  ありがとうございました。
 それでは、本日の議題に入ります。本日の審議の進め方ですが、議題1に入る前に令和5年2月10日付で公表されました昨年度の本検討会の報告書を踏まえて、この4月に濃度基準告示や技術上の指針が定められていますので、まずは事務局からその報告をしていただきます。その後、議題1、2と順に審議いただきます。
○化学物質評価室長  それでは、資料の説明をさせていただきます。化学物質評価室長の藤田と申します。よろしくお願いいたします。
 座長から御案内のありましたとおり、昨年先生方に御議論いただきました報告書に基づきまして告示や指針を定めておりますので、それについて御説明をさせていただきます。
 まず2ページ目を御覧ください。化学物質規制における濃度の基準に関する規定です。この中で事業者は、リスクアセスメント対象物質のうち、厚生労働大臣が定めるものを製造し、これを取り扱う屋内作業場においては、労働者がこれらのものにばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準以下としなければならないと定められております。したがいまして、厚生労働大臣が物質と濃度を定める必要がございます。
 次のページを御覧ください。厚生労働大臣が定めるものといたしまして、アクリル酸エチル等、67物質となっております。本資料の11ページ目以降に物質の一覧が載ってございます。厚生労働大臣が定める濃度の基準ですが、物質の種類に応じて定めるということになっております。8時間のばく露を測定して得られた8時間加重平均値は、8時間濃度基準値を超えてはいけないということと、1日のうちの濃度が最も高くなると思われる15分間のばく露を測定した15分間時間加重平均値は、短時間濃度基準値を超えてはならないという定めになっています。
 次のページを御覧ください。次のページは加重平均の求め方となっております。
 5ページ目を御覧ください。こちらは基準の努力義務についてです。基準を超えなければいいのかという論点にについて、例えば15分加重平均が天井に近いところに何度もあったら危ないではないかという御議論があったかと思います。そこで濃度の基準について事業者は次に掲げる事項を努めるものとするという努力義務がされています。
 ①8時間濃度基準値及び短時間濃度基準値が定められているものについて、当該のばく露における15分間時間加重平均が8時間濃度基準値を超え、かつ短時間濃度基準値以下の場合にあっては、当該ばく露の回数が1日の労働時間中に4回を超えず、かつ当該ばく露の間隔を1時間以上とすることとなっております。
 下のグラフを見ていただきますと、上の横棒が短時間濃度基準、次の横棒が8時間濃度基準となっておりまして、15分間加重平均(グラフの山の間の四角の部分)を4回超えないように、かつこの山の間を1時間以上とすることとなっております。
 短時間濃度基準が決められていないもの、上の基準値が定められていないものもありますが、その場合には8時間濃度基準の3倍を超えないようにすることと決められておりました。
 次のページを御覧ください。また、濃度基準値については、15分間加重平均の場合以外に天井値も定められております。天井値が定められているもの(11ページ以降のリストで、アクロレインなど米印がついている物質)についてはいかなる瞬間的にもこの値を超えないようにしましょうということになっています。
 次の7ページです。努力義務ですが、基準値は物質ごとに決まっております。ただし、複合的な影響も考慮する必要があると思います。有害性の種類及び当該有害物質の影響を及ぼす臓器が同一であるものを2種類以上含有する混合物の8時間濃度基準については、次のように計算して得た換算値が1を超えないようにすることとし、複合的なばく露についても考慮することとされております。
 8ページ目を御覧ください。こちらは技術上の指針となります。技術上の指針が定める、事業者が実施すべき事項を御覧ください。①事業場で使用する全てのリスクアセスメント対象物質、国のGHS分類によって危険度、危険性や有害性が確認された全てのもので
すが、これについて危険性または有害性を特定し、労働者が当該物質にばく露される程度を把握した上で、リスクを見積もることとされています。
 そのうち濃度基準が設定されている物質については、リスクの見積りの過程において、ばく露される程度が濃度基準値を超えるおそれがある屋内作業を把握した上で、ばく露される程度が基準値以下であることを確認するための測定、確認測定というものを実施してくださいということになっています。
 ①と②の結果に基づきまして、優先順位に従って、労働者がリスクアセスメント対象物質にばく露される程度を最小限度とすることを含め、必要なリスク低減措置を実施することとしています。その際、濃度基準値が設定されている物質については、当該物質にばく露される程度を濃度基準値以下としなければならないということで、基準値がないものにつきましてもばく露される程度は最小限としてくださいということになっています。
 さらに9ページを御覧ください。発がん性が明確な物質は、遺伝毒性発がん物質など、どんなに少量でも発がんする危険性があるということで、安全な閾値である濃度基準の設定が困難であるとされています。このため濃度基準値は設定しておりませんが、事業者は危険性また有害性の低い物質の代替や、工学的対策、管理的対策、有効な保護具の使用などによって、これら物質にばく露される程度を最小限としなければならないとされています。
 また、建設作業など、毎回異なる環境で作業を行う場合については、その都度測定を行うことができませんので、典型的な作業を洗い出し、あらかじめそのような作業において労働者がばく露される物質の濃度を測定し、マニュアルなどを作成して、マニュアルなどに定められた措置を適切に実施することによって、リスク低減措置を実施したとみなすことができるとなっております。
 次の10ページ目ですが、こちらに化学物質の管理のためのフローチャートがございます。まず初期調査を行い、リスクの見積りをして、測定を実施し、低減措置を取るなどして化学物質へのばく露を減らしていくということになります。
 このフローチャートですけれども、エンドレスで循環しているように見えますが、化学物質への対策というのは定期的にリスクアセスメントして見直していくというものなので、化学物質を取り扱っている限り、ずっと回していく必要があるという意図で、スタートに戻って随時見直しましょうねということになっています。
 11ページ目からが、昨年度定めていただきました濃度と濃度基準の表になっております。物の種類と8時間濃度基準、短時間濃度基準が定められております。短時間濃度基準の中には先ほど御説明しましたように、アクロレインのように米印がついているものは、天井値が定まっているというものがあるということになっております。
 以上が昨年度頂きました報告書に基づきまして、本年度定められた告示等になっています。
 説明を終了いたします。ありがとうございます。
○城内座長  ありがとうございました。今の事務局からの説明について何か御質問や御意見があればお願いいたします。御意見ある場合は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 では、御質問、御意見等ないようですので、次に続けたいと思います。続きまして、議題1、令和5年度検討会スケジュールについてです。事務局から資料の説明をお願いします。
○化学物質評価室長補佐  それでは、資料2から4までについて説明させていただきます。化学物質評価室の吉見と申します。
 まず、資料2です。この検討会のメインの検討テーマとなる濃度基準値の検討の進め方になります。
 1番と2番については、昨年度と基本的に同じ形になりますので再確認となりますけれども、①の基本的な考え方で濃度基準値は、有害性に関する文献に基づき決定します。②の検討に当たっては、測定方法が定められていること、有効な呼吸用保護具があることの2点が確認されたものについて濃度基準値を決めるということになります。
 それから、③基準値は、初期調査と詳細調査の2段階で検討するということで、初期調査の情報では濃度基準値を決定できない場合には、詳細調査を行い、その情報に基づき決定するということにしております。
 続いて、調査結果の評価です。初期調査につきましては、根拠論文の信頼性が高く、その根拠論文による数値、基準値が諸機関の職業性ばく露限界値と矛盾しないような場合には、その根拠論文に基づいて基準値を決定します。
 続いて、次のような場合には、詳細調査に移行するということで、複数の根拠論文の結論に矛盾があるなど、根拠論文の信頼性の比較等の評価が必要な場合、それから諸機関の職業性ばく露限界値に大きなばらつきがあって、根拠論文の信頼性の比較等の評価が必要な場合は、詳細調査に移行して、その下にあります根拠論文の疫学調査手法、動物実験の試験条件等から、信頼性を比較、評価して、信頼できる根拠論文を選んで、そこから濃度基準値を決定するということとしております。
 今年度の濃度基準値の検討スケジュールですけれども、次の資料3で詳しく説明させていただきますので、ここでは割愛します。
 次の2ページ目に行きまして、濃度基準値の設定までの流れですけれども、大きな流れは昨年度と同じです。まずは労働安全衛生総合研究所に設置した専門家会議で文献のレビューを行った上で、濃度基準値の案を提案いただきまして、その案について厚労省の専門家検討会で御審議いただきまして、そこで基準値と測定法両方がそろったものについて濃度基準値を決定し、厚労省で濃度基準値の告示の改正の手続を行うという流れにしております。
 ここで1点、昨年度から変更点がありまして、右側の労働安全衛生総合研究所(安衛研)の専門家会議という緑の枠の中で、捕集・分析法の審議というところを追加しております。これは、昨年度の検討対象物質については、厚生労働省で過去にリスク評価を実施した物質を対象にしておりましたので、厚労省のリスク評価の過程で測定法の情報収集等を既に行っておりました。ですので、そういった情報を基に測定方法の検討を行ったのですけれども、今年度の検討対象物質についてそのような情報がまだありませんので、安衛研の専門家会議で有害性の評価の検討とは別に、測定法のワーキンググループを新設いたしまして、測定法、捕集・分析法の文献レビュー等を行い、その評価をしてもらうということに致しました。
 安衛研の専門家会議で検討して提案いただいた濃度基準値の案と捕集・分析法の案を基に、厚生労働省の専門家検討会で検討、審議をいただくということになります。
 続いて資料3を御覧ください。こちらが今年度の検討会での当面の検討事項と検討スケジュールです。
 まず1(1)濃度基準値関係ですけれども、先ほど資料2で御説明したとおり、検討会のメインである検討テーマになります対象物質ごとの濃度基準値、測定方法について審議をいただきます。
 それから(2)測定関係ですけれども、まず1点目の、作業環境測定における個人サンプリング法の適用物質の拡大は、昨年度の検討会でも検討いただいたテーマになりますが、さらに追加の検討をいただく予定としております。2点目の、個人ばく露測定の精度管理の仕組みは、現在の法令の仕組みでは個人ばく露測定、法令上は誰でも測定できるという形になっておりますので、今回測定の精度を法令で担保する仕組みについて検討いただくことを予定しております。
 続いて(3)皮膚・眼対策関係です。1点目は、これから検討いただくテーマになりますが、皮膚から吸収、侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定方法は、安衛則の規定に基づき不浸透性の保護具の使用が必要となる物質の特定方法について、本日この後に御議論いただきます。
 2点目の保護手袋等の選定の考え方は、秋以降に検討いただく予定で考えております。
 続いて2今年度の検討スケジュールです。本日が第1回検討会ということで、皆さんにお集まりいただいております。次回、第2回以降、メインのテーマの濃度基準値の検討に入る予定です。
 濃度基準値の値の検討に当たっては、コアメンバーと書いてありますが、これは構成員名簿で全般に関する事項に掲げる構成員の方々に当たります。それから毒性メンバーは、構成員名簿で毒性に関する事項に掲げる方々になります。このメンバーの方にお集まりいただきまして、測定法の検討の際にはコアメンバーとばく露メンバー、構成員名簿でばく露防止対策に関する事項に掲げる方々に検討に参加いただく予定としています。
 まず、濃度基準値の値の検討につきましては、第2回から第6回にかけまして各回最大30物質程度を対象に検討いただく予定です。5回合わせて150物質程度ということになります。各回に対象物質、毒性グループ(1)等と書いていますが、こちらは検討対象物質が今申し上げたとおり約150物質ありますので、これを4つのグループに分けて安衛研の専門家会議で検討した上で、検討が終わったものから厚労省の専門家検討会に提案いただいて、審議を進める予定としております。
 このグループ分けについては、後の資料に出てきますけれども、文献の収集状況ですとか物質の構造の類似性などを基に分けております。基本的には文献の収集が進んだものから順に検討をいただくこととしております。
 次に測定法に関しては、第3回から第5回にかけて、各回最大約50物質程度を検討いただく予定としております。こちらも対象物質を4つのグループに分けて、安衛研で検討が終わったものからこの検討会に提案いただいて審議いただく予定としております。
 この測定のグループ分けは、先ほどの毒性のグループ分けと異なりまして、測定方法別に分けることにしております。したがいまして、毒性の検討と測定の検討で物質のグループ分けが異なりますので、検討の途中段階では先に基準値が決まって測定方法が決まっていない物質ですとか、逆に測定方法が先に決まって基準値が決まっていないものが混在いたしますけれども、最終的に年度最後の検討会の段階で基準値、測定方法の両方がそろったものについて濃度基準値を決定するということになります。
 それから、第3回から第5回では前半と後半に分けていますけれども、先ほど申し上げたとおり毒性の検討と測定方法の検討でメンバーを分けていますので、前後半2部に分けて開催する予定をしております。
 そして最後、第7回の検討会では、第6回までの積み残し分の検討と今年度の報告書の取りまとめを予定しております。
 備考につきましては、1番は先ほど資料2で説明したとおり、検討に当たっては安衛研の専門家会議で検討された文献レビュー結果を用いるということと、2番については、再審議対象33物質、昨年度の検討において再審議が必要とされた物質、保留となった物質については、必要な情報がそろい次第、順次この検討会に諮るということにしております。
 続いて資料4-1を御覧ください。こちらが昨年度の検討で再審議となり、まだ保留となっている33物質です。再度検討する理由については、その表に記載していますが、物質によって様々な理由があります。多くの物質につきましては、今文献等を収集中ですので、再審議は恐らく秋以降になる見込みです。ただし、このうち19番のメタクリル酸と20番のメタクリル酸メチルの2物質については、検討に必要な文献の入手ができましたので、安衛研の専門家会議で検討が終わり次第、ほかの物質より比較的早く専門家検討会で再審議いただくことになる予定です。
 続いて、資料4-2を御覧ください。こちらが今年度の検討対象物質154物質です。毒性グループ、測定グループそれぞれのところに数字が入っておりますが、こちらがそれぞれの物質のグループ分けです。先ほど説明したとおり、グループ分けが異なりますので、検討の順番が途中段階ではそろいませんけれども、最終的に両方の検討結果を合わせて、両方そろったものについて濃度基準値を決定するということになります。
 なお、毒性グループに数値ではなくハイフンが記入されている3物質については、今諸機関で職業性ばく露限界値の改定が予告されている物質ですので、そちらの検討結果が出て、改定の情報を入手した後に検討する予定としております。したがって、検討はかなり後ろのほうになる見込みです。
 説明は以上です。
○城内座長  ありがとうございました。それでは、今御説明いただきました検討会スケジュールについて何か御質問や御意見があればお願いいたします。最川委員、お願いいたします。
○最川委員  全国建設業協会の最川です。
 質問なのですが、昨年決めた濃度基準値67物質については、法律が施行されるのが令和6年4月1日からということで認識しておりまして、今年度、昨年残った33物質、150物質を含めて順次決まっていくと思うのですけれども、濃度基準値以下を確認しなければいけない日にちというのは、また1年後ということでよろしいですか。途中から順次増やしていくのか、法に施行される日程を教えていただけますか。
○化学物質評価室長補佐  本年度検討した分につきましては、年度末頃に告示の改正を考えております。告示を改正した後、1年程度の周知期間を経て施行。具体的には令和7年4月、昨年度設定したものよりも1年遅れでの施行を考えております。
○最川委員  ありがとうございます。もう1つ質問よろしいですか。昨年67物質の濃度基準値が決まったわけなのですけれども、今建設業でマニュアルづくりを建設業労働災害防止協会(建災防)と一緒に取組んでいるところなのですが、67物質が具体的に建設業で使われているどんな資材等に含有されているか、自分でもかなり調べているのですけれども、よく分からないのです。
 令和2年頃に厚生労働省から公表されたあるパンフレットに、特定の物質が、医薬品等、具体的にどのような製品に使われていることを整理した表がありました。それと同じようなものを作っていただきたいのです。67物質が含有されている製品を使うにあたり、事前に濃度を測定し、濃度基準値以下にするためには、どういう作業をすべきか、どういう保護具を使わなければいけないかを設定することが、なかなかできない状況にあります。
 少なくとも67物質について、全部網羅する必要はないのですけれども、例えば塗料に入っている、どういう接着剤に入っている、という情報を出していただきたいです。
 以上です。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。国が示しているようなSDSの中の主たる用途というのが書いてあるので、そのレベルでお示しするのは可能なのですけれども、あくまで主たる用途で、ここに書いていない用途では使われていないと限らなくて、そういうことをお示しすることで、逆にうちは関係ないと思われるのも不安なところもあります。ご指摘の点について今後どうするかは検討させていただきます。
○最川委員  何も情報がないと全く分からいため、調べるのに非常に時間がかかるのです。一つ一つ調べても、結局分かりませんでした。それは非常に労力がかかるため、SDSの主たる用途に書いていないから入っていないということではなくて、ある程度想定するために示していただきたいです。お願いです。
○城内座長  今の御質問について私から確認させていただきたいのですが、SDSを見ても分からないということですね。分かりました。
 宮本委員、お願いします。
○宮本委員  安衛研からの報告書について要望があります。濃度基準値を超えたらすぐ健康診断しなければいけないという点について、例えば短時間の基準値を超えたら急性症状なのだろうというのは分かります。一方、8時間濃度基準値は、慢性的あるいは遅発性の影響を防ぐ目的で設定された濃度基準なのだと認識していますが、結局はばく露早々ということでしたら急性症状を見るぐらいしか手がないと思います。
 また、何等かの症状が現れていた場合も、まずは問診や視診を行う程度しか確認する術がないと思うのですが、例えばその際に意見を求められた産業医は、安衛研からの情報あるいは今後出てくる情報を最初にまず見ると思います。そのため、可能であればこの報告書等に、この濃度基準値はどのような急性症状、慢性症状、遅発性症状を防ぐために設定したといった情報を入れていただきたい。もし昨年の67物質にもレトロフィットで入れられるのであれば、ぜひお願いしたいのですが、そうした対応は可能でしょうか。
○化学物質対策課長  安衛研の報告書というのは、結局我々が審議した資料そのもので、当然のことながら根拠論文と、当該論文に記載されているばく露したらこういう障害が起きました、あるいは動物の場合であれば、という事例が書いてあります。また、短時間濃度基準値を設定した場合は、主に人間のデータが多いと思いますけれども、こういう急性症状がありましたという事例が書いてありますので、それを御覧になっていただく形になろうかと思います。
 毎回、検討会の資料として公開しておりまして、67物質については昨年度、既に公開されたものがありますので、そちらを見ていただければどういう急性障害がエビデンスとしてあるかが分かると思っております。
○宮本委員  おっしゃるとおりではあるのですが、例えば本日の室長から御説明があった資料1の後ろのページに物質一覧、8時間濃度基準値と短時間濃度基準値があります。ここで8時間濃度基準値のときに、急性/慢性にマークがついていたりすると、例えば急性症状があった場合に今度何が起こるかを調べやすいと考えており、その点を補足いただけないかという要望です。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。御指摘踏まえまして検討させていただきます。健康診断につきましては、現在労働衛生課で検討しておりますので、そこで何らかのガイドラインを示す予定にしておりますが、その参考資料として御指摘のように主たる症状がお示しできるかという点について検討させていただきたいと思います。国で示すか、あるいは労働安全衛生総合研究所で参考資料としてお示しするか、いろいろな方法があるかと思います。
○城内座長  そのほか御意見等ありませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、次に進みたいと思います。続きまして議題2、皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかな物質の特定方法についてです。ここからはオブザーバーとして安衛研の豊岡先生にも御参加いただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から資料の説明をお願いします。
○化学物質対策課長  それでは、私から資料5-1を御説明させていただきます。こちら資料5-1につきましては、昨年度、労働安全衛生総合研究所で御検討いただいた報告書の概要です。
 1ページめくっていただきますと、背景要因ですが、まず我が国における化学物質による健康障害事案、休業4日以上に限定しておりますが、これのうち経皮ばく露による皮膚障害が一番多いという状況です。これ以外にオルト-トルイジンとかMOCAのように皮膚刺激性はない、つまり皮膚障害は起こさないのだけれども、そこから吸収されたものが特定の臓器にがんをもたらしたという事案も発生しているところです。
 こういった背景から今般の労衛則の改正で皮膚等障害化学物質等(皮膚もしくは目に障害を与えるおそれまたは皮膚から吸収され、もしくは皮膚に侵入して、健康障害を生ずるおそれがあることが明らかなものをいう)、これにつきましては、製造または取り扱う場合は、不浸透性の保護具の使用を義務づけたというところです。
 このうち皮膚や目に障害を与えるおそれが明らかなものにつきましては、GHS分類で、皮膚腐食性・刺激性、目に対する重篤な損傷性・目刺激性、呼吸器感作性または皮膚感作性がありますので、いずれかの有害性で区分1に該当するという解釈を既に示しているわけです。
 一方、皮膚から吸収・侵入して健康障害を生ずるおそれが明らかなものにつきましては、GHS分類では必ずしも明らかになっていないため、そうした物質を特定する考え方を整理する必要があり、この検討会を開いたというところです。
 下に594条の3の条文があります。こちらは努力義務になっているものなのですが、真ん中辺り、「健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなものを除く」となっております。このようにおそれがあることが明らかなものについては義務、それから健康障害を生ずるおそれがないことが明らかなものについては何も義務がかからない。その間のおそれがあるものについては努力義務といった3層構造で法令を構成しているということです。この3層構造につきましてもどうやって特定していくのかという問題があるというところです。
 続きまして、3ページ目が安衛研で検討されました検討会の委員です。労働安全衛生総合研究所の研究者の方に加えまして、防衛医科大の岩澤先生であるとか宮内先生、それから事業者団体として日化協から山口さんも参加して検討を行ったというところです。
 4ページ以降が内容ですが、そもそも皮膚吸収性物質の概念については、ばく露限界等を提案する諸機関、一番初めに提言をしたのが1961年のACGIHで、液体化合物が正常皮膚を透過して全身に影響を及ぼす可能性があるものを警告するために、許容濃度、この場合ばく露限界ですが、TLVに併記するという形で使用しております。
 その後、同様にNIOSHやOSHA、DFG、HSE、産業衛生学会が、いずれもばく露限界値とペアで注記をつけており、Skin Notationといった形で運用しております。その根拠となるエビデンスには①から④のレベルがございます。①は人の情報で、疫学情報であるとか労働災害の情報であるとか被験者実験によって、経皮で健康障害が起きたことが分かっています。
 ②が動物実験によるものですが、こちらも実際に経皮吸収させた上で、実際に健康影響が出たものが2つ目です。
 3つ目は、健康障害は直接そこまで観察できていないですけれども、皮膚に吸収されることが確実に分かっており、その上でその吸収速度から考えると、ばく露限界値を超えるおそれがある、あるいは発がん性があるといったものにつきましては、Skin Notationをつけるというものです。
 あと③はIn Vitroですので、いわゆる培養皮膚などを使って実験室でやったものです。
 ④は類似構造物質などからこういった属性があるのではないかということをシミュレーションしたものです。それぞれの期間で①から④までどこまでSkin Notationをつけるかというのはかなりばらばらで、我が国においてどのようにこれを考えるか整理する必要がありました。
 5ページ目ですが、今回は不浸透性の保護具を着用することを義務づけるということですので、やはり根拠としてはしっかりしたものである必要があるということです。検討を行ったところ、まず①が人に関する情報ですが、経皮に関して毒性が発生することが明らかであるということですので、当然Group1、義務物質にすべきだということです。
 もう1つ、②についても、動物の経皮から吸収した結果、一定の健康障害が観察されているわけですので、こういったものにつきましてもGroup1として判断できると考えました。もう1つ、こちらも動物実験ですが、候補物質を動物に経皮ばく露した後の体内動態は、吸収規則であるとか組織分布、代謝等が明らかになっており、その結果、経皮吸収によって職業ばく露限界等を超えるおそれがあるとか、あるいは非常に低いレベルで発がんが確認されている物質の場合、発がんのおそれが否定できないといった場合ですので、こちらにつきましてもGroup1として判断すべきだと考えています。
 ③はIn Vitroの実験で、こちらにつきましては培養皮膚ということもありますので、吸収性についても十分な評価ができませんし、また健康障害についても科学的根拠がやや弱いということですので、こちらを義務物質とするのは難しいのではないかと考えています。
 ④につきましては、類似化合物に類似した性質を示すという類似性の原則が示されておりますけれども、実際に類似性質を示すという相応の科学的根拠は必ずしもありませんので、これだけのデータで義務物質とするのは難しいのではないかという結論になっています。
 これを踏まえまして下の3つにありますけれども、まず義務がかかる皮膚吸収性有害物質に該当する条件としては、まずヒトにおける経皮ばく露が関与する健康障害を示す情報、それから動物において、経皮ばく露による毒性影響を示す情報、動物において、経皮ばく露における体内動態情報があって、それら情報を用いたモデル計算から、経皮ばく露により職業ばく露限界等を超えるおそれ、あるいは発がん性を評価できる十分な情報がある場合につきましては、義務物質とすべきではないかという結論になっています。
 次のページは、実際にそれを当てはめてみたわけですが、まず対象としては職業ばく露限界がある約870物質について分類を行っております。職業ばく露限界に設定されているものに限定した理由といたしましては、職業ばく露限界を設定するのに足り得る根拠は十分にあるということを理由にしています。
 それから、下の注記事項がありますけれども、一番下ですが、ばく露限界に設定されていない発がん性物質があります。特に皮膚がんにつきましては、皮膚を1つの臓器とみなした場合は、皮膚に吸収され発がん性を示すということですので、11物質につきましては、職業ばく露限界はありませんが、加えるということです。こうしたプロセスを経て最終的には356物質が該当したということです。
 続きまして、356物質以外で有害性があるかどうかというのを考える考え方というのを示しています。まずGroup2の候補物質は努力義務になる可能性があるということですが、こちらにつきましては356物質を除いた全ての物質をまず考えた上で、GHSにおいて急性経皮毒性があるものにつきましては、当然Group2に分類すべきだということです。
 それ以外のものにつきましては、物性判定を行います。蒸気圧が20mmHg以下と比較的低い、Log Kow(水オクタノール比)が一定以上であるというものにつきましては揮発しにくく、かつ油の溶けやすいということになりますので、吸収されやすいのではないかということが1点あります。
 もう1つは、蒸気圧が20mmHg以上と高くとも、脂溶性が非常に高く、急速に蒸発するものでも水オクタノール比が非常に高いものについては吸収されるおそれがあるのではないか、という仮説をもとに抽出します。その上で呼吸器感作性、発がん性、生殖毒性、生殖細胞変異原生、特定臓器毒性といったものに区分1になっているものについては、経皮による有害性があるというおそれがあると判断すべきではないかということです。
 次のページですが、先ほど抽出されたもの以外は、健康障害を生じるおそれがないと言えるかどうかという問題があります。こちらにつきまして先ほど御覧になっていただきました物性情報でまずスクリーニングしておりますので、物性情報が果たしてどこまで信頼できるかということになるわけです。こちらの下の図はGroup1に入っている物質を蒸気圧と水オクタノール比でプロットしたものです。例えば蒸気圧が非常に高くて、主なばく露経路が吸入ばく露である場合であっても、液体状の物質が皮膚に付着して、皮膚吸収が生じるケースがあるということですので、こういった形で先ほどの物性情報だけで経皮ばく露によって健康障害が生じるおそれがないと言い切るのは難しいのではないかと結論付けており、この検討会においてはいわゆるGroup3、つまり、おそれがない物質を特定するのは難しいという結論です。
 続きまして9ページ目です。先ほど職業ばく露限界があるものから選んでいったわけですが、これ以外にGHS分類はされているけれども、評価書の中に経皮ばく露に関する情報がない、あるいは、ばく露限界があっても経皮ばく露について全く記載がないもの等、評価書自体がない物質のうち動物急性経皮毒性区分1に該当する42物質があります。これをどのように考えるかということですが、このうち職業ばく露限界があるものは2物質で、皮下投与とか黄リンのように皮膚接触のやけどとかで根拠が皮膚吸収性の有害性の毒性概念と合致しないのではないかと考えました。つまり、先ほどの3つに当たらないということで、これは引き続きGroup2でいいのではないかと判断しました。それ以外の24物質は既にGroup1に分類されていました。残り16物質につきましては、Group2に仮分類するということですが、先ほど申し上げた3つのエビデンスのレベルに該当する物質でもあるということですので、これを義務対象物質とすべきかどうかについては、行政の検討会で判断をあおぐべきだという結論になっています。
 それが具体的に記載されているのが10ページ以降です。ばく露経路についてはskinやsubcutaneousですから、いわゆる経皮の経路があって、動物実験をした結果、LD50、あるいは100が出ているものという形になります。文献もそれぞれあるという状況です。
 用途につきましては、農薬や医薬品が多いわけですが、あくまでこれは主たる用途であり、実際に民間が作成したSDSを見ますと、農薬や医薬品以外の用途でも、例えば実験室の試薬等、かなり幅広い用途で使われている状況です。つまり、こうした特定の農薬を使っている方以外にもばく露の可能性があり、ばく露が否定できないということですので、我々としては先ほどの3つの基準に該当するということと考え、16物質につきましても義務のかかる物質として整理したいと考えています。こちら後ほど御意見頂ければと思います。
 13ページ目は考察です。まず1点目は、今回Group2に分類しました。Group1に当たるエビデンスがないものにつきましても、当然新たにばく露限界値、動物属性、あるいは国が行うGHS分類によって情報が追加される可能性がありますので、こういったものにつきましては研究の進展やばく露設定値の設定状況を十分に情報収集した上で、義務の対象となる物質を更新していく必要があるということです。付け加える場合もあると思いますし、除外されるものもあるということです。
 それから、こういった更新する仕組みが必要ではないかという提言を頂いております。
 最後のページですけれども、皮膚吸収性有害物質の経皮ばく露の防止につきましては、そもそも有害化学物質との接触機会を低減する作業環境管理、それから作業方法の管理が重要でして、保護具の使用というのは最終的な手段であるわけですが、現実問題としては保護具を使用せざるを得ない場合もあるということです。これを前提に致しまして、保護手袋の選択や保護具の使用についての教育ということですが、現在Group1の候補物質356物質につきましては、半数強について手袋などの透過性データが公開されていない情報です。こういった場合は、物質と物性、分子量であるとか水オクタノール比、官能基、粘性、液性(酸・アルカリ)に近い物質を参照したり、それらを入力して皮膚透過量を推定できるアプリケーションなどを活用したりして、防護手袋を選択すべきだということです。
 ただし、今回、皮膚吸収物質の一覧を明示いたしますので、今後はそれを踏まえて各保護具メーカーが保有していて公開していない透過性データを開示していただいて、適切な保護具の選定に活用するということを呼びかけていくべきではないかという御提言です。
 2つ目は皮膚吸収性有害物質に関する教育ですが、こちらにつきましては、皮膚に必ずしも障害を及ぼさないということで、特に危ないものと思っていない状況がある中で、それをきっちり教育する必要があります。また、Group2の中でも明らかに有害性があることが分かっているものと、全く分かっていないものもあります。そういった場合についてはやはり危ないものから対策するということになりますので、そういった意味の教育が必要ではないかということも御提言いただいております。
 それから3つ目がメーカーとユーザーのリスクコミュニケーションですけれども、皮膚等障害化学物質の有害性や、保護具の必要性についての理解の促進が必要であり、特に手袋メーカーと化学物質を作るメーカー、それからユーザーが情報を共有する必要があると考えています。例えば手袋メーカーは化学物質のサンプルを頂かないと試験もできませんし、当然化学物質のメーカーは自らで手袋の試験をすることもできないので、両者間の情報のやりとりが必要です。また、ユーザーはこういう情報を頂かないと手袋の選択ができないということになりますので、3者の間のリスクコミュニケーションを促進すべきだという御提言を頂いております。それを踏まえた上で保護具の選択のマニュアルであるとか装着方法、使用方法についての啓発資料を作るべきだといった御提言を頂いています。
 こちらにつきましては、厚生労働省の本年度の予算によりまして、メーカーとユーザーのリスクコミュニケーションを複数回開催した上で、その結果を踏まえた上で保護具選択マニュアルを作るというのを委託事業で調達しています。こちらにつきましては、結果をまた年度の後半にこの検討会に御報告させていただく予定です。
 私の説明は以上です。
○城内座長  ありがとうございました。今の事務局からの説明について何か御質問や御意見があればお願いいたします。宮内委員、お願いします。
○宮内委員  これからリスクコミュニケーション等でこれを普及させるということは重要と思います。今回頂いている資料は概略版なのですが、保護具、手袋の選択と使用、保守管理の3つについては、本資料に明記いただいて、これを教育対象に含めていただくとよろしいと思います。
 現在、呼吸用保護具についても、選択、使用、保守管理という形でJIS8150が書かれております。同じようにこれから保護着用管理責任者による「管理」という業務は非常に重要視されていくことになると思いますので、入れておいていただくと助かります。
 もう1つは、手袋の性能の件ですけれども、基本的に透過を見るということで間違いないと思うのですが、JIS T 8116では大きく浸透、透過、劣化という3つの項目で、化学防護手袋の性能を見るとなっています。もし整合性を考慮するなら、参考という形でも良いので、劣化試験も入っていた方が良いと思いました。
 劣化するものは当然透過もするだろうと考えられますが、試験をしてみると透過と劣化の試験結果が、結構不一致になるケースがありました。劣化すると化学物質は皮膚に接触します。劣化性能の試験項目はEN374にも記載があるので、同様に入れておいた方が良いのではという意見です。
 以上です。
○城内座長  事務局からお願いします。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。保護具の保守管理が必要というのは御指摘のとおりですので、新たに作成するマニュアルの中に入れたいと考えています。
 また、透過につきましては、御指摘のとおりJISでは細かな規定がありますので、それを踏まえながら検討していくと考えています。マニュアルそのもので試験をするということではなく、試験結果を踏まえてどのように選定するかということになりますので、どういった試験をするかにつきましては、引き続きJISに基づき各メーカーにおいて試験いただくよう促していきたいと考えています。
○城内座長  川本委員、お願いします。
○川本委員  ありがとうございます。2点だけ質問させていただきます。
 1点目は、まず実際に化学品を使うときは、混合物で使うことが多いと思いますけれども、例えば何%以下は手袋の着用を考えるということがありますでしょうか。
 それからもう一点、Group1ですとSDSに手袋の着用は書かれていないものがあるかもしれないと思うのですけれども、SDSにそれを記載するようなことはお考えでしょうか。そのときSDSで義務とか努力義務、そうするとGHSから外れるようなことも考えられますけれども、その辺りもお教えいただければと思います。
 以上です。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。御指摘のとおり、実際ほとんどのものは混合物ということになると思いますが、まず単体物質の透過データを揃えて、それを踏まえてまずは個別に考えていくのだろうと思います。
 混合した場合、単体等で透過させたときと違うデータがあるという知見も一部あると伺っているのですけれども、まずは単体でデータを集めて、その上で代表的な混合物について検討するとか、こちら段階を経て考えていきたいと考えています。
 SDSにつきましては、必要な保護具について記載するということを通達等でお示ししているところですので、こちらにつきましてもどのような形でお示しできるかこれから検討させていただきますが、手袋の種類などがどこまで具体的に書けるか検討させていただきます。
○城内座長  宮川委員、お願いします。
○宮川委員  今の資料でいきますと動物急性経皮毒性区分1に該当する物質についてという点について、まず一番左の下にGroup2を維持とありますが、急性経皮毒性区分1、皮膚吸収でもって致死作用が毒物相当というものなのに、どうして根拠がはっきりしないのがあるのかという点が非常に心配になります。この2物質については元のデータから経皮で毒物相当なのに、Group2でいいのかどうか気になるところではあります。
 それからもう1つ、2つ前のページになりますけれども、急性毒性に関しては急性の経皮ばく露をした際に、致死作用でカテゴリー1からカテゴリー4まで分類されるわけですが、それ以外に特定標的臓器毒性単回ばく露と反復ばく露に関しては、やはり経皮で一定のガイダンスバリューにもとづいて、動物実験で健康障害が出た場合には、その用量に応じてカテゴリー1あるいはカテゴリー2に分類されるわけです。これがカテゴリー2だとしても、疑いがあるという意味ではなくて、カテゴリー1よりは量が多く、必要だけれども、やはり経皮吸収でもって健康障害が生じているということです。これは発がん性や生殖毒性のように証拠の確からしさではなく、作用によって決めるものなので、GHSで特定標的臓器毒性、単回・反復ばく露、があるとされ、しかもその経路が経皮で認定されているものについては、経皮吸収による健康障害があるものと判断してよいのではないかと思います。そうするとカテゴリー1に十分該当するという気がしますので、赤字ではカテゴリー1に該当で、2と3は要検討と書いてありますが、単回ばく露の2についても該当と考えてもよいのではないかという気がしました。
 GHSについては、国連の規則だと皮膚障害については特定のマークがつくとかハザードアセスメントがつくのですけれども、経皮吸収に関しては特定の表示をするということが決まっていません。ただ、ACGIHや産衛学会など経皮吸収で障害が生じるものについては、「皮」マークのようなことが考えられていますので、これは将来の話ですけれども、GHSの中に経皮吸収で健康障害が生じるような場合の表示を少し考えていただいてもいいのではないかと思います。これは国連に議論を呼びかけてもいいような気がします。
 以上です。
○城内座長  事務局、お願いします。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。大きく2点のご指摘があったと思います。まず9ページの2物質、ばく露限界があって、Group2を維持するというものにつきましては、エビデンスが皮下投与したものとか黄リンのように、どちらかというと皮膚から吸収されて発生するというよりは、皮膚障害のほうがメインであるような物質であったため、Group2を維持するという整理にしました。
 それから、7ページの関係で特定臓器について2、3は検討ということになっていますが、これは1つのおそれが高いものについて抜き出すというフローですので、2番、3番だからGroup2にはしないということではなく、まず危ないものを抜き出して、それを優先的に対応していただくという意図です。ただ実際は先ほど申し上げましたようにGroup3は作りませんので、おそれがある物質にはなりますが、ここの趣旨としては取りあえず危ないものを抜き出そうという趣旨です。
 こちらについて追加の説明があれば豊岡さんに頂きたいのですが、よろしいでしょうか。
○豊岡オブザーバー  安衛研の豊岡です。
 先ほどの2物質が除外されたというところなのですけれども、その点は化学物質対策課長の説明のとおりです。例えば黄リンの場合、皮膚吸収性有害物質のGroup1に該当するというのは、判断条件から考えると当てはまりませんが、皮膚腐食性でも既にカテゴリー1に入っておりますので、そちらでカバーできているのかなと感じました。
 それからもう1点について、Group2、要するに努力義務になる物質で、例えば特定臓器毒性で経皮ばく露によって特定臓器毒性、あるいは生殖毒性等がある物質で、かつGHS分類がなされているものは、既にGroup1に分類されております。そのため、ここにある物質は、物性情報から経皮ばく露が主たるばく露経路になるのではないかという推測の上で、かつGHS分類でさらに絞っていこうというフローになります。そのため、宮川先生が御心配されていた経皮ばく露で既に何らか臓器毒性があるという物質はGroup1に含まれており、あくまでも経皮ばく露の可能性が高いもので、さらに絞り込む場合には、GHS分類を使用することができるのではないかといったものになります。
○宮川委員  今の点で確認ですけれども、特定臓器毒性の単回では、カテゴリー2が青字になっています。一般的にカテゴリー2は青字だとしても、経皮でカテゴリー2に分類されている物質は別途の判断でGroup1に入っているという理解でよろしいでしょうか。
○豊岡オブザーバー  御指摘の通りです。既に経皮ばく露の実験がなされている物質については、カテゴリー2だとしても既にGroup1に入っております。
○宮川委員  ありがとうございます。もう1つ質問です。別のスライドに記載されている2物質のうち、黄リンについて、一番上の四角の中に動物急性経皮毒性区分1と書いてあるのですが、死亡が起きていないとこれに判断されることはないと考えられるため、このように判断されたということは、経皮ばく露で死亡が起きている、しかもかなり低い容量でということになります。その場合、もしかするとGHS分類が間違っている可能性もあるので、細かいことですが元のデータを確認していただければと思います。
 以上す。
○豊岡オブザーバー  了解しました。
○城内座長  先に最川委員、どうぞ。
○最川委員  全国建設業協会の最川です。
 確認ですが、本日の会議で皮膚障害の対象物質、Group1の356物質が、令和6年4月1日に施行される594条の2に該当する物質として既に決まっていて、それ以外のGroup2を今回検討するのか、それともGroup1も含めてその物質が来年4月1日から施行される物質になるのかという点について、まずお聞きしたいです。
○化学物質対策課長  今回お示ししている356物質、物質の数え方は実際にお名前をつくったときに減ったり増えたりしますが、今回お示ししているものは令和6年4月1日から義務の対象になるというものです。
○最川委員  もう既に決定しているということでよろしいですか。
○化学物質対策課長  既に決定しているといいますか、今回御議論いただいて、これを通達の一覧の表の形でお示しする予定です。
○最川委員  審議会等を通さずにもう決定ということですか。
○化学物質対策課長  こちらにつきましては、省令の中でおそれが明らかなものということに既に規定されており、それの解釈をお示しするという形になりますので、通達でお示しする予定です。
○最川委員  皆さんにお伝えしたいのですが、来年4月1日から施行される594条の2は、保護具を労働者に使わせないといけないのです。使わせていないと違反なのです。結構重たいです。いろいろな物質が入っていて、今回お示しされたように、不浸透性の保護衣、保護手袋、履き物を全部使わせなければいけないのですが、作業によっては逆に不浸透性の保護衣を着けさせたら熱中症になる危険性もあります。私たちはリスクアセスメントをしながら、どのような作業着や履き物にするのが適当か、滑りやすさなども考慮してこれまで検討・導入してきました。今回この法律が施行されることによって、危険性を示していただくのは非常にありがたいのですが、十把一絡げに不浸透性のものを着けなさいということに罰則つきの事業者責任―を課されるのは非常に厳しいです。22条関係なので、違反すると6ヵ月以下の懲役、50万円以下の罰金を適用されてしまうのです。実際に、例えば塗装をする際に、はけで塗る場合は、塗料が身体にかかる可能性がほとんどないのですが、万が一かかってしまってばく露した場合に、なぜ不浸透性の手袋と服を着させなかったのかと事業者責任を問われ、懲役が課されてしまう可能性があります。これは私たちが幾ら反論しようが、法律にこう書かれていると言われれば反論の余地がありません。それだけ重たい法律なのです。本当に危ない物質については義務化されても仕方がないと思いますが。
 今回356物質に関しても、不浸透性の保護手袋を使いなさいとありますが、不浸透性といっても単にビニール製のものを使えば良いというわけではなく、ビニールを浸透してしまう物質もあります。先ほど化学物質対策課長からありましたけれども、それがまだはっきりしていないものを不浸透性なら安全だとしてビニール製の保護具を使わせて、結果的に経皮ばく露をする可能性がある物質が100以上あるわけです。そういった物質について法律で事業者に調べることを義務付けさせても、適切な保護具を使用することはできないのです。結構簡単に皆さん危ないと分かったから載せておけばいいだろうと思うかもしれませんけれども、私たち法律を適用される側にとっては非常に重たい法律ということをもっと認識していただきたい。
 簡単にGroup2も1に格上げしましょうねという問題ではないのです。そのため、十把一絡げに不浸透性のものを使わないといけないという措置は、審議会であれば反対してもらいたいぐらいなのです。この文章だけだと必ず使わせなければいけないことになるため、少なくとも量や使い方等で選べるようにしていただきたいのです。
 特に建設業は、何が含有されているか分からない資材がたくさんあるのです。それを使ってばく露したことが後からわかると、事業者責任を問われ、懲役が課されるのです。それだけ重たい法律ということを考えていただきたいと思っています。
 もし今回決めるのであれば、然るべき保護具が示せるもの以外は施行対象にすべきではないと思っています。それだけ重たい法律ということを理解していただきたい。594条の3の努力義務ならいいのですけれども、よく分からないが、危ないから取りあえず入れておきましょうという法律ではないということは皆さん理解していただきたい。建設関係のユーザーは私1人だけしかいないのでおかしいことを言っているなと思うかもしれませんけれども、それだけ重たいということは理解していただきたい。
 以上です。
○城内座長  事務局、お願いします。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございました。
 まず14ページを見ていただきたいと思いますけれども、透過情報がない物質につきましては、物性が近いものを参照する、それから物性を入力すると皮膚透過量が推定できるアプケーションなどを活用できれば、適切に保護手袋は選択できると御提言いただいておりますので、それで一義的にはできるという認識がありますが、さらにこちらでメーカーとユーザーのリスクコミュニケーションした上で、マニュアルをきちっと作っていきたいと考えているところです。
 また、不浸透性につきましては、もともと条文の中でどういった不浸透性でなければならないという細かな基準と規定がありませんので、一義的には不浸透性の手袋を使っていただければ、非常に低いレベルにおいての法令違反は構成しないような形になっております。そのため、端的に言うと軍手とか綿手ではだめですということになります。
 衣服についても、条文上は適切な保護具ということあり、常に保護衣を着なければいけないという規定ではなくて、御案内のとおりリスクアセスメントした上で、具体的なばく露として考えられるものが手だけであるなら手袋だけで構いません。そういった裁量は事業者の方にあって、それに基づいた対策を取っていただくことになるということです。
 以上です。
○城内座長  最川委員、お願いします。
○最川委員  条文の書きぶりは「不浸透性の保護衣、保護手袋、履き物または」とあるので、これだけ読んでしまうと不浸透性の保護衣はまず着させなければいけないように読めます。何かしらの例規で良いので、事業者側で決めることを文章でお示しいただければと思います。この法律の文章だけを読むと、保護衣と保護手袋と履き物が全部不浸透性のものを使わせなければいけないと読み取れると思うのですけれども、それは事業者側に選択する余地があるのかどうかというのをできれば記載していただきたいと思います。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。594条の2は、資料の2ページに記載がありますが、不浸透性の保護衣、保護手袋、履き物または保護めがねとなっておりますので、いずれか1つでもいいという条文の書き方になっております。
○最川委員  例えば保護めがねだけということにも読めますが、そういう解釈でよろしいのですか。
○化学物質対策課長  もちろん先ほど申し上げましたように適切でなければなりませんから、例えばリスクアセスメントをした結果で既に明らかに化学物質を扱うのに手袋を使わないというのはだめだろうと思いますけれども、逆に言うと手しかばく露しないのに保護衣を着なきゃいけないということはありません。ばく露するところを防御するもので十分だということです。
○最川委員  万が一、保護具を着用していない部位がばく露してしまったら、保護具を着用していなかったということになってしまうので、リスクアセスメントして決めたいと思っているのですが。
○化学物質対策課長  それはそのとおりで、今回建設業においてマニュアルを作っておりますけれども、実際の作業の内容を踏まえて、必要な保護衣が何なのかあらかじめ決めておいて、それを使っていただくというマニュアルを作っていただいて、それどおりに実施するということで対応できると考えています。
○城内座長  それでは、宮本委員。
○宮本委員  ありがとうございます。今の議論と少し関係しますが、資料5-1概要の7ページの表について、せっかくフローに沿って物質選定をしても、結果的にGroup2が2,500~2,600物質になってしまうということになると、結局何も対策を講じないというリスクがあるのではないかと心配しております。例えば右にあるエキスパートジャッジで入ったものと一番左のエキスパートジャッジに入ったものは重みが違うというのはどこかで書かれていましたので、Group2のア、イ、ウだとかα、β、γとかA、B、Cというのでより危険性があるものとかなり薄いものをうまく表現していくというようなお考えはありましょうか。2,500物質がGroup2と言われると結局何も対策されなくなるリスクを心配しております。
○化学物質対策課長  まさに御指摘のとおり、本文14ページにはGroup2は非常に危ないものから全く情報がないものまで千差万別です。毒性の高いものから対策をすべきだという御提言いただいておりますので、マニュアルですべて書くことはできないかもしれませんし、物質を列挙するとそれはそれで非常に煩雑になってしまいますが、例えば概要7ページのフローで出てきたものはかなり優先順位が高いものになると思いますので、御指摘を踏まえまして何らかの形で優先度が高いものが分かるように、教育用の教材への記載方法を検討させていただきたいと思います。
 宮川先生からのコメントに回答します。黄リンにつきましては、先ほど豊岡さんからも御指摘ありましたが、もともと皮膚等障害化学物質の中には皮膚障害を起こすものと吸収物質の2種類あります。黄リンは、皮膚障害の中に既に入っていますので、義務化物質の中には既に入っております。それだけ御説明させていただきます。
○城内座長  尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  化学業界としましても非常に毒性の高いもの、危険性の高いものを屋外でも使うことがあり、こういった不浸透性の保護衣、保護手袋などの着用によって、熱中症になる可能性は非常に高いため、最川委員の御発言に最大限賛同いたします。気持ちは分かります。
 それで不浸透性に関して不明確なところが非常にあるので、調べましたら、農薬工業会が一覧表を作っていますので、それをどこかに載せていただくといいのではないかと思っています。
 それから、本文14ページの1に関するところで御質問させていただきますけれども、356物質の半数強ということで200弱だと思うのですが、これをどうやって来年4月までに示すのかということを心配しています。ここにありますアプリケーションから攻めていくのか、それとも保護手袋協会に要請してデータを出していただくのかというところが気になるところです。国として、どちらの方向から進めていくのかを教えていただきたいと思います。
○城内座長  事務局、お願いします。
○化学物質対策課長  両方からアプローチしていくということですが、当面、まずはないものにつきましては、こちらの参照物質といいますか類似物質を参照し、それから、シミュレーターによる皮膚透過性の推定に基づく選択がまず最低限できると考えております。
 ただ御指摘のとおり、実際の透過性データを開示していただくのがよりよいと考えておりますので、リスクコミュニケーションの場を活用しながら、そうしたデータをお示しいただくように努力はしたいと思います。
 先ほど申し上げましたが、手袋メーカーは個別具体的にどういう物質の透過データが必要かという情報を必ずしも持っておらず、なおかつ実験をしようにもサンプルの化学物質が必要となります。そこは化学メーカーの方から、こういう製品を使っているので、こういう透過データがほしいという点を積極的にコミュニケーションしていただいて、例えば保護具メーカーと化学物質メーカーの間でサンプルのやりとりをする等のやりとりができるように、我々国としてもリスクコミュニケーションの場をきちっとつくっていきたいと考えているところです。
○尾崎委員  手袋メーカーは、営業戦略上の見せ方というのもあるのですけれども、ホームページに掲載しているデータが各社各様の見せ方になっているため、適切な保護具や保護手袋にたどり着くまでに非常に苦労します。そのため、データの見せ方に関しても厚生労働省から手袋メーカーに指導いただいて、誰が見ても非常に分かりやすいようなデータ表示をしていただきたいと思っています。
 以上です。
○城内座長  鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員  結局実効性のある性能が保護具にないと守れないということから言うと、今話題にも出たのですけれども、実際には純物質だけで使われているわけではないので、手袋メーカーはじめ保護具メーカーだけでは対応しきれません。むしろGroup1に入る物質を含む製材を製品として作っているメーカーが、製造物責任の一環として保護具の性能評価に協力するような何らかの仕組みを検討いただきたい。義務というと少し過激な表現になってしまいますけれども、最川委員がおっしゃったとおり、やはり仕組みとしてユーザーの事業者だけに重い義務を負わせるのは現実的には酷です。塗料も純物質ではありません。また、単なる混合物ではなく、乳化している等の複雑な形態をとっていると、手袋メーカーとしても試験はできないと思うので、そういった製品を作っているメーカーが有効な保護具を選べるような情報を出していく、場合によっては製材を製造・販売する側が保護具を評価することまでも視野に入れた仕組みをつくっていかなければ、経皮吸収を完全に守ろうという仕組みはできないのではないかと考えています。
○城内座長  事務局から何かありますか。
○化学物質対策課長  御意見ごもっともというところですが、先ほど申し上げましたように手袋メーカーと化学物質を実際に作っているメーカーがきちんとコミュニケーションを取って行っていく必要があると考えています。まさに御指摘のとおり、特に混合物の試験というのはほぼ不可能ですので、そうしたことをリスクコミュニケーションなどで促していきたいと考えています。
 こちらにつきまして、こうすればいいという解決策を今ここで御提示できないのですけれども、御指摘を受け止めまして行政として取り組んでいきたいと考えています。
○城内座長  小野委員、どうぞ。
○小野委員  いろいろ聞きたいことはあったのですけれども、結局どうやって実行していくかというところが重要になってくるかなというので、質問を絞りたいと思います。
 まず356物質の話がこれだけ盛り上がってしまうと、実はGHS分類の皮膚刺激性や感作性について手袋等をするのだということが何となくかすんでしまうような気がするのです。今度の356物質がそれには入るのですけれども、数が多過ぎて、かつSDSにそれが書かれていないということが往々にしてありますので、まずGHS分類で対応すべき物質については対応を行い、またSDSに経皮吸収の記載があれば対応するといったように、両方やらなければいけないという立てつけはきちんとしておくべきだと思います。
 SDSについては、昨年からSDSについていろいろ変わっていますけれども、洗剤メーカーや塗料メーカーのSDSはほとんど変わっていません。ですからいくら計算して356物質を選んだとしても、製品中に当該物質が含有されているかどうかが分からなければ、結局手袋も選べないし対応できません。その結果、障害が生じたら適切な手袋ではなかったということが後から出てきてしまいますので、そこはやはり心配です。
 あとはこの報告書の書きぶりなのか、経皮毒性ですとか、皮膚吸収といったいくつかの言葉が出てきております。水オクタノール係数を見て、有機溶媒に溶けやすいものは、皮膚に蓄積して、そこから長期にわたって体内に入るということがありますので、そうした物質は今回の対象物質に含まれるのかが気になります。有害性のエンドポイントは経皮・吸入に関わらず基本的に同じものという前提で検討していて、それしかないのだと思いますけれども、経皮の実験に関してもそのデータについては間違いないのかどうかというところも気になるところです。356物質は物質として選定されていますので、やろうと思えば実験はできないことはないのかなと思います。
 また、物質Aと物質Bが混合されているときに、物質Aには役に立つ手袋だけれども、物質Bには役に立たない手袋というのがあります。そういうときに手袋を重ねるのか、あるいは、物質AにもBにも適用可能なしっかりした手袋を使うのかというところについても、マニュアルへの記載が必要になってくるかなと思います。私からは以上です。
○城内座長  ありがとうございます。宮内委員、お先にどうぞ。
○宮内委員  私が透過実験を今までやってきた中で1つ気になっているのは、手袋材料と化学物質が必ずしも一致しないという点です。例えば塩ビやポリエチレンといっても、厚みによっても全然透過性が違います。それから、メーカーによって、様々な添加剤を使って手袋を作っていますが、具体的にどのような添加剤を使っているかは不明で、同じ材料や製品によっても使用されている添加剤により性能が違うということがあるのです。
 一番理想的なのは、今お話にありましたけれども、SDSの中に具体的にこの製品という情報が記載してあると、保護具の選択を間違えにくくなると思っていました。
 製品類を記載するのはハードルが高いと思うのですが、まさに製造者責任として化学メーカーが適切な保護具の製品名を参考としてSDSに記載し、ユーザーがそれを使うという形であれば、適切な保護具の利用が非常に進むのかなと思います。
 また、保護具の使用の仕方によってももちろん全然違います。例えば手袋で漬け込むような作業をするのか、タッチペイントみたいにするのか、必ずしも化学物質だけで決まるわけではなくて、使う量や作業によっても保護具を使い分けなくてはいけません。そのため、それこそリスクコミュニケーションの段階になるかなと思うのですけれども、そういうことを全部踏まえて、いろいろなやり方をいろいろな視野から考えて教育していくというのはこれから必要かなと思いました。
 以上です。
○城内座長  事務局からお願いします。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。
 小野委員から様々な御指摘がありましたが、まず1点目、皮膚吸収性があまりにも目立ってしまって、皮膚刺激性のほうがかすむのではないかという御指摘がありました。こちらは当然両方に義務がかかりますので、両方必要だというところはきちんとマニュアルを作るときには示していきたいと思います。
 今回皮膚浸透性物質としてお示しするものは通達しますが、それ以外につきましてはGHSで分かるものですので、厚生労働省で全体が分かる、つまり刺激性と吸収性両方分かるようなリストをお示しするなりして、漏れがないようにしていきたいと考えています。
 SDSにつきましては、きちんと作成されているのであれば裾切値以上の物質名は入っているはずですので、該当する物質が入っているかどうかというのは分かるという認識です。
 蓄積性につきましては、後ほど豊岡さんから追記していただきたいと思いますけれども、水オクタノール比によって吸収される場合と蓄積される場合の違いがありますが、そちらも踏まえてGroup2の議論はさせていただいております。
 有害性のエンドポイントにつきましては、特定標的臓器ということで、皮膚障害以外のものについては通常の吸入ばく露と同じものを使っています。
 混合物のときに複数の手袋を重ねる必要があるかどうかにつきましても、マニュアルの問題だと思いますけれども、御指摘のとおり全ての物質について完全にマルチに大丈夫な手袋はないものですから、重ねて使用する必要がある場合があり、そういったものにつきましてもマニュアルでお示ししたいと考えています。
 宮内委員の御指摘ですが、細かいところでは製品によって違うということも当然あろうかと思いますが、こちらにつきましては、お示しするのは塩ビやニトリル等、材質のカテゴリー別のお示ししかできないということになろうかと思います。
 SDSにきちんと製品名を書くのは理想といった御指摘は受け止めまして、化学メーカーと引き続きコミュニケーションを図ってまいりたいと考えています。
 以上です。
○城内座長  豊岡さんから追加の御発言ありますか。
○豊岡オブザーバー  小野先生の御質問に対してですけれども、まず皮膚蓄積性の物質、例えば代表的なものは我々でも実験しましたMOCAは、水オクタノール分配係数が約4であり、確かに皮膚に蓄積した後に徐々に出てくるものです。
 一方でMOCAに関しましては、既に人の疫学データ、または動物の経皮ばく露のデータで有害性、毒性が出るという根拠論文があり、Group1、要するに義務がかかる物質としてカテゴリー分類しております。
 一方で、オクタノール水分配係数が例えば7や8等結構高い物質で、明らかに皮膚に蓄積し、その後徐々に出ていくと思われる物質が確かにいくつかありますが、それら物質については人の疫学データや動物のデータがありません。さらにIn Vitroの毒性データもないと、蓄積性は分かっていたとしても、毒性についての情報がないために、今回のGroup1、義務化物質には選べなかったという物質がやはりあります。
 そういった物質は現時点ではGroup2に分類されておりますので、今後毒性の研究が進めば、またGroup1に更新するなりの議論が必要なのかなと思うと同時に、この様にGroup2の物質はかなりグラデーションがあるので、その点については化学物質対策課長がおっしゃられたようにGroup2にグラデーションがあるという事実と、オクタノール水分配係数が高い物質は、皮膚に蓄積性がある傾向があるという点を教育で示していく必要があるのかなと私は思っております。
○城内座長  ありがとうございました。大前委員、お願いします。
○大前委員  大前です。
 スライド5「Group1と判断する条件の検討」について、上2点は当然だと思うのですが、3点目は結構難しいと思います。②について体内動態が明らかになっている場合はGroup1と判断できるとあり、その下の欄に記載されている「Group1に該当する条件」の3点目がこれに該当すると思うのですが、ここには「それら情報を用いたモデル計算等から、経皮ばく露により職業ばく露限界値を超えるおそれが評価できる」とあり、この1物質についてモデル式を使って該当するかを検討するという書きぶりに読めますが、そういう理解でよろしいですか。
○化学物質対策課長  例えばいくつかの物質がありますけれども、吸収の速度などが分かっておりますので、例えば限度値のばく露を受けた場合、皮膚から吸収される量が全身吸収量に非常に大きな寄与をするとか、通常のばく露をすると体内に取り込まれる値を超えるおそれがあるといったことが個別物質で全部定量的に評価されてSKマークがついておりますので、そういった個別物質の検討を踏まえた上で選定したということです。
 豊岡さんから追加があれば御説明いただければと思います。
○豊岡オブザーバー  豊岡です。
 大前先生の御質問に対してですけれども、確かに理解するのが難しいところですので、事前に資料をお作りしました。
 これは先ほどの質問に関連したところで作成しております。今回、義務がかかるGroup1の物質として、ヒト情報はそのままGroup1にしています。動物に関する情報も基本的にGroup1にしているのですが、動物に関する情報は2つ大きく分けられます。1つは本当に動物に経皮ばく露して、その毒性情報があるというものです。これについては経皮ばく露で毒性情報が明確に出ているということで、Group1にしてきたところです。
 大前先生の御質問は、②だと思います。経皮ばく露による動態情報にプラスして、例えばばく露限界値や毒性を考慮した計算予測等があるものに関しては、今回の検討ではGroup1にしたところです。
 ②について具体的にどういうものがあるかというところなのですけれども、大きく分けるとさらに2つに分かれております。1つは経皮ばく露や動態情報から考えると、ばく露の形態次第で職業ばく露限界値やLD50、ほか毒性実験のNOAELを超えるおそれがあるもの、もしくは皮膚吸収分を無視することができないといったもの。もう1つは経皮ばく露の動態情報から吸収量の多さにかかわらず皮膚吸収が明らかであって、かつモデル計算による動物経皮ばく露実験等の結果がサポートされていて、かつ発がん性物質であるといった②も2つにパターンが分かれるわけなのですが、こうした物質については我々で精査してGroup1にしたといった経緯があります。
 諸機関で見てみますと、どうもドイツのDFGの評価では②のケースでHというSkin Notationをつけているものが多くなります。全体では50物質前後かなと感じております。
 次のスライドで具体例をお示ししたいと思います。
 1つ目の例としては、メチルイソブチルケトンという物質です。この物質は、そもそも職業ばく露限界値、DFGの場合、最大現場濃度(MAK)となりますが、被験者実験でメチルイソブチルケトンをばく露した結果、中枢神経症状が出るのを防ぐために20ppmといったMAK値が設定されております。
 これをふまえて、メチルイソブチルケトンの経皮ばく露がヒト健康障害に寄与するおそれがあるとする理由、つまり、今回Group1に分類するのが妥当であろうとした理由をここに書いています。動物実験でモルモット背部皮膚にメチルイソブチルケトンを塗布した研究から、皮膚吸収速度がこのように分かっており、ばく露開始後大体10~45分後には血中濃度が26.7マイクロモーラーに達するということが示されています。このデータを基にするとヒトの経皮吸収率は、モルモットの値の10分の1程度と仮定に基づくと、液体のメチルイソブチルケトンに浸した場合、メチルイソブチルケトンの濃度25ppmにばく露した場合と同量の物質が単位時間当たりに取り込まれると推定されております。
 この体内動態のデータからMAK値レベルのばく露を受けた場合、皮膚から吸収される量が全身吸収量にかなり寄与すると推定されますので、この評価結果から検討会ではGroup1、先ほどの資料5-1の5ページ目の3点目該当するものと判断してGroup1に分類しました。
 時間の関係で説明は省略しますけれども、例の5まで行っていただいていいですか。例の1から4というものは、MAK値を考慮すると経皮吸収分が無視できないとしてGroup1に分類したものになります。
 例の5と6はいわゆる遺伝毒性発がん物質で、Group1に分類してきたものです。例5にあるニトロソジエチルアミンは、DFGでは動物に対する発がん性が認められており、遺伝毒性発がん物質ですのでばく露許容値(OEL)を設定していません。ニトロソジエチルアミンの経皮ばく露がヒト健康障害に寄与するおそれがあるとする理由としまして、N-ニトロソジエチルアミンをヌードマウスに20週及び80週間繰り返し経皮ばく露した実験において、ばく露群では微小群と比べ肺腺腫の有意な増加を認めることにより、まずここでN-ニトロソジエチルアミンが経皮吸収されることが示唆されておりまして、かつN-ニトロソジエチルアミンの物理化学データからいろいろなモデル式があるのですけれども、これから考えてもニトロソジエチルアミンは皮膚吸収性が高いことが示されており、上の動物実験の結果とも矛盾しないということで、ニトロソジエチルアミンは遺伝毒性発がん物質であり、経皮吸収量が少ない場合であっても、ヒト発がんリスクの増加に寄与するおそれがあるといったことから今回はGroup1に分類しました。
○城内座長  ありがとうございます。大前委員、お願いします。
○大前委員  そのようなしっかりしたデータがあるものに関しては、もちろんGroup1ということになるのは当然だと今御説明でもありました。
 1つ問題点は、例えばメチルイソブチルケトンの場合はもともと蒸気圧が高いので、吸入からのばく露と皮膚からのばく露、といっても皮膚に直接つけるわけではなくて、ガスとしてのばく露と両方あります。実際に寄与濃度等をつくる場合は、動物実験は別として、ヒトのデータを使う場合が一番重要なのですが、そのときは吸入ばく露と経皮ばく露両方合わせた影響として見ているのです。そのため、本当は吸入ばく露によるばく露限界値と皮膚からのばく露限界値が分かれていないところがありますので、今回のような形で判断するのは非常に安全側の評価になるという意味ではいいと思います。ただ、安全方向に傾き過ぎている可能性はあります。
 もう1つの例でPFOA、PFOSが出ていましたけれども、PFOSは逆に蒸気圧はほとんどないので、これで職業ばく露限界値をつくった提案理由は読んでいません。これが動物の経口実験から出来た値なのか、あるいは本当に吸入試験から出来た値なのかは分かりませんが、もし本当に吸入試験から設定しているのだとすると、非常に低い濃度で吸入試験したことになるためその結果を基にして経皮ばく露との比較をするのは非常に安全側の設定になります。トータルで安全側ですけれども、必要以上に安全側に傾き過ぎているという物質もあるのだろう思いました。
 以上です。
○城内座長  ありがとうございました。事務局からありますか。そのほか御意見等ありますでしょうか。最川委員、お願いします。
○最川委員  本日この議論をしたら、Group1の物質リストは決定してしまうのですか。私は本当に反対なのですけれども、356物質も本日の議論で決まりましたとされてしまうというと非常に責任が重たいのです。皆さん関係ないかもしれませんけれども、これが決まって安全になるならやります。ただ、実際には効果が分からないのです。例えば適切な保護具を使っておらず、ばく露した場合では、具体的にどのような保護具を使用すべきか、どういった対策をすれば良いかと言う点を指導してくれる人がいるなら良いです。皆さん、そうしたサポートができますか。私が専門家に聞きに行って、こういう作業なのですけれども、何を使えばいいですかと言って答えてくれる人はいるのですか。いるのならやります。いないのだったら法律で564条の3で努力義務にするのが適当でないでしょうか。
 それを義務に格上げするということの重みを、簡単に危ないからといって事業者に丸投げしていませんか。どんな保護具を使えば良いか、答えてくれるならやります。そうでないなら反対です。事例として紹介いただいた1つの物質に関しても、こういうときはこうだとの説明がありましたが、これを聞いて実際に何を使えばいいか皆さん分かりましたか。この物質を扱う人たちがどういう対処すればいいのですか。法律を決めて安全になりましたか。訳分からなくなっただけでしょう。
 化学物質の法改正は最初から納得していないのですけれども、答えを出せない人が法律を決めてはいけません。具体的なことについて、誰に聞きに行けば良いか教えてください。どうすれば良いかを教えてくれる人がいるのなら聞きに行きますが、そうでないなら反対です。勝手に決められるかもしれませんが、とにかく反対です。
○城内座長  事務局、お願いします。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。
 まず事業者での対応方法につきましては、先ほど申し上げましたように今年度中に保護具の選択マニュアルを示しますので、そのマニュアルに従っていただければ選択できるようにしたいと考えています。
 また、これで決めるのかということですが、明らかなものについては不浸透性の保護具を着けるという省令は実は既に公布されており、審議会も経過して、パブコメも経て、既に決まっております。
 今回は、その「明らかなもの」が何なのかという解釈をお示しするということで、法令上の何かを決めるということではありませんので、既に決まっているものの解釈を示しているということです。
 また、G2からG1に格上げするという御発言がありましたが、そういった趣旨ではなくて、明らかなものについてお示しするということです。
 繰り返しになりますけれども、御懸念については我々としても当然だと思いますので、リスクコミュニケーションを図るとともに、保護具選択マニュアルをきっちり作成して、現場できちんとした保護具が選択できるように周知してまいりたいと考えています。
 以上です。
○城内座長  尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  我々の業界におきまして何が一番不安かというと、製造課長が保護具を準備して労働者に保護具を着けさせても、やはり外してしまうときです。そういうときに限って被液したりとか接触したりという事例があり、アンケートを取っても、このような状況になることに非常に不安を感じるという返答が多いのです。
 被液事故があったときに誰がどのように責任を取るという形になってくるでしょう。着けなかった労働者が悪いのか、それともそういう環境でありながら職制の方が悪いのか、そこをはっきりしておきたいと思います。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。ケース・バイ・ケースですので、その場によって違うと思いますけれども、一義的には事業者責任ですので、今御指摘いただいたような形で保護具を労働者が外さざるを得ないのであれば、そもそも作業工程を見直すといった形でばく露を見直すというのが大原則です。そうした全体を検討した上で、個別に判断することになると思います。
 ただ、先ほど申し上げましたように大原則といたしましてはまず作業の内容を見直して、そういったばく露をさせないような作業工程にするというのが第一で、どうしてもやむを得ない場合について保護具を使わせる場合については、きちんと労働者に使っていただくということになるということです。
 もちろん形式的には労働者も保護具を使用しなければいけないという条文がありますので、労働者にももちろん一定の責任があるわけですが、一義的には事業者責任で安衛法は回っているということです。
 以上です。
○城内座長  時間も過ぎましたが、皆様からコメント、意見等よろしいでしょうか。
 私の印象について述べますと、情報を伝えるときに、今GHSが基になっているわけですけれども、例えば欧州ではおそらくSDSを出す際にはしっかりリスクアセスメントをしなさいというのも入っているのです。もちろん現場にあったリスクアセスメントを行い、労働者を保護していくということがあるのですけれども、実は日本で情報伝達をどうしましょうかといったときに、中途半端なままなところがあるのです。それは情報を提供する側が、例えば成分情報や保護具等、どこまで情報を出すかというのが、曖昧なまま運用されているところがあって、鷹屋委員、最川さんもおっしゃっているとおりです。当初からこのシステムをつくっていくときから最川さんもご存知であるのです。
 はっきり申し上げると、化学製品を作る側と使う側のギャップが埋まらないまま来ているのです。それはおそらく日本だけの問題ではなくて、欧州でもアメリカでもそういう問題がずっとあります。そこをクリアするときに不明確なものを不明確なままにするのか、それは誰かが責任を取らなければいけないのかということもきっちり議論しなければなりません。ただこれはクリアカットでは絶対にできないことですので、そこは行政もとても苦労しているところですし、使用者の最川さんも苦労しているところだと思うのです。
 ずるいようですけれども、逆にこのシステムを走らせないとそこもずっと解決しないまま、ほかのものも解決しないままになってしまうので、走りながら考えてはどうでしょうかというのが私の率直な意見なのです。それだと最川さんにしかられるかもしれませんけれども、みんなで知恵を出し合って、いい方向に行きましょう。
 手袋の使用について、化学品の製造と使用者側のコミュニケーションをちゃんとやりましょうという話がありましたが、最近もいろいろな事故があって、やっとと言えば失礼ですけれども、行政がやっとそこに行ったと思うのです。今までは作る側と使う側がコミュニケーションしましょうという発想すらなかったので、その辺に期待して前に進みたいと思うのですが、皆さんいかがでしょうか。
 先ほど化学物質対策課長からお話がありましたけれども、本日ここで議論していただいたことを考慮しつつ、ガイドライン等が出てくると思いますので、最川さんはずっと反対とおっしゃっていましたが、方向性は決まると思いますので、納得いただくしかないかなと思いますが、いかがでしょうか。皆さん、御意見等ありませんでしょうか。
○最川委員  よろしくはないのですけれども、マニュアルづくりも化学物質対策課長に協力していただいているので、そちらで対処していただくしかないと思います。小野先生もよろしくお願いします。
○城内座長  ありがとうございます。
○尾崎委員  あと明確に書き過ぎることによる弊害はあります。例えばここの保護具は手袋のこれを使いなさいと推奨する場合、手袋の製造ロットでも物性は違う事があります。結果的に被液して障害が出たいというところを盾に取られて裁判を起こされたら負けてしまうわけです。そのため、あまりにも明確に書き過ぎてしまうと逆の弊害があり、誰かが責任を取らなければならない環境に置かれるわけです。そのため、お互いに歩み寄っていい形に仕上げていってもらいたいと個人的に思います。
○城内座長  ありがとうございます。そのほかよろしいでしょうか。
 御意見も出尽くしたというところで、事務局でこれからの通達等に向けて作業をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 一応本日の議題は以上となります。構成員の委員の皆様、長時間の御議論本当にありがとうございました。
 それでは、最後にその他ということで、事務局から何かありますでしょうか。
○環境改善・ばく露対策室長  本日の議題は以上です。
 本日の議事録ですが、後日構成員の皆様に御確認いただいた上で公開ということにさせていただきます。
 次回の日程につきましては、次回7月18日火曜日14時から最大延長17時を予定しております。議題は濃度基準値の検討を予定しております。構成員名簿のうち全般に関する事項、毒性に関する事項の欄の先生方に御参集いただきます。正式な開催案内については後日お送りさせていただきます。
 以上です。
○城内座長  以上で本日の化学物質管理に関わる専門家検討会を閉会とさせていただきます。本日はお疲れさまでした。ありがとうございました。