第11回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和5年6月9日(金)16:00~19:00

場所

オンライン開催

議題

(1)今後のがん研究のあり方について
(2)その他

議事

 
○原澤推進官 それでは、定刻を少し過ぎましたが、これから「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催したいと思います。
 構成員・参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。画面のほうをオンにしていただけますと幸いです。
 御出席の方の確認のため、少し遅れての開始となります。御了承ください。
 それでは、事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本有識者会議はYouTubeにて配信しておりますので、その点御承知おきください。
 まず初めに、事務局に異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
 がん・疾病対策課長の西嶋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、事務局の出席状況でございますが、健康局長でございますが、公務のため、遅れての参加となりますので、御了承ください。
 続きまして、構成員の皆様の出席状況でございます。黒瀨構成員より少し遅れての御参加と伺ってございます。
 本会議におきましては、前回に引き続きまして、7名の参考人の先生方に御出席いただいております。また、今回、新たに参考人として、国立病院機構名古屋医療センター名誉院長の堀田知光参考人に御出席いただいておりますので、御承知おき願います。
 また、事務局は、厚生労働省のほか、内閣府、文部科学省、経済産業省からそれぞれ出席してございますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。
 資料は、議事次第、資料1から資料2-8まで及び参考資料1から参考資料6までがございますので、御確認ください。
 万一資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。
 それでは、以降の進行を中釜座長にお願いしたいと思います。中釜座長、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 中釜です。皆さん、本日はよろしくお願いいたします。
 早速ですが、時間も限られておりますので、議事に入りたいと思います。
 議題1「今後のがん研究のあり方について」、こちらについては事務局と構成員・参考人の皆様から資料を提出いただいております。一通り資料を説明いただいた後に、各項目立てについて議論したいと思います。
 まず、事務局から資料1の説明をお願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 それでは、資料1を御覧ください。
 画面にも出させていただいておりますが、「具体的研究事項と横断的研究事項について」ということで資料を準備しております。
 1枚お進みいただいて、2ページ目でございます。
 議題の一覧ということで、中間評価の際の議論の進め方を参考にして、中間評価時の項目立てごとに御議論いただきたいと考えてございます。
 本日議題とさせていただく内容は、この項目の中の青字になっている箇所でございます。具体的研究事項の(3)から横断的事項にまたがっておりますので、各項目について順次御議論いただければと思っております。
 資料については大部でございますので、資料の構成のみ御紹介して、事前に一定お目通しいただいていると思いますので、内容について詳細に御説明することは割愛させていただきたいと思います。
 1枚お進みいただいて、3ページ目から1つ目のセクションが始まります。このような仕切り紙で各項目は変わってございます。
 次の4ページ目を御覧ください。
 4ページ目でございますが、この項目の中、ここで言えば患者に優しい新規医療技術開発に関する研究の中で、平成31年度から令和4年度までの戦略においては、後半の5年間に得られました研究成果の例をお示ししてございます。
 続きまして、5ページ目からでございますが、ここから7ページ目までは、本日の会議に先立ちまして構成員の皆様、参考人の皆様から事前に頂戴した意見について、現状と課題、今後の研究の方向性という形で整理しておまとめしているものでございます。
 続いて、8ページ目までお進みいただきまして、8ページ目から次の9ページ目までは、各項目立てに関連する第4期がん対策推進基本計画等の記載や中間評価における記載について御紹介をするという形になっております。
 ここから以降、10ページ目以降は、同じように項目立てごとに今申し上げたこれまでの研究成果、御意見のまとめ、各項目に関する計画等の記載ぶりという形で整理してございますので、適宜御参照いただければと思います。
 これらの資料を参考にしていただきながら、各項目立てごとに現状の課題及び来年度からの新たな戦略において行っていくべき研究の方向性について、本日御議論いただければと思っております。
 簡単ですが、事務局から資料1の御説明は以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、構成員・参考人から提出いただいている資料について御発表いただきます。
 進行の都合上、各7分程度での御発表をお願いしたいと思います。
 また、資料の内容に応じて発表の順番を検討させていただきましたので、その点につきましてあらかじめ御了承ください。
 それではまず、堀田参考人から資料2-8の説明をお願いします。
○堀田参考人 御紹介いただきました堀田でございます。
 私はAMEDのがん領域の疾患コーディネーターを務めさせていただいておりまして、この有識者会議において現在の10か年戦略を立てるときも構成員として参加させていただいた経緯があります。
 本日は、喉を痛めまして聞き苦しい点がありますが、御了承願いたいと思います。
 「がん10か年戦略の成果と課題」ということでまとめてみましたので、よろしくお願いいたします。
 スライド1をお願いします。
 これがAMEDがん研究の全体像であります。ちょっと細かいですけれども、次世代がんは緑色のところです。ピンクの革新がんは入れ子状態になって、お互いに連携を取りながら基礎研究から実用化まで進めているという状況であります。これと並行して、次世代がん、革新がん以外でもAMEDとしてがん研究をやっている事業が下段に示すようにたくさんあります。これらは事業の中の一部にがん研究を含むということでありますが、AMED発足以来の新規採択課題を合計しますと、次世代がんが395課題、それから、革新がんが591課題に合わせて1,573課題と、約3分の1はこの2つの事業以外のところで行われているという状況であります。
 スライド2をお願いします。
 実際に新規に各年度に採択しました課題の内訳と申しますか、開発フェーズ別の分布であります。このように年度により多少でこぼこはありますけれども、基礎研究が大体半分近く、そして、臨床研究あるいは開発研究というのがその残りの3分の1ぐらいあります。カラム上部の色の濃いところは、開発フェーズのひもづけが当時されていなかった課題であります。
 スライド3は各年度に全体としてどのぐらいの成果が上がったかとして、最初に設定しましたKPIが第1期の指標になります。企業や他事業への導出、そして、実用化への治験に向けた導出ですね。それから、薬事承認とか適用拡大等が指標でありますが、2年度までで上の2つは達成しているのですが、薬事承認というのはやはり時間がかかります。最終年度に1件あったという状況です。中間評価以降は成果の数え方等が変わりましたので、同じようには表示できなくてこのようになっております。薬事承認は令和3年度で4件ございます。そして、シーズの導出といったものが18件、28件と順調に伸びているところであります。
 スライド4をお願いします。
 先ほど申し上げましたように、次世代がんと革新がん以外に基礎的な部分、それから、実用化の部分にそれぞれ別の事業が動いていまして、これらが連携し、あるいは継続、乗り換えをして実用化に結びつけていくという流れになってございます。
 スライド5はは膵臓がんを例にとってあるのですけれども、膵臓がんの中で事業間連携が動いていた25件についてプロットしてみたもので、代表的な流れを表に示しました。それぞれ次世代がんと革新がんを中心に他の事業につながっていくという流れになっています。次をお願いします。
 これをスライド6に図示しますと基本的には左上の基礎研究から右下の臨床開発フェーズに受け継がれていくという流れで、それぞれ事業をまたいで並行する場合もあります。
 この中でマル1とつけましたケースについて、次に少し述べさせていただきます。
 スライド7をお願いします。
 この事業は当初は橋渡し研究で始まったのでありますが、それが次世代がん事業に受け継がれまして、それから次世代がん事業の途中からもう一回橋渡し研究と並走する形で、最終的には臨床研究・治験推進研究事業に受け継がれて、現在はかなり出口に近いところに来ているといます。これは大阪大学の金井先生のがん特異的なアミノ酸の輸送体を利用する治療開発で、現在は大阪大学の竹原先生に受け継がれて臨床試験に入っているところであります。
 次をお願いします。
 そのほかには、これは膵臓がんではありませんが、平成30年度に次世代がんにおける実用化に向けた有望な課題を革新がんにスイッチするという試みをしました。その中で3課題が次世代がんから優先的に革新がんにつないだケースであります。第1例目は、これはがん研究会の清宮先生のタンキラーゼ阻害剤の薬でありまして、当初、次世代がんでP-DIRECTの段階から進めてこられた課題で、平成30年度に革新がんに移り、さらにこれが次のステップに今行って、企業とも並走しながら開発が進んでいるという状況であります。
 次は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使う分子イメージングの薬の開発のお話であります。本課題は次世代がんから革新がんに移行し現在、医師主導治験の段階にあります。これも企業が並走しているという状況でありまして、出口に近づいている流れがございます。
 スライド11をお願いします。
 薬事承認に至った課題を紹介します。一つ目はALK陽性の未分化大細胞リンパ腫に対するアレクチニブの適応追加、それから、小児を中心にした脳腫瘍に対して新規および適応追加で3剤の承認が取れています。また、ヘルペスウイルスに三重変異を入れて特異的な抗腫瘍活性と安全性を担保した日本発で世界初の脳腫瘍の遺伝子治療薬、これも既に薬事承認が得られたところであります。
 スライド12をお願いします。
 それから、もっと後期のフェーズに行きまして、いわゆるガイドラインの掲載例を示します。これはAMEDがプレス発表している課題でありますけれども、全部で15件でいろいろな臓器がんにわたってございます。そのうちの丸をつけた4つについて次に見てみたいと思います。
 スライド13をお願いします。
 RET融合遺伝子の発見はROS1の変異に発展して薬剤の承認が得られ、ガイドラインに掲載されたケースがございますし、また、頭頸部がんに対してWeekly CDDPの優位性が証明され標準治療として確立したケースもガイドラインに載りました。そして、小児領域では多くのガイドラインへの掲載があります。また、胆のうがんに対して術後補助療法として日本で開発されたS-1という薬の効果が証明されたものもあります。
 スライド14をお願いします。
 続いて、患者参画に関する研究成果はここでは詳しくは申し上げられませんけれども、こういう領域でも患者さんの参加や協力をえてランダム化比較試験ができるようになっていることが分かります。こういった領域でもエビデンスを出していくという時代に入ってきております。
 次をお願いします。
 これが最後のスライドですが、こうしてAMED発足以来のがん研究を見ていきますと、かつてと比べて非常に変わってきたところは、研究は研究で終わらないで、すなわち論文化にとどまらず、実用化に向けた研究者の意識が定着化したというのが実感です。ただ、成果という点で十分に実用化に結びついているかということについては、開発途上の課題が多く、評価には時間の経過も必要だと思います。
 それから、現状の課題と今後につきましては、やはり基礎研究から実用化するための谷間になる応用研究から非臨床研究フェーズのところのエコシステムがもっともっと強化されないといけないだろうと思いますし、AIやビッグデータを使った研究がさらに進む必要があると思います。また、若手研究者を巻き込んで異分野融合や国際交流を進めて、最終的にはがんの本態に基づく最適医療の開発と、各個人の満足度の高い個別化医療の実現を図ることが重要と思います。
 以上であります。ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして石岡構成員よりお願いいたします。
○石岡構成員 石岡です。
 画面の共有はこちらでやらせていただきたいと思います。
 資料をたくさん用意し過ぎましたので、ちょっと早口になりますが、御容赦ください。
 では、早速やらせていただきます。
 私は腫瘍内科医で、大学でがん研究、診療や教育、そして、日本臨床腫瘍学会など学会での活動、国や宮城県のがん対策推進協議会などの経験から、今後のがん研究の在り方に関する考えをお話しいたします。
 これは私のディスクロージャーです。
 日本人の死因のトップががんになってから、約42年が経過しました。現在も死亡者は増加していますが、年齢調整死亡率は年々低下してきており、一次及び二次予防の一定の成果があったというビジョンができますが、しかし、一方、進行がんの治療成績はまだまだ不十分です。5年生存率はいまだに満足できるほどではなく、がんの薬物療法の開発とその普及が重要です。このがん薬物療法は、年々生存期間が延長してきており、その背景には多くの分子標的薬の開発が貢献して、この成功にはがん細胞の分子レベルでの基礎研究等、腫瘍血管や宿主免疫に関連した治療薬の開発が大きかったと思います。さらに、次世代シークエンサーをはじめとする技術革新によって、がんゲノムをはじめとする網羅的な分子データに基づく個別化医療、プレシジョン・ポリシーが徐々に日常診療に応用されています。
 現在、新薬開発は一つの慣習を遺伝子異常ごとに細分化してするアンブレラ型の開発と、がん種を問わずに遺伝子変異に臓器横断的に開発するバスケット型の開発が進んでいます。その一方で、頻度の高いがんにおいても頻度の低い希少フラクションが同定されまして、5大がんというよりも一部は希少がんというような考え方も出てきております。臨床試験の症例数や質の高い医療を提供する上で、非常に難しい課題となっています。
 今後、ますます基礎研究の基盤を強化することが重要です。特に免疫療法に加え、宿主の微生物環境や腫瘍の微小環境に関する発がん機構の解明、そこから治療標的の探索、そして、加えて希少フラクション、すなわち特定の遺伝子変異、例えばTP53 Y220C、高度感受性変異のような頻度の低い特殊な変異に対する研究開発に力を注いでいく。シーズ探索とアンメットメディカルニーズは、セットで常に新しいコンセプトで考えていく必要があると考えます。希少フラクションで創薬が不可能、アンドラ株と言われていたKRAS遺伝子変異やTP53遺伝子変異にも治療薬が開発されていたり、アンメットメディカルニーズの頻度の高いコモンキャンサーも新たに生み出され、そこにも新しいシーズが生まれるということになります。
 希少クラクションの多くは難治がんと考えていますので、難治がんという用語自体も政策医療上に取り上げる必要性があるか、見直す時期が来ているかもしれません。この希少で治療標的が見つからない、見つかってもアンドラ株、創薬困難な標的に薬剤を効果的に発見する医師主導を産学連携で行いまして、さらに臨床試験まで一気にできるような仕組みをアカデミアに構築するのがいいと思います。
 ここに来て再び問題になってきているのは、海外と新薬承認の格差、いわゆるドラッグラグが年々進んでいるということです。日本発のシーズをfirst-in-humanまで持ち込む。そのためには、創薬ベンチャーが育つ環境を整備すること、産学連携を強化すること、臨床開発基盤として治験ができる医療機関を地域に整備する、または医療機関間の格差を是正するなどの新しい取組を構築する必要があると思います。希少がんあるいは希少フラクションの症例集積を加速して、それにもつながるような分散型の臨床試験治験、DCTも起きていると考えます。それと新薬承認までの審査と承認までのスピードを速める研究も必要ではないかと考えます。
 これは調査中のデータですが、抗がん剤の治験を行っている全国の医療機関です。治験の実施施設の地域間格差、医療機関間格差は明らかです。国立がん研究センターのように治験を数多く引き受けているところに比べて、大学病院は非常に少ないというところです。全がん協病院も結構治験をやっているということで、青の大学病院が非常に少ないような傾向も明らかになっております。大学のインフラを考えると大変もったいない状況で、体制の改善が必要かと思います。
 このように、新しい標準医療となる創薬やドラッグラグの対象、あるいはドラッグのリポジショニングによる標準治療の創成には臨床試験が必須ですけれども、希少フラクションに対する新たな臨床試験の方法の開発、早期承認後のリアルワールドデータを利用した。効果・安全性の再評価のシーズ、それから、日本が主導する国際共同治験の強化、臨床研究中核病院とそれ以外の大学病院の活性化も検討すべきではないでしょうか。
 私たちが専門とする腫瘍内科の対象とする患者さんの疾患病態は多様であり、かつ多くの場合、重大な合併症を呈します。また、がんの病態が抗がん剤の副作用で様々な合併症を呈することもありまして、大部分は内科的な治療が必要です。
 また、高齢化社会を捉えたところ、がん患者が高齢化し、臨床試験のデータや診療ガイドラインの推奨がそのまま高齢患者に適用できない事例が増えてきています。高齢患者には、高齢者の機能評価のスクリーニング方法の開発や意思決定に関する研究が今後は必要になってくると考えます。高齢者をはじめとする臓器や認知力に機能障害が見られる患者には、より低侵襲な治療法の開発や支持療法の開発が必要であるとか、ここでもリアルワールドデータの活用により高齢者に最適な医療を提供できる仕組みを研究する必要があると思います。今後、腫瘍循環器などのがん関連学際領域の協力も欠かせないと思います。
 次に、がんゲノム医療でありますが、がん遺伝子パネル検査は血液によるリキッドバイオプシーが実用化されまして、年々件数が増加の一途にあります。このため、診断と治療推奨のための専門委員会やエキスパートパネルの負担が年々増加しております。一方、遺伝子パネル検査での治療提案については20%足らずで、実際に治療に至ったケースはさらに10%以下です。さらに、遺伝性腫瘍は二次的所見が9%、実際に陽性患者は、さらに少ないですが5%を切っているというのがあります。
 また、血液によるがんゲノム医療は、今後さらに発展することが期待されております。進行がんのがん薬物療法の治療方針決定においては、薬剤耐性の強化、周術期治療におけるモニタリングに加えて、がん検診への応用も期待されている状況にあります。このがんゲノム医療に関しては、解析や診断技術の開発、新しいがん検診への応用、未発症リスク者へのリスク評価、加えて、がんゲノムの情報を用いて、そういった研究により新しいがんの一次あるいは二次予防の在り方を再検討する必要があると思います。リキッドバイオプシーは、DNAにとどまらず、種々の分子に技術革新を求められており、マルチオミックス時代を見据えた研究が必要だと考えます。また、既存のリアルワールドデータの深層学習、マシンディープラーニングによる新たな検診方法が海外では提案されており、日本でもこの分野の研修を加速する必要があるのではないかと考えます。
 次に、研究基盤の整備についてでございます。疾患のバイオバンクや臨床データ、特に臨床試験のデータの効率的な利活用に課題があります。有効な利活用のためには、質の高い臨床データと統合データベースが必要だと考えます。データベースやバイオバンクについては、一研究機関にとどめず、研究機関間や産学連携が必要と考えます。そこに臨床試験データは質が高いので、今後、網羅的分子レベルはAIを用いた統合解析で新たな医薬品の開発につながる可能性があり、この領域を重点化すべきだと思います。臨床試験の統合データベースの構築と登録、リアルワールドデータを収集して広く利用可能なデータベースにするためのインフラ整備、そして、産学連携を円滑にするための対策が必要だと考えます。そして、AIをツールとして使用する時代ですので、病理診断や放射線画像診断に加えて、がんゲノム医療でのAIの技術導入を加速する必要があると思います。
 もう一つ、臨床研究開発の基盤で重要なのは人材の育成です。抗がん薬の臨床開発に腫瘍内科医が重要な役割を果たしていますが、その数は地域間、医療機関格差が明らかです。専門医は年々順調に増加してきておりますけれども、人口補正をすると地域間格差は極めて大きい。医療機関格差も極めて大きいということは明らかです。他の専門医についても同様のことが言えると思います。
 第4期のがん対策推進基本計画では、このような格差問題が取り上げられ、全体目標には誰も取り残さないというキャッチコピーが入りました。がんの専門医の医療人材は医療提供だけでなく臨床研究開発にも必要な人材ですので、その育成には既に注意する必要がある。例えば腫瘍内科医はがん治療の開発には必要な人材ですが、その養成数の地域格差、医療機関格差に差があり、医療提供に影響があると予想されます。実際に私の地方では、医療提供に関連があることを裏づけるようなデータも出ています。例えば3年前に薬価収載されたがん遺伝子パネル検査の実施件数と専門医数を比較すると、都道府県レベル、県内の二次医療圏レベルでも明らかな相関がありそうです。また、大学医学部やがん拠点病院でのアンケート調査では、主要内科講座や診療科の設置にも関係がある可能性があることもあり、現在その調査を進めてきております。
 最後は、人材養成とアウトカム評価も研究として必要だと考えます。がん研究を行う人材の育成は基盤整備でも重要な課題であり、臨床研究開発の例を挙げましたけれども、基礎研究領域においても若い研究者の研究離れを食い止める施策が必要と考えます。そのためには、必要な人材育成、養成をする事業を例えば主要な学会に委託するようなことを検討してはどうかなと考えています。
 がん対策推進には、成果を評価する方法を工夫する必要があります。国や都道府県のがん対策推進協議会は客観的な評価に苦慮しており、新たな評価方法の研究が必要だと思います。前述のとおり、リアルワールドデータを蓄積し、その解析結果を評価指標に加え、医療間格差を含めたがん対策推進につながる研究をする必要があると考えます。
 最後に、サバイバーシップの患者の報告アウトカムです。サバイバーシップに関しましては、AYA世代の妊孕性の問題、それから、患者の心のケア、仕事と治療の両立アピアランスケア、患者会の活動の継続的支援など、強化すべき要件が山積しているかと思います。中長期的視点でこれを考えるということが必要です。患者報告アウトカムは今後ますます必要ですが、調査結果の客観性や患者の多様性をどのように評価するか、研究が必要だと考えます。
 以上、駆け足でしたけれども、早口で申し訳ございません。私からは以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして内堀構成員よりお願いいたします。
○内堀構成員 それでは、内堀から説明したいと思います。
 量子科学技術研究開発機構の内堀です。
 こちらでは、QSTが中心なって実施しております、量子科学技術を活用した患者に優しいがん診断・治療研究について説明させていただきます。
 次のページを御覧ください。
 ここにまとめておりますが、まず重粒子線治療ですが、右端の絵を御覧ください。炭素イオンは光の約70%まで加速しますと、体の中に20センチぐらいまで入ってきます。そこにある腫瘍部分でエネルギーを放出して止まってしまいます。炭素イオンのエネルギーを調整しまして、ちょうど腫瘍の位置に止まるようにしますと、途中の臓器にあまり影響を与えず、腫瘍だけを攻撃することができます。また、炭素イオンは重いため、あまり広がらずに腫瘍に集中させることができます。
 また、その左にDNAの絵がありますが、重イオンは攻撃力が強く、DNAを複雑に切断することから、高い生物学的効果が得られます。このために、放射性抵抗性の難治がんにも効果がありますし、さらに免疫機能の温存が期待できることから、免疫療法との併用も可能と考えており、臨床試験を開始したところです。
 次に、緑で示しましたように、核医学治療、RI内用療法やあるいは標的アイソトープ治療、TRTと称することもありますが、こちらは微小転移がんにも治療効果が高い治療方法になります。様々な放射性核種と小分子から高分子である抗体まで、多様な組合せで治療に利用することができると考えております。また、放射性核種を別途の核種に付け替えることで、同じ薬剤で診断も行うことができ、治療と診断を一体化させ、薬剤の送達も確認可能なセラノスティクスが実現できると考えております。
 また、左下にありますように、量子科学技術であるところの量子センサーや超偏極MRI等の技術によりまして、非常に高感度のがん診断、すなわち超早期の診断が可能になると考えております。
 これらの診断や治療を用いまして、患者さんの御負担の少ない治療・診断方法で、生活の質、QOLを維持しながら、働きながらがんを治すことによって、健康長寿社会の実現を目指してまいりたいと考えております。
 次のページから詳細を示させていただきます。
 日本では7か所に重粒子線がん治療装置が設置されておるところです。QSTが中心となりまして、これらの施設と共同で臨床試験、症例集積を実施してまいりました。この取組をJ-CROSと称しておりますが、これによりまして保険収載の拡大が進み、右の人体図で示したようにピンクの部分、8疾患が公的医療保険の適用となっております。そのほかにも、青で示した先進医療、緑で示した臨床試験も同時に行われておりまして、今後の保険収載を目指しております。
 また、下の世界図で赤で示したものが稼働中の9施設であり、うち韓国、台湾の2か所は日本製の施設となっております。また、世界の過半数が日本も含め日本製施設で占められておるところです。また、青字で示しました米国のメイヨークリニックを含め、4か所は現在建設中ですが、いずれも日本製の装置が導入されております。一方では、中国政府の支援によって中国国内で独自の企業の受注が進んでいるようで、今後厳しい競争になることが予想されております。
 右の図では、超伝導電磁石を用いた回転ガントリーを示しております。適応の拡大や安全性の向上に貢献しているところです。また、肺や肝臓など動く臓器に対する治療が可能となる高速スキャニングシステムも実現することができました。治療成績だけではなくて、装置開発の面でも国内機関とメーカーが世界をリードしていると考えております。
 4ページ目を御覧ください。
 肺がんに対しては1回、肝臓がんに対しては2回の照射で治療を行っております。全体の平均照射回数は11回となっておりまして、比較的短時間での治療が行えていると考えております。ほかの疾患に対しても今後さらなる短期化を目指しておるところで、この短期化によりまして、患者数の増加やコストパフォーマンスの増加にも貢献することになると考えております。
 また、複数のイオンを用いて、マルチイオン照射と申しますが、そういった照射方法も開発しております。これによりまして、中央の悪性度の高い部分には重たい酸素やイオン、周辺部には軽いヘリウムを用いることで腫瘍の制御の向上や副作用の軽減を目指しております。
 また、右に示したように、最新の超伝導技術やレーザー技術によりまして、装置の大幅な小型化を目指して量子メスプロジェクトを開始しました。本年度より次世代の実証機の建設を開始しております。将来的には20メートル掛ける10メートル程度に収まる装置の実現を目指しておるところです。このために、液体ヘリウムを使わないメンテナンスが容易な超伝導電磁石や、あるいは超高強度のレーザー技術を開発しまして、小型化を実現してまいりたいと考えております。
 次のページを御覧ください。
 核医学治療としまして、放射線としての攻撃力が非常に強いα線放出核を用いた放射性薬剤が世界的に注目されております。その一つとして、悪性黒色腫に対する211At-MABGを開発し、非臨床研究により効果を確認した後、福島県立医大に技術導出しまして、医師主導治験が昨年度から開始されました。
 また、その下にありますように、β線放出核種であります64Cuを取りつけましたCu-ATSMにより、難治性の悪性脳腫瘍に対して医師主導試験を国立がん研究センター様や神奈川県がんセンター様と共同で開始しております。
 また、QST発のベンチャーでありますリンクメッド社を設立しまして、放射性治療薬開発が大きく進展しておるところです。
 また、右側にありますように、新たな診断装置としまして、サブミリの分解能を持つヒト頭部専用PETを産学連携により開発しまして、医療機器承認を得て販売を開始しました。
 また、PETとコンプトンカメラと呼ばれるガンマ線のイメージングを有効にしました新しい原理のガンマ線イメージング装置も開発しております。これらを将来的に活用してまいりたいと考えております。
 次のページを御覧ください。
 核医学治療の高度化としまして、ナノスケールのDNAに損傷を与えるオージェ電子によります次世代の核医学治療研究を開始しております。こちらではJSTの外部資金を獲得し、また、米国の大学との共同研究も開始しており、非常に各国から注目されておるところです。
 また、QSTには50年近い放射性薬剤製造の経験がございまして、世界でも有数の放射性薬剤ライブラリーがございます。診断と治療を融合させたセラノスティクスの実現をオールジャパン体制で加速してまいりたいと考えております。
 また、右側にありますように、核医学を実施する病室や病院といった整備も課題でありまして、今後展開が期待されます177Lu–PSMAや225Ac-PSMAといったものの導入に対して、特別措置病室利用拡大に向けた医療法関連の規制に関する研究や、QSTで開発しましたトレーラーハウス型RI治療施設の医療法承認を目指した取組も重要と考えております。
 7ページを御覧ください。
 こちらでは、最新の量子科学技術を活用したがん診断の研究として、量子センサーを利用した研究を示しております。蛍光ナノダイヤモンドを腫瘍マーカーとして活用し、スピン量子状態を操作し、その標識シグナルのみを検出する技術で、体液診断を従来の約10万倍以上に高感度化することができます。
 また、右図のように、超偏極のMRI技術によりまして、がん組織特有の代謝の検出を行う研究が進んでおります。体内組織形態やプローブ分布のみならず、代謝そのものを追跡することができ、腫瘍の悪性度のマッピングが可能となっております。これらの技術により、がんの超早期診断に貢献したいと考えております。
 最後になりますが、次のページ、患者に優しい新規医療技術開発に向けまして、QSTを中心にしまして、固形がんに対する重粒子線治療、多発・微小がんに対する核医学治療、これらは難治がんにも効果があるだけではなく、副作用が少なく、短期間かつ働きながらの外来での治療、早期の社会復帰も可能な治療法と考えております。体への負担も小さく、二次がんの可能性も低いと考えておりまして、高齢者やAYA世代にも適用できる治療法と考えております。
 これらの長所をさらに生かすために、重粒子線治療では、治療の短期化を進めるとともに、複数イオン照射やマイクロビーム照射などの新技術の開発を進めており、核医学治療では、アイソトープと新たなドラッグデリバリーシステムの組合せに加え、アクチニウムなどα線放出核、さらにはオージェ電子放出核を用いた治療薬の開発を進めております。
 一方で、重粒子線治療装置の小型化・低コスト化や、核医学治療におけるアイソトープ利用の規制緩和がこれらの治療法の普及に必須と考えております。そのために、我が国独自の科学技術を集めた分野横断的な研究を推進するとともに、普及展開に向けた制度・体制の整備が重要と考えております。
 さらに、量子センサーや量子コンピューターといった量子技術は、世界的にも急速に発展しております。社会・経済に革新をもたらす重点技術として位置づけたいと考えております。特に量子センサーについては、生体ナノ量子センサー、超偏極MRI技術、こういったものが診断のブレークスルーになると考えておりますので、長期的な視点に立って研究開発を推進してまいりたいと考えております。
 以上となります。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして山本構成員よりお願いいたします。
○山本構成員 医機連の山本でございます。
 本日は、「がん分野における新たな医療機器の社会実装にむけた研究のご提案」と題しまして御報告させていただきます。
 まず1ページ目を御覧ください。
 本日の内容です。まず医機連の紹介、続きましてがん10か年戦略の中間評価及び第2期医療機器基本計画に関連して、がん分野における医療機器開発の方向性について述べたいと思います。最後に、新たな科学技術を社会実装まで持っていくための課題について触れさせていただきます。
 それでは、3ページを御覧ください。
 まず医機連の紹介です。医機連はディスポーザブルの製品、それから、CT、MRIに代表される大型機器まで、幅広い機器を扱う20の会員団体、約4,280社から成る団体で、がん研究においても貢献している企業が多数含まれています。
 4ページの左の図を御覧ください。
 これは、2019年に行われましたがん10か年計画中間報告で報告された8つの柱です。医機連の範疇であります医療機器は、この8つの柱に対してそれぞれ何らかの関係があると思っています。特に新たな技術を用いた開発という観点からしますと、3項の患者に優しい新規医療技術開発に関する研究、6項のがん予防法や早期発見手法に関する研究が、関係が深い項目ではないかと思っております。
 5ページ目を御覧ください。
 2022年には、第2期医療機器基本計画が閣議決定されましたが、この中で社会課題を解決するため、重点5分野ということマル1~マル5とが挙げられています。これとがん研究の予防、診断、治療、予後を考慮しますと、特に赤字で書きましたマル1の疾病予防、重症化予防に資する医療機器、マル2の早期化に資する医療機器、マル3の個別化医療に向けた診療と治療が一体化した医療機器、マル5の業務効率化・負担軽減に資する医療機器が重要だとの認識ですし、これらに関しては、技術的には多岐にわたりますが、やはりAIというキーワードが外せない領域だと思っております。
 7ページ目の右を御覧ください。
 先ほどのがん10か年戦略中間評価の図を再掲しました。最近の横断的な事項の潮流で、がん研究におきましても、やはりAIは避けて通れない、そして、新たな科学技術の利活用で大変重要だとの見解が示されています。ここに関しては、前ページで申し上げましたとおり、第2期医療機器基本計画の重点5分野と方向性が合っていますし、様々な分野でAIが研究されています。特にがんの早期発見では、診断、特に画像診断系で申し上げますと、臓器のセグメンテーションによるがんの発見のしやすさだとか、診断支援での医師の負担軽減、それから、ワークフローの効率化による検診の効率化とがん研究に直結するような研究が企業ではなされています。
 私ども企業としましては、よい研究をするだけでは価値を生み出せず、社会実装して医療現場に届け、患者様に適用することで新たな価値を生み出しています。がん研究におかれましても、研究から社会実装まで繋げることが大変重要であると認識しております。
 本日は、新しい技術の例としまして、AIを例に社会実装の課題を考えてみたいと思います。
 8ページ目を御覧ください。
 AIの技術で盛んに研究されているディープラーニングですが、プログラム医療機器として薬事承認が下りたのは2019年でありまして、この業界では新しい技術と思っており、非常に将来性のある技術です。ただ、一部のAI開発では大量の画像データもしくは医療データを読み込ませて、チューニングしていくということが大事になります。特に医療データを扱う場合、個人情報保護などを含めました様々なハードルがございます。
 9ページを御覧ください。
 これは企業側の認識ですけれども、シーズとニーズをマッチングさせて新しい製品を社会実装していくためには、ここにありますように技術力の壁、製品化の壁、環境整備の壁、顧客リーチの壁と幾つか壁がございます。ここで考慮しなければならないのが、新しい技術に関する環境整備の壁、すなわち技術以外の法的・倫理的・社会的課題という壁だと思っております。例えば先ほどのAI開発に関する個人情報保護等はここに当たると思っています。
 下の図を御覧いただくと、既存製品の改良というのは従来のルールが割と適用できる場合が多いので、比較的スムーズに社会実装ができるのに対して、新しい技術を製品化して社会実装していく場合には、赤で書いております環境整備の壁を迅速に超えていけるかが非常に重要となります。研究という言葉で言いますと、ともすると、技術力の壁だとか製品化の壁が重要視されるのは当然ですけれども、この結果、環境整備の壁が存在する場合には、ここに目が届かないケースがあると思っています。これでは社会実装が遅れてしまいます。
 10ページを御覧ください。
 倫理的・法的・社会的課題の検討に関しては、日本医師会様、厚労科研等でも取り上げられている課題だとの認識がありますし、特にAI技術を進化させていくためには大量のデータを利活用するため、倫理的・法的・社会的課題がまだまだ多く存在すると考えています。今、世の中で飛ぶ鳥を落とす勢いで発展しています生成AIに関しましても、個人情報の話、著作権の話、それから、最近よく言われますのが、AIが学習する言語や文化などの環境による蓄積される知識の偏り、様々な課題があると言われており、現在、国とか企業によっても扱いが異なる状況ですし、これが医療の世界でも必ず少なからず発生してくると思っております。
 本日、AIを例に話をしておりますが、がん研究の分野においても、様々な新しい技術が発生するところには社会課題に関する課題がいろいろと発生します。がんに関する研究も、このような新しい技術と対になった社会実装の課題への取組を強化すべきと思っております。
 11ページを御覧ください。
 我々はともすると、倫理的・法的・社会的課題は新しい技術を社会実装するための壁のように捉えがちです。
 12ページを御覧ください。
 しかし、ここのルールをうまくつくってやると、新しい技術の社会実装を早め、医療業界に貢献することができると考えておりますので、ぜひ本がん研究におかれましても、社会実装の課題を研究の中に取り込んでいただけることを希望いたします。
 以上で報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、続きまして、福田参考人よりお願いいたします。
○福田参考人 福田でございます。よろしくお願いいたします。
 私のほうからは、「がん対策の効果的な推進の評価に関する研究」という課題に関連して、取り組むべき研究課題についてコメントさせていただきます。
 次のスライドをお願いいたします。
 本日もがん領域について様々な新しい優れた技術が研究開発されているというお話がありますけれども、その一部には非常に高額なものというのも出てきております。
このことについては中間評価の中でもコメントがされていて、患者負担の軽減及び医療経済の観点から奏功率がより高い治療法、あるいは治療効果の高い患者の同定法の開発等も求められているということでございます。
 次をお願いします。
 ただ、このような課題は日本独自のものではないと理解しています。まず、医療技術開発自体はとても重要なところでありまして、これによって生存年数の延長でありますとか生活の質(Quality of Life)の向上など多くのメリットがもたらされていることは間違いないところだと思います。一方で、やはり一部の医療技術については医療費の増加に寄与しているという側面があると理解しています。これは諸外国でも直面している課題と認識しておりまして、そのため、公的医療保障制度を有する国、この一部でありますけれども、医療技術の経済評価(費用対効果の評価)を行って、公的な制度でカバーする技術の範囲を決めたり、償還価格に反映しているという国がございます。代表的には以下のような国でございます。
 次をお願いします。
 日本でもこのような議論が2010年頃から中央社会保険医療協議会(中医協)で起こりました。これを受けまして、中医協の下で医薬品や医療機器の価格設定に費用対効果評価を応用しようという試みが2016年に試行的導入として取り入れられ、その後、2019年度から本格的に運用開始ということで現在に至っております。
 次をお願いします。
 この制度を取り入れるに当たって、私はこれは大変重要だと思っていますけれども、この4つの方針がまず示されたということでございます。1番目は治療が必要な患者のアクセスを確保すること、2番目が透明性の高い仕組みとすること、3番目が財政への影響を考慮すること、4番目が既存の薬価制度、材料価格制度を補完するということであります。
 次をお願いします。
 費用対効果評価制度の概要を御説明します。一番上の四角にありますとおり、この制度は中医協で2019年度からスタートしたものでございます。評価の対象は市場規模が大きい、または著しく単価が高い医薬品および医療機器です。3番目の○にありますが、結果の使い方としては、保険償還の可否の判断ではなくて、一旦保険収載した上で価格調整に用いるとことになっています。ですから、仮に費用対効果の評価をして費用対効果がよくないという結果になったとしても、それを保険収載から外すとかという議論をしているのではなくて、価格を調整するという形で取っています。
 流れとしては、左側に手順とありますけれども、中医協で指定されたものを、まずこれを有する医薬品・医療機器の製造販売業者に分析をしていただいて、それを私どものところで評価をします。具体的には提出された分析のレビューをしたり、必要に応じて再分析をするということをやらせていただいています。
 具体的な評価方法なのですが、右側の上の図を御覧いただければと思いますけれども、費用対効果の評価といいますのは、新しい品目、新しい技術、右上にあるものが、従来のものに比べてどのくらい費用が増すのか、どのくらい効果が増えるのか。その2つの指標の比を取って表すというのが一般的です。これを増分費用効果比といいまして、青い点線の矢印の傾き具合を表しています。これは傾きが小さいほうが効率的と判断することができます。
 一旦次のスライドをお願いします。
 この効果指標なのですけれども、これはがんに限らず様々な疾患領域の治療法を扱うということから、QALY(質調整生存年)というのを統一的に使うというのが現行の制度では取り入れられています。この指標は諸外国でも使われているものでありますけれども、生存年数とQOLの双方を考慮する指標で、QOLについては0が死亡、1が完全な健康という定義の下で表されます。このQOL値といいますのは、実際に患者さんに状態を調査して得るような指標になっておりまして、先ほどからお話が出ておりますが、Patient Reported Outcome(PRO)の一つということであります。
 1つ前に戻っていただいてもいいでしょうか。
 一番右下になります。この結果に基づいて価格調整というのをすることになっていて、1QALY増加に対して、500万円を超えるものについて3段階で価格を下げていくという調整が行われています。
 御覧いただきたいのは一番右下の小さなところなのですけれども、実は抗がん剤については、この基準は500万円ではなくて750万円から調整が始まるとされています。これは諸外国でも見られることなのですが、がんの領域はいろいろな研究開発がされているのですけれども、なかなか難しい領域であるということで、価格調整するところも配慮がされているということであります。
 後ほど参考資料も御覧いただければと思いますけれどもこの4年間で指定された品目は42品目ありまして、このうち、がん治療技術が9品目となっています。
 2つ先をお願いします。
 このような考え方を日本でも取り入れていますけれども、諸外国を見ますと、やはり代表的に取り入れられている考え方がこのHTAという考え方です。Health Technology Assessmentといいまして、これは単純な費用対効果よりも少し広い領域であります。定義的に書いてある文章を見ますと、興味深い書き方が幾つかあって、一つは医療技術評価とは集学的な政策分析の領域であるということです。もう一つが、医療技術の開発、普及、使用に伴う医学的、社会的、倫理的、経済的な影響について研究するとあります。ですから、HTAというのはより広い概念でありまして、経済性の評価の一側面にすぎないということであります。なので、こういう考え方は重要だと思っています。
 次をお願いします。
 実際にこういう考え方を例えば英国では取り入れておりまして、英国はNICE(National Institute for Health and Care Excellence)という国立の機関がございます。そこで医療技術評価をやっているのですけれども、そこでは一番左にありますAssessment、これは有効性・安全性を調べたり、費用対効果を調べたりというアプローチで、学術的な観点からされますけれども、そこだけではなくて真ん中のAppraisalというのが重要です。その結果を解釈したり、あるいは経済性以外の部分、臨床的、倫理的、社会的な影響等を考慮した上で意思決定がされるということに取り組まれているということでございます。
 そこで、次のスライドをお願いします。
 御提案といたしましては、このような諸外国の状況あるいは日本での取組を踏まえまして、新たながん対策(予防や治療等)の開発に当たっては、公的医療保障制度内での実用化がやはり重要だと思いますので、それを見据えて、その有効性・安全性だけでなく、経済性やその他の要素も含めて、その影響を評価する医療技術評価(HTA)という考え方を取り入れるべきではないかと思います。
 この取組に当たっては、諸外国での取組を参考に適切な評価方法等についての研究が重要だと考えます。具体的に幾つか挙げさせていただきましたが、介入技術の費用対効果を推計したり、あるいはやはりQuality of Lifeはとても重要だと思いますので、その尺度開発等、あるいは臨床試験、あるいはリアルワールドデータとかそういうものからデータ収集をどう行うか、さらに、最終的に総合的な意思決定を行うために、経済性以外のものも含めてどのような評価を行っていけばいいか。こういうものに関する研究などが考えられるのではないかと思います。
 以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして西川参考人よりお願いいたします。
○西川参考人 よろしくお願いいたします。
 私のほうから画面共有をさせていただきます。
 では、よろしくお願いいたします。私は名古屋大学、国立がん研究センターに所属しております西川と申します。
 私は、今後のがん免疫療法に係る研究についてお話しさせていただきます。
 がん免疫療法というのは現在広く用いられておりますが、発がんに関わる様々な要素というようなことをまとめた論文で見てみますと、2000年の段階では実はがん免疫の記載がございませんでした。それから11年たった2011年になって、初めて発がんに関わる免疫系の働きとして炎症が入ってきました。さらにそこから11年、これは昨年になりますけれども、環境因子等の関係が述べられております。したがって、発がん過程の免疫系の関わりは非常に重要で、その関わりの違いによって、同じがんでも免疫細胞のがん組織での状態は多様であるということが明らかになってきています。
 ここで述べられた発がんに関わる因子は過去20年程度の概念の変遷ですが、がんに対する免疫療法の研究は100年を超える歴史がございます。中でも記憶に新しいところですが、ノーベル生理学医学賞に本邦の研究者が貢献したことは大きな誇りかと思います。一方で、さらに歴史をひもといてみますと、それ以外にも坂口志文教授の制御性T細胞の発見等、がんに対する免疫研究については本邦の研究者の大きな関わりがあります。
 がん免疫治療の特徴は、ここにございますように、従来の治療法と違い、がん細胞を標的にしていないことです。では、なぜ抗腫瘍活性があるか?がん免疫治療では、患者さん自身が本来持っている免疫監視機構に作用してがんと闘っているということが重要になります。このがんに対する免疫応答の誘導は、がん免疫サイクルで表されることが多いです。がん細胞の抗原が出て、それを抗原提示細胞が取り込み、抗原提示が起こってT細胞が認識し、活性化および増殖したT細胞ががんの局所に行ってがんを攻撃しています。
 お話ししますと比較的単純な話になるのですが、実際にこれを画像で見ていただき、どれくらいの強いインパクトがあるかということを知っていただきたいと思います。この図は細胞株ではありますが、がん細胞が増えている状態です。ここにございますように、実際にがん細胞は増えている過程でも一部のがん細胞は壊れてしまいます。そのようながん細胞ががん抗原を放出し、そのがん抗原が抗原提示細胞に貪食され、抗原提示されて免疫応答、特にT細胞応答の誘導につながっていくわけです。
 これらの放出された抗原は、抗原提示細胞と呼ばれる免疫系の細胞によって取り込まれます。抗原提示細胞によって取り込まれた抗原はT細胞に提示されます。抗原提示細胞が実際に抗原を取り込んでいるところを見ていただきたいと思います。真ん中にいます樹状細胞が死んだがん細胞を取り込むところを見ていただきます。樹状細胞はこちらにありますが、これらの樹状細胞ががん細胞を取り込んでいます。次に実際に取り込んだタンパク質を抗原提示するかということですが、こちらの樹状細胞ががん細胞中の赤でマーキングしたタンパク質を貪食して、それを抗原提示するのを見ていただけるかと思います。
 このようにして抗原提示細胞は抗原をT細胞に提示します。そして、T細胞に認識されますと、T細胞は活性化します。真ん中に抗原を貪食した樹状細胞、その周りにCTL、CD8陽性キラー細胞があります。よく先生方はT細胞が丸いと思っておられると思いますが、実は活性化していくと徐々に丸ではなくなります。こちらの図は抗原特異的なT細胞を樹状細胞が活性化した1日後を示しています。今、抗原提示細胞が提示する抗原を認識してT細胞が活性化、増殖しました。このようにしてT細胞は活性化、増殖していきます。培養2日目になるとT細胞はどんどん増えます。そして、培養1日目と2日目を見ていただくと分かるように、非常にたくさんのT細胞が活性化、増殖します。培養3日目になるとさらに活性化、増殖し、これだけたくさんのT細胞ががん細胞に攻撃を加えるわけです。一方で、抗原がない状態ではどうでしょうか。実はT細胞は全く活性化、増殖しません。これが免疫学が常に重要だと言っている抗原特異性です。抗原特異的に増えたT細胞、これだけのパワフルな大量のT細胞が血管を通ってがん局所に行き、がん細胞を攻撃します。
 では、この活性化、増殖したT細胞は実際にがん細胞を攻撃するでしょうか?活性化、増殖したT細胞とT細胞を混ぜておくとどうなるかということを見ていただきたいと思います。図に示すようにがん細胞にT細胞が近づいてきて攻撃を加えます。すると、がん細胞は接着が外れて、やがて死に至ります。このように、T細胞の攻撃によって確かにがん細胞が死んでいるということを見てとっていただけるかと思います。
 通常であれば、がん細胞というのは際限なく増殖しますが、ここに攻撃を加えるT細胞が存在すれば増殖が止まり、死に至るはずです。がん細胞の培養にT細胞を加えて培養しました。赤ががん細胞、緑がキラーT細胞ですが、赤いがん細胞は緑のT細胞によって攻撃を加えられて、徐々に減っていきます。このように、まさにT細胞の攻撃によってがん細胞は殺傷されるということがご覧いただけるかと思います。
 私たちの体の中で常にできている異常細胞、がん細胞を、免疫細胞、特にキラーT細胞ががん抗原を認識して排除しています。これにより発がんが抑えられていると考えられています。このとき、がん細胞の中にある遺伝子変異ががん抗原として認識されています。この抗原に対して免疫応答が誘導され、通常であればこの免疫監視によってがん細胞は排除されます。しかし、徐々にがん細胞側が免疫応答から逃れるというすべを獲得します。発がん過程での免疫系の関わりをまとめたがん免疫編集説では、平衡相、逃避相と呼ばれます。平衡相では免疫選択、逃避相では免疫逃避が主に作動します。つまり、平衡相ではがん免疫応答が起こり難いがん細胞、もしくは起こっても生き残れるようながん細胞が選択されます。さらに、逃避相では免疫系の攻撃を抑制するために、免疫応答の恒常性を維持するために我々の体の中に備わっている免疫抑制機構を取り込んで、最終的に臨床的ながんになってしまいます。
 このようにお話ししますと、全てのがんは同じように免疫系とインタラクションしていると思えるのですが、平衡相、逃避相、つまり、免疫選択、免疫逃避への依存性の違いがヒトのがんの多様性を生んでいます。これはがん組織の免疫細胞の浸潤を示した図です。ピンク色が制御性T細胞、赤がTAMと呼ばれるマクロファージです。緑がCD8T細胞です。このように緑がたくさん浸潤している細胞もあれば、赤のマクロファージが非常に重要な抑制を示している腫瘍もあります。一方で、ピンク色の制御性T細胞がキーになって抑制しているがんもあります。また、おそらく免疫選択が極めて高かったのだと思われますが、ほとんど免疫細胞が存在しないがんも存在します。同じがん種でも患者毎にこのような違いが存在することをベースに考えないと、がんの免疫療法というのは正しく実施することはできません。したがって、腫瘍微小環境の免疫応答だけではなくて、その環境の代謝、そして免疫応答に影響を与えるであろうがん細胞側の情報というのを解析する必要があります。しかし、がん細胞側の情報はこれまであまり重要視されてきませんでした。がん抗原量を予測するということで遺伝子変異量だけを見ていることが多かったのですが、遺伝子変異は、そのシグナル自体が免疫応答に直接影響を与えているということが明らかになってきています。例えばEGFR変異は制御性T細胞を引き寄せるケモカインをつくっているというようなことも分かってきていますので、そういうことも含めた解析が必要になってきます。
 以上を免疫選択と免疫逃避ということをベースにして考えますと、特に免疫逃避が強い場合、CD8T細胞のようなエフェクター細胞がいるけれども、それを凌駕する抑制細胞が浸潤してきている場合があります。このような状況であれば、その抑制細胞の機能を阻害すれば良いと考えられます。例えばPD-1-PD-L1経路による阻害が大きい場合、PD-1/PD-L1阻害剤で治療効果がある可能性が高いと考えられます。一方で、制御性T細胞、TAMといった別の免疫抑制が優位な場合や、全く免疫細胞がいないというような場合は、免疫抑制機構それぞれに対する治療を行っていくことや一から免疫応答をつくり出すということが必要になると考えられます。
 こちらにがん免疫治療のカプランマイヤーカーブを少し大胆に描いてみたのですが、がん免疫治療単剤のカーブはグレーで、併用するとオレンジの様に上に持ち上がるようなイメージです。すると、併用療法がいいように感じるのですが、この併用療法でもち上がった中には、ベースに単剤で治療効果があった方、つまりグレーの部分の方が含まれています。言い換えると、免疫治療の特徴である長期効果をどのように考えていくかということが重要です。当然、単剤で治療効果がある患者群は単剤で治療し、カプランマイヤーカーブで上にもち上がった分の患者群を併用療法で治療していくことが理想的です。このカプランマイヤーカーブが上に持ち上がる分というのは、先ほど申し上げたとおり、患者さんのそれぞれの免疫抑制機構の違いが大きく関与しています。つまり、それぞれの免疫抑制機構により追加して使用すべき薬が変わってくるということになります。そのことを従来の病理学をさらに発展させることによって、より適切な解析をし、治療につなげる必要があると考えます。
 がんプレシジョン医療は、がんの遺伝子異常に対して分子標的薬を適応することで進展しましたが、がん免疫治療においてもプレシジョン医療が重要と考えられます。つまり、それぞれの患者さんのがん微量環境の免疫状態、優位な免疫抑制機構の違いによって、PD-1阻害剤単独治療が適切なのか、それとも制御性T細胞の治療が必要なのか、もしくは自然免疫から免疫応答を活性化すべきか、さらには元から体の外でエフェクター細胞を作って細胞療法として戻す必要があるかというようなことを明らかにして、がん免疫もプレシジョン医療につなげていくようなことが今後のがん免疫研究では必要になると考えます。つまり、それぞれの新しい免疫治療を開発することに加えて、こういったバイオマーカーによってその新しい治療の対象となる患者をあらかじめ同定するということが必要になるかと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして大井構成員よりお願いいたします。
○大井構成員 よろしくお願いします。
 研究における患者・市民参画ということで、情報の提供をさせていただきます。
 スライドをお願いします。
 これまでの研究における患者・市民参画としては、我が国においては、第2期のがん対策推進基本計画で、がん研究の領域に患者が主体的に臨床研究に参画しやすい環境を整備するということが書き込まれ、その第3期においては、がん研究で患者・市民参画を具体的に実行していくためにAMED等で研究を進められてきたという経緯があります。
 では、実際に実装していくということで、第4期のがん対策推進基本計画では、これらの支える基盤の整備で新たに患者・市民参画の推進という形で書き込まれました。
 それを受けまして、具体的に研究における患者・市民参画というものが世界においてどのように実装されているのかということについて報告させていただきます。
 そもそも、このがん研究における患者・市民参画というのは、1978年のアルマアタ宣言の中に「人々は、医療の計画と実施に個人的および集団的に参加する権利と義務がある」との明文をもって世界各国で実施されるようになったという経緯があります。
 今回はイギリスとアメリカでの研究における患者・市民参画について報告をさせていただきます。
 次をお願いします。
 イギリスにおいては、国立医療・社会福祉研究所、NIHRという機関が研究における患者・市民参画に関与しております。第2期のがん対策推進基本計画のときには研究に関与するということだけでしたが、イギリスにおいては、まず研究をどう進めていくべきなのか。どのような研究が行われて、どのように実施され、結果がどのように共有され、実際に医療の現場で適用されていくのかということを個々の研究ごとに審査する審査員という参画。それから、がん以外の様々な疾患研究に優先順位をつけてどのように資金提供していくのかということを検討する市民委員会の構成員としての参画。そして、研究を社会に知っていただくということを目指す研究広報大使といった患者・市民参画があります。
 イギリスにおける患者・市民参画というのは、市民とともにということと、市民によってということが基本とされていて、その市民というものに関しては、患者と今後患者になるかもしれない一般の人たち、それから、介護者、医療・社会福祉に関わる人、医療・社会福祉に関わる人を代表する組織の人、患者団体や患者支援団体の人たちということになっています。ですので、患者だけが関与するということではなくて、市民全体で関わっていくということが前提として掲げられています。
 次をお願いします。
 研究広報大使としては、先ほど来様々な構成員から御報告があったような様々な研究のことを社会に知っていただくために、市民や患者、それ以外の人たちが参画するという仕組みとしてあります。これはイギリスにおいてボランティアとして誰もが参画できるというような仕組みになっております。実際に研究広報大使として参画するために様々な方法がありますということを示しております。
 次をお願いします。
 実際に個々の研究の審査に関わるということで、イギリスの場合はボランティアという形での参画になっております。患者、介護者、被験者の経験者を含む市民の人たちが、まず研究審査に参画したいということの登録をいたします。それを受けて、オンライン研修で審査をしていく上でのポイントを理解するためのガイダンスが行われていて、現在の審査における様々なガイドラインとか指針というものが示されます。加えて、オンラインによる市民向けの双方向性のトレーニングコースというものが1、2、3という要素があります。所要時間としては1要素当たり1~2時間程度かかるということで、最終的に修了すると、ダウンロードできる修了証明書が発行されます。現在、医療者や研究者の人たちが倫理に関する研修を受けられた後に、倫理研修修了証が発行されるのと同じような仕組みになっています。
 そして、研修を受けた市民は、まずオンラインで審査に参画します。自宅で研究計画を審査してオンラインで意見を送信しますが、患者や市民の人たちが研究の責任を負うということではなくて、研究計画と患者、介護者、市民の期待や要望との一致があるかということを審査していくということになります。また、参画いただいた患者・市民の人たちに対しては、ウェブサイト等で研究審査員リストとして掲載して、敬意を表するというような仕組みも持っているということです。
 次をお願いします。
 市民委員会の構成員として参画については、こちらに記載したように1年に数回の委員会が開催されます。この委員会は現在行われている有識者会議と同じような形式でありますが、その委員会に参画する患者・市民の人は一度に1つの委員会のみに参画申請できます。以前務めた委員会には申請ができないというようなルールもあります。任期は2年で2年間の延長はできるけれども、それ以上認めない任期制というものと、実際の委員になられた人たちはトレーニングを受けて、いろいろなガイドラインというものが提供され学ぶ機会はありますが、なかなかそれだけでは実際に、どの研究が優先度の高い研究なのか評価していくには難しいということで、新委員にはバディという形で、志願した専門家だとか市民委員による電話または電子メールによるサポートも行われています。
 次をお願いします。
 アメリカの場合です。アメリカの場合は、PCORI、患者中心アウトカム研究所というところで研究に関する市民参画が実装されています。こちらは、イギリスでの取り組みに加えて、研究の評価というものも加わっています。申請された研究の優先順位を決める諮問委員会というものと、実際に研究を実施するためにどうすればいいのか、この方法でいいのか、患者や市民の目線を取り入れるということでの研究計画の審査。それから、実際に資金提供を求めて申請された研究が終わった後に、それがどうだったかという研究結果の評価。そして、その研究を社会に知っていただくための研究広報大使という4つの患者・市民参画の仕方があるということになっています。
 次をお願いします。
 市民参画の4原則をアメリカは提示しています。包括制ということで、市民間の多様性を尊重していく、互いに尊重するようなことをまず考えましょう。そして、公正な連携ということで、市民間の公正性、性別や年齢、国籍や境遇などの違いに応じた適切な支援や調整を行って互いに協力する。要するに、全員が一律に参画していくのではなくて、足りない部分に関しては補っていく。補い方もいろいろな支援の仕方が違うのだということになります。それから、信頼/信頼性ということで、市民間の包括性を確保して公正な連携を構築するということで、社会的な信頼を得る。それから、説明責任ということで、先ほど広報大使という参画についても示しましたように、社会に対して情報を発信していくということが大切であるということをアメリカは4原則として掲げています。
 次をお願いします。
 アメリカにおいては、研究広報大使としては、やはりイギリス同様ボランティアという形式をとっています。市民として登録をし、オンラインの研修を受けた後、研究広報大使として社会に研究に関する情報を発信していくお手伝いをしていくということになります。
 次をお願いします。
 こちらはイギリス同様研究の審査という参画になりますけれども、こちらは市民として自らが参画できると考える研究分野に登録します。審査マニュアルだとか審査員の研修を受け、研究の審査員として選抜をされます。これは、様々な研究領域に応じて、その領域に適当と思われる人たちが登録者の中から選抜されるということになります。その研究分野で患者、介護者、医療システムに大きな負担をかけるような状況であるとか、慢性疾患、併存疾患、希少疾患、民族など母集団間で研究結果が異なることが予想される疾患、医療格差のリスクにさらされているような人たちを対象とするような研究といった分野に関して患者・市民が参画して審査に加わっていく。こういった人たちも、イギリス同様、イギリスの場合はバディという形式でしたけれども、アメリカの場合は助言者という形式で研究審査に対してサポートする専門家がつきます。オンラインによる事前の審査、予備審査を行い、その後、対面による審査委員会が開催されます。この場合は、イギリス同様に報酬が支払われ責任を持って参画するということになります。そして、資金提供する研究、資金提供を保留する研究として、様々な議論が行われます。
 次をお願いします。
 研究結果の評価になりますけれども、研究終了後、やはり登録した市民の人たちから選抜され研究評価員として参画します。一つは、PCORIの職員が様々な研究の評価を取りまとめて、それに対してまず事前の研究評価を行い、さらに3~4人の利害関係者、医療者、他の研究者、それから、患者・市民の人たちが参画し、外部評価委員として評価を行います。こちらもイギリス同様に、参加された人は、ウェブサイトでこういった評価に貢献した個人として表彰されています。
 次をお願いします。
 諮問委員会ということで、こちらもイギリス同様に研究の優先順位を決めるという議論に患者や市民が参画することになります。
 次をお願いします。
 市民という形では、現在、日本では患者としか書き込まれておりませんけれども、アメリカの場合は、患者だけでなく地域で貢献されている医療者、それから、研究者、様々な企業の人たち、教育に携わる人たち、皆全て市民として参画するということになっています。
 次をお願いします。
 こういった研究における患者・市民参画に関する評価の基準というのもこのように設けられています。
 次をお願いします。
 市民参画の質に対する評価としては、やはり市民の多様性と代表性を担保するということが非常に重要で、どのように選抜するのか、そして、それが社会の多様性を代弁しているのかということが非常に大きく質の評価に関わるということです。今後日本においてもそういった選抜の方法を考えていかなければならないのではないかと考えております。
 次をお願いします。
 これまでの研究における市民参画は、冒頭申し上げましたけれども、第2期、第3期の段階で研究に関して盛り込まれました。
 次をお願いします。
 これからは第4期で、基盤の整備に患者・市民参画の推進が書き込まれており、実装していくためにどのようにしていけばいいかということ、具体的な取組に関して検討する段階に入ったと思われます。
 次をお願いします。
 実際に日本で患者・市民参画を導入するのであれば、やはり市民の人たち、患者さんを含む多くの人たちが人材プールとして登録され、様々な委員会や役割に関して立候補していく。その選抜に当たっては、代表性を担保するために、一つの方法としてくじ引き民主主義的な方法をとってはどうかと考えます。登録された患者や市民に対しても、当然教育が行われて、様々な研究の審査や優先順位の評価に関して携われるようにする。さらに、患者・市民参画を支援するためには任期満了した患者・市民参画の経験者たちが伴走者、バディとして、次に新たに選任される人たちの支援者となる。また、先生方のような専門家の人たちは、助言者としてアドバイスをするような仕組みをつくっていければどうかと思います。
 最後のスライドです。
 くじ引き民主主義ということで、現状でありますと、私もがん対策推進協議会、この有識者会議も含めてそうですけれども、指名されてここに関わらせていただいております。そうではなくて、登録された患者を含む市民とか、あるいは国民全体から無作為抽出で委員を選抜していくような方式で、その人たちにある一定程度の教育をし、その人に参画いただく。現状、日本においても裁判員裁判だとか、地域でもこういったくじ引き民主主義が取り入れられておりますので、別途資料として配付したものの中には事例として紹介させていただいております。御参考にしていただけたらと思います。
 以上になります。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、続きまして、阿久津構成員よりお願いいたします。
○阿久津構成員 よろしくお願いします。北海道テレビの阿久津と申します。
 お時間をいただきまして、本当にありがとうございます。
私は乳がん当事者、乳がん患者の母を支える家族、父を今もなくすことが大変難しいスキルス胃がんで亡くしました遺族、そして、20年以上患者さんを見てきた取材者という複数の視点から、市民参画のための重要性ですとか現状の段階というのをお話しさせていただければと思っております。非常に底辺のところからお伝えさせていただこうと思っております。
 次をお願いいたします。
 取材を始めた20年前から今を振り返りますと、分子標的薬などの登場ですとか、遺伝子学的な特徴で見る治療薬が増えたというのは非常に画期的でございました。さらに、がん種ごとの区分けではなくて遺伝子レベルの区分けによる個別化医療ということに、患者として非常に希望を持っております。一方で、治療薬に結びつくがんとそうではないがんもできておりますし、同じ種類のがんで治療格差がありまして、希少がんの問題等にもつながる新たな課題と見ております。拠点化の集約化のメリットもありますけれども、やはり地域間の格差が広がっている印象です。さらに、既に特許が切れていたり、薬価が安いなどの理由で企業様が踏み出せない、またはやらない分野の潜在的な治験のニーズがあるのが現実で、最近お気持ちがある先生方による患者さんのためのクラウドファンディングを拝見することが多くて、それで本当にいいのだろうかという思いが患者としては強くございます。
 先ほどからドラッグラグのお話などもありましたけれども、生きる期間が長くなっているからこそなのですけれども、薬の量や使う期間を増やす治験や副作用が少ない治療に潜在的ニーズがある。先ほどからPROのものも少ないというお話もありましたけれども、体の痛みだけではなくて心の痛みに対しても足りていない、患者ニーズに合う治験・研究が今後必要だと考えております。
 一方で、参加する側の患者側の知識と教育のレベルも上げていかないと、この進化に間に合わないということがあるかと思います。既にJCOGの先生方が患者さんへの取組を始められておりまして、臨床試験や治験、市民参画の勉強会などのアンケート結果を取られましたので、今回お示ししております。
 次をお願いいたします。
 今回、964人の方の声でございますが、うち患者さんは276名です。85%が理解が深まったとするいいプログラムだったわけなのですけれども、記述を見ますと、標準治療の意味が伝わっていない、標準治療よりよい治療があるのではないかというような声が多く聞かれます。そして、治験の意味も誤解があって、伝わっていないということが分かります。
 次をお願いします。
 臨床試験についてのイメージなのですけれども、6割ほどの方が変わったと答えています。薬の医療メーカーの方のできる範囲や医療機関ができる範囲の問題など、それが本当に患者の側に立っているのかという声もありました。
 次をお願いいたします。
 そして、PPIについても、7割を超える方が理解が深まったとおっしゃっておりまして、患者にとってはつながっているようでつながっていない薬メーカーの方ですとか、医療機関のできる範囲、その臨床結果がどうであったのか、それが患者の意見が本当に反映されているのかとか、あと、患者と医療機関がどうつながるのが効果的なのかなど、まだまだ患者さんにとって伝わっていないというのが現状です。
 今回の946人の声は、日本対がん協会さんにつながっている、いわばつながる力を持った方の声です。それですら、今まだこのぐらいの状態だということをまず皆様に知っていただければうれしいなと思います。これは、治験やPPIの情報格差の是正につながる研究と推進が不可欠ではないかと考えます。
 次をお願いいたします。
 まず私が考えますのはJCOGなどへの支援なのですが、こちらはやはりITなどの分野に特化した形がベターかなと考えておりまして、先ほどからもありましたけれども、今あるリアルのデータを解析できるものがあるのであれば、それを解析するところから何か支援につながるようなこともあるのかなと思っております。
 そして、製薬企業からの啓発ですとか情報提供の支援というものが必要ではないかなと私は考えております。薬事法などで困難なことは分かっていますけれども、海外とは比べ物にならないぐらい自分で情報を取る難しさが日本にはあります。最近、がん領域では、特に患者さんのための部署をおつくりの企業も多いです。そういった心ある方々の正しい知識を持つ、そういった方々の情報発信というのは非常に大切なのではないかなと思います。
 そして、市民と医療者のつなぎ役の強化も必要で、医療従事者だけでは絶対に足らない部分を誰が担うべきなのかという適格者の研究とか、その認定制度の研究なども必要なのではないかと思います。これはあくまでも私の私見なのですけれども、患者支援の部門におられる製薬企業の皆さんとかが御適任ではないのかなと思います。いざといったときに頼れる場所ですとか頼れる人、知識を持つ人とどうつながるかというのが最終的に患者を救うのではないのかなと考えております。残念ながら、その御活動は今、関東、関西に集中しておられますので、私が住みます北海道をはじめ、地方との格差がここでも出てこないかなと懸念しているところでございます。
 そして、PPIが生かるものとしては、やはりライフステージごとの標準治療の方針の研究かなと思います。乳がんとかであれば、若年層であれば妊孕性温存ですとか、高齢者であればそもそも手術をするのかしないのかというようなことです。先ほど来ありましたが、今あるデータの中で多くの症例をデータにして、今を知るということも大事ではないかなと思います。
 少し横道に逸れてしまうのですけれども、患者には数々の疑問があります。再発を知ることはプラスではない、だから調べないとよくお医者様に言われます。そして、ステージ4は薬物先行だから手術しない。でも、本当にそれはそうなのかとか、それは年齢によるものなのかとか、ライフステージによる差はないのか、違いはないのかというような声をよく聞きます。そして、生存率というのは10年なのですけれども、乳がんですと10年以上たっても晩期再発の可能性があるので、ゆえにデータが存在していない。なので、私はどうなのだろうみたいなと言われるような方も多くいらっしゃいます。でも、研究結果は特性を見ておられますので、長期間見ないとエビデンスゴールにはならないことも分かっています。でも、次の治療を標準治療として望む患者からの悩みごととして、本当にこの研究が進んでいて、私たちの下に来るのはいつなのだろうかというような声は多いかなと思います。
 そして、長期生存があるからこそなのですが、副作用の少ない治療、副作用が激しかったときに変えられるオプション的な治療の研究ですとか、かなり患者さんの主観に基づくので、評価が難しいところだというお話は聞いておりますけれども、非常に必要な視点なのかなと考えております。ガイドラインも大分できてきておりますが、まだ主治医の先生の御経験によるところが多く、患者の意思との乖離もあるのではないかなと思います。
 一方で、私たち患者は、隣の人と違う治療で、知識不足がゆえに右往左往するというのがよくございます。患者さん向けにできているよいもの、よいガイドラインもできているのですけれども、そこにつながるための知識や研究結果を情報として得ることの難しさがあります。最新の研究は未来の患者さんに対する研究、過去の皆さんの実績により成り立っていますけれども、リアルデータを集めるなどした、今を生きる患者さんがすぐに感じられる研究の進化という視点も重要なのではないかなと考えております。
 そして、なかなか難しいと分かっていますが、高齢者ですとかライフステージに合わせた研究にもつながりますけれども、最終的に治験とか標準治療を終えた後に、選択治療がないことから病院を離れなくてはならないという現実を私は目の当たりにしております。病院側にターミナルケアなどの受入れがあればそのままなのでしょうけれども、自宅ですとか施設なのか、はたまたそういう状態になった自分で次の病院を探さなければいけないという現実がそこにあります。この辺りの後追い、そして、前を振り返っていくような研究というのも、患者さんを支える点で必要な視点ではないかなと思います。
 最後になります。これまで多くの先生方、医療従事者の皆様、そして、それに関わる全ての研究者の皆様の御成果により、患者は長く生きられるようになってきました。だからこそ、自分が納得できる生き方の選択肢を選べるために、少し細かいところにはなってしまいましたけれども、患者視点での研究の進化を望む部分をお話しさせていただきました。
 貴重なお時間を頂戴しました。ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 これまで御発表いただきました構成員・参考人の方々、ありがとうございました。
 それでは、これから各項目の議論に移りたいと思いますが、少しここで5分ほど休憩を入れたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中釜座長 特に御異論はないようですので、それでは、5分ほど休憩させていただいて、再開を17時37分とさせていただきます。よろしいでしょうか。
 では、お願いいたします。
 
(休憩)
 
○中釜座長 それでは、会議を再開したいと思います。
 ここからは各項目立ての議論に移りたいと思いますが、時間も限られている点、それから、効率的に議論を進めたいと思いますので、事前意見につきましては既に御覧いただいているという前提で、事前意見にない論点あるいは反対意見を中心に御意見をいただきたいと思います。御協力よろしくお願いいたします。
 また、御発表いただいた構成員や参考人への御質問でも構いません。
 それではまず、資料1の4ページ、(3)の患者に優しい新規医療技術開発に関する研究について御意見をお願いしたいと思います。
 御意見のある方は挙手ボタンで手を挙げていただければと思いますが、よろしくお願いします。
 御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 資料にはAMEDにおける評価と、後半、AMED研究の5年間での成果の例が示されており、それに対して構成員・参考人の方々から既に意見を幾つかいただいているという構成になっております。よろしいですか。
 それではまず、安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 ありがとうございます。
 5ページの5番目のところでございますけれども、細胞治療等の記述がございます。こちらで、新規モダリティーの実用化を推進することは重要だと思いますけれども、こういった新しい技術の研究は、単に研究を推進するだけではなくて、研究開発を阻害しないルール整備の検討が必要であると思っております。一例は生物由来原料基準、それから、カルタヘナとせっかく世界共通のルールがあるわけですけれども、日本独自の要求があるわけで、製薬会社としては、日本独自の要求に対するデータ取りだけで1年に近い期間を要し、また、そのデータをまとめ、またそれは審査を受けるということで、年という単位で臨床研究のスタートが遅れますので、ぜひともこちらのルールの整備のほうも御検討いただきたいと思っております。もちろんこの場はレギュレーションを変えるための議論の場ではないと思っておりますけれども、レギュラトリーボディの方々に古くなったルール等を変えましょうということを促すような研究もどこかで考えていただければありがたいです。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。貴重な視点かと思います。
 では、続きまして大井構成員、お願いします。
○大井構成員 ありがとうございます。
 粒子線治療、RI内用療法に関してです。こうした治療が患者さんたちに資するということは重要なことかと思うのですが、実際にそれが費用対効果としてどうなっているのか。設備ばかりに投資していていいものなのか、あるいは設備環境を整備するためにも様々な障壁があるかと思います。やはりその辺のところの評価というものが行われておらず、研究としての研究は進んでいくけれども、実際にそれを日本のこの社会の中でどう実装していったら国民全体として経済的にも社会的にも合意が取られるものなのか、そういった意見というものもぜひ反映されるような研究を進めていただきたいと思います。
 実際に東京都でも粒子線治療を導入するということでヒアリングを受けましたけれども、実際にそれを導入するということは決定されていて、私たちが市民参画として意見を述べているのはあくまでもアリバイづくりみたいな意見聴取という形式的なものになってしまっています。そうではなくて、やはり市民がこれはどうなっているのでしょうかという疑問に対して答えられるような参画機会のある研究も行っていただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の御指摘について2点ほど、内堀構成員から何か現時点でのコメントはございますでしょうか。
○内堀構成員 ありがとうございます。
 御指摘ありがとうございます。
 まさにそういった点については非常に大きな問題であると考えておりまして、なるべく装置の導入については費用がかからないような方向というのも重要な研究開発の分野だと思いますし、その効果がどれぐらいあるかということ、あるいはその費用対効果はどれほどあるかということも重要だと思っています。
 前者としましては、先ほど御説明しました量子メスという新しい装置の開発というところに力を入れておりまして、それをもちまして装置自体あるいは建屋を小さくするということで導入費用や運転費用が下がるということが非常に大きく期待されますので、この研究開発を進めてまいりたいと思っております。
 また、RI内用療法につきましても、こちらについてはどのような核種を製造するかということ、その製造方法についても非常に重要な問題で、それを安価に行うためには、例えば原子炉を使うとか、あるいは加速器を使っていくというようなことも含めて研究開発を進めております。
 その辺り、費用がかかるというところは御指摘のとおりかと思うのですけれども、それがどのように患者様のメリットになるかというところも研究開発を進めてまいっております。例えば重粒子線がん治療につきましては群馬大学等と協力しまして、トータルの治療費は最終的にはほかの治療方法と5%ぐらいしか変わらないのではないかというような原著論文も発表しております。こういった研究も今後進めまして、費用対効果をよく考えて今後の研究開発に生かしてまいりたいと考えております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 内堀構成員のほうから何か御質問、御意見はございますか。先ほど手が挙がっていましたが、よろしいですか。
○内堀構成員 6ページにつきまして幾つかございますが、よろしいですか。
 6ページにおきまして、今、13ポツについて御意見をいただいたところです。また、14につきましても御指摘いただいたところですけれども、こちらにつきましても、先ほど申し上げた量子メスの対応であったり、あるいは低侵襲であるということ、あるいは短い治療期間であるということをぜひ生かして、様々な疾患に対して対応してまいりたいと考えております。
 また、8から12まで、こちらは現状と課題として入れておるところですけれども、これらについて、また研究の方向性について示していきたいと思いますけれども、例えば11にあるところの規制緩和等につきましても重要な課題と思っております。今のところ、核医学の治療を行う病室あるいは病棟といったものがなかなかない状況にありますので、新たにQSTでもトレーラーハウスというようなものを考えて、そういった治療施設の医療法承認などを受けたいと考えております。
 こういったところであったり、様々な促進であったり、制度の整備、それから、RI治療の場合、RI規制法と医療法の両方にかかるところがございますので、そういったところの制度の解決等を行っていきたいと考えておりますので、またぜひこの辺りも含めて検討させていただければと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、中村構成員、お願いします。
○中村構成員 この項目に当てはまるかどうか分からないのですけれども、患者さんに優しい医療という観点で、副作用を予測して、副作用を回避する診断技術は非常に大事だと思いますし、免疫チェックポイント抗体でも一定の割合で副作用が出ますので、患者に優しいというのであれば、新しい医療技術ではなくて、今まで分かっていることも含めて、地域格差なくどこでも診断が受けられるようなシステムが必要だと思いますので、それを考えていただければということです。
 以上です。
○中釜座長 重要な指摘点だと思います。ありがとうございました。
 それでは、続きまして古関構成員、お願いいたします。
○古関構成員 ありがとうございます。
 私もこれはここで申し上げるのがちょうどいいのか分からないのですけれども、いろいろお話は私もいつも考えていたところですし、今、皆さんのお話を聞いてすごく感じたところは、やはり患者様、それぞれの御病気の方々をどういうふうに層別化していって、それぞれの治療を割り当てていくのかというところが非常に大事ではないかと考えました。既にゲノムですとか先ほど西川構成員からお話があったようなああいう免疫学的なフェノタイピングですとか、もちろん前向き、治療前のいろいろなデータをしっかり集めていくというところは非常に重要であるのですけれども、治療介入後のいろいろな高い層のデータというのも相当いろいろ集められるような状況になっていて、しかも、治療効果とそういうデータをインテグレートしていくことも可能になりますので、そう考えますと、やはりどういうふうにデータを集めるのか。その前提となるのは、一体どういうふうにそのデータを集めるプロセスを標準化していくのかとか、これも先ほど皆さんさんざんおっしゃっていた、本当にリアルワールドデータというのを集める仕組みというのをどういうふうに構築していくのかということ、それを共有できる形で蓄積していくことが大事なのだろうなと思いました。
 以上であります。
○中釜座長 ありがとうございます。層別化とそれに応じた適正な治療、さらにはその効果予測、副作用予測の基盤となるデータ基盤の構築については、事前に多くの方々からもいただいている意見。です。改めて御指摘ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして資料1の11ページ、(5)ライフステージやがんの特性に着目した重点教育研究領域の中の高齢者のがんに関する研究について御意見をお願いいたします。
 先ほど事務局から説明がありましたが、資料は構成順になっていますので、資料についてはめくっていただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、土岐構成員、お願いいたします。
○土岐構成員 意見一覧のところを見せていただけますか。実は私、意見が高齢者のところは漏れていたのかなと思っていたのですが。
○中釜座長 12ページですか。
○土岐構成員 私の意見が次のページも含めてなかったので、もう一回ここで述べさせていただきたいと思います。
○中釜座長 お願いいたします。
○土岐構成員 高齢者は個人差が大きいので、機能評価で高齢者リスクを分類することが喫緊の課題である。その上で、リスクに応じた標準治療、そして、リスクを改善する栄養運動介入といった研究を進めていただきたい。いわゆる高齢者のリスク分類、機能評価を強力に進めなければいけないという意見でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。資料に追記させていただきます。
 ほかに御意見はございますか。
 それでは、石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 1つ前のスライドを出していただけますか。
 今の土岐先生のところ、私はここの2番のところが私の意見です。先ほどのお話にも関係がありますが、高齢者は今までのエビデンス創出のためのクリニカルトライアルに非常に合わない。臨床試験というのは非常に単純化したモデルで行われていますので、比較的若い人で、身体的な機能、合併症についてバイアスがかかっていない状況というものを対象にしていますが、高齢者は複数の併存疾患を当然持っていますので、従来の臨床試験という方法はほとんど役に立たないということです。ですから、新しいエビデンスを創出する方向に頭を切り替える。当局もやはりそういう古い臨床試験のやり方がエビデンスだという考え方は捨てるという時代が来ていると思います。やはりリアルワールドデータをいかに活用していくか。オールジャパンでこれを構築していくということが必須で、これはがん領域だけではなくほかの医療の領域も同じだと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。事前に多くの構成員からも類似の意見をいただいており、リアルワールドデータの活用は非常に重要な視点だと思います。
 それでは、続きまして安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 ありがとうございます。
 ただいまの石岡先生の御意見に付け加えるような形になりますけれども、製薬会社で製造販売承認申請のために行っておりますいわゆるピボタル試験フェーズ3、オンコロジーの領域だとフェーズ2の場合もございますけれども、ほとんどの場合、年齢制限はつけておりません。薬の性質によって肝機能、腎機能、あるいは心機能でいろいろな除外基準がつくことはございます。高齢者の患者さんですと、やはりそういう除外基準に引っかかりますので、最初に製造販売承認を申請するときのデータセットの中には、高齢者のデータが少のうございます。やはりがんの薬ですと、末期のところから最初の申請を始めて、そこで有効性のエビデンスを積み上げ、だんだん前期のがんのほうに適応を広げていくというのがほとんどの場合の製薬会社の戦略でございますので、そちらにやはりエネルギーを使うということで、高齢者の患者さんの使う薬剤にどういうリスクがあるかとか、どういう用法・用量が適切かとか、こういうところはコントロールスタディーによるよりは、やはりリアルワールドデータ、それもグローバルのリアルワールドデータを使ってエビデンスを積み重ねていく、それを受け入れていただくという環境の整備が必要だと私も思います。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 特にございませんようでしたら、次の課題に移ります。次は(5)ライフステージやがんの特性に着目した重点領域の中の難治性がん、希少がん等に関する研究についてですが、こちらについて御意見はございますでしょうか。御意見のある構成員の方、いらっしゃいますか。
 それではまず、中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 中村です。
 特に希少がんに関しては、日本の中でリアルワールドではなくてやはりリアルタイムでデータを集めてくることをしないと、なかなか治験も進まないと思いますので、希少がんの方はすぐに標準療法がなくなって、どちらかというと行く先がないという状況になってしまいますけれども、やはりちゃんとした登録制にして、かつリアルタイムでデータを収集するようなやり方をやっていくということが極めて重要ですし、ゲノムの会議でも言っていますけれども、治験を円滑にするためには、データというのはどこにどんなレベルの患者さんがいるのかという情報を集めてくる必要があると思いますので、それでないとドラッグラグとかジャパンパッシングというような問題も解決できないと思いますので、そこを根底から見直していかない限り、日本の中で開発は進まないと思いますので、がんの特性を考えれば、やはり何か違った仕組みで、リアルワールドに加えてリアルタイムが必要だと思いますので、どうすれば本当にリアルタイムで集められ、かつ経時的に情報を集めることができるのかということを考える時期に来ていると思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。データ基盤の構築に加えて、データ収集のスピード感をがん種によって考慮すべきだという御指摘でした。
 続きまして、安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 ありがとうございます。
 18ページの10番、11番の部分でございますが、11番の前半部分は全く合意するものであります。製薬業界としても、ドラッグロス、ラグの解消に向けた努力は進めていきたいと思っておりますけれども、10番の中にも、11番の中にも、臨床試験をあるいは国として戦略的にという「戦略的に」という言葉が書いてあるのですが、この意味がいま一つよく分からなかったので、10番、11番の御意見を出された方にここで戦略的というのがどういう意味で使われているのかというのを解説していただけるとありがたいです。
○中釜座長 特にこの意見を書かれた方に限らず、この「戦略的に」ということに関して何か御意見のある構成員の方はいらっしゃいますでしょうか。
 石岡構成員、よろしいですか。
○石岡構成員 私は1つ前のスライドの5番を書きました。戦略です。日本の製薬企業のいろいろな方にお会いして、やはりシーズに乏しいと。国内企業はシーズ開発に非常に苦戦している。グローバルな企業の人に会っても、シーズ探索というのは自分たちではなかなか難しくて、結構ベンチャー企業のシーズを買ってきているという状況にあるということで、ですから、シーズ探索というのは製薬企業にとって非常に難しい状況ということはよく理解しています。
 日本ではアカデミア発のシーズというのはほとんどうまくいっていない。例えば本庶先生の例みたいなものもありますけれども、ほとんどうまくいっていない。それから、企業も日本国内でシーズを拾い上げて、first-in-humanまで持っていくというエネルギーもほとんどない。一部の大学等はやっているけれども、規模感とか成功例という意味ではまだまだ不十分ではないかと思います。
 私は、やはりこれは10年計画ですので、アカデミアと企業がもっと太いプロジェクト、ビッグプロジェクトで、産学官の効果プロジェクトと言ってもいい。シーズのスクリーニングから、有望な知財形成から、そこからあとは新しい技術、例えば放射のところとか、あるいは新しい電顕とか、そういう技術を確立して、オールジャパン体制で早期臨床試験までこぎつけるように、いわゆる一気通貫の仕組みというのを私はつくるべきではないかなと思います。僕は製薬企業はそういうのを望んでいると信じています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 今の石岡構成員の意見の中に戦略的な意味合いが込められていたかと思いますが、追加で何かございますか。希少がんゆえの開発の難しさなどもあると思いますので、産官学連携をしながら国家事業として戦略的に取り組む必要あるのではないかという御意見と理解しました。よろしいでしょうか。
 宮園参考人、お願いいたします。
○宮園参考人 宮園です。
 私も実は次回シーズ探索で話をするので、今回私からは課題を挙げなかったのですけれども、先ほどの戦略的ということで、それから、難治がんということに関連して申し上げますと、やはりAMEDの研究費などですと2年ないし3年でどうしても成果を上げなくてはいけないので、チャレンジングなことができないというのが研究者の方々からは声が上がっているところであります。
 例えば米国ですと、NCIでRAS Initiativeというのをやりまして、10年近い計画で、なかなか薬が見つからなかったRASに対して国家的に取り組もうということでやって、だんだん成果が上がってきたということを考えると、何か戦略的にぜひ重点的にやるものというのを考えてみるのも一つの方法かなとずっと考えているところです。
 AMED次世代がんでは、近々膵臓がんのプロジェクトで研究者に集まってもらって、知恵を出し合って、何か新しいものをできないかとか、それから、今回次世代がんでは先ほど内堀先生から話がありましたけれども、α線セラノスティクスですね。よく日本はこういった周回遅れになっているものに関して戦略的に対応していこうということを考えていて、なかなか成果が出にくいもの、あるいは日本が遅れていると言われているものに関して、ぜひそういったものも重点的に考えていくというのは重要なことではないかなと思っております。
 末松先生がおられますけれども、末松先生が理事長のときに、日本ではクライオ電顕が周回遅れでとても追いつかないだろうという話が出ていたのですけれども、そのときにAMEDが重点的に支援してくださって、日本で今クライオ電顕は随分進歩しましたので、何かそういったことを議論しながら重点的にやっていくものを考えていくというのは、今後の計画として非常にいいのではないかと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、続きまして谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 先ほど御意見をいただいた10番、11番を書いたのは私です。
 戦略的という言葉に関しては、詳細は宮園構成員、石岡構成員からお話しいただいたようなことなのですが、中間評価に書かれた言葉を抜き出して表現させていただいています。
 私は希少がんの患者なのですけれども、私の患者としての思いとしては、本当に10番に書いているように、この希少がん、難治がんのところというのは、放っておくと、市場原理に任せておくと、どうしても取り残されてしまう。今回、第4期がん対策基本計画の全体目標は誰一人取り残さないとなっていますけれども、ここはどうしても取り残されてしまう部分なので、中長期的に研究を支援していただきたいという思いでこの記載をさせていただきました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、続きまして直江参考人、お願いします。
○直江参考人 戦略的という言葉に合っているかどうか分かりませんけれども、私がいろいろな開発をしている企業の方、あるいはそれに関連した方から聞く話なのですけれども、やはり日本の場合は患者さんを集めるということ、先ほどお話が出た点ですが、そこで苦労しているという話と、もう一つは何とかfirst-in-human、フェーズ1までは行くのですが、そこから次のフェーズ2まで持っていく有効性をある程度示すというところ、それから、最終的には大手に引き渡すというところが非常に大変だと。つまり、資金不足というところです。今のAMEDもフェーズ1、first-in-humanのところまでは割と補助をしているような感じがするのですけれども、ただ、もう少し大規模になりますとやはり10億、20億というお金がかかってくる。そこをどう乗り越えるかというと、ベンチャーを立ち上げてファンディングを集めるというところが、日本ではなかなかやっている人が少ない、成功モデルがないというところですので、この辺をしっかり成果を出してフェーズ3までつなぐ、あるいは大手のメーカーに持っていくというところを、やはり何か新しい仕組みでお金を集めるというところに、もうちょっと日本もいい課題については何か支援をしていく仕組みをつくっていくというところが必要なのかなと思って発言させていただきました。
 以上です。
○中釜座長 御指摘ありがとうございます。その点を含めて戦略的に取り組むべきと理解いたしました。ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、次のテーマで(6)がんの予防法や早期発見手法に関する研究について御意見をお願いします。資料の22ページ以降になります。
 御意見のある構成員の方はいらっしゃいますでしょうか。
 それでは、野田参考人、お願いいたします。
○野田参考人 私はシーズ探索のところや次世代のところを中心に橋渡しのところの足りないものということで考えていたので、実際には次回の発表で話をさせていただこうと思っていて、そこには早期発見の手法についてのものをお話しさせていただきたいと思うのですが、実際に早期発見のほうはこちらに回っていますので、ちょっとお話をさせていただきたいのですけれども、先ほど石岡構成員からアカデミア発のシーズは創薬の何にもなっていないという厳しい御意見をいただいたのですけれども、先ほどのディスカッションのところを見ていても、直江先生が絞り込まれて話されたように、希少がんとか難治がんとか、やはりある程度焦点を分けて考える必要が早期発見のほうでもある程度あるだろうという部分を考えています。
 例えば難治がんで宮園先生の下で非常にいいシーズが走っていても、そこから革新がんに行くときには、今度は出口のほうが検診や何かを求められるというような場合が往々にしてあって、そうすると、難治がんに対して死亡率低減につながりますかというところまでという形で、やはり診断に関しては少し谷があるというところが見られます。そういうところを含めて、先ほど宮園先生が言われたようにシーズですね。アカデミアにあるシーズを積極的に取り込んで、今言ったような治療のほうはかなり動き出している。石岡先生の御批判もありますが、動き出していて、直江先生が言われたように、革新がんに入るものは例えばあるし、ただし、それから規模を拡大してのスタディーをフェーズ2に進めていくというところに問題が出てきているように、早期診断のほうももっともっとシーズを開発して、そういうエビデンスに基づく診断法の開発というテーマをより多く推進すべきで、さらに革新がんへスムーズにいいものは持っていけるような流れが必要だろうと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして内堀構成員、お願いします。
○内堀構成員 ありがとうございます。
 こちらの11のほうにもありますけれども、革新的な検診技術、こういったものが今後も開発が必要になってくるかなと思っているところです。今日の発表でもお示ししましたが、量子科学技術というものが非常に進展して、新たな技術が開発されてきているところで、そういった技術を使うことによってこれまで見えなかったものが見えてくるということが往々にあるかと思っております。そういった量子科学技術も入れ込んでこういった技術開発をしてまいりたいと思っておりますので、御検討いただければと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、堀田参考人、お願いいたします。
○堀田参考人 ありがとうございます。
 先ほどのがんの早期発見、早期診断というところですが、これを検診に活用するようなエビデンスというのはかなり距離がある話なのです。検診でスクリーニングに使うところになると、どうしても何千人から何万人という規模で生存率をエンドポイントにしたエビデンスにしなければなりません。その前に新規の早期診断ができるエビデンスをしっかり出した上で次につなげていきたいと思うのです。ところが、革新がんで言えば領域2の公募で新たな早期診断法の対策型検診につながる研究を募集するというときに、どうしてもそこのところにギャップができてしまって採択できる課題が少ないという問題があります。ここが実は非常に問題点で、日本の対策型検診は20年来変わっていないと言われるゆえんだと思うのです。この辺りを次期10か年でどう解決していくかというのが非常に大きな問題だと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。検診レベルに資するような早期診断マーカーの開発、大規模コホートをどういうふうに進めていくかという課題と思いました。
 では、続きまして阿久津構成員、お願いいたします。
○阿久津構成員 ありがとうございます。
 19番でございます。現在、先ほど堀田先生からもありましたけれども、検診の体制と国で補助される年代が決まっておりまして、乳がんであれば40代以上と決まっている。でも、患者さんのボリュームゾーンは20代、30代から上がっていって直にいらっしゃる。その方には検診を勧めなくてもいいのかということにぶつかるわけです。でも、エビデンスがなかったり、そこを調べている研究が少なかったりすると、その方々はどうやって自分たちを見つけたらいいのだろうかということにぶち当たっています。最近は遺伝性の話が出てきましたので、御自身の御家庭の方に遺伝性の疾患があれば、そういった検査を御自身も受けることでリスクを知ることができますけれども、そうではない人のための早期発見のための手法というのは、まだまだ考えられなくてはいけないものが多いのではないかなと考えますので、その辺り、非常に患者さんが多いがんでもありますので、御考慮いただければいいかなと思います。
○中釜座長 重要な御指摘ありがとうございました。
 それでは、続きまして大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 ありがとうございます。
 15番ですけれども、がんの発症のリスクとして様々な研究の中で喫煙という問題が取り上げられ、それが非常に大きなリスク因子であると指摘されているということは周知のことではあります。しかし、実際に喫煙の課題に関して、禁煙していこうということのアドバルーンは上がるばかりで、なかなか実装されてこないという実状があるかと思います。そういった視点からいくと、なぜそれが実装されてこないのかということになると、日本ではたばこは販売されていて、国の税収になっているということが課題になりますけれども、2009年の段階でもアイルランドで開催された世界がんサミットで、世界銀行はニューヨーク、香港、ロンドンといった都市の飲食店での全面禁煙した地域の税収データを発表しています。税収で考えたときに、それらの地域ではたばこ税収よりも消費税収が上回っているということを発表しています。なので、ぜひ予防するために禁煙が必要だということが明らかになりつつある、なっているということであれば、それが社会に実装されるために社会的な研究も取り入れていただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。実装普及研究の重要性の御指摘と思います。
 続きまして、石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 私はこのスライドを1つ前のところに書いた。もう一つ前かもしれません。ないですかね。検診に関係するところで、先ほど私の発言のときにも少し出しましたけれども、今週のASCOでは、香港からの胃がんの発表で、血液と身体情報だけで陽性的中率0.95、陰性的中率0.99の血液と臨床症状だけで胃がんを検出できるという深層機械学習、ディープラーニングのモデルが発表になり、非常に大きなインパクトを持っています。
 日本のがん検診というのは非常に長い歴史があって、それなりの有効性があるのですが、今、がん対策でも検診受診率、それから、引っかかった人の精密二次検診の受診率で大きな壁に当たっている。私は、ここで頭を切り替えて、1つのやり方ではなくて、若干精度は低くても、簡単に血液でできるような検診というのを普及させるという2段階の考え方というのは非常に重要ではないかと思います。さらにもう少しアディショナルに精度を高めるのであれば、これは値段が高くなるわけですけれども、Circulating Tumor DNAを使う。そういったがん検診の今までの在り方が、悪い言い方をすれば時代にそぐわなくなってきているというので、そこをまず見直す必要があるだろうと。
 それに関連して、もう一つは全ゲノムの時代になってきて、患者に還元できる情報というのが非常に増えてきている。いろいろなELSIの問題はありますけれども、例えば遺伝性腫瘍のハイリスクという方、あるいは喫煙や飲酒とインタラクションするようなハイリスクの人ということは、これは科学技術的には当然利用可能な状況になってきているわけで、そういうものをうまく検診に応用していくということ、それを値段と制度ということをあまり一本にするというようながちがちの考え方はしないで、地方とか貧困層とか、いろいろな世代にアラクタブルな新しい一次予防、二次予防の在り方を再検討する時期かなと私は思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。先ほど御指摘されているような検診レベルの新しいマーカーの開発のスキームとその評価系の構築の御指摘だと理解いたしました。
 では、野田参考人、お願いします。
○野田参考人 追加なのですけれども、次世代がんのところをやっていて特徴的なのは、極めて予防に対するシーズを探すというのは今プアな状況であります。一方、一番気になるのは、予防の中ではワクチンです。パピローマワクチンのことがたしか中間評価のときには問題になったと思うのですけれども、再開されていますが、あるいは12価のような新しいものが出てきていますけれども、従来と同じように接種率は50%をはるかに下回るような接種率で、年間4,000人の頸がん患者さんが出ているものを半分にも減らすことができないだろうという状況が今あるので、ある程度どこかのポイントでこれに関するその部分の後押しをするような施策が、どうしたらそれが%を上げることができるのかという非常に狭い分野ではありますけれども、効果がきちんと見えているものは進めるということでお願いできたらと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な御指摘と思います。
 それでは、続きまして中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 検診の話ですけれども、検診を受けようと思うと、若い人たちはポケットマネーで検診を受けないといけない。かと言いながら、やはり若い世代のがんを見つけるというのは非常に重要なので、全て遺伝子検査を受けるのかというと、それもあまり現実的ではないというので、あまり重んじられていないのですけれども、家族歴というのは非常に重要だというアメリカのデータもあるわけですから、やはり家族歴があってリスクが高そうな人は遺伝性腫瘍の有無に関係なくがん検診を受けるというような在り方も考えていく必要があると思いますので、費用対効果を考えて何が一番いいのかということを考えていくフェーズに入っていると思いますし、若い人のがんを見つけるための一つの方法として、そういうスクリーニングをやった場合に実際にどれぐらい検出率が上がるのかという研究はしていくべきではないかと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。リスクに対する評価系とその実装という視点かと思います。
 それでは、続きまして郡山参考人、よろしくお願いいたします。
○郡山参考人 ありがとうございます。
 検診の話が出てきたので、後のほうとも少しかぶるかもしれませんけれども、思っているのは、検診のデータがあまり正確でないというところで、本当に評価がきちんとできているのかどうかということも含めた上で、取組をしていかないといけないと思います。それから、データを解析しようと思ったときに、データインフラの整備が不十分であるというところがあるので、少し良質な研究をモデル地域またはコホートでもいいので設定して、きちんと評価をした上で早期発見、新しい技術などの評価というのもすべきではないかなと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして(7)の充実したサバイバーシップを実現する社会の構築を目指した研究の項目に移りますが、御意見をお願いいたします。
 資料1のページとしては29ページからです。既にこのサバイバーシップに関しては構成員の方々から多くの意見をいただいておりますが、加えてご意見がございましたら。
 中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 そこにコメントをさせていただきましたけれども、成人のサバイバーシップという観点でいろいろな議論がされていますが、小児がんのサバイバーの方の平均寿命は50歳と言われていますよね。同じように強力な抗がん剤をするのかどうかということも含めて、小児がんのサバイバーの方の平均寿命という観点を考えた抗がん剤の在り方とか治療の在り方を考えていくべきですし、いろいろなヒントが得られつつあると思いますので、小児がんのサバイバーシップという観点での切り口の研究はぜひとも必要だと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。ライフステージあるいは個々の症例の社会的状況を踏まえた上でのサバイバーシップ、より緻密な研究の重要性という御趣旨だと思いました。
 それでは、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 記載していない部分で3点申し上げます。
 一つは、課題として、長期生存できることになったからこその課題が増加しているなと。
具体的には、晩期合併症とか心理、社会的問題のことをやはりどこかで誰かがフォローしなければならないと思っています。なので、今治療中ではない人も含めて、この日本のシステムの中で長期フォローアップというか、サーベイランスというか、持続可能な形でフォローしていくための仕組みというものについて研究が必要ではないかと思っています。がん専門病院というのはどうしても今がんの人が対象になってしまうので、その後のフォローについてプライマリーケアとの連携なども含めて考えていくことが必要ではないかなと思っております。
 あと2点ございます。相談支援についての話が少なめかなと思うので、意見をさせていただきたいと思います。一つは、がん相談支援センターの役割というのが非常に高くなっています。なので、多様化、複雑化する相談支援のニーズに対応できるような質の高い相談支援体制の整備推進と持続可能な相談支援体制の在り方について研究を進めていくべきではないかなと思っております。相談支援の質を担保するためにも、例えば研修の内容であったり、受講環境であったり、そのタイミングについて、研修後のアウトカム評価もきっちりしつつ、最適化へ向けた研究を推進すべきではないかと思っております。
 最後に、ピアサポーターの活用についての言及もしておきたいなと思いました。ピアサポーターをはじめ、民間団体による相談機関との連携体制の在り方について検討を進めていくべきではないかなと思っております。
 ちなみに、サバイバーシップの項目に関しては、実は12から20まで私が書いているのです。なぜなら、やはり患者にとって長期生存が可能になって、治療も高度化複雑化する中で、心理、社会的課題とか経済的課題というのは、治療同様に本当に重要な分野なのです。ですので、市場原理には乗りにくいところではあるのですが、ぜひこの部分を取り残さないでいただきたいと思っております。
 私からは以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。相談支援の充実に資するような実装化研究の重要性と、そういうものの充実、必要性と理解いたしました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 それでは、阿久津構成員、お願いいたします。
○阿久津構成員 ありがとうございます。
 私は、6から先ほど谷島さんのところまでが全部私でございますというところで、先ほどもありましたけれども、ITの話とかエビデンスとかの話が出てきたのですけれども、とにかくがん情報に対する情報リテラシーの向上というのが物すごく大事かなと思っていまして、患者が正しい情報にたどり着けない今がこの状態になっているというところで、きちんとした情報を、GoogleさんとかYahooさんとかかもしれませんし、もちろんNHKかもしれませんし、私も民間企業のメディアに勤めているので、私もなのかもしれませんけれども、各種のプラットフォームと連携して医療情報のファクトチェックとかというのもきちんとやったほうがいいのではないかなと思います。正しくない情報に関しては、きっちりと消していく。でないと、ずっと間違った情報が上に上がっていくことで、患者さんの情報がどんどん過疎になっていくというか、正しくない情報が入っていく。あとは、余計に患者さんと自分を比べてしまうようなことにもなりかねない。なので、今、がん情報サービスとかも頑張っておりますけれども、製薬企業の方のページも今、きっちりと患者さん向けと分かれているような状態ですけれども、それを一気通貫して正しい情報はここにありますよというような構築というものも非常に大事になってくるのではないかなと思っております。
 ほかにはいろいろな点を書かせていただきました。よろしくお願いいたします。
○中釜座長 貴重な御意見をありがとうございました。
 では、続きまして安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 ありがとうございます。
 ちょうど10番のところで質問をさせていただこうと思っておりました。あとは、先ほどの阿久津様のプレゼンテーションの最後のページにもあった、製薬企業からの啓発・情報提供の在り方を考えましょうというところとも絡むのですけれども、こちらの10番は薬だけではなくて一般論を書かれていると思うのですが、我々製薬メーカーが、医師には宣伝はできますけれども、患者に対して有効性とか安全性を直接お話しすることは、薬機法で禁止されております。一方で、製薬会社こそが、全世界で販売している副作用データも含めまして、逆に言えば一番情報を持っている集団であるので、薬機法の中でその情報を第三者が活用、責任を持って製薬会社が商売のためにやるのではなくて、正しい情報として提供するようなシステムを構築していくとか、そういうことまでお考えなのか、あるいは何か別の方法をお考えなのか、あるいは今後製薬会社にどういうところでもっと頑張ってほしいなというような具体論があればまた教えていただきたいと思いますし、今日時間がないようでしたら別の場でも結構ですので、対話の機会を持たせていただきたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 阿久津様に対する御質問というよりは、全体の研究テーマとしてどういうふうに取り扱っていくかという枠組みでも対応が必要かなと思いましたが、この時点で阿久津構成員から何か。
○阿久津構成員 今、安川さんがおっしゃっていらっしゃった大きな枠組みの中で、今日もありましたけれども、法的・倫理的・社会的課題、環境基盤を、何かを変えてかないとブレークスルーができないというところのポイントがちょうど薬機法なのかなと私も思っています。本当はそこを超えるような形で、きちんとした正しい情報をお持ちの製薬企業ですとか、情報を持っている人が患者さんにきちんとそこを伝えられると、そこは経済的な関連とかではなくて、その方々に資するものとして出せるような新しい枠組みなのか、私の私見ですけれども、もしかすると製薬企業の皆さんの集合体みたいなものであればアクセスができるなど、そういう抜本的な改革というか、これまでではないものというものを模索してみてもいいのかなと私自身は思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。いずれにしましても、研究としてどういうふうな取組が必要かというところを検討すべきという御指摘と理解いたしました。
 続きまして、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 関連してになります。今の阿久津構成員の発言、それから、質問のやり取りの中に関してになります。実際に2004年の段階で厚生労働省の医療分野における規制改革に関する検討会の報告書でも、患者自身が自己決定に責任を負えるようにすべきであるということと、患者に対し適切な情報を伝えて、患者の自律を支援していくということが記載され、それを受けた2007年の医療法の第5次改正ではインフォームド・コンセント条項が書き込まれた。実際には、患者さんたちには自分自身のことを自分で決定するための正しい情報が得られていないという実態があると思います。先ほど安川構成員からありましたような薬機法の関係のところに関しても、これは実際日本で言えば、自己決定権を憲法13条で保障されていますので、薬機法の広告規制が現状の実態と合致しているのかとか、あるいはアメリカにおいてはそれを解消すべく規制を変更してきたという実態があります。そういった事例を踏まえた社会システムとしての研究をすることによって、先ほどの正しくない情報が世に氾濫しているとか、正しい情報が患者さんには提供されていないというところに関しての解消の一助になるのではないか、社会システム上の検証をするような研究であったり、あるいは時代において規制が今合致しているのかどうかということの検証も含めた学際的な研究というのを取り入れていただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、(8)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究の項目についての御意見をお伺いしたいと思います。資料1の40ページからになります。
 では、宮園
参考人、お願いいたします。
○間野参考人 そこで意見を出していないことに関して述べさせてもらいたいのですけれども、費用対効果の計測に関してなのですが、例えば最近の抗がん剤の優れた分子標的治療法などだと、かなりQOLというか、患者さんは実際に飲み薬を飲んでいるだけで、生活は普通にして加療されているという状況にあることもすごく多いと思うのです。昔の抗がん剤で入院治療していた頃と大きく変わってきているので、例えば最新の治療が患者さんの生涯獲得賃金にどういう影響を与えているか、あるいはさらにもっと言うとGDPにどういう影響を与えているとかを調べたら良いと思います。実際にデータを取るのはかなり難しいので、何らかのテストトライアルみたいなことでもいいと思うのですけれども、費用対効果というものはそれぞれの患者さんの生命延長ということよりも、それとともに、その方の生涯獲得賃金あるいは家族の方の生涯獲得賃金という視点で捉え直すような費用対効果も、そろそろ今の薬に対しては必要なのではないかと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして土岐構成員、お願いいたします。
○土岐構成員 私も費用対効果のことで、私はあまり知識がなくて、今日初めて知ったのですけれども、費用対効果は薬価を下げるということで対応するということを聞いて驚いたのですが、もちろん薬は例えばがん種によって当然効果が違ったりするわけなのですけれども、その場合、がん種によって値段が変わってくるのかどうかですね。そういう疑問も持つわけでございます。だから、試験が終わってから薬価で対応するというよりも、やはり試験をする段階である程度見込みというものを設けないと、市場がすごく混乱するのではないかなと思うのですけれども、その辺りはどういうふうに対応されているのか、福田参考人にお伺いしたいと思いました。
○中釜座長 この点につきましては、福田参考人、何か発言はございますでしょうか。
○福田参考人 福田でございます。
 御質問の点なのですけれども、御指摘のとおり、1つの品目であっても複数の適応を持っているという場合がございます。これは費用対効果の観点から当然それぞれについて評価をしていくのですが、最終的には価格は1つにしないと、流通等の観点の問題がありますので、それぞれ使われている患者さんの数で重みをつけて平均にする形で価格を算出する、1つのものにするというのが現行の制度でございます。
○土岐構成員 それはやはり最初の試験の段階で決めることはできないということなのでしょうか。
○福田参考人 一応使い始めて最新の実態に基づいて重みを計算するというようなルールにはなっております。しかも、導入されて比較的早期にありますので、あくまでも早期に適応を取った疾患での計算になっているというのが今の制度でございます。
○土岐構成員 分かりました。ありがとうございます。
○中釜座長 加えて、先ほど間野参考人から御指摘があったような各個人の活動性など、多様な面をどういうふうに取り込んでいけるかというところも重要なテーマかなと理解いたしましたが、そういう理解でよろしいですか。
○福田参考人 関連してコメントしてもよろしいでしょうか。
○中釜座長 お願いいたします。
○福田参考人 御指摘のとおりだと思います。私、プレゼンでお話しさせていただきましたが、改めてここにもコメントしなくてはいけなかったのかと思って、そういう認識がなくて失礼しました。改めてなのですが、これは公的なお金を使って予防とか治療とかに取り組んでいるわけですから、やはり費用対効果を含むこれをちゃんと評価していく視点が重要だと。これに関する研究に取り組んでいくべきと思います。
 費用対効果はやはり重要で、どうやって評価していくかというのは、先ほど生涯賃金という話もありましたけれども、どういう項目を評価していくかというのはしっかり研究で取り組む必要があるところだと思います。
 さらに言うと、個別の技術そのものですね。先ほど例えば検診の話がありましたけれども、検診における検査方法そのものの費用対効果もありますし、それを普及していく、例えば受診率を上げるためにどういう対策を取ればいいか。こういうものについての費用対効果はどういうやり方がいいかというのもありますので、様々な観点からの評価を実施すべきと思います。
 さらに加えさせていただければ、プレゼンでも申し上げましたが、費用対効果は確かに一側面で重要だと思いますけれども、それだけではなくて、ほかの要素も重要です。最終的に費用効果分析というのは行えるのですが、結果として、ではどこまでは費用対効果はいいのか、つまり、追加でどれだけの成果に対してどれだけお金を払っていいのだろうということの意思決定をしていかなくてはいけませんので、その意思決定をどうしていくべきかとか、そのときに費用対効果以外でどういうものを考慮すべきかといったものに関しての研究も進めていくべきではないかということで、プレゼンでお話ししたようなことも少し盛り込んでいただけると大変ありがたいです。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、続きまして郡山参考人、お願いいたします。
○郡山参考人 続けて福田先生に質問なのですけれども、例えばあまりレセプトなどで出てこないような主治医と患者のコミュニケーションの在り方とか、例えば手術後の患者さんへの事前の説明の仕方で不要な薬剤、例えば解熱剤であったり、そういうものが要らないことがあるというような研究も断片的にはあるのですけれども、そういったもの、要するにあまり医療費がかからないような術後のフォローの在り方とか、それから、患者さんに対して生活習慣の指導とかそういったものがどれくらい影響があるのか、そういったものが評価できるのかどうかというものと、そもそもそういうのは既にしているのかというようなことを教えていただければと思います。
○福田参考人 福田でございます。ありがとうございます。
 御指摘の点についてですけれども、結論的にはあまり評価されていない領域だと思っています。御指摘のとおり、例えば医師からどういう説明をしていくとか、あるいはそこで関連する指導をどうやっていくとか、生活習慣上も含めて、それについての費用対効果のようなことを評価することは可能だとは思います。そこにどのくらい時間がかかっていて、それによってどのような成果が得られるなんていうのは、きちんと定量的に評価することができれば費用対効果の観点を入れるというのは可能だと思います。例えばがんではありませんけれども、特定健診・保健指導というメタボの健診とか指導というのは始まっておりますので、どういう指導していくとどのくらい例えば体重減少が図れて、将来的にこのくらいの疾患が減らせますといったことを推計して費用対効果を考えるということはできますので、がんに関連するそういう先生の御指摘のようなものについても可能であるとは思うのですが、今まであまりされていない領域だと思います。がんについて言うと治療領域に関する費用対効果の研究が圧倒的に多くて、そういう部分は今後やらなくてはいけない領域ではないかと認識しています。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な視点を御指摘いただきました。
 続きまして、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 ありがとうございます。福田参考人に関連して質問させていただきたいと思います。
 現状、研究の進捗というか進行の方向性が遺伝子であったり、リキッドバイオプシーであったり、非常に個別化医療に貢献していくような方向性に向いているという実態があると思います。今までの話でいきますと、功利主義的な倫理も必要なのだという御指摘も発表の中であったかと思いますけれども、功利主義的に最大多数の最大幸福を目指すのであれば、多くの人たちに適用されれば保険も変わってくるのですよという説明だったと思います。でも、一方で研究が進んでいる方向は個別化医療に進んでいきますと、たくさんの人たちに適用されるのではなくて、ある特定の方に資するようなものが開発されてきたり、それが社会の中に発表されてくる。あるいは先ほどあったような希少ながんの人たちに関しても、非常に狭い領域に適用されてくるということになると、やはり同じように功利主義的な考え方ではなくて、義務論的な倫理で社会的な責任として適用していくということも必要になってくると思うのです。制度上そういったものが入ってくるということを想定したような研究だとか、今後の進め方というものは議論になっていくのでしょうか。
○中釜座長 では、御指摘の点に関して、手短に答えていただけますか。
○福田参考人 重要な御指摘をありがとうございます。今後やはり取り組むべき領域だと考えます。個別化医療が進んでいることに関しては、個別に最適化することを用いることによって、その患者さんについては有効性が高く発揮できるというように期待できますから、ある程度お金がかかっても費用対効果の観点からいいと考えていくことは可能だと思いますので、これは従来の考え方を、従来の考え方と言っても、必ずしもトータルとしての費用が幾らではなくて、1人当たり幾ら、1人当たりの効果はどのくらいという形でやっていきますので、そこは大丈夫ではないかなと思っています。
 あとは、確かに倫理的な面とかそういうものを考慮していくと、途中でもありましたけれども、難治性とか希少がんとかというものをどう扱っていこうかというのは、やはり別途検討が必要かと思っています。ちなみに、今、中医協で実施されている制度におきましては、希少疾病についてはこの費用対効果の対象から外す、例外として扱うというようなルールになっております。ただ、今後どう扱っていくべきかは検討が必要かと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、石岡構成員、お願いします。
○石岡構成員 今の費用対効果の話題は大井構成員や土岐構成員からもいろいろ意見が出ましたが、考えるべき視点としてもう一つ、研究者、それから、企業のインセンティブがどうなるかということです。費用対効果を重視すれば、インセンティブが働かなくなるので、開発意欲がなくなる。それから、我々研究者も知財を形成できなければやる気が出ない。国立大学もそれでは教授としての価値を認めないみたいなことまで今なってきていたりするのです。やはりこれは国の国策としてどう考えるかと。イギリスの例がよく出ますけれども、イギリスは抗がん剤のドラッグアクセスが非常に悪い国ですので、それで、例えば大井構成員は、あるいはほかの阿久津構成員とかが満足してもらえるのかというようなことも総合的に考えないと、日本はどういう方向にかじを切るかということにつきて、それは国民、患者がどう選択するか。そういう指標をやはり入れるという研究を進めるべきだと私は思います。
○中釜座長 重要な御指摘ありがとうございました。
 それでは、堀田参考人、お願いいたします。
○堀田参考人 ありがとうございます。
 今の石岡構成員の発言についてですけれども、確かに前向きの効果が出るような研究というのはインセンティブが働きやすいのですが、逆の場合、なかなか難しいというのは確かにそうで、それがありますから、今、AMEDのほうでは高額医薬品を本当に今のドーズで長く使用する必要があるのか、途中でやめてもいいのではないかというような研究とか、あるいはインセンシブなフォローアップを大体日本はやっているのですが、その感覚をもっと延ばしても同じ効果が得られるのではないかという公募を今やっている最中でありまして、そういうことから考えますと、国がやるべき研究の中に今言ったようなものを十分に考慮していく必要があるだろうと思いました。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、続きまして中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 費用対効果に関してお伺いしたいのですけれども、日本は公的な検診を除いて、多くの方が自費ががん検診を受けているわけですが、実際に早く見つかったほうが1人当たりの総医療費というのは軽減されると思うのですけれども、結果的に検診を公的にするのかどうかという根源的な問題になると思うのですが、やはり早く見つけるためには公的な検診をもっと広げていくという方向性があるのですけれども、その場合の検診を受けて早く見つけた場合の医療費の減少と、遅く見つかってからかかる医療費の比較とかはかなり大事だと思います。
 アメリカの場合、どんな医療保険に入っているかによってがんが見つかる割合が違ってくるので、そこも考えながらやっていかないと、どうしても収入の少ない人はアメリカでは進行してから見つかるというケースが多いのですけれども、日本でも自分で検診を受けるかどうかによって、かなりその後の医療費というのは変わってくると思うのですが、そのような研究というのは日本ではされているのでしょうか。
○中釜座長 この点、検査に関する費用対効果としてかと思いますが、福田参考人。
○福田参考人 ありがとうございます。
 まさに検診についての費用対効果は、先生の御指摘のような視点を入れなければいけないところで、早期に見つかった場合とそれが見つからなかった場合で将来かかる医療費の推計を行って、やはりそこでのメリットを考えるというようなアプローチが取られていて、国内でやっている研究でもそのような考え方が取られております。大変重要な視点であると考えております。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、最後、福田参考人。
○福田参考人 もう一点お答えしてもいいでしょうか。
 先ほど石岡先生から御指摘がありました、まずイギリスですと公的制度から外れてしまうということがありましたけれども、日本では制度導入のときからそれを避けるために費用対効果が仮に悪くても保険からは外さずに価格調整をするという方法でありますというのが一つです。
 もう一つは、インセンティブというお話がありましたけれども、現行の制度の詳細を時間の関係で割愛しましたけれども、現行の制度でも費用対効果がとてもよいと考えられる品目については価格を上げるという仕組みもございます。これがイギリスと違うのは、イギリスはそもそも治療薬とかの値段をメーカーが決めるという形を取っていますが、日本ではこれを国が決めるという形を取っていますので、場合によっては最初に決めた価格を上げるというようなこともあり得るのではないかということで、制度上はそのようなしくみになっているということを付け加えさせていただければと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。政策的な観点から今の視点をどのよに解決していくか、その研究はどうあるべきかというという御指摘かと思いました。
 それでは、次の課題に移らせていただきます。よろしいでしょうか。
 次は(9)の免疫療法に係る研究についてであります。この点についての御意見がありましたらお願いいたします。資料の50ページです。
 よろしいでしょうか。先ほどの西川参考人のお話の中でも、免疫療法は非常に複雑で、がん細胞との関連や中村構成員が御指摘の新しい免疫療法への展開と開発研究の必要性は御指摘されていましたが、追加で。
 では、中村構成員、お願いします。
○中村構成員 私のコメントにも書きましたけれども、3週間前に『Nature』に膵臓がんのネオアンチゲンの追加療法の結果が出ていましたが、今回の西川先生の発表ではほとんど触れられていませんけれども、ネオアンチゲンを用いた新しい治療法の可能性がビオンテックとスローンケタリングの結果によって、まだプレリミナリーですけれども示されました。それに加えて、いろいろなT細胞を使った治療法、CAR-T細胞をもっと広げていくとか、T細胞受容体を導入したT細胞療法とか、スペシフィックな抗体療法というような形で免疫療法は広がりを見せているわけですけれども、今回の発表でその点に関してほとんど触れられませんでしたけれども、その点に関してはどのようにお考えなのか、西川先生のお考えをお伺いしたいと思います。
○中釜座長 それでは今の御指摘、質問に関して、西川参考人、お願いできますでしょうか。
○西川参考人 今、中村先生の御指摘のように、抗原特異的なものを活性化するというようなものも含めて様々ながん免疫治療法が導入されてきているということは、多くの先生が承知されているところかと思います。こういった新しい治療それぞれに期待がありますが、今後それぞれのがん免疫治療をどのような患者さんに適応していくかを念頭において治療開発することでがん免疫療法の最適化を図ることが重要である、という意図で私は発表させていただきました。それぞれの治療法はどれがいい、悪いというのは、フェーズ3でのデータが必要です。中村先生の御指摘の研究は予備的なプレリミナリーなフェーズ1試験のデータでフェーズ3ではありませんので、ここで善悪を、優劣と言ったほうがいいのかもしれませんけれども、述べることは避けて、考え方として、免疫療法が今後進んでいくべき方向性をお話しさせていただきました。抗原特異的な方法というのは有望なものではあると期待はされますが、まだフェーズ1の段階ですので、今後の結果を期待しながら待ちたいというようなところかと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
○中村構成員 よろしいでしょうか。
 あまり個別の治療法には触れたくないというお考えも分かりますけれども、これから10年のがん研究をどうしていくのかということを考える場で、やはり日本の中で遅れてしまうと、今回のコロナのメッセンジャーRNAワクチンで見られたように、日本は手も足も出なくて、完全に海外に依存するという形になってしまいます。ネオアンチゲンというキーワードで検索すると、アメリカや中国で100件以上臨床試験が行われていて、一部のものはフェーズ2、3に入っているわけなので、やはり今後の10年を考えることを話し合う場で個別なものに全く触れないでただ一言で免疫療法と言っても、免疫チェックポイント抗体のような形で発展しているものもありますし、現にNature誌のようなもので取り上げられているものもあるわけですから、やはりそこに触れないというのは私はおかしいと思いますし、特にメッセンジャーRNAワクチンを日本で作ろうと思っても、その施設さえない。これはゆゆしき状況だと思っていますし、だから、個別に触れないと言っても、結局研究は個別に進んでいって、現れたときには日本はそれこそ周回遅れというような状況になってしまいかねませんので、それを考えると、特に免疫療法の場合、日本のストラテジーというのは非常に重要だと思いますので、やはりそこには有識者会議の中で海外の動きを見ながら日本はどう開発を進めていくのかということは絶対的に触れるべきだと私は個人的に思いますけれども、私の意見を申し述べたいと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。本日の西川先生の御発表でも、免疫細胞療法に加えて、恐らく先生の御指摘の、腫瘍抗原特異的な治療、ワクチン、メッセンジャーRNAワクチンを含めて、どのように複合的に取り組んでいくかということも重要な研究テーマだという御指摘と理解いたしました。
 それでは、石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 スライド51を見せていただけますか。
 2番が私のところで、今、中村先生がおっしゃられたとおりのことが書いてあるのですけれども、私は免疫のプロではありませんけれども、今あるPD-1、PD-L1、CTLA-4抗体のようなかなり幅広く一貫して有効な薬剤がそういったやり方で今後出てくるのかどうかということです。今後の研究、そういった抗体薬の開発の仕方というのは、やはりかなり工夫が必要になってくるのではないかというような印象を私は持っていますし、海外での開発動向もそういう2つの流れに分かれているのではないかなと思うのです。
 中村先生のお話しされたことと西川先生が話されたことは両方大事だというのが私の意見なのですけれども、一方、PD-1やCTLA-4抗体など、やはりバイオマーカーが十分開発されていないということ、それが今後の新しい免疫の療法薬、CAR-Tとかネオアンチゲンに関しては非常にスペシフィックですけれども、そうではないもう少し幅広い免疫療法薬を開発する上で、やはりこれまでの化学療法剤、薬物治療、治療薬の開発と同様に、やはりそろそろバイオマーカー探査、開発ですね。研究ではなくて臨床導入に向けた開発というのはもうちょっと真面目に取り組まないといけないのではないかなというのが私の印象です。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに。
 それでは、古関構成員、お願いします。
○古関構成員 私、この1でふわっとした書き方をしているのですけれども、私も昔免疫学の教育を受けた人間で、最近の進み方、特に基礎研究レベルではやはり物すごく細かいことが特にシングルセルRNA-seq等の技術が出てきて変わってきていると思いました。先ほど西川先生のほうからお話があったように、もちろん抗体ですとかいろいろな介入手段はありますけれども、恐らく今、マウスレベルではもっといろいろな、当然innate immunityだけではなく、自然免疫だけではなく、いろいろな介入点というのは見つかってきておりますので、その辺、まだ幅広に研究する余地というのは僕はあるのではないかと。同時に、やはり人間への介入技術、今、抗体ですとか樹状細胞ですとか相当限られていますけれども、その辺の介入技術をどういうふうにしっかり一緒に持って作っていくのかというところが大事ではないかと思います。
 今、石岡先生がおっしゃっていたバイオマーカーにつきまして、私、最近UCSDの方のお話を聞いてびっくりしたのですけれども、その方は副作用のほうのバイオマーカーだったわけですけれども、やはり非常にこういう抗体治療とかを受けた後の患者様の材料をストックするシステムというのがしっかりしていて、彼らは非常に簡単に、代謝物でしたけれども、そういう物すごくその後リウマチになる方を見つける非常にいいマーカーというのを見つけているのを見て、びっくりしました。
 ですので、何が言いたいかというと、この後議論になりますバイオバンクというのをどれぐらいモバイルといいますか、ダイナミックで多層的なものにできるかというところがもう一つのすごく大事なポイントではないかと思いました。
 以上であります。
○中釜座長 ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、(9)のリキッドバイオプシーに係る研究についての議論に移りますが、御意見はございますでしょうか。
 では、佐谷構成員、お願いいたします。
○佐谷構成員 ありがとうございます。
 先ほど石岡先生から香港でリキッドバイオプシーの早期診断の能力がすごく高いものが出ているというのが発表されましたし、今、バイオマーカーのことなどもありましたが、これからリキッドバイオプシーは単なるセルフリーDNAとかCTCだけではなくて、エクソソームであるとか、あるいはDNAの構成やそのフラグメンテーションまで全てがマーカーになってきて、非常に重要なものになると考えるのですが、私が今回述べていない部分としては、すぐに新しい技術が出てきたときに、それを本当に診断の道具として用いるための試験をするために、企業が絡んできた研究を、当然こういうのは企業との間、いわゆるベンチャーとの連携で行われるわけですけれども、そのときに、やはりもう一度患者様にコンセントを取るという作業が入ってくることが非常に律速段階になってくると思います。
当然同意を取らなくてはいけませんので、これをコンセントのようなシステムで、今、患者様のパーソナルヘルスレコードということ、いわゆるPHRが言われているわけですがそういう形で患者様に対してもう一度すぐ同意を取って、そして、研究を始められるような体制、先ほど古関先生が言われたバイオバンクとも関係してくるのですが、そういうシステムを構築することで、何か技術があったときにすぐにそれを実用にまで持っていける速さというのが必要ではないかということで、それは加えたいと思いました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 このリキッドバイオプシーに関して、ほかに。
 では、直江参考人、お願いいたします。
○直江参考人 私は5にも書かせていただいたのですけれども、やはりこの領域は皆さん御指摘のようにアカデミアがかなりシーズを持っていて、日本でも非常に活発に研究がされている領域だと思います。今後、私がAMED、例えば次世代がん、革新がんでこの領域は割と関与しているのですが、1つ問題だなと思うのは、幾つかのシーズが同時に出てきているのですけれども、どのシーズもかなり研究者の思いがあって、それなりに有効性が高い、特異性が高そうなのですが、ただ、どれもこれもやはりnの数が少ないということがございます。例えば膵がんのステージ1というものを診断できるというところで、どのシーズもやはりいまいちである。これは非常に問題でして、加速化していくためにはやはりある程度まとまって大規模でやっていく必要があって、そういう意味では、今の審査といいますか研究の支援の仕方にもあるのですけれども、同じ検体を用いて複数の研究PIがコンペティティブに測定をして感度特異度を競うとか、そういうようなオールニッポン体制というものは構築しないと、やはりどのシーズもいまいちのところで、次のシーズ、海外シーズに負けてしまうということにならないかという危惧を持っていますので、そこは今後、これに限らず、この10年ということを考えてみた場合に、がん研究を研究面から支援していくということだけではなくて、体制面も含めて、やはりもう少し日本のがん研究システムというものについて踏み込んだ仕組みが何か必要なのではないかと考えまして書かせていただきました。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。先ほど議論にあった早期診断マーカーの有効性検証のための体制、基盤をどうつくるかという御指摘と理解いたしました。
 続きまして、石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 リキッドバイオプシーに関しましては、先ほど申し上げましたが、今週のASCOにありまして、国内ではナショナルセンターの東病院、ナショセンの国がん東は臨床応用に関しましては非常にリーディング、アカデミックソサエティーとしてもかなり有名になっていますが、その基盤技術はアメリカの企業の製品を使っているという状況です。
 あともう一つ、日本で既に承認されている遺伝子パネル検査、これは保険診療でやられているものですが、あるリキッドバイオプシーの遺伝子パネル検査のシェアは80%ティッシュとリキッドを合わせて使われている。日本での基盤で開発された、シーズから開発されたものもあるのですけれども、NCCNが開発したものとか、ほかにも申請が出ていますが、どうしても海外に後れを取っているというところが1つ大きな問題ではないかなということです。今、申請がかかって、承認は申請されているけれども、薬価収載はまだ決まっていない海外のもう一つのアメリカの基盤技術もすごくいい基盤技術で、メチル化を使っているのです。非常に感度がいいというものですけれども、これに関しては開発した人たちに昨日会ってきました。年齢がわずか45歳未満の若い人で、ベンチャー企業から非常にサポートを受けて非常に大きくなった会社なのです。そういうドリームが日本に全然ないというのは非常にまずい問題だろうと。
 いずれにせよ、リキッドバイオプシーというのはこれから進行がんの医療は変えるし、がん検診に応用されることは間違いないので、日本がここでもたついている理由というのは何もないだろうということです。ですから、そこには薬事の承認のプロセスとかもやはり見直す必要があると私は思います。
 もう一つ、先ほど佐谷先生が私の発表を聞いてくださって、香港のですが、あれは実はリキッドバイオプシーではありません。私の言い方がちょっと舌足らずですが、一般の日常的な血液検査と患者の臨床データのディープラーニングだけで陽性的中率0.95、陰性的中率0.99のデータを出したということで、皆さん非常に驚いたわけです。リキッドバイオプシーなどの新しいテクノロジーは全く使っていなくて、テクノロジーはディープラーニングだけなのです。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、続きまして郡山参考人、お願いします。
○郡山参考人 ちょうどこちらのスライドの7番の今後の研究の方向性のところで懸念されていることが、このリキッドバイオプシーの評価として、やはり死亡率の減少がネックになって実装化になかなか時間がかかるというところに関連してなのですけれども、もちろん本当に教科書的には死亡率で評価するというのは重要なことではあるのですけれども、いっそのこと、かなり挑戦的な、もうちょっと手前のアウトカムの評価というものを何か開発していくということが重要ではないかなと。それがより一層加速化すると思いますので、そういった方向もぜひ進めていただければと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに。
 では、中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 簡単に申し上げたいのですけれども、私はリキッドバイオプシーをずっとやっていますが、いろいろな検体を使うと違った結果が出るというのは当然のことで、特にCirculating Tumor DNAというのは2~3時間で半減するということが分かっていますので、血液を取ってから、どのような形でストアして、血漿でないと、やはり血清はかなり難しいですけれども、やはりサンプルプロセッシングのSOPというのが日本であまり省みられていないですけれども、ただ血液を取ってきて血漿を分けて、血漿からDNAを取るというような簡単なものではないので、レトロスペクティブなサンプルを使う場合には必ずばらつきが出てくると思います。やはりベーシックなサンプルのハンドリングから考えないと一定の結果は出ないので、皆さんリキッドバイオプシーと言われますけれども、そこを注意しない限り、直江先生が言われたように、やはりばらつきが出て当然なのが、サンプルをどう扱っていって最後にDNAを取ったのかというプロセスのモニタリングができていないから、結果として大きなばらつきが出るので、特にリキッドバイオプシーで腫瘍DNAを検出する場合には、そこを注意しない限り、結局あちらとこちらで結果が違うというようなこともあるので、やはりどういう方法でやるのが適切なのかということを考えていかないと同じことの繰り返しになって、A研究所ではちゃんとした結果が出るけれども、B研究所でやると全然答えが違うというようなこともあるので、やはりリキッドバイオプシーに関しては、血液を取るところから最後までちゃんと検証していかない限り、ちゃんと臨床には応用できないと私は思いますので、研究としてそういう違った視点での見方が必要だということを注意喚起させていただきます。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。重要な御指摘と思います。加えて、やはり研究として、研究者だけではなく、産学がいかに連携してこの体制をつくるかということの重要性の御指摘と思いました。
 では、続きまして阿久津構成員、お願いいたします。
○阿久津構成員 患者としてのほぼお願いに近い状態なのですけれども、我々、定期健診の際に1か月に1回、3か月に1回、血液を必ず抜かれます。そのときにもちろん腫瘍マーカーを見られるのですけれども、最近医師から腫瘍マーカーはあてにならないからということをよく言われるわけです。こういういろいろな研究が進んでいる中、今までのセオリーではないセオリーみたいなものが絶対に重要になってくると思いますので、今いる患者にとってもプラスになるような新しい指標みたいなものがきちんと世の中に還元されるというような研究であってほしいなと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、続きまして野田参考人、お願いします。
○野田参考人 ちょうど中村先生のお話、それから、今の阿久津さんのお話とダブル、病院で一緒に研究をしていると、患者さんたちは皆さん自分たちの血液どんどんそういうのに使ってくださいとおっしゃるのです。それで、我々、日本で一番多くの数の手術をしているので、それをためてきたものをバイオバンク化してみんなで使おうという動きをしているときに、今、ちょうどこの1年間、その検体をこれだけ中村先生たちのリキッドバイオプシーのようなものが進んできたのだから、血液や尿にバンキングを進めよう、広げようというのをやっているのですけれども、今の臨床にカップルしたものを保存するというのを全部幅広く許すようなSOPをやると、中村先生たちがおっしゃるように、実際には使い物にならないよというふうになるのです。なので、ある程度きちんとしたものをそこでも患者さんからいただいて、検査目的のものをあるSOPでやろうとすると、極めてコストがかかってくるというところで、バンキングのところもやはり国からお金を入れるという形をしていただかないと、そこが難しくなるということが一つです。
 あともう一つは、これは今度の次回のときにしゃべろうと思っていまして、しゃべりますが、今の検査の場合には、その目的のものをきちんと測れるキットを体外診断薬として承認されたら、次はそれを使って、ある程度の数で、今、まさに阿久津さんがおっしゃった、お医者さんがマーカーはあまりあてにならないけれどもねと言っているものよりも、その数の中で、1,000人とか2,000人ぐらいの中で優れていれば、それも認められるというプロセスなのですけれども、そこから今ここでお話しになっているようなより国のレベルで使えるような、検診にまで行くかどうかは別としても、死亡率まで、そこのところのステップを言われたようにきちんと決めて、そのステップごとのきちんとした承認が必要だと思います。そうでないと、患者さんたちはいろいろなものを受けてしまう。そういう横へ流れてしまいますので、そこのところのシステムは国の関与が必要だと思います。
 以上です。
○中釜座長 重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、既に予定の時間を過ぎておりますが、あと2つほど御議論いただきたいテーマがありますので、もしよろしければ、19時半までということをめどに少し御議論を続けさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、(9)の基盤整備等の中のデータベース、細胞株、サンプルの利用、患者報告アウトカムについて御意見をお願いしたいと思います。既にこのデータベース、細胞株、サンプル、それから、ペイシェントレポートアウトカムに関しては既にいろいろ御意見をいただきました。
 中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 次回話をする予定になっているので、簡単に言いますけれども、やはり先ほど申し上げたように、リアルワールドのデータを集めるというのは非常に重要ですけれども、患者さんへの還元を考えれば、やはりリアルタイムで、しかも継続的にデータを集められる仕組みが必要だと思います。現実的にはかなり難しいのですけれども、難しいからやらないのではなくて、やはり10年後を見据えれば、いかにリアルタイムでデータを集められるのかを考えるのは非常に重要だと思いますので、そうすれば臨床試験の患者さんの特定にもつながりますので、いろいろな観点で、今、日本ではなかなかできないのですけれども、データベースの構築を考えて、10年後を見据えたデータベースの構築や、さっき野田先生が言われたように、やはりサンプルをどう保存するのかということをちゃんとSOP化していくということも含めてやっていかないと、10年たったら1周遅れが2周遅れになっているということになりかねないので、それは次回また簡単に紹介させていただきます。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして谷島構成員、お願いします。
○谷島構成員 第4期がん対策基本計画の全体目標は誰一人取り残さないですが、やはり格差を是正するための方策につながるようなデータ整備が必要ではないかと思っています。
例えば地域別のがんゲノム医療につながった人の割合であったり、臨床試験に参加した人の割合など、また、就労とか経済的背景による違いなど、指標とするかどうかは別にして、きちんとデータに基づいてモニタリングできるような環境が必要ではないかなと思っています。この10年で公的統計、医療情報をきちんと安全にリンケージして活用できるようなインフラ整備を進めるべきではないかなと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。様々な種類のデータ基盤をいかに迅速にシステムとして構築し、それを利活用できできるかという視点の重要性と理解いたしました。
 このテーマでほかに。
 では、野田参考人、お願いいたします。
○野田参考人 ここはこういうふうにいろいろなものがまとまっているのですけれども、今、谷島構成員が言われたのとごく反対側の非常に入り口のシーズ探索のところから申し上げますが、細胞株、サンプルということで、出口に近いものをコンファームするためのものというのは、今、ここでも話題になるし、バンクになるのですけれども、新たなシーズを生み出すために、やはり今、もう一回基礎的な部分でのモデルの構築というのが非常に重要だと私は思っています。
 それはなぜかというと、これまでの発がんモデルというものの多くは基本的には後期の進展などのほうを表すモデルが極めて少ないのです。なので、今、患者さんのシーズで大事になっているのは、早い時期のものよりは進展してきて細胞などがどんどんプラスティシティーやヘテロジェナイティーを持ってきているものが必要だと。それを治さなくてはいけない。そのためのモデルというのが、やはり動物モデル、移植モデルは少ないのです。加えて、先ほど西川先生が言われた、西川先生が引っ張っておられる免疫治療はすばらしいのですけれども、この免疫治療に関しては、がんと免疫系が一緒の個体からできていないといけないので、それを評価する個体のモデルというのは極めて少ないのです。ということからも、本態解明のところから、さらにこちら側の治療法、評価法のところまで、幅広く重要になるモデルの構築というのが研究の面では非常に重要であるということは付け加えさせていただきたいと思います。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかにこのテーマでの御発言、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、続きまして、本日最後の課題になります。(9)の基盤整備の中で患者参画に係る取組、がん研究を担う人材の育成、この点について御発言、御意見をお願いできますでしょうか。
 PPIに関しては、今日、阿久津構成員、それから、大井構成員からの御発言はございました。
 では、石岡構成員、お願いします。
○石岡構成員 私はPPIに関しましてはかなり学会等の対応が遅れてきたのではないかなと思いますので、今、積極的にそういうところに取り組みたいという立場でございます。
 PPIを進める上で、厚生労働省の班も立ち上がりましたけれども、結局、PPIの政策を研究してやるのにも、やはり主体となるのは患者である必要がある。あるいは患者とその家族ですね。何を言いたいかというと、先ほどのライフステージのところにもありましたけれども、やはり日本は患者会の力がまだ弱いのではないかということです。行政や企業や、あるいはアカデミアに対等な立場でロビー活動をできるというようなレベルにはまだ至っていないのではないか。
 宣伝ばかりしていますけれども、私は先週アメリカのASCOに行ってまいりまして、ASCOのCEOをはじめ、いろいろな会長とかに7~8人会ってきましたけれども、そういう会には必ず患者の会の人たちが複数アフターファイブのパーティーに来て、プレゼンテーションなどをして意見を言って、対等の立場でいるという状況です。基本的にこれが全く日本では行われていないので、先ほど来患者の会の代表の方々がああしてほしい、こうしてほしいというところに関して、どうしてもその後手後手に回っているのではないかなと思います。
 したがいまして、PPIをまずやるという段階で、患者の会をいかにして強くするかということをやはりみんなで考えていく必要があるのではないかなと思います。それは当然財政的な支援も必要だと思います。
○中釜座長 ありがとうございます。
 この点も含めて、大井構成員、何か御発言はございますか。
○大井構成員 今の御指摘は本当にもっともかと思いますけれども、実際に日本の患者団体の成長の段階と世界各国の成長の段階ではかなり違っていると思います。日本の多くの場合は、患者さんは患者さんだけが集まるという集団の形態を取っています。欧米社会、私たちの組織もアメリカに本部がありますけれども、患者さんが、あるいは患者さんの当事者である家族が創設の声を上げるということには関わっています。ランス・アームストロングさんもそうです。リブストロング財団をつくるときに、声を上げるときは彼が大きく関わりました。でも、その運営にはダグウルマンはじめ一般社会の人たちの支援者が、スポークスマンは俺がやるよ、こういった資金集めは私がやるよという形で、様々な協力者が集うという形成過程があって現在の集団の形態になっています。
 なので、この点は先ほども発表させていただきましたように、患者ということだけではなくて、市民という人たちがいかに巻き込まれてくるかということが重要な視点で、患者だけが患者の視点として何かを言えばいいとか、家族は家族の視点で言えばいいということではなくて、社会がどう考えるか、社会の人たちが支えようと思うかということの土壌をつくっていくというような機運をつくっていかないと、世界の患者支援団体のように成長していくということはまだまだ至らないと認識しています。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、続きまして谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 少し情緒的な意見で恐縮ですが、述べさせていただきます。
 ちょっと遡りますが、免疫チェックポイント阻害剤など新しい治療に関しては、将来に及ぼす影響についてやはり気になるところがすごくあるのです。そこもぜひ今後研究を進めていただきたいのです。また、それに伴って、治療のゴールをどこに持ってくるかによって、今後やるべき対応とか費用対効果は変わってくるように思います。そういう議論になってくると、患者の声というのがより重要になってくると思うので、患者を単なる被験者ということではなくて研究のパートナーとして、様々な研究において患者市民参画とその前提となる患者への丁寧な情報提供や患者還元の思想というのをこの戦略の中にも組み込んでいただきたいと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 それでは、宮園参考人、お願いします。
○宮園参考人 先ほどからも患者さんの参画ということで大変重要な意見として聞いております。癌学会などが何もやってこなかったということは全くなくて、私も癌学会の理事長のときには、患者さんとの参画等、いろいろな形で努力してきたつもりではありますし、アメリカ癌学会が非常に活発にやっておられるのをみんなで学びながら何とかということでやってまいりましたけれども、これはやはり今後も努力する必要があるのではないかと思います。そういったことでの、AMEDでもPPIの仕組みなども始まりましたし、今日の御意見をお聞きして、また今後も議論していくべきかなと思ってお聞きしたところでした。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、阿久津構成員、お願いいたします。
○阿久津構成員 ありがとうございます。
 本日発表させていただいたときにも申し上げているところではあるのですけれども、先ほど大井さんのお話にもありましたけれども、患者さんにパワーをつけるためには市民の皆さんがどうやって支えてくださるか。資金面も含めて支えてくださるのかというのは非常に大きいかなと思っております。
 1つあるとすると、例えば乳がんの学会ですごくPPIが進んでいて、患者の皆さんが集まった会があります。ですけれども、やはり患者さんと薬のメーカーさんが直接薬機法でつながってはいけないという理由から、出られない、情報を得られないセミナーがあります。多分ここを変えるというのも一つ強みになるのかなと私は思っていまして、必要な情報を必要として得られるということと、その人たちを含めて、利益をどう考えるかというのは別として、支えるという点では非常に何かの寄附で支える。アメリカはすごく寄附で支えるというのがありますけれども、日本では患者さんの団体小さ過ぎてて、集まっている団体はもちろんあるのですけれども、それだけではやはり市町村を含めて網羅できていないのではないのかなと思いますので、先ほど石岡先生もおっしゃってくださいましたけれども、患者会のパワーを上げるためにも、周りの皆さんがどれだけ資金も含めてサポートしていただく仕組みをつくるかというところが非常に大事になってくるのかなと思っております。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 今、阿久津構成員の発言のところで資金のサポートという件に関してですけれども、アメリカであったり、ヨーロッパであったり、そういった世界で活動している大きな組織というのは、まず共益性を担保して、仲間内でどうやって課題を解決していくかということをやってきた。その上で公益性を担保することを目指し、日本で言えば公益財団法人とか公益社団法人、あるいは認定NPO法人という形で、アメリカにおいても発言権を持っているのは、公益性を担保しているという内国歳入法第501条C項3号に基づく501(C)(3)団体が社会に対して発言権を持ちます。なので、患者団体もいろいろな形でNPO法人とか一般社団法人で成立しておりますけれども、それは共益性の担保であって、社会的にはやはり第三者の評価を受けるような、公益性を担保するような組織に成長していって、寄附や資金を調達していくような仕組みに市民や患者の団体も考えなくてはいけない。何でもお願いします、お願いしますということでは多分社会を変えられなくて、私たち患者団体や患者支援団体ができることを社会に公益性として評価される仕組みをどうやってつくっていくか、その上で社会の代表性をどう担保するかということに資する仕組みを整えていくということもこの研究という中で議論していくべきことではないかと思います。
○中釜座長 重要な御指摘をありがとうございました。
 では、続きまして石岡構成員、お願いいたします。
○石岡構成員 大井構成員のおっしゃるとおりですよ。それはアメリカはみんな歴史的にはそうなっている。決して日本のがん患者の会がそれを知らないわけではなくて、実際にがん患者の全がん連とかは公益法人ですので、公益性の活動をずっとやってきたのです。だけれども、うまくいかないという状況がある。これはなぜかというと、やはり産業というか一般市民と企業などのそういうファンドを持っているところがそこに冷たいのではないかと。我々学会は、先ほど宮園先生もおっしゃいましたが、土岐先生の癌治もそうですし、癌学会さんも佐谷さんが理事長ですけれども、我々もペイシェントアドボケート活動というのはずっと協力してきました。しかし、それは違いますよね。それから、公的なお金をそこに入れるということともまた違う。やはりそれは、患者の団体の公益性は大井さんが言うとおりで、正しくて、そういうところを大きくするということが必要だというのは全く同じ意見なのですよ。ただ、それはやってきているのです。やってきているけれども、うまくいかない土壌が日本にはあるので、だから、どうにかてこ入れしないと駄目ではないかというふうに私は申し上げているのです。
○中釜座長 今の点に関して、大井構成員から何か御発言があるようですので、先にお願いいたします。
○大井構成員 今のことの視点ですけれども、先ほど多分全がん連という話をされたかと思うのです。全がん連は確かに2万人の患者さんをサポートして、五十数団体で構成されているとおっしゃっていますけれども、一般社団法人です。
○石岡構成員 そうでしたか。分かりました。ちょっと間違えました。
○大井構成員 一般社団法人の非営利型一般社団法人なので、基本的に社会的評価を受けていないという形になりますので、やはり非営利型一般社団法人であれば、公益社団法人を目指して、公益性を担保するような組織になっていくということを目指し、社会に公益性ある組織として認められるような存在になっていくということを目指すことがまず第一歩かなと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございます。
 では、この点につきまして、郡山参考人、お願いします。
○郡山参考人 先ほどの大井構成員の御発表に関して、ちょっと細かいことの確認なのですけれども、たしかイギリスだったと思いますが、この研究の申請の評価に関わる市民の方が18歳から40歳と比較的若い方だったようですが、がんのリスクは高くない年齢層の人たちが関わっている。そこにイギリスとしてはどういった背景があって、そもそもがん教育などが日本とかなり事情が違うからそういった年齢層の人が加わっているのか、日本ではどう考えていけばいいかという今後の参考に教えていただければと思います。
○中釜座長 今の御質問に関して、大井構成員、よろしいでしょうか。
○大井構成員 ありがとうございます。
 アメリカであれ、イギリスであれ、これはがんに関して実装されているわけではないということがまず前提です。全ての疾患において実装するということになっているので、疾患研究のどの部分を研究として推進していくか、あるいはどの部分を評価していくかということになるので、この年齢構成になっているということが一つかと思います。
 あと、がん対策推進協議会で政策面のところでも発表させていただいたのですけれども、がん研究とかそういった研究に関しては、がん患者として5年以内の治療経験を持つ人たちが発言権を持ってそういった評価に当たるということが記載されています。それは、今の研究の進歩とか治療の進歩がすごくスピードアップしていますので、10年前、20年前の治療を受けたという患者さんたちですと、今の治療を評価できない、あるいは今の治療を受けていないという実状で、私たちはこういう経験をしていますということが発言できないということで、5年以内の治療経験を持って発言するというような規定があったり、そういった様々な基準を設けて委員を選抜しています。なので、そこまでは詳しく分かりませんが、40歳以上の人が入ってはいけないとかということではないかと思います。
○中釜座長 今の答えでよろしいでしょうか。
 続きまして、谷島構成員、お願いします。
○谷島構成員 私も大井構成員に質問させていただきたいのです。僕もいまいち患者・市民参画について分かっていない部分が結構多いのですけれども、公益性を担保することと同時に、がんの患者も多様だし、がんに関する悩みも多様ではないですか。なので、多様性への対応というのも必要になってくるわけですよね。したがって、大小いろいろな活動、いろいろな団体が必要である中で、そこでまた公益性という話になってくると、細かい多様性へ対応しているところは、公益性のある団体の中に吸収されていくというか、その内部でやっていくイメージですか。
○中釜座長 では、今の御指摘に関して、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 がん対策推進協議会で政策のところで話をさせていただいたと思うのですけれども、政策の段階の中では2段階になっているのです。要するに、社会的にいろいろな課題を抱えている人たちを選抜していくかというところは公益性を担保した団体が評価に加わっています。先ほど谷島構成員がおっしゃったように様々な小さな課題を抱えている、要するに共益性の段階でしかない問題、例えばある希少疾患に関して研究をしますといった場合には、公益性を担保している団体がそれを全て把握してサポートしているわけではないので、そういった共益性を持って患者さんたちが集まっている団体が研究を評価する委員に選抜されています。ただ、その選抜するという大きな仕組みには公益性を担保した団体が配置されているというようなイメージです。なので、小さな団体が吸収合併されて大きなところの傘下になるというイメージではなくて、それはおのおのの活動として続けていく。ただし、そのおのおのの団体もみんな公益性を目指していかないと、アメリカなどでも寄附は集まっていかないので、おのおのそういった活動に邁進されている。例えばパンキャンという膵臓がんの団体がアメリカにありますけれども、日本でもパンキャンジャパンとして実装されました。やはり公益性を担保して組織を拡大していって、寄附も多く集めていって、膵臓がんの研究に資するというような活動に寄与しているというのが実態だと思います。
○谷島構成員 ありがとうございます。おっしゃることは分かりながら、なかなか取り残される部分も出そうだなと。今後議論が必要なところかなと思いました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますか。
 PPIは非常に重要な部分で、研究及び開発においてもPPIを取り入れながら、医療実装も含めて、日本としてはまだまだ十分でないところを今後どのよに各ステークホルダーが連携をしながら進めていくかが課題としてあります。課題としての重要性と内容的に多様であるというところも御指摘いただいたかと思います。ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、先ほど言いました19時半にちょうどなりましたので、本日の議事はここまでとさせていただきます。
 本日御発言いただいていない構成員の方、既に退席された方々もいますが、その方々に関して、時間がありましたら御意見をと思ったのですが、よろしいでしょうか。もし発言がございましたら、事務局へメール等で御意見をいただければ、構成員で共有させていただきたいと思います。
 それでは、最後に事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 本日は時間を超過して長時間にわたり、大変活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。
 本日いただいた様々な御意見につきましては、座長とも御相談させていただいた上で事務局のほうで整理して、後日お示しできるように準備してまいりたいと考えております。それに当たりまして、構成員・参考人の先生方、御発言の趣旨等に関して確認等の御連絡をさしあげることもあり得ると思いますので、御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 次回以降の日程につきましては、追って別途御連絡させていただきます。
 それでは、本日はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線2066)